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鎮めろ! 厳海突波魔竜宮!!

#サムライエンパイア #戦後

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#戦後


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「ワッショイ! ワッショイ!」
 と野太い声が響いていた。
 冬の風は、冷たく澄んだような海の潮の香りを強く打ち付けてくる。波は鋭く海面に揺れ、寒々とした風情を訴えかけてくる。
 そんな中に、弾ける声と、がやがやとした雑踏。
 その日は、海辺の町の祭りであった。
 冬の海は荒れる。だから、漁師たちは漁に出る事が出来ず、内職などに精を出すのだが、しかし、やはり猟師は猟師。
 早く荒れ海を鎮めようと、始まった祭りだ。
 概要やら伝承は、よくあるものだが、この祭りで特徴的なのは『神輿流し』というものだった。
 山の社から猟師たちが神輿を担ぎ、山道を下りて、海にそれを流す。
 法被に褌、まさしく祭り装束という風体のままに砂浜から腰、そして胸をまで冷えた水に浸かりながら、神輿を波に乗せて沖に浮かべるわけだ。
 冬ごもりで肉体の衰えを防ぐため、というのもあったのかもしれない。
 とまあ、要するに海神への奉納の儀が変じたものだったわけだが、現在では一種の催し物という側面が強い。
 神輿の通る街道には屋台が立ち並び、山の社から海までの道は石畳に舗装されて、昔のように危険な山道を通ることもない。
 心臓が弱ければ、海に分け入るのは危険ではあるが、漁師たちは慣れたもので、見物客の間をそうして、声を張り上げ抜け出ていった先の砂浜。
 そして、神輿を腰が浸かるほどまでに運んだその時。
「……ん?」
 と、一人の担ぎ手が目の前の海に何かを見つけた。
 海面の上を漂う、黒い何か。
 さながら海面に浮かぶクラゲが何かしらの原因で数十センチ上に移動したような形の何か。
「なんだあ――」
 りゃあ、と声を発そうとした、まさにその瞬間。
 ゴゴゴゴゴゴ……っ! と。
 海が揺れた。

 いや、海が膨れ上がった。

 神輿を放り出して、それでも大波に攫われ溺れながら、漁師が見たものは、海中からせり上がる大きな城と、その周囲に浮かぶ風鈴のような炎を灯す化物だった。


「竜宮とは、黄泉の国を指している、という説もあるらしいが」
 真偽の程は分からないけどね、とルーダス・アルゲナ(傍観する獣、知性の声・f24674)は首を傾げながら、予知の光景を思い返すように告げる。
「竜宮と呼ぶには、いささか厳ついと言わざるを得ないかな。何せ、死者の国の方から直接、殴り殺しに来るんだから」
 いうなれば、魔竜宮といったところか。
「まあ、第六天魔王の残党のオブリビオンなんだが」
 大層な仮称に、仮称以上の意味はない。
 山一つ程もある、巨大オブリビオン。それが漁師町の祭りの最中にその姿を現す、と彼は言う。
「祭りのメインイベント。神輿流しの直前だ」
 さてはて、事前に海中に潜って城を討てば、とも思うが、しかしどうやらそれは海中に初めからあるわけではないらしい。
「というかね、あのサイズが潜れる深さではないんだ、あそこ」
 人は簡単に溺れるが、しかし、原寸大の城がオブリビオンとなったもの。それがまるまる沈んでいられるような深さではない。
 地中を掘り進んできたのか、もしくはどこからか転移のような手段を使うのか。それは分からないが、確実に言えるのは、海を割ってせり上がる必要はあまりないという事だ。
 地中からなら、陸の方が安定するだろうし、転移なら下から上がってくるのはロスでしかない。それが転移の失敗ではないというのなら。
 ルーダスがその理由を考えて導き出した結論は。
「演出……くらいしか、思いつかないのだよねえ?」
 だった。
 謎な話だ。
「だが、簡単な話でもある」
 とルーダスは、オブリビオンの考察を放棄して、概要を述べた。
「海上に出現する、オブリビオンを全て撃滅する。それだけだ」
 手始めに、城に先んじて陸へと近づいてくる浮遊する風鈴の群れ。それを撃破したのちに城のオブリビオン、仮称・魔竜宮を破壊する。
「それまでは、まあ、自由時間という事でいいんじゃないかな」
 折角の祭りだ。とルーダスは告げる。
「出店も多いらしいし、温かい物でも食べれば、冬の海の戦いも少しは楽になるかもしれないね」
 ああ、あと。と彼は付け加える。
「神輿の担ぎ手も少ないらしいから、手伝えるなら手伝ってやってくれ」
 猟師もなんなら冬は出稼ぎに行けばいい、と、そこまで切羽詰まって神輿を海に流す事もない。むしろ寒いし、危ないし、嫌だなあ。という心事情もあり、人員不足だそうだ。法被やらの衣装も余り『まくっている』らしい。
 猟兵としても、この祭り自体を中止にする、というのも避けたい。
「無いとは思うが、神輿目当てで出現する可能性も、まあ、万一にもあるかもしれないからね……なにせ、何をしたいのかが分からない」
 という事だった。
「体を動かせばそれはそれで温まるだろう」
 いささか投げやりにルーダスは、延べ切って、寒そうに体を縮めて最後に告げる。
「まあ、よろしく頼むよ。城を一つ盛大に」
 山一つ。だが所詮、落武者じみた残党のオブリビオンだ。規模はでかいが、今まで以上に強大というわけでもない。
 とはいえ、壊し甲斐はあるだろうと、ルーダスは言った。
「ぶっ壊してきてくれ」


オーガ
 冬の海の祭りの話です。
 
 1章含む各章に断章を挟みます。

 よろしくお願いします。
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第1章 日常 『龍神祭』

POW   :    漁師達に混じって神輿を担ぐ。押忍!

SPD   :    出店を回って食べ歩き!

WIZ   :    祭りで賑わう人々と交流!

👑5
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 身を刺すような凍えた潮風が吹けば、誰もが襟を寄せて身を震わせるような、冬の海辺。高く、色を透く空の下に揺れる荒波は、その寒さを更に掻き立てるような音の中で、しかし、わいわいとその日は一層の賑わいを見せていた。
 並ぶのは、暖かな食事や催しを提供する屋台。大通りを挟むように並べられた屋台の間を行き交う人々は、その真ん中の道だけを避けて歩いている。
 そこは、神様への捧げものが通る道。
 砂浜へと続くその道の端、山の社の前で神輿の担ぎ手達が、とても暖かい、とは言えぬ恰好のままその時を待っていた。
 突如巻き起こった戦乱を過ぎたからか、今回は見物客も多いらしい。
 賑やかな声が広がる町の空は、雲一つなく、穏やかに世界を包んでいる。

第一章

 祭りを楽しむ場面です。
 神輿が出発する辺りからの描写になるかと思われます。つまりオブリビオンの登場まではまだしばらくの時間があります。
 よろしくお願いします。
白雪・美狐
(SPD行動)
わーい、お祭りー
この季節なら僕は豚汁が食べたいな!

ふんふん、神輿の担ぎ手が少ない、と?

(僕も多少はわかるよ……冬の海水は極寒だもん……
いくら神事でもよほど熱心な人じゃないと中々やりたがらないよね……!)

んー、僕も子供神輿なら喜んで担ぐんだけどなー
神輿を担ぐには少し背丈が足りないかなー……!

あ、でも僕の身体に合う丈の法被やら何やらがあればそれを着ることは吝かでないよ!

あと……万が一に備えて、神輿が来る前から行動しておくよ
ま、懐の霊符をいつでも飛ばせるように位置取りするくらいだけどね

(アドリブ・連携歓迎)


伊敷・一馬
不採用含め全て歓迎!
POWで対応だ。

なるほど、つまりは半永久的に不滅なる肉体美溢るるこのバディを、我ら猟兵の美しきバディを晒せと言うことだな。
よかろう!見よこの脱ぎっぷりを!
UCを使用、衣服を弾け飛ばしこの天使も微笑む見事なマッソゥを衆目に晒す。
下半身は変身出来ないので普通に脱いで褌姿になるぞ。
法被?不要っ、冬の荒波ひとつ、我が僧帽筋で打ち砕く!
(その変身、一秒と保たないから風邪引く前に上着つけて欲しいべ)

マッスルアピールが終われば神輿を存分に担ぐぞ。ボディ君の貧弱バディにも良い塩梅だろう。
ふふふ、我ながら完璧。ボディ君にも愛を、それが私のジャスティイーッ!
(海には絶対に入るでねぇぞ?)


