荒塵ザップ・エム
#アポカリプスヘル
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●天国侵犯
死と悲劇は、この世界では、荒野に吹く塵埃ほどにありふれたものだ。
――荒野で孤立したショッピングモール跡地。
かすかな光がヒトの生存を伝えるそこに、砲声とチェーンソーの駆動音が響き渡る。
「ぎゃああっ?!」
「ぐわああっ!」
真夜中の静寂を斬り裂き、悲鳴と銃声、そして血飛沫が荒れ飛ぶ。
「な、なんだこいつらッ……!! いや、それより、見張りは何をやってたんだ?!」
「見張り? この小さき集落の入口にいた罪人のことを言うのであれば、先に悔い改め、終なる国へと旅だったぞ」
黒きフードの襲撃者達の一人がにやりと笑って呟くなり、その後ろから巨大な影が進み出た。
それは腐臭と血臭のする、醜悪な、白くふやけたような色の腐肉の塊であった。
汚臭のする肉塊をこねて出鱈目な人型を作ればこうなるか、というような歪な人型をしていおり、その全高は七メートルあまり。白くぶよぶよとした肉の中に、武器や、既に死んだ人間が埋まっている。――殺戮のために進化した巨大ゾンビだ。他に呼びようもない。
その腕の先で、か細い声がした。埋め込まれた人の顔が、テープレコーダーのように『正門前、異常なし』と呟き続けている。
見張りの兵士だ。定時連絡が偽装されていたのだ。
「てめえッ……!」
「さあ、貴様らも後を追うがいい。今なら主の遣いの中で再会が叶うぞ?」
「野郎、ふざけやがって!!!」
「撃て撃て撃てッ!!」
銃火が咲く。しかし、なんの力も持たない五・五六ミリメートル高速弾では、終焉の遣いは殺せない。
巨大ゾンビはなんの痛痒も感じていないかのように、防衛線目掛け踏み出す。それを盾とし、フードの襲撃者達は、無力な彼らの抵抗を嘲笑った。
「抵抗を許そう。絶望して滅びるがいい。貴様らを殺したら、抵抗せぬ者を残らず略取して奴隷とする。我らが終焉の主もそれを望んでおられる!! くくくくっくく、ハハハハハハハッ!」
高笑いが響く。
――応戦する檄の声は、やがて悲鳴に変わり。
すぐに、それすらも聞こえなくなる。
銃声は散発になり、フードの男達の笑い声だけが残り――、
ああ、もはや、この集落の存続は絶望的かに思われた。
●『奴らを撃ち抜け』
「――というのが、おれの見た予知だ。新年早々忙しないことだが、手の空いている猟兵に力を借りたい。転送地点はアポカリプスヘル、『モール・ヘイヴン』。現地に黙示録教の軍勢が集中している。現地の地形情報はそちらの資料にまとめてある。各自、目を通してくれ」
壥・灰色(ゴーストノート・f00067)はテーブルに積まれた紙束を示すと、いつも同様、淀みなく切り出した。説明をしながらも彼は右手で立体パズル状のグリモアを忙しなく回転させる。意識の集中をする為のルーティンと座標の入力を兼ねたオペレーションだ。
「『モール・ヘイヴン』は、かつてショッピングモールだった一帯に生き残ったヒトが寄り集まりコミュニティを成したものだ。彼らには武装があり、粗末とは言えバリケードもある。少々の襲撃ならばどうにか防ぐことが出来ていたんだろうが――今回は相手が悪い。大型のオブリビオンを擁する、黙示録教の軍勢に目をつけられたんだ」
壁に映し出される、黙示録教徒と巨大ゾンビのデータ。
「敵の目的はヘイヴンにある資源――人的なものも、物的なものも、その全てを略取することにある。きみたちは、まずは守りを破って突入してきているこの大型ゾンビを排除したあと、モール周辺に展開した敵を撃滅してくれ」
灰色は大雑把に作戦概要を話すと、現状についての捕捉を加える。
「……きみたちが介入できるのは、正門が決壊し、ヘイヴン内部で戦闘が開始したタイミングになる。つまり、哨戒に当たっていた兵達は既に全滅している。彼らを助けることは出来ないが……彼らの『天国』で震え、死に抗おうとする人々を救うことは、できる。今回も切迫した作戦になるが、どうかきみたちの力を貸して欲しい。――まとめれば、こうだ」
灰色は三本の指を立てる。
「第一目標、巨大ゾンビを排除、敵の流入停止」
一つ折り、
「第二目標、敷地および周辺で破壊行動を続ける敵兵の撃破」
二つ折り、
「……恐らく、それを果たす頃に敵の本命が来る。最終目標は、その本命の撃破だ」
三つ畳んで、フィンガー・スナップ。
六面が揃ったグリモアからレーザーめいた光が放たれ、宙を切り取った。“門”が発生する。
「作戦を開始する。きみたち任せになる部分も多いけど――どうか、よろしく頼むよ」
――“門”の向こうから、埃っぽい風の匂いがした。
終焉の向こう側に藻掻く人々の世界、アポカリプスヘル。
だが、彼らが諦めぬのならば――命の火を燃やし続けるならば。
それを育てる壁となり、燃え盛らせる風となるのが猟兵の役割であろう。
目的地、フォート・ヘイヴン。
グッドラック・イェーガー!
煙
終わってねェよ。これからだ!
お世話になっております。
煙です。
●章構成
第一章:ボス戦『ゾンビジャイアント』
第二章:集団戦『黙示録教の信者』
第三章:???
敵詳細、その他補足は適宜各章間の断章にて描写致しますので参考になさって下さい。
●プレイング受付開始日時
第一章、断章を投稿後に即開始とします。
断章は1/7昼~夜あたりの投稿になります。
●プレイング受付終了日時
『TW新年東京オフ(1/12)終了時まで』
●お受けできる人数について
今回の描写範囲は『無理なく(日に三名様程度)』となります。
TW新年東京オフの終了に合わせてお返しを開始する予定(当日戴いたプレを少数、リアルタイム執筆予定)です。
オフ終了後に返却する関係上、第一章に関しては、オフ前に失効する日取りでプレイングを送信いただいた方に関しては再送が発生致します。(ただ、着手自体は早くなるので、描写出来る確率は上がる、という感じです)
以降は書けるだけ、再送をなるべく戴かず頑張る感じになります。
それでは皆様、此度もよろしくお願い致します。
第1章 ボス戦
『ゾンビジャイアント』
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POW : ライトアーム・チェーンソー
【右腕から生えたチェーンソー】が命中した対象を切断する。
SPD : ジャイアントファング
【無数の牙が生えた口による捕食攻撃】を発動する。超高速連続攻撃が可能だが、回避されても中止できない。
WIZ : レフトアーム・キャノン
【左腕の砲口】を向けた対象に、【生体レーザー】でダメージを与える。命中率が高い。
イラスト:タヌギモ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
「ぐううううううううあああああぁぁあぁああぁぁああう」
間の抜けた叫びが響き渡った。
いや――間が抜けた、と感じるのはその響きだけ。
その音量は凄まじく、モール・ヘイヴンのアーケードがビリビリと共振する。
白き腐肉の巨体――ゾンビジャイアントの咆哮が響き渡ったのだ。
その右腕でチェーンソーが高速回転を始め、振り向けた左手の咆哮が一度火を噴けば、店舗跡が吹き飛んで億の破片と散る。そのくせ兵士達が放つアサルトライフルの銃弾は、蚊が刺すほどにも効果を発揮しない。
その圧倒的な破壊力、そして防御力を前に、現場に集った兵士達は後退せざるを得ない。
「くそっ、なんだよ、なんだよアレは!! あんなもの――殺せるわけないだろッ、化物だ!!」
――彼らは英雄ではない。ただの人間だ。
異形の巨体を前に有効な武器を持たぬ。
逃げ惑う彼らを追うように、進撃し出すゾンビジャイアント。
その視線が、不意に、何かを感じ取ったように宙を捉えた。
光の門が開かれ――きみたちは、歴戦の猟兵達は、モール・ヘイヴンのアーケード街へと飛び出す!
オブリビオンが猟兵の天敵であるように、猟兵もまたオブリビオンの天敵。
現れたきみたちを警戒するようにゾンビジャイアントは構えを取り直し、今一度天を貫くごとき声を上げた。
――さあ、仕事の時間だ。
天国を犯す不埒者を、地獄の底へと叩き返せ!
シャルロット・クリスティア
◎
既に侵入を許している状態での介入ですか……。
前準備がほとんどできないのは辛いところですが、贅沢は言っていられませんね。
幸い、少なくとも今は敵陣はあのデカブツ一体に頼り切っている……。
前に出る猟兵は多い筈。時間的猶予は……ある。
だとすればやることはひとつ。最大火力を以て殲滅するのみ。
マシンガン、セミオート。術式弾装填。魔力充填開始。
魔力飽和ギリギリ……それが無理でも、時間の許す限り溜めに溜めた、六百五十発のエネルギー弾。
包囲させるのに不足は無い。
逃げ場は与えない……この熱量を以て、塵も残さず焼き尽くす。
何処で材料を拾ってきたかは知りませんが……あるべき場所に還させて頂きますよ!
青葉・まどか
この世界で生きていくのは難しい。
それでも、力を合わせて懸命に生きていく人たちがいる。
そんな人たちを守るために戦った人たちがいる。……全ての人たちを助ける事が出来ない事が辛い。
せめて、ショッピングモールは守ってみせるよ。
暴れ回るデカブツを相手にするのなら相手の速度を上回ればいい。
【視力】で攻撃を【見切り】、ショッピングモールの【地形の利用】してフック付きワイヤーを駆使してワイヤーアクションによる立体機動で回避。
「これ以上、暴れられるのは迷惑だよ」
ゾンビになろうが関節を破壊すれば動きを止めれる。
こちらの動きに反応するのなら感覚器官もある。
腐った脳味噌でも思考はしてるね。
『三重苦』
楽にしてあげる。
●号砲
既に侵入を許した状態から始まる防衛戦。トラップを敷設するのには時間が足りない。布陣した猟兵らのうちやや後方、破損したアーケードの鉄骨に陣取り、シャルロット・クリスティア(彷徨える弾の行方・f00330)は現状を的確に分析する。
(前準備がほとんどできないのは辛いところですが――贅沢は言っていられませんね)
敵は現在の所、ゾンビジャイアント一騎を頼りとした制圧戦を仕掛ける構えだ。フードの男達は頭数が揃っていないためか、あるいはゾンビジャイアントのみでなんとかなるという慢心か――幸いにして、今のところ戦闘に介入してくる様子はない。
対する猟兵達は、既に白兵戦を得意とする者達が接敵、攻撃を仕掛けている。既に戦端は開かれた。
――罠を仕掛けるには状況が向かないが、前衛が前線を支えてくれるのならば、自分がするべきことはただひとつ。
最大火力での、飽和攻撃だ。
シャルロットはマギテック・マシンガンにボックス・マガジンをセット。ボルトを引いて初弾を送り込み、同時に、自身が有する魔力を注ぎ込む。
マガジンの中に詰まっているのは術式弾。自己複製、自動追尾、高熱量発生の複合術式を刻まれた銃弾がチェンバーの中で発光し、銃口より燐光を漏らす。
機を伺う。シャルロットは前衛を信じている。
彼等が前進したのならば、必ずや隙が生まれるはずだ。自分はその隙目掛け、致命の一矢を叩き込むのみ。
シャルロットが目をやる最前線では、今まさに、一人の猟兵がゾンビジャイアントの巨体目掛け打ち掛かっていた。
この過酷な世界で、今日を生きるということがいかに難しいか。
水の一滴を求めて荒野を流離い、やがて砂に呑まれて消える命のなんと多いことか。
青葉・まどか(玄鳥・f06729)は知っている。
アポカリプスヘルのこの無慈悲な環境は、人類の生存に決して適していない。
でも――だからこそ、生き残った人々は寄り合い、少しでも生存確率を上げ、力を合わせて懸命に生きていこうとしている。
このモール・ヘイヴンもそうして明日を求めた人々の集落だ。そして、今も散発的に銃撃を浴びせている彼等は、同胞を守るために銃を取り、果敢に戦う戦士達だ。
――助けたい、と思う。自分一人に出来ることは、決して多くないかも知れない。それに、到着時点で犠牲は出ていた。その事実にまどかは唇を噛みしめる。助けられなかったことがひたすらに辛い。
けれどもう、これ以上、誰も犠牲にならないように戦うことなら。このモール・ヘイヴンに、明日をもたらすその手伝いならできる。
「ううううううあああああああぅううう!!!」
大音声。ゾンビジャイアントの咆吼だ。恐れに身を竦め、モール自衛兵の銃声が止む。
その瞬間に、まどかはダガーを逆手に抜いて吶喊した。
神速軽妙。まどかの動きは羽のように軽く風のように速い。ゾンビジャイアントは己が白き腐肉を隆起させ、突端に乱杭歯を生やした顎を備えた、蛇めいた触手を生み出した。その数十数本、まどかを追うように繰り出される。
まどかはショートダッシュとサイドステップを織り交ぜ、触手の悉くを回避、ダガーで斬り払って駆けた。
最後の触手を姿勢を低めてくぐり抜けたまどか目掛け、ゾンビジャイアントが左腕を振り向ける。砲口が鈍く光る!
「っ!」
砲声! 耳を劈くような轟音と共に、ゾンビジャイアントの左腕に取り込まれたカノン砲が火を噴いた。砲弾の着弾箇所がえぐれ、石畳が派手にまくれ上がって石塊を散らす。
――だが飛び散る石塊にまどかの血は混じらない。彼女は一瞬前に跳躍、砲撃を回避していたのだ。巨大ゾンビもそれを認識してか、即座に宙のまどか目掛け照準を改めるが、まどかは既に次のアクションに入っている。即ち、フックワイヤーを用いた立体機動!
放たれるカノンの一射を、建物の鉄骨に絡めたワイヤーを巻き上げ立体機動回避!
「これ以上暴れられるのは迷惑だよ。ここには生きていこうとする人たちがいる。――死人がその足を引っ張って、いいわけない!」
決然たる声と共に、ゾンビジャイアントを翻弄し宙を飛び渡るまどかの軌道上に、ひらりひらりと花弁が舞う。毒々しいほどに蒼い花弁が、ゾンビジャイアントの身体に纏い付く。
「う、ううう……?」
経皮吸収性・即効性を有する神経毒を含む花弁による感覚器へのダメージ。ゾンビジャイアントが蹈鞴を踏んだその瞬間を、まどかは決して見逃さない。
「楽にしてあげる」
敵はこちらの動きに反応している。そして、接近してきたまどかから狙うという判断力がある。つまり、感覚があり、思考しているという事だ。
まどかはよろめいた巨人の瞳にむけ邪眼を解放。その思考能力を鈍らせ、即座にフックワイヤーをゾンビジャイアントの足下に叩き込む。
――花弁、邪眼、続けてこれが最後のダメ押し。ゾンビだろうが、関節があれば動きの基点はそこだ。膝関節を破壊すれば動きは止まる!
ワイヤー巻き上げ、まどかは落下エネルギーと推力を合わせて空を駆け下りるように急降下。
股下を跳ね潜りざまに、両膝、膝蓋骨に繋がる腱をダガーで斬り裂いて駆け抜ける!
「があああああああうううう、あうううあああああ!!」
叫び声、ずうん、と重い音がして巨人が両膝をつく!
そしてまどかが作ったその千載一遇の好機を、シャルロットが逃すわけがない。
飽和直前までチャージした魔力のために、銃口は最早眩い光を放つまでになっている。セフティを解除、セレクターをセミオートにセット。
冷たい引き金に触れる。溜めた魔力の全てが、今まさにシャルロットの人差し指に乗った。
「逃げ場なんて与えない。この熱量を以て塵も残さず灼き尽くす……! どこで材料を拾って、どうやってそんな躯体を作ったかは知りませんが、骸が向かうべきは土の底! あるべき場所に還りなさい!!」
シャルロットは吼え、迷いなくトリガーを絞った。
その瞬間に、光が弾けた。
シャルロットのマギテック・マシンガンの銃口から飛び出した術式弾は、ライフリングによる旋条痕刻印を最終詠唱としてその術式を発露した。
内部に込められた膨大な魔力を元に、術式弾本体は魔力分解され、単純な熱エネルギー弾体に還元される。射出からゼロコンマゼロゼロ二秒で、弾体は即座に自己複製・増殖を開始。即座に完了。吐き出されたたった一発の魔弾が、一瞬で六五〇発の魔弾流星雨に変貌する。
闇夜斬り裂き降り注ぐ光の嵐。
これこそはサジタリウスの弾雨。コード『ミーティア』!!
炸裂、炸裂炸裂炸裂炸裂炸裂炸裂炸裂炸裂炸裂炸裂炸裂炸裂炸裂炸裂炸裂炸裂炸裂炸裂炸裂炸裂炸裂炸裂ッ!!! 着弾と同時に撒き散らされる熱量に、巨大なるゾンビの肉体は火柱の如くに燃え上がる!!
轟音と悍ましきゾンビの苦鳴――
これが、猟兵達が戦う長き一夜の先魁であった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
フローラ・ソイレント
◎
POW判定
・行動
敵の眼前に仁王立ちし
正面からUC使用した「全身を電磁加速した突きの一撃」で迎え撃つ
・セリフ
(独白ぎみに)
この救いのない荒野でも
人間は心の中に一本の芯があれば生きていける
それは各々が自分で見定めて
自分で据えるものであるべきです……
(大声で)
つまりアンタらが何を信じようと勝手だが
それを人様に押し付けんじゃねえってことだよ!
・UC演出
(反抗の衝動が加速する)
全身の雷光が大きくなるにつれ
皮膚の紫色が濃く、広くなっていく
やがて眩いばかりの輝きを纏った拳で敵を討ち抜き
「(UC詠唱後)応用の一、独鈷崩拳」
(懐から取り出した冷却薬煙草をくわえ、指先の雷光で火をつける)
ふうっ、ちっと無茶したか
シャオロン・リー
可哀想やけど、死んだらそこまでや
俺は一つも哀れんでやらん、悪党やからな
そんでも天国の門守りに来とんのは、俺が暴れたいからや……暴れさせろ!!
「はっはァ、脳天もろたで!」
目立たんように近づいて、頭っぽい箇所にまず一撃食らわす
一撃目はどんだけ小さくてもええ、とにかく当てるのんが重要や
敵の攻撃は大技は見切って躱して、あと細かいもんは激痛耐性と継戦能力で耐える
最悪俺の意識がもってかれんかったらええ、槍でいなしてなぎ払って、小さな傷でもたるモンは当てとく
隙の一度でも見せたら火尖鎗で槍の雨降らしたるわ
「こっちは思いきり暴れ倒す気で来てんねんぞ!
バラバラにしたるさかい、そっちもバラバラにするつもりで来ぃや」
●轟雷に焔捲く
爆炎に捲かれ炎上する巨躯。しかし場を取り巻く重苦しいプレッシャーが消えることはない。――当然だろう。
あれだけでは滅ぼせぬ。
かの一撃に比肩する打撃を、幾度も叩き込まねばならぬ!
「可哀想やけど、死んだらそこまでや。俺は一つも哀れんでやらん。悪党やからな」
とんとん、と朱槍の柄で肩を叩き、赤き衣に身を包んだ男がニヒルに呟く。
クールな台詞とは裏腹に、その根底には燃えるような感情が蜷局を巻いている。熱に沸き立つような、芯の通った強い声。
「そんでもこんな地の果てまで、天国の門守りに来とんのは、俺が暴れたいからや」
びゅ、ヒュ、ひゅうおっッ!
朱槍を取り回し、腰で回転を止め、刀印の左手を前に腰を落とす。発される剣気、挑みかかる一歩手前。装填された銃を思わせる様相。
「お前やったら思いっきりブチかましても、簡単にゃ壊れんやろ? 暴れさせろや!!」
鮫のように歯を剥いて笑うは、シャオロン・リー(Reckless Ride Riot・f16759)。
「ごおおあああアアアッ!!!!」
吹き上がる火柱の内側より、肉を焦げ爛れさせながら駆け出るゾンビジャイアント。既に関節部は再生済か。シャオロンはそれに合わせるように踏み込んだ!
敵の感覚器に与えられたダメージが全快する前に、足下へ駆け寄せ、その膝を蹴り敵の身体を駆け上る。軽業。
けたたましいエンジン音と共に振るわれるチェーンソーの一撃を紙一重で回避し、
「はっはァ、脳天もろたで!!」
身体を振り、遠心力を乗せた朱鎗をゾンビジャイアントの脳天に叩き込む! 確かな手応えと共に巨体の頭部が陥没。蹈鞴を踏む巨躯。しかし、
「ごおお、おおおあうウッ!」
当然その程度で止まるゾンビジャイアントではない。最早死んだ、生命の埒外のことわりで動いている者を、頭をへこませた程度では止められぬ。
振り払うように無造作な左手のスイングが来る。
シャオロンは即座に畳んでいた脚を伸ばし、敵の頭を蹴り飛ばしバックフリップ回避。
「とっと、ッはは!! イキがええな、そう来なくちゃつまらん!」
頭部への打撃二発で、ゾンビジャイアントの注意は完全にシャオロンに引きつけられた。シャオロンが着地するなり、巨躯の左手の砲口がシャオロンを睨み、ギラリと光る。
凄まじいバックファイアと轟音。放たれたカノン砲の砲弾。人間がそんな者を喰らえば、即座に億の肉片に化すであろう力の権化。
シャオロンは凶悪な砲撃を無手側転で回避、踵で地面を捉えるなり力強く踏み込んで前進。後方に着弾した砲弾が爆炎と破片を散らし、シャオロンの背を破片と衝撃波で嬲る。めり込んだ破片に血を流すも、致命傷にはほど遠く、シャオロンの好戦的な笑みはいささかも陰らない。痛みに耐えるのには慣れている。
――敵の得物はあの強大なカノン砲、そして右腕のチェーンソー。そこから繰り出される大技を警戒し、他の些細なダメージは喰らった上で耐えれば良いという割り切り。なんたる胆力か。
振り下ろされるチェーンソーを転がり潜り、股下を抜けざまに内股を振り回した槍で引き裂き、死角に回って背中に突きを二つ。敵が振り向く前に右ふくらはぎから膝までを槍の刃先で裂いて抜ける――
シャオロンは止まることなく動き続ける。この攻撃の先に、作られる小さな隙のために。
シャオロンの機敏な格闘戦を見ながら、瞑目、腕組みし仁王立ちする影が一つ。
一言で言うならば、異様な風体の女であった。白い瞳に紫の肌、顔と首に縦横と這う傷跡。女性としては長身に類する一七〇センチメートル弱の背丈を、露出の多いナース服で包んだ女だ。
シャオロンの相手に固執し、腕を振り回し足を薙ぎ振るって暴れるゾンビジャイアント目掛け、その女は独白めいて口を開いた。
「この救いのない荒野でも、人間は心の中に一本の芯があれば生きていける」
それは、或いは宗教かも知れぬ。何者かの教えかも知れぬ。
或いは己の力、家族との絆、生きたいという強い目的意識、コミュニティへの帰属意識――枚挙にいとまが無い。
それら全ては尊いものだ。それがあるからヒトは生きていける。
この、水さえ涸れ、泪が砂に染みて乾く滅びの大地でも。
「――それは各々が自分で見定めて、自分で据えるものであるべきです」
女はすう、と目を開いた。鮮血のような色の瞳が露わになるなり、ぱしィッ、じ、じじっ! と空中で紫電が爆ぜる。
そう。生きる理由はそれぞれでいい。それぞれが尊い。
……他人のそれを、侵害しない限りにおいては。
女の名は、フローラ・ソイレント(デッドマンズナース・f24473)。
その身に纏う磁極流、練達の闘気『電磁覇気』がスパークを上げ、帯電した髪がざわりと広がる!
フローラは開いた眦を尖らせて、真っ向からゾンビジャイアントを睨めつけた。
「ゾンビの腐った脳味噌でも分かるように言ってやるぞ。つまりアンタらが何を信じようと勝手だが――それを人様に押し付けんじゃねえってことだよ!」
クールで落ち着いた声音を一転、吼えるように言うなり、フローラは全身に纏う電磁覇気を全開で回す。
彼女を衝き動かすのは、反抗の衝動。この世界に抗うことこそ彼女の源衝動。死して尚、誰かの死に、圧政に、運命に抗う事こそが、デッドマンたる彼女が尚も動くその動機だ!
電磁覇気がスパークを散らし、その輝きが増すほどに、侵食されるように彼女の皮膚の紫が濃く広がっていく。
そのあまりのプレッシャーと敵意に、ゾンビジャイアントの意識が、シャオロンとフローラの間で揺れたその瞬間――
シャオロンが槍の先に輝ける焔を点し。
フローラが挑みかかるような前傾姿勢を取る。
動いたのはフローラが先だ。
地面を踏みしめた太股の筋肉が隆起し、溜めた力の凄絶さを知らしめる。
「我が金剛の雷は一切を貫く」
溜めたバネを一挙に解放。ど、と地の爆ぜる音がした瞬間――フローラの姿は消失した。
否、圧倒的な踏み込みの速度で爆ぜ疾ったのだ。拳に集まった電磁覇気のスパークが眩く、闇夜に流星めいて尾を引く!!
これぞ、電磁拳法『磁極流』――
ヴァジュラ
「磁極流、帝 釈 天――応用の壱、独鈷崩拳ッ!!」
声が早いか、着弾が早いか。身体自体を電磁加速した砲弾めいた突きが、ゾンビジャイアントの脇腹に突き刺さり、そのまま肉を抉り散らして抜けた。
ゾンビジャイアントの脇腹が大きく抉れ吹き飛び、余りのインパクトにずずん、と巨躯が蹈鞴を踏む!!
「ええザマやなぁオイ、こっちは思くそ暴れ倒す気で来てんねんぞ!! バラバラにしたるさかい――そっちもバラバラにするつもりで、掛かって来ィや!!」
そこにすかさず吼え声、シャオロンである。よろめいたゾンビジャイアントの身体を再度駆け上り、肩をジャンプ台にして跳躍! 下方に振り向けた朱鎗より、火竜の焔気が迸る!!
焔に幻影めいて揺らめく朱槍の穂先が、シャオロンの裂帛の気合と共に繰り出された。一閃二閃どころではない、数さえ気取れぬ連続突きだ!! 空より降る無数の焔槍連打、是をして奥義『火尖鎗』と称す!!
「ごお、おうううおおおおあああああああ!!」
その槍撃の極致、躱すことなど不可能。腕で身体を庇い吼えるゾンビの巨体が、再び紅蓮の炎に包まれる――!
燃え上がるゾンビの巨体を尻目に制動したフローラが、冷却煙草の尖端を雷光で炙る。
「ちっと無茶したか。……だが、今が無茶の通し時ってもんだ」
――ここで押し負ければ、ヘイヴンは落ちるのだから。
哄笑して槍を叩き込み続けるシャオロンを援護すべく、向き直ったフローラは煙を吐くと、今一度電磁覇気を励起する!
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
「なんと不遜な……!!」
「者ども! 御使いを守れ! 背教者共を殺すのだ!」
立て続けに現れた猟兵達、その突然の一転攻勢にざわめいたフードの殉教者らが、怒りの声を伴って攻め寄せる。 猟兵達は手近な者から順にその応戦に当たる。敵は数を揃えて押し寄せるが――ただ数が多いだけでは、猟兵達は殺せない!
ゾンビジャイアントと交戦していた猟兵らが即座に距離を離し、シームレスに敵信者らに攻撃対象をスイッチ。その間に、新たに現れた猟兵、ゾンビジャイアントをレンジに捉えた猟兵がゾンビジャイアントに攻撃をするシフトが組まれる。
猟兵達は知っている。ここがヘイヴン最後の防衛線だ。ここを抜かれれば後がない!
猟兵達は己が武器を構え直し、油断なく己が敵と相対する!
ハウト・ノープス
◎
襲撃があったか
ならば私も出よう
巨躯の個体と聞いていたが、このタイプか
私も同じ死に体ではあるが、作り手が悪かったな
黒剣を抜き、構え
狙うは頭、そこまで駆けて登るだけの道
頭が無理でも上半身の何処かに剣を突き刺せればそれでいい
最悪喰われても対応はできる
敵の攻撃に気を配りつつ、接敵
剣を深く、深く突き刺す
さあ、死はもうすぐそこだ
【デッドマンズ・スパーク】を使用
腕一本犠牲に、突き立てた剣へ電流を流し込もう
今後の動きに支障が出るが、問題ない
私は生きねばならず、そのために殺さねばならない
隙を見て剣を引き抜き、一本の腕で構え直す
倒れぬならば倒れるまで斬り込むのみだ
命の手触りを思い出させてくれ
●死の形
「骸による襲撃か――ならば私も出よう」
宙に現れた“門”を潜り、新たな猟兵がモール・ヘイヴンの宙を游ぐ。前宙を一つ、バランスを取って着地。
均整の取れた、精悍な体つきの男だった。赤錆びた瞳に燃える橙火めいた髪、浅黒い膚が目を引く大柄な男性。
名を、ハウト・ノープス(デッドマンの黒騎士・f24430)という。
ハウトは先行して戦う猟兵らの戦闘と、敵の状態を検分。真っ当な生物であればとうに決着が付いて然るべき打撃が幾度となく叩き込まれ、それでもなお腐肉の巨躯が瞬く間に再生するのを見て目を細める。
恐るべき再生能力。そして圧倒的な高火力。ああ、確かに兵器としては奴の能力は圧倒的といっていいだろう。しかし、ハウトがこぼした評はその真反対のものだった。
「巨躯の個体と聞いていたが、このタイプか。――私も同じ死に体ではあるが、作り手が悪かったな」
侮るでもなく、ハウトは言う。
ただただ命を冒涜した涯てに生まれたかのような醜悪な外形、今なお生きた肉を求め浅ましく腐液めいた涎を垂れ流す口吻。
――あれが、かつて生きたなにがしかの命の成れの果てだというのなら、これを哀れと言わずしてなんと言う。
「死を忘れたか、哀れなる骸。私が思い出させてやる」
漆黒の剣を抜剣。ハウトは右足を引いて歩幅を大きく広げ、吶喊の構えを取った。
「ご、あ、あ、ああああ――!!」
巨躯が吼える。最早言葉もなく、ハウトは真っ直ぐにゾンビジャイアント目掛け疾駆する。
ぎゃ、ぎ、ぎぎぎぎぎぎりいりりりっ!!
血脂滴る錆びたチェーンが悲鳴を上げ、巨躯の右手からせり出したチェーンソーの刃が高速回転する。
駆け寄せるハウトを叩き潰すように大振りの、チェーンソーの一撃。ハウトとてそれをまともに防御しようなどとは考えていない。質量に差がありすぎる。転がるように刃を潜り抜け、懐に飛び込んで、その大腿部に黒の剣を突き立てる。即座に突き立てた剣を支点に身体を引き上げるハウト。
「がああ、あああ!!」
股に止まった虫を叩くような所作で、巨躯は振り上げた左手をハウト目掛け振り下ろした。太股を蹴り飛ばして身体を駆け上がり、間髪のところで逃れるハウト。
一歩間違えば今度こそ物言わぬ肉塊になりかねぬすれすれの回避を見せながら、ハウトは敵のだぶついた腹肉を蹴って跳び、黒剣を逆手に握った。両手保持、身体を反らせて引き絞る。
「――さあ、すぐそこにあるぞ。お前の『死』が」
ハウトはそのまま溜めた身体のバネを解放。黒剣を敵の頭に力の限りに突き立てる。
「ぎいいいいがああああああっ!!!」
しかし黒剣が突き立とうと巨躯の動きは止まらぬ! 脳を破壊したそばから再生が始まる。この程度では死なぬとでも言うかのように!
羽虫を払う様な動きで、砲付きの左腕がハウトを薙ぎ払う、その刹那――
「私は生きねばならず――そのために殺さねばならない。故に死ね、彷徨者。お前の死の形を思い出せ」
――スパーク!
ハウトの左腕が見る間に劣化・風化しズタズタになる。そこにあった生体エネルギー、存在量、魂の衝動の全てを、ヴォルテックエンジンが膨大な電流へと変換――突き立てた剣を介し、巨躯の脳幹と脊髄を焼き焦がすッ!!
捨て身の一撃、『デッドマンズ・スパーク』!
文字通り雷鳴に撃たれたかのように痙攣するゾンビジャイアントの頭を蹴り飛び退き、ハウトは踵で石畳を抉りつつ着地。
片膝をつきつつも、骸の巨躯はチェーンソーを再始動する。規格外の耐久性。しかし、ハウトは焦りの色もなく言紡いだ。
「これで終わらぬなら、終わるまで斬り込むのみ」
黒剣を右手に油断なく構え直し、呼吸を一つ。
ズタズタの左腕をだらりと下げ、デッドマンは謳う。
「何度でも死の形を教えよう。代わりに――お前の命で、命の手触りを思い出させてくれ」
成功
🔵🔵🔴
ルーノ・アルジェ
◎
さあ、行こう。
やる事は、きっといつも通り。
オブリビオンを、倒すだけ。
…でも、守れるだけは、守ってみせるよ。
…とはいえ。私は、これしか知らないから。
真正面から、まっすぐ…避け方なんて、知らないし。
攻撃には、攻撃。
相手が攻撃する時なら、全力で攻撃しても、避けられる心配を、しなくていいから。
紅血のベーゼを使いながら、捨て身の一撃を叩き込もう。
攻撃が当たれば、生命力吸収と吸血ができる。
急所だけはオーラ防御して…あとは、攻撃だけを考えよう。
オブリビオンを倒し続ける為には、必要な事だから。
よそ見をする暇なんて、あげるつもりもない、し。
死ぬまで、私に付き合って?
…そうすれば、私でも、誰かを守れる。きっと。
●呪装一輪
ばがっ、ばがんっ、ばがんっ!!!
闇夜を引き裂くカノン砲のマズルフラッシュと着弾焔。
骸の巨躯の左腕に内包されたカノン砲は換装が効くらしく、速射の効くモデルでの連続射撃が猟兵らを牽制する。着弾する度に闇夜のモールの煤けた店構えが明るく染め上げられ、あるいは流れ弾で吹き飛んでいく。
その着弾の隙間を一人の猟兵が駆け抜ける。ルーノ・アルジェ(迷いの血・f17027)だ。やることはシンプル、たった一つ。オブリビオンを倒すだけ。それこそ彼女の源衝動にして行動理念。
――そうだ。これ以上奪わせるものか。
人が殺され、略取されるばかりのこの世界の有様は、彼女の故郷、ダークセイヴァーに勝るとも劣らぬ荒廃ぶりだ。
だからこそ、守れる者は守りたい。後ろのヘイヴン自衛兵に砲弾が行かぬよう、最前線を駆け抜けて敵の狙いを引きつける。
ルーノは決して戦闘の巧者ではない。飛び道具の避け方も理論的には知らぬ。だが、本能だけが彼女を突き動かした。
全力、真正面、全速。ルーノは敵の照準が補正される前に射線の上を駆け抜ける。放たれた砲弾が間近を掠め、その衝撃波に薙ぎ倒されて地を嘗めるが、弾むボールめいた動きで地を蹴り飛ばして再前進。掠めた破片による切創と衝撃波による裂創より血が溢れて滴る。
――それでも、ルーノは止まらない!
ルーノは血が滴る右腕を打ち振った。右腕を伝う血がまるで生きた蛇のようにのたくり、彼女の右手に集まって巨大な鎌を生成する。血を媒体として武器を成す魔術――鮮血呪装『重き血の咎』。
血の巨大鎌を引っ提げ、そこに流した血の分の呪力を乗せる。ユーベルコード、『紅血のベーゼ』による戦闘力増強。傷つけば傷つくほどに彼女の戦闘能力は増す!
「私は難しいことは分からないけど、……こっちを攻撃する時は……そっちだって、動きを止めるでしょ」
なんたる捨て身か! しかし、機動力を持たぬ骸の巨躯相手にはその理屈は正しい。退きながら撃つという発想のないゾンビジャイアントは、足を止めてルーノを撃ち続ける。
――放ち続けること十三発目の砲弾、直撃コース。
ルーノ目掛け巨砲が火を噴いた瞬間、少女は本能のままに血鎌を一閃した。
ぎゃ、ぎぃんッ!!!!
軋るような鈍い金属音と共に、カノン砲のマズルファイアが弾頭諸共二つに裂ける!
ルーノが踏み込み振るった鎌が、間近で放たれた砲の一撃を斬り裂いたのだ。二分され背で爆ぜる砲弾の爆風に乗り、ルーノは全力跳躍。爆炎に背を炙られようと彼女が止まることはない!
「はあああっ!!」
ルーノはそのままゾンビジャイアントを飛び越すコースで銃弾めいて飛翔、後ろ手に引きずるように引っ提げた鎌の刃を骸の巨躯の首にかけ――触れた刃を支点とし、勢いのままに大車輪!
「がっあ、あああああああっ!!」
紅き血の閃きがゾンビジャイアントの首を一周、汚濁した血液がスプリンクラーめいて飛沫く!
苦悶に暴れる巨躯を蹴り離しルーノは後退。流石に一撃では首を落とすまでは行かずとも、初手はそれで充分。斬った傷から生命力を吸収し、ルーノは傷を癒やし、纏う紅きオーラの硬度を上げる。――しかし最低限だ。急所だけを庇う。それ以外の生命力は全て攻撃に回す。
紅き陽炎めいた光が血の大鎌に伝い、煌めく。
「よそ見する暇なんてあげないわ。死ぬまで、私に付き合って?」
ルーノは挑発するように言って再び大鎌を構える。
この身が傷つこうと、構わない。
この巨躯を抑え続ける限りは――少なくとも、これ以上誰も傷つかないのだから。
(そうすれば、私でも、誰かを守れる。きっと)
悲壮なまでの決意を背負い、ルーノは今一度ゾンビジャイアント目掛け吶喊する!
成功
🔵🔵🔴
雨宮・いつき
かの暗夜の世界のように、ここにはもはや人の世の理と呼べるものは無いのかもしれません
ですが…今を懸命に生きる人々の命が摘まれようとしているならば、助けぬ道理など在り得ません
御勤め、果たさせて頂きます
目には目を、巨体には巨体を
この場は天津丸にお任せ致しましょう
狙いは正確、故に読みやすい
左腕から放たれる生命の光を【生命力吸収】の力を纏った斬城刀で威力減衰させつつ受け流し、
斬城刀の噴射機と焔の放射による推進を併用した高速機動で白兵戦を挑みます
灼熱の炎と零度の焔で両腕を焼き凍てつかせ、
噴射機による変幻自在な太刀筋で斬り裂き打ち潰す
元は人であろうと、救えぬ物の怪に成り果てたのなら…あらゆる手を使い祓います
●機神絶刀
過酷なアポカリプスヘルという世界。人の生存圏は僅少化し、明日をも知れぬ身となった彼等から命を、物資を、尊厳を奪い取るかのようにオブリビオンが跋扈する。
或いはこの世界は、ダークセイヴァーと同等か、それ以上に過酷なのやも知れぬ。
「そう、ですね。かの暗夜の世界のように、ここにはもはや、人の世の理と呼べるものは無いのかもしれません」
少年は苛烈ないくさばで、淡々と呟いた。
そうとも、来る終焉により、人理は毀れ、砂に呑まれた。この無法末法の荒野においては、弱者は踏みしだかれて砕け潰えるのみ。
――だがそれでも。
彼の瞳より、光が消えることはない。
「ですが……今を懸命に生きる人々の命が摘まれようとしているならば、助けぬ道理など在り得ません。御勤め、果たさせて頂きます」
前線で他の猟兵が戦い敵の侵攻を押しとどめる間に、少年――雨宮・いつき(歌って踊れる御狐様・f04568)は鋭く手を組み替えて印を切る。
「目には目を、巨体には巨体を。鋼の巨塊が叩いて砕く、悪を倒せと轟き唸る。天之御影が力の一端、今こそ此処へ起動せよ。我が驚天動地の鉄攻武神、とくとその目でご覧じろ!」
いつきが印を組んだ諸手を地に着くなり、火炎が同心円状に吹き上がる! 天の炉めいた火焔の裡より、ぬうと無骨な刀持つ腕が突き出た。推進器付き巨大刀『斬城刀』を引っ提げ、炎の裡よりそれは迷いなく踏み出した。
丈、骸の巨躯と比べても劣らぬ。鍛冶神により鋳造されし、絡繰り仕掛けの巨大武者! 飛び退き見送るいつきの口から紡がれる、その鋼武者の銘は――
「参りませ、天津丸!!」
――天津丸、推参!!
己と対等な体躯を持つ敵手の降臨にゾンビジャイアントが顕著な反応を見せる。チェーンソーを振り回して周囲の猟兵を遠ざけながら、即座に破壊された左腕内部の機関砲を破棄・換装する。骸の肉体の中には武器の換えさえもが内蔵されているのだ。
弾種、生体エネルギー弾。物理弾頭よりも増した速射力での連射! 出力の余りに地より砂塵が舞い上がる。
そのエネルギー弾を迎え撃つように天津丸が前に踏み出した。生体エネルギーを減衰する術式を纏った斬城刀を傾け、連射されるエネルギー弾を分厚い刀身にて弾く、弾く弾く弾く! 弾丸が途切れる一瞬を狙い、いつきは蒼扇をぱん、と広げ、沙汰を下すように宙を扇ぐ。
呼応し、天津丸が身を捲くように斬城刀を振り被る。その峰の推進器が、まるで爆発したかのような勢いで赤き焔を吹いた。天津丸は推力に振り回されるように一転、しかし制御を喪ったわけではない。凶悪な推進力を、暴れ馬を御すが如く、己が身体を振り回して支配下に置き――超高速にて骸の巨躯へと襲いかかる!
「があああ、あああ、ああ!!」
尚も生体エネルギー弾を連射するゾンビジャイアント。数発が天津丸のボディを削り抉るが、速力の乗った天津丸はその程度では止まらぬ!
ば、ばばっ、ばうんっ!!
破裂音、加速! 己が持つ権能、鍛冶神の焔を操る力により、斬城刀の推進力を細やかにコントロールして瞬く間に距離を詰め、ゾンビジャイアント目掛け唐竹割りの一閃。
「があああうっ!」
高速回転する右手の巨大チェーンソーによる受け太刀! 斬城刀とチェーンソーが苛烈な音を立てて鍔迫り合い、火花が散る!
「元は人であろうと、救えぬ物の怪に成り果てたのなら――あらゆる手を使い祓います。天津丸!」
命じるようないつきの声に、天津丸はチェーンソーを流し払った。巨躯の間近で打ち振った左手より絶対零度の焔を撒く。皮膚が引き攣れ、束の間目玉が凍結し、ゾンビジャイアントが足を止めた瞬間――
再三、斬城刀が火を噴いた。
かの巨体を高速で機動させる推力が斬城刀一本に集まれば――
是即ち、天剣絶刀。
袈裟、唐竹、喉、水月、小手斬り、胴打ち、瞬刻の斬撃が血を散らし、
斬城刀の鎚部分による力任せの薙ぎ払いが、骸の巨躯を横から薙ぎ飛ばした。
汚液を撒き散らしながら吹き飛んだゾンビジャイアントが、店舗を二つ薙ぎ倒して転げていく……!
成功
🔵🔵🔴
ユキ・パンザマスト
サイクルとしての弱肉強食は嫌いじゃねえです。が。
信仰の名を掲げた略奪なんざ、埒外っすわ。
そこのデカブツ!
お前も、早食いには自信がおありで?
[先制攻撃+マヒ攻撃]による百舌の早贄、
枝根を伸ばし、動きを鈍らせましょう!
──【杯盤狼藉】!
[生命力吸収]を行なう藪椿と侘助の刻印をまとわりつかせて、増殖と[捕食]を繰り返す。
分厚い皮膚装甲を齧りとりましょう。
喰われようとも、喰い合うだけだ!
上手く舌に取り付けたら、柔らかい体内から喰らってやりますよ。
タンは好きですとも。
ええ、ユキ、悪食なんで、
お前みたいなのは最高の馳走です!
少しでも。
体内に埋まった方々の無念ごと喰らえれば、
食葬になりますかねえ。
●業を喰らう
ゴム鞠めいて吹っ飛ぶゾンビジャイアントに併走する影が一つ。薙ぎ倒される建物の瓦礫が乱れ飛ぶ。その瓦礫さえも蹴り飛ばして、そいつは獣めいて疾る。
獣めいて?
――いや。そいつは、『けもの』だ。
ユキ・パンザマスト(暮れ泥む・f02035)が駆け馳せたのだ!
「サイクルとしての弱肉強食は嫌いじゃねえです。けものだってみんなそうやって生きてるわけですからね。――けどあんたらのは違う。信仰の名を掲げた略奪なんざ、埒外っすわ」
呆れたように言いながら、店の看板をオーバーヘッドキックで蹴り避け、大振りの瓦礫を蹴って加速。
「神様の名前を騙って弱肉強食を気取る、さぞや気分がいいことでしょうが、残念! ユキ達が来たからにゃその夢も泡沫、終わりってもんです。――そこのデカブツ! お前も、早食いには自信がおありで? ひとつこのユキと、『喰い比べ』、一局いかが!」
ず、が、がががっがががっ!!!
「ごおおお、おおおおおああああああん!!」
瓦礫を蹴って制動したゾンビジャイアントが、全身の傷を蒸気を上げて復元しつつ吼えて応じた。
――言葉のままに受け取れば、そんなもの、勝負になるわけがないだろうと思うのが普通の意見だろう。七メートルオーバーの骸の巨躯と、たかだか一・五メートルに満たぬ矮躯で、食う量なり速さなり、いずれを競うも正気の沙汰ではない。
しかしユキは大真面目であった。敵のチェーンソーが動き出す前に、その左手の剣呑な砲が振り向けられる前に、最後の瓦礫を蹴って宙へと身を翻す。
「そうら、宴の始まりですよ!」
放映端末が音立て回り、映し出されるは無数の白椿の枝根! 地面に、周囲の建物に、ありとあらゆる所に映し出された実体ホロの椿が伸びて、ゾンビジャイアントの四肢に胴にと遠慮無く食いつく!
「ぎいううううう、ああああ」
腕を薙ぎ、エネルギーカノンを乱射し、白椿を引き剥がしに掛かるゾンビジャイアントだが、十の枝根を毟られば、十の新手でユキが追う。百の枝根を噛み砕かれども、分厚く白い脂肪を喰い進め、一歩も退かぬ!
――ユキはべろり、と舌を出してみせた。舌に真ッ赤に咲くは刻印、『藪椿』。ひらりと振った左手に、輝く其方は『侘助』。その二つの刻印と同じ刻印が、押し寄せる枝根に刻まれている。
ユーベルコード、『杯盤狼藉』! 敵を捕らえその生命力を、存在量を吸い尽くして捕食する為の刻印を増殖させ敵を喰らう。――そしてその渇望と食欲は、対象を喰らい尽くすまで際限なく膨れ上がり続ける。
増殖し、喰らい、毟られて千切られて斬り裂かれて撃ち千切られて喰らわれて喰らって喰らって喰らって喰らわれて喰らわれて――
それはまさに、けものと獣の『喰い比べ』。
実体ホロが削られ刻印が蝕まれ空虚に痛む胸を、身体を、ユキはひたすらに敵の身体を喰らうことで補う。喰らわれようとも、喰らい合うのみ。
ゾンビジャイアントが、刻印が集中した一際太いホロ椿の幹に食らいついた瞬間――フィードバックが自身の存在を軋ませる感覚を覚えながらも、ユキは口端から血を流しながら、唇の両端を吊り上げて嬌笑した。
「ッ、は、ははっ! ――ええ、ユキ、悪食なんで。タンも好きなら、お前みたいな業の塊は――この世で最高の馳走です!」
砕けかけたホロ椿の幹を分化。敵の上顎に杭を叩き込み止めて、細い枝を幾つも伸ばして骸の舌に絡め、潰して千切って刻印で喰らうッ!!
「――!!!!!!!!!」
舌を喰らわれ声にならぬ叫びを上げるゾンビジャイアントの体内までも、そのまま喰い進みながら、軋む身体を止めるようにユキは胸元の布地を握り締めた。
ああ。願わくば。
こうして柔肉を喰らい進む、あと僅かの間。
今その肉となり果てた、かつて喰われて死んだ人々の魂を――
あの骸の巨躯より解き放てていますように。
「――こいつはお前の業の流転。食葬です。まだ、離しちゃああげませんよ……!!」
成功
🔵🔵🔴
冴木・蜜
これがこの世界でありふれたものだとして
私はそれを許すつもりはない
少しでも救える可能性があるの命なら
私はこの手を伸ばしましょう
巨体もそうですが
その両手の得物が厄介ですね
では私は敢えてチェーンソーの刃を受けましょう
他の猟兵に向けられた攻撃の前に
体を捻じ込み庇う形で
チェーンソーの一撃を受けます
攻撃を受ける直前
其処で体を液状化し
急所への直撃だけは回避
損傷に痛みはありますが堪えましょう
飛び散った己の血肉さえ利用し
攻撃力重視の捨て身の『毒血』
有りっ丈の毒でその鋸刃を融かし落とします
そのまま腕を這い上がり
腕を丸ごと一つ融かしてしまいましょう
絶望して滅びるのは彼らではない
死んだものは眠らねば
ジェイ・バグショット
◎
…デカブツ過ぎていい的だな…。
銃弾は埋もれてあんま意味なさそうだし、……削ぐか。
…そういうの、俺一番得意なんだ。
鉄輪に棘のついた拷問具『荊棘王ワポゼ』が空中に複数出現
回転しながら敵を引き裂いたり、自動追尾で捕らえると同時に棘が突き刺さる
黒剣『絶叫のザラド』は
攻撃と防御どちらにも使う
ブラッドガイスト使用後は殺戮捕食形態
剣の切っ先から裂け、牙の覗く異形の捕食剣へ
切りつけたところから捕食していく
ギィイイ"ェエ"!だとギィイ"ヤァ"ア"!だの
嫌な叫び声で煩い
…まだ喰い足りないってよ。
軽薄な笑みは剣の声を代弁するように
ザラドの絶叫に気を取られると同時に『テフルネプ』を操り複数の縄状の影で敵を捕縛する
●ポイズン・ディップド・ディナーショウ
生きるために足掻き、必死に群れて、明日に繋がる何かを探し、懸命に荒野を這いずる人間達。それを、当然のように、教義を盾に踏み躙り、その権利を、命を蹂躙する。 この末法の光景が譬え、この世界でありふれたものだとしても――冴木・蜜(天賦の薬・f15222)がそれを赦すことはない。看過することもない。
「誰かに決められる滅びの定めなど、許されるものではない。……少しでも救える可能性がある命なら、私はこの手を伸ばしましょう」
うっそりと呟き、蜜は右手を打ち振った。錆びた鉄のこすれる音。翻した手先に古錆びた切開用メスが三本、手挟まれている。
「道義を語るつもりはないが、食いでのありそうなデカブツだ。いい的だな――」
その横合い、黒剣を抜く男が一人。金の瞳が妖しく光り、ゾンビジャイアントを睨む。その周囲に、ぎゃら、ら、ら、らららりぃっ! 棘がそこかしこに光る鉄輪が浮遊、時たま擦れて耳障りな金属音を奏でる。
その鉄輪は引き裂き削ぎ落とすもの、拷問具『荊棘王ワポゼ』。これより骸の巨躯を裁く刑吏めいて、宙に躍る複数の鉄輪の中心に飄然と立つのは、ジェイ・バグショット(幕引き・f01070)。
二人、共に思想は違う。しかし、目指すところは同じだ。
奴を溶かし、削ぎ落とし、地獄に叩き込む。
「両手の得物が厄介ですね。私がチェーンソーを抑えます。その隙を取っていただけますか」
「……わかった。弾は埋もれて効かなさそうだし、端から削ぐか。そういうの、俺、一番得意なんだ」
蜜の紫眼とジェイの金眼が寸刻交わる。次の瞬間には、二人の猟兵は地を蹴り敵目掛け駆け出していた。
「ごおあああああああううううう」
ゾンビジャイアントは己が欠損を再生しつつ吼声を上げ、二人の猟兵目掛けて左腕を突き出した。間髪入れず生体エネルギーを加速・収束して撃ち出すブラスター・カノンによる砲撃。
蜜とジェイは即座に左右に散るように弾道から身を躱す。正確には、砲口が自身らに向いた段階で軸をずらすように機動している。過たず回避。
凄まじい威力のエネルギー弾が地面を爆ぜさせ捲り上げ、瓦礫を散らすのを尻目に、まずは蜜が先行した。
手挟んだメスを投擲。錆びている割に切れ味鋭く、メスはゾンビジャイアントの膚に突き刺さり、汚れた血を飛沫かせる。
――だが、それだけだ。そのメスには蜜が宿す毒が塗りたくられているが、骸の巨躯の体積に対してそのメスは余りに矮小すぎる。人のサイズ感に換算すれば、爪楊枝よりもまだ小さいようなものだ。
メスによる損傷を意に介すこともなく、ゾンビジャイアントは疾り駆け寄せる蜜に狙いを絞り、右腕のチェーンソーを再始動。軋み音とエンジンの唸り音を混ぜ合わせた、死を思わせるノイズをあげてチェーンソーを振るう。
迫る凶器に対する蜜は無手、受ける武器もない。ジェイが目を瞠ったその瞬間――
蜜の身体がどぷり、と黒い流体になった。
ぎゃありっりりりりっりいりりっッ、
超高速で回転するチェーンソーの鋸刃が液化した蜜の身体を飛び散らせる。そう、平素人の形を取ってはいるが蜜はブラックタールだ。液化して急所を外したのだ。
無論ダメージがないわけではない。液化が間に合わず損傷した部分もある。だが、それら全てを無視して蜜は自分を薙ぎ斬ったチェーンソーを視界に捉える。
――チェーンソーの刃は、文字通り、鎖に乗って常に回転しているものだ。斬り裂かれた蜜の身体が、血肉が、刃に絡みついてチェーンソーの上を循環浸透する。
そして、冴木・蜜の血は終なる死毒、『毒血』である。
錆びたチェーンソーのチェーンに浸潤浸食して融解脆化するなど、造作も無い!
