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森に呑まれる!

#アックス&ウィザーズ

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#アックス&ウィザーズ


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⚫️アックス&ウィザーズ、森にほど近い村の一角にて。
 コーン、コーン、コーン……メキメキメキィ……ズズゥン。
 断続的に響く、斧が木を切り倒す音。
 一つや二つではない。村人が総出で村の傍の木を切り倒していた。
 男も、女も、子供も老人も。
 文字通りの老若男女が木に斧を突き立て、枝を落とし、牛に切り株を引かせ引き抜く。
 それはその村で使うには余りにも多い木材。世が世なら森林破壊とも言われかねない光景。だが。

「また出るぞォ!!!!」
 そんな叫び声と共に、先ほど切り倒された木の根元から、一本の若葉が芽吹く。
 ぴょるん、とでも擬音を出しそうな可愛らしい見た目はほんの数秒。
 瞬く間に、その丈は大人の背丈を優に超え、幹が裂けるのではないかというような異音を発しながら、若葉は樹齢20年はありそうな大樹へと姿を変える。

「クソッ! キリがねぇ! このままじゃ村が呑まれちまう!!!」
 それは、ここ数週間の間に始まった異変。
 そもそも、この村は森の近くに有ったわけではない。
 だが、突如として遠方に現れた森が、瞬く間に広がり。今や村を呑み込もうとしている。
 移住をするにも、村人全員を受け入れてくれる町があるはずもなし。
 村人たちにできる事と言えば、せめて木を切り倒して森の侵攻を妨げる事のみ。
 だが、一本切り倒しているうちに二本、三本と木は伸びる。
 徒労の果てに待つものを予感し、村長は天を仰ぎ膝を突く他無かった。

 村から離れた数キロ先の森の中心部。
 そこで一体のオブリビオンが首を起こす。また、己の子が命脈を断たれた。
 許さない。赦しはしない。我が子に等しき森の木を断った者達に鉄槌を下さねばならない。
 そして、オブリビオンは立ち上がる。樹海の端へと足を向け、その周囲を踊りまわる樹精達を引き連れて。
 その歩みの跡には、可愛らしい若葉が芽吹いていた。

●グリモアベースにて。
「これが、私の見た予知です」
 瞳から白い壁に投影した映像を消し、深々と下げた頭を上げ、猟兵達を見据えてスキエンティア・スフィアソフィア(電脳知性天体・f01158)はそう、口を開いた。

「皆様、ようこそおいでくださいました。皆様を召集する事態。即ち、オブリビオンによる事件。今回の世界はアックス&ウィザーズ。剣と魔法の世界です……なぜ剣と魔法の世界なのにアックス&ウィザーズなのかは知りません。ウィキへ〇ディアにも載ってませんでしたので。えぇ。
 もとい。今回のオブリビオンは森を広げる事を目的としているようです。はい、そこの方。それは良い事ではないか、と思われましたね。ところがぎっちょん。
 そのオブリビオンにとって、森の木こそが至上、他の事は一切気にしない為、村が一つ呑まれようとしています。勿論、これを見過ごせば村一つの話では収まりません。
 最悪の話をするならば、アックス&ウィザーズの世界全てが森に呑まれる事になるかもしれません」
 スキエンティアは、そこで一度言葉を区切る。
 表情筋など存在しないのではないかと思わせる程にピクリともしない表情でありながら、強い意思を込めた眼差しで猟兵達を見回して。

「ここまでお伝えすれば、聡明な皆様の事ですから何をすべきかは分かって戴けたものと思います。えぇ。オブリビオンをメッタメタのギタギタに叩きのめし、アックス&ウィザーズの世界を救う……のは最終目的。まずはこのオブリビオンと相対するために、森へ入っていただきます。
 といっても、森から入ってしばらくすると花畑が広がっています。問題はこの花畑。
 一見何の変哲もない草花が咲き乱れる花畑なのですが、その中に獣であろうと捕食する食虫植物ならぬ食獣植物が混じっているのです。
 所謂食虫植物の生息地は、土壌の栄養が乏しい場所。急激な成長をした樹木が吸い上げた所為で枯れた土壌に食獣植物が生息したようですね。
 そしてそれらが枯れればその栄養が土壌に還元され森が栄える、と。
 意図的かは知りませんが、随分と考えられたサイクルですね」
 表情は相変わらず変わりなく、ただ声音に若干の皮肉気を込めながら、スキエンティアは続けた。

「さて、皆様がこの花畑を越える為に考えられる手段は三つ。
 一つは食獣植物の伸ばす蔦を駆逐しながら進む方法。ですが、大型の獣を捉える程の蔦は一筋縄ではいかないかも知れません。多少なりダメージを受ける事を覚悟して下さい。
 一つは蔦を相手にせず掻い潜り、花畑を駆け抜ける方法。成功すれば被害はありませんが、少しでも蔦に絡め取られれば大きなダメージを受ける可能性もあり得ます。
 そして最後に、食獣植物を見分ける方法を探り、安全な道を探し出す方法。最も被害の出る可能性の少ない方法ですが、如何せん、植物に対する知識が必要とされるので、最初の段階のハードルが高いと思われます」
 そこで言葉を区切り、スキエンティアは再度猟兵達を見回す。

「察しの良い皆様ならばもう一つあるだろう、とお考えでしょうね。
 そう、花畑を焼き払ってしまう事。しかしながら、それを行った場合、怒り狂ったオブリビオンと樹精との集団戦になる可能性が高いので避ける事を推奨します。
 というよりも、そうした場合どうなるか、私にも予知出来ません。絶対に避けてください。
 さて、花畑は前哨戦、ご自身の得意とされる方法で突破して戴き、その後に控えるオブリビオンとの戦闘に備えて戴きたく思います。
 オブリビオンは自らが生み出した樹木から精霊を呼び出し、使役している様子。
 先にその精霊たちを殲滅して目的のオブリビオンと戦うことになるでしょう。
 長丁場の戦闘になるでしょうが、皆様ならば達成できると信じております。
 どうぞ、よろしくお願いいたします」
 そう告げて、スキエンティアは再度、深々と頭を下げた。


氷川 仁
 最近の人は与作を知っているのでしょうか。氷川 仁(ひかわ じん)です。
 森林破壊が叫ばれる昨今、植林事業も盛んになり自然を守ろうという運動も活発になっていますね。
 しかし異世界の植物はなんと獣だろうが食って生き残ろうとしています。
 逞しすぎて、自然を守ろうだなんて言った日にはその人が頭から食われている絵面のオチが見えますね。
 さて、今回はそんな食獣植物の花畑を突破して戴きます。
 方法の一つとして、スキエンティアは植物を見分けるのに知識が必要、と言っていましたが、具体的な事例を挙げる必要はありません。この世界の植物に対する知識を持っている! と言い張れるだけの技能を持っていれば大丈夫と判断いたします。
 勿論、獣を獲るのだから相応の何かがあるに違いない! と指摘して戴くのも大歓迎です。

 そしてその後は樹精、そしてオブリビオンの連戦となりますが、樹精は好奇心旺盛なので突入してきた猟兵たちへ率先して襲い掛かります。
 なので、オブリビオンと樹精を分断する事についてはプレイングを割いて頂く必要はありません。
 皆様の多彩なプレイング、お待ちしております。

