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神と、そして人と

#アポカリプスヘル

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#アポカリプスヘル


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●誰のための、何のための
 目の前でひれ伏す複数の男たちは、『彼女』の目にはひどく滑稽に映った。
 何がそんなにありがたいのだろうか。
 自分は彼らを救うことも、導くこともこれっぽっちも興味がないと言うのに。
 だが、「それで良いのです」と彼らは一様に声をそろえてそう言うのだ。
 ただ「あるがままでいれば良いのです」と。
 自分が好きなように生き、好きなように求めれば、彼らはそれで満足なのだと。
 そして彼らは、欲しいものは頼みもしないのに持ってくる。
 楽なものだが、少しばかり退屈だなとも思った。
「それで」
「はっ」
「どうせ今日もいっぱい持ってきたんでしょ」
 先ほど、彼らが『贄』と呼んでいる人間たちを、空き部屋に連れ込んでいるのが目に入っていた。
「老若男女、いずれもあなた様の御威光を理解しようともせぬ愚か者共です。
 後始末は我々が致しますゆえ、どうぞお気の召すままにしていただければ。ご覧になりますか?」
「今はいい。めんどくさい」
「はっ」
 何のためのものなのかもよくわからない大きな機械に腰掛けて、細く白い脚をぶらぶらさせながら『彼女』は言う。
 男たちの表情は見えない。まぁ、別にどんな顔をしてたって関係ないんだけど。
「それでは、失礼いたします」
「はーい」
 聞いているのか聞いていないのか。気の無い返事に顔色一つ顰めることなく、男たちは一人、また一人と部屋を後にしていく。
「……ニンゲンって、へんなの」
 自分たちで作り出し、弄り、喚び降ろしておいて『好きにしろ』だなんて。
 ――あーあ、何か面白いこと転がってないかなぁ。
 壁や床に幾重にも傷痕が奔り歪み、血と死臭に塗れた部屋で。
 男たちから『神』と称された少女は一人、退屈そうに伸びをした。

●狂気の結実
「……それぞれがどのような経緯で生まれたのかは、今となってはもう知る由もありませんが」
 グリモアベース。
 グリモアの光があちこちで瞬き、猟兵が忙しなく歩き回るいつもの光景の中、シャルロット・クリスティア(彷徨える弾の行方・f00330)はそんなことを口にする。
「破壊と滅びをよしとするカルト教団と、悪魔を身に宿し狂気に堕ちたフラスコチャイルド……。
 本来は無関係であっただろうオブリビオンが、この時代に蘇った際に出会ってしまえば、こういうこともあり得るのかもしれませんね」
 そう言うシャルの背後には、アポカリプスヘルの寂れた荒野の光景が浮かび上がっている。
 その中、風で抉れたのか歪な形の大岩の影に隠れるように、無機質な金属質の建造物が一つ、映りこんでいた。
「『彼女たち』はここを拠点にしているようです。……言いたいことはわかりますね」
 予知にあった光景。オブリビオンの存在。そしてその拠点とされる場所。
 答えはひとつ。『乗り込んで撃破しろ』と、そう言うことだ。
「とはいえ……それなりに知恵のある相手のようです。
 元は何かの研究施設だったようですが……完全復旧は無いとしても、それなりに迎撃設備はあると思って良いかと」
 そしてもう一つ、と。シャルは人差し指を立ててみせる。
「むしろ、討伐よりも重要なことかもしれませんね。
 施設の中には、狂信者が捉えてきた民間人が数人、捕らえられているようです。今のところ命に問題はなさそうですが……戦端が開かれると何があるかわかりません。先に彼らの救援を行った方がいいでしょうね」
 中の構造が正確にわからない以上、簡単な事ではないのは間違いない。
 それでも、とシャルは猟兵達に向けて頭を下げる。
「これ以上、彼らの狂気で無辜の命を散らせることを許すわけにはいきません。どうか、よろしくお願いします」


ふねこ
 人が神に近づく罪がなんちゃらかんちゃら。
 はいどーも、ふねこです。
 冒涜的なテクノロジーもポストアポカリプスの醍醐味だと思います。
 例によって、更新タイミング等の大雑把な目安はマスター自己紹介にも随時書いていこうと思いますので、そちらもよろしければご確認くださいませ。
 以下、補足情報になります。

 第一章では研究施設内に潜入、警備や防衛設備を掻い潜り(あるいは無力化し)囚われている人々を救出してもらいます。
 本格的な交戦は第二章でですが、あまり派手にやりすぎると襲われるかもしれません。
 第二章で救出した人々を守りつつの撤退戦を行いつつ、三章でボス戦……な流れとなります。

 第一章~第三章通して、冒頭に断章を追記後受付開始な感じを予定しております。
 皆様のご参加、お待ちしております!
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第1章 冒険 『オーバーテクノロジーを追って』

POW   :    瓦礫を取り除いて埋まっていた通路を確保する

SPD   :    侵入者用に仕掛けられた罠を回避、解除する

WIZ   :    辛うじて生きている設備から施設の情報を手に入れる

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●深遠
 猟兵達が忍び込んだその研究施設は、存外に静かなものだった。
 人の気配はまばらで、積極的に巡回の類を行っているようには見られない。
 所々、天井から伸びた監視カメラが無機質な目を光らせているが、そのすべてが正常に稼働しているわけではなく、幾つかは壊れたまま、バチバチとスパークを走らせている。
 最低限、通路に流れ落ちた瓦礫はどかしてあるようだが、崩れた壁面はそのままで、電気自体が通っていない場所もあるようだ。
 侵入者の想定などしていないのか、あるいは遺失物に疎い奪還者程度ならこのレベルで十分なのか。
 少なくとも、今のところ発見された様子は無い。

 ……しかし。
 入り口付近のそんな様子とは裏腹に、通路の奥、施設の深部からは、低い唸り声のような機械の蠢く音が聞こえてくる。
 遠く、決して大きいとは言えない微かな音。
 それでも、それはこの施設が死んでおらず、未だ何者かの手の内にあるなによりの証拠であった。
メルヴィ・リリス
重たいものを退かしたり、たかだか罠に四苦八苦したり…。自ら進んで苦労するだなんて、アタシの性に合わないわぁ。

いくら警備がおざなりだからって、見回りぐらいは居るでしょう。
[おびき寄せ]、[誘惑]…それに、[暗視]も使えるかしら。
暗い影から獲物をじ…っと待って、確実に鞭を当てられる機会を伺うわ。…騒がれると、あとで面倒だもの。

ふふふっ、さぁ跪きなさい…!アナタたちの「神」様とやらより、アタシと居るほうがよっぽどイい思いができるわよぉ♪

まずは贄の居る部屋へ案内してもらおうかしら。戦う時に邪魔なモノは、きちんと外へ出しておかなくっちゃ。

ご褒美は……そうね。このアタシの糧となりなさい。([生命力吸収])



 警備が甘い。
 易々と侵入を果たした猟兵の中には、そう感じたものは決して少数ではなかろう。
 それでも、完全な無人でない以上は、無警戒に歩を進めれば不意の遭遇は避けられない。
「(……当然、見回りぐらいはいるでしょうね)」
 侵入者が無くとも、機器の異常を見回ることだってあるだろう。
 そうでなくとも、何らかの用事で施設内を移動することだってあるだろう。
 室内灯の明かりも届かない物陰に身を潜めたメルヴィ・リリス(愛寥の魔女・f14640)が見つけたのは、そのような『何がしかの事情』で廊下を歩く一人の男だった。
 整った身なりに、インプラントなのかなんなのか、金属質な異形の片腕。
 捕まった奪還者や民間人の類とは考えづらい。
 真っ赤なルージュに彩られたメルヴィの唇の端が吊り上がる。
 それに気づいたわけでもないだろうが――あるいは、その妖艶でありながらある種の危うさを孕んだ『香り』に感づいた可能性はあるやも知れぬが――男はこちらに歩を進めてくる。
 まだ。
 もう少し。
 メルヴィが潜む曲がり角を、男が今まさに折れようとしたその瞬間。柔らかく撓る鞭が男の胴を捉えた。
「声を出しちゃ駄目よぉ?」
 音も無く絡みつき引き摺り倒した男の頭を即座に踏みつけ、抵抗を奪う。
 脚の隙間から見えた、驚愕に見開かれた男の瞳が、少しずつ蕩けて行くのが見えた。
 なるほど、完全に機械と言うわけではないらしい。
 狂信者と成り得るほどだ、まだ人の割合は多いと見える。……好都合だ。
「……良い子」
 芳香。
 精神を蝕み、肉体をも支配させる甘い毒。
 鞭で動きを止め、跪かせてしまった相手にその香りを嗅がせることなど造作もない。
 今の彼にとってその香りは最早、『神』への恭順よりも余程心地よいものとなっていることだろう。
 絡みついた鞭を解いても、緩慢な動作で立ち上がるのみで、目の前の女を侵入者と認識できているとは到底思えない。
「さて……それじゃあ、贄のいる場所まで案内してもらおうかしら」
 焦点の若干ぼやけた瞳のまま、男は頷く。
 力仕事や罠への警戒など、自ら苦労して道を開くなどとんでもない。
 使い魔か、或いは憐れな犠牲者か。自身は楽して誰かに押し付ける。それが魔女のやり方と言うものだ。
 ……そして、魔女に魅入られたものの末路もまた、解り切ったものであろう……彼が、それを理解できているかは別として。

成功 🔵​🔵​🔴​

ニコライ・ヤマモト
■罠の解除。侵入・撤退経路の安全確保
[目立たない/暗視/忍び足]を活かし暗闇や物陰に紛れて移動。
適宜【九泉流動学】で身体を液体にし、狭い隙間から偵察の後侵入。
罠を解除・危険物の存在を共有する。
また、一時的に隠れられる区画がないかも一応確認しておこう。怪我人の治療ができるように。

開かない扉は隙間や通気口から入り込み内側から試す。
敵は頭を包み込み声を出させないようにしてから首を掻き切るように。

静かに、静かに。どんな狭い場所にでも入り込んでみせよう。
目にも耳にも、鍵にもなろう。俺はそのために居る。
(…ただすまんが機械は分かる者に任せたい。どうも疎いもので、うっかり触って…なんてことがないようにな)


