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封じの魔鏡と奉じる鈴響

#アルダワ魔法学園

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●鏡の檻
 しゃらん、しゃらんと鈴の音が静かに響く。
「祓いましょう。封じましょう。奉じましょう」
 幼い少女のような声が、詠うように紡がれる。
「邪まなる者を。悪しき者を。永久に、永遠に、とわに。闇の帳に閉じ込めましょう」
 それの声の主は、巫女服を纏った狐の少女……否、少女の人形。
「鏡ひとつ、邪を映し。鏡ふたつ、悪を捕え。鏡みっつで、魔を封ず」
 無限に映し出される鏡の中の少女が、その表情を変える。
 無表情であるはずの彼女が、怒り、悲しみ、嘆き、妬み……負の感情を描く。
「祓いましょう。封じましょう。奉じましょう。この身が物言わぬ石となり果てるまで」
 だが惑わされず……否、感情無き人形には惑いなど、感情など元より無い。
 しゃらん、しゃらんと鈴の音が彼方に響く。


「鏡は古来より神秘的な物とされています」
 ソフィーヤ・ユリエヴァ(人間の聖者・f10512)が語り出す。
「邪を弾く魔除けとされる一方、合わせ鏡は魔の世界に通じるとも言われていますね」
 金属や硝子の加工技術が洗練された世界では有り触れたものだが、金属を磨いた美しい鏡は芸術品であり、
 あまり詳しくはないのですが、とはにかみながら微笑む。
「今回のダンジョンは、フロア丸ごと鏡張りとなっています」
 鏡酔いは馬鹿にできない。
 何せ距離感が掴めず、まるで異空間に迷い込んだかのようだ。
 ただそれも右手法など、目を閉じ手を壁に当てながら歩くなどでも解決できる。
 だが、それは通常の鏡酔いであればこそ。
「主因は、迷宮に閉じ込められたドッペルゲンガーによるものです」
 鏡酔いらしき影響は、オブリビオンによる精神攻撃や幻惑だ。
 どのような幻覚を見せられるかは、猟兵それぞれ違ってくるだろうが……。
 傾向的には、『過去の自分やそのトラウマ』、『現在の自分の抱える悩みや不安』。
 人の心を読み、そう言ったものを突いてくる。
「ただそれだけならば、学生達でも対応できるのですが……厄介なのはその守り役です」
 狐巫女型のミレナリィドール、その名を『ヴェルぺ』。
 本来オブリビオンを、邪なる者を祓うはずの彼女は、もはやオブリビオンと化した。
 そのフロア全てに存在する者を『邪』と見なし、打ち倒そうとする。


「それでは、今回皆様にお願いする三つの依頼です」
 ソフィーヤは握り拳を見せ、一本ずつ指を立てる。
「1つ。精神攻撃に耐えながら鏡の迷宮の奥へと進んで下さい」
 ドッペルゲンガーが精神干渉し、心を読み取ってその姿と言葉を借り、弱らせて来る。
 尤も、彼らは心の表層しか覗けない。強く心を保てば、騙せるかもしれない。

「2つ。オブリビオン、『ドッペルゲンガー』の集団を撃破してください」
 奥へと進めば、オブリビオンが本体を現す。
 姿を真似、技を模倣し、心を読み取るオブリビオン、ドッペルゲンガー。
 一体一体はオリジナルには到底敵わない上が、数がいる事が厄介だ。

「3つ。狐巫女型ミレナリィドール、『ヴェルぺ』を打ち倒してください」
 かつて人の守り役であった彼女は、今はダンジョンの守護者として君臨している。
 彼女は相手の切り札……ユーベルコードを無効化にする長けている。
 敢えてユーベルコードに頼らない戦術をメインに据えると良いかもしれない。

「もはや彼女は……役目を終えた者です。どうか、安らかな眠りを与えてください」
 ソフィーヤは慎重に言葉を選ぶ。
 オブリビオンと化した巫女が、骸の海に捨て去る『過去』でしかないとしても。
 役目に殉じた者には、安息が必要だろう。そうでなくば、報われない。
 猟兵達に深くお辞儀した。


アマガエル
 8つ目のオープニングとなります。アマガエルと申します。
 心情重視のシリアスめなシナリオです。

 1章は鏡の迷宮により自分を見つめ直す『冒険』
 2章は自分の姿を模倣するドッペルゲンガーとの『集団戦』
 3章は『邪を祓う巫女』ヴェルぺと対する『ボス戦』
 1章では自らの不安、過去のトラウマ、闇、そう言ったものを、そしてそれに打ち勝つ想いがあればカッコいいかと思います。
 「まんじゅうこわい」のように本当は怖くない物を思い浮かべても面白いですね。
 それでは皆様の心強いプレイングをお待ちしております。
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第1章 冒険 『誰の為の鏡』

POW   :    鏡を割っていく、鏡酔いを克服する。

SPD   :    急いで駆け抜ける、鏡酔いを無視する。

WIZ   :    鏡を塞ぐ、鏡酔いを対策する。

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

曽我部・律
精神に対する攻撃など交代人格の絶には関係ないこと。
奴は人間にある悩みや不安を持ち合わせていない。
己の破壊衝動に任せ、鏡のダンジョンを破壊し尽くせるはずだ…。

だがなぜか今回の鏡の迷宮を絶に任せる気にはならない。
自分自身で過去のトラウマを克服したいからか?それともここに死に場所を求めているのか?

いずれにせよ、私は敵が見せてくる幻覚に正面から立ち向かう気でいるらしい。
…策が無いわけじゃない。
敢えて愚かな行動をとる私に、幻覚を生み出しているオブリビオンが「疑問」を抱きさえすれば、【謎を喰らう触手の群れ】で追尾して本体を貫くことができるはずだ。
その時に私の意識が残っていればの話だが…。

絡みアドリブ歓迎



 天井、壁、床。至る所全てが、鏡張りの空間。
 その中に頬がこけ、歳よりもくたびれた男の姿が数多映し出す。
 曽我部・律(UDC喰いの多重人格者・f11298)は、もう一人の人格、『絶』を思い浮かべる。
「……奴は人間の人間にある悩みや不安を持ち合わせていない。絶ならば……」
 人間の弱さを捨て去った人格だ。精神攻撃など、物ともしないだろう。
 己の破壊衝動に任せ、鏡のダンジョンなど破壊し尽くせるはず。それは、ある種の信頼とも言える。
 だが、律は今回絶に任せる気にはなれなかった。
 それは自分自身で過去のトラウマを克服したいからか。
 ――それともここに死に場所を求めているのか。
 律自身にもわからなかった。

「……いずれにせよ私は敵が見せてくる幻覚に正面から立ち向かう気でいるらしい」
 もう一人の自分が表出するたび、混濁する意識と失われゆく自我。
 どうしてそうしたいか、その理由はわからない。
 けれどそうしたいという想いは、確かに『自分の意志』だと確信できた。

 奥へと歩んでいると、鏡の中に見慣れぬ姿が映る。
 いや、それは昔の……妻と息子と共に幸せに過ごしていた頃の自分だ。
 他の鏡に映った今の姿と比べるとこうも差があるものかと、律は自嘲気味に笑う。

『今度の結婚記念日には、どこか旅行に行こうか――』
『なぁ、今の聞いたか、確かにパパと呼んだよな? あぁ、もう喋れるようになるなんて、この子は天才だ――』

 スクリーンのように映し出された、いつかあったかもしれない幸せな光景に思わず足を止めたくなる。
 自我と共に喪いゆく記憶を蘇らせてくれるのでは……そんな衝動に駆られる。

