#ダークセイヴァー
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暗闇を往くように、その女は覚束ない動作で両の手を前のほうへと伸ばした。
指先は日ごろの水仕事でひび割れ、あかぎれとささくれだらけだ。たつんたつんと、冷えた石床を水滴が打つ音がする。
女のはだかの踵は既に凍えきって、感覚が鈍いらしかった。
つまさきも同じように。
それ故に躓き、バランスを崩した女は床に転んだ。濡れて冷えた石床は、女の身体を拒絶するように硬く在った。
立ち上がる気力すら、どうやらそれにより奪われてしまったらしい。女は吐くように嗚咽を漏らしはじめ、「おねがいします」と「終わりにしてください」を繰り返した。
ゆらゆらと、それを眺めているなにかしらの視線がいくつか。
女の目元は、呪詛の描かれている布で覆われている。目隠しのそれだろう。
視線のひとつが動いたのを、目隠しされた女は感じた。ひゅっと細く空気を呑みこむ音がした。
「おねがい」
これまでにひとりひとり消えて行った村人も、こんなふうに戯れをした後に殺されたのだろうと女は思い、ならばせめて尊厳というものを弄ばれる前に殺されたほうがよほどましなのではないかと、一瞬、覚悟を決めた。
せめて最期は、人として。
頬を撫でるように風が鳴った。
ああ、でも。
でも――。
風があまりにも冷えていて、底冷えしたはずの身体が、それでも寒いと叫ぶものだから。
「殺さないで」
おねがいしますと、女は言った。
●
「みなみなさま、お初にお目にかかる! 姓は五色、名は如! 人呼んで五色如と発す。もころん♪ とか、もこたん♪ と呼んでくれて一向に構わんでな!」
五色・如(ゴシキノゴトク・f03771)は見事なしたり顔をしたまま開口一番にそう告げたわけだが、自分がどうにもいわゆる『外した』『滑った』ことは理解したらしい。如は一度だけ視線を斜めに逃がし、咳払いをした後に「仕切り直しじゃ」と再びしたり顔をした。
「あー……場所はどこじゃったか。えーと? ああ、あの暗い感じのダークセイヴァーじゃの。わしはまだ行ったことないのー」
それはさておき、と如は言う。
「どうにも、支配が多すぎると聞いた。この世界は。ひとまず、悪趣味なオブリビオンが跳梁跋扈してるらしいのはどの世界でも同じじゃがの」
そのうちひとつをどうにかしてやってくれ、と如は言った。
「……当初の目的は『救出』とするべきじゃろうな」
ヴァンパイアに支配された村――と『されている』と、何かを考えるように視線を伏せて如は言った。
ついと流れるように上げられた視線は、猟兵たちを見つめている。
今は女がひとり、さらわれている『らしい』ということ。
ヴァンパイアがいる『らしい』ということ。
その場所はわからない『らしい』ということ――。
そこまで説明して、如はふむと漏らして首を傾げた。
「そう。どうにも何かしら隠されているようでな」
まあそこらへんはうまいことやってくれ――と、如は目を眇めて笑った。
OZ
OZです。
みんながんばれば、きっとなんとかなるよ。
※がんばるのにはOZも含まれています。
第1章 冒険
『この血なんの血気になる血』
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POW : 周辺をくまなく探す
SPD : 村人にそれとなく聞いてみる
WIZ : 村の中に不審な場所がないか確認
👑11
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
ニコラス・エスクード
POW
悉くが『らしい』、か。
随分と曖昧な話ではあるが、
隠れ潜む何かが或るのは確かなのだろう。
ならば向かうに否はない。
隠れ潜む悪意など、逃してなるものか。
周囲より村の状況を伺っていく。
荒らされた様子があれば何かの来襲が考えられるが、
そうであれば隠れた何かとはならぬ気がするな。
何某かに生贄でも捧げているのやもしれん。
であればそれが村の内で起きているのか、
外で起きているのか、だ。
村へ続く道を調べ移動跡が無いか調べていこう。
支配されているのであれば無闇に村外へは出れまい。
支配者の許しがない限りは。
何もなければ其れも良しだ。
村の内にて、何かがあるのだろう。
必ず、追い詰めてやる。
多々羅・赤銅
はぁん。わからないない、多分おそらくのあやふや尽くしと来たか。
なにが隠されてんのか知らねえが、
なーに、心配すんな。助けを呼ぶ声があるならば、必ずや。
【POW】
なーんてカッコつけたが、結局私にできるのなんざしらみ潰しくらいか。
妙な通り跡、妙な建物、なにかないもんか。
辺りを探すはもちろん、住民にも話を聞いてみようかね。
……ああいや、「支配」されて絶望してるこの世界じゃ、教えてなんてくれねえか。
ならばせめて。弱った住民には、私の清浄の血を混ぜた水でもプレゼントしていくか。
万一
助けを呼ぶ声も無かったら
どうしたもんかな。
いや
なんとかなんだろ。
犬曇・猫晴
うーん、らしい情報にらしい情報にらしい情報。
なんだか意図的に隠されてる感じがすごくするね?
【SPD】【忍び足】
とりあえず村に忍び込んで村人達の会話を盗み聞こう。
空振りに終わるかもしれないけども、堂々と聞きに行って警戒されるよりもマシってところかな。
さらわれた少女の親、ヴァンパイアの所在の噂、そして居場所の噂。この3つを重点的に調査しよう。
親御さんを見つける事が出来れば、自ずと情報もきっと出てくるだろうからね
ロク・ザイオン
……おれの声はみにくい。
ひとに話を聞くのは、うまい者に任せたい。
(森番は、村の中よりも森をよく知る。村の外を知る。ならば、痕跡を探そう。
獣のものではない、ひとか魔物のものを。
【野生の勘】で【追跡】する)
(それとも。
【恐怖を与える】「惨喝」のひとつもあげれば
隠れ潜む、臆病者を炙り出せるだろうか)
……喋るのは嫌いだから。
ひとりでいい。
でも、誰かとともに仕事をするのも構わない。
浅沼・灯人
まずは目的地を探すところからか。
……面倒だが、やらなきゃ余計面倒が嵩む。
俺がやれることをやっていこう。
【POW】人の動き、足取りを探る
村の中は得意なやつらに任せよう。
獣なり人なり通行の多い場所は整地されてるかどんな形でも道ができる。
特に、村へと向かうもの以外でそういう道があったなら、
【迷彩】で潜みつつ通るものを観察しよう。【視力】は眼鏡のお陰でそこそこ良いんだ。
もし挙動が怪しい……例えば、妙に周囲を警戒してるやつがいたなら、
隠れたまま【追跡】する。夜なら【暗視】も役立つだろう。
万が一当てが外れてようが、厄介な魔獣やらがいたなら覚えておこう。
後々で退治に来るかも知れねぇしな。
グウェンドリン・グレンジャー
血、の匂い……私は、人より、敏感……
グールドライバー……で、あること、が役に立つ……なんてなぁ
私、周辺、を……くまなく、探す。
第六感、活かし、て……アタリ、つけたり、
動物と話して、鳥、小動物に、聞い……たり
出来れば、頭、よくて、血肉の匂い、敏感、な……カラス……良い……
あやしい、血痕、みたいなのは、指で取るなり、削る、とかして、舐めて、確かめる……
ジャハル・アルムリフ
……人攫いか
奪う事の得手な連中だ
――と言えど。我等とて然程変わらんのだろうが
主に手足と、多少は頭を使い探索を
村の何処かに高台、または比較的高い建物があれば
そこに翼で飛ぶか登るかして全体を見渡す
のちに大きな建物、他と比べ異質な場所や
入り組んで見通しの悪い区画があればそこへ向かい重点的に
分かり難いのに足跡や草葉の擦り切れなどの痕跡
また、どこに通じるのか解らん、おかしな通路や扉
入り口が発見できない建物なども探す
一見動きそうにないものも<怪力>を活かし試してみる
それら以外にも、被害者の血痕や落としたものなど
落ちているのが不自然な物がないか見落とさぬよう
千桜・エリシャ
WIZ
儚き花が散らされようとしていると聴きましたわ
弱者を徒に甚振るなんてはしたないこと…
早く見つけだして親玉の御首をいただくとしましょう
ひっそりと消えたのなら、やはりどこか見つかりにくい場所へ連れて行かれたのでしょうね
なにか手掛かりはないのかしら?
例えば、攫われたときに抵抗したのならば被害者の血の跡とか
はたまた足跡とか
そして、それはきっと人目も人気もないところで行われたのでしょう
まずはそういう場所の候補を周って、そこから痕跡を辿れないか試してみようかしら?
ジンガ・ジンガ
さーて、俺様ちゃんのログインですよっと!
ヤダわー、今日もステキに陰気くせェんだからァ
支配とかマジボッコだわー、ボッコボッコのフルボッコ?
らしい、ねぇ……不確定な情報が多すぎじゃんよ
【忍び足】で【目立たない】ように
村人同士の会話や、家の中を【聞き耳】して【情報収集】できないカシラ
ほら、よそ者には言わないような情報があるかもしんねーじゃん?
その他にも、地面とか建物の壁とか、墓場とか調べてみて
何かしらの痕跡があれば上々
村人ちゃんを説得なり交渉なりするコが居るようなら
おハナシの材料がてら、得た情報アゲちゃう
揺さぶりも時には大事っしょ?
