人形は好きですか?
●午前三時の惨事
『キャハハハハ!!』
耳を塞ぎたくなるような笑い声が、そこらじゅうから響いていた。
目に入るのは赤、赤、赤。
『オッサンのくせして泣きながら「人形大好きぃ~」だってさ!聞いたァ?』
……それは、あなた達が脅したからじゃない。
『泣き顔もキモかったけど死に顔もマジキッモ』
どうして私、こんな人達と一緒にいるの。
『ほら、ローテだから。明日はアンタの番だかんね』
どうして私、この人達と同じ姿をしているの。
思うことは違うのに、違うのに。
『……うん』
怖くて怖くて……私の手は、その刃を受け取ってしまうのだ。
●あなたは人形が好きですか?
「……お前ら、人形は好きか?」
忌塚・御門(RAIMEI・f03484)は猟兵たちに向かってそんな第一声を投げかけた。
「UDCアースに、星見ヶ丘って地方都市がある。そこの歓楽街で、最近奇妙な連続殺人事件が起きてるんだが……ここまで言やぁわかるだろうが、犯人はUDCだ」
被害者はみな一様に小さな刃物らしきもので全身を滅多刺しにされて発見されている。
「発見現場は路地裏やトイレなんかで、一人になった頃合いを見計らって襲撃されてる。現れるUDCは……大体20cm程度の、少女の姿をした人形の“集団”だ」
小さな少女の姿の人形それぞれが刃物を持ち、寄って集って被害者を刺し殺したようだ。
人形たちは邪神の眷属として少女の心を埋め込まれており、各々がそれぞれに自我を持っている。眷属として作られたが故か、彼女たちは自らの意志で殺人に耽溺しているらしいのだが――。
「そこに、一人だけ例外がいる。『仲間』がニンゲンを殺して愉しんでる事実に怯えている、善良な心を持った『変わり者』だ。……こういうのの事を、『UDC-P』って言うんだったな」
猟兵たちに頼みたいのは、UDCたる人形を倒すこと、そしてUDC-Pである一体の人形の『保護』だと御門は言った。
人形の見分けは付きづらいが、猟兵にならばUDC-Pとそうでないものとはひと目でわかる。間違えて攻撃してしまうこともないので、保護を第一にして問題ない。
「今、人形たちは夜な夜な、歓楽街で集団になって獲物を探してる。まずは現地に行って、今まで事件が起きた場所を探ったりしてみるといいんじゃねーか?」
ああ、そうそう、と。御門は最後に言う。
「人形たち同士は互いに会話らしきコミュニケーションを取れてるみてぇなんだが、それはきゃらきゃらした笑い声にしか聞こえねえ。だが、被害者に話しかけるときには必ずこう聞いてくるんだそうだ。……「あなたは人形が好きですか?」 ってな」
それにYESと答えても、殺される。NOと答えたものが居るかどうかは不明だ。
「もしかすると、声を聞いたヤツくらいは探し出せるかもしれねぇな」
遊津
遊津です。
UDCアースにて、UDC-Pを巡るシナリオをお届けします。
第一章冒険、第二章集団戦、第三章日常の構成となっております。
第一章の部隊は地方都市「星見ヶ丘」の歓楽街です。市の中央にあります。
観光スポットにもなっており、名物料理の海鮮居酒屋などが立ち並んでいます。
UDCの人形たちと接触できるのは第二章からになりますので、第一章では被害者や事件現場、そうなりそうな場所などの調査などを行うことになります。
時刻は既に夜となっておりますので、店の客などに扮してみたり、歓楽街の人々から話を聞き出す等の行動が可能です。事件のことは噂にもなっており、知る人間も多いでしょう。
※歓楽街なので大人向けのお店もない訳ではなく、探せば見つかりますが、過激なプレイングにはマスタリングさせていただきます。
当シナリオは第一章が公開されてから受付を開始いたします。
念の為、マスターページを一読されてからご参加くださると幸いです。
それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
第1章 冒険
『歓楽街に潜む影』
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POW : 客に扮して調査する。
SPD : 従業員に扮して調査する。
WIZ : 記者などに扮して調査する。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
波狼・拓哉
人形は好きですか…まあ、どちらでも無いってのが正解かなぁ。ほら種族にドールさんいますしね。人形って括りだけでも色々ありますし。
ま、聞き込みかな。1人になった時狙われるって事だし…飲んでる人らがよく狙われてそうかな?居酒屋でよく飲んでそうなグループを探して話を聞きますか。
コミュ力使って最近見なくなったやつが居ないか、いるなら何か不思議な事がなかった辺りを聞いて行って…あとは実際行ってみるかなぁ。1人なら狙われるそうだし、酔った一般人ぽく演技、変装して目撃情報あった所に向かいますか。
(アドリブ絡み歓迎)
●お一人様飲み放題で
(人形は好きですか、……ねぇ)
波狼・拓哉(ミミクリーサモナー・f04253)は若者向け居酒屋チェーン店の片隅でグラスを傾ける。たこわさが美味しかった。とりあえずで頼んだレモン酎ハイもいける。
(まぁ、「どちらでも無い」ってのが正解かなぁ)
単に人形という括りだけでもフィギュアであったりドールであったりと多岐に渡る。猟兵の身として言うならば、ミレナリィドールという機械人形の種族がいることだし。
(んでー……まぁ、まずは聞き込みかな。確か、一人になった時に狙われるんだっけ? ……あとは、飲んでる人らがよく狙われてそう、か)
視線だけで店内の様子を伺う。お誂え向きに乾杯の音頭で盛り上がっている若者たちのグループが目に入って、拓哉は笑顔を作ると彼らの席へと歩いていった。
酒を一杯ずつ奢り、ニコニコと笑ってノリの良い青年を演じながら小一時間ほどもすれば、
青年たちの頭には程よくアルコールが回って判断力が落ちてくれた。
「今日はー、タクヤさんとの出会いを祝してー、かんぱーい!!」
「「「かんぱーい」」」
はいはい乾杯乾杯。いや、多分きっと今限定のオツキアイなんだけどね。交換した連絡先とかも全部ダミーだし。
「そういえばさあ、最近ここらで事件が起きてるんだって?」
「事件っすかぁ?」
「いやさあ、今日入ろうかなって思った店がそれでやってなくてさぁ」
「あー、もしかしてそれ、あのー8丁目の角曲がったところのー」
「そうそうそれそれ」
適当なところでそれらしく話を振ってみると、勝手に辻褄を合わせて話を成立させてくれる。
「滅多刺しなんでしょ、トイレの個室で」
「うわちょっとやめてよ一人でトイレいけない」
「でも8丁目の焼き鳥屋でしょー? あれは店の裏って言ってたし」
「へー、ちなみにさ、最近この辺の飲み屋で見かけなくなった常連さんとかいる?」
少し水を向けると、青年たちはアルコールで回ってない頭でそれでも聞かれたことには答えようと考えているようだった。ややあって、髪の長い女が口を開く。
「そういえば最近ミサヨさん見ないんだけど」
「あー、あの色んなトコで一人飲みしてる。新規開拓に忙しいんじゃない?」
「え、ああ。うん……きっとそうだよね……?」
何かに気づいてしまったらしい女は顔を青褪めさせている。それを見なかった体にし、拓哉はもうしばらく好青年の仮面を被り続けて彼らとの酒席につきあうことにして、本日三杯目のジョッキを呷る。つくねがやたらと美味かった。
居酒屋を出て、次はハンバーガー食べたいとか言い出し近場の店へと移動を始めた青年たちの列から外れ、拓哉は一人になる。
「はぁー疲れた」
上着を着替えて帽子をかぶる。飲み会好きな好青年の役はこれでお終いだ。
(んじゃ、実際行ってみるかなぁ。8丁目の焼き鳥屋だっけ?)
目当ての場所にはすぐにたどり着くことが出きた。事件現場と思しき場所には立入禁止のテープが貼られていた痕跡はあるが、既に撤去されている。
わざとふらつくような足取りで人の目から遮られた場所に入り込む。
ネオン街の中にありながら明かりの消えたそこだけどこか異界のような異質さを感じた。
――きゃぁ、きゃっ、きゃ……
ひそひそと囁きあうような声に、振り向かぬまま周囲の様子を伺う。
確か、件の人形たちの言葉は普通の人間にはきゃらきゃらとした声にしか聞こえないと言ったはずだ。じっと耳を澄ましてみるが、その声は先程でお終いだったらしい。
(勘違い? 聞き間違い? いや、今のは、アタリだったよね)
「……とりあえず、もう少しそのへんぶらついてみますか、と」
拓哉は歩き出す。まだ夜は始まったばかりだった。
大成功
🔵🔵🔵
浅間・墨
記者や従業員は私にはとても難易度が高いので…。
客として繁華街中をのんびり散策しようと思います。
…それも…その。…かなりの…難易度なのですが…はい。
今日来た観光客を装い土産屋や甘味の店に立ち寄ります。
そして他のお客さんの会話に耳を澄ませつつ買い物を。
気になった単語が耳に入ったら勇気を出し声をかけます。
「あ…あの、なに…か…あったの…で…か?」
おば様や年配の方に絞って声をかけようと思っています。
…話が好きそうな方の方が勝手に色々と聞けそうなので…。
ただ『少し失敗をしたかもしれません』と後悔するかも。
でも話を聞くのは苦痛ではないので重要事項は記憶します。
今回愛刀は持っていきません。違和感ありますし。
●名産和菓子の小豆の産地
「飲み放題、週末限定割り引きやってますよどうっすかー!」
声の大きな客引きにびくりと肩を震わせる。
顔を伏せ、ふるりと首を振ると青年は残念そうにしながらもそれ以上追求してくることはなく、それに胸をなでおろしながら、足は自然と小走りになる。
人見知りの激しい浅間・墨(沈黙ダンピール・f19200)にとっては、客のふりをして繁華街を歩くことさえもかなりの高難易度案件であった。
しかしそんな本人の心情とは裏腹にややぎこちないその佇まいは来たばかりの観光客らしく見えており、違和感とは遠く離れたものだった。
繁華街を歩き続けることしばらく、ふと目に入った甘味処に足を踏み入れる。
昼間ならばもっと賑わっていたその店は、既に夜ということで客も少ない。地方の名物を材料に作ったという餡蜜は絶品で、墨はしばらく喧騒を離れて癒やされるのだった。
「……え、今日も村西さん無断欠勤?」
「そうなのよねぇ、そろそろ次のシフトも組まなきゃいけないし……」
静かな店内では店員達の噂話が耳に入ってくる。本人たちは声を潜めているつもりのようだったが、周囲の様子を注意して聞いていた墨には筒抜けだ。
ベルを鳴らして(注文の際に店員に声をかけなくて済むのは彼女にとって非常に助かるシステムだった。)店員を呼び、追加の注文をしながら勇気と声を絞り出す。
「あ……あの、なに……か……あったの……で……か?」
「はい?」
少し強めに聞き返されて背筋が冷える。しかしすぐに年配の店員はああ、と一人納得したように頷いて。
「最近ねぇ、このへんちょっと事件が多いのよぅ」
噂好きなのだろう、墨が相槌を打つのを待たずして店員は勝手に喋り続ける。注文の品を運んできて、墨がそれを完食するまでに、彼女はパートの従業員が無断欠勤を続けていることや、彼女がもしかしたら最近この辺りを騒がせている事件――即ち、独り歩きのものや一人になったタイミングで何者かに襲われ滅多刺しにされるという――に巻き込まれたかもしれないと噂されていることを丁寧に教えてくれた。
墨はその雑多な情報の中から、必要事項だけをしっかりと記憶に留めていく。
「お客さんは一人で観光に来たの?」
「え……あ、の……」
「まぁとにかく、夜中の独り歩きは危ないってことだからさ」
話を終えた店員が戻っていくのを見ながら、墨の心臓は破裂寸前だった。
ちゃんと違和感なく振る舞えていただろうか、なにか迂闊なことをしなかっただろうか?
