「あら、来たのね。待ってたわ」
時影・ぺたるは、猟兵たちを振り返った。
グリードオーシャン! 異世界から落ちてきた島と荒れ狂う海で構成された世界。ぺたるが机に投げた写真は、その中にぽつんと浮かぶ超巨大なカツラめいた漆黒の島である!
「予知で島がひとつ見つかったわ。……ただ、問題があってね。この島はオブリビオン……あの世界ではコンキスタドールというのだったかしら。それに乗っ取られて要塞と化してしまっているわ」
島を支配しているのは『名を忘れられ堕落した『髪の女神』』。元は島があったどこかの世界で信仰されていた女神だが、グリードオーシャンに落ちた際に土着信仰の対象から外れ、島民を髪で縛り付ける悪神と成り果ててしまったようだ。
島は髪の女神によって支配された島民たちと、女神に魅了されたコンキスタドール『殺戮オウムガイ』に守られ、このままでは上陸することが出来ない。
「……そういうわけだから、あの島に乗り込んでコンキスタドールを排除して来てくれないかしら」
ぺたる曰く、上陸するにはまず髪の守りが薄い場所を探さねばならないという。その間に襲いかかってくる『殺戮オウムガイ』をまずは殲滅。次に島へ上陸し、『名を忘れられ堕落した『髪の女神』』を倒すという流れになるようだ。
「コンキスタドールを倒したあとのことだけど……どうやらこの要塞、爆発するみたいね。恐らく、旧時代の遺産か何かを使ってるんだと思うわ」
ぺたるの予知によれば、髪の女神は敗北すると島に残された遺産を使って猟兵ごと自爆を試みるようだ。放置すれば、折角解放した島が消し飛んでしまう。戦闘後は、それもどうにかケアしてほしい。
「ああ、そうだ。せっかく島を見つけたのだから、名前をつけてあげないと。……そうね、それじゃあ、バインドヒルにでもしましょうか」
鹿崎シーカー
ドーモ、鹿崎シーカーです。ワンダーくんは泳げないのでぺたるちゃんが予知します。
●舞台設定
コンキスタドールによって要塞と化した島、『バインドヒル』を攻略することになります。バインドヒルは髪の女神の毛髪によって覆われており、周辺海域は女神に魅せられた殺戮オウムガイに守られているようです。髪に隠れて元がどこの島だったのかわからなくなっていますが、解放すれば判明するでしょう。
●第一章・集団戦『殺戮オウムガイ』
メガリスによって死亡し、オウムガイの姿で蘇ったコンキスタドールです。人語を話し、高度な魔術や超能力を操ります。
●第二章・ボス戦『名を忘れられ堕落した『髪の女神』』
世界から切り離されたために土着信仰の対象から外れ、名を失い堕落した髪の女神。反動からか島民を髪で縛り付け心を奪うようになってしまった。
●第三章・冒険『狂える遺産』
敗北した髪の女神は島に残る遺産を暴走させて、島ごと自爆しようとしています。遺産を止め、島を守ってください。
アドリブ・連携を私の裁量に任せるという方は、『一人称・二人称・三人称・名前の呼び方(例:苗字にさん付けする)』等を明記しておいてもらえると助かります。ただし、これは強制ではなく、これの有る無しで判定に補正かけるとかそういうことはありません。
(ユーベルコードの高まりを感じる……!)
第1章 集団戦
『殺戮オウムガイ』
|
POW : 念動衝撃波
見えない【衝撃波】を放ち、遠距離の対象を攻撃する。遠隔地の物を掴んで動かしたり、精密に操作する事も可能。
SPD : 賢者の触手
質問と共に【無数の触手】を放ち、命中した対象が真実を言えば解除、それ以外はダメージ。簡単な質問ほど威力上昇。
WIZ : オウムガイ粘液
【粘液】が命中した対象を捕縛し、ユーベルコードを封じる。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
イラスト:りょうま
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
綿津・甕星
髪の女神?酔狂な神様もいたもんだなァ。
まあいいや。要はドンパチして、この島を解放すりゃいいんだろう?よゆーよゆー。この島、ハゲ散らかしてやるよ。
道を開けろやコン何とか!神鳴る一撃ィ!デッドマンズ・スパァァァク!!片腕をくれてやる代わりにまとめて消し飛ばす!片腕が使えなくても大した支障はねぇから威力は低いけどな!!はっはっは!
……っオラァ!片腕使えなくてもそこそこ戦えるんだし仕方ねぇだろ!!そんな目で見るんじゃねぇ!文句あるならかかってこいやぁ!!!このまま神様んとこまで駆け抜けてやらぁ!
夕闇霧・空音
【アドリブOK】
海の世界なんて随分と楽しそうじゃないの。
とはいえ、上陸を邪魔するのにはどんな理由があるのかしらね
【戦闘】
敵の衝撃波は厄介そうね。
なるべく気配を消した上で近寄って倒しに行くつもりよ
水中に向けてユーベルコードを発動!
海ごと氷漬けにして動けなくさせてしまおうかしらね。
二発ほど発動すればなんとかなりそうね。
木常野・都月
一人称:俺
二人称:貴方
三人称:先輩や尊敬してるヒトはさん付け、それ以外は呼び捨て
メガリスで敵になったオウムガイ?
この世界のヒトはメガリスの為に命がけの選択をするのか。
でも、コンキスタドール?になった以上、猟兵の俺とは敵同士。
仕事として倒さないと。
…オウムガイって食べられるのか?
UC【狐火】を使用、火力は強め
。
こんがり焼いてみたい。
水に潜るなら[属性攻撃]で対処したい。
敵の攻撃は[高速詠唱、属性攻撃、2回攻撃]の[カウンター]で、粘膜を防ぎたい。
野生の狐としては、焼いても、そのままガブリでもアリだな。
生命力…あわよくば精気も…どんな味がするのかな。
野生の狐として、妖狐として、興味津々だ。
レパル・リオン
こんにちは!あたしはレパル!またの名を『魔法猟兵イェーガー・レパル』よ!よろしくね!
お祭りとかイベントとか友達と遊んだりとか、とにかく楽しい事大好き!
あたしが戦うのは、怪人(オブリビオン)から人々と平和を守るため!そのためなら、ケガをしたってかまわないわ!
(強敵相手だと少し怯えるが、表には出さないように努める)
得意なのは肉弾戦!ダッシュで切り込んだり、ジャンプやオーラ防御でかわしたり、激痛耐性でガマンしたり、怪力パンチ&キックでぶっ飛ばしたりするわ!
ユーベルコードに怪人の弱点属性を組み合わせてパワーアップさせたりもするわよ!
頭を使うのは苦手かな。でも、パワーとスピードでなんとかするわ!
グリードオーシャン、バインドヒルの沖にて!
島の外周をぐるりと大回りする軌道を描く鉄甲船が、横腹に重傷撃を食らって激しく揺れる。甲板でたたらを踏むレパル・リオン(魔法猟兵イェーガー・レパル・f15574)の首根っこをつかまえた綿津・甕星(まるでダメなオーシャンハンター・f26170)は、船舶の左手の島を一瞥して笑った。
「おーおー。こりゃマジでヅラ以外の何モンでもねェな。島をこうしたのが…………あー、髪の女神? 酔狂な神様もいたもんだなァ。おらよっと」
「うわわわわっ!」
呟く甕星に引っ張り戻され数歩よろめくレパルの両肩に、夕闇霧・空音(凶風・f00424)の手がポンと置かれた。肩越しに見上げてくるレパルを支えつつ、空音は船を襲う二度目の重傷撃を耐える! ZGTOOOOOOOM!
