●海鳴りの牙
「"データ"変換開始」
Loading……。
Loading……。
Loading……。
データとして収集した情報が、機械の中で巡る。
数が、数字がすごい速さで駆け巡っていく。
「てめぇは覚醒出来なかった。つまり、此処で終わらなければならねぇ!」
カトラスを手に、海賊団は人形を囲んでいた。
「完了」
データは機械から、人間に聞こえない音として変換されて垂れ流される。
一見すれば何もしてないように見えただろう。
しかし――。
音に喚ばれた"帯電した無数の巨大魚"が、天井を壁を、食い破るまでは。
誰にとってもそれは"いつもと同じ"、儀式の一つで在ったのに。
●落雷のリフレイン
「海。新世界。……やはり冒険心が疼くもの?」
目を細めてフィッダ・ヨクセム(停ノ幼獣・f18408)はポツリと尋ねる。
「いや。いいさ、どちらでも。仕事といえば行く顔だ」
解決に挑む表情と、未知の世界にワクワクした表情。
どちらも見たら分かると、フィッダは満足げに鼻をひとつ鳴らして。
「予知した島は、島自体もバチバチ帯電してる、不思議島なんだが……人体に影響があるモンじャねェさ。何もして無くとも静電気で髪がふわりとする程度だ。あとはそう、電力を浴びすぎて浮かんだ機械とかがたまにあるな?元々スペースシップワールドにあッたもんだろう」
潮風と、常に雨が振るような荒い気候が異世界から落ちた宇宙船も島として世界に抱えた。故に、目的地は元、宇宙世界で人々を運んだ方舟。
「長く苦戦や撤退戦を重ねてきただろうモンが此処に落ちたんだ。ワープ機能もなければ航行もまた不可能。時折、役割を思い出したように"コアマシン"が一定時間動いているようだから、多少貧しかろうと生活には困ッちャあいない"島"だ」
今では盛大に苔生した宇宙船に、深い愛着を持って暮らす末裔が暮らしている。
暮らしに嫌気が差して飛び出す粗忽者は、大抵、曰く付きのメガリスを釣り上げる、等という目標を糧に日々励む。
いつか生きて覚醒者となって、支配と暴力の海へ飛び出す事に憧れるというのだ。
過去逃げる生活をしてきた末裔の一部は、"やり返す"事に夢を見る。
「以上、大体の島の概要だ。本題は此処からだ。その島の名前は……悪い。わからない」
"島"自体、殆どの日々を雨と雷が鳴き叫ぶ気象という事はわかる。
恐らく猟兵が訪れる日もまた、雨と雷が暴れているだろう。
「島民、もしくは海賊。"島"を探せば名前が分かるかも知れん。分からなければ、勝手に仮称して呼べばいいさ」
そこまで重要じゃないので俺様は雷電島とでも呼んでおくが、と前置いて。
「勿論、島に海賊による統治が既に行われている。執念で釣り上げたメガリスを、覚醒者ではない部下に与える試練なんかも当然、成人を区切りに行われていたりするな?」
一つの末裔が全て覚醒者となり、いつか海賊団として島を有るべき姿で海を進む術とできたなら。
望む願いは大きく、欲は誰しもに平然と問いかける。
"live or die"。
「覚醒する奴ばかりなら良いんだがな、呪いで死ぬ奴も少なからず存在する」
こうして発生していくコンキスタドール。
発生させた海賊たちが"海賊の矜持"をもって討伐するらしい。
「使用したメガリスの呪いが凶悪なようでコンキスタドールは海賊より強いことがあり、……手に負えず、返り討ちに合うこともしばしばあるんだそうだ。丁度行ッて欲しいその島は、"掟"に従い戦闘の真ッ只中なんだッてよ」
わかりやすいだろう、とフィッダは笑う。
「現場は天井を食い破られた、甲板だ。活きのいい巨大魚のコンキスタドールがそれをした。いや、している」
島近辺の海から飛び出した群れが、新たに発生したコンキスタドールの指示で島を奇襲中。海面を強靭な尾で叩き飛び出して来ては海に戻るを繰り返しながら。
「海賊が絶賛応戦中だが、劣勢のようだな……情報収集が元々得意だッた機械人形のコンキスタドールなんだ。元仲間の情報なんて手玉の範囲だろう。此処で必要なのは、"誰も知らない誰か"ッつーことさ」
つまり、猟兵だ。
島への上陸、侵入を歓迎してくれないかも知れないが。
海賊は根っからの悪人というわけでもない。元々、この地の島民だ。
「俺様……?借りた鉄甲船で待ッててやるさ」
送り先に船が必要だ。
目印は、どの様な形であれ必要だろう?
タテガミ
こんにちは、タテガミです。
雷鳥が劈く、帯電の島へ行きましょう。
宇宙船ですけど、宇宙に戻れない船であり"島"ですけど。
ばちちちち、と謎の電力が帯電する電気島だ!
なんやかんやグリモア猟兵が長々言っていましたが。
端的にいいますと、島は苔生した古い宇宙船。
天候は大体、雨と雷。特徴は、暮らす日々に応じた帯電が齎される。
ちょっと集団戦敵の影響で拓けちゃった甲板上での戦闘です。
今ならなんと、最近コンキスタドール化したボスも付いてくる!
海賊団に通称などはありません。
戦う時は死なば諸共、と行動を共にできる程の絆があります。
そして、この島に固定名称がありません。
三章は島の名称や海賊団の名称に"こんな名前がいいんじゃない!?"と提案できたり、他のことをしたりすることが出来ます。一応この島も海賊の縄張りですので、誰かしらが猟兵へ監視目的で同行しています。
(特に名称案があがらなければ、グリモア猟兵が言っていた島名称になると思います。住民が"島"に愛着を持って固定名称で呼んでいないようなので、特に必要というわけではありません)
第1章 集団戦
『巨大魚』
|
POW : 船喰らい
【頭部からの体当たり】が命中した対象に対し、高威力高命中の【鋭い牙によるかみ砕き攻撃】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD : テイルフィンインパクト
空中をレベル回まで蹴ってジャンプできる。
WIZ : ウォータービーム
レベル×5本の【海水】属性の【水流弾】を放つ。
イラスト:傘魚
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●
飛び跳ねる魚影が牙をむく。
船喰らいの巨大魚が跳ぶ。
「てめぇら精々気ィ付けなァ!最悪腕か足の一本は諦めろ!」
海賊達がラッパ銃を向けるが、その魚は人丈より二倍近く大きい。
ひとつどころか、同時に複数。
弾が弾けようとも、魚鱗の下に致命的な傷を負わせる事が叶わない。
「ひええ、コイツらどんなウロコしてやがんだよ!?」
銃弾の攻撃もどこ吹く風。がぶがぶがりがり島の壁を齧り砕き素材を気にせず飲み込んで勢いよく乗り上げた個体が、ビチビチ跳ねる。水しぶきだけなら、可愛いものだが、コンキスタドールとして存在する魚は知恵があった。
ああ、感の良い死の怪物が海賊ではない"存在"にいち早く気がついたらしい。
齧るのをやめて、海水より飛び上がる魚影――猟兵達に、殺意の視線と牙が迫る。
十津川・悠
はぁ、いきなり魚ね…とはいえ数も多いしここは戦力増やしましょ
そんなこんなで呼び出す幽霊達に前衛という壁になってもらいつつ私は冷静に投げ柁輪で叩き落とす方向で行きましょ
とはいえやっぱブランクあるなぁ
●錨を上げろ
「はぁ、いきなり魚ねぇ……」
ビチビチと飛び上がる魚がコチラを視ている。
なにしろ、十津川・悠(強化人間のゴーストキャプテン・f26187)は視線が遭った。見上げる程に大きな極彩色が跳ね回る。びちびちと巨体を弾ませる度、先程まで海水に浸かっていただろう魚の身体から海水が飛び散った。
大きく開けた牙だらけの口の周囲に水の文様が複数浮かぶ。
同地多発で放つ、直線の水流弾が形作られるように水量を順調に充填していく。
溜めの時間がほんの少し。
空を泳ぐ動作の延長で水柱が一斉に海賊と島に人為的な雨として叩きつける。
拓けた空から降り注ぐ雨水にその魔法の鏃は混ざっているが、真っ直ぐに飛ぶ。
こちらに直接向かい降り注ぐ雨の向きは島の静電気を帯びていて、雨粒を貫いて飛来する。
「あんな大きなのを、倒そうとするのはきっと方法が違うよ」
何本も飛んでくる水流を、軽く避けて足場の安全性を確かめる悠。
――そう。こちらに向いた殺意の数。
――どうあっても"殺そう"とする眼だよ。私は、良く知っている。
隠れ島でよく視たものだ、なんて。
ポツリ零す言葉は波の音に消されて誰の耳にも入らない。
「はァ!?ならどうするってんだ、知らねぇ奴だろうが関係ないね!方法を言え!方法を!!」
悠の言葉を正しく聞き取る海賊が、姿を確認すること無く問い掛けた。
口先だけではない方法が、今この場で必要なのだ。
「得意な方ではないけどね、正攻法でコチラも数を増やすんだよ」
相手がコンキスタドールに喚ばれた、更に別の死の怪物だというのなら。
――海賊は海賊でも、全く知らない誰かであったほうが都合がいいこともあるさ。
悠が不意に、軽く手を叩く。
雨の中でもぱちん、という音は響いて"届く"。
「ちょっと相手をしていてくれる?少しの間でいいからさ」
ギィイ、と音を立て、虚空から軋む方舟は現れた。
どんな肉体の死者でも修繕を施し、没した声を正しく聞くキャプテンに、幽霊海賊団は喚ばれ、応えた。
ロープを伝って幽霊船から降りてくる海賊たちは果敢に巨大魚へカトラスを突き立てて、四方八方から無慈悲に串刺しにしていく。
幽霊海賊たちもまた、恐れない。巨大魚に乗り上がりゼロ距離で放つラッパ銃が幾度となく弾丸をお見舞いする。
ずどん、ずどん。雨粒を超えて、音が届が聞こえる。
『キシャァァアアアアアアアアアア!!!』
魚とは、思えない声をあげる巨大魚。
痛がるようにバタバタ暴れるのを知り目に悠が冷静に、構える。
「皆ありがと。攻撃する暇がないくらい、責め立てられたら……」
勢いよく投げる一投の舵輪が、遠鳴りとふぉん、という音が空気を切り裂いた。
進む航路を阻める魚は居やしない。
「もう随分遊んだでしょ。あとは墜落してお役御免、がいいところだよね?」
投げ放たれた舵輪で横薙ぎに叩かれて、魚は海に落ちていく。
悠の手元に不思議の力で戻れば、次の標的と最大威力で叩き落とす。
ひとつ、ふたつと舵輪が航行する。
右へ、左へ舵輪の赴くままに、幽霊海賊団がその手を伸ばし戦いを挑む。
「んー……やっぱブランクあるなぁ」
成果を出したものの、過程と結果に納得はできいない悠。
「でもさぁ、――海賊はやっぱりこうじゃないとねえ?」
「お見事。……もっと派手にやってくか、負けてられねぇなあ野郎ども!」
幽霊も生者も関係ない。
海賊全てから――やる気の満ちた歓声が上がった。
成功
🔵🔵🔴
御園・桜花
「海賊になるか死か…分かりやすい価値観の世界なのですね」
他の猟兵と共闘
UC「シルフの召喚」使用
遠距離から不可視の風刃で切り刻む
敵からの攻撃は第六感や見切りで躱す
躱せないと思った攻撃は盾受け又はカウンターからのシールドバッシュ
風刃があまり効かないと思ったら制圧射撃での移動阻害に切り替え
戦闘後は海賊に話を聞く
「コンキスタドールを退けるお手伝いをしたのですもの。少し教えて下さい。(人形指差し)目覚めなかった、というのは死と同じなのでしょうか。再挑戦の機会は与えられないですか」
「…部外者がすみません」
「ここにサクラミラージュの一部が落ちてくれば、そこではきっと転生が可能ですよね…少しだけうれしいです」
太宰・寿
極彩色ですね…あの牙で噛まれたら痛そうです
ところで、このお魚は食べられるんですか?
