アルダワ魔王戦争2-A〜地下墳墓の怨鎧
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「アルダワのファーストダンジョンも順調に攻略が進んでおるようじゃの」
ガングラン・ガーフィールド(ドワーフのパラディン・f00859)は顎髭を撫でながら、何度もうなずく。しかし、その表情に緩みはない。まだまだ先がある、油断は出来ないことと思っているからだ。
「今回、おぬし達に頼みたいのは地下墳墓で構成されたダンジョンでの戦闘じゃ」
戦場となるのは地下墳墓では、墳墓の怨念が災魔に憑依し戦闘能力を向上させている。真っ向から普通に戦えば、苦戦は必死だ。
「おぬし達に頼みたいのは、騎士の怨鎧という騎士の鎧が災魔として蘇った存在じゃ」
範囲攻撃や回避能力、自身の能力を強化するなど個体として最初から強力な災魔だ。これに更に墳墓の怨念が憑依して強化しているのだから、強敵と呼ぶしか無い。
「幸い、怨霊に憑依されると知性が下がるようじゃが……騎士の怨鎧の場合、戦闘能力が向上しておる方が問題じゃな。まともにやりあっておったら、かなり骨が折れるじゃろう」
しかし、対処法もあるのじゃ、とガングランは続ける。
「ただ、あくまで強化されるのは怨霊がおるからじゃ。怨霊を浄化したり怨霊を鎮める事ができれば、災魔を弱体化できるじゃろう」
その手段に関しては、みんなに任せるとガングランは語った。いかに怨霊と相対するか、その方法や手段に関しては出身世界によってさまざまあるだろうし、個々によって変わるだろう、との事だ。
「何にせよ、徐々にでも攻略を進めていかねばならん。この調子でよろしく頼むぞ」
波多野志郎
怨霊にどう対処するか? あなたならどうします? どうも、波多野志郎です。
今回は地下墳墓で構成されたダンジョンを戦場に、戦っていただきます。
今回のプレイングボーナスは、「怨霊を浄化したり、鎮めたりする行動」となります。皆様のアイデアを楽しみにお待ち致しております。
それでは、怨霊がさまよう地下墳墓にてお会いしましょう。
第1章 ボス戦
『騎士の怨鎧』
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POW : 戦鎧の妙技
【縦横無尽の剣閃】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
SPD : 闘鎧の秘技
【自身に刻まれた戦闘経験から的確に】対象の攻撃を予想し、回避する。
WIZ : 魔鎧の禁忌
【魔核の稼働制限を解除。超過駆動状態】に変化し、超攻撃力と超耐久力を得る。ただし理性を失い、速く動く物を無差別攻撃し続ける。
イラスト:暁せんべい
👑11
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠茲乃摘・七曜」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
神楽火・天花
災魔と怨霊か。厄介ね。
まずはこの場を浄めるのが先。それなら「魔女」のアタシよりも適任がいるわ。
「正義の味方」の人格に交代!
マジカルナギナタを持って、破魔の舞いと祝詞で怨霊を鎮めちゃうよ!
「あまつひのかみにかしこみもうす。きよめたまえ、きよめたまえ!」
もう一度「魔女」の人格に交代。天神雷華狂咲を使って、二丁拳銃の雷属性攻撃を乱れ撃ち。
「九倍の手数が二丁。さらにそれぞれ二回攻撃。……かわせるかしら?」
味方を攻撃しないと寿命が減る?そんなの気にしないわ。
オブリビオンを滅ぼすために、アタシ達はここにいるんだもの。
梅ヶ枝・喜介
敵に敵にが取り憑いて、むむ?
難しい状況になってんナ
だが悪霊退散ならば陰陽の術が効果アリと見た!
泰山府君の流れを汲んで死者を蘇らせるのは陰陽道の最奥よ!
む?蘇らせちゃあ不味いよな?
しまった!おれの陰陽術は半人前!
すっかり忘れてたゼ!
じゃあどうする?
ンなもん決まってらァ
心の底から祈るしかあるまい!
モノノフどもの相手をしながらで、木刀を持たなきゃいけねぇからさ!
