【Q】冒険だ! 海へ出よう!
●グリモアベースにて
「今回の任務の舞台は戦場ならぬ船上だ。壊血病にならないようにビタミンCをしっかり取っといたほうがいいぞー」
伊達姿のケットシーが猟兵たちの前で干し柿を食べていた。
グリモア猟兵のJJことジャスパー・ジャンブルジョルトだ。
お世辞にもビタミンCが豊富とは言えない干し柿を美味そうにかじりつつ、JJは話を続けた。
「去年のエンパイア・ウォーの際に何隻もの鉄甲船がサルベージされたことは知ってるよな? その鉄甲船たちに妙なことが起きた。船首のところから紫色の光線がピューンって伸びたんだよ」
しかも、すべての鉄甲船の光線が同じ方角に向かってるという。
その先になにがあるのか? それを知るためには光線を辿るしかないだろう。
「つーことで、鉄甲船で海に繰り出し、光線が指し示しているものの正体を見極めようぜ! 未知の海への大航海――これが燃えずにいられようか! さあ、錨を上げろ! 帆を張れ! とりかじいっぱーい! よーそーろー!」
海の漢(おとこ)になりきって、大声を張り上げるJJ。
とはいえ、彼の役目はグリモアベースでの転送係であり、実際に船に乗ることはない。
海の漢(おとこ)もしくは海の漢(おんな)として航海に出るのは、JJの前に並ぶ猟兵たちだ。
「現地のベテラン船員が同乗してくれるから、基本的な操船とかはお任せしちゃって大丈夫だ。逆に言うと、『基本的な操船』以外の面ではおまえさんたちが踏ん張らないといけないってことだな。オブリビオンどもに行く手を阻まれる可能性も高いし。よーそろー!」
『よーそろー!』が気に入ったらしい。
「おっと、おまえさんたちが乗る鉄甲船の名前を教えるのを忘れてたな。『玄蛟丸(げんこうまる)』ってんだ。『ブラック・シーサペント』みたいな意味なのかな? ちょっと中二病入ってるけど、カッコいいよなー」
カッコいいかどうかは意見の分かれるところであるが、JJは皆の意見など聞くことなく、意気揚々と転送の準備を始めた。
「転送開始! よーそろー!」
土師三良
土師三良(はじ・さぶろう)です。
本件は、鉄甲船『玄蛟丸』に乗って、危険と浪漫がいっぱいの海を征く海洋冒険シナリオです。
第1章では、猛吹雪と流氷群が『玄蛟丸』の行く手を阻みます。知恵や体力や勇気やユーベルコードを駆使して、視界を確保し、暴風に耐え、流氷群を回避(あるいは破壊)してください。
第2章は集団戦、第3章はボス戦です。第1章の内容やオープニング画像から察しがつくと思いますが、登場するオブリビオンはすべて氷雪系です。炎熱系のユーベルコードで対抗するもよし、毒を以て毒を制すようにより冷たぁーいユーベルコードをぶつけるもよし。
それでは、皆さんのプレイングをお待ちしております。
※章の冒頭にあるPOW/SPD/WIZのプレイングはあくまでも一例です。それ以外の行動が禁止というわけではありません、念のため。
※基本的に一度のプレイングにつき一種のユーベルコードしか描写しません。あくまでも『基本的に』であり、例外はありますが。
第1章 冒険
『脅威の海洋災害』
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POW : 肉体の力で体力任せに海洋災害に立ち向かいます
SPD : 素早い行動力や、操船技術で海洋災害に立ち向かいます
WIZ : 広範な知識や、素晴らしいアイデアなどで海洋災害に立ち向かいます
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●幕間
「くそっ! なんてこった!」
揺れる玄蛟丸の甲板で船員が叫んだ。
その声を他の船員たちはかろうじて聴くことができた。
『かろうじて』がつくのは、凄まじい音を立てて暴風が吹き荒れているからだ。
いや、音ばかりではない。暴風は大量の雪も伴っていた。
空から降り注いだかと思えば、真横からぶつかり、時には下方から舞い上がり……美しくも残酷な雪片の軍団は縦横無尽に暴れ狂って、船員たちの体温を容赦なく奪っていく。
そして、視界も奪い始めていた。周囲を白く染め上げることで。
「陸(おか)の上ならともかく、海のど真ん中でこんな猛吹雪に遭うのは初めてだぜ。もしかして、妖しかなんかの仕業か?」
寒さに震えながら、先程の船員は目を凝らして前方を見据えた。
昼間だというのに視程は一キロ強といったところ。
その一キロ強の辺りの海面に新たな障害が現れた。
それも無数に。
流氷の群れだ。
「なんてこった!」
船員は再び叫んだ。
「あんなもんに何度もぶつかっちまったら、鉄甲船といえども保たねえぞ。少しくらいなら耐えられるかもしれないが……」
『少しくらい』の基準はベテランである彼にも判らなかった。鉄甲船に乗ったのも初めてなら、あれほどの規模の流氷群を見たのも初めてなのだから。
「俺たちだけの力ではどうしようもねえな」
目の前に聳える非情な現実を船員は受け入れた。
だが、絶望したわけではない。
彼が言うところの『俺たち』とは一般人の船員のみ。幕府から天下自在符を与えられた者――猟兵は含まれていないのだ。
「下に行って、猟兵さんたちを呼んでこい!」
と、船員は仲間たちに指示した。暴風に負けないくらいの大声で。
「きっと、なんとかしてくれるはずだ!」
ガイ・レックウ
【POW】で判定
『流氷群か…不思議なもんだな』
流氷群に向けて【範囲攻撃】のスキルでのユーベルコード【双竜闘技『プリズムキャノン』】のビームで【なぎ払い】、破壊しにかかるぜ
船の周りに【オーラ防御】でオーラを纏わせ、【拠点防御】のスキルも乗せて防御するぜ
『さあ、乗り切るぞ!!』
上野・修介
※連携・アドリブOK
実のところ、闘うよりも冒険とか探索とかの方が好きだ。
「新天地を目指して、か」
正直、結構ワクワクしている。
しかしかなりの障害が待ち受けているだろう。
ある程度予知されているとはいえ油断はできない。
適度にワクワクしつつ、気を引き締める。
【POW】
船の扱いは素人。
先ずは航海が円滑に進むよう尽力。
船員や他の猟兵などから船の仕組みや仕事を教えて貰い、その中から自分の出来そうなこと(力仕事関係)を見つける。【学習力】
また眼には多少自信があるので見張り役も買って出る。【視力+情報収集】
避け切れない氷山は、先ずタクティカルペンを【投擲】し、それ楔に拳【グラップル+戦闘知識】を叩き込んで破砕。
ミスト・ペルメオス
【POW】
フネを守るのが鎧装騎兵の役目です。やってみせましょう…!
