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つみかさね

#グリードオーシャン

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#グリードオーシャン


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 ぷかりぷかり。
 波間に浮かぶ小舟が揺れる。
 ぷかりぷかり。
 その背に花嫁一人を乗せて。
 ぷかりぷかり。
 纏う衣装の眩さと相反して、花嫁の顔は望まぬ未来に曇りを帯びて。
 それを見送るヒトビトは目に目に涙を浮かべ、彼女の未来を祈るばかり。
 ――ざばり。
 水面を割った水柱。現われ出でたは大蛇の化身。
「貴女が今年の巫女ですね?」
「……はい」
「よろしい。貴女のこれからの務めに期待します」
「……はい」
 差し出される手。おずおずと掴み取る手。
 重なり、そして。
 ――とぷん。
 僅かばかりの音だけを残して、大蛇の化身と花嫁は海原の中に溶け消える。
 固唾を飲んでそれを見守っていたヒトビトから漏れ出すは、硬い吐息。
 これで一年は捧げものをしないでいいという安心の念。
 また今年も犠牲を生み出してしまったという罪悪の念。
「いつまで、こんなことを続ければいいんだ……」
 誰かの言葉が静けさを取り戻した海に響く。
 だが、繰り返し繰り返し、幾度もと積み重ねられてきた時の流れが、その言葉に応じる言葉を誰からも奪っていた。

「皆さぁん、新世界へようこそぉ」
 集まった猟兵達の前、ぴょんと跳び出たはハーバニー・キーテセラ(時渡りの兎・f00548)。
 頭部に揺れるは作り物の兎耳。だけれど、今回は大仰にコートなんてはためかせてみたり。
「グリードオーシャン。遂にぃ、遂にと辿り着きましたねぇ」
 猟兵達がその名を聞き知ってから、さて、どれ程経ったことだろうか。
 だが、どれ程の時が経とうとも、こうして猟兵達の尽力の結果として確かにこの世界へと辿り着いたのだ。
 そのことを称賛し、ハーバニーは集まった猟兵達を讃える。
「ですがぁ、この世界もやはりとオブリビオンの影がぁ」
 この世界風に言うのなら、コンキスタドール。そう呼ばれる猟兵達の敵。
 やはりと言うべきか、それがこの世界にも存在することは確か。
 だからこその招集であり、だからこその依頼。
「今回はですねぇ、島を支配する掟を壊しぃ、元凶であるオブリビオンを討って欲しいのですよぅ」
 ハーバニーに曰く、その島――ヘスペ島と呼ばれるそこでは、過去より連なるとある掟があるのだとか。
 それこそが一年に一度、島民の中から選ばれた女性をオブリビオンへと嫁がせる――云わば、生贄の掟。
 遡れば、さて、いつから続いているのかすらも定かではない。
 当然、過去にそれへと反抗したこともあったことだろう。だが、それが未だと続いていることこそが、その結果を示すもの。
 そして、その掟が守られ続ける限りにおいては、島民の無事は保証されるのだ。だからこそ、誰も彼もが疑問を、不満を心の奥底に抱えながらも、それは続いていると言えた。
「古くからの慣習というのはぁ、なかなか当人達には崩せないものなのですよぅ」
 故に、古き慣習を、積み重ねを崩すためには新しい風――猟兵達の働きかけが必要になってくるのだ。
「ということでぇ、まずは花嫁さんや島民の皆さんを止めてくださぁい」
 猟兵達が赴く時はまだ予知に語られる前の時間。
 まだ船で海に出る前であり、花嫁は支度のために海岸にほど近い村の教会に居ることだろう。そして、その支度を手伝うために島民や島の代表者達もまた近くの家々に居る事だろう。
 誰にアプローチするか。その方法は説得か、力尽くか。考えられる方法は様々であり、どのように彼ら彼女らを止めるかは猟兵達に一任される。
「それを止めさえすればぁ、後は元凶を討つのみですよぅ」
 守られなかった掟に対し、オブリビオンはきっと島民へと見せしめを行うことだろう。その時こそが最大の機会。
 そして、掟を壊す際のアプローチ次第によっては、もしかすれば島民達の援護もあり得るかもしれない。
 協力するもよし。避難を促すもよしだ。
「新たな世界も、また一癖も二癖もありそうですね。ですが、皆さんならば確かに前へと進んでいけると信じています」
 開かれるは世界を繋ぐ扉。
 それぞれの想いを胸にして、猟兵達の新たな一歩が扉の向こうへと踏み出される。


ゆうそう
 オープニングへ目を通して頂き、ありがとうございます。
 ゆうそうと申します。

 また一つ、新しい世界が出てきましたね。
 その世界でも、やはりオブリビオンの影。
 是非とも、悪習をぶち壊してあげてください。

 以下、大まかな補足。

 島。
 かつてUDCアースの世界から落ちてきたものです。
 ですので、島にある家々は多少古くなっていたりもしますが、現代風のものと思って頂ければ幸いです。
 また、住まうヒトビトも人間が主です。探せば、僅かにサイボーグの方とかも居るかもしれません。

 掟。
 それが生贄を要求するものだということは暗黙の了解。
 誰も彼も、敢えては言いませんが、そうであると理解しています。

 花嫁。
 二十代前半の女性。
 自分の未来を憂いて、沈みきっています。
 しかし、島のためにそうしなければならないとも理解しています。

 島民。
 代表者は六十代程度の白髪混じりな男性。
 掟に対して不満はありますが、自分達だけで反抗すればどうなるか、よくよく理解しています。
 周囲のヒトビトの反応は様々。
 一人の犠牲で済むなら続けるべきだというヒトもあれば、内心不満を強く抱えているヒトもあります。
 また、数に限りはありますが幾人かは銃も所持。

 それでは、皆さんのプレイング、活躍を心よりお待ちしております。
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第1章 冒険 『花嫁を奪え』

POW   :    正面から障害を乗り越えて、花嫁を助け出す

SPD   :    こっそり忍び込んで、花嫁を助け出す準備をする

WIZ   :    必要な情報を集め、花嫁奪還の為の計画を練る

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

シキ・ジルモント
◆SPD
掟そのものも、まぁそうだが…
島民たちの生きたいと願う心情を利用して生贄を強いるオブリビオンのやり方が、何より気に入らない

真っ直ぐ花嫁のいる教会へ向かい、花嫁に接触を図る
見つかって騒ぎになっても面倒だ
体勢を低く隠れやすい狼の姿に変身し、物陰に隠れながら教会に近付き侵入を試みる

花嫁を見つけたら人の姿に戻り話しかける
無理に連れ出さず、助かる可能性を提示して彼女の意思を確認したい

生贄にならなくても島が助かる方法があれば、そちらを取ってくれるかと聞いてみる
俺は今からその生贄を求める存在を倒しに行くつもりだ
だから今は安全な所に避難して結果を見届けて欲しい
決断するのは、それからでも遅くはないだろう?



 掟に抗うことなかれ。
 それが島の不文律。
 例え、そこにどれだけの苦渋があったとしても。
「……まだ、行きたくないなぁ」
 教会の個室。そこに一人ある花嫁から零れ落ちた想い。それこそは叶わないと理解しての言葉。
 今年の花嫁として――かの大蛇の化身が言うならば、巫女として――選ばれた以上、それを覆すことは出来ない。
 それをしてしまえば最後、この島に待つのは悲劇だけと言い聞かされてきたからこそ。
 それにだ。嫌だと逃げたとして、この島のどこに逃げ場があるというのだろうか。
「行きたく、ないなぁ」
 だけれど、想いが零れ落ちることだけは止められない。止められよう筈もない。
「生贄とされることが嫌ならば、助かる方法を求めればいい」
「――え?」
 響いた声はあり得ざる他者の声。
 外から聞こえた訳ではない。それは確かに、この室内から。
 その声の出所を探して花嫁が周囲を見渡せども、そこに人影の姿はなし。
 ――いや。
「犬?」
「狼だ」
 いつから居たのだろう。いつの間に居たのだろう。視線向けた先には部屋の片隅に鎮座する銀狼の姿。
「あ、ごめんなさい。狼さんだったのね」
「……まあ、今、それは重要なことではない」
 咳払いするような銀狼の仕草に、花嫁の心覆う曇りが僅かと晴れた。
 そして、その瞬間を待っていたかのように、銀狼の姿もまた形を変えていく。
「人間なの?」
「間違いではない」
 それこそはシキ・ジルモント(人狼のガンナー・f09107)。
 すらりと立つ姿に面影があるとするならば、冴えた青の眼差しとさらりと揺れた銀の色。
 その変化に花嫁はただ目を瞬かせるのみ。
「それで、狼さんは……何しに来たのかしら?」
「売り込みというやつだ」
「売り込み?」
「ああ。内心の想いを押し殺し、生贄とならんとする花嫁に助かる道を示すためのな」
 シキの言葉に、ドキリと花嫁の心臓が一つ跳ねた。
 それは仄かな期待によるものであり、そして、脳裏に刻まれた掟の重さに圧し潰され、消えたもの。
「……折角の売り込みだけれど、駄目よ。掟は掟だもの」
 ――守らないと、皆が大変なことになる。
 僅かと晴れていた花嫁の顔の曇り。それが再び、閉ざされていく。
 その様子にピクリとシキの眉が僅かに上がった。
 彼女をそうさせた掟の存在が、それを強いているオブリビオンの存在が、シキには何より気に喰わなかったのだ。
「なら、それがその掟を決めた存在そのものが倒すことであるなら、どうだ」
「それは……できっこないわ」
「できるさ」
 そのためにこそ、シキはここにあるのだから。
 どこまでも気負わぬ、静かなる言葉。情熱を込めるでもなく、ただありのままに伝える言葉。
 それ故にこそ、その言葉は重い響きとなって花嫁の心に届いていく。
 ――本当に、彼ならば? と。
 ドキリドキリと花嫁の胸打つ鼓動。胸の内に掟あれども、消えぬ鼓動。
「それに俺は一人ではない。今頃、他の仲間達もそれぞれに動いていることだろう」
 その言葉を待っていたかのように、ざわり揺れる島の空気。
 それは風であったのか。それとも、誰かの雄叫びであったのか。
 だが、確かに何かが動き出しているのだと花嫁へ理解させるものがそこにはあった。
「決断するのは今でなくてもいい。これからを見届け、それからでもな」
 ――手はもう差し伸べられている。後はそれを掴むだけだ。
 それを伝えるためにこそ、本来であれば好まぬ狼の姿を用いてでもとシキは花嫁に接触するを選んだのだ。
 そして、それは見事成功を果たしたと言える。
 まだ決断には至っていないが、それでも花嫁の胸の内で膨らんだ期待は最早消せるものなどではないことは明白。
 ふるふると震える花嫁の唇は開いて、閉じてを繰り返している。
 ――花嫁の内にあった慣習という分厚い心の壁に、シキは確かな風穴が穿ったのだ。

成功 🔵​🔵​🔴​

フィーナ・ステラガーデン
気に入らないわね!!

とりあえず花嫁は誰かが何とかするんじゃないかしら?
私は教会出口で島民の足止めをするわ
もし誰もいないなら適当に杖に乗っけて空飛んで連れ去るわよ


明らかに自分達に害する相手がいるのに抗おうともせず
一人に全部背負い込ませて犠牲にして
あの花嫁の子は何よ?
現状一年に一度出荷される家畜とかわんないわよ!
それで一年間無事に生きれるって笑わせんじゃないわ!
生かされてるだけでしょ!
掟を言い訳にするな!理不尽を受け入れるな!!
あんたらが立ち上がらないと今まで理不尽に殺された子達が報われないわ!
そうやって苦渋を積み重ねてきたんでしょ!?
いい加減目をさませえええええ!!!!
(アレンジアドリブ連携歓迎


ジョー・グラム
島での結婚式なんて素敵じゃないの。相手がウミヘビでなけりゃな。

港で船を数えてから教会に向かおう。
「よう。結婚式なんだって? それにしちゃ浮かない顔ばっかじゃねぇか」
言い分は聞こう、今までも大変だったんだろうさ。
「けど、ソレとそこのお嬢さんの笑顔ってのは釣り合わないんじゃないかい?」
俺は可愛い子の笑顔が大好きなんだ。
「悪いが攫って行かせてもらうぜ。邪魔するんなら島中の船を積み木の玩具にさせてもらう」
内蔵火機で手近な木でも一発ブチ込み、花嫁を連れ出しに。
「なぁに、責任は取るさ。ウミヘビのスープってのも飲んでみたいしね」



 島を包むは静かなる。
 掟に則る以上、今日という日には間違いなく島民の一人がいなくなるのだ。だからこその空気。
 痛ましさを孕んだ空気の中、時が来るまで静けさが続くのだと誰もが思っていた。
「気に入らないわね!!」
 ――その怒号が空気を斬り裂くまでは。
 なんだなんだと島民がそれぞれの家々から外出てみれば、そこには揺れる豊かな金色の色。
 それこそはフィーナ・ステラガーデン(月をも焦がす・f03500)。
 その身の内に収まり切らぬ感情の発露に髪揺らし、視線の先で堂々たる姿を晒していた。
「お嬢ちゃん。いったい、どうした――」
「アンタらが気に入らないって言ってんのよ!!」
 言葉尻を燃やし尽くすは怒りの炎。
 身の丈にして150cmにも届かないフィーナであったが、そこより発せられる怒気は本物。そして、その圧力はともすれば侮りを覚えられるであろう、彼女の体格の小ささを補って余りある。
 フィーナの怒りの前に、誰もが言葉を失っていた。
「まぁまぁ、そう怒りなさんな。島での結婚式なんて、素敵じゃないの」
「なによ、アンタはこれを祝福するっての!?」
「いいや、相手がウミヘビでなけりゃな」
 怒る金色の前に飄々と乾いた風が吹く。
 風に乗って少しばかり鼻を擽ったは煙草の残り香か。それとも、火薬のそれか。
 草臥れたコートのポケットに片手を突っ込み、ジョー・グラム(サイボーグのブラスターガンナー・f02723)がフィーナの傍らへ。
 その彼の登場が契機となったのだろう。フィーナの火勢が僅かと弱まり、緩んだ圧力に島民達の言葉が戻る。
「突然、気に入らないと言ったり、ごちゃごちゃと騒いでみたり……なんなんだ、君達は!」
 萎縮のあとの反発。
 この場の島民達を代表するように、年若い男が怒りも露わに二人の前へと歩み出る。
「アンタ――」
「よう。今日は結婚式なんだって?」
 再びの着火を抑えるように、フィーナを遮り応えたはジョー。
 チラリと見やった後ろでは、遮られたことに怒りのボルテージをあげつつある金色お嬢。
 だから、一つばかりウィンクを。
 ――出番は先に貰うぜ。お嬢さんの出番はまた後で頼む。
 そう言わんばかりのアイコンタクト。
 それに目をぱちくり瞬かせ、毒気抜けたはフィーナの顔。仕方ないわね。とばかりに、今はジョーへと出番を譲るのだ。
「……それを知っているのか」
「知ってるさ。だが、それにしちゃ浮かない顔ばっかじゃねぇか」
「仕方がないだろう。アンタらだって、その意味を知っているのなら理解できるんじゃないのか」
 ジョーが視線引き戻した先では、先刻の怒りも立ち消えて沈痛な面持ちを浮かべる男の姿。
 そこに苦渋が見え隠れするのは、きっと見間違いではないことだろう。
 その感情を彼が覚えていることが、少しだけ救いに見えた。
「理解してるさ。アンタらの言い分も、今迄にあったのだろう大変さもな」
「なら、何が言いたいんだ」
「なぁに、簡単なことさ。ソレとあそこの中に居る花嫁の笑顔ってのは、釣り合わないんじゃないかい?」
「……掟を破れとでも?」
「俺は可愛い子の笑顔が大好きでね」
 ニカリと笑うジョーの口元。
 ジョーが口にした言葉とは島民の願いでもあり、彼らでは決して口になど出来ぬ想いだ。
 それを苦も無く口にしたジョーを、男は眩しいものを見るように見つめる。
「……だけれど、それは出来ない」
「すれば、島がただで済まないからか?」
「そうだ」
「なら、実力行使ってやつだ」
 するりと身を引いたジョー。その背後に居るのは――。
「ああもう、さっきからウダウダと!!」
 ――燃ゆる炎の化身だ。
 ジョーと男とのやり取りの間、ふつりふつりと静かに燃えていた感情。
 出番を失い、不完全燃焼のようになっていたそれへ、再びと空気が送り込まれる。
 それはまさしく爆発であった。
「明らかに自分達を害する相手がいるのに抗おうともせず!」
 紅の奥に浮かぶは血濡れの日から始まったいつかか。
「一人に全部背負いこませて、犠牲にして、あの花嫁の子は何よ?」
 ダン! と、浮かぶ追想を振り切るように、力強く踏み出した足は勇ましく。
「現状、一年に一度出荷される家畜と変わんないわよ!」
 昂る感情に合わせてか、周囲の空気が熱を孕む。
「それで一年間無事に生きれるって、笑わせんじゃないわ!」

 ――そんなもの、生かされてるだけでしょ!!

