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お祝いの日の物語

#アリスラビリンス

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#アリスラビリンス


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●花の糸
 ♪ステキなステキな国が欲しいよ。
 ♪ぼくらのぼくらの国が欲しいよ。

 幾重にも重なったバラのスカート。
 朝顔のドレスに、ポンポネットデイジーの髪飾り。
 濡らしたサンカヨウを重ねた透明なジャケットに、カキツバタのベストとパンツを合わせて。
 スズランの鐘をりんりん鳴らせば、みんな集まっての合図。

「さあ、ボク達の国をつくろう!」
 誰かが大きな声で宣言をすると、お花のお洋服を着た小さなお針子達がわあと歓声をあげた。
 そうしてお針子達は、ハサミを持って、糸を紡いで、花を布へと加工して――。

●グリモアベース
「やあ、貴殿達には開拓者の手伝いをお願いしたいのさ」
 帽子を少し持ち上げて、挨拶をしたケビ・ピオシュ(テレビウムのUDCメカニック・f00041)はその顔のモニタへと花のドレスを着た小人を映し出した。
「――アリスラビリンスで見つかった、まっさらな新しい不思議の国を開拓したいという者達がいてね、それが彼等なのだけれども」
 ぱちりと切り替わるモニタ。
「彼等はお花を布にしてお裁縫をするのが得意な者達でねえ。お花や布で国を作っている所なのさ。――それで、貴殿達に頼みたい事はね。国を作る他に――彼等にお祝いされてほしいのだよ」
 ケビが言うには。
 彼等は花を布に加工にして裁縫する他には、『人々をお祝い』する事が生きがいの種族なのだと言う。
「その為に、沢山の猟兵達に来て欲しいと彼等は言っていたよ。沢山の人とお祝い出来ることは幸せな事だとね」
 ぴょん、と立ち上がったケビはもう一度帽子を掲げて。
「さあさ、素敵で素敵なお祝いを彼等と楽しんできておくれよ」
 ぺこりとお辞儀をした。


絲上ゆいこ
 こんにちは、絲上ゆいこ(しじょう・-)です。
 お花のお針子達も、皆様をお祝いする事を楽しみにしております!
 今回もよろしくお願いしますー!

●はじめに
 こちらは物語背景と童話系の宿敵フラグメントで合わせたちょっとした合同シナリオのひとつです。
 事件が起きている国は別々という扱いなので、ご参加は各シナリオご自由にどうぞ!

●一章について
 お花のお針子達と素敵な建物を立てたり、自分たちの『お祝い用衣装』を仕立てたりします。
 彼等はお花を布にする力と、何でも縫って物を作る事ができます。
 布とお花はファンタジーな物から現実的な物まで大体なんでも用意出来るようです。
 自由な発想で色々提案してみてくださいね!
 なんとかします!

●二章について
 お花のお針子達が皆の為に衣装を仕立ててくれます。
 お祝いを一緒にしましょう!
 お祝いの内容は、結婚式、誕生日、記念日、ただのお茶会、なんでも無い日を祝うのも素敵でしょう。
 何かしらお祝いできれば彼等は幸せなのです。
 一章で仕立てた素敵な衣装でお祝いを致しましょう!

●迷子防止のおまじない
 ・冒頭に「お相手のキャラクター名(または愛称)とID」または「共通のグループ名」の明記をお願いします。
 ・グループ名等は文字数が苦しい場合、無理に括弧で囲わなくても大丈夫ですよ!

●その他
 ・プレイングが白紙、迷惑行為、指定が一方通行、同行者のID(共通のグループ名)が書かれていない場合は描写できない場合があります。

 それでは、素敵なお祝いを!
 プレイングお待ちしております!
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第1章 日常 『ワーク・ワーク・ニードルワーク』

POW   :    気合でやればどうにかなる、とりあえず針を手にしよう。

SPD   :    こういう物は機械を使えば早くできるものだ、手早く縫う。

WIZ   :    こういう事は知識が物を言う、情報を仕入れてから作り始めよう。

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ヘルガ・リープフラウ
・ヴォルフ(f05120)と共に
・アドリブ歓迎

わたくし達のことをお祝いしてくださるの?
ではお言葉に甘えて……ヴォルフとの結婚式を祝ってくださらないかしら?
そして式で着るドレスのお仕立ても

エンパイアラインのウェディングドレスは、ビロードのような手触りの白いクチナシ
花言葉は「私は幸せ」……そう、愛するヴォルフと共にいられる、今のわたくしの心そのままに
スカートにはビーズ刺繍のようにヘリオトロープの青紫と白の小花をあしらって
ベールにはレース編みのようにカスミソウを忍ばせ、真珠を模した鈴蘭の花がティアラを彩る

どんな素敵なドレスになるかしら。楽しみだわ
お手伝いできることがあれば遠慮なく言って下さいましね


ヴォルフガング・エアレーザー
・ヘルガ(f03378)と同行
・アドリブ歓迎

……俺もこの年齢だ。そろそろ身を固める時期か
せっかくの機会だ。ヘルガと正式に、ここで将来を誓い合おう

こういう時、新郎は「タキシード」というものを着るのだろう?
どうか俺の分も作ってはくれないか
生憎俺には花のことはよくわからない
こういう時は「専門家におまかせ」でも問題ないだろうか
君たちの知識ならば、ヘルガと並んでも恥ずかしくない、立派な装束を作ってくれるだろう

この国は「何でも縫って作る」と聞いたが、もしかして建物もなのか?
待っている間、俺も街づくりを手伝おう
縫い物というか、あまりこういう作業には慣れていないが、迷惑にならないよう頑張ろう



●幸せな、幸せな
 まだまだ何も無い、不思議な不思議な国。
 ふかふかと花弁のドレスを揺らした小さなお針子達が、ヘルガ・リープフラウ(雪割草の聖歌姫・f03378)とヴォルフガング・エアレーザー(蒼き狼騎士・f05120)を見つけると、人懐っこく首を傾げた。
「ねえ、お祝いするー?」
「キミたちのお祝いはなーに?」
 ヘルガは空色の瞳を優しい笑みに細め、その場でしゃがむとお針子達と視線を合わせて。
「まあ、わたくし達のことをお祝いしてくださるの?」
 赤、青、黄色、白。
 色鮮やかな花のドレスを揺らすお針子達は、楽しいこととお祝いが大好き。
 どんどん集まって来るお針子が、ヘルガの言葉に口々に応じる。
「お祝いがあるんだ!」
「お祝い、お祝い! きかせて!」
「幸せなこと? 楽しいことー?」
 そんなあどけないお針子達の様子に、ヴォルフガングも鋭い眼光の眦を少し緩め。
 獣の耳をぴっと彼等に向けて言葉を紡ぐ。
「ああ、……俺もこの年齢だからな。ヘルガと正式に将来を誓い合いたいのだ」
 その言葉を聞いたお針子達は、わあと歓声を上げて。
「結婚式かな?」
「結婚式だ!」
「結婚式!」
「うえでぃんぐ!」
 お針子達は両手を上げて飛び回ったり、気の早い者は花弁を撒いてみたり。
 彼等の様子に、ヘルガは唇を掌で覆って上品に笑い。
「ふふ。そうですわね、ではお言葉に甘えて――ヴォルフとわたくしの結婚式を祝ってくださるかしら?」
 彼等の言葉に同意を示すと、お針子達はまたわあ、と沸き立った。
「もちろん!」
「もちろんー!」
「素敵な服を作っても?」
「よろしくってー?」
 そうして口々に尋ねるお針子達。
「ええ、素敵に仕上げてくださいまし」
 ヘルガは小さく頷き。
 その横でヴォルフガングは頬を小さく掻いて、お針子達に首を傾げた。
「俺の分も仕立ててはくれないか? ……こういう時、新郎は『タキシード』というものを着るのだろう?」
 美しく着飾った彼女の横で、背を伸ばして立つ事が出来るように。
 彼女と並んでも、恥ずかしく無いように。
 ――なにより、将来を誓う時にふさわしい姿を。
「……生憎、俺には花のことはよくわからないのでね。……でも。君たちならばきっと立派な装束を作ってくれるだろう?」
 『専門家』にお任せさせてくれるか、なんてヴォルフガングが付け足すと。
 その言葉を待っていましたと、お針子達はぐっと胸を張った。
「よろしくってよ!」
「おまかせあれー、さささ。だんなさまー、サイズを測らせて下さい!」
「測ったよー」
「はやーい!」
「あれれ、そういえば作業する所は?」
「それよりドレスだよ!」
「お花ー、つんできたよー」
 集まってきたお針子達は、首を傾げて、顔を見合わせて。
 その言葉にヴォルフガングは、はたと気がついた様子で彼等に尋ねる。
「そう言えば、この国は『何でも縫って作る』と聞いたが、もしかして建物もなのか?」
「そうー。前の国もそうだったのー、前の国は……むぎゅ」
「ステキなステキな国が欲しいよ~♪」
「ボクたちの国! ボクたちの国をつくろう~♪」
 彼の問いに答えようとしたお針子も、歌い出したお針子達につられて歌い出す。
 恐らく。
 お針子達は主導するものが居ないと、ずっとこの様子なのであろう。
 瞬きを一度重ねたヘルガとヴォルフガングは、顔を見合わせて――。
「そうですわね、それではこちらの皆さんはわたくしと服の仕立ての準備を手伝って下さいまし」
「では、俺と作業場を作る者はこちらに来て欲しい」
 二人が分担を提案する事で、ささっと動き出したお針子達はわちゃわちゃと二手に分かれ。
「まかせてー!」
「布を作ろ~」
「お花をつもう~」
「縫うの好き!」
「ええ、素敵な服を仕上げましょうね」
「おおー!」
 ヘルガの言葉に、ドレス仕立て班のお針子達は、一斉に腕を掲げた。

 ――ウェディングドレスはびろうどの手触りの白い梔子。
 スカートにヘリオトロープの刺繍をあしらい、エンパイアラインに仕上げましょう。
 勿論、ヴェールも忘れずカスミソウのレースで仕上げて、ティアラはころころとした鈴蘭で彩りました。
 ――タキシードは黒いペチュニアにカランコエを添えて、柔らかに仕上げましょう。
 黒の刺繍に、柔らかなシャツは白百合で。
 彼女の髪に咲く花と同じ……ミスミソウを、蝶ネクタイに変えて。

 その間にヴォルフガング達は、街づくりだ。
「だんなさまー、式場もつくりましょうよー」
「あ、ああ、でも少し待ってくれ。こういう作業は不慣れでな」
「そしたらこっちを持ってくださーい」
「ああ、力仕事なら任せてくれ」
 ひらひらと舞う花弁。
 縫って造られたとは思えぬ建物が、少しづつ組み上がってゆく。
 ――今日は、今日は、きっと幸せな日になる事でしょう。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

エドガー・ブライトマン
花を布に?それはすごいねえ!
いろんな国を渡ってきたけれど、やはり世界って広いらしい
確かに見渡すほどに鮮やかな国だね、ここは

左腕をチラと見て
ねえ、レディも布になってみる?――痛いな、冗談だってば!
からかうとすぐ私の腕を棘で刺すんだ。困るよねえ

さてさて、花の小人君
お祝い用の衣装だっけ…
とはいえ私はコレがすでにそれなりの衣装だから

王冠とか作れないかな。この国での王冠さ
王冠は私にとって大事なもの
それを作ることが出来ればきっといい祝い事ができるよ

花は青いバラが良い
花の小人君に、この国の王冠はどんなものか話を聞いて

さあ作ってみよう!やり方を教えてくれよ
丁寧に優しめに頼むね

私、多分……かなり不器用なんだ

ふふ



●赤、青
「キミたちは花を布にできるんだって? すごいねえ!」
「そう、ボク達すごい!」
「すごーいの?」
「すごいすごい!」
「やっぱ天才~!」
 目にも鮮やかな、色とりどりの花服を纏った小さなお針子達は、お手伝いに来てくれた猟兵――エドガー・ブライトマン(“運命”・f21503)の周りで花を布に仕立てたり、自画自賛したり、跳ねたり、飛んだり。
 アイスで出来た国も見た。
 不思議な魔法の国も見た。
 茨に呑み込まれた国も見た。
 すべてがふわふわとした国も見た。
 それでも、それでも。
 お針子達の紡ぐ糸でパッチワークのように布が建物になって行く光景は、色々な世界を旅してきたエドガーも初めて見る光景。
 花から生まれた布で造られた建物へ触れてみると、見た目はどうみても布だというのに想像よりもずっとしっかりとしている。
「やあ、世界ってやっぱり広いものだねえ! ここは本当に鮮やかな国だね、レディ?」
 左腕をくっと擡げて、エドガーはそこに宿るレディ――自らを蝕むバラに首を小さく傾ぎ。
「そうだ。ねえ、レディも布になってみる? っ、――痛いな、冗談だってば」
「え! 痛い? 指刺した?」
「針で指をさすとー、痛い!」
「危険~」
 エドガーの様子に、口々に彼を心配しながらお針子達が更に集まり。
 小さく頭を振ったエドガーは、眉を下げて笑った。
「心配してくれてありがとう、花の小人君達。でも針で指を刺した訳じゃ無いんだ。……ここに居るレディは少しばかり冗談の通じづらいレディでね。――からかうとすぐ私の腕を棘で刺すんだよ。困ったもんだろう?」
 なんて、エドガーが肩を竦めて見せると。
「大変ねぇ」
「なんでからかうのー?」
「刺されるのに!」
「可愛い子には、少し意地悪したくなるもの?」
「こまった人ねえ」
「でもあたい、そういうの嫌いじゃないわよー」
 わあわあと言葉を重ねるお針子達。
 エドガーはあらためてしゃがみこむと、彼等と視線を合わせて。
「はは。ありがとう! さてさて、花の小人君。一つ尋ねたい事があるのだけれど」
「なあにー?」
「答えますよ」
「――王冠なんて作れないかな? この国での王冠さ」
 エドガーは既にその容貌にぴったりな、王子様として随分と良い仕立ての服を纏っている。
 だからこそ服の仕立てでは無く――。
「王?」
「キング!」
「王様はねえ、今はいないけれど、作れますよ! すごいの!」
 そうして建物をまつり縫いでぴしっと縫い上げたお針子が、無駄にサムズアップした。
 サムズアップで応じたエドガーはこっくり頷き。
「凄いのかい、それは楽しみだ。――王冠は私にとって大事なものなんだ。それを作ることが出来れば、きっといい祝い事ができるよ」
「お祝い!」
「お祝いするの?」
「お祝いしたーい!」
「ああ、是非お祝いしよう。そう、――花は青いバラが良いかな?」
 エドガーの言葉に顔を見合わせたお針子達は、瞬きを一つ、二つ。
 お花の服をひらひらと舞わせて、エドガーの服の裾を引いた。
「ある?」
「摘みに行かなきゃ~」
「今無い~、いこ~、つくろ~」
「ふふ……、後、もう一つお願いがあってね。作り方は……丁寧に優しめに教えて貰えると嬉しいな。――私、多分、かなり不器用なんだ」
 服を引いて花畑へと連行されつつ、悲しい告白にエドガーは視線を宙に泳がせ。
「困りましたなあー」
「やってやれないことはないですよ!」
「不器用でもギリギリ生きていけます」
「生を諦めないで」
 手先が器用なお針子達は、割りと手厳しめのフォローの言葉を重ねる。
 向かう先は、一面の青い薔薇畑。
 さあ、さあ。
 ご一緒に。
 ――棘を取った茨を編んで、青い青い薔薇の布を張って――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ファルシェ・ユヴェール
ネルウェザさん(f21838)と

花のお針子さん達を微笑ましく眺め
何とも愛らしく華やかな国になりそうですね

では私もひとつ、素敵な衣装のお願いを
彼女に似合う、とびきりのドレスを仕立てたいのです
ネルウェザさんの手を引き、柔かに微笑み

そう、誕生花……撫子の花など素敵ですね
花弁の如き薄絹を幾重にも重ねた清らな白に
たっぷり広がる裾に淡い桃色の花を隠し、所作に揺れれば視えるよう
デザインを伝えるお洒落好きの表情は、心なしか普段の営業スマイルより活き活きと

ああ、そうでした
髪飾りに此方を使って頂けますか、と彼女の瞳色のグリーンサファイアを預け

ふふ、楽しみです
纏う貴女のお姿も、私にと考えて下さった衣装に袖を通すのも


ネルウェザ・イェルドット
ファルシェ君(f21045)と一緒に

花を布に、とは器用なものだねぇ
折角だから私も一つ頼もうか

白いカトレアでファルシェ君にタキシードを
人に着せるものを考えるなんて初めてだから
お針子達と少し相談させて貰いながらね
…真っ白ではつまらないかな
胸元に小さなマルメロを一輪
それとネクタイに桃の花の刺繍を

さて、ドレスを拝見しに向こうのお針子の元へ
彼の仕立てたドレスに思わず顔を緩ませ
髪飾りの宝石に加えてもう一つ
紫水晶『桔梗の心』を首元に

…お祝い、か
誕生日も過ぎてしまったし、記念というものも…
ああ、そうだ

こっそり手の空いているお針子達に近づいて
…序でで良いんだけど…ケーキと大きめのナイフ、なんて用意して貰えるかな



●お祝いの日
 布を重ねて、パッチワークのように糸で結ばれた色鮮やかな建物。
「へえ、花を布にして建物まで縫うなんて、本当に器用なものだねぇ」
 ネルウェザ・イェルドット(彼の娘・f21838)がキョロキョロと周りを見渡して。
 その横を歩むファルシェ・ユヴェール(宝石商・f21045)が、こっくりと一つ頷いた。
「布で建物まで作ってしまうなんて不思議です、――しかし何とも愛らしく華やかな国になりそうですね」
「あー、猟兵さん? こんにちはー」
 言葉交わす二人を発見した花を抱えたお針子達は、人懐こくぱたぱたと駆け寄って、ご挨拶。
「猟兵さんだ! こんばんはー」
「おはよう、おはよう。何かお祝いある?」
「建物縫うー? お洋服縫うー?」
 花弁の服をひらひらと跳ねさせて、続く小さなお針子達も口々に言葉を紡ぐ。
「はい、こんにちは。そうだねぇ、なら折角だから私も一つ頼もうかな」
 彼等がせがむように尋ねるものだから、ネルウェザはいつもの薄ら笑いの眦を少し緩めて。
「それでは私もひとつ、素敵な衣装のお願いを致しましょうか」
 愛用の帽子を手に一礼したファルシェは、きゅっとネルウェザの掌を取ってから。
 お針子達に向かって、柔らかく笑めばその願いを口にした。

 ――ネルウェザの願いは、ファルシェに贈る白いカトレアのタキシード。
 綺麗なカトレアを伸ばして、編んで。
 月光花から絞った水で、練って、結って。
 胸元にはマルメロを咲かせよう。きみに幸せが訪れますように。
 桃の花をネクタイに刺繍すれば、きっととびきり魅力的なタキシードに仕上がるだろうから。

  ――ファルシェの願いは、ネルウェザに似合うとびきりのドレス。
 彼女の誕生花の撫子。
 花弁のようにたっぷり広がる裾を幾重にも重ねて、清らかな白を映えさせて。
 内に淡い桃色の花弁で作った布を隠して、大きく揺れる事で白の下よりに薄ら桃色が覗く優美なデザイン。

「――ああ、そうでした。髪飾りにこの宝石を使っていただけますか?」
「きれー」
「いし!」
「石つかうのはじめてー」
「ぬのにする?」
「ならないよー」
 ファルシェの預けたグリーンサファイアに、お針子達は興味津々。
 ネルウェザの瞳と同じ色。
 向こう側が透けるほど薄い白を重ねた花を生かしたヘッドドレス。
 真ん中にグリーンサファイアが咲くソレは、きっとネルウェザの髪色にも映えるだろうと。
 ファルシェは注文通りに仕上がってゆく花の衣装に、なんだか普段よりずっと楽しそうに見える表情。
「さてさて、形くらいはでき……」
 なんて作業場を覗き込んで、思わずネルウェザは言葉を飲み込んだ。
 机の上に広がった、自らのドレスの仕上がりは本当に素敵で。
「……うんうん、……なかなか素晴らしいじゃあないか」
「そうでしょう? 本当に彼等は器用だ」
 瞬きを重ねるネルウェザに、ファルシェも頷いた。
「……そうだねぇ。じゃあ、折角だしね。この紫水晶も合わせてチョーカーに仕立てて貰えるかな?」
「……おや」
 自らの贈った石を服に合わせたい、と彼女が申し出れば。
 ファルシェはまた、普段より微かに柔らかい微笑を浮かべてしまう。
「あぁ、……そうだ」
 ふ、と思い出したように踵を返して、外へと向かうネルウェザ。
 そして外で手が空いているお針子達を見つけると、ネルウェザはこっそりと近づき小声で囁いた。
「――物の序ででいいんだけど。……ケーキと大きめのナイフなんて、――用意してもらえるかな?」
「もしかしてそれって、おいわ……」
「しいっ」
 わっと騒ごうとしたお針子の口に、人差し指で内緒の指。
「これは、秘密だよ」
「……! ひみつ!」
 楽しげな言葉にぴかぴかと瞳を瞬かせたお針子は、何度もコクコクと頷いて。
「ひみつで用意するよー」
「ひみつか」
「ひみつなら仕方ない」
 口々に頷いたお針子達が、外へと駆け出して行く。
 彼等を見送ったネルウェザは肩を竦めて。
 ――脳裏を過る、アメシストの石言葉。
 ああ、――そうであれば良い、なんて。
 彼女は知らず知らず拳をきゅうっと、握りしめた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

旭・まどか
お祝い……、お祝い、ねぇ……

誰かへ宛て祝詞を述べる事も
僕自身と関係の無い事象に対して歓喜する事も得意では無い

ましてや、それを望まれて、だなんて……

僕は自身を変わっていないと思える程厚顔では無いけれど
お前たちは相当“変わって”いるね

生きがいを、他者へ依存するだなんて


そうだね、じゃあまずはお前たちのご自慢の手技を見せて貰おうか
――……嗚呼、本当に花を布に変えられるんだね

悪く無いよ。誇っていい技術だ
針捌きも素晴らしい
僕はあまり細かい作業は得意では無くてね……
お前たちの中のひとりでも
僕の手伝いをしてくれれば随分と助かるのだけれど

……え? これじゃあお祝いにならない?
そう……。案外難しいものだね



●変わっているということ
「――お祝い……、お祝い、ねぇ……」
 金色の髪を揺らして、瞳を眇めた旭・まどか(MementoMori・f18469)は、色鮮やかな街並みを見やって細く息を吐いた。
 なんたってまどかは、そもそも人との接触が得意ではない。
 誰かに祝詞を述べる事も、ましてや自らに関係しない事に大して喜ぶ事なんて。
 得意になれる訳も無かった。
 ――それを望まれて、祝いたいなんて。
 肩を竦めて、わいわいと跳ね回る小さなお針子達を見下ろしたまどかは小さく首を振って。
「お前たちは相当“変わって”いるのだね」
 ――自身が変わっていない、と思いはしない。
 しかし。
 生きがいを他者へ依存する彼等の生き方は、まどかにとって少し理解がし難い存在である事は事実であった。
「かわって?」
「それってお祝いー?」
「あ、流れてるやつかなー」
「きらきらした水!」
「……それは川だね」
 さっきからこの調子でずっと離し続けているお針子達に、まどかは何度かめの肩を竦めるポーズ。
「まあ、いいよお前たちのご自慢の手技を僕にも見せてくれるかい?」
 そうして彼らに、お願いをした。
「建物作る?」
「いいよー、縫う?」
「お花ある!」
「布にしよー」
「そっちもってー」
「よいしょー!」
 魔法によってまたたく間に色鮮やかな花弁が撚られて糸と成り、一瞬で編み上げられて布と化す。
 その手際はまさに見事の一言で。
「嗚呼、本当に花を布に変えられるんだね。悪く無いよ。誇っていい技術だ」
 ちいさく拍手をしてやったまどかに、お針子はてれてれと頭を掻いた。
「えへへー、おほめにあずかり光栄~」
「建物つくるー?」
「なにつくる?」
「家?」
「あ! 川!」
「いいや、川はつくらないよ」
 口々に騒ぎ出す小さなお針子達の言葉を、ゆうるりとかんばせを左右に振ることで止めたまどかは、先程から自分で縫おうとしていた布を擡げて。
「それよりも。僕はあまり細かい作業は得意では無くてね……、お前たちの中のひとりでも僕の手伝いをしてくれれば随分と助かるのだけれど」
 そうして全然進んでいない作業をお針子達に見せると、お針子達は同時に首を傾げた。
「でもそれお祝いのやつ?」
「お祝いのやつを自分ではじめたなら、自分でつくらなきゃー」
「全部やらないけどちょっとなら手伝うー」
「お祝いなの?」
「何のお祝い?」
「……そう、でも結局は自分でも縫わなければお祝いにはならないのだね?」
 眉を寄せたまどかは、仕方無い、といった様子で。
 ゆっくりと手元の作業を再開する。
 彼を応援するかのように、寄り添う風の仔が尾をゆらりと揺らした。
「――案外難しいものだねえ」
 ちく、ちく、ちく。
 縫って、縫って、縫って。

大成功 🔵​🔵​🔵​

御園・ゆず
お洋服……
うーん、わたしには、似合いませんので
お洋服は辞退しましょう
わたしには制服で充分です
御心だけ、頂きますね
ありがとうございます

では、国を作って行きましょうか
このあとに、お祝いをするんですよね?
パーティーホールは如何でしょう?
薄紅の桜を紗幕に
シャンデリアカバーは色とりどりのツツジを咲かせて
採光窓はステンドグラスめいた感じに
青はポピー
黄色はデイジー
赤はやっぱり薔薇?
ダンスフロアの周りに立食用の場所を設けて
桃色と白のコスモスの絨毯を敷きましょう

座ってゆっくり出来る場所
霞草のソファカバーに
若草のテーブル掛けを引いて

わたしもぬいぐるみをよく作るので裁縫は得意です
一緒に縫いましょう

気に入りました?



●祝いに揺れる
 色とりどり、縫い合わされた建物達はまるでパッチワークのように見える。
 小さなお針子達が、ふかふかと花のレースを揺らしながらあっちをいったりきたり。
 目にも鮮やかな花畑が遠く見える光景に、御園・ゆず(群像劇・f19168)はぱちぱちと瞳を瞬かせて。
「あー、あたらし猟兵さんきたー」
「キミ、キミィ。キミもお祝いするの?」
「お洋服欲しい人ー?」
「お花ー、お花もあるよ!」
 紺色のセーラー服姿は、この未完成の不思議な国の中にあっては逆に目立つよう。
 わっと近寄ってきたお花のお針子達が、一斉に口を開いた。
「うーん……。お洋服、ですか」
 ――そういうのは、わたしにはにあわない、と……思う。
 ゆずは視線を地に少しばかり伏せると、困ったような眉を寄せて。
「わたしには、制服で充分です。御心だけ、頂きますね」
 小さく頭を左右に振ると、お針子達にありがとうございますと礼を一つ。
「そうー?」
「いつでも言ってねー」
「そしたらなにする? おひるね?」
「だめでしょー、ごはんが先~」
「お風呂?」
 口々に喋っては、内容がだんだん脱線して行くお針子達。
 きっと彼等はこんな様子だからこそ、猟兵達に手伝いを願ったのであろう。
 ゆずはしゃがんで彼等と視線を合わせると、悪戯げに唇を笑みの形に擡げ。
「それより、国を作るのでしょう? お手伝いしますよ」
 なんて首を傾げた。
「おおっ、助かりますなー」
「何よりです」
「十全~」
「何作るが良いですかー?」
「そうですね、……後でお祝いをするんですよね?」
 よいしょ、と立ち上がったゆずは胸元のリボンを揺らして。
 ひっくり返されたおもちゃ箱みたいな色合いの街並みを見やる。
「お祝いすきー」
「お祝いしたい!」
「では……、パーティーホールを作るのは如何でしょう?」
 そんなゆずの提案に。
「お祝いのばしょ?」
「ぱーてぃだ!」
「ぱーりない?」
「ぱーりんぐ~」
 わあっとはしゃぎだすお針子達。
 跳ねて、跳んで、回って、踊って。
「はい、ではまずは――材料集めを手伝ってくれますか?」
 わいわいとしだした彼等を促すように、ゆずが言葉を重ねると。
「ハーイ!」
 指導者さえいれば、お針子達は優秀な労働者だ。
 薄紅色の桜の花を紗幕として。
 色とりどりのツツジの咲くシャンデリア。
「こちらの窓はどういたすですー?」
「そうですねー、……ステンドグラスみたいに、してみましょうか?」
「おおー、助かりますねー」
「助かったー」
 青に、黄、赤に。
 薄く伸ばした花弁で色鮮やかな花畑と化した窓は、床に色づいた光を落とす。
「後は、ダンスフロアの周りに立食スペースを設けて……、休憩できる場所も欲しいですね」
 うーん、と出来上がってゆくフロアを見渡して、ゆずは考えを口に。
 彼女の言葉に沿って、お針子達は糸や、花、布を持ってあっちにきたり、こっちにきたり。
「絨毯つくろー」
「お花伸ばすよー」
「ああー、伸びてる、伸びてる~」
「伸ばしすぎだよー」
「こっち縫う?」
 大きな針を抱えて尋ねるお針子の横に歩んできたゆずが、その手に針を一つ。
「はい、一緒に縫っていきましょうか」
「こころづよーい!」
 ゆずの手さばきは慣れたもの。
 布を縫うことで建物と成す技術は魔法の力でも、どうやら縫い方自体は変わりはしないらしい。
 ちくちくちく。
 ゆずは小さなお針子達と並んで、縫って。
 柱を縫って、机には綺麗な若草色のテーブルクロスをかけて。
 お祝いされる人も、お針子達も、気に入ってくれると良いのだけれど。
 素敵なお祝い日にぴったりな、パーティーホールを作りましょう。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シーヴァルド・リンドブロム
フルエレ殿(f24754)と

彼女と出会えたのは、花の導きがあってのこと
ならば、その思い出を永遠にするのもまた、運命なのだろう

が、花には詳しくないので、神の力を借りるとしよう
「……すまない、服を見立ててくれないだろうか」
いつも黒っぽい服ばかり着ているので
フルエレ殿の選んでくれたローズマリーの色彩に目を奪われる
『あなたはわたしを蘇らせる』か
確かに、生まれ変わったような気分になりそうだ(照れる)

ローズマリーを使ったカジュアルなコートを仕立てて貰い
ついでに髪もアップにして花で飾ってみよう
揃いの小物はエリカとビオラ
ハンカチをポケットに

可憐なルクリアの化身の如き、女神の手を取って
いざ、ステキな国のお祝いへ


フルエレ・エルムウッド
シーヴァルド(f01209)様と

私達が出会ったのは花の種を植えた場所
花達の未来をお借りして出会いを祝す…
さだめの様に思えまして

え?私がお見立てして宜しいのですか?
では
今の雰囲気を残しつつ
新たな芽吹きにローズマリーは如何でしょう
選んで頂き「絶対、素敵なのです!」と大喜びしてしまいます
あとですね
互いの小物をエリカとビオラで揃えても宜しいでしょうか
花達の抱く言葉は
シーヴァルド様に感じた心と私が在りたく望むもの
有難うございます
シーヴァルド様はハンカチーフ
私は薄いショールを淡い桃色ルクリアの春めくフレアドレスに纏おうと

針子皆様のお仕事を頼もしく楽しく眺め

常夜闇の再生誕、優しきエスコート
御礼と共に手を預け



●はなのことば
 二人の出会いは、荒廃した世界。
 花の種を大地に託す事で生まれた縁ならば。
 花の導きのままに、花の未来を借りて。
 その出会いを祝い、永遠とすることもまた『運命』――さだめのように思えた。
 黄色いマリーゴールド、くるくると木に巻き付く朝顔の横にはクルマユリが揺れている。
 咲き誇るクロッカスとダリアに、可憐な花弁を空に向けるポーチュラカ。
 白、黄、青、オレンジ。
 四季の入り交じる、艶やかで鮮やかな花畑を目前として。
 夜の色を外套纏ったシーヴァルド・リンドブロム(廻蛇の瞳・f01209)は、白いかんばせをフルエレ・エルムウッド(フローライトのひかり・f24754)へと向けた。
「――すまない、服を見立ててくれないだろうか?」
 常より漆黒に身を包むシーヴァルドは、鮮やかな光――花々への理解はけして深くは無い。
 しかし今日の同行者は、神である。
 神ならば良案も持ち合わせるだろう、とシーヴァルドは首を傾いで。
「え? 私がお見立てして宜しいのですか?」
 艶やかな濃紫。
 蛍石色のまあるい瞳でシーヴァルドを顔を見上げたフルエレはそうですね、と掌を口元へと寄せて。
「では、今の雰囲気を残しつつ――、新たな芽吹きにローズマリーは如何でしょう?」
 フルエレの髪にも、瞳にも似た色合いのローズマリー。
 その鮮やかな色彩は、確かに美しく映えるのであろう。
 シーヴァルドは切れ長の瞳を、一度、二度、瞬かせて。
「成程、――『あなたはわたしを蘇らせる』か」
 花々への理解が深くないとは言え。
 中二くらいに発症する病に罹患したものならば、必修科目。花言葉をさらりと口にするシーヴァルド。
「……確かに、生まれ変わったような気分になりそうだ」
 ふ、と瞳を反らした彼は、きっと少しばかり照れたのであろう。
「ふふふ、絶対、素敵なのです!」
 彼の様子に花笑んだフルエレは、心弾んだ様子。
「われらのでばんですかー?」
「へい、おまちー」
「お祝い、お祝い?」
「お洋服お仕立てやね!」
 そこへぴょいぴょいと姿を現したのは、小さなお花のお針子達であった。
「まあ、まあ! お針子様達、それではお仕立てをお願いしても良いですか?」
 フルエレが掌を合わせて首を傾ぐと。
「おまかせあれー」
「どうする、なにするー?」
 ふむ、とローズマリーを手にしたシーヴァルドはお針子達と一度視線を合わせて。
「それでは、コートを一着頼めるだろうか?」
「私はドレスを仕立てましょうか、――あ」
 花畑を眺めていたフルエレは、薄紅のルクリアに視線を留めて。
 思いついたように言葉を零せば、掌をぽんと打った。
「あとですね、シーヴァルド様。互いの小物をエリカとビオラで揃えても宜しいでしょうか?」
「ああ、構わないが……」
「ありがとうございます。ふふふ、きっと素敵なのです」
 ――エリカとビオラの花言葉。
 それはフルエレが彼に感じた心と、彼女が在りたく望むものだ。
 何を作るかが決まれば、まずは布作り。
「いくよー」
「そっちもってねー」
「えいえい!」
「布になったー?」
「まだまだ、そっちーひっぱってー」
「おおー、いいかんじですなあー」
 わいわいと口々に騒ぎながら、作業をするお花のお針子達。
「こちらを引っ張れば良いのだろうか」
「せやせや」
「なんだか楽しいですね!」
 シーヴァルドとフルエレも勿論お手伝い。
 ――揃いの小物は、彼にはハンカチーフ、彼女には薄手のショールを。
「こんなもの、だろうか?」
 ローズマリーを幾つも重ねて、伸ばして。深い色合いのカジュアルなコート。
 合わせて長い長い銀糸の髪を纏めて花で飾ったシーヴァルドは、腕を上げて具合を確かめるように。
「ええ、よくお似合いです!」
 くすくすと笑うフルエレは、ふわふわと揺れる桃色ルクリアのフレアドレス。
 薄いショールで華奢な肩を覆えば、上品な仕上がりだ。
 そうして彼女が、こつりとヒール音を響かせて一歩足を踏み出せば――。
 差し出された、シーヴァルドの白い大きな掌。
「さあ、往くとしようか女神よ。――いざ、ステキな国のお祝いへ」
「ええ、素敵な常夜闇の再生誕を」
 エスコートに差し出された掌に、くすくすと笑んだフルエレは掌を重ねて。
 パッチワークのように様々な色が重ねられた、鮮やかな街並みを二人は歩み出す。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

逢坂・理彦
煙ちゃんと(f10765)
この世界にくるのは久しぶりだね。
花を布や飾りにできる針子さん達が国作り中なんだって。
こうやって見るとサムライエンパイアの着物柄って結構花の意匠のものが多かったなって。
煙ちゃんの普段の羽織も牡丹の柄だし。
俺に牡丹が似合うって言ってもらったけど最初は牡丹は煙ちゃんの方が強かったんだよね。

俺は煙ちゃんに似合うのはやっぱり白梅だと思うし…そうだそれで布や飾りを作ろう。
可愛らしい花だからねどちらも似合うよ。

さて、まずはお手伝い頑張ろうか。


吉瀬・煙之助
理彦くん(f01492)と
いつ来ても可愛い感じの世界だよね
オウガは怖いけど、国作りの手伝い頑張りたいね♪
そうだね、和柄は花の模様を使う事が多いから
そういう感じのものなら手伝えそう

うーん、僕は牡丹柄は単に好きだから身に着けてたんだけど
理彦くんはUCの炎の牡丹が綺麗で似合ってるなぁって
僕が白梅は聞いたけど、やっぱり可愛すぎないかな…?
その…理彦くんに可愛いって言ってもらえるのは嬉しいんだけどね

僕も牡丹柄で理彦くんに羽織は作りたいけど
まずは針子ちゃん達のお手伝い頑張ろうね…♪
一緒に布で吊るし飾りとかどうかな?
色とりどりの布で作ればとっても華やかになると思うよ



●牡丹と白梅
「この世界に来るのは久しぶりだね」
「いつ来ても可愛い感じの世界だよね~」
 獣の耳をぴんと立てた逢坂・理彦(守護者たる狐・f01492)がぐるりと回りを見渡し。
 吉瀬・煙之助(煙管忍者・f10765)は、軽薄な笑みでゆるーく応じる。
「ま~、オウガは怖いけど、国作りの手伝いは頑張りたいね♪」
 なんたって荒事は苦手だからさあ、と愛嬌たっぷりに笑った煙之助に、理彦も、ふふ、と笑って。
「そうだねえ。この国は花を布や飾りにできる針子さんが国作り中、だっけ?」
「そう、そう」
「そのとおりなのですよー」
「お国つくるです? ボクたちのお国!」
 首を傾いだ理彦の言葉に、ぴょこぴょこぴょこと現れたのは、花の服を纏ったお針子達であった。
「おや、こんにちは」
「やあやあ、お手伝いにきたよ~♪」
 理彦が小さく頭を下げると、煙之助がゆるーく手を振り。
「……といっても、何ができるかな」
 煙之助がうーん、なんて顎に指先を当て、四季の花が咲き誇る花畑を見やった。
「そうだねえ、――考えてみると、着物の柄って結構花の意匠のものが多いよね」
 ふ、と思いついた言葉を理彦は口に。
 ふかふかと狐の尾を揺らすと、お針子の視線がその動きを追う。
 みぎ、ひだり。
「煙ちゃんの普段の羽織も牡丹の柄だしさ、――俺に牡丹が似合うって言ってもらったけど。最初牡丹の印象は、煙ちゃんの方が強かったんだよねー」
 ひだり、みぎ。
 お針子達の視線自らの尾先を追うのが面白くなってきた理彦は、尾の動きに上下運動を足しながら言葉を重ねて。
「――うーん、僕は牡丹柄は単に好きだから身に着けてたんだけど……。理彦くんは炎の牡丹を咲かせる事ができるでしょ? ――だから、綺麗で似合ってるなぁって」
 そんな彼等の様子が微笑ましくて、瞳を細めて笑った煙之助。
「うん、ありがとう。前は牡丹の印象だったけど、今の煙ちゃんに似合うのはやっぱり白梅だと思うよ」
 綺麗、と言われれば。
 少しばかり笑みを深めた理彦は、擽ったげに言葉を紡ぎ。
「……僕が白梅は聞いたけど、やっぱり可愛すぎないかな……?」
 彼の返す言葉に、照れたのかもしれない。
 言いながらくっと帽子の鍔を引いて、ぎゅっと深く被り直す煙之助。
「その……理彦くんに可愛いって言ってもらえるのは嬉しいんだけどね」
「――ああ、そうだ、それで布や飾りを作ろうか?」
 煙之助の様子に、くすくす笑った理彦は提案一つ。
「わぁ、いいね♪」
 名案だ、と煙之助は手を打って。
和柄は花の模様を使う事が多いし、きっと素敵だよ。飾りなら――吊るし飾りとかはどうかなあ?」
「お祝いの日にはきっとぴったりだねー。可愛らしい花だからきっとどちらも似合うよ」
 うんうん、と頷いた理彦がぴたりと尾の動きを止めた。
 その瞬間。
「うーん、ぐるぐるー」
「あー」
「ああー、お手伝いですー?」
「お国つくるです? ボクたちのお国!」
 わやわやと思い出したように喋りだすお針子達。
 尾の動きにつられて、頭をぐるぐるとしていた彼等は、目を回している者、はっと目を見開く者。喋りながら尾に飛びかかる者。
「うん、うん♪ 一緒に作ろうよ」
 飛びかかってきたお針子をひょい、と軽く避けた理彦は頷いて。
 わー、なんて飛びかかったお針子はコロコロ転がってゆく。
「色とりどりの布で作ればとっても華やかになると思うよ。針子くん達も手伝ってくれるかな?」
 できれば後で羽織作りも手伝ってほしいな、なんて言葉を付け足して首を傾いだ煙之助に。
「わあい!」
「やってやるです」
「やろう、やろう!」
「うれしいなー」
 大きく頷いたお針子達は、その申し出を跳ねて喜んだ。
 縫って、縫って。
 ちく、ちく、ちく、ちく。
 幸せな日をお祝いする物を作りましょう。
 幸せな人をお祝いする国を作りましょう。
 幸せな日を作りましょう!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ラフィ・シザー
アナンシ(f17900)と
花を布に出来るのか。素敵だな♪
俺の好きな花はイベリスにマグノリアにシロツメグサに…。
ふふっ、俺の口から花の名前がすらすら出てくるのは不思議かな?
お菓子も好きだけど俺は花も好きだよ。
お菓子も花も『トモダチ』やアリスは大体好きだったし。
アナンシは紫の花が似合いそうだなって思うよ。
アネモネにカンパニュラにビオラ…。

