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浸って溺レてアルコオル

#UDCアース #呪詛型UDC

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#UDCアース
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「集まってくれてありがとな!」
 手を挙げて笑いかけるタハニは、状況の説明を始める。
「UDCアースで、妙なヤツが出たみてえだ。呪いみたいなUDCで、ある飲食店に出るらしい」
 そこは巨大な酒場なのだと言いながら、タハニは現場の写真を見せる。

 二階建ての酒場には螺旋階段があり、吹き抜けもあるようだ。
 高さのある作りで、照明の少なさもあって天井が見えるかどうかも怪しいほど。
 飴色に磨かれた店内や、天井から吊るされた黄金色の鳥籠もあって、どこか不思議な雰囲気の店内のようだ。

「この店で酒を飲んでいると、天井から吊るされた鳥籠に、いつの間にかUDCが出現するらしいんだ」
 現れるUDCは、強欲の傀儡『烏人形』。
 人形の身体を持つソレは、内側から鳥籠を開け、両腕の翼を広げて襲い掛かってくる――卓上の酒や食事を奪いながら、人の命までも奪おうと狙うだろう。
 何羽も現れるこの鳥人形を撃破するのが、今回の最終目標だ。

「酒の種類も量もかなり揃えた状態で貸し切りだ。食事も色々あるみたいだぜ」
 甘酸っぱいピクルスやホクホクのフィッシュ&チップス、グラタンやパスタなど、洋食に寄ってはいるが種類は豊富。
 チョコレートでワインを開けるもジャーキーでウォッカを煽るも自由自在だ。
「酒が飲めねえなら、ノンアルも多いぜ。モクテルって言うのか? 酒の入っていないカクテルもあるらしいからな!」

 楽しい時間を過ごしていれば、いつしか『鳥人形』は姿を見せる。
「『酔いすぎ注意』とだけ言っておくぜ。じゃ、楽しんできてくれ!」


遠藤にんし
遠藤にんしと申します
おいしいウォッカをたくさん飲みたいです

1章・2章は酒場で楽しんでいただき、
3章は強欲の傀儡『烏人形』との集団戦です

●酒場
 2階建て木造、非常に高い天井から大きな金色の鳥籠(空)が吊り下げられています

 1階は大テーブルが多く、大勢で楽しむことができるようになっています
 2階は半個室が多いほかカウンターがあり、ひっそりと静かに楽しむのに向いています

 アルコール類は非常に豊富、その他ノンアルコールも取り揃えています
 食事はピクルス・フィッシュ&チップス、ピスタチオ入りサラダ、グラタン・パスタなど、洋食が多いようです
 日本酒は比較的少ないようですが、日本酒サングリアの用意があります

※一般人として店員がいますが、戦闘開始時はすみやかに避難するため、何事もなければ被害を受けることはありません
 また、カクテルは店員へ申し付けるほか、自分で作ることも出来るようです

●強欲の傀儡『烏人形』
 酔いの気配に応じ、天井からぶら下がる鳥籠に現れます
 食事と酒への欲を持ち、テーブルの上のものを掠め取り、そのついでに近くにいる人間に攻撃を行うようです

 皆様のプレイングをお待ちしております
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第1章 日常 『おいしく楽しく』

POW   :    とにかくたくさん食べる!

SPD   :    ゆっくりと味わって食べる!

WIZ   :    おしゃべりを楽しむ!

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🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 酒場のドアを開けると軽やかなジャズの調べに迎え入れられ、磨き抜かれた床に足を踏み入れる猟兵たち。
 ほんのりと色づいたランプは数こそ少ないものの、壁面いっぱいに並べられた酒瓶がそれを反射し、辺りに色とりどりの光を散らしている。
「いらっしゃい」
 カウンターの中で微笑む髭面のバーテンと控える店員がいるのみで、客はいない。
 猟兵たちはそれぞれに散り、思い思いの時間を過ごすことにした。

 ――広々とした空間を見下ろすように下げられた鳥籠。
 中には、まだ、何もいない。
波狼・拓哉
…酔って幻覚見てんじゃねーのかって言いたくなるやつー。ははーん?そう言われるから発生してても誰も認知して無いパターンだな?酔って無い奴には姿見せないから従業員に被害が出てないと見た。

…まああくまで予想だから外れてるかも。しかし、今それはどうでもいいんだ。重要じゃない。酒の時間だ!

さーって何飲もうかなぁ。…聞いたことない奴とか珍しい奴がいいんだけど。…バーテンさんなんか珍しいカクテル・お酒ない?グサーノ・ロホ見たいな見た目インパクトあるやつとかブラックデスとかの地酒系統とかなんでもいいんだけど。あ、つまみは合う奴で!

