アルダワ魔王戦争1-B〜古き黄金は騒がしく
「皆、任務お疲れ様。さて……迷宮の探索が進み、『アウルム・アンティーカ』が――」
そう猟兵へ呼びかけるネルウェザ・イェルドットは、ああ、と一度言葉を止めて。
「アウルム・アンティーカというのは、アルダワに潜むオブリビオン・フォーミュラ『大魔王』の第一形態だ。第一、ということで察したかもしれないが……大魔王は複数の形態で迷宮のあちこちを守護しているそうだよ」
つまり今回の戦いは大魔王の『最終形態』へ辿り着き、魔王戦争に勝利してアルダワ世界を守るための第一歩なのだとネルウェザは続ける。
「とはいえ、油断は禁物だ。アウルム・アンティーカとの戦闘は、三体の敵がいっぺんに襲い掛かってくるものだと思ってほしい」
そう言って彼女がモニタを取り出せば、その画面に巨大な黄金の怪物が映し出される。精巧な楽器や銅像にも見えるそれは、大小様々な部品を動かして何かを話しているようであった。
まず目を引くのは腹部らしき部分で動く口。飢えたようにがしゃがしゃと開閉されるその内部には、真っ赤な石が禍々しく輝いている。その後ろには人形のような機械が載り、更に上部に小さな頭が見えた。
――ネルウェザの言葉通り、三体の敵が融合したような姿だ。
「巨大な口や全身の楽器、おまけに背の魔導砲。それぞれが高い火力を持っている上に……」
彼女はアウルム・アンティーカの中心を指して続ける。
「この『人』が厄介なことに高い思考力を持つようでねぇ。比較的単純な口や頭にも指示を送り、確実にこちらを仕留めようと戦術を組んでくる」
故に、先手を打たれてしまう可能性が高い。ネルウェザは少し表情を曇らせつつそう告げて。
「危険な任務となるが……頼まれてくれるかな」
猟兵が肯定を示せば、ネルウェザは強く頷き笑みを浮かべてグリモアを浮かべる。
「それでは、皆をあちらへ転送させてもらうよ」
ふわり、と光が回りだせば、彼女は少し姿勢を正して。
くれぐれも気をつけて、という言葉を最後に、猟兵の姿はアルダワへ送られていくのであった。
●
「テキガクルヨ! テキガクルヨ!」
猟兵が迷宮で目を開ければ、そこには用途の不明な機械や設備の並ぶ空間。実験施設のようにも見えるその区域には、甲高い声が響き渡っていた。
「――おではらへった」
がしゃ、と金属の擦れる音が鳴って。
猟兵の目の前には、知らされていた通りの黄金の怪物――大魔王第一形態、アウルム・アンティーカの姿があった。
「はは、早速来ましたな! 戦場こそ……戦う事こそ吾輩達『大魔王』の本懐! ではいざ、参りましょうぞ!!」
笑い、そう宣えば、アウルム・アンティーカは巨体をがしゃりと鳴らして猟兵に襲いかかる。
世界を守る為、かの『大魔王』の最終形態を討つ為の戦いが――幕を開けた。
みかろっと
こんにちは、みかろっとと申します。
今回はアルダワの迷宮、実験施設のある区域にて大魔王第一形態との戦いです。
こちらはボス戦一章のみの戦争シナリオとなります。
判定等に関わらず、敵は必ず先制してきますので対策を練ってご参加ください。敵のユーベルコードに対する迎撃・回避などの行動があれば有利となります。
プレイングお待ちしております!