アルナスル・アミューレンス
※アドリブ・連携ご自由に

へぇー……。
まだ随分と綺麗な方だねぇ。
備えも、どうやらまだ残ってるみたいだし。
なんか使えそうな物、見つかったりしないかなぁ……。

とりあえずは、迷彩を生かして闇に紛れて、
抜き足差し足忍び足なダッシュでささっと行こうかなぁ。
何処に何があるかもわからないし、暗視機能使って見て回りますよー。

ありそうなのは、赤外線センサーとかそれに連動するトラップ。
モーションセンサー式の自動機銃とかかなぁ?
赤外線ならゴーグル越しで見えるだろうけど、そうじゃないのは第六感や戦闘知識を生かして、見切りますよー。

遠ければG.R.V5をクイックドロウして破壊。
近くに出たら、パクッと「悪食(モラウ)」よ。



「へぇー……」
 嘆息。
 アルナスル・アミューレンス(ナイトシーカー・f24596)がガスマスク越しにくぐもった音を漏らす。
「まだ随分と綺麗な方だねぇ」
「そうか?」
 アルナスルの足元で影が蠢く。
 否……それはよくよく見れば、影などではなく二足歩行の黒猫だった。
 猫……ニコライ・ヤマモト(郷愁・f11619)の怪訝そうな顔を見下ろしながら、そんなもんだよとアルナスルは頷いてみせる。
 所々崩れ、亀裂が走り、今にも切れそうな蛍光灯も数多い。
 なるほど確かに、それなりの文明を持つ数多の世界から考えれば綺麗とは言い難いのかもしれない。
 だが、多くの文明が滅び去ったアポカリプスヘルにおいて、かつての繁栄の面影がこれほど形を残している建造物はそうそうお目にかかれるものではない。
 根城にしている狂信者が物資を溜めている可能性も考えれば、奪還者にとっては宝の山だ。
 ……もっとも、すべきことを果たさぬうちは捕らぬ狸の皮算用。まずは済ませることを済まさなければ。
 油断なく周囲を伺うアルナスルの視界には、ゴーグル越しにあらゆる情報が入ってくる。
 一見すると分かりづらい物陰に潜むカメラや、所々に走っている赤外線センサーのライン。
 触れる事の無いように、素早く慎重に。
 小柄なケットシーであるニコライにはそんな便利なツールこそないが、状況の把握が出来ているアルナスルの指示さえあれば、隙間を潜り抜けて行くことも造作もない。
 それに、小さいからこその視野の差は、ニコライに気付けてアルナスルに気付けない細かな違和感を発見することにもつながる。
 二人の偵察は、後続への情報として大きな価値を持つに違いない。

「……鍵かかってるね」
 そんな中発見した、一つの扉。
 小窓を覗き込む分には人の気配はない、が。そのドアノブは固く、捻っても動く気配はない。
 猟兵の力を以てすれば無理矢理破ることも難しくは無い……だろうが、今は人知れず潜入した段階。
 あまり大きな音を立てることは得策ではないだろう。
「任せろ」
 どうしたものかと思案するアルナスルの足元で、ニコライが小さく声をあげる。
 目の前にあったのは、換気の為の小さな通気口。
 格子で阻まれたそこに、するりとまるで液体のように――あるいは、本当に液体になっていたのかもしれないが――黒猫は入り込む。
「見事なもんだね」
「俺はそのために居る」
 少しの間をおいてカチャリと開錠の音。
 数瞬ぶりの再会を経て改めて中を見やると、そこは倉庫のようで。
 置かれている物資は少ないものだが、その分スペースがある。覗いてもばれないようなスペースに入り込めば、身を隠すこともできるだろうか。
「……しかし、アレはセンサーか……?」
「対人機銃と連動してるみたいだねぇ」
 二人が見上げた天井には、まだ機能が生きているのであろうカメラと銃口が部屋を俯瞰している。
 入口に立つ二人は視界の外のようだが、迂闊に入り込めば何が起こるかわからない。
 もちろん、倉庫を利用するうえで機能を切ることは何かしらの方法で可能なはずではあるのだが……。
「どうする?スイッチでも探すか?」
「いーや、この距離なら……」
 見上げたニコライの視線の先で、アルナスルの片腕が蠢いた。
 偽神細胞を埋めこまれた身体は、人間でありながら一種の怪物とも言える別の物をも内包する。
 現出したそれが天井に伸びて……ぱくりと擬音がするかのように、いともあっさりと、くぐもった咀嚼音と共に喰らって見せた。
「……この方が早いよ」
「なるほど」
 ……セーフポイント、一ヶ所確保。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

白斑・物九郎
●POW



ァ?
なんですよ?
捕まってる人らが居るんスか?
猟師が猟銃ブッぱなそうって時じゃニャーですか
狩場にカタギが紛れてんのはよろしくありませんわな
どれ、本格的に“狩り”をおっぱじめるのはそこんトコどうにかしてからっスね


・研究施設に進入した所で【野生の勘】を張る

・建物の「間取り」や「往来の可能/不可能な箇所」と「救出対象の位置」に勘を及ばせながら【ドリームイーター】発動、魔鍵で己を軽く引っ掻く

・尖らせた勘に裏打ちされた「探索目的に対する想像力」を支出しブチ猫型の眷族を複数作成
・この眷族達は己の野生の勘が網羅した情報に基づいて探索を実施する

・眷族を探索と救出対象の発見&誘導とに送り出す
・俺めは寝てる



「ァ?」
 こちら、今回の現場の状況を聞いた直後の白斑・物九郎(デッドリーナイン・f04631)氏の第一声になります。
 ……まぁ、無理もないと言えば無理もないのかもしれない。
 猟兵と言うのは、基本的にオブリビオンを倒すものだ。
 それが目的であれ過程であれ、切っても切れない関係だと言うことは否定しようもないであろう。
 邪魔……と言うと語弊があるが、捕まっている民間人が残ったままとなると、暴れ回るにはいささか都合が悪いのは否めないところ。
「猟師が猟銃ブッぱなそうって時に、狩場にカタギが紛れてんのはよろしくありませんわな……」
 狩りにも狩りのルールがある。その線引きが成っているからこそ、獣でなく狩人なのだから。
 ……さて、と。
 物陰に身を潜めながら、物九郎は思案する。
 損壊が進んでいるとはいえ、元はそれなり以上には整った建物だったはずだ。
 であれば、ある程度理にかなった設計がされてしかるべきであろう。
 外観と、今まで通ってきた道。記憶から引っ張り出して、類推する。
 部屋の配置、構造……その上で、狂信者たちが詰めるならばどこか、捕まっているのなら何処に押し込まれているか。
 ……そして、その上で避けるべきルート、選ぶべきルートは何処か。
「……ま、こんなトコっスか」
 おおかた予測を付けたのであろう。閉じていた金の瞳を薄く開くと、手にした巨大な鍵の凹みを自分の腕に当てがい……掻く。
 傷は無い。血の代わりに溢れ出てきたのは、小さな斑猫が何匹か。
 何を言うでもなく、顎の動きひとつで指示を飛ばせば、斑猫は即座に散って行く。
 自身の類推した地形や配置情報、その想像……ある種の『探求心』という『想像力』を糧とした眷属たち。
 小さな使い魔たちは、それこそ己の想像通りの仕事をしてくれるに違いない。
「……くァ……」
 そして、そのエネルギーを眷属創造に消費してしまった物九郎に、探索への気力が残っているわけもなく。
 腰を落とし、壁に体重を預けて大欠伸。
 果報は寝て待て。考えるだけ考えたのだから、後は結果に応じてやるだけだ。
 ……この状態で発見されたら?
 当然、その時は『狩る』だけである。

成功 🔵​🔵​🔴​

シャルロット・リシュフォー
まずは囚われた人達を助ける。大事なことですのね
特に、このまま何もしなかったときの未来を考えたら
「それではシャルロット・リシュフォー、ひっそりこっそり救出作戦に向かいますっ!」(小声)

基本は音を立てないようにこっそりと施設に忍び込みますです
監視カメラのあるところでは【クリスタライズ】で念の為
透明化しますです
カルトの人やフラスコチャイルドとうっかり鉢合わせしないかは……勘頼みですのね

無事捕まっている人達にたどり着けたら、まずは彼らに安心して落ち着いてもらうのが先決ですのね
助けに来たこと、カルトの人たちに見つからないように脱出することを伝えて協力してもらいましょう!

【アドリブ歓迎】


トリテレイア・ゼロナイン
騎士としては一刻も早く人々を救出しなければなりませんが…
強行突入は最後の手段
慎重に、堅実に人命救助を進めましょう

UCの妖精ロボを施設のダクトや通風孔に放ち●情報収集
人目を避けるよう●操縦し送信映像や音声を元に地図を作成
囚人の居場所も大事ですが、一番の目当ては監視カメラ等の情報が集約される管制室
作動カメラの所在が分かれば最上

発見次第、施設内の放送設備や警報装置、カメラの配線に●破壊工作を施します

突入時は●防具改造で暗い外套を纏い関節に静音処理
集音センサーを●限界突破し見張りの所在を●見切って避けつつ侵入
破壊工作作動と同時に管制室制圧
敵が異常に気付くのを出来る限り遅らせた上で囚人の救出へ向かいます



