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希望を蹂躙する闇の騎士団

#ダークセイヴァー #人類砦 #闇の救済者

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「やめて……お願い、やめて!!」

 粗末な身なりをした村娘の悲痛な叫びは、無数の馬蹄の響きによってかき消された。
 蹂躙。この光景を端的に現せる言葉を探すなら、まさにその一言こそが相応しい。
 人々がこの地で積み重ねてきたもの――生命も施設も営みも、全てを踏み躙る疾走。

「どうして……私達はただ普通に生きていくことができれば、それで……」
「――貴様たち人間が明日に希望を抱くこと。それ自体が『悪』なのだ」

 無惨に踏み荒らされた畑、破壊し尽くされた村、血と臓物を撒き散らした屍の山。
 その只中で崩れ落ちる村娘に酷薄な言葉を告げるのは、黒き武具を纏った女騎士。
 その身に帯びた漆黒のオーラは、彼女が人を外れた者であることを如実に示していた。

「喜ぶこと、笑うこと、生きることを楽しむこと。それらは全てヴァンパイアに対する『罪』。貴様たちに許されるのは服従、恐怖、そして絶望だけだ」

 白い馬上にて槍を携えたその振る舞いは洗練されており、心身ともに相応の鍛錬を重ねた騎士であることが窺える。だがその厳粛なる口調で紡がれるのは無慈悲な宣告のみ。
 刃のごとく鋭き眼光にて弱者を睥睨し、彼女は黒き槍の矛先を最後の生存者に向ける。

「恨むがいい。そして絶望と共に死ね。貴様たちが如何様な最期を迎えたかを人々が知れば、分不相応な希望を抱かんとする叛徒もいずれは絶えるだろう」

 ――命乞いをする機会さえ与えられず、心臓を貫かれた娘は断末魔を残して屍となる。
 この日、ヴァンパイアの支配に抗う「人類砦」がひとつ、この世界から消え去った。


「事件発生です。リムは猟兵に出撃を要請します」
 グリモアベースに招かれた猟兵たちの前で、グリモア猟兵のリミティア・スカイクラッド(勿忘草の魔女・f08099)は淡々とした口調で語りだした。
「ダークセイヴァーに点在する『人類砦』のひとつが、オブリビオンの襲撃を受けて壊滅する未来を予知しました」
 昨今のダークセイヴァーでは猟兵や「闇の救済者」達の弛まぬ努力が実を結び、ヴァンパイアの支配が及ばない人類の活動圏が現れ始めている。どれもまだ規模は小さいものだが、これらの領域は希望を込めて「人類砦」と通称されている。
 無論、支配者たるオブリビオン側からすれば面白い筈もない。芽生え始めた希望を再び根絶やしにするために、軍勢を派遣して「人類砦」を破壊しようというのだ。現在の人類砦の規模や戦力ではこの襲撃を撃退するのは難しく、防衛には猟兵の力が不可欠だろう。

「今回襲撃を受ける『人類砦』は地方にある小規模な農村です。慎ましやかながらも自給自足の生活を送り、少しずつ防備や人口を増やしていましたが、残念なことにヴァンパイアに目を付けられてしまったようです」
 自身の支配下にない人間共を見つけたヴァンパイアの領主は、配下の中でも精鋭の騎士団に人類砦の破壊を命じた。これは明らかに見せしめとしての意図が強く、過剰なほどの戦力で徹底的に反逆者共を叩き潰すことで『現実を理解させる』つもりなのだろう。
「間の悪いことに現在、村では春の収穫期の真っ最中です。住人への被害は勿論のこと、畑や作物を荒らされるだけでも、村の生活は立ち行かなくなります」
 このタイミングの襲撃もおそらく偶然では無いのだろう。ヴァンパイアの圧政はどこまでも容赦がない。命だけではなく生きる為の希望を根こそぎ奪い尽くそうという算段だ。

「襲撃を実行するのは『闇に誓いし騎士』が数十名。いずれも領主に忠実なヴァンパイアで構成された精鋭部隊で、高い統率力と油断ならない戦闘力を持っています」
 特に、怪物じみた馬に跨り巨大なランスから繰り出される突撃戦法の威力は脅威だ。
 彼らの目的はあくまで「人類砦の壊滅」なので、敵に村に侵入されないよう、敵の注意をこちらに引き付けたり、郊外で食い止めたりするための工夫が要求されるだろう。
「この騎士団を率いる隊長は『暗黒騎士サンドラ』と名乗る女騎士です。彼女だけは他の騎士とは毛色が異なるようですが――少なくともその戦力は他の騎士を凌駕します」
 彼女以外の騎士団員が束になっても、彼女ひとりの実力にも及ぶまい。その強さと堂々たる立ち居振る舞いから、元は高名な騎士だと思われるが、何故それがこのような襲撃に加担しているのか詳細は不明である。

「いずれにせよ事態は切迫しています。襲来する全てのオブリビオンを撃退し、人類砦に再び平和を。それが今回の依頼の目的となります」
 闇深きこの世界にようやく現れ始めた希望の成果を、ここで砕かせる訳にはいかない。
 期待と信頼をこめた眼差しで猟兵達を見回してから、リミティアは手のひらにグリモアを浮かべると、人類砦への道を開く。
「転送準備完了です。リムは武運を祈っています」



 こんにちは、戌です。
 今回の依頼はダークセイヴァーにて、ヴァンパイアの支配及ばぬ「人類砦」の村を、襲撃するオブリビオンの騎士団から守るのが目的です。

 襲撃を受ける「人類砦」は春の収穫期を迎えた小さな村落です。
 人口はおよそ500人足らずで、農業による自給自足の生活を営んでいます。
 物見櫓や防柵といったある程度の防衛設備もありますが、今回ほどの規模の襲撃に耐えうるものではなく、また精鋭の騎士と戦えるような住人もいません。

 第一章では村を襲う『闇に誓いし騎士』との集団戦になります。
 戦場は村の郊外にある平原ですが、敵は基本的に領主からの命令を果たすことを優先して行動するので、一部でも突破を許せば村に大きな被害が出ます。

 第二章は騎士団を率いる『暗黒騎士サンドラ』とのボス戦です。
 ヴァンパイアの精鋭騎士達をさらに上回る実力を持った強敵です。
 戦闘においては配下と同様、人々に「絶望」を齎さんがために行動します。

 無事に騎士団を撃退し人類砦を守り抜ければ、三章では村の日常となります。
 住人と交流を深めるもよし、畑で収穫の手伝いをするもよし。戦いの疲れを癒やしながら、明るい未来を信じられるような希望を与えられれば最良でしょう。

 ダークセイヴァーの状況も、少しずつですが希望が見えてきました。
 それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
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第1章 集団戦 『闇に誓いし騎士』

POW   :    生ける破城鎚
単純で重い【怪物じみた馬の脚力を載せたランスチャージ】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD   :    屠殺旋風
自身の【兜の奥の邪悪なる瞳】が輝く間、【鈍器として振るわれる巨大な突撃槍】の攻撃回数が9倍になる。ただし、味方を1回も攻撃しないと寿命が減る。
WIZ   :    闇の恩寵
全身を【漆黒の霞】で覆い、自身が敵から受けた【負傷】に比例した戦闘力増強と、生命力吸収能力を得る。

イラスト:すねいる

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

エウトティア・ナトゥア
※アドリブ・連携歓迎

無体なことをする、人の営みを悪と断ずる痴れ者共めお主らこそここで果てるがよいぞ
まずは村の守りを固めるかの
【精霊の唄】を歌い、【不壊属性】の【石筍】を乱立させ村を取り囲むのじゃ
次に【秘伝の篠笛】を吹き鳴らし、狼と大鷲の群れを呼び出して陣地構築じゃな
狼と大鷲に【手作りの縄】を渡し、騎手の高さに合わせ石筍を使って張り巡らせて即席の陣地とするのじゃ
敵は騎兵じゃ、機動力を奪うには十分じゃろう

準備が完了したら防衛じゃな
【巨狼マニトゥ】と狼の群れで足の止まった騎兵を囲んで屠るのじゃ
わしも石筍を盾として死角から【誘導】する矢で1騎ずつ仕留めるとするかの
足の止まった騎兵などただの的じゃな


ギージスレーヴ・メーベルナッハ
まあ、支配者にとっては面白い状況ではなかろうな。
…だが人類を侮った報いはこの程度で終わらせぬ。人々にとっての希望、守り抜こうではないか。

郊外の平原地帯に布陣、黄昏大隊・歩兵部隊を発動。
此処は既に最終防衛線、敵兵の一騎とても通してはならぬ。その旨を命じた上で敵の迎撃に当たる。
ドローンを飛ばし戦場の敵分布を随時把握。
兵にはライフルにて迫る敵を順次射撃、敵が数を揃え突破を試みるならばグレネードでの一掃を命令。
ユーベルコードで強化を図る敵には集中攻撃を命令、但しその隙に別の敵の浸透を許さぬよう戦力配分に注意。
余自身も魔導小銃での射撃で攻撃に参加。突破しそうな敵、強化を図る敵を【スナイパー】で撃ち抜く。



「まずは村の守りを固めるかの」
 最初に人類砦に降り立ったエウトティア・ナトゥア(緋色線条の巫女姫・f04161)は、彼方から近付いてくる馬蹄の轟きを耳にしながら【精霊の唄】を紡ぎはじめる。
 大自然の息吹を感じさせるような伸びやかな歌声が辺りに響くと、主に大地や鉱物の精霊たちがそれに呼応して、村の周辺の地面からズズズと盛り上がっていく。
 そうして乱立するのは、不壊なる石筍にて構築された大きな石壁。ぐるりと村を取り囲んだそれは、騎兵の突撃を阻害し機動力を制限することに念頭が置かれていた。

「此処は既に最終防衛線、敵兵の一騎とても通してはならぬ」
 エウトティアが築いた防壁の前に兵を配置するのはギージスレーヴ・メーベルナッハ(AlleineBataillon・f21866)。【黄昏大隊・歩兵部隊】にて召喚された彼女の兵士達はUDCアース風の軍服を纏い、アサルトライフルを手に一糸乱れぬ戦列を築く。
「敵はもうすぐ近くまで来ている。貴殿も油断めされるなよ」
「分かっておる。わしの猫耳も飾りではないからのう」
 偵察に飛ばした無人探査通信装置「ヴィッセン・ミトヴィルケン」からの報告を元にギージスレーヴが敵の接近・布陣・方角を把握する一方、エウトティアは「秘伝の篠笛」を高らかに吹き鳴らし、狼と鷲の群れを呼び出して陣地構築の仕上げをする。
 獣たちに渡した強靭な「手作りの縄」を、石筍を使って騎手の高さに合わせて張り巡らせれば、敵の突破を阻む障害の完成だ。
「敵は騎兵じゃ、機動力を奪うには十分じゃろう」
 即席ながらも堅固に組み上がった陣地を満足げに見やると、手製の短弓に矢を番えるエウトティア。時間が限られていた中、どうにか敵の到来に間に合ったようだ。

「どうやら我らの襲撃は気付かれていたか。彼奴らめ、よい"耳"を持っている」
「だが主命に変更は無い。我らヴァンパイアに仇なす者に絶望による罰を」
 地鳴りと共に平原の彼方より姿を現したのは漆黒の靄を纏った漆黒の騎士団。
 闇に誓いし騎士達は怪物じみた黒馬に跨り、黒塗りの甲冑と槍で武装し、爛々と輝く紅い瞳を人類砦に向ける。彼らの目的は砦の殲滅、猟兵がそのための障害となろうとも、蹴散らして突き進もうという気か、騎馬の勢いが衰える様子は微塵もない。

「まあ、支配者にとっては面白い状況ではなかろうな。……だが人類を侮った報いはこの程度で終わらせぬ。人々にとっての希望、守り抜こうではないか」
 不遜な笑みを口元に浮かべながら、ギージスレーヴは魔導小銃「トーテンクロイツ」を構え兵士達に号令する。ここに人類砦を巡る戦いの火蓋は切って落とされた。
「歩兵部隊、前へ! 目標の完全沈黙まで全力にて攻撃せよ!」
 黒い闇に顔を覆われた兵士達が、一斉にアサルトライフルによる射撃を開始する。
 けたたましい銃声と共に放たれる銃弾の嵐が、村に近付く騎士を撃ち抜いてゆく。
 しかし敵も精鋭、銃撃に晒されながらも【闇の恩寵】にて自らを強化し、痛みなぞまるで感じていない風で猛然たる突撃を敢行する。

「先頭の敵に火力を集中させよ!」
 ギージスレーヴはユーベルコードを発動した闇の騎士への集中攻撃を命令する。
 強化を図る敵にはそれ以上の火力を以って応じる。但しその隙に別の敵に浸透されたは元も子もないため、戦力の配分には常に細心の注意を要する。ドローンによる敵分布の随時把握と、彼女の指揮能力の高さが無ければ容易に突破されていただろう。
「隊列を乱さず徐々に後退せよ。奴らを死地に誘い込め!」
 全方面で戦線を維持しながら、黄昏の歩兵部隊は遅滞戦術を駆使して移動する。
 そこに待ち受けているのは、エウトティアが準備した対騎兵用の防御陣地だ。

「怯むな、一気に突破せよ――ッ!?」
 闇の恩寵を得た者を先頭に、数を揃えて歩兵陣の突破を試みた騎士達は、乱立する石筍と張り巡らされた縄によって勢いを殺されることとなった。平原では無類の強さを誇る騎馬突撃も、障害物の多い地形ではその真価を発揮することはできない。
「今じゃ、行けマニトゥ!」
 騎士達が足を止めた瞬間に襲い掛かったのは、エウトティアの使役する巨狼マニトゥと狼達。聖獣たる白狼をリーダーとして一丸の群れとなったそれは、狩りをするように俊敏な機動で騎士団を包囲すると、牙を剥き出しにして喰らいついた。

「無体なことをする、人の営みを悪と断ずる痴れ者共め。お主らこそここで果てるがよいぞ」
 群狼の餌食となった騎士団に、怒りを込めて冷たく言い放ちながら、エウトティアは石筍の陰から矢を放つ。風の精霊の力を宿した矢はまるで生きているかのような軌道を描き、標的の死角から鎧の隙間に深々と突き刺さった。
「これが精霊の裁きじゃ」
「おのれッ!!」
 窮地に陥った騎士達はなんとか群狼を振りほどいて突破口を開かんとするが、"不壊"の属性を付与された石筍が乱立するこの地帯は、突撃槍のような長物を振り回すには適さず、並外れて巨大な馬体は今や自らの小回りを制限する枷でしかなかった。
「足の止まった騎兵などただの的じゃな」
 進撃する脅威から木偶の坊と化した連中に容赦なく矢を射掛け、1騎ずつ確実に仕留めていくエウトティア。同時にマニトゥと群狼の牙も容赦なく敵を屠っていき、戦場は騎士の悲鳴と狼の遠吠えが響く修羅場と化した。

「己が狩る側だと疑わなかったのだろう、痴れ者め。狩られる側の気分はどうだ?」
 他方では同様に騎兵封じの陣地に飛び込んでしまった騎士達を、ギージスレーヴ率いる歩兵部隊が蹂躙していた。突破のために固まったまま身動きの取れなくなった敵陣に、ハンドグレネードが投げ込まれ、戦場に爆炎と衝撃波を巻き起こす。
「貴様らはここから一歩も進めぬ。一掃せよ!」
 爆音が轟く中、指揮官たる彼女自身も魔導小銃を手に攻撃に参加すると、往生際悪く突破を試みる者や強化を図る者に狙い定め、呪術弾頭にて次々と撃ち抜いてゆく。
 古風な意匠のマスケット銃でありながら、彼女の銃はリロードの動作を必要とせぬまま無限とも思える弾丸を放ち続け、進退窮まった敵を脅かし続けるのだった。

「このような罠に掛かるとは……主君よ、不甲斐ない我らをどうかお許しを……!」
 矢弾と牙と爆発に屠られ、死にゆく彼らが末期に口にするのは主君に対する懺悔。
 猟兵と群狼と黄昏大隊の迎撃により、闇の騎士団の第一陣はことごとく駆逐されたのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

御狐・稲見之守
【同行:リリエ f19764】
邪神ばかりのこの世で救う神となるが我が役目、さて天使殿は如何する? ふふ、ワシは胸糞悪い彼奴らを鏖殺する以外ありえんがナ。

圧倒的な絶望――"過剰な程の戦力で徹底的に反逆者共を叩き潰す"か……なるほどなるほど、では此方もその道理に従おうじゃァないか。幸い戦場は平原、多少の無茶は利くじゃろうて。

UC荒魂顕現、我為す一切是神事也、天裂き地割る神業畏み畏み奉願祈るべし。吹けよ暴風、轟け雷鳴――来たれ稲妻の嵐。制御などみみっちいことはせん、暴走するがままに一切合切蹂躙して消し炭にしてしまえ。

リリエ殿を近くに寄せ、霊符による[電撃耐性][呪詛耐性]の防陣を張っておくこととす。


リリエ・ヘブンリィブルー
【同行:稲見之守 f00307】
問われるまでもなく、天覆う暗雲の世に差した光たる人類砦を破壊させてなるものですか。どうか御付き合いくださいませ、神なる御方。

敵の注意を砦から離すことに加え、その高い統率を乱すならば広範囲且つ混乱を呼ぶようなやり方が良いでしょうね…私と稲見之守さんとで似たUCが使えるので協力しましょう。

UC天災、主の御名に於いて蒼天より祝福を、悪しき者に滅びあれ。今此処に神鳴る怒槌を――来たれ雷の洪水。周囲に稲見之守さん以外の味方がいないのを確認して意図的に暴走させ、彼等を雷の洪水で押し流し打ち据えます。

また、[破魔]の[祈り]を以て漆黒の霞を除けその守りを打ち払います。



「邪神ばかりのこの世で救う神となるが我が役目、さて天使殿は如何する?」
 楓柄の扇子で口元を隠しながら、御狐・稲見之守(モノノ怪神・f00307)は問う。
 その相手はリリエ・ヘブンリィブルー(至天の蒼・f19764)。この闇に閉ざされた世界の暗雲を払い、蒼天へと導くことを使命とするオラトリオの聖者である。
「問われるまでもなく、天覆う暗雲の世に差した光たる人類砦を破壊させてなるものですか。どうか御付き合いくださいませ、神なる御方」
「ふふ、ワシは胸糞悪い彼奴らを鏖殺する以外ありえんがナ」
 純白の天使は穏やかなれど決意を秘めた口調で応じ、モノノ怪神は扇子の下で静かに笑う。両者が見据えるものは共に同じ、人類砦へと迫る暗黒の騎士団であった。

「圧倒的な絶望――"過剰な程の戦力で徹底的に反逆者共を叩き潰す"か……なるほどなるほど、では此方もその道理に従おうじゃァないか」
 彼方から押し寄せる膨大な騎影を前にして、稲見之守は【荒魂顕現】を詠唱する。
 相手が力による蹂躙を是とするのならば、此方はそれ以上の力をもって目にもの見せてくれようと、幼気な童女の姿から他を圧するような神威がほとばしる。
「幸い戦場は平原、多少の無茶は利くじゃろうて」
「敵の注意を砦から離すことに加え、その高い統率を乱すならば広範囲且つ混乱を呼ぶようなやり方が良いでしょうね……私も協力しましょう」
 妖しげに微笑む相方に呼応して、リリエもまた【天災】の詠唱を紡ぎはじめる。
 大気が震え、風が逆巻き、雷鳴が轟く。周辺に巻き込むような味方がいないことを確認した後、ふたりは最大まで高まった力を一切抑え込むことなく解き放った。

「我為す一切是神事也、天裂き地割る神業畏み畏み奉願祈るべし。吹けよ暴風、轟け雷鳴――来たれ稲妻の嵐」
「主の御名に於いて蒼天より祝福を、悪しき者に滅びあれ。今此処に神鳴る怒槌を――来たれ雷の洪水」

 その瞬間――天をも焦がさんばかりの落雷によって、戦場から音と光が消し飛ぶ。
 鼓膜をびりびりと震わせる雷鳴。視界を真っ白に染め上げる雷光。天の怒りを体現したような雷の嵐と洪水の全てが、ヴァンパイアによる闇の騎士団に襲い掛かった。
「なん―――ッ?!!」
 驚愕も、悲鳴も、誰かの耳に入る前に雷鳴にかき消される。意図的に制御を外された2人分のユーベルコードによる天変地異は、暴走するがままに戦場にいる一切合切を蹂躙し、雷光の熱と衝撃によって押し流していく。そこにヴァンパイアであろうとも区別はなく、自然の猛威の前には等しく全てが無力であった。

「驕りし者よ、己の矮小さを知りながら消し炭になるがよい」
 雷光の裁きが繰り広げられる中、唯一無事であったのは稲見之守とリリエの立つ僅かなスペースだけだった。稲見之守の霊符が張った防陣が雷の災いを防いでいる。
 逆に言えばそれ以外の者は惨劇の渦中であった。絶え間なく降り注ぎ押し寄せる雷鎚によって騎士達は打ち据えられ、騎馬ごと骨の髄まで灼き焦がされて果ててゆく。
「おのれ……我ら闇に誓いし騎士、雷ごとき何するものぞ……!」
 だが、それでも騎士達は同胞の屍を踏み越えながら、果敢なる突撃を続行する。
 雷に打たれる度にその身を覆う【闇の恩寵】が彼らの戦闘力を高め、漆黒の靄が障壁となって雷光を防ぐ。精鋭として領主に抜擢された実力は伊達では無いようだ。

「この世界はすでに我らが領土。自然さえも我らを阻むことはできぬ!」
 漆黒の突撃槍を振りかざし、雷光の術者ふたりを一気に屠らんとする騎士団。
 しかし、その矛先が彼女らに届くよりも早く、リリエが主への祈りを捧げる。
「主よ、汝の威光を以って魔を退け給え」
 雷鳴が轟く中でも不思議とはっきりと聞こえたその声は、破魔の祝詞となって悪しき者共から闇の恩寵を除く。漆黒の靄による護りを失い、驚愕に目を見開く騎士達。
「馬鹿な―――ッ!!!!」
 無防備となった彼らの元に、再び数え切れないほどの雷撃が叩き付けられる。
 荒魂の怒りと蒼穹の天災は今だ収まる気配を見せず、思う様に猛威を奮っていた。

「なかなかに壮観じゃのう。リリエ殿、ワシの傍から離れんようにナ」
「あまりこういった業は使いたくないんですけど……はい、稲見之守さん」
 防陣から出ないよう相方をそっと近くに寄せながら、神罰を眺める稲見之守。もはや術者である彼女らにもこの雷を止める術はなく、自然に治まるのを待つしかない。
 リリエはその光景をすこし複雑な気持ちで見つめながらも、決して目は背けない。
 彼女らの眼前で、人類砦を襲った悪しき騎士達は灰燼に帰していくのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

シェーラ・ミレディ
ようやく人間が安心して暮らせる場所が出来つつあるのだ。
むざむざと蹂躙させてなるものか!

襲撃を止めるためにも『野茨姫』で戦場を封鎖しよう。
敵は騎馬だ。迷路の中での方向転換は難しいし、例え馬を捨てたとしても、槍を振るうのは難しいだろう。
馬の嘶きや蹄の音等で敵の居場所を推測し、奇襲を仕掛けて撃破していくぞ。

もし敵にUCを使われても、相手の土俵で戦わなければよい。
戦闘力はすでに削っているし、槍の間合いに入らず、通路の角から撃つなどして離れて戦えば生命力が吸収されることはないだろう。

強い者が弱い者を虐げる。貴様らの理屈だろう?
僕はそれに倣っただけだ。……嗚呼、反吐が出るな。全く。

※アドリブ&絡み歓迎



「ようやく人間が安心して暮らせる場所が出来つつあるのだ。むざむざと蹂躙させてなるものか!」
 人類の希望たる村を背にしてシェーラ・ミレディ(金と正義と・f00296)は叫んだ。
 人類砦と呼ばれるこの場所は、彼を含む猟兵と人々による不断の奮闘が実を結んだもの。吸血鬼如きに奪わせはすまいと、朗々たる調子でユーベルコードを紡ぐ。
『ねぇ、いらして? わたくしの愛おしい貴方。戦場では雄々しく剣を振るうその腕で、今はわたくしを強く抱いて離さないで──』
 【戯作再演・野茨姫】。まっさらだった平原に無数の茨が広がっていき、押し寄せる敵を迷路の中に閉じ込める。そこはもう彼のための狩場――眠りの森の中だった。

「何だここは……?」
 人類砦への襲撃を仕掛けんとしたところを、茨の迷路に捕まえられた闇の騎士達。
 突撃戦法に適した平地とは異なり、ここは彼らにとって極めて不利な環境と言えた。
(敵は騎馬だ。迷路の中での方向転換は難しいし、例え馬を捨てたとしても、槍を振るうのは難しいだろう)
 騎兵の強みである機動力と突破力。その両方を封じ込めたシェーラは精霊銃を手に迷路を駆ける。敵がどこに居るかなど、馬の嘶きや蹄の音、そして重たい甲冑の立てる音などを頼りにすればすぐに分かる。

「見つけたぞ」
「ぐあッ?!」
 狭い迷路でまごつく敵影を捉えた瞬間、シェーラはすかさず奇襲攻撃を仕掛けた。
 複数の精霊銃を巧みに操る彼独自の戦闘法『彩色銃技』。躍るような手さばきから放たれた銃弾は狙い過たずに甲冑の隙間を居抜き、闇に誓いし騎士を撃破する。
「やってくれるな。こんな所に我らを閉じ込めた程度で勝ったと思うな!」
 騎士達は負けじと【闇の恩寵】を身に纏い、馬上から降りて突撃槍を振りかざす。
 しかし馬を降りたところで彼らの不利が覆るわけでは無い。鈍重な長物がこの迷路の中で振り回すのに向かないのは一目瞭然で、狭い通路では得意の連携も取り辛い。
 それはこの状況を作り出したシェーラが誰よりも良く理解している。だからこそ彼はわざわざ槍の間合いに入るような愚は犯さず、離れたまま銃撃による戦いを挑む。

「この眠りの森の中で、貴様らも覚めない眠りにつくがいい」
 銃声が奏でるメロディは子守唄かそれとも葬送曲か。すでにこの戦場の環境に適応したシェーラは、迷路の角の向こうから銃弾を撃ち込んで鈍重な敵を翻弄していく。
 一方の騎士達の攻撃は、身軽さと射程で勝るシェーラには届かない。一撃でも当たれば闇の恩寵による生命力吸収で逆転もあり得るが、その一撃があまりにも遠い。
「くそっ、卑怯者め! 正面から正々堂々と戦おうという気概は無いのか!」
「強い者が弱い者を虐げる。貴様らの理屈だろう? 僕はそれに倣っただけだ」
 悔し紛れの罵声を放つ騎士共にも、シェーラは飄々とした態度で冷たく言い返す。
 罪もない民草を無慈悲に蹂躙せんとした輩と、同じ土俵での戦いなど誰がしてやるものか。正々堂々など片腹痛いとばかりに、一方的な攻撃が闇の騎士達を襲った。

「……嗚呼、反吐が出るな。全く」
 一合も槍を交えることなく倒れゆく騎士達を睨めつけ、小声で吐き捨てるシェーラ。
 その言葉にはこのような道理を罷り通らせる輩達への不快と、その悪辣なる所業への怒りが滲み出ていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

キリカ・リクサール
アドリブ連携歓迎

農村一つすら見逃さなくなってきたとはな…ヴァンパイア共も余裕が失せて来たと見える

農地から離れた場所からシルコン・シジョンで銃撃
先頭を走る馬上の騎士を落とし後続の馬を纏めて転ばせ、オーヴァル・レイによるビーム線で止めを刺す
こうすれば敵はこちらに向かってくるだろう

フン、虎口とも知らずに押し寄せて来たか
こちらの牙は鋭いぞ?

敵が来たらUCを発動
ナガクニによる刺突でランスチャージを仕掛けてくる騎士を馬ごと串刺しにして攻撃
更に複数の鎖を怪力で振り回し敵や馬を周囲の騎士に叩きつけ、更に銃撃で追い打ちをかける

「現実を理解させる」か…いいだろう、存分に思い知れ
お前達の栄華が崩れていく「現実」をな


ティオレンシア・シーディア
※アドリブ掛け合い絡み大歓迎

最近、こういう依頼増えてきたわねぇ。…うん、考え方によってはいいことよねぇ。
だって、ヴァンパイア連中からしてもだいぶ目障りになってきた、ってことでしょ?

