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Kill me, you kindly

#サクラミラージュ #木村鈴彦の記録簿 #かごのことり

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#サクラミラージュ
#木村鈴彦の記録簿
#かごのことり


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●優しさで、殺して
「ごほっ、ごほっ」
 死の気配がする咳。息を吐くごとに魂が抜け落ちてしまいそう。

 ――苦しい……私、もうすぐ死ぬのね。

 もっとも……『私』は既にこの世には『いない』人間だけれども。

 誰も『私』を見ない。
 世話をしに来るメイドですら、私を『私』としてではなく、他人の目に触れさせてはならぬ『忌み者』として扱う。
 私は……水口の家にとって存在してはいけない者なのだ。

 ――私は……生きているのかしら?

 誰とも話すことなく。誰にも見られることなく。
 このまま死んだとして……私が『此処に居た』という何かは残るのか?

 きっと、何も残らない。この世に何も残すことのないまま、誰とも繋がりの無いまま、私は。

 ――いやよ。そんなのは絶対にいや。

 私は『生きている』のだから。どうせ死ぬのなら。

 部屋の片隅を見る。そこに佇むのは、とても不安定なこの世にあらざるもの。うっすらとした影のような存在。
 これが何かはわからない。きっと良いモノではないのだろう。

 ……でも。

 今、この世で唯一、私に反応する存在なのだ。
 まったく動かない両足を引きずって、彼女の側まで行く。針で指先を突いて、小さな血溜まりを作った後、彼女の口に指を突っ込む。
 彼女の喉が、こくん、と血を飲みこんだ。

 この行為に何の意味があるのか、それはわからない。
 ただ……少しずつ、その影が濃くなっている。このまま行けば……いつか『目覚める』、そんな気がする。
 その頬を愛おしく撫でながら、私は囁く。

「貴女が目覚めたら……真っ先に私を殺してね?」

 私を殺すという行為は。私が『生きている』から成し得るものだ。
 彼女に『殺された』なら、私は『この世に在った』ことになる。

 ――どうせ死ぬのなら……誰かに殺されたい。

 水口・琴里(みなぐち・ことり)はその想いを籠めた眼差しで、目の前の存在――影朧を愛おしく見つめる。

●予知は時として、残酷に
「正直なところ……水口・琴里が死にかけているのは事実っすよ」
 鈴木・レミ(ハイカラインフォメーション・f22429)が目を伏せがちにして、話を続ける。
 先の予知は、サクラミラージュに潜む影朧を炙り出すものであった。ただし、今、その影朧は。
「自身の倒錯的な目的のために、琴里が匿っているっす」
 不安定なオブリビオンがゆえに、ただちに危険とは限らないのが影朧。しかし、彼らもオブリビオンであることには違いない。放置すれば『世界の崩壊』に繋がるのは必至だ。「琴里の影響か、影朧がじきに活動を開始する……これもまた事実っす」
 そうなれば、琴里は殺され、その後、もっと多くの人々も巻き込んで、たくさんの犠牲者が出てしまう。
「完全に目覚める前に。影朧を倒してきてほしいっす」
 それが今回の、レミからの依頼である。

 問題は1つ。
 琴里と影朧がどこにいるのか、はっきりした場所がわからない。

 そこでヒントになるのは琴里の口から出た『水口の家』という言葉だ。
「調べたところ、水口家っていうのは、サクミラのとある街に続いている華族の家系っすね」
 公式の記録によると、数年前に一人娘が『亡くなっている』。
 もし、それが琴里なら? その記録が表向きの偽装だとしたら?
「予知の内容からするに、実際には、人目触れず監禁されているってことになるっすね」
 ならば、その監禁場所に辿り着けば……そこに影朧がいる。

「唯一の突破口は、琴里の世話をしているメイドっす」
 監禁を隠すためか、様々なフェイクを重ねて。そして追跡を前提とした行動で、琴里の場所が簡単にはわからないようにしているようだ。
「その上で、迷宮横丁って入り組んだ路地裏を通るんで、また面倒なんすけど」
 常人であるなら簡単に撒かれるか、追跡を悟られるだろう。
 しかし、猟兵であるなら、追跡はそう難しくは無いはずだ。技能やユーベルコードを使えば、より効果的に行動できるだろう。
「琴里のいる場所まで辿り着いたら、後は影朧を倒すだけっすよ!」
 影朧は猟兵の影響も受ける。相対すれば、不完全ながら活動を開始して、戦闘に入るだろう。
「琴里は両足が動かないこともあって、戦闘に介入してくることはないっす」
 念のため、影朧を外まで誘き出せば、完全に琴里の安全を確保できるだろう。
 もちろん、それは『戦闘に巻き込まれない』という安全である。

●それは依頼とは関係なく、されど
 影朧を退治すれば、今回の依頼は完了だ。
 強いて言うなら、琴里をどうするか、という問題が残っているくらいだろう。
「琴里をどうするかは皆さんにお任せするっすよ」
 そのまま放置。そこから連れ出す。あるいは、ユーベルコヲド使いの超弩級戦力という立場を利用して、何か画策するのも大きな問題にはならないだろう……そう、殺してしまっても。
「ま、そこはおまけみたいなものっす。影朧退治、しっかりお願いするっすね」
 そう言ってレミは猟兵たちを送り出す。

 影朧退治という猟兵の仕事に添えられた、琴里とどう向き合うかという物語。これをどうするかは……あなた次第。


るちる
 こんにちはとかこんばんは、るちるです。やりたいことやるのが一番よね、ってことでまたまたサクミラにて、事件です。
 どんな物語が綴られるかは、参加された皆様次第。

 シナリオの補足です。
 当シナリオは、日常、冒険、ボス戦の3章構成。オープニングにあった、メイドの追跡は2章。影朧戦が3章となります。

 1章は作戦開始までの準備または待機時間。2章の舞台となる『迷宮横丁』の入口にある神社にて、願掛けなどしてお過ごしください。とってもご利益があると、ユーベルコヲド使いの中で噂になっております。信じるか信じないかはあなた次第。
 境内の中に休憩所があります。お茶くらいしかありませんが、のんびり過ごすことができます。本来、願掛けの内容は他言しないのが普通ですが、ま、ちょっとくらいは同行者に零しても大丈夫じゃないでしょうか。

 2章以降の状況は改めて、追記の序幕にて。

 それではご参加をお待ちしています。
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第1章 日常 『猟兵達の願い』

POW   :    健康などを願う

SPD   :    恋愛などを願う

WIZ   :    平和などを願う

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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
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 苦戦🔵🔴🔴
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👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●グリモア猟兵の追加情報・調査報告1
 公的記録による水口・琴里の死亡原因は、流行病にかかったこととされている。彼女だけではなく、両親や水口家に雇われていた執事・メイドも含め、少なくない人数が感染したようだが、その中で『亡くなった』のは琴里のみ。
 当時を知る記者などに聞き込みをした結果、琴里は感染による毒素か、あるいは別の要因か、両足が全く動かなくなった、との噂が出回っていたらしい。その後、死亡となり、琴里に関する情報はぱったりと無くなった。
 『人の口に戸は立てられぬ』と言われる世の中で、『そうなった』ということは。察した者は調査や取材をやめ。察せられなかった者はいつの間にか消えていた。
「当時、水口は没落した家を復権するための一大事業を起こしていたんだ」
 そう語る記者の声はとても小さい。
 水口家の一大事業は成功し、いまやこの街の名士として盛り返すことができた。その最中にあった悲しい出来事は、成功という輝かしい偉業で完全に覆い隠されている、ようだ。
 まるで……『水口家の成功』に対する『物忌み』とでも言わんばかりに。
鳳凰院・ひりょ
猟兵になって初めての仕事。
いよいよ猟兵として活動していくのかというワクワク感と共に緊張もしている。「果たして自分にちゃんと任務を果たせるのだろうか」と。

こんな時くらいは願掛けもいいのかな、と思い神社へ立ち寄る。
「俺が猟兵として活動する事で、少しでも世の中が平和になりますように」
俺は周りの人に支えられてこれまで生きて来た。
その恩をこうして猟兵として誰かを助けたりすることで返していけたら、と思う。

不安もあるけど、まずは一歩。歩んでみよう。




 迷宮横丁の入り口を守るように、あるいは迷宮に蓋をするように。その神社は街中に溶け込んで、人の営みを包み込む。

 鳥居をくぐり、境内に足を踏み入れたのは鳳凰院・ひりょ(人間の聖者・f27864)。猟兵となってから日は浅く。共に在る仲間は増えてきたけれども、本格的な『猟兵の仕事』はこれが初めてといっても過言ではないかもしれない。
「…………」
 無言で砂利道を歩くひりょ。日が暮れようとする時間帯のせいか、人影は少なく、話し声も無く。砂利を踏みしめる音が静かに響く。

 グリモア猟兵に転送され、サクラミラージュの世界を踏みしめて。
(いよいよ猟兵として活動していくのか)
 その時、抱いたワクワク感、と……緊張。

 ――果たして自分にちゃんと任務を果たせるのだろうか。

 そんな想いを抱きながら、この神社の前まで来たら、思わず足がそちらを向いた。
(こんな時くらいは願掛けもいいのかな)
 これも縁、というものかもしれない。

 拝殿まで赴き、佇まいを整えてから、本坪鈴を鳴らす。からん、からんと音が響き、ひりょは手を合わせて、想いを紡ぐ。
「俺が猟兵として活動する事で、少しでも世の中が平和になりますように」
 本来、願掛けとはただのお願いでは無く、それを神様に見守ってほしい、導いてほしいと行うものだ。そういう意味で、ひりょの行ったものは正しく願掛けであった。
(俺は周りの人に支えられてこれまで生きて来た)
 それは猟兵になる前も、そしておそらくこれからも。彼の天涯孤独の身を支えてきたのはそういう縁の力だったのだろう。
 だからこそ。
(その恩をこうして猟兵として誰かを助けたりすることで返していけたら)
 ひりょの抱く想いは、信条となって彼を動かす。
(不安もあるけど……まずは一歩)
 そう。まずは……歩んでみよう。次に何が来ようとも、時には空回りしようとも。
 踵を返して拝殿を後にするひりょ。鳥居をくぐって境内を出る、その一歩がどこに続くかは彼の想いだけが導く先。

大成功 🔵​🔵​🔵​

星群・ヒカル
【SPD】
ほう、ここは神社のようだな、少し寄ってみよう
いかにもな雰囲気じゃねぇか、風情ある洒落たところだ
えっと、この鈴を鳴らしてお祈りすればいいんだな

(現在進行形で絶賛片思い中なわけだが
恋愛成就を願うのは、どうにも気恥ずかしくて性に合わねぇな
おれの力だけでなんとかしたいって思いもあるし
とりあえず今は……その子の健康を祈っておこう)

そういえば、今日依頼されたその、コトリって子も病気なんだっけか
随分とひどい仕打ちをする親がいるもんだ、全く
できればそこから助け出して連れてってあげたいってところなんだが、それは彼女の意思次第だろうな

ん?あの背姿は最近戦艦(同旅団)に来たひりょか?
背中を追いかけてみよう




 グリモアベースから転送によってサクラミラージュに降り立った星群・ヒカル(超宇宙番長・f01648)はグリモア猟兵に指示された場所まで赴き、この後メイドたちを追跡する舞台となる迷宮横丁を確認する。
 そしてそのすぐ側にあったのは。
「ほう、ここは神社のようだな。少し寄ってみよう」
 興味にくすぐられて、ヒカルは鳥居をくぐって中へ。
(いかにもな雰囲気じゃねぇか、風情ある洒落たところだ)
 境内の中を玉砂利を踏みしめて歩きながら。視界に飛び込んでくる光景は、静かに佇みながらその存在感を余すことなくヒカルに伝えてくる。

 拝殿まで赴いて、順番を待つこと少しばかり。
「えっと、この鈴を鳴らしてお祈りすればいいんだな」
 本坪鈴をからんからんと鳴らして、手を合わせて……さて、何をお願いすべきか。
 脳裏にふっとよぎっていったのは、頼もしいけどうるさい快活なあの子。
「いやいやいやいや」
 慌てて小さく首を振るヒカル。確かに、確かに『ソレ』はアリと言っちゃアリだ。定番だし。しかし、彼も番長である。『ソレ』を願うのはどうにも気恥ずかしくて性に合わない。
 それに、だ。
(おれの力だけでなんとかしたいって思いもあるし)
 その想いが真摯であればあるほど。きっと彼は自分の手で成したい、とそう思うのだろう。
(とりあえず今は……その子の健康を祈っておこう)
 何とか着地点を発見したヒカルは、手を合わせ直し、目を瞑ってお祈りする。