ジャスパー・ドゥルジー
【隠れ鬼】
八雲と一緒に屋台巡り
仕事までにゃまだ時間があんだろ?
飯でも食ってのんびりしてよーぜ
神輿とやらも見学すっか
あんまサムエンの文化になじみがねえんだ、かなり新鮮
なあなあ八雲、神輿ってあれとどのつまり何なんだ?神様でも乗ってるの?
イカ焼き片手に談笑――
してたところで見知った黒ずくめを見つける

あーっオスカーじゃん!
ひっさしぶりー、こんなとこで逢うなんて偶然だな
大声で呼びかけてからさすがに小声で
オスカーも仕事?せっかくなら俺らと一緒に組もうぜ
手は大いに越したこたァねえからな

俺を見たオスカーはいつも以上にビクビクしてるだろうが特に気にしない
どころか気づいてるかも怪しい態度


出雲・八雲
【隠れ鬼】で参加
ジャスパーに祭りがあるってンで来てみたら仕事だってンでまンまと罠に嵌められたンだが?

くっそーあとで覚えてろよと思いつつ、出店に団子屋を見つけ団子を購入してちょっとだけ上機嫌
ア”ァ?サムエンだァ?俺もあンまりわかっちゃいねェけどよ、
あながちジャスパーの言ってる事は間違っちゃいねェぜ?
(団子を口いっぱいに頬張る)

おー…誰だ?
…ちょっと待ってな(もごもご)
悪ィな。流石に初対面の奴に見せる顔じゃなかったンでな。(気恥ずかしそうに口の端を拭いて)

ほー、知り合いか。
んじゃァ仲間っつー事で、よろしくなァ。(にぃと笑って)
ああ、俺は八雲だ、お前さンの名前は?
そうか、良い名だなァ。


オスカー・ローレスト
【隠れ鬼】
海、か……あの時……戦争中、は……ゆっくり見てる場合じゃなかった、けど……(海を見ていつぞやの戦争の折、厳島神社で戦ったコルテス戦を思い出すなどしている
森育ちだから、見たこと、なかったんだ、海……

ぴゅ……(寒さに身と羽を震わせる小雀

と、とりあえず俺は、何か温かい飲み物でも飲んでようと思、う……(祭りの喧騒からちょっと離れて時間までちびちびやる予定だった、が

ぴえっ?!(ジャスパーに声をかけられて盛大に飛び上がる

え、あ、う、うん……そう、だね(震えつつも同行の誘いに乗る

……と、そ、そっちの、彼、は……?(八雲とは初対面
八雲……お、俺は、オスカー……よ、よろし、く……



 空は快晴。澄んだ青色は遥か高くに奥行を見せている。
 その下、喧騒の中で少年の姿をした妖狐が、陽気な心地で歩いていた。
「やー、お祭りだー」
 ふわ、と尻尾を揺らし、人の喧騒に頭に生えた三角の耳を揺らす。
 活気づく人の里は、心地がいい。
 てんてん、と跳ねるような足取りも、その活気に中てられたのか。妖狐たる彼にとって、精気溢れる、今のこの街は、息をするだけで美味しいと思えるようなものなのだ。
 ぐ、ぐうー。
 そんな音が響く。
 何の音かと考えるまでもなく、白雪・美狐(雪狐・f12070)は自らのお腹を押さえて、むむう、と立ち止まる。
「お腹空いちゃったな」
 香しい気に囲まれて、思わず食い気が体に出てしまった。さて、どうするかと見回してみるは屋台の並び。
 甘酒、煎餅、焼き鳥、熱燗、様々な出し物があるが、美狐が、これは! とその足を向けたのは、大鍋を回す男性の店。
 積み重なる竹の器、その香りを僅かに感じさせながら、強く薫るのが猪か豚の脂の薫り。甘みを帯びた香りに味噌のまろやかにも刺激的に醸し出される香りが、なんとも食欲を刺激する。
 その中に、僅かにつんと鼻を衝くのは、具として投じられた野菜の匂いだけではなく、そう、生姜だ。
 立ち上る匂いを吸い込んで、手の中の竹の器の温もりにニッコリ、と笑みを浮かべる。
 いつの間に買ったのかというツッコミは無粋と言う物。
 そんなもの、それを見つけた時から買ったも同然だ。
「寒い空のしたで、豚汁。たまんないなぁ」
 ふは、ととこんとした旨味が凝縮されたような汁を啜り、白く曇る息を吐いた。
 春に桜、と並び立っても問題が無いのでは? とすら思えるような、まさしく極楽だった。
「……えっと、ここが社だっけ」
 零さぬように歩いて、いつの間にか美狐は山の社についていた。緩やかな斜面。
 なるほど、石畳に舗装は確かにされている。
 でも、神輿の担ぎ手が少ないんだっけ? と美狐は社の境内に入ってみる。
 美狐の目にもやはり、祭りの規模に対して、そこにいた担ぎ手の数は少ないように見えた。
「……冬の海水は、極寒だもん」
 それは、美狐にも分かった。いくら神事でも、よっぽど熱心な人じゃないとやりたがらないよね、とむしろ不参加を選ぶ若者にも同情的になっていると、担ぎ手の集いの中に、この世界にはまず見ないストレッチ生地の真っ赤な布が見えた。
「あれって」

 つまり、マッソゥだという事だ。
 鍛えた逞しい肉体を、海の神に見せる神事だという。
 少し違うのだが。
 猟兵の手助けがいるという事は、つまり猟兵の鍛え上げた美しきボディを晒せ、という事に違いない。
 少し違うのだが。
「ならば、私が一肌脱ごうじゃないか!」
 担ぎ手の集いに現れた彼は、自信満々に大声をあげた。ドドン! と大太鼓が鳴るかの如き勢い。
「刮目せよ、このンバディッ!!」
 赤いジャージの男性。
 何故かその顔にひょっとこの面を付けた彼が、ぐぐ、両腕を内側に巻き込むように力を込め、上半身の筋肉を隆起させたその瞬間。
 ず、バァアアンッ!!!!
 さながら爆竹が爆ぜたような快音と共に、伊敷・一馬(燃える正義のひょっとこライダー・f15453)の服が吹き飛んだ。
 もし世界が違えば、有名アニメのようだと声が上がるだろう光景に、オオー、と周囲の野太い感嘆が上がる。
「法被なぞ不要! 冬の荒波一つ、我が僧帽筋で……」
 直前まで、どこにその筋肉を服の下に隠していたのか、とばかりのゴリッゴリの筋肉の束を見せつける様に、モストマスキュラーから腕を抱える様に体を半身に開きサイドチェストへ。
 辛うじて破れさっていないズボンも膨らみ、その剛体が手に取る様に分かる。が。
 そこまでだった。
「打ち砕――」
 風船がしぼむかのように、超然としていたパワフルマッスルボディが忽ちに縮んでいく。
「くぅ」
 鍛えてはいるが、しかし、やはり中年男性の域を出ない、そんな体に戻っていた。とはいえ、そちらの方がどこか自然体なような印象も受けるのだが。
「……変身、一秒と保たないから風邪引く前に、法被でもいいから上着欲しいべ」
 もごご、と傍で聞いて聞こえるか聞こえないか程の声量が、仮面の下から漏れ出ていた。はて、直前までのひょっとこ面の男の声とは違う口調ではあったが、その言葉を聞き取った者がいない為にそれを疑問に思う者もいなかった。
 彼本人以外は。
 が、その声に応える事もなく、一馬はそこそこに筋肉と脂肪の付いた胸を張って言う。
「では、この体で参加するとしよう! ボディ君の貧弱ボディにもいい塩梅だろう!」
 と。
『ボディ君』など、ヒーローマスクとそれを装着した体、という存在の構図を知らない担ぎ手達は、一様に頭の上に疑問符を揺らしているが、重要な所はなんとなく伝わったようだ。
「要するに、さっきの筋骨隆々状態は使わないって事か?」
「その通り、異論は無かろう?」
「あ、ああ、そっちの方が左右の振合いが取りやすいから、良いんだが」
 今のは……何だったんだ? と言わんばかりの沈黙に、しかし一馬(のひょっとこお面)が気にすることは無い。
 褌と、ついでに体の懇願により法被も受け取って、着替えへと向かう一馬は、自らのパフォーマンスに結構満足していた。
 弾け切らずにジャージのズボン、その腰ゴムに引っかかった残骸の輪っか諸共に衣服を脱ぎ、褌を締める最中も鼻歌を歌い出しそうなほどに上機嫌。
「(これは……)」
 既に生肌をそよぐ風が冷たい。反射で縮こまる体も何のその。
 もはや不本意ながらに慣れた真っ赤な服装から青い波模様の法被に新鮮味を覚えながらも、どこか不安な予感を覚えていたのは、体の彼だけであった。