UDCを研究する身としては気になります
このお魚は、ぴょんぴょんどこまでも跳んで行ってしまいそうですね
筆を取って、甲板に絵を描きます
蔦が伸びる豆の木を描いて、縛り上げて
それからファンシーな鮫さんを描いたら、ぱくりと食べてもらいます
食べられないなら、尾鰭でビンタです
こちらに来るなら虹霓を振り回して応戦します
噛まれたら痛いどころじゃなさそうです…頑張って見切ります
うう、それはそれとして静電気で髪が傷みそうです…
●ソラを泳ぐ魚
暴れ狂うほどの雨粒が甲板を叩き続ける。
猟兵の歓迎ともいうべき攻撃を浴び、極彩色の身体からより濃厚で鮮明な血液を流しても尚海から飛び上がる魚影は攻撃をやめない。
「聞いていたより一層、極彩色ですね」
跳ね上がった巨大魚の姿。その鮮やかな体を、太宰・寿(パステルペインター・f18704)は仰ぎ見て、呟やいた。
「……あの牙で、噛まれたら痛そうです」
ガリガリガリと"島"に喰らいつく牙はより一層の異形感をイメージに植え付けてくる。巨大さと殺し尽くす為に動く、特殊な音に導かれ喚ばれ現れた怪物の群れ。
「海賊になるか死か……分かりやすい価値観の世界なのですね」
御園・桜花(桜の精のパーラーメイド・f23155)は雨水と静電気で顔に張り付く髪を軽く払って、新たに訪れた地の有り様を近くて遠く、理想を在り処を見定めるように目を細めて視やる。
「ところで、純粋な疑問なのですが……このお魚は食べられるんですか?」
寿の中でた正直疑問。
巨大で、活きが良くて攻撃的で。
怪物だとしても、見た目は異様なだけで魚なのだ。
――UDCを研究する身としては気になります。
寿の興味に、桜花が首を傾げて海賊を見る。忙しい現状、のんきな問い掛けに答える余裕はないのだろうが、声だけが返事と返してきた。
「喰うやつは喰う!だが、アンタらも見たら分かるだろ、雑食過ぎて腹の中がジャングルだ!料理の手間が最悪なんだよコイツらは!」
食べた物が魚の中に溜まっているなら、消化できない瓦礫が著しく多いだろう。
そんな重さを感じさせる事無く、巨大魚と海から連続で空気を叩き、海水のない空を自力で泳ぐ。
飛び掛かってくる魚の群れが、連続で振るう尻尾が。
水のない空を、徐々に速度を上げ魚雷の如く突き進むのだ。
「このお魚は、ぴょんぴょんどこまでも跳んで行ってしまいそうですね……生き急いでるようにも見えますが」
空高くまで自由に泳ぐ巨大魚は、床に激突する事を恐れず、自然落下で巨体が落ちてくる。自ずと一番重たい頭が下に向くのだから、ずらりと並んだ牙の群れが人々の憧れる空を、視界を埋め尽くす。
「雷雨時々巨大魚が降る、なんてどんなお天気なのでしょう」
魚雷の到来を、銀盆を携えた桜花の第六感が告げる。
――これは、躱せない。
小柄な盆で渾身の体当たりを繰り出してくる巨大魚を、受ける。
『キシャァアアア!!!』
正しく受け止め、渾身の力で押し返す。
盆によって防がれた体当たりと同じくらいの威力で後退した魚が、甲板で跳ねる。
そこに、追撃と銀盆が巨大魚の頭部にすこぉんと叩きつけられた。
「手が滑りました」
にこりと笑う桜花だが、誰が見ても営業スマイルであったことが分かるだろう。
時を同じくして、異常気象の到来を寿は虹霓を振り回して、直接の到来を防ぎきって、なんとか躱す。大きな口を眼前に目の当たりにしても、魚の殺意は消えないばかりか増すばかり。
「噛まれたら痛いどころじゃなさそうです……」
床を突き破る個体や床で跳ね回る個体が出る始末。
自由気ままに蹂躙させては甲板の惨状は悪化していくばかり。それらを一連の動作と、魚たちは第二派、第三派と繰り返すような動きを見せ始めた。
「少々、暴れ魚にしては暴れ過ぎですね」
スッ、と取り出した筆で甲板に絵を描き始める寿。
雨水と海水、それらに落とされない絵の具は明確なイメージを乗せて、弾むように具現化していく。
するすると、描かれた場所を起点にするすると豆の木が伸びる。
木と同時に絡まる蔦が寿が視認している巨大魚に無遠慮に絡みついて動きを封じた。尾が強靭なインパクトを生み出せなければ、びちびちと、獰猛な牙で噛みつき暴れるだけの魚に成り果てる。
「ちょっとそこで大人しくしていて下さい?」
続けて描くものは、ファンシーな鮫だ。ずるぅりと描かれた鮫は具現化し、何の法則にも縛られず悠々と空を泳ぎう浮かんでいく。
ポップで可愛らしい風貌であったが、鮫は鮫だ。
尖った頭部より、巨大魚よりも明確な牙の並びが魚に向けられる。
くわっと開いた口が一息に巨大魚を丸呑みにしていく様子は、より凄惨なファンシーの蹂躙劇だが、海賊たちはあっけにとられ、ひゅ、と声にならない声が様子への感想を漏らすばかりだ。
「丸々としたままでは食べにくいでしょう?調理には多少、自信があります」
桜花がゆるりと指で空中を撫でるようにしながら、風の精霊を召喚しその力を用いて、不可視の風を纏う。
「これはシルフィードの戯れ。しかし、見切るには難しいものですよ」
指を向ければ風の刃が空を奔り、鱗を切り裂き、牙を削ぎ落とす。
巨大魚から悲鳴が上がる。破壊が訪れると魚は悟って暴れだした。
「活きがいいのは良いことですが……」
ファンシーな鮫がぐるりん、とその場で尾鰭によるビンタを繰り出し黙らせる。
「誰かのお食事中は、お静かに。基本中の基本ですよ?」
些か鋭利さを欠如し、食べやすくなった巨大魚たち。
暴れまわりたいが、蔦に囚われ逃げ出せない。
描かれた鮫は喜ぶように空を泳ぎだし、丸呑みタイムを再開した。
空の掃除は着々と進んでいく。
――……うう、それはそれとして静電気で髪が傷みそうです……。
ぱちっと静電気の弾ける音が、聞こえる。
軽く手櫛で直したとしても、島に滞在するだけ意味を成さないのだろうと考えると、女心に憂鬱を抱えた寿だった。
「コンキスタドールを退けるお手伝いをしたのですもの。少し教えて下さい」
巨大魚を退けた、桜花が海賊に問いかける。
「なんだい、戦いはまだ終わっちゃあいねぇが……」
「目覚めなかった、というのはは死と同じなのでしょうか。再挑戦の機会は与えられないですか」
あちら、と巨大魚を差し向けてきた元部下のコンキスタドールを指差して。
問いかける言葉は、概念の問い掛けだ。
「アンタ、知らねぇ顔だが"命掛けの大勝負"にもう一度、があるもんかい?」
「強大な賭け事に、失敗したから泣きのもう一回があるのかい?」
「そんな生易しいならこの海はもっと平和だなぁ!」
「生きるか死ぬか、秘宝のロマンは呪いで人を選ぶんだ。死ぬやつも当然居る。あいつも、……そうだとも」
一人、二人と海賊が口々に語りかける。
喪った部下は一人二人ではないだろう。
末裔という言葉がある以上、この島での生活に失われた存在は勿論存在する。
不始末にはケジメを、呪いに屈した仲間に終焉を。昨日同じ釜を囲んだとしても、今日の敵だ。
「……部外者がすみません」
「わかりゃあいい。あいつは今日、死んだんだ」
「コレは俺らの"矜持"で、弔いなんだよ」
海賊と、コンキスタドールの間に強く降り注ぐ雨。雷が確実に別れた生き方を知らしめるように、ひとつ、甲板に落ちて床を一点焼く。
――もしここにサクラミラージュの一部が落ちてくれば。
――そこではきっと転生が可能ですよね……少しだけうれしいです。
この島は、他の世界の元一部。
どこかには、そのような場所もあるんだろう。目の前で繰り広げられる戦いの物寂しさと比例するように桜花は少し、どこか儚げに――ほんのり笑った。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
シェフィーネス・ダイアクロイト
アドリブ◎
絡み×
メガリス(眼鏡)越しの菫青の眼で標的確認
襟足の髪と高級なマントが帯電し光る
動力源(金)はあの船か
噫、そそられるな(厭な笑み
此処からは手出し無用
却って邪魔だ(弾撃ち線引き
利にならぬ負け戦は好まず
私自らが手を下す、即ち
既に活路は見えている
謝礼は此の島一つ私に寄越してくれれば構わん(冗談混じりの真
敵の攻撃は奪った錨で庇い軽やかな身のこなしで回避
船上にある網で一瞬動き封じ
二丁小銃で柔な敵の口の中や目を射る
銀の弾丸が粗く荒く削る
喰らい尽くせ(舌なめずり
余程、魚鱗に自負を持つ様子
加えて知恵もあるようだが
無駄骨だ
最後は弾丸一つで
敵に背を向けた侭
鎧を砕く様に外さず撃つ
Die
Die
Die
無に還せ
●染まる甲板のデッド・エンド・ライン
甲板上で哀れに墜ちる魚が複数――消えた。
此処に訪れた男もまた、"島"の領域に入り込んで少し時間が経過したことで既にぱちりぱちりと音が上がっている。
体を打つ雨脚が、先を暴れる者たちの荒々しさで海水も時折混ざって降り注ぐ。
そんな中、己が視界を彩るメガリス越しの菫青が、次の一群と跳ね上がってくる巨体を見る。
標的は、あれだ。幾つも高く跳ね上がる様は登る竜が如く。
勢いも活きも、どちらもある。
未だ数も多く、殺しの競争率は眼鏡越しでも高く映る。
男の襟足の髪と、身に付ける高級なマントが帯電し朧気にチリッと光った。
「動力源は、船か」
シェフィーネス・ダイアクロイト(孤高のアイオライト・f26369)は思わず目を細める。戦いの場は魚が飛び上がってくる甲板。海賊同士の戦いの手助けをという話であったが、戦場は地元の海賊にとって護るべき宝船。
「噫、そそられるな」
厭な笑みを浮かべ、マントを風に靡かせて、男はその歩みを進める。
「此処からは手出し無用」
素早くその手に掛けるは愛用の銃。
シェフィーネスは抜き放つと同時に甲板に、海賊の足元ギリギリを穿って語る。
「却って邪魔だ」
銃弾で乱暴に描くデッド・エンド・ライン。
死への直行、片道切符。
踏み込むなと言葉と弾丸で言って語る男は決して海賊の返答を求めていない。
「てめぇら……それより先に出るなよ?……あれは、本気で殺る男の、やり口だ」
言葉を無視して手を出せば、先に撃たれる可能性を見出した海賊はゴクリと生つばを飲む。
「利にならぬ負け戦は好まず。私自らが手を下す、即ち――」
ぎろり、と男が睨みつける先で空を泳ぐ巨大魚の群れが大口を開けて歓迎していた。今からどうなる事とも想像せず、ただ殺すための戦術を。
喚ばれたから壊すだけの死の怪物を。
「既に活路は見えている。故に、この場へ……ああ、そうだ」
振り返らないシェフィーネスが、部下へ静止を指示した海賊へ。
一度限りの警告を送る。
「謝礼は此の島一つ私に寄越してくれれば構わん」
島の海賊にとっての宝、金銀財宝と同じ意味を持つだろう生活圏。冗談のような軽さで、しかし鋭い切り口を持つ撃ち込みが海賊を絶句に持ち込んだ。
――こいつも、"海賊"か……!!
『キシャァアアアア!!!』
ヒュウウウウウ、と既に飛び上がりきった魚が自然落下で落ちてくる。
牙の群れがシェフィーネスに迫りきても男は一切焦らない。
「荒波越えて飛び出して、やることがそれでは芸がないな」
いつかどこかで奪った錨で牙の並を受け止めるように翳すが、穿った場所は魚の口。鉄壁すら齧り破壊する牙に挟まれる前に、思い切り突っ込んでその身を回避させる。まるで軽やかな足取りで、蹴り上げるものは、誰かが持ち込んだ網だ。
蹴り上げられた網が投網のように巨大魚に絡まる。ああ、一瞬魚が捕らわれる。
「網より出る為の行動を取るなら、真に遅い」
空いた両手に握る二丁拳銃が、左右交互に吼え、爆ぜた。
バン、バンと撃ち込まれる場所は噛み切らんとする口内。だくだくと溢れかえる鮮血が滴る。
痛がる姿に問答無用で接敵し、目玉を射る弾丸が瞳の光を音より早く闇へ閉ざした。銀の弾丸で穿たれ、叫び悶える魚が足元で転げ回る様は日常で見かける光景だ。
「喰らい尽くせ」
撃つ。爆ぜる。
「余程、魚鱗に自負を持つ様子」
無慈悲に当たる。
魚が破滅の弾丸に悶えて叫ぶ。
「加えて、知恵も有るようだがその身に贅沢な言葉で返そう。そう貴様らは――無駄骨だ」
無様な光景を見た。
暴れる体が強靭さを半減させても、跳ぼうとする化け物。
血に沈む魚の群れ。血抜きはもう十分か?
身を翻し、シェフィーネスはゆっくりと背を向ける。
ただ腕を魚の前に遺したまま。
哀れなものを、その瞳に映すことを――拒絶するように。
「終焉の導きは一つ限りで十分だ」
最後は、一つ。バンという音と同時に撃ち込まれる。
死を喚ぶ場所を正確に射抜く、終わりの弾丸。
――Die.
――Die.
――Die.
頭が爆ぜる。文字通り、海風を。甲板を。紅く濡らして咲き誇る。極彩色の巨体から、頭部を無駄なモノをと断罪し薔薇と咲かせて海の藻屑と昇華させた。
「無に還せ」
こうなりたくなかろうと、知ったことか。存分にこの庭を踏み散らせ。
弾丸が導く――終焉の華畑で。添えるだけの華となればいい。
成功
🔵🔵🔴
アリエ・イヴ
アドリブ◎
てめぇの船の落とし前をてめぇでつけられないとは
さぞ無念だろうよ
…
けどまぁ、そんな悔しさも吹き飛ぶくらい
今はド派手にいこうじゃねぇか
やてきたとこにブチ込めば話は早いだろうが
知性があるならそうもいかねぇ
そんならこっちから仕掛けてやろうじゃねぇか
鎖をブンと振り回し
水中の影めがけて投げつける
遠心力で勢いをつけて
碇が当たれば儲け物だが
当たらなくても…釣り針にかかってくれりゃ十分だ
攻撃の直後
ドでかい隙をきっちり狙ってくれたなら
同じ事を考えてた運命に感謝してやろう
会いたかったぜハニー
不敵に笑い、見切り避けたら【一撃必殺】
濡れた体なら多少は効くか
勢いのまま甲板に叩きつけてやろう
どうだ?シビレるだろ
●Momentary lovers
「てめぇの船の落とし前を、てめぇでつけられないとは。ああ、さぞ無念だろうよ」
他人の不幸は蜜の味、しかしそれはこの"島"において真実不幸の産物だ。
賭すに価値在る家族の終わり、それを身内で終えれられないというのだから。
――……。
男は一瞬、顔色に翳りを浮かべた。
しかし次の瞬間には雨に濡れた赤銅の髪を自信の現れと、大げさに払う。
「――けどまぁ?そんな悔しさも吹き飛ぶくらい、今はド派手にいこうじゃねぇか」
アリエ・イヴ(人間の海賊・f26383)が見据える先には血塗れの甲板と、足元に広がる正確無比の弾丸で穿たれたデッドライン。
問答無用に、殺し殺される舞台に上がり込むアリエ。
大嵐が通るこの船の上でも暴れまくる奴がいる。
それも何人も。それを海が選んだ事なら愉快なものだ。海よりざばっ、と大きな音を立て空で泳ぐ魚の群れが、集まり始めるのに時間は掛からない。
――ああやって来た。玩具が群れてやって来た。
ざわざわがやがや集まる群れは共通の言葉で話さないわりに騒がしい。
ばち、ばちと鱗に帯電した微量の静電気を溜めながら。
泳ぐ空を極彩色に染めていく。巨大な雲より大きな殺戮の魚群。
「おいおい群れて集まって、"単体をオトす"、ってか?」
アリエはわざとらしく額に手を当てて、悩ましいと頭を抱える仕草をとる。
「集まって獲物を確実に殺すって?」
――殺しにやってきたとこでブチ込むつもりだったがな。
――知恵があるから余計に値踏みして群れてやがる。
「ほぅら雪崩れて来いよ、俺は逃げねぇ」
船喰らいの大口を開けて、挑発に乗った。
ああ、勢いよく言葉通りに魚雷が雪崩れて落ちてくる。
――掛かったな、仕掛ける絶好のチャンスと来た。
――強靭な体で海から飛び出そうが、魚類は魚類だな。
手に握るは、アハ・ガドール。
男が過去に拾って手元に置いている碇、そこから伸びる鎖をじゃらりと撫でて。
「さぁ来い、俺は此処だぜ?」
ぶんぶんと遠心力を利用して振り回し、凪ぐに相応しい仰ぎ見る空中の巨影に向けて碇を投げ放つ。本来、留める為ものは魚だらけの空に大いに食い込み極彩色の流れを大いに乱した。
――お。この手触り……ビンゴ!