 ――その子が健康でありますように。

 お祈りを終えて、踵を返すヒカル。せっかくだ、と境内の中を散策しながら思い出すのは先に祈った健康繋がりか。
(そういえば、今日依頼されたその、コトリって子も病気なんだっけか)
 事前に聞いた琴里の話を思い返すヒカル。
(随分とひどい仕打ちをする親がいるもんだ、全く)
 あの話を聞いてどう思うかは人それぞれとはいえ。ヒカルにはそうとしか思えない状況であった。
 それゆえに思考もまたその先を想像する。
(できればそこから助け出して連れてってあげたいってところなんだが)
 彼女に声は届くだろうか。彼女が応じるだろうか。こればかりは彼女の意思を確かめるしかあるまい。
(ま、行ってみるしかないなッ)
 そう結論付けて、ヒカルは鳥居の方へ足を向ける。その時、ちょうど鳥居の辺りを歩く人影を見つけて。
(ん? あの背姿は……最近戦艦に来たひりょか?)
 どうも同じ旅団に所属する見知った相手らしい。予期せず見かけた知人の背中を追いかけるようにして、ヒカルもまた境内の外へ駆けていくのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アイ・リスパー
「旅団員の新人猟兵が任務に向かったと聞いて、心配になって様子を見に来てしまいました……
ですが、私が表立って任務に加わるのも、なんだか過保護っぽいですよね……
ならば、ここはこれです!」

【ビルドロボット】を使用して周囲にある無機物をパワードスーツに変形。それに乗り込んで行動しましょう!

『私の名は通りすがりの謎のウォーマシン、チューリングXだ。
なに、偶然、この依頼を受けてね。せっかくだから一緒させてくれないか?』

ふむふむ、まずは願掛けからですか。
ここは個人的な願いを……
って、いけませんっ、新人さんがすごく立派な願いをっ!

『ああ、私の願いも世界平和なんだ。
私たち猟兵の活動が人々の役に立つといいな』


リリ・アヌーン
猟兵として平和をキープするにも恋愛するにも、
戦ったり働くにしたってまずは心身の健康が大事よね!

グリモア猟兵ちゃんの話だと
お家や世間体の為に水口家の琴里ちゃんの身に何かあったようね
まあ何かあったにせよ一人娘を亡くなった事にして
監禁するだなんてロクなもんじゃないわ

そして迷宮横丁っていう入り組んだ路地裏かぁ…
私方向音痴なのよね…まあいっか!
道は全部繋がってるし何とかなるでしょ♪

神社で健康を願いましょう
作法は…周りの仲間を見て真似たり教えてもらうわね
休憩所でお茶を飲み景色を眺め
「神社って確か…町の要とか、いわくつきの場所に
あるんじゃなかったかしら?」
と推理

ひりょちゃんや猟兵仲間ともお話してみましょう


天星・雲雀
「琴里、コトリバコ、足を?」

「神社、処刑場、神を御迎え?」

「サクラサク、ミライ、コイユメ?」

いつ何処で誰に見られてるか、わからないので【技能:追跡】で気配を消してます。

「生きてないなら殺せない。生きているなら殺せる」

おみくじを引きつつ、猟団の人を探します。

さっきから不穏な発言をつぶやいているので、一般人は近づいてこないでしょう。小柄な自分でも、動き回れます。

猟団の人を見かけたら、合流してみるのも良いかもしれません。

「水口家は、口封じで幾人か消していた様ですが、琴里さんは消せない。そういう事情が有る物と考えても良いかもしれません」

お賽銭をチャリーン。

「多くの出会いが、良縁でありますように・・・」



●とある旅団の縁つなぎ
 迷宮横丁の入り口を守るように、あるいは迷宮に蓋をするように。その神社は在って。
「んー……」
 その神社の鳥居の前で、口元に人差し指を当てながら立っていたのはリリ・アヌーン(ナイトメア・リリー・f27568)である。
「迷宮横丁かぁ……」
 リリの視線は迷宮横丁と言われる場所に。簡単に言えば入り組んだ路地裏なのだが……ただ、リリにとって問題なのは入り組んだ迷路状の形態では無くて。
「私方向音痴なのよね……」
 まさかの迷宮耐性無しであった。
「まあいっか! 道は全部繋がってるし何とかなるでしょ♪」
 そんなわけで気を取り直して、神社の方へ向かうリリ。

 鳥居をくぐって境内に足を踏み入れて。
「まずは心身の健康が大事よね!」
 猟兵として平和をキープするにも、恋愛するにも、戦ったり働くにしても。全ての基本はそこといっても過言ではない。
 宣言したところで、テンション高く、しゃりしゃりと玉砂利の上を歩くリリ。

 参道とも言える道をまっすぐ拝殿へ……向かう途中にテントがあった。何やら気配を感じる。それに誘われるように中を覗くリリ。
「生きてないなら殺せない。生きているなら殺せる」
「あらあら」
 そこにいたのは見知った顔。特設テントの中でおみくじをひいていたのは天星・雲雀(妖狐のシャーマン・f27361)であった。何やら怪しげというか近寄りがたい雰囲気を纏っているが、リリの声にくるりと振り向く。一瞬、顔を合わせて、また視線を戻す雲雀。
「……?」
 リリが声をかけようとする……前に、雲雀がリリの前に立っていた。これはリリを待っていたのだろうか。

 合流した2人は再び参道をまっすぐ拝殿へ……行きたかったのだが、その前にざっと現れる影、っていうかシルバーな何か。
 それはよく見るとパワードスーツ。
『ではない。私の名は通りすがりの謎のウォーマシン、チューリングXだ』
 めっちゃ合成っぽい機械音声なんですが。それはさておき、チューリングXが話を続ける。
『なに、偶然、この依頼を受けてね。せっかくだから一緒させてくれないか?』
 有無を言わさず合流するチューリングX。こいつ、いったい何リスパーなんだ?

 そんなわけで3人組となったリリ、雲雀、チューリングX。

 彼女らは皆、口には出していないけれども、ここを訪れた契機はおそらく一緒。
 それは……3人の視線の先を歩いている、アイ・リスパー(電脳の天使・f07909)が旅団長を務める旅団【電脳の箱庭】の新人さんなのである。

●三者三様の神社参り
 アイ・リスパー……じゃなかった、チューリングXは、知人伝手でこの依頼に旅団員の新人猟兵が参加していることを知った。そしてすぐさまこのサクラミラージュへと赴いたのである。
「心配になって様子を見に来てしまいました……ですが、私が表立って任務に加わるのも、なんだか過保護っぽいですよね……」
 なんか初めてのお使いに行く子供を見守るお母さんの気分である。年齢的には新人猟兵の方が上なんだけれども。
 さておき、旅団長の責任(?)が彼女を突き動かす。
「ならば、ここはこれです!」
 と神社の付近で【ビルドロボット】を使用する。周囲にある無機物が白銀のパワードスーツに変形し、それに乗り込むアイ。
『これで行動する、うむ完璧』
 声や口調もばっちり変声機で変えて。彼女はここにチューリングXとして降臨したのである。
 以後、アイさんはいません。

 そんなチューリングXに続いて、境内に足を踏み入れたのは雲雀であった。
 ここに訪れたのは確かに新人猟兵の話が出た後だが、雲雀の動機はちょっと不明。だけど、袖振り合うも他生の縁とはよく言ったもの。旅団員を見て見ぬ振りをする予定はないようだ。

 チューリングXを追いかける……風では無く、雲雀は雲雀で参道を歩く。ただ、その足取りはどこかしら不安定で。
「琴里、コトリバコ、足を?」
 歩きながら彼女の口が言葉を紡ぐ。しかしそれは短文過ぎて。
「神社、処刑場、神を御迎え?」
 言葉には意味があるようで、しかし捉えどころがなく。
「サクラサク、ミライ、コイユメ?」
 そこに在るのが見て取れるのに、彼女の気配は感じ取れないほどに存在感が無かった。

 それは雲雀の、水口家に対する対策。『いつ何処で誰に見られてるか、わからない』となれば、行動していることすら悟られるわけにはいかない。雲雀の持つ『追跡』の技能の応用。それであれば気配を消すこともそう難しいことでは無いし。
(さっきから不穏な発言をつぶやいているので、一般人は近づいてこないでしょう)
 その目的は、小柄な自分でも、他人に捕捉されることなく、動き回れるようにすること。隠密性があがれば、行動もしやすいはずだ。
 後考えるとするならば……誰かを隠れ蓑にすること。その影で動く。例えば見知った顔で、さらに言うなら目立つほうがいい。テンション高いとか物理的に目立つとか。そんな仲間が現れたなら、合流するとしよう。
 視界に入ってきたおみくじ所を見て、雲雀はその機会を少し探ることにする。

 そしてリリがこの地を訪れたのは、新人猟兵の助力のためである。少しばかりであっても、その想いで。

 三者三様の思惑。されど、それは自然な流れで以て、ひとつの糸のように撚り合っていったのだ。

●願うは……。
 そんな経緯を辿り、新人猟兵さんを見守る図となった3人。

 何故さっさと合流しないのかというと、チューリングXが必死で止めたからである。
『よく考えるんだ。まだ事件は始まってもいないのだし、今、合流することは彼のためにならない』
 我々の出番は、彼が真に困った時、とチューリングXの主張でした。

 なお、見つかった場合のことは考慮されていない。

 そんなわけでただ今、新人猟兵さんは拝殿にてお祈りの最中。その様子を拝殿の左右にある、御守りなどを置いている社務所にて窺う3人。
 遠目で様子を見守るリリ、雲雀に対して、チューリングXにはセンサー類がある。
(ふむふむ、まずは願掛けからですか)
 効果範囲最大、回収ボイス限定。遠くの声ってか新人猟兵の声だけを拾い上げる万能感なチューリングX。しかしその耳に届いてきたのは、あまりにも清らかなお願いであった。
(新人さんがすごく立派な願いをっ!?)
 これはいけない、とっても個人的な願いをしようとしていたのに!!
 なんか途轍もなく申し訳ない気になってくるチューリングXの中の人。

 とかなんとか悩んでいる内に、新人さんが踵を返して参道を戻っていく。
「アイ……じゃない、チューリングXちゃん。どうするの?」
「……」
 チューリングXに問いかけるリリと、あくまで気配を殺している雲雀。
『今、まともに追いかけるとバレる可能性もある。我々もお参りをしよう』
 そんなわけで、3人も拝殿へと赴くのであった。

 さて、何をお願いしたものか。

 煩悩と立場の狭間で苦しむ(?)チューリングX。その時である。

 チャリーン。

 お賽銭が賽銭箱に落ちていく音がする。それは雲雀がお賽銭を投げた音であった。
「こうするのね?」
 雲雀に倣ってリリもお賽銭をチャリーンと。こういう作法は真似たり教わるに限る。
 その、清涼(?)な音にチューリングXも我(?)に返った。
『ああ、私の願いも世界平和なんだ。私たち猟兵の活動が人々の役に立つといいな』
「多くの出会いが、良縁でありますように……」
「健康を願いましょう」
 しばし、祈りの静かな時間が過ぎ……。

 そして3人は参道を戻っていく。先に進んだ旅団の新星を追いかけねば。
 道すがら、リリがふと言葉にするのは今回の事件の発端とも言える、琴里のこと。
「グリモア猟兵ちゃんの話だと……お家や世間体の為に琴里ちゃんの身に何かあったようね」
「水口家は、口封じで幾人か消していた様ですが、琴里さんは消せない。そういう事情が有る物と考えても良いかもしれません」
 リリの言葉に雲雀も疑念として抱いていた言葉を発する。その言葉に頷きを返しつつ、リリはちょっとご立腹。
「まあ何かあったにせよ、一人娘を亡くなった事にして監禁するだなんてロクなもんじゃないわ」
『状況を鑑みるにそう判断するのが妥当だが、まだ情報が少ない』
 断定しない方がいいだろう、とはチューリングXの分析である。思い込みは判断を誤らせる。どんなに不可解であろうとも、目の前に現れた事象が事実であるのだから。