「……んー、やっぱり、背が足りないなあ」
 と、そんな筋肉盛衰の一幕を見終えて、空になった竹の器に残った熱を両手で包んで名残惜しみながら、呟く。
 150足らず。美狐の身長だと手を伸ばして掴めるかという程度。力を込める事は難しい。
「子供神輿でもあれば、喜んで担ぐんだけど」
 残念ながら、そんな催しがあるようには見えない。
 とはいえ、ちゃっかり、というかなんというか。美狐は、少し離れて一馬の筋肉ショーを見ていた境内の人に、声をかけて一着、法被をもらっていた。
 担ぎ手のように裸に、ではなく纏った羽衣の上から、小ぶりな法被を羽織る美狐は、出来ないなら出来る事をするまで。と神輿が下りていく予定の道に沿って、歩いていく。
 オブリビオンが現れる場所がはっきりしているなら、その時間に、即座に動けるように位置取っておくのだ。
 そうして、道を下りていく美狐は、寒そうに肩を竦ませて豚汁の屋台を見つめる男性を見つけた。
 買うかどうか、悩んでいるのか。となんとなくに感じ取った美狐が、その屋台を薦めようかと思った瞬間に、やはりやめたらしくくるりと背を向けたので、意思を尊重して何も言わないでおくことにした。
 と、いう彼。オスカー・ローレスト(小さくとも奮う者・f19434)も、美狐を視界の端に収めて、視線も感じていた。
 寒いという事もあったが、しかし、それ以上に初対面の相手に話しかけられそう、という予感に身震いをして、そっぽ向いたのが現実だった。
「……っ」
 冬の海風は容赦がない。太陽と北風の寓話があるが、北風はこんなものを吹かせて服を脱がせようとしたと考えると、結構やばい奴なのかもしれない、とまで思えてきてしまいそうだった。
 実際の所、法被に褌で着物を脱いでいる猟師たちがいるわけで何とも言えないが。
「さむ……なにか温かい飲み物」
 豚汁の屋台からは目を背けてしまった手前、もう話しかける勇気はない。また冷やかしか、とでも思われそう、と考えただけでも吐きそうになる。
 と、視線を彷徨わせて、目に留まったのは甘酒だった。
 そそ、と屋台へと寄り、言葉少なに、どもりながらどうにか注いでもらったそれを受け取ってから、気付く。
「(邪魔、に思われるかな)」
 ふと向けられる視線が、邪険に物語っているように感じて、そっと喧騒を離れる様に歩く。
 どこか落ち着ける場所で、温もりを放つ手の甘酒をちびちびと呑む算段を立て、海をふと見つめた。
 サムライエンパイアの海。そう聞いて真っ先に思い出すのは、先のエンパイアウォーでの厳島神社での戦いだ。
 あの時は、ゆっくりと見ている余裕は無かったが、しかし、こうして改めて見るとそういえば、と思い出すことがある。
「海、見るの初めてだったんだ」
 森の育ちである彼が、すこし遅れた感慨に浸っていた、まさに、その時。
「おーっ、オスカー!!」
「……っ!!?」
 唐突に呼ばれた自分の名前に、ビッ……クゥッ! と体が跳ねた。甘酒を手に零すことはどうにか回避し、振り返った先には、見慣れた顔と、見慣れぬ顔があった。
 見知った顔の方、ジャスパー・ドゥルジー("D"RIVE・f20695)は、ばくばくと驚いて高鳴る心臓に、少し顔色を青くするオスカーを気にすることなく。
「ひっさしぶりー、こんなとこで逢うなんて偶然だな」
 というか、気付く素振りすらなく気軽な挨拶を振り撒いてきた。
「え、あ、……う、うん、久し、ぶり」
「おん、なんだ知り合いか」
 オスカーに、そんなジャスパーへ砕けた返事を返せるわけもなく、しどろもどろな返事をしていると、団子の串を手に頬を膨らませる隣の男性が口を開く。
「っと、わりいな」
 と、みたらしの餡か。口の端についていた汚れを拭って。にい、と笑う。
「初対面に見せる顔じゃア、無かったな、悪ィ。八雲ってンだ、ヨロシク」
 と出雲・八雲(白狐・f21561)が先手を取った挨拶に。
「お、俺は……オス、カー……その、よ、よろしく」
「そうか、良い名だなァ」
「……、そ、そう」
 あまり言われない言葉に、オスカーも名前を誉め返すべきか、否か。と堂々巡りの思考が頭を揺らす。
 と、その一瞬の沈黙を遮ったのはジャスパーだった。
「それで、オスカーも仕事か?」
 初対面の相手への挨拶という、大役を済ませて疲労するオスカーへと、ジャスパーがずずい、と顔を寄せて、そんな事を小声で呟いたのだ。
 猟兵の仕事。つまりはオブリビオンの襲撃。あまり大声で言うべきではない、という判断だろう。
 そこの気遣いをオスカーにも回してほしいと、半ば怒るように思いながら、しかし、オスカーは素直に頷いた。
「なら、俺らと一緒に組もうぜ」
 手は大いに越したこたァねえだろ? と輝かせる目に拒否など返せるわけもない。
「そ、う……だね」
 と絞り出すような返事を聞いたジャスパーのその背後。食い切った団子の串を、ぎしぎしと歯で千切る様に擦りながら、八雲が聞き逃せない単語に、目くじらを立てていた。
「ォおい、今、仕事っつったか?」
「アレー? 言ってなかったーっ?」
 振り返るジャスパーは、明らかに抑揚の外れた返事をしている。冤罪の余地もない、確信犯だ。と八雲の脳裏に直感が電流がごとく迸る。
 彼自身、祭りだから行こうぜ、としか言われていない訳で。つまり。
「……嵌めやがったンだなァ、てめエ?」
 睨む八雲にもジャスパーに反省の色は無い。
 はあぁ、と深くため息を吐く横で、オスカーが怒りを露わにする初対面の人間に、また顔を青ざめさせている。
 なんというか、一番割を繰っているのは、彼なのかもしれない。
「あんまサムエンの文化になじみがねえんだ、かなり新鮮」
「要するに案内係ってかァ? 俺も、あンまり詳しかァねえぞ」
 あっけらかんと言うジャスパーに、八雲が、来ちまったもンは仕方がねェ、とばかりに言い返す。
 ざわ、と辺りが騒がしくなる。いや喧騒は変わらないが、四方八方へと散っていた人々の意識の向きが一か所へと集まる、音の無い音。ズア、と意識の表面を撫でるような騒がしさがあった。
「わーしょい!! わーしょい!!」と響く男の声に、ああ、来たのか。と振り返る。
「……なあ、八雲」
 とジャスパーはイカ焼きを咥えながら、器用にも明瞭に言葉を話す。
「神輿ってあれとどのつまり何なんだ? 神様でも乗ってるの?」
「ん、まァ。そンなとこだろ、神様だったり、神様じゃなかったり」
「なんだそりゃ」
「海の神黙らせようって、山の社からなンかを乗せてンだろ」
 それに乗っているのが、髪なのか悪魔なのか、それとも、人間なのか。知った事ではない。
「ふゥン」
 と、聞いた本人も、なんとなく分かったような分からないような、そんな適当な反応だった。
 オスカーはと言えば、それよりも、担ぎ手に交じっているひょっとこ面の男が気になっていた。
 あれも、猟兵なんだろうか、あれと一緒に戦うのか。と。
「……、あれが、海、に……着けば」
 戦いが始まる。
 三人は、三者三様にその時に備えていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『彼岸の兜風鈴』