●第二章以降の戦闘領域について。
 基本的に森の中での戦闘。
 樹高は凡そ三十メートル程の木々が三メートル程の間隔で生えている。
 急激に生えた森なのでまだ落ち葉は積もっておらず、地面がむき出し。
 生木は意外と燃えにくいので、余程のことが無ければ延焼を気に掛ける必要はないが、周囲に水場は無いため、自在に消火、操作不可能な炎を使用する場合は留意しておく必要があるかもしれない。
 辺り一面を適度に焼き払って広場を作る、などの方法も可。
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第1章 冒険 『食獣植物の花畑』

POW   :    蔦を駆逐しながら花畑を突破する

SPD   :    食獣植物の蔦を搔い潜り、花畑を駆け抜ける

WIZ   :    食獣植物を見分ける方法を探り、安全な道を探し出す

👑11
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

シエナ・リーレイ
「ここならお友達が沢山出来そう!とシエナは花畑を前に小躍りします。」

普通の人には危険な花畑もシエナにとっては沢山のお友達候補との出会いの場
花畑に辿り着いたシエナは【友達作りのおまじない】で花畑に眠る生物の骸を次々とお友達にしてゆきます

「お友達が大変な事に!とシエナは悲鳴をあげます。」

ただ、目覚めたお友達のいる場所は確実に食獣植物の真っただ中
お友達は目覚めた直後に食獣植物に襲われるでしょう

そうなればシエナはスカートの中から過去の依頼でお友達になったゴブリンやキメラの皆さんを呼び出すと食獣植物達の駆除をお願いするでしょう

「新しいお友達を助けて!とシエナはお友達のみんなにお願いします。」



●ある日、花畑の中。熊? さんに出会った
「ここならお友達が沢山出来そう! とシエナは花畑を前に小躍りします」
 明らかに植生の噛み合っていない歪な森を抜け、目の前に現れた花畑を前に、嬉しそうな声を上げ。口にした通りに小躍りを始めるシエナ・リーレイ(年代物の呪殺人形・f04107)。
 シエナにとって、食獣植物の花畑は【お友達】を作るのに、持って来いの場所だった。

「早速お友達を作りましょう! とシエナはユーベルコードを発動します」
 そう言ったシエナが花畑に向けて微笑むと、幾つかの間を置いて地面から、ぼこり、と骨が一本突き出す。
 ぼこり、ぼこり。その数は徐々に徐々に増えていき、遂には数十もの骨が浮かび上がり、組みあがるように形を成していく。

「あなたが私の新しいお友達なのね! とシエナは新しいお友達へ快活に笑いかけます」
 組みあがったのは、肉も皮も無い大型の肉食獣の骨格。
 熊のようなその骨は、かつて食獣植物の餌食となった獣がシエナのユーベルコードによって一日限定のお友達として蘇った姿だった。

「さぁ、あなたも一緒に行きましょう! とシエナはお友達と共に歩き出します」
 と。シエナが歩き出そうとした、その瞬間。
 新しくお友達になった熊? の足元に緑色の蔦が絡みつき。
 その蔦は瞬く間に熊? の骨格全体を覆いつくして締め上げ、その動きを拘束してしまった。

「あぁ! お友達が! お友達が大変な事に! とシエナは悲鳴をあげ、新しいお友達を助けて! とシエナはお友達のみんなにお願いします」
 すると、シエナのスカートの影から、ぞろり、と鈍い刃が覗き。
 それに続いてオブリビオン、ゴブリンの姿が現れた。しかし、それは本来のオブリビオンではなく、シエナが取り込んだ魂を骸に吹き込んだ人形。
 お友達であるそれが、ぞろぞろと現れて刃を振り上げ熊? を締め上げる蔦に斬りかかる。
 スパパン、と千々に刻まれる蔦。しかし、今度はゴブリン達が足元に現れた蔦に絡め取られ、宙に吊るされもがき逃れようと暴れだす。

「えぇと、えぇと、そうだ、来て! とシエナはさらにお友達にお願いします」
 その言葉と共に現れたのは、イノシシの胴に鹿の脚を接着したかのような異形の存在。
 キメラと呼ばれたその人形は、一声叫ぶと、その頭から生えた角で地面から生えた蔦を薙ぎ払っていく。
 熊? を締め上げ、ゴブリンを吊っていた蔦は力を失い、それでも猶、シエナたちを絡め取ろうと蔦は伸び。

「もう! キリがないわ! とシエナはぷんぷんし、お願い! とお友達に飛び乗ります」
 そして、新しくお友達にした熊? の背に乗り、シエナは森の奥へと駆け出して行く。
 その後ろに、キメラとゴブリン達をぞろぞろと連れて。

成功 🔵​🔵​🔴​

箱庭・山岳
◆心情
純粋な生存競争、拡張欲求か。悪意よりはよほどわかり易い。

◆行動(SPD)
ブラックスライムの肉体を存分に発揮して花畑を駆け抜ける。
蔦に巻きつかれてもバウンドボディの柔軟性ですり抜けられるだろう。
「絞りちぎられる前に抜けないと大事になりそうだがな」

余裕があれば蔦を伸ばしてきた植物が他種とどう違うかの観察をして、
そのことを周辺や後続に伝えたい。




 ざわり、と花畑が揺らぐ。
 先に突入したシエナによって目覚めた食獣植物たちだったが、目的の獲物が去った事を察知して、再度草花への擬態を開始する。
 その姿の一部始終を眺めていた箱庭・山岳(ブラックタールのウィザード・f02412)は、思案気に顎を撫で擦る。
 
「……純粋な生存競争、拡張欲求か。悪意よりは、よほどわかり易い」
 そう呟いた山岳は、己の身を軟化させ、バウンドモードへと変化させる。
 ブラックタールとしての特性を発揮した姿へと変じた山岳は、その身を大きく伸ばし、一気に縮める。
 十メートルの距離を一瞬で瞬発した後方部に弾かれた前方が押し出され、跳ね飛ぶように山岳は花畑の中へと飛び込んだ。

 最初に着弾したのは花畑の入口から20m程入った場所。
 その衝撃で、反射的に食獣植物が蔦を伸ばす。だが、その蔦は空を切り。
 既に山岳は着弾の衝撃を自前の弾力で速度に変えて前方へと吹っ飛んでいる。
 そして着弾。さらに蔦。着弾、蔦、着弾、蔦、着弾、蔦。
 食獣植物の反射速度よりも早く、バウンドモードの山岳は弾み抜けていく。
 食獣植物はその性質を食虫植物と大きく変じてはいない。
 何らかの接触、振動で反射的に蔦を伸ばし、巻き付けてはいるが、そこに意思は無いのだ。
 とは言え、意思が無い故に加減も無い。一度捕まればバウンドモードの山岳であろうと抜け出すことは容易くはないだろう。
 柔軟性によって限界までは耐えられるだろうが、絞り切られればその限りではないのだから。とは言え。
 現状問題なく通り抜けていく山岳の目に、ふと一本の草の根元が一瞬映る。

「……成程」
 その草は山岳の着弾の衝撃と共に蔦を伸ばす。
 そう、接触して反応するのは根。地面に張り巡らされた根に一定の重量が接触すると、それを目掛けて蔦を伸ばすのが、食獣植物の習性だったのだ。
 そして、その為に食獣植物の根は他の草よりも多く、目に見えて茎が太い。
 これは暴れる獲物を逃さないために頑丈に進化した結果だろう。
 明確に見分ける手段を発見した山岳は、それを後ほど後続に周知しようと心に刻み、蔦を置き去りに花畑を抜けていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リチャード・チェイス
自然を大切にという言葉を聞くようになり久しい。
しかし、自然とはなんであろうか。
人の手が加わっていないものと定義することもあるが
その人も自然の成り立ちによって生じた存在である。
自然から生じた人の行いが不自然となる。
そこには大きな矛盾を孕んでいるいるとは思わないかね?

