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Kill me, you kindly(作者 るちる
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●優しさで、殺して
「ごほっ、ごほっ」
 死の気配がする咳。息を吐くごとに魂が抜け落ちてしまいそう。

 ――苦しい……私、もうすぐ死ぬのね。

 もっとも……『私』は既にこの世には『いない』人間だけれども。

 誰も『私』を見ない。
 世話をしに来るメイドですら、私を『私』としてではなく、他人の目に触れさせてはならぬ『忌み者』として扱う。
 私は……水口の家にとって存在してはいけない者なのだ。

 ――私は……生きているのかしら?

 誰とも話すことなく。誰にも見られることなく。
 このまま死んだとして……私が『此処に居た』という何かは残るのか?

 きっと、何も残らない。この世に何も残すことのないまま、誰とも繋がりの無いまま、私は。

 ――いやよ。そんなのは絶対にいや。

 私は『生きている』のだから。どうせ死ぬのなら。

 部屋の片隅を見る。そこに佇むのは、とても不安定なこの世にあらざるもの。うっすらとした影のような存在。
 これが何かはわからない。きっと良いモノではないのだろう。

 ……でも。

 今、この世で唯一、私に反応する存在なのだ。
 まったく動かない両足を引きずって、彼女の側まで行く。針で指先を突いて、小さな血溜まりを作った後、彼女の口に指を突っ込む。
 彼女の喉が、こくん、と血を飲みこんだ。

 この行為に何の意味があるのか、それはわからない。
 ただ……少しずつ、その影が濃くなっている。このまま行けば……いつか『目覚める』、そんな気がする。
 その頬を愛おしく撫でながら、私は囁く。

「貴女が目覚めたら……真っ先に私を殺してね?」

 私を殺すという行為は。私が『生きている』から成し得るものだ。
 彼女に『殺された』なら、私は『この世に在った』ことになる。

 ――どうせ死ぬのなら……誰かに殺されたい。

 水口・琴里(みなぐち・ことり)はその想いを籠めた眼差しで、目の前の存在――影朧を愛おしく見つめる。

●予知は時として、残酷に
「正直なところ……水口・琴里が死にかけているのは事実っすよ」
 鈴木・レミ(ハイカラインフォメーション・f22429)が目を伏せがちにして、話を続ける。
 先の予知は、サクラミラージュに潜む影朧を炙り出すものであった。ただし、今、その影朧は。
「自身の倒錯的な目的のために、琴里が匿っているっす」
 不安定なオブリビオンがゆえに、ただちに危険とは限らないのが影朧。しかし、彼らもオブリビオンであることには違いない。放置すれば『世界の崩壊』に繋がるのは必至だ。「琴里の影響か、影朧がじきに活動を開始する……これもまた事実っす」
 そうなれば、琴里は殺され、その後、もっと多くの人々も巻き込んで、たくさんの犠牲者が出てしまう。
「完全に目覚める前に。影朧を倒してきてほしいっす」
 それが今回の、レミからの依頼である。

 問題は1つ。
 琴里と影朧がどこにいるのか、はっきりした場所がわからない。

 そこでヒントになるのは琴里の口から出た『水口の家』という言葉だ。
「調べたところ、水口家っていうのは、サクミラのとある街に続いている華族の家系っすね」
 公式の記録によると、数年前に一人娘が『亡くなっている』。
 もし、それが琴里なら? その記録が表向きの偽装だとしたら?
「予知の内容からするに、実際には、人目触れず監禁されているってことになるっすね」
 ならば、その監禁場所に辿り着けば……そこに影朧がいる。

「唯一の突破口は、琴里の世話をしているメイドっす」
 監禁を隠すためか、様々なフェイクを重ねて。そして追跡を前提とした行動で、琴里の場所が簡単にはわからないようにしているようだ。
「その上で、迷宮横丁って入り組んだ路地裏を通るんで、また面倒なんすけど」
 常人であるなら簡単に撒かれるか、追跡を悟られるだろう。
 しかし、猟兵であるなら、追跡はそう難しくは無いはずだ。技能やユーベルコードを使えば、より効果的に行動できるだろう。
「琴里のいる場所まで辿り着いたら、後は影朧を倒すだけっすよ!」
 影朧は猟兵の影響も受ける。相対すれば、不完全ながら活動を開始して、戦闘に入るだろう。
「琴里は両足が動かないこともあって、戦闘に介入してくることはないっす」
 念のため、影朧を外まで誘き出せば、完全に琴里の安全を確保できるだろう。
 もちろん、それは『戦闘に巻き込まれない』という安全である。

●それは依頼とは関係なく、されど
 影朧を退治すれば、今回の依頼は完了だ。
 強いて言うなら、琴里をどうするか、という問題が残っているくらいだろう。
「琴里をどうするかは皆さんにお任せするっすよ」
 そのまま放置。そこから連れ出す。あるいは、ユーベルコヲド使いの超弩級戦力という立場を利用して、何か画策するのも大きな問題にはならないだろう……そう、殺してしまっても。
「ま、そこはおまけみたいなものっす。影朧退治、しっかりお願いするっすね」
 そう言ってレミは猟兵たちを送り出す。