どんなものを作ろう。
俺の好きな花ならマグノリアのシャツにシロツメグサの指輪。イベリスのバッグ。
アナンシに似合う花ならアネモネのスカーフにカンパニュラの帽子にビオラの靴…かなぁ。

…アナンシ…嬉しいけど赤い薔薇は大切な人じゃなきゃダメだぞ?
(顔を赤くして)


アナンシ・メイスフィールド
ラフィ君f19461と
花を布にするとは本当に素敵な子達だね
私も野の花々にはつい目が行ってしまうのだけれども名前には疎くてね…と
ん?花か?どの花か教えてくれるかね?と共に花の元に向かってみよう
ラフィ君が好きな花は見てみたいではないね…と
ラフィ君の会ったアリスは花が好きだったのかね?
君が楽しそうに話す子はどの様な子だったのかな?今度教えてくれると嬉しいのだよ

私の衣類はラフィ君の見立てでお願いするとして…
ラフィ君の白と黒は何の色でもあうからねえ
鮮やかな色合いも素敵だろうと赤い薔薇を勧めてみよう
胸ポケットから覗くハンカチィフ等素敵だと思うのだよと笑みを向けつつ
本当にどのようになるのか楽しみなのだよ



●キミの花
 魔法のように――。
 否、事実魔法なのであろう。
 花を伸ばして、紡いで、糸として。
 ぐうるりと回せば布と成る。
「できたー」
「これ、これー、やったー」
「わーいわーい」
 のんびりとした口調のお針子達が、力を合わせて花弁を布に加工している姿。
「花を布に出来るのか。素敵だな♪」
 そんな様子を眺めていた、黒髪よりくろーい長耳をぴょんと跳ねさせたラフィ・シザー(【鋏ウサギ】・f19461)は額に掌を当てて遠見をするように。
「ああ、本当に素敵な子達だ。本当に花を布にできるのだねえ」
 頷いたアナンシ・メイスフィールド(記憶喪失のーーー・f17900)が、目の前に広がる色鮮やかな花畑に瞳を眇めた。
 黄、白、桃。
 桜の下にアネモネ。ポピーが咲き誇る真横にデイゴが揺れている。
 四季の折り混じった、普通ならありえない魔法の花畑。
「野の花々にはつい目が行ってしまうのだけれども――どうにも名前には疎いのだよ。きっとこの子達は花の名前にも詳しいのだろうね」
 言葉を紡ぎながら、アナンシは走り回るお針子達へと視線を移し。
「花かー……、そうだな、俺の好きな花はイベリスにマグノリアにシロツメグサに……」
 花畑に視線を向けて、指差し確認するように人差し指で指し示し。
 どんどん花の名を上げるラフィに、アナンシはぱちぱちと空色の瞳を瞬かせて。
「……おや、ラフィ君も花に詳しいのかね?」
「ふふっ、俺の口から花の名前がすらすら出てくるのは不思議かな?」
 なんて、悪戯げにラフィは笑ってみせた。
「いいや、少し驚いたけれども……」
 アナンシが小さく首を振って、ラフィと視線を交わすと彼はにいっと笑みを更に深めて。
「お菓子も好きだけど俺は花も好きだよ。――お菓子も花も『トモダチ』やアリスは大体好きだったし」
「ああ、なるほど――。君が楽しそうに話す『アリス』はどの様な子だったのかな。また、今度教えてくれると嬉しいのだよ」
「あぁ、今度また教えるよ。ふふ、長いお茶会になるぜー」
 ウサギの耳をぴょんと跳ねたラフィは、擽ったげに肩を上げて、下げて。
「さて、どんなものを作ろうかな?」
「そうだね、互いに見立て合うかい?」
「ふふ、名案だ! 流石、アナンシだな♪」
 アナンシの提案に、ラフィは花畑の通路を跳ねるように。
「そうだなー、アナンシは紫の花が似合いそうだなって思うよ」
 視線の先に見つけた紫色、アネモネにカンパニュラにビオラ――。
 さくさくと見繕ってゆくラフィとは対称的、アナンシはううん、と悩んだ様子。
「うーん、……ラフィくんの白と黒は何色でも合うからねえ」
 何が良いだろうか。
 じっと花畑を見つめて――。
「――そうだ、白と黒に映える鮮やかな色合いも素敵だろう?」 
 なんて、赤い薔薇を一輪手に。
 ぴょん、と耳を跳ねて。
 目を丸くしたラフィは、少しばかり頬を染めて――。
「……アナンシ、嬉しいけど赤い薔薇は大切な人じゃなきゃダメだぞ?」
「そうなのかい? ――でも、胸ポケットから覗くハンカチィフ等素敵だと思うのだよ」
「……良いけど、さあ!」
 く、とアナンシが笑えば、ますますラフィは顔を赤くするばかり。
 ぷるぷる首を振って、照れ隠し。
 さあ、何を作ろうか!
 ラフィの好きな花を選ぶのならば。
 マグノリアのシャツに、シロツメグサの指輪。イベリスのバッグ――。
 いいや、やっぱり彼に似合う花?
 アネモネのスカーフに、カンパニュラの帽子に、ビオラの靴。
 ――ああ、いっそ全部作ってしまおうか!
「猟兵さん、なにつくるのー?」
「てつだう、てつだうー」
 花畑に立っていると、小さなお針子達もどんどん集まってくる。
「あぁ、ありがとう、じゃあ一緒に作ろうぜー」
「ふふ、お願いいたしますねえ」
 ――どのように仕上がるかは、お楽しみ。
 布を作って、糸で縫って。
 ちく、ちく、ちく。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

栗花落・澪
【白桃翠】

衣装:薄緑系色をベースにパステルカラーで纏めつつ
小物やジャケット等にライラックモチーフの紫を使用した
パンツスタイルのボーイッシュロリータ衣装
(見た目女子ですけど男子です)

僕も薄荷さんも花扱うからねぇ
でも薄荷さんの言うとおり
百鬼さんも雰囲気的に似合うと思うよ
お姫様みたいな感じで

薄荷さんは明るくてポジティブだから
まさに太陽の花って感じだよね

褒め言葉は基本にこやかにさらりと
思った事をそのまま口に出してるだけなんだけど

ライラックかぁ…うん、いいかも
それなら紫が差し色になるようにベースの生地を淡い緑とかにして…
(モデルの義理姉譲りの本気コーデ)

裁縫なら僕も得意だよ
普段家事担当なので(得意げ


薄荷・千夜子
【白桃翠】
衣装:向日葵モチーフ
太陽のようなオレンジと向日葵の黄色の柔らかいパステルカラー
クラシカルロリータ系のパンツスタイル
髪には小さなハットに向日葵の花

お花のお洋服なんてとても素敵!
きっと良い衣装ができますよ
智夢さんも似合いますし、ばっちりな衣装作るんですから!ね、澪君!!とやる気満々

わぁ、向日葵と言ってもらえるのは嬉しいですね
太陽みたいで大好きです!
澪君は紫ならライラックとかどうでしょう?
智夢さんは花弁いっぱいのふわふわした花がいいですね

えぇ、智夢さんのロリータ服可愛いと思いますっ!
ので私たちの衣装も系統を合わせましょうか
せっかくなので一緒にお裁縫も楽しいと思いますよ、と智夢さんに微笑んで


百鬼・智夢
【白桃翠】

衣装:ラナンキュラスモチーフ
淡い桜色生地にピンクの花飾りをあしらった
レースいっぱいロリータワンピース
腰までのふわふわ髪にも花飾り

お花のお洋服…とっても素敵ですね
2人ともお花が似合うから…

2人の衣装をほわほわと想像
薄荷さんは…向日葵とか、合うんじゃないでしょうか
澪くんも、私にとっては同じだけど…
男の子らしさなら、紫とか、どうかな?

えっ…えっと、その…ロリータ服は…好き、ですけど…
私にそんな可愛いの、似合うでしょうか…?(もじもじ

よかったら…リアムにもなにか作ってもらえたら、嬉しいな

国造りも、お手伝いします…けど
えっと…な、何をしたらいいのかな…?
お裁縫は、得意ですけど…(薄荷さん見上げ



●おそろいの衣装で
 黄色、白、紫、赤。
 ハイビスカスの横に咲くエリカの花。
 梅の木の足許にはアジサイが咲き誇っている。
「わぁ、凄い。綺麗だね!」
 視界いっぱいに広がる花畑を前に、栗花落・澪(泡沫の花・f03165)はぴかぴかと琥珀の瞳を輝かせて。
「こんなに色んなお花が一度に咲く花畑なんて、初めて見ました……! この花でお洋服を作るんですね!」
 彼の横で、ぐぐっと拳を握った薄荷・千夜子(羽花灯翠・f17474)。
 花を操る術を使う千夜子としては、花はとても身近な物。
 しかし。
 そのように花が身近だとしても、この様な咲き乱れ方はめったに見れるものでは無い。
 ほう、と見惚れたように瞳を丸くした百鬼・智夢(慈愛の巫女・f20354)もこくこくと頷いた。
「とっても素敵ですね……」
「でしょー」
「せやろー」
 いつの間にか立っていた小さなお花のお針子達が、智夢の呟きにぴょんぴょんと跳ねて相槌を打った。
「そういえば猟兵さんー、服作るのですかー?」
「服ー作るー?」
 そうして、ふわふわと花のレースを跳ねてお針子が口々に尋ねては首を傾ぎ。
「えっと……ぜひ作りたい、ですけれど。そうですね……お花で衣装を作るなら……」
 二人ともお花が似合うから、なんて。
 智夢は空を見上げて、指を顎に当てて少しばかり思案ポーズ。
「あ……、薄荷さんは……向日葵なんて、合うんじゃないでしょうか……?」
「あっ、良いよね! 明るくてポジティブだから、まさに太陽の花って感じだよね!」
 智夢の提案に澪は、そうそう、と微笑んで。
 二人の評価に千夜子は、それこそ太陽のように花笑んだ。
「わぁー! 向日葵と言ってもらえるのは嬉しいですね……! 私も、太陽みたいで大好きなお花です!」
 太陽。
 太陽といえば――。
「……澪くんも、私にとっては同じだけど……、えっと、……男の子らしさなら、紫とか、どうかな……?」
 花畑のあたりで視線をぐるぐるさせる智夢が、ぽそりぽそりと呟けば。
 ぴっと腕を伸ばした千夜子が、目に止まった花を指差して。
「あっ、澪君は紫ならライラックとかどうでしょう?」
「ん。ライラック、……ライラックかぁ、うん。いいかも!」
 小さな花弁が寄り集まった可愛らしい花を前に、澪は顎に手を当てた。
「…………それなら、紫が差し色になるように……ベースの生地を淡い緑とかにして……。小さな花が映えるように、小さなハットに合わせるのも面白いかな……?」
 独りごちる考えは、モデルをしている義理のお姉さん譲りの本気のコーディネート構想。
「猟兵さん本気ー」
「せやせやー」
「せやかてー」
 澪と同じポーズを真似して、お針子達がむむむと眉根を寄せてみせる。
 お花を見繕っていた千夜子は、智夢の姿と花を見比べるように。
「そうですね、智夢さんは花弁いっぱいのふわふわした花なんてどうでしょう? ライラックみたいにいーっぱい小さなお花が集まっているのも可愛いですけれど、八重桜のようにふわふわ重なっているのも可愛いですよねえ!」
「えっ……!? え、えええ、えっと、その……」
 ――過去の記憶から、智夢はとても自己評価が低い。
 自分がそのように花を纏う事など、想像もしていなかった様子で。
 ぴゃっと肩を跳ねた智夢は、しどろ、もどろ。
「ロリータ服は……好き、ですけど……、私に…………そんなに可愛いの、似合うでしょうか……?」
 掌で口元を隠した智夢は、茶のふわふわとした髪を揺らしてモジモジと。
 本当に、そんな評価を自分が得て良いのだろうかと――、瞬きを重ねて。
 そんな悩みを吹き飛ばすくらい、からりと笑う千夜子。
「えぇ! 智夢さんのロリータ服、可愛いと思いますっ! ねえねえ、澪君! 私たちの衣装も智夢さんと系統を合わせませんか? 絶対に可愛いですよ!」
 太陽みたいに、ぴかぴか笑顔の千夜子に澪はくすくすと笑って。
「うん。薄荷さんの言うとおり、百鬼さんも雰囲気的にふわふわした服はとっても似合うと思うよ。お姫様みたいな感じでさ」
 ラナンキュラスなんてどうかな、と花弁が幾重にも重なった薄紅色の明るい花を指し示す澪。
「みんなおひめさまするのー?」
「お祝いするー?」
「お祝いの服! つくる? つくろ! つくりたーい!」
 彼の横で、彼の真似をしていたお針子達がぴょんぴょんと跳ねてアピールを。
 おず、と頷いた智夢が、お針子達の横でしゃがむと、手を伸ばして――。
「えっと、……それなら、……よかったら……リアムにもなにか作ってもらえたら、嬉しいな……?」
 小さな手で指先をギュッと握り返したお針子は、あくしゅ、握手。
「まかせんかいなー」
「やりませえー」
「めしませー」
「……わ、……ふふ、よろしくおねがいします……!」
 へにゃ、と眦を緩めた智夢が、照れたように笑った。
 使うことに決めたお花を抱いた千夜子が、彼女とお針子の様子ににーっと笑みを深めて。
「きっと良い衣装ができますよー! ばっちりな衣装を作りましょうね、――ね、澪君!!」
「うん、裁縫なら任せてよ!」
 普段から家事を担当しているから得意なんだ、と澪は胸を張り。
「わ、私もお裁縫、得意ですから……がんばります……っ!」
 きゅっと拳を握りしめて智夢も、意気込んだ。
「えっと……そうしたら、な、何をしたらいいのかな……?」
 ――もちろん、国造りも手伝いたいし。
 助けを求めるように、千夜子を見やる智夢。
「そうですねえ、ではまずお花を集めて――」
「布作りは、君達にお願いして大丈夫だよね?」
「まかせんかいなー」
「やるやるー」
「めしませー」
 千夜子と澪がテキパキとお針子達に指示をすれば、揃いの衣装と国造りのはじまり、はじまり。
 ――パステルグリーンのボーイッシュなパンツスタイルのロリータ服には、ライラックの紫を添えて。
 ――オレンジと黄色、柔らかな太陽のクラシカルなパンツスタイルのロリータ服は、ひまわりの花を添えたハット。
 ――淡い薄紅色、花飾りに花のレース。ふわふわと幾重にも重なったロリータワンピース。花の髪飾りだって、沢山、沢山。
 素敵な一日を過ごすための大切な衣装を、ひと針、ひと針。
 お花を重ねて。
 針を重ねて。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

フリル・インレアン
ふわぁ、すごいです。
お花がどんどんお洋服になっています。
ふわあ、カワイイドレスの出来上がりですね。
ふぇ!!い、いいんですか?
せっかくのカワイイドレスを私なんかに。
ありがとうございます。
さっそく着てみますね。

えへへ、どうでしょうか?
似合ってますか?
ふわあ、アヒルさんはタキシードをお願いしていたんですね。
とっても似合ってますよ。


クーナ・セラフィン
うーんお祝い。面白そうだ。
とは言っても直近で祝う事なんて…いや、祝おうと思った心が芽生えた日が記念日、そんなわけでお茶会を開いてみよう。
お花のお針子さん達の新天地発見記念日、的なのでも大丈夫だよね、うん。

それにしてもお祝い用の衣装…あまり派手派手なのは気恥しいし、もうちょっと気軽に着れるのがいいかな。
かといって地味すぎるのもお花のお針子さん達的に張り合いないかもだし、テーマだけ伝えてお任せする形がよさそう?
…テーマは茶会、薔薇をメインにした落ち着いた雰囲気の紳士服って感じで。
薔薇を布に仕上げたら女の子用ならフリル多めになりそうだけど男物ならどう仕上がるかな、的な好奇心も。

※アドリブ絡み等お任せ



●なんでもない日、あるいは、なんでもある日
「ふわぁ……すごいです……、お花がどんどん布になって……!」
 大きな空色の帽子を揺らしたフリル・インレアン(大きな帽子の物語はまだ終わらない・f19557)はガジェットのアヒルさんをぎゅっと抱きしめ、小さなお針子達が花弁を布にする姿を見る。
「うんうん、すごいねえ。見事なものだよ」
 同じく大きな帽子。
 深い葉色の羽根帽子をふかふかと揺らすクーナ・セラフィン(雪華の騎士猫・f10280)が、フリルの横に腰掛けてうんうんと頷いた。
 街を作るための布を用意するために。
 頼まれるがままに花畑から花を摘んでは、彼等に手渡していたフリルとクーナは、その髪と毛並みに花弁をつけたまま休憩中。
「猟兵さんー、もすこし休んで大丈夫~、ありがとありがと、ついでにお祝いするー?」
「お祝いはねー、良いよ、とても良いよー」
「えっ、お祝い? する、する~」
「わーい、何のお祝い?」
「わかんない! でもお祝い!?」
「しよー」
 お祝い、と一人が口にすれば、お針子達がどんどん集まって口々に話し出す。
 そんな事言ってないのににゃあー、とクーナは思えど。
 彼等の期待を裏切るのも忍びない。
「うーん、面白そうだけれどね」
 といっても、最近なにか祝うことがあったかと言えば直に思いつきはしない。
「あっ、アヒルさん……?」
 はたはたとお針子達の方に跳んでいってしまったフリルのアヒルさんを目だけで追って、クーナは帽子をかぶり直して。
「そうだね。……祝おうとおもった心が芽生えた記念日、またはお花のお針子さん達の新天地発見記念日……かにゃ。ってことでお茶会を開くっていうのはどう?」
 クーナの提案に、お針子達はわあと歓声を上げ。
「かしこま!」
「おいわいするの?」
「おいわいしよう!」
「準備しなきゃ~」
「ふく、服つくる?」
「お洋服、ですかー?」
 フリルが目を丸くして、わわわ、どうしよう、なんて帽子の鍔をぎゅうっと引き絞って顔を隠し。
 クーナが肉球でとん、とん、と地を叩いてから――。
「うーん……、なら、テーマは茶会で落ち着いた雰囲気の紳士服を薔薇で作ってくれるかな?」
「かしこま!」
「おいわいしよう!」
「ほんと?お祝い?」
「そうだよー」
「ばら、ばらばらあった? ばらばらになってない?」
「なってなーい」
 口々に言葉を紡ぐお針子達。
 喋りながらも彼等のしごとは的確で――。
「……ふわぁ、布が次はどんどんお洋服になっています……! 可愛いドレスですね」
「これ猟兵さんのよー」
「ふぇ!! い、いいんですか?! えっ、でも、……せっかくのカワイイドレスを私なんかに……?」
「お申し込み頂いた商品ですー」
「完成品ー」
 どうやら、先程アヒルさんが頼んでくれていたらしい。
 それならば、とフリルはおずおずと服を受けとって。
「……わかりました。……えへへ、ありがとうございます。早速着てみますね」
 なんて、布で出来た衣装室に引っ込んでいった。
「キミ達、すごいスピードで仕事をするねえ」
 そうして服を受け取ったクーナも、驚いたように獣の耳をぴんと立てたまま。
 服を広げて、じいっと見やる。
「えっへん」
「すごいよ、ボクら」
「お祝いする?」
 くすくすと肩を竦めたクーナは、ありがとう、と礼を一つ。
「そうだにゃ、服の完成のお祝いもいいかもねえ」
 薔薇のように幾重にも重なったレースをあしらった袖先。
 どこか中世めいた仕上がりのスーツは、赤いバラを幾重にも重ねたようで昏い赤に仕上がっていた。揃いの羽根帽子は、クーナの服装を模してつくってくれたのであろう。
「……えへへ、どうでしょうか、……似合ってますか?」
 そこに再び姿を表したのはフリルだ。
 タキシードを纏ったアヒルさんも一緒に、ぷかぷかと彼女の周りを飛び回り。
「うん、素敵だとおもうよ」
 幾重にも重なった白と青。
 海にも空にも見える色合いのドレスは彼女に似合いだと、クーナは笑い。
「え、えへへ……、ネコさんも、きっとそのスーツ、……えと、お似合いになりますよ!」
 なんて、フリルも照れくさそうに笑う。
「さて、お祝いしますかあ」
「腕がなりますなー」
 衣装を仕立てたお針子達は、既にお祝いをスタンバり始めていた。
 不思議な不思議な国で。
 何も無い日を特別にして、お祝い、お祝いしましょう!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

月舘・灯里
【鯉灯】
にいさまといっしょにおしごとなのです!
とうさまもかあさまもいない
ちゃんとしたおしごとは、はじめてなのですよ?
にいさまのことはあかりがまもるです(きりっ)

あかりは『わんぴーす』がいいです!
うすいみどりいろにもみえる
しろいおはなでわんぴーすはできますかっ!
できるのならあかり、おてつだいします!

おはなのおはりこさん!
にいさまにもかっこういいおようふく
しつらえてください!なのです

にいさま、にいさま
すこしじっとしていてくださいなのです……

かっこういいおようふくを
とうさまやかあさまにみせましょう……?
じっとするのがんばってくださいなのです!

にいさまも、かっこういいのです!
さぁ、おいわいなのです!


篝・陸彦
【鯉灯】
アリスラビリンスって国が増えるのか
布の作り方もおれ達の国とは違うみたいで面白そうだ
今回は灯里と二人だけで出掛けるのは初めてだけど
おれ達ならきっと大丈夫だよな
灯里、おれを守るなんてまだ早いぞ!

それにしてもお祝いかぁ
祝われた事無かったから、よく分からないんだよな
えっ、灯里はもう決まったのか!?
おれも急がないと……えぇと、なんかかっこいい服!
絵本で見た「王子様」ってのが来てたやつ!

濃い青の花で布作り
あとはおれのサイズに合わせて作るんだな!
サイズを測りたいからじっとしろ?
うー……なんかくすぐったいんだけどなぁ
ん、我慢する

完成したらお披露目、かっこいいだろ!
へへ、灯里も可愛いな
さぁお祝いするぞ!



●兄妹
 父と慕う羅刹もヤドリガミも、今日は居ない。
 拳をきゅっと握って、きりりと気持ちと表情を引き締めた月舘・灯里(つきあかり・f24054)は、篝・陸彦(百夜ノ鯉・f24055)を見やるとこっくり頷いて。
「にいさまのことは、あかりがまもるです!」
「へへっ、おれを守るなんてまだまだ早いぞっ!」
 意気込む彼女に、陸彦は胸を張って妹分の手を引く。
 ――『アリスラビリンス』と猟兵達が呼ぶ世界は、幾つもの小さな世界が寄り集まり、繋がった世界だ。
「おー、猟兵さんたちですかー?」
「お手伝いたすかるなー」
「ボクらの国にようこそー、まだできてないけどー」
「つくるですわ」
「なにつくる?」
「ご飯はまだですかー?」
 ひょっこりと顔を出した花の服を纏った小人――お針子達。
「わっ、こんにちは!」
「えっ、ご飯は持ってきてないぞ!?」
 片手を上げてぴかぴか笑顔でご挨拶した灯里と、おおっと驚く陸彦。
 彼らのような自然発生する疑似生物の『愉快な仲間』が、その小さな世界を国として整える事で、この世界は成り立っているらしい。
 きちんと父達とこの『世界』について勉強をしてきた陸彦は、ちゃあんと彼等の事も勉強してきている。
 ――それもこれも、初めての世界での、初めての二人のお出かけ。
 二人ならきっと大丈夫だと、信じているけれど。
 全ては、妹分を護るが為。
「ならお祝いいたしますー?」
「街もまだつくりちゅーやでー」
「なにつくる? ご飯?」
「ご飯はまだですかー?」
「ご飯はまだなのですー」
 戯けた彼等の様子にくすくす笑った灯里。
 うーん、と少しばかり悩んだ様子の陸彦は、相違う赤と金の視線を空中に泳がせて。
 お祝い、お祝い。
 ――人の姿として顕現したばかりの『根付』である彼は、祝われた記憶などまだ在りはしない。
 祝う、という事がまずどういう事なのか、よく分かってはいないのだ。
「あかりは、『わんぴーす』をつくりたいです!」
 悩む彼の横で、妹分はすらすらと望みを即決だ。
「しろーいおはなで、うすいみどりにもみえるようなおはながよいのですー」
「おおー、わかったですよー。お祝いの服はたいせつですものなー」
「わんぴーす~」
「おはな、おはな、向こうにありますが?」
 灯里の願いに、わいわいと騒ぎ出すお針子達。
「えっ!? 灯里はもう決まったのか!?」
 その様子に目を丸くした陸彦は、すこしばかり焦り出す。
 すぐに決める事が出来る灯里はすごい。
 ならばおれも急いで決めないと……と、慌ててだした結論は――。
「えぇっっと……なんかかっこいい服! そう、えっと……ほら! 絵本で見た『王子様』ってのが来てたやつがいい!」
「おはなのおはりこさんたちー、にいさまにもかっこういいおようふく、しつらえてくれますかっ?」
 勉強のために読んだ絵本の王子様は、確かに格好良くみえたもの。
 陸彦は思いつくがままに、ふんわりとしたオーダーを口にして。
 灯里が重ねて、ぺこりとお辞儀してお願い。
「よいですぞー」
「まかせんかいなー」
「やるやるー」
 ゆるーい返事で、お針子達は跳ねて、跳んで。
「ちょっとじっとしてねー」
「ちくっとはしませんよー」
「しゃわしゃわするかも?」
「そうだっけー?」
「ご飯はまだですかー?」
 メジャーを取り出した彼等は、身体の大きさを図るべく。
 二人に向かってメジャーをくるり、くる。
「うー……、な、なんかくすぐったいなー」
「にいさま、にいさま、すこしのがまんです!」
 メジャーの擦れる間隔がどうにもむず痒く、陸彦は髪を揺らしてもじもじ。
 かっこういいおようふくを、とうさまやかあさまにみせるのですから!
 ぐぐっと拳を握りしめ意気込む灯里が、兄貴分に応援を重ねる。
 お花を選んで、魔法で伸ばして、撚って、布にして。 
 初めて見る、初めての世界の、初めての生地の作り方。
 お針子達に混じって、伸ばして、撚って、二人も勿論お手伝い。
 切って、重ねて、縫って。
 青に白。
 重ねた花弁を服にしよう。
 王子様みたいなスーツに、お姫様みたいなワンピースドレスを作ろう。
 ちく、ちく、ちく。
 今日という日を、お祝いする為に!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ユニ・エクスマキナ
わぁぁ、お花が布になるなんてスゴイのねー!
ユニも可愛いドレス作りたいなぁ
例えばね、ハイビスカスのお花をモチーフにしたドレスなんてどう?

…なーんて言ってもユニはお裁縫とか出来る気がしないけど
…(針に糸も通せない)
ほ、ほら…!
うん、大丈夫、ユニこの展開も覚悟はできてたから
お針子さんにお任せしちゃおう!
ねぇねぇ、お洋服にあわせる飾りはどんな色がいいかな?
髪飾りは?帽子は?
ブローチとかもつけちゃう?
え?どれも作れるの?
ステキ、ステキ!
どれもみーんなステキだから…全部まとめて採用しちゃおう!

ステキなお洋服が出来たら、お祝いされる準備もバッチリ、かな?
ふふっ、楽しみなのね!
さぁ、本番はこれからなのねー!



●なついろドレス
「せーのー」「いくよー」「えっ、ほんと?」「わあー」
 青、緑、赤にオレンジ。
 八重の花弁はふっくらとしたバルーンスカート、椿のつやつやとしたチュニック。
 彼等の動きに合わせて、はらはらとナズナの花弁が舞った。
 お花の服を纏った小さなお針子達が、花弁をぐんと引っ張ればするすると糸に解け。
 結合わせる。
 織り上げる。
 魔法の光がきらきらと舞いながら、瞬く間に花弁が布に生まれ変わってゆく。
「わぁぁ、スゴイ、スゴイのねー! ユニも可愛いドレス、作ってみたいなぁ」
 ぴかぴかとまあるい瞳を一番星みたいに輝かせて歓声を上げたユニ・エクスマキナ(ハローワールド・f04544)に、お針子達は胸をきゅっと張って。
「すごいでしょう!」「ボク達すごーい」「え、すごかったです?」「ばんざーい、すごーい!」
 跳ねて、跳んで、口々に喋りながらユニを見上げた。
「もしかして」「もしや」「む」「ひそひそ」
 そうして彼等は、円陣を組んで一度相談。
 チューリップをひっくり返した形のワンピースを纏ったお針子が代表となった様子で、他のお針子を背におずとユニの前へと出る。
「もしかして、猟兵さんはお祝いされに来たですか?」「服作る?」「すごいでしょー」「みちびく?」
 代表者を作った意味も無く、結局後ろにいるお針子も喋っている。
「わーっ、もしかしてユニの事もお祝いしてくれるの?」
「お祝いしていいぱたーんですかー」「そうきたかー」「わーい、おいわい! お祝いのお洋服!」
「すてきにお洋服つくるです?」
 ユニの答えにお針子達は、布を抱えたお針子達は突然大忙しになった様子。
「わーい、作る! 作ってみたいのねー!」
「やろー」「よっしゃー、なにつくる?」「おー」「なにはじまる? おいわい?」
 首をかしいだお針子に、ユニはこくこく頷いて針を一本手にとって。
「そうね、そうね……、例えばね、ハイビスカスのお花のドレスなんてどう?」
「よいですねー」
「っていっても、ユニはお裁縫とか」
 へにゃっと笑いながらユニが、針穴に糸を――。
 通せない。
 スッと穴から逃げる糸。
「む」「ふぁいといっぱつー」「おしー」「あともうすこしだったなー」
 もう一度穴と向き合うユニ。
 その瞳には真剣な色が宿っている。
 針穴に糸が――。
 通らない。
「あちゃー」「そういうぱたーんかー」「やられましたね」「む」
「うん、……うん。ユニこの展開も覚悟はできていたのね……」
 瞳を瞑ってユニは顔を左右に振り、振り。
 まるで糸にも意志があって、穴に通るまいとしているようだ。
 知識には自信があれど、身体が付いてこず。
 へにゃと逃げる糸、もしかして穴にも意志があって、糸を通さないように通せんぼしてるのかも。
「これなー、こうするといいですなー」
 ユニを見かねたのか、それとも動きたくなっただけなのか。
 お針子さんが糸を引くと、スッと通る糸。
「ふぉぉ、お針子さんスゴイ、スゴイの!」
「せやろー」「こんなこともできるよー」「はいびすかすー」「ぬの!」
 鮮やかな赤い布を運んできたお針子達は、ユニの褒め言葉に良い気分になったのだろう。
 服作りを始めた瞬間、わっと周りからもどんどん集まってくる彼等。
「わーっ、ねぇ、ねぇ、お洋服にあわせる飾りはどんな色がいいかな?」
「せやなー、お花を活かすならー、みどり?」「水色もきれー」「こっちは?」
「わああ、ステキ、ステキ! 髪飾りにー、帽子も……ブローチとかもできちゃう?」
「こっちのやつもいいですよー」
「わぁあ、ステキ! ふふふ、どれもどれもみーんなステキだから――ぜーんぶまとめて採用しちゃうのはどう?」
「さんせーい」
 ユニとお針子達は、頭を突き合わせてお洋服会議。
 華やかに広がるバッスルみたいなスカートに、重ねられたスカート。
 夏色の帽子と葉っぱのブローチ、白のレースも晴れやかに。
 ――ステキなドレスができれば、お祝いされる準備もバッチリ。
 さあ、さあ。
 ステキで楽しい一日を、お祝いしよう!

大成功 🔵​🔵​🔵​

リグ・アシュリーズ
ティル(f07995)ちゃんと

お花が布に……魔法みたいね!
ぷらねた、りうむ。たしか、お星様が見られるのよね!
周りの壁を蔦植物が覆って、そのまま花と植物の天蓋を形作るの。
どうかしら?と思い描く星見の館を彼女に語り。

見えるのは本物の星でも、漏れいづる太陽の光でも!
そう口にすれば、両方叶う案を出され。
昼と夜で顔が違うなんて、素敵……!
夜に花開くなら、夜行性かしら。
蓮みたく白い大きな花弁の屋根がぱあっと開いて、星々が顔を覗かせるの!

お針子さんへは、内密に衣装作りのお願いを。
月光のように嫋やかな銀糸に菫色の糸を編みこみ、襟元には鈴蘭の刺繍を。
穏やかで気遣いあふれる私の友達。ふさわしいものを届けたいの!


ティル・レーヴェ
リグ殿(f10093)と

お花を布に
そして其れが建物にもなるなんて
不思議で素敵

施設を作るとするならば
妾はアレ!
プラネタリウム、と提案を

花も星も好きだから
それらが合わさればきっと幸せ
語る瞳はきらきらと隣の彼女へ向けて
そして彼女の想像を聞いたなら
尚それは煌めいて

なんと素敵なご提案!
ならば昼は
閉じた花弁や蔦から漏れる光を星と見て
夜は花開いた其処からまことの星が――
などは如何じゃろう?