(……少し、失敗をしたかも、しれません……)
軽率な行動をしたのではないかと後悔しながら会計を済ませ、そしてまた繁華街を歩き出す。多くなってきた客引きを避けていけば自然、人通りの少ない場所へと足は向かっていた。
――きゃら、きゃら……
不意に吹いた向かい風の中に小さく甲高い笑い声が聞こえる。墨の足が止まった。
そして身に纏わりついてくるようなそれは、視線だろうか。
長い前髪の下で目を閉じ、声と視線の出どころを探る。しかしそれらはすぐに雑踏の中に溶けて消えてしまった。
(……見られていた、のでしょうね……)
墨は視線の主を探して、それを殊更強く感じた方向へと歩みを進めるのだった。
大成功
🔵🔵🔵
花菱・真紀
十朱さん(f13277)と
ゲーム内のHN:Hana
とりあえず居酒屋とかで【情報収集】してみます?俺達も何か食べながら周りの話を聞いたり【コミュ力】で声をかけてみたりですかね?
いやぁ、まさかNagiBombさん(ゲームHN)が猟兵さんだったなんてまだ信じられないですよ…。
十朱さんは人形好きですか?俺はデフォルメされた小さめのフィギュアとかクレーンゲームのぬいぐるみとか結構好きなんですけど…子供っぽいですかね?ぬいぐるみ可愛いじゃないですか…姉ちゃんも好きだったし。
でもホラーでの人形も割と定番って言うか。
やっぱり人の形だと魂とか人格が宿りやすいんでしょうね。
…!ゲーセン行きます!
十朱・幸也
花菱(f06119)と
ゲーム内でのHN:NagiBomb
とりあえず、海鮮居酒屋とやらに行ってみるか
店員にオススメとか聞いて、注文
頃合い見て、噂話とか聞いた事ないか追加注文がてら【情報収集】
そりゃ、こっちの台詞だっつーの
まさか『Hana』が猟兵だったとか、どんな偶然だよ
食いたいモンあれば、オニーサンが奢るから遠慮なく食えよ?
人形なぁ
普通のもデフォルメのも割と好きだぜ、二次元キャラなら尚更
アンティークっつーの?そういう人形も興味あるな
コレでも一応、人形遣いだし?
ぬいぐるみも色々あるよな、ふわふわしてたり
つい、クレーンゲームで取りたくなるわー(けらけら
この依頼終わったら、ゲーセンにでも行くか?
●仮にHNしか知らない間柄でも
「じゃあ俺、梅サワーください」
「俺はこっちの塩レモンサワーで。あとはとりあえずシーザーサラダとワカサギの唐揚げセットください」
「かしこまりましたー」
その店は、それなりの規模の海鮮居酒屋だった。お通しをつつきながら待っていたアルコールが届くと、二人は乾杯の声を上げる。
「いやぁ、それにしてもまさか『NagiBomb』さんが猟兵さんだったなんてまだ信じられないですよ……」
感慨深げに言うのは、花菱・真紀(都市伝説蒐集家・f06119)。まだアルコールは回っていないが、興奮のあまり頬が紅潮している。
「そりゃ、こっちの台詞だっつーの。まさか『Hana』が猟兵だったとか、どんな偶然だよ
」
それに答えるのは十朱・幸也(鏡映し・f13277)だ。彼もまた予想外の出会いに喜び、瞳を輝かせている。バトルゲーマーである以上にオフでもゲームに没頭する彼らは互いの正体を知らずに同じゲームの中で友好を育んでいた。これはそんな二人のオフ会のようなものである――勿論、事件の調査も忘れてはいないが。
「食いたいもんがあればオニーサンが奢るから、遠慮なく食えよ?」
「あっ、すみません、そんじゃあゴチになります!」
頭を下げつつも、真紀は年下として奢られる立場に甘んじることにする。
二人が入った店はなかなかの賑わいを見せる海鮮居酒屋だった。
各テーブルにつけられたベルを鳴らせば、手拭いを巻いた店員が注文を取りにやってくる。
「えーと、魚介天ぷら盛り合わせとシーザーサラダと……あとオススメとかあります?」
「それでしたら今はホッケの開きとが冬季限定メニューですのでー、はい」
「じゃあそれも追加で。それとこのタラのあら汁ってのもください」
「十朱さん十朱さん、このワカサギの唐揚げマジで美味いですよこれ」
「あ、じゃあそれもう一皿。それからワカサギの天ぷらの方も……お前、牡蠣鍋って頼んだら食うか?」
「食いますね!」
「じゃあそれひとつ」
「あ、あとですねーグレープフルーツ酎ハイお願いします」
「ああ、じゃあ俺は塩レモンサワーもう一杯」
ひと通り注文し、店員が去っていったあと、真紀はこほんと咳払いをしてから幸也に目配せをして、わずかに声量を上げて口にする。
「そういや、十朱さんは人形好きですか? 俺は俺はデフォルメされた小さめのフィギュアとかクレーンゲームのぬいぐるみとか結構好きなんですけど…子供っぽいですかね?」
ほんの僅か、一瞬だけ、店内のざわめきがまるで演奏を中止したかのように止まったのは、果たして気の所為だったのか否か。
幸也はそれに口角を上げ、こちらも周囲にわざと聞こえるような、しかし不自然でない程度の……興奮した酔客の粋を出ない程度に声を大きくして答えた。
「人形なぁ……普通のもデフォルメのも割と好きだぜ? 二次元キャラなら尚更な」
「あとほら、クレーンゲームのぬいぐるみとかって可愛いじゃないですか……」
姉ちゃんも好きだったし。亡き姉のことを語る真紀は、かつてその死の記憶を封じていた頃よりもどこか色づいて、張り切った様子に見えなくもない。
「あー、ぬいぐるみも色々あるよなあ、ふわふわしてたりもちもちしてたり。素材も綿とかビーズとか低反発のとか」
もう何度目になるのか店員を呼び、追加注文をしながらも二人の会話は止まらない。否、敢えて止めていない。
「アンティークっつーの? そういう人形も興味ある。……コレでも一応、人形遣いだし?」
最後の言葉が何を意味するか、このUDCアースではそれこそゲームか何かの話だと思われることだろう。
「アンティークですかぁ。あー、でもホラーでの人形も割と定番っていうか」
ぴたり、と店員の動きが不自然にぎこちなく、止まった。二人の目はそれを見逃さない。
「やっぱり人の形だと魂とか人格とか、宿りやすいんでしょうね」
「あー、ひとりかくれんぼってぬいぐるみ使うんだっけ?」
「綿出して中に米詰めるんで、ぬいぐるみですねぇ」
けらけらとそんな話題をわざと面白がっているようにしてみせる。咎める者が出てきたらそれは今の彼らにとって貴重な情報源というやつだ。
件の店員はやや顔色を悪くしたままテーブルを離れ、それきり彼らのテーブルに来ることはなかった。
「でもやっぱぬいぐるみならクレーンゲームだよなぁ。“これ”が終わったら、ゲーセンにでも行くか?」
「……!ゲーセン行きます!」
そのままシメの雑炊と茶漬けをかっ喰らい、ついでにデザートまで堪能して店を出る。
行き先は勿論ゲームセンター、ではない。そこへたどり着くまでにはまだ、彼らにはこの街でやることが残されているので。
人気の少ない通りを選んで歩いていれば、「お兄さんたち」と後ろから声がかけられた。
振り向けば、私服に着替えてはいるが件の居酒屋の店員であった。
「あれ、君さっきの」
「もう上がりなんで……あの。お兄さんたちこの辺の人じゃないのかもしんないっすけど、あんまりこう……人形の話、大っぴらにしない方が良いっすよ。……狙われる、んで」
「――狙われる?」
店のユニフォームを着ていたときには年齢まではわからなかったが、私服でみるとそこそこに若い少女だった。もしかすると高校生ぐらいだろうか。
少女は当たりを憚るように、抑えた声で言う。
「その、最近ここらブッソーで……殺人事件とか起きてるんすけど……友達が、第一発見者っていうか……事件現場で、殺されてる最中の隣のトイレに入ってて。今は、入院してんですけど……殺されたの、友達もよく知ってるドールオーナーさんで、……犯人は、殺す前に、『人形は好きですか?』って聞いた、らしくて」
「……それに、なんて答えたって?」
「ケーサツに色々聞かれて、あの子ちょっと今寝付いちゃってて……でも。アタシはあの子が嘘とか言うはずないって信じてるんで!!」
「ちょ、ちょっと落ち着けって!」
興奮して叫ぶ少女を真紀が宥める。話を促したのは幸也だった。
「それで、……何があったか聞いたのか?」
「どこから入ってきたのかは、あの子もわかんないみたいでしたけど……人形好きかって聞かれて、オーナーさんは“好きだ”って答えたって。アタシはその人さんとは直接の知り合いじゃないからわかんない、っすけど……あと、ずっと女の子みたいな高い笑い声が聞こえてきてたって話してくれました。それで、犯人は人形が好きな人を狙っているのかもしれないって……それだけはちょっとずつ話、広まってきてて」
「わかった。注意する。ありがとな。わざわざ教えてくれて」
二人は話しながら駅の近くまで少女を送っていく。見知らぬ二人組に友人の影を重ねたのだろう少女は、何度も礼をしながら駅の中へと消えていった。
「……それで、NagiBombさん。どう思います?」
「俺の勘でいいんなら。多分これは“順序が逆”だと思うんだよな。被害者が人形を持ってたから殺されたんじゃなく、犯人が人形だったから人形を持ってた人間をその日の獲物にした……そういう感じじゃないか? Hana」
「同感です。それにしても、隣の個室に人が居ても一人きり認定なんですね……」
「気づかなかったってことはねー……よな。姿を見られなかったから放置したのか、サイズ差的に見られる前に殺して逃げることが可能だったか。……後者な気がするぞ」
言葉と推理を交わしながら、二人の足は少しずつ少しずつ繁華街の明かりから路地の薄暗がりに近づいていく。
獲物を品定めする少女たちの視線とは、彼らはまだかち合わない。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
七篠・コガネ
お人形さんもぬいぐるみも大好きです
でも物騒なのは嫌いです…
さて。何か不穏な匂いがするのはよく分かりました
酒屋のトラックが停まってるですね
生体反応が無いからトラックには今誰もいない様子
酒屋のフリして積まれてるお酒を飲み屋へ運んじゃいましょう【怪力】
飲み屋の店員に話聞きます
最近この辺で事件があったのです?