POW   :    風鈴の音が響き渡る
予め【風鈴の音を響かせ続ける 】事で、その時間に応じて戦闘力を増強する。ただし動きが見破られやすくなる為当てにくい。
SPD   :    風鈴の音が共鳴する
【共鳴振動となる甲高い風鈴の音 】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
WIZ   :    風鈴の音が死者を呼ぶ
【黄泉の国 】の霊を召喚する。これは【悲鳴】や【武器】で攻撃する能力を持つ。

イラスト:marou

👑7
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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



断章追加します。
 城が海を割る。
 その光景に、しかし、即座に行動を起こした者達がいた。
 浜で、冷える海へと男たちが踏み入っていくのを眺めていた妖狐が、霊符を一枚投げ放り、男たちの呑まれる荒ぶる波を鎮め、そして、壊れた神輿の傍、やや乱暴に法被やら褌やら腕やら、掴める所を掴んで筋骨隆々となったひょっとこ面の男が浜へと他の男を放り上げていく。
 大漁、というには数は少ないか。
 浜に打ち上げられた海の男たちを蹴り飛ばさんばかりに追い払い、浜に進み出る見物客二人、と後ろから逃げ去る背を恐る恐ると見送る一人。
 ともかく、妖狐が事前に準備を済ませていたおかげで一般人の避難は素早く済んでいた。
 ならば、あとは心置きなく猟兵として力を振るうばかり。


 揺蕩う。
 キン、と鋭い音を炎に響かせながら、それは海の上を滑るように迫る。
 潮騒ではない音が波間を渡っている。確かな数は分かりはしないが、聳える城に至るに障害でしかない。
 ならば、それを排除して、あの城を打ち壊す事にするまでだ。



 第二章です。
 彼岸の兜風鈴との戦闘。一人あたり十数体、くらいの描写が基本になります。

 また、腰や頭まで海の冷水に浸かる状態です。水の抵抗で動きにくかったり、冷たかったりします。呼吸は頭を出せば十分に可能でしょう。

 第三章は、更に深くなり、呼吸や水中からの攻撃がしにくくなったりする予定です。

 ではよろしくお願いします。
ジャスパー・ドゥルジー
【隠れ鬼】
俺、飛べるから問題ねえんだけど
(八雲を見る)(オスカーを見る)
……ここで飛んだら担ぎ上げろとか言われそう(羽をしまう)

そういや俺、前もルーダスの案内で水浸しになったな
ヘンな縁もあったもんだ
腕にナイフ走らせ溢れた血で【イーコールの匣】
自在に宙を飛ぶ斧を生成
これなら俺が動かずとも問題ナッシン♪
兜ごとカチ割ってやるとも、イイ音で啼けよ

黄泉の国の霊とやらが召喚されちまう前に片そうぜ
違えッつーの数が増えたら厄介だろ怖くなんてねえからな(早口)


オスカー・ローレスト
【隠れ鬼】

け、結構深い、ね……俺は、ちびだから……すぐに頭の方まで、来そう……(海の水のしょっぱさに驚くなどもしつつ

羽は、あるけど……俺、飛ぶのは無理、だね……(ジャスパーの視線を受け申し訳なさそうな顔

遠距離から、【暴風纏いし矢羽の乱舞】の【一斉発射】を、することにする、よ……これなら、動かなくていいし、俺は【視力】良いから、遠くから敵を捉えるのに問題ない、と思う……
れ、霊とか、悲鳴とか、こ、怖いからって言うのも……あ、あるけ、ど……(がくがく

う、うん、そう、だね……?(早口になるジャスパーにどうしたんだろうと思いつつ
ぴぃ?!(八雲の「悲鳴が寧ろ心地いいくらい」発言に耳を疑うなどする


出雲・八雲
【隠れ鬼】で参加

飛べるだァ?うるせェ地に足つけやがれ   ずるィぞ

【地獄の獄卒】で攻撃
必要なら牛頭鬼に自分を肩に乗せさせて移動
これなら水に浸かる必要も無ェしな
このクソ寒い時期に濡れ鼠になるのは勘弁

ア”ァ?
この格好じゃ濡れると動きが取れ無ェんだよ
文句あンのか?