 あまり時間をかけていられる状況ではない。
 時間をかければかけるだけ、発見のリスクは高まっていく。
 いや、それだけではない。
 今はまだ、確かに捕らえられた人々は無事……かどうかはわからぬが、少なくとも命がある状態ではあるのだろう。
 それも、『今は』と言うだけで、いつその状況がひっくり返ってしまうのかわかったものではないのだから。
「騎士としては一刻も早く人々を救出しなければなりませんが……」
 しかし、だからこそ慎重に。
 トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)の電子頭脳は、義憤を感じることはあっても冷静さを失うことは無い。
 事を急いで発見を許してしまっては本末転倒。強行突入はあくまでも最後の手段だ。
「慎重に、堅実に人命救助を進めましょう」
「はい、ひっそりこっそり救出作戦、開始ですっ!」
 返事はトリテレイアの腹のあたりから。
 声を潜めた中にも、活発そうな印象が透けて感じ取れる少女の声の主を、肉眼で確認することは出来ない。
 だが、そこに確かに人――クリスタライズで透明化しているシャルロット・リシュフォー(歌声アステリズム・f00609)――がいることは、トリテレイアの熱感知センサーはしっかり感知していた。
「それで、大丈夫ですの?」
「はい、カメラ以外のセンサーは無いようです。どうぞ」
「では……!」
 足音も潜めたシャルロットの気配が遠ざかっていくのを感じた。
 少しの間の後、通路の角に隠れた向こうで、パキンと何かが壊れる音。
「助かりました」
「お安い御用ですっ!」
 トリテレイアが操作する小型の妖精機械を始め、遠隔操作……あるいは、小柄な体躯を駆使して、多くの猟兵が偵察を行っていた。
 おかげで、施設内の地形情報はかなりの精度を以て彼らの手の内に集まっている。
 部屋の配置、監視カメラやセンサーの有無、密度……。
 だが、それらを把握するのと潜り抜けるのとでは、また話は違ってくる。
 特に大柄なウォーマシンともなれば、位置がわかっていても気づかれないように通り抜ける、或いは破壊すると言った行動は難しくなってくるのは必然だ。
 だからこそ、こうして死角に潜り込んで対処ができるシャルロットの援護が効いてくるのである。
 そうして辿り着いた一つの扉。奥の生体反応は……ひとつ。
 鍵は……幸いにして掛かっていない。
 ここまで侵入してくるものなどいないと言う相手の慢心が有り難い。
 後は、一瞬。今回ばかりは、身を隠す必要すらも無い。
 押し入って、中にいた男を一刀のもとに斬り伏せる。
 そこは管制室。カメラの映像も、赤外線センサーも、異常を把握する人間がいてこそ効果を発揮するものである以上、その『異常を把握する人間』を襲う場合は見られる心配も要らない。
「こちらでシステムの偽装を試みます。シャルロット様は囚人の救出を」
「わかりました、そちらもお気をつけて……!」
 管制室の制圧。潜入、及び脱出においてこれ以上のアドバンテージはそうそうないだろう。
 これで発見のリスクはギリギリまで抑えられる。
 とはいえ、だからと言って急がない理由は無い。
 オブリビオンとの不意の遭遇という偶然、その可能性はどう足掻いても付きまとうし、今も捕らえられた人々は不安に心をすり減らしているに違いない。
「(早く、安心して落ち着かせてあげないといけませんわね……!)」
 逸る気持ちを抑えながら、管制室を後にしたシャルロットは廊下を駆けてゆく。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

リヴェル・シックエールズ
立派な研究施設。滅びを待つような変な宗教じゃなくて、この世界の惨状に抗うためにここの技術を使えば、きっと今よりは良くなるのに。

……しんみりするの終わり!
囚われた人をちゃっちゃっと助けて、事が済んだら中にある物資を生きようとする人のために奪還する!目立たない程度に気合い入れてがんばろー!

ということで物資を傷つけたくないし、極力戦闘は避けるために罠に気をつけつつ、隠れながら進む!
どうしてもやり過ごせない敵の時だけ『ヘッドショット』で頭を狙って黙らせる、かな……!

もし無事に救助対象と出会えたら「奪還者です。あなたたちを助けに来ました」って声をかけるよ。現地の人ならこっちの方が安心できそうだし。たぶん


荒谷・つかさ
目立たずに潜入する……なんて、ガラじゃないんだけど。
まあ、いいわ。やれるだけやってみましょうか。

可能なら誰かに帯同しつつ、要所で能力を発揮していく
持ち前の「怪力」を活かし、重量物の運搬や移動、邪魔なものの破壊等を行う
予め大型のコンテナ類やトラックでも調達できれば、要救助者の一時避難やそのまま(私が)担いで撤退する、なんてことも出来るかもしれないので探しておく

【妖術・九十九髪】は遠隔地にあるスイッチの操作や、警備で歩いている人間に遭遇した時に無力化するのに使用
仮に複数人に遭遇した時でも、展開された不可視の髪ならば一瞬で全員に巻きついて縛り上げられるわ
口に詰めれば声も出せないしね(酷)



 施設は広く、まだ生きている機能も多いように思える。
 立派なものだ。そう、リヴェル・シックエールズ(暴風恋娘・f24595)には感じられた。
 いったいここは何の研究に使われていたものなのだろう。
 それが何かは存ぜぬにせよ、変な宗教でなく、滅びに抗うためにここの技術使われていたら……というのは考えずにはいられない。
 もしかしたら、生活や自身の命も……と。
 そこまで考えて、リヴェルは緩く首を振る。
 しんみりするのは後だ。何は無くとも、まずは助けるべき人を助け、倒すべき相手を倒すのが先決なのだから。
 気持ちを切り替えて、息を潜めて歩を進める。
 終われば施設の中の物資を持ち出すことが出来るかもしれないし、体力的な問題もある。
 極力、戦闘は避けるように隠れて行動してはいるが、物理的に消え失せることは出来ない以上、身を隠すにはどうしても限界がある。
 不意の遭遇とは、いくら頑張ったところでゼロにすることは出来ないものだ。
 物陰から次の物陰へと移ろうとした、まさにその瞬間。角から人影が飛び出してくる。
 大柄な、小奇麗な格好をした男だった。
 何かを口走ろうと、口を開くのが見えた。だが、それに伴う音は無い。
 代わりに炸裂した、乾いた発砲音。瞬間、男の眉間に穴が空いた。
「すみません、助かりました」
「いいわよ」
 小銃を腰に戻しながらリヴェルが見やった別の物陰。
 そこから出てきたのは、巫女服姿の一人の羅刹。
「元々目立たず潜入する、なんて柄じゃないし」
 よいしょ、と軽々と男の亡骸を担ぎ上げ、羅刹――荒谷・つかさ(『風剣』と『炎拳』の羅刹巫女・f02032)は、適当な空き部屋にそれを放り込む。
 男が声をあげられなかったのも、口に不可視の呪髪を即座に詰め込んで見せた彼女の仕業である。
 彼女としては、こう言った無力化のような荒事の方が性に合っているのだろう。
「トラックとか、空きコンテナとかもあれば救助者を運ぶのも楽だったんだけど」
「……自力で持ってくつもりだったんですか?」
「そうだけど?」
「わぁお……」
 実際に可能かは別として無かったものは仕方ない。
 ともあれ。どうしても無視できないものはこうしてつかさが処理し、時に隠れ、時に破壊も織り交ぜて、瓦礫をのけての脱出路も確保しつつ。
 別の猟兵が敵陣の連絡手段を妨害したのも手伝って、ようやくたどり着いた一つの扉。
 小窓を覗けば、そこには年齢も性別もバラバラな汚れた格好の人々が、一様に俯いて身を寄せ合っているのが見て取れた。
 元の鍵は壊れてでもいたのだろうか、乱暴にまかれたチェーン錠をつかさが力任せに千切り壊す。
「……奪還者です。あなたたちを助けに来ました」
 決して大きな声ではない。
 それでも、戸を開けて入ってきたリヴェルの声に、人々は弾かれたように一斉にその顔を上げた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​




第2章 集団戦 『異端審問官』

POW   :    邪教徒は祝福の爪で切り裂きます
【強化筋肉化した右手に装備した超合金製の爪】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD   :    邪教徒は聖なる炎で燃やします
【機械化した左手に内蔵の火炎放射器の炎】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ   :    邪教徒に相応しい末路でしょう?
自身が【邪教徒に対する狂った憎しみ】を感じると、レベル×1体の【今まで殺した戦闘能力の高い異教徒】が召喚される。今まで殺した戦闘能力の高い異教徒は邪教徒に対する狂った憎しみを与えた対象を追跡し、攻撃する。

イラスト:純志

👑11
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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●異端なる研究
 猟兵達が辿り着いた部屋は、何らかの実験室のようであった。
 奥には液体の満たされた巨大なシリンダーが立ち並び、その手前でいくつもの機器が連動しながら、数値やグラフを明滅させている。
 そしてそのシリンダーの中には、大小さまざまな生物――あるいは、その中に『ヒト』もいたのかもしれない――が、体中にケーブルを繋がれて浮いていた。
 果たして、一体それは何のためのものであったのだろうか。
 しかし、猟兵達はそれを調べる時間を残念ながら持ち得ない。
 まずは、部屋に集められた人々を安全な場所まで退避させなくては。
 ある者は猟兵に縋るような目線を投げ、またある者は背中に立ち並ぶ悍ましい設備におびえた表情を浮かべながら、一人、また一人と猟兵に連れられ部屋を後にしていく。

「待ちなさい」
 道半ばの廊下。一行を呼び止める、冷ややかな声。
 同時に、目の前に立ちふさがる複数の人影があった。
 一様に燕尾に似たコートを纏い、無表情ながらどこか憤怒の感情を思わせる瞳で猟兵達を睨む。
「この者らは我らが神の威容を理解しようともせぬ愚かな邪教徒達」
「ならば我が神の贄となるか、或いは我々人類が『あの方々』に近づくための礎となるが道理」
「大人しく我々の下に還すならば良し。
 しかし野に放とうと言うのならば、貴方がたも同じ命運を辿るが相応しい末路と言うものでしょう」
 耳を澄ませば、後方からも、或いはここからは見えぬそこかしこでこちらに近づいてくる足音が聞こえる。
 そして目の前に立ちふさがる彼らも、機械的な鉤爪を備えた異形の腕を揺らしながら一歩、歩を進めてみせる。

 幸いにして、彼らは猟兵を優先すべき目標として定めたようだ。
 猟兵さえ倒せば、単なる異教徒程度どうとでもなると踏んでいるのだろう。
 流れ弾さえ注意すれば、人々を守り切ることはそう難しくは無い筈だ。
 しかし、逆に言えば『猟兵の戦いに人々の命がかかっている』と言う事でもあることを忘れてはならない。
荒谷・つかさ
ふうん。
別にあんたたちが何を信仰してようと知った事じゃないんだけれど。
私の仕事の邪魔をするっていうなら……私の信じるものの力を見せてあげる。