碇は狙い通りに流れを乱して当たったようだ。
鎖越しに暴れる魚の感触が伝わってくる。
釣り針に掛かった個体はどれだろう。雨が顔に当たるが良く見えない。
鎖の越しの手触りは海の男に感を働かせた。
ああ、すごい勢いでこちらに泳いで来るようだ、――運命の碇に貫かれた個体が。
悲鳴を上げながら、血濡れた体を弾ませて極彩色の間から、アリエを殺さんと泳いで現れる。
「俺に会いに来てくれたんだな、ああ。会いたかったぜハニー?」
――同じことを考えていた運命に、乾杯。
不敵な笑みは口角を釣り上げて、男の偽りのない感謝を物語る。
追突してくる動きは鎖を手繰る事でずらし、勢いを利用して、甲板の上にひっくり返すように投げ捨てた。
完全に見切ったアリエは、魚の大きな瞳をずいいと覗き込む。
「その体も、俺も良い具合に濡れてるなぁ」
にこ、っと一瞬満面の笑みを浮かべ勢い良く魚へ拳を叩き込んだ。
愛しのハニーへの告白は、帯電する島の静電気を盛大に含んだ拳で伝えよう。
視線を独占し、甲板に縫い付けるハニーの瞳はもう、アリエ以外を映さない。
「どうだ?派手にシビレるだろ」
島民や島の海賊がその身に帯電する電気に意識が向かないのは、それが微量過ぎて脅威ではないから。しかし物理的に、体外より持ち込まれた静電気が体の内側で爆ぜ、電気量が増えでもしたら。
そうだ、静電気は内側から身を貫く熱量でその内部を瞬間的に焼き尽くす。
駆け巡る痛みは一瞬だろう、しかし内側に叩き込まれた拳の痛みの二重苦は魚を絶句に追い込んだ。びちびちと、弱々しく跳ねる尾はもう空を泳ぐ力を持ち得ない、とアリエは確信する。
「ああ、そうかそうか。心の底からシビレてもう生きるのが辛いか」
魚が弱り動かなくなるのも時間の問題。
アリエが次なる出会いを碇が掛かる先に見出したころ。
蕩けるような電気で内側全てを奪われて。
大きな魚が、またひとつ恋に焦がされ溺れて――消え去った。
成功
🔵🔵🔴
ギヨーム・エペー
うはは。静電気すごいなー。魚はでっかいなー!
いいね、水場が近いと気分が上がってしまう。だが魚突きは真剣にしないとな
あっちがビーム打ってくるなら、こっちは対抗して撃ち落とすか、かき消すか。どっちかかなー
UCで氷槍を生成して、それをぶつけよう。発射は精霊に頼む。太陽、水で発射台とか作れるだろ?
筒みたいな感じにしてさー、水で滑り飛ばしたら機動力すごい気がする。太陽出来る子、やれるやれる。物量作戦だから残りはおれが近づいて対処しよう
銛やレイピアでちくちく突っついていくぞー。攻撃はスライディングしたりして回避していきたいところだな
樹神・桜雪
こういう島もあるんだね。ゆっくり見たいなあ。
すごいね状況だよね。いろいろと。
魚が島をかじってるよ。歯痛くならないのかな。
なんてのんびりしてる場合じゃないのか。
海賊さんたちに噛みつかないように牽制しつつ、攻撃を仕掛けよう。
物凄く固そうだから殴りがいはあるよね。
飛んできた所を凪ぎ払って叩き落とそうと試みようか。
元気よく跳ねてくるならUCで対処。冷凍マグロにでもなってみる…?
水流弾は第六感で回避を試みる。貰ったら海に落ちちゃいそうだから対処は慎重に。
まだ泳ぐには早い季節だ。
ボクが風邪を引くかは自分でもよく分からないけども。
一緒に戦う人がいるなら積極的に庇いに行くね。もちろん海賊さんたちへの攻撃も。
●君達は極彩色の冷凍マグロ
「うははっ!静電気、すごいなー」
僅かに摘むように指を近づければ、パチッ、とか細い電流が疾走る。
痛いまでは至らない僅かな電力。
それが滞在しているだけで自身の身体に帯電しているのだという不思議な"島"あり様に、ギヨーム・エペー(日に焼けたダンピール・f20226)は無邪気に笑った。
「……こういう島もあるんだねぇ。ゆっくりみたいなぁ」
樹神・桜雪(己を探すモノ・f01328)の自身の指越しにも、擦れる衣服にも静電気の音がある。
何者も選ばない帯電は、どのようなものにも起こるのがこの"島"なのだろう。
「でもすごい状況だよね、色々と」
正しく息絶えて動かなくなった魚が伏した血塗れの甲板。
桜雪やギヨームの身体を叩く雨は無視できても、ボロボロで雨晒しとなった半壊の壁に喰らいつく魚たちは群れが滅びに向かおうと、喚ばれた限りに破壊を尽くしていた。極彩色と赤色の色が雨に海水に流されても、目を程の焼く色を称えるのだから。
風景を眺めるには少々鮮やかすぎて目に余る。
「ねえねえ。魚が"島"を齧ってるよ。……歯とか顎、痛くならないのかな」
ぎょろりと半ば飛び出す眼が一心不乱に噛み付いて、砕き破壊し飲み込んで。
バタバタと尾やヒレを振って動く様からは、痛みなどは一見すると無さそうだ。
「魚、近くで見ると余計にでっかいなー!」」
ついついギヨーム気分がアガってくる。水場も近く、荒れた波の音も。
飛び出す殺意の巨大魚なんて、楽しい気分を更にアゲてくるものだ。ギヨームにとっては、心地よい音にしか聞こえなかったものだが、勿論一線は引いている。
「……だが、魚突きは真剣にしないとな」
相対するという意味でも。
命のやり取りに遊びを持ち込むのは真剣さに欠けるもの。
「……そうだねぇ、のんびり未知への観光気分じゃだめだよねぇ。こちらを凄い視線で見ているし」
散々群れを殺し尽くす他所から来た多彩な戦法の海賊たちを眺めていた、今まで島を齧るだけに専念していた巨大魚がある。
僅かばかりの知恵をフル活用して、一人でも多く殺さんと画策していたとしたら。
叩かなかった分、大変な時間を与えていたことになる。
「アンタらはあんな馬鹿でかい強敵ともそんな楽しく渡り合うのか?」
「楽しく?……まぁそうだね、敵だというならそうかも」
桜雪が海賊の問い掛けに答えた頃、水の魔法陣が巨大魚の周囲に浮かぶ。身体の中に溜め込む水量はそう多くなくとも、この"島"の外に従属する属性は死ぬほどあるのだ。巨大魚が望むイメージに近づくように、海水が導かれて水の弾は創られる。
『キシャァアァアアアア!!』
叫びとともに、幾本もの殺意の水流弾は猟兵二人と海賊に撃ち込む準備が進んでいくようだった。津波よりも破壊力を持った殺人光線が、生成されていく。
「あっちがビームうってくるなら、こっちは対抗して撃ち落とすか」
――いいや、かき消すか?んー。どっちかかなー。
ギヨームの翳す手に、魔力から生成された氷の槍が並ぶ。
氷花は数多く咲き誇る。しかしこのまま投げて放つのは分が悪い。
そんな彼の声を先んじて感じたのか、力を貸す契約精霊がふわ、と現れた。
「太陽、水で発射台とか作れるだろ?」
こんなに溢れる水場で出来ない事のほうがおかしい、と言わんばかりのギヨームの言葉に精霊は応える。
氷槍を射出するために必要な形状を、水を操り整えていく。ソレイユの名を冠する精霊は望みを形作るように即興で、水の簡易砲台を並べ備えて構える。
「太陽できる子、やれるやれる」
――そうだ、この筒状なら。
氷槍の射出に炎は勿論向かないだろう。
発射は勿論、水の勢いで十分。甲板を濡らす水、操る水が絶えないならば。
射撃の弾丸を数多く揃え、射出タイミングを精霊に任せればいい。
「滑らせて進めー。滑り飛ばす程の機動力があれば、硬い鱗も怖くないなー」
ギヨームが太陽に任せた直後、魚の充填が完了したのか怒涛の水量が放たれる。
対抗策の迎撃の槍が、砲台を滑り放たれてビーム相殺に突き刺さるように飛んでいく。破砕された元海水の水飛沫が氷の魔力であられのように甲板に散らばる。
「ああ噛み付くと危ないって仲間の死を見て流石に学んだの?良いよ、賢いね」
愛用の薙刀を手に海賊の前に飛び出して、桜雪がビームと氷槍の軌道を第六感で感じ取り、残りのビームを切り捨てんと素早く潜り込む。
水圧を魔術で高められた海水の弾丸は音もさながら束ねられては硬さがあった。
その身に受ければ骨の一つも軽く折られてしまうだろう。
勢いよく海に投げ出される事は想像に容易い。
――まだ海を泳ぐには早い季節だよ。
「ボクの剣戟で斬れなくても、水流弾を放つ君をなんとか出来たら勝ちだよね」
ビームを斬る事を即座にやめて、今にでも飛び掛かって来そうな巨大魚目掛けて突き進む。
「ねえ、冷凍マグロにでもなってみる……?君の氷もちょっと借りちゃうね」
「んー?ああ、おれのかー?ははは、いいぞぉー」
精霊にユーベルコードの制御を任せたギヨームは身を低くスライディングしながら最前線に飛び出してきた。
ビームと槍の打ち合いを躱し、その手にレイピアを携えて。
我先にと飛び込んでくる巨大魚を剣先でちくちくと突いて追い返す。
「ありがとう。勿論悪いようにはしないよ――ほら。おいでよ、"冷たきもの"……」
力ある言葉と共に薙刀を氷の花びらに溶かしハラハラと桜雪の傍で舞う。雨に打たれても力を失わない花びらを、くるりくるりと風に舞わせるように操って。
足元に散らばるあられの冷気を誘発して協力な"凍結"を誘う。
「此処はもう、空気が凍りつくに相応しい"冷たさ"があるんだよ」
「とっくに海より寒いぞー、気づいてなかったかー?」
桜雪の花びらは巨大魚が逃げるより早く、鱗の上に張り付いて凍りつかせていく。
尾から頭部へ、駆け上っていく冷気は。
ギヨームの氷槍が散らばって発生したあられも手伝った強烈なものだ。
頭部以外が完全に氷漬けになり、鋭利な牙が虚空を噛むだけとなる。
「動けなくなったら、あとはー?」
「砕くだけだね。風邪は引きたくないし、早めに寒々しいのは終わりにしなくちゃ」
――この身体のボクが風邪を引くかなんて、よくわからないけど。
空中を撫でるようにすれば花びらは薙刀の姿を手に取り戻し、ギヨームが魔力で生成した氷の銛を手に、終焉を彩るために続く。
「じゃあおれは右からだー」
振りかぶる両者の攻撃は、動きを封じられた活きの良い魚の首を盛大に撥ねる。
「うーん、……この頭は美味しそうにはみえないなー」
ごとりと甲板で転がった頭部もまた極彩色。良い調理法を編み出しても、ギヨームにはとてもじゃないが、美味しそうには思えなかった。
「……調理目的で、そんな切断をしたのか…………?」
海賊たちが驚くなかで、猟兵たちの討伐戦は終わらない。
動きを鈍らせた幾つ目かの首を刎ねて――問答無用に黙らせた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第2章 ボス戦
『収奪のウラヌス』
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POW : 横奪のバンシー
自身が【興味】を感じると、レベル×1体の【データ収集用ドローン】が召喚される。データ収集用ドローンは興味を与えた対象を追跡し、攻撃する。
SPD : 侵奪のケートス
対象のユーベルコードを防御すると、それを【データへ変更し】、1度だけ借用できる。戦闘終了後解除される。
WIZ : 攻奪のクラーケン
【これまでに収集したデータ】を使用する事で、【身体中から対象に有効な武装】を生やした、自身の身長の3倍の【戦闘用兵器】に変身する。
イラスト:FMI
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠トール・ペルクナス」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●仲間を殺す為に"島"を壊す
喚び寄せた極彩色のコンキスタドールは血に伏した。
人形は額に手を当てるように、ブツブツとなにかを呟いている。
「"データ"演算、再調整開始」
Loading……。
Loading……。
Loading……。
…………Error…………。
「解析不能。データ入力、及び奪取へと移行」
データ召喚、収集を目的としたドローンが男の周囲を飛ぶ。
雷雨にも、静電気にも全く阻害されない材質で海賊を観測し、すぐさま離れた。
今度は猟兵の傍をジロジロと観察するように、舐るように。
「そうだ。てめぇは死のうがそうなろうが、用意周到だったよなあ!」
「今度はそれでコチラを殺し尽くすって?たはーっ、流石"メガリス"の呪い、意図は逆巻きその身に戻るッてか」
海賊が懐より絵筆を持ち出す。
この場にそぐわない、異質な筆だ。
「コイツはメガリス『船乗りの絵筆』だ。効果は筆にあるんじゃない。真価は使う時のみ滲み出す絵の具にある」
海賊の男は語る。
この島に存在する"メガリス"は絵筆。
永い時を只管狙い続けた釣りにより執念で釣り上げた呪いの秘宝だ。
『誓う事柄を象徴する文様または刻印を身体に刻み込み、一切違えないことで、誓いどおりの効果を発揮する』というもの。
覚醒者となる為に海賊団の団長または幹部がその身に描くのだ、という。
描く文様、または刻印は自動で描かれるため、想像力は必要ない。
『誓いが成されたとき。筆は絵の具を滲ませて勝手に疾走る』。
覚醒した者が扱わなければ勝手に動くことはなく、筆は所有者をも選ぶという。
この"メガリスの所有者"は団長の男だが、効果は直接身体に描かれないと発揮されない。故に、部下をメガリスの影響下に置き、覚醒者へと導くためには。
成人した時――何かを誓わせなければならない。
誓いとは制約、裏を返せば破ってはならない禁断の呪いでもある。
始めから呪われた宝に賭けるのだ、呪われる覚悟も無ければならない。
命掛けで覚醒者を目指すというのは、そういうことだ。
誓いが軽ければ願いに取り殺されて怪物に。
決意が揺るげば資格に値せずと、絵の具は問答無用に呪い殺す。
「あいつは願いも誓いも違える奴じゃあなかったが……」
「常に行動はデータ頼り。自分の意志無しと殺されたようなもんだ」
コンキスタドールとなった後はメガリスの効果で、誓いが逆転し、海賊団へ牙をむく。大抵の部下は、海賊団へと思いを向けていることから当然の帰結だ。
「説得が利くかはわからん。てめぇらの攻撃なら、届きそうでは在るが……」
人形の願いは『仲間のために"島"を護る』。
他人行儀な願いはメガリスに一切を否定された。
「なぁ……失態の償いは俺の腹を掻っ捌いたっていい。止めるのを、…………手伝ってくれないか」
部下の人形と同じ時を過ごしてきた海賊たちは猟兵達に共闘を持ちかける。
「刻印は背中に在る。行きてようが死んでようが、偽だろうが鼓動在る限り消えやしない。"メガリス"を壊すなんて持ってのほかだぜ?訪れた日を恨みなぁ!俺らの弔い合戦に嫌でも手を貸して貰うぜぇ!!」
"海賊の矜持"を護るため。
部下との離別を華々しく彩るため。
戦闘開始の合図に、ラッパ銃を空高く撃ち放つ――。
十津川・悠
なるほどね…そこまで言われたらやるしかないじゃないか。
とはいえ幽霊海賊団を呼んで闘うにも分が悪いかな
…ま、彼にも彼なりに思うところがあって運命に賭けたと言うならこちらも相応に賭けないと行けないし幽霊海賊団ではなく
大海原を駆けた彼等を…
呼び出す彼等の援護をもってして白兵戦と洒落込もうか
何、リスクは高かろうがそれが海賊ってもんだろ?