つまり、鹿の主食は何かということだ。
芝生、木の芽、煎餅……即ち草食である。
さて諸君。テーブルマナーの予習は済んでいるかね?
免責事項的に腹痛など起こしても私の責任ではないので
その辺りはご了承しておいて欲しい。
(シカノイアで花畑の生物の死骸を従える。ナイフとフォークで蔦をお食事)

ちなみに、今日の私の昼食は鹿肉のローストサンドイッチである。



●独壇場
「自然を大切にという言葉を聞くようになり久しい。
 しかし、自然とはなんであろうか。
 人の手が加わっていないものと定義することもあるが
 その人も自然の成り立ちによって生じた存在である。
 自然から生じた人の行いが不自然となる。
 そこには大きな矛盾を孕んでいるいるとは思わないかね?」
 そう、誰も居ない空間に向かって朗々と語り掛けている声が花畑に響く。
 誰も居ない、そう、誰も居ないのに何故かその視線は誰かを向いているように。
 具体的には第四の壁的なものに語り掛けているように。リチャード・チェイス(四月鹿・f03687)の演説はまだ続いていた。

「つまり、鹿の主食は何かということだ。
 芝生、木の芽、煎餅……即ち草食である。
 さて諸君。テーブルマナーの予習は済んでいるかね?
 免責事項的に腹痛など起こしても私の責任ではないので
 その辺りはご了承しておいて欲しい」
 その場に人が居れば間違いなく、鹿煎餅は草じゃないだろ、とツッコミが入るところだが、残念ながら誰も居ない。そう、リチャードを止められる者は誰も居ないのだ。残念ながら。
 そして、発動してしまったリチャードのユーベルコード、向き直り向き直れ、お前達の全ての鹿から(シカノイア)。
 その効果を受け、食獣植物の犠牲となった獣たちがシャーマンズゴースト鹿へと変じて現れる。シャーマンズゴースト鹿とはなにか。それは誰にも解らない。もしかしたらリチャードにも解らない。
 そして当然、先に明かされた食獣植物の習性によってシャーマンズゴースト鹿は蔦に絡め取られ、ギリギリと締め上げられる。
 吊り上げられ、その体液を絞ろうとする食獣植物だったが、この謎の生物は果たして体液など存在するのだろうか、血の一滴も流すことなく胡乱な瞳で虚空を見つめていた。

「ふ……全ての命に感謝を……いただきます」
 そして、右手にナイフを。左手にフォークを。完全に食事態勢に入ったリチャード。
 突き刺さったフォークにのた打ち回る蔦をナイフでギリギリと切り落とそうとするリチャードだが、火も通っていない生の草がそう簡単に食事用のナイフで切れるわけもなく。

「ふん! せい! うおりゃっ!」
 格闘する事20分。他の猟兵たちが通り過ぎた気配もしたが、蔦と格闘するリチャードには関係の無い話。ナイフとフォークで蔦と相対するリチャードを他の猟兵たちが避けたとも言える。
 しかし、その甲斐あってか遂に一口サイズの蔦を切り出すことに成功したリチャード。ちなみにシャーマンズゴースト鹿は、未だ胡乱な瞳を虚空に向けたままピクリとも動かない。
 そして、万感の思いで蔦を口に運んだリチャード。一噛み、二噛み。ゆっくりと噛み締めるように咀嚼を続け。
 僅かに口に含んだ空気を鼻から吐き出し、その匂いを堪能。舌の上で転がすように蔦をかき混ぜ、その味を愉しみ。

「マッズ!!!!」
 ベッと地面に吐き出した。当たり前である。
 確かに幾つかの食虫植物は食用に向かない事もないが、そもそもが蔦だ。
 繊維と収縮の為の水分で構成されたそれは、鹿だろうがシャーマンズゴーストだろうがシャーマンズゴースト鹿だろうが凡そ食べるのに向いた部位ではない。

「……ふ、こんな事もあろうかと。昼食に鹿肉のローストサンドイッチを持って来て正解であったな……!」
 最初から食おうと思うな、そもそもお前草食じゃないのかよ、共食いじゃないのかそれ、等々。
 この場に誰かが居れば間違いなくツッコミが入っただろう。だが、残念ながら居ないのである。
 そして、リチャードはその場にランチボックスを広げ、優雅な昼食を開始したのだった(その後、シャーマンズゴースト鹿を囮に花畑を抜けました)。

成功 🔵​🔵​🔴​

石上・麻琴
いやはや、どうしたものか……植木の心得はないですが、斬っていくのが確実ですかね?という訳で、剣刃一閃で蔦を斬り裂きながら花畑を突破します。多少の傷は致し方ないとしましょう……■アドリブ等大歓迎です



●草刈り
「いやはや、どうしたものか……」
 山岳が見つけ出した食獣植物の見分け方を元に、花畑へ足を踏み入れた石上・麻琴(虹の彼方の空の星・f01420)だったが、その密集具合に辟易していた。
 根を踏めば蔦が襲う。単純な事だが、問題はその根だ。
 根である以上当然地中に埋まっているそれを見出すことは容易くはなく、食獣植物の周囲にはその根が張り巡らされて近づけない。
 近づかなければ迂回してそのうち突破は出来そうだが。

「植木の心得はないですが、斬っていくのが確実ですかね?」
 そう、呟いた麻琴は腰に差したサムライブレイドを抜き放ち、無造作に食獣植物へと向かって行く。
 当然、食獣植物はその重みへと反射的に蔦を伸ばす。這うように進み、麻琴の足首に絡みつこうと伸びる蔦。それが触れたならば、瞬く間に締め上げられ多くの獣達と同じ末路を辿る事となるだろう。

「ふっ!」
 だが、その蔦は瞬きの間に切り落とされ、返す刃で食獣植物の茎が両断される。
 吐いた呼気を吸い、残心を解かず食獣植物の反撃に備える。
 と、切断されたはずの蔦が麻琴へ向けて再度伸びる。
 元より伸びる事で獲物を襲う蔦。切断されたとて植物に痛覚などあるはずもなく、お構いなしに麻琴へと伸び掛かり。

「これは……面倒な。だけど、それだけですね」
 だが、伸びるならば斬り落とし続ければいい。
 花畑の奥へと、麻琴が足を踏み入れる度に伸ばされる蔦は、刃が閃く度に斬り飛ばされていく。
 無から有が生まれないように、伸びる蔦とて食獣植物の蓄えた栄養を元としている。
 遂には反射行動を起こしても蔦を伸ばせない食獣植物。そして、遂には茎を幾重にも輪切りされ、ようやくその動きを止めた。