 事実。その言葉に反応したのはまたもやリリであった。
「そういえば。神社って確か……町の要とか、いわくつきの場所にあるんじゃなかったかしら?」
 いわくつき。その言葉に今度は雲雀とチューリングXが顔を見合わせる。
 いやいや、霊とか祟りとかそんな気配感じないし、一般人も普通ににこやかにお参りしているし。ここはたぶん自然発生的に出来上がった街のスポット……のはず?
 そうすると、何故自然発生したのかという問題が出てくるけど。
 リリの視線が神社の外にあるモノへ向き、それを追って雲雀の視線もそちらを見て、そしてチューリングXの目がめっちゃ細くなる。

 きっと……迷宮横丁が面倒なだけでしょう。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

文月・ネコ吉
…神様か
俺はまあ、そんなに信心深い方じゃない
祈ったところで都合よく助けてくれる訳じゃなし
結局のところ未来は自分で切り開くしかないからだ

尤も、神が居るか居ないかを問うなら居ないとは言うまい
神と呼ばれる存在なら猟兵にだってごろごろ居るしな
だがその分、万能じゃない事も知っている

それでもこうして参拝するのは単なる気まぐれだ
賽銭も、俺なんかが境内に入る事への迷惑料
鬱陶しい独り言を聞き流してくれりゃそれでいい
それで…

いや、一つだけ願ってもいいだろうか
もし鳥籠の少女が外の世界を望むなら
良き仲間達との縁を結び
その羽ばたきを見守ってやって欲しい
そんな未来の為に
俺は俺の役割を

手順に従い少女の為のお守りを授かり懐へ




 最後に神社を訪れたのは文月・ネコ吉(ある雨の日の黒猫探偵・f04756)であった。その様子はサクラミラージュという世界にあってもいつも通り、普段通りのネコ吉で。

(……神様か)

 鳥居を見上げるネコ吉。ケットシーの身に人間でも大きい鳥居はさらに大きく。まあ他の猫(というか盟友)なら鳥居を駆け上がる罰当たりなこともしそうだが、ネコ吉に限ってそんなことはない。
 とはいえ。
(俺はまあ、そんなに信心深い方じゃない)
 視線を戻して参道をまっすぐ拝殿へ。他の者ならしゃりしゃりと音を立てる玉砂利も、元暗殺者であったネコ吉にかかれば、音を立てずに歩くことなど造作も無く。
(祈ったところで都合よく助けてくれる訳じゃなし)
 その言葉はあっさりとしているようでどこか重くて。

 ――結局のところ未来は自分で切り開くしかないからだ。

 それはネコ吉がこれまでに歩んできた道でもあり、彼の生き様でもあるのだろう。
 尤も。
(神が居るか居ないかを問うなら居ないとは言うまい)
 ほら、神と呼ばれる存在なら猟兵にだってごろごろ居るし。そんな存在を知ってるがゆえに、万能じゃないことも知っている。

 拝殿まで辿り着いたネコ吉はお賽銭をぽーんと。
(それでもこうして参拝するのは単なる気まぐれだ)
 お賽銭すらも自分なんかが境内に入ることへの迷惑料だという。
(鬱陶しい独り言を聞き流してくれりゃそれでいい)
 本坪鈴から繋がる紐を手にして。

「……いや」

 そこで。境内に入って、初めてネコ吉が声を零す。そして、からんからんと鈴を鳴らして。
(一つだけ願ってもいいだろうか)
 肉球をぽむっと合わせながらネコ吉は頭の中で、想いを綴る。

 ――もし鳥籠の少女が外の世界を望むなら。

(良き仲間達との縁を結び、その羽ばたきを見守ってやって欲しい)
 その未来がどうなるかは、すべてこれからの、猟兵たちの活躍次第、ともいえる。ゆえに。
(そんな未来の為に。俺は俺の役割を)
 自身の役目を神に告げて。

 参拝の手順に従って、社務所でお守りを授かるネコ吉。
 このお守りは、少女の為。じっ、と見つめた後、大切に懐に入れて。

 ネコ吉もまた神社を後にするのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 冒険 『迷宮横丁』

POW   :    曲がるから迷うのだ!壁を壊してでも直進せよ

SPD   :    止まっている暇はない!進み続ければいつか必ず出口に辿り着くはずだ

WIZ   :    記録せよ!地図を作って迷宮の全景を暴くのだ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●グリモア猟兵の追加情報・調査報告2
 事業で成功した水口家。立て直したお家の次の心配は『跡継ぎ』である。しかし、おめでたいことにこの度、跡継ぎである長男が産まれたとのこと。この子が成長して家を継いでくれれば、水口の家は安泰と言うわけだ。
 そのため、今の水口家はその跡継ぎである赤ん坊の世話と安全に全力を注いでいる。まあ事業がひっくり返らない程度には、仕事にも注力している。
 全ての労力が事業と『家の中のこと』に注がれている現在。『家の外の秘密』に対する注力はこれまでにないくらい緩んでいる。
 そう、ひた隠しにしてきた『彼女の存在』も今やバレたとて。『病弱で足が不自由で覇気が無くて。ともすると婿に家をいいようにされる可能性』と『跡継ぎが完全にいなくなる可能性』の両方を排除するため、と言えば。
 今のこのおめでたい雰囲気でどうにか押し流せる、というのが水口家の見解らしい。

●迷宮横丁にて
 どこまでも続くと思しき路地裏。曲がれど進めど果て無く続く、この迷宮のような街の一角。
 『呪われている』『ここは人が住んではいけない土地だ』。人々は口々にそう謳ったが、そのような謂われは無いようだ。ただただ、人の発展に合わせて乱立され、不便であるから放棄された。
 人は既に住んでおらず、立ち並ぶ家々に入り口や窓の悉くは封鎖され、建物がそこに在るのみ。
 しかし、この一画に琴里のいる場所がある。

 琴里の元へ赴くべく、道先案内人であるメイドを待つ猟兵たち。思い思いの場所で身を潜めて、迷宮横丁の前に現れたのは3人のメイドであった。
 グリモア猟兵の話によると、常に数人のメイドがこの迷宮横丁に訪れる。地図などもちろん無い。それどころか道を覚えた頃に交代を申し渡され、まるで『常に迷う』ことを要求されているようだ。
 仮に。辿り着かなくても水口の家としては問題ないのだろう。辿り着かなかったメイドが悪いのだから。

 3人の内、本来のメイドは1人。もう2人は護衛にして、追跡者を撒く担当だ。スリーマンセル……と見せかけて、迷宮の中では別行動を行う。
 ひとりが迷いながら琴里の元へ向かいつつ、ひとつが追跡者の前に立ち塞がり、もうひとりが罠を仕掛けて回る。立ち塞がるといっても一般人の格闘家レベルだし、罠も足止めやペイントトラップなどいずれも殺傷力の無いものだ。

 迷宮内の追跡をメインに、妨害を排除して、琴里の元へ。
 それが猟兵たちに課せられたミッションである。

※POW、SPD、WIZの選択肢(ユーベルコードの使用は無くてもOK)を追跡のメイン行動として、メイドたちの妨害を回避してください。
メイドたちを無効化すれば、次の章で琴里と話す時の妨害が無くなります。
鳳凰院・ひりょ
WIZ

影の追跡者の召喚でメイドを可能な限り追跡
影と共有した情報を基に追跡出来た場所までのルートを割り出し、少しでも迷宮の探索時間を減らす

「俺の影、追跡頼むね」
影を送り出しこの後の事を考える
迷宮前に集ってくれた猟兵は見知った顔も多かった
そのおかげで緊張もだいぶ薄れた、皆のおかげだ

皆のおかげでしっかり今後の事も考えられた
琴里さんをどうするか
俺は彼女がもし諦めの気持ちから死を望んでいるのであれば、その諦めの気持ちを払拭してあげたい
癒しの力をもって猟兵になった事、そして数ある任務の中から今回のこの案件に関わった事が
偶然なのか必然なのか、わからないけれど
彼女が生きたいと望むのなら俺はそれに全力で応えたい




 メイドたちが迷宮横丁に消えた後。鳳凰院・ひりょ(人間の聖者・f27864)はすぐさま行動に移った。もちろん、メイドにのっけから気取られるようなことはしない。
「俺の影、追跡頼むね」
 【影の追跡者の召喚】。ひりょの影から生まれた影の追跡者が、召喚主の言葉を受けて、路地裏の闇にすっと溶ける。
(これでメイドを可能な限り追跡する……!)
 まずはメイドを捕捉……する前に、既に迷宮横丁が複雑であった。
「むぅ……」
 とりあえずはルート取りが必要だろうか。あるいは。
(合流も考えないといけないかも)
 迷宮横丁に飛び込む前に、見かけた『人々』を思い出して、ひりょは今後の対策を打つ。

 ひりょが隠れていたのは、迷宮横丁の入り口を入った付近。メイドが通り過ぎるのを息を殺して待っていたその時の話。
 迷宮横丁の外に、同じように隠れている人々に偶然気付く。それは明らかに猟兵であった。なんか挙動不審なロボっぽいのもいたし。
 この事件に関してはひりょが一番最初に転送されてきたのだ。その時の同行者は無く、ただこの仕事に取り掛かる後から来た猟兵たちに、見知った顔がいるのを知った時。
(緊張もだいぶ薄れた、な)
 それは安心感か、信頼感か。皆のおかげだとひりょは思う。
 メイドが訪れたタイミングが悪く、合流できないままに追跡が始まってしまったが、この後、望めば合流も容易いはずだ。

 ゆっくりと安全なルートを進みながら、ひりょは手元の地図に目を落とす。ここまでの情報とルートを纏めて、最適なルートを導き出しているのだ。
 影の追跡者がメイドを捉えた。残念ながら、道を塞いでいるメイドを。まずはこれをかわす。
(このルートは外すべき。……となると)
 影の追跡者に回り道を調べさせる。時間は少しかかるが、影の追跡者との間隔共有があれば、問題なく、辿り着けるはずだ。

 そして辿り着いたならば、影朧を倒し。
(琴里さんをどうするか)
 それはグリモア猟兵に依頼された影朧退治の本筋ではないけれど。
 皆のおかげで緊張がほぐれたせいか、思考に余力が出来た。考えるべきことを考える余力が。

 ――もし、彼女が諦めの気持ちから死を望んでいるのであれば。

(俺はその諦めの気持ちを払拭してあげたい)
 その想いにひりょは自分の手を見る。
 癒しの力をもって猟兵になったこと。そして数ある任務の中からこの案件に関わったこと。
(これが偶然なのか必然なのか、わからないけれど……)
 しかしこれが縁だというのなら。そして。

 ――彼女が生きたいと望むのなら。

(俺はそれに全力で応えたい)
 その決意を胸に、ひりょは迷宮横丁を、メイドを追跡しながら進んでいく。
 まだ『出口』は見えないけれども、それはきっと見つかる。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リリ・アヌーン
アドリブ連携歓迎

UC「キャット&シャドウ」で五感を共有した黒猫を召喚
私は適当な建物の屋上にヒョイと登ってダッシュ&ジャンプ
装備品のパラソルで空中浮遊して空から偵察、情報収集
ネコちゃんは地上から2手に分かれて追跡よ

落ちそうになったらその都度フック付きワイヤーでサーカスみたいな動きで
体勢を立て直して再びジャンプしてフワフワするわ
空飛ぶアラサーエルフ、目立ちまくりね!
目立つ事で所属仲間の時間稼ぎ、黒猫への注意力を下げるわ

迷宮横丁を空と地上から偵察して頭の中に大雑把な地図を作るわよ~
済ませたらメイドを探して空からパラソル畳んで急降下
重量攻撃の奇襲ヒップアタックよ
さあ、琴里ちゃんの元へ急ぎましょ♪


天星・雲雀
「予知では、迷宮横丁の住人はすでに居ない。現在住んでいるのは、琴里さん一人だけらしいですね」と、言うことは建物を壊しながら進んでも。

【行動】UC光の粒子を凝縮した操り糸で、素早く静かに壁を壊して建物の中を移動しながら、メイドさんを【追跡】していきます。

「妨害もトラップも家の中には仕掛けられていないはずです」

「チューリングXさん!通れるだけの直進ルートを作りました、先行してください!自分も後から、追い付きます!」

「最悪メイドさんを見失っても、琴里さんの元にたどり着ければOKです」

メイドさん3人に、猟団の人全員が巻かれることは無いでしょう。「メイドさんを探すより猟兵さんを探すほうが楽ですね・・・」


アイ・リスパー
『なるほど、水口家の警戒が緩んでいる今が、琴里さん……いや、琴里に接触するチャンスというわけだな』

【ビルドロボット】でパワードスーツを纏った『チューリングX』として、メイドさんたちを追跡しましょう。

『人が住んでいないというのであれば、仲間が作ってくれたルートを通って家を突っ切るのがベストだな!』

迷宮だろうと直進してしまえば問題はない!(脳筋感
壁を破壊しながら迷宮を突破します。

『邪魔をするメイドには、有給休暇を取っていてもらおうか』

メイドが立ちふさがってきたら、『チューリングX』の重量級パンチで、相手を気絶させる程度に手加減した一撃で昏倒させます。

『琴里……直接会って、その真意を問わねばな』




 メイドたちが迷宮横丁に消えていき、それを新人猟兵くんが追いかけて行ったのを確認してから。
 リリ・アヌーン(ナイトメア・リリー・f27568)、天星・雲雀(妖狐のシャーマン・f27361)、アイ・リスパー(電脳の天使・f07909)……じゃなかった、チューリングX(※)が、身を潜めていた物陰から姿を現わす。

※アイは【ビルドロボット】でパワードスーツを作って、それを纏った『チューリングX』として、行動しているぞ!