敵集団の中心へ怯まず突撃しつつ【鬼神鉄爪牙・天地粉砕撃】発動
手近な奴の頭を鷲掴みにして、遠慮なく持ち前の「怪力」で力任せにぶん回し叩きつける
当然、叩きつける先は別の敵
可能であれば、両手にそれぞれ一体ずつ掴み攻撃範囲を拡大
敵の反撃に対しても掴んでる奴を盾にしたり振り回して迎撃したり
壊れて使い物にならなくなったら新しいのを捕まえて続行よ

……私の信じる神を知りたい?
神なんて信じてないわ。
私が信じてるのは……「筋肉」よ。
筋肉こそ最強無敵……また証明してしまったわ。


白斑・物九郎
●WIZ



偶像(アイドル)をブチ上げた後は、ノッて来ねえヤツをいびるだけしか営業努力してないんですかよ?
そんなんで大衆からの『いいね』が付くワケ無いじゃニャーですか

――俺めが正しい信仰の集め方、教えてやりまさァ

#ワイルドハント
三毛、動画配信モード起動

拝謁を許す
俺めのコトは猟団長と呼べ


・【怪力】でブン回す魔鍵で集団敵相手に【武器受け】中心の防戦を
・敵のコード効果を高めぬよう、敵を攻撃する際は、物理攻撃モード(気絶攻撃)でブン殴り非致死での鎮圧を

・【#ワイルドハント】の効果が累積して来たら魔鍵を【限界突破】しフル強化
・「憎しみ」を感じるその心自体に照準した【精神攻撃】モードで【なぎ払い】【蹂躙】する



「はっ」
 異端審問官……そう称される狂信者たちへの物九郎の返答は、唾一つ。
「偶像(アイドル)をブチ上げた後は、ノッて来ねえヤツをいびるだけしか営業努力してないんですかよ?……そんなんで大衆からの『いいね』が付くワケ無いじゃニャーですか」
「何も知らぬから言えることです。我らの……」
「あーあー、そう言うのはいいんスわ。もっと単純なことでさァな」
 ――俺めが正しい信仰の集め方、教えてやりまさァ。
 聞く耳など持たない。持つ必要もない。
 片手で頭の猫耳をほじり、もう片方の空いた手の指を鳴らす。
 招集に応じたかのように現れるのは、三毛猫を模した自立飛行する撮影用のドローンだ。
「ヘイ、テメェら。拝謁を許す」
 ドローンのカメラが回り始めると同時、併載されていたモニターに光が灯る。
 映し出されているのは、配信開始を待ち望んでいたかのようなコメント群と……今まさに対峙する、物九郎と狂信者たち。
「――俺めのコトは猟団長と呼べ」
 それは、嵐の猟団の狩りの開始の合図。
 信仰を得るための一番の方法とは何か?簡単だ、その力を見せつけてやればいい。
「口上は済んだ?」
「ン」
 そして、そんな物九郎に声をかけたのは正面ではなく後ろ側。
 問うた真意は、『早速示してやって構わぬか』以外の何物でも無し。
「下手に死体が増えると面倒でさ。加減しなせェよ」
「『場が暖まるまでは』ね」
 そしてその声の主――つかさが物九郎の脇を抜け、手近な狂信者へと掴みかかる。
 迎撃に右腕の爪が振るわれるのが見えた。だが、遅い。
 元々小柄なつかさの体格は、容易に男の懐を取れる。頭上で鉤爪を空振らせ、がら空きの顎へとその手が伸びる。
 声などあげさせない。
 一瞬の視線の交錯の後、後ろで身構えていた他の狂信者へと男を軽々と……いとも簡単に、文字通り『放り投げた』。
 そして、物九郎もただ啖呵を切って終わりというわけではない。
 メリケンサックさながらに鍵束を握り込み、敵陣へ一切の躊躇なしに殴り込んだ。
 連携も、協調も無い。ただお互いが邪魔しない程度に、暴れたいように暴れるだけ。
 殴り、掴み、投げ、叩きつける。決して効率の良い戦い方ではないだろう。
 ただ、豪快で派手なだけ。そして、それこそが『魅せる』分には都合がいい。
 ちらりと視界の端に収めたドローンの画面。沢山のコメントが流れている。
 ギャラリーもご満悦だ。物九郎の口の端が僅かに吊り上がる。
 上等。俄然殺(や)る気も出ると言うものだ。
「あんたたちが何を信仰してようと知った事じゃないんだけれど……邪魔をするっていうならこうなるわよ」
 つかさがまた一人、掴み投げつけ、他の狂信者にぶつかって動きを止めた男の腹に蹴りを入れる。
「……我々の信仰をもしのぐほどの力とは、一体……」
「聞きてェか?」
「だったら教えてあげましょう。私達が信じてるのは……」
 ドローンのカメラが、物九郎とつかさを中心に捉えた。さぁ、演出は完璧だ。
「……『筋肉』よ」
「おうつかさワイハンを筋肉宗教団体に挿げ替えるのやめなせーよ」
 一気にコメント欄を見るのが怖くなった物九郎であった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ニコライ・ヤマモト
■敵の足止め・味方猟兵の補助
初めは民間人を逃がす役を引き受けようと思ったが、罠の解除や撤退経路の確認は出来ているはずだし…
俺は万が一の時のことを警戒しておくことにしよう。

【詠唱特殊弾】を[スナイパー/援護射撃/暗視]で、確実に攻撃阻止。
また、[2回攻撃/クイックドロウ/一斉発射]で出来るだけ多くの敵に対処しよう。

・逃げ遅れたり人質にとられた民間人が居た場合、即座に奪還する。
 自分の怪我は気にせず、人命を最優先に守るつもりだ。
・味方猟兵が戦いやすいよう敵の動きをコントロールする。
 範囲攻撃や数で不利になるのを防ぐ。[おびき寄せ/拠点防御]の知識を活かし、敵の死角や安置を常に意識しておく。


メルヴィ・リリス
ふん、足手に纏ったままの戦闘なんてゴメンよ。アタシは殿を務めさせてもらうわ。

とは言えこんなに狭い廊下じゃ、技を使った途端に崩落しかねないわねぇ。…少し、移動しましょうか。
[おびき寄せ/カウンター/挑発]を使って、注意を惹きつつ悟られないように広間まで後退するわ。

…そろそろ頃合いかしら。さぁてお仲間の皆様方ぁ?忠告してあげる。…巻き込まれたくなければ、近付かないことね。
猟兵達が距離を取ったのを確認したら【赤荊棘】を発動、重視するのは勿論攻撃力よ。さぁ…綺麗に咲いてちょうだァい!

逃げ遅れですって?そんなもの、知ったことではないわ。…邪魔よ。
(人命優先の猟兵に対しては、特段妨害せず手助けもしません)



 さて、かくして猟兵と狂信者たちとの戦闘の幕が上がったわけだが、だからと言って最初の仕事が終わったわけではない。
 捕らえられていた人々は脱出を果たしたかと言うとそんなことはなく、守らなければいけないことに変わりはない。
「罠の解除や撤退経路の確認が出来ているのは救いだが」
 狭い廊下に、幾度目かの銃声が響いた。
 ニコライが放った詠唱特殊弾。
 銃弾でありながら、特殊手榴弾に匹敵する拡張性を秘めた霊銀製の特殊弾が、追撃に迫る狂信者たちの手前で弾ける。
 強烈な閃光。前を向いて走る脱出者たちにとっては何ともなくとも、もろに視界に入ってしまった狂信者たちには辛かろう。
「突き当りを右。大部屋はまっすぐ、正面が出口だ」
「ほら、聞こえたわね?さっさと行きなさい」
 ニコライのすぐ後ろで、急かすように鞭を床に打ちながら、メルヴィが言う。
 体力の低下に、単純にこのような荒事に不慣れなものもいよう。
 奪還者らしき者たちはともかく、ただの民間人と思しき面々にはどうしても辛いのか、時折人同士ぶつかったり、足をもつれさせたりと、若干の手間取りが見て取れる。
 少々もどかしい。いっそ踏みつけて先に行ってしまおうかとも思ったが、口に出すと追々面倒なので言わない。
 そんなメルヴィが何故そんな逃走劇に付き合っているかと言うと、勿論理由はある。
 こんな狭い廊下では派手に暴れづらく、一番広さが確保できる場所と言うと、入り口付近のエントランスあたりが最も妥当だろう。
 だが、誘い出すには工夫がいる。やりようは探せばいくらでもあるだろうが、こうして脱出者の護衛を装うのが一番手っ取り早いと踏んだのだ。
 ニコライはよく追撃阻止に動いているが、それでも別方向からの追手にはどうしても後手に回る。
 そう言った相手を最低限鞭で牽制しつつ、少しずつ着実に誘い込む。
「もうすぐだ、そのまま真っ直ぐ!走れ!」
 ニコライの指示が飛ぶ。
 元は来訪者の受付や案内をやっていた場所なのだろうか、今までの廊下に比べるとずいぶんと開けた部屋の反対側から、日の光が差し込んでいるのが見えた。
 いかせてなるものかと、狂信者たちが後を追ってエントランスになだれ込んでくる。
 ……そしてそれは、メルヴィにとっても頃合いだ。
「黒猫さん、忠告してあげる。……巻き込まれたくなければ、近付かないことね」
「何……?」
 訝し気に眉を顰めるニコライだったが、メルヴィのその手に握られた鞭が、一度床を強かに叩く様を見て、すぐにその意図は知れた。
 やる気だ。それも、周囲の事などお構いなしに。
「……っあの馬鹿!ぼさっとするな、巻き込まれるぞ!」
 慌ててニコライは最後尾を走っていた初老の女性の背を突き飛ばす。
 多少怪我はあったかもしれない。それでも無事に脱出できるのであれば安いもの。
 自身もその勢いに任せて退避したその背中を、茨鞭の先端が掠めて行った。
「……さぁ、綺麗に咲いてちょうだァい!」
 別にタイミングを測ったわけではない。ギリギリのところでニコライが間に合わせた、それだけの事だ。
 振るう。
 振り回す。
 もはや気にすべきものは――元々気にしていたかどうかは別として――何もない。
 周りにいるのは、跪かせるべき敵だけだ。
 高笑いと共に振るわれる茨鞭は、さながら紅い暴風の如し。
 触れればたちまちボロ雑巾、しかし近付かなければその首を獲れるはずもなし。
 結果として、いくら狂信の域に達した信仰心を以てしても、その暴威に敵うことはあり得ず。
 しばらくの後、ズタズタのエントランスには、無残に引き裂かれた狂信者の骸とその中央に鎮座する魔女だけが残されたのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

アルナスル・アミューレンス
届かないモノに成ろうとするなんて、おこがましいと思わないかい?
思わないか、そっか。

クイックドロウから弾幕を張って、片っ端から「処刑(終わり)」にしていくよ。
どうせ話した所で平行線だろうし、さっさと行くよ。
頭。胴。四肢。武器。
遠慮なく吹っ飛ばして行くよ。
対オブリビオン用の特大口径弾の弾幕だ、掠っただけでも即死級だよ。

さぁ、血路を開いた、進むよ。
弾幕を張って制圧射撃を行いつつ、ダッシュで前進。
第六感や見切りで周囲の動きを覚りながら進むよ。
周囲が危ない時は援護射撃でカバー。

あぁ、近づいたら取れると思ったかい?
ごめんよぉ、お兄さん全身凶器みたいなものなんだぁ。
敵の爪も体も、近接格闘で破壊するよ。


シャルロット・リシュフォー
あなた方が人々を攫っているという悪党ですのね!?
これ以上の暴虐は許せませんです!