僕、お人形さん好きだから怖いんですよね
危なそうな場所って何処でしょう?教えて下さい
UDCアースの地図データをインストールしてあります
【暗視】を凝らしながら教えてもらった場所に行ってみましょう
電線引っかからないよう気を付けながら思い切って空飛んで!
この地図データがあれば目的地の位置はすぐに分かります
●大人たちが飲むビールへの子供の苦くかっこいい憧れ
人形も、ぬいぐるみも、子どもは大抵好きなものだ。
どちらが好きかと比べられたら、そこには個人の好みが強く反映されてくるかもしれない。
たまに彼らに可愛らしさや親しみやすさよりも怖れの方を強く感じる子どもも居るだろう。それもまた個性の一部だ。
少なくとも、七篠・コガネ(ひとりぼっちのコガネムシ・f01385)はお人形もぬいぐるみも大好きな子どものうちのひとりだ。
経過年数でなく、精神面で大人か子どもかを語るならば。彼は背伸びをしたい子どもだ。
(……でも、物騒なのは嫌いです……。)
コガネはネオンに彩られた歓楽街の裏、きょろきょろとあたりを見回していた。
この街を、今、不穏な影が覆おうとしている。その浮足立った危うさに厭なものを感じながらも、コガネは自らに与えられたオーダーを遂行しようとする。
飲み屋の裏に泊まった酒屋のトラック。生体反応はなく、運転席にも助手席にも人は居ないようだ。しかして周囲にそれらしき人物も発見できない――コガネは、一計を案じることにした。
コンテナの鍵をこっそりと壊し、中からまだたっぷりと中身が詰まったビール瓶を納めたケースを運び出す。コガネの力であれば、短時間でそれらを店の中に運ぶのは難しいことではない。
「おや、ありがとう。今日はコウノさんは?」
「い、今は席を外してるので、僕が代わりに運んじゃいますね!」
「ああ。急がなくてもいいからね……」
コウノさんが誰かはコガネにはわからない(このトラックの酒屋の店員か何かだろう、多分)が、まだやっていない仕事がいつの間にか終わっていたことだとか、確認作業諸々が吹っ飛ばされてることだとかは車を放っていなくなったいう一点で諦めてもらいたかった。
「そういえば、この辺で事件があったのです?」
「ああ、それねぇ……、みんな不安になってるわよねぇ。あたしらみたいな商売はね、お客さんがいなくなったらやってけないしねぇ……まだ警察の方からは何も言ってこないけどさぁ……」
「僕も、お人形好きだから……怖いんですよね」
「あら、お人形が何か関係があるの?」
初老の女性である飲み屋の主人はどうやら殺人事件の事しか知らなかったようで不思議そうな顔をする。犯人が人形であることは予知で判明したことで、人形への好き嫌いの問いは一人きりの時の被害者に向けられたもの。事件のことはともかく、人形が事件に関わっていることを知る現地の人間は少なかった。
「そういう噂があるですよ」
「あらそうなの。最近ね、お人形を連れてきて一緒にお酒を飲むのかしら? そういうお客さんもいるんですって。ほら、駅が近いから、市外からも人が集まるでしょ、ここは」
「ええと、そう、ですね」
既に周辺の地理情報はインストールしてある。この繁華街のすぐ近くには周辺都市へも繋がる大きな駅があることは知っていて、そしてそれはこの街で商いをする酒屋としても当然知っていることだろう。
「今度きたら、それとなく注意してみようかしら……」
「ええと、それで……あの、この辺で危なさそうな場所ってどこでしょう? 教えて下さい」
「あらあら、おかしな聞き方をするのね、怖いのに危なさそうな場所? まるで探検しに行くみたいだこと」
コガネの背に冷たい何かが落ちる気がした――それは人間で言う冷や汗に似たものだったが、ウォーマシンであるコガネは汗をかくこともない。今の感覚はその疑似体験であり、感覚でなく精神を司る機構が受容したものだ。
とは言え、会話の相手は歓楽街で長年を生き抜いてきたであろう女性だ。くすくすと笑いながら、やぁね冗談よ、と笑ってみせるその言葉に裏はないのだと直ぐに判断できて――彼女は、近づくのは危険よと言って、幾つかかの場所を教えてくれた。
飲み屋の店主との会話から得られた目的の場所へ目指し、コガネは翔ぶ。
電線に引っかからないように気をつけながら、文字通り空を飛んで、冷たい風を浴びながら歓楽街の裏道を翔んでいく。
(この地図データなら、目的地の位置はすぐにわかります……)
そしてそれは、夜空を駆ける一瞬だった。
――きゃらきゃら、きゃっ、きゃっ……
擽るような笑い合う声、人よりも高い場所を翔ぶコガネには聞こえない筈のそれと、彼は今一瞬「行き合った」。
(もしも、今の感覚が正しければ……!)
コガネは方向を転換する。インストールされた目的地を変更、たった今通った声の持ち主を、追跡する。
その先に、自身の目的とするものがあるという、そんな確信が、たしかにあった。
大成功
🔵🔵🔵
クラウン・アンダーウッド
人形が好きってわけではないけれど、人形作りがボクのライフワークみたいなモノだからねぇ。ナニが人形の意思を持たせるに必要なのか研究している身としては今回のUDCは興味が尽きないよ♪
からくり人形一体を伴い、ワクワクとした感情を顕にしながらクラウンはそう呟く。
さてさて、凄惨な事件現場で情報を集めるのも良いけれども直接件(くだん)の人形を捜索するとしようか♪
さぁ、γ。アポリュオンのイナゴ!
キミの蝗達に彼らを探させておくれ♪
γ(個体名)を通して絡繰蝗の大群に指示を与えて件の人形達を捜索し追跡させる。蝗はそのサイズや数を利用してどんな隙間からでも侵入でき広範囲を捜索する。
収集した情報はγを介して掌握する。
●道化師のカードは誰とも番わない
キープアウトテープが剥がされてまだ数日と経たないその場所に、道化師のごとく奇抜な衣装を纏った男は興奮を隠さぬ表情で立っていた。
「人形が好きってわけではないけれど、人形作りがボクにとってのライフワークみたいなものだからねぇ。ナニが人形の意思を持たせるに必要なのか……研究している身としては、今回のUDCは興味が尽きないよ♪」
傍らにからくり人形を伴い、クラウン・アンダーウッド(探求する道化師・f19033)そう呟く。
「さて、さて……凄惨な事件現場で情報を集めるのもいいけれど、そろそろ直接くだんの人形の捜索に入ろうじゃないか♪」
クラウンはからくり人形に命じる。
「さぁ、γ。【アポリュオンのイナゴ】!キミの蝗たちに、彼らを探させておくれ♪」
ぞわり、夜の影から稲を食い荒らす害虫たちを模した超極小サイズの絡繰人形が姿を表す。アスファルトを覆うほどのそれらは、クラウンの傍らに寄り添うγと名付けられたその一体を介してしか命令することが出来ない。
蝗たちが瞬く間に夜の歓楽街中に散っていく。極小にして大量のそれらはいかなる隙間にも入り込み、歓楽街の至る所をカバーする。それらの情報はからくり人形のγを介して掌握されるため、例え蝗が轢き潰されようとも、その痛みがクラウンにフィードバックされることはなく、同時に異なる場所を見る視界への負担も、異なる音を聞く聴覚への負担も無い。しかし、情報は確実に彼の手元へと集約される――。
―――きゃらきゃら、きゃら……
―――きゃらきゃら。
―――きゃら、きゃら……
程なくして、クラウンは知る。今自分が追っている標的の人形と、蝗たちは確かに幾度もすれ違っている、それは間違いない。予知された甲高い笑い声が、歓楽街中に散った蝗の聴覚に引っかかっているのは確かなことだ。
だが、しかし。それら無数の蝗たちの複眼は、怪しい人形の一体も目にしてはいない。
「これは、姿を消している……或いは、ターゲットの前に現れたときだけ具現化している、ということかな♪ このどちらかであれば、蝗たちの目でも『無いものを見ることは出来ない』わけだからね♪ ただ……声を聞いているところを鑑みると、前者が濃厚かな♪」
クラウンは笑顔のまま、情報を聴覚に絞って更に収集を絞り始める。
――きゃらきゃら、きゃら。
次第、彼の推測は一つの結論へと導かれる。
今夜、人形たちが殺人を犯そうとしているとして。
それが人目のつかない場所であるとして。
一人きりの人物が標的であるとして。
人形たちの声は、きゃらきゃらとした笑い声にしか聞こえないとして。
けれど、たったひとつ、人の耳に届く言葉があるとして。
それが発せられる場所は。
掌握する。ただひとつ。クラウンは、その場から一歩たりとて動く必要はない。
(むしろ、動いちゃうのはちょっと無粋ってものだろうねぇ♪)
彼の背中に、声が投げかけられる。
「……に、人形は……好き、ですか?」
その言葉を聞いて、ゆっくりと、クラウン・アンダーウッドは振り返る。
「やぁ――待っていたよ」
彼の目の前にはナイフを構えた人形が、震えながら浮かんでいた。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 集団戦
『偽りの心を授けられた人形』
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POW : 我が身を砕かせ敵を討つ戦術
【相手の攻撃に対し、理論上最も有効な反撃】を発動する。超高速連続攻撃が可能だが、回避されても中止できない。
SPD : 限界を知りつつもそれを超える要求
【身体耐久力の限界を超えて操る邪神の眷属】を召喚し、自身を操らせる事で戦闘力が向上する。
WIZ : その身を犠牲に得る情報
【全身】で受け止めたユーベルコードをコピーし、レベル秒後まで、全身から何度でも発動できる。
イラスト:黒江モノ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
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ナイフを手にした人形は、猟兵を前に震えている。
その後ろから、否、どこからか、幾体も幾体も同様に刃物を手にした人形たちが湧いて出てくる。
“ちょっとぉ何やってんの、早くやっちゃえよ”
“でも。私、私……やっぱり……”
“ああもう、グズ! もういいから代われってば!”
