5
世界に平和を、とオブリビオンは言った

#ダークセイヴァー #異端の神々

タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#ダークセイヴァー
🔒
#異端の神々


0




「ねえ、みんなは何のために戦っているの?」

 ふわふわと美しく漂うシャボン玉の向こうから、ユメカ・ドリーミィ(夢幻と無限のシャボン玉・f18509)はふと問いかけた。
「悪いやつをやっつけるため。弱い人を救うため。自分を鍛え抜くため。それとも、お金のためや、ただ暴れたいため。……色々あるわよね。もちろん、どれもそれぞれ尊重すべき理由だと思う。ただ……」
 ユメカは困ったように、もう一つのシャボン玉をぷかりと浮かべた。

「……ダークセイヴァーで、『世界に平和と安寧を取り戻すために戦いましょう』、って言っているひとがいるみたいなの。ええ、素晴らしいことよ……それがオブリビオンでさえなければね」

 パチン、と天井まで舞い上がったシャボン玉が不思議そうに割れた。
「みんなの言いたいことはわかるわ。どうせ、『オブリビオンに支配された世界が一番幸せだ』とか『みんな滅んでしまえば世界は安寧になる』とかの身勝手なパターンだろ? って言いたいんでしょう。あたしも最初はそう思ったわ。でも」
 虹色のシャボン玉がユメカの内心の当惑を映し出すように色彩をゆらめかせ、輝きを不安定に放つ。
「でも、なんか違うみたいなのよね。そのオブリビオンは確かに、……あたしたちと同じような意味での平和と安寧を求めているみたいなの。誰に虐げられることもない、人々が幸せで優しさに溢れて生きていける、綺麗な世界をね。……信じられる?」
 確かに「UDC-P」と呼ばれる友好的UDCの存在が確認されてはいるが、それはまだUDCアースのみにとどまっている。転生によって普通の生命に戻れる可能性がある「影朧」も、サクラミラージュのみに特有の存在だ。
 UDCアースでもサクラミラージュでもなく、ダークセイヴァー――人の悲嘆と恐怖と諦観のみに満ち溢れたその世界で、暴虐と破壊、傲慢と専制の象徴であるオブリビオンが、果たしてそのような考えを抱くものだろうか。
「もしかしたら、UDC-Pみたいに人と仲良くできるオブリビオンが、他の世界にも現れたのかもしれない。それとも、もしかしたら、何かの……罠なのかもしれない。あたしのシャボン玉ではそこまで映し出せなかったの、ごめんね。だからみんなに、それを確かめに行って欲しいの」
 細い首を傾げながら言ったユメカの声はどこか不安げだった。
「そのオブリビオンは人里離れた廃墟に住んでいるらしいんだけど、その周囲には魔獣がいっぱいうろついているみたい。まずは魔獣に警戒しながら廃墟に潜入して、そのオブリビオンについて、何か手掛かりがないかを探してみるのもいいかもしれないわ」

●???
「……嗚呼。お待ちしています、猟兵の方々。世界に平和を取り戻すために、安らぎと愛に満ちた日々を取り戻すために。あなた方の力が必要なのです……」
「コロセ、コロセ、スベテヲコロセ……」
「くっ……あなたの思うままにはなりません。きっと猟兵の皆さんが来てくださるのですから……」


天樹
 アルダワ魔王戦争お疲れさまでした。天樹です。
 今回はダークセイヴァーを舞台にしたお話となります。
 ユメカの言ったように、世界に平和を望んでいるオブリビオンがいるらしいとのこと。そのオブリビオンとコンタクトを取り、目的を探るシナリオとなります。
 果たして友好的な存在なのか、それとも……。

 ではご参加をお待ちしております。
 一章のプレイングに関しましては、フラグメントの指針にあまりとらわれずに行動していただいて構いません。
 なお、各章の冒頭にストーリーを補完する小文を挟む予定です。プレイングの受付は小文掲載以降となります。
82




第1章 冒険 『廃墟の魔獣』

POW   :    魔獣の痕跡から居場所を特定する

SPD   :    罠や仕掛けを用意して設置する

WIZ   :    地形や建物を調べて戦闘しやすい場所を探す

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 月光が頼りなげに朽ち果てた洋館を照らし出す。いや、館と言うよりは、砦に似た作りかもしれない。まるで、何かと戦うためのような……戦った跡のような。
 オブリビオンはこの廃墟の中にいるという。直接オブリビオンに出会う前に、屋敷内で何らかの調査や情報収集を行って準備を行うことも重要かもしれない。
猟兵はすべての世界の言葉を理解できるのだから、書類や手紙、碑文などがないかを調べることもできる。
 あるいはこの廃墟そのものの状態を調査するのもひとつの手だろう。
 ただ、あまり派手に動き回ると魔獣を呼び寄せてしまうかもしれないため、注意が必要だ。
備傘・剱
平和を望むヴァンパイア、ね…
何もなければ受け入れたいが、今までが今までだからなぁ
調査するまでは解らないもんだ

ってなわけで、鳥獣技で、隼に変身して、彼方此方見て回ろう
良くも悪くも野鳥一匹だ
目立つことはあるまい

俯瞰で屋敷の様子や、中にいる人、様子を見ていくぞ
中に入る必要があれば、今度は兎になってこっそりと覗こう
無害な動物と見れば、様々な行動に出るだろうぜ
ま、食料にだけはならない様に気をつけないといけないが、な

戦う必要があれば、誘導弾と衝撃波を放って気絶させるぞ
殺しはなるべくしない主義なんだ

状況にもよるけど人間形態に戻るのは、やめる
なんか、きな臭いんだよな…
どうにも、よ

アドリブ、絡み、好きにしてくれ


リリエ・ヘブンリィブルー
空を覆う暗雲を払い蒼天へと導くが私の使命、彼の者を疑うことはしたくありませんし信じたいですが、滅びに至る門へと導く者はいつだって甘い言葉で人々を唆します。

もし、真に安寧を望む者であれば…疑ってしまったこの身を恥じ、非礼をお詫びしたいところです。

魔獣に関しては屋敷まで空を飛んで振り切るようにします。屋敷に潜入…と言っても派手な真似や変に家捜しをするようなことはせず、道中で目に付く事物がないか気にするようにしておきます。空を飛んで向かうので上から見た全景なども。

ああ、彼の者との縁が喜ばしいものであることを心より祈ります。



 重くのしかかるような暗雲は、あたかも空気そのものにまで、どろりと滴るような密度を与えているようにさえ思える。二人は本来なら軽やかに羽ばたくべき各々の翼が、まるで粘液の中でもがいてでもいるような錯覚をふと覚えた。
 それは備傘・剱(絶路・f01759)と、リリエ・ヘブンリィブルー(至天の蒼・f19764)の翼。
 剱はその能力によって雄々しい隼へと変じて空を飛翔しており、リリエはオラトリオとしての神々しい翼をはためかせていた。まずは高空からの俯瞰によって、廃墟付近の状況を把握しようというのが二人の考えであり、その手段であった。

「平和を望むヴァンパイア、ね……」
 剱はふとひとりごちる。その声は虚空の奥底へ飲み込まれて哭くように消えた。
 無用の戦いを剱も望んでいるわけではない。本当に平和が可憐な手を伸ばしている姿が見えているものならば、その手を取りたいとは思う。それは、つい先日までの異世界の戦争において、己には願いも祈りもないと切って捨てた剱が、自分でも思いがけず抱いていた希望なのかもしれなかった。
 しかし同時に、その願いが容易くかなうものではないとも剱は知っている。綿菓子のように甘いが中身のない空想に似た望みにすがるほど、剱は強くも弱くもなかった。
「何もなければ受け入れたいが、今までが今までだからな……調査するまでは解らないもんだ。……なんか、きな臭いんだよな……どうにも、よ」
 ほろ苦い気持ちで剱は己のつぶやきを聞いていた。

 美しい黄金の髪をなびかせ、少し離れて飛ぶリリエもまた、思いを馳せる。
「空を覆う暗雲を払い蒼天へと導くが私の使命、彼の者を疑うことはしたくありませんし信じたいですが、……」
 信じたい、だが簡単に信じきることもできない。人の救い手であるがゆえに、己の眼差しが偽りに曇らされてはならぬものだとリリエは知っている。そしてその決意と覚悟は、時に辛く切なくその胸を斬り裂くものだということも。
 ためらいなく信じ抜く者が聖者であるべきか。それとも、謹厳に見極める者が聖者であるべきか。
 ……それはリリエに冷ややかに突きつけられた刃のような難問であった。
「滅びに至る門へと導く者はいつだって甘い言葉で人々を唆します……。」
 吐息と共に零した言葉は己自身を責めるかのようにリリエの耳に届く。
 彼の者との縁が喜ばしいものであることを心より祈るのも、また決して偽りのないリリエの心情ではあるのだけれど。
 それでも、飛び続ける彼女の風切り羽は、小さく、そしてどこか哀しい声を上げて歌っていた。

「……しかし、こいつは」
 剱は首を振って己の想いを追い払う、廃墟がその猛禽類の鋭い視界に入ってきたのだ。
 同様に、リリエにもそれが目に入る。彼女の美しい眉が微かにしかめられた。
「……明らかに、戦いの跡ですね」
「それも、ただ事じゃねえ。……人間同士の争いの結果じゃねえぞ、これは、いや、それどころか……」
「はい、……ひととヴァンパイアの争いでさえ、かくまでにはならないでしょう」
 二人の眼下に広がっていたのは、ひび割れ、砕け、荒れ果てた大地の惨状。
 もとより荒野を見るになれているこの世界の住人でさえも思わず目を背け戦慄を覚えずにはいられない、破壊の跡だった。
 高空から見下ろす二人の目にははっきりとわかる。
 強大な力が岩盤を引き裂き尽くし、恐るべき魔力が岩肌を溶かし尽くし、魂を凍らせるような呪いが大気ごと軋ませて砕き尽くしたような、その荒廃の跡は……明らかに、戦いの跡だということが。
 それは単なる争いではない。天地をどよもすほどの、信じがたいほどの力と力のぶつかり合いがもたらした結果と見えた。
 そう、超常の……超越者同士の。
「人とヴァンパイアなら、それはただの蹂躙だ。戦いってのは同程度の力を持つものでなければ成り立たねえ。一方がヴァンパイアだとしても、この世界の人がこれほどの力を持つわけはねえな……」
「たしかに。例えばスペースシップワールドの超科学兵器を用いたとしてさえも、ここまでできるものではないかもしれませんね……」
 信じがたいものを見るような声でつぶやいた剱の疑問に、微かに顔を蒼褪めさせながらリリエが首を振る。
 無論、人の仕業、という選択肢は即座に排除される。ならば、次なる可能性は生命の埒外の者たち。
「……俺たちの前に猟兵が来たのか?」
「いえ、グリモアベースの出撃記録では、私たちより前にこの地に猟兵が派遣されたことはないようです」
 では。
 ……それならば、誰が、戦ったのか。
 誰と、誰が、この凄まじい戦いを引き起こしたというのか。
 剱とリリエは、思わず背筋が総毛立つ感覚を覚えていた。

「……早く、早く来てください、平和のために。世界の平和のために。寸刻の時さえ惜しいのです……」

 遠い弔鐘のような声が風に乗り、聞こえたような気がしたのは幻覚だったのだろうか。
 思わず振り返った二人の視界には、無論誰もいはしなかった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

セシリア・サヴェージ
もちろん世界の平和は私にとっても望みです。
ですが、それはオブリビオンの在り方とは相容れない事なのでは……?
その真意を確認するためにも現地へ赴きましょう。

廃墟に侵入してオブリビオンについて手がかりになるような物を捜索しつつ、【第六感】や【聞き耳】【暗視】を使って周囲を警戒し、魔獣と会敵したら暗黒剣で斬り捨てます。

廃墟となった砦、しかも戦いの痕跡があるならば亡くなった方もいらっしゃるかもしれません。
UC【影の囁き】を使って影から話を聞いてみましょう。
この地で何が起こったのか。オブリビオンは何者なのか。視ている人がもしかすればいるかもしれません。


幻武・極
へぇ、平和を願うオブリビオンか。
これから、平和な世界を作っていこうと願っているならいいんだけど、なんか気になるんだよね。
平和を取り戻すという辺りがね。
平和だった過去を取り戻そうとしているなら、やっぱりオブリビオンなんだよね。

さて、調査開始だね。
廃虚か、元はどんな建物だったんだろうね。
平和な世界を作ろうと言っているのにこんな場所というのも怪しいしね。
まあ、ヴァンパイアに見つからないために地下に大きな施設があるのかもしれないし、その辺も調べられたらいいね。


リーヴァルディ・カーライル
…ん。人類に協力的なオブリビオンね。
他の世界にそういう存在がいる事は知っているし、
死霊術で操る者も大別すればそうかもしれない…。
だけど、やはりこの目で確かめるまでは信じられそうに無い…かな。

UCで喚んだ全員と共に存在感を消す呪詛を付与
全身を闇に紛れるオーラで防御して気配を遮断し、
魔獣の暗視や第六感に捉えられないように複数人で屋敷を捜索する

…情報が欲しい。この屋敷に潜むオブリビオン。
推定、屋敷の主に繋がる情報が……行って。

私は戦闘知識から目立たない戦闘跡を見切り、
何が起きたのか予測しつつ、他の者達が帰還するのを待つわ

…この地で戦っていたのはあの吸血鬼?
なら複数の少女の形跡が残されているかも…。



「……ん。人類に協力的なオブリビオンね……」
 リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)は噛んで含めるようにその言葉を口中に転がす。
「他の世界にそういう存在がいる事は知っているし、私の死霊術で操る者も大別すればそうかもしれない………。だけど、やはりこの目で確かめるまでは信じられそうに無い……かな」
 リーヴァルディは長い睫毛を揺らして考えに沈む。
 ひとつには、その相手が信用できるのか否かという問題が。
 そして、仮に。……もしそれが真実だった場合、自分はどうするのかという疑念が。
 その二つの問いかけが、リーヴァルディの胸中によぎっていた。
 この世界でオブリビオンといえばまずはヴァンパイアだ。
 しかし、――リーヴァルディは吸血鬼を狩るもの。過去を過去に、灰を灰に、塵を塵に帰すべく、闇を斬り裂き影を断ち切る大鎌を振るうもの。
(万が一それが真実だった時、ヴァンパイアを友とすることが、私にはできるの……?)
 リーヴァルディは己の手をじっと見つめる。それはヴァンパイアに死をもたらすべき手。だが、その手が、吸血鬼の手を取ることがあるのだろうか……。

 幻武・極(最高の武術?を追い求める羅刹・f00331)もまた、小さな肩をすくめて思いに耽る。
「平和を願うオブリビオンか。……『これから』平和な世界を作っていこうと願っているならいいんだけど、なんか気になるんだよね……」
 極の澄んだ眼差しは年齢にそぐわないほどに深い光を宿す。それは極の特異な出自によるものであるかもしれず、あるいは弛むことなく倦むことなく、「武」を通じて己を研ぎ澄ませ続けている極のたどり着いた境地かもしれなかった。
「平和を『取り戻す』……」
 その一言に関する違和感を、極は目を細めて思考の中で追う。
「『取り戻す』……それは平和だった『過去』を『取り戻そうとしている』ってことなんじゃないかな? ……だとすれば」
 だとすれば。それはやはり、過去にとらわれたオブリビオンに他ならないのではないか。
 しかし、同時に。
 仮に平和を望むそのオブリビオンの心情が真であるのならば。
 それがもし過去にとらわれたものであったとしても、無下に糾弾していいものだろうか、とも思う。
 武術には拱手包拳という礼がある。右手の拳を、開いた左掌で押さえ包み込む形を示すものだ。
 武を意味する「拳」を、開いた手で押さえる。それが本来の、和を望む武の姿であるかもしれない。
 真に相手が和を望むのであれば……。
 しかし、やや先走り過ぎたことに気付き、極は首を振って苦笑した。
「……まあ、とにかくは調べてのことだね。行くとしようか」