「死者が生者の脚を引くものではありません。死んだものは、眠らねば」
蜜の声が響いた刹那、張り詰めた音がしてチェーンが破断し、切れたチェーンを巻き込んだチェーンソーがエンスト、沈黙する!
「ご、おおあ……!」
動かなくなったチェーンソーで癇癪を起こしたように地面を、液化した蜜を打ち据えるゾンビジャイアント目掛け――
「なるほど。驚かされたけど、次は俺の出番ってわけだ」 ジェイが迫る。チェーンソーの換装、再始動には時間を要する。
ゾンビジャイアントが次の行動を決めあぐねたその瞬間にねじ込むように、ジェイが鉄輪の群れ、ワポゼを投射した。真っ当な飛び道具にはあり得ない、ジグザグの奇怪な軌道で飛んだワポゼが次々と、その営利にして無骨な棘でゾンビジャイアントの腐肉を抉り、千切り、引き裂いて散らす!
「ぎいいい、があああっ!!」
「煩い奴だな。――まぁ、コイツとどっちが煩いかって話だが」
ジェイは黒剣の刃に自分の手を滑らせ、裂けた手から溢れる血を黒剣に吸わせる。――血液を代償に目を覚ますのは、
『――ギィィィッギッィ"イィエイアアア"ア"ァ!!』
――裂かれし罪人。
ジェイが手にしていたはずの優美な形状の黒剣は今や面影もなく、まるで異形のバケモノが擬態を解いたかのように、切っ先より顎門めいて裂け開いた。裂け目には牙列が覗く。
これぞ、ジェイの持つ黒剣『絶叫のザラド』の殺戮捕食形態である。
「ちょうどよく捌けたところだ。喰わせてくれよ」
シニカルに笑って、ジェイは先立って繰り出した鉄輪群に続き突撃。停止したチェーンソーを鈍器として振り下ろすゾンビジャイアント。
急制動とステップで天槌めいた打撃を掻い潜ると、ジェイは地面に叩き付けられたチェーンソーの切っ先を蹴り登った。蜜がチェーンソーを破壊したからこそ出来る業だ。『イイイイィィイギギ、ギイ"イ"イ"ヤアアァアァ"!!』
――ああ、ザラドの発するその奇叫は。
「ガッつくなよ。今食わせてやるさ」
喰わせろ、喰わせろと喚く、飢えたる獣の叫びに他ならぬ。
ジェイは速力もそのままに、チェーンソー、ゾンビジャイアントの右腕を駆け上る。腕を打ち振れば変形したザラドが鞭剣めいて撓り、ゾンビジャイアントの前腕を上腕を脇腹を胸を頸筋を顔を目玉を、斬り裂き喰い千切り噛み千切り飲み干すッ!!
「が、ぐううう、あああああああああああああああ!!!」
「痛いか、バケモノ。悪いな、まだ喰い足りないってコイツが喚くんだ」
ザラドの絶叫とゾンビの雄叫びが混ざる。阿鼻叫喚の地獄絵図の中で、なおもジェイは捕食剣を振り回した。斬風めいて翻るザラドの切っ先が肉を喰らい裂き、忌血の飛沫が宙に吹く。
肩を駆け上り越えて、敵の巨大な背を立て続けに斬り裂きながら、ジェイはパチリとフィンガー・スナップ。
「――そら、仕上げだ」
刹那、ジェイが地に落とした影が縄めいて変形、平面を飛び出してゾンビの巨躯に絡み付く!
影に住まうUDC、『テフルネプ』による拘束。軋むように動きを止めるゾンビジャイアントの巨体――
拘束を引きちぎろうとしたその右腕が、余りにも唐突に、ずるりと腐り落ちた。
「ごああああアアアッ?!」
どちゃり、と地面に落ちた腕が、チェーンソーを残してグズグズと溶けて腐臭と共に地に染みていく。腐液から分離するように黒く蟠った、タールめいた水溜まりが、ずるりと変形してヒトの形を取った。――蜜である。
毒血の死毒により、あの巨大なる骸の右腕を侵食浸潤、内側より融解して溶かし落としたのだ。
「――絶望して滅びるべきは、今を生きる彼らではありません」
「一度渡った黄泉路だ。今度は迷わず歩けるだろう?」
蜜が静かに言った言葉に、ジェイの軽薄な声が重なる。
違う字面に見えて、彼らの言意は一つきりだ。即ち――
――『ここで滅びるべきは、骸たる貴様だ』ということだ!
吼えながら腕の再生を始める骸の巨躯。
拘束が払われるその前に、蜜とジェイは前後より、再び同時に襲いかかる!
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ラナ・アウリオン
◎
――ラナ、現着。拠点防衛任務、開始しマス!
浮遊砲塔から各種の属性弾を掃射。
弱点らしい弱点でも、見つかれば好都合デスが……。
敵の攻撃については弾幕を以て牽制、加えて回避を重点することで対処としマス。
さて、ゾンビ……やはり対生物の戦闘とは勝手が違うものデスね。
痛覚や恐怖では止まらなさそうデスし、ここは搦め手ではなく力押しと参りマショウ!
ユーベルコード起動。
現象〈氷の流砂〉定義――発動。
足を止めさせ、動きを鈍らせ、そのまま凍結させにかかりマス。
抵抗はされるデショウが、無理に動けば肉体へのダメージも生じるはず。ここはひとつ、相手の膂力を利用させてもらいマス!
●氷葬
破壊、破壊、破壊。再生、再生、再生。
幾度もその身を繕い直す骸の巨人との激戦が繰り広げられるその渦中、空中に今一度“門”が広がり、その中からまた一人の猟兵が飛び出す。
蒼銀の髪が宙に吹く風に攫われ、ともすればしゃらりと音を奏でるやもと思わせるほどに、戦闘の光を照り返して煌めく。身体の各所にはメタリックな流線型の局所装甲を帯び、遊色の魔力光が彼女の回りに粒子のようにきらきらと閃いた。
藍色の瞳は凜と輝き、整った面差しに決然とした表情を浮かべ、戦場を俯瞰するその姿は最新鋭の戦乙女を思わせる。
「ラナ、現着しましタ。これより拠点防衛任務、開始しマス!」
ラナ・アウリオン(ホワイトアウト・f23647)である。
着地と同時に周辺の環境をスキャンし、世界律へアクセス、介入して局所的に新現象を定義。
対オブリビオン用の決戦兵器、人為聖痕を宿したミレナリィドールとして生み出されたラナは、己の権限を持って現実を書き換え、常世では起こりえない現象を発生させる事を可能とする。ユーベルコード、『最新鋭の創世神話』。
バックグラウンドでユーベルコードを発動する魔力リソースを確保し、ラナは即座に敵、ゾンビジャイアントを中心とした旋回機動に入る。
「ウェヌス! フルコントロール、レディ!」
ラナが左手を敵に向けて突きだすなり、彼女の周囲に浮かぶ砲撃ユニット四基――浮遊型火力投射外装『ウェヌス』が一斉にその切っ先をゾンビジャイアントに向けた。二叉槍の穂先だけを浮かべたような外見をしたその尖端付近に、まるでレーザー投影したかのように、魔法陣が描かれて高速回転。
二枚のブレードの間に魔力の光が煌めき、それを高速回転する魔法陣が圧縮・加速・増幅。
「ファイアッ!」
ラナの檄に応えるように、ウェヌスから同時に光が放たれた。一台ごとに属性が異なる、マジック・ボルトの弾幕が放たれる。雷、炎、氷、風、打撃力的にメジャーな属性を揃え、それぞれが相克し合わないように着弾点を離しての射撃だ。
弱点を探る、極めて効率の高い戦闘機動。ラナの高い戦闘的リテラシーが光る瞬間である。
――だが、しかし、それも圧倒的な暴力の前には霞むものだ。
「!」
高エネルギー反応。ラナの放つ魔弾幕に捲かれながら、それをものともせずに左腕を突き出すゾンビジャイアント。ラナは即座に砲口角度と彼我の距離と相対速度から弾道を逆算、風の魔術を纏わせた足で地を蹴り、回避起動を取る。轟音! 連射される生体エネルギー弾が、ラナの疾るそのほんの僅か後ろを立て続けに吹き飛ばす!
「ゾンビ……やはり対生物の戦闘とは勝手が違うものデスね。戦闘履歴をアップデートしましタ。痛覚や恐怖では止まらなさそうデスし、ここは搦め手ではなく力押しと参りマショウ!」
弾幕が通じぬとみるやラナは即座に現実侵食の座標を構築。使用する現象は決まっている。あの圧倒的な怪力を逆用するための現象。
「ユーベルコード起動……現象〈氷の流砂〉定義――発動!」
その瞬間、埃っぽい風が、きんと音を立てるほどに冷たく張り詰めた。ゾンビジャイアントの足下にあったはずの瓦礫は、現実侵食に飲まれて氷の砂礫と化す。骸の巨躯は戸惑うように足を上げようとするが、逆足がその分地面に沈む。
気づいたように、狂ったように暴れ出す骸の巨人を、四基のウェヌスにて照準。
属性は氷。狙うは一点、沈み行く左脚。
既に術中。捉えた。
「――逃がしマセン!」
放たれる氷の魔弾の嵐!
足下から伝わる絶対零度の氷気、そしてウェヌスからの魔弾連射が瞬く間にゾンビジャイアントの足を凍結させる。
――力任せに動かそうとした事により、その関節よりクラック音。動かぬ、動かそうとすれば自壊に到る!
足が止まった骸の巨人を前に、最新鋭の戦乙女は謳う。
「その膂力が仇になりマシタね。――さぁ、今デス! 皆さん!」
彼女の『神話』が終わるまでの、値千金の寸刻。それを、精鋭たる猟兵達が逃すわけもない。
応ずる声が次々鳴り、猟兵らの全力攻撃が骸の巨躯へと降り注ぐ……!
成功
🔵🔵🔴
ロカジ・ミナイ
ヒョウ!見に来たよ、デッカいゾンビ!
痩せ薬でもぶっ掛けたくなるカラダしてんなぁ!
きもちわるっ
正直ね、ツギハギは嫌いじゃないんだよ
でもこうさ、尊厳っていうかセンスっての?
そういうのも廃れちまったのかい
なんて哀しい世界だ
ねぇ、敵さんよ
刀なんて見た事あるかい?
近未来にまで残ってるのか知らないが
なんとも綺麗で場違いでしょう?
やたら長いナイフじゃねぇよめちゃくちゃ斬れるだろう一緒にすんなや
実はね、驚いて欲しいんだけど…
この刀からはビームが出ます
ええ、サムライテクノロジー
霞に構えて左手を刀身に添える
例のかっこいいポーズを取ったら
高出力の熱線がゾンビジャイアントへまっしぐらよ
やぁ、現地の人
お薬は入り用かい?
斬幸・夢人
やれやれ……、今日も今日とて正義のヒーロー業開始といくかね
ゾンビジャイアントに襲われそうな奴らは片っ端から蹴飛ばすなり投げ飛ばすなりして遠くへ
少々荒っぽいが、もうぎりぎりの状況みたいなんでね
なーに、痛かったら生きてる証拠だぜ?
俺に仕返ししたけりゃ、あとで付き合ってやるよ
使用UCは「神さえも覆せない確実」
超遠距離から放てば勝てる――だが自分の手の内を早々にばらす必要はねぇからな
敵の攻撃を回避するのに十分な距離を保って、回避したところを隙をついて高威力高速抜刀術……くらいにしておくか
あーあ、コートが血でぬれちまった
どーも堅実な戦い方ってのは性に合わないね、効率的なのは分かるんだがよ
●雷閃、次元一刀
猟兵達の全力の攻撃に、ゾンビジャイアントの身体は焼かれ凍らされ砕かれるが、破砕された白い肉片がうぞうぞと蠢き、びちりびちりと本体に跳ねて貼り付き、音を立てて結合、再生。
その様子に眉をひそめる猟兵も少なくない。――一見不死身に見える骸の巨躯だが、猟兵達は知っている。あの再生とて限度がある。幾度も攻撃を重ねれば必ずや打倒せしめることが可能だと。
――しかし。
「う、うわあああっ!!」
「まだ再生するのか……?! あんな化物、どうやって倒せば良いんだよ……!」
この世界に住まう人間達は、そうではない。
あのクラスのオブリビオンの高速再生など見たことがあるはずもなく、畏れに狼狽を見せる自衛兵達。
ゾンビジャイアントは全身より腐臭漂う蒸気を上げ、受けた傷を塞ぎつつ、恐れの匂いを感じ取ったように自衛兵らの方に顔を向けた。破損したはずの右腕のチェーンソーが換装され、高速で唸りを上げる。
「ひっ……!?」
恐怖を煽るチェーンソーの駆動音、そして振り向けられるエネルギーカノンの砲口。逃げ出す自衛兵の中に、恐怖で足が縺れ転ぶ者、足がすくみ動けなくなる者が出始める。
「ごああああうううううッ」
ゾンビジャイアントが唸るような咆哮。左手のエネルギーカノンが煌めき、エネルギー弾が射出されるまさにその一瞬前――
「やれやれ、面倒なこった。今日も今日とて、正義のヒーロー業の始まりだ」
剽げた声。その主と、もう一人が射線上を駆け抜けるなり、尻餅をついたままの自衛兵数人が立て続けに宙を飛んだ。
「う、うわあアアアッ!?」
一瞬後に砲声! 一瞬前まで自衛兵のいた位置に立て続けにエネルギー弾が炸裂、石畳をまくれ上がらせて吹き飛ばす!
転がって痛みに呻く自衛兵を尻目に、コートの男――剽げた声の主が踵で制動して止まった。
「荒っぽくて悪いが、もう構ってられる状況じゃないんでね。なーに、痛かったら生きてる証拠だぜ。俺に仕返しがしたきゃ、生き延びて後で会いにきな。付き合ってやるよ」
軽い口調で語るその男の名は、斬幸・夢人(終焉の鈴音・f19600)。敵の射撃を予見して間髪、射程範囲にいた兵士らを投げ飛ばして射線から外したのだ。
そしてもう一人。負傷で動けなくなっていた兵士二人を小脇に抱え逃れた男が、物陰に二名を横たえて白き骸の巨体を振り仰ぐ。
「ヒョウ! 見に来たよ、デッカいゾンビ! 痩せ薬でもぶっ掛けたくなるカラダしてんなぁ!
きもちわるっ。継いで接いでをやるにしたって、もう少しやり方があったろうにね!」
快活な口調で笑って言うのはロカジ・ミナイ(薬処路橈・f04128)。青い瞳に黒髪、赤のメッシュが夜闇にも鮮やかな青年である。
「正直ね、ツギハギは嫌いじゃないよ。そういうパッチワークのイケてる服もあるし。でもこうさぁ、尊厳っていうかセンスっての? そういうのもこの世界じゃ廃れちまってるのかい? なんて哀しい世界だよここは」
ロカジの声に激した風に、またもゾンビジャイアントが音高く吼える。
「ああ、ああ、そんなに喧しく吼えなくたって聞こえてるって……ちょいと兄さん方、後ろに離れていなよ。そこの物陰の怪我してるヒトの所に薬箱も置いてある。退いて養生して、ちょっと待っててくれるかい」
気軽な、この緊迫した状況にとても似合わぬ声で、ロカジはなんとか立ち上がる自衛兵らに言った。
「あ、ああ……! あんたたちは? どうするんだ、あんなの相手に」
「どうする? ぶった斬るさ。そのために来たんだ。俺たちは」
自衛兵の問いに気負う様子もなく、夢人が応える。「そゆこと」とロカジもまた応じ、窈窕たる抜き身をずらりと抜き放った。
「巻き添えを食う前に、さっさと下がれ。文句はあとで聞いてやるよ」
「……わかった、気をつけて……!」
念を押すような夢人の声に、数名残った自衛兵らも撤退していく。そのやりとりの間にエネルギーカノンの再充填が完了、再び砲声が鳴った。
ロカジと夢人は同時に左右に飛び、転がってエネルギー弾を回避。左右に散ることで、敵の攻撃の狙いをずらす。敵が優先したのは夢人だ。逃げ走る夢人の後ろを、連射される生体エネルギー弾が次々と吹っ飛ばしていく。爆光と瓦礫が散り、爆風が夢人の背を嬲る。
「そっちばっかり構うってのは、なんとも寂しい話じゃないか。ねぇ、敵さんよ。『刀』ってのを見たことあるかい? この荒れた世に残ってるのか知らないが――こいつのことさ。なんとも綺麗で場違いでしょう?」
右から回り込むロカジが、走りつつもまるで実演販売員めいた口調で切り出した。ぬらりと月下に煌めく妖刀。光を照り返しゾンビジャイアントの視界に入れる。
「ただの長いナイフだと思ってもらっちゃ困る。今お前さんがビュンビュン飛ばしてるそれ、ビーム。実はねぇ、驚いて欲しいんだけど」
だん、と地面を蹴り、ロカジは近くのテナントの張り出した屋根へ飛び乗った。
「なんとこの刀からも出ます。サムライテクノロジーだよ。びっくりだろう?」
刀を持った右手を引いて腰を落とす。剣の切っ先は真っ直ぐ前に向け、左手を刀身に添えた。指の股の間から敵の巨体を覗いて狙いをつける。
ロカジビーム
「そらご覧。これが空裂く手名椎のこえだ!」
その刹那、集束した雷が空を割った。
空中放電するまでに到ったその一撃はなるほど、ロカジの言葉通りに空を裂き、一直線に伸びてゾンビジャイアントの巨体を貫いた。
「ごあああ、あああっ!?」
まさに雷槍。肉の焼ける匂い。胸にぽっかりと、人の胴回りが収まるほどの穴が開く。
骸の巨体がよろめき蹈鞴をを踏む。必然射撃も止まったその一瞬を逃さず、左から回り込んだ夢人が踏み込んだ。その左腰に刀。未だ抜き身は視えぬ。
夢人は鞘を持った左手を上げ、右手で柄を握った。最後の一瞬まで刃は見せぬ。
彼の居合術は必中即死。鬼に会うては鬼を斬り、神に会うては神を斬る。
斬撃の名は、『神さえも覆せない確実』。神にさえ覆せぬものを、骸の巨躯が反せるわけがない。
夢人は間近まで接近。敵が苦し紛れにチェーンソーを振り下ろす、その一撃の下を掻い潜り、巨躯の足下で刀の鯉口を切った。
きん、と鍔鳴り――
月へと登るような、一直線の斬光。居合いによる斬り上げが天目掛け疾った。
ゾンビジャイアントが押さえようと伸ばした左腕が、まるで大根めいて半ばから斬れ飛ぶ。左半身と右半身が半ばより七対三に分かたれ、まるで噴水めいて断面より紫の噴血。巨体がバランスを崩してぐらりと傾ぐ……!
「……ちッ、コートが血で濡れちまった。どうも堅実な戦い方ってのは性に合わないね、効率的なのは分かるんだがよ」
接近しての確実な居合いを決め、倒壊する建物めいて倒れ臥す骸の巨躯の足の間を走り抜け、夢人は血塗れになったコートの裾を払った。汚濁した紫の血液が跳ねる。
血振りして納める刀の鍔鳴りに、地を揺るがすゾンビジャイアントの咆哮が重なった――。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
日下・彼方
◎
こんな厳しい世界で屍肉の塊がよく働くものだ。
いや、順序が逆か?
どちらにしろ今を生きている人にとって
迷惑極まりない事に変わりない。
…余計な思考だ、早く始めよう。
相手は巨大、リーチもあるし飛び道具もある。
正直、手元の短刀だけじゃ分が悪いな。
“Managarmr”で空を蹴り【空中戦】を仕掛ける。
回避優先で時折短刀で斬りつけながら牽制する。
傷は浅いだろうが構わない。
機を見て間合いに潜り、本命のUC使用。
UCで強化した短刀で一撃見舞う。
この一撃でただの屍肉に戻るといい。
●獣牙一閃
身体を砕かれ、分かたれ、焼かれようとも、最早動く屍に過ぎぬゾンビジャイアントは、苦痛を叫ぶかのような声とともにその身を復元し、何度でも立ち上がる。恐るべき事に、武器を壊そうとも砕こうとも、その内側より新たなる武装が再度迫り出すのだ。
未知のテクノロジーの介在を感じさせるその異様をアーケードの鉄骨上から見下ろすのは、日下・彼方(舞う灰の追跡者・f14654)。
「こんな厳しい世界で屍肉の塊がよく働くものだ。――いや、順序が逆か? あんなものが闊歩しているから、ここまで厳しい世界になったのか。……どちらにせよ今を生きている人にとって
迷惑極まりない事に変わりない――さっさと始めよう」
味方の射撃攻撃が途切れた瞬間を狙い、彼方は鉄骨を蹴り渡り敵へ接近する。
七メートル超の敵の巨体に対し、彼方の身長は一・六メートルといったところだ。体格段階で圧倒的なリーチの差に、それに加えて彼方の武器は短刀、そして敵には飛び道具がある。
分の良い戦いではない。それは分かっている。だが、彼方が足を止めることはなかった。
「ごああああああ!!」
吼声。同時に、彼方の存在に気づいたゾンビジャイアントが左手のエネルギーカノンから砲撃を放つ。彼方は小刻みなストライドを取り、鉄骨を次々に蹴り渡った。
着弾の轟音が重なり、鉄骨が吹き飛んで行くその一歩先を彼方は疾り、宙にその身を躍らせる。ゾンビジャイアントが空中に跳んだ彼方を狙って今一度トリガーを引いた瞬間、ばうんっ! と音がして彼方の身体は中空で跳ねた。
――試作翔靴『Managarmr』。UDC由来の素材を用いた、『空を走るための靴』。
戦いとは、敵にあって己にないものではなく。
己にあって、敵にないもので勝負するものだ。
それ即ち、機動力!
彼方はManagarmrを使い空を駆け、次々と放たれるエネルギー弾を三次元的な機動で回避しつつ空を駆け下りた。敵の腕が届かぬ死角に回り込み、短刀『Tyr』にて肉を裂く。
「ごあ、あああ!」
腕を振り回し、まるで蠅を払う人間のような所作で彼方を捉えようとするゾンビジャイアントだが、彼方はひたすらに冷静に関節可動域と動作速度を分析し、振り回される腕から逃れつつ短刀での一撃を重ねる。
(これでいい。浅くても構わない。――抜けない棘のように居座ればいい)
ひたすらに回避と攻撃を繰り返す彼方の動きに、焦れたようにゾンビジャイアントが右腕のチェーンソーの回転を上げる。
「がああああああああああああああっ!!」
轟くような咆哮は、怒りの現れか。焦れたように、巨大なチェーンソーを大振りに振り回し始めるゾンビジャイアント。
その怒りようを冷めた目で見ながら、彼方は右手に握った短刀に力を込めた。
Tyrはただの短刀ではない。彼女の、内なる獣を抑え込むための楔でもある。
内なる獣の力を流し込んだTyrを構え、彼方はゴーグルを下ろした。チェーンソーの軌道予測、刃の速度の算定。全ての情報を揃えれば――あとは駆け抜けるのみ。
振り回されたチェーンソーが、軽く引いた顎先三寸を掠めて抜けた瞬間、彼方は虚空を蹴り、一直線に踏み込んだ。
相対距離七メートル、俯角三十度。宙に駆け下りるコースをイメージ。
Tyrが獣の力に軋む。そう、これは武器を代償とする一撃。獣の訪れ、『冬の刻撃』。
まるで放たれた矢のような速度で宙を駆け下り――一閃!!
獣の牙めいて突き刺さったTyrの一撃が、骸の巨躯の首筋で光に爆ぜ、肉を裂き、紫の汚血を飛沫かせる……!!
空を揺るがす咆哮を尻目に駆け抜けた彼方はそのまま空中を蹴り、手近な屋根にひらりと着地。
「一撃では足りないか。――ならもう一度。迷わず逝けるように、標をくれてやる」
少女は新たなる短刀を抜きつつ、暴れる巨躯を睨み据える!
成功
🔵🔵🔴
セリオス・アリス
【双星】
◎
死んでった奴らの代わりにっつーわけでもねえけど
ちゃんと、仇は取ってやる
敵に剣先を向けて睨みつけ
ああ、行こうぜアレス
歌い上げるは【望みを叶える呪い歌】
靴に風の魔力を送り先ずは一発先制攻撃
敵の攻撃を見切り
足元で旋風を炸裂させて上に避けアレスの後方へ
一気に斬れなさそうなデカブツなら
隙を見て数を打ち込んでやればいい
考えることは同じだなぁ
笑み浮かべ
アレスを鼓舞するような歌で援護して
一瞬の隙を見逃さない様に
任せろ!
ダッシュで一気に距離を詰め
2回連続…を繰り返しゃそれなりの数になるだろ!
つってそんだけデカいんだ
それだけで死なねえだろうってのは予測がつく
だから…行くぜアレス!
最大火力を一緒に敵の口へ
アレクシス・ミラ
【双星】
◎
ここを守ろうとした彼らの為にも…これ以上進撃はさせない
ここで生きようとする人々の明日を奪わせはしない
征こう――反撃だ
ただ斬るだけでは効かなそうだな
だが、強固な物でも…脆くさせられれば
セリオスから僕へと意識を向けるように接近し、斬りつけ
攻撃はオーラ纏う盾で受け流す
捕食攻撃には【絶望の福音】を発動
全て躱してみせる
そして、見極めるは僕が避ける事で生じる隙
その隙を突くように、体勢を崩すのを狙って
シールドバッシュの一撃を!
崩せたら…頼んだよ、セリオス!
剣を翳し、麻痺を乗せた雷を降らせて彼を援護する
新世界の生ける屍とて…内部ならどうだい
君の炎と合わせるよ
セリオスと一緒に
敵の口内に最大火力の炎を!
●送り火
「があああああああ!」
ゾンビジャイアントの吼声が響き渡り、それにチェーンソーの駆動音が重なった。振り払うように骸の巨躯が振り回す巨大チェーンソーが、周囲を薙ぎ払い破片を散らす。腕の丈だけで二メートル、それにさらに全長二メートルのチェーンソー。踏み込みを合わせて一度振るえば、その死の旋風は半径五メートルを薙ぎ倒す。巻き込まれたアーケードの柱が火花を散らして千切れ吹き飛ぶ、中を掻い潜り、双ツ星、駆ける。
「死んでった奴らの代わりにっつーわけでもねぇけど――ちゃんと、仇は討ってやる」
「ああ。ここを守ろうとした彼らのためにも、これ以上進撃はさせない。ここで生きようとする人々の明日を、奪わせはしない――往こう、セリオス! 今の僕らはヘイヴンの剣と盾。反撃だ!」
「ああ、アレス!」
敵の攻撃の隙間を縫い、全く示し合わせることなく同時に前進するのはセリオス・アリス(黒歌鳥・f09573)とアレクシス・ミラ(夜明けの赤星・f14882)。
骸の巨躯がチェーンソーで描く死の旋風を、恐れることなく突き進む。
「歌声に応えろ……力を貸せ!」
セリオスが鋭く吼え、高らかに歌い上げる。奏でるは『望みを叶える呪い歌』。『エールスーリエ』に風の魔力を装填、発破。その歌はアレクシスをも鼓舞する。増した魔力を即座に使い、アレクシスもまた脚部鎧から光の魔力を噴出。両者速度を上げ、ゾンビジャイアント目掛け距離を詰める!
「先行する! 後詰めを頼むよ!」
「任せろ!」
アレクシスが前に出る。彼我の身長比、およそ三対一。ウェイトの差で言えば比べるべくもない。
ゾンビジャイアントは駆け寄る二名の猟兵を認めるや否や、振り上げたチェーンソーを振り下ろした。
しかし、轟音、金属音、火花!
高速回転するチェーンソーの鋸刃が、アレクシスが構え広げた盾――『早天の盾』と火花を散らし、あろう事か受け流す!
「重い――だが、防げないほどじゃない!」
チェーンソーだけでは攻撃を通せぬとみてか、ゾンビジャイアントは身体の一部を変形。びゅるりと飛び出すのは複数の牙付き触手! 一瞬で七本の蛇めいた触手がアレクシスに食いつきに掛かる。
形状に囚われぬ奇襲攻撃。しかし――
「甘いっ!」
アレクシスはサイドステップして『赤星』を抜剣! ホーミングレーザーめいて曲線的に迫る触手の群れを次々と斬撃を繰り出して刻み落とす! その目が蒼く煌めく――『絶望の福音』!
最初にチェーンソーを受けるその前より、アレクシスの目には十秒先の未来が視えている。どこから攻撃が来るかが彼の目は映っているのだ。奇襲攻撃が来ることも、上段からチェーンソーの打ち下ろしが来ることも見えていた。ならば、あとは身体の動きがついていくかどうかだけ。さらに弾く弾く斬り裂く落とす、飛び退き躱してバックフリップ!
(あと六打――)
レーザーめいて降ってくる触手を続いて打ち払う、
五、四、三、二、一……!
「ここ、だッ!!」
「ごああっ!!」
放たれる触手の群れをかき分けるように再びチェーンソーを振り上げるゾンビジャイアント。だが、チェーンソーを振り上げるその前にアレクシスは飛び込んでいる!
ここから先の予知はない。だが、構わない! この敵の守りを突き崩すための布石となるのが自分の役割だ!
(あの巨体ではただ斬りかかったところで効果は薄いだろう。――しかし、いかに強固でも……脆くさせられれば!)
ゾンビジャイアントがチェーンソーを振りかぶり、胴が空いたところに全力のシールド・バッシュ! 敵の体勢を僅かでいい、崩す!
「頼むよ、セリオス!!」
「おう!」
衝突を避けて回り込んでいたセリオスが応ずるなり即座に前進した。エールスーリエから荒風爆ぜさせ宙を駆け、放たれた矢の如くに敵に迫る! 作られた一瞬の隙に剣をねじ込み、こじ開けるために!
「らあああああああああああっ!!」
空中を駆け迫り、セリオスが翻す長剣は『青星』。親友と対を成す星の剣!
咆吼と共に繰り出される連続斬撃。その剣筋、俊敏にして苛烈。繰り出される斬閃は荒々しくも美しく、アポカリプスヘルの夜気を風切り音で引き裂く!
肉が裂け、紫の血が散り、瞬く間に再生が始まる。しかしその再生を上書きするような超高速斬撃! 手数の多さで圧倒せんばかりに、セリオスは宙を絶え間なく蹴り、常に位置を変えながら斬撃を叩き込む。青星の光を文字通りの星の輝きに準えるのなら、疾る銀の軌跡はさながら流星雨。高らかに歌い上げながら刃を振るうセリオスの走った軌跡の形に、ゾンビジャイアントの身体から毒々しい紫の血飛沫が飛び散る!
「があ、あああうう!!」
ゾンビジャイアントが刻まれる傷を厭うように、セリオスを振り払うべく腕を振るおうとした瞬間、
「落ちろ、天雷!」
その足下で巨躯の脚を赤星でピン刺しにし、アレクシスが叫んだ。セリオスから受けた魔力支援を活かし、刃へ雷を喚ぶ!
がああん、と虚空より、宙を裂いて落ちた雷が骸の巨躯を貫いた。雷撃のショックでびくんと痙攣し、一瞬動きを止めるゾンビジャイアント。
――そうとも。いかにセリオスとアレクシスとても、この骸の巨躯を一撃では仕留められまい。だが、事を一撃で済ませる必要はない。最後に生きて、この巨躯を地に沈めれば勝ちなのだから。一撃で貫けぬならば、攻撃を重ね、動きを封じ、追い詰めて殺せばいい。セリオス、アレクシス共に考えることは同じだ。
片方が惹き付ける度にもう片方がさらに大きな攻撃で脅威をアピールする。結果、ゾンビジャイアントはどちらに狙いを絞るか判断しきれず迷う。
その迷いこそ、致命の隙だ。
彼ら一対の剣と盾が狙うものだ!
「なるほどな、確かに固い。このまま肉を削っても致命に辿り着くのは遙か先だろう。――だけど、新世界の生ける屍とて、内部まで固いものかな?」
「ハッ、固ぇってんなら望むところだぜ。――この炎は夜空を焦がす焦熱! てめぇの腹に収まるか、今から測ってやるよ――俺とアレスの全力だ、喰らってくたばりやがれ!!!」
セリオスが上から、そして赤星を抜いたアレクシスが下から。セリオスの歌により高まった二人の魔力が紅蓮の炎として剣に纏い付き、燃え立つ。
二人同時の火焔魔術の発露。それは二人から、この天国を守るために散った幾人もの兵士達への鎮魂歌にして送り火――
そして敵を憎む、正義の心の具現である!
「「燃えろおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!」」
吼声、全く同時!
セリオスの手の中で青星が蒼く蒼く、しかしあらゆるものを焦がすほどに熱く燃える! アレクシスの右手で、赤星が紅く紅く、全ての邪悪を飲み込まんと激しく猛る!
二人の高さが揃った瞬間、全く同時の二色の焔剣がゾンビジャイアントに叩き込まれる。
地を揺るがすようなゾンビジャイアントの叫びさえ、あるいはそれごと灼き尽くすかのような劫火が、巨躯の口より臓腑に流れ込み――その内側を超高熱で灼き尽くしていく!!
「――――!!!!!」
声帯までも一瞬で焼け、声を出すことすらままならずに喘鳴を零すゾンビジャイアント。二色の炎は内側のみならず、口から零れた火がその巨体をも焼いていく……!
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
鷲生・嵯泉
死した後に蘇り、更にオブリビオンと化すとは
其の在り様、醜い以外に言い様があるまい
此れ以上は先に進ませる訳にはいかん
ショッピングモールの奥を背に位置取り、衝撃波で注意を引くとしよう
攻撃は戦闘知識と第六感での先読みにて軌道を読み
武器受けにて叩き落として後ろへは決して通さん
なぎ払いにフェイント交えて接敵し、怪力乗せた斬撃を叩き込む
――漂簒禍解
お前を動かすモノが何かなぞ知らんが……
血や神経電流、あるいは魔力であろうとも『流れている』なら同じ事
総て灼き付きかせ枯れ果てるがいい
荒廃の極みに在る様な世界と云えど、人は諦めはしない
そして此処に集うのは未来を作り担う種達
お前達なんぞにくれて遣るものは1つも無い
●獄炎に閉じる
蝋燭のように燃え上がるゾンビジャイアントの巨体の前に、刀の鯉口を切り立ち塞がる金髪隻眼、精悍な体躯をした長身の男が一人。
「――死した後に蘇り、さらにオブリビオンと化すとは。あまつさえ、人を喰らいその屍体を永らえるなど、その有様、醜い以外に言い様があるまい」
「――!!!!」
声帯が焼け爛れたか、声なき声で咆吼し暴れ狂う骸の巨躯の前で男は抜刀。一閃すれば露を掃い、その鋭さ悉くを断つ刀。銘を、『秋水』。
「此れ以上は先に進ませる訳にはいかん。ここで引導を渡してくれる」
モール奥へと進む路を塞ぎ、悠然と立ち向かうその姿は気高い。もし人々がその姿を見たならば、その背中に希望の光を見たことだろう。
男の名は、鷲生・嵯泉(烈志・f05845)。燃える炎のように熱く、握る刃の如き鋭く曲がらぬ意志持つ男。
嵯泉は抜刀した刀を横薙ぎに振るい、衝撃波を放った。空を裂く斬撃波が骸の巨躯の土手っ腹に炸裂し、その巨体が僅かに揺るぐ。
「――ご、……ッグ、」
声帯が再生しつつある。徐々に声を取り戻しつつある巨人の、腐肉の間に爛々と光る目が、嵯泉の姿を捉えた。
「――、アァ、ア!!」
途切れ途切れの吼声が宙を揺るがした。チェーンソーのエンジンが再三始動、高速回転する鋸刃が嵯泉の真上より振り下ろされる!
確かに圧倒的な巨体、そして圧倒的な膂力だ。だが、軌道自体は真っ直ぐ。ゾンビとあれば複雑な思考も間々ならないのだろう。
嵯泉は真っ向から力で抗おうとはせぬ。この手の相手に力比べをするのは愚策だ。斬撃の軌道を読み、回転する鋸刃自体ではなく、そのへりに秋水の刀身を重ね、僅かに横方向のモーメントを加えて斬撃を受け流す。地にチェーンソーの切っ先が突き刺さり、石畳がえぐれ巻き上がるのを尻目に一歩踏み込み、鋭き一閃! チェーンソーを握る五指のうち、薬指と中指が斬れ飛ぶ!
「――っが、あああ!」
「もう焼けた傷が癒えつつあるか。――ならば何度でも、お前が燃え尽きるまで繰り返すのみ」
嵯泉は目をぎらり、鋭く尖らせ、その刀に力を込めた。――ちり、じりっ、火燐浮かび散り、刃が陽炎を纏ったかに見えたその次の瞬間、秋水の刀身を炎が捲く。
ヒョウサンガカイ
――漂 簒 禍 解!
「お前を動かすものが何かなぞ知らん。興味も無い。だが、血、神経電流、魔力の類であろうとも同じことだ。此れは『流れる』概念を焼断する一刀。全て灼き付かせ、枯れ果てるがいい」
嵯泉が刀に燃やすは獄炎! 地面を抉りながらに薙ぎ払われるチェーンソーを背面跳び回避、降り立つなり撓めた膝をそのまま溜めたバネにして、がら空きに開いた敵の胴目掛け吶喊!
「お、おおお――」
吼えるなり、嵯泉は熱く燃える刀身を霞みに構え、大きく円弧を描くように振るい、下から上を斬り上げるコースで振り上げ、跳躍!! 骸の巨躯の股下より刃が入り、嵯泉はそのまま敵の膝を腹肉を蹴り飛ばして敵の肉体を駆け上がる!
「――おおおォッ!!」
燃える刃は天へ昇る龍が如く!
昇竜の爪がゾンビジャイアントの身体を、股下から肩上に掛けて深く薙ぐ! ――肩を蹴って、敵を飛び越した嵯泉が着地。
「荒廃の極みに在る様な世界と云えど、人は諦めはしない。――そして此処に集うのは未来を作り担う種達。お前達の手前勝手な教義なんぞに、くれて遣るものは一つも無い」
嵯泉は秋水を血振り。二度振った刃を鞘にすう、と収め――
「――その骸の煙を以て、お前が殺めた全ての命に詫びるがいい」
きん。
納刀の音と同時――ゾンビジャイアントを巡る紫の血液が、魔力が、沸騰して炎へと変わり、身体の孔という穴から炎が吹き出す!!
声なき声で暴れる巨躯を尻目に、壮絶な火焔に揺らめく嵯泉の影だけが、唯々動揺もなく静かであった。
大成功
🔵🔵🔵
ネグル・ギュネス
【アサルト】
デケェし見た目もアレだし、そりゃ怖いわな
だが、化け物退治は専売特許だ
とりあえず出鼻を挫き、脚を止める
理性が飛ぶ前に見切り、頼んだぞ?
【エクリプス・トリガー】──変身!さあ、ぶちかますぞ!
能力を強化し、残像で敵の大振りや動きを欺き、武器受けで受け流す!
アンデットなら、破魔が効くと見て拳や脚に力を宿し、脚に集中してダメージを与えて動きを鈍らせる
あんなデカブツを振り回すんだ、バランスが崩れ易いはずと考える
テンポやタイミングを見せた
動作、動きも見せた
敵が大振りする時に一気に引き下がり、変身を解いて下がる!
今だ、任せるぞ!
知能が低いだけの化け物にオレ達が負けるわけがねぇさ
これもまた、戦い方だ
ヴィクティム・ウィンターミュート
【アサルト】
オイオイ、なんだいこりゃ?
パニックムービーならスターになれそうなフリークスじゃねーか
ンッンー、だが残念──観客が求めてるのはそっちじゃあない
ヘイヴンは堕ちんよ…俺が脚本を書くからな
よーしネグル、匡!遊んでやりな
俺はちょいとばかし観察させてもらうぜ
いくらフリークスでも行動の癖くらいはある
よーく【見切り】、【情報収集】する
スピードはどの程度だ?パワーは?反応は?武装の出力は?
──OK、大体は理解した!ネグル、スイッチの用意!
ネグルが引いたと同時に、俺が入れ替わりで前に
セット、『Balmung』
捕食攻撃キャンセル、吸収
開いた口に突っ込んで、内部で爆発だ
さぁ総攻撃の時間だ!行くぞ野郎ども!
鳴宮・匡
【アサルト】
明らかに見た目が“化け物です”って語ってるやつより
普通みたいな顔したやつのほうがよほど怖いと思うけどな
相手の動きをつぶさに観察しながら
ネグルの動きをサポートする【援護射撃】を
あいつの攻撃が回避されないよう・逆に相手の攻撃はうまく通らないよう
攻撃や防御動作を行う瞬間を狙って射撃で動きを制限
見た目には単純な知能しかなさそうに見える
焦れてきたら大振りの一撃で形勢を覆そうとするだろう
……こっちは、それが狙いなんだけどな
ヴィクティムとネグルの交錯する一瞬
狙撃で入れ替わる隙を作る
後は、ヴィクティムの合図で攻勢に移るよ
動きはしっかり視たからな、ここからは反撃も許さない
そのまま骸の海に還りな
●侵攻
炎上するゾンビジャイアントが闇雲にチェーンソーを振り回し、周囲をその圧倒的な威力で轢断、破壊する。かつて店舗だったであろう建物が木っ端を散らして吹き飛び、その身を燃やす炎に捲かれて燃え上がる。一帯はまさに煉獄の様相を呈した。
「オイオイ、なんだいありゃ? パニックムービーならスターになれそうなフリークスじゃねーか」
相対距離五十メートル。やや遠目より高みの見物とばかり、皮肉っぽい口調で敵の外見を揶揄するのはヴィクティム・ウィンターミュート(impulse of Arsene・f01172)。その左右に二人で二人の男が己が武器の状態を確認する。
「明らかに見た目が“化け物です”って語ってるやつより、普通みたいな顔したやつのほうがよほど怖いと思うけどな。俺は」
「そりゃ自分のことを言ってんのか、匡?」
「一般論だよ」
ヴィクティムの左、混ぜ返す言葉に肩を竦めて返す黒髪の男は鳴宮・匡(凪の海・f01612)。
何の変哲もない、容姿の整った一般的な青年、といった風貌の匡の手には、共鳴の名を冠すアサルトライフルがある。匡はこう見えて幾多の戦場を死の旋風と共に駆け抜けた、凄腕の傭兵だ。彼からすれば、擬態した脅威の方がよほど警戒すべきものなのだろう。
「匡が怖いかどうかは横に置いておいて、ありゃデケェし見た目もアレだし、そりゃ怖いわな。一般人には」
顎を撫でながら、暴れ狂う骸の巨躯を見つめるのは最後の一人、ネグル・ギュネス(Phantom exist・f00099)。事実、あの巨体とその圧倒的な暴力を恐れ、自衛兵達は蜘蛛の子を散らすように逃げ出した。
――しかし、ヴィクティムも、匡も、ネグルも、それを恐れる事はない。
彼らは三位一体の猟兵小班、チーム『アサルト』。獲物を恐れる牙がどこにあろう?
「化け物退治は専売特許だ。ひとまずオレが足を止める。理性が飛ぶ前に見切りを頼む」
ネグルが拳をガツンとぶつけ合い、一歩進み出る。チーム・アサルトのタンクは彼だ。
「おう。――ありゃあ確かにB級映画のスターを狙える器だったが――」
応えてくるりと、タクトを翻すように空中で指を回すヴィクティム。指揮者を気取るような手付きで手を振ると、指鉄砲を巨大なゾンビに差し向ける。
「ンッンー、残念。観客が求めてるのはそっちじゃあない。『パニックホラーの王道、人食いドデカゾンビが、派手に爆発してくたばる』って終わり方じゃなきゃ。ヘイヴンは落ちんよ、俺が脚本を書くからな」
「その脚本通りに動くのが俺たちって訳だけどな。どうする、監督?」
「匡は射線を確保、ネグルの援護だ。ネグル、遠慮は要らねぇ、ブッ飛ばしてやるつもりで行け。パーティタイムだ、遊んでやりな!」
「応!」
「了解」
ヴィクティムに応じ、ネグルが一筋の銀光になったかのような速度で走り出す。匡もまた夜闇に溶けるように横合いの建物の影に消える。残るヴィクティムは地面を蹴り、壁を反射して上昇。すたり、と鉄骨の上に着地して、敵の様子を見下ろす。
「そんじゃまぁ、ちょいとばかし観察させてもらうぜ。動きの癖からパワーにスピード、反応速度に武装出力――お前の全部を丸裸にしてやる」
無慈悲なるヴィクティムの宣告が、静かに夜気を揺らした。
走りながらネグルは『トリガー・ツール』を抜き放ち、義手の鍵穴に挿入。半回転した鍵が、ネグルの中のもっとも獰猛な部分を引きずり出す。
「【エクリプス・トリガー】──変身! さあ、ぶちかますぞ!」
──Access、berserk、DEAD END!
赤雷が走り、ネグルの右半身を稲妻で包み込む。走るネグルの右半身がその稲妻が染みたように深紅色に染まり、両目もそれに引きずられるように紅く転じる。
超攻撃力と超耐久力を得る『エクリプス・トリガー』の発動状態。それまでに倍するスピードでネグルは加速、駆け寄りながら両拳を構える。
「来い、化物。遊んでやる」
「が、あ、あ、ああ、あああ!」
ここまで攻撃を食らい、燃え上がり、今なお燻る獄炎にその身を焼かれながらも死なぬとは。
まさにゾンビジャイアントは化物だったが、化物の相手には慣れている。ネグルはまず突撃するなり、その拳脚に破魔の力を宿した。ぼう、と白き輝きを帯びる四肢。
「はァッ!」
加速の勢いを載せた鋭いミドルキックでゾンビジャイアントの右足首を叩く。表層が陥没し、肉が抉れて骸の巨躯が小揺るぐ!
「があああ!」
吼えながら足を上げ、踏み潰すように踏み下ろす巨躯の攻撃をバック転回避するネグル。
ゾンビジャイアントは間髪入れず追撃。逃げるネグルを叩き伏せるように真上から、高速回転するチェーンソーの刃を振り下ろそうとする――その刹那、ぱ、ぱぱぱ、ぱ、とゾンビジャイアントの肘関節、手首関節から紫の汚血が飛沫いた。
『射撃を挟む。邪魔はしない』
通信機からの声より、殆どタイムラグなく銃声。BLAM!! BLAMBLAMBLAMBLAM!!
音がほんの僅かだけ遅れた。ネグルは即座に距離感覚を把握する。これは百メートルほど後方からの援護射撃。
相変わらず腕が良い。小口径銃弾ながら、関節部を的確に狙撃して攻撃を遅らせるこの射撃技術は、間違いなく匡のものだ。
ネグルは着地し、僅か遅れて振り下ろされたチェーンソーの一撃の横っ腹を拳で叩いて逸らす。軌道を逸らし、身を捌いて回避。チェーンソーが地面を抉ってコンクリートと土塊をまくれ上がらせたその刹那、ネグルはまたも爆発的に前進してゾンビジャイアントの足下へ飛び込んだ。
白き光宿す四肢にて、殴る、蹴る、殴る殴る殴る殴る蹴る殴るッ! シンプルなコンビネーションだったが、ネグルの膂力と四肢に輝く破魔の力が重なればアンデッドにとってはこの上ない脅威となる連打だ。
スネから膝にかけてを破壊する連打に、たまらず二歩後退するゾンビジャイアント。僅かでも距離を開こうとしつつ、破壊された表層組織を突如、顎門持つ肉の触手に変えてネグルへ連射するが、
『――見え見えだな。見たままの単純な知能しかなさそうだ』
嘆息混じりの言葉が通信機から響く。
銃声銃声銃声ッ! またも遠距離からの狙撃。観察によって得た行動予測から、『ここに銃弾を置けば敵は死ぬ』ということを知覚するに到った死神の銃弾。ユーベルコード、『千篇万禍』。
空中で次々と、触手がばちゅりばちゅりと音を立てて弾け潰れ吹き飛ぶ。小口径弾とて、的確な計算、演算、そしてユーベルコードのサポートがあるならば、この化物に抗するための剣となる。
弾ける触手の間を、全く一切の防御を取らず駆け抜けるネグル。信じている。後ろで銃を放つあの男のことを。故に恐れない。敵の攻撃は自分には届かないと確信している。
「せあああああああああああっ!!」
ネグルは地面を蹴り、推力を円運動に転化。空中で三転して威力を増幅、斧めいた回し蹴りを敵の右膝に叩き込むッ!! 膝関節が気持ちの悪い音を立ててズレ、巨体がずんと音を立てて跪く! 立ち上がろうと力を込める左脚に匡が撃ち込む銃弾が立て続けに炸裂し、復位を阻害する。敵に回したくないと思わせるような執拗な追撃に、ネグルは口笛を吹きつつ後退する。
攻撃のテンポ、タイミング、動作、動き。全ては見せたはず。頃合いだろう。
「――OK! 名演だったぜネグル。だいたい理解した! スイッチ用意だ!」
そらきた、とばかりにネグルは片目を閉じた。予想通りの展開だ。
「ああ。任せるぞ、ヴィクティム!」
長時間起動すれば理性を持って行かれるエクリプス・トリガーを解除、大きく後ろに跳び下がるネグル。それを追撃せんと肉の触手を立て続けに放つゾンビジャイアントだが、それも全て匡の射程内だ。片っ端から打ち落とされ、汚れた紫の血が飛び散る中を、ネグルを追い越す形でヴィクティムが駆け抜ける。
「結局は予想の範囲を出なかったな、フリークス。ま、それも仕方ないこった。相手が悪かったんだよ、テメェは」
「ぐおおう、あああああ!」
吼声響き渡る。ヴィクティムに狙いをスイッチし、肉の触手を体中から生やして降り注がせるゾンビジャイアントだが、ヴィクティム自身が『アヴァロン』から連射するショットガンの射撃と、後方から絶え間なく降り注ぐ匡の五・五六ミリメートル小口径高速弾がヴィクティムへの攻撃を許さない。
『そろそろ焦れる頃だろうな』
「気が合うね、俺もそう思ってた所だよ、匡」
インカムに、ヴィクティムがへらりと笑って応えた瞬間、壮絶な咆哮を発しながらゾンビジャイアントが右腕のチェーンソーを破棄。右手自体を巨大な顎門に作り替え、ヴィクティムを喰らわんとするかのように振り下ろす。同時に、腕の表面から生えた無数の牙つき触手が平行してヴィクティムを狙う――
数も威力もそれまでの比ではない。いかにヴィクティムでもそれを防ぐことは困難――
だが、そう思われるときこそ、端役好みのひっくり返し時なのだ。
Reuse Program『Balmung』、起動。ここまで、あの肉体を変容させての捕食攻撃は山ほど見た。故にその変形についても仕組みが推察できている。故に食らいつく牙の力も、細胞を破壊・再生するエネルギーも――既に織り込み済みだ。ヴィクティムは腕を突きだし、身体の力を抜いた。敵の牙がその細腕を食い千切るように咥え込み、彼を引き裂くかに思えたその刹那――
ど、ごうっ!!!