 極限まで高まった熱は炎と変わり、フィーナの背後で踊りくねる。
 それは先程までの比ではない圧力となり、男と島民達の足が無意識に後ずさっていた。
「な、なら、どうすれば良かったというんだ!」
 男から吐き出される言葉は血を吐くように。反発するように。
 先程と異なり、フィーナの圧力を前にしても尚と言葉を返せたのは、彼にも僅かと怒りがあったからか。
 だが、その怒りはあくまでも反発による一時的なもの。
「掟を言い訳にするな! 理不尽を受け入れるな!!」
 本物の前には、容易く吹き消されるか。より大きな炎に呑み込まれるのみ。
 島民達の怒りすらをも呑み込んで、フィーナの炎は轟と揺れる。
「あんたらが立ち上がらないと、今まで理不尽に殺された子達が報われないわ!」
 一年に一度。それは必ず出ていた犠牲。
 誰もが心からそれを受け入れていた訳ではない。誰もが望んでその役割を担っていた訳ではない。
 目を背けていた現実が、フィーナの言葉聞く者達に突きつけられる。

「――いい加減、目を、さませえええええ!!!!」

 天へと昇るは紅の柱。
 その光景を目撃した男を含めた島民達は、誰も、何も言えない。
「悪いが、ここの掟は今日限りで仕舞いだ」
 茫然とする男の肩を、ポンとジョーが叩く。
 その刺激にぎこちなく男の首が動いて、未だ衝撃に揺れる瞳がジョーを捉えた。
「なぁに、責任は取るさ。ウミヘビのスープってのも、飲んでみたいしね」
 その言葉が何を意味するかを理解出来ぬ程、彼も愚かではない。
 ただ、ジョーとフィーナであれば出来ぬ事では無いのだろうと、その胸の内にストンとそれが落ちるのみ。
 島民達を後にして教会へと足を向けるジョーとフィーナ。
 最早、それを妨げる者は誰も居ない。言葉を掛ける者も誰も居ない。
 だけれど、それを見送る心の奥に、紅の柱から分けられた熱が確かに燻り始めていた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

テイラー・フィードラ
―――我が声を聞け。

堂々と協会に乗り込み、島民たちの前で声を上げん。

貴殿らは誰かを犠牲にすれば助かると。このような強硬を見逃すどころか、それに加担する処刑人に何時なったと?誰かを犠牲にとは言うが、其の果てにあるは己を犠牲の代償となるか、己が娘を平和への礎とするか。
無論苦しみも分かろう。恐怖も理解しよう。例え立ち向かった所でその果ては無謀の一言で済んでしまう事も知っている。
だが、今此処に居る者よ、貴殿らは罪を犯した存在である。

故に問う。お前達はこれでよいと思っているか、答えよ。
……現状を良しとせぬものよ、集え。
花嫁を隠せ。武器を持て。歯を食い縛り備えよ。
今、汝らはその勇気に値する戦士である。


トリテレイア・ゼロナイン
女性を欲する怪物退治
UDCEの守護聖人始め、世界各国に散見される騎士の誉れ

犠牲者を想えば、得る機会が無ければ良かったのですが

呼び止められれば生贄奪取と怪物退治の為と
例え背中から撃たれようと攻撃を見切り弾を叩き落し、野次馬を引き連れ教会へ

UCの人心に訴える大仰な仕草と声で群衆説得鼓舞

娘が、母が籤で選ばれる度
そして愛する男女に女児の赤子が生まれる度に
皆様は涙を呑まれたことでしょう

戦機の身で私は人を見つめてきました
人は海に捧げる為に愛と命を育むのですか?
いいえ
違うと断言します

私達が尊厳と未来を取り戻すことを誓いましょう!


後で島の長に「海賊が花嫁を攫ったと装う」等現実的リスクヘッジ兼戦闘の際の策を提案


オリヴィア・ローゼンタール
圧政は打ち破らねばならない

代表者へ直談判
悪習は背徳の都を育み、腐敗した悪徳の果実を実らせるのです
このまま唯々諾々と従っているのは、怪物にその果実を与え、肥え太らせる行為に等しい
飽食はさらなる飽食を招き、いずれはすべてを喰いつくされるのです
今は一年に一人であっても、明日には一日に一人になるかもしれない
怪物が己が気分で掟を変えないなど、誰にも保障できないのですから
どうか決断を
今、この世界には変化の時勢が訪れたのです
我々という異物の存在が、世界に刺激を与えている
今この時を漫然と過ごしてしまえば、永劫搾取され続ける奴隷として磨り潰される
その手で、自由を、勝利を掴むのです


エルザ・メレディウス
文化・風習を改める...というのは難しいですけれど、島民の皆様は、もちろんこの悪習には否定的の様です

◆WIZを使用します
*仲間の方の行動と矛盾してしまう場合は、行動を控えさせて頂きます
島民の方々から、この人身供養の習慣について情報を集めます。彼らがどれくらい、この習慣を信じているかやどんな条件で花嫁が選ばれるのかを確認。
もしもこの掟に反対派の方の方が多いなら、彼らの協力のもと、代表者に紹介して頂きます。

代表者の方とお会い出来たら、生贄にされる女性にかわり、私が生贄に扮することを提案致します
村からの被害者が無くなるのなら...良い策だと思いますので



 天高くへと伸びる紅の柱。
 それの齎した熱は島全体へと波及していく。誰もの内に。誰もの内に。
 それは今は小さな種火でも、風吹けば瞬く間に大火へと変じる可能性の熱。
 であればこそ、彼らは島に吹き込む新しき風にならんと動き出すのだ。

「文化、風習を改める……というのは、本来であれば難しいことです」
 ぽつり零すは気品に満ちた声。
 波打つ黒髪を風に遊ばせ、エルザ・メレディウス(復讐者・f19492)はそれを想う。
 だが、彼女の言う難しさも、そこに継続の意思があればこそだ。
 先んじて島中を巡り、島民と触れ合い、様々な情報を集めた今、そこに秘められた想いを彼女は既に察していた。
「ですが、島民の皆様は、もちろんこの悪習には否定的の様です」
 島民達の心に眠る、掟への想いを。
 花嫁を送る――体のいい人身御供。それを強制する掟。
 その始まりは彼らの祖先。だが、それは自発的に起こったものでもなければ、自然という神への捧げものとしてのものでもない。
 そこには確かに悪意があったのだ。オブリビオンという名の悪意が。
 始まりには反抗もあったのだろう。だけれど、摘み取られ、見せしめられ、積み重ねられてきた時の中で、それはいつしか諦観へと変わっていったのだ。
 誰もの心に燻るものはある。だが、実際の行動へと至らなかったのは、そういう経緯もあったからこそ。
「彼らの多くは、この習慣を信じてなどいません。ただ、反抗する力がないからこそ従わざるを得なかったのです」
 拾い集めた情報の欠片を繋ぎ合わせ、その答えをエルザは口にする。
 そして、ならばこそ。
「この島には私を含め、猟兵という名の力があります」
 それを知らしめることが出来たなら、彼らの意識を変革させることも可能であろう、と。
 第一矢は既に紅の炎となって天を衝いた。
 それが齎した熱を煽ることが出来たならば、あとは燎原の火の如くとなることは間違いない。
「既に種は幾つか撒いています。そこで皆さんが各々の想いをぶつけたならば」
 ――それは確かな風となりうる。
 島を巡る中、エルザは島民達の中のグループを幾つかとピックアップもしていたのだ。
 それを情報共有する仲間達――鎧の偉丈夫、鋼鉄の騎士、聖槍の戦乙女へと伝えることで、彼らの動きをより円滑にせんと。
 エルザの想いを受けた者達が、こくりと力強く頷きを返し、それぞれの道を往き始める。
「さて、私ももうひと働きしなければですね」
 見送った彼らの背中。
 エルザもまた、まだ己の仕事を果たさんと歩み続ける。

「――我が声を聞け」
 粛々と響いた威厳ある声。
 それは大きく張り上げたものでもないのに、先程に空を焦がした紅の炎へざわめいていたヒトビトの耳にするりと届いた。
 誰だと振り向けば、そこにあったは鎧の偉丈夫。
 堂々たる立ち振る舞いを見せて、テイラー・フィードラ(未だ戴冠されぬ者・f23928)がその姿を島民達の前に見せたのだ。
 一瞬の静寂を消し去るように、またざわりざわりと声が広がる。

「――圧政は打ち破らねばなりません」
 黒のヴェールの中で、さらり流れる白銀の色。
 凛と涼やかに響いた声は、草原を吹き抜ける風のように島民達の中を渡っていく。
 その声の主たるオリヴィア・ローゼンタール(聖槍のクルースニク・f04296)の顔に浮かぶは、罪を弾劾する厳しさではなく、道標を示すかのように温かな。
 集まる島民達の、視線が集まっていく。

「――望まぬを押し付ける怪物を対峙するは我が役目」
 朗々と歌うように。
 それはまるで騎士が誓うようであった。それはまるで吟遊詩人が語るようであった。
 己が理想をここに体現するは、トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)。
 集まった視線に宿るは大言への猜疑と敵意が半々か。

 ざわめく島民に構わず、テイラーは続ける。
「――貴殿らは犠牲を強いるを見逃すのか」
 その声は罪の糾弾ではない。ただ、淡々と事実を確認するためのそれ。
 王冠の頂きを目指すからこそ、テイラーは感情だけに囚われないなどしないがために。
 誰かが言った。
 ――何も知らぬ者が何を言うのか、と。

「――私はアナタ達の苦しみを知りません」
 集まった視線の前でオリヴィアはそう告げる。
 そして、だからこそ、言えることもあるのだと、オリヴィアは言う。
「ですが、このまま唯々諾々と従っているのは、怪物を肥え太らせる行為に等しいことは間違いありません」
 肥え太った怪物が一年に一度の捧げものだけで満足するだろうか。
 答えは――否。
 望む、望まざるに関わらず、いずれどこかで破綻することは目に見えている。
 長い時の中で、島民達も気付かない訳がない。だけれど、今迄も大丈夫だったのだからという思いが、そう思いたがる心が、誰もの目からそのことを背けさせていたのだ。
 重い沈黙が生まれる。

「――娘が、母が花嫁と選ばれる度に。そして、愛する男女に女児の赤子が生まれる度に、皆さまは涙を呑まれたことでしょう」
 その言葉は、敢えてと古傷を開くかのように。
 一年に一度。それは長いようでもあり、とても短い時間だ。
 幾度と積み重なった儀式の回数は、島民の誰をにも等しく犠牲を強いていたことは間違いない。
 トリテレイアが語るように娘が選ばれた者もあるだろう。母が選ばれた者もあるだろう。友人が、縁者がという者もあるだろう。
 思い起こされる記憶に敵意は呑み込まれ、涙の気配が彩を増す。

「――無論、その苦しみも分かろう。恐怖も理解しよう」
 ――だが、今此処に居る者よ。貴殿らは同時に罪を犯した存在でもある。
 自分が生きるために剣を執らず、平和の礎というお題目で目を瞑り続けてきたのだから。
 張り上げぬテイラーの声であるからこそ、それはより深くと聞く者達の心に突き立つ刃となる。
 ほろりほろりと瞳からは涙がこぼれ、それはまるで開いた心の傷から血が零れているかのようにも見えた。

「――ですが、まだ諦める時ではありません」
 告解の涙を見守り、オリヴィアは変革の時を告げる。
 彼らの心に燻る種火を炎に変えんとして。
「今、この世界には我々という異物が現れました。皆さんも、天を衝いた炎を見たことでしょう」
 ――あれこそは我らが力の一端。悪しきを討つ為にこそ振るわれる力そのもの。
 心の傷開かれる衝撃とはまた異なる衝撃が、島民達の心を震わせる。

「――人は海に捧げる為に愛と命を育むのですか?」
 機械の身体持つ者として、トリテレイアは数多のヒトを見つめてきた。
 そんな彼だからこそ、その命の尊さを島民に問うのだ。
 その行いは果たして正しいのか、と。
 誰かが言った。
 ――いいや、違う! 俺達は、そんなために生きて来たんじゃない。と。

「――では、問おう。現状を良しとせぬものがあるならば、ここに集え」
「――永劫搾取され続ける奴隷として磨り潰される未来を望まぬのであれば、その手で、自由を、勝利を掴むのです!」
「――ならばこそ、私達が皆様の尊厳と未来を取り戻すことを誓いましょう!」

 異なる場所、異なる時の中で、三者三様の言葉が響いていた。
 だが、それに応ずる反応は同一。
 ばらばらであったざわめきは一つの集まりとなり、明確な意思持つ言葉となる。
 ――即ち、古き掟への抵抗の意志を示す言葉へと。
 誰もの心に宿った種火は、この瞬間、確かな灯火となったのだ。
「今、汝らはその勇気に値する戦士である」
 立ち上がろうとする群衆の姿に、テイラーの口元が緩く弧を描き出す。
 さあ、悲劇を、罪を重ねる時は、もう終わりだ。
 エルザの情報を発端として、テイラー、オリヴィア、トリテレイアという風の巻き起こした炎が、島民達の間に燃え広がっていく。

「ああ、そうだ。幾つか提案したいことがあるのですが……」
「村からの被害者をなくす方法ですね。私も、それを提案しようと」
 トリテレイアの想定。エルザの想定。
 それが伝わるより早く、同じ想定を抱いた他の猟兵の手によって事態はまた一つ先へと進んでいくことになるのだが、それはまだほんの少しだけ先のお話。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

シホ・エーデルワイス
《華組》
アドリブ歓迎


聖痕が疼き宿命を痛感

島民の代表者と花嫁に逢い
胸元をはだけ『聖痕』を見せつつ
敵討伐の為
花嫁にして欲しいと
【覚醒】<コミュ力、礼儀作法、優しさ、覚悟>で交渉

私達猟兵は皆さんを生贄の掟から解放しに来ました
ただ敵は海中にいる為
私が花嫁になりおびき寄せます

失敗時のリスクを皆さんだけに負わせません
聖痕の宿命に従い私も命を賭けます
だから皆さんも少し勇気を出してみませんか?

花嫁は島民である必要があれば
花嫁と手を繋ぎ『聖鎧』で変身


交渉成立後
少し緊張故冗談に苦笑

燦を【救園】に入れて小舟に乗り
敵と遭遇したら翼で飛び燦が調べた場所へ誘導

はい
ですが私が仕えるに相応しい力をお持ちか
捕まえてみせて下さい


四王天・燦
《華組》
SPD

シホの聖痕が分かってきた。
悔しいけど止めない。
「本当に花嫁にならないよう頑張ろうぜ」
秘めた独占欲…他所に嫁がれたくない

教会に侵入。
花嫁まで忍び足で移動し軽やかにダッシュで接近。
掻っ攫える実力を示し取引さ

シホの身代りとアタシがオブリビオンを始末すると断言。
椅子でも斬って実力を見せる。二回攻撃で縦横四等分

「花嫁役の娘はさ。やりたい?」
村人に彼女の意思を尊重するよう説得。
反対意見は「風習のせいにして罪を重ねるな」と諫める

シホの着替えは見る(エロ狐)
「綺麗だ。狐の嫁入りしない?」
冗談ぽく言う

儀式場所を選べるなら戦闘しても村に被害のない浜を聞いて実行。
あとは避難勧告

シホの救園に隠れ舟に同行



 献身の花が胸元で囁き、揺れる。
 トクリ、トクリ。
 鼓動に合わせて瞬く輝きは、痛みをシホ・エーデルワイス(捧げるもの・f03442)へと齎すもの。
 それは決して強くはないけれど、無視も出来ない不思議な疼き。
「これも、宿命の一つなのでしょうね」
「……」
「……燦?」
「ああ、ごめん、なんでもない」
 否、なんでもないことなんて、ある筈もない。
 シホの胸元に輝く馬酔木を視界に納めながら、四王天・燦(月夜の翼・f04448)は芽生えた独占欲を噛み殺す。
 悔しいけれど、今の燦にその宿命を止めることは出来ない。
 もしも、今、彼女に出来ることがあるのだとすれば、それは――。
「本当に花嫁にならないよう、頑張ろうぜ」
 ――シホがせんとすることに付き添い、その身を支えることだけだ。
 その姿を、シホはどこか申し訳なさそうな顔で見つめるのみ。
 それ以上の言葉を交わし合うには、それぞれの目的地までの距離は長いようで短かった。

「私を花嫁としてください」
「お嬢さん、その意味を理解して言っているのかな?」
 白髪混じりの男性の目は鋭く、積み重ねてきた歴史の重さを物語るかのよう。
 数多の悲嘆があったのだろう。数多の憤怒があったのだろう。しかし、それらすらを呑み込んで島民の代表を務めることの意味。花嫁を差し出し続ける判断を下し続けたことの重さを。
「――もう一度言おう、お嬢さん。その意味を理解して、言っているのかな?」
「私も何度でも答えましょう。私を、花嫁として下さい」
 しかし、その積み重ねの重さを前にして、シホもまた退くことはない。
 鋭き眼差しを前としてもなおと物怖じすることなく、彼女はその覚悟を示し続ける。
「……どうして、そんなことを言うんだい?」
 その疑問は当然だろう。彼からすれば、猟兵達など見ず知らずの誰かに過ぎない。
 だと言うのに、それが都合よく犠牲の成り代わりとなってくれるなど。
「少なくとも、皆さんを生贄の掟から解放するためにです」
「少なくとも、ということは他にも理由が?」
「はい、私には宿命があるのです」
 失礼と断りを入れた後、僅かな衣擦れを立て、曝け出されるシホの胸元。
 突然の行動に目を白黒させる男性ではあったが、なにより惹きつけられる輝きがそこにはあった。
 それこそはシホの聖痕。犠牲と献身の象徴。
「――このアセビの聖痕は必要な時に身代わりとなって、人々を守る使命を負った生贄の証」
「それが、君の理由か」
「その通りです」
 再びの衣擦れの音。輝きは布の奥へと仕舞いこまれる。
 男の脳裏を巡るは、シホの言葉が信用に値するか否か。判断の間違いは、ともすれば島の壊滅に繋がりかねないからこそ。
 だが、脳裏に焼き付いた輝きが、目の前に凛と立つ姿が、天秤を揺らす。
「全部、アンタが決めることはないんじゃないかい? この娘の意見も聞いてやれよ」
 そして、その後押しをするかのように、新たなる役者がこの舞台へと上がるのだ。

 ――だがその前に、時計の針は少しばかり示す時間を遡る。

「おや、既に先客があったんだ」
 するりするりと燦が忍び込んだは教会の内。
 ヒトの眼を潜り抜け、耳を誤魔化し、難なくと。
 だが、花嫁居る一室に入りこんでみれば、そこには先客。他の猟兵の姿が一つ。
「話し中、だったかな?」
 問えば、もう終わったと彼は言う。そして、身を引くように部屋の片隅へ。
 恐らくは、ここからの出番を燦へと譲ると言うのだろう。
 ならば、遠慮など無用。
「キミが花嫁役の娘で良かったんだよな?」
「ええ、そうよ」
「うん? これは思ったより元気そうだな」
「そうね。さっきまでは沈みきってたわ」
 まだ溌溂には遠い。けれど、生を諦めていない力が花嫁の女性からは感じられた。
 まるで、絶望の淵で何か希望を手にしたかのような。そんな印象。
 ――燦の思考が廻る。
 恐らくは、先に接触した猟兵が彼女に何がしかの影響を与えたのだろう。
 その結果としてこちらの言葉に耳を傾けるだけの余裕が生まれたならば、良い事だと言える。
 それに、そうしたことをする時間が省けたのは、シホと別行動をする時間も惜しい中でなお良い事だ。
 結論。単刀直入に行くべし。
「なら、端的に聞こうか。キミは、花嫁役を続けたい?」
「……いいえ。私は、生きたい。私を、この島の人達を助けて!」
 彼女は理解をしている。猟兵達の存在こそが希望なのだと。
 だから、差し伸べられる手を掴むことに、最早躊躇などなかったのだ。
「そっか。なら、アタシ達にも協力してくれるかな?」
 否など、あろう筈もなかった。