守るべき人達を守る為にも、堂々と正面から相対して狂信者を制圧しましょう
相手のUCはこれまでの犠牲者を呼び出す技(なんて非道な!)……
なら、まずはそれを無力化します!
【我が抱擁で、愛し子よ眠れ】の対象に『召喚された異教徒』を指定
全て眠らせますです!
残った本体だけなら、私の剣だけでも十分倒せますですぅ
「数を頼むのではなく、純粋に嗜虐心でやっている辺り本当に救いが有りませんのね!」

この末法の世界で、何を信じ何に縋るかは皆様好きになさればいいと思います!
でも!自分と違うものを信じている人に何をしても良いとはならないんです!



「あなた方が人々を攫っているという悪党ですのね!?」
「悪党とは心外ですな」
 並び立つ狂信者の眼前へ、シャルロットが進み出た。
 決して広くない地形、入り組んだ通路。
 あまり戦い安い環境とはいささか言い難いが、それでもなお、彼女は真正面を選ぶ。
 今もなお、この場から生き延びようとしている、罪もない人々がいるのだ。
 彼らを守るために、敢えて堂々と、その身を彼らの前に晒す。相手は自分だと。
「そう思うのも、我らが神の御力を知らぬが故」
「だからと言って……!」
 ただ生きることも難しい、この末法の世。
 今はオブリビオンと成り果てた彼らも、もしかしたらかつて生を足掻き、そして死んで行ったものだったのかもしれない。
 そう足掻くために彼らはその『神』とやらを信仰し、縋りついたのだろう。
 それは良い。それを否定することは誰にだってできないだろう。
 ……だがそれは、『自分と違うものを信じている人に何をしても良い』という免罪符にはならないのだ。
 そのような暴虐を、見過ごすわけにはいかない。
 彼女に向けて異形の爪を向ける狂信者に、シャルロットがなおも口を開きかけて、しかしそれは、横合いからの冷めた声に遮られた。
「どうせ話したところで平行線だよ」
 大口径機関銃の単射が、シャルロットの肩越しに一撃。
 一番前にいた狂信者の腕が千切れ飛ばされるのを見た。
「さっさと行くよ」
「……っ、はい……!」
 銃弾の主――アルナスルの言は正確であろう。だからシャルロットもただ頷いて、剣を手に斬り込んで行く。
 とは言え、前後衛の基本的な布陣であれど、あまり広いとは言えない廊下では実力は十分に発揮しづらい。
 着実ではあるが、どうしても殲滅には時間がかかるものだ。その中で、二人の耳は確かに後ろから近づく複数の足音を捉えていた。
 逃げ遅れた人はいない筈だ。そして他の猟兵であれば今もどこかで戦いを繰り広げている。
 となれば残る選択肢はひとつ、敵の増援である。
「……へぇ」
「あれは……っ!?」
 それは、目の前で戦う狂信者たちとは違い、みすぼらしい服装を身にまとった者達……正確には、かつてそうであっただろうと思わせる、二足歩行の醜悪な怪物であった。
 左右非対称に膨張した腕にはそこかしこから異形の牙が生え、焼けただれた皮膚からは異臭が漂い、瞳の焦点は合っていない。
 何があったのか、ストームブレイドであるアルナスルにはすぐに知れた。
「……『埋めた』ね?」
「左様」
 こともなげに彼らは答える。
 『偽神細胞』……あるいは、それに近しい何か。それを埋め込み、そして耐えきれずに異形化した成れの果て。
 なるほど、『神に近づくための礎』とはよく言ったものだ。
「我らが神の力を理解しようとしなかったが故の結末です。異端者に相応しい末路でしょう?」
「なんて非道な……!」
 戦力拡充のための苦渋の策でもない、何の罪悪感もその言葉からは感じ取れない。
 痛々しい、あまりにも痛々しいその成れの果ての姿に、シャルロットは歯噛みする。
 その様に何かを感じ取った、というわけでもないのだろうが。
「じゃあ前はお兄さんやっとくから」
「えっ……?」
 あっちはよろしく、と。
 アルナスルはシャルロットの背を軽く叩いて、機関銃を手に狂信者たちの眼前へと躍り出た。
 何か言いたげなシャルロットの声は、すぐにフルオートを作動させた機関銃の射撃音に掻き消されていく。
「……」
 意を決した。
 見るに、今もその身体の崩壊は進んでいる。放置したところで長時間は動けないだろう。
 それでも、せめて。苦しみを感じないように。
 口を開く。言葉を紡ぐ。
 矢継ぎ早の発砲音の中で聞こえたのは、優しく穏やかな子守唄だ。
 せめて優しい夢の中で、痛み無く終われますようにと、願いを込めた歌が、異形の動きを一つ、また一つと止めて行く。
 させてなるものかと、狂信者が走る。
 強烈な弾幕と言えど、所詮は重火器。懐を抜けさえすれば……。
「あぁ、近づいたら取れると思ったかい?」
 ぐしゃり。
 アルナスルの腕が、いとも簡単に狂信者の腕を握りつぶした。
 狂信者の目が見開かれる。
 それは驚愕と言うよりも、むしろ……。
「……やれやれ」
 こんなどっちつかずな化け物擬きの、いったい何に憧れるんだか。
 彼の呟きは、狂信者の耳にはついに入らず仕舞いだったことだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
あなた方が邪教徒や贄と呼ぶ人々を救出する為に私達は訪れました
これ以上の問答はお互い不毛、押し通らせて頂きます

人々を●かばうように立ち塞がりつつ近接戦闘
爪を●怪力での●武器受けや●盾受けで受け流し、剣の●なぎ払いや●シールドバッシュで応戦

人々を人質に取られたら此方が不利
近づく増援との挟み撃ちが気掛かり
センサーでの●情報収集で移動音や熱源を探り、増援の出現の瞬間を●見切りUCを使用

未来予測演算に基づき素早く付近の審問官を近接攻撃で処理しつつ、頭部や肩部格納銃器を展開
●スナイパー射撃で増援を排除し脚部スラスターでの●スライディング移動で人々の元へ戻り再度の接近を牽制

容易に手出しできると思わぬことです



 ……少し、時間は巻き戻る。

 ここは敵地。地の利はあちらにあると言って良い。
 そして軍事基地とまではいわずとも、複雑な研究施設は、右へ左へと通路が枝分かれしている。
 地形を把握している猟兵達が先導してはいるが、逃げるものと追う者、どちらが効率よく移動ができるかと言われれば断然後者であろう。
 だからこそ、トリテレイアは『挟撃』を何よりも警戒していた。
 猟兵を囲い込むだけならまだいい。
 脱出路を阻まれ、守るべき人々を人質に取られることは何としても避けなければならない。
 彼が全力で駆けていたのは、人々が脱出のために歩を進めているのとは一本逸れた廊下。
 単騎であれば、進軍速度を合わせる必要もない。一切の速度を緩めず、走る。
 音響センサーが、近づく足音を捉える。間に合う。交差路、躍り出る。
「……邪魔立てをなさるおつもりですか」
「あなた方が邪教徒や贄と呼ぶ人々を救出する為に、私達は訪れました故」
 目の前にいたのは、幾人かの狂信者たち。
 逃げおおせようとする異教徒か、あるいはそれを守ろうとする猟兵か。彼らが狙っていたのがどちらであるかは存ぜぬが、その眼前に立ち塞がった格好になる。
「庇う価値など無い異教徒によくもまぁ」
「……これ以上の問答はお互い不毛でしょう」
 彼らにとってすれば、己が信仰を理解せぬものは等しく無価値なのであろう。
 だとすれば問答も対話も、したところで理解し合えるということはあり得ない。
 突き出してきた異形の腕を、盾で受け止める。
 人間離れした膂力。押し負けるまではいかずとも、少なからぬ衝撃がトリテレイアの腕に伝わる。
「……しっ!」
 だが、ここで退いてはウォーマシンの……いやそれ以前に騎士の矜持に反する。
 外側に受け流し、即座にその顔面にシールドを叩きつける。
 瞬間、交差路の右方から物音。
 足音だ。推測するに、数は二人分。
 方角は奥、猟兵ではない。逃げ遅れた一般人でもない、ルート選択に迷いが無さすぎる。
 予測演算。
 目標との射線が通るまで3……2……。
「させませんよ」
 手近な狂信者の胴を横薙ぎにに払う。上半身が、その『来るべき場所』を見た。
 銃声、二発。
 両肩に格納された単装砲が狭い廊下を飛び……丁度廊下を横切っていた狂信者二人を過たず射貫いて見せた。
「容易に手出しできると思わぬことです」
 至近距離で相手取っていた残る男が驚愕に目を見開くのが見えた。
 その隙を逃すほど、トリテレイアと言うウォーマシンは甘くは無い。
 袈裟懸け、一撃。騎士剣が胴を引き裂いていく。
 ひとまず、この集団は処理できた。それは良い。
 だが、これで終わったわけではない。人々の脱出が成るまで、護衛と言う仕事は続くのだ。
「……まだ離れてはいないようですね」
 複数の不揃いな足音、追撃者とは違う、早いとは言えない進行速度。
 まだはっきりと、先ほどと同じように捉えられることに内心安堵しながら、トリテレイアは踵を返し、再び走り出す。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『リクファ・ルシーズ』