凄まじい音。光の柱が、ゾンビジャイアントの食いついた腕――その肘辺りから噴き出し、その後を追いかけて紫色の血飛沫がびしゃびしゃと飛沫く。
「AAAAAAARRRGGH!!!???!?!」
一際高く咆哮しつつ、ゾンビジャイアントが破壊された腕を引く。噛みつかれたはずのヴィクティムは全くの無傷でにやりと笑う。
「どうだ、テメェの攻撃の威力を転用される気分は」
頭と壊れた腕を振り、身悶えするゾンビジャイアントを眺めつつ、ヴィクティムは左腕内蔵型のショットガンに弾丸を再装填。
龍殺しの武器とは、得てして龍の爪牙より作られる――Reuse Program『Balmung』は、敵の攻撃に伴う諸エネルギーを正確に演算定義して捕捉、防御し、増幅して相手に叩き返すプログラム。一歩間違えれば常に増して甚大な被害を被る技だったが、ヴィクティムは恐れ知らずにあの巨体目掛け、あの巨体の業にて応報したのだ。
「さぁ、総攻撃の時間だ! 行くぞ野郎共!」
マントを翻してのヴィクティムの言葉に応じ、
「任せろ!!」
ネグルが抜刀しながら再度前に踏み出し、
『ああ。――動きも視飽きた頃合いだ。ここから先は、反撃も許さない』
静かな、彼の異名を思わせる口調で匡が、通信機越しにヴィクティムに応える。
『そのまま骸の海に還りな。その図体には、このモールは狭すぎるだろ』
匡の皮肉な言葉と、宙に再び放たれる五・五六ミリメートル高速弾の嵐。
それを追うように、ネグルとヴィクティムが獣のごとき速度で襲いかかる――!
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
清川・シャル
あまり良くない状況からの打破ですね、よし大丈夫です
今生きてる救うべき人を生かす!それだけ!
其処退け鬼が通ります、羅刹っていうんですけどね
逆ひゃっはーして差し上げましょうとも!
ぐーちゃん零スタンバイ!背中から取り出しまして
弾薬をフレシェット弾にしておきます
周りの皆さん気を付けてね、当たらないように
自分の保身には氷盾を展開しておきます
UC発動!いっけー!
毒使い、マヒ攻撃、呪殺弾を込めておき、制圧射撃と範囲攻撃を狙って吹き飛ばしします
弾は念動力で確実に当てます
近接攻撃には激痛耐性、見切り、カウンターで対応
使う武器は櫻鬼とそーちゃんです
道をあけなさーい!
●爆光の咲く
前進を銃弾、打撃、火焔にズタズタにされてなお――その巨体は動き続ける。傷が復元し元に戻る度、骸の巨躯はチェーンソーを振り回して猟兵らを押し戻す。
限界はどこにあるのか。いつまでこの泥仕合が続くのか。そんな疑問が、疑念が去来しても無理からぬことと思われた頃合いで、宙から場違いに明るい声が降った。
「私たちが考えるべきは、今生きてる救うべき人を生かす! それだけ!」
空中に飛び出し空を游ぐは少女。着物姿にピンク鼻緒のぽっくり高下駄、巨大な金棒。空色の瞳を爛々と煌めかせ、高下駄より魔力噴射、一直線にゾンビジャイアントへ襲いかかる。
「其処退け鬼のお通りですよ! 羅刹っていうんですけどね――」
ぎゃあああああいぃいぃいぃん!!
明るい声の後ろを、棘部が高速回転する特殊金棒の駆動音が追いかける!
気付いたゾンビジャイアントが即座にチェーンソーを振り上げ応じるのを、少女――清川・シャル(無銘・f01440)は真っ向からの格闘戦で捉えた。振るわれる巨大チェーンソーに対し、桜色の金棒『そーちゃん』で応戦。
「そーーーれっ!!」
が、っぎいいいいん!!
「ごあ……?!」
巨大なチェーンソーと金棒が、凄まじい音を立てて弾け合う。
質量は絶対的にゾンビジャイアントの方が上だ。しかし質量を増す呪魔力を帯びた金棒の力、そして高下駄『櫻鬼』より噴出する魔力の推進圧、身体の回転と体幹、筋肉の発条をフルに用いて一撃のインパクトを極限にまで増し、シャルは正面からあの巨体の打撃と拮抗したのだ。
蹌踉めくように一歩下がるゾンビジャイアント。シャルは空中でくるくると木っ端のように舞いながらも、背中から左手一本で『ぐーちゃん零』を抜く。三〇連装アサルトライフルと一二連装グレネードランチャーの一体火器だ。
「ここに狩られる側の人間しかいないと思ったら大間違い! 逆ヒャッハーして差し上げましょうとも! ――『爆撃』します! 範囲内の皆さんは待避お願いしますね!」 言い放ち、シャルは金棒を収め、銃を両腕で構えた。サイトの内側に敵を捉える。ジャイアントゾンビは蹌踉めいた隙を消すように、いくつもの牙付き触手を膚より生やし、追跡レーザーめいてシャルに放つが、
「UC発動……! いっけー!」
その着弾よりも早くシャルが吼えた。
スタックスピーカー&アンプ『Amanecer』がシャルの後背に姿を現し、スピーカーコーンから発された熱線が捕食触手を次々と灼き落とす。同時にトリガーを絞るシャル。
凄まじい速度で連射されるフレシェット弾と十二発のグレネード弾の一斉発射! 手加減無用の全部装一斉射撃――これぞユーベルコード『爆竜戦華』!
「が、ごおおおおう?!」
弾速の高いフレシェット弾が先に命中し、グレネード弾がその後を追う。ゾンビジャイアントは即座に触手により榴弾を叩き落とそうと全身から牙付き触手を伸ばすが――「甘いです!」
シャルがそれを予見せぬわけもない。放ったグレネード弾を念動力で操作、敵の口腔へとコースを操作する。――彼女自身が誘導機となってのアクティブ誘導だ!
各グレネード弾には呪殺の詛い、毒、麻痺毒が込められている。触手の群れをすり抜けたグレネード弾が立て続けにゾンビジャイアントの顔面に炸裂する! 色とりどりの爆炎、爆光、繚乱である!
「ぎいいいいいいいいいいいいいいい!!」
目を潰されて顔面を押さえ、動きを止めるゾンビジャイアントの元に、
「道を、」
再度金棒を抜き、高下駄からの魔力噴射で宙を駆け、
「あけなさーい!!」
即座に接近戦にシフトし、突撃! シャルは金棒で、顔を押さえる手ごと、ゾンビジャイアントの顔面を痛打! 仰け反ったゾンビジャイアントが、そのまま建物を薙ぎ倒して後方に倒れ伏す……!
大成功
🔵🔵🔵
クロト・ラトキエ
◎
えぇ。オーダーを果たしましょう。
はぁい、呼ばれず飛び出てお節介♪
反撃の狼煙ですよ、っと。
殊更明るく敵前に出て。
UCにて武装に魔力を。
炎の火力、風にて疾さ…と攻撃力強化。
視線、踏み込み、腕の上下…
見切る全てを以って攻撃を避け、或いは往なし、
駆け抜け様に手首足首頸部等、細部へと鋼糸放ち断つを狙う…が。
デカブツは頑丈が厄介なれば、動きの阻害だけでも上々。
それに…的が大きいのは悪くない。
次策でガラ空きの口腔か砲口狙い、矢を放つ。
敵体内には、喪われたかつての命も、と…
けれど手心無く。
己が優先するは生者。
生きるを止めず抗うを止めず――
ならば、終わりではない。
終わってはいない。
終わりになど、させませぬとも
●生者の明日に捧ぐ歌
「はぁい、呼ばれて飛び出てお節介♪ ――反撃の狼煙ですよ、っと」
アーケードの上方鉄骨に片足立ちし、殊更明るい口調で語るのはクロト・ラトキエ(TTX・f00472)。
仰け反り倒れようとも、あれだけではまだゾンビジャイアントが死なぬという事もクロトは予見していた。
あの化物を葬るためには、一人でも多くの猟兵の最大火力を叩き込まなくてはならない。
最後まで油断は出来ぬが、それでも飄々と道化めいて言葉を吐くのは、周りに、ひいてはどこで見ているとも知れぬ、このヘイヴンの民に安心感を与えるためでもある。
「さて――どこから攻めましょうか」
クロトは眼鏡を通し、ゾンビジャイアントに透徹な視線を注ぐ。歪な顔、淀んでぎらぎらと光るその目。視線の動きの癖と、踏み込みの幅、速さ、腕の上下速度、可動範囲……それに類する敵のデータを蓄積し、やがて前の猟兵が引き際と見て下がった瞬間に割り込む。
グローブに炎が走り、クロトを捲くように烈風が巻き起こった。
「こちらですよ、デカブツ。次の相手はこの僕です」
人ならざる骸の巨躯に、名乗る名などない。クロトの挑発めいた声を聞いてか、即座にゾンビジャイアントが視線を跳ね上げた。
「がああ!!」
吼声一つ、次の瞬間には左腕を突き上げ、エネルギーカノンを発射するゾンビジャイアント。クロトとてそれは織り込み済み、鉄骨を蹴り飛ばして回避、宙に身を躍らせる。
後ろで鉄骨がカノンの爆光に呑まれて吹き飛ぶ。空に舞うクロトを追うように即座にカノンの連射が来るが、クロトは次の鉄骨にワイヤーを巻き付け既に巻き上げを開始している。ワイヤーを鉄骨に絡めての自在な空中移動だ。連射される生体エネルギー弾をものともせずに回避。
「ごあっ!!」
壁面と天井鉄骨を足場とし、ワイヤーを張って蜘蛛めいて逃げ回るクロトの俊敏な回避を見てか、ゾンビジャイアントも攻め方を変えた。
即座に自身の表層の肉を牙持つ触手に転じ、空中のクロトを追うように放つ。その巨大なる死者は、あるいはこの戦いの中で学習し、進化しつつあるのやも知れぬ。
「ならばなおさら――捨て置けない話です!」
迫る肉の触手は多数。クロトはワイヤーを切り離し、空中で纏う風の流速と方向を操作して姿勢制御。八方に放ったワイヤーで触手の悉くを斬り裂き、そこから伝えた炎で焼き払う。なおも襲い来る触手の一つに着地し、蹴飛ばして空を疾る。
背を見せてゾンビジャイアントから距離を取るクロト。骸の巨躯は、ほとんど本能的と言っていい反応速度でクロトを追いかけ足を踏み出した。その瞬間、
「ぎ……?!」
引き攣った声を上げ動きを停止するゾンビジャイアント。その喉に一条の切創。
クロトが移動に紛れ、壁と壁で繋いでおいたワイヤーが敵の首に食い込んだのだ。
(首を落とすには至らずとも――隙を作るには充分)
背中を見せたのは誘い。罠に向け逃げて見せ、おびき寄せた敵を填めるのは常套策。藻掻き、チェーンソーを振り回して糸を断った骸の巨躯が、我慢ならぬとばかりに左腕を突き出す。エネルギーカノンの砲口が輝き、クロトを射ようとする。
しかし、今度はクロトの方が攻勢だ。彼の次作の方が速い。右手の籠手、短矢射出機のボルトに、有りっ丈の風と炎の魔力を乗せる。
――躊躇いはない。あの中にはかつて生きた者達がいるだろう。喰われてあの一部になった無念の人々がいるだろう。しかし、手心は加えぬ。
己が優先するは生者。生きるを止めず抗うを止めず――この終末の世界でなお藻掻く、生きることを望む人々だ。 ならば、終わりではない。終わってはいない。
「――終わりになど、させませぬとも」
凜と吼え、光る砲口目掛けてクロトはボルトを連射した。超高熱に白く燃える短矢が立て続けにエネルギーカノンの砲口に飛び込み――
KABOOOOOOOOM!!
「がああああああぁぁあああっ!!」
砲の深部で、正に激発したエネルギー弾が炸裂! 砲根本から爆光が吹き出、ゾンビジャイアントの左腕が裂けるように爆ぜる……!
成功
🔵🔵🔴
矢来・夕立
この世界はどいつもこいつも。
誰の許可を得て掠奪行為を働いていますか。
悪行でしたらまずオレがやってからにしてください。
【紙技・文捕】。紙垂製のトラップを張る。
普通はワイヤーやロープでやるアレですね。
《闇に紛れる》よう、街中の影を使います。
動けなくなれば最高。一歩止まっただけでも構いません。
一瞬あれば跳び乗れますんで。
口って、身体への“入り口”でしょう。
これから“切り口”にします。
初撃、においや吐息で読み切れるかどうか。
一発目が勝負です。この手合い、追撃はスキだらけでしょうから。
開けてくれた口の端に刀を突き立てて、身体を駆けて、引き裂く。
弱点を曝してくれてどうも。
お礼に大きくしておきますね。
●死出の紙垂
ずん、ず、と数歩後退るゾンビジャイアント。クロトの策が奏功し、吹き飛んだ左腕がすぐに再生を始める。カノンが再発射可能になるまでおそらく今までのペースでいけば十五秒。その間の発射は不可能。即ち今の敵の手札は触手とチェーンソーのみ。これは僥倖、癇癪起こしてのやけっぱち乱れ撃ちが一番怖い。狙ってくれるなら、彼我の速度差であれば当たらないようにするのは容易だ。
この隙に注意を盗む。
「この世界はどいつもこいつも――誰の許可を得て掠奪行為を働いていますか。悪行でしたらまずオレがやってからにしてください」
涼しい声がした。そう、声だけがした。
ゾンビジャイアントは鈍重に、もう一歩だけ後退りながら周囲を見回した。ずん、足音。その大柄な体躯が何かを引っかけた。
シデ
黒い、紙垂だ。
忍法紙技、『文捕』。
きん、と金属質な音がして、次の瞬間、ばがん、と何かが炸裂した。
紙業・紙鳴。紙垂の端に結びつけられていた紙風船が破裂したのだ。それにしても紙風船の威力ではない。もう殆どスタン・グレネードだ。ゾンビジャイアントは虚を衝かれた風につんのめり、地面に、切っ先を上に大量に、剣山めいて敷設された式紙『黒揺』を踏んだ。
黒揺の切っ先がぢゃぎん、と開き、ゾンビジャイアントの足の裏をズタズタに引き裂く。
「がああああああああああああぅ!!!」
苦痛に噎ぶ巨人。げに恐ろしきは、最初にワイヤートラップめいてゾンビジャイアントを引っかけた紙垂も、スタングレネードめいた閃光・轟音を撒き散らした風船も、ゾンビジャイアントの足を裂いたその刃さえも、ただの千代紙で折られた『式紙』に過ぎぬということだ。
「つかまえた」
影が嘯く。
『式紙』とは。
紙忍『矢来・夕立(影・f14904)』が操る、千代紙を媒体として構成された武具、或いは謀殺用具であり、彼が用いるもっとも効率的な暴力の総称である。
四方から紙垂が伸び、ゾンビジャイアントの四肢を絡め取った。ぎしりと軋む紙垂、四肢に食い込み動きを拘束できたのはそれでも一瞬。ゾンビジャイアントの無類の膂力の前には、いかに『文捕』といえども長くは持たぬ。ぶちりぶちりと一本、また一本、千切れ飛ぶ。
だが、たかが一瞬、然れど一瞬。
その一瞬が命捕り。
「口って、身体への“入り口”でしょう。これから“切り口”にします」
影から、影が飛び出した。紅い瞳が光って闇に閃を曳く。
右手、逆手抜刀。
刀匠『永海』一派、七代『斬魔鉄』筆頭鍛冶、永海・鉄観作――脇指、『雷花』。
夕立の目と同じいろをした、血を思わせる紅浮く刀が、彼の手の内でまるで生きているかのように揺らめいた。
「ぐう、あう!!!」
足の苦痛が残っているのだろう。巨躯の動きは精彩を欠く。飛び出した夕立にチェーンソーで攻撃を仕掛けるゾンビジャイアントだが、鈍重な一撃が四方や、希代の紙忍を捉うるべくもない。
殺意の匂い、機械油と生臭い、腐った体液の匂い。
夕立はそれら全てを嗅ぎ分けて、振り下ろされた一撃をたっぷり自身二人分の間を開けて回避、敵の爪先を踏み潰しながら駆け上がった。親指を潰し、膝の皿を足がかりに蹴り飛ばし、でっぷりとした腹に爪先をめり込ませて足場に、駆け上りながら――
「弱点丸出しなんてセクシーですね。イージーゲームありがとうございます。お礼に大きくしておきますね」
突き立てた雷花を、走る勢いのままに引くッ!! ゾンビジャイアントの異形の口と傷をつなげるように深々と大きく、まずは下から!
「ぎいいいいいいいいいいいっ!!!」
「オマケです」
口の中に『紙鳴』を三個放り込み、口の上端から今度は頬にかけてを裂き散らし、落下の勢いも合わせ項から背中にかけてを引き裂きながら飛び降りる。
容赦もへったくれもない、最短距離で最大の損害を出すダーティ・ファイト。
文字にすら起こせぬような絶叫を、口の中で炸裂した『紙鳴』の破裂音が呑み込む。
「お粗末様です」
言葉を残し、夕立は着地。その姿が薄れて再び闇に紛れる。
後に残されるのは、余りの苦悶に悶え暴れ狂う骸の巨躯のみである――
大成功
🔵🔵🔵
杜鬼・クロウ
【義煉】◎
超常の力を以てしても猟兵は決して万能じゃねェ
亡き味方兵を嘆くよりも
今ヤるべきは、寇する敵の殲滅だ
…理解ってる
あァ、被害は最小に
食い止めるぞ
俺達に不可能はねェ
歯軋りし激昂を抑え敵睨む
燃え滾る心は刃に乗せ
屠る
グラサン代償に【無彩録の奔流】使用
大型の両刃の鋸歯で構え
地面踏み込み荒野に罅が
敵の攻撃はカウンター
攻撃一辺倒
多く血を流しても前だけ見る(次の布石に
本命の元へ進む為
疾く
剣に炎と大地の精霊宿し赤熱した橙色へ
周囲の土や砂を玄夜叉の力に利用
砂塵舞う
灼熱の如き溶岩の力で熔解
圧圧圧ッ殺!
敵の口の中狙う
図体がでけェからイイ的だぜ
邪魔だ
さっさと逝きやがれやァァ!
源次と隣に並び渾身の一撃揮う(部位破壊
叢雲・源次
【義煉】◎
砂塵舞う荒野を一歩踏み出す
アポカリプスヘル…初めて訪れたが、此処が何処であろうと構う事ではない
やる事は変わらん…斬り、屠る。それだけだ
「行くぞクロウ、いつも通りだ。」
敵は大型…ならば…(必要なのは一撃の重さと判断。対神太刀を抜き放つ。刃からは蒼炎が立ち上る)
チェーンソーの攻撃を紙一重で見切り、回避と防御を繰り返し相手の焦りを誘う
しびれを切らした敵が大ぶりの攻撃に出たならば特殊戦靴により発生した斥力で跳躍、更に壁を蹴り、矢のような速さで空中から突撃
「加減は無しだ。只散れ。」 【蒼炎一刀】
チェーンソーごと叩き斬らんと全力で太刀を振り下ろし、斬撃とそれに伴う炎と衝撃波で吹き飛ばさんとする
●神殺しの蒼
宙に“門”が開く。
砂塵舞う荒野に、新たに二人の猟兵が降り立った。
彼らが始めに見たものは、荒れ狂うゾンビジャイアントと、その手の内のチェーンソーが周囲の建造物を悉く薙ぎ倒す暴虐の光景だった。幸いにしていまだ、人的被害はほぼないのが見て取れたが、楽園が少しずつ削られていることに変わりはない。
――それに、もう喪われた命が返ることも、また、ない。
超常の力を以てしても救えぬものはある。予知が、全てを救えるタイミングから始まるばかりではないように。
今暴れる、あの暴虐の骸を討て。
分かっている。それだけが、只、己のやるべきことだ。
降り立った二人の片割れ、杜鬼・クロウ(風雲児・f04599)が大剣『玄夜叉』を両手に構える。
その横で、もう一人が静かに切り出した。
「この地には初めて降り立ったが――どこに行こうとも邪悪の絶えた試しなし、と言うところか。此処が何処であろうとも、敵が何であろうとも――俺のすることは変わらん」
フォーマルなスーツに端正な顔付きをした男である。重たげな太刀――クロウの玄夜叉にすら劣るまい、肉厚の大刀――神殺し、『黒ノ混沌』を携えるは、叢雲・源次(DEAD SET・f14403)である。
二本ある刀のうち打刀ではなく太刀を用いたのは、刃幅と身幅に勝る太刀を使い、一撃の重さを優先したほうがいいとの判断である。抜き放った刃から蒼炎が立ち上る。
ヒュッ、と空を裂く音を立て刀身を上げると、切っ先を暴れるゾンビジャイアントに向け、源次は傲然と言った。
「行くぞクロウ。いつも通りだ」
「あァ、被害は最小に。ここで食い止めるぞ。――俺達に不可能はねェ」
あるいは己を鼓舞するための台詞か――それともただの事実確認か。喪われた命に、今も破壊されていくこのヘイヴンに、激しそうになる感情を抑えながらクロウはサングラスをつまんで、ぴん、と横に弾くように棄てた。
燃える心は刃に乗せる。視線だけで貫けるほどに敵を睨む。
――逃がさねェ。此処で、屠る!
クロウの内心に呼応するように、空中でサングラスが輝き、光の粒子となって散って、玄夜叉の刀身に纏い付く。
オプティカル・オムニス
「 術 式 解 放 !」
詠唱と同時に光の粒子が、玄夜叉に備えられた機能の鍵を解放した。此度の変異は、主にその刀身に対するもの。刃が鋸刃となり、いかなる装甲も鉤裂きに出来るように変貌する。
ユーベルコード、『無彩録の奔流』。クロウの身につけるアクセサリー類を代償とし、玄夜叉の形状と性能を解放変化させ、戦況に適応する能力だ。
クロウの準備が整ったのを見るなり、源次が導くように踏み出した。それに続き、クロウが地面を踏み割るほどの踏み込みで続く。
二人の修羅の走る路は、次々砂塵と土塊爆ぜ、風が逆巻く!
「がああああああ!!」
ぶおん、と音を立ててチェーンソーをバックスイングするゾンビジャイアント。その腕の骨格が外れ、腕がまるでゴムのように伸びる。源次とクロウを纏めて薙ぎ払うような一撃を、源次は姿勢を極限まで低め、クロウは鋭く跳躍して飛び越える。
「温ィンだよ」
クロウが玄夜叉に込めるは、この乾いた大地に彷徨う炎と大地の精霊。乾き果てた大地に満ちた彼らの力を剣に集めれば、玄夜叉は即座に赤熱、橙の光を帯びる。
同時に、地精に命じて砂塵孕む風の砂を集め、それに赤熱する剣の一振りで着火燃焼。結果、クロウの周りに構築されるのは無数の溶岩礫だ。
「おオォッ、らァ!!」
ほぼ一瞬で成した溶岩の弾丸を、クロウは咆吼一つ、ゾンビジャイアントの大口目掛け射出する!
「ぎいい、いいっ」
牙を咬み合わせて口を閉じ、咄嗟に口を守るゾンビジャイアント。牙に連続して溶岩礫が叩き込まれ、砕けたところから連続で口内へ火炎弾が叩き込まれる。
「図体がでけェからいい的だぜ!」
「ぐあああ、ううあああうう!!」
閉じた口の隙間から唸り声。
連続で火炎弾を注ぐクロウ目掛け左腕のエネルギーカノンを差し向ける敵に対し、しかしそれより先に距離を詰めて源次が対応を迫る。
底知れぬ威圧感を放つ、蒼炎纏う太刀。喰らえばただでは済まぬと本能で察してか、ゾンビジャイアントは即座に射撃を中止、代わりにチェーンソーで火炎弾を薙ぎ払いつつ、源次を狙って薙ぎ払いを繰り出す。
苦し紛れの一撃とは言え、その巨体から放たれる打撃の威力は凄まじい――迫る一撃を前に、源次は、
「――はッ!!」
まさかまさか、前に踏み込んだ。
その蒼き炎に包まれた刃を、真っ向から、ただ己が膂力の全てを込めて振り下ろす。
「が――!?」
金属と金属がぶつかり合う大音がし、派手な火花が散って機械鋸のチェーンが半ばから断裂! エンジンがチェーンを巻き込んで停止し、耳障りな機械音が止まる!
ユーベルコード、『蒼炎一刀』。対神太刀による必殺斬撃。
蒼く燃える炎は集中したエネルギーが可視化したもの。今、源次の持つ刃『黒ノ混沌』には、神さえ殺す力が満ち満ちている。
――そして蒼炎一刀の真価は、ここからだ!
「ここで貴様を終わらせる」
刃の如く鋭い源次の声が、低く骸を恫喝する。
「があああああうううっ!!」
とうに刃も停止したチェーンソーを、巨大ゾンビはただ、目の前の一人の猟兵を叩き潰す為だけに振り上げ、天雷めいて振り下ろした。
大振りの一撃。それを見切っていたかのように、源次はノーモーションで横に向けて跳んだ。
三十式特殊戦靴に内蔵された斥力発生機構により自身と地面を反発させあい、瞬時に高々と跳躍したのだ。
姿勢制御。即座に迫る壁を蹴りつけ反射。陥没する壁を尻目に、まるで矢の如く敵に迫る。
「これ以上テメェに、誰もヤらせやしねェよ。邪魔だ、とっとと逝きやがれァァ!!」
派手な源次の動きに敵が気を取られる間に、その反対、対となるコースでクロウが爆炎を撒きながら壁を蹴った。炎を炸裂させ、その反発力を推進力に換えて跳ぶ。
右方、左方、どちらを受けようとゾンビジャイアントが逡巡した瞬間には、クロウの玄夜叉がエネルギーカノンごと左腕を薙ぐ。鋸刃状に展開した玄夜叉の刃が、加速したクロウの速力を余さず、丸太めいた敵の左腕に伝え――
「おっ、らアアアァア!!!」
断裂、紫色の血飛沫が飛沫く!!
「ぎ、っいいい、い……!」
それに重ね、ほぼ同時。対照的に静かな声が、しかし鋭く空気を裂いた。
「加減は無しだ。只散れ」
源次の台詞を追うように繰り出される蒼炎の太刀がゾンビジャイアントの右腕を断つ。――そして、炸裂!!
「があ、あああっ……!!」
黒ノ混沌から放たれたエネルギーの奔流が、半ばまで断裂したゾンビジャイアントの腕を吹っ飛ばした。余りの衝撃にゾンビジャイアントの巨体が浮き、両腕を失った巨躯がコマめいて回転、背中から横合いの建物に叩き付けられる。
ブレイズ・インパクトの名を戴く源次の一撃は、命中の直後にエネルギーを解放することで対象を吹き飛ばす。これぞ蒼炎一刀の本領発揮!
頽れた骸の巨躯が、蒼い炎を燻らせながら、崩れ落ちる瓦礫の中に沈む……!
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
アルナスル・アミューレンス
◎
いやぁ、まさか僕みたいなのが猟兵に選ばれるなんてねぇ。
まぁ、これも何かの縁。精一杯、生き足掻いてみましょうかねぇ。
さて、他の先達の皆さんの動きを見させてもらいながら、道を開けていこうかなぁ。
防衛兵の皆さんは後退しつつ、非戦闘員の方々の避難と護衛をお願いねー。
――さぁて。
また随分とぶくぶくと肥えちゃってまぁ。
どれだけ喰らったんだろうねぇ。
さあ、「撤去(ドイテ)」もらうよ。
使用火器はG.R.V5
戦闘知識から動きの先を見切り、スナイパーの腕を使って四肢、特に足を狙おうか。
動こうとする部位を制圧するように、撃ち込んでいこうかなぁ。
それでも近づいて喰らおうとするなら、僕も君を「悪食(モラウ)」よ。
●偽りの神を宿して
「いやぁ――まさか僕みたいなのが猟兵に選ばれるなんてねぇ。まぁ、これも何かの縁。精一杯、生き足掻いてみましょうかね」
呟くのは、アルナスル・アミューレンス(ナイトシーカー・f24596)。ガスマスクとゴーグルで素顔を覆った年齢不詳、長身の男だ。その身長は一九〇センチメートルを優に超えており、方々のホームで名の知れた奪還者でもある。
とはいえ、『選ばれた』と彼が口にするとおり、猟兵としての戦闘経験があるわけではない。故に彼は、先達が戦うのをその目でじっと見つめていた。自分に足りない戦闘経験を補うように、猟兵とはいかにして戦うのかを。
猟兵達は数々の人智を越えた技、ユーベルコードを用いて戦う。それは、猟兵として覚醒したアルナスルとて例外ではない。アルナスルは後方より、ゆっくりと進む。前方から数名の負傷兵。この集落、モール・ヘイヴンの自衛兵だ。
「あ、あんた! あのデカブツ相手に戦うつもりか?!」
「……そうだねぇ」
「やめておけ、よそのベースからの救援か、腕っこきの連中が今は支えてくれてるが、あんなもの、人間が戦うような相手じゃない、バケモンだ!」
猟兵らの出自は、モール・ヘイヴンの自衛兵にはまだ割れていないのだろう。
アルナスルは小さく息を漏らして笑うと、首を振る。
「前で戦っているのは僕の先達さ。僕一人が後ろに縮こまっている訳にもいかないだろう? 僕は、もう、選ばれてしまったんだから」
ぶおっ、と遠くでスイング音。
「なっ――おい、気をつけろ! そっちに飛ぶぞ!!」
「え――」
呆けた声を出して、負傷兵らが振り向いて空を見上げた。
夜闇の中、回転しながら巨大な鉄骨が飛んでくる。
明らかに負傷兵達を狙っての鉄骨投擲。投げたのは勿論ゾンビジャイアントだ。その左腕のカノンは前衛が破壊したのか全損している。
修復待機中故に遠距離攻撃はないと前衛が警戒を緩めたのが仇になったか。負傷兵らは足がすくんだように立ち尽くす。その場にいる誰も、彼らを庇うには距離が遠い――
そう思われた瞬間に、アルナスルの身体はごく自然に動いた。
今までに培った動きが、筋肉が、猟兵としての戦いに自然に適応する。
ボルトに滑らかに指を引っかけて引き離し、チェンバーに初弾を叩き込む。アルナスルはまるでクイック・ドロウめいた速さで、大口径機関銃『G.R.V5』を振り上げた。
耳を聾する銃声が連なる。片手保持で連射された大口径機関銃弾が、空中に鉄骨を縫い止め、絶え間ない連射のあげく木の棒めいて撃ち砕き、木っ端微塵にして吹き散らす。
「あ――あ、」
がぁあん、ごおぉん。人の頭ほどのバラバラの鉄塊が重い音を立てて周囲に降り落ちる中、へたり込む自衛兵らにひらりと手を振り、アルナスルは前進する。
「ここは任せて後退して。非戦闘員の皆を避難させて、護衛してあげてね。僕らはアレを沈めないといけないからさ」
アルナスルは四肢の偽神兵器『Ruthless』のうち、左手首のものを機関銃のドラムマガジンに接続。投入孔より弾薬を継ぎ足し装填しながら歩く。
後方で、這々の体で立ち上がり、走り出す音を聞いて初めて――アルナスルは誰にも見せぬ、マスクとゴーグルの下で笑った。
「があああああうううううううっ!!」
遠くで咆哮する、骸の巨躯。
「獲物を取られて不満たらたらって感じだねぇ。また随分と肥えちゃってまぁ――今まで、どれだけ喰らったんだろうねぇ?」
じゃぎり。
金属音を立てる機関銃を、今度こそはゾンビジャイアントに向けて据え――
成りたての猟兵は、確固たる信念を込めて告げる。
ドイテ
「――さあ、撤 去もらうよ。天国に、悲劇は似合わないだろ?」
G.R.V5のマズルフラッシュと銃声が、今一度乾いた闇夜を斬り裂いた。
次々と敵の足に突き刺さる銃弾。咆哮。
アルナスルの援護を受けた前衛達が、機を逃さぬとばかりに苛烈に襲いかかる……!
成功
🔵🔵🔴
霑国・永一
◎
ひゅー、この醜悪な見た目、邪神にも勝るとも劣らないなぁ。いや、話聞く感じ黙示録教徒とかいうのが操ってるなら、向こうの邪教徒が生み出す邪神と大差は無いか
さぁて、フード連中の襲撃で俺も風評被害出そうだし、まずはこれを片付けるかな
狂気の銃創を使うとしようかなぁ
移動を続けて距離を保ち、遠くから銃を撃ち込んでいくとするよ。足、チェーンソー、最後に顔面辺りをねぇ
兵士のアサルトライフルとは訳が違う。銃声がないだけで単純な威力は大したものじゃあない
ただ、当たった場所から傷口が広がり続けて崩壊するだけさぁ
機動力はこれで削げるかな
一応当たる前に接近するなら相手の足元打ち込んで地面崩壊させるけど
いやぁ危ない危ない
●疵で埋めよ
「ひゅー、この醜悪な見た目、邪神にも勝るとも劣らないなぁ」
相対距離二〇メートルほどを置いて、霑国・永一(盗みの名SAN値・f01542)の言うとおり、ゾンビジャイアントは極めて醜い姿をしていた。
白くふやけた様な色の腐肉の塊。四肢に筋肉の隆起を持ちながらもでっぷりとした腹肉が生理的な嫌悪感を煽る。本来口のあるべき場所から胸当たりまでが縦に裂け、牙をデタラメに並べた摂食器官となっており、人間の形をベースにしながら、醜悪に歪められた姿。
しかし、それが壊し、殺すために最適な姿なのだろう。幾たび攻撃をして傷つけようと同じ形に復元するのがその証座だ。
「いや、話聞く感じ黙示録教徒とかいうのが操ってるなら、UDCアースの邪教徒が生み出す邪神と似たようなものか。どっちにしても、煮ても焼いても食えなさそうな見た目だねぇ」
食うつもりもないけど、と嗤う永一こそ、『食えない男』という形容がピタリとはまる。捉えどころの無い物腰と軽口。言動の端々に、致命的な違和感にはならぬほどの狂気が漂う。
眼鏡の下で目を細め、永一はゾンビジャイアントの後ろに視線をやった。そこにはゾンビを矢面に立たせ、物陰から猟兵達の攻撃を妨害し続けるフードの黙示録教徒らがいる。
「やれやれ、ああいう連中がフードをしてると、俺にまで風評被害が出そうだし――まずはさっさとこれを片付けるとしようかな」
永一は手に握った無骨なフォルムの拳銃――トカレフのスライドを引き初弾を装填。片手保持で無造作にトリガーを絞った。
無音。サプレッサーも取り付けていないはずなのに、銃声がしない。しかし弾丸は発射されているようで、ちゅん、と音を立ててゾンビジャイアントの足下で銃弾が跳ねた。
ぐるり、とゾンビジャイアントの顔が廻り、永一を視界に捉える。
「やぁ、酷い顔だねぇ。そんなんでこっちを認識できてるって辺りがまた気味が悪い。あぁ怖い怖い、危ない危ない」
囃し立てるように言いながらさらに数発。足下に跳ね続ける銃弾に苛立った風に、ゾンビジャイアントは無造作に永一へと一歩踏み出し、
「おっと、足下注意だよぉ」
――突如落とし穴めいて崩壊した地面に足を取られ、ぐらりとバランスを崩す。
それは永一が数持つ狂気の一つ。『盗み貫く狂気の銃創』。無音のトカレフから吐き出された弾丸は、実際のトカレフにすら劣るような威力しか持たない代わりに、『命中して出来た銃創を広げ続ける』能力を持つ。
「悪いねぇ。こんなサイズ差じゃ、まともに戦おうと思えないタチでさぁ」
ゾンビジャイアントが足を止めた瞬間に、永一は残る全弾を、無造作にゾンビジャイアントの足、続けざまに顔面に向けて叩き込んだ。顔面狙いはチェーンソーに弾かれ不発に終わるが、足はそうはいかぬ。
「っがあああう、うううあああああう!!」
一度命中すれば銃創が広がり続け、骨が露出し、筋肉の支えがなくなれば、自立できなくなるのは自明の理。ずううん、と音を立てて跪くゾンビジャイアント。体表を変形し、いくつもの触手を永一目掛け射出するが、永一はそれすら見切っていたように移動しつつリロード、淡々と射撃。潰れた触手から傷が這い上り、ゾンビジャイアントの身体を侵食する。
「があああああああああああ!!」
「悪いね。単純な威力は大したものじゃあないけど、広がり続ける傷は存外痛いだろ? ――そのまま、広がる傷に溺れるといい」
機動力を削がれ、広がり続ける不可思議な銃創に藻掻くジャイアントゾンビを、狂気の使い手が嗤う。
今一度のリロード。トカレフから落ちたマガジンがカツンと音を立て――再三、無音の弾丸がゾンビジャイアントを襲った。
骸の巨躯の絶叫が、モール・ヘイヴンの闇に響き渡る。
成功
🔵🔵🔴
薄墨・ヴィーシュニャ
●◎
……言葉は、届かない。わかってる。これは、もう、手遅れ。ただの、バケモノ。……ごめんね。傷つけることしか、出来なくて。
わたしは、刃の怪奇人間。全身から刃が生え、全身が刃と化す。
【高嶺】で空へ飛び、距離を取って、【八重】を飛ばして、突き刺し、呪いを与える。
……これで、その左手のチェーンソーは使えない。もう、わたしのもの。わたしの、支配下。ごめんね、使わせて、もらうね。
【深山】と合わせて、チェーンソーが2つ。後は、この二本で、切り刻む。
本当は、傷つけたくない。でも、倒すしか、殺すしかないのなら。
傷つけるのは、得意だから。だから、死んで。
……バケモノを倒すのは、わたしの、バケモノの、役目。
●刃薙ぐ
ゾンビジャイアントは自身に刻まれた、広がり続ける銃創を、稼働させたチェーンソーで自ら抉り取ることで除去。ぐじゅぐじゅと音を立てて体躯を再生しながら、猛々しく吼えた。音量の余りに幾つかの建物の窓ガラスが共振し、クラックが入る。
「――」
その声に圧されるでもなく、ただ凪いだ瞳をして、今一度立ち上がったゾンビジャイアントを見上げる少女の姿があった。
最早、あの巨体にはいかなる言葉も届くまい。言葉を解さず、獣の如く吼え、命ある者を殺し貪る本能しかなくなったあの肉の塊は――いつか生きていたものの成れの果て。ただの化物だ。
「……ごめんね、傷つけることしか、出来なくて」
呟く。白い少女であった。白い髪、白い瞳、白い膚。無垢な色をした小柄な娘。名を、薄墨・ヴィーシュニャ(聖なる呪いの刃・f23256)という。
ゾンビジャイアントの目が、己を見上げるヴィーシュニャの姿を捉える。左腕のカノンの砲口が跳ね上がり、少女に狙いを付けるその一瞬前。
ぎしり、と金属の軋む音がした。音は少女の背から。バックファイアと砲声が鳴ったその瞬間には、コース上にはヴィーシュニャの姿はない。
派手に吹き上がる土礫と石畳を尻目に、ヴィーシュニャの姿は既に中空高くにある。
――その姿、異様なり。いつの間にやら、彼女の背中には銀の翼があった。軋み、ぎりぎりと音を響かせるその翼は――背の傷跡を斬り開いて生える『刃の翼』。銘を、呪刃『高嶺』。
よく見ればそれは、そもそも翼などではない。無数の短剣が連なって翼のような形を作り、そのように機能しているだけだ。高嶺を羽ばたかせて空を舞いながら、ヴィーシュニャは感情を波立たせないよう、端的に、静かに言葉を紡いだ。
「……わたしは、刃の怪奇人間。あなたを、殺しにきたわ」
ヴィーシュニャは指揮者のように両手を翻した。じゃ、ぎ! 刃が擦れる音がして、左右の指の股に釘めいた細身の投擲長剣が発生する。計八本。呪刃『八重』である。
狙いを絞らせぬよう、敵を中心とした旋回軌道で飛びながら、間髪入れずヴィーシュニャは己の呪いを込めた呪刃を投擲。刃が立て続けに突き刺さるが、骸は意に介した風もなく左腕の砲でヴィーシュニャを付け狙う。その程度、躱さずとも問題ないとばかりに。
「があっ!!」
巨躯の左腕より立て続けにエネルギー弾が放たれるが、ヴィーシュニャはそれを辛くも回避。
しかし、避けられても続けざまの連射。弾速は凄まじく、射撃に切れ目が見えぬ。劣勢に立たされるヴィーシュニャ。被弾を免れ得ぬかと思われたその瞬間、
うば
「……全ての刃を簒奪うのが、わたしの呪い。ごめんね。使わせて、もらうね」
空いた掌を巨躯に向け、彼女は小さな掌を握った。
その瞬間、ゾンビジャイアントの右手で、チェーンソーが独りでに始動した。
「――ぎ、?!」
不意のことにゾンビジャイアントが戸惑いの声を上げる前に、ヴィーシュニャは突き刺さった八本の『八重』より、なおも強く呪いを流し込む。
――斬り裂け。
果たして、狂ったような唸り音を上げ、骸の巨躯の手の中で、意志持つかのようにチェーンソーが暴れた。跳ね上がった刃先がゾンビジャイアントの腿を、カノン構える左腕をこそげるように抉り、紫の血を飛沫かせる!
「ぎああああっ!?」
これぞ、彼女の呪い、『刃の簒奪者』。攻撃を命中させた相手の持つ刃を、己が支配下に置くユーベルコードだ。地面に叩き付けてチェーンソーを破壊、強引に止めようとするゾンビジャイアントだが、その致命の隙を少女が逃すわけもない。
じゃぎぎり、と音を立て、ヴィーシュニャの細い身体から新たなる刃――チェーンソーが迫り出す。呪刃『深山』。手に取るなりけたたましいエンジン音を立てて始動。
一直線。
刃の翼を羽撃いて、閃を描くように少女が飛ぶ。
――本当は、なにも傷つけたくない。
でも、倒すしか、殺すしかないのなら。
傷つけるのは、得意だから。
それだけが、わたしに出来ることだから。
――だから、死んで。
「……バケモノを倒すのは、わたしの、バケモノの、役目」
エンジン音に埋もれるようなかそけき声と共に繰り出された深山の一撃が、巨躯の首を掻き裂き、腐肉と汚血を撒き散らす……!
成功
🔵🔵🔴
アビー・ホワイトウッド
◎
レイダーが生物兵器を使う事が多い。すごく厄介。
モールには大勢の猟兵が乗り込んでるはず。彼らを援護する。
始まったらUC発動、歩行戦車を荷台に乗せた装甲牽引トレーラーでモールに突っ込む。
アクセル全開のままゾンビジャイアントに激突。トレーラーの重量と速度で壁まで押しやって押し潰す。
いかに頑丈でも、只では済まない筈。
激突したらトレーラーを下げて降車、今度はグスタフM4 携行無反動砲を準備して照準、弾頭は榴弾。
他の猟兵が攻撃を行うタイミングに合わせて射撃、ダメ押し。
撃ったら再度弾頭を装填、更に撃ち込む。
何度でも立ち上がってくるといい。こっちも商売。容赦はしない。
●吼声を止める砲声
「があああっ、あああぁあああああ!!!!!!!」
凄まじい大音声で吼えながら、ゾンビジャイアントは地面を蹴ってモールの奥へと強硬に侵攻し出す。遮る猟兵が数名いたが、彼らの絶技を以てしても、絶対的な質量の差は埋めがたい。圧倒的な再生能力で、攻撃を食らいながら、強引に回復しつつの突破だ。
「クソッ!! こいつ、奥に行く気だ……!」
「止めろ! ここで止めろッ!」
数名の猟兵が回り込もうと身構えた刹那、ハイビームが闇を裂く。
「ッ!?」
「なんだ!?」
ライトの光はモールの奥から。エンジン音が猛り、アクセル全開で車両が走り来る。装甲板で補強された武装牽引トレーラーだ。
「――大丈夫。行かせない。ここで、止める」
トレーラーの運転席で呟いたのは、アビー・ホワイトウッド(奪還屋・f24498)。腕利きの奪還者にして、モール・ヘイヴンの危機に馳せ参じた猟兵の一人だ。
アクセルを全開にし、アビーはトレーラーを真っ直ぐにゾンビジャイアントに突っ込ませた。激突!
「ごああああああっ!?」
いかに外法により生み出された強力なゾンビと言えど、全長二〇メートル級のウォーカー牽引用トレーラーによる正面突撃のインパクトを受けて無傷で済むはずがない。
果たして、トレーラーはゾンビジャイアントの膝を正面から破壊し、そのまま巨躯を推して後退せしめた。正面装甲板が歪み、強化ガラスにクラックが走り、トランスミッションが異音を上げ軋む。だが、アビーはユーベルコードを起動して車両の性能を底上げし、ここまで全開で加速してきた分の速度と、歩行戦車を乗せた分の重量とで、強引にゾンビジャイアントの身体を建物の壁に押しつける……! 彼女の整備した二足歩行戦車、および車両は、彼女が乗ることでその性能を限界を超えて発揮する。ユーベルコード、『整備万全・全力発揮』の効果である!
暴れ狂うゾンビジャイアントを、ギアをローに叩き込み直して、強硬にアクセルで押さえ込みながらアビーは車載の拡声器をオンに。
「こちら奪還者、アビー・ホワイトウッド。先攻する猟兵の援護に入る」
言うなりトレーラーの自動運転モードをオンにし、アビーは武器を片手に引っ掴んでドアを蹴り開け、トレーラーから転がり出た。敵の動きを封じている間に追撃を駆ける必要がある。虎の子の『ラングレー』に搭乗している暇は今はない。しかし、
「――あの子に乗らなくても、出来ることがある」
転がるように物陰に飛び込んで、得物――『カール・グスタフ』M4、八四ミリメートル携行無反動砲の照準器を覗き込む。距離二〇メートル、狙いはあの大口。アビーは後方確認の上、躊躇いなく無反動砲のトリガーを引いた。
凄まじいバックブラストが後方を薙ぐのと同時に、弾頭が円状のブースター煙を発しながら推進加速! トレーラーを押しのけて逃れようとするゾンビジャイアントの大口に突っ込み炸裂、破片と爆炎を撒き散らす!
「ぎいぃぃぃぃあああああああ!!!」
口から右肩までが大きくえぐれ、おびただしい量の血を垂れ流して悶絶するゾンビジャイアント。
「今よ。攻撃を!」
「了解!」
「任せろ!」
アビーの声に数名の猟兵が応えた。炎が、雷が、或いは氷が、光が、銃が剣が魔法が唸り、次々とゾンビジャイアントに攻撃が突き刺さる。
アビーはその切れ目が来る前にカール・グスタフに弾頭を再装填。再びサイトを覗き込み、醜悪なるゾンビジャイアントの血走った目と、照準器越しに見つめ合う。
「――立ち上がれるなら、何度でも立ち上がってくるといい。こっちも商売、容赦はしない。立ち上がった数だけ――八四ミリの洗礼をあげる」
やがて来る攻撃の切れ目を、彼女の一撃が埋めた。
トリガー。
射出された榴弾が火球めいて飛び、今一度炸裂してゾンビの身体を破片と爆風で引き裂き千切り飛ばす……!
成功
🔵🔵🔴
ロク・ザイオン
【レグルス】
(腐臭に交じる真新しい血の匂いに鬣を逆立てる。
間に合わなかった。
けれど、まだ)
…やろう。
レグルスの、仕事だ。
おーば。
(大きくなったジャックに閃煌を託し)
咲いて。"ライカ"。
(剣を銃に変形させ、その肩に乗って
【野生の勘】で捕食動作を読み【早業】の射撃で牽制してジャックを援護。
巨大な閃煌の斬撃で骸が態勢を崩せば
肩を蹴って高く【ジャンプ】)
――閉じろ、"ライカ"!