「もちろん世界の平和は私にとっても望みです」
 セシリア・サヴェージ(狂飆の暗黒騎士・f11836)も柳眉をひそめる。
 いうに及ばず、騎士たる我が身を理想に捧げた彼女が志すものは世の平和に他ならない。
「しかし……」
 それでもセシリアは躊躇わずにはいられない。不審を感じずにはいられない。
 平和を望み、願うというその立ち位置そのものが、
「……オブリビオンの在り方とは相容れない事なのでは……?」
 そう、それは本質的な疑問。世界の破壊を望まずにはいられないはずの存在、それがオブリビオンではなかったか。確かにオブリビオンの在り様は千差にして万別、けれど、いかに個体ごとに穏やかな性質、柔らかな物腰のものがあったとしても、終局的には――破壊。そこに帰結せざるを得ないはずではなかったのか。
「……闇の力を世を救うために振るう、この私が言うのもそぐわないのかもしれませんが」
 確かにセシリア自身もその力の源はと問えば『暗黒』そのものに他ならぬ。故に、救うべきものにすら恐怖を振り撒くことさえ稀ではない。
 それでもなおかつ高潔にして逆風の中に凛然と立つのがセシリアであるように、己が定めに逆らうオブリビオンもいるというのだろうか……。

 三人はそれぞれの思いを胸に、探索を開始した。
「もとはどんな建物だったんだろうね……」
 極は建物の周囲を見回し、その建造の目的を探ろうと試みる。
 それはある意味、武に、そして兵法に通じた極には適切な手でもあった。
 明らかに、戦に向けて備えられた砦に他ならぬと、極の目が見て取ることに時間はかからなかったのだから。
 それも……守るための施設ではない。むしろそこを足掛かりに、積極的に打って出るための陣ではないかと極は推論した。
「……へえ、平和を望むはずのものが、戦に向けた……攻撃に向けた砦を……? ふうん……」
 極の赤い瞳がきゅっと細められる。そこに漂うただならぬ気配を、羅刹の鋭い感覚が逃すことはなかった。

 リーヴァルディは同じ吸血鬼を狩る己の同志を召喚し、手分けをして廃墟を探っていた。
 周囲に木霊する魔獣たちの遠吠えは、重く垂れこめた暗雲に反響するかのように、しきりにその存在を主張しているが、リーヴァルディの呪詛により、狩人たちの気配は遮断され、すっかり闇に紛れている。
 目敏い熟練の狩人たちが、周囲一帯の中から特に目を引く場所を見つけ出すのに時間はかからなかった。
「ん……戦いの跡……それも、これは……」
案内されて行ったリーヴァルディはぴくりと体を震わせる、
そこに残っていた――戦場あとに消え切らず漂っていた、力の残滓を感じ取って。
「これは……この感覚は、……ユーベルコード同士の激突……?」
 そう、世界の理から外れた恐るべき力。その暴威が渦を巻き天地を裂いて激突した、微かな力の残留が、リーヴァルディの鋭敏な感覚を強く刺激していたのだ。
「……こんな、……これほどの力。まだ感じ取れるほどの力……まるで……」
 リーヴァルディは息を飲む、その言葉のあとに続くべき言葉は、果たして。
 悪魔、であっただろうか。それとも。
 ――神、であっただろうか。
 
 セシリアは、廃墟の内部に侵入し、調査を行っていた。
 彼女の駆使するユーベルコードは清廉なる騎士に相応しく、命を失ったものを悼み、それを慰めながら力を借りるものである。
「現在を生きる人々のために……どうか、私に力を貸してください」
 セシリアの求めに応じ、ゆらりとゆらめくように湧き立った数体の影が彼女の前に現れる。
「見ていた方がやはりいたのですね。この地で何が起きたのか、そしてそのオブリビオンとは何者なのか……。出来る範囲でいいのです、教えてくださいませんか」
「お、お、おおおおおお……」
 震えるような亡霊たちの声はセシリアの問いを拒むものであろうか。
 否。
 亡霊たちは答えようとしていた。必死に。けれど。
 答えられなかったのだ。
 恐怖に……あまりの恐怖に身を縛られて。
「怖ろしい……あの者を敵にしてはならない……残忍にして過酷、決して容赦なく己の野心を遂げんとするもの……すべてを喰らう者……あの者『たち』を敵にしてはならない……!」

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

黒影・兵庫
平和と安寧を求めるオブリビオン...
UDC-Pだって突然誕生したんですから
ダークセイヴァーで発生しない道理は
ないはずですよね?せんせー
(頭の中の教導虫に話しかけるが「うーん」と疑念のこもった回答が返ってきた)

本当の味方であることを願いつつも
ここは慎重に調査をするとしましょう
(UC発動)
強襲兵の皆さん!死んだ皆さんなら
他人から見えない状態で探索・調査が
できるはずです!
『第六感』で調査する場所を指定するので
こっそりと調査をお願いします!


エドゥアルト・ルーデル
オブリビオンに平和な心が芽生える事があるのか…
我々は真相を確かめるべく廃墟へ向かった

もし本当に世界平和が目的なら素晴らしい事でござるね!感動的だな!<嘘>
廃墟自体を調査ですな!支配階級っぽいオブリビオンなのに廃墟にいるってのも不思議でござるよね
道中の魔獣対策には囮用の【UAV】を放てッ!音が出てホバリングとかするやつ!
廃墟についたら外壁を登り天井裏から侵入、物色しこの廃墟の手がかりになりそうな物を探索、調査でござるよ!
(調査ついでに壁や柱に爆薬を仕掛けながら)

なんか出てきたこの【知らない人】は適当に野に放っておきますぞ
見つからずに先行して敵の親玉の様子を盗み見盗み聞きしてくれるんじゃないかな



「NASAは「そんなこと知るか!」って拙者に門前払いを喰らわせたでござるよ。世の人情も地に落ちたものでござるね」
「えーと、何の話ですか、エドゥアルトさん」

 エドゥアルト・ルーデル(黒ヒゲ・f10354)の意味不明な言葉に、黒影・兵庫(不惑の尖兵・f17150)が律儀に尋ねる。スルーしてもいいのだが、それが兵庫の真面目なところだ。
「いやこの廃墟に一体何があったのか、NASAに聞こうと思ったでござるよ」
「何故NASAに!?」
「だって何か気になる事があればNASAに飛ぶのは常識だし……」
「多分違うと思います!」
 ……だからスルーすればよかったのに。

 それはさておき、二人は連れ立って廃墟近くまで歩みを進めていた。
「UDC-Pだって突然誕生したんですから、ダークセイヴァーで発生しない道理はないはずですよね?」
「もし本当に世界平和が目的なら素晴らしい事でござるね! 感動的だな!」
「何かセリフが棒読みです、エドゥアルトさん!」
「エッ、ソウカナ? ソンナコトナイヨ?」
 棒読み以下の口調で応えたエドゥアルトだが、その黒々とした顎髭をひと撫でする。
「まー、平和は平和に越したこたぁないでござるな。エンジョイ&エキサイティングといっても、あんまり物騒な世の中では十分に楽しめなかったりしますからな」
「おお、エドゥアルトさんが真面目なことを言っています! これがもしやシリアスな笑いという奴なのでしょうか!」
「エッ、ソウカナ? ソンナコトナイヨ?」

 無駄口を交わしあいつつも、二人はそれぞれ、今回の案件について思いを巡らせる。
 生真面目な兵庫は、先刻の言葉通り、そのオブリビオンが本当の味方であることを強く願っていた。
(うーん……そういうとこが黒影の良いところなんだけど、でも、どうなのかしらね)
 兵庫の脳内に寄生する蟲であり、同時に彼を導く恩師、そしてまた母のような……いや失礼、姉のような存在でもある「せんせー」ことスクイリアは、兵庫の実直な態度に、愛情と同時に微かに懸念を覚える。
(「彼女」なら……逆に、この状況下でも決して心を許さず冷ややかに対応するかもしれないわね。そういう意味でも、黒影と彼女はお似合いなのかしら)
 
 一方、シニカルなエドゥアルトは特に感慨を示さない。
 先ほど兵庫に言った言葉も全くの偽りではないが、かといって世が荒れていればそれなりに楽しむ方法もある。真のエンジョイ勢にとってみれば、すべてはものの見方ひとつにすぎないのだ。
(支配階級っぽいオブリビオンなのに廃墟にいるってのも不思議でござるよね)
 普段はとぼけてはいるが、決してエドゥアルトの頭脳は軽んじられるものではない。むしろ鋭敏でなければギャグキャラとかやってらんないというものである。
「さて、では拙者は天井裏からのスニーキングミッションと行くでござるよ」
 カサコソカサコソと擬音が聞こえてきそうなアクションを起こしながらエドゥアルトは廃墟へと潜入していく。その姿を感心しながら眺めていた兵庫も追随する。
「さすがエドゥアルトさん、まるで蟲さんのようです! 俺も蟲さんたちに支援を受ける身として負けてられませんね!」
(黒影、なんか張り合うとこ間違ってない?)
 スクイリアのツッコミも置いといて、兵庫は強襲兵の霊たちを召喚する。不可視の霊たちは兵庫の導きのままに廃墟に潜入し、調べ尽くしていく。

「んー、これは手記……あるいは日記でしょうか? 女性物のようですが」
「ホワッツ!? ソースイートなprprガールのヒミツの花園に今こそダイブイン!? ……と思ったらほとんど破かれてますなー、ちぇー」
 エドゥアルトと兵庫の行きついた先は奇しくも同じだった。
 兵庫とエドゥアルトは共に強力な第六感を有する。その二人が共に手掛かりとして反応したのが同じ部屋だということに不思議はない、もっとも、兵庫は純粋に調査として、エドゥアルトの方は欲望に塗れて、であったかもしれないが。
 ともあれ、二人は潜入した廃墟内で一冊の手記を見出したのだ。
 喜び勇んで読み込もうとしたエドゥアルトだったが、しかし、あいにくとほとんどその手記は破損されていた。
 辛うじて読み取れるのは、ただ一行。
 ――『私は私のものだ』
「どういう意味でしょうね?」
「ちゅーか、もしこの日記を廃棄しようと思ったんなら、単純に丸ごと焼くなりすればいいんでござるよな。滅茶苦茶に破くだけとか、合理的じゃないっちゅーか、なんか変な話ですぞ」
 首を傾げる兵庫に、エドゥアルトも腕を組んで斜めに体を傾ける。特定の角度に。
 二人は改めて周囲を見回した。その手記を発見した部屋は、おそらく往時には居間に使われていたと思われる一室。
「……奥の方だけあって、あまり戦乱の影響も受けず、調度品はまあまあ残ってるでござるが……」
「鏡だけが滅茶苦茶に壊されていますね。……鏡だけが」
 兵庫とエドゥアルトの視線は、微塵に打ち砕かれた鏡、それも複数の鏡に、じっと向けられていた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

トリテレイア・ゼロナイン
【古城】
覚えておられますか、フォルター様
私達が参加した依頼
伴侶と我が子を確かに愛した吸血鬼の討伐を
あの時は領民の虐殺を防ぐ為に討ちましたが…

機械としては今回も討つ可能性が高いと結論づけています
愛を解してもそれが共存の保証とは限りません
ですが、騎士としては…信じてみたいと思うのです

先ずは情報を集めましょう。見極める為に

●防具改造で金気臭さを誤魔化す外套装備
調査は任せセンサーの機能を●限界突破し音、熱源、移動振動等の●情報収集による魔獣の索敵と警戒に専念

相手は獣、血の匂いを出す殺しは避けた方が良さそうです

交戦を避けつつ排除の必要があれば石の●投擲や●操縦する妖精ロボで囮として遠方で音を鳴らし突破


フォルター・ユングフラウ
【古城】
…忘れるものか、言われずともな
あの男のせいで、今でもたまに寝覚めが悪い
全く、胸糞の悪い話よ

我等が初めて出会い、共に討った男がいたな
あの男の姿が、脳裏に蘇る
愛を解して共存出来るのであれば…あの男の様な悲劇を無くす事が出来るのであれば、汝の“騎士道”に乗ろうではないか

…さて、我は調査に専念するか
かつてここで戦いがあったとすれば、当然血が流れた筈
我のダンピールとしての感覚と使い魔の蝙蝠を駆使し、血の残り香が濃い場所を探ってみるとしよう
上手く見つかれば死霊術で死霊共を呼び寄せ、情報収集といくか

交戦は避けたいが、敵と出会ってしまった場合はやむを得ぬ
UCを発動して小石でも投げつけ、気絶させておこう



 荒涼たる地平を、勇壮にして謹厳なる白と流麗にして妖艶なる黒が征く。
 それは並び混ざらぬ黒白にして、故にこそ互いに際立たせ合う白黒。
 世界を覆う闇さえも煌めく鎧と刃の輝きにて打ち払わんとする騎士、トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)と、漆黒の影さえもまだ浅いと不遜に微笑み深い闇を纏う吸血美姫、フォルター・ユングフラウ(嗜虐の女帝・f07891)である。
 それは一見奇妙にも見える連れ立ちであった。王道を進むものと詭道を舞うもの。
一歩、いや半歩その歩みがずれていたら、二人の刃は相手に向けられていたやも知れぬ。
 そう、実際、二人はそのような間柄でもあった。仮に妖姫がその眼差しをあるべき姿から逸らした時には、そしてもしも鋼の騎士がその道を失った時には。
 ……だが、それは今ではない。

「覚えておられますか、フォルター様。……私達が参加した依頼、伴侶と我が子を確かに愛した吸血鬼の討伐を」
 トリテレイアがセンサーの有効感知内に捉えた廃墟からカメラを逸らさず発した問いかけに、フォルタ―もまた微かに目を細め、美しい容貌をやや苛立たし気に染めて頷く。
「……忘れるものか、言われずともな。あの男のせいで、今でもたまに寝覚めが悪い
全く、胸糞の悪い話よ……」
 ――かつて、可憐な花の名を持つ女性と、彼女を愛した悪鬼がいた。
 然り。
 悪鬼といえども、その淀み穢れた胸深くに至純の愛が芽生えることもあり得るのだ。
 それは、トリテレイアとフォルターが初めて出会った戦場においても同じだった。
「我等が初めて出会い、共に討った男がいたな。……ふん、あの男の姿も、脳裏に蘇る」
 そう、希少ではある。例外中の例外ではある。
 しかし同時に、絶無ではない。現に、確かに存在する「例外」なのだ。
 ……愛を知るオブリビオンは。
「愛を解して共存出来るのであれば……あの男の様な悲劇を無くす事が出来るのであればな」
 フォルタ―の声に、トリテレイアはしかしセンサーアイを揺らめかせる。
 愛を知るオブリビオンの存在を許容し、むしろそれを望みさえする。それはフォルタ―の過去に照らして忸怩たる思いを抱かざるを得ないことを理解しつつも。
「愛を知っていても。……いえ、愛を知っているがゆえに、誰よりも激しく強い愛を持つがゆえに、共存できない場合もありました。……そんな激しすぎる愛を抱く母親が、かつて」
「……そうか」
「はい。愛を解してもそれが共存の保証とは限りません」
 ぽつりと発声したトリテレイアは、しかし再び顔を上げる。雄々しき兜を立て、しっかりと己の進むべき前を見据えて。
「……ですが、騎士としては……信じてみたいと思うのです」
「ふん、汝らしい答えだ。では、汝の“騎士道”に乗ろうではないか」
 艶めかしい朱唇を微笑の形に変え、フォルタ―は騎士を嘉する。吹きすさぶ逆風を前にしても、この者の掲げる旗が折れることはないのだから。

「……では、情報を集めましょうか。私は魔獣への警戒を重点的に行います」
「任せよう。我は調査に専念する」
 『背中を任せる』その端的な最上級の言葉を無造作に吐き、フォルタ―は意識を集中させた。
(かつてここで戦いがあったとすれば、当然血が流れた筈……)
 彼女のダンピールとしての感覚、そして群れ為し羽ばたく使い魔の蝙蝠たちが、血の残り香が濃い場所を洗い出さんと周囲を観照する。が、
(……ふむ、洗い出す必要さえない、か。周囲一面、血の海となったと見える)
 フォルタ―の鋭敏な感覚は、即座にその反応を見出していた。
 鮮血――それも、二種類。
「……ちっ」
 フォルターの鋭い舌打ちに、トリテレイアが振り返った。
「フォルタ―様、どうかなさいましたか?」
「この濃厚な血の気配……一つは、確かにヴァンパイアだな。そして、もう一つは」
 フォルタ―は長い髪を風に泳がせ、その気配を払いのけるように首を振る。