第1章 ボス戦
『大魔王第一形態『アウルム・アンティーカ』』
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POW : 真紅崩天閃光撃
【突撃し、『腹の口』が放つ真紅の光線】が命中した箇所を破壊する。敵が体勢を崩していれば、より致命的な箇所に命中する。
SPD : 黄金殲滅魔導重砲
【『真ん中の人』の背部に装着された魔導砲】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ : 絶対奪命皇狂曲
【『上の頭』が角を指揮棒のように振るう状態】に変身し、武器「【聞く者の正気を奪う全身の魔導楽器群の音色】」の威力増強と、【黄金の竜翼】によるレベル×5km/hの飛翔能力を得る。
イラスト:柿坂八鹿
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
大神・零児
本来なら戦闘で耳を塞ぐべきじゃねぇんだが
魔導楽器群の音色はマルチギアイヤフォンの集音機能をオフに、ノイズキャンセラーオン
両耳に付けて外部の音をシャットアウトする事と狂気耐性で対処
マルチギアとC-BAの機能をリンクさせフル活用、第六感、野性の勘も使い、戦闘知識、世界知識からも情報を引き出し敵の動きのパターンや思惑等の情報収集をし攻撃タイミングをはかる
飛翔するなら体当たりも警戒し敵を常に視覚かマルチギアやC-BAの各種センサーで捕捉し続け、見切りで繰り出される攻撃を回避
なるべくおびき寄せ、早業のフェイントで敵が体制を少しでも崩すように見切りで回避
体制を崩したらUCで多対一にしてボコる
アドリブ共闘可
「マンナカノヒト! ナニスル!? ドウスル?」
甲高い声でそう問う『上の頭』に、ふむと小さく考え込む声が返る。アウルム・アンティーカ中心に身を構える『真ん中の人』は、骸骨のような口をにたりと歪めて笑った。
「では、上の頭殿。ここで早速、一曲披露して頂けますかな?」
「――ワカッタ!!」
途端にがしゃっ、と真ん中の人の角が動き出す。上の頭の震えに合わせて角が右へ左へ揺れ続ければ、それは指揮棒のようになってアウルム・アンティーカが備える全身の楽器へと力を送り始めていた。
――とても、楽器の音とは思えない異音。
聴く者を狂気に誘うそれに顔を顰めつつ、先陣を切った大神・零児は耳元へマルチギアイヤフォンを装着して呟いた。
「本来なら戦闘で耳を塞ぐべきじゃねぇんだが」
そう言いつつも彼はイヤフォンの集音機能を切り、代わりにノイズキャンセラーを起動させる。聴こえる音の幅こそ減ったものの、あの狂気の異音に苛まれるよりはマシなはずだ。
「モット、モット!!」
アウルム・アンティーカ、上の頭が煩く叫び角を揺らす。段々と増幅していく音と狂気を耐えつつ、零児は傍らに呼び出した機械獣『C-BA』へ手を触れた。
C-BAはバイクへと変形し、零児を乗せて唸り出す。
ギュゥン、とバイクが急発進して大きく地を旋回すれば、アウルム・アンティーカは演奏を止めぬままぐねりと身を零児の方へ向けた。
「上の頭殿、あちらですぞ!」
そんな声と同時に、アウルム・アンティーカが零児目掛けて突進する。零児は背後から近づく黄金竜の動きをマルチギアで把握すると、素早くハンドルを切って弧を描いた。
バイクと竜のチェイスが続き、楽器の音色もかなり滅茶苦茶になり出して。
零児は追ってくるアウルム・アンティーカが速度を上げたのを感じると――突如、勢いよくその場で車体を真後ろへ回した。
「何っ!?」
驚いたアウルム・アンティーカはぐらり、と大きく宙でふらつく。体勢を崩した黄金竜に向け、零児は正面からユーベルコードを発動した。
「――生きては帰さん」
一瞬にして周囲の空間は稲妻に覆われる。中心の一つがアウルム・アンティーカを貫けば、残る無数の稲妻が地へと直撃し――夥しい数の武装した霊を発生させた。
ずるりと霊が手を伸ばす。アウルム・アンティーカは圧倒的な数に飲まれながら、甲高い声を上げて深く傷を負うのであった。
大成功
🔵🔵🔵
ナイ・デス
敵が飛翔する
正気?が奪われる?
思い出す。9年間の世界巡りでのこと
自然再生した時、逃がした筈の人達でできた血だまりの中で、とか
様々な死因、そして救えなかった出来事を経験して
『私は、死なない。私は、死ねない』
だから『いつか壊れるその日まで』
【覚悟、激痛耐性、継戦能力】私は、止まらない
既に狂気、影響なく
【念動力】で自身【吹き飛ばし空中戦】
【鎧無視攻撃】黒剣鎧の刃で【串刺し】にしようと
喰われても、消し飛ばされても、瞬時に再生し止まらない
戦闘力増強、加速していく不死身【恐怖を与える】
そして【怪力】深々刺して【零距離射撃】
【範囲攻撃】の
【生命力吸収】する光を放ち、大魔王を、飲みこみ
消滅させる
光で、喰らう!