なンだお前さん達ビビってンのかァ?
あーそうかよ。
俺は聞き慣れすぎて別に何とも無ェな。
むしろ悲鳴が心地良いくらいだなァ



 凍るような潮騒が揺れている。
 その上を滑るように迫りくる兜風鈴の大群。
 それを前に。
「……」
「……」
「……」
 何故か険悪な雰囲気で無言の視線を交わすジャスパー・ドゥルジー("D"RIVE・f20695)と出雲・八雲(白狐・f21561)。
 と、その雰囲気に割り込む訳にもいかず狼狽えるオスカー・ローレスト(小さくとも奮う者・f19434)がいた。
「ちぇー」
 と、ジャスパーは広げていた羽を締まっていた。
 詰まる所、先ほどの沈黙は。
「俺飛べるんだけど」
「うるせェ、地に足付けやがれ」
 という具合だったわけだ。
 オスカーは、おろおろとしていただけなので会話には加わってはいなかった。
 ひとまず、そのまま、海へと入る事になった一行は、水面に浮かぶオブリビオン目指し、波間に分け入っていく。
「……」
 幾らか進んで、最後尾でひたりと立ち止まった八雲は、何を思ったか召還して従えていた馬の頭、牛の頭の大柄の人型の化物、牛頭鬼と馬頭鬼の片方、牛頭鬼に指を立て。
「あー! すっりいの!」
 その肩の上に摘まみ上げられ、乗せられた彼に、振り返ったジャスパーが指を差し、野次を飛ばしていた。
 俺の事するい、とか言ってたじゃねえか、と騒ぐジャスパーに、八雲は地に足付けろと言っていた数分前の自分のこと等気にした様子もない。
「ぁあ? なんか文句あンのか」
 服が水吸って動きが取れねえんだ、という八雲。
「文句しか出ねえっつうか、さあ」とジャスパーは、一度締まった翼を広げて一瞬、オスカーを担ぎ上げる。
 水を吸ったずぶぬれの男が困惑の声を上げるも気にせず、馬頭鬼の肩へと乗せると、よし、と頷く。
「こうすりゃ飛んでも文句言われないじゃん?」
「チッ」
 彼らが、険悪に見えて結構それで上手くコミュニケーションが取れている、というのを理解しながらも、慣れはしていないオスカーは、まだ少し遠くに見える兜風鈴へと羽の矢を撃ち出す事にした。
 海面を見下ろす形になって視線も通りやすくなったのはありがたい。風を纏い、空気を裂いて一直線に走った羽の一片が兜風鈴を捉えて、次々に砕いていく。
 それを見た、近接手段に訴えかける気でいた二人は、各々に感嘆の声を上げた。
「おー、オスカーすげえな、このまま黄泉の国の霊とやらが召喚されちまう前に片そうぜ」
「なンだお前さん達ビビってンのかァ?」
「んーなわけねえだろ?」
 ふんすと、胸を張るばかりにジャスパーは言う。
「聞いた感じ数多そうじゃん、あんまり増えられても困るっつうか、数は力だしさ厄介じゃねえか。冷えるしな! とっとと片付けねえと濡れた体冷えて風邪引いちまうわ、うん。だから早く片付けるに越したことはねえっつうか? いや、怖いとかじゃなく、厄介じゃんって事で、怖い訳じゃねえんだけどな、ほんと。っていうかお前はそこんとこどうなの。意外と怖がってたりするんじゃねえのー?」
 怒涛の自己弁護であった。
 翼を広げて、オスカーの射撃を邪魔しない空中に陣取りつつ、八雲に絡みに行ったジャスパーに、返るのは一言だった。
「あーそうかよ」
 と冷え冷えとした視線を送る。
「俺は聞き慣れすぎて別に何とも無ェな」
 むしろ悲鳴が心地良いくらいだなァ、とまで言った八雲に、オスカーがぴぃ、と変な声を漏らすその時、ゆらりと自らの顔の横に揺蕩う一本の腕に気付いた。
 ジャスパーか、と思うも、青白くはあっても、ジャスパーの腕はぶよぶよと膨らんではいないし、腐った果実じみた甘い香りを発することも無い。
「……ぴぃ」再び。
 腕は海から生えていた。
 それは、海底へと沈ませようとする、怨嗟の腕か、一風変わった海藻か何かのように揺れているのだった。
 無数の腕が、水底から水面を突き破って、ぶよぶよと膨らんだ指先の歪に削れた爪を突き立てんと迫る。
「……ひょ」とジャスパーが頓狂な声を上げるのを待つことも無く。
 波間の海面に、存在しない人の顔のような泡が浮かんでは、聞き取れぬ悲鳴を上げる。何を叫んでいるのか、分からないが、気分のいい言葉ではないのは確かか。
 脳の裏側に泥肥を塗りたくられるような不快感が、背筋を震わせる。集中など、途端に掻き消えてしまいそうな声だった。
 実際、距離を離して狙撃していたオスカーの羽の照準がぶれて、数体接近を許している。
 ジャスパーは、ナイフを自分の腕に躊躇なく刺し裂きながら、八雲へと少し信じがたいという目を向けていた。
「……これが心地いいとか、八雲サン、割かし本気でキモーい」
「抜かす暇あンなら、とっとと片ァつけろ!」
 茶化すジャスパーに乱暴に言葉を投げた八雲の下で、牛頭鬼、馬頭鬼はその手に持った鈍重な拷問具を叩きつけて、纏わる死者の腕を噴き散らかし、ジャスパーの腕から溢れた血液が自在に踊る斧を形作り、迫る兜風鈴を引き潰す。
 加えて、オスカーも直下へと暴風纏わせる羽を討ち放っている。
 バ、ッガ!! と水が立てる音とは思えない硬い何かが壊れるような音が連続し、盛大な水しぶきが上がる。
「ハァ……どっちにしても、濡れ鼠じゃねェか、クソが」
「お、俺は……息出来るだけ、ありがたい……けど……」
 と消え入りそうな声でオスカーが言う。礼を言う事すら、相手の機嫌を損ねかねないというばかり。
 言いたい事が在るならはっきり、明々に喋れ。と言いたくもなるが、短い付き合いでも流石に分かる。
 ジャスパーを挟まない、オスカーとの会話は、一先ずチームワーク的には確実に致命的な結果を生む。
 だから八雲は、腕を振るう度に揺れる地獄の極卒の肩の上であまり聞こえないように小さくため息を吐いた。
 小さくオスカーが肩を震わせたのは、その声が聞こえたのか、はたまた、黄泉の霊の悲鳴が聞こえたのか。
 真実がどうであれ、目ざとくその様子を見つけたジャスパーが八雲を茶化すきっかけになってしまったことだけは確かだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

伊敷・一馬
不採用含め全て歓迎だ!

兜風鈴。よく分からんが、あれを装備すれば私はもっと輝くのじゃないか?
(防御力とか攻撃されないかとかそういった心配を度外視した発想は認めるべ)

ともかく敵を倒さねば話にならん。見よ、冬の海をも沸騰させる我がバディ!
先手必勝、ドルフィンキックで大空に飛び出しUCで即座に叩く!
(水の固さを知らない人の発想だべ。お面だものな)

君たちの気持ちはわかる。夏が…恋しいのだろう…?
だからと言って自らを風鈴としても冬の海には寒さと響き、孤独が増すばかり。
暖めてあげよう、この私の愛で!
これぞ私のジャスティッ!ふん!
(あの数で寂しいはずはないと思うんだども。あとベアハッグは愛とは呼ばないべ)



 海面を跳ねる男がいた。
 いや、彼はその全身のバネで水をかき分け、時折トビウオのように海面に全身を浮かび上がらせながら、さながら人間魚雷がごとく冷えた海を泳いでいるのだ。
「ああ、分かるぞ、君たちの気持ちは、とても分かる」
 ぐんぐん、と迫る兜風鈴に、男、伊敷・一馬(燃える正義のひょっとこライダー・f15453)は、寄せる波も厭わず、叫んでいる。
「夏が……、夏の海が……恋しいのだろう……?」
 青、というよりも、灰色を湛えるような寒海を熱い男の肌が裂いていく。
 兜風鈴は、その情熱の炎を溢れさせながら、何かを求めている。風鈴とは、夏の風物詩。海は、夏の醍醐味。ならば、何を求めているのか、は明白だ……っ。
 ――すなわち、夏!!
 だが、涼やかな音を響かせようと、夏は来ず、冬の海に寒々と響くばかり。寂しいのだ、彼らは……!
 ならば! 一肌脱いでやるのが男、というものだろう!
「いや、寂しい、とか思う数じゃないんと思うんだども」と漏れた言葉にしかし、彼らが止まることは無い。
 ず、と一馬の体が、海中へと一度沈み込み、そして、次の瞬間、その強いドルフィンキックによってその体は、ひときわ勢いよく海面を飛び出していた。
 ざっ、ぱああッッ!!!! と盛大な水しぶきと共に一馬の体が大空へと打ちあがったのだ!!
「暖めてあげよう、この私の愛で!!」
 陽光を背に、全身の筋肉を隆起させ、マッスル大盛りなエジプトの壁画じみたポーズを取った一馬が、火炎を纏い――、一筋の流星となった!
 大空から、豪然と炎の尾を棚引かせ、男が駆ける。
「いや、こんなベアハッグは愛とは呼ば……ん、これ、腹の皮痛くなる奴でねぇべk」
 ど、ゴ――ッ!!
 一馬の体が、何かに気付いたような声をかき消すように爆発じみた轟音が響いて、豪炎と水蒸気が膨らみ、周囲一帯の兜風鈴を噴き散らかす。一つ海上に雲が浮かんだかのような衝撃の中で。
「……お面は、水面に叩きつけられる感覚知らねえべなあ」
 ひりひりと真っ赤になった腹を抑える一馬がいた。ひょっとこの面と共にある事で強化され、軽減されてはいても痛い物は痛い。
 プールで水面を打つ、そんな経験はひょっとこのお面は皆無だろう。何せ、水面に落ちても、叩きつけようと、パチャン、と軽い音を立てる程度だなのだから。
「ふむ」
 と一馬の体が、自分のお腹を摩る間に、一馬の面は、何かを考えていた。
「兜風鈴、あれを装備すれば私はもっと輝くのじゃないか?」
 ひょっとこの面に兜。その下は法被と褌。防御の偏りがとてつもない事になる。いや以前に、被った瞬間焼き殺されそうだ、とかそういった心配をさて置いて。
「諸々度外視した、その発想だけは認めるべ」
 けど却下だべ。と。
 送られてきた企画書にバッテンの判子を押すが如く、言った一馬は再び水中を蹴る中で考える。
 あと、何回かプレスダイブをする事になりそうだども、明日お腹壊さねえべか? と。
 田舎の川に飛び込みまくった少年のような事を心配しながら、一馬は再び波間を裂いていく。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『最強無敵究極天魔城』

POW   :    最強無敵究極天魔拳
単純で重い【拳】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD   :    最強無敵究極天魔忍者隊
【城内から忍者軍団】が現れ、協力してくれる。それは、自身からレベルの二乗m半径の範囲を移動できる。
WIZ   :    最強無敵究極天魔砲
【両肩の砲身】を向けた対象に、【最強無敵究極天魔砲】でダメージを与える。命中率が高い。