2人の想像合わされば
ふわりきらりと星見の花が咲き誇る

そして欲張りもうひとつ
祝いの日に纏う互いの衣装を考えて

太陽の如き彼女には
眩しく見上げる花模して
お色は黄色
元気な彼女が翔けれる様に
裾はふわり捌きやすく、と

お針子殿にお願いを



●花の星見台
 花を抱えた小さなお針子達がせーので魔法をかければ、解ける花弁。
 空中で撚り合って糸のようにするすると伸びたかと思えば、織るように縦に、横に。
 まさしく魔法。
 一瞬で花が布と成ってゆく。
「わ、わ、わ。スゴイわねぇ!」
 亜麻色の瞳に、好奇心をぴかぴかと瞬かせて。
 リグ・アシュリーズ(風舞う道行き・f10093)は、お針子達の手さばきにぱちぱちと小さく拍手を重ね。彼女の横に立つティル・レーヴェ(福音の蕾・f07995)がその不思議な光景に、アメジストの様に煌めく吸い込まれそうな瞳を不思議そうにぱちぱちと瞬かせた。
「此れが建物にもなるなんて、本当に不思議じゃのう」
「本当に不思議で、おとぎ話みたいよね。ティルちゃんは何か作ってみたい建物があるのかしら?」
 リグの質問に、ティルは瞳を瞑ってこっくり頷き。
「うむ、うむ。施設を作るとするならば……。そう、アレ、プラネタリウム――と、いうたか? 星を楽しむところじゃ!」
「ぷらねた……、りうむ。ああ、アレね! 星を見る建物をお花で作るなんて、たしかに素敵だわ」
「そうじゃろう? そうじゃろう? 妾は花も星も好きでのぅ。合わさればきっと、何倍も幸せに違いないのじゃー」
 くすくすと楽しげに笑ったティルに、リグもにっと微笑み。
「ええ、そうに違いないわ。そうねえ、――こう、周りの壁を蔦植物とかで覆って……」
「ほうほう」「いいですねえー」「つくるです?」
「わっ!」
「むっ?!」
 プラネタリウムの構想を聞いたお針子達が、ぴょっこりと顔を出し。
 いつの間にかリグとティルの話の輪に入ってきていた。
「つづけていいですよ」「おまかせー」
 驚いた二人に遠慮したように手を差し出すお針子達。
「う、うむ……! そうじゃの、リグ殿、続きを聞かせてくれるかえ?」
 少しだけ驚いた様子だったティルも、その様子に肩を竦めてからくすくすと笑って。
 リグに視線を戻すと続きを促した。
「そうね、そのまま花と植物の天蓋を作るのよ! 天蓋が開いていて星が見えるとか、その隙間から漏れる光がお星さまに見える……なんて、どうかしら?」
「おお、おお! なんと素敵な提案じゃろう」
「ええねー」「星をみるですかね」「昼にも星が見れる?」「すごーい!」
 うっとりと頬に掌を当てたティルが、想像に瞳をぴかぴか瞬かせて。
 同じくお針子達が彼女とならんで、頬に掌を当ててうっとりと。
「ふむ、ふむ、しかし……それならばどちらも欲張って――昼は閉じた花弁や蔦から漏れる光を星と見て、夜は花開いた其処からまことの星が――、なぁんて、如何じゃろう?」
 そうしてティルが、想像に補足を重ねる――。
「わぁあ、昼と夜とで顔が違うなんてなんて素敵なのかしら!」
 リグは掌をあわせて、歓声をあげて大賛成。
 お針子達は、顔を見合わせて。
「まずやってみてからかんがえるー」「あともどりはできない」「そういうもんだなー」「夜にお花がひらくなら、月の光でひらく花ー?」
「蓮みたいに白くて大きな花弁の屋根、なんてできるかしら?」
「やってみますー」「たね、たねあった?」「あるあるー」「これなにの種?」
 リグのお願いに、お針子達はぱたぱた走り出し。
「やるぞー」「おおー」「おひがらもよくー」
 彼等は一斉にパッチワークみたいに布を組み上げると、すべやかな壁へと針を奔らせ出す。
 そうして一瞬で萌え伸びた蔦が生まれた壁へとしゅるりしゅるりと絡みつき――。
「ああーっ、はさまってますー」
「えっ、わっ、大変!」
「い、いま助けるのじゃ!」
 ぽん、ぽん、ぽん。
 音を立てて白い花がきゅうっと蕾をつけて。
 蔦に絡まるお針子の救出劇等を挟みつつも生まれたのは、昼と夜とで表情を変えるまあるい植物の屋根の星――花見台。
 そうしてリグとティルは、それぞれこっそりお針子達に内緒のお話。
「――そうそう、お針子さん。一つ内緒でお洋服作りをお願いできるかしら?」
 月みたいに穏やかで、気遣いあふれる私の友達に。
「――そうじゃ、そうじゃ、お針子殿、一つ内密で仕事を頼まれてくれるかの?」
 太陽みたいに眩しくて、元気な妾の大切な友達に。

 ――彼女にふさわしい、素敵な素敵な贈り物を!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

都槻・綾
f11024/かよさん

出会いの一周年記念とは何とも愛らしい

和らぐ眼差しの先
弾んだ様子であれもこれもと花々を見て回る姿は
蝶の如くふわふわしているから
ふくふく笑んで肩揺らし

思い描くのは
さらさら流れる星の景
川底で煌いていた幽きあかりが
今の
そして此れからの
彼女と私を繋ぐ燈火となるならば――

依頼する仕立ては
霞草で紡いだレースに
ブルースター、ネモフィラ、
其れから
勿忘草の飾りを散りばめた星空のヴェール

御櫛を彩る薄紗に揃えた衣装は
お針子さんへお任せしましょ

きっと
あなたにお似合いですよ

風に遊ぶ紫紅の髪
麗しきかんばせに灯る薄紅の花
自由に咲くひとの軽やかな足取りを
何事も遮ること無きように
柔らに護るものを贈りましょう


境・花世
綾(f01786)と

初めて出逢った星掬いの日を想い出し、
小人さんに語ってはふわふわと笑う

あのね、あのきれいなひとと、
出逢えたお祝いをするんだよ

選ぶのは馨しく白い清廉な花たち
気品あるクチナシに華やぐ月下美人を重ねて、
匂やかな銀木犀で縫い留めて
夜にも染まらず皓い外套を仕立ててもらおう

素敵なのができるよときらきら振り向けば、
目を奪うのはサムシングブルーのヴェール
きらめく色とやさしい声に瞬いて、
なぜだかすこし泣きそうになる

――まるで、あの日の星みたいだね

透徹る眸をしたひとを見上げたなら、
あえかに微笑って頷こう
輝くひかりが確かに照らしてくれるから
これからも、きみのもとへ、駆けていけるよ



●蛍石
 ねえ、ねえ。
 ようく、ようく思い出してみて。
 あの日のこと。
 一年前の今ごろのこと。
 豊かな紫紅を風に靡かせて、右の瞳に八重の華を揺らした彼女が問うた言葉。
「あなたと初めて、お逢いしてからもう一年ですか」
 澄んだ青緑色の眦を和らげた都槻・綾(夜宵の森・f01786)が首を傾ぎ。
「うん、うん。そうだよ。――今もあの日のきらめきが続いているなんて、ほんとうにゆめみたい。それがわたしは、とてもうれしいよ」
 蜜を求めて羽根をはためかせる蝶のようにふわふわと。
 足取り軽く花を摘む境・花世(はなひとや・f11024)は、四季の華入り乱れ狂い咲く花畑の只中でくすくすと笑った。
 ――脳裏によぎるは、あの日の事。
 川辺の街の感謝祭、星掬いの日。
 あたたかで柔らかな橙色の光を閉じ込めた、蛍石。
 冷たい水に、川底で煌いていた幽きあかり。
「おおー、猟兵さん、おいわいですか?」
 花の服を纏ったお針子が花世に声をかけると、花を抱いた彼女はこっくり頷き。
「あのね、――あのきれいなひとと、出逢えたお祝いをするんだよ」
 八重を揺らし桃色の瞳をぴかぴかと瞬かせて笑った花世は、梔子を一輪。内緒の指の代わりに唇に寄せて。
「よいですねえ、おいわいはすてきですからー」
「そうだね、お祝いは素敵だ。ねえ、きみ。折角だから一つ頼まれてくれないかい?」
「お仕立てー?」
「そうだよ、――きれいなひとに、贈る外套だよ」
「すてきですねえ」
 ――いっとう綺麗な花を選んで、自分で積んだ馨しく白い清廉な花たち。
 冴え冴えをした気品を湛える梔子に、凛と華やかな月下美人を重ねて。
 甘やかな金木犀を縫い上げれば、昏い昏い、夜にも染まらぬ外套を頼もう。
 彼の甘やかな陶磁色の眸と、青みがかった漆黒に映える外套を。
 あのきれいなひとに、似合うように。
 あのきれいなひとが、気にいるように。
「まかされましたよう、よいお花をあつめましたねえ」
「ふふ、ありがと。ねえ、綾――」
 くる、と振り向けば。
 綾もまた、小さなお針子と話していた。
 彼の抱く花は、カスミソウにネモフィラ、ブルースター。
 勿忘草もたっぷりと。
「そうですね。それでお願いしましょうか」
「ういー、まかせてまかせて、すごいのできるよー」
 ――彼女の眩しい赤色を彩る薄紗。
 柔らかな繊細に編まれたレースに花飾り。
 出会いの日を思い返す、流れるような柔らかできらびやかに。
 縁に、星を数珠つなぎ。
 花散る星空のヴェールに、薄紗を重ねたドレス。
「それはすごい話ですねえ」
「おはなかして、かしてー」
 ふくふくと肩を揺らして笑む綾の姿。
「えーい!」
 どこか気の抜けたお針子の声に合わせて花弁が解けて、撚って、織って――。
 花が散り溶けて、一瞬で布へと成る。
 吸い込まれそうなその色に、花世はちいさく息を吐いて、飲んで。
「おや、花世さん。――素敵な色でしょう?」
 綾がいつものように笑う。
 ――きらめく色と、綾の優しい声。
 その光景に一瞬瞬きを忘れていた桃色が、ぱちぱちと開いて閉じて、開いて。
 ああ、なんだか、すこし泣きそうだ。
 もう一度息をきゅっと飲み込んでから、彼を見上げて花世はあえかに笑んだ。
「――まるで、あの日の星みたいだね」
 星明かりが、きみへのもとへの道を照らしてくれるのならば。
 これからもずっと、駆けていけるよ。
「ええ、きっとあなたにお似合いですよ」
 柔く笑む綾。
 ――あなたの麗しき御髪。
 美しきかんばせに宿る八重の薄紅。
 自由に咲くひとの軽やかな足取りを、何事も遮ること無きように。
 柔らかく、柔らかく、護る贈り物を。
 ざあ、と風が駆ける。
 それはあの日の水みたいに、冷たい風。
 それでも、胸は不思議に暖かくて――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

マリアドール・シュシュ
【星鳥】
アドリブ◎
他絡み×

お祝いする事が生き甲斐だなんて
楽しい事が大好きなマリアと何だか似ているのだわ
ええ、沢山お祝いしましょう!

カデルやアーシェと楽しい時間を過ごす
花のアーチや幸せの鈴が鳴る噴水広場を針子達と建設

華水晶に芽吹く恋蕾
少し大人に近付き

まぁ!
マリアもカデルの衣装を考えたいわ
…ふふ
素敵な事、そうね
マリアはカデルや皆が大好きだけれど
もっと特別な…
あたたかくて
きゅって胸を締め付けられるような
そんな気持ちを最近抱いてしまったの

カデルに似合うお花
ピンクの薔薇に黄色のフリージア
真珠やレース、胸元に宝石を
アーシェへはガーベラを
これで衣装を作って欲しいのよ
…カデルには内緒ね
最後に茉莉花の祝福の香を


瀬名・カデル
星鳥

アドリブ◎

お祝いお祝い♪
マリアと一緒にお祝いしようー!
(アーシェと一緒にくるくる回る)

お祝い衣装を仕立ててもらえるんだって
せっかくだからボク、マリアの衣装を考えたいな

だってね、最近のマリアはなんだかいつもよりもとってもキラキラ輝いているの
これはきっと素敵な事があったんだよね?
だからボクも、マリアをお祝いしたいんだ!

マリアの話にボクはとっても嬉しくなって

ねぇねぇお針子さん
マリアに似合いそうなお花
アイリスにブルースター…この二つでドレスを作ってほしいな!
星の海のようなキラキラショールも!

そして、どうか彼女の未来に希望と幸福が訪れますように!ってドレスに祈りを込めるんだ
でもこれはマリアに内緒だよ



●大切な友達と、今日を
「お祝い、お祝い♪ でーきたできた!」
 蜂蜜みたいに甘い桃色の髪を靡かせて、瀬名・カデル(無垢なる聖者・f14401)は黒髪の人形――アーシェの両手を持って、くるくる回る。
 花を編み上げた大きなアーチをくぐり抜ければ、鳴らすと鈴蘭がころころ揺れる――幸せの鈴が鳴り響く噴水広場。
 パッチワークみたいに布を組み合わせた街の真ん中に生まれた、憩いの広場。
 柔らかい銀を宿した絹糸みたいな髪に、星々を宿したマリアドール・シュシュ(蜜華の晶・f03102)が、ぱたぱたと駆けるお針子達の姿と、カデルの無邪気な姿に眦を和らげて。
「素敵な広場になって、嬉しいの! それにしても、お祝いする事が生き甲斐だなんて、この子たちはマリアと何だか似ているのだわ」
「にてるですかねー」
「ええ、マリアは幸せに満ち溢れる楽しい事が大好きなのよ」
 小さく首を傾いで、お針子を見やったマリアドールに。
 くるくると回りながら近づいてきたカデルは、ぴしっとその場で立ち止ま――、いやちょっとフラついちゃったけれど。
 羽根を畳んで、くるっと回ることでごまかして相違う青と赤の瞳を瞬かせてカデルは言う。
「あ! マリア、マリア! この子達がお祝い衣装も仕立ててくれるって言ってたよ!」
「あら、そうなの? それは素敵なのだわ」
 掌で口元を覆って瞬きを一つ、二つ。
 マリアドールは改めてお針子へ視線を向けると、ありがとう、なんて。
「でね、でね、マリア? せっかくだからボク、マリアの衣装を考えたいなーって、……思ってるの!」
「まぁ! 良いわね、楽しそうね、マリアもカデルの衣装を考えたいわ!」
 掌を合わせて、カデルの提案にマリアは黄金色に星を宿して。
 でしょーと歯を見せてぴかぴか笑うカデルは、だってね、と言葉を次ぎ。
「――最近のマリアは、なんだかいつもよりもとってもキラキラ輝いているの。これはきっと素敵な事があったんだよね?」
「……ふふ、そうね。――マリアは、カデルや皆が大好きだけれど……、もっと特別な、あたたかくて……」
 ほう、と息を吐いたマリアは眦を和らげて。
 胸に掌を当てると、黄金を揺らして微笑んだ。
「きゅって胸を締め付けられるような、そんな気持ちを最近抱いてしまったの」
「――……そっか、そっか」
 大好きな彼女が口にする言葉は、聞いているだけで嬉しくなって胸がほっこりするよう。
 アーシェを抱きしめたカデルは、咲いたばかりの花みたいにはにかんで。
「マリアをたっぷり、お祝いしなきゃね! ね、お針子さん達!」
「まかせてー」「やったるでー」
 ぴょーんと跳ねたお針子達が、細腕を曲げてムキムキするポーズをした。
 力こぶは一つもできなかったけれど、その頼もしい返事に少女達は笑い合って。
 ――華水晶に似合いの花。
 夜みたいに穏やかなアイリスに、冴え冴えとしたブルースター。
 星海みたいなきらびやかなショールに、星を散らしたドレスをお願い。
 ――無垢な天使に似合いの花。
 薄紅色の薔薇に、太陽みたいな黄のフリージア。
 胸に添えた宝石に、真珠にや透かし編みをたっぷりと添えて。
 そうして彼女の頼もしき相棒には、ガーベラを。
 みているだけで元気になるような、ペチコートを添えた柔らかくて動きやすいドレスを仕立てて頂戴。

 そうして、
 ――茉莉花の祝福の香と。
 ――彼女の行先を祈る、希望と幸福のお祈り。
 互いには内緒のお祈りを重ねて。

 りんりんと甘やかに広場に響く、連なる鈴の音。
 魔法のように水が空を舞い、噴水の上で祝砲のようにぱしゃりと跳ねた。

 ――さあ、素敵な一日を。
 未来に、今に。幸せが続き、訪れることを祈って、お祝いしよう!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

蘭・七結
【紅月】

花たちにて紡ぐ布
その布たちで造りあげる国
不思議の世界は何時だって魅力的ね
この世界の奇跡には、心惹かれてしまう

キキョウの花の燕尾服に身を包むあなた
まあ、なんてステキなのかしら
歓喜の声が、聴こえるようだわ
長身のあなたによおく似合っているわ

名を呼ばれたなら振り返り
軽い抱擁には首を傾げ
あなたに見繕っていただけるだなんて
とても光栄なことね
数多の花々へ紅彩を遊ばせて
選択するのは白と紫の牡丹一花
ステキな仕立て屋さんたち
どうぞ、宜しくね

白の花は繊細なレースへ
紫の花はフィッシュテールのドレスへと
お気に入りの靴音響かせたなら
あなたへとカーテシー
ご一緒、してくださるかしら
あなたと踊る円舞曲は、心地が良いの


朧・ユェー
【紅月】

おやおや、花を布にそして服に仕立てるのですか
面白そうなので衣装でも作りましょうか?

七結ちゃんはどの花を布にしてドレスを作るのかい?
僕は桔梗の花を燕尾服に仕立ててもらおうかねぇ
おや?似合うかい?そうだといいねぇ

七結ちゃんちょっといいかな?
そっと彼女を抱き締めて
ふむ…と何やら思いついた様に
可愛い花のお針子ちゃん、彼女のドレスは僕が作ってもいいかな?
花のお針子と共に彼女のドレスを縫っていく
彼女の美しいスタイルに合わせ下品過ぎず可愛いく綺麗にでもセクシーに

紫色のドレスに身を包み、白いレースは君を隠す
あぁ、きっと舞い降りた天使の様だろうねぇ
宜しければどこまでも踊りましょう
僕の紅華のお嬢さん



●あか
 広がる花畑は何処までも続くようで。
 可憐な花弁を空に向けるポーチュラカ。
 デイゴが揺れる、桜の花。
 四季の降り混じった魔法の花畑。
 ――この世界の国々は沢山あるが。
 全ての国が、全て違った、不思議な世界。
 その不思議達はみんながみんな、どうにも心惹かれる魅力に満ち溢れている。
 一輪、また一輪。
 桔梗を抱いた蘭・七結(戀弔・f00421)は、振り返ればしとやかに微笑んだ。
「――ねえ、あなたにきっと似合いよ」
 桔梗を燕尾服に仕立ててもらおうかと朧・ユェー(零月ノ鬼・f06712)が言うものだから。
 一等綺麗な桔梗を摘んだ七結は、甘く揺れる灰髪を揺らして。
「そうだといいねぇ」
 喉を鳴らして笑ったユェーは、ふ、と思いついたように。
「――ねえ、七結ちゃんちょっといいかな?」
 首を傾いだ七結を、ユェーはそうっと軽く抱きしめて。
 近くを歩いてきたお針子に声をかけた。
「……可愛い花のお針子ちゃん。彼女のドレスは僕が作りたいのだけれど、力を貸して貰えるかな?」
「おいわいです? いいですわよー」
 花の服を揺らして片手を上げたお針子は良い返事。
 そうと彼の腕から逃れ桔梗を変わりに手渡した七結は、瞳のあかを揺らして。
「まあ、あなたに見繕っていただけるだなんてとても光栄なことね」
 自らに冠する牡丹一華と揃いの花。
 白に、紫。
 裁鋏にて幾つか摘み取れば、『お祝い』との言葉に集まってきたお針子達に手渡して。
「ふふ、ステキな仕立て屋さんたち。どうぞ、宜しくね?」
 ユェーとお針子を交互に見て、優しく長い睫毛を二度揺らした。

 お針子の魔法は、お裁縫の魔法。
 花弁は解けて糸に、糸は織られて布へと姿を変える。
 編んで、縫って、織って、切って。
 針を奔らせ、鋏を奔らせ。 
 ――白の花弁が繊細なレースへと。
 紫の花弁は、尾鰭のように広がり柔らかくスカートが揺れるドレスへと。
 七結を天使のように彩る、可愛く艶やかな衣装を仕上げましょう。
 ユェーを飾る、幾重にも重ねられた桔梗の燕尾服を仕上げましょう。

 ――こつりと響く、七結気に入りの靴の音。
 カーテシーを踏んだ彼女は、まるで地上を泳ぐ人魚のよう。
「――ご一緒、してくださるかしら?」
「ええ、勿論。お嬢さんさえよろしければ、どこまでも踊りましょうか」
 どうぞ、僕の紅華。
 差し出されたユェーの掌を七結は取って、一歩、二歩。
 ――あなたと踊る円舞曲は、心地が良いの、なんて。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

サン・ダイヤモンド
【森】
あのね【僕とブラッドが出逢った日】をお祝いしたいの

あ、その日は僕の誕生日でもあって
えっと、僕、昔の記憶が無くて、本当の誕生日は知らないの
それでブラッドが、僕とブラッドが出逢った日を、僕の誕生日にしてくれたの
次で七回目だよ

ブラッドブラッド、顔に迫力出てるよ!

彼の話には少し困ったように、照れたように微笑んで

ブラッドはね、いつも僕の事を護ってくれるの
だから、彼には『騎士』の格好を
彼の鎧は脱げないから、それの、カッコイイマントを作りたいの

お花は力強く大地に根差した『魔法の黒い薔薇』
薔薇は本数にも意味があるんだって
だからね…ううん、何でも無い(笑顔

(999本だなんて、皆の薔薇が無くなっちゃうから)


ブラッド・ブラック
【森】
サンの誕生日を祝いたいと思っている

…まあ、そう言う訳だ
花は、実際に探しに行っても?

サンはな、俺にとって天使のような存在だ
いや、『救いの女神』かもしれない
勿論男子ではある、男子ではあるが…、そういったものも似合うだろう?(謎の顔圧

や、すまん 怖がらせるつもりは無かった

――だから
今日は飛び切り美しいものを、彼奴に着せてやりたいんだ
貴方達の力を貸して頂けるだろうか?

有難い
心から感謝する

目に留まった物は『朝露の煌きを宿した白い薔薇』
…嗚呼、此れが良い
キラキラと輝いて宝石の様だ

此れで『白いドレス』を
露出は少ない方が良い
それから赤い薔薇を一輪、後で胸に飾ってやりたい

何か俺達に手伝える事はあるだろうか



●黒と白の出会った日
 四季の入り交じる畑の前で。
「おいわいですかなー?」「おいわいするです?」
 猟兵の姿を認めると、集まってきたお針子達が首を傾げていた。
「うん、僕とブラッドが出逢った日をお祝いしたいの」
「――……サンの誕生日を祝いたいと思っている」
 こっくりと頷き。
 白い狐尾を揺らしたサン・ダイヤモンド(甘い夢・f01974)と、その横に立った大きな黒。ブラッド・ブラック(VULTURE・f01805)は同時に口を開き――。
「であって」
「誕生日?」
 ぱちぱち、瞳を瞬かせたお針子達にサンは、あっ、と翼のような耳をはためかせて腕を広げた。
「あ、その日は僕の誕生日でもあって……」
 腕を使って、尾を揺らして、サンは全身で話を紡ごうとするように。
「えっと、僕、昔の記憶が無くて、……本当の誕生日は知らないの、それで」
「それでね、ブラッドが! 僕とブラッドが出逢った日を、僕の誕生日にしてくれたの! 次で七回目だよ」
 横に立つ黒を見上げると、話している内に胸に満ちる気持ち。サンはくすくす笑って。
「……まあ、そう言う訳だ」
 うむ、と頷くブラッド。
「ははーなるほどー」「いいやつなんだなー」
「そう! ブラッドは本当に『いいやつ』なんだよ!」
 彼の凄さを伝えようとするように、また腕を広げて力説するサン。
 そんなサンの横で、自らもお針子達に視線が合うようにしゃがんだブラッド。
 しゃがんでも尚、高い背。お針子達に顔を近づけてもまだ、見下ろす形。
「祝いの服を頼む前に少し聞いて欲しいのだが、――サンはな、俺にとって天使のような存在だ」
「は、ははー、なるほどー」「いいやつなんだなー」
 その圧にややたじろぐお針子達。
「いや、『救いの女神』かもしれない……。いいや、サンは勿論男子ではある。男子ではあるが…、そういったものも似合うだろう?」
「は、ははー」「う、うん」
 大きな角、骨めいた強面。瞳の奥に揺れる色だけはどこか優しい花めいて。
 しかしその顔圧は小さなお針子達を震え上がらせるには充分な圧だ。
 近づいた顔にぷるぷる震えたお針子達は頷くばかり。
「ちょっと、ちょっと! ブラッドブラッド、顔に迫力出てるよ!」
 慌ててブラッドの両手でお顔を挟んで、きゅっと横に向けてあげたサン。
「や、すまん 怖がらせるつもりは無かった」
 サンの手によって横を向いたまま、ブラッドは謝罪一つ。
「――だから。今日は飛び切り美しいものを、彼奴に着せてやりたいんだ」
 サンが手を離してあげれば、ブラッドは再びお針子達と視線を真っ直ぐに交わして言葉を次いだ。
「貴方達の力を貸して頂けるだろうか?」
 こうやってブラッドが真剣になってくれる事も。
 ちょっと気合が入りすぎて圧がでてしまう事も。
 全て全て、サンを思ってのこと。
 それが分かるからこそ、サンは擽ったそうに唇を擡げてはにかみ笑い。
「ブラッドはね、こうやって迫力があるから人をビックリさせちゃう事もあるけれど――いつも僕の事を護ってくれるの」
 それは幸せな笑み。信頼の笑み。
「だから、彼には『騎士』の格好を。――鎧は脱げないから、……合わせるカッコイイマントを作りたいの!」
 そう、夜みたい優しくて、力強いマントを。
 そこへ、丁度目に入った黒い薔薇。
 ぴかぴかと瞳を輝かせたサンは、軽く跳ねると一輪摘み取って。
「――そう、布にするならばこのお花がいいな。ブラッドにぴったりだよ」
 それは力強く大地に根差す、魔法の黒い薔薇。
「嗚呼……、此れが良いな」
 その横に咲いた、朝露のような清い輝きを宿した白い魔法の薔薇。
 ブラッドもまた白薔薇を一輪摘めば、す、と胸元に寄せて。
「――此れで『白いドレス』を」
 露出はできるだけ少ないほうが良いだろう、ああ、赤い薔薇も一輪胸に飾ればもっとサンが引き立つかもしれないな。
 ブラッドの優しい言葉に、お針子達はもう怯えてなんかいない。
 彼等の気持ちがわかるからこそ、ぴかぴか笑顔で応じる。
「まかされました!」「おおー、がんばりまっせー」
 ぴょーいと跳ねて、腕まくり。
 小さな花を一輪持ったまま、ブラッドは首を傾げた。
「何か、俺達に手伝える事はあるだろうか?」
「あるあるー、そやってお花ちょっとあつめてきてー」「ボクが布にするー」「ぼくもしよかな」「おおー!」
 下手に歩くと踏んでしまいそうな程。
 お祝いの雰囲気にわちゃわちゃ集まってきたお針子達を前に、次に圧倒されるのはブラッドのほうであった。
 サンはそんな彼を見やって。
「……あ、」
「なんだ?」
「……ううん、なんでも無い!」
 言葉を飲み込んで、ふふふ、と笑った。
 ――薔薇は本数にも意味があるんだって。
 でも、――999本だなんて、皆の薔薇が無くなっちゃうものね。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

月居・蒼汰
ラナさん(f06644)と

この世界ではお花も布になるなんて、不思議ですね
ラナさんは好きな花や色はありますか?
似合いそうなのはやっぱり赤とかピンクとかかな、黄色やオレンジも合いそう
俺は花は大体綺麗だなって思ってしまう方なので
あんまり種類とか詳しくないんですけど…

お針子さん達の知恵や力も借りつつ
ラナさんに選んだのはピンク色のラナンキュラス
と言っても名前は知らなくて、ただ薔薇みたいに花びらが重なっているのが
綺麗だなって思って…
ラナさんの意見も聞きつつ、パーティードレスを仕立ててもらえたらなって
ラナさんが選んでくれた花にはにかんで
パーティーも楽しみですけど、この花からどんな服が仕上がるかも楽しみですね


ラナ・スピラエア
蒼汰さん(f16730)と

お花が布になるなんて、不思議です
ふふ、お祝いごとが好きな皆さんに喜んで貰いたいですね

好きな色は赤とかピンクです
お花は何でも好きですよ!
蒼汰さんはやっぱり青とか緑でしょうか?
種類が分からなくても大丈夫ですよ
きっとお針子さんが素敵に仕立ててくれますから

蒼汰さんには何が似合うかな
どんな色でも似合いそうだけど…
目に留まったのは
青緑から薄紫へのグラデーションの花弁
名前もついていない、実在しないお花だけれど
綺麗なその色は彼みたいで
このお花で、パーティー用のスーツを仕立てて下さい

綺麗なお花で嬉しいです!
お互いどんなお洋服になりますかね
お針子さんが仕立てる様子を、一緒に見守って



●きみの色
 花が布にも、建物にも変わる不思議な世界。
 パッチワークのように彩られた建物も、四季の花が咲く魔法の花畑も。
 全てが不思議で不思議に彩られている。
「――ラナさんは好きな花や色はありますか?」
 首を傾いだ月居・蒼汰(泡沫メランコリー・f16730)は蜂蜜色の瞳を揺らして。
 視線交わしたラナ・スピラエア(苺色の魔法・f06644)の苺色は、眦を和らげ微笑んだ。
「そうですね、赤とか……ピンクです、あっ、お花は何でも好きですよ!」
 色鮮かな花弁や木々が風に揺れる花畑の前。
 言葉を紡ぎながら、その色の花を無意識にラナは視線だけで探しながら応え。
「ああ、似合いそうだと思っていたとおりです。……黄色やオレンジも合いそう、と思いますけれど」
「ふふ。蒼汰さんは、青や緑のお花が似合うような気がしますね」
「……そうですか? 俺は、花は大体綺麗だなって思ってしまう方なので、種類とかは詳しくないんですけれど……」
 服を仕立ててもらえる、と言ってもどの様な花を選べばよいのか。
 花畑に視線を向けた蒼汰は、すこしばかり瞳を細めて。
「きっと、種類が分からなくても大丈夫ですよ。お針子さんが……」
 ラナが言いきる前に、ぴょこ、ぴょこ。
 姿を表したお針子達。
「おこまりですかー?」
「おいわいですか?」
「おお! 猟兵さんです?」
「……ふふ、ほら。助けてくれるみたいですよ」
「助かりますね」
 首を小さく傾げて、眦を和らげた蒼汰は笑って。

 ――彼女に似合いの花を、選びましょう。
 薔薇みたいに花弁が重なった、薄紅色の花。
 名前なんて知らないけれど、これが良いように蒼汰には思えたのだ。
「それは、らなんきゅらすー」
「へえ、そんな名前なのですね」
「きれいよねー」「ぼくもすき!」「おいしい」「たべちゃだめだよ」
「ねえ、お針子さん。このお花の名前は何でしょう?」
 花畑から姿を表したラナが、胸にいだいた花。
 青緑から薄紫へと空のように色が移り変わる、優しい色の花。
「それは、しゅーてんぐさって、ぼくらはよんでるー」
「まあ、そうなのですね。とっても綺麗な色です」
「うん、うん」「ええよねー」「せやせや」「かってにはえてたよねえ」
 口々に言葉を重ねるお針子達。
「綺麗な花を選んでくれて嬉しいです」
「俺にも良い花を選んでくれたのですね」
 そうして、顔を見合わせるとラナと蒼汰はくすくすと笑んで。
「それでつくるー?」
「ええ!」「はい」
 問にも、当時に頷き、頷き。
 集まってきたお針子達が魔法を紡ぐ。
 花弁を解いて、撚って、糸に、織って、布に。
 またたく間に生まれ変わった布をぎゅっと彼等は抱いて。
「てつだってねー!」「いっしょに縫うとねー、きもちがはいるよ」
 お針子達のお願いに、こっくり頷いたラナ。
「ええ、折角ですから!」
「はい、それでは手伝いましょうか」
 一緒に素敵な服を、紡いで縫って。
 彼女には彼女に似合いのパーティドレスを。
 彼には彼の色のパーティ用のスーツを。
 ちく、ちく、ちく。
 切って、重ねて、縫って。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

リル・ルリ
🐟櫻沫
アドリブ歓迎

櫻!お花でお洋服を作るんだ
お祝い用の
どれす、着物…どんなのがいいかな
僕?公演の時は尾鰭が綺麗に見えて一緒に揺れるような衣装だった
これは祝いに入る?

僕は君の服をつくりたいんだ
やっぱり桜がいい
薄紅の桜の布に花弁と赤い桜の花弁を織り込んで裾には花弁が零れるフリルをつけたら可愛い
和洋折衷ハイカラの着物ドレス
帯は春暁桜の空色だ!
まめいどらいんでお揃い
僕と同じ様なヴェールも
透けるサンカヨウのレエスに桜を咲かせれば
ほら綺麗!

…?何ブツブツいってるの
良く似合うよ
ふふ
今日も君と一緒
今日もまた君に戀したお祝い

いつものように誤魔化されると思ったのに
何でそんなに照れて?
僕までもっとどきどきしてきた


誘名・櫻宵
🌸櫻沫
アドリブ歓迎

お花で服を?
リルにどんな服を着せようかしら!
晴れ着を着たことあるの?
…それは祝いというより呪いよ!

あたしの為だなんて可愛い子ね
…私としてはリルと過ごせる毎日が祝日

違うわ
これは布になっていく花にドキドキしてるんであって
私の為に一生懸命服を作るリルにキュンときた戀しちゃってるサインみたいなそういうのでは…!
そうよね、お花!
何故か薄紅に染まった月下美人と鈴蘭と胡蝶蘭で、ナイトドレス…リルの洋装ドレスを作るわ
星空のリボンで結んで、美しさが際立つよう