ぎぃぎぃと再び鳴り響く狂気の音。黄金の翼を広げて飛翔するアウルム・アンティーカを見つめ、ナイ・デスは揺らぎかけた意識に自らの記憶を過ぎらせていた。
ヤドリガミであるにも関わらず自らの本体が『何』であり『何処』にあるかも判らないまま、神隠しによって様々な世界を巡り彷徨った九年間。彼は原型を留めない肉塊になろうとも、死には至らず蘇り、復活してきた。
――そう、彼”は”復活した。
再生し、目を開ければ、逃がした筈の人々の骸と血溜まり。
聖者として在ったナイが、救えなかった経験。
「――だから、いつか壊れるその日まで」
狂気の音からふっと我を取り戻し、ナイはユーベルコードを発動する。
「私は、死なない。私は、死ねない」
ナイの身体は聖なる光に包まれ、アウルム・アンティーカへと向かっていく。覚悟を決めた瞳は真っ直ぐ前を見つめ、狂気の影響など微塵も感じられなくなっていた。
自身を強い念動力で飛ばし、宙へ。
ナイは高く飛翔するアウルム・アンティーカとの距離を一気に詰めると、身に纏う黒剣鎧から鋭い刃を飛び出させた。
「上の頭殿!!」
アウルム・アンティーカ、真ん中の人が警告を叫ぶ。瞬時に角が動き、ナイに向けての攻撃を試みるが――今更、楽器の音を増幅させようと無駄であった。
煩い音を裂くように、ナイは刃を手にして更に前へと進んで行く。
「ええい、腹の口殿!!」
その呼びかけに答え、巨大な口がナイを齧ろうと突如上下に開く。素早い噛み付きにぞぶり、とナイの腹が大きく抉られ、その肉片を散らせば、真ん中の人はにたりと笑みを零していた。
――の、だが。
ナイの身体は光を強め、瞬時に再生してアウルム・アンティーカの眼前へと戻る。
止まらない。
身体を喰われても、消し飛ばされても、ナイの戦いは止まらなかった。
アウルム・アンティーカは不死身の如き彼の姿に悪寒を覚える。思わずぶるり、と身を震わせ、黄金竜の動きが止まれば――ナイは思い切り刃を突き刺し、その身から強い光を放った。
彼の光はアウルム・アンティーカを喰らうように力を奪いながら、強く強く煌めいて広がっていく。眩いそれが黄金竜を飲み込めば、迷宮には甲高い声がひどく苦しむように響き渡るのであった。
大成功
🔵🔵🔵
ミリア・ペイン
うるさいわね…何なのこいつ?一人芝居でもしてるワケ?
魔王の威厳とやらは全く感じないのだけれど…油断はしないわ
【WIZ】《冥き深淵の守護者》
音色に聞き入ってはダメ
【オーラ防御】で音色による魔力を防ぎ【挑発】による罵倒で音色に割り込みつつ自我を保ち【狂気耐性】
敵の注意を逸らし隙を作りましょう
言葉には【呪詛】の念を持たせ【精神攻撃】で精神を搔き乱し、演奏を中断させてやるわ
『下品な音色ね、センスの欠片もないわ。お前は魔王でも何でもない、只の騒音を撒き散らすガラクタよ
隙を突いて【念動力】で指揮棒を破壊
更に竜翼を捻じ曲げて地面に叩き伏せてやりましょう【部位破壊】
敵の攻撃を防ぎきったらUCによる追撃を