ソレ使って助け舟出せそうな場所があれば、俺様ちゃんもお手伝いするねぇ
九琉・りんね
【WIZ】
何もかもわからない状態……
とりあえず、手当たり次第にやるしかないですね!!
行くよ!ミカン!
……って、ちゃんと言うこと聞いて〜〜!!
ミカンは私よりも小さな女の子ですけど、活発ですごく動ける子なんですよ!
怪しい場所……えぇでもどこも暗いねミカン………
──あれ?
ミ、ミカ〜ン……
どこ行ったの〜?
ふ、ふざけてないで〜〜出てきなさ〜い……
………ここに、一人
……………う、うう
ってあれ!!??
ミカンいつからいたの!!!???
心配したんだから……べ、別に泣いてないし!!!
大体あなたはいっつも……んん?
怪しい場所見つけたの?
あーもう、帰ったらお説教だからね!!
鼠ヶ山・イル
へぇ?「らしい」しか無いって、ねぇ
随分と曖昧じゃんかよ
曖昧であるっていう理由も気になるね
やーれやれ、どうしたもんか
とりあえず、不審なモノを探してみようか
女ってのは誰だ?誰か分かったら、その女の住居の周辺に変な痕跡はないか?
そもそもその村に不審な言い伝えや儀式などはないか?
ああもう、切り口考えてたらキリがねぇな
一応技能【呪詛】については造詣深いつもりだからさ、なにか分かんないかな
ただ、「戯れ」に殺されていることはわかる
その「戯れ」を村人は看過するしかねぇってこともわかる
けどよ、そうやって村人たちは自分たちの大事なモン守ってるんだろ?
オレはそういうのに対する嗅覚は鋭いぜ
じゃあ、探してみようか
●
各々、向かう理由というのは別々だった。
人を助けたい、暇つぶし、自身が悪とするものを斃したい、あるいは存在意義を埋めるため――実に様々ではあるが、例えばこのニコラス・エスクード(黒獅士・f02286)という男の場合にとっては、いまのところ挙げたものはかっちりとは当てはまらないだろう。
己に架した贖罪がためという、どこかしら苦痛を孕む理由が、此度ニコラスがこの土地に立っている理由だった。
ずいぶんと枯れた土地だ、とニコラスは思った。
立ち枯れた木々は、冬の風のせいだけではなく、生命力というものが足りないようにすら見える。
――それともこれは、この土地が『そう』だと知っているからか、否か。
ニコラスはそこまで考えて頭を振った。
「だいたい、頼みってのは、もう少し明確にするべきだと思うんだけどよ」
鼠ヶ山・イル(アヴァリティアの淵・f00273)は多少なり、出発前を思い苦笑した。
「ほぼぜーんぶ『らしい』だったもんねェ。俺様ちゃん、手持ちのお金がからっぽじゃなきゃ、このおシゴトやりたくなかったなァー」
ジンガ・ジンガ(塵牙燼我・f06126)がからりと笑った。
だってさァと間延びした軽口で、ジンガは肩を竦める。
「こういうおシゴトて、なんかこーさァ、たまにいきなり危なくなるじゃん?」
わからないでもねぇなと、イルは口先だけで、こちらも軽く、大して楽しいわけでもないのに、ただ笑った。
風が鳴った。
その細い音に、グウェンドリン・グレンジャー(NEVERMORE・f00712)は顔を上げる。すんすんと、冷えてきた鼻先をほんの僅かに――人間が動かせる程度――ひくつかせ、匂いを辿る。
あまりにも様々な種族がいる猟兵のなかではあるが、彼女は人のわりに鼻が利いた。それはグウェンドリンが宿す能力に基づくものかもしれなかった。
つまるところ、グールドライバーたる彼女が見つけようとしている匂いは、血のそれだ。
吸った空気があまりにも凍えるものだから、ロク・ザイオン(疾走する閃光・f01377)は思わず咳き込んだ。遠巻きに、訪れた猟兵たちを見つめている村人のほうをちらと見遣って、ロクはいつものように、人々から視線を逸らした。
向いていない――というか、己が好きではおれない己のものを、声というものを晒すのが嫌なのだ。獣であったほうがよほど楽だったろうと思ったことすらあれど、ロクは未だにヒトとして生きていた。ヒトが嫌いなわけではないのだ。己の一部が好きになれないというだけで。
村人たちから逸らしたロクの視線が、更に伏せられる。だが今度のそれは目的あってのことだ。ロクは探していた。
無論、手がかりと表現すべきそれは、彼女だけではなく、訪れた猟兵全員が探しているものだったが。
「はぁ、まぁなんつーか、情報収集すんには11人ってな多すぎる気もするけどな」
多々羅・赤銅(ヒヒイロカネ・f01007)は頭を掻いた。
「しかもなんだ、アレか、なんだコミュ障か。人数いるのに声すらかけられねぇ」
「コミュ障じゃなくてもね、堂々と聞きに行くのが正解じゃない場合もあるし」
赤銅のぼやきに犬曇・猫晴(亡郷・f01003)が苦笑した。
「さすがにそんくらいは判ってんだけどよ」
それにしたって単独でモノ調べが多すぎねえかと赤銅は唇を尖らせた。
猫晴に視線を移した赤銅は、その時点で首を傾げた。
「あれ? お前――」
「そういうのはいいよ、ほら、ぼくが手伝うよ。するんだろう? 聞き込み」
ぼくは盗み聞きでもできればいいと思っていたけれどと眉尻を下げた猫晴に、赤銅は肩を竦めて「わかったよ」と一言、再度ぼやいた。
「というか、勝手に人をコミュ障にカテゴリすんじゃねえよ」
ふたりの会話が聞こえてくる場所に居たらしい、浅沼・灯人(ささくれ・f00902)がそう言って顔を顰めた。
「おぅ、そりゃ悪ぃね」
「……俺は少しばかり、村の入り口を見てくる」
「結局お前もコミュ障モドキじゃねぇのそれ!?」
灯人の言葉に、赤銅は結局馬鹿笑いするほかなかった。
一方で、ジャハル・アルムリフ(凶星・f00995)は考えていた。手足を動かしてこそと思っていれども、気にかかることがあったからだ。
ジャハルが立つのは、赤銅や猫晴たちが言葉を交わしていた間近の建物の屋根であったから、背の低い、ぼろの家々が並ぶ村を見るのにさほど苦労はしなかった。
枯れた土地に建つ家々、細々とした木々が立ち並ぶ、少しばかり離れた林。
寒々しい土地だ、とジャハルは思った。
そしてそれがこの季節特有のものではないのだろうと推測できるからこそ、彼は眉を寄せるに至った。このジャハルという男は、ただただ諦観というものが好きではないのだ。ジャハルの胸の内に渦を巻いた、苛立ちとでもいうべきものは――なればこそ、この村そのものに、或いはこの世界そのものに薄く漂っている諦観を感じ取ったが故に湧いたものだったのだろう。
弱者は護るべきものである――と、千桜・エリシャ(春宵・f02565)は思っている。とはいえその思考は、強者は屠るべきと思っているわけでもない。桜色の双眸を瞬かせて、エリシャは小首をかしげた。
――この村の春に、桜は咲くのかしら。
何故彼女がそんなことを思ったかというと、実のところとても単純なことで、それは彼女の眼前に立つ、葉も花もつけていない大木が、どうやら桜の木ではなかろうかと思ったからだった。
「この樹を見つけたのは、あなた?」
「え!? あっ、うん!? そ、そう……だって言っていいのかな。見つけてくれたのはこの子だから」
九琉・りんね(おてんばまりおねっと・f00448)は、エリシャに声を掛けられて盛大に動揺した。
「怪しいところを探そうとはしてたんだけど、なかなか見つからなくて……そしたらミカンが――あ、ミカンっていうのはこの子のことなんだけど。あ! えっと、えっとその、私はりんね!」
「エリシャです。千桜エリシャ」
小さな生きものを思わせる身振り手振りを添えて懸命に語っていたりんねに、エリシャは微笑んでみせる。
その笑みに、ほんの僅か、本当に、ほんの僅かに、幽かにだけ滲んだエリシャの毒に、りんねは己で気付かぬうちに、ぴんと背筋を伸ばした。
●
グウェンドリンが、ぴくりと視線を上げたのはしばらく経ってからのことだった。
風向きが変わったのだ。
否、変わったというのは正しい表現ではない。――風が止んだ。そう表すのが正解だろう。
「……え」
まさか、とグウェンドリンは思った。
何故今まで気付かなかったのかと、それから思い、当然のことだと、やはり思った。
血の匂いがしなかったわけではない。
「この村……、どこも、かしこも。……血、の匂いが、する……?」
ほんの僅かに、それでも確かに。
グウェンドリンはそれを感じ取った。今まで気付けなかったのは、ゆるく吹き続ける風が、それを拭っていたからだと、彼女は悟った。
「何か、見つけたか」
ニコラスが重い鎧で痩せた土地を踏んだ。
グウェンドリンが気付いたことを語れば、ニコラスは一言「ふむ」と唸った。
「暫し探してきたが――どこにも荒らされた形跡がなく、何らかが繰り返し来襲しているとは考えにくい。……あまり考えたくはないが、何某かに、村人たちが『捧げて』……いるのやもしれん」
「外、とも思えなかった」
灯人が声をかける。
「痕跡も何もあったもんじゃねえ。村の出入り口できる道はひとつ。道の先はだいたい深い森だし……そこも、人が気楽に遊びに行けるような森でもない。特に戦う手段を持たない人間にはな」
「あっはァーん? つまりどゆこと? ちょっとさァ、俺様ちゃんにもわかりやすく説明してくんない?」
会話に混ざったジンガに、灯人は露骨に顔を顰めた。