「……これを繰り返すとなると、骨かもしれませんね」
 植物を刈っても、その根が残ればいずれまた、その根から新たな目が芽吹く。
 駆逐した事にはならないだろうが、今この時はまず花畑を抜ける事が最優先。
 麻琴はサムライブレイドを振り襲い来る蔦を斬りながら、花畑の奥へと向かって行った。

成功 🔵​🔵​🔴​

ロク・ザイオン
(森には秩序がある。穏やかに、緩やかに巡る秩序が。
森は巡り完結する。
だから、この「在り方」を森番は許さない)

……これは森ではない。
病だ。

(森番は森番が故に、森を深く知る。【地形利用】し、富める土と飢えた草を見抜けるだろうか。
草に呑まれた獣の痕跡を【追跡】し、警戒も出来るだろうか。
愚直に烙禍で焼き潰し続けてもよい。どのみち病葉一枚、残す気はないのだから)


エーリカ・バルシュタット
ふぅーん、ま、大きく広く生息地を拡大したいのは植物として当然よね。
でもこれはちょっとやり過ぎ。
木々の管理なんて庭師に任せるものだけど、特別にあたしが剪定してあげるっ!

行動:WIZ
たしかああいう植物は一定の刺激で獲物を捕らえるって前に本で読んだわね…
なら簡単じゃない!とにかく刺激して食獣植物が生えてない場所を見つければいいのよ!

というわけでエレメンタル・ファンタジアで花畑全体に氷塊の雨を降らすわ。
氷塊に反応してる蔓を避けて先へ進みましょう。
もし通れなくても氷で花畑を埋めて、氷の上を渡るのはどうかしら。
あたしが無事に通り過ぎるまで、好きなだけ氷を抱いてなさいっ。




「ふぅーん、ま、大きく広く生息地を拡大したいのは植物として当然よね」
 エーリカ・バルシュタット(シュテルンドラッヘ・フロイライン・f03435)は、眼前に広がる花畑を見下ろしつつ、そう呟く。

「……これは植物ではない。病だ」
 エーリカの声を聞き、ポツリと言葉を漏らしたのは、ロク・ザイオン(疾走する閃光・f01377)。
 森には秩序がある。穏やかに、緩やかに巡る秩序が。森は巡り完結する。
 だから、この「在り方」を森番は許さない。
 その目を以って、ロクは花畑を見回す。明らかに通常の植生から異なった歪な花畑は、ロクにとって嫌悪の対象でしかなかった。
 それでも、森番としての知識から土を見て気付く。明らかに痩せた土の場所と、そうでないところ。痩せた土には茎が太く、根が多い、例の食獣植物が生えている。
 僅かな差ではあるが、まだ富んだ土に生えているのは普通の草花。
 その差を見切った上で、ロクは烙印刀を引き抜き、構える。

「病葉一枚、残す気はない。燃え、落ちろ」
 赤熱した烙印刀が、食獣植物の茎へと叩き込まれる。
 水分調節によって蔦を伸縮させる食獣植物は、その身に含まれる水分も多い。
 だが、そんな水分の多寡など関係ないと言わんばかりに、食獣植物は見る間に焼け崩れ、脆く炭へと変わっていった。

「植物でも、病でも。何でもいいわ。あたしの前に立ちふさがるなら。
 木々の管理なんて庭師に任せるものだけど、特別にあたしが剪定してあげるっ!」
 そう言って掌を天に翳すエーリカ。その掌中から放たれた魔力は風を巻き、雲を呼び、花畑の上空に積乱雲を作り出す。
 どすん。どすどすどすん。そして、振りだしたのは一抱えもある巨大な氷塊の雨。
 その重量が刺激となり、氷塊へと絡みつく食獣植物の蔦。
 しかし、それはただの氷。無機物であろうと刺激を受ければ反射的に絡みつく習性を逆手に取られ、食獣植物たちは氷塊に掛かり切りとなって。その横をすたすたと歩くエーリカには目もくれない。

「ねぇ、そこのあなた。もう通れるけれど、まだ続けるの?」
「……」
 エーリカの問いかけに気付かないのか、気付いてもそれどころではないのか。
 氷塊を抱えた食獣植物たちを一本一本、普通の草花に影響が出ないように焼き潰していくロク。
 その姿にエーリカは口をヘの字に曲げるも、ふいっと顔を逸らして。

「そ、庭師が居たのね。なら、あたしがわざわざやる事もなかったわ」
「……庭師じゃない。森番だ」
「それってどう違うの?」
 なによ、聞こえてるじゃない、などと思いながらも気になったエーリカはロクに問う。しかし、その問いにも返事はなく。肩をすくめたエーリカはさっさと花畑を抜けてしまった。
 その後も、黙々と食獣植物を焼き潰していくロク。
 異形の花畑は、少しずつ普通の花畑へと変わっていった。
 焦げ崩れた食獣植物の灰を、糧として。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『アルラウネ』

POW   :    ルナティック・クライ
【聞く者を狂わせるおぞましい叫び声 】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
SPD   :    スクリーミング・レギオン
レベル×5体の、小型の戦闘用【マンドレイク(アルラウネの幼生) 】を召喚し戦わせる。程々の強さを持つが、一撃で消滅する。
WIZ   :    リパルシブ・シャウト
対象のユーベルコードに対し【それを吹き飛ばす程の大音声 】を放ち、相殺する。事前にそれを見ていれば成功率が上がる。
👑11
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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●樹精、アルラウネ
「「「「「「うふふふ、あはははは」」」」」
 花畑を抜け、猟兵たちは森へと足を踏み入れた。
 その途端、周囲から童女の笑い声が響く。方向は定まらない。全周囲から響くその声は、笑い声でありながら、喜の感情を含んでいない。
 ただ、そういう音を出しているに過ぎない様な違和感。
 だが、これだけは確実だ。囲まれている。
 元よりこの森はオブリビオンが生み出した木々で構成されている。
 すなわち、今ここは敵の腹の中に居るも同然なのだから。
 警戒を強めた猟兵たちの前に、ぴゅるん、と可愛らしい若葉が幾つも芽吹く。
 それらは瞬く間に伸びあがり、童女の姿と変じた。
 それらは樹木の精霊。オブリビオンが呼び出した木々に宿る精霊。
 幼気な童女の姿に騙されるなかれ。それは。

「「「「「きゃははははははははははははははははは!!!!!!!」」」」」
 紛れも無い、オブリビオンなのだから。
シエナ・リーレイ
森を進むシエナと沢山のお友達の前にアルラウネ達が現れます
シエナは楽しそうに笑う彼女達とお友達になる為に行動開始します

「恥ずかしがり屋だね。とシエナはを微笑ましく見つめます。」

真正面からではアルラウネ達が恥ずかしがって叫ぶので近づけそうにありません
なので、シエナは策を講じる事にします
シエナは熊、ゴブリン達と共に注意を惹き、その隙に骨の動物達がアルラウネの背後に回ります
そして、動物達はアルラウネを掘り起こしてシエナ達の傍まで運んでゆくのです
上手くアルラウネ達を傍に寄せれば後は一人一人丁寧にお友達にしてゆきます