 だがそれは幻影だと知っている。痛いほどに、よく知っている。
 重たくなる脚を前に進めていくと、今度は趣向が変わる。
 目も覆いたくなる暴力を、『自分』が振りまいたその直後。
 返り血に塗れた自分、『絶』。

『――何故お前はさっさと俺に変わらない? お前みたいな弱い人格が、いつまでその身体の主人面していやがる?』
 律は思わず笑ってしまう。
 自分にも分からない事は、心を読むドッペルゲンガーでも分からないらしい。
「ああ、本当に何故なんだろうな……自分でも愚かな行動だと思うよ」
 ここにいるのは鏡像。本体がどこにいるかは分からない。
「だが、その『謎』は喰らってやる……――行け、『謎を喰らう触手の群れ』よ」
 律は鏡に向けて手をかざし、ぐっと拳を握りしめる。
 遠く、ダンジョンの奥のほうで大きな物音が響いた後、絶を模した鏡像が律自身の姿へと戻った。

「……音がしたのは……あちらか」
 恐らく召喚された触手が、この幻を見せたドッペルゲンガーに襲い掛かった音。
 ならば進むべき道は定まった。
 律はロケットペンダントを握りしめる。
 確かに存在する思い出が、律の存在を繋ぎ止めてくれる事を祈って。

成功 🔵​🔵​🔴​

雛菊・璃奈
鏡…そういえば、実家の神社にも魔鏡とかあったかな…。多分、滅ぼされた時に紛失してると思うけど…。
…あぁ…こうやって過去の事を事を少しずつ引き出して…。


璃奈のトラウマは『オブリビオンの侵攻による家の滅亡』と『奴隷時代』の二つ。家の滅亡で家族を失い、奴隷時代の体験(隷属、暴行、凌辱等)が元で感情表現を失った為、根深い。

迷宮へは【オーラ防御】を展開し前進。精神攻撃による過去のトラウマに精神を侵されつつも、逆にそれで【呪詛】を高め、狐九屠雛を展開。迷宮の道全ての鏡を凍てつかせ曇らせ、使えなくして全身する。


決して乗り越えたわけじゃないけど、戦うと決めた日から立ち止まるわけにはいかない…。

アドリブ歓迎



 人形のように整った顔と表情で、眉一つ崩さない少女雛菊・璃奈(魔剣の巫女・f04218)が鏡の迷宮を進んでいく。
 曲がり角に差し掛かり、思わず手に付いた鏡を手でなぞる。
「鏡……そういえば、実家の神社にも魔鏡とかあったかな……」
 ふと感じた懐かしさに、記憶を手繰る。
『夜中に鏡を見てはいけないよ、鏡には魔が潜んでいるからね』、なんて優しく言い付けられたのを思い出す。
「多分、滅ぼされた時に紛失してると思うけど……」
 ちくりと胸が痛むと、一瞬鏡の中の自分が幼い頃の姿に変わったように見えた。
「……あぁ……こうやって過去の事を事を少しずつ引き出して……。」
 懐かしく幸せな過去を思い出せば思い出すほどに、『その後』に記憶の時計の針が進んでしまう。
 璃奈が自身の感情と共に、封じていたはずの記憶が紐解かれる。
 鏡の中に、記憶から再現された鏡像が浮かび上がる。
 炎に包まれる家、何もできない無力な自分、捕える何者かの手――。
 オーラの防御を展開しながらも、足早にダンジョンを進むほどに時が進む。
 首輪を付けられ、手枷で拘束された自分。
 屈服させるために、あるいは気紛れに振るわれた暴力で傷付いた自分。

 四方八方、天井や床に至るまで鏡で覆われた空間。その中に映る、自分。
 先程まで気にも留めていなかったはずのそれが、あらゆる角度から誰かに見られて値踏みされているような感覚に襲われる。
 大丈夫、写っているのは、自分の姿だ。
 決して、自分を物のように扱い、下卑た目で見るあんな奴らのものでは――。

「……っ! 狐九、屠雛……っ!」
 璃奈は気を落ち着かせようと、思い描き引き出してしまった忌まわしいその姿に、背筋に悪寒が走る。
 咄嗟に、凍てつく絶対零度の霊火を放ち、周囲の鏡を凍てつかせる。
 凍結された鏡によって、冷たい空気が気温を下げる。
「っ、はぁ……はぁ……っ……!」
 苦しげに荒く白い息を吐きながら、自分の身を必死に掻き抱く。
 自分の身体が自分だけのものだと確認する。
 自らの身体から呪詛を生み出すように、黒いオーラが沸き上がる。
 どんなに押し殺して隠していても、その心についた傷は根深く、未だ苛む。
「……決して、乗り越えたわけじゃない……」
 璃奈は幼子のように蹲ったまま、きゅっと唇を噛み締める。
 腰に帯びた魔剣が、カタリと揺れる。まるで、主人を心配するかのように。
 璃奈は魔剣の柄に手を添え、そっと立ち上がる。

「けど、戦うと決めた日から立ち止まるわけにはいかない……」
 自らを傷つけようとする者へ反逆する、報復の剣。
 璃奈は自らが纏った呪詛を、霊火へと変えて放つ。
 凍て付き冷気で白く曇った鏡の中を、璃奈は前へ踏み出した。

成功 🔵​🔵​🔴​

落浜・語
ゆかり【f11398】と一緒に
駆け足で抜けてしまいたいが、どうなるかね。
不安だのなんだのってのは、ないって言えればいいんだが。ただの物であった頃からの後悔が一つだけ。もう一度でいいからあの人に俺を使って噺をやってほしかったな。
まぁ、言った所で人の寿命と物の寿命、基ヤドリガミの寿命の違いは埋められない。何より、あの人が残したものはちゃんとつながってる。それで良いし、後悔して振り返ったらあの人が怒りそうだ。
だから、こんな幻覚はとっとと消えてくれ。『仏壇の線香が、たち切れでございます』ってな。
ゆかりに声をかけられたなら、足を止めた誤魔化し兼ねて頭撫でる。
大丈夫。お前は平気か?さっさと抜けてしまおう。


落浜・ゆかり
語あにさん【f03558】と一緒。駆け足で抜けるつもり。
怖いもの。怖いもの?……本体(手拭)が水をかぶるのが怖いかなぁ。濡れると、べしょってなって気持ち悪いの。それに、石鹸で洗われたりとかも怖いかな。それから物干しにピーンと張って干されるのも。
その間ずっとにこにこしてられるよ。だって、手拭だもの。『ここらで、綺麗に畳まれるのが怖い』ってね。
兄さんの足が止まってるようなら、腕を引く。必要そうなら、なぎなたで、鏡を割る。
大丈夫?あたいは平気よ?
兄さんは、何を見たんだろうね。



「駆け足で抜けてしまいたいが、どうなるかね」
「やってみればわかるよ!」
 落浜・語(ヤドリガミのアマチュア噺家・f03558)と落浜・ゆかり(ヤドリガミの戦巫女・f11398)、同じ噺家の元で愛用された落語の小道具、二人のヤドリガミが兄貴分と妹分が二人で駆け足で進む。
「不安だのなんだのってのは、無いって言えればいいんだが……」
 人の姿を得る前、ただの『物』であった頃からの後悔が一つだけあった。
 距離感を計りかね、分かれ道や行き止まりがあるものの、あくせく進む分気を散らせる。