お酒には強いけど一応後があるからちびちびと。さあ、楽しむかー
(アドリブ絡み歓迎)



 拓哉はぶら下がる鳥籠を見上げながら、ははーん? と目を細めて。
「発生してても誰も認知して無いパターンだな?」
 酔っていれば視界はおぼつかなくなるもので、酔客にしか姿を見せないのなら店員に被害が出ることもない。
 おまけに店は薄暗い。鳥人形の黒い姿なら、容易に闇に溶けることだろう。
(ま、重要なのはそこじゃない)
 思い直した拓哉は、バーカウンターへと踏み出した。
 カウンターは磨き抜かれ、濡れたように光を放つ。渋い微笑みを見せる店主の背後、ガラス瓶の中に芋虫を見つけた拓哉は、嬉しそうに笑みを浮かべる。
「さーって何飲もうかなぁ――」
 芋虫入りのグサーノ・ロホまで揃えているのなら、変わり種の用意も万全ということ。
 ブラックデスも地酒系も何でも来いだと告げる拓哉へと、バーテンは笑みを浮かべてリキュールグラスを差し出し、そこにリキュールを注ぐ。
「ほう?」
 その次に、バーテンが取り出した珈琲豆を見て、思わず不思議そうな声を上げる拓哉。
「これは、このまま乗せます」
 砕くでも淹れるでもなく、焙煎された珈琲豆はリキュールの上に。
「そして――」
 悪戯っぽく髭面で笑むバーテンの手にはライター。リキュールグラスに近づけると――、
「おっ!」
 瞬時に灯る青い炎に両目を輝かせる拓哉。
 暗がりの中で躍動する炎を楽しんでいた時間は一分にも満たない。コルクのコースターで蓋をして火を消されたものが、ようやく拓哉の手元に届けられる。
「火傷しないようにお気をつけて」
 グラスには、塩気の強いプレッツェルを添えて。
 アルコールと珈琲の香りは、螺旋を描いて立ち上る。

成功 🔵​🔵​🔴​

鞍馬・景正
成る程。
呑まないといけないのですね。

分かりました。
呑みます。
呑みましょう。

呑まいでか。(真顔)

◆行動
と、つい気合が入ってしまいましたが、場所柄的にも静かに飲みましょうか。
二階のカウンター席にて、まずはお奨めのものでも軽く。

……ティオペペと生ハムのレモンクリームパスタ? では、それを。
ふむ、淡く爽やかで、それでいて味わい深い。

食前酒、食中酒……成る程、そんな種類の酒なのですね。
エンパイアの酒とよく似た日本酒が少ないのは残念ですが、異国の美酒たちも実に善哉。

そのまま気になった酒を追加で数杯干しつつ、周囲を軽く観察。
敵の現れる気配はまだ無いでしょうが、この場でどう戦うか軽く構想しておきましょう。



「成る程」
 景正の視界に広がる、色とりどりの酒瓶。
 呑まなければ敵は姿を見せない。ということは、
「呑みましょう。……呑まいでか」
 真顔で、力強く決心を固める景正は二階へ。
 ぐるりと螺旋階段で店内を一周するように上った先は、店内の照明が遠くひっそりとしている。
 重い椅子を引いて腰かければ、見たこともないラベルを貼られた酒瓶たちが景正をお出迎え。
 ここからどれだけのメニューが作られるのかと思えば果てしない気分になって、景正はバーテンへとお勧めの食事を尋ねることにした。
「……ティオペペと生ハムのレモンクリームパスタ? では、それを」
 飲み物はバーテンに委ねると、白のスパークリングワインが供された。
 手早く作られたパスタを口に運べば、淡く爽やかな、それでいて味わい深さが広がって。
「……成る程」
 食前酒や食中酒と呼ばれる種類らしいワインは、普段景正が飲んでいるエンパイアの酒とはまた違った風味。
 エンパイアの酒がないからといって、口の中が寂しくなることはなさそうだ。
 皮付きの白ブドウで造ったというオレンジワインの味わいを楽しむ景正。
 目の前のグラスの輝きがちらつくのは、黄金の籠の反射を受けてのことだろう。
(ふむ……)
 景正は酔いの回った心地よさの中で、戦いの算段を立てて。
 ワインからスーズ・トニックにグラスを変えながら、静謐に時間は過ぎてゆく。

成功 🔵​🔵​🔴​

黒鵺・瑞樹
アドリブ絡みOK

店員はUDC職員の関係者なのかな?なら年齢確認とか平気だろうか。一応春の忙しくなる前の時期に身分証代わりに免許取ったけど。

鳥籠が見えるカウンター席希望。
金色の鳥籠がぶら下がってるって変わったコンセプトというか…なんとなくこう、ファンタジーっていうの?そんな雰囲気もあるような。
洋食・洋酒が多めなのも余計そう感じさせるのかもな。