騎兵最大の長所は質量と速度による突破力。…なら、その起点である機動力を殺しましょうか。
エオロー(結界)とオセル(不動産)で障害物を作って軌道に指向性を持たせて、●圧殺で纏めて潰しましょ。
スモークとスタングレネードによる〇目潰し、イサ(停滞)・ソーン(障害)・ニイド(束縛)による足止め。機動力のない騎兵なんてただのお荷物だもの。引っ掛けて転かせたら最上ねぇ。
…単純故に強力、ってのは。あくまでも「通れば」の話なのよねぇ。



「最近、こういう依頼増えてきたわねぇ。……うん、考え方によってはいいことよねぇ」
 今回の件を含めたダークセイヴァーの昨今の事件や情勢を、ティオレンシア・シーディア(イエロー・パロット・f04145)はそう評しながら虚空にルーン文字を描く。
「だって、ヴァンパイア連中からしてもだいぶ目障りになってきた、ってことでしょ?」
「農村一つすら見逃さなくなってきたとはな……ヴァンパイア共も余裕が失せて来たと見える」
 その意見にこくりと同意するのはキリカ・リクサール(人間の戦場傭兵・f03333)。
 抵抗勢力『闇の救済者』の活動の活発化に、ヴァンパイアの支配の及ばない人類砦の出現――これまで盤石であった敵の支配体制にも、揺らぎが生じ始めてきたようだ。

「我らヴァンパイアに仇なす者は、どんなに小さな芽でも許してはならぬ」
 主君に忠誠を誓った闇の騎士達は、馬蹄の音を轟かせながら人類砦に侵攻する。
 一糸乱れぬその突撃陣形はなるほど、彼らが相応に高い練度を誇る精鋭であることを窺わせる。しかしながらそれと対峙する猟兵達が動揺した様子は微塵もなかった。

「騎兵最大の長所は質量と速度による突破力。……なら、その起点である機動力を殺しましょうか」
 ティオレンシアが描いたのはエオロー(結界)とオセル(不動産)のルーン文字。
 それ自体が魔術的な意味を持った文字の力によって、平原に敵の進軍を阻む障害物が作り出される。騎士達はとっさに迂回機動を取って障害を避けていくが、そうやって敵の機動に指向性を持たせること自体が、ティオレンシアの狙いであった。

「お前達の相手は私達だ。一騎たりとも村の土を踏めると思うな」
 騎馬の動きが読めた瞬間、遠雷のような銃声と共に弾丸の雨が騎士達に降り注ぐ。
 銃弾の主はキリカ。彼女は村落はもちろんのこと、周辺の農地からも十分に離れた位置から、VDz-C24神聖式自動小銃"シルコン・シジョン"による銃撃を仕掛ける。
 聖書の箴言を込められた聖なる弾丸は、隊列の先頭を駆ける騎士の甲冑を撃ち抜き、馬上から落とす。すると後続を駆けていた騎士たちもそれに巻き込まれて転倒、あるいは馬を止めることを余儀なくされる。この瞬間、騎馬の持つ強みは失われた。

「機動力のない騎兵なんてただのお荷物だもの。引っ掛けて転かせたら最上ねぇ」
「随伴の歩兵も射手の支援もない。好きなように料理してくれと言うようなものだ」
 動きの止まった騎士達を【圧殺】せんとグレネードを投げ込むティオレンシア。
 敵陣の只中で炸裂した手榴弾はスモークと閃光によって騎士達の目を潰す。そこにすかさずキリカの浮遊砲台「オーヴァル・レイ」が粒子ビーム線を発射し、右往左往する敵をまとめて薙ぎ払った。

「くそっ、怯むな! ここで立ち止まっていれば相手の思う壺だぞ!」
「猟兵ごときが何するものか! 我らヴァンパイア騎士の力を示せ!」
 一瞬にして少なからぬ被害を被った騎士団だが、彼らとてただの無能ではなかった。直ちに隊列を立て直すと騎馬を駆り、槍の矛先を猟兵に向けて突撃を敢行する。
 怪物じみた馬の脚力と重量を載せた必殺のランスチャージは、単純ながらも【生ける破城槌】を思わせる絶大な破壊力を誇る。正面からこれを受け止めるのは困難だ。
 しかしその標的となった猟兵達は静かに笑みを浮かべる。敵の注意が自分たちに向けられたということは、村のほうの安全が確保できたということでもあるからだ。

「フン、虎口とも知らずに押し寄せて来たか。こちらの牙は鋭いぞ?」
 騎士達が十分に近付いてきたのを見計らって、キリカは短刀「ナガクニ」を抜く。
 そして放つは【ヴィヨレ・ドゥ・エクレール】。投擲された短刀は空中で分裂し、紫電を帯びた夥しい数の刃となって、突撃してくる騎士達の鎧や騎馬に突き刺さる。
「ぐおぉぉッ!?!!」
 標的を串刺しにした瞬間に雷は弾け、爆発を起こすと共に紫電の鎖で彼らを縛る。
 それはオブリビオンの力と生命を蝕む縛鎖。キリカはその片端をぐっと握り締めると並外れた膂力で振り回し、繋ぎ留められた敵や馬を強引に引きずり回す。
「がはっ!!」
「ぐぉっ?!」
 騎士と騎士とがぶつかり合い、統率された騎馬の隊列に再び大きな乱れが生じる。
 先刻の攻防でも示された通り、突撃中に妨害を喰らった騎兵というのは脆いものだ。

「……単純故に強力、ってのは。あくまでも『通れば』の話なのよねぇ」
 隊列を乱した敵陣へと、ティオレンシアは愛銃オブシディアンのトリガーを引く。
 放たれる銃弾に刻まれたルーンはイサ(停滞)・ソーン(障害)・ニイド(束縛)。その魔弾に撃ち抜かれた騎士は、金縛りにでもあったように動きを止める。
「う、動けん……ッ」
 立ち止まった騎士は後続の者と衝突するか、追撃の魔弾に息の根を留められる。
 こちらの意図通りに指向された機動など何の脅威も無い。ティオレンシアから見れば無謀な突撃を敢行する騎士達は、自慢の槍を届かせることなく脱落していった。

「『現実を理解させる』か……いいだろう、存分に思い知れ。お前達の栄華が崩れていく『現実』をな」
「これまで散々人間を舐めていたツケが回ってきた、ってとこかしらねぇ。今さら慌てたって自業自得よねぇ」
 崩壊していく騎士達に冷たい眼差しと笑みを向けながら、キリカとティオレンシアは銃撃で追い撃ちをかける。人類の希望を踏み躙らんとした者を、決してこの地から逃しはしない――容赦のない殲滅から逃れられた騎士は、誰一人としていなかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ペトニアロトゥシカ・ンゴゥワストード
アドリブ・連携OK

罪だの悪だの面倒くさい建前を並べるねえ。
もっと単純に、気に入らないって言えば済むだろうに。
まあ、どう言った所でやることは殺し合いしかないんだけどさ。

さて、相手が馬に乗って突撃してくるんなら、
【埋根伏蔦】で地面の下から根っこを出して馬の足を引っかけようか。
予め広く根を張っておけば、多少迂回されても捕まえられるしね。
馬が転んで騎士が落っこちたら、蔦と根っこで縛り上げて絞め殺せばいいかな。

分不相応かどうかで言うなら、アンタらがここに居る事が何よりの不相応だよ。
さっさと骸の海に帰るがいいさ。



「罪だの悪だの面倒くさい建前を並べるねえ。もっと単純に、気に入らないって言えば済むだろうに」
 小難しい理屈を捏ねたがるのは支配者というものの性なのだろうかと、ペトニアロトゥシカ・ンゴゥワストード(混沌獣・f07620)は思う。どうせあいつらはどんな態度を取ろうとも、この世界の人間を許すつもりはないのだろうから。
「まあ、どう言った所でやることは殺し合いしかないんだけどさ」
 そしてそれは猟兵であるペトニアロトゥシカも同じだ。彼女にとって戦いとは日常であり、目の前にいる相手がオブリビオンであるなら、やることはひとつしか無い。

「さて、相手が馬に乗って突撃してくるんなら、馬の足を引っかけようか」
 武具の重量と騎馬の脚力を活かして【生ける破城鎚】のごとき突撃を仕掛けてくる闇に誓いし騎士達を止めるために、ペトニアロトゥシカは【埋根伏蔦】を発動する。
 どん、と彼女が地面を踏み鳴らすと、足の裏から伸びた植物の根が地面を掘り進めていく。地上からは一見何も起こっていないように見えるが、その裏で彼女の根はまたたく間に平原一帯に広く張り巡らされていた。

「分不相応なる希望を抱く者共に、相応しき絶望と死を!!」
 そうとも知らぬ騎士達は突撃槍を振りかざし、人類砦に向かって猛然と突き進む。
 大地を踏み鳴らす馬蹄の音が村に迫り――なるべく多く範囲内に踏み込んでくるのを待ってから、ペトニアロトゥシカは満を持して埋根伏蔦を地上に現出させた。
「搦め捕ろうか」
「な、にッ!?」
 地面を突き破るようにして現れた根っこは、騎馬の脚を引っ掛けるトラップとなる。
 既に突撃体勢に入りスピードの乗った騎馬にとってこれは致命的であり、避ける間もなく脚を取られては悲鳴のような嘶きを上げて転倒する。当然、跨っていた騎士らも無事では済まず、振り落とされてしたたかに地面に叩き付けられる羽目となった。

「分不相応かどうかで言うなら、アンタらがここに居る事が何よりの不相応だよ」
 落馬した騎士達にいつもと変わらぬのんびりとした調子で語りかけながら、足元から伸びた根と蔦を手足の延長線のごとく操るペトニアロトゥシカ。敵が立ち上がり反撃する暇を与えずに、ぐるぐると縛り上げて動きを封じ、そのまま締め上げていく。
「ぐ、ご、ぉ……ッ!!!?」
 見た目よりも強靭で、かつ本体の膂力を反映してか凄まじい力を誇るペトニアロトゥシカの根は、一度捕らわれれば容易には逃れられない。もがく騎士達の甲冑がひしゃげ、その中でヴァンパイアの肉体がへし折れ、捻じり潰されてゆく。

「さっさと骸の海に帰るがいいさ」
 この世は本来なら生者の世界。過去の亡霊たるオブリビオンに跋扈する資格はなし。
 平原に広がるペトニアロトゥシカの根は、迂回して避けようとする者すら逃さない。
 傲岸なる騎士達はことごとく根の養分と成り果て、在るべきところへと還っていくのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

雛菊・璃奈
幸せに生きる権利は誰にでもある…。貴方達にそれを踏み躙る権利は無い…。

「ご主人!」
「無茶しない様!」
「監視!」

…前回、自分を犠牲にしようとしたのを帰って知られて大泣きされてラン達の監視が…。

とりあえず、村周辺の地形や敵の侵攻状況から、敵の進路上に呪符【呪詛、高速詠唱、呪殺弾、誘導弾、属性攻撃、衝撃波、残像、フェイント】を用いた他属性の呪術や呪詛の弾丸等による攻撃・幻影等の呪術トラップを設置…。
敵が掛かり次第、【unlimitedΩ】と黒桜の呪力解放【呪詛、衝撃波、なぎ払い、早業】とラン達の【暗器】による一斉攻撃で一気に大打撃を与え、後は一体ずつ凶太刀やバルムンクで倒していくよ…。



「なかなかやるな猟兵共。だが、我らが主の命令は絶対」
「たとえ同胞に犠牲が出ようとも、この村には滅びてもらう」
 度重なる敵の襲来を退ける猟兵であったが、闇に誓いし騎士団の攻勢は止まらない。
 先鋒として犠牲となった同胞らが猟兵の注意を引き付けているうちに、戦場を大きく迂回し、別の方角から村に攻め寄せんとする別働隊がいた。彼らの目的はあくまでも人類砦の破壊であり、主命を果たすためならば同士の命さえ捨て駒とするのだ。

 ――だが、別働隊が踏み込んだ所にはもう既に、猟兵による罠が仕掛けられていた。
「ぐお、っ!! なんだっ!?」
 地面に設置された呪符らしきものを騎馬が踏みつけた瞬間、地水火風の属性や呪詛を込めた呪術の弾丸が襲い掛かり、予期せぬ不意打ちに騎士達は思わず脚を止める。
 同時に辺りに立ちこめた風景の幻影が村を隠し、彼らの方向感覚を狂わせていく。

「幸せに生きる権利は誰にでもある……。貴方達にそれを踏み躙る権利は無い……」
 動揺する闇の騎士達の前に姿を現したのは雛菊・璃奈(魔剣の巫女・f04218)。
 この呪弾と幻影の呪術トラップを仕掛けたのは言うまでもなく彼女であり、予め村周辺の地形や敵の侵攻状況を把握し、進行ルートを予測しておいた成果であった。
「ここから先には通さない……。村には手を出させないよ……」
 呪槍・黒桜をその手に構え、【Unlimited curse blades Ω】にて召喚した数百の魔剣・妖刀の切っ先を騎士達に突きつける璃奈の後方には、じぃっと穴が空くほどの熱心さで彼女を見つめるメイド人形達がいた。

「ご主人!」
「無茶しない様!」
「監視!」

(……前回、自分を犠牲にしようとしたのを帰って知られて大泣きされてラン達の監視が……)
 それは別世界での依頼でのこと。とある邪剣の器として囚われた人間を救うため、璃奈は己を身代わりにしようとしたのだが――その一件を知ったメイド達は、もう二度と自分達の見ていないところで無茶はさせまいと今回の依頼に付いて来たようだ。
 璃奈としても(少なくとも今回は)もうあんな無茶をするつもりは無い。監視の目があることもそうだが――何より事情を知られた時の家族の泣き顔は、しばらく頭から離れないだろうから。

「全ての呪われし剣達……わたしに、力を……立ち塞がる全ての敵に終焉を齎せ……!」
 敵がトラップに掛かった動揺から立ち直る前に、璃奈は黒桜と魔剣による一斉攻撃を仕掛けた。呪槍の矛先から放たれた呪力は漆黒の桜吹雪となって戦場に吹き荒れ、"終焉"の力を宿した呪われし刃が豪雨のように闇の騎士達に降り注ぐ。
「「「お手伝い!」」」
 メイドのラン達も主人に合わせて暗器を一斉に放ち、騎士の甲冑の隙間を狙う。
 いかに精鋭といえども、これだけの猛攻を全て捌き切ることはできない。呪力に侵され、魔剣に切り裂かれ、暗器に穿たれ、闇の騎士達は次々と倒れ伏していった。

「「ぐおおぉぉぉぉぉぉぉッ!!!?!」」
 一気に大打撃を受けた騎士団であったが、璃奈はここで攻勢を止めるつもりは無い。たとえ一騎でもここから逃せば、村を脅かす脅威となると分かっているからだ。
 呪槍から妖刀・九尾乃凶太刀に得物を持ち替えて接近。妖刀の呪力によって彼女の身体は音速を超える速さを獲得し、目にも止まらぬ早業での攻撃を可能とする。
「後は一体ずつ確実に……」
 高速の斬撃でひとりの騎士を斬り捨てれば即座に次の相手を見定めて、今度は魔剣バルムンクに持ち替え。速度重視から一転して破壊力に秀でた剛の一太刀にて、分厚い甲冑ごと騎士の肉体を両断した。

「ガ―――ッ!!」
 【闇の恩寵】を纏う暇さえないまま、闇に誓いし騎士達は骸の海へと還っていく。
 璃奈の視界から騎士の姿が居なくなるまでに、そう長い時間はかからなかった。

成功 🔵​🔵​🔴​

朱酉・逢真
転移位置、調整してもらえっとありがてぇんだが。頼めるかい?
敵は集団なんだろ。なら真ん中上空あたりに落としてくれねえかな。俺はでけぇ『虫』に乗って空中に位置取らぁ。
ンで、こっからが本番だ。UC使って暴走する爆弾にした眷属『獣』を地にたくさんばらまく。
いやぃや大した強さじゃねえさ。一対一なら確実に負ける。オブリビオンにゃァそうそう勝てねえよ。死んだ途端に、死毒を周囲にぶちまけるがな。
ひひっ、溶解でも腐敗でも糜爛でも麻痺でも壊血でもよりどりみどりだ。こっちはオブリビオンにもようよぅ効くぜ?
猟兵らぁに当たっちまうとやべえからなァ、あんまそっちに行かねぇようにしねぇと



『転移位置、調整してもらえっとありがてぇんだが。頼めるかい?』
 それはグリモアベースにて朱酉・逢真(朱ノ鳥・f16930)からグリモア猟兵に向けた要請だった。彼の考えていた作戦のためには、最初に出現する位置が重要となる。
『敵は集団なんだろ。なら真ん中上空あたりに落としてくれねえかな』
 その要請は果たされ、彼は今、眼下に敵集団を見下ろすことのできる高所にいる。
 神の権能にて呼び出した巨大な虫の眷属に乗っかって、平原上空に陣取ったのだ。

「ンで、こっからが本番だ」
 逢真はゆらありと笑みを浮かべながらユーベルコードを発動し、呼び集めた沢山のネズミやコウモリといった『獣』の眷属に自らの力を分け与えては地上にばら撒く。
「よぉし、行ってきな」
 解き放たれた【凶神の寵子】たちは小さな牙を剥き出してキイキイと敵に襲い掛かるが、その強さは大したことは無い。オブリビオンにはそうそう勝てないだろうし、一対一なら確実に負ける。逢真もそれはよくよく分かっている上でのことだ。

「何だ、この畜生共は? こんなモノで我らを阻めるとでも?」
 空から落ちてきた獣の群れに闇の騎士達は多少戸惑ったようだが、精鋭たる彼らにとってそれはさしたる脅威ではなかった。突撃槍で一突きするまでもなく、猛進する巨大な騎馬の蹄で踏みにじるだけで、逢真の眷属らはあっけなく息絶える。
 ――死んだ途端に爆発し、主より与えられた死毒を周囲にぶちまけながら、だが。
「ひひっ、かかったな」
「何ッ?!」
 逢真が司るものは病毒と死。その眷属たる獣達は病毒を運ぶ媒介者に他ならない。
 爆ぜた獣の血肉は猛毒のシャワーとなって辺りに飛び散り、付近にいた騎士達はもろにそれを浴びる羽目となった。

「ぐ……なんだ、これは……身体が……」
 神の力である死毒の影響はすぐに表れる。特に症状が重篤なのは騎馬であった。
 ヴァンパイアよりも毒への耐性が低かった馬たちは、その巨体を支える力を失ってどうと崩れ落ちると、それきり二度と立ち上がることは無かった。
「ひひっ、溶解でも腐敗でも糜爛でも麻痺でも壊血でもよりどりみどりだ。こっちはオブリビオンにもようよぅ効くぜ?」
「ぐ、が、ごぉ……よぐ、も……ぎぃぃぃぃ……っ、ぐる、じ……!!!」
 馬より効きが鈍いとはいえ、こちらに症状が出るのも遅かれ早かれでしかない。
 病毒に戯ぶ神が笑う下で、闇の騎士達はもがき苦しみ、呻き、叫び、無様に地面をのたうち回りながら息絶えてゆく。その全身甲冑の中身がどんな有様となっているかは、恐らく見ないほうが幸せであろう。

「猟兵らぁに当たっちまうとやべえからなァ、あんまそっちに行かねぇようにしねぇと」
 逢真は同士討ちを起こさぬよう気をつけながら、さらなる凶神の寵子をばら撒く。
 空中から舞い降りた死毒の運び手は、果敢に敵に挑んでは汚染範囲を広げていく。
 ソレに触れたものは死ぬ。矮小と見下していた獣共の恐るべき特性を知った騎士達は、兜の下で血相を変えながら逃げ惑うのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

フレミア・レイブラッド
吸血鬼らしい傲慢な考え方ね…。良いわ、その傲慢の報いは存分に与えてあげる。

【ブラッディ・フォール】で「黒竜を駆る者」の「ドラゴンテイマー」の姿(フレミアがテイマーの黒衣と剣を装備し、翼が生えた姿)へ変化。
平原に転がる石ころ等や村で出た廃材等を集めて【文明侵略】で黒竜へ変化。
平原を埋め尽くす様に黒竜を全域に配置して敵の侵略を阻み、黒竜が敵を倒したら倒した敵の武具から【文明侵略】で更に竜を増産して数で圧倒し続けるわ。
更に最後方で【ギガンティックダイウルゴス】を全合体状態で召喚。
わたし自身も【騎乗】して魔力弾【高速詠唱、誘導弾、属性攻撃】等で支援しつつ、最終ラインとして到達した敵を蹂躙させて貰うわ



「我らの支配を受け容れぬ者には死あるのみ……愚かなる反逆者共に絶望を……!」
「吸血鬼らしい傲慢な考え方ね……。良いわ、その傲慢の報いは存分に与えてあげる」
 人類砦を滅ぼすべく迫り来る闇の騎士団を前にして、剣呑な笑みを浮かべながら立ちはだかったのはフレミア・レイブラッド(幼艶で気まぐれな吸血姫・f14467)。その真紅のドレスは黒衣に変化し、背中には翼が生え、手には真紅の剣を携えている。
 それは【ブラッディ・フォール】によって過去に討伐したオブリビオンの力を顕現させた証。此度の彼女が纏うのは黒竜を使役する「ドラゴンテイマー」の力だった。

「村へ行きたいのなら、まずはこの子たちを倒してからにすることね」
 フレミアが赤き剣を掲げて【文明侵略(フロンティア・ライン)】を発動すると、平原に散らばる石ころや、村から集めてきた廃材が次々と漆黒のドラゴンに変化する。
 その名はダイウルゴス。平原全域を埋め尽くすように配置されたそれは多方面からなる敵の侵攻を阻み、迫りくる闇の騎士達に真っ向から襲い掛かった。
「こやつら、一体どこから……? ええい、怯むな! 突破せよ!」
 騎士達は【闇の恩寵】をその身に纏うと、突撃槍を振りかざして黒竜に応戦する。
 数の上では劣勢なれども流石は精鋭。負傷するたびに強化されるユーベルコードの効果と生命力吸収能力もあって、一歩も退かない戦いを繰り広げる。

「なかなかやるみたいね。だけど……」
 黒竜の牙に貫かれ、一人の騎士が馬上から落ちる。そこから戦いの拮抗が崩れる。
 フレミアは倒した騎士の武具も【文明侵略】することで新たな黒竜を増産し戦力を拡大する。敵を倒すたびに味方が増える理想的なムーブの出来上がりだ。
「なんだと……ッ!!」
 騎士達にとってそれは悪夢の光景だっただろう。戦いが続くにつれて彼我の戦力差は開く一方となり、黒竜はその膨大な数の力を背景として騎士を圧倒していく。
 ここに至って敵の駆逐は不可能とみた闇に誓いし騎士は、決死の覚悟で槍を振るい騎馬を駆り、黒竜の防衛線を突破することに血道を上げるように作戦を変更した。

「我ら一騎でも村に到達すればよし。主命を果たす事こそが絶対……!」
 "人類砦の破壊"という当初の目的を完遂すべく、仲間の屍を踏み越えて進む騎士。
 だが、何百という黒竜の大群をやっとの思いで突破した彼らを待ち受けていたのは、それまでの黒竜の何倍ものサイズを誇る【ギガンティックダイウルゴス】と、その背中に騎乗するドラゴンテイマー・フレミアの姿であった。
「言ったでしょう、その傲慢の報いを存分に与えてあげると」
 召喚した大型ダイウルゴス全てを合体させた超大型ダイウルゴスと、それを従えるフレミア本人が、この人類砦を守る最終防衛ライン。これまでとは比べ物にならない力と存在感を放つふたりを前にして、騎士たちは呆然と立ち尽くすほかにない。

「あまり時間をかけるつもりはないのよ。蹂躙させて貰うわ」
 冷徹なる宣告と共にフレミアが魔力弾を放ち、巨いなるダイウルゴスが咆哮する。
 やっとの思いで黒竜の群れを突破してきた騎士に、その力に抗う術は皆無だった。
 魔弾にて馬上から撃ち落とされた彼らは直後に黒竜の顎の餌食となり、跡形もなくこの世から消え去ったのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

オリヴィア・ローゼンタール
希望の灯火、決して絶やさせはしない!

猛進する騎兵団の前に立ちはだかる
轢き潰される寸前、【全力魔法】【破魔】【オーラ防御】で最大強化した【絶対不可侵なる大聖堂】を発動
白く輝く魔力障壁を展開し、突撃を跳ね返す
突撃の威力が大きければ大きいほど、それを塞き止められた反動と、心理的衝撃は絶大な筈
ここにあるのは人が人として営みを送る、当たり前の生活……!

隊列が乱れたところで大聖堂を解除し、馬の脚の装甲されていない部分を狙って、聖槍を【なぎ払う】
落馬したものを踏み砕き、ランスを奪って【怪力】【槍投げ】で【衝撃波】を伴った【投擲】で攻撃
それを罪と呼ぶのならば……この一投を以って叛逆の烽火となさん!



「猟兵の力は我らの想像以上か。だが関係はない」
「我らに与えられし命は、反逆者の拠点の殲滅のみ」
 大地を踏みしめる馬蹄の音を響かせて、闇に誓いし騎士団は人類砦へと進撃する。
 すでに甚大な犠牲者を出しながらも彼らの作戦目標に変更はない。隊を複数に分けることで猟兵の防衛線を突破し、村も畑も住人もことごとく踏み躙る算段だ。

 ――しかし、猛進を続けるこの一隊の前にも、ひとりの猟兵が立ちはだかった。
「希望の灯火、決して絶やさせはしない!」
 煌めく破邪の聖槍を携えたその娘の名はオリヴィア・ローゼンタール(聖槍のクルースニク・f04296)。この闇に包まれた世界にようやく芽生えた希望の萌芽を守るべく、彼女はその身を盾とする覚悟で邪悪なる騎士団と真っ向から対峙する。

「その身一つで我らの突撃を止められると思ったか? 蹂躙してくれよう!」
 前方の障害がオリヴィア一人とみた騎士達は、さらに騎馬のスピードを上げる。
 騎馬の脚力と武具の重量をフルに活かした【生ける破城鎚】のごとき突撃の破壊力は、本来ならば猟兵であっても生身で受け止められるようなものではない。
 だが――あわや轢き潰されるかに思われた寸前、オリヴィアはその身に宿る聖なる力を全て解き放ち、最大限に強化した【絶対不可侵なる大聖堂】を発動する。

「顕現せよ、絶対不可侵なる大聖堂。穢れなき白亜の壁よ、一切の害意を跳ね返せ!」

 その瞬間、穢れなき純白の輝きに満ちた魔力障壁がオリヴィアの周囲に展開される。
 絶対なる防御力を誇るかの聖域は邪悪なるヴァンパイアの侵略を阻み、槍に突かれようが騎馬にぶつかられようが小揺るぎすらせず、全ての突撃を跳ね返してみせた。
「馬鹿な……ッ!?」
 自分達の突撃戦法に強い自信を持っていただけに、それを正面から破られた騎士達の心理的な衝撃は大きい。同時に突撃を塞ぎ止められた物理的な反動も激しく、バランスを崩した騎士の中には槍を取り落したり、馬から転げ落ちる者までいた。

「ここにあるのは人が人として営みを送る、当たり前の生活……!」
 敵の隊列が乱れたのを好機とし、オリヴィアは大聖堂を解除して反撃に転じる。
 狙うのは馬の脚の装甲を施されていない部分。草刈りのように低い聖槍のひと薙ぎが、怪物じみた騎馬たちの脚を切断し、騎乗している騎士達ごと転倒させる。
「ぐごあッ?!!!」
 落馬した騎士が起き上がる間もなく、破邪の祈りを宿した「セイントグリーブ」が漆黒の甲冑ごと敵を踏み砕く。オリヴィアは絶命した者の手から突撃槍を奪い取ると、柄が軋むほどの力で握り締め、背を弓なりにしならせながら振りかぶり――。

「それを罪と呼ぶのならば……この一投を以って叛逆の烽火となさん!」

 轟、と人並み外れた膂力にて投じられた槍は、音速を超えて衝撃波を巻き起こす。
 その穂先は射線上にいた騎士共を纏めて串刺しにし、周辺にいた者達もなぎ倒していき、槍が突き抜けていった後にはまるで台風が過ぎ去ったような痕跡が刻まれた。
「お……おのれ……叛逆者……め……」
 心臓を貫かれた騎士の末期の言葉は、驚愕、怒り、そして恐怖に彩られている。
 人類の希望を、当たり前の営みを守護する叛逆者。その勇姿は悪しきオブリビオンの眼にも、かくも燦然と輝く太陽のように刻まれたのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シャルロット・クリスティア
かつてサムライエンパイアにおいて、かの魔王信長は騎馬の大群を鉄砲にて迎え撃ち、悉くそれを打ち倒したと言います。
……ならば、その再演と行きましょうか。

マギテック・マシンガン、全門並列配置。
弾数、連射性、そして何よりも威力、どれをとっても不足は無い。
私の持てる最大の防壁を展開しましょう。
ヴァンパイアの絶対的な力を僭称するのなら、よもや尻尾を巻いて逃げ出すと言う醜態は無いでしょうが……。
……しかし、考え無しの突撃でこの銃火の吹雪に挑むのならば、たちまち蜂の巣になりますよ。
もっとも、足を止めるのならば私自身からの射撃で狙わせて頂くだけですが。

近寄らせることも許さない。
……守り抜いて見せます。



「かつてサムライエンパイアにおいて、かの魔王信長は騎馬の大群を鉄砲にて迎え撃ち、悉くそれを打ち倒したと言います。……ならば、その再演と行きましょうか」
 長篠なる地で行われたという戦国時代の合戦の逸話を教訓として、シャルロット・クリスティア(彷徨える弾の行方・f00330)は闇に誓いし騎士の大群と対峙する。
 彼女が異世界アルダワに身を寄せて技を磨いたのは、このような敵から人々の希望を守るため。人類砦を蹂躙させはすまいと、少女は冷静な口調で詠唱を紡ぎ始める。

「エーテル圧縮……エレメント組成変換、構築開始……マギテック・マシンガン、全門並列配置」
 大気中の魔力を凝縮変換する錬金魔術によって、シャルロットの相棒たる魔導機関銃が72機に複製され、迫りくる騎士の群れに銃口を向けながらずらりと一列に並ぶ。
「弾数、連射性、そして何よりも威力、どれをとっても不足は無い。私の持てる最大の防壁を展開しましょう」
 かの長篠の戦いにおいては三千丁の鉄砲が用いられたというが、銃器の性能を鑑みればこの布陣も決してそれに劣るまい。圧倒的な火力と弾幕の密度による面の制圧こそが、何者をも寄せ付けない防陣となるのだ。

「ヴァンパイアの絶対的な力を僭称するのなら、よもや尻尾を巻いて逃げ出すと言う醜態は無いでしょうが……」
 果たしてシャルロットの予想通り、敵は機関銃の陣地を前にしても突撃の速度を緩めようとはしなかった。兜の奥の邪悪なる瞳を輝かせ、巨大な突撃槍を振りかざしながら、矮小なる人間共の抵抗を真っ向から打ち破らんとする心積もりのようだ。
「……しかし、考え無しの突撃でこの銃火の吹雪に挑むのならば、たちまち蜂の巣になりますよ」
 傲れる騎士に目にもの見せてくれようと、解き放たれるは【吼え猛る銃火の吹雪】。
 72の機関銃が一斉に火を噴き、数え切れないほどの銃弾の嵐が戦場に吹き荒れる。
 騎士は凄まじい速さで鈍器のように槍を振るい、弾幕を弾き落とそうとするが――いかに精鋭のヴァンパイアとて、それは流石に無謀と言わざるを得なかった。

「ぐ、おぉぉぉぉぉぉぉッ!!!?!」
 マスケット銃が最高であるこの世界の技術水準を、遥かに上回る兵器の集中運用。
 その威力を闇に誓いし騎士は正しく理解していなかった。【屠殺旋風】すらもかき消す銃火の吹雪に晒されて、隊列の先頭にいた騎士は為す術もなく蜂の巣にされる。
「い、いかんッ! 迂回路を探せ!」
 遅まきながら脅威を認識した騎士達は、転身して射線から逃れようとするが、その重装ゆえに小回りの効かない騎兵にとって、方向転換は大きな隙を晒す瞬間になる。

「足を止めるのならば私自身からの射撃で狙わせて頂くだけですが」
 複製元となったオリジナルのマギテック・マシンガンの照準を合わせ、シャルロットがトリガーを引く。狙撃用に単発で放たれた弾丸は、騎士の無防備な側面を的確に撃ち抜いた。
「ぐが……ぁ、ッ!?」
 敵陣を"面"で一掃する飽和射撃と、隙を見せた標的を"点"で討ち倒す狙撃。
 このふたつを同時に実現する魔導銃士を前にして、もはや騎士達に進路はない。
 否、それどころか退路さえも既になく、ここはとうに彼らの死地と化していた。

「近寄らせることも許さない。……守り抜いて見せます」
 絶え間なく戦場に響き渡るマシンガンの銃声は、シャルロットの決意の証。
 その容赦のない弾幕は、人類砦に迫る闇の騎士をことごとく殲滅していった。

成功 🔵​🔵​🔴​

四王天・燦
《華組》

人が人を殺戮に来る。
「狂い神よりイカレてら」

「先に行って抑えるぜ」
フォックスファイア・漆式で紅狐様に騎乗し敵陣に先行。
雄たけび上げおびき寄せ。
敵を盾にして乱戦化、残像で九倍攻撃を散らす。
紅狐様の爪と神鳴で蹂躙

聊か無謀(負傷描写望む)

危機にはシホが追い付くと信じてる。
本音は薄汚い盗賊に聖女の隣が相応しいか不安なんだ。
犠牲となり誰かを護れるって見せたかった―最低だ。
「胸を張って隣にいたい…アタシをエーデルワイスの騎士にしてよ」
弱い本心を曝す

「対等、親友―何を見失ってんだアタシ」
シホの言葉に気合を入れ直す。
相乗りして敵を斬る。照れ涙は隠すぜ。
紅狐様も炎で属性攻撃。
「下っ端騎士に負けるかよ!」


シホ・エーデルワイス
《華組》
アドリブ歓迎

燦が前衛で私が支援するのはいつもの事
でも…突出し過ぎ?

<幻惑属性攻撃の閃光煙幕弾で敵を撹乱し燦を救助活動>し
【祝音】で癒す

燦!一旦退いて!
何かありましたね?普段の燦なら敵の間合いは避けて戦うはずです

…確かに私は多くの人から聖女と呼ばれています
けど私は…大勢を救う為
虐殺に手を染めた私が聖女とは思えません

燦の命はあの程度の敵に与える程
安くないはずです
それに普段通り戦っても護れるでしょ?

