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アルダワ魔王戦争9-A〜嵐の玉座

#アルダワ魔法学園 #戦争 #アルダワ魔王戦争 #大魔王 #ウームー・ダブルートゥ #オブリビオン・フォーミュラ

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●地下最大の作戦
「皆、お疲れ様だニャア」
 バースト・エラー(世界の不具合・f21451)は集った猟兵達を見渡し、一つ咳払いをして作戦説明を始める。バーストが目に当てたハート形のARデバイスがチカチカと光れば、それに合わせてスクリーンに表示される情報が更新された。
「今度の相手は大ボス、大魔王の最終形態なんだニャア」
 大魔王――このアルダワ魔王戦争を引き起こした張本人。その最終形態を倒しさえすれば、この戦いは猟兵達と学園の勝利となる筈。
「例によって必ず先制攻撃してくるニャ。いかに防御して反撃するかの作戦が重要になるんだニャア」
 敵の攻撃手段は敵対者の思念を利用して己を強化する超常の呪法、敵対者の恐怖を利用して現れる超常の影、触れると急速に若返る『産み直しの繭』で作られた超常の迷路――この三つの攻撃手段を如何に凌ぎ、対抗するかが鍵となるのだ。
「オーダーは二つ、勝利して生還せよ。それだけニャ」
 ぐにゃりとバーストの背後が歪む。魚型の磯臭いゲートが大きく開き、敵が居座る『はじまりの玄室』への直通経路が繋がった。
「……余計な事は言わないよ、信じてるからニャ」
 これまで四つの世界を救って来た猟兵だ。今回も同じく――絶対に救うという固い意志を胸に戦ってきた。だからこそ油断無く、いつも通り最後まで立ち向かうだろう。
「それじゃ、グッドラックだニャ」
 薄暗い迷宮の最奥、古の香りと共に道は拓かれた。最後の戦いが始まろうとしている。


ブラツ
 ブラツです。このシナリオは1フラグメントで完結し、
 「アルダワ魔王戦争」の戦況に影響を及ぼす、
 難易度の高い特殊な戦争シナリオとなります。

 本シナリオは大魔王最終形態「ウームー・ダブルートゥ」との最終決戦です。
 非常に強力な敵となりますので、判定も難易度相当になります。

●プレイングボーナス……敵のユーベルコードへの対処法を編みだす。
 以上です。敵は必ず先制攻撃してくるので、
 いかに防御して反撃するかの作戦が重要になります。
 上記が伴わない場合は、プレイングボーナスが発生しません。

●今回の注意事項
 お手数ですがオープニング承認後、幕間の投下と内容をご確認の上、
 私都合で恐縮ですが、定めた期間にプレイングを送って頂ければ幸いです。
 尚、期間外に頂いたプレイングの採用率は著しく下がります。

 それでは、よろしくお願い致します。
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第1章 ボス戦 『『ウームー・ダブルートゥ』』

POW   :    ホープイーター
【敵対者の願い】【敵対者の望み】【敵対者の祈り】で自身を強化する。攻撃力、防御力、状態異常力のどれを重視するか選べる。
SPD   :    ホープブレイカー
【敵が恐れる大魔王形態(恐れなければ全て)】が現れ、協力してくれる。それは、自身からレベルの二乗m半径の範囲を移動できる。
WIZ   :    ホープテイカー
戦場全体に、【触れると急速に若返る『産み直しの繭』】で出来た迷路を作り出す。迷路はかなりの硬度を持ち、出口はひとつしかない。

イラスト:hina

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●嵐の王
『……来たか』
 それは龍の様な、獅子の様な、荘厳にして強大な威容を以て現れた。
 背中には猛禽と巨竜を想起させる三対の非対称な翼が。
 山羊の様に曲がりくねった悪魔めいた角を生やし、蜘蛛を模った様な冠を頂に。
 白銀の鎧の様な光沢を放つ金属質の外殻の中心に、真紅の宝石を抱いて。
 その姿は美しくも禍々しく、正に大魔王と呼ぶに相応しい。

 威容は紅と蒼の炎を纏い、そして……。
『戦場こそが『大魔王』の本懐。この期に及んで知らぬとは言わさんぞ』
 現れ出ずるはこれまでに倒してきた大魔王――その影が続々と姿を見せる。
『我が力、物言わぬ者達の代弁者としてその責務を果たす』
 ざらりと生やした五本の刃が妖しく煌く。びたんと巨大な尾が跳ねて。
『往くぞ猟兵、命を捨てて戦おうではないか』
 烈風を放ち、大魔王『ウームー・ダブルートゥ』は最後の戦場に立つ。
『この世界の唯一の敵よ――贄共よ。さあ!』
 はじまりの玄室にて、おわりを齎す為に。



※プレイングは以下の期間に募集致します
 2/19(水)8:31 ~ 2/22(土)8:30 迄
【200220追記】
 沢山のご参加、誠にありがとうございます。
 当方都合で大変恐縮ですが、2/23(日)の作業時間がほぼ取れず、
 本日8:31からプレイングを頂いた場合、失効日が23日となる為、
 もしも合わせプレイングをご希望の方がいらっしゃいましたら、
 恐れ入りますが2/21(金)8:31以降にプレイングを頂ければ幸いでございます。
 何卒、よろしくお願い申し上げます。
霧島・カイト
【霧島家】

俺達の出自にとって、この繭は非常に危険だ。
故に同時に『飛び』、【早業】【高速詠唱】で
素早く【指定UC】を使用し、飛行状態を維持したままに向かおう。

基本的に道中は攻撃を【見切り】、
俺が【かばう】形で【盾受け】【オーラ防御】で受け流してゆく。
その最中にも迷宮の構造を【ハッキング】し【情報収集】。
最短ルートで繭に接触しないように向かおう。

魔王と相対出来たならば、
【属性攻撃】【鎧無視攻撃】【怪力】の拳で殴りつけつつ、
魔力の流れを掻き乱すように直接【ハッキング】を仕掛けよう。

……クロトと並び立てるというだけで、
胸の奥から力強い物がこみ上げて来る。
――負ける訳には、行かない。

※アドリブ連携可


霧島・クロト
【霧島家】

おーけー。兄貴。手筈通りに行くぜ。
まず、迷路に接触しないように同時に『跳ぶ』。
その上で【高速詠唱】から【指定UC】で飛行状態に。

迷路の案内と護りは兄貴に任せ、
道中の攻撃は【見切り】、撃ち落とすか、回避してくぜ。
或いは【オーラ防御】で受け流してくけど、
繭に接触しそうなら、素早く【属性攻撃】でその面を凍結だ。
んな物騒なモン、直接接触したら大惨事だ。

ご本尊が見えたなら兄貴と連携してボコ殴りタイムだ。
【属性攻撃】【怪力】【マヒ攻撃】【生命力吸収】の氷拳を
【2回攻撃】のラッシュでその余裕から削ってやるよ。

――誰が負けるかってんだよ。
兄貴が頼ってくれたんだ。テメエは必ず『潰す』。

※アドリブ連携可



●蘇る群狼
 蠢く巨大な影の下、ウームーの足元より黄金が迸る。光は筋となり、奇怪な糸玉……まるで繭の様な、立体的な構造物が壁の様に立ち塞がった。
「――俺達の出自にとって、この繭は非常に危険だ」
 それこそウームーの超常、触れたモノを急速に若返らせる『産み直しの繭』とも言うべき呪いの顕現。事前の情報と照らし合わせて、周囲の微弱な生体反応が急速に衰えていく状況をサーチした白銀のサイボーグ、霧島・カイト(氷獄喪心の凍護機人・f14899)がぼそりと呟く。
「おーけー。兄貴。手筈通りに行くぜ」
 その傍ら、対照的な漆黒のサイボーグ――霧島・クロト(機巧魔術の凍滅機人・f02330)が頷いて。皆まで畏言う必要は無い。通じ合ってる二人にしてみれば、やるべき事さえ分かっていれば、後はそれぞれが合わせて動くだけなのだから。
「先導は任せろ。目標はあの奥……」
 ガキンと白銀の装甲が展開し、カイトの姿が紫電と共に不確かなモノに――超常の高次電脳体の姿となって、うねる繭玉を、その奥の出口を見据える。
「ああ。邪魔する奴は凍らせてポイだァ」
 合わせて超常の氷結装甲がクロトの全身を包み込む。呪われた出自を乗り越えて並び立つ両雄は旋風と共に、悍ましい繭玉の中へと飛翔した。

「――クロト、三秒後右、その後全速力で直進。妨害あり」
「はいよッ……コラ、邪魔すんなァ!」
 迷宮の様に複雑な進路を的確にナビゲートするカイト、不意に行く手を遮る縄の様な黄金の糸を凍らせて撃ち砕くクロト。触れれば最後、生きてきた時間と記憶が曖昧なカイトは特に、どうなってしまうか想像もつかない。最悪、再び眠りについてそのまま生まれたままの時に戻される恐れも。
「フラクタル構造か……成程。読めたぞ」
 電脳体として飛び回りながら、変異していく繭玉の周辺をハッキングして構造の法則性を導いたカイトは、遂にその始まりへ至る。
「流石だなァ……それじゃそろそろ、準備しとくぜ」
 変異法則さえ分かれば、その始まりまで逆算すれば自ずとゴールは見えてくる。ご本尊が見えたなら兄貴と連携してボコ殴りタイムだ――相対するであろう強敵を見据え、必殺の拳をしたためるクロト。
「――出口だ。準備は」
「言われるまでもねェ。行くぜ」
 氷結の貪狼が牙を剥く。サラリと伸ばした氷の刃がクロトの両腕を覆って、視線の先には漆黒――繭の迷宮の出口、それなりに消耗してはいるが、減った分は奪い返せばいい。
「三、ニ、一……」
「覚悟しろよオラァッ!」

『ほう……あれを抜けたか』
 飛び掛かるクロトの斬撃を、生やした巨大な刃をカーテンの様に並べて凌ぐウームー。そのまま空いた手から放たれる衝撃が漆黒の貪狼を弾き飛ばす。
「弟に……手を出すなッ!」
 きらりと纏った凍気をバイザーから光線の様に放つカイト。ウームーの追撃の手を押さえてそのまま肉薄して、怪力を込めた拳で巨大な掌を殴り返す。
『小さいな、そんなもの』
 再び衝撃、凍気のバリアで凌ごうにも止めどなく放たれるそれが、徐々にカイトを圧していく。だが敵は一人では無い。
「一番乗りは俺なんだよッ! 喰らえ!」
 踵より氷柱を伸ばして突き進むクロト。足場があれば早々吹き飛ばされる事も無い。そして二つ目――鋭く伸ばした大槍の様な氷塊をウームーの喉元目掛けて打ち放つ。
『そんな弱った拳で……何を』
 嘲笑するウームーが氷塊を握り潰そうとした刹那、その手より力と動きが奪われる。超常のみが武器では無い、鍛えた五体が最上の武器。不意にカイトを縛る衝撃が晴れた瞬間、真実を暴く異能の凍気がウームーの片腕を貫いた。
「……クロトと並び立てるというだけで、胸の奥から力強い物がこみ上げて来る」
『それが何だと……言うのだ』
 歯を食いしばり最大出力で照射を続けるカイトを睨み、ウームーが厳かに零す。右腕がやられた――時間が経てば戻るだろうが、この戦で一瞬の不利は死に繋がる。
「だから――負ける訳には、行かない」
「ああ――誰が負けるかってんだよ」
 ウームーが動きを止めた時間はわずか三秒。必殺の刹那を逃す程、狼の牙は緩くない。
「兄貴が頼ってくれたんだ。テメエは必ず『潰す』」
 バリンと足元の氷柱が割れて、全身の凍気を推進力に変えたクロトが、ウームーの片腕を潰して凍らせたカイトが、その上を一気呵成に駆け上がる。
「「終わりだ」」
 それぞれの右拳と左拳がウームーの下顎に届き、その巨体が轟音を立てて吹き飛ばされて玉座らしき構造物にぶち当たる。しかし同時に、先の黄金の壁が両者の間を塞ぎ切った。これ以上の交戦は危険――咄嗟の迎撃が戦いの仕切り直しを要求する。
「逃げたか。大丈夫か、クロト?」
「あァ……どうって事ねえ。だが」
 続いて塞がる黄金の繭の壁はぞわぞわと蠢き続けて、先の様に一筋縄で突破出来る代物では無くなった。
「だがよォ、どうする?」
 目の前の繭を超える頃には両者の消耗もピークになるだろう。
「大丈夫だ。ここでやれることだってある」
 敵を倒す事も、弟も大事だ。前線に出なくともハッキングで奴の術式の解析を続けて共有する事も出来るし、何より……。
「この衝動を、今は覚えたい」
 湧き上がった思いの正体を今は知りたい。その為にここで倒れる訳にはいかない。
「そうだな。少なくとも奴に攻撃は通じる」
 猟兵は十分戦える。それが証明出来た事、それを後に繋げる事。現在が過去を乗り越える為に、二人は第二の戦いを始める。戦いは今まさに、幕を上げたのだから。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ルエリラ・ルエラ
【アドリブ改変・連携歓迎】
いかにもラスボスって感じ
怖いとは感じてなかったから歴代魔王が集結しちゃけど、どんな時でも私らしくいこう

まず<芋煮ハンドグレネード>で周囲に煙幕発生。沢山投げてとにかく視界封じ
『目立たない』よう煙に紛れ<狼耳デバイス>で敵の音を『情報収集』して攻撃を『見切り』ながら『第六感』で回避。回避しきれない攻撃は、魔力障壁で全力防御
煙幕を追加しつつ、囮として<メカ・シャーク号>を自動操縦で煙幕の中うろちょろさせるよ。それで敵の気が逸れたら、ブーツに魔力を込めて『空中浮遊』
煙が晴れた瞬間を狙って、『スナイパー』として上空から本体を【アインス】で貫くかせてもらう



●エルフは眠らない
 黄金の壁に仕切られた玄室、先の戦いの傷を癒すウームーを続いて猟兵が襲う。
『甘い、そんなモノ』
 背後の影が――これまで死闘を繰り広げた大魔王の分身がウームーを囲う様に前に出て、視界に入った青い影を一斉攻撃。轟音と共に容赦無く地面を亀裂が走り、舞い上がった土埃が空間を埋め尽くす――否、大魔王の攻撃が全てでは無い。
『姿を隠したか。だが……』
 一向に晴れない土埃――それは猟兵が放った煙幕だった。攻撃に混ざって投げ込まれたそれはただでさえ暗い空間を揺蕩い、全ての視界を遮る。
(……いかにもラスボスって感じだね)
 初撃の回避は辛くも成功した。暗がりに身を隠すルエリラ・ルエラ(芋煮ハンター・f01185)は自身を探して蠢く影を見やり、声を殺して状況をつぶさに観察する。
(まあ、どんな時でも私らしくいこう)
 何も考えずに飛び込んで、全ての大魔王の影がルエリアを猛追した。だが狙いは一人なのだ――他は相手にする必要は無い。足元をつぶさに観察する巨大な影を見やり、続いて煙幕の海に機械の鮫を放ったハンターは、身を潜めて淡々と獲物を狙い続ける。

『――もう良い、全て壊せ』
 幸い黄金の繭の壁が容易く増援を寄越す事は無い。たった一人、じっくりと腰を据えて潰すのみ。それに影とは言え意思持つ自身の分身だ。恐れる事など無い……号令と共に再び、空間を轟音が埋め尽くす。
『フム、耐えきれなくなったか』
 煙幕の中、自身では無い動く影がちらりとウームーの前を横切る。ここに居るとも分からずか――だが容赦はしない。スッと手を上げると共に、散っていた幾つもの大魔王が一斉にその影に狙いを定め、三度猛烈な攻撃がそれを襲った、瞬間。
『な……』
 突如ウームーの身体に痛みが走り、首筋に赤い血が流れる。その元は動く影では無い、全くの見当違い――遥か上方から音も無く何かが飛来して、佇むウームーを正確に狙い撃ったのだ。
『一体、何故……!』
 激高するウームーが天井目掛けて破壊の衝撃を飛ばす。赤と青の炎が絡み合い、渦を巻いて空間を舐める様に一閃――バチバチと煙幕を払いながら、しかし憎悪の炎は敵の姿を捉える事は無い。
(まーねー。一人だけ止まってるんだもの。狙ってくれと言ってるようなものだよ)
 それはルエリアの超常、全てを貫く魔法の矢が傲岸に佇むウームーに必中の一撃を下したのだ。滞留する煙幕は重い。故に囮の鮫を放ち足元へ気が逸れた瞬間、物陰よりゆっくりと空へ上がったルエリアが、煌々と赤と青の宝玉を輝かすウームーへ一矢必中の狙いを付けたのだ。
(だけど、これ以上はヤバいかも)
 どくどくと血を流すウームーを遠目に見やりルエリアは転進、そして確信する。
(大魔王、まだ猟兵を侮ってるね)
 一矢を報い、着実にダメージは蓄積されている。これまで通り、積み重ねれば奴は必ず討ち倒されるだろう。口元を僅かに歪ませて、エルフの少女は闇に紛れた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

数宮・多喜
【アドリブ改変・連携大歓迎】

とうとう親玉の真打ちって訳かい?
この威容……気圧されないように気合を入れるしかないね。
とは言っても、アタシがやる事はいつも通り。
カブに『騎乗』し、電撃の『属性攻撃』を放って機動力で撹乱する。
そのままじゃ強化された魔王相手さ、
カブごと吹っ飛ばされるのがオチだろうけどもね…そこからが本番さ。

攻撃を受けた時に『衝撃波』を放ってより距離を開け、
余裕をもって【戦地改修】を発動。
使う補修パーツは……この迷宮、そのものさ。
そうしてファーストダンジョンと魔術的パスを繋ぎ、
「魔王を封印する」という迷宮の機能そのものをカブに再現!
さあ、迷宮そのもののぶちかまし……
受けてみやがれ大魔王!


アルフレッド・モトロ
俺の願いは…故郷のお袋を安心させてやること!
魔王に関係のない「願い」で、強化不発を狙う

お袋が安心するかなんて、お袋自身が決める事だしな
魔王には干渉しようがないんじゃねーかなって!