『世の中に怖いものなんてない、って顔をして。本当に怖いものはないの?』
「怖いもの。怖いもの?」
 ゆかりが駆けていると、どこからか自分自身の声で問いかけられる。
 無邪気なゆかりは、うーんと考えて思いつく。
「……本体が水を被るのが怖いかなぁ。濡れるとべしょってなって気持ち悪いの」
 するとどうだろう。
 鏡に映ったのは濡れたゆかりの姿。本体である手拭いに水を引っかけられる。
「それに、石鹸で洗われたりも怖いかな」
 移り変わって今度は人の姿のゆかりの手で、ゆかり自身である手拭いがごしごしと洗われる。
 それだけではない。泡だらけのゆかりが水に潜らされて泡を落とされた後、ぎゅぅっと両手で絞り上げられ、水気を飛ばされる。
「それから物干しにピーンと張って干されるのも」
 ぐるぐると振り回され、残った水気を飛ばされると、全身の毛が逆立つかのよう。
 暖かい日光に晒されて色落ちしては心配だ、とゆかりは大層怖がる。
 にこにこと、楽しげな笑みを浮かべて。

『騙したね! 貴女の本当に怖いものは何!?』
 ゆかりは一層笑みを深める。噺家の小道具である自分を写し取っただけはある。
 合いの手までばっちりだ。
「だって手拭いだもの。『ここらで、綺麗に畳まれるのが怖い』ってね」
 お後がよろしいようで、と噺家の道具らしく。小噺にも気持ちも、落ち着ける。
 ドッペルゲンガーの気配が消えたのを感じる。
「精神攻撃、っていうのも大したことないね、ねっ、兄さん。……語兄さん?」
 駆けながら朗らかに言うゆかりだが、ふと隣で駆けていたはずの語がいなくなっているのに気付いた。

「ああ、こういうのも……あるわけか」
 語が脚を止めて食い入るように見つめていたのは、一つの鏡。
 写っているのは語本来の姿である高座扇子を持った、敬愛する一人の噺家。
『もう一度でいいから、あの人に俺を使って噺をやって欲しかった』
 その願いを写し取ったかのように、語を使ってその噺家は噺を披露する。
 声は聞こえない。だがその仕草、その表情、その口ぶり。身振り手振り。
 ただ一人で座っているだけの噺家は、それらを用いて人を惹き付け魅せる。
 熱をあげる若旦那に、恋煩う芸者、厳しい番頭。
 何人もの登場人物が、一人の噺家と、二つの小道具によってありありと目に浮かぶようだ。

 ――ああ、ゆかりの出番はここだ。自分の出番はそろそろだ。
 それが偽者だと分かっていても、記憶の中に焼き付いたそれに聞き入ってしまう。
 だが。
「人の寿命と物の寿命、もとい、ヤドリガミの寿命の違いは埋められない」
 何より、あの人が残したものは語にもゆかりにも、ちゃんと繋がっている。
「……後悔して振り返ったら、あの人が怒りそうだ」
 三味線の音がどこからか聴こえてくる。
 それがドッペルゲンガーの見せる幻聴か、あるいは――。
「だから、こんな幻覚はとっとと消えてくれ。『仏壇の線香が、たち切れでございます』ってな」
 噺家と語のオチの言葉が重なり、深くお辞儀する。
 顔を上げた時にはもう、自分の姿しか映っていなかった。いや、もう一人。

「兄さんったら、いつの間にかいなくなっちゃうから心配したよ! 大丈夫?」
 駆け寄ってきたゆかりが、心配そうな顔を浮かべる。
 妹分を安心させるように、あるいは誤魔化すように頭をくしゃくしゃと撫でる。
「大丈夫。お前は平気か?」
「うん、あたいは平気よ?」
「そうか。じゃあさっさと抜けてしまおう」
 確認した後足早に、けれどどこか力強く先に進む語にゆかりは小首を傾げる。
「……兄さんは何を見たんだろうね」
 不思議そうに小首を傾げながら、後を小走りでついていった。

 色町の恋は八十日。線香一本が燃え尽きれば、逢瀬はそれまでのお勘定。
 けれど今生に逢えずとも……託された想いと一人と二つ(さんにん)の絆は、いつまでも続くはずだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

シエラ・アルバスティ
【SPD】

私はダークセイヴァーの街に住んでいた
“風の声”が私に告げる
外は危険、外に出るな──と
私の脳に負担をかけ続ける呪いじみた危険信号の波

8歳の頃、両親が私の部屋に突然入ってきて私を強引に外に出そうとした
私は風の声で知る
私をこの街を支配する領主に献上するのだと

──コロセ。

声に従い私は両親をナイフで殺し逃げ出した
逃げ出した後は人狼病にかかったけど体が強くなって逆に助かった

風の声は正しい、でも心が苦しい
私はいつしか生きる為に笑顔を作り心を閉ざした

猟兵になったのは正義が芽生えたとかじゃない、“暇”だから



「あの頃は何でもやったなぁ……あ、今もかな?」

槍を持ってダンジョンをダッシュで駆け抜ける



 シエラ・アルバスティ(自由に生きる疾風の白き人狼・f10505)が駆け抜ける。
 入り組んだダンジョンであろうと、その俊足が衰える事はない。
 しかしいくら速く走ろうと、目の端に映る姿。幼い頃の、8歳の自分。
『外は危険、外に出るなって、ずっと声が聞こえるの、頭が……痛い、痛いよ……』
 『風の声』ではない、幼い自分の声を模したドッペルゲンガーの声だ。
 制御できない風の声によって、幼いシエラに容赦なく突きつけられるダークセイヴァーの残酷な現実。
 世界は常に死の危険に満ち溢れていた。危険信号だけで脳に負担を掛け続ける程に。
 部屋の隅に引きこもって座り込んでいたあの頃の自分が、何もかも置き去りにして走る自分の姿の代わりについてくる。
『お父さん、お母さん……? どうして怖い顔してるの? いやっ、離してっ!』
 シエラは無視する。その後の光景なんて知っているから。
『お父さんとお母さんが悪いんだよ……私を領主に差し出そうとするから……「風の声」がそういってたもん』
 ナイフを手に、返り血で真っ赤に血に染まった自分。
 一度見た映画を流し見るような感覚。
「(その後は逃げ出して、人狼病に掛かって……身体が強くなって逆に助かった)」
 走りながら、狼の尻尾が揺れる。
 その力が寿命と引き換えだとしても、幼いシエラはあの世界で生き抜くことなどできなかっただろう。

『ねぇ、本当にそうだったの? 「風の声」なんて……妄想じゃないの?』
「風の声は正しいよ。……けどまぁ、確かにあの時は心が苦しかったかな」
 足を止める。それはドッペルゲンガーの声に惑わされたからではない。
 無視してきた言葉に答えたのも気紛れ。
「でももう心を閉ざしたから。苦しいとか迷いとかなんて、もう感じないよ」
 猟兵になったのも、『暇』だったからでしかない。

『「あの子達」の前でもずっとそうやって、笑顔の仮面で自分を隠すの? 本当の自分を知られるのが怖いだけのくせに』
 シエラは無表情のまま、手にした槍で鏡の中の幼い自分を貫く。
 道に迷わないようつけた『目印』から、ゆっくり槍を引き抜く。
「あの頃は何でもやったなぁ……あ、今もかな?」
 シエラは頭の中で構造を整理する。そろそろ中腹に入っても良い頃だ。
 戯言を弄するドッペルゲンガーの本体に会えるのももうすぐだろう。
 再びシエラは鏡の迷宮を駆け抜けた。