 影朧退治という猟兵の仕事に添えられた、琴里とどう向き合うかという物語。これをどうするかは……あなた次第。





第3章 ボス戦 『人斬り『十香』』

POW ●血戦山河
【魔刃刀『裏正』】が命中した対象を切断する。
SPD ●悪鬼羅刹
自身に【裏正に封じられしかつて斬った人々の怨念】をまとい、高速移動と【斬撃による衝撃波と血のような斬撃波】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
WIZ ●百花繚乱
自身の【瞳】が輝く間、【魔刃刀『裏正』による斬撃】の攻撃回数が9倍になる。ただし、味方を1回も攻撃しないと寿命が減る。
👑11

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はガイ・レックウです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●水口・琴里の独白
 私がこの屋敷に軟禁されて、どれくらいの時間が経ったのか。もう日を数えるのも諦めてしまった。流行病で倒れて、何が原因かはわからないけど、両足が動かなくなってから。私の世界はこの屋敷、いえ、この部屋で固定されてしまった。

 ――これはお前を守るために仕方ないんだ。

 そういって親が抱きしめてくれたことを覚えている。

 なら、どうして生かしておくの? それはただの親のエゴではないの?
 だって、私は『生きて』いない。

 この世界になってから、ここへの来訪者は世話役のメイドと親だけ。メイドだって2~3日に1度程度、親に至っては片手で数えられるほどしか会っていない。

 私にはここを脱出する術がない。両足は動かない。這いずって移動する程度はまだしも、立って歩くのは無理だ。
 メイドにしても、ペットの世話をしているような手間だ。私という『人』に対して何かをしてくれるわけではない。

 ここまで不自由な私を、同情するフリをして、あるいは親身になるフリをして近づいて来る存在を親は恐れたのだろう。『全てが奪われる』と不安になったのだろう。

 どれだけ親に綺麗事を言われようとも。

 私は私に存在価値を見いだせない。私がここに残されているのはきっと、水口を継ぐ跡継ぎを産むため。それも弟や妹が産まれれば不要となるだろう。

 しばらく前から絶え間なく襲ってくる胸の痛みと咳。明らかな異常を目の前にしても、メイドたちは何も言わない。
 きっと私は親にとっても『不要になった』のだろう。

 でも、でもでも!
 苦しくて胸を掻き毟りながら倒れていた時。それはふらりと現れた。いや、見えるようになった、だけかもしれない。現にメイドたちは彼女の存在に気づかない。
 彼女は、私だけに見える、私にだけ反応してくれる彼女。
 彼女ならきっと私の存在を証明してくれる。

 ――ああ、わかるわ。目覚めの時が近いのね。
 ――さあ、どうぞ私を殺していただけないかしら?

●メイドの独白
 メイドその3を捕捉した猟兵たち。メイドに詰め寄り、琴里の居場所を吐かせるつもりだったが。
「何? お嬢様を誘拐でもしてくれるの? 助かるわー」
 朗らかにメイドは告げ、あっさりと琴里の場所を教える。
 顔を見合わせる猟兵たち。
「面倒なのよもう」
 メイド曰く、お給金に対して荷が重すぎる、とのこと。
 メイドは口を尖らせて言う。もうこの仕事に利点は無い、と。
「お給金も良くても、自由が無いなんて最悪よ」
 そう。琴里の世話をする以上、琴里のことは他言無用だ。もし零れようものなら自分の命が無い。それは常に監視されているのと同じだ。
 それでも、以前までは『世話をする者は交代していく』制度があり、交代した後は水口の指示に従っていれば左うちわで生活ができたのだ。そのトレードオフこそがこの仕事の本当の旨味。
「でも交代が全然行われないの。つまり、私たちがずっと世話しなきゃなんないってわけ」
 つまり、一生、最悪今の給金で、制限された生活をせねばならない。勝手に辞める、という選択肢は取れない。それは文字通り、死ぬからだ。

「だから考えたの。殺しちゃえって」

 食べるものすら選べない琴里だから、その食べ物に毒を混ぜれば? 水口の直系は今、新たに産まれた跡継ぎに夢中で、琴里の様子など微塵も気にしていない。その証拠に、交代の制度が機能していない。
「死んでるも同然なんだし、居なくなっても誰も気にしないって」
 朗らかに笑うメイド。彼女の目に罪悪感などなく、それはつまり、琴里の存在が彼女らにとって『その程度』ということだ。

●覚醒する影朧
 その影朧、『人斬り『十香』』の意識は、いまだ微睡(まどろみ)の中にあった。
 されど、呼びかける声がする。それは『人』の声だ、と認識した(わかった)時、彼女の本能が沸き上がる。

 十香は、かつて帝都を騒がせた伝説の人斬り。魔刃刀『裏正』を片手に、数多くの人を斬り、殺めた者。ただ斬るだけではなく、斬るためにどうするかを思考し、自身の全てを人斬りに費やした『真性の人斬り』こそ、彼女の本質。

 ゆっくりと瞳を開ける十香の視界に……琴里がいた。


※猟兵たちが踏み込むタイミングは十香が瞳を開けたその瞬間。十香は猟兵を認識したならば、まず猟兵を排除しようとします。
※琴里は戦闘に介入する術を持ちません。巻き込もうとしない限り、安全です。
※琴里を取り巻く真実はいまだ闇の中。全ては状況証拠でしかありません。琴里を今の状況から抜け出させるならば。その状況証拠を繋ぎ合わせた先に在る希望を教えてあげてください。

※3章のリプレイは。その構成上、個別ではなく、一気に書き上げます。
月曜日6日23時までにプレイング送信していただけると助かります(執筆予定日は水曜日8日)