(大きなものはしばしば、見下ろすばかりで己の頭上に気が回らない。
体躯の近いジャックに気を割かれている間が好機。
真上から強襲、刃に戻した"ライカ"で頭から割り断とう)
…ここにととさまの祝福は無く。
お前たちに御旨が、あるはずがない。
ジャガーノート・ジャック
【レグルス】
(ザザッ)
巨大ゾンビか。
対大型個体向けの戦闘方法に切り替えた方が良さそうだ。
いつも通り行こう、ロク。
チームレグルス、行動を開始する。オーヴァ。
(ザザッ)
"Leopard:Arm-ON"。
リンク指定:ロク・ザイオン。
対象武器:【閃煌】を指定。
(捕食を狙う様なら好都合、そこはこの森番の刃の間合いだ。
ロクが支援をし隙を作ってくれるその瞬間を見計らい)
――そこだ。
(素早くレオパルドを駆動させ刃を振るい、ロクと共に敵を切り裂く(操縦×早業)。)
――骸は灰塵と還り土の糧となるが定め。その肉、操るものどもを含め一切を灼滅してくれる。覚悟をするといい。(ザザッ)
●焼断
鬣を逆立てて、森番は唇を噛みしめた。
「おお、お、ああ、あああああああ」
彼女の前方で、ゾンビジャイアントが千切れ飛んだ身体を、喪われた肉を修復していく。その再生速度は当初に比べれば遙かに落ち、終わりが近いことを示すかのようだ。
――しかし、それを素直に喜べるほど彼女は鈍感ではなかった。あの巨大な腐った肉塊の腐臭の中に、真新しい血のにおいが混じる。それは、きっと誰かが――ほんの十数分かそこら前に、あれの手に掛かったのだ、という事実を否応なく想起させる。
ザッ……、
思考を、ノイズが斬り裂く。
『目標、巨大ゾンビを確認。対象の体高は約七メートル。対大型個体向けに戦闘モードを切り替える。ロク、いつも通り行こう。準備は』
傍らに立った、豹を擬人化したような装甲のアバターが、ざらついたエコーの掛かった声で言った。ジャガーノート・ジャック(AVATAR・f02381)だ。
「……大丈夫だ。やれる。やろう。ジャック。『レグルス』の、おれたちの仕事だ」
森番は――ロク・ザイオン(蒼天、一条・f01377)は、ジャックの声を噛みしめるような調子で頷くと、腰のシースから一本の剣鉈を抜いた。刀工『永海』一派、緋迅鉄筆頭鍛冶『永海・頑鉄』が作、緋迅鉄製剣鉈『閃煌』。
信を託すが如く、くるり回して柄をジャガーノートに差し出す。
ぱしり、
ジャガーノートの手の内に閃煌が納まり、
『了解した。チームレグルス、行動を開始する』
彼が作戦行動の開始を宣言すると同時に、追装型機械装甲『Leopard』が展開。
『“Leopard:Arm-ON”。リンク指定:ロク・ザイオン。対象武器:【閃煌】を指定。戦闘態勢に、移行する』
宣言と共に、機械装甲は質量保存の法則を無視して膨れ上がった。ジャガーノート本人をコアとして合体・展開・変形したLeopardは、ほんの数秒で漆黒の巨大人型機動兵器の形を取る。擱座姿勢を取るLeopardの肩にロクが飛び乗るなり、その頭部バイザーカメラが命を宿したように紅く輝いた。
立ち上がるLeopard。その手には、閃煌をモチーフとした燃える剣鉈がある。
これぞ、ユーベルコード『Leopard:Arm-ON』。ロクの武装形質とリンクし、その性質をコピーした状態にLeopardを変形させて戦闘を行うプログラムだ。
「がああ、ああああ……!」
両者、共に全高は七メートル強。突如現れたLeopardを威嚇するつもりか、ゾンビジャイアントは右手のチェーンソーのエンジンを全開で回し、唸り音を上げる刃を振り翳す。
「咲いて、“ライカ”」
身構えるLeopard――ジャガーノートの右肩で、ロクが可変剣銃『ライカ』を銃形態に変形。援護の構えを取る。
間合いを計るような四半秒の沈黙の後、動いたのはゾンビジャイアントが先であった。フェイントも様子見もなく、真っ向からの単純な突撃。しかし、全くの無策でもないらしい。その体表が、まるでざわめくように蠢いた。
ぞぶ、じゅるり……、
ゾンビジャイアントは体表を変形させ、牙付きの触手を数十本と構築し、鞭めいて撓らせ伸ばす。鉄にさえ突き刺さり食いちぎる牙持つ数十本の触手と共に、暴威の塊が迫り来る。
対するレグルス二人は、ジャガーノートは構えを解かず迎撃態勢、ロクが肩からライカを連射し牽制に掛かる。
ガンモード
銃 形 態のライカから迸るのは蒼白い、稲光に似た光線だ。光条の連射が立て続けに、伸ばされる牙の触手を撃ち墜としていく。
「があっ!!」
苛立ちの混じるゾンビジャイアントの声をよそに、ロクはきゅるりと瞳孔を絞り、ライカの連射サイクルを上げた。触手が同時にいくつも動く、その交点を睨む。最少弾数で、最大の数の触手を撃墜。神業である。
『接敵する。対ショック姿勢』
「わかった!」
ロクがLeopard越しのジャガーノートの声に応じ、姿勢を低めて装甲板の隙間を掴むなり、ジャガーノートは機体を低姿勢に持ち込み、爆ぜるように前進する。
「があああああうあっ!!」
けたたましいエンジン音と共に回転するチェーンソーの刃が袈裟懸けに振るわれるのを、Leopardの巨大なる剣鉈が真っ向より受け止める。火花を上げる巨大な剣鉈だが、その強靱なる刀身はその程度では砕けない。
間近でチェーンソーと剣鉈が軋り合う間に、ロクがライカの出力を最大にし、間近からゾンビジャイアントの顔面目掛けライカを連射!
「ぎいっ!?」
不意打ちに蹌踉めくように後退するその隙を逃さない。ジャガーノートはすぐさま機体をコントロール。敵のチェーンソーを突き放すなり、閃煌に意志リソースを込める、燃えろ。紅き炎が如く。猛れ、我が相棒の如く!
果たして巨大剣鉈は一瞬で赤熱を通り越して白熱!
『近づきすぎたな。ここはもう我々の間合いだ』
白く煌めく炎の刃を、ジャックは全力で敵目掛け繰り出す。守りに回ったゾンビジャイアントのチェーンソーに、凄まじい音を立て一合打ち込む。圧倒的熱量と威力にてチェーンが破断! むなしい音を立てて駆動部だけが空回りするチェーンソー。ジャガーノートは迷わず機体を前進させ、左手のカノンが放たれる前に敵のボディに肩をブチ当てる。体勢を崩したところに、さらに閃煌を一閃!
「っが、あああ、ああああ!!」
紫の汚血が飛沫く。最早動かぬチェーンソーを振り回して威嚇するゾンビジャイアントから、ジャガーノートは機体を操りステップさせて逃れる。
ゾンビジャイアントは左腕のカノンを構え、Leopardを撃とうとして一瞬、動きを止めた。
――あの右肩に乗っていたはずの猟兵が、いない。
「……閉じろ、“ライカ”!」
答えを教えるように、声が上から降った。
あの激突、ジャガーノートがチェーンソーを破壊した反撃の折にロクは天高く飛び、ジャガーノートへの対処に終われるゾンビジャイアントを上から狙ったのだ。
ロクの吼える声に合わせて、可変剣銃は今度は剣形態に変形。銃身だった部分は組み合わさり閉じ、グリップが回転して一本の強靱な剣へと姿を変える!
ゾンビジャイアントは迎撃のため上を見上げるが、そうしていれば下、ジャガーノートに対する隙が大きくなる。――いや、そもそもだ。
跳ばせてしまった、警戒を向けなかった……巨躯故に自分より上に意識を向けることがなかった、その時点で、この奇襲に対して詰んでいたのやもしれぬ。
「――ここで枯れ落ちろ、病葉!! おれとジャックが、お前を灼き尽くしてやる!」
ロクが振り上げた刃、ライカが激しいスパークを上げた。手元の光を帚星めいて後ろに曳き落ち――
振るった刃は頭から突き刺さって、口端を裂き、牙を削ぎながら落ちて、そのままの速度で反対の口端を裂きながら落ちていく。ロクが着地するのと同時に、斬られたことに気付いたように断面から汚血が飛沫き、あたりに悪臭のする湯気を散らした。
「……ここにととさまの祝福は無く。お前たちに御旨が、あるはずがない」
冷たく言って後退、距離を取るロク。痛みに吼え悶える骸の巨躯へ、括るようにジャガーノートが言い放った。
「――骸は灰塵と還り土の糧となるが定め。その肉、操るものどもを含め一切を灼滅してくれる。覚悟するがいい」
閃くバイザー。その身体を蹴り登り、再びガンモードとしたライカを構え直すロク。
一等星の二人は、その名に違わぬ煌めく眼で、不浄なる巨体を睨め据える!
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ムルヘルベル・アーキロギア
◎
同行:織愛/f01585
終末思想に取り憑かれたカルト教徒か、実に"らしい"連中であるな
飢餓と荒廃は道徳をたやすく吹き飛ばし、そして斯様な衆愚を生む
オブリビオンもそうだが、こうした思想を駆逐することも重要であろう
委細承知した。ワガハイの魔力の限りに屍肉を吹き飛ばしてくれる
さて、とはいえワガハイは大規模な破壊術式に秀でているわけではない
必要なのは、彼奴の巨体を貫く一点集中された攻撃であろう
ゆえに砲台型のガジェットを【ガジェット・ショータイム】で召喚し、
練り上げた魔力を砲弾として形成、織愛の攻撃が彼奴の懐を開けた瞬間、
彼奴の土手っ腹に狙いを定めて叩き込む
当てないようにするが、避けるのだぞ織愛よ!
三咲・織愛
◎
ムーくん(f09868)と
おぞましいですね。あのゾンビも元は人だったのでしょうか……
行きましょう、ムーくん
守るための戦いは得意ですから!
真っ向から勝負します。この先へなど進めさせません
足を止めますから、ムーくんの最大火力をぶち込んでやってくださいね!
モールの人達を安心させるためにも、堂々と勝ってやりましょう
最初から力勝負のつもりで挑みます。攻撃も避けずに全て受け止めてみせる
愛槍を握りしめ力で打ち合います。ノクティスはそうそう折れませんよ
左腕の動きには注意を払い、砲口を人やモールに向けさせぬよう打ち落としていきます
覚悟を持って、槍を足に突き刺し捻りあげる
隙を作れたらあとは彼におまかせします!
●流星一条
度重なる攻撃に再生速度も緩み、ゾンビジャイアントはよろめくように身体を揺らす。
「御遣い様が……!」
「おのれ、おのれ! なんたる不遜!」
「祈りを捧げよ! 御遣い様を後押しするのだ!」
その影でフードの男達が喚き散らし、意味の取れぬ聖句らしきものを唱えるのが見える。
賢者からしてみれば、その光景は、衆愚が産んだ愚妹の極みであった。
「終末思想に取り憑かれたカルト教徒か、実に"らしい"連中であるな」
紫の目をすいと細め、ムルヘルベル・アーキロギア(宝石賢者・f09868)が密やかに呟く。
「おぞましいですね。あのゾンビも元は人だったのでしょうか……」
「で、あろうな。ゾンビとはそういうものだ。事実あやつはヒトを喰らい、己が一部としている。もっとも最初にベースとなった人間を核に、他者を奪い続け、自らの欠損を埋め続けた。結果生まれたのがあの化物であった、といったところであろうよ」
「――許せません」
桃色の瞳をしたエルフが、その嫋やかな手を握り締める。長い栗毛に儚げな容貌の少女だったが、今その瞳はこの理不尽を真っ向から睨み、破壊せんとする意思に満ちている。――三咲・織愛(綾綴・f01585)だ。
織愛の言葉にムルヘルベルが頷く
「怒りに正しい、間違っているとラベル付けをするのは賢いとは言い難いが――しかしワガハイはその怒りを肯定しよう、織愛よ。飢餓と荒廃は道徳をたやすく吹き飛ばし、そして斯様な衆愚を生む。オブリビオンもそうだが、こうした思想を駆逐することも重要であろう」
「はい。行きましょう、ムーくん。守るための戦いは得意ですから。必ず、――このモールの人たちを守り抜きましょう。安心させるためにも――堂々とした、勝利を!」
「委細承知した。ワガハイの魔力の限りを尽くし、あの屍肉を吹き飛ばしてくれよう」
拳を握りながらの織愛の言葉に、ムルヘルベルがゆっくりと頷く。二人は、事前に打ち合わせたとおりに行動を開始した。
まず前に出るのは織愛だ。このツーマンセルの強みは、格闘攻撃全般に秀でた織愛が前衛を務めて戦線を支える間に、後方でムルヘルベルが敵に対応した術式を練り、それによる猛撃を喰らわせることが可能な点にある。
相手が巨大であろうとも、その戦法に変わりはない。
「この先へは進ませません。一歩も」
じゃ、りっ!
織愛が夜の槍『ノクティス』の刃を一閃すれば、地に一本のラインが引かれる。
その線より先には行かせぬ、という境界線。
「があ、ああ、ああああああ!!」
骸の巨躯が咆哮した。最早そのチェーンソーにもカノンにも換えはなく、肉体再生のペースも落ちきったというのに、その動きに迷いは無い。死など恐れていないのか。或いは、そのようにプログラムされているのか。
チェーンソーが凄まじい音を立てて回転。織愛目掛けて唐竹割りに、高速回転する刃が振り下ろされる。
今までの猟兵達の殆どはそれを避け、掻い潜り攻撃を叩き込むことを選んできた。だが、織愛は――
「はあっ!!」
が、っぎいいいいいいいいいいいいん!!
愛槍『ノクティス』が金属の軋む大音を立てる。しかして折れない。織愛の愛する藍色竜は、彼女の膂力に耐えられるほどの強度を持つ。
――力比べだ。
振り下ろされれば、それに真っ向から打ち返す。薙ぎ払われても、一歩も引かずに叩き返す。それは異様な光景であった。七メートルオーバーの巨人と、身長百六十センチ足らずの少女が、双方一歩も退かずに打ち合うなどと!
ここまでゾンビジャイアントの存在強度を削り、その力を減衰させてきた猟兵達の活躍あってこその光景であれど、しかしその前提があったとして、そうそう出来ることではない。
織愛は一打として攻撃を避けず、槍で受け、弾き逸らし、踏み込んで手首を、足を、膝を狙って突き、払い、斬り裂き、打つ。
無呼吸での打ち合い。怪物の紫の血が空中につむじを捲き、織愛の頬を濡らした。戦乙女めいて戦う少女の美貌は、それでも一向に陰らない。
「頼もしい限りよな。まったく」
後ろからその様子を見ながらも、ムルヘルベルは術式を練り上げていく。
彼自身、大規模な破壊術式が得意というわけではない。より多くの状況に対応すべく多数の魔術を修めた彼ではあるが、あの規模の敵を一方的に鏖殺するような破壊術式にはとんと覚えがない。
だが、一打。
多数の猟兵により、通常ならば疾うに死んでいるであろうほどの損傷を幾度となく受け、その存在強度が落ちた霊核を射貫き霧散するための『砲弾』ならば用意できる。
「参ろうか」
ムルヘルベルは襟巻きを手に取り、空中に翻した。長マフラーは彼の腕のスイングに従って伸び、空中に美しいまでの螺旋を描く。きゅるきゅると螺旋が窄まり、長マフラーはまるで長筒を形作るようにムルヘルベルの右腕に巻き付く。
襟巻きの動きが止まる。ムルヘルベルの右腕に巻き付いて固定された襟巻きの上に、金属板の組み合わさるような大音と共にメタリックなテクスチャが貼り付き、まるで戦車砲めいた形状を形作る。ユーベルコード、『ガジェットショータイム』である!
「宝文魔装、限定展開。霊核侵徹弾頭形成」
そして砲と化したムルヘルベルの右腕、その尖端に遊色の光が点る。砲身根元、ムルヘルベルの手から放たれる魔力が砲身内部で砲弾として結実。
これ成るはあの不浄なる巨体を、仮初めの命から解放するための一弾。
「ぐああ、ああうああう!!」
その、危険なまでに美しき輝きを見たためか。自棄を起こしたように左腕のエネルギーカノンを振り上げ、織愛ごとその背後を薙ぎ払わんとするゾンビジャイアント。当然ながら織愛の後方にはムルヘルベルがいる。
「させませんっ!」
しかし織愛はそれをも読んでいたかのように、弾丸めいて跳び上がった。初めからその左腕が町並みや、他の誰かを狙って火を噴くことを予見していたのだろう。
故に行動は早い。エネルギー弾が放たれる前にノクティスの全力の一撃で、ゾンビの巨腕を跳ね上げる。エネルギー弾が天を貫くように放たれる。その一打の反作用を以て織愛は反射する様に地に落ち、
「はああああああああああっ!!!」
裂帛の気合一つ、ゾンビジャイアントの足をノクティスで深々と貫き、地面に縫い止める!
「があ、ああああっ!!」
「ムーくん!」
「心得た!!」
織愛が好機を告げる声に、ムルヘルベルは即座に応えて砲身を真っ直ぐに伸ばした。変形した服の裾が硬化変形伸張、アンカーめいて地面に突き刺さり彼の身体を支える。
「手向けだ。在るべき場所に還れ、死者よ!」
狙いは土手っ腹。敵の中心目掛け、ムルヘルベルは心で引き金を絞る。
――砲口より光が爆ぜた。
地より出でたる流星一条。霊核侵徹弾頭が音速を容易く凌駕し、ゾンビの巨体、その中心を抉り飛ばし――たやすく背に抜け、長い長い尾を残して、荒野に閃を曳いた。
「――、――お……、」
最早、声を出すこともままなるまい。胸まで開いた大口だったはずの部分は、ムルヘルベルの一射によって開いた孔に飲まれて今や虚空である。
それ以上何を吼えることもなく――存在量の全てを奪われ、今まさに霊核をも砕かれた骸の巨躯は、ぐらりと傾いで倒れ、解けるように塵となって消えた。
ゾンビのいた跡に残るのは、かの足を縫い止めていた藍色槍、ノクティスのみ。嫋やかな手がそれを握り、地より引き抜く。
「――もう貴方たちの『御遣い』はいません。続けますか?」
決然とした声で問いかけ、構える織愛。襟巻きを直し、その横に並び立つムルヘルベル。
そして総勢数十名からなる猟兵達が、闇の裡より決然と黙示録の信者らを睨む。
この絶望の世界にあって、光は未だ絶えぬのだと。
そう謳うように!
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第2章 集団戦
『黙示録教の信者』
|
POW : 【黙示録教の信仰】我らガ祈りを聞き届ケ給ヘ!
【常人には理解不能な狂った教義と信仰】を聞いて共感した対象全てを治療する。
SPD : 【黙示録教の崇拝】我ラが願イヲ聞き届け給え!
【常人には理解不能な狂った教義と信仰】を聞いて共感した対象全ての戦闘力を増強する。
WIZ : 【黙示録教の殉教】幸福なル滅びト終焉ヲ此処に!!
【心臓と同化したオブリビオン爆弾による自爆】が命中した対象に対し、高威力高命中の【疑似超大型オブリビオン・ストーム】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
イラスト:嵩地
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
|
種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●ディセイヴ・ディセプション
「なんたる――なんたる不遜か!!」
「おお、救いを受け容れぬか、幸福なる滅びと終焉を、我らが教義を受け容れぬか、愚昧なる猟兵共……!」
――こちらの戦力をそう認識するということは、やはりオブリビオン。
フードを被った男達が、あのジャイアントゾンビを屠ったきみたちに大音声で叫んだ。
既にモール・ヘイヴンの自衛兵は後方に退避済。ここから先は彼らに配慮する必要もあるまい。
「総員抜剣。是は聖戦である! あの異教徒共に我らが黙示録教を知らしめる機である!一人でも多く殺し、そして大いに死ぬがいい!! 我らが主は我らが死を慈しみ、悦び、救いを遣わすことであろう!」
おお――!
凄まじい、多数の叫びが聞こえた。
猟兵達は眉をひそめる。……おお、あのゾンビジャイアントは、奴らの虎の子に見えてその実、ただの尖兵に過ぎなかった。
暗闇に、黙示録教の教徒達の紅い瞳がギラギラと煌めいて浮かび上がる。その数、数えることすら能わぬ無数。ジャイアントゾンビを屠る間に後詰めの本隊が到着していたか、猟兵達とて決して油断が許されぬ数だ。
抜剣の号令に合わせ、彼らは手にそれぞれ棍棒、剣、或いは鉄パイプを掲げた。銃器を帯びている者も多数いる。オブリビオンたる彼ら黙示録教徒らの手から放たれる武器攻撃は、猟兵らにダメージを与える領域にある。
しかし、恐れてはならない。
死による救済、滅びによる救済が事実なのだとすれば。
奴らはただ、自分たちだけで死んでいればよかったのだ。
それを他者に押附け、誰かを殺し、略取し、奪った命を奴隷として扱う。
そんな欺瞞に満ちた思想の持ち主を前に、後ろに退くわけには決していかぬ!
「鏖殺ぞ! 神の裁きをここに!!」
吼える奴らの狂える叫びを、正しき怒りと鉄火で潰せ!
敵対象、『黙示録教の信者』! グッドララック・イェーガー!
≫≫≫≫≫MISSION UPDATED.≪≪≪≪≪
【Summary】
◆作戦達成目標
『黙示録教の信者』の侵入防止、排除
◆敵対象
『黙示録教の信者』×多数
◆敵詳細
滅びによる救済を教義とする異端の神を信仰する一団。
実体は従わぬ者、教えに屈さぬ者を銃や剣で殺し脅し、従わせてきた狂人の集団。
彼らが生きていること自体が教義と矛盾しているように見えるが、その実、彼らは死ぬ事を厭わない。武器攻撃、教義を唱えることでの回復・戦闘力増強、自爆前提の疑似オブリビオン・ストームの発動など、個体としてはかなりの威力を持つ攻撃を行うため、相対した場合は速攻での撃破が推奨される。
◆戦場詳細
モール・ヘイヴン。
広大な敷地を持つ半開放型ショッピングモール。上から見るとだいたい八角形の外縁のある敷地となっている。
人々の居住区は中央部にあり、外縁部にはブービートラップの類が敷設してあるため飛行できぬ限りは侵入困難。このため、ジャイアントゾンビを含む敵対象は正面の門を破って侵入してきたとみられる。
今回は正門からモールに到るまでの広範なスペースを戦場とし、黙示録教の信者を迎撃することとなる。敵は多数、多少の障害物はあれど見晴らしは良し。敷地を破壊せぬ範囲で、存分に戦うことが可能だ。
◆プレイング受付開始日時
2020/01/19 22:20:00
◆プレイング受付終了日時
2020/01/24 23:59:59
ハウト・ノープス
◎
死が救いか
滅びを求めるか
ならば、悉く殺そう
だがその前に
先の戦いで襤褸くなった片腕の代替えが必要だ
ちょうどいい、手前のお前。そこの信者、お前だ
動くとずれる。止まっていろ
上手く片腕を切り落とせたならそれを拾い、替わりに接ぐ
多少不格好だが、まあ動くならいい
あとは只管に断在を
生命力を奪いながら斬りつけ、破損したら継ぎ足し取り替え皆殺そう
死とは、確かに救いと呼べるだろう
少なくとも一時の安寧は得られる
が、私はどうにも死ねない身らしい
それどころかお前達の死を求めて止まず、
殺したくて仕方がないようなのだ
ああ、もしやお前達の神は私に助力しているのかもな
気にするな、戯言だ
聞く耳などとうにないかもしれないが
●デス・バラージ
「死が救いか。滅びを求めるか。なるほど」
ずちゃり。音を立て、ハウト・ノープス(デッドマンの黒騎士・f24430)の左腕が地面に落ちた。繋がっているだけで奇跡的な状態だった彼の左腕は、デッドマンズスパークの代償として喪われたものだ。
「ならば、悉く殺そう。死を遣わそう。黙示録教とやらの教義を、それに従う愚昧の輩共を、この野に吹く黄砂の中に沈めてくれよう」
「強がりは止すのだな、猟兵! その左腕を見れば分かる、我らが主の御遣いとの戦いで、貴様の身体は襤褸襤褸だということが!」
「――」
敵の言葉は間違っていない。たしかに、ハウトの左腕は腐り落ちるほどに脆くなっており、事実たった今自重に耐えかね崩壊して落ちた。
左腕だけではない、あの巨体と渡り合い全身に受けたダメージは決して無視できるものではない。
――だが、仔細ない。
ないものは接げばいい。まだあるならば振り絞ればいい。
「そこのお前」
「は?」
「そう。そこの信者、お前だ」
「なんだ、気でも狂ったか? この大勢を前に、万に一つも勝機があるとでも――」
「喧しい。動くとずれる。止まっていろ」
「えっ」
どうん、と地面が撓んだような錯覚。ハウトの全力の踏み込みが地面を揺らした。
「いっ、」
ぞぶん。
肉を打ち断つ重い音がして、左腕がぽおん、と空中に飛ぶ。
「ぎ、あああああっ?!」
腕を押さえ叫び声を上げる信者の一人を蹴り倒し、心臓を地に縫い止めるように黒剣を突き立てる。心臓を破壊されれば再生どころの騒ぎではない。即死だ。
痙攣して動かなくなる敵を脚の下に敷いたまま、ハウトは落ちてきた左腕を受け止め、半ばより喪われた自分の左腕にあてがった。
ぐち、と音を立てて断面が癒着。二秒と置かず、ハウトはその接いだ左手を握り、開き、具合を確かめるようにその手で黒剣を地から抜く。
「少しばかり長さが違うが……まあいいだろう。動くならば同じことだ」
「ば、化物ッ!!」
「撃て撃て撃て、撃てぇっ!!」
――化物と呼ばれることには慣れている。
銃声。銃弾が数発身体にめり込むが、意にも介さずにハウトは姿勢を低めて走り出した。繰り出される黒剣での斬撃は『断在』。そこに在るものを断つ剣、自在に断つ剣、罪を断つ剣。
敵の脚を払い、後頭部を一衝き。一殺。飛び込みざま、受け止めるために上げられたアサルトライフルごと敵の身体を両断。二殺。間近から右手にショットガンを喰らう。裂けるチーズのように花開いた右腕から左手に剣を持ち替え、敵の右腕を斬り飛ばす。三殺。用をなさない右腕を切り離し、敵の腕を鹵獲、癒着。
死を喰らい、死を撒く。ハウトは死そのものの顕現であるかのように、容赦も躊躇いもなく敵を殺す。
「死とは、確かに救いと呼べるだろう。少なくとも一時の安寧は得られる。この世界では特にな」
生きていくことさえ苦しいこの世界では、或いは死という安寧は救いでさえあるのやも知れぬ。――しかし。
それは、もう死にたいと思って与えられて初めて救いになるものだ。
懸命に生きて、戦おうとするものには不要の概念だ。
「――だが、私はどうにも死ねない身らしい。それどころかお前達の死を求めて止まず、殺したくて仕方がないようなのだ。ああ、もしやお前達の神は私に助力しているのかもな。もしそうなら、使者を名乗ってやってもいい」
「お、悍ましい化物が何を語るか……!!」
「気にするな。只の戯れ言だ。――それに、すぐに聞こえなくなる」
ハウトは距離を詰めて、電光石火の一刃にて敵の頭を叩き潰した。「げゃ」という奇妙な一声を最後に、また一人死ぬ。これで四殺。
「私を見ろ。そして己が死を思い出せ。――鏖にしてくれる」
ハウトは傲然と言い放ち、黒剣を霞に構え直す……!
成功
🔵🔵🔴
アルナスル・アミューレンス
◎
なるほどねぇ。
各々のやれることを最大限に生かして、
脅威を排し、その世界を生かす為に戦う。
っていうのが猟兵の在り方、って事かなぁ。
いいんじゃない、そういうの。
お兄さん、そういう戦い、好きだよ。
じゃあ、生きる為に足掻きましょうかねぇ。
さぁ行くよ、「鏖殺(起きて)」。
悪い夢は、「処刑(終わり)」にするよ。
前に出て、地形の利用が出来そうな場所辺りで偽神兵器の封印を解く。
G.R.V5を媒体に、射撃形態に変化。
スナイパーの腕を生かし、「射撃」による超長距離からの制圧射撃を行うよ。
無尽蔵の弾丸による継戦能力で、片っ端から部位破壊して抑え込むよ。
どんどん治られると面倒だし、優先的に頭を破壊しようかねぇ。
●天国の門番
「なるほどねぇ。各々のやれることを最大限に生かして、脅威を排し、その世界を生かす為に戦う――っていうのが猟兵の在り方、って事かなぁ」
モール中腹、立体構造の階段踊り場で戦場を俯瞰しながら、アルナスル・アミューレンス(ナイトシーカー・f24596)が静かに呟いた。覚醒してなお未だ掴みかねていた『猟兵』という概念が、彼の中で急速に像を結んでいく。
自分に出来ることを、最大限に。
難しいことは、他者が補う。
皆、世界を救うため――或いは他の思想を持っているものもいるかも知れないが――結果的に『そうなる』ように、全力で戦っている。
「いいんじゃない、そういうの。お兄さん、そういう戦い、好きだよ」
ガスマスクの下で笑い、アルナスルは四肢の偽神兵器を起動。
オキテ
「さぁ行くよ、鏖 殺……」
Ruthless――『無慈悲』の名を冠する偽神兵器が、彼を文字通りの戦闘体へ作り替える。
オワリ
「悪い夢は、処 刑にするよ」
拡張した右腕のRuthlessが、携えた大口径機関銃『G.R.V5』を取り込んでアルナスルの右腕と一体化させる。
アルナスルの右腕はほんの数秒で、有機的なデザインをした白色の砲塔となった。Ruthless、限定神性解放。射撃形態。
アルナスルは即座に地面を蹴った。射撃形態としたRuthlessの出力は、近距離を掃射するには強すぎる。入り組んだモール内部よりも、モール外部から攻め寄せる敵を削るべきと判断。跳躍し、モールに並ぶ建物の屋上と屋根を蹴り継いで前線を目指す。
射撃形態のRuthlessから端子が伸び、彼のゴーグル『オールサイト』へ接続。オールサイトの表示機能に介入し、熱源探知機能とロックオン・サイトを表示。いわば偽神兵器の力を使った疑似ファイアリング・コントロール・システムだ。
物見台として使えそうな高い建物の上に跳躍、飛び乗ると、アルナスルは下方を見下ろして敵に狙いを定めた。
チチチチチチチ、とサーチ音を立てて揺れる緑色のロックオンサイトが、ロック音と同時に紅く染まる。
その瞬間にアルナスルは躊躇いなくトリガーを引いた。砲塔と化した彼の右腕から発射されるのはもはや機関銃弾ではなく、偽神兵器より吐出されるエネルギーそのものだ。
その射撃は拳大の太さを持つビーム・ライフルの光条めいて夜闇を裂いた。射線上を走っていた信者達の頭が、腕が、削れ飛んで次から次へ吹き飛んでいく。
距離が遠く一射で頭を潰せなければ、腹から下を狙い削り落とし、動きを止めて二射目で殺す。
「――! ……!」
遠距離故声は届かぬ。しかし、望遠したオールサイトの内側で、敵がアサルトライフルをめくら滅法に連射するのが見える。しかし充分に距離を取ったアルナスルに、立ったまま碌な狙いも付けずに発射された銃弾が掠めるわけもない。アルナスルは的確に距離が近いものから順に、近寄らせぬまま屠っていく。
「悪いけど、ここから先には行かせないよぉ。君達の教義に巻き込まれて死ぬことを、このヘイヴンの皆は望んでいないはずさ。――ま、想像だけどねぇ」
バレル過熱警告。連射を止め、アルナスルは腕を覆った偽神装甲を半露出してバレルから強制放熱。熱気と陽炎を上げる銃身の向こう側に、次なる敵の姿を睨む。
「さあ、お待たせ。処刑の時間を再開しよう。死にたい人から前に出るんだねぇ」
バレルを夜気で効率的に冷やし、再び装甲を閉じる。
アルナスルは、ヘイヴンの門番めいて、望まれざる侵入者への狙撃を再開する!
成功
🔵🔵🔴
シャオロン・リー
◎
群れ成して来よったなぁ
あったまるには足りへんとこやってんな
この暴れ竜、いくらでも相手したるわ
最初は各個撃破から出来る限り大勢を巻き込めるように増やして
引き続き一撃での致命傷喰らわんようだけ見切って、それ以外のダメージは激痛耐性と継戦能力で耐える
暴れ続けられるっちゅうんはほんま楽しいねんけどなぁ
俺はまだまだ暴れ足らへんぞ、ヌル過ぎや
真の姿限定解放、竜の翼出して上空に飛んで高い位置キープしたら
火竜鏢で広範囲巻き込んで出来るだけ多くの敵を焼き尽くす
黙示録?やったら竜がおるもんやろ、火竜(俺)の炎で燃えて散れ
「呵呵、ええやん!やぁっとあったまってきたわ」
お前らももっと熱くなったらええわ、骨の髄までな
●火竜の獄
既にモール・ヘイヴン・エントランス――門からモール入口にかけての広場は、大混戦の様相だ。
その混戦のそのまた最前線へ、危険を求めるように飛び込む猟兵が一人。炎気帯びる竜槍を高速回旋しながら駆け抜けるのは、シャオロン・リー(Reckless Ride Riot・f16759)である。
「いよぅ、群れ成して来よったなぁ。あのデカブツじゃ鈍うて鈍うて、あったまるには足りへんとこやってん――この暴れ竜、いくらでも相手したるわ」
獰猛なる笑みを浮かべ吼えるシャオロンを出迎えるのは、四方から降り注ぐ小口径・高速ライフル弾だ。マズルフラッシュが咲き乱れ、シャオロンを捉えようと無数の火線が伸びる。
「殺せ、殺せ殺せ! 我らが主への供物ぞ!」
「より多くの贄を、我らがいと高き神に!」
黙示録教の教義は、滅びこそ至高というもの。それを認めぬ愚昧なる民を滅びに導く――つまりは殺すことで徳が得られるという考え方をする。
ど、と地面に土が散った。四方から集中する銃弾が空を穿つ!
「ハッ」
笑い声が空中から降った。
アサルトライフルの掃射に合わせてシャオロンは跳躍、敵のライフルの照準を外すと同時に手近な一団に襲いかかったのだ。
「っせアァア!!」
槍撃一閃。首から脇までを裂かれて血飛沫上げて倒れる敵の横合いに降り立ち、ぐうんと振り回した刃先でもう一人の首をすっ飛ばし、身体を回す勢いを合わせて石突きに乗せて、さらに二人を骨を砕きながら薙ぎ倒す。
「ヌルいのう、ヌル過ぎや!! いくら暴れられるンが楽しいっちゅうたかて、ぬるま湯じゃいつまで経っても足らへんぞ!!」
「こ、この男……!」
「焦るな! 距離を取って撃ち続けよ! 空を飛べるわけでもあるまい!」
指揮官の声に応えるように、銃を持つ多数の信者が足を止めたシャオロン目掛け集中射撃。シャオロンは槍を回して銃弾を弾きつつ、無手側転とバックフリップを交えたステップワークで降り注ぐ銃弾の間を駆け抜ける!
数発が身体に食い込み血が流れるが、いずれも致命傷には遠い。痛みには慣れている。彼の判断が、動きが、生半な痛みによって鈍ることはない。
――そして、
「おう、今俺が飛べへんって決めつけたん、お前やな? ――んならしっかり見とき。冥土の土産になぁ!!」
受けた傷、ジリ貧の窮地。脅威に取り巻かれたこの状況を糧に、シャオロンは己の真の姿を限定的に引き出す。
シャオロンの背に、竜の翼が広がった。本質限定解放、シャオロンは力の限り垂直に地面を蹴り、同時に翼を力強く羽撃いた。
「なっ――」
「た、高い?! 奴は空を飛べるのか?!」
敵の慌てる声をせせら笑うように、高々と飛んだシャオロンは己が本質、火竜の血脈を励起する。戟『朱鎗』が紅き焔気に取り巻かれ、陽炎を上げ――中天に赤々と、シャオロンの姿を燃えるように浮かび上がらせる!
「黙示録ッちゅうからには竜がおるもんやろ。終わりの時ってんならなぁ!」
コロナめいてシャオロンを取り巻く炎が、再び槍に収束! 終末めいて燃え上がるその炎を足を竦ませ見仰ぐ敵集団、そのど真ん中目掛けて、
おれ
「調度ええわ。火竜の炎で、燃えて散れェ!!!」
振り抜く火槍より、迸るように緋弾の嵐が降った。
ユーベルコード、『火竜鏢』。
数千と降り注ぐ緋弾はその一つ一つが高熱の火焔塊。着弾と同時に爆裂、熱き炎を撒き散らす業熱の炎弾!
着弾した数十メートル四方を、炸裂する火焔で白熱、灼滅! 闇夜に煌々と燃え盛る中に、阿鼻叫喚の信者の叫びが混じる。
「呵呵、ええやん! やぁっとあったまってきたわ。お前らももっと熱くなったらええわ、骨の髄までな。炎ならここにある――いくらでも貸したるさかいに、のぉ!!」
シャオロンは身の裡より尚も炎気を引き摺り出し、槍へ込め――次なる標的を睨み羽撃く!
成功
🔵🔵🔴
夷洞・みさき
◎
骸の海の住人が現世に害する事の罰は死んでもらう事だけど、彼等には今一つ罰になりそうじゃないね。
だから、僕は君達を殺さない、ただ、何も為せず、誰にも見られず骸の海に還ってもらおうかな。
【SPD】
飛び込んできた信者を誘導し、奥へ向かう扉を氷白館に直結させる。
ここで起こる事件は様々な宗教の信者達による連続殺人事件。
全滅or犯人が分かれば役者は蘇り、配役を入れ替え事件は再演される。
信者達も役者の一部となり、完全に死ぬ事も殺す事もできないまま、オブリビオンたる館に捕らわれる。
彼等の教義に賛同する者もいるが、事件が終われば全て初期化。
夢幻の繰り返しに彼等は何時か、ただの舞台装置に成り果てるだろう。
●氷白館狂信殺人事件
「骸の海の住人が現世に害する事の罰は死んでもらう事だけど、彼等には今一つ罰になりそうじゃないね。なにせ滅びることが救いだって話だし――」
モール中程、侵入してきた敵の排除に当たるのは夷洞・みさき(海に沈んだ六つと一人・f04147)。
あらかじめあった説明によれば、黙示録教の信者らはその悉くが滅びを希求し、他者にそれを強要するのだという。殉教を恐れることなく、むしろ殉教した涯てにこそ救いがあるのだとする、異端の教義を持つ者達だ、と聞いている。
故にみさきは思う。
奴らに、死をくれてやるのは生ぬるい、と。
「――だから、僕は君達を殺さない、ただ、何も為せず、誰にも見られず骸の海に還ってもらおう」
闇の中に浮き上がるような金の瞳で弧を描くと、彼女は連絡通路に陣取り、酷く静かにユーベルコードを発露する。
冷ややかな夜気に、張り詰めたような冷気が走った。……ただそれだけ。空気が一瞬張り詰めただけの変化。それでいいのだとばかり、みさきは闇の向こう側を見通すように、連絡通路の向こう側をじいと見つめた。
――程なく、声が聞こえてくる。足音。複数、恐らくは十人をくだらない。
「さあ、さあ、さあ、異端はどこだ、どこに居る! 我らが教義に従わぬ、希望を求める異端共は!」
「我ら黙示録教徒、恐れるものなし! この先に肉体の滅びあれど、我らの魂はその先の楽園へ!」
「殉ぜよ、殉ぜよ、教えに殉ぜよ――!」
十数人からなる男達が階段を上り、大挙して連絡通路の扉へ押し寄せた。
みさきは、アサルトライフルと鉄パイプなどで武装した男達が連絡通路の扉の向こう側から自分に手を、武器を伸ばすのを見た。獲物を見つけた、といわんばかりの所作だ。
――しかし彼女は淡く微笑んだだけだった。武器を構えることも、身勝手な教義を痛罵することもない。
彼らがそのドアを潜ったとき。
彼女の攻撃は、既に完了しているのだから。
「――あ?」
何が起きているのか、分からなかった。
気がつけば暖炉に薪の燃える暖かい部屋の中に、彼らはいた。
「なんだ、どういうことだ、これは」
「全員、固まって動くな。点呼を――」
信者の中でもリーダー格の男が言いながら辺りを見回す。爪先がゴツリと何かを捉える。視線を落とす。
「……なっ?!」
――首が転がっている。ズタズタの断面。さぞや苦しんで死んだと思しき面相。
知った顔ではない。だが、突如としての場面転換、唐突な死体の登場に正常な判断力が奪われる。
「な、なんだこれは……おい、全員いるな?!」
「い、います! しかし、ここはいったい――」
動揺から現状把握と共有が遅れる。声は揺れ、実のある会話が阻害される。
そして、
――いますか。かみはいますか。います。ここにいます。
どるん、どぅるるるるるるるん……、
白痴めいた呟きに続き、部屋の隅から、終わりの音が轟いた。
それはチェーンソーの音。黒ミサを行いそうなサバト服の何かが、血のこびりついたチェーンソーを再始動させながら振り向いた。
そいつの足下には――否、この暖炉の部屋のそこら中に、
ああ、バラバラになった、いつかヒトだったものが転がっている!
「な、なんだあいつは、」
「ええい躊躇うな! 撃て、殺せ! アレも異端だ!!」
「います、ここにいます、かみはいます、あなたもかみになります、かみにしますうううぅううぅうぅうぅ」
どるんっ、どるるるるるるるっ……!!!
銃声。悲鳴。刃が当たるたび高低を変え唸るチェーンソーのバズ音。噴き出る血飛沫。飛び散る肉片。
惨劇の舞台の名は……虚構境界『氷白館』。
「その事件は何度でも再演される。次は君達が殺す演者となるかもね。――まあ、些末なことだ。迷い込んだが最後――君達はいつか、舞台装置に成り果てる定めなのだから」
『氷白館』は虚構境界に佇む、様々な事件が起こる館。
みさきはそこに連絡通路の扉を氷白館に繋げ、信者らを巻き込み贄としたのだ。
今宵起きるは、狂信者達による殺戮の宴。全ての犠牲者が死んだなら、彼らはまた甦り、初めから殺し合いを始める。死ぬとも死ねずに繰り返される歪な輪廻を嗤うように、みさきはかそけき声で呟くのだった。
「さよなら。君達の大好きな滅びだよ。幾度も噛み締め永久に彷徨え」
大成功
🔵🔵🔵
ルーノ・アルジェ
あなた達は、ヒトの形をしているけど。
あなた達は、誰かから奪うから…やっぱり、オブリビオン。
だから、容赦はしない。倒すべき、敵。
あんまり、頼りたくは無い力だけど。
……あなた達と同じ、オブリビオンの力。
誰かを護る為だから…仕方ない、よね?
…血の覚醒を使用して、最初から全力で…速攻を仕掛ける。
多少のダメージは無視して、捨て身で首を狩りにいくよ。
回復するヒマなんて、与えない。そんな教義…聞きたくも、ない。
とにかく、数を減らさないと、ね。
難しい事は、分からないから…後は、いつもどおり。
正面から、いくよ…!
――欲しいなら、終わりを与えてあげる。
これ以上は何も、奪わせない。死ぬなら一人で、死んでいて…!
●守るための力、滅びを呼ぶ力
オブリビオンとは何か。
骸の海より浮上する三千世界の黒点にして人類の怨敵、決して相容れぬ過去からの侵略者だ。
少女は、弾丸と超常の力飛び交う戦場の中程、会敵した十数人の敵トループと間合いを取り、静かに呟いた。
「あなた達は、ヒトの形をしているけれど――それでも奪うんだね。誰かから、自由を、命を、権利を」
ルーノ・アルジェ(迷いの血・f17027)である。目の前にいる黙示録教の信者達は揃いも揃って全員がオブリビオンだ。この世界で、滅びを前にして狂い、自らオブリビオン・ストームに身を投げた狂人達の成れの果て。
先頭に立つ男が、
「貴様は何か勘違いをしているようだが、我々は教義を広めているのみ。その過程で相容れぬ異教徒はやむなく、教義を布する前に滅びにてこの世より解放することも有るが、あくまで我々は抵抗せぬものには寛容だ。やがて来る滅びを共に迎える同胞として愛そうというのだから!」
酔ったような口調で言う男の言葉には陶酔はあれど罪悪感はなく――芯から、骸の海に染まりきっているのであろうことが伝わってくる。
「今のうちに貴様も投降すれば悪いようにはせぬぞ。聖戦に備え集まった精兵はまだまだいる。このような小さな集落、飲み込んで余りあるほどにな」
「――関係ない。はっきり分かる。あなた達は、その奪う在り方を止められないオブリビオン。なら、容赦はしない」
ルーノは巨大ゾンビとの戦いで流した血を再び固め、巨大な血の鎌を再び作り上げる。それに加え――ひたり、と瞼を伏せたその一瞬の後。藍色の筈の彼女の瞳が、開けば深紅に染まっている。
オブリビオンを殺すために、オブリビオンの力を使う。その大いなる自己矛盾を嫌い、余り頼ることのないヴァンパイアとしての力。
ルーノは内心で、モールの人々を守るためだと言い聞かせながら、力を解放する。
「あなた達の教義なんて聞きたくもない。――そんなに滅びが好きなら、私がここで終わらせてあげる」
「吼えたものよ! 者ども、背教者がいるぞ! 首級を挙げて供物とせよ!」
「「「「おおっ!!」」」」
先頭の男の叫びに応じて、フードの男達は一斉にルーノ目掛けトリガーを絞った。
けたたましい音と共に立て続けにマズルフラッシュが咲き誇る。十数兆のアサルトライフルからフルオートで放たれる小口径高速ライフル弾。常人ならば一瞬でボロ雑巾めいてズタズタになるであろう弾雨の中を、ルーノは地を這うような低姿勢で駆け抜ける。
何発も、肩や脚を掠めて、或いは食い込む銃弾がある。鎌の刃を盾にして致命傷を避け、ルーノは超高速で疾駆、距離を詰めた。
流れる血を鎌に流し込み、
「はああっ!!」
射程を拡大。扇状に紅色の斬風が吹いた。
「ぎっ、」
「ぎゃああっっ?!」
四名ばかりが巻き込まれ、脚を斬り飛ばされて達磨落としのように倒れていく。ルーノは止まらない。命を燃やすかのようにさらに加速。倒れかかった一人の男の首を鎌の柄に引っ掛け、振り回して数名を薙ぎ倒し、叩き付けて頸骨を砕き絶殺。なおも放たれるライフル弾の掃射を回した鎌で弾き飛ばし、鎌の刃先に集中させた血を迸らせ、スイングと同時に固めて飛び道具めいて放つ。
「ぐあっ?!」
「いぎっ……!」
紅き血の飛刃がフードの男達の喉に、頭に突き刺さり、次々と命を奪い去る。
敵の一団を一瞬で退けつつ、ルーノは後続の敵群に、恐れ知らずに突っ込んだ。
この滅びすら、彼らにとっては本望なのやも知れぬ。考えればキリのない自縄自縛に追い込まれそうな戦場で、しかしルーノは真っ直ぐに、一つの目標を守るべく動く。
「これ以上は――何も、奪わせない!」
難しいことは分からない。けれど、守るべき人々が後ろにいることだけは分かる。
故にルーノは止まらない。この滅びを退けるまで、その赫の瞳を煌めかせる!
成功
🔵🔵🔴
ロカジ・ミナイ
きもちわるっ
……2度目が出ちまったね
だってさぁ、こういうウジョウジョしたのってさぁ、ねぇ?
ベシャッとしたくなるよねぇ、ククク
こういう時には、そう、さっきのアイツみたいにさ
デッカいのの出番じゃないか
やられたらやり返さないとねぇ
――さぁ、出ておいで、僕の大蛇
アレぜーんぶ喰っちゃっていいよ、遊んだっていい
おやつかお遊戯か、各々好きにするといい
生きた死体は好物だっただろう?え?違ったっけ
まぁまぁ、やっつけた数の多い子から順にご褒美を弾むからね
僕はおまえらの頭の上から数を数えていよう
自分に降る火の粉には妖刀で対応
ライディングサムライの美技を冥土の土産に魅せてやろうじゃないか
……頭の上は禁煙じゃないよね?
●不味い食べ放題より上の拷問はそうそうない
「うーーーーわ、きもちわるっ」
それは黙示録教の信者達の物言いにか、彼らの在り方にか、或いはその両方にか。
ゲー。と反吐が出そうだとばかり、立派な眉を器用に奇妙な形に歪めてみせ、ロカジ・ミナイ(薬処路橈・f04128)が呟いた。彼が出張った前線、エントランス広場は既に乱戦状態。はぐれた信者が鉄パイプで殴りかかってくるのをひょいといなし、抜刀一閃、頸を刎ね飛ばして殺す。躊躇いはない。
「いやあ、二度目が出ちまったね」
喉を鳴らして嗤うなり、狐は肩に乗った、七つ頭の奇矯な蛇を指先であやし、手に乗せた。
「こういうウジョウジョゲヨゲヨしたのって、もう、ねぇ? ベシャッと潰したくなっちまって困るよねぇ、ククク。――こんな集団で滅びがどうのって、死にたきゃ身内でやり合やいいのに、よそ様出張ってやることかねぇ」
ぽおん、と蛇を放る。ぽてん、と落ちた七頭蛇が、主人をくるりと見上げて、舌を四本ちろり、三本ちろり。
「こういう時にはそう、さっきのアイツみたいにさ、デッカいのの出番じゃないか。やられたらやり返さないとねぇ。――そうでなきゃアイツらも、踏まれる怖さが分からないってものさ」
応報の原則を説きながらロカジは指をぱちりと鳴らす。
「さぁ行くよ、僕のオロチ。アレぜーーーんぶ喰っちゃっていいよ。遊んだっていい。おやつにするでもお遊戯に使うでも、食い散らかしても吐き出しても、おまえらの好きにおしよ」
ロカジが無造作に言うなり、命を受けた掌サイズの七頭蛇は、見る間に膨れ上がって十メートル級の巨大な禍蛇に化ける。
じゃあああああああああああ、という空気を揺るがす威嚇音。巨体から発される音が、周辺の信者をどよめかせ、動揺させる。
「ほいっと」
ロカジはいつものこととばかりに蛇の身体を蹴り登り、頭の一つの上に飛び乗って煙管に葉を詰めた。
「そら、やっちゃいな。生きた屍体は好物だっただろう?」
顎をしゃくればやおら、しゃああ、と威嚇音が返る。抗議の声か。うるさそうに片耳に指突っ込み、片目を閉じてとぼけた調子で言葉を紡ぐ。
「えー? 違ったっけ? まぁまぁまぁ。もし違うんでも、やっつけた数の多い子からご褒美を弾んでやるからさ。皆で競争、はいよーいドン」
ぱちんぱちんとロカジが手を叩くなり、蛇たちは渋々といった調子で、各々の頭を動かして周囲の信者らを手当たり次第に食い始める。骸の海から蘇った死骸の味なんぞ知りたくもないが、きっとろくでもないのだろう。
「ぎゃああっ?!」
「う、うわっ、ひいいいい」
「げ、ぎゃッ、ぐェっ」
次々と大蛇が信者を平らげる。それを見ながら指折り、死にゆく信者の数を悠然と数えるロカジ。余裕ありげに煙草の葉に火を点け一吸い。
しゃあああああっ。足下から抗議の音。
「あん? 頭の上は禁煙だって? ……まぁまぁ、ご褒美増やしてやるからさ」
のんきに飼い蛇と会話をするロカジ目掛け、
「このッ、異教徒め……!!」
地上で距離を取った四名ばかりがアサルトライフルを連射した。蛇の鱗を徹すこと叶わずとも、ロカジは撃ち抜けようとの算段だろう。
しかし、温い。
「おっとっと。そりゃ喰らってあげらんないな」
ロカジの手元で刀が閃いた。彼の相棒、窈窕たる抜き身がひゅるりと翻って銃弾を弾く。ロカジは遊ぶように身を逸らし、蛇の頭を滑り台めいて滑落、中途で跳ねて他の頭の上に降り立つ。
「ごらんよ。冥土の土産には悪くないんじゃないか? 猿回しならぬ蛇回し――ご堪能頂けたところで、そんじゃ、さいなら」
ロカジがいたずらっぽく言うなり、大蛇は大きく一転。尻尾を撓らせて、十メートル先にいた四人を横薙ぎにし、全身を粉砕して轢き潰す。
「お望みの滅びってやつだよ、よく味わうんだね――……あ」
血の染みにかわった四人の信者だったものがブチ撒けられたあたりを眺め、ロカジは難しい顔をして、髭の剃り跡をちりりとなぞり――
「――尻尾で叩いた奴はどの子の数にしようかな」
真剣な顔のまま、どうでもいいことを深刻に悩むのだった。
大成功
🔵🔵🔵
ロク・ザイオン
◎【レグルス】
死は。
健やかにいのちを満たした者への。
土を満たし。森へ還る者への。
安らかな憩いだ。
あれは違う。
あれは間違っている。
ととさまを讃えるようなことばで、
病を撒き散らすな!!!