イラスト:8mix

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠砲撃怪獣・ガンドドンです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 兜風鈴の群れを抜けて。
 猟兵達は、まだ兜風鈴を周囲に纏わせるように送り出し、海中から聳える巨城に対面していた。
 小さな山程の巨体。
 攻撃を外す事はそうそう無いだろうが、しかし、大きさは力だ。防御の固い部分では弾かれる。
 それにあまり暴れられると高波が、あの町を襲うだろう。あまり時間もかけられない。
 見た限り、海に浸かる下部は防御が固く、上部程に攻撃は通りやすそうだ。
 ならば方針は簡単だ。
 不利な海中ではなく、海上に躍り出て、強力な一撃を叩き込む。
 その時、城が猟兵たちに気づいたのか、ドウ、と海をも震わせる声を発していた。
「我は、最強無敵究極天魔城!! 第六天魔王信長様に仕える城が一つ!!」
 ご、と大海が揺れる。その足が踏み出すだけで波が荒ぶり、怒濤を立てる。
「いざ、猟兵どもよ! 主の弔いの献花にしてくれよう!!」
 


 第三章、城のオブリビオンとの戦闘です。
 水深は深く、更に海中からの攻撃は減衰されます。
 海上に飛ぶ、跳びあがる、狙撃等でより上部へ、より強力な一撃を与えてください。

 宜しくお願いします。
伊敷・一馬
不採用含めて全て歓迎だ!

恐ろしい、名前負けしない絵面(パゥワァ)がみて取れるッ…!だが私は負けない、この胸に一輪のジャスティスある限り、正義が私を照らす限り!この私が正義を進む限り!
そうッ、私こそがジャスティス☆
窓に目掛けて突撃、内部攻撃を狙うぞ!
(これ入れずに城壁でカサカサやるパターンだべ)

主君を想い、主君の為に立つ。美しい忠義の心、そこに正義はあるのだろう。
だが、人の為に立つならば、それはまた己の為でなければならないっ!復讐などは己の為ではなく、己を貶めるものだ!
そんなものは正義ではない!ただのナルシズム!
君はもっと輝けるはずだ…共に行こう、高みへと!
そう、私たちこそがジャスティイーッ!



 海底に沈みながら、重い風が如く水流が褌一丁の男の体を揺らしていた。
「恐ろしいな……」
 海に足を着け尚も海上へと、その姿を聳えさせる最強無敵究極天魔城。
 尊大不遜な名ではあるが、しかし、それを軽んじるつもりにもならない。なぜなら。
「名前負けしない絵面が見て取れる……っ」
 感じる。その城が持つ、体を震わせるような絵面(ぱぅわぁ)を。
 声を発する度、その体から空気が抜けていく。沈んだ体は、限界だ。
 だが、彼は焦燥に駆られたままに、水天を破る気は無い。それはあの最強無敵究極天魔城へと妥協した一撃を差し向けるという事に他ならない。
 そんな事は、伊敷・一馬(燃える正義のひょっとこライダー・f15453)には許容しきれるものでは無かったのだ。
「主君を想い、主君の為に立つ」
 美しい忠義。その為に、ここにあるというのならば。全力で相手取る。
「正義はそこにあるのだろう」
 だが、しかし、彼はまだ足りないとばかりに叫ぶ。腰に手を当て、波に法被を揺らがせて、人差指を天に聳える最強無敵究極天魔城へと突きつける。
「人の為に立つならば、それはまた己の為でなければならないっ! 復讐などは己の為ではなく、己を貶めるものだ!」

 ――ゴ。

 体を揺らす重い風に震えが走る。
 それはさながら海底火山の噴火の兆候にも似て、しかし、それは確かに一馬の、一馬の踏みしめる海底の岩肌から発せられていた。
「君はもっと、輝けるはずだ……共に行こう、高みへとッッ!!!」
 魅せろ。
 正義とは何なのかを!
 これが、これこそが、彼らこそが正義であると叫ぶのだッ!!
 燃え滾るオーラが彼の体を燃え滾らせる。燃え滾って更に燃え滾るそれは、彼のテンションを燃え滾らせ、更に燃え滾っていく!!
 海底を踏み出した。天上の槌が落ちたかという衝撃に海を揺らし、翔け上る!!!!
「私たちこそが、ジャス――」
 急加速に壁となって襲い来る水圧を無理やりに押し破り、瞬く間に一馬の体は暗い水底から光に満ちる波のその上へと飛び上がっていた!!
 だが、それでは終わらない。
 そう、その程度で彼が止まるはずもない。
 狙うはその窓。巨大建造物として、その内側に空洞があり、兵を格納している事は分かっている。
 ならば内部攻撃が効果的なのは自明の理!!
「矮小なる猟兵風情が!!」
 最強無敵究極天魔城もそれを理解しているのだろう。飛び出してきた一馬へと、超重量兵器となった拳、最強無敵究極天魔拳が一馬へと迫るッ!!!!
 大きさにして、人と蚊程の比率。勝ち目など見出せないその拳に対し、一馬はしかし逃げも隠れもしない。
 突き出すは、燃え滾り燃え滾っては燃え滾るオーラを燃え滾らせる拳!!
 ゴッガッ!!!!
 真正面からぶつかり合った大小の拳、その決着は。
「……っなん、だと!!」
 瞬間、数センチ。
 一馬の拳が打ち勝ち、最強無敵究極天魔城の拳を押し返した、本の僅かな距離。だが、それは、紛れもなく一馬の勝利であった。
 ゴパっ! と肘、肩といった関節部から破片を散らした腕に飛び乗り、そのままそれを足場に再び加速。正しく正義の一矢となった一馬の体は、最強無敵究極天魔城の壁、その窓へと豪然と着弾ッ!!
 衝撃に視界を揺らすような一馬の一撃に、最強無敵究極天魔城の体が大きく仰け反る様に動きを止める。
 そして、一馬はその窓の格子を突き破り、内部へと踏み入――。
「ごべ、っ!?」
 ……れなかった。
 木材で出来ているように見えた格子窓は、めちゃくちゃに硬かったようで。
 なら、猛烈な勢いで飛び込んだ一馬は、どうなったか、と言えば。
 べちゃあと、さながら壁に投げつけた餅のように大の字に広がっていた。暑苦しく燃え滾っていたオーラも立ち消え、青い法被が情けなく揺れる。
「んまあ、……そんな気はしてたべ」
 そんな体の方の声と共に、ぺらりと一馬の体が剥がれる。
 どこか冷えた海風が、彼の体を攫う様にびゅうと過ぎていく。それがどこか叙情的に思えて仕方のないような、そんな憂いを帯びた中年男性の頬に浮かんだ涙が塩っ辛い海へと落ちていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

火土金水・明
魔法の箒に跨って【空中戦】の技能を使用します。
「空中戦で巨大ロボと戦えるのは、一つのロマンですね。」「信長の敵討ちですか、残念ながらそうはいきません。」
【WIZ】で攻撃です。
攻撃方法は、【先制攻撃】で【高速詠唱】し【破魔】を付けた【全力魔法】の【サンダーボルト】を【範囲攻撃】にして、『最強無敵究極天魔城』が何処に移動しても巻き込めるようにして【2回攻撃】をします。相手の攻撃に関しては【見切り】【残像】【オーラ防御】で、ダメージの軽減を試みます。
「(攻撃を回避したら)残念、それは残像です。」「オブリビオンは『骸の海』へ帰りなさい。」
アドリブや他の方との絡み等は、お任せします。