手を合わせられねぇ無作法の分まで確りと祈る!
アンタらは無念や恨みを抱えた連中なんだろうな
その遺恨はおれが晴らしてやる!
敵が縦横無尽の剣ならば、おれの剣はただの一刀!
しかして侮るなかれ!
研ぎ澄まし続けた一は!
無尽にも勝ると教えてやらァッ!
シリン・カービン
【WIZ】
死は恐るべきものではありません。
それは生命の循環の一場面なのだから。
忌むべきは、その循環を止め、死を留めること。
騎士の攻撃を捌きながら、狩猟の前に行うまじないを謡います。
糧となる生命への感謝と狩猟の無事を祈る唄ですが、
怨霊達が生命の循環に戻れるよう、祈りを込めて謡います。
怨霊の力が薄れ、騎士が超過駆動状態になったら、
目の前から逃げ去るように全力でダッシュし、騎士を誘います。
追いすがる騎士の剣が届く直前で【スプライト・ハイド】を発動。
姿を消してやり過ごし、行き過ぎる騎士を背後から狙撃。
鎧の隙間を狙って炎の精霊弾を撃ち込み、内部から爆破します。
「骸の海で、眠りなさい」
アドリブ・連携可。
鈴木・志乃
……私たちはいつまで戦わないといけないんだろうなぁ?
UC発動
【祈り、破魔を乗せた全力魔法】で怨霊の一切合切を【なぎ払い】するよ
……もう誰かを傷つけたり、恨んだりする必要なんて無いんです
ゆっくり、ゆっくり土の下で休んでいいんですよ
これ以上眠りを妨げないように、私も尽力します……
戦うことを義務付けられた鎧、か。しかも怨みを持って。
【オーラ防御】展開
【祈り、破魔】を乗せたレクイエムの【歌唱】による【衝撃波】で鎮魂を願う
……戦闘経験があっても回避し辛いと思うよ。鼓膜潰さない限り聞こえちゃうからね
第六感で攻撃を見切り光の鎖で早業武器受けからのカウンターなぎ払い
御剣・刀也
騎士の怨霊か
騎士道と武士道、似ている所も多い。こいつも誰かに剣を捧げたんだろう
なら、俺も剣士として、剣で答えよう。満足がいくまで、な
戦鎧の妙技は第六感、見切り、残像、武器受けで避けるか受け流すかしながら勇気で恐れずダッシュで距離を詰め、捨て身の一撃で斬り捨てる。
一撃必殺がもっとうだが、相手が倒れないのならば、倒れるまで、満足するまで、何度でも剣を交わして、剣を交える喜びを感じながら、闘う
「お前さんも鬼よな。主の為に捧げた剣。見事としか言いようがない。が、俺も人を捨てた鬼。さぁ、やりあおうぜ。どちらかの鬼が力尽きるまで、存分に、な」
葛折・菖蒲
連携歓迎
「ごく普通の一般人に怨霊退治は荷が重い気もしますけれど、やるしかありませんわね」
味方が一緒なら仕込み傘から浮遊砲台を展開、援護射撃を
単独なら砲台と連携しガジェットで近接戦闘
怨霊に関しては神聖系の属性を攻撃に付与し、属性攻撃とすることで浄化を試みます
そして効果の有無にかかわらずUCへ繋げる
「対象の攻撃を予測して回避してきますのね。厄介ですけれど」
逆に言うなら攻撃することで回避を強いれるので敢えて躱しやすい場所を作って、UCで作成したガジェットの効果範囲内に追い込むのが真の狙い
「名付けて『聖域メーカーβ』ですの」
踏み込んだ敵の移動を封じ、浄化されるまで継続的に神聖属性でダメージを与え続ける
上野・修介
※連携、アドリブ歓迎
魔術、呪術の類は全くの門外漢。
「ならば、『八卦良い』と行くか」
だが清めろというのであれば、やりようはある。
塩を撒き、渾身を以て四股を踏む。
(上半身裸に裸足で)
深く、そして強く四股を踏み締め、場を清めると共に、呼吸を練り上げ、気勢を高める。
また相手を観【視力+第六感+情報収集】据え、体格・得物・構え・視線・殺気等から敵の戦力を量【学習力+戦闘知識+見切り】る。
向かうは真正面から。
小細工無用。
【覚悟】を決めてダメージを恐れず【勇気+激痛耐性】推して参る。