そして俺は望まない祈らない
持つのはそう「確信」と「意志」さ!
俺はこれまでの俺自身をただ信じて戦うだけ!
さあ勝負だ!打ってこい!

と、魔王が攻撃を重視するよう誘う。

ワンダレイ・アンカーを盾に【気合い】で耐える
プロトステガを重ねてアンカーを【かばう】ことで防御力を上乗せしたい。

【野生の勘】でタイミングを見て【カウンター】!
奴の攻撃力を流用し【捨て身の一撃】!
地獄の炎を纏わせた錨を【怪力】で叩きつけてやる!

(連携アドリブ歓迎)



●願いよ叶え
「とうとう親玉の真打ちって訳かい?」
 数宮・多喜(撃走サイキックライダー・f03004)は荒れ果てた玄室へ愛車と共に現れる。宇宙カブでなければこの路面は少々苦しかっただろう。僅かにマシンを浮かせて、アイドリングの乾いた音が空間に響き渡る。
『……そういう事だ、全てを喰らう為に』
 瞬間、赤と青の炎が迸る。亀裂の入った地面から噴き出る様に、稲妻の様な灼熱の壁が多喜を包み込んで――同時にスロットルを開いて高々と前輪を持ち上げた多喜は、そのまま鋭い角度でウームー目掛けて上昇する。
(この威容……気圧されないように気合を入れるしかないね)
 続けて五本の刃が続々と宙を舞い、風を切って多喜へと殺到した。一つ一つが戦艦の装甲じみた巨大な構造物、その刀身に着地してスロットル全開――狙いは血を流すウームーの首元!
『器用な真似を。だが』
 遅い。翳した左腕から衝撃が巻き起こり、カブごと多喜を玄室の壁に叩きつけた。振動が壁を揺らしてそのままずるりと落下――かろうじで炎の壁から逃れるも、既にマシンのフレームや機関には目に見える歪みが発生していた。戦意旺盛な多喜の願いを、望みを、祈りをそのまま自らの力に転じたウームーの超常は、その五体を戦術級兵器並みの強大な火力と暴力で覆っているのだった。
「って、痛いわぁ……流石にやるわね」
「おいおい、無茶しなさんな」
 倒れ込む多喜の下へふらりと長身のキマイラ――アルフレッド・モトロ(蒼炎のスティング・レイ・f03702)が、攻撃的な厳めしいマシンに跨り姿を現す。
「ああ、アリガト。でもね」
 それにしても凄い形状だ……じゃなくて、気遣うアルフレッドに目配せする多喜。手元にはサイドバッグから取り出したスパナが。その表情を見て多喜の狙いを汲み取ったアルフレッドが、口元をニヤリと歪めてウームーの前に立つ。ならば、やるべき事は一つだ。
「さあ、来いよ。願いを、望みを、祈りを喰らうんだろう?」
 不敵に堂々と声を上げるアルフレッド。戦いはまだ終わってはいない。

『これ、は……』
 驚愕したウームー。汲み取ったアルフレッドの澱みない純然たる思いは、これまでとはわけが違った。
「俺の願いは……故郷のお袋を安心させてやること!」
 遥か遠く離れた故郷に思いを馳せて、願うはただ一つの安寧。それこそ純然たる暖かな人の希望そのものだった。
『世界が、人々が皆お前の様であればな』
 不意にウームーの放つ威が削がれる。炎が、巨剣が、烈風を巻き起こした衝撃がはたと鳴りを潜めて、静寂が辺りを支配する。
『縋るモノは無いと……』
「応! 持つのはそう『確信』と『意志』さ!」
 ガンと地面に打ち付けたアルフレッドの錨の音が響いて、光のバリアがその鋼鉄を覆い尽くす。
『いいだろう。ならばその『誇り』ごと打ち砕いてくれる!』
「さあ勝負だ! 打ってこい!」
 瞬間、後脚で跳ねたウームーがアルフレッドへ猛然と突っ込んで、巨大な拳を真正面から振り抜いた。銅鑼を叩いた様な重い音が衝撃と共にアルフレッドを襲う。超常は防げたか――元よりその力は尋常では無い。だが耐えねば、起死回生の時は今では無い。
「待たせたね!」
 不意にアルフレッドの背後から威勢の良い声と甲高いエキゾーストが届く。多喜が己のマシンの修理を完了し、瞬く間に戦列へと復帰。ウームーの巨体をなぞる様に、けたたましい音を浴びせて俊敏に駆け巡る。
『チョロチョロと……何!』
 たかが小五月蠅い虫が一匹――その認識が甘かった。多喜のマシンの軌跡はさながら何かの魔方陣の様に光の跡を残して、その中に立つウームーの力を、さながら呪いの様に封じ込めたのだ。
『力が……貴様、何をした!?』
「何って、直したのよ。たった今――この迷宮を使ってね!」
 多喜の超常、それは戦場を使いマシンを修理する事で、その力を取り込み発揮される決死の切り札。見れば玄室の外壁から崩れ落ちたファーストダンジョンの素材が組み込まれ、ダンジョンが持つ超常――即ち大魔王の封印の力をマシンを通じて発揮したのだ。
「さあ、受けてみやがれ!」
『グオオ……馬鹿な、たった一人で』
「一人じゃねえよ」
 ウームーの手を離れた錨を担いで、アルフレッドが五体に超常の炎を発現させる。敵の力が封じられた今こそ好機。再びマシンに跨ってウームーの間合いへと飛び込んだ!
「ここを造った先人の思いが……たっぷりと注がれてるんだ」
「お前と一緒にするな、大魔王!」
 快音と猟兵の咆哮が木霊する。二体のマシンが交差した瞬間、捨て身の超常の獄炎が、封印の超常の突撃がウームーの脇腹を抉る様に潰し、燃やす。
『お、の、れぇぇぇぇぇッ!!!!!!』
 叫ぶウームーの声に呼ばれて、分身たる大魔王の影が二人の間へ立ち塞がる様に飛び込んだ。
「へっ、上等だ。相手が大魔王ならアタシのマシンは負けねえよ!」
「ああ、何度でも立ってやるよ。お前を倒すまで!」
 爆音が戦場を埋め尽くす。決死の願いは見事、ここに果たされた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ガーネット・グレイローズ
繭の迷宮ににわとり型ドローン「メカたまこEX」を放ち、まずは内部を撮影してルートを調査。映像情報は手元の端末に送信する。なるべく探索に時間をかけないよう気を付けて、繭に触れないよう〈念動力〉でどかしながら進もう。
繭と接触して子供の姿になるまで若返ったとしても、知識や技術まで失われることはないはずだ。【妖刀の導き】で武器を強化後〈戦闘知識〉と〈メカニック〉の知識を活用し、魔王の急所を探りながら攻撃パターンを把握。ブレイドウイングでガードしつつ、アカツキと躯丸の二刀流による〈2回攻撃〉を主体に攻める。若返りすぎて剣が振れなくなるまで小さくなったら、鋼糸を〈念動力〉で操作する攻撃に切り替えるぞ。



●血の涙を流せ
『猟兵、これ程とは……』
 まさか封印の力そのものを利用するとは。先の戦場から逃げ延びたウームーは玄室の更に奥へ。負った傷を癒さんと静かに目を閉じた刹那、頭上より赤い影が飛び掛かる。
「まだ終わってはいない。大魔王」
 ガーネット・グレイローズ(灰色の薔薇の血族・f01964)は闇に紛れて、玄室の奥へと先回りしていた。手にした赤い妖刀と白い太刀を振りまわし、居座るウームーの首筋――未だ血が流れるそこへ、必殺の刃を叩き込む。しかし。
『邪魔を……するなッ!』
 瞬間、ガーネットの視界が黄金に染まる。超常も黄金の繭――触れれば最悪、生まれたままの時まで姿形を戻されるという呪われし迷宮の罠だ。
「クッ……若返りの繭か」
 辛くも無事な地表に着地したガーネットは、すぐさま鶏型ドローンを展開して、複雑にうねる繭玉の中を虱潰しに調査する。ウームーが展開した黄金の繭はガーネットを取り囲む様に広がって、今もその数を増殖させ続けている。
「幸い情報はあるんだ。多層フラクタル――成程」
 事前に猟兵が流していた黄金の繭の構造を手元の端末で確認し、ドローンが仕入れた情報と合わせて照合する。うっそうと茂る繭玉の糸を念動力で抜けながら、出口の方へ――しかし、事はそれだけでは済まなかった。
「まさか、ここに!」
 不意に衝撃波がガーネットの身を襲う。回避は間に合わない……止むを得ん。念動力で強烈な衝撃を逸らしながら、ガーネットは残る威力をその身で受けて、繭玉の上で受け身を取った。

『ほう、抜けたか』
 黄金の繭玉にぽっかりと空いた出口――現れた真紅の美少女は捕らわれた時より僅かに幼さが残る顔つきで、ギラリとした双眸でウームーを睨みつける。
『長命種か。厄介な』
「アンタ程じゃあ無いよ。さあ」
 続きをやろうか。燃ゆる刀身は超常の煌きを放ち――地に満ちた邪気を我が物としてウームーに飛び掛かる。知識や経験まで無くしたわけじゃない。だが精神は、ギラギラと高揚する戦意は正に、若かりし頃の自身のモノ。降り掛かる五つの刃を強引に払い落とし、残像がウームーの巨体を取り囲めばそれを舐める様に横薙ぎの炎が襲い来る。そして残った本体に、ガーネットに降り掛かるは強烈な衝撃。
(連撃、炎、衝撃の繰返しか――ならば)
 片手に持った白刀を投げつけて衝撃を裂き、もう一本の妖刀を投げ放ちウームーを追撃する。傍目に見れば勝負を捨てたかの様に、されどガーネットの胸中には秘策があった。
『剣を捨てたか! 愚かな!』
「捨てた? 違うな!」
 不意にひゅんと風を切る音が響く。瞬間、真っ直ぐ飛んでいた二振りの刃がその向きを垂直に変えて、天を貫く勢いで上昇した。
「持ち替えただけよ、こんな風に!」
 いつの間にか、ガーネットの手には鋼糸の束が。そして第三の刃、外套に隠した流体金属の鋭い刃がビュンと伸びて立ち塞がる五つの巨剣を凌ぎ切る。
『ぬぅ……小癪な……』
 投げ放たれた二本の刀は念動力で制御した鋼糸が絡め取り、自在な動きを見せている。鋼糸を通じて流れるガーネットの超常の力が刃をギラつかせて、瞬く間にウームーの巨体を貫いた。
『貴様、最初から!』
「そうよ。この身体でもこうすれば振れるからね!」
 一閃――四足獣めいた巨体から夥しい量の血が流れ落ちる。しかしここまで――若返りの呪いがこれ以上自分を蝕む前に、ガーネットは三つの刃を己に戻し、闇の中へ姿を隠す。
『こうも、やるとはな……!』
 ぼたぼたと流れ落ちる血を見やり、ウームーは心底から愉悦の笑みを浮かべる。
 矢張り闘争は良いものだ、と。

大成功 🔵​🔵​🔵​

白皇・尊
妻の鉋(f01859)と共闘

「大魔王といえど、僕ら夫婦の絆には勝てませんよ♡」

☆先制対策
まず『オーラ防御・かばう・拠点防御』の力により【物理、術、呪いなどあらゆる攻撃から身を守る強固な防御結界を張る符術《守護法陣》】を展開して自身に守護結界を付与、これにより繭との接触を避けます。
仮に触れてしまっても、僕はかなりの長寿なので上手く最盛期まで若返れば逆にチャンスなはず…!
「タイミングを合わせて…行きます!」
鉋と連携しつつ結界の守りを頼りに斬り込み、【フォックスファイア】で繭を『なぎ払い』、霊剣で魔王を『串刺し』にして『生命力を吸収』し尽くし討伐します。

※アドリブ歓迎です♡


喰龍・鉋
旦那の尊(f12369)と共闘 *アドリブ歓迎

ボクの望み、ボク自身の望みは…これ以上の戦闘を望まないこと
お前が戦場を望むなら、ボクはその戦場を望まない事が望み!
黒剣大五郎をまず投げ捨てる、ボク自身は戦闘を放棄する
攻撃もかわして防御もする、ボクの望みに反するから
だから、大五郎で「動きを止める」こともボクの望みに反さない
隙は一瞬で構わない【指定UC】を発動、これは攻撃ではなく拘束
お前をこれ以上戦わせないための拘束
床を爆破してその破片ごと魔王をつなぎ止める!

後は頼んだよ、尊!



●わたしが誰より一番
 滴る血がようやく止まった頃、ウームーの前に再び猟兵が姿を現す。
「大魔王といえど、僕ら夫婦の絆には勝てませんよ♡」
『夫婦か。惚気るとは戦場で暢気な……』
 二人の猟兵――白皇・尊(魔性の仙狐・f12369)と喰龍・鉋(楽天家の呪われた黒騎士・f01859)は、互いの手を繋いで屹然と対峙する。
『ならば試練を与えよう、大魔王らしくな』
 ニタリとウームーが口元を歪ませた刹那、不意に空間を黄金の繭玉が埋め尽くす。咄嗟に鉋を突き飛ばして、自らその檻へと捕らわれた尊。しかし二人とも悲鳴すら上げずに、取り残された鉋が再びウームーを睨みつける。
『さて、絆は断たれた。どうする?』
 滲み出る悪意が場を支配する。しかし臆する事無く、鉋は一歩前に出た。
「大丈夫。尊がこんな事でやられるなんて、思ってないから」
『ほう?』
 さも人間らしい答えに薄く笑みを零すウームー。まるで懐かしい過去を思い出すかの様に、そうして散った魂を憐れむ様に。
「信じてるから。それにボクの望み、ボク自身の望みは……これ以上の戦闘を望まないこと」
 手にした荒々しい黒剣を放り投げ、身一つとなった鉋が一歩、一歩ウームーの方へにじり寄る。その巨体が生み出す影に飲み込まれる様に、それでも鉋は凛とした声で己が望みを唱えながら。
「お前が戦場を望むなら、ボクはその戦場を望まない事が望み!」
 戦いを捨てる、では無い。戦いを止める為に来たのだと頑なに言い放つ。迷い一つ無く覚悟を決めた表情で、すっと巨体を見上げながら。
『――気は確かなようだな。ならば逝くがよい』
 もう聞き飽きた、と言わんばかりに化物じみた前足を上げて鉋を踏み潰さんと迫るウームー。その凄まじき一撃を両腕で受け止めて、それでも反撃せずに耐えきる鉋。ウームーの体躯を支えながら、その超重が足元に亀裂を走らせる。
「戦いを止める為だ。何も、間違っちゃいないよ!」
『詭弁を――だが!』
 もう一撃、この黒い少女を黙らせる為に大きく前脚を振り上げたウームーの腹部を、突如凄まじき量の炎が迎え撃つ!
「人の妻に手を出さないで貰いたいな」
 それは黄金の繭を脱し、幾何か若さを取り戻した尊の超常だった。

「大したものです。この呪い――あるいはこれ自体が、大魔王に掛けられていたのでしょうか」
 産み直しの超常、触れれば肉体が急速に若返るというその呪いは、しかし尊にしてみればそこまで恐れる程の事ではない。
「まあ、長く生きましたからね。それでも」
 やり直せるとしても結果は変わらない。こんな、子供じみた願望の様な荒唐無稽は、妖狐の長たる自身にしてみれば児戯にも等しい。ふわりと、翳した護符が己の周囲を包み込んで、うぞうぞと蠢く黄金の繭玉に振れ過ぎない様注意しながら歩みを進めれば、出口に自ずと近付いていく。
「術の力の流れが分かれば、ね」
 レーダーの様に張り巡らせた護符が尊を導いた。多少動きが軽い――意図せず触れてしまったらしいが、それはそれ。
「さて出ますか――おや」
 視線の先、尊の目に入ったのは今にもウームーに踏み付けられそうな妻の、鉋の姿。そうはさせまいと、狐火の超常がぼうと燃え上り、寄り固まって巨大な火球を形成した。

『貴様も、長命種!』
「タイミングを合わせて……行きます!」
 鉋に目配せして地を駆ける尊。触れれば即座に若返らされる繭とは言え、長命種たる尊にとっては十分にやり直しが効く呪いの類だった。周囲をくるくると舞う護符が、張り巡らせた結界が無ければもう少し若く戻されていたかもしれないが、今の尊は十分――全盛期の威勢を誇る十全な状態だ。
「後は頼んだよ、尊!」
 そして鉋が超常を――突如ウームーの影が、その中に放り投げられた黒剣が姿を変えて、音よりも早くウームーの下腹部を貫く。そのまま爆ぜた刀身が呪いの縛鎖に形を変えて、床ごとウームーの動きを封じれば――戦いを止める為に仕込んだ刃が、立ち戻った尊に必殺の機会を齎す。
「動きが軽い、ありがとう大魔王」
『お、のれ……!』
 集束した狐火が背後の繭を燃え上がらせて、その威を借りた巨大な炎の槍を形成――ごう、と空間を破って標本の様に固定されたウームーを容易く貫き、妖狐の呪いが奪われた生気の尽くを取り戻す。その一撃を喰らって、ウームーは成す術も無く立ったまま動きを止めた。
『これで、勝ったと、思うな……よ!』
 突如、暗がりより無数の衝撃が二人を襲う。それは大魔王の影達。五つの巨大な分身が、二人をウームーから引き剥がさんと間に入って立ち塞がった。
「やっぱりモテるね、鉋 」
「でもボクの一番は尊だから、ね」
 合流した二人は惚気ながら再び得物を構える。相手は強大、されど自分達の愛は無限大。だから、この愛があれば敗れぬ敵など無い。不敵な笑みを湛えて、白と黒の番は再び戦禍に身を投じた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

トリテレイア・ゼロナイン
白銀の鎧に武器に盾、その威風堂々で清廉潔白なる姿
「御伽の騎士のようでありたい」
私の理想…永久に叶わぬ私の原初の願いを喰らったのですね

…光学センサーの●情報収集で攻撃の際に動く鎧の可動部を●見切り、そこへ●怪力で儀礼剣を●投擲
剣を噛ませ動きを制限させ勢いを殺し●盾受けで防御し受け流し被害を最小限に

弾き飛ばされた空中でワイヤアンカーを射出し●ロープワークで巻き取り魔王に取り付き●騎乗しUCを甲冑の継ぎ目に発射
削岩弾を遠隔●操縦し身体奥深くへ移動
フォーミュラの強度を考慮し周辺被害許容限度最大規模で起爆

紛い物でも、無様でも、叶わぬとしても
全ての善き人々の為…
願いも望みも祈りも纏めて吹き飛ばしましょう!