 ――そして、時計の針は現在を指し示す。

「君は、お嬢さんの仲間かな?」
「そうだぜ」
「この娘というのは、その娘のことだろうか」
「それもその通り」
 チラリと男が見るのは燦の背後。白の花嫁がそこに立っている。
 溜息を一つ。
「彼女がここに居るということは……もう、説得も終わっているのだろうね」
「ごめんなさい、お爺様。私、まだ生きていたい。だから、この人達に賭けてみたいの」
「良い、謝るな。これはどこかで破綻するものだったんだ」
 花嫁の娘――男の孫――に芽吹いた希望は、期待は、最早取り除くことは出来ない。
 それがある限り、最早花嫁は花嫁となることを応としないだろう。なにより、目の前にあるシホと燦の存在があるからこそ、覆すなど不可能であった。
 それを理解したからこそ、男の顔から鋭さが消える。
 そこに残されたのは年相応の、人生と重責に疲れ果てた初老の顔。
「おいおい、勝手に絶望するなよな」
「その通りです。アナタ方だけにリスクを負わせなどしません。聖痕の宿命に従い、私も命を賭けます」
「シホだけにさせるかよ。一蓮托生、私もだぜ」
 花嫁を代わるだけではない。この悪しきを布いた者を討つことこそが、猟兵の目的でもあるのだ。
 島民が想っても口に出せぬを堂々と言い放つ二人の意志は眩い。
「アナタも、犠牲を出し続けるとは違う勇気を出してみませんか?」
「もう、風習のせいにして罪を重ねる必要はないんだぜ?」
 差し伸べられる手。
 その背を押すように外から届いたは、掟を今こそ打ち破る時と響く声。
 それこそ、島の空気が決定的に変わった瞬間であり、それは島民達へと接触を図った他の猟兵達によるもの。
「変わらねばならない時、なのだろうね」
 そして、疲れた男の手もまた、差し伸べられた手をおずおずと握るのだ。
 その顔には、ある種の安堵が浮かんでいた。

「では、花嫁の代わる準備を……」
「あ、手伝うぜ!」
 打算ありありな狐の一声。
 さては下心かと苦笑いが浮かび上がる。
 だが、着替えたからとすぐに儀式が執り行われるという訳ではない。
 その前にと、島民の代表たる男が願い出たからだ。
「一つ、芝居をお願い出来ないだろうか?」
 それは捧げられる筈の花嫁を、猟兵達が攫ったという一芝居。
 きっと、他の猟兵の入れ知恵もあったことなのだろう。もしもの時を考えて、少しでも島の安全を守るためのにと。
 だから、これから始まるのはちょっとしたお芝居。だけれど、島民達にとっては古きを捨てるためにも必要な物語である。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

御狐・稲見之守
よし、お前らその花嫁ワシに寄越せ。

あ? ワシは通りすがりの荒ぶる神様じゃよ。マジでマジで。んで、その大蛇の化身とやらをぶち殺すから花嫁くれと云っておる。む、お前ら本気にしてないナ?

UC荒魂顕現、来たれ嵐。ふふふ、お望みなら津波や地震でこの村を水底に沈めても良いゾ?

なぁに心配することなかれ、ことが終わった暁には古い掟など廃して、娘さんはワシの巫女としてこの地に置くこととす。ワシをめっちゃ讃えれば良い。あ、好きな人がおるじゃと? かまわんかまわん、自由恋愛大いに結構。ワシが許す。

さてさて、ワシの花嫁を奪わんとすると大蛇…許せんナ!


レパイア・グラスボトル
古い汚れは建物ごと嵐に巻き込んで吹き飛ばすにかぎるね。
それをやったワタシらの世界は滅びかけだけどね!

【POW】
ポストアポカリプスのレイダーに難しい事はわからない。
襲う、奪う、殺す、殺される。
その四つができれば死んでからも幸せだ。

故郷の皆を呼んで仲良く教会まで花嫁襲撃。
一応猟兵なので殺害等非道はしない。
花嫁を抱えて島内を逃げ回る。賑やかに。馬鹿のように。馬鹿だけど。
食べ物も持って帰れないのでその場で食べるに留める。

でも服は欲しいね。その綺麗なのとか。

メタ:第三勢力的行動。猟兵と島民が協力して花嫁奪還を目指す様に。
召喚されたレイダーは生者、オブリビオン混在。
死んでも馬鹿は治っていない。

怪我人は治す



「難しいことはわからねぇが、自分達から嵐を望むだなんてね!」
「本当に良いのじゃな?」
「構わない。過去からの積み重ねを崩すには、きっと必要なことなんだ」
 そんな、僅かばかり前の会話。

 ――嵐が来る。
 それは乾いた風と共にタガの外れたような笑い声を乗せて。
 ――嵐が来る。
 それは神威の顕現たる荒魂を見せつけるように。
「ヒャッハー! 狼煙を上げろ!! みんな、略奪の時間だよ!!!」
「我為す一切是神事也、天裂き地割る神業畏み畏み奉願祈るべし」
 三十余りの荒くれ者を引き連れ、行進曲代わりの喧騒も高らかにとレパイア・グラスボトル(勝利期限切れアリス・f25718)のお通りだ。
 童のような小さな一歩。しかし、その一歩が進む度にと世界は畏れと共に身を縮こまらせる。其は御狐・稲見之守(モノノ怪神・f00307)。神を負う者也。
 進む、進む。無人の野の如く。島を揺らし、騒がし、目的地を目指して。
 だが、二人――と荒くれ者達――の足が、目的地たる教会を前にしてひたりと止まる。
「ふむ。抵抗があるとは聞いておらなんだが?」
「いいんじゃねぇか? 殺すまではいかなければいいだろ」
 眼前。そこに集うは銃持つ島民。数にして十に足らず。
 白髪の初老――村の代表たる男――がずいと前へ出でて、銃口を突き出す。
「あの娘は生贄と差し出すために育んできたのではない!」
 男は花嫁ではなく、生贄という言葉を使った。
 それは掟に縛られていた、掟を出来ぬ理由としていた時ではあり得なかったこと。
 その変化に気付かぬ稲見之守ではない。
「ほう、それがお主らに出来るのか? 大蛇の化身とやらにすら反抗をしなかった者共が、この荒ぶる神たるワシに」
 だから、彼女はそれに乗ることにした。
 予め、これは芝居だと理解していたが、真に彼らが過去からの脱却を図ろうとしているのだと理解して。
 ――地が揺れる。風が哭く。
 ただ在るだけで世界震わす荒魂に、只の人である彼らが反抗出来る筈もない。
 だと言うのに、そこに構える銃口は恐怖で微かに震えていたが、それでも背中を見せる者はなかった。
「へえ、根性見せるね」
 稲見之守の威圧は実際に振るわれれば怪我などでは済まない。それ故に、彼女の行為は主にして精神を攻めるもの。
 ならばこそ、実際の分かり易い脅威となるのは――。
「なら、こっちはどうだい?」
 ――レパイア達、レイダーの役目だ。
 襲う、奪う、殺す、殺される。
 それこそが彼女の所属していたレイダー達の四か条。
 流石にここで殺す、殺されるの非道まではさせないが、それでも多少の痛い目は致し方のないところ。
「花嫁を奪われたくなかったら、しっかり抵抗しなよ!」
「ッ! 怯むな! 私達が戦わねばならんのだ!」
 銃口の輝きも恐れずに、荒くれ者の波が島民達へと迫る。
 脅威に抗うための――それが威力として十分かはさておき――武器はある。だが、その引き金を引くのに必要なのは、戦うための確かな意思だ。
 圧倒的な暴力を前にして、果たして彼らにそれが出来るのか。
 ――暴力の波が到達する直前、パンと弾けた火薬の響き。
 口火を切ったのはやはり初老の男性で、それに続くようにして残る者達がその引き金を引いていく。
「撃て、撃て、撃てー!」
「そうだ、それでいいんだよ! 大人しく呑まれるのを待ってんじゃないよ!」
 だが、やはり数と能力の差を埋めるには、彼らは余りに非力。
 僅か数十秒の均衡だけを残し、荒くれ者の波に全て呑み込まれて消えていく。
 だが、その結果は決して卑下するべきものではない。
 彼らは上位者たる者達を前にして、確かに数十秒を稼ぎ出したのだ。
 これがもしもの時であれば、他の者達が生き延びる確率をあげる、確かな数十秒を。

 ――芝居の終わりに、喧騒と嵐が嘘のように消えていく。

「ふふふ、なかなか気張っておったのぅ」
「いやはやどうして、結局と呑み込まれてしまったがね」
 荒くれ者に可愛がられた十人足らずの銃士達。
 痛む身体をレパイアに診てもらいながらも、彼らの顔は一様に晴れやか。
 今回の事が従順と時を積み重ね、犠牲を生み出す罪重ねの禊となるとは思ってはいない。
 だけれど、全てはここからなのだ。古い慣習を壊し、新しきを始めるのは。
「あいつらも馬鹿だけど、アンタらも大概だね」
「古きから脱却するためには、私達は一度死なねばならなかったのだ。それをすら頼ったことは申し訳ないことだが」
「本当じゃよ。突然、アドリブなどぶち込んできおってからに」
「しかも、それで怪我人増やしてんだからよ。死んでも馬鹿は治らないってな」
 付ける薬なし。ただし、それはもしかすれば自分達にも言えることなのかもしれないけれど。
 さらりとレパイアの脳裏を過る、愉快な仲間達。
 意識的か、無意識的か。動き続けるレパイアの腕が、話の間に最後の一人の治療を終えていた。
「お礼も出来るならしたいところなのだかな」
「アタシは服が欲しいね。あの綺麗なのとか」
「おや、誰か恋しきでも居るのか?」
「そういう訳じゃないけどね。そういう、アンタはどうなんだい?」
「ワシか? ワシは……そうじゃな。花嫁を貰おうか」
 稲見之守が見せた荒魂が一端。それがあるからこそ、すわ生贄としてかと場がざわめく。
「馬鹿者。生贄など今更欲する訳ないじゃろう。巫女としてじゃよ。ワシの巫女としてこの地に置いてやっても良いと思ってな」
「ちなみに、何をさせるためにか聞いても?」
「あー……そう、そうじゃな。ワシをめっちゃ讃えればよい。あ、なんなら好物なりを供えてくれても良いな」
 まるで、今考え付いたかのよう。
「勿論、好いた者があれば自由に恋愛もするがよい。自由恋愛大いに結構。ワシが許す!」
「ははは、それはきっと光栄なことだ。あの娘もきっと考えてくれることだろう」
 始まりの昏く淀んだ島の空気は既にない。
 あるのは、まるで生まれ変わったかのような清々しき空気。
「――我々は今、一度死んだ。ならば、生かされるだけの掟に囚われる必要などなし!」
 号を発する男に、諦観も疲れ切った様子も最早ない。そして、居並ぶ島民達にも、また。
 発した言葉の通り、彼らは猟兵達の力によって古き掟から遂に解き放たれたのだ。
 ならば、これより行うべきは古き神への決別のみ。
「さてさて、ワシの巫女を奪わんとする大蛇……許せんナ!」
 その新たなる戦いのときは、もうすぐそこに。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​




第2章 集団戦 『呪われた船首像』

POW   :    まとわりつく触腕
【下半身の触腕】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD   :    掻き毟る爪
【水かきのついた指先の爪】による素早い一撃を放つ。また、【自らの肉を削ぎ落す】等で身軽になれば、更に加速する。
WIZ   :    呪われた舟唄
【恨みのこもった悲し気な歌声】を聞いて共感した対象全てを治療する。

イラスト:Kirsche

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 ぷかりぷかり。
 波間に浮かぶ小舟が揺れる。
 ぷかりぷかり。
 その背に花嫁一人を乗せて。
 ぷかりぷかり。
 纏う衣装は眩き白。だが、顔隠す覆いがその表情を読み取らせない。
 それを見守るヒトビトの顔にあるは緊張の汗一滴。
 ――ざばり。
 水面を割った水柱。現われ出でたは大蛇の化身。
「貴女が今年の……これは、どういうことでしょう?」
 浮かぶ船の背にある花嫁をその視界に納めた大蛇の化身――オブリビオンは静かに視線を島民へ、代表へと向ける。
「――何故、花嫁ではなく、それに扮した猟兵が差し出されているのです」
 言葉は穏やか。だが、そこに込められたものは島民の心胆を震え上がらせるもの。
 だが、彼らはもう逃げない。
 瞳に決意を浮かべ、手に手にと取った十にも足らぬ銃を突きつけるのだ。
「そうですか。何かを吹き込まれたのですね」
 その様子に、猟兵の存在に、納得がいったと言わんばかりのオブリビオン。
 その口元が裂けるように邪悪な――本人からすれば優しきつもりの――弧を描き出す。
「もう一度、教えて差し上げなければならないようですね」
 その希望を砕いた後に、じっくりと。
 オブリビオンの指先がぱちりと一つ音を立てる。
 ――ざばり、ざばり、ざばり。
 水面を割った水柱は十、二十を超える数。
 そこから現れ出でたのは――。
「お前達……ッ」
「これが末路かよ……」
 ――かつて犠牲となった者達の亡骸。それを船首像の如くと掲げし、異形の怪物。
 島民達もそれを目撃するのは初めてだったのだろう。嘆きを零し、奥歯を噛みしめ、動揺を殺さんとしている。
 それを傍目として、異形はゆるりゆるりと動き出す。
「さあ、捧げられし巫女達よ。彼らの希望を海に沈め、貴女達の仲間にしてあげなさい」
 主たるオブリビオンの指示に従い、猟兵を、銃持つ島民を海の藻屑とするために。
 ――悪意の形が、迫りくる。
レパイア・グラスボトル
他所の同業者にあの手のオブジェが好きなヤツらがいたけどね。
ワタシの趣味じゃないし、何故かやる気にならないんだよな。(仕様的な意味で)

荒事ならワタシらの得意分野だ。
今度は殺しても良い相手だ。
手加減も何もいらないね。

しかもあちらは見た目は良いしな。
ワタシに抱き着くよりかは楽しいだろ?

ゆえに馬鹿共が空を飛ぶ。

【POW】
目についた船首像に向けて、レイダー達をぶつける。
触腕に叩き落とされない事に注意。
しがみつくことを重視。場合によっては己から当たる。
しがみついたレイダーへの巻き込み攻撃も可。というか推奨。

でも、あれって皮を被ってるだけだよな?
…オマエら、楽しかったか?

怪我人がいたら応急処置をして回る。



 迫り来るは異形。女の身に怪物の触腕を合わせた。
 それこそは、その製作者の悪意を透かして見せる醜悪なオブジェ。
「他所の同業者にあの手のオブジェが好きなヤツらがいたけどね」
 それはワタシの趣味じゃない。何より、やる気が出もしない。
 そう独り言ちるはレパイア・グラスボトル(勝利期限切れアリス・f25718)。
 迫りくるそれを前にしてもなお、その顔に浮かぶは不敵なる。
 生き馬の目を抜くような世界を生き抜いてきた彼女だ。悪意の一つ二つを目にしたところで、今更と動揺する程に軟ではない。なにより、そんな純粋無垢など、とうの昔にフラスコの中へ置いてきたのだから。
「ま、荒事ならワタシらの得意分野だ」
 ざくりと砂浜に足跡残し、異形と向かい合う姿に気負いはない。
「今度は殺しても良い相手だ。手加減も何もいらないね」
 襲い、奪い、殺し、殺され。
 先程までは律していたそれを掲げるに、最早遠慮など必要もあるまい。レイダーたるの本領を見せてやろうではないか。
「――そうだろう?」
 虚空にレパイアが声を投げれば、そこには無数の人影。
 いつから居たのか、いつの間にか居たのか。それとも、最初から居たのか。だが、今、確かにそこにある荒くれ者達の姿。
「はははっ。より取り見取りたぁ、豪勢な話じゃねぇかよ!」
「しかも、あちらは見た目は良いしな。ワタシに抱き着くよりかは楽しいだろう?」
「そりゃそうだ。見るからにして、あっちの方が柔らかそうだしな」
「おいおい、比べてやんのは可哀想だろう。どこをとは言わねぇが」
「うるっさい。御託並べてないで、さっさと行きなよ」
 下卑た笑いの面々を、レパイアは自動小銃の口で小突いて追い散らす。
 それこそ、零した言葉の通り、さっさと行け。そう言わんばかりに。

 ――そして、ヒャッハーの掛け声も高らかに、荒くれ者達は空を飛んだ。

 比喩か否か。一部比喩で、一部比喩でなし。
 彼らはレパイアに押しだされるように――押しだされるまでもなく――異形へと向けて突撃したのだ。それこそ、飛ぶような速度で。
 そんな彼らを迎え撃つは異形の下半身より伸びし触腕。
 人一人など容易く絡めとることが出来るだけの力持つそれが、迎え撃ったのだ。
 その結果、不運と踊ってしまった一部は鳥でもないのに、青空に舞ったのだ。
 ドポン、どさり、ざりざり。
 水落ち、砂浜落ち、砂浜削り。
 不運な一部の荒くれ者達が倒れ伏す。
「おい、生きてるか? ……生きてるな。よし」
 それの応急処置をして回るのは、後方支援の嗜みだろう。いや、製品仕様と言うべきか。
 息を確かめ、患部を確かめ、必要に応じてレパイアは処置を施していく。
 そして、瞬く間に戦線復帰を果たす者もあれば、無念と離脱をせざるを得ない者もある。
 だが、異形目掛けて突進し、その歩みを遅める姿は悪意の波に抗うが如く。
 恐らくは、こうやって終末へと歩みゆく世界で彼らなりに抗い続けてきたのだろう。そう思わせる光景であった。
 では、不運な一部以外はどうであったのか。辿り着いたのだ、彼らは。触腕を潜り抜け、同業者を犠牲にし、異形たちの懐へと。
「ヒャッハー! この子は俺が貰うぜぇ~!」
「あ、手前! 俺が狙ってたってのに!」
 組み付き、しがみつき、纏わりつき。
 一人で足りないなら、二人三人。己の身体を使って、異形の身体を抑え込む。
 そして。

 ――ドカンッ。

 見苦しい花火が異形を包んだ。
 異形からすれば、いったい何が? と思う間もない。
 それこそが彼らの役割。
 敵を抑えることでもなく、奪い取らせることでもなく、その自爆こそが。
 ドポン、どさり、ざりざり。
 不運と踊った一部のように、爆発の余波で海へ砂浜へと墜ちていく。
 それはまるで、敵を倒した代償のように。
「……オマエら、楽しかったか?」
「ふふっ、やわらか、かった、ぜ」
 大丈夫。まだ息はある様子。
 傷だらけで倒れ伏しながらも、男達はサムズアップ。やりきった顔がそこにはあった。
 それを先程と同じように処置しながらも、見つめるレパイアの瞳はどこまでも冷ややか。
「――でも、あれって皮を被ってるだけだよな? 中身は――」
「ぐふっ」
 事実とは時に非情で、現実が彼らに止めを刺していた。
 だが、呆れたように息を吐きながらも、レパイアの手は止まらない。
 傷に対する的確な分析が、処置が、彼らの命を確かに繋いでいく。
 そんな、まるで冗談のような一幕。
 だが、その突撃が、身を挺しての行動が、島民達を含む仲間の態勢を整える確かな時間を稼ぎ出していたことは間違いないことであった。
 ――ドカン。
 また花火が打ち上がる。

成功 🔵​🔵​🔴​

エルザ・メレディウス
*台詞などアドリブ歓迎です
*仲間との連携に気を付けます
◆POW使用しながら戦います
・島民の皆様の戦力を有効に使用したいので【集団戦術】を駆使いたします
・かつての亡骸を撃つ【覚悟】を皆様にも持っていただけるようにお声がけを
1.射撃に専念できるように武装した島民は陸側へ。
2.武装した島民は二つのグループに分けて、オブリビオンを左右から囲むような位置取りで
3.間断ない射撃を行えるように弾込めや射撃に工夫していただきながら攻撃の手を絶やさないように

*万が一、相手の攻撃が村民に及びそうな場合は身を挺して庇います。
また、相手の数が減ってきたら猟兵の皆様の戦闘に参加を。白王煉獄を使用します


テイラー・フィードラ
そうだ。これが貴殿らが選び続けた選択の末路である。
故に勇気宿し者よ。その心を忘れるな!終の選択を打ち砕け!
そして守るべき島民達に死力を尽くさせるのだ。私が向かわずして何が王だ。
行くぞ!フォルティ!