(咎人殺しは、異端を決してゆるさない)
――あああァアアア!!!
(ジャックの砂嵐を貫く「惨喝」の咆哮で
【恐怖を与え】声を掻き消す
己の弱さすらも解らぬほど歪んだ病葉ども
だれひとり、其処を動くな
鋭さを増す刃で、その病を吐き出す喉全て【薙ぎ払い】灼き潰す)
黙ってこの枯れた地の糧になれ。
それが、お前たちの果たすべき
たったひとつの御旨だ。
ジャガーノート・ジャック
◎【レグルス】
(ザザッ)
聞くに耐えない妄言だ。
死とはお前達の思うような都合の良いものでは断じてない。
その"祈り"も"願い"も、共々本機達が塗り潰す。
獅子座の星の咆哮を聴け。
(ザザッ)
本機の電脳体を部位離散させ展開・広域拡散。(残像×範囲攻撃)
準備は出来た。聴かせてやれ、ロク。
(ロクの"惨禍"を拡散した電脳体で受け解析。)
ノイズ
"砂嵐"発動。
(拡散した砂嵐から、尚盛大な音量の咆哮を浴びせる。(力溜め×一斉発射))
獅子の雄叫びはどうだった。
いやいい、解は要してない。
では最期に
お前達の言う所の救いのあらん事を。
(熱線の雨を複製濫造し、狂徒達を穿ち抜く。(狙撃×一斉発射×範囲攻撃))
(ザザッ)
●灼嵐
銃声と怒声と罵声が飛び交う戦場の一角で、重たい声が罵るように響いた。
『聞くに耐えない妄言だ』
ザ、ザッ。
ノイズにかすれた声に、無色の怒気が滲んでいる。
『死とはお前達の思うような都合の良いものでは断じてない』
二度とは埋まらぬ彼岸と此岸の断絶。それを、死と呼ぶ。
二度と会えぬ。喪われていった者には。声を交わすことすらままならぬ。
その喪失に、手前勝手なラベルをつけて、その向こう側には幸せしかないなどと――
『死者は二度と話さず、二度と帰らない。その向こう側に幸はなく、あるのはただの無、そして残されたものの嘆きだけだ』
淡々と告げるのはジャガーノート・ジャック(AVATAR・f02381)だ。声はいつも通り、静かなのに――それは誰が聞いても、『怒っている』ように聞こえた。
「ふん、異教徒共が言うことはいつも同じだ」
対するは二〇人からなる多勢、黙示録教の信者達。数的優位を見てか、ジャガーノートに対する言葉には余裕が見える。
「やはり我らが教義を受け容れる気は無いと見える。黙示録の教えとは徹頭徹尾異なるな。死は終わりではない。始まりなのだ! 我らが主の膝元に至る、唯一の――」
「黙れ」
得々と演説をぶろうとした高位信者の声を、真っ赤に焼けた鉄の声が貫いた。ジャガーノートにも増して苛烈な――燃えさかるような唸り声。
「死は。健やかにいのちを満たした者への。土を満たし、森へ還る者への。安らかな憩いだ。もう、脅かされない安息を抱くために、ともしびを失ったものが過ごす時間だ」
断じて。
断じて、それはひとから与えられるものではない。いやそればかりか、己で決めることですらない。
「お前たちは違う。何もかも違う、間違っている。ととさまを讃えるようなことばで……」
ざりり、と少女の声が鑢に掛けたように割れる。
「病を、撒き散らすな!!」
目を見開いて叫ぶのは、ロク・ザイオン(蒼天、一条・f01377)だ。彼女は森番。病葉を灼くもの。病を――死を撒き散らすあの異端の教徒共を、彼女は決してゆるさない。
「耳障りな声で吼えるものよな! 者ども囲め、改宗の路は今や断たれた! 異端を滅する時ぞ!」
上位信徒の吼え声鳴るなり、敵が散開、二人を取り囲まんとしつつ銃口を構える。ジャガーノートはその一挙手一投足を、冴え冴えと紅く光るバイザー越しに睨んだ。
『その“祈り”も“願い”も、共々本機達が塗り潰す。お前達の祈念の声など、響かせるものか。――獅子座の星の咆哮を聴け』
ぶ、うんっ! 低く唸るようなハム・ノイズが響き、ジャガーノートの姿が唐突にぶれた。同時に、ロクとジャガーノートを囲みつつあった敵を取り囲む形に、空間を侵食するノイズが走る。まるで壊れたテレビジョンめいた砂嵐が、周囲を満たす。
「なっ……?!」
意表を突かれ敵が周囲を見回す。空間に走るこのノイズは、ジャガーノートから離散した『電脳体』。バーチャルキャラクターとしての己の構成要素を一部分離・拡散させたのだ。
ただの目眩ましか?
否。そうではない。単に敵の目を眩ませるだけならば、ジャガーノートの手の内には、他に手管が数十とある。
敵が一瞬注意を取られた瞬間を縫い、ジャガーノートはロクの背中を押すように言った。
『聴かせてやれ、ロク』
それを待っていたのか。ジャガーノートの一声とほぼ同時に、ロクは雷鳴のように吼えた。
――あああアァアあァアぁあああァアアア!!!
直接相対していない敵さえもその大音声に目を瞠った。そのうち数人は驚きと恐怖に、慄然として動きを止めさえした。その殺意が直接、自身に向いたわけでもないのに。
況んや、それを直接、真っ直ぐに向けられた者達の内心はいかばかりか。
けものの牙を押し当てられたかのように動きを止める信者達に、
ノイズ
『まだだ。砂 嵐、発動』
――なおも、断罪するかの如くに、音の奔流が押し寄せた。
ロクの咆哮、ユーベルコード『惨喝』による絶叫を、ジャガーノートが拡散した砂嵐――電脳体が解析し波形を再現。アンプめいて増幅して、四方八方より敵に叩きつけたのだ。鼓膜が破れたか、信者らの耳から血が流れる。
ジャガーノートの狙いは二つあった。この大音量の中では教義を説くことさえ許されぬ――敵のユーベルコードの特性を真正面から叩き潰す事が一点。そして、ロクの強化を強めることが一点。
「あああアァァアあぁぁぁッ!!!!」
彼女の発する咆哮、『惨喝』は、弱き者の身を竦ませ、闘志を挫き、かつ己を鼓舞する性質を持つ。及び腰となって恐れるように後退る信者らへ、ロクはけもののように襲いかかった。
「だれひとり、其処を動くな!!」
烙印刀が陽炎と閃を曳く。斬り込み一閃、首が跳ね飛ぶ。
「これ以上、何も口にするな!!」
首無し死体が倒れるその前に、蹴りを叩き込んで横合いの敵に突っ込ませる。体勢を崩した敵が復位する前に襲いかかった。烙印刀、加えて左手に剣鉈『閃煌』を引き抜いて、独楽めいて回る。
身体をひねる力と、踏み込みの力が同期した瞬間、ロクは突き進む炎の旋風となった。
巻き込まれた者は斬り裂かれ灰燼に帰すのみ。
「黙って、この地の糧になれ。それがお前たちに――己の弱さすらも解らぬほど歪んだ病葉どもに許された、たった一つの御旨だッ!!!」
「こ、この女……!!」
「何を、何を言ってるっ、耳が……が、ぎゃァっ?!」
「げっ、が か、ひゅうっ……」
白熱した二振りの刃が、すれ違う敵の喉を掻き切り薙ぎ裂き灼き潰す。裂けた喉から空気の漏れる音。斬風荒れる地獄絵図の渦中に、ヴン、とまたもハムノイズが鳴る。
『獅子の雄叫びはどうだ。――いやいい、解は不要だ。どうせ、応える余裕もあるまい』
駆け抜ける炎の風を追うように、電脳体を集束させたジャガーノートが、自身の周囲に十数のレーザー・ファンネルを構築。ロクが敵を切り刻み疾る、その背に向けて怪物は言う。
『ロク。真っ直ぐに征け。本機はいつも通り、君を全力で支援する』
「ああ!!」
返事は打てば響くようだ。声に応えるように、レーザーファンネルの砲口に紅き光が点る。
『では最期に。お前達の言う所の救いのあらん事を』
ジャガーノートは無慈悲に言って、空気の塊を押すように両手を前に突きだした。
その周囲に浮遊する十数からなるレーザーファンネルが一斉に咆哮する! 連射される熱線ががまるで光の雨の如く狂信者達を撃ち抜いた。最早悲鳴すらない。
ロクが吼える。滅びを齎す炎の旋風として。
ジャガーノートが猛る。全てを貫く光の雨として。
二人が生み出すのは、熱と光の暴風雨、灼嵐。
相対した一団を壊滅させただけのみならず、二人は視線を交錯させ、アイコンタクトのみで別の敵トループに狙いをスイッチ。
――この病葉共を。狂人共を。一人たりとて逃すものか!
「ジャック!! 灼き潰す! 全部、全部、全部だ!」
『了解。――敵勢力の撃滅を継続する』
レグルスが疾る。
天を焦がすような焦熱と共に。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
冴木・蜜
……、やれやれ
死が救済であると
そう信じること自体は自由です
滅びに瀕した世界だ
救いをと縋る先が必要なのはわかる
しかしそれを他者に押し付けるのは違う
望まぬ死を救済だと?
そんなことが認められるはずがない
死がありふれたこの世界だからこそ
賢明に生きる彼らを蹂躙することは許さない
異教徒の武器を『偽毒』へと変えましょう
私と同じ死毒と変えて
そのまま持ち主の身体を這わせ
どろりと融ける其れに触れたもの全てを融かす
その間に私も体を液状化
混乱に乗じて毒液の中に紛れ
異教徒たちの足下を這い進み
包み込んで何もかも溶かして差し上げます
私は死に到る毒
故にただ触れるだけで良い
さあ 私に溺れて下さい
自爆する前に
全て終わらせましょう
●死の沼に揺蕩え
「……、やれやれ」
慨嘆げに息を付いたのは、冴木・蜜(天賦の薬・f1522)。押し寄せる黙示録教の信徒を前に、蜜は恐れるでもなく歩みゆく。
彼らの思考は、つくづく度し難いものだ。――確かにこのアポカリプスヘルは、滅びに瀕した――否、一度滅びてしまったと言ってもいい、末法の世界だ。
縋る救いが、信仰が必要なのは理解出来る。人間は弱い。軸がなければ折れてしまう。故にその軸を、信仰と救済に求めるのは理解出来る。譬えそれが、死の先に救済を見つけるとするような教義を持つ信仰でも。仏教とてそういった宗派があるのだ。それ自体は否定するものでもない。
――だが、彼らはその信仰を他者に押しつけた。
こうすれば救われる。だから信じて死ねと、望まぬ死を押しつけて救済だと嘯いた。
「――そんなことが認められるはずがない。死がありふれたこの世界だからこそ……懸命に生きる彼らを蹂躙することは許さない」
人を救いたいと願い続けた死毒の蜜は、それ故に偽善の涯てに人を殺す信者達が許せない。
「貴様も異端か!! 丸腰でふらふらと歩くとはなんと滑稽、なんたる慢心! 悔い改めよ、そして死ねェ!!」
一人の信者が、有刺鉄線を巻き付けた金属バットで蜜に殴りかかった。一方の蜜は敵の言葉通り丸腰、そして身体を捌くこともしない。蜜は当然のように金属バットでの一撃を食らい――
ずぐちゃ、と鈍く湿った音がして、蜜の頭の中程まで金属バットがめり込んだ。びちち、と肉片が飛び散る。
「はははッ、一撃か、他愛な――」
い、と続けようとした信者の唇が、凍えたように止まった。頭を叩き潰されたはずの蜜が、倒れるどころか、残った右目でぐりん、と信者を睨んだのだ。
「な、何ッ……」
「融け落ちなさい」
蜜が命じると同時に、じゅわり、と金属バットの表面が黒ずみ泡立って液化した。黒い液となったバットはそのまま持ち主の手を伝い、
「あ、ああっ?! あぎゃああああッ!!?」
まるで手を這い上るように浸食溶融、信者の身体を蝕み腐らせグズグズに溶かしていく。溶け落ちた手を見て喚く信徒に、頭をずるりと再生しながら蜜が踏み込んだ。
手を一振り。ずるりと液化した蜜の左手が拡がり、悲鳴を上げる信者の身体を飲み込む。悲鳴がくぐもり、――すぐに止んだ。
周囲の信者らが息を呑む異様。蜜が液化した腕を再生した後には、足首だけになった信者が、……信者だったものが転がっている。
ユーベルコード、『偽毒』。
蜜を中心とした半径六十三メートルの無機物に干渉し、それを薬液および毒液に変換する権能。蜜はこれを行使し、敵の武器を己と同質の死毒に変換したのだ。
死毒のブラックタールは、うっそりと呟く。
「私は死に到る毒。故に、ただ触れるだけで良い。包み込んで――何もかも溶かして差し上げます」
敵が動揺から立ち直る前に、蜜は周囲にいる敵全てに対し、同時に『偽毒』を行使。敵の武器を溶かし落とし、それに振れた部分を溶融させ、負傷と混乱に陥れる。
「ぎゃああっ!?」
「ぐうっ、お、おのれっ、こうなれば……殉教の竜巻を見せてくれる……!!」
手を喪いつつも戦意の萎えなかったものが吼えた。彼ら黙示録教徒の中でも限られたものに埋め込まれた、心臓の爆弾を起爆すべく、胸に残った側の手を当てる。
これにより命を捨てることで、殉教の竜巻――擬似的なオブリビオン・ストームを起こして蜜を巻き込む目論見だ。
「畏れよ異端! これこそ我が主の威光にして力、……?」
蜜のいる場所へ駆け出そうとした信者ははたと気付いて足を止めた。
――いない。
白衣の男は、もうそこにいない。
何処だ、と頸を廻らせた彼は、次の瞬間地面にどぷりと『溶けながら』沈んだ。今度は靴も残らない。即死だ。――彼がいた場所に、気付けば黒い沼が拡がっている。言わずもがな、液化した蜜である。
偽毒を発動後、蜜は即座に己が身体を液化し、地を高速で伝って、危険な信徒を自爆する前に葬り去るべく攻撃を仕掛けていたのだ。
『自爆など許さない。ただ静かに終わらせましょう』
這い寄る黒き沼に、恐怖の叫びが方々で上がる。
蜜は止まらない。――ただ、淡々と――
『さぁ、私に溺れてください』
彼らを融かすべく、進むのみ。
成功
🔵🔵🔴
フローラ・ソイレント
◎
POW判定
・セリフ
別にアンタらの教義を否定する気はねえよ
信じたい奴は信じていればいい
だがな、人間ってやつは思想で動くんじゃねえ
その思想を説く人間の行動を見て、共感した奴が動くんだ
だからまずはてめえが滅んでみせな!
その散りざまが見事だったら後に続くやつも出るだろうよ!
こちとら一度死んでもこの世にしがみついたデッドマンだ
このオレの反抗の衝動を、止められるもんなら止めてみやがれっ!
・戦闘
捨て身の自爆特攻に対して胸部に触診代わりの掌底で一撃入れる
その隙に掌底で探った心臓と爆弾の起爆装置へ大型電磁鍼を刺し入れ
電撃で焼き切り爆発を防ぎながらとどめを刺す
(スキル:見切り、医術、鎧無視攻撃、部位破壊)
●因果を断つ
前線での猟兵と黙示録教との激突は混迷を極めた。銃声と罵声が交錯し、鮮血と死で溢れ染まる、モール・ヘイヴンエントランス広場。
「異教徒どもめ……! あくまで我らに楯突くか!」
激戦の最中、信者らが唸るように言うその言葉に、あっけらかんと応える声が一つある。
「オレは別にアンタらの教義を否定する気はねえよ。信じたい奴は信じていればいい」
皮肉に歪めた唇から涼しい声がまろびでた。狂人らにいらえたのは青ざめた肌色の女。継ぎ接ぎごとに色味の異なる膚をしたデッドマンは、名をフローラ・ソイレント(デッドマンズナース・f24473)という。継ぎ接ぎの傷跡を指でなぞりながら、得物も持たずに進み出る。
「だがな、人間ってやつは思想で動くんじゃねえ。その思想を説く人間の行動を見て、共感した奴が動くんだ」
フローラはゆらりと構えを取った。電磁拳法『磁極流』、護りの型。敵の攻撃に備え、後の先を取る堅牢にして柔軟なる構え。
「何が言いたいか、理解できたか?」
「ええい、何をゴチャゴチャと! 教義を説くのは異端なる貴様らではない、唯一無二なる終末の主を戴く我々の役目よ! 物言わぬ骸となるがいいわ!」
一言で切って捨て、信者の一人が、手にした鉄パイプを振り翳して突撃した。フローラは「やれやれ」と零しながら目を細めた。
踏み込みに合わせ、半歩詰めて間合いを整える。
振り下ろされる鉄パイプを、しなやかに回した右手で流す。頭を叩き潰すような軌道の全力の一振りが、まるで磁力に弾かれたように逸れる。フローラは、敵の力の方向を軽く曲げて逸らしただけだ。打撃は空振り、勢い余って信徒がよろめいた瞬間、もう半歩を踏み込む。
左前足、震脚。地面に敷かれたストーンタイルが彼女の靴裏の形に陥没、そこを中心にひび割れてまくれ上がる。どん、と雷轟めいた踏み込みがあたりを揺らした時には、信徒の身体は空中に吹っ飛んでいた。
「――、」
声もない。その胸に掌の痕。フローラが震脚と共に打ち込んだ掌底の一撃が、敵の心臓を一撃の下に破壊し吹き飛ばしたのだ。
「なん、だと……?!」
信者らの反応速度では、踏み込み、先手を打って必殺の打撃を打ち下ろした信徒が、後手に回ったはずのフローラに吹き飛ばされ絶命したようにしか見えないだろう。
――因果を見切る磁極流の業の一つ、これぞ『色即是空』。
「分かってねぇみたいだから教えてやる。滅びが救いってんならな、まずはてめえが滅んでみせなって言ってんのさ! その散りざまが見事だったら後に続くやつも出るだろうよ!」
「ぬ、ううっ!! 一斉にかかれ、油断するなッ!」
指揮役らしい上位信徒が下した号令に従い襲い来る敵に、フローラは今一度色即是空で応戦。格闘攻撃は悉く空を切り、反撃の拳と掌底で心臓を、頸椎を破壊されて一撃で死んでいく信者達達。銃を撃とうとしたものが、フローラが咄嗟に発露した磁力によりぐいと引き寄せられてバランスを崩す。叩き込まれる斧めいた蹴りが、信徒の首をボールめいて飛ばした。
「ぐぬうっ!! かくなる上は……!」
上位信徒が己が胸を掴むように右手を引いたところに、空気を裂いて針が飛んだ。五寸釘めいた針がその手を胸に縫い止めた。言わずもがな、フローラが投げ放った飛針である。
「ぐうっ……?!」
「こちとら一度死んでもこの世にしがみついたデッドマンだ。このオレの反抗の衝動を――止められるもんなら止めてみやがれっ!」
衝動を電力に変換する無限機関、ヴォルテックエンジンが吼える。
フローラが伸ばした手から紫電が迸り、五メートルは離れた上位信徒の胸の針を打った。――上位信徒のみが持つオブリビオン爆弾の起爆回路を雷撃で焼き切り、自爆を阻害!!
「あぎ、いいいぃいっっ!?」
「是世全て空なり、因果なくて色無し――悪いな。視えてんだよ」
身体に走った雷撃に痙攣し目を見開いた信徒に、紫電纏い空を裂く、迅駛たる掌底の一撃が疾った。
――激音。頭が砕け吹き飛び、その意識諸共千々に散る。
「どうだよ。あったか? そっちには。救済とやらがよ」
フローラの皮肉交じりの一声に答えるように、首無し死体がゆっくりと倒れて、砂塵を散らした。
成功
🔵🔵🔴
雨宮・いつき
所と時代が変われど、宗教と戦は切っても切れぬ物…
ですが人の営みの内より出ずる戦ならいざ知らず、人理の外より出でし者の手による物なら…いえ、何れにしても良くはないですが、尚のこと許すわけには参りません
救うと謳いながらその実、己が救われる為だけに無辜の民を鏖殺するなど愚の骨頂
彼らの敵意、狂気を取り込み、伊吹大明神をお呼びします
言の葉で肉体の治癒や強化をするなら、その口を封じるまで
先の戦いで損傷した床の下から大量の土砂を噴出させ敵集団を包み、
それを地を操る能力で溶岩へ変換し、纏めて焼き払います
其処許、最早帰依せしめるに値せず
この沙汰、因果応報と心得よ
主の威光も届かぬ獄炎の中で、異郷の神の糧と成り給え
●身を灼くは汝の業
雨宮・いつき(歌って踊れる御狐様・f04568)は知っている。宗教の歴史とは、それ即ち戦争の歴史であるということを。
たとえば、唯一の神を崇める人間がいたとする。他方にも同様に、別のとある一柱を唯一神として崇める人間がいたとする。この二人が接すれば、当然のように矛盾が起きる。彼らの中にはそれぞれ、『神は一柱しかいない』はずなのに、相手が信じている神は別の神なのだ。
――彼らは大いに戸惑うが、退くことは出来ない。神が唯一であり、相手が信ずるものを神だと認めるとするなら――それ即ち、自分の信仰を偽であると認めるようなものだからだ。自分の神が、神ではない何かだと認めて貶めるようなものだからだ。
故、違う信仰同士がぶつかれば、当然のように争いが起きる。信仰が強固であればある程に、生まれる溝は深くなり、その溝を埋めるのにより多くの血と肉が使われる。いつの世も、教義の裏に流れる血は止められぬ。
それはヒトの営みの一つ。生得した業の現れである。良いと認める訳には行かぬが、然りとて互いの正義を活かしたままの解決は難しい話だ。
「――しかし」
いつきは沈思をやめ、やや後方より戦場を見渡した。
今、このモールに群がるアリの如くに現れたフードの男達は、人理の外から現れたもの。骸の海より蘇り、滅びを旨とし、生きとし生けるものを鏖殺して、生き残った命をその魂まで陵辱しようという邪悪の権化。
「救うと謳いながらその実、己が救われる為だけに無辜の民を鏖殺するなど――愚の骨頂。許すわけには参りません」
猟兵達が奮戦し支える前線を抜け来る敵を遠目に見て、いつきは、すう、と右手に組んだ刀印を上げた。
「恨み辛みに畏れに怒り、無心にあらずんば其れ則ち信仰也。
怨嗟を喰らいて神威と成し、我らが為に振るい給え」
呼びかける。それは、ヒトの負の感情を呑み顕現する古の魔。
「参りませ、伊吹大明神!」
ご、ばうっ!!
いつきが詠唱を結ぶと同時に、間欠泉めいて地が爆ぜた。現れるは見上げるような高さの、八頭八尾の巨龍――伝承に聴く、八岐大蛇そのもの!
ユーベルコード『遠呂智絵巻開帳』――敵の邪念・邪心・狂気をリソースとした邪龍召喚である。その余りの威容に、前線を抜けてきた教徒らが恐れるように足を止める。
「な、なんだッ?!」
「八頭の龍……!」
「で、でかすぎる……!」」
「新手の術だ、狼狽えるな!! グレネード用意! 蹴散らせ!!」
怯え浮き足立つ信者達を統率する声が響く。その声が、彼らに冷静さを取り戻させる前に。
「参ります」
いつきは謳うように言った。その肩に留まっていた尾長雀が翻した手先に向け跳ね、光瞬き両刃剣に姿を変える。炎剣『朱音』。
いつきが朱音を構えるなり、伊吹大明神が空を裂くような威嚇音を発した。それに呼応するように、地雷が炸裂したかのような勢いでどうん、どうんと土が跳ね上がる。
伊吹大明神は地脈を操る。土を爆ぜさせるなどお手の物。
「うわあっ、うわああああ!」
「焦るな!! ただの土塊だ、駆け抜けろ!!」
吹き上がる土流に恐れる声を上げる教徒ら。それを諫める上級信徒。混乱をよそに、いつきは伊吹大明神に霊力を注ぎ込み、その権能を振るう。
「其処許、最早帰依せしめるに値せず。この沙汰、因果応報と心得よ」
――吹き上がった土塊が、こぉ――と音を立て、朱く燃えた。
「なっ――」
息を呑む声を、最後まで発することすら許さない。
地を操る伊吹大明神の権能を霊力で最大解放し、舞い上がった土砂の全てを溶岩としたのだ。
――最早宙に舞い上がった土砂は、落ち来る火砕流に他ならぬ。その紅蓮の奔流の間に消えた信徒達が、身の毛もよだつような絶叫をあげた。
壮絶なる光景に、しかし裁きを下す如く、いつきは表情を変えずに続ける。
「――主の威光も届かぬ獄炎の中で、異郷の神の糧と成り給え」
言葉を結ぶときには、ふつふつと煮え立つ溶岩池から、焼け残った白骨が所々突き出るばかり――。
成功
🔵🔵🔴
ユキ・パンザマスト
……誰もに与えられる訳ではなくとも。
ひとが還る場所は、満足行くまで生きたさいはて。
お前らの横槍は見苦しく、んな信仰なんざ更に聞き苦しい!
盛大に掻き消してやりましょう!
サイレン塔のごとき高い椿樹を放映。
味方から離れた位置かつ敵集団の付近に聳え立たせる。
翼で浮遊、中空から枝に留まり、
【逢魔ヶ報】!
教義も信仰も掻き消す程の、
大声サイレンのなぎ払いと衝撃波を、
上方の花から継戦能力で浴びせ続けましょう!
応戦してくるならば、百舌を使役。
連中の手足をマヒ攻撃とロープワークで絡め取り、
抗う者や逃げる者の幾許は、場に固定しましょう。
楽には彼岸を拝めると思うんじゃねえ。
暫くは這い蹲って、誰ソ彼に迷ってなさいな。
●さいはての鉄塔にて
――誰しもに、満足のいく終わりがあるわけではない。
失意の中死ぬ者もいるだろう。道半ばにして倒れる者もいるだろう。
けれど、生きとし生けるものは誰でも、満足まで生きた自分の『さいはて』を目指して歩き続ける。いつか、其処へ還るために。そのために、今日を懸命に生きるのだ。
「それをお前らは、救いだなんだと見苦しく横槍入れくさって――教義? 信仰? 聞き苦しいにもほどがある、くそくらえ!」
前線を跳ね、舌鋒鋭く叫ぶ少女がいた。瞳は猫。頭に狼尾。混ざる蝙蝠と骨蜥蜴。ごちゃ混ぜごった煮のキマイラだ。
少女の名は、ユキ・パンザマスト(暮れ泥む・f02035)。
さいはてに向かって生きる獣は、傲慢にひとの行く先を決める教義を許さない。自分から選んだのならばともかく、押しつけの教義にいかほどの価値があるだろう。
――否。一銭ほどもあるわけがない。
「そんな戯言、ユキが盛大に掻き消してやりますよ!」
ユキの声に従い、彼女の放映端末が幻燈を発する。
彼女が狙ったのは、まだ味方の猟兵が交戦していない一角。恐れ知らずに雄叫び上げて駆け来る敵集団を遮るような、その真ん前。
「――さぁ、さぁ、ほうら、けものが来ますよ!」
ユキが吼えるなり、幻燈が伸張して、地より空に向け伸びた。
彼女の放映端末が映し出す幻燈は実体となる。闇の中、白く伸びる幻燈は反転した影絵のようだ。伸張しきり、末端でぱっと花開く。幻燈椿樹――実体ホロの白椿。ユーベルコード『逢魔ヶ報』。
サイレン塔めいて高くそびえる白椿に、戸惑うように足を止める敵の一団。
困惑をよそに地を蹴りユキは羽撃いて、椿の枝に飛び乗った。
「吼えろサイレン! 禍時告げろ、逢魔を謡え!」
ユキが謳う。ユキ・パンザマストが謳う。
鉄塔めいた白椿が、パンザマストの名を体現するように、逢魔が時の警報を発した。教義も信仰も掻き消して吹き飛ばし、本能的な恐怖と焦燥を煽り立てるサイレン音、――そして衝撃波!!
「――!!」
最前列で直撃した信徒数名が、衝撃波の圧力で眼球と鼓膜に損傷。言葉もなく吹っ飛んで気絶、痙攣する。
「ぐわァッ!?」
「ぎゃっ!?」
やや後方、被害が浅いものも只では済まぬ。展開された白椿のサイレンと衝撃波に、次々と転けまろぶ信者達。数人がそれでも踏み止まって、樹上のユキ目掛けて銃撃をかける。
しかし銃弾は空中で、尖った椿の枝に払われ弾けた。『百舌』。実体ホロの白椿の枝根が、早贄を求めて宙を游ぐ。
「当たりゃしませんよ。さぁ、このサイレンの中で唱えられる教義があるもんなら、どうぞ声を枯らして謳いなさいな! 聞こえやしないでしょうけどね!」
音だ。ユキはこの圧倒的なサイレン音で敵の聖句を、教義の詠唱を阻害したのだ。衝撃波による同時攻撃で敵の攻撃力を削ぎ、さらには百舌を伸ばす三段構えの攻撃態勢。実体ホロの前に足を止めた時には、既に術中……!
ユキは命を下すように椿の枝を踵で蹴りつけた。同時に、樹上から椿の枝が生きているかのように伸び、地面から椿の根が鋭利に尖って突き出す。
「ぐぇっ!?」
「がっ……!!」
嘔吐くような声、苦痛に噎ぶ声。
刺し貫く百舌の枝根が、呪毒めいて信者らの手足から自由を奪い、さらにはその上から雁字搦めに絡みつき、決して動けぬように固定する。
身動きが取れなくなった信徒達を見下ろし、ユキは吐き捨てるように言った。
「死が救いなんでしたね。それじゃあお前らに、救いなんてあげません。――楽には彼岸を拝めると思うんじゃねえ。そこで暫く這い蹲って、誰ソ彼に迷ってなさいな」
ユキはそのまま、さらに枝根を伸ばして周囲の信者らを範囲攻撃。猟兵らの前線を確保し、押し上げていく……!
大成功
🔵🔵🔵
杜鬼・クロウ
【義煉】◎
源次…?
此度彼と戦場を潜り抜いたからこそ分かる
異質
増す殺気
明確に普段と違う親友の様子に訝し気
察した
以前彼が語った過去の由縁
其の復讐は
彼にしか為しえない
…止まれねェンだろ。お前は
酷似してるのか、奴等は
果たせ
奪われたものを取り戻す為
只、心許ねェよなァ
勝手に一人で熱くなってンなよ
胸糞悪ィのは
俺も同じだ(剣素振りし空気裂く
死や滅びが救済
馬鹿げてる
親指齧り【沸血の業火】使用
今回は源次と対照的に冷静に熱く
紫電纏う
深呼吸
限界突破・継戦能力
敵の回復よりも疾く
敵の頭鷲掴み地面に叩きつけ
ジャンプし回避
一蹴後、玄夜叉に炎熱の魔宿し横薙ぎ
源次と手分けし五月雨の様な連撃
的確に急所突き部位破壊
青と紫の稲妻が支配
叢雲・源次
【義煉】◎
なんだ…奴らは…
黙示録教の教徒達と相対した瞬間、全身が震えるような感覚を覚えた
恐怖によるものではない…この感情の名を俺は知っている
これは、怒りだ
身勝手な理想、自身が信じる神の為に他者に犠牲を強い事を厭わぬ、狂った者達を俺は知っている。奴らは、それと同じだ…
「クロウ、俺は今から奴らを屠る。一片の躊躇もなく」
止めてくれるな親友…これは俺の宿業だ
>Inferno_cylinder...ignition...overclock
>RDY STRATO_SABER
心臓の地獄から発する炎をエネルギーに変え全身に巡らす
超速駆動、高速戦闘開始
敵陣へ超高速突撃、一瞬七閃の斬撃を放ち狂信者を斬り捨てんとす
●地獄を此処に
彼らと相対した瞬間、叢雲・源次(DEAD SET・f14403)は己の体と心が震えるのを感じた。
込み上げるような激情。握りしめた拳が微震する。――嗚呼、それは恐怖によるものではない。神殺しの太刀を振るう男が、その神の僕を恐れることなどあるものか。
「なんだ、奴らは」
滅ぶことこそが、滅びに奉仕することこそが幸だと――ひとの幸いを手前勝手に定義し、従わぬものには死を押しつけて救済だと称する。滅びこそが教義であると嘯き、今日を懸命に生きる人間達を踏み躙り陵辱し、それをして教義の布教だと言って憚らぬ外道共。
手に握った刀が鍔鳴りを起こす。
この感情の名を、源次は知っている。
「クロウ。――俺は今から、奴らを屠る。一片の躊躇もなく」
常にない、熱を帯び、重く殺気立った声。
巨大なゾンビを相手取った時さえ冷静沈着に敵を断った源次の様子に、訝るような声が被さった。
「源次……?」
確かめるように名を呼び返す傍らの友、杜鬼・クロウ(風雲児・f04599)に、源次は抑えた声で言った。
「いや、屠らねばならない。奴らを生かしておく訳にはいかない。――止めてくれるな、親友。これは、俺の宿業だ」
身勝手な理想、歪んだ思想。自身が信じる神の為に他者に犠牲を強いることを厭わぬ、狂った崇拝者達――マキナ教団の邪教徒達。黙示録教の信者達の眼は、あのいかれた狂信者らと同じだ。
ならば、源次が彼らに抱く感情も当然のように同じとなる。
――嗚呼、煮え滾るようなこの感情は。
唯々純粋に煮詰められた、『怒り』だ。
源次の左目に埋め込まれた高度演算デバイス『アナライザー』に高速でコンソール出力が流れる。心臓が激しく鼓動し、生み出された地獄の炎が彼を衝き動かすエネルギーとなって全身を駆け巡るッ!
インフェルノシリンダー・イグニッション
炎 獄 機 関 、焦 熱 点 火。
オーバークロック レディ・ストラトセイバー
過 剰 励 起――顕現『 七 閃 絶 刀 』!!
ごおっ!!
鞘を払い抜刀した対神打刀『灰ノ災厄』に地獄の蒼炎が纏い付き、猛る源次の怒りを示すかのように燃え上がる!
ただならぬ鬼気を帯びた親友の横顔を見つめていたもう一人の男――クロウは、事ここに至り悟った風に小さく嘆息する。
「……止まれねェンだろ。お前がそう言うってことは。酷似してるのか、奴らは」
――お前の復讐の先に。お前の討つべき敵に。
真意を問いかけるようなクロウの言葉に、源次は言葉もなく頷いた。その目は、数十メートル先でこちらを捕捉したらしき敵の一団を睨んでいる。
「なら、果たせ。奪われたモンを取り戻すため。いくら熱くなっても構わねェ。――ケドよ、一人で熱くなってンなよ、相棒。――心許なく空いた脇も、背中も、俺が固めてやる」
クロウもまた敵集団に視線を注いだ。自動小銃を構える敵、その数約二十。その後には追加の部隊も見える。
――上ッ等じゃねェか。
手にした玄夜叉を一振り、空気を裂く。
「お前の怒りは、俺の怒りでもある。胸糞悪ィのは――俺も同じだ」
言うなり、クロウは親指を噛み裂いて血を零す。流した血潮を代償に、ユーベルコードを起動。
ヘレシュエト・オムニス
「 獄 脈 解 放 」
言霊と同時にその全身を紫電が取り巻いた。茨の如くに纏った雷電は、ユーベルコード『沸血の業火』によるもの。紫電はクロウの筋力を常の数倍にも増し、瞬発力、移動速度、攻撃速度を格段に向上する。
怒りに猛る轟炎の如き源次とは対照的に。深呼吸を一つ、此度のクロウは酷く静かに――しかしふつふつと沸くマグマのよう。
「死や滅びが救済だと? 糞みてェな教義だ。馬鹿げてやがる。――行こうぜ。奴らを叩き潰すんだろ、源次!」
力強い親友の声に、源次は応えるように頷いた。
「――ああ。なら、行こう。――」
ぐ、と膝を縮め、疾駆の予備姿勢を取り、
「此処を、奴らの地獄にする」
「おう!」
返事が早いか、前進が早いか。
ど、ばあんっ!! まるで地雷でも埋まっていたかのように、地面が爆ぜ飛び、二人の姿が消え失せた。
ただの踏み込みというのに地面が捲れ上がり、その足に込められた力を物語る。源次とクロウはジグザグに、稲妻めいて駆け抜けた。その影、常人の眼では到底追えぬ。ただ蒼と紫の光のいろした風のように、鉄火場となった最前線を疾る!
「なっ――」
「う、撃て!! 近づけるな!!」
慌てふためいたのは棒立ちの二人を狙っていた教徒達だった。全く唐突な、零から百、停止から最高速へのシフトに泡を食ったように銃弾を放つ。しかし射撃は散発的、号令に従ったと言うより、急激に接近する二人へ反射的に引き金を引いたといった様子。
遅い。彼ら二人を前にして、そのような手緩い攻撃で足りるはずがない。
先に突っ込むのは源次。背を固めるとの言葉通りにクロウがそれに続く。
「おおおッ!!」
蒼炎纏う灰ノ災厄を握り、源次が怒りに吼える。さらなる低姿勢、地を這うような、四足の肉食獣を思わせる疾走にて敵陣に吶喊!!
振るう刃、見切れるものなし。超高速の踏み込みより放たれるのは瞬撃七閃の蒼炎斬撃。
――『七閃絶刀』!
獄炎を限界励起し、身体能力を超増幅して放つ、神域に到る連撃である!
源次がすれ違う敵の悉くに、受けること叶わぬ必殺の七閃を叩き込み駆け抜ける!! 叫ぶ事すら許されずにバラバラに分かたれた死骸が地面に落ちるその前にクロウが続いた。
「ッだらァあああ!!」
「は――? ッおご、げっ!?」
手近な敵の顔面を引っ掴み地面に叩きつける。それまで駆け来たスピードを活かしたまま、クロウは叩きつけた敵を踏み付け、サーフボードめいて足の裏に敷いたまま低姿勢で滑る。
「ぎゃああああぁぁああぁああ!!」
敵の絶叫など耳に入れる気もない。滑りながら源次の斬り残しを二人、一刀のもとに斬り伏せると、速度が落ちる前にサーフボード、もとい信者の背骨を踏み折って低空跳躍。
「燃えろ玄夜叉、源次に負けちゃァいらんねェぞ!!」
叫ぶなり身を捲くクロウの手の中、玄夜叉に刻まれたルーン文字が赤熱し、宿る炎熱の魔が空気を食み、紅蓮の炎を作り上げる。
「オラァァアァア!!」
大振りの一閃!
鎌鼬めいて巻き起こり飛ぶ火焔刃が、逃げようとした数名の教徒を灼き断ち、灰に還す!!
死骸の手脚乱れ飛び、紅蓮の刃翔け死灰舞う、源次の言う地獄が此処にある。
「この程度で終わらせるものか。――滅びを尊ぶのならば、俺達が終わらせてやる。これより永久に地獄を彷徨え!!」
源次が吼えた。
クロウと源次の連係攻撃により、一瞬で二十数名が散る。まだ終わらせぬとの言葉の通りに、蒼と紫の稲妻は、今一度息を合わせ次なる敵群へと挑みかかる……!!
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
日下・彼方
1回死んでもなお死にたがるとは
狂ってるとしか言えないな
彼らに巻き込まれないよう相手しよう
私の影または影狼の身体から影狼を多数召喚して前線を押し留める
影狼は代えがいくらでも効くし念じるだけで呼べるので
とにかく数が減らないよう随時呼び出す
私はその間に目立たないよう移動し戦力の高い敵を撃破する
敵陣から影狼を呼び出して撹乱するのも有効だろう
どさくさに紛れて各個撃破がやりやすくなるからな
今ある命を奪わせるわけにはいかない
せいぜい命ですらない影法師で満足するといい
●ウルヴズ・ハント
前線。
猟兵らの戦闘能力は確かに圧倒的、一人で数十人という信徒を屠るものすらいるが、敵の勢いはそれでもなお尽きぬ。そもそもが死を恐れない者達だ。
「やれやれ……」
前線を支えるべく、また一人の猟兵が踏み出す。日下・彼方(舞う灰の追跡者・f14654)である。
襲いくる黙示録教信者。彼らもまたオブリビオン。
骸の海に沈んだという事は、奴らは過去に朽ちたものということ。常世の軛より解き放たれて、命と言えるものもなく、この世を彷徨う亡霊だ。
だというのに。
「一回死んでもなお死にたがるとは。狂ってるとしか言えないな。巻き込まれないよう相手をしてやろう」
彼方はぼやくように言うと、地面を踵でざりりと蹴った。呼び起こされたように、彼方の影がむくむくと立体的に膨れ、狼の形となって遊離する。立ち上がった影の狼は、まるで自己複製するかのように一体が二体、二体が四体と増え、瞬く間に三二体ほどのウルフ・パックを形成した。
裡に秘めし獣性の顕れ。彼女はそれを、『影狼』と呼ぶ。
「食い散らせ」
彼方は冷たく静かな声で、顎を決りながら命じた。
命を受けるなり影の狼たちが地を蹴り、駆けていく信者の一団に横合いから襲いかかる。
「うおっ……?!」
「獣?! 何でこんな所に!!」
「ええい怯むな! 撃て、撃て!!」
マズルフラッシュが咲き乱れ、耳を聾する銃声がした。銃弾は影狼らに過たず着弾し、数体を消し飛ばすが、
「悪いな。替えが効くんだ」
彼方が呟くなり、即座に残った影狼の身体から新たな影狼が現れる。ユーベルコード、『影狼複写』。詠唱も、動作も不要だ。ただ出てこいと念じるだけでいい。コストが低く替えが効く、多勢を相手取るのにうってつけのユーベルコードだ。
「ぎゃあっ?!」
「ぐあっ!!」
食いつかれ倒れる信者、銃弾で吹き飛ばされ消し飛ぶ影狼。数十のアサルトライフルの銃声と、影狼の群れとが拮抗する。
「く、糞ッ!! このままでは埒があかん! この獣の群れは我々だけを狙っている! ならば糸を引いているものがいるはず、そいつを潰せ!」
思い当たったように口にする上位教徒。なるほど、頭の巡りは悪くない。――しかし、その程度のことは彼方も既に織り込み済みだ。
ひゅん、と刃が閃いた。
「おごっ……!?」
「なッ――」
「え……?」
指示を下した上位教徒の胸から刃の切っ先が突き出た。全く唐突のバックスタブ。寝かせて突いた刃を容赦なくひねり、心臓を破壊する。周囲の信者らも余りに唐突のことに、銃を撃つのも忘れて息を呑んだ。
――彼方である。影狼を嗾け、それに意識を裂かせることで隙を作り忍び寄り、背中を一突きにしたのだ。
「もう死んだような過去の遺物に、今ある命を奪わせる訳にはいかない。ああ、影狼は別だ。あれは命ですらないからな」
影狼。
言葉が出た瞬間に信者らは目を見開く。
射撃が止めば、次何が起こるかは明白。
――押し止められていた影狼たちが、信者らへ一斉に襲いかかった。
「うわあああああああああっ!!」
「ぎゃああっ!」
「こ、この野郎……ッ!!」
慌てたように銃を撃てども間に合わぬ。むなしく咲いたマズルフラッシュ、虚空を抜く銃弾。襲いかかった影狼の爪牙が、その喉首を掻っ捌く。
よしんば間に合おうとも、信者らの間を駆け抜けながら彼方が刺し、抉り、影狼をさらに呼び出して各個撃破していく。
――そう、狼の狩りの後には、生者など残らない。
「せいぜい命ですらない影法師を狩って満足するがいい。お前たちにくれてやるには、命の価値は重すぎる」
駆けざまの彼方の声を何人が生きて聞いたか。
食い荒らした敵の一団を踏み越え、次なる得物へ彼方と影狼の群れが疾る!
成功
🔵🔵🔴
霑国・永一
◎
幸福なる滅びと終焉が教義の黙示録教かぁ。
ちょうどその教義を実践しようと思ってたところなんだよねぇ。
それじゃ、敬虔なる信仰を是非とも味わってほしい……任せるよ、《俺》
『って訳だ!俺様がてめぇらを救ってやるぜ!幸福かは死に際で考えろ!』
真の姿状態で狂気の戦鬼を発動
高速移動を続けながら、敵が多く纏まってる所へ衝撃波を放ち続け、囲まれそうであれば飛び上がって真下に衝撃波を放って吹き飛ばし、または敵の足元へ衝撃波を放ってバランスを崩させる
また、敵の合間をすり抜けながら武器を次々盗んで破壊する
邪魔がなければ教義唱えてるやつを優先攻撃する
『ハハハハッ!俺様めっちゃ他者を救っちゃってるぜ!いい教義だなァ!』
アビー・ホワイトウッド
アドリブ及び連携歓迎
敵の数が多い。かなり厄介。
一気に殲滅する必要がある。
巨大ゾンビ相手に突っ込んだトレーラーを建物から出して、荷台に寝かせた二足歩行戦車「ラングレー」に乗り込む。
起動と一緒にUCを発動するわ。
システム起動、数値異常なし。いい音。
ラングレーを起動したら広場へ。先ずは挨拶。主砲照準、HE弾セレクト。
狂信者の密集地隊に主砲から榴弾を撃ち込む。
その後は更に主砲を撃ち込みながら前進して近接、30mmガトリング砲で横薙ぎに薙ぎ払ってやる。
わざわざ死にに来る…酔狂な奴ら。
擬似ストームを発生させられては困る。もし弾幕を突破してきた奴がいれば焼夷弾投射器からの焼夷弾攻撃で焼き払おう。
●狂気と号砲
敵、多数。
殲滅すれども殲滅すれども、後から後から湧いて出る敵。ならばとばかり、一気に殲滅せんと奥の手を振るう肚を固めたのは、アビー・ホワイトウッド(奪還屋・f24498)であった。
ジャイアントゾンビ相手に突っ込ませた装甲トレーラーの荷台をスマートキーで操作展開、降りてきたラダーを蹴り上って荷台に飛び乗る。
「行くよ、相棒」
――二十メートル級のトレーラーの荷台に横たわるのは、文明崩壊以前、合衆国陸軍の歩行戦車部隊が一部採用していたタクティカル・バイペダル・ウォーカー『M102』、通称『ラングレー』!
その全高、約十二メートル。腰部に三〇ミリメートルガトリング砲、右肩部に一三五ミリメートルマルチパーパス・スムースボア・カノン――多目的滑腔砲を擁し、左肩部には対電子戦用レドームと八連装対戦車ミサイルランチャーを装備した、完全武装の鋼鉄の鎧である。
器用にそのボディを駆け上り、ハッチを開けるアビーの耳に、不意に軽薄な声が掛かる。
「いやぁ、デカいね。これが動くのを見るのは楽しそうだなぁ」
アビーが声を振り向くと、やや遠く、廃墟の柱に寄りかかる影が一つ。黒尽くめの、整った顔を皮肉な笑みに歪めた男であった。
「あなたは――」
「俺の名前なんて些細な話さぁ。それより手伝おうか。向こうが対戦車兵器を持っていないとも限らないしさ。≪俺≫が援護するよ」
男の名は霑国・永一(盗みの名SAN値・f01542)。盗みの名手にして狂気の申し子。
「これでもそこそこすばしこく動けるし、邪魔はしないよ。どうだい?」
「――」
オブリビオンに何かしらの声を掛けられたわけでもない。断る理由はなかった。アビーは軽く頷き、問い返す。
「……じゃあ、私が路を開く。あなたのいる場所には撃たない。そのくらいのざっくりした連携でも、大丈夫?」
「問題ないさぁ。むしろ全部かっちり決まってた方が面倒なタチでね」
「そう。……じゃあ、よろしく」
自己紹介もない。切迫した状況の中のドライなやりとり。
しかし、猟兵達の目標は全て同じ、たった一つ。
攻め寄せるあの教徒を、地獄の底に叩き返すのみ!
アビーは開いたハッチからラングレーに乗り込み、永一は建物の影の闇に消える。
即席チームアップのタッグは、それぞれの役割を果たすために行動を開始した。
ガシンッ、ガシンッ、ガシンッ、ガシンッ!!
重たげな金属音が連続して響くのを、最初に認識したのは誰だったか。
それは定かではないが、戦場にいた黙示録教徒らがやおら騒ぎ出す。
「二足戦車だ!!」
警戒を促すように叫んだものがいた。然り。ダーク・オリーブドラブのアーミーカラーをした戦術二足歩行戦車、『ラングレー』がモールの奥から姿を現したのだ。歩行者用の路を狭苦しそうに歩くラングレーだが、その足取りには些かの迷いもない。
「システム・オールグリーン。オールパラメータ正常。うん、――いい音」
ラングレーの操縦席に座り、ユーベルコード『整備万全・全力発揮』を展開したアビーが、本人も意識していないのであろう薄い笑みを浮かべた。愛機のコンディションが彼女の意気を高揚させる。
アビーはディスプレイに映し出される外の光景から、敵がこちらを認識したことを知る。慌てたように後退するもの、迎撃の構えを取るもの――少なからぬ意識を引いたことを確認の上、敵が密集している一帯をサーチしてそのど真ん中に照準を合わせる。
弾種、ハイ・エクスプローシヴ弾。ハンドルのホイールを回して弾種を確定し、一三五ミリメートル滑腔砲の安全装置を外す。
「これは挨拶代わり。持って行け」
トリガーボタンを押し込むなり、巨大な火球めいたマズルファイアが夜闇を裂いた。一三五ミリメートルハイ・エクスプローシヴ弾が火線を描き、照準した一帯に着弾、強烈な爆発を引き起こした。回避が間に合わなかった十名ほどの教団兵が、最早肉片レベルにまでバラバラになって吹き飛ぶ。
「ぎゃあああっ!?」
「うわあああああああああああああ!!」
巨大なグレネードの爆炎と破片が、周囲にいた敵をも引き裂いて二次被害をもたらす。
――一発でこれだ。小回りはきかないが、歩行戦車の制圧力は尋常ではない!
アビーはなおも主砲を連射しながらラングレーを前進させる。
「う、うおおっ!!」
近距離ならばあの尋常ではない破壊力の榴弾砲は発射できまい――と目論んでか、数名が無謀にも前進、ラングレー目掛け自爆覚悟の特攻を仕掛けるが、
「わざわざ死にに来るなんて……酔狂な奴ら」
呆れたようにいいながら操縦桿のガントリガーを引くアビー。三〇ミリメートル機関砲弾が射程に潜り込もうと駆ける敵を薙ぎ払い、千切り飛ばして鏖殺。
ラングレーは骸を積み上げ、敵を蹴散らし前進する……!