愛機たる機械鎧(人型機動兵器)を駆って参戦。
鉄甲船を母艦とするのは無理だが、任務に支障は無いだろうと判断。
念動力を最大限に発揮し、機体をフルコントロール。
荒天の中でも敢えて鉄甲船の周囲を飛び回ることで早期警戒を試みる。
一方で異常気象の中での作戦行動、周囲のみならず機体の状況にも常に注意を払う。
念動力の他に各種センサーも駆使することで障害物や異常の早期発見を図り、それらを発見し次第、音声や発光信号で鉄甲船に通達。
また【オープンファイア】、可変速ビームキャノンによる大威力の砲撃を以て障害物を破砕していく。
※他の方との共闘等、歓迎です
●上野・修介(吾が拳に名は要らず・f13887)
実を言うと、戦闘よりも冒険や探索のほうが好きだ。
だから、この航海にもワクワクした気分で臨んでいた。適度に緊張感を持ちつつな。
しかし、今は違う。ワクワクと緊張感の間を揺れていた心のメーターの針は緊張感のエリアで停止中。その代わり、俺の体が揺れている。いや、船そのものが荒波を受けて揺れている。
なにもしなければ、揺れは更に激しくなるだろう。
荒波とは別の脅威が目の前に迫っているのだから。
俺は船首の近くの欄干にしがみつき、その脅威――無数の流氷を見据えた
「奇妙な流氷群だな!」
ガントレットを装着した手で同じように欄干にしがみつきながら、灰色の髪の青年が大声で語りかけてきた。彼はガイさん。俺と同世代(ちなみに俺は二十一歳だ)の猟兵だ。
「そうですね!」
と、俺は答えた。相手に負けじと大声で。普通の声量では吹雪の音にかき消されてしまうんだ。
しかし、吹雪のそれとは違う音――スラスターの噴射音が頭上で轟いたから、ガイさんの耳には届かなかったかもしれない。
スラスターを噴かせて前方に飛んでいくのは、超大型のウォーマシンと見紛うような人型の黒い機械。
なにも知らない者には想像もできないだろうな。体長が十メートル近くもあるあの厳つい人型機械を駆っているのが、中性的であどけない顔立ちをした少年だなんて。
●ガイ・レックウ(相克の剣士・f01997)
『宇宙を行く船であろうと、海を行く船であろうと――』
デカくて黒い甲冑が空中で停止し、割れた声を発した。
いや、正確に言うと、甲冑の中にいるミストがスピーカーを介して喋っているんだが。
『――それを守ることが鎧装騎兵の役目です!』
声の次に発したのは光。甲冑に装備されている大砲から光線が撃ち出されたんだ。
甲冑が上半身を動かすと、それに合わせて光線は海面を横切り、通過点にある流氷を半ば溶かすように断ち切っていく。
いくつもの流氷が大量の水蒸気を上げて二つに、あるいは三つに、あるいはそれ以上の数に割れて、更に熱と衝撃の余波で粉々になる様はなかなか壮観だ。
「航海が始まった時から今日までの間、船員の皆さんに船の仕事のことなどを教えてもらってたんですよ!」
修介が語り出した。例によって、吹雪に消されないように大声で。
「でも、それを活かす機会はなさそうですね!」
「そりゃそうだろ!」
俺は懐中から結晶を取り出した。ドラゴンのエネルギーを集結させた結晶だ。
「操船がらみのなんやかやに素人が手ぇ貸す余地なんかねえよ! 船員に任せときゃいいんだ! ミストの言葉を真似るわけじゃねえが、俺たちの役目は――」
「――船を守ることですよね! 船を動かすことではなく!」
と、修介が後を引き取った。
「そういうこった!」
俺は頷き、海原に向かって結晶を突き出した。
●ミスト・ペルメオス(銀河渡りの黒い鳥・f05377)
猟兵用機械鎧『ブラックバード』の中。
眼下の流氷群を破砕しながら、ぼくは各種センサーをフル稼働させていました。
いくつかのセンサーに反応あり。船から見て二時の方向の流氷群の動きが速くなっています。ぼくはこの場所で手一杯なので、対処できないですね。しかし、問題はありません。
船を守ってるのは、ぼく一人ではないのですから。
「あちらの流氷をお願いします!」
スピーカー越しに叫びながら、『ブラックバード』の片腕を上げて、破砕すべき流氷群にライトを照射。
同時に、甲板の様子を表示しているスクリーンをズーム。ライトの方角を見ている修介さんとガイさんの姿が確認できました。ガイさんのほうは欄干から身を乗り出し、石のような物を持った手を伸ばしています。
『具象化せよ、双竜の力!』
『ブラックバード』のコクピット内にガイさんの咆哮が響きました。集音センサーが吹雪の音と一緒に拾ってきたのです。
次の瞬間、石のようなものから光線が迸り、速度を上げていた流氷群の一角が破壊されました。
『とう!』
またもやセンサーが咆哮を拾いました。今度は修介さんです。
彼は甲板から飛び出し、流氷のうちの一つに着地すると、その表面にボールペンを突き立てました。おそらく、それは普通のペンではなく、所謂『タクティカルペン』なのでしょう。
『とう!』
二度目の咆哮とともに拳をペンの尻に叩きつける修介さん。
そして、ジャンプ。
別の流氷に着地するのとほぼ同時に最初の流氷が真っ二つに割れました。深く打ち込まれたペンが楔の役割を果たしたのでしょうか。
修介さんは新たなペンを取り出し、先程と同じ作業を始めました。
その間もガイさんもビームを放ち続けています。
何度も叫びながら。
『絶対に乗り切るぞぉーっ!』
集音センサーの感度は下げておいたほうがよさそうですね。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
セルマ・エンフィールド
それでは、なんとかしましょうか。
操船の方はお任せするしかありませんからね。適材適所ということで。
冷気を操るユーベルコードが私の本領、この程度であれば寒いうちにも入りません。(氷結耐性)
視程は1kmほど。それより手前も雪が舞っていますが、『視力』には自信があります。視程内の流氷は見逃さないようにしましょう。
玄蛟丸の進行方向やこちらにぶつかりそうな流氷があればフィンブルヴェトで【砕氷弾】を撃ち込み、砕きます。
風は強いですが、『スナイパー』としてこれだけ大きい、避けもしないものを外しはしません。
流氷と比べれば小さな弾丸ですが……この気温であれば、十分です。
鏡島・嵐
船旅の道中に、猛吹雪と流氷の群れか。なんかそういうの、映画か何かで見たような気がすんな。
ただでさえ吹雪で寒ィのに、船が壊れて立ち往生すんのはぞっとしねえし、冷てぇ海に投げ出されたら船員さんもおれらも堪ったもんじゃねえや。
こういう時は、《幻想虚構・星霊顕現》の出番だな。
他の味方が流氷に対処するんなら、猛吹雪の方に干渉。熱風を巻き起こすなり熱源を空中に作るなりして、それを弱める。
逆に猛吹雪の方を何とかする仲間が居るんなら、流氷の方に対処。
流氷に対抗できる自然現象っていうと……炎の隕石でも作って落としてみるか? 制御は難しいけど、やってみる価値はあるよな。
上手いタイミングを〈第六感〉で計りてえな。
アリルティリア・アリルアノン
まだ見ぬロマンの海目指し~♪
進め我らのアリル丸~♪
……船の名前が違う?まあいいじゃない!
……って、海めっちゃ荒れてるじゃないですかヤダー!?
こうなればアリルも一肌脱ぎましょう!
とりあえず視界が悪いのは紫の光に従って進めば問題ないとして、一番厄介なのはやはり氷山ですね
アリルの火力とこの寒さでは、氷山をいちいち溶かすのは現実的ではないので、船に当たっても問題ない大きさまで粉砕してしまいます!
「爆発」属性の魔法弾で【属性攻撃】!
さらにUCで、ミサイルとか爆弾で戦うゲームのバトルキャラクター達を召喚!
さあ!この飽和攻撃で、船に近づく氷山は全部爆破してロックアイスにしてやりますよ!