燦と上下のある関係は嫌です
私は心を許せる数少ない親友として対等でありたい


闇を祓う<破魔の祈りを込めた聖炎属性攻撃の誘導弾で援護射撃>
霞を纏えなければUCの前提条件が崩れて効果を発揮できなくなるはず



「人が人を殺戮に来る。狂い神よりイカレてら」
 迫りくる漆黒の騎影を睨みつけ、四王天・燦(月夜の翼・f04448)は吐き捨てた。
 苛立ち、不快感、怒り――そしてそのどれとも違うざわつく感情が心を逸らせる。抑えられない焦燥感を自覚したとき、彼女はもうそれ以上立ち止まっていられなかった。

「先に行って抑えるぜ」
「あ、燦……?」
 相方であるシホ・エーデルワイス(捧げるもの・f03442)が止める間もなく、【フォックスファイア・漆式】を発動した燦は大きな紅狐に乗って飛んでいってしまう。
 雷を帯びた名刀「神鳴」を抜き放ち、雄叫びを上げながら敵陣に突っ込んでいくその様は、勇ましくもあるが、同時にいささか無防備に過ぎるようにも見えた。
「さあ、アタシが相手だ騎士ども!」
「単騎駆けか。その蛮勇、後悔するぞ」
 闇に誓いし騎士達は兜の奥の瞳を爛々と輝かせ、巨大な突撃槍をぶおんと振るう。
 鈍器としても充分な威力を誇る大槍による【屠殺旋風】は、一撃でも直撃すれば深手は免れないだろう。

「そんなのでアタシがビビるかよ!」
 まるで自分に言い聞かせるように叫びながら、紅狐と共に敵陣の中を駆け巡る燦。
 乱戦に持ち込めば敵は同士討ちを恐れて迂闊に長物を振れなくなる。さらに残像が生じるほどの猛スピードで絶えず動き続けることで、連続攻撃を散らすのが狙いだ。
「行くぞ紅狐様!」
 燦が神鳴で敵を斬りつければ、紅狐は赤々と燃える炎の爪を振るう。一心同体の動きを見せる彼女らは半ば敵に取り囲まれた状況でありながら、紫電と火の粉を散らして猛然と大暴れを繰り広げる。

 ――だが、それでも彼女の戦法は、多勢に無勢が過ぎるものではあった。
「調子に乗るなよ、猟兵風情が!」
 仕掛けた当初は相手の意表を突けたものの、次第に騎士達も燦の動きに慣れてくる。
 隊列を整え、正確さを増した突撃槍の乱舞は、やがて紅狐を捉えるようになった。
「ぐぁ……っ」
 紅狐が傷つけば生命力を共有している燦もダメージを負う。激しい鈍痛と衝撃に襲われて思わず苦悶の声が漏れた。それでも彼女は退かず攻勢を緩めようともしない。
 それは明らかに無謀な攻めだった。攻めに偏れば闇の騎士達にも相応のダメージを与えることはできるが、燦自身はそれ以上に深刻なダメージを負っていく。

「燦! 一旦退いて!」
 その時、後方から放たれた閃光弾が騎士の目を眩ませ、煙幕が燦の姿を覆い隠す。
 突出を見かねたシホからの援護射撃。相方からの呼びかけを受けた燦はようやく敵陣から後退し、シホのいるところまで戻ってくる。
「燦が前衛で私が支援するのはいつもの事です。でも……突出し過ぎでは?」
「危なくなったらシホが追い付いてくると信じてるからさ」
 そう言って笑ってみせたものの、燦と紅狐が受けた負傷は深刻だった。多勢の騎士から袋叩きにされた身体は出血と青痣だらけで、おそらく骨も何箇所か折れている。
 シホはすぐに【苦難を乗り越えて響く福音】を発動し、慈愛の光で燦のケガを高速治療していく。

「何かありましたね? 普段の燦なら敵の間合いは避けて戦うはずです」
 煙幕が晴れるまでの僅かな猶予、シホは治療に努めながら燦の真意を問いかける。
 シホの知る燦は力押しよりもクレバーな戦法を旨とするタイプだ。小技を効かせて敵の油断や不意を突き、時に慎重に時に大胆に。全てを理解しているとまでは言うつもりは無くとも、無策で敵の間合いに飛び込むというのはあまりにも"らしくない"。
「普段のアタシなら、か……」
 最初はシホと目線を合わせようとせず、言葉を濁していた燦だったが、まっすぐに訴えかけてくるシホの眼差しに負けて、やがてぽつりぽつりと本音を語り始めた。

「本音は薄汚い盗賊に聖女の隣が相応しいか不安なんだ」
 今もこうして無茶をした自分を懸命に癒やしてくれる、優しくて清らかなシホ。
 そんな彼女の傍にいるのには、自分では釣り合わないんじゃないかと、そんな風に思う時がある。目的のためなら何だって好きにする、正義と縁のない自分では。
「だから犠牲となり誰かを護れるって見せたかった――最低だ」
 彼女のように自分も誰かのために命を賭けられると証明すれば、この不安をかき消せるかもしれないと思った。それも、いざ窮地に陥ればシホが救けてくれるという打算ありきで。

「胸を張って隣にいたい……アタシをエーデルワイスの騎士にしてよ」
 いつもの自分のような"盗賊"らしくない戦い方をしたのもそれが理由だった。
 弱い本心を曝した燦の姿は、シホの目にはいつもよりもすこし小さく見えた。
「……確かに私は多くの人から聖女と呼ばれています。けど私は……大勢を救う為、虐殺に手を染めた私が聖女とは思えません」
 燦の治療を終えて、シホはそっと彼女の手に自分の手を重ねながら語りかける。
 シホのことを聖女と呼ぶ者達の多くは、シホの抱えている多くの苦難や葛藤を知らない。けれど燦はそうではない筈なのに――心を許しあった相手にまで"聖女"と特別扱いされるのは、どこか落ち着かない、すこし寂しいような気持ちがある。
「燦と上下のある関係は嫌です。私は心を許せる数少ない親友として対等でありたい」
 だから燦を"騎士"にすることはできないと、それだけは明確にシホは告げる。
 自分をお姫様のように守ってくれる騎士よりも、燦は自分にとってずっと大事な存在だから。

「燦の命はあの程度の敵に与える程、安くないはずです」
 ぎゅっ、と少しだけ力を込めて手を握りながら、シホはなおも燦に語りかける。
 自己犠牲についてどうこう言えるような立場でないとは、シホの自覚も絶無ではない。けれど、こんな形で燦の命が失われるのは絶対に間違っていると断言できる。
「それに普段通り戦っても護れるでしょ?」
 最後にほんのすこし茶目っ気を加えて小さく微笑みかけると、燦は見惚れたような表情でシホを見つめ――それから、ぴしゃり、と自分の頬を思い切りひっぱたいた。

「対等、親友――何を見失ってんだアタシ」
 寝惚けていたのかと呆れるくらい、意識がはっきりとクリアになる。ああ、本当に目をつむったまま戦っていたのかと思うほど――自分は何にも見えちゃいなかった。
「下っ端騎士に負けるかよ!」
「ええ。その意気です、燦」
 気合を入れなおして紅狐に飛び乗ると、シホもちょこんとその後ろに相乗りする。
 もう迷いは無い。本心をさらけ出して対等となったふたりは、今度こそ一緒に闇の騎士に挑む。

「目くらましとは小細工を。だが、何度来ても同じこと――」
 煙幕を突撃槍で吹き飛ばし、騎士達は【闇の恩寵】をその身に纏わんとする。
 だが、漆黒の靄が彼らの身体を覆うよりも早く、シホの聖銃が炎の弾丸を放つ。
「ユーベルコードの前提条件が崩れれば、効果を発揮できなくなるはず」
 闇を祓う破魔の祈りを込めた聖火が、靄をかき消して闇の恩寵を不発に終わらせる。
 何だと、と騎士達の間に動揺が走った直後、紅狐に乗ったふたりが敵陣に飛び込む。

「シホ、ありがとう!」
 照れ涙を見られないよう隠しながら燦は神鳴を振るう。同じ太刀筋でも余計な気負いの消えたその一閃は、先刻とは別物と思えるくらい鮮やかに敵を斬り払った。
 シホは黙したまま微笑のみを返答として、二丁の聖銃を巧みに操り燦を援護する。
 彼女らを乗せた紅狐もまた、その口から紅蓮の劫火を吐いて敵陣を灼き焦がした。

「何だ、こいつらは……さっきまでとはまるで違う……!!」
 完璧な連携を取り戻した彼女らにとって、闇の騎士達はもはや敵では無かった。
 ほどなくして燦とシホの視界から、村を狙う敵はことごとく一掃されたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
騎馬突撃という戦法は豪快な見た目に反し、案外繊細です
騎馬の保護に適した地形…私も考慮する要素は多々

なので…

戦場に銃器の●なぎ払い掃射でUCを全体的に塗布し転倒エリア構築
自分は●防具改造で足と接続可能とした盾にサーフボード宜しく●騎乗
自身を●ハッキングし演算リソース再分配
●限界突破した重心制御を頼みに片方の脚部スラスター噴射による●スライディング移動

転倒した馬は格納銃器での●スナイパー射撃で処理
落馬した騎士達の態勢が整う前に●怪力で振るう剣で首関節を狙い止め
同時にワイヤーアンカーでランスを拾い旋回後に速度を乗せ●投擲

無粋の極みですが一人も通しはしません
私の理想
御伽の騎士は「失わせない」のですから



「騎馬突撃という戦法は豪快な見た目に反し、案外繊細です。騎馬の保護に適した地形……私も考慮する要素は多々」
 騎士として同様の戦法を駆使することもあるトリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)は、猛然と進撃してくる敵軍の機動の弱点もよく把握していた。
 なので――と、彼は展開した格納銃器から【対襲撃者行動抑制用薬剤】を封入した弾丸を掃射し、戦場となる一定の平原区域に敵を陥れるためのエリアを構築する。

「同胞らの屍を無駄にするな! 一同、進め―――ッ!!!!?」
 そこに何も知らず吶喊した騎士達は、直後に地面と盛大にキスする羽目になった。
 トリテレイアが撒いた薬剤は塗布された対象の摩擦係数を極限まで減らし、滑りやすくするもの。真冬のスケートリンクよりも滑りやすくなった地面の上で騎馬突撃など仕掛けようものなら、騎馬ごと転倒するのは火を見るよりも明らかである。
「御伽噺の魔法の薬ほどではありませんが、色々と応用が効くんですよ」
 無様にすっ転んだ敵を前にして、トリテレイアは固定器具を取り付けた大盾に足を接続するとサーフボード宜しくその上に乗って、転倒エリアを颯爽と滑走する。

「き、貴様、何だその面妖な動きは?!」
「サーフィンはご存知ありませんでしたか」
 地面に突き立てた突撃槍を支えとして、どうにか立ち上がろうとする闇の騎士達。
 彼らからの抗議をさらりと受け流し、そして体勢を整える猶予も与えず、トリテレイアは片方の脚部スラスターを噴射し敵に迫ると、儀礼剣で首の関節部を狙う。
 ウォーマシンの怪力を活かした剛の一閃。強固な甲冑の隙間を狙われた騎士の首級は高々と刎ね飛ばされ、首なしとなった骸が力なくその場に崩れ落ちた。

「くそっ?! なぜ、こんな足場でやつは動けるのだ……!」
 驚愕と動揺、そして困惑が一挙に騎士達に押し寄せる。本来なら盾でサーフィンしながら剣を振るうという曲芸じみた行為を試みても満足な威力は出せないだろう。
 トリテレイアは自己ハッキングにより演算リソースを重心制御に再分配し、限界を超えたバランス感覚によって地面に立っているのと遜色ない戦いを可能としていた。

「無粋の極みですが一人も通しはしません」
 トリテレイアは自在なスライディングで敵の騎士を斬り捨てながら、同時に転倒したまま起き上がれないでいる騎馬を格納銃器で狙い撃ち、敵の"足"を処理していく。
 薬剤の効果が切れたとしても逃しはしない。この先には平和に暮らす人々が――そしてその人々が築いた生活の基盤がある。その全てが掛け替えのない尊い財産だ。
「私の理想。御伽の騎士は『失わせない』のですから」
 命も、生活も、未来も、何一つ失わせない。それがどれほど困難な使命であるかは彼自身が誰よりも理解している――それでも彼はまだ見果てぬ理想を諦めていない。

「暴君に仕え民を虐げる。貴方達のような"騎士"に遅れを取る訳にはいきません」
 トリテレイアは滑る地面の上を旋回しながらワイヤーアンカーを放ち、敵が取り落したランスを拾い上げる。スラスターを噴射して充分な速度を乗せ、今だ身動きのままならない標的をロックオンし――渾身の力で、投擲。
「ぐがあぁぁぁぁぁッ!!?!」
 自らの槍に深々と心臓を貫かれた闇の騎士は、絶叫しながら大地に縫い付けられる。
 これより先に邪悪なるものが踏み入れることは決して無い。おとぎ話とはいささか異なる勇姿でも、機械仕掛けの"騎士"は民を守るために奮戦するのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リーヴァルディ・カーライル
…ん。少なくとも私の知る騎士とは、
“異端の魔女”であっても手を差し伸べるような高潔な存在よ。
…お前達のような輩に騎士の称号は相応しくないわ。

今までの戦闘知識からUCで召喚した狩人達に防衛線を展開させて、
目立たないように一ヶ所だけ村への突破口を設けておく

…全員、配置についた?後は手筈通りに…。

全員が【吸血鬼狩りの業】で敵の行動を暗視して見切り、
傷口を抉る呪力を溜めた矢弾を乱れ撃つ先制攻撃で迎撃
自身は殺気や気合いを断ち存在感を消して闇に紛れ、
突破した敵の首を怪力任せに大鎌をなぎ払う早業で刈り取る

…この先は救済の名の下に多くの希望が集う地よ。
お前達のような者が足を踏み入れて良い場所ではないと知れ。



「怯むな。ここで主命を果たせなければ騎士の名折れである……!」
「……ん。少なくとも私の知る騎士とは、"異端の魔女"であっても手を差し伸べるような高潔な存在よ」
 闇に誓いし騎士達にそう語りながら、リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)の視線は今も誰かを守るために戦っている仲間を見つめていた。
 この苦難多き世界においてなおも高潔さを失わぬ存在が"騎士"だとするのなら。悪徳なるヴァンパイアに盲目的に仕え暴虐を働くこの"騎士"達のなんと卑小なことか。
「……お前達のような輩に騎士の称号は相応しくないわ」
 すっ、と漆黒の大鎌を構えてヴァンパイアの前に立ちはだかる今宵のリーヴァルディは、一人ではない。【吸血鬼狩りの業・血盟の型】によって召喚した、黒衣の弟子達も共に並んでいる。

「……我ら、夜と闇を終わらせる者なり」
 リーヴァルディの戦闘知識に従い、人類砦を守る防衛線を展開した吸血鬼狩人達。
 相手が精鋭の吸血鬼と知ってもなお、誓いを胸に戦場に立つ彼らに怯懦は無い。
「……全員、配置についた? 後は手筈通りに……」
 布陣が整ったのを見て取ると、リーヴァルディ自身は闇に紛れて戦場から姿を消す。
 残ったのは猟兵ならざる十数名の狩人達。人類砦壊滅のために攻め寄せたヴァンパイア達からしてみれば、それはさしたる脅威とは思えなかったことだろう。
「たかが人間風情が我らを狩るつもりか? 思い上がりも甚だしいな!」
 騎馬を駆る彼らの兜の奥で、邪悪なる意志の宿った瞳が爛々と輝く。そして豪腕にてぶおんと振るわれる巨大な突撃槍――この【屠殺旋風】を以ってすれば、こんな防衛線など簡単に破れると彼らは思っていただろう。

(……私の弟子達を甘く見ないほうがいいわ)
 だが、師たるリーヴァルディに鍛えられた弟子達は、ただの人間"風情"ではない。
 心と身体を磨き抜かれ【吸血鬼狩りの業】を叩き込まれた彼らは、闇夜の中から敵の行動を見切り、間合いに踏み込んでくる前に飛び道具による先制攻撃を仕掛けた。
「ぬぅ……っ?!」
 乱れ撃たれる矢弾には呪力が込められており、騎士の強固な甲冑に付けられた傷をより深く抉り本体までダメージを届かせる。想像以上に統率された動きと高い練度、ヴァンパイアに傷を与えるほどの実力には、騎士達も驚かざるを得なかった。

「矮小なる者共が、これほどの業を振るうとは。だが……」
 動揺に苛まれながらも、闇の騎士達は狩人達の布陣に綻びがあることを見抜いていた。
 たった一ヶ所だけではあるが、防衛線の中に村への突破口がある。決して目立つような欠陥では無かったが、それを見抜いたのには伊達に精鋭では無いということか。
「我らはただ主命に従うのみ。貴様らにかかずらっている暇は無い」
 予想外の抵抗を示した狩人達を放置して、騎士達は村の破壊と殲滅を最優先とする。
 陣形の綻びに戦力を集中させて一点突破を図られれば、さしもの狩人も正面からそれを止める術はなく、防衛線はあえなく突破される――。

 ――闇の騎士達は確かに有能ではあった。だが、敵の布陣に空いた突破口を見抜くことはできても、それが意図的に用意された敵の罠だとまでは気付けなかった。
「……来ると思っていたわ」
「何ッ?!」
 一目散に村へと向かう闇の騎士達の前に、リーヴァルディは不意に姿を現した。
 驚く彼らが転身する間もなく、漆黒の大鎌で力任せに薙ぎ払う。"過去を刻むもの"の銘を与えられたその刃は、邪悪なるオブリビオンの首級を瞬時に刈り取った。
 一瞬の早業で、首なしと化した数名の騎士が馬から落ちて骸の海に還ってゆく。
 それを目の当たりにした後続は、ようやく自分達がここに誘い込まれたと知った。

「……この先は救済の名の下に多くの希望が集う地よ。お前達のような者が足を踏み入れて良い場所ではないと知れ」
 冷徹ながらも凛々しい物言いで村への道を阻むリーヴァルディに、闇の騎士達は「おのれッ!!」と怒りを露わにしながら、突撃槍を振り上げて一斉に襲い掛かる。
 だが彼女の【吸血鬼狩りの業・封陣の型】は弟子達の業よりも遥かに洗練されている。
「……お前達に、この構えを破る事はできない」
 敵の力の流れを見切り、受け流し、円の動きにてそのまま本人へと跳ね返す。
 あるいは力の基点そのものを先んじて穿ち、攻撃や移動の動きを封じ込める。
 多勢であるにも関わらず、騎士達はたった一人の少女に完全に封殺されていた。

「……去りなさい」
 愕然とする闇の騎士の前に振り下ろされるは、死神のごとく冷たい漆黒の大鎌。
 その首級と命脈はことごとく刈り取られ、彼らが村の土を踏むことは無かった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フォルク・リア
「ひっそり慎ましく暮らす事も許さないという
傲慢さは如何にもヴァンパイアらしい。
だが、此方もそれを黙って見逃す程
寛大じゃないんでね。」

騎士を遠方から観察
「随分数を揃えたものだ。普通の村を制圧するには
過剰とも言えるが。なら、こっちも数で勝負と行こうか。」
不浄なる不死王の軍勢を使用。
自分は騎士から距離を取り戦況を見極め
騎士を人類砦に向かわせない様に召喚した軍勢を操り
砦と騎士の間に死霊と魔物の壁を作る。
自分は召喚した軍勢に身を守らせ
適宜騎士から見える位置に姿を表し
軍勢に指示を出し騎士の注意を引き付ける。
騎士の配置や攻撃には十分注意して距離を取り
【残像】を発生させつつ攪乱して移動。
攻撃の的を絞らせない。



「ひっそり慎ましく暮らす事も許さないという傲慢さは如何にもヴァンパイアらしい。だが、此方もそれを黙って見逃す程寛大じゃないんでね」
 迫り来る敵を遠方から観察しながらフォルク・リア(黄泉への導・f05375)は呟く。
 己に従わない者は全て滅ぼすという輩が領主であれば、村民たちも逃れたくもなるだろう。彼らの掴んだささやかな幸福と平和を、ここで踏み躙らせるつもりは無い。

「随分数を揃えたものだ。普通の村を制圧するには過剰とも言えるが」
 猟兵によって幾度となく突破を阻止されても、敵はまだ目的の遂行を諦めていない。
 数的優位にものを言わせて突撃を繰り返す騎士達を前にして、フォルクは禁書「エンドオブソウル」の表紙を開きながら呪文を唱える。
「なら、こっちも数で勝負と行こうか――偉大なる王の降臨である。抗う事なかれ、仇なす事なかれ。生あるものに等しく齎される死と滅びを粛々と享受せよ」
 召喚せしは【不浄なる不死王の軍勢】。地の底より這い出した無数の死霊とそれを喰らう魔物の大群、そしてその全てを凌駕する力と存在感を放つ骸骨姿の不死王が、平原の戦場に防御陣地を築き上げる。

「この力、死霊魔術か……! 構うな、突き進め!」
 【闇の恩寵】を全身に纏った騎士達は馬の速度を上げ、突撃による突破を図る。
 対する不死王の軍勢は敵を人類砦に向かわせまいと、死霊と魔物の壁を作り上げる。
「そう安々と突破できると思わないで貰おうか」
 指揮官であるフォルクは騎士から距離を取って軍勢に守られながら、戦況を見極めて軍を操る。魔物達はその指示に従って爪や牙、魔術による攻撃で騎士を迎え撃ち、不死王は杖から破壊の闇を放って敵の突進を押し返してゆく。

「この軍勢が魔術によるものならば、術者さえどうにかすれば……」
 死霊と魔物からなる膨大な兵力を前にして、力押しでの突破は消耗が大きいと判断した闇の騎士達は、不死王の軍勢を召喚した者を倒すことで戦況の打開を目論みる。
 そんな敵方の心理を把握していたフォルクは、敢えて敵から見える位置に姿を現して、注意をこちらに引き付けようと企図する。
「いたぞ! あそこだ!」
 案の定、騎士達は目の色を変えて殺到する。軍勢の召喚中は戦闘に参加できないフォルクにとって、この作戦は少なからぬ危険を伴うものだが、それでも彼は実行した。

(村よりも俺のほうに敵意を向けてくれた方が楽だからな)
 攻撃を受けないよう十分に注意して、敵を人類砦から引き離さんとするフォルク。
 騎士達は猛然とその後を追い駆けるが、残像を生じさせながら駆けまわる彼の動きに翻弄され、あと一歩のところでどうしても追いつくことができない。
「ええい、ちょこまかと……!」
 攻撃の的を絞りきれず苛立ちばかりがつのる中、いつしか騎士達は包囲されていた。
 フォルクという囮に釣られ、まんまと深入りしてきた敵に、四方八方から死霊と魔物による猛攻が叩き込まれる。

「ここはもうお前達の支配地じゃない。お帰り願おうか」
「しまった……っ、ぐああぁぁぁぁぁッ!!?!」
 断末魔の悲鳴を上げて、傲慢なるヴァンパイアの騎士達は骸の海へと還っていく。
 その後に響き渡るのは、人類砦を守護する不死王の軍勢の鬨の声であった。

成功 🔵​🔵​🔴​

ヒビキ・ノッカンドゥ
アドリブ・連携等歓迎

残念だね。いくら練度が高かろうと、ただの屠殺を行う者は騎士に非ず
ただの古錆びた包丁だよ

後方に陣取り突破しようとする兵の進路を見極めて砲撃
「僕は罪だなんて牧師めいた言葉は吐かないよ。ただ滅びればいい」
五百を賄える農耕地の後方ならば距離は十分
騎兵突撃の速度なら対応は可能
腰だめに長大な砲を構えて迎え撃つ
【UC・スナイパー・騙し討ち使用
「鎧を着て、軍馬に乗り、圧倒的な力を得たつもりだったかな?」
「ただ力を持つだけで、自分のものにしたつもりだったかな?」
淡々と語る。何度も、平原を光の柱が奔る
「力に驕るな。いつだって死神は自分の傍らで笑っている」

「静穏を奪う代価が何か、解ったかな?」


ヴァルヘ・ヘレヴェッティ
連携等色々歓迎

さて困った。悪い吸血鬼軍が攻めてきた
このままじゃ殺されちゃうね
じゃあどうしようね?
「じゃあぶっ殺すかぁ」
幼く見える美貌を凶暴に歪ませ

後方地点からUC。制圧射撃。援護射撃使用
UCで射撃の土台へと相手を無理矢理にでも乗せる。付き合わせる
重機関銃をバイポッドで地面に置き寝そべり撃ち続ける
前衛へ援護として鉛玉を毎秒30発降らせる
前衛集団から突破する者が1騎でも少なくなるよう

「たらふく食えよ。まあ喰い過ぎたら逆に体重減るけどな!」
「弱い者いじめする気だったらさぁ、怒られても仕方ないよなあ?」
「カッコつけて単一兵種で来るからこうなるんだよ馬ーー鹿!」
ゲラゲラ笑いながら鉛玉の審判を下し続ける。



「さて困った。悪い吸血鬼軍が攻めてきた。このままじゃ殺されちゃうね」
 じゃあどうしようね? と誰に対するでもなく問いを放つのはヴァルヘ・ヘレヴェッティ(聖なるかな完璧過ぎる自分・f23422)。彼女の手の中にある物騒な重機関銃を見れば、その答えは最初から示されているようなものだった。
「村の人達の手には負えないなら、僕らが戦うしかないよね」
「じゃあぶっ殺すかぁ」
 同様に長大なビームキャノンを構えたヒビキ・ノッカンドゥ(月の響・f17526)の返答を聞くと、ヴァルへは幼く見える美貌を凶暴に歪ませて笑う。迫り来るヴァンパイアの騎士達を歓迎する用意はとうに整っていた。

「楽しい楽しいパーティーだ! 飲め! 食え! 遊べ! 死んでからに楽しみはないんだよ!」
 【さあ。笑え嗤え嘲笑え哂え呵え】と、ヴァルへは地面に寝そべりバイポッドで設置した重機関銃「Love your enemy.」のトリガーを引く。けたたましい発砲音が戦場に響き渡り、高速徹甲弾の雨が闇に誓いし騎士達に降り注ぐ。
「僕は罪だなんて牧師めいた言葉は吐かないよ。ただ滅びればいい」
 【ヘビーアームド・ウェポナイズ】で重武装モードに変身したヒビキも、多目的ビーム砲「Howling at the Moon」を腰だめに構えて撃ち放つ。この位置からならば距離は十分、平原を奔る眩い光の柱が騎士の甲冑を貫通する。

「ぐお……ッ、何だッ!!?」
 突如として砲火に晒された騎士達は、農耕地の後方にて砲撃体勢を取った猟兵ふたりの姿に気付く。遮るものの無い平坦な地形は突撃戦法にも適しているが、射撃から身を隠す場所もない。双方の距離は射撃側にとって一方的に有利なほど離れていた。
「ええい怯むな! 突破せよ!」
 それでも騎士達は眼前の農地ごと敵を踏み躙らんと、得意の騎馬突撃を敢行する。
 怪物じみた黒馬の脚力、分厚い鎧と巨大な突撃槍の重さがもたらす【生ける破城鎚】のごとき破壊力と突破力は、彼らが絶対の自信を抱くものであったからだ。

 ――だが。すでに万全の砲撃体勢を築いた猟兵達を相手にそれは無謀に尽きる。
「鎧を着て、軍馬に乗り、圧倒的な力を得たつもりだったかな?」
 騎兵の速度にも惑わされることなく、ヒビキは適時照準を補正しトリガーを引く。
 放たれる大出力のビームは狙い過たず、突破を図った騎士の胴体に風穴を開けた。
「たらふく食えよ。まあ喰い過ぎたら逆に体重減るけどな!」
 ハイテンションかつ殺意に満ちた笑みを浮かべ、ヴァルヘも全力の制圧射撃を行う。
 毎秒30発のペースで降り注ぐ大量の鉛玉。残弾がゼロになれば即座に交換用のバレルと弾倉に付け替え、休みない鉄と硝煙のパーティーに強制的に敵を引きずり込む。
 その圧倒的な火力と密度を前にして、騎士達はふたりに迫ることは愚か、畑に足を踏み入れることすらできずに次々と撃ち倒されていく。

「ただ力を持つだけで、自分のものにしたつもりだったかな?」
「弱い者いじめする気だったらさぁ、怒られても仕方ないよなあ?」
 前線で戦う猟兵達の後詰めであるふたりは、前衛集団から抜けてきた騎士の突破を決して許さない。ヴァルヘがひたすら銃弾を"面"にばら撒くことで突撃を封じこめ、制限された敵の進路を見極めたヒビキが"点"の狙撃で一体ずつ仕留めていく。
「力に驕るな。いつだって死神は自分の傍らで笑っている」
「カッコつけて単一兵種で来るからこうなるんだよ馬ーー鹿!」
 淡々と語りながら何度も閃光を奔らせるヒビキと、ゲラゲラ笑いながら鉛玉の審判を下すヴァルヘ。両者の態度はまるで対照的だが、その戦法は実に噛み合っていた。
 遠距離攻撃の手段を持たないまま射撃戦の土台に無理矢理乗せられた騎士達からすれば、この状況は最悪の一言だったろう――ただ一種の卓越した戦法のみに偏ったツケとも言える弱点が、ここに来てはっきりと露呈した形である。

「こんな……騎士である我々がこんな形で……一方的に……!!」
「残念だね。いくら練度が高かろうと、ただの屠殺を行う者は騎士に非ず。ただの古錆びた包丁だよ」
 苦痛と屈辱に震える騎士達に、ヒビキはどこまでも淡々とした調子のまま告げる。
 騎士として不適格なこの連中に誇り高い戦いや死など勿体ない。反撃の機会も与えられず、己の罪と愚かしさを噛み締めたうえで死ぬのが似合いの最期だ。
「静穏を奪う代価が何か、解ったかな?」
 ビームキャノンが咆哮を上げ、月光のごとき閃きの柱が闇の騎士を消滅させる。
 あれだけいた騎士団の兵力も、今や数えるほどの騎影しか残ってはいなかった。

「ぐ、ぅ、っ!! やむを得ん、ここは一旦退いて――」
「今さら帰るなんて言うなよ。僕の奢りだ全部食ってけ」
 この戦場を突破する進路はおろか退路さえも、もはや彼らには残されていなかった。
 残酷なまでに無邪気に楽しげに、ヴァルヘは機関銃の引金から指を放さない。持ち込んだ鉛玉を惜しげもなく振る舞って、最後の1騎が動かなくなるまで撃ち続ける。
「仲間外れになんてしないさ。優しいだろう僕は?」
 悪党どもに平等なる死を。己を聖なると信ずる者は容赦のない裁きを与える。
 断末魔の悲鳴も、怨念に満ちた恨み言も、すべては笑い声と銃声にかき消された。

 やがて砲火の音が止んだとき、そこに敵はもう存在しなかった。
 平原に突き刺さった突撃槍が、闇に誓いし騎士達の墓標であった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​




第2章 ボス戦 『暗黒騎士サンドラ』

POW   :    暗黒を纏う者
全身を【暗黒のオーラ 】で覆い、自身が敵から受けた【負傷】に比例した戦闘力増強と、生命力吸収能力を得る。
SPD   :    黒き騎兵の戦技
技能名「【ランスチャージ】【盾受け】【踏みつけ 】」の技能レベルを「自分のレベル×10」に変更して使用する。
WIZ   :    闇き魔槍の騎士
【ランスを構えた 】突進によって与えたダメージに応じ、対象を後退させる。【愛馬】の協力があれば威力が倍増する。

イラスト:森乃ゴリラ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はセシリア・サヴェージです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「――これを退けるか。あの村の者達とは違い、貴殿らは相応の実力者のようだ」

