アルダワ魔王戦争1-A~うつろの鎧を越えて
●グリモアベース
「皆、集まって。アルダワ魔法学園最深部の『ファーストダンジョン』発見。大魔王が多数の災魔と共に、地上を目指しているそうよ」
地図らしき紙を手に、コルネリア・ツィヌア(人間の竜騎士・f00948)が緊張した面持ちで告げた。
大魔王は猟兵たちを倒し地上を目指すべく、ファーストダンジョン内に広大なダークゾーンを展開。その中から、無限の戦力をけしかけてきているという。
「ファーストダンジョンは旧校舎から繋がっていて、そこからダンジョンの探索と攻略を進めることで、ひとつずつ、隣接するダークゾーンを解除出来るの」
具体的にはこう、と、縦横の線で区切り記号を振った地図を広げる。
まだ大半が空白の地図、その左上辺りを指差し、コルネリアは続けた。
「今回お願いしたいのはこのポイント1-A、『隠し通路の迷宮』。その名の通り、隠し通路や隠し部屋がひしめくエリアの……大体この辺の一画よ」
通路の様子としてはオーソドックスな石畳の道だが、地味に石畳ひとつの大きさが少しずつ違っていて距離感を狂わせたり、直線の道に見せかけて振り返ると枝道だらけだったりと、なかなか意地の悪い区画であるらしい。
「その上、敵が多数うろついてるの。彼らも隠し通路や隠し部屋を利用して、不意打ちやバックアタックを仕掛けてくるわ。くれぐれも気をつけて」
いささかげんなりした様子で腕を組み、けれど、とコルネリアは続ける。
「迷宮の構造や通路、隠し部屋をうまく使えば大きな被害を与えられるのは、こちらも同じよ。さっき言った例だと、石畳の大きさに騙されないよう、距離感を把握した上でマッピングするとかね」
他にも何かしら工夫すれば、隠された部屋や通路も見つけ出せる筈だ。
ユーベルコードやこれまでの迷宮探索で培った知識。或いは他の世界で得た経験や、各自の閃きがものを言うだろう。
「出現する敵は、兵士の鎧がオブリビオン化した災魔。小隊を組んで巡回しているけれど、連携や統率が取れているから、エリアの特質も相まって、厄介な相手よ」
状況に合わせて、密集しての行動や前後衛の連携、陣形を組んでの突撃などを行ってくる。
「数も多いし、指揮する個体も複数居るようだから手ごわいけれど、さっき言ったようなかたちでアドバンテージを取ることが出来れば、十分に勝機はあるわ」
個体差の激しい彼らにとって、連携は最大の武器。ならば尚更、それを維持しようとするだろう。
「どうか、無事にこの区画を踏破して、そこから繋がる区画への道を切り開いて。武運を祈ります」
越行通
こんにちは。越行通(えつぎょう・とおる)です。
「アルダワ魔法戦争」のシナリオをお送りします。
OPにある通り、隠し通路や隠し部屋だらけの区画を探索。敵のエンカウントを警戒・戦闘による排除を行いながら、ダンジョンを踏破してゆく流れになります。
戦争シナリオ説明ページにある通り、こちらの戦争シナリオで獲得した青丸を戦争ページで割り振って頂けます。
また、区画の特徴として、『隠し部屋や隠し通路を捜索する』行動が盛り込まれたプレイングには、プレイングボーナスがかかります。
是非、思いつくまま、自分らしいプレイングをかけてみてください。
皆様のプレイングをお待ちしております。
第1章 集団戦
『兵士の呪鎧』
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POW : 突撃陣形
【密集陣形を組ん】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD : 防御陣形
【後衛】から【遠距離攻撃】を放ち、【前衛が盾で押し込むこと】により対象の動きを一時的に封じる。
WIZ : 機動陣形
【鋒矢陣形を組むこと】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【衝撃力の高い突撃】で攻撃する。
イラスト:暁せんべい
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
黒玻璃・ミコ
※スライム形態
◆行動
ふーむ、隠し通路の迷宮とは厄介ですね
こう言う時は【空中戦】の要領で
ほよよんと壁や天井を【念動力】で跳ねながら
【暗視】も可能な素敵な【視力】のお目々では迷宮内の壁の色の違いや
【聞き耳】で音の違いを聞き分けて隠された場所を探して進撃しましょう
厄介な災魔は敢えて【毒使い】で目に付く毒々しい腐食毒を精製し
【範囲攻撃】をするつもりと見せ札にした上で
単調な攻撃の振りをして油断させ
最後は【カウンター】気味に【黒竜の遊戯】による物量で封殺しましょう
とは言え中々に厄介な強敵です
時には【第六感】に素直に従って私自身も緊急回避するとしましょう
◆補足
他の猟兵さんとの連携、アドリブOK
ラナ・アウリオン
迷宮探索――
空間走査は元より得手とするところ。
さらに念を入れて、風属性術式の応用による反響定位も併用しマショウ。
もしギミックやトラップを発見できたなら、記録しておきマス。
敵オビリビオンとの遭遇時は、火力重視で制圧していきマス!