まずは軽く食事をして。それから酒を頼む。酒はウィスキー中心でつまみもそれに合うものを。
ロックでゆっくり飲むとしよう。その方が酔いにくいし、ちびちび飲むのが好きなんだ。ほんのりのどを焼くアルコールがまた良い感じでな。
…雰囲気に俺が浮いてなければいいなぁ。



(年齢制限とか平気だろうか)
 思いつつも、念のため運転免許証を提示する瑞樹。
「ご協力ありがとうございます」
 運転免許証を見たバーテンはうやうやしく頭を下げてから、瑞樹を螺旋階段の上へと導く。
「お席のご希望は?」
「鳥籠が見えるカウンター席がいいな」
 返した瑞樹の願い通り、通されたカウンター席は吹き抜けを見上げるように座席が配置されていた。
 二階のフロアには背を向ける格好だが、目の前には鳥籠がぶら下がり、階下を一望することも出来る。
 俯瞰する座席は、この店の雰囲気を味わうには特等席だーーなどと思う瑞樹はまずは食事を注文した。
 注文したのはボンゴレビアンコ。殻つきのあさりがたっぷり入っていて、あしらわれた大葉は香り高い。瑞樹が普段口にしている精進料理と比べると味が濃いものの、酒を飲むならこの濃さがかえってありがたかった。
「そろそろ何か飲もうかな」
 手元のメニュー表の、ウイスキーの中から瑞樹が選んだのはタリスカー10年のロック。
 完璧な球を描く氷の上に流れ落ちる琥珀色。度数が強いから量こそ控えめだが、華やかな香りは瑞樹のもとまで届く。
 唇を浸して喉に滑らせれば、即座に喉がアルコールに灼ける。
 ウイスキーの余韻の中でビーフジャーキーを口にすると、肉の旨味が合わさってより複雑な美味しさに変貌を見せた。
 美酒と美味。ゆったりと過ごせる時間と空間。
 どれもが満足いくものだったが、瑞樹には気になっていることがひとつだけ。
(浮いていなければいいなぁ)
 年季の入った調度や酒瓶の中で、ちびちびとグラスを傾ける瑞樹。
 グラスの中、氷は瑞樹に相槌を打つかのように音を立てた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アナイア・デイム
※アドリブ歓迎

あら、中々小洒落たお店ですこと。鳥の巣には勿体ないですわね。
そういえば、猟兵になってからは随分とお酒もご無沙汰ですわね。
折角ですし楽しませて頂くとしましょう…お代は害鳥駆除、でよろしくて?

❖行動:POW
1階にて【礼儀作法】に気を付けてお上品に食事をしながらワインを中心に楽しむ姿には淑女としての【威厳】を感じる…が、そのスピードが尋常ではない。
フードの下に食事やグラスが吸い込まれるように消えていく…どうやって食べてるのやら。
今の時点ではどれだけ飲んでも淑女のキャラを表面上崩す事は無いはず。今の時点では。

周りで面白い事が起きれば嬉々として参加。一応現時点でも酒は回っているらしい。



「あら、中々小洒落たお店ですこと。鳥の巣には勿体ないですわね」
 仮面を纏うアナイアの表情を知ることは出来ないが、微かに微笑んでいるようにも見える。
 果ての知れない天井、そこから下がる鳥籠。視線を下げれば並ぶ酒瓶もまた、アナイアの胸を踊らせるものだ。
 思えば、猟兵になってから酒を嗜むことはなかった。折角の機会なのだから楽しもうと心に決めたアナイアは、一階の座席まで導いたバーテンを見やって。
「お代は害鳥駆除、でよろしくて?」
「勿論でございます」
 代金に見合うだけの料理がアナイナの前を埋め尽くすように並べられ、ボルドーワインの封が切られる。
 ワイングラスに注がれる深紅色を揺らめかせて香りを堪能。それからグラスを傾けたーーかと思えば、アナイアの前に置かれていた大皿の上からいつの間にやらアラビアータのパスタが消えている。
「素敵な渋味。赤に合うようなものをお願い出来るかしら?」
「は……はい……」
 あっけに取られた様子ながらもキッチンとホールを往復するバーテン。
 ガーリック枝豆がしゅるりと吸い込まれ、ペスカトーレが消失。
 目を白黒させながら子牛のカツレツを持ってきたバーテンが目撃したのは、カマンベールチーズがフードの下に吸い込まれていくところ。
「美味しそうですわ」
 淑女の威厳はそのままに、カツレツを見下ろすアナイア。
 吸引するかのようにカツレツを食べ終えたアナイアは、気品ある態度でバーテンに注文を繰り返す。

 気品ある態度で。
 今のところは。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 冒険 『なんでや!?おいしいやろ!!』