「……『異端の神々』」

 ヴァンパイアを父に持つダンピールにしてダークセイヴァーに居を構えるフォルタ―にとって、「異端の神々」は始末に悪いオブリビオンという強い認識がある。
 それはヴァンパイアにとって、まつろわぬ神。
 それは辺境をしろしめし、吸血鬼の支配に降らないテリトリーを持つもの。
 それは……猟兵を除けば唯一、ヴァンパイアに抗し得る存在。
「……ヴァンパイアと異端の神々との戦いがあったと?」
「ああ。おそらく……」
 フォルターは荒廃した廃墟を改めて見回した。
 その目に映る館跡は、今となっては砦――戦のための砦だったのだとはっきりわかる。

「おそらく、異端の神々の支配地域にヴァンパイアが攻め込んだのであろうな。相互に強大な力を持つ者たちが、互いに死力を尽くし、互いを……喰らい合うほどの」

 魍魎のように朦朧のように、揺らめき立ち上る陽炎のように、フォルタ―の周囲に立つのは死霊たち。だが、単に呼び出しただけでは、先刻のように恐怖におびえ、従わぬかもしれぬ。
 ゆえに。
 フォルタ―はすべての力を駆使した。誘い、呪い、恫喝し、恐怖を与え、殺気を纏わせて。薄れゆく死霊たちを次々に引きずり出してさえも。
「――周囲全てを巻き込み、破壊され尽くした大地に、最後に立っていたのは」
 と、フォルタ―はやっとのことで消えゆく死霊たちから情報を絞り出した。
「……吸血鬼であったと。……そのものは己が身も引き裂かれながら、最後には異端の神々を喰らい尽くしたのだと。だが、それ以降、彼のものは廃墟の奥に引きこもり、表には出なくなったと……」
 話を聞き、トリテレイアはセンサーアイの奥を鋭く光らせる。
「その吸血鬼が、単に戦いの虚しさを知って平和を求めるようになった……というのは楽観的に過ぎる観測でしょうね」
「……いずれにせよ、呪われた血に塗れたこの地にさらに血潮を染み込ませることにはなりそうだな。死霊の気配が呼んだようだ。少し無理をし過ぎたか」
 ゆっくりと振り返るフォルタ―とトリテレイアの周囲には、トリテレイアの警戒網と邀撃をさえも潜り抜けた魔獣たちが集まり始めていた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​




第2章 集団戦 『暗闇の獣』

POW   :    魔獣の一撃
単純で重い【血塗られた爪】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD   :    暗闇の咆哮
【血に餓えた叫び】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ   :    見えざる狩猟者
自身と自身の装備、【自身と接触している】対象1体が透明になる。ただし解除するまで毎秒疲労する。物音や体温は消せない。

イラスト:飴屋

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 かつてその地には神がいた。異端の神々と呼ばれるものが。
 だが世界の支配者は憤る。吸血鬼と怖れられるものが。我が意を退けるものよ滅ぶべしと。
 吸血鬼と、神々。共に世の理を超越したものども。
 その両者は激しく争い、天をも翻し大地さえも覆した。
 最後に立っていたのは、吸血鬼だった。相手のすべてを喰らい尽くして。
 しかし、勝者のはずの吸血鬼は、その後、姿を消す。
 理由は何故か。廃墟の奥に入って見なければならない、直接その相手に会ってみなければ。
 だが、猟兵たちの生気に誘われてか、現れた魔獣の群れがその行く手を阻む。
 これを排除する必要があるが……
 深く濃い霧の向こうから薄く聞こえる鐘の音のように、猟兵たちの頭に響く声がある。
 その声は、問いに答えぬ限りいつまでも脳裏に木霊し続け、集中力を乱し、戦いに不利になるかもしれない。 

「さあ、ご一緒に戦いましょう、平和をもたらすために。……死と滅亡、破壊と暴力、悲劇と絶望、そんなものよりも、もちろん皆さんも、平和をお望みのはずですよね?」

※この問いに何らかの形で答えるとプレイングボーナスが付きます。答えは真剣なものでも、あるいはネタ系の雑な答えでも構いません。
 プレイングの受付は3/1(日)AM8:31からになります。
御狐・稲見之守
…ほぉう、救世を謳うオブリビオンであるか。それに異端の神々なあ、なるほど面白い。奴さんに会うて茶と行きたいところであるが。

さて、目の前の雑魚どもはお呼びでない。疾く去ぬがよい。UC荒魂顕現、我為す一切是神事也。来たれ暴風かまいたち、彼奴らを薙ぎ払い切り刻め。制御などせん、存分に暴れよ。

ふふ、ヒトが平和を望むならばそれを聞き届けるが神の務め。ヒトを救う神なきこの暗世、我が救世の神の一柱たらん…胸糞悪い化け物どもを一切合切根絶やしにしてやると、救世の志半ばに散ったこの世界の者達に約束したのだ。

吸血鬼であろうと異端の神々であろうと、平和の望みに仇なすならば暴力と破壊を以てこれを除けようではないか。


リリエ・ヘブンリィブルー
吸血鬼と異端の神々との戦い。まるで神話の一節のような話ですが、あの空からの光景を見てしまうと……。

しかし平和を望み神々に比類する力を持つのなら、なおさら何故このような場所に……魔獣の群れを退け、確かめねばなりません。

――……蒼天より祝福を、悪しき獣に滅びあれ。主の御名のもと神鳴る雷鎚を振り降ろさん――UC天災、主への[祈り]と共に雷の洪水で魔獣の群れを打ち据えます。

そして語りかけてくる声に答えましょう。
主より世を覆う暗雲を払い蒼天へと導く使命を授かり遣わされたこの身、平和以上に望むものなどありません。虐げられる人々を救い希望の光を指し示す志を胸にするならば、私は貴方と共にありたいと思います。



 貪婪なる瞳が殺意をみなぎらせて輝き、獰猛たる牙が獲物を喰らい尽くさんと剥きだされる。
 魔獣の群れが闇より黒い塊となって行く手を阻むも、彼女たちの歩みが、しかし止まることも鈍ることもない。
 清冽にして神聖なる歩を進めゆくは、神、そして聖者。
 御狐・稲見之守(モノノ怪神・f00307)と、リリエ・ヘブンリィブルー(至天の蒼・f19764)であった。

「……ほぉう、救世を謳うオブリビオンであるか。それに異端の神々なあ、なるほど面白い。奴さんに会うて茶と行きたいところであるが」
 くすくす、と稲見之守は嗤う。齢百を数える妖狐、己自身清廉潔白とは呼べぬ過去を持ち、しかしそれを逃げることなく真正面から見据えてきたものの、それは自信と余裕でもあろうか。
「おもしろい、ですか」
 と、リリエは稲見之守の言葉に微苦笑し、しかしすぐに表情を改める。
「吸血鬼と異端の神々との戦い。……まるで神話の一節のような話ですが、あの空からの光景を見てしまうと……」
 先ほどの破滅的な光景。あれをもたらしたものが、今どうしているのか、本当に平和を望んでいるのか……いずれにせよ、捨ておくことはできない。
「さて、いずれにせよ、目の前の雑魚どもはお呼びでない。疾く去ぬがよい」
「ええ、魔獣の群れを退け、確かめねばなりません。平和を望み神々に比類する力を持つのなら、なおさら何故このような場所にいるのかを……」
 どす黒い殺意の塊となった魔獣の群れを、臆することなく稲見之守とはリリエは見据えて。
 どちらからともなく、戦端は開かれた。

 確かに、まるで塊のようにさえ見えたのだ、その魔獣たちの群れは。
 ゆえに、……それが消えた時。
 そう、一瞬にしてその圧力をさえ感じる群体がかき消えたことに、通常のものならば虚を突かれ、戸惑い、そしてその刹那の間隙が致命の一瞬となったに相違なかった。
 ――けれど、支障なし。
 神と聖者に惑いなし。
 戦闘に置いて視覚のみに頼る次元になど、猟兵は元より閑居してはおらぬ、まして、気を察し魂を見据える神と聖者なれば。
 姿など消そうとも、そこにいることに紛れがないならば、ためらわずに討つのみ。
「『我成す一切神事也――』」
「『蒼天より祝福を――』」
 両者の言の葉が同時に紡がれる。それは奇しくも、同系統のユーベルコードを顕現させる真言に他ならぬ!
「『――天裂き地割る神業畏み畏み奉願祈るべし』!」
「『――悪しきに滅びあれ』!」
 天地を撃ち砕くのが荒ぶる神の力であるのなら、天地を清め祓うのが人の祈りの中にある神と聖者の力でもあろう。
 その大いなる御力は瞬時に来臨する。――すなわち、大気に悲鳴を上げさせる暴風かまいたちとなって荒れ狂い、神罰そのものを与える雷の洪水となって!
 姿を消していようが何の意味もない、魔獣たちの群れは烈風にその身を引き裂かれ、雷の嵐に打たれ消し炭となって散り散りにかき消えてゆく。

「ああ、さすがです、猟兵の方々。お見事な力です。それほどの力、もちろん平和のためにお使いになるのですよね?」

 そのとき脳裏に木霊したのは、あの『声』。
 戦闘の前に問いを投げかけてきた、あの謎の声だった。
 不気味なほどに真摯。そのように評すべきだろう、その声に迷いなく、詐術も騙りも感じられぬ、神と聖者の力をもってしても。
 けれど警戒を捨て去りはしない。稲見之守は薄く笑んで答えた。
「ヒトが平和を望むならばそれを聞き届けるが神の務め。ヒトを救う神なきこの暗世、我が救世の神の一柱たらん……胸糞悪い化け物どもを一切合切根絶やしにしてやると、救世の志半ばに散ったこの世界の者達に約束したのだ」
 リリエもまた細い首をこくりと肯定の意に頷かせる。
「主より世を覆う暗雲を払い蒼天へと導く使命を授かり遣わされたこの身、平和以上に望むものなどありません」

「ならば」
 と、『声』は嬉しそうに笑みを湛えながら。
「ならば、お出で下さい、共に平和をもたらすために」
 その響きと同時、静かに廃墟の一角が開かれ、道ができていく。
 二人を導くように。
「……もし平和の望みに仇なすならば、暴力と破壊を以てこれを除けよう。……じゃが、ふん。本気にも聞こえたのう、あの『声』は」
「ええ、虐げられる人々を救い希望の光を指し示す志を胸にするならば、私はあの『声』のかたと共にありたいと思います」
「さてさて、そううまくゆくのであれば、世はこともないのじゃがな……」
「それは承知しています。けれど、信じることからすべては始まるとも私は思うのです」
 神として、世の裏も表も知る稲見之守。
 聖者として、ひとを信じ抜こうとするリリエ。
 二人はお互いの顔を見合わせ、そして小さく微笑んだ。
 互いに、在り様は異なるものの、敬うべきものを相手が持つと知って、その尊敬の想いと共に。
「……では、ゆこうかのぅ、聖者どの。せっかくの宴のお誘いゆえに」
「はい、神なるお方。お供させていただきます」
 二人は連れ立ち、廃墟の奥へと優美に歩みを進めていく。
 オブリビオンの求める平和――その言葉の意味を質すために。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

セシリア・サヴェージ
この声は異端の神々……?ならば、戦いを制した吸血鬼は今はもう……。
それを確かめるためにも魔獣を排除しなくては。

人々を護るため、平和を勝ち取るために私は戦っています。
こちらからも問いましょう。平和をもたらそうというあなたは何者なのです?共に戦うというのであれば、今すぐ姿を見せるといい。

問いかけに精神を乱されぬよう【狂気耐性】で気を確かに持ち、魔獣が透明になっても気配や物音を【第六感】【聞き耳】で探知します。
看破できていれば魔獣の攻撃を【武器受け】で防いだり、逆に攻撃を当てることも難しくないはず。
こちらの攻撃が外れてもUC【純黒の終撃】ならばそれも無駄にはなりません。


幻武・極
へぇ、人を戦いに巻き込もうとしているのに、平和を望むんだね。
なら、教えてよ。
平和を乱す敵をね。

さて、答えがどちらでも声の主はオブリビオン。
ボクの敵であることにかわりはないけどね。

まずは目の前の魔獣を倒さないとね。
姿を消すユーベルコードだけど、気配を感じ取って幻武百裂拳を打ち込むよ。
衝撃波や範囲攻撃で気配による位置の憶測の誤差は穴埋めするよ。



「この声は異端の神々……? ならば、戦いを制した吸血鬼は今はもう……?」
 セシリア・サヴェージ(狂飆の暗黒騎士・f11836)は、脳裏に響いた遠い声に柳眉をしかめ、思惟を巡らせる。
 果たして、勝者が残りし者なのか、敗者が消えしものなのか……。必ずしもそうとは限らぬ、それこそが世の理から外れしものどもの異形たる所以でもあるとセシリアは知っているから。
 そして、それを確かめるためにも魔獣を排除しなくてはならないということも。
 脳裏に繰り返される『問』を意思の力で押さえ付け、セシリアは剣の鯉口を切った。

「へぇ、人を戦いに巻き込もうとしているのに、平和を望むんだね」
 一方、幻武・極(最高の武術?を追い求める羅刹・f00331)は皮肉な笑みを可憐な顔に浮かべ、細い肩をすくめた。
 もとより極は懐疑的な立場を最初から崩してはいない。空を仰いで理想を追い求めることも美しいが、そのあまりに歩むべき足元が崩れ去っては意味がない。そう、しっかりと歩むこと、運歩こそが武の基本でもあるのだから。

 群れ為す魔獣が唸り声を上げながらその二人の前に立ちはだかる。殺意と悪意を隠そうともせずに。
 ……ゆえに。
 二人にとっては与し易い、たとえ瞬時にその魔獣たちの姿がかき消えようとも。
「そんなダダ漏れの殺気丸出しじゃあ、姿を消した意味がないよ」
 くすりと笑い、極はその総身に感じ取る魔獣の気配を敏感に受け取る。柔らかな極の肌に突き刺さるような獰猛な殺意。それはあたかも魔獣たちが居場所を自ら明かしているに等しい。
「ま、あえて気配を悟らせるのも、一概に悪い手じゃあないけどね。それ自体がフェイントにも使える……こういうふうに!」
 呼、と極の口許から気勢が漏れ、同時に無数の拳が大気を裂いて瞬時に叩きこまれる!
 ――これぞ幻武流『幻武百裂拳』。
 百裂の拳と呼ぶ技――しかしそれはすべてが実態を持った拳ではない。幻影の拳による虚と実を織り交ぜた攻撃。虚の中に実を隠し、実の中に虚を潜めるのもまた武の奥義。
 魔獣たちは獣であるがゆえに、自らに向けられた気配には敏感だ。そしてそれゆえに――容易く虚たる幻影に釣られた獣たちの動きは乱れ、極の拳はあやまたず獣たちを撃ち砕いて行く。

 セシリアの第六感と鋭敏な聴覚もまた、魔獣たちの行方を見失いはしない。鋭い爪が床や壁を蹴る音が、涎滴る牙が噛み鳴らされる音が、方向も距離も教えてくれる。
「優れた能力を持っていても、己の中の殺意に完全に飲まれてしまっては宝の持ち腐れというわけです。……身につまされますね、省みて、私自身の戒めとさせてもらいましょう」
 闇を我が力とするセシリアは、その力を解放した時には暗黒の暴威そのものと化すこともある。そんな自分の境遇と合わせて僅かに苦笑し、セシリアは剣を鞘走らせた。
「純黒の終撃(ブラックエンド)――!」
 裂帛の声と共に虚空を一颯した剣閃は、すべてを漆黒に染め上げ、そして終焉へと導く呵責なき断罪の刃。
 それはセシリアの振るう闇。されど、彼女はその闇に従いはせぬ。狂乱たりたいと吠え猛る衝動を御するのは、闇の中で確かに輝くセシリア自身の高潔なる魂であるのだから。
 叩きつけられた衝撃は周辺一帯を闇より深く鮮やかに彩り、セシリアの刃はその黒の中で美しく舞う。魔獣たちが奏でる断末魔を伴奏として。

「素晴らしいお手並みです、猟兵の方々。そのお力、無論平和のために振るわれるのでしょう?」

 意識の中に響く讃嘆の声に、二人は顔を上げる。
 それは戦闘直前に響いてきたあの声と同じ、何者かの問いかけの声だった。
 動ぜず、二人は己の想いを、――『平和』への想いを口にする。
「そうですね、人々を護るため、平和を勝ち取るために私は戦っています」
「教えてよ、平和を乱す敵をね。そいつを倒すことに反対はしないよ」
 セシリアは静かに毅然として。
 極は皮肉に、達観を目に宿して。
 それぞれの答えが、廃墟の中に残響を伴いながら消えていく。
「……ですが、こちらからも問いましょう。平和をもたらそうというあなたは何者なのです? 共に戦うというのであれば、今すぐ姿を見せるといい」
 セシリアの凛然とした反問に、『声』は小さく、恥ずかしそうにさえ聞こえる答えを返す。
「ええ、もちろん、もちろんです。こちらの準備にも少し時間がかかってしまいまして。ですが、さあ……平和を求める方よ、こちらへお進みください」
 その『声』と同時、廃墟の一隅が静かに開き、一筋の道が現れた。猟兵たちを奥へといざなうように。
「……ご丁寧なことだね。でも」
 極は口角を僅かに上げ、その道の奥を見据える。
「『残っている』のがどちらでも、声の主はオブリビオン。ボクの敵であることにかわりはないけどね……」

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

黒影・兵庫
ご一緒に戦いましょうと言われても
発言者の姿どころか影も見当たりませんね、せんせー
(頭の中の教導虫に話しかけると「というか鬱陶しいわね」と若干苛ついた声が返ってきた)
まぁ声の方の言う通り、平和が望ましいのは確かですね!
そのためにも、この魔獣たちには骸の海へ還っていただきましょうか!
(敵の動きを『第六感』で予測し攻撃を『衝撃波』で弾きながら『オーラ防御』で攻撃の余波を防ぐ)
今です!
(UCを発動し召喚した蚊を粘着性の{蠢く水}で敵に貼りつけた後、距離を取る)
ロックオン完了!砲兵さん!ファイアー!
(掛け声と共に大量の砲塔を装備した甲虫が召喚され敵集団に向かって砲弾が一斉射される)


エドゥアルト・ルーデル
こいつ直接脳内に…!
平和ァ?そんなことより神を吸収した吸血鬼ってこれ多分内から侵食されつつあるパティーンだよね?
その場合悪堕ちになるんでござるよね!!いや元が邪悪な吸血鬼なら善堕ちか…?
どっちだ!?気になりすぎて心の平和が保たれない!答えろ!!!どっちなんだい!!!