鋒矢陣形は正面以外が脆いモノ。浮遊砲を散開させ、十字砲火を以て崩しマス。
敵陣系を崩せたら、そこに追い撃ちデス。
ユーベルコード起動。
現象〈灼熱の嵐〉定義、前方一帯に発動。
ラナたちは、探索を急がなければならない身。押し通らせてもらいマス!
ソラスティベル・グラスラン
まるで人間の兵士のように統率を取りますか…
さしずめ魔王軍でしょうか?ふふふ、相手にとって不足なしですっ
それでは早速【蜜ぷに召喚!】
彼らは災魔であり、わたしと志を共にした勇気ある友!
沢山蜜ぷにさんを呼び出したら、解散っ!
隠し部屋見つけたら教えてね!頑張った子には後でお菓子を進呈しますよー!
わたしも【情報収集】で周囲の壁を観察
どこか変わった壁や目印などを探します
蜜ぷにさんが会敵したなら、敵をわたしの居る隠し部屋まで誘導させて…
隠れてた蜜ぷにさんたちの奇襲一斉突撃!わたしも【範囲攻撃】の大斧で薙ぎ払います!
陣形が取れていても、大勢の勇者軍には無意味です!思う存分わちゃわちゃしましょう!
●
災魔を封じる大迷宮の一画は、見た目だけならば比較的普通の通路に見えた。
だが、元々得手とする空間走査の結果が訴える違和感に加え、風の応用術式による音の反響で確証を重ねたラナ・アウリオン(ホワイトアウト・f23647)は、この通路がどれだけ視覚や感覚をごまかす為に計算され尽くしているのかをはっきりと悟っていた。
「ダンジョンは封印の為、難しく作ったのデショウ。……ですが、物量作戦で来られた為、侵入を許してシマッタのデスね」
壁ひとつ隔てた空間を感じ取り、記録に残す。石壁を走査し、他の密度の違う石をぐいと押し込めば、押し込んだ先で何かが押し出され、倒れ、新たな道を広げてゆく。
「環境・空間走査。罠、なし。南東からのクリアリング完了デス」
念の為にもう一度付近をサーチし、結果を記録に叩き込みながら、ラナは歩き続ける。
一方、そこから少し離れた一角で、黒々とした丸い塊がゆるゆると震え、ほよよんと飛び上がってはぺちゃりと壁や天井に張り付くことを繰り返していた。
不定形を震わせ、しっかりと狙いを定めて飛び、時折停止したかと思えば、迷宮の仕掛けを発動させて隠し通路にへよりと滑り込む動きには、紛れも無い知性がある。
不確定名:液状生命体と名づけたくなるような動きのそれは、あえてのスライム形態を取った黒玻璃・ミコ(屠竜の魔女・f00148)だった。
「足跡、結構くっきり残ってますね。力押しで通路を探したやつと、何か頭良さそうなのが混ざっていそうです」
空中戦の要領で念動力を操り、自信を持つ視力と聴力をフル稼働して、ミコは通路と敵の動きを分析してゆく。
尚、この形態において目や耳はどうしたといったことについては割愛する。猟兵には割と不可能はないのだ。
「……、ん。ちょっとこう……聞いてた敵とは違う感じで、賑やかですね?」
ふと捉えた、まったく別な違和感。
しばし思考するようにほよよんと揺らいでいたミコだったが、やがて注意深く音の方角へと進んでいった。
「まるで人間の兵士のように統率を取りますか……。さしずめ魔王軍でしょうか? ふふふ、相手にとって不足なしですっ」
鎧姿と連携頼みのそれは、確かに魔王軍の尖兵にふさわしいだろう。
英雄譚そのもののような広大な迷宮と魔王軍の先触れに、ソラスティベル・グラスラン(暁と空の勇者・f05892)は闘志を燃やしていた。
「それでは早速、蜜ぷに召喚!」
彼女の召喚に応じ、わらわらわらわらと現れたのは、知る人ぞ知るぷよぷよ系、蜜ぷに。ソラスティベルと志を共にした勇気ある友として、彼女の求めにはいつでも参上する。
ひととおり今回の事について説明してから、彼女は元気よく拳を振り上げ、蜜ぷにたちに宣言した。