「海の世界なんて随分と楽しそうじゃないの。とはいえ、上陸を邪魔するのにはどんな理由があるのかしらね」
「それは、あの島にいる女神様とやら聞けばわかるさ」
空音に応えた木常野・都月(妖狐の精霊術士・f21384)が、樹で作られた杖を構える。直後、四人が乗る鉄甲船の周囲に複数本の水柱! SPLAAASH! 飛沫を上げて現れたのは巨大なオウムガイの群れ! 殻の上部には脳が透ける!
「……あンだァ、こいつら。脳みそ見えるぜ」
「メガリスで敵になったオウムガイ? この世界のヒトはメガリスの為に命がけの選択をするのか」
怪訝そうに言いながらも、拳を構える甕星。油断なく目を細めた都月が杖を両手で握る中、船首側に陣取った殺戮オウムガイの一匹が触手を動かした。
「JRRRRRR……女神ノ海域ニ、踏ミ入ル者共。汝ラ、何者カ!」
瞬間、オウムガイたちは一斉に無数の触手を解き放つ! 鉄甲船の上は一瞬で四方八方からの触手に飲み込まれ、覆い隠された! 甲板の上でもぞもぞと蠢き、絡み合うオウムガイの触手たち。だが猟兵たちの感触が無い! そこにレパルの声!
「何者か、と聞いたわね!」
オウムガイたちの視線が上向いた。空中に跳び上がったレパルは同席していた三人を頭上に持ち上げ、高らかに名乗る!
「こんにちは! あたしはレパル! またの名を『魔法猟兵イェーガー・レパル』よ! よろしくねっ! そうれっ!」
レパルが三人を頭上へと押し上げる! 宙を舞う甕星の全身を青黒いオーラが包み、交叉した空音の両腕が蒼銀のマシンアームに変化! 高く振り上げた都月の杖先に紅蓮の太陽めいた火炎弾が生成された!
「こんがり焼いてやる。食らえ!」
都月が杖を振り下ろすと同時、火炎弾が流星めいて船首の一体を襲撃! 絡み合う触手を引っ込めんとしたオウムガイが爆炎に呑まれ、CABOOOOOOOM! 放射状の爆風が海面に波紋を生み出し、鉄甲船をノックバック!
「JRRRRRRRRR!」
「散開! JRRRRRR!」
触手を引っ込めたオウムガイたちが鉄甲船から飛び離れる! そのうち一体の脳を閃光をまとったレパルの飛び蹴りが粉砕! GROOOOOOP! 緑色の粘液が吹き出した! 後方回転して甲板に戻ったレパルから光が弾ける!
「うえっ、なにこれベトベトする……」
両腕や胴体にべったりついた緑の液体を見て嫌な顔をするレパル。ライオンのタテガミめいた襟巻と砂色の服に変身した彼女の身体にはオウムガイの粘つく体液。次の瞬間、レパルの後方上空に新手の殺戮オウムガイが!
「JRRRRRR!」
触手を左右に開き発射予備動作を取るオウムガイ! その前方上空から高速縦回転しながら空音が落下し、オウムガイとすれ違って甲板に着地! SLALALALALASH! 一瞬で無数の斬撃を叩き込まれたオウムガイは細切れになった!
「大丈夫? 背中に注意よ」
「えっ!? あ、ありがと!」
レパルが謝意を述べると同時、空音の前方に二体のオウムガイが飛び出し触手を突き出す! 空音は氷の爪が生えた両腕を左右に伸ばし竜巻めいて回転! 襲いかかる触手をバラバラにした!
「空音ちゃん、上ごめんねっ!」
スタートしたレパルがジャンプして空音を飛び越え空中で一回転! そのまま流星めいた飛び蹴りを繰り出しオウムガイの片方を甲殻粉砕殺! さらにもう一匹を側面からつかみ、空音の方へジャイアントスイングで投げる!
「うりゃああああああっ!」
「JRRRRRRR!?」
車輪めいて回転しながら水平飛翔するオウムガイに、待ち構えていた空音が氷爪の一閃! 彼女の後方へ抜けたオウムガイは殻ごと五枚に卸され死亡! 先に粉々にされた個体の死骸と一緒に転がった。その時である!
SPLASH! 海中から飛び出した触手がレパルの足を絡めとり、即座に海中に引き込んだ! 目を見開く空音だが、彼女の周囲を三匹の殺戮オウムガイが取り囲む!
「JRRRRRRR……確固撃破……!」
「そこをどいてもらうわよ……」
空音が氷爪を生やした腕を交叉し告げる。一方海中のレパルは息を止め、自身を海底へ引き込まんとするオウムガイを真っ直ぐ見据えた。暗い海の底に星空めいてきらめく無数の青白い光。全て殺戮オウムガイだ!
「むぐーっ!?」
レパルは慌てて両足をばたつかせるがオウムガイの触手は解けぬ! 先頭の殺戮オウムガイが引き込む力をさらに強めた、その時! 海面側から飛来したハープーンがレパルの頬を掠めて海中を直進! オウムガイの脳天に突き刺さる!
「ごばっ!」
驚き、口から水泡を吐きながら振り返ったレパルへ、甕星は高速潜行で距離を詰めて首根っこをひっ捕まえた。そのまま大鎌じみた回し蹴りでレパルの足に絡みついた触手を切断! 解放された彼女をスープレックスめいて投げ飛ばした!
「ごぼぼぼぼぼーっ!」
SPLAAASH! レパルが海面から飛び出した! 甕星は首を鳴らすと、海中から一気に押し寄せてくる大量の殺戮オウムガイを見下ろす。口元には不敵な笑み!
「ハッ! あのちんちくりんがそんなに美味そうに見えたか、貝風情が! 道を開けろやコン何とか! 食らえ神鳴る一撃ィッ!」
振りかぶった甕星の拳に稲妻が輝き、光量を増していく! 襲いかかってくるオウムガイたちめがけ、彼は上体をひねって拳を繰り出す!
「デッドマンズ・スパァァァァァァァァク!」
ZGRAAAAAAAAK! 海面が黄金色の光を放ち、水蒸気を吹き上げる! オウムガイが一瞬そちらに気を取られた隙を突き、都月は甲板を蹴って一気にダッシュ! 振り返るオウムガイの触手を一本つかみ、迷わず噛み千切った!
「JRRRRRRRRRR!」
オウムガイの触手スイングを連続バク転で避けた都月は触手を咀嚼。彼の頬からコリコリと音が立つ!
「しょっぱい。けど歯ごたえあって中々……ちゃんと調理したらイケる気がする」
「GJRRRRRRRRRRRR!」
触手を食いちぎられて激昂したオウムガイが緑の粘液を都月に噴射! 走った都月はこれを紙一重でかわして一気に距離を詰め、右手に握ったダガーナイフをオウムガイの眉間に突き刺す! 柄尻に当てた左手に炎が逆巻く!