姿勢を低く【ダッシュ】で懐に飛び込み、【捨て身】にて素手格闘【グラップル+戦闘知識】を叩き込む。
UCは攻撃力重視。
ペイン・フィン
ファン(f07547)と
怨霊を宿す騎士、か……
……なんというか、嫌なものを、思い出すよ(少しだけ悲しい目になる)
攻撃は、任せたよ、ファン
代わりに、防御は、自分が引き受ける
コードを使用
墳墓の怨霊を、それらが宿す怨念を、辺りに漂う負の心を
一切合切、全部ひっくるめて、喰らうよ
同時に、ファンを含めた仲間の猟兵を、相手の攻撃から護る
……貴方が、どんな生き方をして、どのようにして、今ここに居るのか
自分には、分からない
……でも
死してなお苦しむその怨念と恐怖を
良いように扱われ虐げられるその憤怒と憎悪を
この状況に対して無力なその悲哀と絶望を
喰らい、吸収し、宿して、飲み干す
自分にできるのは、そのくらいだから、ね
ファン・ティンタン
【POW】斬り、祓う
ペイン(f04450)と
怨讐漂う鎧、か……
知り合いに動く鎧はあれど、あなたとはまるで別物だよ
ダンジョン攻略もあるし、ついでだ、色々と断ってあげる
我が器物、【天華】は、古きオラトリオの鍛えた一振り
何物をも漂白する【破魔】の白刃
あなたの内にも記憶された幾条の太刀筋があるのだろうけれど
そんな煩雑で多くのものは、必要ないんだよ
ただ一太刀、ソレで決まるのだから
前衛は任されたよ
万一の守りに心配はないから、安心して剣閃の嵐へと踏み出そう
大剣の振り下ろしを【見切り】、薙ぎを【武器受け】でいなし、突きを【カウンター】で【なぎ払い】弾く
その大剣じゃ、懐に入られたが最後だよね
おやすみ
【剣刃一閃】
愛久山・清綱
蝕まれた戦士か……確かに厄介な存在だ。
されど迷える魂を導くのも巫覡の役目の一……
引き返すわけにはいくまいな。
■祓
怨霊の墓の前で、手を合わせ【祈り】を捧げよう。
後の事を自分たちに任せるよう霊たちに声をかけ、
その魂が安らかに眠れるように……
■闘
攻撃が放たれる瞬間を【見切り】つつ、【オーラ防御】を
纏いながら剣閃を【武器受け】で流し、【ダッシュ】で
敵の懐まで急接近を図る。
懐までたどり着いたら『心切』に【破魔】の力を込めて非物質化、
魂を祓う太刀【夜見・改】を放って宿り主と怨霊の双方を浄化する。
乱暴な形で申し訳ないが、これが俺にできる救済だ……
どうか、安らかに眠っておくれ。
※アドリブ・連携歓迎
ヴィクティム・ウィンターミュート
…生憎と、俺にはスピチュアルな方面に対応できるスキルが無い
向き不向きってもんがあるからな…だがそれを理由に何もしねーなんてことは、論外だ
スキルは無い。だが"手札"はある
陰陽師の知り合いがいて良かったよ…本当に
霊符の破魔の力を開放する
これはある陰陽師──梅の香りを纏う、優しき水の担い手の業
故にそこに込められるのは清く、柔らかな力だ
鎮まれよ怨霊ども。梅の香りに包まれておけ
さて…んじゃあ戦ろうか
ナイフによる近接戦闘を仕掛ける
牽制の攻撃で焦らしつつ、不意に大ぶりな一撃をかます
…ま、これはきっと避けられる
だからこその二段構え…もう一度霊符を掲げる
【破魔】の力で奴を縛り、今度こそナイフで致命的な一撃だ
●地下墓地
ファーストダンジョンの一角、そこにその地下墓地はあった。薄暗い荒れ地に立ち並ぶ様々な形状の墓石。その暗さは、何も物理的なものだけではない。息苦しいまでの空気にも理由はある。
(「……私たちはいつまで戦わないといけないんだろうなぁ?」)
鈴木・志乃(オレンジ・f12101)の口の中での呟きの答えは、あるいはここにあるのかもしれない。
「あれは――」
葛折・菖蒲(多重人格者の探索者・f18540)の視線を、猟兵達が追う。そこに見た光景に、しみじみと梅ヶ枝・喜介(武者修行の旅烏・f18497)がこぼした。
