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五寸の釘と引き換えに

#UDCアース

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#UDCアース


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●深夜二時、五寸の釘と藁人形を。
 その噂は、最初は古典的な与太話だった。
 オカルトに興味がなくてもほとんどの日本人は知っているだろう話。深夜、草木も眠る丑三つ時。神社のご神木に五寸釘で藁人形を打ち付ければ、呪いが叶う。
 ただしそれを誰にも見られてはならない。見られたものは…………そんな噂話。
 だがこの町では、いつしかその噂話は変質していた。
「深夜二時、学校の裏山、山道の外れにある古い神社で」
「御神木に五寸釘で藁人形を打ち付ける」
「すると天狗さまが来て呪った相手を神隠しにしてくれる」
「ただし、少しでも呪う心に迷いがあると――」
 こんな話が、今学生たちの間で流行っている。
 やれ二組の何とかさんは呪われたから学校に来ないのだ。やれC組の何とかさんは呪いを迷ったから天狗に連れて行かれたのだ。
 その真偽は置いても、この町の学校で欠席が目立つのは事実。そして、その欠席者達に共通するのが――この噂に興味を示していたことである。
 しかし、たとえ神隠しに遭うとしても、人の情念は止まらない事がある。このみもまた、そんな呪詛に最後の望みを託す少女だった。
 暗い夜の山道を、このみは懐中電灯の小さなLEDを頼りに駆け上る。
 深夜二時まであと僅か。ポケットの中の五寸釘が、音のない山にちゃりちゃりと金属の音色を響かせた。

●深夜二時、呪う心に救済を。
「ミッションを発令します」
 集まった猟兵たちをレールに沿って這うモノアイで確認して、アレクサンドラは切り出した。
「今回はUDCアース、とある地方都市での事件を解決していただきたいのです」
 事件の内容はこうだ。
 丑の刻参りの噂が流行するその町で、実際にその呪詛を行ったであろう子どもたちが何人か消息を絶った。おそらくはUDC絡みの事件に巻き込まれたのだと思われる。
「そして、新たな犠牲者が発生するだろうことが予測されました」
 このみ、という名前のその少女は、抑圧的で自由を認めてくれない母親に呪詛で復讐しようとしている。
 猟兵達が今から駆けつければ、件の神社に辿り着く前、山道の入り口付近で彼女に接触できるだろう。
 彼女が目的地に到達しないよう阻止すること、まずはそれが最優先だ。彼女が先に神社にたどり着いてしまっては、あるいは猟兵が彼女を無視して先に戦闘を開始してしまっては、間違いなく神社に訪れたこのみが巻き込まれてしまう。
 そのため、どうにかして彼女に呪詛を諦めさせ帰らせた後、神社に潜み事件を引き起こしたオブリビオン、UDCを排除する。それが今回の目標となるだろう。
 ただし、とアレクサンドラは続ける。
「犠牲者たちの呪詛に至るまでの念を、何らかの邪神復活儀式に用いている可能性もあります。既に犠牲者が出ている以上、何が起こるかわからない……つまりは、作戦中に儀式が発動する可能性も考慮して充分に注意してください」
 場合によってはオブリビオンとの連戦も有りうる。召喚に儀式を要するクラスともなれば強敵だというのは想像に難くない。
 気を引き締める猟兵達にご武運を、と声を掛け、アレクサンドラは君を現地に送り出した。


紅星ざーりゃ
 こんにちは、紅星ざーりゃです。
 今回はUDCアースにて、再流行の兆しを見せる古典的な呪詛の阻止に挑んで頂きます。

 第一章では実際に丑の刻参りを試みる少女の阻止を。
 第二章では被害を齎しているUDCの撃破を行っていただくことになります。
 第三章では、儀式が発動した場合強力なUDCとの戦闘になるでしょう。
 終了後の情報統制や関係者のケアは、UDC組織に一任して問題ありません。

 どうか皆様の力で、この事件を終息に導いてください。
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第1章 冒険 『小さな呪い』

POW   :    叱る、脅す、力づくで止める

SPD   :    先回りし障害物を設置する等で妨害する

WIZ   :    説得する、誤情報を与え他の場所に誘導する

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ウイシア・ジンジャーエール
UDC組織に「落石注意」の看板とポールを準備させる。
山道の外れ道の近くに設置。
他の参加者で同じような場所に何か設置される人がいるなら相談します。

ユーベルコード【協力者の召喚】で警察官を召喚します。
「こういう時に、あなたって本当に便利。手伝ってちょうだい」
自身はパンツスーツで[変装][目立たない]を。警察官の横に待機。
「山道の一部が崩れたと報告があり調査中です」
警察官から一歩下がって[言いくるめ]で対応。
「もう遅いですし明日以降にされては…どうしても行きますか?では崩れた場所を確認しますね」
きっと彼女は行くのでしょう。それならタブレットで検索するフリをして[時間稼ぎ]を。




 深夜、裏山の山道に人気はない。
 あれだけ呪いの噂が流行っているのに、先客の姿が見えないのは心細い。いや、噂が流行っているからこそかもしれない。呪詛に迷いがあれば自分の身に跳ね返ってくる。それで実際に何人も姿を消した――学校はインフルエンザの流行だとか、家庭の事情だとかごまかしているけれど――ならば、よほど肝の据わった怖いもの知らずか本気で誰かを呪いたいくらいに追い詰められた人くらいしか来ないだろう。
 そんな人間はそう多いとは思えない。スマホの時刻表示で今から登り始めればちょうど良いくらいの時間に神社にたどり着けることを確かめたこのみは、人の気配もなく、虫や獣、鳥の声もない冬の山の入口でシューズを整え、懐中電灯のスイッチを入れる。
 この先は街灯も殆ど無い。山頂の森林公園まで車道は通っているが、用があるのはその手前で道を外れたところにある神社。車道を外れれば、数少ない街灯ですら無くなってしまう。
 手の中でずっしりと重たい懐中電灯の白いLEDの光は、少ない小遣いで買える中で一番良いのを選んだとはいえ暗闇の山ではとても頼りなく見える。
「でも、もう戻れないもん……」
 自らの覚悟を確かめ、山に踏み入るこのみ。だが、暫くもいかない内に障害物にぶつかってしまう。
 落石注意。この先崩落あり。交通規制中。
 ピカピカと点滅する赤いランプで照らされた立て看板とポールが道を塞いでいる。
「……大丈夫、ちょっと通るだけ。それに、崩れたところは避けて通ればいいし」
 車じゃないんだから、多少道を外れて迂回してでも通れる。いざとなれば落石の隙間を通ったり、上を登ってでも進むことは出来るはずだ。時間がかかってしまうかもしれないけれど、母親に黙って家を抜け出してきた以上は成し遂げるまで帰れない。きっともう自分が居ないことに気づいて、母は怒り狂っているだろう。
 ポールを跨いで封鎖の先に踏み込んだこのみに、死角から声がかかった。
「ちょっと、君」
 ぎょっとして、口から飛び出しそうなくらい高鳴る心臓を押さえて声の方を振り向くこのみの前に、制服の警官が立っていた。
「……はい」
 逃げたい衝動を抑えて立ち止まるこのみに、警官の後ろからスーツ姿のウイシアが現れ、彼の隣に立つ。
「ごめんなさいね。山道の一部が崩れたと通報があって調査中です。二次災害の危険もあるので通行止めなの、引き換えして貰えるかしら?」
 真面目そうな制服警官ではなく、柔和な女性刑事が対応してくれることに少しだけ肩の力を抜いて、でもこのみは帰れない旨を説明する。
 馬鹿正直に今から母親を呪いに行くとは言わない。昼間、大切なものをこの先の神社に忘れてきてしまったのだと言い訳をしながら、必死にこのみは食い下がる。
「もう遅いですし明日以降にされては? どうしても行かないと駄目ですか……わかりました」
 明日では間に合わないのだと訴える少女に、仕方がないといったふうにウイシアは息を吐いてタブレットを取り出す。
 崩落を調査している"警官たち"に連絡を取って、崩れた場所、状況を確認し、迂回路があるか確かめる……フリ。
 そわそわとスマホを出しては時計を見て、落ち着かなさげに身体を揺するこのみ。きっと制服警官が見ていなければ、ウイシアの視線がタブレットに向いている隙にするりと忍び込んでしまうだろう。
「……確認が取れました。貴女の言う神社までなら通れるそうです。くれぐれも寄り道せず、用が済んだらすぐに戻ってください」
 わかりました、と頷いて走り出すこのみの背中を見送り、ウイシアは自身の役目――仲間たちが準備を整えるまでの時間稼ぎを果たしたことに一人頷く。
「手伝ってくれてありがとう。こういう時に、あなたって本当に便利」
 ユーベルコードで呼び出した警察官を戻し、ウイシアは仲間たちが無事に彼女を諦めさせられるよう願うのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アリシア・マクリントック
人の心の闇につけ入る悪魔がいる……ということでしょうか?呪いは誰も幸せになんてしません。何としても阻止しましょう。

『呪いは、ヒヨコがねぐらに帰るように、わが身に返るものだ』という言葉をご存知ですか?貴方には自らが成そうとしている呪いを、自分でも受ける覚悟がおありでしょうか。
言葉でわからないようであれば、そうですね
「私は慈悲深いですから、貴方がいかなる罪を犯そうともそれを許しましょう。ですが……彼女は許してくれるでしょうか?」
そう言って隠れていたマリアを呼んで威嚇させます。大きな獣が目の前で歯をむいて唸っていればきっと怖い……ですよね?