 闇に誓いし騎士団が撃退され静寂を取り戻した平原に、凛とした女性の声が響く。
 現れたのは一騎の女騎士。その手には槍と盾を、身体には漆黒の鎧を纏い、全身を禍々しい闇のオーラで覆った、美しくも残酷なる暗黒の騎士。

「だが、その抵抗は無為なこと。この世はいずれ全てが闇に染まり、絶望に堕ちる」

 これまでの騎士とは一目で格が違うと分かる、強大な存在感と無慈悲な宣告。
 彼女こそが、今回の人類砦襲撃を命じられた騎士団のリーダーなのだろう。
 すぐさま臨戦態勢となる猟兵達を馬上より睥睨しながら、彼女は冷たい口調で語る。

「ひとつお伽噺をしよう。かつて、ヴァンパイア討伐のために槍を振るった高名な騎士がいた。その騎士は力を得るために呪物である暗黒の武具に手を出したが、身に余る呪いに心と身体を蝕まれ、闇に堕ちた」

 騎士の瞳は底なしの闇を宿したように昏く、生気の光はとうに消え果てていた。
 その身に帯びた漆黒の武具は、彼女の言葉に呼応するように暗黒のオーラを放つ。

「人の分際を超えた力を振るう貴殿らもいずれはそうなる。この世界に未来など始めから無かったのだ。ならばこの私、暗黒騎士サンドラが民に引導を渡そう」

 人類のために戦った誇り高き騎士は、今や人々を襲う無慈悲な殺戮者と化していた。
 もはやその生を終わらせることでしか、彼女を暗黒の呪いから解き放つ手段は無い。

 この世界に生まれた希望の光を蹂躙せんとする最後の刺客は、闇に堕ちた女騎士。
 人類砦を巡る猟兵とオブリビオンの攻防は、クライマックスを迎えようとしていた。
朱酉・逢真
清々しいまでの認知の歪みだなぁオイ。「私がこう」から「お前らもそう」は範囲拡大し過ぎだし、そっから世界の未来まで飛躍するのは意味がわからん。論点がすり替わってんだろ、あほったれ。
つまるところ、生者を無為に殺してぇだけじゃねえか。それをなんとかへりくつこねて正当化しようとしやがって。これがオブリビオンになるってことなンかねえ……。哀しいが、かわいいこった。

呪い、ね。っひひ。いいぜ、“そういう毒”に対する“毒”もある。
馬の面に毒酒を投げて視界を奪う。その隙に《獣》に乗って近寄り『生まれながらの光』で呪いを弱める。お前さんの力はその呪い依存だ。「継続ダメージ」入れときゃ、他の奴がやりやすかろうよ。



「清々しいまでの認知の歪みだなぁオイ」
 暗黒騎士サンドラの論調を、さもつまらないと言わんばかりに逢真は言い捨てる。
「『私がこう』から『お前らもそう』は範囲拡大し過ぎだし、そっから世界の未来まで飛躍するのは意味がわからん。論点がすり替わってんだろ、あほったれ」
 身を焦がすような激しい殺気にも動じず、出来の悪い子を叱るような態度で。
 これしきの相手に朱ノ鳥は、病毒に戯ぶ神の心は揺さぶられることはなかった。

「つまるところ、生者を無為に殺してぇだけじゃねえか。それをなんとかへりくつこねて正当化しようとしやがって。これがオブリビオンになるってことなンかねえ……」
 なるほどかつての"彼女"は高潔な理想を抱いた騎士だったのかもしれない。だが闇に堕ちた現在の彼女の行いに正当性は無く、逢真にとっては生死の均衡を乱し余計な仕事を増やすばかりの相手だ。
「哀しいが、かわいいこった」
「理解されようとは思わぬ。ただ去ぬがよい、異端の神よ」
 ゆらありと笑みを浮かべる逢真に黒槍の矛先を向け、サンドラは愛馬の手綱を取る。
 高らかに響く馬蹄の音。【闇き魔槍の騎士】の突進は、さながら地に落ちた黒い流星の如く、一心不乱に標的の首級を求めて駆ける。

「呪い、ね。っひひ。いいぜ、"そういう毒"に対する"毒"もある」
 だが、おぞましき闇を纏った敵が眼前に迫っても、逢真の笑みが絶えることはない。
 ひゅっ、と懐から取り出し投げつけたのは瓢箪。その中から湧き出した毒の酒が、騎馬の顔面に降りかかり視界を奪う。
「ブルルッ?!」
「っ……!」
 悲鳴のような嘶きが上がり、跳ね上がった愛馬の鞍上から振り落とされぬために騎士の突進は中断される。その隙に逢真は「獣」に――先程死毒をばら撒かせたのとは異なる大型の眷属の背に乗って、颯爽と敵の近くまで駆け寄った。

「こいつがお前さんにふさわしい"毒"だ」
 病毒の神から放たれたのは【生まれながらの光】。生者に対しては癒しの力として作用するその輝きは、この暗黒騎士のような呪詛に塗れた輩に対しては"毒"となる。
 サンドラの全身を包む闇のオーラが、聖なる光によってかき消されていく。暗黒の力を浄化されたことで彼女は逢真の狙いを悟り、剣幕を鋭くして彼を睨みつける。
「お前さんの力はその呪い依存だ。継続ダメージ入れときゃ、他の奴がやりやすかろうよ」
「貴様……」
 してやったりと口元を歪める神を貫かんとサンドラは魔槍を振るうが、その動きは明らかに鈍っている。暗黒の呪いを弱められた影響は如実に現れているようだ。
 役目は果たしたとばかりに逢真は矛先をかいくぐると、獣に乗って槍の届かぬところまで後退する。"毒"に蝕まれた騎士に"死"をもたらすのは、他の者達に任せよう。

 初手にて病毒の神が打ち込んだ、暗黒の"毒"を制する"毒"。
 それがこの先の戦いに如何に影響するか、この時点で知る者は彼ひとりであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ペトニアロトゥシカ・ンゴゥワストード
アドリブ・連携OK


未来なんて、神様にだって分からない物だよ。
勝手に決めつけるものじゃあない。

さて、相手は暗黒のオーラを纏った騎馬か。
暗黒のオーラを防ぐのは、樹鎧殻で皮膚を魔除けの力を持つ木に変えようか。
魔の力が効かないとされるイチイの木あたりがいいかな。
樹皮に変えた腕で攻撃を受けつつ、自由に走り回れないよう足止めしてよう。

あとは、親切に力の源を教えてくれたんだし、呪いの武具を壊せないか試そうか。
【牙砕甲破】で、相手が構えた盾を思い切り殴ってみるよ。
ヒビでも入って呪いとかが弱まってくれれば儲けものかな。

あたしはあたしの力しか使ってないし、
呪いの武具なんかに手を出した人と一緒にしないでほしいね。


エウトティア・ナトゥア
※アドリブ・連携歓迎

うむうむ、己の分を弁えぬと身を滅ぼすのじゃよ。
分を弁えて帰ってくれぬかのう?

…と言って素直に帰ってはくれぬよな。凄まじい勢いで突進してくるのじゃ。
とりあえず【精霊石】の力を借りて地と水の精霊を呼び出し、大地に手をついて土を茨の茂る湿地に変換し操作して突進の勢いを止めてやるか。
泥濘を馬の足に絡みつかせ茨で十重二十重に絡めとってやるわい。
すかさず【巨狼マニトゥ】が弓手側から強襲をかけ、同時に【風】を纏わせた【誘導する矢】を二連射し一矢を馬手側から迂回させ【援護射撃】するのじゃ。
かわせぬ矢は槍で打ち払い、狼は盾で防いだ。さて正面から来る最後の一矢はどう受けるのかの?



「未来なんて、神様にだって分からない物だよ。勝手に決めつけるものじゃあない」
 普段よりもすこし咎めるような語調で、ペトニアロトゥシカは暗黒騎士に言い返す。
 この世界の明日には闇と絶望しか無いなんて、少なくとも彼女は信じてはいない。
 結局はあれも他の騎士達と同じだ。過去が未来を踏み躙るなど、あってたまるものか。

「うむうむ、己の分を弁えぬと身を滅ぼすのじゃよ。分を弁えて帰ってくれぬかのう? ……と言って素直に帰ってはくれぬよな」
 そう口にしたエウトティアの視線の先には、再び闇のオーラを纏った白馬の騎士がいる。
 かの者は【暗黒を纏う者】にして【闇き魔槍の騎士】。撤退する様子などさらさら無く、体勢を立て直せば凄まじい勢いで突進してくる。
「私の信念を挫きたいのであれば、貴殿らの力を以って退かせてみせるがいい」
 小細工など弄する必要のない、騎士の名に恥じぬ正々堂々たる正面突破。
 しごく単純な戦法ではあるが、その威力は先の騎士達のそれをなお上回るだろう。

「地と水の精霊よ、わしに力を貸しておくれ」
 まずは敵の突進の勢いを止めようと、エウトティアは精霊石の力を借りて希う。
 祝詞を唱えながら大地に両手をつくと、そこを起点として平坦な草原が茨の生い茂る湿地帯に変化していく。万物に宿る精霊の力によって現実を幻想へと変換する、【精霊の唄】を応用したユーベルコード【掌の創造】である。
「十重二十重に絡めとってやるわい」
 足場の悪い湿地帯では騎兵の動きも鈍る。さらにエウトティアの意志に応じて、泥濘はうねるように馬の足にまとわり付き、無数の茨が戒めの鎖となって襲い掛かる。
 地と水の精霊達が舞い踊る半径73メートルの大地は、すでに彼女の掌握した領域であった。

「なかなか奇妙な技を使う。だが」
 幾重にも自然の束縛を受けながらも、暗黒騎士サンドラはなおも突撃を敢行する。
 速度は大幅に下がったが、この地形下でそれでも動けるのはやはり尋常ではない。
 愛馬と一体となり、暗黒の波動で茨を振り払いながら突き進むその姿は悪鬼の如し。

「これ以上は行かせないよ」
 その時、サンドラの前に立ちはだかったのはペトニアロトゥシカ。交差させた両腕の皮膚はイチイの樹皮に変質し、岩のような強度を誇る「樹鎧殻」に変化している。
 彼女はその装甲を頼みに真っ向から暗黒騎士の突進を受け止めた。凄まじい衝撃が身体を突き抜けていき、吹き飛ばされそうになるが、しっかりと足を踏みしめて耐える。
「耐えたか。やはり猟兵の力には驚かされる」
「このくらい、なんてことないよ」
 古来よりイチイは魔除けの木とされ、その守護の前にはいかなる魔の力も効かないとされた。イチイの樹鎧殻でその身を覆ったペトニアロトゥシカもまた、暗黒騎士の纏う暗黒のオーラに至近で晒されようとも蝕まれることは無かった。

「今じゃ、マニトゥ!」
 騎士の突撃をペトニアロトゥシカが止めた瞬間、すかさずエウトティアは巨狼をけしかけ、緑縞瑪瑙の矢筒から取り出した矢を短弓に番える。弓手側から強襲する狼の牙と、馬手側から迂回する誘導矢による同時攻撃だ。
「連携においても申し分ない。だがこの程度で私は崩せん」
 機動を封じられたサンドラは、風を纏った矢を黒き魔槍で叩き落とし、巨狼の爪牙を呪われし大盾で受け止める。湿地に足を取られた状態でありながら、その技の冴えは見事なものだ。

 ――しかし、左右からの攻撃を防いだ直後、サンドラは目前に迫る二本目の矢に気付く。先の一瞬のうちにエウトティアが放った矢は一本ではなく、二連射だったのだ。
「かわせぬ矢は槍で打ち払い、狼は盾で防いだ。さて正面から来る最後の一矢はどう受けるのかの?」
「くっ……!」
 防御は間に合わない。がら空きとなった胸元に風精霊の加護宿る矢が突き刺さる。
 血飛沫と共に暗黒騎士の表情が苦痛に歪み、馬上にてぐらりと体勢を崩す。その好機を至近にいたペトニアロトゥシカは見逃さなかった。

(親切に力の源を教えてくれたんだし、壊せないか試そうか)
 手甲のように樹皮で覆われた拳を振りかぶり、正面から叩きつける獣のような一撃。
 サンドラは辛うじて防御の構えを取るが、ペトニアロトゥシカの狙いは最初からそれ――敵の最も強固な部分をあえて狙い打ち砕くのが【牙砕甲破】の真髄である。
「脆い」
 そう短く言い捨てた直後、拳を叩きつけられた呪いの盾にピシリと亀裂が入る。
 使い手に暗黒の力をもたらす武具が、よもや破損するとは――サンドラの目が驚愕に見開かれた。

「貴殿らの力は、我が暗黒をも超えうるのか……ならば、辿る末路も知れたもの……」
「あたしはあたしの力しか使ってないし、呪いの武具なんかに手を出した人と一緒にしないでほしいね」
 罅割れた盾を構えなおす騎士に、心外だとばかりにペトニアロトゥシカは返す。
 武具の破損によって敵の纏う暗黒のオーラは些か弱まったように感じる。しかし未だその闘志は衰えてはおらず、戦いの趨勢は定まってはいなかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ギージスレーヴ・メーベルナッハ
ふん、尤もらしいことを言っているが。
弱いのは人ではない。貴様だ。力に飲まれた己自身の弱さ、其を人の身に転嫁せんとする貴様の心根、この先の民より尚脆弱よ。
斯様な輩に余は、余らは斃せ得ぬと知るが良い。

黄昏大隊・蹂躙巨艦を発動。飛行戦艦からの【砲撃】で地形に穴を開け突撃を阻害(【地形の利用】)、次いで降下してきた兵士にはアサルトライフルでの【制圧射撃】による足止めと馬への攻撃を行う者、ロケットランチャーでの【砲撃】を行う者を随時分担(【集団戦術】)。
余自身も魔導小銃での射撃を行う。【スナイパー】でサンドラへ【呪殺弾】を撃ち込みその身を蝕んでくれよう。

己より強い人間など居らぬ、その驕りの末路が貴様よ。



「ふん、尤もらしいことを言っているが」
 居丈高に鼻を鳴らし、黄昏大隊長ギージスレーヴは傷を負った暗黒騎士に告げる。
「弱いのは人ではない。貴様だ。力に飲まれた己自身の弱さ、其を人の身に転嫁せんとする貴様の心根、この先の民より尚脆弱よ」
 どれほど強大な力を得ようとも、それを律する心なくして力は意義を為さない。
 この暗黒騎士にはその心意気が足りなかった。ゆえに堕ちたのだと彼女は断ずる。

「斯様な輩に余は、余らは斃せ得ぬと知るが良い」
 堂々と宣言したギージスレーヴの上空より、暗雲を切り裂いて巨大な艦影が現れる。
 其は【黄昏大隊・蹂躙巨艦】。黄昏大隊が保有する最大戦力、数百の兵員が搭乗可能な全環境対応の武装飛行戦艦である。
「ゴットリヒター出撃! 領域内の敵勢力を徹底的に蹂躙し殲滅せよ!」
 大隊長の号令一下、飛行戦艦は搭載された大砲を敵に向けて一斉砲撃を開始する。
 暗黒騎士サンドラは愛馬を駆りて砲撃を避けるが、着弾した砲弾は大地を抉り、平原に大穴を開ける。凸凹に破壊された地形では、得意の騎馬突撃も阻害されよう。

「斯様な鉄の塊が空に浮かぶとは」
 常識外れの兵器に瞠目しながらも、サンドラは巧みな騎乗術で砲弾を躱し続けている。さらに一手押し込む必要があると見たギージスレーヴは、さっと片手で合図を出す。
「降下兵団、総員降下開始!」
 落下傘を広げて戦艦から降りてくるのは、現代兵器で武装した305名の幽霊兵士。
 地上に立った彼らは即時に2隊に分かれて展開すると、そのうちの1隊がアサルトライフルを構え、騎兵の足を止めるべく制圧射撃を開始する。

「なるほど貴様の手にした力は強大であろう。だが"個"の力では"軍"には及ばぬ」
 ギージスレーヴは数多の兵士達を緻密に統率し、騎士に対抗する戦力とする。
 個々の兵士の実力は暗黒騎士には遠く及ぶまい。だが優秀な指揮官の下で率いられた猟犬の群れは、時に自らよりも遥かに強大な獲物さえ仕留めてみせるのだ。
「ええい……ッ」
 槍と盾で弾幕を打ち払いながらも、サンドラは反撃に転ずる機会を得られずにいた。
 そこに分割されたもう1隊が、ロケットランチャーによる砲撃を仕掛ける。騎馬の足元で炸裂した弾頭は爆炎と衝撃と破片を撒き散らし、暗黒騎士に打撃を与えた。
 砲撃を終えた隊はすぐさまアサルトライフルに装備を交換して銃撃に移行し、それまで足止めに徹していた隊が代わってロケットランチャーを担ぐ。状況に応じた役割分担もスムーズであり、その集団戦術にまるで乱れは無い。

「己より強い人間など居らぬ、その驕りの末路が貴様よ」
 己は強者であり、他者は守るべき弱者であるという傲慢が、騎士を闇に堕とした。
 だが彼女は決して絶対的な強者ではなく、人間は守られるだけの弱者ではない。
 ギージスレーヴは砲火と弾幕の中に烟る騎影に照準を合わせ、魔導小銃のトリガーを引く。蹂躙巨艦に並ぶ最大戦力"猟兵"の銃撃は、狙い過たずサンドラを撃ち抜いた。
「―――ッ!!」
 鮮血を散らしながら後退していく暗黒騎士に、追撃の砲火と銃撃が浴びせられる。
 ここは黄昏大隊の戦場。全ての敵を蹂躙するまで、ギージスレーヴの戦争は止まらない。

成功 🔵​🔵​🔴​

リリエ・ヘブンリィブルー
人々のために戦ったその誇り高い騎士に私は敬意を覚えます。

しかし…その騎士は、呪具の力を以て己が独りで全てを救うつもりだったのでしょうか。己が独りで力さえあれば全てを変えられると思ったのでしょうか。

そうであれば、それは寂しいことだと私は思うのです。

UC天使化、ランス突撃に対して正面から高速飛翔での突剣突撃で相対します。お互い速度の出た状態、こちらが勝てば馬上から彼の者を落とすことが出来ましょう。その落馬した隙を、他の者が見逃すはずがありません。

……手を取り合うこともまた1つの力だと私は思います。その騎士と共に剣を並べることが出来たなら…残念でなりません。


御狐・稲見之守
おとぎ話をしよう。

かつて、ヒトを喰らう悪名高い狐がおった。狐は同族に裏切られ死にかけたが、偶然人々に助けられ生き延びた…それから狐はヒトに絆され味方するようになった。

その騎士もさぞ武勇に優れる者だったのであろう。しかし呪具に手を出すに至るまで、その心根を慮る良き者に恵まれていればどうだったか。

UC化生顕現、黒き不定の獣となりて我が顎、彼の騎士に牙突き立てむ。喰らう頭が一つかと思えば二つ、いや三つか。切り裂く腕爪が二つかと思えば三つ、四つ…幾つやら。纏う妖気は精気、魂、果ては呪詛をも啜る。

ふふっ、生憎なことにワシはヒトではナくてナ。ゆえにヒトを超えた力も、そしてヒトの力も知っているつもりじゃよ。



「おとぎ話をしよう」
 戦火の音色が激しさを増す中で、稲見之守はサンドラに向けて朗々と語り始めた。
 それは或いは、とある騎士のおとぎ話を語った彼女への返礼だったのかもしれない。
「かつて、ヒトを喰らう悪名高い狐がおった。狐は同族に裏切られ死にかけたが、偶然人々に助けられ生き延びた……それから狐はヒトに絆され味方するようになった」
 その狐は今もカミとしてヒトと寄り添いながら、ヒトを脅かす悪鬼と戦っている。
 良き縁とは、絆とはかくも在りようを変えうるもの。そして窮状に陥ったときに手を差し伸べてくれる誰かの存在とはかくも尊いことを、彼女はよく知っている。

「その騎士もさぞ武勇に優れる者だったのであろう。しかし呪具に手を出すに至るまで、その心根を慮る良き者に恵まれていればどうだったか」
「――今になっては、考えたところで意味もない話だろう。おとぎ話の騎士はとうに死んだ。誰からの理解も必要とせず、ただ己の騎士道のみに殉じてな」
 哀れむような眼差しを送る稲見之守に対し、サンドラは馬上にて黒き槍を構える。
 ここに居るのは孤独にして孤高なる【闇き魔槍の騎士】。ただ一騎にして猟兵達と対峙し、全ての希望を蹂躙せんとする、闇に堕ちたオブリビオンのひとりだ。

「人々のために戦ったその誇り高い騎士に私は敬意を覚えます」
 稲見之守の言葉に続けて、敬意を込めた穏やかな口調で語りかけたのはリリエ。
 自らもこの世界に蒼穹をもたらさんとする者として、かの騎士の信念は理解できた。
「しかし……その騎士は、呪具の力を以て己が独りで全てを救うつもりだったのでしょうか。己が独りで力さえあれば全てを変えられると思ったのでしょうか」
 誰かに頼ることも支えられることもなく。何もかもをたった独りで背負い込んで。

「そうであれば、それは寂しいことだと私は思うのです」
「――貴殿らは情が深いな。だがその情で世界は救えない」
 この闇に包まれし世界では、絆も、情も、希望も、全ては力の前で無意味と化す。
 闇に堕ちし騎士は暗黒のオーラを纏い、魔槍を構えると凄まじい勢いで突進する。
 それはおとぎ話の騎士が求めた力の成れの果て。あらゆる希望を蹂躙する絶望の一撃だ。

「――天覆う暗雲切り裂く刃たれ」
 哀しげな表情を浮かべながら、リリエは聖句を唱えて【天使化】を発動する。
 その身は霊的な存在へと近付き、頭上には輝ける光輪が浮かぶ。暗黒を纏うサンドラとは対照的な聖性を帯びた彼女は、光り輝く革命剣を握りしめて飛翔する。
 挑むは互いに真っ向勝負。暗黒騎士が全速力で愛馬を駆り、天使もまた最高速で翼を打つ。彼我の相対速度は音速を超え、疾風を巻き起こしながら正面より激突する。

「……手を取り合うこともまた1つの力だと私は思います。その騎士と共に剣を並べることが出来たなら……残念でなりません」

 ありえたかもしれない、失われてしまった可能性に無念を抱きながら。
 光と闇が交錯する瞬間、万感の想いを込めてリリエは革命剣を突き放つ。
 同時にサンドラも魔槍を繰り出し――双方渾身の結果は相討ちとなった。
「きゃぁっ」
「くぅ、ッ」
 サンドラの魔槍は天使の翼を貫き、体勢を崩させて地に墜とす。
 だが同時にリリエの革命剣も騎士の鎧を穿ち、馬上から落とす。
 この好機を他の者が見逃すはずがないと、リリエは確信していた。

「リリエ殿、見事じゃ。あとは任せよ」
 果たして、落馬した暗黒騎士の元にすかさず襲い掛かったのは稲見之守だった。
 その外見は既に平時の童女姿ではなく――否、それどころかヒトの原型を留めてすらいない。辛うじて狐に近いなにかのように見える、不定形にして異形なる黒き獣。
 全身から膨れ上がる莫大な妖気は闇よりも昏く、双眸は深淵を宿しながら爛々と輝く。

「姿形不定なるこそ真なり、夢と現つの狭間に巣食う神にしてモノノ怪来たれり」

 【化生顕現】。真の姿を解き放ったモノノ怪神は脳裏に直接響くような言葉を発し、顎を開いて牙を突き立てんとする。対するサンドラは魔槍と盾にて応戦するものの、落馬した直後では体勢が整わない。
「その姿はまさか……貴殿も異端の神か……ッ!」
「ふふっ、生憎なことにワシはヒトではナくてナ」
 喰らう頭が一つかと思えば二つ、いや三つに。切り裂く腕爪が二つかと思えば三つ、四つ――もう幾つやら。絶え間なく変化して攻撃の部位数から位置まで変え続けるのは、なるほどヒトには絶対に真似できない戦い方だろう。

「ゆえにヒトを超えた力も、そしてヒトの力も知っているつもりじゃよ」
 たった二本の腕と槍と盾ではとても捌き切れるものではない。獲物の鎧や柔肌に食い込んだ稲見之守の爪牙は、纏う妖気にて騎士の精気を、魂を、果ては呪詛をも啜る。
「があぁぁ……ッ!!!」
 がくり、と片膝を突いて崩れ落ちながら、サンドラの身体は鮮血に塗れていく。
 誰かと手を取り合うことによる連携。そして真にヒトを超えた力の前では、暗黒騎士の力もまた絶対のものとはなり得なかったのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

シャルロット・クリスティア
力を求めたその先の末路がこれですか……やり切れませんね。
一縷の望みに賭けたからこそ、その絶望も大きかったことでしょう。

ですが……。
たとえ変わらぬ運命であろうと足掻き続けるのもまた、人と言うものです。
立ち上がらなければ、変えられる運命ですら変えられなくなる。
かつては、きっとあなたもそうであった筈です……!

真の姿を解放。
その暗黒ごと、御旗の輝きで薙ぎ払ってみせましょう。
騎兵槍が相手であろうと、易々と打ち負けるとは思わないことです。
騎馬兵の脅威はその突進力。ならばそれを活かしようもない近距離戦を極力維持します。

……いつか私も、貴方と同じようになる可能性は否定しません。
それでも……私は、まだ諦めない。



「力を求めたその先の末路がこれですか……やり切れませんね」
 身も心も闇に堕ちた暗黒騎士になにを思ったか、シャルロットはぽつりと呟いた。
 この世界がいかに過酷であるかは彼女もよく知っている。ゆえに逆転がために危険な力に手を染めた騎士の信条は、彼女にも痛いほど理解できた。
「一縷の望みに賭けたからこそ、その絶望も大きかったことでしょう」
 闇に対抗するために闇の力を得て、それでも運命を変えることはできなかった。
 かつての騎士の魂が残っているのなら、どれほど無念だっただろうかと思う。

「ですが……たとえ変わらぬ運命であろうと足掻き続けるのもまた、人と言うものです」
 哀しみを胸の奥にしまいこみ、曇りのない眼差しで騎士を見つめながら少女は語る。
 一歩前に進むたびにその装束は変化し、眩くも温かい光が彼女の元に集まっていく。
「立ち上がらなければ、変えられる運命ですら変えられなくなる。かつては、きっとあなたもそうであった筈です……!」
 【希望の旗、空高らかに】。具現化された光の戦旗を掲げてシャルロットは叫ぶ。
 どれほどこの世界が残酷だろうと自分は決して諦めない。かつての騎士サンドラのように、散っていった数多の英雄達のように――最後の瞬間まで戦い抜いてみせる。
 シャルロット・クリスティアの希望と信念は、決して絶望の闇に屈しなどしない。

「――眩いな、若人よ。だがいつかは貴殿も気付く筈だ。すべては無意味だったと」
 希望の輝きを放つシャルロットになにを見たか、懐旧するようにサンドラは呟き。
 そして再び暗黒のオーラをその身に纏うと、愛馬に飛び乗りランスを構えなおす。
「我が暗黒は全てを呑み込む。希望も、信念も、蹂躙する」
「その暗黒ごと、御旗の輝きで薙ぎ払ってみせましょう」
 暗黒騎士が突撃の構えを取る前に、シャルロットは一気に近くまで駆け込んでいく。
 騎馬兵の脅威はその突進力。ならばそれを活かしようもない近距離戦にこそ勝機があると信じたのだ。

「騎兵槍が相手であろうと、易々と打ち負けるとは思わないことです」
 真の姿を解放したシャルロットは、戦旗を槍のように振るって闇の魔槍と打ち合う。
 突進の勢いを封じても、馬上から繰り出されるランスの威力は十分に脅威。それを操る暗黒騎士サンドラの練度も先刻の騎士とは比べ物にならないほど洗練されている。
 これほどの実力を付けるには武具の力だけではない、血の滲むほどの鍛錬が必要だったはずだ。想像に余りある努力を重ねてなお届かなかった理想、鍛え上げた信念を以ってしても屈さずにはいられなかった絶望が、交えた槍の矛先から伝わってくる。

「志は未だ折れず、灯は未だ消えず……。……私は、諦めない……!」

 ――それでも、シャルロットは一歩も退かない。不屈の魂と戦う決意がある限り、彼女の戦旗から光が失われることはなく、その加護は窮地においてこそ最も輝く。
 暗黒を圧するほどの心の光が、夜闇を切り裂いて戦場を太陽のように照らし出す。
「くぅ、ッ!?」
 あまりの煌めきにサンドラが目を眩ませた、その一瞬をシャルロットは見逃さない。
 全身全霊を込めて突き出した戦旗の一撃が魔槍を打ち払い、暗黒騎士を深々と貫いた。

「見事……だ。だが、忘れるな……私は貴殿の、未来の姿でもある……」
「……いつか私も、貴方と同じようになる可能性は否定しません。それでも……私は、まだ諦めない」
 血に染まった戦旗を引き戻し、噛みしめるような語調でシャルロットは応えた。
 目指すべき理想は遠かれど、決意は今もこの胸に。戦いは、まだ終わらない。

成功 🔵​🔵​🔴​

フレミア・レイブラッド
且つての勇者が堕ちたものね…。
貴女も且つては希望を胸に、未来の為に戦っていたのでしょうに…。
良いわ、忘れたのであれば思い出させてあげる!

【吸血姫の覚醒】を発動。
覚醒した魔力による雷撃の魔力弾【属性攻撃、誘導弾、高速詠唱、全力魔法】で攻撃しつつ、敵の馬も感電させる事で足を封じるわ。
後は【念動力】による防御膜を纏って敵の生命力吸収の影響を防ぎつつ、超高速の速度と膂力を活かし、敵を魔槍【怪力、早業、串刺し】で攻撃!
敵が守勢に回ろうとも、防御する盾武具諸共押し潰す様に猛攻を加え、敵本体もその身に纏う武具も呪いもまとめて【神槍グングニル】で消し飛ばすわ

絶望に抗う人々がいる限り未来はあるのよ。この世界にも



「且つての勇者が堕ちたものね……。貴女も且つては希望を胸に、未来の為に戦っていたのでしょうに……」
 闇へと堕ちた英雄の末路を惜しむように、フレミアの言葉には哀惜が宿っていた。
 呪われし力に手を出してもなお、人類の未来に殉じようとした騎士。しかし今やその理想は失われ、ここに居るのはかつて守ろうとしたものを破壊する殺戮者である。

「希望も、未来も、とうに忘れた。今の私を動かすのは暗黒の絶望だけだ」
「良いわ、忘れたのであれば思い出させてあげる!」
 傷ついてなお力を増していく【暗黒を纏う者】に立ち向かうため、フレミアは【吸血姫の覚醒】を発動する。解き放たれた真祖の魔力は天をも照らすほどに輝き、背中には4対の真紅の翼が生え、身体は17、8歳ほどの外見にまで急成長を遂げる。
「我が血に眠る全ての力で……貴女の絶望を打ち砕く!」
 大気を震わす気迫と共に、放たれるのは雷撃の魔力弾。覚醒した吸血姫の魔力は落雷にも匹敵する凄まじい電流となって、暗黒騎士の元に降り注いだ。

「吸血鬼か。皮肉なものだ、この堕ちた身でもなお戦うことになるとは」
 サンドラは罅割れた盾を掲げて魔力弾を受け止める。暗黒のオーラを纏った武具は強固な防御力で装着者を守るが、しかしその守護は彼女の愛馬の元にまでは及ばない。
 感電した騎馬の足が止まった隙を突いて、フレミアは瞬間移動と見紛うほどの速度で肉迫すると、真紅の魔槍「ドラグ・グングニル」による猛烈な連撃を繰り出した。
「さあ、どこまで受け止めきれるかしら?」
「いいだろう、私も全力を以って応じよう!」
 一撃一撃が竜と伍するほどの重さと、熟達の戦士の鋭い技巧を兼ね備えた攻勢。
 なれどサンドラも負けてはいない。自らの負傷に応じて勢いを増した暗黒の力を借りて、生命力を奪う呪われし魔槍で正面から打ち合う。フレミアは呪いの侵食を防ぐために念動力の防御膜を纏いながら、一歩も譲ることなく苛烈な攻勢を続けていく。

「……かつての私も、これほど強大なヴァンパイアと戦ったことは無かったな」
 激しい攻防が繰り広げられる中、次第に押されつつあるのはサンドラの側だった。
 これまでの戦いで受けた負傷が彼女の力を高めているのは間違いない。だがそれ以上に、武具の損傷や"毒"の影響で、彼女の纏う暗黒の力が弱まってきているのだ。
 フレミアはその隙を見逃さない。守勢に回った敵をガードの上から押し潰さんとするように猛攻を加え、真紅の魔槍に持てる魔力の全てを圧縮して送り込んでいく。
「全てを滅ぼせ、神殺しの槍……」
 形成されるのは全長数メートルにも及ぶ長大なる真紅の槍。真祖の魔力を超圧縮した、この世のあらゆるものを破壊する威力を秘めた必殺の神槍。彼女はそれを敵の至近距離から、本体も呪われし武具も諸共に粉砕すべく、渾身の力を込めて投擲する。

「消し飛びなさい……! 神槍グングニル!!」

 真紅に煌めく神槍の矛先が、暗黒騎士サンドラの掲げた呪われし大盾に突き刺さる。
 直後、盾は中心の亀裂に沿って粉々に砕け散り、神槍はその勢いを緩めることなく騎士の身体を串刺しにして――圧縮された真祖の魔力を一気に解放した。
「――――ッ!!!!!?!」
 想像を絶するほどの衝撃がサンドラを襲い、平原には巨大なクレーターが穿たれる。
 魔力の奔流の中で暗黒の鎧が罅割れ、黒き魔槍にピシピシと亀裂が走っていく。

「絶望に抗う人々がいる限り未来はあるのよ。この世界にも」
「ああ……貴殿らのような力と心の強さが、かつての私にもあればな……」
 魔力を使い切ったフレミアが普段の姿に戻ると、無念を滲ませた声が返ってくる。
 神槍の引き起こした爆心地には、暗黒のオーラを吹き飛ばされたボロボロの騎士が、槍を支えにして立っていた。

成功 🔵​🔵​🔴​

雛菊・璃奈
人々が諦めない限り未来はある…。
闇に堕ちた貴女に希望の光を見せてあげる…!