まあいい直接見たい…怒りを込めつつ突破ですぞ
姿が見えなかろうと所詮は近接戦闘しかできなさそうなフレンズでござるよ
屋内を移動しつつトリモチ、トラバサミなど罠を十重二十重に張り、罠にかかった個体から【流体金属生命体】を纏った拳でパンチ
後は流体金属君が接触箇所から生命力をモグモグでござる
野獣のフレンズは食べちゃってくだされ!



「ご一緒に戦いましょうと言われても……」
 と、黒影・兵庫(不惑の尖兵・f17150)は不思議そうに周囲を見回す。
 寒々しい廃墟の中には人影など見当たらず、ただ荒れ果てたかつての戦いの痕跡が残っているに過ぎない。
「……発言者の姿どころか影も見当たりませんね、せんせー!」
 脳内に寄生する恩師、スクイリアに対して話しかけた兵庫だが、素朴な兵庫の疑問に対し、返ってきた声は若干の苛つきを隠さなかった。
(というか鬱陶しいわね!)
 スクイリアは兵庫の脳内に住む蟲。故に、兵庫の脳裏に木霊する『声』が、兵庫自身よりも強く響いているのかもしれない。耳元に大音量のスピーカーを置かれている的な。それは苛ついても仕方がない。
「『声』の方の言う通り、平和が望ましいのは確かですが……でも」
 しかし兵庫は純朴たるその性状のまま、『声』の問いを真摯に受け止め、己の中で反芻していた。
 同時に、愛しい相手のことを思い出す、彼女から聞いたこれまでの過酷な経歴を、そして兵庫自身の、歴戦の猟兵としての記憶をも。
 そのどちらも、平和という概念が安易に入手し実現できるものではないと、兵庫に教えているものだった。
「難しいものですが、だからこそ手に入れなければならないもの、その値打ちがあるものです! 常温のクリームコロッケのように!」

「くっ、こいつ直接脳内に……?」
 エドゥアルト・ルーデル(黒ヒゲ・f10354)も同様にジタバタしていた。もっとも、彼の場合は多少悩む次元が異なるが。
「神を吸収した吸血鬼ってこれ多分内から侵食されつつあるパティーンだよね? その場合悪堕ちになるんでござるよね!! いや元が邪悪な吸血鬼なら善堕ちか……?」
 悪堕ち。なんと甘美な言葉か。それは不可逆の属性変更、取り返しのつかない罪への転落を伴った、背徳的で破滅的な美しさを伴う一般性癖である。一般。エロスとタナトスは共に分かちがたい概念であり、ゆえに破滅の匂いを色濃く漂わせる悪堕ちは強く鑑賞者の琴線を震わせ、その官能を刺激するのだ。あいつ悪堕ちのことになると早口になるよね。
 しかし、エドゥアルトが疑問に思ったのも無理からぬこと。仮に今回がそうだったとして、もとより邪悪であった存在が「堕ちた」とき、その属性はどう判定されるのか。いやそもそも、「堕ちる」余地がまだあったものを果たして邪悪と呼ぶのか? 呼ばないとすればなんと呼称するべきなのか?
「ぬううう気になりすぎて心の平和が保たれない!!」

「……とにかく皆さん平和がお望みなのですね? 心の平和ももちろん平和の一つですから。平和を手にするのは大切なことです」

 一応の回答を返した二人に、『声』が語り掛ける。若干戸惑いの調子があることは否めないが。
「ならば、どうぞ奥へお進みください。ああ、でも……邪魔な者どもがいるようです。皆さんのご手腕ならもとより問題にしないとは思いますが、どうぞお気を付けて……」
 『声』が途絶えるとともに、廃墟の一角が崩れ去り、そこに通路が現れた。
 おそらく奥へと猟兵たちを誘っているのだろう。だが、通路の前にはいつの間にか、多くの影が蠢いていた。魔獣たちの影が。
「あの通路の奥へ進むために、魔獣たちには骸の海へ返っていただきましょうか!」
「結局まともに答えなかったね! まあいい直接見たい……怒りを込めつつ突破ですぞ!」
 
 二人の闘志と呼応するように魔獣たちの殺気も膨れ上がった。あたかも実体を持ったどす黒い暗雲が空を覆うように。
 が、その殺意は兵庫の鋭敏な第六感に対し、容易に行動予測を可能にするだけのものに過ぎない。猛り狂って吠え掛かり、目を狂気にぎらつかせながら飛びついてきた魔獣たちが、空中で悲鳴を上げつつ次々に弾き飛ばされる。それは兵庫の放った衝撃波によるもの。いかに猛烈な勢いであろうと、軌道の予測が出来さえすれば、カウンターを合わせることなど、兵庫にとって児戯に類する!
 一方エドゥアルトは縦横に屋内を移動しつつ、巧みに魔獣たちをおびき寄せていた。幾度かその牙が彼を襲ったが、液体金属生命体で身を覆ったエドゥアルトの本体にまでは届かない。金属の拳で魔獣たちを殴り倒しながら、エドゥアルトは目的のポイントに到達する。
「せーの、ドン!」
 雲霞の如く群がってきた魔獣たちを見、ヒゲの奥でニヤリと笑んだエドゥアルトは、いつの間にか片手に持っていたスイッチを軽やかに押し込む。と同時、天地を揺るがせるような爆炎と共に魔獣の群れが一斉に吹き飛んだ!
 これぞ第一章のプレイングにおいてエドゥアルトが仕掛けておいた爆薬である。字数の都合でリプレイではご紹介できなかったが、ちゃんとその設定は生きていたのだ!
「ふふん、所詮は近接戦闘しかできなさそうなフレンズでござるよ。っと、まだ残ってるでござるね……まあこっちの手もまだ残ってるんだがな!」
 爆発を辛うじて逃れた魔獣たちがよろめきつつ、それでもなお二人に襲い掛かろうとした時、再度の悲鳴が上がる。それはエドゥアルトがこの爆破の隙に仕掛けておいたトラバサミがまんまと獲物を捕らえた証に他ならない。
「お見事です、エドゥアルトさん! 動きを止めていただけたならこっちのものです!」
 すかさず兵庫の召喚した蟲が魔獣たちに張り付く。それはマーキング――無慈悲にして容赦のない重火砲が集中する前触れ。
「ロックオン完了!砲兵さん!ファイアー!」
 兵庫の号令一下、召喚された蟲たちが一斉に砲撃を開始する。
 爆煙と業火が収まった後、そこに残っていたのはただ一本の道のみ。廃墟の奥へと彼らを誘う道のみだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

備傘・剱
平和のために戦う、か
今まさにやってるが、その後の事も考えてるよな?
それと、もう一つ、暴力で手に入れた平和はな
…いつか、覆されるものさ、平和をもたらした存在への恐怖って奴で、な

青龍撃、発動
襲い掛かってくる奴らに呪殺弾、衝撃波、誘導弾、水弾の全力射撃をお見舞いしてやるぜ
接近されたら、爪で切り裂いてやる

オーラ防御も全面展開して、攻撃を防ぐぜ
盾にできるものがあれば彼方此方、走り回ってる途中でそこの傍を通り、攻撃の隙を作るぞ

しっかしよ、異端の神との喧嘩か、何かは知らないが…
そんなにやりたいなら、ここじゃなく、躯の海でやりやがれってんだ
平和平和言いながら、まきこんでんじゃねぇ

アドリブ、絡み、好きにしてくれ


リーヴァルディ・カーライル
…ん。吸血鬼と神の闘い…辺境で何件か似たような案件があったわ。
おかげで大体の事情は察しがついたけど…さて。

左眼の聖痕に自身の魂の力を溜める激痛を耐性と気合いで耐えUCを発動
不可視の手を繋ぐように空中戦を行う黒刃を操り、
第六感が感応した殺気に残像が生じる早業で先制攻撃を放つ

…往きなさい、私の刃達…!

今までの戦闘知識から闇に紛れた敵の攻撃を暗視して見切り、
黒刃と連携しつつ大鎌をなぎ払うカウンターで迎撃し、
多少の負傷は自分の生命力を吸収して治癒する

…平和を求めるこの声が“どちら”の物か分からない。
…だけど、いずれにせよ私の為すべき事に変わりはない。
望み通り平和の為に狩らせてもらうわ、貴女達を…。



「平和のために戦う、か……」
 備傘・剱(絶路・f01759)は、脳内に響く『声』に対し、冷ややかに言葉を投げつける。
 その瞳は憂悶に閉ざされ、平和という言葉の持つべき美よりも、その陰りの方を捉えて離さない。平和、確かにそれは尊い概念ではあるが、しかしその影に隠された軋みと歪があるのならと、剱は鋭く眼を細める。
「今まさにやってるが、その後の事も考えてるよな? ……それと、もう一つ、暴力で手に入れた平和はな……いつか、覆されるものさ、平和をもたらした存在への恐怖って奴で、な」
 どこか遠い虚空への祈りに似て、その言葉は響く。……けれど、路を絶ち全てを失った男の捧げるべき祈りの空は、果たして何処にあるのだろうか。

「……ん。吸血鬼と神の闘い……辺境で何件か似たような案件があったわ。おかげで大体の事情は察しがついたけど……さて」
 リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)もまた、薄々と事件の背景に見通しを付けつつあった。
 かつて邂逅したいくつかの事件をリーヴァルディは思い出す。奈落の底で、洗脳され狂気に侵された哀れな聖女たちと戦ったあの時のことを。かつては勇猛な戦神とたたえられたその者の雄姿が、今は見る影もなく呪詛に犯され尽していたあの時のことを……。
(……正義も、平和も。それ自体は輝かしいのに、それゆえに歪んだ鏡に映し出されてしまえば、もうその光はまっすぐには進まないものね……)

 二人の猟兵が向けた重い視線の先には、猛り狂う魔獣の群れの姿がある。
 いっそ、あの魔獣たちのように、何も考えずにただ敵を殺すためのみに生きていければ、どれほど楽なものだろうか。
 けれど、二人は安逸な道を選ばない。
 すべてを失くした男はかりそめの願いさえ他者と共にすることを望まず、ただ孤高に駆け抜ける。
 その手で無辜の人々を手に掛けたという罪を背負う少女は、己自身から目を背けることなくまっすぐに進む。
 ああ、ほむべきかな。苛烈なまでに清廉な二人の猟兵よ。その爪は、大鎌は、煌めき輝いて世界の歪から生まれた不浄を斬り裂くためにある!

「『天よ、祝え! 青龍、ここに降臨せり!踊り奏でよ、爪牙、嵐の如く!』」
 剱の詠唱が響くところ、天上の歌声とも聞こえる壮麗な音が鳴り響く。それは大気中の水分が一点に凝縮し、蒼き龍の爪牙として形成されていく麗しき調べ。
「おおおおおっ!」
 遠吠えは魔獣のものにあらず、ただ一筋に龍そのものと化した剱の天響。
 その聖なる爪が、牙が、そして生み出される真空の刃が振るわれる中、まがい物にすぎぬ獣の汚れた爪牙が太刀打ちできようか。さらに、水撃、呪殺、衝撃、誘導……そのすべての弾丸が意思を持った暴風となって周囲に吹き荒れ、廃墟の朽ち掛けた壁ごと魔獣たちを砕き散らし襤褸と化さしめる。そう、剱の存在そのものがまさしく刃と化して、魔獣たちを屠り去っていくのだ。

「……往きなさい、私の刃達…!」
 リーヴァルディもまた条理の外の力、ユーベルコードを解き放つ。左眼の聖痕に己自身の魂を込める不退転の覚悟は、ただ狂乱たる獣の暴威など及ぶべくもない。総身に亀裂が走るような痛みすら己の力と変えて、リーヴァルディは三対六刃の黒刃外装を縦横に舞い踊らせる。
 時折その猛攻さえかいくぐってリーヴァルディの美しい身体に届こうとする魔獣の攻撃、……しかしそれは艶やかに霞み麗らかに朧と消える残像にすぎぬ。その時にはすでにリーヴァルディは自ら振るう大鎌で相手を斬り捨てているのだ。
 舞うように踊るように、彼女は魔獣たちの蒼黒い毛皮を鮮やかな赤に染めていく。せめてその鮮烈な赤の中で消えゆけることを手向けとするかのように。

「ああ、やはり素晴らしい、皆さんのお手並みは。さあお出で下さい、ご一緒に平和のために戦いましょう……」

 魔獣たちを切り伏せていく二人の耳に、またもあの『声』が木霊した。
 積み重なった屍を背にし、鋭い視線を飛ばす二人の眼前で、ゆっくりと廃墟の一角が展開し、ひとつの道を形作ってゆく。
 言われずとも、わかる。あの道こそが深奥へと続く道だということが。全ての結果へとつながる道だということが。

「ふん、もったいつけたもんだな。異端の神との喧嘩か、何かは知らないが……そんなにやりたいなら、ここじゃなく、躯の海でやりやがれってんだ」
 剱は苦々しい思いを隠そうともせずに言い放つ。
「……平和平和言いながら、まきこんでんじゃねぇ」
 それでも剱の脚は向かう。最奥へと。これは既に――彼自身の喧嘩となっているのだから。
 朱唇から吐息を漏らし、リーヴァルディもまた『声』に対峙する。
「……平和を求めるこの声が“どちら”の物か分からない。……だけど、いずれにせよ私の為すべき事に変わりはない」
 長い髪をたなびかせ、彼女は毅然と決意を口にした。
「――望み通り、平和の為に狩らせてもらうわ、貴女達を……!」

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

トリテレイア・ゼロナイン
【古城】

強行突破ですか…お付き合いいたしましょう

脚部スラスターでの●スライディング移動で突撃するフォルター様に追従
センサーでの熱源の●情報収集で透明化した敵の位置を●見切り、命中重視のUCを一発●スナイパー射撃
目印となる出血をさせればあの方達は遅れは取りません
討ち漏らしは近接攻撃からの止めの射撃で処理

その奔放さ、時に羨ましくもありますよ(苦笑し)

そして私も「平和を望む」と応えましょう

人が戦いを止めることは無い証左…人の戦の歴史の結実たる戦機の身だとしても
平和を齎した後…「めでたしめでたし」に結末を導いた騎士の居場所は無いとしても

私は私の存在意義を消す為、戦機の騎士として終わらぬ戦いを続けます


フォルター・ユングフラウ
【古城】

【WIZ】

ふん、下らぬな…獣如きが我等を止められるとでも?
UCを発動させて愛騎に跨り、獣狩りに興じるとするか
騎士が目印を刻んでくれるのであれば、それを活かして立ち回ろう
身の程を知るのだな、畜生共
すれ違いざまに首を刈り、額に風穴を穿ち、肉を抉る
さぁ地に伏せろ、畜生らしくな