「では、解散っ! 隠し部屋見つけたら教えてね! 頑張った子には後でお菓子を進呈しますよー!」
最後の言葉が利いたのかどうか、蜜ぷにたちは瞬く間に四方に散り、壁や床を転がるように調べ始めた。
「わたしも、隠れ場所探さないと。目印とか、変なところとか、無いかなあ」
壁にそっと手をついたソラスティベルもまた、ゆっくりと迷宮を進み始める。なるべく早く隠し部屋を見つけ、鎧軍団との戦いに備えたいと願って。
「…………」
そして、少し離れた天井から、少しだけ黒い液体がぽこりと顔を出した。
「味方の召喚でしたか。さすがにあの津波は驚きました」
一部始終を目撃したミコは気持ちよく納得し、そのまま反対側へと再び跳ねていった。
更にしばらく時間が経った頃。
隠し通路を進んでいたラナは、行進する鎧たちに行き当たっていた。
ラナの進行方向を塞ぐような形で横断する鎧の群れに、ラナは己に搭載された戦闘能力を稼動させる。
鎧たちはどうやら、隠し通路を強引に突破しようと、突撃用の陣形を組もうとしているようだった。制圧を目標に、ラナは瞬く間に戦術を組み立てる。
「浮遊型火力投射外装・ウェヌス、起動。敵の足並みを崩しマス」
氷の透明度を備えた浮遊砲を一斉に励起、行軍を超えて散開させ、一斉に十字砲火を仕掛ける。
横合いからの奇襲に突撃どころでなくなった鎧たちを見据えて、ラナは本命の切り札でもって追い撃ちをかける。
「ユーベルコード起動。周辺環境走査。世界律へのアクセス権を確立。現象の新定義を形成」
通路が急激に塗り替えられ、作り変えられていく。空気が属性を帯び、迷宮にありうざる速度の風が吹き荒れ始める――
「現象〈灼熱の嵐〉定義、前方一帯に発動」
そのことばと同時、限界まで撓んだ空気が、圧倒的に変質した。
鎧の群れをまとめて薙ぎ払う、暴力的な灼熱の嵐。具現化したそれは荒れ狂いバランスを乱し、ラナへも牙を剥かんとする。
反逆を制する為に、注意深い制御力と意志、叫びを必要とした。
「ラナたちは、探索を急がなければならない身。押し通らせてもらいマス!」
燃え盛る通路から、どれほど離れただろう。
鎧たちの行軍を邪魔するように、あるいは挑発するように、蜜ぷにたちが通路を飛び交い、やがてひとつの部屋へと集結してゆく。
ここに至るまでに、顔面やひざ裏に体当たりを食らったこともあり、鎧たちは完全に蜜ぷにを敵視、始末せんと殺到した。
部屋にぽつぽつと固まる蜜ぷにを前に陣形を整え、いざ突撃というところで――
「そこまでですー!!!」
ぐるりと回転した壁から、倍以上の数の蜜ぷにが溢れ出し、更に追いかけるような大斧の一閃が、鎧の一部隊をまとめて壁面へと吹き飛ばした。
誘導担当の何倍もの蜜ぷにと共に、隣の隠し部屋に隠れていたソラスティベルの奇襲は大成功し、鎧たちは足元もままならないまま、蜜ぷにの海に溺れている。
「陣形が取れていても、大勢の勇者軍には無意味です! 思う存分わちゃわちゃしましょう!」
『『『最後ニ勝ツノハ、勇気アル者プニ――ッ!!!』』』
ソラスティベルの声に、蜜ぷにたちが一斉に唱和した。
隠し通路のど真ん中。
いかにも怪しい、触れば即刻死にそうな色合いの沼が、ぽこぽことどこからか発生していた。
色の毒々しさもさることながら、特筆すべきはその腐った匂いだ。今この瞬間も、通路自体が腐り落ちて抜けてしまうような錯覚に囚われる。
武器の先で軽く沼を突いた鎧の一体が、素早く三歩ほど後退した。武器は即刻捨てられた。
「来ないなら、こっちから行きますよ~」
ほよよん、ほよよん、と毒を撒き散らしながら迫り来る黒――ミコに、鎧たちは全力で抵抗した。