そして、新しいお友達の笑い声と共にシエナも楽しくなり、悍ましい真の姿を晒してしまうでしょう



●グラン・ギニョール
「「「きゃははははははははははははははは!!!」」」
 鬱蒼と茂る森の中。陽気そうな、しかしその実そこに一切の感情の込められていない歪な笑い声が辺りに反響する。
 木々の根元からずるり、と分離したアルラウネ達が猟兵たちの方へ向かおうとすると、その前に数体の影が立ちはだかる。
 それは、シエナ・リーレイ(年代物の呪殺人形・f04107)のお友達。
 花畑でお友達になった熊、そして以前からのお友達のゴブリン達。
 笑い声が楽しそうなアルラウネ達をお友達にするため、シエナはそのお友達に注意を引いてもらい、少し離れた場所でお友達を更に呼び出していた。

「皆で一緒に遊びましょう!とシエナはお友達の皆さんを呼び出します」
 スカートの両端をつい、と軽く上げたシエナの足元から現れたのは骨、骨、骨。
 大きさに差はあれど、百体弱の骨の動物たちがアルラウネ達の背後から襲い掛かる。

「「「うふふ、あははははは! きゃははははははははははははは!!!!!」」」
 流石に、背後からぞろぞろと骨の動物たちが現れた事に気付いたアルラウネ達は、熊やゴブリン達から視線を逸らし、振り返って大声で笑いだす。
 その大音量はアルラウネ達に迫る骨の動物たちの先頭集団を高々と吹き飛ばし、寄せ付けない。しかし。

「恥ずかしがり屋だね。とシエナはアルラウネ達を微笑ましく見つめます」
 シエナは動じない。アルラウネ達は全員が骨の動物たちへと向き直った。つまり。
 がしり、とアルラウネ達の根元にゴブリン達がしがみ付く。
 一体、二体、瞬く間にアルラウネ達はゴブリンに群がられ。

「「「きゃは!? きゃあああああああああ!!!!」」」
 大声を上げるアルラウネ達だったが、時すでに遅し。
 ゴブリン達を吹き飛ばすほどの大声を上げても、ゴブリン達はアルラウネ達へとしがみ付いて離れない。そして、ゴブリン達の内の一体が吹き飛ばされるまいと、手に持った鈍い蛮刀をアルラウネの幹に突き立てる。

「ぎゃああああああ!!!!」
 今までと一転して、笑い声ではなく悲鳴を上げるアルラウネ。その声に興奮したのかゴブリン達は次から次へとアルラウネの幹へと刃を突き立て始めた。
 深々と根を下ろしたアルラウネをお友達のシエナの元に運ぶためには、斬り落とすのが一番いい。そう考えたゴブリン達は悲鳴を上げるアルラウネ達を一顧だにせず刃を振り下ろし続け。
 そして、動かなくなったアルラウネ達を骨の動物たちが背に乗せ、シエナの前へと連れていく。

「うふふ。可愛らしい笑い声だね。あなたたちも一緒に笑いましょう? とシエナは特性のおまじないをお友達候補にかけます」
 そして、ゆっくりと起き上がるアルラウネ達。

「「「……うふふ。きゃはっ、きゃはははは!」」」
「うふふ。あははははは!」
 そして、新しいお友達の笑い声に気分を良くしたシエナは笑い出す。
 その姿は、徐々に真の姿へと変貌していったのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

石上・麻琴
さて、樹木の精霊ですか……ならばここはひとつ、陰陽師らしいことでもしてみましょう。五行の理に置いて、『木』の気に克つは『金』の気成り。之即ち『金克木』。今の僕の手持ちで『金』の気を宿すのは――このユーベルコードです!■といった具合にユーベルコードで白虎を召喚して、アルラウネを蹴散らします。相手のユーベルコードでマンドレイクが召喚されるでしょうが、白虎と僕の攻撃を相手にどこまで持ちこたえられますかね?


リチャード・チェイス
クックック……フハハハハハハ、ハーッハッハッげほっ!
ん、んっん、あーあー(喉の調子を整える)
クックック……フハハハハハハ、ハーッハッハッ!(TAKE2)

笑いとはある種、精神的に健康に良いと言われる場合がある。
故に、笑う植物が健康に良いというのもまた道理である。
しかしどうだろうか。ここに響く笑いのなんたる空虚な事。
先ほどの蔦の質が評価に値しない原因がこれである。さもありなん。

私は森の主へとそれを伝え、改善を促す使命がある。
例え悪路であろうと、ペドロ・ロペス君はいざ進む。
クックック……フハハハハハハ、ハーッハッハッ!
(速度出ないので、徒歩以下の速度でフェードアウト)




「「「きゃははははははは!」」」
 シエナがお友達で気を引けたのはほんの数体のアルラウネ。
 元よりここは森の中。樹精であるアルラウネはまだまだ現れる。
 そして、その内の一体の根元からぽこり、と小さな木の瘤が浮き上がる。
 ぽこり、ぽこぽこり。それは瞬く間に60体程のマンドレイクへと変じ、猟兵たちへと向かって行った。

「樹木の精霊ですか……ならばここはひとつ、陰陽師らしいことでもしてみましょうか」
 そこへ立ちはだかったのは、石上・麻琴(虹の彼方の空の星・f01420)。
 迫りくるマンドレイクの群れを見据え、その性質を見抜いた麻琴は、懐から一枚の符を取り出し。

「五行の理に置いて、『木』の気に克つは『金』の気成り。之即ち『金克木』。
 今の僕の手持ちで『金』の気を宿すのは――このユーベルコードです!
 名就けしは十二天将が一つ、後五白虎金神家在申主疾病喪凶将! 来なさい! 虎厳沱!」
 麻琴の放った符を中心に気が渦巻き、マンドレイク達がその気に捲き上げられ宙を舞う。そして、くるくると舞うマンドレイクの内の一体の胴が五つに分割され。
 気が収束しきり、符の放たれた場所に立つのは、白の毛並みを持つ一体の虎。
 先のマンドレイクは二メートルほどの白虎の爪に捉えられ、哀れ消滅した。

「さて」
 そして、白虎の背に跨った麻琴は眼下のマンドレイク達を睥睨する。
 その視線にたじろいだのか、一歩後退るマンドレイク達。

「どこまで持ちこたえられるか。楽しみですね?」
 腰に差したサムライブレイドを抜き放ちながら言った麻琴の言葉に答えるように、白虎は一声吠えるとマンドレイク達へと躍りかかった。
 牙が、爪が、刃が。木の属であるマンドレイクでは金の気を宿した白虎の爪牙にも、同じく金気を帯びたサムライブレイドの刃にも抗う事は出来ず、瞬く間にその数を減らしていき。

「これで、終わりです」
 それは本体であるアルラウネも同じ。逃げようと背を向けた所を、白虎に抑え付けられ、その首を麻琴のサムライブレイドで立たれ、絶命した。

「さて、では奥のオブリビオンの元へ向かうとしま「クックック……フハハハハハハ、ハーッハッハッ」……! 新手ですか!」
 サムライブレイドを鞘に納め、森の中心部へと向かおうとした麻琴の頭上から、笑い声が響く。先ほどまで笑い声をあげていたアルラウネの存在から、警戒を強める麻琴。