「敵に敵にが取り憑いて、むむ? 難しい状況になってんナ」
それはまさにワイルドハント――西洋版の百鬼夜行だった。大量の不形態の怨霊、それを引き連れるように……あるいは引きずるように緩慢に歩くのは漆黒の鎧、騎士の怨鎧だった。
「災魔と怨霊か。厄介ね」
騎士の怨鎧の出現とともに、周囲の空気がより重くなるのを感じて神楽火・天花(マジカルガールクインテット・f03853)が呟く。それに、ペイン・フィン(“指潰し”のヤドリガミ・f04450)はわずかに視線を伏せた。
「怨霊を宿す騎士、か……なんというか、嫌なものを、思い出すよ」
その言葉の意図を察して、ファン・ティンタン(天津華・f07547)はペインの横に立ち騎士の怨鎧へとまっすぐと告げた。
「怨讐漂う鎧、か……知り合いに動く鎧はあれど、あなたとはまるで別物だよ。ダンジョン攻略もあるし、ついでだ、色々と断ってあげる」
その純粋な戦意に、騎士の怨鎧がガシャンと立ち止まる。怨霊の群れが揺れる、ミシミシと鎧を軋ませ――騎士の怨鎧が、吼えた。
『ああ、ああ、あ、ああ、あああああああああああああああああああああああああああ!!』
老若男女、大量な怨嗟の大合唱。ビリビリと大気が震えるのを感じて、愛久山・清綱(飛真蛇・f16956)が言い放つ。
「蝕まれた戦士か……確かに厄介な存在だ。されど迷える魂を導くのも巫覡の役目――……引き返すわけにはいくまいな」
「騎士の怨霊か、騎士道と武士道、似ている所も多い。こいつも誰かに剣を捧げたんだろう」
獅子吼を抜き、肩に背負うように構えた御剣・刀也(真紅の荒獅子・f00225)が前に出る。肌を、神経を、直接ヤスリで削るような濃厚な呪詛と憤怒――怨霊達のそれを無視して騎士だけを見る。
「なら、俺も剣士として、剣で答えよう。満足がいくまで、な」
騎士の怨鎧が大剣を抜き、地面を蹴る。動きそのものは、ひどい遅い。大量の怨霊を宿したからだろう、まるでゾンビのそれだ。
『あああ、ああああああああああああああああああ――!!』
しかし、その縦横無尽の剣閃だけは凄まじく速かった。墓石を、荒れ地を、障害物など意に介さない大乱舞が、猟兵達を襲った。
●怨霊の鎧
瓦礫が舞い上がり、舞い落ちてくる。それはあまりにも不気味なファフロッキー現象のようだった。
「ごく普通の一般人に怨霊退治は荷が重い気もしますけれど、やるしかありませんわね」
菖蒲が真紅の仕込み傘を開く。閉じられていた傘から飛び出したのは、六機の小型浮遊レーザー砲台だ。ヒュオン! と騎士の怨鎧を取り囲んでの一斉に放たれるレーザー、騎士はそれに構わず前に出る。
「――ォオオオッ!」
その刹那、斬撃を掻い潜った刀也が獅子吼を振り下ろす。確かに騎士の怨鎧へ刃は届いた、そのはずだった。
「そういうからくりか」
「怨霊が邪魔してますわ」
しかし、斬撃は届かない。刀也の呟きを補足するように、レーザーが届いていない事に気付いた菖蒲が言った。
「……生憎と、俺にはスピチュアルな方面に対応できるスキルが無い。向き不向きってもんがあるからな…だがそれを理由に何もしねーなんてことは、論外だ」
あの怨霊の群れを払わない限り、有効な攻撃は届かない――ヴィクティム・ウィンターミュート(impulse of Arsene・f01172)は、それを悟って言い捨てる。
「スキルは無い。だが"手札"はある。陰陽師の知り合いがいて良かったよ……本当に」
ヴィクティムが手にとってのは、一枚の霊符だ。ヴィクティムは教わった通りに霊符を騎士の怨鎧へ投擲――バチン! と鎧に触れた瞬間、霊符が弾け周囲に梅の香りが漂った。
『が、ぎ、がああ、ああああああああ!?』
「これはある陰陽師──梅の香りを纏う、優しき水の担い手の業、故にそこに込められるのは清く、柔らかな力だ。鎮まれよ怨霊ども。梅の香りに包まれておけ」