POW   :    ReTuning-Beleth
【傷口を自ら開き、強酸の血】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
SPD   :    ReTuning-Astaroth
自身の【それまで受けた傷と理性】を代償に、【左手に寄生する悪魔の爪】を戦わせる。それは代償に比例した戦闘力を持ち、【UCの効果ごと切り裂く、飛来する爪】で戦う。
WIZ   :    ReTuning-Focalor
【服から覗く無数の赤黒い悪魔の瞳の開放】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【悪魔の宿った服から伸びた、酸に濡れた触手】で攻撃する。

イラスト:柿坂八鹿

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はリルファ・ルシーズです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 何やら騒がしい物音と振動で目が醒めた。
 あいつらに起こされたのだろうかと思ったけれど、それはすぐに違うと気付いた。
 彼らなら、こんなに雑な(別に気にしないのに)起こし方は絶対にしない。
 ぱちくりと目を瞬かせ、視界と意識を覚醒させる。
 ……微かに音が聞こえる。
 足音、何かが壊れる音、そして……あぁ、あれは肉の千切れる音だ。
 ――嗚呼、まったく。
 どうでも良いことは余計な気ばっかり回す癖に、こんな面白い事やってても起こしてくれないのはひどいなぁ。


 囚われの身となっていた人々の脱出は成った。
 追撃阻止、或いは侵入した猟兵達の排除に動いていた異形の爪の狂信者たちも、ほぼ殲滅は完了した。
 ……そんな施設内に戻りつつあった静寂を引き裂いたのは、建物中に響き渡るかのような轟音と振動だった。
「……ぁは♪」
 ……その振動の中央。
 数枚の壁をまとめてぶち抜いたのか、零れ落ちる瓦礫と巻き上がる砂埃の奥に、その少女は佇んでいた。
 血のように――あるいは、本当に返り血に塗れていたのか――深紅に染まったコートを纏い、ぎょろりと血走った瞳が猟兵を捉える。
「仲間外れなんてひどいなぁ……ボクとも遊んでよ」
 所々機械化されているのか、少女の身体からぱちりと電流が弾ける音がした。
 そしてそれ以上に、到底人のものとは思えない赤に染まった異形の左手が、嫌に忙しなく蠢き、爪を擦り合わせる音が耳障りに鼓膜を揺らす。
「ずーっと。ずーっと、退屈だった……。おなかもへった……。
 みんな、押し込めて、閉じ込めて、いじくりまわして……ニンゲンって、いつもそう」
 ――だからさァ。我慢してたぶん……いっぱい、いっぱい、遊んでくれるよねェ?
 少女の顔が、狂喜に歪む。
白斑・物九郎
●WIZ



許す
遊んでやろうじゃニャーですか
狩猟ごっこなんかはどうですよ?

そしたらまずは……猟師の役と獲物の役っスね
どっちがどっちをやるか“遊びながら”決めるとしましょっかや


・【ワイルドドライブⅡ】発動
・コードの力で辺りを【なぎ払い】、周辺の建材や瓦礫をモザイク状に溶かし崩して荒巻かせる

・モザイク模様を統べ、纏い、操り、悪魔の瞳による視認それ自体を阻害する企図――
・――と見せ掛けて、敵へ「大質量の柱や天井等」を不意打ち気味にブチ落としてやれるよう、建造の重心を適宜ブッこ抜くのが真の狙い
・建造の骨子は【野生の勘】で掌握する

・更にはモザイク模様を一斉に殺到させた後でコード解除、瓦礫の檻を造作し敵を呑む


荒谷・つかさ
あんたが、あいつらの言ってた『神』とやら?
……あんまり積極的に君臨するタイプには見えないし、あいつらに祭り上げられたクチかしら。
災難だったわね……私で良ければ遊び相手になってあげるわ。
存分に、動けなくなるまで……遊んであげる。
(戦闘狂の本性を現し、獰猛な笑みを浮かべる)

当初は徒手での近接格闘戦を挑む
異形の左腕と胸の目玉、だぼついた衣服に隠されているだろう「何か」に警戒しつつも、楽しく全力を尽くし命がけで殴り合う
敵コード発動の兆候が見えたらこちらも適当な収束率で【轟烈鬼神熱破】発動
開こうとした傷口を焼いて塞ぎ、強酸の血を封じ込める

そんな野暮な技、止めなさいよね。
折角楽しく殴り合ってるんだから。



「あんたが、あいつらの言ってた『神』とやら?」
 つかさがそう問えば、その少女は不思議そうに首を傾げてみせた。
「きみもボクのこと、そう呼ぶんだ?」
 ふしぎだね、ふしぎだねと。まるで他人事のように髪の毛を弄ってみせるその姿は、おおよそ『組織のトップ』という印象からはかけ離れているように見える。
「……あんまり積極的に君臨するタイプには見えないと思ったけど」
 勝手に祀り上げられたのだと思えばそれも納得がいく。
 果たして、それが彼女にとって災難だったのか否かは、断定しかねる所ではあるが。
 いずれにせよ、彼女が望み……そして、自身もそれを望むのならば、やるべきことはひとつであろう。
「いいわ。……私で良ければ遊び相手になってあげる」
 存分に。動けなくなるまで、遊んでやろうではないか。
 やったと、少女の顔が喜色に染まる。
「じゃあさぁ、何して遊ぶ?」
「――そうさなァ」
 両手をいっぱいに広げて問いかける少女への返答は、彼女の頭上から降りた。
 直後、固いものがぶつかり合う乾いた音が響き渡る。
「狩猟ごっこなんかはどうですよ?」
「……ヘェ」
 脳天目掛けて振り下ろされた物九郎の巨大な鍵と、それを阻んだ少女の右腕が鍔迫り合いを演じる。
 鍵のブレード部分が腕に食い込み、血を滲ませるのには文字通り目もくれず、着崩れた真紅のコートの隙間から覗く、あり得ない位置の目玉がぎょろりと物九郎を睨んだ。
「じゃあ、ボクが狩人さんやるね」
「っは。馬鹿言いなさんな」
 腕が振るわれる。たったそれだけの動作で、物九郎の足が床から離れ、身体が宙を舞う。
 たん、と軽い音を立てて壁に足をついた物九郎が少女を見上げ、その顔に獰猛な笑みを浮かべてみせた。
「どっちがどっちをやるか“遊びながら”決めるに決まってんじゃニャーですかよ」
「そういうこと」
 ともすれば、獲物になるのはお前だと言わんばかりに『ルール』を宣告するその足元で、つかさもまた床を蹴った。
 突き出される拳。
 単純な正拳以上の何物でもない、しかしそれだけで空気を震わす一撃を、少女はひらりと身を翻して避ける。
 視界の端で、少女の笑みが深くなったのが見えた。
 コートがまるで意思を持つかのように蠢き……赤黒い大小さまざまの触手が、一斉につかさ目掛けて伸びる。
 回避は間に合わない。しかし、それがつかさに届くことも無い。
 つかさが振り返ると同時、ぶつりと音を立てて触手が落ちる。
 物九郎が縦一閃に大鍵を振り抜き、触手をまとめて半ばから断ち落としたのである。
 その証拠に、つかさと少女の間の床に、一筋のモザイク状のラインが太刀筋として残されていた。
 反撃に転じようと、そのモザイクを跨ぎかけたつかさの足が止まる。
 切り落とされた触手……正確には、その断面から滲み出る血が、床に、染みとはまた別の変色をもたらしていたのに気付いたからだ。
 迂闊に近づいて浴びていたら、あるいは身を危険に晒していたかもしれない。
「物九郎!」
「しゃあニャーですな!」
 退いたつかさを逆に追わんとした少女を阻むように、物九郎の剣(鍵?)閃が飛ぶ。
 一筋、二筋と、空を切った攻撃が地形にモザイクの太刀筋を刻んでいく。
「どうしたどうした、逃げてばっかじゃあ猟師にゃなれねぇっスよ!」
 鍵を振るう腕を一切休める事の無いまま、物九郎が叫ぶ。
 実際のところ、そのモザイクの空間はただの斬撃痕などではない。
 それは即ち『砂嵐の王が喰らった領地』に他ならない。
 自在に蠢き、渦を巻き、そして王が腕を振るうたびにそれは数を増していく。
 ぎょろぎょろと、服から覗く異形の瞳が忙しなく周囲を伺っているのが見えた。
 その密度を増しながら四方八方から飛来するモザイクの渦は、単純な視認性以上に、視覚情報を複雑化させ、状況確認の余裕を奪っていくに違いない。
 だが、それでも少女が持つ双眸は物九郎をしっかりと捉え、大上段から振り下ろされた鍵を左腕で掴み取り、逆に投げ飛ばしてみせる。
「悪ィな。お前さん、そこはもう『罠ン中』でさ」
 投げ飛ばされた物九郎と入れ替わりに殺到するモザイク。その隙間から見えた物九郎の顔には、確かに笑みが浮かんでいた。
 瞬間、頭上で轟音がした。
 幾重にも刻まれた太刀筋でモザイク化し、流出して欠けた天井が、遂に限界を迎え崩落を始めたのだ。
 それと同時、周囲のモザイクが次々と床や壁の白を取り戻し、そしてそれは瓦礫の檻となって少女の逃げ道を塞ぐ。
 少女の笑顔が、轟音と共に瓦礫の中に消え……。
「――っあははははははははぁ!!!!」
 絶叫じみた高笑いと共に、積み上がった瓦礫が飛び散る紅を伴って『溶け飛んだ』。
 その紅は……血だ。
 触手の亡骸からわずかに漏れ出ただけで床を変質させる強酸性の血が、あろうことか今まさに押しつぶさんとしていた瓦礫をも溶かし、強引に振りほどいてみせたのである。
 鉤爪で掻き毟ったのか、胸からぼたぼたと血を流し、なおも高笑いを続ける少女を、再び紅が……しかし血とは違うそれが包む。
 その紅は……煌々と燃える炎は、撒き散らされた血を包み、焼き、蒸発させて大気へと帰し、少女の肌をも炙る。
「……まったく」
 その炎の奥で、声がした。
「折角楽しく殴り合ってるんだから……そんな野暮な技、止めなさいよね」
 次の瞬間には、炎の中を駆け抜けてきたつかさが、傷口ごと焼かれた少女の腹を殴り抜いている。
 しかし、それでも。
 吹き飛ばされ炎の中に消えて行く少女の顔には、未だ狂喜の笑みが張り付いたままであった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

