誰でもない貴方に、誰かが
●誰かのお伽噺
それはまるでお伽噺のようだった。
見たこともない景色、聞いたことのない言葉、知らない乗り物。
過去の話。もうずっと昔の話。
むかしむかしではじまるお話だった。そう、帝都が世界を統一する前のお話。
だから、自分にとっては、それは遠い遠い昔の輝かしい英雄たちのお話。憧れてしまうのに何ら理由はなかった。
その憧れが、努力を。努力が能力を。水を得た魚のように他者よりも優れたる資質を示すようになった。
自分は特別なのだ。自分の有り余る能力を使えば、できないことなどない。通らぬ理はなく、例えそれが無理なのだとしても、押し通せばいいのだ。そうやって、それが当たり前の日常だった。
故に、その出会いは劇的だった。幻朧戦線。その名はまるで劇薬だった。
「なんてことだ。私が当たり前だと思っていたことは、当たり前ではなかったのか」
なんたる落胆。太平の世とは、ここまで人を腐らせるのか。安穏とした生活はここまで人間を堕落させるのか。
ようやく理解した。なぜ自分がこんなにも優れた能力を持って生まれたのか。なぜ自分が人よりも優れているのか。
「そうだ。私が優れているのではない。他者が劣っているだけなのだ。愚劣極まる、無知蒙昧な安寧を貪るだけの者を覚醒させねばならぬ。それが、人よりも優れたるを持つ者の務め!ようやくわかりました!」
鋼の動力甲冑が重い音を立てて動き出す。その中に私はいる。
影朧甲冑―――大戦期の遺物。私より劣る者たちを進化へと導くための鎧。夢にまで見た動力甲冑!
「さあ、参りましょう。いざ―――」
歪んだお伽噺の主が今、帝都へと進撃する。帝都の動脈とも言うべき、鉄道駅を破壊せんと!
●人が夜、安心して眠るためには
グリモアベースに猟兵たちが集まってくる。世界は違えど、守るべきものは同じ者たちだろう。
そんな彼らを出迎えるのはナイアルテ・ブーゾヴァ(フラスコチャイルドのゴッドハンド・f25860)のお辞儀だ。
いつものように顔を上げると微笑みでもって猟兵たちを出迎える。いつものやり取りだ。
「お集まりいただきありがとうございます。今回の事件はサクラミラージュ、幻朧桜咲き乱れる大正浪漫溢れる帝都が舞台です」
そう、猟兵達と同じくユーベルコードを使う者たちもいる世界だ。といっても、猟兵たちは、その世界において超弩級戦力として扱われる。練度もそうだが、根本的な力に差があるのだ。
そんな世界に事件が起こる。幻朧戦線と呼ばれる集団が帝都の重要施設を狙って破壊行動を起こすのだ。
「幻朧戦線の構成員たちは一般人ですが、皆一様に黒い鉄の首輪を身に着けていますので、見分けがつかなくなることありません……はい、お察しの通り、幻朧戦線が破壊しようとしているのは、帝都の動脈……つまりは鉄道駅です。時刻は夕刻……帰宅する一般人達でごった返す駅です」
一般人が巻き込まれることなどお構いなしの行動だということだ。それはなんとしても阻止せねばならない。しかし、幻朧戦線の構成員といえど、一般人だ。オブリビオンではない。故になるべく死に至らしめることなく捕らえたい。
しかし、場所が場所なだけに……決断を迫られる場面もありえる。一般人と、幻朧戦線の構成員。どちらの生命を優先せねばならないか。
「最悪の場合は、一般人の方々の生命を最優先でお願いいたします。彼ら……幻朧戦線はどんな手段を使ってでも、鉄道駅を破壊しようとしています。ためらう余裕はありません。何より、今回彼らは影朧甲冑を投入しています」
影朧甲冑とは、サクラミラージュの大戦期において使用されていた現在は禁止されている非人道的な影朧兵器の一つである。
その中でも最も非人道的とされた影朧兵器なのだ。影朧を燃料に動く甲冑ではあるが、操縦者は影朧の呪いによって肉体を蝕まれ、二度と甲冑を降りることができなくなるのだ。しかし、その分、性能は申し分ない。つまり、超弩級戦力と呼ばれる猟兵たちでなければ、対処しようのない敵なのである。
「まずは、鉄道駅へと襲撃を駆けてくる幻朧戦線、グラッジ弾で武装した構成員たちの撃破を。彼らは影朧甲冑の進撃を補佐する役目を持っています。彼らを撃破すれば、影朧甲冑の鉄道駅への進行を遅らせることにも繋がります」
ここで幻朧戦線の出鼻をくじかなければ、鉄道駅にいる一般人達は影朧甲冑の犠牲になってしまう。
そうでなくとも、グラッジ弾は人間の恨みを凝縮した弾丸。炸裂すれば、それだけで周囲に影朧を呼び寄せてしまう。それを阻止するためでもあるのだ。
「幻朧戦線の構成員を退けた後に、影朧甲冑への対処をお願いいたします。影朧甲冑は強力な影朧の姿を纏っています。能力も、その影朧そのもの……これを倒し、影朧を引き剥がし、影朧甲冑本体を撃破してください」
二連戦となるということなのだろう。強力な影朧、さらにそれを動力として動く甲冑の撃破。消耗が激しくなりそうである。
「甲冑の乗り手は女性ですが、もう二度と甲冑から降りることはできません。降りなければ、死ぬことはありませんが、降りれば絶命します。確かに、改心の可能性はありますが……」
進むも地獄。戻るも煉獄。そういうことだ。だが、放置すれば、一人では済まない人間の生命が脅かされる。
「どうか、お願いいたします。サクラミラージュに住まう人々の生活を、安寧を……どうか」
ナイアルテは再び頭を下げる。
猟兵は決断するだろう。だからこそ、ナイアルテは送り出す。どのような決断であっても、彼らは最善を導き出してくれるだろうと。
海鶴
マスターの海鶴です。どうぞよろしくお願いいたします。
今回はサクラミラージュの事件になります。全章全てが戦うシナリオになりますので、どうか思いの丈を存分にプレイングに託していただければと思います。
●第一章
まずは、斥候とも言うべき幻朧戦線の構成員たちの凶行を止めてください。
彼らの数は多い上にグラッジ弾という呪いを凝縮した影朧兵器で武装しています。周囲に影朧を呼び寄せる呪いを撒き散らす兵器ですので、速やかな対処が必要となるでしょう。
また、舞台は鉄道駅前になります。時刻は夕刻、帰宅時であり、一般人たちが多くいます。彼らを傷つけないように工夫していただく必要もあります。
●第二章
影朧甲冑が纏う強力な影朧の能力を駆使した甲冑の乗り手との戦いになります。
姿形、能力も影朧そのものです。周囲の避難は完了している状況になりますので、一般人への配慮は考えなくて良いでしょう。
●第三章
纏っていた影朧を剥がされた動力甲冑本体との戦闘になります。
女性の乗り手ではありますが、オープニングにある通り、優れた身体能力を有しています。自身の優れた能力を自身が優れているわけではなく、他者の出来が悪いせいであると考えており、戦乱になれば、否応なく他者もまた自身と同じ能力を持つ者へと進化するだろうという考えに取り憑かれています。
他者より優れているということに対して、孤独を感じているようです。改心の余地はありますが、どちらにしても手遅れです。進む地獄、戻るも煉獄の運命の彼女に決着をつけてください。
それでは、幻朧桜の花弁舞い散るサクラミラージュでの猟兵の戦いを綴る一片となれますように、いっぱいがんばります!
第1章 冒険
『幻朧戦線の襲撃』
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POW : 襲い来る幻朧戦線の一般兵を肉壁となって阻止し、重要施設や一般人の安全を守ります
SPD : 混乱する戦場を駆けまわり、幻朧戦線の一般兵を各個撃破して無力化していきます
WIZ : 敵の襲撃計画を看破し、適切な避難計画をたてて一般人を誘導し安全を確保します
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
夕日が沈む色が鉄道駅へと向かう人々の顔を一様に橙色に染め上げていた。
誰か彼もが疲れてはいるようだったが、その疲労は心地よいものだった。なぜなら、彼らは皆、大なり小なり家族の元へ家路を急いでいたから。
その様子がひどく気に入らないと蔑む者たちがいた。
―――幻朧戦線。
大正の世に終焉を。人類に進化を。
「今まさに帝都を象徴する者たちですね……あのような停滞した姿、見るに絶えぬ醜悪そのもの。やはり人の進化は騒乱戦乱によってのみ成されるのです」
グラッジ弾の銃声が鉄道駅前に響き渡る。着弾した地面に呪いが撒き散らされ、悲鳴が上がる。
混乱は容易に起こり、鉄道駅前は騒然とする。一瞬で混乱は広がり、逃げ惑う人々であふれかえる。
その逃げ惑う人々に狙いをつけるグラッジ弾が再び、放たれる―――!
