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偽龍の墓標

#アックス&ウィザーズ #群竜大陸 #皆殺しの荒野

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#皆殺しの荒野


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●禍つ風
 荒野に風が吹く。
 殺せ、殺せと――本能に囁きかける呪いの風。僅かにあった理性を奪い、元から堪え切れぬ衝動を際限なく解き放つ。
 お前はドラゴンなのだ。
 ドラゴンであるからには――全て屠り、統べねばならぬ。

●ドラゴンならぬ、ドラゴンの戦場
「魂喰らいの森を経て、辿り着いたは人呼んで皆殺しの荒野――……」
 ヴィリ・グロリオサ(残影・f24472)は突如と言葉を止めて、黙った。
 鼻頭に皺を寄せて、腕組み唸り、しぶしぶと告げる。
「――私に芝居じみた台詞回しは無理であった。以後、簡潔に説明するのである」
 はてさて、帝竜ヴァルギリオスと千の竜が住まうという、天空に浮かぶ広大な群竜大陸。
 かの地に橋頭堡を築くための冒険と戦いの果て、猟兵たちは皆殺しの荒野まで辿り着いた。
 物騒な名前の荒野であるが、此処は言葉通り、皆殺しにせねば気が済まぬような殺戮衝動をもたらす風がふいている。
 この呪いの風は殺戮衝動を解き放つどころか、対象にドラゴン化能力を付与し、戦闘能力を増強するのである――この力で、オブリビオンどもはまさしく血で血を洗う戦いを続けているわけだ。
「当然であるが、その戦線に貴様らが加われば、真っ先に貴様らが狙われるであろうな。何故か、という問いは無為である。獣の殺意に理由などあろうか?」
 薄く笑って、ヴィリは続ける。
 さて、最初に遭遇する事になるであろうオブリビオンは『ランナーズイーター』――ドラゴンの翼を生やして空より襲撃してくる。元より素早さを特徴としたドラゴンなのだが、翼を得て更に厄介な事になっている。
 次のオブリビオンどもは『激浪せし水棲馬』――ドラゴンの鱗と角を生やしており、随分とドラゴンに近づいているが――だが奴らは本物ではないため、急所があるらしい。
 更に深くまで進んだ先に待つオブリビオンは更にドラゴン化が進んでいるが――。
「適宜、現地の様子を考え戦術を練ったほうが良かろう」
 そう説明を切り上げて、これも必要な情報だったか、と小さく零す。
 ドラゴン化したオブリビオンの体内には、強さに比例した美しさの『竜胆石』があり、これは相当の値打ちものらしい。
「拾う拾わぬは自由だが、多少張りが出るであろう。何、すべきことは単純明快。殺せ――あちらの流儀通りである」
 元より承知であろうがな――彼は猟兵達を一瞥すると、転送のため、準備を始めるのであった。


黒塚婁
どうも、黒塚です。
ドラゴンの群れとの戦闘はクライマックス感。

すべてドラゴン化したオブリビオンとの集団戦となります。
1章『ランナーズイーター』
2章『激浪せし水棲馬』
3章『ピンク・モフ』
なお、呪いの風は猟兵には全く影響を与えません。

●プレイングに関して
各章、導入を公開後、プレイングを受付します。
今回は特に募集期間などを設けず、執筆可能なタイミングで書く予定です。
ですのでプレイングが流れてしまった場合、再送はご自由に。
締め切るタイミングは、マスターページ及びTwitterで告知予定です。

皆様の活躍を楽しみにしております!
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第1章 集団戦 『ランナーズイーター』

POW   :    スニークイーター
レベルm半径内の、自分に気づいていない敵を【牙】で攻撃する際、ほぼ必ず狙った部位に命中する。
SPD   :    ハングリーランナー
全身を【硬質な鱗】で覆い、自身の【食欲】に比例した戦闘力増強と、最大でレベル×100km/hに達する飛翔能力を得る。
WIZ   :    ハンティングタイム
【別集団のランナーズイーター】が現れ、協力してくれる。それは、自身からレベルの二乗m半径の範囲を移動できる。

イラスト:小日向 マキナ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●貪欲の竜
 見渡す限り何も無い荒野に、風が通り抜けていく――。
 立ち上る土埃に目を細めていると、頭上を覆い尽くす影が大地を蔭らせた。
 次々と猟兵たちの頭上を旋回し始めた屈強なドラゴンは、体格に似合いの大きな翼を広げて、風を叩きつけてくる。
 翼が起こす烈風は、身じろぎすら儘ならぬが、すぐに慣れよう。
 三メートルほどの小柄なものから、五メートルほどの大柄なものまでそれぞれであるが、いずれも飛行速度は似たり寄ったりだ。
 制空権を与えたまま対峙すべきか、地へと引き落とすか、或いは猟兵が空を制すか――選択は様々あろう。
 獰猛な食欲の儘に、彼らは牙を剥き襲い掛かってくる。

 さて、狩るか、狩られるか――。
ディール・コルメ
月守(f19326)と
アドリブ歓迎

ドラゴンだらけだねぇ
こんだけ多いと、一人じゃ一苦労か……
月守、ちょいと協力してヤツらを派手にブッ飛ばさないかい?
――ははっ!暴走上等、振り落とされない様に気ィ付けな!

改造戦車に月守を乗ったのを確認後、指定UCを発動
ノコギリの面で月守の背を叩いた後
全速力でドラゴン共に突っ込んで行くよ!
……まっ、ブン投げても死にゃしないし?
死ぬ前にアタシが治してやるから、行ってこォい!!!

ドラゴン達よりも遥か上
戦車のアームの上に乗った月守を
【スナイパー】併用、思い切り【投擲】

その後は、月守を狙う敵を優先に
戦車の遠距離射撃で【部位破壊】を狙う
いやァ、気持ちが良い戦いっぷりだねぇ


月守・ユア
ディールさん(f26390)と
アドリブ歓迎

わぁ、ドラゴンが沢山いる
殺りがいがあるってもんだよねぇ!
お?ディールさんも派手にいくのが好きかい?
なら
ドカンとぶっ放しにいこう!暴走上等だっ

彼女の戦車に飛び乗り
高速詠唱、UC展開
呪花と月鬼に呪詛を乗せて
攻撃準備完了
背叩かれ彼女の豪快な言葉に楽し気に笑う

そんな清々しいこと言われたら
全力で行くしかないね!

戦車から投擲され飛び出す
風に乗り、ひゃっほーう!とはしゃぎ

さぁ
ドラゴン共
死ぬ時間だ!
その命、いただくよ

空中戦
敵を足蹴にして戦う
ディールさんと連携し
UCを解放
串刺しにして生命力を吸収する
向かってくる敵はカウンター
傷口抉ってやろう

二度と飛べないよう堕としてやる



●空を泳いで、地へ墜とす
「ドラゴンだらけだねぇ。こんだけ多いと、一人じゃ一苦労か……」
 ディール・コルメ(淀澱・f26390)は惘れたように頭上を見上げた。
 飛び交うドラゴンどもは既に殺気で充ち満ちて、好機を見定めようと旋回している。その圧や、鬱陶しいの一言だ。
「わぁ、ドラゴンが沢山いる。殺りがいがあるってもんだよねぇ!」
 その傍らで、月守・ユア(月夜ノ死告者・f19326)が無邪気にはしゃいでいる。
 頼もしいやら、何やら――ディールは口の端に笑みを湛えると、彼女を誘う。
「月守、ちょいと協力してヤツらを派手にブッ飛ばさないかい?」
 提案に、ユアの金色の瞳はきらりと輝く。
 それは何処までも純粋で、真っ直ぐな殺意。
「お? ディールさんも派手にいくのが好きかい? ――なら、ドカンとぶっ放しにいこう! 暴走上等だっ」
 医療ノコギリを手にしたディールが藍色の視線で促せば、戦車にユアはひょいと跳び乗った。
「――ははっ!暴走上等、振り落とされない様に気ィ付けな!」
 こつんと、ユアの背にノコギリの面を当てると、戦車を急発進させた。
 超高速移動に特化したディールの戦車は、瞬く間に最高速度まで加速し、ドラゴンを振り切るほどに突っ走る。
 乍ら、二本のアームを高く掲げる。怪我人運搬用のそれは、今は無傷のユアを乗せていた。ディールも、ユアも、その状態について何も不思議なことはないという顔で――覚悟はいいかい、とだけディールは問うた。
「……まっ、ブン投げても死にゃしないし?」
 彼女の言葉に、はは、軽やかにユアが笑う。
 既に握る対の刃に、触れた生命を喰らう呪詛を載せている。あとはその刃を届かせるだけ――。
「そんな清々しいこと言われたら、全力で行くしかないね!」
 覚悟なんて決めなくても大丈夫、朗らかな返答に、ディールは首肯すると、アームを繰る。
「死ぬ前にアタシが治してやるから、行ってこォい!!!」
 天へとユアを放つための操作――つまり、投擲動作。
 最高高度に到達した段階で、ユアはアームを蹴って、宙へと躍る。
 ――躊躇など、一切なかった。
「ひゃっほーう!」
 空へと発射されたユアは、歓声を上げながら、ドラゴンの背を蹴って、くるりと宙へ返りながら、刃物を煌めかせた。
 翼は、この背にないけれど――彼女はそれらの頭上で笑みを深めて、宣告する。
「さぁ、ドラゴン共、死ぬ時間だ! ――その命、いただくよ」
 無造作に――その喉元に、刃を振り下ろす。
 巨躯に対して、ひどく小さな疵だ。だが、呪詛は命を屠り、断ち切る――あっさりと、屈強な首と胴を切断すると、その背を蹴り上げ、再び舞い上がった。
「二度と飛べないよう堕としてやる」
 ドラゴンどもは風を叩きつけるようにユアへと迫る。
 しかしその荒れ狂う風など、気にせぬように、彼女は軽やかに刃物を交差させ、鋏のように次の首を狩る。
「いやァ、気持ちが良い戦いっぷりだねぇ」
 それを仰いで、ディールは微笑む。地上に残された彼女は、ただ見守っているわけではない――。
 ドラゴンどもを潜り抜けるように操舵を捌き、距離を空けると弾丸を叩き込む。
 既にユアから一刀喰らっているものは、それだけで地に沈む。とはいえ、簡単な仕事ではない――巧みに戦車を走らせ、確実に撃ち墜とす腕があってこそ。
 ひやりとする瞬間が無いとは言わぬ。その瞬間にこそ笑うのが、ディールであっただろうが。
 そして彼女には、もう一つ仕事があった。
 自在に、しかし不自由に躍るユアへと一体のドラゴンが素早く滑空し、脇から食らいつこうと牙を剥く――ユアは目の前の獲物へ刃を振り下ろした所だ――間に合わぬ。
 そのドラゴンの横っ腹へ、狙い澄ました銃火を浴びせる。
「アタシが見てるんだ」
 簡単には通さないよ――にや、と自信に満ちた表情で彼女は笑う。ポイントを押さえた射撃による援護へ、片目を瞑って答えたユアは、大きな咆哮を立てて僅か沈んだドラゴンの頭へ、嬉々と飛び移る。
 脳天へと刃を突きたてて、ははっ、と明るく笑うのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