●鏡島・嵐(星読みの渡り鳥・f03812)
凍てつくような海の上で、俺らが乗る鉄甲船『玄蛟丸』は波にもまれ、風に打たれていた。なんか、俺の十八番の曲を彷彿とさせるシチュエーションだ。『板子一枚下は地獄の云々』って歌詞の演歌なんだけどさ。
『凍てつくような海』と言ったが、海の一部は本当に凍てついちまって、いくつもの流氷になってる。
で、それらが押し寄せてきてるんだ。下手すっと、船がブッ壊れて立ち往生するかもしれねえし、俺らや船員さんたちも冷てえ海に投げ出されちまうかもしれねえ。
もっとも、海に投げ出されてない今の時点でも、めちゃくちゃ寒い思いをしてるんだけどな。この猛吹雪、洒落になんねえよ。俺は暑さや寒さにはそこそこ耐えられるし(旅から旅の放浪生活を送っていて、野宿で夜を明かすことも珍しくないからさ)、あったかいポンチョも着込んでるんだけど……やっぱ、寒いもんは寒いっ! 空気が冷たすぎて、息をする度に肺が痛くなる。
でも、俺の横でマスケット銃の点検をしているセルマは寒さが苦じゃないらしい。文字通り、涼しげな顔をしてる。十八歳の俺より一つか二つくらい下の女の子なんだけど、落ち着いたもんだ。
そんなセルマと対照的なのが、自称『バーチャル魔法少女(ウィッチ)』のアリルティリア(頭にバーチャルがついてるから判ると思うけど、この子は人間じゃなくてバーチャルキャラクターだ)。まだ十歳くらいってことを差し引いても落ち着きがなさすぎるぞ。
「まだ見ぬロマンの海、目指しぃ~♪」
荒れる海に向かって、元気よく歌ってやがる。
「進め、我らのアリル丸~♪」
「アリル丸じゃなくて玄蛟丸ですよ!」
セルマがツッコミを入れた。大声を出してるけど、それは吹雪の音にかき消されないためであって、べつに感情的になってるわけじゃないだろう。あいかわらず涼しげな顔をしているのがその証拠。
「べつにどっちでもいいじゃないですかー! 細かいことを気にしちゃダメ!」
「いや、細かくねえだろ! アリル丸と玄蛟丸って、尻についてる『丸』以外に共通点がないぞ!」
と、俺もツッコんだけど、アリルティリアは返事をする代わりに――
「……ちょっと待って! 海、めっちゃ荒れてるじゃないですか、ヤダー!? おまけにさーむーいーっ!」
――いきなり悲鳴をあげた。今頃になって、心身の感覚が状況に追いついたみたいだな。
「セルマちゃんってば、ずっと澄まし顔をしてますけど、寒くないんですかぁ!?」
「はい!」
アリルティリアが涙目(その涙も凍りそうになってる)で尋ねると、セルマは表情を変えずに頷いた。
「冷気を操るユーベルコードが私の本領。この程度であれば、寒いうちにも入りません!」
たいしたもんだ。
●セルマ・エンフィールド(絶対零度の射手・f06556)
「えーい! こうなったら、アリルも一肌脱ぐしかありませんね! 本当に脱いだら、凍死しちゃいそうですけど!」
寒さに嘆いていたアリルティリアさんが気合いを入れ直しました。猟兵の任務を思い出したのでしょう。
いつの間にか、その手にはエレメンタルロッドらしきステッキが握られています。
「それ、魔法少女の定番アイテムってやつか!?」
「はい! 『エレクトロ・ルミネイト』といいます!」
嵐さん(この状況に相応しい名前ですね)の問いに頷きながらも、アリルティリアさんの目は彼を見ていません。
流氷群を睨みつけています。
「あの氷山をブッ壊せばいいんですね! アリル丸にぶつかる前に!」
『アリル丸』という船名については、もうとやかく言わないでおきましょう。言っても無駄のような気がしますから。
しかし、氷山のことは指摘しておいたほうがいいかもしれませんね。
「氷山じゃなくて流氷ですよ、アリルティリアさん!」
「どっちも同じようなもんじゃないですかー! さっきも言いましたけど、細かいことを気にしちゃダァーメ!」
「だから、細かくねえっての!」
と、嵐さんも指摘しましたが、アリルティリアさんは耳を貸すことなく――
「氷山だか流氷だか知りませんが、ロックアイスにしてやりますよー! 魔法弾、発射!」
――流氷群に向かって、『エレクトロ・ルミネイト』なるステッキを突き出しました。
その先端から放たれたのは薄緑色の光。
それを浴びた流氷が次々と爆発していきます。
なかなか迫力のある光景ですが、流氷群はロックアイスと呼べるような状態にはなっていません。
しかし、アリルティリアさんにとっては想定内だったのでしょう。すぐに次の行動に移りましたから。
「追撃ぃーっ!」
光を放射したままのステッキを横に払うアリルティリアさん。
薄緑の軌跡が真一文字に走ったかと思うと、物理の法則を無視して上下に分かたれ、異次元に続く門に変わりました。
その奥から出てきたのは奇妙な軍団。額に『1』と刻印された、数十体の異形の戦士たち。
彼ら(『彼女』も含まれているかもしれませんが)がミサイルを撃ち、あるいは爆弾を投擲したことによって、流氷群の一部は今度こそロックアイスに変わりました。
「流氷のほうは他の奴らに任せておけば大丈夫みたいだから――」
アリルティリアさんや『1』の軍団の奮闘振りを見ながら、嵐さんが言いました。
「――俺はこの吹雪に対処してみっかな」
「対処の手立てがあるのですか?」
「うん。うまくいかくかどうか判らないけど、『幻想虚構・星霊顕現(ガーディアンズ・ファンタズム)』を使ってみる」
ユーベルコードの名前らしきものを口にすると、嵐さんはポンチョの裾を跳ね上げるようにして両腕を広げ、呪文の詠唱を始めました。
とても美しい声で。
●アリルティリア・アリルアノン(バーチャル魔法少女アリルちゃん・f00639)
「Linking to the Material, generate archetype code:X...!」
嵐くんが呪文を唱えてまーす。吹雪を跳ね返しそうなほど大きな声で。雪と溶け合いそうなほど綺麗な声で。
まあ、さすがに雪と溶け合ったりはしませんでしたが……吹雪のほうは跳ね返しちゃいましたよ! いえ、本当に跳ね返したわけじゃないですけど、弱まったのは確かです! すごーい!
「いったい、どうやったんですか!?」
と、詠唱を終えた嵐くんにアリルは尋ねました(吹雪が弱まったので、もう叫ぶ必要はないんですけど、思わず大声を出しちゃいました)。
「熱風を巻き起こして、吹雪を弾き返してやったんだ。でも、そんなに長くは保たないかも」
「問題ありません。残っている流氷の始末にさして時間はかかりませんから」
そう言いながら、セルマちゃんがマスケット銃を構えました。氷山だか流氷だかを撃ち抜くつもりみたいです。
「マスケット銃の弾丸なんかで壊すことができるんですか?」
「問題ありません」
さっきと同じ言葉を返すセルマちゃん。
そして――
「流氷と比べれば、小さな弾丸ですが……この気温であれば、充分です」
――マスケット銃の引き金をひきました。
そしたら、三種類の音が立て続けに響いたんです。『バーン!』と来て、『ピキーン!』と来て、『バリバリバリッ!』って。一つ目は銃声、次は弾丸が氷に命中した音、最後はその氷が真っ二つに割れる音です。
「この『砕氷弾』は、周囲の気温が下がるほど威力が上がるんです」
解説しながら、セルマちゃんはマスケット銃に弾丸を込めては撃ち、込めては撃ち、込めては撃ち……例の三種類の音を何度も聞かせてくれました。
気がつけば、もう周囲に氷のカタマリは残っていませんでした。海に浮かんでいるのはロックアイス状態の小さな氷だけ。この程度なら、我らがアリル丸の航行の邪魔にはならないはず。
やがて、嵐くんのユールコードの効果が切れました。だけど、冷たい風が吹き込んできたりはしませんでした。
「吹雪も収まったか……」
嵐くんが呟きました。氷のカタマリと猛吹雪という二つの障害が消えたにもかかわらず、険しい顔をしています。
セルマちゃんもちょっぴり眉を顰めてますね。
「なにやら、嫌な気配を感じるのですが……気のせいでしょうか?」
「気のせいじゃないと思いまーす!」
アリルは辺りをグルっと見回しました。あやしいものは見当たりませんでしたが、セルマちゃんが言うところの『嫌な気配』が……そう、殺気のようなものがビンビン感じられますよー。
どうやら、敵に囲まれているようですね。
でも、バーチャル魔法少女アリルは怯みません!
来るなら来ーい! 返り討ちにしてくれるわ!
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第2章 集団戦
『『巫女雪女』寒珠』
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POW : 神威雪護装(ゴッド雪だるまアーマー)
無敵の【自身が奉る神に寄せた雪だるまの鎧】を想像から創造し、戦闘に利用できる。強力だが、能力に疑念を感じると大幅に弱体化する。
SPD : 出でよ守護兎
自身の身長の2倍の【乗り換え可能な雪狛兎】を召喚し騎乗する。互いの戦闘力を強化し、生命力を共有する。
WIZ : 猟氷封縛陣
【対象を飲み込む水を生む護符】が命中した対象に対し、高威力高命中の【水ごと氷結封印する氷の護符】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
イラスト:赤月 絆
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●幕間
吹雪が収まり、波静かな状態となった海。
四方八方に舞い散っていた雪も今は上から下に降るのみ……と、思いきや、異変が起きた。
海上のそこかしこで小さな竜巻が生じ、雪がそれらに巻き込まれていく。
異変はそれだけに留まらなかった。
竜巻に撹拌されながら、無数の雪片が混じり合い、人の大きさほどもあるなにかに変わり始めたのだ。
いや、大きさだけではない。その『なにか』はまさしく人の形をしていた。
白い肌をした女の形。
猟兵たちが感じ取った殺気の発生源。
やがて、すべての竜巻は消えた。海面に立つ(あるいは浮遊しているのかもしれない)白い女たちを残して。
どの女も同じ出で立ちをしており、同じ容姿をしていた。白と紺の巫女装束、青みを帯びた銀白色の長い髪、雪を連想させる宝飾品、そして、雪よりも冷ややかな眼差し。
「愚かな奴らよ」
船上の猟兵たちを睨みつけて、女の一人が吐き捨てるように言った。
「選択を誤ったな。吹雪に抗うことなく、海の底に沈むべきだったのだ」
と、別の女が言った。
「そうすれば、苦しむ間もなく逝けただろうに……」
また別の女が言った。
そして、彼女たちは同じ歩調で海面を進み始めた。
玄蛟丸に向かって。
「貴様らはもう楽には死ねんぞ! 恨むのなら――」
最初の女が叫んだ。
「――浅慮で無謀な己を恨むがいい!」
どうやら、この女たちは知らないらしい。
猟兵に挑む者こそ『浅慮で無謀』だということを……。
ガイ・レックウ
『さて、敵のお出ましか……雪ならば我が炎で溶かすのみ!!行くぜ!ヴァジュラ!!』
百花妖炎刀ヴァジュラと封魔神刀ヴァジュラ…相反する二本の刀を掲げて叫ぶぜ
【オーラ防御】で防御を固め【戦闘知識】で相手の動きを観察して【見切り】で避ける!!