マヤ・ウェストウッド
「犬の耳にも噂に聞こえし、桜の帝都(みやこ)はアラッ! マタ広シ……なンてね。ドロヲン、展開ッ!」
・紅茶で動く自動二輪エマニュエルのエキゾーストノートを掻き鳴らし、敵の注意を引きつける
・ミシンのボビン然とした直径三フィートほどのドローンを展開し、民間人の隙間を縫うように駆け抜け雑兵どもへ六割ほど突撃
・三割のパンジャンは手元に残し、市民への流れ弾を[かばう]為に用いる
・残りの一割は敵の進路上に敷設。いわゆる置きパンジャンである
・自身への呪詛弾は[呪詛耐性]で対抗
・戦闘中、紅茶を優雅に飲んで敵を挑発し、一般人が避難にかける時間を稼ぐ
「どうやら、アンタたちも『話せば分かる』連中でもないようだね」
帝都に花咲く幻朧桜の花弁は一年中を通して、そこかしこに舞い散る。儚さの象徴たる桜の花弁は、ここでは不滅の象徴である。
薄紅色の花弁が舞い散るのは、日常であり、変わりない平穏を象徴するかのようだった。だが、その平穏をよしとしない者たちがいる。
安寧と停滞は同義であると、改革を戦乱によって成そうとする者たち―――幻朧戦線。
過去の遺物を掘り返し、過去の呪物を撒き散らす様は、まさに過去の化身たるオブリビオンと同義なのである。
しかして、その身はオブリビオンではない。一般人そのもの。だが、人々の平穏な日々を傷つけるというのならば、それを阻止せんとするのが、我らが猟兵である。
「犬の耳にも噂に聞こえし、桜の帝都はアラッ!マタ広シ……なンてね」
鉄道駅の周囲は人々でごった返していた。マヤ・ウェストウッド(フューリアス・ヒーラー・f03710)からは、桜の香りではなくて、紅茶の芳しい香りが漂っていた。獣耳をピクピク動かせば、争乱の音が捕らえられる。
「まったく……人様の迷惑っテのを考えられない連中っていうのは、いつの時代も、どこの世界にもいるもんだネぇ……」
ため息をつくより早く、彼女は自動二輪エマニュエルの排気音をかき鳴らしながら走る。
幻朧戦線が使用しているグラッジ弾は撃たれれば撃たれるほどに周囲に呪いを撒き散らす。
こんなにも人が雑然といる場所においては、混乱以上の惨劇を生み出しかねない。急行しなければ手遅れになる。初動こそが、人命救助の鍵だ。アイツもそう言っていたっけ。
「大正の世に終焉を!人類の革新は戦乱の中にこそ―――!」
紅茶香るエギゾーストノートの音と共に駆けつけた瞬間こそ、幻朧戦線の構成員がグラッジ弾を放った瞬間だった。
炸裂する前に間に合うか―――!間に合わせてみせるんだよ!
「ドロヲン、展開ッ!」
マヤのユーベルコード、英国式輪入道(パンジャンドラムス)によって召喚されたドローンは、見るものによっては見慣れたものに見えたかもしれない。
騒然とする鉄道駅周辺。ミシンのボビン……つまりは、糸を巻くための筒状の道具のような回転して空を飛ぶドローンの姿に驚きの声が上がる。
だが、それだけではない。パンジャンドラム。本来は陸上を駆ける地雷……それをもしたドロンが空を駆ける。
空を駆けるそれが放たれたグラッジ弾と衝突し、上空で爆発する。呪いをぶつかったものに駆けるのであれば、一撃で消える召喚されたパンジャンドラムドローンは、その呪いを引き受け、消えていく。
次々と放たれるグラッジ弾。しかし、それらは全てパンジャンドラムドローンと衝突して消えていく。
「何奴―――!奇っ怪な機械を使いおって……はっ!?まさか!?」
幻朧戦線の構成員が目を見開く。その視線の先には黒き眼帯に紅茶色の髪をした、キマイラの女性。ひと目で分かる。あれは、あの者は、
「超弩級戦力―――!忌まわしき帝都に雇われたか!」
「いいや。ただ居合わせただけさ。紅茶でも飲んでいた……いわゆるアフタヌーンティーってやつさ。アンタたちもどうだい。一杯茶でも飲んでいきなよ。喫茶去ってやつさ」
マヤは優雅な所作でジェスチャーする。冗談のような、そうでないような……しかし、それ以上、グラッジ弾を使用するのならば、と剣呑な瞳は変わらない。
一般人たちは未だに混乱の最中。この場より離れるにしても時間がかかるだろう。ドローンによる誘導によって、多少は早く完了するにしても、些かの時を要する。
「―――~~~っ!巫山戯た真似を!撃て!撃て!撃てぇ!!!」
彼女の所作は、幻朧戦線の血気盛んな青年たちの逆鱗に触れる。我らに茶を飲めなどという下らぬことに誘ったと。安寧に浸かりきった毒婦め!
グラッジ弾がマヤに殺到する。流れ弾は、全て防衛用のパンジャンドラムにまかせていい。
「どうやら、アンタたちも『話せば分かる』連中でもないようだね」
なら、やることは一つさ。お仕置きだ。エギゾーストがかき鳴らされる。自動二輪にまたがったまま、疾走する様子は正にアクションスタア。
グラッジ弾の呪いは、呪詛耐性によって防がれている。多少手荒になってしまっても致し方なし。
「これが、アンタらの望んだ闘争ってやつさ!存分に覚えていくと良い!それが痛みってやつさ!」
自動二輪とマヤ、そして、空飛ぶパンジャンドラムが幻朧戦線に突撃する。
悲鳴と怒声が、幻朧桜舞い散る空に響く。
「なァに。多少痛くっても、治してやるさ。アタシはこう見えても医者なんでネ。ただし、行き先はムショの中だがネ―――!」
大成功
🔵🔵🔵
華奈月・里恵と未亜
弾を撃たれるとマズいなら、先に撃つヤツを倒しちゃえば問題ないわね!
里恵は分析、みゃーが表立って敵と戦うわ!
グラッジ弾を撃ちそうな人を探して、その人から先に止めて行くの。
「未亜!次はあの人なのっ…!」
基本的には肉薄して音波で吹っ飛ばしたりレガリアスシューズで蹴っ飛ばすわ、遠くの相手には【クイックドロウ】で対応よ!
俗っぽいとかなんとか言われたらこう返して挑発するわ!
「このナンバーの良さが分からないなんて、あなた達全く分かってないのね。
足だけ考え方まで小学生に遅れてるなんて、本ッ当に救えないのね!」
騒然となった鉄道駅前は、逃げ惑う人々の混乱の声でいっぱいになっていた。それは雑音、ノイズと言っていいほどの音。人々が恐怖と不安でいっぱいになっているときの音だ。
華奈月・里恵と未亜(団体様1名・f02702)……二人は、その混乱の中を欠けていた。
小さな体躯は、人の混乱する濁流をすり抜けるには、十分すぎる。早くこの混乱を沈めなければと『二人』は思いを同じくしていた。
同じ体に二つの意識。ごく普通の家庭で生まれ育ったとはいえ、今の彼女は猟兵。戦いに不安がないかと言われれば、たしかにあるのかもしれない。
けれど、彼女たちがこの場に立っているのは、その不安を払拭するためではない。誰かの不安を拭い去るためだ。
「弾を撃たれるとマズいなら、先に撃つやつを倒しちゃえば問題ないわね!」
里恵は分析、未亜がお表立って戦うことを決める。役割分担だ。一人の体に二人の意識。喧嘩することもあるが、戦いの場においてはこれほど頼もしい味方もいないだろう。
幻朧戦線の構成員はすぐに見分けがつく。混乱の最中に鉄道駅から離れることなく、まっすぐ向かってくる者たち。それに黒い首輪のようなものをしているのが、見分けがつけられていい。すぐに里恵が未亜に伝達する。
わかる。タイムレスな意思伝達は、判断を即断に変える。
未亜が駆け出し、その白と黒、左右色の違うレガリアスシューズで幻朧戦線の構成員を蹴りより放たれる音波で蹴飛ばしたのが、戦いの火蓋を切って落とす合図だった。
「―――貴様っ!超弩級戦力の!動力甲冑の進撃の邪魔をさせるな!総員、構え!」
里恵と未亜の襲来に、即座に立て直す幻朧戦線。グラッジ弾の装填された砲が彼女たちに向けられる。
そっちのほうが好都合!と里恵が叫ぶ。なぜなら、デタラメにグラッジ弾を放たれることこそ、懸念すべきことだったからだ。
自分たちにグラッジ弾が集中するなら、対処の仕方はいくらでもある。だから!
「な、なんだ、この軽薄な音は……!?えぇい!俗物じみた音を……!」
彼女たちのユーベルコード、爆速!スピコア!(バクソクスピードコア)によって、身にまとったテンポよいリズムのナンバーは、この大正の世が続くサクラミラージュにおいては、実に馴染みのない音楽。
故に、一瞬の混乱が起こる。それもまた彼女たちの狙い。
「このナンバーの良さがわからないなんて、あなた達全くわかってないのね」
こんなにもいいナンバーなのに。白と黒の戦闘用靴の十字を切るように宙を裂く。
その過激かつ苛烈な音は、音波の攻撃となって、幻朧戦線の構成員たちを吹き飛ばす。
グラッジ弾の装填された砲諸共吹き飛ばされるものだから、戦線に復帰するのは遅れることだろう。
さらにその場でステップを踏むように、舞い踊るように彼女たちの苛烈で過激な音波攻撃は続く。太陽の光と月光、彼女たちの真髄が今、幻朧戦線の崩壊の切っ掛けとなるのだった。
「足だけ考え方まで小学生に遅れてるなんて、本ッ当に救えないわね!」
鉄道駅に二人の思いがごきげんなナンバーと共に幻朧桜の花弁を舞い散らせるのだった。
成功
🔵🔵🔴
レナーテ・フレンベルク
◎アドリブ連携歓迎
舞い散る桜の花に、活気のある街並み……美しい世界ね
この無粋な輩共がいなければ、もっと素晴らしいのだけど
しかし野蛮で愚かね。無辜の民を巻き込もうとした時点で
貴方達に誰かを導く資格なんてもうないのよ
■行動
まずは一般人の安全確保が優先ね
乗ってきた馬車の御者に命令、幻朧戦線の襲撃から
駅や人々を庇うように馬車を横付けさせて少しでも被害を防ぐ
後は【UC】で周辺の霊を集めるか、呼べるだけ召喚
攻撃しようとする敵に束縛の【呪詛】を掛け
更に【生命力吸収】で死なない程度に精気を奪い無力化
自分への攻撃はヒルデに防がせるわ
呪詛や怨念は死霊の糧、可能なら霊やヒルデに取り込ませて
吸収させるわね【呪詛耐性】
幻朧桜の花弁は、サクラミラージュの帝都においては一年中舞い散る姿を見ることが出来る。その光景は違う世界の者たちから見ると、どのように映っただろうか?