とにかくリーチの長いものがミコを牽制すれば、ひとまずミコは下がる。それを幾度も繰り返した後、鎧たちが痺れを切らした。
多少のダメージ覚悟で、ミコへと一斉に得物を向け、突撃する。
「いあいあはすたあ……拘束制御術式解放」
今度は、ミコは、下がらなかった。
黒々としたその身に宿る魔力を立ち上らせ、既に突撃を開始していた鎧たちめがけて、勢いを乗せた強烈な魔力の塊が、地下の闇より黒い塊より放たれる――
「一撃で終わるなんて思ってませんよ、ええ」
命と引き換えの死に物狂いの一撃に対し、咄嗟にその身を変形、自ら大穴を開けて回避し、同時に近くの鎧たちと黒々とした魔力両方を操り、ぶつけ合う。
深き淵に供された鎧たちはただの無機物に戻り、それすらも骸の海へ消えていった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ルーチェ・ムート
【星歌】アドリブ◎
へええ、迷宮だって!
すごいね!零
傍揺蕩う陽光蝶々を羽搏かせ情報収集
何か気になるものがあればあの子が教えてくれる
常に第六感を働かせて警戒を怠らず
戻ってきた淡く光る桃色の蝶を指先に留め
零、あっちに不思議な部屋があったみたい
隠し部屋?かな?
此処なら有利に立ち回れるかもしれないね!
キミと初めて共闘するのが秘密基地っぽい場所で、なんだかわくわくする
利用出来そうな地形の情報も蝶から得られれば零に伝えよう
キミが一番戦いやすい位置に、キミが一番戦いやすいように
鼓舞の意を込め歌う
零の強さを最大限以上に
キミを包むよう優しさ含む祈り溶かす歌声
―――傷なく、どうか無事でありますように
天星・零
【星歌】
『えぇ、迷宮と言われると心が躍りますね。
宝箱とかあるかもしれませんよ?』
Øで壁または床に傷痕をつけ道をわかるようにし【情報収集+追跡+第六感】で頭の中で地図を描き探索
戦闘
【戦闘知識+情報収集+追跡+第六感】で弱点死角と地形や敵の行動パターンを把握しルーチェさんと連携し応戦
近接
Ø
遠距離
グレイヴ・ロウ
十の死
星天の書-零-で【オーラ防御】
十の死の圧死の骸で天井の壁を敵に落下
焼死で炎を放ったりルーチェさんを支援してもらう
『兵士が剣を向けるとは…これはお仕置きが必要ですね。ねぇ?ディミオス?』
指定UCで鎖で敵の動きを止めたり、鎌で攻撃してもらう
以後ディミオスも戦闘参加
UCの口調秘密の設定参照
●
「へええ、迷宮だって! すごいね!」
「えぇ、迷宮と言われると心が躍りますね」
零、と。振り向いて呼びかけるルーチェ・ムート(无色透鳴のラフォリア・f10134)に、天星・零(零と夢幻の霊園管理人・f02413)が穏やかな言葉を返す。
「隠し通路に隠し部屋ときたら、宝箱とかあるかもしれませんよ?」
「あはは。きっと、金貨や不思議なアイテムがいっぱいだね」
淡く揺蕩う蝶がふたりの輪郭を浮かび上がらせ、その指先から離れて羽搏いてゆく。
「行こう。何か気になるものがあれば、あの子が教えてくれる」
「はい。気をつけて、ついて行きましょう」
ほんの少し先を行く蝶と感覚を分かち合うルーチェを補佐するように、零が得物で壁にしるしをつけ、蝶の飛ぶ秒数を頼りに頭の中で地図を組み立てる。
真っ直ぐに続く通路を進み続けて、わずか。淡く光る桃色の蝶が、ゆっくりとルーチェの指先に戻ってきた。
「零、あっちに不思議な部屋があったみたい。隠し部屋? かな?」
分かち合う感覚をどうにか言葉にしながら歩みを進めたルーチェが、ある一点で足を止める。
柔く光る蝶がぽつぽつと壁に光の筋を作る。その筋に、そっとルーチェが指を近づける。
「――え?」
「ここ、……魔法、かな。見えないけど、少しだけ隙間がある」