視線が面倒だと語っていたが、ジンガは気にした風もなく続けた。
「なんてね! 俺様ちゃんちょー賢いからわかってんの。『外には何もない』『村の中にそれらしい建物もない』。んでもって『村全体から血の匂いがする』。それなら、」
「はい、ビンゴ」
「ちょっとォ!?」
ぱん、と手を叩きつつジンガの滑らかな口を止めたのは猫晴だった。
「聞けたよ。馬鹿正直に聞き込みしにいってしくじる可能性もあったけど」
猫晴の隣で、うるせぇなぁと赤銅が笑った。
猫晴はやはり、さして気にした様子もなく続ける。
「いなくなった女性の親御さん。彼女に辿り着く前に、ちょっと気の引ける盗み聞きとかもしたけどね」
「親か」
なるほど、とイルは言った。
「雁首揃えて何してんだと思ったら、手がかりとはやるねぇ」
イルの軽口に視線だけを投げて、猫晴は「どうも」と返した。そんなに嫌うなよと軽薄に笑ったイルに対して、次の応答はなかった。
「――まあ、それはそうだろうな。もし、その親がマトモな親なら……娘のこたぁ、それなりに大事なはずだ」
隠すべきものがあったとしても、一縷の望みを賭すべき相手が目の前に現れたなら――。
「……ああ。『情報』があるなら吐くだろうな」
集っている仕事仲間たちを認識し、こちらも合流したジャハルが頷いた。
あっ、と声がした。
「あれ、みなさんおそろいで……何かありました?」
りんねとエリシャもまた、猟兵の群れに合流する。
「こちらの首尾は……村の外れに、おそらく桜の樹が一本だけ。……象徴として、あの樹を植えるようなところは少なくはないですから、何かあったかと訊かれたら、すみませんと言うほかないのですけれど」
エリシャが眉尻を下げた。
「んで? 『それなら』の先は?」
「そういう訊きかたしてくれるヒト、俺様ちゃんちょー好きよォ! 愛してる!」
促した赤銅に、ジンガはひゅうと口笛を鳴らした。
「ずばり俺様ちゃんが思うに――」
「地下だそうだよ」
「おっふ!? ちょ……ちょっとォ!?」
「はは」
再び被せにきた猫晴にジンガが「ホワイ!?」と地団駄を踏んだところで、猫晴は表情を引き締めた。
「明確な答えを引き出せたわけじゃ、ないけどね。……彼女も怖がっていた。情報を漏らしたことによる報復を、恐らくは」
娘を助けてほしい気持ちと、恐れが半々なんだろう、と猫晴は言った。
「……多くの人を集めておけるような地下があるような建物もない」
つまり、とジャハルは眉を寄せる。
「……『それぞれの家の地下』か」
「え? ……え?」
りんねが不安そうに胸元で手を握った。
「え……? そ、それって、待ってください。どういうことですか?」
「……それぞれの、全員の、家で。……たぶん、ひとが死んでる、ってこと」
グウェンドリンが告げた言葉に、りんねは絶句した。
「――ッ、そしてェ! それを村人ちゃんたちは隠してるってことォ!」
ジンガが無理やり捻じ込んできたが、既に全員がそれを察していたから、彼に応じる反応は何もなかった。
「……まるで、病だ」
一度たりとも口を開いていなかったロクが、ざらついた声でぽつりと言った。
●
「……ならばこう考えるのが妥当だろう。もし、自宅地下にて娘を……生贄に捧げているのなら、その娘の親は告白などしなかった筈だ。――とうに狂って、諦めていれば別かもしれないが。情報を吐いたということは――」
ニコラスの言葉に、幾人かが頷く。
「その母親が、話している最中、窓からしきりに眺めてた家がある」
赤銅が言った。
行ってみよう、そう告げた彼女に迷いはなく、猟兵たちのなかに否を唱える者は当然の如くおらず、11の猟兵は行動を再開――否、開始した。
なるほど、と、ロクは合点がいっていた。
猟兵たちを遠巻きに見つめていた村人が多かったのも。
それどころか、村全体がしんとして、家の中でひっそりと息をつめていたのも――。
――ぜんぶ、隠すためか。
地下にある『捧げられたもの』を。そこまで頭の中で言葉にして、ロクは寒さから、少しだけ鼻をすすった。
猟兵たちが辿り着いた一軒の家の前で、グウェンドリンは頷く。
「……ここだけ、あまり、血、の……匂いが、しない」
それは、つまり。
「――まだ生きてる」
灯人が言った。
全員が、それに確かに頷く。突入するかと身振りで問えば、幾人かが首を振る。今度は灯人がそれに頷いた。
わずかながらに緊張を滲ませた面持ちで、灯人はその家の戸を、こんこんと手の甲で叩いた。
大成功
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第2章 集団戦
『篝火を持つ亡者』
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POW : 篝火からの炎
【篝火から放たれる炎】が命中した対象を燃やす。放たれた【赤々と燃える】炎は、延焼分も含め自身が任意に消去可能。
SPD : 篝火の影
【篝火が造る影に触れた】対象の攻撃を予想し、回避する。
WIZ : 新たなる亡者
戦場で死亡あるいは気絶中の対象を【自分と同じ姿の篝火を持つ亡者】に変えて操る。戦闘力は落ちる。24時間後解除される。
👑11
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
次の瞬間、猟兵たちの視界は暗転した。
ノックとほぼ同時に、恐ろしい速度で開かれた『内側』から――ありとあらゆる闇のようなものが押し寄せてきたからだった。
それが、猟兵たちだからこそ感じられた殺気であるのだと、彼らが悟るに大層な時間は要らなかった。
頷き合い、どうしようもなく、誰もがいつのまにか息を殺し足音を潜め――無論、それに該当しない者もほんの幾人かはいたかもしれないが――猟兵たちは進む。
大して広くもない家の中だ、地下へ続く道を見つけるのは容易かった。
村人そのものが、その場にいなかったのも幸いしたかもしれない。
ならば何故、扉は『内側から開いたのか』――。
過る疑問をいまは胸の内にしまい込み、彼らは階段を下る。
足が踏みつける木材の音は、あっという間に石のそれに取って代わった。
降りきった、と思った刹那だった。
空気が焦げる匂いがした。それと共に、音も。魔力と感じられるものが奔ると共に、暗闇の奥から炎が舞った。
明白な敵意、害意、あるいは――殺意に。
猟兵たちは立ち向かうこととなる。
多々羅・赤銅
何だお前ら。
難しい事ぁわからねえが
この先に、『居る』んだろ。
通せ。
剣刃一閃、押し通る。
前へ、前へ。炎はこちとら近しい仲だ、【火炎耐性】で焼け残るさ。
【見切り】【感】【勘】、【敵を盾にする】。あらゆる手で耐えつつ、後ろに炎を通すまいと【かばい】て斬る。
ーーああ、こいつらもしかして、ゾンビ戦法なのか?じゃあ私、耐える役な。
てめえらが、何とかしろ。頼んだぜ。
嫌な予感だとか、イマイチわからねえがーー
「生きてるか!!!」恫喝の如く、されど祈りを込めて吼ゆ。
なあおい生きてえか?諦めてんのか?
てめえの存在価値は何だ。
応えろよ。
ロク・ザイオン
(この亡者どもがなにものでも、)
……病は許さない。
病葉は断つ。
(病は伝染る。何人も取り込まれぬよう、森番は前に立つ。
獣の疾さで【先制攻撃】【地形利用】して亡者どもを強襲する。
あの篝火が厄介だ。烙禍で焼き潰せば妙な技は使えないだろうか)
(取り込まれ同じ『病葉』となってしまった者を、おれは、区別ができないから。)
※如何なるアドリブも歓迎致します。
九琉・りんね
すごくなんというか……その………
いや、違いますよ!?怖いとかじゃ!ないですよ!!??
わ、私!子供じゃないので!!!
よし!行くよミカン!
ミカンは小さいけれど、二つの斧でどんな敵だってやっつけるんだから!!
あぁだからミカンそっちじゃなくて……あわわぁ!!??
だ、大丈夫。ただバランスを崩しただけで
私平均体重ですし!!!
床が悪いですよ床が!!
もう好きにしてミカン!
貴女はそっちの方がやりやすいんでしょう??
ニコラス・エスクード
是程の陋劣は久方ぶりだ。
恐れもあれど、自らの行いにて縛り付けるか。
家族を捧げたという楔など想像の範疇に収まらぬ。
俺に出来る事があるとするならば、
その楔の元凶への報復を成すことだろう。
であれば此処からは判りやすい。
斬り、砕き、潰し、突き進むのみだ。
亡者の尖兵程度、受け止め弾き返しその主の元へと。
欠片でも留められると思うな。
戦場に於いて、盾の立ち位置は常に敵の前だろう。
構えた盾による【盾受け】を用い、
彼奴らの前へ陣取ってやろう。
如何な炎も全て受け止め払い除け、
道を作るが俺の仕事だ。
だが一方的に受け続けるのも癪なのでな。
受けた痛みの報いを『報復の刃』にて呉れてやろう。
文字通り、露を払うが如くだ。
夢飼・太郎
鉄火場なら出番だな
オレもがんばるとしよう
*登場までの経緯はお任せします
UCを発動
本体と追跡者は敵に接近
足を引っ掛ける
篝火を叩き落とそうとする
他の敵を盾に攻撃を受ける等の妨害・撹乱メイン
「雑魚が雑魚が雑魚が!へし折れたドアみたいに処理してやるよ……!」
ジン・エラー
ギブハハハハハ!!!!
