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江戸市中捜査ファイル.1「盗人惨殺事件」

#サムライエンパイア

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#サムライエンパイア


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 時は太平、花のお江戸の片隅にあるうどん屋。昼飯時を過ぎたこともあって空席が目立つ店内に、一人の武士が入ってきた。
 初老の男である。黄八丈の着流しに黒巻羽織、町方同心お定まりの小粋な装いだ。
 男は隅の方でうどんをすすっていた少女を見つけると笑顔になって近寄った。
「田抜どのではありませんか! 先日はお世話になりました」
「金之助じゃない。巡視の途中?」
 サムライエンパイアにそぐわない黒革ジャケットを着た少女、田抜・ユウナ(狸っていうな・f05049)は椀を置いて男に目を向けた。
 男の名は六科・金之助(むじな・きんのすけ)。南町奉行所の定廻り同心である。
 役人に、しかも年齢が倍以上の人間に対して無礼な態度だが金之助は怒りもせず、むしろ敬意すら持っている様子で、一言断わってから隣に腰を下ろす。
「そうだ、田抜どの。今朝の事件はご存知ですか?」
 店主に酒とうどんを注文してから、金之助は他人事のような顔で口を開いた。
「近くの川で死体が上がったのですがね。ヘソから下がバッサリ斬り落とされていたんですよ」
 いわく、鋭利な刃物で一刀両断されたようなキレイな断面だったとか。
 下半身を斬り落とされた遺体、という猟奇的な光景を思い浮かべ、ユウナは食欲をなくす。
「拙者が探索を担当することになったのですが、少々面倒なことが……」
 と、金之助は声を潜め、周囲を気にしながらユウナのとがり耳に口を近づけた。
「……殺された者の身元を探ったところ、盗人らしいと分かりまして」
「ふうん、それで?」
 す、とユウナは目を細める。殺人事件を背負っている割に、覇気が感じられない理由が分かった気がした。
「道を外れた人間は、殺されようが知ったこっちゃない、って?」
「い、いえいえ! 決してそんなことは。ただ……」
 気まずそうに視線を逸らす金之助。
 理解できないではなかった。殺人の捜査ともなれば命懸けだ。その上、被害者が罪人では事件を解決しても手柄になるか怪しいところ。関わりたくない、というのが本音だろう。
「……ま、私には関係ないけどね」
 嘆息ひとつ。うどんの代金を机において、ユウナは席を立った。

   ***

「……ってことがあったわけよ」
 話し終えたユウナは、くいとメガネを直した。
 その伊達メガネは彼女のお気に入りで、予知した事件を説明する時にかける物。そう、”事件を予知した時”だ。
「ただの猟奇殺人、と思ってたんだけど、その後でグリモアが反応したの。間違いない、オブリビオンよ。猟兵が手掛けるべき案件だわ」
 そう言って、キャスター式の黒板を引っ張ってくる。
「被害者の名前はネズ吉。中年男性。身分は町人。職業不詳、おそらく盗人だと思われる。死体発見は早朝の川岸。腹部から真っ二つに切断された状態で発見された」
 一通り情報を書き出していくユウナ。
 推測するに、犯人は夜のうちにネズ吉を殺害。真っ二つにして川に放り捨てたのだろう。流れの速い川なので、【殺害現場】はもっと上流だと考えられる。
「手がかりとしては一つ、事件を担当する八丁堀同心から聞いてるわ。ネズ吉の【盗人仲間】がたむろしてる料理屋があるんですって。殺される前に、ネズ吉がどこで何をしてたのか知ってるかもよ」
 もちろん、他の場所を探索するのも猟兵たちの自由だ。こちらから例示はするものの、どんな能力を活かして、どんな捜査を行うかは個々人に一任される。
「私が伝えられることは、このくらいよ。後は皆の手で調べてもらうことになる。……毎度のことだけど、分からないことだらけでごめんなさいね」
 ユウナの瞳が陰った。
 無力感だけではない。何か、もっと大きな不安があるようだ。
「この事件、何か裏があるような気がするのよね。ただの殺人事件じゃない、かも。……いや、今のところは気にしないで」
 振り払うような仕草をして、ユウナは猟兵たちを見渡した。
「目下のところは、殺人犯の居場所の特定が先決。最終的には戦闘、撃破してもらうことになるわ。皆なら大丈夫だと思うけど、気を付けてね」


黒姫小旅
 どうも、黒姫小旅でございます。
 此度は低速シナリオ。二、三日にリプレイ一本程度を想定しております。
 更新される情報をもとに、ゆっくりのんびり調査を楽しんでいただければ幸いです。

 場合によっては、全員のプレイング採用が難しいかと思います。プレイング提出の早さを理由に採用することはありませんので、参加者の人数やタイミングに関わらず挑戦していただけたらと思いますが、時間切れ等の理由で却下せざるをえないかもしれません。どうぞ、ご了承ください。

 以下は補足。

●シナリオ構成と目的
 1章、捜査…殺人犯を探し出してください。
 2章、捜査…1章で明らかになった「裏」を、さらに調べてください。
 3章、戦闘…オブリビオンを撃破してください。

●プレイングについて
 捜査パートの行動内容は自由です。
 フラグメントの例示から考えてもいいし、無視しても構いません。
 使用する能力値は特に指定しなくても、MS判断で処理します。

●捜査関係のキーワード
「【殺害現場】【盗人仲間】」
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第1章 冒険 『八丁堀の旦那』

POW   :    怪しい者を締め上げるなど強引な捜査を行う

SPD   :    聞き込みや尾行など足で情報を稼ぐ

WIZ   :    占いや推理を駆使して捜査方針を決める

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

モンドレイン・グラント
真っ二つとはお見事だネ。

私は川を上りナがら、殺害現場を目指すヨ。
流れの速さを見て、大体のあタりをつけたら、野生の勘ヲ働かせて探すよ。
さすがニ血の匂いは残っていナいかもだけど、血痕ぐらイならあるはず。
殺害現場の痕跡を見ツけたら、付近を捜索。
何か犯人の手掛かりになるものが残されテいるかも。

ソの後は、周囲のロケーションの確認。
人が住んでそうナ場所なら住民に聞き込み。
「殺害された晩、何か物音が聞こエなかったか」
「最近、この辺リで不審な人物を見かけなかっタか」
を重点的に聞くヨ。
人がいナそうな辺鄙な場所なラ……行商人とか、飛脚とかに話を聞いてみようかナ。