「人の心の闇につけ入る悪魔がいる……ということでしょうか?」
 もしそうだとすれば許せない。呪いなど、掛けられた者も掛けた者も、誰一人幸せになんてならない行為だ。なんとしても阻止しなければ。
 暗い山道を照らしながら近づく白く小さな明かりを待ち構え、アリシアはそうごちた。
「はぁ、ふぅ……また……? 今度は外人さん……?」
 警官の次は品のいいドレスに身を包んだ金髪の女性。その真っ暗な山に似合わない装いに、このみは身構える。
「ごきげんよう」
 優しい微笑みを浮かべてこのみに話しかけるアリシア。一方でこのみはやはり、警戒心を解くことはない。
「なんですか? あたし、急いでるんですけど……」
 時間が無いので。時間を確かめ、迫る刻限に苛立つこのみ。もう無視して横を抜けてしまおうか、と歩き出した彼女とすれ違いざまに、アリシアは再び口を開いた。
「Curses, like chickens, come home to roost.」
 しんとした冬の夜山を包む、冷え切った透明な空気にアリシアの声がよく響く。
 不意に放たれた英文に思わず足を止めたこのみが、視線だけでアリシアに振り向いた。
「呪いはヒヨコがねぐらに帰るように、わが身に返るものだ……ということわざです。ご存知ですか?」
 まるで見透かしているかのような言葉。アリシアの蒼い目に黒い目で視線を交わし、このみはゴクリと息を呑む。
「貴女は自らが為そうとしている呪いを自分でも受ける覚悟はお有りでしょうか」
「っ……あたしは、忘れ物を取りに行くだけですし!」
 もし呪いが返ってくるとしたら。だとしても。何をするにも母親に抑えつけられ自由なんてなかった。この状況を抜け出すためなら、あたしは。
 ――いつかこの行いが自らの身に返ってくるとしても、自由を掴み取るんだ。
 ポケットに手を突っ込み、五寸釘を握りしめる。汗ばんだ手のひらに冷たい釘の感触が心地良い。
「それにもし呪いを掛けに行くんだとしても、あなたには関係ないでしょ!」
 手の中の釘が、ずっとこの日に備えてきた決意を思い出させてくれたような気がする。
 それでも"もし"と自らが呪いを掛けに行くことを告げたのは、心のどこかに迷いが芽生えたからだろうか。
「ええ。貴女の事情は存じ上げませんし、私は慈悲深いですから、貴女がいかなる罪を犯そうともそれを許しましょう」
 だったら、と再び足を進めたこのみの前に、とん、と軽やかに銀色の狼が現れた。
 私は罪を許しましょう。
 ですが、彼女は許してくれるでしょうか?
 牙を剥いて唸る狼――アリシアの相棒、マリア。普通に生きてきた日本人の少女にとって、初めて柵や画面越しではなく、生身で直面する獣はとても恐ろしかった。呪い返しよりもよほど現実的に迫る"死"を想像させるその姿。
 けれど、このみは踏み出した。
 狼からきっと逃げ切れると信じ、根拠など無いし自分でも不可能だと心の奥底では分かっていても、道を外れた茂みに飛び込んで走り出す。
 アリシアもマリアも追うことはしなかった。
 がさがさと葉擦れの音が遠ざかっていくのを聴きながら、ふぅと白い息を吐く。
「踏み出す勇気はあるのだもの。きっと彼女は大丈夫、あとは選ぶ道さえ間違わなければ……ね、マリア?」
 心配そうに喉を鳴らす狼を撫で、彼女の勇気が間違った方へと進まないように仲間たちが導いてくれるよう、冬の星空にアリシアは願うのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

キリエ・ニール
WIZで挑戦、説得を試みる。
山道を下り、木の上から現れこのみちゃんに話す。
「やぁ、こんばんは。フライングしに来た山の天狗です。ほら、白髪に刀」
「君の事情は知ってるよ、天狗だからね。でもこの先に行ってはいけない。この先に待ってるものこそ断絶と絶望、理不尽な抑圧だ」

「ねぇ。君にはこんな夜道を一人で歩くことだってできる覚悟と決意がある。ならそれを、その五寸釘に込めてる思いを、真正面から言葉でお母さんにぶつけるんだ。さぁもう夜も遅い。僕は呪いを上げられないけど、代わりに君の心に力をくれるこの光を贈ろう」
コードを使用。
聖なる光で彼女を照らし、復讐にまで追い詰められてしまった彼女の心に対し、治療を試みる。


夕凪・悠那
丑の刻参りとはまた古典的なものを持ち出してきたね。
まあ昔からあるものだからこそ弄りやすいのかな。

【WIZ】
や。キミ、このみさん?
ボクはあれだよ、天狗様ってのはどうかな。

こっそり[早業]で【精神回線】繋いで[ハッキング]。
記憶から[情報収集]しながら、その情報を活かす感じで[コミュ力]で説得。
なんかありきたりなアドバイスだけどさー、おかーさんと腹割って話してみたら?
話を聞いてくれないとか、思春期特有のアレでつい反抗しちゃって落ち着いて話せないとかなら、その辺りだけお呪い(UCの精神干渉)してあげてもいいし。
天狗様だから神通力で余裕だぜ?




 獣道すらあるのかないのかわからないほどに背の低い草が生い茂り、色付いた葉が空を覆い隠す夜の山中。
 微かに木々の隙間から見える山道とそこにまばらに立つ街灯の光を頼りに、このみは神社への道へとようやく復帰した。
 ズボンの裾に絡みついた枝葉を払い落とし、時間を見る。もう殆ど余裕はない、急がなきゃ――山道の先、石段を上った先の鳥居を見て、もう一息とこのみは疲れた足に力を込めて自身を奮い立たせる。
 そこに、ふたつの人影が降り立った。
「やぁ、キミがこのみさん?」
「こんばんは、フライングで来た山の天狗です」
 黒髪金眼の少女と白髪赤眼の少年、ふたりは天狗を名乗って神社への道を塞ぐように立つ。
「天狗……さま?」
 あるいは普段のこのみであれば、一笑に付して素通りしたかも知れない。
 けれど、ここまでの疲労で疲れた頭では、そしてつい先ほど、現実離れした狼の姿を見た今では、樹上から舞い降りた二人が天狗であるというのをすんなりと受け入れ、このみは僅かに後ずさった。
「君の事情は知ってるよ、天狗だからね。でもこの先に行ってはいけない。この先に待ってるものこそ断絶と絶望、理不尽な抑圧だ」
 白髪の天狗は言う。
「君みたいな子が呪いに手を出すものじゃないよ」
 その言葉に、このみはぎりと歯噛みして眉間に皺を寄せ、天狗たちを睨んだ。
「……何がわかるっていうんですか!? 事情を知ってるって、じゃあなんで止めるの!?」
 他のみんなは良くて、なんであたしの時ばかり邪魔をするの。
 このみの叫びは、無音の山によく通る。けれど、黒髪の天狗はそんな激情もさらりと受け流してこのみに歩み寄った。
「わかるよ、天狗さまだから神通力で余裕だぜ? でもさ、このみさん」
 キミはここまで追いつめられるまでに、どれだけおかーさんと『話をした』んだい?
 黒髪の天狗の問いかけに、このみの息が僅かに詰まる。
「確かにキミのおかーさんは、キミのことをとてもとても縛ってしまう人だ……でも、キミはどうなの?」
 どうせ話しても分かってくれない。言ったところで駄目って言われるに決まっている。そんな諦めで、いつしか自分の意見に蓋をしてしまったこのみ。閉ざされた蓋の内側で、行き場を失った不満や諦めが今、呪いとなって噴出しようとしている。
 けれど、それは蓋を少しだけ緩めて、本当の心を伝えることができればそこにまで至ることは無かったはずだ。
「最後にキミからおかーさんに何か意見を言ったのはいつだい? ね? ありきたりなアドバイスだけどさー、おかーさんと腹を割って話してみなよ」
 そうとも、と頷く白髪の天狗。
「君にはこんな夜道を一人で歩くことだって出来る覚悟と決意をする力がある。ならそれを、その五寸釘に込めた想いを、呪いなんかじゃあ無く言葉でお母さんにぶつけるんだ」
 白髪の天狗が放つ暖かな光が、このみの中の諦めを溶かし、自ら縛り傷つけた心を癒やしていく。
 けれど。
「いや、です。……天狗さまの言うとおりかもしれない。あたしがお母さんと話すのを諦めてたのは、たぶんそのとおり、です。でも……居なくなればいい、死んじゃえって思っちゃって、どんな顔して話せばいいかあたしもうわかんないもん……」
 ねぇ、天狗さま。呪いに迷いがあれば、呪った本人を消してくれるんでしょう。
 今からあたしは、お母さんを呪います。だから、あたしを消して。
 お母さんだけが悪いのでないなら、あたしが消えてしまえばいい。
 このみの目から大粒の涙が落ちる。その姿に、目を閉じ頷きあって、天狗たちは道を空けた。
「この先、君に最後のチャンスが待っている。呪いの代わりに、心に力をくれる光を受け取った君なら正しい選択ができると思う」
「そこで、もう一回考えるといいよ。もしおかーさんと話す気になったら、ボクらがおまじないを掛けてあげよう。落ち着いてゆっくりおかーさんと話せる、天狗様の特別なおまじないさ」
 このみは返事をせず、肩をしゃくりあげながら二人の間をとぼとぼと進んでいく。
 その背中が石段を登っていくのを見守りながら、白髪の天狗――キリエが口を開く。
「彼女、きっともう大丈夫だよ」
 黒髪の天狗――悠那が頷く。
「当然でしょ。記憶を読んだけど、彼女思いつめてるだけで明確な殺意までは持ってなかったし」
 殺したいほど憎いわけじゃない。親に居なくなればいいなんて思うのは、思春期特有の反抗心の現れだろう。
 それを自覚した今、涙を流して呪詛を悔いる彼女を――きっと最後の一人が、優しく受け止めてくれるはずだ。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ユナ・アンダーソン
WIZ判定