「次は蒸し焼きだ。本番前の栄養補給にっ、と!」
都月が左手を押し込んだ瞬間、ナイフを伝って炎がオウムガイの内部に雪崩れ込む! 甲高い断末魔を上げ、オウムガイは口から白い煙を吐いて甲板に落下した。オウムガイと対峙しながら都月の背後に滑り込んだ空音がその光景を尻目に問う。
「……食べられるの? それ」
「結構美味い。この仕事終わったら祝杯がてら料理しよう」
焼けた触手の一本に噛みつく都月に半ば呆れた眼差しを向けた空音は、オウムガイが槍ぶすまじみて伸ばす触手群を氷爪を閃かせて斬り刻んだ! さらにその場でコマめいて回転し氷苦無をマシンガン連投! オウムガイは触手で撃ち落とす!
「JRRRRRRRRRRRR!」
「残念。そっちは囮」
殺戮オウムガイの視線が空に向く。既に跳躍していた空音は頭をオウムガイに向け、虚空を蹴って急接近! オウムガイが迎撃に吹き出す粘液を、バーニングホイールめいて回転しながら引き裂いて甲板ごとCRAAASH!
「GRRRRRRRRRRR!」
立ち上る木クズの粉塵に混じって飛び散る甲殻の破片! 粉塵から空音がバックジャンプで飛び出すと、他方ではレパルが残る一匹の頭部を正拳突きで爆砕していた! レパルはスカートで拳の粘液をぬぐいながら都月に叫ぶ!
「都月ちゃん! 船出せる!?」
「出せるけど……甕星は?」
都月が背負った杖を手にした刹那、ZGAAAAAAAM! 鉄甲船船首方向の海面から雷光が吹き出し、一拍遅れて甕星がジャンプしてくる! 片腕は無い!
「ふっ、キメてやったぜ」
「甕星ちゃん!」
ぎょっとした表情のレパルが急いで駆け寄る。
「大丈夫!? なんかいっぱいいたし片腕ないけど!」
「おう、まとめてデッドマンズ・スパーク浴びせてやったぜ!」
甕星は立ち上がり、隻腕で胸をドンと叩いて見せた。直後! SPLAAAAAAAAAASH! 鉄甲船の前方に巨大な水柱が吹き上がる! 巻き上がった海水が幕を落とすように落下したそこには―――無数の殺戮オウムガイ!
「まぁ片腕使えなくても大した支障はねぇから、威力は低いけどな! はっはっは!」
呵々と笑う甕星。他の三人はそろって彼を白い目で見た。
「まだいっぱい残ってるじゃない……」
「……もしかして、ただ相手怒らせただけなのかしら?」
「何やってんだ、このオッサン」
「……っオラァ! 片腕使えなくてもそこそこ戦えるんだし仕方ねぇだろ! そんな目で見るんじゃねぇ! 文句あるならかかってこいやぁ!」
「はいはい、あなたの相手は真後ろよ」
空音が冷たく返すと同時、オウムガイたちが一斉に押し寄せてくる! 甲板から船首まで一気に駆け抜けたレパルは跳躍! 虚空に躍り出た彼女の周囲が陽炎めいて揺らぎ、無数のレパルが姿を現す!
「空中なら負けないわ! あたしたち相手に物量差なんて関係ないんだからーッ!」
『BBJJJJJRRRRRRRRRRRRRRRR!』
殺戮オウムガイの群れと分身したレパル軍団が正面から激突! 始まる壮絶な空中乱戦を眺め、都月は背負った杖をつかんで引き寄せ足元に突き立てる。彼の周囲に翡翠色の風が渦巻いた!
「なるほど。これは、一気に駆け抜けた方がよさそうだ。……精霊様、精霊様。この方舟を動かす力を」
都月の周囲を螺旋状に舞い上がった旋風は真上に突き上げ、空中でカーブを決めた。鉄甲船に張られた帆の真後ろに移動した竜巻の先端は、翡翠色をした女性の幻影! 幻影が大きく息を吸う一方、都月は甕星に視線を投げる。
「甕星! 舵を頼んだ!」
「まぁいいけどよ、なんか俺の扱い雑じゃあねえか?」
「昼間っから、それも戦闘前に飲んだくれてなければもうちょっと考えたんだけどな」
「酒は俺の酸素なんだよ!」
甕星は言い返しながら甲板を駆け、舵をつかむ。直後、風の精霊が両手を口元に当ててブレスを吹いた! 帆が前に膨らんだ瞬間、空音は跳躍! オウムガイと殴り合うレパルの本体を探し当ててキャッチ!
「きゃっ!」
「一旦離脱するわよ」
呟いた空音は背後を振り返り、凄まじい速度で迫ってくる水平の支柱に着地! 風を受けた鉄甲船はレパルの分身ごとオウムガイの群れをぶち抜いた! CRAAAAASH! 殺戮オウムガイの群れは後方へ置き去りに!
「ハッハーッ! 良い風噴いてやがる! このまま神様んとこまで駆け抜けてやらぁ!」
「いいえ、まだよ」
空音が目を細め、鉄甲船の背後を見やる! 海面を切り裂くようにして追いすがってくる無数の殺戮オウムガイ! その距離は徐々に縮まりつつある! 空音はレパルを隣に下ろし、前に突き出した両拳を組み合わせた。
「前に出ちゃダメ。巻き込むから」
「それはいいけど……何するの? もしかして必殺技!?」
目を輝かせるレパルを余所に、空音のマシンアームは展開し高速で組み替えられ大振りな四角い砲に姿を変えた。砲口にペールブルーの光をチャージ!
「狙い良し、出力最大、発射準備完了。八寒地獄を今この両腕に……封印開放! フリーズゼロ、発射ッ!」
SIIIIIIIIIIIIIIIINK! 蒼白い極太のビームが放たれ、追いすがる殺戮オウムガイの先頭集団に命中! 広範囲の海が一気に凍り、巨大な氷山がそびえ立った!
だが、凍ったオウムガイたちの目が青く輝く! 彼らを閉じ込めた氷山は後方から衝撃音を放ち、砕氷船めいて海を割って突進し始めた! オウムガイたちの衝撃波が氷山を押しているのだ! 空音は両手を下ろして溜め息を吐く。
「……凍らせたのに、しぶといわね」
「なんだァ! トドメさせなかったのか!?」
下から響く甕星の声。舵を離した彼は隻腕を回しながら船尾に移動。遅れて都月が彼の隣に立つ。
「行く気か? 火力足りないんだろ」
「うっせ! もう一本なくなりゃそれなりの威力は出んだよ!」
顔をしかめ、首をごきごきと鳴らす甕星。刹那、都月は杖をジャベリンめいて振りかぶった! 甕星が目を丸くする!
「あ? お前、何する気だ?」
「ちょっと手伝いを、なっ!」
THROW! 投げ放たれた杖が氷山めがけて一直線に飛行する! 都月は帆を見上げると、レパルに呼びかけた。
「レパル! 今俺が投げた杖を、出来る限り深く埋め込んでくれ! あと甕星の送迎も頼んだ!」
「送迎って、俺はガキじゃ……」
「オッケーッ!」
甕星の言葉が遮られ、船尾に着地したレパルが甕星の長身をひょいと持ち上げた。彼女はそのままハイジャンプ! 一気に上空へ連れ去られた甕星の手足がばたつく!