「思いのほか賑やかダネ」
 死体が見つかったという川沿いの道を上流に向かって歩きながら、モンドレイン・グラント(呪いの仮面・f06075)は意外そうに呟いた。
 そこは廻船問屋や米問屋など大きな店が軒を連ねる華やかな通りだった。
 背中に屋号の入った印半纏を来た奉公人や船頭などが絶えず行き来しており、今朝がた近所で血生臭い事件が起こったばかりとは信じられないほど活気がある。
 これほど往来があるのに怪しい噂のひとつも聞かないということは、すでに痕跡は隠滅されてしまったか、と不安になり始めたころ。
「……おヤ?」
 モンドレインの獣じみた直感が、何かに反応した。
 船を着けて荷の積み降ろしをするのだろう。川岸にはたくさんの桟橋が並んでいるのだが、そのひとつだけがやけに小綺麗だ。
 誘われるように駆け寄り、周囲から奇異の目で見られるのも構わず四つん這いになって観察してみる。
「念入りに掃除したみたイだが……惜シかったね」
 モンドレインはニンマリした。
 板と板の間に乾いた血がこびりついている。
 痕跡発見だ。
 殺害現場はこの辺りと考え、モンドレインは聞き込みを開始する。
 夜中に物音を聞かなかったか、怪しい人影を見なかったか、しばらく訊いて回ると、一人の船頭から興味深い証言を得た。
「遅くまで飲んだ帰りに通りかかったんだけどな。普通は板戸を締め切っちまう時間だぜ? なのに一軒だけ、戸を開けてる店があったのよ。灯りもないのに人が出入りしてるもんだから、夜盗かと思ったぜ」
 ……だそうだ。
 事件当夜にコソコソと何をしていたのだろうか?
「件の店はコの先の……【廻船問屋】の和類屋(わるいや)といったカ。調べてみる価値はあリそうだね」

   !!!

 キーワード【廻船問屋】が追加されました。

成功 🔵​🔵​🔴​

髪塚・鍬丸
廻船問屋か……。こいつぁ臭いやがるぜ。ちょいと調べてみようかね。

さて、SPDで足を使って聞き込みでもしてみようか。
近場で堂々と探りを入れちゃあ怪しまれるかもしれねぇ。廻船問屋の商いなら、何かと足跡を残しやすいってもんだ。商売人に当たって、金と物の流れを探ってみようか。【世界知識】で持ってるその筋の経験と知識を元に、【情報収集】【コミュ力】でそれとなく聞き込みして調べてみるぜ。
後は、廻船屋なら船を動かしてる筈だな。漁師や渡し屋にも聞いて、不自然な船の運航をやらかしてないか当たってみようか。

まだまだ裏がありそうだぜ、このヤマは……。仏さんの無念を晴らすのはちと手古摺りそうだ。




 捜査線上に浮かんだ【廻船問屋】、和類屋。
 下手に探りを入れて警戒させるわけにはいかないと、髪塚・鍬丸(人間の化身忍者・f10718)は店から距離をおいて聞き込みを行っていた。
「……和類屋さんですか」
 とある小料理屋の女将は、思案するように頬に手を当てた。
「うちに来てくれたことがないんで、詳しくは知りませんけど」
 鍬丸の訊き方が巧みなのか、自分の客でないから構わないのか、女将は気安く話してくれた。
「一年ほど前から、急に大口の取引が増えだしたんですって。それからは順風満帆で、扱う船の数もかなり増えたみたいですよ。ただ……」
「ただ?」
 女将はためらう素振りを見せたが、聞き上手な鍬丸にうながされて、つい口を開いてしまう。
「ここだけの話、やり方が強引らしいんです。皆さんハッキリとは言わないけど、裏では毛嫌いしてますよ。前は表だって火花を散らしてたところもあったんですけど、店の人が辻斬りに殺されて、それどころではなくなってしまって」
 辻斬りとは、ぶっそうな単語が飛び出てきた。
「まさか、和類屋が商売敵を……?」
「滅多なことは言えませんけど、結果として得してますから。それに【用心棒】としてお侍さまを雇っているんですが、そのお方がいかにも……ね?」
 十人や二十人は殺していそうな雰囲気をまとっているらしい。
 ……もしや、今回の事件の下手人ではないか?
「確かめといた方がいいだろうが、他にも裏がありそうだな。……ありがとうよ、女将さん。次は客として来るぜ」
「ええ、お待ちしてます」
 女将の笑顔に見送られて、鍬丸は小料理屋を後にする。

   !!!

 キーワード【用心棒】が追加されました。

成功 🔵​🔵​🔴​

ルーレイ・バーンシュタイン
花占いで探ろうと思いましたが、【廻船問屋】に【用心棒】ですか。下手な小細工せず花売りとして直接、和類屋さんに探りを入れてみます。うまく用心棒さんに接触できれば花の匂いを残しておきたい。

ユーベルコード『一輪の花』で珍しい花をいくつか見繕う。【コミュ力】と【世界知識】で花売りとして立ち振る舞う。どれくらい情報収集できるかな。


竜洞・梓
WIZ
用心棒の侍、ですか。
いかにもですね。そういうきな臭い存在は、大抵その通りです。
妖精さんに和類屋さんを探ってもらいます。
悪巧みの話、その用心棒さんの評判を特に。

私自身は和類屋さんの所に行って、不馴れな旅人を装いましょう。
「そういえば人斬りがあったって……本当ですか?怖いです……(うるうる」
何か口を滑らせてくれるならよし。それでなくても妖精さんから気を反らしてくれればよし。
…がんばります




 ……どうしてこうなった。
 ルーレイ・バーンシュタイン(人間の探索者・f01355)と竜洞・梓(まじかる☆どらくる・f11833)、メガネの乙女たちは、畳の上で正座しながら何度目かの自問を行った。
 二人は【用心棒】の正体を突き止めるため、【廻船問屋】への接触を試みた。
 旅の花売りと身分を偽って、珍しい花を売り込もうとしたのだ。乗り込んでもみると、意外に興味を持たれたようで店の奥へ――ではなく、店の裏手にある隠居所のような家屋へと案内されて、今にいたる。
「ほほう、見事な花付きじゃな。江戸では今、こういうものが流行っておるのか?」
「は、はい。最近出回り始めた品種で、たいへん人気があります」
「そうかそうか」
 ルーレイがユーベルコードで作り出した花を観賞している男は、嬉しそうに目じりを下げた。
 ド派手な羽織袴を着た肥満体の男である。名乗りはしなかったが、裕福な武家だろう。座敷に通されるや、説明もなく彼に花を見せるよう言われたのだ。
「……ルーレイさん、この人だれ?」
「さあ? 花を愛する人には見えないけど」
 欲望でギトギトした目で花々を見つめる男に、呆れたような表情を隠しながら囁き合う梓とルーレイ。
「よし、買った! 全部買ったぞ!」
 その正体が分からぬうちに、男は持ってきた花のすべてを購入。
 ルーレイたちは家来らしいサムライから大金を受取り、狐につままれたような顔で隠居所を後にする。
「此度のこと、決して他言しないように」
 玄関までついてきたサムライが、威圧的な口調で言った。
 梓は目を瞬かせて、ポムと手を打った。
「そういえば、この近所で辻斬りが出たんですよね。こんな大金を持ってるって知れたら襲われちゃうかも」
「……まあ、そういうことだ。今朝も、斬り殺された男がそこの川で見つかったらしい。気を付けなさい」
 不機嫌そうな顔のまま、サムライは二人を外まで送り届けて隠居所へと戻っていく。
 目を潤ませて怖がってみせていた梓は、戸が閉まるのと同時にほっとため息をついた。
「ああ緊張した。でも、あの人ふしぎですよね。近所の辻斬りと今朝の殺人は、犯人が同じだって決めつけてたみたい」
「それにあのお武家さん、いったい何者なんでしょう。和類屋さんとどんな関係があるのかしら」
 二人はメガネを見合わせるが、当然答えは出てこない。
「まあ、追い追い調べるとして。問題は用心棒です。梓さん、どんな調子ですか?」
「そうですね。わたしの妖精さんは本来調べ物のためじゃないから、ちょっと不安ですけど……」」
 気持ちを切り替えて、二人は本来調べるつもりだった和類屋の店舗へ目をやった。