聖者特有の光る体で非現実感を出し普通の人間じゃないアピール
ふふふ、今夜もまた鬱屈した想いを抱えた人が来たのね
私はこの神社に祀られる神の化身
さぁ、あなたの願いを話してみなさいな
疑うなら天狗の形をした影の追跡者を出す

コミュ力8、祈り6、優しさ9でまず親身になって話を聞いてから説得を試みる
多分、学生の親特有の将来への備え云々による窮屈さから来るものだと思うから愚痴を吐き出すだけでも幾分か楽になると思う
ガチ駄目親なら呪詛1で反省させてあげるから今は帰れって言う

説得と平行して影の追跡者で神社の偵察をしておく

正直、厨二病全開の姿を見られたくないからなるべく単独
仲間に見られてたっていう展開はOK




「あなたは……?」
 上着の袖口で涙を拭って、神社の石段の半ばに立つ少女を見上げるこのみ。
 真っ暗な闇の中、光を放って佇むその少女は、今のこのみにとって神々しさを覚える姿だった。
 ふと、先程天狗たちに言われた言葉が脳裏をよぎる。
「ふふふ、今夜もまた鬱屈した想いを抱えた人が来たのね」
 輝く少女――ユナがそう呼びかける。
「か、神様……?」
 呆然とユナを見つめるこのみの呟きに頷いて、ユナはこのみに願いを告げるよう促した。
 母親を呪いたいほど憎んでしまったこと。
 でもそれは、母親と向き合うことを諦めた自分の弱さだったこと。
 けれど、いまさら母親に向き合うのが怖くてたまらないこと。
 だから自分を消してほしい。自分が居なくなってしまえばいい。
 そんなこのみの独白を、ユナは親身になって聞き入れる。
 時に同意し、時に慰め、このみがなぜそこまで母親との関係を拗らせてしまったのか、その一つ一つのエピソードを聞き出しては優しくアドバイスを挟んでこのみの心を癒やすユナ。
「あなたもお母さんも、どちらも悪くないわ。ただ、二人とも自分の想いを伝えるのが不器用なだけよ。あなたはそれを自覚したのだから、帰ったらあなたの方から一歩譲って、お母さんと話してみたら?」
 長年積もった鬱屈した想いを、神様という非現実の存在に吐き出したこのみの表情は、山を訪れる前よりほんのすこしだけ晴れやかだった。
「……うん。神様、ありがとうございます」
 きっと深夜に一人で家を出たことで、帰ったら怒られるだろう。けれどそれをまず謝って、それからしっかり話し合うのだ。
 神様と天狗さま、そして狼と不思議な貴婦人や名も知らぬ警察官たち。
 多くの人々に出会ったこの夜の出来事は、まるで夢を見たようでありながら、確かな現実としてこのみを変えた。
 親を呪おうとした、一人の追い詰められた少女は、最後に呪いを迷って消えてしまった。
 代わりに、自らを見つめ直し、もう一度母親との関係を再構築しようと勇気を出した一人の少女が、ユナに頭を下げてもと来た道を戻っていく。
 
「……がんばってね、このみさん」
 彼女が山を降りていくのを見送って、さて、と振り返るユナ。
 背後には闇の中で沈黙を守る神社。放った影の追跡者たちからは、特に異常を告げる合図はない。
 時刻は間もなく深夜二時。そして――

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『嘲笑う翼怪』

POW   :    組みつく怪腕
【羽毛に覆われた手足】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD   :    邪神の加護
【邪神の呪い】【喰らった子供の怨念】【夜の闇】を宿し超強化する。強力だが、自身は呪縛、流血、毒のいずれかの代償を受ける。
WIZ   :    断末魔模倣
【不気味に笑う口】から【最後に喰らった子供の悲鳴】を放ち、【恐怖と狂気】により対象の動きを一時的に封じる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 深夜二時。時計の長針がくるりと一周し、ぴたりとその時が訪れたことを告げる。
 件の神社の参道脇、注連縄と柵で囲われたご神木は、今やびっしりと打ち付けられた藁人形で覆われており、それが放置されていることから神社の手入れも最早行われていないのだと分かる。
 そんな荒れ果てた神社の本殿の屋根に、一羽のフクロウが降りる。
 雲の切れ間から覗く月明かりを背に、ほう、ほうと鳴いてその敷地を見回すフクロウ――その背を巨大な鉤爪が叩き伏せ、抑えつけられたフクロウを不気味ににやついた顎がぼりぼりと貪り喰った。
 嘲笑う翼怪。UDC組織がそう呼称する、人間の子供を好んで捕食する鳥人に似たUDC。
 それが本殿の屋根に、御神木の枝に、いつの間にかびっしりと止まっていた。
「きらイきラいきらいキらい!」
「しネしねシねシネしネ!!」
「あアああァアアあァあぁア!!!!」
 いびつに歪んだ子供の声音で口々に呪詛を吐き散らしながら、ケタケタと嗤うおぞましい化生の群れは、しかし今日喰らうはずの獲物――腹一杯に呪詛を詰め込んだ、大好きな子供の姿が見えないことに首を傾げる。
 ――今日この神社を訪れる子供はもういない。
 代わりにやってくるのは、その出現を予見し、万全の準備で怪物を狩りに来る猟兵たちだ。
アリシア・マクリントック
アドリブ・連携歓迎です

未来ある子供を惑わせ、あまつさえ命を奪おうなどとは不届き千万!
マクリントック家の埃にかけて私の剣の錆にしてあげます!

飛翔する魔物の群れ……厄介な相手ですね。威力よりも命中重視。死角のフォローをマリアにお願いして、囲まれないよう注意しながら反撃・迎撃を中心に戦いましょう。
力には自信がないので、立ち回りで牽制することができれば……と言ったところでしょうか。他の方が本命の一撃を当てられるようサポートします。

人と戦うことを前提とした剣術では限界がありますね……これからのことも考えると空を飛ぶ相手にも対応した剣術を身につけなければなりませんね!


夕凪・悠那
五月蠅いなぁ。
さあ、狩りの時間だ。
獲物がいなくてお腹すいてるだろ?遠慮しないでたっぷり喰らって逝きなよ。

【バトルキャラクターズ】
FPSの近代兵士型で召喚。
装備の仕様はゲーム式。

飛び立った鳥を[誘導弾]――個人携帯地対空誘導弾で撃墜する。
敵の位置次第では[範囲攻撃]になって複数体巻き込めるかもね。
[呪詛耐性]があるから断末魔にはある程度は耐えられるはず。
それにバトルキャラに感情なんてないんだから恐怖なんて感じない。逆に[カウンター]喰らわせてやる。
接近されたり乱戦になったら【座標改竄】で上空に転移させてから撃って爆風の被害軽減。
撃ち尽くしたらアサルトライフルに持替えて攻撃。