【残像】と【フェイント】を織り交ぜての【なぎ払い】とアサルトウェポンでの射撃で攻撃していき、ユーベルコード【紅蓮開放『ヴリトラ』】の獄炎で対象を焼き尽くすぜ
もちろん船にはオーラと【拠点防御】スキルで保護を忘れないぜ
上野・修介
※連携、アドリブ歓迎
下手に時間を掛ければ船に被害が出かねない。
「速攻だな」
調息、脱力、戦場を観【視力+第六感+情報収集】据える。
目付は広く、敵の総数と配置、周囲の状況を把握。
武器は徒手格闘【グラップル+戦闘知識】
UCは攻撃重視で。
船の揺れを利用し、敢えて安定性を捨て転げる様に動き回ることで、狙いを付けさせず、低く攻める。【地形の利用】
例え器が強固だろうと、揺らし撹拌すれば、中身を潰せる。
鎧に対しては擒拿術と柔術を主眼に、地面に頭から落として脳を揺らす、或いは相手の攻めの勢いを利用し合気を取って関節を砕く等で対処【鎧無視攻撃+カウンター】
船体と船員に攻撃が及ぶなら身を盾にする【覚悟】で。
●上野・修介(吾が拳に名は要らず・f13887)
見るからに『雪女』といった感じの青白い女たちが海の上に立ち、船を取り囲んでいた……というのは、さっきまでの話。
今は違う。雪女たちは海の上を悠々と歩き、包囲網を縮めいてる。
これは背筋が凍るほどの恐怖というのを感じるべき状況なんだろうな。
だが、俺は恐れなかった。
きっと、俺の横で――
「お出ましか……」
――そう呟いてニヤリと笑ってるガイさんも恐れていないだろう。
見得を切るかのように海上の雪女たちをねめつけて、彼は二本の剣を掲げた。
「雪ならば、我が炎で溶かすのみ! いくぜ、ヴァジュラ!」
『ヴァジュラ』というのはどちらかの剣(あるいは両方?)の名前かな?
「溶かすのみだと? 笑わせるな!」
雪女の一人が吠えた。
「貴様らの発する炎ごときで我らの神威雪護装(ゴッド雪だるまアーマー)を溶かせるものか!」
すると、周囲を舞っていた雪が吸い寄せられるかのように雪女へと集まり、華奢な体を覆い隠し、たちまちのうちに鎧らしき物に変わった。
『らしき物』が付くのは、普通の鎧からかけ離れていた形をしているからだ。鎧というよりも雪だるまに近い(実際、『ごっどゆきだるまあーまー』とか言ってたからな)。
「なんつーか……カッコわりぃな」
剣を掲げていた両手をだらりを下げるガイさん。
しかし、すぐに気を取り直し、右手の剣で目の前の空間を薙いだ。
「我が刀に封じられし炎よ! 紅蓮の竜となりて、すべてを焼き尽くせ!」
宙に引かれた軌跡が燃え上がり、炎となった。竜の形をした炎だ。
「虚仮威しが通じると思うな!」
炎の竜に動じることなく、一体の雪女が……いや、雪だるまが叫んだ。
そして、海面を蹴り、飛び上がったが――
「うぐわぁーっ!?」
――まだ空中にいる間に炎の竜に呑み込まれた。
●ガイ・レックウ(相克の剣士・f01997)
「これでもまだ虚仮威しだと思うか!」
雪だるまに叫び返してやったが、返事があるはずもない。焼き尽くされちまったからな。
とはいえ、敵は一体だけじゃない。他の雪だるまたちが次々と甲板に飛び乗ってきた。
「下手に時間をかけると、船に被害が出かねません」
修介が静かに呼吸を整えながら、顔をほんの少しだけ左右に動かした。『ほんの少し』といっても、実際は多くのものを捉えて、いろいろと把握しているんだろう。敵の数とか位置とかな。
「速攻でかたづけたいところですね」
「そうだな」
俺は左手の『封魔神刀ヴァジュラ』を突撃銃AW01-2カスタムに持ち替え、雪だるまたちめがけて連射した。片手での射撃ということもあって、何体か撃ち漏らしたが、問題ない。そいつらには右手の『百花妖炎刀ヴァジュラ』の炎を浴びせたから。
そうやって撃ちまくり、焼きまくり、走り回りながら戦っていると、甲板を転がる修介の姿が視界に入った。攻撃を受けて転倒したのか、あるいはつまづいたのか……と、思ったが、そうじゃないらしい。敵に狙いをつけられないように、船の揺れ(吹雪は止んだが、船は完全に静止しているわけじゃなかった)を利用して転がりながら移動しているらしい。
「どんなに器が強固だろうと、揺らし、撹拌すれば――」
修介は雪だるまの一体に間合いを詰めると、素早く起き上がり、相手の体を掴んだ。
そして、足を引っかけ、頭から甲板に投げ落とした。柔術の要領か?
「――中身を潰せる!」
修介が手を離すと、雪だるまはどたりと倒れた。頭が粉々に割れて、中に隠れていた雪女の顔が覗いている。
ただでさえ青白かった顔は更に青白くなっていた。
今の強烈な投げ技でくたばったらしい。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ミスト・ペルメオス
【SPD】
成る程。
ある意味では、災害よりよほど「やりやすい」ッ…!
引き続き、愛機たる機械鎧を駆って作戦に従事。
明確な敵意を向けてくる敵が相手であれば、排除することに何の躊躇いも無い。
マシンヘルムやデバイスを介し、念動力を活用して機体をフルコントロール。
意のままに機体を駆り、スラスターを駆使して敵集団へと飛翔。
中空に、水上すれすれに、立体的な戦闘機動を行いながら機動射撃戦を展開する。
飛び回りながらビームアサルトライフルやマシンキャノンを撃ちかけて敵を追い立て。
可変速ビームキャノンを、或いはビームブレードを叩き込んで蹂躙していく。
さながら、あらゆる敵対者を焼き尽くす【“黒い鳥”】のように。
鏡島・嵐
余計なお世話だ。
おれは知らねえ場所を旅するんが好きだから、浅慮も無謀も覚悟の上だ。
戦うんは怖ぇけど、こんなとこで死ぬ気なんてさらさら無ぇよ!