漏れる声に苦痛がまじり、騎士の怨鎧が香りを振り払うように剣を振るう。その姿に、上野・修介(吾が拳に名は要らず・f13887)は靴と上着を脱いだ。
「魔術、呪術の類は全くの門外漢だが……ならば、『八卦良い』と行くか」
清める、という方法なら武術にもある。古来、命のやり取りとは神事に密接に繋がりがあった。相撲もまた、その中のひとつだ。
修介は清めの塩を撒き、腰を低く構える。パン! と眼前で手を打つと、両手を膝へ。片足を高く上げ――ダン! と強く踏みしめる!
四股、それは相撲の取り組み前の準備運動に留まらない。祭礼においては大地の邪気や邪霊を踏み鎮める意味を持つ、立派な儀式だ。
『お、おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!』
騎士の怨鎧が修介へ挑みかかる。修介は、それを真っ向から受け止めた。
「――お」
修介が呻く。体にのしかかる重みが異常だった。鎧だけではない、宿り、なおも取り憑こうとする怨霊達の重みも加わっているのだ。
その瞬間、温かい衝撃が怨霊の群れを揺るがした――志乃の祈りと破魔を乗せた全力魔法による光の薙ぎ払いだ。
「……もう誰かを傷つけたり、恨んだりする必要なんて無いんです。ゆっくり、ゆっくり土の下で休んでいいんですよ。これ以上眠りを妨げないように、私も尽力します……」
光に照らされ、怨霊の一部が溶けるように消えていく。その救いを否定するように、怨霊達は叫んだ。
『ああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!』
「死は恐るべきものではありません。それは生命の循環の一場面なのだから。忌むべきは、その循環を止め、死を留めること」
シリン・カービン(緑の狩り人・f04146)の歌声が、その怨嗟に重なる。糧となる生命への感謝と狩猟の無事を祈る唄――それは生命の循環に戻れるよう、祈りを込めて謡だ。
騎士の怨鎧が、よろけながら後退する。真摯な祈りが、その身を焦がす怨嗟を鎮めていく――その姿を見逃さないよう、まっすぐに見つめペインは告げた。
「攻撃は、任せたよ、ファン。代わりに、防御は、自分が引き受ける」
「ええ、前衛は任されたよ」
ファンが地面を蹴って疾走。それは怨霊の宿る大剣の刺突でカウンター気味に迎撃する――だが、その剣の切っ先にペインが立ち塞がった。
「……心配しないで、大丈夫」
この身はあらゆる負心を喰らう(クツウモオンネンモミナクラウ)――両手を広げたペインの胸を怨霊が貫いた、そのはずだった。しかし、まるで大量の水に落ちた墨汁のように溶けるように怨霊達が四散した。
「……貴方が、どんな生き方をして、どのようにして、今ここに居るのか。自分には、分からない。……でも、死してなお苦しむその怨念と恐怖を良いように扱われ虐げられるその憤怒と憎悪をこの状況に対して無力なその悲哀と絶望を――喰らい、吸収し、宿して、飲み干すよ」
自分にできるのは、そのくらいだから、ね、とペインは微笑する。その大剣の切っ先が胸に届く前、ペインの背後から回り込んだファンの一閃がそれを弾いた。
「我が器物、【天華】は、古きオラトリオの鍛えた一振り。何物をも漂白する【破魔】の白刃。あなたの内にも記憶された幾条の太刀筋があるのだろうけれど、そんな煩雑で多くのものは、必要ないんだよ。ただ一太刀、ソレで決まるのだから」
ザン! と怨霊が断ち切られ、騎士の怨鎧が後ろへ下がる。それを見て、天花が言った。
「まずはこの場を浄めるのが先。それなら「魔女」のアタシよりも適任がいるわ」
天花は「魔女」から「正義の味方」の人格となると、マジカルナギナタ「霹靂姫」を構えた。