…我の遊興を邪魔するとは良い度胸だ
いい加減うるさいので応えてやる
我には、騎士の如き理念は無い
死も滅亡も、破壊も暴力も…悲劇と絶望もとうに見飽きた、ただそれだけよ
甘美な美酒であれども、そればかりを味わえば、何時かは水と同じになる
統治者たる我が我儘で贅沢なのは当然の事
さぁ、貴様の示す平和に我を誘ってみせろ

※アドリブ歓迎



 戦う機械とその種族は称される。数多の世界に数多の種族が存在する中においても、「戦」そのものを名に冠する種族はただ一つ、彼らのみ。……ウォーマシンのみ。
 ゆえに。
「我が存在そのものが、人が戦いを止めることは無い証左……この身は人の戦の歴史の結実です」
 トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)は一人呟く。それは、脳裏に響き、平和を求めるかと問い続けるあの『声』に対する答えというよりも、むしろ己自身に対する自嘲のそれであるかにさえ見える。
 けれど。それでも、とトリテレイアは顔を上げる。輝くばかりに堅牢な鋼たるものは彼の身のみにあらず、刃のみにあらず。その心、信念こそが決して折れ砕けぬ鋼に他ならない。
「――それでも、私も「平和を望む」と応えましょう。ええ、戦のために作られたこの身であるからこそ」
 トリテレイアのデータベースに彼の行動を規範するものが駆ける。それはおとぎ話……雄々しく勇壮な騎士が大義のために剣を振るう物語。
 しかし、狡兎死して走狗烹らると、皮肉気にさかしらに、ヒトの口は言う。物語が昇華し、幸せな結句が語られたとき――「めでたしめでたし」が告げられた時。そこにはもはや……無用の長物たる騎士の居場所など存在しないのだと。
「――それだからこそ、私は「平和を望む」と応えましょう。ええ、戦のあとにはあるべき意味を失うこの身であるからこそ」
 ウォーマシンたる現実、おとぎ話の理想、その双方から嘲弄されてもなお、トリテレイアは己の存在意義に挑戦する。それこそがトリテレイア・ゼロナインであるのだから。

「……いい加減うるさいので応えてやる」
 フォルター・ユングフラウ(嗜虐の女帝・f07891)は他を圧する美貌を不興の色に染めて轟然と嘯く。そこには騎士の理念もなく、大義も矜持もさらにない。必要であるだろうか、生まれながらの覇者に? あるがままに、あるがゆえに、帝王が帝王たるべく振る舞うための規範などが?
 ゆえにフォルタ―はただ荒野を征く。思いのままに、心のままに。彼女がその意のままに行く道こそが即ち覇道に他ならぬ。たまさかに訪れる戦乱も平和も、共に価値はなく意味もない、それらは単に帝王が進む道の結果として彼女に供奉するだけのともがらに過ぎないのだから。
 ……だが、それでも。
「……甘美な美酒であれども、そればかりを味わえば、何時かは水と同じになる。ふん……死も滅亡も、破壊も暴力も……悲劇と絶望もとうに見飽きた、ただそれだけよ」
 長い睫毛を揺らしながら呟いたフォルタ―のその言葉の中に、微かな、ほんの僅かな優しさが込められていると評することが許されるだろうか。いや優しさとさえ言いきれない、小さな心の輝きが。
 けれど、満天が重い黒雲に覆われ尽した空の中に、ただ一つだけ小さな星が覗いていれば、それでも光を放つように。フォルタ―の傲慢と憤怒の中にもまた、健気に踊る小さな光が宿っていたかもしれぬ。
(……我も甘くなったか?……誰やらのせいでな)
 そう、飽いた。何もかもに飽き尽した。故にフォルタ―の目に映る世界に色彩は失せていた。だからこそ。
 ……だからこそ、色のない世界に、「白」はまぶしく映ったのかも、しれなかった。

 ――魔獣?
 邪龍が咆哮し火砲が唸りを上げる、その戦場に。
 愉悦のままに暴虐の限りを尽くしていく女帝と、それに追随し、冷静沈着に討ちもらしを仕留めていく騎士の前に。
 どんな「敵」が存在し得るというのだろうか。
 そこにはただ「獲物」がいたに過ぎない。哀れな弱者が。いや、今となってはただの灰が。

「お見事です、猟兵の方々。さあこちらへお進みください……」

 あの『声』が再び響き、二人の視線の先に、ゆっくりと道が開けていく。廃墟の一角が形を変え、開口し、その奥へと続く道が。
「どうやらこの先にご招待くださるようですね。では、参りましょうか」
「ふん、気怠いことだ。せめて気晴らしになる程度のものでもあれば良いがな」
 慇懃に身をかがめるトリテレイアの横を傲慢に通り過ぎながら、ふとフォルタ―は鋭い視線を彼に向けて飛ばした。
「……そう言えば、聞こえておったぞ、先刻」
「……何がでしょうか?」
 きょとんとする騎士に、フォルタ―は機嫌悪そうに吐き捨てる。
「戦いのあとには存在意義を失うだと? ……たわけ。汝には我が無聊を慰めるという重要極まりない役割が残っているわ。戦ばかりが汝の在るべき理由と思うなよ?」
 そのままカツカツと靴音を響かせ道の奥へ向かうフォルターの後姿を見、トリテレイアのセンサーアイは激しく点滅した。愉快そうに笑っている、とそれは判断されるべき姿。
「ふふ、ありがとうございます、フォルタ―様。確かにそうかもしれませんね。……その奔放さ、時に羨ましくもありますよ」
 巨体を揺らせてフォルタ―のあとを追いながら、トリテレイアは軋みを覚えていた己のドライブが僅かにクリーンアップされたように軽くなった感覚を抱いていた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ドゥルール・ブラッドティアーズ
共闘NG
グロNG
POW

守護霊の憑依【ドーピング】で戦闘力を高め
『芳しき熱愛』で物理攻撃無効の汚泥の体に。
魔獣達を【念動力】で引き寄せ
猛毒と【呪詛】を宿した体で纏わり付く【マヒ攻撃】
同時に、局部を【慰め・生命力吸収】
魔獣だろうと苦痛は与えず、快楽の中で眠らせるわ

確かに、私も平和を望んでいるけど
人類の平和の為に戦っている訳ではないわ。
オブリビオンが根絶しても
今度は人類同士で争うのがオチよ

数多のオブリビオンを救済してきた私は
世の理を超越した存在に至りつつある。
いずれは人類の世界を去り、私と死霊達だけの理想郷を創るの

貴女が人類との共存を望むならそれも良い。
でも、そうでないなら……私が貴女を迎えに行くわ



「確かに、私も平和を望んでいるけど……」

 脳裏に響く『声』に対し、ドゥルール・ブラッドティアーズ(狂愛の吸血姫・f10671)は微かに愁いを帯びて呟く。
「……でも、人類の平和の為に戦っている訳ではないわ。もしオブリビオンが根絶しても、今度は人類同士で争うのがオチよ」
 ドゥルールのいうことはあながち単なる悲観論ではない。現に、UDCアースやヒーローズアースでは人間同士の抗争が絶えないではないか。
「……むしろ、オブリビオンが存在するからこそ、人間は『共通の敵』を作り上げ、偽りにして仮初めの団結を為していることができるのではなくて? 欺瞞も甚だしいわね……」
 そう、ドゥルールは平和を望む、けれどそれは人の世の平和ではない。人の世から外れた者たちにとっての平和なのだ。
 石もて追われた者たちの悲しみと嘆きが癒されるような平和。呪詛と怨念に満ち溢れた魂が昇華されるような平和をこそ、彼女は夢見る。
 そしてそれは単なる夢に終わらない。
 その身をもって、ドゥルールは己の理想を実現しつつあった。その身に数多の死霊を友として宿し、救い続けてきた彼女は。猟兵とは元より生命の埒外、しかしドゥルールはその中でもさらに、人理を超えた存在に至りつつさえあったのだ。それを壊れた愛と人はいうのかもしれぬ。狂った愛と。だが、愛に狂うとは――正しい表現ではない、とかつてある詩人は口にした。
 何故なら、愛は即ち狂気そのものであるのだから。

「あなたの真意を聞いてみたいけど、その前にこの魔獣たちをおとなしくさせる必要がありそうね」
 獰猛に唸りを上げる魔獣の大群を前にしても、ドゥルールの瞳にはむしろ慈愛が溢れる。彼女にとって、魔獣すらもまた救うべき対象に他ならないのだから。
 今しもドゥルールに飛び掛からんとしていた魔獣が突如、打たれたように身を引いた。……魔獣の鋭敏な嗅覚に訴えていたのは、強烈な悪臭。これこそがドゥルールの能力、悪臭と引き明けに物理攻撃を無効化し猛毒を宿した肉体に変貌する『芳しき熱愛(スイート・メルティポイズン)』――!
 身を翻そうとする魔獣たちを、しかしドゥルールの愛は強く激しく縛り付けて逃がさない。彼女の想いの力はそのまま無比なる力となって、相手を束縛しその腕の中へと導く。
 とろり、と滴り落ちる。ドゥルールの肌から、ドレスだったものが、液体のようにその艶めかしい太腿を伝い落ちる。ドゥルールの能力は己の衣服をすら溶かし尽くすのだから。けれど、意に介す必要もない。彼女の迸る想いの前に、相手と自分の距離を遮る服など邪魔なだけ。
 白いしなやかな腕が荒々しい魔獣の肉体に優艶に回され、優しく抱きしめる。ちろり、と唇を湿した舌が愛の言葉をささやき、獣の身体へと降りていく。
 青黒い獣たちの肉と、白い美女の肉がもつれ、ひとつの塊となっていく。悲鳴を上げたのはどちらだったのだろう、それも今となってはどちらでもいいのかもしれない。それは紛れもない快楽の叫び、愉悦の叫びだったのだから……。

「お見事です。ではこちらへおいで下さい……」

 長い髪を整え直していたドゥルールがその声に顔を上げると、廃墟の一角が形を変え、道となって開けていくさまが目に入った。
「そう、この奥なのね、あなたがいるのは」
 ドゥルールは細い息をついて立ち上がる。その眼の奥には蒼白い炎のような情熱が燃えている。永久に融けぬ氷の下で燃え盛る業火のように。
「……貴女が人類との共存を望むならそれも良い。でも、そうでないなら……私が貴女を迎えに行くわ」

成功 🔵​🔵​🔴​




第3章 ボス戦 『ヴァンパイア・レディ』

POW   :    肉体変化
対象の攻撃を軽減する【魔力で出来た霧状の肉体】に変身しつつ、【時折実体化しては、鋭く伸ばした爪や牙】で攻撃する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
SPD   :    魅了の魔眼
【魅了の魔力を込めた視線を放つ事】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【瞬時に篭絡し、同士討ちをさせる事】で攻撃する。
WIZ   :    闇夜の眷属
レベル×5体の、小型の戦闘用【の『眷属』、吸血コウモリ達】を召喚し戦わせる。程々の強さを持つが、一撃で消滅する。

イラスト:猫宮さえか

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はアルル・アークライトです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「ようやくお会いすることが出来ましたね、猟兵の方々」

 廃墟の最奥、豪華な内装の一室に猟兵たちは足を踏み入れた。いや、かつては豪華だったであろう、というべきか、凄まじい闘争のあとがそこにもまた歴然と残っていたのだから。
 その中でも、鏡。――鏡が特に、念入りに破壊され尽していた。微塵に粉砕されきって、跡形もない。
 その廃墟の中に、あまりにも不似合いな存在がそこにいた。妖艶にして優雅な美女が。
 彼女こそ、自分たちを招き入れた本人だと猟兵たちは悟る。
「ふふ、この者が抵抗をしていたので、少してこずり、皆さんをお迎えに行けませんでした。お許し下さい……」
 美女が指示したのは、その鏡の残骸。
 ――彼女は、鏡の中の自分と、自分自身と激しく戦っていたとでもいうのか。それはつまり。
 猟兵たちは卒然と理解する。吸血鬼に喰われ尽したはずの異端の神々は、しかし吸血鬼の内部で胎動し、彼女を内側から再び喰らいに掛かったのだと。
 ――その結果、どちらが「勝った」のか。いや、どちらが「勝った」のでもない。
 その二者は今や存在そのものの奥深くまで混じりあい、ひとつとなり、いやひとつ以上となり、ひとつ以下となり、そのどちらでもないもの、何者でもないものになり果てていたのだ。――ただの怪物と称するしかないものに。
 
「さあ、共に平和のために戦いましょう」
 
 オブリビオンは優雅に手を広げ、猟兵たちに近づいてくる。なんと恐ろしいことか、その言葉にも表情にも、一切の嘘偽りがない! 彼女は、心の底から平和を願っている!

「本当の平和のために一番不要なものは何でしょう。この世の悲劇は、災厄は、いったい何がもたらしているのでしょう。……それは、オブリビオンです。オブリビオンを滅ぼさなければなりません……」
 自身がオブリビオンそのものである美女が言葉を紡いでゆく。夢見るように。

「そして、オブリビオンを本当に滅ぼすために必要なのは? ……ええ、そうです。『骸の海』を破壊することです!」

 驚愕が一同を支配する。何を言い出したのか、この相手は。そんなことができるとでもいうのか。一体どうやって……?

「残念ながら、私だけではもちろん骸の海を破壊することはできません。しかし……皆さんがいてくださるなら! 皆さんが一緒に戦ってくださるなら! きっとそれが可能です! さあご一緒に、骸の海に参りましょう! ええ、それはもちろん私と一緒にここで死ぬということですが……平気ですよね? だって皆さんはいずれも、平和を望むとおっしゃったのですもの!」

 壊れ果てたオブリビオンにまともな言葉は通用しない。彼女は心の底から平和を求め、そのために猟兵たちと一緒に死んで骸の海に行こうとしている。
 猟兵たちは彼女に対峙しなければならない。けれど、先程と同じように、いやそれよりはるかに強烈に、オブリビオンの『問い』が猟兵たちの魂を直接揺さぶってくる。猟兵たちはそれに対する答えを用意しなければならない。

「平和を求めるとおっしゃったのですから、そのために自分が死ぬことなど平気ですよね?」

(※この問いに答えていただくとプレイングボーナスが付きます。プレイングの受付は3/7(土)AM8:31以降となります)
セシリア・サヴェージ
骸の海の破壊。なかなかどうして名案な気もしますね。
それが実行可能か否かという疑問点に目を瞑ればですが。

改めて宣言しましょう。私の平和を勝ち取りたいという答えに嘘偽りはありません。
平和のためならばこの命喜んで捧げます。それをこの姿で証明してみせましょう!

UC【闇の解放】を発動。戦闘能力を【限界突破】させる。
魂の揺さぶりなど【気合い】で耐えてみせよう。
霧の肉体になろうが関係ない。暗黒剣から【衝撃波】を放ち霧散させてやろう。
たまらず実体化したその時を見逃さず【激痛耐性】で攻撃を耐えながら【捨て身の一撃】で攻撃する。

未来を決めるのは今を生きる私たちだ。過去は消え去るが道理。骸の海へは一人で行け。


幻武・極
やれやれ、やっぱりキミはオブリビオンだね。
骸の海もまた世界だって考え方はできないかな?
ボクは骸の海の存在は否定しないよ、今のところはね。
世界が未来に進むということは同時に過去つまりオブリビオンが生まれるということだからね。
オブリビオンを収監する世界、地獄のようなものとボクは考えているよ。
だから、骸の海を破壊して行き場所を失ったオブリビオンが世界に溢れ返ったら困るからキミを倒させてもらうよ。

魔力でできた霧状の肉体でも生命力そのものを奪うこの武装を防ぐことができるかな?