凶月之杖より悪魔共の力をフォルティに流しこみ、後脚を魚の尾のように変態させ、海を駆けさせる!
今我々の敵としてある存在は触腕、毒々しき爪を武器として我が相棒や島民を狙う事であろう。
ならば俺がやらねば。長剣を抜き放ち、振るわんとする腕を切り飛ばさせて貰おうか!その隙のトドメは他の奴に任せる!
それよりも島民達を鼓舞する為、声を張り上げん!

民よ!お前の妻を!娘を!母を!守りたいと思うならば!引き金を振り絞れ!


オリヴィア・ローゼンタール
私たちだけで戦い、魔物と化した彼女らを滅ぼすのは不可能ではありません
しかし、これは圧政を打ち破り、邪悪の跳梁を許した己との訣別の儀
彼らを後ろに置いて戦うなど、本末転倒
肩を並べて戦うのです

【聖戦】を宣する
皆さん、目を逸らしてはなりません
これは今までつみかさねてきた罪の証
どれほどの痛みを伴おうとも、決して逃げることは赦されません
【オーラ防御】を重ねることで防御力を重視した強化を施す

意思なき傀儡による緩慢な攻撃は炎を纏った聖槍で斬り落とす(属性攻撃)
あなたたちも本来は被害者……しかし、最早そうなっては救えはしない
その手を罪と血で穢す前に、滅ぼします!



 爆発の音が島民達の意識を引き戻す。
 その視線の先には異形――自分達の積み重ねてきた罪の形。
「そうだ。これが貴殿らが選び続けた選択の末路である」
 言の葉は重くのしかかる現実。
 それは島民達にとって目を逸らし、耳を塞ぎたくなるものであろうことは間違いない。
「皆さん、目を逸らしてはなりません」
 それでも、それは赦されない。
 そこにあるものが彼らが安寧の積み重ねであり、罪の証であるからこそ。
「これは今まで、つみかさねてきた罪の証。どれほどの痛みを伴おうとも、決して逃げることは赦されません」
「故に、勇気宿し者よ。己が心を忘れるな!」
 武器をその手に取った彼らならば、動揺の中でもなんとかと戦うことは出来るだろう。
 だが、それでは駄目なのだ。必要なのは自暴自棄の戦意ではなく、心の芯に据えた確たる覚悟。
 だからこそ、テイラー・フィードラ(未だ戴冠されぬ者・f23928)が、オリヴィア・ローゼンタール(聖槍のクルースニク・f04296)が、その声を島民達へと届けるのだ。
 頭を上げよ。前を向け。眼を開き、その罪を見よ。それを終わらせられるのは誰あろう、己自身である、と。
 そう、これは戦いなのだ。
 己が罪と向き合い、古きとの決別をするのための。
「人々よ、暴虐に膝を屈することなかれ。拳を上げよ、剣を取れ、勝利の光を分け与えよう! 圧政の鎖を打ち砕け!」
「民よ! お前の妻を! 娘を! 母を! 守りたいと思うならば! 引き金を振り絞れ! 終の選択を打ち砕け!」
 聖戦の槍は天高くにと掲げられ、灯されし焔が海風に旗の如くと揺らめき伸びる。
 敵指し示す赤き宝玉を抱きし杖は王笏の如く。例え、王冠は欠けようとも、王たるを示すは我が身をもって。
 戦乙女の、王の加護を、今、ここに。
「はぁぁぁぁぁっ!」
「我が生涯の友よ!悪魔の力を喰らい、この地蹂躙す獣を蹴散らせ!」
 そして、後世へと語り継がれるであろう聖戦の戦端は開かれるのだ。

 輝きが心に戻る。
 オリヴィアとテイラー。その両名が示した光は、異形を前にして波立っていた島民の心を確かに鎮めていた。
 だが、加護が彼らを強化しようとも、それだけでは猟兵という超常に並び立つは些か不足のは事実。
 だからこそ。
「急ぎ、隊列の構築を!」
 それを補わんとして、エルザ・メレディウス(復讐者・f19492)は動いていたのだ。
 覚悟なら既に二人が説いた。ならば、それに応えんとする者達を導くが己の役目として。
 そして、エルザの指示に従い、銃持つ島民達が一斉に動き出す。
「全員で標的を包むように。常に、持てる火力を一つへと集中させるのです」
 島民が持つ銃火器一つ一つでは火力が足らない。
 では、どうすればよいか。簡単だ。火力を纏めてしまえばいいのだ。
 エルザが指示するは鶴翼の如く。異形を左右から囲むように位置取りし、その翼の内に収めしを討たんと。
「落ち着いて、落ち着いて。大丈夫、あれらは皆さんの所まで辿り着けはしません。辿り着かせはしません」
 島民達は訓練された兵隊でもなければ、歴戦の勇士でもない。
 だからこそ、如何に混乱を起こさせないか。動揺を齎さないか。
 エルザは落ち着いた声音を意識して、バタつきがちな島民達を上手にコントロールしていく。
「そう、いいですよ。心を落ち着けて、しっかりと狙って……さあ、私達で彼女を眠らせてあげましょう」
 ――放て!
 剣戟と潮騒の音が支配する世界に、新たな音が加わった瞬間であった。

 近くで見れば見るほどに、それは醜悪なオブジェの如く。製作者の悪意が透けて見えるが如く。
「貴女達も、本来は被害者なのでしょうね」
「だが、今は我々の敵としてある存在。討たねば、討たれるのはこちらだ」
「ええ、分かっていますとも」
「釈迦に説法だったな」
 互いに幾度と戦場を超えた者同士。異形の姿に眉は顰めども、その振るう腕に影響などあろう筈もなし。
 王たらんとする者として、聖槍担う者として、島民達に示すは戦への気概也。
 黄金の穂先が異形の身を穿てば、競い合うように細身の刃が触腕を断ち飛ばす。
 鎧袖一触。
 まさしく、そうなのであろう。だが、二人は待っていたのだ。『それ』が訪れる時を。

 ――飛ばされた触腕。穿たれた傷。満身創痍を引きずって、しかし、確かに浜への上陸を果たした異形の一つ。

 迫りくる悪意の波を斬り崩しながら、視界の端で二人はそれを見る。
 打ち漏らした? いいや、違う――。

「――放て!」
 聞こえたのは凛としたエルザの声。そして。重なる乾いた破裂音。
 エルザの指揮の下、間断なく撃ち込まれる弾丸が次々と満身創痍の異形の身体へと喰らい付く。
 全てが全て命中した訳ではないだろう。幾つかは砂を巻き上げ、海面に水柱を生んでいた。
 だが、撃って、撃って、撃って。その結果、とさりと砂浜に倒れ伏す異形の姿は島民の掴み取った結果だ。
 初めての経験に呼吸乱す者もあっただろう。顔青ざめさせる者もあっただろう。涙浮かべる者もあっただろう。しかし、やりきったのだ。まだ、これが始まりに過ぎないとしても、彼らは確かに。
「数を集めれば、こうして出来るのです! 皆さんが力を合わせれば、こうやって!」
 エルザの激励が響き渡る。
 出来る。貴方達ならば出来る。その結果はそこにあるのだ、と。
 言葉は力となり、熱となり、島民達の背中を力強く押していく。
「次弾の装填を急いで! アナタ達が島を守るのです!」
 島民達の震えは、いつの間にか止まっていた。引き金に添える指先に、もう迷いはない。

 ――彼らが、その覚悟を示すと信じていたからこそ。
「ふふっ、これはうかうかしていられませんね?」
「ああ。俺達がやらんとすることまで奪われてしまいそうだ」
 それは冗談に過ぎないと互いに知っている。
 幾ら徒党を組んだところで、猟兵達に勝るところではないだろう。
 だけれど、彼らの示した意地がオリヴィアとテイラーの心を刺激していた。
 幾度目かの異形の群れが差し迫る。
 その手に生じた水掻きが水を捉え、ぐんと加速をもってその身を運ぶ。
 狙う先は――テイラー。
 だが、彼とてそれをただ座して待つはずもなし。
「我が道を邪魔するつもりであるならば、その身滅びるつもりでくるがいい」
 友たる愛馬は常の姿になく、後脚を魚の尾の如くとしたそれはヒッポカムポスのように。
 そして、殺到する異形の中、これぞ我が道とばかりにテイラーは愛馬と共に正面から突き進む。
 愛馬の速度は陸地のそれと変わりなく、水の中においても主を意のままに運んでいく。
 その先に迫るは猛毒の爪、爪、爪。触れればたちどころにぐずりと肉も蕩けよう。
「――それでも届くとは限らないがな」
 しかし、それよりも迅く剣閃は奔る。傀儡の覚悟なき手に、その行く手は阻めぬとばかりに。
 交差の果て、舞い跳ぶは異形なる者の――。
「仕上げは貴殿に任せよう」
「任されましょう。その嘆きを、ここで浄化させてもらいます」
 その身欠けた異形より、水面にゆらり溶けだす生命の滴。
 テイラーがとどめを任せたは、己が討つよりは修道女の姿をしたオリヴィアへ討たれた方が心休まろうという配慮か。
「――その手を罪と血で穢す前に」
 聖なるかな。聖なるかな。破邪の祈りをここに。
 身に纏いし白銀が、穂先に宿る聖炎が、神々しくと輝きを放つ。
 それはまるで死者へと示す導きの灯り。だが、今は堕とされし異形の身には忌々しき光。
 身は欠けども、残る異形の触腕をもってその火を消さんとするのだ。
「――どうか、安寧を」
 輝きが振るわれ、触腕が触れた端からほろりほろりと崩れていく。まるで鎖解けるかのように、胴の亡骸のみを残して触腕だけが。
 光り過ぎた後には、二人の前に異形の姿はどこにもありはしない。
 ただ、救いだけがそこにはあった。

「派手にやっていますね」
 防衛線の如くと戦う二人を遠目に納め、エルザは血振りの如くと刃を振るう。
 ――火の粉が、残滓のように舞っていた。
 見れば、その足元には異形であったものの残骸――エルザの煉獄が清めた、解放の名残。
 先刻に至るまで島民達の指揮を買って出ていたエルザであった。
 だが、その背に最早、逐一の指揮は必要なしと判断し、彼女もまた他の猟兵と同じくと打って出ていたのだ。
 勿論、何かあれば駆けつける算段ではあろうが、それは心配からではない。
「――共に戦う、仲間ですから」
 肩並べるに足る意志は、彼らの心の中に。
 勇士奏でる銃火の音を舞曲として、黒髪が戦場に翻る。
 ひらり、はらり。
 舞い散る火の粉と異形をその相手としながら。
 エルザの舞踏が終わる頃には、きっともうそこには異形の姿はないことだろう。
 だが、その時が訪れるには、もう暫しの時を要する。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

シキ・ジルモント
◆SPD
こんな姿にしてまで働かせ続けるとは、娶った花嫁に対して随分な扱いだな
方法の善し悪しはともかく、花嫁たちの犠牲によって確かにこの島は救われてきた
そんな彼女たちの末路がこれでは、あまりに報われない

小舟や触腕を足場として使い、銃での攻撃が可能な間合いを維持する
爪の一撃を回避し『カウンター』で射撃を撃ち込む
…しかしこちらへの攻撃はともかく、自身の体まで傷付けるのは見ていて気持ちのいいものでは無い
ユーベルコードで怯ませて動きを止め、急所を狙撃し(『スナイパー』)手早く終わらせたい
もう十分だ、眠らせてやる

島民の安全と心情の為、そして犠牲者たちを解放する為に“巫女”を殲滅する
…元凶の相手は、その後だ


ジョー・グラム
美女の出迎えか、いつもなら嬉しいがね。
まずは、ぶらぶらと歩いて近づく。
「さて…お嬢さん方、出会ったばかりで悪いがお別れだ」
間合いに入ったら抜き打ちで、銃弾を叩き込む。
敵が島民の方へ行かないよう、銃撃でダメージを与えていく。
「熱烈歓迎って言うか、冷てぇなコレ」
手を取ってダンスって訳にはいかないね。
なるべく避けつつ、弱った所を狙って敵の数を減らしていく。
「長引かせるモンじゃねぇな。とっとと本命に行かねぇと気分が悪くなりそうだ」
隙を見つけたらガジェットを召喚、電流投網でまとめて絡めとり、集中砲火で一気に削る。
敵が片付いたら、本番かな。
「さ、そろそろ相手をしてもらおうか。こっちはもう温まってるぜ」



「美女の出迎えか、いつもなら嬉しいがね」
 上半身だけを見たのなら、きっとそれは美女と言っても間違いではないのだろう。
 だが、その認識を歪めるのは下半身から生じる触腕の存在感。
 それが故に、本来であれば眦下げるに足る女性の姿も、今は眉を顰める醜悪なるオブジェ。
「こんな姿にしてまで働かせ続けるとは、娶った花嫁に対して随分な扱いだな」
「これには家庭内暴力も真っ青だ」
「労働環境としても劣悪としか言えん」
「浮かばれないねぇ」
「全くだ。方法の善し悪しはともかく、彼女らの犠牲によって確かにこの島は救われてきただけにな」
 あまりにも報われない。救いがない。
 ならばこそ、そのつみかさねに終止符を撃とうではないか。そのための弾丸は、それぞれの手の内にあるのだから。
 そう。シキ・ジルモント(人狼のガンナー・f09107)とジョー・グラム(サイボーグのブラスターガンナー・f02723)。二人が持つ、その鈍色の銃口の奥深くにと。
 ――ガチリと撃鉄は起こされた。

 砂浜を歩む。その足取りは軽く、まるで散歩のように。
 さくり、さくり、さくり。
 男二人の気ままな旅路。
 だけれど、その視線の先を見つめる瞳は鷹の目のように鋭い。
「よぉ、お嬢さん方」
 瞳と裏腹、気さくに掲げた手は左手。右手はポケットへと突っ込まれたまま。
 それは先制の弾丸を見舞うでもなく、ただ声を掛けるためだけの動作。
 異形達の意識がジョーへと向いたのを、彼は肌で感じていた。
 ――来る。
 考えるまでもない事。
 彼女らの命は既に堕ち、その身は既にオブリビオン。
 敵対する猟兵に対して持ちうる関係と言えば、血で血を洗うもののみ。
「――出会ったばかりで悪いがお別れだ」
 だから、これもまた考えるまでもない事。
 右手がポケットから抜かれ、水飛沫散らして異形が動くよりも早く、その額に撃たれたピリオドの印。
 後の先。ジョーの抜き打ちであるならば、相手の挙動を見てもなおと間に合うもの。
 額に風穴明けた異形がばしゃりと崩れ落ちる。
 その音が開戦の合図。
 倒れた異形を踏み越えて、確かな敵と認識したジョーへと殺到を開始する。
「熱烈歓迎どうもだね、これは。冷たい水飛沫の代わりに、花輪の一つでもくれればなお嬉しいが」
「それは無理だろう。彼女たちが来るのは花輪を掛けるためではなく、あんたの首を掻き切るためだろうからな」
「こいつは手厳しい」
「というより、それが目的だったんだろう?」
 先制の一撃は相手の意識を惹きつけるに十二分。
 それがあれば、より脅威度が高いと認識されれば、異形達の意識が猟兵から島民に逸れる可能性は低くなる。それを狙っての。
 シキの指摘に、ジョーはただ曖昧模糊と笑うのみ。
 まったく。とシキが嘆息零せば、同時に零れ落ちる銃声の咆哮。
 如何に軽口のように言葉交わそうとも、ここが戦場であることを忘れたりなどしない。しよう筈もない。その冷静沈着さこそが、シキのシキたる所以。
 吐き出された弾丸は狙い違わずと異形の身体に、頭部にと突き刺さり、傷痕を確かとその身に刻み込む。
 異形達の足並みが、明確に鈍った。
 それは痛みによるものではない。恐怖によるものでもない。
「大人しくしていてもらおうか」
 その手足を、動くに必要な芯を射抜いていたからこそ。
 だが、それでもなお、それでもなおと異形は波となって押し寄せんとするのだ。
 例え、その身を削ったとしても、砕いたとしても。
「――見るに耐えんな」
 自身の身すらも顧みず、ただ命じられたままに。
 後続が速度落ちた異形に追い付けば、その身を盾とでもするかのように押しだし、迫りくる。
 そして、遂にと異形達は銃弾の距離を埋め、その爪が、手が、シキを捉えんと――。

