アルダワ魔王戦争1-E〜恐怖心を力に変えマッスル
「さあ戦争よ」
ユウナはいつもの伊達眼鏡をかけると、猟兵たちの前に立った。
「私が案内するのは『心奪いのキノコ森』。ボスクラスの災魔が一体いるから戦ってもらうだけなんだけど、注意点が一つ。特殊な迷宮キノコが繁殖していて、精神を汚染する毒胞子を振り撒いているの。これには、『恐怖』の感情を増幅させる効果があるみたい」
厄介なトラップだ、とユウナは表情を厳しくする。過剰な恐怖は心身を強張らせ、まともな戦闘など行えなくなるだろう。
「増幅される『恐怖』を無理やり抑え込もうってのは、消耗が激しすぎるから却下。かといって、キノコを焼き払うとか胞子を解毒するとかも不可能みたいね。残念ながら、防ぐ手立てはないと考えて」
しからば諦めるしかないのかというと、ある意味でその通りだとユウナは頷いた。
「どうしようもないならこの際、発想を逆転させましょう。『恐怖』を増幅させてくるってんなら、いっそのこと自分から感情を高めてやるのよ」
極限まで高まった感情の発露は大きな力になる。それは恐怖心にもあてはまることだ。膨れ上がった『恐怖』の爆発は、キノコによる感情増幅の効果も相成って凄まじい威力を発揮してくれるはずである。
「あなた達が感じる恐怖の強さと、その力を如何にして戦闘に流用するか。そこらへんが重要になってくると思うわ」
●迷宮内部
戦場へとテレポートしてきた猟兵たちの目に飛び込んできた光景。それは……
『ヌォオアアアァァアァァ!!? 何だこれはァァァア!? この私が、恐怖を感じているだとォォ!!? おのれェェィ、きっとまだ筋肉が足りていないのだァァ!!』
筋骨隆々としたドラゴニアンの女が、筋トレしていた。
両手に炎を纏って腕立て伏せ、両足に稲妻を纏ってスクワット、背中の竜翼に氷のウエイトをつけてホバリング飛行。なんかこう、己の肉体を苛め抜いている。
「………………」
猟兵たちは恐怖した。……いや、別に筋肉女子が恐怖にさいなまれながら筋トレしてる姿を見たからではない。たぶん。
恐怖の元となっているのは、周辺のキノコだ。天井と言わず壁と言わず床と言わずビッシリと埋め尽くしている小さなキノコたちが巻き散らす胞子が、恐怖心を植え付け増幅しているのである。
たちまちに体が震えだし、心が萎んでいくのを感じながら、猟兵たちはグリモア猟兵の言葉を思い出す。
――自ら恐怖を高めて爆発させるのだ、と。
黒姫小旅
どうも黒姫小旅でございます。
此度は戦争シナリオ、一章のみの構成です。下記の条件を満たしたプレイングには、ボーナスが付与されます。
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プレイングボーナス……オープニングで指定した感情を爆発させる
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第1章 ボス戦
『教練竜筋のソウリアス』
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POW : 筋肉教訓『鎖で敵を縛り後は筋肉で力押し!』
【マッスルポージングを取る全身から放つ光】が命中した対象を爆破し、更に互いを【対象のみ束縛し自身は自由に操れる鎖】で繋ぐ。
SPD : 何て貧弱な筋肉だ!私と筋肉への愛を教えてやろう!