POW   :    根性で完食

SPD   :    完食したフリをする

WIZ   :    MY調味料で味を調えて完食

👑11
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

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※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 アルコールも少しずつ回ってくる中、まだまだ楽しい時間は続く。
 鳥籠の中はいまだ空、やるべきことは変わらない。
波狼・拓哉
なるほど珈琲リキュールの一種…でいいのかな。いや流石にリキュール上で豆炙るやつは初めてですわ…ただ間違いなく旨いと思う。
旨いわこれ…いいよね珈琲リキュール。豆でもいいけど粉混ぜるのも手軽でいいんですよねぇ…

プレッツェルでちびちび行くのもいいけどもうちょいなんか…ベーコン系のおつまみなんかないですかね。ちょっとガッツリ目に頂きたいなーバーテンさん?あ、後お酒も適当に追加で。…いやちょっと待ち人がまだ来なくてねー。

さて…鳥籠は動きないかな。…ま、俺が動けなくともおにーさんの場合は別のが動くしな…そろそろ見張り始めといてミミック。なんか出てきたら噛んでもいいぞ。
(アドリブ絡み歓迎)


黒鵺・瑞樹
アドリブ絡みOK

相変わらず鳥籠が見えるカウンター席で酒飲み。酒には強い方だけど、呑みすぎないように気を付けないと。一瓶空けなきゃ大丈夫だとは思うが。
というか飲みすぎないようにロックで頼んでるんだしな。
しかし一人で飲むのもつまらんなぁ。いや飲むつもりで来たんだからそれでいいはずなんだけど、今回は仕事だし。
ゆっくりと二杯空けたらいったん水に変えて。
つまみを食べるにも限度があるからだんだんペースは落ちていく。
際限なく飲み食いできる方ではないのもある。
そっと周りの様子でもみてそれをつまみにするのもありか。


アナイア・デイム
ゴキュッ、ゴキュッ…ぷっはぁぁぁ!酒もツマミもサイッコーですわねぇ…!
これだけどか食いしても、鳥を丸焼きにするだけでタダになるってんですから猟兵バンザイ!ってカンジですわね!

あら、テーブルが寂しくなってしまいましたわね…
すみませぇーん、新しい料理とお酒をゲェェェェップ!恐れ入りますわ。

❖行動:POW
相も変わらずテーブルで【威厳】を保ったまま食事をしている…頭部だけは。
酒が回って何かが狂いだしたのか、下半身はドロドロに溶け、上半身もその輪郭が朧げになりつつある…
テンションも明らかにおかしくなってきており、言葉遣いはおろかマナーの面でも最早貴婦人の面影は無く、完全におっさんである。おいたわしや。


鞍馬・景正
さて……漸く酒が染み渡ってきましたね。
とは言え、屋敷で呑む時のように大盃を傾ける事の出来ないのがもどかしい。

――ボトル、なるものが注文できる?
なら其方を頂きましょう。


そうして数本空けつつ、次にはレーベンブロイなる銘のビールを。
つまみとしてフィッシュ&チップス、アイスバインなるものも注文しましょう。

ふむ、これは……白身魚の天ぷらと豚の角煮では?
国が違えば名前も変わるというものでしょうか。

しかし味付けの濃いものは酒もまた進む。
味噌や塩のみを肴に飲るのも良いですが、食事も美味いに越したことはありませんね。

――ですが、そろそろ酩酊ばかりもしておれませんね。
先に会計だけは済ませておきましょう。



「さて……」
 グラスを置いた景正の漏らす吐息には、アルコールの香りが混ざる。
 ようやく景正の身にはアルコールが染み渡り、色白の膚に淡く紅が差している。
「お次はどうなさいますか?」
「大盃を傾ける事の出来ないのがもどかしいですね」
「では、これを一本というのはいかがでしょう?」
 ウエイターがかざしたのは、ワインボトル。未開栓のボトルはワインクーラーの中で冷やされている。
「――ボトル、なるものが注文できる? なら其方を頂きましょう」
 一本開けて、心ゆくまで注ぎ、飲む。
「一瓶開けて大丈夫か?」
 そんな景正に目を留めて、瑞樹はそう問いかける。
 一瓶空けさえしなければ呑みすぎの心配はない――と思っていた瑞樹だから、景正の飲みっぷりは気になるもの。
 当の景正は涼しい顔でワインを干し、今度はビールの品定めをしているところだ。
「この程度であれば、どうということはありません」
 レーベンブロイのダイレクトな麦芽とホップの苦味に、フィッシュ&チップスとアイスバインをお供に選ぶ。
「ふむ、これは……白身魚の天ぷらと豚の角煮では? 国が違えば名前も変わるというものでしょうか」
 油も味もしっかりしているものには酒が進む。
 軽い調子でジョッキをあおり、皿の上のものを片付けていく景正とは対照的に、瑞樹の飲み方と食べ方はゆったりしたものだ。
 景正が一瓶開ける間に一杯を空ける瑞樹は、今度は水で酔い覚まし。
 メニューを見れば魅力的なつまみも並んではいて、心惹かれるのは事実。
 しかし、瑞樹は際限なく飲み食いが出来るたちではない。お腹のことと戦いのことを思うと口に入れるのはためらわれた。
(こうして水だけ飲むのも退屈だが……)
 どうしたものかと考える瑞樹は、ふと階下から漂う珈琲の香りに目を向けた。