ヘスティア・イクテュス
敵対者の願い…望み……
ねぇ、魔王…
貴方キンキラの貴金属製の身体とか宝石製の身体にならないかしら!!

ほら、倒すなら高いドロップの方が…げふんげふん


当然望みが叶ったら重量も増えて攻撃力、防御力も増えるし状態異常も増えるかもね…
まぁけれど…速度は増えないわよね?
むしろ重量が増える関係で遅くなるかも?

ティターニア、フルドライブ!【空中戦】
当たらなければどうということは!

ミスティルテインのビームならそも硬くなったところでだし…【鎧無視攻撃】

うん、相手は強化される、わたしは倒しやすくしかも報酬が大きい
WINWINよね?
じゃあ採集決戦を始めましょうか!


殺したかっただけで死んでほしくはなかった…



●祈ると折るは似ている
「御伽の騎士のようでありたい」
 私の理想……永久に叶わぬ私の原初の願い。メモリに残る行動規範は古に刻まれた祈りの様な存在。トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)の胸中に掲げられた純粋な望みは今、形となった。
「夢いっぱい目いっぱいの宝石が欲しい」
 それは己のアイデンティティ、己の願い、父の様になりたいと願った幼い日々の望み。ヘスティア・イクテュス(SkyFish団船長・f04572)の脳裏を過る様々な欲望は今、形となった。
『この身体、貴様たちが望んだ結果だ』
 先の戦いで負った傷を猟兵の持つ強き望みを形に変えて、ウームーは戦場に踊り立つ。白銀の鎧に武器に盾、威風堂々で清廉潔白なる姿、更にその上を豪著な金銀財宝で飾り立てた風格は正に王者のそれ。
「ええ」
 最早貫かれた跡も無く、絶対無敵の煌びやかな重武装が、一歩足を前に出すだけで大地を震わせる。その挙動を見やり、トリテレイアに緊張が走る。
「ドロップするならその方がいい、でしょ?」
『はい……クエーサービーストに比べれば、この位は』
 トリテレイアへヘスティアがおどければ、サポートAIたる『アベル』がより強化されたウームーを解析し、厳かに告げる。
『お嬢様、トリテレイア様、クエーサービースト級を遥かに超える――』
 そこから先はいらない。二人は分かっていた。何故ならば二人が望んだ姿そのもの、やるべき事はとうに決まっているのだ。互いのスラスターが青白い噴煙を吐いて、轟音と共に戦端が開かれた。玄室を揺らす超重の咆哮が、猟兵を襲う津波の様な衝撃波となって迫り来る。

『フン……漲るぞ、力が!』
 その軌道を見切って、妖精の様に軽やかな舞で尽くを回避。背負ったビームライフル――『ミスティルティン』を諸手で構えて、迎撃の弾幕を張るヘスティア。地上では地面を滑る様に突進しながら、トリテレイアが大盾を構えて衝撃を凌ぐ。
『そうだ、闘争とは、戦いとは、こうでなくてはッ!』
『お嬢様、正面180度、衝撃来ます』
「分かってるわよ! マニューバをオート、対艦戦闘!」
 不可視の攻撃をランダムな機動で躱しながら、衝撃の発生源たる光輪目掛けてビームを乱射するヘスティア。戦艦の対空砲火を潰す様に、一つずつその威を削ぎながらウームーへ肉薄する。耳元ではアベルがつぶさに攻撃予測と回避パターンをがなり立てて、背負ったティターニアが妖精の羽根の様に噴射炎を広げる。手慣れた強襲にウームーは一層、火線をヘスティアへと集束させる。
「速射で潰してくわよ! トリテレイア!」
「大丈夫です、しかし流石の大魔王……」
 叫ぶヘスティアの声を聞き、攻撃を凌ぐトリテレイアが長剣をウームーへ投げ放つ。対空迎撃に気を取られている隙に、可動部へ己が愛剣を捻じ込めば動きを封じられる――それに。
「やはり、一筋縄では難しそうですね」
『どうした、騎士よ?』
 足掻くトリテレイアを見やり、不敵な声色でウームーが語り掛ける。頭上の五月蠅い小娘は衝撃で追い払えるが、足元の男は未だウームーへ取り付かんと勢いを止める気配が無い。
「いえ、どうもこうも」
 剣が可動部に入り込んだとはいえ片脚、残るもう片方を猛然と振り上げて蒼銀の巨体を弾き飛ばす。その刹那、トリテレイアが射出した数本のワイヤアンカーがウームーの全身を抱き止める様に絡みつく。
「こう現実的では、些か趣に欠けるというか」
『何だと……貴様!』
 ギリギリと音を立てて縛られるウームー。只のワイヤーでは無い。自重を支え且つ、巨大な構造物すら牽引出来る物理的強度も抜群のワイヤーだ。更に飛ばされた空中で、トリテレイアは大質量の大筒を――超常の切り札を担ぎ出す。
「元来、資源採掘用の道具ですからね」
「じゃあ――採集決戦を始めましょうか!」
『貴様ら、何と……』
 それは小惑星爆砕用特殊削岩弾発射装置。大魔王はおろか、宇宙を跋扈する超生命体すら破砕する、禁断の武装。合わせてヘスティアも超常で研ぎ澄ませた武装を――ミスティルティンのモードを切り替え、仕上げの準備に入る。
「紛い物でも、無様でも、叶わぬとしても――全ての善き人々の為」
 照準がウームーの巨体、白銀の鎧に守られた下腹部に狙いを定めて。カチカチとセーフティが外れる音と共に、巨体を封じるワイヤーが波打つ甲高い音が玄室に響き渡る。
「願いも望みも祈りも、纏めて吹き飛ばしましょう!」
『速射モード切替、精密狙撃モード』
「空いた穴から根こそぎ掻っ捌くわ! シュート!」
 そして爆音と共に星すら砕く超常の極太杭状爆弾が発射され、後を追う細長い光条がウームーに吸い込まれる様に放たれて――世界が白く染まった。

「さあ皆、回収してとっととずらかるわよ!」
『重量オーバーです』
 二人の策は『己が望みで超強化されたウームーの自重を増やし、身動きを取れなくする』事だった。その副産物、飛び散った金銀宝石を端末に拾わせて、自身は衝撃で機能停止したトリテレイアを無理矢理抱えたまま空中を駆けていく。
「流石に死んでほしくはなかった……」
「生きてます。しかし」
 超常の衝撃で駆動部が一時的にロックされただけです、と呟くトリテレイア。しかし油断は出来ない。全身を文字通り吹き飛ばされたとはいえ、ウームーの生体反応はトリテレイアのセンサから消えてはいなかった。
「大魔王も、また」
 ウームーも間違いなく生きている。だがその威の大半は削ぎ落した。しかし手負いで歯向かえる相手では無いし、まだ戦いは終わっていない。ゆらりと入れ違う様に訪れた影に目配せし、騎士と海賊は玄室を後にする。律儀に願いを叶えた大魔王に、ほんの少しだけ同情して。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

鵜飼・章
恐れる?僕がきみを?
面白い冗談だね
僕はもう三回きみに【言いくるめ】で勝っているんだよ

恐れず全員と戦う
狙いは第一第二第五形態
あまりの退屈さで第一形態を発狂させた魔笛を吹き
余裕の【恐怖】と魔王さえ恐れぬ【優しさ】の包容力を同時に放出
【催眠術】をかける

僕は暴力を恐れない
裁定さえ赦し受け入れる
慈愛の裏側は万物への諦観
希望も恐れも存在しない底の無い虚ろ
服従しろ
鵜飼章は『命ある無』だ

UC【模範解答】で優しさと恐怖を増強
笛を通した【精神攻撃】で勝利済の三体を操り第三第四形態を攻撃
力を見せ【コミュ力】で五体とも仲間にする

僕が誰か知ってる?
魔物使い《ビーストマスター》さ

仲間の魔王に第六形態を攻撃させ袋叩きにする



●まものフレンズ
「随分な姿だね、大魔王」
 ずたずたに引き裂かれた五体を急速に治癒するウームーの前に、生気の無い男がゆらりと現れる。漆黒に包んだその姿はまるで闇そのもの。
『人間、猟兵め……』
 ずらりと、己が影を――五つの大魔王の分身がその男を取り囲む様に現れて、その威を振りかざさんと力を蓄えた。
『貴様の相手をしている暇など無い。恐れを抱いて――消えよ』
「恐れる? 僕がきみを?」
 面白い冗談だね。その声色には嘲りも怒りも無い。あるのは自信と、虚無。
「僕はもう三回きみに『言いくるめ』で勝っているんだよ」
 作り笑いを浮かべて、鵜飼・章(シュレディンガーの鵺・f03255)はすっと魔笛を取り出した。

「僕は暴力を恐れない」
 ゆらりと、オカリナを口元に運んで。巨大な影が――機械獣じみたアウルムが、不揃いの歯が並ぶ大口を開けて章を威嚇する。
「裁定さえ赦し、受け入れる」
 視線の先、見据えるのはウームー。蹂躙を望む悪辣な表情を覗かせたそれを一瞥し、ニヤリと笑うレガリスと視線が交わる。
「慈愛の裏側は万物への諦観――希望も恐れも存在しない底の無い虚ろ」
 静かに指孔を塞ぎながらズルズルと足音を響かせたドミヌスの厳めしい姿を見上げ、吹き口にそっと口を付けて――静かに告げる。
「服従しろ」
 そして音色が響いた。静謐にして暖かく、深淵へ導く様な底なしの虚の音色が。

『貴様、何をした!?』
 響く音色が、三体の巨大な影の精神を激しく掻き乱して、先ずアウルムが目の前のセレブラムに激しく殴りかかった。突然の仲間の狂乱に、吹き飛ばされたセレブラムが反撃の呪詛の塊を投げ放ち、辺りが汚泥の様な闇に塗り潰される。
 続いてレガリスが獅子の牙をラクリマへ向けて、柔らかな魔女の肉を貪るように食い千切る。章に向けて飛び掛からんとした獣人の群れが反転し、主を守らんと荒れ狂うレガリスへ殺到し巨大な獣の身体を埋め尽くした。
 更にドミヌスが諸手をウームーへ突き出して、背後から続々と新たなドミヌスが姿を現し、ウームーへとにじり寄る。
「僕が誰か知ってる?」
 命ある無。人の振りをしている魔物。そして。
「――魔物使い《ビーストマスター》さ」
 魔笛が奏でる魔性の音色は既に征した三つの魔王を自在に操り、その牙を同胞へと向けたのだ。力をもって力を制す……音色が途切れた時、玄室には屍と化した魔王だった骸の山だけが残されて、それを背後にウームーが戦慄の表情で章を見下ろした。
『恐るべきは人間、か』
 再構築した五つの刃を章へ向けて、憤怒の形相で章を睨む。
「そんな顔をされても、恐くないよ」
 うぞりと、屍が蠢く。否――墜ちても魔王、再び活力を取り戻したそれぞれが一斉に、ウームーに覆いかぶさる様に襲い掛かる。全て章の魔性に囚われた、叛逆の徒として。
『恐怖、我が貴様にそれを感じていると……!』
 瞬間、真紅の宝玉が光を放ち――後に残されたのは串刺しにされた魔王達の姿のみ。それでも真っ赤な血の跡が――ウームーと刺し違えた跡が、大魔王を蹂躙したという確かな証拠を残す。
「流石に引き際は心得ているみたいだね」
 底無しの恐れが呟く。そして闇に包まれた玄室に、静寂が戻った。

大成功 🔵​🔵​🔵​

比良坂・逢瀬
【大魔女ご一行】

此れが大魔王の最終形態ですか。
新陰流剣士、比良坂逢瀬。全霊を賭して挑みます。

私は剣士として強敵との闘いの中でこそ研ぎ澄まされる<第六感>により大魔王の攻撃の気配を過たず察知し、その挙動の起こりを<見切り>ます。

常に脚を止めずに<ダッシュ>と<ジャンプ>を織り交ぜた高速の軌道で戦場を縦横無尽に駆け抜けて敵に狙いを定めまさせません。

大魔王は私の心の願いや望みで自身を強化する様ですね。

しかし私の得意とする業は影を斬る事で実体を断つ異能の太刀《影ヲ斬ル》。

その肉体が如何に強壮に、そして堅固に変貌し鎧われようとも地に落ちる影は変わりませんよ。

其の生命、一刀のもとに両断します。


イデアール・モラクス
【大魔女ご一行】
フン、ようやく姿を見せたか大魔王…ならば我らの本気で貴様を滅ぼしてやる

・先制対策〜攻撃
不老の肉体を得て遥かな時を生きる私に若返りが効くとも思えぬが、迷路構築と同時に【全力魔法・高速詠唱】にて体表に炎の魔導結界を纏い、繭を『焼却』しつつ防いで直接接触を避ける。
「私に触れられるのは私が許した者だけだ」
そしてUC【魔導覚醒】を行使、結界を強化し空中を自由自在の機動で繭との接触を避けながら次々と全『属性攻撃』魔法を無詠唱『乱れ撃ち』、圧倒的弾幕の『範囲攻撃』と成して『一斉発射・制圧射撃』を仕掛け、敵の攻撃を相殺『武器受け』しながら大魔王を『なぎ払い・蹂躙』。
「我らの力に屈せよ大魔王!」


六連・栄
【大魔女ご一行】
はぁん、これが最終形態?
…大魔王ってんだからもうちょっとヤバい格好してると思ったんだけど、この様子なら「アウルム・アンティーカ」の方が余程怖かったもんだ
で、僕が恐れる大魔王形態が現れる、と

ところで、僕がなんで第一形態が怖いかって言ったっけ?

――僕ァアイツだけはどうにも好きになれなくてね
見てただけだけど、金属質でツルっとした外見には生き物っぽさをまるで感じない!
でもまぁお陰で「怖くとも、倒すことには躊躇せずに済む」んだよなぁ!

SRC、ロード
大人になった僕はちょっとばかり手強いぜ?
強靭さを増した肉体で前衛を務めよう
逢瀬やイデアールが、きっちり決めきれるようなサポートをね!

アドリブ可



●ウィッチ&ブレイド&バレット
「此れが大魔王の最終形態ですか……」
 そこは玄室の奥、大魔王所縁の品々が眠る宝物庫の様な一室。しかし何もかも悠久の年月が、込められた封印が悪しき産物の諸々を朽ちさせた。比良坂・逢瀬(影斬の剣豪・f18129)の目の前には朽ちた宝物に囲まれて、傷を癒す大魔王――ウームーの姿が見える。どう見ても満身創痍だが、それでも敵は強大な大魔王。スラリと愛刀を抜き放ち、正眼で鎮座するウームーと相対する。
「新陰流剣士、比良坂逢瀬。全霊を賭して挑みます」
 凛とした掛け声。瞬間、神速の足捌きが逢瀬の姿を闇に溶かす。
『全霊か――いいだろう』
 ニヤリと口元を歪めて、大魔王が雄々しく立ち上がる。既に全身の傷は無い――それこそが大魔王の超常、希望を喰らい己の糧とする恐るべき呪法だ。
『見切ろうとしたか、笑止』
 ガキンと、鋼鉄がぶつかって火花を散らす。一振りの巨剣がいつの間にか飛び出して、逢瀬の行く手を阻んでいたのだ。
『お前の様な使い手はごまんと居た。その意気や良し……だが』
 己が感に従って大魔王の太刀筋を見切る――筈だった。しかし。
「早い……違う、この動き!」
 大魔王は微動だにしない。にも拘らず機先を制された。魔術的な迎撃でもないそれは恐らく逢瀬と同じ、絶え間ない鍛錬が齎した達人の境地。
『我より先の先を取ろうなど、千年早い』
「上手い事言ったつもりか、え?」
 不意に外連味のある声が一室に響く。それと同時に重たい炸裂音が響き渡り、寸での所で飛ばされた弾丸をウームーの巨剣が再び遮る。
「はぁん、これが最終形態?」
 影より現れたのは六連・栄(F-666・f17087)。人の成りをした生物兵器――ニヒルな笑みを浮かべて、重々しいリボルバーの銃口をウームーへ向けたまま言葉を続ける。
「……大魔王ってんだからもうちょっとヤバい格好してると思ったんだけど、この様子なら『アウルム・アンティーカ』の方が余程怖かったもんだ」
 その一言が第二の超常――己が影たる魔王の分身が、二人の前に実体を伴い現れる。
『――間に合ったか、行け』
 ギチギチと歯車を鳴らして、巨大な髑髏の機械獣――アウルムが空を舞う。しかし。
「フン、ようやく姿を見せたと思えば……」
 出会い頭に何者かが放った光球が、アウルムの全身を舐める様に焼き焦がす。それでも尚動き回る姿は魔王の風情か。その姿を一瞥して、つまらなそうに言葉を投げる女が一人。
「既に倒された小物をけしかけるとは。格が知れるな、大魔王よ」
 音も無く現れた暴虐の魔女、イデアール・モラクス(暴虐の魔女・f04845)が全身に魔力をしたためてウームーと対峙する。
『小癪な、魔女如きが――』
 瞬間、黄金の繭玉がイデアールを包み込む。触れれば産み直しまで肉体が遡るという、恐るべき第三の超常。しかし。
「時戻しの呪法か。愚かな」
 内側よりイデアールの炎が繭玉を焼き尽くして――それでも魔女を封じ込めんと蔦の様に黄金の糸を伸ばす呪いの繭を、片っ端から燃やし続ける。
『貴様もまた長命種か!』
「私に触れられるのは私が許した者だけだ」
 その姿に変わり無く、繭玉の咄嗟の一撃が掠めようとイデアールの豊満な肉体に大きな影響は無かった。しかしその無礼な振舞いはイデアールの心に火を点ける。
『許しだと? ほざくな魔女め。ラクリマの中身と同じにしてやろうか』
「ならば我らの本気で貴様を滅ぼしてやる。お仕置きの時間だ」
 炎を背後に胸を張って威圧するイデアールの目には、確かな怒りが宿っていた。