雑魚どもがどいつもこいつも!
生贄ェ??
ダッセェ〜〜〜〜ことやってンな
ほらよ【光】だ
テメェーらの専売特許じゃねェーンだよそれは
よォ〜〜〜〜くツラァ見えるなァ??おォ???
おいお前ら
【オレの救い】を拝ンで帰りな
なかなかこンな機会ねェーぞ?
あァ、クソ野郎でもなンでも
オレが救ってやるよ
鼠ヶ山・イル
家族の中で死者を出して、それを屍人にしているのか
なるほど、なるほどね
以前も戦ったことがあるぜ
あの時は可哀想だった
あんたらも「可哀想」なままに、葬ってやろうな
オレの魔法、結構風流なんだぜ
死臭も花の香で掻き消して、安らかにしてやる
【2回攻撃】があるから、結構数があってもまとめて片付けられる自信があるぜ
あんたらに次なる目覚めがありますように 然様なら然様ならってな
で、親切にも扉を開けてくれたのは誰なんだよ
あんまりやさしいもんだから、きちんと礼を言ってやらないとな
な?逃げんじゃねーよ
グウェンドリン・グレンジャー
敵、生きて、いて……も、死んで、ても、やること、同じ。
細切れ……の、切り落とし、に……して、やる……
ブラッド・ガイストで、体内から展開した武装を全て殺戮捕食形態に。
2回攻撃と暗殺技能でEbony Featherを射出して牽制。
既に他の猟兵の攻撃を喰らっている個体に、捨て身の一撃でトドメか、それに繋げうる大ダメージを狙う。
死者や気絶者を出さないために、あまりに多くの亡者に組み付かれたり、囲まれた人がいたら、武装で羽ばたいて吹き飛ばす。
自分のダメージは激痛耐性で対処。
屍肉、漁りの、カラス……だから、あなた、たち、怖くない……
千桜・エリシャ
――まだ間に合うのならば、急ぐ他ありません
花は愛でるものですもの。散らせてなるものですか
ごきげんよう。忌まわしき亡者の方々
あなた方に首はあるかしら?
……嗚呼。なくとも、屠ることには変わりありませんけれど、ね
大人しく私に御首を差し出すことです
先を急ぎつつ、向かってくるならば一体ずつ確実に仕留めて差し上げましょう
先制攻撃でこちらへ攻撃する隙は与えず
相手に隙を見つけたら2回攻撃で畳み掛けましょう
相手取る亡者以外の個体に背後を取られないように常に後方には注意
敵の攻撃は花時雨を開いでオーラ防御か見切りで回避しますわ
こんな酷いことは早く終わらせて、この村に桜の春を迎えるためにも――
浅沼・灯人
あぁあ、団体さんのご登場か。
しゃあねえ、仕事の時間だ。
立ち回りとしては前衛サポート。
派手に暴れたい連中を前に行かせて、
その後ろから【スナイパー】【零距離射撃】【クイックドロウ】を駆使してアサルトウェポンで射撃。
近付いてきた敵はブレイズフレイムで燃やし後衛の邪魔を無くす。
後々蘇られるのは面倒だ。
時間に余裕があれば倒した連中の死体も焼いていきたい。
篝火が消えても【暗視】があれば倒れたやつも見逃さねぇさ。
後始末は任せろ。
にしても、家族を贄にか。
こういう時、大体先に差し出すのは老人か子供だろ。
誰も、親や子供の死に様見ずに言われるが儘ってか。
……それしかできなかったにせよ、胸糞悪くて吐きそうだ。
ジンガ・ジンガ
ヤダァこわーい、敵ちゃんヤる気まんまんじゃーん?
俺様ちゃん、超死にたくねェんですけどォー
死にたくないからァ――先に殺ったモン勝ちっしょ?
俺様ちゃん、戦うのがキライとはヒトコトも言ってねェじゃんよ!
★SPD
はァー、明るい明るい
陰気くせェ外は違った意味で明るいわァー
乱戦になりそーだし
他の猟兵ちゃんが頑張ってる隙に
初手は【忍び足】で【目立たない】よう【だまし討ち】
敵の攻撃は【見切り】で躱すか
近くにマヌケが居れば【敵を盾にする】
【フェイント】かけて撹乱しつつ
当て易い状況を作り出してシーブズ・ギャンビットからの
もう一発オマケの【2回攻撃】
ザコに用はねェのよな
さっさと親玉ちゃんボコッて帰りたいわァー
犬曇・猫晴
どうも、ぼくらの為に熱烈な歓迎会を開いてくれるみたいだね。
とはいえ、こういう歓迎の仕方はぼくはちょっっっとだけご遠慮したいかな。
ということで、戦おう。
【POW】
もしも相手が村人なら、殺しはしない。ただちょっとの間だけ眠っててもらうよ。
もし違うなら、容赦せず潰す。
【二回攻撃】【ダッシュ】
受けよう、全部。
ぼくの手の届く範囲で、いなしきれない攻撃を全て、受けよう。
ふふん、ぼくが倒れたとしても、共に戦う大勢の仲間がいる。
その人たちが後に続いてくれるなら、その内の1人の犠牲なんて、犠牲のうちに入らない!
負傷、アドリブ大歓迎
●
「散れ!!」
誰ともなくそう叫んだ。言われなくともと言うかのように、猟兵たちはこちら側に再度花開いた炎の熱量を跳んで躱す。
とはいえ地上の住居部分より多少なりは開けているようではあるが、散開できるほどの広さがないのはすぐに判った。
「くそ、狭ぇ!」
浅沼・灯人(ささくれ・f00902)が、避けるついでに身体を壁に打ち付けて悪態を吐いた。
「ヤダァ俺様ちゃんこういうのこわーい、むりィ!」
「瞳孔おっぴろげてなぁに言ってやがんだてめぇは」
多々羅・赤銅(ヒヒイロカネ・f01007)が、ジンガ・ジンガ(塵牙燼我・f06126)の様子を見もせず言った。ジンガはその声にひひと引き攣るように笑う。
「俺様ちゃん、戦うのがキライとはヒトコトも言ってねェじゃんよ!」
よく言うぜと赤銅は吐き捨て、こちらも笑った。
「クソが」
轟々と唸る炎は、底冷えしていたはずの地下をじんわりと熱で包んでいる。
「生きてるか!!! ――いや違ぇ、ちょっと待ってろ、生きてろよッ!!」
弱いものに向けるにしては、いささか乱暴すぎる言葉を吐いて、赤銅はだんと床を蹴った。
「……ここじゃむりだ」
「う、ん。……そう、思う」
ロク・ザイオン(疾走する閃光・f01377)にグウェンドリン・グレンジャー(NEVERMORE・f00712)が応じる。
「……おびき、だそう」
グウェンドリンが動く。
仮に、『敵』が血を好むのならば、使わない手は確かにないだろう。自らに奔らせた刃に、人間の血の匂いがついていった。
――気に入ると、いいのだけれど。
半ば無意識にそこまで思って、グウェンドリンははたと目を瞬かせた。
「戻れ! 外に出す!!」
「はァ明るい、ほんと明るい、陰気くせェのにぱっぱらお日様みたいに明るいの、やめてほしーわァ」
灯人が上げた怒号に、ジンガの悪態が混ざった。
「おいでよ、……おいで。ぼくらのために熱烈な歓迎会、してくれるんだろう? それならせっかくのパーティだ、お外で派手にやろうじゃないか」
犬曇・猫晴(亡郷・f01003)の唇がやんわりと笑みに歪んだ。
ニコラス・エスクード(黒獅士・f02286)は、背筋を這い上がってくる一種の悪寒を、ほんの一瞬だけ恐怖と錯覚しかけた。だがこれが恐怖であるはずがないのだと、彼は知っている。
「これほどの」
これが怒りのそれであると、ニコラスは知っているのだ。
「陋劣は久方ぶりだ」
轟と唸る音とともに、放たれた炎にニコラスが呑まれる。ぬるりとした炎の先が蛇の舌のように彼の鎧を舐め上げたが、鎧の男が掃うように動けば、蛇の舌はぱっと頼りなく散った。
「貴様らの愚劣な炎、全て俺が受けてやろう」
「は、無理すんなよアンタ! こういうのは皆仲良くやるもんだぜ!」
飛び込むと同時に、その勢いで舞った炎を、まるでいきものを殺すように切り伏せたのは夢飼・太郎(扉やかく言うな・f00906)だ。
「鉄火場なら、誰だってある程度役に立てるだろオレたち猟兵ってやつは!」
太郎は喉の奥すら見えそうなほどにそうがなって、強く地を蹴った。
「ひゃッ……ハ! オレもそー思うぜェ! お前とは仲良くなれそーだなァ!」
ジン・エラー(救いあり・f08098)が飛び込み叫んだ。
引き攣るように笑い声が止まったのは、笑いすぎてどうやら逆に呼吸ができていなかったかららしい。
「……あかるい」
千桜・エリシャ(春宵・f02565)は、地下から地上へ上った後、場違いなほどたおやかに目を細めた。
「嗚呼、よかった。あなた方にも首がある」
どうぞ、とエリシャは言う。
「その御首、大人しく――なくとも構いませんが。差し出すことです」
喩えるならば、それは暗い愉悦。
エリシャの瞳がその毒に愉しそうに歪んだ。
「――っ、別の家からも、似たようなのがたくさん出てきますー!」
九琉・りんね(おてんばまりおねっと・f00448)が声を張り上げた。
りんねが叫んだとおり、からからと乾いた、まだ明るさの残る寒空の下に、似合う風景があるとするならばそれは夜だろう。闇の眷属とでも言うかのような者どもが集まりつつあった。
「人が化けてたとかそういうわけでもなさそうだな。……死臭があったわけでもない」
鼠ヶ山・イル(アヴァリティアの淵・f00273)が吐き捨てた。
「地下に一匹ずつ『飼ってた』ってとこか」
「ペットちゃんにしちゃァ、ぜんぜん可愛くねーってェの、ここの村人ちゃんたち知らないんじゃないのォ!」
背後から滑るように、ジンガが一体の亡者を刃で撫でる。
「それともあれかなァ! ブス専!?」
「ハッ! ブス専でもクソ野郎でもなンでも!」
ジンガの声に、ジンが声を上げる。
「オレが救ってやるよ、決まってンだろそんなのぁよォッ!!」
――救ってやる、か。
赤銅はふと思った。そうだ。猟兵は『救う側』だろう。間違いない。
――なら。
――私たちの救いとやらはどこに在るんだろうな?