【筋肉を鍛えていない者を見極める教師視線】が命中した対象に対し、高威力高命中の【自身への敬愛を刻み込む、槍連続洗脳突き】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
WIZ : 筋肉教訓『臨機応変に強化筋肉を変えるべし!』
【炎を纏い火傷を与える両腕の超熱血筋肉】【雷を纏い麻痺を与える両足の超刺激的筋肉】【冷気を纏い氷結を与える両翼の超冷静筋肉】で自身を強化する。攻撃力、防御力、状態異常力のどれを重視するか選べる。
イラスト:すねいる
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「九十九・静香」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
トール・テスカコアトル
「な、なんてトールに向いてる依頼なんだ!」
向き過ぎてて、涙が出てくるね
トールにとって、恐怖っていうのは親しい友達みたいなもんだよ
地面が崩れそうで歩くのが怖いって言ったら
義兄さんに怖がりも才能だって言われた
「お姉さん、筋肉はいいよね……けど、それじゃダメだね」
それじゃ恐怖に抗ってるもの
恐怖を消そうとしてるもの耐えてるもの
「怖がりの先輩として、教育してやるぅ!」
怖いけども、そもそも筋肉が怖いんだけども
トールの武器は一つだけ……それで勝つ
怖がってるトールを鎖で引っ張るといいよ……痛さと恐怖を支配する
「怖い……怖い……そこだ!」
拳一閃、グラウンドクラッシャー
怖いままに頑張る【勇気】がトールの武器なんだ
●
『もっと筋肉をォォオオォ!!』
迷宮キノコによる精神汚染は、オブリビオンにも作用する。抗いようのない恐怖を振り払おうとスクワットに励む教練竜筋ソウリアスに、一人の少女が近づいた。
「……それじゃダメだね」
『ヌッ、何奴!?』
背中に声を掛けられ中腰姿勢で制止して振り返ると、そこには涙目で震えるトール・テスカコアトル(ブレイブトール・f13707)の姿があった。
『貴様ァ、我が筋肉にケチをつけるつもりかァ!?』
「筋肉はいいよね。でも、ダメなんだよ。それじゃ恐怖に抗ってるもの。消そうとしてるもの。耐えてるもの」
……恐怖っていうのはね、親しい友達みたいなもんなんだよ。
『エエイ、ワケのわからんことを! 貴様も筋肉教に強制入信させてやる!』
ひそひそと語るトールに対して、ソウリアスが返すのはあくまでも拒絶。そして筋肉。怪光線による爆破と鋼鎖による束縛がトールを襲った。
『フハハハハ! 筋肉は恐怖になど負けん! その貧弱な肉体に教え込んでくれるわ!』
「うぅ……怖い。痛い。色々怖い、怖い怖い怖い怖い……怖いよお!?」
縛り上げられたトールは、なすすべもなく引き寄せられていく。高笑いする筋肉女とか、これから何をされるのか分からない不安とか、鎖に締め付けられる痛みとか、あらゆることに対する恐怖が迷宮キノコの毒によって増幅されて気が狂いそうだ。
「こ、怖い……こわい…………けど」
恐怖で潤んだ瞳が、敵の姿を映す。
力の入らない体が強引に引っ張られて、豊満なる大胸筋へと飛び込んでいき……――――そこだ。
拳一閃、【グラウンドクラッシャー】!
握り固めた鉄拳が、ソウリアスの鳩尾を打ち抜いた。
『ゴフッ!? ば、馬鹿な……貴様は完全に恐怖に屈していたはず』
「怖いままに頑張る勇気、それがトールの持ってるたった一つの武器なんだよ」
『……な、なんというマッスルスピリット』
眼前に立つ若き勇者がどれほど大きいのか、災魔は初めて気付いたように目を見開いた。
成功
🔵🔵🔴
チトセ・シロガネ
彼女は筋肉への信頼が揺らいでいるネ……。
ボクにもわかるヨ。筋肉で解決してきた自信が崩れる時をッ!
だからこそ!鍛え続けている……ッ!
筋肉で力押し、なんてすごいパワーネ。
怪力が自慢のボクが押されているッ!?
己の筋肉が相手の筋肉に屈してしまう恐怖に耐えながらUC【霹靂閃電】を発動。
この湧き上がる恐怖を勇気と筋肉で打ち勝ってもう一つステージを上げるッ!つまり限界突破で乗り越えて相手にも自分自身にもウィンするネ!