「あんま嬉しくない大漁だな」

 ――空中に投擲され、広がったはガジェット製の投網。
 ばさりと落ちれば、絡まり、纏わり、その動きを戒めていくもの。
 俺はヒトをとる漁師なんて柄じゃないんだけどな。なんて、ぼやきがポツリ。
「――一網打尽ってのは、こういうのを言うのかね?」
「言葉通りだろう」
 勿論、異形の全てを捕えた訳ではない。
 その網の範囲から運よくか、意識的にか、逃れた者達もあるにはあった。
 だが、渋滞を無理矢理に押し通していた者達の大半は網の中。そして、それは二人に相対していた異形の大半がそうなったことを示すもの。
 蠢く網の中、最早、狙いを付けるまでもない。
 見据える視線の先で身を削り、もがき、それでも前へと愚直に進もうとする姿は、いっそ憐れ。
「長引かせるモンじゃねぇな。とっとと本命に行かねぇと気分が悪くなりそうだ」
「同意見だな」
 止めを刺すならば、これ以上の苦しみを与えぬように。

「――もう十分だ。眠らせてやる」

 火薬の破裂音はいついかなる時も無情なる音。
 だが、その担い手までもが必ずしもそうであるとは限らない。
 二つの銃口から硝煙が燻り、天高くへと昇っていく。
 それはまるで、犠牲となった花嫁達を天へと導く送り火の名残りのように。

「さ、そろそろ相手をしてもらおうか。こっちはもう温まってるぜ」
「……次はお前だ」

 最後の一つが倒れ、解放の時が終わったとしても、まだ戦いの時は続くことだろう。そこにこの島での出来事の元凶が存在する限りは。
 二人の視線の先で、大蛇の化身が静かに嗤っていた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

御狐・稲見之守
古来より往々にしてヒトとヒトならざる者との契りはヒトが破るもんじゃ。しかし、それゆえに時にはヒトは古き掟を棄て、自らの足で現在を過去にして未来に進む。さ、スケベな海神様にはお暇願おうか。

さて、島民らの前でかつての縁者を討つのはやりづらいが……彼女らの舟歌を島民らが聴いて向こう側にいざなわれても困る。止むなし。

UC荒魂顕現、我為す一切是神事也、天裂き地割る神業畏み畏み奉願祈るべし。来たれ雷の嵐、轟く雷鳴とともに疾く彼奴らを跡形もなく消し炭にしてしまえ。雷のとばっちりが生贄の舟や島民らに行かないよう霊符を飛ばし防陣を敷いて置くこととす。

……彼女らの魂が迷いなく海の向こうに辿り着くことを祈ろう。



「古来より往々にして、ヒトとヒトならざる者との契りはヒトが破るもんじゃ」
 さて、その言葉はどちらの側に立ってのものだろう。
 古きに名を列ねる者としてか。ヒトに寄り添う者としてか。はたまた、その境界に立つ者としてか。
 しゃらりと奏でる衣擦れの音も涼やかに、御狐・稲見之守(モノノ怪神・f00307)はさくりと砂地を踏む。
「しかし、それゆえに時にはヒトは古き掟を棄て、自らの足で現在を過去にして未来に進む」
 彼女のヘテロクロミアの瞳が映してきたもの。
 それはきっと、稲見之守が積み重ねてきた時間の数だけ様々とあるのだろう。
 故にこそ、厳かに、懐かしむように語る姿は、童のような姿であってもなおと重さを感じさせるもの。
 そして、走馬灯のように駆け巡った過去から、異色の双眸に現在が映し出される。そこへ映るは、古きに抗い始めた島民の姿。
 ――彼らも、きっとそうなのだろう。
 例え、それが猟兵という切っ掛けが、稲見之守を始めとした働きかけがあったとは言え、だ。
 島民の姿から視線逸らすように瞳閉じ、現在が暗闇に閉ざされる。
「――さ、スケベな海神様にはお暇願おうか」
 言葉軽やかに口元は弧を描く。
 再びと開かれた瞳にあるは不敵の二文字。
 その瞳の先は海の彼方。向かい来る異形とその元凶を見据えていた。

「しっかし、趣味の悪い造形じゃのう」
 迫りくる触腕を、毒の手を薙刀で払いながら、思わず眉間に皺。
 それも無理からぬものだろう。
 稲見之守の眼前に蠢くは、女性の亡骸に異形の身を無理矢理に融合させたかのような者達だ。
 それで精神の動揺に至ることはないが、それでも直視し続けて気持ちの良いものではない。
「――ん?」
 異形へ薙刀振るうこと幾度か。異形を斬り伏せること幾度か。
 彼女の耳がピクリと動く。
 それは潮騒でもなく、まして戦場の音でもない。そんな『音』を拾ってからこそ。
「――……して、どうして」
「お前達が沈めばよかったのに。お前達が喰らわれればよかったのに」
「助けてほしかった。助かりたかった」
 それは怨念の声。亡骸零す、呪詛の声。
 そこに彼女らの意思が未だあるのかどうかは分からない。
 もしかすれば、大蛇の化身が謳わせているだけなのかもしれない。
 もしかすれば、残留思念のようにその感情だけがこびり付いているのかもしれない。
「その恨み辛み、尤もじゃろうて」
 異色の双眸に宿るは、憐憫の情。
 だが、その声をようやくと新しきへ歩み出した島民達に聞かせる訳にはいかないのだ。
「そなたらの声を届けてやることは出来ぬ。じゃが、代わりにわしが聞き覚えてやろう」
 言葉の証とするように、薙刀の動きがひたりと止まる。
 邪魔立てのなくなった異形達は傷だらけの身を寄せ合うようにして、呪詛の声を重ね合う。
 ――怨、怨、怨。
 まるで泣き叫ぶかのような声は、彼女らに遺された最後の自由なのだろうか。
「……我為す一切是神事也、天裂き地割る神業畏み畏み奉願祈るべし」
 ならば、耳朶を打つその想いに応えるこそ――。
 青天の霹靂。稲見之守の神鳴る声が轟いた。
 荒れ狂う稲妻は龍の如くとうねり、嘆きをその身に呑み込んでいく。
「よいよい、もう泣き止むのじゃ。その嘆きの戒めより、そなたらを解き放ってやろう」
 ――永きの勤め、御苦労であったのぅ。
 稲妻は荒魂の顕現なれども、それにあるは荒れ狂うのみが意味の全てではない。そこには義侠の意味もまた含まれているのだ。
 稲見之守の視界に収まる異形を全てと飲み干し、稲妻の龍は天へと還っていく。その内に数多と魂を乗せて。

「……その魂、迷いなく海の向こうへと辿り着けると良いな」

 嘆きの歌は、もう聞こえない。
 あるのは潮騒と祈りの言の葉紡ぐ稲見之守の声だけ。

成功 🔵​🔵​🔴​

トリテレイア・ゼロナイン
目を伏せたい者は伏せても構いません
人に代わり刃を振るうのは騎士の役目

…もし彼女らの悲劇を直視し、終わらせたいと願うなら
引き金に指を掛ける時です

他猟兵への補助と上陸する敵から住民を●かばう為敵中突撃
センサーの●情報収集で四方八方の触腕を●怪力の●盾受け、●武器受けでの切り落としで防御
対処すべき優先度を●見切り住民への危険度が高い敵を優先的に排除

刃でしか救えぬというのは口惜しいこと極まりませんが…
私の天秤は何時も背後の今を生きる人々へ傾き
哀悼は電子頭脳の奥深くに
刃には一切の容赦を乗せません

恐らく住人の援護は微々たる効果
ですが「終わらせる」決意が込められた重い弾丸
それを実現する為に刃を振るいます



 重き刃が獲物の身に袈裟懸けと喰らい付く。
「刃でしか救えぬというのは口惜しいこと極まりませんが……」
 容赦なくと断ち抜けた刃を引き戻し、ばしゃりと倒れる姿に構う間もなく思考は回転を続ける。
 如何に動くか。如何に凌ぐか。
 敵の数は四方八方。それは最早、センサーで感知するまでもない程の。
 当然だ。その身は既に敵地の中。
 寄せては返す波が足を攫わんとする。
 沈み込む砂地が足を取らんとする。
 まるで、環境すらもが敵に回っているかのよう。
 だが、それでも彼――トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)は、決してそこから退きはしない。
「――私の天秤は何時も背後の今を生きる人々のために」
 かの身がある場所こそは防衛線の要。そして、その背後に奮闘する島民達を背負う場所であるからこそ。
 その身を動かす推進器が、水の中であろうともその抵抗を押しのけ、陸地と変わらぬを齎す。
 ――ガツン。
 翳した大楯にぶつかる衝撃。
 見るまでもない。数瞬前はがら空きだったそこを狙って、異形が触腕を叩きつけたのだ。
 ――盾の損傷程度を確認。……まだ問題ありません。
 既に幾度かと受けた痕。
 滑らかな曲線を描いていた盾の表面には、刻まれた凹凸とぬらり残る毒の滴。
「ぬぅ……!」
 叩きつけた触腕で、盾ごとトリテレイアを抑え込むかのような動き。
 その圧力程度に負けるトリテレイアではないが、それでも一瞬の動きは止まる。
 それを狙ったかのように、挟み込むように来たる異形の影。
 ――身体で受けることも覚悟の上。
 敵の頭を抑えるという役割を担うとした以上、いつまでも無傷とはいられない。斬り込む刃の切っ先こそが、最も欠けやすいのだから。
 だが、ただでは傷を刻まさせなどしないと、緑の光に秘めたるは覚悟が煌く。

 ――パァン。

 炸裂音をトリテレイアのセンサーが拾い上げ、同時、迫りくる筈の異形の影が仰け反りを見せている。
 何が。という思考が電子頭脳を駆け巡るより早く、その身は動いていた。
 盾ごとと抑え込む触腕を巧みなる盾捌きで受け流し、宿した怪力と推力でもって打ち払う。
 緑の光が眼前に捉えたは、力を流され、態勢崩した異形の姿。
 踏み込み、刺突。
 ずぶりと確かな手応えがトリテレイアに伝わり、引き抜けば力なくと異形の身は水面に崩れ落ちる。
 遅れて、仰け反りから態勢を整えた異形が来るが、もう間に合いなどしない。

「――皆様方の『終わらせる』決意。確かに受け取りました」

 斬。
 トリテレイアの怪力と長剣の重さが合わされば、その唐竹割りを止める術などなし。
 左右に分かたれた異形が、勢いのまま泣き別れて水面に沈む。
 それを傍目で確認しながら、トリテレイアの意識はその向こう側――浜辺へと。
 そこにあったは、銃口より硝煙燻らせる島民が姿。
 一様に悲し気な表情を浮かべてはいるが、そこに震えも、怯えも、ありはしない。
 ――あの異形もまた誰かの娘であり、誰かの妻であり、誰かの母であったのだろうか。
 それを見つめたトリテレイアの電子頭脳に奔った感傷という名のノイズ。
「……まだ、まだです。哀悼を捧げるべきは、今ではありません」
 頭を振り、感謝を示すように島民達へと黙礼を捧げる。
 これは島民達が古き掟から脱却し、尊厳と未来を取り戻す戦いだ。
 その彼らが立ち上がったのであれば、ヒトビトに代わり刃振るう筈の騎士が感傷になど溺れてはいられない。
 悼む気持は勿論ある。だが、それは全てが片付いた後にこそ。
「この悲劇を終わらせましょう。今日ここで、間違いなく」
 彼らの決意は、願いは受け取った。
 ならば、それを実現させるためにこそと、トリテレイアは刃を振るい続けるのみ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フィーナ・ステラガーデン
悪趣味にも程があるわね!
こっちからは身の程を教えてやるわ!

アイテムの靴の能力を使って水面を【ダッシュ】で駆けつつ触手を【ジャンプ】で躱しながら邪魔をするなら【属性攻撃】で動き回りつつ焼き払うとするわ!

こんな姿にされちゃったならもう戻せないわよ!
焼いて骸の海に返してあげるのがこの子達の為よ!
島民の支援は期待してないけど
銃とかで援護射撃とかしてくれるなら動きを合わせるわ!
水中にいる奴は【高速詠唱】のUCで水中で爆破するか、打ち上げるわ!

(アレンジアドリブ連携大歓迎!)



 浜辺を駆ける力強い足取り。
 一歩一歩と踏み込む度に、その身体はぐんぐんと加速していく。
 それを表すかのように、豊かな金色が風に波打っていた。
 迎撃するかのように、水面を割って触腕が揺れる。
 そして、助走もたっぷりに踏み込んだ足。
 足を、膝を、身体を、全てをバネと変えて、彼女は勇ましく跳んだ。
「悪趣味にも程があるわね!」
 潮騒の音をかき消す程の雄叫び一つを共として。
 一拍遅れて触腕が伸び来るも、既に弾丸の如くとなった彼女の身を捉えるには至らない。
 触腕の隙間縫い、異形の顔面に突き刺さったはフィーナ・ステラガーデン(月をも焦がす・f03500)の全体重+α。

 ――そう。それは、とてもとても綺麗なドロップキックであった。

 手応えは確か。
 反動を利用して、フィーナ自身はくるり猫の如くと一回転。揺れる水面を今は踏みしめる地と変えて、見事な着地を決めている。
 翻って、フィーナの一撃を受けた異形は如何なるか。
 ぐらりと身体揺らし、仰け反り、そのままばしゃりと小さな水柱。
 突然の襲撃ならぬ、蹴撃を受けた異形がざわりと揺れる。
「掛かって来なさい! 全部、燃やし尽くしてあげるわ!」
 ドン! と擬音の付きそうな、堂々たる宣戦布告。
 それに触発された訳ではないだろう。だが、それが確かな切っ掛けとなり、新たなる戦いの幕は上がったのだ。

「こんのぉぉ!」
 海中から、空中からと伸び来る触腕。
 それを駆け、跳び、時に蹴り返し、フィーナはひと時とて止まらずに躱し続ける。
 それでも追いすがるものあれば、杖振りかざし、紅蓮の盾がその前にと。
 ――触腕と紅蓮がぶつかり、轟と風が吹き荒れた。
 衝撃に巻き上げられた海水が外套ととんがり帽子にぶつかり、ぱらぱらと音を立てる。
 俯くフィーナの表情はとんがり帽子の鍔の奥。そこにある感情は窺い知れぬ。
 一拍の空白。
 その空白を埋めんと、再びに触腕が殺到し――。
「……やっぱり、もう戻せないわよね」
 ――ぽつり零したフィーナの言葉に、焔に、呑み込まれた。
 ぱらぱらと落ちる海水の雨に、焔の残り火がちろちろと揺れる。
 その向こうで、フィーナが顔を上げていた。
 そこにあったのは憤怒であり、悲哀であり、様々な感情を綯交ぜにしたもの。
 数回の交差を経て、異形に堕とされた彼女らを救う術はないと、彼女自身が何よりも理解していたからこそ。
 だから。
「焼いて骸の海に返してあげるのが、私に出来る餞よ!」
 ――宣戦布告の折、宣言した言葉を実行に移すのみ。
 翳すは愛杖。詠唱は不要。
 起爆剤ならば、既に周囲でちろちろと揺れている。
 後はそれに魔力を注ぎ込みさえすれば――。

 突如としてフィーナの足元から立ち上るは水柱。海面を割って伸び来たは異形の触腕。
 それこそは、先の蹴撃にて沈んだ異形のもの。
 海中に没したのは確かであったが、それはまだ意識を失っていただけ。
 それが折り悪くと覚醒し、お返しの襲撃を仕掛けてきたのだ。
 起爆の魔力を流し込むが先か。触腕がフィーナの細身を捕えるが先か。
 ――バァン。
 乾いた破裂音。奏でたのはフィーナでもなければ、異形でもない。
 だが、そこで起こった出来事は一つだけ。
 フィーナに巻き付かんとしていた触腕が、明後日の方向へはじけ飛んだという事実のみ。
「期待はあんまりしてなかったんだけれどね」
 この島に来て、初めて見せた口元の笑み。

 ――起爆は最早、止められない。
「消し飛べえええええええええ!!」
 感情を爆発させたかのような、フィーナの大音声。
 連鎖して起こるは、それにも負けぬ大爆発。
 そして、全てが紅蓮の中に呑み込まれた。

 ばらばらと降りしきる海水の雨。時折、海産物。
 二度目のそれは量も多く、流石に弾ききれなかったのだろう。外套と帽子が水分を吸って、少しばかり重たい。
 だけれど、それを纏うフィーナの顔は、ちょっとだけスッキリしたかのような、明るさを僅かと取り戻したかのような。そんな表情にも見えていた。
「次はあいつね? こっちからは身の程を教えてやるわ!」

成功 🔵​🔵​🔴​

四王天・燦
《華組》

「いまは謝ってあげろ、鎮魂を祈れ!」
銃を撃つはまだ。今は後悔と向き合えと村人に指示。
「シホ、この娘達の魂にも安らかに眠れるよう祈りを―」

真威解放・神鳴発動。
飛翔で足場の悪さをカバー。
浜でなく海にいる個体を相手するぜ

水面を飛び、水飛沫で目潰し。
「蛇のために歌い続ける必要はないさ」
胴を部位破壊で切断し、触手の下半身と分かつ。
上半身に四王稲荷符を貼り破魔で憑き物を祓う。
沈みそうな上半身は回収し、シホの救園と協力して陸にあげるよ。
アタシは女の子の魂の救済が業。
陸に帰したいし、村で弔ってあげたいんだ

回収を繰り返し、村を襲う戦力を削いだらシホに助けを求める。
疲労で弱音を吐くが激励に継戦能力を発揮さ


シホ・エーデルワイス
《華組》
アドリブ歓迎
乗船中を想定


<礼儀作法、コミュ力、誘惑で敬いおびき寄せ>つつ

失礼
花嫁は猟兵以外という掟は無いと聞きましたので
どうでしょう?
ここに居る島民全員を生かしたまま私達が負ける所を見せつけられたら
私は逃げず大人しく花嫁になり仕えます

島民への被害を抑えるのが目的


<目潰し属性攻撃の閃光煙幕弾を船上で炸裂させ目立たないで飛翔し
燦を救園から出す>

勿論です

敵の歌に気持ちが沈まない様
<破魔の祈りを込めた慰めの鎮魂歌を歌唱し呪詛耐性を付与>

燦が祓った遺体を<空中浮遊と空中戦を駆使し第六感>で効率よく
片っ端から【救園】へ収納

燦が音を上げたら<優しさと手をつなぐで鼓舞>

しっかり!彼女達を弔うのでしょ?