何が天狗さまなんだか。




 どす黒く酸化した血に塗れた、汚らしく固まった羽毛をぼとぼとと落として狂ったように呪いの言葉を吐き散らす怪物の群れ。
 その出現を斥候を放った仲間から聞いていたアリシアと悠那が、異形の存在の領土と化した境内に踏み込んだ。
「五月蠅いなぁ。さあ、狩りの時間だ」
「未来ある子供を惑わせ、あまつさえ命を奪おうなどとは不届き千万!」
 ボディアーマーとヘルメットに身を包み、ライフルや拳銃、ロケットランチャーで武装した兵士たちの小隊を引き連れた悠那と、ドレスの上から蒼く輝くガントレットを纏い細剣を構えるアリシア。
 二人の姿を捉えた化け物どもが、今宵の「餌」の登場にゲタゲタと興奮した嗤い声をあげて跳ね回る。
 ばさり。飛び立った翼怪。月明かりのない空を埋め尽くすほどの数は、猟兵であってもその物量に苦戦を強いられただろう。
 尤も、その全てを自ら相手にしなければならないという条件のもと、だが。
「獲物がいなくてお腹すいてるだろ?遠慮しないでたっぷり喰らって逝きなよ」
 ――撃て。悠那の命令に従って、兵士たちが担いだ大筒を空に向ける。しゅぼ、と軽快な噴射音とともに炎の尾を引いて空に上ったそれは、地対空誘導弾――ミサイルだ。
 本来のそれは、戦闘機やヘリコプターのような乗り物を相手に使うもの。だが、ゲームキャラクターであるところの兵士たちにとって、相手が巨大な金属の猛禽だろうが人間大の生きた化け物だろうが関係はない。
 現実のそれとは異なる、ゲーム的な制約の隙間を縫った砲撃が、逃げ惑う翼怪を追い回し、空中で爆裂する。
 直撃したものは跡形もなく吹き飛び、破片や炎に煽られたものも翼を失って墜落する。
「いダいぃ! イたい、いたイィ、いたいヨォぉォォ!!」
 地面の上でジタバタと藻掻きながら、ニマニマとした笑みを貼り付けたその口から子供の声で悲鳴をあげる翼怪どもに、駆け寄った兵士たちの銃によるトドメが突き刺さる。感情のないNPCの兵士達にとって、犠牲者の声で助けを求め、精神に変調を来す翼怪の断末魔もただの騒がしい騒音に過ぎない。
 たん、たたん。軽快な銃声が、死に損なった化け物を正しく仕留めていく。
「マクリントック家の誇りに懸けて、私の剣の錆にしてあげます!」
 一方でアリシアは苦戦を強いられていた。
 空を自由に飛び回る化け物に対して、アリシアの武器は剣。フィールドを自由に選ぶことができ、空に逃げれば追撃を受けることのない翼怪にアドバンテージがある。
 狼のマリアとの連携で死角なく立ち回ってはいるものの、双方に決め手に欠くといった状況だ。
 うかつに降下して襲いかかってきた最初の数体はマリアが抑えつけ、アリシアの剣が貫き斃してきたものの、それを学習した翼怪は徹底したヒット・アンド・アウェイに徹して刺突の隙を与えない。
 当てれば倒せる敵を相手に、当てるための隙が得られない。焦燥するアリシアの頬を汗が伝う。
「これからのことを考えると、空を飛ぶ相手にも対応した剣術を身に着けなければなりませんね……!」
 背後から音もなく舞い降りた翼怪をマリアの吼える声で察知し、ひらりと身を躱してその胴を剣で貫くアリシア。
 だが、その一撃を入れる一瞬を狙って、複数の化け物が同時に多方向から襲いかかる。
 汚れた羽毛から覗く鉤爪が、アリシアの肌を裂き肉を抉り取ろうと迫る――が。
「アリシアさん、飛ばすよ!」
「……? っ、はい!」
 受け持った敵を兵士たちに任せた悠那が、アリシアを上空へと転移させる。直後に、アリシアを狙った翼怪たちに兵士たちの放ったロケット弾が直撃し、爆炎の中に怪物を飲み込んだ。
 そして、本来敵を飛ばして仕切り直したり、兵士たちに構築させたキルゾーンに送り込むための技は仲間との連携においてもう一つの意味を持った。
 天高く転送されたアリシアは、空中でドレスの裾を翻らせながら飛び回る翼怪の上に降り立ち、剣でその息の根を止めては新たな翼怪を踏みつけ貫き、地上へと戻ってくる。
 翼怪が荷重に耐えかねて姿勢を崩し、墜落するまでの一瞬の内に刺突し、次へ飛び移るという離れ業。それを成し遂げたアリシアと、その刺突を受け墜落してなお息のある翼怪に喰らいついて確実にトドメを刺していくマリア。
「助かりました。ありがとうございます、悠那さん」
「いいよ、少しでも数減らすのに仲間が居るほうが効率いいだろ?」
 悠那の指揮のもと陣形を組み、銃火で化け物の群れを削り取る兵士たちと、縦横無尽に転送されては柔軟な剣さばきで翼怪を叩き落とし、地上の狼との連携で確実に仕留めていくアリシア。
 二人の猟兵の活躍で、地上に落ちる翼怪の残骸は積もっていく。
 しかしそれでも、その数は半数にも満たない。
 いまだ空を舞う化生の数は多い。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ユナ・アンダーソン
断末魔の模倣……本当にUDCは悪趣味ね
ここにあなた達の居場所はない
三千世界のUDCを殺し平穏な朝日を拝みましょう

なぎ払い3、範囲攻撃3を用いてエトワル・ボワ・ジュスティスでなるべく多くの敵をなぎ払い断頭します

敵の攻撃は武器受け1を用いて武器で防御
激痛耐性5、気合い1で攻撃を受けても隙は見せないようにする

傷ついた味方がいたら祈り6、優しさ9、手をつなぐ3、救助活動1を用いてペインテイカースティグマを使用
あなたの傷を私にちょうだい?

敵をよく観察し気づいたことがあれば皆に知らせる

断末魔模倣を聞いたら嫌悪感で顔を歪めます

アドリブで他の方との絡み歓迎


キリエ・ニール
やぁどうも、今日限りの山の天狗です。
よくもまぁ汚い囀りで山を荒らしてくれたねぇ、山に代わってお仕置きってね…覚悟はいいか、今宵喰らわれるのはお前らだ。

敵の群れに突入。
POWで挑む。
他の皆の戦闘を見て学習。
飛び込み空中戦、見切り、第六感を使用しどの手足がどの方向から来るか予測。
衝撃波で弾き返す。

僕を囮にこちらに群がってきたところでコードを使用。
これだけ近ければ、範囲攻撃で巻き込める。
この鳥もどきを全員攻撃の対象に。
攻撃には二回攻撃、鎧無視、鎧砕き、衝撃波、捨て身の一撃、全てを載せる。
好きができても構うものか、確実にこいつらを落とす。
…だから、ゲテモノで申し訳ないけど喰らい尽くしちゃって、友達。