「うおおおおおおおおおおおおおおっ!?」
「さーて行くわよっ! 必殺!」
三回転したレパルの右足先がライオンの頭部に変化する! 左足一本で多段ジャンプを決めたレパルは、氷山に突き刺さった都月の杖めがけて急降下飛び蹴りを繰り出した!
「レパル! カミカゼ! キィィィィィィィック!」
「のわああああああああああああッ!」
空を斜めに引き裂いたレパルの蹴りが都月の杖に直撃し、氷山の奥へ叩き込た! さらにライオンヘッドが杖先に食いつくと同時、レパルはドリルめいて回転し始める!
「それ―――っ!」
「ぐおおおおお待てッ! さ、酒が! さっき飲んだ酒が……おえっ!」
竜巻じみた猛回転に巻き込まれて目を回す甕星! 一方、回転して杖を先端付け根までねじ込んだレパルは左足で氷山を蹴りバク宙! 後方一回転から甕星を高々と振り上げた!
「行くよ甕星ちゃんっ!」
「うぷっ……おお、畜生やってやる! 都月ともども後で覚えてろよ!?」
甕星は恨み節を吐きながら握り込んだ隻腕に雷光を溜め込む! レパルは彼を都月の杖めがけて投擲! 甕星は雷の拳を振りかぶり、都月の杖に狙いを定めた!
「今度はさっきまでとは違うぜ! 食らいやがれ!」
甕星の全力パンチが木の杖先に撃ち込まれた! SMASH、ZZZZZZZZZZZT! 激しい雷鳴と共に発光し始める甕星! 一際強く輝く彼の腕を伝う稲妻が都月の杖を伝って氷山に流れ込み、氷山を巨大電球じみて輝かせる!
「デッドマンズ・スパァァァァァァァァァァァァァァァクッ!」
甕星が吠えた次の瞬間―――SMAAAAAAAACK! 凄まじい光が海を、鉄甲船を、バインドヒルを照らし出す! 殺戮オウムガイの群れを閉じ込めた氷山に無数の細かいひび割れが走り、貝を砕けさせていく! そして!
ZGRABOOOOOOOOOOOOOM! 氷山は、殺戮オウムガイもろとも爆発四散した。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第2章 ボス戦
『名を忘れられ堕落した『髪の女神』』
|
POW : 髪鳴り(かみなり)
自身に【生えた髪の毛へ邪気で作られた雷】をまとい、高速移動と【髪に纏った超威力の雷】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
SPD : 髪業(かみわざ)
あらゆる行動に成功する。ただし、自身の【無数に生えて来る髪の毛うちの一部】を困難さに応じた量だけ代償にできなければ失敗する。
WIZ : 髪縛い(かみしばい)
【邪気で作られた雷】を籠めた【強靭かつ伸縮自在で自由に動く髪の巻き付き】による一撃で、肉体を傷つけずに対象の【意識や信仰心】のみを攻撃する。
イラスト:ekm
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠神永・衣乃」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
レパル・リオン
相手は無限の髪を操る怪人!
なら、髪の弱点をつくしかない!
髪を傷めるもの…それは高温!
まずは迸る気合いによって、あたし自身の魔法(?)の力を極限まで高めるっ!うおおーっ!
そして溜めた炎の魔力(?)を、正拳突きに乗せて衝撃波として打ち出す!
これぞ必殺・【竜咆拳】!
どれだけ髪があろうとも、あたしの情熱の炎で焼き尽くしてみせるわ!
そして高熱で燃え尽きるものがもう一つ!
それはアンタ自身よ、美髪怪人!
綿津・甕星
ヒューッ、なんだよ、思ってたよりも遥かに美人じゃねぇのこの神様、いや髪様か?
まあいい。せっかくだからデートしようぜ。両腕ねぇから不格好だけどよ。
敵の放つ雷に合わせてUCを発動。
甕星流喧嘩術・電気鯰。はっはー、効かねぇなぁその程度の雷はよぉ!高速移動?雷の放射?関係ねぇ、全てこの足で踏破してやるよ。当たるまで何度でも踏み込んで、何度でも蹴り飛ばしてやらぁ!
ぶっ飛べや女神、偉そうにふんぞり返ってるんじゃあねぇ!
木常野・都月
●プレイング
一人称:俺
二人称:貴方
三人称:先輩や尊敬してるヒトはさん付け、それ以外は呼び捨て
神様は信仰心が無いと駄目なのか?
でも、神様なら島の人を縛るような事したら駄目だって、分からないものなのか?
神様なのに。
ヒトも難しいけど、神様も難しいな。
とはいえ、俺は猟兵。
ヒトを守るのが仕事だ。
オウムガイ食べて元気も出た。
最善を尽くしたい。
[野生の勘、第六感]を使用して、敵の挙動に注視したい。
UCは【精霊の矢】を風の精霊様の助力で使用したい。
敵のUCは…俺は狐だ。
在るが儘に生きてきた。
元々信仰はない。
なので、闇の精霊様に、俺の思考を守って貰いたい。
対処しきれないなら[呪詛体制]あたりで凌ぎたい。
夕闇霧・空音
独り占めは良くないわね。
これからはこの島を使わせてもらうわ
【アドリブOK】
敵の髪の毛が攻撃のメインのようね。
悪いけどその髪の毛狙いで攻撃させてもらうことにする。
切り落とすのを狙うけど、
攻撃次第ではユーベルコードで氷漬けにして身動きを封じさせてもらう。
カミナリの攻撃はなるべく喰らわないようにしないとね。
メカの大敵だもの
バインドヒルの内部は、雨の日の夜めいた闇に包まれていた。
島の中央に立つ巨大神殿の屋根を突き破る、漆黒の世界樹じみた大黒柱。頂上の見えないそれの上部から四方八方に展開した黒い天蓋が島をすっぽり覆い隠し、陽の光を遮っているのだ。
さらに、神殿を遠巻く森林の幹にも黒髪の束が螺旋状に絡みつき、枝葉をグルグル巻きにしてしまっている。それらと天蓋、そして神殿の前に等間隔で並ぶ黒い土下座ミイラに走る紫色の雷光だけが数少ない光源。
獲物を待ち受ける食虫植物めいて神殿入り口から放射状に広がった黒髪を掻い潜り、内部の長い通路を抜けた先。神殿最奥に造られた巨大円形空間に踏み入った甕星が口笛を吹いた。
「ヒューッ! なんだよ、思ってたよりも遥かに美人じゃねぇのこの神様……いや髪様か?」
猟兵たちが入って来た入り口のちょうど対面に、神殿の屋根を突き破って伸びる髪の御柱。その半ばから、白い女性の上体が生えていた。
見えるのは真っ白な肌をした胴体と、胸元から腹部までを隠す黒い垂れ幕めいた布。四肢を髪の柱に飲み込まれながらも、彼女の表情は赤子を見守る母親じみて慈愛に満ちている。
柱の女―――名を忘れられ堕落した髪の女神は、猟兵たちを見下ろして語りかけた。
「ようこそ。待っていたわ、私の新たな子供たち。さっきは海の子たちが粗相をしたわね」
「能書きは不要よ」
甕星の隣をすり抜けた空音が、両腕を軽く振り抜いた。蒼銀の機械拳から飛び出した氷爪の片方で、髪の女神を真っ直ぐ指差す。
「ここが元々どこのもので、あなたがどういう存在だったか知らないけれど、独り占めは良くないわね。これからは、私たちがこの島を使わせてもらうわ」
「まぁ、まぁ、うふふ」
髪の女神は微笑し、小さく身じろぎをする。
「いけない子たち。この島の全ては私のものよ? 外でお祈りしていた子供たちはもちろんのこと、外から来る者たちも、コンキスタドールも。全て、全て私の信者。あなたたちもそう」
「冗談じゃないわ!」
女神の言葉を遮ったレパルが拳を構え、ボクサーじみたステップワークを踏み始めた。横では都月が杖の先に翡翠色の旋風をまとわせ、臨戦態勢を取る。
「だーれがアンタの信者になんかなるもんですか! 外の人たち見たいな髪の毛ミイラになるなんてまっぴらごめんよ! アンタを倒して、この島もあの人たちも全部解放しちゃうんだから!」
「俺は狐だったから、信仰心……ってよく分からないけど、神様は信仰心が無いと駄目なのか? でも、神様なら島の人を縛るような事したら駄目だって、分からないものなのか? ヒトも難しいけど、神様も難しいな」
女神の表情は一切崩れぬ。余裕! そしてお転婆な愛娘を見守るが如きその態度! 髪の女神は御柱に埋まった両腕を僅かに動かす。直後、御柱の両側面から巨樹めいた髪束が吹き出した! うねり、猟兵たちを見下ろすそれは髪の大蛇だ!