尭海・有珠
自分で逃げるのも追いかけるのも得意じゃないが
魔法で追う分には構わないか、自分で走るわけじゃなし
何よりドラゴンならぬドラゴンとて、̪私怨の限りを尽くして私は大嫌いだ
丁度いい、殲滅する心算でやってやる

雷撃属性を全力で乗せた≪剥片の戯≫で
薄刃を二手、三手に分け、包囲するよう追い回す
掠れば感電し動きが鈍るかもしれないしな
捉えられるなら広範囲に薄刃を突き立てても良いのだが

振りきり此方に直接向かってくるというのなら
高速詠唱で前面に薄刃を密集させ展開、突っ込んでくれば穴だらけだぞ
それでも勢いが削ぎきれないなら得物で少しでもずらし直撃を避ける
多少肉が抉れようが知ったことか
剣を抜いてその頭に突き刺してやるさ



●刃
 空を仰いで、尭海・有珠(殲蒼・f06286)は双眸を細めた。黒髪が風に浚われ、さらさらと靡く。
「自分で逃げるのも追いかけるのも得意じゃないが――魔法で追う分には構わないか、自分で走るわけじゃなし」
 冷ややとした眼差しは頭上を飛び交うドラゴンを貫く。
 何よりドラゴンならぬドラゴンとて、私怨の限りを尽くして私は大嫌いだ――唇が、そっと囁いた一言は彼女が力を奮うに充分の理由。
「丁度いい、殲滅する心算でやってやる」
 手には、『海』の宝珠を抱く真鍮色の蔓茨――しっとりと手に馴染む杖を触媒に、魔力を紡ぐ。
「来たれ、世界の滴。群れよ、奔れ――『剥片の戯』」
 無数の稲光が彼女の身体を奔り、髪を浮かせた。
 魔力の高まり、そして獲物の殺意に気付いたドラゴンどもは群れをなして有珠へと食いかかってくる――。
 それらの鼻先を掠めたのは、雷の薄刃。
 刹那、前方、左右を挟撃する薄刃が突如と精製され、閃光が空で爆ぜた。
 有珠も駆ける。輝きを突き抜けて、一体のドラゴンが鼻から落ちてきた。何とか牙を剥いてみたものの、それだけだ。方向転換も出来ず、彼女が立っていた所へただ落下すると、その身体は燻った匂いを立てて、よく灼けていた。
「巧く当たれば仕留められるか――さて、残りは」
 冷静に振り返る。
 追いかけて高度を落としてくるドラゴンどもは、掠めた雷撃で身体が傾いでいる。
「突っ込んでくれば穴だらけだぞ」
 警告では無く、ただ事実を。それが真であると示すように、
 瞬時、圧縮した魔力が目が眩むほどの光をもたらす。薄刃を数枚重ねて、扇状に放出する――。
 先程は詠唱などしてみたが、本来は意識を向けるだけで発動できるのだ。
 吐息は嘲笑に似て、有珠はまんまと掛かったドラゴンどもと距離を取る。そこへ、一体のドラゴンが、最後の意地とばかり、大きく口を開いて突進してきた。
 ともすれば丸呑みされそうだ――彼女は全く動じず、殆ど抜かぬ藍の剣を閃かせた。
 吹きつける腥い吐息が不快だった。牙の端が白い肌を掠めた。止めの薄刃を内側から叩き込みながら、有珠はひらりと地を蹴ると、その頬へと剣を突き刺す。
 焦臭い匂いは、荒野を走る風によって浚われていく。さらりと乱れた髪を直して、彼女は次なる進路へと向き合った。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シャルロット・クリスティア
遮蔽は無し、視界は少々悪い、風は……多少読みづらいですね。
あまり長距離射撃向きのコンディションではありませんか……。

……仕方ありません、迎撃戦と行くしかなさそうですね。
幸い、あちらは遠距離攻撃手段は無い。どうやろうと向かってくるほかないわけですし……。
水平二連のショットガン、片方に散弾、もう片方には単発のスラグ弾。
あちらの攻撃に合わせ、散弾で勢いを殺し、すかさずスラグ弾で急所を狙い仕留める。
一体ずつ処理すれば大丈夫。
後は、囲まれないように、気流や羽音、足音には常に気を配り、退きつつ戦闘しましょう。焦りは禁物です。



●鋼の歌
 吹き荒ぶ風で乱れた金の髪が、頬を乱暴に撫でる。
 されど、シャルロット・クリスティア(彷徨える弾の行方・f00330)の視線は狙撃対象へと注がれたまま、揺るがぬ。
「遮蔽は無し、視界は少々悪い、風は……多少読みづらいですね」
 あまり長距離射撃向きのコンディションではありませんか……、囁く声は、既に戦闘に向けた集中に入っていた。
 ふう、静かに息を吐いて、彼女はゆっくりと瞬く。
「……仕方ありません、迎撃戦と行くしかなさそうですね――幸い、あちらは遠距離攻撃手段は無い。どうやろうと向かってくるほかないわけですし……」
 零しながら、地を蹴り出す。
 シャルロットの見立て通り、彼女の存在に気付いたドラゴンどもは急転回し、飛来する――牙を剥いた巨躯が近づいてくる。
 静かに両腕を水平に掲げ、シャルロットは後ろへと跳んだ。
 その手には二対のショットガンが握られている――、鋭い視線で相手の軌道を読むと、まずは片の銃を轟かせる。
「その隙は逃がさない……!」
 散弾がドラゴンの鼻先で爆ぜる。ほぼ同時、もう片方の銃が閃く。
 弾けた銃弾を厭って傾いだドラゴンへ、横に躱しつつ、至近より強烈な一撃を見舞わせる――頭を穿ち貫通する大穴に、よし、とシャルロットはひとりごち。
 くるりと小柄な身体で、ドラゴンの下へと滑り潜り抜けると、次の弾丸を装填する。
「一体ずつ処理すれば大丈夫」
 確認するように息を吐き、彼女はくるりと身を翻す。
 全神経を、迫り来るドラゴンへ向けて研ぎ澄ます――一体の骸で、充分に遮蔽となる。同時に、それに驕れば不意討ちを喰らうだろう。
 傍らに転がるドラゴンの顎を見る。あれに食いつかれれば、急所を避けても、致命傷になりそうだ。
(「――焦りは禁物です」)
 両手の相棒は通用する。ならば、彼女はそれと自分の腕を信じるのみ。
 羽ばたきの音が下りてきた――凛乎と顔を上げると、シャルロットは物陰から飛びだし、両手を閃かせる。自分の何倍も大きな敵を、退きながら、少ない手数で仕留めていく。
 荒野に骸の山を築きながら、ショットガンは何処までも高らかに、歌う。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シリウス・クロックバード
魂を喰らう森の先、出会うは皆殺しの荒野
禍々しき風の吹く地、か
この場合、僕たちは来訪者かな
さぁ、幕を開けよう