 ぷかり浮かんだ船の背で、天使は一人静かに祈る。
「花嫁は猟兵以外。掟にそのような内容があるとは、聞いていません」
「それはそうでしょう。あれは島民へと求めたものなのですから」
「あら、応えて頂けるのですね?」
 剣戟の音は遠くもあり、近くもあり。
 大蛇の化身との距離も、また同じく。
 ある種、空白地帯のような空間。それがぷかり浮かぶ船の周囲だった。
 だから、花嫁となった天使――シホ・エーデルワイス(捧げるもの・f03442)は、自身の言葉に大蛇の化身より返事があったことへ驚きを返す。
 そして、同時、これは一つの機でもあると。
「――では、どうでしょう?」
 銀の中に浮かぶ蒼は真摯な光を湛え、大蛇の化身を正面から見据える。
「ここに居る島民全員を生かしたまま、私達が負ける所を見せつけられたなら、私は逃げず、大人しくアナタの花嫁になり仕えます」
 それは、もしもの時にはせめて島民だけでもという自己犠牲からのもの。
 助けたいという想いは本物で、きっとそれは尊いもので。
「逃げずにもなにも、元より猟兵を生かして帰すという道はありません。そして、反抗した者達を赦すということも」
 ――だけれど、大蛇の化身たるには価値なき想い。
 一度許せば、反抗の芽は幾度も芽吹く。だからこそ、丹念に心を折るのだ。牙を抜くのだ。
 そして、その結果が、この島につみかさねられたもの。
 それは猟兵という超常の介入さえなければ、恐らくこれからも続いていたことだろう。
 だからこそ、その希望――猟兵と反抗の灯火掲げた島民――を生かす道は、大蛇の化身にあろう筈もなかった。
「どうあっても彼らを生かす道はない、と?」
「そうなりますね。ですが、安心なさい。貴女も、他の者達も、命沈めた後は等しく同じとしてあげますから」
 ――この巫女達と同じように。
 空白を埋めるように、ざぱりと水飛沫あげて船の周囲へと現れるは異形――捧げられし者達の成れの果て。
 大蛇の化身がシホとの会話に乗ったのは、慈悲でもなければ、戯れでもない。これらを招くための。
「――致し方、ありませんね」
 だが、如何に船を囲まれようとも、シホに動揺の様子はない。ただ、どこか悲し気に蒼の瞳が揺れるのみ。
 そして、異形の触腕が船へと殺到せんとして――。

「御願いします」
「応とも!」

 ――光が生まれた。
 シホより生じた眩い輝きは異形達の眼を一瞬と焼き、視界を奪うには十二分。
 しかし、白に染められた視界の中、異形に伝わる触腕が船を砕いた感触は確か。
 焼かれた視界が元の景色を取り戻した時、そこにあったのは――。

「御狐・燦が願い奉る。今ここに雷神の力を顕さん。神鳴――真威解放!」

 ――空中にと飛翔し、触腕より逃れたシホを背へと庇うかのように立ち塞がる、四王天・燦(月夜の翼・f04448)が姿。
 陽光に輝くは凛々しき戦巫女。常なる衣装を脱ぎ変えて、彼女が今ここに推参した瞬間であった。
「――鎮魂の祈りに代えよう」
 ぽつり零した言葉。
 異形達がそれに反応して再びと動き出すより早く、ばちりと奔ったは紫電の輝き。
 瞬きをした訳ではなかった。
 だが、まるでコマ送りのように、先程まで離れた位置にあった筈の燦が異形の目の前に。
 ――斬。
 紅の稲妻を尾と残し、異形の身を断ち抜けた刃は鋭く、迅く。
 すれ違い、ゆるり振り返った燦が眼にしたのは、己の業。ずるりと泣き別れた異形の上下。
「シホ、この娘達の魂にも安らかに眠れるよう祈りを――」
「――勿論です」
「以心伝心ってやつだな」
 言葉全て伝える前に、当然の如くと返ってくる応の言葉。
 ニカリと明るきが燦の顔を彩った。
 その目の前で祈りを捧げるシホ。応えるように、彼女の十字架へと異形の上半身――女性の亡骸が吸い込まれていく。
 あれなるこそ燦が突如としてこの場に現れるが叶った絡繰り。
 シホの十字架を、服の袖口を出入口として、別の空間へと繋げる御業。
 燦は予めとそこに潜み、予想されるシホの危機に備えていたのだ。
 そして、此度はその逆。後の弔いを想って、せめて身体だけでもと。
 ――アタシの業だな。これは。
 シホにも刻まれた聖痕の業があるように、燦にもまた魂の救済という業があったのだ。
 だからこそ。
「待ってな。今、救けてやるよ」
 弾ける紫電は目の前の全てを平らげるまで、決して衰えなどしない。

 刃が奔り、刃が奔り、刃が奔る。
 燦の断った異形の数は既に十を超えていた。
「ちょーっと、息があがってきたか?」
 まだ刃の鋭さに陰りはない。
 だが、断てども断てども減らぬ異形の数。積み重ねられてきた時間の重さは、じわりと燦を蝕む。
 それを助長するかのように、異形達の口々から零れるは呪詛の歌。
「何故、何故、何故」
「お前達が沈めばよかったんだ。お前達が……」
「帰りたい。家に帰りたい」
 恨みが、哀しみが波となり、異形達の傷を癒す。同時、その哀しきは聞く者の心を波立てるのだ。

「――しっかり! 彼女達を弔うのでしょ?」

 ならば、それを打ち払うは如何なるか。
 それは鎮魂の歌。心寄り添い、救いの手を差し伸べる慰めの歌。
 シホの歌声が伸びやかに海原を渡り、世界に響く。
 ――旋律が、変わった。
 最早、そこに心蝕むような声はなく、あるのは心奮い立つような。
 彼女が、シホが絶望を塗り替えたのだ。
「ははっ! こんな激励を受けて、奮い立たないじゃ名も廃るってもんだ!」
 刃握る手に力が戻り、紫電の輝きは一層と力強さを増していく。
 ――是、この一刀で全てを祓わん。
 両の手で握った柄。刃金は鋭く、視線の先を指し示す。

「もう、蛇のために歌い続ける必要はないさ」

 ――解放。
 力溜め込むように屈めた身体から一足。
 宙を蹴り、身体は瞬きすらも許さず彼我の距離を詰め――魔なるを断った。
 此処に、救済はなったのだ。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​




第3章 ボス戦 『寛容なる蛇神』

POW   :    蛇神の抱擁
【蛇体での締め付け】による超高速かつ大威力の一撃を放つ。ただし、自身から30cm以内の対象にしか使えない。
SPD   :    縛られた献身
小さな【宝石で抵抗できないように暗示をかけ、口】に触れた抵抗しない対象を吸い込む。中はユーベルコード製の【胃。暗示を解ければ抵抗できるようになるの】で、いつでも外に出られる。
WIZ   :    囚われし神僕
【神威の手鎖につながった鎖】で武装した【過去に喰らった人々】の幽霊をレベル×5体乗せた【大蛇】を召喚する。

イラスト:遡及

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠空葉・千種です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 ざあ、ざあ、ざあ。
 交戦の音はいつしか止んで、潮騒だけが鳴り響く。
「どうして邪魔をするのでしょう?」
 大蛇の化身――寛容なる蛇神は不思議そうに問う。心から不思議そうに。
「年に一人。たった一人を捧げたなら、それ以上など強いなかったというのに」
 嘘ではない。
 蛇神は確かに年に一人の犠牲のみを求めた。しかし、一方でそれ以上を求めもしなかった。
 たった一人の犠牲で大多数の安全が守られるのだ。それに何の不満があるのか。
 ――それが、彼女の思考。
 だけれど、それはあくまでも彼女の視点でしかない。
 長き時に積み重なる犠牲の数。それを強いられ続ける者達の意思など、そこには欠片もなかったのだ。
 それこそは無自覚なる悪意。
「……事ここに至っては仕方がありません」
 猟兵も、反旗を翻した島民も、逃しておくわけにはいかない。
 介入の理由も、反抗の理由も、全ては分からないまま。だけれど、それだけは理解出来ていた。それだけしか、理解できていなかった。
「壊れた巫女の代わりも必要なことですし、暫くはアナタ達で代用するとしましょう」
 ぬるりと蛇の尾が海中で動いたのだろう。不自然な波がばさりと起こる。

 ――硝煙の香りが棚引き、浜辺に薄く広がった。

 銃撃の主は白髪混じりの。
 まるで――否、まさしく備品を扱うかのような言葉に激発しての行動。
 そして、それは確かに蛇神の胴を捉えていた。捉えていたのだ。
「此処にない島民達の仕置きも考えておかないといけませんね」
 ただ、悲しい程までに意味をなさなかっただけで。
 変わらぬ蛇神の態度は、銃弾がその身に毛筋ほどの痛痒をすら齎していなかったことを示すもの。
 元凶を前にして、自分達だけでは届かぬ現実がそこに。
 口惜しさの涙に代わり、男の食いしばった唇からぽたりと赤い滴が零れ落ちる。
「では、一度全てを平らげてしまいましょう」
 ――また積み直すのは、それからのこと。
 ざばり、ざばり。
 波をかき分け、元凶が猟兵達へと近付き来る。
 そして、潮騒に混じり、再びと交戦の音が――。
エルザ・メレディウス
*アドリブ大歓迎です

▲鷲の軍団旗を浜辺に打ちたてます。もしも、住民の方々が血気に走りそうなら、彼らを落ちつかせてから戦闘に参加致します


共に戦ってくれた皆様は決して無力などではありませんでした。皆様の力があったからこそ、私は今、万全の状態で敵を斬る事ができます

あの放たれた銃弾に込められた想いは、私達が引き継ぎます...
あとは、お任せ下さいね

【残像】を使用しながら敵に近づきます。【集団戦術】を心がけて、仲間の皆様と足並みを揃えながら、相手の挙動を観察いたします。
相手に隙が出来たら、その瞬間を見逃さずに白王煉獄を使用致します


テイラー・フィードラ
神は傲慢であるが、お前は大罪背負う以前の存在だ。
ならば知れ。罪を積み重ねしモノを。

敵に現れたるは過去の残滓を乗せた大蛇。繋がれたるは神の鎖。
血の罪と万の咎を持つ俺ではかの鎖と蛇の双方では面倒極まりない。
故に知れ。神の翼が消えても、枷に囚われても、知を持つモノを。

此方も呪言を素早く詠唱し、悪魔を召喚する。
呼び出すはかつて高位の使徒を名乗るモノ。言動こそふざけているが、悪魔として堕ちても尚、知は偉大なり。
そして知れ。悪魔よ、己が善なる過去と悪たる今を持って、霊を縛り付ける鎖を解き放て。

さて、フォルティよ。相手は大蛇のみだ。牙を剥く前に踏み潰せ。
蛇を滅したならば、そのまま神を討ちに向かわん。


オリヴィア・ローゼンタール
人を罪へといざなう、その悪意……年を経た蛇が如し

勇気と無謀は別物、島民たちには戦線から下がっていただく
白き翼の姿に変身
あれは必ず討ち滅ぼします……我々の勝利を【祈って】いてください

【全力魔法】【破魔】で【聖天烈煌破】を放ち、幽霊を浄化する
聖なる光に灼かれ、のたうち回る大蛇の頭を【串刺し】に
人々の魂を縛り付ける邪悪の鎖、主の御稜威にて打ち砕く!

蛇身による変幻自在な攻撃を、強化された【視力】で【見切り】、聖槍で切り払って距離を保つ
口にしろ抱擁にしろ、至近距離を狙う筈
焦れて強引に攻めてきたところへ【カウンター】で掌中に極小凝縮していた【聖天烈煌破】を掌底打ちと共に叩き込む



 届かなかった銃弾。消せぬ蛇神の微嗤み。
 近付きくる悪意の足は変わらない。
 口惜しさが肉に食い込み、鉄の味を口の中に広げていた。
 多少でも影響を与えらていたのなら、意味があったのなら、そうも感じなかったであろう。
 だが、そうではなかった。
 あの蛇神を前にして、島民達の力は目の前を飛び回る羽虫にすら届いていなかったのだ。
 亡骸を討ってまでして辿り着いた現実が、彼らの心を叩きのめす。
 無力感に砂浜へざくりと膝を付いたのは誰であったか。
 まだやれると焦り隠すように憤ったのは誰であったか。
「そう、そうです。貴方達が誰に挑まんとしていたのか。そして、その意味のなさを理解できましたか?」
 蛇の言葉がするりと心に絡みつく。
 消せなかった蛇神の微嗤みが、彼らを遠くから見下ろしていた。
 島民達の心が悪意に蝕まれ――。

「いいえ、違います」

 ――砂浜にばさりと翻った旗の影。その旗手たる口元より、悪意祓う鈴の音が響いた。
 島民の、蛇神の視線集った先にあったは、堂々たるを見せるエルザ・メレディウス(復讐者・f19492)。
「共に戦ってくれた皆様は、決して無力などではありませんでした」
 その声が、悪意を否定する。
 違うのだ、と。島民達の行動に意味はあったのだ、と。
「――皆様の力があったからこそ、私は、私達は今、万全の状態で敵を斬ることができます」
 既に幾度と異形を斬り裂いていた刃が、陽の光を反射して輝きを放つ。
 それが指し示す先に見せるは集いし猟兵達の姿。
 そうだ。そうなのだ。
 島民達は一人一人で戦っている訳ではない。ここには猟兵達もまたあるのだ。
 砂浜に打ち立てられた旗が、潮風にまたばさりと靡く。
 そこに描かれた紋様こそは翼広げた鷲。自由への翼。
 島民達の瞳に、生気が戻る。そこに、絶望の彩はなかった。
 忌々し気な視線を感じるが、さて、これは誰のものであろうか。
 そして、視線に――蛇神に一瞥を返し、エルザは島民達へと宣言するのだ。
「あの放たれた銃弾に込められた想いは、私達が引き継ぎます」
 ――あとは、お任せくださいね。
 猟兵という名の神殺しの弾丸が解き放たれる。
 その背に、島民達の願いを背負って。

「――小賢しいことですね」
 あのまま抗う島民達の心折れれば、後の処理もより楽であったろうに。
 しかし、エルザの言葉がその心を立て直したのだ。
 最早、蛇神が心描いた通りにはいかないことは明白。
 ならばこそ、その希望を手ずからに砕くが優先か。
「先程の亡骸を討つだけなぞ、児戯にも等しき事」
 ――さぁ、おいでなさい。 
 言の葉は水面に零れ落ち、ざわりと海がさざめき揺れる。
 ぬるりと海中で巨影が蠢いた。
 そして、海面割って現われ出でたは見上げるほどの大蛇。その周囲に漂わせるは、朽ちた縄に囚われし魂隷の巫女。その手には鎖。
 巫女の姿は水に濡れた様子もなく、その輪郭は朧に揺れている。
 恐らくは、亡骸すらも残されなかった者達の末路こそが、ああなのだろう。
 大蛇が威嚇の音をかき鳴らし、己が身と亡霊を壁へと変えて、猟兵達の進むを妨げんとする。
「人を罪へといざなう、その悪意……年を経た蛇が如し」
「神は傲慢であるが、あれは神とすら呼べぬな。貴殿の言う通り、唆す者。大罪背負う以前の存在だ」
「主はその御手をさし伸べる者を選びはしませんよ?」
「そうだろうな。ただ、それが必ずしも救いだけとは限らんが」
「それはそうでしょう。試練もまた、人を助くるに必要なものですから」
 だが、その威容を前にしてもなお、猟兵達の歩みは止まらぬ。
 当然だ。その程度で止まる足ならば、彼らの足はとうの昔に止まっていたことだろう。
 魂竦むような威嚇の声を、亡霊の揺らめきを、柳に風と受け流し、テイラー・フィードラ(未だ戴冠されぬ者・f23928)は、オリヴィア・ローゼンタール(聖槍のクルースニク・f04296)は、常なるを崩しはしない。
「なに、その辺りの議論はまたの機会にだ」
「ええ、それはまたいずれ」
 そうだ。今はなにより優先すべきことがある。
 二人の視線向かう先は、口うるさくと唸り続ける蛇の姿――ではなく、その向こうにある蛇神の姿。

「――踏み潰すぞ」
「――あれは必ず討ち滅ぼします」

 その視線を遮るように、じゃらりじゃらりと蛇の音。
 四方八方より伸び来るは、かの者に囚われた亡霊の振るう鎖。
「しかし、たった二人を捕らえようというのに、大仰なことですね」
「だが、数で攻めるのは有効なやり方だ」
 数の差はそのままに手数の差だ。
 猟兵と亡霊達での力量の差はあれど、それを埋めうる数がそこにはあった。
 なにより、その鎖こそが厄介の種。
 下手に触れればたちどころに絡みつき、その身を、力を、容赦なくと抑え込む。
 だからこそ、如何な二人とて槍もて剣もてと、それを打ち払わねばならなかったのだ。
 そして。
「テイラーさん、足元! 来ますよ!」
「分かっている」
 その隙をつくようにと、海中より伸び来る蛇の巨体。
 それは亡霊の鎖とはまた違う、絞め殺すための。巨体が故、その抱擁を愛ければただでは済むまい。
 反撃を試みれば、蛇の隙を覆うように、また鎖。
 劣勢ではない。だが、拮抗がそこに。