(努めて声を張り上げて、震える心と体を鼓舞する)
《我が涅槃に到れ獣》でクゥを呼び出して、一緒に戦う。
クゥの機動力で間合いを保ちながら〈スナイパー〉で命中精度を引き上げて攻撃。
他の仲間が近くにいるんなら〈援護射撃〉を飛ばして支援したり、相手の攻撃タイミングを〈見切り〉、〈目潰し〉や〈武器落とし〉を狙って妨害したりして戦いが有利に運ぶようにする。
それでも止められねえ攻撃は〈第六感〉を働かせて回避するなり〈オーラ防御〉で耐えるなりだな。
●鏡島・嵐(星読みの渡り鳥・f03812)
あっちを向いても、雪だるま。
こっちを向いても、雪だるま。
見渡す限りの雪だるま。正確に言うと、雪だるま型の鎧を着た雪女たちだけどな。
さっきまでは寒くて体が震えていたけど、今は怖くて体が震えている。言っとくけど、雪だるま/雪女たちが怖いってわけじゃねえぞ。戦うことが怖えんだ。
だからといって、戦いを投げ出すつもりはないけどな。
『吹雪だの流氷群だのといった災害よりも――』
スピーカー越しの声が空から聞こえてきた。
黒くてでっかい機械の鎧(雪だるま型の鎧と違って、カッコいいな)に乗ってるミストの声だ。
『――こういう手合いのほうが判りやすくていいですね』
「そんな口を利いていられるのも今のうちだ!」
一体の雪だるまが空を見上げて怒鳴った……いや、怒鳴ってる間にそいつは雪だるまから雪女に戻った。雪だるまの鎧がバラバラに分解して雪女から離れ、また寄り集まって別の形に変わったんだ。
別の形――それは兎。
雪でできた兎ってのは珍しくない。冬の風物詩みてえなもんだ。でも、その雪兎は普通のそれはとは違った。とにかくデカいんだよ。鼻先から尻尾までの長さは人間の身長の二倍ほどもあるんじゃないかな。
怒鳴った奴だけじゃなくて、他の雪女の雪だるま型の鎧も次々とデカ兎に変わった。
そして、雪女たちはデカ兎に飛び乗り、俺や皆に襲いかかってきたけど――
『兎狩りといきましょうか』
――ミストが素早く反応。黒い機械鎧からビームだの砲弾だのをドカドカ撃ちまくり、迎撃を始めた。
よし! 俺もやるか!
「戦うのはやっぱり怖ぇけど――」
愛用のスリングショットを取り出しながら、俺は声を張り上げた。
自分を奮い立たせるために。
「――こんなとこで死ぬ気なんて、さらさらねえよ!」
●ミスト・ペルメオス(銀河渡りの黒い鳥・f05377)
愛機『ブラックバード』を縦横無尽に駆り、雪女を、あるいは雪兎を、あるいは両者をまとめてビームアサルトライフルやマシンキャノンで吹き飛ばしていく。
この場合の『縦横無尽』は文字通りの意味。スラスターを噴射して、時に宙高く舞い上がり、時には海面のわずか数メートル上を突き進み、アクロバティックに飛び回っているのです。
とはいえ、敵は多勢ですから、ぼくだけでは対処できません。また、どんなに素早く動き回ろうと、死角は生じます。それでもぼくが自分のペースで高機動戦を続けることができるのは、仲間たちのフォローがあるから。
たとえば、嵐さんです。
「力を貸してくれ、クゥ!」
「がおー!」
嵐さんの叫びに可愛い咆哮で答えたのは、ぬいぐるみのような仔ライオン。いえ、『ような』どころではないかもしれません。ついさっきまでは本当にぬいぐるみに見えましたから。ぬいぐるみに擬態する能力を有しているのでしょうか?
なんにせよ、その『クゥ』なる仔ライオンはもうぬいぐるみではありません。そして、すぐに仔ライオンでもなくなりました。嵐さんのユーベルコードによるものか、敵の雪兎と同じくらいの大きさに変わったのです。
「さっき、『浅慮』だとか『無謀』だとか言ってたけど、余計なお世話だってんだよ!」
雪女たちに向かって叫びながら、嵐さんはクゥの背に跨がりました。
「おれは知らねえ場所を旅するんが好きだから、浅慮も無謀も覚悟の上だ!」
『ブラックバード』に勝るとも劣らぬスピードで甲板上を駆け回るクゥ。
その背の上でスリングを構え、礫を放つ嵐さん。
もちろん、闇雲に放っているわけではありません。『ブラックバード』の動きに合わせて援護射撃をしてくれています。
「がおー!」
「浅慮で無謀な猟兵の力を見せてやるぜ!」
クゥとともに吠えて礫を打ち続ける姿からは勇ましい印象を受けますが、ことさらに大きな声を出しているため、恐怖を必死に抑えているようにも見えます。
しかし、それでも嵐さんが頼れる仲間であることに変わりはありません。
死角にいる敵への攻撃を彼に任せて、ぼくは『ブラックバード』で雪女と雪兎たちの蹂躙を続けました。ビームアサルトライフルやマシンキャノンだけでなく、近接武器のビームブレードも加えて。
空を翔ける機械と地上を駆ける獣とのコンビネーション。とくとご覧あれ。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
アリルティリア・アリルアノン
出ましたねオブリビオン、さっきの猛吹雪もお前たちの仕業ですか!
しかしわざわざ出てきてくれるとは、こちらから探す手間がはぶけたというもの
寒くて危ない目に遭わされた分、まとめてお返ししてあげます!
敵の攻撃は当たらなければ問題ありません
自分そっくりの立体映像を投影する「残像」技能によって回避を試みます
そしてアリルが使うホログラフィック・ペタルによって生まれた無数の光の花弁が、さながら吹雪のごとくオブリビオンどもに吹き荒れダメージを与えていきます
セルマ・エンフィールド
楽に死ぬことを選ぶのであればそもそもこんなところまで来ませんよ。
わざわざ出てくるとはこの先に行かれると困ると言っているようなもの、押し通らせてもらいます。
船縁に【スノウマンレギオン】を召喚、365体の銃を持った雪だるまを並べます。
吹雪いていたなら雪だるまたちが転落しそうですし、取れない戦法でしたが……今頃出てきた自分を恨むことですね。
雪だるまを指揮し、365の銃による乱れ撃ちを。雪玉の弾幕で船にも私にも護符は通さないようにしつつ、敵を撃ち抜きます。
雪女というくらいです。雪や氷で凍てつくことはないでしょうが……雪や氷の塊がぶつかって物理的に傷つくのに耐性があるわけではないでしょう。
●セルマ・エンフィールド(絶対零度の射手・f06556)
「はっはっはっはっはっ!」
雪女を乗せた大きな雪兎たちが跳ね回る中、不敵な笑い声を響かせたのは自称『バーチャル魔法少女(ウィッチ)』のアリルティリアさんです。
雪女たちの攻撃を避けつつ、私は尋ねました。
「なにがおかしいのです?」
「これが笑わずにいられましょうか!」
肩をそびやかして答えるアリルティリアさん。
「敵のほうからわざわざやられに来てくれたんですからね! 探す手間が省けたというものです!」
「ほざけ!」
雪女の一人が怒声を発し、細長い紙片を投じました。東洋の文字らしきものが記された紙片です。護符の類でしょうか?
もっとも、その護符が形を保っていたのは一瞬だけです。風船が割れるような音を発して空中で弾け散り、大きな水滴に変じたのですから。
水滴は重力に従うことなく水平に飛び、アリルティリアさんにぶつかり、彼女を包み込みました。
すかさず、第二の護符を投げようとする雪女。
それを阻止すべく、私は『フィンベルト』(私の相棒とも言えるマスケット銃のことです)のトリガーを引こうとしました……が、その必要がないことをすぐに悟りました。
水滴の中のアリルティリアさんの姿が何重にもぶれ、消失したのです。
「はっはっはっはっはっ!」
またもや不敵な笑い声を響かせて、アリルティリアさんが姿を現しました。少し離れた場所に立っているマストの陰から。
「命中したと思いました? ざんねーん、そっちは立体映像でしたー!」
「くそっ……」
悔しげに呻きながら、雪女は再び護符を投げました。
しかし、アリルティリアさんは回避の素振りも見せることなく――
「さっきの猛吹雪もおまえたちの仕業ですよね? 寒くて危ない目に遭わされた分、まとめてお返ししてあげます!」
――あの『エレクトロ・ルミネイト』なるステッキを頭上に突き上げました。
●アリルティリア・アリルアノン(バーチャル魔法少女アリルちゃん・f00639)
「輝く正義の花よ、舞え!」
かっこよくポーズを決めて、かっこよく叫べば、あらフシギ! 『エレクトロ・ルミネイト』が激しく輝いて、花弁の形をした無数の光に分裂しましたー!