「いやぁ、すごいねぇ。援護するとは言ったけど、もしかして要らないんじゃないかな、これ?」
おどけたように言いながら、ラングレー――アビーが拓いた道を永一が駆け抜ける。
「でも、ま、俺は俺で彼らに味わって欲しいものがあるからねぇ。――なんだっけ、幸福なる滅びと終焉が教義の黙示録教、だっけ? その敬虔なる信仰、教義、大いに結構。だったら味わって貰おうじゃないか、ねぇ、≪俺≫?」
永一は人を食ったような笑みのまま、呼びかけるように呟いた。
疾駆、地を鳴らして歩くラングレーの横を駆け抜け――
そして、狂気の戦鬼が目を覚ます。
「あァ――やっとかよ、待ちくたびれたぜェ。いよォ、クソ共! 最高の夜だなァ!!」
皮肉っぽい、軽妙洒脱なしゃべり口は何処へやら。
永一は粗野な口調で言いながら、楽しくて仕方がないといった表情で、鮫のように嗤った。発動するは『盗み纏う狂気の戦鬼』、戦闘狂の人格を喚び出すことで身体能力と戦闘能力を激増するユーベルコードを発露したのだ。
「ってェ訳で! 俺様がてめぇらを救ってやるぜ! 幸福かどうかは死に際で考えろォ!」
ラングレーの前に躍り出た永一は、トップスピードを更新するように加速。
「な、っあ?!」
「速ッ……!?」
敵勢からすれば、天災めいた歩行戦車の暴虐に続き、また新たな敵が現れたことになる。
彼らが持つユーベルコードは、教義を唱え、その戦闘力と再生能力を高めるもの。上位信徒はそれに加え、心臓に内蔵された爆弾を爆破し殉教することで、擬似的にオブリビオン・ストームを巻き起こす権能を持っていたが――
それも、どれも、これも。
押し寄せる圧倒的な暴力の前には、遅すぎた。
「ッハハハハハハハハァ! そら、お待ちかねの滅びだぞ、吹っ飛べ!!」
永一は、影を纏い黒き籠手のようになった両腕を無造作に振るう。発露するのは暴虐の衝撃波。まともに食らった信者がバラバラになって吹き飛び、その破壊力を物語る。
永一は敵の足下に衝撃波を放ち転倒させ、彼らの上を走り抜けざまに置き土産代わりに衝撃波を叩きつけ轢殺。
「ハハハハッ! 俺様めっちゃ他者を救っちゃってるぜ! いい教義だなァ、滅びが第一なんてさァ!」
めまぐるしく殺し、殺し、殺しながら、永一は鋭く目を走らせて敵の武器を見る。対戦車ロケット砲、ミサイルランチャー、対戦車ライフル。戦車対策火器を持っている者を優先して狙い、衝撃波を放った。
悲鳴と共に肉片が飛び散る。永一は駆け抜けながら、対戦車火器を次から次へと盗み取り、瞬時に部品単位に分解。二度とは使えないように部品の一部を抜き取って遠くに投げ飛ばし、敵の対戦車戦力を削ぎ落とす。――彼がこうして暗躍することで、敵は戦車に対抗できなくなる!
縦横無尽と暴れ回る永一の後ろで、アビーが操るラングレーが再び一三五ミリ滑腔砲の砲門を上げる。
期せずして最良の相性となった二人と一機の進撃は、止まることを知らない……!
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ラナ・アウリオン
◎
第二目標、敵兵集団の迎撃に移行しマス!
数は――多勢デスか。
しかし大火力の投入は、防衛すべき施設を破壊してしまいマス。
ユーベルコード起動。
現象〈紫電の霧〉――範囲:広域/出力:手動調整――定義、発動。
感電による行動の阻害から、可能であればそのまま無力化を図りマス。遠距離攻撃に長ける猟兵と協働できるならば、より理想的かもしれマセン。
敵装備・オブリビオン爆弾の起動条件は――
意志や操作が必要ならば、それらを奪うように。
バイタル等の条件による自動起爆ならば、あえて条件を満たさぬように。
出力を随時調整し、可能な限り起動させぬべく努めマショウ。
シャルロット・クリスティア
◎
では、私はモール入り口を陣取ります。
射程も長く、手数もある。最終防衛ラインをこちらで構築します。
多少の撃ち漏らしは結構、こちらで処理しますのでお気になさらず。
治療などさせる暇は与えませんよ。教義を説くよりこちらの銃弾の方が早い。
当然、飛び込んで自爆などもってのほかです。近づかれる前に仕留める。
単射するには弾薬は十分、リロードは不要。
射撃体勢に入った重火器使いに、そう簡単に近づけるとは思わないことですね……!
滅びたければどうぞ、止めはしませんよ。
ですが、他の人を巻き込むのはいただけません。
そういう時は自分たちで独りで勝手に滅んでてください……!
●雷霆の庭、穿つ銃弾
「――多勢デスね。これだけの攻撃を加えても、未だ余力があるようデス」
「そうですね……ですが、彼らを通すわけには行きません。ここを最終防衛ラインに設定します」
猟兵らから見た広場後方――つまりはモール入口に、二人の猟兵の姿があった。ラナ・アウリオン(ホワイトアウト・f23647)とシャルロット・クリスティア(彷徨える弾の行方・f00330)である。
「歩行戦車も出ているようデスが、過剰な火力の投入は防衛すべき施設の破壊にも繋がりマス。ラナは出力調整の上、広範囲の敵行動を阻害しマス。推察、装備より射撃が得意と思われマスが、いかがでショウ?」
「ええ、得手です。ここから、皆さんの討ち漏らしや、最前衛の数を削ることを考えていました」
シャルロットはセミオートに設定したマギテック・マシンガンを持ち上げて見せ、こくりと頷く。
「でしタラ、ラナは前線に出て、敵の動きを止めます。ラナは、ラナ・アウリオン。お名前を教えて戴けマセンか、お姉さん」
小首を傾げるラナに、シャルは小さく笑って――
「シャルロット・クリスティア。シャルで構いませんよ、ラナさん。前進されるなら援護します。……一緒に、彼らを止めましょう」
そして、すぐに顔を引き締めた。
「救いを騙って、懸命に今日を生きる人々を脅かす人たちを――許すわけにはいきません」
「ハイ! 第二目標、敵兵集団の迎撃に移行しマス!」
二人は互いに頷き、行動を開始した。
ラナは他の猟兵と教徒らが戦う戦場の中を真っ直ぐに駆けていく。敵のマシンガンやアサルトライフルによる射撃を、左右へのステップと、第一種戦装『ミネルウァ』からの高圧魔力噴射による、ブースト・ダッシュめいた高速機動により掻い潜り、浮遊型火力投射外装『ウェヌス』より、火炎弾による応射。命中した敵信者が火達磨になって転がり回る。
「ぐわあっ!」
「クソッ、速い……!」
「慌てるな! 軌道を予測して照準を先回りさせ――ぎゃあっ?!」
指示を下す上位信徒の肩口に銃弾が突き刺さり、彼はもんどり打って倒れ込む。後方からの、シャルの的確な援護射撃がラナを補助しているのだ
浮き足立つ敵信者をよそに、ラナの瞳の中には既に周辺環境のスキャン結果が表示されている。ラナ・アウリオンは対オブリビオン用決戦兵器として製造された、力あるミレナリィドール。彼女は厳然として存在する世界の法則、『世界律』へアクセスし、その形を任意に書き換え――常世では起こりえない超常現象を巻き起こすことが可能だ。
「アクセス権、確立。現象の新定義を形成しマス」
ユーベルコード、『最新鋭の創世神話』。
大規模な破壊攻撃は施設に影響がある可能性がある。しかし、広範囲を狙えなくては多数の敵を止めることもまた罷りならない。
そのジレンマを解消すべくラナが選んだのは――
『現象定義。≪紫電の霧≫――範囲:広域/出力:手動調整――発動』
現象の範囲設定・出力設定にオプションを加え、ラナはその『現象』――『紫電の霧』を発露する。
その瞬間、空気が帯電するかのように張り詰めた。ラナを中心として、突如空気が薄く煙りだす。――霧だ。霧は瞬く間に広がり、スモークめいて視界を悪化させる。
それだけではない。パチ、ヂリッ、と音を立て、霧の間に紫電が走る。
「なんだ、この霧は……?!」
「あの子供だ! あの子供の方から流れてきている! 警戒しろ、これは――」
「その警戒、残念ながら無意味と言わせていただきマス!」
ラナは決然と言い、宙に既に広がった『紫電の霧』に向けて魔力を流し込む。出力を任意調整。宙に瞬いたスパークの間を結ぶように撃雷が次々と走り――
ラナが眦を決したその瞬間、四方八方に茨めいて雷が伸びた。
「っがああああああっ?!」
「ぐわっ、ああああ!!」
紫電の霧に捲かれた信者達に襲いかかる雷轟。即死しないまでも感電は免れぬ。筋肉が引き攣り、意図せずトリガーが引かれ、発射された銃弾が他の信徒に突き刺さる。
ラナはちらりと後方を見る。百メートル余り後方にて、銃口が、再三火を噴かんと黒光りするのが見えた。
「なるほど。雷撃で動きを封じるわけですね……」
後方、シャルロットは前線を見遣りながらぽつりと呟いた。ラナが発生させた紫電の霧により視界は良いとは言い難いが、迸る雷撃が宙で激しく光るために、それに打たれて浮かび上がった敵の影はむしろ狙いやすいほどだ。
「――動きが止まった今が好機。治療させる暇は与えません。一撃で片付けます。――マギテック・マシンガンの初速は超音速。その引き攣った喉から出る言葉よりも、こちらの銃弾の方が速い」
シャルロットは冷徹に言い、マギテック・マシンガンを構え、膝立ちで狙撃態勢を取る。アイアンサイトを覗き込み、トリガーを引いた。
ダァンッ!! マギテック・マシンガンのストック越しにずしりとしたリコイルがシャルロットの肩を打つ。しかしそれをものともせずに、シャルロットはセミオートでマシンガンを連射する。
驚くべきは、その精度だ。前線で雷撃により動きを止められた教徒達の頭を、心臓を、次から次へと破壊していく。撃たれたものから順に、できの悪いブギを踊って地に倒れ臥していく。一発として外さない。無駄弾がない。
マギテック・マシンガンは魔術に依り強度と冷却性能――放熱性を強化したLMG――分体支援火器級のライトマシンガンである。当然フルオートでの射撃に対応しており、ベルトフィードでもマガジンフィードでも、その双方で稼働するよう設計されている。
しかし、シャルロットはそれをセミオートでの狙撃用として用いる。そもそも強度が高いということは、即ち剛性が高いということだ。元が高精度に作られているマギテック・マシンガンは、剛性を高めることで、ライフリングやその他摺動部の精度を常に確保し、遠距離での狙撃に対応するだけの命中精度を常に確保することが可能となったのだ。しかも連射前提の設計故に増した重量が、射撃時の安定性をより高め、連続での狙撃の助けとなっている。
ボルトアクションライフルでは対応しきれない状況も、このマギテック・マシンガンならば容易に対応できる。ドラムマガジンのキャパシティは、それこそ並の自動小銃の比ではない!
射撃、射撃射撃射撃射撃射撃射撃! 敵の中にはラナの範囲攻撃を逃れ、その身体能力を増幅しながら高速で接近してくる者もいるが、シャルロットは視界の中にそれを捉えるなりセミオートで二連射。胸と頭に着弾、一発目で仰け反り二発目で糸が切れたように倒れ、走ってきた勢いのままに地を滑る。
「射撃体勢に入った私相手に、そう簡単に近づけると思わないことですね……!」
ラナが維持する前線を、シャルロットが次々と射貫いていく。上位教徒が胸を押さえ、破れかぶれにオブリビオン爆弾を炸裂させようとするのさえも見逃さない。ラナが雷撃を強めて炸裂までの時間を遅らせるなり、シャルロットが的確な射撃で頭部を射貫き、爆発を未然に防ぐ。
「滅びたければ勝手にどうぞ――ですが、他の人を巻き込むのはいただけません。死にたいのなら、滅びが救いだというのなら、自分たちだけで、勝手に一人で滅んでください。――そうでないのなら。誰かを道連れにせずにはいられないのなら――」
青い瞳が、鷹めいて尖る。
「――どれだけ遠かろうと。私の銃弾は、貴方の命を撃ち穿つ」
シャルロットは再びトリガーを引く。
ラナが描いた雷霆の霧の中を、熱き銃弾で撃ち貫く!
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
ネグル・ギュネス
【アサルト】
嗚呼そうだ貴様らのような奴は何時もそうだ
異教徒だ、異端だと人を嬲る口実にする
──匡、ヴィクティム….奴らを逃さない、余さないぞ
皆 殺 し だ!!
真っ向から走って敵陣に斬り込み、刃風による衝撃波で動きを鈍らせる
そして破魔の雷光を刀から解き放ち、敵を焼き焦がしながら、前に立つ
オレが止めれば、二人が仕留めてくれる
攻撃は武器受けや身体で止め、縫いとめて的にしてやる
治療?教義?
首を落とされてもほざいてられるのか!
【破魔の断・雷光一閃】を解き放ち、纏めて首を身体を叩ッ斬りながら、尚進む
何が聖戦だ、何が救いだ
そんなものの為に、皆は、あの人は──!
そんな神がいるってんなら、纏めてブッた斬ってやる!
鳴宮・匡
◎
【アサルト】
……なんだあいつ、いつになく怒ってんな
まあいいか、ヴィクティム、いける?
オーケー、それじゃやろうか
あいつの援護を全力で、だ
ヴィクティムの準備が済むまでは
譫言を喚いてる敵から喉を潰していく
護衛も兼ねて離れすぎないように立ち回るよ
心配するな――指一本触れさせないさ
さて、文字通り反転が効いたら攻勢に出よう
足を止めた敵から順に殺していくよ
中でも体勢を崩した相手を優先的に狙い
頭を潰して沈黙させる
ネグルが折角敵を引き付けてるんだ、利用しない手はない
俺は、あいつが怒る理由を理解してはやれないけど
あいつの道を阻むやつを殺すことはできる
いいよ、好きなように突っ走りな
フォローはこっちでしてやるからさ
ヴィクティム・ウィンターミュート
◎【アサルト】
どーやら、ああいう手合いがネグルの地雷ってやつらしいぜ
ま、俺もああうのは好きじゃねーけどな
主義主張や思想は個人の勝手だが、押しつけがましいのは嫌いなのさ
さて、そんじゃあ怒りの戦士に付き合うとしようかね
『反転』を広域化させる…ちと時間かかるぜ
前はネグルが大暴れしてるし、こっちは匡の護衛付きだ
何の憂いもあるもんかよ
範囲指定終了
さぁ、ご自慢の信仰心が試される時が来たぜ!
『Reverse』──盤上はひっくり返り、信仰の叫びは地に堕ちる
人数が多い分、重なっていた強化がひっくり返った時の効果はデカイぜ
許せねえもんがあるのなら、切り開いて進め
不条理に怒りを燃やすなら、とことんやりな!チューマ!
●侵攻の痕、骸の轍
「嗚呼、そうだ。貴様らのような奴は何時もそうだ、異教徒だ、異端だと人を嬲る口実にする。僅かにでも答えに瑕疵があればその疵を穿り返し、弾圧する理由を作り上げる。オレは、今まで貴様らのようなのを何度も何度も見てきた。許さん。――絶対に許さん」
焼け付くような焦熱が、声から滲むようだった。
戦場後方、敵との距離は未だ遠く、狂的な怒りを滲ませ敵を睨むのは、ネグル・ギュネス(Phantom exist・f00099)。
「──匡、ヴィクティム……奴らを逃さない、余さないぞ」
「……了解」
「あいよ。走りな、チューマ。お前が奴らに裁きを下すってんなら、俺たちはそれに付き合うだけだ」
鳴宮・匡(凪の海・f01612)とヴィクティム・ウィンターミュート(impulse of Arsene・f01172)がネグルの言葉に応える。チーム・アサルトの三名だ。
「応」
しゃ、っりぃぃいん……、
ヴィクティムの後押しに応え、黒刀『咲雷』を抜刀。突っ込む敵陣を真っ直ぐに指し示すネグル。咲雷の刀身には破魔の雷光が纏い付き、猛る怒りを物語るかのようだ。
キル・ゼム・オール
「 皆 殺 し だ !!!」
ネグルは叫ぶと同時に、地面を蹴り抉るような踏み込みで跳ねた。土が撒き散らかされ、石畳だった石塊が跳ね上がった。それが落ちる前に、ネグルの身体は張るか前方に駆け飛んでいる。
「……なんだあいつ。いつになく怒ってんな」
邪教の信徒がテロを起こすことなど、それこそ一度二度ではなかった。邪教でなくても武器さえあればテロリズムに走る人間は確かにいる。匡はそれを相手に幾度も戦ったことがある。故に、さしたる感慨もなくアサルトライフルに初弾を装填した。
相手が誰だろうと、結局のところただの戦場だ。死を睨み、弾を撒く。やるべき事はそれだけ。故にネグルとは異なり、匡の思考と言勢は極めて冷静で、冷徹であった。
「どーやら、ああいう手合いがネグルの地雷ってやつらしいぜ。狂信者っつうか――相手の教義を否定して、征服する事を生き甲斐にしてるような連中がな。まぁ、俺もああうのは好きじゃねーけどな。主義主張や思想は個人の勝手だが、押しつけがましいのは嫌いなのさ」
軽やかに答えるヴィクティムは、既にこの状況に対応するプログラムを探り当て、その動作の下準備を始めている。
「ふーん。そういうもんか。……まあいいさ。ヴィクティム、いけるか?」
「『反転』を広域化させる。ちと時間が要るな。稼いでくれ」
「オーケー。それじゃやろうか――あいつの援護を全力で、だ」
個人の怒りを理解する必要はない。徹底した共感も必要ない。少なくとも、彼らの間には。そんなものがなくても、彼の走る路を護ることは出来るし、背中を押すことは出来る。
「行けよネグル。好きに突っ走れ。フォローはこっちでしてやる」
匡はアサルトライフル、BR-646C『Resonance』の銃口を上げ、ストックを肩につける。のぞき込んだアイアンサイトのリアサイトの中に敵影を捉え、呟いた。
「よし、そんじゃあ怒りの戦士に付き合うとしようかね。匡、アイツだけじゃなく俺のことも忘れないでくれよ。頼むぜ」
「心配するな。指一本触れさせやしないさ――戦闘開始だ。行くぞ」
匡の視界の中で、敵の先頭集団とネグルの影が交錯した。
「おおおぉおぉぉお!」
ネグルが振るった刃より衝撃波が吹き荒れた。間合いの外より振るった剣圧が空気を裂き、信徒数名の身体を圧し、動きを封じる。
「な、なんだっ……?!」
「気をつけろ! 来るぞ!」
信者らが身構え、体勢を立て直そうとするが、その前にネグルは手の内の刃に己が意思を、力を込めた。力注げば応ずる咲雷の刃に、破魔の雷光が纏い付き、まるで雷神が振るう神器めいてスパークを上げる。
「っせええええええええええええぁあっ!!」
裂帛の気合と共に、返す刀でのもう一撃。振るった刃から遊離した雷が、空中を網めいて広がりながら迸り、捉えた範囲外の信徒を撃った。
「――!!」
雷撃の威力は凄まじい。神経が一瞬で電流に焼き切られ、ジュール熱により血液が沸騰。焼け焦げた肉体がドサリ、ドサリと倒れ伏す中を、真っ直ぐに駆け抜ける。
「その滅びを求める教義とやら――首を落とされてもほざいていられるか!!」
太刀に纏う破魔の雷光――ユーベルコード『破魔の断・雷光一閃』。天に雷鳴、地に黒刀、闇斬り断つは破魔のいかずち。ネグルは一瞬で灼き焦がした敵の上げる、黒く焦げた煙と噎せ返るような焦臭のなかを迷い無く踏み越え、次なる敵に襲いかかった。
「何が聖戦だ。何が救いだ! そんなものの為に、皆は、あの人はッ――!!」
「こ、こいつッ……」
「なんだ、何を言ってる!」
「異教徒め!!」
アサルトライフルの銃口を上げ、ネグルを狙おうとするものがいた。しかし、
「ぎゃっ?!」
「がっ、」
「うわあああっ?!」
その瞬間に、彼らの持つライフルの銃身が爆ぜた。次から次へと、銃弾が詰まったかのように、発砲と同時にアサルトライフルの銃身が花を咲かせるように裂け爆ぜる。――整備不良か? 否。
後方から銃口を狙ってトリガーを引いたものがいる。銃口を狙っての神憑り的な狙撃。
既にトリガーに指をかけた敵を始末する際には、頭や心臓を撃って命を奪っても、痙攣した指先の筋肉が発砲に繋がる場合がある。理想的には、武器を潰して脅威を奪った後殺すべきだ。そんなことが、通常の人間に可能なわけがない――故にバイタルを一撃で奪える場所を撃てと教練される場合が殆どである。
――しかし、可能なら。出来てしまうのなら。そしてその策が有効であるとするのなら、その射手――鳴宮・匡がそうしない理由はない。
「滅びを旨とする神がいるなら、信徒諸共まとめてぶった切ってやる。そんなに滅びたいなら、死にたいのなら、最初から自分たちだけでくたばれ!! オレがまとめて――黄泉路に叩き込んでやる!!」
ネグルは紫電纏う黒刃を構え直し、武器を喪っておたつく信徒を数人まとめて、一息に斬り裂いた。走る刃が首を、腕を、胴を、まるでバターに刃を入れるように斬り裂き、殺していく!
「おのれっ、我らが教義を聴くがい、」
銃声。
教義を説こうとするものからネグルは首を裂いていくが、しかしその刃が届かぬ位置で口を開こうとする敵を、匡が逃がさない。喉を撃ち抜き声帯を破壊すれば、物理的に声が発せなくなる。いかにオブリビオンとて、その形を取っている以上、人体構造には決して逆らえぬ。
「これ以上貴様らに、誰かを殺させてたまるか。オレがここで立つ限り――後ろには通さんぞ!」
ヒトの形をした悪鬼を、死神の指先めいた高精度の狙撃が護っている。烏合の衆では、その足を止めることすらままならない――!
口笛一つ。
「相変わらず容赦ねぇな。ま、あんだけ大暴れしてくれればこっちも働きやすいってもんだが」
凄絶に腕や首や二つになった身体が宙を舞い、敵の喉首からの噴血と壊される武器が彩を添える。まさに殺界となった前線を見て、ヴィクティムは肩を竦める。
「さて、範囲指定終了だ。ご自慢の信仰心が試されるときが来たぜ! お前らの教義がちゃんと天に届いてるか――今から試してみようじゃねぇか、なあ?」
ヴィクティムはホロ・キーボードに実行のコマンドを叩き込む。同時に、ヴィクティムが座標指定した周辺の空間がざ、ざ、じりり、じじじじ、と音を立て、砂嵐めいたグレー・ノイズが走り回る。前線で戦うネグルがそれを察したように飛び退き、匡の射撃が止まる。
ユーベルコード、Attack Program『Reverse』。
その効果はごくごく単純なものだ。
「おのれ、――皆のもの、案ずるでない! 奴らは我らが神の座に到ることを妬むだけの異教徒だ! 滅びの向こうに楽園あり、神は滅びの縁より我らを招き、身体を棄てその膝元に帰依することを望まれた! 第三十二節を唱えよ、死を恐れず前に進め、者共!」
上位信徒が朗々と叫ぶなり、地を揺るがすように大勢の信徒が教義、第三十二節を復唱する。要は滅びこそが人の最後に行き着く場所であり、神は其処で人を待っている。この壊れた世界でいつまでも生きるよりも、神が呼ぶ其処へ自ら歩を進めるのが良い、といった内容の節であった。
大勢が唱和することで不気味に輪郭の歪んだ教義の詠唱を、ヴィクティムは目を細めながら聴く。あの詠唱は、共感したものの能力を増幅し、そしてその傷を癒やすものだ。それは事前にグリモア猟兵より説明されている。
しかしヴィクティムは何もしない。ポケットに手を突っ込んで、詠唱を眺めている。
妨害と電子戦、サボタージュアタックにクラッキング、暗殺強襲バックドア交錯、ありとあらゆる搦め手に熟達した、Arseneのハンドルを戴く男が、その余裕ぶった態度を取ると言う事は――
攻撃の全てが、完了していると言う事に他ならない。
「死ね、悪鬼め! 死ね!!」
能力が増幅された十数人の男達が、近接攻撃用の鉄パイプや棍棒を持ってネグル目掛け襲いかかった。
増幅された筋力により振り下ろされる鈍器の威力は、並の猟兵ならば殺して余りある威力のはず。――それが一斉に十数人。いくらネグルとて、それを防ぐことは困難であろう、と思われたその刹那。
ネグルが、先頭の男が振り下ろした鉄パイプを片手で受け止めた。
「え――?」
「Gotcha」
ヴィクティムはゴーグルを跳ね上げ、いたずらな少年の瞳で笑った。
ネグルはそのまま、敵に数倍する速度でカウンターの斬撃を叩き込み両断。強化されているはずの信者達を今まで以上の速度で薙ぎ倒し始める。
それに合わせるように匡が後方で容赦なくトリガーを引いた。今までは防衛戦とばかり、攻撃してくる敵を優先して迎撃する構えだった匡の狙いは、より積極的に『敵の数を減らす』方向にシフトする。
敵に強化を許したにもかかわらず、ネグルと匡の動きは冴え渡り、今まで以上の速度で敵を殲滅していく。
「ば、バカな!! なぜ――我々には神の加護があるはず――」
呻くように言う敵の声が、ネグルのインカム越しにヴィクティムの耳に届く。
「だから言っただろ、信仰が試されるってよ」
ヴィクティムは、到底聞こえ得ぬ距離で笑った。
――Attack Program『Reverse』。その効果は、敵のユーベルコードの一切を反転させること。即ち、今敵が己を強化せんと唱えた教義は、全て逆の効果となって彼らの身を覆っている。即ち、弱化作用として働いているのだ。
ネグルが速くなったわけでも、匡の認識速度が加速したわけでもない。弱くなったのは敵自身。それを教えてやる義理もなく、ヴィクティムはせせら笑うように言った。
「お前らを許さないってな、うちのタンクが言うわけだ。――死んでもらうぜ。さぁ行け、ネグル! 許せねえもんがあるのなら、切り開いて進め! 後ろは俺と匡で固める! 不条理に怒りを燃やすなら、とことんやりな! チューマ!」
『応ッ!!』
通信機の向こう側でネグルが吼えた。踏み込んだ余波で信者が吹き飛び、振るう刃がその衝撃波と雷撃で弱化した信者らを灼き散らす。宙に巻き上げられて藻掻く敵を、匡が無言での狙撃で片っ端から撃ち抜いていく。
その戦線は、彼らのものだ。
信徒らが奪い返すことを許さず、三名は蹂躙を加速する!
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ティオレンシア・シーディア
◎
…どこの世界でも、狂信者ってのはどこまでもハタ迷惑極まるのねぇ…
ホント、タチ悪いったらありゃしない。
なまじ死ぬのを躊躇しない分余計に面倒なのよねぇ…
端から潰してっても効率よくなさそうだし。一気に突っかけて暴れようかしらねぇ。
〇ダッシュ・ジャンプ・スライディング駆使して突っこんで、〇第六感で攻撃〇見切りながら〇範囲攻撃。
〇グラップルで〇盾にしたりグレネードの〇投擲で○吹き飛ばしたりもしたほうが纏めて潰せるかしらぁ?
さっきからぎゃあぎゃあと鬱陶しいもの。手あたり次第の大盤振る舞い、当たるを幸い片っ端から○蹂躙するわよぉ。
さっきから殺せだの終焉だのわめいてたけど。…●鏖殺ってのは、こうするのよぉ?
●鏖殺のシックス・バレッツ
「どこの世界でも、狂信者ってのはどこまでもハタ迷惑極まるのねぇ……」
モール入口前広場の所々に配置されたオブジェの一つに隠れながら、呆れたように呟くのはティオレンシア・シーディア(イエロー・パロット・f04145)。先のジャイアントゾンビ戦より、その狂信者――黙示録教の信徒達の前進を押し止めていた猟兵の一人だ。
「ホント、タチ悪いったらありゃしない。なまじ死ぬのを躊躇しない分余計に面倒なのよねぇ……」
アサルトライフルの銃弾が遮蔽物に跳ねる。銃弾が切れるのを待ちながら、ティオレンシアは手にしたシングルアクション、〇・四五インチロングコルト弾六連装のリボルバー『オブシディアン』をハーフコックにし、シリンダーをジィィッと音を立てて空転させた。
まるで、命というダイスを、戦場というフィールドに投げ込むタイミングを占うように。
「これは聖戦だ!」
「貴様らに我らが教義を知らしめるぞ、猟兵共!」
「我ら黙示録教徒、滅びを恐れず、死も恐れず……!」
次々上がる鬨の声。ティオレンシアはその一つ一つにうんざりする、とばかり大げさに肩を竦めた。
「これよ。こっちの迷惑なんて、一切考えてない。自分本位、自己中心的、布教という名の強制しかしなくなった狂人達――この手合いは話も通じやしない。さぁて、どうしようかしらねぇ」
端から撃って片付けていくのは、少しばかり手が掛かりそうだ。敵の銃弾も使えるように敵陣深くに侵徹するか。
プランを頭の中で描くなり、ティオレンシアはようやく訪れた弾丸の切れ目に従って飛び出した。
「撃て撃て撃て、殺せぇ!!」
殺意に満ちた敵の叫びを聞きながら、放たれる火線の一歩先を疾るティオレンシア。片手で抜いたグレネードのピンを咬み抜き、敵の密集地帯へ投擲。炸裂するグレネードが七名ほどを吹き飛ばし、敵が浮き足立つ隙を狙って火線の中を駆け抜ける。
「おのれ、よくもっ!!」
なおも撃ってくる相手に、腰撓めにしたオブシディアンからの応射。次々と撃ち倒し、弾が切れればスピードローダーで素早くリロード、連射しながら突っ込む。おおよそ、リボルバーで発揮できる連射能力ではない。本来なら拮抗すら出来ない火力差を、ティオレンシアの技術が覆す!
「ぐわあっ!?」
「ぎゃっ!!」
弾が当たり倒れる敵には目もくれず、ティオレンシアはその脚力を生かし神速で距離を詰める。二行横隊で連射を繰り出す敵の近距離に辿り着くなり、敵前衛を銃口をスライドさせながらのファニングで射殺、さらに突っ込む。
「貴様ッ、」
「遅いわよぉ」
突き出される銃口を蹴り上げ、サブミッションの応用でアサルトライフルを奪い去る。銃を失った敵を、こちらを狙う他の敵の前に蹴り出して盾に使いながら、奪い取ったアサルトライフルで掃射。
ティオレンシアが展開するのは至近距離における白兵射撃戦だ。敵を盾にする、敵の武器を流用する、敵の射撃自体をこちらの武器にする――彼女の挙措には対多数戦闘におけるセオリーとエッセンスが凝縮されている。
「ぎゃああっ!?」
「きッ、貴様ァ!!」
「ぎゃあぎゃあと鬱陶しいわねぇ。戦場じゃ脅し文句の前に銃弾を吐くものよぉ」
甘い声で吐くのは戦場慣れしたダーティな台詞。
銃弾の切れたアサルトライフルを横殴りに、回転させながら投げ飛ばし、それが顔面に命中した一人が昏倒し掛かるところに襲いかかる。襟首を引っ掴んで、立て続けに放たれる敵の銃弾の盾にしつつ、敵の一団の中央に突っ込む。襤褸切れめいて銃弾に嬲られた盾代わりの男を突き放し、ティオレンシアは敵の一団、六人の間で唇を吊り上げた。
敵同士の射線を重ね、発砲を一瞬だけ躊躇わせる――その一瞬があれば、彼女にはそれで充分。踵を軸にターン、
BLAMBLAMBLAMBLAMBLAMBLAMッ!!
ともすれば銃声が一つに聞こえるほどの速度での六連射。ティオレンシアを囲む敵が、彼女を中心とした放射状に吹っ飛んで仰臥する。いずれも頭を一撃。ファニングによる、魔術めいた連射。
弾き出したシリンダーから焼けた薬莢を吐き出しながら、ティオレンシアは謳うように言う。
「さっきから殺せだの終焉だのと騒いでたけど――鏖殺ってのはね、こうするのよぉ?」
再装填したオブシディアンを構え直し、女は次なる敵集団目掛け、再び地面を蹴る!
成功
🔵🔵🔴
クロト・ラトキエ
◎
不遜?
笑い死なす気です?
全く…何様のおつもりか。
広狭問わず。
糸掛け、地上空中双方、地の利活かせる場であれば良い。
視線に銃口の向き、手の動き等、特に銃器は注意。
近接武器は間合いを、と。それぞれ見切り得た情報を基に対処。
さぁ、殺到しておいでませ。
大体ねぇ、説得力足りないんですよー。
『滅びが救済』?
ちまちま略奪、せこせこ従え、肝心の救いは神頼み。
その程度で、滅び?
…失笑も出んな。
増強を図ろうと。
多糸からの範囲に渡る2回攻撃。
併せ、
業の拾…否、新たな解、更なる暴威、
見敵鏖殺――UC展開。
一打は己に。
そんな代価も奴等にゃ勿体無いが。
幸福が、終焉が、欲しいなら呉れて遣るさ。
神?結構。
勝手に信仰に溺れてろ
●滅びを求めし汝ら、生くるに能わず
「こっちだ! 本隊が奴らの相手をしているうちに回り込め!」
「無理に猟兵共を相手にすることはない。奴らが強硬に正面を守るうちに、非戦闘員共を略取するのだ!」
所はモール裏路地。建物と建物の隙間を強引に通り抜けるルートだ。大勢が通れるほど広くはなく、三人も肩を並べれば壁に肩を擦ることになるほどの手狭な路。
そこを、モール入口広場の死闘を回避した信者達が十名ばかり、縦隊を汲んで走って行く。
この路を守護する猟兵の姿は、未だ見えぬ――
「くく、奴らに不遜の代償を思い知らせてくれよう、……ッゲ?!」
かに、思われた。
先頭で息巻く狂信者の一人が、喉に食い込んだ鋼糸により道半ばで阻まれ、跳ね返されたように仰け反り倒れるまでは。
「やれやれ。不遜、不遜ですか」
声は上から。
反射的に見仰ぐ教徒らに、なおも嘲るように声が続いた。
「――全く何様のおつもりか。神の名を騙り人を殺し、それが救いだと嘯いて、上手く行かなければ不遜だと? 面白い話ですね。笑い死なす気ですか? その銃よりはよほど僕に届きそうな冗句だ」
宙に立ってぼやくように言うのは、クロト・ラトキエ(TTX・f00472)。浮いているかに見えるが、彼の足下にはロービジブルなワイヤーが張り巡らされている。それを足場に、蜘蛛めいて立っているのだ。
クロトは口元だけを微笑みに歪め、くい、と人差し指を引っ掛けるようにして敵を招き、挑発。
「ここを通りたくば僕を倒してから行くことです。この心臓が止まるまで、全力でお邪魔しますよ。さぁ、殺到しておいでませ」
「異教徒め!」
「こちらルートF! 敵猟兵と交戦する、至急応援を請う!」
俄に殺気立ち、応援を呼ぶ信者の傍らで他の信者が銃口を跳ね上げる。マズルフラッシュが路地裏の闇を裂いた。クロトはその一瞬前に糸を蹴り飛ばして跳躍している。壁を蹴り、新たな糸を飛ばし、壁に打ち込んで引き寄せ、宙を自在に跳ね飛びながら降下。
敵の主武装はこの路地裏では取り回しの悪い、長銃身のアサルトライフル。銃口の向きを追うのはたやすく、クロトは銃弾が放たれる前にその射線から身を躱す。結果として銃弾は彼には当たらず、自ずから逸れていくかのように見えた。
「当たらんッ……!?」
「下がって距離を取れ!」
近づかれることを嫌うかのように下がろうとする残九名の敵に、クロトは剽げた口調で言った。
「大体ねぇ、説得力足りないんですよー。『滅びが救済』? ちまちま略奪、せこせこ従え、肝心の救いは神頼み。その程度で、滅び?」
天に浮かぶ月が、路地裏に差し掛かる。建物に切り取られた狭い空を跳躍しながら、ぎらりと眼鏡の下、蒼い瞳を尖らせた。
「失笑も出んな」
クロトは両の腕を一息に打ち振った。その瞬間、クロトの指先から迸るのは、月光吸って煌めく鋼の糸。一瞬にして操る糸の数、最早数えきれぬ。十指にすら余る数の糸を、如何にして操っているのか――その場の誰が看破することも叶わぬままに、クロトは攻撃を開始した。
「なッ――」
見敵鏖殺、『唯式・幻』。
鋭角的に、或いは有機的に。まるで生きているような不規則な軌道で、結界めいて張り巡らされた糸が、逃れようと押し合う信者達の身体を瞬く間に雁字搦めに捉える。
「ぐあっ?!」
「う、動けんッ!?」
「幸福が、終焉が、欲しいのならば呉れて遣るさ」
クロトは絡め取った敵に繋がる糸を綾取りめいて一つに纏め右手に絡めた。鋭い鋼糸がグローブの布地を破り、男の手から血を飛沫かせる。――それすらも計算のうち、『幻』を開帳するために必要な血。
「――教義に溺れて、」
「や、やめっ……」
「永久に彷徨え」
クロトは命乞いを聞くこともなく、落ちる自分の体重の全てをかけて糸を引いた。糸と糸が無数の滑車めいて、落ちるクロトの体重と落下エネルギーを増幅し、繋がったその先に伝える。
ぞ、んっ!!
信者達を雁字搦めにしていた糸は、クロトの意のまま、彼らを斬り裂く刃となった。一瞬で十人の男がぶつ切りの肉塊となり路地裏の闇に転がる。一人降り立ったクロトは、右手から流れる血を振り棄て、闇の向こうから聞こえてくる足音へ向き直り、構えを改める。
「――この路は地獄に続く道。誰一人とて、無辜の人々の元へは届かせませんよ」
大成功
🔵🔵🔵
青葉・まどか
◎
狂人の戯言が不快だ
莫迦共の凶行で被害者が出るのが赦せない
イカレタ教義に従うカルト信者共に虫唾が走る
……此奴らを倒す理由なんて幾らでも挙げられるよ
本当に救いようのない連中だね
『神速軽妙』発動
いつものようにフック付きワイヤーを駆使して、ショッピングモール内の高低差の【地形の利用】した立体機動
跳んで、走って、常に動き回って、相手を攪乱しながら攻撃
投擲。離れていても油断しないでね
刺突。ぼんやりしてると急所に一突きだよ
斬撃。思う存分、切り刻んであげる
投擲、刺突、斬撃!
刺突、斬撃、投擲!
斬撃、投擲、刺突!
一人で死ぬのは寂しいよね
自爆狙いの信者には【敵を盾にする】
喜べ、お前達だけは必ず滅ぼしてあげる
●必滅の階
「異教徒は何処だ、何処だ、何処だ! 改宗の機ぞ、喜べ! 我が主の祝福を我らが代行する時ぞ!」
人三人が横隊で歩くことさえ難儀しそうなモール裏の細い通路を、密かに突破した敵兵達が走る。身勝手な教義を垂れ流し、彼等は獲物を探してモール・ヘイヴンの奥を目指していた。彼らが謳う黙示録教の教義が、狭い通路の壁を跳ねて反響する。
限界まで突き詰めれば、『黙示録教』の教義は、次の一言に集約される。
死んだらいいことがある。
なのでみんな死なせて、その後死のう!
「――くそくらえ」
教義を諳んずる信者らの行く手から、暗い怒りにふつふつと煮え立つような声が鳴った。未だ年端もいかぬ少女の声。青葉・まどか(玄鳥・f06729)のものだ。
信者らが反射的に足を止め、武器を上げる。タクティカルライトで闇の中を探るように照らしながら、警戒態勢を取る信者達。
「出てこい、隠れても無駄だぞ。それともそのまま怖じけて我らを見過ごすか? ならばそれも良いだろう、死出の道に旅立つ新たなる信徒の誕生を、闇の中からただ見つめているがいい!」
挑発の言葉を投げかける信者に答えぬまま、まどかは闇の中で深く嘆息した。
「本当に救いようのない連中だね、お前達」
逆手に抜いたダガーを構える。
「狂人の戯言を耳に入れるだけで不快、莫迦共の凶行で被害者が出るのが赦せない、イカれた教義に従うカルト信者共に虫唾が走る――お前達を倒す理由なら山ほどある。逆に訊くけどね、この道を無事に通れると思ったの?」
闇の中に、きらりと残光する眼鏡の光。
それに反応して信者の一人がトリガーを引いた瞬間、まどかは物陰より駆けだして姿を現した。放たれるアサルトライフルの弾幕を飛び越えるように跳躍。ユーベルコード、『神速軽妙』。跳躍するなりフックワイヤーを壁の突起にかけて巻き上げ、壁を蹴り飛ばしざまにフックを外し、下方の突起目掛けてまたもフックを放つ。投擲と巻き上げをシームレスに行うことで、まどかはまるで翼を得たかのように宙を自由自在に翔る。
「ちょこまかとッ!」
飛び回るまどか目掛けてアサルトライフルの弾幕が襲うが、まどかは火線の間を飛び抜けつつ、前方に跳びながら真下目掛けフックワイヤーを投擲。
「ぐげっッ?!」
敵の一人の首に絡め、ワイヤーの中間を張り出したパイプに引っかける。まどかはそのまま、落下の力を活かしてワイヤーを力強く引いた。パイプを支点として、敵の首は滑車に吊された錘めいて吊られる。ゴギッ、と音がして敵一名の頸椎粉砕。ワイヤーから手を離し、宙返りとひねりを二つ入れて、飛び込むようにまどかは地面へ落ちる。
「こ、この女ッ……、」
他の信者が銃口でまどかを追うよりも早く、彼女は敵五名の真ッ只中に飛び込んだ。飛び込みざまに手先でいくつも銀閃を描く。翼めいて広げた両手の先にはダガーの刃。敵二人の喉から胸のラインを数度斬り裂いて血を飛沫かせる。
「がっ――」
「か、ひゅっ」
「貴様ッ!」
生き残りの信者が着地際を狙っての射撃をかけるが、まどかはまるで羽が落ちるように着地するなりゴムボールめいて再度跳ね、手近な壁を蹴って身を一転。鋭い蹴りで更に一人の顔面を抉り、二百七十度回転頸骨粉砕。蹴りの勢いのまま手を撓らせてダガーを投擲、更に一人の首を抉る。着地。
どさり、どさりと、致命傷を受けた男達が倒れ臥す。
「っば、……莫迦な……、」
残ったのは、六人小班の最後の一人。
それを前に、まどかは右手に残ったダガーを構え直す。
「一人で死ぬのは寂しいよね。皆で逝きなよ。滅びが欲しいんでしょ?」
「う、うおおおおっ!!」
まどかの静かなトーンの言葉に、抑えられぬ恐怖が溢れた。
破れかぶれのフルオート射撃を、まどかは壁に飛びついて五歩、壁を走り、蹴り飛んで回避。敵を跳び越すような軌道で跳躍しながら、擦れ違い様にその延髄にダガーの刃を叩き込み、刺殺。
「がぇッ」
糸の切れた人形のように倒れ臥す男を尻目に、まどかはひらりと着地。
闇の向こうから続く敵の足音に、眼鏡の下の目をゆるりと細める。
「――喜べ、お前達だけは必ず滅ぼしてあげる」
望みの通りにと。
まどかは、怒りもそのままに嘯いた。
大成功
🔵🔵🔵
セリオス・アリス
【双星】
◎
死が救いだ何だとうるせえな
その理不尽を人に押し付けんじゃねえ
ホントに救いだと思うならいっぺん自分で死んで確かめて来いよ
歌で身体強化して駆けていく
アレスの光に紛れるように敵の中へ飛び込んで
剣に炎の魔力を込めたら
2回攻撃で一気に敵を薙ぐ
防御より数を叩いた方が早い!
防御をアレスに任せて攻撃に専念だ
…つってチマチマしてたんじゃ回復されちまう
アレス!
アレスの背に飛んでくる銃弾を剣で弾いて
背中を預ける
ああ、一気に片付けようぜ
アレスが開いた道を駆け
高めた闘気を剣に込め【蒼ノ星鳥】を放つ
打ち合わせなんざしなくても
光の柱が鳥の行く道を遮る心配なんざ少しもねえ
ただ俺は全力の魔力で敵を焼き尽くすだけだ!
アレクシス・ミラ
【双星】
◎
既に人ではなかったか
…ならば尚更、容赦はしない
終わるのは救いだと称して殺し、奪おうとする貴様達の方だ
防御なら任せて
盾として、セリオスが戦いやすいように
守り、敵を引き付けるように駆け、光纏う剣で斬る
障害物も利用して高く跳躍
落下速度に乗せるように剣を振り下ろし
地面に衝撃と光の魔力を叩き込んで範囲攻撃
けど、銃を得物とする敵も多いと少々厄介だな
セリオスの背中を守るように攻撃を盾で弾き
彼と背中合わせに
…だが、不安はない
君とならこの戦局を変えられる
そうだろう、セリオス
衝撃波を放って最適な発動地点まで道を切り開き
【天聖光陣】を展開
炎の鳥を最善へと導くように
そして敵を陣から逃さぬように光の柱を放つ!
●双星瞬くダンスフロア
駆け寄せる黙示録教徒達は、傷つけど教義を諳んじてその肉体を再生、筋力を増幅してなおも挑みかかってくる。腕がもげようと、脚がもげようと、頭さえ無事なら再生して襲いかかるその様相、まともな人間にはあり得ない挙措。
「既に人ではなかったか。――ならば尚更、容赦はしない。終わるのは、『救い』だと称して殺し、無辜の人々の命を、権利を奪おうとする貴様達の方だ」
押し寄せる教徒らの大群の前に、アレクシス・ミラ(赤暁の盾・f14882)が立ち塞がる。
そして、赤暁の背に青宵あり。しゃん、と長剣『青星』を抜き放ちながら進み出るもう一つの影。
「死が救いだ何だとうるせえな。その理不尽を人に押し付けんじゃねえ。ホントに救いだと思うならいっぺん自分で死んで確かめてこいよ」
嫌悪も露わに言い放つのはセリオス・アリス(青宵の剣・f09573)。流れる黒髪に青い瞳、整った面相を今は挑みかかるような怒りの表情に歪め、敵を睨み付ける。
「異教徒共が、お決まりの台詞を吐くものだ」
「我らがそれを示す必要は無し。信じられぬならば貴様らが死を踏み越えて向こう側を見ればよい!」
「話にならねぇな! やるぞ、アレス!」
「ああ。行こう!」
駆けてくる敵の数は一団、三十名強。
それに対するセリオスとアレクシスはたったの二人。猟兵達はこの極端な人数比での戦いを強いられ続けている。「死ぬがいい、異教徒共!!」
信者の一人がアサルトライフルを構えれば、それに従い数名が銃を構えて斉射をかけてくる。アレクシスは即座に『蒼天の盾』の面積を拡張。集中射撃を広げた流線型の盾で後方に受け弾きつつ、セリオスを守って突撃をかける。
敵の数は多く、そのほぼ全てが自動小銃で武装。近接格闘戦を行うアレクシスとセリオスにとっては分の悪い相手だ。
しかし、アレクシスは決して膝を折ることはない。不安を抱くこともない。友と共に駆けるのならば、いかなる逆境とて恐ろしくはない。
「ひっくり返してみせる。どんな戦局だろうと――君と僕なら変えられる。そうだろう、セリオス?」
「へっ、当たり前だ! チマチマしてたんじゃ埒が明かねぇ。一気にやってやろうぜ、アレス!」
一言かければ、背から力強い声が返る。強く頷いてアレクシスは右手に握る長剣『赤星』に魔力を込めた。アレクシスの魔力が極光となり、剣に纏い付く。
すぐさまアレクシスは盾を縮め、横薙ぎに赤星を振るった。剣先から極光が遊離し、光の衝撃波となって射撃する教徒達を薙ぎ倒す。
「うわあああああっ?!」
「ひ、光の刃だとッ……!」
もんどり打って倒れ込む教徒らの後ろ、新たな信者達が銃を構える。狙いが整わぬうちの威嚇射撃。近づくのを拒むように銃弾が跳ねる!
「おおおぉっ!!」
――しかし、彼等が狙いを付けるその前に! 発砲炎も銃声も恐れず、アレクシスは雄々しく吼えながらに突っ込んだ。二人ばかりをシールドバッシュで撥ね除けるなり、手近な数人を斬り倒す。
「ぐわっ!?」
「ぎゃあっ!!」
血と悲鳴が飛び交う中、アレクシスは一瞬とて止まらない。素早く自身に狙いを付け直す敵の照準から逃れるように手近なコンテナを足場に跳躍、空中で二転してムーンサルト。
「セリオスッ!」
「おう!!」
空中で呼びかければ、地上から応え。
銃弾を掻い潜り走り回るセリオスに警告をかけ、アレクシスは光纏う剣を大上段に振り上げたまま落ちた。
「はああああああっ!!」
裂帛の気合。剣より迸るは払暁の聖光!!
着地しざま、落下エネルギーの全てを剣に乗せ、アレクシスは聖光の剣を地面に突き立てる。――瞬間、爆光が咲く! 同心円状に光が拡がった。――描かれる陣の名は、『天聖光陣』。アレクシスのユーベルコードの発動である。
光陣より吹き上がるは邪悪を許さぬ浄化の光柱! 巻き込まれた邪教徒が声もなく消滅する。
「おのれっ、おのれおのれおのれっ――!!」
「異教の光など、恐れるものかよ!!」
転げて逃れる信者達が反撃の態勢を整える信徒ら。陣を敷いたアレクシスを、いくつもの銃口が睨み――
「ならついでに、異教の炎も持って行くかよ。アレスの光だけで足りないなら、おまけに俺の怒りもくれてやる……!」
銃声の前に、声が降った。
光吹き上がり、周囲半径六十メートルの信徒らが逃げ惑うその中――
光の一つを踏み、その炸裂の勢いを使って天へ舞った黒歌鳥が、今まさに終わりの歌を奏で出す。
セリオスだ。
啖呵に続く美しき、高らかなる歌声。セリオスの剣が蒼炎に燃え、蒼く蒼くモール・ヘイヴン広場の空を焦がす。 光に導かれるように、炎の鳥は今まさに蒼天に舞った。
その余りに荘厳な、幻想めいた光景に、黙示録教の信者達とて動きを止めずにいられない。
セリオスとアレクシス、彼等の間に、一切の打ち合わせはなかった。そうするまでもなく、光は黒歌鳥の行く道を遮らず、その道標となって輝くのみと知っているから。
「おおおおおおおおおぉっ!!」
歌が高まる。天を貫くようなセリオスの叫びに従い、根源の魔力が共鳴、増幅。セリオスの外套は炎に煽られ翼めいてはためく。掲げた剣から止め処なく蒼炎が迸り、夜空を灼いた。
――青い炎の一等星が、此度歌うは『蒼ノ星鳥』。蒼炎の星尾を曳く双翼。
セリオスは高めた魔力の全てを叩き付けるように、剣を一息で二度振るった。剣先から迸る蒼炎の闘気が、巨大な二羽の星鳥を形作り、声なき声で咆吼――そのまま、地面へ目掛けて急降下する。
「ば、莫迦なッ、」
「こんなことがッ――!」
支え合うように飛び落ち来る二対の炎翼。比翼の如くに落ちる二羽は、セリオスとアレクシスを象徴するかのようだ。神々しいまでのその輝きを見ては、信者らも教義を諳んずるどころではない。
やけっぱちな銃声と絶叫が鳴った。止まるはずもない。放たれた銃弾の全てを飲み込んで、蒼ノ星鳥が炸裂した。――蒼炎爆ぜて、地を嘗め尽くす! 半径六十メートル教のうち、炎が避けたのはアレクシスが立つ範囲のみ。
アレクシスの光がセリオスの炎を遮らぬように、セリオスの炎はアレクシスを避けて通る。焦土と化した地表に着地するセリオス、駆け寄りその背を固めるアレクシス。
当意即妙のコンビネーションの前に一瞬にして三〇名強が灰燼に返るが、それでもなお遠距離からの銃火は止まぬ。射程内は撃滅したが、未だ四方は敵だらけ。
セリオスは剣で、アレクシスは盾で銃弾を弾き飛ばし、肩越しに視線をちらと重ねる。
「まだこんなもんで終わりじゃないだろ、アレス!」
「当然さ。君の歌が響く限り――僕が膝を折ることはない!」
アレクシスは剣を天を貫くように掲げ、刀身に湛えた極光を斬閃として放った。遠距離からの銃撃を加えてくる教徒らに、地面を削り飛ばしながら光の衝撃波が迫り、避けきれぬ数人が吹き飛ぶ。
敵が動揺に浮き足立つのを見逃さない。セリオスとアレクシスは、示し合わせることすらなく、緩んだ方位の方向へ、全く同時に駆け出した。
「それなら、何曲だって聴かせてやる。ヘバるなよ、俺達のステージはここからだ!」
「いいとも。特等席だな――君の声が枯れるまで、踊ろうじゃないか!」
軽口一つ。
今一度、双星は流星めいて敵の群れへ迫る!