「上の、頭殿……! まだ、続けられますかな!?」
「……ガンバルヨ!!」
そんなやりとりが聴こえれば、すぐに狂気の演奏が再開される。ギィ、キィィと耳を劈くような異音はまるで曲とは言い難い何かを奏でていたが、アウルム・アンティーカの『上の頭』はさも愉快そうに震えて角を動かしていた。
その調子ですぞ、と笑う『真ん中の人』に眉を顰めるのは――猟兵ミリア・ペイン。
「うるさいわね……何なのこいつ? 一人芝居でもしてるワケ?」
彼女の呟きが聞こえたか、アウルム・アンティーカの真ん中の人は憤慨したように口を開く。
「一人芝居とは失礼な。吾輩達は三位一体、しかしそれぞれが『大魔王』であるのですぞ!」
「……魔王の威厳とやらは全く感じないのだけど……」
その言葉に真ん中の人はきいいと歯を食いしばる。見事にミリアの挑発に乗せられ、アウルム・アンティーカの中枢である真ん中の人が思考を乱した所為だろうか――鳴り響いていた楽器の音はそのボリュームを下げ、ミリアを狂わせるにはあまりにも粗末なものとなってしまっていた。
とはいえ、油断は禁物。ミリアは心の中でそう頷くと、更にその声に呪詛を混ぜて言葉を紡ぐ。
「下品な音色ね、センスの欠片もないわ。お前は魔王でも何でもない、只の騒音を撒き散らすガラクタよ」
ミリアが罵るように告げれば、遂に上の頭までもが感情を露わにして。
「コイツ……イワセテオケバッ!!!」
ぐい、とアウルム・アンティーカの角が大きくしなる。同時に楽器の演奏がぴたりと止んで、一瞬の静寂が訪れた。
思い切り指揮棒代わりの角が動――く、寸前。
バゴォッ!!!
「……ナ、ナ、ナニ!?」
角は砕け散り、楽器が弦を擦る音すら鳴らさずに眠る。ミリアは怒りで我を忘れていたアウルム・アンティーカに念動力を放ち続け、黄金の巨体を浮かせる翼へと視線を向けた。
直後、翼は紙屑のようにひしゃげて潰れる。悲鳴と共に地面へ叩きつけられたアウルム・アンティーカへ、ミリアはユーベルコード『冥き深淵の守護者』を発動して追撃した。
「さあ行って」
ふっ、とミリアの両手の先に死神とぬいぐるみが現れる。
彼女が大魔王アウルム・アンティーカを倒すよう願えば、守護者達は優しく頷き――容赦なく、黄金の巨体へと重い一撃を放つのであった。
大成功
🔵🔵🔵
御桜・八重
【POW】
相変わらずボスの先手取りは厄介だよね。
ここは一つ、引っかけと行こうか♪
「好きにはさせないよ、大魔王!」
大魔王の前に立ち威勢よく啖呵を切って、いざ突撃!
…と思いきや。
「わわっ!」
蹴つまづいてつんのめる!ピンチ!
実は、これは腹の口からの光線を誘う一手。
無防備に見せた命中個所に、桜色のオーラを集中させて防御!
幾らかは抜けるのは覚悟の上。
気合いでこらえて反撃だ!
「きゃあああっ!」
【桜吹雪化身ノ舞】を発動。桜吹雪に身を変えて、
光線を受けて爆発四散するかのように散る!
消し飛んだと思わせたら、上の頭の頭上で実体化。
不意を打って二刀の交差斬りをお見舞いだ!