「ところで、僕がなんで第一形態が怖いかって言ったっけ?」
 一方、焼かれたまま飛び回るアウルムに追われ、反撃の弾丸を撒きながら駆ける栄が、顔色一つ変えないで魔王の分身へ語り掛ける。
「――僕ァオマエだけはどうにも好きになれなくてね。見てただけだけど、金属質でツルっとした外見には生き物っぽさをまるで感じない!」
 生を感じない。生物兵器として、生命の箱舟として産み落とされた栄にとって、その存在は忌むべきモノ――ひたすらに命を脅かすだけの無生物が、存在していい訳が無い。
「でもまぁお陰で『怖くとも、倒すことには躊躇せずに済む』んだよなぁ!」
 ガチャリ、と撃ち尽くしたリボルバーに弾丸を装填しながら、己が身体に刻まれたプログラムを起動する。SRC、ロード――それが栄の超常、肉体を戦いに適した大人の姿に。己が生命を代償に発現したその力は、瞬く間に栄を逞しい肉体へと成長させる。そのまま足を止めて、飛び掛かってきたアウルムへ裏拳を。ブンと勢いをもって振られた拳が――超硬のガントレットが火花を散らして、機械めいたアウルムの巨体を壁に叩きつけた。
「――大人になった僕はちょっとばかり手強いぜ?」
「手伝いましょう。先ずはこいつを」
 傍らにはいつの間にか逢瀬が。手にした太刀が照明の光を受けて妖しげに煌き、鋭い切っ先をアウルムへ向けて。鎌首をもたげて置き上がったアウルムは最早、逃げる事など許されない。刹那、二つの影が風より早くアウルムの首を、銅を貫いて――魔王だった骸はそのまま闇の中へと溶け消えていった。

「どうした? そんな下手糞な呪いで私をどうにか出来るとでも……」
 続々と行く手を遮る黄金の繭を片っ端から焼き払うイデアール。炎の結界を張り巡らせて、更に己の高まる魔力が炎、氷、雷――ありとあらゆる属性の形を成して、バチバチと極彩色の奔流が空間を染め上げた。
「思ったか! 老害!」
『吠えるな小娘、この程度――』
 放たれた魔力の奔流が横薙ぎに全ての繭を焼き払い、千切り飛ばして爆ぜさせる。しかし力を高めたウームーにとって、ここまでは十分に予測の範疇。背後の光輪から凄まじい量のエネルギー衝撃波が、爆音と共にイデアールを襲った。
『遊びの内にも入らん!』
 舞い上がった土埃が視界を覆い尽くして、紫電と幾何かの炎が宙を舞う。変化した大気組成がイオン臭を放って、その奥に蠢く影が――暴虐の魔女が張り巡らせた結界に囲まれて、更なる威を放たんと極大のエネルギー光球を、しつこく殺到する黄金の繭を焼き払いながら徐々に肥大化させていく。そして。
『何ッ!? その姿……』
 イデアールの周囲をルーンが湧き上がり、滝の様に包み込む。それぞれが幾戦幾万の詠唱に等しい魔力の発露。ふわりと空中に浮かんだイデアールは超常を――己の本気の姿を晒して、無数の魔方陣が砲門の様にウームーを包み込んで展開した。
「言ったろう。仕置きの時間だと」
 瞬間、巨大な魔方陣がイデアールの頭上に現れる。それに吸い込まれる様に無数の魔力の塊が光球より出でて、更にウームーを取り囲む魔法陣から一斉に吐き出された。
「我らの力に屈せよ大魔王!」
 全方位同時斉射魔力砲――これを逃れる事など出来ようか。盾代わりに展開した翼も、剣も、何もかもを埋め尽くし、焼き尽くし、蹂躙する暴力的な魔力の奔流は止まる事を知らない。
『まだだ、おのれ――!』
「そう、まだなんだよ」
 隙だらけとなった巨体に栄がグレネードを投げながら、リボルバーを撃ち続ける。魔法と物理の二重奏、更にもう一人の猟兵が音も無く忍び寄り切先をウームーへと向ける。
『小物が邪魔をするな!』
「誰が小物ですか」
 魔力と鉛玉を掻い潜って辿り着いたウームーの懐で、逢瀬が太刀を大上段に掲げた。
「先程は後れを取りました。ですが――」
 狙うべきは巨大な影。これならば先を取らずとも、確実に両断出来る。
「既に一度死んだも同然……これ以上何を恐れるでしょう」
 それは超常が断ち切る必殺の刃。影を斬る事で実態を斬る太刀の業。肉体が如何に強壮に、そして堅固に変貌し鎧われようとも地に落ちる影は変わらない。故に。
「其の生命、一刀のもとに両断します」
 一閃、巨体の四足獣めいた脇腹から鮮血が吹き上がる。イデアールの猛攻が傷口を焼き尽くし、栄のグレネードが更にその傷口を押し広げる。
「――タイムリミットだ、喰わせていい寿命はここまで!」
「フフ、フハハハ……燃えているぞ、あの大魔王!」
 三人の連携が致命傷を負わせれば、止めどなく溢れる鮮血がその足元に沼の様な血溜まりを造って……それを見やり、猟兵達は闇に紛れて帰還する。
『猟兵、め……!』
 ぼたぼたと滴る血液がその威力を物語る。五体を燃やしながらウームーは吼えた。これ以上の暴虐を許してなるものかと。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

陽向・理玖
あんたを封じた人たちは
きっといつかあんたが倒される事を願ってた

俺の願いはその人たちの願い
俺の望みはその人たちの望み
その人たちの祈りを背負ってんだ

だからいくらあんたが強くなろうが
負けらんねぇッ…!

龍珠弾いて握り締めドライバーにセット
変身ッ!
衝撃波飛ばしUC起動
龍爪装着
スピード増しダッシュで間合い詰めグラップル
残像纏いフェイント交え上下に揺さぶり攻撃当てる
地上空自在に駆け
ヒットアンドアウェイ

敵の攻撃よく見て見切り
当たるくらいなら突っ込み武器受けでいなしカウンター
傷は激痛耐性で耐える

あんたの喰らった希望はその程度か
その程度じゃ俺はやれねぇ
俺はヒーローだ
俺こそが希望だッ!
吹き飛ばし追い打ち
拳の乱れ撃ち


ソラスティベル・グラスラン
そのオーダー、承りました!
我ら『勇者』に退路無し、進むは前進、勝利のみ
勝って帰りましょう、善き物語を手土産に
これが我らの『英雄譚』です!!

オーラ防御・盾受けで守り、攻撃を見切り怪力で受け流す
第六感で最善の生存手段を察知し継戦を
只管に耐え延びて前進!己の大斧を叩き込む為に!

願いも、望みも、祈りも不要
それら『希望』は弱き民のもの

『勇者』とは勝利を願われ、望まれ、祈られる者
逆は無く、その全てに応え立ち向かう者

不確かな願いなど抱くに能わず!真の力は元より己の中にありッ!!
【勇気】を剣に!
【気合い】の鎧を!
【根性】を支えに立ち上がるのです!

これがわたしの、【勇者理論】―――ッ!!!



●蒼龍烈牙
 グリモア猟兵は言った。勝利して生還せよ――当たり前の様だが困難が伴うミッション。だからこそ、生命を賭けて立ち向かわなければならない時だと、改めて己を奮い立たせる。
「そのオーダー、承りました!」
 胸に秘めるは勇者の心。ソラスティベル・グラスラン(暁と空の勇者・f05892)は蒼い大斧を担いで、意気揚々と玄室の奥へ進んでいく。
「我ら『勇者』に退路無し、進むは前進、勝利のみ」
 橙の髪を揺らして、もう一人同じ髪色の少年が――陽向・理玖(夏疾風・f22773)が足を並べる。
「勝って帰りましょう、善き物語を手土産に――これが我らの『英雄譚』です!!」
「ああ。負けらんねえよな……この戦いは」
 辿り着いた部屋の先、強大な大魔王ウームー・ダブルートゥは五体を焼き焦がしたまま、怒りに打ち震え猟兵を待ち望んでいた。

『おのれ、まだ邪魔立てをするかッ!』
 先の戦いで負った傷は残ったまま、それでも出血は止まり力も幾何か戻って来た。
「ああ、幾らでもしてやるよ」
 おもむろに理玖が一歩前へ。片手に龍珠を握りしめ、バックルのドライバーを起動する。
『邪魔はさせない! 絶対に、誰にもだッ!』
 瞬間、ウームーを焼き焦がす炎が消えて、その全身が禍々しい輝きで満たされた――かの様に見えた。
『何故だ、何故願いが無いのだ。貴様は、貴様らは!?』
 僅か一瞬、光は消えて元の通り――本来ならば猟兵達の希望を喰らい、己が身を癒すはずだった。なのに、何も起こらない。
「願いも、望みも、祈りも不要。それら『希望』は弱き民のもの」
「あんたを封じた人たちは、きっといつかあんたが倒される事を願ってた」
 たじろぐウームーへ二人の猟兵が畳みかける。橙の髪を揺らしながら一歩ずつ、地面を踏みしめる様に近付いて。
「『勇者』とは勝利を願われ、望まれ、祈られる者。逆は無く、その全てに応え立ち向かう者」
「俺の願いはその人たちの願い、俺の望みはその人たちの望み。その人たちの祈りを背負ってんだ」
 それぞれの得物を構えて、横並びに進む理玖とソラスティベル。眼差しに宿る強き意志は勇気と覚悟の証。
「不確かな願いなど抱くに能わず! 真の力は元より己の中にありッ!!」
 ガツンと大斧を地面に突き立てて、ソラスティベルが声高らかに宣言する。
「だからいくらあんたが強くなろうが――負けらんねぇッ……!」
 ガキンとバックルに光が灯り、理玖が声高らかに変身する。
「これがわたしの、勇者理論―――ッ!!!」
「俺はヒーローだ。俺こそが希望だッ!!!」
 碧光が二人を包み込んで、解放された超常が激しく渦を巻く。蒼き龍の装甲に包まれた理玖と、蒼き大斧を担いだソラスティベルが共に、ウームーへ一斉に躍り掛かった!

『己自身を希望として、願いを受ける器として語るだと……!』
 怒りに燃えたまま、望む結果が得られなかったウームーが再び激高する。
『そんな希望、喰らい尽くしてくれる――!』
 そして背負った光輪からエネルギー衝撃波を放ち、青と赤の炎の渦が舐める様に地面をなぞる。容赦の無い連撃がソラスティベルと理玖に襲い掛かった。
「効きません、そんな攻撃!」
 しかし恐るるに足らず。光のバリアと大斧でその衝撃を、炎を受け止めて、ソラスティベルは些かも歩みを止める事は無い。
「あんたの喰らった希望はその程度か?」
 両腕から超硬の龍の爪を生やした理玖が飛翔して、絶え間なく放たれる攻撃を掻い潜りながら前へ進む。
『生意気な真似を!』
「その程度じゃ俺はやれねぇ!」
 不意に放たれた五つの剣を躱して、同時に残像を振り撒く理玖。上下左右に広がった理玖が速度を上げて、ウームーが空ぶった直後に猛追を掛ける!
「そのままぶっ飛べ!」
 七色の気迫が残像と共に理玖の片足に集まって、渦を巻くように集束――放たれた蹴りがウームーの喉元にぶち当たって、その巨体を遂に吹き飛ばす。
「まだ終わりでは――ありません!」
 そしてウームーの攻撃が途切れた刹那、ソラスティベルが翼を広げて空を駆ける。手にした大斧――サンダラーに思いと力を籠めて。
「勇気を剣に! 気合いの鎧を! 根性を支えに!」
 碧光が更に輝きを増して――ソラスティベルが、そして理玖が吹き飛ばされたウームーを挟み込むように追いついた!
「この一閃は悪しきを断つ雷鳴ッ!」
「オラオラオラオラァッ!!!!」
 天と地と、勇者の一撃と英雄の乱れ撃ちが空間ごと揺らして――ウームーは五体をバラバラに砕かれる。
『ウオオオオオッ!!!!!!』
 勇者の一撃はそのまま轟音と共に一室の床を砕いて、奈落に落ちたウームーは深い闇に飲み込まれる。ズシンと大きな音が響いて真紅の宝玉が輝きを消し、しばらくして静寂が再び闇を支配した時、そこにはもう大魔王の姿は無かった。

「やった、のか……!?」
 変身したまま、奈落を見つめて理玖が呟く。
「――どちらにせよ、わたし達の勝利に変わりはありません!」
 翼を羽ばたかせてソラスティベルが声高らかに勝利を宣言する。奈落の底からは何も反応が無い。闇の中の沈黙が示すのは、英雄と勇者の勝利。大魔王は倒れた――少なくとも今は、その勝利の余韻を噛み締めるだけの暇があるのだから。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

別府・トモエ
おう、いっちょ勝ってくるぜ

「大魔王……希望を喰らうんだって?……私も喰らっていただこう」
私はテニスがしたい……大魔王はテニス形態を得る?
私はテニスを楽しみたい……大魔王はテニス技術を得る?
私はテニスを大魔王にも楽しんでほしい……大魔王もテニスを楽しんでくれる?
もしもそうなったら……大魔王も立派なテニスプレイヤーじゃんよ
「……試合開始だ!」


大魔王が打ってくる【先制攻撃サーブ】を
【視力】で【見切って】【ダッシュ】で追い付く
そして【ラケット武器受け】をキメて【誘導弾ショット】で的確に返す
これで決まるとは思えない
気を抜けない試合になるだろう
けど、格上を相手に全身全霊で挑むテニスが
「楽しくないわけない」



●身体は闘争を求める
 奈落の底、玄室の更に下へと突き落とされたウームーは、砕け散った己が身をそのまま、ゆっくりと再起の時を伺っていた。しかし。
「大魔王……希望を喰らうんだって?……私も喰らっていただこう」
 現れる女が一人――別府・トモエ(人間のテニスプレイヤー・f16217)はテニスラケットにテニスウェア、その姿はどう見ても戦場に現れる趣とは違う。
『…………』
「どうしたの、大魔王? 早く……さあ!」
 闘志を剥き出しにして、剥き出しの真紅の宝玉の前へ進むトモエ。
『貴様…………』
「見えたんだよね、私の気持ち」
 半壊した仮面の様な大きな顔の前で立ち止まり、ラケットをウームーの方へ向けて。
『そこまでして、闘争を望むか』
「闘争? うん、そうだよ。私が望むのはただ一つ……」
 厳かな声が空間に響く。戦いに敗れ、静かに蘇る時を待っていた、だけなのに……。
『既に、尽きかけていたこの思い』
「さあ、始めようか」
 トモエはウームーの心に熱い火を点けた。宝玉が煌々と輝けばブロンドで長身の――人間サイズのウームーの分身が出来上がる。
『後悔するなよ、小娘』
 全てはテニス――闘争に挑む為。砕けかけた心は再び、蘇ったのだ。

『フィフティーンラブ――』
 審判は宝玉が行っている――らしい。そこに一切の忖度は無い。鮮やかな弧を描きセンターラインを割ったウームーのサーブを、常軌を逸したテニスポテンシャルの持ち主――インターハイ覇者たる別府・トモエが打ち返す。幾ら大魔王とはいえテニスは初心者、如何に学習しようと培った経験と勘に早々敵う訳が無い。
『サーティーラブ――』
「このままブレイクを……!」
 続けて放たれたサーブも最早、手に取る様に読み切れる。しかし大した相手だ、まさかこんな地下にコロシアム上の競技空間まで作り上げて、その上にウィンブルドン並みの芝のコートを作り上げるとは。
『そうか、この気持ち。この思い――』
 ブツブツと何かを呟くウームー。取り戻した闘争心、だがそれだけではトモエに敵わない。あと一つ、己に足りていないもの――それは。
『させんよ、ブレイクは!』
『サーティーフィフティーン――』
 瞬間、トモエの側を風が横切る。早さは変わらない、しかし取れなかった。三球目、ウームーは遂に学習したのだ。駆け引きを、粘り強く打ち返してくるトモエの戦いから――世界と戦う実力を、身に着けてしまったのだ。
「そうだよ、そう来なくっちゃ……!」
 やはりテニスすげえな。そして心行くまで二人はテニスを堪能した。
 大魔王の心に、莫大な闘争心を刻み付けて。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シーザー・ゴールドマン
【POW】
そろそろ、この祭りも終わりだね。

先制対策
願い、望み、祈り、か……祈りはともかく、まあ、願い、望みは現状では君が見かけ通りに強大な存在であり、心行くまで戦う事だね。
直感(第六感)、戦闘経験(戦闘知識)による見切り、分身(存在感×残像)による惑わし、全てを駆使してUC発動までの時間を稼ぐ。

ああ、私の望みは確かに果たされた。お礼をしなければね。

『ウルクの黎明』を発現。オドを高め飛翔。
先程までの戦闘から剣術、魔法、最適解の戦闘法を高められた戦闘力で放つ。
大技はオーラセイバーを大上段から振り下ろして発生させる巨大な破滅の衝撃波。(衝撃波×鎧砕き×鎧無視攻撃×範囲攻撃)