   ***

 和類屋の店内で仕事をしていた奉公人が、ふと“彼”に気付いて顔をこわばらせた。
「せ、先生。お出かけですかい?」
『おお、ちょっと飲みに行ってくらぁ』
 紺の着物を着流して、大刀一本落とし差し。一見すると尾羽うち枯らした痩せ牢人だが、まとう雰囲気は悪鬼羅刹のそれであった。
『いつもの店にいるから、何かあったら呼びに来な……よっ!』
 白い閃光が走った――と思った時には、牢人はすでに刀を鞘に戻していた。
「ひ、ヒイッ!?」
 壁際に飾られていた置物が真っ二つに切断され、床に落ちてからようやく奉公人は腰を抜かす。
『……羽虫がいたと思ったが、気のせいかね?』
 ニタニタと笑みを浮かべながら、牢人は何事もなかったように歩いていく。
 恐怖に震える奉公人は、ユーベルコードの妖精が置物と一緒に斬り捨てられていたことに気付かない。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​


   !!!

キーワード【謎の武家】が追加されました。
髪塚・鍬丸
さて、今度はSPDで【盗人仲間】どもを調べてみるか。

変装して旅の遊び人を装い、件の料理屋に入ろう。
まずは店内の連中に酒でも奢り、この界隈で楽しく遊べるような所を聞いてみる。能天気に気前よく振る舞い、取り入る価値のある良いカモだと思わせるぜ。
盗人っぽい連中がいれば、世間話に紛れて「そういや、何やら物騒なコロシがあったって聞いたぜ。嫌だねぇ、この辺じゃよくあるのかい?」「あんたらの知り合いなのか!?へぇ、どんな旦那だったんだ?何かヤバい事でもやってたのかね?」と、好奇心を装って聞き出してみよう。【コミュ力】【情報収集】だ。




 昼でも暗い裏通りに、一軒の料理屋があった。
 店内では人相の悪い男ばかり数人が飲んだくれている。
 彼らはこの店の常連だが、一人だけ新顔が混ざっていた。遊び人風の男である。
 最初こそ不審そうな顔をされていたが、遊び人は気前よく酒をふるまい、あっという間に溶け込んでしまった。
「それで、ネズ吉さんは和類屋って廻船問屋に手ェ出して殺されたって?」
「ヤツは前に、荷運び人足として雇われてたんだがよ。店へ運び込んだ荷物の中に、二重底の箱が混ざってたんだと」
「密輸でもやってんじゃねえかって、探ってたらしい。あそこはヤベエ用心棒がいるから、やめとけって言ったのになあ」
 等々。話をしているうちに、一人また一人とイビキをかき始める。
 そして全員が酔い潰れたころ、遊び人が席を立った。
「密輸か。初めて聞いたな」
「……お前さん、信じるのかい?」
 店の奥から、料理屋の親父が顔を出した。遊び人は半笑いで肩をすくめる。
「調べても無駄だぜ。それらしい話は聞いたことがねえ」
「誰かが手を回してるってか?」
「どうかな。権力があれば隠せるかもしれねえが、密輸なんて大罪をもみ消そうとすれば、その動きで誰かが勘づく」
 この江戸市中で、気配も見せずに密輸を隠し続けることなど不可能ではないか、と親父は言う。
「権力……って言やあ、和類屋の隠居所に身形のいい武家が泊ってるな?」
「詳しいな。だが、何者かは分からねえ。和類屋の人間なら知ってるだろうだが、真っ当な訊き方じゃ口を割らないぜ」
「そうかい。教えてくれてありがとよ」
 遊び人は礼をいい、店を出ると身にまとっていた変装を脱ぎ捨てた。
「……ちょっとずつ見えてきたが、仏さんの無念を晴らすにはまだ手こずりそうだな」
 もとの服装に戻った髪塚・鍬丸(人間の化身忍者・f10718)は、傾きつつある太陽に向かって歩いていく。

成功 🔵​🔵​🔴​

シーマリネィア・シーン
【謎の武家】さんについて調べます。

和類屋の周囲を張り込んで、家人や奉公人が出てくるのを待ち構えます。
出てきたら周囲を確認して、他に誰もいなければその人の前に飛んで行って、「……お静かに。すみません、ちょっとお話を聞かせて下さい」と、人気の無い路地等に引っ張って行きます。
抵抗されたり騒がれたりする様なら、天下自在符を見せて協力を要請します。誠意重視です。
「この町で不穏な事態が起きているんです。見逃す訳にはいきません。」「ご迷惑はおかけしない様に配慮します。だから、協力をお願いします」
件の武家さんについて、知ってる事を聞き出します。知らなければ知っていそうな人を教えて貰って同じ事を繰り返します。




 シーマリネィア・シーン(フェアリーのパラディン・f12208)は、誰にも見られていないことを確かめてから改めて、物陰に引っ張ってきた男と向き合った。
 男は最初こそ抵抗したものの、天下自在符を見せると真っ青になって沈黙した。今は忠犬のようにおとなしい。
「それで、隠居所にいるお武家さまは何者です?」
「……阿久台・勘太郎(あくだい・かんたろう)さま。九州は秋内藩(あきないはん)のお代官さまで」
「九州? そんな遠くから来たんですか?」
「すぐそこに飛び地があるんでさあ。江戸と簡単に行き来できる場所に領地を持っとくと、何かと便利だってね」
 男の言う通り、江戸周辺に領地を持つ藩はいくつもある。
「そのお代官さまが支配地を離れて、何をやっているんです? やはり、密輸ですか?」
「ッ!?」
「ご迷惑はおかけしませんから、どうか話してください」
 シーマリネィアの曇りない瞳に魅入られたように、男はぽうっとしていたが、言い逃れはできないと察したのかポツポツと話し始めた。
「密輸してるのは本当なんですね。でも、どうして噂にならないんです?」
「ヤベエ品は、阿久台さまの領地へ持ってっちまうんでさあ。他藩の領内ともなりゃ、江戸の人間は気付けねえ。一度は江戸を経由するから、秋内藩の監査もごまかしやすいって寸法で」
 なんと巧妙な。シーマリネィアは唸った。
「カラクリはだいぶ理解できましたね。……ありがとうございます。もう行っていいですよ」
「……へ? いいんで?」
 簡単に逃がしてもらえるとは思わなかったのだろう。男は目を丸くする。
「迷惑はかけないと言いましたから」
「……姉さん。店を調べるなら、用心棒の先生が飲みに出かけてる今のうちだぜ。ありゃ人間じゃねえ、顔合わせねえように気をつけな」
 礼のつもりか、忠告を残して男は逃げていった。