「いいのよ。なにも気にすることはないの。あなたたちも私の愛で包んであげる。安らかな母の胎内でお眠りなさい?」
大口を開ける二匹の大蛇。髪の女神を見つめた都月が半眼を作って小さくぼやく。
「……まるで話が通じてないな」
「だな。……まあいい。せっかくだからデートしようぜ。両腕ねぇから不格好だけどよ」
甕星がタップダンスじみたステップを踏む。彼の全身が激しい稲妻に包まれた次の瞬間、髪の大蛇二匹が口から紫色に放電! ZGRAAAAAAAAK! 吐き出された雷を四人の猟兵は左右に跳び分かれて回避した。開戦の合図だ!
「強い雷は困るわね。メカの大敵だもの」
「だったら俺の後ろに隠れてなァ! なァに、あんな雷、俺にとっちゃ静電気にもならねえぜ!」
空音に言い放つが早いか、甕星は髪の大蛇めがけてターン! 前傾姿勢で猛然と突っ込む彼を見下ろした大蛇は、全身に紫電をまとわせ神速突進! CRAAASH! 神殿の床を打ち砕いた大蛇の真上を取った甕星が右足を振り上げる!
「すっとろいぜ! 沈みやがれやァァァァァァッ!」
かかと落としから落雷が放たれ、大蛇の胴体を貫通して引き千切る! その外側を遠回りに駆けた空音は左拳を振りかぶった。手の甲に青白い十字の光が爆ぜ、氷の大手裏剣が出現! 高速回転し始めるそれを、髪の御柱めがけて投げつけた!
「はッ!」
THROW! カーブを描いた氷手裏剣は髪の御柱を切断せんと飛翔する! 髪の女神がそちらを一瞥すると共に、御柱から無数の髪の腕が吹き出し氷手裏剣を白羽取りキャッチ! そのままくの字に圧し折って捨てる!
「余所見をするな。風の精霊様!」
空音のちょうど間反対の位置で都月が木製の杖を掲げ、真横に一閃! 彼の前に翡翠色の旋風で出来た矢が複数生まれ、左右にうねりながら突撃してくる髪の大蛇に射かけられる! 頭部を連続で貫かれた大蛇から髪の毛が散った。
「レパル、援護する!」
「おっけー! 行ってくるわっ!」
都月の真横を駆け抜けたレパルが炎めいた紅蓮のオーラをまとって跳躍! 都月の矢によって穴だらけになりつつも再生する髪の大蛇の頭部に飛び乗り、そのまま女神を目指して駆け上がる!
「どれだけ髪があろうとも、あたしの情熱の炎で焼き尽くしてみせるわ!」
レパルは宣言と共に両拳を打ちつける。御柱から撃ち出される紫電のビームをジグザグダッシュで掻い潜り、ブレーキをかけながら右拳を引き絞った!
「これぞ必殺! 竜―――咆―――拳っ! でりゃああああああああっ!」
ダッシュストレートからドラゴンブレスめいた衝撃波が迸った! 自らを狙う紅蓮のソニックブームオーラを見つめ、髪の女神は御柱に埋まった指を動かす。レパルの衝撃波に対し、御柱から髪の巨拳を放って迎撃! CABOOOOOOM!
「いけない子ね」
しっとりとした微笑み浮かべる髪の女神。繰り出した巨拳は腕の半ばまで燃え上がり、焼き払われた。しかしレパルは、足場にしていた髪の大蛇胴体から伸びた毛髪触手により四肢と胴を縛り上げられていた! ばたばたと暴れるが解けぬ!
「うなぁーっ! 放してよ!」
「駄目よ。髪は女の命なんだから、大事にしないと……ね?」
髪の女神が右手を御柱の中で握り込む! レパルの足元から追加で生えた大量の毛髪触手が、地上から飛来した風の矢により次々と引き千切られた! さらにレパルを縛る触手も切断! 都月はレパルを注視しつつ杖を振る!
「風の精霊様! 俺の仲間にどうかご加護を!」
レパルの周囲に翡翠色の風が渦巻き、たちまちストームボールを生み出した。再度レパルを狙う毛髪触手を弾き飛ばす風のバリアー! 都月が胸を撫で下ろしかけたのも束の間、地面を滑って髪の大蛇が迫りくる!
「邪魔するなっ!」
大蛇に向き直り杖を突き立てた都月の前に、両開きの門めいて風の壁が左右から閉じる! 構わず風壁に食らいついた大蛇の牙が雷を放ち、防御を噛み砕いて都月に頭から衝突! ふっ飛ばされた都月は神殿の壁に背中から叩きつけられた!
「ぐはぁっ! ぐっ……!」
よろめきながらも踏ん張る都月に高速接近した蛇が大口を開け、電撃まとう牙を光らせた! CRAAAAASH! 壁ごと噛みついて粉砕! 噛み潰された都月に紫電が流れ込む!
「ぐあああああああああああっ!」
両目に焼けつくような痛みが走り、視界が真っ白く燃え上がる! その中に垂れ下がる、水に溶かした墨汁めいた黒をかき分けて現れた髪の女神のビジョンが優しく、何かを囁き始めた。都月は頭を抱え、歯を食いしばる! 屈するなかれ!
「精霊、様っ!」
都月の周囲に黒紫色の霧が渦巻き、背後に迫り出した闇色のローブをまとう女性の幻影が都月を優しく抱きとめる。黒い霧が都月の姿を覆い隠す中、紫色の光に縁どられた都月の瞳が髪の女神のビジョンを睨んだ。
「俺は……狐だ! 在るが儘に生きてきた! 元々信仰はない!」
他方、都月に食らいついたまま動かない蛇を遠目に、空音は両手を広げて竜巻の如く高速回転! 空気を裂く音の中から冷徹な宣告が響く!