あたしが似合うのは当然よ!
リルだってなかなか大人っぽくていいわよ
でも何のお祝い―え?

~~~!!

(顔を逸らすも耳まで真っ赤

照れてないわよ!




 パッチワークみたいな鮮やかな街並み。
 縫い上げられた建物達!
 色とりどりの布や花弁が並ぶ前。
 花が糸に、布に、建物に変わる不思議な不思議な世界。
 さあ、愛しい人にどんな服を作ろうか。
 ドレス? 着物? それとも洋服!
 きっときっと、なんだって似合うけれど。
「ねえ、リル、あなたは晴れ着を着たことはあるかしら?」
 尋ねる誘名・櫻宵(屠櫻・f02768)は、楽しい気持ちに、真っすぐ伸びる角へと桜の花を灯して。
「晴れ着……って、お祝い用の服の事だよね? 僕は、公演の時は尾鰭が綺麗に見えて一緒に揺れるような衣装だったよ」
 これはこれは祝いに入る? なんて。
 櫻宵の言葉に首を傾げたリル・ルリ(想愛アクアリウム・f10762)。
 ぴゃっと首を振る櫻宵は一瞬でちょっと花を萎ませ――。
「違うわ! それは祝いというより呪いよ!」
 またあの団長に貰った服の事なんか話しちゃって、と頬を膨らせて見せる櫻宵。
「む、むー……。団長の事を話したつもりはないけれど……。でも僕は僕の服より、やっぱり君の服をつくりたいな」
 桜の花弁を手に、肩を竦めたリル。
「……うん、やっぱり桜が好い」
 薄紅の桜に、赤い桜の花弁を織り込んで。
 雫にぬれたサンカヨウの花弁で、桜が咲くふわふわのフリルをあしらおう。
 春暁桜の空。ぴしっと帯だってキメてみたい。
 ああ、僕とおそろいも何か欲しい。
 ヴェールなんてどうだろう。
 そう――和洋折衷の着物ドレスなんて、きっと櫻宵にぴったりだ。
「おうい、君! これを布にしたいんだ!」
 くるりと振り返ると、お針子にリルは声を掛けて。
「おおーまかせてー」
「ふふ、あたしの為だなんて。本当に可愛い子ね」
 真剣な表情で、お針子に花を布にする魔法を掛けてもらうリルの姿。
 ああ、――なんて。なんて。
 リルといるだけで、毎日が祝日みたいなものよ、なんて。
 嘯こうと思ったのに。
 どうしてだろう。
 胸がきゅっとしてしまった。――ああ、違う。この感情は。
 愛おしい、であって、――戀であってはならないものだ。
 ならばこれは綺麗な布が出来る様に、心が高鳴っているだけに違いない。
 ほう、と息を吐いて。
「……櫻宵? どうしたの? ぶつぶつもじもじして、お手洗い?」
「いいえ、桜龍はお手洗いにいったりしないわ」
 食い気味に応えた櫻宵はめちゃくちゃな真顔だった。
 ……、そうしないと。
「そうよね、お花! お花を選ばなきゃね!」
 左右に首を振った櫻宵が、手早く花弁を選び出す。
 薄紅湛える、月下美人。
 冴え冴えと揺れる鈴蘭と胡蝶蘭。
 星空のリボンを結んだシュミーズ・ド・ヌイ――ナイトドレスを彼に仕立てよう。
「ねえ、君によく似合う服がきっとできるよ」
「ふふ、あたしが似合うのは当然よ? リルのだってなかなか大人っぽく仕上げてあげるわ」
「おおー、がんばろなー」「やるでやるで」「がんばるー」
 縫い針に、布を手に、お針子達が気合の声。
「うん、ありがとう!」
「ええ、お手伝いお願いね!」
 リルと櫻宵が応じて――。
 はた、と気がついた櫻宵は首を傾ぐ。
「ねえ、でもリル。これって一体何のお祝いかしら?」
「ふふ、……今日も君と一緒。――今日もまた君に戀したお祝い」
 蜂蜜みたいに蕩けた笑顔で、リルが答えるものだから。
 息をきゅ、っと咽む櫻宵。
「……~~~っっ」
 思わず口を袖で覆って、顔を逸らす櫻宵。
 ああ、耳まで熱い。
 ――いつもみたいに、受け流せない。
「……? どうしたんだい櫻宵」
 いつもみたいに誤魔化さないから。
 どうしてそんなに顔を赤くしているの?
 リルまでなんだか、どきどきしてしまう。
「……なんでも、なんでもないわ」
 この気持ちは、この気持ちは――。
 そうじゃない、……違う、違うわ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

リンデ・リューゲ
ヨル(f14720)と一緒

なんだか夢みたいだねぇ、ヨル
普段しっかり者の彼女が
少女の様にはしゃいでるのが微笑ましくて頬が緩む

…へ、俺の絵?
彼女の発想に驚いてぱちくり
だって、現実にきれいな花があるのに

戸惑いながらお針子たちにできるの?と
ヨルにほんとにいいの?と問いかける

幼い頃から俺を守ってくれるきみ
だいすきなねえさん
きみを俺の筆で彩れるなら
そうして笑ってくれるなら
それはきっと目が眩むほどしあわせだけれど

どんな花がいいだろう
俺たちの故郷の菩提樹?
きみの瞳に似たカンパニュラ?
レウィシアのスカートなんかも可愛いね

自分が纏う発想はゼロ
きみの望む花を咲かせるよ
水彩は浮き立つ心そのままに
滲む彩はしあわせの――


ティヨル・フォーサイス
リンデ(f14721)と

花で布を作れるの?
すごいわね、リンデ!

花も綺麗なものも大好き
口に出さなくたって輝く目は雄弁
作ってもらうならやっぱり菩提樹?
私たちの故郷では大事な花だもの、なんて思うけれど

そうだ
どんな花でも布にできるならとひらめいて
リンデの描いた花を布にしてもらえないかしら?

(リンデの描く花は鮮やかで
この頼りない弟の性分そのもののようなやさしい色をしているから
きっとどの世界にだってないような布ができる)
リンデの好きな花がいいと思うわ
緑もいれてね

あ、縫わなきゃいけないのよね?
裁縫には自信がないのだけど
お針子さんが手を挙げてくれたなら
…まかせていいの?

そしたらねと
ひそり伝えるのはリンデの正装



●しあわせのいろ
 パッチワークみたいな継ぎ接ぎの街。
 事実縫い物だけで、この建物は作られているらしい。
 四季の花がいっぺんに咲く畑なんて、見たことがない!
 きらきら煌めく花の建物。
 綺麗なもの、咲き誇る花だって、みんなみんな大好きで。
「わあ、すごいわね、リンデ!」
 ぴかぴかと瞬くティヨル・フォーサイス(森のオラージュ・f14720)の瞳は、言葉以上に雄弁に好奇心を語るよう。
 常ならば、自分の前ではしゃんと胸を張っている彼女が、はしゃいでいるのが解る。
 リンデ・リューゲ(ヤド・f14721)には、ティヨルのその姿が微笑ましくて、嬉しくて。
 頬がどうにも緩んでしまうのは、仕方がない事だろう?
「うーん……それにしても、どうしようかしら」
 お祝いの服を作ってくれるというものだから。
 ――作ってもらうならやっぱり菩提樹かしら。
 なんたって、ティヨルとリンデの故郷ではとてもとても大切な花。
 それとも、それとも。
「……そうだ、リンデ」
「うん?」
「ねえ、リンデの描いた花を布にしてもらえないかしら?」
「……へっ? へ、俺の絵?」
 ティヨルに提案に、緑の瞳を瞬かせて間抜けな声を漏らしてしまうリンデ。
 なんたって、こんなに沢山の美しい花が咲く広大な花畑があると言うのに――。
 こんなに綺麗な花が咲き誇っているというのに――。
「ヨル。ほんとに、いいの?」
「勿論よ。ねえ、あなた達できるかしら?」
「はなのもちこみでっかー」「できるよー」「とくいー」「もちろんー」
 周りで花を運んでいた小さなお針子達が、コクコク頷いて。
 ――リンデの描く花は鮮やかで、この頼りない『弟』の性分そのもののようなやさしい色をしているから。
 きっときっと、優しくて、鮮やかで。
 どの世界にだってないような布ができるだわ。
 柔らかく笑んだティヨルは、カンパニュラみたいな瞳を細めて、笑った。
「どのおはなー?」
「……んー、わかった。どんな花がいいかな。……俺たちの故郷の菩提樹? それともカンパニュラ? ああ、レウィシアのスカートなんかも可愛いかもしれないね」
「ふふ、リンデの好きな花がいいと思うわ。緑が入っていると、嬉しいわね」
 こっそりと互いの瞳の色をリクエスト。
 ――あの日、迷子だった自分を導いてくれた、小さなフェアリー。
 家族を喪ってからも、ずっと、ずっと。
 リンデを導いて守ってくれる、やさしいきみ、だいすきなねえさん。
 彼女の事を、自分の筆で彩れるならば、――そんな風に優しく笑ってくれるなら。
 それは、きっと。
 それはきっと目が眩むほどしあわせな事。
「……ねえ、あなた達、もう少しだけお願いがあるのだけど……私ね、裁縫にあまり自信がないの」
「あー、たいへんですなー」「てつだう?」「やったるでー」
 小さなお針子さん達が手を上げてくれれば、ティヨルがくうるりと宙を翅で泳いで。
 近づいて、近づいて、内緒のお話。
「――そしたらね、……リンデの正装をお願いしたいの」
「がってん!」「へへえ」「いいねー」
 そんなティヨルの気持ちは、いざ知らず。
 彼女を彩る花を願い描く。
「よし、……行くよ」
 駆ける水筆。
 ――さあ、君の望む花を咲かせよう。
 しあわせの色で彩取ろう。
 水彩は浮き立つ心そのままに。
 滲み、花弁を開かせて――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 日常 『お伽噺の世界』

POW   :    元気よく楽しむ

SPD   :    知的に楽しむ

WIZ   :    優雅に楽しむ

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●花縫いの祝街
 遠く遠く広がる、四季の花が咲き誇る花畑。
 レース編みと花々に彩られた美しき式場。
 桜の紗幕を纏った、花のステンドグラスのパーティホール。
 立食テーブルの備え付けられたダンスフロア。
 蔦の覆った丸い天井、白い花がきゅっと蕾を閉じて。
 木漏れ日がまるで星灯のように。光差し込む星見の館。
 花のアーチが出迎える、ろんと幸せの音を謳う鈴蘭連なる噴水広場。
 結んだリボンに、花のレース。
 パッチワークみたいにつぎはぎで編み上げられたような、カラフルな街。

 ――今日は新しい国の始まりを、お祝いする日。
 人々を祝う、素敵な日。
 糸を紡ぎ、縁を結い。
 紡ぐ祈りは、幸せを謳う。
 笑え、歌え、舞い踊れ。
 さあ、――今日という日を祝おう!
エドガー・ブライトマン
花のアーチをくぐり抜け、噴水広場へ
雫が光を受けて、きらきらと輝くように見える
祝い事をするにはいい日だねえ

先ほどは花の小人君らの強めの励ましと優しい指導のおかげで
良い王冠が出来た
まさかあんなに励まされると思わなかったけど
多分この国で不器用であることって致命的なんだろうな…

さて、花の小人君。お祝いをしよう
私は一国の王として相応しいひとになるべく
たくさんの国を巡る旅をしているんだ
この旅だってそう

私のこれまでと、これからの旅路を祝福してくれるかい?
手先は不器用だけど、きっと良い王になってみせるよ
その冠、私の頭に載せてくれる?


――ありがとう!
どう?オスカー。似合ってる?
この日の祝福、どうか忘れませんよう



●祝福の日
 ころころ響く、鈴蘭の鈴。
 噴水の上をツバメが一話、くるりと円を描いた。
 咲き乱れる花のアーチを潜れば、太陽の光を透かした水雫が宝石のように降り落ち。
 水の落ちる先の水面にも色とりどり、名前も知らぬ花がぷかぷかと揺れている。
「ああ、祝い事をするにはいい日だねえ」
「そうねー」「そうよー」
 眩しそうに瞳を細めたエドガーは、後ろを追ってくる小さなお針子達の返事に笑みを深めて。
 マントを翻して背をぴんと伸ばすと、噴水の前に向かって先へ、先へと。
 彼の手には太陽の光を浴びて、きらきら瞬く青い王冠。
 張られた布は、びろうどの手触りの青薔薇。
 編み上げられた金の蔦は金属のように硬く、ぴかぴかと磨き上げられ。
 添えられた青薔薇の花と葉が、王冠を美しく彩っている。
 肩を竦めたエドガーは思い出される記憶に、苦笑を浮かべる。
 ――お針子達の、だいぶ力強めの優しい指導によって生まれた王冠。
 ……そりゃあ、まさかあそこまで励まされるとは思っていなかった。
 しかし。
 糸を撚り、布を織り、縫う事で国まで作ってしまう彼等にとって、不器用である事はとても致命的なのであろう。
 それでも彼等は、根気強くエドガーに付き合った。
 そしてエドガーも、根気強く諦める事は無かった。
 だからこそエドガーの手元には今、ぴかぴかの王冠があるのだ。
「さて、花の小人君。お祝いをしよう」
「おいわいしよう!」「おいわいだあ!」「しよしよー」
 よく響くエドガーの声に、お針子達はぴょんぴょんと跳ねて喜びの声を上げる。
「私は一国の王として相応しいひとになるべく、たくさんの国を巡る旅をしているんだ。――この旅だってそうさ」
 こくこくと彼の演説に頷く、お針子達。
 打てば響くような小さな裁縫の先生達の反応に眦を緩めたエドガーは、彼等と目線を合わせるようにしゃがんで王冠を差し出して。
「その冠を私に乗せてくれるかな? それから――私のこれまでと、これからの旅路を祝福してほしいんだ」
 それに、とまた苦笑をエドガーは浮かべ。
「……私は手先は不器用だけど、きっと良い王になってみせるよ」
「おうさまかー」「おうさまになるぎしき?」「たいかんしき!」「つよいおうさまになってねー」
 王冠を受け取ったお針子は、目をぱちぱち。
 きょときょと周りを見渡してから――、ぴょん、と跳ねて噴水の縁に乗った彼は、エドガーの頭上へとその冠を戴かせる。
「わーい、ばんざーい」「ばんざい?」「おうさまばんざいだよー」「よいおうさまになるんだよ」「生を諦めないで」
 ころころと鈴蘭の鈴が鳴り響き。
 わあ、と上がる歓声、とぼけた声。
 お針子達が一斉に、鮮やかな花弁のシャワーを舞い降らせる。
「ありがとう、皆!」
 降り落ちる花弁。
 金糸のような髪を飾る、青薔薇の王冠。
「どう? 似合ってる?」
 くうるりともう一度円を描いて、肩へと降りてきたツバメ――オスカーへと。エドガーがウィンクをひとつ、尋ねてみせれば。
 くちばしに咥えた一輪の花――カキツバタを、オスカーは王冠へと差し込んだ。
「ああ、ありがとう」
 擽ったそうに笑んだまま肩を上げて、――エドガーは願う。
 ああ、どうか、どうか。
 この祝福を、この記憶を。
 失くさぬよう、忘れませんよう。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ネルウェザ・イェルドット
ファルシェ君(f21045)と

今日くらいは白衣とおさらば
撫子のドレスを身に纏うよ
同じく着替えた彼に一瞬見惚れて…ないってば!
囃すお針子達にケーキを式場に運ぶよう伝えて
少し二人きりにしてくれるかな

今日こそ想いを――そう意気込んだかと思えば
彼が口づけなどするものだから混乱して
お針子達が待っている、とつい口走り式場へ

式場に着くと予定通りのケーキ…と、大きなナイフ
結婚式みたいだろう?などと笑ってナイフの柄を差し出す
何時もの表情を崩した彼をからかおうとした瞬間
聞こえた言葉に耳を疑って

…今、何て

首元に触れ
その宝石の意味を確信しながら
色んな感情が混ざって
笑って泣いて

良いに、決まってるだろう
私だって…大好きだ


ファルシェ・ユヴェール
ネルウェザさん(f21838)と

私にと誂えて下さったタキシードに袖を通せば
カトレアの芳しい香に微笑んで
最後にきゅっと締めたタイの刺繍に触れ
桃の花の秘める言葉
嗚呼、本当にそうであれば――

ネルウェザさんの麗しいドレス姿に微笑みかけ
重ねてくれるその繊手にすっと片膝をついて口づけを
――貴女は綺麗で
その清らかな心に寄り添う資格が、私にあるのでしょうか
葛藤にひとつ、沈黙を落とし
然し鉄壁の微笑を向ければ、貴女を花の式場へエスコート
其処には

あの
これは

完全な不意打ちに仮面が崩れれば
ただ頬を染めて瞬く青年ひとり

……私は
貴女が好きです

気付けば口にしてしまうその想いは初めての

もし
貴女の手を取るのが
私で、宜しければ――



●その意味
「これって……」「ムーッ!」「ないしょー」「むむむむ!」
「ふふ、ありがとうお針子君達。――少し二人きりにして欲しくてね、もうちょっとだけ内緒で頼むよ」
 口を押さえたり、人差し指で内緒の指をつくったり。
 お神輿のようにケーキを抱えて、奥の部屋へと歩いて行くお針子達。
 いつもの笑みを浮かべたネルウェザは、彼等の行先を視線だけで追って。
 清らかな白を幾重にも重ねた、撫子のドレス。
 ふわふわと広がる裾に、淡く桃色が揺れている。
 グリーンサファイアの咲いたヘッドドレスに、紫水晶のレースのチョーカー。
 普段の白衣とはまた違う。
 清らかで柔らかな白に彩られたネルウェザは、みつあみをアレンジする形でまとめ髪。
 ファルシェが仕立ててくれた、『とびきり』のドレス。
 お針子達の仕事は確かで、サイズこそネルウェザにぴったりだけれども。
 ……彼は似合っていると言ってくれるだろうか。
 いいや、弱気になる事等無い筈だ。
 今日こそ、今日こそ。――伝えようと決めていたのだから。
「――ネルウェザさん」
 そこに。
 掛けられた声にネルウェザは顔を上げて、振り返る。
 カトレアの芳しい香。
 白いタキシードに身を包んだ彼は、位置を整えるようにネクタイへと手を這わせ。
 ――彼の指先が触れる刺繍。桃の花の秘めた言葉。
 そうしてファルシュは、アメジストのような瞳を細めて花のように微笑み。
 自然な動きで片膝を付くと、彼女の手を取ってその甲に唇を落とした。
「良くお似合いです、麗しき姫のようですね」
 一瞬、彼の姿に見惚れたように動きを止めてしまったネルウェザは、その行動に瞳を見開いて。
「――貴女は、本当に綺麗で」
 ……その清らかな心に寄り添う資格が、私にあるのでしょうか。
 言葉にはしない言葉。
 ファルシェは葛藤を奥にひた隠し、努めて常の笑みを浮かべるとネルウェザを見上げる。
「……お、」
 ぐっと息を呑んだネルウェザは、手をさっと離すと踵を返し。
 口づけされた甲を逆の手で覆って護るように、奥の部屋へと向かって彼女は歩き出した。
「……お針子達が奥で待っているんだ。行こう……!」
 ああ、何も言えなかった、何も言えなかった。
 もう。何故君はいつもさらりとそういう台詞が出てくるんだ。
 ネルウェザは細く深呼吸。
 ――振り向くまでに、表情は整えておかなければならない。
 だって、今から。
「……あの、……これは?」
 ファルシェの声。
 奥の部屋に用意されていたのは、鮮やかな大きな二段ケーキ。
 お針子達なりのサービスなのだろう、銀の大きなケーキナイフは花のリボンで彩られている。
 ネルウェザの願い通り。
 お針子達はきちんと二人きりにしてくれたようで、その姿は見えない。
「……ふふっ、どうだい? 服も相まって結婚式みたい」
 努めて常の笑顔を浮かべ、ネルウェザはくるりと振り向くと――。
「だ、……ろう?」
 そこに在ったのは、思いもよらぬ不意打ちに常の笑顔すら浮かべる事すら出来ずに、ただ頬を染めて瞳を丸くしたファルシェの姿。
 想定していた以上の反応に、思わずネルウェザも言葉を失い。
 慌てて軽口を紡ごうと――。
「……ふ、ふふ、驚いてい――」「……私は、貴方が好きです」
 ネルウェザの言葉に重ねられた、ファルシェの言葉。
「……え?」
 それはファルシェとしても想定をしていなかった、零れ落ちてしまった言葉。
 それでも、それでも。
 ――だからこそ、その気持ちに嘘は無い。
 ファルシェは真っ直ぐにネルウェザと視線を交わしたまま、言葉を接ぐ。
「もし、貴女の手を取るのが私で、――宜しければ」
 差し出された掌と、彼の顔を見比べるように。
 ――チョーカーに仕立てた紫水晶に一度手を触れると、その意味を確信した。
 ネルウェザは口を開く。
 しかしそれだけでは言葉にならなくて、ただ吐息が漏れて。
 ぁ、と小さく喉奥から音が漏れた。
 一瞬で視界が歪んで、ほろりと暖かい雫が頬を伝う。
「……良いに。良いに、決まってるだろう?」
 そうして不器用に笑んで、……泣いて。
「私だって……、大好きだ」
 ぎゅ、っと掌を握ったネルウェザは、彼を見上げて。
 涙に濡れたとびきりの笑顔で告げた。
「ネルウェザ、さん……」
 ファルシェは彼女の手を引いて、その身体を引き寄せて。
 彼女は以前、自らを『物』と呼んだ。
 しかし、悲しみ、喜び、微笑む彼女は、何よりも。
 誰よりも――。
 その瞬間。
「わーっ、おめでとおー!」
「おいわい! おいわいしていいですか!?」
「かのじょのどのようなところにひかれて!?」
「けっこんしき? けっこんしきしていいの?」
「わーめでたい、めでたーい」
 鮮やかな花弁の雨。
 ケーキが置かれていた台の下から、どばっとお針子達がその姿を現し。
 フラワーシャワーを容赦なく舞わせ、跳ねた。
「な、ななななっ!?」
 思わず言葉にならない言葉が、やっぱり言葉にならないネルウェザ。
 ファルシェも一瞬驚いた様子だったが、苦笑を浮かべて。
「……やれやれ」
 なんて、肩を竦めると。――ネルウェザの身体をぎゅっと引き寄せた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

篝・陸彦
【鯉灯】
花は色んな花が咲いてるし建物は家よりも広くて
どこを見てもキラキラしてて綺麗だ!
灯里も嬉しそうだ、お祝いってすごいんだな!
灯里、探検しようぜ

広場や建物を探検したら腹が減って来たな
お茶会してる所にお菓子が沢山あるみたいだ
クッキーやマフィン、どれも美味そうだな
これもお祝いや服の効果だったりするのかな

おれ達は何のお祝いで来たって?
お針子に言われて気付いたけど……
王子様服を着た記念?灯里はわんぴーす記念?
あっ、おれ達二人で出掛けるのは初めてだったな
初めて祝い……大人の一歩、なんかかっこいいじゃん
それに決まりだな!
なぁなぁ、もうお菓子食べていいだろ

父ちゃん達の祝いの日って何だろうな
帰ったら聞こうぜ


月舘・灯里
【鯉灯】
わんぴーすでおいわいするのです!
にいさまのおたんじょうびはもうすこししたら、なのです
だから、ええっと……

まって、まって!
そんなにせかさないでください、なのです

おはりこさんたちはせっかちさんです

じゃあ、あかりとにいさまが
ふたりでこうしてぼうけんしてることをおいわいしましょう?
ええっと、『おとなへのさいしょのいっぽ』のおいわいです!

にいさまとたんけんです!
ぼうけんしてたんけん、すてきなのです!
Σ!は!あかりはあまいおかしをいただくです!

とうさまとかあさまも
こんなふうにおいわいしたのでしょうか?
かえったらきいてみるです!

とうさまもかあさまもにいさまも
おいわいのひがたくさんあったらいいのですよ



●小さな冒険家
 鮮やかな花畑だけでは無い。
 この国は、どこにでも花が咲いている事に気がついた。
 家よりもずっとずっと大きな建物を覗き込んで。
 すれ違った人たちにお祝いの言葉を告げて。
 青い王子様と白いワンピースのお姫様。
 陸彦と灯里はどこもかしこもお祝いに沸く街を、二人歩み行く。
「どこを見てもキラキラしてて綺麗だなー」
「ふふふー、にいさまとたんけんも、みんなのおいわいも、とってもたのしいのです!」
「そこら中でお菓子も貰えるし楽しいよな……、そういえば少し腹が減って来たなー」
「わ、じゃあにいさま、すこしきゅうけいします? あかしはあまーいおかし、いただきたいです!」
 あらゆる所で行われているお茶会や何かのパーティで、お菓子やお花を配られたり、貰ったり。
 お針子がきっと役に立つと灯里に渡してくれた花籠の中は、今やお菓子で溢れていた。
「じゃあ、そこでちょっとおやつ休憩にしようか。喉もちょっとかわいたしな!」
「はーい!」
 蔦を編んだようなベンチに、陸彦と灯里は並んで腰掛けおやつタイム。
 クッキーやマフィン、食べられるお花のおせんべいに、お花のお茶。
「いただきまーす」
 手をあわせて、陸彦は先ずマフィンから。
 クッキーを口にくわえた灯里は、お花のお茶もコップに注いで。
 ――そこに。
「あー、猟兵さんたちだー、今日は何のお祝いー?」「ちょこあるよー」「おいわい?」「する?」
 通りかかったお針子達が、二人に向かって首を傾いだ。
「……そう言えば、おれ達って何のお祝いで……?」
「え、ええっと……にいさまのおたんじょうびはもうすこししたら、ですし……」
 お茶をずずーっと啜る灯里。マフィンをまふまふ食べる陸彦。
「そっかあ……おいわいで無いかんじですかあ……」
「ま、まってくださいー、いまかんがえるのです!」
 少しだけがっかりしたような声を上げたお針子に、灯里は慌てて声をあげて。
「おまちしまーす」「わかったー」「ちょこたべるねー」「おいしー」
 その返事にお針子達は、三角座り。
 陸彦が顎に指先を当てて、首を傾げ――。
「んー……おれは王子様服を着た記念? 灯里はわんぴーす記念?」
 その言葉に。
 何か閃いた様子で灯里は、コップを横に置いてからぽん、と手を叩いた。
「じゃあですね! あかりとにいさまが、ふたりでこうしてぼうけんしてることをおいわいしましょう!」
「……あ、確かに。おれ達二人で出掛けるのは初めてだったな」
「ええっと、……そう! 『おとなへのさいしょのいっぽ』のおいわいです!」
「……大人の最初の一歩、……なんかかっこいいじゃん! いいな、それに決まりでいいぞ!」
 わあっと笑顔を浮かべた陸彦は、改めてお針子達へと視線を戻すと胸を張る。
「と、言う訳でおれ達は、大人への最初の一歩を祝いに来たんだ!」
「ははー、なるほどー」「ちょこたべる?」「おいわいかー」「めでたいなー」
 口々に感想を漏らすお針子達はぴょんぴょん跳ねて、フラワーシャワーをふわふわ舞わせて歩き出し。
 チョコレートを受け取った陸彦と灯里は、花弁を舞わせながら歩いて行くお針子達を見送った。
「そういえば……」
 ぱきっとチョコレートを割りながら、なんとなく灯里の脳裏に過ぎった疑問。
「……とうさまとかあさまも、こんなふうにおいわいしたのでしょうか?」
「んー、父ちゃん達の祝いの日って何だろうな?」
「かえったらきいてみるです!」
「そうだな、訊いてみようか」
 チョコを齧れば、あまくてやわらかくて、口の中で一瞬で溶けてしまう。
 おいしい、あまい、たのしい。
「とうさまもかあさまもにいさまも、おいわいのひがたくさんあったらいいのですよ!」
 なんて、灯里はくすくすと笑った。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

旭・まどか
――はぁ、草臥れた
慣れない事はするもんじゃない
こういう事は、僕には不向きなんだから

もう既に帰りたい気持ちで一杯なのだけれど
嗚呼、そうだね
参席ぐらいはしていてあげる

けれど、あまり姦しいのは得意では無くてね
少し、静かな場所に落ち着けたいかな

慣れない針仕事で肩も凝ったんだ
これぐらいの休息は、許されたって良いだろう?

――……何、肩でも揉んでくれるの?
お前がその四足じゃなければお願いしたのだけれど
残念だったね

嗚呼、いつまでも僕の隣に居て居なくとも構わないよ
好きに見て回ると良い

お前の見たいものが、そこに在るだろうから

その八重に焼き付けたならば、帰っておいで
お前の出番は、そこからだよ



●休憩
 つぎはぎの鮮やかな街、広がる鮮やかな花畑。
 お祝い好きの住人たちの作り上げたこの国と言えば。
 何処を見たって華やかで、何方を向いたって幸せな雰囲気が漂っている。
 どこもかしこもお祝いムード。
 そりゃあそうだ、ここはそういう国なのだから。
 ――そりゃあ、解っているのだけれど。
「……――はぁ、草臥れた」
 しかしそのような華やかで幸せな空気に、どうにも馴染みにくい者もいるもので。
 祝いの言葉を重ねて花弁をふかふかと撒くお針子達を遠目に、まどかは大きく肩を上げて、下げて。
 ため息一つ。
 慣れない針仕事。
 慣れない雰囲気。
 慣れない事ばかりで肩が凝ってしまう事も、仕方が無い事であろう。
 なんだったら、もう帰ってしまいたい気持ちだって存分にあるけれども。
 ちゃんとこの後に訪れる展開を、まどかは理解している。
 だから今は、少し休憩を。
 そんな彼をじいっと見つめる視線が一つ。
「――……何、肩でも揉んでくれるというの?」
 喧騒から離れた大きな花のベンチに腰掛けたまどかは、視線の主――尾を揺らす風の仔を横目で見やり。
 人形の狼に桃色の瞳を眇めて、ほんの少しだけ眦を緩めた彼は言う。
「お前がその四足じゃなければお願いしたのだけれど、残念だったね」
 遠く響く喧騒は、祝いの声、幸せな声。
 それはまどかにとって、どうにも慣れ難い響きで。
 足先を一度揺らしたまどかは、その光景を遠くに見ながら更に言葉を紡いだ。
「……嗚呼、お前。いつまでも僕の隣に居て居なくとも構わないよ」
 好きに見て回ると良いなんて付け足して、彼は狼を見下ろして。
「お前の見たいものが、そこに在るのだろう?」
 きっとお前の好む光景が。
 きっとお前の望む光景が。
「……いいよ、行っておいで。その八重に焼き付けたならば、帰っておいで」
 お前の出番は、まだなのだから。
 それまでは、楽しんでおいで。
 金色の髪を揺らして、まどかの紡ぐ言葉。
 風の仔は遠く響く喧騒を、その瞳で真っ直ぐに見やって――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ラフィ・シザー
アナンシ(f17900)と
お祝いかー…俺達は何のお祝いをしようか?
なんでもない日はなんでもない日で素敵なんだけどな。
だってなんでもない日って平和ってことだろう?

可愛い家族が出来た記念?かわいいかぞくって俺のこと!?
も、もう、アナンシは俺のことをからかい過ぎだぞ!
赤い薔薇の花をくれようとするし。
アリスが言ったんだ。赤い薔薇は大切な人にあげなくちゃいけないって。
だからそんなこと言われたら『愛されてる』って勘違いしちまうだろ?

でも、アナンシが…愛してくれるなら…すごく嬉しい。
俺はアナンシの子供かな?それとも弟かな?
どれでもいい、俺を家族にしてくれるならどれでもいいよ。


アナンシ・メイスフィールド
ラフィ君f19461と
作って貰った衣類を嬉しそうに纏いつつラフィ君の服を眺めよう
ふふ、とても似合って居るのだよ…と。祝いの日、かね
ならば私は可愛い家族が出来た記念日という事にしておこうかと笑みを向けよう
揶揄って等いないのだよ?
君が味方でいてくれると言ってくれた様に私はずっと君の味方なのだからね
ふふ、ラフィ君ならば弟でも良いかもしれないけれども…愛しく大事な子供の様に愛しているのだよ
記憶が無い故もし家族が居るのだとしても、私はずっと君の家族で愛しく思っている事を忘れないでくれ給え
そう笑いながら手を差し出そう
さあ、折角の祝いの日だからね
存分に楽しみに行こうではないね、ラフィ君?



●家族記念日
「ふふ、中々良い仕立てじゃないか。――よく似合っているのだよ、ラフィ君」
 アネモネのスカーフに、ビオラの靴。
 仕立てて貰ったばかりの服に身を包んだアナンシは、その唇に浮かぶ笑みを深めて。
 カンパニュラの帽子をきゅっと深く被り直して。
「うん、ありがと! アナンシもよく似合ってる。……でも折角お祝いの服を仕立てて貰った事だし、……何をお祝いしようか?」
 マグノリアのシャツを纏ったラフィは、顎先に指を当てて考える。
 なんでもない日は、なんでもない日で、それはそれで素敵な日だ。
 だって、なんでもない日は平和だったという事なのだから。
 でも、今日は服だって仕立てて貰ったのだから。
 折角ならば、何かお祝いをしたいものだ、と。
 長い耳をゆらゆら揺らして考え込むラフィに、アナンシは悪戯げに首を傾いで。
「……そうだね、ならば私は可愛い家族が出来た記念日という事にしておこうかな」
「……え?」
 かわいい家族?
 ラフィはその言葉の意味を反芻するように、呟いて、耳をぴょんと跳ねて。
「え、ええええっ!? かわいいかぞくって俺のこと!?」
「おや、君以外に誰が居ると言うのかい?」
「も、もおおーっ、もう! アナンシは俺のことをからかい過ぎだぞ!」
 ぷりぷりと頬を膨らせたラフィが、アナンシに拳を突き上げる。
「……赤い薔薇の花をくれようとするし! アリスが言ってたんだ。赤い薔薇は大切な人にあげなくちゃいけないって!」
「おやおや、揶揄って等いないのだよ」
 小さく首を振ったアナンシに、ラフィはどんぐりみたいに瞳を見開いた後、視線を落として――。
「……うう。だめだぞ、アナンシ。赤い薔薇もそうだけど、……そんな事を言われたら――『愛されてる』って勘違いしちまうだろ?」
 服をぎゅうと握りしめる。
 だんだん弱くなる語気。
「――ふふ、ラフィ君。先程から言っているだろう。揶揄って等いない、と。……君が味方でいてくれると言ってくれた様に私はずっと君の味方さ」
 彼を安心させるかのように。
 柔らかく笑んで紡がれるアナンシの言葉に、ラフィはぺったりしてしまった耳を小さく擡げて。
「……それって、アナンシが、俺を愛してくれる、って、事?」
「その通りだよ」
 アナンシが頷き。
 再びラフィはぴん、とウサギの耳を立てて拳をきゅうっと握りしめた。
「それって、それって! 俺はアナンシの子供? それとも弟かな?」
「ふふ、ラフィ君ならば弟でも良いかもしれないけれども……愛しく大事な子供の様に愛しているよ」
「そっか、そっかあ。……俺を家族にしてくれるんだ!」
 くすくすと笑うラフィに、そうさ、とアナンシはもう一度大きく頷いて。
「もしかすると、私には家族が居たのかも知れない。けれど、私は覚えていないものでね。――だから、今の私の家族はラフィ君、君一人だよ」
 青い瞳を眇めて。
 アナンシが掌を差し出すと、おずおずとラフィはその手を取って――。
「忘れそうになったら、思い出し給え。――アナンシ・メイスフィールドは君の家族で、君を愛しく思っている事をね!」
「……うん、ふふふ。解った。……ありがと、アナンシ!」
 擽ったげに笑ったラフィは、きゅっと掌を握りしめて。
 そうして二人は、鮮やかな街並みを歩き出す。

 さあさあ、今日と言う日は可愛い家族ができた記念日である。
 今日という日を、存分に楽しもうではないか!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

フリル・インレアン
ふわぁ、素敵なパーティ会場ですね。
おめでとうございます。
おめでとうございます。

ふえぇ、さすがに疲れてしまいました。
すこし休憩です。
アヒルさん、お水おめでとうございま・・・。
すみません、ありがとうございます。

パーティーは楽しいのですが、やっぱりいろんな方の人の目が気になってしまって、それに室内では帽子を取るのが礼儀ですが、被り続けている私を皆さんがどう見ているのか気になってしまうんです。

あ、アヒルさん、それは私をダンスに誘ってくれているんですか?
お気遣いは嬉しいですけど、隅の方でって・・・
ふえええぇ、どうして真ん中にまで行っちゃうんですか。
みなさんの注目の的じゃないですか。



●ダンスの時間
「お、おめでとうございますー、おめでとうございます」
 色鮮やかに縫い上げられた、パーティ会場。
 花々咲き乱れるテーブルに、ダンスのステージ。
 花弁を散らし、お針子達が国の出来たお祝いに、猟兵達のお祝いへと。舞い、歌い、踊っている。
 今日は何処に行ったってこんな調子で、お針子達も、猟兵も。
 皆一様に幸せそうな笑顔を浮かべて、祝う言葉を口々に交わしあう中。
「ふえぇ……、お、おめでとうございます……」
 お祝いの言葉を幾度も幾度も重ねる少女。
 ――空の色のドレスを身にまとったフリルは溜息と共に椅子へと腰掛けて、きょろきょろ周りを見渡した。
 楽しい雰囲気は心地よいものだけれども、フリルは皆の視線が気になってしまう。
 室内では帽子を取るのが一般的な世界もある。
 この世界の人達は?
 フリルが帽子を被りっぱなしである事を気にしていないだろうか。
 礼儀知らずだと思われてはいないだろうか。
 ――皆さんの楽しい雰囲気を、わたしは、壊してしまっていないでしょうか……?
 きゅっと帽子を押さえたフリルは、ふわふわと水を運んできてくれたガジェットのアヒルさんにはた、と気がついて。
「アヒルさん、お水おめでとうございま……、すみません、ありがとうございます」
 言い間違え。
 ぴゃっとフリルは肩を跳ねるけれど、アヒルさんは気にした様子も無い。
 こくこくと水を飲んでいると、アヒルさんはフリルの手にぐいぐいと頭を押し付けて、押し上げて。
 フリルが首を傾げて周りを見れば、踊ったり歌ったりしているお針子達の姿。
「……もしかしてアヒルさん……、それは私をダンスに誘ってくれているんですか?」
 ふ、と小さく笑みを浮かべて首を傾げたフリルの言葉を肯定するかのよう。
 ぐい、と腕を引いたアヒルさんにつられて、フリルは立ち上がる。
「あ、でも、お気遣いは嬉しいですけど、隅の方……、ふぇええええ……ど、どうして~……」
 しかしアヒルさんは聞く耳持たず、そのままフリルを皆の踊る真ん中まで引っ張っていってしまう。
「ふえぇ……」
 お針子達が此方を見ている気がする、ふるふると首を振るフリル。
 気にした様子も無くふうわりとフリルをエスコートするようにまわりだすアヒルさん。
 皆に見られている気がする、いや、流石に見ていますよねえぇえ……。
 半分涙目になりながらも、フリルはくるくるくるくる。
 アヒルさんの動きに合わせて、ステップを踏んで――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

御園・ゆず
沢山の方々が楽し気に、嬉しそうにお祝いしている様を
隅の方で眺めましょう

たのしそう、うれしそう
そのお手伝いが出来て、良かった
この世界のヒトたちは、猟兵のみなさんは
とっても優しくて暖かいヒトたちだから
その素敵な顔が見られて、満足です

…え、
あ、わたしのお祝い、ですか?
……か、考えてなかった…
えと、んと…
み、みなさんの素晴らしい日おめでとう、とか、だめ、ですかね?
あなた達には、素晴らしい建国おめでとうを
猟兵のみなさんには、それぞれのおめでとうを
それをお祝いさせてください

眺めてるだけで、満足なんです
わたしなんかでも、いいことが出来たなって
無論、自己満足ですし、思い上がり、ですけどね



●君におめでとう
 甘い匂い、全てが縫って作られた建物の中。文字通りに華やかな飾り付けが成された会場。
 心地の良い喧騒、幸せに満ち満ちた空気。
 歌うもの、踊るもの。
 たのしそう、うれしそう。
 行き交う猟兵達も、お針子達も、その顔に浮かんだ表情は幸せに満ちているように見える。
 祝いの雰囲気に満ちた街の片隅。
 月桂樹を編み上げたいい匂いのするベンチに腰掛けたゆずは、手渡されたハーブティのカップを手に行き交う人々を眺めていた。
 ――皆の幸せそうな雰囲気を感じられるだけで、ゆずは良かった。
 この国のヒトたちも、猟兵のみなさんも、とってもも優しくて暖かいヒトたちだから。
 彼等の笑顔が見られるだけで、ゆずは満足で。
 暖かなハーブティにふう、と吐息を吹きかけて一口。
 目を閉じて、開いて。
 気がつけば、横にお針子が一人座っていた。
「猟兵さんー、猟兵さんはおいわい無いです?」
 ぴょこ、とその後ろから顔を出すもう一人のお針子。