樹神・桜雪
そう、アレを止めたいんだ。話はあまり聞いてくれなそうだね。武力行使で良いのかな。
それならボクでも手伝えるね。
いいよ。力を貸してあげる。あの人形を止めれば良いんだね?
こちらの情報も集めているの。少しやりにくいな。
どうしようか少し悩むけど、大きくなるなら的が大きくなってくれたと考える。
巨大化した相手の攻撃を第六感で回避を狙いつつ、一気に接近する。足元まで行ったらUCで雹嵐を呼ぼう。
ボクも巻き込むけど気にしないで捨て身の攻撃するよ。
…それくらいしないと、データには対抗出来なさそうなんだもの。
島を守りたかった君が島を仲間を攻撃するのは悲しいね。…これ以上酷い事になる前に止めてあげるよ。
●困難の雹嵐航路を進め
「なるほどね……そこまで言われたら」
――はは、やるしかないじゃないか。
十津川・悠は"海賊の矜持"の押し付けを頷くような仕草で受諾した。
拒否権はないというのだから、後は渡りに船。
たった一人の亡者の為を弔う宴を催すのは、死者の声を聞く事もある身としては仲間への想いを打ち付ける雨粒に負けぬほど感じた。
――とはいえ、幽霊海賊団を喚んで、戦うにも分が悪いかな。
先程までの戦闘で、悠の喚び出した海賊たちもまた、ウラヌスに見られている。
データ、すなわち情報の収集を得意とするならば。
行動、ゴーストキャプテンの取る行動への対策は既にシュミレートされ、練られていると考えられる。
人形故に顔色が、心の挙動が全く読めない。
――こんなコンキスタドールと、こんなところで出会うとは……。
「ふうん?……そう。君たちはアレを止めたいんだ?」
海賊たちがしたいというなら、樹神・桜雪には止める気などなかった。
「話は印象として、あまり聞いてくれなそうだねぇ。武力行使で良い……いや、構わないかな?」
「勿論さぁ!部下と同じ声で顔で姿で喋ろうと、確かにあいつは"死んだ"んだ。そこを否定する気はねぇよ」
「快い返答をありがとう。それならボクも手伝えるね」
――いいよ、力を貸してあげる。
そういえば、と桜雪の思考の隅に一つの事柄が過る。
――アレは名をなんと称するのだろう。的確な名称は。
聞き忘れたコンキスタドールの名。再確認と言葉にするためには、敬意を評してなんと言えばいいだろうと、言葉を選ぶ。
――……ああ。ボクより大分、乏しい箇所が目立つけれど。
「あの"人形"を、――止めれば良いんだね?」
団長は静かに目を伏せて頷いた。
許可された猟兵より、早く。ウラヌスが動く。
いや、その手元で飛ばすドローンが、出方を伺うように旋回している。
「敵性を判定。計測中……」
キィイイと音を立て、ウラヌスの紅い瞳に色が灯った。
「殺戮達成予測……暫定、67%」
「てめぇにしちゃあ低いな……つまり、アンタらは相当、予測しにくいってか」
団長が喋りながら放つ銃弾は、身体の装甲一つ貫く事が叶わない。
元より、海賊団の攻撃成功率は計測されていないのだ。
殺す対象であり一切の驚異ではない。彼の計算は、そう導き出している。
「……ま。彼にも彼なりに思うところがあって運命に賭けたと言うならさ、こちらも相応に賭けないといけないし?」
運命に殺された人形を、幽霊海賊団と共に串刺しで責め苦に沈めた所で何も晴れるものはない、と悠は考えた。束ねあげるキャプテンとしての感性より、それは闇医者として色々聞いた暗き声の経験則のようなものだが。
「賭ける願いを更に超えて、伝説に打ち負かされたら流石に眠りに同意をくれないか?」
宙をなぞる指、古く伝わるルーンの14。
「例えばそう、いつかどこかの"冒険の為の船"とかね!」
雲の上からぎぎぎと音を立てて、どこか幽鬼な船が現れる。その名はアルゴー。
運ばれ現れた戦士は各々弓や剣、本来の船よりとても多くの鬨の声が空から"島"へ木霊する。
雨と雷雨の音のなかで、竪琴の音が緩く耳を撫でていく。
名手が奏でる旋律が、"振り向くこと無く、迷うこと無くただ進め"と告げている。
「さぁ一人と、これだけの数だが、……白兵戦と洒落込もうか。何、リスクは高かろうがそれが海賊ってもんだろ?」
「驚異判定、微修正。殺戮達成予測を、65%に修正する」
データを修正し、身体へと情報を適応及び身体への改竄コードを入力することで、ウラヌスの姿が攻奪に相応しい姿へ改変されていく。
人形は3倍に膨れ上がる巨大な砲を一対で両腕に携えた。
撃つものは銃弾では無く、無尽蔵に"島"に存在する静電気。
微弱であろうとも、溜めて集めて使えば相当の武器となる。
「守るより容易く、早く。成果以上に破壊を遂行――戦闘開始」
それがウラヌスの導き出した"解答"だ。
「……おや。人数を集めてもそれだけか」
――少しやりにくいと思っていたけれど……。
――純粋に、的が大きくなってくれたと思えば、まぁ。
帯電する電気を使うため、撃つ動作も充電の動作も短い。
ウラヌスが打ち込んでくるのを読んで、桜雪は袖をやや大きく振り、余計な静電気を生み出し敵との距離を詰める。
「衣擦れも、電気の一つでしょ?」
桜雪がやや皮肉ると同時に、アルゴー船から武器の波が撃ち込まれる。
剣に弓矢、多い人員が島になだれ込み、動ける範囲を圧倒的に狭められる。
幽霊に混ざり、悠はにんまりと笑った。
「こういう嘘吐き白兵戦だってあるさ、……海賊がバカ正直だけで貫けるものかい?」
「皆昔の偉い人?冒険家?それとも海賊かな……でも、そのままで居て?」
第六感を信じ、決して攻撃が及ばぬ場所に立つ。
それが今から行う事の巻き添えに自分がなるとしても、ウラヌスもまた逃れるすべを持たない。
「雨も雷も混ぜて、更に凶悪な嵐を喚ぼう!ボクは――此処にいるよ!」
攻撃の座標を、あえて自分に指定し、雹の嵐を混ぜ合わせ凍れる竜巻は桜雪が選んだ属性から更に大きく膨れ上がって制御不能に陥る。
暴れ狂う雹粒を飛ばす風は雷を孕んで突き進む。
――……それくらいしないと、データには対抗できなさそうだから。
そうだ、幽霊を含めて全てに当てる事ができたなら。
「"島"を守りたかった君が、島を、仲間を攻撃するのは聞いてるだけで十分に悲しいね」
――だからさ、……これ以上酷い事になる前に止めてあげるよ。
アルゴー船からの幽霊も、桜雪も、ウラヌスも。
全て巻き込み嵐が抜けて、コンキスタドールが無傷で居られるはずもなく。
感情などは分からずとも、片膝を付き元の人丈に戻っていた。
「……損害30%と推定」
遠くに消えていった嵐と共に消えた悠が喚び出したアルゴー船。
微かに遠く、消え去った波間の向こうから音が今でも聞こえる気がした。
そう強大な番犬すら眠らせる――竪琴の、音が。
"向こう側で待っている"――そんな音色を、奏でて。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
御園・桜花
「仲間のためにと誓ったのは、貴方が島を守れれば、それだけ仲間が助かると思ったからではないでしょうか。願いが本当に反転するなら、島や船を壊すよりもこの人達を滅ぼすことを選んだ貴方の真の願いは、仲間を守ること。今の貴方の暴虐から…私達が、貴方の仲間を守ります」
UC「精霊覚醒・桜」
飛行し接敵
第六感や見切りで敵の攻撃を潜り抜け、破魔と風の属性攻撃乗せた桜鋼扇で殴り合う
最終的には回り込んで背中側の文様を鎧ごと壊すのが目的
盾受けやカウンターからのシールドバッシュは本当に躱せない時のみ
「今の貴方から、コンキスタドールから、私達が海賊団を守ります。だからもう…お眠りなさい。そして、いつか戻っていらっしゃい」
ギヨーム・エペー
いいぜ、おれは乗った。元からその気ではあったしなー
おれは好きだぞ、その願い。でも説得はなー、気の利いた言葉よりは…理不尽な死を手向けるのが、賊なもんじゃないか?
先ほどのデータを取られたなら、また新たな行動を取るまでだ
あーと、詠唱なんだったか……最悪省略しても怒る太陽は休んでいるから、大丈夫だな!!