「好きにはさせないって、言ったでしょー!」
「うぅ、うぐぐ……」
アウルム・アンティーカ『真ん中の人』が痛みを堪えて唸る。しかし更に近づいてくる猟兵に気づけば、真ん中の人は仰々しく声を上げて自身を鼓舞した。
「盛り上がって……参りましたぞ、上の頭殿、腹の口殿! はは、戦いはこうでなくては!」
間違いなく、虚勢。それでも堂々と立ち上がるアウルム・アンティーカは、未だ傷の浅い『腹の口』を主にして身体を起こした。
――そこへ。
「好きにはさせないよ、大魔王!」
アウルム・アンティーカの前に現れたのは、そう威勢よく啖呵を切る猟兵、御桜・八重。勇ましく胸を張る彼女がさぁいざ突撃――と、踏み出したかと思いきや。
「わわっ!」
八重は何もない地面で蹴躓き、大魔王の数歩手前でつんのめる。体勢を崩して明らかなピンチを見せる彼女に、アウルム・アンティーカは一瞬驚きつつもすぐに『腹の口』を構えた。
「はらへった――くう、おで、くう!」
がばっ、と口が開けば、その喉の奥から真紅の光が煌めく。真正面で強力な光線が溜め込まれていく中でも、八重は傾いた身体を起こすのに精一杯という様子。
堂々と宣いながらこんな間抜けもいたものだ、と真ん中の人が心の中で呟けば――腹の口はぶるりと震えて、八重を喰らうが如く大口を開けて光線を放った。
「きゃあああっ!!」
真紅の光に飲まれ、八重はなす術もなく爆ぜていく。
――少なくとも、アウルム・アンティーカにはそう見えていた。
ばっ、と周囲に舞う花弁を骸の欠片と思い込み、真ん中の人が高く笑う。腹の口も同様にがしゃがしゃ動いて喜ぶ中、手負いの『上の頭』がかぷかぷと虚しく口を動かしていた。
「……上の頭殿?」
「……ウエ、クル、ヨ!」
真ん中の人が途切れ途切れの言葉の意味を理解する頃には、既に。
爆発四散したと思われた猟兵の姿は、アウルム・アンティーカの頭上にあった。
「好きにはさせないって、言ったでしょー!」
ガキィィィン!!!! と激しい衝撃音が響き、上の頭に深く深く十字が刻まれる。
ピンチに見えた彼女は既に防御網を整えており、消し飛んだように見えたあの光景はユーベルコード『桜吹雪化身ノ舞』によって姿を眩ませていたに過ぎなかったのだ。
八重は刀を握る両手に力を籠め、更に押し込んでいく。重い斬撃によって『上の頭』が遂に砕ければ、『真ん中の人』までもが深い傷を負って痛みを叫ぶのであった。
大成功
🔵🔵🔵
ファルシェ・ユヴェール
先ずは降り立った場の手近な機材の影に転がり込み
直撃を避けましょう
オーラによる障壁も併用し、最小限の被害で済ませられるよう
そうしてUCを扱う一瞬の間が稼げれば良し
水晶の欠片を手に、騎士の姿を顕現
……突撃を命じます
私が直撃を受ければひとたまりも無いような一撃も
彼ならばもう少し持ち堪えてくれるでしょう
我が水晶の騎士が真っ向から距離を詰める間、
私自身はもう少し物陰を伝って
私ではなく騎士が狙われるタイミングをはかって
その口内の赤い石を狙い澄まし、
磨かれた面の脆そうな箇所を仕込み杖の鋒で思い切りひと突き
叩き割ってしまえるならそれが一番ですが
其処までいかずとも光線を封じられれば勝機に繋げられるでしょうから
「吾輩達は……吾輩達は、三位一体の大魔王! だと、いうのにッ!!」
上の頭を失ったアウルム・アンティーカは、仇討ちと言わんばかりの形相でそう叫ぶ。がばりと巨体に開く『腹の口』が真紅の光を集め始めれば、強力な一撃が来ることがすぐに予想できた。
実験施設にも似た迷宮で、ファルシェ・ユヴェールは近くの頑丈そうな機材の陰へと転がり込む。アウルム・アンティーカが嘆くように一度声を上げれば――ズゴォン!! と激しい衝撃音が迷宮を揺らし、直後眩い赤の光がファルシェの視界を奪った。
機材を盾に、気の障壁を堅く張ってファルシェはアウルム・アンティーカの一撃を凌ぎ切る。すうと光が解けた瞬間、アウルム・アンティーカは力を出し切ったように深く息を吐いていた。
今なら、攻撃は来ない。アウルム・アンティーカが回復を待つ数秒に、ファルシェは水晶の欠片を手にしてユーベルコードを発動した。
透明な石が彼の魔力を纏って輝けば、瞬く間に水晶鎧の騎士の姿を顕現させる。ファルシェはアウルム・アンティーカの蹲る方を一度見遣ると、水晶の騎士へ突撃を命じた。
「さて……敵は、あちらですかな」
近づいてくる硬い足音にアウルム・アンティーカが振り返る。僅かに回復した腹の口がかしゃりと上下に開けば、再び赤い光がその喉に集まっていった。
――コゥッ、と細い光線が騎士を襲う。同時にアウルム・アンティーカ自体もその身を突進させ、騎士を仕留めんと牙を向いていた。
最早、『真ん中の人』の思考にすら余裕はあるまい。
その証拠に――アウルム・アンティーカは、機材の陰を伝って死角から近づく猟兵の姿に気づいていなかった。
「腹の口殿!」
掛け声と共に、腹の口へ再び赤い光が溜まる。水晶の騎士、その頭部に狙いを定めた一撃が放たれる寸前――突如、その光は口の中で炸裂して消滅した。
「お、おで――」
ががががっ、と腹の口が激しく震える。
その内部で輝いていた赤い石は、不意を打って現れたファルシェの杖に穿たれていた。
得体の知れない大魔王の一部といえど、その石の何処が脆いかを見極めるのは彼にとってそう難しいことではなかった。ファルシェは思い切り突き出した仕込み杖を素早く引き、踵を返してアウルム・アンティーカから距離を取る。
――追ってくるか、と思えばその気配はない。
ファルシェが息をついて振り向けば、アウルム・アンティーカの腹の口は苦しそうな声で呻きながら、力を削がれた口内の石を労るように口を閉じるのであった。
大成功
🔵🔵🔵
ソラスティベル・グラスラン
敵は伝説に聞く大魔王……危険など承知の上ですとも
ですがわたしは嬉しい!