●スカーレット・インパクト
 そこは最早玄室というよりはコロシアム――広々とした空間には灯りが煌々と照り続けて、薄暗い墓地とは到底思えない装いだった。
「ウォーミングアップは十分か?」
 静かな声色が――真紅の美丈夫、シーザー・ゴールドマン(赤公爵・f00256)が外套を翻し、ゆっくりと空より舞い降りる。
『ああ、お陰様でな――』
「そろそろ、この祭りも終わりだね」
 ふらりと、シーザーの姿が増える。それぞれがバラバラの動きを――赤黒い闘気を滾らせて、人間サイズのウームーを取り囲む様に。その様子を見やり、不敵に笑みを漏らすウームー。
『そうだ。そして終わるのは……貴様だ!』
 ウームーは取り戻した闘争心を、莫大な心のエネルギーを糧に全身を作り替えた。最早以前のダメージなど無い、真っ新な大魔王の巨体がシーザーに躍り掛かった。
『この闘争を望んだのは貴様自身、後悔は無いな!』
 無数の刃が空中に顕現し、シーザーの軍団の尽くを貫く。所詮は分身、一撃喰らえば雲散霧消する魔力――オドの塊。それでもウームーの巨体に取り付いた一つ一つが、手にした光剣で斬りつけて、その度に貯め込んだ魔力を爆ぜさせる。
『フハハハ……漲るぞ! この力、この戦こそ貴様自身の力!』
 不意にウームーの大蛇の様に伸びた太い尾の先端から、赤黒い光線が横薙ぎに放たれる。空中から襲い掛かる分身も、地を駆ける分身も何もかもを飲み込んで、その威力は自ら建造したコロシアムごと破壊する。しかしそれこそが、シーザーの狙いだった。
「ああ、私の望みは確かに果たされた。お礼をしなければね」
 ぐらりと崩れたコロシアムの石壁がウームーを押し潰す。それでも大魔王の巨体の動きを完全に止める事は叶わず、僅かにその動きを鈍らすだけ。
「さらばだ、大魔王」
『何、貴様――いつの間に!』
 不意に空中に、ウームーの目前に現れたシーザーは光剣を手に超常を――自らの魔力を極大に高めて、必殺の刃を繰り出した。
『……とでも言うと思ったか!』
 一つ、二つ――無数の刃が再びシーザーを襲う。しかしその軌道は既に見切った。多大な分身の犠牲によって、ウームーの手の内は殆どが丸裸同然だった。
「流石に、威力だけは超一流。大魔王なだけはある」
 ウームーが生成した巨剣の束が続々と光剣の剣捌きに弾き返されて、ウームー自身に突き刺さる。威力は先方が備えていればいい――シーザーの莫大な魔力がその剣の制御を奪い、今度こそウームーは動きを止められた。
「言ったろう、さらばだと」
 そして本命――大上段に構えた真紅の斬撃は、超常の衝撃波をウームーの巨体に浴びせ掛ける。外殻を砕き、内側から浸透する破滅の衝撃はそのまま、ウームーの全身にバラバラと亀裂を走らせる。
「永遠に眠れ、大魔王」
 舞い上がる埃がオドに触れてバチリと爆ぜる。空中から眼下のウームーの姿を見やり、真紅の美丈夫は更なる高み――照明の届かない闇の中へと姿を消した。

成功 🔵​🔵​🔴​

霧枯・デスチーム
【2m半のガジェットブラザーに乗り込み行動。アドリブ協力歓迎】
「いくぜブラザー。終わらせるぜ」
『はい、ガージ。貴方のためにも』
それが生き残りの最後のお勤めだ。

死んでいったガジェット乗りの仲間達の安息を【祈る】
なら相手になるのはあいつら全員分か?流石代弁者様だ。皆の恨み言まで聞かせてくれるのか。
「間に合わなくて悪かったナ。今度は最後まで付き合うぜ」
共食いはおいら達の十八番だ。やり口なんざ知り尽くしてる。勝てなくても泣くほど痛い目見せるなんざ朝飯前だ。足掻きぬいてやる。
「ブラザー」
『了解。自爆します』
一矢報いて皆で死ぬ。【望み】通りだ、ざまぁみろ。
『私と皆の最後の【願い】です、ガージ。お元気で』



●ばいばい、ブラザー
 コロシアムで蹲るウームーを見やり、一体のマシン――『B29』が煙を吐く。
「間に合わなくて悪かったナ。今度は最後まで付き合うぜ」
 霧枯・デスチーム(ラストブラッドショルダー・f13845)は棺の様に狭いコクピットで、散っていった仲間達に思いを馳せた。この迷宮で、幾度となく繰り返された作戦――終わる度に一人、また一人と鋼の中で息を引き取った。
「――いくぜブラザー。終わらせるぜ」
『はい、ガージ。貴方のためにも』
 霧枯の決意に『ブラザー』が、B29のAIが応える。目の前の横たわるウームーから吐き出される蒸気の中、地獄の炎みたいな赤の群れが揺らめいて悪夢の日々が蘇る。共食いか、そんなのおいら達の十八番だ。
「しっかし流石代弁者様だ。皆の恨み言まで聞かせてくれるのか」
 霧枯の祈りはとうの昔に潰えた仲間達への哀悼。軋む鋼の音が霧枯を取り囲んだ瞬間、炸裂音が同窓会の幕を開けた。

「流石隊長だ、動きが違う」
『死んでも恨まれてますね、貴方は』
 ただ一機、指揮官用の長大なポールアンテナを付けたマシンが執拗に霧枯を追う。バースト射撃で行く手を遮りながら、徐々に間合いを詰めて振り抜いた腕にはパイルバンカーが。その動きをターンスライドで鮮やかに躱して一回転。足元を穿った鉄杭が火花を散らして、奴の背後にお返しの弾を喰らわせた。
『三時方向、いつもの皆です』
「一緒に殴り込みした仲だってのによ」
 着弾間際に左腕ワイヤーを射出して後方へ離脱。手にしたガトリング砲で弾幕を張りながら、両肩の回転動力炉が鈍い光を放つ。
『フィールド展開、60秒が限界です』
「いつも限界だよ! パターンB、頭上に注意!」
 正面を追撃してくるマシン群に向けて、崩れて突き出た外壁の下をローラーダッシュで通り抜ける。即座にブラザーが状態を走査、これならば――展開したフィールドを突き破る轟音が、B29の左腕を吹き飛ばすと同時に、炸裂したガトリング砲が外壁を崩して、がれきの下にマシン群を沈めた。
「60秒持たなかったぞ!」
『そんな事ばかりだったでしょうに』
 淡々と言い返すブラザーに悪態をつきながら霧枯はウームーの下へ。未だ横たわる巨体にB29を取り付かせて仕上げに入る。
「ブラザー」
『了解。自爆します』

 眠るように横たわるウームーは理解が追い付かない。何故この生物は自ら死を望む。先の戦いの傷はようやく癒えた所――バリバリと全身の亀裂が大きく割れて、その中より新たなウームーが姿を現した。
『問おう、貴様の願いは、望みは、祈りは聞き届けた』
 グンと伸ばした巨腕でB29を掴み上げ、厳かな声で問いかけるウームー。
『何故そんな事を』
 打倒では無い、死に場所を探す様な愚行。ここまで辿り着いた者達の中で一際異質な霧枯の望みの、その真意を探る為に。
「言ってわかるかよ」
 にべも無く言い返す霧枯。回転動力炉出力最大、チャンバー内圧力臨界、しっかりと掴み掛ったウームーに駄目押しのワイヤーを巻き付けて、映し出されるカウントダウンに目を細めたまま言葉を続ける。
「一矢報いて皆で死ぬ。『望み』通りだ……ざまぁみろ」
『私と皆の最後の『願い』です、ガージ。お元気で』
 それがブラッドショルダーの、俺達の任務だから。刹那、真紅の爆光がウームーの巨体を包み込んだ。
『こんな事で……』
 それでも尚大魔王の威容は健在。焼け爛れた上半身を軽く撫でて、爆発で四肢のもげたB29のハッチを無理矢理こじ開けた。こんな事を望む生物は一体、どんな奴なのだと。
 そして大魔王は知る。その興味が過ちである事を。その行為が、100万人が死ぬ様な何かですら、殺す事の出来ない猫の異能を呼び覚ました事を。
「悪ぃ、また生き残っちまったナ」
 手にした長銃のパイルバンカーが、死を運ぶ嘶きの様な炸裂音と共にウームーの片腕を貫いた。

成功 🔵​🔵​🔴​

草野・千秋
【全世界サイボーグ連盟】
あなた……いやお前がこの戦争を引き起こしたのか!
アルダワの生徒さん先生さんの笑顔のためにも平和のためにも
この戦いには勝ってみせる
それ以外の願いですか?
好きな人とずうっと一緒にいられたらとか色々ありますね
そういうのって僕の努力次第とか思ってますし
魔王である存在に願いを叶えて貰おうとかは思いませんけど

勇気を出しながら
ヒーローとして挑発で名乗りをあげ
捨て身の一撃で殴り込む
怪力を込めたパンチキックをしつつ2回攻撃、グラップルで接近戦
UCは一撃必殺のパンチでいきます!
一か八か、正義の鉄拳をくらうがいい!
敵攻撃は第六感、戦闘知識で逸らしつつ
盾受け、激痛耐性で耐える


リーデ・クインタール
【全世界サイボーグ連盟】
アドリブ歓迎

ふむ…第一形態が親近感を覚えて一番好みでしたね…
まぁ如何でも良い話です…
相手がオブリビオンであるのなら、滅するまで…

・POW
願いに望み、祈りですか…ええ、ありますわよ?

誰よりも昏き陛下の下で生を謳歌し…
最期は、あの方の手で縊り殺して戴くこと…それだけです!

残念ですが…貴方には叶えられぬ願いですわね?
故に無意味です…さぁ、わたくし想いは晒しましたよ?
満足して死んでくださいませ
【温もりを捨てて…】発動
後方から先ずはブラストレーザーで援護致します(属性攻撃・スナイパー・援護射撃)
エネルギーが切れたらバレッドスコールでの制圧射撃に切り替えます


クネウス・ウィギンシティ
【全世界サイボーグ連盟】で参加
「願いですか、やはり自爆装置搭載はロマンだと思うんですよね」

【POW】

●願い
自爆装置を積んで敵へ特攻し自爆したい(本音)

●戦闘・UC対抗
「普通の願いは叶えてもらったりばかりなので、後は技術者としての目標でしょうか」
知り合いの猟兵も自爆好き、ロマンですね。

「GEAR:AGATERAM。腕部リミッター解除、『銀の腕』起動」
赤熱化させた機械化した左腕で敵の攻撃を【武器受け】、そのまま左腕を【武器改造】しパイルバンカーと一体化。パイルごと左腕を【零距離射撃】で敵に叩き込みます。
「片腕だけですが、こんなこともあろうかと自爆機能は実装済みです」


リズ・ルシーズ
【全世界サイボーグ連盟】で参加、アドリブ歓迎だよ!

【SPD】

ボクが怖いのは第三形態かな、呪いなんてよくわからないもの振りかざすなんて信じられないよ

【鏡面体】を射出し、【呪詛の塊】や【凝視】を迎撃しつつ【空中戦】で一気に距離を取ろうとするよ

でも、こっちには呪詛の専門家の理仁もいるし、種が分かってれば!

【指定UC】で量産型を召喚し、呪詛の身代わり人形代わりに使い潰しながら、残った量産型と【疑似刻印】のレーザーの光【属性攻撃】で召喚された大魔王形態に【一斉発射】で攻撃

あとは、大元を!

【スナイパー】として、皆の【援護射撃】と攻撃までの【時間稼ぎ】だね

魔王を倒すのは勇者達の仕事、ボクは只そのための道を!


バスティオン・ヴェクターライン
【全世界サイボーグ連盟】で参加、アドリブ歓迎「悪いけど命を捨ててまで戦う気は無いねぇ」先制で繭の迷宮を出されたとき、わざと盾で受けつつ出てきた繭に撥ねられるように動くよ。そうして「飛び出してきた繭を盾で防いだ」って事実さえ作れればUCで封印出来る。繭に触って若返る力だって10年20年位までならおじさんにとっては寧ろ強化だ。そこからは最前線で敵の攻撃を【武器受け(剣)】【盾受け(盾群付右義腕)】【激痛耐性】で受けて味方を護るよ。どれだけ攻撃を受けようが立ち塞がり続ける盾兵の姿で少しでも【恐怖を与え】ておじさんに注意を向けさせる。そこに味方の攻撃の隙も生まれる筈だ。「どうした…そんなもんかぁ!?」


ドロレス・コスタクルタ
【全世界サイボーグ連盟】で参加。絡み&アドリブ歓迎。

SPD対抗。

「最も恐ろしいのは第三形態です。まず見た目が苦手ですし、わたくしには理解不能な『呪い』という力が実体をもって襲ってくるなど、悪夢のようです」

UCで鬼神型のパワードスーツを遠隔操作。被害は覚悟の上で魔王の攻撃を防がせる、いわば呪いに対する身代わり人形。パワードスーツが時間を稼いでいる間、全サ連のメンバーと共に魔王本体に攻撃。

二丁拳銃による【鎧砕き】を【2回攻撃】【誘導弾】【見切り】で同じ個所に正確に何度も撃ち込み、魔王の堅固な鎧を砕いて防御力の弱い箇所を作り出す。
「弱点がなければ作ればいいのです! 皆様、狙ってください!」


佐倉・理仁
【全世界サイボーグ連盟】

肩書きから姿からおっかない奴だな。
悪く思うなよ、魔王と恐れられるお前さんの仕事は「倒される事」だぜ。

(男の首から下は、UDCと機械喉の魔術が形作る《肉体を再現する魔法》。生命の模倣であるそれは若返る過去を持たない)
俺には少し効きが甘いんじゃねーか。死霊をばら撒きガイド役を任せる。ほれ、俺らを死地に案内しな『第六感』

願いね、それ聞いちゃう?
俺はサイボーグ戦士達の活躍が見たいんだよ、さっきも言わなかったか。魔王の仕事は倒される事だ。
【剛力封陣】
コイツらの願いも吸い上げるか? いいぜ。モリモリっと、盛り上げな、存分に披露しな……好きなだけ重ーくなりやがれよ。『呪詛』


紅葉・智華
※アドリブ・連携歓迎

【全世界サイボーグ連盟】で参加

これが魔王の最終形態か……他の形態を直に見た事ないけど。
何はともあれ――(眼鏡を外して)――やるしかないでありますね。

【選択UC】を自身の周囲に纏うイメージで展開。足場としても、盾(盾受け)としても機能させる。敵UCの影響は受けないか、あるいはかなり緩やかなものになる筈。

可能な限り、【ダッシュ】で出口を向かいつつ、敵への射線が確保できたら【選択UC】の隙間から『唯射』を構えて狙撃(スナイパー、援護射撃)。

仮に若く――いや、幼くなって、銃が持てなくなってたら近接戦闘で。これでも、小さい頃に赤枝流武術(グラップル)を学んだ身だからね。


河原崎・修羅雪姫
【全世界サイボーグ連盟】
「チカラこそパワー! チカラこそパワー! 大魔王、私と魂の尊厳をかけて歌対決を申し込むわぁ!」
 この事件に対してこう感じ、猟兵として参加します。

全サ連の戦旗を振って、『仲間の命を集め、声を合わせて絶唱』します。
「私は半神半鬼のメタルモンスター!!」
 
『ウームー・ダブルートゥ』の「ホープイーター(POW)」に対し、
UC「真の姿・限定開放」を使い、巨大化した真の姿に内蔵された大量の爆音スピーカー、ミラーボールの群れで圧倒します。

「歌は人類が生み出した最高の奇跡! 破れるか! 破れるものか!」
【歌唱・誘惑・鼓舞・存在感・第六感・楽器演奏・二回攻撃】


伊高・鷹介
【全世界サイボーグ連盟】

・祈りや願いを糧になんとも大仰な姿になったもんだな?
で、俺らはその願いでできたお前を駆逐する……どっちが悪者か分かんねぇな。

・が、てめぇは「ただ吸収した」だけだ。ヒトの願いを叶えるなんて考えちゃいねぇんだろう?
なら、その願い、持ち主の所に返してもらうぜ。代わりに俺の願いをくれてやる。気になる女と恋人になりてぇいう願いだけどな?
さあ、恋は盲目。強化されたお前の動きも盲目的に…直線的になるんじゃねぇのか?
「念動力」で障壁を張り、無理やり体を動かして凌いでやんよ。
・後は力比べだ。攻撃重視の【超パワー】で思いきり締め上げて仲間が好き勝手にボコれるようにしてやっから、覚悟しな!