壁の幻影を突き抜けたそのまま壁に手をかけ、力を入れて横に滑らせる。
材質の割に驚くほど軽く動いた壁は、そのまま引き戸のようにして、ふたりを細い通路へと迎え入れた。
「左右と通路の先、敵の気配は無いです。背後は守ります」
「うん。お願い」
ゆらめく蝶と共に先へ進むルーチェは、振り向いた目線が少し高いと気づいた。
意識しなければ気づかないほどの傾斜をゆっくりと進むと、やがて少し広い部屋にたどり着いた。
「そこに、さっきと同じ横に動く壁……かな。此処なら有利に立ち回れるかもしれないね!」
キミの刃を振るいやすい位置、相手の突撃に邪魔な傾斜、少しの窪みも巧く使えば不意打ちに使える……。
知りえたことを数え、伝えてゆくルーチェに、零が変わらぬ笑みを色違いの瞳に湛え、ひとつひとつに頷きを返す。
「楽しそうですね」
「うん。キミと初めて共闘するのが秘密基地っぽい場所で、なんだかわくわくする」
笑ったルーチェは、確かに楽しげで。
桃色の蝶と共に、ふわりと髪を揺らして、振り向いたまま。
「――さあ、キミが一番戦いやすい位置に、キミが一番戦いやすいように」
来たる鎧の群れの気配を指し示せば、応えるように零が前へと進み出て、あらゆる死と墓標を呼び起こした。
隠れた石室の隅々まで染み入るように、甘い歌声が響いている。
最初は、圧死だった。
もうひとつの隠し通路から奇襲をかけようとした鎧めがけて、天井の壁が落下。その鎧を動かす意志ごと粉砕した。
飛び散る鎧の破片が後続を打つ間に、瞬く間に十字架の墓石があらゆる方向から突き出し、入り口を半ば塞ぎ、分断された鎧を数体葬って、そのまま墓石とした。
流れ弾からルーチェを護るように霊壁を張り巡らせ、あらゆる攻撃を叩き込んで、一切の接近を封じ続けている。
次なる死は炎。熱を孕んだ鎧がふらついて後ろに倒れこみ、仲間諸共に隠し通路へと押し戻される。
「おいで、僕のお友達。首狩りの女王が求めるのは汝の首と血なり……僕のとっておきの子です。首を狩られないように気をつけて下さいね」
更に呼び寄せるは、巨大な骨の女王。
禍々しき骨が手にした鎌を振るう。兜を弾き落とされた鎧たちは、まるで生きたもののように倒れ伏す。低所の窪みへと滑り込んだ女王が放つ鎖が絡みついたものから、生き物の真似事が出来なくなってゆく……。
「兵士が剣を向けるとは……これはお仕置きが必要ですね。ねぇ? ディミオス?」
『だが、脆い。この様では、慈悲にしかならないではないか』
骨の女王の言葉通り、鎧たちはあまりに無力だった。盾を構え時間を稼ごうという試みは、女王の一閃か、零の一瞥の前に潰える。
甘い歌声は響き続けている。部屋全体に、そして一番は、零の背中に。
――最大より更に上を、ひとつの傷もつかぬよう、キミにとってすべての無事を。
やがて、押し寄せた鎧の波が途切れるまで。歌に乗せた祈りは、足元を浸す水のように、途切れることなく叶い続けていた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
茲乃摘・七曜
心情
この世界の平和の為にも頑張りましょうか
指針
Angels Bitsから超音波を周囲に響かせ聴覚を使い構造を把握し、隠し部屋や隠し通路等の仕掛けを探る
「大きさの違う石等に紛れて仕掛けとかがありそうですが…どうでしょうね
行動
探索を終えた場所には『流転』用の魔導弾を目立たないように残し戦闘に備える
災魔と遭遇した場合は、Pride of foolsによる速射で撃破を狙い近づかれるようであれば来た道を引き返すように引き撃ち
「鎧の隙まであれば効果的にダメージが狙えるでしょうか?