「悪いけど、伐採させてもらうわね」
爪撃の竜巻が御柱の幹を横一直線に駆け抜ける! 一拍遅れて青白い斬撃が閃き、髪束がバッサリと引き裂かれた! 刹那、御柱と神殿床の継ぎ目が蠢き、巨樹の根じみた発電髪触手が空音を狙う!
「!」
振り向きながらの連続バク転で距離を取った空音は神殿の床に両手を押し当て、ダイヤモンドダストをまとった。白い煙の中で彼女の瞳が空色に輝く!
「凍てつきなさい……!」
空音の足元から放射状に足場が凍結! アイスエイジめいた氷の波動が地を舐め、彼女の眉間に刺突をせんとす髪触手も凍らせる! SKYAAAAAAAAM! 甲高いサウンドとともに氷が御柱を駆け上がった!
「っしゃあ! でかしたぜ!」
御柱に肉迫した甕星が跳躍回転して凍った御柱に着地した。足裏の電光で根を張り、女神まで一気に駆け上がっていく! 髪の女神は柱を侵食してくる氷を見下ろすと、両手を御柱から引きはがす!
「あらあら、まあまあ……」
生白い両足を抜き、御柱と接続していた黒髪が腰のあたりでブチリと千切れる。後ろ髪を軽く払った女神に、甕星は電撃の飛び膝蹴りを繰り出した!
「たっぷり食らいなァ! 甕星流喧嘩術、電気ィィィィィ鯰ゥゥゥウウウウウウッ!」
「そろってやんちゃなんだから」
優美な所作で両腕を広げる髪の女神! 扇状に展開した髪の一部がその両二の腕に絡みつき、螺旋状に拳の先まで這い登る! 黒い長手袋に紫電を走らせた髪の女神は、甕星の膝に片手をあてて受け流し、すくい上げるような掌打を打った!
「うぐおッ……!」
「でも、構わないわ」
女神がのけ反った甕星の腹に両手の平を押し当ると、手袋めいた髪から髪触手が左右に伸びて彼の身体を締め付ける! 髪縛い!
「最後は私の中で眠るのだもの」
女神の両目が、毛髪が禍々しい紫色の雷を放った! ZGRAAAAAAAK! 背を弓なりに反らせた甕星が両目から紫の光を吹き出しながら痙攣!
「グワガガガガガガガガガガガガガガガガッ!」
「ふふっ……大丈夫よ。許してあげる。あなたにも、惜しみない愛を注いであげる。だから今は……お眠りなさい?」
「アバババババーッ!」
甕星の口からも紫電が噴出! 女神の微笑が徐々に邪悪な含みを孕み始めた刹那、彼女は表情を消して甕星を解放しバック! 彼女の目と鼻の先を風の槍が貫いた! 燃え上がる髪の大蛇を背後に、都月が杖を振り上げる!
「甕星から離れろ! 行くぞレパル!」
都月がその場で杖を振り下ろすと同時、神殿の天井から翡翠色のストームボールが垂直落下! 中のレパルは大きく息を吸い込み、球を形成する風を一息に吸い込む。彼女の髪とフレアスカートから爆炎めいたオーラを発現!
「パワーもらったわ都月ちゃんっ! 今度こそ燃やしてやるんだからっ!」
右拳を引き絞るレパルに振り返った髪の女神は、自身の前で髪を組み合わせて織り上げた。紫電をまとう巨大な盾を! 毛髪の柱に足を着けたレパルは構わず走る!
「本気の防御ってわけ? いいわ、撃ち破って見せるっ!」
「本当に……やんちゃな子だこと!」
女神が毛髪の盾裏側に両手当てる! ZGRAAAAAAAK! 盾から電光が四方八方に飛翔し、電磁バリアを作り出す! レパルは燃える足で大きく踏み込み、右拳を限界まで引き寄せた!
「はあああああああああああッ!」
SMASH、CABOOOOOOOOOOOOM! ドラゴンブレスめいた衝撃波が縦一直線に落下し、髪の女神の盾に直撃! ZGGGGGBBBBOOOOOOOOOOOM! 正面衝突し、炎と雷が乱れ飛ぶ中、レパルは左拳を引き絞る!
「まだまだっ! もういっぱああああああああああつっ!」
BOOOOOOOOOOM! 二発目の火炎衝撃波が追撃をかけ、爆発音を響かせる! 女神の両足が後ろに下がり、髪の盾が表面を徐々に赤熱させ出した! 女神が目をすっと細めた、その時である! 彼女の頭上を青白いビームが通過!
「…………!」
ビームを見上げた女神は肩越しに背後、柱の根元に振り返った。そこには両腕を四角いキャノン砲に変形させ、ビームを繰り出す空音の姿! 髪の盾が裏側から氷始める!
「繊維で支えた電磁バリア……確かに強固なのでしょうけど、凍ってしまったらどうなるかしら」
空音の瞳が青く冷たい光を放つ。たちまち巨大な氷塊と化した髪の盾は、レパルの衝撃波を食らってひび割れ―――爆散! 炎じみた衝撃波が女神を飲み込む! 爆炎の中から絹を裂くような悲鳴が響いた!
「ああああああああああああっ!」
「燃え尽きなさい、美髪怪人! あたしの炎でっ!」
柱の表面を焼きながら垂直に落下する熱波! 両腕を分離させ、軽やかなバックステップを踏む空音の隣を復帰した甕星が走り抜ける。凍りつき、上から下へひび割れる御柱を一気に駆け上がって女神の元へ!
「ッハァ! 情熱的なイイ女ってか! いいねえ、シビれるような恋をしたくなっちまうよなぁぁぁぁぁッ!」
咆哮した甕星が低姿勢で地を蹴った。都月が杖を振るって飛ばした翡翠色の風が甕星をロングコートめいて包み込むと同時、彼はレパルの炎に飛び込んだ! 真っ黒に炭化した姿で喉を掻きむしる女神の成れ果てが見える!
「ぶっ飛べや女神、偉そうにふんぞり返ってるんじゃあねぇ! うおらああああああああああああああッ!」
甕星は跳躍し、稲妻と旋風をまとった足で回し蹴りを繰り出す! 雷の足は女神の脇腹に命中し、その体を粉砕させた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第3章 冒険
『狂える遺産』
|
POW : 「元世界の遺産」を力ずくで完膚なきまでに破壊する
SPD : 暴走の被害を抑えるため、細工や避難誘導を行う
WIZ : 暴走の原因を突き止め、取り除く
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●断章
髪の女神の死に伴い、神殿に残っていた『遺産』が暴走を始めてしまいました。
『遺産』とは、髪の柱の中に埋まった黒いモノリス。どうやら髪の女神はこのモニュメントを通じて島を支配するほどの力を得ていたようですが、女神の支配を失ったためにモノリスは暴走。島の各所で爆発と火事が起こっています。
このままではバインドヒルは消し飛んでしまうでしょう。『遺産』の暴走を止め、島を守ってください。
受付は人数が集まり次第適宜開始します。プレイングはお早目に。
木常野・都月
一人称:俺
二人称:貴方
三人称:先輩や尊敬してるヒトはさん付け、それ以外は呼び捨て
本当、髪の神様じゃなくて迷惑の神様だったんじゃないか?