●鋼鉄の戦鬼達
「成程、見事な自爆」
「私達も負けていられませんね」
「何に負けるって言うんだい。おじさん痛いのは遠慮しとくよ……」
 クネウス・ウィギンシティ(鋼鉄のエンジニア・f02209)は目の前で散華した仲間の雄姿を見やり、静かに敬礼する。そしてリーデ・クインタール(鋼鐵の狂機・f14086)の昂ぶりに、バスティオン・ヴェクターライン(戦場の錆色城塞・f06298)がやれやれと肩を落とす。
「動いたよ……やっぱり」
「第三形態、ですわね」
「それだけじゃないぜ。来るぞ――!」
 リズ・ルシーズ(Re-Z・f11009)のセンサが蠢く大魔王の影――セレブラム・オルクスの出現を感知し、ドロレス・コスタクルタ(ルビーレッド・f12180)と共に迎え撃つ。その横で佐倉・理仁(死霊使い・f14517)は、呪い以外の更なる脅威を感じ取っていた。
「まあ、なんとも大仰な姿になったもんだな?」
「何はともあれ――やるしかないでありますね」
「ええ。アルダワの生徒さん先生さんの笑顔のためにも、平和のためにも――ダムナーティオー、この戦いには勝ってみせる!」
 呆れた風にウームーを見据えるのは伊高・鷹介(ディフェクティブ・f23926)、そして紅葉・智華(紅眼の射手/自称・全サ連風紀委員・f07893)が得物を構えて、草野・千秋(断罪戦士ダムナーティオー・f01504)が名乗りを上げて思いを叫ぶ。
「それじゃあ皆、準備はいいかしらぁ?」
 この戦いに勝利する為に集ったサイボーグ戦士達。血とオイルと硝煙に染まった団結を示す鋼の戦旗を振りかざし、河原崎・修羅雪姫(プリンセス・スノーブラッド・f00298)が檄を飛ばす。その声と共に戦士達は、戦場を疾風の様に駆け抜けた。

「やっぱこっちかよ。だが黄金の繭の生成パターンは既にあるからな!」
 理仁の懸念、それは黄金の繭玉。触れれば強制的に若返らされるこの攻撃は、年若い戦士達にとっては恐るべき超常だった。十重二十重に蠢く黄金の糸が猟兵達を取り囲み、囚われた三人はそれでも、同胞より貰っていた情報で着々と突破を進めていた。
「おじさんにとっちゃ多少はクスリみたいなもん……」
「駄目ですよ! それにここまで攻撃が――!」
 そしてここに居る最年長者バスティオンにしてみれば、多少の若返りは願ったり。鋼の義腕で受け止めて、鉤爪で立ち塞がる糸の群れを掻っ捌きながら前進すれば、微妙に声色が高くなる。その傍ら、智華が迷宮の外からの攻撃を――不可視の衝撃を躱しながら、進路上の障害を青白い熱線で焼き払う。
「ま、それでも俺には少し効きが甘いんじゃねーか」
 更に理仁にしてみれば、自身の首から下はUDCと機械喉の魔術が形作る《肉体を再現する魔法》――発動し続ける呪いには過去などという存在は無い。死霊をばら撒いて出口へガイドさせながら、ゆっくりと歩みを進める。
「おっと危ない、危ない」
「本当に! もう――!」
 姦しい声を上げながら、三人は着実に繭玉の出口へと近付きつつあった。

「呪いなんてよくわからないものを振りかざすなんて――信じられないよ」
「高度に発達した科学技術は、魔法と見分けがつかない――というモノでも無いでしょうね、これは」
 悪態をつくリズを窘めながら、ドロレスは左右に飛び跳ねてオルクスの攻撃を捌き続ける。
「理解不能な『呪い』という力が実体をもって襲ってくるなど、悪夢のようです」
「でも、こっちには呪詛の専門家の理仁もいるし、種が分かってれば!」
 しかし肝心の理仁は繭玉の迷宮に囚われたまま。それでも必ず突破してくると信じて――二人は超常を発露して迫るオルクスの猛追を凌ぎ続ける。
「反応は近付いてるよ、何とかここを耐えきれば!」
 足元からにじり寄る呪詛の汚泥をリズが呼び出したRシリーズの複製体が受け止める。その呪詛が依り代となり果てる前に、幾つもの爆光が戦場を覆った。そのまま空中よりオルクスの側面へ回り込んで、銀光が――鏡面体が無数の光条を放ちながら、ドロレスの本領までの時間を稼ぐ。
「コード入力――Get Ready Go! 時間を稼いで!」
 リズの奮戦が作り出した時間が、ドロレスの超常が――自律稼働するパワードスーツが出現と共にオルクスへ猛攻を加えた。
「ああ、やっぱり気持ち悪い……!」
 赤い鬼の様なマシンが背部のアンカーを飛ばして、オルクスの動きを遮ると共に金棒での乱打をぶち込む。その度にオルクスの体液が飛び散って、戦場は汚泥と共に悍ましい色に染め上げられた。
「ドロレス!」
 駆けるドロレスの後を追う様に汚泥が魔の手を伸ばす。幾ら愛銃で弾を撃ちこもうとも、不定形のそれには効果が薄い。そしてドロレスの全身を包み込む様に汚泥が広がった瞬間、風がオルクスの悪意を吹き飛ばした。
「死地はここかい……待たせたな」
 迷宮を抜けた理仁の呪詛が――骸の香が呪いを塗りつぶしたのだった。

「チカラこそパワー! チカラこそパワー! 大魔王、私と魂の尊厳をかけて歌対決を申し込むわぁ!」
「姫さん、そんなに飛ばしたら……!」
 巨大な観音像のような姿に変貌した修羅雪姫は、伴った種々の音響機器と共にウームーと正面から対峙する。爆音が轟いて戦場を震わせながら、その下で白銀の装甲を纏った千秋が、修羅雪姫を守る様に立ち塞がった。
「大丈夫よぉ、皆がいるんだし」
「ええ。普通の願いは叶えてもらったりばかりなので、後は技術者としての目標でしょうか」
「唐突に不穏なワードをぶち上げんなよ……まあ」
 その傍らでクネウスが、鷹介が、不敵にウームーの巨体を見上げる。
「俺らはその願いでできたお前を駆逐する……どっちが悪者か分かんねぇな」
「願いに望み、祈りですか……ええ、ありますわよ?」
 更にリーデが全身の武装を展開して――その姿は正に鋼鉄の破壊神。開幕の光条をウームーへ浴びせながら、ゆったりと戦線を押し上げた。
「残念ですが……貴方には叶えられぬ願いですわね?」
「前方高エネルギー反応、形振り構わず来ますか!」
 しかしウームーも黙ってはいない。過去最大の中隊規模の戦力――攻撃力ならば師団単位にも匹敵する超常のサイボーグ兵団に容赦はいらない。無数の巨剣が、二色の炎が、そして胸元の宝玉より放たれた真紅の光線が舐める様に大地を穿つ!
「それでも、負けない! 私は半神半鬼のメタルモンスター!!」
 修羅雪姫が声を張り上げ、戦旗が風に大きく揺れる。千秋が炎を受け止めて、クネウスが乱舞する巨剣の迎撃を。そして真紅の光線が修羅雪姫に狙いを定めた刹那、無数の人型が盾となって――その奥で若干若返ったバスティオンが盾を構えて衝撃を受け止める。
「おまたせ!」
「肩が軽い。それじゃあ行こうか」
「総員配置につきました、姫さん」
 分身も、迷宮も全て攻略した。残るはただ一人、大魔王ウームー・ダブルートゥのみ。
「全サ連特攻――さあ蹂躙よぉ!」
 ウォークライが戦場に轟く。天と地を揺らして、最後の戦いが始まった。

「歌は人類が生み出した最高の奇跡! 破れるか! 破れるものか!」
 神々しい観音像が音と光で戦士達を鼓舞すれば、九人の戦鬼は戦場を自在に駆け抜ける。
「どうした……そんなもんかぁ!?」
「おっさん凄えな――こっちだって!」
 バスティオンの超常、それは受け止める事で相手のUCを封印する事。これで黄金の繭玉は少なくとも、この戦場に広がる事は無い。その傍らで理仁の超常が――無数に開いた死者の門から筋骨隆々の亡霊達を呼び起こす。
「コイツらの願いも吸い上げるか?」
 亡霊達が一斉にウームーへ取り付いて、その巨体を黙らせんと溢れる筋肉で大地に繋ぎ止める。
「いいぜ。モリモリっと、盛り上げな、存分に披露しな……好きなだけ重ーくなりやがれよ」
「合わせます! 動きさえ止められれば!」
 その隙を千秋が捨て身の一撃で殴りこんだ。青白い炎が尾を引いて、衝撃と共に拳と蹴りの乱打がウームーを襲う。しかし。
「この……固い!」
「だったら……ボク達の本質、見せてあげるよ!」
 白銀の装甲はウームーの中身まで攻撃を通す事を許しはしない。舌を鳴らす千秋の背後に、リズが複製体を伴って飛蝗の様に群がった。
「魔王を倒すのは勇者達の仕事、ボクは只そのための道を!」
「弱点がなければ作ればいいのです! 皆様、狙ってください!」
 刻印から一斉に放たれたレーザーがウームーの全身を焼き焦がす。その猛攻すら囮にして、ドロレスが愛銃の弾丸を続々と叩き込む。一発で駄目ならば十発、百発と、その鎧を砕くまで同じ所を撃ち続ければいい。
「GEAR:AGATERAM。腕部リミッター解除、『銀の腕』起動」
「俺の願いが届いたならよぉ……まともな判断も出来ねえ筈だぜ?」
 キン、と拘束が解除された左腕が赤熱化――大地を踏みしめ超常発動の機会を伺うクネウスを庇う様に、不可視の障壁を展開する鷹介。ただ恋人と添い遂げたいという純粋な願いは果たして、ウームーの脳裏に盲目的な恋慕を繰り返させる。闘争と相反する思考が僅かに攻撃の手を緩めた刹那、反撃の超常がウームーを襲った。
「後は仲間が好き勝手にテメェをボコす」
「さぁ、満足して死んでくださいませ」
 圧倒的な鷹介の念動の拘束が巨体を雁字搦めに縛り上げて、そしてドロレスの一念が遂に、突破口を切り拓いた。

「間に合いましたか。これでも小さい頃に赤枝流武術を学んだ身だからね」
 一方、暴れ狂うオルクスが抑えつける真紅の装甲を払い、ぶちまけられた汚泥が人の形を取って、サイボーグ達を鼓舞し続ける修羅雪姫へと迫る。それを防いだのは智華、僅かに体躯を縮めた姿で群がる泥人形を掴んでは投げ、撃ち崩して鉄壁の護りを見せた。
「ここは誰一人通しません! 覚悟!」
 あと少し、ウームーさえ仕留められればこの軍勢も消滅する筈。猛る思いを胸に秘めて、広げた不可視の壁と共に最終防衛線を支えんと智華が吼えた。
「第一形態が親近感を覚えて一番好みでしたね……まぁ如何でも良い話です」
 その傍ら、リーデが悍ましいオルクスを一瞥して、全身の武装で泥人形の軍勢を焼き払う。しかし圧倒的なその手勢に光条が不意に光の筋を細め――武装切替、バレットスコール。両肩の重機関砲が唸りを上げて、土埃と共に再び戦場に火薬の華を咲かせた。
「私の願いも望みも祈りも、貴方には叶えられない――でしょう?」
 ガツンと大きな音が。鬼の形相のパワードスーツが遂に、オルクスのコアたる宝玉を力任せに抜き取って、撒き散らされた汚泥と悍ましい巨体が鳴りを潜める。誰よりも昏き陛下の下で生を謳歌し……最期は、あの方の手で縊り殺して戴くこと。矢張り、紛い物では叶えられぬ願いでしたね、と。今度は照準をウームーへと切り替えて、リーデの重砲が――ディストピアが火を放った。

 その轟音がウームーの巨体を揺らした時、クネウスと千秋が一斉に飛び掛かった。ドロレスがこじ開けた大穴に灼熱の左腕を、そして蒼銀の鉄拳が捻じ込まれて。衝撃がウームーを内側から破裂させれば、そのまま肉塊が背後に飛散する。
「片腕だけですが、こんなこともあろうかと自爆機能は実装済みです」
 まだだ、これだけではない――と。左腕に装着した対艦装備、パイルバンカーを強制連結、溢れるエネルギーがチャンバー内を猛烈な勢いで加圧して、爆ぜると共に天へ向かって鉄杭が放たれた。
「一か八か、正義の鉄拳をくらうがいい!」
 更に千秋が、渾身の思いを込めてもう片方の腕を振り抜く。秘めたる思いは叶えてもらうものじゃ無い。己の力で叶えるからこそ、価値があるのだ。だから……。
「悪く思うなよ、魔王と恐れられるお前さんの仕事は『倒される事』だぜ」
 亡霊の負荷を極限まで上げて、理仁が呟く。逃げる事も隠れる事もままならない、十人の戦士の思いはそして、この戦いに終局を齎す。
「俺の思いは見損ねたか? 俺の願いはサイボーグ戦士達の活躍が見たいんだよ」
 その願いは果たされた。ウームーの頭頂を貫いた鉄杭がその鋭い穂先を見せた時、声も無く大爆発が全てを包み込んで、影も形も思いも何もかもを飲み込んで、全てがここに消え失せた。

「状況終了、ですが……」
 ウームーは潰えた。それは間違いない。だが反応は健在――クネウスの見立てでは、どうやら更に深くへと逃れたらしい。確かに、奴の居た地点には見慣れぬ大穴が開いている。
「更にこの奥、奈落の深淵」
 その深さは魔術的な妨害もあって計り知れない。追撃か、それとも体勢を立て直すか――しかし思考をする暇は、彼等に残されてはいなかった。
「その前にこれ、どうにかしないと――!」
 リズが声を上げると共に、大魔王の影が、分身の群れが一斉にサイボーグ戦士達を取り囲み、徐々に距離を詰めて来た。それも一体ごとでは無い。広大な空間を埋め尽くす様に数十体の巨大な邪悪が蠢いて――これこそがウームーが放った最後の罠。解放された闘争の心が呼び出した、戦禍という災い。
「それじゃ、アンコールの時間ねぇ!」
 しかし臆する彼等では無い。ギターをかき鳴らして鬨の声を上げる修羅雪姫に続いて、戦鬼達は各々の得物を構える。これだけ追い詰めたのだ、カーテンコールまで盛大にいこう。戦いは未だ、終わらない。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

バンリ・ガリャンテ
【POW】
その御姿を見たかった。
力が欲しい?あなたに勝ちたい?帰るべき場所へ戻りたい?
さぁね。生憎もう俺の中は真っさらだ。
ここ迄来られた。
引き換えに求めるものなど何もねぇ。
俺は、俺の知らぬ者となり、あなたと戦う。
そうさ。「奴」の望みなんて「俺」は知る由もない。
後は炎の山となれ。

未来が削られていく。
思い出を捨ててきた女の末路。ここでもいいな、果てるのは。
心と身体のありったけを地獄に焚べて、戦場を炎で閉じる。武器が折れたら五体で縋る。
その外殻を、角を、冠を、脚部を、心臓を、頭蓋を、そのどれか一つでも砕いて焼いて滅ぼせば。
ねぇ。あなたの時間に俺は、残る?
私を忘れないで。

【アドリブ連携大歓迎です】



●私を忘れないで
「随分な場所だな……だけどよ、その御姿を見たかった」
 奈落の深淵、暗黒が支配する空間にぼうと炎が揺らめいた。バンリ・ガリャンテ(Remember Me・f10655)は一足早く、ウームーが叩き落とされた地の底へ足を踏み入れて、呆然と佇むそれを見やる。

『何を、願う』
 面を上げて静かな声がバンリに問う。
 願い。力が欲しい――それは誰の願い?

『何を、望む』
 ゆらりと動いて厳かな声がバンリに問う。
 望み。あなたに勝ちたい――それは誰の望み?

『何を、祈る』
 翼を広げて優しい声がバンリに問う。
 祈り。帰るべき場所へ戻りたい――それは誰の祈り?

「――さぁね。生憎もう俺の中は真っさらだ」
 ここ迄来られた。引き換えに求めるものなど何もねぇ。それで十分――俺は、俺の知らぬ者となり、あなたと戦う。灰色の様な桃色の様な豊かな髪を揺らして、少女は静かに絢爛な刃を手に取った。

 緋色が舞う。剣戟を相手取る様に放たれた無数の巨剣も、風の様に飛び跳ねるバンリのステップが、斬撃が、踊る様に打ち払う。光輪が放つ衝撃も響く音色が打ち消して、放たれた極彩色の炎すら、バンリの超常が――地獄の炎が全て、塗り潰す。
『何、者……?』
「何者だろうね――そうさ。『奴』の望みなんて『俺』は知る由もない」
 後は炎の山となれ。手にした剣が、超硬の籠手が熱を帯びて、じわりと景色を歪ませる。振るわれる斬撃が迫る悪意の尽くを弾き返して、緋色が闇を染め上げる。
『何も無い、貴様がどうして……存在出来る?』
 未来が削られていく。実態を持たぬ光の剣がウームーの尾撃を斬り払って、重ねる様に炎を走らせる。心と身体のありったけを焚べた地獄、朽ちた刃を投げ捨てて、五体を燃やして再び前へ。

『違う、ここでは無い。お前では無い。これ、は……』
 思い出を捨ててきた女の末路――ここでもいいな、果てるのは。互いの炎が渦を巻いて、重なる。破壊の力が空間を揺らして、五体に宿る地獄が共鳴する。
『地獄、か……この炎!』
 懐かしいこの音は灼熱のそれか。高揚するウームーの心音が空間に響いて、巻き起こされた風を受けバンリが巨体を駆け上がる。その外殻を、角を、冠を、脚部を、心臓を、頭蓋を、そのどれか一つでも砕いて焼いて滅ぼせば――。
「ねぇ。あなたの時間に俺は、残る?」
 巨大なダンスホールみたいだ。ステップが高く、高く上へと繋がって、鋭く伸ばした厳かな角が炎の拳で砕かれた。
『残る……とも』
 静かに呟き大魔王は闇の中に姿を消した。ガランと音を立てて落とした、宝飾の様な角と、少女の歌声を残して。

成功 🔵​🔵​🔴​

ニコ・ベルクシュタイン
「産み直しの繭」とは恐ろしい
時は不可逆なるものという絶対の理をも覆すか――面白い
ならば挑もう、そして打ち克って見せよう、其れこそが我が使命と知ったぞ

ヤドリガミたる俺の時が巻き戻るという事は
つまり元の器物に戻るという事を示すのだろう
床に転がるただの懐中時計は無力に見えるか?
其の時計にはな、百年愛された歴史を持っている
そして人の姿と心を得るという奇跡を知っている
迷宮の出口が一つしか無いなら迷うことはない
時計の針をもう一度正しく刻み、元の姿を取り戻すさ

災魔の大魔王さえも骸の海に還る時が来たぞ
【時計の針は無慈悲に刻む】の双剣で
正しい時の理を其の身で思い知って貰おうか
俺達は先へ、未来へと進まねばならぬ!