「憎い憎い憎い憎イィィ!」
 ゲタゲタと耳障りな嗤い声とともに、喰われた子供の声で呪いを吐き散らす翼怪。
 あるいはその呪詛が犠牲者たちの最期の声だったのだとしたら、彼らの抱いた憎しみは、絶望は、如何程のものだったのか。
 自分に歳近い子供たちがそれほどの苦しみを抱え、呪詛などという最悪の手段に最後の救いを求めたことに。そしてそれを餌に、その汚らしい腹を満たして嗤う怪物に、ユナは嫌悪を覚えて表情を歪めた。
 それは共に戦場に立つキリエも同じ。かつて神を祀っていたであろうこの山の神社を、そして救いを得られなかった子供たちの魂を汚す翼怪への怒りで、刀を握る手に力が籠もる。
 けれど、彼は努めて普段どおりに飄々とした態度で上空を旋回する翼怪に視線を向ける。
「やぁどうも、今日限りの山の天狗です」
 町で噂に語られる、本当の『天狗さま』たる翼怪に、我こそは天狗だと名乗るキリエ。
 意図を掴めず怪訝な顔のユナをよそに、キリエはぶわりとその身から殺気を放つ。
「よくもまあ汚い囀りで山を荒らしてくれたね。覚悟はいいか、今宵喰われるのはお前らだ」
 本来の神社の主たる神に代わって、この山に代わってこのおぞましい化け物を狩る。その宣言とともに、キリエは跳躍し翼怪の群れに斬り込む。
「くるしイ、ニくイ……憎イ、にクい…………にく、にくにくにくにくゥ!! ぎゃははははあああはは!!」
 自らの領域に飛び込んできた獲物を貪ろうと狂喜して殺到する化け物に対し、キリエは第六感を頼りに一羽ずつ手足を使って弾き返し、地面へと叩き落としながら空中戦を維持し続けた。
 この化け物が、知性を感じさせないながらも知能が無いわけではないというのは先行した猟兵たちの戦闘からキリエも知っている。
 一対一の波状攻撃で駄目ならば、奴らは必ず複数で同時攻撃を挑みかかってくる。その時こそ、確実にこいつらを落とす好機だ――キリエは自らの身を囮に使い、迫る翼怪を殴りつけ、蹴り飛ばし、突き出された鉤爪を数打の刀で受け流して耐え続ける。
 まだだ、まだ――まだ、もっとだ。未だに気味の悪いほどの数で飛び回る翼怪を掃討するには、最大効率で斃すほかにない。
 そのためなら、どれだけ自分の身が危険に晒されようとも構わない。
一斉攻撃を仕掛けた翼怪を数打ちで縫い止め、釘付けにしてより多くを誘い込む。そうして、キリエを追う群れが肥大化したところで自ら彼はその群れに飛び込んだ。すかさず獲物を喰らうために伸ばされた爪や歯がキリエの身体に食い込むが、
「隙ができても構うものか。確実にこいつらは……落とす。」
 だから、ゲテモノですまないけれど。
「食らい付くしちゃって、友達!」
 その呼び声に応じるように這い出した、星を見上げる旧き神々の現身が、呪いと肉を喰らう卑しき化け物共を飲み込んだ。 
 一方、地上ではユナが、キリエの打撃で墜落しながらも立ち上がった翼怪の群れと相対していた。
「なンで……ナんでわタしばっかリこンな目に遭わなキゃいけナいの……きヒ、くひひゃははハは!!」
 ゆらりと起き上がっては、目の前の獲物に狙いを定める化け物ども。死者の叫びを模倣する悪趣味なその存在に、
「ここにあなた達の居場所はないわ」
 ユナはギロチン刃を模した武器を突きつける。ヒトの発明した最も慈悲深き凶器。一瞬のうちに首を刎ね、苦しみ無く永遠の眠りに誘うそれを構え、墜ちてきた翼怪が全て刃の届く場所にやってくるまで防戦の構えを取るユナ。
 その言葉を理解してか、あるいはただの偶然か。翼怪は居場所を奪われたことへの呪いを吐きながら、華奢な少女に襲いかかる。
「みトめてくれなイィ! ボくはァ! みンなと一緒ニいたかっタだけなノにィ!」
 振り下ろされた羽毛の手足、そこに隠された爪がユナのギロチン刃とぶつかり火花を散らす。
 一羽二羽では収まらない数の翼怪がそれに触発されて一斉にユナに群がるが、ユナは防ぎきれないものは無理に防がず、その身で受けながら痛みを堪える。
 傷を奪う聖者――その在り方ゆえに、彼女は痛みに慣れている。その彼女をして、救いを求めて喰らわれた子供たちの受けた痛みは想像し得ない。
 あるいはもっと早くに駆けつけることができていれば、彼ら彼女らの心の傷を奪い癒やすことも出来たのだろうか。
 そんな想像を思考の済に追いやって、およそ地上の翼怪がほぼ自らの方へと集まったことを確かめたユナはギロチン――エトワル・ボワ・ジュスティスを薙ぎ払った。
「三千世界のUDCを殺し、平穏な朝日を拝みましょう……!」
「――――――――!!!!!!」
 聞くに堪えないほど痛ましい断末魔の悲鳴をあげて、首を刎ねられた翼怪どもの頭がごろりと地に落ちる。
 いくらか静かになった境内で、ユナの前に傷だらけのキリエが降り立った。
「うわ、傷だらけじゃないか。大丈夫?」
「わたしはいいのよ。大体、あなただって人のことを言えるの?」
 互いに捨て身で最も多くを斃すことに注力した者同士、お互いの傷に目を丸くして、互いの台詞に肩を竦めあう。
「お互い無茶をするものね。――あなたの傷をわたしに頂戴?」
 キリエの手を取り、聖者の光で彼を包み込むユナ。傷を奪う聖者たる彼女の力で、キリエの受けた傷が癒え、代わりにユナに同じ傷が刻まれていく。
「ちょっとちょっと、いいって! キミだって怪我してるんだから!」
 狼狽えるキリエに、ユナはただ優しく微笑みながらもその治癒の手を離しはしなかった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

エル・クーゴー
『UDCアースに現着』
『交戦地帯の定義を完了しました』

『敵影捕捉:複数』
『>積極殲滅モードに移行』

『これより、敵性の完全沈黙まで――』
『――ワイルドハントを開始します』


●POW
当機は【空中戦】に高い敵性を発揮します

飛行用バーニア、展開
常に敵群より高所を取る空戦機動を行います

まずは回避マニューバに集中
並行して【学習力】により敵機動を観察
敵使用コードの攻撃・命中・回数の各特化形式を予兆の段階で速やかに看破するプラクティスとします

見切れ次第反撃を開始します

攻撃力重視には攻撃力重視のブラスターを
命中重視には命中重視のライフルを
回数重視には回数重視の機関砲を
各射撃兵装を適宜展開し応射、敵群を掃討します




 夜空を舞う翼怪の数は減ったものの、未だに全滅させたとは言えない数が残っている。一体一体は容易に御せる相手といえど、これだけの物量であれば猟兵たちも苦戦を強いられていた。
 倒せど倒せど倒しきれない化生の群れに、神社に乗り込み戦闘を繰り広げる猟兵達の頬を汗が伝う。
 せめてあと一人でもいい、応援は来ないのか。
 そんな思いに応えるように、無機質ながら澄み渡った、よく通る声が化け物の喚き声を縫って仲間たちの耳を打つ。
『UDCアースに現着』
 ずどん、と石畳の上に置かれた棺桶型の武装。
 銃砲火器を満載したそれを展開しながら、彼女は天を見上げる。
『交戦地帯の定義を完了しました』
 空を覆う翼怪の群れは、この神社の上空を縄張りと定めているのか飛び去る気配はない。戦闘領域が限定されるのであれば、撃ち漏らす心配はないと言ってもいいだろう。
『敵影捕捉:複数』
 飛び回る翼怪どもをすべてそのゴーグルに内蔵されたコンピュータで捕捉して総数とその位置を追い続けながら、彼女は戦術プランを決定する。
『>積極殲滅モードに移行』
 敵の撃滅に向け、準備を整えて翼を展開。重力の軛から解き放たれるための機械仕掛けの炎の羽根を広げ、彼女――L95、エルは翼怪の群れに塞がれた空高くに飛翔する。
『これより、敵性の完全沈黙まで――』
 地上の獲物が炎を噴きながら急上昇したことにに混乱し、バタバタと路を開ける敵の群れを突き抜けて、エルは天上に舞い上がった。
『――ワイルドハントを開始します』
 それは天を征く猟師の一群。その姿を見るものは死を免れない、過去からの災厄を滅ぼす災い。
 その存在に本能的に危険を察知した翼怪が、対地攻撃を中断して一斉に上昇する。
 羽毛に覆われた爪を光らせ、自身より高くに在る存在を憎み呪うかのように鋭く舞い上がる翼怪の群れ。
『敵の迎撃を確認』
『>回避マニューバを実行』
 優れた空戦適正を持つエルは、さながら人型の戦闘機のようなもの。連携も策もなく、速いものから順に襲いかかる知性に乏しい化け物に易々と捕捉される愚は犯さない。
『敵の行動パターンを解析』
 下方、上方、前後左右――空中にあって全方位から波状攻撃をかける翼怪に対し、エルはまず回避に徹することでその能力を観察する。上昇力は、旋回能力は、加速は、限界高度は。
 ――そして、各個体ごとの攻撃前後のクセからそれぞれがどの方向から、どのような攻撃を好むのかを記録し、回避の精度を高めていくエル。
『情報の収集を完了しました』
 長いようでいて短い空戦の末に、エルは翼怪の飛行能力、そして攻撃のクセをすべて記録して反撃の準備を終える。
『反撃を開始。敵群を掃討します』
 そこからは一方的な展開であった。
 上方を取ったエルが、下方に位置した翼怪へと銃を撃ち下ろす。
 大柄で力強い個体には接近し、至近距離から高火力のブラスターのトリガーを引く。
 狩るものと狩られるものが逆転したことに気づき、高速で離脱を試みる個体は逃げる背に狙撃用の対物ライフルを撃ち込み粉砕する。
「憎イにクい! のロってやル!!」
 残る有象無象が半ば捨て鉢に多方向からの同時攻撃を挑みかかるが――
『――殲滅、完了しました』
 ぐるりと旋回しながらの機関砲の掃射がその進路上を薙ぎ払い、翼怪の無謀な抵抗を叩き潰す。
 そして空には、たった一人の射手だけが在る。
 騒々しい天狗もどきは駆逐され、息があるまま墜落したものも無事に仕留められた。
 呪いの正体、子供たちを連れ去り貪るUDCは猟兵たちの手で撃滅されたのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『膨らむ頭の人間』

