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アルダワ魔王戦争7-A~叫べ、魂の限り

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●魔道王の間
 そこは、どこかのお城の様な空間だった。
 金糸で飾られた赤い絨毯が敷かれ、等間隔に篝火が焚かれている。
 部屋の奥には、骸骨を基調とした禍々しいデザインの大きな玉座が設置されている。
『ふっ……待っていたぞ、勇者達よ』
 そして――玉座の上には、その大きさからすると随分小柄な姿があった。
『いや、もっと偉そうな方がいいかな……よし!』
 何やら一人で納得すると、玉座の上にすくっと立ち上がる。
『我が名はスペルマスター・ガレット! 大魔王に選ばれし、闇と雷を操る至高にして究極の魔道王!』
 ……。
『決まったぁ……』
 ガレット、すげえドヤ顔である。
『さて、次は詠唱の練習をしておこう』
 玉座から飛び降りると、ガレットは魔導書片手にポーズを決める。
『深淵なる闇の力よ――』
 そして、一人孤独に、詠唱の練習を始めるのだった。

●うわぁ
「と言うわけで、これが皆に任せたい絵画の中なんだ」
 状況を伝えたルシル・フューラー(ノーザンエルフ・f03676)と集まった猟兵達の間には、何とも言えない空気が流れていた。

 はじまりの迷宮――第7層。
 アルダワ地下迷宮最深部の中でも深層と言えるであろう一角に、幾つもの絵画が並んでいる回廊がある。
 魔王を封じていた迷宮に、ただのインテリアで絵が掛かっている筈もない。
 陳列されているのは、災魔――オブリビオンの封じられた呪われた絵画だ。
「ただの絵と思って進んでいると、絵画の中に吸い込まれて災魔とご対面、と言う中々性質の悪いトラップだ」
 そのトラップを解除する術は、ただ一つ。
 中にいるオブリビオンを倒す事。

「そのオブリビオンが、さっきのスペルマスター・ガレットと言うわけだ」
 どうやら、元々はアルダワの学生だったらしい。
「魔術に関しては優等生だったみたいだよ? 友達いなかったらしいけど」
 それで、一人で自分の優秀さを示そうと迷宮に突っ込んで、なんかこう色々あった挙句に哀れオブリビオンに。
「生意気盛りだった上に、所謂、中二病ってやつが治らないままオブリビオンになってしまったもんだから、大魔王に選ばれたのだとか自称してる」
 うわぁ。
「で、ガレットのいる絵の題目が『魔道王の間』と言うものでね。その中は、非常にガレット向きの空間になっている」
 具体的にどういう事?
「推奨、中二病」
 ……。
「物理攻撃だろうが魔法攻撃だろうが、詠唱したり、技名叫んだりしよう。して。でないと、本来の性能が出ないから。むしろ普段より盛ってもOK」
 詠唱とか元々ないよってユーベルコードだってあるだろうが、その場合も即興で何か考えないと、おそらくちょっと悲しい事になる。
 ポーズとかあってもいいかもしれない。
 あれ、ここアルダワだよね?
「心の準備は良いかな? 準備が出来たら行って貰うよ。実は泣き虫なガレットが寂しくて泣き出す前にね!」
 色々面倒そうな災魔だな!


泰月
 泰月(たいげつ)です。
 目を通して頂き、ありがとうございます。

 このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
 1フラグメントで完結し、『アルダワ魔王戦争』の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。

 7-A『絵画展覧会』です。
 戦場は、絵画トラップの絵の中となります。
 そして今回のプレイングボーナスは『絵画世界の雰囲気に合わせた戦い方をする』です。
 絵画のタイトルは『魔道王の間』。
 敵の『スペルマスター・ガレット』お好みの絵画世界となっております。
 具体的には、どんな類のユーベルコードであれ、長々と詠唱したり、技名を叫んだりしないといつもの調子が出ない謎空間となっております。

 叫べ。唱えろ。

 プレイングは、2/13(木)8:30~でお願いします。
 公開は2/15(土)からの予定です。
 描写人数は、再送なしで可能な限り頑張ります。

 ではでは、よろしければご参加下さい。
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第1章 ボス戦 『スペルマスター・ガレット』

POW   :    イーヴィル・イクリプス
【手にした魔道書から禍々しい闇属性の光】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
SPD   :    マリオネットガールズ
レベル×1体の、【左頬】に1と刻印された戦闘用【鋼鉄製の女子型カラクリ人形】を召喚する。合体させると数字が合計され強くなる。
WIZ   :    サンダーグレイブ
レベル×5本の【雷】属性の【三叉槍】を放つ。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はミモザ・クルセイルです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ナザール・ウフラムル
まあ、実力があってもそれを鼻にかける奴とお近づきになりたい奴はそういないよなぁ。