「――刃は罪を断ち切り、炎は魂を浄化する」

 故にこそ、その弾丸――エルザは此処に届いたのだ。
 世界に数多と己の影を映し出し、同時に振るうは死者の霊を清める刃。
 それは伸び来る鎖を断ち切り、燃やし、確かな空白の瞬間を生み出すに十二分。
「聞こえますか? 彼らの祈りが」
 エルザが示すは、浜辺で猟兵達を見守る島民の姿。祈りの姿。
 彼女の受け取った想いが、テイラーとオリヴィア、その二人にも受け継がれていく。

「ここで奮い立たねば、か」
「その祈り、確かに」

 今ここに勝利を。
 血と罪の色は黒。世界に穿たれた穴は現世と地獄を繋げる門。
 魂の輝きは純白。祈りを背に受け、輝きは天駆ける翼を生ず。
 それは朝と夜との境界に立つ悪魔を導くモノ。
 それは日輪の輝きをその体躯に宿す為のモノ。
 エルザの齎した空白の時間が、それらをなし得るに繋がったのだ。

「――悪魔よ、己が善なる過去と悪たる今を持って、霊を縛り付ける鎖を解き放て」

 神の翼が消えてもなお、枷に囚われてもなお、失われぬモノはある。
 それこそが叡智。如何なるであろうとも縛られぬモノ。
 悪魔が軽薄な笑みを浮かべ、すいとその手で虚空を撫でる。
 それだけ。たったそれだけで、悪魔の視界にある蛇神の威光示す鎖がただの鎖となり果てた。
 物凄く複雑な視線を隣から感じた気もするが、なに、今は気にすることではない。
「牙を剥く前にな」
「分かっていますよ」
 掲げた槍に祈りを込めて。
 
「――人々の魂を縛り付ける邪悪の鎖、主の御稜威にて打ち砕く!」

 極光は集い、祝福をここに。
 鎖は煉獄と悪魔の前に意味をなさず、残るは蛇の巨体のみ。
 だからこそ、『それ』が来ることは分かっていた。
 海中より伸び来る蛇。その身を灼かれようとも、その熱源こそを脅威と判じてオリヴィアを喰らわんとすることは。
「無窮の光よ! 絢爛たる勝利の煌きで天地を照らし、遍く邪悪を滅却せよ!」
 呑み込まれるよりも迅く、聖槍が極光と共に蛇の脳天を穿っていた。
 そして、振り下ろされた光が世界を照らし出し、蛇神へと続く道を指し示す。

 駆ける。エルザが島民の想いと共に。
 駆ける。テイラーが悪魔と共に。
 駆ける。オリヴィアが極光と共に。

 ヒトと悪魔と天使。
 その刃が蛇神の身へ、威光へ、確かな傷を刻んだ瞬間であった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

四王天・燦
《華組》

綺麗な魔物娘♪
だが殺す

電撃属性攻撃の神鳴で斬るが、魔物娘好きの性と暗示で目が虚ろ。
実は胎から爆破する心算。
朦朧のまま吸精―生命力吸収の接吻を試み…呑まれる

(創り換えられる…シホと一緒に…)
「シホ!?」
シホの声を導に狂気耐性で暗示に抗うぜ

胃の入口に爆弾カウントダウンを設置。
霊装と絆の積重ねを経て真の姿が六尾に成長し一閃。
脱出し真威解放で秒読み爆散さ

「傷を狙え。撃てい!」
村人を鼓舞し銃殺。
人間の怒りを知れ!

胃酸で服はボロボロ。
偽乳も外れ、かつて受けた胸と腹の石化が露見…シホに後遺症だと説明。
犠聖が通じぬ確信あれど、そも傷を親友に移す行為はやんわり拒む

贄の躯は村で弔う。
「ただいま、だってさ」


シホ・エーデルワイス
《華組》
アドリブ歓迎

燦の作戦に内心不安を感じるも
有効だとも思う

なら私は信じて支えるまで

幽霊と大蛇は<破魔の祈りを込めた氷結属性攻撃の誘導弾を高速詠唱で範囲攻撃>
爬虫類は寒さに弱い


燦が仕掛ける頃合いで『聖笄』の光学<迷彩で目立たないで忍び足>で近づき
【霊装】で燦に憑依
翼は出さず気配も隠す

胃へ侵入後<毒耐性のオーラ防御を展開
燦の暗示を催眠術とコミュ力で解除し鼓舞で救助活動>


目を覚まして!


戦後

負傷者を医術で手当てする中
燦の石化後遺症に気付く
諦めきれずUCで癒そうとするが
患部に触れ下手に干渉してはいけないと第六感が告げ引き下がる


島民に心の準備ができたら【救園】から亡骸を出し弔う

どうか安らかな眠りを…



 零れる血の色は赤。
 それは島民の男が流したものと同じ色。
 先立って猟兵に刻まれた傷を撫で、赤の付いた指先が唇を彩る。
「迫りますか」
「綺麗なけしょう♪」
 さて、それは蛇神を指してのことか。それとも、その血化粧を指してのことか。
 魔物。殊更に、女性の姿を模ったそれの魂を好む四王天・燦(月夜の翼・f04448)からすれば、蛇神もその範疇か。
「――だが、殺す」
 否。そうであったとしても、最早、それは食むにすら値しない。
 ばちりと手の中の刃から紅が弾けて踊る。
 その音を切っ掛けとして、燦の姿が掻き消えた。
 コマ落とし。
 その姿を認めた時には、既にその身は眼前。

「――燦!」
「ッ! ありがとっ!」

 だが、閃いた刃が刻んだ相手は蛇神との間に割り込んだ亡霊のみ。
 遅れて、頭部を失った大蛇の胴体が、燦の身体を捕らえんと囲い込む。
 しかし、それがなるを防いだは虚空より飛来した凍てつく弾丸。
 破魔を内に秘めたそれは首なし大蛇に突き刺さり、ひしりひしりとその自由を奪う。
 囲いに緩みあれば、抜け出るに不可能はない。
 神鳴の轟き鳴り響き、燦のその身は自由の空へ。
「一人は無茶ですよ」
「いやいや、あと少しだと思ったんだけどね」
 見咎めるような視線の主はシホ・エーデルワイス(捧げるもの・f03442)。
 じとり視線を向けるシホではあるが、先程までの自己犠牲の精神を思えば、無茶は案外似た者同士なのかもしれない。
「――でも、二人ならもっと大丈夫、だろ?」
「仕方がありませんね。その行動を支えましょう」
 互いが互いに無茶をして、でも、互いが互いに支え合って。
 ならば、その先に切り拓けぬものはないだろう。
 二人の前には、氷を砕いた首なし蛇と亡霊達。
 立ち止まるつもりなど、微塵もなかった。

「蛇の身であるならば、これは堪えるでしょう?」
 雪よ、舞え。風よ、吹き荒べ。
 シホの歌声に世界も謳う。
 ちらりちらりと陽の下に舞う雪という名の奇跡。
 それは風に乗り、海を吹き抜け、気温すらも真冬のそれへ。
 先程に燦を助けるべくと放った弾丸と規模が違う。威力が違う。
 ぬるりと動いていた蛇の動きは、今はぎしりとぎこちなく。それに繋がる亡霊達もまた凍えたように身を震わせていた。
 だからこそ、この時がなによりも好機。信じる相手の拓いてくれた道を駆け抜けずして。
「遅い、遅い!」
 すり抜け、飛び抜け、潜り抜け。
 しなりを無くした縄に、錆付いた鎖に、捕まる燦などではない。
 もし、彼女に追いつける者があったとすれば、それはきっと信ずるべき者のみ。
 だが、今は彼女は一人で翔ぶ。
 殺すと決めた相手へその一刀――蒼銀の迸りを振るうために。

「熱い視線ですね。だからこそ、よく分かります」
 ――宝石の輝きが目を奪った。

 それは燦が蛇神を注視していたからこそ。
 だからこそ、それは蛇神にとっても絶好の好機であったのだ。彼女がこちらを見るのならばこそ、意識を集めているからこそ、暗示をかけるには絶好の。
 刃振るう直前、がくりと燦の速度が落ちる。
 そして、ひたりと止まったは蛇神の前。それはまるで、捧げられた供物の様。
「丁度、傷を癒すに良いと思っていました」
 蛇神の口が開かれて、燦の視界は闇に沈んだ。
 氷雪も、気付けば止んでいた。

 昏い、昏い、闇の底。
 とろり蕩けた意識だけが揺蕩う。
 そこはまるで母の胎の中のようで、遠く、トクリトクリと鼓動が聞こえる。
 このまま蕩けて一つになってしまってもいい。そう思えるほどの、安寧の闇が燦を包んでいた。
 ――……て!
 安寧の中、声が聞こえた気がした。
 ――……燦、目を覚まして!
 今度こそ、間違いなく。
 そして、急速に視界は光を取り戻す。
「……シホ!?」
「よかった。目を覚ましましたね」
 ――目を覚まさないかと思いました。
 そう語りつつ、安堵の息を漏らすはシホ。
 周囲を見渡せば、ぬらりと光る肉の色。
 そう、此処こそは。
「――あいつの胃の腑辺りって感じか?」
「そうですね、恐らくは」
 見れば、燦の衣装も、シホの花嫁衣裳も、その機能を僅かずつだが失いつつあった。
 そして、晒された肌に感じるピリとした痛みは、酸性のそれ。
 それがどういう意味か、理解せぬ二人ではない。
 だが、ひとまずはどうしてここにシホが存在するかの説明が必要となるだろう。
 それこそは、彼女の力の断片が理由。
 己自身を聖霊体へと変じ、望む相手の得物へと憑依し、強化する。
 それを用いて、燦の神鳴へと憑依。共に内なるへと入り込んでいたのだ。
 そして、状況を見るにそれは正解だっという他にない。
「ありがとう。また助けられたな」
「お互い様です。それに、支えるって言いましたからね」
 蕩かされるを待つ状況。だというのに、二人に絶望はなかった。
 ふと、シホの眼に映ったは、露出した燦の――。
「あら、そのお腹。今の間に、何か呪いでも貰ったのでしょうか」
「あ、いや、これは……」
「治しておいた方が、後々のために」
「いいんだ。これは……後遺症でね」
「ですが……」
「大丈夫だから。それより、ここを脱出するのが先決ってな」
「……分かりました」
 共にあったとしても、全てに踏み込める訳ではない。
 それが恐らく、そういう部分なのだろうと、シホの勘が囁く。
 だから、それ以上は踏み込まなかった。踏み込めなかった。
「――それで、何か手立てが?」
「ああ、あるさ」
 やんわりとシホを拒んだ空気とはもう違う、いつもの燦の空気。
「――こいつを、爆発させてね」
 時限爆弾を片手に、にやりと狐が笑っていた。

「少しは足しになったでしょうか」
 燦達を呑み込み、腹を擦るは蛇神の姿。
 その犠牲にざわめきが広がる。
 それを満足気に眺め――。
「あ……?」
 ――突如として膨れ上がった腹の一部、
 バンと血肉が破裂して、飛び出す影の六つの尾。
「自分達ごとだなんて、無茶苦茶にも程が……」
「でも、出られたし、爆破に関しては怪我もなかっただろう?」
「それはそうですが」
 それこそは真なる姿を解放し、己とシホとを守った燦が姿。そして、その影にはシホ。
 どちらも衣服はボロボロで、だけれど、健在で。
 呑み込まれた時とは違うざわめき――歓声が場を包んだ。
 だが、健在とは言え、一部の皮膚が火傷のように爛れた彼女らを、傷負った彼女らをそのままにすまいとフォローが入る。
 それを受けながら、彼女らは島民達の下へと退いていく。
 巫女達を、その亡骸を共としながら。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

フィーナ・ステラガーデン
年に一人たった一人ってあんた何様?
どんだけ傲慢なのよ
元々あんたがいなきゃ一人も犠牲にならないのよ!
今日でくだらない慣習とやらはおしまいね!
最後の犠牲はあまり美味しくなさそうな蛇の蒲焼よ!!

引き続き水面に立って戦うけど前回と違って距離を開けて
【属性攻撃】で牽制しつつ戦うわ!
っていうか水が邪魔で炎の効きが悪いわね!
炎が効きにくいなら温度をあげればいいわね!

もし一緒に戦ってくれる猟兵がいるなら前衛を任せてる間に

一人なら水面に向かって火球を複数飛ばして
水蒸気で目隠しを行って隙を見て【高速詠唱】で
UCを【全力魔法】で発動させてたたっきるわ!

(アレンジアドリブ連携大歓迎!)


シキ・ジルモント
◆SPD
年一人の犠牲が慈悲だとでも言うつもりか
毎年誰かの大切な者を断腸の思いで差し出して来ただろうに
…本当に、気に入らない

…まぁ、理解できなくても構わない
こんな掟は支配者ごと、今日限りで無くなるのだからな

真の姿を解放する(※月光に似た淡い光を纏う。犬歯が牙のように変わり瞳が輝く)
敵の行動を観察、ユーベルコードの効果と真の姿を解放して向上した身体能力で攻撃の発動を察知し反応したい
暗示を察知したら、完全に暗示にかかる前に宝石への狙撃を試みる
宝石への攻撃で敵の行動を中断させ、暗示を解いて銃で反撃する
ゆっくり暗示をかけ直す暇は与えない

鉛玉なら鱈腹喰らうといい
だが、その腹に命が収まる事は金輪際無いと思え


レパイア・グラスボトル
悪趣味なオブジェかと思ってたら、アンタ自身も悪趣味だったわけだ。

アイツらは還したし、今頃女連中に武勇伝でも語っていやがるかな?
となると荒事はちょいと難しいし、
ワタシは後ろで治療を…誰だ?ワタシの白衣を引っ張るのは…?

【対SPD】
冒険心に溢れるガキ共がやってきた。

彼等は親共と違うカッコよく綺麗で強い猟兵達を【応援】する。

ついでに【団体行動】で戦場に残る島民を回収したり、見様見真似の【医術】でレパイアの補佐。
また、【団体行動】で、蛇女の宝石を【略奪】。

レパイア自身は、島民、猟兵の治療に奔走。
子供達を狙った場合は、威嚇射撃を行う。
仕様か情かは分からないけれど。

汚いから口とか触るなよ。バイ菌伝染るぞ。



 白衣のはためきは潮風がために非ず。
 レパイア・グラスボトル(勝利期限切れアリス・f25718)が、忙しなくと動き回るが故にこそ。
 此処は砂浜。戦いの音と僅かに遠い場所。しかして、彼女にとっての戦場に他ならぬ場所。
 その視線の先は怪我人――自爆して蛇の胎から脱出した猟兵――にのみ注がれてはいたが、その前にちらりと一瞥した蛇神の姿が彼女の網膜には焼き付いていた。
「悪趣味なオブジェかと思ってたら、アイツ自身も悪趣味だったわけだ」
 先の戦いで目にした醜悪なオブジェ。彼女の趣味の範囲外な代物。
 なるほど。あれはもしかすれば、蛇神が自分の模造品でも作ろうとしていたからなのかもしれない。
 なんて思考を回しながらも、その手の動きは止まらない。
 切創、熱傷、擦過傷……etc。
 傷の種類も数も数多あれども、治療に奔走するはレパイア一人。
 これじゃあ全く、目も回る。
「ったく、肝心な時にアイツらは……」
 思い返すのは満足気な笑みと共に還っていた連中共。
 恐らくは、還った先で武勇伝でも語っているのだろう。
 それを思うと、少しだけむかっ腹もたとうというもの。
 ――何がサムズアップだ、アイツらめ。
 せめて、数人でも残っていれば手足の如くとこき使えたのに。
 これには愚痴も思わず零れ出ようというものだ。
「――ん?」
 だが、捨てる神あれば、拾う神あり。
「ねぇ、お姉さん。僕達にも手伝わせよ」
「猟兵の人達を助けられたら、皆に自慢できるってもんだ!」
「包帯を巻いたりとかぐらいならぁ、私達でもできるよぉ」
 否、レイダーに神などない。あるのは、ただただ現実だけだ。
 そして、今、レパイアの前に現れた者達――レイダーズ・チルドレンもまた、現実。
 それが忙しなく動き回っていたレパイアの白衣を引っ張り、その存在を主張していた。
「あー、引っ張るな引っ張るな。わかったから」
 使えるものは猫でも杓子でも、何でも使う。
 そうやって生き残る術を教わってきたのだから。
 そうやって生き残る術を教えてきたのだから。
「――よし、お前ら。ここに来ちまったからには容赦はしないよ。クタクタになるまで使われると思いな!」
「はいっ!」
 仕込んだ技能はまだ半人前。だが、それでも数がある。それをレパイアが指示で活かせばどうとでもだ。
 選り分け、選り分け、仕事を任せ。
 避難誘導、治療補佐、それとちょっとの本職仕事。
「さぁ、用意は良いか、お前達。ワタシらが教えたこと、やってみせな!」
 レパイアの指示に従って動き出す彼ら。そのスタートを示すかのように、海で紅蓮の華が咲く。