「一足、お先に行くわ」
 【キャット&シャドウ】で黒猫型の影の追跡者を呼び出したリリは迷宮横丁へと足を踏み入れ、素早く近くの建物の屋根へと飛び上がる。そして屋根から屋根へとヒョイと登っていき、一番高い建物の屋根から。ダッシュ&ジャンプで空中に飛び上がる。
 そして手にしていたオシャレなフラワー柄のパラソルを広げ、風を受け止めての空中浮遊で空から偵察、情報収集を行う。
(ネコちゃんは地上から。2手に分かれて追跡よ)


 少し遅れて雲雀とチューリングX。
『なるほど、水口家の警戒が緩んでいる今が、琴里さん……いや、琴里に接触するチャンスというわけだな』
 チューリングXがグリモアベースを出る際に記録していたデータを再度確認する。
『よし、私たちもメイドを追跡しよう』
 チューリングXの言葉に、雲雀の視線が迷宮横丁へ向く。
「迷宮横丁の住人はすでに居ない。現在住んでいるのは、琴里さん一人だけらしいですね」
 視線をチューリングXに戻す雲雀。視線(?)が合う。
「と、言うことは建物を壊しながら進んでも」
『うむ。迷宮だろうと直進してしまえば問題はない!』
 図らずも意見が一致する二人でした。

 そんなわけで、迷宮横丁の入り口からちょい横にずれた位置に立つ雲雀。手に握っているのは見えなくともそこに確実に『在る』ユーベルコード製【光の粒子を凝縮した操り糸】。呼吸を整え、一気にそれを振るう雲雀。素早く静かに、壁を破壊されていく。
『人が住んでいないというのであれば、家の中を突っ切るのがベストだな!』
「妨害もトラップも家の中には仕掛けられていないはずです」
 というより家の中に通路を作り出すがごとく、くり抜かれていく建物。その中を全力でチューリングXと雲雀が突っ切っていく。時折、雲雀の破壊より早く、チューリングXが壁にぶつかれば。
『とう!』
 チューリングXが重量級パンチで壁をぶち抜いていくのであった。

 しかし、どれだけ静かに壊していったとしても、やっぱり壊れる時の音や騒がしさというものがありまして。
 それに気付いたメイドその1(立ち塞がり担当)が二人の前に姿を現わしたのである。


 フワフワ……タンッ、トーン……フワフワ。

 リリの空中浮遊を音で現すならこんな感じ。風だけでは限界もあるが、横丁というだけあってビル街のように高い建物が連なっているわけでもなく。時折着地が必要な空中浮遊となっている。その都度、フック付きワイヤーでアンカーを張って着地。体勢を立て直して再びダッシュ&ジャンプして飛び上がるリリ。
「空飛ぶアラサーエルフ、目立ちまくりね!」
 これももちろん意図しての動き。目立つことでメイドから仲間たち、そして黒猫への注意を逸らす役目だ。
 そうしてメイドたちの注意を引き付けながら、リリ自身は視界から得た情報と黒猫から得た情報を元に、頭の中へ大雑把な地図を作っていく。
 後は、地図に従って迷宮横丁内を走査するだけだ。


 目の前に現れたメイドに対して、チューリングXは躊躇うこと無く決めていたパターンに沿って行動する。つまり。
『邪魔をするメイドには、有給休暇を取っていてもらおうか』
 普通にストレート(右)を放った。チューリングXの重量級パンチ!
『安心したまえ。気絶する程度に手加減はしてある』
 ということです。
 しかし、その一撃にぎりぎり耐えるメイド。よほどお給金がいいのだろうか?
「……む」
 追撃しようとチューリングXの前に雲雀が出た瞬間。

 空からリリが降ってきた。

「重量攻撃の奇襲ヒップアタックよ」
 直撃したらえらいことになるので、掠める感じで吹っ飛ばすリリ。
「……どうやら無事、気絶したみたいです」
『うむ』
 吹っ飛んだメイドをつんつんして確認する雲雀とそれに頷くチューリングX。

 そんな感じでメイドその1を無力化した3人は。
 リリの作った頭の中の地図に基づいて、雲雀が直進ルートを作っていく。チューリングXは小さな物音すら聞き逃さないようにセンサー類へ注力して琴里を探す。

 全力で迷宮横丁が壊れて言っている気がするが。
「琴里さんの元にたどり着ければOKです」
 雲雀さんの至言です。
「さあ、琴里ちゃんの元へ急ぎましょ♪」
『琴里……直接会って、その真意を問わねばな』
 リリとチューリングXが雲雀に続く。
 三者三様の想いを抱いて、3人は迷宮横丁を攻略していくのであった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

星群・ヒカル
おれとしたことが、ひりょを見失ってしまったぞ。
ふむ、迷宮にみんな挑んでいるようだな……
探し物なら、おれの十八番だぜ?(にやりと笑う)

【SPD】
宇宙バイク『銀翼号』に『騎乗』し迷宮を爆走するぞ
メイドの足跡などの些細な痕跡を『視力』でとらえ、『第六感』で彼女達の行方を追跡して行こう
邪魔するとしても『逃げ足・早業』で素早く妨害回避だ

罠は可能な限り外して、次通る人が安心できるようにしないとな
『超宇宙望遠鏡・析光形態』で罠を見抜き、引っかからないように超宇宙牽引ワイヤーでの『ロープワーク』も交えて、ーわざと発動させることで解除していくぞ
おれの目を欺けると思ったか、100万年はやいんだよ!

※アドリブ歓迎




「おれとしたことが、ひりょを見失ってしまったぞ」
 迷宮横丁の中、少々困った顔でそう呟くのは星群・ヒカル(超宇宙番長・f01648)である。この迷宮横丁に真っ先に飛び込んだ猟兵は、彼が所属する【飛空戦艦ワンダレイ】の一員でもある。
 新人猟兵を見守り、導く。そんな想いで彼を追いかけていたのだが、メイドたちが現れたタイミングのせいで合流は叶わず。彼がメイドを追いかけて迷宮横丁に入っていったすぐ後に追い掛けたのだが、こういう状況である。
 仕方ない、と気を切り替えてヒカルは迷宮横丁を見渡す。確かグリモア猟兵に聞いた話では。
「ふむ、ここにみんな挑んでいるようだな……」
 そしてこの迷宮横丁の中に、目的地があるということも。
「探し物なら、おれの十八番だぜ?」
 にやりと笑うヒカル。その表情はとても自信に満ち溢れていた。

「いくぜッ」
 ヒカルの掛け声とともに、駆動音が高鳴る。ヒカルが跨るのは銀色に輝くボディが輝かしい宇宙バイク『銀翼号』。ヒカルの気合に応じるかのように、バイクが迷宮内を爆走する。
 入り組んだ路地も複雑な構造もなんのその。ヒカルのバイクテクがそれらを軽くあしらっていく。
(……あれか!)
 爆走しながらも、流れる景色の中でヒカルの超視力がメイドの痕跡を捉える。そこから直感的に導き出すのはメイドたちの行先。
「こっちだッ!」
 ハンドルを切り返し、痕跡が続く先へバイクを疾走させる。

 狭い通路、一本道。そして、先ほど捉えたメイドの痕跡。
(わかりやすかった……ということは、だ!)
 一瞬、目を閉じて、再び開く双眸。そこに宿すのは蒼き輝き。
「この超宇宙番長の目を、欺けると思うなッ!」
 【超宇宙望遠鏡・析光形態】。『超宇宙望遠鏡「ガントバス」』がもたらす魔眼は視た事象を超観測し真実を導く『星の目』と化し、メイドその2が仕掛けた罠を見抜いていく!
 どうやら仕掛けられた罠は、足止めや動きを止めるものなど時間を稼ぐこと、または追跡を中断させるものばかりらしい。
 立ち止まるには時間が惜しく、されど見つけたからには、後続する者が安心できるようにせねば。
「となれば……こうだな!」
 バイクの速度を緩めることなく、取り出したのは『超宇宙牽引ワイヤー』。ロープワークを駆使しつつ、バイクで無理やり罠を踏み潰していく!

 そのまま突き進み、視界に入ってきたのは次なる罠を仕掛けているメイドその2。
「うそっ?!」
 想定以上の速さで自身の元まで辿り着いたヒカルに驚愕の声をあげつつ、戦闘力のない彼女はその場から逃げ出そうとする。
「おれの目を欺けると思ったか、100万年はやいんだよ!」
「きゃぁぁぁぁっ!」
 直接ではなく、すぐ横をすり抜ける衝撃波で。爆音も合わせて、メイドを軽く吹き飛ばし、そのまま気絶させるヒカル。

 こうして迷宮横丁内の妨害を行うメイドその2は無力化されたのである。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『人斬り『十香』』

POW   :    血戦山河
【魔刃刀『裏正』】が命中した対象を切断する。
SPD   :    悪鬼羅刹
自身に【裏正に封じられしかつて斬った人々の怨念】をまとい、高速移動と【斬撃による衝撃波と血のような斬撃波】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    百花繚乱
自身の【瞳】が輝く間、【魔刃刀『裏正』による斬撃】の攻撃回数が9倍になる。ただし、味方を1回も攻撃しないと寿命が減る。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はガイ・レックウです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●水口・琴里の独白
 私がこの屋敷に軟禁されて、どれくらいの時間が経ったのか。もう日を数えるのも諦めてしまった。流行病で倒れて、何が原因かはわからないけど、両足が動かなくなってから。私の世界はこの屋敷、いえ、この部屋で固定されてしまった。

 ――これはお前を守るために仕方ないんだ。

 そういって親が抱きしめてくれたことを覚えている。

 なら、どうして生かしておくの? それはただの親のエゴではないの?
 だって、私は『生きて』いない。

 この世界になってから、ここへの来訪者は世話役のメイドと親だけ。メイドだって2~3日に1度程度、親に至っては片手で数えられるほどしか会っていない。

 私にはここを脱出する術がない。両足は動かない。這いずって移動する程度はまだしも、立って歩くのは無理だ。
 メイドにしても、ペットの世話をしているような手間だ。私という『人』に対して何かをしてくれるわけではない。

 ここまで不自由な私を、同情するフリをして、あるいは親身になるフリをして近づいて来る存在を親は恐れたのだろう。『全てが奪われる』と不安になったのだろう。

 どれだけ親に綺麗事を言われようとも。

 私は私に存在価値を見いだせない。私がここに残されているのはきっと、水口を継ぐ跡継ぎを産むため。それも弟や妹が産まれれば不要となるだろう。

 しばらく前から絶え間なく襲ってくる胸の痛みと咳。明らかな異常を目の前にしても、メイドたちは何も言わない。
 きっと私は親にとっても『不要になった』のだろう。

 でも、でもでも!
 苦しくて胸を掻き毟りながら倒れていた時。それはふらりと現れた。いや、見えるようになった、だけかもしれない。現にメイドたちは彼女の存在に気づかない。
 彼女は、私だけに見える、私にだけ反応してくれる彼女。
 彼女ならきっと私の存在を証明してくれる。

 ――ああ、わかるわ。目覚めの時が近いのね。
 ――さあ、どうぞ私を殺していただけないかしら?