よう、無謀な先達。かわいい後輩がその息の根、止めに来たぜ。

UCをいつも通り詠唱付きで発動して、召喚したグリフォンに乗る。
地上を滑るように低空飛行しながら、放たれる雷槍を躱したりグリフォンの操る雷で相殺したりしながら距離を詰める。
ある程度距離が詰められたらグリフォンの背からガレット目がけて跳躍(ジャンプ)。
「スパルナ=チラーダ」を刃の翼の形状に変化させて上から斬りかかる、と見せかけて、下から「スーデル」が魔道書を狙って影の槍を突き出す(だまし討ち)。


大豪傑・麗刃
ほうほう長々と詠唱とな。
そういうことならわたしの超得意分野なのだ。

ほう、きみの持っているのはまさしく魔導書!
さぞかし強力な技を使うのであろうなあ。
ヤヴァイぞ。

まー、どうしょ!

……
魔導書なだけに!
まーどうしょ!!

(この一連のギャグを詠唱と言い張る)

んで相手がわたしのギャグに爆笑(あるいはつまらなくて怒る白ける等)で油断したところを刀でずんばら。
これも技名必要?え、えっと、秘技変態剣!(アドリブに弱い)

そも前のが詠唱と認められなかったら仕方ない。

南無阿弥陀仏南無妙法蓮華経完全無欠質実剛健七転び八起き弱肉強食焼肉定食腹減った今夜はラーメンソーメンアーメンカーチャンオマエノカーチャンデベソ(以下略)


星河・成海
まあ、見事に拗らせた敵みたいね。でもたまにはこんな風に戦うのもよさそうかしら?

基本的には属性攻撃や衝撃波で攻撃していくけど、せっかくだしちょっと意味あり気に魔導書のページを捲ったり、手の動きもつけてみる

炎の属性攻撃なら「小さき灯火よ、触れし物をみなその熱で脅かし、朱に染めて、大きく燃え上がりなさい!」
衝撃波なら「見えざる大気の拳よ、音より速く駆けて我が敵に鉄槌を降さん!」

UCの詠唱は「全ての命を育む大いなる大樹よ、その力を現せ。大地と結び付く根、大樹に寄りそう蔦、蒼穹へと伸ばす枝、それら全てを我が前に立ちはだかる者への縛めとせよ!」
……普段の詠唱を盛ってみたけど、ここまで言うと大変ね


フィーア・ストリッツ
は?魔王に選ばれたとか知りませんが
竜の力をこの身に宿す私のほうが凄いですよ。多分

「無くした記憶が疼くのですよ、オブリビオンを滅せよと
アナタもすぐに躯の海に叩き返して差し上げますよ」
ふふふ、記憶喪失という中2的上げポイントをアピールです

攻撃は勿論、一番の切り札たる【氷雪竜砲】です
相手の攻撃をハルバードで捌きつつ、喉奥の印に魔力をチャージ
「我が身に宿るは蒼氷の銀竜。我が眼差しは全ての驕慢を捉え、我が肌は刃を寄せぬ龍鱗と化す。そして――」
「我が吐息こそは竜の息吹。氷の裁きを受けなさい、グレイシャル・ドラゴンブレス!」

「全て、全て白銀の輝きの中に沈むが良いです。フィーアは負けませんよ」
【アドリブ歓迎】


フィロメーラ・アステール
「ふははは、お前が魔道王とやらか!」
少しはできるようだが、このあたしに……。
ん? ああ、そっちがそういう役?

しょうがないなあ。
許さないぞ魔道王! 正義の光は負けないぜ!

まず【月の庇】で防御!
見えない魔力の幕を【破魔】の【オーラ防御】として展開!
これで禍々しい攻撃を遮断!
仮にちょっとくらいダメージを受けても、何事もなかったかのように【演技】して続けよう。

……フッ、今なにかしたのか?
光とは、こうして使うものだ!

天空を駆ける聖なる流星の光よ、輝く槍となりて敵を貫け!
ファイナルオメガクロスシャイニングメテオセイバースピア!
(そんな技はない)

【全力魔法】でそれっぽい光の【属性攻撃】を演出して攻撃!


空目・キサラ
中二病に罹っている時期というのは、とても想像力が豊かになるのさ
それは悪いことじゃないよ?
ただ治った後に思い返すとダメージ受けるって後遺症があるだけでね

だがまぁここはひとつ、魔道王に付き合ってあげようじゃあないか

ご機嫌いかがかな?魔道王
…って声をかけてから、なんかそれっぽいタイミングで攻撃


26の軍団を指揮す、偉大にして思慮深き王子よ
異邦人たる我の眼を通して視よ
彼の者は時に逆らいし我らが敵

さぁ応えよ
その姿を写せし鳥となり、蹂躙せよ!