対機動陣形
可能なら隠し通路に逃げ込む等で進行方向から退避
無理なら仕掛けた『流転』で戦闘を捉え動きを留める
「…数と連携に警戒ですね
一駒・丈一
隠し部屋や隠し通路か。
この手の仕掛けを暴くには、焦らずに注意深く観察することが肝要だ。
床や壁に、微妙な色の違いがないかなど、
自分が、こういった仕掛けを【罠使い】として用意する場合はどうするかといった視点で【第六感】を交えつつ調べていく。
探索中に敵からの襲撃を受けた際は、
【咄嗟の一撃】にて、UC『罪業罰下』で視界内の敵を一閃する。
雑魚に対しての集団戦に効果を発揮する技故に。
焦らず、慎重に進んでいこう。
リュカ・エンキアンサス
俺みたいなのは、先制攻撃されると困るから……
星鯨を呼び出して、一部を先行させる
そして残りと一緒に、隠し扉を探していくことにしよう
行動は慎重に
地形の把握を行いながら、簡単に地図を作っていけば、不自然な空白も見つけやすいんじゃないかな。あとは第六感や学習力も使いながら、情報を集めて逃げ込める隠し場所をいくつか目星つけておく
先行させてる星鯨たちは、巡回している敵を見つけたら知らせてもらう。その時点で一番近い隠し場所に対比して、敵が多すぎなければ銃を撃ち込んで倒そう。対処しきれそうになかったらやり過ごす
撃ち残して騒がれても困るから、やるときは手早く全部処理したいな
…悪いけど、先行くよ、急ぐんだ
フェルト・ユメノアール
なるほど、つまり目に頼らずに進めばいいんだね
それなら…
逆巻く水の魔術師よ!その魔力を以て、世界に新たな理を示せ!
現れろ!【SPマーメイジ】!
マーメイジの効果で耳をコウモリのモノに変え、音を聞く事で迷宮の構造を把握、マッピングをしながら進行
これならいくら距離や方向を惑わす仕掛けがあっても平気だよね
隠し通路、部屋に関しては『ハートロッド』で壁を叩いてその反響音から部屋があるかどうかを探っていく
敵が奇襲を仕掛けてきた場合はハートロッドを即座に白鳩の姿に戻して敵に放ち、行動を妨害
さらに『ワンダースモーク』を使用する事で視界を塞ぎ、その隙をついて接近、『トリックスター』による『カウンター』の一撃を決める
●
隠された道と部屋が交錯し、侵入者を諦めに閉じ込める迷宮は、ゆっくりとその全貌を明らかにしていた。
「あー。これほんとに、見ただけじゃわかんないよ。ここ作った人、手品の大道具作ってくれないかなあ」
通路の壁にそっとカードを当て、同じようにやや下方にもカードを当てたフェルト・ユメノアール(夢と笑顔の道化師・f04735)は、ある意味では最高の褒め言葉を捧げた。
「しかしなるほど、つまり目に頼らずに進めばいいんだね。それなら……」
手にしたカードを持ち直し、何処か不敵に笑む。
掲げると共に宣言する、封印の解放のことば。
「逆巻く水の魔術師よ! その魔力を以て、世界に新たな理を示せ! 現れろ! 【SPマーメイジ】!」
言葉と共にフェルトの耳が蝙蝠のそれへと変化し、聴覚として受け取る感覚が変質してゆく。
こん、とステッキの先で叩いてみた壁の音、それに更に跳ね回る音は、それまでより格段に多くの情報を伝えてくる。
「これならいくら距離や方向を惑わす仕掛けがあっても平気だよね」
小細工抜きならば、あとは音を頼りにマッピングを行い、道を埋めてゆくだけだ。
黒い花咲く鍔広の帽子を深く被り、蒸気機関のからくりを周囲に浮かべていた女性が、ゆっくりと首を傾げる。
彼女の動きに合わせて付随するデバイスは超音波を発し、偶然にも同時刻フェルトがそうしていたように、音と反響による道の把握が行われていた。