「クックック……フハハハハハハ、ハーッハッハッげほっ!
 ん、んっん、あーあー、よし。
 クックック……フハハハハハハ、ハーッハッハッ!(TAKE2)」
 不気味な(強弁)笑い声を挙げながら、麻琴の頭上から目の前に飛び降りて来たのはリチャード・チェイス(四月鹿・f03687)。
 張り上げた声に喉が負けたのか、数度咳払いをして、あの、と声を掛けようとした麻琴の機先を制して振り返り、口を開いた。

「笑いとは! ある種、精神的に健康に良いと言われる場合がある。
 故に、笑う植物が健康に良いというのもまた道理である。
 しかしどうだろうか。ここに響く笑いのなんたる空虚な事。
 先ほどの蔦の質が評価に値しない原因がこれである。さもありなん。」
 麻琴に台詞を言う隙を与えず、たたみ掛けたリチャードは、そこまで言って意味深に麻琴の方を向き、その目を見つめ。

「あの」
「私は森の主へとそれを伝え、改善を促す使命がある。
 例え悪路であろうと、ペドロ・ロペス君はいざ進む。
 クックック……フハハハハハハ、ハーッハッハッ!」
 一拍置いた事に特に理由はなく、そのまま続け、ペドロ・ロペス君に跨ったリチャード。そんな彼に麻琴は声を掛けるの止めようかな、と思いつつも根気よく口を開いて。

「いえ、だからあの、後ろ」
「は?」
 振り向いたリチャードの背後に忍び寄っていたのは、一体のアルラウネ。
 独演を続けるリチャードが邪魔で白虎も手出しできない為、麻琴は注意を促そうとしていたのだが、すでにリチャードはアルラウネの射程の内。

「きゃあああああああああああああああああああああああ!!!!!!」
 そして、狂気に満ちたおぞましい叫び声がリチャードに向かって放たれ。

「あああああああああああああ!!!!!」
 その声に、存在するはずの神経が鑢掛けされたような不快感が引き起こされたリチャードは、誘導鹿をアルラウネへと突っ込ませ、わけのわからない存在に怯んだアルラウネへと向かって、飛び出せ!エド・ゲイン君が直撃。
 その幹を真っ二つに圧し折った。

「ぜーっ……はーーーっ………………ふ、悪は滅びた」
「あの」
「はっ、こうしてはいられない! 私には森の主に蔦の品質改善を伝える使命があるのだ! さらば!」
 そう叫んだリチャードは、颯爽とペドロ・ロペス君に跨り、森の奥へと進む。
 しかし、その速度は常人の歩く速度以下。
 どうしたものか、とそれを眺める麻琴の視線を背に受けながら、リチャードは進む。進むったら進む。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

グイーダ・スティラ
アルラウネ……数が多いってのは厄介だものね!だけど、アタシの弓なら撃ち抜けると信じているわ!ユーベルコードでバシバシアルラウネを撃ち抜いていくわよ!他の猟兵達は先に行っちゃってるみたいね!アタシも急がなきゃ!アドリブ等は大歓迎よ!


ラニューイ・エタンスラント
ふぅん……こんなモンスターも居るのね。まぁ、蹴散らしていきましょうか。トリニティ・エンハンスで攻撃力を重視した強化を行いつつ、あと炎の魔力を軸にして敵を攻撃していくわ。こんなところで足踏みしている訳にはいかないもの。アドリブ等は大歓迎よ。




「「「「きゃははははははは!!!!」」」」
 多くの猟兵たちが通り抜け、残ったのは4体のアルラウネ。
 無数にいた樹精達も、無限ではない。樹精となれるだけの木々は既に無く、多く居た姉妹が減った事はアルラウネにとっても悲しい事だ。だが。

「「「「きゃはは! あははははははははははは!!!!」」」」
 アルラウネ達は感じていた。すぐそこまで来ている。通って行った連中と鉢会うだろうが、問題はない。何故なら、それはこの森の祖、この森の支配者。この森、この世界の支配者なのだから。
 だから楽しい。楽しくなって笑ってしまう。
 大きく口を開けて笑ってしまう。

「丸見えだわ」
 そして、その大口に一本の矢が突き立つ。咽頭を貫通した矢はアルラウネの太い神経節を断ち切り、アルラウネの行動を封じた。
 一斉に振り向いたアルラウネ達の視線の先に居たのは、グイーダ・スティラ(ビーストナビゲーター・f12597)。
 二百メートル以上離れた場所からでも、彼女のロングボウから放たれた矢は過たずアルラウネを捉え、狙いの通りに打ち倒した。
 しかし、アルラウネ達もただやられるだけではない。
 一斉に散開し、その根元からぽこり、と小さな木の瘤が浮き上がる。
 ぽこり、ぽこぽこり。それは瞬く間に六十体程のマンドレイクへと変じ。
 3体のアルラウネから生み出された百八十体のマンドレイクが一斉にグイーダへと襲い掛かる。
 二百メートル以上の距離があれど、十秒の集中を必要とする精密射撃は、今行えば致命的な隙となるだろう。

「まぁ。数だけは多いのね」
 グイーダ目掛けて駆けるマンドレイク達の頭上から、紅蓮を纏った刃が振り落とされる。
 その刃から迸った炎熱は、マンドレイクの一割方を一撃で消し飛ばす。
 ラニューイ・エタンスラント(ダンピールの聖者・f05748)が手にする聖霊剣グロワール・リュミエールの刀身は炎の魔力を纏い赫々と燃え盛る。
 その熱気に怯み、一歩を退くマンドレイク達。その集団を、一直線に貫き奔るグイーダの矢。
 ラニューイを前衛に、グイーダを後衛に。
 炎熱を纏うラニューイを迂回しようにも、その隙をグイーダに貫かれ。

「さぁ、蹴散らすとしましょう」
「数が多いのは厄介だけれど。的が絞られているのなら!」
 そして、火に炙られる氷の如く。瞬く間にマンドレイク達はその数を減らしていく。

「そこね」
「見えたわ!」
 そして、三体残ったアルラウネも、その二体が焼かれ、貫かれ。
 残るは一体。

「きゃああああああああああああ!!!!!」
 最後の足掻きと放たれた、聞く者を狂わせるおぞましい叫び声。
 しかし、大きく息を吸い込んだ挙動を見切ったラニューイは一足に後ろへ下がり、その間合いを外す。そして。

「こんなところで足踏みしてられないの」
 紅の尾を引いて、流星はアルラウネの喉元に突き立つ。
 聖霊剣グロワール・リュミエールから吹き上がった炎がアルラウネを呑み込み、瞬く間に炭と変えた。

 かくして、樹精達は殲滅された。
 歪んだ森の歪んだ樹精達。しかし、その歪んだ森を生み出した元凶が、猟兵たちの行く先に待ち受けているのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『ヒューレイオン』

POW   :    ディープフォレスト・アベンジャー
【蹄の一撃】が命中した対象に対し、高威力高命中の【自在に伸びる角を突き立てて引き裂く攻撃】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD   :    チャイルド・オブ・エコーズ
【木霊を返す半透明の妖精】を召喚する。それは極めて発見され難く、自身と五感を共有し、指定した対象を追跡する。
WIZ   :    サモン・グリーントループ
レベル×1体の、【葉っぱ】に1と刻印された戦闘用【植物人間】を召喚する。合体させると数字が合計され強くなる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠ミレイユ・ダーエです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●歪んだ森の王
 ざわり、ざわり。
 森の奥へと足を進めた猟兵たちの耳に、木々が戦ぐ音が響く。
 しかし、この森の中に風はない。木々の梢も揺れてはいない。
 ならば、この音はどこから来るのか。
 その答えはすぐに現れた。