ストレンジャーズ・ヴィジョン!!

…ってノリよく詠唱して技を叫ぶよ
何?読みと技名が一致してない?そんなのよくある事だろう
そんなことよりストラスもふろう(フクロウもふもふ)


木元・杏
ドヤ顔勝負なら負けない
『魔道王の間』に足を踏み入れて

ん、いた、大魔王
魔王を倒すのは勇者の役目
でも、わたしはそこらの勇者とは一味違う
そう、わたしはクールな女(UC発動)

とうっ!

ジャンプしぐるんと空中一回転
光る体(オーラ防御)に装備される防具
たなびく黒髪、はっと見開かれる瞳

くーるびゅーてぃ・杏!
横Vした指を目元にびしっと決めポーズ!
(※何一つ変わってません)

世界平和の為ならはげビームではげになるのも苦ではないくーるなわたしだけど…
お肉が食べられないのは見過ごせない

そう、このお城にはお肉がない
魔王失格

ばしゅっと飛翔し、幅広の大剣でガールズ薙ぎ払う

魔王、お人形はこう使うの
うさみん☆、魔王を殴り倒して?



●お約束
 カツーン、カツーン。
『む……?』
 石畳の広間に、幾つもの足音が響く。
『よいしょっと』
 音に気づいた『スペルマスター・ガレット』は、玉座から腰を上げると、わざわざその上に立ち上がって仁王立ち。
『……時が、来たようだな!』
 そして、猟兵達を魔導書片手にキリッと出迎えてみせた。
『我が名はスペルマスター・ガレット! 大魔王に選ばれし、闇と雷を操』
「ん、いた、大魔王」
 多分練習してたのであろうガレットの口上を遮って、木元・杏(たれあん・f16565)がびしっと指さし大魔王認定。
『大魔王に選ばれし、闇と雷を操る至高にして究極の魔道王!』
 しかしガレットもさるもの。1回遮られたくらいじゃ、この中二病はめげない。
『我が魂より溢れ出る魔力を、凡人が魔王と錯覚するのも無理はない』
 むしろ前髪かき上げたりなんかして、満更でもなさそうである。

「ふははは、お前が魔道王とやらか!」
 そんなガレットを見据えて高笑いを上げたのは、一際ちっちゃな猟兵。
 幸運の流れ星を自称する妖精、フィロメーラ・アステール(SSR妖精:流れ星フィロ・f07828)である。
「少しはできるようだが、このあたしに――」
『くっ……その光!』
 今度はガレットがフィロメーラが言い終わるのを待たず、フィロメーラの全身に煌めく星の如き輝きから目を背けるように視線を逸らす。
『おのれ――世界め。大魔王に選ばれしこのスペルマスターに対し、勇者ではなく光の妖精を差し向けたか!』
 意訳すると、なんかむっちゃキラキラしてて強そうだな、とかそんな感じ。
 出まかせのくせに、フィロメーラ自身も覚えていないその存在の生まれに、結構あっていたりするのだが。中二病侮れない。
「ん? ああ、そっちがそういう役? しょうがないなあ」
 当のフィロメーラは、口上を遮ったガレットの言葉から、頭の中で今回の自分の立ち位置をつらつらと書き替えていた。

「まあ、見事に拗らせてるわね」
 ガレットの中二病っぷりを目の当たりにして、星河・成海(風にそよぐ深緑の樹・f03570)は目を丸くしていた。
 聞いてはいたけど、ここまでとは。
「ある意味、あれはあれで幸せかもしれないよ」
 何処か面白がるような笑みを浮かべて、空目・キサラ(時雨夜想・f22432)は、ガレットにそんな評を下す。
「どういう事?」
「中二病に罹っている時期というのは、とても想像力が豊かになるのさ。そして、それは悪いことじゃないだろう?」
 首を傾げた成海に、キサラは指を立てて返した。
 誰しも――とまで言うと過言かもしれないが、まあそういう時期はあるものだ。
「そうね。想像力が豊かになるのは、年齢問わずに良い事だと思うわ」
 今でもアニメやゲームが好きな成海は、その言葉に素直に頷く。
「だけどオブリビオンの中二病は、永遠に治らない」
 そう。キサラの言う通り、オブリビオンは、世界から骸の海へと廃棄された過去の残滓にすぎない。猟兵がいる限り、未来はない。
「だからさ。あそこの自称魔道王君は、治った後に思い返してダメージ受けるって後遺症を味わう事はないんだよ」
 枕を抱えてジタジタすることがないわけだ!
「それ……良いのかしら、悪いのかかしら」
 キサラの言わんとする事を理解して、成海は何とも言えない表情になっていた。