「あまつひのかみにかしこみもうす。きよめたまえ、きよめたまえ!」
『ぐ、が、あああ、ああああああああああああああ……!』
天花による破魔の舞いと祝詞によって、更に場が清められていく。騎士の怨鎧はその場から離れようとするも、菖蒲のガジェットが許さない。
「名付けて『聖域メーカーβ』ですの」
『ぐ、うう、あああ、ああああああああ……ッ』
踏み込んだ敵の移動を封じ、浄化されるまで継続的に神聖属性でダメージを与え続ける――まさに、この状況に適したガジェットだ。
騎士の怨鎧、否。怨霊達が狂ったように剣を振るう。取り憑いていた怨霊はかき消されていく――それでもなお、集まろうとした怨霊に喜介が言った。
「だが悪霊退散ならば陰陽の術が効果アリと見た! 泰山府君の流れを汲んで死者を蘇らせるのは陰陽道の最奥よ! ――む? 蘇らせちゃあ不味いよな?」
元の木阿弥である、陰陽道なのに。思わず、喜介が唸った。
「しまった!おれの陰陽術は半人前! すっかり忘れてたゼ! じゃあどうするか? ンなもん決まってらァ、心の底から祈るしかあるまい!」
すべての基本、それに立ち返り集まろうとする怨霊達に喜介は木刀を振るう。祈りながら斬る、一打一打渾身の祈りを込めて振るう、振るう、振るう!
「手を合わせられねぇ無作法の分まで確りと祈る! アンタらは無念や恨みを抱えた連中なんだろうな。その遺恨はおれが晴らしてやる!」
その喜介を背後に、墓石を前に清綱は手を合わせた。
「後の事を自分たちに任せれよ」
その魂が安らかに眠れるように……、ただ真摯な願いを込めて清綱は祈りを捧げ続けた……。
●そして、騎士が残る
どれだけの時間が必要だったのだろう? 正確に理解している者はどこにもいない。しかし、怨霊が祓われる度に騎士へと刃が攻撃が届くようになっていく――それと同時に、重みを失った騎士の怨鎧の速度も戻っていった。
「……お」
刀也が不意に動きを止める。騎士の怨鎧が、その動きを止めたからだ。
『――――』
ガシャリ、と騎士の怨鎧は胸元で大剣を掲げ、騎士の礼を取る。それは賛辞か、謝辞か、あるいは――騎士の怨鎧へ、刀也が笑って言った。
「お前さんも鬼よな。主の為に捧げた剣。見事としか言いようがない。が、俺も人を捨てた鬼。さぁ、やりあおうぜ。どちらかの鬼が力尽きるまで、存分に、な」
刀也が真っ直ぐに駆ける。魔鎧の禁忌によって超過駆動状態になった騎士は、それを真っ向から受け止めた。
「この切っ先に一擲をなして乾坤を賭せん!!」
持てる力を振り絞って上段から振り下ろし――刀也の雲耀の太刀が、ついに騎士の鎧を大きく切り裂いた。それでも、騎士の怨鎧は止まらない。斬られながら、前に出て下段から大剣を振り上げた。
「はは!!」
両者が、連続で激突する。鬼と鬼、火花と意地を散らす交差。そこへ、喜介も喜々として加わった。
「敵が縦横無尽の剣ならば、おれの剣はただの一刀! しかして侮るなかれ! 研ぎ澄まし続けた一は! 無尽にも勝ると教えてやらァッ!」
刀也の雲耀の太刀と喜介の火の構え(ジョウダンノカマエ)からの渾身の一撃が、騎士の戦鎧の妙技の乱舞を止める! そこへ菖蒲のスカートの中の狙撃手による援護射撃が重なった。
「今ですわ!」
「ええ」
足場が砕け、銃弾が動きを牽制する――その刹那、志乃の祈りと破魔を乗せたレクイエムの歌唱が、衝撃波となって騎士を吹き飛ばした。
「……戦闘経験があっても回避し辛いと思うよ。鼓膜潰さない限り聞こえちゃうからね」
そしおて、ジャラララララララララララララン! と志乃の光の鎖が空中で騎士を拘束する。強引に力技で鎖を振り払おうとした騎士の怨鎧へ修介が跳んだ。
「――力は溜めず――息は止めず――意地は貫く」
ガシャン、と騎士の怨鎧へと組み付くと、修介が騎士の怨鎧の腕を取るとそのまま背負うように滑り込み――投げ飛ばす!