【九尾化・天照】封印解放…!

光速による敵の馬をも超える速度で敵を翻弄…。
敵とバルムンクで切り結びつつ、光を集束させ、【破魔】と【呪詛】を宿した光呪のレーザーで敵自身と暗黒の武具に宿る呪いを貫いて攻撃…。
更に光速状態から振るうバルムンクによる一撃【力溜め、鎧砕き、呪詛、衝撃波】で敵本体と共に彼女を蝕む武具を破壊していくよ…。

光をバルムンクに集束させた一撃で暗黒の武具を撃ち砕き、【ソウル・リベリオン】で彼女を呪いから解き放つ…。
オブリビオンと化した彼女を元に戻す事はできなくても、せめて、この呪いから解き放たれるように…。



「人々が諦めない限り未来はある……。闇に堕ちた貴女に希望の光を見せてあげる……!」
 深手を負った騎士に回復の暇を与えず、魔剣バルムンクを手に斬り込んだのは璃奈。
 銀の瞳に揺らがぬ意志の輝きを秘め、人類の努力が築いた希望の砦を背にして――絶対に闇に屈さないという決意の元で、彼女は【九尾化・天照】の封を解く。
「この世界に太陽の輝きを……封印解放……!」
 それは、ヴァンパイアによってこの世界から奪われたはずの煌めき。金髪金毛の九尾に変化した璃奈の身体から溢れる、眩くも暖かい光が、暗黒の闇を照らしていく。

「この……光は……!」
 日輪が地に降りてきたかのような輝きを前にして、サンドラは思わず目をかばう。既に闇の存在へと堕落してしまった騎士にとって、その輝きは余りにも眩しすぎた。
 その刹那のうちに璃奈は自らの間合いに敵を捉える。九尾化に伴って光速の域に達した彼女のスピードは、騎馬の脚力をもってしても太刀打ちできるものではない。
「行くよ……」
「来るが、いいッ!」
 上段からのバルムンクの斬撃。サンドラは咄嗟に魔槍を振るって刃を打ち払う。
 手負いなれども【黒き騎兵の戦技】は健在。速さでは圧倒的に凌駕する璃奈の太刀筋を培った経験のみで捉え、一歩も退くことなく互角に斬り結んでいく。

 ――だが、九尾化・天照の真価は術者に光の速さと身体能力を与えるだけではない。
 璃奈は闇夜を照らす光を集束させ、破魔の呪詛を宿した光呪のレーザーに変えて、自らの斬撃と同時に攻撃を仕掛ける。
「ぐ、ぁッ!!!」
 暗黒の武具に宿る呪いの守護を、破魔のレーザーが貫通する。間髪入れずに振り下ろされたバルムンクの刃が騎士の鎧を切り裂き、真っ赤な血飛沫が草原を濡らす。
 純粋な武技だけならばまだしも、光線と光速剣の波状攻撃を槍一本で凌ぐことは至難の業だ。その身を覆う武具は徐々に破壊され、サンドラは次第に翻弄されていく。

「貴女を蝕む武具と呪いは……わたしが破壊する……」
 敵が完全にこちらの動きを見失った瞬間、璃奈はバルムンクに光を集束させる。
 魔竜さえ断ち斬る魔剣の刃に、希望の輝きを込めた渾身の一撃。光そのものと化したその一閃は、暗黒騎士の鎧をバラバラに撃ち砕いた。
「馬鹿、な、ッ?!」
 サンドラが愕然と目を見開くなか、璃奈はすかさずバルムンクを手放すと【ソウル・リベリオン】を召喚。初撃の勢いを殺すことなく追撃の二の太刀を叩きつける。
「呪詛喰らいの魔剣よ……彼の者を縛る呪いを喰らい、正しき姿、正しき魂へ戻せ……。彼の魂に救済を……!」
 光速にて振るわれた魔剣は、騎士の心身を蝕んできた暗黒の呪いを喰らっていく。
 オブリビオンと化した彼女を元に戻す事はできなくても、せめて、この呪いから解き放たれるように――それが璃奈の願いであり、彼女に示したい"希望"であった。

「あぁ……貴殿らはまったく……いや、だからこそ貴殿らは"希望"足り得るのか」
 サンドラの身体から暗黒のオーラが消えていく。その表情は、どこか晴れやかで。
 だが同時に哀しげで、遠い過去を眺めているような――昏い感情が残っていた。
「……私は、もう戻れない。だからどうか、君達の手で終わらせてくれ」
 それは闇に堕ちたはずの騎士が垣間見せた、あるべき姿へと戻された精神の残滓。
 誇り高きかつての騎士の願いは、現在の自身がここで終焉を迎えることだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シェーラ・ミレディ
そのお伽噺は君自身のものか?
……などと尋ねても、答えはないだろうが。
救済の志もすでになく、ただ力に飲まれた悪鬼が相手だというのなら、終わらせてやるのが情けだろう。

敵が突進してくるのを見切り、大きく後ろへ飛ぶ。
同時に素早く銃を抜きカウンター、『片恋の病』。銃口を向ける先は敵本人と馬、双方の眼だ。
弾頭は精霊の力を借りた誘導弾。それに僕の技量とUCの性能も合わせれば、小さな的に当てることも容易い。
視覚さえ封じてしまえば、ただ突っ込んでくるだけの攻撃なぞ簡単に回避できるだろう。
身を翻し続けて敵の体力の消耗を誘い、ついでに横っ腹に銃弾をお見舞いするぞ。

光を消させてなるものか!

※アドリブ&絡み歓迎



「そのお伽噺は君自身のものか? ……などと尋ねても、答えはないだろうが」
 その瞳に怜悧な輝きを宿し、シェーラは悲劇の英雄譚を語った騎士に銃口を向ける。
 なるほど、かの騎士は闇に堕ちた悲劇の士であったのかもしれない。だが、そうだとしても今、目の前にいる者は騎士ではない。自分たちが為すべきことは唯ひとつ。
「救済の志もすでになく、ただ力に飲まれた悪鬼が相手だというのなら、終わらせてやるのが情けだろう」
「―――私を討ったところで、この世界の絶望は終わりはしない。全ては無意味だ」
 一度は正気を取り戻したかに見えた【闇き魔槍の騎士】は、再び暗黒のランスを構える。溢れ出す闇の中から彼女の愛馬が現れ、不気味な嘶きが闇夜の平原に木霊する。

「滅びるがいい、猟兵よ。貴殿らが守る儚い希望の光と共に」
 暗黒騎士サンドラは愛馬に跨ると、馬蹄の音を轟かせながら猛然と突進を開始する。
 武具の破損によって暗黒の力は大きく弱まっているように感じるが、それでも騎士としての技量に裏打ちされた騎馬突撃の威力は脅威。その槍に串刺しにされぬ前に、シェーラはさっと大きく後方に跳んだ。
『この思いのひとかけでも、あなたが感じてくれたなら。それだけでわたしは報われるのです』
 同時に素早く両手で銃を抜き、唱えた一節は【戯作再演・片恋の病】。
 あらゆる距離と障害を突破する、愛憎の力を弾丸に宿すユーベルコード。
 そして、その弾丸を込めた銃口を向ける先は騎士と騎馬、双方の眼だ。

「光を消させてなるものか!」
 空中より放たれた弾頭は精霊の力を借りた誘導弾。そこにシェーラ自身の技量とユーベルコードの特性が合わさることで、彼の射撃はどんな小さな的だろうと決して外さない、必中の魔弾と化した。
「ぐあッ!?」
 サンドラと愛馬が同時に悲鳴を上げる。眼窩からぽたぽたと零れるのは真っ赤な血。
 封じられたのは片目の視力のみ。だがそれで視界は半減したうえに遠近感まで喪失。
 こうなればただ闇雲に突っ込んでくるだけの攻撃など簡単に避けられる。軽やかな身のこなしで魔槍の矛先を躱しながら、シェーラが回り込むのは潰した片目の側だ。

「くっ、どこへ行った―――ッ!」
「こっちだ、堕ちた騎士よ」
 片目を押さえながら無闇に槍を振りまわすサンドラから、シェーラは躍るように身を翻し続け、常に死角に回り込むように相手の周りを駆け回りながら銃撃を見舞う。
 タタンッとリズミカルな銃声を響かせて、空いた横っ腹を精霊の弾丸が射抜いていく。
「盲た闇の中で躍るがいい!」
 絶えず動くことで敵を翻弄しながら体力の消耗を強い、着実に傷を負わせるのがシェーラの戦法。その効果は覿面に現れ、血に塗れた騎馬の動きは次第に鈍り始めていた。

成功 🔵​🔵​🔴​

キリカ・リクサール
アドリブ連携歓迎

フン…なるほどな、自分の思う通りに行かなかったから癇癪を起こし、いじけてるだけか
身を削った笑い話だな、腹が捩れるかと思ったぞ

と敵を挑発し銃撃
ダメージを与えながら距離を取って敵の戦技を警戒し、同時にヴェートマ・ノクテルトのリミッター解除準備を行う

お前の未来が潰えたからと言って、この世界もそうであると思うな
この世界も人々も、お前や私が思う以上に強く、希望を持って生きている

ランスチャージが来たらUCを発動、強力な念動力で敵の突進を止め、ナガクニとデゼス・ポアによる斬撃で攻撃を行う

この世界が闇に沈むことはない
たとえ、私がこの戦場で骸を晒しても、闇と戦う意思は人々へと紡がれていくからだ


ティオレンシア・シーディア
※アドリブ掛け合い絡み大歓迎

あらあら、吸血鬼の狗ごときが裁定者気取り?
…死神の価値も墜ちたものねぇ。

さすがに生身で真正面から騎兵の相手はしたくないわねぇ。
ミッドナイトレースに○騎乗してグレネードの〇投擲による○爆撃と●轢殺で機動戦仕掛けるわぁ。
オーラの放射でカッ飛んでくるくらいはしてくるかもしれないけど、この子はこんなナリでもUFO、ホバリングもVTOLもお手の物。○空中戦ならこっちの領分よぉ?

刻むルーンはラグ・アンサズ・ユル。
「浄化」の「聖言」にて「悪縁を断つ」…あれ、呪いの装備って話だし。祓っちゃえば、相応に弱体化するんじゃないかしらぁ?
通れば御の字、やってみる価値はありそうねぇ。



「この世界の人間はいずれ、絶望の中で死に絶えるしかないのだ……貴殿らの足掻きはほんのささやかな終末への遅延でしかない。なぜ、それが分からない……?」
 傷ついた身体を流血に染めながら暗黒騎士サンドラは嘆くように調子で語りかける。
 それは、かつての彼女が戦いの果てに辿り着いた真実だったのかもしれない。だが、対する猟兵達からの反応は冷ややかなものであった。
「あらあら、吸血鬼の狗ごときが裁定者気取り? ……死神の価値も墜ちたものねぇ」
「フン……なるほどな、自分の思う通りに行かなかったから癇癪を起こし、いじけてるだけか。身を削った笑い話だな、腹が捩れるかと思ったぞ」
 強化型クロスボウ"クレインクィン"の弦を巻き上げるティオレンシアに、機関拳銃"シガールQ1210"のトリガーに指を当てるキリカ。かつての騎士がいかな人物であったとしても、目の前のオブリビオンに情けをかけるつもりは、彼女達には無かった。

「ならばその身を以って思い知れ。お伽噺の騎士が味わった絶望を――!!」
 【暗黒を纏う者】は馬上にて告げると、卓越せし【黒き騎兵の戦技】を披露する。
 挑発に激していようとも戦いぶりは冷静で、暗黒のオーラを纏いながら愛馬と共に戦場を駆ける。ひとたび距離を詰められれば、その魔槍は容赦なく猟兵を貫くだろう。
「さすがに生身で真正面から騎兵の相手はしたくないわねぇ」
「腐っても騎士を名乗るだけのことはあるか。厄介だな」
 ティオレンシアはバイク型UFO「ミッドナイトレース」に騎乗し、敵の騎馬に機動戦を仕掛ける。キリカはその後部に相乗りすると、敵の戦技を警戒して「切り札」の準備を行いながら、シガールQ1210のフルオート射撃を浴びせた。

「そのような面妖な鉄の馬で、私の愛馬と張り合うつもりか?」
「もう『一芸だけ』とは言わせないわぁ。……これでも、だいぶ特訓したんだから」
 その言葉に恥じぬ巧みなハンドル捌きで、騎士の動きに追随するティオレンシア。
 片手でハンドルを握りながらもう一方の手でクロスボウを構え、流鏑馬のように移動しながらグレネードを射出する。銃弾にて牽制されていたサンドラのすぐ足元で、大きな爆発が巻き起こった。
「効いたか?」
「どうかしらねぇ」
 これで倒せたなどと考えるほど甘くはない。果たしてふたりがじっと警戒を保つ中、暗黒のオーラを全身に纏った騎士が爆煙を突き破り、猛然と突撃を仕掛けてきた。

「受けるがいい、暗黒の力を! 潰えるがいい、この世界の未来と共に!」
 負傷に比例して増大する暗黒をジェットのように放射し、黒い流星の如く疾駆するサンドラ。突き出されたランスの矛先はまっすぐミッドナイトレースを狙っている。
 このままでは回避は間に合わない。そう予感したキリカはバイクの後部から飛び降りると、切り札たるバトルスーツ「ヴェートマ・ノクテルト」の制限を解き放った。
「コード【épique:La Chanson de Roland】承認。リミッター全解除……起動しろ!【デュランダル】!」
 これまでキリカの行動を補助(アシスト)していた全機能が、増幅器(ブースター)へと変わる。その運動能力はあらゆる生物を超えた超高速移動を可能とし、脳への電気的刺激は限界を無視した強大な念動力を一時的に発現させるのだ。

「お前の未来が潰えたからと言って、この世界もそうであると思うな。この世界も人々も、お前や私が思う以上に強く、希望を持って生きている」
 キリカがきっと睨めつけると、見えない壁にぶつかったように騎士の突進が鈍る。
 暗黒騎士を掴まえた念動力のパワーは、高層ビルをも圧潰させるほどのものだ。
「ぐ、あぁぁぁぁぁ……ッ!!!?!」
 ミシミシと骨が軋み肉が潰れていく激痛に苛まれながらも、騎馬を前に進ませようとするサンドラ。だが、その突撃からもはやこれまでのような勢いは失われている。
 この機を逃さず、ティオレンシアは乗騎のアクセルとフルスロットルに入れると、敢えて自ら敵に突っ込んでいき――衝突する寸前、ふわりと空中に舞い上がった。

「な―――ッ」
「この子はこんなナリでもUFO、ホバリングもVTOLもお手の物。空中戦ならこっちの領分よぉ?」
 まさかそれまで地を駆けていた相手が飛ぶとは思いもよらなかったのか、驚きの余りサンドラの思考に空白ができる。その間隙を突いて猟兵達は一気に攻撃を仕掛けた。
 上空から狙い撃つはティオレンシアの愛銃オブシディアン。刻むルーンはラグ・アンサズ・ユル。「浄化」の「聖言」にて「悪縁を断つ」銃弾がサンドラを狙う。
(あれ、呪いの装備って話だし。祓っちゃえば、相応に弱体化するんじゃないかしらぁ? 通れば御の字、やってみる価値はありそうねぇ)
 果たしてルーンの銃弾は暗黒のオーラを吹き飛ばして、漆黒の魔槍に的中する。
 ピシリ、と音を立てて柄に亀裂が走るのと同時に、騎士の動きがさらに鈍った。
「があぁぁッ!!?!」
「ビンゴ、ってやつねぇ」
 すかさずティオレンシアはグレネードを取り出して、相手の頭上目掛けて投下する。
 空爆宜しく降り注いだ手榴弾は、幾つもの爆炎の華を咲かせて敵を蹂躙していく。

「この世界が闇に沈むことはない」
 そしてサンドラが暗黒の加護を失った直後、人体を凌駕した速度でキリカが迫る。
 その手にはナガクニを握りしめ、傍らには呪いの人形「デゼス・ポア」がいる。
 そして繰り出すのはスーツの機能を最大限発揮した超高速の斬撃。たとえ限界を超えた反動によって自らの寿命を縮めようとも、彼女は気にもとめずに刃を振るう。
「たとえ、私がこの戦場で骸を晒しても、闇と戦う意思は人々へと紡がれていくからだ」
 自分は決してひとりではない。共に戦う仲間が、意志を継いでくれる誰かがいる。
 それはお伽噺の騎士には得られなかったもの。迷いのない覚悟を抱いたキリカが、人形と共に放つ無数の斬撃が、完膚なきまでに敵を切り刻んでいく。

 ――爆炎、銃声、そして斬撃と血飛沫。
 絶え間なく続く猟兵の猛攻によって、暗黒騎士の命運は確実に削られていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

フォルク・リア
「なるほど。ご高説痛み入る。
だが、お伽噺で喜ぶ年齢でもないんでね。
興味があるのは目の前の悪夢をどうやって打ち払うかだけだ。」

ランスの構えに注意し突進を躱す為
一か所に留まらず残像を発生させて移動。
隙を見て【高速詠唱】で冥雷顕迅唱発動。
落雷での攻撃と共に雷弾を地表近くに展開し
馬を狙った【誘導弾】で放つ。
突進の瞬間を【見切り】雷で起点を潰し
雷を纏って接近し距離を潰し突進を防ぎ
馬の脚や胴を狙った雷撃を用いた【マヒ攻撃】で
馬を感電によりマヒさせてから
雷を集めて【全力魔法】の力を込め
【2回攻撃】でサンドラに向け雷撃を放つ。
「世界の未来は何時でも人の手の中にある。
それが失われるのは明日を諦めた時だけだ。」



「なるほど。ご高説痛み入る。だが、お伽噺で喜ぶ年齢でもないんでね。興味があるのは目の前の悪夢をどうやって打ち払うかだけだ」
 悲観的な持論を語った暗黒騎士サンドラに対して、フォルクは素っ気なく言い放つ。
 つまらない悲劇の後日談に付き合ってやるつもりはない。自分がここに来たのはそういった過去の亡霊どもから、今日を生きる人々の明日を守る為なのだから。

「私という悪夢を払ったところで……この世界が悪夢から覚めることは無い……」
 深手を負った【闇き魔槍の騎士】は幽鬼のごとき有様で、それでもランスを構える。
 まるで見えざる何かに衝き動かされるように、一心不乱の猛進が敵の心臓を狙う。
 フォルクは突進を躱すためにじっと騎士の構えを注視し、残像をその場に残して身を翻す。一ヶ所に留まっていればたちまち騎馬の餌食だろう、ならば動き続けることだ。
「上天に在りし幽世の門。秘めたる力を雷と成し」
 騎士の猛追を右に左にと紙一重で避けながら、隙をみて紡ぐは【冥雷顕迅唱】。
 青年の手にした黒杖「デモニックロッド」の先端に、バチバチと放電する稲光が灯りはじめる。

「その荒ぶる閃光、我が意のままに獣の如く牙を剥け」
 呪文が完成した瞬間、フォルクがさっと杖を掲げると、暗雲を切り裂く雷光が閃く。
 地上へと落ちた雷は全方位へと拡散する雷弾となり、術者の誘導のもとで戦場を奔る。
「ぐ……ッ、騎馬狙いか!」
 サンドラを襲った雷弾は彼女の愛馬を感電させ、突進の起点となる助走を封じる。
 その隙にフォルクは自らの身体にも雷を纏うと、文字通り迅雷の速さで肉迫した。

「ここまで距離を潰せば突進もできないだろう」
「魔術師風情が、白兵戦で私と張り合うつもりか!」
 のこのこと間合いに踏み込んできた標的へと、馬上より魔槍を繰り出すサンドラ。
 だが暗黒の槍がフォルクを串刺しにするよりも、雷撃が放たれるほうが一瞬速い。至近距離からの放電が馬を麻痺させ、バランスを崩した騎士の刺突が僅かに逸れた。
「隙を見せたな」
 フードの端を穂先が貫いていくのにも構わず、フォルクはさらなる魔力を練り上げる。
 敵が体勢を立て直すよりも速く。拡散した雷が杖先に集束していき、眩い輝きとなる。

「世界の未来は何時でも人の手の中にある。それが失われるのは明日を諦めた時だけだ」
 静かなる宣言と共に解き放たれる全力の雷撃。目の前が真っ白になるほどの閃光が辺りを染め上げ、束ね上げられた雷の槍が暗黒騎士サンドラの身体を撃ち貫く。
「――――ッ!!!」
 神経を灼かれ臓腑を焦がす激痛。悲鳴を上げることもできずに悶絶するサンドラ。
 明日を諦めてしまった闇堕ちの騎士にとって、その輝きは耐え難いほどに眩しかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヒビキ・ノッカンドゥ
・天使組で参加
アドリブ歓迎

別人格リンへ交代し接近戦
「へーお伽噺ありがとー。すげーつまんねえ」
打って変わって嘲笑い禍々しい片刃剣を振るう
先と違い風のように動く

剣戟しながらギアを上げる
相手が己を高めるにあわせUC、見切り、早業使用
「所詮テメエはその程度ってこった。さっさともう一回死んで後進に任せろよオバサン」
唯唯速く。誰も追いつけない速さを目指す
「諦めた奴の言葉なんざ負け犬の遠吠えだ」
当たると悟れば頑健すぎる左腕の義手を前に出す
大質量が当たるならば抗わずにヒラリと舞う
「走る奴にゃそんな言葉聞こえねえんだよ」
殺気は刃のように、片刃は風のように、己は音のように
「闇は静かにあるもんだ。勘違いしてんなよ」


ヴァルヘ・ヘレヴェッティ
・天使組で参加アドリブ等歓迎

「なるほどな!参考にならねえ!」
笑い飛ばし突撃するリンを援護
馬の脚が鈍れば質量の利点は必然鈍る
「つまるところ力を見誤っただけのバカだろお前
偉そうに説教たれてんじゃねえぞばーかばーか!」
カラカラと笑い自身も素早く動き弾雨を常に違う場から見舞う

敵UCを見るとUC、破魔、祈り使用
「来たれ浄罪の光。罪科を捨てぬ愚者に逃げる場所無し」
「贖罪の日は今この時なり。神意の使者に背を向けること能わず」
「振り返るなという言葉こそ、その心を試すものだ」
詠唱を重ねると両手甲の聖痕が輝き空から光が舞い降りる
味方以外が広範囲に塩結晶と化して砕け散っていく

「心せよ。滅びは汝の心の中にこそある」



「貴殿らがいかに強かろうとも……絶望はいずれ貴殿らの心をも呑み込む。この世界の闇が晴れることは無いと知るだろう……かつてのお伽噺の騎士のように……」
「へーお伽噺ありがとー。すげーつまんねえ」
「なるほどな! 参考にならねえ!」
 悲嘆と絶望に満ちた暗黒騎士の語りを、リンとヴァルヘはあっさりと笑い飛ばした。
 赤の他人の悲劇になんてこれっぽっちも興味はない。害を為すならばここで倒すまでだと、彼女らの振る舞いは如実にそう語っていた。

「所詮テメエはその程度ってこった。さっさともう一回死んで後進に任せろよオバサン」
 ヒビキの中に宿るもうひとつの人格「リン」は、ヒビキとは打って変わって嘲笑うかのような表情を浮かべ、禍々しい片刃剣を手にして風のように接近戦を仕掛ける。
 対するサンドラは全身に暗黒のオーラを纏い、己の負傷をも力に変えて猛然と突き掛かる。【闇き魔槍の騎士】としての技、渾身の騎馬突撃にて敵を蹂躙せんと――。
「つまるところ力を見誤っただけのバカだろお前。偉そうに説教たれてんじゃねえぞばーかばーか!」
 ――それを阻止したのはヴァルヘの見舞う銃弾の雨。カラカラと笑いながら前線のリンを援護すべく、敵の騎兵を弾幕で自由に動き回らせないことを第一とする。

「そこまで言うのならば見せてもらおうか、貴殿らに私を超えうる力があるのかを」
 重機関銃の弾幕を巧みにかい潜りながら、暗黒騎士は馬上から闇の魔槍を振るう。
 リンは人間離れした敏捷性を以ってその機動に追随し、嵐のごとき剣戟を繰り広げる。
 回避のために馬の脚が鈍れば質量の利点も必然鈍る。それでも高所の優位と【暗黒を纏う者】による戦闘力の増大により、接近戦ではサンドラに分があるかに見えた。

「貴殿の力はその程度か? だとすれば拍子抜けだな」
 闇を帯びて加速する魔槍の刺突。避けきれないと悟ったリンは左腕の「彙己纏翼」を前に出して盾とする。頑丈な義手がガキンと鈍い音を立てた直後、今度は騎馬の馬体そのものが追撃を仕掛けてくる。
「さっきまでが俺だと値踏みしたか? 馬鹿じゃねえの?」
 【この程度が俺の筈がないから】と、大質量による体当たりに抗わずにヒラリと舞いながらリンは笑う。体感時間の減速によって擬似的な時間加速を、全身のリミッターを外すことで運動能力の強化を。一瞬前の自分よりも一瞬後の自分は速く、上がり続けるギアの段階に制限はなく。誰も追いつけない高みを目指して唯唯加速していく。

「諦めた奴の言葉なんざ負け犬の遠吠えだ」
 殺気は刃のように、片刃は風のように、己は音のように。際限なき加速を続けながらリンは剣戟を交わす。もはや彼女の耳には騎士が何を言っているのかすらも分からない――あまりにもそれは"遅すぎて"。
「走る奴にゃそんな言葉聞こえねえんだよ」
 攻守は逆転し、いつしかサンドラは攻める側から守る側に追いやられていた。
 目にも止まらぬ速さで繰り出されるリンの猛攻をどうにか凌いではいるが、捌き切れなかった斬撃が鮮血を散らす。騎馬の質量にものを言わせて押し切ろうにも、後方から絶え間なく降り注ぐ「Love your enemy.」の銃撃が騎馬の機動を制限している。
「逃がしゃしねーよばーか!!」
 天使のような笑顔で重機関銃をブッ放すヴァルヘの表情は実に楽しげで。前線の連中に伍するほどではないにせよ、相応の機敏さで戦場を駆けまわり、敵を射程距離から決して逃さない。

「なるほど大したものだ。だが暗黒の力に底は無い。絶望に沈めッ!」
 猟兵達の攻勢が激しくなるにつれて、サンドラの纏う闇はより深くなっていく。劣勢に立たされども屈しないのは、闇が彼女の力を高め続けているからに他ならない。
 それを見たヴァルヘは銃撃を中断し、両手を組み合わせながら天に祈りを捧げる。
「来たれ浄罪の光。罪科を捨てぬ愚者に逃げる場所無し」
 【命を懸けて逃げるといい】。暗雲に覆われたダークセイヴァーの空に光が差す。
 それは聖者のもたらす奇跡の力。あまねく罪咎を祓い清める有無を言わさぬ力。
「贖罪の日は今この時なり。神意の使者に背を向けること能わず」
 詠唱を重ねるにつれてヴァルヘの両手の甲にある聖痕が輝き、それに呼応するかのように空から舞い降りた光は、闇に包まれし暗黒騎士を照らし出した。

「振り返るなという言葉こそ、その心を試すものだ」
「ッ……この、力は……あぁぁあぁぁぁぁッ!!?」
 ヴァルヘが味方と認識した以外の者が、その光の範囲に入れば浄化され塩となる。
 闇という名の罪を纏った騎士に、浄罪の光はまさしく天敵とも言えるものだった。
 咄嗟に騎馬を反転させて効果範囲から逃れたものの、その時には既に彼女の片腕と片脚は塩の結晶と化しており、そのまま脆くも砕け散ってしまう。

「心せよ。滅びは汝の心の中にこそある」
 天使のように厳かに、そして無慈悲に、ヴァルヘは罪深き騎士へと宣告する。
 半身を失ったサンドラが体勢を立て直す間もなく、死の予感は紅い疾風となって彼女の元に迫る。禍々しき刃を携えた、リンという名の執行人が。
「闇は静かにあるもんだ。勘違いしてんなよ」
 亡霊がいつまでも騒ぎ立てるなと、音速を超えた斬撃が騎士を深々と切り裂く。
 平原を紅く染めていく血潮の量が、刻一刻と迫る戦いの終わりを示していた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

四王天・燦
《華組》

演説を聞き自分の馬鹿さ加減に涙を浮かべて笑う。
サンドラには謝るよ

神鳴―妖刀である。
「シホの危機には魂を捧げて雷神と化す気だった」
シホを世界に置き換えるとサンドラと同類さ、笑っちゃうね。
雷神化封印を誓う。
良い友達だ…叱られるのさえ心地いい

サンドラを可哀想に眺め挟撃。
シホの目潰しに合わせて真威解放・デストラップで足場に鋼糸の網を張る。
馬の脚に搦めて斬り裂いてやる。
「独りで抱え込んだお前との差だ」

落馬させ死合の如く突貫。
刃を交えるが、シホの援護に合わせ神鳴一閃。電撃属性攻撃をもって闇を祓う。
「正々堂々戦おうとも思った。でも独りでない強さも見せたくなったんだ」
不敬は謝る。闇から解放されて逝けよ


シホ・エーデルワイス
《華組》
アドリブ歓迎

依頼≪選ばれなかった未来、遠く霞んだ過去≫で思い出した
養父が絶望した事を想う


燦の告白を聞き
真剣な眼差しで

わ・ら・え・ま・せ・ん!