「大きさの違う石等に紛れて仕掛けとかがありそうですが……どうでしょうね」
茲乃摘・七曜(魔導人形の騙り部・f00724)が確認したのは、僅かな角度で台形の通路を形成する一角だ。
音を慎重に聞き比べ、明らかに不自然な空間のある箇所を軽く押せば、左横にずるりと通路が現れる。
行き止まりではないということだけは、音の反響で把握出来る。それ以外はまるで未知だ。
壁際に魔導弾をひとつ残して、隠し通路へと歩を進める。
目印であり備えでもあるこれを、使うことにならずに済めば良いと思いながら。
宙に浮かべた探照灯の光が小さな鯨たちを描くと、それは活き活きと空中を泳ぐように漂いはじめた。
かたちとして呼び起こした、星鯨たち。その一部を先行させ、リュカ・エンキアンサス(蒼炎の・f02586)は慎重な足取りで、星鯨と共に道を進んでゆく。
――俺みたいなのは、先制攻撃されると困るから……。
星鯨たちに偵察を任せ、慎重に隠し部屋を探る。調査は勿論のこと、もし敵に遭遇したとき、逃げの一手を打てるのは大きい。
手にした紙に地図を描く。最初こそ目算の罠に嵌りかけたが、星鯨や自分の歩幅を目安に適宜修正を加え、隠された場所を炙りだす。
星鯨が照らした箇所をひとつひとつなぞり、地図に記してゆく。
このまま影のように、迷宮を踏破出来るのなら、それも望ましいのだが。
「……あれ」
すれ違い様に、光るものがあった。
星鯨が身を寄せると、それは弾丸のように見えた。明らかに、今回の敵が使いそうなものではない。
少し考えた後、リュカは弾丸には手を触れず、ただその位置を地図に書き記した。
――迷宮が作られた目的を考えるならば、まず、内から外へ逃がしてはならない。
注意深く、道の構造やそこから受ける『印象』を吟味しながら、一駒・丈一(金眼の・f01005)は思案する。
――外から内もまた同様。ここまで迷い込める者は限られるだろう。それがどういう目的であれ、容赦する理由にはなるまい。
作り手の視点に立ち、罠にかける手法をいくつも思い浮かべる。この建造物の目的、技術、方向性を考え合わせる。
怪我を引き起こすのではなく、錯覚にて捉える罠。
だまし絵を立体化するようなものを、どのようにしてか、実現させた。ならば――
……ならば。そう考え終わる前に、丈一は足を止めた。
順調なこの道のりに受ける印象は何だ。次に己がしようとしていたことは何だ。足を止めさせたのは、何だ。
歩き出そうとしていた足元を、見下ろす。道は真っ直ぐに続いている。目印らしきものは何もない。何も。
だが。
「……曲がるのが正解か」
懐中時計を手に持ち、長針を進路に重ねる。
普通の迷宮ならば、十字路を右に曲がり続ければ、どういうことになるかは想像に難くない。
だが、ごくごく僅かずつ角度をずらされた道であったなら。
「針山の方がましかもしれないな」
「んー……傾斜は斜めの線を引くとして……深さはどうしようかなあ」
マッピングに使う用紙を見下ろし、フェルトはつぶやいた。
階層一階分ほどではない、ゆるやかな傾斜部分を利用した迷宮路の仕組みは解明出来たが、それを地図に落とし込むにあたって、基準をどうするか。
彼女の頭には構造が入っているので、わかるように描いてもかまわないのだが、後々こんがらがって面倒なことになっては困る。
「記号だけにして、地図は後で色分けでもしようかな。とにかく今は、」
言いかけたところで、彼女は咄嗟に手にしたステッキを白鳩へと変え、一見何もない方角めがけて解き放った。
「そこ!」
空中で何かに跳ね返される。それが何もないところから生じた『盾』だと認識した瞬間、戻ってきた白鳩と入れ替わりに、ステージ演出用の球を投擲。