ともすれば、いずれどこかで。己がどう在ったとして救われることもあるのだろうかと、そんな下らない妄執を赤銅は、頭を振って捨てる。
「おうてめえら踏ん張れよ! 奥に――『居た』ぞ!」
「上から言うなよ! こんなもん、ドア一枚ぶち破るより簡単だろ!」
赤銅の張り上げた声に、太郎が笑った。
ぞろぞろと亡者たちの集うそれは、まるで葬列だった。
だがそれは、どうしてだろう。
――まるで。
彼らもまた、正しい眠りに落ちたがっているようにも、グウェンドリンには見えてしまっていた。『在るべき』かたちなど、人それぞれ――死者であれそうなのだろうと思うが故、それが傲慢であることも、グウェンドリンは知っていたが。
それでも、あれらが『敵』だというのなら、己が成すべきことは同じだと、グウェンドリンは思う。
「細切れ……の、切り落とし、に……して、やる」
展開された、少女の武装が踊り奔る。
さんざめく刃が、暗い陽光を照り返して光った。
「そう。こんな『酷いこと』は早く終わらせて、この村に、誇らしく咲かせてあげなくては……」
エリシャが軽々と跳ねた。彼女の持つ太刀の刃は、いつからか黒く染まっている。
「み、みみみみみミカンどこいったのー!?」
乱戦と化した中でりんねが叫んでいた。
ああ、と半ば軽い絶望感漂う声を漏らした瞬間、りんねは己が背後に影が迫ったことを悟る。
「――ッ!!」
怖くないというのは無理だ。
怖い。
死が迫るのだ、そこから逃げられないかもしれないと思えば、足が竦むのは当然だった。――が、いくら待っても振らない追撃に、りんねが目を開ければ、その眼前でどうと亡者は崩れ落ちた。
「み、みかーん!」
どこか誇らしげにすら見える『ミカン』が、そこには立っていた。
これは病だ、と。
ロクは思った。
森ごと病に呑まれることは滅多にないが、その病が、炎のかたちをしていたら、ともすれば『普通にあり得ること』なのかもしれないとも。
――伝染るのは、そうか、『わるいもの』か。
それを病と呼ぶか。呪いと呼ぶか。或いは悪意と呼ぶか、弱者の嘆きとするか――狡い言いかたをすれば、それはきっと時と場合によるのだろうが。恐らくそれだけなのだろうと、ロクは考え、ほんの一瞬視線を落とす。
視線と共に身を低く、疾く駆ける姿は獣のそれのようだった。
「……おまえらが、どんな亡者でも」
ざらざらとした粗い砂を思わせる声は、そこまでしか紡がない。
断つことでしか、伝染る病が、蔓延る悪意が止まらないこともあるというのを、ロクは知っているからだ。それをわざわざ語らずとも、彼女にはそれを行動で示せる力がある。
「もし村人だったらとか、杞憂だったのほんの少しだけ安心したよ。――ほんの少しだけね!」
轟々とうなる炎の渦を打ち払い、猫晴が笑う。
全てが彼ひとりに向いていた攻撃ならば耐えられなかっただろうそれも、飛び込み、退き、時には打ち払い、切伏せ弾き――それができる多数の猟兵たちにより、うまい具合に攻撃が分散されている。
「はは! ――もし受けるのがぼくしかいなくて、斃れるならそれもかっこいいかもなんて思ったけど、それも! 杞憂で、ほんっと安心した!」
死を間近にする人間というのは『狂いがち』だが――彼らの狂気というものは、どこに所在があるのだろう。ともすればそれは、彼らといま敵対している亡者たちのほうが、ただ死んでいるが故に持っていないものなのかもしれない。
耳元で炎が爆ぜる音に、ジンガは一瞬息をつめた。
「――ッ、び……ビるからそーゆーのほんとやめてェ!?」
心臓が早鐘を打つ。
「やめてよマジでさァ! 俺様ちゃん殺すがわになンのはいいけど死ぬのとかほんとこえーから! ヤなのよわかる!? わっかんねーかァ死んでるもんなお前らさァ!」
それでも戦うことから逃げられないのは、ジンガが羅刹であるからこそなのかもしれない。生存欲求と戦闘欲求、どちらを満たすか、否、どちらも満たしておくには――。
「しらねーけどォ! 俺様ちゃん死ぬつもりねーからさァ! 生きてるしかねェのよ!! だからお前ら、とりあえずお前!」
掠れるようにジンガの喉が嗤った。
「殺すわ」
猟兵たちと、家々から漏れ出てきた亡者たちの戦闘はしばらくの間続いた。
耐える者。隙を突く者。真っ向から切伏せ殴りつける者。戦いの方法は様々であれども、その全ての方法は、『ひとをたすける』ために使われていた。――最終的に目指すところがそこなのだから、当然のことでもあったのだが。
切伏せられ、いのちと呼ぶべきものがあるのかわからない亡者どもが、その動きを止めていく。
家々から、『生きている』視線が、猟兵たちを伺っていた。
猟兵たちが希望であることを知っていれど尚、村人たちはその希望に手を伸ばせずにいるらしい。
「――おうこらてめぇら!!」
赤銅が叫ぶ。
「生きてえなら、生きてえって叫べ! 私たちは――てめぇらがどんなでも――生きてえなら救けてえんだよ!!」
何故、と問われれば、おそらく誰もが上手く応えるすべなど持っていない。
戦うことでしか救えない命があるのだと知っている、だとか。
目の前で死なれるのが嫌だから、だとか。
それこそ理由付けするのならば、どういうわけかだいたいが後付けのきれいごとになってしまうことを、猟兵たちは知っている。
「でもな! 私らは――ッ」
赤銅のわき腹で炎が爆ぜた。
叫びを上げそうな痛みを堪えて、女は大地を踏む。
「伸ばされてる手しか、掴めねえんだよ!!」
だからどうかと、その乱雑な、決して丁寧ではありえない声は伝える。
その絶望を振り払えと。
「然り!」
ニコラスが声を張る。
「俺たちは、露払い! 貴殿らが真実立ち上がることをせずして、支配への勝利はなしと――」
どうか知ってくれ、と。
鎧の、盾の男はそう叫ぶ。
「それしかできなかった、ずっとその胸糞悪ぃの抱えて、こんなの続けるつもりか! 信じろ! そうすりゃ……止めてやる!」
灯人はどうも、気が緩むと若干の雑さが顔を覗かせるらしい。
「違うだろ、ただ諦めるのは――違ぇだろ! ちゃんと目ぇ開いて俺たちを見ろ! 勝ちに来た、救けにきてんだ、手ぇ伸ばせ畜生が!」
「ああ、そうさ。なぁ、そうしてくれよ。『大切』な命なら……ちゃんとだきしめて、しまっておいてくれ」
諦め笑うようにイルが呟いた。
風が竜巻くように、イルの周囲に花の香りが散った。
「言ったろォ! クソ野郎でも弱者でもオレが救ってやるってよォ!!」
ジンの傲慢もまた、ほかを焼く光だ。
それは時として、彼自身を焼き尽くすものかもしれないが――。
「弱くなんてねぇ負けやしねぇ――」
言い聞かせるように、言い聞かせてもらえるように太郎もまた呟く。繰り返し、嫌になるほど。
「雑魚が束になっても雑魚なんだよ雑魚が!」
迫った最後の亡者の篝火を叩き落とし、太郎は吠えた。
りんねは、戦闘が終わり、おとなしくなったミカンを抱きしめていた。
なんてむごいと、思わずにはおれなかった。そしてこの脅威に、ずっと脅かされていた村人たちに、りんねは叫ばずにはおれなかった。
「……っ、助けますから、私たちが!」
おねがいしますと、りんねは声を張り上げる。
「ここを、この村を支配してるのは何なのか、教えてください! 倒しますから!!」
おねがいします――と。
泣きそうなほどの声のあと、応えのない絶望感が場を満たそうとしたときに。
扉の隙間から、ほんの小さなかたまりが飛び出した。甲高い、そのかたまりを呼び止める声と共に、りんねの傍にいたエリシャの足元に抱き着いたのは、村の幼子。
「……っ、つぎは、おかあさんだって言ってたんだ」
だから、と。
無知故か、無謀故か。それでも手を伸ばした、伸ばすことを選んだ少年は言う。
「たすけて……!」
痩せ細った指先で、エリシャの服の裾を握り、少年はそう言った。