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
日埜・晴翔
◎連携歓迎
滅びの救済、ね。嫌いじゃねぇよ。そこがゲームオーバーじゃ無ければな。
後方支援、隠しキャラ撃破係するな~。
見通しが良くても障害物があるなら、地形の利用は必須。
それは向こうも同じ事。…お、なんかモグラ叩きっぽくね?(UC)
忍び足とジャンプを駆使して障害物へ接近。
敵が居そうなら踏みつけてみる。当たったらラッキー♪
居なかったら次だ次!モグラ叩きは制限時間内に数ぶん回せばスコア稼げるし。
獲物を持って向かってきてたら、カウンターで盗み攻撃でもしてみるか。
殴った奴らが回復したらニヤリと笑って。
死が救いなら、もっぺん死んでみる?
死を覚悟しても永遠に死ねないって、どんな気持ち?
つまんねぇクソゲーじゃん
●狂信者達のバッドエンド
目まぐるしく動く戦況。派手に前衛の猟兵達が暴れ、討ち漏らしを後衛の猟兵達が崩していくその傍ら。
正面から当たっても戦力の消耗を招くだけと理解しだしたか、信者達の動きが少しずつ変わっていく。
大群は通れずとも、十名足らず程度の小班ならば通れるような路に狙いを絞って突撃を駆けてくる敵が増えだしたのだ。
「――ま、分かってた。遅すぎるくらいだぜ。固いところには見切りを付けて、さっさと弱点探すだろ普通」
そんな路の一つで、男は――日埜・晴翔(嘘つき×快楽主義の軟弱メンタル・f19194)はぽつりと呟いた。ゲーム慣れした彼からしてみれば、敵の動きはいいだけ戦力を浪費してからの方針変更にしか見えない。遅きに失する。
「滅びの救済、ね。嫌いじゃねぇよ。そこがゲームオーバーじゃ無ければな」
そりゃ、哀しく終わるよりも救われてほしい。ゲームも物語も、意味も無いバッドエンドじゃ味気ない。
バッドエンドにしたって、スタッフロールも流れない、ゲームオーバーまがいの終わり方はまっぴらだ。
「――狂信者みたいなモブに殺されて死ぬなんて死に方に、スタッフロールがあるわきゃねぇ」
狭い路地の先から、複数の足音がどかどかと響く。
「さしずめ隠しキャラ撃破係ってとこかねぇ。――ハイスコア狙ったろうじゃん。モグラ叩きの始まりだ」
敵の銃に装備されたフラッシュライトが、サーチライトめいて路地裏を照らす。
敵を充分に引きつけ、晴翔はゲームキャラクターを複数体召喚した。晴翔の自作ゲームのキャラクター達だ。手の内のコントローラを操作、一斉に突撃させる!
「うおっ!?」
「敵だッ! こんな路まで固めているとは!」
信者の一人がほとんど反射的にトリガーを引き、闇をマズルフラッシュが斬り裂いた。それを皮切りに敵全員がアサルトライフルを構え射撃。路地裏にけたたましい銃声が響き、次々と火線がキャラクター達に降り注ぐ!
「お前らの狙いなんて見え見えだっての」
銃声響く中で嘯く。晴翔はぺろりと舌を出し、突撃させたゲームキャラクターの後ろを走った。ゲームキャラクター達は次から次へと銃弾を喰らい、電子ノイズを散らして掻き消えていくが、しかし晴翔を止めぬ限りゲームキャラクターは間断なく連続召喚される。
ゾンビアタック上等の足止めを喰らわせつつ、晴翔は狭い地形を生かし、跳んで壁を蹴り、ゲームキャラクターの相手にかかりきりとなった敵集団に上から襲いかかった。
「上から失礼っと!」
「ぎゃっ!?」
「ぶっ、」
「っでぇっ?!」
晴翔は次から次へと、銃持つ信者の顔面を踏み拉き、鼻を蹴り潰して、モグラ叩きの言葉通りに敵を踏みつけて回る。一度とて地に降りずに敵を踏んではひらりひらりと跳び上がる様子は、まるで雑魚を踏んで残機を稼ぐ、アクションゲームの自機めいている。
「っつ、おのれ!! 巫山戯た真似を!!」
「オレはいつだってマジでゲームを楽しんでるよ。お前らと違ってね」
銃を振り上げて狙ってくる信者の顔面を踵で射貫く。鼻血を散らしてよろめいた信者の手から、地に降り様にアサルトライフルを掠め取る。間髪入れず、近距離から敵にアサルトライフルを連射。
「ぐわあああああっ?!」
「クッ、侮るな! 我らが教義を思い出せ、滅びは――」「「「万物の救いである!」」」
身体を射貫いた銃弾は致命傷だったはずだ。しかし信者らは教義を諳んじて再生力を高め、銃創と打撲傷を再生し出す。
驚異的な回復能力。倒すには骨が折れる。
――しかしそれを見て、晴翔はにやりと笑った。
「死が救いだってなら、もっぺん死んでみる? 何回だって風穴開けてやるぜ。なぁ、死を覚悟しても永遠に死ねないって、どんな気持ち?」
晴翔はなおもゲームキャラクターを召喚して嗾け、アサルトライフルの銃弾を叩き込みながら敵に問いかける。悲鳴と苦悶の声が狭い路地裏に響いた。
生かさず、殺さず、死が救いだと謳うそんな欺瞞を引っ剥がし、彼らの心を叩き折るまで、
「そんなの、つまんねぇクソゲーじゃんなぁ」
皮肉に嗤う晴翔が、手を止めることはない。
苦戦
🔵🔴🔴
斬幸・夢人
◎
やれやれ、静かな分ゾンビのほうがまだマシだったかな
いいぜ、付き合ってやるよ
いくらでも救われるがいいさ
ただし、裁くのはテメェ等の神じゃねぇ
俺の意思と力――つまり地獄へ落ちろってことだよ、知障共
使用するUCは「神さえも覆せない反逆」
切り込んで切り刻む
敵の攻撃に合わせてカウンターで切り刻む
自分の攻撃と敵の攻撃の数だけ敵を切り裂く
ハッ、バカみたにたむろってきやがるっ
いいぜ、テメェらの神様に会いたい馬鹿からかかってきな
一つ、二つ、三つと四つ――とんで九つ!
さぁさぁ、俺も珍しく興味があるね
テメェ等みたいなのは何人お仲間が死ねばビビりはじめるのか
今後のためにも教えてくれよ、テメェ等の死でな
●神の教えを斬る
「やれやれ、叫ぶだけのゾンビのほうがまだマシだったな。下らねぇ能書きとガキの考えたような教義を聴かされる側の身にもなってくれ」
戦場のど真ん中、流れ弾が顔の横を抜けていくような激戦地帯で、肩を竦めて煙草に火を点けるのは斬幸・夢人(終焉の鈴音・f19600)。余裕のある所作で煙を吐く彼は戦場においては異質だ。すぐに信者の一団がそれに目を付けて突撃してくる。
「この聖戦の最中によくもそこまでの慢心を!」
「死ぬ覚悟は出来ていると見える、すぐに天に送ってやろうぞ!」
喚きながら突撃してくる敵の一団は銃を持たず、白兵武器――棍棒や鉄パイプなどを持つものがほとんど。武器には乾いた血の痕が克明に残り、きっと幾人もが犠牲になったのであろうと偲ばせる有様である。
夢人は目を細めた。彼は死者を悼む言葉を吐かぬ。過去を変えることは出来ぬと知っている。――しかしそれでも、信徒らの醜悪な教義を、憎む心が確かにあった。
咥えた煙草を吸い付けて、口の端から煙を吐き捨てる。
「いいぜ、付き合ってやるよ。そんなに救われたきゃ、いくらでも救われるがいいさ。ただし、裁くのはテメェ等の神じゃねぇ。俺の意思と力だ」
奴らの死の先に、救いなどない。
なぜなら、ここで夢人が、その意志と力を以て、
「――つまり地獄へ落ちろってことだよ、低能共」
奴らを、黄泉路に叩き込むからだ。
「何をブツブツと! 死ねェッ!」
先頭の二人ばかりが一息に襲いかかった。打撃武器による集団攻撃は、一方向からではそれこそ二人が限度。それ以上は、得物が干渉し合ってまともに攻撃できない。
――そして、たかだか二人が武器を持って襲いかかったところで、夢人に対して数的優位に立てるわけもない。
夢人は地を蹴って踏み込み抜刀。振り下ろされた鉄パイプを潜り抜けながら黒刀を流れるように振るった。
流水の如く剣が走り、鉄パイプを持つ腕を切って飛ばし、叫びを上げる前に喉を裂く。剣先が照り返す光が、まるで飛燕のように闇に舞う。
「な、なんだと……?!」
吹き出る血を背に、ゆらりと夢人は前方の敵を睨んだ。蹈鞴を踏む敵集団に、今度は己から突っ込む。敵集団、目測で二〇名超。正確な数を数えるのも面倒だ。
「ハッ、バカみたいにたむろって来やがって。テメェ等の神様に会いたいバカから掛かってきな、どうせ最後は全員仲良く地獄行きだがなァ!」
吼えながら敵集団の中を夢人が駆ける。振り下ろされる棍棒を断ち、鉄パイプを刀の腹で流しては返す刀で胴を薙ぐ。
「一つ、」
前宙しながら走らせた刀が二人の喉と肩口を裂き、
「二つ、三つ、」
降り様の突きがまた一人の喉を貫く。
「四つ――」
納刀、
鍔鳴りの音。
「――とんで、九つッ!!」
抜刀一閃!
神速の居合が、襲いかかろうとした五人の頸を、明らかな間合いの外から切断、撥ね飛ばす!
「バカな……なんだこいつは?!」
「強すぎる……!」
「テメェ等の教義とやらは聞き飽きたが、今、ひとつ――珍しく興味が湧いたことがある。テメェ等みたいな狂信者は、いったい何人お仲間が死ねばビビりだすんだろうな?」
黒刀から血を払い、夢人は今一度鞘に刀を収めた。
抜刀術とは納刀姿勢からの即応技術を示す。あくまで非常手段であり、通常、納刀することによるアドバンテージなどは無いはずだ。
――しかし夢人の抜刀術は、現実として射程の外から人を斬る。そうするための型、そうするための構えである。
「――今後のためにも教えてくれよ、テメェ等の死でな」
ニヒルに笑い、夢人は今一度愛刀の鯉口を切った。
畏れに叫ぶ信者らの間を、再び死の斬風が駆け抜ける!
成功
🔵🔵🔴
薄墨・ヴィーシュニャ
◎
……どうして、そんなこと、するの?死んだら、それで終わり、なのに……
お話、出来るのに、どうして傷つけるの?何か理由があるなら、ちゃんと言葉にしよう?
……わかってる。もう何を言っても、意味ないって。
本当は、したくない。けど、誰も殺されないために。殺させないために。
ここは、通さない、から。
UC【呪刃迷宮】これで道を塞ぎ、敵を閉じ込める。
通りたければ、進めばいい。……無事、通り抜けられたらだけど。
全ての刃に【呪詛】を込めて、凶暴化させておいたから。ここで、さよなら、だよ。
ばいばい。もう会うことはないけれど、次は、人の痛みがわかる、いい子になってると、いいね。
●迷い路に刃
「人を殺して、殺して、たくさん傷つけて……どうして、そんなこと、するの? 死は、救いなんかじゃない。死んだら、それで終わり、なのに。お話、出来るのに、どうして傷つけるの? 何か理由があるなら、ちゃんと言葉にしよう?」
砲火銃火、信者らの悲鳴と血飛沫飛び散る鉄火場で、場違いにすら聞こえる少女の声が響いた。
白い髪、白い肌、白い瞳……挙げ句、その服までもが真っ白い。戦場にまるで似つかわしくない無垢な色彩の少女――薄墨・ヴィーシュニャ(聖なる呪いの刃・f23256)である。
「その時点で貴様と我らは相容れぬ! 貴様は死は終わりといい、我が主は死をはじまりと定められた! なれば最早、言葉にて理解し合おうとすることそのものが不毛よ。それともそれすら解さぬか!」
金切り声で言葉を連ね、一人の信者がヴィーシュニャ目掛けアサルトライフルのトリガーを引いた。秒間十三発で五・五六ミリメートル小口径高速弾が激発し、ヴィーシュニャを貫かんと吹き荒れる。
ヴィーシュニャは即座に呪刃『緋寒』を抜剣。身の丈に余るその大剣を盾に、銃弾を弾きながらバックステップ。狙いを外すように横駆ける。
「者共、異端ぞ! あの子供もまた異端ぞ!! 我らが主の教義に反する異端、悉く滅ぼすべし!」
「「「我らが主に反する異端、悉く滅ぼすべし!!」」」
銃を放ちながら、装飾つきのフードを目深に被った信徒が吼えた。その声に応えるように、敵の一団が沸き立つような声を上げる。声はすぐに伝播し、ヴィーシュニャの命を断たんと多数の敵が彼女の周りにハイエナめいて迫る。
――ああ、これも分かっていたことだ。
あの狂信者達に、何かを説いて理解されるわけがない。彼らの行動を糺そうとすることに、最早意味などないのだと。
四方から放たれる銃弾が、盾として振り回す緋寒の刀身に傷を刻み、火花を散らす。数発の銃弾が防刃コートにめり込み貫通して、脇腹を、腕を穿つ。
――本当は、誰も殺したくはない。誰も死なずに済むのなら、それが一番に決まっている。
けれど。このまま言葉だけで済ませようとすれば、その代償は誰かが血と命で贖うことになる。
だから、ヴィーシュニャはそれ以上は迷わなかった。彼女は誰かの死を忌避する。しかし、それは彼女が『殺せない猟兵』であることを意味しない。
死なせない為に殺す。彼女には、それが出来る。
「ここは、通さない、から」
「貴様一人に何が出来るか! 全員突撃、踏み潰して進むぞ!」
おおっ!!
鯨波の声が湧き、少女を目掛けて二十数名の小隊がライフルを連射しながら突っ込む。
ヴィーシュニャは大きく飛び退き、手にした大剣を、力の限り地面に突き立てた。
――その瞬間。
地より無数の呪刃が飛び出て、迫る信者達の行く手を遮る。
「なっ――?!」
ギャりん、じゃりンじゃぎっじゃり、ぎゃぎぎギがぎギギぎッ!!!
軋む音立てて刃が伸張し、分岐し、或いは新たに地より生え、無数の刃が敵を取り囲む。ユーベルコード『呪刃迷宮』。刃は瞬く間に塀めいて彼らを覆っていく。
「貴様ッ――なんだ、なんだ、これはっ!!」
鋭い刃壁に縁取られた、複雑怪奇な道筋の迷宮が組み上がっていく。ドーム状に教徒達を覆っていく呪刃迷宮の内からの怨嗟の声に、ヴィーシュニャは無温の声で答えた。
「……これがわたしにできること。進みたければ、どうぞ。きっと難しいけれどね。――全ての刃に呪詛を込めたの。だからきっと、ここで、さよなら、だね」
「巫山戯るなっ! こんな、こんなことが――」
迷宮の刃が血を求めてジャリリと軋む。呪刃迷宮が完成しようとしていた。
声も、じきに聞こえなくなるだろう。
「ばいばい。もう会うことはないけれど、次は、人の痛みがわかる、いい子になってると、いいね」
哀れむような声が届いたかどうか。
閉じかけの呪刃迷宮の内側から、刃から逃れようと走る信者の裏返った声と――聴くに堪えない、貫かれた男の断末魔が連なった。
迷宮は閉じ。
聞こえた声も、また、それで最後であった。
自爆も骸の風もまた――皆迷宮の内側で潰えるのみ。
成功
🔵🔵🔴
ムルヘルベル・アーキロギア
◎
同行:織愛/f01585
そもオブリビオンとは「そういうモノ」であるがゆえ正論は通じまいが……
しかし、こやつらは確かに過去に存在した者どもであることは確か
これほどの終末思想に至るこの世界、一刻も早く救済せねばな
と、決意を新たにしている暇はないようだ
彼奴らの狂信は馬鹿げたタフネスを発揮するようだ
織愛が反撃を受けぬよう、注意深く【T.T.Y.F】を使いとどめを刺していく
懺悔せよとは言わぬ、だがその狂気に今の世界を生きる人々を巻き込ませはせんぞ
……しかし、織愛もだいぶ熱が籠もっておるな
まあ、あれなりに思うところあるのだろうが……
狂気を覗き込む者はなんとやら、だ
引きずり込まれるなよ、織愛
三咲・織愛
◎
ムーくん(f09868)と
そう……死が救いとなることも……あるでしょうね
そんな時と場合が、決して無いとは言い切れない
けれど、望まぬ者に己が教義を押し付ける姿の、なんと浅ましい事でしょう
人の命をなんだと思っているのかしら
生を尊べない者にこそ、死が相応しいと思います
私、怒ってますから
ちょっと酷い事をするつもりですけど、付き合ってくださいね、ムーくん
分からせてあげましょう。人の痛みを、生への渇望を、
――奪う事の愚かさを!
武器は使いません。身一つで距離を詰め、掴みかかり
【ものすごく痛いこと】をします
治療するというのなら好都合、治っても治っても地面に挨拶させてあげます!
あなたの救いはいつ訪れるのかしら
●人の形をした災害
銃弾と断末魔、血飛沫と怒声。
引っ切り無しに飛び交う争いの象徴。その間を、二人の猟兵が駆け抜ける。
「そう……死が救いとなることも……あるでしょうね。そんな時と場合が、決して無いとは言い切れない」
たとえば死んでしまいたくなるほどの苦痛。不治の病床の末期。苦しみが終わることだけが救いであるとしたなら――そこにおいては、全てを打ち切る『死』は、確かに救いたり得るだろう。
三咲・織愛(綾綴・f01585)はコーラルピンクの瞳を、今し方門を潜り新たに攻め寄せる一団に向けた。
「けれど、望まぬ者に己が教義を押し付ける姿の、なんと浅ましい事でしょう。このモールに生きる人たちは、今も懸命に足掻いている。立ち止まれば繋がらない命を繋いでいく為に、必死に歩き続けている。死にたいのなら、この過酷な世界の中でとうに足を止めているはずです。――人の命をなんだと思っているのかしら」
ふつり、ふつりと沸き立つような怒りが、声の根底にあった。
織愛は声を荒げない。ただ、静かに静かに声を重ねる。
「――生を尊べない者にこそ、死が相応しいと思います」
これは怒髪天だ。聞き慣れているはずの彼女の声が、果てしなく重く熱く静か。本気で怒ったときに彼女がこのような声を出すことを、ムルヘルベル・アーキロギア(宝石賢者・f09868)は知っている。
「……そもオブリビオンとは『そういうモノ』であるがゆえ。正論は通じまいよ」
同情するわけではないが、ただ気の毒だ。これから彼女と相対する、全ての侵略者が。
弁護するわけでもないが一言、彼女の怒りを宥めるように言って、ムルヘルベルは大きく息をつく。
「――しかしてこやつらは、この末法の世界に、いつか、確かに存在した『過去』。これほどの終末思想に至るこの世界、一刻も早く救済せねばなるまいな。……織愛よ、まずは手始めにこの案件を無事に終わらせるとしよう。全く、決意を改める暇もない」
破られた正門を越え、教義を叫びながら攻め寄せる敵の一団を睨み、ムルヘルベルは走る速度を緩めながら織愛の背に告げる。
「彼奴らの狂信は馬鹿げたタフネスを生むようだ。倒すのならば速攻が吉。努々忘れることなく征け、織愛よ。ワガハイが背を護る故」
「ええ。……でも、ちょっとだけ。これは、我が侭ですけれど。――私、怒ってるんです。ムーくん」
知ってた。
唇を引き結んで顎に陰影を作るムルヘルベルをよそに、織愛は底冷えのする声で続ける。
「ちょっと酷い事をするつもりですけど、付き合ってくださいね」
「……可能な限りはな」
「ありがとうございます。――じゃあ、行きますね」
速度を緩めるムルヘルベルとは対照的に、前傾姿勢で速度を上げる織愛。ムルヘルベルは背を見送りながら、指先に魔力を練り上げる。
――ああ、本当に気の毒に。
敵は、織愛があの美しい面差しの下に隠した怒りの総量を、今から厭というほど知ることになるのだ。
「分からせてあげましょう。人の痛みを、生への渇望を――奪う事の愚かさを!」
織愛は無手のまま、力の限りに爆ぜ駆けた。
「突っ込んでくるぞ!」
「素手だ! 撃ち方構え!」
織愛が徒手空拳であることを悟るなり、信者達は即座に足を止め、遠距離からの射撃を選ぶ。しかし足が止まると言う事は、
「撃てェッ!!」
「させぬよ」
賢者の射程内で、無防備を晒すという事に他ならぬ。
ムルヘルベルが構えた手、その五指に遊色の光が点る。ユーベルコード、『T.T.Y.F』の光だ。巨岩を押すかのように両手をぐいと突きだすなり、両手の五指から虹の光が迸った。
極彩色の光閃が夜を裂く。合わせて十指よりホーミング・レーザーめいて疾る光が、信者達の武器を、身体を射貫いて射撃を妨害する。
「ぐわっ!?」
「くっ、焦るな! 教義を唱えよ、この痛みも我らが愛しき滅びの先魁ぞ!」
上位信徒の声に触発されるように念仏めいて教義を唱え出す信徒達。傷が見る間に治癒される。それを見ながらも織愛は止まらない。そればかりか、トップスピードを更新して迅走する。武器すら持たず、常ならば共にある筈の藍色竜の加護も無く、何をしようというのか。
決まっている。
『ものすごく痛いこと』をしようというのだ。
「はあああああああああああああっ!!」
織愛は吼えるなり疾風めいて前衛に近接した。
「速ッ……!?」
あまりの速さに敵は反応しきれぬ。銃を上げるが遅い。織愛は敵の銃口を手で払いのける。激発。あさっての方向に飛ぶ銃弾が何かに着弾するその前に敵に喉輪を喰らわせる。
「ごえっ!?」
「やあああああああッ!!」
喉を掴んだまま地面に叩き付け、その勢いのままに地面を削り飛ばしながら滑る。
「――ぉ、ご、、……! 、……ッ!!」
喉を捕まれている故に哀れな教徒の口から声は出ない。余りのことに呆気にとられる敵が我に返る前に、再びムルヘルベルの閃光が降り注いだ。
「オヌシらは逆鱗に触れたのだ。同情はせぬ。哀れみはするがな。――懺悔せよとは言わぬ。しかしその狂気に今の世界を生きる人々を巻き込ませはせんぞ」
呟きながら指先に魔力を注ぐ。天に突き上げるように掲げた両手指の先から溢れた光が天に向かって光線を放った。遊色の光線は射出後すぐに敵を見つけたように軌道をねじ曲げ、光の雨となって敵の頭上より注ぐ。
嵐のように降り注ぎ、敵が身を守り転げ回る中、織愛だけが躊躇いなく動く。賢者の光が己が身を穿たぬことを知っているが故に。
地面で敵の背を削りながらの片手半倒立滑走を、敵の頸を突き放すことで終え、空中で一転して着地するなり次なる敵へ襲いかかった。手近な信者に的を絞り、距離を詰める。
「はっ……!?」
光の雨より逃げ惑う彼からしてみれば、目の前に突如織愛が現れたようなものだ。
反応する間もなく胸ぐらを掴み、握り固めた拳で単純に殴る。頬骨が砕け奥歯が三本抜けて空中に飛ぶ。一撃KO。ぐったりと力の抜けるその身体を離さず、腕を取り、
「治療するのでしょう。して御覧なさい、好都合です。――何度治っても地面に挨拶させてあげます!!」
力の抜けた身体をさながら棍棒めいて振り回す。無造作に。軽々と。
「ぎゃああああああっ?!」
「う、うわあああああ!!!」
鬼か。悪魔か。人の形をした台風か。否。三咲・織愛である。
凄まじい力で、人体を鈍器代わりに振り回し、近くの敵をその竜巻めいた暴力に巻き込んで吹き飛ばす。打撲挫傷骨折の見本市の開催だ。天より光の雨、地には暴力の竜巻。逃げ場などありはしない。
「幾度でも再生するというなら、あなた方の救いはいつ訪れるんでしょうね? ――早く来るといいですね、救いが!」
悪鬼羅刹もさながらの勢いで暴れ狂う織愛。
その背を見ながら、ムルヘルベルは目を細めた。
「――ずいぶんと熱が籠もっておるな。分かっていたことではあったが。……思うところがあるのが分かるが、引きずり込まれるなよ、織愛」
ムルヘルベルは憂えるような声で言うと、光の狙いを敵の急所に絞る。これ以上の痛苦を味合わせまいと、数人を、心臓と頭部を貫いて滅殺しつつ――
「狂気という名の深淵を覗く時……狂気もまた、オヌシを見つめ返しているのだから」
そう、慨嘆げに呟くのであった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
矢来・夕立
◎
一人を通したら何が起こるか想像に難くありません。
そしてその一人を通すためなら全員が喜んで死ぬ集団だ。
ゼロ失点でなければ我々の勝ちとは言えません。
――視界を遮るものは殆どなし。
まんなかであれ最終防衛線であれコレが最適でしょう。
可哀想に。運がありませんでしたね。
【紙技・冬幸守】。
こいつらは静かなイイ子ですが、喧しくしようと思えばできるんですよ。
たかだか紙の羽音ではありますけれど。
ご自慢の教義は聞こえます?
…いえ、主義は理解できますよ。
生きるというのは、苦痛の連続ですから。
看過できない理由はふたつ。
ひとつめ。
排除せよ、通過を許すな、とのオーダーに反する。
もうひとつ。
お前らの態度が気に入らない。
●造花が嗤う
滅び大好き、破滅大好き、だから一緒に滅びましょう。
そんな理屈を振り回す連中を、一人でも背後に通せばどうなるか。
奴らは殺す。たった一人でも、爆弾抱えて多数の中に飛び込んで、嫌になるくらいの数を殺す。
そしてそのたった一人走り抜ける聖戦士を生むために、何人だってバンザイして死ぬ。我先にと争って死ぬ。
「なので、そう。ゼロ失点でなければ我々の勝ちとは言えません」
モールの入口脇の狭苦しい路地から、一人の少年が滑り出た。手にした脇指はべったりと血で濡れており、既に数人を屠ったのであろうことが見て取れる。詰め襟に眼鏡。逆手に握った脇指が、彼が真っ当な剣術の使い手では無いことを語る。
この忍び、名を矢来・夕立(影・f14904)という。
彼は知っている。敵に対する嫌がらせと謀略にかけては一家言ある彼だからこそ、敵の性質は嫌と言うほど分かっている。
故にまずは飛び込んできそうな所に網を張り、敵がどの程度の頻度で、何処から漏れてくるかを把握した。その上で、前線から攻め寄せる敵を始末し、元を絶とうというのだ。
「始めますか」
血を拭った刀を納めると夕立は戦場へ飛び込んだ。戦場の騒ぎは密やかに駆ける夕立の存在を覆い隠してくれる。
夕立は先程の路地および、その左の路地あたりを目掛けて駆けてくる敵集団がいると既に看破している。眼鏡の下で目を細めた。おそらくはそのコースを辿るであろう敵集団に目星を付ける。
(視界良好、遮蔽物無。風速軽微、鏖殺日和)
腰のホルダーからひと束の千代紙をとり、振り捌いて扇状に広げ、一度弾いて宙にばらまいた。夕立を中心として乱れ舞う千代紙が、ひとりでに捩れ身悶えし、やがてコウモリの形に折りあがり、夕立に侍るように羽撃く。
忍法『紙技』、『冬幸守』。
「可哀想に。運がありませんでしたね」
小指の爪垢ほども哀れんでいないとはっきり分かる口調で夕立は嘯き、速度を速めた。正に疾風めいて敵集団へ距離を詰める。
敵集団の左方へ回り込み側撃。間近に迫った夕立の足音に、羽撃く冬幸守に、数名が気付く。
「なんっ――」
「鏖だ」
遅い。それでは遅い。紙忍、夕立を囚うるに能わず。
夕立は冬幸守を嗾け、手を閃かせて再び脇指を抜刀した。
羽撃く紙の蝙蝠が次々と信者達に襲いかかり、その耳を鼻を頬を、露出した肉を咬み千切る。
「ぎゃああっ?!」
「糞ッ、なんだこいつは、紙細工……?!」
「紙は紙でもよく効く暴力です。じっくり味わえ」
夕立は嘯きながら隙の出来た敵の間を駆け抜け、行きがけの駄賃に三人ばかりの首を掻っ捌いて血の霧を散らす。
「おのれッ!! 教義を諳んじよ、我らには主の加護がある!」
「我ら黙示録の使徒」
「滅び恐るるに能わず」
「異教を滅し、我らが主に帰依せしめるものなり……!」
次々と教義を唱える信徒達。冬幸守が刻んだ傷を瞬く間に癒えだす。しかし夕立に慌てた様子はない。予想していたとばかり、ぱちん、と指を鳴らす。
――瞬間、騒音があたりを席巻した。蝙蝠の紙の翼が空気を孕み、けたたましい羽音が連なる。
「――?!」
「――!」
教義を掻き消すほどの羽音。――そう、声が届かねば、彼らのユーベルコードは発動しない。
――こいつらは静かなイイ子ですが、喧しくしようと思えばできるんですよ。たかだか紙の羽音ではありますけれど――ご自慢の教義は聞こえます?
夕立は口を動かし問うたが、その声も敵には届かない。冬幸守が再び耳や鼻を噛み裂き、ガードを上げさせ、無防備になった首元を食い千切り、次々と信者を屠っていく。
駆け抜け、鏖殺の限りを尽くしながら夕立は思う。
一切皆苦。生きるというのは苦痛の連続だ。故に、主義は理解できる。死こそ救いという考え方自体は。
しかし看過できない理由がふたつある。
ひとつ。
あの灰色の男から受けた、排除せよ、通過を許すな、とのオーダーに反すること。
そして、もうひとつ。
「――お前らの態度が気に入らない」
氷の温度の声を、次の瞬間死ぬ信者だけが聴いた。
ゴミのように殺してやる。
だからゴミのように死ね。
朱刃閃く。冬幸守の羽音に、信者の悲鳴がいくつも呑まれて消えた。
羽撃く蝙蝠に返り血が跳ねて染まる。
――ああ、まるでいくつも花弁が舞っているようだった。
大成功
🔵🔵🔵
清川・シャル
シャルの背中にはモールがドーンと、っていうシチュエーションで。
背水の陣、なんてね
シャルの陣は特殊なんですよね
こうやります、こう
とか言いながら、「押し付けがましい宗教なんて御免こうむりますよ〜」等と、挑発技能はないのでささやかですがやってみましょう
何かしら感情を向けられたらUC発動です
ようこそシャルワールドへ。
Amanecer、ぐーちゃん零、それから氷柱込のブリザードが乱舞します
Amanecerでシャウトして聴覚攻撃も行っておきましょうか
●ガンパレード
戦場中程。徐々に陰りつつある敵兵の勢いだが、それでも未だ健在の敵兵多数。
「しぶとい異教徒どもめ! どうあっても帰依しないと見える」
「ならば滅ぼすまで! 滅ぼして救うまで!」
「それこそがこの終焉の世界の、唯一の救済なれば――!」
黙示録教の信徒達は口々に教義を唱え、モール・ヘイヴンを滅ぼすべく走り来る。戦闘能力を、回復能力を増幅し、猟兵など蹴散らせと言わんばかりに銃を連射しながら、数にものを言わせて猟兵達の防衛戦を侵徹せんとする。
そんな中。数十名の信者らの行く手に、酷く小柄な少女の影一つ。
「そんな救いを誰が欲しいって言ったんですか。少なくともシャルがここの人たちでしたら、そんな救いなんて御免だ~! って言いますけどね」
モール奥を背に、腕組みをして仁王立ち。
これ以上は退くも許されぬ背水の陣。
幼き面差しに揺るがぬ決意と笑みを浮かべて、清川・シャル(無銘・f01440)が立っている。
「押しつけがましい宗教なんて御免こうむりますよ~。思想の押し売り、ダメ、ゼッタイ! です!」
胸を反らしてふんす、と鼻を鳴らす愛らしいシャルの様子に、駆け寄せる信者らも暫時、足を止める。
その中の一人、上位教徒らしき、ローブに衣装を凝らした男が『やれやれ』とでも言いたげに首を振った。
「異教徒の子供では世の理が分からぬも自然なことよな! この世には貴様の知るものではない、遙かに優先されるべき絶対の真理があるのだよ。そこを退くがいい、そうすればすぐには殺すまい、今しばらく我らと共に滅びの価値と真理を学び、我が主に帰依――」
「あ、それナシです。ていうか、絶対正しいことなんてあるんでしょうか? シャルは分かりませんけど、絶対正しい事なんてあったら、争いなんて起きませんよね。今、ここでシャル達が戦っていることが、あなたたちが絶対に正しいわけではないという証明なんじゃ?」
とくとくと騙る言葉に無垢に突き返すド正論が、上位信徒の鼻っ柱を突き刺してへし折った。――無邪気さとは時として、無上の挑発となり得るものだ。
上位信徒の頬が見る間に紅潮。わなわなと震える手で、抱えた機関銃を持ち上げる。
「異教の幼子に教義を語る時間ほど無駄なものもない……!! 殺せ、者ども、殺せ!! 背教者だ、異教徒だ、容赦は要らぬ! 帰依の見込みもない!!」
号令に従い、十数名の信徒がシャル目掛けてトリガーを引く。憎悪と、殺意とを込めて。
――刹那、
「ようこそ、シャルワールドへ」
シャルは淡く微笑み、呟いた。
ユーベルコード、起動。これは一方通行の慕情に似た結界。
――『片想』。
けたたましい音を立てて、無数の火花が宙に咲いた。
結界が縦断を遮ったのだ。シャルは、敵を前に腕組みをして仁王立ちしたその時から、既にこの結界を展開していた。
「シャルの陣は特殊なんですよね。――どうぞ、召し上がれ!」
『片想』は、敵の攻撃を通さず、シャルの攻撃を通すまさに一方通行の結界。シャルに何らかの情を抱いたが最後――
彼女の後ろに展開した、雷神太鼓めいたスピーカー群から熱気と打ちのめすような音圧が発され、その手に填めたメリケンサックから冷気舞い、宙に析出した氷柱が信者らを睨み。最後に、片手で構えた十二連装グレネードランチャーの砲口が黒光り。
明らかなる過剰火力を、目を見開いた信者らが制止する間すらなく――
一斉射が、結界を通り加速する。
轟音が、世界を揺るがした。
結果だけ記そう。
十数名の信徒は、この世に肉のひとかけらとて残らなかった。
あとに残ったのは、巨大なクレーターだけである。
成功
🔵🔵🔴
鷲生・嵯泉
そんな世迷言を教義なぞとは、よく云ったものだ
勝手な言い分に付き合う義理も義務も無い
滅びだの終焉だの、其れを救いだと思うならお前達だけで滅べ
しかし流石に其の数を一々相手にするのは鬱陶しい
烈戒怒涛――縛を解く
衝撃波と組み合わせて追い込み誘導し
数が纏まった所で怪力乗せたなぎ払いにて蹂躙し叩き潰してくれる
攻撃は戦闘知識と第六感の先読みにて
可能な限り近寄らせずに躱し、武器受けにて打ち落とす
多少の傷ならば構いはせん、激痛耐性で捻じ伏せ無視する
くだらん戯言を喚くな、耳障りだ
……死が救いと為る事がある事を否定はせん
だが其れは、自らの深奥が望んだ時のみこそ能う結末
他者が押し付ける其れに何の救いが在るものか
●剣精纏身
滅びの向こうに楽園がある。そう唱えながら押し寄せる数十名の狂信者達。
その先数十メートルの位置。逃げるでもなく、焦るでもなく、ただ水の流れるようにゆらりと――長身の男が身構えた。
「くだらん。そんな世迷言を教義なぞとは、よく云ったものだ。こちらには勝手な言い分に付き合う義理も義務も無い」
男は手に黒き刃を抜く。黒剣、『縛紅』。数十人の突撃とその鬨の声の前には、彼の声は余りに小さくか細く、すぐに飲み込まれてしまうかに思われた。
だが。
男の声に恐れは無く、唯々その手にした刃のように真っ直ぐに凜と鳴る。
「滅びだの終焉だの、其れを救いだと思うならお前達だけで勝手に滅べ。誰にも累が及ばぬほどの遠くでな。そうするつもりが無いのなら、」
男は後ろ足を引き、踏み込みの予備姿勢を作った。
「――ここで私が滅ぼしてやる。一人残さず」
静かなる声に、烈々とした熱を湛え。
鷲生・嵯泉(烈志・f05845)は、群れ成す敵に言い放つ。
それを聞いてか聞かずにか、走り来る敵集団の先頭に立つ男――上位信徒と思しき男が、哄笑を交えて叫んだ。
「異教のものは一人として許さぬ、全員我が主の教えに帰依するか、はたまた死して救いを見るか! そのいずれかよ! 立ち塞がるならばここで死ね! さもなくば頭を垂れて恭順せよ――!」
「いずれも御免だ。――縛を解く。是を以て約を成せ」
嵯泉は一言。剣精の封印を文字通りに解き、己の命の蝋を燃料としてその身に権能を纏う。
圧倒的な重圧、プレッシャーを背負う嵯泉に、走る信者らが目を瞠ったその次の瞬間――嵯泉は消えた。――否。消えたかに見えるほど、疾く、鋭く踏み込んだ。
相対距離三十メートル余りが、瞬く間に縮む。
地面が爆ぜる。並の視力では最早彼を捉える事は叶わない。その爆ぜる地の軌跡で姿を追うのが精一杯。
剣精纏身、『烈戒怒涛』。
その身に纏う剣精は、嵯泉の斬撃、そして打撃の効果範囲を拡張し、行動速度を増幅する。
「は、速いッ?!」
「ええい怯むな、撃て撃て撃て撃て!!」
銃声が鳴り響く。しかし射撃が来ることを嵯泉が予測せぬ訳もない。稲妻めいた歩法で銃弾を掻い潜りながら、嵯泉は射程外より黒剣を振るった。剣気漲るその刃から、衝撃波めいて剣気そのものが遊離し、『飛ぶ斬撃』と化す。
「うわあああっ!?」
「ぎゃああ!!」
空気を歪めて翔ける『飛ぶ斬撃』が数名の腕や足を斬り飛ばした後に衝撃波を撒き散らして炸裂し、敵集団の足を止める。
「おのれ、よくもッ!」
「恐れるべくもない! 教義を唱えよ!」
信者達も狂ってはいるが莫迦ではない攻撃の小隊を掴めずとも、嵯泉が刃を振るう動きに従って発生するその斬撃波を避けるように動きながら、戦闘力と治癒力を高めるべく教義を唱え出す。
「――くだらん戯言を喚くな、耳障りだ。……確かに、死が救いと為る事がある事を否定はせん。だが其れは、自らの深奥が望んだ時のみこそ能う結末。他者が押し付ける其れに何の救いが在るものか」
死を、滅びを賛美する彼らの声に、嵯泉は苛立ったように斬撃波を連射しながら言う。
「戯言かどうか確かめるが良い。我らはこの教義によって無敵となる!」
「「「「「我ら黙示録教徒、滅びを恐れず! 死は親しき隣人なれば!!」」」」」
だが信者達は教義を唱和しつつ、鋭い動きで回避する。
「その小技も最早通じぬ! 死ぬがいい!」
嵯泉を物量で圧し潰すように、銃を連射しながら詰め寄せる敵の群れ――
しかし、
「――ようやく纏まってくれたか。其の数を一々相手にするのは骨が折れるのでな」
「えっ」
それすら術中。
気づけば、教徒らは散開を許されず、団子状態で嵯泉に突っ込んでいる。
斬撃波による回避誘導。第六感と、戦場における心理・思考把握の成せる技。
誇るでも、驕るでもなく、嵯泉はぐっと身体をひねり、最大の剣気を込めて、
「雑魚は纏めて潰すに限る」
全力一閃、薙ぎ払い。
剣気が刃を延ばしたかのよう。間近に迫った敵集団を、一人残らず、剣気の効果範囲に捉える。
天地両断の一閃が、悪態も命乞いも怯懦も許さずに、生き延び走り来た数十名を、上半身と下半身に両断した。
「ば、」
「ばか――な……」
上半身が地に落ち、下半身はそのまま数歩走った後に倒れる。
――嵯泉は倒れる骸を跨ぎ、前に進む。このまま、力の続く限り殺し続ければ――
きっと、其の分死ぬ人間の数が減るだろう。
大成功
🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『『超重戦車』スーパーモンスター』
|
POW : ウルトラ・ザ・キャノン
【旧文明の国際条約の破棄】を代償に自身の装備武器の封印を解いて【主砲の砲弾を大都市を一撃で消滅させる砲弾】に変化させ、殺傷力を増す。
SPD : 加農・ファランクス
レベル分の1秒で【全砲門に砲弾を再装填し、連続で砲弾】を発射できる。
WIZ : ゴールキーパー
【連続で射撃攻撃を行う、大口径の車載機銃】が命中した箇所を破壊する。敵が体勢を崩していれば、より致命的な箇所に命中する。
イラスト:8mix
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「アララギ・イチイ」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
殺して、殺して、殺して、殺した。
押し寄せてきていた信者の軍勢は、猟兵らの健闘により徐々に少なくなっていく。タイトな戦線に余裕が生まれ、パワーバランスが猟兵の側に傾く。当然だ。そもそも、信者達の個々の戦闘能力は猟兵と比べるべくもない。一人で数十名という信者と渡り合う猟兵すらいたのだ。信者達の強みは数であり、それが喪われ、ひとたび猟兵達が優位に立てば、決着が付くのはそれこそ時間の問題と言えよう。
戦闘は徐々に集束に向かっていく。
そんな中、追い詰められた一人の上位信徒が、狂ったような笑い声を上げるなり、己が首にナイフを押しつけた。
「――おお、口惜しい。死ぬ事がではないぞ。この目で――貴様らの滅びを見られないのが、口惜しいのだ。貴様らに滅びの祝福あれ、我が神の力の前にひれ伏し給え!」
彼は狂的な笑みを浮かべたまま、迷いも躊躇いも無く自分の首を掻き斬った。血が噴き出し、心臓の爆弾が爆発。大規模な疑似オブリビオン・ストームが巻き起こる。
吹き荒れる骸の風に、猟兵達は飛び退いて防御の構えを取る。――そうするまでもなく、疑似オブリビオン・ストームは巻き上げた荒塵を残して、徐々に消えていく。
「――……?」
一人の猟兵が、その向こう側に目を凝らした。
荒塵の遙か向こう。
なにか、巨大な――建造物のようなものが見えた。
「――なんだ、アレ」
あんな建物があったろうか。否。なかった。先程までは存在しなかったはずだ。
アレは何か、と考える前に――闇夜を斬り裂く砲声と巨大な火球めいたマズルブラストが中空で炸裂した。建造物の方向で、突如として何かが炸裂したのだ。
火線が迫る。……それは、巨大な砲弾であった。
「ッ!!!!」
一人の猟兵が地面を蹴って駆けた。アレはまずい、と本能的に察知したのだ。突き出た鉄塔を蹴り跳び上がり、手にした武器を力の限りに振るった。その尖端から迸った衝撃波が、砲弾を真っ向から叩いて起動を上方に逸らす。
CRU-TOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOM!!!
凄まじい爆音が響き渡り、夜空がまるで太陽が顔を出したように、赤光に焼ける。
その砲弾の爆発が、奇しくも遠方にある建造物の姿を照らし出した。
「――冗談だろ」
呆然と呟く猟兵がいた。呆れたように肩を竦める者もいた。
それは、戦車であった。しかし縮尺がおかしい。基地そのもののめいたサイズの巨大戦車だ。キャタピラだけで通常の戦車か、それ以上の大きさがあり、あらゆるものを踏み潰して壊してしまえそうなサイズをしている。
幾人かの、望遠能力を持つ猟兵らが、そのボディにペイントされた『黙示録教イ組第六支部 移動基地』の白い文字を見て眉をひそめる。
怪物級の大型戦車が微速前進でこのモール・ヘイヴンに近づいてきている……!
大軍が無尽蔵に供給されていた理由が分かる。あの基地にいた兵員が、操縦担当と砲手を残して残らず武器を持ち突撃してきていたとするのならば、あの戦力にも納得がいくというものだ。
――兵員による制圧、一般人や資材の略取が不可能であると見るや、全てを破壊する方向に舵を切り替えたのだ。
「あんな砲弾がモールに着弾すれば、死人一人二人どころの騒ぎじゃないぞ」
「最後の最後でヤケクソなモン出しやがって。布教が失敗したからって、ムキになるにも程があるってもんだ」
「……砲弾を止めるのと、あれを破壊するのと。どちらにも戦力が要るな」
「やってやるわ。要は、壊せば良いんでしょ」
猟兵達は口々に声紡ぎ、武器を構えた。迫る超弩級巨大戦車を相手に、いささかも戦意萎えることなく!
そう。きみ達がアレを壊さねば、今度こそ天国は終わってしまう。武器を取れ、目を開け。己が敵を睨め。
――あれが、最後の天国侵犯だ!
ザップ・エム
荒塵の向こうの奴らを、撃て!!
敵対象、黙示録教イ組第六支部移動基地。
識別名『超重戦車』スーパーモンスター!
グッドラック、イェーガー!!
≫≫≫≫≫MISSION UPDATED.≪≪≪≪≪
【最優先事項】
作戦に参加する猟兵は、『防衛』をするか『攻撃』をするか、プレイング戦闘に明記のこと。
番号による略記をしたい場合は以下の通り。
1:防衛
2:攻撃
【Summary】
◆作戦達成目標
『超重戦車』スーパーモンスターの破壊
◆敵対象
『超重戦車』スーパーモンスター
◆敵詳細
黙示録教イ組第六支部移動基地。
文明崩壊以前に建造された巨大戦車。内部には未だ黙示録教徒が多数搭乗しており、乗員不足による戦闘力の低下は期待できない。
多数の砲や機銃を装備しており、近距離から遠距離まで多彩な距離の戦闘に対応するモンスターマシン。
常に大量の砲撃を繰り出してくる為、『モール・ヘイヴンを砲撃から護る猟兵』、『スーパーモンスターを破壊する猟兵』の二つに戦力を裂かねば、無血でこの事態を収拾することは困難だろう。
◆戦場詳細
モール・ヘイヴン正面エントランス広場~(一五〇〇メートル余)~スーパーモンスター間の荒野。
スーパーモンスターの撃破に動くにせよ、ヘイヴンの防衛に動くにせよ、敵の機関砲・戦車砲への対策が重要となる。
◆プレイング受付開始日時
2020/02/02 08:30:00
◆プレイング受付終了日時
2020/02/07 23:59:59
ジャガーノート・ジャック
◯レグルス/2.攻撃
(巨大な戦車。その威容といい暴力といい、何処か似たものを感じる。あれもまた「圧倒的破壊」と言えよう。)
(――ザザッ)
いいだろう、不足はない。
同じ「圧倒的破壊」たるものとして対峙しよう。
――ロク、準備をしておくといい。初手は本機が担う。
(ザザッ)
電脳体拡散・"砂嵐"を広域展開。
(残像×範囲攻撃)
怪物戦車の射線を遮るように広げ、放たれる弾を全て展開した砂嵐で受け止める。
――解析完了。
砲塔・弾丸複製。
受けた暴威をそのまま返そう。
発射。
(一斉発射×カウンター×狙撃)
本機を揺るがすには些か足りない暴威だったな。
――"着弾"も確認した。
グッドラック、ロク。オーヴァ。(ザザッ)
ロク・ザイオン
◎【レグルス】
2
(大きな、大きな――嘗てのジャックに似ていると、思った。
それならば、強いのだろう。
……けれど)
うん。
……ぐっどらっく。ジャック。
おーば。
(それも、もう乗り越えた過去だ)
(ジャックから借りた装甲を貫く弾に「擁瑕」を刻み
その影に潜んだまま砂嵐に紛れて撃ち込んで貰う
着弾寸前で弾の影から抜け出せば、そこは戦車の甲板上だ)
言っただろ。
お前たち、全部。
灼き潰す。
(【地形利用】し【野生の勘】で弾を躱しながら【ダッシュ、ジャンプ】
至近距離、射角の死角から砲台を【砕く】
主砲を斬り落とし病葉を灼き潰し
巨大な鉄の獣を、内側から喰い荒らせ)
おれは。
かみさまも。
かみさまに己を明け渡すやつも。
大嫌いだ。
シャオロン・リー
◎2 連携希望
「ははっ…何やお前ら、まだこんなどでかいモン隠し持っとったんか!こんなんぶち壊せるとか、めちゃくちゃ興奮するやん!」
目的
梱仙縄で戦車を行動不能にする
俺も動けんくなるんは承知の上や、せやから直接攻撃するんは他のやつに任せた!
翼出したまま飛行状態で高速接近して、砲撃は見切りで避けに徹するしかあらへんな
槍やろうが小石やろうが、殴ろうが蹴ろうがとにかく俺の「攻撃」が一発でも当たればええ
爆破して、そっから後はなんもでけへんようにしたるわ
俺も動けへんからな、こっちに来るダメージは激痛耐性と継戦能力でひたすら耐える
デカブツが何もできんとぶち壊れろ、俺はそれが見たいねん、それまではぶっ倒れへんぞ
●龍の鎖と流れ星
「ははっ……何やお前ら、まだこんなどでかいモン隠し持っとったんか! こんなんぶち壊せるとか、めちゃくちゃ興奮するやん!」
最初に動いたのはシャオロン・リー(Reckless Ride Riot・f16759)だった。危機的なこの状況において、なお笑う。
ここまで薙ぎ倒してきた敵はゾンビに、狂信者。いずれも兵としての彼を満足させるものでは無かったが、あれ程巨大な戦車が相手とくれば、心の臓からふつふつと戦意が煮え込み上げる。
「こら張り切らんとあかんな。俺が奴の動きを止めたるさかい、その間に攻撃したれ!」
砲弾の雨が降り注ぐ。
『では、本機らが援護する。ロク』
「わかった!」
ノイズ混じりの声と、ざらざらとした山猫の声が応えた。ジャガーノート・ジャック(AVATAR・f02381)とロク・ザイオン(蒼天、一条・f01377)――チーム『レグルス』の二名である。
――敵は巨大。ジャガーノートはバイザーを光らせ、遙か遠くの移動要塞を望遠する。巨大ななる戦車。その威容、暴力は、何処か自分に似たものを感させる。
力の塊。
ジャガーノート
あれもまた『圧倒的破壊』と言えよう。
「――ジャック」
ジャガーノートの内心が見えているかのように、ロクがその肩を拳で撫でた。ジャガーノートのバイザーがぼう、と紅く光る。首肯を一つ。
ザッ、ザザ、咳払いめいてノイズが二つ。
『ああ。いいだろう、相手にとって不足はない。同じ圧倒的破壊たるものとして対峙しよう。――準備を、ロク。初手は本機が担う。君達の路を、必ずや開いてみせる』
「ああ。……ぐっどらっく、ジャック」
淡く微笑むロク。――ああ、彼女はきっと識っている。ジャガーノートが既に、只の怪物では無いことを。
彼は何者か。
彼は、『人間』だ。
圧倒的暴威の担い手。
怪物のアヴァターを抱いた人間だ!