「おいわいー、おいわいしよう!」
 一瞬ぎょっとしたゆずは、焦げ茶色の瞳をぱち、ぱちと閉じて、開いて。
「……え、……わ、たしのお祝い……ですか?」
「そーそー」「お花のふく、いらなかったです?」「たくさん猟兵さん、はたらきをしていた猟兵さん、はたらきをしたの、えらいじゃないです?」「えらいかー」
 今日気づいたのだが、花のお針子達は1人見かけると気づくと5人は寄ってくる。
 口々に騒ぐ彼等を前に、ゆずは困ったように少し微笑んで。
 『自分』のお祝い、なんて一つも考えていなかった。
 だって。
 今日は皆のお祝いする姿が見る事ができれば、――その手伝いができればそれだけで良かったのだから。
「えと……、んと……、そうです、ね……」
 そうして、ゆずがなんとか絞り出した答えは――。
「み、みなさんの素晴らしい日おめでとう、とか、だめ、ですかね?」
 お針子を指差すゆず。
「あなた達には、素晴らしい建国おめでとうを」
 次に、ゆずは遠くを歩いている猟兵達を指差して。
「猟兵のみなさんには、それぞれのおめでとうを」
 手を膝に下ろすと、首を傾げていつもの眉を寄せた、ゆるい笑み。
「それをお祝いさせてください」
 ゆずの言葉に、一瞬ぽかんと口を開いたお針子達。
「すばらしい?」「わかる」「おめでと!」「ほーん」「ええやんけ」
 直後に言葉を理解できたようで、わあとまた跳ねて、騒いで。
 花弁を撒き散らして、おめでとう、おめでとうと祝いの言葉を口々に交わし合う彼等。
 細く、細く息を吐いて。
 踊る彼等を見下ろしたゆずは、少しだけ、少しだけ眦を緩めてハーブティを啜る。

 ――眺めてるだけで、満足なんです。
 わたしなんかでも、いいことが出来たなって、思えれば。
 ……無論、自己満足ですし、思い上がり、ですけれど。

 あまりに幸せそうにお針子達が言葉を重ねるものだから。
「……おめでとう」
「おめでとー!」
 ぽつり、とゆずが漏らした言葉に、本当に幸せそうにお針子達は笑った。

 華やかな街並み。
 幸せな音楽に、幸せな歌。
 今日は、今日は、お祝いの日。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ラナ・スピラエア
蒼汰さん(f16730)と

仕立てて頂いたドレス(お任せ)を纏って
いつもと違う装いに、微笑んで
とってもお似合いだと思います、お針子さん達すごいですね

誕生日も終わったばかりで
確かにお祝いすることは何も無くて
でも…
はい、何気ない日常が幸せですから
私も一緒にお祝いしたいです

どこも可愛らしい景色だけど
折角だし、普段は出来ないこと…
蒼汰さんさえよろしければ、1曲ご一緒して頂けますか?
ふふ、不慣れでも大丈夫ですよ
公式な場じゃないですから、楽しめればそれで
一応社交は慣れているので、頑張ってリードをしながら1曲

大丈夫、お上手でしたよ
我儘を聞いてくれてありがとうございました
不思議と逸る鼓動を抑えるように、微笑んで


月居・蒼汰
ラナさん(f06644)と
仕立ててもらったスーツ(翼尻尾対応)に着替え、何だかそわそわ
ラナさんも、とても良くお似合いです

カラフルな街並みはどこを回っても楽しそうでわくわくする
今日は二人にとっては何でもない日の中の一日だけど、…折角だから
今日こうしてラナさんと一緒にいられることをお祝いしましょうか

…えっ、ダンスですか?
確かにそういうのが出来そうな服を作ってもらったし
俺で良ければ喜んで、ですけど…俺、経験がなくて。ちゃんと踊れるかな…
ラナさんのドレスの裾とか足とか踏まないように細心の注意を払いつつ
一曲踊れたらほっと一息
めちゃくちゃ緊張しました。変じゃなかったですか?
…ラナさんの我が侭ならいつだって



●何でもない日
 薄紫の翼を小さく畳んで、開いて。
 細やかな刺繍も上品に、青緑から薄紫に染まる秋空色のジャケット。
 ダブルボタンのベストのスリーピーススーツよりふかふか揺れる獣の尾。
 何処か落ち着かぬ様子の蒼汰は、キョロキョロと周りを見渡す。
 つぎはぎパッチワークの街並み。
 色鮮やかな街路の向こうに見えた姿に、蒼汰は金の瞳を細めて手を上げた。
「ラナさん」
「……まあ、蒼汰さん」
 レースのハーフグローブ、シフォンのパフスリーブに揺れるリボン。
 柔らかそうなペチコートの上に、八重に重ねられた向こう側が透けるほど薄い薄紅色のドレスのスカートは歩む度にふかふかと揺れて。
 彼の姿を認めると小さく駆けてきたラナは、蒼汰の姿をじいっと見て。
「ふふ、おめかしさんになりましたね。――とってもお似合いだと思います!」
 両手を合わせると、お針子さん達の技術はすごいですね、なんて微笑んで。
「……ん。ラナさんも、とても良くお似合いです」
 尾をゆっくりと揺らすと蒼汰は控えめに笑い、二人は並んでカラフルな街を歩みだす。
 花のお針子達はお祝いに浮かれて、フラワーシャワーを舞い上げながら踊って、歌って。
 街の何処を見たって幸せな喧騒と歌と花に包まれて、楽しそうな表情ばかり。
「猟兵さんたちも、おいわいですー?」
 道行くお針子に尋ねられれば、少しばかり首を傾いだラナ。
 二人の誕生日も少し前に、終わったばかりでお祝いする事は特に思いつきはしない。
 ――この国にとっては、大きなお祝いの日かもしれない。
 しかし、お針子はラナと蒼汰のお祝いを尋ねているようで。
 今日は二人にとっては、何でも無い日。
 でも、何でも無いからこそ――。
「……折角だから、今日こうしてラナさんと一緒にいられることをお祝いしましょうか?」
「そうですね、私も一緒にお祝いしたいです」
 ラナの苺みたいに真っ赤な瞳をしっかり視線を交わした蒼汰が尋ねれば。
 ラナも丁度同じ事を考えていた様子で、こっくりと頷いた。
 何でも無い日を一緒に過ごせるなんて、何気ない日常を過ごせる事こそが。
 ――きっと何よりも、幸せなのだから。
「おおー、ではなんでも無い日にかんぱーい!」
「ふふ、おめでとうございます」
「はい、おめでとうございます」
 二人の返事に大満足したご様子、お花のお針子はぴょんと跳ねると花弁を二人へと舞い散らせて、くるくると踊りだす。
 彼の踊りながら向かう先には、朝顔のラッパに、スズクサのサクソフォン。
 鈴蘭の鈴を鳴らして、蓮の葉のシンバルがわんと鳴った。
 そこはお針子達のダンスステージ。
 お祝いに沸く彼等が自由に演奏を重ねて、自由に踊る場所。
 ぱちぱちと瞬きを重ねたラナは、ふ、と思いついた様子で蒼汰の前へと掌を差し出して。
「……えっと、蒼汰さんさえよろしければ」
「……ん?」
「一曲、ご一緒して頂けますか?」
 次に目を大きく開いて、瞬きを重ねたのは蒼汰であった。
「……えっ、ダンスですか?」
 確かに、確かに。
 今日の二人の服装は、ダンスにはピッタリの正装だ。
 しかし。
「俺で良ければ喜んで、ですけど……」
 少しだけ困ったように眉を寄せた蒼汰は、ラナの手を取って――。
「……俺、ダンスの経験が、無くて。ちゃんと踊れるかな……?」
「ふふ、不慣れでも大丈夫ですよ。公式な場じゃないですし、ね」
 それにお針子達のダンスを見ていると、本当に自由に楽しいから踊っているだけの様子で。
 蒼汰の手を引いたラナは、擽ったそうに笑って緩やかにステップを踏み出した。
「お針子さん達みたいに、ダンスを楽しみましょう?」
「はい……、がんばって、みます」
 慣れた様子の足取りのラナのリードで、ぎこちなくステップを踏み出す蒼汰。
 いち、に、いち、に。
 手を引いて、腕を引いて。
 足を引いて、一歩進んで、背を弓なりに。
 ゆうらりゆらり、お針子達の伴奏に合わせて揺れる八重のスカートと獣の尾。
「――めちゃくちゃ緊張したのですけれど……、変じゃなかったですか?」
「大丈夫、お上手でしたよ」
 慎重に踊ってくれたのであろう。
 胸をほうと撫で下ろす蒼汰の姿が何だか、擽ったくて、おかしくて。
 ――なんだか、不思議と胸が逸るようで。
 それを抑え込むみたいに軽く胸を押さえたラナは、微笑み。
「ねえ蒼汰さん、我儘を聞いてくれて、本当にありがとうございました」
「いいえ、……ラナさんの我が侭ならいつだって」
 なんて、蒼汰が笑うものだから。
「……それでは早速、もう一曲、如何ですか?」
 もう一度掌に掌を重ねて、悪戯げにラナは笑った。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ヘルガ・リープフラウ
・ヴォルフ(f05120)と共に
・アドリブ・絡み歓迎

お針子さんたちの仕立ててくれた素敵なドレスを身に纏い、夢にまで見たヴォルフとの結婚式……
真新しい式場は陽光に溢れ、まるでわたくしたちの未来を祝福してくれるかのよう

タキシード姿のヴォルフも、とても素敵よ。
家族も故郷も滅ぼされ、絶望と恐怖に怯えていたわたくしを今日まで守り支えてくれたあなた。
これからも変わらず、互いに支えあい生きて行けるなら、これに勝る幸せはありません。

指輪の交換、誓いの口付け
そして祝福のフラワーシャワー

猟兵となって以来、今まで出会った様々な世界の仲間や人々に、
この国の可愛い住人さんたちに、
そして愛しいヴォルフに、

『ありがとう』


ヴォルフガング・エアレーザー
・ヘルガ(f03378)と同行
・アドリブ・絡み歓迎

このタキシード、本当に花で作られたのかと思うほど、見事な出来栄えだ。
そして式場や様々な施設も……

普段は着慣れた戦装束ばかりの俺でも、こうして婚礼衣装に身を包むと、改めて身が引き締まる思いだ。
何より今日は、ヘルガと将来を、これからも共にあると誓い合う、大切な記念日になるのだから。

ヘルガ……綺麗だ。
花弁の繊細さ、その優美さを引き出す見事な縫製、そして何より幸せそうな笑顔が、普段にも増してお前の美しさを際立たせている。

改めて誓おう。いついかなる時もお前を助け、共にあると。
騎士として、そしてこれからは夫として。
お前の笑顔を、幸福を守り続けよう。



●幸福の日
 美しい花々が鮮やかに咲き乱れ、陽光に透けるレースの壁。
 ヴォルフガングとお針子が仕上げた式場は、真珠のように白く艷やか。
 差し込む光すら二人を祝福するように、美しく輝いている。
 ヴェールに揺れる鈴蘭。
 すべやかな梔子のウエディングドレス。
 雪のように白い髪は美しく纏め上げられ、青の花弁が柔らかく揺れている。
 翼を畳んで、開いて。
 ――ヘルガが視線を上げれば、彼が居る。
「ヘルガ……綺麗だ」
 ああ、衣装は勿論だが。
 ――彼女の今日の笑顔は普段にも増して、美しさを際立たせるようで。
 眦緩めたヴォルフガングは、かんばせを上げたヘルガと視線交わした。
 黒のペチュニアを重ねたタキシード。――常は戦装束ばかりのヴォルフガングからすれば、着慣れぬ首元をしっかりと覆うシャツも蝶ネクタイも、なんだか擽ったくて堪らないけれど。
 それでも畏まった衣装を纏った背を、きゅっと伸ばす。
「ふふ、……ヴォルフも、とても素敵。良く似合っているわ」
 なんて。
 ヘルガは蜂蜜みたいに、甘く甘く笑む。
 彼女が幸せそうに笑む理由。
 彼が背をしっかりと伸ばす理由。
 それは――今日がとても、とても大切な日に成るからだ。
 今日は、今日は、お祝いの日。
 二人の将来を、未来を、これからも、共にあると誓い合う。
 ――大切な大切な、結婚記念日。
「ねえ、ヴォルフ」
 こつ、とヒールを響かせて。
 白い花が咲き乱れる式場の真ん中に立ったヘルガは、ヴォルフガングを見上げ、言葉を紡ぐ。
「――家族も故郷も滅ぼされ、絶望と恐怖に怯えていたわたくしを今日まで守り支えてくれたあなた」
 無垢な雛鳥であった彼女は、孤独であった狼と世界を歩みだした。
「これからも変わらず、互いに支えあい生きて行けるなら、これに勝る幸せはありません」
 そうして柔らかく空色の眦を緩めたヘルガは、陽光に照らされて美しく微笑んだ。
 一歩、一歩。
 戦いを共に重ね、歌を囀り。
 彼は彼女を護り、彼は彼女に救われ。
 ――命ある限り、命ある限り。
 その胸に、愛を抱いて。
 交わされる、空と海色の視線。
 ヴォルフガングは、花のレースに包まれた彼女の細く繊細な指先を取り。
「改めて誓おう、ヘルガ。いついかなる時もお前を助け、共にあると」
 ――騎士として、そしてこれからは夫として。
 誓いの証を彼女の左薬指に通すと、唇をきゅっと引き絞ってヴォルフガングは微笑んだ。
「お前の笑顔を、――幸福を守り続ける事を、誓う」
「……はい」
 頷いたヘルガが、ヴォルフガングの掌に指先を添える。
 節くれ立った大きな指先。
 ヘルガの掌より、ずっと固い掌。
 自らを護ってくれる、大きな掌。
 その左の薬指に、――誓いの証を重ねて。
「ヘルガ……」
「……ヴォルフ」
 視線を交わした二人は、惹かれ合うように唇を交わし――。
 その瞬間。
「わー」「おめでとー!」「けっこん?」「すごーい」「おいわいとはこうあるべきですなあ」「めでたーい!」
 固唾を飲んで二人を見守っていたお花のお針子達が、風船を割ったみたいに口々に喋りだし。
 ぴょんぴょん跳ねて、ラッパ草のラッパをぷうぷう吹き鳴らして。
 わあと花弁を舞い散らせて、二人を祝福する。
 おめでとう、おめでとう。
 猟兵さんの大切なお祝いの日を、祝える事を幸せに思うよ。
 そんな彼等の様子に、視線交わした二人は肩を竦めて笑い合って。
 ――ああ。
 猟兵となってから。
 出会った様々な世界の仲間や、人々。二人の為にと助力してくれた、この国の可愛い住人達。
 そして、――誰よりも。
 ヘルガはヴォルフガングを見上げ、その掌を貝のようにきゅっと結んで。
「――ありがとう」
「……それは、俺の台詞だな」
 舞い散る花弁の雨。
 祝福に包まれて、二人はくすくすと笑いあった。
 幸せな一歩。
 今日という日の誓いは、今日という日の幸せは。
 きっと、ずうっと未来まで続いているのであろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

リンデ・リューゲ
【凛夜】

菩提樹で仕立てた正装に
胸元に咲くカンパニュラのチーフ
絵筆が染めた色彩は思いの外身に馴染む

けれどこういうきちんとした装いは初めてで
もたつく動作で彼女セレクトのタイを締める
そういえば今日は何のお祝いだっけ?

なにそれ(ふふっ)
それなら俺をかっこいいって言ってくれる記念日も追加で
誉め言葉をおねだりするのはかっこ悪いけれど
今日くらいはいいでしょう?

嬉しさにへにゃり緩んだ頰を引き締めて咳払い
小さなきみへ差し伸べる指先
俺と踊ってくれますか?

お針子さんたちも
歌って
踊って

俺が咲かせた花を纏う姉は
花に負けないくらいあざやかで
むくむく湧き上がる誇らしさ
ああいけない言いそびれてた
ヨルも、凄くきれいだよ


ティヨル・フォーサイス
凛夜

リンデだってもう大人だもの
正装の一つくらい
そう思ったのだけれど

見立て通り緑のタイもばっちり
思った以上に様になっているから満足げ
似合ってるわよリンデ
今日は「リンデが正装した記念日」でしょ

おねだりに笑うのは私の番
うんうん、格好いいわ
弟の望みを叶える言葉は紛れもない本心

泣いていた男の子が立派になって、なんて
まだまだ頼りないけれど
実はそんなところに安心しているのは気づかずに

飛べば揺れるカンパニュラのドレス
リンデに満足して忘れていたけれど私もだった
スカートは慣れないからそわそわする

恭しく指を取り
よろこんで

羽をきれいと言われるのとは違う
ありがとうと視線を彷徨わせ

お針子さんも上手ね
ふふ、今日はいい日だわ



●きみのいろ
 お針子達が、花の楽器を吹き鳴らす。
 スズクサのサクソフォンに、百合のラッパ。
 茨を編んだハープに、ソテツのツリーチャイムに、綺麗な音がするデイジーの鉄琴。
 にぎやかに華やかに、歌い踊るお針子達。
 そんな中で、ミルクティ色の髪を揺らしてくすくすと笑った小さなフェアリー。
「――うん、うん。よく似合っているわね、リンデ」
 鏡とにらめっこしながら碧色のタイをおぼつかない手付きで締めるリンデの周りを、くるくるとティヨルが飛び回る。
 リンデの絵筆で染めた色彩。
 菩提樹で仕立てたフォーマルスーツの胸元に咲くは、ティヨルの瞳と同じ色のポケットチーフ。
 ――リンデだってもう大人だもの。
 正装の一つくらい、と思ったのだけれど――。
 ティヨルの見立てた通りに。
 リンデの瞳と同じ、翠色のタイも相まって思った以上に様になっている。
 鏡を覗き込んでは、腕を組んで何度も何度も頷くティヨル。
「そう? ありがとうヨル」
 やっとの事でタイを収めたリンデは、ふわふわ飛び回っているティヨルを見上げて。
「……そう言えば、今日は何のお祝いだっけ?」
「決まってるでしょう、今日は『リンデが正装した記念日』でしょ」
 ティヨルの言葉に、ふは、と笑み零したリンデは肩を竦めて。
「なにそれ。――それなら、俺をかっこいいって言ってくれる記念日も追加しておいてくれる?」
 緩めた眦。
 ――今日くらいは良いでしょう? なんて。
 リンデの翠に揺れるおねだりの色。
 ふふ、と笑ったティヨルがはたはたと翅を揺らして。
 鏡の上に腰掛けると、悪戯げに笑いながらリンデを見下ろした。
「うんうん、格好いいわ。流石、私の弟ね。バッチリキマっているわよ」
 彼にねだられて伝えた、褒め言葉。
 しかしそのティヨルの言葉には、偽りは一つも無い。――紛れもない本心だ。
 あの日泣いていた男の子が、こんなに立派になって。
「ふふ、ありがと。お姉さん」
 へんにゃりと頬を緩めて笑むリンデに、肩を上げて、下げて。
 まあ、――まだまだ頼りない所もあるけれどね。
 ――彼が『弟』らしい振る舞いをする事でどこか安心している事に、彼女はきっと気づいていない。
 そこに、リンデはこほんと咳払い一つ。
「……ねえ、ヨル」
 鏡の上に腰掛ける彼女へと掌を伸ばすと唇をきゅっと引いて、少しばかり真剣な表情。
 彼の様子にティヨルは瞬きを一度、二度。
「俺と踊ってくれますか?」
 ――ああ、彼の事ばかりで忘れていた。
 自らの瞳の色と、同じ色。
 ――カンパニュラのように、ふうわり揺れる柔らかなドレス。
「……よろこんで」
 うやうやしくリンデの指先に掌を添えると、小さなお姫様みたいなフェアリーは笑った。
 そうして。
 お針子達が楽しげに踊る中、小さなフェアリーと人の青年は踊りだす。
「お針子さんたちも、とってもダンスが上手なのね」
 くるくる回るティヨルに合わせて、リンデは腕を上げて、ステップ踏んで。
「そうだね。――ああ、そうだ。ねえ、ヨル」
「何かしら」
 答えるティヨル、ひらひら揺れるカンパニュラ。
 どうにも慣れぬ衣装は落ち着かないもの。
 くっと背を伸ばして、翅をはためかせて。
 首を傾いで答えながら、ティヨルはスカートをきゅっと引いて。
 ――そんな姿は、まるで舞う花弁のように。
 ……いいや、リンデにはそれ以上にあざやかに見えて。
 自らがその花を咲かせた事が、自らの姉がとても綺麗な事が。
 なんとも、誇らしい。
「ヨルも、凄くきれいだよ」
 だからこそ、混じりけの無い褒め言葉を彼女にストレートに伝えよう。
 本当の気持ちだけを言葉にして、リンデは瞳を細めて笑った。
「!」
 その言葉にティヨルの胸は、ときん、と跳ねる。
 それはいつもみたいに、翅をきれいと言われるのとはまた違う。
 ティヨルは少しだけ誤魔化すみたいに、目線を泳がせて。
「……うん、ありがとう」
 ――ああ。今日は、いい日ね。
 なんて、思うのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

境・花世
綾(f01786)と星見の館へ

皓々と白い外套は貴公子めいた優美さで
あんまりきみに似合っているから、
思わずぎゅっと瞑ってしまうよ

だって、まぶしくて

深く被り直したヴェール越し、
薄く霞んでようやく眸を開く
木漏れ日の星を宿す髪は
それでも見惚れるくらいきれいなんだ
あの日からずっと、あの日よりずっと、
いつの間にかきみだけがこんなに光って

わたしたち、出逢えたね、おめでとう

心からのお祝いをささやいた声は、
花がそよ風に揺れるように震えるけれど
しゃらりと薄紗の衣擦れの音が隠してくれるかな
自分がどんな顔をしているのかもわからなくて
……恥ずかしいから、見たらだめだよ


都槻・綾
f11024/かよさん

差し伸べる手に掴めぬ星灯は
さやさやと揺れる木漏れ日

両手を器の形にしても
掬い集めることは出来ない

然れど
纏いし外套に灯る金木犀も
薄紗を彩る勿忘草もまた
星屑のように煌いて

私達も星座になったみたいですねぇ
或いは星の海を漂う旅人か

楽しげに振り向けば
何やら瞳を閉じて固まっている様子

小首を傾げるも
風に零れた彼女の囁きが暖かだったから
ふわり和んで首肯する

おめでとうございます
そして
ありがとう

少し擽ったい気持ちですねぇ、と笑いつつ
彼女のヴェールを上げて
花のかんばせを覗き込もうか

美しく咲いた牡丹は
いっそう色付いて春爛漫
柔らかな霞の如き薄紗は、ほら、見立ての通り――

お似合いですよ
とても、綺麗です



●花の色
 歩みに揺れる外套に、光が落ちる。
 歩むたびにそれは形を変えて――。
「ねえ、かよさん。――私達も星座になったみたいですねぇ」
 花と蔦の絡み合う、美しき天蓋。
 掬そうとも掬せぬ木漏れ日が、星明かりのように降り注ぐ丸いホール。
「或いは、星の海を漂う旅人でしょうか?」
 綾が白い清廉な花を束ねた皓い外套を、満ちる光に揺らして振り向けば。
 花世の薄紗を重ねたドレスにも、彼と同じく星灯が宿っている。
 それでも、勿忘草の飾りを散りばめた星空のヴェールで赤を覆った花世は、ぎゅうと目を瞑って。
「……かよさん?」
 瞬きを重ねて、首を傾ぐ綾。
「……だって、まぶしくて」
「そう、ですか?」
 きゅっと深くヴェールを被り直す事で薄く霞み透ける視界の向こうで、やっとの想いで淡紅色の瞳を開いた花世。
 そう。
 綾に誂えた眩い服が、まるでお話の中の王子様――貴公子のようで。
 あまりに彼に似合っていたものだから。
 木漏れ日を星に。
 髪に宿星を宿して立つ彼は、まぶしい。
 ――それは瞳を見開いた今も同じ。
 見惚れてしまうくらい、きれい。 
 あの日からかわらず、ずっと。
 あの日からかわって、ずっと。
 いつの間に、きみだけがこんなに光ってしまったのだろう。
 きみだけが、こんなにも。
 ――ほかの星々が霞んでしまうくらいに、眩い。
 花世はほうと、細く細く息を吐き出して。
「ねえ。――わたしたち、出逢えたね」
 光の星を宿した姿を揺らして、かんばせを上げれば微笑みを浮かべた。
「おめでとう」
 それは心よりの祝いの言葉。
 そよ風に揺れる花弁のように、薄く震え揺れる言葉。
 その震えもきっと、しゃしゃらと揺れる薄紗の衣擦れの音が隠すだろうと。
「はい、おめでとうございます。――そして、ありがとう」
 少しだけ擽ったげに笑った綾が、花世へと一歩近づいて。
 しゃらり、と、星空のヴェールを上げて。
 八重牡丹の咲くかんばせを覗き込んだ。
 交わす視線。
 高鳴る鼓動。
「……恥ずかしいから、――見たらだめだよ」
 刻む音は、きっと逸っているのであろう。
 花世は今、自分が笑えているかすら解らない。
 ふくふくと笑んだ綾は細く小さな声で、花世だけに聞こえるように囁く。
 ああ、見立ての通り。
 それは――綾だけの知っている花世の色。
「――お似合いですよ。とても、綺麗です」
 そんな甘い言葉で、囁かれてしまったら。
 花世と綾に降り注ぐ、真昼の星灯り。
 しゃら、しゃらと響くは、花の布が揺れる音。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

逢坂・理彦
煙ちゃんと(f10765)
お祝いかぁ…俺達は何をお祝いしようか。
(ペアリングをチラリと見て)
思い当たるお祝いは結婚式かなぁ、なんて。
指輪は渡したし誓いもたてたけどせっかくの機会だからお祝いしてみようか。

さっき作った白梅の羽織が花嫁さんの打ち掛けみたいだなぁってこっそり思ってたんだけど夢が叶っちゃったな。
俺は煙ちゃんが作ってくれた牡丹の着物。
こういう柄物はあんまり着たことがなかったら…その似合ってるかな?
ふふ、煙ちゃんはもちろん似合ってるよ。

針子さん達も祝ってくれるの?嬉しいなぁ。
ちょっと嬉し過ぎて泣いちゃいそう。


吉瀬・煙之助
理彦くん(f01492)と
わぁ…街中がすごく華やかになったね
どこも楽しそうな場所ばかりだし迷っちゃうね
理彦くん、どこに行こう……?
えっ、結婚式…!?
ええと…それは、その……うん
既に受け取っている指輪に触れながら
照れつつも嬉しそうに差し出された手をとるよ

理彦くんの作った白梅の羽織に袖を通して…
ふふっ、似合ってると嬉しいなぁ…
理彦くんは…うん、やっぱり牡丹が凄く似合ってかっこいいよ

こうやって式まで出来ると思ってなかったから
凄く幸せ…
この幸せがずっと続きますように…



●きみのひとみのいろ
「本当に街中がすごく華やかになったね。何処も楽しそうで、迷っちゃうねえ」
 ふかふかとした尾を揺らし、ゆるく笑んだ煙之助は街を見渡して。
 花の舞うパッチワークの彩りの街並みには、縫い上げられた鮮やかな建物が立ち並び。
 お針子達は花を纏い、お祝いに歌い踊っている。
「そうだねえ」
 理彦は楽しげなお針子達の様子を横目に、相槌ひとつ。
「――ねえ、俺達は何をお祝いしようか?」
 そうして。
 ふ、と噴水の前で足を止めた理彦はぽつりと呟いて、煙之助に首を傾いだ。
 その視線を向けたるは、自らの指先。
 煙之助の瞳と同じ色――彼と揃いの指輪。
「……思い当たるお祝いは結婚式かなぁ、なんて」
 理彦は少しだけ照れくさそうに擽ったそうに、少しばかり視線を泳がせて言葉を紡ぎ。
「えっ、結婚式…!?」
 瞳をまあるく見開いた煙之助は、跳ねる胸を掌で抑え込むように肩を上げて言葉を重ねた。
「ええと…それは、その……うん……、えっと……」
 そして自らの指先。
 理彦の瞳色の石へと、一度目線を向けた煙之助。
 そりゃあ。
 ――一度は誓いも立てた、指輪だって交換した。
 しかし、しかし。
 今日はお祝いの日なのだから。
「――せっかくの機会だからお祝いしてみようか」
 柔らかく眦緩めた理彦が、掌を差し出して。
「……うん」
 差し出された掌を煙之助は、きゅっと握り返した。

 ろんと揺れる、幸せ運ぶ鈴蘭の鈴。
 ぴかぴか陽光瞬く、噴水の前。
 先程煙之助へと仕立てて貰ったばかりの白梅の羽織が、理彦にはなんだか花嫁の打ち掛けの様にも感じられて。
「……ふふっ、似合ってるかな?」
 笑う煙之助に、理彦はこっくり頷き。
「うん、勿論よく似合ってるよ……、なんだか夢が叶ったみたいだなあ」
「夢?」
「うん。……花嫁さんみたい」
 理彦の言葉に一度目を見開いた煙之助が、本当に擽ったそうに、甘く甘く笑って。
「ん……。理彦くんは、牡丹が凄く似合ってかっこいいよ」
「――こういう柄物はあんまり着たことがなかったけれど、……うん、煙ちゃんにそう言ってもらえると嬉しい」
 くす、くす。
 笑い合う二人。
 ――そこへ。
「おー、おいわい?」「おいわいだね」「なあに?けっこんするの?」
「まかせてー」「うたう?」「えんそーするー!」
 お針子達が、お祝いの気配に駆けてきた。
「指輪交換とかするー?」「ボクが神父さんをしていー?」
「うん、頼んでも良いかな?」
「まかせたまえー」「おおー」「ちゅーする?」
 格好良いポーズで宣言するお針子に、お針子達は口々に色んな事を言い合って、ぱちぱちと拍手。
 そうして重ねる言の葉は、お祝いの一色。
 始まる彼等の踊りに、歌に、オーケストラ。
 舞い散る花弁。
 響く幸せの音。
「ふふ、ありがとう。……嬉しいなあ」
 笑みにこみ上げる感情が入り混じって、理彦は肩を擡げて唇をきゅっと噛んで。
 ああ、嬉しすぎてすこし泣いちゃいそうだ。
「うん、……本当に」
 こっくりと頷いた煙之助はぐっと息を呑んで、瞳を閉じた。
 なんたって。
 こうやって式まで出来るなんて、思ってもいなかったから。
 ――ああ、夢みたい。
 でも、これは本当で。――この幸せがずっと続きますように、なんて。
 煙之助は、瞳を開いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

シーヴァルド・リンドブロム
フルエレ殿(f24754)と

ローズマリーのコートを翻し、祝祭に湧く街を往こう
陽光眩い星見の館は、闇夜とはまた違った風情
成程、昼が造りし夜か……フルエレ殿の言葉は面白い

折角の衣装なのだ
喜びの日を祝う為に、どうか一緒に踊ってくれないかと
芸術を愛する神へそっと手を差し伸べよう
「……実は、俺も踊りは詳しくないのだが」
う、うむ、ワルツだな(ぎくしゃくした、ロボットみたいな動き)

ああ、それでも木漏れ日を受けて色づく花のドレスは
光の祝福を受けているかのようで
ひとの鼓動とゆるやかな円環に身を委ねて踊れば
花びらが舞うように、ふわり身体も宙に浮く(空中浮遊)

形にとらわれぬ、神と人とが生み出す円舞曲で
今日を祝おう


フルエレ・エルムウッド
シーヴァルド様(f01209)と
仕立てて頂いたルクリアのドレス姿で星見の館に
「昼が造り給う夜…と語りましょうか。美しいのです」
ダンスのお誘いに笑み零れ喜んでと頷き
「ステップに余り詳しくないのが申し訳ないですけれど」
とても嬉しいですとワルツを刻み手を伸べて
「ワルツの三拍子は、ひとの鼓動が作り出すリズムと言います
不思議で、素敵」
ところで私は小柄ですのでシーヴァルド様のお腰が心配です
ユーベルコードで少し浮けば丁度良いかも
たん、と浮けば折角のドレスが変化する…ので
浮かんだりユーベルコードを切って落ちたりすれば良いのです!
あら、シーヴァルド様も空を行けるのですね、ふふふ
私達のステキなワルツは遥か天蓋まで



●きみと、ワルツを
 絡み合う蔦に咲く白い花。
 その館では洩れ入る木漏れ日は、星々の輝きと成る。
 桃色ルクリアの春めくフレアドレスに星彩宿したフルエレは、シーヴァルドに振り向くとくすくすと笑った。
「昼が造り給う夜……とでも語りましょうか。……本当に美しいのです!」
 彼女が笑うと、降り落ちた星明かりもぴかぴかと瞬き。
「ふむ、成程、昼が造りし夜か……フルエレ殿の言葉は全く面白いな」
 シーヴァルドは眩しそうに天蓋を見上げると、瞳を細めた。
 彼のローズマリーの外套にも、まとめ上げた髪にも。
 平等に降り注ぐ、陽光の星灯。
 それは自然が作ったスポットライトのようにも感じられて。
 くっと白いかんばせをフルエレに向けたシーヴァルドは、彼女へと掌を差し出した。
「――折角の衣装なのだ、喜びの日を祝う為に、どうか一緒に踊ってくれないか?」
 美しき、芸術を愛する女神へと。
 舞いへと誘う彼の姿は、とても様になっている。
 こっくりと花笑んだフルエレはレースのハーフグローブに包まれた指先を、その掌へと重ねて。
「ええ、是非に。……余りステップに詳しくないのが、申し訳ないですけれど……」
「――安心して欲しい、……実は、俺も踊りは詳しくないのだが……」
「ふふふ、……そうですか。では、ワルツをゆっくりと合わせて行きましょうか」
 フルエレの言葉通り、刻むステップはワルツ。
 いち、に、さん。
「――ワルツの三拍子は、ひとの鼓動が作り出すリズムと言います。……ね、不思議で、素敵ですね」
 ぎく、しゃく、ぎく。
 ロボットみたいな動きで刻むシーヴァルドのステップ。
 それでも。
 太陽の星灯りに揺れるローズマリーと、ルクリアの色は光の祝福を受けているかのよう。
 ――一歩、フルエレが空へと舞う。
 花弁を舞わせて、くるりとステップ。
 それは彼との身長差を慮った彼女なりの優しさであったのだが、シーヴァルドにとっての僥倖でもあった。
 シーヴァルドは空中を歩む事も得意とする。
 むしろ地よりも、ずうと踊りやすいかもしれない。
「……あら、シーヴァルド様も空を行けるのですね!」
 ふふふ、と笑うフルエレ。
 ステップをあわせる事に必死なシーヴァルドは、唇の笑みを深めてこっくりとただ頷いて。
 ひとの鼓動、ゆるやかな円環。
 神と半魔半人とが生み出す円舞曲は、ゆるやかに花と舞い。
 ――ダンスに形など関係はないのであろう。
 天蓋まで舞い、白花を揺らして。
 くる、くる、くる。
 形になどとらわれず心と身体の赴くままに、腕を引いて、回って、背を弓なりに。
 空を歩む、甘やかな足取り。
 祝福宿した星光に満ちるステップで、――今日を祝おうか。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

栗花落・澪
【白桃翠】

作成した衣装着用
すごく着心地いいね、ほんとに花を纏ってる気分

百鬼さんはもっと自信もっていいよ
薄荷さんも、明るい黄色がよく似合ってる
リアムもね

おめかししたテディベアに優しく微笑み

いってらっしゃい
リアムは僕と一緒だよ

二人が踊る間はリアムを預かり
足元に★どこにでもある花園を広げ
花弁を折って作った蝶々に【指定UC】で命を宿し
舞う花と花弁の蝶、素敵なコラボじゃない?

僕もこれでも男だからね
リードするのは任せて
お手をどうぞ、お姫様?

踊りのコツは一つだけ
身を任せるだけでいいんだよ

薄荷さんに誘われれば喜んで、と手を取りかけて
…あれ?逆じゃない?
確かにチビだけどー!
もー、わざと難しいステップ入れちゃうぞ


百鬼・智夢
【白桃翠】

ラナンキュラスのふわふわワンピース着用
な、なんだか恥ずかしいです…
くるりと回ってみればふんわり広がる裾に少し照れ
★リアムもネモフィラの空色ジャケットを着せてもらい
素敵なお洋服もらえてよかったね、リアム
お二人もモデルさんみたいで素敵です…!

えっ、お、お姫様なんて…もう、恥ずかしいですよ薄荷さん…
誰かと踊るなんて初めてで…えっと…こ、こうでしょうか…?

初めは戸惑いながらも音楽は好きだから
薄荷さんのリードに合わせて踊るうち
だんだん楽しくなって、無意識に笑顔に

私がうまく踊れるのは、きっと二人のおかげです
足が、勝手に動いちゃう

二人が踊ってる時は…小さな小さな声だけど
少しだけ、歌ってみようかな…


薄荷・千夜子
【白桃翠】
お花のお針子さんに作ってもらった向日葵の衣装をまとって
二人の衣装も見てにこにこ頷きながら
やっぱりお二人ともよくお似合いです!
素敵な花のお洋服と、新しい国の始まりをお祝いですね

せっかくですので、可愛いお姫様
一曲いかがでしょう?
智夢さんに手を差し出してダンスフロアにお誘いして
ふふ、こうしてみるとなんだか王子様な気分ですね!
ステップに合わせてUC使用
踊りながら花嵐で彩って
くるくる音楽に合わせて踊って一曲楽しんだら澪君と交代を
二人が躍っているのを楽しそうに眺めて
それじゃ、澪君私とも踊りましょうか?と男性役を申し出て
ほら、身長的に…なーんて冗談ですよ、よろしくお願いしますとくすくす笑いながら



●しあわせなひ
 色鮮やかなパッチワークの街並み。
 お花のお針子達は鮮やかな花弁を舞い散らせ、駆け回って、ぴょんぴょん跳ねて。
 今日は、今日は、新しい国のはじまりの日。
 くるりと回れば、ふかふかと広がり揺れるスカート。
 甘い薄紅色の衣装と、紅茶色の長い柔らかな髪を、彩り飾る花飾り。
「な、なんだか恥ずかしいです……」
 ふわふわした服はそれだけでなんだかとっても、ドキドキしてしまう。
「でも、素敵なお洋服を貰えて良かったね、リアム」
 智夢が囁いてぎゅうっと抱きしめたテディベア――リアムもネモフィラ生地の冴え渡るような空色ジャケットを纏っておめかし中だ。
「うん、うん。すごく着心地いいね、ほんとに花を纏ってるみたいな気分だよ」
 ショートパンツを覆う形で広がる裾をふかふか揺らして。
 レースのグローブをきゅっと引き絞った澪は、改めて自らの衣装の細部まで確かめるように。
「ふふ、やっぱりお二人とも、よくお似合いです!」
 向日葵の花がぱっと咲いたハットに手を添えた千夜子は、花の様に微笑みながら何度も頷いて。
「そ、そんな、えっと……その、お二人もモデルさんみたいで、す、素敵ですよ……!」
 褒め言葉にピャッと肩を跳ねた智夢は、更にぎゅっとリアムを抱いて照れ、照れ。
 服をふかふかと揺らして、小さく首を振り。
「百鬼さんはもっと自信もっていいと思うよ」
 そんな彼女の姿に、澪は金蓮花を跳ねさせてくすくすと笑って、その琥珀色の眦を緩め。
「薄荷さんも、明るい黄色がよく似合ってる。――勿論、リアムもね」
「ふふ~、ありがとうございます」
「……リアム、よ、良かったね」
 それは彼女の服に咲く向日葵のように。
 華やかに笑った千夜子は、やっぱり照れ照れしている智夢へと求めるように手を伸ばして。
「さあさあ、素敵な花のお洋服と、新しい国の始まりのお祝いです」
 そのまま膝を付くと、キリリと引き締めた表情。
 逆の手を胸に当てると、智夢を見上げて千夜子は尋ねる。
「可愛いお姫様。――一曲、ご一緒に如何でしょう?」
 お誘いに目をまあるくする智夢。
「えっ、えっ……、お、お姫様……?」
 自分を指差して、本当に? と首を傾げて。
「ええ。――お受けいただけますか?」
 なんて、千夜子がぴかぴかスマイルで応じれば。
 一瞬の逡巡。
 それから瞬きを重ねて、かんばせをうつ伏かせた智夢は瞳を細めて。
「…も、…もう、……恥ずかしいですよ薄荷さん……」
 ちいさく、こっくりと頷くと、その掌に手を重ねた。
「はいはい、いってらっしゃい。楽しんできてね」
 リアムを預かると、肩を上げて笑う澪。
 千夜子と智夢は、音楽の渦へとその足取りを踏み出した。
「……えっと……こ、こうでしょうか…?」
「そう、そう、上手上手。――ふふ、こうしてみるとなんだか王子様な気分ですね」
 千夜子のリードで、智夢は初めて人とステップを踏んで。
 そうだ、と花笑んだ千夜子は術を一つ。
 ――それは吹き荒れる花嵐。
 ステップを踏めば、足先より咲き乱れる花。
「ねえ、リアム。見ててご覧」
 そこに澪が左腕に魔力を込めて、大きく凪げば。
 仮初の命が宿された、花弁を折って作った蝶々がぱ、と舞った。
「……わ、あ……!」
 識らず識らず、踊るステップに合わせて、跳ねる心。
 自らも気づかぬ内に、智夢は笑みを浮かべて――。
「さあ、次は澪君も!」
「え、わ、わわっ……」
「ん、僕もこれでも男だからね――リードするのは任せてよ」
 くうるり回った瞬間に、千夜子がぱっと智夢の手を離せば。
「お手をどうぞ、お姫様?」
 宙を舞った智夢の手に、澪は掌を優しく重ねて握る。
「――ねえ、薄荷さん。踊りのコツは一つだけ。……身を任せるだけでいいんだよ」
「は、……はいっ!」
 パートナー交換に、瞳を白黒させる智夢だが。
 澪の言葉にはこっくり頷いて、そのステップを委ねる。
 揺れる、揺れる。花のスカート。
 ふんだんにあしらわれた花々が揺れる姿は、まさに花のようで。
 ああ、これが踊る、という事なの、でしょう。
 ――足が、勝手に動いちゃう!
 笑み浮かべた智夢は、いち、に、さん。
 澪にリードされるがままに、その身体を預けて――。
「はあ……、どきどきしました……」
 ステップを終えた智夢は、胸を押さえて緊張を取るように。