POW   :    異形なる影の降臨
自身が戦闘で瀕死になると【おぞましい輪郭の影】が召喚される。それは高い戦闘力を持ち、自身と同じ攻撃手段で戦う。
SPD   :    慈悲深き邪神の御使い
いま戦っている対象に有効な【邪神の落とし子】(形状は毎回変わる)が召喚される。使い方を理解できれば強い。
WIZ   :    侵食する狂気の炎
対象の攻撃を軽減する【邪なる炎をまとった異形】に変身しつつ、【教典から放つ炎】で攻撃する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 呪いの正体たるUDC、嘲笑う翼怪の群れは斃された。
 これで呪いの噂に最後の望みを託して神社を訪れた子供たちが喰われることも、彼らが呪った相手が翼怪に襲われることもなくなるのだろう。
 これ以上の犠牲者が生まれることはない。猟兵達にとって、事件は介入した時点で勝ち得る最良の結果に終わった――かに思われた。
「……あなた達は? いえ、これはなんですか」
 境内の奥から姿を現し、朽ちた翼怪の死骸に言葉を詰まらせたのは、神職の衣服に身を包んだ男。
 荒れ果てた神社だが、神主が居たのだろうか。それがUDCと猟兵達との戦闘音に目を覚まして、ということなのだろうか。
 なんと説明したものか……そもそも事後の情報操作として、UDC組織に任せるべき状況ではないのか。
 猟兵達が目配せするなかで、神主は死した翼怪の傍らに屈み込み、その死骸を検めている。
 ぶつぶつと祝詞のような声が聞こえるのは、異形といえど死んだものを慰め祀る神職の慈悲か。
 ――違う、と誰かが呟いた。
 離れろ、来るぞ。そんな警告に、猟兵達は迅速に各々の武器を構えて戦闘態勢を取る。
 視界の隅で、御神木に打ち付けられた五寸の釘が青白く燃え上がり、藁人形を焼き尽くしていく。
 同じように死んだ翼怪の骸も燃え上がり、その炎に青く照らされながら神主はゆらりと立ち上がり、猟兵達を振り向いた。
「あと僅かで我が大神に捧ぐ供物が揃ったのですがね……よりによって儀式の晩によくも邪魔をしてくれたものです」
 神主の貌はすでにヒトのそれではない。
「あと一人……あと一人だったのに」
 ぼこり、めしゃりと頭蓋が歪み、脳髄が潰れる音がする。
「オかげでわタシが最後の贄ニなル羽目になっテしまったじゃアないでスか」
 異形の顔面に狂った笑顔を貼り付けて、神主――狂信者は猟兵を睨みつける。
「あア、最初カらやりなおシです……もういちド噂を流すトころかラ……」
 今度はもっと呪いを溜め込んだ子供を供物にして、より完全な形で「ワタシ」を降ろさないと。
 その姿は、その思考は、もはやヒトのものではない。UDC組織によって「膨らむ頭の人間」と呼称されるUDCそのものだ。
 邪神を信じ崇め、ついには邪神の現身そのものに成り果てた男。
 彼を斃さないことには、この街の子供たちを死へと唆す呪いの噂は絶えることはないのだろう。
 だからこそ、猟兵達はこの狂った怪人を確実に葬るべく再び戦いへと挑む。
アリシア・マクリントック
さきほど私は慈悲深いと言いましたが……あれは嘘かもしれません。貴方のように人の道を外れ、人で無くなった者に与える慈悲は持ち合わせていませんから。……変身!

手にしている書物が気になりますね。この邪悪な存在を呼び出したのもあれの記述によるものでしょうか?
何かの情報が得られるかもしれませんし、あの書物を奪えないかしら。
人であれば峰打ちで、といくところですが、化け物相手なら腕を切り落としてしまえばいいですね。斬れなくても衝撃で落とすかもしれませんし。うまくいったら書物はマリアに回収をお願いしましょう。

難しそうであったり、大きな隙があれば書物を奪うことにはこだわらずにセイバーフィニッシュで攻撃です!




 青白い炎に照らされて、怪人と化した神主は猟兵たちに笑いかけた。
「でモ、なカなかの手腕だっタと思いマセんか? 噂をえサに、たらふク呪いを溜め込ンだ子供を釣っテ……かレらにそれホど呪わレルだケの悪意を持ッた人間もついでニ喰わせテ……ふフ、みるみル儀式の準備が進んデ、笑いが止まりマせんでしたよ」
 子供たちを利用し、彼らの憎しみを、恨みを、悲しみを利用して邪神を降ろそうとした怪人。彼はその所業を自慢するようにひけらかす。
「貴方は……」
 怪人のあまりにも身勝手で邪悪な言葉に怒り、肩を震わせるアリシア。慈悲深い彼女をしても、怪人の行いはとても赦せるものではない。
「私は貴方のように人の道を外れ、人でさえなくなったものに与える慈悲は持ち合わせていません!」
 ――変身。
 アリシアのベルトが展開し、白銀の甲冑へと姿を変える。剣を抜き、その切っ先を怪人に突きつけ、彼女は果敢に攻め込んだ。
「おヤぁ、奇遇でスねぇ。我が大神モ、『ワタシ』もあなタ達に掛ける慈悲ハ持っていナいのでスよ!」
 裾から伸びる触手を波打たせ、斬りかかるアリシアを迎え撃つ怪人。四方八方から冬の夜の冷えた空気を裂いて襲いかかる触手を剣で切り払うも、アリシアの進撃はそこで押し留められた。
 迫る触手を刃で断ち、断てば隙を生む連撃は剣の腹を滑らせて流しながら怪人と切り結ぶアリシア。
 その眼が、怪人の左手に大事に抱えられた書物を捉える。禍々しい邪気を帯びた古い本だ。
「あれは――もしやあれが元凶でしょうか……?」
 狂信者を邪神の現身へと変貌させたもの。そも、一人の人間を狂わせこのおぞましい魔術儀式へと誘ったもの。
 邪神がこの世に顕現するための布石として置いた邪悪な教えがそれだというのなら。
「それを奪ってしまえば、彼らに対抗する情報が得られるかも……!」
 もとより自分ひとりでトドメを刺せるとは思っていない。ただ狙いを腕に向けるのであれば、それに一太刀加えてあの書を取り落とさせることができれば。それならば、充分に可能だろうか。
「なァにを狙っテいるノか知りマセんが、貴女でハワタシに勝てはシません! 大いナる方と一つになっタワタシには!」
 視線が腕に向いたことを察知した怪人が触手を一斉に差し向ける。
「くっ……! まずは接近しないとどうにもならないと……言うことですね!」
 そのためにも触手が邪魔だ。これをなんとかしないと仲間たちの接近戦も十分な効果を発揮できない。
「立ち回りと、牽制……相手が人型で剣が届くところに居るなら、今の私でも相手を出来ない道理はありません!」
 纏った鎧を、描かれた家紋と自らの象徴たるエンブレムを信じて触手の渦に飛び込むアリシア。
「死にに来マシたか、いい子でスねぇ、褒めてあげマしょう!!」
 呵々と笑って触手を叩きつける怪人。その打撃に鎧で耐えながら向けた剣先から、一条の光線が放たれる。
「セイバーホールド――」
「ナっ……!?」
 その清浄な光は邪悪な男を縛り上げ、ごく一瞬だけその動きを封じ込めた。
 そして、アリシアには一瞬があればそれで事足りる。
「――フィニッシュ!」
 残りわずかの距離を一瞬で詰める突撃と、その勢いを乗せた斬撃が触手を根から断つ。
「ぐォあァあぁぎぃッ、ワタシのォ!!?」
 痛みに悶える怪人、そしてその手には未だに書物が握られたまま。
 よほど彼にとって大切なものなのだろう――アリシアはそのまま返す刀で左腕を断とうとするが、離れて見守っていたマリアの吼える声でそれを諦め後方へと飛び退る。
 直後、怪人の影がおぞましい形へと歪み、そこから飛び出した触手が直前までアリシアの立っていた地面を突き砕いた。
「影に何か潜んで……皆さん、気をつけてください! 敵は彼だけではありません!」

成功 🔵​🔵​🔴​

ウイシア・ジンジャーエール
第1幕説得後、空中飛行で戦場へ。
「少女は下ったのかしら、見当たらないけど」
少女が下山したかウイシアは知りません。
周囲に少女が居ない事を確認、戦闘を開始。

敵は彼だけではない?
距離を取る、絶対に無理・近接はしない。

●WIZ対抗
「散って。アドラムス!」
【天罰(アドラムス】で攻撃。
武器を向けるだけで攻撃対象を固定出来、高い命中力を持つUC。
[空中戦]のまま距離を取り武器を振るって仕掛けます。

炎の軌道を[視力]で捉え、[第六感]で回避し[逃げ足]で距離を取る。
一か所に留まらずヒット&アウェイの要領で狙われにくくします。
逸らしきれない炎は【花の盾(ビームシールド】で防ぎ[早業]で[カウンター]。