これぞ、ユーベルコード『ホログラフィックペタル』でーす。
光の花弁は雪(まだ降ってるんですよ)を巻き込みながら舞い狂い、アリルに向かって飛んでいた護符をズタズタに切り裂くだけにとどまらず、周りにいる雪女や雪兎にもダメージを与えました。ぴょんぴょん可愛く飛び跳ねていた兎さんたちを痛めつけるのはちょっと心苦しいけれど、どんなに可愛くても敵は敵。情けは禁物なのです。
「光の花の次は――」
花弁の嵐が収まったところで、セルマちゃんがアルマの横に並びました。
「――雪の銃弾で攻めましょうか」
「雪女に雪の銃弾が通じるんですか?」
「雪女というくらいですから、雪や氷で凍てつくことはないかもしれません。しかし、雪や氷の塊がぶつかれば、物理的に傷つくはずです」
クールに答えるセルマちゃん。なにやら召喚系のユーベルコードを使ったらしく、輪をかけてクールな軍団がどこからともなく現れました。
その軍団とは、小さな雪だるまたち。
敵が纏っていた雪だるま型の鎧よりも可愛い形をしていますけど、甘く見ちゃいけませんよ。全員が銃を持ってますから。しかも、数が多いんです。一つ、二つ、三つ……って、いちいち数えてられなーい! まあ、三桁に達しているのは間違いないですね。
「吹雪が続いていたら、この戦法を取ることはできなかったと思います。雪だるまたちは容易く転がされていたでしょうから。吹雪を止めてのこのこと姿を現した浅慮で無謀な自分たちを恨むことですね」
と、セルマちゃんが雪女たちを挑発している間に丸っこい雪だるま軍団は隊列を組み、銃を構えました。
そして、ファイア! ……じゃなくて、この場合は『アイス!』ですかね? 雪だるま軍団の銃から飛び出したのは雪玉ですから。
唸り飛ぶその白い弾丸を浴びて、雪女たちは次々と倒れていきます。セルマちゃんが言った通り、物理的な雪の攻撃は有効みたいですね。
数分後、甲板に立っている雪女はもう一人もいませんでした。
「『楽には死ねん』などと言っていましたが――」
死体となった彼女たちを見回して、セルマちゃんが呟きました。
とっても冷たぁ~い声で。
「――楽に死ぬことを望んでいるのであれば、そもそもこんなところまで来ませんよ」
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『雪鬼と雪女見習い』
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POW : 『こおらせてみる おねがい』『ぶっとべええ!』
【雪鬼渾身の】突進によって与えたダメージに応じ、対象を後退させる。【対象を氷漬けにする雪女見習い】の協力があれば威力が倍増する。
SPD : 『あぶないよ たすける』『すまねえ!』
【客観的に動きを予測し協力する雪女見習い】を召喚し、自身を操らせる事で戦闘力が向上する。
WIZ : 『がんばれ まけちゃだめだよ』『うおおお!』
【雪鬼が奮闘する中、雪女見習いの応援】を聞いて共感した対象全てを治療する。
イラスト:煤すずみ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠ポーラリア・ベル」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●幕間
波にずっと洗われていた甲板が更に水浸しとなった。
雪女たちの骸が溶けて、水に変わったのだ。
足を濡らして歩き回りながら、猟兵たちは船体のそこかしこをチェックした。
戦闘の余波で傷だらけになっているが、航行に支障を来すほどの被害は受けていないようだ。船内に避難している船員たちを呼び戻せば、すぐに旅路を再開できるだろう。
しかし、呼び戻すことはできなかった。
行動を起こす前に空から――
「うおおおぉぉぉーっ!」
――砲声のごとき大音声をあげて、巨漢が降下してきたのだ。
甲板を踏み抜くようにして着地したそれは人間ではなかった。
容貌魁偉な鬼である。
巌のごとき頑強な体躯、冷気を発する青白い肌、額から伸びる二本の角、口に収まりきらないほど長い牙……しかし、それらの特徴よりも目につくのは左肩だ。
そこには着物姿の少女がちょこなんと座っていた。
あどけないながらも、あの雪女たちに通じる雰囲気を漂わせた少女。
まさか父娘ではないだろうが(父娘だとしたら、娘は間違いなく母親似だ)、両者ともに猟兵たちを敵と見做していることは間違いない。猟兵たちに向けられた大小二対の目は憎悪に燃えている。
「おそかったか……」
鬼は視線を下げ、水浸しの甲板を見回した。
「だが、かたきはうってやるぜぇ」
そして、すぐにまた猟兵たちに視線を戻し、右手に持った金棒を一振りした。
「かくごしろ、おめえら! ひとりのこらず――」
「――ぶっとばしてやるぅ!」
と、少女が愛らしくも勇ましい声で後を引き取った。
レシア・ラミリィズ(サポート)
ダンピールのプリンセス、レシア・ラミリィズと申しますの
皆様どうぞよしなに
生き血を求める魔剣『鮮血剣カーミラ』を振るう剣士ですわ
魔剣の欲求に従い積極交戦致しますの
剣の意思に身を委ねる事で
わたくしの拙い腕前でも達人の如く剣を振るう事ができますの
反面、防御が不得意かつ敵味方を識別できなくなりますわ
護衛等は不得手ですわね
ほぼ全ての攻撃は【捨て身の一撃】になり
【生命力吸収】で傷を塞ぎながら戦うスタイルとなりますの
サポートは荒事専門
冒険日常は他の方にお任せしますわ
言葉遣いは上品に優雅に、されど戦は熱狂的に…
華々しく戦わせて下さいませ
尚、わたくし自身による吸血行為は全てNGと致しますの
連携アドリブ歓迎ですわ
ゲンジロウ・ヨハンソン(サポート)
エロ…NG
グロ…OK
やられ役・引き立て役…OK
○日常
日常系なら料理に関すること、可愛い動物関連に飛びいちまうな。
装備した宇宙バイクは調理場を有した屋台に変形させることも可能じゃ。
○調査
客を集めて情報集められるなら、上で言った屋台を使って料理と酒で人々から情報を集めることもできるな。
一応戦場傭兵でもあるからな、人並み位になら潜入もこなせるとは思うわ。
○戦闘
普段は武器そのものの威力よりも、並外れた身体能力で戦い抜いとるな。
といいつつ、決めてのUCは自分が繰り出す大技の方よりも、
実は人や物を呼び出して打ち出すUCのが威力が高いわ。
†蒼刻の騎士†と槍翼の揮士についちゃ、基本わしよか戦闘能力も高いぞ?
ガイ・レックウ
「さて、やられるわけにはいかないんでな……ぶった切る!!』
ユーベルコード【竜王技『天下無双』】を発動と同時に叫び、【オーラ防御】を纏った状態で飛翔し、突撃するぜ。挙動に【フェイント】を交えつつ、相手の攻撃を【見切り】。【怪力】での【鎧砕き】と【なぎ払い】の【二回攻撃】で果敢に攻めてやるぜ
●ガイ・レックウ(相克の剣士・f01997)
「かくごしろ、おめえら! ひとりのこらず――」
「――ぶっとばしてやるぅ!」
青い鬼が吼え、その肩に乗った小娘が叫んだ。随分とミスマッチな二人組だが、息は合っているようだ。
「まさか、オブリンビオンが子連れで挑んでくるとはなぁ」
筋肉の盛り上がった肩を揺らして、ゲンジロウが苦笑した。
「子供を連れてようが、孫を連れてようが、容赦しませんわ」
姫様みたいな格好をしたレシアも笑った。こっちは苦笑にあらず。新たな敵を前にした凶暴な戦士の冷ややかでありながら熱狂的な笑み。
まあ、この二人の相違点は笑いの質に限ったことじゃないけどな。なにからなにまで正反対なんだ。かたや、色黒の顔をした五十がらみの大男。かたや、色白で小柄な年齢不詳(見た目は子供だが)のダンピール。
「わらってんじゃねえ!」
鬼が牙を剥いて(いや、あまりにも長い牙だから、常に剥き出しの状態なんだが)、レシアを睨みつけた。
だが、レシアは動じることなく、尊大な視線を返してる。背丈が低いから、鬼をやや見上げてる形になっているが、本人は見下ろしている気分なのかもしれない。
もっとも、この年齢不詳のお姫さんは最初からこんな風だったわけじゃない。航海が始まって間もない頃は見るからに気弱な感じだったし、実際、船室の隅でおとなしくしてたんだぜ。
様子が変わったのは、敵が現れ、剣を抜いた時からだ。
鮮血か紅蓮を思わせる色に染まった剣を……。
「笑われるのがお嫌でしたら――」
ぞっとするような笑みを口元に張り付けたまま、レシアは剣の切っ先を鬼に向けた。
「――笑われないような言動を心がけるべきですわ」
●ゲンジロウ・ヨハンソン(腕白青二才・f06844)
「うるせえーっ!」
鬼が金棒を振り上げ、レシアに飛びかかった。見かけによらず、俊敏だ。そして、見かけ以上にパワフル。
レシアは後方に飛び退いて回避……するかと思いきや、相手と同じくらいの勢いで突っ込んでいった。荒っぽい戦い方だ。この娘(といっても、俺より年上かもしれんが)も見かけによらんな。
「やっちゃえ!」
「おう!」
雪娘の激励に応じて、レシアに金棒を叩きつけようとする鬼。
しかし――
「おぇ!?」
――間抜けな声をあげ、体を硬直させた。
その一瞬を見逃さず、レシアが例の剣を鬼の腹に突き刺した。体ごとぶつかるようにして。
「たっぷりとおあがりなさいな、カーミラ」
『カーミラって誰だよ?』ってなことを俺が訊くより先にレシアは剣を素早く引き抜き、今度こそ本当に飛び退いた。
その動きに合わせて、真一文字の赤い線が宙に引かれた。鬼の血(体は青白いが、血は赤かった)で描かれた軌跡。だが、鬼の傷口とレシアの剣を結ぶそれはすぐに消えた。後者に吸い取られちまったから。
どうやら、『カーミラ』ってのは剣の名前だったらしい。
「こんなやつらにまけちゃだめだよ!」
と、雪娘がまた鬼を激励した。応援してくれる相棒がいるってのはいいもんだ。俺にも相棒がいることはいるんだが、こんなに可愛い応援はしてくれない。
「がんばれ! がんばれ! がんばれーい!」
「うおおおぉぉぉーっ!」
鬼が体を大きく仰け反らせてるが……ん? 『カーミラ』とやらがブッ刺されたチ込まれた傷が少しばかり塞がったように見えるぞ。もしかして、雪娘の応援は治癒系のユーベルコードだったのか?