メンカル・プルモーサ
…最終形態か…それに違わぬ迫力があるね…
…ならこちらも…全力で行くか…
…箒に乗って空を飛ぶことで『産み直しの繭』を回避…私が触れたら戦闘出来るかも怪しいし…
…迷路に【尽きる事なき暴食の大火】をぶつけることで壁を燃料として…一直線に魔王を目指そう…
…魔王からの攻撃は空中戦で回避…心理隠密術式【シュレディンガー】を用いて発見されづらくしながら接近するよ…
…魔王を見つけたら壁を飲み込んで大きくなった大火を重奏強化術式【エコー】で更に多重強化…
…シルバームーンの許容限界を超えて砕けかける(射出と同時に砕ける)まで強化した大火を魔王へとぶつけるよ…
…この杖はくれてやる…暴食の炎で骸の海へと疾く還れ…



●過去が未来を作る
「時は不可逆なるものという絶対の理をも覆すか――面白い」
 ニコ・ベルクシュタイン(時計卿・f00324)は張り巡らされた超常の黄金の繭を見据え、静かに呟く。その手に長短の時計の針の様な剣を持って、わざとらしく開けられた繭の入口へ。
「ここ、抜けるのか……」
 同じく、メンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)はその背後より――出来れば空を飛んで回避したかったが、抜けて出なければならないのであれば、致し方あるまい。
「ならば挑もう、そして打ち克って見せよう、其れこそが我が使命と知ったぞ」
 うぞうぞと蠢く繭玉の糸を叩き斬って、時計卿が進む。その後ろからおっかなびっくり、杖に炎の魔術を灯し、松明の様に掲げてメンカルが続く。
「まあ、全力で行けば……」
 それは最後の手段。今はただ、この迷宮を抜ける事だけ考えればいい。

『……辿り着いたか、猟兵』
 角を折られたウームーが厳かな声で出迎える。微かな煌きを見せるニコに、たっぷりと炎を蓄えたメンカル。その姿は寸分の代わりも無く――しかし、燃え尽きる前のろうそくの様な儚さを、それぞれが醸し出していた。
『産み直しの繭、見事通り抜けた――という訳では無さそうだな』
「だとしたら、どうだというのだ?」
 ニコは幾度と無く黄金の繭に触れていた。しかしヤドリガミたるニコは、悠久の時を超えて人の身を得た奇跡は、如何に超常の呪いと言えどその姿を直ちに還す事など適わなかった。
「ヤドリガミたる俺の時が巻き戻るという事は――つまり元の器物に戻るという事を示すのだろう」
 だが、その代償は大きかった。道を切り拓く為に犠牲にしたのは込められた主たちの思い。忘れたわけではない――それでも溶け出でる様に薄れていく生気は、繭の呪いが着実にニコの身体を蝕んでいる証左。しかし臆する事無く、ニコは懐から己たる懐中時計を取り出してウームーへと掲げる。
「この時計はな、百年愛された歴史を持っている。そして人の姿と心を得るという奇跡を知っている」
 その百年が、アルダワで培われた絆と思いが、時の番人たる役目を、過去を正しく葬るという猟兵の力を与えたのだろうか。ならば今こそ、その力を行使する時。
「迷う事など無かった。幾ら超常が俺の力を奪おうと――また取り戻せばいい」
 スッと懐中時計を仕舞い、再び長短一対の剣を取り出すニコ。迷いなど無い、命燃え尽きるまで戦うだけ。
「その時は、時計の針をもう一度正しく刻み、元の姿を取り戻すさ」
『御託はそれまでか。ならば行くぞ!』
 そして絢爛たる剣舞が幕を上げる。炎の照り返しが切先を煌めかせて、流れ星の様な剣筋が空間を彩った。

「十分、お前の事は理解した」
 一方、ニコがウームーを抑えている間にメンカルの超常が更に勢いを増していく。
「この世界は壊させない……シルバームーン、エコー、フルブースト」
 自身はガジェット研究者の一族、アルダワの者だ。故に大魔王との決戦を避けては通れない。不意に黄金の迷宮が――繭玉がぐらりと揺れて、メンカルを捕らえんとその糸を伸ばす。しかし。
「……この杖はくれてやる……暴食の炎で骸の海へと疾く還れ……!」
 まるで綿菓子の様に掬い取られた黄金の糸が、超常の炎に飲まれてより大きく肥大化する。ちりちりと火花を散らして、手元が無性に熱い。だが杖を手放すのはまだ早い――最大迄高めた威力をぶつけるには、もう少しだけ時間が必要だ。

『貴様の剣と我の剣! どちらが上か比べるか、え?』
「上も下も無い――正しい時の理を其の身で思い知って貰おうか」
 剣戟は続く。無数の巨剣がニコを掠めて、その度に鋼が火花を散らす。甲高い音が空間に響いて、ふと視線をずらした刹那、尋常では無い大きさの火球が出来上がっている事に、ウームーはようやく気が付いた。
『炎が、膨れ上がって――!』
 それは黄金の繭玉すら喰らい尽くして、膨れ上がったメンカルの全て。この世界を取り戻す、その為だけに練り上げた如何なる存在も燃料にする白色の炎。つまり、己が杖――シルバームーンすら喰らわせて。
「貪欲なる炎よ、灯れ、喰らえ。汝は焦熱、汝は劫火――」
「過去は過去に、未来は我らに――」
 炎にたじろいだウームー。その隙をニコが逃しはしない。超常が解放した無数の連続突きは、時計の様に正確な動きでウームーの鎧の隙間を刺し貫いた。
「魔女が望むは灼熱をも焼く終なる焔――!」
「俺達は先へ、未来へと進まねばならぬ!」
 じわりと鎧の隙間から血が滲んで、フィニッシュの長剣の一撃がウームーの肉体を一閃――血飛沫が空間を赤く染めると共に、白色の巨大な炎がウームーの上半身を埋めるように焼き尽くす。
「灰すら残さない……お前だけは」
 この世界に生ける者として、全霊を賭して戦ったのだ。
「時間厳守だ、骸の海へ還るがいい」
 その声が届いたのか、ウームーの影は炎に飲まれて次第に消えていく。
 過去と未来――二人の思いは、ここに邪な奇跡を打ち破ったのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

出水宮・カガリ
【壁槍】まる(f09171)と

急速な、若返り…まるも若返れば、十年、二十年……
…いや、いや、カガリが惑ってはいけない
繭の糸に触れては駄目だぞ、まる

【しろ】、まるとカガリを乗せてはくれないか
今こそ、お前の美しさをあの大魔王に見せつけてやる時だ
直接触れなければ、カガリ達は退行しないと思うが…
【しろ】が仔馬になってしまったら、すまない
その時は【籠絡の鉄柵】を大型化、浮遊させてまると共に乗ろう
【追想城壁】を展開させて、壁の内の若返りを無効化するぞ
魔王への追い討ちは頼む、まる

…少しだけ、ほんの少しだけ
まると過ごせる時間が伸びれば良いな、などと考えて
…やはり、今のまるだからいいのだなと、思って


マレーク・グランシャール
【壁槍】カガリ(f04556)と

触れれば若返る繭か
だが決して無敵とは言えまい
ユーベルコードによる結界の中に新たな結界を張り直せば、そちらの効果が有効であろうということ
も一つは万が一幼子に返ろうとも、猟兵としての戦闘知識やユーベルコートはそのままということだ

地に足を付けぬよう馬に乗せて貰うか
だがカガリなら必ず繭の効果を破るだろう
俺は無二の友の信じている
その時が好機だ
カガリと合わせて【大地晩鐘】を発動
敵の足が地に着いている間に死霊の王の顎と無数の槍で地に足を縫い止める
繭の効果が消え大人に戻ったらダッシュしてジャンプ
敵の羽根の付け根を狙い碧血竜槍を槍投げ
魔を滅ぼす山祇神槍のランスチャージで追撃するぞ



●ドラゴンズゲート
「急速な、若返り……まるも若返れば、十年、二十年……いや、いや、カガリが惑ってはいけない」
 出水宮・カガリ(荒城の城門・f04556)は目の前をの通路を塞ぐ黄金の繭玉を前に思案する。この力があれば友人ともっと長く、同じ時を過ごせるのでは……いや、駄目だ。そんな事を考えている場合じゃない。くるりと後ろへ向き直り、神妙な面持ちで相方の男に語り掛ける。
「繭の糸に触れては駄目だぞ、まる」
「ああ。しかし触れれば若返る繭か――それでも、決して無敵とは言えまい」
 まると呼ばれた男――マレーク・グランシャール(黒曜飢竜・f09171)は槍の束を担いで、鬱陶しく聳える黄金の繭玉を眺めていた。確かに触れれば厄介だが、最初から触れなければ――つまり、答えは既に出ていたのだ。
「カガリ、結界を――」
「そうか。その中に皆入れれば……しろ!」
 カガリがそう呼べば、連れてきた美白馬が嘶いて颯爽と歩み寄る。
「しろ、まるとカガリを乗せてはくれないか」
 その言を察しそっと首を下げるしろ。もたもたしている時間は無い。二人掛けで白馬に跨り、即座にカガリの超常が――城壁の幻影が何重にもしろの周りを包み込んだ。
「さあ行こう、まる」
 その結界は閉じ、隔て、守るモノ。古の黄金都市の城門が編み出した、永久の守護。
(耐えてくれよ、ここを抜けるまでの辛抱だ)
 バチバチと超常が干渉する音を耳にして、マレークは皆の無事を心から祈った。

『来たな、性懲りも無く』
「それが仕事でね。悪いが倒されてはくれないか?」
 不敵に槍を構えるマレーク。黄金の迷宮を抜けて辿り着いた先、ウームーは堂々たる威容で二人を待ち構えていた。
「しろ、そこで休んでいるんだ……まる!」
 しかし愛馬のしろは迷宮の呪いが足元から蝕んで、最後まで踏破しきった時、その身体を大きく縮めて仔馬となってしまう。それでもまだ、この戦いさえ終われば元に戻るだろう。代わりと言わんばかりに、カガリは魚骨めいた巨大な鉄柵を闇の中より取り出して、空中にずらりと広げた。
『面妖な器物めが――フン!』
 それこそカガリの正体たる器物の一部。宙を舞う異形に二人は跳び乗って、カガリは盾を、マレークは槍を手に、ウームーが放つ炎と衝撃を凌ぎ切る。
『やる様だが、それで終わりと思ったか!』
 再び、ウームーの咆哮と共に無数の巨剣が飛来する。それらを防ぐのはカガリの盾と、張り巡らせた不可視の念動。巨剣の切っ先をあらぬ方向へ逸らしながら、マレークが眼下のウームー目掛けて超常を呼び起こした!
「遅いぞ――あまねく大地を統べる地竜の王の力を今ここに!」
『何だと!? これは――』
 ぐらりと地が揺れて、無数の槍がウームーを縫い留める様に床から迫り出した。
『こんな小細工……!』
 そして超常は槍だけでは無い。強靭かつ巨大なウームーの四つ脚を影が――死したる地竜の亡霊が喰らい付いて、大地へ引き摺りこもうと頭を振った。
『させるものか、亡霊風情が!』
「動きが止まった! 今!」
 しつこく喰らい付く地竜と槍が、上空の二人から気を逸らした。その刹那、開かれた門より出でしは、マレークが投げ放った碧玉の竜槍。
「大魔王よ、お前は開いてしまったのだ……」
 投げられた竜槍は瞬く間に碧眼の小竜と成り、ウームーの翼の付け根に喰らい付く。空へ逃がしはしないという強い意志――そしてマレークが勢いをつけて、身一つでウームーへ飛び掛かった。
「荒ぶる竜を呼び起こす門を、今ここに!」
 その手には魔を滅ぼす山祇神槍、必殺の思いを込めてもう片方の翼を狙う。
『き、貴様ッ……!』
「そのまま骸に飲み込まれ、潰えるがいい」
 迎撃の衝撃も、炎も、全てカガリの守護が尽くを防いで、巨剣は超常の槍がその切っ先を押さえつける。両翼と四つ脚の自由を奪われたウームーは、成す術も無く地竜に引き摺られ大地へと沈んでいった。

「…………」
 戦いは終わり、地に足を付けた二人は避難していたしろの下へ。まだ小さなままだが、しばらくすれば元に戻るだろう、多分。
「どうした、カガリ?」
 カガリはそんなしろの姿を見て、そしてまるの姿を見て、少しだけ、ほんの少しだけ、まると過ごせる時間が伸びれば良いな、などと考えて。
「ん、いや……」
 やっぱり、限りある現在を共に生きようと考えた。
 まるは、今のまるだからいいのだなと、思ったから。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

荒谷・ひかる
【竜鬼】

わたしのコードは、精霊さんへ「お願い」することが必要……
でも、それすら力にされるなら、別の手立てが必要ですね
……初めての試みですが、やってみせましょう
リューさん……護ってくれると、信じています(愛らしくキスして鼓舞)

敵先制攻撃は、リューさんに抱きかかえて飛行してもらい全面的に対処してもらう
わたしは意識を閉じ、ひたすら瞑想
精神の集中により、精霊さん達と……ひいては『世界』と同調し【精霊さん応援団】発動
リューさんへ、わたしと同調した『世界』からの祝福を授け強化し
地震や鉄砲水等の災害(精霊魔法)で援護する

『世界』は願わず、望まず、祈らず
ただ、荒ぶる力を振るい、時に生命へ祝福を授けるのみ


リューイン・ランサード
【竜鬼】

UC対策
UCによる強化武器&【炎の属性攻撃】で、迷宮で一番薄い箇所=天井の繭を焼き切り脱出口作成
即座にひかるさんを【怪力】でお姫様抱っこし、UC&翼&【空中戦】で上空に脱出

大魔王の攻撃は【第六感、見切り、空中戦、残像】で躱し、更にUCで強化したビームシールド【盾受け、ひかるさんも包むオーラ防御】で受ける

「ひかるさんを護る!」
宣言した決意をひたすら強め、願いを喰らう大魔王の力を【限界突破】し、ひかるさんと想いを繋いだ精霊さん達の力を借りて大魔王の力を超える!

「一人では無理でも、ひかるさんと二人なら勝つ!」と言い切り、精霊さん達の攻撃に同調して【光の属性攻撃・全力魔法・高速詠唱】を放つ!



●愛の輪郭
「ここに長居しては危ない。ひかるさん!」
 うねる迷宮に張り巡らされた黄金の繭、触れれば産み直しの時まで肉体が遡るという超常は、年若いリューイン・ランサード(竜の雛・f13950)と荒谷・ひかる(精霊寵姫・f07833)にとってこれ以上無い恐るべき攻撃だった。しかしこの迷宮を抜けなければ、大魔王は倒せない。
「はい。リューさん……護ってくれると、信じています」
 可愛らしくリューインの頬にキスをして、精一杯の鼓舞を――もう精霊さんに頼ってばかりの女の子じゃない。ひかるの愛を受けてリューインが超常を、竜神の力を自らに降ろす。
「――ひかるさんを護る!」
 静かに猛るリューイン。三対の龍翼と二股の竜尾が黄金に輝いて、始原の元素が莫大な炎を巻き起こす。片手でしっかりとひかるを抱きかかえたリューインは、炎で繭をひたすらに焼き切って更に先へ、先へと空を進んだ。
(わたしのコードは、精霊さんへ「お願い」することが必要……)
 ひかるは意識を閉じ、ひたすら瞑想する。願いや祈りすら喰らうモノが相手ならば、願いそのものが力たるひかるにとって、その相性は最悪だろう。
(でも、それすら力にされるなら、別の手立てが必要ですね)
 だからこそ、いつもとは違う戦い方が必要だ。愛する男の鼓動を耳にしながら、静かに意識を研ぎ澄ます。きっと出来ると、己を信じて。
(……初めての試みですが、やってみせましょう)
 不意に空気の流れが変わって――ウームーが聳える空間に二人は躍り出た。

『今度はつがいか。ならば見事に爆ぜてみせよ!』
 猛々しく極彩色の炎を放つウームー。その五体は繰り返された戦いの中、ボロボロに傷つけられていた。にも拘らず剥き出しの闘争心が幾つもの殺意を振り撒いて、空中より飛来した二人を容赦なく衝撃と巨剣が襲う。
「誰が爆発なんか……!」
 殺到する殺意の群れを光の盾で凌ぎ切って、お返しと言わんばかりに魔法剣の刀身から光の波動で薙ぎ払うリューイン。
「一人では無理でも、ひかるさんと二人なら勝つ!」
『そんなモノで足りると思うな、小童共!』
 光の波動を光輪のエネルギー衝撃波が相殺して、羽ばたきが無数の烈風を生み出せば、不意に乱れた気流がリューインの体勢を崩す。
「……まだだ、僕がひかるさんを……絶対に、守る!」
 三対の翼を羽ばたかせて乱気流に拮抗するリューイン。刀身から迸る光が邪悪な衝撃を打ち破り――そして、静かにひかるがその眼を開く。
「はい、二人なら……この祝福を」
 ぼそりと呟いて、リューインの剣にひかるの思いが宿る。世界に祝福されし精霊の寵姫が、その超常を発揮したのだ。
「これが、祝福……」
 青光りする刀身を包み込む様に、巨大な結晶が氷柱の様に伸びて新たな刀身を形成――世界の意志を体現するその姿は、美しくも恐ろしい。
「『世界』は願わず、望まず、祈らず――ただ、荒ぶる力を振るい、時に生命へ祝福を授けるのみ」
『それがどうしたと……言うのだ!』
 激高するウームー、大魔王は勘づいていた。目の前の儚げな少女が既に、この迷宮どころか世界と繋がってしまった事に。
『人の身でそんな事をすれば……ただでは済まんぞ、鬼の子よ!』
「それでも、やらねばならぬ時が――あるのです」
 ぐらりと、ウームーの体勢が崩れる。不意に大地が大きく揺れて、地面に亀裂が走ると共に周囲が急速に凍結していったのだ。
『馬鹿な、天候に地形まで操るとは、そこまでの力を……!』
 気圧を変え分子運動を制御して、更に地の底の莫大なエネルギーすら使いこなす。ひかるの応援は最早、世界を伴う超常に他ならない。
「力が、漲った!」
 そして仲間には絶対の加護を。降り注ぐ巨剣を斬り払って、放たれる衝撃波を羽ばたきで押し返す。世界に祝福された竜神は、美しい尾を揺らしながら最大の一撃を――極限まで研ぎ澄ました魔法剣を振るって、長大な光の刃がウームーを炎ごと真っ二つに両断した。
『そ、んな……世界は……!』
 あの娘を選んだというのか、裁定者にして大魔王たる我を捨てて……。
 真っ二つに両断されたウームーが地割れに飲み込まれ、消える。
「やったかな、ひかるさん――!」
 顔を下げてひかるを覗き込んだリューインが、その異変を察知して慌てて地上へと降りる。極限まで集中した所為か、どうにもひかるの呼吸がおかしかったから。
「大丈夫? あいつはもうやっつけたから……」
「はい、わたしも大丈夫……です」
 不意に視界に入ったリューインの顔に頬を赤らめながら、そっとその手を握るひかる。
「うん、それなら……良かった」
 掴まれた手を握り返して、二人は微笑み合う。
 そして再び、影が重なった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

エル・クーゴー
【物九郎(f04631)と】
●POW


●対先制
当人許可に基き、マスター・物九郎の精神野へ電脳魔術に因る【ハッキング】を実行
今この瞬間、マスターの心より社会的動物としての思考を【吹き飛ばし】、原初の獣性を極端に表出させます

願いもせず
望みもせず
祈りもしない
大魔王が喰らい得る精神活動を有さない、己の自然の侭にただ獲物を狩る、それを成す為だけのヒトガタの獣として擁立します


●反撃
・敵強化に寄与し得ない今の物九郎の状態を示し、これを以って物九郎一人分からの強化獲得の不発を指摘/実証とする

・【狩猟の魔眼と砂嵐の王】発動
・電脳世界で地形と敵味方の布陣を走査、敵を討つに最適な空間座標へ物九郎を送り込む“門”を設置


白斑・物九郎
【エル(f04770)と】
●POW


ワイルドハント、白斑物九郎
アルダワのフォーミュラを狩りに来た


●対先制
エルに俺めの精神野への干渉を許可
こんなおっかねー施術、コイツ以外にゃまず頼みませんわ
――信頼してますからな、俺めの副官

我が身これより畜生道に入る
有るのは只々狩猟本能(野生の勘)

願わず
望まず
祈らない
テメエの権能が知性体に刺さるなら、俺めは獣でいてやりまさァ!