成功 🔵​🔵​🔴​




第2章 集団戦 『ドッペルゲンガー』

POW   :    心の模倣
【対象の目を見ることで思考を読み取り 】対象の攻撃を予想し、回避する。
SPD   :    体の模倣
戦闘中に食べた【対象の血肉 】の量と質に応じて【捕食した対象の姿を模倣し】、戦闘力が増加する。戦闘終了後解除される。
WIZ   :    技の模倣
対象のユーベルコードに対し【対象の動きを模倣し同じユーベルコード 】を放ち、相殺する。事前にそれを見ていれば成功率が上がる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 猟兵達が進んだ鏡の迷宮の先。
 待ち構えていたのは、幾多もの形のない黒い影。
 それらは揺らめきながら猟兵達の姿と声を模して、その存在を確かなものにする。
 体の一部は黒い不定形な部分を残しているため、味方と見間違えることはなそうだ。
 だが相も変わらず存在するこの鏡の地形――。
 本体は鏡の中に逃げ込んだりこそできないようだが、虚像が入り混じった集団戦。その姿を捉えるのはなかなか容易ではなそうだ。
 本来の実力以上に手強そうなドッペルゲンガーを前に、猟兵達は武器を構えた。
落浜・語
引き続き、ゆかり【f11398】と。
深呼吸一つして切り替える。さっきの事は忘れよう。
それにしても、虚像が多いのが面倒……鏡、割っちまうか?文楽人形から、人形行列を召喚して鏡を破壊。鏡を傷物にしてしまえば、虚像かどうかの見分けを多少はつけやすいだろうし。
そのうえで、ドッペルゲンガーを。まぁ、虚像に当たったらその時はその時だ。


落浜・ゆかり
語あにさん【f03558】と
虚像が多いのは面倒だけれど、薙ぎ払っちゃえばいいかな?基本的には、なぎなたで薙ぎ払う。虚像も、虚像だってわかれば無視できるし、やっぱり、鏡割っちゃおうか。
実態があるってはっきり判れば、剣刃一閃でスパッと。いくら何でも、味方と見間違いようはないね。



 語とゆかりが背中合わせで武器を構える。
 周囲を囲むのは、二人の姿を模したドッペルゲンガーと鏡。
 そこに映し出される二人自身の鏡像と、ドッペルゲンガーの虚像。
 実数が計れないのが何より厄介だ。
 語は深呼吸一つ、気持ちを切り替える。
 先程のはドッペルゲンガーが見せたただの幻。忘れるのが一番だ。

「虚像が多いのは面倒……鏡、割っちまうか?」
「そうだね語兄(あに)さん。面倒だけど、全部薙ぎ払っちゃえばいいかな」
 語の文楽人形が、列をなす。
 百鬼夜行には届かないが、合わせ鏡の無限の鏡像を討つのには余りある。
 頷いたゆかりも薙刀を構え、薙刀を振るう。
「この鏡、異様に硬いな。流石にダンジョンの一部、ただの鏡じゃないか」
 だが表面を傷付けるのに留まり、その隙に模倣された文楽人形によって、その数を減らす。
 ならば一撃で割れないなら、もう一撃加えるまで。
 迷うまでもなく、更に文楽人形の数が減らされる前に鏡に攻撃を加えて割る。
「鏡に傷さえつければ虚像は判別できるな」
「うん、やっぱり鏡優先で割っちゃおう!」
 鏡だけ狙っても全てを割るのは骨が折れる、だがそれで十分。
 周りの鏡を割り、『偽者の偽物』に目印さえ付ければ、消去法で絞り込むだけだ。
「ゆかり、あまり離れるなよ」
「兄さんこそ!」
 二人は背中合わせで守りに徹しながら、相手の地形有利から殺いでゆく。

「頼んだ、人形行列」
『人形行列』
 語が再度放った文楽人形を複写した偽語が、同じ文楽人形を放つ。
 その数はオリジナルに比べて少ない。だが複数の偽語がそれを放つことにより、僅かにその数を上回る。
 合わせ鏡の影響も相まって、ぶつかり合う互いの人形は万にも見える。
「数に物を言わせる相手は面倒だな。しかし居場所は分かった。ゆかり!」
「合点承知! 実態が分かれば――」
 しかし語は、その中から自らの放った文楽人形を迎撃したドッペルゲンガーを見て取った。
 合図されたゆかりは、阿吽の呼吸でその本体を見極めて駆けだす。

「剣刃一閃!」
『剣刃一閃!』
 偽語へと放ったゆかりの薙刀に、守るように立ち塞がった偽ゆかりの薙刀がぶつかり合う。
 ばちばちと金属を削り火花が散るが、ゆかりは更に床の鏡を踏み砕いて一歩踏み込む。
「てっ、りゃぁあッ!」
 気合の声と共に偽ゆかりの薙刀……ドッペルゲンガーの身体の一部を切断する。
「もう一丁おまけ、スパッとね!」
 ぐるんと勢いを殺さぬままに、周囲の鏡やドッペルゲンガーを巻き込みながら、もう一回転。
 その心を読み取って、なお回避し切れなかった偽語と偽ゆかりが消滅する。
「よくやったゆかり。この調子でいくぞ」
「うん、見分けるのは兄さんにお願いするね!」
 以心伝心で連携する二人の兄妹を前に、姿形ばかり真似た偽の兄妹達はその数を確実に減らしていった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

シエラ・アルバスティ
体の不定形な部分……そこが狙い目であり要注意箇所かな
自分たちとは違う箇所に警戒して【風の声】で情報を集めつつ回避しよう

でもまずは【人狼咆哮】を周囲の鏡を割る程度の出力で放っておこう

自分だか味方だかの姿をしたドッペルゲンガーを殺す事に躊躇いは無いかな
そもそもの“死”に対する価値観であれば私は悪い印象では無いから
日々苦しむ人々からすればそれは救いにも成りえる物だった

ドッペル的にはどうなのかな?
まあオブリビオンなら精霊槍『シルフィード』で突いて息の根を止める
猟兵っていうのは単純でいいよね

外面を作るっていう点ではこの敵と私は似た者同士なのかな?


雛菊・璃奈
幻影の次は偽物…本当に嫌な迷宮だね…。
わたしの姿は真似できても、この子達の力は真似できるかな…。

【unlimited】は展開させておくと技の模倣で相殺される可能性が高まるので、ギリギリまで隠す。
黒桜からの呪力放出で牽制と敵の力を様子見。
その後、懐に入り込んで敵の攻撃を【見切り】と【オーラ防御】で回避しつつ、敵と凶太刀で斬り合い。
敵の反撃のタイミングを【見切り】、咄嗟に【呪詛】【武器受け】【カウンター】【早業】アンサラーを引き抜いて反射。
更に【unlimited】を素早く展開し、逃げ場をなくす程の一斉掃射で一気にトドメを刺すよ…。


わたしにはこの子達がいる…偽者じゃわたしに勝てない…

※アドリブ歓迎



「幻影の次は偽物……本当に嫌な迷宮だね……」
 璃奈が呪槍・黒桜を呪力を纏わせて構える。
 最初から切り札を切れば、見切られる。狙うは絶好のチャンス。
「偽物の私達の体の不定形な部分……そこが狙い目であり、要注意箇所かな」
 再現し切れなかったか、敢えて変異を残しておいたか。楽観的なほうを考えるシエラではない。