芝居がかった口調で告げて、笑みを浮かべる

周囲を警戒しながら大弓を展開、光の矢を番える
足音よりは振動が良いかな。近づけば流石に増えるからね

数がいる分、束ねて放とうか。ただの一撃で仕留められるなどとは思わないよ
噛みつかれたらその口に銃弾をあげようか

敵の足が落ちた程度、その身が削れた程度では油断などしない
ーー油断などできるものか

存分に引きつけ
大弓を引き月予見命を発動。
この身を中心に降り注がせよう。君に、星を届けよう

血で血を洗う戦いか
本当に射貫くべき心臓を、この風で見失ったものがいるとすれば不幸か



●流星
「魂を喰らう森の先、出会うは皆殺しの荒野――禍々しき風の吹く地、か」
 届かぬ揶揄を滑らかに唱い、シリウス・クロックバード(晨星・f24477)は穏やかに微笑んだ。
 一房の長い三つ編みと編み込んだ飾りが風に躍る。
「この場合、僕たちは来訪者かな……さぁ、幕を開けよう」
 芝居がかった物言いも、彼においては自然なもの。さて、あの無骨な男は解さぬらしいが、この世を支配する獣はどうか。
 微笑みはそのまま彼方の標的を見やると、彼は無造作に大弓に光の矢を番えた。
 ひゅ、と。
 空を斬るのは荷電粒子砲。光は風を斬り裂いて、ドラゴンの群れを貫いた。
 ひとつではない。彼は複数重ねて一度に放ち、一気に群れの動きを攪乱した。
 何かが千切れるの深緑の肉眼は遠く捉えた。さて足か腕か――翼を穿てば、地に落とせただろうか。
 ――否。
「――油断などできるものか」
 殆ど死にながら、報復するものを彼は知っている。
 殺しても殺しても、死なぬものを知っている。
 無意識に奥歯に力が入っていたが――すぐに平然と気を取り直し、次の矢と共に弦を引く。
 暫し、彼はその体勢を維持して、動かなかった。
 群影が空を埋め尽くし、羽ばたきの風が髪を、服を煽る。
 それでも弓を引いた姿勢をシリウスは崩さない。
「暗雲より招く矢雨。さぁ、追いかけっこをしてみようか」
 影を上書きする暗雲が、彼らの頭上に立ちこめて――荒野の一帯が薄闇に包まれる。
 不気味な気配にも臆さず、ただ急かされたように、ドラゴンどもはシリウスへと牙を剥く。
 それと、ほぼ同時――。
「――君に、星を届けよう」
 シリウスが天に矢を放つ。余韻を残す弦の音が耳元で唸る。然れど、放った矢は暗雲より雨の如く降り注ぐ。
 自身を中心に降りしきる光の矢の雨に、為す術も無く首や頭を貫かれ、落ちる。
 穿ち、貫き、滴るドラゴンの血が、赤い雨のように零れるのは、流石に避けながら。
 招いた流星を微笑み眺め、シリウスはそっと囁く。
「血で血を洗う戦いか――本当に射貫くべき心臓を、この風で見失ったものがいるとすれば不幸か」
 或いは――哮るだけで気が済むならば――何も考えずに屠るだけで済むならば、どれほど安楽な日々を過ごせるであろうか――と。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アルバ・アルフライラ
ええい、鬱陶しい竜共よな
貴様等には興味無い
その身に宿す竜胆石のみを置いて疾く失せるが良い

数には数で対処
魔法陣より召喚するは【暴虐たる贋槍】
貴様等に翼なぞ分不相応であろう?
…ほれ、私が削ぎ落としてくれる
広範に高速詠唱にて絶え間なく風槍を降らせ、攻撃
たとえ黒雲が如く竜が増えようとも
我が魔術で残らず串刺しにしてくれよう
卑しい牙を私に向けようものならば
行動を見極めて見切りと共に槍によるカウンターを与える
やれ、とんだ不敬者が居たものだ
我が玉体を疵付けんとした行為、万死に値すると知れ

…然し、彼奴等より得られる石なぞ雀の涙程度やも知れぬ
まあ魔術の触媒くらいにはなり得るだろうよ
ふふん、折角だ――試してみるか?



●玉石
 数を着実に減らすドラゴンの群れは、警戒を促すような――或いは、怒りの咆哮をあげて、空を荒々しく羽ばたいていた。
「ええい、鬱陶しい竜共よな。貴様等には興味無い」
 それらを忌々しそうに見やり、アルバ・アルフライラ(双星の魔術師・f00123)は仕込み杖を軽やかに手に収めた。
「――その身に宿す竜胆石のみを置いて疾く失せるが良い」
 スターサファイアの瞳が軽く伏せられる――瞬きの刹那に、魔術は成る。
 高速で紡がれた風の槍は、元より吹く風まで喰らい尽くすよう、暴虐に荒れ狂う。
 触れなば消し飛ぶ、過密なる風の檻。それをアルバは躊躇いなく、ドラゴンどもへと放った。
「貴様等に翼なぞ分不相応であろう? ……ほれ、私が削ぎ落としてくれる」
 攻撃に気付いたドラゴンどもが一団と固まって、風の槍へと挑む。然れど、彼の言葉通り――無数の槍に穿たれ、一体、一体と肉を削がれながら落ちていく。
「ほう、知恵を働かせたか」
 楽しそうにアルバは呟く。群れた事で最後尾のドラゴンは何とか生き存え、嵐を乗り越えた。無傷とはいかず、屈強な翼は歪に穿たれ、脇腹にも見逃せぬ大穴が空いていた。
 ドラゴンは怒りに任せて吼えるなり、頭から突進してきた――ふふん、アルバは不敵な笑みをそれへと向けた。
 風など、幾らでも作り出せる。
 見せつけてやるために、仕込み杖をかつりと鳴らした時だ。直感が、警笛を鳴らす。下がれ――という予感に従って、彼は全力で跳び退いた。
 髪の一部を牙に引っかけ、脇より掠めたドラゴンが風でアルバの身体を叩きつけていった。
 戯れに浮かべていた笑みが、意味を変える。美しく輝く蒼い髪が、魔力で軽く浮いた。
「やれ、とんだ不敬者が居たものだ――我が玉体を疵付けんとした行為、万死に値すると知れ」
 冷徹なる声音と共に、更に密度の高い槍を紡ぐ。
 そして、正面より食らいついてこようと弾丸の如く滑空したドラゴンともども、風の槍が貫いて――荒れ狂う風は、それらを内側から破裂させた。
 飛散した肉塊を魔力の護りで弾きながら、大地に転がった宝石を拾い上げる。
 ――これが、竜胆石か。
 大きさは掌半分といったところか。輝きの質から、等級は然程高くは感じぬ。
 しげしげと観察したアルバは小さく溜息を零す。
「……まあ魔術の触媒くらいにはなり得るだろうよ。ふふん、折角だ――試してみるか?」
 或いはもっとドラゴン化が進んだ個体ならば、いずれにしても逸材となり得るか。
 術士はあわく笑って、凄絶なる死の中を進んでいった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ユルグ・オルド
やるかやられるかッてのは分かり易くてイイね
ま、話は通じないんだけども

いやァ、まァ、砕かれたくないわな
肩竦めつつさて真面目に遊びましょ
追い風に向かって煽られるまま、ほらおいで
大振りの爪も尾も怯まず振り切る瞬間を見切りに
真直ぐ見据えてその刹那を狙いに

梏で繋いだら離すまいと、雁字搦めに絡めとり
手綱代わりに飛び乗れっかしら
飛んでっちゃう前に更にその上
空を制する背の上に翼の間に
逆鱗てドラゴンにもあるのかな
深く、鱗を装甲を突き刺したんなら
失墜する前に次の巨躯へと移ろうか
枷を解くのを忘れずに
一時でも舞い上がるんなら
空往く気持ちもわかるかね



●飛翔
 荒野の果ては未だ未だ見えず、延々と地平線が続いている。視界に入るのは土っぽい大地と、何処までも広がる空だけだ。
 此処は遥か空に浮かぶ大陸のひとつだという実感はいまいち薄いのだけど――、ユルグ・オルド(シャシュカ・f09129)は軽く柄に手をかけて、天を隠そうと飛び回るものへと笑う。
「やるかやられるかッてのは分かり易くてイイね――ま、話は通じないんだけども」
 さてドラゴンといえばそれなりに知恵もあるという伝承もあるが――少なくとも、ぎゃあぎゃあと喚くようなドラゴンの言葉は、彼には解らぬ。
 だが、殺気は伝わってくる。空気を振るわせ、肌を刺す、敵意を越えた意識――生きたければ殺せ。殺して先へ行け――その意志を孕むのが、吹きつける風なのだ。
「いやァ、まァ、砕かれたくないわな」
 肩を竦めて、ユルグはさて、と改めて剣を握り直す。
「真面目に遊びましょ」
 鋼が滑らかに解き放たれる――その些細な音に、光に、ドラゴンどもは転回し、地上のユルグに狙い澄まして滑空してくる。
「ほらおいで」
 赤い瞳を愉快そうに細めて、彼は刹那の折衝に身を躍らせた。
 前進しながら刀身がドラゴンの顔を斜めに走る。力加減は、籠手試し。ドラゴンの鱗、肉体の強靱さを刃で確かめる一刀であった。
 ゆえに斬撃そのものは、浅く、肉までは届かない――だが、それで構わぬ。
 捉まえた、と囁くや否や、見得ぬ枷がドラゴンの頸を括った。ユルグはそれを引き寄せるようにして、軽やかにドラゴンの上へと飛び移る。
 振り落とそうと飛翔したドラゴンの背で、彼は口元の笑みを深める。豪速の風に煽られて、浮遊する身体を面白く思うような様子であった。
 どれくらいか垂直に舞い上がった後、左右に身体を揺らして、ドラゴンは暴れ回る。枷を手繰って距離を詰め、その背に降り立ったユルグは、足元の悩みなど与り知らぬ様子で、ひとりごつ。
「逆鱗てドラゴンにもあるのかな」
 頸の付け根あたりへと無造作に剣を叩き込む。垂直に刺し貫く、というのが正しいか。
 言い表せぬ断末魔が轟き渡る――戦慄く背の上で、ユルグはバランスを取りつつ、他のドラゴンが迫るに合わせて跳んだ。
 枷を引き上げながら、新たな斬撃と共に、次の足場へ身を繋ぎ。
「一時でも舞い上がれば、空往く気持ちもわかるかね――と思ったけども」
 ひゅうひゅうと風切る音を楽しみながら、彼は興味深そうに、随分離れた大地を見た。
 大地に初めて脚をつけたときと似た感情は、一瞬のこと。
 暴れるドラゴンでは、乗り心地が悪過ぎる――やっぱ自由になる飛行じゃなきゃ、比較になんないね、と嘯きながら容赦なく剣を走らせたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『激浪せし水棲馬』

POW   :    血染めの魔角
「属性」と「自然現象」を合成した現象を発動する。氷の津波、炎の竜巻など。制御が難しく暴走しやすい。
SPD   :    貪り喰らうもの
戦闘中に食べた【人肉】の量と質に応じて【魔力を増幅させ】、戦闘力が増加する。戦闘終了後解除される。
WIZ   :    欲深き者共へ
【欲深き人間達に対する怨嗟の呪い】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。