「年に一人。たった一人って言うけれど、あんた何様?」
 瞬間的に引き上げられた温度。海面の一部が蒸気となって、霧のヴェールを戦場に敷く。
 それを斬り裂くように投げかけたは、フィーナ・ステラガーデン(月をも焦がす・f03500)の疑問の言葉。
 そこには怒りがあった。だけれど、それは燃え盛る焔ではない。沸々と、静かに燃え広がるマグマのようなそれ。
「神ですよ。たった一つの犠牲で赦しを与える、慈悲深き」
「その犠牲を慈悲と呼ぶか」
 凪のような静かな言葉と共に、銀の弾丸が鮮血零す蛇神の腹を狙う。
 だが、それを受け止めたのは鋭く動いた蛇神の尾。
 硬い鱗とその下に敷き詰められた筋肉の鎧。それがシキ・ジルモント(人狼のガンナー・f09107)の弾丸を弾いたのだ。
「それが慈悲である以外に、なんであるというのでしょう?」
 蛇神からすれば、その怒りが分からない。抵抗が分からない。
 その気になれば島を全滅させることなど容易く、それを敢えてと抑え込んでいるのだ。
 そのことに感謝されども、こうして非難されるなどお門違いも甚だしい。
 根本からして違う生き物がそこにはあった。
「どんだけ傲慢なのよ」
「……本当に、気に入らない」
 そう。蛇神はたった一人の犠牲で、と言うが、それは全て――。
「――元々あんたがいなきゃ、一人も犠牲にならないのよ!」
「その一人には、毎年誰かの大切な者が断腸の思いで差し出されてきたのだろうに」
 蛇神が居なければ、生まれなかった犠牲なのだ。
 慈悲を説くのであれば、そも、島にそれを強制するべきではなかった。疾くと、消えるべきだった。
 だというのに、それはそうしなかったのだ。
「俺達の言葉の意味が理解できなくても構わない」
「今日でくだらない慣習とやらはおしまい!」
「ついでに、支配者の看板も今日限りで下ろして貰おうじゃないか」
「そうね! あんた自身がこのくだらない慣習の最後の犠牲! 蛇の蒲焼で決定よ!!」
「……なんとも美味しくなさそうだ」
「寄生虫とかいそうよね! しっかり火を通してやるわ!」
 だからこそ、二人はその心に火を点す。
 積み重ねられたものに、蛇神の土手っ腹に、更なる風穴を開けるために。
「好き勝手を言ってくれるものですね」
 蛇神の身がぎちりと音立て引き締まり、筋肉の収縮が零れる紅を止めていた。
 恐らくは簡単な血止めなのだろう。長くは続くものではない。
 だがしかし、それを可能にする筋肉は、果たして如何ほどのものだろうか。少なくとも、掴まってただで済むものではあるまい。良くて挽肉。悪ければ、胴体の泣き別れか。
「硬そうな肉よね。ますますもって、不味そうだわ」
「ならば、しっかりと叩いてやればいいだろう」
「もしくは煮込むかよね!」
「本当に好き勝手を――」
 丁々発止の罵りに、蛇神の顔から微笑みが消える。
「――ああ、隙だらけだ」
 だが、そのやり取り自体がそもそもの囮。
 そう蛇神が気づかされたのは、その身を弾丸が叩き、焔が焼いてから。
「ぐっ……!?」
 鱗と筋肉の鎧がために、致命傷へはまだ遠い。
 それでも、その一撃は確かな衝撃を蛇神へと齎すには十分。
 反撃とその尾を振り抜くが、衝撃に覚束ない尾の反撃で捉えられる二人であろう筈もなし。それは虚しく空を薙ぐ。
 あり得ない事であった。ヒトをその掌の上で転がし続けてきた筈の蛇神にとって、自分が手玉に取られるなどとは。
 二人のテンポにこれ以上巻き込まれてはならない。仕切り直さなければ。
 そう判断したのだろう。ばしゃり尾を海面に叩きつけ、大波のヴェールと共に海中へその身を隠す。
 そして、海中から小憎らしい金髪の娘から首り殺さんと――。

「狙いはあんたのようだな」
「へぇ、わざわざこっちに来ようっての? 上等じゃない!」

 ――その気配を、シキが捉えていた。
 犬歯はその鋭さを増し、虎狼の牙が如く。瞳は静かに燃ゆる篝火の如く爛々と。
 その姿こそが彼の真なる姿。本来であれば、秘すべき筈の。
 月光の薄明りすらを身に纏うに至った彼であればこそ、その索敵能力は水の壁すらをも超える。
 そんなことは露とも知らぬフィーナであれど、仲間の言を訝しむ程に彼女の感情はひねくれていない。
 だからこそ、全力全開を魅せるのだ。

「なぎぃ・・・払えぇぇえええ!!」

 相手は迫り来つつあるとはいえ、未だ海中。
 彼我の距離を埋める水は明らかに炎操るフィーナにとって不利となるもの。
 だが、敢えて言おう。だからどうした、と。
 道理も条理も踏み越えて、世界に足跡刻むのが彼女なのだから。
 天へと翳した杖より伸びるは黒炎の刃。振り下ろせばそれは海面をじゅわりと泡立て、確かに水中の蛇神へと届くを叶わせる。
 ぼこりとひと際大きな泡。
 それはその身焼かれた蛇神の断末魔か。
 ざばりとその身を海面に見せた姿に刻まれた、痛々しい焦げ跡。
 だが、まだ諦めてなどいないのだろう。
 海面に姿現せば視線が集うと予測していたからこそ、その手には宝石の姿。
「諦めの悪い事よね」
「全くだ」
 しかし、それこそ他の猟兵達に使うを一度見たものだ。
 今のシキに予測できぬものではない。

「――まぁ、それを最初から理解していれば、こんなことをしてなどいないのだろうがな」

 既に辺り漂っていたのは硝煙の香り。
 暗示の輝きが照らすより早く、蛇神の手に空いた風穴一つ。
 彼の耳が、肌が、五感の全てが、どこに蛇神が現れるかをすら既に予測していたのだ。
 ならば、そこに弾丸を運ぶは銃の担い手たる彼に不可能な筈もない。
 覚悟なき痛みに、思わずと蛇神の手が宝石を取りこぼす。
「ぐぅあぁ、ど、どこ、どこに!?」
 まだ間に合う筈。拾えば、まだ暗示を齎すことは可能な筈。
 だが、どこを探してもそれはない。

「うふふ、綺麗な宝石みーっけ!」
「回収したなら退散急いで! ほらほら、早く!」

 響いたのは場違いな子供の声。空裂き廻る羽の音。
 音の出所見渡せば、そこには小さなドローン。それが取りこぼした宝石を捕まえて、浜辺へ向かって全速全身の真っ最中。
 それこそはレパイアの薫陶を受けた子供達が操るドローン。猟兵達を援護するためのもの。
 略奪強奪お手の物。それがレイダーの真骨頂。今まさに、その真価が発揮された瞬間であった。
 そして、宝石は見事、彼ら彼女らの手の中に。
「汚いから、それを触った手で口とか触るなよ。バイ菌伝染るぞ」
 視線は相変わらず怪我人を診続けているレパイア。
 だが、その言い草にきゃーきゃーと子供達が宝石を投げ遊ぶ。
「躾のなっていない、童風情が!」
 最早、我慢の限界であった。
 怒りに染まった思考は、猟兵よりも何よりも、最たるを邪魔した子供達へと牙を向く。
 だが、それこそは悪手。
 猟兵達を前にして、その存在から意識を切るなどあり得ぬ程の。

「はん! 馬ッ鹿みたいな慣習しか考えつかないあんたが、どの口で言うのかしらね!」
「その腹にもう命が収まる事はない。だが、それでは不憫だろうからな。これは俺からの慈悲だ」
「奪い続けてきたんだろう? なら、それが今回はアンタの番だっただけさ。現実を受け入れなよ」

 解き放たれるは鉛玉と紅蓮のフルコース。
 如何に鱗と筋肉の鎧で守ろうとも、打ちのめされるには十分の。
 怒りではない。激痛が蛇神の視界を白にと染めた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
どうして、ですか…
「たった一人」と宣う貴女を…人は「怪物」と呼ぶのです
所業の報い、受けて頂きます

強靭な筋肉の鎧とその瞬発力は脅威
蛇体のリーチをセンサーで●情報収集し計測
突撃やなぎ払いを●見切りたい所ですが
…やはり鱗の隙間や筋肉の分伸長するようですね 
そこが危地であり好機
●武器受けや●盾受けで弾き伸びた鱗の隙間を攻撃

締め付け命中は必至
…遺憾ですがその瞬間こそUCの●だまし討ちが威力を発揮する時

蛇体を焼き切った隙にアンカー射出し●ロープワークで首拘束
自己●ハッキングで●限界突破●怪力で浜から乾いた地面へ投げ飛ばし
水中への逃亡防止も兼ねますが

人々が区切りをつける為
怪物の最期を見届けなくてはなりません



 白の世界に彩が戻る。
 それはまるで眠りから覚めるかのようで、今迄の出来事が夢であったかのよう。
「……ッ!」
 取り戻された蛇神の意識。しかし、身体を苛む痛みは本物。
 それは先程までの出来事が嘘ではなかったと知らしめるもの。
 猟兵達が積み重ねたものは、確かに蛇神の身体を追い詰めていた。
「……どうして」
 何故、こんなことに。年に一人。たった一人だ。それを求めただけであったというのに。
「どうして、ですか……」
 それに反応する言葉があった。
 慌て、痛む身体をざばりと引き起こし、蛇神が視線向けた先にあったは白銀の騎士――トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)。
「そうです。何故、貴方達は私の邪魔をするのです」
「たった一人」
「――え?」
「そう宣う貴女を……人は『怪物』と呼ぶのです」
 それが全ての答え。蛇神が決して届かぬ答え。
 だからこそ、ヒトはそれを討つのだ。決して相容れぬ者として。
 トリテレイアが滑らかに引き抜いた刃。それはよく手入れをされているのだろう。先の戦いを経てなお光は失われず、陽の光を反射して輝きを放つ。
「――所業の報い、受けて頂きます」
 緑の光が瞬き、決別の言葉が投げかけられる。
 それを蛇神は理解不能なもの――怪物――を見るような眼差しで見つめるのみ。その感情こそが、ヒトの覚えた感情なのだと、終ぞ理解することもなく。
 だが、ただ討たれる訳にはいかない。これを覆し、望むを得る為に。
「受けるべき報いなど、ありはしませんよ」
「そうですか」
 そして、騎士と怪物はぶつかり合う。まるで物語の始まりを告げるかのように。

 しなる尾の重さは、速さは、そこに傷などないかのよう。
 受けた盾がミシリと軋む。
 それがトリテレイアでなければ、恐らくはその護りごと吹き飛ばされていたことだろう。
 だが、彼の力量をもってしても、盾に刻まれた傷は深い。確かに、先の戦いにおいて刻まれた凹凸はあったが、今の一撃はそれだけで越えるもの。
「元々の重さ。リーチの長さからくる遠心力。この段階においても侮れませんね」
 呟きを消すように、再びのしなりくる尾。
 今度はセンサーを用いて計測した長さを計算に入れて、回避を――。
「――……やはり、鱗の隙間や筋肉の分、伸長するようですね」
 数多と戦い続けてきた経験の蓄積。それが導き出した、咄嗟の判断。
 予測した尾の動きに合わせ、反撃にと振るいつつあった刃。それを盾と変え、辛うじて受ける。
 強度を、耐久性を重視した筈の剣。それを支えるトリテレイアの怪力。それがあってもなお、腕泳ぐ程の衝撃。見れば、先程まで輝き放っていた筈の刃に罅。
 だが、緑の光にあるのは怯えでなく、怜悧なる光。
 今の一合もまた、彼の中に蓄積されるデータとなるのだから。
「何を……何を企んでいるのです」
「そう思うのは、御自身が何かを考えているからでは?」
 一合、また一合と尾がしなる度、盾が、剣が、装甲が、悲鳴をあげる。
 零れ落ちる鋼の欠片は、まるで流れ落ちる血のよう。
 しかし、攻め続けている筈であるのに、蛇神の顔にあるのは焦り。
 あと一歩が届かない。あと一歩が遠い。
 自身の攻勢に、トリテレイアはボロボロとなっている筈であるのに、とどめへと至らない。
 だから、その一歩を詰めるために、蛇神は駒を進めざるを得なかった。
 薙いだ尾にトリテレイアの腕が再びと泳いだ瞬間、その身を絡めとるという。
「捕まえた。捕まえましたよ」
 喝采が蛇神の心の中に響く。
 これで、訳の分からない連中の一翼を堕とせるのだ、と。
 高まる圧力に、トリテレイアの装甲がバキリと不協和音を奏で上げる
 だが。

「――騎士としては恥ずべきなのでしょうけれど、私の全ては今を生きる者達のためにこそ」
「えっ、あ……ぎゃぁぁぁぁぁ!?」

 響いたのは断末魔でもなく、微塵も動揺を感じさせぬ。
 伸びたのは輝きの剣。零れたのは蛇神の血肉と断末魔。
 絡みつく好機を待っていたのは、何も蛇神だけではなかった。
 その瞬間――密着する、絶対に外さない距離を、トリテレイアもまた。
 そして、その瞬間にこそ、トリテレイアは自身の機能を、爪先に仕込んだ疑似フォースセイバーでもって、蛇神の尾を断ち切ったのだ。

「人々が区切りをつける為、怪物の最期を見届けなくてはなりません」

 それはきっと傷付いたトリテレイアの役目ではないだろうけれど、それでも舞台を変えることは出来る。
 緩んだ尾を限界超えた力づくで跳ねのけて、引き裂いて、彼は蛇神を海中から浜辺へと打ち上げた。
 今迄は海水が隠していた蛇神の全身を、余すことなく白日の下に晒したのだ。
 最後の時は、もう目前。

成功 🔵​🔵​🔴​

御狐・稲見之守
蛇神よ、こんな話を知っているか。

ある人喰いの鬼女が、数多いる我が子を育てるためにヒトの子を喰らっていた。それを見兼ねた釈迦が、鬼女の子の一人を隠すと鬼女は大いに嘆き狂うた。釈迦は女に『数多の子を持ちながら一人を失いそれだけ嘆き悲しむならば、ただ一人の子を失うヒトの親の気持ちはどれほどか』と諭したという……ふふっ、お前さんにはわかるまい。

さて、蛇神退治と参ろうか。[UC魂喰い]、人喰い魂呑みの外道――大狐の真姿となって召喚された幽霊を喰らい大蛇を喰い千切らむ。腹ごしらえが済んだなら、お次は蛇神様よ。[生命力吸収]……その精気、我がいただいてやろう。 

全てを平らげるだと? この我を前に千年早いわ。



「なぁ、蛇神よ。こんな話を知っているか?」
 さくりさくりと砂を踏んだ軽い音。
 地にのたうつ蛇神が、果たしてその主を視界に納められたかは分からない。
 だけれど、それに構わず音の主――御狐・稲見之守(モノノ怪神・f00307)は続ける。
「ある人喰いの鬼女が、数多いる我が子を育てるためにヒトの子を喰っていた」
 それはとある世界に伝わる昔話。
 まるで子供が親へと言い聞かせるように、それを稲見之守は語るのだ。
「それを見かねた釈迦が、鬼女の子の一人を隠すと鬼女は大いに嘆き狂うた」
 さて、言い聞かせているのは誰にだろうか。
 蛇神にか。はたまた、島民にか。それとも、どちらにもか。
「釈迦は鬼女に『数多の子を持ちながら、一人を失いそれだけ嘆き悲しむなら、ただ一人の子を失うヒトの親の気持ちはどれほどか』と諭したという」
 そして、一旦言葉を切り、稲見之守は周囲を見渡す。
 そこには理解を示す色と示さぬ色の対極。
 誰がどちらであるかなど、言うまでもないことだろう。
「……ふふっ、お前さんにはわかるまい」
「何故、ですか。どれも人間、では、ないですか」
「そんなのだから、こうなったんだろうに」
 稲見之守が指し示すは、血に濡れた蛇神の身。そして、その顔には呆れ。
 だが、分かるまいと言いつつも、僅かでも教訓を語ったは蛇神に己が過去の断片でも重ねたからか。
 『人喰い魂呑みの外道』。そう語られた時の己と。
「……アナタ達が居なければ、こんなことには」
「そうか。ならば、もうよい」
 ――蛇神退治と参ろうか。
 改心の期待などしていない。例えしたとしても、今更と赦すつもりも。
 さくりとまた一歩、稲見之守の身体が蛇神に近付く。
 それだけだというのに、蛇神の眼には彼女の身体が、童の身体が、まるで大きく――。
「近付かないで!」
 それは半ば、反射的な行動。
 根源的な恐怖に支配された、生物としての本能。防衛機能。
 蛇神には絡みつき、縊り殺すための尾はもうないけれど、それでも、代わりのものならまだ辛うじて。
 伴う亡霊を失い、頭をも亡くした大蛇が、海面を割って稲見之守へと絡みつく。
 心臓のみとなっても動き続ける蛇の生命力。その賜物であった。
 最期の力を振り絞るように、蛇の身体がぎりぎりと絞られていく。
 稲見之守の姿が見えなくなっても、胸より掻き消えぬ不安。それと、僅かな、ほんの僅かな期待。

「わざわざ馳走を用意するなど、見上げた手腕だな」

 ――それははらりと縄が解けるように。
 姿見せたは童の姿に非ず。巻き付いた蛇の生命を喰らい、心の臓を凍らせ、太古の――大狐の姿を取り戻した姿。
 蛇神の心中に、期待は最早露ほども残ってはいない。
「大きさの分だけ食い出はあったが、こうして絡みついたままは些か面倒だな」
 邪魔な縄を解くようなぞんざいな手つき。それだけで、まだ絡みついていた蛇の亡骸がばらりと崩れた。
 ずるりずるりと地を引きずる音。
 おや。とわざとらしく見てみれば、そこには身を引きずり稲見之守から離れようとする蛇神の姿。
 砂浜に描かれる痕が、蛇神の傷より零れ落ちる赤が、まるで失った尾の代わりのように伸びていた。
「さて、どこへ行こうというのだ?」
 ざくりざくりと音立てて、呆気なくと追い付いた距離。
「そういうえば、蛇神様よ」
 白魚の手が血と砂に塗れた蛇神の首をがちりと掴む。まるで狐が蛇を咥えるように。
 様と付けたのは、きっとわざと。
 それが分かるのだろう。触れた首筋から震えが伝わる。
 もう理解しているのだ。させられたのだ。
 どちらが捕食者で、どちらが被食者かを。

「全てを平らげると言っていたな? この我を前に、千年早いわ」

 こくりと咽喉がなったのは、果たしてどちらのものであったか。
 己が死の恐怖に唾呑んだ音か。それとも、魂呑んだ音か。
 だが、なんであれ、結果はそこに。
 稲見之守が蛇神の首筋から離れれば、支え失った蛇神の身もまた砂の上に崩れ落ちる。
 断末魔もあげず、ぴくりとも動かぬそれに、生命の気配は一つとてない。
「まあ、まずまずの味だったな」
 喰らうことで高まった妖気を吐き出すように、ほぅと零す小さな息。
 それこそが蛇神の終わり。つみかさねた時のおわり。
 そして、島民達が神の手から離れ、古き因習から解き放たれた瞬間であった。

 これから先、彼らを縛るものは最早ない。
 それがどのような未来を引き寄せるのか、時を積み上げるのか。それこそは神のみぞ知るところ。
 だから、くつりと狐は笑うのだ。
 歓声をあげる彼らの未来を見守るように。

成功 🔵​🔵​🔴​



最終結果:成功

完成日:2020年04月02日


挿絵イラスト