とはいえ、モノリスの暴走を止めないと。
でも、どうしたらいいんだ?
[野生の勘、第六感]で[情報収集]をしたい。
何か出来る事があればいいんだけど…
黒いモノリスだから光の精霊様を集めてみるか?
何か思いつく事があれば、暴走を止める事を最優先に、状況次第で臨機応変に行動したい。
モノリスの暴走をとめるのに、妖狐の妖術や精霊術が不向きそうなら、せめて島の被害を抑えに向かいたい。
火災には水の精霊様を、島の人に怪我人がいるなら、UC【緑の癒しの狐火】で治療を、それぞれ行いたい。
レパル・リオン
よっしゃ!勝った!
…あっ、違う!怪人が自爆するから、どうにかしなきゃいけないんだった!
どうにかじゃないわよ具体性なさすぎでしょ!
よーしこの黒くて凄そうな板を破壊すればいいのね!
みんな、がんばろう!あたし達が力の限り戦えば、自爆装置なんかに絶対負けない!
【閃虎爪】あたしの爪で斬って斬って斬りまくる!
うおおおお切断切断切断切断切断切断切断切断切断切断切断切断切断切断切断切断切断切断切断切断!
綿津・甕星
さて、あとはあれをぶち壊すだけか。なら、とっとと終わらせて帰りますかねぇ、腕も生やさなきゃ行けねぇし。
多少の傷は今更気にしなくてもいいだろう。近づいてぶん殴る。まー、実力行使でダメそうなら、あとは頭使う連中に任せるわ。
甕星流喧嘩術・剛力羅ァ!!!
助走をつけて全力で飛び蹴りをかます。よっしゃオルァ!ぶっ壊れろぉ!!
……あー酒飲みてぇ。
夕闇霧・空音
まったく…自分が倒れたら住処を爆破なんて…
今どき悪の組織だってやらないわよ。
【アドリブOK】
モニュメントの中に制御しているモノリスがあるってことね。
それなら自爆コードみたいなものでも設定されてるのか
あるいは制御する人が必要なのか…
何れにせよこのモノリスにハッキングを仕掛けて自爆コードの解除を試みるわ。
できれば解除の条件でもわかればよいのだけど、
そういうのの痕跡がないかも調べておいたほうが良さそうね。
熱暴走しているようなら威力を抑えた武器で
冷却させて頑張るわ。
ZGRAAAAK! バインドヒルを覆う毛髪の天蓋が紫色に激しく放電!
神殿から四方八方へ走る無数の稲妻が黒い繊維を焼き切り、紫の炎を燃やし始める。島の上空、髪の毛に絡まれた森はたちまち炎上し、地獄めいた光景が広がっていた。一方の神殿内部では、髪の御柱が内奥から爆発!
「どわッ!」
「きゃあっ!?」
紫電の爆裂に吹き飛ばされた甕星とレパルが、背中から床に打ちつけられた。跳ね起きたレパルはハツラツとした笑顔で両拳を突きあげる。
「よっしゃ! 勝った! ……あっ、違う! 怪人が自爆するから、どうにかしなきゃいけないんだった! どうにかじゃないわよ具体性なさすぎでしょ!」
上体を起こしたまま両腕を左右にブンブンと振るレパル。駆け寄ってきた都月は彼女を見下ろして安堵の息を吐いた。
「ちょっと心配したけど、ノリツッコミする元気があるなら平気そうだな。甕星は?」
「あァ? ……まぁ、ちっとは効いたかもなァ」
立ち上がった甕星が首をゴキゴキと鳴らす。彼が見上げるのは、紫炎に焼かれた上部の髪がバナナの皮じみて垂れ下がる髪の御柱。その内部で激しく明滅するモノリスである! 島がこの海洋に来る前の遺産!
「さて、あとはあれをぶち壊すだけか。なら、とっとと終わらせて帰りますかねぇ、腕も生やさなきゃ行けねぇし」
「ちょっと待って。今調べてるから」
空音が甕星の背中に待ったをかけた。続いて両手を宙空にかざし、氷の板めいたホロウィンドウを二枚生成。滑らかに指を動かし、スクロールする文字列を目で追いかける。分析して数秒、空音が独り言めいて口を開いた。
「……なるほど。モニュメントの中に、島を制御しているモノリスがあるってことね。それなら自爆コードみたいなものでも設定されてるのか、あるいは制御する人が必要なのか……どちらにしてもいい迷惑だわ」
「制御モノリスを使って悪さしてたわけか。本当、髪の神様じゃなくて迷惑の神様だったんじゃないか?」
呆れ顔をする都月の耳がぴくぴくと動いた。空音は返事代わりに重い溜め息を吐く。
「まったく……自分が倒れたら住処を爆破なんて……今どき悪の組織だってやらないわよ。そうでしょ、魔法猟兵さん?」
「え? 普通じゃないの?」
きょとんとした顔のレパルに問い返され、空音はどんよりと半眼を作る。その間にも視線はホロウィンドウから外さない。ハッキングを急がねばならぬ!
(変ね……妙にエラーが多い。このエラーが爆発の影響なのか、それともあの女神もモノリスをハッキングしていたのかしら?)
空音の頬を汗が伝った。損壊した書物を読み解いているような気分だ。至るところに虫食いがあり、全体像を把握できない! 自爆の原因探しが難航する中、暇そうに足を揺らしていた甕星が屈伸運動をし始める!
「あー、もういいか? いいよな。とりあえずコイツぶっ壊すか!」
「ちょっ……本気?」
手を止めぬまま空音が聞き返す。甕星はモノリスを見つめたままタップダンスめいたステップを踏んだ。彼の両目両足に走る稲光!
「多少の傷は今更気にしなくてもいいだろ? まー、実力行使でダメそうなら、あとは任せるわ」
「よーしこの黒くて凄そうな板を破壊すればいいのね! みんな、がんばろう!あたし達が力の限り戦えば、自爆装置なんかに絶対負けない!」
レパルが身を沈めて両腕をグルグルと振り回した。両手の指が白く輝き、伸長してレイピアじみた様相を呈する! 空音が何か言いかけた直後、二人はロケットスタートを決めた。ワンテンポ遅れた風圧が空音の髪をなびかせる!
「……もう」
嘆息する空音。彼女と疾駆する二人を見送る都月は、木製の杖を軽く掲げた。杖先の宝玉が黄金色に光輝くと共に祝詞を詠唱!
「精霊様、精霊様。あの二人に光の加護を」
都月が杖を二人に向けた瞬間、先端から閃光が噴き出した! 凄まじい速度でモノリスに迫る二人は背後からの光線を受けると同時に跳躍! 甕星は稲妻と光をまとった飛び蹴りを繰り出す!
「ぶっ壊れろや! 甕星流喧嘩術・剛力羅ァァァァァァッ!」
SMAAAAASH! キックがモノリスに激突し、紫電の波紋が虚空に広がる! 蹴り足を引いた甕星は一回転し、逆の足でキック! SMAAAAASH! さらに両足を引っ込め、光と雷を集中させた。
「ウオオオオラアアアアアアアアアアアアアアッ!」
渾身のドロップキックが、CRAAAAAAAAASH! モノリスが抵抗するように激しく明滅! キックの反動で甕星が飛び離れ、入れ替わりに両の爪を伸ばしたレパルが飛びかかる!