 一階。
「流石にリキュール上で豆炙るやつは初めてですわ……」
 珈琲豆を浮かべたリキュールは、拓哉の期待を上回る美酒。
「豆でもいいけど粉混ぜるのも手軽でいいんですよねぇ……」
 こんな美酒にプレッツェルだけというのも味気ない気がしてきて、拓哉はベーコン系のおつまみをリクエスト。
「お酒も適当に追加で。……いやちょっと待ち人がまだ来なくてねー」
「こっちも良ーいーかしらぁーー?」
 拓哉の言葉に続くアナイアの声は、完全に酒気帯び。
 アナイアの品のある唇は微笑を湛え、空のグラスを前にしてそわそわ酒待ち中。
 そして首から下は――酩酊した人間の脳味噌を粘土細工で表現した現代美術、とでも言うのがふさわしい有様になっている。
 朧げな輪郭の胸元からウェストへ視線を下げていけば、腰あたりでアナイナの体が完全にグズグズに蕩けているのが分かるだろう。
「お待たせいたしました」
 差し出されたグラスを受け取った瞬間あおるアナイア――ゴキュッ、ゴキュッと喉を鳴らして、
「ぷっはぁぁぁ! 酒もツマミもサイッコーですわねぇ……!」
 歓喜の声と共に、バナナチップスを吸い込み消滅させるアナイア。
 どれだけ食べてもUDCさえ倒せばタダ。遠慮ない食べっぷりを見せるアナイアの横で、ウエイターの顔がどことなく引きつっているような気がした。
「すみませぇーん、新しい料理とお酒をゲェェェェップ!」
 店内のBGMもかき消そうかという巨大ゲップに、慌ててウエイターが水を差しだす。
「恐れ入りますわ」
 アナイアが楚々と微笑した瞬間、水は既に消えている……その様子に思わず瞠目する拓哉だが、ベーコンの爆ぜる音と香ばしさが拓哉の意識をカウンターの上に引き戻す。
「カチョカヴァロのベーコン焼きでございます」
 小ぶりなスキレットの上で、カチョカヴァロという名のチーズはふつふつと膨らんでは弾けを繰り返している。
 溶けたチーズの海に沈むベーコンは分厚く、両面をしっかり焼いたようで焦げ目がくっきりついている。 ベーコン自身の脂とチーズの油分でキラキラ輝くベーコンを口にすると、濃厚な肉の旨味とミルク感の強いチーズの風味が一気に襲い掛かってくる。
「熱っ、けど美味しいっすわ……!」
 ウイスキーの柚子ソーダ割で口の中を冷たくスッキリさせたところにまた食べれば、まさに無限機関。
 香りが気になるのか、鳥籠を監視しているミミックもちょっとそわそわしているようだ。
「あれも食べたいですわねぇー!」
 声を上げるアナイアの前にも同じものが供されて、火傷も臆さず吸い込む。

 ――そんな階下の賑わいに、景正は目を細めて。
「先に会計だけは済ませておきましょう」
 酩酊もしていられないと、最後の一杯を飲み干すのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 集団戦 『強欲の傀儡『烏人形』』

POW   :    欲しがることの、何が悪いの?
対象への質問と共に、【自身の黒い翼】から【強欲なカラス】を召喚する。満足な答えを得るまで、強欲なカラスは対象を【貪欲な嘴】で攻撃する。
SPD   :    足りないわ。
戦闘中に食べた【自分が奪ったもの】の量と質に応じて【足りない、もっと欲しいという狂気が増し】、戦闘力が増加する。戦闘終了後解除される。
WIZ   :    あなたも我慢しなくていいのに。
【欲望を肯定し、暴走させる呪詛】を籠めた【鋭い鉤爪】による一撃で、肉体を傷つけずに対象の【欲望を抑え込む理性】のみを攻撃する。
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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
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【2020.3.16/10:00頃から執筆を開始します】