一本背負い、柔道だけではなく相撲にも存在する決まり手だ。
『――ッ!?』
背中から受け身が取れず、騎士の怨鎧が地面に叩きつけられる! 地面が砕ける中、騎士が転がりながら立ち上がり――ヴィクティムが眼前に迫っていた。
「さて……んじゃあ戦ろうか」
大振りなナイフの一撃は、闘鎧の秘技によって回避される。背後に一歩下がり、間合いを開けての大剣の振り下ろし。しかし、不意に騎士の怨鎧の動きが止まった。
「……ま、これは避けられるのはわかってる。だからこその二段構えだ」
かわした隙に鎧の胸元に張られた霊符が、騎士の動きを奪った。止められるのは刹那、だが十分だ。先程の違い鋭い、ヴィクティムの刺突が鎧の隙間に突き刺さった。
「秘伝……夜見」
そして、清綱が霊力を込め非実体化した心切で騎士の怨鎧を貫いた。確かな手応えがある、そのまま清綱は横に刃を振り払った。
「乱暴な形で申し訳ないが、これが俺にできる救済だ……どうか、安らかに眠っておくれ」
ガシャン、と騎士の膝が揺れる。体が傾き倒れる寸前――しかし、大剣を地面に突き刺し倒れることを拒んだ。
『オ、オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!』
先程までの怨霊の叫びとは違う、悲痛なまでの声。まだだ、まだ終わっていないと、騎士が訴えた。
その直後、ドン! と爆発が騎士の怨鎧の背中で爆ぜた――シリンの炎の精霊弾だ。
「骸の海で、眠りなさい」
よろめく騎士の怨鎧は、腹部に大穴を開けながらなおも前に出る。繰り出す乱舞、それに天花は「魔女」の人格へと交代。フルガレイターとトニトレイターを抜いた。
「九倍の手数が二丁。さらにそれぞれ二回攻撃。……かわせるかしら?」
天神雷華狂咲(ジュピター・レイジング・オーバードライブ)による、連続射撃。一発は仲間に撃たなくては寿命の減る銃弾の豪雨を、構わず天花は騎士の怨鎧へ前弾撃ち込んだ。
大剣が銃弾を弾き、かわし、しかし、一発当たってしまえば終わりだ。糸のこんがらがった操り人形のように体を踊らせ、騎士の怨鎧は後退していき――ペインは膝砕き“クランツ”によって、騎士の怨鎧の両膝を破壊。その動きを止めた。
「ファン」
そのペインの呼びかけに、ファンは天華を手に踏み込み。騎士は倒れながら大剣を振るおうとするが――遅い。
「その大剣じゃ、懐に入られたが最後だよね。おやすみ」
放たれたのは、ペインの想いも乗せた剣刃一閃。そのどこまでも純白の一閃が、漆黒の鎧を完全に断ち切った……。
「もう、これ以上はいいのよ」
再び、シリンが歌う。怨霊達が生命の循環に戻れるよう、この悲しき地下墓地にその想いが響き渡った……。
大成功
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