燦…本当に私を想ってくれるなら
自分の命を安売りしないで
私達は彼女と違う事を証明しましょう


燦が避け易く鋼糸が<目立たない様【華霞】で目潰しの援護射撃>をしつつ
私も『聖笄』で<迷彩を纏い燦と敵を挟む位置へ忍び足>

敵落馬後

攻撃されたら<第六感と聞き耳で軌道を見切り
オーラ防御を纏い聖銃の銃身で受け流しつつ踏み込み
カウンターの蹴りで鎧無視攻撃>

燦に矛が向くなら
<破魔の祈りを込めた誘導弾>で攻撃

独りで強大な力を振るえば身を滅ぼすでしょう
だから私達は支え合います



「燦……どうして泣いているのですか?」
「え……ああ、ゴメン。あいつの演説を聞いてたら、自分の馬鹿さ加減が身に沁みてさ」
 傷ついていくサンドラを哀れむような目で眺めながら、燦はシホの問いに答えた。
 目元に浮かんでいた涙をぐいっと手の甲で拭い、自嘲するように笑みを浮かべて。
 その背に担いだ雷様の力を宿した太刀――妖刀・神鳴の柄にそっと手を当てながら。

「シホの危機には魂を捧げて雷神と化す気だった」
 それは如何ともし難い窮地に陥った時のために、燦が考ていた奥の手――否、禁じ手か。大切なものを守るために己を犠牲として力を得る、まさしく最終手段である。
「シホを世界に置き換えるとサンドラと同類さ、笑っちゃうね」
 あの騎士も決して譲れないもののために、超えてはならない一線を超えたのだろう。
 その選択がどんな結末を招くのか、護りたかった相手にどんな想いをさせるのか、正しく理解しないままに――そう、それはつい先程までの燦も同じことだった。

「――――」
 その告白を聞いたシホは、いつも以上に真剣な眼差しでじっと燦を見つめ。
 一言一言、噛んで含めるように、厳しい口調で想いの丈を叩き付けた。
「わ・ら・え・ま・せ・ん!」
 決して怒鳴り散らすような感じではないが、それでも燦がたじろぐほどの剣幕だった。
 引き気味になった親友の手をぎゅっと掴まえ、今度は心配そうな調子で語りかける。
「燦……本当に私を想ってくれるなら、自分の命を安売りしないで。私達は彼女と違う事を証明しましょう」
 かの騎士の姿を見るうちにシホが想い浮かべたのは、絶望に堕ちた養父との記憶。
 どうしようもなく残酷で理不尽な世界で、あのひとは手の届かないところに行ってしまった――だからこそ思う。もう、置いていかれるのは、嫌だ。

「分かった……もう絶対にそんなことはしない。友達として誓うよ」
 自分のために本気で叱ってくれる友に心地よさを覚えながら、燦は雷神化を封印する。
 そんな力に頼らなくても彼女を守れる自分になる。なれるはずだ、彼女と一緒なら。
「……お前には、そういう相手はいなかったのか?」
 再び視線を向けた先にいるのは、暗黒のオーラを纏いて孤軍奮闘するサンドラ。
 その痛々しい勇姿を可哀想と感じながら、シホと目配せひとつ交わし、走り出す。
 仕掛けるは挟撃。いかな強大な個人が相手であろうと、今なら負ける気がしなかった。

「友情、信頼、絆……それらもいずれは絶望へと堕ちる布石に過ぎない」
 サンドラは隻腕にてランスを構え【黒き騎兵の戦技】を以って燦とシホを迎え撃つ。
 片腕片脚を失った状態ながらも馬上で巧みにバランスを取り、左右どちらから敵が来ても対応できるように構えを取っている。
「咲き誇って! 私のエーデルワイス!」
 先に仕掛けたのはシホだった。【儚きエーデルワイスの嵐】が吹き荒れ、銀色に輝く無数の花弁が敵の感覚を晦ませる。それに合わせて彼女自身はハイドランダのヘッドドレスに念を込め、光学迷彩を纏って戦場からふっと姿を消した。

「隠れたか。ならば先ずは見えている者から仕留める」
 花弁の嵐に巻かれたサンドラは限られた視界の中、薄闇色の外套を着た燦の姿をおぼろげに捉えると、騎馬に拍車をかけて突進する。手負いと言えども【闇き魔槍の騎士】は健在、渾身のランスチャージには一撃で猟兵を戦闘不能にする威力がある。
「いいぜ、来いよ」
 燦は逃げない。まるで武士のように堂々と刀を構えて、迫りくる敵を見据えている。
 否――正しくは逃げる必要が無かったのだ。何故ならば罠はもう仕掛け終えていたから。

「―――ッ!?」
 騎馬のスピードが最高速に達し、暗黒の魔槍が燦の心臓を貫かんとしたその瞬間。
 ふいに足元が抜け落ちたような感覚を受けて、サンドラの身体は宙に投げ出された。
「っ、これは……糸か。嵌められた、ということか」
 地面に叩き付けられてからようやく気が付くほどの、細く強靭な鋼糸を用いた【真威解放・デストラップ】の網。それは馬の脚を搦めて切り裂くように仕掛けられており、シホの【儚きエーデルワイスの嵐】が発見をより困難なものとしていた。

「独りで抱え込んだお前との差だ」
 単独での仕込みでは、同じことをやってもこうは上手く嵌まらなかっただろう。
 連携によって騎士を落馬させた燦は、立ち上がる間を与えずに死合の如く突貫する。
 サンドラは即座に槍を構えなおすが、片腕片脚を失った今の彼女は、馬から降りれば大きなハンデを負う。振り下ろされる神鳴の太刀を柄で受け止めるのが精一杯だ。
「援護します!」
 そこに背後から轟く銃声。焼けるような痛みに騎士が振り返れば、ちょうど燦と敵を挟みこむ位置に迷彩を解いたシホがいる。破魔の祈りを込めた彼女の銃撃は、闇に染まった者を浄化する銀の弾丸であった。

「く……まだだ、ッ!!」
 片膝をついた不安定な姿勢のまま、サンドラは渾身の膂力を以って魔槍を薙ぎ払う。
 強引に刀を弾かれた燦は一歩下がる。一方で攻撃に巻き込まれたシホは落ち着いて聴覚と第六感を研ぎ澄ませ、風鳴りの音から軌道を見切ると、逆に前へ踏み込んだ。
「失礼いたします」
 両手の二丁聖銃にオーラを纏い、銃身を盾代わりとして穂先を受け流しながら懐に入る。間髪入れずに蹴り上げられたつま先が、ごすりと騎士の急所にめり込んだ。

「かは……っ」
 クリーンヒットを食らってよろめくサンドラ。この機を逃さず燦が追撃を仕掛ける。
 その手に握りしめた神鳴の刃は、昂ぶる感情を示すかのごとく紅い雷撃を纏って。
「正々堂々戦おうとも思った。でも独りでない強さも見せたくなったんだ」
「独りで強大な力を振るえば身を滅ぼすでしょう。だから私達は支え合います」
 ふたりの連携で繋いだ勝機。想いを込めて放たれた神鳴一閃が、暗黒騎士を断つ。
 紅雷と共に迸った鮮血が、戦場に紅い華を咲かせ――。

「不敬は謝る。闇から解放されて逝けよ」
「まだ……まだ、だ……」
 一度は倒れかけた騎士は、暗黒の魔槍を支えとして辛うじて立っていた。
 なれどその身は満身創痍。もはや戦いの趨勢は誰の目にも明らかだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

オリヴィア・ローゼンタール
すべての人に物語がある
貴様のそれが闇と悲哀によって幕を閉じたとしても――今を生きる人々の未来を、そこに引きずり込む理由にはならない!

騎兵が最も力を発揮するのは、突撃によるランスチャージ
力に囚われているなら、その戦法を変えることはない筈
狙いが分かるならば……真っ向から迎え撃つ(カウンター)

白き翼の真の姿に変身
聖槍に聖なる力を極限まで圧縮(全力魔法・属性攻撃・破魔)し、【嚇怒の聖煌剣】を形成
全霊を以って振り下ろし、魔槍のチャージと正面から激突
背後の人類砦を護るため、一歩も退かず(拠点防衛)
明日を希う人々の【祈り】を受けて【限界突破】
聖煌剣よ――闇を斬り裂けっ!!



「すべての人に物語がある」
 それが悲劇であれ喜劇であれ、そのひとつひとつは誰とも異なる自分だけの物語。
 それを自分の意志で綴っていくのが"人生"であると、オリヴィアはかく語る。
「貴様のそれが闇と悲哀によって幕を閉じたとしても――今を生きる人々の未来を、そこに引きずり込む理由にはならない!」
 他者の物語を――否、この世界そのものを悲劇で終わらせんとするオブリビオン。
 破邪の聖槍を携えしクルースニクは、そのような輩を決して見逃しはしない。

「ならば止めてみせよ……私のお伽噺を、貴殿の信じる物語で凌駕してみせよ……!」
 満身創痍なれども【闇き魔槍の騎士】の戦意は挫けず。愛馬に跨り魔槍を構えると、立ちはだかる全ての希望を踏み躙らんとするように猛然と突進を仕掛けてくる。
(騎兵が最も力を発揮するのは、突撃によるランスチャージ。力に囚われているなら、その戦法を変えることはない筈)
 果たしてオリヴィアの読みどおり、敵は己が最も得意とする戦法で仕掛けてきた。
 極めてシンプルではあるが、その速度と質量が凄まじい威力を有するのも事実だ。

「狙いが分かるならば……真っ向から迎え撃つ」
 オリヴィアは白き翼を背から生やした真の姿に変身すると、破邪の聖槍を掲げる。
 悪を穿つ黄金の穂先に聖なる力が圧縮されていき、それが極限まで達した時、聖槍は燦然と煌めく【赫怒の聖煌剣】を形成する。
「――その意気や良し。ならば私も全身全霊を以ってその剣を打ち砕く」
 サンドラの口元に静かな笑みが浮かび、魔槍がドス黒い暗黒のオーラを纏う。
 闇に包まれながら駆けるその姿は、まるで騎士自身が巨大な黒槍と化したかのようだ。

「無窮の光よ! 絢爛たる勝利の煌きで天地を照らし、怒りの刃で遍く邪悪を斬り伏せよ!」
「無辺の闇よ! 果てしなき絶望の暗黒で世界を包み、嘆きの穂先で一切の希望を蹂躙せよ!」

 全霊を以って振り下ろされた聖煌剣と、渾身を込めたランスチャージが激突する。
 全てを切り裂く黄金の光と、万物を蹂躙せんとする暗黒の闇は激しく鍔迫り合い、その余波は戦場に大きな衝撃派を巻き起こす。

(退くわけには、いかない)
 一瞬でも気を抜けない圧を感じながら、オリヴィアはぐっと大地を踏みしめる。
 彼女の背後には人類砦がある。オブリビオンの支配より脱したかの地の人々は、平凡で掛け替えのない日常を過ごしながら、今も猟兵達の勝利を信じて待っている。
 猟兵は、『闇の救済者(ダークセイヴァー)』は決して絶望に負けたりしない。
 明日を希う人々の祈りが届いたとき――オリヴィアは自らの限界を超えた。

「聖煌剣よ――闇を斬り裂けっ!!」

 瞬間、爆発的に膨れ上がった黄金の輝きが、天を衝くほどの巨大な刃となる。
 あらん限りの力を込めて振り下ろされた眩き一閃は、ついに暗黒の闇を凌駕した。
「――――!!!」
 聖煌剣に断たれたサンドラは、鮮血を撒き散らしながら吹き飛ばされていく。
 折れた魔槍の穂先の先端が、絢爛たる輝きの中で塵となって散っていった。

成功 🔵​🔵​🔴​

リーヴァルディ・カーライル
…ん。そうやって今まで多くの人達を犠牲にしてきたのね。
護るべきものが何かすら見失って…。
…ならば、もはや容赦はしない。己が罪業の報いを受けよ。

左眼の聖痕に魔力を溜め犠牲者達の魂の存在感を暗視し、
心中で祈りを捧げ魂の残像と手を繋ぎUCを発動

…暗黒に囚われし魂よ。正しき報復を望みならば…。
怨嗟を晴らす事を望むならば…。
我が声に応えよ。その望み、我が名に賭けて叶えよう…!

今までの戦闘知識と第六感から敵の戦技を見切り、
限界突破した早業で呪詛を纏う大鎌をなぎ払って切り込み、
敵を乱れ撃ちにして傷口を抉る闇属性攻撃を放つ

…私は死んでいった人達から意志を託されて此処にいる。
お前のようにはならないわ、暗黒騎士。



「まだ、だ……まだ私の戦いは終わらない。この世界の全てを闇に染めるまでは……」
 欠けた魔槍を満身創痍の身体の支えとして、なおも立ち上がる暗黒騎士サンドラ。
 その傷ついた肉体を見れば、とうに戦えるはずのない負傷であると分かるだろう。
 今の彼女を動かしているのは魔槍に宿る暗黒の力。その身を護る盾も鎧も失われたが、この槍が失われない限り、彼女は終わらぬ殺戮に身を浸し続けるだろう。

「……ん。そうやって今まで多くの人達を犠牲にしてきたのね。護るべきものが何かすら見失って……」
 悪鬼へと変わり果てた暗黒騎士を、リーヴァルディは哀しむように見つめていた。
 かつて人類のために自らを犠牲にして戦った、高潔で誇り高き騎士はもういない。
「……ならば、もはや容赦はしない。己が罪業の報いを受けよ」
 覚悟を決めたリーヴァルディの左眼に刻まれた聖痕が、淡い魔力の輝きを発する。
 かの暗黒騎士の犠牲となった者達の魂を、闇の中から彼女の瞳は見つけ出す。

「……暗黒に囚われし魂よ。正しき報復を望むならば……怨嗟を晴らす事を望むならば……我が声に応えよ。その望み、我が名に賭けて叶えよう……!」
 心の中で祈りを捧げ、死者の残滓と想いを繋ぐ。リーヴァルディの呼びかけに応えた霊魂達は【断末魔の瞳】にて聖痕に取り込まれ、結晶化した"死者の翼"を形作る。
 その姿の名は【代行者の羈束・死を超越せし者】。オブリビオンの犠牲となった数多の死者たちの"致死の記憶"を背負い、その全てを力と為す報復の代行者である。

「……ん。行くわ」
 自らの中にある恩讐の嘆きに応えながら、リーヴァルディは颯爽と地を蹴った。
 過去を刈り取る漆黒の大鎌を握りしめ、一息に踏み込むのは敵の間合いの内。
 【暗黒を纏う者】は全身から闇のオーラを膨れ上がらせ、猛然と魔槍を突き放つ。
「その禍々しき力……貴殿もいずれは私と同じ末路を辿ることになろう……!」
 理想のために禁忌の力に手を出してなお、悲願を果たせなかった絶望を籠めた一撃。
 しかしリーヴァルディの培った戦闘経験と鋭敏な第六感は、騎士の戦技をすでに見切っていた。さっと身を翻して魔槍の穂先をくぐり抜け、そのまま懐まで肉迫する。

「……私は死んでいった人達から意志を託されて此処にいる。お前のようにはならないわ、暗黒騎士」
 理想を託して去っていった者がいる。無念を託して力を貸してくれる者がいる。
 この夜闇の世界の犠牲となった死者の想いの全てがリーヴァルディを支えている。
 だから彼女はどんな時でも独りではない。どんなに深い闇の中でも、決して自分を見失いはしない。

「……そして次はお前の番よ。彼らの無念をその身で味わえ」
 刹那、限界を突破したリーヴァルディの斬撃速度は、暗黒騎士の反応を超越する。
 呪詛を纏った大鎌がサンドラを薙ぎ払い、闇が傷口を侵食する。それは一撃のみに留まらず、リーヴァルディに力を貸す全ての霊魂の無念が晴らされるまで終わらない。
「ぐああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ――――ッ!!!!!!」
 絶えることなく繰り出される闇と斬撃の乱舞の渦中で、サンドラが絶叫を上げる。
 闇に堕ちてから彼女が積み重ねてきた罪業の重さ――それはもはや彼女自身にも負い切れるものでは無かった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
物量に弾も薬剤も品切れとは…
(機械馬騎乗、槍・体躯差で有利とジョストを挑み)

絶望の主命を果たすなら、人々の希望を守る為立ち塞がるまで…勝負! 
(オーラでリーチを伸長され盾で辛うじて防ぐも槍握る腕ごと右上半身が抉られ)
…!?

(落馬しかかるも)
私は未来の為、危険や呪いを承知で戦う幾人もの勇気ある黒騎士の姿を知っています
…御伽の騎士が呪物に手を伸ばしたように

異形の人馬となり反転突撃

彼ら彼女らの誇りの為
騎士を名乗るモノとして
墜ちた貴女には負けられない!

地に突き立つ槍を抜きハッキング限界突破で更に加速
見切った穂先を穂先で弾き
左肩を貫かれるも胴を槍で貫き

御伽噺等と…
一番絶望していたのは貴女ではないですか



「物量に弾も薬剤も品切れとは……」
 闇に誓いし騎士との戦闘で消費した弾薬の量を確認し、トリテレイアは独りごちる。
 補給のために一時帰投する余裕はない。現状使用可能な武装の中で戦術を組み立て、彼が選んだのは機械白馬「ロシナンテⅡ」による一騎打ち(ジョスト)であった。

「……そのいでたち、貴殿もまた騎士とお見受けする」
 すでに半身を喪い満身創痍だった暗黒騎士サンドラは、馬上槍と大盾を構えながら機械馬に乗って近づいてくるトリテレイアを見ると、自らも颯爽と愛馬に飛び乗る。
 闇に堕ちてなお残された矜持なのか、最後まで彼女は騎士として振る舞わんとする。
「絶望の主命を果たすなら、人々の希望を守る為立ち塞がるまで……勝負!」
「その挑戦……背を向けるのは騎士として恥となろうな。受けて立とう!」
 一騎打ちを挑む騎士らしく堂々たる姿勢でトリテレイアが機械馬を駆けさせると、サンドラも同時に愛馬に拍車を当てる。お互いに一歩も譲らぬ構えの全力疾走だ。
 騎馬や槍を含めた体躯と重量においてはウォーマシンのトリテレイアが有利。正面から突進しながら互いに槍で突き合うジョストの形式では、彼の方に分があるはずだが――。

 ――だが、サンドラには呪われし魔槍と、忌まわしき暗黒の力が付いている。
「受けよ我が全身全霊――この一撃、貴殿に耐えられるか!!」
 まだどちらの間合いに入らぬうちに、暗黒騎士が烈帛の気合と共に槍を突き出す。
 すると暗黒のオーラが欠けた穂先を包みこみ、瞬間的に槍のリーチを伸長させる。
「……!?」
 間合いを見誤らされたトリテレイアは辛うじて盾でコアユニットを含む胴体を守るものの、矛先を逸らされた魔槍は引き換えに彼の右上半身を、槍を持つ腕ごと抉っていった。

「しまった……っ」
 半身損傷の被害を負い、重心のバランスが崩れたトリテレイアの身体が左に傾く。
 馬上から落下しかかる刹那のうちに、緊急時対応のために彼の思考速度は加速する。もしも人間であればその現象を或いは"走馬灯"と呼んだかもしれない。
 機械仕掛けの騎士のメモリーに浮かび上がってきたのは、知己のある騎士達の姿。
 呪われた黒い武具を身にまといながら戦う、勇敢なる遍歴の騎士の勇姿であった。

「損傷部位強制排除。 ロシナンテⅡ、ドッキングモード!」
 直後、起動されたユーベルコードは【機械騎士は愛馬と共に】。損傷した右上半身と下半身をパージして機械馬と一体化、損傷箇所の修復と自己強化を同時に実行する。
「なんだと……ッ」
 勝利を確信していたサンドラが振り返りざまに目にしたのは、ケンタウロスのごとき異形の人馬一体形態となりながら、反転突撃してくるトリテレイアの姿であった。

「私は未来の為、危険や呪いを承知で戦う幾人もの勇気ある黒騎士の姿を知っています……御伽の騎士が呪物に手を伸ばしたように」
 地に突き立った槍を引き抜いて、愛馬と一体となった機械騎士はさらに駆ける。
 自己ハッキングによるリミッター解除により、補助動力となった機械馬の炉心をフル稼働。限界を超えた速力に機体が軋むのにも構わず、加速し、加速し、加速する。
「彼ら彼女らの誇りの為、騎士を名乗るモノとして、墜ちた貴女には負けられない!」
「ならば……超えてみせるがいい機械の騎士よ! 我が絶望の槍を超えてッ!!」
 全ての騎士の誇りを背負いて駆ける機械騎士を、暗黒騎士は真っ向から迎え撃つ。
 再び繰り出される暗黒の絶槍――だが、その戦技はすでに一度目にしたものだ。
 鋒先と鋒先が火花を散らし、暗黒の槍が弾かれる。逸れた鋒先は今度は機械騎士の左肩を貫くも、彼は構わずに全出力を乗せて馬上槍を突き出し――。

「御伽噺等と……一番絶望していたのは貴女ではないですか」
「ああ……その通りだよ。だから……ありがとう。私に希望を見せてくれて」

 ――機械騎士の槍は、暗黒騎士の胴体を深々と貫いていた。
 ふたりの騎士は最期の刹那、互いの視線と言葉を交わし。
 そして、憑き物の落ちたような表情を浮かべながら、暗黒騎士サンドラは塵に返っていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『ぷち収穫祭!』

POW   :    力任せに野菜を採って採って採りまくる!

SPD   :    収穫した野菜を素早く調理!

WIZ   :    野菜を収穫し、じっくりことこと煮込んでいく

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「このたびは私達の村を救っていただき、なんとお礼を申し上げればいいか……」

 戦いを終えた猟兵達を待っていたのは、人類砦の住人からの感謝の言葉だった。
 闇の騎士団の接近と平原での戦いは、村の方からもしっかりと確認できていた。
 ゆえに住人達は敵が自分達では太刀打ちできないほどの強敵であったことも、村を守るために猟兵達が戦ってくれたことも理解している。

「この御恩は一生忘れません! 皆様はこの村の救世主です!」
「満足いくおもてなしも出来ませんが、どうかゆっくりしていって下さい!」

 折しも今は収穫期の真っ只中。防衛戦の甲斐あって畑にも被害は出ていない。
 村人達は採れたての新鮮な春野菜を使って、猟兵のための宴を開いてくれた。
 スープにサラダ、炒めものにシチューなど、質素ではあるが精一杯の気持ちを込めたもてなしの品々がテーブルに並べられていく。

 あなたはこの宴に参加して、戦いの疲れを癒やしてもいい。
 野菜の収穫や調理を手伝って、村人達と交流を深めるのもいい。
 また、今後の村の防衛について方策を話し合うのも堅実的だろう。

 猟兵達の活躍によって、平和を取り戻した人類砦。
 守り抜いた"希望"の萌芽は未だか弱く、けれども明日への喜びに満ちていた。
雛菊・璃奈
ラン達は村の人達の料理を手伝いつつ、他の世界の料理や限られた食材や普段捨てる様な余りモノを活用、美味しく食べる為のレシピを村人達に伝授…。

「料理!」
「節約レシピ!」
「簡単クッキング!」

わたしは防壁や主要な道に対オブリビオン用の呪術トラップの呪符(第一章で使った様なヤツや呪力の縛鎖が発動するモノ)を設置して防備を固めるよ…。
流石に精鋭は倒しきれないけど、足止めになるしね…。


ん…料理美味しい…。採れたての春野菜とか美味しいね…。
この村は吸血鬼達の支配が及んでない分、支配地域の村より幾分か豊かみたいだね…。
その分、ここまで築くのは大変だったと思うけど…。
でも、その成果を、希望を守れて良かったよ…。



「料理!」
「節約レシピ!」
「簡単クッキング!」

 楽しそうに弾んだ声と美味しそうな匂いが、平和な人類砦の村に広がっていく。
 村人たちの料理を手伝う、璃奈のお付きのメイドたち。彼女らはこの村にはなかった異世界の料理や、限られた食材や普段捨てる様な余りモノを活用、美味しく食べる為のレシピを村人たちに伝授する。
「なるほど、こうすれば無駄なく料理できるのですね」
「とってもおいしそう! 私も作ってみます!」
 けして食糧豊かとは言えない村にとって、レパートリーを増やしつつ食材の無駄を省けるレシピは重宝するもの。特に台所を預かる村の女性たちは興味津々だった。

「ラン達はよくやってるみたいだね……」
 村から漂ってくる明るい賑わいを感じながら、璃奈は村落の周辺を巡っていた。
 その手にあるのは対オブリビオン用の呪術トラップを仕込んだ呪符。闇に誓いし騎士達との戦いの折にその侵攻を阻んだような、罠や呪力の縛鎖が発動するモノだ。
「流石に精鋭は倒しきれないけど、足止めになるしね……」
 彼女は村の主要な道や防壁の各所にトラップの呪符を設置し、防備を固めていく。
 いつかまたオブリビオンがこの村に攻めてきた時には、これが村人たちが敵に立ち向かうための一助となるはずだ。

「ご主人!」
「戻ってきた!」
「ご飯食べよ!」

 罠の仕込みを終えて戻ってきた璃奈を真っ先に迎えたのは、メイド達の笑顔だった。
 どうやら宴の準備は整ったようで、設えられた卓上には美味しそうな料理が並ぶ。
「あのメイドの方たちに教わったんです」
「どうぞ召し上がって下さい!」
 そう村人たちからも勧められて、璃奈は席につくと盛り付けられた料理を口に運ぶ。
 素朴ながらも優しい味わいが、いつもは無表情な彼女の顔立ちをすこし綻ばせた。

「ん…料理美味しい……。採れたての春野菜とか美味しいね……」
 新鮮な春の食材を余すところなく使った料理の数々を、よく味わっていく璃奈。
 その反応を聞いた村人たちは嬉しそうな笑顔を見せ、自分たちも宴に加わっていく。
「この村は吸血鬼達の支配が及んでない分、支配地域の村より幾分か豊かみたいだね……。その分、ここまで築くのは大変だったと思うけど……」
 暗い夜闇の世界でも希望を失わない、明るく元気な人々の様子を眺めながら。
 しっかりと地に足のつけた暮らしを営む村民たちに、璃奈は微かに微笑みかけ。
「でも、その成果を、希望を守れて良かったよ……」
 この舌に転がる味わいは、自分たちが護りぬいた人類の明日と勝利の味。
 オブリビオンの支配から脱した村の宴は、まだまだ始まったばかりだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フレミア・レイブラッド
あら、旬の野菜を使った美味しい料理ね♪お酒(自前)にも合うわ♪
村を守れたお祝いに貴方達もどう?(村の人達に【魔城】から取り寄せたお酒を振る舞いつつ)

「スープおいしいのー♪」

良かったわね、雪花♪そうね、こんな素敵な宴を開いてくれたのだから、お礼をしないとね。

雪花と共に宴を楽しみ、料理を堪能しつつ、宴のお礼といった建前を付けて【魔城スカーレット】を開き、この人類砦を継続、発展させて行く為に各種野菜の種や農具、武具や医薬品といった物資を提供するわ。
子供達には「ブラッド・クリスタル」を渡したりね♪

ここは人々の希望となる町よ。これからも頑張って貰わないとね♪協力は惜しまないわ



「あら、旬の野菜を使った美味しい料理ね♪ お酒にも合うわ♪」
 自前で持ち込んだ名酒のグラスを片手に揺らしながら、村の歓迎を味わうフレミア。
 戦いを終えた彼女はすっかりご機嫌の様子で、眷属の雪花と共に宴を楽しんでいる。
「村を守れたお祝いに貴方達もどう?」
「これはこれは、ありがたいことです」
 フレミアが【魔城スカーレット】より取り寄せた酒は、本来ならこの村ではとても手の届かないような名品ばかり。それを惜しげもなく振る舞う彼女に驚きを敬意を抱きながら、村人たちは喜んで酒杯を受け取る。

「スープおいしいのー♪」
 優雅にグラスを傾ける主人の傍らでは、雪女見習いの少女が料理を味わっている。
 ほっと快さそうに綻んだ表情が、心からこの宴を楽しんでいることを語っていた。
「良かったわね、雪花♪ そうね、こんな素敵な宴を開いてくれたのだから、お礼をしないとね」
 フレミアもまた自分達のために作られた料理を堪能しつつ、指先ですっと虚空をなぞるように魔法陣を描き、己の居城【魔城スカーレット】に通じる異空間の穴を開く。
 その中から出てくるのは、各種野菜の種や農具、武具そして医薬品。いずれもこの人類砦を継続、発展させていく為には欠かせないであろう物資の数々だった。

「受け取って貰えるかしら?」
「こ、こんなに!?」
 宴のお礼といった建前で用意された大量の物資に、村人達はぽかんと口を開ける。
 安定しているとはいえ豊かとは言えない、さらにオブリビオンの攻撃にも備えなければいけない集落にとって、この援助がどれだけ大きな意味を持つかは言うまでもない。
「村を救ってくださったうえに、こんなご支援まで……どんなに感謝してもしきれません」
 惜しげもなく、恩に着せることもなく、それらの物資を譲り渡してくれたフレミアに、村人たちは敬服にも近い感謝の念を抱きながら、深々と頭を下げるのだった。

「ここは人々の希望となる町よ。これからも頑張って貰わないとね♪ 協力は惜しまないわ」
 恐縮する村人達ににっこりと微笑みかけながら、フレミアはスープを一匙すくう。
 明日も明後日もその先の未来も、この美味しいスープをみんなが味わえるように。
 今は小さなこの希望の灯が、いつか世界中に広まっていくことを彼女は願ってやまない。猟兵とこの世界の人々が手を取り合えば、それは不可能な事では無いはずだ。
 だから、そのために自分が出来ることを惜しみはしない――フレミアは村の子供達をそっと手招くと、自身の加護を与えた「ブラッド・クリスタル」を手渡す。

「この世界の未来は貴方達が作っていくのよ。頑張ってね♪」
「はーいっ!!」
 紅いお守りをぎゅっと握りしめて、元気いっぱいに返事をする小さな子供たち。
 その眩いほどの笑顔に目を細めながら、吸血姫はこの村の明るい未来を願うのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シホ・エーデルワイス
《華組》
アドリブ歓迎


救世主…

一瞬誇らしく思うも
すぐに罪悪感が心を占めるが表情に出ない様振舞う

守った村はどう?