 聳える最強無敵究極天魔城。
 その天守閣よりも上部に挿げられた巨顔と視線の高さを同じくする女性がいた。
 黒に揃えた衣服に身を纏ってはいるが。
 しかし、足や胸、その肌を大胆にも冬の空風に晒して、眉一つ動かさず、むしろ僅かに笑みすら浮かべている。
 箒に跨り空を飛ぶ彼女を、この世界には無い大陸にすむ人間が見たのであれば「魔女だ!」などと騒ぎが起きていただろう。
 街の人々にとっては馴染みがなさ過ぎて、誰かがいるな、程度で済まされている。こういう光景は先の戦争で見慣れたのかもしれない。
「ともかく」
 そんな風にとうとうと考えていた魔女らしき女性、火土金水・明(夜闇のウィザード・f01561)は、一つ括りにした黒の髪を風に揺らしながら、誰かの攻撃に揺らいだ最強無敵究極天魔へと狙いをつける。
「信長の仇討ち……そうはいきません」
 彼女は、魔力を滾らせた指先を最強無敵究極天魔城へと向けた。
 同時に、最強無敵究極天魔城もまた彼女の高ぶる魔力に反応を示していた。瞬時に両肩の砲身が動く。
 そして、指先と砲塔。それらが指し示す線が一直線に結ばれた瞬間。
 カッ、とまるで天が瞬くような明暗が起きた。晴天だというのにも関わらず目も眩む雷撃が空から降る。
 そしてそれが体を貫く前に、と最強無敵究極天魔城の両肩の砲身から、天を轟かせるほどの爆音と共に砲弾が放たれていた。質量兵器が宙を駆け、そして、照準に箒に跨がった明を違わずに撃ち抜く。
 砲弾一つで、彼女の体よりも大きなそれは、喩え、体の一部でも着弾していれば致命傷に違いない。
 それを真っ正面から受け止めたというのであれば――。
「残念」
 その姿は跡形もなく、肉片へと分解されていないとならなかった。
 だが、彼女はそこに五体満足で飛んでいた。視覚的に防御が厚いとは言えない服の、端の一つも解れはない。
「残像です」
 そう、最強無敵究極天魔城が撃ち抜いたのは、虚像の彼女。それだけだったのだ。
「それと、ごめんなさい」
 明は、口許に指を寄せて、そう謝った。
「ほんとは今の一撃、全力じゃないんです」
 先程の一撃は本気ではなかったとはいえ、一切力を抜いた訳ではない。だというのに、その指先から溢れる魔力は、明確に先程とは隔絶した濃度で。
 ありありと分かる。
「これが」

 ――全力。

 彼女の細い指が、最強無敵究極天魔城を指差す。
 瞬間。
 大地が割れる程の爆音が海中から響き渡った。豪雷、さながら雷神の拳とでも言うような極太の光の幹が天地を繋ぎ、最強無敵究極天魔城を、その白光で包み込んでいた。
 魔力によって増強された熱と衝撃による破壊が、小さな山程の巨体へと容赦なく襲いかかる!
 それは、刹那の攻撃。
 その世界そのものを震わせるような威力に反して、その雷光は瞬きの間隙にしか顕現せしめてはいなかった。
「ぐ、……ぉ……オオ」
 だが、全てを焼き焦がすような雷熱が与えた傷は凄まじい威力であった。最強無敵究極天魔城は、堪えきれずその巨体を支える足を砕き折るように、波の中へと膝を着く。
 ザ、ッッパ! と大波を荒げ、飛沫が天高く、逆雨がごとく舞い上がっていく。
 塩辛く、少し粘度を感じる飛沫を肌に伝わせながら、明はほんの少しの間だけ、広がる海原に傾きはじめた太陽の赤を眺めていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ジャスパー・ドゥルジー
【隠れ鬼】
おーおーまたでっけェのがでてきたなァ
壊し甲斐があるンじゃねーの、お二人さん?
頼んだぜ、とオスカーにぱちりウィンク
震えてさえなきゃ奴の狙いは正確無比
あのでけえだけの大砲より余程頼りになる

血を用いて【ジャバウォックの歌】
空翔ける魔竜を召喚し騎乗する
俺らがあのデカブツ惹きつけるわ、あとは頼んだぜ!

奴の拳を惹きつけるように至近距離を飛び回って牽制
隙がありゃァ相棒の吐く炎で視界を眩ませてやる
ちょっとくらいの被弾は相棒もろとも【激痛耐性】でスルーだ
でけェだけで大して威力もねェ
つまんねー相手だなァ
如何に負傷しようと獰猛に笑む

――なァ卒塔婆の使い方それで合ってんの?
八雲って俺より余程パンクじゃね?


出雲・八雲
【隠れ鬼】

ほォ、こりゃでっけェ的だなァ

こンなデカブツが町へ行けば阿鼻叫喚だろうなァ。
それはそれで面白そうだが、敵の手でってのが癪だが。
ハッ、冗談だ。


敵の攻撃が的確にこっちを当ててくンならわざわざよけるなンて面倒な真似はしねェ
当てさせれば良いンだよ

【百鬼夜行】で敵の攻撃を召喚した魑魅魍魎に当てさせて相殺する

ホラよ、当たってンだろ?
まァ多少は俺にも当たるけどなァ

なァに、【激痛耐性】で俺も多少は痛みに慣れてンだ
このままデカブツに突っ込むぜェ

かぎ爪で【鎧砕き】【部位破壊】【傷口をえぐる】
ついでに卒塔婆で【呪詛】もオマケだ

デカいのは見た目だけかァ?
ちゃんと守らなきゃ落城しちまうぜ?


オスカー・ローレスト
【隠れ鬼】

ぴゃあ?!?!(敵さんの大声に囀りの如き悲鳴を上げる小雀

お、怯えてる場合じゃ、ない、放っておいたら、ま、町、が……!
って、や、八雲……っ(八雲の発言にちょっと咎めるような視線を向け、

……頼んだぜ、なんて……前に共闘した時も、そう、だったけど……そんな風に背中を預けて……どうして、俺、なんか、に……
(ジャスパーのウィンクには戸惑いにも見える表情で頷きつつ)

……それでも、作ってくれた隙、無駄にしない、ように……しなくちゃ……
ジャスパー達が上手く引き付けられるように……【目立たない】よう気配を殺して……【暴風纏いし矢羽の乱舞】の【一斉発射】を……敵の頭上に降らせる、よ……



 天を破らんばかりの雷轟と、それをその身に余すことなく受けた最強無敵究極天魔城が崩れ落ちた衝撃に荒れ狂うような波の上。
「ヒュー」と、その光景を眺めて、朗らかに口笛を飛ばす男がいた。
「うんうん、派手で良いじゃねェの、なァ?」
「あれが町まで行きゃ、随分楽しい祭りになりそうだなァ」
 阿鼻叫喚で溢れかえってよォ。
 と口笛を吹いた男、波の上を揺蕩うジャスパー・ドゥルジー("D"RIVE・f20695)に出雲・八雲(白狐・f21561)が、ハッと嘲笑うように言を発した。
「ま、敵の手でってのが癪だが」
 膝に肘ついて、八雲は頬杖を突く。さっきまで足代わりにしていた鬼はもういない。深まる海に、沈む泥。それらで動きが鈍ったので捨て置き、代わりに海藻めいた黒い靄を波に浮かべて絨毯代わりに胡坐をかいている。
 多分、兜風鈴が呼び出した水死体の霊と、起源自体は似通ったものだろう。
 その正体に彼自身興味はない。一先ず自分が召還して支配下に置いているならば気にも留めないが。
「……や、八雲……」
 だが、しかし、そこに立つもう一人は、ぶよぶよと、生々しく沈む感触に恐怖やら不快感やらをないまぜにした表情を浮かべていた。
 たとえば、の話であっても町の人々の不幸を、娯楽のように笑う八雲に咎めるような声色を滲ませたオスカーは。
「あァ……?」
 険のある物言いに、やはり少し肩を跳ね上げるのだった。
「ハッ、冗談だ」
 八雲がそう、手を軽く振る。
 オスカーは、この短い付き合いでも、なんとなく彼を理解しつつあった。悪言を舌先で転がしながらも、しかし、それの実現を望んでいるわけではない、……と思う。
 とはいえ、もしオスカーが「思ってもない事を言っている」等と指摘の一つでもすれば、その言葉をこそ否定するために町一つ、水火に包みかねない恐ろしさも、やはり、拭いきれるものでは無く。
「来る、よ」
 見上げた先、全身から黒煙を吹かせながらも再び動き始めた最強無敵究極天魔城へと注目を逸らす事だけに留める。
「叩き潰してくれる……っ!!」
 号砲じみた声に「ぴゃあ!」と跳ねたオスカーに対して、ジャスパーはその肩の砲塔に狙いを定められた事に喜色を滲ませ、八雲は億劫そうに嘆息を返す。
「狙われたなァ! どうするよ?」
「揃いも揃って煩ェんだよ」
 呆れを吐く。
 いや、むしろ呆れるのは味方に対してか。一一怯えるオスカーと一一燥ぐジャスパー。己の領分を全うするデカブツの方が、断然マシだと吐き捨てる様に。
「当てに来てンだから、当てさせりゃ良いだろォが」
 焦げた体を震わせて砲身を轟かせた最強無敵究極天魔城に手を振りかざす。
 走る砲弾。明らかに八雲たちの体よりも巨大な砲弾へと差し出した手は、別にその比して矮小な腕で受け止めようとしたわけではない。
 海が黒く膨らむ程に。
 八雲の手に誘われた骨や肉、異形の動物、植物。そう言った妖怪の群れが暗い海の底からあふれ伸び、迫る砲弾へと正面から衝突したのだった。
 ゾ、ゴゴァ!! と筆舌に尽くしがたい、骨やら肉やら木やら鉄やらが折れる多重奏を響かせて、軌道を逸らされた砲弾が近くの海上へと落ち。
 ドゴボ、と鈍い音すら立て、大量の飛沫が舞い上がった。
「当たったら、オシマイか」と八雲は、細かな雨に煙るような潮水の中で息を吐く。大きさと言うのは、それだけで十分な武器だ。
 砲弾に直撃すれば、全身に衝撃を逸らす場を与えず爆散する。直撃を防いでも四肢のどれかを引っかければ、千切られる。死にはしないかもしれないが、まあ、足手まといにしかならないだろう。
 そんな砲撃に。
「んじゃまあ、俺。囮いってくっからぁ」
 と言って。