彼女たちの会話は猟兵たちには聞こえない。
きゃらきゃら、きゃらきゃらと笑い声が交わされるのみ。
それでも猟兵たちは確信するだろう。どれが保護すべきUDC-Pであり、どれが倒すべきUDCの恐るべき怪物であるのか。
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・『偽りの心を授けられた人形』達が現れました。
まずは、UDC-Pである一体を保護してください。
誰がどのように保護するかは最初の失効日までにプレイングを頂いた中から「保護」について書いてくださった方のものを選ぶこととなると思います。
(UDC-Pが保護された後は、保護に関するプレイングは不要です。)
UDC-Pも含め、人形たちの言葉は猟兵たちにも「きゃらきゃらとした笑い声」にしか聞こえていません。(リプレイ中で言葉を発する場合もあると思いますが、それは猟兵には聞こえないものです)ただし、人形たちは人間たちの言葉は理解しています。
現場は以前の殺人の現場であり、既に警察の捜査が一度入ったためある程度綺麗に片付けられています。人が近寄ることもなく、瓦礫などに足を取られる・一般人に目撃されるなど、立地が戦闘の邪魔になることはありません。
アドリブについて
多めにアドリブが入ると思われます。
(例として、人形たちはユーベルコードの他に刃物を有しているため攻撃手段として用いてくるなど)
やめてほしいという方はプレイングの頭にアドリブ不可と一文お願いいたします。
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十朱・幸也
花菱(f06119)と
見た目同じで、声も区別がつかねぇってのは厳しいな
後は動きの違いとかを【見切り】【情報収集】するかね
花菱、UDC-Pへの声掛けは頼むわ
俺と千薙は足止めを
花菱への攻撃は、どちらか近い方が【かばう】
どれがUDC-Pか判明するまでは
【武器受け】や【見切り】でダメージを最小限に留める
判明した所で『戦姫』を発動
悪ガキ共にはキツイお仕置きってな
千薙の衝撃波を回避した相手の位置は、即座に花菱へ連携
二次元キャラで高性能だったら、
ちょっとは躊躇ったかもしれねぇけど……なっ!
ところで……和服も似合いそうだよな、この子
コスプレとか興味あるか?(そわそわ
花菱・真紀
十朱さん(f13277)と
あの中にUDC-Pがいるんですよね。
【視力】と【第六感】で見極めて攻撃しないようにしないと…あと出来れば早めに保護が出来ればいいかな…。
【クイックドロー】【スナイパー】【援護射撃】で十朱さんの援護をしながらUDC-Pに声かけ。【コミュ力】
相手の言葉は分からないけれどこっちの言葉がわかるならやる価値はあるよな。
誰かを襲うのが嫌だって他のみんなと同じ事をするのが嫌だっていうのならこっちへおいで。
俺達に敵意を向けないのではあれば俺達は君を迎えいれるから。
だからこっちへおいで。
見た目はほんと可愛い人形だよな…あ、和服とかも似合いそうですね!
●はじめの一歩の背を押して
幸也と真紀の目の前に大量に浮かんでいるのは同じ服装をして、同じ顔をした、声も同じようにきゃらきゃらとしか聞こえないUDCの人形たち。
けれど、猟兵の勘がそうさせるのか。濁った殺意を帯びたUDCたちと、それに怯えるUDC-Pの少女との違いは、外側に見えて聞こえるものが同じでも、瞬時に判別することが出来た。
「花菱!あの子は任せたぞ!」
「了解っす!」
真紀が走り出すと同時、幸也の十指に繰られてからくり人形の『千薙』が踊る。
“ウッザイ、何あのブス!!”
“まとめてぶっ壊しちゃおーよ”
――きゃらきゃら、きゃらきゃら。少女人形が笑いさざめいた。
群れなして躍りかかる人形たちを、千薙の薙刀が弾き飛ばす。
「二次元キャラで高性能だったら、ちょっとは躊躇ったかもしれねぇけどな……っ!」
千薙に溜め込まれていた怨嗟と呪詛が蒼黒に色づいて幸也に纏わりつく。陽炎のように空気が揺らいで、彼が今どんな顔をしているのかよく見えない。
「あと今、誰か千薙の事ブスっつったろ。なんかこう、わかるんだよそういうのは」
前出ろや、前。
薙刀が描いた弧に合わせて放たれた衝撃波が地面を割りながら最前列にいた少女人形たちを砕く。
「花菱!!七時の方向、二体!!」
衝撃波の直撃から逃れた人形が、真紀の手にした自動拳銃に撃ち抜かれて地面に落ち、そのまま墨のように溶けて消えた。それを一瞬だけ確認して、真紀は目の前で震える一体の少女人形へと手をのばす。
「誰かを襲うのが嫌だって言うなら」
ぴくりと、少女の肩が揺れた。
「他のみんなと同じことをするのが嫌だって言うのなら、こっちへおいで」
――きゃら、きゃらきゃら……きゃら。
そう語りかける真紀にだって、彼女の声は他の人形たちと同じようにしか聞こえていない。
それでも、真紀の言葉を怯える少女が聞くことができるのなら。届いていると、信じて。
「……俺達に敵意を向けないのであれば、俺たちは、君を迎え入れるから」
少女が顔を上げる。その瞳はガラス玉だ。けれど真紀には、その瞳が濡れているように見える。怯えて助けを求めているように、見えている。
「だから、こっちへおいで」
ほんの何秒か、それでも待つには長く感じる時間。
少女はそれまで震えながら握りしめていた手にしたナイフを、アスファルトに落とした。
“ちょっと、なにやってんの!?”
きゃらきゃらと笑う声から逃れるように、少女は手の中へと飛び込んでくる。それをしっかりと受け止め、胸元に抱きしめて、真紀は人形たちを撃ち落としながら幸也の元へと駆け戻る。
「お疲れさん」
「……っす」
短い言葉を交わす二人。
自らの腕にしがみつくようにしてみせる少女人形の様子をみて、真紀は呟く。
「見た目はほんと、可愛い人形だよなぁ……」
「和服とかも似合いそうだよな、この子。……なぁ、コスプレとか興味あるか?」
「あ、和服とか似合いそうですね!」
少女の手がとん、と真紀の腕をつつく。それは戸惑い半分、照れが半分にも思えるものだった。
“はーん、あっそう”
“ハーレムじゃん、そーいうのが好みだったってワケ”
“バッカみたい。もういいよ、さっさと殺そう”
――きゃらきゃら、きゃらきゃら、笑い声を立てる少女たちの上に異形の両腕が浮かび上がる。それこそが邪神の眷属。操り糸は見えずとも、その指が糸を繰るような仕草をして。
千薙の薙刀の一振りが、集った人形のナイフが一点に集中したその場所で止められる。
「ちっ……そろそろ悪ガキ共に、キツイお仕置きをしてやらねぇとな……――踊り狂え、千薙!!」
集る人形たちが拳銃に撃ち落とされ、開いた穴を縫って薙刀が衝撃波を生む。二度、三度と人形たちの列が割れ、アスファルトに罅が入った。
少女を守るように腕に抱く真紀の前に立ち、幸也はさらに凛々しく戦姫然と千薙を舞わせるのだった。
成功
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波狼・拓哉
あれね。…UDC-Pは見ただけで分かるなぁ。何ででしょう。…まあいいや。そういうのは学者とかの仕事ですし。
そういうわけで、オラー(早業で近づいて震えてる人形の持つナイフを蹴って武器落とし)ごめんねっと。…さてお手を拝借しますよフロライン、殺しずくしの人生なんて楽しくもないですよ…っと…キャラじゃねぇなこれ。
あ、そっちの娘たちは変わりそうもないんでこれあげますわ。ミミック!化け狂いな。
超高速で動くならこっちが逃げ出してもこっちにミミックのタゲが来ることもないでしょうが…目立たない、闇にまぎれる、逃げ足を使ってPを人形を連れて戦場から逃げますか。
……理論上ねぇ。理性ないのを読めるとは思えませんが。
●無貌の獣と夜通し踊れ
きゃらきゃらと笑うだけの人形たちが本当は何を言っているのか、ニンゲンたちはそれを理解することは出来ない。どの世界にいても言語の壁が存在しない猟兵であっても、それは一緒だ。
「UDC-P……Pでいっか。Pが見ただけでわかるのって何なんでしょう。まあいいや、そういうのは学者とかの仕事だし?」
拓哉は刃物を携えた少女人形たちを前にして笑う。
「これは俺の推測なんだけど、君たちかなりきったない言葉使ってるでしょ。なぁんかね、わかるんですよねぇそういうのってさぁ? 聞こえないから良いじゃんってやつ」
その笑みが。口元が。ぱっくりと裂けるように弧を描いて。
「あの子がこれからどう変わっていくかわかんないけど、君たちはこのまま変わりそうにないんで――これあげますわ。さぁ来いよミミック、化け狂いなァ!!」
箱型生命体、拓哉の召喚したミミックが獣に変わる――化ける。
後ろの二足でアスファルトを蹴り、両腕で飛び回る人形たちを掴み、ねじり切る。胴から繋がるその頭部に顔はなく、つるりとしている。
“なにこいつ、気持ち悪ッ……!!”