やっと、やっと物語の英雄たちに並び立てるのですからっ!!
大魔王の突撃に、【勇気】を胸に突撃あるのみッ!
【盾受け・オーラ防御】で守りを固め、【怪力】で受け止める!
光線は命中箇所を破壊する、ならば確りと「狙う」必要があるはず
受け止めた衝撃を利用し空中へ、発射の瞬間を【見切り】翼で真上へ飛翔【ダッシュ・空中戦】
翼で空気を叩き急降下!発射後の隙を狙います!
恐れを捨て前へ、その禍々しき黄金を砕く為に!【鎧砕き】
蒼雷の竜よ、雷の大斧よ
今こそ応えて、我が【勇気】に
災厄の一矢を断つ、汝の名は
【我が名は神鳴るが如く(サンダラー)】
アウルム・アンティーカは身を震わせ、腹の口で高く吼えて猟兵の方へ駆け出す。そこに高い戦術や巧みな思考を感じるのは少々難しかったが、地を踏み鳴らす黄金竜の巨体は――強大な『大魔王』に相応しい姿にも思えた。
「伝説に聞く大魔王……危険など承知の上ですとも」
ソラスティベル・グラスランは真剣な眼差しで頷く。しかし、彼女の瞳には危険や恐怖に怯える影などまるで無く、寧ろ――この状況を待ち望んでいたかのように輝かしい光を帯びていた。
「はは、大魔王アウルム・アンティーカを前にして、気でも狂いましたかな!?」
そう叫ぶアウルム・アンティーカの『真ん中の人』に、ソラスティベルは確かに首を振って。
「わたしは嬉しいんです……やっと、やっと物語の英雄たちに並び立てるのですからっ!!」
その様は勇ましく、恐ろしく巨大な黄金竜にも怖気づくことなく――ただ、真っ直ぐに。
「――突撃ッ!!」
ソラスティベルは一歩踏み込み、アウルム・アンティーカの突進を凄まじい力で受け止めると、同時に背の翼を大きく広げて風を掴む。正面から突進を受けたソラスティベルはその衝撃を利用して飛び立つと、追ってくるアウルム・アンティーカの『腹の口』に視線を動かした。
口から覗く赤い石は、戦闘の傷を負い力を削がれていながらも確かに光を溜めていく。
数秒の間を置いて、高く高く飛翔するソラスティベルに向かって光線が飛び出せば――アウルム・アンティーカはごふっと黒煙を吐き、呻きながら口を閉じた。
上空のソラスティベルは光線を難なく躱すと、翼で空気を叩いて勢いよく急降下を始める。
反動で動きの鈍っているアウルム・アンティーカへ、彼女は大斧を構えてユーベルコードを発動した。
「蒼雷の竜よ、雷の大斧よ――今こそ応えて、我が『勇気』に」
眼下の大魔王に狙いを定め、ソラスティベルは息を吸い込んで。
「災厄の一矢を断つ、汝の名は」
サ ン ダ ラ ー
――我が名は神鳴るが如く――
ズゴォン!!! と重く激しい一撃がアウルム・アンティーカを直撃する。
ソラスティベルの放った蒼い雷はアウルム・アンティーカの巨体を見事に貫くと、瞬時に轟音を響かせて地へと圧し潰してしまった。
大成功
🔵🔵🔵
ナミル・タグイール
黄金の魔王!喋って動く金ぴかにゃ!