 ざわり、ざわり、ざわり。
 それは、歩を進めるオブリビオンの足元から芽吹く木々の伸びる音。
 蹄に踏みしめられた大地から、草が、花が、木々が次々に天突くばかりに伸び上がる。
 それは森の王。それは森の祖。それは森の支配者。
 オブリビオン:ヒューレイオンは瞳に嚇怒の炎を宿し、猟兵たちの前に立つ。
 愛しき子らの命脈を断った者達を、赦してはおけぬ。

「――死ね」
 発せられた言葉は端的に。しかし、その中に込められた思いは泥濘の様に淀み沈んで。
 そして、それが猟兵たちとオブリビオンとの開戦の号砲となった。

 
 
石上・麻琴
さて、ようやく森の支配者のお出ましですか。命を育むその素晴らしさには敬意を払いましょう。しかし、これ以上その行いを見過ごす訳にはいきません。『木』の気から生み出されるは『火』の気。相生の関係たる『木生火』の理を持って――あなたを、倒しましょう。舞え、朱雀。■アドリブ等は大歓迎です。



●飛んで火が入る
「オォオオオオオオオオオオ!!!!!」
 猟兵たちを前にしたオブリビオン:ヒューレイオンの咆哮が森中に轟く。
 間を置かず、ヒューレイオンの足元に捲きあがったのは、木々の梢まで届かんばかりの猛烈な木の葉の旋風。
 それは徐々に旋風の中で形を成していき、旋風が消えた後、そこに立っていたのは三十体の植物人間たち。
 その胴は幹。腕は枝。足は根。頭は果実。肉は木の葉で補われた、歪な人形はヒューレイオンを守るように猟兵たちへと立ち塞がる。

「ようやく森の支配者のお出ましですか」
 居並ぶ猟兵たちから一歩先んじて前に進み出たのは、石上・麻琴(虹の彼方の空の星・f01420)。
 麻琴はその懐から引き抜いた符を構え、植物人間たちを睥睨し、素早く祝詞を唱え上げ始め。

「名就けしは十二天将が一つ、前二朱雀火神家在午主口舌懸官凶将!」
 そして、符を構える麻琴の背後に、孔雀の尾羽の様に広がった火球が十九個並ぶ。
 それは瞬く間に巨大化し、一つ一つが火の鳥、朱雀の形を成し。

「『木』の気から生み出されるは『火』の気。相生の関係たる『木生火』の理を持って――あなたを、倒しましょう。舞え、朱雀」
 麻琴の宣言と共に、一斉にヒューレイオン目掛けて飛翔する朱雀達。
 当然、それを座視する植物人間たちではない。
 その拳で、体で、朱雀を叩き落す、もしくはヒューレイオンを庇おうと。
 しかし、結果は文字通りに火を見るよりも明らかだった。
 麻琴の語った通り、火は木より生ずるもの。
 最初こそ数の上では植物人間たちの方が多かったが、一体を焼いた一体の朱雀はその炎を吸い上げ肥大化し、焼き尽くした植物人間を種火として更に巨大化。
 瞬く間に数の差は逆転した。

「命を育むその素晴らしさには敬意を払いましょう。
 しかし、これ以上その行いを見過ごす訳にはいきません。
 過ぎたる木気を土に還しなさい!」
 そして、全ての植物人間を焼き尽くした朱雀たちが一つと纏まり、巨大な朱雀へと変じ、ヒューレイオン目掛けて飛翔する。
 対するヒューレイオンは咆哮を放ち、再びその身を守る植物人間を召喚しようとするも、既に遅い。
 現れた植物人間たちは瞬く間に炎に捲かれ、薪にしかならず、朱雀はヒューレイオンを捉え、炎熱の翼で包み込み植物人間と同じ末路を辿らせようとする。

「オォオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!」
 しかし、只でやられるヒューレイオンではない。
 炎に捲かれながらも麻琴目掛けて突進を敢行する。

「くっ……!」
 当然、高熱を纏ったまま突進を受ければダメージが増す。
 咄嗟に朱雀を還し、突進を躱そうと身を翻す麻琴だったが、その勢いは凄まじく、ヒューレイオンが振り回した角に腕を引っかけられ、その勢いのまま跳ね飛ばされて地面に叩きつけられた。

「ゼッ……ゼッ……おのれ……」
 しかし、朱雀の炎がヒューレイオンに与えたダメージは決して軽いものではなく、その表皮のみならず、深部に到るまでの熱傷がありありと刻まれていた。

成功 🔵​🔵​🔴​

蒼焔・赫煌
どーせ咲かせるならさー、もっと可愛いお花とか咲かせようよ!
勿論安全安心な奴!

さぁさ、可愛い正義の味方の大一番!
どかんと真正面から斬りかかっていくよ!
角を突き立ててくるのに合わせて、【捨て身の一撃】からの【カウンター】!
ピンチが一番のチャンスってね!
ぶちかますよ、ガシャドクロー!!

【アドリブ歓迎】


石上・麻琴
さすがに森の支配者ともなれば手強いですね……ならば、『金剋木』たる、相克の理ならどうでしょう!召喚した白虎と連携して、畳み掛けるように攻撃を行います(判定は選択したユーベルコードで行いますが、僕こと麻琴自身の攻撃として剣刃一閃のユーベルコードもあわせて使用します)


ラニューイ・エタンスラント
……モンスターの親玉ともなれば、こんなこともできるね。森が嫌いって訳じゃないけど、これだけ増えるのも鬱陶しいからあなたをここで倒すわ。トリニティ・エンハンスで攻撃力を強化しつつ、聖霊剣グロワール・リュミエールを呼び出して、神聖輝装・光導乙女で攻撃するわ。



●森の始まり
「おぉおおおおおおおおお!!!!」
「っ!」
 全身に負った熱傷を堪え、オブリビオン:ヒューレイオンは後ろ足で跳躍。
 その前足に備えた蹄で地面へと倒れた石上・麻琴(虹の彼方の空の星・f01420)へ追撃を仕掛けようと。

「おっと、そうは問屋が卸さない! ってね!」
 そこに割り込む一人の猟兵。蒼焔・赫煌(ブレイズオブヒロイック・f00749)はその手に携えた黒杭、ブラッドダートでその蹄を受け止める。
 硬質な物同士が激突する甲高い音が森の中に響き、ヒューレイオンの重量が赫煌の両腕に伸し掛かり。

「どけ」
 ヒューレイオンから発せられた言葉は端的。しかし、その言葉と同時に放たれた、自在に伸縮する角の一撃が赫煌目掛けて放たれ。
 両腕でヒューレイオンの体重を受け止めている赫煌に、回避する術はない。
 もし今一瞬でも力を抜けば、その重量に押しつぶされるのは明白だからだ。
 だが、赫煌が一瞬でも麻琴を庇った意味はあった。
 麻琴は即座に懐から先とは別の符を抜き出し、ヒューレイオンへと突き出して。