イラスト:〆さば

👑11
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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●黒き大地
 屈強なるドラゴンどもを退け、先へと進めば、大地と風が湿り気を帯びてきた。
 そこには変わらず平坦な荒野が続いているのだが、目に見えて黒く変化している――踏み込めば僅かにぬかるんで、緩くなっていた。
 脚をとられるほどではない――猟兵達は躊躇いなく踏み込んでいく。
 水はけが悪いのか、湿地というには浅い、大きな水たまりのようなものが幾つも居並んでいる一帯であった。
 そして、その中央には、馬に似た上半身と魚のような下半身を持つ怪物が行く手を遮るように集結していた。
 同時に勘付く――このぬかるんだ大地は、それらの力によるものなのだろう、と。
 全身を堅い鱗で固め、額には無数の角を生やし、先程のドラゴンと同じように強烈な殺意を向けてくる。
 よりドラゴン化が進んだ水棲馬――元は精霊であった人を呪う魔物。それは更に元の姿を離れて、ドラゴンとして猟兵たちへと牙を剥く。
 その鱗は飾りでは無い――生半可な攻撃は通さぬ、ドラゴンの鱗だ。だが、完全では無い。
 水棲馬の名残、柔らかにその頸を守るたてがみの下は、柔らかな肉の儘。つまり、弱点は項であるようだ。
 さて、如何に近づくか。如何に弱点を突くか――。
 殺戮を招く風は、素知らぬ顔で魔物のたてがみを靡かせ乱すのだった。
シリウス・クロックバード
精霊……そのなれの果てからも外れたか
黒き大地にて終焉を告げよう

弱点らしいものが分かってはいる、か
二丁拳銃で牽制しながら距離を詰めよう

鱗に阻まれても構わないさ。
狙いは最後に弱点ひとつ。他の猟兵がいれば援護を

星詠みの詩を発動。
星々の導きを此処に。

これはただ我が身で描いた結界。

強化した身で、近接の銃撃戦といこうか

吹き抜ける風は
宿縁と業に生きるこの身には心地よい

負傷は気にせず
生憎、その程度で終われれば今の僕はいないさ

蹴り飛ばし、止まらず銃弾をたたき込む

生憎、君に呪われてあげられる程
この身は余ってない

精霊であれば、我が身ひとつで砕く意味がある
間合い深くに踏み込んで銃口を突きつける

君の行く道に、星の導きを



●星の行方
「精霊……そのなれの果てからも外れたか」
 ひとりごつ声は、静かに浸みて――シリウス・クロックバードは冷ややかな双眸で敵を見据える。
 自然に祝福されたものであった何かが。全てを呪う魔物に成り果てる――その定めを憐れむ程、寛容ではない。相手が無辜の人々であるならば、話は変わってくるのだが。
 ゆえに――黒の二丁拳銃を手に、宣告する。
「――黒き大地にて終焉を告げよう」
 ドラゴンと成り果てた水棲馬は前肢を撓ませると、空を躍る。
 両手に構えた拳銃が火を吐き、弾丸がその額を撃つ。無造作であれ、狙いは外さぬ。然し弾丸は次々と甲高い悲鳴を立てて、彼方へと跳ねる。
 それは単なる銃弾ではないのだが――術式ごと、撥ね除けられたか。
 無傷の鱗を見やり、シリウスはふむとひとつ頷く。
 解っていれば、特別驚くこともない。相手の間合いに入らぬよう、ひらりと身を返して躱しながら、弱点らしいものが分かってはいる、か――口元に余裕を刷いて、彼は敵を招く。
「星々の煌めきに、世界よ閉じよ。ーーこの煌めきを、止めたくば星を堕とすことだ」
 滔々と唱えば、突如と流星雨が降り注ぐ――天より至る輝きの雨は、赫と燃えて水棲馬を貫く。ドラゴンの鱗があれば、全てを失うこともないが、無作為に落ちる礫が危険な事に代わりは無い。
 但し、それはシリウスの身にも等しく起こること。
「これはただ我が身で描いた結界」
 これは、彼の紡いだ彼の、守護者の結界。
 どう立ち回るかは、彼のみが知る――不退転の結界。掛かってこいと促す視線に、殺意を高める風に乗って、水棲馬は駆る。
 その両眼に灯る怒りと、憎しみ。呪いの眼差しに、シリウスは思わず微笑んだ。
 髪を揺らすほどの風が互いの狭間を抜けていく。
(「宿縁と業に生きるこの身には心地よい」)
 斜め、前へと跳びながら、彼は銃を突きつける。降りしきる流星雨を躱し、一方で、落ちる礫が水棲馬の出鼻を挫けば、その背に跳び乗るように立ち位置を入れ換える。
 無防備な背に銃弾を叩き込む。今度は生々しい肉を穿つ音がして、大きく戦慄きながら水棲馬は崩れていった。
 別の水棲馬が、呪いを放つ――欲深き人間達に対する怨嗟は、黒き水流がごとき刃となりて、流星雨ごと砕く。
 音も無く四方へと放たれた棘が頬を掠め、四肢に浅く朱を走らせようとも。
 シリウスは構わず疾駆した。その瞬間こそ、好機であると――。
「生憎、君に呪われてあげられる程……この身は余ってない」
 精霊と聴くと、忌々しきものを思い出す。
 荒ぶ風の効き目は猟兵には影響しないと聞いたが――冗談のように湧き上がる衝動へ、身を任せる。
「――その程度で終われれば今の僕はいないさ」
 無差別なる棘を放つ相手の腹を容赦なく蹴り上げ、もう二丁の銃を同時に突きつける。
 然しその瞬間、祈る言葉だけは静謐に――。
「君の行く道に、星の導きを」

大成功 🔵​🔵​🔵​

尭海・有珠
旅慣れてると泥はね程度どうということはないが
落とす手間を考えるとイラッとさせられるな

人を呪うという元来の性質は元より
ドラゴン化が進んでいるのなら、迷惑度合は倍増どころじゃない

高速詠唱・多重詠唱でもって出来る限り多くの≪青の抱擁≫を生み、水棲馬を拘束
敵の攻撃は空中浮遊代わりに、宙を踏んで躱せるものは躱す
狙いが大雑把過ぎるんだろう、それとも強すぎる力に振り回されてるのか
避け切れないものは杖を翳し威力を軽減して、押し切るがな

動けぬか動きが鈍ったものくらい、私の腕でも
項に剣を突き立てる事は可能だろう
敵の体を駆け上がり踏みつけ、剣を差し込んでやる
足蹴にしたところで、思いの外溜飲が下がるわけでもないとはな



●濯げぬもの
 戦闘にも動きにも、何ら影響しないとはいえ――尭海・有珠は足許の状況に、軽く眉を動かした。
 靴が、ロングジャケットが、泥で汚れる。旅慣れているゆえ、その程度のことは付きものだ、と諦めてはいるが。
「……落とす手間を考えるとイラッとさせられるな」
 それも自然にそんな地形であったならば仕方が無いが、目の前で屯する水棲馬の所為だというならば。
「人を呪うという元来の性質は元より――ドラゴン化が進んでいるのなら、迷惑度合は倍増どころじゃない」
 涼やかな青い瞳に不快そうな感情を宿し、彼女は仕込み杖へと魔力を回す。
「来たれ、世界の澱。駆けよ、糾え――≪青の抱擁≫」
 唇は薄く開いていたが、奉じる呪いは心の中で。実際は、有珠の睫が軽く揺らめく程の間に――吹きつける風に載せ、薄青い光の鎖が走る。
 輝きは水棲馬を魔力によって追跡し、その場に縫い止めた。
 無論、それも拘束される儘では済まさぬ。
 風に逆らうが如く哮ると、泥の大地が強大な霜柱のように有珠を狙う。跳ねる泥に、舌打ちながら、蹴り上げて空に舞う。
「狙いが大雑把過ぎる――それとも強すぎる力に振り回されてるのか」
 彼女の想像通りなのだろう、次々と隆起するぬかるみの幾つかは、制御できずに目前で爆ぜて、ますます周囲に泥を撒き散らす。
 向かう風に長い黒髪を揺らし、有珠は空中に軽く浮遊したような状態で、次の足場を探る。
 流石に、鋭く尖った土の刃の上に乗るのは危険だ。だが、これを乗り越えねば背後はとれぬ。杖を構えると、自分の身体を目指して放たれた巨大な土の霜柱を、正面から魔力で割りつつ、衝撃を軽減する。
 その間にも彼女は鎖を解除していない。水棲馬は鎖に貫かれて拘束され――何とか逃れようと悶えたまま、何とか自らの力で有珠を排そうとしていた。
 柱を割って抜けた彼女はふわりと大きな弧を描いて、水棲馬のすぐ脇へ降り立つと、その背を蹴って駆け上り、軽く体を捻る。
 その腕の先、普段は殆ど抜かぬ剣を閃かせ――黒に近い藍色の刀身を、その柔らかなたてがみへと叩き込む。
 するりと刃が埋まる感触に、小さく吐息を零しながら。
 その背を蹴り上げながら刃を抜くと、ジャケットを翻しながら、黒い大地の上へ足を付ける。崩れ落ちていった水棲馬が立てる飛沫を躱すように、前へと駆る。
 ――それにしても。
「足蹴にしたところで、思いの外溜飲が下がるわけでもないとはな」
 しみじみと有珠は呟きながら、拘束された次の水棲馬へと剣を振り上げた。
 己の中にある、戦うための増悪は――いくらでも尽きぬようだから。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アルバ・アルフライラ
やれ竜化も此処迄来ると、よもや病よな
――ほれ、私が楽にしてやろう
対価なぞ気にするな
その身に宿す石を渡しさえすれば良い

…全く、こういう時に弟子が居れば
靴を汚す羽目にもならぬというに
致し方ないと描くは魔方陣
高速詠唱にて【女王の臣僕】を召喚
広範に亘るよう、馬共に嗾ける
たっぷり水分を含んだ黒き地はさぞ凍り易かろう
故にこそ彼奴等の動きを止める事は容易い
後は弱点を狙えば良いのだが…数が多いと多少面倒よな
手取り早く宝石に魔力を――おお、そうだ
折角手に入れた竜胆石があるのだ
手に入れたそれ等に魔力を込め
属性魔術の範囲攻撃で、纏めて仕留めてやろう

齎される呪いは呪詛耐性である程度相殺を図る
ふふん、欲深くて何が悪い?