カタン

 ――その音は聞えただろうか。

カタン
 キィ    キィ

 あえかな音を聞き取った猟兵たちの視線が、一カ所に集まる。
 この木造りのバーの、先が見えないほど暗い天井から下がる、黄金の鳥籠。
 その中は――

キィ

「キィ」

 黒いもので満たされている。

「キィ――ィ! 足りない!」
 金切り声を発する黒いものが、籠を飛び出して黒翼を広げる。
 包帯に覆われて眼差しは知れない。
 それでも、強欲の傀儡「鳥人形」の欲望にギラついた視線が感じられそうだった。

「欲しいわ。美味しそう。食べさせて――そのお酒、食べ物、命も」
「全部全部食べさせて」
「足りないわ」
「足りないわ」
「足りたことなんて一度もない!」

 口々に己の欲を謡いながら、鳥人形たちは襲い掛かる。
 バーテンたちは去っている。
 戦いに障壁はないことを確認して、猟兵たちは鳥人間との戦いを始める――。
アト・タウィル(サポート)
『どうも、アトです。』
『ふふ、それはどうも。』
『私にできることなら、なんなりと。』

ねじくれた魔笛≪Guardian of the Gate≫を携え、ふらっと現れる女性。性質は大人しく、いつも笑顔を浮かべているが、その眼は深く開いた穴のように光を写さない。大体平常心で、驚くということがあまりない。その代わり、空気は読むので、必要に応じて驚いたふりなどはする。

戦闘では、魔笛を用いてUCを使う。音楽系はもちろん演奏で、サモニングガイストもそれに合わせて現れる形。ミレナリオ・リフレクションでは、相手のUCが剣などを使う場合は必要に応じて武器としても使う。

後はお任せします、自由に使ってください



 キィ――

 ひび割れそうな悲鳴にも近い、鳥人形の声。
 そんな鳥人形の声につられたように、アトはふらりと姿を見せる。
「どうも、アトです」
 アトの手には奇妙にねじれたフルート。薄い微笑は確かに鳥人形に向けられているはずなのに、どこか虚ろで何も映していないかのようにも思えた。
「何を我慢しているの?」
「我慢は必要ないわ」
「ほしいもので満たしましょう、すべて!」
 取り囲む鳥人形たちは口々にアトに欲望の誘いをかける。
 しかしアトの心は動かない。金切り声を上げる鳥人形に心惑わされることなく、アトは魔笛≪Guardian of the Gate≫によって旋律を広げる。
「欲望まみれの心臓を寄越して!」
 鳥籠から真っ逆さまに落ちてきた鳥人形は、鉤爪でアトの頸動脈を狙う。
 アトの黒髪が数本、鉤爪に切られて落ちる。
 そのまま勢いを殺さず、アトに突っ込んでいく鳥人形――その進撃を食い止めたのは、鳥人形のものとまったく同じ鉤爪。
「あら」
 口の中で呟いた鳥人形の眼前、ミレナリオ・リフレクションによって生み出された鉤爪が、鳥人形に襲い掛かる。
「ィ、イイイッ――ッ!!」
 悲鳴を上げて倒れ伏す鳥人形。
 その中心で、アトの奏でる調べはいつまでも響いていた。

成功 🔵​🔵​🔴​

鳶沢・成美(サポート)
『え、これが魔導書? まあどうしよう?』
『つい気合い入れて掃除しちゃいました。元ボランティア同好会の血が騒いでしまいましたね』
『まあどうでもいいや、オブリビオンなら倒すだけですよ』

故郷UDCアースの下町の古書店でたまたま見つけた魔導書を読んで覚醒した自称なんちゃって陰陽師

昨今でいう陽キャラ? みたいな行動は正直よくわからないのでマイペースに行動
でも集団での行動も嫌いじゃないですよ
一応木工好きでゲートボール好きキャラのはず……たぶん

戦い方は直接殴るより術をとばす方が好みです
範囲攻撃とかロマンですよね
例え好みの容姿だろうと、事情があろうと敵ならスパッと倒すだけですよ

アドリブ・絡み・可



 開きっぱなしの鳥籠から飛び立つ鳥人形たちのせいで、成美の視界は翳る。
「さっさと倒してしまいましょう」
 言って、鳥人形たちへと手をかざす成美。
 鳥人形たちの動きは自由そのもの。無人になったバーカウンターの内側にまで侵入し、無造作に酒瓶を掴んだかと思えば中身をあっという間に干してしまう。
「足りないわ」
 その上で告げる鳥人形は、二階から一階めがけて酒瓶を投げ捨て、黒翼を広げる。
 酒瓶が割れる音を合図にして羽ばたく鳥人形――あと少しというところまで引き付けてから、成美は日曜大工ノ術を発動。
「我、大工也、我、名工也」
「――ッ!?」
 偽物の壁が、鳥人形を阻む。
 このバーと同じ木造りの壁は精巧で、強度も折り紙つき。壁が遮っているから成美にも見えないが、衝撃に揺れる壁が、鳥人形の激突を伝えていた。
「うん、やっぱりこの戦い方が良いですね」
 武器を手にしての大立ち回りよりもしっくりくるのか、うんうんうなずく成美であった。