【アドリブ歓迎】
●
「ユー、筋肉への信頼が揺らいでいるネ?」
美しく分割された腹直筋を前面に押し出しながら、チトセ・シロガネ(チトセ・ザ・スターライト・f01698)がそびえ立った。
「筋肉で解決してきた自信が崩れる感覚、ボクにもわかるヨ。だからこそ! 鍛え続けている……ッ!」
『……なるほど、貴様わかっているな!』
ソウリアスは口の端を持ち上げ、ポージングでもって応じた。パンプアップした大腿筋から放たれる怪光線がチトセに命中し、爆炎とともに鋼の鎖が彼女の肉体を縛り上げる。
『同じく筋肉を拝する信徒と見た。ならばこそ、貴様を倒すことでこの恐怖を乗り越えよう!』
恐怖に追い立てられるようにソウリアスは吠えて、鎖を思い切り引っ張った。チトセは両足で踏ん張るが、虚しく床のキノコを削りながら引き寄せられていく。
「ぐ……なんてすごいパワーネ」
チトセは苦悶の声を上げた。
鎖が体に食い込む痛みもさることながら、己の得意分野である力比べにおいて後れを取るという屈辱に打ちのめされる。
「……でも、負けないヨ。そう、今こそステージアップ! 限界突破ダ!!」
チトセの肩から雷電のごとき闘志が立ち上った。燃える勇気と筋肉で災魔の怪力もキノコの毒をも跳ね除けると、己を捕えていた鎖を逆に握り返して振り回す。
『な、なんだ、急にパワーが増して……グアアァァァァア!?』
驚愕に染まったソウリアスが、宙に浮いて壁へと叩きつけられた。瓦礫とキノコが飛び散り、壁にめり込んだ体がゆっくりと落下すると、縛鎖が煙のようにかき消える。
「ウィナー、ボク! ……うっ」
チトセは拳を天につき上げて、唐突に膝をついた。精神汚染を真っ向から打ち破ったのは立派だったが、その消耗は激しく立ち続けるのもままならない。
「……おすすめしないって言ってたのも納得だネ」
額に浮いた大粒の汗を拭って、チトセは呟いた。
成功
🔵🔵🔴
ジョン・グッドマン
あぁ、まだ私は人であると確信がもてる。……ッ私にはまだ感情があるのだと!
足が震える!歯が合わずに怖気で涙が出る!
それがたまらなく愛おしい!
この二律背反を感じて臓腑と感情がまぜっかえされるようなこの感覚!
今!恐怖と歓喜で私は打ち震えているっ!
【POW】使用
ユーベルコード対象味方以外
あぁ、そうだ!モット私に歓喜と恐怖を!
敵の攻撃は【第六感】【グラップル】【武器受け】でいなす
もしくは【空中戦】【空中浮遊】【ダッシュ】【地形の利用】で相手との距離を一定に保ち敵の鎖と洗脳突きを警戒する
アドリブ、連携歓迎します
●
「……あぁ、これが『恐怖』か」
ジョン・グッドマン(人間のグールドライバー・f00131)は戦慄した。
膝が笑ってまともに歩くこともできない。体が震え、歯がカチカチと音を立てる。こみ上げてくる怖気が涙腺を緩ませ、視界が歪んだ。
空気中を漂う迷宮キノコの胞子に汚染される感触。体内の臓腑が痙攣するほどの恐怖に襲われながら、ジョンは駆けだした。
「なんと怖い、なんと恐ろしい。……なんと、愛おしい!」
ダンッ! と地面を蹴って、怪鳥のごとく跳躍した。
悪寒で心が震える。震えることで、心があることを実感できる。己はいまだ感情を持つ『ヒト』なのだと確信が持てる。
実に素晴らしい、最高の気分だ。
ダダッ! 立て続けに壁、天井を蹴って縦横無尽に跳び回りながら、恐怖と歓喜という背反する二つの感情をほとばしらせるジョンの姿は、教練竜筋の名を関する災魔をして一歩退かせる迫力があった。
『グ……私が気圧されているというのか!? ありえん!』
「あぁ、いいぞ!」
マッスルポージングを取るソウリアスに、ジョンは臆しながら奮い立った。
飛来する鎖を左手で掴み取って捕縛を避けつつ、右手をうんと振り上げて――ダァン!! 五指を開いて振り下ろした掌から放たれた衝撃波が迷宮を蹂躙し、空間ごとソウリアスを打ち据えた。災魔は逃げる間もなくポージングしたまま吹っ飛んで、口からあふれた血の帯がその軌跡を示す。
『ご……ハッ!? な、なんだこの力は……!?』
「あれを正面から受けても死なないか。……それは僥倖! さらなる恐怖と歓喜を私に与えてくれ!」
ユーベルコード【パイドロスの馬車馬】。彼の体に宿りしUDCの片割れ『羽搏く者』の力を解き放ってなお斃すに至らぬ強敵に、ジョンは狂い喜んで跳躍する。
大成功
🔵🔵🔵
三上・チモシー
アドリブ連携歓迎
いやぁぁー! ムキムキな女の人がなんか叫びながら筋トレしてるぅぅ
めっちゃ怖いぃぃ!! 何あの人ぉ!?