●欲
 スターサファイアの瞳は、鋭く殺意を投げつけてくる水棲馬を、ただ静かに見つめた。
「やれ竜化も此処迄来ると、よもや病よな」
 呪い、病――少なくとも、それらが望んで狂気に身を置き、肉体的な変化を迎えているとは思えない。
 尤も、こうして医者のように診断してみたところで、してやれることなど、ひとつしかない。
「――ほれ、私が楽にしてやろう。対価なぞ気にするな……その身に宿す石を渡しさえすれば良い」
 仕込み杖を片手に、アルバ・アルフライラが空いた側で手招く。
 敵が此処にいるぞと伝えてみたところで、とはいえ、易々弱点を曝すような事はするまい――。
「……全く、こういう時に弟子が居れば、靴を汚す羽目にもならぬというに」
 おらぬものは、おらぬ。致し方なし。
 ひとつ嘆息を零して、悠々と仕込み杖にて魔方陣を描き出す。
「控えよ、女王の御前であるぞ」
 瞬きの間に、青き蝶が飛び立ち視界を埋めていく。術なる蝶の群れはアルバの指揮に従いて、何処までも青き世界を広げた。
 蝶が緩やかな羽ばたきの度に落とすは、きらきらと輝く冱てし鱗粉。
「たっぷり水分を含んだ黒き地はさぞ凍り易かろう」
 斯くして、アルバの狙い通り。黒い大地はうっすらと霜を這わせながら、その上から逃れられぬ水棲馬をも冷気で縫い付ける。
 精霊であったそれらに何処まで有用なのかは解らぬが、痺れたように上肢を戦慄かせているのだから、充分だ。
 しゃり、と凍った地を踏みしめ、アルバは不遜に笑んだ。
「手取り早く宝石に魔力を――おお、そうだ。折角手に入れた竜胆石があるのだ」
 先程拾った宝石を掌に、彼は石より魔力を解き放つ。
 それは赤い輝きを内側から放つ――触媒となったより強い冷気を呼び、猛吹雪となりて水棲馬どもを斬り裂く。
 多くは首を狩られてのたうち倒れていくが――生き存えた個体が、憎しみに満ちた瞳でアルバを睨むと、最後の力を振り絞り呪詛で応酬する。
 黒き矢の如く怨嗟が吹雪を突き抜け、アルバを撃つが――彼が身を纏う魔力の壁に阻まれて、弾かれ消える。
「……届かぬよ。その程度の怨みであらば、な」
 さあ、無駄な抵抗は棄て、次の竜胆石を見せよと微笑む。その貌は慈悲深くすらあった。
 あくまでも――至高の宝玉に出会えるならば。それも、魔術の触媒たる、強力な力を持つならばと、わざわざ骨折り退治に来ているのだ。
「ふふん、欲深くて何が悪い?」
 むしろ研究熱心であると勤勉さを労って貰いたいものだ――凍り付いた大地に残る宝石を見つめて、そう嘯いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ディール・コルメ
月守(f19326)と
アドリブ歓迎

あー……診察結果、アレは固そうだねぇ
え、見れば判るって?
細かい事は言いっこなしだよ!

柔らかそうな部分はあるし
全然、まーったく歯が立たないワケじゃないか
さぁて!運転手は任せときな、月守!【運搬】

『絵空事』を使ってから
改造戦車『キュー』を操縦しつつ
敵に向けて【クイックドロウ】【制圧射撃】【乱れ撃ち】
引き摺り落とせないっていうなら、そっちまでぶっ飛ばすだけさね!
射程圏内に潜り込んだら、月守を夜空に向けて【投擲】

人間、強欲で何が悪い?
アンタらがソレを許さない、厭うってんなら
文句あるヤツは全員捩じ伏せて、これからも生き抜くだけだ


月守・ユア
ディールさん・f26390と
アドリブ歓迎

大丈夫♪
ボクらなら仕留められるよ!

はーい、特攻はお任せあれー!
またドカーン!と頼むよ

ボクは夜を司る血筋の生まれ
彼女が生み出す戦場は最高の舞台だ!
派手なディールさんの攻撃スタイルに思わず口笛吹き感心
彼女の投擲を利用
ディールさんの肩を借り助走つけ
敵への距離を更に縮める

高速詠唱:UC
…人を呪う魔物か
人の何が精霊を魔へと変えたのか
――可哀想だと思う、共感もできる
でも
残念だけど、その殺戮は赦されないらしい

生命力吸収、2回攻撃
二振の刃で敵だけを攻撃

君らが人を貪るように
僕もその呪を全て喰らってやる
だから…

部位破壊
狙うは項

尊き精霊よ
せめて最後は呪を忘れ、安らかにおやすみ



●星夜と祈り
「あー……診察結果、アレは固そうだねぇ」
 深海の如き藍色の目を細め、ディール・コルメが目標を観察して呟く。月守・ユアがディールをじっと見つめていると、彼女はからりと笑ってみせた。
「え、見れば判るって? 細かい事は言いっこなしだよ!」
 そんなこと思ってなかったけどさ、ユアは彼女の言い分に思わず笑いながら、片目を瞑ってみせた。
「大丈夫♪ ボクらなら仕留められるよ!」
 今度はディールが肩を竦めて笑う。
 今の所、そう断定する根拠は全くないが――その通りだと同意してしまう事実に対して、小気味よい心地になった。
 戦車を動かしながら、ユアを促す。ぬかるんでいようが関係ない。いつも通りの動きが出来そうだ。ならば怖れることがあるだろうか――否。
「柔らかそうな部分はあるし、全然、まーったく歯が立たないワケじゃないか……さぁて! 運転手は任せときな、月守!」
「はーい、特攻はお任せあれー! またドカーン! と頼むよ」
 準備はいいかと振り返ったディールに、勿論だ、ユエはにかっと不敵な笑みを向けた。
 水棲馬どもへと間合いを測りながら、最初の一撃は天へと見舞う。
 ディールが撃ち出すは、黒と白のソーダ水の雨。
「海は海でも星の海、星見酒と洒落込もうじゃないか!」
 高らかに彼女が謳うように、風が駆け抜ける蒼穹は一瞬にして星夜に染まる。きらきらと弾けるソーダ水の輝きに、水棲馬どもは何事かと足を止めて戸惑う。
 更に畳み掛けるように戦車の砲台を繰り、掃射する。弾丸の雨あられを、ドラゴンの鱗は殆ど弾いてしまうが、注意は十分に引きつけている。
 ヒュウ、口笛がその光景を讃える。空は輝く星空、火薬の匂いが爆ぜる大地。
 絢爛豪華、豪快で躊躇いの無い襲撃に、ディールの後ろでユアも目を輝かせていた。
「さあ、月守!」
「おう!」
 名前を呼ばれたユアは、しなやかにディールの肩を蹴り、再び戦車のアームの頂点へと跳び移る。心得たような流れる動きに微笑を向け、ディールは完璧なタイミングで、彼女を天へと放り出す。
「引き摺り落とせないっていうなら、そっちまでぶっ飛ばすだけさね!」
 届かぬならば、初めから距離など無くしてしまえばいい。
 単純で乱暴だが、解りやすい答えである。投げ出されたユアはといえば、ずっと近くなったサイダーの星夜に笑った。
「ボクは夜を司る血筋の生まれ――彼女が生み出す戦場は最高の舞台だ!」
 真っ直ぐに風を受け、白い髪を揺らしながら眼下を望む。
 上を睨むか、正面を睨むか――惑う水棲馬の姿を見つめ、彼らの在り方を、ふと思う。
「……人を呪う魔物か」
 ――かなり大雑把に分けてしまえば、ユアの中にも似たようなものはある。異質と変貌した、掴みきれぬ何か。
(「人の何が精霊を魔へと変えたのか――可哀想だと思う、共感もできる」)
「……でも、残念だけど、その殺戮は赦されないらしい」
 この背に、翼は無い。ゆえに落下していくだけ。乍ら、彼女の唇は歌を紡ぐ。
「哀しみを捨て、想いを黒に染め…この身はキミを奪う死となろう」
 ディールがもたらしてくれた星空が歌声に応じて輝く。
 握った刃物に、死の力を纏わせるとひらり降り立つ――ひと掻き、ふた掻き。その項へ、交差させて死を誘う。
 先程まで全ての攻撃を撥ね除けていた水棲馬は、ぷつりと糸が切れたように崩れ落ちていく。
 泥が跳ねる、横へ退く。憎悪の視線と共に黒く編まれた怨嗟の矢が、無造作に放たれる――そこへ、ディールの援護射撃が来る。
「人間、強欲で何が悪い? アンタらがソレを許さない、厭うってんなら――文句あるヤツは全員捩じ伏せて、これからも生き抜くだけだ」
 不敵に笑い、叩きつける。
「そうだ。生きるためには、欲がいる」
 頷いてユアは疾駆した。この身に宿る衝動に抗わず、欲の儘に死霊を喰らうこと。それは決して清らかな行いではないだろう。
 少年のような細くしなやかな四肢に、浅く矢が掠めていこうとも、彼女はその背に食らいつく。
「君らが人を貪るように、僕もその呪を全て喰らってやる――だから……」
 絶対的な死をふるって、また一体。骸の海へと沈めゆく。金の瞳を柔らかに細め、そっと、穏やかに歌う。結局紡がれる力は、死であるけれど。
「尊き精霊よ。せめて最後は呪を忘れ、安らかにおやすみ」
 少なくともこの瞬間だけは――安らかなるものが訪れると信じて。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ユルグ・オルド
馬、……魚、いや、まァ
ドラゴン、ッてことで一つ
悠長に眺めてる場合でもないわ