的がでかくなると当てやすくていいもんだなー。確実に当てたいから狙うなら胴体だ
炎は一つの火球にする。だから複合合体で強化して、延焼はー…火を途絶えさせる必要はないと思うから、可能な限り燃やし続けよう
炎は海が消してくれるさ。きみは仲間のもとに帰りたいかもしれないが、海に一度潜るといい
●仲間思いのコンキスタドールへ
ヒューヒュー、と音がある。
パチパチと壊れる音がある。
損傷の影響で膝を折り、死した後に敵対する死を踊るコンキスタドールの前で。
海賊に御園・桜花は語って聞かせる。
「仲間のためにと誓ったのは、貴方が島を守れれば、……それだけ仲間が助かると思ったからではないでしょうか」
まるで独り言のようで、状況を整理するかのようで。
誰もが返答をしない中、気にせず語る桜花は目を伏せ気味に、在り様を想像する。
「"メガリス"でしたか?願いが本当に反転するなら……」
指を一度ウラヌスに向けて、海賊たちへと移動させて。
関係性を読み解く。
「島や船を壊すよりも、この人達を滅ぼすことを選んだ貴方の真の願いは……ただ、"仲間を守る"ことだった。違いますか?」
賭けた願いの重さが反転し、目的を書き換えるというのなら。
コンキスタドールとなった死者の男は、返答代わりに視線の赤を点滅させる。
「凄い力を代償に求めるんですね、"それ"は」
ちらり、と海賊に鋭い視線を向けて。
所有者にはどんな代償を求めるのかと、気になりもした。
「だからこその秘宝。覚醒者が航海へ乗り出す」
賭けるモノ無しに、覚醒者無しでの海渡りは誰も行わない。
島は昔より続く悲願達成のため、全員が覚醒者でない限り、大海原へ挑もうという行動を起こしてないようだが。
「……今の貴方は暴虐しか抱えるモノがないのでしょう。……私達が、貴方の仲間を守ります」
裏返せば、この場に"人形の居るべき場所はない"と桜花は言い放つ。
「守られるだけじゃあ海賊の名がすたる!多少とは言え、声は張ろう!」
「いいぜ?おれは乗った。元からその気ではあったしなー」
ギヨーム・エペーは海賊の矜持を否定しない。
むしろ共闘も含めて賛同で返し、彼らの行動の後押しで返した。
「おれは好きだぞ、その願い。……でも説得はなー」
頭の後ろをがりがりと、ギヨームは掻いて言葉を濁す。
「真正面から言葉を受け取るものかー?海賊だろ、なら気の利いた言葉よりは」
スッ、と視線をあげて。
「……理不尽な死を手向けるのが、賊なもんじゃないか?」
お前も海賊、あれは真の海賊に成れなかったコンキスタドール。
海賊同士の矜持のぶつけ合いに、涙まじりの見送りは似合わない。
そうギヨームに指摘されれば、海賊たちは虚をつかれたように目を丸くしていた。
「……ああ、確かに。弔いは弔いでも、正々堂々殺り在って別れた方が確かに……」
――海賊団らしい、送り方だ――――。
「話は纏まりましたね。では参りましょう?」
南国な風をどこかに感じる宇宙島に、渦巻く桜が吹き込む。
発生源は、桜花だ。
『われは精霊、桜花精。呼び覚まされし力もて……』
吹雪の中に身を置いて。種族としても精霊であるその身を強い意志の力で働きかけて空を飛ぶ。ふわり浮んだ桜花をウラヌスは首を傾げて視線で追う。
吹雪に覆われたその姿は早く、視線だけでは到底追いきれない。
ウラヌスの感情に反応し、データ収集用のドローンが大量に召喚されていく。
1機だけでは足りない関心、興味。それにつられて増えていく。
桜色の吹雪を黒い飛翔物が追跡し、回り込む。
「いいえ、いいえ。遅いです全く」
飛翔速度で軽く置き去りにされ、数の多いドローンがウラヌスの手元に戻る前に。
データを収集される前に。桜花は桜鋼扇で撃墜する。
機体事の戦闘力は無いに等しいのだ、それらは。
「解析優先、てめぇはいつもそうだ。だから"一歩"必ず出遅れるんだ!」
ドローンの群れと桜花に気を取られている間に、団長の男が懐に飛び込んだ。
カトラスも、ラッパ銃も扱えば逃げ道はない。
しかし……。
「こうして!!殴られんのは!!!何度目だ!!!!!」
男は馬鹿正直に、人形の頬を殴り飛ばした。
ガキ、と金属質な音がひとつ。
「死んだなら潔く死んでおけ!ゴーイングマイウェイは、生きたモンの特権だ!!」
自身に限り、あらゆる行動に成功する海賊の男の怒号が島の甲板で響いた。
「おう、よくいったー」
半壊したドローンが、ウラヌスの元へ飛んでくる。
ここまでの戦闘結果を収集し、解析を進めているのだ。
「ドローン損害80%。緊急警戒態勢へ移行」
Update……。
Update……。
「情報を更新。殺戮達成予測を55%に下方修正」
手に入れた情報を元に、鎧のあらゆる部分から銃口を生やし、再度身長3倍にまで巨大化を図る。
今度は動く事を考慮に入れず、足元まで重甲な重火器搭載だ。
動けないことを視野に入れず、ただ殺し尽くす事を名目にした形状。
――先程のデータを取られたなら、また別の新たな行動を取るまでだ。
「あーっと、詠唱なんだったか」
次の戦闘行動に移らんとするギヨームから漏れ出た言葉。
その真意を悟るものが出る前に、次の行動が追従する。
「……最悪省略しても怒る太陽は休んでいるから、大丈夫だな!!」
普段、その力を制御するモノがあるギヨームは、あえてそう大きな声で。
加護が若干離れようと、やろうとする事に迷いはなく。
「的がでかくなると、当てやすくていいもんだなー?」
炎を手元でまとめ上げ、火球の一投として生み出す。最大の威力を誇る魔術レベルにまで引き上げて、煌々と燃える太陽が甲板上の水分を軽く乾燥させた。
「これを避けても構わないがー、……その足では無理そうだなー?」
狙いすまして豪と燃える火球をでウラヌスの胴体を狙う。
3倍も大きくなり、足の起動を落としている今ならそうだ、確実に当たる――。
「予測通り」
体中の重甲が火球へ向く。
一斉に放たれる雷撃弾が火球の到来を迎え撃つ――。
「一つのことしか見ていない。だからダメだと何度言わせるんだ、てめぇは!!」
上空で、ドローンの数が刻一刻と減り続けていた事。
「今のコンキスタドールとしての貴方から、私達が海賊団を守ります。団長さんを貴方以上に叫ばせませんよ、きっと」
それの中より飛来する桜の風を、見落とした事。
「だからもう、お眠りなさい。そして、いつか……この世界に戻っていらっしゃい」
ドローンを振り切り、桜花が大きな背中を風の属性と破魔の力で包んだ桜鋼扇で殴り掛かる。叩くよろいも払うに特化した、物理的攻撃だ。それは、桜の風に混じった帯電した静電気が硬い鎧に描かれた文様事、砕く勢いで。
「振り向くのかー?じゃあ火を恐れないんだなー?」
背中側の鎧にヒビが入った。
怪物と言えど、偽の鼓動が途絶えるだろう。
明確で致命的な亀裂。
「うーん、きみは言葉少なで疎通が難しいなー。だが、これは分かる」
ギヨームの火球が銃撃の交戦に打ち勝ち、ウラヌスの身体が炎に呑まれた。
「きみは仲間のもとに帰りたいかもしれないが、海に一度潜るといい」
高度な温度で燃える術が、可能な限り燃えた後。
海と雨の水気が消し冷ました鉄に変えた時にでも、終わりを自覚し還ればいい。
願われた重さと、突き放された現世にウラヌスはただ――。
「損傷を85%に更新」
整然と同じく機械的に。
壊れる自分の現実を、――呟くだけだった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
太宰・寿
仲間のために、そう誓おうとしたのなら
そんなあなたに仲間を傷つけさせたくないです。
エゴかもしれないけれど、その為に私も戦います。
まずはPolarisで牽制射撃。
相手の行動を観察しながら、遠距離で戦いつつ海賊さんたちの援護を。
そうして私が銃でしか戦えないというデータを取らせます。
射撃に対応しようとあちらが動いた時、虹霓に持ち替えて接近し、思い切り殴ります。
描くだけじゃないんです、この筆。
可能であれば、そのまま背中の刻印を狙い塗り潰します。
それで刻印が消えはしないでしょうけど……きっとこれも私のエゴなんでしょうね。
そうすれば、貴方が呪いから解放されるような気がするんです。
●色は"世界"を変えるんだ
「仲間の為に、"そう"誓おうとしたのなら……」
既に終わった事。
今目の前の姿は、成れ果て。
「そんなあなたに仲間を傷つけさせたくないのです」
――エゴかも知れないけれど。
太宰・寿が願う、一般的な暖かさ。
機械的な帯電の島でも灯る、優しさの一欠。
「だから、そのために私も戦います」
「普段なら綺麗事と一蹴してやるところだが、こういう場面なら頼もしいもんだ」
敵対するのが真実、誰にとっても真の敵ならば。
心を痛める表情を海賊たちもしなかっただろう。
「では……まずは」
別名に北極星の名を関する拳銃Polarisの弾丸を身動きするウラヌスに撃ち込めば海賊たちもまた、ラッパ銃で同時に攻め立てた。
「てめぇの誓いは俺らも知ってるさ!」
「しかし死んだ後に仇をなすのは海賊の流儀からハズレてんだよ!」
海賊と共に銃弾を撃ち込み続ける中で寿は冷静に観察する。
目の前で、他の猟兵が放った炎の魔術で燃やし尽くされるウラヌスは始めから巨大だった。雨に打たれ荒れた波を受け、今は炎の隙間から弾丸の礫が降り掛かる。
徐々に消えていく炎が晴れれば人形はやや焦げた身体で寿を観察するように、息の残ったドローンを放った。
情報への執着にだけには隙がない。
「情報更新中」
Update……。
Update……。
ウラヌスのドローンが、海賊と寿が銃撃遠方戦を主流に敵対しているのだとフォーカスを絞って撮影し、観察しデータを組み上げる。撃ち込まれる速度、人数。
海賊団の仲間ではない存在が、それに混ざり援護している姿を計算の内側に放り込み。次の行動へのデータを更新していく。
――データ収集、ちゃんとしていただいているようですね?
――ええ。私が銃でしか戦えないという最新のデータを沢山取って頂きましょう。
「更新完了」
現在まで体を構成していたデータを破棄。
新たに遠方攻撃に対する重装備防護鎧を構築し、腕を中心に経口の大きな銃を幾つも生やして戦闘用兵器に姿を変える。
ウラヌス自身が動く事を計算に入れず、ただ殲滅にデータを傾けて。
雷槌を腕の銃口に集中する。
バチバチと目に見えて雷撃が充填されていく。
弾丸より硬く、狙撃するより早く疾走る雷と同じく貫くように焼くエネルギーが質量を増やしていく。甲板上は豪雨よりも、雷の爆ぜる音で満たされる。
「殲滅開始」
一斉掃射を行おうと経口全てが同じ方向を向いた。
海賊の中に混ざる、寿をピンポイントに、狙っている。
そんなターゲッティングを受けて射撃に見切りをつけた寿はPolarisを収め、モップサイズの絵筆虹霓へと持ち替える。
「私を狙うんでしたら、……ちょっと近づきますね」
ふぉん、と虹霓を一度振ると同時に柄のボタンを押す。
この場にない、色鮮やかな絵の具で先を湿らせて。
海賊より前に、帯電を増大させるウラヌスに勢いよく駆け寄って振りかぶった筆で思い切りぶん殴った。
絵筆の使い方と誰も予想しない大胆な一撃に、大きな体は揺らぐ。
「描くだけじゃないんです、この筆は」
にっこり。
鈍器として扱った絵筆の絵の具はパステルカラーに、ウラヌスを染めた。
雷槌を容赦なく撃ち込み始めた弾丸を、塗料で染めて回避する。
弾丸を受け止めきれずに甲板の床に絵の具の分だけ、その上に立ち寿は繰り返し、絵の具を届かせるように大きく絵筆を振るって"願い"を飛ばす。
弾かれた分だけ甲板はポップな色に染まって、寿の領域を広げていく。
「……あなたの力の源は、こちらなのでしょう?」
ばしゃ、と狙い塗りつぶされた背中。
「!?」
「如何ですか、それで刻印そのものが消えたりはしないのでしょうけど……」
――きっと、これも私のエゴなんでしょうね。
自身のエゴの部分を見つめるたびに、どこか寂しそうな表情を浮かべる寿。
「私はこうしたかったんです。そうすれば、……貴方が呪いから解放されるような気がするんです」
戦闘兵器は動きを止める。全ての情報集積への執着が、その刻印が齎したものでないことは誰の目からも明らかであった。
「思考、……混濁」
Error。
……Error!Error!Error!
「そいつは混濁じゃねえよ、やっと前を見て別れを見れる目を取り戻しただけだろ!」
"メガリス"の反転した力が、寿の塗り潰しに屈し効力をやや薄れさせた。
死した現実も、怪物化した現実も何も取り戻せやしないが。
「理解。死別への早急対処を、外部に要求」
ぼろぼろの人形は――確かにそういった。
大成功
🔵🔵🔵
アリエ・イヴ
【契】
アドリブ◎
シェフィーじゃねえか!
会いたかったぜ我が友よ
友との再会に笑み浮かべ
ソレとは別の強い眼差しを海賊に向ける
まぁ“俺達に”説得する必要は、確かにねぇな
ただよぉ、お前らにはねぇのか
家族の最期に掛ける言葉が
もしあるなら…俺が力を貸してやる
剣構え真正面から切り込んで
『存在感』で意識をこちらへ
同じ攻撃を繰り返せば
データ通りの行動は決まってくんだろ
海賊団にも指示を出して
追い込む先はシェフィーの射線
正確に、無慈悲に撃ち込まれる弾丸にゾクゾクする
ああ、やっぱ欲しいなアイツ
…だから、俺のモンに手出されちゃ困るんだよ
シェフィーへの攻撃は碇を飛ばして跳ね返し
ここまでしてやったんだ
ケジメはきっちりつけろよ
シェフィーネス・ダイアクロイト
【契】
アドリブ◎
貴様も居たのか、アリエ・イヴ(面倒な輩と出くわし機嫌悪い
私が手を貸すのは貴様等の為では無い
怪物へと堕ちた成れの果てに説得など不要
時間の無駄だ(冷徹に
私の好きにやらせてもらう
間合い取る
傷口抉る様に敵の足や胴を二丁小銃で同時射撃
何故か普段より戦いやすい
余計な真似を(舌打ち
貴様と手を組んだ覚えも無いのだが
…ッ!
僕に恩を売るつもりか
其の身が危ぶまれようと私は貴様を救う気は毛頭無い
礼言わず
攻撃に迷い無く
正確無比に継ぎ目を砕く
略奪は貴様の専売特許と思うてか
障害物に身隠し【ヘッドショット】で刻印狙い撃ち
無性に腹が立つ
人を直ぐに信用する
友?下らぬ
話聞かず押し付けがましい所
昔と變じない所が
嫌いだ
●海賊業なら死後でも出来るさ
男はその姿を見て、呼びかける。
「おいおい、シェフィーじゃねえか!」
シェフィーネス・ダイアクロイトはその声の主を、個性的な呼び方で理解した。
出来ることなら視認する事からしたくない。
「会いたかったぜ我が友よ」
肩をぽんと馴れ馴れしくアリエ・イヴに叩かれた。
こんなに距離を詰められては応じる他ないと、頭では理解していたのだが。
「……貴様も居たのか、アリエ・イヴ」
アリエは友との再会に思わず頬を緩めて、笑みを浮かべていた。
「もしやそうなんじゃねえかなぁと思ってたが、……俺の勘は当たったようだな!」
満足気にバシバシと肩を叩き、現実をその目に捉えた時には。
無邪気で、しかし自信に溢れた表情は影を潜める。
この島の海賊の在り方について、言いたいことがアリエに強い眼差しとして現れた。同様、いやそれよりも冷たい視線を、シェフィーネスにも向けられて海賊たちは何だと眉を顰める。
「私が手を貸すのは貴様らの為ではない」
ため息まじりに苛つく声色で吐き出した。
「怪物へと堕ちた成れの果てに説得など不要」
猟兵たちの活躍で多少、生前の心を取り戻した所でこれは刹那の間、化け物に服従の枷をただ嵌めただけ。
怪物は怪物。生者であることはない。
生者に戻ることなど、尚更ありえないのだ。
「死者と知る時点で時間の無駄だ。私は好きにやらせてもらう」
アリエの手を乱雑に払い除け、シェフィーネスは独りで行動を開始する。
「……まぁ?"俺達に"説得する必要は、確かにねぇな」
払われた手で、アリエとシェフィーネスを指差し示す。
「ただよぉ、お前らにはねぇのか」
「弔いは海賊らしくねぇと他の奴にも言われたさ」
「あるんだな?家族の最期に、掛ける言葉が」
ヒトデナシの集まりでない事に安堵したように、アリエもまた戦闘行動に移る動作を始める。
「必ず伝えろよ?……俺が力を貸してやる」
無造作に雨露を払うレーシュ。
「だから絶望の別れではなく"謳え。誇りと矜持在る勝利を"!」
掛けられた言葉の希望の欠片。
幾人拾うかは大いに賭けだ。海賊ならば、全て丁寧に解説するものではない。
伝わらなければ、発展も進展もこの海賊団には見込めないだろうと、アリエは見切りをつける。
「さぁ、此処からも派手に暴れよう――ほぉらこっちだ!」
半壊の人形へ、存在感を強く呼びかける。
切れ味が化け物級の、アリエのカトラスを持って真正面から切り込み、襲いかかればウラヌスは新たにドローンを召喚し差し向けた。
「敵対者の意志を確認」
カメラの撮影音、ジィイイと機械的な音がアリエの動きを観察する。
捨て身でアリエに突撃するドローンすらあるのだ、威力まで計測収集の対象だ。
「横奪にも手段は選ばないと、はははそりゃあいい」
突っ込んでくるドローンを切り払い、しかし絶対数が残るように追跡してくる機体を斬り捨てる。
――同じ攻撃を繰り返し溜め込めば。
――自ずとデータ通りの行動は決まってくんだろ。
「さぁ!表舞台は整えたぜ、今だ雪崩込め!」
あわよくば。
アリエの期待に同意した黄金の蜜の花を象る闘気に気づいた者たちへ。
――そうだ。海賊団の面々がそのまま行けば。
――追い込まれた先には、シェフィーの射線へ至るんだ。
間合いを取り、静かに訪れるべき未来を見据えていた男。
シェフィーネスはウラヌスの傷口を更に抉り壊すように、左右の二丁拳銃で別々の場所を撃ち逃がす隙を与えない。
ドローンでの収集を優先する人形には隙しかないが、足と胴。
どちらを穿ち続けるのにも、不思議な違和感を感じる。
――何故か普段より、戦いやすい……。
「正確に、無慈悲に撃ち込まれちゃってまぁ……」
思わずゾクゾクするほどの躊躇の欠片のない悪辣の弾丸。
――ああ、やっぱ欲しいなあアイツ。
ニンマリと企み顔のアリエに、行動を仕組まれて撃たされたと感じ取るやいなや、シェフィーネスは露骨に嫌な顔をする。
「余計な真似を……」
苛つく気分が余計に不快を撫でた。
舌打ちひとつで晴れるものではない、その男の態度。
「貴様と手を組んだ覚えも無いのだが」
――……ッ!