燦の希望で油揚げ入りのボルシチを【供宴】で料理し仲間や村人達に振舞う


燦が話し終えるまで静かに聞き

話してくれてありがとう

加担と傍観
どちらが罪深いかは分からないけれど…
心が擦り切れるのも
罪を抱えて生きるのも
とても辛いよね


依頼≪罪は冷たく静かに降りしきる≫で思い出した罪を話す

騎士団は少ない物資を優先的に頂く代わり
命を賭けて人々を守るのが役目でした
でも私は…虐殺に手を染めた

罪悪感に押し潰されそうになった時
親友は
罪と感じているヒトに、断罪はいらない
と言って支えてくれました

私達…咎人同士でお似合いね


四王天・燦
《華組》

W

救世主…歪な欲だったが結果良しか。
親友の肩を叩き「良いことしたんだ」と笑う

護った村を見る。
視線は女性にばかり行くけど。
悪くねーな

シホに得意のボルシチをおねだり。
(油揚げ持ってるし…嫁に欲しいわ)

食べたら反省会。
無茶の切欠を教えるよ

最初は義賊だった。
世界が繋がりA&Wで興味と向上心で盗賊ギルドに入った。
麻薬・人身売買何でも御座れ。
奴隷の子も拷問も…見て見ぬフリに慣れてしまった

罪と向き合うシホを見ている内にあの慣れが、恥と後悔とコンプレックスになったんだ。
「加担より酷い最低の傍観者だ。手を汚さず―まるで悪魔さ」

隠し事はしんどかった、懺悔は以上。
咎人同士―咎にケジメつける者同士になりたいね



「救世主……歪な欲だったが結果良しか」
「救世主……」
 あまり耳に馴染みのない呼ばれ方に肩をすくめながら、燦は小さく苦笑を浮かべる。
 その傍らのシホは一瞬誇らしい気持ちになるものの、すぐに罪悪感が心を占め、表情に出ない様に己を律する。しかしそんな振舞いは親友にはお見通しだったようだ。
「良いことしたんだ」
 ぽん、と肩を叩いて笑いかける燦。憂いの晴れたその表情を見ていると、シホの心のざわつきも落ち着いてくる。そう、けして万事順調とは言えなかったかもしれないが、自分達は確かにこの村の平和を――人類砦の未来を守り抜いたのだ。

「守った村はどう?」
「悪くねーな」
 祝勝の宴の席につきながらシホの問いに答えて、燦は村の様子をぐるりと見渡す。
 その視線の先にいるのはもっぱら女性ばかりだが。けして豊かとは言えない暮らしの中でも笑顔を絶やさない人々の姿は、とりたて美人ではなくとも魅力的だった。
「ごちそうも美味いし。でももう一品なにかあればなー……シホ、あれ食べたい」
「あれですか? いいですよ、捧げるものシホ。感謝を込めておもてなし致します」
 親友からのリクエストを受けて、シホは【もてなし捧げるもの】として台所に立つ。
 村人から鍋と食材を借りて作るのはボルシチ。主に寒冷な土地でよく口にされる、たっぷりの野菜と肉をじっくりと煮込んだ、温かくて栄養たっぷりのスープだ。

「出来ましたよ」
「待ってました!」
 鮮やかな深紅色のスープを仲間と村人達に振舞うと、宴席からは歓声が上がった。
 リクエストをした当の燦はもちろん、料理上手なシホのボルシチは村人からも評判が良いようで、レシピを教えてほしいという者も出てくるほどだった。
(油揚げ持ってるし……嫁に欲しいわ)
 しっかりと自分のお皿に大好物が入っているのに気付いて、燦はしみじみと想う。
 美人で料理の他にも掃除もできて歌唱やアートにも堪能――そんな魅力的な彼女に「親友」として心を許されていると思うと、なんだかすこし誇らしくもあった。

 ――大好評の甲斐あって、ボルシチの鍋はあっという間に空っぽになった。
 空腹と疲れを癒やした燦とシホは、改めて今回の戦いについての反省会を開く。
「最初は義賊だった。世界が繋がりアックス&ウィザーズで興味と向上心で盗賊ギルドに入った」
 供宴を終えてすとんと隣席に座ったシホに、燦は今回の無茶をした切欠を教える。
 それは燦が歩んできた過去の述懐でもある。盗人なれども義を通すことを旨としていた彼女の生き様は、いつしか綺麗事ではまかり通らない現実の前に歪んでいった。
「麻薬・人身売買何でも御座れ。奴隷の子も拷問も……見て見ぬフリに慣れてしまった」
「…………」
 燦の述懐を、シホは懺悔を聞き届けるシスターのように、ただ静かに聞いていた。
 彼女が目にしてきた裏社会の闇の深さに、そして抱えてきた重荷に寄り添うように。

「罪と向き合うシホを見ている内にあの慣れが、恥と後悔とコンプレックスになったんだ」
 燦自身はけして率先して悪辣に手を染めたわけでも、力を貸したわけでもない。
 だが余りにも多すぎる悪事と悲劇から、目を逸らし耳を塞ぐことを覚えてしまった。
「加担より酷い最低の傍観者だ。手を汚さず――まるで悪魔さ」
 そんな風に心の奥でわだかまり続けてきた自己嫌悪が、蓋を押しのけて溢れ出してきたのが今日の出来事だ。コンプレックスを解消しようと必死になるあまり、シホにも迷惑をかけてしまった。もう二度とこんなことはしないと燦は固く己に誓う。

「隠し事はしんどかった、懺悔は以上」
 腹の中に溜まっていたものを出し切った燦は、幾分とすっきりとした表情だった。
 話を聞き終えたシホは、努めていつもと変わらないトーンで彼女に語りかける。
「話してくれてありがとう。加担と傍観、どちらが罪深いかは分からないけれど……心が擦り切れるのも、罪を抱えて生きるのも、とても辛いよね」
 全てが、とは言わない。けれどもシホには燦が抱えてきた苦しみの一端が分かる。
 なぜならシホもまた、罪を抱える者だから――とある依頼での一件で思い出した己の過去の罪を、とある騎士団に所属していた頃の出来事を話しはじめる。
「騎士団は少ない物資を優先的に頂く代わり、命を賭けて人々を守るのが役目でした。でも私は……虐殺に手を染めた」
 とある任務で悪魔に唆された人間の説得に失敗し、大勢の人が瘴気を浴び悪魔化する事件が起きた。被害の拡大を防ぐために、シホは悪魔化した人々をその手にかけた。
 騎士団は適切な判断だと評価した。だが彼女が"人"を殺める姿を見た人々は彼女を非難した。そして彼女自身は罪悪感に苛まれ、戦えなくなるほどに心折られ――人々の怒りを鎮めるために命を捧げ、死の果てに猟兵として覚醒を果たした。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​


 ――だが、猟兵となった後も、彼女はけして罪から解放されたわけでは無かった。
 そんな彼女にとっての救いとなったのは、共に戦う仲間からかけられた言葉。
「罪悪感に押し潰されそうになった時、親友は――罪と感じているヒトに、断罪はいらない、と言って支えてくれました」
 あの時自分がその言葉に救われたように、自分もそうして誰かを救いたいと願う。
 だからシホは燦を断罪せず、ただその罪に寄り添い、共に支えあうことを望んだ。

「私達……咎人同士でお似合いね」
「咎人同士――咎にケジメつける者同士になりたいね」
 ふわりと柔らかな微笑みを浮かべるシホに、燦はこくりと深く頷きながら応える。
 いずれ必ず、背負ってきた罪咎と決着を付けなければならない時は訪れるだろう。
 けれども独りではなく、ふたり一緒なら――支えあう誰かがいてくれるのなら、けして罪の重さに潰されてしまうことはない。そんな確信が、彼女達の心に宿っていた。
シェーラ・ミレディ
うむ、村の防衛には成功したか。
宴に参加したいところだが……料理は専門外だからなぁ。
僕は防衛計画の構想を練っておこうか。

いつも猟兵がすぐに駆け付けられる状況にあるとは限らない。
なので、防衛というよりは己の命を守るために隠れる、逃げるといった行動をとることが重要だろう。
その為には外敵の早期発見が必要だ。物見台の設置や警戒網の構築、それに隠れ場所の選定などもしなくては。
村が壊されようが、人が居れば先に繋ぐことができるだろう?

あとはー……そうだな、村人たちの手前、墓を作ることはできないが。
お伽噺の彼女に黙祷を捧げよう。
願わくば、希望が実らんことを。

※アドリブ&絡み歓迎


ヴァルヘ・ヘレヴェッティ
なんでも歓迎
wiz

皆と食事をしながら方策会議
「完全な城塞都市化が最終的な目標にはなると思うよ
けどその為には人も物もいるからねえ…他所と連携や統廃合がいるかな?」
時間だけは待ってくれないので勘定に入れない
「僕らみたいなインチキに頼らない現実的に堅固なものがいるし
それらを補充できる物資も城塞内に必要。となると都市拡張計画は簡単じゃない…スープおいしい」
「それと並行し皆が逼塞しない程度の娯楽だっている。食べ物、お酒、文化
どれも簡単なことじゃない。でも、必要だ。特にお酒。お酒ね。お酒だ。お酒は大事だ」
個人的意見もダダ漏れだ

ま、難しい話は後でもできる
UC使用で天使降臨
「とりあえず今は食って飲んで踊れ!」



「うむ、村の防衛には成功したか」
 無事に守り抜いた人類砦の様子を、満足げに笑みを浮かべながら見回すシェーラ。
 村は今やちょっとしたお祭りムードとなっていて、猟兵への感謝を伝えようと村人たちが丹精込めた旬の野菜料理が、ずらりとテーブルを彩っている。
「料理は専門外だからなぁ。僕は防衛計画の構想を練っておこうか」
「おーいいなー。僕も付き合おうか」
 いつまたオブリビオンの襲来があるとも限らない。次なる脅威にどう備えるべきか考えようとの意見に同意したのはヴァルヘ。村の有力な人物らも交えて、今後の方策に関する意見交換が始まった。

「完全な城塞都市化が最終的な目標にはなると思うよ。けどその為には人も物もいるからねえ……他所と連携や統廃合がいるかな?」
 宴席にて村人たちの用意した料理を味わいながら、村の将来像を語るのはヴァルヘ。
 現在の暮らしをただ維持しているだけではダメだ。同じようにヴァンパイアの支配を脱した他の人類砦とも協力して、より大規模な集落へと発展させるのが理想だが、そのために超えなければならないハードルは幾つもあると彼女は理解していた。
「僕らみたいなインチキに頼らない現実的に堅固なものがいるし、それらを補充できる物資も城塞内に必要。となると都市拡張計画は簡単じゃない……スープおいしい」
 より多くの人々が安全に暮らせる、都市という"容れ物"を作るのも、それを維持するのも多大なコストを要する。大変な手間がかかるだろうが、時間だけは待ってはくれない――野菜スープを口に運びながら、天使はクリアすべきことを考えていく。

「いつも猟兵がすぐに駆け付けられる状況にあるとは限らない。なので、防衛というよりは己の命を守るために隠れる、逃げるといった行動をとることが重要だろう」
 続いてはシェーラが、現段階において実現可能であろう防衛計画について語る。
 守りを固めて外敵の侵攻を"受け止める"のには今の村では限界がある。防衛力がもっと充実するまでは、一旦引いて再起を図るような戦いも必要となるだろう。
「その為には外敵の早期発見が必要だ。物見台の設置や警戒網の構築、それに隠れ場所の選定などもしなくては」
 今回のように敵が村のすぐ傍まで迫ってからでは遅い。もっと早い段階から外敵の動向を察知して行動に移れるような体制作りは急務となる。情報共有という側面においても、他の人類砦との連携を密にする意義は大きいと言えよう。

「しかし、折角ここまで大きくした村や畑を手放すのは……」
「村が壊されようが、人が居れば先に繋ぐことができるだろう?」
 それが最善策と分かってはいても、村人はすんなりとは受け入れられないだろう。
 その心象を理解したうえでシェーラはなお強く主張する。時には築きあげたものを放棄せねばならない苦渋の決断でも、ぐっと耐え忍んでこそ未来は開けるのだと。
「辛抱強くやるしかないよね。何でも最初から上手くはいかないって」
 もぐもぐとサラダを頬張りながら、ヴァルヘもその意見にはおおむね同意する。
 この人類砦はまだ誕生したばかり。安定した人類の拠点となるまでにはまだまだ多くの苦難を体験することになるだろう。村人たちにはその覚悟が必要だ。

「それと並行し皆が逼塞しない程度の娯楽だっている。食べ物、お酒、文化」
 同時にヴァルヘは人々がストレスに押し潰されないよう、適度な息抜きも提案する。
 将来のためとは言えなんの楽しみもない日々を耐えるのは難しい。即物的でも日常的な張り合いやモチベーションがあってこそ、人々はより力強く生きられるのだから。
「どれも簡単なことじゃない。でも、必要だ。特にお酒。お酒ね。お酒だ。お酒は大事だ」
 ――そこにはヴァルヘの個人的意見もダダ漏れだったが、言っていることは的確だ。
 宴のために用意された料理はどれも美味だったが、アルコールが少ないことだけがちょっと物足りないものだから。農業に加えて酒造を始めてみるのもいいかもな――と、村人たちもわりと乗り気のようだ。

「ま、難しい話は後でもできる」
 一通りの意見が出揃ったところで、空気を切り替えるようにヴァルヘは手を叩く。
 【ドレスアップ・プリンセス】発動。一瞬にして豪華絢爛なドレス姿に変身した彼女は、色とりどりの花びらを舞い散らせながらふわりと宙に浮かび上がる。
「とりあえず今は食って飲んで踊れ!」
 勝ち取った生命と平和を大いに祝おうと、人々の前で披露するのは華麗なる舞踏。
 その姿は、まるで天使がこの地に降臨したかのように美しく、皆の心を魅了する。
「そうだな。今日のところは思う存分楽しむのも悪くない」
 それを見たシェーラはふっと微笑むと、天使のリズムに合わせて自分も踊り始める。
 ダンスの心得ならば彼も負けたものではない。ガンプレイのように複数の精霊銃をくるくると操る『彩色銃技』の舞いは、先の騎士との戦いの再演のように鮮やかだ。
「わぁ、すごい!」
「とってもキレイ!」
 ふたりの周りにはたちまち人だかりができ、村人たちは口々に拍手と喝采を送る。
 たくさんの笑顔と笑い声に包まれて、楽しい宴の時間はあっという間に過ぎていった。

「……ふう。楽しかったな」
 やがて宴も終わりのときが近付き、踊りを終えたシェーラはひとり村の外を眺める。
 目に映るのは静かな平原。そこで命尽きたとある騎士のために、彼は黙祷を捧ぐ。
(村人たちの手前、墓を作ることはできないが)
 願わくば、希望が実らんことを。お伽噺の彼女も、かつてはそう望んだ筈だから。
 祭りの熱気を冷ます夜気をはらんだ風が、ひゅうと鎮魂の音色を奏でて、散った。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

キリカ・リクサール
アドリブ連携歓迎

なんとか被害を出さず守り切ることが出来たか
ようやく一息付けそうだな

宴には参加するが、どうせなら手土産の一つでも持っていくか
UCを発動
ドローンを広範囲に展開し、畑を荒らす鹿や猪、兎などを見つけて狩る
村人達や他の猟兵の分まで狩れば十分だろう
捕らえた獲物はドローン数機で村まで運べば手間もないだろう
狩りの後は村のもてなしをありがたくいただこうか
素朴で温かな料理で腹を満たす
春の野菜をたっぷりと使った料理だ、戦いで疲れた体に染み入るほど美味いな
その後は宴を眺めつつ、ゆったりとした時間を楽しもう

この世界に未来は無い…か、そんな事はないさ
どんなに重苦しい闇の中でも人々はこうして輝けるのだからな



「なんとか被害を出さず守り切ることが出来たか。ようやく一息付けそうだな」
 人命をはじめ建物や畑にも損害が無いことを確認して、キリカはほっと息を吐く。
 村のほうでは既に宴会が始まっていた。人々は危機から救ってくれた感謝を示すために、収穫したばかりの野菜を惜しみなく使った料理で猟兵をもてなしている。

「どうせなら手土産の一つでも持っていくか」
 キリカは【シアン・ド・シャッス】を発動すると、召喚した68機の戦闘用カスタムドローンを村の郊外へと広範囲に展開し、食糧となりそうな野生動物の探索にあたる。
 畑を荒らす鹿や猪、野原を駆ける兎などを見つければ、ドローンに搭載された機銃で狩る。農耕を主体とした生活を送る村人にとって、こうした獣の肉はきっとご馳走だろう。

「これくらいで十分だろう」
 村人達や他の猟兵にも行き渡るだけの量を確保すると、キリカは数機のドローンに捕らえた獲物を運ばせて村に帰還する。予想通り、彼女の手土産に村人たちは大いに驚き、そして喜びに沸きながらさっそく新しい料理を始める。
「村を救ってくれたうえに貴重な食糧まで、なんとお礼を言っていいやら」
「大したものはありませんが、どうか心ゆくまでご逗留くださいませ」
 口々に感謝を述べる村人からのもてなしを、キリカはありがたく受けることにする。
 ゆらゆらと湯気の躍るスープをひとさじ口に運び、焼きたてのパンと一緒にいただく。けっして豪勢ではないが、ほっと身体の芯から温まるような、優しい味がした。

「いかがでしょうか? お口に合うといいのですが……」
「春の野菜をたっぷりと使った料理だ、戦いで疲れた体に染み入るほど美味いな」
 穏やかに腹を満たす素朴で温かな食事に、お世辞抜きの感想を口にするキリカ。
 殺伐とした戦場では味わえることのない、平和な日常を実感させてくれる料理。
 もしも猟兵の救援が間に合わなければ、この味わいも永遠に失われていただろう。

「この世界に未来は無い……か、そんな事はないさ」
 キリカは平和の味を噛みしめるように堪能しながら、宴の様子を眺めつつ、ゆったりとした時間を楽しむ。楽しそうに祭りに興じる人々の笑顔に満ちあふれた光景は、自然と彼女の口元にもほっこりとした微笑を浮かばせた。
「どんなに重苦しい闇の中でも人々はこうして輝けるのだからな」
 それは夜空にまたたく小さな星のような、はかなげで頼りないものかもしれない。
 けれど、決して闇に呑まれて消えることなくここに在る――これこそが未来を照らす希望なのだと、キリカは揺らぎない確信を抱いていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヒビキ・ノッカンドゥ
wiz
色々歓迎
「いえ。やることをやっただけです
狩りは猟師の仕事、縫製は仕立て屋の仕事、机仕事は役場の仕事
そういう類のものです。どうか畏まらずに」

「ですが、一緒に実りを頂けるのであれば、嬉しいことです。ありがとうございます」

「じゃあ、お手伝いしよう」
「俺ぁ食う専門で居てーんだが」
分かれた二人でああだこうだ、村人とも談笑しながら調理
黒は朗らか、赤は悪童の軽妙…どちらも話は弾むかな?
ほぼ野菜の素朴さだがそれ故に改良や流通の進んだUDC等では味わえない物だろう
(でも肉も食いてえ)(帰ったらねー)

この世界はまだ夜のままだけれど
火を灯すことはできるから
彼らが灯りとなり続けることを祈り

「「いただきます」」


エウトティア・ナトゥア
※アドリブ・連携歓迎

宴じゃ宴じゃ!自然の恩恵に感謝を奉げる祭りはどこの世界も変わらぬのう
どれわしも料理のお手伝いをするかの
マニトゥにお願いして、少し遠めの場所で狩ってきて貰った獲物を料理を振舞うのじゃ

おお、鹿かこれはよい
【精霊石】の力を借りて炎の精霊を呼び出し、ささっと捌いた鹿肉に野菜と香草を詰め込んで岩塩を刷り込み絶妙な火力(精霊任せ)で焼き上げるのじゃ
これぞ故郷の名物料理『精霊焼き』じゃ(たった今命名)
宴といえばお肉じゃよ!ささ、皆も食べるがよいぞ
内臓や骨はマニトゥの取り分じゃよ

(炎の精霊の篝火の前で舞いながら)
うははー、楽しいのう。今宵は食べて、夜通し歌って踊って楽しむのじゃ



「宴じゃ宴じゃ! 自然の恩恵に感謝を奉げる祭りはどこの世界も変わらぬのう」
 旬の食材が並ぶ素朴な宴席に、エウトティアはふと故郷の暮らしを思い出していた。
 闇に包まれたダークセイヴァーであっても、自然は枯れ果てることはなく、生きるための糧を人々に与えてくれる。そんな当たり前のことだと思われがちのことが、本当は貴重な恩恵であることをエウトティアは、そしてこの村の人々は知っている。

「どれわしも料理のお手伝いをするかの。そろそろマニトゥも戻ってくると思うのじゃが……」
 村の台所に立ちながらきょろきょろと辺りを見回すと、ちょうど村の外から一頭の白狼が駆けてくる。その口に咥えられた獲物を見て、エウトティアは笑みを浮かべた。
「おお、鹿かこれはよい」
 相棒にお願いして少し遠めの場所で狩ってきて貰った獲物を、平原の巫女姫は慣れた手付きでささっと捌いていく。黒曜石のナイフを巧みに操り、肉の鮮度が落ちる前に血抜きをして内蔵を取り除けば、見た目にも"お肉"らしくなった獲物が横たわる。

「炎の精霊よ、出番じゃよ」
 続いて野菜と香草を詰め込んで岩塩を刷り込み、下拵えができたところで火元を呼び出す。精霊石の輝きから現れた炎の精霊は、強すぎず弱すぎない絶妙の火加減で鹿肉を焼きだした。
「これぞ故郷の名物料理『精霊焼き』じゃ」
「こんな調理法、はじめて見ました……」
「とっても美味しそうです! すごい!」
 火力は精霊任せなうえに命名もたった今付けたものだが、そうとは知らない村人たちは素直に感心している。実際、精霊に炙られた肉からは食欲をそそる良い匂いが漂いはじめ、じゅぅじゅぅと肉汁の跳ねる音が人々の期待感をかき立てていく。

 その一方ではヒビキが村人たちと一緒に、他の料理を作っている最中だった。
「もし皆様が来てくれなければこの村は滅んでいました。感謝してもしきれません」
「いえ。やることをやっただけです。狩りは猟師の仕事、縫製は仕立て屋の仕事、机仕事は役場の仕事。そういう類のものです。どうか畏まらずに」
 彼女の振る舞いに、自身がこの村の救い主であることを鼻にかけた様子はない。
 オブリビオンと戦うのは猟兵の仕事。それが人助けになったのは好ましいことだが、べつに恩に着せるような事でもないというスタンスだ。
「ですが、一緒に実りを頂けるのであれば、嬉しいことです。ありがとうございます」
 朗らかな表情で談笑しながら、採れたての野菜から丁寧に土や汚れを洗い落とす。
 その隣では【オルタナティブ・ダブル】によってヒビキから分裂した別人格のリンが、面倒くさそうな顔をしながら包丁を振るっていた。
「俺ぁ食う専門で居てーんだが」
「そう言わずに、お手伝いしよう」
 苦笑気味にヒビキからたしなめられつつも、流石にその刃物捌きは鮮やかなもので、まるで測ったかのようにピッタリと手頃なサイズに野菜が切り刻まれていく。

「ほら切れたぞ。次は何すりゃいいんだ?」
「では、こちらの鍋の火を見ていて貰えますか?」
 悪童じみてはいても根は善性なリンは、なんだかんだと言いながらもちゃんと調理の手伝いをしている。持ち前の軽妙なノリで村人との折り合いも悪くないようだ。
「こっちはそろそろ良さそうかな」
 会話を弾ませている己の片割れを見守りながら、ヒビキはそっと鍋の蓋を取る。
 ふわっと真っ白い蒸気の雲が上がり、くつくつと煮えた春野菜のスープが顔を覗かせる。具材はほぼ野菜だけの素朴な一品だが、それ故に改良や流通の進んだUDCアース等では味わえない物だろう。出来上がりを見てみればなかなか美味しそうだ。

(でも肉も食いてえ)
(帰ったらねー)
 小声でぼやくリンを、やはり村人に聞こえないように小声でたしなめるヒビキ。
 農業を主体とするこの村で、肉が手に入らないのは仕方ない――と思っていたのだが、リンの希望は幸運にも、仲間である猟兵の手によって叶えられることになった。
「できたのじゃ!」
 ふたりが調理していたのとは少し離れたスペースで、エウトティアが快哉を叫ぶ。
 見れば、そこにはこんがりと焼き上がった『鹿肉の精霊焼き』が、大皿に盛り付けられて宴席に供されるところであった。

「宴といえばお肉じゃよ! ささ、皆も食べるがよいぞ」
「うわぁ、すっごく美味しそう! いただきますっ!」
 満足げな笑顔を見せながら、焼きたての肉を振る舞うエウトティア。滅多に食べられないご馳走に村人たちは目を輝かせて、我も我もとテーブルに集まってくる。
 その肉を獲ってきた功労者のマニトゥは、騒ぎをよそに場所で自分の取り分――鹿の骨と内臓を齧っている。こちらもこちらで満足している様子だ。
「あるじゃねーか肉。俺たちも食べに行こうぜ」
「そうだね。こっちの料理も出来上がったし」
 調理を終えたリンとヒビキも、大鍋や食器を運びながら宴の輪の中に加わる。
 ジューシーな肉料理に野菜料理が合わさることで、食卓の彩りはより豊かになる。

「うははー、楽しいのう。今宵は食べて、夜通し歌って踊って楽しむのじゃ」
 活気づいた宴の風景に喜んだエウトティアは、満面の笑みで【精霊の唄】を紡ぐ。
 先程は肉を焼くのに呼ばれた炎の精霊が、今度は赫々と燃える篝火となって村を照らす。
「精霊よ! 幻想のおもむくままに歌え!」
 エウトティアは篝火の前で髪をなびかせ尻尾を揺らし、火の粉と共に舞い踊る。
 生きる喜びを全身で体現するかのような、力強く活き活きとした舞踏に、ある者は自然と手を打ち合わせ、またある者は炎を中心に輪になって踊り始める。

「素敵だね」
「ま、悪くないな」
 ヒビキとリンはそれぞれスープと鹿肉を手にしながら、その光景を眺めていた。
 慎まやかな暮らしの中で、それでも存分に生を謳歌し、希望を抱く人々の姿を。
「この世界はまだ夜のままだけれど、火を灯すことはできるから」
 あの篝火と共に躍る人々のひとりひとりが、夜闇の未来を照らす希望の灯り。
 彼らが灯りとなり続けることを祈り、月の響はそっと手を合わせて――。
「「いただきます」」
 赤髪と黒髪の声が唱和する。希望に満ちた人類砦の宴は、まだ始まったばかりだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

オリヴィア・ローゼンタール
救世主、などと……未だ我々にできるのは、水際での対応だけ
天は自ら助くる者を助く、こうして己の力で人類砦……人間の世界を築き上げた皆さんこそが、この世界の救世主足り得るのです

拙いながらも【料理】の腕を振るいましょう
メインの料理はある程度用意されているようですし、私は子供が喜びそうなお菓子を……せっかくですし、他の世界で仕入れた知識を活用します
春野菜ならジャガイモがあるでしょうし、薄く切って油で揚げて……UDCアースでは定番のお菓子、チップスですね

子供たちと一緒にチップスを食べる
次世代を担う、希望の象徴
彼らの健やかなる成長を【祈って】



「救世主、などと……未だ我々にできるのは、水際での対応だけ」
 自分たちはそこまで賛美される程の者ではないと、オリヴィアはそっと首を振る。
 この世界の希望の一助にならんと戦い続けている彼女だからこそ、現状はまだ根本的な解決に至っていないことも理解している。自分達の行動はあくまで対処療法だ。
「天は自ら助くる者を助く、こうして己の力で人類砦……人間の世界を築き上げた皆さんこそが、この世界の救世主足り得るのです」
「わたし達が……救世主……?」
 世界のあり方を根本的に変えられるのは、この世界に生きるひとりひとりの力。
 真剣な眼差しでオリヴィアからそう告げられた人々は、驚いたように目を丸くして――そして、彼女の言葉を深く胸に刻み付けているようだった。

「貴女のような方にそう励ましていただけると、勇気が湧いてきました」
「本当にありがとうございます。今日はどうかゆっくりしていって下さい」
 晴れやかな表情で村人たちが感謝を告げると、オリヴィアもまた笑顔で応じる。
 勝利と平和の喜びを共に分かち合う宴であれば、ことさらに辞退する理由は無い。
「では、私も拙いながらも料理の腕を振るいましょう」
 ざっと台所と宴席を見るところ、メインの料理は既にある程度用意されているようだ。ならばと彼女は子供が喜びそうなお菓子をメニューに加えられないかと考える。

(……せっかくですし、他の世界で仕入れた知識を活用しましょう)
 目を付けたのは収穫したてのジャガイモ。冬の終わりに植えて春に穫れたそれは生育期間が短く、まだ完熟していないため皮が剥きやすく食感も滑らかなのが特徴だ。
 オリヴィアはそれを丁寧に芽を取ってから皮を剥き、薄くスライスして油で揚げる。出来上がるのはUDCアースでは定番のスナック菓子、チップスだ。

「わぁっ、なにこれ! 薄くてぺらぺらしてる!」
「これってジャガイモなの? こんな料理はじめて!」
 出来上がったチップスを子供たちに持っていくと、興味津々の反応が返ってくる。
 ジャガイモを揚げた料理はこの村にも存在するが、それは所謂フライドポテトであって、こんなに薄く切られたものを見るのは始めてのようだ。

「異郷の地で私が学んだ料理のひとつです。どうぞ召し上がれ」
「いただきまーす! ……わっ、すごい、おいしい!」
「ジャガイモがパリパリしてサクサクしてる!」
 一口食べるなり子供たちが味わったのは、それまでの芋料理にない未知の食感。
 キラキラと目を輝かせながら次々とお皿に手を伸ばすその様子からして、どうやら気に入って貰えたようだ。

「沢山作っておきましたから、慌てなくても大丈夫ですよ」
 すっかり夢中になっている子供たちを微笑ましく見守りながら、オリヴィアもチップスをつまむ。大した味付けもされていない、本当にただ薄切りのジャガイモを揚げただけの一品が、彼らと一緒に食べると凄く味わい深いもののように感じられた。
(次世代を担う、希望の象徴)
 ダークセイヴァーの未来はまさに、この子供たちに掛かっている。
 星のように煌めいているその瞳の輝きが、どうか曇らぬようにと。
 彼らの健やかなる成長を祈って、オリヴィアはそっと瞼を閉じた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ギージスレーヴ・メーベルナッハ
決して豊かでない中で宴を調えんというのだ。この厚意、無碍にするわけにはいくまい。
というわけで参加である。

…うむ、戦の後はやはりこうした素朴な味が身に沁みるものよな。日常を勝ち取った実感、とでも言おうか。

しかしこの村の者達、良くぞまあヴァンパイアへの叛逆を決意したものよな。
まあ各々事情もあろうが故、深くは聞かぬが。
余程の覚悟があったのだろう。その決断と行動に敬意を表するものである。
何も武器持て立ち向かうばかりが叛逆ではない。支配の手の外にて良く生きるもまた、かの者共への叛逆という価値があろう。
今後も強く生き抜くことだ、この世界の黎明は、貴殿らの手にこそ掴むべきものである故に。



「決して豊かでない中で宴を調えんというのだ。この厚意、無碍にするわけにはいくまい」
 とうわけで参加である、と宴席に腰を落ち着けるのはギージスレーヴ。戦いの時と変わらない不遜なまでに堂々とした振る舞いは、とても12歳の少女には見えない。
 だがそんな傲岸な彼女にも、心づくしのもてなしをしようとする村人たちの境遇と心境は理解できる。春野菜のスープを口に運ぶその表情はどこか感慨深げでもあった。

「……うむ、戦の後はやはりこうした素朴な味が身に沁みるものよな。日常を勝ち取った実感、とでも言おうか」
 やや薄味ではあるがほっと胸が温かくなるような優しい味。収穫したばかりの野菜の恵みをふんだんに使った食事を堪能しながら、ギージスレーヴはにっこりと微笑む。
「ありがとうございます。こうして私達が日常を味わえるのも貴女方のおかげです」
 台所から新しい料理を次々と運び込みながら、村人たちは心からの感謝を語る。
 もしも猟兵の救援が来なければ、今日が村人にとって最期の日になっていた。
 この平和で素朴な日常の味覚も、もう二度と味わうことは出来なかっただろう。

「しかしこの村の者達、良くぞまあヴァンパイアへの叛逆を決意したものよな」
 ギージスレーヴは供される料理に舌鼓を打ちながら、ふとしたように語りかける。
 今回ほどの事態は想定以上だったとしても、この世界の支配者たるヴァンパイアに逆らうことが、並々ならぬ危険を招くことは、彼らも承知のことだったはずだ。
「まあ各々事情もあろうが故、深くは聞かぬが。余程の覚悟があったのだろう。その決断と行動に敬意を表するものである」
 威厳に満ちた彼女の言葉は、けして大声を張り上げていないのに周囲によく響く。
 芝居がかった抑揚の中に込められた敬意が、村人たちの胸の奥にじんと染み渡る。