駆けても足を取られそうで
そんなら迎え撃つことにしようか
柄に手掛けたらいつでも抜ける姿勢のまま
呼ぶのは錬成カミヤドリ
翻す布はないが降る刃で行く路を塞ごう
追い立てて、立ちはだかって威嚇代わりに
向かってきたなら抜いて応じて気を引きつけて
屠るべき敵はここにいると
背後の意識を逸らしたなら

その首の後ろに狙いを定めて残りの刃を降らせよう
真向から首落としにかかってもいいんだけども
刃が毀れましたじゃア笑えなくない
まァそしたら狙うのは眼球での悪足掻き、と



●剣が舞う
 目の当たりにした生物は、さて、一言でなんと称したものか。
「馬、……魚、いや、まァ――ドラゴン、ッてことで一つ」
 悠長に眺めてる場合でもないしね、と結論を遠投し、ユルグ・オルドは身を屈めた。
 足場は緩い。間合いは格段にあちらが有利。ともすれば、場の優位はあちらが持っている。
 言葉通り、泥臭い斬り合いを仕掛けても――最悪はそれ、としようか。この案は、最初に選ぶ手ではあるまい。
「そんなら迎え撃つことにしようか」
 柄に手をかけると、細く息を吐く。ユルグの赤い瞳が少しだけ剣呑さを宿す。
 彼の周囲に『彼』そっくりなシャシュカの複製が浮き上がり、紗の如く扇状に広げると、それぞれに放出される。
 先行する複製された刃は、水棲馬どもへと降り注ぐ。予期せぬ襲撃に、それらは驚くも、大きく身体を撓らせて弾くと、するすると刃の間を縫うように駆って、シャシュカの雨を逃れていく。
 ひとつ偶然、尾へと垂直に落ちた剣が、叩かれ、鈍い音を立てて弾かれた。刃毀れこそしなかったが、確かに、急所以外はなかなか通じぬか――厄介な鱗だ、と改めてユルグは双眸を細めた。
 だが、狙いは別にある。剣の群れは水棲馬の進路を限定するように、幾度でもそれらを追い越し、遮り、誘導する。
 あらぬ方へと行きそうなのを一刀が威嚇すると同時、更に別方向へと逸れぬよう、斜めに斬り込ませて怯ませた。
 ユルグは何時でも抜刀できる姿勢の儘、無数の剣を操作し、水棲馬を一カ所へと追い込んでいく。自分の正面。自分を捉えざるを得ない場所へ。
 つまり、彼こそがこの剣を操るものであると、それらが気づき――『屠るべき敵はここにいる』と知らしめるように。
 果たして、彼の目論見通り、止まぬ剣の襲撃に怒った水棲馬どもは、揃いも揃ってこちらに首を向け疾駆してくる。
 その速さは侮れぬ。全く手も届かぬ位置にいたものが、瞬きの間で迫り、至近より聞こえる嘶きに、はっ、と彼は小さく笑った。
 確認は一瞬――視線を僅かに上げるや否や、泥を跳ね上げ地を蹴り跳ばし――跳び退いた。
 然し、引き攣ったような声が、水棲馬どもから次々上がる。
 すっかり意識をユルグに向けたそれらは、後ろから追いかける剣の群れを失念していた。背後に回り込んだ剣たちは、無防備な背を貫き、首を落としていく。
 悪いね、彼は構えを解くと、崩れ落ちていく精霊の残滓に声を掛けた。
「真向から首落としにかかってもいいんだけども――刃が毀れましたじゃア笑えなくない」
 武芸者の戯れに興じるにしても、後が閊えてるモンでね――風の行く先を見送り乍ら、そっと呟いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 集団戦 『ピンク・モフ』

POW   :    はい、次は君が鬼ね
【体を擦り付けることで】、自身や対象の摩擦抵抗を極限まで減らす。
SPD   :    僕が逃げる番だね
非戦闘行為に没頭している間、自身の【体毛】が【激しく光り】、外部からの攻撃を遮断し、生命維持も不要になる。
WIZ   :    僕が見えるかな?
自身と自身の装備、【咥えて持っている】対象1体が透明になる。ただし解除するまで毎秒疲労する。物音や体温は消せない。

イラスト:羽月ことり

👑11
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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●桜、ひらりと
 風の行く果て――地平線は何処までも続く。乾いた大地は荒涼としており、枯れ色の草がところどころ茂る程度。
 そんな蒼と土色の境界に、ふわり軽やかに舞い踊るは華やかな色を纏い、花弁の如く空を駆る。愛らしい顔立ちの獣――。
 されどその身体はドラゴンへと変じる呪いに冒されていた。背には厳めしい翼が生え、額には柔らかな毛並みを押しのけ、一角獣のような角が生えていた。
 ふわふわとした体毛で視認できぬが、この獣も堅い鱗で身を守っているようだ。
 獣たちは空を舞い、身体を守る鱗を備え、鋭い角をもっている――つまり、今までに出会ったオブリビオンよりも、よりドラゴンに近づいていることになる。
 何となく気の緩みそうな愛らしい顔立ちはそのままであるように、捉え所の無い攻撃スタイルも変わらない。つまり、ドラゴンの強靱さと猛々しさを備えたわけだが――さて、如何に攻略するか。その容貌に絆され、無策で挑めば苦戦は必至。
 地に立つものたちが迷うも、迷わぬも関わらず――空より、桜色の獣たちは駆けてくる。血が沸く程の、明確な殺意を伴って。
ディール・コルメ
月守(f19326)と
アドリブ歓迎

うし、ソーダ水ブチ撒けるとするかァ!
自分と自分の装備だのなんだのが透明になるなら
透明になる前に、目印をつけてやるってね

という訳で
本日二度目の星空展開!
上空と敵に向けて『絵空事』を使用
月守ィ!後は任されたから、好きに暴れてきな!

昏睡状態に陥った月守を戦車で抱えた後は
アタシのターンだ
生きてるヤツは治せるまで治療するけどさ
生憎、過去の残滓とやらは手の施しようが無いんでね

――あばよ、可愛い患者さん
戦車から降りて、零距離まで近付いたら
医療ノコギリで【傷口をえぐる】勢いで【部位破壊】を

仕事終わりには一服でも
そういや、月守はいつ起きるんだか……まぁ、細かい事はいいか!


月守・ユア
ディールさん(f26390)と
アドリブ可

なーいす♪ディールさん
これなら、隠れん坊する悪い子は捕まえられるね!