もちろん、と、桜の双眸をゆるく細めて、エリシャは応えた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『幻想術師『パラノロイド・トロイメナイト』』
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POW : 記録■■番:対象は言語能力を失った。
【夢幻の眠りを齎す蝶の幻影 】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
SPD : 記録■■番:対象の肉体は既に原型を留めていない。
完全な脱力状態でユーベルコードを受けると、それを無効化して【数多の幻想が囚われた鳥籠 】から排出する。失敗すると被害は2倍。
WIZ : 記録〓編集済〓番:〓編集済〓
対象のユーベルコードに対し【幻惑し迷いを齎す蝶の群れ 】を放ち、相殺する。事前にそれを見ていれば成功率が上がる。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠鶴飼・百六」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
実のところ、一度でも手を伸ばしてしまえば「助けを求める」のは簡単なことだ。
凝り固まった諦めさえなければ。諦めという常識が成されていなければ――意外なまでに。
それを成した少年は、おそらくきっと、ともすれば猟兵たちよりも、村の光であったのかもしれない。おかしな話だが。きっかけというものは、往々にしてそういうものだ。
その後、地下から救出された娘は、呪いの刻まれた目隠しを覚束ない手取りで外し、それから泣いた。母親もまた泣いていた。
泣くくらいならと誰かが悪態を吐いたが、幸いなことにそれは戦えない者たちには届かなかったようだった。
故に、ここから先は、希望を得るためだけの話だ。
依頼された仕事は既に成された。救出だったのだから。
ただそれでも、支配という名の、人の心を摩耗させゆく何かしらの害意を――ここで断とうとするのなら。
猟兵として、するべきは唯一だろう。
頷いた者たちは、村人たちから示された村の一点へと向かう。その土地では、希望という名を込めた、今は葉も花もつけぬ桜の樹のもとへ。
そうしてそこで、『それ』はゆらゆらと――空を泳ぐように、猟兵たちを待っていた。
ロク・ザイオン
(救いを求められるのは、孤独な森番には嬉しいことなので)
……。
病の源は、断つから。
(すこし、張り切る)
木なのか。
木に憑いたのか。
……よるべだったのでは、ないのか。
(【先制】し【2回攻撃】で【傷口をえぐる】。鳥籠を壊せば有利になるだろうか。
邪魔な蝶の群れは【なぎ払う】。
隙は【野生の勘】で逃すまい。「烙禍」で焼き潰す)
……ひとから奪うお前はせめて、灰に。炭に。
……森の。新しい命の、礎になれ。
グウェンドリン・グレンジャー
絵本……に、出てきた……悪い、フェアリー……?
何者なのか、分からない。なら、調べるしかない。
盗み攻撃を乗せてBlack Tailを伸ばし、手に持ってる蝶々の入った籠を奪ってみる。
どんなものなのか、それで攻撃が鈍らないか判断。
危なさそうと第六感で感じたら誰もいない遠くにすぐ投げる。
あれ、おか……しい、ねむ……戦わ、な……いと
MórríganとEbony Featherで前衛として応戦しつつ、敵が疲弊してきてると見えたら
捨て身の一撃と生命力吸収を乗せたRaven's Roarで攻撃
一度見られたら対策される、から最後の最後に
……いただき、ます
(アドリブ、他参加者との絡みや連携大歓迎)
犬曇・猫晴
心の底からの救いを求める叫び、しっかりと受け取ったよ。
なら僕らは全身全霊を以て応えるだけさ。
何故かって?そりゃあもう、僕らが猟兵だからさ!
他にどんな理由が必要だ!!!
【POW】
で、お前が元凶か。
いつもの僕なら「個人的な恨みはないけど」って言うけど、てめぇには個人的な怒りしかねぇや。殺す。
眠気なんか知った事か。眠気なんか自分の足を刺せば痛みで吹き飛ぶでしょ。【串刺し】【傷口をえぐる】
自分を刺した痛みだって、村の人たちが受けた痛みの方が遥かに痛いと思う。
だからこの涙は村の人たちの涙だ。
一度しか使えないこの一撃を叩き込むまでは、僕は倒れるわけにはいかない
負傷、アドリブ歓迎
ニコラス・エスクード
此処で退くは手落ちが過ぎるな。
元を断ち切らねば繰り返すだけだろう。
彼奴に報復を為さねば、
真の救出は成らず、我が贖罪は成らぬ。
捻じくれた悪意を振りまく奴は如何なものかと思ったが、
成る程。
中身同様、捻くれた見目をしているものだ。
切り捨てれば死ぬのかも怪しいところだが、
なぁに、死に果てるまで斬り落としてやろう。
蝶よ花よと愛でる趣味も持ち合わせていないのでな。
襲い来る幻影など意に介さず、
己の同胞たる鎧と盾とを以って払い除け、
素っ首に捨て身の一撃を叩き込んでやろう。
血を己が得物に啜らせ、【ブラッド・ガイスト】の発動を。
『鎧砕き』と『怪力』を以って、
如何な守りがあろうとソレごと砕き散らすまでだ。
ジン・エラー
怖がり生きたがり守りたがり
大いに結構ォ!!
ああ――
だけどなァ――!!
『手ェ伸ばされねェーと掴めねェーのかこのクソどもが!!!!』
『猟兵サマも所詮その程度だったのかよ!!!!ア゛ア゛!!!???』
『嗤えよ衆生!!捨てとけ我執!!!今からこのオレが!!!テメェーら全部!!!!救ってやるよ!!!!!!』
『【オレの救い】を!!!!そのクソったれな節穴に!!!!脳髄に!!!!!そっくりそのまま!!!!!焼き付けろ!!!!!!』
ああ、悪ィな"共犯者"
お前のイヤホン、傷つけた
多々羅・赤銅
さて、私らがコレを斬ったとこで。てめえらに差す光がいつまで保つかはわからねえよ。私ら猟兵も、この世界に付きっ切りじゃいられねえからなあ。
けど
また伸ばしてくれたら
その時も生きていたら
見つけてやるよ
一人ずつ殺す事で今日まで生き延びたお前らの抗い、
よく生きた
褒めはしないが否定もしねえさ
桜の花見酒してえなあ。
さ、平穏の為に、ひとタダ働きいくか!
蝶だの何だのまどろっこしいな、羅刹旋風で練り上げた破壊力の風圧で吹き飛ばせばいいんじゃねえか!?
上空戦になるなら私に出来んのは下方での耐久、露払い、肉壁。上撃てるヤツを地べたから護る。届きそうならまあ、適当なヤツの背中でも踏み台にしてぶった斬りにいくけどよ。
夢飼・太郎
誰が為の仕事は終わり
ここから先は己が為の時間だ
☆スタンス
エージェントや猟兵としての役目を於いて戦う
敵の思惑主義主張は無視
ただ自身が強者であると納得する為に敵を倒す
「テメェが何しようと何考えようと知ったこっちゃねぇオレは!テメェを倒して強くなきゃならねぇんだクソが!」
☆戦闘
矢面に立つ
主に射撃しつつ適当な技能を活用して敵の攻撃を妨害する
UCは敵WIZを警戒し最終手段に使う
☆他
敵POW技の範囲内に村人がいる場合
真っ先に避難させる
アドリブ大好きです
九琉・りんね
怖い怖い怖くて堪らない!
だって私はただの……
――違う
私だって、
私だって!!猟兵なんだ!!!
あの怪物から離れたいなら
足が竦んで動かないなら
自分は後方。『ミカン』は前方。
大丈夫、落ち着いて周りを良く見よう
私は人形遣い。無力じゃない
ヒーローみたいに強くない!
刀だって振れない!
素早くなんて動けない!
でも、全部、ミカンなら出来る
でしょ?ミカン!
信じてるからね!
あの人はいっつも前に出過ぎなんだ
守られてばっかりは嫌なんだ
私だって「たすけて」って言われたんだ
だから私にも守らせて、多々羅さん
貴女が怪我したら、誰が私を肩車してくれるんですか!!