「ちょっと耳を塞いでてね! 行くよー……」
 戦闘開始の鬨の声代わりに、シエラが大きく息を吸って低出力に抑えた咆哮をあげる。
 壁や天井に、ミシミシと多数の亀裂が入っていく。
 事前にオーラの防御を張った璃奈と違い、ドッペルゲンガー達はもろにその巻き添えとなる。
「割り切れなかったか。威力抑え過ぎたかな?」
「ううん……これなら、簡単に虚像を判別できる……」
 璃奈が黒桜を振るって呪力を衝撃波を放つと、偽璃奈が左右対称に鏡のように真似て放つ。
 纏った呪力で防御しつつ直後に懐に踏み込めば、3人の偽璃奈も同じように飛び込んでくる。
 3人の反撃を見切って躱し、手放した呪槍の代わりに凶太刀を抜刀して切り裂く。
『酷い……どうして乱暴なことするの……? 痛いのは嫌……気持ち悪いのは嫌……』
 切られた偽璃奈が苦しむ素振りを見せ、その後ろからもう一人の偽璃奈が、魔剣を手に切り込んでくる。
「……その魔剣、アンサラーは……こうやって使うんだよ……!」
 それを逆の手の魔剣で受け止めながら、その力を丸ごと反射させて吹き飛ばす。
 姿形は真似できても、武器の性能まではコピーできないらしい。

「個々の力は弱い……でも決めるならやっぱり……シエラさん、追い込んで貰える……?」
「一気に片付ける方法があるんだね? オッケー、任せて!」
 璃奈が偽璃奈を誘い、自身に惹き付けながら、一か所に集めていく。
 シエラはその反対側に駆け抜けて回り込み、風の精霊を纏った巨大な槍、『シルフィード』を振るう。
 相手が自分の姿だろうと、仲間の姿を借りていようと、関係ない。
 それは単純に敵だと分かっている、という以上に。
「そもそも私にとって、死は悪い印象ではないから」
 暗黒世界を生きたシエラにとって死とは、これ以上苦しむことのないということ。
 日々虐げられて生きる人々にとって、ただ生かされる以上に救いにも成りえる。

「ドッペル的にはどうなのかな?」
『死は救いだよ。だから貴女も、もう救われていいんだよ』
 何人ものドッペルゲンガーを追い込みながら、戯れのようにシエラは自分の偽者に問いかける。
 シエラはその答えに無感情に笑みを返す。
「それって私の心読んでるの? まぁ、どっちでもいい……かっ!」
 偽シエラの胸を精霊槍が貫き、纏った風が衝撃波となって吹き飛ばす。
「外面を作るっていう点ではあなたと私は似た者同士なのかな?」
 シエラは偽シエラと槍の柄同士で競り合い、偽シエラの笑顔を浮かべながらも感情の無い顔をじっと見つめる。
 形だけの笑顔の仮面を被った自分。
 姿形を真似てその中身がないドッペルゲンガー。
 自分と重ねて、ほんの少しだけ共感した。

「でも、オブリビオンなら息の根を止めるだけ。猟兵って言うのは単純で良いよね」
 風の声に囁かれたシエラは冷徹な表情に戻り、不定形の黒い影から伸びた、人間体ではありえない奇襲を躱す。
 攻撃手段が自分の模倣だけと警戒を怠っていれば、血肉を奪われていただろう。
「私の血肉は、おいそれとくれてやるほど安くはないよ」
 シエラは風の精霊の追い風を受けて押し返しながら、周囲のドッペルゲンガーごと吹き飛ばして一か所に固める。
 周りの鏡はひび割れて判別は容易、狙い通りの位置だ。

「璃奈ちゃん、今だよ! 今度は私も全力で行くから!」
 シエラ自身も咆哮をあげるべく、後方へ跳ぶように距離を取る。
「うん……わたしの姿は真似できても、この子達の力は真似できるかな……呪われし剣達よ……」
 ドッペルゲンガーと鏡の虚実を見極めた、絶好のチャンス。
 璃奈は伏せていた切り札を切る。
 それは百を超えて顕現される魔剣、妖刀の現身。

「――『unlimited curse blades』」
「――『人狼咆哮』!」
 璃奈の魔剣と、シエラの咆哮が左右から迫り来る。
 初見である狭い迷宮を埋め尽くす魔剣の軍勢と、威力に歴然と差がある猛る咆哮は、模倣し切れるものではない。

「わたしにはこの子達がいる……偽者じゃわたしには勝てない……」
「勿論、風の精霊がついてる私にもね!」
 無表情ながらも、感情が上手く出せないだけの璃奈。
 笑顔を浮かべながらも、それに感情を宿さないシエラ。
 正反対のようでどこか似た者同士の二人は、息の合った連係で自分達の周囲の敵を一掃した。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

琥珀川・れに
鏡は自分の姿が映る
僕は自分の姿さえ映ってさえいるなら安心できるから、自分に見とれながらゆっくりここまで来たよ

「でもね、僕の姿を真似しておきながら僕の思いと違った行動をする君には吐き気がする」

いつもとは違う【見切り】の使い方が問われるだろう。
「君は一部黒いのもよくない。僕とは違う。
その部分、そぎ落としてあげよう」

「僕の戦闘スタイルを真似るなら得意なカウンターを使ってくるはずだ」
つまり【心の模倣】対策が必要…。
(それに気づいたら【変装】のアイテム『変装マスク』を付けよう)

ちなみに、周りの鏡は割らないよ。かっこいい姿をたっぷり映しておくれ
UC【血統覚醒】でトドメだ

※アドリブ大好き。省略追加ご自由に。



「この迷宮はいいね。僕の格好いい姿が三面鏡と言わず全面に映し出される」
 琥珀川・れに(男装の麗少女 レニー・f00693)がマントをたなびかせ、悠々と歩く。
 舞台劇の男役めいた芝居がかった仕草が鼻につかないのは、美しい容貌に相応しい自信に満ちたその面持ちによるもの。
「でもね、僕の姿を真似しておきながら僕の思いと違った行動をする君には吐き気がする」
 れにが見惚れる鏡の中の自分と違い、偽れには勝手気ままに動く。
 自分の姿を模倣しておきながら、人を傷付けるなど許容できるものではない。
 れには敢えて味方達から外れながら、無事な鏡の場所に誘い出す。
「僕の戦闘スタイルを真似るなら得意なカウンターを使ってくるのかな」
『勿論。正々堂々、一対一の決闘でね。君も望むところだろう?』
 れにと偽れには互いにルーンの刻まれた刺突剣、エペ ド ルーンを構える。
 れにの心を模倣したように、偽れには数の優位を捨てた決闘を挑む。
 それに応えたれには変装マスクを取り出し、謎の紳士へと変装する。
「結構。一人ずつ相手してあげよう。だが君の一部黒いのはよくない。僕とは違う」
 れにの姿をコピーし切れなかったドッペルゲンガーの名残部分に意識を向ける。
 心を偽りながら、ドッペルゲンガーから目線を外す。
 そのまま様子見せず、初手から一気に踏み込む。