何で燃えたり雷出たりしてるの?
鍛えるとみんなああなるの? 怖い怖い怖いぃぃ!
きゃあぁぁ! 全身光ってるぅぅぅ!?
もうやだ怖いー!
敵が放つ光はできるだけ【見切り】、【地形の利用】もして絶対当たらないように逃げ続ける
怖すぎて近付きたくないから、離れた場所から『熱湯注意』で広範囲を攻撃
いやぁぁ! 筋肉ピクピクしてるぅぅ!!
●
「めっちゃ怖いぃぃ!! 何あの人ぉ!?」
三上・チモシー(カラフル鉄瓶・f07057)は絶叫した。これぞ迷宮内の存在を無差別で恐怖に染め上げる迷宮キノコの効果である。……断じて、ムキムキな女がなんか叫びながら筋トレしてる様を目撃して素で叫んだわけではない。きっと、おそらく。
「何で燃えたり雷出たりしてるの!? 鍛えるとみんなああなるの!?」
怯えるチモシーに対して、ソウリアスは胸を張って答える。
『当然だとも!』
1ミリの躊躇もなく断言した。
『筋肉があれば何でもできる、火でも電気でも出せる! さあ貴様もレッツ筋トレ! 鍛えぬけばきっと、恐怖などに惑わされることもなくな――』「いやぁぁ! 筋肉ピクピクしてるぅぅ!!」『ちょっ、聞け!?』
しかしチモシー、ソウリアスの妄言もとい宣伝文句になど耳を貸す余裕もなく、いよいよ恐慌状態に陥っていく。動きに合わせて隆々と躍動する筋肉とか、変なポーズを取ったら光りだしたりとか、もう恐ろしくて仕方がない。
「いやぁぁー! 怖い怖い怖いぃぃ!」
チモシーは泣きわめきながら、鈍く輝く鉄瓶を取り出した。注ぎ口から真っ白な湯気を立ち上らせる平丸型の南部鉄瓶を素手のまま持ち上げて、無茶苦茶に振り回せば煮えたぎった熱湯が巻き散らされる。
「もうヤダこっち来るなぁぁぁ!!」
『筋肉を無視するじゃ熱っツァァァァァ!?』
話を聞いてもらえずいきり立つソウリアスの頭上へ、悲鳴とともに放出された熱湯が降りかかった。
射程53mにもなる高水圧の水鉄砲、それもグラグラと沸騰中の高熱だ。ソウリアスは恐怖も怒りも忘れてのたうち回る。
「わぁぁん、怖いー!」
『熱! ちょ待、熱っ熱い!』
恐れ慄きながら水攻めする男の娘と悶え苦しむ筋肉女……なかなか凄絶であった。
大成功
🔵🔵🔵
テラ・ウィンディア
恐怖か
ふん
何が恐怖を増幅で力にだ
そんな物におれは屈しないぞ!
邂逅
…あれ…こいつ…この色合い…羽…何か妙に流線形に…角がなんか…触覚に…
ままままさか…む、虫…!(冷や汗だらだら…敵がGに見えてる(ぇ
む、虫いやーーーっ!!(狂戦士化)
【属性攻撃】
獄炎を全身と武器全てに付与!
【一斉放射】でグラビティバスターで砲撃!
いやー来ないでー!(【第六感・見切り・空中戦・残像】で避けて
炎を纏った槍で【串刺し】から【早業】で剣と太刀に切り替えて切り刻み
やだやだやだーーー!!!(恐怖心が膨れ上がり完全に目の前の存在の排除への苛烈な意志に染まり
紅蓮神龍波発動!
ソウリアスを中心に全てを焼き尽くす業炎の龍が超大暴れ!!!