 そこに。
「あ、それじゃ、澪君。私とも踊りましょうか?」
 なんて、千夜子が手を差し出すと花みたいに笑った澪。
「喜んで――」
 そうして差し出された掌に掌を重ねようとして、はたと気がついた。
「……あれ?逆じゃない?」
「ええ、ほら、身長的に……」
「わーっ、言ったね! 確かにチビだけどー!」
「――なーんて冗談ですよ、よろしくお願いします!」
 くすくす笑いながら手を重ね直す千夜子。
 ぷう、と頬を膨らせた澪は彼女の手を取って、くっと引いた。
「もー! わざと難しいステップ入れちゃうぞ」
「ふふふ、望む所ですよ!」
 くる、くる、くる。
 ステップ踏んで、腕を引いて。
 踊りだした二人。
 リアムをきゅ、っと抱きしなおした智夢は、瞳を閉じて。
 ――小さな小さな声で、歌い出す。
 ああ、なんて、なんて。
 今日はたのしくて、しあわせな日なのだろう。
 揺れる、揺れる、お花のようなステップ。
 小さな歌声が、彩りを添えて――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

サン・ダイヤモンド
【森】
完成した衣装に身を包み皆をお祝いして回る
お針子達に逢えば衣装の礼と
「新しい国おめでとう!」

それから少しだけ人目を避けて
くるくると踊るように彼の手を引き誘ってゆく
そこはたくさんの薔薇が咲き誇る秘密の花園の様な場所

「僕、大きくなったでしょう?」
傍に寄り薔薇色の瞳をじっと見詰めて
「もうすぐブラッドに追いつくよ」

僕はもう子供じゃないよ

「ねえ、ブラッド。僕の誕生日のお祝いに――少しだけ、あなたを頂戴?」
背伸びをして齧り付くのは無防備なあなたの首元

飲み込んで、朝露の煌き宿す白いドレスを染めていく
キラキラと星が輝く黒い夜空と白い地平のグラデーション

「見て、綺麗でしょ?」

ほろ苦い、あなたの色で僕を飾った


ブラッド・ブラック
【森】
サンと共に皆のお祝いを
祝われれば素直に礼を

後、サンに導かれ立ち寄った薔薇の庭園の美しさに感嘆を漏らし
女神の様な白いドレスを靡かせて
その中でも一際美しく輝くサンに心を奪われる

サンの声で我に返り
「嗚呼……、そうだな。もう十七か。大きくなった」
子供へする様にサンの頭を撫でてやるも
真っ直ぐで、だが何処か魔性を秘めた瞳に僅かたじろいで


抵抗する間も無かった
囚われていたのやもしれん

「…ッ何をしている!?」
慌ててサンを引き離す
俺は液状体だから多少欠けた所で何の問題も無いが
生き物の体に良いものでは無いはずだ

黒く染まった女神を呆然と見詰め

『あなたしかいない』と赤い薔薇に秘めた
その想いごと呑み込まれた気がした



●7年目の黒と白
 鮮やかな街並みに降り注ぐ、花弁の雨。
 花の楽器を抱えたお針子達が、幸せな音を奏で響かせ。
 街を行くお針子達は、皆一様にうきうきと喜色に満ちている。
 ふかふかとした耳をお祝いの空気に揺らして。
 猛禽の爪先で街路を跳ねるように蹴ったサンは、透けるほど柔らかな薄紗を花弁のように重ねた緩やかな白のドレスと、合わせて幾つもの束に編み上げて貰った髪を翼のように靡かせてくるりと振り返り。
「ねえ、素敵な服をありがとう、それと――、新しい国おめでとう!」
「ええよー」「よくできました」「ありがとー!」「おめでとー!」
 大きく手を振るサンに、声を掛けられたお針子達はぴょんと跳ねて応え。
 ぱっと花弁を舞わせて、祝いの日を鮮やかに彩る。
「おいわいするのね! おめでと! いっぱいしあわせしてね!」「おめでとおめでとー」
 すれ違うお針子達はその度、口々にお祝いの言葉を告げ往き。
「有難う、感謝する。――それに、新しい国をおめでとう」
 びろうどの手触りのすべやかな花生地に刺繍が施された黒のマントを翻したブラッドが、湾曲した大きな角を傾けて。
 眼孔の奥に揺れる桃の視線を、彼等へと差し向けた。
「わー、ありがとー」「せやせや」「たのしいねえ」「たのしー」「わーっ」
 跳ねる、飛ぶ、手を振る、くるくる回る。
 ブラッドの言葉に応じたお針子達等は、踊るような足取りで歩みゆく。
 ――しかし、いいや。
 踊るような足取りは、別段彼等だけと言う訳では無い。
「ねえ、ねえ、ブラッド! こっちだよ!」
 ブラッドの手を引くサンもまた、軽やかなステップを踏むように。
 ふかふかと狐の尾が揺れる。
「……それは良いが、……一体、何処に向かっているのだ?」
「それはね――」
 蜂蜜色の瞳を悪戯げに細めて、くすくす笑うサンはブラッドの腕を引いて。
 軽い足取りは草木を飛び越え、大きな風車を曲がって――。
「ここだよ!」
 そうして足を止めたサンは大きく腕を広げて、じゃーん、と言わんばかりのポーズで微笑んだ。
 膨らみ始めた蕾。
 今にも零れ落ちそうなほど、八重に重なる花弁を重たそうに蓄えた花。
 咲き乱れる、色とりどりの薔薇の花。
 赤、青、白、黒、黄色に緑。太陽みたいなオレンジに――。
 茨に隠し覆われた庭園は、まさしく『秘密の花園』であった。
「さっきね、皆に教えてもらったんだ。――……ねえ、綺麗でしょ?」
「嗚呼、……すこし驚いた。美しい場所だな」
「でしょ!」
 ブラッドの手を離すと、良かった、とまたくすくす笑って。
 ふわふわと薄紗を靡かせて、跳ねるサン。
 それはブラッドにとって――太陽の下にあってなお月のように煌き、花に遊ぶ女神のように見えて。
 呑む息すら持ち合わせぬブラッドは、ただ心を、視線を、サンに奪われてしまう。
「――ねえ、ブラッド。……僕、大きくなったでしょう?」
 跳ねて、跳んで。
 今にも大空に飛び立とうとしている鳥のような身軽さで、サンはブラッドへと身体を寄せて言葉を紡ぐ。
「嗚呼……、そうだな」
 頷くブラッド。
 そう、サンは大きくなった。
 それでも7年前よりも随分と高くなった背を、7年前と変わらずブラッドは撫でてやる。
 しかし。
 ブラッドの薔薇色の瞳としっかと視線を交わす蜂蜜色は、その形を笑みに和らげ。
「もうすぐ、ブラッドに追いつくよ」
 その瞳は幼子のように真っ直ぐだが、その奥に揺れる色は色を知る女神のように蠱惑的だ。
 ……僕はもう、子どもじゃないよ。
 サンの瞳に揺れる、相反する二つの色。
 ――ブラッドはきっと、その瞳に囚われていたのであろう。
「ねえ、ブラッド。僕の誕生日のお祝いに――少しだけ、あなたを頂戴?」
 背伸びをしたサンはブラッドの背へと腕を回して。
 抱き寄せるように、その黒の首筋へと白い歯を立てる。
「……ッ!?」
 タールの身体に痛みは無い。
 ――しかしその自らの身が、生者にとって良いものである理由が無い。
「何を、しているっ!?」
 一瞬遅れて慌ててサンを引き剥がしすブラッドだが。
 こくりと喉を鳴らしたサンはそれは綺麗に綺麗に、作り物みたいに整った表情で笑って。
 星が輝く黒い夜空と、白い地平のグラデーション。
 ほろ苦い、あなたの色。
「ね、見て。……綺麗でしょ?」
 笑うサンは、朝露の煌き宿す白いドレスを黒に染めて。
 それがひどく、ひどく、綺麗な姿だったものだから。
 笑うサンをブラッドは、ただ呆然と見つめて――。
 『あなたしかいない』。
 赤い薔薇の秘めた言葉。
 嗚呼、――全部、全部、お前は呑み込んで。
「……そうだな、綺麗だ」
 ブラッドは、ぽつりと言葉を零した。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

朧・ユェー
【紅月】

とても似合ってますよ、お綺麗ですねぇ
紫の尾ひれのドレスに身を包み白きレースを護られる君
今日の君は海の中を泳ぐ人魚

君と出逢ってもうすぐ一年
誘われ導かれ白道、何と無くの興味
ここまで執着するとは昔の僕では考えられたない事
紅に魅了されあかく染まった赫月
あの誓いは永遠に君とあの子達を守護しよう

この出逢った奇跡を祝いましょうか?
そっと手を差し伸べてダンスのお誘い

彼女の呼吸に合わせ舞う
いつ見ても彼女の舞は美しい
何度か交わした舞台の舞は心地良い

嗚呼、この美しい人魚を地上へと誘うか?それとも
何処かへ攫ってしまいましょうか?
ねぇ、僕の人魚姫さん

君となら闇の底でも楽しい時間、何処までも一緒に堕ちましょうか


蘭・七結
【紅月】

紅桔梗の彩に身を包んだあなた
白も黒も。どちらも魅力的だけれど
色彩を得たあなたは、いっとうステキね

誇り高くうつくしい人魚たち
彼女たちのように游ぐことが出来るかしら

遣いの白に誘われたあなた
響く扉音
眸に映った月の彩を
忘れたことは一度もない

館を、あの子たちを、わたしを
献身的に守護してくださるひと
紅の月へと誓ったひとつの契り
あなたの生命はわたしが護る

出逢いの奇跡に、感謝を
細指に指さき重ね
鰭のドレスが游ぶ

うつくしい舞いを失ったこともあった
それでもあなたは、変わらずそこに居て
今、再び共にすることが心地好い
呼吸重なればあなたへ微笑みひとつ

そうね、それも良いけれど
夜の果てへと引き込む結末も、愉しいかしら



●しろ
 百合のラッパの音は、遠く響き。
 重ねて響動むは、蓮の太鼓。
 紡がれた旋律は、祝いの歌だ。
 地上を行く、人魚の尾。
 尾鰭のように広がり柔らかくスカートはなよやかに。
 コツと響く足音だけが、七結の足を照明するよう。
「今日の君は、海の中を泳ぐ人魚のようだね」
 桔梗の彩りを燕尾に変えて。
 その身を包んだユェーは、銀糸揺らして眩しそうに七結を見やり。
「とても似合ってますよ、お綺麗ですねぇ」
「まあ。ナユは彼女たちのように、游ぐことが出来るかしら?」
 問い笑む彼女の足取りは、誇り高くうつくしい人魚のよう。
 ユェーの前へとその身を躍らせると、牡丹一花を揺らして笑った。
「ふふ。白も黒もどちらも魅力的だけれど。色彩を得たあなたは、いっとうステキね」
 月の名を冠する白きひと。
 『あか』を咲かせたのなら、どんなに美しいのでしょう、なんて。
 ――もう一年も立つだろうか。
 愛しき遣いの白に誘われた彼の眸。
 その黄金を月光のようと思ったのは、まるで昨日の事のよう。
「ふふっ、そうだねぇ。お褒めに与り光栄だよ」
 笑みに歪む眸。
 ここまで『あか』に執着するとは、過去のユェーには想像も出来なかった事だ。
 紅に魅了され、あかく染まった赫月。
「――この出逢った奇跡を祝いましょうか?」
 七結はそっと手を差し伸べて、ユェーを見上げる。
 白きひと。
 館を、あの子たちを、わたしを――献身的に守護してくださるひと。
 紅の月へと誓ったひとつの契り。
 あかに染まった、白きひと。
 ねえ。あなたの生命は、わたしが護るわ。
「勿論、祝いましょう」
 赫月への誓いは永遠に、――君とあの子達を守護しよう。
 細い指先に掌重ねて、遠く響く旋律にそのステップを委ね。
 再び刻む足取りは、三拍子。
 くうるりくるり、舞う円舞曲。
 ――うつくしい舞いを失ったこともあった。
 それでもあなたは、変わらずそこに居て。
 今、再び共にすることが心地好い。
 彼と重なる呼吸に、七結は花笑んで。
 腕を引いて、くるりと回って。
 人魚の尾鰭がふわふわ揺れる。
 ユェーは眸を眇めて、美しき人魚をぐっと引き寄せて。
「ねぇ、――何処かへ攫ってしまいましょうか? 僕の人魚姫さん」
 ふ、と小さく笑う七結。
「――そうね、それも良いけれど。王子様を夜の果てへと引き込む結末も、愉しいかしら?」
「そりゃあ、良い」
 喉を鳴らして笑うユェー。
 君とならば。
 闇の底でもきっと、楽しいもの。
 ――何処までも、何処までも、一緒に堕ちてしまいましょうか。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ユニ・エクスマキナ
お針子さんたちに造ってもらった夏色のドレスを纏って
お祝いされる準備は万端なのねー!
どう、どう?似合う?
スカートの裾を持ち上げて右と左と前と後ろとチェックは入念に
葉っぱのブローチをしゃらんと揺らして
ちゃっかりお針子さんたちに作ってもらった白い日傘を広げ
ところで―何をお祝いするんだっけ?
うーん、じゃぁ…
ユニとお針子さんたちが仲良くなったことをお祝いするのはどう?
美味しいお菓子を摘まみながら
可愛いリボンの端をそれぞれ持って一緒にくるくる回ったり
聞こえてきた歌を口ずさみながら
ユニもお祝いしちゃうのねー!

賑やかなお祭り騒ぎは楽しいっ
カラフルな街にふさわしい幸せな一日になりますようにっ!



●なつのおじょうさん
 夏色の帽子をぎゅっと押さえて。
 ユニが大きく跳ねると、ハイビスカスのスカートがふかふかと揺れた。
「どう、どう? 似合う? 似合うかな?」
 お針子達を前に、ユニは入念チェック。
「おにあいー」「ええよええよ」「いろきれー」
「うん、うん! やっぱりそう?」
 スカートの裾を持ち上げて、くうるりくるり、チェックは入念に。
 シャラと揺れる葉っぱのブローチ。
「ふふっ、じゃあ完璧なのねー!」
 夏色に映える白い日傘を広げれば、ユニは花のように笑って。
「おっけーおっけー」「だいじょーぶだいじょーぶ」「よくおにあいー」
「わー、ふふふ、お針子さんたち、ありがとう!」
 お針子達のチェックが通れば、白い傘を掲げてかわいいポーズをとったユニ。
「これでお祝いされる準備は万端なのねー!」
「おー!」「おいわいするかー」「おいわいーなにおいわいするー?」
 お針子達がわっと盛り上がって、ユニもそれに応えてぴょーんと跳ねた所で。
 着地したポーズのまま、ユニは瞬きをひとつ、ふたつ。
「……え? えっと……何をお祝いするんだっけ?」
「え?」「せやな」「むずかしいもんだいやん」
 三人のお針子達はユニの言葉に、あちゃーってな表情で腕を組む。
 顎先に指を当てて、ユニは瞳を閉じて――。
「うーんと……」
 そうしてぽんと手を合わせると、しゃがんでお針子達と真っ直ぐに視線を交わした。
「そう! じゃぁ、――ユニとお針子さんたちが仲良くなったことをお祝いするのはどう?」
「ええー!」「いいやん」「なかよし!」
 そうしてお針子達は順番に、ユニとハイタッチ。
「そうと決まれば、ユニもお祝いしちゃうのね!」
「おおー!」
 声をあわせて腕を突き上げたお針子達は、ユニと一緒に歩みだす。
 鮮やかな建物が立ち並ぶ街並みへ、響く旋律は祝いの歌。
 花弁が舞い散る街中に、お針子達が喜色浮かべて跳ねては、踊って。
 おめでとうの歌を口ずさんで。
 綺麗なリボンの端を引き合い、くうるりくるり舞うユニとお針子。
「ふおぉ……、あれ、すっごーく美味しそうなお菓子なのね!」
「たべにいくー?」「うまいよ」「うまい」
「ってもう食べてるのね!?」
 幸せなお祝いの日。
 賑やかな国の生まれた日。
 ――今日という日が、この鮮やかな街にふさわしい幸せな一日になりますように。
 ユニはクリームとフルーツのたっぷり乗ったケーキを一口。
 うーん、もう幸せかも!

大成功 🔵​🔵​🔵​

クーナ・セラフィン
いい感じの赤、うんぴったりだ。
これなら建国祝いにも十分な格好、ナイスお針子さん達。

さて、服の完成祝い記念も兼ねてお花のお針子さん達も誘ってお茶会を。
ティーセットは持ち込みのを使うとして…猫サイズじゃお針子さん達には小さい?
大きいのを準備しておくね。
お菓子も手軽に摘まめるのを準備。

準備が出来たらさてさて、建国記念に素敵な服の完成を祝って素敵なお茶を淹れようか。
秘蔵の茶葉を惜しみなく使って美味しい一杯を。
お茶と菓子だけじゃ祝い足りない?なら踊ろう。
皆で相手を交代しつつダンスすればとても楽しい気分。
リズムは…湧き出る情熱任せでいいんじゃないかな!
この国始まったばかりなんだしね。

※アドリブ絡み等お任せ



●お茶会
 雪のように真っ白なクロスのひかれたテーブル。
 ケーキスタンドに並んだクッキーにケーキ、サンドイッチにスコーン。
 フルーツに、パイ、ピクルスにサラダ。
 丸いポットの中には果物のように華やかな香りの紅茶が収められている。
 ケットシーサイズの小さなティーセットの横には、もうすこし大きめの布で作られたティーセット。
「へえ、本当になんでも縫っちゃうんだねえ」
 建物も縫ってしまう彼等だ、生活用品くらいお手の物なのかもしれない。
 クーナは持参した秘蔵の茶葉を惜しげなく振る舞い、温めたカップに注ぎ入れる。
「さあ、召し上がれ!」
「はー、おちゃですね」「けっこうなおてまえー」「もぐもぐ」
 クーナの前に並んだお針子達は、カップを掲げたり、食べ物をくちいっぱいに放り込んでいたり。
「キミたち、身体に似合わずたべるよねぇ」
「せいちょうきゆえに」「え? おおきくなったことない」「もぐもぐ」
 お祝いの日のティータイム。
 肩を竦めて笑うクーナの前で、お針子たちは賑やかな言葉を交わして。
 遠く響くお祝いの旋律。
 華やかで、愉快な歌声。
「あー……なんだかむずむずしてきたー」「おどる?」「おどりたい!」
「楽しい音楽だね、皆踊るのが好きなのかい?」
「うんー」「すぐおどっちゃう」「しかたあるめえ」
「……なら、踊ろうか!」
 きっと彼等は、陽気な種族なのであろう。
 服と一緒に仕立てて貰ったブーツは、跳ねると良い音が響くもの。
 赤薔薇かさねた昏い赤。
 足取りなんて、響く歌に任せて、気の赴くまま、身体の動くままに。
 ぴょん、と跳ねたクーナも音を響かせステップを踏んで、ふかふかと羽根帽子を揺らして跳ねる、飛ぶ。
 ――この国の始まりを、楽しく愉快に陽気に祝おう。
 踊り疲れたら、また紅茶とケーキを楽しもう。
 今日という日は、今日しかないのだから。

大成功 🔵​🔵​🔵​

瀬名・カデル
【星鳥】
アドリブ◎

噴水広場でマリアと一緒にお祝いをするよ!
マリアの竪琴、きちんと聞くのは初めてかも?
前に聞いたのは囚われの時
そっと勇気をくれたんだ

竪琴とマリアの声で奏でられる音はとても喜びに満ちて
ボクもその音に合わせてアーシェと一緒に踊りを披露

この国を祝おう 生まれておめでとう!
どうか希望に満ちた 幸せな国になりますように

二人のハミングで沢山の人たちに幸せな気持ちになってくれたらいいな

楽しかったことはね、たっくさんあるよ!
アリスラビリンスで他の国に行ったり
雪山で犬ぞりを体験したり!
あとねーサンピラタのナポタ、かな?

ミルク色で、フォークでこう食べるんだよ!
とっても美味しいの!
(身振り手振り)


マリアドール・シュシュ
【星鳥】
アドリブ◎
連携×
ドレスは一章参照

マリア達が作った噴水広場で
踊って歌って奏でて
沢山お祝いしましょう!
楽しくて幸せな時間を皆で過ごせますよう
微笑(はな)が咲きますよう

幸せの音鳴らせば始まりの合図
色取り取りの花を舞わせカデルと踊る
前に猫好きな少年と踊った経験あるので多少踊れる
針子達も踊ってほしいのよ、と誘う

ケルト民謡風の旋律で竪琴演奏
透き通る様な声で謳いハモる

マリアの普段の演奏も聴いて欲しかったから嬉しいのよ
カデルは最近、依頼で楽しい事はあったかしら
まぁ!犬ぞり、マリアはやった事がないわ
サンピラタ?(首傾げ
食べ物だったのね、ふふっ
今度見掛けたら食べてみるの

UC使用
癒しを与え
最後は皆で記念撮影



●うたおう、おどろう、かなでよう
 つぎはぎのパッチワークの街並み。
 レースの影に太陽の光が透けて、薄ぼんやりと地に綺麗な模様を映し出す。
 幸せの運ぶ鈴蘭の鈴がころころと音を立てて、始まりを告げれば。
 きらきら陽光を浴びて、宝石のように輝く水滴が踊りだす。
 噴水広場へとつながる花のアーチを潜れば。
 マリアドールが黄昏色に眩く竪琴に乗せて、牧歌的な旋律を奏で響かせている。
「おいわい♪ お祝い♪」
 お針子達が鮮やかな花弁を舞わせて、カデルとマリアドールはステップ響かせ舞い、踊る。
 即興の詩を口に、お針子達もステップ踏んで、跳ねて、跳んで。
 ――回って転んで。
 そんなお針子の様子に、マリアドールとカデルは顔を見合わせて、笑って。
「ねえ、お針子さん、だいじょうぶ?」「気をつけてね」
「ありがと! だいじょぶー、てれますなあー」
 カデルが転んでしまったお針子の手を引いて立ち上がらせれば、ぴかぴかに微笑んだお針子が助けてもらったお祝い、と。
 また鮮やかな花弁を空に舞わせた。
 ――マリアドールのステップは、猫が好きな少年と合わせたステップだ。
 希望と幸福を願われた星の海のようなショールを揺らして、花舞う足取り。
 指先は牧歌的な音楽を奏で。
 唇を開けば、透き通るように響く歌声も高らかに。
 アーシェとくるりくるり回るカデルのステップは、心と身体の赴くままに踏むものだ。
 カデルにとって、この旋律は初めてのものでは無い。
 ――いいや、ちゃあんと聞くのは初めてなのだけれど。
 囮として囚われていたあの日、不安に揺れていたカデルの心にそっと勇気を与えてくれたあの旋律!
 じんわり暖かくなる心。
 マリアドールの歌声に合わせて、カデルはハミング重ねて。
 今日のマリアドールの演奏は、お祝いの響きに満ち満ちている。
 だからこそ、カデルは精一杯幸せな響きを重ねられるように。
 茉莉花の祝福の香りに笑顔を浮かべて、しあわせを歌う。

 しあわせな音楽重ねて、しあわせな言葉重ねて。
 ――この国を祝おう、生まれておめでとう!
 ――どうか希望に満ちた、幸せな国になりますように!

「――ねえ、カデル。カデルは最近楽しいことはあったかしら?」
「勿論! 楽しかったことはね、たっくさんあるよ!」
 マリアドールの問いに、カデルはぴかぴか笑顔で全身で頷くように。
「アリスラビリンスで他の国に行ったり、……雪山で犬ぞりを体験したり――」
「まぁ! 犬ぞり、マリアはやった事がないわ、やっぱり早いのかしら?」
「はやいよー!」
 カデルの指折り数える言葉。
 マリアドールはくすくす笑って。
 頷いたカデルは、そうそう忘れちゃいけないと、手を上げる。
「あとねー、サンピラタのナポタ、かな?」
「サンピラタ……の、なぽた?」
「うん! ミルク色で、フォークでこう食べるんだよ!」
 とっても美味しいの、なんて、カデルは身振り手振り。
「ねえ、お針子さん達も楽しかった事を、おしえてくれないかしら?」
 マリアドールは、蜂蜜色の瞳を笑みに揺らして。
 千一夜も語る言葉は持ち合わせないけれど、きっと止まらぬお喋り!
 お祝いの日を奏でて。
 お祝いの日に歌って。
 お祝いの日は舞って。
 いつまでも、いつまでも、幸せな時間を過ごしましょうか!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

英・操
メリル(f14836)と一緒に

メリルのお願いだもの聞いてあげないと
似合う着物を借りてきて着付けてあげましょう

うん、いいじゃない
こういうのも似合ってるわよ

はしゃいで転びそうになるメリルに手を差し伸べて今日は一緒にお祝いよ


針子ちゃんたちにも挨拶しましょう
どうせ祝うなら盛大に
一緒にお祝いしてくれるならぱーっとね

祝うのはメリルと出会えた運命に
気まぐれで開いた事務所に来てくれた可愛い子
いつでも元気いっぱいなこの子と一緒に過ごした時間はかけがえのないもの

あら、乾杯したいの?いいわよ、しましょうか
メリルはジュースだけどスタアはたまにはワインでも
グラスをこつんと合わせて微笑みながら口をつける

ええ、こちらこそ


メリル・チェコット
操ちゃん(f22936)と一緒に!

操ちゃんに着付けてもらったお着物!
初めて着る和服に大はしゃぎ
えへへ、今日はお揃いだね!

慣れない歩幅で、転んじゃいそう
差し伸べてくれる手には素直に頼って
ちょこちょこ、転ばないように気をつけながら歩んでいく

操ちゃん、なんか可愛い格好の子たちがいっぱいいるよ!
こんにちは、オシャレさんたち
ふふ、一緒にお祝いしてくれるの?

祝うのは、わたし達の出会い
彼女が営む芸能事務所に、裏方として応募したあの日から今日まで、一緒に楽しい時間を過ごしてきた

操ちゃん、乾杯しよ、乾杯!
メリルはお酒は飲めないから、ぶどうジュースで気分だけでも
ワイングラスをコツンと合わせて
これからもよろしくね!



●はれの日には、華やかな着物を
 英・操(スタアライト・f22936)の着付けてくれた、初めての和装。
 おひさまみたいな色を宿した髪を、二つ括り。
 ふわふわ髪を揺らしたメリル・チェコット(ひだまりメリー・f14836)は、草履をぺったらぺったら。
「えへへ、今日はお揃いだね!」
「ふふふ、他でもないメリルのお願いだもの、よく似合っているわよ」
「綺麗な模様で、本当に可愛くて素敵! うん、うん、選んでくれてありがとう!」
 お洋服やお裁縫が好きなメリルは初めての和装と、何処を見ても縫い物で出来ている街並みにはしゃいだ口ぶり。
 レースの柱に、毛糸のリボン。
 パッチワークのお家に、足元に並んだタイルは飾りボタン!
 そこかしこから響いてくる音楽は、楽しくお祝いを奏でている。
「……わっ」
 音楽に気を取られたメリルは、慣れない草履も相まって。
 床に並んだボタンに足を引っ掛け――。
「メリル」
 そこに赤い髪を揺らして。
 さっと腕を差し出して受け止めてくれた操はまさにヒロイン――国民的スタア!
「わ、操ちゃん、ありがとう」
「今日は一緒にお祝いだものね」
 そうして。
 にっと笑った操は、そのままメリルの手を取って歩みだす道。
 えへへと笑ったメリルは、操の掌に導かれるままに。
 先へ、先へと。

「わあ! ねえ、ねえ、操ちゃん、なんか可愛い格好の子たちがいっぱいいるよ!」
「あら、あの子達がこの国の住人達かしら」
 踊るお針子達を見つけたメリルは操の手をひいて。蜂蜜色の瞳をぱちぱち、はしゃいだ口調。
「こんにちは、針子ちゃんたち、今日はいい日ね」
「こんにちは、オシャレさんたち!」
「おおー、こんばんは」「おいわいにぴたりのひー」「こにちはー」「ええやろー」
 お花の衣装に身を包んだ彼等は、それぞれ口々に挨拶と言葉重ねて。
 二人を見上げると――。
「はれのひのふくっぽいー」「おいわいしにきたの?」「きょうはお祝いたくさんなんですよー」「いわえるとうれしー」
 そんなお針子達の様子に、メリルはくすくす笑って。
「ふふ、一緒にお祝いしてくれるの?」
「そうね。お祝いが沢山あるのなら、一緒にぱーっと祝ってもらいましょうか」
 操はしゃがんで、お針子達と目線を合わせる。
「ね、針子ちゃん。お祝いしましょう。――祝うのは、わたし達の出会いよ!」
 帝都の大女優たる操が気まぐれに独立し、突然設立した芸能事務所。
 ――『芸能事務所スタアパレヱド』。
 メリルが裏方スタッフ――衣装係として面接を受けたあの日から。
 時を、言葉を、時間を重ねて。
 楽しい時間を一緒に過ごしてきた。
 そんなかけがえのない時間を祝いたいのだと、操は語り――。
「わー」「ええはなしやで」「いいですねー」「おいわいしよー」「なかよしさんー」
 こっくり頷いたお針子達は、わあわあ跳ねたり飛んだり、楽器にお菓子にテーブルに。
 演奏に、演舞。
 布でできたソファを運んで彼女たちの席を作ると、賑やかに騒ぎ出す。
「ふたりのしあわせをおいわいしよー」「おかし、おかしあるよ、あまいの!」「そのまえにかんぱいだよー」「する?」「して!」
 お針子達の勧めに、眦緩めたメリルがうんうんと頷き。
 並べられたチーズを眺めていた操にお願いするみたいに声を掛ける。
「えへへ、操ちゃん、乾杯しよ、乾杯!」
「あら、いいわよ! しましょうか」
 未成年のメリルは葡萄ジュースだけど、操はまっかなワイン。
 折角のはれの日なのだから、ちょっと背伸び。
 ――気分だけでもと、ワイングラスを交わして。
 お針子達は口々にかんぱあい、なんて跳ねて、飛んだ。
 グラスを掲げて二人は、笑みも交わして。
「――操ちゃん、これからもよろしくね!」
「ええ、こちらこそ」
 そうして二人は、グラスへと口をつける。
 ――二人の出会いと、これからを祝して。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『雪の女王』

POW   :    【戦場変更(雪原)】ホワイトワールド
【戦場を雪原(敵対者に状態異常付与:攻撃力】【、防御力の大幅低下、持続ダメージ効果)】【変更する。又、対象の生命力を徐々に奪う事】で自身を強化する。攻撃力、防御力、状態異常力のどれを重視するか選べる。
SPD   :    【戦場変更(雪原)】クライオニクスブリザード
【戦場を雪原に変更する。又、指先】を向けた対象に、【UCを無力化し、生命力を急速に奪う吹雪】でダメージを与える。命中率が高い。
WIZ   :    【戦場変更(雪原)】春の訪れない世界
【戦場を雪原に変更する、又、目を閉じる事】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【除き、視認外の全対象を完全凍結させる冷気】で攻撃する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はアララギ・イチイです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●冷たい風
 幸せをとお祝いを奏でる暖かく楽しい街へと、冷たい風がぴゅうぴゅうと吹いてきました。
 なんだか、天気も悪くなってきたようです。
「もしかして、またきた?」「ぴえ……」
 お花の洋服を纏ったお針子達が、ぶるると身体を震わせています。
 花畑に、みるみると霜が落ちだしました。
 お針子達の顔も真っ青になっています。
「やーーっ、やっぱりきてるーーっ」「また滅びるですか?」「えーん」
「――また、こんな事をしているのね、貴方達」
 そこに響いたのは、冬の朝の水よりもずっと冷たい声でした。
「きゃーーーっ」「滅びるー」「あーー、しょぎょうむじょうのひびきありーー」
 その声を聞いたお針子達は、一気に逃げ出します。
 その声の主は、雪の女王。
 愛する少年を奪われてから幸せを憎み、――彼等の作る幸せな響きが大嫌いなオウガです。
 ――女王は人の事を祝いたい彼等の事なんて、ひとつも理解ができません。
「もう、作らないようにあれほど言ったのに、また理解できなかったのね。……また、壊してあげる」
 女王が瞳を瞑ると、みるみる間に国が、花が、雪に、氷に包まれてゆきます。
 もう二度とお針子達が、人を祝おうと思わぬように。
 彼等ごと、すべて、すべて、凍らせてしまいましょう。
「やだー」「ははあ、あかんなこれ」「しがおとずれるか」「またかー」「ゆだねよー」
 諦めたお針子達が瞳を瞑って、その運命に身を委ねようとしたその時――。
ファルシェ・ユヴェール
ネルウェザさん(f21838)と

刺すような冷気に
己の荷から外套をネルウェザさんの肩に掛け
お針子達に隠れるよう告げる

私達に祝福を下さったお針子さん達と、この幸せな国を
決して壊させは致しません

名残に舞う花弁一枚、そっと握って
…この国は
彼女が私の想いを受け取って下さった、思い出の地になりました
私の故郷は既に失われ、愛する人が出来た事を報告する相手も最早無いけれど
この思い出の地は、訪れるたび祝福に溢れていて欲しいから

力を削がれるならその分強化を
彼女の髪を飾るグリーンサファイアに触れ
その力を借りて光纏えば
仕込み杖を手に
援護をお願いします、と告げ

今度こそ護ってみせると
その想いをそっと護られる心地に微笑んで


ネルウェザ・イェルドット
ファルシェ君(f21045)と

うう、寒い…って、
…だからそういうとこだぞ、君
外套の礼を述べ、少し顔を火照らせて

衣装と場を用意してくれたお針子達の為にも
こんな私の手を取ってくれた彼との思い出の為にも
絶対にこの国は護り切る

覚悟を決め、バロックレギオンを創る為に記憶を蘇らせようと――した、寸前
光を纏い、前へ征く彼の背中に心を落ち着けて
…ああ、そうか
今は、思い出さなくて良いんだ

肩に掛けられた外套を握りつつUC発動
…なぁ、兄様、姉様
私、大好きな人が出来たんだ
護ってくれるかい

ファルシェ君の盾となるよう人形腕を飛ばし援護
モノから生命力は奪えないよねぇ
凍らせようが無駄だよ、本体は私だ

…指一本、触れさせるものか



●私はあなたのとりこ
 霜が落ちたかと思えば花咲くように冷たい結晶が広がり、瞬く間に街が氷に包まれてゆく。
 凛烈と肌を刺す風。
 撫子のドレスが、音を立ててはためいて。
「う、うう……寒い……」
 ぶるると背を震わせたネルウェザは、自らを抱き寄せるように腕を抑えた。
 その肩の上へと、そっと掛けられた外套。
「お針子さん達、まだ動く事はできますか?」
 ファルシェはそのまま外套を掛けたその手で、今にも目を瞑って眠ろうとしているお針子を一人引き起こしすと彼と真っ直ぐに視線をあわせ。
「あー……、じつはまだ平気~」「でもさむーい」「ねむー」
「ではホットココアでも飲みながら、できるだけ暖かい建物の中に隠れていて下さい」
 大丈夫そうだと判断したファルシェは、眠たげに目をこするお針子の背をやさしくぽんと叩いた。
「――私達に祝福を下さったお針子さん達と、この幸せな国を決して壊させは致しませんから」
「わー、わかった!」「え? ほろばない?」「すごい!」「まかせたぞー」
 ぴょんと跳ねたお針子達が手をふりふり、分厚い布の建物の方へと駆けて行き。
 ネルウェザはファルシェの自らより大きな外套に袖を通しながら、すこうしばかり唇を尖らせた。
「……だからそういうとこだぞ、君」
「それは、大変光栄ですね」
 ありがとうと、彼女が頬を紅に染めたのは寒さばかりではあるまい。
 ファルシェに軽く受け流されてしまえば、ネルウェザは小さく肩を竦めてみせてから。
 自らの掌をきゅっと握りしめた。
 ネルウェザにとって、この『国』はアリスラビリンスの中の『ただの国の一つ』ではなくなっていた。
 この『国』は、ネルウェザにとって思い出深い『ただ一つの国』だ。
 こんな自分の手を取ってくれた彼との思い出の、国になってしまったのだ。
 ――ならば、壊させる訳には行くまい。
「絶対にこの国は護り切ろう」
「ええ、勿論」
 頷いたファルシェは、風に煽られた桃色の花弁を一枚そっと握りしめて。
 この国が特別な土地と成ったのは、勿論ネルウェザだけでは無く。
 ファルシェとしても同じ気持ちであった。
 ――ファルシェの故郷は既に失われている。
 彼が愛する人が出来た事を報告する相手も最早、居はしない。
 しかし。
 この思い出の地は、訪れるたび祝福に溢れていて欲しい、と彼は願う。
 ネクタイの刺繍をなぞるように引き絞るファルシェ。
 ネルウェザの撫子のドレスの奥に揺れる薄桃色に瞳を眇めたファルシェは、掌の中の花弁を逃して。彼女の髪を彩る大きなグリーンサファイヤに触れると光が満ちた。
「ネルウェザさん、援護をお願いします」
 仕込み杖を片手に、ファルシェは前へと駆け出して。
「ああ、任せてくれ」
 援護を、と。
 ネルウェザも息を呑んで、白の記憶に触れようとするが。
 彼の背が見た、その瞬間。
 瞬きを重ねて、ネルウェザは気づいてしまった。
 ほう、と吐息が漏れる。
 ああ、そうか……そうだな。
 ――今は、思い出さなくて良いんだ。
 あの痛い記憶も、あの冷たい記憶も。
 ――私は彼にとって、『価値あるもの』なのだから。
 外套の袖をきゅっとにぎりしめて、ネルウェザは真っ直ぐに真っ直ぐに、ファルシェの背を見つめる。
 ――……なぁ、兄様、姉様。
 私、大好きな人が出来たんだ。
 護って、くれるかい?
 ファルシェが地を蹴ると緑の光を揺らめかせて、一瞬で女王へと肉薄する。
 仕込み杖を逆袈裟に振り上げると、女王はうっとおしそうに瞳を細めて。
「へえ、邪魔をする子達もいるのねえ」
 彼女がふう、と冷たい冷たい吐息を吹きかけると――。
 機械人形の腕が間に割入り、その吐息を受け止めた。
「ふふ、残念。モノから生命力は奪えないよねぇ。――凍らせようが無駄だよ、本体は私だ」
「……貴方も、邪魔ねえ」
「そうさ、邪魔しているのだからね」
 ――指一本、触れさせるものか。
 ネルウェザが、敵をしっかりと睨めつけて大きく腕を薙ぐと。
 メルル=メイフ、カルム=クルム――腕が女王へと掴みかかり。
「ありがとうございます、ネルウェザさん」
 彼女の援護に、ファルシェは真一文字に怜悧な両刃を振るう。
 ――今度こそ護ってみせると、その瞳の奥に確かな色を宿して。
 小さく、小さく、微笑んだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ヴォルフガング・エアレーザー
・ヘルガ(f03378)と同行
・アドリブ、他猟兵との共闘歓迎

お針子たちが言っていた『前の国は…』というのは、こういうことだったのか。
せっかく作り上げた国を二度も滅ぼすわけにはいかんな。
行くぞ、ヘルガ。夫婦としての初の大仕事だ!

【守護騎士の誓い】を胸に【ブレイズフレイム】を範囲展開(炎の属性魔法+範囲攻撃)
他の者が完全凍結しないよう氷雪を溶かし周囲の気温を少しでも上げる
俺の生命力を奪うというなら奪えばいい。
継戦能力を鍛え、覚悟を決めた。何よりヘルガの存在が、俺を無限に癒してくれる。
お針子たちの避難が済み、自身の体力が限界に近づいたら【無敵城塞】で更に耐える
勇気と優しさは、決して潰えることはない!


ヘルガ・リープフラウ
・ヴォルフ(f05120)と共に
・アドリブ、他猟兵との連携歓迎

ええ、勿論ですとも。
素敵な国を、衣装を、そして何より祝福をくださった可愛い住人さんたちに、今度はわたくしたちがご恩返しをする番です。

祈りを込め、周囲を鼓舞する【シンフォニック・キュア】を歌唱。ヴォルフや仲間、お針子さんたちを癒します。

わたくしたちだけじゃない。この国中に溢れていた笑顔。
恋人の、友人の、家族への愛。感謝。
悲しみを慰め、未来への希望を与える人の優しさ。
「生きている」ただそれだけで尊い命の輝き。
わたくしはその全てを祝福しましょう。

過去に味わった悲劇は二度と繰り返さない。
冬が去った後には、暖かな春の陽だまりがあるのだから。



●信じる心
「ふえぇ……っ、みなさん諦めてはダメですー」
「もうだめー」「ゆだねたほうがいい」「さむいよー」
 ごろんと転がってお花のドレスに霜を落としたお針子達を前に、フリルは慌てた様子。
「こ、この冬を乗り切れば春はきっと訪れます……!」
 ゆさゆさとお針子を揺するフリル。
「あとごふんねかせてー」「あしたからがんばるー」「むにゃ……」
「だ、ダメですよーっ、ふえぇ……あ、アヒルさんー!」
 フリルのガジェット――アヒルさんがぷかぷかとお針子達を転がして一箇所に集め出し。
 そんな彼等を凍てつく雪風より護るように。
 前へと立ったヴォルフガングは、騎士の誓いをその胸に。
「……お針子たちが言っていた『前の国は』というのは、こういう事だったのか」
 幸せな国を作っては、国を壊されて。
 幸せを妬み壊しては、国を作られて。
 空しきいたちごっこを、彼等と彼女は繰り返していたのかもしれない。
「行くぞ、ヘルガ。せっかく作り上げた国を、そう何度も滅ぼされる訳にはいかん」
「勿論ですとも」
 得物を手に言ったヴォルフガングの後ろで、くったりしたお針子を抱き上げたヘルガは頷いて。
「――素敵な国を、衣装を。そして何より祝福をくださった可愛い住人さんたちに、今度はわたくしたちがご恩返しをする番ですもの」