「さっきから何度も言ってますが、大魔王に選ばれた? だから何ですか」
 すっかり大魔王の幹部ロールで悦に入っているガレットに、フィーア・ストリッツ(サキエルの眼差し・f05578)が、眉すら動かさない氷の様な無表情で告げる。
 戦いですらない中二病のやり取り。いちいち取り合う必要は――。
「無くした記憶が疼くのですよ、オブリビオンを滅せよと」
 必要はないが、フィーアもしっかり中二病合戦に乗っかってきた。
『そうか――その漆黒の刃に、我が魂も疼くぞ!』
 またまた意訳すると、そのハルバード痛そうだね、とかになるのだろうか。
(「ふふふ、記憶喪失と言うのは、やはり中二病的上げポイントの筈」)
 ガレットの返しに、フィーアは胸中で呟いていた。
 記憶がないと言う自身の境遇をちゃんと活かして来る辺り、フィーアは実は乗り気なのかもしれない。

「よう、無謀な先達」
 中二病が止まらないガレットに、ナザール・ウフラムル(草原を渡る風・f20047)の掠れ声がかかる。
「かわいい後輩がその息の根、止めに来たぜ」
『ほう……出奔した後も時を刻み続けていたかの学園の者が、このスペルマスターの前に立ちはだかるか』
 その言葉でナザールの所属を理解したガレットが、すっと目を細め――。
『ところで、我を何と呼んだ?』
 何故か、そう訊き返してきた。
「ん? 無謀な先達、だが?」
『先達!』
 訝しむナザールの目の前で、ぐっと握った拳を掲げるガレット。
 あ、これ、先輩扱いされて喜んでる。
(「どれだけ人望なかったんだよ……」)
 それに気づいたナザールも、思わず胸中で呟いていた。声に出さなかったのは、きっと最後の優しさ。

「いくぜ、無謀な先達!」
 気を取り直し、ナザールが風を纏う。
『来い! 大魔王の蔵書である、この全能の魔導書・エクスグリモワールを操るスペルマスターが相手だ』
「魔王を倒すのは勇者の役目。ドヤ顔勝負なら負けない」
 ドヤ顔で返したガレットに、杏も負けじとドヤ顔を返す。
 張り合う所、そこではない。
 ――そんな風に杏に突っ込んでくれる保護者が、今回は不在だった。
「ドヤ顔勝負! そういうことは、わたしも超得意分野なのだ!」
 むしろ大豪傑・麗刃(変態武人・f01156)も、負けじとドヤ顔参戦。
「許さないぞ魔道王! 正義の光は負けないぜ!」
「アナタもすぐに躯の海に叩き返して差し上げますよ」
 立ち位置変更を終えたフィロメーラもガレットに言い放ち、フィーアが黒い槍斧の石突で石畳を叩いた音を響かせる。
「さて。ひとつ、魔道王に付き合ってあげようじゃあないか」
「まあ、せっかくだし。ちょっと乗ってあげましょう」
 キサラの言葉に、成海も頷く。
 ああ、やっと――戦いが始まる。

●勃発、中二病バトル
『遠く鳴り響く角笛! 来たれ鋼の戦乙女――マリオネットガールズ!』
 左頬に数字の刻まれた鋼鉄製の女子型カラクリ人形の群れが、猟兵達とガレットの間にずらりと出現する。
 1対7とあっては、ガレットも流石にまず配下を増やす手を打ってきた。

「来たれ、来たれ!」
 片手を軽く掲げて、ナザールが召喚の言葉を唱えだす。
「今は遠きもの、鷲獅子の王よ!」」
 ナザールの足元から風が巻き起こり、雷鳥の羽を織り込んだローブの裾が腰の辺りで風に揺れてはためき出す。
「因果を捻じ曲げる愚か者どもへの鉄槌を下す時だ!」
 更にローブの表面でパチリパチリと静電気が爆ぜて――。
「黒翼の王――ジルニトラ!」
 ナザールがその名を呼べば、背後に黒い翼のグリフォンが現れた。

「さっき凡人って言われたけど……わたしはそこらの勇者とは一味違う」
『そうだろうな……このスペルマスターの目は誤魔化せないぞ』
「見せてあげる、わたしはクールな女――とうっ」
 あっさりと自分の発言を棚に上げたガレットに返して、杏が跳んだ。
 はっと瞳を見開いた杏の身体が光に包まれる。
 何処からともなく現れた桜の花びらを纏い、空中で杏がぐるりと回れば、切りそろえた黒髪がふわりとたなびく。
「くーるびゅーてぃ・杏!」
 しゅたっと着地した杏は、Vサインを横にして目元に構えた、所謂横ピースとか呼ばれるポーズをびしっと(本人はびしっとのつもりで)決めた。
 ……――。
 シン、と静まり返る空間。一瞬、敵も味方も黙り込む。
 だって杏ってばびしっと決めているけれど、ちょっとオーラと桜を纏ったくらいで、ほとんど変わっていないのだもの。
 と言うか、そのポーズはクールなのか?
 くーるびゅーてぃとは、そういうものだろうか?
『ふっ……ふふふ……まさか、それほどの輝きを内包していたとは。このスペルマスターの目を欺くとは――おのれ、神の戦士!』
 ガレットが黙っていたのは、どうも反応に困ってと言うより、杏に対してどう盛ってやろうかと迷っていただけの様である。