その薄紅色の花弁が舞い散り、風に舞い上がっては花道を作る様子を見て、美しいと感じるのであれば、その光景を写す鏡である心もまた美しいのかもしれない。
しかし、帝都は今、争乱の真っ只中にある。帝都の動脈である鉄道駅に襲撃するは、幻朧戦線。大正の世に終わりを!人類に革新をと謳う彼らの血気溢れる情動によって、平穏は打ち破られんとしていた。
平穏を脅かすものあれば、平穏を守ろうとするものもまたあるのが、世の理。
平穏紡ぐ者たちを守らんと駆けつけるのが、世界に選ばれた猟兵!
レナーテ・フレンベルク(幽玄のフロイライン・f25873)は、この舞い散る桜の花と活気のある街並みを美しい世界と評した。
それは心からの賛辞であり、この美しい世界をと駆けつけた一人の猟兵としての思いであった。
「この無粋な輩共がいなければ、もっと素晴らしいのだけれど」
鉄道駅前に乗り付けた馬車。それは横付けにされ、幻朧戦線の構成員たちと鉄道駅から逃げ惑う無辜の人々との間に立ちふさがる。少しでも被害を減らしたい。
一般人の安全確保は、急務にして絶対。
「しかし野蛮でおろかね。無辜の民を巻き込もうとした時点で貴方達に誰かを導く資格なんてもうないのよ」
レナーテがその美麗なる所作でもって、馬車から降りる。その姿は、違う世界の住人である幻朧戦線ですら、一瞬見惚れるほど。
「貴様……!我らが崇高なる使命を愚弄するか!グラッジ弾装填!馬車ごと諸共に打ち払え!」
一瞬でもレナーテの美しさに心を打たれたかもしれない構成員は彼女の言葉に激高する。堪え性がないのは、他者の言葉に耳を貸そうとしないのは、やはり、資格なし。
「さぁ、行きなさい。貴方達を悪用しようとする彼らに、無辜の民を導く資格はないのだと思い知らせるの」
彼女のユーベルコード、迫り来る死霊の嵐(ヴィルデ・ヤークト)が発動する。彼女の言葉に応えるように、彼女の周辺に漂う霊が召喚される。
そのユーベルコードに幻朧戦線の構成員が目を剥く。ユーベルコヲド使いは、この世界に存在するが、さらに彼ら以上の能力を持った者を、彼らはこう呼ぶのだ。
「―――超弩級戦力……!我らに付かず、世の真理を解しようとせぬか!総員!撃てぇ!!」
無駄よ、と静かにレナーテが指を上げる。それが合図となって、一斉に召喚された霊たちが幻朧戦線の構成員たちが持つグラッジ弾の装填された砲へと壁のように張り付き炸裂を防ぐ!
しかし、答えた霊の数を上回る砲を持つ幻朧戦線。数で圧倒すれば、超弩級戦力である猟兵とて封殺できると、呪詛をかけきれなかった構成員たちがグラッジ弾をレナーテへと放つ!
「無駄よ、と言ったはずだけれど……―――ヒルデ」
彼女の背後から巨大な一体の巨骸が現れる!彼女のボディーガード兼使用人……幾多の死霊と数多の躯を繋ぎ合わせてつなぎ合わされた巨躯の手がグラッジ弾を打ち払う。
グラッジ弾によって撒き散らされた呪詛は、耐性あるレナーテには効かない。そうでなくても、呪詛や怨念は死霊の糧。相性は絶望的なまでレナーテの方に分があるのだ。
コツ、とその繊細な足が一歩を踏み出す。優雅な所作は、名家に生まれた故か。
コツ、とまたもう一歩幻朧戦線へと踏み出す。グラッジ弾が放たれるたびに、その無力さを彼らは知るだろう。
更に巨大なモノの前には、小さきものは屈する他ない。何よりもはや、彼らは呪詛によって動きを封じられている。
グラッジ弾も意味はなく、レナーテがたおやかな指を彼らの額に当てる。
「殺しはしないわ。無力化させるだけ……」
彼女の指から吸収されれる精気。次々と幻朧戦線の構成員たちは昏倒し、無力化されていく。
幻朧桜の花弁が、その白き令嬢の髪を美しく彩るほどの時間だけ、無辜の民たちの平穏の時間は守られたのだった。
成功
🔵🔵🔴
ロニ・グィー
【pow】
んもー
人騒がせだなあ
大体動機が弱いよね
平和は尊い、家族は大事、かけがえのない友人、脅かされることのない穏やかな生活…その価値を本当に理解したうえでやってる?
そう!そのうえでなお、どうしても!人を踏みつけにしてでも!戦ってでもほしいもの……そんなもののために君たちは戦うべきだよ!
ま、それはそれとして
おっきめな球体を壁のように、または市民を守るように配置しようかな
面倒なのは呪詛耐性やらで耐えておけばいいかな
後は演説におびき寄せられたり、近づいてきた子たちの銃を潰して、踏みつけたり、球体で押さえつけたりした後でUCでそこらの地面をどーんっ!
ほら、スイカ割りのスイカ役をやりたい人は立って!
人騒がせだなぁ、と嘆息する声が響く。夕刻の鉄道駅、幻朧桜の花弁が舞い散るサクラミラージュにおいて、その声はあまりにも間延びしたような、ひどく緊張感がないものだった。
しかし、鉄道駅の現状とそれとはまったく関係がない。鉄道駅前は、今まさに幻朧戦線によって混乱の極みに陥っているのだ。
猟兵達の活躍によって、幸いに犠牲者は出ていないが、「まだ」出ていないだけでこれから出ないわけではない。なんの保証もないのだ。
安寧を紡ぐ人々の生活を脅かすのは、いつだって尖った思想だ。自身の言葉が、指先が、人を傷つけるほどに鋭いということに鈍感な者たち。自身への鋭さは許せず、しかして他者への傷には鈍感なものなのだ。
故に幻朧戦線、彼らの思想は平穏な帳を引き裂くばかりなのだ。
ロニ・グィー(神のバーバリアン・f19016)が彼の持つ球体群と共に市民を守るように舞い降りる。ぽん、と軽く跳ねて、幻朧戦線の構成員と逃げ惑う人々の間に割って入るのだ。
「んもー!人騒がせさんたちめ!」
「―――何奴!貴様!我らの改革を邪魔立てするか!その奇妙な出で立ち……もしや、超弩級戦力……!我らの崇高な使命、邪魔をさせん、これは人類を革新へと導く戦いなのだ!」
幻朧戦線の構成員たちがグラッジ弾の装填された砲を構える。しかし、ロニは未だ構えることもせずに余裕の表情を浮かべる。楽しくはない。けれど、楽しくないからと言って、これ以上事態を悪くする必要もない。
「動機が弱いよね。平和は尊い、家族は大事、かけがえのない友人、脅かされることのない穏やかな生活……その価値を本当に理解した上でやってる?」
「無論!だが、停滞したこの世界の、大正の世は人類の革新を妨げているのだ!故に我らが立つ!」
グラッジ弾が一斉に放たれる。その弾丸はロニや、彼の背後にある鉄道駅、それに逃げ惑う人々さえも関係なく、やたらに放たれる。
市民を守るように配置していた球体群が一斉に動く。
グラッジ弾が球体群にぶつかって炸裂する。飛散する呪詛をさらに防ぐように球体が動き、これ以上の呪詛汚染をさせない。
「そう!その上でなお、どうしても!人を踏みつけにしてでも!戦ってでも欲しい物……そんなもののために君たちは戦うべきだよ!」
それが本当にこれなのか。いたずらに人を傷つけているだけではないのか。
まあ、それはそうとして。みすみす呪詛まみれにするわけにはいなかい。ロニの体が駆ける。数多くの幻朧戦線の構成員たちを相手取り、時には銃を潰すように蹴り上げ、時には球体群によって押さえつけたりと、獅子奮迅の動きを見せる。
「超弩級戦力……!貴様に我らの理念は届かぬか―――!」
「ないね。ほらっ、どーんっ!」
彼のユーベルコード、神撃(ゴッドブロー)がそこらの地面を撃ち抜くように放たれ、地面を割る!路面が飛び散り、戦線はズタボロにされてしまう。
「ほら、スイカ割りのスイカ役をやりたい人は立って!」
しかし、その言葉に応える者はいなかった。誰も彼も、その神の一撃の前に立つ気力など湧きようもなかったのだから―――!
成功
🔵🔵🔴
シエル・マリアージュ
「この世界を汚すこと、學徒兵シエル・マリアージュが許しません」
逃げる人々の頭上を飛んで視界を確保したら戦況把握、名乗りを上げて敵の注意を自分へ集める。
破魔の力を付与した蒼焔の殲剣を逃げる人々をカバーするように展開、戦闘知識と見切りで幻朧戦線の配置などからグラッジ弾の弾道を予測して、弾道に向けて放った蒼焔の殲剣でグラッジ弾を相殺する。
すかさず二回攻撃で幻朧戦線の構成員に蒼焔の殲剣でマヒ攻撃のカウンターを仕掛けて敵の動きを止める。
周囲に被害がおよばないように自分へのグラッジ弾は避けずに破魔の力を付与したオーラ防御で対抗。
グラッジ弾が着弾した場所は、破魔の力を付与した蒼焔の殲剣で浄化してみる。
平穏な世界を愛してやまない者がいる。平穏な世界を良しとしない者たちがいる。
そのどちらが真に世界のことを憂いているのかは、中庸であるものでしかわからないことだ。だが、確実に言えることがある。
過去に背中を押されて、今を傷つけ、未来への道程を汚すことは、世界のためと掲げる旗には似合わない。
未来を思うのならば、今を生きなければならない。それが争乱に満ちた世界であっても、平穏紡がれる世界であっても変わらないこと。
故に、猟兵は世界に選ばれ、過去の化身たるオブリビオンと戦うのだ。
サクラミラージュの空を尖竜槍キルシュヴァッサーで駆ける、シエル・マリアージュ(天に見初められし乙女・f01707)は、幻朧戦線が展開するはるか上空から、眼下の惨劇に心を痛めた。
確保される視界。幻朧戦線は未だにこちらに気がついていない。今ならば、機先を制することができる。強襲し、圧倒することも出来る。
だが、彼女はそれを是としない。
尖竜槍キルシュヴァッサーと共に上空から幻朧戦線の目の前に降り立つ。
「この世界を汚すこと、學徒兵シエル・マリアージュが許しません」
「―――學徒兵か!だが一人で何ができる!恐れることはない!グリッジ弾装填!この大正の世の尖兵を撃滅せよ!」
彼女の姿は目を引く。それは強烈に幻朧戦線の注意を引くのだ。なぜならば、彼らは今、彼女の名乗りによって、彼女がユーベルコヲド使いだと認識している。
「―――っ撃て!」
シエルとキルシュヴァッサーに向けて次々とグリッジ弾が放たれる。彼女の思惑通り、彼女へと向けて一斉に放たれるグリッジ弾はまさに弾丸の雨。
しかも炸裂すれば、周囲に呪詛を撒き散らす兵器!