言われなくとも!暴れまわらせてもらうよ♪
”第六感”を研ぎ澄ませ
ディールの絵空事の上を駆ける

月魄幻影の煙を口に含み
ふぅ…と吹く煙に”精神攻撃””マヒ攻撃”を乗せて戦場に舞い踊らせる
煙は揺蕩う
逃げ隠れても自由な煙からは逃げられない

UC:命蝕
煙に魔力を込めて剣の様な無数の”呪殺弾”に形成”範囲攻撃”
”生命力吸収”を織り交ぜて放つ

逃げるなんて赦さない
1匹残らず
僕の糧となって果てろ
そうして…せめて…過去を未来へ運んであげるから

さぁ…
あとはディールさんの舞台
いっぱい遊んできて?
UC代償で、昏睡状態に



●星空にて、蝕が呑むもの
 陽は高く、下よりも近い。ゆえにであろうか、少し眩しい――。
「うし、ソーダ水ブチ撒けるとするかァ!」
 掌を翳して陰を作りながら、空を転回する獣たちの姿を眺め、ディール・コルメが不敵に笑う。
「透明になる前に、目印をつけてやるってね――という訳で、本日二度目の星空展開!」
 彼女が言うなり、戦車の砲台が天を仰ぎ――高らかに吼えた。
 獣たちの上から降り注ぐは黒と白のソーダ水の雨。空は黒く染め上げられて、弾けた水は輝く星になる。
 爽やかな香りが漂って、獣たちの身体に浸みる――色は、輝きは、それに合わせて薄く消えて、姿を捕捉することは難しくなってしまう。
 だが、その僅かな香りの変化と、弾ける音を聞き取ることは可能だろう。
「なーいす♪ ディールさん。これなら、隠れん坊する悪い子は捕まえられるね!」
 月守・ユアが臆面も無く褒めそやす。
 尤も、対するディールも又、当然だと片目を瞑る。同時に戦車を動かしながら、次の動きに合わせて進攻せねばならぬ。戦場なのだから。
「月守ィ! 後は任されたから、好きに暴れてきな!」
「言われなくとも! 暴れまわらせてもらうよ♪」
 軽やかにディールの戦車を足場に、空へ躍るも慣れたものだ。アームを駆け上がって、ディールが染め上げた空に金色の瞳を細める。
 その唇が咥えるは、三日月と十字架が刻まれた煙管。
 息を吹きつければ、煙が揺らぐ。呪いの風が吹くのとは異なる、煙の動き。
 思わず、笑みを刻む。揺蕩う煙が獣の形を描き出すようだ――ましてや、只の煙管でもなく。只の煙でもない。
 薄く――然し何処までも広がっていく煙を前に、ユアは迫り来る獣の角を、別のものの背を蹴り上げて躱しながら、告げる。
「逃げ隠れても自由な煙からは逃げられない」
 空を跳ねながら、煙を拡散するように、息を細く吐きながら。
 ユアはひとたび瞳を閉ざし、耳が捉える風の音と、弾ける星空の音と、獣たちが迫り来る音を聴く。
 いくつか通り過ぎる風が、彼女の四肢を傷つけていった。毛並みがくすぐるような感覚に、その正体を知る。だが、気にせず、自分のすべきことに集中していた。
 持ちうる感覚は全てを捉えている。彼女の内側にある月と死の魔力がもたらす衝動が、命を寄越せとあらぬ腕を伸ばす。
 それを支配しているのか。それとも、それに支配されているのか――脳裡にひとつ羽が落ちるイメージが浮かんで、消える。
 ユアはいつでも楽しそうに笑って、力を紡いだ。
「逃げるなんて赦さない――1匹残らず、僕の糧となって果てろ」
 その瞬間、拡散していた煙は形を変えた。
 無数の剣。命を屠る呪いの刃が、姿を隠した獣たちを串刺しにする――見えていようが、無かろうが。戦場を支配するのは彼女の魔力。
「そうして……せめて……過去を未来へ運んであげるから」
 煙が捉えている輪郭に合わせて、吹き荒れる風ごと食い破るが如き剣閃の舞い。
 爆発的に高められた死の発露は獣たちを大いに驚かせ、ここにある群れの多くを屠った。首と胴が離れたものたちは、赤い宝石を輝かせながら落ちていく――。
 それでも、巧くドラゴンの鱗に守られた個体もいるようだ――だが、その事実を認めながらも、もうユアに出来る事は無い。
 負傷は癒やされ、命で満腹になろうとも、この力の代償は払わねばならぬ。
「さぁ……あとはディールさんの舞台。いっぱい遊んできて?」
 満足そうに微笑んで、中天より崩れ落ちる――戦場で昏睡してしまうけれど、不安はない。
 落下地点まで素早く戦車を回したディールが受け止めてくれると信じているからだ。
 ――そして実際、ディールは落下するユアを確りと受け止めると、優しく座席に横たえた。意識があれば、きっと乱暴に転がしたであろうけれど。
 よくやった、と小さく労い、ノコギリを担いで不敵に笑う。
「ああ、アタシのターンだ」
 高度を下げた獣たちへ、鋭い眼差しを送る。
「生きてるヤツは治せるまで治療するけどさ――生憎、過去の残滓とやらは手の施しようが無いんでね」
 戦車から敢えて降り、大地に脚を着く。
 吹きつける風は乾いていた。猟兵である彼女には何の呪いも掛からぬが――ぐっと身体に力を籠める。
 泡の弾けるその音色。鼻腔をくすぐる、ソーダの香り――否、隠せぬ血の香り。見えざる敵へと、大振りにがたつく歯を叩きつける。既にユアが傷つけた龍鱗の位置を逃さず、疵を更に掻き捌く。
 ディールは医者だ。負傷の位置など見なくても解る――というのは、言い過ぎだが。
 すかさず身を翻して、背より迫る獣へノコギリを振り下ろす。畳み掛ける襲撃に応え、くるりくるりと、星夜の下、躍る。
 観客はいないのが、少し残念だろうか。
「――あばよ、可愛い患者さん」

 ふう、吐息と共に、紫煙が昇る。
 ディールは戦車に身を預けて仕事終わりの一服を楽しんでいた。
 ――まだ視界の隅で、激しい炎が燃えている。
 派手にやりあう同胞がいるらしいが、自分のすべき事は終わった。
「そういや、月守はいつ起きるんだか……まぁ、細かい事はいいか!」
 昏睡時間は一分ほどだったはずだが――疲れているなら、身を休めてもいいだろう。彼女は雑な見立てで判断すると、遮る物の途絶えた荒野で、微笑んだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

尭海・有珠
可愛らしい顔だとて竜に成りそこに殺意があるのなら
私も殺すのに一片の躊躇いもない

人もいない、燃えるものも然程ないとなれば
やり方にも遠慮はいらないな
炎の≪憂戚の楔≫で地上から空へと
高速・多重詠唱を用い、空を埋め尽くす勢いで天地逆の雨の如く降らす
延焼するなら尚良し
熱が体内に篭るか燃えるかして弱れば良いんだが
見下ろせる場所が優位にあれると思うなよ

動きが鈍るか当てられそうなものがいれば
≪憂戚の楔≫を巨大化させ、全力魔法・属性攻撃を乗せ
威力重視で1体ずつ確実に仕留めていく

自分にも炎は降ろうが耐性で多少は耐えられる
これしきの熱、首の落ちかけた痛みより
――を喪った心の痛みより、遥かにマシだと剣呑に笑い見据える



●誅する、楔
 確かに、愛らしい顔をしている生き物だ。
 だが図々しくも自分の頭上にあって、殺意を振りまき牙を剥くというのなら、そんな愛らしさなど数に入ろうか。
「可愛らしい顔だとて竜に成りそこに殺意があるのなら――」
 私も殺すのに一片の躊躇いもない、尭海・有珠はきっぱりと言い切り、『海』の宝珠を抱く真鍮色の蔓茨に掌を這わせる。
 緩く波打つ黒髪が、彼女の動きに合わせて軽く靡いた。
「人もいない、燃えるものも然程ないとなれば、やり方にも遠慮はいらないな」
 口元が刻むは、不敵な微笑。半ば伏せた蒼海の双眸が魔力の昂揚に、輝く。
「来たれ、世界の滴――凝れよ、奔れ、『憂戚の楔』」
 唱える声は聞こえない。既に地を割って、ごうごうと燃える魔法の杭が天へと奔る。
 有珠の放った炎の杭は幾度となく放出され、次々と獣を捉える。貫ければ最良。触れれば炎が移り、その毛皮が燃えるだろう。魔力に燃えるこの杭を、足場にもできなかろう。
 裡まで熱を残して弱ってくれれば良いが、それは落ちてくるまで様子見だ。
「見下ろせる場所が優位にあれると思うなよ」
 自分の術に自信をもっているが、有珠は油断などしない。
 あれは、ドラゴンなのだ。憎き相手であり、限りなくドラゴンであると言うならば、この程度で朽ちていくという判断に依るのは危険だと判断する。
 事実――かの桜色の獣たちは、互いに身を擦りあい、その摩擦を極限まで減らして加速した。
 焔が舐める陽炎を突き抜けて、鋭き角で有珠を追う。
 焦げた匂いがたちまち周囲に立ちこめる。視認するより先、軽やかに彼女は地を蹴って、後ろへ跳ぶ。
 瞬く程の間に、先程立っていた位置より、巨大化した炎の杭が突如と出でて、獣を灼く。空気抵抗もなく真っ直ぐ滑空して来ているのだから、むしろ避けようも無い。
 だが敵もさるもの、仲間たちの身体を滑るように軌道を変えたものたちが、次々と彼女へ突進してくる。
 一体、二体は間に合わぬ。杖で軽く合わせて凌ぐが、膚に浅い疵が走った。それを、忌々しそうに見つめるだけで、彼女の集中は既に、次の群れを如何に誘導するかを考えている。
 炎を纏いながらくるりと空を転回した獣たちが、再び高速で迫り来る。焦げた黒い煙が、足跡のように空に線を描いていた。
「お互いに、学習しないものか」
 囁く言葉は皮肉。双方、同じ攻撃を仕掛けるのは自信の顕れ。だが、こちらは少し違うと、唇だけで囁く。
 今度は、動かなかった。じっと大地の上に踏みとどまり、自分に向かってくるもの一体へ、渾身の楔を放つ。視界が揺らめき、炎熱がぶわりと大地ごと包み上げる。
 熱のいきれの息苦しさは有珠も苛んだが、彼女は気にしなかった。
 自分の結んだ魔術で指先に痛みが走ったり、皮膚が糜爛と崩れるような無様は無い。何より、そこまで有珠を追い詰めるほどの敵には非ず。
「これしきの熱、首の落ちかけた痛みより……――を喪った心の痛みより、遥かにマシだ」
 剣呑に笑うと再度――自分を囮に誘導しながら、成れ果てどもへ、順に報いを。
 ああ。焦る必要も無い。
 丁寧に、全て、殲滅してやる心算で――最初から此処にいるのだから。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シリウス・クロックバード
ーー(無言で銃を空に向けたい衝動を抑え