●メイドの独白
 メイドその3を捕捉した猟兵たち。メイドに詰め寄り、琴里の居場所を吐かせるつもりだったが。
「何? お嬢様を誘拐でもしてくれるの? 助かるわー」
 朗らかにメイドは告げ、あっさりと琴里の場所を教える。
 顔を見合わせる猟兵たち。
「面倒なのよもう」
 メイド曰く、お給金に対して荷が重すぎる、とのこと。
 メイドは口を尖らせて言う。もうこの仕事に利点は無い、と。
「お給金も良くても、自由が無いなんて最悪よ」
 そう。琴里の世話をする以上、琴里のことは他言無用だ。もし零れようものなら自分の命が無い。それは常に監視されているのと同じだ。
 それでも、以前までは『世話をする者は交代していく』制度があり、交代した後は水口の指示に従っていれば左うちわで生活ができたのだ。そのトレードオフこそがこの仕事の本当の旨味。
「でも交代が全然行われないの。つまり、私たちがずっと世話しなきゃなんないってわけ」
 つまり、一生、最悪今の給金で、制限された生活をせねばならない。勝手に辞める、という選択肢は取れない。それは文字通り、死ぬからだ。

「だから考えたの。殺しちゃえって」

 食べるものすら選べない琴里だから、その食べ物に毒を混ぜれば? 水口の直系は今、新たに産まれた跡継ぎに夢中で、琴里の様子など微塵も気にしていない。その証拠に、交代の制度が機能していない。
「死んでるも同然なんだし、居なくなっても誰も気にしないって」
 朗らかに笑うメイド。彼女の目に罪悪感などなく、それはつまり、琴里の存在が彼女らにとって『その程度』ということだ。

●覚醒する影朧
 その影朧、『人斬り『十香』』の意識は、いまだ微睡(まどろみ)の中にあった。
 されど、呼びかける声がする。それは『人』の声だ、と認識した(わかった)時、彼女の本能が沸き上がる。

 十香は、かつて帝都を騒がせた伝説の人斬り。魔刃刀『裏正』を片手に、数多くの人を斬り、殺めた者。ただ斬るだけではなく、斬るためにどうするかを思考し、自身の全てを人斬りに費やした『真性の人斬り』こそ、彼女の本質。

 ゆっくりと瞳を開ける十香の視界に……琴里がいた。


※猟兵たちが踏み込むタイミングは十香が瞳を開けたその瞬間。十香は猟兵を認識したならば、まず猟兵を排除しようとします。
※琴里は戦闘に介入する術を持ちません。巻き込もうとしない限り、安全です。
※琴里を取り巻く真実はいまだ闇の中。全ては状況証拠でしかありません。琴里を今の状況から抜け出させるならば。その状況証拠を繋ぎ合わせた先に在る希望を教えてあげてください。

※3章のリプレイは。その構成上、個別ではなく、一気に書き上げます。
月曜日6日23時までにプレイング送信していただけると助かります(執筆予定日は水曜日8日)
リリ・アヌーン
連携歓迎
POW
UC「ナイトメア・リリー」による
無敵の慈悲深く巨大な死神を創造
刀は死神に命中させるよう素早く位置取りし続け
自身や仲間に斬撃が当たらぬよう壁役となりながら
カウンターの大鎌で薙ぎ払う
鎌が当たらなくてもその神威で生命力を吸収し続けるわ

事後
琴里ちゃんの足をひりょちゃんに治してもらった後
「居場所は自分で作るものよ。
足がダメなら絵でも小説でも書けばいいじゃない。
行きていく術や生き甲斐を全部試してみてから、
身の振り方を考えてみても遅くはないんじゃないかしら?
その為にも、後々後悔が残らないように今から私達と一緒に
ご両親の元へ行って、真実を確かめてみましょう」
と協力して下さった猟兵仲間と共に説得


鳳凰院・ひりょ
WIZ
連携歓迎
彼女が琴里さんか
先程会話したメイドによって毒殺されかかっていたようだ
彼女はどうしたいのだろう、彼女の真意を確かめたい
その上で冷静に憶測の部分を省き事実だけを導き出す
結局は両親と真剣に向き合ってみないと真実には辿り着けないかもしれない
その為の助力は惜しまない
俺達が琴里さんを全力で支えるんだ!

戦闘は外で
仲間を生まれながらの光で回復、光陣の呪札で遠距離から援護攻撃
戦闘後に琴里さんの元へ
仲間の援護も得つつUCで気絶も覚悟の上の治療を実施
可能なら足の症状も治療
両親には俺達猟兵が関わった経緯と琴里さんが毒殺されかかっていた事も報告
もし両親との対談で水口の家に居られぬのなら、連れ出す事も視野に


文月・ネコ吉
成程人斬りか

仲間と連携
十香を外へ誘導し倒す

冷静に太刀筋見切り
武器受けはフェイント
刀と残像残し一歩下がり攻撃回避
死角から影の刀で斬る

■戦闘後
琴里治療を影ながらサポート
医術の心得も(元暗殺者として)少しある
役に立てるだろうか

陰謀渦巻く華族の世界
手負いの小鳥が生き抜くのは難しい
だがお前は生きている
籠の中で加護の中で

文句は直接言ってやれ
お前には目も腕も言葉もあるだろう

状況も変化した
弟が生まれ
今や華族の重荷は純粋無垢な彼の背に

皆護る為に必死だ
良かれと思い道を誤る事もある
だが彼が生きる為に本当は何が必要か
お前は知っている筈だ

(お守り渡し
結ばれた縁に向き合うのはお前自身
大切なら守ってやれ
お前の望む未来の為に


アイ・リスパー
『琴里を救うことができるとしたら、彼女のことを親身になって考えてあげることができる人だけ……。
見守ると決めた私には……こほん、いや、心の無いウォーマシンである、このチューリングXには、琴里をどうするか口出しすることはできない。
ゆえに、人斬り『十香』の相手は私がしよう!』

ビルドロボットでチューリングXになったまま、人斬り『十香』と対峙しましょう。
他の皆さんが琴里さんを幸せにしようとする邪魔はさせません!

……とはいえ、狭い室内ではチューリングXの巨体は不利。
さらにミサイルなども使えません。

『ならば、斬り合いで勝負だっ!』

荷電粒子砲を収束させたプラズマブレードで攻撃です!

え?
まだ出力過剰ですか?


天星・雲雀
琴里さんは、弟がすでに産まれてる事も知らされていない御様子。
誰からも教えられづ、実家の状態を調べるすべもない。

「琴里さんには、一度ご実家に赴いて、ご両親と直に合い思いをぶつけて、水口家の現状を理解していただきます。その上で、本当に『必要とされていない』と、確信を得られたなら、猟兵に成って世界を旅しながら、自分自身が自分で居続けた事の意味を探してみると良いでしょう。幸い、希薄な影朧が見えるという事は、素質は有るようですし」

【戦闘】開けた場所まで【おびき出し】てUC千切り糸の結界で斃します。

「琴里さんの解毒治療のために、ひりょさんの体力を温存します!影朧の相手は、ひりょさんの分まで自分がします!」


星群・ヒカル
琴里、おめーは病気で疎まれたんじゃねぇ
おめーを狙うなにかから匿われているんだ!
ただ疎むだけなら屋敷内に幽閉するだけでいい
誰も来ないのは、誰かが足繁く通うことで、場所がバレないようにするためだ!

琴里のことはひりょに任せた
おれは【超宇宙・武勇星舞台】を使い超宇宙牽引ワイヤーを『ロープワーク』を駆使して操り戦うぞ
敵の攻撃は『第六感・視力』で捉え『逃げ足・早業』で回避
チューリングXたちやネコ吉と協力し、決定的な隙を作るように行動するぞ!

終わったら琴里を両親の元へ連れて行こう
メイドを告発し、彼女に真実を伝えてもらう
彼女が望まぬ真実なら、見切りをつけさせ別の場所へ
もし望んだ結末なら……静かに見守ろう



●邂逅する世界
 『人斬り『十香』』の意識が覚醒する。その本能がその身に宿る。
「目覚めたのね!」
 喜びの声をあげる水口・琴里(みなぐち・ことり)。その声に反応するように肩に担いだ魔刃刀『裏正』を振り上げる。
「……!」
 その様子を歓喜の表情で琴里は見つめ。

 ドガァッ!

「…‥!?」
「何!?」
 突然の轟音に思わず振り向く十香と琴里。そこにあったのはドアを蹴破る星群・ヒカル(超宇宙番長・f01648)の姿。
「ひりょ、皆、見つけたぜ!」
 ヒカルの声に部屋に駆け込んできたのは、鳳凰院・ひりょ(人間の聖者・f27864)とリリ・アヌーン(ナイトメア・リリー・f27568)。
(彼女が琴里さんか……!)
 琴里の姿を確認したひりょはそのまま駆け出す。その様子に十香の意識が猟兵に向きかける。
「違う! 私よ! 貴女が殺すべきは私!!」
「……っ!」
 琴里が絶叫する。その声に、もしくはこれまでに与えられた血ゆえに。十香の裏正が琴里に向けて、突き出される!
「琴里ちゃん!」
 リリが叫ぶ。しかし、裏正より一瞬早く、ひりょが割り込んだ。琴里を庇うように両手を広げるひりょ。
「ぐ、ぅっ……」
 ひりょの腕が十香の刺突の軌道を無理やり逸らす。
 斬られた腕を押さえながら膝をつくひりょ。熱くなっているわけではない、むしろ頭の中は落ち着いて。
(結局は両親と真剣に向き合ってみないと真実には辿り着けないかもしれない)
 それは琴里について、この部屋に来るまでにひりょが導き出した考えだ。
(その為の助力は惜しまない! 俺達が琴里さんを全力で支えるんだ!)
 その想いがひりょを突き動かしたのである。

「ちっ! 邪魔!」
 琴里を仕留め損なったことに舌打ちしながら、十香が裏正を引き抜き、今度はひりょの首を狙って振りかぶる!
「ひりょ!」
 今度はヒカルがひりょを庇うべく飛び出す。

 その時。

「成程、人斬りか」
 その声は不意に背後から。ぞわっと後から襲い掛かってくる殺気を斬り裂くように、振り向きざま刀を振るう十香。その一撃は空を切るも、その視線の先。いつの間にか部屋の中にいた文月・ネコ吉(ある雨の日の黒猫探偵・f04756)から目が離せなくなる。それはおそらく同種の……。
 そして部屋に駆け込んでくるアイ・リスパー(電脳の天使・f07909)……じゃない、チューリングXと天星・雲雀(妖狐のシャーマン・f27361)。
 琴里、傷ついたひりょ、十香、ネコ吉、緊迫した部屋の中を見て、状況を察するチューリングX。
『琴里を救うことができるとしたら、彼女のことを親身になって考えてあげることができる人だけ……』
 それはこの場で言うなら? 問うまでも無い。ただ。
『見守ると決めた私には……こほん、いや、心の無いウォーマシンである、このチューリングXには、琴里をどうするか口出しすることはできない』
 しかし、出来ることはある。彼らが琴里のことを十全に考えられるように。
『ゆえに、人斬り『十香』の相手は私がしよう!』
 チューリングXの巨体が十香に迫る!
「次から次へと……!」
 悪態をつきながら、しかし言葉とは裏腹に、十香の動きは滑らかで計算ずく。いかに立ち回れば戦況を優位に運べるか、それを考えている。
「アンタ、その図体で戦えるのかい!?」
 素早く間合いを取りながら十香が告げる。
 そう、【ビルドロボット】で構築したチューリングXの体はこの狭い室内では不利。ミサイルなどの広範囲兵器も使えない。
 だが、打つ手がないわけではない!
『ならば、斬り合いで勝負だっ!』
 荷電粒子砲を収束させたプラズマブレードを形成。勢いのままに斬りかかる。しかし、大振りな攻撃は十香にいなされ、懐に飛び込まれる。そのまま一撃、刀で斬りつけられるチューリングX。
『くっ……!』
 接近戦では小回りの利く十香が有利。相手もそれがわかって懐に飛び込んできている。
 しかし、チューリングXは『ひとりで戦っているわけではない』。