敏いシェフィーネスは行動の意図を、身体に感じとった。
値踏みするような企み顔から感じることは、そう……。
「僕に恩を売るつもりか」
「あらあら、俺はなにもいってねぇけども?」
完全に機嫌を崩したシェフィーネスの死角よりに、侵奪した闘気を纏ったドローンが玉砕覚悟で飛来するのを見て取る。踊りこむように勝手な借用を受けた闘気事切り捨てて、それでもやはりアリエは笑う。
「……其の身が危ぶまれようと私は貴様を救う気は毛頭無い」
窮地を助けたアリエに礼を返さず、むしろ突き飛ばして甲板を軽く滑り、ウラヌスの鎧の継ぎ目。
その僅かな部分を正確無比に砕く連撃を撃つ。
「略奪。それは貴様の転売特許と思うてか」
狙いを定められぬよう、シェフィーネスは海賊よりも立派な障害物に身を隠しながら縫うように疾走る。
「追撃」
「……だからぁ、俺のモンに手出されちゃ困るんだよ」
それでも尚、ドローンでの執拗な攻撃を続けるウラヌスの機体を、碇で完全に破壊して。キツめに、鋭い視線と共に支援する。
――わずか一瞬でも。人形がシェフィーを見失えばいい。
ずどん。
略奪者の簒奪は、刻印を無慈悲に砕いて撃ち抜く。
完全に砕かれた背中と共に、刻印もまた砕けた。
"メガリス"力はもう、人形をただの死者へと還すだろう。
「損傷率100%を超過」
人形はがしゃりと音を立てて地に伏した。
「活動限界まで……」
甲板上で赤の視線を点滅させて。
「壊れかけと言わず、これで完全に終われる」
ちゃき、と硝煙を燻らせる銃口を吹き消す。
人形の終わりもふわりと泳がせた煙に同じ。儚く消える命運を紡いだ。
「ここまでしてやったんだ。ケジメ、きっちりつけろよ」
「……ああ、手間をかけたな」
アリエの言葉に背中を押され、海賊の男が壊れた人形の傍に佇む。
「てめぇは何も悪くない。死ぬまでてめぇを忘れもしない」
「……」
「俺らが死んで追いつくまで、精々そっちのデータ収集を沢山やっとけ!」
「団長、命令」
「そうだ。そっちで即座に冒険に乗り出せる準備を、それこそ死ぬほどしておけよ」
団長の男は言いたいことだけ言う。
ウラヌスの返答は死後の後に聞くと偽の心臓が停まるより早く、カトラスを鋭く突き立てて。それを部下の男への手向けとした。
墓標にしてはとても雑で。戦いを遠く傍観していたものがあったのならば。
弔うというよりただ、仲間の暴走を止めたという印象を得ただろう。
電子的な、ぷつんと墜ちる音すらも名残惜しい程あっけない終わり。
空より降り続ける雨が雨脚を弱め、雷槌もまた遠くに音を潜めていた。
海賊の矜持を遠巻きに独りで眺めていたシェフィーネス。
そこへ、アリエが近くに歩いてくるのが見える。
視界の隅に男の姿が入り込んだ。
――無性に腹が立つ。
「人を直ぐに信用する」
――友?ああ、下らぬ。
シェフィーネスの苛立ちが、限界を超えて。
ポツポツ雨まじりに吐き出される。
「特に、話を聞かず押し付けがましい所」
「褒め言葉か?」
「昔と變じない所が」
「大好き?」
「――嫌いだ」
その表情をアリエはどう受け取っただろう。
「ふうん?」
一度にんまり笑って、シェフィーネスの背を思い切り叩いた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第3章 日常
『島の不思議を探して』
|
POW : 手当たりしだいに報告する
SPD : 慎重に見定めて報告する
WIZ : 推測も交えて報告する
|
種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●
「盛大に手間を掛けたな」
「……だがこちらも仲間が旅立ったところだ。詫びはひとつで許してくれ」
海賊の男はただ、そういって軽く頭を下げた。
「ところでてめぇら、見ねぇ顔だな……?」
頭を上げた男は、今さら重大な事を思い出したというように呟く。
部下の海賊たちも団長もくつくつと喉の奥を鳴らして笑った。
「帯電と雨ばかりの"島"だが縄張りへの不法侵入は見なかった事にしてやるさ」
それが礼だと海賊は提案する。
「好きなところへ足を伸ばしてくるといいぞ!」
「滞在も自由にしてくれ、なんなら迷子防止に部下でも俺でも同行しよう」
島民でも構わないが、と軽口を叩く。
「もし独りでの行動が好ましいなら、大分離れて同行を伺う事は許して欲しい」
客人が不用意に触るには、住んでいる"島"は特殊な方だと理解が在るのだ。
「希望があるなら話しかけないよう、部下にも島民にも言い伝えておく事はできる。――海賊の矜持を賭けてな、違えねぇぞ」
「……まぁあれだ。暴力行為と制圧以外ならお気の召すままに?」
多少損害を被った甲板から見送られる猟兵たち。
海賊たちは君達の行動を余程の事が無い限り制限したりしないだろう。
さあ、どこへ行ってみようか。
御園・桜花
「団長さん、あの方をどちらかに葬られるなら…私も参列できるでしょうか?それと…この地の名産があったら、教えていただけませんか?」
水葬なり土葬なりを行う予定があり、且つ参加を認められたら最後尾で参列
心の中で転生願い、参列後鎮魂歌を捧げておく
名産を教えて貰えたら、労働等して1人前以上購入
UC「精霊覚醒・桜」使用し鉄鋼船へ帰還
「無事終わりましたので…この地の名産をいただいてきました。フィッダさんもいかがです」
「私の妄言を聞いて下さるのはフィッダさんだけなので。この地で幻朧桜は馴染まないだろうと寂しくなって。此処では喚ばれた影朧を抑えきれないでしょう?あれには二重の意味で、抑える者が必要でしょうから」
十津川・悠
さて、やることもやったし…私はちょっとゴーストキャプテンとして最後の一仕事しますかね。
つまるところ送った後の後始末とその他もろもろである。
墓の一つでも置いておかないとね…最も海賊としてというわけでもないけど。
●弔いに添えて
「あの、団長さん?」
御園・桜花は雨風に服を揺らすばかりの団長に声を掛けた。
「あの方をどちらかに葬られるなら……私も参列出来るでしょうか?」
「葬るっつーのは、何だ?……"島"で聞いた事ねぇが…………」
団長は沈黙した部下に突き刺さったままのカトラスを見ている。
心臓の動力部を貫き刺さるそれは、さながら簡易で雑な墓標と見えた。
「まさか、そのままにしておくということはないのでしょう?」
「ああ。それはない。こいつのような身体をした奴を放り込む部屋なら……」
壊れた鉄屑、人形が積まれた虚無の部屋は、あるのだという。
男の話を纏めると死者の体にも帯電は起こり、簡易ながら微弱電気を保持する電池のような役割を果たすらしい。
故に、死後も"島"と共にあり続けるのだとか。
桜花は聞いた途端に眉根を下げた。
それは例え死者が人形の体であったとしても、あんまりだ。
「おや、ゴーストキャプテンをお呼びかな?」
弔いと葬る話の向こう側、十津川・悠が声をかける。
「やることはやったし、此処は最後の一仕事をしますかね」
「……一応聞くが、てめぇは何をするつもりだ?」
男のカトラスが抜けるかどうかを上から下まで眺める悠。
「ん?ああ、団長ということは君が船長だろう?なら許可をくれないか」
「……ええと?」
「説明するより我流にはなるんだけどね、伝説の船式弔いをするのさ」
身振り手振り。
悠が説明する所内容を繋げると"葬儀"を行いたいという申し出だった。
「聞いたよ。"島"は釣りも盛んなんだろう?近辺の海に一切害を出さないさ」
――名産品は、"お魚"なのですね……。
桜花が訪ねようとしていた情報を胸の内に留める。
「ならこうしよう。せめて、派手に馬鹿騒ぎして見送ろう。海賊だろ?」
「何を」
「この……彼"ら"を、さ!」
突如ぶわ、と溢れる重苦しい磁場が混ざった重力。
霊的に冷たい風が、涼やかに吹いた。
悠の背後に、海の怪物となりいつか死んだ死者の魂が溢れ出てくる。
虚無の部屋をいち早く訪れて、死者の身体に触れて魂の有無を探り歩いた。
海の藻屑と散って尚、この"島"に留まり続けていた仲間思いのゴーストに声を掛け、今に至る。
――此処に居ても話はできないだろう?なら、逢わせてあげるよ!
悠の言葉に同調したゴーストは多かった。
身内を心配したもの、未練が在ったもの。数多くの幽霊が此処にいた。
団長と海賊団の仲間の目にも浮遊する幽霊たちが目視でき、――ああ、見える。
彼らにとって、誰かは懐かしい"誰か"。もしくは先祖。
一族のどこかで途絶えたが、同じ夢を抱いた、誰かだ。
「盛大にやろう!彼らもそれを望んでいるよ」
死者には遠き伝説の船による、冥界への迎えを。
魂の在り処は此処にあらず。
上空に再度現れたアルゴー船から竪琴の音が聞こえてくる――。
「……あいつらは、此処にまだ、いたのか…………」
絞り出すような声で、海賊団は呟く。
「……わかった許可する。おいてめぇら酒を持て!いいやなんでもいい、騒げるモノを各々持ち寄れ!」
『そんなこともあろうかと!酒樽なら沢山用意しておきやした!』
「おお!幽霊のくせに実体化してんのか、じゃあ一緒に飲めるなぁ!」
『ああ!』
"島"を良く知る幽霊たちと、アルゴー船と海賊団が合わさったどんちゃん騒ぎの飲み会が、突如として開かれる。
どこからも笑顔と乾杯とカップをぶつける音が響く。
再会(わかれ)も忘れて、ただ楽しく飲みふける。
その中には勿論、控えめにウラヌスの霊の姿もあった。生者としてコンキスタドールとして二度死にながら、即座の廃棄をしなかったこと。完全に破壊しつくしてくれなかったことを、無言ながら礼を述べているようでもあった。
悲しげではない竪琴の名手の伴奏に合わせて、桜花が歌声を乗せる。
鎮魂歌にしては寂しげではなく、また会う日までと祈りを声に乗せて。
――最後尾、一番控えめですがここからでも見えます。
桜花は歌いながら微笑んで、宴の様子をみていた。
――粛々と、お送りするのが良いと思っておりましたが。
――これが、海賊のやり方の一つなのでしょうね。
――ですが……あわよくば。転生への助けとなりますように。
水葬ではなく、言う成れば『天葬』。
死者に死者を連れて行ってもらう。
ゴーストが登るべき道を知らないのなら、既に知っている者に任せればいい。
道先案内人たるアルゴー船に乗ればもう帰っては来られないが、これが最後の一時となるならば。
「大丈夫だ!てめぇらのことは海賊団も島民も!」
「……いや、誰より"島"がずっと忘れない!」
酒の入った樽ごと持ち上げて、実体化しているゴーストに団長はぶちまけた。
「未練と容易く朽ちぬ身体は遺しても、魂は遺すんじゃない!現の船長命令だ!!」
酒を浴びた幽霊も、酔っ払った男もとにかく楽しげに笑っていた。
それが死者相手でも、彼らは海賊。
悲しいだけの涙別れは似合わない。
どこまでも、馬鹿のように笑って叫んではしゃいで泣き笑いで顔を濡らして。
「竪琴の音が聞こえるだろ?あの船に乗ったら"振り向くんじゃない"よ」
満足したようにアルゴー船へ乗り込むゴーストに悠はそういい添える。
――最も?海賊としてというわけでもないけど。
闇医者としても雑な弔いを気にしていた気持ちがなかったわけではない。
「墓の一つでも置かなくて悪いねぇ。これが私流なのさ」
喚び出したアルゴー船。そこで演奏する者が、そういう伝承持ちだ。
下手なことをすれば、進む道を惑ってしまうから。
『ハハ!大丈夫さ。雑な墓で寝てるだけじゃいられねぇって気づいたしな。――じゃあな、お前ら!』
大きく帆を張って、空の向こうの航海へ乗り出すアルゴー船。
乗り込んだ幽霊も、伝説の戦士たちも誰も振り返らず背中だけが遠くに見えた。
沢山の幽霊が、"島"を去っていく。
その間も、やかましく続く宴は全く見えなくなるまで。
酔っ払いの笑い声が――死者たる彼らを盛大に見送った。
そこには誰の目にも悲しい涙はなく……ただ笑顔だけがあり、ふんわりと温かい気持ちが胸に広がった。
●
そこから少しして。
鉄甲船に桜を引き連れていち早く戻った桜花。
「無事終わりましたので、この"島"の名産を頂いてきました。フィッダさんも如何です?」
舞わせた花びらが落ち着いて、バス停に見せたものは極彩色の魚の泳ぐ小さめの水槽。今朝釣られた新鮮なもので、刺し身としても焼き魚としても絶品だと進められた。魚も同様に帯電の中で生活してきたものであり身は大変歯応えが良いという。
「……いや、気持ちだけでいい。コレ以上の飼育は怒られそうだ」
バス停は渋い顔で首を振る。調理して食べるという意味で受け取られなかったのは、彼がヤドリガミだからだろう。
「私の妄言を聞いてくださるのはフィッダさんだけなので、早々に戻ってきてしまいました」
水槽をバス停の横に置いて桜花は続ける。
「この地で幻朧桜は馴染まないだろうと寂しくなってしまって……此処では喚ばれた影朧を抑えきれないでしょう?あれには二重の意味で、抑える者が必要でしょうから」
「此処は、サクラミラージュから脱落した島じャねェよ」
それは実際、誰かが該当の島を見つけその目でみなければ分からない。
バス停からはため息がひとつ。
「てめェの生まれた世界の"桜"は何年生きてんだよ」
「! そうですね……"もしかしたら"ということは、あり得るでしょうか」
「さあな」
揺れる鉄甲船の上。猟兵たちが戦った巨大魚よりとても小さな魚。
それが水槽を飛び出すほど元気に活き活きと――跳ねた。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
太宰・寿
差し支えなければ、この島の風景を絵に残したいです。
もしよかったら、お勧めの場所教えて頂けませんか?