さて、骸の海に着いたら彼女にキミの罪を裁いてもらうといいよ。



「……骸の海の破壊ですか。なかなかどうして、名案な気もしますね」
 セシリア・サヴェージ(狂飆の暗黒騎士・f11836)はオブリビオンの問いかけに、揺蕩うような笑みを浮かべる。その答えに、オブリビオンは百万の薔薇がそよぐような鮮やかな笑みを浮かべて歓喜を表した。
「ああ、やはり。わかっていただけると思っていました。さあ、それでは私と一緒にここで死にましょう!」
「……先走らないでくださいな。私が言いたいのは」
 ゆっくりと首を振りながら、しかしセシリアの視線は急速に温度を失っていく。冷え切った眼が射すくめるように相手を捉えて。
「――それが実行可能か否か、という疑問点に目を瞑れば、ということです」
「おお、もちろん可能ですとも! なぜなら、不可能であるという証拠はないのですから!」
 きっぱりと言い切ったオブリビオンの答えは決して嘲弄でも揶揄でもない。オブリビオンの声にはわずかな惑いもなく、信じがたいほどに確固とした、それは断言だった。それが彼女の心の底からの答えなのだ。……ゆえに。
(やはり壊れ果てていますね……ならばこれ以上の問答自体がもう、意味をなさない)
 セシリアは断を下すと、静かに言い放った。
「改めて宣言しましょう。私の平和を勝ち取りたいという答えに嘘偽りはありません。平和のためならば、この命、喜んで捧げます……」
 果たしてそれはオブリビオンの期待した答えだっただろうか? ……否。なぜなら。
「それをこの姿で証明してみせましょう!」
 セシリアの流麗な姿が、漆黒の闘気に包まれ始めたのだから。いや、それは既に闘気というべくもない、闇よりも深く影よりも黒き、真なる暗黒そのもの!
 身を包む? そのような形容さえ程遠い、今のセシリアは意思を持った闇の顕現、魂を持った暗黒それ自体に他ならぬ! それこそがセシリアの覚悟、己の身を闇に染めてもなお戦い続ける、祈りにも似た闘志!

「やれやれ、やっぱりキミはオブリビオンだね。骸の海もまた世界だって考え方はできないかな?」
 一方、幻武・極(最高の武術?を追い求める羅刹・f00331)は哀れむような視線を相手に向ける。年端もゆかぬ少女に見える極の姿、しかしその視線の奥には、他者とは異なる命を燃やしてきたもののみが宿す光が輝く。
「骸の海が、世界……?」
 オブリビオンは怪訝そうに顔をしかめた。不可思議な光景ではある。猟兵がオブリビオンに対し、骸の海の何たるかを説くのだから。
「ボクは骸の海の存在は否定しないよ、今のところはね。……世界が未来に進むということは、同時に過去、つまりオブリビオンが生まれるということだからね」
 それが正解であるかはわからない。が、極は今のところ、そのように捉えている。
 時の流れが止まらぬものであるのなら、過去は一瞬ごとに絶え間なく生まれゆく。真に過去を絶ちたいのならば、未来そのものへの歩みを消すしかない。
 光に向かって立てば影が生まれる。影を嫌うからと言ってそれを消すことなどできようか。それはどちらかを消し、どちらかのみを残すと言った関係にあるものではない。裏は不要だとして、一枚の紙の表だけを取り出すことなど不可能であるように。
「……だから、骸の海を破壊して、行き場所を失ったオブリビオンが世界に溢れ返ったら困るんだ」
 そのようにして生まれた過去を収容する場所こそが骸の海であるのなら、そこを破壊することは逆に世界に破滅をもたらしかねない。ゆえに、極は言う。骸の海もまた世界の一部だと。
「でも、オブリビオンは平和の仇。安寧の敵。それを根絶するためには骸の海を破壊するしかないのです」
 オブリビオンの言葉に、極は小さく笑みを浮かべて肩をすくめた。無論、相手にまともな理屈が通じないことは最初からわかっている。それでもなお、言ってみたかったのは……「過去」に対する極の特別な思い入れ、だからでもあっただろうか。

「皆様のおっしゃることはよく分かりません。……けれど、共にここで死んで、平和をもたらすことこそが私たちの唯一の選択肢のはず!」
 悲痛な、と表現しても許されるかもしれない、喉の奥から斬り裂かれるような声を放ったオブリビオンのその姿を。まぎれもなく彼女はそれが正しいことだと信じているのだから。壊れても狂っても。
 けれどそれを容認することはできない。セシリアと極は共に迎撃の構えを取る。
 その二人の前で、オブリビオンの美しい肉体は、――突如、弾けた。
 いや、弾けたように見えた。それはまるで、オブリビオンの高まる感情のあまり、肉体がそれに耐えきれなかったかのように。
 しかしそれは己の肉体を変容させただけだと猟兵たちは瞬時に悟る。真紅の霧――魔力で満たされた霧に、オブリビオンはその姿を変えたのだ。通常の物理攻撃など通用はしない身体に。
「さあ! 死にましょう!」
 虚空から響くコーラスのような声が猟兵たちに襲い掛かる。紅い闇から伸びる爪と牙と共に。
 けれど。
「ボクたちは君の見込んでくれた猟兵なんだよ。だからこそ、そのボクたちには届かない、君の刃はね。……さあ、君の力を使わせてもらうよ――『ザラキエル』」
 淡々と呟いた極の声は、ある名を形作る。
 その名は――ザラキエル。死を告げる悪魔にして……罪を裁く天使だったもの。
 そして、かつて、冷たく静かに降りつのる罪の中で、極と凄絶に対峙したもの。
 鏡に映ったお互い同士であったもの……。
 そのザラキエルの力が自らに静かに寄り添ったことを極は感じる。
(妙な縁だよね、ほんとにさ……)
 微かに口元に笑みを浮かべ、極は打つ。
 ――半歩崩拳。
 かつてザラキエルを討った技。
 その拳を、今度はザラキエルと共に。
 拳に宿った奪うザラキエルの力は、生命力を奪う。相手が霧であろうと関わりなく。
「が、あああああっ!」
 たまらずオブリビオンは悲鳴を上げる。のたうち捻じれ、霧の形が半ば人型を取り戻して宙空で暴れる。
 その隙を見逃すセシリアではなかった。
 己の魂がオブリビオンの力によって激しく揺さぶられていると確かに感じながらも、しかし彼女に迷いも躊躇いもない。あろうはずもない。揺さぶり程度で怯える余地が今更どこにあろうものか。その身が闇と化してもまだ、セシリアの魂は人のために世のために輝き続ける灯なれば!
 セシリアの振るう暗黒剣が唸りを上げる。あらゆる敵を喰らい尽くさんとするような遠吠えを。それは刃から衝撃波となって迸り、オブリビオンに突き刺さった。オブリビオンが完全な霧の姿のままならばその威力は軽減されていたかもしれぬ、けれど、極の攻撃により半ば凝固しかけていたオブリビオンはその衝撃をまともに受けた。
 何条もってたまるべき、大きくたたらを踏んでオブリビオンはよろめいた。そう、実体に戻らざるを得ないほどの一撃を受けたために。
 刹那――
 セシリアと極は同時に踏み込んでいた。壊れ果てたオブリビオンに終焉をもたらすために。刃と拳が同時に風を巻き、苦し紛れの敵の爪牙を撃ち砕きながら――その体躯に突き刺さる!
「……未来を決めるのは今を生きる私たちだ。過去は消え去るが道理。骸の海へは一人で行け」
「そう、そして骸の海に着いたら、キミの罪を裁いてもらうといいよ。彼女に……ザラキにね」

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

御狐・稲見之守
骸の海を破壊するか、面白い試みではあるがな。

それが出来たとて、その中に浮かぶ我々の世界が果たしてどうなるかな。我々の世界は膨大な過去に囲まれ、過去を消費して在るのだ。

そして悲しいことに、我々はただそこから出て来たものを潰す後手に回るしかない……光と闇、陽と陰が溶け合うことなく油と水のように、我々とオブリビオンとは終わりのないそういうモノなのだろう。

本当にその時が来たらばお前に付き合ってやっても良いが、生憎まだ我は過去になる気はない。そして終わりなく奴等が来るならば終わりなく刈り取ってやろうさ。

UC破魔矢……さあ、残念であるがお別れだ。敬意を以ってせめて骸の海への送り出しくらいはしてやろう。


リリエ・ヘブンリィブルー
……彼女の言いは聖戦を謳う殉教者達のそれと同じ…そうすることが唯一絶対の道と信じて全てを焼き尽くす狂気。そしてもう一人の彼女もまた破滅をもたらす存在……。

ごめんなさい、今は力ある者が力なき者の前に立ち、導くことこそが必要だと私は思います。そしてあなたもまた…手を取り合えるなら今死すべき時ではなく共に歩んで欲しいと思います。

しかし…あなたはもはや平和を脅かす存在でしかありません……せめてどうか、安らかに。

UC天使化、革命剣を手に召喚された蝙蝠をなぎ払い彼女へと刃を振るいます。

平和を謳う者に剣を向けることへの抵抗も、他に何か道はなかったのかと云う問いも、天使化によって無感情なものへと……。



「骸の海を破壊するか、……面白い試みではあるがな」
 御狐・稲見之守(モノノ怪神・f00307)もまた、オブリビオンの着想自体には一定の評価を下す。長きを生きてきた彼女のそれは世故長けた柔軟さでもあるだろうか。
 しかし、安直に賛同できるほど稲見之守は物事を容易く考えてもいない。
「……それが出来たとて、その中に浮かぶ我々の世界が果たしてどうなるかな。我々の世界は膨大な過去に囲まれ、過去を消費して在るのだ」
 長きを生きてきたからこそ、稲見之守は世を知る。良きことも悪しきことも糾える縄の如きもの。未来は過去の中より生まれ、それを糧として育ち、そしていずれはそれ自体も過去となって更なる未来への礎となる定めのもの。故に、一概に過去を否定しきることはできないと。
「ああ、でもそれでは人々は救われません。骸の海を破壊しなければ、ひとから哀しみは絶えないのです。神よ、あなたはそれを是となさるのですか?」
 オブリビオンが身をよじるように問いかける。その言葉は稲見之守の内面に刺さり抉る、……けれどそれでも稲見之守は、微かに寂しげな微笑を浮かべて毅然と言い切った。
「……そうじゃな。悲しいことに、我々はただそこから出て来たものを潰す後手に回るしかない……光と闇、陽と陰が溶け合うことなく油と水のようにな。我々とオブリビオンとは、終わりのないそういうモノなのだろう」
 過去を否定することができないのならば、そこから導かれるオブリビオンもまた、終わりなく生まれ来る。それすらも結局は認めざるを得ない。
 さよう、神は認める。
 猟兵は――世を救えない。 
 ただ世に刻まれた傷を癒すのみだと。
 本質的な悲劇と災厄に対して終止符を打つ存在では――少なくとも、今はまだ、ないと。
 だがそれは諦めではなく、覚悟。
 無際限の災厄に対して自らも久遠にそれを迎え撃つ、明鏡止水たる覚悟に他ならぬ。
「……終わりなく奴等が来るならば、終わりなく刈り取ってやろうさ」
 それこそが神の託宣、稲見之守の告げる己の未来だった。

(……彼女の言いは聖戦を謳う殉教者達のそれと同じ…そうすることが唯一絶対の道と信じて全てを焼き尽くす狂気。そしてもう一人の彼女もまた破滅をもたらす存在……)
 リリエ・ヘブンリィブルー(至天の蒼・f19764)は深い嘆きの想いの中に沈む。
 彼女は信じた。聖者として無垢に純粋に。そしてそれはある意味、間違ってはいなかった。
 確かにオブリビオンは平和を望んでいたのだ。そのリリエの信頼は裏切られることはなかった。
 ……その方法が狂い果てていたことを除きさえすれば。
(想いは正しいにもかかわらず、それが壊れていることもある……悲しいことです。ですがそれでも……それでも私たちは顔を上げねばなりません)
 聖者はその美しい貌を静かに相手に向ける。相手は確かに壊れている、それでも。
 それでも、ただ壊れているだけのことで、その結論は出るだろうか。
 己自身を含むオブリビオンを排除するために、骸の海を破壊するという考えが。
 世の平和のために、すべてを投げ打つという考えが。
(狂気ではありますが……それでも彼女の中には、もともと、一抹の、ほんの欠片でも……光があったからこそのことだと私は信じたい)
 そう、信じることがリリエの強さ。
 信じない方が楽なのだ、相手はただのバケモノ、その単なる妄言にすぎず、歯牙にかけるほどの価値もないと。
 けれどそれでもリリエは信じる、その方が辛いとわかっていても。
 信じて言葉を送り出す、その方が哀しいとわかっていても。
「ごめんなさい、今は力ある者が力なき者の前に立ち、導くことこそが必要だと私は思います。そしてあなたもまた……手を取り合えるなら今死すべき時ではなく共に歩んで欲しいと思います」
リリエは眼前の壊れた相手を優しい声で抱き締めるように語り掛ける。
「しかし……あなたはもはや平和を脅かす存在でしかありません……」
 せめてどうか安らかにと、その祈りを口にすることは言い訳になるから。
 リリエはただ静かに、革命剣を抜き放った。

 「けれど、それでも! 平和は求める価値があります! すべてに抗ってでも!」
 ああ、その言葉を発したのは猟兵ではなくオブリビオン。何たる皮肉であろうか。
 声と同時、一瞬、闇がすべてを覆い尽くしたかにさえ思える。だがそれは無数の翼――コウモリの翼。オブリビオンの呼びだした無限の使い魔が神と聖者の視界を覆い尽くしたのだ。璃レの
 それはあたかも意思を持った闇がそのまま覆いかぶさってくるようにさえ思えるほどの圧倒的な圧力。コウモリたちの爪が神と聖者の肌を切り裂き、牙がその聖なる血を吸い尽くさんとする!
 だが間一髪、致命の事態になる前に展開されたのはリリエのオーラ。刹那の間ではあったが、その神聖なる光の壁は蝙蝠たちの襲撃を緩和した。……そしてその一瞬の間さえあれば良い。稲見之守の凄まじい催眠の力がコウモリたちを絡め取るには。
 次の瞬間、コウモリたちは猟兵たちに向けるべき爪牙を互いに向けて振るい始めた。阿鼻叫喚の絵図が繰り広げられる。
 無論、無数のコウモリ全てに催眠が掛けられるわけではない。だがそれで良い。一部ではあっても己が支配下に置くことができれば、同士討ちをさせることにより戦場に混乱を招くことができるのだから。
「『諸々禍事罪穢を祓い清めむ』!」
「『――天覆う暗雲切り裂く刃たれ』!」
 すかさず神と聖者による二重詠唱が響く。
 稲見之守の手にするは霊符――それが風を切って投げ打たれるところ、符は無数の神矢へとその姿を変えた。嵐の如く暴風の如く、吹き荒れる神箭は蝙蝠の大群を撃ち払いつつオブリビオンめがけて降り注ぐ! これぞ神罰なり!
 同時に光明が差し込む。それはリリエの覚醒した姿。天頂に輝く眩い光輪を戴いた、壮麗にして侵し難き威厳を有する――まさに天使。
 だが天使と化したリリエの目には、嗚呼。先刻までの痛々しいまでの慈愛は、もうない。
 躊躇わぬ。平和を謳う者に剣を向けることも。
 問いもせぬ。他に何か道はなかったのかとも。
 ただ敵を討つ刃と化して、リリエは飛翔し、まっすぐに貫く。迷わずに。
 時を同じくして、稲見之守の矢がオブリビオンを突き刺していた。
「ああああああ! なぜ……なぜです。神の御方、そして天使の御方……あなたたちは……あなたたちこそが、最も平和を希求しておいでのはずなのに……!」
 オブリビオンが血を吐くような悲鳴を上げたのは、身体の傷のため、だけではなかったかもしれない。むしろ、心に受けた傷の方が彼女を深く貫いていたのかも、しれなかった。
「本当にその時が来たならばお前に付き合ってやっても良いが、生憎まだ我は過去になる気はない。……じゃが、お前に敬意を持った、それは誠じゃて」
 稲見之守の言葉は、深い手傷を負い撤退していくオブリビオンの後姿に、手向けのように響いていた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

黒影・兵庫
死んだ後どうなるのかも不確定なのに
そんな提案には乗れませんよ...
それに平和のために命がけになっても
差し出すことは御免です
理由ですか?
俺の命は俺だけのものじゃないので!
でしょう?せんせー
(頭の中の教導虫に話しかけると「正解!花マルよ!」と返された)
ありがとうございます!

というわけです!
骸の海には貴女一人で行ってください!

(UC発動)

強襲兵さん!俺が蝙蝠に向けて『衝撃波』で攻撃するので
残った蝙蝠を複数匹で確実に倒してください!
俺は{蜂皇の牙}を『念動力』で操作しての攻撃と
『衝撃波』の直接攻撃の挟み撃ちで吸血鬼を倒します!