 ガガガガッガコガコンッ。

 激しい、何かが崩れる音。音のした方をヒカルが咄嗟に振り向く。
「ぶっ、壁ぶっ壊しやがった!?」
「チューリングXさん!」
 ヒカルの声をスルーしながら、雲雀が声をあげる。壁に空いた風穴。それは雲雀の【千切り糸の結界】によるもの。琴里の逃亡を許さぬ『鉄壁』が細切れになるまで破壊されていた。
『任された!』
 十香を外へ追いやろうと、チューリングXが横薙ぎにブレードを振るう! ブゥゥンと振動音を立ててブレードが斬り裂く!
「斬れてる! 部屋が斬れてる!!」
『え? まだ出力過剰ですか?』
 十香がブレードをかわすと、止まることなく部屋の壁を斬り裂いていった。
 リリの声に、ビックリ顔で振り向くチューリングX。その様子に十香が距離を詰める。
「隙だらけだよ!」
「お前もな」
 チューリングXに斬りかかろうとした十香、それをさらにネコ吉が後から不意打ちする。ネコ吉の回し蹴りが十香を外へ吹っ飛ばす。
「演技に決まってるだろ」
 たぶん。そう思いながら、ネコ吉が外へ駆け出していく。普段を知らないってのはいいことだ。

 吹っ飛ばされた十香を追いかけて、リリ、雲雀、チューリングXもが外へ飛び出す。「琴里のことはひりょに任せた」
 そう言ってヒカルも外へ。応急手当を終えたひりょは琴里を顧みる。
(どうするべきか)
 皆に戦闘を任せて、この場で琴里と話すこともできる。そして、状況を把握して、その上で冷静に憶測の部分を省き事実だけを導き出すことができれば……。
 しかし、ひりょは心の中で小さく首を振る。

 今はその時じゃない。

 ひりょもまた戦場へ赴くために立ち上がる。
「俺達はこの件であなたの知らない事実を突き止めました」
「……!」
 それは嘘のような本当のようなこと。
 その言葉が耳から離れなくなった琴里をその場に残して、ひりょもまた外へ飛び出していくのであった。

●それは依頼された影朧退治
 出力過剰と言われようと、外で障害物が無くて、巻き込まれる一般人がいないなら。
『特に問題なかろう!』
 チューリングXがミサイルをぶっ放す。それは複雑な軌道を描いて、地面に着地したばかりの十香へ降り注ぐ。
「ちぃぃっ!」
 十香が裏正を振り回し、ミサイルを全て叩き斬る。爆風に乗って後方へ飛び退り、態勢を立て直す十香。猟兵たちが集まりきる前に、地を蹴って突撃する。
「死神さま、そのお力を少しだけお貸しください」
 その進路上に立ち塞がるリリと。【ナイトメア・リリ】によって創造された無敵の慈悲深く巨大な死神がその大鎌を振るう。
「邪魔だ!」
 大鎌をかいくぐって、十香の裏正が死神に直撃するが、無敵の死神はその斬撃を容易く弾き返す。
「……面倒っ!!」
 刃が通らない。その事実を確認した十香は死神をかわすように軌道を変え。
「お前も面倒だっ!」
 近くに居たネコ吉へその刃を振り下ろす。
「見え見えなんだよ」
 冷静にその太刀筋を見切り、ダガーで裏正を受け止めようとする。
「そんな小さな刃物で!」
 直撃の瞬間、押し込む。それで問題ないと判断した十香の一撃。しかし。
「っ?!」
 刃と刃が当たる衝撃が伝わってこない。
 武器受けはフェイント、さらには残像を残しながら、ネコ吉はすっと一歩下がり、斬撃をかわして。
「黒き刃よ」
 視界から消え、死角から影の刃で斬りつけるネコ吉。
「熱くなりすぎてるんじゃないか?」
「多勢に無勢とは思わないのかい?」
 さらに振るわれたネコ吉の【影の刀】の追撃をかわして、後方へ飛び退る十香。
 そうこうしている内に猟兵たちがすべてこの場に集う。
「援護します!」
「当たるか!」
 ひりょが光陣の呪札を飛ばすもそれは斬り捨てられる。だが、時間稼ぎには十分な仕事だ。
「姿を見せろ、ガントバス! ふふふ、ここから先の超宇宙番長は、一味違うぜぇーッ!」
 ヒカルが吼える。ユーベルコード【超宇宙・武勇星舞台】、ヒカルの足元の影が宇宙を写した色に変化し、『超宇宙望遠鏡「ガントバス」』が創造した戦士の影がヒカルの動きを操作する。
「いくぜッ!」
 尋常ならざる勢いで『超宇宙牽引ワイヤー』を振り回してから投げつけるヒカル。
「ハッ」
 直線的に飛んでくるワイヤーを鼻で笑って斬り伏せる十香。しかし、裏正の一撃とて超宇宙牽引ワイヤーは斬れない! 斬撃を弾き返し、十香の防御を突き抜ける。
「こうだッ!」
 ワイヤーの先にあるフックを十香の袖口に引っ掛けてそのまま引っ張り上げるヒカル。そのまま振り回して、地面に叩き付ける!
「ぐっ……!」
 叩き付けられた衝撃に息を吐く十香。続けざまに攻撃を加えようとするヒカル。
「だから、多勢に無勢だって言ってるだろ!」
 叫びながら十香が裏正に封じられしかつて斬った人々の怨念を纏う。その力でワイヤーを振り払い、可能となった高速移動で一気に距離を詰める十香。
「うぉぉっ!」
 十香の斬撃をワイヤーで受け流すヒカル。互いに自分ならざる力で引き上げられた力は拮抗しているようで突破ができない。
「そこです!」
 そこへ雲雀が不可視の光粒子の操り糸を飛ばす。ヒカルと十香の間に割り込むように飛んだ1本を十香がかわし。
「……!?」
 その瞬間、十香の周りを【千切り糸の結界】が包む。その1本1本が貫通力の有る不可視の光粒子の操り糸。それが包囲で以て十香へ襲い掛かる!
「奥の手ってのは最後まで残しておくもんさ!」
 しかし、十香もまた次の手を繰り出す。十香の瞳が輝き、裏正が素早く9回、瞬く間に振るわれる。本来、刀は斬りつけるもの。しかし、今の十香は斬撃による衝撃波を放つことができる。
「きゃぁっ」
「ちぃっ」
「くっ」
 悪鬼羅刹が放つ百花繚乱、不可視の操り糸の包囲網を突破した、乱れ飛ぶ衝撃波が猟兵たちを斬り裂いていく。不意の攻撃に態勢を崩される猟兵たち。
「お前から仕留めるかい!」
 一番近くの位置で、態勢を崩していた雲雀へ十香が距離を詰める!
「まだだ!」
 叫びとともにひりょの【生まれながらの光】が戦場を満たす。
(これが俺の戦いだ!)
 直接攻撃が上手でなかろうと、戦いをすることはできる。支えることはできる。ひりょの想いが仲間たちを癒していく。

「ひりょさん!」
 真っ先に回復した雲雀が叫ぶ。
「琴里さんのために、ひりょさんの体力を温存してください! 影朧の相手は、ひりょさんの分まで自分がします!」
 そう言ってひりょの制止しながら再び【千切り糸の結界】を展開する雲雀。今度は反撃の隙を与えず、全ての操り糸を即座に繰り出す。
「くっ、ちぃぃっ」
 それらを捌くべく、足を止めて裏正を振るう十香。しかし、指向性を持って飛んでくる操り糸の全てを斬り裂くことなどできず、操り糸が十香の体を斬り裂いていく。
「そろそろ終わりにしよう」
 動きの止まった十香へ。ネコ吉が音も無く懐へ踏み込む。静寂にして鋭い【影の刀】の一撃が十香の胴を横薙ぎに斬り裂き。
「捕まえたぜッ!」
 思わず俯いた十香の体、その隙をヒカルのワイヤーが捉える。動きを封じられる十香。
「死神さま、もう一度……!」
 リリの死神の鎌が十香の体を斬り裂き。
『これでトドメだ!』
 チューリングXのプラズマブレードが今度こそ十香を切断するのであった。

●添え物の、大切な物語
 十香の消滅を見届けた猟兵たちが琴里の元へと戻る。
 その最後尾、チューリングX。立ち止まって琴里の家を見渡す。
 ……戦闘の余波で直接壊した部分以外もなんか不安定になっている。これもう住めないのでは?
 という疑問はさておくことにした。

 部屋の中。
 先ほど座り込んでいた場所から一歩も動かず、猟兵たちを見つめる琴里。その視線は、恐怖と不安と期待が入り混じった、とても不思議な視線。

 その視線には応えず。
 ひりょが琴里の足元へ座り込む。
「皆さん、後は頼みます」
「おう!」
 ひりょの声にヒカルが応える。そしてネコ吉がサポートにつく。
(医術の心得も少しあるしな)
 仁術……ではなく、暗殺者としての過去が。否、未来のために使えるならそんなことはどうだっていい。
「な、なにを……ごほっ」
 咳き込んだ琴里を見て、ひりょが【生まれながらの光】を生み出す。柔らかい光が琴里を包み込んでいく。
「なっ……え……?」
 しばらく前から絶え間なく襲ってくる胸の痛みと咳が嘘のように消えた。その様子は外から見てもわかるほどに。まずは解毒が成った。
(このまま……!)
 足も。ひりょが琴里の足に手を当て、さらに力を籠める。
「……まて。これは……」
 それを制したのはネコ吉であった。
「なあ、琴里。……『膝から下の感覚』はあるか?」
「……あるわけないでしょう。残ってるのは形だけって言われたわ」
 ネコ吉の問いに琴里が憮然と答える。
「……」
 琴里の言葉に顔を見合わせる雲雀とリリ。
 それはつまり、足の神経が死んでいるということ。もしかしたらユーベルコードであれば治療できる……のか? 死んだ神経を元に戻す、それは再生のレベルになる。
 気絶覚悟のひりょにやらないという選択肢は無い。しかし制止したネコ吉は改めてGOサインが出せない。

「足なんてどうでもいいわ。それよりも何故病気が治ったの?」
 猟兵たちの逡巡を琴里が断ち切る。
「それは病気じゃねーからだよ」
「琴里さん、あなたはメイドによって毒殺されかかっていたんだ」
「……!」
 ヒカルの声はドアのところから。その脇には先ほど捕縛したメイドその3が居た。ヒカルの言葉を捕捉するようにひりょが告げ。琴里が息を飲む。
 メイドの告白。毒が盛られていた事実。それを聞いて琴里はメイドを睨み付け、しかし、猟兵たちを見上げる。
「貴方たちが得た事実とはこのこと?」
 それは戦闘前にひりょが放った言葉だ。半分はハッタリ。しかし、この場に居る琴里以外の人間の知恵を合わせた結果、『真実に近いであろう事実』を導き出している。
「琴里、おめーは病気で疎まれたんじゃねぇ」
 ヒカルの言葉が告げられる。
「おめーを狙うなにかから匿われているんだ!」
「……」
 ヒカルの言葉に琴里は無言。
 そうだ、ただ疎むだけなら屋敷内、あるいは地下などに幽閉するだけでいい。そうでないなら、それなりの理由があるはずだ。
「誰も来ないのは、誰かが足繁く通うことで、場所がバレないようにするためだ!」
 それがヒカルの出した結論。
 そして。
「琴里さんは、弟がすでに産まれてる事も知らされていない御様子」
「え……それ、本当?」
 雲雀の言葉に、きょとんとしながら声をあげる琴里。
 そうだ、誰からも教えられないから実家の状態を調べる術もない。彼女が知っているコトは与えられたものしかないのだ。
 ゆえに、猟兵たちはこう結論した。琴里は真実をほとんど何も知らない。
「琴里さんには、一度ご実家に赴いて、ご両親と直に会って思いをぶつけて、水口家の現状を理解していただきます」
 雲雀の言葉に、目を丸くする琴里。そして……黙り込んだ。その様子は渋っているような、あるいは意味が無いと思っているような。
「陰謀渦巻く華族の世界。手負いの小鳥が生き抜くのは難しい」
 嘆息とともにネコ吉が話し出す。ネコ吉の言葉は諦観しているようで、しかし違う。
「だがお前は生きている。籠の中で、加護の中で」
「加護……?」
「そうだ」
 それはきっと琴里が思いもしなかった言葉。
「皆、『護る為』に必死だ。良かれと思い、道を誤る事もある」
 雲雀の言ったように、弟が産まれ、状況が変化した。
(今や華族の重荷は純粋無垢な彼の背に)
 それは琴里が解放されたとも言える。でも本当はそんなことはどうでもよくて。大切なのは彼女に弟が出来たということ。
「……彼が生きる為に本当は何が必要か、お前にもわかる筈だ」
 ネコ吉の言葉に、琴里は視線を伏せる。自身もまた水口の者であったからこそ、弟の存在がいかに大切か、わかる。
「居場所は自分で作るものよ」
 リリが告げる。
「足がダメなら絵でも小説でも書けばいいじゃない」
 そうやって違う可能性を探して。行きていく術や生き甲斐を全部試してみて。
「それから、身の振り方を考えてみるって未来もあると思うの」
 リリの言葉はあくまで前向きに。