 ――ジャスパーは自らの腕に突き立てたナイフを、肘から親指まで滑らせていた。

 オスカーは凶行に目をしばたかせ、八雲は興味なさげに一瞥だけをよこす。
 まるで、カッターで鉛筆を削るような気軽さで、ジャスパーの腕から肉が捲れていた。前腕から親指までの骨を覗かせ、宙を泳いだ肉塊から滴る血液がまるで意思を持つようにその腕の肉を包み、喰らい、黒と赤が渦を巻くように膨れ上がって形を成す。
 揺れる黒い炎に実体化した鱗。それはジャバウォックの名を冠する、魔炎龍。
 頼んだぜ、とウィンクと共にジャスパーは自らの傷に構うことなくそれに飛び乗っていた。
「え、……ジャス」
 ジャスパー、とオスカーが呼び止めようとした時には、既にその姿は黒炎と灼鱗の影に隠れている。
 それを呆けるように見上げるオスカーの隣で、胡坐を解いた八雲は立ち上がっていた。
 当たればただでは済まない。そう真正面から示されては、八雲としてはこう答えるしかない。
 それはもう仕方がないのだ。
「ンなもん、痛かぁねエよ」
 なおも、狙いを定めてくる砲身に、八雲は切れ長の目を好戦的に笑ませると、足場にしていた魑魅魍魎どもを溢れさせる。
 ご、ボァ!! と八雲の体を押し上げて、海中から伸びた妖が最強無敵究極天魔城へと迫っていった。
 ジャスパーは、ビル一つを武器にするような、超重量級のパンチを魔炎龍の羽ばたきの反動でかわし抜けながら、そんな八雲の突進を見て、口をへの字に曲げていた。
「ッ、鬱、陶しィんだよ!! 手前よォ!」
 かぎ爪で届かないと知るや、あやかしの壁で砲撃を躱し抜けながら彼が投擲するのは、木製の投槍めいたなにか。
 というか、卒塔婆だった。
 日本風の木材で作られた供養を主な目的とする、小さな建造物。
「なァ、卒塔婆の使い方それで合ってんの?」
「アァッ!? 合ってようが、間違ってようが、ンなモン俺に関係ねェだろうが!!」
「ええ……、ロックじゃん」
 ジャスパーは、跨る彼女が吹く炎で、気を引くように飛翔しながら、呪詛を最強無敵究極天魔城に打ち込む八雲へと、感動をすら滲ませる称賛を送り、そうして。
「さて」
オスカーはどうしているか。
 そう思いを馳せていた。

 海藻じみた妖怪の上に残されたオスカー一人。
「……はぁ……ッ」
 吐く息は荒々しい。分かっている、それが格好のつかない、惨めな吐き方だとは。
「頼んだ、だなんて」
 迷惑だ、戸惑いを起こさせるそんな言葉を投げかけられても、それに肯定の返事を返せるわけもない。
 濁った怒りをジャスパーへと向ける。その先で、避けきれない拳の一撃にジャスパーが吹き飛び、魑魅魍魎の帳を抜けた弾丸に八雲が弾かれた。
「……っ!」
 息を呑む。
 彼は知っているのか。それが、期待に応えられず彼が傷付く事への怒り。そんなものに彩られて等いない事に。
 それが期待に応えられない自分へ、自らが失望したくない、というエゴから発せられるものだという事に。
『――つまんねーなァ!! 図体だけでっかくても、痛くもねえじゃねェか!!』
 だが、それでも声は途切れない。
 空中、衝撃をそのまま慣性へと逃せる状態だとしても、あの拳を身に受けて『痛くない』はずがない。
『このまま、落城しちまうんじゃねえか?』
 八雲とジャスパーに続い、挑発する言葉を発している。
「ああ、ッもう……!!」
 前髪を掴んで、全身に力を込めて視界を鎖す。痛覚が過分に刺激されて、やらない理由を探す脳の動きを、阻害する。
「わか、ってる……よ」
 この時も、卑屈に自分を拒む自分の精神の情けなさなんて。
 自分の臓腑の底から、この体を食い破ってくれれば、どれ程楽になるか。
 だが、そんな事は起こらない。
 自分がやることは、既に限定され切っている。それをしなければいけない。
 そう、目の前に道を作られてしまっている。
 期待に応える事。それを為さなければ、いけないように。
 あの城の怪物の意識にオスカーはもういない。ここで死んだとしてあれがそれを喜ぶ事すらしない。
 だから、知れず、彼は翼を広げる。
 一枚一枚は脆弱なる羽の一片。それが最強無敵究極天魔城の頭上に舞い上がる。
 その巨体を吹き飛ばす暴風を起こすには、脆弱に過ぎる翼だが。

 全身傷に塗れて、展開したそれに言葉を交わす。
「囮、受けてくれるたぁな、八雲サンやい」
「アイツが役立たずなら、真っ先にテメエを殺すつもりだったケドなァ?」
「ぉウー、怖」

 揺らぐその巨体を沈ませる猛禽の爪になら、――事足りる。

「いい加減、その大声止めておくれよ」
 瞬間。
 一つ一つが嵐を内包する羽、三百にも至らんばかりの嵐が最強無敵究極天魔城のその頭蓋部分で炸裂していた。
 嵐、それが、重なりあった災害そのものが。暴虐たる牙を剥き――。



 浜辺でその聳える巨城と猟兵の戦いを見ていた人々は、その瞬間を見つめていた。
 だが、それをはっきりと目視出来たものは、果たしていたのか。
 ゴ、ガッ!! といっそ物理的な衝撃すら纏って弾けた暴風の壁に舞い上がる砂嵐が、かれらの眼を遮っていた。
「……っ、ぁ、れは」
 砂嵐が止み、彼らが目を開けるまで数秒。
 傾いていた陽が、遠く海の果てに飲み込まれていくその赤に。聳えていた城がその姿を崩れさせ、瓦礫の群れとなって夜の暗さを湛える海へと落ちていく。

 炎、雷。さながらそれが生んだ嵐の過ぎた先。

 春めいた凪の海を、僅かに感じさせていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年03月08日


挿絵イラスト