たちまち通路に充満する煙の中を、音を頼りに進む。
盾しか見えないが、煙のおかげで相手は音に無頓着だ。曲芸用のダガーを手の中で回し、一度に数本を投げつける。
狙うのは、重い盾を構える腕。
強かに打たれて、よろめいた様子を見せる。そのまま盾の上に飛び乗るようにして、兜を踏み台にスモーク球とダガーを構えて。
「透明な壁と、視界を歪める幻覚。ほんと、大したイリュージョンじゃないか!」
最初、七曜は己への追手かと錯覚した。
だが、すぐに思い違いを悟る。どちらかといえば、迷う足音だ。こちらへ向かっているのは、勘付いたわけではない。
背後の通路に仕掛けてきた数を思い起こし、銃を構える。
――ここで即仕留めたいですね。
角を曲がり姿を見せた瞬間、七曜は弾丸を叩き込む。
よろめいた影が、恐らくよくわからぬままに、真っ直ぐこちらに近づこうとする。一度大きく歩幅を取って下がり、鎧の隙間に狙いをつける。
二丁の銃が装甲の隙間を穿ち、鎧の繋ぎ目を破壊。がらん、と右膝から先を落とした鎧は、甲高い音を立ててその場に倒れ伏した。
「……念には念を入れましょう」
ここへ来たのは一体きりだが、増援の可能性は高い。
来た方角へ一度戻り、魔導弾の設置が崩れていないことを確かめる。
駆け込んだ隠し通路は細い一本道。ここであれば、鎧が大挙して来ても動きを留めることは出来る筈だ。
また、先ほどの場所へと大回りして向かうことが出来るコースの目星もついている。
少し考え、七曜は歩き出した。裾を乱さず、着実に、下層への道と思しき場所を目指して。
先行した星鯨たちがゆらゆらと戻ってきたのを見て、リュカはすぐに数歩下がり、思い切り良く壁の一箇所を押した。
仕掛けに応じて開いた隠し扉に滑り込み、身を捻ってその場に伏せる。
――数は、三体。
――少しあわてている、気がする。靴は、ふたつが柔らかそうだ。後衛個体かもしれない。
わずかに扉を開く。ごく僅かな隙間から、アサルトライフルを構える。ナイフはいつでも抜ける。
鎧たちは少し忙しなく、しかし同じような呼吸で歩いている。
それが、致命的な隙となった。
たっぷり十を数えてから扉を開いた。
真っ先に頭を狙った個体は、兜が外れて地に転がっている。弾幕で押しつぶした二体は、鎧の強度の所為か、逃げきれずに倒れ伏したかたちになっている。
モノに宿った怨念は、モノが壊れて、中身も壊れた。
「……悪いけど、先行くよ。急ぐんだ」
そう告げたリュカは、それ以上は顧みることなく。
再び、偵察に飛ばした星鯨を追う。終わりが近い、と、かれの直感が囁いていた。
「これにて終いだ。余罪は地獄にて禊がれよ」
丈一の手にした刀の一閃で、すべての鎧が砕け、転がり、仮初の息吹を失う。
調査に伴い、派手に討伐を行った猟兵たちも居たのだろう。なるべく戦闘を避けようと思えば、想像よりも戦の少ない道行きとなった。
「ありがと、助かったよ。この先が肝だと思うんだけど、塞がれちゃっててね」
「いや。改めて、地図を見せて貰って良いか?」
「もちろん」
ナイフを仕舞ったフェルトが差し出した地図を眺め、これまで通った道とも照らし合わせた丈一は、小さくひとつ頷いた。
「ああ、確かに。迷い路の起点は、この先だな」
鎧の残骸の向こう側、それまで幻術で狂わされていた道筋が、今はもはやここより先を目指して伸びていた。
隠された道はことごとく踏破され、すべての部屋は開かれた。
ファーストダンジョンの奥深く、大魔王までの道のりがここにひとつ、着実に敷かれることになった。
大成功
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