人形たちがきゃらきゃらと笑いながら突き立てたナイフに怯むこともなく、幾本もその背に刃物を生やしながらも獣は人形に掴みかかる。豪速でアスファルトに叩きつけられた何体かがどろりと溶けるように息絶えた。
「君たちがミミックに対して“理論上”最も有効な反撃が出来るとして……今のミミックには理性がないんですよねぇ。理性ないのを、読めるとは思えませんが」
拓哉の声が人形たちに聞こえているのかいないのか。どちらにせよ人形が何かを答えたとして、その言葉は拓哉にはやはりきゃらきゃらとした笑い声にしか聞こえないのだったが……人形たちには、言葉を発する余裕は与えられなかった。
餓えた獲物のごとくに駆け回るミミックは、さながら暴風のように人形たちを翻弄し、ねじりきり、叩きつけ、砕き壊す。台風に舞う木の葉のように宙を舞う人形たちこそが、無差別に「早く動くもの」を攻撃目標とする今のミミックにとって格好のターゲットで、拓哉はそれよりもゆっくりと動いていればいい。
「ばぁん」
ミミックへと向かっていった人形の一体を指鉄砲で撃ち、その首がねじ切られる。
「ははっ」
拓哉は笑って空を仰ぐ。そう言えば今日は満月だった。
成功
🔵🔵🔴
クラウン・アンダーウッド
無言でカバンから全てのからくり人形(以下 人形)を呼び出しUDC-Pの元へ歩む。10体の人形は各々両手に短剣を持ちクラウンの露払いをする。
UDC-Pに近寄り一言「キミのような子は大好きさ♪」
手を差し出し「ボクとトモダチになってくれないかい?」と笑顔で声をかける。
UDC-Pに「用事がすむまでこの中で待ってて」とカバンの中に入るように促し彼女?を保護する。
お待たせしたね!キミ達はよく笑うけど今度はその口から悲鳴が聞きたいな♪
足止めしていた全ての人形の瞳が輝き出し一斉に短剣をクラウンに突き立て引き抜く。
さぁ、パーティーの始まりさ♪
人形達は血の様な炎を纏った短剣を手に、笑いながらUDCを解体していく。
ルネ・プロスト
……んぅー
ちょっと、いやだいぶ出遅れちゃったかな?
情報収集は他の人に任せきりだったし
その分含めて挽回していかないとだね
人形達は死霊憑依&自律行動
開幕UC
騎乗したナイトのダッシュ&ジャンプで敵陣に突撃
UDCP以外は纏う暴風の放射で吹き飛ばし、宙に浮いた所を『悪意』のなぎ払いで追撃
ついでにUDCPの子がまだ保護されてなければ簡潔に保護しに来たこと伝えて抱き抱える感じに回収もとい保護
後は初撃と同じ流れで
重量足りなければ暴風で容易に吹き飛ばせるし
単純な能力強化だけならどうにでも
君達の性悪さは少し目に余るね
手加減なしのお仕置きが必要と思う程度には
それ故に、だからこそ
君達を――悪い子を狩り(弔い)に来たよ
●パーティー・マスト・ゴー・オン
「んぅー……ちょっと、いや、だいぶ出遅れちゃったかな?」
「いいや、まだまだ。パーティーは今から始まるところだとも!」
半人半馬の騎兵人形に抱えられて現れたルネ・プロスト(人形王国・f21741)に、クラウンは微笑みを返す。鞄から取り出された十体のからくり人形が、彼の前に整列していた。
「そう、情報収集は任せきりにしちゃったから……今から挽回するね」
悪意に染まった死霊達がルネの腕の中で大鎌の形に成形される。
ナイト
「行くよ、遊撃騎兵。制限は全て外すよ、一気に突き崩せ……!!」
抱えていたルネを背へと乗せ直した騎兵が、その身に紫電を纏った鎧装となって人形たちへと突っ込んでいく。
荒れ狂う暴風が少女たちを吹き飛ばし、宙へと舞い上がった彼女たちを大鎌の『悪意』が薙ぎ払い、腕を、首を、胴を刈る。
きゃらきゃら、きゃらきゃら、人形達が何かを笑いさざめき立てる。
「さあ、お待たせしたね!キミ達はよく笑うけれども……今度はその口から、悲鳴が聞きたいなぁ♪」
十のからくり人形が瞳を輝かせ、手にしていた短剣を一斉に――クラウンへと突き立てる。引き抜かれたそこから真っ赤な血が飛沫き、クラウン自身の笑顔を染めた。
“は、何やってんの、イミわかんねーんですけど……っ!!?”
きゃらり、笑い声を上げた少女人形の腕が消し飛んだ。きゃらきゃらきゃら、悲鳴なのか怒号なのか、響くそれはやはり猟兵たちには囁き合うような笑い声にしか聞こえないが――
「さぁ、パーティーの始まりさ♪」
クラウンから流れ出る血と同じ色の炎を纏った彼のからくり人形たちがけたけたと笑いながら、少女人形たちに襲いかかる。ある者はガラス玉の目玉を抉り取り、ある者は指先から順繰りに丁寧に少女たちのボディを刻んでいく
“ああもう、何なのよっ……あああ、痛い痛い痛いぃっ!!”
「さぁ、さぁ、ほら早く、悲鳴を聞かせておくれよ♪」
少女たちの声はクラウンには、否彼女たち以外には笑い声にしか聞こえない。例え彼の言葉通りに泣いて叫んでみせたとしても、それがそうとは伝わらないのだ。被害者たちが何を言おうと、少女人形たちが聞き入れることもなく嬲り殺しにしてきたのと同じように。
“くっそ、こいつらほんとうっざい……!!”
異形の腕、邪神の眷属が少女人形達の頭上に現れ、その手指が彼女たちにまじないをかけるような動きをする、少女人形たちはクラウンのからくり人形を速度で振り切り、逆にナイフでもって突き刺す。けたけたとからくり人形から漏れる笑い声は、少女たちとは違いそうとしか聞こえないのではなく、染め上げられた狂気によるものだろうか。
「……君たちの性悪さは、少し目に余るね。手加減なしのお仕置きが必要と思う程度には」
大鎌を振り翳したルネを背に乗せた半馬の騎士が跳躍する。
「それ故に、だからこそ」
悪意の大鎌は眷属の腕によって強化された少女たちの防御を紙のように破り、一瞬のうちにその首を刈り取った。首をなくした少女人形の身体がアスファルトに転がり、染みとなって消えてゆく。
弔い
「君たちを――悪い子を、狩りに来たよ」
半馬の騎士人形の背で大鎌を翳すルネの姿は死を運ぶ妖精のように幻想的で。
その一方で、けたけたと笑いながら少女人形たちを虐殺していくクラウンの狂ったからくり人形は残酷な御伽噺めいていた。
背後から喉元を短剣で貫かれ口から短剣を生やした人形が、ぶらりと揺れながら血色の炎に焼かれて煤となって消えていく。
「楽しんでくれているかい? パーティーは、まだまだ終わらないとも!」
ごぷりと血の塊を吐き出しながら、クラウンは月を仰いで両手を広げた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
七篠・コガネ
●保護
UDC-Pへ【ダッシュ】
自身を顧みずこの身でUDC-Pを庇いましょう!
切られて血が出るような軟な躰してませんからこれぐらい平気
もう大丈夫。僕のコートの中に隠れて
…お仕置きの時間ですよ…!
取り囲まれないよう注意しながらUCで攻撃を予測、躱す事に専念
時折、『Heartless Left』で【武器受け】をしますが
胸部コアマシンからの電気を左腕に流してますから
限界を超えた状態で感電するのはさぞ辛いでしょう!
上空へ高く【ジャンプ】をして蹴りを食らわす勢いで地面を【踏みつけ】
振動で人形達の動きを一時的に封じたら
そこを狙って『code-Nobody』で【一斉発射】!
過去へ還りやがれです!ゲロクソがァ
●夜明けを翔ぶ鷹
いつの間にか、東の空がぼんやりと明るくなりかけている。月は沈みかけ、夜の盛りを謳歌するこの街が微睡みに落ちる時が近づき始めていた。
――眷属の腕に操られて速度を増した少女人形たちのナイフが、コガネの肩を貫く。
それが実際に襲い来るのは、僅か刹那にも満たないけれどまだ未来の出来事だ。
故にコガネは軌道を変える。演算装置によって導かれた未来を変える。
“くっそ、ウッザイなぁさっきから、もう!!”
“カタい癖にハヤいとかサイテーじゃん”
きゃらきゃら、きゃら。ぱっと散った少女人形達が弾けるように散開し、コガネの腕へと切りつける。
コガネは左腕の内蔵型パイルバンカー「Heartless Left」でその刃を受け止める。バチバチと電流が迸り、人形の身体が跳ねた。
「その状態で感電するのは、さぞ辛いでしょう!」
それも読み通り。左腕のHeartless Leftには常に電流が流れるようになっている。しかし人形たちも賢しく、コガネの身体の右半身を執拗に狙ってくる――勿論それは、演算による回避が容易になる要因となったのだが。
空を飛び、少女人形よりも高位を確保し、攻撃の回避に専念するコガネ。
邪神の眷属に操られた人形たちは限界を超えた能力で宙を舞い、手にしたナイフでその硬い皮膚に傷をつけようと、あわよくば貫こうと執拗に追いすがる。
「……お仕置きの時間ですよ……!!」
コガネの身体が地面スレスレに近づき、その足がアスファルトを蹴った。更に高く高く翔んだコガネの背中からアームドフォート「code-Nobody」が展開される。そしてそこから発射される弾丸が、地面をずたずたに抉りながら人形たちに豪雨の如く降り注いだ!!
「過去へ還りやがれです、ゲロクソがァ!!」
“ふざけんじゃねーぞ、このデカブツ……!!”