●
恐怖などに屈したりするものか。
テラ・ウィンディア(炎玉の竜騎士・f04499)はそう豪語して戦場へとテレポートし、今しがた会敵を果たしたところだった。
『グヌ……まさかこの私が……』
教練竜筋のソウリアス。かの女傑は累積したダメージと増幅される恐怖によって、地に倒れ伏していた。
『ま、まだだ。我が筋肉は不滅……!』
「……あ、あれ? こいつ……?」
それでも必死に立ち上がろうとする災魔を目の当たりにして、テラの瞳に狼狽が浮いた。
黒光りするピチピチのボディスーツ。羽も……妙にいい感じな流線形で……頭に二本の角……というか触角?
「ま、まままさか……む、虫……」『誰が台所の悪魔だァァァ!?』
そこまではまだ言ってないが、失敬極まりない物言いにソウリアスは激高。黒き竜翼を広げて「いや――――飛んだ――――――っっ!!?」
テラが発狂した。
全身を恐怖の獄炎で包み込み、変形型砲撃兵装、星霊重力砲『グラビティ・バスター』を起動し、無茶苦茶に撃ちまくる。
「やだやだやだ、来ないで――――っ!!」
感情にまかせた一斉掃射。重力波の砲弾が、それこそ虫一匹逃さぬほどの密度で襲い掛かり、ソウリアスをぶちのめし吹っ飛ばす。
『ブアッ!? ヌオワァァァア!?』
「虫いや――――っっ!!」
それでも、テラは止まらない。恐怖心は膨れ上がる一方で、目の前の存在を完全に排除しなければならぬと苛烈な意思に染まっていき、
「――【紅蓮神龍波】!!」
悲鳴に呼応するように、迷宮が揺れた。
キノコの生えた床や壁、天井に次々と亀裂が入り、真っ赤に燃える溶岩が噴出する。母なる大地の奥底に流れる灼熱は、さながら業炎の龍のごとし。
『ぐっ、ま、マズ……!?』
数えて66にも及ぶ龍炎を前に、ソウリアスはいよいよ恐怖に慄いて逃げようとするが、もう遅い。溶岩の群れ龍は災魔を取り囲み、煉獄の炎で焼きながら熱く溶けた岩の中へと沈めていった。
大成功
🔵🔵🔵
バルディート・ラーガ
ヒエエ……くわばら、くわばら。
なにせあっしは細身のシーフ職でございやすモンで、
純粋なパワーでブン殴られっちまうのにゃすこぶる弱い。
感情の強化も相まって、震えるよな恐れが止まりやせン。
ム、敵サンがキレキレのポージングを取り……ギャッ!爆発!
爆煙はひとまず「火炎耐性」でもって甘んじて受けやすが
鎖に繋がれっちまい震えも止まりやせン。こりゃピンチ……
……恐怖に耐えられねエならば、理性をブン投げてしまえば宜しい。
力を解き放てば、全身がドデカイ炎の蛇へと変化して行きやす。
金属の鎖をアツアツに熱して敵サンの手エを焼き、鎖を手放さしたらば
恐怖心のまま、炎蛇ががむしゃらに大暴れしちまうお時間ですよう!
●
ソウリアスを飲み込んだ溶岩は冷えて固まり、硬い岩石の墳墓となって災魔を封じ込めた……かに見えたが、
『お……おのれェィ! このままでは終わらんぞ!』
突然岩が砕け散ったかと思うと、ソウリアスが立ち上がった。その肉体はボロボロでいつ崩壊してもおかしくなかったが、構うことなくマッスルポーズ。
「ギャッ!?」
放たれた怪光が一角の暗がりを照らし出すと、短い悲鳴が上がった。爆炎とともに顕現した鉄鎖によって引きずり出されたのは、バルディート・ラーガ(影を這いずる蛇・f06338)。
「……こ、こいつァまいりました」
蛇の顔に卑屈な薄ら笑いを張り付けながら、バルディートは声を震わせた。
身軽さが売りのシーフ職が、鋼鉄で雁字搦めに縛り上げられてしまっては手も足もでない。なんなら「腕無しなモンで、最初から手は出せねえんですがね」くらいの自虐ジョークでも飛ばしたいところだが、恐怖で舌が回らず言葉を手繰る余裕すらなかった。
……余裕がねエなら、いっそブン投げてしまえば宜しい!