成功 🔵​🔵​🔴​




第2章 冒険 『山吹色のお菓子』

POW   :    船に船員として乗り込む

SPD   :    廻船問屋や代官周りの聞き込み調査

WIZ   :    上客のフリをして廻船問屋に近付く

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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 殺人事件の裏に潜む巨悪の存在を知った猟兵たち。
 廻船問屋『和類屋(わるいや)』と、江戸近郊の某領地を治める代官『阿久台・勘太郎(あくだい・かんたろう)』は、周囲に気付かれないよう巧妙な手口で密輸を行っていたのだ。商売敵の暗殺までやっていたという噂もある。
 幸か不幸か、討伐対象と目される用心棒は留守。
 唯一にして最大の脅威がいない今が、捜査する絶好の機会だ。
 手段は問わない。彼らの犯罪を明らかにする証言や証拠品を見つけ出し、引導を渡してやってほしい。
   !!!
 捜査キーワードを整理しました。
【廻船問屋】【代官】
ルーレイ・バーンシュタイン
近くの茶屋でお団子でも食べながら情報整理。
「あっ、お団子もう一皿お願いします。」
なるほど密輸ですか。それなら私の売った花がどこへ向かうか、他にどんな荷物が積まれているのか調べてみますね。




 だいぶ空が赤らんできた刻。
 廻船問屋、和類屋の表にある桟橋に、荷物をたっぷり積んだ船が到着した。
 日雇いの荷運び人足たちが積み荷を下ろしていくのを観察していれば、いくつかの木箱を奉公人たちが店の奥へと運び込んでいるのに気付くだろう。
 何度かの往復の後、奉公人たちは番頭のもとへ報告に向かう。
「もう全部運び終わったか?」
「それが、納戸がいっぱいになっちまって、置き場がないんでさあ」
「どういうことだ。数は合ってるんだろうな?」
「へい、間違いありやせん。ただ、お代官さまが買い付けた花。あれが場所を食っちまってるんで」
「チッ、あの方も面倒なことしてくれたな。だが、全て納戸に入れとけってお達しだ。お前らでなんとか整理しとけ」
 奉公人を下がらせて、番頭は書き入れの途中だった帳簿に向き直った。
 ……その会話を盗み聞きしている者がいたことなど、気付きもせずに。

   ***

 少し離れたところにある団子屋で、ルーレイ・バーンシュタイン(人間の探索者・f01355)は今後の方針について考えをまとめていた。
「私が売った花は、店の奥にある【納戸】ですか。一緒に納められている木箱、気になりますね」
 船が運んできた数多くの積み荷の中で、納戸まで持ち込まれた物はほんの一部だ。外見は他と変わらぬ普通の箱のようだったが、中身はいったい何だろうか?
「忍び込んでみるのも良さそうですね。……あっ、お団子もう一皿お願いします」

   !!!

 キーワード【納戸】が追加されました。

大成功 🔵​🔵​🔵​


●証言・証拠品リスト
・ナシ
髪塚・鍬丸
なるほど、納戸だな。便利な能力だねぇ、ルーレイさん。後は任せて貰おうか。

という訳で、件の怪しい納戸の詳しい位置を聞いて忍び込んでみるか。面倒そうな奴が留守の内に片付けるぜ。
【猿飛の術】で人気の無い塀を乗り越える。【ジャンプ】【クライミング】も併用だ。
人目に付かない様、気配や物音に注意しながら【忍び足】【早業】【ダッシュ】で迅速に目的の納戸まで忍んでいく。鍵の掛かっている扉は、油で音を殺しながら【鍵開け】だ。

さて、怪しい箱には何が入ってるのかね。調査の痕跡を残さない様注意はするが、犯行の証拠になる様な物があれば持ち帰るぜ。決め手さえあれば後は速攻勝負だ。




「お代官さまは、今日も和類屋の主人と料亭か」
「我々も行きたかったですね」
「やめとけ、何の役に立たない話を延々と聞かされるだけなら、こうして留守番していた方が気楽だ」
 和類屋の裏手にある隠居所で二人のサムライが呑気に会話しているのを横目に、髪塚・鍬丸(人間の化身忍者・f10718)はマシラのごとき身のこなしで塀を乗り越えて廻船問屋の中へと潜入した。
「隠居所は、【代官の家来】が二人きりで留守番か。……まあ、それは後回しだな」
 第一の目標は店の奥にある納戸。そこにある怪しい木箱だ。
 かすかに漂う花の香を便りに、鍬丸はあっという間に納戸までたどり着く。
「ここまでは順調っと。さて、鬼が出るか蛇が出るか」
 と、部屋いっぱいに積まれた木箱のひとつに手をかけた鍬丸は、拍子抜けした。
 箱に入っていたのはただの反物だ。いい布だが違法性はない。
「いや待てよ、盗人仲間の話だと……」
 聞き込みした内容を思い出し、反物を全部取り出して箱の底を調べてみると――やはり二重底だ。
 底板を外してみると、そこには難解な象形文字が書かれた白紙が敷き詰められているではないか。
 護符である。彼の世界知識が正しければ、呪い道具に近い性質のものだろう。鉄砲のような兵器と並んで、幕府が厳格に規制している品だ。
「何てこった。これだけでも死罪は免れねえぜ」
 鍬丸は低く唸り、証拠として護符を一枚懐に納めると、手早く箱を元に戻す。
「最低限、廻船問屋の密輸は確定だな。あとは殺人の方や、代官についても調べねえと」

   !!!

 キーワード【代官の家来】が追加されました。

   !!!