だが、幻朧戦線!その眼を開いて見るがいい。學徒兵と侮った彼女、シエル・マリアージュの勇猛なる姿を!
「聖櫃より来たれ蒼焔の剣、煉獄の焔で悪しきものを滅せよ」
シエルのユーベルコード、蒼焔の殲剣(セイクリッド・フレア)により生み出された蒼い焔を帯びた実体のない霊剣が顕現する。
空を覆う霊剣が飛来し、グリッジ弾の雨を尽く撃ち落とす。
その光景はあまりにも強烈な光。呪詛と蒼焔とがぶつかり、浄化されつつ地に落ちていく様は、流星雨の如く。
「貴様―――、まさかっ!ただのユーベルコヲド使いでは!」
「キルシュ!」
彼女の声に応じて、小竜もまた空を滑空する。一瞬の隙も与えずに、幻朧戦線の構成員の胴を打ち据える。殺しはしないが、それでも体を動かすことは叶わなくなったことだろう。
次々に打ち倒されていく幻朧戦線。それを尻目にグラッジ弾の着弾した地面を破魔の力が宿された蒼焔の殲剣が浄化してく。
「―――っ、超弩級戦力、だった、か―――!」
最後の一人が倒れ伏す。完全に戦線は崩壊し、鉄道駅前の混乱は収束していくように思えた。後にこの混乱を間近で見た者たちは語るだろう。
空舞う戦乙女の姿を雄々しく……!
大成功
🔵🔵🔵
第2章 ボス戦
『顔無しの悲劇』
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POW : 理由無き悲劇の意味は
対象への質問と共に、【自身の身体】から【自身の一部である死霊】を召喚する。満足な答えを得るまで、自身の一部である死霊は対象を【自らの死因の再現】で攻撃する。
SPD : 値打無き命の価値は
自身の【内の一つの魂】を代償に、【その魂を象徴する魔人】を戦わせる。それは代償に比例した戦闘力を持ち、【生前の特技】で戦う。
WIZ : 稔り無き歩みの成果は
【何かを為しえた妄想の自分たち】を召喚し、自身を操らせる事で戦闘力が向上する。
イラスト:透人
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠エルディー・ポラリス」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
「戦線が崩壊……ユーベルコヲド使いがいた……?我らの計画が読まれていた、ということでしょうか……?ですが、計画に変更はありません」
影朧甲冑が唸りを上げる。
恨みをはらさせろと、我らの悲劇をあまねく全てに知らしめなければと。
我らの悲劇は一体なんのために!我らの悲しみは何故!悲劇と!呼ばれるのか!
動力甲冑を覆う影朧の姿が慟哭す―――!
「去らば、安寧。これより我らは修羅となりて、平穏というぬるま湯に浸かる者たちの覚醒を促さん!」
踏み出す。その一歩は悲劇から来る恩讐か。それとも―――
鉄道駅前の混乱は収束に向かっている。しばらくすれば、収まるはずなのだが、これで終わる幻朧戦線ではない。もっとも厄介な影朧兵器……影朧甲冑が控えている。
進撃の足音を響かせながら確実に鉄道駅へと進軍している。
あれを止めなければ、例え幻朧戦線のグラッジ弾を封殺したとしても、瞬く間に鉄道駅を破壊されてしまう。
なんとしても鉄道駅に到達する前に止めなければならない!
マヤ・ウェストウッド
「要するに、この世界に退屈してンのかい? でもさ……」
・エマニュエルに跨り、甲冑へダッシュで急接近
・好奇心と冒険心を尊ぶ猟兵としては、停滞を忌み嫌う敵に一定の共感を示す
・しかし、銀河帝国に故郷を焼かれたマヤは知っている。安寧を護り続ける辛さと険しさを……
・アレゲな紅茶で脳の冴えたマヤの速力は普段の五倍
・バイクから飛び降り、余勢で甲冑の土手っ腹に見舞う尻の一撃は、公式により運動エネルギーは二十五倍増加
・尻への反動は気合いとオーラ防御と激痛耐性でカバーだ。女は度胸とご愛嬌
「変わって欲しくないものの為に、頑張ってる奴らを少しでも気にかけた事あるかい? 平和ってのは怠けてちゃあ成り立たないもンだよ」
戦う者は常に覚悟せねばならない。自身の歩みが刻む轍は必ずしも一直線ではないということを。果はなく、その生命が途絶えた時こそが終焉であると。
故に弛みなき努力と懸命さが、その生命には求められる。誰にも称賛されることがなくとも、誰かにけなされることがあろうとも、その道程は誇るべきことなのだ。
築き上げてきた平穏とは、そういうものだ。
だが、彼女『たち』は違う。
自身の意味を、自身の人生の意味を測るものさしとして、他者を利用する。
影朧纏う動力甲冑、大戦期において最も非人道的兵器として名高い影朧甲冑が、その身に影朧をまとう。
その姿は顔のない少女の姿。一見、頼りなく儚げに見えるそれは、あまりにも禍々しき思いの集合体。
「さあ、ここに人類の進化を始める改革を!成そうではありませんか!」
動力甲冑の中で、これこそが自身の求めた闘争であると高らかに叫ぶ乗り手。それに呼応するかのように影朧「顔なしの悲劇」が慟哭する。
だが、そんな彼女たちの前に立ちはだかる者がいた。
マヤ・ウェストウッド(フューリアス・ヒーラー・f03710)が自動二輪エマニュエルにまたがり、立ちふさがる。それ以上は進ませぬと。彼女たちが破壊しようとしているのは、鉄道駅。この駅が破壊されれば、帝都の人的動線が途切れてしまう。そうなれば、物流やそれに伴い諸々の人間的活動が滞ってしまうことは明白だった。
「要するに、この世界に退屈してンのかい?でもさ……」
紅茶の香りがエキゾーストパイプから香る。確かに自身の好奇心と冒険心を尊ぶ気質としては、彼女たちの言う停滞を忌み嫌うことに対して、一定の共感はある。
だが、彼女にとっても、苦々しい思いがあるのだ。
銀河帝国に焼かれた故郷。あの平和を、安寧を守り続ける辛さと険しさを。そして、その尊さを。得られる平穏は、誰がために。
彼女のユーベルコード、女王の茶室(エレガント・ロイヤル・ティータイム)が発動する。自動二輪であるエマニュエルにまたがったまま、紅茶を給仕する。
たちまちに脳は冴え渡り、自動二輪のエギゾーストブーストの音は帝都の夕刻に鳴り響く。
「それでもって言うんなら!」
「わかりはすまい!平穏安寧と謳いながらも、影朧は生まれ続ける。平穏の影で、彼女たちのような悲劇は生まれる!ならば、彼女たちの人生は一体なんだったのだ!」
動力甲冑が唸りを上げる。纏った影朧のないはずの顔から咆哮が聞こえる。
顔なしの悲劇が生み出した魔人が召喚され、マヤに襲いかかる。
しかし、マヤのユーベルコードによってその速度は5分の1になっている。
自動二輪の速度で持って加速されたマヤ自身の速力捉えることはかなわないだろう。だが、魔人の手が伸びる!速度は落ちようとも、マヤを捕らえて握りつぶさんと伸ばされ―――
「遅いっ!さあ、土手っ腹に喰らいな!」
一瞬マヤが早く速度の乗った自動二輪から飛び降りる。その勢いは凄まじく、体当たりと言うのがぴったり来る一撃。ただし、彼女のヒップアタックで、だ!
激痛耐性とオーラ防御によってカバーされてはいるものの……ひどく痛みを帯びるであろう。だが、そんなことはどうでもいい。女は度胸!
影朧を帯びる動力甲冑が、マヤの一撃を受けて横転する。そこに立つは一撃をくわえた主、マヤ。
「変わってほしくないものの為に、頑張ってる奴らを少しでも気にかけた事あるかい?平和ってのは怠けてちゃあ成り立たないもンだよ」
彼女の言葉は、失った者の言葉だ。
何も失わない者などいない。だが、失ったことを忘れる者もいれば、見てみぬふりをする者もいる。
だからこそ、その尊さをマヤは知るのだ―――!
成功
🔵🔵🔴
ロニ・グィー
【pow】
アドリブ歓迎
んもー
またその話?
あーなるほどねー
趣味の悪い武器ってのはこういうことかー
一度に二つもめんどくさい事を聞かれてボクはもうゲンナリだよ!
君も、彼女らも
何言われたって納得なんてしないくせに、無意味だ無駄だって言われたら我慢ができないんだ
よっぽど退屈な人生で……暇してるんだね
それじゃあボクの答えで「退屈」から救ってあげるよ
球体を前面に立てて攻撃を受けて、カウンターのUCでどーんっ!!