「行け、ジルニトラ」
 黒翼のグリフォン――ジルニトラの背に乗ると、ナザールは短く告げた。
 ジルニトラの返事は羽撃き。黒翼から放たれた風雷が、マリオネットガールズを蹴散らしていく。
「負けない」
 飛び出した杏の手から、白銀の光が伸びて剣を為す。
 桜の花弁を散らして杏が光刃を振るえば、暖陽の彩が舞い散り、マリオネットガールズを白銀の光が薙ぎ払う。
「こんな機械人形など、私の敵ではないですね」
 フィーアが黒いの槍斧"ジレーザ"を振り回せば、マリオネットガールズの手足が鉄屑となり、破片が飛び散る。

 あっさりとマリオネットガールズの群れに空けられた、間隙。
 そこからガレットを見据えて、成海が緑色の革で装丁された魔導書『Yggdrasill』を意味ありげに構えていた。
『む……お前も魔導書の声を聴けるのだな』
「大いなる大樹の書の力、見せてあげましょう!」
 ちょっと何を言っているのか判らないガレットを軽くスルーして、成海は小さな笑みを浮かべて言い放つ。
 成海の指がページを捲れば、カサリと葉擦れのような音が鳴った。
 そして始まる、魔術合戦。
「小さき灯火よ! 触れし物を皆その熱で脅かし、朱に染めて、燃え上がりなさい!」
『凍れる地獄の凍気よ! 咎人を封じる氷よ! 顕現せよ!』
 成海が炎の属性の術を放てば、ガレットが氷の属性で対抗し。
「見えざる大気の拳よ、音より速く駆けて我が敵に鉄槌を降さん!」
『物言わぬ灰の塊よ、障壁をなせ! ストーンウォール!』
 成海が衝撃波を放てば、ガレットは石畳を変形させて盾と為す。
「優秀だったのは本当みたいね」
 どんな属性だろうが、反対の属性で返して来るガレットの魔術の技量は、成海も認めざるを得ないところであった。
(「たまにはこんな風に戦うのも良いかしら?」)
 そんな一進一退の攻防の中、成海は胸中で少し楽しそうに呟いていた。成海が今まで触れてきたアニメやゲームに、こんなシーンもあったのだろうか。

『しまった! 魔の競演は罠か!』
 唐突に、ガレットがそんな声を上げた。
 成海との魔術合戦に打ち込んでいる間に、マリオネットガールズはナザールと杏とフィーアの攻勢によって、その数を大きく減らしていた事に気づいたのだ。
『深淵なる闇の力よ。光を喰らう漆黒よ。星列の時は来たれり。魔道王の名の元に無窮の彼方より顕現せよ――イーヴィル・イクリプス!』
 ガレットが掲げた魔導書から、禍々しい闇の光が溢れ出す。
 だが、その闇が魔法の形となる直前、その前にフィロメーラが飛び出した。
『空を彩る星の装い……エクリプスオーニング!』
 フィロメーラの小さな体の前で、闇が止まる。
 一見何も変わっていないように見えて、フィロメーラは纏っていた。目には見えない魔力の幕――月の庇を。
 確かに月それ自体は、不可視と言えよう。月は月だけでは、輝けないのだから。
『何っ!? 蝕の力だと!?』
 抑え込まれる闇に、ガレットが驚いた声を上げる。
 エクリプス――或いはイクリプス。
 偶然にも、ガレットが放った魔術も、フィロメーラの月の庇も、天体用語で『蝕』を意味する言葉を含んでいた。
 だが、言葉とは幾つかの意味を持つものだ。例えばエクリプスなら――力を失う。
 闇の光の輝きが、薄れていく。
 フィロメーラの月の庇が、闇に打ち勝ったのだ。
「……フッ、今なにかしたのか?」
 フィロメーラは消耗を悟られないよう、何事もなかったかのようにふわりと浮かび上がって、ガレットを悠然と見下ろし告げた。