「名就けしは十二天将が一つ! 後五白虎金神家在申主疾病喪凶将!
 来い! 虎厳沱!」
 麻琴が呼び出した白虎は、符から召喚されると同時、下から跳ね上がるようにヒューレイオンの体を宙へと跳ね飛ばし、赫煌を襲おうとしていた角の一撃を逸らす。
 伏虎の一撃を受けたヒューレイオンは、体勢を崩す事を嫌い、その角を周囲の木に引っ掛けて立て直し、猟兵たちから離れた場所に着地し。
 金克木。木の気を宿したヒューレイオンでは、金の気を宿した白虎の一撃を完全に防ぐことは叶わず。その脇腹に深々と爪の一撃の痕が残っていた。

「……小癪な」
「流石に……森の支配者ともなれば手ごわいですね」
 その一撃でさえ、痛痒も感じていないように振舞うヒューレイオン。しかし、それは明らかに虚勢だと見て取れる。
 止まらぬ脇からの出血。全身を苛む熱傷。いずれも軽症ではあり得ない。
 ヒューレイオンを今立たせているのは、この森の支配者であると言う事。刈られた愛し子達の仇を取るという意思。

「……私、森が嫌いって訳じゃないけど」
 そう、口を開いたのはラニューイ・エタンスラント(ダンピールの聖者・f05748)。
 地を蹄で踏みしめて立つヒューレイオンに向かって、その目を見るように言葉を続ける。

「これだけ増えるのも鬱陶しいからあなたをここで倒すわ。
 それって、結局は生存競争よね。恨まれる覚えもないわ」
「そもそもさー。こんな森とか食獣植物とかじゃなくて、もっと可愛いお花とか咲かせようよ!
 勿論安全安心な奴!」
 「過ぎた木気は土を涸らせて世界の循環を乱します。それを捨て置けません」
 ラニューイが、赫煌が、麻琴が、それぞれの主張を口にしつつ、武器を構える。
 詰まるところ、これは生存競争に過ぎない。領域を侵したのはお互い様なのだから。
 過去から今へ、そもそもの始まりはそこなのだから、そこを恨まれる筋合いはない。
 道理は間違いなく猟兵たちにあるのだから。

「黙れ」
 しかし、道理が通るのなら、そもそもこうなっていない。
 オブリビオンは過去から浮かび上がり、この地に森を広げた。
 その森に侵入してきた猟兵たちは草花を刈り、樹精を狩った。
 ヒューレイオンはそれを許せない。
 ならば、一つの帰結しか導きはしない。

「ま、そうなるか。じゃ、可愛い正義の味方の大一番!
 どかんと真正面から真っ向勝負!」
 その宣言と同時。赫煌の心臓に刻まれた刻印が血液を吸い上げ、赫煌の体に宿った妖の力を武装として展開。
 現れたのは白。赫煌の体を包むように白骨が覆い、それは徐々に鎧の姿へと変じ。

「我が身に宿りし聖なる輝きよ、夜を斬りさく剣となれ!」
 そして、並び立つラニューイも、召喚したルーンソード、聖霊剣グロワール・リュミエールを構え、宣言を森に響かせる。
 それは宣誓。ラニューイの体に宿った聖者の力を解放し、その身を聖騎士となす為の。
 ラニューイが手にする聖霊剣グロワール・リュミエールの輝きは一段と増し、薄暗い森を煌々と照らし出す。

「僕はそういうの無いのですけど。でも、行きましょうか。虎厳沱」
 麻琴は先ほど呼び出した白虎と並び立ち、自身の腰に差したサムライブレイドを抜き放つ。
 金の気を宿した爪牙。金気を帯びたサムライブレイド。金克木。
 陰陽師として当然の理に従って、麻琴はヒューレイオンに対峙し。

「……」
 ヒューレイオンも既に理解している。この場を制するにはこの三人に打ち勝たねばならない。
 満身は創痍。特に脇腹からの出血が深刻。このままでは時を置かず戦う事すら、ままならなくなるだろう。
 そう判断したヒューレイオンの行動は早かった。
 
「オォオオオオオオオオオオ!!!!!」
 逆巻く木の葉の旋風。それがいくつも現れ、一つの旋風へと統合されていく。
 ヒューレイオンが選んだのは全力の戦闘。己の持つ全ての力を、眼前の敵に集中させようと。
 植物人間が。そして、ヒューレイオン自身が。三人へと襲い掛かる。

「……モンスターの親玉ともなれば、こんなこともできるね」
 ラニューイは襲い掛かってきた植物人間を見上げ、そう呟く。
 先の麻琴に対して召喚された時とは異なり、その植物人間は一体。
 しかし、その額に刻まれた数字は三十。召喚された植物人間たちを全て合体させ、強力な一体の植物人間が生み出されていた。
 そして、植物人間はその拳を握りしめ、ラニューイ目掛けて振り落とそうと。

「……遅いわ」
 とん、と。したのはそんな軽い音だった。そして、数秒の後にどさり、と重たいものが地に落ちる音。
 振り抜かれたはずの植物人間の拳は空を切り。否。そもそも振られてすらいない。
 何故ならば。その拳は腕の付け根から斬り落とされていたのだから。
 それを為したのは、ラニューイが手に携えた聖霊剣グロワール・リュミエールの一閃。
 毎秒ごとに寿命を削るほどの代価を払い、強化されたラニューイの身体能力ならば造作も無い事だった。
 そして、怯む植物人間の胴に、瞬く間に懐へと潜り込んだラニューイの掌底が添えられ。

「ユーベルコード、リベレイション!オーヴァードライブ・ブラッドクロス!」
 そして、クロスの名の通り。植物人間は添えられたラニューイの掌底を起点とした十字に裂かれ、地に崩れ落ち。

「あら。もうおしまい?」
「えぇ、これで」
「御終いっ!」
 そして、時を同じくして。ヒューレイオンの首が空に舞う。
 己に手傷を負わせた麻琴を優先して狙ったヒューレイオン。
 その突進力で瞬く間に距離は詰まり、白虎が振り上げた爪を躱して麻琴の胴へと前足の蹄が叩き込まれようとした瞬間の事だった。
 その蹄が空を切る。確かに捉えたはずの麻琴の姿はほんの僅かにズレた位置に。
 極至近距離での残像に目を眩まされたヒューレイオンが見上げたのは、己の上から振り落とされる白と赤の刃。白骨と血液で構成された、赫煌の粉骨再刃ガシャドクロの刃が上から。そして、麻琴の剣刃一閃の一撃が下から。
 白虎に残像を守らせ誤認。その攻撃の一瞬の隙を突いたカウンターの一撃。
 そして、上下に挟まれたヒューレイオンの首は断ち切られ、空に舞う。
 ヒューレイオンが最後に目にした光景は、暗く、日さえ遮る森の風景。
 それが、己の世界の全てだったのだから。

 そして、森の支配者の死と同時に、ヒューレイオンに生み出され、ヒューレイオンに守護された森は急速にその身を枯らしていく。
 影響は逆回しの様に外延部から。木が、食獣植物が、樹精を生み出す木々が。
 猟兵たちが去ったのちには、此処にオブリビオンの残滓は何も残りはしないだろう。
 枯れさった木々が土に還り、過剰に吸い上げられた栄養を糧として、新しい植物が芽吹く。
 それは過去の残滓ではなく。今を生きる紛れも無く、正しい生命の円環なのだから。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年01月28日


挿絵イラスト