まあ、でも……そこが君たち人間のいいところでもあるんだよね
だからボクもなかなか嫌いになれないんだ
壊れたレディオのように繰り返される革新と進化。
その言葉は呪いのように纏う影朧の顔のない口から発せられる。なぜ、なぜ、なぜ。平穏を謳いながら、その影にて虐げられる者がいるのは何故。
その影朧の身に宿した死霊が猛り狂う。影朧から分裂するように顔のない少女の死霊が現れる。
問う。平穏が光だというのならば、我らは陰。平穏という帳の外にある者たちはどうやって生きればいい。
「大正の世が生み出した平穏がこれだというのならば、その安寧は彼女らが礎となってこそ!平穏を享受できない者たちがいるのならば、それを生み出さぬ格差を是正せねばならぬ!故に!人類の進化は必須!」
動力甲冑の乗り手が叫ぶ。誰も彼もが違うから、こんなにも苦しみを生むのだと。光があるから影があるように、その陰の中にしか生きられぬ者がいるということこそが、帝都の闇であると。
「んもーまたその話?」
正直、ボクはゲンナリだよ。ロニ・グィー(神のバーバリアン・f19016)は肩をすくめる。
一度に二つもめんどくさいことを聞かされて、飽き飽きだというような自由奔放さ。なぜなら、彼は人ならざる身。すなわち神である。ならば、人の埒外に生きる者である。
死霊がロニ迫る。その死因たる打ち込まれた弾丸を放った小銃を持って、ロニへと放とうと。その姿を見て、嘆息するロニ。
「君も、彼女らも。何言われたって納得なんてしないくせに、無意味だ無駄だって言われたら我慢できないんだ。よっぽど退屈な人生で……暇してるんだね」
ロニの答えは完結なものだった。無意味。無駄。例え、どんな回答を示そうとも、彼女らは納得しないだろう。満足しないだろう。
堂々巡りと自己矛盾に陥るのが見えている。だからこその無意味。それはとても退屈なことだとロニは思うのだ。
だからこそ、救わなければならない。
銃弾が炸裂し、ロニに放たれる。だが、球体群が彼を守るように全面に展開され、その攻撃を防御する。届かない。これほどの怨念を持ってしても、届かない。
なぜ、なぜ、なぜ、と嘆く声が響き渡る。それ以外にできることがない。
嘆き、苦しみ、他者を妬み嫉むことしかできない死霊。哀れむべきなのだろうか。いや―――
「まあ、でも……」
そう、哀れむべきではない。
悲劇に慟哭し、喜劇に笑う。その相反するものを内包するからこその人間。一つの人生の中にいくつもの悲劇と喜劇が混在するのが人間の人間たる所以。
「そこが君たち人間の良いところでもあるんだよね。だからボクもなかなか嫌いになれないんだ」
ロニのユーベルコード、神撃(ゴッドブロー)が炸裂する!迎え撃つ死霊を粉砕して有り余る衝撃が、影朧甲冑を後ずらせる。
死霊は神たる彼の一撃を受けて、霧散する。彼女の信仰の対象がなんであったのかはわからない。
しかし、ロニの解答と一撃は、彼女に信仰の安らぎをもたらす一撃だったのかもしれない。ただただ、無意味であったという「退屈」ですら、彼の一撃は救い上げたのだった―――!
成功
🔵🔵🔴
華奈月・里恵と未亜
「…悲劇の理由なんて分からないの、誰かが誰かを傷つけて良い理由なんて、本当はあって良いはず無いの…
…けど、だからこそあなた達は間違っているのっ!」
「何が我らの悲劇よ?あなた達にやつあたりされる人達の方がよっぽどかわいそうだわ!!」
わたしと未亜、2人に分かれて1対1に持ち込むの。
わたしはレガリアスシューズで本体と【残像】を起こす程の速度で【空中戦】に持ち込むの。
みゃーはサウンドウェポンで【衝撃波】を放つ【楽器演奏】で召喚された敵を本体に追い込むわ。
相手を追い込んだら2人一緒に蹴り込むの。
「日の光と月の光」
「重なる2つの光」
『今、あなた達を喰らい尽くす』
「のっ!」「わ!!」
悲劇とは一体何を持って悲劇と成すのか。
ある者は言う。人生の中に起きる悲劇の連続とは、遠くから見れば喜劇であると。
だが、それは他者が見た悲劇の主たちの姿であって、彼女たち自身が受けた悲劇ではない。
だからこそ、理由はわからない。
「彼女たちの慟哭そのものが、貴様たち安寧を貪る者たちの温床と知れ!彼女たちの悲劇の意味も解することもなく、ただぬるま湯に浸かる!自身より優れたるを見て、諦観に達するなど!愚昧の極み!」
影朧甲冑の乗り手が叫ぶ。
他者を羨み、他者を嫉む。ただそれだけのことしかせずに、自身を高めることをしない。高き者の足を引っ張り、引きずり落とすことでしか自身の価値を確認できないというのならば、その傲慢を我ら幻朧戦線が正さねばならぬと。
「…悲劇の理由なんて分からないの、誰かが誰かを傷つけて良い理由なんて、本当はあって良いはず無いの……けど、だからこそあなた達は間違っているのっ!」
「何が我らの悲劇よ?あなた達にやつあたりされる人達の方がよっぽどかわいそうだわ!!」
華奈月・里恵と未亜(団体様1名・f02702)の声が同時にサクラミラージュの幻朧桜の花弁舞い散る夕刻に響き渡る。
ユーベルコード、オルタナティヴ・ダブル。彼女たちの精神が今、二つに別れる。二人で一人であるということが、彼女たちの姿。だが、ユーベルコードによって生み出されるは、里恵と未亜二人の体。
レガリアシューズと、サウンドウェポン。二人がそれぞれ持つ武器を構える。
「こんな幼子まで……いや、是非も無し!人類の進化が成ればこそ、老いも若きも関係がない!肉体的な強さなど、無意味になるほどに!進化を!」
影朧甲冑の狂乱じみた声が響く。動力甲冑に纏う影朧が、その身に宿る魂を代償として、魔人を呼び出す。
「だから、あなた達の八つ当たりにはされないって言ってるでしょう!」
里恵が駆ける。残像を残すほどのスピードでレガリアシューズで大地を蹴る。魔人の伸ばした両手が、彼女を捕らえんと空に。
しかし、空を舞う彼女を捕らえることなど、容易ではない。レガリアシューズを身につけた彼女にとって、本来の戦場は空。
そこにおいて、彼女に追いすがろうなど、地に這う魔人には不可能なことだ。
「里恵っ、追い込むの!本体!あっちに、まとめて―――!」
未亜のサウンドウェポンが放つ衝撃波が、空を舞う里恵に注意を向けた魔人の体を押し込むように動力甲冑へと追いやる。
サウンドウェーブの波が見えぬ壁となって動力甲冑と魔人を抑え込む!互いの体が邪魔をして身動きが取れなくなった今こそ、彼女たちの本当の攻撃の切っ掛け!
二人が駆ける。怨念も恩讐も、そのどれもが彼女たちを捕らえるには値しない。なぜなら、彼女たちは、
「日の光と月の光」
「重なる2つの光」
そう、二人で一人。日の光を受ける月。月追う太陽。見上げることしかできない悲劇の主には、目もくらむほどの輝き。
ならば、その悲劇を!
『今、あなた太刀をくらい尽くす』
「のっ!」「わ!!」
動力甲冑、魔人、彼女たちを挟撃する二人の蹴撃!それはまさに悲劇を飲み込む顎そのものだった。
大成功
🔵🔵🔵
レナーテ・フレンベルク
◎アドリブ連携歓迎
これは……そう、この影朧も魂に関連した能力を……
少し興味深いわね
私も誰かの悲劇や恨みを糧に戦う存在、その戦い方には
何の否定も強要も出来ないけれど……
ただ、それらの悲劇を無差別に振り撒くのは駄目よ
邪法には邪法なりの、超えてはいけない一線もあるの
■戦闘
貴女はその心の中で、何を為しえたのかしら
だけど何かを為しえた自分たちがいたとしても、結局は貴女は一人
それなら今回は【UC】でかつての騎士達の魂を呼び寄せて、
数の力で戦わせてもらうわ
召喚した骸骨騎士を前衛に、弓手と魔術師は後衛から隙を狙って攻撃
私自身の防衛はまたヒルデに任せるわね
【団体行動】の強さは、貴女にも良く分かっているでしょう?