ギョロリと蛇眼がうごめいた。過去に失った両腕を補完する『地獄』の黒炎が燃え上がり、バルディートを縛る鎖を伝ってソウリアスへと走る。災魔は慌てて鎖を手放し逃れるが、顔を上げて驚愕した。
『な、なんだこれは!?』
そこには天井を突き破るかという大蛇がいた。黒炎の体躯を持つ【九つ頭の貪欲者】、フレイムヒュドラ。力を解放したバルディートは、その理性と引き換えに強大な戦闘力を発揮する。
『……グ……シュウルルル……!!』
言葉も失ったフレイムヒュドラは一つの竜頭と八の蛇頭をそれぞれもたげた。爬虫類特有の縦長の瞳18個は恐怖に染まり、口腔内では緑の炎が燃えている。
『シャァァアアァァア!!』
理性もなく、衝動に突き動かされるまま暴れる化け物は悲鳴のような咆哮を上げた。九つ頭がただ一体の敵へと叩きつけられ、砂塵と竜炎、そして轟音が迷宮内を満たした。
大成功
🔵🔵🔵
クリュウ・リヴィエ
敵はいつだって怖い物。
それ以上に負けるのが怖いから、退くわけには行かないね。
敵を見たら「血統覚醒」して一直線に吶喊。
敵の攻撃は避けず、防がない。
【殺気】で【存在感】と【恐怖を与え】、むしろ自分が狙われれば他が安全かも知れないくらいの気持ちで。
接近した後も何も考えず「カミ砕き」を振るう。
【力溜め】と【鎧無視攻撃】でダメージを増やしつつ、
斬ると同時に【吸血】と【捕食】で【生命力吸収】をしっかりと。
痛いのは怖い。
倒れるのは怖い。
味方が倒れるのはもっと怖い。
ここで敗れて地上を攻められるのは耐えられない!
●
クリュウ・リヴィエ(よろず呑み・f03518)にとって、敵はいつだって怖い物だが、この時感じた恐怖は埒外のものであった。
どんな痛みが待っているだろうか。もしかしたら、敗れて倒れることになるかもしれない。最悪の想像ばかりが頭に浮かび、今すぐにでも逃げ出したい気持ちになる。
……だが、逃げてどうなる?
代わりに味方が傷つくのか? 地上にいる、罪もない人々へと戦火が及ぶのか? そう考えると、もはや退くこともできなかった。
「ぁ……ァあ…………」
前へ往くのは怖いが、後ろへ戻ればもっと恐ろしい思いをすることとなる。二つの恐怖に挟まれて、心が潰れてしまいそうで、
「……ぁぁ、ア……!?」
ああァァぁぁアアアああああ――――ッン!!!
クリュウの中で何かが切り替わる音がして、金の眼が紅に変わった。さながら血の色に光る満月のごとく、両の瞳孔が妖気を放つ。
夜の支配者たるヴァンパイアの血統である証、真紅の瞳が迷宮の闇を見通して、満身創痍のオブリビオンを射貫いた。
『――ヒッ!?』
突き刺すような殺気にソウリアスは身をすくませるが、クリュウが動く方が早い。テレポートかと錯覚するような、制止から超速への急加速で一瞬のうちに間合いの内へと踏み込むと、ジャララララッ!! 蛇腹の刀身が伸長する。
湧き上がる恐怖に立ち向かっているのか、それとも追い立てているのかも定かでない夢見心地のような状態で、クリュウは黒剣を振りおろした。
「喰らい、啜り、斬り伏せろ〈カミ砕き〉!」
蛇腹剣が大気をぶち割って、落雷のような音を轟かせてソウリアスに咬み付き、その首根から腰元までの斜め一直線に切断した。
「……は……はあ、はあ…………こ、これで……大丈夫」
目標の討伐を確認。
クリュウは異形化を解除し、大きくゆっくりと呼吸して胸の内の恐怖を吐き出した。
【END】
大成功
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最終結果:成功
完成日:2020年02月05日
宿敵
『教練竜筋のソウリアス』
を撃破!
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