 そして、そのためには乗り越えないといけない壁がある。
「その為にも、後々後悔が残らないように、ご両親の元へ行って、真実を確かめてみましょう」
 リリもまた、琴里を両親の元へ導こうとする。だが、琴里は……。
「琴里さんはどうしたい?」
 ひりょが問いかける。大切なのは琴里がどうしたいか、だ。彼女の真意を確かめたい。それからでしか、憶測の部分を省き事実だけを導き出す、なんてことはできない。
「私、は……」
 それでも言葉を出し渋る琴里。
「文句は直接言ってやれ。お前には目も腕も言葉もあるだろう」
 ネコ吉が強く、そして優しく告げる。ネコの手にあるのは、迷宮横丁の入り口の神社でもらってきたお守りだ。
「結ばれた縁に向き合うのはお前自身……お前の望む未来の為に」

 ネコ吉から渡されたお守りを握り締める琴里。その目は先ほどまでの絶望にすがる目では無く、ひとつの目的を持った瞳。
『どうやら、話はついたようだな』
 ずっと見守っていたチューリングXの声が、心なしか嬉しげにその場に響いた。

●ひと時、幕を閉じて
 両親の元へ移動すべく、琴里を両脇から抱え上げるひりょとヒカル。
「俺の乗ってきたバイクがある。アレに乗せて、両親の元へ連れて行こう」
「ついでに、彼女もつれて行かないと」
 いまだ縛られたまま、チューリングXに担がれているメイドを指さすひりょ。
「そうだな。告発し、彼女に真実を伝えてもらわねぇと」
 ひりょの言葉に頷きを返すヒカル。
「一緒に行けば大丈夫よ」
 リリが琴里を励ます。
 両親と話して。
「その上で、本当に『必要とされていない』と確信を得られたなら」
 猟兵に成ってみませんか。雲雀がそう告げる。
 猟兵に成って世界を旅しながら。自分自身の意味を探してみる。
「幸い、希薄な影朧が見えるという事は、素質は有るかもしれませんし」
 少しばかり賑やかに。琴里と皆が話す中。
 ネコ吉は振り返って家をじーっと見ていた。
「うん、ダメだなこの家。もう崩れ、あ、崩れた」
 ネコ吉の言葉に振り返る琴里と猟兵たち。琴里と猟兵たちの脱出を待っていたかのように、崩れていく屋根。
「後で、荷物だけ回収してもらった方がいいかもだ」
「そう、ね。たいしたものはないけれど」
 もう戻れない。それでも暮らしていた場所だから。

 この後、猟兵たちは父親の元へ琴里を届ける。
 そこからの話は……別に語るとしよう。

 グリモア猟兵に依頼された『影朧退治』はひとまずここで終わりである。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​


 ――ここより先は、グリモア猟兵への報告には含まれない。
 ――添え物の物語の行く末を、あなたへ伝える。

●水口・琴里の独白
 結論から言えば。
 私、水口・琴里は猟兵たちと一緒に迷宮横丁を出ることは叶わなかった。

 何故なら。

 迷宮横丁を出る前に、お父様が目の前に現れたから。
 そして猟兵たちに要求したのだ。『娘を引き渡せ』と。

 猟兵たちも食い下がって、私とお父様が話し合う場を設けてくれようとした。その場に同席しようとも言ってくれた。
 それをお父様は。『猟兵たちがいるなら、何も話さない』『この場で娘を引き渡さないのなら、これからも話の場は無い』と言ったのだ。
 だから、心優しい猟兵たちは。私をお父様に預けて、その場を去った。
「ああ。事の次第だけは私の知り合いの猟兵から伝えましょう」
 立ち去る猟兵たちの背中に、お父様はそう告げたのだ。

 そして。私は今、ここにいる。ここ……は迷宮横丁の中にあった家。外見はとても人が住めないようなぼろぼろだったのに……中はどうにか人が暮らせる程度には片付けられていて。
 その2階の書斎に使用人に抱えられて運ばれ、そして今、お父様と向かい合って座っている。ふかっとしたソファ。とても上質の、たった今用意したとは思えないような。
 そして。
「……あ」
 窓から……私の居た家が見えた。全壊している家が。

「さて、乱暴なことをしてすまなかったね、琴里」
 お父様の言葉に、キッ、と睨みつける。
「そんなに怖い顔をしないでおくれ」
 きっと今の私は文字通り食って掛かるほどの表情なのだろう。でも取り合わずにお父様に言葉を叩き付ける。
「どうして猟兵たちが一緒じゃダメだったの!?」
「私だって怖かったんだよ!?」
「!?」
 なんかキレ返されたんだけど。何で?
 呆気にとられていたら、お父様が、コホン、と咳払いをした。
「琴里、少しだけ待ってほしい。殴るも噛むも好きにしていいけども、まず私の話を聞いて欲しい」
 そう言ってお父様が話し出す。
「久しぶりに会えたのに、とても時間が無い。だが、どうしても君に伝えたいことがある」
 よく見たら、どこか余裕が無い風のお父様。きっと事業とやらが忙しいのだろう。いい気味だ、と思いながら、挑発する。
「なら、猟兵たちに任せれば、自宅で寝る前にゆっくりとお話しできましたのに」
「ダメだ」
 その言葉は完全なる否定にして、これまでに聞いた事の無いような気迫のこもった言葉。その勢いに思わず気圧されて。
 その様子を見てお父様が慌てて取り繕う。
「いや、君が悪いわけじゃない。でも、君が迷宮横丁から出る、それだけはダメだ」
「……どうして?」
 そこに感じたのは悪意でも嫌悪でもなく、とても必死な想い。思わず私も問いかけてしまう。
「……それはね、琴里。君が『死んでいる』からだ」

●記者、木村・鈴彦の極秘手記より~赤と白が混じりあい

 ――水口・高雄(たかお)、琴里(ことり)の会話を記録す。

「まず、琴里。5年前に流行病にかかったことは覚えているかい?」
『ええ、覚えているわ。13歳の時よ』
「そうだ。君は高熱を出して意識不明の重体だった。皆が必死に看病をしていたね」
『そこは全然覚えてないけど』
「確かに。君は何も悪いことなどしていない。ただ‥‥私たちが守りきれなかったんだ」
「その頃、水口の家はとても敵が多くてね。いわゆる政敵というやつだ。いや、ちょっと違うか」
「とにかく、新しく始めた事業を邪魔しようとしていた者がたくさんいたんだ」
「流行病は疑うまでも無く本当なんだが‥‥流行病に気を取られ、油断していた」
「産業スパイにね。隙を突かれて、飲み水の瓶に水銀を盛られた」
『‥‥!』

(琴里が息を飲む)

「ああ、安心していい。その輩と背後関係は既に解決している」
「それで‥‥水口家に関する公的記録で『流行病にかかった』となっている者は、実はみな毒を盛られた者だ」
「そして我々大人はどうにか回復することができたが、君は重症化してしまった」
「原因は不明だが、きっと水銀と流行病の毒が変に作用しあったのだろう」
「それからだ、琴里。君の足は神経がやられ、完全に動かなくなった。膝から下が完全に力が入らなくなった」
「仮に松葉杖を使ったところで‥‥ほぼ完全に両腕の力だけで歩かなくてはならないほどに」

「医者の見解では、まず君の体調を整え、体力をつけさせねばならない、とのことだった」
「だから、ここに君を『療養』に来させたんだ」
『‥‥なら、何故歩くための補助が何もなかったの?』
「松葉杖はさっき言った通りだよ。おそらくあったとしても使いこなせない」
『車椅子は、最初からそれに頼ると完全に体が弱ると言われたからだ」
「だから、体調が整って体力と腕力が付いてきた頃に手配する‥‥予定だったのだが」

(高雄、目を伏せる)

「すまない。ここでも『後手』に回ってしまった」
『‥‥どういうこと?』

(高雄、目を琴里を合わせる)

「琴里。君は『公的記録で死んだことになっている』」
『‥‥え?』
「死亡届が出ているんだ」
「事実の君は生きている人だが、管理される情報として君はこの世界のどこにも存在しない。書類にも名簿にも記録にも」
「『君が死んだ』との噂が記者に回り始めた時、それを止める力が当時私たちに無かった」
「その話はそのまま役所まで流れ、とうとう役人が来た」
「運命の分かれ道だ。君は生きているというか、あるいは死んだというか‥‥」

(しばらくの沈黙)

「その時、水口の家は本当に瀬戸際だった」
「君と共に倒れた私たち。当然、事業にも『大丈夫なのか?』と疑いの目が向けられた」
「当時、キミを守りながら、事業を発展させる力は私たちには無かった。もちろん裏から手を回す力も」
「だから、琴里。君は『死んだ』。恨んでくれて構わない。すべては私の、私たちのエゴによるものなのだから」
『‥‥‥‥』

「君があのまま、猟兵に連れられ、外に出ていたら、結構マズイことになっていた」
『‥‥あ』
「気付いたかい? さすが琴里だ」
「そう、君は『死んでいる』。にもかかわらず、街を闊歩‥‥はできないけれども、街の往来に何事も無く姿を現わし、そして水口の家に恨み言を言い連ねるような言動をすれば」
「まず、影朧として疑われるだろう」
「猟兵が一緒に居る、というのは殊更マズイ。何故なら、一般的に民衆の前に猟兵が現れるのは影朧が関係する時くらいだからね」
「まあ、猟兵だから? 色んな権限でねじ伏せるのかもしれないが」
「彼らも事情を知ったら協力してくれたかもしれないが‥‥君に伝える前に、君が判断する前に、彼らに聞かれるのはマズイと判断した」
「だから、申し訳ないが、ご退席願ったのさ」

「そして、影朧じゃない、と誤解が解けたとしても、だ」
「『よかったね、琴里。君は生き返った』となるかといえば、おそらくそうではない」
『‥‥でしょう、ね』
「そうだ。わかるだろう? キミの元に役人が、記者が、物好きな野次馬が押し寄せてくる。およそ、今まで通りの生活など不可能だ」
「だから、君を守るためには。ずっと、もうずっと隠していくしかなかったんだ」
「すまない、琴里。謝って許してもらえるなんて思ってもいない。でも‥‥」

(高雄、視線を下げる。琴里、視線を外へ遣る)
(高雄が視線を戻す)

「君を隠し通すためには極力接点を少なくする。これしかなかった」
「だから、私たちも極力行かないようにした」
「メイドたちが交代させていたのは、この迷宮を迷わせるため」
「態度が素っ気なかったのも、出来る限り君との面会時間を少なくするためだ」
「道を覚え、世話に慣れて。油断してもらっては困る。緊張感が無くなっては困る。万が一にも君が外に出たいと思うようなことをしてもらっては困る」
『それでも‥‥車椅子だけでもあれば、もっと不便がなかったのに』
「それだけは本当にすまない。届けさせようと小夜子と話したこともある」
「だが、子供用の車椅子を手配するという行為は目立つ」
「それにその時点で『公的には』私たちに子供はいない。そんな目立つ行為を行う勇気が無かった」
「だから、今日まで君にも真実を隠してきたんだ」