「その部分、削ぎ落してあげよう」
 れにが最も得意とするスタイルを捨て、技を模倣する偽れにの舞台に乗った形だ。
 譲れない矜持、美学の為に。美しくない自分など、見るに堪えない。
 偽れにのカウンターの技量は、れにに劣る。
 直前までカウンターを警戒し様子見する素振りを見せながら、真っ向から挑んだれにに反応し切れない。
 黒い影部分を切り裂き、更に偽れに胸を貫き串刺しにする。
「僕の姿を真似るなら完璧に真似る事だ」
 引き抜いた刺突剣の切っ先を血の代わりに汚す黒い影を振り払い、胸元に手を寄せて剣を掲げてポーズを取る。
 警戒するように目の端に周囲に目を配るが、見ているのは主に自分自身を映す鏡。
 カッコよく決まったと自分に見惚れながら、浮つかないよう表情を引き締める。

「僕と一対一を挑むには、君達では役者不足だ。……そして何よりも」
 閉じた紫の瞳が、真紅に染まる。
 ダンピールの血の力を余すことなく引き出した、ヴァンパイアの血統覚醒。
「不出来な君達と睨み合い続けるのは願い下げだ。全員早々にご退場願おう!」
 爆発的に高められた圧倒的なれにの戦闘力を前に、不揃いの贋作が敵うはずもない。
 思考を読み取ってなお、回避し切れぬ神速の刺突に貫かれ、ドッペルゲンガーは次々と消滅していく。
「鏡とならいくらでも見つめ合えるのだけれどね。さぁ鏡達。僕のかっこいい姿をたっぷりと映しておくれ」
 敵に思考を読まれぬよう、ドッペルゲンガーと直接目を合わせず戦うれには、代わりに鏡を利用して間接的に視界を確保する。
 敵を圧倒して戦う自分の姿に見惚れながら。
 れにが残ったドッペルゲンガーを掃討するのは、時間の問題だった。

成功 🔵​🔵​🔴​




第3章 ボス戦 『『邪を祓う巫女』ヴェルぺ』

POW   :    封印の儀
対象のユーベルコードの弱点を指摘し、実際に実証してみせると、【式符から生まれた式神】が出現してそれを180秒封じる。
SPD   :    呪返の儀
対象のユーベルコードに対し【鏡から全く同じユーベルコード】を放ち、相殺する。事前にそれを見ていれば成功率が上がる。
WIZ   :    結界の儀
全身を【殺生石と呼ばれる大岩】に変える。あらゆる攻撃に対しほぼ無敵になるが、自身は全く動けない。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はクネウス・ウィギンシティです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 ドッペルゲンガーを倒した猟兵達の元に、鈴の音が反響しながら近づいてくる。
「祓いましょう。封じましょう。奉じましょう」
 繰り返し続けるレコードのように祝詞を唱えて鈴の音を響かせながら、巫女服の少女が姿を現す。
「私は『邪を祓う巫女』ヴェルぺ。この迷宮に封じられし者を見張る番人」
 静かな鈴の音のように凛とした声は、しかし無感情で理性を感じさせない。
「影よりもなお強き者。即ち魔なる者。封じましょう。永久に、永遠に、とわに」
 壊れた機械人形は、眼前の猟兵達を敵と見なした。
「それが私に与えられし役目。何れこの身が物言わぬ石となり果てるまで」
 無感情な目で、猟兵達をじっと見つめる。
「……何れ、この地に封印されし災魔を悉く滅する者達が現れるまで」
 それはどこか、救いを求める幼子のように。
曽我部・律
「邪を祓う存在にとって、邪をその身に宿した私の存在はさぞ目障りだろうな…」

当然自分の猟兵としての弱点は理解している。
ユーベルコード、則ち寄生したUDCの力を封じられれば
一般人程度の戦闘能力しかないということ。

だがその力に頼っているのはヴェルぺも同じこと、
ユーベルコードを使わない私をヴェルぺは邪と見なすのだろうか。

死への恐怖は無い。
その時ヴェルぺがどんな言葉を紡ぐのか
元科学者としての探求心が故か、ただ「興味」がある。

【脈動切断】で寄生するUDCを切り離し、生身でヴェルぺに接近、対話を試みる。

(ぶん投げすいません><)



「邪を祓う存在にとって、邪をその身に宿した私の存在はさぞ目障りだろうな……」
 律の力の源泉は、その身に寄生させたUDCによるもの。
 ユーベルコードを用いぬ戦闘力であれば、一般人とほぼ変わりない。
 そう自嘲した律は、機械人形の巫女ヴェルペを見る。
 律を見返すガラス球の瞳には、律を敵と認識しつつも害意や殺意は感じられない。

「この力が邪であるならば、同じ力を使うヴェルペも同じ事」
 律は自ら寄生するUDCを切り離して、ゆっくりと歩み寄る。
 無防備な生身を晒す。強力な一撃をまともに受ければ、無事では済まないだろう。
 だが律には死への恐怖はない。
「巫女ヴェルペ。キミは私を邪と見なすか?」
 あるのは、元科学者としての探求心による『興味』。
 無防備な身体を晒しながら近づいた律へ、ヴェルペは静かに佇む。

「貴方は、救われる事を望んでいるのですか?」
 近づいた律をじっと見上げながら、ヴェルペは逆に問いかける。
 無機質な瞳に見つめられ、律の心まで見透かされたかのような錯覚に囚われる。
「私は……」
 律は何と答えるべきか……否、自らの行動理由にも迷う。
 自分は何を求めているのだろうか。
 己を律する力か。復讐を成し遂げるための強さか。
 それとも、この苦しみに満ちた命の終わりか。
 この迷宮に、この機械人形に、一体何を――。

「私は邪を祓う巫女。魔を封じる守り人。罪を断つ事は私の役目ではありません」
 答えられずにいた律に、ヴェルペは言葉を紡ぐ。
 律の問いかけに対し、否定も肯定もしない。
 少なくとも無抵抗でいる律に攻撃する意図はない、ということだろうか。
「人に赦しを与える事もまた、人ならざる身なれば、できません」
 律に比べて頭一つ分以上小さなヴェルペは少し俯いただけでその表情が隠れる。
 その様子はどこか寂しげで、無力さを嘆いているかのように。
 あるいは、そう感じた律の自身を映す鏡のようで――。

「貴方が自らを封じるならば、私は貴方を見守りましょう。貴方が為すべき事を見つける、その時まで」
 顔を上げたヴェルペは、先程と変わらぬ無機質な表情のままだった。
 律が切り離したUDCを封じるべく、ヴェルペは律から離れて歩み出す。
 自らの『役目(できること)』を果たすため。

成功 🔵​🔵​🔴​

シエラ・アルバスティ
初手【クレイジー・アトモスフィア】展開
槍を突撃の構えをして【迷彩】で【目立たないい】様にし、翼を飛散させながら【ダッシュ】からの【捨て身の一撃】

「聖とか邪とか興味無いんだよね、“無”に近い私からしたら」
「あ、でも分かる分かる、聖とか邪の反対は無であって自然と殺しちゃうんだよね?」

残りの翼を飛散させて『リフレクター』と『エウロスコート』を使って壁を跳ね回りながら巫女を貫き続けようとする

「ヴェルペって本当は怒ってるんじゃないの?」

私も無感情な相手と戦うのは何か微妙
退屈すぎたら帰る? ヴェルペを回収して直してみるとか?