一本の白い線が引かれていることを自覚しなければならない。
それは超えてはならぬボーダーライン。それは他者との境界を示すものであったり、触れてはならぬものに触れぬようにと配慮されたものであったり……
しかして、その白線を超える者たちは跡を絶たない。なぜなら、白線の先は、人心を容易に惑わす魅力があるからだ。
求めるものがあればこそ、なおさら、それに気がつくことが出来ない。自身が踏み外しているという自覚すらなく、崩れ落ちる道の上に立つ。
あとは薄氷を踏むのと同じ。落ちれば……
「我らは安寧を求めてはいない!安寧の先にはなにもないことを我らは知っている!悲劇こそ喜劇!対局を見ることをしない者たちに、その先にある崇高なる使命がわかるはずもなし!」
影朧甲冑の乗り手の言葉は、耳障りが良い。停滞をよしとしないその考え方は、過激な思想に取って代わられている。それを自覚していないのだ。
故に、レナーテ・フレンベルク(幽玄のフロイライン・f25873)は、静かに言の葉を紡ぐ。興味深いわね、と。だが、それだけだ。興味深いだけ。
「私も誰かの悲劇や恨みを糧に叩く存在、その戦い方には何の否定も強要も出来ないけれど……」
けれど、貴方は超えたのね。一線を。
レナーテの真紅の瞳が影朧甲冑の纏った影朧……顔のない悲劇を捉えた。顔のない少女。その身は幾多もの悲劇の魂で結合されていることがわかる。
それぞれがどんな人生を歩み、どのように幕を下ろしたのか、思いを馳せることはしない。何故ならば、どうあがいても理解はできないから。それは、超えてはならない一線。
「ならば!そこを退け!超弩級戦力……!かような悲劇を安寧の影に引き起こした大正の世は、今を生きる我らが終わらせねばならない!」
影朧の腕が上がる。その頭上には何かを為しえた妄想の自分たちの姿。
自信に満ち溢れた顔。晴れやかな顔。そのどれもが現実に結実しなかった妄想の塊。それらが操るように影朧甲冑にふれる。
「それらの悲劇を無差別に振りまくのは駄目よ。いけないことだわ、それは。貴方はその心の中で何かを為しえたのかしら?」
頭上に現れた彼女たちの妄想の姿。心のなかで思い描いたそれは、歪に見える。
精鋭スケルトンの召喚(マイン・リッターオルデン)……彼女のユーベルコードによって召喚された骸骨騎士と弓手、魔術師。
そして、彼女の背後に控えるは、彼女最大の防御の要、ヒルデ。
「団体行動の強さは、貴方にもよくわかっているでしょう?さあ、おきなさい。こちらも数の戦いをさせてもらうわ」
骸骨騎士が駆ける。顔のない悲劇……影朧と切り結ぶ。弓手の矢が降り注ぎ、魔術師の焔が彼女たちを追い詰めていく。
「何故!何故だ!我らは超えたはずだ!人間の限界を!真理を!それを他者に知らしめることの何が悪い!我らと同等に引き上げようと言うのに!なのにそれが何故わからない!」
動力甲冑の中から憤怒の声が響く。他者より優れているからこそ、優れていない者たちを率いねばならない。この理念が何故わからないと。わかるはずだと。
「いいえ。何かを為した所で、結局貴方は一人。超えてはならないものを超えた者の末路。孤高と孤独は違うのよ」
レナーテの瞳が射抜くのは、影朧に覆われた動力甲冑、その中の乗り手。
影朧が剥がされるように霧散していく。後もう一手……!
「邪法には邪法なりの、超えてはいけない一線もあるの。それを見ていないから、地に足のついていない考えに囚われてしまうのね……悲しい人」
ヒルデの一撃が、最後の決め手のように影朧甲冑を吹き飛ばす。
ユーベルコードによって動けぬ身でありながら、レナーテは一歩も引かない。
ここがボーダーライン。貴女たちが超えてはならない最後の一線なればこそ―――。
大成功
🔵🔵🔵
シエル・マリアージュ
「その覚悟がありながら、人の道を外れるとは残念なこと」
道を間違えなければ、あるいは良き方法で世界をより良きものに出来たかもしれない。
たが、この世界に仇をなすのなら、刃を以て応えるまで。
敵を侮らず慎重にオーラ防御などで防御を高め、武器から破魔の力を宿した衝撃波を放って敵の間合いの外から攻撃を仕掛ける。
敵が間合いを詰めてきたら【贖罪の御使い】で召喚した霊に敵を拘束させ、その隙に攻撃を仕掛けて素早く間合いを取るようにする。
霊による拘束が効かなくなってきたら、霊を自爆させると同時に追い討ちをかける。
覚悟とは、不退転の意思を持つ者にとっては、当然のこと。後ろの退く足はなく、全身あるのみ。
しかし、顧みない行動は常に自身へと返ってくる。不退転ということは、戻れないということ。もしも、道を外れたのだとしたら、もう引き返してやり直すことなどできないのだ。
人生の行く先は常に白紙。しかし、過去は常に戻るべき足場を残さずに瓦解している。そんな生き方をしていれば、自分も誰かも大切にしない生き方しかできなくなてしまうのは、自明の理。
故にシエル・マリアージュ(天に見初められし乙女・f01707)は、哀しみを瞳に湛える。
「學徒兵……!帝都の犬め……!痛み無き世界に人類の革新は訪れないと何故理解しない!他者より優れた物を持つユーベルコヲド使いであるのならば、わかるはず!我らの決死の覚悟を侮るな……!」
影朧甲冑の乗り手が言う。
シエルの學徒兵であるとわかれば、過剰に反応をしてしまう。その激高にも近い感情の波に攫われるように纏う影朧がざわめく。
その頭上には何かを為しえた妄想の自分たちの姿。何かを為したい。それができるだけの力がある自分。何もかもが自分のため。結局は、人はどこまで行っても一人なのだろうか。
「その覚悟がありながら、人の道を外れるとは残念なこと」
静かにシエルが応える。道を間違えなければ、あるいは良き方法で世界を良きものに出来たかもしれない。
だが、それはもうできない。彼女たちが取った行動は、不退転の道。違えた道をやり直すには、すでに間違いだらけの選択をしてしまっている。
平穏そのものの世界に刃を向けたのだ。ならば、シエルは行動で返さなければならない。
「この世界に仇をなすのなら、刃を持って応えるのみ」
「言うことはそれだけか、ユーベルコヲド使い!」
両者の交わらぬ視線がぶつかる。影朧をまとう動力甲冑がシエルの華奢な体を圧殺せしめんと駆ける。
それに相対するのはシエルの破魔のちからが宿りし武器より放たれる衝撃波。その余波で幻朧桜の花弁が舞い上がる。夕焼けの光を受けて、橙に煌めく花弁は戦いの最中であっても変わらぬ美しさ。
「この美しい世界を汚さぬためには……我に敗れし咎人よ、我が御使いとなりて敵を討て」
彼女のユーベルコード、贖罪の御使い(ショクザイノミツカイ)。彼女が倒した敵を召喚し、影朧甲冑へと向かう。
腕で薙ぎ払いながらも応戦するも、ついには動きを止められる。
「良き技量ですが……近い方を誤れば、ただの暴力です。かつての咎人も、誤った力の使い方さえしなければ……」
影朧甲冑を拘束していた霊を自爆させる。身に纏った影朧が徐々に剥がれてきている!
「―――っ、ぐ!この程度でっ!まだ!私が、負けるわけが―――!」
「いいえ。そうはさせません……!」
シエルの破魔の力宿りし武器が影朧を完全に打ち払う。
黒いモヤのような影朧は、動力甲冑の装甲から完全に乖離し、その真なる姿を現す。
大戦期において、最も非人道的と謳われた兵器。
一度搭乗しては二度と降りることの叶わぬ不退転の兵器。
その歪な姿がついに―――!
大成功
🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『影朧甲冑』
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POW : 無影兜割
【刀による大上段からの振り下ろし】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD : 影朧飛翔弾
【甲冑の指先から、小型ミサイルの連射】を発動する。超高速連続攻撃が可能だが、回避されても中止できない。
WIZ : 影朧蒸気
全身を【燃料とされた影朧の呪いが宿るドス黒い蒸気】で覆い、自身が敵から受けた【影朧甲冑への攻撃回数】に比例した戦闘力増強と、生命力吸収能力を得る。
イラスト:雲間陽子
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
「がっ―――!くっ!影朧を剥がされようと……!私は!」
そう、私は負けるわけにはいかない。負けるわけがない。私より優れた者はいない。私が今劣勢に立たされているのは、彼らユーベルコヲド使いたちが集団でかかっているからだ。
そう考えれば辻褄が合う。一人や二人であれば、問題なく目的を達成できたのだ。
安穏のさばるこの帝都に、人類の進化の礎を築けることができたはずなのだ。
人は誰だって、他者より優れたものでいたい。他者からの称賛を浴びたい。他者から認められたい。
そんな無自覚な欲求があるからこそ、私を見上げるのだ。ならば、私は他者より優れた者として、彼らに手を差し伸べるのが道理。
他よりも多きを持つ者にある責務だ。
だというのに、目の前の彼らはそれを理解しようとしない。
「私は―――優れた者!他より多くを持つ身なればこそ!無知蒙昧な愚劣な人民を導く責務がある!故に、私は負けるわけがない―――!」
劇薬に触れて歪んだ骨子は戻らず。
歪んだものは、周囲を傷つけ自壊するのみ。
ならば、せめて他を傷つけぬように屠ることこそが救いなのかもしれない。
そして、その答えを持つのは……猟兵しかいない。
戦い、打ち砕くほか無いのならば、明日へと続く平穏を守るしかないのだ。
マヤ・ウェストウッド
「化け物みたいな力を授かって、戦いの中でしか自分を見出せないのなら、アンタらとアタシらは意外に似てるのかもね……」
・しかし奴と自分には決定的な違いがある。自分の優秀さと有用さを示す為に、他人をないがしろにはしない
・真の姿を解放。全身の筋肉を隆起させ、妖狐めいた尻尾を生やし、伸びた口吻から剥き出す歯牙はシザースバイト。その形相、まさに地獄の番犬
・敢えて反撃はしない。回避も防禦せず猛攻を受ける。背後の一般人を脅威から防ぎ、戦友たちのチャンスをつくる為に。怨恨に駆られる敵さえ受け止めて、抱き締めるように
「いいかい"お嬢ちゃん"、顔が無くとも目に焼き付けな。能力(ちから)ッてえのは、こう使うんだよ!」
強さが最も光り輝く時、それは戦いの最中だろう。争乱こそが強さを持つ者の晴れ舞台であり、その場においてのみ力を振るうことを許される。
つまりは敵が必要なのである。しかし、大正の世が続く平穏の帝都にあっては、それを見つけることすら難しい。
苛立ちは不満に、不満が欺瞞に。欺瞞は独善に。
そうやって変わっていくものだ。どれだけ体躯に恵まれようとも、どれだけ膂力に優れようとも、中身まで鎧うことなどできはしないのだ。
「だからこそ、私は敵を求める!私にふさわしい敵を!打倒するに値する敵を!私と同等の私を!」
影朧甲冑には最早影朧を纏うだけの力はない。しかし、影朧を纏うことができなくなったからと行って、その戦力が一般人レベルまで落ちることはない。
未だ帝都の脅威として存在していた。
「化け物みたいな力を授かって、戦いの中でしか自分を見出せないのなら、アンタらとアタシらは意外に似てるのかもね……」
影朧甲冑の乗り手に、奇妙なシンパシーを感じていたマヤ・ウェストウッド(フューリアス・ヒーラー・f03710)の呟きは、果たして動力甲冑の中まで届いただろうか。
いや、届いていて欲しいと思うのはマヤ自身の甘さだろうか。優しさとも言うのかもしれない。
似ているかもしれないが、決定的な違いがある。それは他人を蔑ろにはしないということだ。だからこそ、マヤは立ち塞がらなければならない。真の姿をさらしてでも―――!