最高のお宝デスにゃー!ナミルが貰うにゃー!
対策はこっちからも突撃にゃ!
ナミルからも突撃して腹の口の上とか下に入り込んでやるにゃ!【捨て身】
無理そうなら【野生の勘】で致命傷を避けるにゃ。手足はしょうがないけど頭、尻尾、金ぴかは絶対守るにゃ!
近づけたらナミルの番にゃ!
金ぴか装飾の【呪詛】maxで武器も体も強化
理性も持ってけにゃ!金ぴか欲しいって欲望以外は何もいらないにゃー!
そのまま敵の体を呪いの金ぴか斧でぶっ叩くにゃ!持ち帰れる大きさまで分解してやるにゃー!
壊しきれなくても呪詛でおかしくなるはず、指示がおかしくなれば混乱するはずにゃ
カオスってるうちにぶっ壊しにゃ!
「黄金の魔王! 喋って動く金ぴかにゃ!」
満身創痍のアウルム・アンティーカに向かってそう目を輝かせるのは、猟兵ナミル・タグイール。彼女は大魔王を名乗る巨大な黄金竜に全く怖気づくことなく、その煌きに感情を昂ぶらせて声を上げていた。
「最高のお宝デスにゃー! ナミルが貰うにゃー!」
ばっ、と手を広げるナミルに、アウルム・アンティーカはガタガタと歯を震わせ立ち上がる。
「大魔王を……アウルム・アンティーカを、お宝扱いとは!!」
そう『真ん中の人』は怒りを露わに、腹の口を叩き起こしてナミルに狙いを定める。直後アウルム・アンティーカはその巨体で一歩前へ踏み出すと、その勢いのままに地を踏み鳴らして駆け出した。
轟音が響き、黄金竜の巨体がナミルに影を落とす。しかしナミルは真正面から立ち向かい――駆けてくるアウルム・アンティーカの『腹の口』目掛けて勢いよく踏み出した。
「こっちからも突撃にゃー!」
ナミルは素早くしなやかな動きでアウルム・アンティーカの足元へ滑り込む。そのまま巨体を潜って後ろへと回り込めば、ナミルは高く飛び上がって『真ん中の人』に飛びかかった。
――きらん、とナミルが纏う『金ぴか』、呪われた装飾品の数々が呪詛を籠めて光を返す。彼女の身体は呪いに呑まれながら強く強く力を膨らせ、その手に握る武器までもを強化していった。
「理性も持ってけにゃ! 金ぴか欲しいって欲望以外は何もいらないにゃー!」
ナミルがそう言い放てば、金ぴかはそれに応えて彼女の思考に入り込んでいく。
呪いの所為か、それとも彼女の本来の意志か。ナミルはアウルム・アンティーカ中心で喚く『真ん中の人』に狙いを定めると、その首元へと金ぴかの斧を思い切り振り抜いた。
「持ち帰れる大きさまで分解してやるにゃー!」
がしゃああああん!!! と高い金属音が響き、傷だらけだった『真ん中の人』は呆気なく首を落とされてしまう。そのままナミルは斧を振り回し、残る『腹の口』にも刃を叩きつけていった。
腹の口はがくがくと震え、気が狂ったように右へ左へ揺れ動く。
――無理はない。ナミルが叩きつけている金ぴかの斧も、彼女の装飾品と同様に呪いを纏っていたのだから。
「おで、はら、へっ――!!!」
ガゴッ、と小気味良い音を最後に。
アウルム・アンティーカの身体は遂に砕け散り、音も声もぴたりと止めて迷宮の床に崩れ落ちる。大魔王第一形態との戦いの終わり――を喜ぶより先に、ナミルはそこら中に散らばる黄金へと目を輝かせて笑みを浮かべるのであった。
大成功
🔵🔵🔵