「そうだな、――夫婦としての初の大仕事だ!」
「ええ、行きましょう」
 吹きすさぶ冷たい風にミスミソウを揺らして、ヘルガは祈る。
 その美しき声音に旋律を乗せて。
 鼓舞の、勇気の――希望の歌を祈るように紡ぎだす。
 合わせて駆けたヘルガは炎の魔力をその身に宿して、女王の生み出す冷気を少しでも和らげるように。
「ふうん。どうせ居なくなる命に愛を誓うなんて、馬鹿らしいと思わないの?」
 興味があるのか、ないのか。
 彼等の言葉に耳を傾けた様子の女王は冷たいあおの瞳を閉じて開いて、視線を逸らす。
 瞬間。
 一層周りが冷えたように感じられた。
 強くなった雪風に氷礫が混じりだす。
「……ぐ……ッ!」
 その礫を弾くようにヴォルフガングは、構えた鉄塊剣を前へと押し出し。
 それは、命を吸い上げる雪風。
 身体を熱を奪い、横殴りに叩き込まれる礫。
「ふえぇ……、更に寒くなってきました……! アヒルさん……!」
「あー、つめたー」「かわがみえるねー」「ほろび……ほろびない? ほぼほぼほろびてるかのうせいあるなー」
 言葉なきガジェットが集めたお針子達を護るように、フリルはアヒルさんと共に癒やしを与える。
 皆で集まれば暖かいはずだ。お針子を守れるように、その生命を絶やさぬように。
「大丈夫です、滅びません。……わ、私が、私がみなさんを守りますから……」
 応急手当ながらに癒やしを重ね、祈りを重ね。
 ただこの体力が持ってくれる事を、フリルは祈る。
 そのフリルすらも癒やす、柔らかき歌声。
 ――この国中に溢れていた笑顔。
 恋人の、友人の、家族への愛、感謝。
 悲しみを慰め、未来への希望を与える人の優しさ。
 歌うヘルガは、暖かき希望を歌う。
「――『生きている』、ただそれだけで尊い命の輝きを、わたくしはその全てを祝福しましょう」
「いつかは尽きる命かもしれぬ。しかし俺の……」
 戦う意味も知らず。
 ただ本能のままに目前の敵を屠り、喰らう日々の中で――ヴォルフガングは彼女と出会った。
 人を愛する心を識った人狼は、その生命を希望の灯として燃やし続けると。
 彼女の剣――騎士となる事を誓ったのだ。
「――俺のこの命は守るべき者のために捧げる命だ! そのために誓った言葉を、馬鹿らしいとは思わぬ!」
 自らの背より響く、彼女の歌声が頼もしい。
「――ヘルガが居る限り俺の誓いは、決して潰えることはない!」
 ヴォルフガングが氷の礫を一身に受けるようにぐん、と踏み込む。
 暖かき希望を歌う歌声が、誇らしい。
 暖かき愛を歌う歌声が、心地良い。
 それは、自らの護るべきものだ。
 それは、自らの希望だ。
 ――過去に味わった悲劇は、二度と繰り返してはいけない事だ。
 無垢であった雛鳥は、冷たい風に晒されて歌う、歌う。
 ――冷たい冷たい冬が去った後には、暖かな春の陽だまりがある事を信じて。
 自らの頼もしき夫――自らを守護する騎士を信じて!

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ラフィ・シザー
アナンシ(f17900)と
…針子さん達大丈夫か?
せっかく記念日をお祝いしてたのに邪魔をするんだな。
俺とアナンシが家族になった記念日なんだ。俺にとっては大事な日なんだ。

でもあんたは何かを祝うことが出来ないんだな…今の俺ならそれを悲しいって思うよ。
さぁ、もう一度クリスマスを…祝うべきクリスマスを祝えない悲しい悪い子には。
UC【悪い子のクリスマス】だ。
寒さはアナンシに貰ったもこもこの帽子が和らげてくれるよ(【氷結耐性】に【オーラ防御】も重ねて)

目を閉じてなんていないで見てご覧よ。世界は幸せに溢れている!
【挑発】で目を開かせようとしながら楽しそうに【ダンス】して前に出て【二回攻撃】


アナンシ・メイスフィールド
ラフィ君f19461と

君にも幸せな記念日という物の一つや二つあっただろうに…本当に憐れな子だね
けれども私とラフィ君の記念日を壊させる訳には行かないのだよ

戦闘と同時に仕込み杖から剣を引き抜き『早業』にて敵へ間合いを詰め攻撃を仕掛けんと試みるよ
その後は敵からの攻撃は剣で払う様に『武器で受け』つつ至近から【蜘蛛の毒炎】を放とうか
雪といったならば炎だろう?
それに寒さ等ラフィ君がプレゼントしてくれたマフラー『氷結耐性』がある故効かないのだよ…と
ふふ、ラフィ君も使ってくれているのかね?君を護る助けになったならば良かったのだよとそう笑みを向けつつラフィ君の攻撃に併せ剣を振るおう
さあ、大人しく骸の海に還り給え



●家族
「……針子さん達大丈夫か?」
 寒々しい空の色。
 容赦なく熱を奪う雪風に、ラフィはぶるると背を震わせて。
「あんまりー」「まあまあですな」「けっこうなおてまえー」
 ダメそうなお針子達を、ポイポイと建物の中に放り込む。
 外にいるよりは、ずっとマシだろう。
 凍った花弁が舞っている。
 花の楽器は冷えて砕け、布を編んだ建物には白白と雪と氷が張り付きだしていた。
 くるりと振り向いたラフィは、女王を睨めつけて。
「……今日はな、俺とアナンシが家族になった記念日なんだ。――俺にとっては大事な日なんだよ」
 大きな鋏を構えて、下げたランプを揺らした。
「君にも幸せな記念日という物の一つや二つあっただろうに、……本当に憐れな子だね」
 ラフィと並んだアナンシは、仕込み杖より刃を引き抜き。
 地を蹴ると、一気に女王へと肉薄した。
 飛び込んだアナンシが上段より振り下ろした刃を、ふうわりと浮いた鏡が受け止める。
「そうね。憐れなのよ、あたくし。――貴方達も大切な子を奪われれば、理解してもらえるかしら?」
 ちらり、とラフィを見やった女王は、アナンシを見下すように冷たい瞳を揺らして。
 視線そらせば、雪礫が降り注ぐ。
 アナンシが腕を大きく振るって礫を薙ぎ払い。
 ラフィはぐっと、息を呑んだ。
「そうか、……あんたはもう何かを祝うことができないんだな。――今の俺ならそれを悲しいって思うよ」
 そうしてラフィは、ランプを掲げる。
 さあ! クリスマスをしよう。
 祝うべきクリスマスを、楽しいクリスマスをしよう!
 ――楽しくクリスマスを祝えぬ、悲しい、悲しい悪い子には――。
 さあおいで、クランプス!
 悪い子が良い子になるまで、お仕置きだ!
 光が膨れ上がって、山羊の角を持つ悪魔が形作られる。
 ――さあ、悪魔を従わせる為の対価は――。
 アナンシの首元で揺れる毛糸の黒いマフラーは、ラフィの『家族』を暖かく護る。
「残念だが、キミがどれほど憐れな子だとしても、私とラフィ君の記念日を壊させる訳には行かないものでね」
 雪といったならば炎だろう?
 ふう、と炎を放ったアナンシは叩き込まれる氷塊に刃を叩き込んで。
 氷塊が割れた瞬間、踊るように飛び込んできたのはラフィであった。
 その頭を護るのは黒い耳がぴょんと飛び出た、随分と手作り味の在る毛糸の帽子だ。
 ――彼がちゃんと被ってくれている事に、アナンシは眦を緩めて。
 ラフィにあわせて、ぐんと更にアナンシも踏み込む。
「ねえ、女王様! 目を閉じてなんていないで見てご覧よ。世界はこんなにも幸せに溢れているんだぜ!」
「ああ。そして世界をしっかりとそのまなこで見通せたのならば、――大人しく骸の海に還り給え!」
 無鉄砲なまでの突撃に一瞬怯んだ女王がバックステップで間合いを取ろうとするが、ラフィは許しはしない。
 ラフィは割れた氷塊を蹴って更に大きく跳ねると、鋏の刃を縦一文字に振るって。
 右足で地面を鋭く踏み込むと半身を引いて構えたアナンシが、重ねる形で横真一文字に銀を交わした!

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

旭・まどか
他人の不幸は蜜の味――、とはよく言ったものだけれど
己が不幸を嘆き他者をその場まで引きずり下ろすのは
些か勝手が過ぎるんじゃない?

さぁ、漸くお前の出番が訪れたよ
彼らのしあわせを護る為に、戦っておくれ


隸に力を与えたら距離をあけた場へ
一瞥が伸びて来そうならば両脚を疾く駆けようか

とはいえ僕はそんなに足が速くも無いし
長くを奔れるだけの体力も無い

最悪、お前のその背に引き上げて、僕を逃がしてくれる?

どうせ中身は空気と綿だ
多少中が凍ろうとも、動きに影響は無いでしょう?


一度凍ってしまったものは再び溶けた所で、元には戻らない
けれど、芽生えた春を咲かせることは出来る筈だ
――それをこれから行っていくのは、お前たちだよ




「……ふうん。他人の不幸は蜜の味――、とはよく言ったものだけれど」
 瞳を眇めたまどかは肩を上げて、下げて。
 霜が落ち、氷が広がった街に細く息を吐いた。
 ――全く、随分と冷たくしてくれたものだ。
「己が不幸を嘆き、他者をその場まで引きずり下ろすのは、些か勝手が過ぎるんじゃない?」
「あなたに、あたくしの何が解るというの?」
「僕はお前の身勝手さしか知り得ないよ。……ああ、そう。自分が世界一不幸だという顔で他者を苦しめる、とんだ礼儀知らずという事も知っているね」
「そう。あたくしの事、ようくご存知なのね」
「どうやら、そのようだね」
 小さく頭を振ったまどかは視線をそちらに向ける事も無く、自らの横に侍る狼人形が尾を振る感覚を感じ。
 そろりとその頭に掌を乗せた。
 冴え冴えと輝く魔力を風の仔への加護と成し、――天夜を照らし、満る月と成れ。
「お前の出番だよ、行っておいで――彼らのしあわせを護る為に、戦っておくれ」
 応じるように頭を掲げたはらわたにたっぷり綿の詰まった風の仔が、氷礫舞う雪嵐へと一直線に立ち向かう。
 まどかは敵の視線をこちらに向け続けるべく、再び口を開く。
 ――彼女が瞳を開いている限り。
 ――彼女が視線を向けている限り、冷気の被害は減るのだから。
「ねえ、どうしてそんな事になってしまったのだい。聞いてあげる」
 大きく駆けた風の仔が女王の喉笛に食らいつく。
「……よくもまあ、人を攻撃しながらそんな口をきけることね」
 瞳を瞑ろうとした女王は、ひゅうるりと冷気を纏って――。
「ああ、危ない。――しっかりみていないと、狼が来るよ」
 一度凍ってしまったものは再び溶けた所で、元には戻らない。
 けれど、芽生えた春を咲かせることは出来る筈だ。
 猟兵達がお針子を守り、癒やし、避難させるその姿。
 女王へと執拗に食らいつく狼。
 肩を竦めたまどかは、女王へと視線を戻す。
 ――それをこれから行っていくのは、お前たちだよ。

成功 🔵​🔵​🔴​

薄荷・千夜子
【白桃翠】
今度は我々がお返しをする番ですね
皆さんの素敵な国凍らせたりなどさせません

長期戦は不利ですね
速攻で仕掛けます【先制攻撃】
『花籠鬼灯』を掲げてUC発動
【属性攻撃】【破魔】【全力魔法】で炎の花弁を一塊にして女王へ放ちます
澪君、気を引くのは任せ……???(首を傾げる)
智夢さん、あれはどなたでしょう?
女の子らしくないというかもうキャラ変わっていませんか?
思わずこちらまで動きが止まってしまいましたが、ここで一気に押し切ってしまいましょう!
3人の周りにも炎の【オーラ防御】【環境耐性】で冷気対抗をしながらも炎での攻撃も緩めず
この焔は太陽の煌めき
必ずやこの地に春を届けてみせましょう!!


栗花落・澪
【白桃翠】

自分が嫌でも強制はよろしくないね
それ我儘って言うんだよ

ダメ元で【指定UC】を発動
ほんの少し伸びた髪を首の後ろで一つに結んだ
身長170前半の中性的長髪美青年に変身
勿論声も男らしくなってるからね

目を離せなくなるように
ずっと僕を見ていたくなるように
輝く【破魔】のオーラを纏いながら
跪いて、片手を差し出して
女王をにこやかにお誘い(【誘惑】)しましょう

ヴィ・ラ・プリンシア
僕と一曲踊っていただけませんか

今なら僕の言葉、歌、全てが攻撃と同義
彼女のため愛の【歌唱】を捧げ
優雅な【ダンス】と共に甘い言葉を囁きましょう
少年を失った悲しみも
寿命をも捧げた僕の愛で上書きするように

最期に素敵な思い出を残せるように


百鬼・智夢
【白桃翠】

姿を変えた澪君を見てキョトンと目をパチクリさせた後
薄荷さんと澪君を何度か交互に見て

……誰でしょう、あれ…?(素直
や、まぁ澪君なのはわかるんですが…
澪君にしては女の子っぽくないです…

万一のため★心霊タクシーを呼び寄せ
運転手さんに扉を開けておいてもらい
いつでも中に逃げ込めるよう準備します

もし澪君の誘導が上手くいって
女王様の目を閉じる行為を封じられそうなら
★リアムで善霊を呼び寄せて
舞踏会のように2人の周りで社交ダンスを踊らせながら
さり気無く【破魔】をばら撒いてもらいます
少しずつ、少しずつ…弱体化できるように

希望の始まりは、美しい星空で
澪君が離れたのを見計らい
【指定UC】で流星群を降らせます


逢坂・理彦
煙ちゃんと(f10765)
針子さん達にはお祝いもしてもらったししっかり守らないとね(煙ちゃんも)【防御拠点】【かばう】

お祝いはいいものだよ。
確かに心が荒んでいるときには眩しすぎるかもしれないけど。

君が世界を凍らせるのなら俺の狐火で世界を温めよう。
UC【狐火・椿】
後は俺が攻撃に出るから煙ちゃんは援護をお願い。
【早業】で詰め寄り【なぎ払い】で攻撃。
俺は倒れるわけにはいかないからね攻撃に【生命力吸収】付与しちゃおうか。


吉瀬・煙之助
理彦くん(f01492)と
せっかく皆で作ったのに、壊すなんてダメだよ
それに…此処は僕と理彦くんにとって
とっても大事な思い出が出来た国だから…
みんなにたくさんお祝いしてもらって幸せな場所
絶対絶対、壊させないから…!

火縄銃『鷹尾』で理彦くんの援護するよ
【スナイパー】【呪殺弾】で敵の動きを阻害する弾を撃つ
うん、サポートは任せて
理彦くんは思いっきりやっちゃって…!
お針子くんたちは後ろに隠れててねっ
怪我した子はUCで治療するよ

愛する人を奪われたのは同情はするけど…
でもだからって他の人の幸せを奪っていい理由にはならないよ…!



●愛する人のために
 落ちる霜。
 冷えた空気。
 吐き出した空気と入れ替えに、肺が凍ってしまいそうなほど冷たい風。
 女王を見やった千夜子は、むん、と拳を握って。
「今度は我々がお返しをする番ですね!」
「は。はい……、がんばりましょう……!」
 いつでも避難できるように、と。
 心霊タクシーを喚び出した智夢がこっくりと同意を示した。
「針子さんたち、辛いのは解るけれど少し我慢して移動してね」
 よいしょっと理彦が持ち上げると、だらんと身体を弛緩させたままのお針子。
「ねむいよー」「ほろびるよていなんやけどー」
「はいはい、滅びる予定はまた今度にしようね~」
 煙之助が理彦に渡されたお針子を、バケツリレーのようにほいっと建物の中に避難をさせて。
 くゆる白檀の香り。
 それは皆を癒やし、皆を勇気づける煙之助の香の香りだ。
「いーにおい」「ほろびなくていー?」「あー、ゆだねまーす」
「滅びなくて良いよ」
 小さく笑った煙之助は彼等を護るように背にして、女王を見やる。
 ――針子達は皆笑顔で、たくさんたくさん二人をお祝いしてくれた。
 ――針子達は皆笑顔で、二人の服を縫ってくれた。
 ――この国には理彦と煙之助の、幸せで大切な思い出が在る。
「……折角皆で作った場所、――絶対絶対、壊させないから……!」
 周りの針子の避難を終え火縄銃をぐっと握りしめた煙之助は、狐炎を纏う理彦が地面を蹴る背を見る。
「煙ちゃん、俺が攻撃に出るから援護をお願い」
「うん、サポートは任せて!」
 吹き荒ぶ雪嵐。
 冷たい冷たい風は、身体の奥から凍らせようとするかのよう。
「……こんなに寒い場所にいちゃ、心も荒んじゃうよね」
 ――君が世界を凍らせるのならば、俺の狐火は世界を温めよう。
 とん、ともう一度強く踏み込んだ理彦は、煙之助の放つ援護弾を背に炎を膨れ上がらせる。
「お祝いはいいものだよ。確かに心が荒んでいるときには眩しすぎるかもしれないけどさ」
「下らない事を言うのね、貴方も。あたくしが嫌だと言っているモノを強制するのは本当にお祝いかしら?」
 爆ぜる炎を氷息の一吹きで凍らせて、諭すように言葉を紡ぐ女王。
 そこへ飛び込んできたのは、琥珀色の髪を一つに括った青年の姿であった。
「そうだね、――自分が嫌でも強制はよろしくないね。それ、我儘って言うんだよ」
 低く響く、青年の声音。
 ……?
 瞳をぱちくり。
 彼を一度見て、千夜子と智夢は顔を見合わせて、もう一度彼を見る。
「……智夢さん、あれはどなたでしょう?」
「え……そりゃ、れいく……。……? あれ? うん……? 誰でしょうか、あれ……?」
 なんて。
 首を傾げた智夢も本当は理解している、ちょっと脳が理解を拒んだだけで。
 彼は――あの青年はユーベルコードで姿を変えた澪である。
 うん、……え、そうだよね?
 微笑んだ澪は、跪いて女王へと向かって片手を差し出し。
「ヴィ・ラ・プリンシア。――僕と一曲踊っていただけませんか?」
 目を離さないで、閉じないで。
 ずっと僕を見ていて。
 ――少年を失った悲しみも、寿命をも捧げた僕の愛で上書きしてあげる。
 紡ぐ言葉は歌のように甘く、宿した光を纏う彼は蜂蜜みたいに笑い――。
「あ、あの……何故か、澪君にしては女の子っぽくなくないですか……? えっと……その、……澪君なのは、わかるんですけれど、……わかるんですが……」
「女の子らしくないというか、もうキャラ変わっていませんか?」
 ぽそぽそ、智夢と千夜子は言葉を交わす。
 目の前で繰り広げられる、普段とは違いすぎるギャップに思わず小声になる二人。
 やっぱり脳が理解を拒んでいる。
 冷たく揺れる瞳に睫毛の影を落とした女王は、澪を見やって。
「――いいえ。あたくしは遠慮しておくわ、綺麗な人。あたくしは我儘なのでしょう?」
 く、と小さく喉を鳴らす。
 きっと誘惑は、伝わっていたのであろう。
 彼の言葉は攻撃であれ、確かに美しい人だと思ったのであろう。
 しかし、ソレ以上に、ソレ以上に。
「それでもあたくしは、……あたくしの愛した人といたいだけ。きっと、貴方に愛する人がいるのならば、そうじゃないかしら。――お誘い、ありがとう」
 そうして眦を落とした女王は、瞳を閉じる。
「この国は、あたくしには眩しすぎるのよ」
「そうですか、……では、せめて――あなたの為に歌わせていただけませんか?」
 ひどく哀惜に響いた言葉に。
 頭を振った澪は一歩下がって、琥珀の瞳を細めて言った。
「……どうぞ、ご自由に」
 女王の返事は短いもの。
 冷える、冷える世界。
 彼女の閉ざした心が、全てを喰らい凍らせるかのよう。
 澪は少しだけ、少しだけ、考えてしまう。
 この幸せな国を憎しんでしまう程に、彼女が愛した人の事を。
 澪は祈るように寿命を削り、破魔を籠めた愛の歌を捧げる。
 ――ほんの少しだけでも、彼女の心の闇が晴れるように。
 ほんの少しだけでも、素敵な思い出を残せるように。
 しかし、彼女が瞳を閉ざしてしまえば当然――。
 吹き荒ぶ、氷礫混じりの風。
「くっ。こうなってしまうと、長期戦は不利ですね!」
 ぶるると背を震わせた千夜子は、鬼灯を象ったグリモアを掲げて。
 百花繚乱、ろんと揺れた鬼灯より炎の花弁が渦巻いて。
 思わず固唾を飲んで見守っていた智夢が、リアムをぎゅうと抱きしめた。
「お、思わずこちらまで動きが止まってしまいましたが、……一気に押し切ってしまいましょう!」
「うん、俺も結婚式をしたばかりだからね。――ここで倒される訳にはいかないや」
 ねえ、煙ちゃん、なんて。
 理彦は後方で火縄銃を握る煙之助に、視線をちらりと送って。
 瞬きを二度重ねてから、笑った煙之助はコクリと頷いた。
「うん、――愛する人を奪われた事に同情はするけど、でもだからって他の人の幸せを奪っていい理由にはならないよ」
 冷える世界から猟兵達も、お針子達も護るように。
 煙之助は香をさらに燻らせて、大切な大切な彼に信頼を籠めて言葉を紡ぐ。
「理彦くん、皆は僕に任せて――思いっきりやっちゃって!」
「うん、うん。任せて、煙ちゃん」
 大切な大切な彼の信頼に応えるように、理彦は炎をぱっと咲かせた。
 その狐火は椿の如く、咲き乱れ――。
「この焔は太陽の煌めき、必ずやこの地に春を届けてみせましょう!!」
 千夜子のはなった猛る魔を喰らう炎が花弁と化して、椿の炎と絡み合って女王へと一直線に向かい放たれる。
 ――女王が、少しでも希望を抱いて骸の海で眠れるように。
 希望の始まりを、――美しい星空で彩ろう。
 す、と腕を上げた智夢に応じて、雪雲を裂いて光が瞬いた。
 それは降り注ぐ、破魔の星。
 流星群が女王へと殺到し――!

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

ティヨル・フォーサイス
お針子さん、無事!?
ちょっとあなた、理解できないから壊すなんて
子供だってもっと上手にコミュニケーションが取れるわよ

女王に槍を突き立てる
ドラゴニック・エンド使用
まだ名前も付けられないでいる、りゅうとしか呼べない白いあなた
お願い、少しだけ力を貸して

本当は、言葉の通じない大きな生き物は怖い
一口でのみ込まれてしまうもの
でも私は
あなたと同じ緑の目をしたあの子を守る力が必要だと思ったの
一緒に、戦って頂戴

痛みを気づかせないよう強がり笑み浮かべてドレスひらり
残念でした
あの子が咲かせた花は、雪の中でも枯れたりしないのよ!

みんなで不幸になろうなんてバカな話だわ
奪われたって、悲しくたって
……いつか、幸せになるのよ!


御園・ゆず
お針子さんたち、委ねちゃダメですよ
お祝い、沢山したいし、他の人ももっと『おめでとう』したいはずです
さっき、あなた達がみなさんを笑顔にしたように
わたし達がみなさんを笑顔にしますから
だから、待ってて

傷ついても構わない
無防備に寄っていって、ぎゅうっと抱きしめます
あたたかな体が、この心が
貴女の氷を溶かしますように
おめでとうって、あったかいんですよ

無様にも、縋り付いて。
動けなくなったら道化芝居を演じるあたしに任せよう
彼女はきっと、見事な体捌きでオウガを攻撃するんだろうな
銃で、鋼糸で、プッシュダガーで

貴女にも、おめでとうが言える日が来ますように


エドガー・ブライトマン
もう、誰に何を委ねるつもりだい?
さっき私に「生を諦めないで」って言ったのはキミだろう
キミこそ諦めちゃダメだぜ

ここに私がいるんだから

青薔薇の王冠とマントは花の小人君へ
それ、預かっていてよ。大切なものなんだ
マントは防寒に使ってね
全て終わったら、きっと受け取りに行くよ

雪の女王君だっけ
女王らしからぬ器の小ささ
母上とは大違いだ
(母上の方が怒った時は怖かったし)

“Hの叡智” 状態異常力を重視
これで雪原にも多少耐えられるハズ

小人君へ攻撃が及ぶ際は《かばう》
時間が経つほど不利になりそう
小人君たち、寒いの苦手そうだし

間合いを詰めて、一瞬でも隙を見つけたなら
《早業》《捨て身の一撃》

この国に、冷たい風は似合わないさ



「お針子さん、無事!?」
「もう、誰に何を委ねるつもりだい? さっき私に『生を諦めないで』って言ったのはキミだろう?」
「えーん、だって、またほろびるもん」「ほぼほぼほろびたかー」「さむいもんなあ」
 ひらひらと羽根を揺り動かすティヨルがお針子の周りを飛び回れば。
 肩を竦めて、敢えて笑ったエドガーは震えるお針子の手を取って引き起こしてやり。
「そうですよ、お針子さんたち。委ねちゃダメですよ」
 分厚い布で出来た建物に彼等を誘導する、ゆずは少しだけ嗜めるみたいに言葉を紡いで。
 エドガーはこっくり頷けば、抱えたお針子の鼻先をつん、と突いた。
「そう、そう。諦めちゃダメだぜ、――ここに私がいるんだから」
「お・おうじさまー」「むねきゅんやん」「おせる~、めちゃくちゃにしてー」
「全くキミ達は、――もう」
 肩を竦めて笑ったエドガーが、お針子達を纏めてマントで包んでやり。
 真ん中のお針子に青薔薇の王冠を手渡した。
「それ、預かっていてよ」
「ちょっとあたたかい」「猟兵さんさむないの?」「じょうちょめちゃくちゃになるー」
「大丈夫だよ、でも、大切なものだからね――全て終わったら、きっと受け取りに行くよ」
「うけたまわった」「気をつけてー」「もどってきたらだいてー」
「そうだね。お姫様みたいに抱っこならしてあげるよ」
 きゃあーなんて黄色い声をあげたお針子達。
 そんなエドガーとお針子のやり取りを横目で見やりながら、どんどんお針子を建物の中へと運び入れるゆず。
 外よりは少しはマシだが、建物の中だって十二分に寒い。
 彼等が絶望するには、十分な寒さであろう。
「さむいなー」「たたかうの?」「あぶないよー」
 弱音に似た言葉を紡ぐお針子達。
 ゆずはエドガーのように、上手に彼等を勇気づける事はきっと出来ない。
「ねえ、お針子さんたち。お針子さんたちはきっとまだお祝い、沢山したいし。他の人ももっと『おめでとう』したいはずです」
 だから、言葉を尽くす事しかできないのだ。
 ゆずの言葉に目を丸くして、聞き入るお針子達。
「さっき、あなた達がみなさんを笑顔にしたように、わたし達がみなさんを笑顔にしますから。――だから、待っててください」
「ほんと?」「けがしないようにね」「たすかるなあー」
「……はい」
 そうしてゆずは、薄く笑った。
 ――それは、いつもの笑み。
 
 翅をはためかせて、きりと女王を見やったティヨル。
 アメジスト色の奥に宿る確かな覚悟の色。
「――ちょっと、あなた!」
 小さな体で吹きすさむ氷礫を避けて、くるくると回りながら女王へとカッ飛んだ。
「理解できないから壊すなんて、子供だってもっと上手にコミュニケーションが取れるわよ!」
 構えた槍を一直線に叩き込み。
 喚び出すは、白い白い竜。
 名前すら未だつけられず、『りゅう』としか呼ぶ事のできない生き物。
 ティヨルの事なんて、ひとのみできるであろう、大きな口。
 ――本当は、ティヨルは『りゅう』の事が怖い。
 それでも、それでも。
 ティヨルの知っている碧色と同じ瞳をしたりゅうが、皆を、――あの子を守る為に必要な力だと思った。
「……一緒に、戦って頂戴!」
 高く吠えた竜が、小さなフェアリーの言葉に呼応するかのよう。
 女王へと一直線に食らいつき――。
 鏡をガードに浮かせた女王。
「あなたも、……解らないコなのね」
 緑瞳の中で、女王の姿が揺れた。
 鏡で竜の攻撃を抑え込み。一層強い冷気を放った女王は、ティヨルの翅を狙う。
「……ッ!」
 翅が重い。
 フェアリーの細い手足は、他の猟兵よりも冷える速度が早い。
 差し向けられた冷気だけで、ずぐずぐと痛みだす身体。
 息をきゅっと呑んだティヨルは、敢えて笑って。
「……残念でした! あの子が咲かせた花は、雪の中でも枯れたりしないのよ!」
 そうしてふかふかとカンパニュラを揺らしたティヨルは、くうるりと旋回して――。
 ティヨルとりゅうのつくった、一瞬の隙。
 その隙を逃さずに――。
「――そう、花は雪の中で眠るものです」
 女王へと、飛び込んだセーラー服の姿の彼女。
 一房だけ白い髪を編み込んだ、普通のおんなのこ。
 ぎゅうと女王を抱きしめて。
 そばかすの顔を埋めれば、その身体はひどく冷たい。
「でも雪は春には溶けて、また花は開きます」
 ゆずは願う。
 あたたかな体が、この心が。――貴女の氷を溶かしますように。
「ねえ、おめでとうって、あったかいんですよ」
「……知ってるわ。知ってるから、嫌いなのよ」
 ぱん、と平手打ちされる頬。
「あなた!? りゅう、お願い!」
 ティヨルが驚いて悲痛な声をあげる。
 りゅうが食らいつき、女王は腕でその攻撃をいなし。
 それでもゆずは離れない。
 蹴られても、揺さぶられても、その身をぎゅうと抱きしめたまま。
 ――貴女にも、おめでとうが言える日が来ますように。
 縋り付いて、齧りついて。
 彼女を、暖めるように、絆すように。
「女王らしからぬ器の小ささだね、母上とは大違いだ」
 やれやれ、と肩を竦めたエドガー。
 深呼吸を一つ。
 まばたきは、二度。
 ――母上の方が、怒った時は怖かったように思えるね。
 すらりとレイピアを抜き放つと、一気に女王へと飛び込んで。
 真一文字に刃を駆けさせて、強かに蹴り上げられる事で引き剥がされたゆずを受け止める。
 まったく、女王らしい振る舞いとは言えぬだろう。
「大丈夫かい、キミ?」
 肩を震わせるゆずを、エドガーが覗き込むと――。
「大丈夫です」
 傷だらけの彼女……ゆずは朗らかに言葉を紡いですく、と立ち上がる。
 その表情は先程までの彼女とは別物で、自信に満ちた表情。
 にこ、とエドガーに微笑むとゆずは銃を引き抜いて。
「さあ、王子様に、可愛い妖精さん! 合わせて下さい、行きましょう!」
 女王を見もせずに、片手で引き金を6度引いて微笑んだ。
「ええ、……あなた、本当に大丈夫?」
「あたしですか? あは、逆に調子が良い位ですよー、大丈夫です!」
 『わたしがなりたかったあたし』を演じるゆずは、銃を投げ出し。
 次は両手で別の拳銃を構えながら、きますよ! なんて二人に注意を促して。
 女王の追撃を躱すが為、撃ち放つ弾。
 そうか、とエドガーも前へと視線を戻して。
「――キミが大丈夫だというのならば、信じるよ。さあ、合わせようか!」
「わ、わかったわ……! みんなで不幸になろうなんてバカな話だもの」
 腕を引いてレイピアを構えるエドガー。
 ティヨルもくうるりと一度回ってから、りゅうの背に乗る。
 ――奪われたって、悲しくたって、……それだけじゃそんなお話、悲しすぎるもの。
「……いつか、幸せになるのよ!」
「そうだね、この国に冷たい風は似合わないしね」
 歯で鋼糸を引き伸ばしながら、ゆずが駆けるに合わせて。
 りゅうとエドガーが、一気に距離を詰め――!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

月居・蒼汰
ラナさん(f06644)と

……。
ここに来てからずっと、気にはなってはいたんですけど
ここの住人さん達、めっちゃゆるいですよね
いけない、王国が大変な時に戦意を緩めるわけには
(気持ちを引き締めて)
絶望は払います。諦めさせたりはしない

ラナさんより一歩前に、彼女に氷が届くことがないよう
俺自身も氷結耐性とオーラ防御、あと炎の精霊の力を借りて戦います
攻撃は煌天の標で、全ての矢を女王へ向けて

自分が幸せを奪われたからって
他の誰かが幸せになるのを妬んだり憎んだりするのは良くないです
自分が苦しいだけだし、それじゃ誰も幸せになれない
だからせめてここで、憎しみの連鎖を一つ断ち切ること
それが、きっと俺に出来る精一杯のこと


ラナ・スピラエア
蒼汰さん(f16730)と

ゆるい、ですか?
…ふふ、でも皆さん可愛らしいと思います
素敵なドレスを仕立てて頂いたお礼もしたいですし
皆さんが元のゆるい生活が出来るように
世界が雪と氷で満ちる前に、終わらせましょう

いつも通り頼もしい背中に温かさを感じつつ
春咲ノ花片で攻撃します
その色と香りで、少しでもお針子さん達に春を感じて貰えたら

また、という言葉や
お針子さん達のあきらめの早さ
貴女は何度も、こういったことをしているんですか?
大切な人を奪われてしまったことは、可哀想だと思いますけど
綺麗なこの世界に、悲しみが溢れることはやっぱり嫌だから
そうですね、せめてこの場で
憎しみから、彼女を解き放ちましょう



●連鎖
「またかー」「えーん」「ほろびるかー」
「……」
 猟兵達の手によって避難させられるお針子達を横目に。
 女王と対峙すべく立った蒼汰は、お月様色の瞳を瞬かせて。
「どうかなさいましたか?」
「いえ……。ここに来てからずっと、気にはなってはいたんですけど。……ここの住人さん達って、その……めっちゃゆるいですよね」
 瞬きを1、2回。強い冷たい風に八重のスカートがふかふかと揺れ。
 淡い桜色の髪ごと、ラナは首を傾いだ。
「……ゆるい、ですか?」
 確かに。
 言葉だけ聞いていれば、彼等は絶望している筈なのに。
 その口調はどこか気の抜けてしまいそうなもので。
「いえ、――この国が大変な時に戦意を緩めている場合じゃないですね」
 遠く見える雪の女王は、未だ悪意をばらまいているというのに。
 いけない、と。
 気持ちを引き締め直すように小さく蒼汰が首を振れば、垂れたふかふかの耳がつられて揺れる。
「……ふふ、でも。蒼汰さんの言う様に、皆さん『ゆるく』て可愛らしいと思いますよ」
 そんな彼を肯定するように。
 苺色の瞳を笑みに細めたラナは、女王から瞳を逸らすこと無く言葉を紡いだ。
「けれど。まだ素敵なドレスを仕立てて頂いたお礼も出来ていませんし、……皆さんが滅びる事無く、元のゆるい生活に戻る事が出来るように」
 そうしてラナは導きの光を宿した花の杖をきゅうっと握り締め、蒼汰と一瞬視線を交わして。
 その苺色の瞳に宿っているのは、確かな決意の色。
「――世界が雪と氷で満ちる前に、終わらせましょう」
「はい、絶望は払います。――彼等に幸せを、諦めさせたりはしません」
 こっくり頷いて応じた蒼汰は、ラナよりも一歩前に。
 ――決して、彼女に氷が届くことの無いように。
 覚悟と共に腕を振るえば、炎の精霊の加護がちらちらと火花を散らす。
「はい!」
 ラナもまた頷いて。
 ――随分と見慣れた、自らを護るべく前へと立ってくれる彼の背中。
 こんなに冷えた世界の中でも、ラナの胸奥には確かな温かさを感じる。
 強く握り締めた杖へと魔力を漲らせれば、蕩けるように春の色の花弁と解けて。
 あまいあまい春の香りが世界を飲み込んだかと思えば、一斉に花弁が女王へと殺到し。
 重ねて。
 蒼汰が炎と光を一つに纏めて。
 見えない弓を射るように空を引いて一気に踏み込むと、星々の加護を宿した幾百本の矢が全て女王を目掛けて撃ち放たれた。
「!」
 女王が腕を振るう。
 彼女の意のままに浮き動く鏡が、防御に掲げられ。
 春の香りを嵐のようにうねらせたラナと、攻撃主を見やった女王は真っ直ぐに視線を交わした。
 ……ラナには気になっている事があった。
 ――『また』という言葉。お針子達のあきらめの早さ。
 それは、それは――。
「貴女は……、何度もこういったことをしているんですか?」
 ラナの真っ直ぐな問いかけに、女王は一瞬目を見開いて。
「あたくしが何をしようとも勝手でしょう。あたくしはあたくしが嫌な事を壊したいだけですもの」
 直ぐに吐き捨てる様に答えた女王は、勢いよく氷礫を放った。
 炎の精霊の加護を宿した腕でガードを上げた蒼汰は、礫を真っ直ぐに叩き落とし。
「――自分が幸せを奪われたからって、他の誰かが幸せになるのを妬んだり憎んだりするのは良くないと思います」
 更に空へと弓を番えるように、腕を引いた彼は瞳を眇めて言葉を紡いだ。
 そんな事をしたって、自分が苦しいだけだ。
 そんな事をしたって、誰も幸せになれない。
 そうして矢を更に撃ち放った蒼汰に合わせて、ラナも大きく頷き。
「はい、大切な人を奪われてしまったことは可哀想だと思いますけど……。綺麗なこの世界に悲しみが溢れるなんて、――私は嫌です!」
 二人の言葉を聞いた女王の瞳は、酷く冷たく揺れていた。
「綺麗な事をおっしゃるのですね。――そんな事、あたくしが一番知っていますわ。それでも、それでも――あたくしは壊さねば、あたくしが壊れて仕舞いそうなのよ!」
 どこかヒステリックに言い放った女王が瞳を瞑れば、世界が更に深く凍え出した。
 ぞっと背に氷を押しつけられるような居心地の悪さ。
 霜の落ちた花畑。
 半ば凍ったパッチワークの建物達。
 曇った空。
 蒼汰とラナは視線を交わすと、小さく頷き合う。
「……せめてここで、憎しみの連鎖を止めなければ」
「そうですね。――憎しみから、彼女を解き放ちましょう」
 それはきっと、二人に出来る精一杯のことだ。
 ――二人は雪と氷を巻き上げる女王を、真っ直ぐに見やって。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

リグ・アシュリーズ
ティル(f07995)ちゃんと

うたた寝してたら、お外が大変!
薄黄色の衣装を翻して並び立ち。
ティルちゃんがお月様なら、私はいっそお日様になりたい。
我ながら大きく出たけど、気持ちは本物よ!

銃撃を浴びせつつ、避難完了まで女王の注意を惹くわ!
寒さで動きが鈍ってるから、得意の黒剣は接近時のみ。
お歌が始まったら鳥籠の中へ!
狙撃銃を構えて女王の姿をようく見定め、
隙間から、もしくは鳥籠が解除された瞬間、
研ぎ澄ませた五感で銃弾を一発!

効かない?そうよね。本命は二発目だもの。
炸裂弾で動きを止めて距離を詰め、黒剣で一気に斬り抜けるわ。
寒い北風なんて吹き払ってみせる。
なんならそのまま、春だって呼んじゃうんだから!


ティル・レーヴェ
リグ殿(f10093)と

祝いの衣装となる
銀糸と紫色が煌く月思わす衣を纏いて
太陽のような彼女と並び駆ける

愛らしきお針子殿の優しき世界
祝いに満ちたこの地を雪で終わらせるなどと
斯様な事はさせぬ

出来るだけリグ殿と近く動きつつ
女王の動向は注意深く観察を

特に目を伏せる動きには注意し
『春の訪れない世界』の対抗に
即座攻撃の手を止め歌を紡ぎ花鳥籠を展開
リグ殿を含む最大限の範囲で
味方やお針子殿達を
共に凍結からお守り致そう

知っておるか?雪にも負けぬ花はある
さあ、芽吹きの花の歌を――

鳥籠解除の際はリグ殿と合図連携
タイミングを合わせよう
UC無力化時は聖痕による味方への治癒メイン
我が身に刻まれし華は皆の為
誰も膝はつかせぬ



●月と太陽
 夜にはまだ早いというのに、床に落ちる星明かりを模した陽光が陰りだし。
 冷たい冷たい風が吹き抜けて、すぐにそれは痛みを感じるほどの寒さとなった。
 星見の館の中。
 異変に気がついたリグは、陽光色の鮮やかな花弁を重ねたドレスを揺らして慌てて立ち上がった。
「わっ、ティルちゃん! 大変、大変よ! 外がおかしな事になっているわ!」
 そうして外を覗き込んだリグは慌てて、ティルを呼び腕を振って。
「わ、わ……! 確かにこれは随分な異変のようじゃ」
 空にぽっかりと浮かんだ、月のような印象の装い。
 リグに呼ばれるがままに。
 銀と紫をたなびかせたティルも彼女に倣って外を覗きこむと、大きな瞳を一層大きく見開いた。
 パッチワークの建物はカチカチに凍って。
 霜の落ちた飾りボタンの街路。
 噴水の水は飛びはねたようとして凍ってしまったのだろう。
 滴が転がって宝石のように地面に転がり、その吹き出した水の形をしっかりと残したまま動きを止めてしまっている。
 ――それはまるで、世界がおしまいを迎えようとしているかのようにも見えて。
「行こう、ティルちゃん!」
「うむ!」
 二人は慌てて外へと駆け出した。

「さむいよー」「あかんわなこりゃ」「えーん」
「いいや、大丈夫じゃ」
 地面に転がるお針子を、ティルが拾っては建物へと避難させる。
「ほんとー?」「ウー」「せやろか」
 ――ここは、愛らしきお針子達の優しい世界。
「うむ。祝いに満ちたこの地を雪で終わらせるなどと、……斯様な事はさせぬ」
 ティルは口ずさむ。
 雪にも負けない花の歌を。
 芽吹きの花の歌を口に、鳥籠の結界でお針子達を包み込む。
 ティルは決して、彼等をこのまま凍えさせて見殺しにしたりはしない。
「あったかー」「ほろびなくてよさそー」「ええやん」
 これ以上、お針子と味方が凍えぬように。