(「良くまあ、あれだけポンポンとそれっぽい言葉が出てくるものだ」)
 ガレットの戦いぶりを眺めていたキサラが、感心したように胸中で呟く。
 ずっと見ていたおかげで、キサラの中にはガレットに対する好奇心がいい感じに溜まってきていた。
 そろそろ、頃合いだ。
「ご機嫌いかがかな? 魔道王。僕もひとつ、術を披露するとしよう」
『よかろう、見せてみろ』
 鷹揚に頷いて見せるガレットに頷いて、キサラは口を開く。
「26の軍団を指揮す、偉大にして思慮深き王子よ! 異邦人たる我の眼を通して視よ。彼の者は時に逆らいし我らが敵也!」
 キサラの口から、ノリを合わせた詠唱が声高に発せられた。
『その詠唱は――異界のデーモンの声に耳を傾けし者であったか』
「さぁ応えよ。その姿を写せし鳥となり、蹂躙せよ!」
 何やら感心した様子のガレットの中二病はスルーして、キサラは詠唱を締めくくる最後の言葉を叫ぶ。
「――ストレンジャーズ・ヴィジョン!!」
 ――バサッ、バサバサバサッ!
 重なり響く羽撃きの音。
「さあ、行くんだ。ストラス!」
 どこからともなく現れ戦場に舞い降りた54羽のフクロウの群れが、キサラの声で残りのマリオネットガールズを嘴で突いて壊していく。
「ん? どうしたんだい?」
 数羽だけ、若干戸惑うようにキサラの周りぐるぐるしているのは、いつもと色々違っていたからだろう。
 量子自殺による証明の欠点――本来の読みは、ストレンジャーノシカイ。
 まあ、読みは違えど意味は同じ。
「読みと技名がいつもと違う? そんなの良くあることだろう? ストラス」
 ひょいと捕まえたフクロウの一羽をもふりながらそう言い聞かせると、キサラは残りのフクロウをガレットへとけしかけた。

『其は天に対する叛逆の象徴。鳴り響け、神々の嫌う喧騒。静寂を突き破れ、魔神の雷槍――サンダー! グレイブ!』
 キサラのフクロウ達にチクチクと主に突かれながら我慢して詠唱を終えたガレットの周囲から、雷が立ち昇る。
 雷は幾つもの雷の三叉槍となって、宙空を吹き荒れる。
 ――キュルッ!
 キサラのフクロウを灼き落として迫る雷槍を、ジルニトラが一声鳴いて放った雷をぶつけて逸らした。
『このスペルマスターの雷を逸らすとは! 流石グリフォンの王!』
「だってよ、ジルニトラ」
 勝手に設定を盛って来るガレットは軽くスルーして、ナザールはガレットの背中に呼びかける。
 実際、ジルニトラと言う名は、ある世界では魔法の神と言われていたりする。
 合体しないマリオネットガールズ程度であれば、風雷で蹴散らせるものだ。
 それでも咄嗟に逸らすしかできなかった辺り、ガレットの魔術の強さが伺える。
(「まあ、実力があっても、それを鼻にかけるような奴とお近づきになりたい奴はそういないよなぁ」)
 ナザールはジルニトラの背中で、そう胸中で呟いていた。

「世界平和の為ならはげビームではげになるのも、雷で天パになるのも苦ではないくーるなわたしだけど……お肉が食べられないのは見過ごせない」
 雷槍が吹き荒れる中、その衝撃に負けじと杏が進む。
『は? お肉?????」
 杏の唐突なお肉発言に、ガレットが流石に目を丸くした。
「このお城にはお肉がない。魔王失格」
『肉だと? 血の臭いなど、魔道を極めるには無粋』
 意訳するとお肉なんてあるわけないだろう、と言いたいのだろうガレットは。
「うさみん☆、魔王を殴り倒して?」
 だが、杏はそんなガレットに構わず、うさ耳付きメイドさん人形をけしかける。
「魔王、お人形はこう使うの。うさみん☆ぱーんち」
『そんな人形の攻撃なんか――ぐわぁっ』
 ちゃんと技名を杏が声に出した直後、うさみん☆の拳がガレットの頬にそれは綺麗なフックで叩き込まれていた。