●レシア・ラミリィズ(鮮血剣姫・f24125)
当然のことながら、ユーベルコードを使えるのは敵だけではありませんわ。先程、鬼の体が硬直しましたが、あれはわたくしがユーベルコードを用いたからですの。
そして、今は――
「雄々しく猛き魂の炎よ! 我が身を包み、悪を討たん!」
――ガイ様がユーベルコードを発動させておられます。
たちまちのうちに彼の体は炎のようなものに包まれました。
「なにが『あくをうたん』だ! あくはおめえらのほうだろうが!」
鬼が咆哮し、ガイ様に向かって突進しました。
「そーだ、そーだ!」
少女が袖から手を突き出し、冷気を放ちました。鬼の援護をしているつもりなのでしょう。
しかし、炎に包まれたガイ様は冷気を躱し、更に鬼の体当たりも躱し、両手に持った二刀で斬撃を浴びせました。
「ぐむっ!?」
二条の燃える刃に足を斬り裂かれ、鬼は体勢を崩しましたが――
「まけるなー!」
「おう!」
――少女の声援を受け(今回はユーベルコードではなく、ふつうの声援だったようです)、なんとか転倒は免れました。
そして、体を反転させて、また突進。今度の標的はガイ様ではなく、ゲンジロウ様です。
「頼れる相棒がいるのは――」
迫り来る鬼を見て、ゲンジロウ様はニヤリと笑いました。その手にあるのは無骨な鉈。
「――おまえさんだけじゃないんだ」
「ぐえっ!?」
鬼の苦悲が響き、突進が止まりました。
ゲンジロウ様が止めたのではありません。
蒼い衣装を纏った剣士が彼の前に出現し、鬼の足にレイピアを突き立て、いとも簡単に動きを封じたのです。
「これでまた貸し一つだ」
「へいへい」
ゲンジロウ様と言葉を交わしながら、ユーベルコードで召喚されたであろうその剣士は鬼の足からレイピアを抜き、またすぐに繰り出しました。
目にもとまらぬ速さで。
何度も何度も何度も何度も……。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
セルマ・エンフィールド
っと……あの大きさに暴れられては船が持ちませんね。
船が破壊されては意味がありません、手早くやりましょうか。
まずはフィンブルヴェトによる遠距離からの射撃で戦闘を。客観的に見て、私は銃を使う狙撃手でしょう。
となるとあちらの指示はどう銃弾を避けて接近し、近接戦に持ち込むかでしょうか。
魔力で生成する氷の弾丸を使えば弾込めの隙もありませんが……敢えて通常のマスケットの弾丸を使用し、隙を作りましょうか。
あちらがその隙を突き接近してきたら【銃剣戦闘術】で対応を。振るわれる金棒や腕、足の攻撃を『見切り』回避、『カウンター』で雪鬼をフィンブルヴェト先端の銃剣で『串刺し』にし、『零距離射撃』を撃ちこみます。
鏡島・嵐
ここに来てさらに強そうなんが出てきたな……!
怖ぇけど、ここまで来たからには尻尾巻いて帰るわけにもいかねーよな……!
こっちも《二十五番目の錫の兵隊》を呼び出して、応戦させる。
《錫の兵隊》には前に出てもらって攻撃を担当。
おれは後ろから〈援護射撃〉で《錫の兵隊》や他の仲間を支援したり、向こうの攻撃を〈目潰し〉〈武器落とし〉で妨害したり。
あと隙があれば雪女見習いを〈スナイパー〉で狙い撃ちして、回復を妨害。
向こうも支援役のおれを狙ってくるかもだけど、我慢比べだ!
つーか、前に出て戦うのと後ろから援護するので役割分担って、こっちの戦闘スタイルとそっくりだ!
ああもう、敵に回すとこんなに脅威なんか……!
上野・修介
※連携、アドリブ歓迎
闘うとなれば誰が相手だろうと容赦はしない。
とはいえ、
「親子連れか。正直、闘り辛いな」
悪いが推し通らせてもらう。
調息、脱力、敵を観【視力+第六感+情報収集】据え、敵の体格・得物・構え・視線・殺気から間合いを量【学習力+戦闘知識+見切り】る。
真正面から最短距離を【ダッシュ】で間を詰め、真正面からぶつかり合う、と見せかけて間合い入る直前に地を打撃し、急ブレーキを掛けて攻撃を遣り過ごす【フェイント+だまし討ち】と同時にその勢いを利用し頭を飛び越え【ジャンプ】背後を取る。
UCで攻撃強化し【捨て身の一撃】による裏当てから寸勁で更に一撃【グラップル+戦闘知識+鎧無視攻撃】を叩き込む。
アリルティリア・アリルアノン
あーっ!お客様!困ります!
そんな図体で暴れ回って、この玄蛟丸がバラバラになったらどうするんですか!
娘の前で暴れるパパとか教育上もたいへん良くない絵面なので、
ちょっと大人しくしていてもらいますよ!
というわけで、あの似てない父娘?のみを画角に収めたところで、フォトジェニック・ステイシスをパシャリ☆
仲良く固まったところで【全力魔法】のビームをぶっぱして……逆にぶっ飛ばしてやります!!
●セルマ・エンフィールド(絶対零度の射手・f06556)
とうの昔に吹雪は去ったにもかかわらず、玄蛟丸はまだ揺れています。
「ちきしょー! いてぇーっ!」
レイピアで何十回(あるいは何百回?)も突き刺された鬼が怒り狂い、痛みにも狂って、今まで以上に激しく吼え、暴れ回っているからです。
「うおおおぉぉぉーっ! おめえら、ゆるさねえぞ! ぜったい、ゆるさねえぞぉーっ!」
「ぜったい、ぜったい、ゆるさなーい!」
鬼の肩の上で少女も叫んでいます(よく振り落とされないものです)。なにやら微笑ましい光景のような気がしないでもないですが、少女はともかく、鬼のほうは脅威です。このままでは船が持ちません。既に甲板のそこかしこが踏み割られていますし、早急に倒さないと……あら?