「レパル! タイガークロー・スラ―――ッシュ!」
SWAWAWAWAWAWAWAWAWAWAAAAASH! 連続の爪撃がモノリスの表面をズタズタに引き裂き、切れ込みから紫の火花を吐き出させる! レパルの爪撃は加速、加速、加速! 甕星のキックが生んだヒビを広げる!
「うおおおお切断切断切断切断切断切断切断切断切断切断切断切断切断切断切断切断切断切断切断切断! 自爆装置なんかに絶対負けない!」
「とっととぶっ壊れろオラァ! こっちは帰って酒飲みてェんだ!」
レパルの真上で、甕星が四度目のキックを打ち込む! FSHHHHHHHHHHHHH! モノリス各所の亀裂が火を噴き、神殿が鳴動し始める。両壁が稲光を発して紫に発火! それらを見た都月は、杖の石突で地を叩く!
「精霊様、水の加護を与えてください! 邪気の炎を洗う流れを!」
都月の足元にコバルトブルーの光が渦巻き、全方位に放たれる! 津波じみて神殿中に広がった蒼の光は神殿の壁を駆けのぼって紫色の火を消した。女神が残した邪気を払う、清浄なる水気の業だ! 都月は身をひるがえしながら空音を見やる!
「空音、ここを任せていいか。島の外もこんな状況なら、放っておけない!」
「お願い。私は……そうね」
空音は両腕を開いてホロウィンドウを消去。蒼銀の機械腕に白い冷気をまとわせて言った。
「向こうを冷やすわ。大体わかったから」
「ん。それじゃあ頼んだ」
周囲に緑色の狐火を複数浮かべ、都月は神殿からダッシュで出て行く。それを背後に、空音は両手を合わせてモノリスを注視!
(自爆コードは凍結したけど、もう一息……あれの熱暴走も止めないと)
ハッキングの結果、モノリスに仕込まれた自爆コードを圧縮封印した空音は、無数のエラーコードの原因をなんとか探り当てていた。髪の女神の喪失と物理的な欠陥、そして内部エネルギーの暴走!
(髪の女神はあのモノリスから力を吸い上げて、島を支配しようとしていた。そしてあのモノリスの中では供給先を失ってエネルギーが暴走している……このままだと壊した瞬間に吹き飛ぶ!)
地を蹴る空音! 神殿の天井からは邪気の暴走によるものか、紫電が次々と降り注いでくる! これらをジグザグダッシュで掻い潜り、レパルと甕星の攻撃を食らい続けるモノリスに直行! 二人に声の限り呼びかける!
「下がって! 一度凍らせるから!」
空音は合わせた両手の平を神殿の床に振り下ろした! SKIIIIIIIIIIIIM! 神殿の床がスケートリンクめいて凍てついていく! 残留する都月の水気を伝って広がる氷の床は髪の御柱に達し、駆け上がった! その先にレパル!
「せいやっ!」
横薙ぎ一閃を置き土産にし、レパルはモノリスを蹴って離れる。FOOOOOOOOOOOSH! 電撃と炎を放出する切り傷を、空音の氷が覆い隠して封じ込めた。その上の甕星もマシンガンめいたキックを止めて飛び離れる!
「なるほどなァ! カチコチにしてからぶっ壊してやろうってハラか!」
甕星は空中後方回転を決め、真下で上下反転したレパルの両足裏に着地する。目の前には空音の氷に飲み込まれ氷像と化した遺物のモノリス! レパルが両膝を曲げて力を溜めた!
「んのりゃああああああああああっ!」
キックし上下に跳躍する二者! 神殿の天井付近まで一気に跳び上がった甕星は電光輝く右足を振り上げ、高速縦回転しながら落下! モノリスめがけてかかと落としだ!
「これで終いだァァァァァァッ!」
ZZZZZZZZZZT! 回転速度と電圧を上げた甕星の蹴り足が―――モノリスの上部から振り下ろされた! CRAAAAAAAAAASH! 稲妻めいたひび割れがモノリスの半ばまで達し、その中に紫光がわだかまる!
「どうだオラァッ! ぶち割ってやったぜッ!」
「まだよ!」
モノリスからやや離れた位置で空音が氷のホロウィンドウに指を走らせる! 画面には乱高下する複数本の棒グラフ! モノリス内のエネルギーを可視化した図を横目に、空音は片手でタイピング!
(エネルギー供給減……物理ダメージのせいでエラーは増えてるけど、これならなんとか……!)
瞳をギラリと光らせ、ホロウィンドウを勢いよくフリック! 直後、モノリスの亀裂から吹き出かかった紫光が徐々に弱まり、神殿を揺らしていた地響きが静まり始めた! モノリスの稼働が止まりつつある! 空音は振り返って合図を出した!
「いいわ、やって!」
「まっかせてーっ! 甕星ちゃんにばっかりいいカッコはさせないんだから!」
風めいて走るレパルが空音の真後ろでジャンプしモノリスに跳びかかる! 左の爪を逆袈裟に斬り上げたのを起点に、稲妻模様の剣閃を描きながらモノリスを駆け上がっていく! SLASLASHLASHLASHLASHLASHLASH!
「でええええええっ……やっ!」
最後にアッパーカットじみた一撃! レパルの爪撃の軌跡と甕星が作った亀裂が繋がった! モノリスは重い軋みを上げながら左右に分かれ、神殿の床に倒れ込む! THOOOOOOOOM! 白い粉塵を上げながら粉々に粉砕!
「やったーっ! 今度こそやったよね空音ちゃん!」
「これ以上は勘弁しろよな! いい加減喉乾いたしよ!」
空中のレパルと甕星が会心の笑みを浮かべながら空音を見下ろす。空音は砕け散ったモノリスと手元のホロウィンドウを交互に見やると、目を閉じ薄い微笑を浮かべた。氷の板には『アクセスポイント消失』の文字が表示されていた。
一方その頃、神殿の外。尖った耳をぴくんと動かし、都月は神殿の入り口を振り向いた。焼け焦げた髪の束が垂れ下がる玄関の奥から破砕音が聞こえて来たのだ。同時に地鳴りも収まっている。都月は穏やかな表情で息を吐いた。
「……やったか」
「おお、おお……」
片膝立ちする都月の足元で枯れた呻き声が漏れた。見下ろすと、枯れた老婆が震える指を都月の方に伸ばしている。女神の髪に繭めいて囚われていた島民の一人だ。都月は老婆の手を取った。
「大丈夫か。あまり無理はするな」
老婆の脇腹や膝に灯る緑の狐火を見ながら、都月が言った。回復効果のある超自然の炎に構わず、老婆は呟く。
「あの魔女はァ……女神は……どうなったのかね……?」
「死んだよ」
都月は出来る限り穏やかな声音で応えると、老婆の手を地にそっと置く。長いこと囚われていたと見え、老婆は衰弱気味。他の解放された島民たちも同じくだ。
「大丈夫、この島を支配する神はもういない。貴方たちは自由だ」
「そうかい……そうかい……」
老婆は呟きながら空を見上げる。ところどころ穴が空き、木漏れ日めいて光を通した毛髪の天蓋を。都月はつられて、僅かに見える青空を振り仰いだ。
堕落の女神に縛られた大地に、光が差し込んで来た。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