『な、殴ったな!? 教師に殴られた記憶だって無いのに!』
 殴られ、赤くなった頬を抑えてガレットが立ち上がる。
 ごしごしと目元を袖で拭うと、ガレットはキッと杏を睨んできた。
『我の逆鱗に触れたな。真の闇の恐ろしさを知るが良い!』
 意訳。グーパン痛かったから怒ったぞ!
「真の闇、ですか。確かに魔術の腕は確かの様です。まだ上の術があるなら、脅威かもしれませんね」
 そう淡々とガレットの実力を認める言葉を口にして、フィーアが進み出る。
 認めるところは認めなければ、正しい敵の評価は下せない。
「ですが、竜の力をこの身に宿す私のほうが凄いですよ」
 その上で――フィーアはそう、豪語した。
『竜の戦士か、面白い! その力、見せてみろ!』
「言われるまでもありません。竜騎士たる私の奥の手をご覧に入れましょう」
 ガレットの視線を淡々と見返して、フィーアが黒い槍斧を突き立てる。
「我が身に宿るは蒼氷の銀竜」
 フィーアが唱え始めれば、"ジレーザ"に刻まれた『11』の数字が蒼銀の輝きを放ち、迸る魔力に紫のリボンがゆらゆらと揺れ動き始める。
「我が眼差しは全ての驕慢を捉え、我が肌は刃を寄せぬ龍鱗と化す」
 本来、フィーアはこんな詠唱は必要としない。
 喉奥に刻まれた竜の魔術印には、既に十分な魔力が溜まっているのだから。その証として、フィーアの喉が淡い輝きを放っている。
『深淵よりも深きに在る闇よ。夜よりも影よりも暗き、全て喰らう漆黒よ。星蝕の時は来たれり』
 そうとは知らないガレットは、フィーアに対抗せんと、先ほどの詠唱からさらに盛って唱えてみせる。
「氷の裁きを受けなさい、グレイシャル・ドラゴンブレス!」
『魔道王の名の元に無窮の果てより顕現せよ――イーヴィル・イクリプス!』
 氷雪竜砲と、イーヴィル・イクリプス。
 フィーアの口から放たれた吐息が変じた白銀の吹雪と、ガレットの放つ禍々しい闇。どちらも戦場を吹き荒れる力が、ぶつかり合う。
 両者の間で拮抗する、蒼銀の輝きと光を飲み込む闇。
「全て、全て白銀の輝きの中に沈むが良いです。フィーアは負けませんよ」
 淡々と告げて、フィーアは己が喉元に手を当てた。
 喉奥の魔術印が、更に重ねた魔力で輝きを強める。
 吹雪は氷竜の吐息と変わり、闇の魔術を押し流した。

●中二病の終わる時
『そ、そんな……何かの間違いだ。このスペルマスターが、大魔王の蔵書たるエクスグリモワールを使って、押し負けるなんて……!』
 フィーアの氷竜の吐息に押し負けたガレットの姿は、頭髪の先や服の袖、袖から覗く手足の所々が白い霜で覆われていた。
 身体のダメージ以上に、押し負けたショックの方が大きそうだ。

「そう! きみの持っているのはまさしく魔導書だろう!」
 そんなガレットに、麗刃が声をかける。
「まさかもうネタ切れなんてことはないであろう? さぞかし強力な術が記されているのであろうなあ」
『ほう……このエクスグリモワールの闇を感知できると言うのか』
 麗刃の言葉に、ガレットが少し調子を取り戻す。
 何故、麗刃がガレットに塩を送るような真似をしているのか。
 それはちゃんと、理由があった。
「判るとも! 強力な術を使われたらヤヴァイ、ヤヴァイぞ。まー、どうしょ!」
 困惑しているかのように頭を抱えて、麗刃がことさら大きな声を上げる。
『ふっ! このスペルマスターの魔術の前になす術なく散るが――ん?』
 勝ち誇りかけたガレットが、魔導書を掲げたまま固まった。
『今、何か違和感が――』
 ぶつぶつと呟いたガレットが、やがてはっと顔を上げる。
 その視線を、麗刃はニヤリと笑みを浮かべて受け流し――。

「魔導書なだけに! まーどうしょ!!」

 ここでダジャレである。そう。一見塩を送ったかのような麗刃の言葉は、このダジャレの為の前振りだったのだ。
『ふ、ふ、ふざけているのか! スペルマスターをなめるな!!!』
「なめてない! ギャグと見せかけた詠唱だ!」
 憤慨したガレットに、麗刃がすかさず言い返す。
「これが今の時代の詠唱だ!」
『なに? そんな筈は――このスペルマスターが知らない詠唱があるのか?』
 麗刃の言い分、信じちゃったよガレット。
 ネタキャラと中二病、混ぜるな危険。
 だが、麗刃の狙いはこの言い分を通す事ではない。
 ガレットを笑わせるなり怒らせるなりして、隙を作る――そんな策だったのだ。
 そしてその隙は、自分一人だけの為ではない。

 成海が魔導書掲げて、声を上げる。
「全ての命を育む大いなる大樹よ、その力を現せ」
 成海の背後で、地面が盛り上がる。
 石畳が砕けた割れ目から、樹木が地中から姿を現そうとしていた。
「大地と結び付く根、大樹に寄りそう蔦、蒼穹へと伸ばす枝、それら全てを我が前に立ちはだかる者への縛めとせよ! ユグドラシル・シール!」
 いつもよりもかなり盛った詠唱でも地中より現れた樹は、、成海の意思と魔力でぐんぐん伸びてアッと言う間に大樹となった。
 大樹の根は四方へ走り、幹からは絡んだ蔦が、青々とした葉が生い茂る枝が、次々とガレットへと伸びていく。
 世界樹の名を冠した、大樹を召喚し敵の縛めとする成海の業。
『くっ、こんな根っこなど――』
 だが、ガレットがいくら放とうとしても、魔力は成海の大樹に吸い取られていく。
『まさか、これは世界樹だと言うのか!?』
 驚くガレットを、成海は無言で見つめていた。
(「普段よりかなり盛ったけれど……ここまで言うと、詠唱も大変ね」)
 これまでの戦いを見ているだけで、成海はお腹いっぱいな感じだったのである。