「貴様―――!まさか、超弩級戦力!ならば、我らが計画を妨害できるのもうなずけるというもの!」
マヤの姿が変わっていく。全身の筋肉は隆起し、妖狐のような尻尾が伸びる。伸びた口元からむき出す歯牙は獣そのもの。それが彼女の真の姿。見るものが見れば、彼女の今の姿は、地獄の番犬じみていただろう。
「来な―――!」
くい、と指を寄せて挑発するマヤ。未だ取り残された一般人を守るためには、こうする他ない。いや、そうでなくても、マヤはこうしただろう。なぜなら、彼女は猟兵だからだ。
「安い挑発を!その体っ、両断してくれる!無影兜割っ!」
上段からの斬撃!その動力甲冑に秘められし力が最上段からの斬撃となって放たれる。マヤは避けるだろう。そう思って袈裟懸けに刀を振るう―――だが、マヤは一歩も動かない。
斬撃が彼女の体を襲う。一撃目は皮を、二撃目は肉を、三撃目は骨を!息が上がる。この荒々しい吐息は誰のものか。
攻撃を受けているマヤは未だ立ちふさがる。一歩も、幾度の斬撃を受けても尚、怯むことなく立ちふさがっている。なんだこいつは!なんなのだ!まさか本当の―――化け物なのか!?
違う。彼女は猟兵。故にユーベルコード、防弱武人のふるまい(ヴァンガード・スタンス)によって、彼女にとって不利な行動を取れば取るほどに、生命の危機に晒されるほどに、彼女の能力は跳ね上がっていく。
「いいかい、“お嬢ちゃん”、顔がなくとも目に焼付な。能力(ちから)ッて
えのは、こう使うんだよ!」
壮絶な、凄絶な笑みを浮かべてマヤが一歩近づく。その行動は確かに不利な行動だったのだろう。動力甲冑の乗り手からすれば、理解に苦しむ。何故だ、一体何なのだ!と。
思わず、足が後退しようとして、止まる。
不退転の覚悟を捨てさせなかったのは、マヤの抱擁。一歩下がれば、煉獄である。ならば、せめて地獄に送り届けよう。
機体がきしむ。マヤの膂力によって軋まされているのだ……!機体が悲鳴を上げる。そのきしむ音はまるで、乗り手の理解不能なものに対する恐れに慄く絶叫のようだった―――。
成功
🔵🔵🔴
シエル・マリアージュ
秀でたが故の孤独と驕りの果ての狂気、ならば私は全力で応えよう。
ダッシュと地形を利用した機動力で先制攻撃、更にジャンプからの空中浮遊による空中戦のような軽快な動きで敵を翻弄、剣による斬撃の後に間合いを取りつつ銃撃による2回攻撃など、自分が積み重ねてきた戦闘技術で攻撃を受ける度に強化されていく敵に対抗。
「あなた、その程度ですか」
苦しい状況でもオーラ防御や残像によるフェイントで攻撃を凌ぎ、生命力吸収で体力を補いながら粘り、限界ギリギリでカウンターから【死は闇より来たれり】による不意打ちを仕掛ける。
防御を捨てた捨て身の一撃、鎧無視で甲冑内部に炎属性の付与した衝撃波を叩き込む。
これが私からの手向けです
軋む音が響く。それは骨子の軋む音か、それとも魂の軋む音か。
影朧甲冑のあちこちから響くその音は、彼女―――シエル・マリアージュ(天に見初められし乙女・f01707)にとってどんな意味を持っただろうか。
もはや、最大の長所である影朧は猟兵達の攻撃によって引き剥がされた。
しかし、動力甲冑の中で乗り手は叫ぶ。まだであると。まだこれが自身の終わりではないと。見果てぬ夢は、理想の果にあるのだと。
未だ人類の進化を信じ、その結実が争乱の果にあるのだと信じて疑わない。
その傲慢。未だ衰えを見せず。
「秀でたが故の孤独と驕りの果ての狂気、ならば私は全力で応えよう」
シエルが路面を蹴る。夕刻の空は、もはや橙から濃紺に。
彼女の白い髪が昼と夜との間において、淡く煌めく。その様子を美しいと感じたのであれば、それは一瞬の儚さに美を見出すがゆえ。消える泡沫の如き美しさ故、動力甲冑の乗り手は見惚れる。
あの儚さこそが、人類の進化を促すのだ。美しく生きたい。醜くなりたくない。
「これ以上私は、衰えたくない!もっと!もっと!進化したい!それには私を高める対等な者が必要なのだ!」
動力甲冑が唸り声を上げる。影朧の残滓が黒い蒸気となって甲冑を覆う。まだそんあ力が残っているのかと、絞り出すような咆哮が響き渡る。
シエルが空に舞い、甲冑のモヤを晴らすように翻弄する。攻撃が、あたっているのに少しも怯む様子がない。
確かに翻弄している。あちらの攻撃は当たらず、こちらの攻撃は当たる。だが、明らかに、一撃目より二撃目が。二撃目より三撃目が重く早くなっている!
間合いを取りつつ放たれた銃撃が、動力甲冑の装甲を削る。だが、それでも止まらない。何に突き動かされているのか、黒い蒸気はもうもうと、その身を覆い続ける。
「止まれぬものか……!この程度で……!私は……!私の夢は潰えない!私の夢は人類の夢!見果てぬ進化の先にある完成を目指すもの成れば!」
大太刀がシエルに振り下ろされる。オーラ防御によって漸く斬撃をそらすことができるほどに、動力甲冑の出力が上がっている。受けては押し負ける。
苦しい。息が上がる。それでもシエルは残像を伴うスピードで敵の攻撃を避け続ける。苦しい。生命吸収の攻撃を放っても尚、動力甲冑は止まらない。
重い音を立てて、シエルの動きを捉えた斬撃。受けてしまった斬撃がシエルの骨をきしませる。
だが、ここで膝を折るわけにはいかない。シエル自身にも、譲れぬ想いはある。この世界を守ると決めた決意は、何者にも変え難く。
故に、
「あなた、その程度ですか」
「虚勢を、張る―――!」
最上段から振りかぶられる大太刀。あれは受けきれないとわかってしまう。最大の攻撃。だからこそ、見える一条の光。
ユーベルコード、死は闇より来たれり(シミツイタコロシノワザ)―――影朧甲冑の影より放たれたる一撃は、その甲冑の隙間を縫って貫く。
動きが止まる!刹那の一瞬を青い瞳が捉える。
「罪人に相応しきは、慈悲の刃……これが私からの手向けです」
防御を捨てた捨て身の一撃。体をぶつけるように動力甲冑の装甲に突き立てられる一撃は、確かに装甲を貫く!
装甲の内部で蒼焔が膨れ上がり、裂帛の衝撃波が叩き込まれ、シエル自身も動力甲冑から吹き飛ばされてしまう。
だが、確かにシエルの一撃は、信念は蒼焔の輝きを持って、動力甲冑の乗り手の信念んに楔を打ち込むのだった―――!
成功
🔵🔵🔴
レナーテ・フレンベルク
◎アドリブ連携歓迎
停滞、革新、進化……色々な言葉が出てくるけれど
結局のところ、貴女が真に求めているのは
自分が孤独を感じない世の中、いえ、仲間かしら
能力故の孤独に耐え切れず、何とかしたかっただけなのでしょう?
他に幾らでもやり方はあったはずなのに、悲しい人
■戦闘
残念だけれど、何をしても既に手遅れだというのなら
倒すしかないわね
その甲冑の能力から考えても、貴女を苦しませたくないという
想いからも、一気に決めさせてもらうわ
【UC】を使用して、名も無き英雄の成れの果て
上位アンデッドのデスナイトを召喚
さぁ、かつての相棒と共に戦場を駆け、呪われし魔剣をその手に
あの哀れな敵に慈悲の一撃を与えてあげなさい……!