・その他
敵が結界を張れば【穿孔滅牙】を撃ち込み続ける
鏡があれば【人狼咆哮】



「聖とか邪とか興味無いんだよね、“無”に近い私からしたら」
 ヴェルペの前に、シエラは六枚の翼をその背に纏って槍を構える。
 初手からの切り札を切る。
 割れた鏡の生む鏡像の中に紛れ、瞬時に爆発的な加速によっての奇襲をヴェルペに仕掛ける。
 ヴェルペは反射的に鏡を構えるも間に合わず、槍でその身を削り取られる。

「あ、でも分かる分かる、聖とか邪の反対は無であって自然と殺しちゃうんだよね?」
 壁を蹴って突撃の勢いを横に逃がしながら殺さず、速度を落とさない。
 更に放った次撃はヴェルペが抱えた鏡から鏡写しのシエラが放たれ、相殺される。

「いいえ。私は祓い、散らし、封じるのみ。それが私に与えられた役目」
 ヴェルペの手のした鈴が響くと、シエラの翼が一枚解けて散っていく。
 魔を祓う音色がシエラの力を削いでいるらしい。
「滅しも、殺しもしません。そうするだけの力は、私にはありません」
 鈴の音に乗せた言葉はどこか、シエラには感情を殺しているように見えた。
 そう感じたのは、真っ直ぐとシエラを見据える鏡のような瞳のせいだろうか。
 その考えを振り切るように、リフレクターで足場した壁を蹴って突撃する。

「ヴェルペって本当は怒ってるんじゃないの?」
 シエラが無感情な相手と戦う居心地の悪さに、ふと問いかけてみる。
 その言葉にヴェルペは目蓋を瞬かせて、思った以上に揺らぐ。
「怒る? 私が、ですか?」
 ヴェルペは不思議そうに小首を傾げるが、その間もシエラは攻撃の手を止めない。
 その言葉に動揺したかのように、明らかにヴェルペは対応が鈍くなる。
「そう、こんな迷宮にオブリビオンと一緒に閉じ込められてさ。閉じ込めた連中に、怒りを感じてるんじゃない?」
「……いいえ。断じて、それは、あり得ません」
 ヴェルペは語気を強く、否定する。
 その言葉にこそ憤りを感じているかのように、強く槍を弾く。
「私は待つのです。この世界の災魔を討ち倒す、英雄が現れるまで」
 使命への献身……殉教だろうか。
 壊れていようと、ただ純粋な機械人形は、自らを捧げる聖者のように。
 ダークセイヴァーにも、極僅かながらそんな人がいたような気がした。

「無感情な相手よりは……まぁ、マシかな?」
 シエラは後ろに飛んで距離を離して槍を構え直す。
 最後の風の翼を一枚飛散させ、爆風と共に突撃力に変換する。
「……――『呪返の儀』」
 精霊槍を手に一直線に向かうシエラに、ヴェルペの構えた鏡から、鏡写しのシエラが放たれる。
「それはもう、見切ってるよ」
 だが鏡写しのシエラが貫いたのは、シエラの残像。
 風の精霊の加護を有するエウロスコートにより、空中での方向転換した空中三角跳び。
 視界から瞬時に消えて斜め横から迫るシエラの槍がヴェルペの身に直撃し、激しい音を立てて吹き飛んだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

雛菊・璃奈
「わたしは魔剣の巫女、雛菊・璃奈…。わたしもこの子達を祀り、鎮める巫女だからね…。貴女の事はよく解るつもり…。でも、貴女はもう役目をやり遂げた…。貴女はもう休んで良いんだよ…」

自身の妖刀・魔剣達に【呪詛】を送り増幅…。
数多所有する呪いの武器を駆使して戦闘…。

最初はバルムンクによる【衝撃波】を纏った【鎧無視】の一撃。
敵の反撃はアンサラーに持ち替え【見切り】【オーラ防御】【武器受け】【カウンター】で敵の攻撃を反射。
黒桜の呪力解放で追撃。
最後は凶太刀と神太刀の二刀流による【呪詛】【早業】【2回攻撃】と【妖剣解放】の高速連撃から、最後に二刀で×字に切り裂く…。

「妖刀二刀剣術…『神楽舞』…」

アドリブ歓迎



「私は……巫女、ヴェルペ……役目は……邪を祓い……封じる……千引岩……」
 手傷を負いながら、ヴェルペはゆっくりと立ち上がる。
 璃奈の眼にはその姿がどうしようもなく痛々しく見えた。
「わたしは魔剣の巫女、雛菊・璃奈……」
 璃奈は最初の名乗りに答えるように、穏やかに名乗りをあげる。
「わたしもこの子達を祀り、鎮める巫女だからね……貴女の事はよく解るつもり……」
 邪を祓い災魔を封じるヴェルペ、魔剣や妖刀を鎮める璃奈。
 オブリビオンとして蘇ってなお、変わらず役目を果たそうとしたヴェルペの思い。
 その役目と責務、使命の重さは璃奈も知っている。

「同じ巫女として、私が貴女を解き放つ……」
 自身の魔剣に、呪詛を流し込み呪いの力を増幅させる。
 振るった魔剣バルムンクから衝撃波が迫る。
「……っ!」
 鎧を貫きその身に呪詛を流し込む衝撃波に、魔力の守りも通用しない。
 だがその呪いがヴェルペに触れた瞬間、何割か打ち消され弾き飛ばされた。
 反撃とばかりにヴェルペが鳴らす鈴から、破魔の音が響き渡る。
 音を介した高範囲攻撃、魔剣に満たした呪詛が剥がされていく。
 邪を祓う清めの巫女としてヴェルペの宿すのは、呪詛に対する耐性と呪いを祓う破魔の力。
 呪いを力とする璃奈にとって、天敵と言っていいほどに相性が悪い。

「それでも、押し返して……貫き通す……!」
 この鏡の迷宮の中で、ただ独り。
 ドッペルゲンガーの精神攻撃に晒されながらも、耐え続けた少女。
 ヴェルペが稼働していた年月は、数年、数十年ではきかないだろう。
 そんな彼女に、伝えるべき言葉があるから。相性の不利など関係ない。
 持ち替えて抜き放ったもう一振りの魔剣、アンサラーで破魔の鈴の音を弾き返す。
「っ!? 破魔の鈴が……私の身をも……?」
 ヴェルペの身にはもはや魔を宿している。反射された破魔の鈴はその身を苛む。
 即座に魔剣を手放した代わりに呪槍・黒桜を薙ぎ払い、立て続けに呪力解放して追撃する。
 鈴の音で打ち消そうとするヴェルペの動きを止め、縫い付ける。
「九尾乃凶太刀、九尾乃神太刀……」
「……もはやこの身自体が災魔と化そうと、私に呪いは通じません」
 璃奈は両手の妖刀の怨念をその身に重ねて纏う。
 足を止められたヴェルペは、更に守りを固める。
 先程より上回っていようと呪いであれば、反撃の余力は十分に――。

「貴女はもう役目をやり遂げた……貴女はもう休んで良いんだよ……」
「…………――――」
 高速移動で接近した璃奈は、剣撃ではなく言葉を投げかける。
 呪いと呼ぶには、あまりも優しく、暖かな言葉。
 込めるのは呪いだけでない、璃奈は想いを込めて両の太刀を振るう。
 璃奈の妖刀が神速の連撃を放ち、浄化の守りを呪詛で削ぎ取っていく。
 一の太刀、二の太刀で剥がれぬ守りならば十でも二十でも畳みかけるまで。
 纏わせた呪詛が剥がされ、打ち消されながらも、璃奈は自身の命を削りながら力の限り振り絞る。
「妖刀二刀剣術……『神楽舞』……」
 締めの双撃、二刀を交差させた斬撃によってヴェルペの身が切り裂かれた。