「そろそろ終わらせようぜ」
 ガレットが大樹に縛られたのを見て、ナザールがジルニトラの背から飛び降りる。
「光の術は使えないようだな。光とは、こうして使うものだ!」
 フィロメーラも片手を掲げて、魔力を練り上げる。
(「よし、この隙にズンバラリとぶった斬る!」)
 そして、麗刃は刀を手に無言で忍び寄る。
 ギャグが詠唱――なんて言っていたけれど、麗刃は先祖代々武人の家系。まあ、歴代が奇人変人だらけだったりするが、武人だ。
 攻撃の術は、剣である。
(「ん? もしかしてこれも技名必要?」)
 一足で刀の間合いに跳べる距離まで詰めた所で、麗刃はそう思ってしまった。
(「さっきのを詠唱と認められたことになるのか?」)
 ガレットが認めるかどうかは、問題ではない。空間の特性なのだから。むしろ、麗刃自身が疑問に思ってしまったことが、この場合は問題だ。
(「でも、効かなかったらやだし……技名技名技名技名」)
 そしてあれだけの事を言っておきながら、実は麗刃はアドリブに弱かった。
 いざ考えようとすると、咄嗟に技名なんて――。
「南無阿弥陀仏南無妙法蓮華経完全無欠質実剛健七転び八起き弱肉強食焼肉定食腹減った今夜はラーメンソーメンアーメンカーチャントーチャン――秘技・変態剣!」
 刃は思いつくままに言葉を並べながら、刃を振り下ろした。
『ぐあっ……って、痛くない!?』
 思わず呻いたガレットだが、予想した痛みがなく目を丸くする。
 だが、ガレットにその謎を確かめる時間は与えられていなかった。

「スパルナ=チラーダ!」
 ナザールが空中で、片手を掲げる。
 その手首から翼のような刃が伸びていた。
『それは――お、お前が持っていたとはな!』
 そのナザールの姿を見て、やはり勝手に盛ってくるガレット。
 だが、その言葉は――さっきまでより、盛りが少なかった。
「天空を駆ける聖なる流星の光よ、輝く槍となりて敵を貫け!」
 フィロメーラの掲げた手の上に、自身よりも長大な光の槍が生まれる。
『そ、それは……えーと、えーと、えぇっと……!』
 その光を見たガレットが、戸惑うように視線を彷徨わせる。
『深淵よりも――じゃない、ええと、闇よりも――ぬぁぁぁぁっ!?』
 ガレットの口から、中二病が出てこない。
「ふっ、わたしの変態剣は、精神を斬るのだ!」
 そうさせたのは、麗刃の一太刀。斬ったのは肉体ではなく精神――それも、『シリアスな空気や平常心で戦闘に挑む姿勢』である。
 そしてこうなったと言う事は――ガレットの中二病は、あれで大真面目のシリアスだったと言う事になるわけで。
「まさか、こんなひどいタイミングで治るとは……」
 予想外の展開に、キサラはフクロウもふりながら憐れむしかなかった。
「ファイナルオメガクロスシャイニングメテオセイバースピア!」
 構わず声高に叫んで、フィロメーラが光の槍を放つ。
 実はこれ、フィロメーラがただの全力で放った光の属性魔法だったりするだが。
 所謂、そんな技はない、である。
 だって作ろうにも、ユーベルコード名に入らないし。
 だがこの空間の特性と、適当な技名を躊躇いなく叫んでみせ、事件解決のためなら思考や感情を変えられるフィロメーラの性格の一致が、ただの魔法をなんかすごいものへと変えていた。
 光に照らされ、ガレットの影が伸びる。
 その影に自身の影が重なるように。ナザールは無言で風を操り、落下する自身の位置を調整する。
 そして、影が重なったその瞬間――。
「やれ、闇精霊『スーデル』よ」
 ガレットの影と重なったナザールの影から、影が伸びる。
 光と影の槍が上と下から、動けないガレットを容赦なく貫いた。

 その瞬間――景色がぐにゃりと歪みだす。
 渦を巻くように、視界が揺れる。
 立っているのが床なのか、天地が判らなくなる感覚。そんな感覚が数秒続いて――。
 気が付くと、猟兵達は元のダンジョンに放り出されていた。
 目の前にかかった絵画には――無人の玉座だけが描かれていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年02月17日


挿絵イラスト