 皆の苦しみが少しでも、減るように。
 ティルは加護の歌を、高く高く響かせて。

 優しい歌声が響く最中。
 女王の注意を引くように短機関銃より弾を幾度も吐き出しながら、リグは駆ける駆ける。
「ねえ女王さん! どうしてそんなに冷やしてるの?」
 冷凍庫はもう少し小さい方が良いと思うわよ、なんて軽口一つ。
 しかし女王の振らせる雪はリグの力を奪っているようで、軽口を叩いたって雪が止むことは無い。
 リグとは裏腹。
 彼女の力を吸い上げている様子の女王からは、力が漲っているように見える。
 そうして女王は、ゆるゆると小さく頭を振って。
「この国が下らないからよ」
「へえ、こんなに幸せな国なのに?」
「それが下らないというの」
 生み出した氷の盾で弾を叩き落としながら、女王は冷たく言い放ち。
 歌を口ずさんで結界を維持するティルを視線に捉えると、ぴっと指を立てた。
「あたくしは――その服も。祝うなんて馬鹿馬鹿しい行為も。この国も。全部、全部下らないと言っているのよ」
 死んでおしまいなさい。
 敵は多くの場合、似た属性の力で反撃してくる事が多いもの。
 ティルへと向けられた指先より放たれたのは生命力を奪い、彼女の力を無効化する冷たき吹雪だ。
「――ティルちゃん!」
 慌てた様子で銃を持ち替えたリグは、息をきゅっと呑んで。
 落ち着いて、落ち着いて。――五感を研ぎ澄ませ。
 リグが瞳を眇めて真っ直ぐに撃ち放った弾丸は、確かに女王へと叩き込まれ――!
「……これが、どうした?」
 ぺち、と弾が落ちた。
 痛くもかゆくもない一撃に、女王は肩を竦めて鼻で笑う。
 だから下らないというのだ、とでも言いたげに。
「――そうよね!」
 こっくり頷いたリグが同意の言葉を紡いで。
 一気に距離を詰めれば、叩き込むように炸裂弾を撃ち放った。
「っ!?」
「だって、本命はこっちだもの!」
 次に構えたのは、切れ味の鈍ったなまくら剣。
 黒く鈍く光を照り返すそれは、最早剣では無く鈍器であると言えよう。
「寒い北風なんて吹き払ってみせる。――なんならそのまま、春だって呼んじゃうんだから!」
 駆けるリグの姿は、太陽のように。
「この国は、冬で終えるわよ」
 短く女王は、言い捨てるように。
 黒剣を手に飛びかかったリグに向かって、一瞬で伸ばした氷柱を叩き込み。
「……?!」
 ――しかし、その氷はリグへと届いてはいなかった。
 確かな手応えは、掌の中で砕け、零れ落ち――。
 響く歌声。
 春を待ち焦がれる、芽吹きの、蕾の歌。
 氷柱よりリグを護った、鳥かごが蕩けて消えて。
 唇に灯した歌を止めたティルは、真っ直ぐに女王を見やった。
「――我が身に刻まれし華は、誰一人として膝をつかせること罷り成らぬ。やらせはせぬよ!」
 翼の付け根に咲く小さな華――聖痕は、痛みを加護と癒やしに変える力と成る。
 月のように佇むティルは淡い緑を風に遊ばせて、朗々と女王へと言い放ち。
「よいっ、しょっ!」
 重ねて。
 鳥かごを踏んで大きく跳ねていたリグが、黒剣を女王の脳天へと叩き込んだ!

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

フリル・インレアン
ふえぇ、みなさん諦めてはダメです。
この冬を乗り切れば春はきっと訪れます。
団体行動と手を繋ぐでお針子さん達を私の手の届く場所に集めます。
戦場を駆け回りませんがナースコールを使い、みなさんと私が凍結するのを阻止します。
みんなで集まれば暖かいです。

あとは私の体力がもつかどうかですね。



●信じる心
「ふえぇ……っ、みなさん諦めてはダメですー」
「もうだめー」「ゆだねたほうがいい」「さむいよー」
 ごろんと転がってお花のドレスに霜を落としたお針子達を前に、フリルは慌てた様子。
「こ、この冬を乗り切れば春はきっと訪れます……!」
 ゆさゆさとお針子を揺するフリル。
「あとごふんねかせてー」「あしたからがんばるー」「むにゃ……」
「だ、ダメですよーっ、ふえぇ……あ、アヒルさんー!」
 フリルのガジェット――アヒルさんがぷかぷかとお針子達を転がして一箇所に集め出し。
 そんな彼等を凍てつく雪風より護るように。
 前へと立ったヴォルフガングは、騎士の誓いをその胸に。
「……お針子たちが言っていた『前の国は』というのは、こういう事だったのか」
 幸せな国を作っては、国を壊されて。
 幸せを妬み壊しては、国を作られて。
 空しきいたちごっこを、彼等と彼女は繰り返していたのかもしれない。
「行くぞ、ヘルガ。せっかく作り上げた国を、そう何度も滅ぼされる訳にはいかん」
「勿論ですとも」
 得物を手に言ったヴォルフガングの後ろで、くったりしたお針子を抱き上げたヘルガは頷いて。
「――素敵な国を、衣装を。そして何より祝福をくださった可愛い住人さんたちに、今度はわたくしたちがご恩返しをする番ですもの」
「そうだな、――夫婦としての初の大仕事だ!」
「ええ、行きましょう」
 吹きすさぶ冷たい風にミスミソウを揺らして、ヘルガは祈る。
 その美しき声音に旋律を乗せて。
 鼓舞の、勇気の――希望の歌を祈るように紡ぎだす。
 合わせて駆けたヘルガは炎の魔力をその身に宿して、女王の生み出す冷気を少しでも和らげるように。
「ふうん。どうせ居なくなる命に愛を誓うなんて、馬鹿らしいと思わないの?」
 興味があるのか、ないのか。
 彼等の言葉に耳を傾けた様子の女王は冷たいあおの瞳を閉じて開いて、視線を逸らす。
 瞬間。
 一層周りが冷えたように感じられた。
 強くなった雪風に氷礫が混じりだす。
「……ぐ……ッ!」
 その礫を弾くようにヴォルフガングは、構えた鉄塊剣を前へと押し出し。
 それは、命を吸い上げる雪風。
 身体を熱を奪い、横殴りに叩き込まれる礫。
「ふえぇ……、更に寒くなってきました……! アヒルさん……!」
「あー、つめたー」「かわがみえるねー」「ほろび……ほろびない? ほぼほぼほろびてるかのうせいあるなー」
 言葉なきガジェットが集めたお針子達を護るように、フリルはアヒルさんと共に癒やしを与える。
 皆で集まれば暖かいはずだ。お針子を守れるように、その生命を絶やさぬように。
「大丈夫です、滅びません。……わ、私が、私がみなさんを守りますから……」
 応急手当ながらに癒やしを重ね、祈りを重ね。
 ただこの体力が持ってくれる事を、フリルは祈る。
 そのフリルすらも癒やす、柔らかき歌声。
 ――この国中に溢れていた笑顔。
 恋人の、友人の、家族への愛、感謝。
 悲しみを慰め、未来への希望を与える人の優しさ。
 歌うヘルガは、暖かき希望を歌う。
「――『生きている』、ただそれだけで尊い命の輝きを、わたくしはその全てを祝福しましょう」
「いつかは尽きる命かもしれぬ。しかし俺の……」
 戦う意味も知らず。
 ただ本能のままに目前の敵を屠り、喰らう日々の中で――ヴォルフガングは彼女と出会った。
 人を愛する心を識った人狼は、その生命を希望の灯として燃やし続けると。
 彼女の剣――騎士となる事を誓ったのだ。
「――俺のこの命は守るべき者のために捧げる命だ! そのために誓った言葉を、馬鹿らしいとは思わぬ!」
 自らの背より響く、彼女の歌声が頼もしい。
「――ヘルガが居る限り俺の誓いは、決して潰えることはない!」
 ヴォルフガングが氷の礫を一身に受けるようにぐん、と踏み込む。
 暖かき希望を歌う歌声が、誇らしい。
 暖かき愛を歌う歌声が、心地良い。
 それは、自らの護るべきものだ。
 それは、自らの希望だ。
 ――過去に味わった悲劇は、二度と繰り返してはいけない事だ。
 無垢であった雛鳥は、冷たい風に晒されて歌う、歌う。
 ――冷たい冷たい冬が去った後には、暖かな春の陽だまりがある事を信じて。
 自らの頼もしき夫――自らを守護する騎士を信じて!

成功 🔵​🔵​🔴​

篝・陸彦
【鯉灯】
そうだな、灯里
良い事をして貰ったら同じくらい良い事をするんだ
父ちゃん達もそう言うと思ってる
だから戦うぞ

ほらほら、戦えないのは後ろに行ってろ
居なくなったら服とか作れなくなっちゃうだろ
それはおれ達も嫌だし、そっちも嫌だろ?
てきざいてきしょ、こういうのはおれ達の仕事ってやつ!
行くぞ、灯里!

冷たいのにはちょっと強いんだ
だから、あとはもう少しだけ耐えられるようにする
灯里が雪や氷を溶かしてる間に高速詠唱で巫覡載霊の舞
自分を強くして、おれも薙刀で氷ごと切ってやる!

失くしたから幸せは要らないなんて意地っ張りだよな
だって、幸せになりたいからってすぐなれる訳じゃないだろ
分かった、女王様は羨ましいんだな!


月舘・灯里
【鯉灯】
にいさま、おいわいしてもらった
すてきなおうじさまとおひめさまにしてもらった
おれいをするです……!

おはりこさんたち!
ほろんでしまわないように、みんなでたたかうです
あかりとにいさまもおてつだいするです

そうして、ほろばなかったおいわい、しましょう?
すこしかくれていてください!なのです!

エレメンタル・ファンタジアで
ほのおのたつまきをおこしてゆきをこおりを、とかすですよ?
ぼうそう、しないようにきをつけるです

かわいそうな、ゆきのじょおうさま

しあわせだったじぶんもきらいなのですか?
うばわれてしまったからうばうのですか?
それはちがうとおもうのです
なので、とめます!

こうげきはオーラ防御でふせぐですよ!



●わかった
 パッチワークの街並みは、灰色がかったように色を雪に奪われて。
 花のように咲いた氷が、建物を、噴水を、喰らい。花畑を侵食して行く。
 明るく楽しかった世界を舐める様に、冷気が全てを覆ってゆく姿に灯里はぶるると背を震わせて。
 猟兵達がお針子を避難させる姿、――戦う姿。
 お姫様みたいだと思った白いワンピースの裾を握った灯里は、ゆっくりと顔を上げて。
「ねえ、にいさま」
 一瞬だけ陸彦と視線を交わした灯里の翠の奥に、決意の色が宿っている。
 今こそ『とうさまもかあさまもいない、ちゃんとしたおしごと』の始まりなのだと、杖を構えて前を見据えた。
「あかりたちは……、みんなにたくさん、たくさんおいわいをしてもらいました」
 服も、お菓子も、言葉も、暖かい空気も、素敵な歌も、幸せな気持ちも。
 たくさん、たくさん、この国に貰ったのだ。
「すてきなおうじさまとおひめさまにしてもらった、おれいをするのです……!」
 相違う蜂蜜色を一度細めた陸彦は、風を宿した薙刀を手に。
 妹が駆け出す前に、自らが前に出る事で全てを守ろうとするように一気に地を蹴った。
「そうだな、灯里。良い事をして貰ったら同じくらい良い事をするんだ!」
 きっと、きっと。
 父達もそう言うだろう。
 陸彦はそれが正しい事だと知っている、感じている。
「だから戦うぞ!」
「はい、にいさま! 行くぞ、灯里!」
 兄の背を追うように、灯里も駆け出して。
 見据えるは冷たい、冷たい、雪のように広い女王。
 黒を悼むように纏う、美しき人。
「おはりこさんたち! ほろんでしまわないように、あかりとにいさまもおてつだいするです!」
「戦えないのは後ろに行ってろ、てきざいてきしょ、こういうのはおれ達の仕事ってやつ!」
「そう、そう。すべておわったら……ほろばなかったおいわい、しましょう? ――すこしかくれていてください! なのです!」
 倒れてごろごろしてしまっているお針子達に、兄妹は声を掛けながら駆ける。
「――えいっ!」
 炎を宿した杖をまるでバットを振り抜くように振るった灯里の杖先から、ぱちりと炎が爆ぜた。
 雪を溶かし、氷を割らんと、渦巻いた風は炎の竜巻と成って。
 冷たい冷たい風はその身を芯から凍らせようとするようだけれど。
 すこうしばかり陸彦は冷えには強い。
 滝を登る鯉のように勢いよく駆けながらその身を神霊体と成した陸彦は、すくいあげるように刃を返すと縦一文字に氷へと薙刀を叩き込む。
「……ゆきのじょおうさまは、しあわせだったじぶんもきらいなのでしょうか……」
「失くしたから幸せは要らないなんて、ホント意地っ張りだよな。ケンカしたときの灯里みたいだ!」
「むーっ、……でも。そうなのかもしれないです。じょおうさまも、いじをはってしまっているだけなのかもしれません!」
 奪われたから奪う事が、新たなケンカに発展する事くらい灯里だって知っている。
 悪戯げに笑った陸彦が、冷たい風に対抗するみたいに大きく薙刀を払って。
「そうだなー、謝ろうとしてもすぐには謝れないもんなあ。……幸せになりたいからってすぐなれる訳じゃないし……」
 あ、と声を漏らした灯里は炎を渦巻かせて瞬きを一つ、二つ。
 陸彦も一つの結論に至ったようで、地面をぽーんと蹴って妹と一つ頷いた。
 どうして人と、ケンカをするのか。
 どうしてすぐに、謝れないのか。
「わかりました!」
「分かった」
 きっと、きっと。
「女王様は羨ましいんだな!」
「じょおうさまは、うらやましいのですね!」
 羨ましくてケンカしてしまった後、どうすればいいか二人は知っている。
「……行こう! 灯里!」
「はい、にいさま!」
 謝って済むことでは無いかもしれない。
 それでも、それでも――。
 ケンカをしている時の気持ちは、寂しいものだから。
 その気持ちに任せて色々やってしまったら、後からとてもとても悲しくなってしまうに違いない。
 それはきっと、女王だって。
 『やってはいけないこと』は、止めてあげなければ!
 二人は女王の下へと、一気に駆け出して。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

朧・ユェー
【紅月】

景色が白く冷たい雪の世界へと移す
二人のダンスは障害など無く脚を止めず舞続ける
おや?何やら景色が変わりましたねぇ
彼女の身体がヒヤリと氷華へ
舞ながら花の布を受け取り彼女の身体を包み暖める

彼女が攻撃しやすい様にリードしながら
【紅炎蒼氷演舞】で炎の精霊が彼女に攻撃しつつ凍った針子さん達を溶かしていく

【傀儡】で雪の女王が愛した少年を作り
ねぇ、貴女は本当は祝いたいのではないかい?
この綺麗な花の中で彼と供に
一緒に舞えばいい
彼女の甘い毒が凍った心を溶かすだろう

世界が元に戻ってもダンスは変わらず
あぁ、どんな世界でも君は紅く咲き誇る
例えここが地獄だったしても君と共に 踊れるのなら
ねぇ、紅華のお姫さん


蘭・七結
【紅月】

色が、温もりが消えてゆく
全てが真白に呑まれてゆく
おそろしく幻想的な光景だわ

この脚は留まることを知らぬよう
雪の褥さえ、ひとつの舞台となるわ
新たに纏った花衣はあたたかい

停滞を受け入れるにはまだ早いわ
凍えた運命はナユたちが払いましょう
黒鍵の刃を喚んで氷華を薙ぎ払い

彼の傀儡――愛した少年の、にせもの
あなたは、どんな表情をみせるのでしょう
怒り、悲しみ、それとも……
凍えたおもてに何を映すのかしら

生命奪う吹雪を見切り、宙へと舞う
凍てつく場所に春は訪れない
あなたの笑顔は、もう咲かないのかしら
凍結したココロを、蕩かせて
“満つる暗澹”

明けた世界で、もう一度
嗚呼、地獄の舞台もステキだこと
なんだか心が踊るよう



●あかいつき
 街を染める白雪。
 あれほど鮮やかであった街並みが見る間に、温もりも、色も全て呑み込まれて。
 冷たい白が覆い隠して行く。
 その様は決して言葉には出来ないが、おそろしく幻想的にも見える。
 猟兵達がお針子達の避難に駆ける中。
 冷たい雪の褥さえ舞台の一つとして、留まる事を知らぬ足先は律動を刻む。
 花の衣に包まれた七結は服裾をゆらゆらと揺らし、座り込んだお針子の一人へと声を掛けた。
「お針子さん、停滞を受け入れるにはまだ早いわ」
「あー……そうー?」
「ええ、暖かい場所で待っていてくださいねぇ」
 ユェーがよいしょっとお針子を拾い上げて建物の前まで運んでやる間に、七結は駆け出して。
 ――凍えて眠るだけの運命は、ナユたちが払うから。
 黒い黒い鍵の刃を手に、ぎゅっと踏み込んだ七結は氷礫を薙ぎ払う。
 重ねて精霊銃を構えたユェーは、弾に宿した焔の精霊に願う。
 ――彼らが凍えぬように、暖めてあげておくれ。
 ユェーの願いを受け取った精霊達は街を暖め、雪を溶かして舞い踊る。
 そうして真っ直ぐに女王を見据えた彼は、続いて地に手をついて。
 喚び出すのは、からくり人形とドッペルゲンガーだ。
「ねぇ、貴女は本当は祝いたいのではないかい?」
 まっすぐに女王を見やって尋ねるユェー。
 きっと彼等の面は、彼女の愛した少年の影があるに違いないから。
 ――この綺麗な花の中で彼と供に、一緒に舞えばいい。
「この子たちと同じで、貴方達も理解ができないのかしら? 下らないことを言うのをやめてもらえるかしら」
 しかし。
 問いかけられた女王は、うんざりとした様子で肩を竦める。
 瞳を閉じれば、吹き荒ぶ冷たい氷嵐。
 ――もし、例えば。
 からくり人形とドッペルゲンガーに彼女が親しみを覚えたとしたら、彼女の攻撃はこのようなものでは無かったであろう。
 激情に動かされるがままに嘆き悲しみ、怒り狂っていたのであろう。
 もし敵がもう会う事も叶わぬ、自ら愛した者を模して操ったとしたら。
 愛した者を冒涜される恐ろしさは底しれぬものであろう。
 それが幸せを憎む程に拗れてしまった彼女――国を潰す程に想ったものであれば、余計だ。
 だから、きっと。
 彼女が過去から滲み出したオブリビオンで、その胸に抱くものが少年への愛おしさだけであった事。
 ……もう少年の眼差しすら思い出せなくなっていた事は、彼女にとっても猟兵達にとっても僥倖であったのだろう。
 凍てついてしまった心は、溶かしたとしても元の形に戻りはしない。
 それでも凍てついたままの場所に春は、訪れはしないから――。
 駆ける人形とドッペルゲンガーに合わせて、漂う甘い、甘い香り。
 それは七結の操る、たくさん、たくさんの甘くて優しい毒。
「……あなたの笑顔は、もう咲かないのかしら?」
 花と散った恋が、愛が。
 彼女の笑顔を奪ったとしたならば。
 その気持ちすら、毒に溶かしてしまえればいいのに。
「この国が壊れた後ならば、きっとね」
 言葉を口にした女王は、少しだけ眦を緩めたようにもみえて。
 そう、と瞳に睫毛の影を落とした七結。
「……ならせめて一緒に踊りましょうか」
「素敵なお誘いね、でも、結構よ」
 七結によって叩き込まれた毒は、女王の身体を溶かす。
 雪も、身体も溶けようとも。
 ――変質してしまった彼女の心が溶ける事は無いのかも知れないけれど。
 重ねて七結は黒鍵を薙ぎ払って、瞳を細め。
 同時に左右から、ユェーの喚び出した者達が女王へと飛びかかり。
 主……ユェーは月の色をした瞳で女王と――舞うように刃を振るう紅華のお姫様を見やった。
 ――あぁ、どんな世界でも君は紅く咲き誇る。
 例えここが地獄だったしても、君と共に踊れるのならば。
 きっと、僕は。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

サン・ダイヤモンド
【森】
待って、と指を噛み切って
「次はブラッドの番だよ」
血の滴るそれを彼へ差し出した

逃げないで
受け容れて
僕はあなたと生きたいんだ

静かな声音で告げる
それは懇願だったかもしれない

あなたの牙が埋まる
受け容れてくれた事が嬉しくて涙を零し
彼を抱き締めその体に白い焔を燈す

「あなたに加護を」
全ての災いを焼き尽くす無敵の加護を


僕、嬉しかった
皆が笑顔なのも
皆に祝って貰えたのも
ブラッドと僕のこと、「おめでとう」って言ってくれて嬉しかった
だから

『破魔』を籠めた『光属性攻撃』の『祈り』で凍った国を溶かす

どんなに悲しくても
世界に害を為しちゃ駄目なんだよ

ここは、皆の思い出の国なの


あなたと二人生きていく
これまでも、これからも


ブラッド・ブラック
【森】
俺は人を喰わねば生きられぬ化物だ

本当は誰も傷付けたくない
運命を呪った

餓えに我を忘れサンを襲った事もある
我に返った俺は絶望し震えていた
なのにお前は俺を赦し
剰え自分を犠牲に俺を救おうとする

それでも嫌だ
お前を傷付けたくない
何度も拒絶した
なのにお前は

差し出された腕を引いてサンの首元に喰らい付く
赤薔薇の花弁が舞った

お前だけが受け容れてくれた
こんなに醜い俺の事を

「――解った
俺は、お前と生きる
お前の未来を俺にくれ」

お前を傷付けてしまう事を
お前の無限に拡がる可能性を奪ってしまう事を
どうか許して欲しい

俺はお前がいないと駄目なんだ

皆を背に庇い、跳躍
そして全ての災いを焼き尽くす白焔の一撃を
さらばだ、雪の女王よ



●アガペー
 咲き誇る薔薇達に霜が落ちる。
 パッチワークの街並みを雪が白く染め行く。
 それは異変。
 それは異常事態。
 そして、それこそ猟兵達がこの国に訪れた理由でもあった。
「始まったようだな」
「……待って!」
 異変を察知したブラッドは秘密の花園に踵を返し、その彼の黒いマントを引いたのはサンであった。
「……!」
 声掛けに振り向いたブラッドは、その光景に鮮やかなマゼンタを揺らす。
「――次はブラッドの番だよ」
「……嫌だ、お前を傷つけたくない」
 それは愛し子が自ら指先を噛み切って、白い指先を紅に染める姿。
 ――愛し『子』で居てはくれぬ、艶やかに揺れる彼の蜂蜜色の瞳。
 反射的にブラッドはその大きな身を竦ませて、短い拒否の言葉を紡ぐ。
 ぞわ、ぞわ。
 胸裡に思い起こされる、あの日の事。
「僕はあなたと生きたいんだ」
 揺れるブラッドの光とは裏腹。
 サンの瞳には、揺れること無き決意が宿っている。
 ――逃げないで、受け容れて。
 静かな静かなサンのその声は、懇願にも似て。
「――……」
 ブラッドは、運命を呪う他に何も出来なくなってしまう。
 血すら通わぬ身体のくせに、他者の鮮血――人を喰らわねば生きる事も出来ぬこの身体。
 ブラッドは、自らを化け物だと思う。
 本当は誰も傷つけたくないと思う。
 それでも、それでも。
 飢餓に耐えかねて、サンを襲った事があった。
 甘くて蕩けるその肉を。
 あの好いた女と同じ味を。
 全部貪り、食らってしまいたいと思ったあの欲を。
 ――ブラッドは本当に、怖ろしいものだと思ったのだ。
 その時に己が怪物であった事実を再び理解した。
 己が異物である事実を思い知った。
 ――それでも、それなのに。
 目の前の白は、何度も、何度も、何度でも。
 自らを受け入れようとした事だって、覚えている。
 覚えてしまっている。
 何度拒絶したって、幾度振りほどいたって。
 お前は、何度でも――『受け入れよう』とする。
 何も知らぬと思っていたのに。
 何も知らぬままで居られはいない事くらい、ブラッドだって知っていたのに。
 祈るように、縋るように。
 サンはその朱色を差し出たまま、じっとブラッドの奥を見透かすような視線で彼を眺めている。
 俺は、こんなに醜いのに。
 俺は、怪物であるのに。
 ソレを見て、ソレを知って。
 いいや、きっとそれを知らぬ時から、ずっと、ずっと。
 ――お前だけは、受け入れてくれた。
「……解った」
 サンの手首を掴んで彼の噛み切った朱色に口を一度添えてから、ブラッドは朱色を啜ってサンの身体を抱き寄せ。
「俺は、お前と生きる。……お前の未来を俺にくれ」
 そうして骸の牙は、ぞぶりとサンの首筋へと食らいついた。
 ああ、生きている、流れている。
 甘くて、赤い、生の色。
 ――お前を傷付けてしまう事を。
 お前の無限に拡がる可能性を奪ってしまう事を、どうか許して欲しい。
「俺はお前がいないと駄目なんだ」
 掻き抱かれるみたいに背に回された腕。
 サンは彼の腕中で、赤い薔薇の花弁が雪風に煽られて落ちるのを見た。
「……ブラッド」
 その痛みに、その喜びに、感情が溢れて、零れて。
 つ、とサンの頬を伝う熱い雫と成る。
 ブラッドが、自分を受け入れてくれた。
 首へと食らいつく彼の牙は痛くも無い、この喜びに比べたらほんの些細なことだ。
 大きな黒に腕を回す。
 なんだか泪の無い彼の身体が泣いているみたいに思えて、宥めるように、慈しむように。
 彼の背をサンは優しく、優しく撫でながら。
「……あなたに加護を」
 囁く声音。
 それはブラッドにとって――全ての災いを焼き尽くす、無敵の加護だ。
「ああ。……始めようか」
 こっくりと頷いたブラッドはサンを抱き上げたまま、その身をバネのように撓らせて大きく跳ねて。
 パッチワークの壁を蹴って、花の天蓋を跳ねて。
 サンを柔らかい花布の上へと降り立たせると、その身を白き焔を煌々と燃え上がらせて。
 ブラッドは女王の前へと、一気に降り落ちて行く。
 サンは自らの出来る事をしよう、と。その身より光を侍らせて、凍った街を溶かしだす。
 ――僕ね、嬉しかったんだよ。
 皆が笑顔なのも、皆に祝って貰えたのも。
 ブラッドと僕のこと、『おめでとう』って言ってくれて。
 本当に、本当に、嬉しかったんだ。
「……だから、どんなに悲しくても世界に害を為しちゃ駄目なんだよ」
 この国は、皆の思い出の国なのだから。
 ――もちろん、ブラッドとサンにとっても。
 大切な、大切な思い出を重ねた場所だ。
 これまでも、これからも。
 ずっと、ずっと、二人で生きていくと約束をした場所だ。
 サンは燃える大きな、白い焔を見る。
 黒が白を纏う姿。
 大きくネジのように、限界まで引き絞った上半身。
「さらばだ、雪の女王」
 ブラッドは女王へと――絞った身体を解き放つ勢いそのまま、白き焔を宿した拳を叩き込んだ!

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

都槻・綾
f11024/かよさん

委ねるのは、どうぞ私達に

お針子さんへ
直ぐに暖かくなりますからねと笑み向けて

着ていた外套をかよさんの肩に掛けてやり
寒さからひと凌ぎ

背中越しに伝わる体温が
優しく降る雨が
私の身も温めてくれるよう

廻らぬ季節に心閉ざす雪の女王
骸海から還りたいと願う程の強き想いは
憎しみだけではなく
喪失の悲しみも、きっと

恵みの雨に
雪が融け
氷が融け
やがて清らかな水となったなら
澪を示す鳥葬を朗と詠おう

降り注ぐ慈雨が
凍り付いた女王の涙も融かしてくれるよう願って見送る

――もう寒くない
大丈夫ですか

微笑んで振り向いたなら
花のかんばせにも、雨

人目から隠すよう身を寄せて
晴れるまで
あなたが笑うまで
そっと頭を撫で続けよう


境・花世
綾(f01786)と

ふわふわと夢見心地でこの身が熱を帯びるのは
きみの詞が、きみの温度が響くから

しあわせがきらいならちょうどいいよ
わたしのことを冷やしてよ、雪の女王

淡いヴェール靡かせて、乞うように目を瞑る
きみの慈しむいのちの一つに過ぎないこと
わかってるのに、ぜんぶ理解ってるのに
囁く理性も飛び越えて生まれる雨は

――春の雨、あたたかな、育花の雨

馬鹿みたいに狂い咲く花が世界を埋めて
なのにきっときみにだけ届かない
背中合わせのやさしい声が、
どうしようもなく憎らしくて
なのにいとおしくて、胸がいたいよ

なにもかも融かし終えても雨はまだ止まない
折角の衣装を濡らしてしまいたくはないのに
ああ、困ったなあ……


メリル・チェコット
操ちゃん(f22936)
なんだか冷えてきたね……
和服って意外と風通しいいのかな?

針子ちゃん達が震えてる!
メリルのお友達をいじめちゃだめー!
委ねちゃだめだよ、諦めないで!
あのスタアなお姉さんが守ってくれるから、あの人のところに行っててね!

髪を結っていたヘアゴムを外し、お着物の袖が邪魔にならないよう括って留めて
二つに結われていた髪がふわりと広がる
せっかく見繕ってくれたお着物、汚さないようにしないと!

氷には炎、鉄板だよね
白い炎を纏う魔法の矢を展開、重視するのは命中力
針子ちゃん達ががんばって作り上げた、素敵で素敵な縫い物の世界
間違っても燃やさないように

操ちゃん、針子ちゃん達、みんな大丈夫!?


英・操
メリル(f14836)と一緒に

多分寒いのはあの子のせいよ

針子ちゃんたちも諦めちゃだめよ?
ほんのちょっとでもまだ誰かをお祝いしたいならスタアの後ろに隠れなさい
とってもいいものを魅せてあげるから

針子ちゃんたちを背に隠しUCを発動

八つ当たりもその辺にしておきなさいな
雪の女王? それがどうしたの。こっちは銀幕のスタアよ!!!


ファンを護るのもスタアの役目
吹雪が来ようと針子ちゃんたちの声が壁になり、スタアと後ろの針子ちゃんたちには届かない

針子ちゃんたち観てなさい? これがスタア、英・操!

吹雪が来ようと知ったことじゃないわ
ファンが観ていれば私はいつだってスタア

こっちは大丈夫だからやっちゃいなさい、メリル!


ユニ・エクスマキナ
えぇー!?せっかく作った国、壊しちゃうの!?
もったいなーい!
ダメダメ、そんなのダメ!
お針子ちゃん、負けちゃダメ!
ユニも一緒に戦ってあげるから!
ね、頑張ろう?

女王が世界を氷に包む様をじっと見て
『Record& Play』を使用
ほらほら、ユニだって出来るのねー!(えへん
まだやるの?
じゃぁ、ユニも何度だってまねっこしちゃう!

パラソルでびしっと女王をさして
ふふん!ユニたち負けないのねー!
ほらほら、お祝いの続きをしなくっちゃ!
女王様は…お祝いする気分になれないのかな
うーん、まぁそういうこともあるし
仕方がないのねー
お針子ちゃんたちときゃっきゃうふふとはしゃいで
一緒に記念撮影したりして
勝利も祝うのねー!



●おひさまのひかり、スタアのひかり
 なんだかとっても、寒くなってきた気がする。
 陽が落ちてきたのだろうか、そんなにもう時間が立ったのかな。
「なんだか冷えてきた気がするね、……うーん、和服って意外に風通しがいいんだねー」
 柔らかな髪を揺らして首を傾いだメリルは、ぽやぽや言葉を紡いで。
「いいえ、メリル。多分それは違うわ」
 そんな彼女の言葉に、操はととのったかんばせを左右に振った。
 雪も振ってきている、風も強くなってきている、建物が氷に包まれだしている。
 ――それは完全に異常事態。
 きっとそれこそ、猟兵達がこの国へと派遣されてきた理由が動き出した証拠であろう。
 そこに。
「わあーっ、お針子ちゃん、負けちゃダメ!」
「えーん」「ぴえん」「さむくてつらいよー」
 慌てた様子のユニとぷるぷると震えて倒れているお針子が、二人の目に入ってきた。
 メリルは服の裾を靡かせて、草履をぱたぱたと響かせて駆けて行き。
「わああ、大丈夫、針子ちゃん? どうしたの? 寒いの?」
「だめかもー」「さむさむ」「ぴえん」
「ゆ、ユニの服を貸してあげるからー!」
「あ、諦めないでー!!」
 だめと言われればわたわたと慌てるユニとメリル。
 そんなお針子へとゆっくりと歩み寄って、さっと抱き上げた操は瞳を細めて。
 ――遠くに見える、雪のように白い女。
 きっと、この異変はあの子のせいなのだろう、と操は推測する。
 吹き荒ぶ雪嵐は、近づけば近づく程ひどく荒れ狂っているようで。
 だからこそ、にいっと彼女は華やかに笑った。
「そう、諦めちゃだめよ? ほんのちょっとでもまだ誰かをお祝いしたいなら、このスタアの後ろに隠れなさいな。――とってもいいものを魅せてあげるわ」
 ファンを護るのもスタアの役目。
 ファンが苦しんでいる時こそ、スタアは微笑んで勇気を与えるもの。
「あなたが雪の女王? ――八つ当たりもその辺にしておきなさいな」
 そうして。操はとん、と地へと立つ。
「操ちゃん……!」
 メリルが思わず声をあげるその立ち姿は、遠くにあっても不思議と目を引く姿。
 朗々と響く声音は、普段の稽古の賜物だろうか。
 レッドカーペットの上を行くように、美しい佇まいで操は歩む。
 雪の女王、それがどうしたの?
 ――こっちは銀幕のスタアよ。
「針子ちゃんたち観てなさい、これがスタア――英・操よ!」
「お、おおー」「なにやらすごいじしんだ」「これがじ・むーびーですかー」「ゆだねるかー」「スタアなのね!」
 雰囲気とその声量。
 簡単にノセられる針子達と、あとユニも操の後ろに立って、ぱちぱちと手を叩き。
 肩をただ竦める、女王。
「まあ、あなた有名な方なのね。その子達も喜んでいるわ。――じゃあ、そうね。貴方を壊せば、その子達はどう思ってくれるかしら?」
「ぴゃっ!?」「ぴー!? 逃げてー」「ゆだねるかー」
 睨めつけて。指を真っ直ぐに操へと向けた女王の圧、
「委ねちゃだめー!」「お針子ちゃん達、まって、まって! 下手に逃げると危ないよー!」
 メリルとユニがぱっと散ろうとしたお針子達に声を掛けるが――。
「いいえ――その必要は無いわ」
 一瞬で混乱を納めたのは、朗々と響くスタアの声だ。
「ないのか」「わかっぱー」「わー」「どこにかめらあるの?」
 思わず足を止めたお針子達。
 ただ、綺麗に笑った操は首を降る。
 女王の視線をも惹きつける、操のスタア性。
「吹雪が来ようと知ったことじゃないわ。ファンが観ていれば、私はいつだってスタア。――あなたにこの壁が壊れるかしら?」
 わいわいと騒ぐお針子達の声は操の力と成り、それこそが彼女と彼等自身を守る加護となる。
 操はスタアだ。
 スタアであるからこそ、ファンは必ず守る。
 スタアであるからこそ、戦いはせず、魅せるだけ。
「――こっちは大丈夫だからやっちゃいなさい、二人とも!」
「うん! メリルのお友達をいじめる事は、ゆるせないもんね!」
 気合十分。
 メリルはヘアゴムを外すと、着物の袖をきゅっと括って留めて。
 ――なんたって、折角の着物を汚したくないもの。
 ふわふわと髪を揺らして女王を見やって。
「うんうん、せっかく皆で作った国を壊しちゃうのは許せないのね!」
 パラソルでぴしっと女王を指し示したユニの頭上に展開される、巨大ディスプレイ。
 そのディスプレイに映し出されているのは、先程まで観察していた『女王の雪嵐』だ。
「えいっ! ほらほら、そのくらいユニだって出来るのねー!」
 ぐっと胸を張ったユニは、ディスプレイから吹き荒れる嵐を女王へと殺到させて。
 その風に乗って駆けるのは、幾本もの白い炎を纏った魔法の矢だ。
「――氷には、炎! 鉄板だよねっ!」
 メリルはしっかりと女王を見据えて、炎の矢の向きを慎重に調整する。
 お針子達と一緒に皆で作り上げたこの国を、間違っても燃やしたくはない。
「お祝いにする気持ちになれない時は、仕方ないと思うの! でも、人のお祝いを邪魔するのは良くないのねー! ――そんな気持ちには、ユニたち負けないのねー!」
「うん! この国は、わたしたちが守るよ!」
 ぴしっと決めポーズを決めたユニに、メリルがちょっとだけ感化された様子でふわふわの髪を揺らしてかっこいい立ち方。

 そこに――。

●花の色
 綾は羽織った外套を、花世の肩に掛けてやると。
「ね、お針子さん。委ねるのは、どうぞ私達に」
「わかっぱー」「ゆだねよー」「すてるかみあればひろうかみありー」
「はい、直ぐに暖かくなりますから。少しだけ避難しておいて下さいね」
 なんて、青磁色の眸を細めて微笑み。ぽてぽてあるき出すお針子の背を見送る綾。
 彼の掛けてくれた外套の暖かさに、――胸裡の暖かさに。花世は、きゅっと拳を握って。
 雪の女王を真っ直ぐに見やった。
 揺れる揺れる、八重牡丹。
 冷たき霜にも負けず咲き誇る大輪は、その花がただの花で無く。
 ――UDC『絢爛たる百花の王』である何よりもの証拠なのかもしれない。
 でも、その花を宿した身体は、齢25の女。
 背に感じる熱に、頬を燃やすばかりの、ただの人間。
「ねえ、雪の女王。――しあわせがきらいならちょうどいいよ。わたしのことを冷やしてよ」
「まあ、自殺志願かしら。身体は大切にしたほうが良いと、あたくしは思うわよ」
 言われなくとも、と。
 女王が瞳を瞑れば、世界の温度が更に冷えたように感じる。
 鮮やかに縫い上げられた街並みが白に染まる。
 用意されたお祝いの準備が、人のいなく成ってしまった広場に幾つも転がっている。
「ううん、今のわたし程生きようとしている人もそうそういないよ」
 身体はそれほど大切にしてないかもしれないけれど、なんて、笑う花世。
 ヴェールを靡かせて、女王と同じ様に瞳を閉じた。
 揺れる睫毛。
 ――ほんとうは識っている。
 わたしが、きみの慈しむいのちの一つに過ぎないこと。
 わかってるのに、ぜんぶ理解ってるのに。
 囁く理性、留めるためのストッパーだって、ぜんぶぜんぶ飛び越えちゃって。
「……そうかもしれないね」
 やれやれ、と肩を眇めた女王は――。
 もしかすると、笑っていたのかも知れない。
 恋の香り、愛の香り。
 ああ、ああ、なんて馬鹿らしいのだろう。
 降り注ぐ雨。
 暖かな春の雨が降る。
 それは、はじめは雪に溶けて。
 徐々に暖かな雨が雪を溶かして――。
 その雨は、綾の身体も暖めてくれるようで。
 綾は小さく頭を降ると、すこしだけ笑った。
 ――廻らぬ季節に心閉ざす雪の女王の、骸海から還りたいと願う程の強き想い。
 それはきっと、祝い喜ぶ者達への憎しみだけではなく。
 喪失の悲しみも、きっとあるからこそ。
 ああ、その凍ってしまった心が。
 恵みの雨に、雪が融け。
 氷が融けて、やがて清らかな水となったなら。
 ――澪を示す鳥葬を、朗と詠おうでは無いか。
 さあ、さあ、航り逝く路を標そう。
 迷わぬよう、惑わぬように、真っ直ぐと。
 綾より膨れ上がる、朱色の鳥。
 羽ばたきが女王へと殺到し。
「えーいっ!」
 重なった二人の少女の声音。
 ユニとメリルが放った氷礫の嵐と白い炎の矢が、女王を貫いて――。
 雪が溶けるみたいに、その身体がとぷん、と水に成った。
 一瞬でしゅるり、と芽吹いた双葉。
 女王が溶けた場所から、花が狂い咲く。
 建物が、道が、国が、世界が、暖かな花に咲き埋もれ――。
「わああ、すごい、すごい! 何だかわからないけれどすごいのね!」
 その様子に、ユニが苺色の瞳を瞬かせて歓声を上げた。
 メリルが皆を護ってくれていたスタア――操へとぱたぱたと駆け寄り。
「操ちゃん、針子ちゃん達、みんな大丈夫!?」
「もちろん。スタアが居て大丈夫じゃないわけないでしょう?」
「……うん、うんっ、そうだよねえ!」
 凛とした操の姿に、胸を撫で下ろす。
 ――花に埋まった国で、もう一度始まったのは国が守られたお祝いだ。
 お針子たちが、歌い、踊り。
 花で布を作っては新しい建物を生み出して。
「写真映えするのねー」
「いんしゅたー」「すたあ?」「むーびー」
 なんて、きゃっきゃ、わいわい。
 お針子と自撮りの記念撮影。お針子を抱き上げたユニは、くすくす笑って。

 花と笑顔の咲き誇る街角の、すこうし曲がった所。
 人目から隠すように、花世に身を寄せた綾が柔らかく呟いた。
「――随分と、暖かくなりましたね」
「……うん……」
 未だ雨の降り注ぐ花世のかんばせ。
 こんなにも、こんなにも、花が世界を埋め尽くしても。
 なぜだろう。
 どうしてだろう。
 きみには、きっと届かない気がするんだ。
 しってる。
 わたしが、きみの慈しむいのちの一つに過ぎないこと。
 それが憎らしくて、なのに、いとおしくて。
 胸が痛くて。
 とまらない、とまらない。
 花世の頬を、暖かな雫がほたほたと溢れる。
 ああ、困ったなあ、……折角の衣装を濡らしてしまいたくはないのに。
 彼女の頭を撫でる手のひらは、止まらない。
 花世が笑うまで、きっとずっと。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年02月09日


挿絵イラスト