 このみを足止めした後、新たな犠牲者が山に踏み込まぬよう見張りに立っていたウイシア。
 その背後で盛大な銃声が弾け、彼女は猟兵達が「天狗さま」と戦いを始めたことを察した。
「あの子はもう下ったのかしら。まだ見当たらないけど」
 どのみち戦闘が始まったのなら、これ以上ここに留まる必要はないだろう。召喚した警官に封鎖線を片付けさせ、ウイシアは翼を広げると夜の空へと舞い上がった。
 彼女が戦場と化した神社に到達した時、既に天狗――ブリーフィングでその存在を提示されていたUDCは猟兵たちの活躍で全滅していた。道理で迎撃がなかった訳だ、とウイシアは仲間たちの手早い仕事ぶりに感心すると共に、彼らが撃ち落としたUDCの死骸が不気味に青く燃え上がり、その灯りに照らされて見慣れない影があることに気づく。
 触手を伸ばし、先陣を切って挑みかかった猟兵と渡り合うそれは、つまり敵だということだ。
「敵は彼だけではない……?」
 仲間の発した警告に、ウイシアは攻め手を模索する。
 姿形や格好からして、神官や信者の類が暴走して邪神に呑まれたタイプのUDCなのであろう。ということは、彼を変貌せしめた邪神の切れ端がその近くに潜んでいるか、その落とし子の類でも呼び出すことが出来るのだろう。
「接近戦は絶対に無理ですね」
 もともと武器を手に至近距離で渡り合うようなタイプではないウイシアにとって、わざわざ敵地に飛び込んでいく理由はない。
 徹底したヒットアンドアウェイで敵に確実にダメージを与えていく、もう少し効果を求めるならば、地上の仲間と上手く協調して空と陸で敵の集中を分散させれば少しは攻めやすいだろうか。
 手にした白い枝――杖を振り翳し、眼下の怪人に向ける。敵はまだウイシアには気づいていない。奇襲で初撃を当てれば、その後のイニシアチブは自然と此方の手に飛び込んでくるだろう。
「だから、当てることが大切。……散って。アドラムス!」
 その声に天を見上げた怪人めがけ、光の柱が降り注ぐ。邪悪なものを消し去る光は、ウイシアが杖を向けている限り狙いを違うことはない。
「空……! おノれ、厄介なトころにいルものでス……!!」
 怪人が呻き、空を飛ぶウイシアへの悪態を吐いて己の神を称える言葉を並べ立てる。
 邪悪な神の加護を賜るための言葉は、耳にするだけでおぞましい音となってウイシアを襲った。
 だがそれだけではない。怪人の手にした書物が青白く燃え上がり、その炎が腕を伝って怪人の全身を這えば、ウイシアの放つ光を邪悪な炎が焼き焦がす。
 光の表面を舐めるように、ウイシアめがけて逆流する邪悪な炎。
「……っ!」
 反撃をもらうわけにはいかない。攻撃を中断し、ひらりと旋回して火柱を回避するウイシア。その移動先めがけて飛来したいくつもの火球をちらと視野に収め、すぐさま直感でその隙間を抜ける路を見出して回避し、断続的に光を浴びせる。
「ぶンぶんと小煩イ羽虫が! あナたも大人シく贄になりなサい!!」
「羽虫じゃないわ、天使よ」
 純白の光と青い炎の応酬は美しくすらあるが、その攻防もいつまでもは続かない。
 ついにウイシアを捉えた炎を、彼女は左手の花の盾で受け流す。しかし邪神の悪意のように粘り気の強い炎は盾に纏わりつき、更に燃え広がろうとする。
 絶体絶命、これ以上の無理な継戦は更にダメージを受けかねない。そして、その無茶はウイシアの望むところではない。最悪でも一旦射程外まで退き、仕切り直しを望みたい状況だ。
 だが、同時に命中させたことに怪人がほくそ笑み、油断したこの瞬間は最大の好機でもある。
「――――消えて」
 退くべきか、押し込むべきか。その一瞬の好機をどう扱うか、瞬時に決断したウイシアが放つ光は、見事に怪人の纏う邪神の加護たる炎を消し飛ばした。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

エル・クーゴー
『最終撃破目標を捕捉しました』


●POW
【空中戦】用バーニア展開、空戦機動を継続
「影」からの触手の射程及び伸長速度を警戒しつつ、空対地攻撃シークエンスを実行します

回避に専心する【時間稼ぎ】
同時に敵触手の態様を【学習力】を以って観察
触手の展開量が頭打ちと思しい瞬間の看破を試みます

・回避が限界
・敵触手展開量が頭打ち
いずれかの条件を満たし次第――ファイア
【フルバースト・マキシマム】を【誘導弾】化させての【一斉発射】
加えて【武器改造】により副砲を増設しての【2回攻撃】
全触手の破砕を見込みます

同時、銃砲の一つでヘッドショット狙いも交えます(【スナイパー】)
敵瀕死時の脅威度を鑑み、即死が最適解と算出しました




『味方の後退支援、終了』
『最終撃破目標を捕捉しました』
 被弾し、一度敵の攻撃圏内から離脱する仲間を逃がすため牽制に入ったエルは、改めて斃すべき全ての元凶、この街に呪いを顕現させた邪悪な存在を視認する。
 空からの攻撃であれば、多少は奇襲への対応にもゆとりはある。とはいえ、敵の影に潜む邪神の一部がどこまで伸縮するのか、どれだけの量を展開できるのか、そして最高でどれほどの速度を以て敵に襲いかかるのか。
 知らなければならない。敵を正しく脅威評価してこそ、エルの緻密に計算された対地攻撃は成立するのだから。
『>牽制継続』
『「影」からの迎撃を誘発、攻撃能力を学習査定』
『最大効率での攻撃機会を捜索します』
 狙うは牽制による敵の攻撃の遅滞と、長期戦をもってその戦闘力を見極めること。空を飛ぶ猟兵との撃ち合いで天を向いた怪人の視界に飛び込み、わざとその足元を払うように機関砲を掃射して敵の関心を惹きつけたエルは、そのまま空中戦で影触手に挑みかかる。
 急降下で近寄り、影から触手が伸びてはそのまま上昇してくるりくるりとマニューバし、追撃を躱して逃げ切る。そうして敵が追撃を諦め、他の猟兵に攻撃しようとすれば再び襲いかかってそれを妨害し、また空へと逃げてゆく。
「やル気があるノですか、あなタは!!」
『肯定』
『当機は戦術目標達成のため任務を遂行中です』
「面倒くサい物言いですネぇ、自分が木偶人形だとデも言うつモりデすか!?」
 エルの独特の口調に苛立つ怪人だが、攻撃の手は緩まない。散発的な銃撃を影触手で受け止め、執拗な追尾でエルを追い回す触手だが、そのしつこさが仇となる。
『射程限界を把握しました』
『迎撃の最高速度を暫定的に確定』
『同時展開可能量を暫定的に確定。脅威評価を終了します』
 予想より早く異形の影の戦闘能力を見極めたエルが、攻撃の準備に移った。
 触手の射程圏外ギリギリで滞空し、無数に携えた銃砲を更にその場で改造して砲門数を倍加させる。その全てを別個の照準で、脅威となる影触手に向け――
『――ファイア』
 エルの持つ全火力が一斉に投射される。誘導性をすら付与された弾丸は、追うものと追われるものをそれまでから逆転し、逃げ惑う影を捉え触手を一本たりと残さず吹き飛ばしていった。
「あァ! 神、大神よ! なンてことヲ……偉大な主ニこのよウな狼藉、断じてゆルっ」
 嵐のような銃声に遅れてたぁん、と乾いた破裂音が山に木霊し、怪人は額に穴を空けて後ろへと倒れ込む。
『敵瀕死時の脅威度上昇を鑑み、即死が最適解と算出しました』
 狙撃銃の銃口からくゆる硝煙を夜風になびかせ、エルは照準器から顔を離す。
 ヘッドショット。脳を破壊されてはもはや生存不可能だろう。――それが常識の埒内で生きる生物であれば。
「うギっ、ぎげッ……げホっ、げほ……非道イことをシまスね、死んでシまうではナいですカ」
 咳き込みながら血の混じった脳の欠片を吐き出し、怪人は少し痛かったくらいに振る舞い再び立ち上がる。
 既に邪神をその頭蓋の内に召喚した怪人にとって、もはや脳などヒトだったときの名残でしかないということなのだろうか。
『……脅威度再判定の必要性あり』
 必殺の一撃の効果が想定に満たなかったことは遺憾だが、しかし脳を破壊されても生存するというこの個体の脅威は知れた。より近距離で戦いを挑む猟兵にとって、その情報は千金にも値するだろう。
 エルは情報収集という役目を果たしたことをひとまずの成果として、さらなる迎撃を警戒し高度を上げ一時離脱するのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

夕凪・悠那
罪悪感一切なし、そりゃそうか
まあ、元凶を斃して町は平和になりました……って、わかりやすくていいよね

過去の膨らむ頭の人間との戦闘経験から対策
敵の基本性能は[情報収集]済みだよ
バトルキャラを人盾に「教典から放つ炎」を防御。それをトリガーに【異法複製】
変身を打ち消しつつ、真の姿を限定解放して変身
身体の各所にブロックノイズが走った「邪なる炎をまとった異形」に変身して「複製教典から放つ炎」で攻撃
(真の姿:ノイズのくだりの辺)

呪われルだけの悪意を持った人間なラ目の前にいルよ
喜べヨ、すグに神サマのとこに逝けルさ!
炎を操って([誘導弾])、影に潜んでる触手も膨れ頭も経典も、纏めて焼き払ってやる([範囲攻撃])


ユナ・アンダーソン
WIZで判定

彼女たちの願いは美味しかったかしら?
……そう
綺麗にその頭を落してあげる
死ね、UDC

なぎ払い3、範囲攻撃3を用いてエトワル・ボワ・ジュスティスを振り回しよけられないように広範囲を攻撃し断頭
攻撃を軽減する邪なる炎は火炎耐性3、呪詛耐性2で断ち切ろうとする

傷ついた味方がいたら優しさ10、手をつなぐ9、激痛耐性5を用いて傷奪う星痕を使用
あなたの傷を私にちょうだい?