「あーっ! お客様! 困ります! 困りますぅーっ!」
アリルティリアさんが鬼をなだめ始めました。いえ、本気でなだめているわけではないと思いますが。
「そんな図体で暴れ回って、このアリル丸がバラバラになったらどうするんですか!?」
「だから、アリル丸じゃなくて玄蛟丸だって」
言葉を挟む嵐さんに構うことなく、アリルティリアさんは電脳ゴーグルを装着しました。
「娘の前で暴れるパパというのは教育的観点からもよろしくない絵面ですから――」
両手の親指と人差し指を合わせて横長の四角をつくり、それをのぞき込むアリルティリアさん。
「――ちょっと、おとなしくしてもらいますよ! 三、二、一……パシャリ☆」
戦いの場に似合わぬ擬音が彼女の口から出た直後、鬼と少女は静かになりました。そう、とても静かに……。
『教育的観点からもよろしくない絵面』のまま、硬直してしまったのです。
「はい! 金縛りからのー!」
アリルティリアさんは電脳ゴーグルを額に上げ、ステッキを振りました。
「全、力、魔、法!」
ステッキの先端から薄緑色の光線が一直線に飛び、鬼の胸板に突き刺さりました。
●アリルティリア・アリルアノン(バーチャル魔法少女アリルちゃん・f00639)
ユーベルコード『フォトジェニック・ステイシス』で一時的に動きを封じ、全力魔法をどぉーん!
「ぐえっ!?」
無様な声をあげて、鬼は背中から転倒しました。『きゃっ!?』という可愛い悲鳴も聞こえましたが、それは着物姿の女の子の声。鬼が倒れた拍子に放り出されちゃったんです。
「くそぉ! もう、ゆるさねえ! ぶちころしてやるから、かくごしやがれ!」
鬼が立ち上がり、青白い顔を真っ赤にして怒鳴りました。そして、怒りに任せて金棒を振り回す……かと思いきや、立ち上がった時の姿勢のままです。
その間に女の子が猫みたいに素早く鬼の体を駆け上り、肩にすとんと腰を下ろしました。なるほど。女の子が定位置に戻るまで待ってあげていたんですね。
「ついさっきも『ゆるさない』と言ってましたし、その前にも『かくごしろ』と言ってましたね。語彙が貧困ですよ」
と、指摘したのはセルマちゃん。鬼に向けられた視線はとても冷たいですけれど、その手に構えたマスケット銃の先端では銃剣の刃がもっと冷たい光を放ってます。
「アリルとしては、語彙よりも言葉遣いに気をつけてほしいですねー。娘の前で『くそ』だの『ぶちころす』だのと怒鳴るのは教育的観点からもよろしくな……」
「うるせぇ! キョーイクテキカンテンとやらはもういいんだよ!」
アリルの言葉を遮って、鬼はダッシュ! こっちに突っ込んできました。
だけど――
「戦うとなれば、誰が相手だろうと容赦はしないが……正直、親子連れというのはやり辛いな」
――と、独り言を呟きながら、修介くんが同じくダッシュ! 鬼に突っ込んでいきます。
でも、これってマズくないですか? 修介くんがいかに手練れの戦士であろうと、ウエイトが違いすぎますよね。正面からぶつかり合ったら、確実に押し負けちゃうと思うんですけど。
●上野・修介(吾が拳に名は要らず・f13887)
目の前に鬼が迫ってくる。
俺もまた鬼に迫っている。
ただでさえ大きな鬼の姿が視界いっぱいに広がり……次の瞬間、俺は宙を舞っていた。
巨体に弾き飛ばされたわけじゃない。
正面衝突する寸前に甲板を手で打ち据え、その勢いを利用して跳躍したんだ。
慌てて急停止した鬼の頭上で弧を描き(その途中、ぽかんと口をあけた雪娘と一瞬だけ目があった)、背後に着地。
そして、攻撃。ユーベルコード(と言っても、普段は無意識下でおこなっている呼吸法その他を意識的におこなう形に切り替えただけだが)で力を高め、敵の腰に掌底を叩き込む。続け様に二度。常人の目には一度にしか見えないだろうが。
「……っ!?」
鬼は呻きを漏らし、がくりと片膝をついた。
「さっすがー!」
アリルティリアさんが歓声をあげた。
「アルマは信じていましたよ! 修介くんなら、圧倒的なウエイト差も簡単に撥ね除けるって!」
……本当かな? まあ、いい。
歓声だけではなく、詠唱も聞こえてきた。
「胸に燃ゆるは熱き想い。腕に宿るは猛き力。その想いを盾に、その力を刃に……」
呪文を唱えているのは嵐さん。あいかわらずの美声だが、聞き惚れている余裕はない。
俺は鬼の背面に拳を何度も打ち込んだ。
それらのうちのいくつかを食らい、いくつかを躱しつつ、鬼はなんとか体勢を直し、こちらに振り返った。
しかし、すぐにまた――
「……っ!?」
――呻きとともに片膝を落とした。
電撃を受けたからだ。
それを放ったのは、片足が義足の兵士。嵐さんの側に立つその姿は半透明だった。おそらく、ユーベルコードで召喚された霊なのだろう。
「いけぇーっ!」
嵐さんの声に応じて、童話に出てくる人形を思わせる兵士の霊は鬼に飛びかかった。得物は銃剣。
そして、嵐さん自身もスリングショットで攻撃を始めた。
●鏡島・嵐(星読みの渡り鳥・f03812)
スリングショットから石礫を発射。狙いは鬼の目の辺り。
よし、命中!
「ぐっ!?」
と、鬼が目を押さえた隙を衝き、アリルティリアが魔法で、修介が格闘技で、俺の召喚した錫の兵隊が銃剣で追撃した。
「お見事です」
俺に言葉をかけながら、セルマもマスケット銃を発射した(射撃が得意そうなセルマに褒められると、なんか照れるな)。
「あぶないよ!」
「おう!」
ちびっこい雪女の警告の声に助けられて、鬼は銃弾を回避しやがった。
そして、金棒を振りかぶり、セルマに襲いかかったけど――
「そう来ると思っていました」
――セルマは華麗に攻撃を躱しつつ、一気に間合いを詰め、マスケット銃を槍のように突き出した。実際、それは槍みたいなもんなんだ。錫の兵隊が持ってる銃と同じように銃剣が装着されてるからな。
「ぬおおおおおう!?」
銃剣で腹を抉られて、鬼は苦しげな声をあげた。
くぐもった銃声がその声に重なった。
銃剣を突き刺したまま、セルマが銃弾を撃ち込んだんだ。串刺しからのゼロ距離射撃。
「そんなきず、たいしたことないよ! がんばって!」
ちびっこい雪女が声を張り上げた。ただの応援じゃない。さっきも使ってたヒール系のユーベルコードだ。その効果で鬼の傷のいくつかが消え去ったけど、全快とはいかなかった。セルマたちが与えたダメージは『たいしたことない』なんて言える程度のものじゃなかったらしい。
とはいえ、雪女は厄介な存在だ。あいつがいなかったら、鬼はとっくに力尽きていただろう。つーか、前に出て戦うのと後ろから援護するので役割分担って、こっちの戦闘スタイルとそっくりじゃないか? 敵に回すと、こんなに脅威なんか……。
「でも、俺らの連携だって、敵にとっては脅威だよな!」
自分を奮い立たせるために叫びながら、後方支援役たる俺は敵の後方支援役めがけて礫を放った。
鬼は咄嗟に手を翳して雪女を庇ったけども――
「悪いが、押し通らせてもらうぞ」
――その隙に乗じて、修介が鬼の脇腹に拳を叩きつけた。
「あうっ!?」
と、悲鳴をあげたのは鬼じゃなくて雪女のほうだ。俺が新たな石礫を撃ち込んだから。
すかさず、他の猟兵たちも『脅威』の連携攻撃を次々と食らわせた。
そして、激闘の末に――
「フィニッシュでーす!」
――アリルティリアのステッキの光線を浴び、鬼はついに力尽きた。
「す、すまねえ……」
それが鬼の最期の言葉。きっと、雪女に向けてのものだったんだろう。
でも、雪女はなにも答えなかった。鬼が倒れるちょっと前に俺の礫を受けて息絶えていたから。少しばかり後味が悪いけど、しょうがない。やらなきゃ、こっちがやられてた。
「航海を再開しましょうか」
物言わぬ雪女の着物を直してやりながら(鬼の肩から落ちた時に乱れたんだ)、セルマが静かに言った。
「うん」
俺は頷き、玄蛟丸の舳先に目を向けた。
紫の色が真っ直ぐに伸びている。
あの先に新しい世界が待っているんだろうか?
だとしたら、オブリビオンとの戦いも待っているんだろうな。そう、おっかない戦いが……。
でも、戦いだけじゃない。素敵なものだって、たくさん待ってるはず。
だからこそ、恐がりの俺でも旅を続けていられるんだ。
大成功
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最終結果:成功
完成日:2020年03月23日
宿敵
『雪鬼と雪女見習い』
を撃破!
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