(琴里が視線を戻す)

『‥‥それで? 今日、お父様がわざわざここまで赴いてそんな話をするのは、私が本当に不要になったから?』
「まさか。逆だ、琴里。全ての準備が整ったからだよ」

●記者、木村・鈴彦の極秘手記より~飼い主と小鳥、父と娘
「琴里、君は転生した」
『‥‥は?』
「まあ、そうなるな。いや、順番を飛ばし過ぎた。これ、そこで笑ってるんじゃないよ木村君」

(名指しで怒られる。手招きされる)
(入口の側から二人の元へ歩み寄る)

「彼は木村・鈴彦君。帝都で記者をやっている」
「君の存在を知って、なお私たちに協力を申し出てくれた、唯一の記者だ」
「彼がいなければ、君の存在を記者から隠し通すことはできなかった」
『‥‥きょうりょく、しゃ?』
「君は水口が自分の家だけで何でも出来ると思っているのかい?」
「その期待は嬉しいが、何にでも限界はあるものさ」
「君を守るために、たくさんの協力者が居る。本当にたくさんの、ね」
「それはさておこう。それで、何故木村君がここに居るか、だ」
「木村君はつい最近、想い人が転生したらしい。そう、影朧に恋をしていたというんだ」

(慌てて制止する)

「やめてくれって? いやいや、大事な所だろう?」
『あの、お父様。仮にも時間が無いのなら世間話など‥‥』
「君は影朧の転生がどうやって『転生と認められる』か、考えたことはあるかい?」
『‥‥え?』

「木村君も想い人の彼女が転生して知ったそうだ。影朧から転生した者を支援する組織がある、と」
「身分証明や当面の生活の補助など、その組織が一定期間面倒を見ることもあるらしい」
「そこで証明してもらうには、學徒兵や猟兵の協力が必要だが、これも何とか木村君の伝手で解決した」
『‥‥‥‥え? えぇっ?!』

(本当にびっくりした表情で固まる琴里)

「ははは、琴里は本当に頭が良いな。そうだ、琴里」
「君は5年前に死亡して、人知れず影朧として甦った。さらに倒され‥‥今日! ここに転生したのだ!」
「影朧の転生は過去の記憶を持ちこさないらしいが、何、例外は何にでもある。君は過去の記憶を持ったまま、そして何故か死んだ後の記憶を保持して、転生したのだ」

(得意げな高雄。ぽかんとしたままの琴里)

「この筋書きを考えたのは木村君だ」
「最善ではないかもしれない。けれど籠を壊すには十分だ。私はこれを実行することにした」
「この半年ほど、念には念を入れて、慎重に慎重を重ねて、秘密裏に、極秘裏に、事を進めてきた。もちろん裏からも手を回して」
「そして、ようやく君の転生を証明する書類を整えることができた」
「天にも昇る気分だった。ようやくやり遂げた‥‥と思っていたのが不味かったらしい」
「今回のメイドの件もそうだし、他にも結構抜けているところがあって、さっきまで小夜子にめっちゃ怒られていた」
「駆けつけるのが遅くなったのはそのせいだ。君が迷宮横丁を出る前でよかった」

「さっきメイドに聞いたが、今回の犯行の原因は『交代制度が無くなった』からと言っていたな」
「交代が無くなったのは、そもそも君の世話をする仕事そのものが近日中に無くなるからだ」
「しっかりと伝えたはずなのだが、すまない。色んなことに浮かれてフォローできていなかったらしい。完全に私のミスだ」

「‥‥いや、それでも大切な娘を殺すとかおかしくない? あのメイドども、本気で酷い目に合わせるぞ」
『‥‥‥‥』
「コホン。とにかく、だ」
「琴里。君も籠の中から出る時だ」
『‥‥はい?』
「ははは、唐突過ぎるという顔をしているね。確かにそうだ」
「でも君の住処は、鳥の籠は、ほら、壊れてしまった」

(窓の外を指差す高雄)

「‥‥いや、猟兵が壊していったのか‥‥木村君、あれ後で請求できると思う?」

(小さく首を横に振る)

「無理か、そうか‥‥こほん、失礼した」
「さて、琴里。籠が壊れたなら、そして翼があるなら鳥は飛び立たなくては」
『‥‥私に、翼なんて‥‥』
「あるとも。今日、ここに用意してある」

(高雄が指を鳴らす)
(ドアを開けて、使用人が丁重に何かを運んでくる)

「君に合わせて作った車椅子だ。遅くなった、すまなかったね」
『‥‥お父様? 私、この人たち‥‥初対面よね?』
「ハハハ。君は本当に聡いな」

(高雄が使用人たちへ振り返る)

「お前たち。お前たちも苦労を掛けたね。もう今日でお役御免だ」
『お役、御免?』
「そう。この人がいなくなったと言われる迷宮横丁の中で、人知れず、誰とも合わず」
「‥‥君のためにこの家で生活していた監視役だ」
『‥‥!!』
「不思議に思わなかったかい? 雨漏りがした時に、すぐに大工が来たことに。偶然紛れ込んできた不審者が家の戸を叩いていた時に、警察がすぐ来たことに」
「ここは迷宮横丁。迷うのが当然だ。『すぐ駆けつける』ことは出来ない、あり得ない」
「そのあり得ないを実行するために。彼らにここにずっと住んでもらっていた。君の、協力者たちだよ」

(しばらく沈黙)

「‥‥琴里。籠の中の鳥は何故長生きするか、わかるかい?」
「皆、『籠の中の鳥は可哀相』と言う。閉じ込められて、飼い主に自由を奪われて」
「それは事実だ。しかし、一方で‥‥飼い主は籠の中の鳥を常に見守っている。死なないように守っている」
「だから、長生きするんだよ。そう、籠だけに加護、なんちゃ」
『それ、さっき聞いたので』
「えっ!? 誰から!?」
『‥‥猟兵?』
「おのれ猟兵‥‥私が3年も温めていた冗句を横からかっさらうとは‥‥!」

「いや、違う。そうじゃない。話が逸れた」
「これまで君の望んだ生活で無かったことは、本当に申し訳ない」
「それでも私は、私たちはずっと君を見守っていた」
「君が『生き続けられる』ように」
『‥‥‥‥』

「そうだ。もうひとつ報告がある」
「実は君に弟が‥‥」
『知ってる』
「‥‥何で?」
『猟兵が教えてくれたの』
「なんなのあいつら、私のこと嫌いなの? 私も嫌い」

(高雄、ギリィと歯ぎしりをする)

「いや、冗談だ。そう、弟が産まれてね」
「ハハハ‥‥早速流行病にかかった」
『‥‥!!!』
「ああ、そんなに心配しなくていい。もう元気に、後遺症も無く過ごしている」
『‥‥ほっ』
「‥‥これはもう水口の宿命なのかね?」
「君のことがよぎった。どうしても君のようにしたくない。その想いでずっと目を離す事ができなかった」
「それで君の危機に気付けなかったのは本当に申し訳ない。ははは、今日は謝ってばかりだな」

「君のことだ。『私は世継ぎを残す道具』とか思っていたんじゃないかい?」
『‥‥』
「それは否定しない。私たちも心の奥底で、そう思っていたことは事実だ」
「君が居てくれれば、どうにか手元に戻すことが出来れば。水口は安泰だ、と」
「とっても身勝手な妄想だったよ。でも君は消えずに、死なずにいてくれた」

(高雄と琴里が無言で見つめ合う)

「琴里。君を縛るものは全て消えた。君は‥‥自由になった」
「これまでの君を知る者は私が口止めしている。何、問題ない、そのために大金を払ってでも手の内に収めているのだから」
「君の自由を、生活を邪魔する者は誰一人存在しない」
「あ、あのメイド3人だけはどうにかしてくれよう。マジで酷い目に合わせる、うむ」
「いやいや。許してほしくて言ってるわけではないぞ?」
「君には、君だけは。私たちを断罪する権利がある」
「他の誰であっても水口を攻撃すれば私たちは反撃する」
「だが、君だけが今の水口の全てを破壊する権利と力を持つ。それを使うかどうかは、この後、君が決めたらいい。」

(高雄が私を見る)

「しばらくは木村君が預かってくれることになっている」
「この街を離れ、この世界を見て回るといい。何も知らなくて当然だ、何せ君は影朧の転生。記憶や常識など覚えている訳がないのだから」
「その状況でこの世の中をゆっくり見て回りなさい。これからの生きる道を探しなさい。そして、自分で判断しなさい。これからはそれが出来る」
「そう、もしかしたら猟兵にだって‥‥」
『私、猟兵になる、かも』
「え、マジで?」
『誘われたの』
「‥‥私、嫌いって言ってるのに?」
『うん』
「あ、そう‥‥」

(全力でしょんぼりしている高雄)
(立ち直ったらしい)

「まあ、さておき」
「君が世間を見て回って、そして考えて‥‥その上で、私たちの顔をひっぱたたきたいというなら、いつでも水口の家に来なさい」
「大丈夫だ、転生した君は、紛れも無く『水口・琴里』なのだから」
「誰もそれを否定することはできない。そのために、木村君が頑張ってくれたのだから」

(促され、車椅子を琴里の側へ移動させる)

「さ、行きなさい。さすがにもうすぐ迷宮横丁にも警察が来るだろう」
「君と私が同じ時間に同じ場所に居た。それはよろしくない」
「この裏工作だけは‥‥例え八百万の神とて邪魔させるわけにはいかないのだ」

(琴里を車椅子に乗せてドアの方を向く)

「木村君、よろしく頼む」
「ああ、ひとつお願いがある。君の知人の猟兵から事の次第を今回協力してくれた彼らに」
「そう、あの長い黒髪の女性で眼鏡を掛けた胸の大きい‥‥琴里、そんな目でパパを見るんじゃありません。猟兵いっぱいいるの! 特徴を正確に伝えないと木村君も困るだろう?!」

(自分と琴里の笑い声がしばし響く)

「‥‥琴里。いつも慌ただしくてすまないね」
「元気に過ごしなさい。それから‥‥お帰り」
「いつか、どんな目的でもいいから。公衆の面前で君と会える日を楽しみにしているよ」

(記録はここで終わり)
(琴里を連れて、人目につかないよう、迷宮横丁を出る)

●Kill me? no, I alive!
 ――死んでいるに等しい、と思っていた。違う、本当に『死んでいた』のだ。
 ――籠の中の鳥だ、と思っていた。違う、本当に『籠の中に入っていた』のだ。
 ――私の味方など誰もいない、と思っていた。違う、『ずっと味方が側にいた』。

 私の中で色んな情報が錯綜する。今までの経験と、猟兵の話と、お父様からの話と。どれが正しくて、どれを信じればいいかわからなくて、どうしていいかわからない。

 それでも。ひとつだけ。どうしようもない事実がある。

「私は…………生きている」
「……ああ。そうだ」
 私の呟きを、木村という記者が肯定する。
「君は、正真正銘『生きている』。この世界で暮らす『人間』だ」
 彼の言葉に、つぅっと涙が頬を伝う。私の言葉を肯定する言葉。いえ、これが否定する言葉であっても。

 ああ、そうか。私が欲しかったのは、外との繋がり。自分の世界に干渉し、それを壊す何か。
 私はこれから、それを得ることができる。それが出来る未来ができた。

 絵でも小説でもかける。
 文句を言う口も引っ叩く手もある。
 私がしたいことを、出来る。
 もしかしたら、猟兵にだって。
 バイクに乗ることだって
 ロボは……まぁいいかな。

 これから先、私は色んなことが出来る。

 いつか。また彼らに、私を助けてくれた猟兵たちに会えることがあるのなら。
 こう告げてみよう。

 ――私を殺す? できるものならやってみなさい!


●手紙の最後に
 事の次第を知った猟兵のあなたへ。
 出来るなら、この事の次第はあなたの胸に秘めたままにしていただけないだろうか。
 そして祝福してやって欲しい。一匹の小鳥がサクラミラージュの世界へ飛び立ったことを。
 もし、いつか出会ったなら……その時はひとりの友人として、声をかけてあげて欲しい。
 『生きている』彼女の姿を喜び合いながら。

最終結果:成功

完成日:2020年07月09日
宿敵 『人斬り『十香』』 を撃破!


挿絵イラスト