成功 🔵​🔵​🔴​

鞍馬・景正
漸うの訪いですが、今晩は既に店仕舞いとなりました。
それに相伴に預かりたいなら、相応の礼儀あって然るべきでしょう。

◆戦闘
問いにはただ一言で答えましょう。
酒席では、無粋な輩の要求になど応えなくて良いのですよ。

さて、それより私がただ考え無しに鯨飲していたとお思いか。

私は飲みながらも周囲と店の構造を観察し、導き出した結論として──敵が現れた時に直感のまま戦えば良いやとなりました。

【酒呑無双】にて、普段より力の増した我が剣をお見せ仕る。

太刀を乱舞させ、【早業】の【衝撃波】で迫る鴉達を撃退。

そのまま繋げての【2回攻撃】で鳥人形も仕留めましょう。

無事勝てたなら──河岸を変えて飲み直すとしますか。


黒鵺・瑞樹
アドリブ絡みOK
右手に胡、左手に黒鵺の二刀流

美味そうな食事を出す店に鳥籠があったから、あの場所に出現するようになったんだろうか?
それとも烏だからか?どっちにしろ迷惑なのは変わらんが。

UC月華でより各耐性を高めるようにする。
【存在感】を消し【目立たない】ように立ち回る。隙を見て【マヒ攻撃】を乗せた【暗殺】攻撃。一撃で倒せればいいが、倒せなくてもマヒで動きを鈍らせる。
相手の攻撃は【第六感】による感知と【見切り】で回避。回避できないものは黒鵺で【武器受け】し可能なら【カウンター】を叩き込む。
どうしても喰らうものは【オーラ防御】【激痛耐性】【呪詛耐性】で耐える。


波狼・拓哉
やっと出てきましたね。…普通にお酒楽しんじゃいましたよ。けけけ…っとやっぱちょっと酔ってますかね。

…んじゃまあそういうことで。化け堕としなミミック。全部貫きその翼を意味なきものにしてやってください。おにーさんは最後までしっかり楽しんでから行きますね。オーダーは鳥のローストってとこですか。

楽しんだら自分は地に落ちてる奴らから衝撃波込めた弾で止めさして回りましょう。酔ってます(自称)から無理して動くのもね。あ、ミミックは死ぬほど動いてね!
別に欲しがるのはどうでもいいんじゃないですかね。やらねぇってだけですし。…つーか足りないのが人生でしょう。満ち足りたとかないと思いますよ俺は。
(アドリブ絡み歓迎)


アナイア・デイム
※アドリブ・絡み歓迎
WIZ

ちょっと…バーテンが居なくなってしまいましたわ。
おかわりができないじゃありませんの…(溶けた体を再構成し)
足りない足りないって、私だって食い足りませんわよ!
そんなに欲しければくれてやりますわよオラァッ!(UC)

❖飛行する相手なのでUCと『ペイルマンの仕掛け傘』でタールの飛沫をバラ撒いて【範囲攻撃】。
飛沫が命中すれば【焼却】して【属性攻撃】、鳥の丸焼きに。
外した飛沫は店への延焼を防ぐ為発火させない。

敵の攻撃には【第六感】を頼りに【フェイント】を交え、【ダンス】するように【見切り】を試みる。
味方が辛そうならば【防具改造】で『蠢く乾留液』を強化、【激痛耐性】で【かばう】。