 証拠品《ご禁制の護符》を入手しました。

成功 🔵​🔵​🔴​

シーマリネィア・シーン
【代官の家来】を調べてみましょうか。
上空から店に侵入して、隠居所で留守番してる家来の様子を探ってみます。二人の会話に手掛かりが出てこないでしょうかね。

隠れているだけじゃ事態が進みそうにないなら、直接お話を聞いてみましょう。もう証拠は出てるんです、多少強引に行ってもきっと大丈夫。
人気が無い事を確認して、二人の前に出て【礼儀作法】で誠意を込めて質問です。眼差しと口調に【気合】を込めて、真実を問います。
代官さんは何を企んでるのか、用心棒さんは何者なのか、ネズ吉さんは誰に何故殺されたのか……。知ってる限り話して下さい。
人を呼んだりしないで下さいね。後ろで槍竜のマルクリールに見張ってて貰いますよ。




 隠居所の座敷で、大のサムライが二人、身長一尺足らずの女騎士と向かい合わせに座っていた。
「代官さんは何を企んでいるんですか?」
「企みなど、何もありませぬ」
 シーマリネィア・シーン(フェアリーのパラディン・f12208)の問いかけに対して、代官の家来衆は慇懃に答えた。一応の礼儀は保っているが、誠意ある対応をする気はないらしい。
 知らぬ存ぜぬを通して、廻船問屋だけが悪いのだと言い張っている。
「……分かりました。質問を変えます。ネズ吉さんが殺害されたのはご存じですか?」
「ネズ吉? ……ああ昨日の盗人か。たしか用心棒が斬ったと聞きました。町方に知られたら面倒だとかで、秘密裏に処理したようです」
「高価な調度品や畳が汚れてしまったと、和類屋の主人がぼやいたような」
「用心棒については?」
「妖魔の類いとしか思えぬ恐ろしい男です。辻斬りに扮して和類屋の商売敵を斬ったと自慢していました」
「冗談にしては、やけに具体的な内容で気味が悪かった」
 今度は、何かを隠すような気配がない。
 自分たちにさえ火の粉がかからなければ、和類屋の罪が暴かれても構わないということか。
 いい加減に腹が立ってきて、シーマリネィアは一度席を立つことにした。
 愛槍を小竜へと変身させて見張りに残し、外に出る。
 辻斬りについてなど有力な証言を得たが、代官を追い詰めるにはまだ足りない。次はどんな手を打つべきだろうか。

   !!!

 証言《代官の家来》を入手しました。

苦戦 🔵​🔴​🔴​


 代官の家来たちがヒソヒソと話している。
「天下自在符の持ち主に対して、こんな態度が通用するでしょうか?」
「認めれば我らは終わりだぞ。幸いにして向こうは、密輸の証拠は掴んでいても、お代官さまの関与については物的な確証を得ていない様子。ダンマリを通せば、罪に問われるのは和類屋だけで済むかもしれない」
「しかし、たかが盗人ひとり殺したことに、彼らが食いついてくるとは思いませんでした」
「盗人のことは我らも話にしか聞いていないが、あやつどの部屋で何を盗もうとしたのだろうか?」
●証言・証拠品リスト
《ご禁制の護符》……取引が規制されている呪い道具の一種
《家来の証言》……用心棒が和類屋の商売敵を暗殺していたと、具体的に証言した。
ヨハン・デクストルム
なかなか尻尾を出しませんね。オブリビオンも恐ろしいものですが、欲をかいた人間も大概です。ねえ、デルタ*?
…ちょっとした小細工をしてみましょうか。

どうやら【代官の家来】様方は退屈していらっしゃる様子。『コミュ力』と『礼儀作法』を駆使し、お暇でしたら占いでもいかがです? と『誘い』かけましょう。『託宣板』で簡単な占いをしながら、『第六感』と『情報収集』で観察しつつ、徐々に踏み込んで動揺を誘ったところで『早業』で『気絶攻撃』。UCを使用して真実を聞き出します。

*1 UC『永遠の家族』は常時発動型なため、黒猫は常に行動を共にしています。しかしUCとして使用宣言しない限り、黒猫は攻撃などを行いません。




 静かな座敷の中で、カードを切る音だけが響いている。
 山札から引かれた一枚が、畳の上に置かれた。
「ふむ。このカードが暗示するのは……『連帯』でしょうか。どうも破滅的ですね。自身が滅ぶときには相手も道連れにしようという意思が感じられます」
「っ!?」
 ヨハン・デクストルム(神亡き狂信者・f13749)の言葉を聞いて、代官の家来たちに動揺が走った。
「何か、心当たりでも?」
「し、知らぬ!」
 家来たちは必死にごまかそうとするが、ヨハンの巧みな話術と占いで引き出した反応はまさしく本物。何かを掘り当てたのだ。
 そう確信したから、ためらうことなく実力行使に出る。
「答えてもらえないのであれば、仕方がありませんね」
 嘆息と同時、ヨハンは飛影のごとく身を寄せると、立て続けに当て身をくらわした。
「それではお二方、『お手を拝借』」
 気絶した二人にユーベルコード【亡神の戯れ】が放たれ、洗脳状態で目覚めさせる。
「改めてお訊きます。先ほどの占いで何を思い浮かべましたか?」
「……お代官さまは密輸に協力していたが、一度だけ国元の密輸業者に書状をしたためたことがある。取引が成立した後、和類屋が処分したはずだが、ひそかに隠し持ってるのではないかと」
「なるほど、裏切られたとき武器として使えるように、あなた方が共犯者だという証拠を用意していると考えているのですね」
 うなずいて、ヨハンは占いのカードをもう一枚引く。
「その在り処を示すは『死者』。ネズ吉さんが殺された場所を調べてみるべきでしょうか?」

   !!!

 キーワード【殺害現場】が追加されました。

成功 🔵​🔵​🔴​

鎧坂・灯理
犯行現場に戻ってくるのは犯人だけではないということか。
殺害現場の小綺麗な桟橋周辺を再捜査する。猫の手も借りたいので小型機械共にも探させる。川に沈んでいる可能性があるから、持ち物のひも束で網を作り、念動力で川底をさらってみよう。例の剣士先生に襲われたらバイクで逃げる。
技能:ロープワーク、情報収集、掃除、念動力、騎乗など




 今回の事件は、川から死体が上がったことから始まった。
 そして今、事件を終わらせる手掛かりを求めて一人の猟兵が川へと戻ってきた。
「私一人で調べていたのでは、文字通り日が暮れるな」
 西の空を見上げて鎧坂・灯理(不退転・f14037)は呟くと、小型の機械兵を75ばかり召還。血痕が見つかった桟橋とその周辺を徹底的に調べさせる。
 機械兵が捜索を行っている間、灯理は即席の網を作ると、川の中へ投げ込んだ。
 灯理の念動力に操られ、網は生き物のように流れに逆らって川底を這いまわる。
「さて、どんなものかな」
 しばらくして引き上げてみると、網の中は石やらゴミやら魚やら……。
「……おや?」
 ひとつ、気になるものが見つかった。
 ネズミ柄の巾着袋である。中身は一枚の書状だ。ずぶ濡れだが、頑丈な和紙だったのと丁寧に油紙で包装されていたおかげで読むのに不自由はしなかった。
「何々……『何某の呪い札一揃え、願い奉り候』か」
 書かれていた内容は、呪い道具を購入したいという旨。最後の署名は、『阿久台・勘太郎』とある。
 代官が密輸に関わっていたことを示す物証だ。
 密輸品の現物と、商売敵殺害に関する具体的な証言。そしてこの書状。
 悪党どもを捕らえる大義名分、その最低限はそろったはずだ。
 これから成敗に向かうこともできるし、他に証拠品の心当たりがあるなら探索を続けてもいいだろう。
「どちらにしろ、決着の時は近いらしいな」

   ***

 川辺に佇む灯理の姿を、和類屋の奉公人が見つめている。
「あの男……いや女か? 何の違和感もなかったから気にしなかったが、よく見たら妙な術を使ってやがる。一応、先生に声かけとくか」

   !!!