エドゥアルト・ルーデル
これは…拙者的には善堕ちと評価したいでござるな!異論は認める

平和を求める云々は兎も角死ぬのは別に平気でござるね
早速やってみるでござるよ!玉には違う嗜好を試すのもいいよね!
無防備マンなまま攻撃を受けますぞ!ぬぅぅん!愛で拙者を殺してくれぃ…!

はい適当な所で【リスポーン】して復活!おう死んだぞ!これでいいのか
【霧状の肉体】を強制的に実体化させちゃるでござる!聖水は無いので代わりにこの青白い光を放つコーラ瓶を霧に向かってそぉい!
適当な所で銃で撃ち抜き中身をぶち撒けますぞ
危険な物質が霧に混じって実体化した所を爆破でござるな

美女にやられるのも良いが次はロリ吸血鬼にやって欲しいなぁと思う拙者であった、まる



「お断りします!」
 開口一番、黒影・兵庫(不惑の尖兵・f17150)の回答は、彼自身の性格のようにまっすぐで衒いのないものだった。兵庫にとってそれは自明の理、躊躇う必要のないもの。
「何故です……? 平和を求めるとあなたはおっしゃったはずです」
 戸惑ったような表情を浮かべて問い直すオブリビオンに、兵庫ははきはきと答えた。
「まず第一に、死んだあとどうなるかが不確定だからです。いえ、ごくまれに、死んだあとどうなるかがはっきりしている方もいますが、それは例外です」
 ちらりと兵庫が送った視線の先にいたのはエドゥアルト・ルーデル(黒ヒゲ・f10354)。だが今は兵庫のターンなのでエドゥアルトはもう少しそこでぼんやりしていてほしい。
 とにかく兵庫の言いたいことは、死して必ず骸の海に赴くことができるのか、そしてそこで現状の戦闘能力と、何より意思を抱いたままでいられるのか、という疑念だった。
「そして第二に、といいますか、何よりも――俺の命は俺だけのものじゃないので!」
 兵庫はきっぱりと答えきる。その脳裏に浮かぶ面影は、恩師、妹、蟲たちを含む多くの仲間と友、そして……愛する少女。
 兵庫の命は彼の独断で好き勝手に捨てられるものではない。たとえそれが崇高な使命のためであったとしても、――平和のためであったとさえしても。それと匹敵する価値が己の命にはあると、今の兵庫は知っている。
「でしょう? せんせー!」
(正解! 花マルよ、黒影!)
 兵庫の脳内に寄生する恩師、スクイリアの感激したような声が響く。
 兵庫の預かり知らぬことではあるが、スクイリアにとって、オブリビオンの問いは決して看過できないものだった。
 兵庫を深く愛し、ゆえに何よりも兵庫の死を恐れ、それを避けようとするあまりに彼の身体を書き換え続けてさえいるスクイリアにとって、兵庫の死を前提とした誘いなどは断じて受け入れられるものではなかったのだから。どんな答えを兵庫が出すか、スクイリアにとっては身を切られるような緊張が続いていたのだった。
(でも黒影は……アタシの教示なしに、自分でこの答えにたどり着いてくれた。それでこそ、黒影よ!)

 一方、エドゥアルトもまた深い問題に直面していた。
 果たしてこのオブリビオンは悪堕ちなのか、善堕ちなのか? というシビアな問題である。
 深く考え込み、その後適当なインスピレーションに基づいて、エドゥアルトはついに答えを見出した。
「これは……拙者的には善堕ちと評価したいでござるな! 異論は認める」
 善堕ち。悪が善に目覚める現象。それは往々にして日曜の朝などによく見られる現象である。ナントカ書房の研究書によれば、少年漫画などにある、強敵が仲間になるパターンとも少し違うと考えられるという。すなわち、過去の罪が大きくその華奢な背にのしかかり、その重圧に押し潰れそうになりつつ、それでも前を向く健気さと、しかしそんなことをしても決して完全な贖罪にはなり得ない、永遠に罪を感じて生きていくのだという嗜虐心の双方が視聴者の心を強く刺激して離さないのだ。あいつ善堕ちのことになると早口になるよね。
「まあ、平和を求める云々は兎も角、死ぬのは別に平気でござるね。早速やってみるでござるよ! さあ愛で拙者をころころするでござる、さあさあ可及的速やかに! ハリーハリー!」
「え、ええ……私の考えを受け入れていただいて、嬉しい限りです……?」
 オブリビオンとすればこれ以上はないほど素晴らしい展開のはずなのだが、微妙にその口角は引きつり、明らかな戸惑いを隠せない。
 それでも意を決し、オブリビオンは鋭い爪を伸ばし、まったく無防備なまま棒立ちになっているエドゥアルトの胸を深々と刺し貫いた! おおなんということか、ここでしんでしまうとは。
「リスポーン!!」
 まあ、ちょっと離れたところで腕組みしたまま復活し飛び出してきたエドゥアルトのヘルメットが、その勢いのままにオブリビオンの後頭部を直撃したのだが。
「痛い!」
「いってえ! それはともかく、ほら死んだでござるよ、これでいいのか?」
「いえ、あの……死ぬこと自体が目的ではなく、それは手段でして、あくまで骸の海へ行くことが……」
「え? ヤダよ。骸の海にも可愛いガールズがいることは確かでござろうが、やっぱり健康的にprprしたいもん」
 さて問題です。この場面で壊れているのは、果たしてオブリビオンでしょうか、猟兵でしょうか。

 もちろんオブリビオンもまた壊れ果てていることには違いない。言葉が通じないと見るや、彼女は猛然と猟兵たちに攻撃を開始した。平和のために。共に死んで骸の海を破壊するために!
 無数のコウモリが甲高く吠えながら猟兵たちの視界を埋め尽くす。迎撃する兵庫は衝撃波を放つが、多くのコウモリはこれを回避してゆく。超音波によって障害物を察知し回避する能力は通常のコウモリも持つ。ましてこのコウモリはオブリビオンの召喚した魔獣なのだ。簡単に攻撃が命中するものではなかった。
 だが。
「ええ、もちろんそれも、承知していましたよ!」
 兵庫は口元に笑みを浮かべる。彼の撃ち放った衝撃波の狙いは、オブリビオンが撃ち砕き散乱させた鏡の破片に他ならなかったのだ。衝撃波によって撃ち上がった鏡の無数の破片が、コウモリたちの死角から対空砲火の如く叩きつけられる! 
 コウモリたちが慌てふためき、行動が乱れたところへ、今度こそ本命の衝撃波が、そして追撃の強襲兵たちが襲い掛かった。

「くっ、さすがです、それならば!」
 オブリビオンの身体が文字通り雲散霧消していく。そう、身体を霧と化すのも彼女の恐るべき能力。物理攻撃は容易なことでは届かない。
「いや霧ったって物理現象には違いないでござるよな?」
 もっとも、エドゥアルトは動じる様子もない。彼は素早くコーラ瓶を取り出すと、霧となったオブリビオンめがけて投げつけた。その中に充たされていたのは、なんかよくわからない系の青白い液体。
「そぉい!」
 とぼけた言動ではあっても、彼が歴戦にして熟達の傭兵であることは紛れもない事実。電光石火のようなエドゥアルトのクイックドロウがほとんど時差なく、投擲した瓶を撃ち砕いた。
 当然、瓶の中の液体は霧の中にぶちまけられる。オブリビオンの肉体そのものである霧の中に。
 不純物で身体組成を乱されたオブリビオンは、しかし動揺する暇さえなかっただろう。次の瞬間、オブリビオンの霧は轟音と爆煙に包まれ吹き飛んでいたのだから。
「がはあああっ!?」
 たまらず実体化するオブリビオンめがけ、兵庫のナイフ「蜂皇の牙」が彼の衝撃波と共に叩き込まれる。
「平和のために命がけにはなります、でも、軽々しく差し出すことは御免です。骸の海には貴女一人で行ってください!」
 冷徹に断ずる兵庫の後ろで、エドゥアルトはしみじみと呟いていた。
「美女にやられるのも良いが次はロリ吸血鬼にやって欲しいなぁと思う拙者であった、まる」

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ドゥルール・ブラッドティアーズ
共闘NG
グロNG
POW

お断りよ
私が死ねばオブリビオンを救う者が居なくなる
それに骸の海の破壊なんて許さない

真の姿で背中に黒炎の翼
守護霊の憑依【ドーピング】で更に強化して
悲愴の剣で【衝撃波・乱れ撃ち】
肉体変化で軽減されても【呪詛】が寿命の消耗を加速

【オーラ防御・激痛耐性】と【医術・早業】を多用し
不死である事を隠して持久戦
終盤に『永劫火生』と【学習力・見切り】で強化復活
吸血で回復されそうになったら
全身から放電【属性攻撃・電撃耐性・マヒ攻撃】

疲弊して変身を解いた彼女を
【怪力】で押し倒し【誘惑・催眠術・全力魔法】で魅了
全身を【慰め・生命力吸収】

貴女を骸の海には行かせない
私の中で永遠の愛と快楽に溺れなさい



 オブリビオンは救いたかった。世界を。悲鳴を上げる世界を。苦しみにのたうち回る世界を、その痛みから。
 ドゥルール・ブラッドティアーズ(狂愛の吸血姫・f10671)は救いたかった。オブリビオンを。暴虐の裏に悲哀を宿し、残虐の影に孤独を隠して、誰も共に笑ってくれない哄笑を虚空に響かせる者たちを、その宿命から。
 ……そう、二人は鮮やかなまでに対極で、そして嘆息すべきほどに相似だった。
 どちらも救いたいと願う、狂おしいほどに、壊れ果てるほどに、ただ望む、願う、ああ、そのためにならば、いかなる手段をも辞さないと。そのためにならば、この身がいかに傷つこうが問うところではないと。
 ――二人は共に、愛の窮まるところに狂気を抱いたものとして、歪んだ世界の中で孤高に立つものだった。

 けれど、それゆえに。似ているからこそ。相手の想いの強さが分かるからこそ、ドゥルールはそれを認められない、認めてはならない。似ているとわかるからこそ。
「お断りよ……骸の海の破壊なんて許さない」
 鋭い眼光を放ちながらドゥルールは言い放つ。
 オブリビオンたちの故郷を、世界が勝手に過去と名付けて無情に葬り去ろうとする、かつての世界それ自身の姿を、愛おしみ慈しむからこそ、ドゥルールはオブリビオンの言葉に従うことはできない。決して。
「美しくも怖ろしい御方。あなたが私たちを……オブリビオンを愛してくださっているのは知っていますし、それに感謝もしています。けれど」
 オブリビオンは、しかし、そんなドゥルールの眼光にひるむことなく淡々とその眼差しを見返した。
「……けれど、本当に私たちを愛してくださっているのなら、なおさら私の言葉に賛同していただけるはず」
「なんですって?」
 相手は無論壊れ果てている。そのひび割れた言葉に耳を傾ける必要はないはずなのに、ドゥルールはそれでも問い返さざるを得なかった。
「だって」
 と、オブリビオンは微笑むのだから。莞爾と。

「だって、本当にオブリビオンを救いたいのなら。その哀しい定めから解き放ちたいのなら。――もう二度と私たちが現れないようにすべきだからです。私たちが世界に現れてしまうからこそ、私たちは世界から疎まれ、怖れられ、憎まれてしまう。本当に私たちを救いたいのなら、私たちが現れること自体失くしてしまえばいいのです。そうすれば誰も憎まれない、恨まれない。悲しい思いをしないのですから……それともまさか、あなたは」
 優しいまなざしでオブリビオンは続ける。聞き分けのない子供をあやすような口調で。
「あなたは、『自分が救い手になりたい』という承認欲求だけで私たちをお救いになっているのですか? ご自分が悦楽を感じるためだけに?」

 それは恐ろしい問いかけだった。捉えようによってはドゥルールの存在の根底さえ揺るがしかねないほどに。
 ……嗚呼、けれど。
 やはり、ドゥルール・ブラッドティアーズこそは深き闇の中に咲き誇る大輪の妖華。その壮麗にして峻厳な佇まいにいささかの陰りもなし。
「……愛しい、そして可哀想な子。教えてあげるわ、あなたがまだ知らないことを」
 ドゥルールはその朱唇に慈愛深い微笑みを浮かべ、相手を見つめ返したのだ。

「そう、愛の何たるかを、あなたはまだ知らない。ええ、私は確かに自分も悦びを味わうために愛しているわ。……そして、それこそが愛なのよ。愛はお互いに求め、与えあってこそ成り立つもの。あなたは自分を滅ぼそうとするけれど、完全な滅私は愛ではなく陶酔に他ならない。だから私は、自分も、そして相手も悦んでもらうために愛するの」

 そう、ドゥルールの行為が熱く激しい営みであり交歓とするならば、オブリビオンの為そうとすることは孤独で哀しい自慰にすぎぬ。それを切ないと評することはできるとしても。
「――だから、教えてあげるわ、永遠の愛と快楽を……」
 漆黒の翼が天をも覆うかのように広げられる。あたかも相手を抱きしめようとするかのように。
「いいえ、私は……世界に平和をもたらします!」
 オブリビオンは真紅の霧となってこれを迎え撃つ。燃え上がる漆黒の翼に纏わりつく真紅の霧が、地獄の恋火を消し止めようとするように激しく相打った。
 反転し空を駆けるドゥルールが距離を取って放った衝撃波が渦を巻く、しかしそれは物理攻撃を軽減させる霧の身体を擦り抜ける。反面、オブリビオンの攻撃は的確にドゥルールの滑らかな肌を傷つけていく。戦いがが長引けば長引くほど、不利になるものはどちらか、明らかと見えた。
 だが見よ、ドゥルールの顔に焦りはない。
(そろそろではなくて?)
 ドゥルールは沈着にその隙を伺う。そう、衝撃波に纏わせておいた呪詛こそが本命。それは相手の存在そのものに作用し、その強烈な疲弊を誘ったのだ。
「はぁっ……はぁっ……」
 息を切らし、オブリビオンはよろけながらついにその実態を顕現させる。
 その面前に、燃え上がる炎に包まれたドゥルールが立つ。
 ――永劫火生(エターナル・ブレイズ)。
 それは過去も未来も超越した不滅の姿。
 大きく広げた腕がゆっくりとオブリビオンを包み込み。その意識を蕩けるような愉悦の中に奪って行く。
「――永遠の愛と快楽に溺れなさい、私の中で……!」

成功 🔵​🔵​🔴​

フォルター・ユングフラウ
【古城】

【POW】

死が償いとなると、そう考えていた
我とて馬鹿ではない、己の業は嫌という程理解している
しかし、それではいけないと
生きてその力を正しき方向に使えと、叱咤激励してくれた者がいた

…それだというのにその有様は何だ、トリテレイアよ
他人の差し出す平和に便乗する受け身が、汝の希求する平和だと言うのか?
弱きを護り、見果てぬ正義に挑むのが汝の“騎士道”ではなかったのか!?