「漸うの訪いですが、今晩は既に店仕舞いとなりました」
 鳥人形らを前にしても、景正は平素の態度のまま。
「いいえ、まだ満足していないわ」
「足りないの。飲ませて頂戴」
 景正の席、グラスの中に残る酒は舐めれば終わる程度にしか残っていない。
 だというのにそれすら惜しいと見えて、鳥人形はギラギラとした視線で景正を睨む。
「やっと出てきましたね。……普通にお酒楽しんじゃいましたよ」
 けけけ、と笑う拓哉の傍ら、ミミックは白熱した鎖に化けている。
「やっぱちょっと酔ってますかね」
「ちょっとだけなら沢山にしましょう。欲望に果てはないのよ」
 言葉を返す鳥人形に、拓哉は肩をすくめるのみ。
「化け堕としなミミック」
 声は鳥人形に宛てたものではなく、ミミックへ宛てたもの。
 呼応したミミックは、螺旋階段を辿るように駆けあがって鳥人形に肉薄する。
 鎖は景正と向き合っていた鳥人形に巻きつき、二階から一階へと引きずり落す。
 ギィ、と悲鳴を上げる鳥人形は意地汚くも付け合わせのパセリを手にしてはいたのだが、衝撃波を込めた弾がパセリもろとも鳥人形を破壊した。
「落ちてきたとこに止めさすのは任せてくださいよ」
 階下から聞こえてくる頼もしい拓哉の声に、景正は微笑。
 呑みながらも景正は周囲と店の構造を観察し、戦い方を考えていた。その結果として導き出した結論は――、
「お見せ仕る」
 直観のままに戦う、それだけだ。
「酒は天の美禄にして憂いを払う玉箒――その力を、此処に」
 酒の力は景正の心眼を研ぎ澄ませ、挟撃すらも太刀の一振りでいなしてしまう。
 衝撃波が唸れば景正に近寄ることは叶わず、二度目の波に翻弄されて失墜する鴉も多々。
「加勢しよう」
 告げる瑞樹の瞳は、平時の青とは異なる輝きをたたえている。
 気配を殺してホールを駆ける瑞樹は、左手の黒鵺を虚空に滑らせる。
「キィ――!?」
 空を飛びまわっていた鳥人形は瑞樹の刃を前にしても止まることが出来ない。一筋の傷跡からは絶えず血が流れ続け、動きの鈍ったところをひと息に刎ねる瑞樹。
「そこか」
 いくら存在感を消すよう立ち回っていても、攻撃を重ねていれば注目は浴びてしまう。
 数羽を仕留めたところで、鳥人形たちは景正だけでなく瑞樹にも集まってくるが、軽やかに伏せれば嘴も鉤爪も届かない。
 ――見上げれば、黄金の鳥籠は鳥人形が飛び立った名残で揺れている。
 照明を反射する輝きに目を細める瑞樹。カランカランと軽く揺れる籠の中には、もう鳥人形の姿はない。
「つまり、今いる烏を倒せば終わりだ」
 鳥籠があったから出現するようになったのか、烏だからなのか――それは瑞樹には分からないことだが、迷惑なことは事実。
 ならば撃退するより他ないと、黒鵺で受け止めた一撃を押し切るように返し、麻痺したところに胡を突き立てる瑞樹。
 黒い羽根は抜けて辺りを舞い、皿の上とグラスの中を空にして茫然とするアナイアを覆い隠すかのよう。
「ちょっと……バーテンが居なくなってしまいましたわ。おかわりができないじゃありませんの……」
 呟いて、溶けていた体を再構成するアナイア。
 そんなアナイアの眼前に降り立った鳥人形は、求めるように両腕を差し伸べて。
「足りないわ。まだ足りない。命も全てを寄越しなさい」
「足りない足りないって、私だって食い足りませんわよ! そんなに欲しければくれてやりますわよオラァッ!」
 叫びと共に、アナイアの体からはタールの飛沫が。
「それは欲しくないわ。欲しいのは――」
 ゆるりと回避しながら言いかける鳥人形の体が、炎に包まれる。
「っ……」
 アナイアの体も、携えるペイルマンの仕掛け傘も、鳥人形の体のほとんども、黒い。
 だからこそ鳥人形の回避は不正確なものにしかならず、日傘から射出されるタールは白銀の炎に変貌して鳥人形の黒い姿を白い消し炭に変えている。
「欲しいんだったらくれてやりますわよッ!」
 くるりと傘を回す所作に合わせてアナイア自身もターン。
 汗のかわりに散るタールは焔となり、下から上へと熱気を噴き上げる。
「足りないわ」
 熱から逃れようと鳥人形が階上へ翼を翻せば、瑞樹は狙いすました一撃で出迎える。
 重ねるように突き付けられる刃は景正のもの。冷艶なる拵えから振るわれる猛威に翻弄されている間にも、瑞樹の両手の得物は斬撃で鳥人形を追い詰めている。
「足りないわ。欲しいのに」
「別に欲しがるのはどうでもいいんじゃないですかね」
 ミミックに翼を貫かれ、灼熱の中に落ちた鳥人形へ声を掛けるのは拓哉。
「やらねぇってだけですし。……つーか足りないのが人生でしょう。満ち足りたとかないと思いますよ俺は」
「私は、足りていたいのに――」
「はいはい」
 呟いた拓哉は、鳥人形へと弾丸を放つ――鳥人形だけを焼き続けていた白銀の炎がようやく静まり、周囲には静寂が戻る。
 それが、戦いの終わりだった。

 ようやく戦いを終えて、猟兵たちは安堵の声を漏らす。
「──河岸を変えて飲み直すとしますか」
 景正の言葉に、誰からともなく賛同の声を上げて。
 猟兵たちは、勝利の美酒を求めて歩きだす――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年03月17日


挿絵イラスト