「何も武器持て立ち向かうばかりが叛逆ではない。支配の手の外にて良く生きるもまた、かの者共への叛逆という価値があろう」
 いつしか宴席はギージスレーヴの演説場となり、村人はそれに聞き入っていた。
 彼女の語る"価値"は皮肉にも今回の襲撃で明確に示されたと言ってもいいだろう。
 精鋭の騎士団を差し向けてでも、ヴァンパイアは人類砦の殲滅を目論んだ。それだけこの村が目障りであり、同様の"叛逆"が広がることを恐れたということでもある。
「健やかに生き、阿ることなく己らの力のみで暮らす。言葉にすれば単純なそれの何と難しいことか。故にこそ貴殿らの叛逆は誰にも出来ることではない」
 至極尊いことだ、と、戦乙女のごとき微笑をもってギージスレーヴは称賛を送る。
 彼女の言葉を聞いているうちに、人々の心には勇気が、闘志が、覚悟が、そして生存への執念が湧いてくる。それは薪を焚べられた火種のように、心の奥で燃え盛る炎となりつつあった。

「今後も強く生き抜くことだ、この世界の黎明は、貴殿らの手にこそ掴むべきものである故に」
「……はい。これからどんな困難に見舞われても、決して私達は挫けません!」
 ギージスレーヴが演説を締めくくると、村人から割れんばかりの拍手が起こった。
 過去を打ち破り未来を拓く、其を為す力は彼らの内にこそ在り。【黄昏大隊・反攻檄声】によって呼び覚まされた彼らの意志に、黄昏の大隊長は満足げに頷くのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ペトニアロトゥシカ・ンゴゥワストード
アドリブ・連携OK


んー、別にお礼を期待してやったわけではないんだけどねえ。
まあ、断る理由も特にないし、素直に楽しめばいいか。

さて、戦って疲れてはいるけれど、動けないほどでもないし、
少しは準備を手伝っておこうかな。
野菜がメインとはいえ肉や魚が無いのも寂しいし、川魚でも釣ってこようかな。
スープやシチューの具くらいにはなるでしょ。

後は、デザート用に【豊穣樹海】で村の隅っこのほうにでも、
果物の成る木を生やして果実をみんなに配ろうか。
村に森なんか作っても邪魔だし、数本植える程度でいいよね。

……結局ずいぶん働いちゃった気がするなあ。
まあいいや、あとはゆっくり料理を食べてよう。



「んー、別にお礼を期待してやったわけではないんだけどねえ」
 村人達から予想以上の感謝を受けて、ペトニアロトゥシカはすこし戸惑っていた。
 戦いとは日常であり、できることをやった、という感覚の彼女からすれば、こんなにも村を挙げて歓迎されるのはむず痒くもあるのかもしれない。
(まあ、断る理由も特にないし、素直に楽しめばいいか)
 べつに迷惑になるわけでもなし、受けられる厚意はありがたく貰っておこう。
 受け取った春野菜の料理の味は、放浪暮らしの長い彼女には口馴染むものであった。

(さて、戦って疲れてはいるけれど、動けないほどでもないし、少しは準備を手伝っておこうかな)
 貰ってばかりも何だしと、ほどほどに料理を頂いたところでペトニアロトゥシカは席を立つ。野生で研ぎ澄まされた聞き耳を立てて、川のせせらぎをの聞こえる方へ。
「野菜がメインとはいえ肉や魚が無いのも寂しいし、川魚でも釣ってこようかな」
 釣り竿も網も持ってはいないが、彼女には最初からそんなものは必要ない。
 山羊と蛇の瞳でじっと水中に目を凝らし、魚影を発見するとすかさず「テンタクルアーム」を体から伸ばして捕まえる。実に野性味にあふれる釣り方であった。

「スープやシチューの具くらいにはなるでしょ」
「まあ、こんなに沢山! ありがとうございます!」
 戻ってきたペトニアロトゥシカに釣りたての魚を渡された村人は、嬉しそうな声を上げていそいそと調理を始める。普段は野菜づくしの生活を送る彼らも、たまにはやっぱり肉や魚を食べたいようだ。
「喜んでもらえて良かった。後はどうするかな」
 主食のレパートリーが増えたなら、次はデザートが欲しくなるところだろうか。
 ペトニアロトゥシカは村の隅っこの邪魔にならない場所に移動すると、ぺしり、と地面に手を当てて【豊穣樹海】を発動する。

「な、なんだぁっ!?」
 たまたまその近くにいた村人は、突如として村の隅からにょきにょきと木が生えていくのを見て驚愕する。ペトニアロトゥシカの肉体の一部から変化した種や芽は、彼女の生命力を吸って急速に成長して、あっという間に立派な数本の果樹となった。
「生えてるのは好きに食べていいよー」
 重たそうに実った果実を枝からもいで、ぽかんと驚いている村人たちに配る。
 もちろん食べても何も問題はない。彼女がその気になれば他にも様々な食糧が実る森林を作り出すこともできたが、村に森なんか作っても邪魔だろうと自重したのだ。
「……美味しい!」
 しゃく、と果実をひとくち齧った村人は、その甘さと瑞々しさに驚嘆の声を上げる。
 特に女性や子供たちからは、滅多に手に入らない"甘味"ということで特に好評のようだ。

「……結局ずいぶん働いちゃった気がするなあ」
 村人たちに様々な食糧を提供し終えたペトニアロトゥシカは、ふうと汗を拭いながら腰を下ろす。釣り場を探すために遠出したり、果樹を生やすために生命力を使ったりと、なんやかんやで結構な体力を消費していた。
 けれども、まあ――喜んでいる村人の笑顔を見れば、それだけの価値はあったと思う。特に村外れに生えた果樹は、枯れない限り村人たちに恵みを与え続けるだろう。
「まあいいや、あとはゆっくり食べてよう」
 お魚入りになったスープに口をつけて、ほっと一息つくペトニアロトゥシカ。
 歓喜に沸き立つ村の中でも、彼女はいつもと変わらずにマイペースであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リリエ・ヘブンリィブルー
晩酌、御付き合いいたします、神なる御方。希望の光とかつての誇り高き騎士に。乾杯。

……力のないことが罪なのか、私はそれは否であると信じています。力への渇望は時にヒトを破滅の道へと追いやりますが、力なき者を守ることが力を持つ者の務め――そうして孤高の存在となった救済者の破滅を罪であり悪であると私は断じたくはありません。そうした者を救うのもまた、猟兵の務めだと私は思います。

……さて、折角の宴ですしフィドルでお祭りの曲を。稲見之守さんも皆さんと一緒に踊っては如何です?

踊ろう友よ 西風と一緒に実りを歌おう
踊ろう娘よ 祭りの夜にヤドリギの下で
靴底が抜けても気にする者は一人もいない
乾杯 乾杯 さあ踊ろう


御狐・稲見之守
それでは天使殿、希望の光と…おとぎ話の騎士殿に乾杯であるな。

例えば――もし我々が来なく、ここの住人達の前に呪具に置かれていたとしたならば、彼等はそれを手にしていただろうか。我は、きっとそれを手にしていたと思うがな。愛しき者を守るため、仲間を守るため、生まれた土地を守るため――それを悪いこととは思わんが。ま……それゆえの、それゆえに、我々がいるということよな。

っと、我はそういった類の舞は苦手なのだがな。ハレの場なれば止むなし、踊らにゃ損か。

手を打ち鳴らしリズムを奏でステップを踏もう。老いも若きも手を取って、誰が誰かなど些細なこと。つたない足取りも気にすることなく、宴の夜に皆と共に酔いしれよう。



「終わったのう、天使殿。よければ一献付き合ってくれぬか」
「晩酌、御付き合いいたします、神なる御方」
 童女からいつの間にか成人した女性にと姿を変えた稲見之守が、酒杯を手に誘う。
 リリエはたおやかな微笑を浮かべて頷くと、その隣の席にそっと腰を下ろした。
「それでは天使殿、希望の光と……おとぎ話の騎士殿に乾杯であるな」
「希望の光とかつての誇り高き騎士に。乾杯」
 掲げられたふたつの杯は、夜空に浮かぶ月に照らされ、酒精の雫が煌めく。
 戦いを終えたモノノ怪神と天使の、疲れを癒やす静かな夕餉が始まった。

「例えば――もし我々が来なく、ここの住人達の前に呪具に置かれていたとしたならば、彼等はそれを手にしていただろうか」
 何気なく、それでいて風情のある所作で酒杯を傾けながら、ぽつりと稲見之守は語りだす。呪いに手を染めると分かった上で、それでも力を得られる機会があったとすれば、果たして今、目の前で宴を楽しんでいる人々はどんな選択をしただろうかと。
「我は、きっとそれを手にしていたと思うがな。愛しき者を守るため、仲間を守るため、生まれた土地を守るため――それを悪いこととは思わんが」
 その選択の果てに待っているのは、おとぎ話の騎士が辿ったのと同じ破滅だろう。
 ヒトとしての尊厳も誇りも喪って、かつて守りたいと願ったものに刃を向ける――そんな末路を知っていながらも、ヒトはその身に余る力を求めてしまうのか。
「ま……それゆえの、それゆえに、我々がいるということよな」
 月光に照らされる妖狐の横顔は妖しいまでに艶やかで、どこか哀しげでもあった。
 ヒトがヒトであるが故の、願いと想いと渇望を、彼女は一体何度目の当たりにして、そして何度その末路を見届けてきたのだろうか。

「……力のないことが罪なのか、私はそれは否であると信じています」
 物憂げな妖狐と酒杯を交わしながら、リリエは静かにはっきりと言葉を返した。
 それは非力ゆえの葛藤と苦難、そして悲しみを抱いてきた彼女だからこその答え。
「力への渇望は時にヒトを破滅の道へと追いやりますが、力なき者を守ることが力を持つ者の務め――そうして孤高の存在となった救済者の破滅を罪であり悪であると私は断じたくはありません」
 闇に堕ちた騎士は多くの破壊と死をもたらしたが、その前提としてあったのは祈りと願い。闇に手を染めなければ救えなかった命があったこともまた事実なのだから。
「そうした者を救うのもまた、猟兵の務めだと私は思います」
 力及ばずして闇に堕ちた者たちに、断罪ではなく救済を。世界を救うもの、猟兵(イェーガー)にはそれが為せると信じている――だからリリエはこれまでも、これからも、その身が穢れることも厭わずに闇と対峙し続けるだろう。

「そうか……それが天使殿の考えか」
 リリエの答えに稲見之守がどのような感慨を抱いたのか、彼女は口にしなかった。
 暫しの間、両者の間に沈黙の帳が降りる。宴の賑わいがどこか遠いものに感じる。
 そんな物憂げな空気を払うように、おもむろにリリエはフィドルを取り出した。

「……さて、折角の宴ですしお祭りの曲を。稲見之守さんも皆さんと一緒に踊っては如何です?」
「っと、我はそういった類の舞は苦手なのだがな。ハレの場なれば止むなし、踊らにゃ損か」
 いつの間にか空になっていた杯を置いて、稲見之守はふっと笑いながら祭りの喧騒の中に飛び込む。爪弾かれるフィドルの音色に合わせて手を打ち鳴らしリズムを奏で、優美に陽気にステップを踏めば、人々も自然に彼女に手を差し伸べた。

 踊ろう友よ 西風と一緒に実りを歌おう
 踊ろう娘よ 祭りの夜にヤドリギの下で
 靴底が抜けても気にする者は一人もいない
 乾杯 乾杯 さあ踊ろう

 天使の奏でる歌と旋律が夜風に乗って、実りの春を迎えた村に響き渡っていく。
 聞いているうちに自然と心が踊りだす、どこにでもある素朴な村の祝祭の歌。
 煌々と燃え盛る篝火を中心に、人々は輪になって愉快に楽しげに踊り明かす。
 老いも若きも手を取って、誰が誰かなど些細なこと。つたない足取りも気にすることなく、モノノ怪神は宴の夜に皆と共に酔いしれる。それは或いは酒よりも、余程心地よく酔えるひとときであった。

 それは今日を迎えられた喜びの祝祭。そして明日への希望を繋ぐための宴会。
 今宵は村人も猟兵もヒトも人外も関係はなく――ただただ穏やかで賑やかなこのひとときに癒やされて、稲見之守とリリエは次なる戦いへの英気を養うのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
(損傷甚大両腕使用不能
人馬形態で座り込み槍から生き残ったロボ操縦
転移前の応急処置や雑事、装備確認中【慈悲の短剣】を妖精が運ぶのを見、"異端の魔女"を想起)

あの騎士は一体幾度無力と悔恨を味わったのか
呪物へ手を伸ばした思考が解る気が…
いえ
神秘や故人を深く知らぬ者の戯言ですね、これは
(墜ちた結末も罪業も騎士が紡いだ不可侵の物
所持品の本に「お伽噺」をそのまま書き記した後)
『その様を見聞きした者が何を思い何を為すか、それはまた別の御話』…我ながら文才の無い

(近くで見ていた子供達に気づき)
読みますか?
楽しい話も哀しい話も沢山あります
ですがどんな御伽噺も
(絶望すら…)
明日への糧…希望となることは保証しますよ


リーヴァルディ・カーライル
…ん。私は先に預かりものを渡してくる。
貴方達は皆に混ざって宴に参加するなり、
村人達に稽古をつけるなり好きにして。

…後、これを代表者に渡しておいて。
被害が無かったとはいえ、流石にこの人数で押し掛けるのは気が引けるもの。

先の章で【血盟の型】で召喚した吸血鬼狩人達に、
UCから取り出した“吸血鬼の財宝”の一部を代表者に渡すように命じて解散させる

……独りだった頃は、こんな事考えなかったのに…。
何だろう。段々、思考が所帯染みてきたような…。

自身は以前の依頼で先に帰還した騎士殿を探して村を見て回り、
彼に“異端の魔女”からの伝言を伝えるわ

…少し良いかしら。“異端の魔女”から言伝を預かっているわ。

※アドリブ歓迎



「……ん。私は先に預かりものを渡してくる。貴方達は皆に混ざって宴に参加するなり、村人達に稽古をつけるなり好きにして」
 闇の騎士団との戦いを終えたりーヴァルディが最初にしたのは、【吸血鬼狩りの業・血盟の型】にて喚び出した吸血鬼狩人の弟子たちに自由行動を許すことだった。
 厳しい鍛錬と戦いに身を置く狩人にも、時には息抜きが必要である。また、対吸血鬼戦用に磨かれた狩人の技は、人類砦の防衛においても大いに役立つことだろう。
 好きにして、というのは、彼女なりに弟子たちの判断を信用している証でもあった。

「……後、これを代表者に渡しておいて」
 そう言ってりーヴァルディは異界に繋がる【常夜の鍵】を発動すると、そこから金貨の袋を取り出す。それは数多の吸血鬼を狩るうちに手に入れた財宝の一部である。
 宜しいのですか? と問いかける弟子に、軽く肩をすくめながら彼女は答える。
「被害が無かったとはいえ、流石にこの人数で押し掛けるのは気が引けるもの」
 村の暮らしもそこまで余裕があるわけでは無いだろうに、恩人をもてなすために村を挙げての宴を開いてくれているのだ。せめてこれくらいはしないと居心地が悪い。
 吸血鬼社会に対するある種の隠れ里と言えるこの村では、ドレスや宝飾品などを渡しても換金に困るだろうが、金貨であればそれなりに使い道はあるだろう。

「……それじゃあ、あとは帰還まで、解散」
 ぱん、と手を叩くと、狩人の弟子達は村のほうぼうへと散っていった。
 それを見届けてから、りーヴァルディはふう、と小さくため息をつく。
「……独りだった頃は、こんな事考えなかったのに……。何だろう。段々、思考が所帯染みてきたような……」
 人との関わりが増えれば必然、関わり方について考えることも増えるということか。
 面倒を見る弟子ができて、深く想う相手もできて、負うべき責任や気にかけることもその分だけ多くなった。きっとそれは彼女が"成長した"ということなのだろう。
「……まあ、それはそれとして。彼は一体どこにいるのかしら」
 気を取り直してりーヴァルディは"預かりもの"を渡すべき相手を探しに向かう。
 種族柄、自然と見つけやすい相手ではあるが――もしや"また"先に帰還してはいないだろうかと、少し心配になりながら。


(損傷甚大、両腕使用不能。今回も派手にやられたものです)
 一方の村の片隅では、人馬形態のトリテレイアが自己のモニタリングを行っていた。
 暗黒騎士サンドラとの最後の一騎打ちで負ったダメージは大きく、機械馬との合体を解除できないのもそのためだ。幸いにも破損を免れた装備のうち【自律式妖精型ロボ 格納・コントロールユニット】を使用して、今は応急修理や破損パーツの回収、生き残った装備品の確認といった諸々の雑事をこなしているところである。

「隠し腕の制御ワイヤーも切れていますね……こちらのユニットは……」
 機体状況や装備品のチェックをひとつひとつ行う中で、機械仕掛けの妖精が【慈悲の短剣】を運ぶのを見て、トリテレイアはそれで救うことの出来なかった相手――"異端の魔女"と呼ばれた狂えるオブリビオンのことを想起する。
 それは骸の海に還る刹那の間、己を取り戻しせめて安らかな道行きをもたらすための刃。だが、刃に含まれる薬剤の悪影響によって"異端の魔女"は暴走し、怨嗟と苦痛の果てで自ら命を落とすという真逆にして最悪の結果をもたらしてしまった。
 ――少なくともトリテレイアの記憶においては、それが紛うこと無い事実だった。

「あの騎士は一体幾度無力と悔恨を味わったのか」
 救えなかった命、果たせなかった約束、届かなかった希望、望まなかった結末。
 機械仕掛けのこの身さえ砕かれんばかりの悲劇を、彼女は何度味わったのだろうか。
 無力感と後悔の果てに縋り付くものは、暗黒の力しか残っていなかったのだろうか。
「呪物へ手を伸ばした思考が解る気が……いえ、神秘や故人を深く知らぬ者の戯言ですね、これは」
 もはや全ては憶測にしかならない。墜ちた結末も罪業も騎士が紡いだ不可侵の物。
 トリテレイアはただ、自身が見聞きしたありのままの「お伽噺」を、いつも持ち歩いている本に書き記す。動かぬ両腕の代わりに、機械仕掛けの妖精に代筆させて。

「『その様を見聞きした者が何を思い何を為すか、それはまた別の御話』……我ながら文才の無い」
 自嘲するように肩をすくめながら、記録を終えたトリテレイアは本を仕舞おうとして――そこで、村の子供たちが近くの物陰から様子を見ていたのに気付く。
 どうやら本に興味があるようだが、声をかけていいものか迷っていたのだろう。じぃっと注がれる幼いまなざしにふっと安らぎを覚えながら、機械騎士は声をかける。
「読みますか?」
「いいの?」
 ひょこりと顔を出した子供たちは、ぱっと明るい表情で騎士の元に集まってくる。
 娯楽の限られたこの村では、ありふれた騎士道物語やお伽噺でも、よい気晴らしとなるだろう。

「すっごく分厚い本だね。どんなお話が書いてあるの?」
「楽しい話も哀しい話も沢山あります」
 興味津々といった様子でページを捲る子供に、トリテレイアは優しい声で答える。
 心躍る冒険譚から胸が張り裂けるような悲劇まで、彼が世界各地で収集した物語がこの本には詰まっている。その内容も結末も、類似性はあれど千差万別と言えよう。
「ですがどんな御伽噺も――」
 絶望すら――と、心の中で付け加えてから。
「明日への糧……希望となることは保証しますよ」
 全てのお伽噺は未来を担う次の世代のために綴られ、そして語り継がれるもの。
 物語という形で先人から遺された想いは、きっと子供達の心に何かを残すはずだ。

「ねえねえ、ぼく字が読めないの。騎士さま、かわりに読んで?」
「分かりました。それではまずこのお話から……」
 読み書きのできない子供にせがまれ、トリテレイアはお伽噺の読み聞かせをする。
 賑やかな宴の影で過ぎていく和やかな時間。そこにひとりの少女がやって来る。
「……ここにいたのね」
「貴女は……」
 吸血鬼狩人のりーヴァルディ。彼女はトリテレイアにも面識のある人物だった。
 ダークセイヴァーで起きた事件では何度も顔を合わせ、時には共闘した間柄である。
 彼女が"預かりもの"を渡す相手とは、他でもないこのトリテレイアのことだった。

「……少し良いかしら。“異端の魔女”から言伝を預かっているわ」
「……! "異端の魔女"から……?」
 その名を聞いた瞬間、思考にノイズが走りかけるほどトリテレイアの心が揺れた。
 りーヴァルディもまた、かの異端の魔女を巡る事件解決に関わった猟兵のひとり。
 同時に彼女はトリテレイアが"居合わせていない"――異端の魔女の最期を看取った猟兵のひとりでもある。

「『……ありがとう、皆さん。私を人間に戻してくれて』」

 ――それが、今際の際に"異端の魔女"が猟兵たちに遺した言葉であった。
「『私は十分に救われました』と。先に帰還した騎士殿にも、会えたらどうかお礼を言っておいてほしいと……そう頼まれたわ」
 敢えて自らの感情を交えないように、淡々とした口調でりーヴァルディは伝えた。
 奇しくも今回の戦いと同様、重症を負ったトリテレイアは先にグリモアベースに帰還したため、事件の顛末を見届けてはいなかった。彼と彼女を含む多くの猟兵の奮闘の結果、かの魔女の魂が最期には救われていたことも。

 ――だが、"異端の魔女"からの言伝を聞いたトリテレイアは呆然としていた。
 彼女は苦しみの中で自ら命を絶ったはず。彼の記憶の中ではそうなっている。
 それは、かつての事件においてトリテレイアが"異端の魔女"を救うために負った後遺症。奇跡の代償としてその結末を悲劇であると思いこむ、認知歪曲の呪い。
 【知らぬは騎士ばかりなり】。
 それは彼自身すらも知らぬ、無意識のユーベルコードがもたらした代償であった。

「……騎士さま、泣いているの?」
「泣いて……? いえ、私に涙腺は……」
 フリーズしたように動かないトリテレイアを心配して、子供たちが声をかける。
 思わず頭部のカメラアイに手を当てても、無機質なレンズは一滴も濡れていない。
 だが、その様子を見ていたリーヴァルディが、ぽつりと呟くように声をかける。
「……"泣く"とは、涙が流れるか否かではないんじゃないかしら」
 リーヴァルディとて騎士の身に何が起こったのか全て把握しているわけではない。
 自分はただ預けられた言伝を渡しにきただけ。それでも何となく分かることはある。
 あの事件、魔女の顛末を見届けられなかった騎士は、今のように心の中で泣いていたのではないか、と。そう感じるのはただの邪推か、或いはこれも"成長"の証なのか。

「……私は、もうすこし村を見て回ることにするわ。言伝は確かに伝えたから」
 ゆらり、と夜闇に紛れる装束を揺らして、リーヴァルディは村の中心へ踵を返す。
 弟子たちがどうしているかも少し気になるし、この希望の集う地をしっかりと見ておきたい。人々が当たり前に今日を祝い、明日を楽しみ、宴に興じる平和な光景を。
 人類に再びの繁栄を。そしてこの世界に救済を――そのための足跡がはっきりと見え始めた今、彼女の足取りに迷いはなく、その心音は常よりも高鳴っていた。

「…………」
 一方、その場に残されたトリテレイアは、座り込んだままじっと沈黙していた。
 伝えられた言葉と自己認識との齟齬。湧き上がる処理困難な感情と思考の羅列。
 それを一時に整理するには、現状は余りにもリソースが足りていなかった。
「騎士さま、だいじょうぶ?」
「……大丈夫です。朗読の続きをしましょうか」
 ただひとつ、子供たちの無垢な眼差しだけが、今の彼にとって明確な指針だった。
 機械騎士はお伽噺を語る。子供たちと一緒にひとつページを捲るたび、新たな想いと魔力がその本に蓄積されていくことに、彼はまだ気付いてはいなかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ティオレンシア・シーディア
※アドリブ掛け合い絡み大歓迎

地形はともかく、物的・人的被害はなし。戦果としては上々ってとこかしらねぇ。

あたしは防衛についてちょっとお話しようかしらねぇ。
あたし、防衛設備は撃退よりも時間稼ぎにリソース振ったほうがいいと思うのよねぇ。
現実的な話として、今回みたいのに来られたらここの人たちじゃ撃退はまず無理ってのが一つ。
…正直な話として、次もあたしたちが来られるかわからないのと…来られたとして、間に合わない可能性があるのが一つ。
逆茂木とか落とし穴とかでなんとか時間稼いで、少しでも被害減らす方向で計画立てたほうがいいんじゃないかと思うんだけど…どうかしらぁ?



「地形はともかく、物的・人的被害はなし。戦果としては上々ってとこかしらねぇ」
 守り抜いた人類砦の状況をぐるりと見渡して、満足そうに呟くティオレンシア。
 猟兵達の奮闘の甲斐あって、今回、村への被害はほぼ出なかった。だがこれは事前に敵襲を予知できたがゆえの幸運で、次もこう上手くいくとは限らないことも、彼女は理解していた。

「あたし、防衛設備は撃退よりも時間稼ぎにリソース振ったほうがいいと思うのよねぇ」
 村人と宴の席を囲みながら、ティオレンシアは村の防衛についてちょっと話をする。
 あまり考えたい事ではないが、次にまた同規模のオブリビオンの襲撃があった場合、現状では時間稼ぎに徹することが最良だろうと彼女は考えていた。
「現実的な話として、今回みたいのに来られたらここの人たちじゃ撃退はまず無理ってのが一つ」
 厳しい評価のようだが、これに異を唱えられる村人はいなかった。彼らと猟兵やオブリビオンとの間には厳然とした力の格差があり、これは容易に覆せるものでは無い。実際にその戦いの激しさを目の当たりにしたのならば分かるだろう。
「……正直な話として、次もあたしたちが来られるかわからないのと……来られたとして、間に合わない可能性があるのが一つ」
 グリモアの予知にも限界はあり、全ての事件を未然に察知することはできない。
 ゆえにティオレンシアは救援が訪れるまで独力で持ち堪えるための体制作りが目標とする課題だろうと考える。

「逆茂木とか落とし穴とかでなんとか時間稼いで、少しでも被害減らす方向で計画立てたほうがいいんじゃないかと思うんだけど……どうかしらぁ?」
 守り切れないことを前提とした消極的な策ではあるが、現実的な観点からのティオレンシアの提唱に、村人達は悔しげな表情を浮かべながらも同意の態度を示した。
「……確かに、今の私達ではあんな化物や領主の騎士には敵いません」
「少しでも生き延びる可能性を上げるためには、それしかないと俺達も思います」
 人類砦として領主から独立を果たしたとはいえ、この村はまだ立ち上がったばかり。
 将来的にはより規模を大きくして強固な防衛体制を取れれば話は変わるだろうが、そのためには時に痛みに耐えることも必要だと彼らも理解していた。

「あたしたちもこの村を見捨てたりはしないわぁ。生き延びることさえできれば再起することもできるでしょう?」
 ティオレンシアがにこりと微笑みかけながら語ると、村人達もまたこくりと頷く。
 人々の思考はいかにして時を稼ぐかという、具体的なプランに進みつつあった。
「いざとなったら逃げ出してでも生きてみせます」
「昔のことを思えば、そのくらい何でもないですから」
 二度とあの支配と圧政の日々に戻らないために、掴み取った希望はけして手放さない。
 めらめらと決意を燃やす人々の熱は、ティオレンシアにとっても快いものであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フォルク・リア
村人達の言葉を受け。
「無事でよかった。
村に被害が出なかったのなら戦った甲斐があったと言うものだよ。」

これだけの食料も貴重なものだとは分かっているけど。
折角の心ばかりのもてなしだ。有り難く受けさせてもらうよ。
「やっぱり新鮮な野菜なら何を作っても美味しいね。
それとも、料理を作ってくれた人の腕前かな。」
元々小食な事と遠慮もあって多くは食べないが。
と感謝を述べつつ料理をもらい。

贅沢なものではないけど。
こうやって振る舞ってくれる事が
何よりのごちそうだよ。
それに振る舞う側もこの明るい気持ちを持つ事が
これから先、必ず支えになると俺は信じる。
その為にも此処は言葉に甘えて楽しませて貰う事にしよう。



「無事でよかった。村に被害が出なかったのなら戦った甲斐があったと言うものだよ」
 感謝のこもった村人達の言葉を受けて、フォルクはフードの下で静かに微笑する。
 彼の目の前に並ぶのは、村を挙げて用意されたごちそうの数々。穫れたての春野菜をふんだんに使った料理が、目にも豊かにテーブルを彩っている。
「これだけの食糧も貴重なものだとは分かっているが、折角の心ばかりのもてなしだ。有り難く受けさせてもらうよ」
 感謝を述べながら料理をもらい、まずは湯気を上げるスープからひとさじ口に運ぶ。
 しみ出した野菜の旨味と、ほっとする素朴な味付けが、戦いのあとの心身を癒やしてくれる。

「やっぱり新鮮な野菜なら何を作っても美味しいね。それとも、料理を作ってくれた人の腕前かな」
「両方……だったらいいですね。ふふ、ありがとうございます」
 フォルクの褒め言葉に、にっこりと微笑む村人。汗水たらして育てた畑仕事の成果と、美味しく食べて貰いたいという心からの努力が報われるのはとても嬉しいものだ。
「本当はもっと、宴会らしく豪華な料理を用意したかったんですけど。恥ずかしながら今の村ではこれが精一杯で……」
「贅沢なものではないけど。こうやって振る舞ってくれる事が、何よりのごちそうだよ」
 それはお世辞ではなく、確かにフォルクの本心だった。彼自身は元々小食な事と遠慮もあって多くは食べないが、どの料理にも込められたもてなしの気持ちが、それがたとえ贅を凝らしたものでは無くとも、量よりも心を満たしてくれる。

「それに振る舞う側もこの明るい気持ちを持つ事が、これから先、必ず支えになると俺は信じる」
 人類砦の勃興はまだ始まったばかり。超えるべき困難や課題はまだまだ多いだろう。
 精鋭を使った襲撃が失敗した以上、しばらくはヴァンパイアも次の手は打ってこないだろうが、いつかは再びこの村を滅ぼすために魔の手を伸ばしてくるだろう。
 だが、どんな時でも人々の心が折れない限り、きっと乗り越えられるはずだ。

「その為にも此処は言葉に甘えて楽しませて貰う事にしよう」
「はい! 今日はどうか心ゆくまで楽しんでいって下さいね!」
 希望に満ちた満面の笑顔を浮かべながら、村人は明るくフォルクの言葉に応える。
 今日の記憶が猟兵にとっても村人にとっても幸せな思い出になるように。それが明日を紡ぐ糧となるように。テーブルにはごちそうが、村には音楽と笑い声が満ちる。
 楽師が奏でるメロディに乗って、楽しそうに躍っている人々もいる。そんな彼らを穏やかな笑みで見守りながら、フォルクはまたひとくち、スープを口に運ぶ。
 このスープのように素朴で幸福な日々が、明日もその先も続いていくように祈って。


 ――かくして、希望を蹂躙する闇の騎士団と、人類砦を守る猟兵の戦いは幕を閉じる。
 闇に包まれし世界に芽生えた希望が、どんな花を咲かせるのかはまだ分からない。
 だが、この萌芽はいつか世界に夜明けをもたらす、未来の嚆矢となるだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年04月04日
宿敵 『暗黒騎士サンドラ』 を撃破!


挿絵イラスト