純真な騎士を誑かすのもそろそろ終いにしておけ、オブリビオン
貴様と我等では、平和の概念が異なる
見解の相違─そういう事だ

せめてもの手向けよ、貴様と同じ姿で相手してやる
UCを発動し、攻撃力重視で攻め立てる
実体化した時が、貴様の最期だ


トリテレイア・ゼロナイン
【古城】
(狂気の戯言、戦は永遠、骸の海に墜ちれば自身もああなると確信できる同型機達(女帝の参加依頼【蒼き姫と機械騎士】等に登場)否定材料は多々あれど…この問いの本質では無く)

戦機は目的を果たすことが存在意義
騎士として平和を齎すことが出来るなら、喜んで機能を停止するべきです
…叶うならばその平和を一目見、役目を終えたと満足の内に

そうでしたね、フォルター様

骸の海を含めた世界の仕組みを探求する現実的対処…この邂逅でその視点も得られました
それに貴女が御存命の内は私も安心出来ません
立ち止まる暇は無さそうです

…感謝を

背後だろうと味方狙いだろうと実体化探知や迎撃防御は得手の中の得手
捕まえた後は…お任せ致します



 血が爆ぜる。肉が融ける。慟哭とうめき声が地上を覆う。腐り果てた死が闊歩する。
 ここにある。地獄はここにある。他のどこでもなく、地上にこそ地獄はある。人の世にこそ。
 ここにいる。邪悪はここにいる。他の何が呼び起こしたわけでもなく、ここにこそ邪悪はいる。――フォルター・ユングフラウ(嗜虐の女帝・f07891)こそが。
「オブリビオンよ、汝は壊れている、故に純粋なのだな。汝は狂っている、故に無垢なのだな……我とは異なって」
 フォルタ―は小さく微笑む。それは自嘲の色を濃く刷いた笑み。
 オブリビオンは知らぬ、フォルタ―の美しい手がいかに血に塗れているかを。フォルタ―の澄んだ瞳がいかに無数の屍を映してきたかを。
「オブリビオンがいなくなれば世界に悲劇はなくなる? ……そうではない。邪悪も狂気も、すべてはもともと世界に内包されているのだ。……いや、世界に責任を転化すべきではないな。我が……そう、この我こそがというべきであった。罪も咎も、すべて己の所有物としてこその女帝であろうよ、ふふ……」
 フォルタ―は軽く瞼を閉じ瞑目する。やがて再び見開かれたその輝きは、己の罪から決して目を逸らさず受け止める覚悟の光。

 心があり、魂がある。思いがあり、苦悩がある。ゆえに彼らは種族と呼ばれる。尊き命の一つだと。
 けれど同時に、彼らはやはりマシンに他ならない。「同型機」が存在するという意味においては。
 ゆえに、トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)は知っている。己がもし骸の海に落ちればどうなるかを。己の同型機の末路を鑑みて。
「ですが……それはこの問いかけに対する答えの本質ではないでしょうね」
 壊れたオブリビオンの妄言、その一言で片が付く。マシンならば本来そうあるべきであった。しかし。
 それをしないからこそ、ウォーマシンはただのマシンではなかったのだ。
 真摯に自分自身に向き合えるからこそ。そして、真摯に相手にも向き合えるからこそ。
 ――殲滅するだけの「敵」としてではなく、オブリビオンであっても、それを対峙すべき「相手」と考えることのできるトリテレイアだからこそ。
「今問われているのは、平和のために死ねるかという命題。……ならば私は……」
 トリテレイアは戦機である。故に目的を果たすべきである。
 トリテレイアは騎士を志す。故に平和を齎すことができたのならば、それは喜んで眠りにつくべき時。
「……叶うならばその平和を一目見、役目を終えたと満足の内にならば……」
 是と。オブリビオンの問いに、そう答えてもよかったのかもしれない。
 もし、トリテレイアに一抹の影さえなかったのならば。
 光があまりに輝き過ぎれば、光は己の眩さのあまりに、己自身を見失ってしまうだろう。
 白があまりにも純粋すぎれば、それは己自身の中に溶け去って、白とは呼べないただの虚無になり果ててしまうだろう。
 白が白であるために、その輪郭を形作る影は必要なのだ。
 ――黒が。
 僅か一しずくの、けれど眩い白と同等に純粋な、黒が。

「――その有様は何だ、トリテレイアよ!」
 
 凛然と声が響く。
 己の無限の罪を見据えてなお、その力を正しき方向へ使うべく変えたものの声が。
 「……他人の差し出す平和に便乗する受け身が、汝の希求する平和だと言うのか? 我に汝を愚か者と呼ばせるな!」
 叱咤ではない。激励でもない。鼓舞でもなく、元より罵倒でも難詰でもなく、そして祈りでさえもない。
 それは女王の魂であった。フォルター・ユングフラウの。

「……そうでしたね、フォルター様」
 機械騎士は再起動を果たす。知らず知らずのうちに己を規矩していた自縛の鎖を断ち切って。
 女王の聖勅は、騎士に狭い視野の使命だけではなく、より広範な観点からその使命を見直すことを知らしめたのだ。
「ふん。聞き飽きるほど聞いた言葉を汝に投げ返してやろうか。弱きを護り、見果てぬ正義に挑むのが……」
「ええ、――それが私の騎士道でした」
 トリテレイアのセンサーアイに強い光がともる。それは道を照らし出す光。見失いかけた、いやそもそもあるのかどうかさえ分からない道を、けれど確かに照らし抜く光。
「それに貴女が御存命の内は私も安心出来ませんからね。立ち止まる暇は無さそうです」
「言うてくれるわ」
 フォルタ―は口角を愉しそうに歪めると、オブリビオンに対して向き直った。一転し、彼女の視線が鋭利な剣の如く煌めく。
「純真な騎士を誑かすのもそろそろ終いにしておけ、オブリビオン。貴様と我等では、平和の概念が異なる。見解の相違─―そういう事だ」
「そんなことがあるでしょうか。平和は平和。それは紛れもない唯一の概念であるはずです。この平和とこの平和は種類が違う、などということがあり得るでしょうか」
 もとよりオブリビオンにまともな言葉は通じない。彼女はあくまで己の考えに凝り固まり、他者の想いなど受け止めようともしないのだから。
「ゆえに! ただ一つの平和のために!」
 オブリビオンはただただ己の信じるままに牙を剥く。平和のために、骸の海を破壊するために、猟兵たちに死をもたらすために! 
 その華麗な肢体が瞬時に真紅の霧と化し、かつては豪華だった廃墟一面に広がる。おお、オブリビオンは今、「場」そのものと化す! 意思を持った「場」、殺意を持った「場」へと!
「ならば汝と同じ姿で相手をしてやろう!」
 フォルタ―の瞳が鮮烈に光る。無数の屍をわが胸に抱いて、その呪詛さえも女王は己の刃と変えるのだ。
「我は、道の外を歩む者、無窮の荒野にて独り、血に狂う……我が前には光無く、我が後には骸在るのみ!」
 ぞわりと逆立った髪が風を孕んで巻き上がり、血の色の瞳が同じ色の霧を睥睨する。剥きだした牙はあらゆる命を無慈悲無情に斬り裂く輝きを秘めて――フォルタ―は今、吸血鬼へと変貌する!
 オブリビオンもまた、真紅の霧の中から神出鬼没に爪牙を煌めかせ、嵐のように荒れ狂いながらフォルタ―を襲わんとする。その勢いは、パワーを重視したフォルタ―の変貌に取って、追いつき得る速さを越えていた。
 しかし、風をも欺くオブリビオンの牙が、背後からフォルタ―の首筋を狙った一瞬。
「わざわざ無防備な体勢を取るなど……無茶をしますね、フォルタ―様」
「故に、汝は狙いが付けやすかった。そうであろうが」
 そこに撃ち出されたトリテレイアのサブアームが、代わりにオブリビオンの牙に深く穿ち抜かれていた。己を囮として攻撃を誘ったフォルタ―の無言の意図を、トリテレイアは確かに受け止めていたのだ。
「騎士の戦法としては行儀が少々悪いのですが……場には場でお返ししましょう! 電撃の場で!」
 損傷したトリテレイアのサブアームから、凄絶な電撃が迸る!
 広域に広がった霧としてのオブリビオンも、同じく広域に放たれた電撃であれば回避の仕様はない。
 悲鳴を上げ、オブリビオンはたまらず、よろめきながら実体へと回帰した。――刹那。
 フォルタ―の牙は、音もなく獲物を刺し貫いていたのだった。
 女王が下す断罪の刃として。

「……感謝を」
 深手を負い、辛うじてその場を逃れていくオブリビオンの後姿を見やりながら、トリテレイアは小さく発声する。傍らに立つ女帝に向けて。
 が、むすっとした声で、その言葉には答えが返る。
「聞こえぬぞ! 相手に感謝する時は、大きくはっきりと相手の目を見て言うものだ、それでも騎士か」
「……聞こえているではありませんか」
 互いに相手の目を見やり、白と黒は、同時に笑みを浮かべたのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

リーヴァルディ・カーライル
…ん。それで本当に世界が平和になるならば…って、
一年前の私ならば言っていたかもしれないけど、ね。

前章の黒刃を維持(生命力吸収、手を繋ぐ、空中戦)して、
自身の殺気や気合いを断ち存在感を消して気配を遮断

…だけど、今の私には帰るべき場所がある。共に歩みたいと願う人がいる。
お前と心中する気はない。

先の宣告通り、終わらせてあげる。その不本意な生を…。

今までの戦闘知識と経験から敵の死角を暗視して見切り、
闇に紛れて死角に潜り込み先制攻撃のUCを発動

大鎌を武器改造して魔力を溜めた双剣と黒刃を乱れ撃ち、
無数の魔刃のオーラで防御ごと傷口を抉る早業の2回攻撃を放つ

…できる事なら、狂う前の貴女と話してみたかったわ。


備傘・剱
漫画の主人公なら、礎になって死ぬんだろうが、俺は生憎とそういうがらじゃないんだ
それにな、骸の海で仲良く亡霊と海水浴楽しむほど、人生も達観してないんでな
仲間と、別の方法を探すさ

他の奴らの攻撃を囮にして、暗殺を仕掛ける
Orthrusで、喉を一突きにして、仕留めてやるよ
だが、それで倒せるほど、甘い奴じゃないってのは解り切ってるからな
反撃にカウンターをあわせる様に黒魔弾を叩き込んでやる

オーラ防御は一撃で即死しそうな所に重点に発生
急所への一撃が来そうな時は念動力でずらして、戦闘不能は避ける

オブリビオンにも、そういう考えの奴がいるんだな
できれば、まっとうな状態で会いたかったぜ

アドリブ、絡み、好きにしてくれ



「……ん。それで本当に世界が平和になるならば……」
 リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)はその可憐な顔をやや俯かせ、細い声でつぶやく。オブリビオンの言葉に応じるかのように。
 だが、リーヴァルディの、一度は伏せられた睫毛は再び上げられる。その瞳に澄み切った光を宿して。
「……って、一年前の私ならば言っていたかもしれないけど、ね」
「そうか、あんた、漫画の主人公みたいな生き方してたんだな。嫌いじゃないが」
 備傘・剱(絶路・f01759)はリーヴァルディの答えに淡々と和する、それは皮肉ではなく、むしろ純粋な称賛。……己がそうなれないと知っているからこその。
 年齢にそぐわず少年らしさを残した剱だが、同時に決して、少年めいた無垢で無謀な、後先を考えない憧憬に惹かれることもない。
「だが、俺は生憎とそういう柄じゃない。……礎になって死ぬなんて柄じゃあ、な」

「ん。私も、今はそうじゃない。それに、昔だって、……そこまで崇高な考えだったかどうか。……ただ、自分の命を軽視していただけなの、かも」
 リーヴァルディは薄く笑む。
 1年。なんと短く、そして長い期間であることか。そのめくるめく踊るような月日の中で、リーヴァルディは帰るべき場所を得た。友を得た。
 そして何よりも――共に歩みたいと願う人を、得た。大鎌の苛烈な刃に映る自分の顔は峻厳でも、彼の瞳に映る自らの顔は無垢で恥ずかしがり屋だと知った。
 月光の中で甘い牙と血に誓ったその人との遠い約束が、リーヴァルディに尊ぶべき命の意味を教えたのだ。己の存在の大切さを。
(平和……それも尊いものだけど、あの人と一緒じゃなければ意味はない)

「ま、確かに俺も、骸の海で仲良く亡霊と海水浴楽しむほど、人生も達観してないんでな」
 剱もニヤリと笑みを浮かべる。
 世界を救うこと自体に否やはない。だがそれは自暴自棄な捨身とは相容れぬ。リーヴァルディと同じように、すべてを失い失くし果てた剱にも、まだ戻るべき場所はある。語らうべき相手はいる。酌み交わしたい一献も。
(……おいおい、こうしてみると俺も結構リア充だったか? こいつはRB団を辞退しないといけねえかもな)
 そんな戯れ話もいつしか一席の酒の肴になるだろう、と、剱は喧騒と雑踏の酒場の様子を脳裏に思い浮かべる。そしてそれは……今この場で死しては叶わぬものでもあった。

「では……あなた方も、賛同してはいただけないのですか?」
 オブリビオンが悲しみに満ちた瞳で訴える。
 誰一人。
 これまでに、誰一人、オブリビオンの誘いに応じてくれたものはいなかった。
 待っていたのに。信じていたのに。きっと猟兵たちならば、世界に平和を齎すために共に戦ってくれると信じていたのに。
 壊れ果ててはいても、その願いは確かに、真実のものであったのだ。
 壊れ果てているからこそ、その想いは確かに、揺るぎないものだったのだ。
 けれど。
「……お前と心中する気はない。先の宣告通り、終わらせてあげる。その不本意な生を……」
「悪いな。俺も仲間と、別の方法を探すさ」
 冷徹とも聞こえる二人の答え。それが最期の戦いの合図だった。

 無数のコウモリが舞い上がり、廃墟を覆い尽くす。闇より深い黒そのものとなって。
 けれどリーヴァルディの美しい瞳は闇をも見透かす。無限とも思えるコウモリたちの爪を、牙を、リーヴァルディは舞うような足取りでかわし続け、間合いを詰めていく。
 だが、さしものリーヴァルディも、無尽蔵なコウモリの攻撃をすべて回避しオブリビオンに一撃を加えることは至難の業。
 ……そう、もし彼女が一人であったならば。
「遺跡探索にコウモリはつきものだからな」
 剱の声と共に、ワイヤーがコウモリたちめがけ飛翔したのだ。もちろん、それだけでは何の意味もない。剱の意図は別にあった。自身が口にしたように、遺跡探索を生業とする剱は、コウモリへの対策を熟知していたのだから。
 剱は打ち出したワイヤーを、己のガントレットの力を使って超高速振動させたのだ。高周波を発生させるほどに。
 コウモリは超音波を使って敵の位置を測定する。しかし高周波によってそのセンサーが阻害されてしまえば、ただ不器用に飛び回るだけの獣にすぎぬ!
「吸血鬼狩りの業・乱舞の型(カーライル)!」
 その隙をリーヴァルディが見逃すはずもない。繊手に宿った双剣は華麗に虚空に閃いて、鮮烈な花吹雪を荒れ狂わせる。一片一片がすべての敵を斬り刻む真紅の華が、漆黒の魔獣の翼を葬り去っていく。さらにそれだけではない。コウモリたちを斬り裂いた花片はその余勢をもって、魔獣群の奥に潜んでいたオブリビオンをも強襲する!
「くっ……しかし!」
 ぎしりと牙を噛み鳴らしながら、オブリビオンはとっさに姿を変じた。真紅の霧へと。
 花弁は霧を傷つけること能わず、そのまま虚しく舞い散って行く。しかし。
「がふっ……!」
 喘ぎ声、そして吐血と共に、オブリビオンの変化は途中で解けていく。完全にオブリビオンが霧状化する直前に、リーヴァルディの花片に紛れて接近していた剱の一撃が、しっかとその咽喉元に食い込んでいたのだ。
「ま……だ……です……!」
 おお、しかし。
 それを、執念、と一言で済ませて良いものであろうか。
 リーヴァルディも剱も、眼もとに険しい光を宿す。深々と咽喉を突き通されたオブリビオンが、それでもなお歩みを止めない姿を見て。それでもなお、願いを諦めない姿を見て。
「へいわ、を……!」
 ……平和とは、呪詛のことであっただろうか。
 しわがれた声を後に遺しながら、オブリビオンは進む。よろめきながら。一歩一歩。
 果て無い先へ向かうことをやめないというように。
 平和への道を歩むことをやめないというように。
 剱は黙したままその相手を待ち受ける。
 彼に向かって、わななきながら、オブリビオンの手が伸びた。
 その手は――
 剱の命を奪おうとしたのだろうか。
 それとも、……剱の手を取ろうとしたのだろうか。
 剱には、わからない。
 漆黒の魔弾が無言のまま、オブリビオンを撃ち抜いていたのだから。
 そして同時に。
 リーヴァルディもまた、声なきままに、無数の剣舞をオブリビオンに対して叩きこんでいた。

「せかいに、へいわ、を……」
 ……世界に平和を、とオブリビオンは言った。
 それが、彼女の最期の言葉だった。

「……できれば、まっとうな状態で会いたかったぜ」
 乾いた風が吹くような剱の言葉に、リーヴァルディも細い顎をこくりと頷かせる。
「……ん。できる事なら、狂う前の彼女と話してみたかったわ」
 狂う前のオブリビオンは、果たしてどのような思想を抱いていたのだろう。
 ……いや、そもそも。
 彼女は本当に、狂っていたのだろうか。
 それを確かめるすべはもうどこにもなく。
 骸の海を破壊するという彼女の意図が正しかったのかどうかを確認することももうできない。
 ただ一つ残されたのは。
 平和を願う意思。
 たとえそれが壊れ果てた言葉でも。
 その言葉はきっといつか、何処かの誰かに届くだろう。
 荒れた野にも、いつか小さな花が咲くように。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2020年03月13日


挿絵イラスト