きゃらきゃらと笑いさざめく声とともに、ナイフを構えた少女人形達が落下してくる。眷属の腕に操られている今、最早地面などに張り付いている人形は既に活動を止めた残骸だけだ。空を自由自在に飛べるのはコガネだけではない、腕に導かれるまま、少女たちもまた空中に躍り出てくる、その動きは決して空を飛ぶことを覚えたての雛鳥のように覚束ないものではなく、操られているがゆえに乱れはない。
それでも、その状態でようやく少女たちは一体一体が弾丸。対してコガネにはcode-Nobodyがある!発射された弾丸が、次々と人形たちを撃ち落とし、地に落とされた少女たちは彼の叫んだ通りにアスファルトの染みになる。
「どうですか、僕はまだまだ翔べますよ……!!」
太陽が少しずつ上りつつある中――空中戦は、コガネが制しつつあった。
大成功
🔵🔵🔵
浅間・墨
【閻魔】の一撃を以って人形さん達を眠らせます。
(早業、破魔、2回攻撃、鎧無視攻撃、限界突破)
「…ご、ごめ…な…い…痛くして」
少し奇怪な姿を想像していましたがとても綺麗です。
物理的に斬るのは引けるので邪心だけを斬りますね。
人形さんの懐まで潜り込むまで見切りと残像を駆使。
人形さんの攻撃は第六感と見切り…フェイントで回避。
あ。扱う刀は『国綱』でお願いします。
倒した人形さん達はどこかのお寺で供養できますか?
壊してしまうのは勿体ないと感じてしまって。
私達が壊した部分はなんとか修復してからお寺にと。
修復不可能だったら…包帯で壊した部分に保護を。
「休んで…ください」
もし保護する方が居ない場合のみ私がします。
●暁にひらり、
出来るものなら、自分たちが倒すことになる人形も直してやりたいと墨は思っていた。
壊してしまうのがもったいないほど、少女人形たちの姿は――少し奇怪なものだと思っていた、墨の想像とは裏腹に――とても綺麗なものだったから。
否、人形たちの姿がどんなものだったとしても、彼女は同じことを思ったかもしれない。
壊した部分はなんとかして修復するか、それでも駄目なら包帯を巻いてやって、どこかの寺で人形供養に出せるものならと。
……もしも。もしも彼女たちが、現世の人形の殻に宿った怪物なのであったなら、そうすることも可能であっただろう。
けれど、少女人形たちはその存在そのものがUDC――オブリビオンであった。
故に活動不能となり、倒された人形は骸の海に還っていって、その亡骸は残らない。ただアスファルトの染みになって、それさえも溶けて消えていってしまう。
それは残念で、悲しいことでならない。
それでも、それでも斬らねばならない。斬らねば彼女らは、また今夜も人を殺すのだ。
(それでも……物理的に斬るのは、気が引けます)
笑い合う少女たちが振り回す刃物、刀葉林の地獄の如く迫る刃を一心に避け、墨が駆ける。
振るうは名刀「粟田口国綱」。さりとて閻魔が断つはその体でなく、その性根に巣食った邪なるもの。
「……ご、ごめ……な……い……痛くして」
“あ、あ……”
しかし、いくら肉体には傷一つなかったとしても。UDCの怪物は、特にこの少女人形たちは、殺人に耽溺するその邪心こそがその生命と同じもの。故に、一瞬ことりとアスファルトに落ちたその物言わぬ綺麗な人形は、やはり外殻を溶かして消えてしまう――骸の海へと、還って逝ってしまう。
――きゃらり、と、ちいさな笑い声を残して消えた人形の最後の言葉は何であったのか、邪心を打ち消され、消えてしまう悲しみであったのか、血に濡れた因果から開放された例であったのか、それとも最後に残る邪しまな心の断末魔、罵倒であったのかすら、墨にはわからない。
それでも墨は、再び刃を奮った。三度、四度、五度、六度――……
気づいたときには、きゃらきゃらとくすぐるような笑い声は消えていた。
人形たちは、全ていなくなっていた。
「休んで……ください」
はらはらとこぼれるように、墨の唇が言葉を紡ぐ。
こうして、歓楽街を血に染めた少女人形たちは、UDC-Pたる一体を残して。
朝焼けの中に姿を消したのである。
大成功
🔵🔵🔵
第3章 日常
『UDC-P対処マニュアル』
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POW : UDC-Pの危険な難点に体力や気合、ユーベルコードで耐えながら対処法のヒントを探す
SPD : 超高速演算や鋭い観察眼によって、UDC-Pへの特性を導き出す
WIZ : UDC-Pと出来得る限りのコミュニケーションを図り、情報を集積する
👑5
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
猟兵は歓楽街での連続殺人を犯していたUDCの討伐に成功した。
そして彼らの役割は、保護に成功したUDC-Pたる人形の少女を、UDC組織に引き渡すことまでとなる。
協力的であり好意的な彼女であるが、このまま組織に引き渡すには、一つ、問題が存在する。それは、戦闘の間も猟兵たちは感じていたことだろう。
「彼女は人間たちに通じる言葉を喋ることが出来ない」。
組織に引き渡す前に、彼女についての取り扱いマニュアルを作成するのが、最後の役割だ。
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・猟兵達の戦いにより、UDC-Pの少女人形の保護に成功しました。
彼女が今後UDC組織にて引き取られるにあたり、円滑なコミュニケーションを取れるようマニュアルの作成にご協力をお願いいたします。
「彼女」の話す声は、すべてきゃらきゃらとした笑い声に聞こえます。
首を振る、などの大きな動作を行うことは可能です。
唯一話せる「人形は好きですか?」ですが、単語を切り貼り(「にん」+「き」=人気という単語を作る)などしようとすることは出来ないようです。
彼女のサイズとその指の関節の作りの関係上、人間サイズの筆記用具などは抱えるようにしか持つことが出来ません。また、彼女はそれ故に文字を書くということをしてきたことは無いようです。
・対策マニュアル作成の他
衣装を着替えさせたりなど、彼女とお別れの前にコミュニケーションを取ることも可能です。
また、現在彼女には個人を表す「名前」がありません。命名などしていただければ彼女も喜ぶでしょう。
(複数候補があった場合は、それについてプレイングに書いてくださった中からランダムで決定させていただきます)
第三章は必要成功数が少なくなっているので、お気をつけください。
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クラウン・アンダーウッド
簡単な話さ。代わりにお喋りしてくれるモノを作ればいい♪お見せしよう、ボクの人形作りの最高傑作を!
自身が用いるからくり人形との感覚を共有させる操り糸と圧縮して物質化させた地獄(慈愛)の炎を材料に自身の技術の粋を極めたあるものを早業で作り上げる。
小さな赤い瞳に長い耳、白い体毛姿をした手に装着し動かす人形。そう、うさぎのパペット人形である。
この子を嵌めればあら不思議!心で思ったことをこの子が話してくれるって寸法さ!やったね、お嬢さん。これで会話が楽しめるよ♪
...本当は研究のために色々とキミを調べたいけどレディには失礼過ぎるから自重するとしよう。
そうそう、キミの名前だけど「カルミア」ってどうかな?
●夢と理想の発明品は
「なるほどなるほど♪つまり彼女が今後UDC組織の職員たちとお喋りすることが出来ればいい、そういうことだね」
クラウンは上機嫌な様子で言う。
「簡単な話、実に簡単な話さ!「代わりにお喋りしてくれるモノ」を作ればいい♪……お見せしよう、ボクの人形作りの最高傑作を!」
彼自身の人形たちを操る際に用いている、からくり人形との感覚を共有させる操り糸、そして圧縮させて物質化させた彼の地獄の炎――慈愛の炎――を材料に、それまでの人形作りの経験と技術の粋を極めた芸術が結実していく。
そうして作り上げられたのは――小さな赤い瞳と長い耳をした。ふわふわとして真っ白な、手にはめる事のできる人形、うさぎの形の小さなパペットだった。
「この子を手にはめればあら不思議!キミが心で思ったことを、この子が代わりに話してくれるって寸法さ!やったね、お嬢さん、これで会話が楽しめるよ♪」
ニコニコと笑顔のまま、クラウンは少女にパペットをはめて見るように言う。
『……ええと、わたし……私、お話できているの? これは、あなたにも聞こえているの?』
パペットから聞こえる言葉に驚きを見せる少女。そんな少女に、クラウンはもう一つの贈り物をしようと言った。
「――いつまでもキミじゃあ不便だろう? 『カルミア』という名前はどうかな?」
カルミア。それはツツジ科の花の名前だ。金平糖のような小さな蕾がつき、白や紫、桃色の花が咲く。レースの日傘を広げたようと言われる淑やかで美しい花姿にちなんで、「優美な女性」または「大きな希望」と言った花言葉を持つ。
『……カルミア。……「私は「カルミア」」……すてき、気に入ったわ。きれいな名前。今まで私、「アンタ」みたいにしか呼ばれたことがなかったの。でもこれからは私だけの名前で読んでもらえるのね。それって、とっても嬉しい』
ありがとう、と白いパペットを通じて少女人形――カルミアはクラウンに礼を言う。
「喜んでもらえて嬉しいよ♪……本当はボク個人としても研究のために色々とキミを調べたいのだけど、レディには失礼過ぎるね。自重するとしよう」
「けんきゅう、なら組織の人がするのだと言っていたわ。私が痛いことや怖いことはしないって約束してくれているんですって」
しばしの間、クラウンとカルミアは二人の会話を楽しんだ。
そして初めての長いおしゃべりのあと、カルミアはおずおずとクラウンに言い出した。
『お喋りってたのしいのね。……でも、これをずっと使い続けることは私、出来ないわ』
「何故だい? これはボクの技術の粋を極めた作品だよ?」