もふもふというか、ピンクのふわふわとした生き物に見えるけど
確かに。さっきまでと同じ、硬い鱗の気配はある

獣の殺意に理由は無い、か。
ーー言ってくれる。

今此処に、月は満ちた。
星々は隠れるとも、終わりを告げよう。

隠れんぼが好きでも逃がさないよ
みんなに呼びかけよう
荒唐無稽な願いを此処に。

誰よりも僕は強くあろう
君たちの存在を見失わないでいよう。
その熱も、声も、姿も、余さずこの目で見て忘れない

それがどれ程の傲慢でも
弓に剣の矢をかけ、迷い無く穿つ
俺の願いと君たちの「竜」の戦いだ
間合いを詰められようが、傷は構わず。矢が放たれば良い

ーー俺には、君が見えるよ

天は巡る。良き眠りを



●荒唐無稽なるは、
 空にはふわふわとしたピンク色の獣が駆け回っている。
 それを見つめた男は――黙した儘、何も語らず。震える腕で、耐える。
 天に銃を向けたい衝動を瞳を閉じてやり過ごしたシリウス・クロックバードは、ひといき零してから薄く開いた。
「もふもふというか、ピンクのふわふわとした生き物に見えるけど――確かに。さっきまでと同じ、硬い鱗の気配はある」
 あれはドラゴン。獰猛で凶悪な獣だ。
 ――そんな事を思った瞬間、脳裡を掠めるフレーズに軽く眉根を寄せた。
「獣の殺意に理由は無い、か。――言ってくれる」
 出立の前に聴いた詞を思いだして、口元に嘲笑を浮かべる。
 いくつの意味を含むのか。今は忌々しき宿縁へ届く矢はない――その代わりにするというのは、呪いに冒された獣どもにとっても業腹であろうが。
 理由など、澄まし笑えば覆い隠せる。夜空に美しく月のように。
「今此処に、月は満ちた。星々は隠れるとも、終わりを告げよう」
 弓を手に剣を番えながら、シリウスは悠然と告げる。
「隠れんぼが好きでも逃がさないよ」
 きりりと弦が鳴る。
 美しき射手の構えは如何なる強風が吹きつけようと、揺るぐことはない。
 その敵意に気付いた獣たちが次々と姿を消していき、シリウスの視界に広がるのは蒼穹のみ。だが口元に浮かべた余裕の笑みは変わらぬ。
「誰よりも僕は強くあろう。君たちの存在を見失わないでいよう――その熱も、声も、姿も、余さずこの目で見て忘れない」
 右目に埋め込まれたサーバーから、荒唐無稽な願いに、賛同を乞う。
 力を溜めて、放たれる瞬間を待つ一矢。これは相手の出方を見る嚆矢などではない。
「――俺には、君が見えるよ」
 ――姿を消したドラゴンすら、的確に撃ち抜く一矢。
 迷いなどなく、シリウスは指を離す。放たれた刃は、見えぬはずの獣の鼻を貫き、落とす。成果を見届けるより先、彼は次の矢を構えている。
 放ち、番え、放つ。淀みなく暇もなく、畳み掛ける剣の矢に、獣たちは次々とを居抜かれていった。
 額を、胸を、――龍鱗など知らぬよう易々と矢弾は貫いていく。
 ドラゴン退治の特殊な弓矢であろうか。否――それが特殊な弓矢であることは、事実だが――違う。本来であれば、ドラゴンを容易く落とすほどの力はもたぬ。
 言うまでもなく――賛同者によってもたらされた奇跡の力だ。
 それがどれ程の傲慢でも、実現するのだ。
 然れど敵は数をもって、彼に応報を与えんと滑空してくる。幾つもの獣が撃ち取られ、桜花を散らすように隊列から零れていく。
 それでも――仲間の骸で矢を回避した獣の角が、彼の頬を掠めていった。褐色の膚に、ゆっくりと零れる朱を、シリウスは拭うこともせず、軽くステップを踏んで横に転がる。
 腰を落とした姿勢から、再度襲い来る獣へと容赦なく至近距離から矢を叩き込む。
 その所作に、迷いなどない。
「俺の願いと君たちの……『竜』の戦いだ」
 尽きるまで、増悪の限り、向かってくるが良い。振り向き様に矢を放ち、シリウスは前へと駆る。自ら、突進するように距離を詰めた。
 視線の高さに掲げた弓の奥、彼の新緑が輝く。
 端から見れば、彼は虚空に弓を突きつけたように見えただろう――だが、それは、獣の鼻先へと鏃を埋める程、至近に迫っていた。
「天は巡る。良き眠りを」
 弔いの詞を唱えながら――その眉間を、無慈悲に貫いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アルバ・アルフライラ
やれ、血の臭いを漂わせおって
愛らしい身が台無しぞ?
竜の呪いに侵された分、可愛げも何もあったものではないが

用意したトランクを投げ放つ
現れたるは【刻薄たる獣】
足りぬと分ればトランクを杖で叩き
高速詠唱にて更に獣共を喚び出す
さあ、存分に喰らい尽くせ
但し彼の身に宿す石は無事に入手せよ
――出来ぬとは言わせんぞ?

たとえ姿を消そうと逃げられると思うな
私のこの感情がある限り
貴様等は一匹たりとも逃しはせん
我が首を砕かんとする爪、牙
それが届く前、我が目の前で
災厄に喰い千切られる様は
さぞ愉快であろうよ

…ふふん、さてさて
亡骸を見下ろし、求めていた品を探す
今迄とは竜化の度合いも異なる故
さぞ素晴らしい石が見つかるやも知れん



●輝ける墓標
 はらはらと、砕けていくドラゴンの残骸が風に乗って通り過ぎていく。
 流れていく桜色など意に介さぬよう、スターサファイアの双眸はゆっくりと瞬いた。
「やれ、血の臭いを漂わせおって。愛らしい身が台無しぞ?」
 白い貌に、皮肉の微笑を湛えてアルバ・アルフライラが声かける。
「――竜の呪いに侵された分、可愛げも何もあったものではないが」
 笑みを含んだ声音を響かせながら、携えたトランクを投げ放つ――乱暴な扱いより、トランクは口を開いて弧を描く――それこそが、解放の合図である。
「喰ろうて良いぞ、私が許す」
 そう命ずる相手は、匣の中に封じられていた災厄。
 怒濤と飛び出した獣の形をしたそれらは、空を支配する獣たちへと一目散に駆けつける――飢えきった獣が、血を滴らせた新鮮な肉を前にしたように。
 逸る獣たちにアルバは瞳を細めて、宥めるでも嗾けるでもない命令を下す。
「さあ、存分に喰らい尽くせ。但し彼の身に宿す石は無事に入手せよ――出来ぬとは言わせんぞ?」
 仕込み杖を手に指揮するように。
 彼の頭上で、二種の獣たちは激しくぶつかった。
 否、正確には一方的な蹂躙に等しかった――アルバが喚びし、刻薄たる獣はドラゴンの鱗などあらぬかのように、その喉元に食らいつく。
 然れど敵もドラゴン。仰け反って獣を振りほどこうと首を振るが、次々と数を増やしたものたちに呑み込まれ、鱗ごと砕かれた。
 容赦なく牙を立て屠り乍らも、忠実なる獣たちは、その身体にある石を噛み砕くことはなかった。ぽつり、ぽつりと。血に濡れた輝ける石が落ちてくるのを、主は満足そうに見つめている。
 そう、アルバはただ暢気に待っているわけではない。悉に戦況を見つめ、獣の数が足りぬと思えば、魔力を充填した仕込み杖でトランクを叩き、更に召喚する――桜色の勢力はたちまち、災厄によって塗りつぶされていく。
 だが、それらの動きを見極めたらしい一群が、頑強なる角を振り乱し、脇より獣たちの流れを断ち切った。
 瞬間、桜色が蒼空より消える――それを地上で見ていたアルバは、唇に孤を刻んだ。
 小賢しい事よ、囁く言葉はゆるりと穏やかであったが、内包する感情は異なる。
「たとえ姿を消そうと逃げられると思うな――私のこの感情がある限り、貴様等は一匹たりとも逃しはせん」
 元より、刻薄たる獣を指揮し、維持する力はアルバの憎悪。
 姿を消したはずのドラゴンのか細い悲鳴が、遥か上空で響くのを、彼は確かに聴いた。
 望みは悪辣なる呪いより生まれしドラゴンを食らいつくし、この世より廃すこと。ただそれだけのことで、そこまで耐えず憎しみを保てるものか。
 未だ後続で姿を顕わにしていた桜色の獣たちの――真紅の双眸が憎しみに歪み、一斉にアルバを見据えた。
 憎しみには、憎しみを。牙には、牙を。
 それらの思考が、アルバは不思議とよくわかった。吹きつける風に異常なまで殺戮衝動を高められ、肥大した殺気は――命を省みる必要性など不要と、精神を乗っ取り、戦闘能力を向上させた。
 ――戸惑いを捨て、目的を固めれば、この陣を突破できぬはずもない。本来の、柔らかで捉えにくい特性を使うのだ――。
 それを確認するような瞬きの後、ドラゴンどもは再び姿を消した。
 ああ、愚かなり。仕込み杖を弄びながら、アルバは囁く。
 疾風が叩きつけ、髪や外套を一気にはためかせた。宝石の身体はいずれも繊細な作りだ。獣が本気で体当たりをすれば、毀れてしまうだろう。
 風切りの音に、アルバは薄く瞳を閉ざした。
「……我が首を砕かんとする爪、牙。それが届く前、我が目の前で、災厄に喰い千切られる様は――」
 さぞ愉快であろうよ、戯れに微笑んだ瞬間。
 彼の膚が欠けるよりも先、姿を消したドラゴンどもを、たちまち追いすがる獣たちの作る、影の蠢き。
 生々しい臭いが鼻につく。
 鱗の砕ける音、骨の折れる音、肉が咀嚼される音――ぴしゃりと地を濡らした鮮血に、アルバは一切の興味をもたぬ。
 ふと腕をあげてみる。内側深くが、みしりと軋んだ。なんやかんやと無防備を装いつつも、仕込み杖を構えて、魔力の壁は張っていた。それを破られた感覚はあったのだ。
 ――薄くとも。この玉体に、疵をいれおったか。
 やはり、形は柔らかなでも、忌々しき呪いの深く冒された獣だけある。ならば、期待がもてるというものではないか。
「……ふふん、さてさて。さぞ素晴らしい石が見つかるやも知れん」
 極めて朗らかに告げると、躊躇無く亡骸を踏み越え、彼は宝探しを始める。その表情は、今まででもっとも明るく輝いていた。
 ――さて、ずっとこの先に潜伏する諸悪の根源ならば、一体どれほどの秘石を持つであろうか。
 魂の名残か、命の結晶か――陽を受けて煌めく無数の竜胆石の中央で、華やかにアルバは微笑むのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年04月29日


挿絵イラスト