 証拠品《代官の書状》を入手しました。

成功 🔵​🔵​🔴​


●証言・証拠品リスト
《ご禁制の護符》……取引が規制されている呪い道具の一種
《家来の証言》……用心棒が和類屋の商売敵を暗殺していたと、具体的に証言した。
《代官の書状》……代官直筆の署名とともに、《ご禁制の護符》を購入したいと書かれていた。
髪塚・鍬丸
これだけの証拠があれば何とかなるか。後は直接ぶつけて炙り出してみようかね。

代官の屋敷に向かう。和類屋が代官と会ってる時なら尚良し。【ジャンプ】で塀を乗り越え【忍び足】で代官の部屋へ。天井裏から会話を盗み聞くのがお約束だ。
何かとどめの証拠になりそうな話が聞ければ儲けもの。何にせよ、適当に機を見て直接対峙しよう。
お前さん達の悪事もここまでだぜ、と奴らの行った悪事を並べたて、しらばっくれるなら証拠を突き付ける。
抵抗したり手下を呼ぶなら、【風閂】の糸で拘束する。後はお白洲の仕事だ。

さて、問題は先生とやらだが。奇襲を受けない様に【第六感】で警戒しとこう。




 日が沈み、徐々に闇が迫る江戸の町。
「和類屋および秋内藩の代官、阿久台・勘太郎。お前さん達の悪事もここまでだぜ!」
 とある高級料亭の二階座敷で二人きり、代官と和類屋の主人が酒を飲み交わしているところだった。
 天井裏から飛び降りてきた髪塚・鍬丸(人間の化身忍者・f10718)が、声を張り上げる。
「あ、悪事だと!?」
「和類屋、お前さん用心棒を動かして商売敵を殺してたそうじゃねえか。それだけじゃねえ、お宅の納戸からが見つかったぜ」
 密輸の現物を押さえられたと聞いて、和類屋が絶句した。
 代官も顔色を失うが、悪あがきのように和類屋を糾弾する。
「な……き、きき貴様そんなことを!?」
「おいおい、お代官さまよ。そっちだって一枚噛んでるんだろ? ネタは上がってるんだ、しらばっくれんじゃねえ」
「っ!? あの書状、捨てなかったのか!?」「……こうなっては仕方ない。貴方も道連れだ!」
 にらみ合う代官と和類屋。
 言い逃れは出来まい。これで観念するかと思いきや……
「こやつの口を封じれば済む話だ! であえ、であ――」
「――言わせねえよ」
 血走った目で立ち上がろうとした代官が、中途半端な姿勢で硬直した。
 ユーベルコード【風閂】。代官と和類屋は不可視の糸で縛り上げられ、声も出せずに倒れ込む。
「お約束通りにいかなくて悪いな」
 鍬丸は不敵に笑い、座敷を横切るとおもむろに窓を開ける。
「こっから後はお白州の仕事。だが……」
 虚空へと身を躍らせ、宙返りをひとつ地面に着地。
「……お前さんは、お白州の代わりに『骸の海』へ送ってやるぜ!」
 表の通りに飛び出した鍬丸が指さした先から、闇夜と共に剣鬼が歩いてくる。

成功 🔵​🔵​🔴​




第3章 ボス戦 『用心棒』

POW   :    剛なる居合い
【居合い 】による超高速かつ大威力の一撃を放つ。ただし、自身から30cm以内の対象にしか使えない。
SPD   :    飛刃縮地の構え
自身に【修羅の気 】をまとい、高速移動と【斬撃による衝撃波】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    死者の誘い
【用心棒が殺した死者 】の霊を召喚する。これは【悲痛な叫び声】や【生前持っていた武器になりそうな物】で攻撃する能力を持つ。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠犬憑・転助です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 高級な料亭などが立ち並ぶ通り。
 日も暮れて酔客などで賑わうのがいつものことであったが、その日は不気味に静まり返っていた。
 通りをぶらぶらと歩く一人の牢人。彼が纏う殺気に怯えて、誰もが建物の中に身を潜めているのだ。
『呼ばれて来てみりゃ、なんてこった。どうやら雇い主様はお仕舞らしいなぁ』
 牢人は顎を撫で、ニタリと笑った。
 追い詰められているなどとは微塵も思っていない様子である。
『一年ばかり世話になったが、それも今日限りだな。……最後にちょっくら、用心棒らしいことでもしておくとしようか』
 チャキ、と小さく腰元で鯉口を切る音がした。

 提灯の灯りで照らされた無人の大路で、凶刃が猟兵たちに牙を剥く。
髪塚・鍬丸
「お前さんの主人はお縄についたぜ。観念したらどうだい?」
不敵な笑みを浮かべつつ刀を抜いて用心棒と対峙。霞の構えを取りながら内心呟く。
『参ったね……。こいつぁ、正面から勝てる相手じゃねぇな」

忍術とは即ち遁術。勝てぬ敵からはまず逃げよ。
そう教え込まれたもんだが、生憎俺はもう忍者じゃねぇ。
これ以上仏さんを増やさない為にも、この人斬りに背を向ける訳にはいかねぇな。

【求蓋の外法】使用。今の俺で勝てないなら、未来の更に修行を積んだ俺の力を借りる。
正面から正攻法だ。【ダッシュ】【ジャンプ】で常に刀の間合いを保ち、敵の速度と衝撃波に対抗する。攻撃は【見切り】【第六感】でかわし【暗殺】で隙をついて急所を狙うぜ。




「参ったね……。こいつぁ、正面から勝てる相手じゃねぇな」
 刀を敵の視線と水平に合わせる『霞』と呼ばれる構えを取った髪塚・鍬丸(人間の化身忍者・f10718)は、内心では冷たい汗をかいていた。
 忍者の本領とは隠密にして遁走であるというのが師の教えである。
 とっさに敵の真正面へ飛び出したのは正しかったのか……否、それは結果である。今さら背を向けるわけにはいかない。
「正面からいくぜ!」
『ハッハァ! そう来なくっちゃなァ!』
 まっすぐに駆け出した鍬丸に、牢人は鮫のように笑った。
 衝撃波を帯びた斬撃を放つ牢人に対し、鍬丸は跳躍と疾走を織り交ぜて対応する。
『いい動きだァ! ……が、逃げてばかりじゃァな! 俺を殺るにゃ十年早ェ!』
「……ほう、そうかい」
 攻撃に転じられないのを嘲笑う牢人に、鍬丸のバイザーが怪しく光った。
「だったら、十年先の俺に助けてもらうかね」
『あン?』
「――『臨む兵、闘う者、皆 陣列べて前を行く』」

 斬!