「だから使えないの。これはユーベルコードで生み出されたものだもの。あなたがこの世界を去ったら、使えなくなってしまうかもしれない。もしそうじゃなかったとしても、壊してしまったり、使えなくなってしまったり、なくしてしまった時、私や組織のひとじゃあなたに直してって頼むことができないのだもの。これに慣れてしまったら、私、その時とっても困ることになってしまう」
そう――クラウンは、猟兵だ。そして、UDC組織の側から世界を越えてクラウンを呼び出すことは出来ない。今クラウンが此処にいるのは、グリモア猟兵が猟兵たちを転送させているからだ。
仮にもしもクラウンがこの先どこかで「自らのユーベルコードを過去に遡って全て無力化」されてしまうようなことに陥ったなら、このパペットは使えなくなってしまうかもしれない。そうしたらカルミアは、また喋れなくなってしまう。
そうでなくても、何かの拍子で破損してしまう可能性や使えなくなってしまう可能性は考慮に入れなければいけないだろう。
猟兵一人しか持たない技術――特にユーベルコードに依存した方法に慣れるべきではない。
彼女はこのUDCアースで行使できる方法で、彼女の抱える問題の解決策を導き出さねばならない。
『そうじゃないと、マニュアル……というのでしょ それはできないと思うの』
「……なるほど。ボクの力に頼らず、『この世界の力で』再現できるものが望ましいというわけか。仕方ない。残念だ!だけど、今だけそれでボクとお喋りするくらいはいいだろう?」
「ええ、勿論よ」
カルミアの表情は変わらない。けれどパペットの声は彼女の花のほころぶような感情を伝える。
たとえそれが、今だけのものだったとしても。
苦戦
🔵🔴🔴
七篠・コガネ
夜の街にも必ず朝はやって来るのですね
UDC-Pの彼女にも朝はやって来たのです
さてさて…明確な会話は不可能
僕と同じロボット同士なら信号を送り合って意思疎通が図れるのですが…
お人形さんはロボットとは違いますものねぇ
UDC組織にお絵描きキットを用意してもらいました
これで一緒にお絵描きしましょう?気持ちを伝える手段、教えてあげます
絵筆を抱えるように持ってー…思うがままに遊んでみましょうよ
知ってました?色は気持ちを表す事が出来るんですよ
青なら悲しみ、赤なら情熱
今の君はどんな色を使って絵を描きたい?自由に表現していいのですよ
僕は似顔絵を描いてあげるね
背景に使う色は黄色!新しい友達が出来た喜びの色です
●朝空に花、咲う
窓の外にはすっかりと青空が広がっている。コガネはそれを見上げながら、一夜が明けたことを改めて実感していた。
夜に華やぐ歓楽街にも、必ず朝がやって来る。殺戮に耽る同族達の中で怯えていた彼女にも、こうして朝がやって来たのだと。
コガネの傍らで窓辺に座る、カルミアと名付けられたUDC-Pの少女人形は、今はビニール製の白い長袖のスモック姿になっている。
それは、コガネがUDC組織に依頼した品の一つであった。
(僕と同じロボット同士なら、信号を送り合って意思疎通が図れるのですが……お人形さんはロボットとは違いますものねぇ)
などと思いながら二つのイーゼルにキャンバスを立て掛け、コガネはカルミアに言う。
「用意が出来ました!これで一緒にお絵描きしましょう? 気持ちを伝える手段、教えてあげます!」
コガネがUDC組織に依頼したのは、絵を描くための一式だった。
汚れないようにスモック姿になったカルミアが絵筆を抱えるように持つ。
「それじゃあ、思うがままに遊んでみましょうよ!」
パレットに絵の具を出しながら、コガネは歌うように言う。
「知ってましたか? 色は気持ちを表すことが出来るんですよ!」
青なら悲しみ。赤なら情熱。それら二つを混ぜてできる紫は、神秘や癒やし。
一つの色にも様々な意味がある。色を示すだけでは意思の疎通の手段としては難しいと言ったほうが良いだろう。けれど今までのカルミアの置かれていた状況を考えれば、絵を描くということはとても新鮮な体験でもあった。
「今の君はどんな色を使って絵を描きたい?自由に表現して良いのですよ」
コガネに促され、カルミアはおずおずと水に濡らした筆先に絵の具をつける。その色は赤に白を混ぜたピンク色。――安らぎや幸せを表す色でもあった。
小さな体で抱えるように持った絵筆では、思うように絵を描くことは難しいだろう。それでも彼女は何度も何度もキャンバスの上に絵筆を滑らせる。
夢中になって描き出したのはハートの形。そして、新たな色を乗せる。調和と穏やかさを連想させる緑色は、ピンクのハートの茎葉となってハートを花にする。
青空の下に咲くピンクのハートの花。それがカルミアが――夜の町で、同じ姿をしたUDC達が作り出す真っ赤なの惨劇に怯え続けていた彼女が、この世で最初に描いた絵だった。
その隣でコガネが描き出したのは金色の豊かな髪に青い瞳の少女、カルミアの似顔絵だ。
黄色に塗られた背景に、カルミアは興味を示すように近づいていく。まだ絵の具が乾いてないから汚れちゃいますよ、と制しながら、コガネはこの色が気になりますかと問う。
ゆっくりと頷くカルミアに、コガネは胸を張って告げた。
「黄色は新しい友達が増えた喜びの色なんですよ!」
僕とお友達になってくれますか?
少女のキャンバスに、ハートの花がもう一輪咲いた。
成功
🔵🔵🔴
花菱・真紀
十朱さん(f13277)と
保護した時の反応とか見てると女の子だなって思ったから組織でも一人の女の子として扱ってくれたら嬉しいかな。
意志の疎通。簡単なのは首の動きで出来そうだけどそれ以上となると…そうだな。
スマホ…よりこの子だったらタブレットのほうがいいかな?連絡アプリのスタンプ機能とか便利だなーってイラストだとわかりやすいからしばらくはそれでやりとりたり。
あとゲーム!簡単なやつからはじめてさ。俺も十朱さんもゲーム好きだからいつか一緒に出来たらいいなって!あ、課金は注意な!
(組織の人にはチャイルドロックを推奨)
名前…は一生ものだからなぁしっかり考えないと…花音(かのん)とかどうだ?
十朱・幸也
花菱(f06119)と
アドリブ大歓迎
多少は研究対象みたいな扱いをされるかもしれねぇけど
此処なら、前の居場所よりは安心安全だろ
女の子扱い、ねぇ……
女性の組織員にでも頼んでおくか?
(事前に花菱と、連絡アプリの友達登録を済ませて)
タブレットなら持ってるぜー
とりあえず、お試しで俺の使ってみるか
こういう絵を送って、相手に気持ちを伝えるんだよ
嬉しい、楽しい、悲しいとか……自分の感情、気持ちは判るよな?
練習がてら、花菱に何か送ってみ?
簡単な……動物を集めていくゲームから、かね
課金はダメ、ゼッタイ(まがお
響きも綺麗だし、いいんじゃねぇか
きっと、笑顔が似合う女の子になるだろうし
花が咲き誇るみたいに、さ
●彼女からのメッセージ
「多少は研究材料みたいな扱いもされるかもしれねぇ、けど……ま、嫌われるような事をしちゃあ意味がないってんで、研究も人道的な範疇内に収めるって約束されてるそうだし。どっちにしろ、前の居場所よりかは組織の方が安心安全だろ」
こつん、とテーブルをペンで叩いた幸也。UDC組織へと提出するべく用意された紙を前に、カルミアをテーブルに座らせて、真紀は彼女の髪を柔らかく指で撫でる。
「やっぱり、保護した時の反応とか見てるとちゃんと女の子だな―って思ったんすよね。だから、組織でもちゃんと女の子として扱ってくれたら嬉しいなって」
「女の子扱い、ねぇ……女性の組織員にフォローしてもらえるように頼めれば良いか」
さらさらと用紙にペンを滑らせる幸也。
「あとは、意志の疎通かぁ……簡単なのは首とか手の動きで出来そうだけど……そうだ、スマホ……ああ、いや、この子だったらスマホよりタブレットの方がいいかな?」
「タブレットなら俺が持ってるぜー」
真紀が何をしようとしているのかを察した幸也はタブレット端末を取り出すと、真紀と連絡用アプリケーションの友達登録を済ませ、いつでも相互にメッセージが送り合えるよう準備する。
「とりあえず、お試しで俺のを使ってみるか」
おいで、と声をかければカルミアはすぅっと幸也の元へ移動してくる。タブレット端末を見つめる瞳からは、心なしか興味津津であるようにも見えた。
あらかじめアプリケーションにダウンロードしておいたスタンプを幾つか押してみせる幸也。
「こういう絵を送って、相手に気持ちを伝えるんだよ。嬉しい、悲しい、楽しい……自分の感情、気持ちはわかるよな? 練習がてら、花菱に何か送ってみ?」
カルミアはタブレット端末に手を伸ばす。小さな小さな手でとん、とんとボタンを押していく。ぽろん、と真紀のスマートフォンにメッセージが送られた。
“ありがとう!”
“うれしい!”
“すき”
ネコやゾウ、ウサギがフキダシで喋っている可愛らしいスタンプが、自身を救ってくれた真紀へのカルミアからの最初に送られたメッセージだった。
「どういたしまして。……はは、なんか、嬉しっすね……」
カルミアはさらにタブレット端末のキーボードをたどたどしい手つきでタップしていく。
ぽろん、ぽろろん、と続けてメッセージが受信された。
『わたし』
『かる』
『みあ』
それは、間違いなく彼女が自らの手で一から綴った言葉だった。
「おお!!そうか、スタンプの絵だけじゃなくて文字もちゃんと読めてたのか……!」
「大丈夫っすよ!ゆっくり、ゆっくり練習していけばこれで会話ができるっすよ!」
ぽろん、
“ありがとう!”
“がんばるぞ!”
少女の小さな手が、懸命に言葉を紡ぎ出していく。
それは二人にとっても嬉しいことで、興奮気味に頬を紅潮させながら真紀が言う。
「あと……ゲームしよう、ゲーム!!簡単なやつから始めてさ!俺も十朱さんもゲーム好きだから、いつか一緒にできたら良いなって!」
「キーボード入力が出来るやつなら話すことも出来るし……でもそうだな、まずは簡単なヤツから、かね」
アプリケーションをダウンロードし、起動する。端末から音楽が鳴り、可愛らしい動物たちがデフォルメされて描かれているスタート画面が表示された。
画面上に現れた動物をタップして集めていくゲームで、少しプレイしてみせるとカルミアもそれに倣う。心なしかうきうきしているようにも見えた。
ひとしきり遊んだ後、改めてメッセージアプリを起動させると、カルミアは早速スタンプを押す。
“たのしい!”