島民さんでも海賊さんでも、伺えたら教えてもらって。
詳しくないのですけど
元が宇宙船なら居住区とか操縦室とかあるんでしょうか。
不思議でどこかノスタルジックな風景があったり…なんてちょっと期待しつつ。
私は感性も感覚も平凡だから
辛いことも悲しいことも時間を経て薄らいで
いつか当たり前に忘れていくと思うんです
薄情かもしれないけど…
だけど、少しだけでも残したくて
いつか記憶が薄らいでも、見たら思い出せるように
絵にしておきたいなって
●Sketch
「あの、差し支えなければ……」
口数少なく、太宰・寿が声をかける。
荒波のような戦い模様が落ち着けば、おっとりとマイペースに戻るもの。
「ん?」
「この"島"の風景を絵に残したいです。ですから、もしよかったら……」
控えめに、尋ねるのは島民としてお勧めの風景。
海賊でも、島民でも暮らすものであるなら知るだろう。
日常の一部を、見せて欲しいと寿は願った。
「風景でいいのか?おい、誰かいい場所知ってるか」
「吹き曝しという意味では此処から海眺めるのがいいだろうけどな!」
わっ、と冗談混ざりの声が上がる。
確かに甲板から見える"風景だけ"は趣があるだろう。資格情報として苔だらけの壁面や、先程噛み砕かれた部分等、迫力満点に猟奇的である。
「"島"らしくはねぇなぁ……あああそこならどうだ、旧操舵室だ」
「甲板より上の操舵室の旋回窓なら視界は雨を感じず良好だろう。案内してやれ」
団長の男がすぅ、と指差す先に帆を張るワイヤーの向こうで。
ガラスが張られた見張り窓が見えた。
見たことある物でいえば、車のワイパーのようで、扇風機の羽のようで。
窓ガラスを円形状に磨き、視野を常に良好にする機構だ。
「このタイプの環境に詳しくはないのですけど……普段使われているんですか?」
「ははっ!釣りはよくやるからなぁ俺らは」
望遠鏡を手に魚に群がる鳥を探したり、天気の記録を付けたりと日常的に使われる場所であるらしい。
"島"で暮らす上での生活の知恵と言えるだろう。
宇宙(そら)を飛ぶ事を失って永いが、帯電の原因は"島"にある。
「"島"の半分は海に沈んでるんでな。空調関係がおかしなほどに今でも元気なんだ」
異常動作を起こしかけるのを制御するように"コアマシン"が時折動く。
故に、この宇宙船は電気が勝手に帯電するのだ。その活動は、この世界で抱えた人々と共に生きるために必要な空調設備を過剰に働かせ、"島"そのものが簡単に朽ちてしまわぬように人知れず頑張っているのかも知れない。
完全に死んでも居ないのだ、この宇宙船(しま)は。
「じゃあ、少し遠回りで道案内をお願いしても良いでしょうか」
真っ直ぐ向かえば他の区画を目にする事は叶わない。
――不思議で、どこかノスタルジックな風景があったり……なんて。
――ほんの少し、期待する気持ちが在るんですよね。
「じゃあこっちだ。のんびり案内してやるよ。俺らの住処をな!」
冗談を吐いた海賊が案内を申し出る。
ニコニコと豪快に笑いながら、決して喧しくない晴れやかな男だ。
「ええ、お願いします」
男はあれやこれやと、指出して教えてくれる。
甲板を降りて真っ直ぐあるけば居住区。
海賊と島民、どちらも同じく住まう者である限り別け隔ては特にないらしい。
――私は歓声も感覚も平凡だから……。
キラキラな生き方を口にする男が、寿には少々眩しかった。
昨日まで隣り合っていたかもしれない仲間の死を送り、"島"で眠っていた歴代のゴーストを冥界に見送った海賊というのは此処まで晴れやかなものなのか。
「今朝は各所で大漁だったからな、清掃が追いついてねぇし足元滑るかも知れん」
暮らしてる俺らでも普通に滑るんだ、と付け加えて。
「……そうなんですね。辛いことも悲しいことも、時間を経たら薄らいでいつか当たり前に、忘れていくと思うんです」
男とは対象的に寿はツラそうで、悲しそうな表情を浮かべていた。
それを見た男は不思議に思ったようで、きょとんとしている。
「……薄情、かもしれないけれど…………」
今から未来(ゆめ)を見続けて生きていくのは、過去(かなしみ)をどこかに置き去りにするようなものだ。
時間(かなしい)がどこかで薄れて、消えてしまったとき。
――次のまた悲しい思いを、繰り返していくんでしょう。
「だけど、……だからこそ少しだけでも残したくて」
――私は絵に、残したいんです。
「いつか記憶が薄らいでも、見たら思い出せるように絵にしておきたいな、って」
「難しい事はわからんがアンタは……良い奴だな!」
隣合えなくなったとしても、死者が眠る区画がある以上、この"島"で過去を確実に失う事はまずないだろう。過去から繋がる今が、彼ら"島の海賊"が"遠き未来に夢"を見る存在理由であるからだ。
「差し障りなければ完成したら見せてくれ」
いつの間にかたどり着いた管制室の扉を開けて。
「他所から来たアンタの目に、どう移るのか興味あるんだ」
若干古い鉄の匂いがふわりと、室内を占めていた。
ぐるぐると帯電する電力を元に回転する不思議なまあるい窓から"島"を見下ろす。
甲板が、海の上に顔を覗かせる島の一部が遠鳴りの響きに彩られ見て取れる。
巨大で強大な宇宙船のごく一部。
――さぁ何色から始めよう――。
歴史ある"機械の島"だが、どこかふんわりほのかにポップで明るい色が似合うような、ぼんやり考えながら寿の一人作業の時間が始まった。
海賊の男はいつか完成するだろう絵を楽しみに。
しかし寿の邪魔などしないよう控えめに。
楽しい"島"での話を始めるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
ギヨーム・エペー
POW
探索していいなら、遠くまで行かない程度に周辺を歩いてみようかなー
時間経過だけでなく、場所によっても帯電速度変わるのだろうか。ちょっとした実験と行こう
後はー、そうだな……おれからも、花を
造形は適当に花っぽく、一輪だけ生成しよう
墓に添えたら、帰るとするかな!じゃあ、またなー!
だが、船に戻る前に島の周りをぐるっとバイクでかっ飛ばす。同行者がいるなら後ろに乗せる。海が囲むこの島の全貌を見ておきたい
天候は変わらず雷雨だろうが、いい景色だ。わしは好ましい
……うん、おれは満足した。今度こそ戻らないとなー!
●氷の1輪
「探索していいなら、……さて、おれはどうするかなー」
ギヨーム・エペーは軽く悩む。
歓迎すると言われると、逆にやりたいことは絞られる。
――あ、そうだ。
「なぁなぁ、このパチパチはー」
自分の人差し指と親指を近づけるだけで帯電があるのは此処まで体験してきた。
痛いほどの強さはないが、加護というほど強いものでもない。
曖昧だが確かに、不思議な特色だ。
「場所によって、帯電速度が変わるのだろうかー?」
「……ほう?面白い事を思いつく奴だな。おい誰か、実証したやつはあるか」
海賊団に問いかければ、首を傾げたり、横に振る姿ばかり。
誰も気にしたことがなかったのだろう。
「そうだよなぁ、俺もだ」
「此処で生まれ育つと考えることではないんだなー」
成程、と呟いて、甲板より海をギヨームは見下ろした。
長年の披露蓄積から"島"から離脱し、浮き輪のように浮かぶデブリの群れがあるようだった。宇宙船からこぼれ落ちた壁面パーツの上で増え続ける苔が、島の周囲に確かな足場を形成しているようである。
「あれはグリーンライン。見えているより強固だぞ、機械類を乗せても沈まねぇ」
「ほう。……なら、遠くまで行かない程度に周辺を色々みてくるかなー」
腕を組んで軽く伸びをするギヨーム。
「後はー、そうだな……」
自身の生まれ持った氷の魔力を掌に集める。
海水が主とはいえ、水気は"島"に十分に満ちているのだ。
それらを集めて、造形を想像し、イメージする。
理想を掴み、形作る。
「おれからも、花を」
ギヨームが魔力で作り出した氷の花は、やや造形が適当でたった1輪。
氷の花束を作り出す程、海賊団に重い情を抱いたわけでもない。
矜持に飛び込んだだけの縁。重すぎず軽すぎない。
それ以上に踏み込まず、踏み込ませない。
魔力の時点で効果が切れれば容易く解けて消える素材だ。
飛ぶ鳥後を濁さず、ただその場だけの祈りを捧げられるだろう。
「……ああ。まだあいつは此処に在(い)るよ。手向けてやってくれ」
倒れ伏す壊れた人形へ、ギヨームが花を添えた。
「んじゃ、見るだけ見ておれはかえるから……先にちゃんといっておくか」
ゆったりした動作で、手を上げて。
ひらりと、揺らす。
「じゃあ、またなー!」
「ああ、……ありがとう。またな」
助太刀に訪れた男にゆるりと別れを告げられて。
団長の男は当たり前とでもいうように、感謝の言葉で見送った。
「……さぁて?帰りの船に戻る前に、っとー」
"島"を下船するギリギリで愛用のパステークに跨り、颯爽とかっ飛ばす。
ごおうと音を立てて急激に走り出すギヨームの速度。
喰らいつくような追跡者が背後にある事に、ギヨームは気がついていた。
飛翔能力を得た、騎乗用の鮫に乗った海賊……いや、空賊の男。
何も言わず、もしもの救助のために着いてきているようだ。
凄い速度で飛ぶ鮫と騎乗する海賊に追われている構図になるわけだが……。
――凄い光景だ。"島"に終わりが見えないし。
バイクの上から見上げてみても、遠く。
船の後方を見据えようとしても"届かない"。
雨霧にかき消され、霞んだように見て取れなかった。
人々が暮らす巨大な箱(ふね)は、容易く全容を見せない。
ただどこまでも強大で、朽ちて尚、尊大だった。
――鮫も凄いなー、あれもメガリスの効果様々なんだなー?
真に水面上ではないとはいえ、ややタイヤが苔に沈む。
心持ち荒れた波間のグリーンラインは振動が地上とは異なる揺れがある。
わくわくとスリル感もあって堪らない。
「こんなにしっかりした道があるなら、やることは沢山ありそうでいいなー」
「釣りにしか使われてないんだけどな」
生きる分には困らない生活の中での釣りは、相当の意味を持つのだろう。
――それも、うん。ありだな。
心の内で同意を示し、一度ハンドルより片手を離して指を近づける。
……ぢっ!
「お?」
"島"の甲板でやったときよりも、反応速度が遅い。
外周とも言えるグリーンラインでは、音まで違う気がした。宇宙船の中央に近づくにつれて速度も威力も若干上がるのだろう、という予測は容易い。
確認するのは、背後を飛ぶ鮫の男か"島"の誰かが新たな発見とすれば良いだろう。
「なあ、団長へ伝えておいてくれるか。"帯電速度は変わるみたい"ってなー?」
「……ああ。これは一言一句そのまま伝えよう」
生真面目な空賊の返答に満足したギヨームは、顔に張り付く髪を払う。
ずっと降り続ける雨も、ゴロゴロと音を忍ばせる雷も。
合わせてこの風景というのなら。
「ああ……いい風景だ。わしはわりと好ましい」
独り言に目を細めて。
「……うん、おれは満足した。今度こそ、戻らないとなー!」
カッ、とパステークの向きを変える。
――身体に帯電する場所は全て、この"島"のひとつってことなんだろうなー!