メルヴィ・リリス
(常に[恐怖を与える/呪詛/力溜め]を使用、自身のUC発動に備える。)

彼女のUC、酸が厄介ね。[毒使い/毒耐性/激痛耐性]を使って、予め肌全体を毒液で覆っておくわ。…これで少しは防げるかしら。
鬱陶しい触手は…そうだわ![敵を盾にする]で”肉壁”を使って対処しようかしら。うふふっ、貴方…まだアタシの為に働いてくれるわよね…?
…あァら、もう壊れちゃったの。…まあ良いわ。代わりならそこら中にいくらでも”在る”もの!ぁははっ♪

楽しいわねぇ!それにほら…なんて綺麗なの。貴女の腹綿も、とても綺麗な色をしているんでしょうねェ…ねえ「神」様ァ?……んふっ♪あぁ貴女、今…アタシに”恐怖”してしまったわねぇ…?♪


ニコライ・ヤマモト
殺し合いが、そんなに楽しいか。
任務のためならば俺も人を殺す。必要ならば非人道的な研究も全て悪だとまでは非難できん人間だ。だがそんな風に笑うことは…俺にはできん。
お前をそんな風にした人間をどう思う?
…さあ、仕事だ。もどかしい感情は顔に出さず戦闘に備える。

■UCにて近接[先制攻撃]。敵に肉薄して速さで攪乱しよう。

身のこなしには自信がある。[地形の利用/目立たない]ところからUCの速さを活かし足音や気配を殺した[忍び足/ダッシュ]。
人体への狙いは的確に[暗殺/鎧無視攻撃]。
味方の攻撃に合わせ、捕まる前に[マントや帽子を脱ぎ捨てて加速]し一時撤退。
拳銃での[援護射撃]を行い、再度斬りかかる機会を伺う。



 激しい戦闘の余波で、今もなお崩壊が進んでいく研究施設。
 あちこちに穴が空いた空間で、少女の笑い声は良く通る。
 心の底から楽しそうに、そしてどこか空虚な笑い声を、少女はあげ続ける。
 ニコライが狙うのは、そんな少女の首筋。
 狙うは急所。
 もとより小柄なケットシー、それも漆黒の毛色は、中途半端に光が差しあちこちに瓦礫や物陰が散在した、埃まみれのこの場所において隠れる手段に事欠かない。
 如何に異形の瞳を持つと言えど、視界に捉えることは決して容易ではなかった。
 死角から襲い掛かった刃が閃く。
 一拍おいて、少女の首筋から鮮血が流れ落ちる。
 ……頸動脈を掻き切った。尋常の生物であれば間違いなく致命傷であった筈の一撃。
 それでも、少女は笑みを崩さないまま、その一撃の主であるニコライへと向き直る。
「……殺し合いが、そんなに楽しいか」
「変な事聞くね、黒猫さん」
 内心の動揺を表に出すことなく問いかけるニコライに、少女はさも不思議そうに首を傾げてみせる。
 その拍子に、今しがたつけた首の傷が開いて、どす黒い血がまた溢れだした。
「……楽しいに決まってるじゃないか」
「そうか……」
 いったい、どんな人間が彼女をこうまでしてしまったのか。今となってはもう、知る由もない。
「お前をそんな風にした人間をどう思う?」
「んー……?」
 質問に耳を傾け、考え込んで見せるそのそぶりは、敵同士というよりも、さながら遊び相手と雑談に興じるだけのようにも見えて。
「自分勝手で、わがままで、わけわかんなくて……」
 考え込んだ拍子に閉じられていた瞳が、ゆっくりと開けられる。
 同時に、服と一体化した異形の一つ目が、ニコライを捉えた。
「……面白い、かな」
「……ッ!」
 背筋が冷えた。考えるより先に身体が動く。飛び退く。
 一斉に殺到する触手は、それだけでは到底回避しきれるものでなかったであろうが、そのわずかな間隙が確かにニコライの身を救っていた。
 少女とニコライの間に放り込まれた『何か』が、影を落とす。
 それが何かを少女が理解するよりも早く、触手が容赦なく『それ』に突き立てられる。
「……あァら、もう壊れちゃったの」
 よくよく見やれば、それは人であった。
 正確に言えば、オブリビオン。あの狂信者が、身体中を触手に貫かれて脱力している。
「まあ良いわ。代わりならそこら中にいくらでも”在る”ものねェ?」
 ぽかんと自らが貫いた狂信者の亡骸を見つめる少女に掛けられる、妖艶な女性の声。
 潜入時に魅了した『元』信者を引き連れ、メルヴィが笑う。
 ようやく理解が追いついたのだろう。少女の顔がゆっくりとメルヴィを向いて、「あぁ」と小さく吐息を漏らした。
「今度はおねえさんが遊んでくれるんだ?」
「えぇ、いらっしゃいな」
 二人同時に、口角が上がった。
 少女の足が床を蹴る。同時にメルヴィの腕が振られ、鞭が撓り、飛ぶ。
 その向かう先は、少女……ではなく、傍らに控えていた元信者。
 胴体を絡め取り、抵抗させる間もなく少女の眼前へと放り出す。
 信者の腹を、紅い異形の剛腕が貫いた。
 指先に半分になった心臓と臓物を引っ掛けた少女の顔に、鮮血が浴びせられる。
 如何に尋常でない力を秘めた悪魔の腕であろうと、人一人ぶら下げたまま振り回すのは邪魔になる。
 どうしても必要になる、引き抜くと言うワンアクション。
 その一瞬で、こちらも距離を詰める。
 血まみれになった、幼さを残す少女の顔。至近距離で、目が合った。
「嗚呼、とっても綺麗」
 思わず漏れた吐息は、何に対してのものか。
 理解の及ばぬであろう少女に、続けてメルヴィは声を落とす。
「貴女の腹綿も、とても綺麗な色をしているんでしょうねェ……」
 ねェ『神』様?
 その魔女の微笑みは、常人であるならば恐怖を覚えることは不可避であったことだろう。
 いくら理性で平静を取り繕うとも、湧き上がる本能的な恐怖は抑えようもない。
 理性を失った狂人であれば、より本能的な恐怖は避けようがない。

 ……そう。それが『人』であったならば。

「……ぁは♪」
「……!」
 少女の顔には、一片たりとも『恐怖』はなく。
 逆に浮かんでいたのは『歓喜』。まるで自分を理解してくれる存在と出会ったかのような、そんな『悦び』の感情だった。
「見てみたい?いいよ、いいよ!じゃあ見せあいっこだね、おねえさん!!」
「――下がれっ!!」
 ぞわりとにわかに動き出す無数の触手。
 今にもメルヴィを覆い尽くさんと伸びたそれに、ニコライの銃撃が飛ぶ。
 一瞬だけだが退路は確保できた。
 咄嗟に飛び退いたメルヴィが今の今までいた場所に触手が矢のように降り注ぎ、肉の擦れ合う耳障りな音を響かせる。

 人の死と恐怖を糧とする愛寥の魔女。
 誰もが嫌悪や恐れを抱かずにはいられないであろうその在り様すら届かないという事実は、その少女が既に『人』ならざる『何か』に成り果ててしまった、何よりの証左であったのかもしれない。

苦戦 🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

シャルロット・リシュフォー
彼女は……!?
いえ、オブリビオンなのは間違いないんですっ
「貴女を自由にすると、あの人達が死んでしまうなら……。戦ってでも、貴女を止めます、です!」

【ハーモニックワールド】で歌いながら二刀流による攻撃を仕掛けますです
相手に効きそうな属性は……酸と機械……氷属性ですの!
「せめてこの歌が、貴女の心に響くと信じてっ!シャルロット・リシュフォー、参ります!」
伸びる触手を氷でコーティングした剣で切り落としつつ接近して
本体に氷の魔力を叩き込んであげますです

彼女は最初から狂っていたのか、それともあの信者達にこうされたのかはわかりませんが……
それでも、この教団が彼女ののぞみではなかったと信じたい、です


トリテレイア・ゼロナイン
あの顔…知人のサイボーグの方に面影が似ているような…
どのような存在だったのか、施設情報を抜かなかったのが悔やまれますね

ですが何であろうと人々を徒に害する存在であるならば討つまで

●環境耐性はありますが、流石にUCの強酸を無制限に浴びれる装甲ではありません

センサーでの●情報収集で位置を確認しつつ●盾受けで防御しながら接近しますがどれ程保つか…
限界を迎えると同時、●操縦して盾裏に潜ませていた妖精ロボ達で●だまし討ち
精密攻撃●スナイパー射撃で傷口をレーザーで焼いて止血