「ゲームとメッセージアプリが同時に使えねーのは不便だよな」
「それは俺たちも常々思ってることじゃないっすか? ……あ、カルミア。課金は注意な!」
「課金は駄目、ゼッタイ」
真紀の言葉に一瞬で真顔になる幸也。一体どれだけの額を過去に融かしたと言うのだろうか。まるで給料を全額つぎ込んでもお目当てのSSRが引けなかったような時を思い出すような顔をしているが、真実は幸也一人が知ることである。
(組織でも、ゲームに触れられるように頼んでおこうか。……チャイルドロックはちゃんと掛けてもらわないと)
提出する用紙にその旨を書き込むと、真紀はどうやらとても満喫したらしいカルミアから“たのしい”のスタンプ爆撃を受ける画面を幸也と覗き込んで笑う。
……いつかの未来、どこかなにかのゲームで高ランクを叩き出す正体不明の人物がネット上に現れるかもしれない。
きっとその「誰か」は掲示板上で雄弁に“たのしい”を語るのだ。
そんな未来を共有できればいいと、かれらは未来を想像して笑った。
ぽろん、ぽろん、ぽろん。軽やかなメッセージが真紀のスマートフォンに表示された。
“たのしい”
“うれしい!”
“ありがとう!”
――『ありがとう』
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
波狼・拓哉
…性格、特性両方が狂気ってなければ大分楽なんですよねぇ。あの感じなら眷属召喚とか自発的にやったりもしないでしょうし…
まあでも喋れないってのは…うん。面倒だし何より可哀想ですしね。
つってもなー何かいい案あるとかじゃないんですよねぇ…文字は分かる…んですよね。ありきたりだけど文字カードとかでどうだろうか。単語でお話になっちゃいますけど、頷くよりは深くコミュれるんじゃないですかね。
…あのきゃらきゃら声の法則見つけて翻訳機とか作れると楽なんだけどね。如何せんおにーさん第六感で何となく理解出来ちゃうから法則とかさっぱりだわ。まあ、その辺は組織の方がデータ集めてやってくれるでしょう。
(アドリブ絡み歓迎)
●狂気の彼岸、彼と彼女は対話する
「性格と特性の両方が狂気ってなければ、ほーんと楽なんですよねぇ」
机に腰掛けたカルミアに、拓哉は椅子に座って対面する。
「キミだったら、眷属召喚とか自発的にやったりしないでしょ」
“し、しないわ、絶対しない!!”
――きゃら、きゃらきゃら。
カルミアが首を横に振り、囁くような笑い声が大気を震わせる。
その笑い声を聞いた後、拓哉はううん、と首を傾げた。
「このきゃらきゃらした声の法則を見つけて翻訳機が作れたら楽なんだけどね。如何せんおにーさん、なんとなく理解できちゃうから法則とかさっぱりなんですわ」
それは第六感によるものか、或いはは削れた正気のぶんだけ狂気の沼に浸っているが故のものか。拓哉自身は前者であると考えているが、UDCの少女人形たちと戦っていた時から、彼には彼女たちが何を言わんとしているのか「なんとなく」理解できていた。
「要は外国語と同じなんですかねぇ。全然わかんない国の言葉で馬鹿にされた時とかにあーなんかムカつくこと言われたなってわかる感じの。て言っても猟兵になってから言葉に困ることなくなったからなぁ、感覚が遠い遠い」
うん、と伸びをして。多分ですね、と拓哉はカルミアに語りかける。
「組織でのキミの研究で、その言葉の解読も進めるんでしょう。色々とデータ集めてさ。……翻訳機が作れたなら、第一歩ってとこですよね」
“それができるなら、わたしだって頑張りたいわ、協力もいっぱいする”
――きゃらきゃら、きゃら。
傍目からはカルミアの笑い声に対し、拓哉が一方的に語りかけているようにしか聞こえないだろう。
「とは言え、組織のヒトは言葉、わかんないでしょうしね……うん。面倒だし何より可哀想ですし。俺に何かいい案あるとかじゃないですけど……ああ、キミ、文字はわかる……んでしたっけ?」
“ええ、大丈夫。読めるわ”
きゃらきゃら、きゃらきゃら。頷くカルミアを見て、拓哉はそれなら、と傍らの紙に何事か書いては千切りして。出来上がったのは即席の文字カードだ。
「単語でのお喋りになっちゃいますけど、頷くよりは深くコミュれるんじゃないですかね」
テーブルの上に並べられた文字を拾い集めながら、あっちへ行き、こっちへ行きして文章を作るカルミア。
『がんばる』
“ふう。ちょっとだけ大変だけど、これでわかってもらえるのよね?”
「そっかー大変ですか。でもそうですね、組織の研究員さんと当面の意思の疎通はとれるでしょう。もっとちゃんとした単語と文字のカードを作ってもらえれば良いはずですし。ああ、でもカードの大きさはキミに合わせてもらわないと」
拓哉は手にしたペンでUDC組織への要望を紙に書き付けていく。
「……うん、まぁ。何ですかね」
“なぁに?”
「これから頑張ってくださいね」
あっさりとしたエール。
それに彼女は、テーブルの上の紙片で作った『がんばる』をもう一度返したのだった。
大成功
🔵🔵🔵
浅間・墨
…そ…そのコミュニケーションは全く得意ではないので…す。
じっ…と観察をしてPさんの挙動から探っていこうと考えます。
皆さんが色々試している間に威圧にならない程度に見守ります。
表情はそのままだと思うので態度や動きを特に注視してみますね。
ただの観察や注視では心許ないので【見切り】を用いてみます。
何かヒントでも掴めればいいのですが…あまり自信はありません。
発見があった場合は皆さんに…伝えます。…伝えるよう努めます。
そ…それにしても…何度見ても…美人さんな…人形ですね。Pさん。
Pさんは和装でも洋装でもなんでも似合うと思います。…いい…な…。
ちなみに今回は武器の類は全て所持しません。怖がらせたくないので。
ルネ・プロスト
皆が皆、君みたいであればいいのにね
そうであれば強引に討つ必要性も――
――あらぬ夢、空理空論
戯言だ、聞き流しといて
大きな動作であれば可能であるのなら
簡易的な交流手段は『はい』『いいえ』で答えられる質問に絞る、とか?
これなら身一つで応じられるし
密な交流が必要ならタイプライターとかで文字打ってもらうのがいいかな
細かい動作できなくてもペン先でキー押すぐらいの事はできるだろうし
問題点は1字1字打つ関係で時間がかかることと
……文字。読みぐらいはできる、かなぁ
読みもダメならこの案没で
どうか君により良き生が
今際にて悔いのない程、満ち足りた未来がありますように
ルネの役目はこれで終わりだけれど
君の幸福を祈ってるよ
●誰もが幸福を祈った
「皆が皆、君みたいであればいいのにね……そうであれば、強引に討つ必要性も――」
ぽつりと口にした言葉を拾った墨が、静かにルネを振り返る。
彼女の視線に気づいたルネはその実年齢の幼さに見合わない笑みを浮かべた。
「……あらぬ夢、空理空論。……戯言だ。聞き流しといて」
窓際に座る少女人形、カルミアの髪を朝の爽やかな風が靡かせていく。
今の彼女はドレスを着替え、和装――髪を結い上げた女給のような着物姿になっている。
(そ……それにしても……何度見ても……美人さんな……人形ですね。和装も……洋装も……なんでも似合うと思います……)
「……いい……な……」
そう呟いた墨の前にカルミアは降り立ち、真っ黒な黒髪を小さな手で撫でる。
カルミアの挙動をじっと観察――注視でも心許ないと思いながら見詰めていた墨ははっとする。今の挙動は墨の呟きから思いを読み取ったのだと、つぶさな観察など必要とせずとも理解できるものだった。
人形であるがゆえに、カルミアの表情は変わらない。けれど自分を助け出してくれた猟兵たちの前で振る舞う彼女の動作は思ったよりも雄弁だった。言葉がなくても思いを汲み取ることが出来そうなほどに。
少しでも触れあえば組織の研究員たちとも言葉無くして意思の疎通が可能であるような気もする。けれど多分それでも、全くゼロの信頼関係からではやっぱり難しいのだろう。
故に今、猟兵達が作る「マニュアル」が今後の役に立ってくるのだ。
「頷いたり大きな動作であれば可能であるのなら、簡易的な交流手段は『はい』か『いいえ』で答えられる質問に絞る、とか……これなら身一つでも応じられるしね。それでも、もっと密な交流が必要なら……」
ルネが取り出した日本式タイプライターにカルミアが興味津々で寄っていく、墨もそれに続いた。
「問題点は、一字一字打つ関係で時間がかかることと……文字は、読めてるんだっけ?」
ルネの問いにカルミアは肯定の意を持って首を縦に振る。
「よかった。読みも駄目ならこの案は没にしようと思ってたんだ」
ルネと墨が見守る前で、カルミアはタイプライターのキーに手を伸ばしていく。場合によってはペンを抱えてもらってその先で押してもらうことも考慮に入れていたが、どうやらその心配は無用のようだった。
『これで いいの?』
「……!」
墨の頬が紅潮する。
『あなたたちの なまえ おしえて』
「ルネ、ルネ・プロストだ」
(……ぁ、浅間……墨……と、言い……す……!)
『るね すみ おぼえた』
『わたしを たすけてくれて ありがとう』
『だいすきよ』
簡素に紙に印刷されたインクのたった三行。二十九文字。
それでも、彼女の感情が漏れ出してくるような二十九文字だった。
「うん、きっとこの方法は正解だよ。組織へのマニュアルにもそう書いておこう」
机に座り直し、UDC組織に提出する為の紙に向かってペンを走らせたルネは、タイプライターの前のカルミアの背中に言った。
「カルミア。どうか、君により良き生が……今際にて悔いのない程、満ち足りた未来がありますように」
かたり、かたかた。カルミアがタイプライターに打つ文面を、墨は見ていた。
少し離れた場所に座るルネは、その文章を今見ていない。ルネがそれを知るのはもう少しだけ先の未来になるだろう。
だからその会話の一部始終を今見て、聞いているのは墨だけだ。
『ありがとう るね わたし いまもとても しあわせなのよ』
「ルネの役目はこれで終わりだけれど……君の幸福を、祈っているよ」
『わたしも あなたの あなたたちのしあわせを いのっているわ』
君の幸福を祈っているよ。
――あなた達の幸せを、祈っているわ。
「わた……し、も」
墨は勇気と力を振り絞る。この言葉だけは二人に伝えたいと思ったからだ。
「わたし……も、祈って……ま、す……!」
ルネが笑う。かたかたとタイプライターが鳴る。
その文章を墨が見るまであと少し。
太陽は昇り、もうすぐ正午。
惨劇の夜は消え去り、青空が広がる三月のある日のことだった。。
一人の少女が、幸福を祈り、祈られて……新たに歩き出そうとしていた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