襲祢・八咫
……おれは器物の成れの果ての身ゆえ、あまり眠りを必要とはしないが。人の子にとって、眠りは穏やかなもので、夜は安らかなものであるべきだろうよ。
ちりぃんと鈴の音、浮かぶ赤鳥居から溢れかえるようなひとつ目烏の群れ。【破魔】【祈り】【属性攻撃】【衝撃波】【2回攻撃】を加えて。
往け、烏共。
その身を食い荒らし、蝶の群れを陽で灼き尽くせ。
もし眠る者あらば翼で叩き起こせ、喧しく鳴き立てろ。
……この世界は暗闇が多かろう。ならば、明るい日差しを。陽光の加護を。
おれは日輪の神の物ゆえな、少しばかり力を借りるとしよう。
纏う属性は破魔と陽光、故に浄光と化す。
扇子を薙刀に変えて灼き尽くす浄光を纏い、自らも前へ。
浅沼・灯人
助けられるんだ。
救えるものがあるんならいくらでも、
俺の手から零れていかないなら救って見せる。
……とか、口に出すのはガラじゃねぇから、
そういうのは他に任せた。
俺はこいつを倒すことだけを考える。
ああ、必ず止めてやるよ。
敵の攻撃は武器で受け、攻撃の癖を見極める。
癖が見抜けりゃ戦いやすくなるだろう。
味方への攻撃は極力かばう。
邪魔はしねぇよ、だから好きに動け。援護する。
攻撃は木を傷つけないよう注意し、零距離射撃やスナイパーで急所や武器を狙う。
……幻覚は撃てないが、気合でどうにかする。
弱ってきたら灼焼で幻想術師だけを焼き祓う。
希望の下に陣取る絶望に、餞を。
延焼箇所は選べる。木は絶対に燃やさねぇよ。
千桜・エリシャ
助けを求められたのならば、それを成すのが道理でしょう
少年を安全な場所へ避難させてから桜の樹の元へ
あなたがこの支配の元凶さんかしら?
そう、でもこの場所はあなたには似つかわしくありませんわね
早々に退いてもらわないと
――嗚呼。でも、その前に御首を私にくださってから、ね?
手向けの花は差し上げますから
――ああ、そうですわ
ねえ、あなた
桜の樹の下には骸が埋まっているというお話をご存知?
いわく、骸の血を吸っていっそう美しく咲くようになるそうよ
だから、
あなたの御首をこの桜に捧げて差し上げますわ
ふふ。そうすれば、きっと美しい桜を咲かせてくれるでしょう
それが希望になるのなら、
ジンガ・ジンガ
そっか、テメェが親玉ちゃんかー
テメェの配下の所為で、俺様ちゃんさっきマジビビるハメになったんよ
これ処すヤツですわ、マジでー
★POW
【フェイント】で体勢を崩しながらのダガーで【2回攻撃】
至近距離まで近付いたなら【だまし討ち】でショットガンをぶち込め
倒せ倒せ倒せ倒せ
やれることは全てやれ
範囲攻撃は【逃げ足】【見切り】で対応
急所だけは絶対守る
ぶっちゃけ
他人の希望とかそんなモン知ったこっちゃねェのよ
希望抱きたいなら勝手に抱いて生きてろ
諦めんなら諦めて死ね
嫌なら最後まで足掻け
自分のために好きに使って、好きに生きて死ね
俺様ちゃんが生きるために、テメェは死ね
この世の誰にも、俺様ちゃんの命だけは奪わせねェぞボケ
●
漏れ出る溜息のようなそれだった。
この村に潜んでいたそれは、しかし悪意というものではなく――。
――むしろこれは、憐憫か。
ニコラス・エスクード(黒獅士・f02286)は敵を前に思った。ゆらゆらと液状なのか気体なのか、ともすれば幻そのものであるかのような、不定形のそれ。
それは憂うように猟兵たちを『観て』いた。
「気に入らないな」
犬曇・猫晴(亡郷・f01003)はそれを睨んだ。
「その顔。……自分だけ観客席にいるみたいな、傍観者の目をしてる」
「……なれば、おれたちは舞台の上か」
ゆらりと、半ばくらげのように――くらげに首はないが――襲祢・八咫(導烏・f09103)が首を傾げた。
「っふふ、舞台ですか、ときには踊るのとて、嫌いではないですよ」
唇をほころばせて千桜・エリシャ(春宵・f02565)がころころと笑う。
それならばさあ、とエリシャは続けた。
「共に舞台に上がらねば」
その微笑みに、浅沼・灯人(ささくれ・f00902)が頷いた。
良いとは言えない彼の目つきが、捨てきれない誇りを燃やしていた。先ほどは思わず、柄にもなく叫んでしまったと自覚していたから、若干の羞恥心も持ち合わせていたかもしれない。意識こそしておらずとも。
「さァ、さーさーさー! 本日のアナタのお相手は、俺様ちゃんたち『イェーガー』」
仰々しく笑って、ジンガ・ジンガ(塵牙燼我・f06126)は、淑女を誘う紳士のようにゆるくポーズをつけて一礼してみせた。
「テメェが死ぬまで踊ろうぜ、親玉ちゃん!」
そうして奔る一閃の光が、舞台の幕だ。
観客席に手を伸ばした猟兵たちにより、『観客』は欠伸をするように舞台に上がった。
「は、主役は遅れて登場とでも言いたげだ!」
ほざけ、と夢飼・太郎(扉やかく言うな・f00906)が唸った。
「主役格なのはくやちぃけど間違っちゃねえけどな」
多々羅・赤銅(ヒヒイロカネ・f01007)は、幼児言葉をわざとらしく使ってひとつ笑った。
敵が展開した蝶の群れに、酷い眠気を誘われて、赤銅はぐっと目を閉じぬよう力を入れた。煙のようなそれらの範囲から飛び退き、掠れた唇を舌先がなぞる。
「クソみたいな話はもうひとつあんな。これがタダ働きだってこった」
「ねえ、えっと、それじゃああの、」
「おん?」
九琉・りんね(おてんばまりおねっと・f00448)が、再び前に出ようと、低く構えた赤銅に声をかけた。
「あの、あのね。タダ働きになんてさせないから、わ、私が、えっと、ちょっと時間かかるかもしれないけど! 多々羅さんに何か――おごるから!」
「は?」
上手く言語化できない感情を、りんねは吐き出す。笑えていたはずの表情は、すぐに笑えきれずにぐしゃぐしゃになった。りんねは、無理やり笑みをかたどらせた口元をひくつかせて言葉を探す。
赤銅が、ほんの僅かに顔を顰めた。
「お前、なんて顔――」
「いなくなっちゃいそうな戦いかたしないでよッ!!」
思わず張り上げてしまった声に、りんねははっとした。
それでも止まらない。どうやらそういうタイミングだったらしい。
ああ泣くな、泣くな、私は――。
「お酒でもごはんでも洋服でも、多々羅さんに必要なもの、おごるから! わた、私も猟兵だから、えっと、そうじゃなくて……賭けごととかも、勉強するから、だから、っだから……!」
言いたいことなど纏まるはずもない。
これはただの衝動だ。何を言えばいいのか、何を伝えればいいのか、何を伝えてはいけないのか、判らない。りんねの中でぐるぐると渦を巻く、いずれどこかでの分かれ道が、どういうわけかひたすらに怖かった。
赤銅は一瞬片眉を上げて、それから軽く苦笑した。
「そんなら賭けとくか、今」
まとまらないりんねの感情が、その赤銅の一言で晴れた。
止まったと表現してもいい。
「お前と一緒にひとまず帰れることに、いまんとこ懐にある全財産、全部賭けるぜ、りんね」
ぽんとりんねの頭に触れて、それから赤銅は再び跳んだ。
反射的に手を伸ばそうとし、届かず、りんねは唇をひくりと動かした。
――届かない。
そう思った。
たすけるためにしか力を注がない赤銅の光が、いつか彼女自身を焼いてしまいそうで。
りんねはぐっと顔を上げた。涙は散ったが、それ以上は零れなかった。
「ミカン、やるよ!!」
――私も、同じものに賭けるから。
勝敗のつかないだろう賭けに、いまのすべてを。
空気をきる音がロク・ザイオン(疾走する閃光・f01377)の耳元で唸る。
跳び、走り、身を屈め、ロクはぶんと身体を回転させた。勢いを殺さずに叩きつけた体術が、ぐんにゃりとした感触をロクに伝える。
「……っ!」
生理的な嫌悪感に、ロクは飛びずさる。嫌悪感とともに、触れた場所から立ち上ってくるようなこの感覚は――。
――眠い。
「くそ」
ロクは霞みそうになった視界を、己の頬を叩いて回復させる。
「無理……しないで、ね」
グウェンドリン・グレンジャー(NEVERMORE・f00712)がロクに声をかける。それからすいと滑らせるように視線を動かし、グウェンドリンは敵を見た。
「……絵本……の、フェアリー、みたい。……悪い、ほうの……」
「……」
ロクは何も言えなかった。何を求めるわけでもなくグウェンドリンが述べている感想に、どう応じるべきか判らなかったし、誰かに向けて声を発することに、ロクは未だおそれがあるからだ。
グウェンドリンは武装を展開して飛ばしながら、小さく首を傾げた。
「話すの、嫌い?」
「……ちがう、おれは。――ただの森番だから、喋るのは嫌い」
鈴の音のような声で話すグウェンドリンに対して、己の声は美しくないからと、そう言ってしまうことすら憚られて、ロクは視線を伏せながらそれだけ応えた。
「……そう? それ、なら……私も、黙ってる。ごめん、なさい」
ロクはもう応えなかった。
ジン・エラー(救いあり・f08098)は、ほんの一瞬死んだような目でそちらを見ていた。ふたりはそれに気付かなかったし、もしかするとジン自身もそれに気付かなかったかもしれない。――彼の『本人』がどこに居るのかは、甚だ疑問であるのだが。
「なァお前! お前はなんだ敵か、敵なのァ知ってんだけどよォ!」
光。
自然のそれでも慈善のそれでもありえない強すぎるそれが一瞬爆ぜる。
「安心しろよ、オレはお前も救ってやるからよォーー!!」
「……」
ニコラスは、己が横から飛び込んでいったジンの背中を一瞬見つめた。
救ってほしいのは、或いは――そこまで思い、止める。
沈んだ思考がいまこのときこの場所で、ともすれば死地ともなろう瞬間に、何の役にも立たないこと程度は、ニコラスは理解している。
――贖罪を重ねる以外、何が在ろうか。
それでも命があるというのは不可思議なもので、思ってしまうと、身体とは別に、感情が走りはじめるのだ。
は、と、ニコラスの鎧の奥で嘲笑が漏れた。
盾の男は思考を潰す。
報復を成せと、それだけを――やはり、考えた。
ふるふると震える、あるのかないのか判らない身体を前に、八咫は打ち込む。
「眠りは、そうか。……お前にとって、救いたるものか」
八咫は敵を解する。敵意もなく、ひたすらに感情の受け皿にたまった感覚を追えば、理解は容易かった。
「……眠らせ、救うのか。死ではなく……永遠に眠らせて」
泳ぐような身体に二撃、三撃と打ち込み、八咫はほんの僅かに眉を寄せた。
「しかしな、それは。……我々にとって、……人にとって、醒めない眠りは、救いにならんのだ」
お前には、伝わらんのだろうが――。そこまで言って、八咫はばっと飛び退く。
「ふふっ、――あは!」
笑みが狂気を滲ませて、刃が煌めいた。
「どうぞ、遊んで、踊ってくださいませ!」
エリシャがごうと得物を薙ぐ。
「なぁなぁなァ、なァ親玉ちゃんよォ! お前のあれそれ奪ったら、俺様ちゃんの残機ワンアップしねーかなァ! すると思うんだよねェ!」
だから死ねよとジンガが笑った。
乾いた目の表面がちりちりと痛む。首の後ろ側が熱い。
――ああ。
――まだ、生きてる!