 スピードが増したり、透明になったりしたわけではない。鍬丸は、彼の体が本来持っている能力のまま、本来の挙動でもって刀を振るっただけだ。
 しかし、牢人は全く反応することができぬまま、首根の経脈を掻き斬られていた。
『ぐっ!? ……て、テメエ』
 突如として異様なまでに技量を飛躍させた鍬丸に、牢人は驚愕する。
 ユーベルコード【求蓋の外法】。修行の末に自身が行き着くであろう可能性を召喚した今、鍬丸は老練なる達人と化していた。
 ……果たして、正面対決を選んだのが正しかったのかは分からない。全ては結果である。なにがあろうと、最良の結果を導き出すだけの能力を持つのが猟兵という存在であり、髪塚・鍬丸という男だった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルーレイ・バーンシュタイン
流石の剣客といったところでしょうか。迂闊に近づくことも難しそうですね。
今回は巻き込まれそうな人もいないからちょっとくらい派手にやっても大丈夫かな。
「ふっふっふっ。この手の花の性能を試してみたかったんですよー。」

【世界知識】で知りえた様々な爆発する花を【一輪の花】で召喚し投げつける。
「斬っても爆発、放っておいても破裂する。ああ癖になりそうです。」
うっかり足元に落としたらポンコツー!っていってもらって構わないよ。

アドリブ絡み歓迎




 ヒラと風に乗って一輪の花が舞った。
 死合の場には似合わぬ、白く小さい花だ。
「これは、そう。アルダワ魔法学園世界で見つけた花。甘い香りがするでしょう?」
『くだらねェ!』
 一刀両断。牢人の刀が閃き、可憐な花を斬り捨てる。
「香りの元は花の蜜なんですが、これが珍しくてですね。――ニトログリセリンなんですよ」
 爆!
 切断された白花が炸裂した。凄まじい爆風が牢人の体を吹っ飛ばす。
 小さな花弁からは想像もつかない威力に、ルーレイ・バーンシュタイン(人間の探索者・f01355)は手を叩いてはしゃぐ。
「一度、実戦データを取りたかったんですよねぇ。さあ、今度はアックス&ウィザーズ世界のバクダン花でも行ってみましょうか」
 ルーレイは異世界を渡り歩いて見つけた爆発性の花を、次々に咲かせては投擲していく。花ごとに様々異なる爆炎や轟音が起こるさまは、ちょっとした花火大会のようだ。
「ふっふっふっ。癖になりそうです」
『どうせなら、血の華でも咲かせやがれ!』
 アブない快感を覚えるルーレイへ、牢人が苛立ち任せに刀を振るった。
 衝撃波となって飛来する斬撃を、ルーレイはなんなく飛び退いて――
 ポロリ
 回避した拍子、手榴弾のような形の花房が零れ落ちた。
「ポンコツー!」
 悲鳴とともに爆煙に飲み込まれたのは、ご愛敬である。

成功 🔵​🔵​🔴​

シーマリネィア・シーン
下手に近付いたら危ないですね。どうしようかな……。

とりあえず、ランスの竜に乗って【空中戦】です。刀が届かない距離を保って飛び回りながら隙を伺います。

あの構えはサムライの居合い、ですよね。確か、間合いを見切って放つ後の先の剣技、でしたか。
ならば……。

更に距離を取り、上空に昇ります。そこから、エストックを構えて斜め下の用心棒に向かい全速飛行。竜の飛行力に自身の羽での羽ばたき、落下の勢いも加えて全力突撃。
【フェイント】です。居合いの間合いに入る直前に剣を捨て、竜を全長3mのランスの姿に戻して間合いを変え【串刺し】に。即【ドラゴニックエンド】でランスを再度竜化、零距離からブレスを傷口に撃ち込みます。




『――ふぅ』
 牢人は血の上った頭を鎮めるように小さく息を吐くと、刀を鞘に戻した。
 柄に手をかけた状態で、どっしりと腰を落として身構える。
「あれが居合の構えですか」
 小竜の背にまたがって上空から様子をうかがい、シーマリネィア・シーン(聖竜騎士・f12208)は呟いた。
 納刀状態から抜き打ちの一挙動にて敵を斬る特異な剣術。その神髄は、精密に間合いを見切る技能であると聞く。
「……ならば」
 シーネマリネィアは即決、騎竜に急降下を指示した。
 竜翼と自身の背から生える透明な羽とによる二重の羽ばたきで加速し、全力の突撃を敢行する。
『なんだァ、縫い針持って一寸法師の真似か!』
 牢人の嘲笑に耳を貸さず、シーマリネィアは白金のエストックを手に飛翔。
 そして――
「マルクリール!」
 シーネマリネィアがまたがる小竜が、一瞬にしてランスへと変身した。
『ぬあッ!?』
 身の丈の十倍を優に越える超長大な突撃槍を放つフェアリーの騎士に、牢人は驚愕しつつも刀を抜き放った。
 ギィン! と金属音を立てて弾け合い、二人はともに後方へ飛びのく。
 ただ、双方には一つ違いがあった。
 ――【ドラゴニックエンド】!
 シーネマリネィアの手中で突撃槍が再びドラゴンの姿に変身、今しがた切り結んだ牢人の刀めがけて竜の息吹を吐きかける。
『グォオオ!? くっそがァ!!』
 剣閃でもってドラゴンブレスを斬り払った牢人だったが、その容姿はボロボロだった。
 もはや立っているのもやっとの様子で、しかし牢人は呵々大笑する。
『ハッ、ハッハハハハ! いいねェ。最近は斬り甲斐のないカスみたいな奴ばっかりだった。こんな楽しい殺し合いは久しぶりだぜ!』

成功 🔵​🔵​🔴​

シーマリネィア・シーン
強いなぁ、この人……。
『空から攻撃すれば安全かな。正義の為なんだから正々堂々とか言ってられないんだけど……」
さっきの侮辱が頭を過ぎります。
「……聖竜騎士、シーマリネィア=シーン。今一度、お手合わせ願います」
【儚き騎士道】発動。妖精騎士を侮らないで下さい。
人の身で竜に立ち向かうが騎士。妖精が人に立ち向かうに何の躊躇いが必要でしょうか。

先程と同じく、上空から竜に乗って剣を構え突撃。但し今度はフェイントも竜炎も無しの真っ向勝負。
恐怖を【勇気】で抑え【捨て身の一撃】【怪力】【空中戦】【串刺し】で全力突撃。【気合】で【衝撃波】を纏い、剣で刺すよりむしろ体ごとぶつかって吹き飛ばし、壁に叩き付ける勢いです!