溢れる黒き蒸気は、感情の発露か。それとも零れ落ちる、彼女の魂か。
それが望んだ結末なのだろうか。どれだけ力を尽くしても、どれだけの時間をかけようとも、見果てぬ理想の先にあるのは地獄か煉獄か。
いずれにせよ、不退転を決めた時から彼女の結末は変わらない。
ならば。それならば、何をしても既に手遅れだというのなら―――
レナーテ・フレンベルク(幽玄のフロイライン・f25873)は、囁くように小さく同じ言葉を彼女に送った。―――悲しい人。
夕暮れを越え、これよりは濃紺の夜が来る。帳は落ち、闇の時間がやってくる。闇故に人は恐れる。光があるから闇があるように、昼があるから夜が来る。
それは自然の摂理。恐怖があるからこそ、それを乗り越える勇気がある。
「停滞、革新、進化……いろいろな言葉が出てくるけれど、結局の所……貴女が真に求めているのは自分が孤独を感じない世の中」
「違う!私が求めるのは真に平等なせかい!誰も彼もが劣らぬ、優れぬ!横並びの世界!私は求める!今この世が停滞するのは、安寧あるからこそだと!」
レナーテと乗り手の言葉が交錯する。レナーテの言葉は穿っていた。確実に影朧甲冑の乗り手の心を。
だが、もはや届かない。何故ならば、彼女は多数の中に居てこそ、孤独を感じるからだ。どうしようもない、癒やすことの出来ない孤独。他者と自身が違うということを受け入れられなかったが故の悲劇。
「……いえ、仲間が欲しかったのかしら……それならば、私が一時でも与えましょう。……死して尚、戦いを求め続ける強き魂よ。我が呼びかけに答え、躯の海より此処へ来たれ」
ユーベルコード、永劫の戦を求める者(グローセ・ヘルト)により現れたるは、死霊馬にまたがりし、デスナイト。その手にもつは、破滅の魔剣。
さあ、とレナーテが指差す先には、黒き蒸気を纏う動力甲冑!行きなさい。貴女と貴方。同じ哀しみを持つ者たちよ。
死霊馬が駆け出すと同時にデスナイトの魔剣が振るわれる。動力甲冑の放つ大太刀の一撃と火花散る剣戟が響く。
何度も何度も。
「ほしいのは―――ほしいのは―――!違う!私は強者!故に欲しない!」
慟哭じみた咆哮が動力甲冑から響き渡る。
「能力故の孤独に耐えきれず、なんとかしたかっただけなのでしょう?……他に幾らでもやり方はあったはずなのに……やっぱり悲しい人」
孤独に耐えきれる者はいない。永劫に続くのであれば、その身の内から焼き焦がし、凍りつかせていく恐ろしき呪い。それが彼女には待っている。
ならば、と名も無き英雄の成れの果てに命じるレナーテ。
たおやかな指先が示す先は、煉獄。ただ、今与えるべきは、苦しめるべき一撃ではなく……
「さぁ、かつての相棒と共に戦場を駆け、呪われし魔剣をその手に……あの哀れな敵に慈悲の一撃を与えてあげなさい……!」
レナーテの声に応えるように、嘗ての名無しの英雄が咆哮する。呪われし魔剣が輝き、夜の帳を切り裂く。死霊馬の蹄が路面に火花をちらして駆け、動力甲冑との一瞬の交錯が一閃となりて、幻朧桜の花弁を舞い散らせる。
魔剣によって切り捨てられた大太刀の刀身が風を切って、路面へと突き刺さる。
「さようなら、悲しい人―――」
大成功
🔵🔵🔵
ロニ・グィー
【pow】
アドリブ・絡み歓迎
あーあ、もう終わっちゃった?
あのかしましいキーキー声もずっと聞かされてたのが絶えるとちょっと寂しいかな?
ドリル球を甲冑の顔をカバーする部分を鎧砕きしてお顔を拝んでみようか
あ~あ、負けちゃったね
これで、まだ反駁するならそれはそれで大したものだよと興味を持つかな?
アハハ!そうだね、君はまだ一敗地にまみれただけさ
まだ不撓不屈の意思があり
降伏も帰順も知らぬ勇気がある
敗北を喫しないためにこれ以上何が必要だというんだろう!
さあ、立って
君がやるんだ
全ての人を進化と革命へと導いて、悲劇を終わらせるんだ
君ならできるさ
必要なら最後にUCをどーんっ!
じゃあまたね、楽しみにしてるよ
膝をつく影朧甲冑。黒き蒸気に囲まれながらも、その装甲のあちらこちらで火花が散る。それは乗り手が望んだ儚さ。散る火花のような、そんな生命の明滅こそが、人類の進化を促すと信じて疑わなかった。
そうすることでしか、進化は促せない。その急ぎすぎる思想は、人類の歩みの速度を正しく測ることなどできていなかったことの証明。
「まだっ……!まだ終わるものか……!なんと言われようと……!私が成さねばならない……!」
乗り手は未だ倒れず。動力甲冑が重い音を立てて、動き出す。一歩前へ。さらにもう一歩前へ。そうすることでしか、彼女の存在は証明されない。彼女が行きた証が。
「あーあ、もう終わっちゃった?って思っていたんだけれど、まだやる気なんだね」
ロニ・グィー(神のバーバリアン・f19016)が立ちふさがる。あれだけ手ひどくやられたというのに、まだまだやる気満々じゃん、と。
猟兵達の攻撃は、確実に影朧甲冑の装甲を削っていた。だが、それでも尚、このまま鉄道駅へと到達すれば、破壊活動を行うのに十分すぎるほどの力を持っていた。
今、ここで止めなければ被害はいたずらに広がるばかりとなろう。
「無論……!そのために私の身はある……!退け……!」
「あのかしましいキーキー声もずっと聞かされてたのが絶えるとなると、ちょっと寂しいかな?」
ロニの球体群が浮遊する。動力甲冑の折れた大太刀が構えられる。いっそ痛ましいと思ってしまえれば、楽だったのかも知れない。
球体群が螺旋旋盤のように回転する掘削衝角変形して、動力甲冑を襲う。
折れた大太刀で幾度か切り払うも、それでも数に圧倒され、防ぎきれぬ球体が甲冑の顔面部を破砕する。
破片が散り、夕刻を過ぎた夜の帳の落ちる帝都に乗り手の顔がわずかに。その瞳は未だに彼女の敵を見据える。
勝負は完全についたと言っても良い。だが―――!
「あ~あ、負けちゃったね。結局、人類の進化だとか言っていても、この程度。君と同じ程度になったくらいでは、進化とは言わないと思うよ?」
「黙れ……!私は礎にして楔……!私は滅びない……!この影朧甲冑がある限り、私は―――!」
「アハハ!そうだね、君はまだ一敗地にまみれただけさ!まだ不撓不屈の意思があり!降伏も帰順も知らぬ勇気がある!敗北を喫しないためにこれ以上何が必要だと言うんだろう!」
乗り手の言葉は多少なりとロニの興味を引くことだろう。譲らず、引かず、顧みない。それを愚かだと一蹴することはできようが、それすらなければ、何事も成すことなどできはしないのだ。
他者がどう言おうとも、何もかも曲げない信念があればこそ。ならば……。
「さあ、立って。君がやるんだ。すべての人を進化と革新へと導いて、悲劇を終わらせるんだ!君ならできるさ!」
咆哮が響く。無邪気に煽る言葉に、人類の進化と革新が掛かっているのだから。
だが、動力甲冑が唸り声を上げるよりも早く、ロニの拳が動力甲冑の真芯を捉えた。
「じゃあまたね、楽しみにしてるよ」
動力甲冑の背後に立つロニ。動力甲冑から溢れる黒き蒸気が、まるで血液のように甲冑の足元へと溜まるように広がっていく……
乗り手の彼女は神を見ただろうか。それとも、これから進む地獄か煉獄かにおいて、打ち貫いた拳の先の神を思い出すのだろうか……
大成功
🔵🔵🔵
ロニ・グィー
【pow】
アドリブ歓迎
【見届ける】
・もうおよそ満足な戦闘能力は喪失していると判断する
・観察の結果、そうでない場合は狙撃し、手を削ぎ足を折り戦闘能力を削いでいく
・これだけ騒げばいい加減に學府のユーベルコヲド使いたちも来ただろうか?後は彼らでも十分だと判断する
・それがどういう意味を持つか、持たされるか、そのことに興味はないがそれがふさわしいと考えて
・彼女の目に彼らは、彼らの目に彼女はどう映るだろうか?
・彼らでの撃退が適わぬときは、影朧甲冑が駅に到達しようというそのタイミングで、一瞬で特大の球体で潰す
「退屈が少しは癒されたかい?ならよかったね」
「あ~あ…。本当に、本当に、人間ってどうしようもない」
「死ぬのはちっとも怖くない。けれど、何事も成すこともできずに、名を残すことなく死んでいくのだけは恐ろしい」
それは、いつかの誰かの言葉だったのかもしれない。遠い昔の、遠い誰かの言葉。
それは、纏う影朧の言葉か。それとも動力甲冑の乗り手の言葉か。
もはや、影朧甲冑の装甲は削がれ、脱落し、それでも尚足を止めないのは如何なる理由か。人類の革新と進化か。それとも安寧を許せぬ気概が為せる業か。
どちらにしても、ロニ・グィー(神のバーバリアン・f19016)は、見届けると決めた。あの動力甲冑には満足な戦闘能力は喪失しているとしか思えなかった。
大太刀は折れ、ひしゃげた装甲、内部は蒼焔に焼かれている。満身創痍。
「これだけ騒動になっているんだ、いい加減學府のユーベルコヲド使いたちも来るでしょ」
ロニは見届ける。彼女の行く末を。それ事態に興味はない。意味があるのかないのか。どちらかなのかという解答を彼は考えない。彼自身にとってそれは意味がない。
意味を見出すとするのなら、乗り手の彼女か、ユーベルコヲド使いたちか。
「彼女の目に彼らは、彼の目に彼女はどう映るんだろうね」
ユーベルコードが輝く。すでに何人もの猟兵達による攻撃で影朧甲冑は、動けないはずだ。だが、一歩、一歩と進む。まだそんな力があるのかと、ユーベルコヲド使いたちの攻撃もあるというのに、それでも尚進む。
彼女の目に何が映るのだろうか。それを為したとして、果たして彼女の名は歴史に刻まれるのだろうか。
だが、それは叶わぬ夢。見果てぬ夢。叶えてはならぬ願い。
一歩、後一歩。その最後の一歩を踏み出そうとして、それは叶わなかった。
ロニの巨大球体が動力甲冑を圧潰させる。轟音が帝都に響き渡る。
「退屈が少しは癒やされたかい?ならよかったね……」
かつて影朧甲冑と呼ばれた非人道的兵器の成れの果てが、そこにはあった。
人道を外れたものがどうなるのか。その末路とも言うべき姿が、そこに。
「あ~あ……本当に、本当に、人間ってどうしようもない」
ロニのつぶやきだけが、夜の帝都の溶けて消えていく。
そして。
悲劇も、惨劇も、いつかは癒やされる時が来るだろう。
そう、未来が現在に。現在が過去になる頃に。
誰でもない貴方に、誰かが、きっといつか―――。
大成功
🔵🔵🔵