コラプサーの誘惑5、おびき寄せ5で注目を集め味方への攻撃をかばう3
攻撃は武器受け3、第六感5、呪詛耐性2、火炎耐性3で防御
膨らむ頭の人間は事例が多いから
対策ばっちりよ

戦闘が終ったら今までの犠牲者に祈り6を
――――彼らの魂に憐れみを




「あァ、そレにシても愚かシい人間ふゼいが! ワタシの邪魔ヲするンじゃああリマせんよ……!」
 頭蓋を吹き飛ばされ、それから再生し更に歪なカタチに膨れた頭部を掻き毟って怒り狂う怪人。
「そモソもあなた達サえ来なけレば、もっと完全なカタチで儀式を終えラれたのでスがね……贄を遠ざケ、眷属ヲ殺し、今度はワタシの邪魔をスる。目障りナ人間どモめ……全員始末シてあげマショう!」
 怒りに我を忘れたかと思えば、すっと冷静さを取り戻し、かと思えば憎々しげに猟兵たちを睨みつける怪人。まるで精神がぐるぐると入れ替わるような不安定さは、彼の潰れた脳髄と邪神との結合が進んでいるためだろうか。
「それにしても罪悪感一切なし、と。そりゃそうか」
 お前にとっては神様に供物を捧げるのは"いいコト"だったんだろうな。悠那はつまらなそうに怪人を見遣り、ひとりごちる。
「ねぇ。…………彼女たちの願いは美味しかったかしら?」
 ユナは静かに怒りを燃やして怪人に――その頭の裏側に潜む邪神に問う。
「はァぁ、いマさラ何ヲ? えェ、えぇ、それハもウ美味デしたトも! 邪魔さエ無けれバもっト楽しメたのですガねェ……?」
 その凶相に貼り付いた笑顔がにたりと粘っこく歪んだ。誰かを憎む心。消えてしまえと願う心。そしてその想いの何処かで、そんなことを願ってしまった自分を蔑んでしまう心。それは邪神にとって、至上の美味なのだと怪人は楽しげに語り、そしてその邪魔をする猟兵たちに突然怒り散らす。
「……そう。綺麗にその頭を落としてあげる。死ね、UDC」
 巨大な断頭台の刃を構え、一歩踏み出すユナ。
「ま、元凶を斃して街は平和になりました……ってのはわかりやすくていいよね」
 翼怪との戦闘を生き延び、額の数字をいくらか大きくした精鋭兵たちを伴い、怪人に向き合う悠那。
 二人はほぼ同時に、倒すべき邪悪に向けて攻撃を開始する。
 悠那の従えた兵士たちが銃を構え、怪人へと銃弾を叩き込む。それ自体は体内に邪神を巣食わせ、人型の袋と化した怪人にはさしたるダメージにはならない。だが、絶え間ない銃撃は怪人の反撃を邪魔することは出来るし、本命の一撃を加えるための目くらましになる。
「死ヌのはアなた達でスよ、神に抗ウ愚か者の末路ヲ知らナいのですカ?」
 怪人は全身に炎を纏ってそれまでに無いほどに激しく燃え上がりながら、教典から火球を飛ばして兵士を焼き、肉薄するユナの進路を塞ぐ。
 だが、死の恐怖を持たない電子の歩兵は損耗を気にすること無く攻撃の手を緩めない。
 そしてユナと悠那には、今までに何体ものこれと同じ「成れの果て」を葬ってきた経験がある。突出し先行するユナと、それをサポートするため追随する歩兵隊。
「あら、どうも。巻き込まれないように気をつけて?」
「巻き込んでも構わないよ、別に。いくらでも補充できるしさ! さあ君達、お姫様のエスコートだ!」
 迫る火炎を刃で切り裂き、弾けた火は、その火種たる呪詛はその身の耐性を信じて耐える。迎撃の隙を突く避けきれないものは兵士が迎え撃ち、あるいはその身体を盾に引き受けて、ユナを庇って燃え尽きていく。
 かくして怪人の前にたどり着く頃には、ユナを護る兵士はほぼ壊滅していた。だが、彼らの奮戦によってユナの傷は驚くほど少ない。敵の攻撃手段を知る二人だからこそ、そして厄介な触手や影を殲滅し、傷を与え怪人を弱らせた仲間が居たからこそのスムーズな攻勢だ。
「あなたの断頭台が来てあげたわよ」
「ぎヒっ、首ヲ落とすト? ワタシの? えェどウゾ! やレるものナら――――」
 すぱん。
 怪人が自慢げに燃やし揺らがせた邪悪な炎を容易く切り裂き、ユナの刃が首を落とす。
 ごとり、と地面に落ちた怪人の頭からは一滴の血も流れることがなく、丸みを失ったそれは転がっていくこと無く白濁した眼球で地からユナを見上げていた。
「これで終わりね」
 悠那に振り向き、ふぅ、と息を吐くユナ。怪我は無いかしら、治療は必要? と問う彼女を、悠那は突き飛ばす。
「まだ死んで無いよ、こいつ……!」
 全身に呪詛の炎を浴びて燃えながら、悠那は首を失ってもまだ二本の脚で立ち、教典を掲げる怪人の身体をにらみつける。
「そんな……」
 ユナの呆然とした呟き。その足元から、ゲタゲタと二人を嘲笑うかのような声。
「ひヒャはハはははひひッ、神ト一つにナッたワタシがァ! その程度デ死ぬハずがなイでしょウ!! 愚かサは死で贖いナさい、あなタ達を最初ノ生贄ニ――」
 うるさいな。
 全身を炎に包まれたまま、悠那は呟く。その身体は不気味なブロックノイズに隠され、かろうじて人型と分かる程度の燃える"なにか"としか認識出来ない。
「そンなに生贄ガほシいのかイ? なラ、ソれに相応シい、呪われルだけの悪意を持った人間なラ目の前にいルよ」
 ノイズの隙間からわずかに覗くその姿は、悠那の面影を残しつつもまるで目の前の怪人のようにおぞましく歪んでいた。
「あナた……いヤ、お前ハ……おマえのようナ存在がナぜこんな所ニ居るノでス!! なンなんだ、お前ハ――!?」
 くしゃりと喧しく喚き立てる怪人の頭を踏み潰し、悠那の放つ炎が怪人の潰れた頭を、身体を、教典を、影すらも残さず焼き尽くす。
「喜べヨ、最初ノ生贄トして、すグに神サマのとこに逝けルさ!」


「……その、最後は助かったわ。ありがとう」
 醜い怪人の複製体への変身を解き、身にまとった命を削る邪悪な炎をかき消してへたり込む悠那に、ユナは手を差し伸べた。
 これまで仕留めた『膨らむ頭の人間』どもが、首を落とせば大人しく死ぬ手合いだったおかげで少しの油断があったかもしれない。オブリビオン――特にUDCのような存在を生物の常識で捉えると危険だ、というのは分かっていたことだけれど。
 ユナの手を取って立ち上がった悠那は、気にすることないよ、とユナを励ます。
「ユナさんが首を落として、あいつの注意を引いてくれたおかげでボクもあいつに近づけたわけだし、って」
 悠那は気付く。自ら纏った炎で受けた傷がみるみる癒えていくのと、手を繋いだユナが痛みを耐えるように僅かに眉根を寄せていることに。
「ちょっと、何してるんだよ!?」
「気にしないで、貴女の方が深手を受けているでしょう? 貴女が庇ってくれたおかげで私は無事なのよ、その分の傷くらい私に頂戴」
 怪我してまで癒やすことはない、いや自分のせいで負った傷だから自分が癒やすと譲らない二人を、雲の切れ間からようやく姿を現した月の明かりが仄かに照らす。
 それを見上げて、二人は想う。
 この邪神によるおぞましい計画は阻止された。UDC組織による情報工作で、天狗さまの呪いの噂もそれによって姿を消した子供たちの行方も、それらしい偽装が施されていずれ消えていくのだろう。
 そうなった時、呪いにしか頼るものを見出だせぬままその命を邪神に利用された犠牲者たる子供たちのことを覚えていられる人間がどれだけいるだろうか。
 ――――彼らの魂に憐れみを。
 ――――そして、今なお救いを求める子供たちに正しい救済があらんことを。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年01月24日


挿絵イラスト