速度を上げて疾走るパステークのタイヤにまで帯電が起こっていた。
"島"を離れれば、帯電からは開放される戻るだろう。
しかし、それと同時に――。
手元でぱちりと爆ぜる音の名残惜しさを感じた、ギヨームだった。
大成功
🔵🔵🔵
樹神・桜雪
UCで相棒を呼び出して一緒に島を探検するよ。
見張りがつくなら、団長さんに話を聞きながら行こう。
ボクはお喋りは得意な方ではないから、話してて楽しいかは分からないけれど。
改めて見ると、本当に不思議な島だね。雷ビリビリしてる。どうなってるのかな。
宇宙船、初めて近くで見たんだ。
あちこち覗いてはいろいろ聞いてみる。
コアマシンとか、島の施設の話とか。
珍しい物を見ては相棒とはしゃいでみたり。
コックピットも見せてもらえるなら見てみたいな。人形のロマンなんだ。
見た事がない場所で見た事がないものを見るのが好きなんだ。これも大切な思い出になるから。
ありがとう海賊さん。大切な場所を見せてくれて。
…すごく、楽しかった。
●ロマンともふと時々相棒
「お前さんは?どうする」
樹神・桜雪はぼんやりと、"島"を眺めていた所を尋ねられた。
訪ねてきたのは海賊団の団長。
桜雪が何をしているのかと、気にしたようだ。
「そうだねえ、相棒を呼び出して一緒にいこうかな」
言いながら軽く袖を振るうと、溢れて飛び出す一羽の白い鳥。
ちちちと鳴きながら、桜雪の周囲をパタパタ飛んだ。
心做しか、現れた瞬間に"島"の静電気を帯びたようでぼふっ、と羽毛が倍増している。手元に招いて触れてみると、普段よりも3倍近くもこっとしていて白の身体でとても特徴的な瞳の黒が、羽毛に埋もれている……。
「そいつは……鳥か?小柄だな」
「うん?シマエナガ、っていう鳥だよ」
ちちちと主張するように応える小鳥に、団長の男は思わず笑う。
「"うち"で鳥といえば命知らずのカモメ類かオウム。小柄な鳥は幼鳥以外みねぇからなぁ」
「そうなんだ?鳥も居るんだね」
小柄なシマエナガを団長が肩口にもし止めていたら。
威厳など振りかざせるものではないなろう。傍から見ても肩口に毛玉だ。
想像してみると、失礼ながらなかなか微笑ましい。
「お?なんか変な事考えてんじゃねぇだろうなぁ」
「ああいや。そんなことはないよ……ふふふ」
――ボクはあまり、お喋りは得意な方ではないから。
言葉はあえて繋げなかったが、何か不思議の想像をしたことは筒抜けだろう。
――ボクと話してて楽しいかは分からないけど。
――うん。ボクは楽しい気がするね。
「改めて見ると、だけれど」
「感想か?おう、ストレートに言って見てくれ」
団長は面白がっているように、桜雪には思えた。
少なくとも、今日初めて顔を合わせた間に流れる空気ではない。
「うん。本当に不思議な島だよね、目に見えるくらい時々ビリビリしているのが見えるもの。雷、だよね……?どうなっているのかな」
「それが本音か。ああ良いとも、素直なのは良いことだ」
「此れは宇宙船、なんでしょう?今一緒に歩いているけどね、初めて近くで見てるんだ」
桜雪の問い掛けと興味に、団長は満足気に一つ二つとう頷く。
新しい団員にでも説明するように相応な答えを口にしながら。
「そのとおり雷だ。だが空のやつじゃねぇ」
宇宙船だった名残が忘れ形見のようにずうっと動いている、という口伝えの伝承があるようだ。ただし、遠い昔に飛行能力を墜落と同時に失ってから、機体を維持するに最低限の空調を制御するあたりだけ。無尽蔵なエネルギーを有しているはずもなく、時折墜ちる雷のエネルギーを取り込む構造。
「宇宙(そら)にあった頃は無かったらしいけどな」
動力機械"コアマシン"が完全に大破しなかった事で、今も尚暮らしていける環境であるという。
「この部屋は?」
ひょこ、と入り口から相棒共々顔を覗かせて。
あれは、これは、と桜雪が質問すれば、団長はそれにも海賊流で応えて返した。
「大体居住区だ。あと、そっちの部屋は釣った魚の競り場だな」
大小競って、勝った負けたで感情を動かすだけの部屋。
通貨も確かに存在するが、基本は物々交換による流通で済ませる。
諍いは殆どなく、平穏で施設と暮らし以外が"田舎"という印象を桜雪に持たせた。
「勿論、死者の眠る部屋もある。"虚無の部屋"なんて名付けられてるが……」
簡単に朽ちぬ機械や人形の体をしたものを安置する場だという。
団長は誰かが言った部屋名を口にしているだけだったが、別名『ガラクタ置き場』と呼ぶらしいことを相棒はひっそり耳打ちした。
「やっぱり、色んな施設があるんだね……不思議。あ、そうだ」
「ん?」
「コックピット、ってある?見せて貰えないかなぁ」
人形からしたらロマンの箱庭。
「その心は」
「見たこと無い場所で、見た事が無いモノを見るのが好きなんだ。これも大切な思い出(たからもの)になるからね」
興味と関心は人形でも、尽きない。
決して空っぽではない胸の内に、相棒と一緒に見たモノが増えていけばいいと願う。それを総合して言うのだ、――"宝物(おもいで)"と。
「良いぞ、どうせ舵きったところで動きはしねぇけどな!」
「えぇっ、お客人に夢を与えなきゃだめだよ。そこは上手く誤魔化さなきゃ」
軽口を叩き在って、操縦室に桜雪は招かれる。
"島"となっても朽ちぬその場は、あまり島民でも訪れる場所ではないようだが、 手入れは欠かさず行われているのだろう。
沢山のボタンが並ぶパネルを蓄えた机は、とても綺麗だ。
「……あっ」
止まっていた桜雪の肩から勢いよく飛び立つシマエナガ。
相棒が悪戯にボタンを押そうと突進していくのを、海賊が身を挺して阻止する様子など、そう多く見れるものではないだろう。
「お前さんにはまだ早い。せめて"団長"を名乗る様になってからにしろ」
「チチッ!!」
海賊に臆する事なく堂々と張り合う相棒が微笑ましい。
「ありがとう、海賊さん。大切な場所を見せてくれて」
「なんてこたあねぇさ。仲間たちをキチンとケジメ付けさせてくれた礼だよ。……んで?どうよ、この"島"は」
ニィと感想を催促するように顎をしゃくり笑った団長。
「……すごく、楽しかった」
桜雪の返答は、相棒と一緒。
シマエナガが執拗にボタンを狙うのを、今度は桜雪も団長に加勢して止める。
不思議だらけな冒険を、許可してもらえて色々得たものがあるから――。
――ああ、だから今はとても楽しいんだよね。
大成功
🔵🔵🔵
アリエ・イヴ
【契】
アドリブ◎
シェフィーと探検でもって思ったけど
断られて逃げられた
まあ島にいるなら会えるだろ
興味のままにフラフラと
今、あっちに行けば会える気がする
その勘と運に従って
シェフィーに会えたら笑って次こそ捕まえよう
何って最初っから言ってるだろ
一緒に島を回ろうぜ
それか俺のものになれよ※意訳:俺の船に乗れよ
確かに船員と話すのも悪くはねぇが
今ここにいる人間のなかで
お前が一番、過ごす時間が甘そう《旨そう》だ
毎回こうやって別れては出会うより
一緒に行動した方がいいんじゃねぇか?
至極真っ当な意見だと押しきって
シェフィーがバイクに乗るなら便乗する
海賊が手ぶらもしまらねぇし
1つくらい、お宝を貰って帰ってもいいだろう?
シェフィーネス・ダイアクロイト
【契】
アドリブ◎
(未だ熟しておらず
其の時期でも無し
此の島は必ずいつか手中に)
島の地図あれば貰う
アリエと別行動しようとして事あるごとに遭遇
居場所がバレるのが気に食わないし何故分かるのか謎
先程から何なのだ貴様
私の往く先邪魔して楽しいか
くどい
誰のものにもならん
私に構う程暇なら此処の賊共と話に花でも咲かしてれば良かろう
(言い争いこそ無駄か
押し切られ渋々承知(諦め気味
メガリス越しに島の外観眺め
充電で動く改造電動バイクがあれば陸地を効率良く走る(本当は乗せる気無く
灯り持参し洞窟探検など
宝探しは本分
機械仕掛けの何かが欲しい
雨の中、朽ちた宇宙船に名がある事に気付く
NITRUS-RS
ならば島の名は…ニトゥルス島
●強運と凶運
――未だ熟しておらず。
――其の時期でも無し。
――故にこの島は必ずいつか手中に。
「……ああ。私はもう行く」
立ち去った男の心境はどの様なものであったか、話した団長には掴めずしまい。
しかし別に構わなかった。
此処が海で、"夢乗せる島(ふね)"で在る限り、誰もが自由であれと望むのは。
"島"を縄張りにするの海賊の首魁たる彼が、一番に望んでいる事だから。
「……ありゃ?シェフィーと探検でもって思ったけど」
アリエ・イヴ(Le miel est sucré・f26383)が意気揚々と声を掛ける前に、シェフィーネス・ダイアクロイトは素早く姿を消していた。
「ああ、あれはアンタの連れなのか?」
「そうとも言うし、どこか"そうだ"と言えねぇのが辛ぇとこだ」
「案内図には脆いが地図は渡してやったが、……追いかけるなら間に合うと思うが」
団長は、情報を得て尚即座に行動しないアリエを不思議に思う。
「分かってねぇなぁ。こういうのは興味のままにフラフラ行くのが良いだろ」
――"島"からまだ出てないという裏返しだ。
――なら、いい。
「俺の勘なら、今すぐあっちに行けば会える気がするんだよ」
海と女神の祝福を手にするからこそ、輝き続けるモノがある。
アリエがアリエである限り不動のまま、それは手の内にあり続けるだろう。
「そうか?なら好きに進め」
「言われなくとも」
軽い足取りで気分と直感の赴くまま、アリエは歩みを進める。
「シェフィーに会えたら……」
――そうだな、次こそ捕まえよう。
悪戯を目論む無邪気さで、笑いながら希望を抱く。
まるで迷宮のように入り組んだ空間構造を、やや頼りない地図を手がかりに。
一つ目の角を曲がり、二つ目の角を無視して大分歩いた。
「…………」
シェフィーネスはとても不機嫌だ。
数分前、後から追いかけてきたらしいアリエに居場所を特定されていた。
わざわざ入り組むように歩くのは、独り散策に勤しむ気でいたからでも在る。
「よお」
――ああ、つかまえた。
ところが、豪運の男は今度は正面から現れた。
アリエはただ、"こちらだと思う"と足を向けて来たに過ぎない。
どちらから来たかなど些事だろう。
帰り道もまた、直感で難なく超えるに違いない。
「先程から何度も……何なのだ貴様」
「何ってシェフィー。最初っから言ってるだろ」
これ以上なにを説明すればいい、言いたげに顎に指を絡めアリエは悩む。
あの顔に溢れるのは――相当の自信。無邪気なまでの過信。
「一緒に島を回ろうぜ」
「私の往く先邪魔して楽しいか」
会話をする気もないように、アリエの誘いを喧嘩腰にシェフィーネスは潰す。
これで終わりと踵を返し、地図通りの道を、次に進みたい場所へ遠回りに歩く(躱す)。
「それかさぁ、俺のものになれよ」
――"捕まえた"ぜ?シェフィー。
苦もなく強運の男と再遭遇を果たし、開口一番言われた言葉は私物化への勧誘か。
アリエもまた、船長の立場が在る。言葉には意味が絡みつき、相応の意味となるはずだがアリエがにやりと笑っていることでシェフィーネスの返答は無言の舌打ち。
「……くどい」
その顔面に手を出さないだけありがたいと思え、と言わんばかりに露骨に避けて。
シェフィーネスは合意と取られても困ることだけ完全に否定する。
「誰のものにもならん」
視線を合わせるのは論外。睨みつけても効果は薄い。
アリエという男を相手にするなら――。
矢継ぎ早に言葉で刺し、会話を早々に打ち切ろうとするのがいい。
「私に構う程暇なら此処の賊共との話に花でも咲かしてれば良かろう」
「確かに?船員と話すのも悪くはねぇが……」
今この場には残念ながら呼び止められそうな者がなかった。
いいや、しかしそれは現実と異なる。
シェフィーネスにも嫌でも分かることだ。
「お前が一番、過ごす時間が濃厚で、濃密でとにかく甘そうで……《旨そう》だ」
あれは、――"呼び止める気がない"のだ。
"欲しい"という思いに偽りはなく、アリエは舌舐めずりと共に指を舐める。
「…………」
舐るように眺められては逃げ切れない事を認めざる追えない。
重く深く、渋々ではあるが承諾の溜息と吐き出してシェフィーネスは無言で返した。メガリスたる眼鏡越し、"島"の外観を眺めながら現実を受け止めずに流す。
「なぁ、毎回こうやって別れては出会うより、一緒に行動した方がいいんじゃねぇか?」
何をしても遭うならそれをなんと呼称するだろう。
想像する気がないと頭を振って、雑念を逃がすシェフィーネス。
ふと、視線の先に止められた電動バイクを見つけた。
――悪運も、此処まで来ると……。
余計な考えだと頭を振って、無言で勝手についてきている賊が首を横に振っているのが視界の隅に入る。
これは誰のものでもないようだ。
島の帯電で充電は完了済みで、鍵の類もつけっぱなし。
奔り続ける静電気があればどこまでも走り続けられるだろう。
――陸地の部屋。
居住区だけが"宇宙(そら)を移動した船"ではないだろう。
何しろ、それは夢と希望を抱えて暮らしていたのだから。
娯楽もロマンも、苦行も墓場も居住区より奥に添えられた。
見つけた区画は、"本当の陸"に最も近く。
宇宙船や航海とは最も遠い部屋。
誰も住んでおらず、冒険心の溢れる賊が稀にしか訪れず。過去の祖先たちが何を遺し、何を置き去りに作り出したものなのか誰もわからない。
「宝探しは本分、私は行くが」
バイクに手を掛けて、エンジンが掛かる事を入念にチェック。
砂地へすぐさま走り出そうとするシェフィーネスにアリエはただ一言。
「至極真っ当な意見だ」
反論等一切聞かずに同意で押し切って、シェフィーネスのバイクに便乗した。
「では落ちて砂の中でも探せ」
効率の良さを重視にバイクを駆るシェフィーネスに温情はない。
本気で落とそうとする走り方をしていたが、アリエが墜ちる気配はなかった。
「灯りはまぁ、それでいいんじゃねぇか?」
砂の部屋を走りに走り、見つけた洞窟はただ湿ったカビが群生していた。
暗く、とても"何かあります"と言いたげな空間だった。
「…………」
バイクのライトが照らした先で、何かが光った。
この様な場所で反射で返すもの。
「……それ、指輪か?」
シェフィーネスが拾い上げたものは、一対の機械仕掛けのアンティークリング。
嵌め込まれた財は玉か判別が付かないが、一つは蒼く、一つは榛色。
細かく意匠が施され、内部構造が把握出来ない。
ただ、かちり、かちりと音がある。
時計の様に刻む音、しかしアリエがいうように見た目はただの指輪に見えた。
「お宝か、ハハ!海賊が手ぶらもしまらねぇし……1つくらい、お宝を貰って帰ってもいいだろう?」
正確には一対なので、二つであるが。
薄暗い洞窟の中で見つけた宝を嬉しそうにアリエが掻っ攫った。
――玉の奥深く穢れ淀む色を見た気がした。
――ただのお宝であるはずもあるまい。
――これは、恐らく相応に曰く付きの"メガリス"だ。
シェフィーネスはそう分析したが、口に出さない。
それよりも、じゃり、となにかを踏んだ事を気にしていた。
拾い上げるとそれは、何か名称が掘られている。
古く錆びて、朽ちていた。この様な洞窟には似つかわしいものだ。
「……NITRUS-RS」
解読出来たのは、其の単語。
いいや、それしか書いていなかった。
「この名もなき"島"の名は、ニトゥルス島……」
納得する部分がある。
其の言葉は恐らく"雷鳴"をもしくはその近くに沿った言葉指すのだ。
ああ、では名前がなかったのではない。
名称が大事にされなかったわけでもなかった。
"島"は常に"在り方"を存分に主張していたのだ。
――この島の失われた名は、【ニトゥルス島】。
訪れる者に"雷"を押し付ける強欲さと。
遠鳴りに雷槌と常に荒れる、島であったのだ――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