 一撃を与えたあと、フェアリーの女騎士は再び上空にいた。
「このまま空から攻撃すれば安全かな。正義の為なんだから正々堂々とか言ってられないんだけど……」
 言葉とは裏腹に、彼女はまたも突撃の構えを取っていた。
 自慢の剣に向けられた侮辱には、応えなければならない。
「……シーマリネィア・シーン(聖竜騎士・f12208)。騎士の誇りと妖精王の剣にかけて、今いちど」
『上等だァ!』
 対する牢人もまた、居合抜刀の構え。
 先ほどの焼き増しのごとく、二人は衝突する。ただ一つ異なるのは、シーネマリネィアの得物が槍でなく、細剣のままだという点だ。
 ギィィンン!
 つばぜり合いである。
 騎竜の突進力と、サムライの膂力が拮抗した。
『どうしたァ! さっきのが、まだマシだったぞ!』
 牢人が嗤った。
 確かに、不利を承知の正面突撃は合理的な戦術とは言いがたいかもしれない。
 だが、それがどうしたというのか。
 体格差や、技の相性など関係ない。大事なのは、己の誇りを体現することである。
「妖精騎士を侮らないで下さい!」
 構わず、シーネマリネィアは押し込んだ。
 小さな体に宿る大きな勇気が! 気合が! 圧倒的不利を凌駕し、自身の力へと変えていく。
『ぐおっ!? ば、馬鹿なァァァッッ!!?』
 まるで巨竜の突進を受けたかのように、牢人の体が吹っ飛ばされた。
 軽々と宙を舞ってべしゃりと倒れ伏す牢人のすぐそばに、真っ二つにへし折られた刀の切っ先が突き刺さる。
『ぐ、うぅぅ…………ま、まだ……死んじゃァいねえぞ』

大成功 🔵​🔵​🔵​

竜洞・梓
助太刀します! あなたに斬られた妖精さんの仇です!
【WIZ】
妖精さんに全力でバックアップいただきます。
【勇気】を持って相手のこわい攻撃を突き抜けてみせますよ。
【第六感】【見切り】でことごとくを躱してみせましょう。
そして【高速詠唱】【属性攻撃】【全力魔法】(※全部バフ魔法)を乗せて、今必殺のまじかる☆どらくる☆ラッシュ!(高速の拳ラッシュ)
私のどらくる☆ペイントが真っ赤に燃える!

(お、おそば美味しくいただいていたらすっかり解決して最終戦に……!
「天誅! 勝てばいいのです、勝てば!


三上・チモシー
(偶々近くのお茶屋さんでお団子食べてただけの人)
んー?喧嘩?
……あっ、違った猟兵とオブリビオンだ!

地形の利用で物陰に隠れながら、察知されないよう注意して接近
数メートル程度まで近付けたら、姿を見せないまま用心棒を狙って【熱湯注意】使用

当たったかどうかにかかわらず、使用後は他の猟兵の邪魔にならないようにすぐ逃げるよ
ちょっとでも戦闘の手助けになってればいいなー
お団子食べに戻ろっと




 ところかわって、戦場から少し離れた場所にある蕎麦屋。
「ズルズル……ハッ、いつの間にやらすっかり解決して最終戦に……!?」
 竜洞・梓(まじかる☆どらくる・f11833)は、戦闘音に気付いて蕎麦をたぐる手を止めると、丼ぶりを置いて飛び出していく。
 その様子を、店の奥で見ていた少女……もとい少年が一人。
「んー、喧嘩? ……あっ、違った。猟兵とオブリビオンだ」
 三上・チモシー(カラフル鉄瓶・f07057)は食べかけの団子を置くと、音もなく梓の後を追った。

   ***

「あなたに斬られた妖精さんの仇です! いざ、勝負」
『妖精だァ?』
 啖呵を切る梓に対し、牢人はふてぶてしい笑みを浮かべ、
『そいつは、この中にいるのかい!』
 半ばで折れた刀を振るえば、無数の死霊が召喚される。すべて、かの凶刃にかかった犠牲者たちだ。
 死後も無理矢理に隷属させられる霊たちの悲痛な叫びを受けて、梓は退きそうになるが、すんでのところで踏みとどまった。
 恐怖に屈するなど、彼女が目指す魔法少女にはふさわしくない。
 勇気を胸に、魔力をたぎらせ、妖精たちの応援を背に受けて、梓は正面から戦いを挑む。
「必殺のォォォ、まじかる☆どらくる☆ラッシュ!!!」
 真っ赤に煌めく拳で死霊の群れに飛び込んでいく梓。
 その裏で、影のように静かにオブリビオンへと忍び寄る影があった。
 誰であろう、チモシーである。
 物陰から物陰へ、誰にも気付かれずに移動する少年の手には、湯気の沸き立つ鉄瓶。ヤドリガミたる彼の本体、南部鉄器の鉄瓶だ。
 深みのある黒色の鋳鉄が傾けられ、その内部にてグラグラと煮えたぎっていた熱湯が注ぎ口から勢いよく噴き出すと、狙い過たず牢人の襟首へと飛び込む。
『うわっ熱ァアア!?』
 不意打ちを首の後ろにもらった牢人は飛び上がった。
 着物の内側に入り込んだ熱湯は、ただ皮膚を焼くだけにとどまらない。布地に染み込んで身体に張り付き、延々と熱を与え続けるのだ。
 牢人は地獄の責め苦に七転八倒、たまらず濡れた着物を脱ぎ棄ててふんどし姿になる。
 その無防備な顔面に、死霊の群れを突破した梓の竜拳が炸裂した。
「天ッ誅!!」
 燃え上がる魔力を乗せた拳が、オブリビオンを天高くへと殴り飛ばす。
『グあアアァァァ!? ば、馬鹿なァァァッッ!!?』
「若干、気の毒な終わり方だった気がしないこともなかったりしますが……勝てばいいのです、勝てば!」
 夜空の星となって消えた牢人を見送り、梓は勝利を噛みしめたのだった。

   ***

 一方その頃。
「ちょっとでも手助けになってたらいいなー」
 奇襲攻撃がえげつない戦果を挙げたことを確かめもしないで蕎麦屋へと戻ったチモシーは、のほほんとした笑顔で店の名物だという団子に舌鼓を打っていたという。

【END】

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年02月24日


挿絵イラスト