呼吸すら忘れ、ジンガは脅かすものと踊る。それが侵すのは誇りでも救いでも、日常でもなんでもない。彼にとっては。
「テメェが死んだら俺様ちゃん生きてられんだろォ! ひとまず! いやひとまずとかなんもなく、その先も俺様ちゃん死なねえけどさァ! なァ頼むよ親玉ちゃん、オネガイ、ってかわいく言ってもいいぜェ、どういうのがお好み?」
なあだから死んでくれよとジンガは笑えないままに笑う。
殺したいのか、そう問われれば、外れてはいない。
生きたいのか、そう問われれば、それもやはり正解ではある。
だが、死なない、これはそんな高尚な決意でもなんでもなかった。
だからこそ、恐らくは、ジンガジンガという名の男にとって――。
「死にたくねェのよ俺様ちゃん!」
いつものように笑って告げた無意識だけが、心の底を吐いていた。
敵の攻撃が、ぶれた。
灯人は瞬時にそれに気付いたが故に、半ば無謀にもその攻撃を飛び込むことで相殺した。
「……っ」
「な――ッ何してんだ!」
幸いにも追撃はなかった。力は強大とはいえ、一体の敵が多数の猟兵を相手取るには、やはりすべて完璧にとはいかないようだった。太郎が膝を折った灯人の襟元を掴む。
「死んでないな!?」
「……今はてめぇのせいで苦しいけどな」
「っ、わ、悪い」
緩んだ手を苛立つようにはらって、灯人は立った。
そして再度飛び込んでいった灯人に、太郎は続こうとして――気付く。
振り向いた先は、桜の大樹。
「……今時流行らねえぞ、判りにくいツンデレとか」
ああでも、くそ、と。太郎は吐いた。
「くそ。……アンタみたいなのを強いって言うんだろうな、……クソが」
ならば背を追え見失うな。
太郎は内なる声に従う。
「俺は――ッ強くなり『たい』わけじゃねえとっくに強ぇんだクソが! テメェを倒して証明してやるよこの野郎!」
皆大変そうだなあと、叩き伏せられたいた猫晴は、どこか意識は遠いまま思った。
叫び、嘆き、怒号――。
それぞれがみな己のまんなかに置く『なにか』を抱え、それに勝つために、或いは守るために戦っているのだろう。そしてそれは、恐らくどこかしら、己とて同じなのだろうことを、言葉にせずとも思想とせずとも、認めこそせずとも、猫晴は理解している。
「『たすけて』に応える理由に、」
ぐっと腹に力を入れる。
睡魔と、穢れのような痛みが渦を巻く。
力が抜けそうになって、それでも猫晴はもう一度言葉を吐いた。
貫かんとする意思というものは、ときおり、通じる言葉にして吐くことで、様々な力を呼び起こす。
「どんな理由が必要だ」
撒き散らされる敵の霞が、思考と力を奪おうと猛威を振るう。猫晴は、持っていた刃をぐっと握りしめた。足を傷付ける余裕すらなかった手のひらが、刃を握り込んで血を流す。
「ぼくたちが『猟兵』だから助けることに……それ以外に残る事実なんて、ないだろう!」
どれだけ何を思おうが、迷おうが、救った命が『ひとまず続く』こと以外、猟兵の残せる結果などなにひとつない。
怒声を、或いは咆哮を上げて猫晴は打ち込む。
「行けぇえ!」
「ミカン!!」
猫晴の一撃が作った隙に、りんねの呼び声と共に彼女の人形が奔る。人形に次いで、ロクと八咫、エリシャが総攻撃を仕掛けた。
「舞台に上がるなんざァーてめぇにゃァーもったいねーってこったろー多分よ!!!! おら、節穴見開いて焼き付けて救われろよクソが! これが――」
ジンが辺り一面を光にて焼く。
「こんなもん、舞台でやるほど上等なもんじゃねえ、引き摺り下ろせ!!」
灯人が激昂を露わにする。
「さァて、何を奢ってもらうかね」
喉だけで笑って、赤銅が不定形の身体をがっしと掴んだ。
打ち込め、仕留めろと赤銅は叫んだ。
「もらっっ――たァ!」
とんと間合いに踏み込み、ジンガの撃鉄が零距離で爆ぜる。
きゅうと、まるでイルカの鳴き声のように、空気が収縮する音がした。まだだ、と誰かが――恐らく太郎が――声を張る。
「大丈夫」
影のようにグウェンドリンが、身体を震わせ地に落ちた敵に寄った。
逃げようとしているのか、震えていたそれが、鳥籠を振るい――。
「あ、」
「……へいき」
つづけて、と。鳥籠を叩き落として、ロクが言った。
グウェンドリンは小さく微笑んで、それから地面に落ちたそれに向けて、そっと顔を寄せた。だからこの一言は、他の誰かに聞こえたかはわからない。
「――いただき、ます」
ばつん、と。
喰らうような一撃が、さいごに吠えた。
●
しんとしていた。
「……殺せなかった、かな?」
「いつも通り……というやつでしょうね」
残念ですと、エリシャが得物を収める。
「いくら首を落とそうとも、縁あるものがいなければ、縁は断てない……ふふ、すこし、不思議ですね」
エリシャの笑みに、八咫は笑った。
「まるで、おれたちのようだな」
そうかもしれないと、幾人かが思った。
ニコラスはどっかとその場に座った。さすがに、疲れた。そう言った男に、「俺様ちゃんもちょー疲れたァ」と、ジンガもまた、地面に身体を投げ出した。
冬の空が、やたらと高くて遠いのを、ジンガの瞳は映していた。
誰かが肩を貸し、貸され、村の中央へと戻っていった猟兵たちを、静かな村が受け入れた。申し訳なさそうに下を向く村人たちの中から、手を伸ばした少年が駆けてくる。
ありがとうと、泣きじゃくりながら。
「っ、!」
少年が掴んだのはロクの服の裾で、ロクはしばらく己が手の所在をどうするべきか懸命に考えていたが、やがて言葉はなく、少年の頭をそっと撫でつけた。
ぱさついた髪が、ひどく柔らかいもののように思えた。
村人たちは、疲れ切っていたからこそ、多くを語れないのだろう。ただそれでも、『ひとまず』これ以上、支配に捧ぐものを断てることは解っていたらしい。村人たちは、一斉に、獣が如く戦った猟兵に頭を下げた。
「――は、」
赤銅は幽かに笑った。
その『礼』のなかに、少なからずおそれを感じたからだった。
「まァ、わかんなくもねーけどォ」
ジンガが口をとがらせていた。
「ちょーがんばったのにィ、村人ちゃんたち酷くない?」
「化け物倒せんのは化け物の類だからな。理由もなく『猟兵だから』助けに来たっていう理屈は、……俺たちにしか、たぶん理解できねえよ」
灯人が気にしたふうもなく言った。
そう。――各々、救ける理由など、別々で、様々で、そのどれもが身勝手だ。
力ありて、それを振るえる者が『正しい』かどうかなど、助けられる側の考えに含まれるはずもない。
狂気という名の獣に堕ちれば、正義の所在は露と消える。
世界を救い、世界を渡る『猟兵』どもよ。
故に、人たれ。
大成功
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