●反撃
・エルの“門”設置に沿い敵に迫る
・エルの【狩猟の魔眼と砂嵐の王】が命中した瞬間を以って己の【砂嵐の王と狩猟の魔眼】発動とする

・敵コードを封印した上で高威力を叩き込む、合体ユーベルコード×2、二人だけの百鬼夜行[ワイルドハント]の連携奥義



●ワイルドハント
「しっかし、見せ付けてくれますなぁ」
「覗きが趣味とは最低ですね」
 ひたひたと狭い通路を歩くのは白斑・物九郎(デッドリーナイン・f04631)とエル・クーゴー(躯体番号L-95・f04770)は、これまでの戦闘映像を見ながらぼそりと呟いていた。それは幾度と無く転移を繰り返す敵を追い詰める為、転移座標に関わる情報をひたすら収集していたからだ。
「仕方ねえっす、敵の居場所を探るのが――」
「はい、私達の仕事です。着きました」
 そこは先の戦場より遥か下方、地の底と呼ぶに相応しい、暗闇が支配する暗黒の空間だった。そして奴が――ウームーは常の様に、赤と青の炎を侍らせて猟兵を待ち受ける。
『世界すら手にして尚、まだ我との戦いを望むか』
「世界? ああ……そっちじゃねえっすよ、用があるのは」
 どうやらこの大魔王は猟兵とは何なのかを完全に理解してはいない様だ。その名の通り、猟兵がやるべき事はただ一つ。魔鍵を担いで前に出た物九郎が啖呵を切る。
「ワイルドハント、白斑物九郎――アルダワのフォーミュラを狩りに来た」

『そうか、猟兵。お前たちの望みは』
「そんなモノはありません」
 揺さぶりをかけるウームーに割って入るエル。そのまま物九郎の後ろへ回り込み――当人許可に基き、マスター・物九郎の精神野へ電脳魔術に因る『ハッキング』を実行。
『叶わぬ願いと知って尚、立ち向かうか』
「いいえ、そのようなモノも」
 それは大魔王へのユーベルコード封じの秘策――今この瞬間、マスターの心より社会的動物としての思考を『吹き飛ばし』、原初の獣性を極端に表出させます。
『ならば祈れ、せめてもの生存を』
「それすらも要りません」
 一歩間違えれば命すら落としかねない所業――大魔王が喰らい得る精神活動を有さない、己の自然の侭にただ獲物を狩る、それを成す為だけのヒトガタの獣として擁立します。
「我が身これより畜生道に入る。有るのは只々狩猟本能」
 こんなおっかねー施術、コイツ以外にゃまず頼みませんわ。口元を歪ませて物九郎がニヒルに呟く。
「願わず、望まず、祈らない――テメエの権能が知性体に刺さるなら」
 それでも――信頼してますからな、俺めの副官。
「俺めは獣でいてやりまさァ!」
 そして、災厄の様なけものがうまれた。

 荒れ狂う嵐の様に物九郎は縦横無尽に暴れ回る。手にした魔鍵を振りまわし、ウームーの巨体へ絡みつく様に纏わりついて。それを追い払わんと衝撃を放ちながら、ウームー自体も巨剣を一つその手に取る。しかし。
「ユーベルコードの不発を実証――」
 力が無い。欠片程の希望すら無いのだから――エルの中にあるプログラムだけでは、ウームーの腹は満たされないだろう。明らかにこれまでの戦闘と比較して冴えの無い動きが、エルの超常の発動を裏付ける。
「反撃開始。パターン7554、ゲート形成――実行」
 幾万通りものシミュレーションデータから確実にウームーに攻撃を加えられるポイントを選定、その場所に物九郎だけを転移させる“門”を出現させるエルの超常。その真価は、二人が揃った時に初めて発揮されるのだ。
「過去の亡霊恐るるに足らず、我等二人だけの百鬼夜行――」
 ぐらりと、ウームーの足元が歪んで、歌う様に獣が姿を現す。そして後脚の付け根辺りを猛烈な砂嵐が絡め取り、がら空きの腹部へ魔鍵の痛打が襲い掛かった。
「座標確認、全武装開放」
 それが合図となって物九郎の超常が発動する。敵コードを封印した上で高威力を叩き込む、合体ユーベルコード――ワイルドハントの連携奥義。
「「さあ、全てのオブリビオンを狩り尽くせ!」」
 空中には対物ライフル、機関砲、突撃銃、熱線銃――ありとあらゆる射撃兵装を懸架したエルの姿が。アームドフォートとリンクしたFCSが、目に映るウームーの全身を真っ赤に染め上げ――弱り切った大魔王の正面に、鉄の嵐を巻き起こす。
「ハァ……ハァ……俺めもまだまだ、行けますぜ」
 そして挟み込む様に、大きな魔鍵を担いだ物九郎がウームーの下腹を容赦なく殴り倒す。ハッキングによる疲労も相当だが、本能がそれを許さない。一撃ごとに広がるモザイクが心ごとウームーの力をこそぎ落として、天より降り掛かる鋼の雨がその巨体を激しく撃ち付ければ、最早大魔王だった何者かがその姿形を失くすまで、百鬼夜行の進軍は止まらないのだ。

 後に残されたのは砕け散った剣と、ズタズタに裂かれた翼と、崩れ落ちた巨大な尻尾――しかし。
「奴さん……また逃げたっすか」
「しかし反応は微弱、追撃は――不要かと」
 赤と青の宝玉が姿を消して、抜け殻となったウームーの巨体がバラバラと崩れ落ちる。それ程までに苛烈な攻撃――手も足も出せなかったのだ、あの大魔王が。
「そうっすね。まあ次で最後でしょうな」
 奴のエネルギーは極限まで減っている。そこまで二人の猛攻が減らし切ったのだ。
 この先が最後――袋小路だ。終焉の刻まで、あと僅か。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

リア・ファル
【Dトリガ】
SPD

願いも望みも祈りも『届ける』のがボクの使命
まして今回は独りじゃない
ボクの本領みせたげる

ただ、呪詛方面のプロは居ない
出てくるのは『セレブラム・オルクス』だろう
厄介だが、凌いでみせる

「行くよ、イルダーナ! 二人に反撃の機会を届ける!」
『イルダーナ』で飛び回り、セレブラムを引きつけ囮をする
(操縦、空中戦、時間稼ぎ、逃げ足)

破魔の弾丸も使えば、充分に目障りだろう?
(制圧射撃、破魔)

・反撃
「ここからは8対2だ! いくよ!」
セレブラムの相手はこっちのセレブラムに任せて、
光学(迷彩)発動しウームー戦へ合流

UCで魔王に弱点を!
(スナイパー)

「頭と胸の宝石! ヴィクティムさん!匡さん!」


鳴宮・匡
【Dトリガ】

あいにく、誰かに願うことも祈ることもないんだ
望んだものは自分の手で掴む主義でね

自分の中にあるものが、恐怖、といえるかはわからないけど
『セレブラム・オルクス』に対する警戒心は、多分、強いだろう
――自分の中にも、殺してきた自身の情念が変じた“影”がある
だから、呪詛というものの脅威は、わかるつもりだ

連携してことに当たる中で
俺の役目は、敵へ一撃を届かせることだ
二人の対応が実ることを信じて
大魔王本体の動きから目を切らずにいるよ
敵の攻撃を見切り、或いは受け流して自身を守ることに専念
肝心な時に動けなきゃ、話にならない

右腕の銃に影を纏わせ
リアが作った敵の弱点を精確に撃ち抜くよ
……さすがに外さないぜ


ヴィクティム・ウィンターミュート
【Dトリガ】

ケッ、大魔王相手に大立ち回りなんざ…俺の領分を超えてる
だが負けられない。敗北はナンセンス
勝負だ…その嵐、征してやるぜ

俺たちはスピリチュアルな方面に明るくない
これまでの形態で一番相手にしたくない、厄介な…正直恐れてると言ってもいい『セレブラム・オルクス』が出て来るだろう
キツイが、これはチャンスでもある

『Distribute』
呪詛の攻撃を、一発ナイフで受ける
防御力向上に加えて、【ハッキング】で身体能力を増強
受け流すように呪詛をやり過ごし──コピー完了

お前は最強だ
だから、これまでの形態に対する『恐怖』なんて存在しない
故に──5体の魔王は今、お前の敵となって現れる
悪いね、俺は…欲張りなんだ



●嵐の玉座
 アルダワの地下空洞。これまでの地の底とは違う淡い光が中に浮かぶ赤と青の宝玉を照らしていた。それは紛れもない大魔王の核たるパーツ。
「ほらな、やっぱりココだ」
 静謐な空間に若い男――ヴィクティム・ウィンターミュート(End of Winter・f01172)の声が響く。三つの影がふわりとアルダワの空洞に姿を現して、宝玉を囲む様に並び立った。
「あの石ころが、大魔王――?」
 巨大な人馬の様な奴じゃなかったっけ? リア・ファル(三界の魔術師/トライオーシャン・ナビゲーター・f04685)がその様子を訝しげに見つめて、電子の目で走査を――途端に実態が、白銀の鎧に身を包んだウームー・ダブルートゥの姿が浮かび上がった。
「まさか隠れてる心算だったとか、な」
 突撃銃を手に鳴宮・匡(凪の海・f01612)が呟く。実際の所どちらでもいいと――倒す事に変わりは無いのだから。
『…………未だ勝利を願うか、闘争を望むか、生存を祈るか、猟兵』
 ウームーが厳かに声を上げる。その声色には恐れも焦りも無い。淡々とマシンの様に、希望を喰らい放つ機能としての言葉だった。
「あいにく、誰かに願うことも祈ることもないんだ。望んだものは自分の手で掴む主義でね」
「ケッ、それにしても大魔王相手に大立ち回りなんざ……俺の領分を超えてる」
 にべも無く返す匡と悪態をつくヴィクティム。彼等にしてみればそんな囁きは思考するまでも無い、神頼みなんて何の利益も無い世界で、命をすり減らして生き抜いて来たのだから。
「だが負けられない。敗北はナンセンス」
 だからこそ、甘言を弄するこの存在に、負ける様な事があってはならないのだ。するりと生体ナイフを抜いたヴィクティムが逆手にそれを構えれば、宇宙バイク――『イルダーナ』に跨ったリアが言葉を続ける。
「願いも望みも祈りも『届ける』のがボクの使命」
 それは運び屋としての矜持か、ヒューマンインターフェースとしての誇りか。人の望みを叶えるマシンたるリアの胸中は、決して大魔王に引けを取らない。
「まして今回は独りじゃない――ボクの本領、みせたげる」
 スロットルを開き、爆音が空間に響き渡る。白銀のマシンはそのまま滑る様に空を駆けて、その動きを目で追ってウームーの両翼が巨大な嵐を巻き起こす。
『いいだろう。小細工は『無し』だ』
「勝負だ……その嵐、征してやるぜ」
 ヴィクティムのコールと共に、最後の戦いが始まった。

(自分の中にあるものが、恐怖、といえるかはわからないけど)
 匡は駆ける。自分の中にも、殺してきた自身の情念が変じた“影”がある――それこそが、ウームーが呼び起こす分身の切っ掛けになるだろうと思って。
(俺たちはスピリチュアルな方面に明るくない――恐らく出てくるのは)
 ヴィクティムが距離を詰める。これまでの形態で一番相手にしたくない、厄介な……正直恐れてると言ってもいい、悍ましい姿のアイツを脳裏に描いて。
(出てくるのは『セレブラム・オルクス』だろう。厄介だが、凌いでみせる)
 この中に呪詛方面のプロは居ない――それでも、だからこそやらねばならないのだ。そしてリアの想像と共に、巨大な影が形を成して――セレブラム・オルクスが三人の前に立ち塞がった。しかし、ここまでは想定通りだ。
「行くよ、イルダーナ! 二人に反撃の機会を届ける!」
 弾種切替、イルダーナの機銃を破魔弾頭に変更。これならば多少は効果がある筈――張り巡らせた弾幕がオルクスの進路を遮って、リアは対象をあるべき地点へと誘導する。
 キツイが、これはチャンスでもある。反撃の『Distribute』――呪詛の攻撃を、一発ナイフで受ければいい。顔色一つ変えずに、リアの誘導に従って這い寄るオルクスを見上げヴィクティムは己の得物を正面に構えた。飛び掛かる汚泥が、呪詛の籠った超常の呪いをナイフで捌けば――それだけでこのディールは俺達の勝ちだ。
『行け、オルクス』
 静かにウームーが告げる。その攻撃に合わせて自身も、背負った光輪から無数のエネルギー衝撃波を――しかしその一撃は一発の銃弾に防がれる。
「邪魔はさせない。大人しくしてもらおうか」
『ほう、この期に及んで我を拒むか』
 匡の手には武骨な狙撃銃が――それだけでウームーを討てるとは思ってもいない。ただ、今だけはどんな手段を使ってでも、奴を引付ける必要がある。
「――趣味じゃないんでね、お前みたいなのは」
 スコープの先にはウームーが。もう一撃当てるか――刹那の思考が脳裏を過った時、スコープの中から突如、ウームーがその姿を消した。

「お前は最強だ。だから、これまでの形態に対する『恐怖』なんて存在しない」
 それはヴィクティムの声。発動した超常がバチバチとヴィクティムを――それだけじゃない。匡も、リアも、超常の加護が不可視の防御フィールドを展開させて。
「故に――5体の魔王は今、お前の敵となって現れる」
『何をした、貴様!?』
 そして現れたるはこれまで刃を交えてきた5体の魔王。恐怖が無ければ、ウームーが全てを呼び出すという恐るべき超常を、ヴィクティムはコピーしたのだ。
「悪いね、俺は……欲張りなんだ」
 最終形態たるウームーが過去の自分を恐れる事など無い。あるのは純然たる戦意のみ――だからこそ、5体の魔王は枷を易々と乗り越えて、猟兵の下へと現れたのだ。
「ここからは8対2だ! いくよ!」
『舐めるな小娘、誰が打ち止めと言ったか……!』
 しかしそれはウームーも同じ――猟兵達はオルクスへの恐怖を、しかし呼び出された魔王達はどうだろうか。
「そうか――分身に対してユーベルコードを使ったか。だがな!」
 続々とウームーの背後に5体の魔王が集結して、大地を揺らして空を震わせる。戦場は魔王同士が戦い合う、混沌じみた様相をここに示した。
「それでも、ウームーは一つだけ」
 イルダーナが天高く舞い上がり、倒すべき敵を見据える。どちらにせよやるべき事は変わらない。魔王同士がそれぞれ潰し合えば、邪魔をする者はもういない。
「来い! フォトンスナイパーライフル!」
 超常が、発揮された必殺の光子狙撃銃が空間を揺らして顕現する。精緻なレティクルを展開し、物理的・魔術的なウームーの弱点をそこに示す。
「弱点が無ければ作ればいい――この刻印弾で!」
 狙いは二カ所――ここに来た時目にした二つの宝玉。それさえ破壊すれば、奴は機能を失うとリアは確信していた。距離、風速、風向、気圧――様々なデータを電脳が整理して、目元のディスプレイに狙うべき角度が表示される。
「頭と胸の宝石! ヴィクティムさん! 匡さん!」
 リアが叫ぶ。その時にはもう刻印弾は音の壁を超えて、ウームーの胸元と頭上にしっかりと弱点を創り出していた。
「この距離でウィリアム・テルの真似事かよ……上等だ」
 右腕を高く掲げたヴィクティムが全身のサイバネ組織を活性化、電脳が導いた最適解に辿り着く為、己の身体をガッチリと大地に固定させて右腕を展開――クロスボウが弦をピンと張り詰めて、強化された網膜のARターレットが弱点たる宝玉を捕らえる。
「青い方は俺が狙う。赤を頼む」
 ヘッドセットより匡の声が――展開した狙撃銃に右手を添えて、流し込むは超常の破滅の因果。遥か遠くより僅かに反射したスコープの光が、尋常では無い匡の狙撃位置をウームーへ示す。
『愚かな、その位置で我を仕留めると!』
「ああ……さすがに外さないぜ」
 その嘲笑が最後――放たれた弾丸と矢は正確に、リアが刻んだ弱点を狙撃した。核たる赤い宝玉が、力の源たる青い宝玉が崩れ落ちて、そしてウームーは遂に力尽きる。

『どうして、希望が……』
 力を失い転移する事も敵わず、大魔王の脳裏を過ったのは『希望』という名のアイデンティティ。それを求められない、しかしそれが無ければ――人は生きてゆく事など出来ぬはず。
「器じゃ無かったって事だろ、ウームー・ダブルートゥ」
 その心は、人々の希望に耐えられる程のモノじゃあ無かった。
「希望――今は仲間がいる」
 そして希望は、得体の知れない何かに縋って手に入れるモノじゃあ無い。
「縋るんじゃない、共に進むんだ」
 それこそが、人々が未来に向けて進む事が出来た原動力なんだ、と。
「じゃあな」
 小さな呟きと共に、ウームー・ダブルートゥは空に飲まれて消えた。
 嵐は止んだ――座標消失、転移反応なし。
 恐るべき心を弄ぶオブリビオン・フォーミュラは、遂に倒れたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年02月25日


挿絵イラスト