大成功 🔵​🔵​🔵​


●待ち人来たる
「ま、だ……まだ、倒れるわけには、いかないのです」
 ヴェルペは動力をフル稼働……否、既に限界を超えてなお、渾身の力を振り絞る。
 戦闘用としては、攻撃手段に乏しい個体。
 ヴェルペが有する機能は『邪を祓う』、ただこの一点のみ。
 本来、単独で戦闘を行う機体ではない。
 それでもただ一機で立ち向かうのは、彼女が既に壊れているからであり――。

「私は待たねば……なりません。この世界の災魔を……討つ者が現れる……その時まで」
 役目を果たそうとする執着――あるいは機械人形の純粋さ故に。
 ヴェルペは目の前の猟兵達を、再度認識する。
 ドッペルゲンガーを滅した、強き者達。己を追い詰めた、強き者達。

 ならば彼らこそ、この地の災魔を悉く滅しうる者ではないか。
 在りし日に命じられ、自らが待ち侘びた、希望の光なのではないかと。
 もし――もしも、そうなら。
「災魔を討つ者……あなた達が『猟兵(わたしのまちびと)』であるならば……」
 どうかこの身に、永久の暇を。
雛菊・璃奈
それが貴女の望みなら…わたしが貴女を眠らせるよ…。

祓いましょう。封じましょう。奉じましょう…貴女を縛る、『役目』という呪いを…わたしの剣にて、終わらせましょう…。

引き続き、凶太刀と神太刀の二刀流…。
双方の剣に再び【呪詛】を込め、【早業】【2回攻撃】による連撃で振るい続け、追い詰める…。
そして、機を見て【unlimited】を展開…。全力で【呪詛】を放出し、【unlimited】の魔剣・妖刀を満たし、一斉掃射と同時に自身も弾丸の様に飛び出し、身体ごとぶつかる様に凶太刀を相手の心臓へと突き刺す…。

これで、役目はお終い…。貴女の来世に幸せが訪れますように…。

『役目』に縛られた巫女に、祈りを捧げるよ…


アレクシア・アークライト
 昨日の相手は、世界を守るためにオブリビオンを取り込み、結果、オブリビオンと化した者だった。
 そして今日の相手は、オブリビオンとなってなお世界を守ろうとする者。

「いつか、私もそっち側に回る日が来るのかもしれないわね」

 オブリビオンと化しているならば、死後、身体は消滅すると思われる。
 だから意味はないのかもしれないが、これ以上の外傷は与えないように一撃で動力部を止めることを狙う。
 [念動力、グラップル、情報収集][超感覚的知覚(千里眼)]

「災魔が出たなら、私達を呼んで。災魔は私達が倒してあげるわ」
「それが貴方の永久の眠りの中でも」

 だから、安心してお休みなさい。
 おつかれさま。ありがとう。



●巫女人形は、希望の夢を見る
 アレクシア・アークライト(UDCエージェント・f11308)は、弱々ったヴェルペに思いを馳せる。
 昨日の相手は、世界を守るためにオブリビオンを取り込み、結果オブリビオンと化した者だった。
 そして今日の相手ヴェルペは、オブリビオンとなってなお、世界を守ろうとする者。
 ただそこに在るだけで、この世界を侵す毒として蘇ってしまった存在。
「いつか、私もそっち側に回る日が来るのかもしれないわね」
 何れ誰しも、『過去』となる。
 その未練が強ければ強いほどきっと蘇ってしまうのだろう。
 そう思うと、アレクシアは他人事には思えなかった。

「それが貴女の望みなら……わたしが貴女を眠らせるよ……」
 璃奈はぼろぼろになりながらも立ち上がるヴェルペを見つめる。
 彼女はずっと、祈りながら一人で璃奈達を待っていた。
 ようやく、休みを与えてあげられる。
「祓いましょう。封じましょう。奉じましょう……」
「――」
 魔鏡の巫女が幾千、幾万と唱えた言葉を、魔剣の巫女が継ぐように唱える。
 彼女が祈り続けたその想いを、璃奈は聞き届けた。
 ヴェルペは少し驚いた顔をして小さく、とても小さく口元を微笑ませる。
「貴女を縛る、『役目』という呪いを……わたしの剣にて、終わらせましょう……」
 璃奈の凶太刀と神太刀の二刀流に対し、ヴェルペも鈴を構える。
 交戦の意志はある……いや、戦わねばならないのだろう。それが『役目』故に。
 だが、もはやユーベルコードを用いる力も残されていないらしい。

「オブリビオンと化しているなら、死後、身体は消滅するはず。だから意味はないかもしれないけれど……」
「うん……一撃で終わらせてあげよう……」
 アレクシアの意図するところに、璃奈はこくりと頷く。
 もう十分頑張った。もう沢山傷付いた。
 ひたむきな彼女をこれ以上傷つける事は忍びなかった。

「魔剣よ……――『unlimited curse blades』!」
 璃奈は一斉掃射すると共に、ヴェルペの元へ弾丸のように駆け出す。
「響け、破魔の音色」
 ヴェルペが力を振り絞り、鈴を鳴らす。
 地面を埋め尽くすように降り注ぐ魔剣の雨の中、自分の身を守る。
 だがそれは脚を止めた上に、移動を封じられたということ。
「『超感覚知覚』――千里眼」
 アレクシアがその魔剣の雨の中を見切って接近したアレクシアが、組み技でヴェルペの身を拘束する。その高められた力は、弱ったヴェルペに抗える物ではない。
「もういいのよ。貴方はもう……一人で頑張らなくていい」
 アレクシアは優しく声を掛ける。
 そこに璃奈が神太刀を持って、ヴェルペの心臓部を貫いた。
 今度こそ、完全な致命傷。
 ゆっくりと倒れ込むヴェルペの身体を、璃奈とアレクシアが両側から優しく受け止める。

「災魔が出たなら、私達を呼んで。災魔は私達が倒してあげるわ。それが貴方の永久の眠りの中でも」
 だから、安心してお休みなさい。
 アレクシアの腕の中で半身を任せるヴェルペに、優しく、力強く囁く。
「機械人形も……夢を見られるでしょうか?」
「うん……きっと見られるよ……」
「よかった……なら――とても、良い夢が見られそうです」
 答えた璃奈に、眠らぬ人形の巫女、ヴェルペは柔らかく微笑む。
 ガラス球でしかない瞳に、アレクシアと璃奈の姿を映して。
「強き者……とっても優しい人。私の……この世界の人々の全ての……希望の光――」
 その瞼が眠るように閉じられ、ヴェルペの体が光の粒子となって解けていく。
 無機質な人形は、最期に穏やかな笑みを浮かべる。
 『貴女達に幸あれ』と言葉を残して。
 永い永い時の中で、鏡の迷宮の巫女はようやく――初めての眠りについた。
「……おつかれさま。ありがとう」
 アレクシアは腕の中で消えゆく光を見つめて、殉じた『命』を労う。
 彼女のような存在が、このアルダワ魔法学園の礎となったのだろう。

「これで、役目はお終い……。貴女の来世に幸せが訪れますように……」
 璃奈は手の中に残るヴェルペの光の残滓が空中に浮かび消えていくのを目で追う。
 『役目』に縛られた巫女へ、璃奈は時が許すまで静かに祈りを捧げ続ける。
 静寂に包まれる迷宮の中に、『しゃらん』と、心地よい鈴の音色が響いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年02月09日


挿絵イラスト