新たな傷を開かれる前に脚部スラスターでの●スライディング移動で一気に接近
退避する脚をレーザーで撃ち抜き●怪力任せに振るう剣の腹で殴打



 果たして、彼女は最初から狂っていたのだろうか。
 それとも、あの信者たちが彼女をそうさせてしまったのか。
 シャルロットに、それを判ずる術は無い。
 しかし、これがこの少女の望みであったのか。いやそもそも、少女はいったい何を望んだであろうか。
 きっと、問うたところで返ってくることも無いだろう。
 それでも、こんなありようが望んでいたものではなかったと、そう信じたい。
 そして、何よりも。
 彼女がオブリビオンであるなら、ここで見逃してしまえば、今を生きる人達を危険に晒すのであれば。
 終わらせるしかあるまい。
「シャルロット・リシュフォー……参ります!」
 床を蹴る。積もった埃が舞い上がるのを後に残して、肉薄する。
 金銀の直剣には冷厳なる氷の魔力を、歌を紡ぐ唇からは、浄化の音色を。
 せめてこの歌と祈りが、彼女の心に届きますようにと願いを込めて。
「ぁっは!こんどはおねえさんが遊んでくれるんだねェ!」
「……っ!」
 そんなシャルロットの願いを知ってか知らずか、歌声を掻き消すかのような笑い声をあげながら、少女が駆ける。
 殴りつけるように振るわれる少女の左腕を、シャルロットが前転して躱す。
 潜り抜けた彼女の背中を、コートの下から異形の単眼が視線で追った。
 少女が振り返るよりも早く、服の下で触手が蠢き、シャルロットを襲う。
 立ち上がりざまに身体を捻り、シャルロットの剣が触手を半ばから断ち斬った。
「……あれぇ?」
 少女がこてんと首を傾げた。
 痛みに顔を歪めることこそないものの、感覚はあるのだろうか、視線が向くのは切り落とされた触手の先。
 冷たい。そして断面から血が流れ落ちることも無い。……凍っている。
 だが、状況を悠長に考えている暇は少女には与えられない。それは明確な隙だった。
 少女の脇腹に、魔力を込めに込めたシャルロットの横薙ぎが叩き込まれ、少女の身体が宙を舞った。
 どこか金属質な手ごたえを腕に感じつつ、シャルロットの瞳が少女の飛ばされた方角を追う。
「やった、です……?」
「いえ、まだです。警戒を緩めないよう」
 構えを解こうとしたシャルロットを横合いから制する声。
 大盾を構えたトリテレイアが、油断なく土煙の向こうを見やる。
 穴の開いた壁の向こう、土煙が晴れた先に見えたのは、人々が捕らえられていたあの実験室だった。
 吹き飛ばされた少女がぶつかって割れたのであろう、砕けたシリンダーから培養液が溢れ出て、少女の身体をしとどに濡らしていた。
 鬱陶しそうに、頭に乗っかってきたよくわからない肉塊を払いのける少女。
 その顔つき、体つきに、トリテレイアは先ほどから既視感を感じていた。
 知人のサイボーグに似ている。
 少し似ている程度なら他人の空似で済ませられただろうが、それにしては『似過ぎている』。
「(どのような存在だったのか、施設情報を抜かなかったのが悔やまれますね……)」
「……おにいさん、何見てるの?」
「!……」
 シリンダーの残骸に背中を預けたままの少女の声が飛んだ。
 そこか不機嫌そうな少女の顔の下で、単眼がぎょろぎょろとトリテレイアをねめつけている。
 心を読んだわけでもあるまいが、それでも誤魔化すのは無駄と、構えを解かぬままトリテレイアは思った通りの事を口にする。
「失礼。……少々、見知った方に似ていたもので」
「ふぅん……でもざんねん、ここはボクとは関係ないところだよ」
「……ほぅ?」
 怒るでもなく、襲い掛かってくるでもなく、その姿勢のまま少女は言葉を紡ぎはじめた。
「ここはボクが『見つけた』だけ。先に住んでたあいつらなら何か知ってたかもしれないけど、もうみんな死んじゃったみたいだし」
 ――嗚呼、でもふしぎで面白いよね。
「場所が変わっても、おんなじことやってるや、ニンゲンって」
 ぐしゃり。
 髪についていた、元は小動物的なものであったのだろうナニかを握りつぶす。
 肉が飛び散り、名状しがたい色をした血が噴き出た。
「……でも、そっか。あいつ元気にしてるの?」
「貴方が想像しているお方かどうかは存じませぬが、ご健在ですよ」
「ああそう」
 帰ってきた言葉はそれが最後だった。
 一体彼女は、何を思ってそれを問うたのだろうか。笑みの消えたその顔から窺い知ることは出来ない。
「……どうして、そのようなことをお話しになったのです?」
「決まってるじゃないか」
 よっこいしょ、と。
 シャルロットの問いに、少女が立ち上がる。その表情には、先ほどと同じ――あるいは、同じようでいて何かが違っているかもしれない――笑顔が、再び浮かび上がっていて。
「せっかく楽しく遊んでるのに、考え事なんてつまらないじゃないかァ!!」
「!!シャルロット様!」
 咄嗟にトリテレイアがシャルロットを突き飛ばす。
 突き出された少女の左腕が、トリテレイアの大盾を強かに叩く。
「ぁは!あははっ!あははははははははっ!!」
「く……っ!」
 がつん、がつんと大盾に衝撃が走る。
 少しでも気を緩めてしまえば、ウォーマシンであろうとも体勢を崩されかねない暴れようは、攻撃を受けていないシャルロットですらも攻めあぐねるほど。
 それだけでなく、あまりにも激しい動きは、焼かれ、或いは凍らされた少女の傷口も罅割り開くほどで、飛び散る血液が酸になって大盾を蝕んでいく。
 防戦一方。それもどこまで持つか。
 終いに少女の左腕が、脆くなった盾を叩き割る。
 その破片に紛れ、何かが飛翔するのを少女は見た。
 それは、機械の妖精たち。盾裏に潜ませていたのを不意打ち気味に展開する。
 少女の意識が割かれる。それでもなお気付いて見せたのは、その異形の瞳のなせる業か。
 しかし、明確に動きがそれへの対処へとシフトした。攻撃の手が緩む。
「させないですっ!」
 機械妖精へと伸びる触手を、シャルロットの魔法弾が弾き飛ばす。届かせはしない。阻めるのは一瞬であろうが、それで十分だ。
 その一瞬で、妖精たちは発射準備を整えた。
 レーザーの一斉射が、開きかけていた傷口を撃ち抜き、焼き塞ぐ。
「……今!」
 トリテレイアが脚部スラスターを吹かした。
 懐、取る。剣の腹を渾身の一撃で叩きつける。
 勢いと質量の乗った強烈な一撃。これで何度目か、少女の身体が宙を舞った。
 しかし、その瞬間までも少女は『恐れ、退く』という選択肢を一切取らなかったことを、トリテレイアはその有りすぎた手ごたえから感じ取っていた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

アルナスル・アミューレンス
あー……。
君は、初めから弄られて作られた側かぁ。
しかも、更に弄られてる?。
まぁ、「そういう存在」になったら、大して関係ない話かな?

じゃあ、始めよっか。
遊んであげるよ。

TrustEdgeを抜き、戦闘知識を生かして近接格闘に持ち込むよ。
第六感を発揮して彼女の動きを見切り、継戦能力を発揮して時間稼ぎするよ。
あっちがパワーで押しても、こちらも怪力で対抗しようか。
どれくらい遊ぼうか?

自傷して血を撒いたら、終わり。
他の人にかからないように庇うよ。

じゃあ、遊びはここまでだねぇ。
――拘束制御、開放
遠慮なく、『氾濫(オソウ)』よ。

沸き立つように体を直し、
天災の様に容赦なく、
黒き不定形の異形は、貪り捕食し尽くす。



「ぁはは……楽しい……楽しいなァ……」
 瓦礫に半ば身体を埋めながら、それでも少女は笑う。
 それをアルナスルは、瓦礫の上から一人見下ろしていた。
 彼女の表情に、誤魔化しの色は感じ取れない。きっと、本当に、心から楽しんでいるんだろう。
 自分がこうして傷だらけになるのも含めて、嘘偽りなく、この状況が。
 もはや衣服はズタボロで、その下の身体が――所々機械化し、またあるところは人のそれとは違う醜悪な肉と化した、その身体が――破れた衣服のあちこちから覗いている。
「あー……。君は、初めから弄られて作られた側かぁ」
 どこで彼女がこうなってしまったのか、それはわからない。
「しかも、更に弄られてる?」
 遺伝子をいじくり回され、身体を機械に変えられ、そして神だか悪魔だか知らないが、身に宿させられて。
 よくもまぁ、ここまで派手に弄ったものだ。
「……まぁ、「そういう存在」になったら、今の君には大して関係ない話かな?」
「そういうおじさんは、「どっち」なのかな?」
「どうだろうね」
 ガスマスク越しのアルナスルの声が、小さく笑ったような気がした。
 それこそ、今はどうでも良い話だ。
「それで、おじさんも遊んでくれる?」
「いいよ、遊んであげる。……あぁ、でも一つだけ」
 ――僕、おじさんじゃなくてお兄さんだから。
 その言葉は果たして少女に届いていたか。……まぁ、これもある意味どうでも良いことか。
 ナイフが閃き、剛腕が空気を引き裂く。
 時に打ち合い、腕が痺れる。
 過酷な環境にも耐えうる頑丈な刃は容易に折れる事こそないが、その刃も容易には通らぬほど、少女の異形の腕は屈強だ。
 さて、どれほど『遊んでいられる』ものか。
 アルナスルも、偽神細胞を移植された身。それでもなお、正真正銘の『化物』を相手にするには力不足が否めない。
 自慢の怪力も、対抗するのが限界で、攻め手に転じるにはもう一歩が踏み出せない。
「あははははははっ!」
 楽し気な、そして狂ったような笑い声を響かせて、少女の身体が『裂ける』。
 肉体に力を込めすぎたのか、重なってきた傷が開いたか、はたまた己の意志で裂いたのか。
 いずれにせよ。
「あぁ、じゃあ終わりかな」
 至近距離。噴き出る血を、アルナスルは避けようがない。避けるつもりもない。
 全部浴びてしまえば、その酸の血で周囲に被害が出ることは無い。
 肉が溶ける嫌な臭いが鼻をつく。
「――拘束制御、開放」
「……え?」
 きょとん顔の少女の目の前で、アルナスルの身体が溶け落ちて行く。
 ――言ったよ、『終わり』だって。
 どろどろに溶けた、黒い不定形の異形の奥底から声がした。
 そう、『遊び』は もう『終わり』。
 沸き立つ異形が、少女の足に絡みつく。這いあがってくる。
「……わぁ」
 体のあちこちから夥しい血を流したまま、少女はその様を、抵抗するでもなく見下ろしていた。
 その表情は、狂喜の笑みの代わりに、どこか親し気な、見知ったものに似た何かを見つけたかのような微笑へと変わっていて。
 いずれにせよ、そこに恐怖も憎悪も一切なく。
「……そっかぁ、終わりなら仕方ないね」

 ――ばいばい、ニンゲンたち。楽しかったよ。

 その言葉を最期に、少女は黒の中へと飲み込まれていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年03月21日


挿絵イラスト