「ほんじゃあ一丁地獄までフライトといこうや! お先に飛ぶでぇ!!」
バンッ、と空気の爆ぜる音。シャオロンがその背中に竜の翼を広げ、三歩の助走でトップスピードに達し跳躍。そのまま弾丸を思わせる速さで彼方の戦車に向けて飛翔する!
迎撃するように、彼方の空が紅く光った。あの巨大戦車に装備された無数の火砲が火を噴いたのだ。船団からの艦砲射撃レベルの攻撃密度。それを、猟兵らの先頭に躍り出たジャガーノートが迎え撃つ。
『第一陣は本機が止める。近接する猟兵は今のうちに先行せよ』
複数の猟兵が応えるなり駆け出す。それを見送りつつ、後ろに従ったロクを守るように、ジャガーノートはユーベルコード『砂嵐』を展開する。
豹鎧の姿がザリザリとノイズと共にぶれ、周囲に白く煙った電子的砂嵐――『電脳体』を広域に拡散。 敵の射撃一陣目はモール・ヘイヴン入口広場、猟兵達を迫撃する形で放たれている。既に弾道は解析済み。
『この程度の暴威では本機は揺るがせん』
巨大戦車からの無数の射撃が、砂嵐に満ちたモール・ヘイヴン入口広場に降り注ぎ――
まるで、霧に呑まれたかのように掻き消えた。
『敵ユーベルコード解析。砲身長、炸薬量算出完了。弾頭の複製開始』
ジャガーノートの呟きにつれて、空中にいくつもの弾頭が複製される。その一つに、ロクが烙印刀を抜いて傷を刻みつけた。
一瞬のアイコンタクト。ロクの瞳の空色が、いつでもいいと告げていた。ロクはそのまま刻みつけた傷――紋章めいたそれに手を触れる。その瞬間、いかなることか、彼女の姿は浮いた砲弾の影に溶けた。
一つうなずき、ジャガーノートは複製シーケンスを継続。
『砲塔複製。手ぬるい砲撃だな。見本を見せてやる、よく学習することだ。――もっとも、お前達に“次”などないが』
ノイズが凝り固まり、弾頭を包み込むようにして、空中に無数の砲塔が構築される。この間僅か数秒。敵の砲撃の空隙を縫う、圧倒的な速度のカウンター準備!
ジャガーノートは右手を振り上げ、重く、ノイズに錆びた声で言う。
ジャガーノート
『教育してやろう。“圧倒的暴威”とは、こういうものだ』
そして、真っ直ぐに腕を振り下ろす。
――砲声!!
複製された一射限りの砲塔が空中でクラッシュ・ドットの火花を咲かせ、無数の砲弾を吐き出すなりゼロと一のノイズ帯に分解されて消えていく。
その中の一つ。瞬く間に小さくなっていく、傷を刻まれた弾頭を見送り、ジャガーノートは密やかに呟く。
『グッドラック、ロク。オーヴァ』
――遙か前方から、飛龍と山猫の猛りが聞こえた気がした。
空に爆光が咲く。
巨大戦車が放った対空砲の砲弾を、モール・ヘイヴンからカウンターめいて撃ち出されたノイズ混じりの砲弾が叩き落とすッ!
「っはははア! なんやなんや、面白い芸やの!!」
先駆けて空を飛び、巨大戦車へ直進していたシャオロンは、自分に降り注ぐ対空砲の砲弾が次々と墜ちるのを見ながらその速度を速める。ジグザグに機動し、狙いを絞らせず、巨大戦車との距離を詰める。
「――近くに来ると呆れるデカさやな!」
その全高、駆体のみで約七〇メートル。全幅一〇〇メートル余、全長三〇〇メートルに及ぶ。冗談のような巨大砲塔を多数装備した、まさに移動要塞だ。――しかし!
「壊し甲斐があるってモンやなぁ。ほな、――いくでェ!!」
シャオロンの槍に宿る竜気が炎として結実し、穂先を赤々と包み込む。シャオロンはそのまま戦車の間近まで接敵、紅き槍を振り翳す!
間近に迫った男目掛け、すぐさま対空機関砲の迎撃射撃が唸る。迎撃機関砲の口径は二〇ミリメートル。着弾すれば人間など一撃で千切れ吹き飛ぶ威力だ。猟兵と言えどタダでは済むまい。
凄まじい速度で唸り飛ぶ対空砲火の狭間を、シャオロンはバレルロールめいてスピンしながら、風に吹き嬲られる木の葉のように舞い回避。弾幕の隙間に身体をねじ込む。
「おおっ、らァ!!」
突き出す槍より火線が伸びる! 収束したレーザーめいた炎が戦車の巨大なボディに突き刺さる。爆炎、爆発!
しかしその威力は微々たるもの、その一発では、戦車の巨体には蚊に刺されたほどのダメージも無い。
だが、それでいい。にいぃ、とシャオロンの唇が凶悪な笑みに歪む。
「喰ったな。ほな我慢比べといこか、梱仙縄ッ!!」
炸裂した炎が、鉄鎖の形に固まって迸った。瞬く間に巨大戦車の全体に絡みつき、ぎしりと軋みを上げてその巨体を縛り上げる! そればかりではない。シャオロンの発する火線までもが鉄鎖へ換わり、シャオロン自身をも戒める。戦車の巨体とシャオロンは鎖で繋がれ、綱引きめいて膠着する!
ユーベルコード、『梱仙縄』。鎖は熱を発し、その表面で絶えず小爆発を繰り返す。彼自身が我慢比べと称したとおり、繋がれる限り敵と己が動きを封じ、その身を竜の焔気で焼き焦がし続ける拘束の業である。
「デカブツが、何もできんとぶち壊れろ。俺はそれが見たいねん、それまではぶっ倒れへんぞ……!!」
シャオロンは身を焼き爆ぜる梱仙縄にすら構わず凄絶に笑う。誰が見ても明らかだ、このような無茶が長く続くわけがない。きっと、すぐに拘束は解かれてしまうだろう。
だが、シャオロンが拘束したその一時。
彼が作った時間に、ジャガーノートが放ったレグルスの煌めきが滑り込む。
――印の刻まれた砲弾が、戦車の甲板に影を落とした。
着弾。爆発。着弾地点の装甲が火を噴き、甲板を延焼させる中、ゆらりと立った影がある。
「言っただろ。お前たち、全部。灼き潰す」
炎のいろをした声が言った。焼き焦がすような憎悪が、そのざらざらの声に燃えていた。
――ロクだ。ロク・ザイオンが、戦車の甲板に立っている。
いかなるトリックか? 彼女は己のユーベルコード『擁瑕』により、その肉体を、ジャックが複製した砲弾の『影』に封じ、砲弾と共にこの長距離を飛翔したのだ。
着弾の寸前に術を解き、彼女は影を飛び出した。一拍遅れれば、粉々になった影の中で諸共に木っ端微塵になりかねないというのに、彼女はその危険を冒してもここに来た。
――なぜか?
決まっている。
教えてやるのだ。
命を軽んじる教義がどれだけ愚かか。
それが、ロクの信条をどれだけ侵すのか。
彼女の『ととさま』を、どれだけ否定するのか。
そして、
「おれは。かみさまも。かみさまに己を明け渡すやつも」
両手に二刀が閃く。右手、彼女の牙。『烙印刀』。左手、彼女の爪。『閃煌』。
二刀は彼女の怒りそのものとばかり炎纏い、呼び合うように燃え猛る!
「――――大嫌いだ」
ああ。
この憎悪を、教えてやるためにここに来た!!
すかさず戦車の機関砲が、甲板のそこかしこに敷設された対人機関銃が、揃って音を立てて回頭。筒先をロクに据える。しかし、
「何もでけへんようにしたる、言うとるやろがッ!!」
戦車の巨体に絡みつく梱仙縄が爆ぜ、その爆炎から新たな鎖が迸って砲口を絡め取り、明後日の方向に筒先を逸らす。迸る砲火が虚空を貫き空を穿つ中を、ロクは真っ直ぐに走り出した。
駆け抜ける。彼女を止めるものはもはや何処にも無い。ジャガーノートが、シャオロンが、彼女の路にある全ての障害を取り除いた。
ロクは両手を翼のように広げ、獣のような低姿勢で駆ける。行く手に縛られた放題。一閃し破壊、爆炎を飛び越えて次のターゲットへ。機関銃二門、閃煌を閃かし灼き断ち、その次の砲を踏み砕いて跳躍。
迎撃のためにゲートを開けて飛び出してきた数名の信者を、飛燕の如く翻したその両手の刃で閃滅。閃く刃に纏う炎が、ばらばらになった肉塊を空中で焼き尽くす!
「あああァァァあああぁァァアアァ!!!!」
吼える、吼える!
ロクの吼え声はまるでサイレンめいて天高く鳴り渡る。シャオロンが縛り付けた砲の根元に閃煌を突き立て、烙印刀で更に一撃。装甲板のボルトの頭が吹っ飛んで緩んだ装甲に飛び乗り、閃煌の熱を高めれば、弾頭が炸裂して砲は爆発四散する。
間近で爆発を受けたはずのロクは――空高く飛んでいた。否、爆発は彼女を傷つけていない。ボルトを叩き斬ったことで、砲の爆圧は装甲板を引き裂くのではなくカタパルトめいて押し出すように作用したのだ。それに足をつけて乗っていたロク諸共に、天高く。
ロクは空中で身をひねり、両手を天高く振り上げた。炎の二刀が高まるように燃える。病葉を灼き潰せ。この巨大な鉄のけものの牙を、今ここで切り落とせ、そう叫ぶかのように!
「あああァァァァアアあああッ!!!」
燃え上がった二刀から発された炎が一つとなり、まるで、天を衝く巨大な剣のように耀いた。巨大な砲の一つ目掛け――ためらいなく振り下ろす!!
筆舌に尽くしがたい大音が響き、巨砲の一つが溶断されて地に落ちた。文字の通りに地を揺るがすような大音が響き渡り――ロクが着地してたっぷり二秒して、断たれた砲の根元が爆発、派手に炎を噴いた。
――爆発の轟炎の中に、遠雷めいてロクの鑢声が響いている。彼女はいま、再び走り出した。今しばらく――シャオロンの鎖が緩むまで、己の力の全てを出し切るまで。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
シュシュ・リンクス
◎ 1!
いやぁ、大きいねっ!STGかRTSか…はたまたARPGかなっ?
ま、私が来たからにはもう安心!任せておいて!
さあ、目指すからには完全防衛、パーフェクト、守りきっちゃうよ!
と、言っても私ニュービーなんだけど!
それはそれとして、オートビットを全力展開!弾幕には弾幕で迎え撃とう!
さあ、撃て撃てー!
なるべく他の人とか、モールに当たりそうな危ないところに優先して、援護射撃な感じで弾幕を張っちゃうよ!
あとは、他の猟兵さんと戦ってる所も観察させてもらってー。
準備ができたら満を持して、ユーベルコードで迎え撃っちゃう!
さあ、お互いに弾が尽きるまで撃ち合っちゃおうか!
……私の弾数、切れないけど、ね!
ユキ・パンザマスト
◎1
儘ならなきゃあ、諸共ってか?
大層な玩具の怪物持ち出して、
黙示録が聞いて呆れら。
早業、椿樹の放送塔を広場に放映、
モール・ヘイヴンが一望できる場所まで、
極力迅速に、高く高く、伸ばしていく。
【此岸祝呪】──
先ずの救護対象は、
モール・ヘイヴンと、それを認識し続ける己、椿樹!
野生の勘と情報収集で、認識把握を継続しつつ、
認識からあぶれた場所があれども、
そこは他の猟兵達の腕を信じましょう。
撃破に向かう猟兵達のほうにまでは、
意識は割けねえっすが、
塔の付近、広場で遠距離戦を行なう猟兵が居れば、
余裕があったら認識に入れましょう。
ええ、無論、
最優先は只人の天国。
滅ぼさせやしませんともさ、
この目がけもののうちは。
ロカジ・ミナイ
1:防衛
さっさと踵を返した僕は
モールのいっとう眺めのいい場所から超重戦車を眺めている
やー!でっかいね!こりゃ壮観だこと!
見事見事、流石に僕の大蛇も敵わぬ大きさだ
呑気に見えるだろうけどね
この僕の背中には愛すべき一般人の皆様がいる
前線はお盛んな猟兵に任せて…君の中という“一番近く”で護って見せよう
剣でもって剣を制す盾となる
喩えるならウイルスに抗うワクチンさ
――だって僕は、あなたのまちの薬屋さんだからね
飛び来る砲撃を手名椎のこえで撃ち返す
ビームと砲撃が夜空で拮抗し炸裂する様の美しさよ
実はこのロカジビーム、妖刀を横に構えれば扇状にも出せる
ちっこいのは妖刀バッティング(打率100割)でホームランよ
●幻燈樹のアイギス
「ハッ! 儘ならなきゃあ諸共ってか? 大層な玩具の怪物嗾けて、徒党を組んで襲い来て、挙げ句そんなでっかい戦車を持ち出して――黙示録が聞いて呆れら。あんたらの神様が滅びを祝福するんなら、その神様をいまここに持ってきて天罰下してみやがれってんだ。そんな砲弾じゃなく――さあ!」
回る幻燈。ユキ・パンザマスト(暮れ泥む・f02035)の放映端末が光を発し、だだっ広いモール・ヘイヴンの正面広場に巨大な椿樹を投影した。最初の一拍で十五メートル。それだけでは終わらない。ユキは幻燈椿の枝に飛び乗り、その生長に全力を注いだ。
伸張、伸張、伸張――ユキが注いだ力に従うように、幻燈椿は伸びに伸びる。放送塔めいた高さに伸び上がる幻燈椿の枝の上から、ユキはモール・ヘイヴンを俯瞰せんとする。
ユーベルコード『此岸祝呪』――己の認識範囲にいる全ての救護対象に、己が不死の呪いを分け与える事で、この集落を護ろうという肚だ。
しかし如何に早く樹を延ばしたとて、彼女自身が砲撃に晒されることは免れ得ぬ。着弾してユキが死ななかったとして、吹き飛べば彼女の認識範囲は狭まり、モールは彼女の庇護から外れるだろう。雨霰と降り注ぐ砲弾の嵐を前に如何に対処するのか。
(耐えきってやりますよ)
彼女が下した解は、己に降り注ぐ砲弾は耐えればいいというシンプルなものだった。ユキは足下の太い枝に手を預け爪を立て、対ショック姿勢を取り――
「やぁやぁ、そういうときのための私だよっ!」
ジジッ、ジ、ヴンッ!!
突如としてブレる、幻燈椿の枝の上の空間を見て目を丸くした。
空間をゼロ・ワン・ノイズで破り、まるでゲームのバグめいて共に一人の少女が析出した。「ひゃー、高い!」と遠ざかる地上を見下ろすのは、シュシュ・リンクス(電脳の迷い子・f11333)。
「ついでに相席いいかい、お嬢さん? ――あ、煙草はやめとくから安心して。一人でこの眺めを楽しむなんて、人が悪いよ」
次いで、飄々とした声がユキの足下から響いた。伸張する幻燈椿の枝をしなやかに駆け上ってくる洒落者一人。
空中で身を一転抜刀、手に窈窕たる抜き身を提げ。ユキの隣の枝に降り立ち、剽げて笑うのはロカジ・ミナイ(薬処路橈・f04128)。
「そうそう! どうせ楽しむなら皆でってね! ――いやぁ、大きいねっ! STGかRTSか……はたまたARPGかなっ? 何でもどんとこいだよ。私が来たからにはもう安心! まっかせといて!」
シュシュが笑うなり、ロカジもニイと歯を見せて笑う。
「やー、でっかいね。思った通りこりゃ壮観だこと! 流石に僕の大蛇も敵わぬ大きさだ。――あんなのを天国に入れるわけにゃあ、いかないねえ!」
しばし呆気にとられた様子だったユキも、ロカジが水を向ければ顎を引くように頷いた。
飛来する無数の砲弾が、闇に流星雨めいて火線を曳く。
「――そうっすね、その通りです。ユキ達が護らなきゃ。アレを防ぎ止めなきゃあいけない。手伝ってもらえますか」
「合点!」
「もちろん! さぁ、目指すからには完全防衛! パーフェクトに守りきっちゃうよ!」
ロカジとシュシュが即座に応える。三者は殆ど同時に動き出した。
ユキが力を注げば、幻燈の椿は尚も上へ上へ、やがて天を穿たんばかりに伸びる!
ロカジは枝を蹴りさらに上に上る。そしてシュシュは腕を大きく振り、その軌道上の延長線に無数のビットが現出する。
光を湛える迎撃用自動攻撃兵器。電脳顕出、『オートビット』。自身の支配下に置ける限界個数を現出してシュシュは指先を空に差し向け、星散るようなウィンク一つ。
「弾幕には弾幕ってやつだよ! それ、撃て撃て撃て撃てー!!」
空から墜ちる流星雨に、樹上からの迎撃射撃が真っ向迫った。多数の砲弾が空中でオートビットの光条に貫かれ、紅蓮の炎と破片を散らして爆散する。
だがあの巨大兵器の一斉射撃だ。シュシュ一人の弾幕で支えられはしない。弾幕を突き抜け幻燈椿に迫る砲弾が十数発。
「ちょいと失礼」
――それを掻っ攫うのが、薬屋の仕事だ。
がが、が、が、がッ!!
宙を紫電が引き裂いた。樹枝のような放電が、迎撃弾幕を抜けた複数の砲弾を貫いた。――否、正確には、砲弾と砲弾の間をその雷撃が通電したのか。結果は同じこと。宙に盛大な爆光を咲かせ、複数の砲弾が爆ぜ果てる。
雷撃放った妖刀を彪、と振り、ロカジは光に目を細めた。
「物見遊山の呑気顔に見えたかい。この僕の背中にはね、愛すべき一般人の皆様がいるんだよ。前線はお盛んなやつらに任せるとしても、こいつばっかりは譲れない役割さ」
ロカジは刀を正眼の即応姿勢に構え直し嘯く。
彼の思いは一つ。
――この『患者』を、一番近くで護りたい。
喩えるのならばロカジは、このモール・ヘイヴンという患者の身体の中で、病原体めいて飛来する砲弾を排除するワクチンになろうというのだ。
――そう、
「だって僕は、あなたの街の薬屋さんだからね」
剣には剣を。弾丸には雷を。毒には毒を、菌には薬を
ぺろりと舌を出して見せ、見得を切るロカジ。
――しかし、如何に彼らが手練れだとて安堵は出来ぬ。
空を覆う砲弾の爆炎が晴れたあとには――先程に倍する数の砲弾雨が迫っている! ロカジが思わず片眉を跳ね上げる。
「うわぁ大人げない! 防がれたからっていきなりムキになるもんかね!」
「確かにすごい数だねぇ。でも――」
シュシュが不敵に笑い、オートビットで射貫いた砲弾の構成情報を用い、ユーベルコードを発動。――『こぴぺ・りふれくしょん!』! 空中に無数の砲塔が発生する!
まるでコンピュータのコピー&ペーストコマンドめいて、かの巨大戦車が備えた砲塔を一時的とはいえ完全に複製して運用しようというのだ。
「力比べなら受けて立っちゃう! 私の弾数は切れないよ――そっちの弾数はどうかなぁっ?」
いたずらに問いかけるような声と共に、空中にデタラメに貼り付けられた無数の砲塔が、全く同タイミングで火を噴いた。
同時にオートビットから最大火力の砲撃! 一人で防ぐことなど到底不可能かに見える砲雨に、束の間拮抗してみせる!
「いやぁすごいね、こりゃ僕もちょっと本気を出さないとかな!」
ロカジは笑って再び妖刀に雷を集めた。口がピリつくほどに空気が帯電する。放電を起こし出す刀をぐうんと振りかぶり、
「突き出すばかりが能じゃないのさ」
歌うように唱えて天へ向け振るった。
――う゛、おォんっ!!!
空に紫電の扇が疾る。
まるで刀が雷に延伸されたかのようであった。ロカジは雷撃、『手名椎のこえ』を剣先より放ちつつ、それが発露を終えるまでの間に刃を振り抜いたのだ。結果生まれるのは月まで断つような雷光の斬弧。軌道上にあった十数発の砲弾が断たれて上下二つに分かれ、盛大な爆光を散らした。空中で立て続けに誘爆が起こり、まるで空が燃えているかのような紅蓮に染まる。
それでも尚抜けてきた一発を、ロカジは剣術もへったくれもない一本足で構え、
「そぉ――らああっ!!」
刀身の腹でフルスイング。たっぷり一二〇ミリはありそうな砲弾を、まさかの一本足打法で打ち返すッ! 夜空高くにかっ飛ぶ砲弾を、手で作った庇越しに片目で見送るロカジ。
「百割バッター、なめてもらっちゃ困るねぇ」
「百割は千パーセントだよ、お兄さん」
「細かいことは気にしないもんだよ」
四方や刀で砲弾を撃ち返すとは――そしてその大雑把な確率計算は――とシュシュが呆れ顔を浮かべるのも束の間、打ち返された砲弾が空で爆炎と共に爆ぜ散る。
インパクトの瞬間にへし折れる手前まで撓った妖刀が不満げに刀身に紫電を散らし、「あたた、怒るなって、悪かったってば」とロカジが妖刀に弁明する横で、ユキが後方、下を見下ろした。既に椿の全高は、モール・ヘイヴンが一望できる高さだ。
「次の砲撃が来るよっ! でも……これは、」
「……参ったね、僕らを狙ったもんじゃないな」
シュシュとロカジが次なる砲撃の角度を見て憂うように声を上げる。
ユキが視線を前に戻すと、なるほど、砲撃はここまで延ばした幻燈椿さえ飛び越えるような仰角で放たれている。
向かってくるものを墜とすことなら、不可能ではない。しかし己を狙うでもなく、落ち来る雨の全てを射貫くのは困難を極める。
しかし、やらずに終わるわけにもいかない。ロカジが再び窈窕たる抜き身を構え、シュシュが仰角を狙い無数の砲塔を制御する横で、
「お二人はここの防御を。ユキ達が吹っ飛ばされるのが一番まずいです。――後ろは、任せてください」
「おや、策があるって顔だ。こんな所まで木を延ばしたんだ、何かあるとは思ってたけど」
「ええ、無論。――世界樹気取るわけでもありませんが、この樹が天国の盾になりますよ!」
ユキはウィンクを一つ。軽やかにロカジに応えるなり、念ずるように目を閉じた。
――ここは放送塔の天辺。ユキは、己の野生の勘を、情報収集能力をフルに拡張する。一つだって、救い損ねる命を出さないように。この天国を救う為に。
降り注ぐ弾頭、その一つ一つを見極める。数発が牽制するように幻燈樹の頂点付近にいるユキ達三名を狙って飛んでくるが、それをロカジとシュシュが逃さず叩き落とす。ユキは自分を襲う砲弾を一顧だにしない。二人の猟兵が防いでくれると信じているからだ。
「――ひとときだけ、永遠をお分けしましょう。大丈夫。誰ソ彼に迷うほど――長くはないひとときですよ」
ユキはかそけく謳い、けものの両目を見開いた。幻燈椿を飛び越え落ちる弾頭の一つ一つを、落ちるそのコースの一条一条を認識する。
縦にヒビ割れた瞳孔がぎらりと黄昏色に光り、砲雨の落下予測地点をなぞった。
ユキ・パンザマストは、八百廻りの誰ソ彼けもの。
彼女が過ごす永遠を、彼女が認識した全てに分け与えるその術は、名を『此岸祝呪』。
祝福とも呪いとも付かぬ視線がなぞり上げた道に建物に、一二〇ミリメートル砲弾の絨毯爆撃が着弾する!
炸裂、炸裂炸裂炸裂炸裂炸裂炸裂炸裂炸裂炸裂ッ!! 煤煙と紅蓮の炎が吹き上がる――
「――っ!」
思わずと言った調子で息を呑むシュシュ。迎撃をオートビットと多数の砲身に任せながら、煤煙上がる地表を見下ろす。
――煙が晴れていく。
「……えっ」
そして、もう一度驚く羽目になる。
黄砂孕む風が煙を払ったあとには、元のままの――勿論荒れ、往時の姿は見る影もない廃墟めいた眺めではあったが――砲の着弾など、まるで無かったかのような町並みが広がっていたのだから。
「無限の手品ってワケじゃありません。ユキが認識できた範囲に限る、限定的な不死と不滅じゃあありますが。――それでも、今のこの時の盾くらいにはなる」
ユキは嘯くように言った。『此岸祝呪』による不死の呪いが、着弾地点を損傷から護ったのだ。
無論のこと、限界はあるだろう。この広範囲を視界に入れたとて、全てを一人でカバーできるわけではない。だが、ユキは信じている。シュシュとロカジが今共に守りに入ってくれたように、志同じく、この天国を護る為に他の誰かが穴を埋めてくれると。
故にユキは迷い無く言い放った。
「――荒野に残った只人の天国。滅ぼさせやしません。この目がけもののうちは、ね!!」
襲い来る砲雨など、恐れることはないと。闊達に!
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ハウト・ノープス
◎防衛を
肉体の補修は可能だが、前線での戦闘には支障が出ると判断
他猟兵と連携し、防衛に専念する
が、どう対処するか
砲撃程度ならば斬り飛ばせるだろうが、それだけでは抑えられまい
速度を殺し、着弾箇所をずらすか
唯我、先程繋いだ他人を私に変換する
やはり長さが揃っている方が戦いやすいな
では、行こう
砲塔に動きがあれば飛翔
射撃の方向を推測しつつ前進
極力拠点からは離れた位置で接触するよう試みる
接触手前で剣を持つ腕へ旋風を集中し纏わせれば
弾の勢いを殺しつつ斬り落とせるはずだ
連射にも対応は可能だろう
とかく、私の役割は二つ
全ての弾を斬るか、殺すか
剣が届く限りは斬ろう
斬れなかったものは、頼んだ
●闇より黒き閃を曳く
「――前線の戦闘には追いつくべくもない、か」
弾雨降り注ぎ、幻燈樹がそれを防ぐその真下で、ハウト・ノープス(忘失・f24430)は呟いた。
自身の肉体の補修は可能だが、傷の全てを癒やせるわけでも無い。最低限、動けるように取り繕うことが出来るだけだ。あの巨大な戦車相手に、全力全開での戦闘が出来るような余力はない。
しかし、それでも出来ることはある。ハウトは淡々とユーベルコードを起動する。
『唯我』。その五体として繋がったものは全て『彼』となる。
ハウトの、彼の体躯からすれば奇妙に短かった両腕――彼とは肌色さえ違うそれが、ぐずりと変形し、伸張、継ぎ目が消えて『彼自身の腕』となる。
ハウトは事ここに至るまで、十数回もその両腕を換装していた。換装、といえばメカニカルなイメージを持つかも知れないが、彼が行ったのは生体の略奪そのものだ。敵、即ち、黙示録教徒の腕を斬り飛ばし、耐用限界を超え用をなさなくなった自分の腕と挿げ替えてきたのである。
最後に付いていた両腕もまた、他人のもののはず。それを強引に、ユーベルコードによって自分に帰属させたのだ。手を握り開き、動作を確認。
「やはり長さが揃っている方が扱いやすい」
デッドマンならではの凄まじい感想を零しつつ、ハウトは軽く地面を蹴った。その瞬間、ぶあ、と荒砂を巻き上げて、黒き風が吹く。闇に紛れるような――空に墨を流すような黒風だ。
正確には、ハウトから風が巻き起こっている。その精悍な体躯が宙に浮く。――これぞ、『唯我』による魂喰らいの風である。
「では、行こう」
ハウトは黒風伴い、剣を抜く。漆黒の刀身――銘は、見たそのままの一文字、『黒』。風を手繰るように空へ舞い上がり――彼方にて紅蓮の砲火が咲いた刹那、ハウトは正に、応ずる迎撃砲弾の如く空を蹴り飛んだ。
冗談のような高さの、幻燈で映し出された椿をバックにハウトは空を駆けた。椿の上で奮闘する猟兵達の守備範囲外となるであろう、空高くに打ち上げられた砲弾を目掛け、ハウトは空を駆け上がる。
――四方や、空覆うかの如くに降り注ぐ弾雨に、ただの剣の一本で挑もうという。
それは、或いは狂気に近かった。力伴わなくば大言壮語、墜ちる砲弾に潰されて地諸共に爆ぜるのみだったろう。
しかし――
おそろしいことに、彼は本気だった。
「……問題ない。この剣が届く限りは」
黒剣を翻す。落ち来る砲弾を睨む。
「譬え神の雷であろうと、この先へ通すものか」
黒き風そのものとなったかのようにハウトは翔けた。
黒剣に、黒剣を取る腕に黒風が集中し、その膂力をいや増す。天より落ちる流星めいた砲弾めがけ、地より飛んだ漆黒の礫めいて――ハウトは真っ直ぐに迫り、風を爆ぜさせ黒剣を一転した。黒風をコントロールし、瞬間的に偏向噴出することで、武器加速ブースターめいて用いる緻密な操作である。
黒風が持つエネルギーをそのまま運動エネルギーに転換し、
「――オオッ!!!」
吼声一つ、力の限りを尽くし大振りの回転斬りを叩き付けるッ!!
――果たして、流星は二つに分かたれた。
金属の軋る音が空に響き、二つの爆光が咲いた。真っ二つに断ち割られた弾頭が空中で爆ぜたのだ。ハウトはそれを一顧だにせぬ。彼の意識は既に次の弾頭に向けられている。断つと決めたのだ。この手、この剣の届くものならば、全て刻んで墜としてみせると。
黒の男は空を行く。闇より黒き閃として。
彼が描いた軌道の上で、立て続けに砲弾が刻まれ断たれ爆ぜ割れる……!
空に溢れる光の中でさえ、染まらぬ黒き彼の剣が、爆光の中ただ一つ、黒点めいて揺らいでいた。
成功
🔵🔵🔴
ムルヘルベル・アーキロギア
◎
同行:織愛/f01585
【1】
なんとまあ、旧文明とはあんなものまでこさえたのか
よかろう、大量破壊はワガハイの得手ではないのでな
……まあ防衛戦も得意かは微妙なところだが!
さて、任されたからには一発も通さずに凌ぐほかなし
ウィザードミサイル……機銃の弾数には追いつけぬな
封印文法……砲台ひとつ縛ったところで意味は薄い
であれば、これか
【553ページの悪魔】よ、少しだけ『花布』の封印を解いてやる
害意を喰らうその力を以て、人のいのちを守ってみせよ
制御を誤れば、吸収した弾丸がぶちまけられるやもしれぬが
あの娘も気張っておるからな、少しばかり無理をしよう
『魔力結晶』をあらかた砕き、すべての魔力を禁書に注ぐ!
三咲・織愛
◎
ムーくん(f09868)と
【1】
傍らに寄って来た竜の子を槍へと変えて、
夜星を手に握れば、心が凪いだ
いつも、共に戦ってきた子だから
……護るための戦いをしましょうか
きっと、その方が私達には合っていますよね
機銃の細やかな弾数を捌くのは、私には荷が重いですね
であれば大砲などの砲弾を弾くことに専念しましょう
他は任せましたからね、ムーくん!
後ろには通させない
砲口の向きを観察し弾道予測、怪力を籠めて槍で払う!
終わりが見えなくとも、怪我を負おうとも、
決して折れない。負けない。何度でも立ち上がってみせる!
己の信じる救いの中へと逝けるのなら
きっと幸せなのでしょうね
本当に――独りで死んでいればよかったものを……!
●飛べ、星を穿つ槍よ
「――少しは落ち着いたか、織愛よ」
「……はい」
すでにモール・ヘイヴン正面広場の乱戦は収束し、今やあたりは対戦車防衛線の様相を呈している。
防衛に、攻撃に、双方に奔走する猟兵らの中には、三咲・織愛(綾綴・f01585)とムルヘルベル・アーキロギア(宝石賢者・f09868)の姿もあった。
狂戦士めいて戦っていた織愛は幾分か落ち着きを取り戻したのか、血に汚れた自分の掌を見下ろし思案げな表情を浮かべている。
その後から歩むムルヘルベルの首元後ろ、長マフラーの下から、ぴょこりと藍色竜が顔を出した。織愛のドラゴンランス――夜を翔ける藍色竜、ノクティスである。マフラーの下から這いだし、ムルヘルベルの肩を蹴って、主人の下へ走り出す。
「ならばよい。預かったはよいが、其奴も心中穏やかならぬようだったのでな。……ここよりは共に疾るがいい。まだ戦いは終わらぬ」
ムルヘルベルの言葉をバックに、ぴょんと跳ねたノクティスが織愛の腕に収まる。きゅう、と、主人の腕の温もりに、安心したように一声鳴く藍色竜。その輪郭がゆらり変じて、流麗な一本の槍に化ける。
「……ええ」
夜星の槍。ずっと、共に戦ってきた竜の仔。
握りしめれば心が凪ぐ。
――何もかも、すぐに、スイッチを切り替えるように切り替えることは出来ないし、割り切れるわけでもない。織愛はそこまで器用ではない。
けれど、慣れた愛竜の重さが、彼女に原点を思い出させた。
「……ここからは、護るための戦いをしましょうか。きっと、その方が私達には合っていますよね」
「然り」
我が意を得たり、とムルヘルベルが目を細める。
「よかろう。大量破壊はワガハイの得手ではない、向きとしても防衛が適任であろうよ。……まあ消去法だがな! 得意かと言えば微妙な所だが!」
ワガハイの得手は本来的に頭脳労働である故! と冗談めかして言うムルヘルベルに、織愛は少しぎこちないながら、常と同じような笑みを浮かべた。
「ふふ。頼りにしてますね、ムーくん。……私も、頑張りますから」
「過度な期待はするでないぞ。無論、やれることは全てするつもりでいるが」
心配ごとが一つ減ったとばかりに、ムルヘルベルは織愛の肩を叩いて進み出た。既にいくつもの砲弾が降り、迎撃態勢を整えた猟兵らがそれを迎え撃っている。弾雨と閃光の狭間、一五〇〇メートル先の巨大戦車に目を眇める。
「――呆れる巨大さよな。この世界の旧文明はあんなものまでこさえたのか。さて、如何にする、織愛よ」
「機銃のような手数の多い攻撃は私には荷が重いですね。私が砲弾を捌けるだけ捌きましょう。小粒のものはムーくんにお任せします」
「よかろう、任された以上は一発も通さず凌いでみせようではないか」
「お願いします。――では、行きましょう!」
言うなり夜槍をひゅんと翻し、織愛は天より迫撃する軌道で降り注ぐ砲弾の雨へ、驀地と駆け出した。
見送りながら、ムルヘルベルは取る手を思案する。ウィザード・ミサイルでは弾数が追いつかぬ。一詠唱につき三〇〇発強では、如何に連続で詠唱したとて切れ目に機銃弾をねじ込まれる。
では『封印文法』ならば? これも否だ。敵の砲台は一つ二つでは無い。全部纏めて発射を封じられるならばともかく、一つ一つ封ずる間に他が火を噴いてご破算だ。
ムルヘルベルが思索したのは時間にして二秒と僅か。千五百メートル先で、巨大戦車の甲板上に二十ミリメートル機関砲が十数門せり上がったまさにその時、ムルヘルベルは右手を打ち振り翻す。
「――であればオヌシの出番よな。大盤振る舞いといくか。ようやく織愛もいつもの調子だ、ワガハイも負けてはいられぬ」
握り、開く。まるで手品のように、指の股に四つの遊色の結晶が現れた。『魔力結晶』。言わばムルヘルベルの魔力を閉じ込めた予備タンクである。
ムルヘルベルは迷うことなく結晶を己が魔力と共鳴させ砕き、込められた魔力の全てを吸い上げる。
ムルヘルベルのオパールの髪が、淡い虹色に煌めいた。その身体を構築する珪素細胞『エクスリブリス』が魔力を吸い上げて励起。真の姿には及ぶまいとも、彼の魔術行使を補助する!
「閉架書庫、開帳――」
虚空に光の門が開く。天に向け腰撓めに、空気を支えるように出したムルヘルベルの左手の上に、門より一冊の革装丁の本が出た。
ばらららら、ららり! ページが捲れ、光る文字が宙に飛び出す。
「花布、一次限定解除承認。禁書『応報論概説』! 頁の狭間より来たれ、『553ページの悪魔』よ!」
ムルヘルベルは拘束術式『花布』の拘束を緩める。本来、彼が収集した『禁書』は少しでも手綱を緩めれば四方に呪いを撒き散らす、絶大な呪力を秘めたアーティファクトだ。
その拘束を緩めること即ち、秘められたその力の、呪いの最奥を垣間見ることに他ならぬ。
「害意を喰らうその力を以て、人のいのちを守ってみせよ。――出来ないなどとは言うまいな、応報の魔神よ!」
ご、お、お、お、おおう!
未だその真なる力は秘めたままに、姿形のない魔神が空を軋ませ吼えた。
彼方で、咆哮に応えるかのように無数の機関砲が火を噴いた。莫大な量の機関砲弾が、地面と平行の軌道を描き、宙を火線色に染めながら挺進する。
ムルヘルベルは手を突きだした。宙に舞い散る遊色の原初文字が帯状の魔法陣を構成する。破損した正面ゲート前の空間に、キープ・アウト・テープめいて横帯に展開された陣が、嵐めいた砲弾の群を呑み込み、それより後ろに一発たりとて通さぬ……!
「この力続く限り……この軌道はワガハイのもの。ささやかだが、決してオヌシらの好きにはさせぬ。これがワガハイからの、オヌシらの悪意への応報である!」
一歩間違えば受け止めた砲弾は魔神の腹から溢れ出すだろう。しかしその綱渡りを、身に満ちる魔力の限りを尽くして維持する。決して後ろに通さぬと、織愛と約束した故に!
ムルヘルベルが前方からの機関砲を受け止めるその間に、織愛は後方、建物の壁を蹴り上って、割れ窓だらけのアーケードの屋根に立った。落ち来る砲弾を見仰ぐ。
いくつも降り注ぐ砲弾の大部分を、他の猟兵が撃ち落とす。しかしそれでも撃ち漏らしは発生する。
猟兵達は強い。しかし、万能ではない。一にして完全たる猟兵は存在しない。
「――でも、」
……だからこそ。
彼らは互いを補い合い、不可能と思われる局面を逆転に導けるのだ。
織愛は決然とした光を瞳に宿し、夜の槍を二度回して穂先を天に向け構える。
「後ろには……通させません!!」
吼えるなり、織愛は鉄骨を蹴り飛ばし空へ舞う! 発射台から撃ち出されたロケット弾めいて上昇し、
「はあああああああああぁっ!!」
裂帛の気合! 薙ぎ払いの槍の一打が、一二〇ミリメートル級の戦車砲弾を真っ向叩き、あろう事か弾き飛ばす! 広場の地面に叩き返された砲弾が突き刺さり、紅蓮の炎と焼けた石塊を散らすのに目もくれず、織愛は空中で一転、続く砲弾を二、三と弾いて叩き落とす!
「く、うううっ……!!!」
しかして膂力だけでは如何ともしがたい。余裕の少なくなってくる四発目を受け損なう。打撃の位置がずれ、信管が作動。間近で爆裂する砲弾!
「――ッ!!」
破片が、爆圧が、織愛を襲った。常人ならばバラバラの肉片になっていたであろう。身体を反射でオーラで覆い防御するが、彼女の身体は破片に刻まれ爆炎に灼かれ飛ばされ、アーケードの鉄骨を突き破って地面に叩き付けられる。
もうもうと塵が立ちこめる。
一瞬の沈黙。
「……己の信じる救いの中へと逝けるのなら、きっと幸せなのでしょうね。――でも」
塵の中、声が響く。
白く淡いオーラの輝きが浮かぶ。
「あなた達の救いが、他の万人にとっても救いであるなんて――神様だって決められないことです。……独りで死んでいればよかったものを!」
血塗れになり、服は破れ。
それでも、瞳と槍の輝きは失われない。
「何度だろうが遮ります。負けません。あなた達の、身勝手な救済なんかに――」
願い星、跳ぶ。
想い、そらを駆け、星を穿つ!
「これ以上、誰の命も渡すものですかっ!!!」
織愛は今一度、モールのアーケードの穴より飛び出し飛翔。白きオーラを身に纏い飛翔能力を得た彼女は、今や星を穿つ槍そのものだ。
天へ翔け――降り注ぐ砲弾を次々と弾き貫き破壊しながら飛ぶ!
爆炎の間を白き光となった織愛が翔破する。その正しき心の続く限り――彼女の覚悟が折れることはない!
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
クロト・ラトキエ
◎1
超戦車。何、少年の永遠の夢ですか?
なんて冗談はさて置き。
当たれば終わり、されど止めれば事も無し…っと。
ベースが落ちて詰み…なんてつまらない。
お任せを。
一発たりとも、通しません。
こちとら絶対生還の戦場傭兵。
『奴らを撃て』
えぇ。オーダーを、果たしましょう。
各砲門の向き、弾の速度、飛来する数、弾道は直線か弧か…
視得る限り見切り。
瞬間移動じゃあ無い。距離まであるならば。
これ、疲れ方が尋常じゃ無いんで、あまり使いたく無いのですが…
幾度でも。
お粗末な花火、盛大に上げましょうか。
弾の飛来速度も逆利用。
現最大操数340…
各弾道上に切っ尖を放つ様…UC解放
――捌式
あんな物。
気持ち良ぉく、壊して来てくださいな
●摩天楼の綾取り
「いや、はや。超戦車。何、少年の永遠の夢ですか?」
冗談めかして呟くと、クロト・ラトキエ(TTX・f00472)眼鏡の内側の瞳をゆるりと細める。遠方には迫り来る超重戦車『スーパーモンスター』。子供の時分に抱く、巨大な兵器への憧憬を思い起こしながら、クロトはモール・ヘイヴンの中央付近、タワービルの屋上に陣取っていた。
前方、モール・ヘイヴン正面広場には、ビルの上にいるクロトからでさえ見上げるような、巨大なる幻燈の椿がそそり立っている。ユキ・パンザマストが展開したものだ。樹上に陣取った猟兵が、第一関門めいて降り来る砲弾を迎撃している。
敵からしてみればその椿を避けるように曲射弾道を取るのは自然なことだろう。クロトは樹上よりさらに上を見上げた。一五〇〇メートル先の空が砲火で紅く染まる度、無数の火線が空へ舞い上がる。
――ああ、あの赤は流れる血の赤。
降り注ぐ死と鉄の雨だ。
「当たれば終わり。――されど、止めれば事も無し。ベースが落ちて終わりなんて、つまらないオチはご免です」
クロトは眼鏡のブリッジを押し上げて、曲射弾道の頂点に達した砲雨を見上げた。
「天国は明日も続く。この世界は確かに生きるには厳しいでしょう。けれど生きたいと望む誰かがいるなら、業を振るうに不足なし」
口上を述べるようにクロトは呟き、両手を広げて翼めいて打ち振った。
十指より鋼糸が伸び、その切っ先が分化する。糸の先はミクロのアンカーめいて尖り、今も中天でいくつも咲く砲弾の爆炎に照らされて、殺意を点したように煌めいた。
「こちとら絶対生還の戦場傭兵。苦境も辛苦も飽きるくらいに越えてきた。十三が業の八、ひとつ御覧に入れましょう」
ザップ・エム
灰色の少年は言った。『やつらを撃て』と。
ならばそのオーダーを果たすまで。
砲弾の弾道を確認。目星を付けた二点間を移動する所要時間からそのおおよその速度を割り出す。弾雨は落ち来る最中にいくつも撃ち落とされ、空中で爆炎を咲かすが、迎撃の網を潜り数十発が擦り抜ける。
クロトはビルを登り来た故に知っている。このビルの中には未だ、避難が間に合わず留まった人々が取り残されている。……このビルだけではない、恐らくはこの周囲にも似た状況の人々が点在しているだろう。
砲弾が墜ちれば、猟兵はともかく彼らの命は塵埃と散るであろう。
――彼等の命は、今やクロトの双肩に掛かっていると言って過言ではなかった。
「疲れ方が尋常じゃ無いんで、あまり使いたく無い手ではありますが――」
それでも、伸ばした手で糸で、誰かの命を繋ぎ止められるのならば。クロト・ラトキエは躊躇わない。
「今日は特別です。幾度でも空に花火を咲かせてやりましょう。赤と破片のお粗末な花火をね」
クロトは手を撓らせた。その瞬間、月に舐められたワイヤーが銀色に煌めき、闇に糸の結界めいて煌めく。
ひょ、おぉおうっ!
無数の細いワイヤーがクロトの指の動きに従い、まるで山間を吹き抜ける飄風めいた音を立てて天に伸びた。同時操作数三四〇本、十指だけではない、その関節と手首、肘の動きまで使い、いちどきにそれだけの鋼糸を操作する。
『捌式』。
クロトの第八の業、綾なす鋼の朧糸。
「さぁ――気持ち良ぉく壊してやりましょう。この天国は護られているのだと――皆さんを安堵させるためにもね!」
クロトは手を突き出し、全ての糸を上空へ放った。極細の糸の鋭い切っ先が、もはや間近に迫った五十数発の砲弾雨を真っ向から迎撃する。
ただの糸であの砲弾の雨を如何にするのか――
そんなもので防げるわけが無い――
そうしたあらゆる疑念と猜疑は、
「穿て」
クロトの決然とした声と共に、微塵に砕ける。
趨らせた三四〇本の自在鋼糸が、空中で弾頭を貫き、籠目を編んで斬り刻み、無数の爆炎を宙に散らす!
次々爆ぜる砲弾の爆光が、クロトの眼鏡のレンズをぎらりと煌めかせ、その表情を隠す。
「この程度では、死に損なうにも足りません」
皮肉に言い、クロトは両手を払う様に振って糸を巻き戻す。
翻った糸が砲弾より散った黒煙を裂き、その向こう側の夜空を露わとした。既に中天に差し掛かる第二射を見てクロトは構えを改める!
「何度でも貫きましょう。――お任せあれ、一発たりとて通しません」
成功
🔵🔵🔴
冴木・蜜
1:防衛
なんとまぁ
最終的に思考まで放棄して
あんな……野蛮ですね
とはいえ私にはアレを止める力は無い
戦車の破壊はお任せして
私は人々の楽園を護りましょう
楽園の正面
弩級戦車を正面に捉えられる場所に陣取り
動向をよく観察
弾が何処から飛んでくるのか常に把握
他の猟兵と連携の上
降り注ぐ銃弾を全て『偽毒』へと変えます
今回は治療薬へと変え
そのまま地上へ降り注がせることで
同じく防衛にあたる猟兵の傷を癒しましょう
麻酔や強化剤も御用意出来ますが
如何なさいましょう
身体を液状化し
跳ねたり伸ばした腕を引き戻すことで
戦場を飛び回り
出来る限り多くの弾を効果範囲内に収めます
楽園に鉄の雨は似合わない
癒すことで私は全てを護りましょう
矢来・夕立
◎1
■方針:察知/迎撃
単独での対処はムリです。
【紙技・渡硝子】。
弾道を《追跡》。
そのとき一番の脅威になると思われる砲撃を優先して、『式紙』で撃ち落とす。
飛来する方向の周知にもなります。
直接声をかけるよりもヤバめの爆発音の方が注意喚起になるでしょ。
何か対処法をお持ちの方、よろしくお願いします。
よろしくお願いできない場合は周辺の砲弾を巻き込んで誘爆を狙います。
コレで一気に数を減らせる。
…という心算ですが、上手く行くかどうかは賭けです。
何せこんなバカみたいな敵は初めてなもので。
信仰心なんか持ってなくてよかったって思いますね。
どうせ無様に塵になる。
生きる理由と死ぬ理由には、もっとマシなものを選びます。
●偽毒一切
一五〇〇メートル弱にまで距離を詰めてきた移動要塞が、引っ切り無しにバカスカと、百ミリ超の砲弾を撃ち込んでくる。対処に当たる猟兵達の攻撃が砲撃と拮抗し、紙一重のところでモール・ヘイヴンを崩壊から守り抜く最中、二人の猟兵が声を交わした。
「なんとまぁ。最終的には思考放棄ですか。また野蛮なものを持ちだしたものですね」
「野蛮で済むレベルを軽く三回りくらい上回ってますよアレ。国の一つや二つ滅ぼせるんじゃないですか」
双方共に眼鏡。穏やかでやや儚げな印象の青年と、無慈悲という言葉を捏ねて固めたような、無表情な少年である。
少年の平板な口調での軽口に、青年が応えた。
「まさに。――況してや、この小さな楽園など言うまでもないでしょう。あの履帯の下となれば、何一つとて残りますまい。とはいえ――私単独ではアレの足止めもままなりません」
「気が合いますね。単独での対処はムリです。あんなもの、一瞬止めるだの一部を壊すだの、その程度の足止めは叶うにしても、一人ではどうにもならない。――ですが」
「ええ」
「数人がかりになれば。或いは、あの攻撃をどうにかすること程度はなんとかなるでしょう。――ちょうど物好きが居残って、アレをなんとかしようとしてるみたいですし。オレはその尻馬に乗るとします。あなたは?」
「足止めや破壊は無理ですが、防衛となれば話は別です。当然お手伝い致しますよ。――楽園に鉄の雨は似合わない。私なりの方法で、皆さんとこの楽園をお護りします」
「そりゃ頼もしい。……ちなみにどんな方法で?」
少年が問い返すなり、空の彼方でまた砲火が空を灼く。
ばがんばがんずどんずどんと喧しい砲音に顔をしかめ、少年は青年に顔を寄せる。青年はその耳元に、声を少し強めて行動方針を吹き込んだ。爆音の中、余人には聞こえぬ声。
――遠雷めいた砲の音の尾が窄まり出す辺りで、少年は軽く頷いた。
「そりゃいいですね。――じゃあ、もっと疾く動けるようになるような、強いのをお願いします」
「承りました」
互いに、名を聞くこともない。
しかし、互いに悟っている。こいつは腕が立つだろう。やれるだろう、と。
現場で即興連携する猟兵らの、ドライだが固い信頼。少年が両手に千代紙の束を広げ、青年が、ずるりとその両腕を液状化させる。
「オレはヤバそうなのをひたすら撃ち落とします。速さだけで言ったら、多分あなたより速いんで。どうにもならなくなったらガンガンに音を鳴らすんで、その時はよろしく手伝ってもらえれば」
「心得ました。……ではお互い。できる限りの力を尽くしましょう」
最後までにこりともせず。
二人の猟兵は莫迦真面目に会話を終えて、左右それぞれの方向に駆けだした。
少年の名は、紙忍、矢来・夕立(影・f14904)。
夕立は青年と会話していたときには、既に己の知覚を式紙『渡硝子』により拡張していた。既にモール・ヘイヴンの各所に、千代紙で折られた鴉がバタバタと羽撃いている。
渡硝子は言わば、夕立の識覚を大幅に補助する端末だ。己から視認したもの、その感覚と情報、演算結果を夕立に流し込む。
故に夕立は、『次、ヤバいのが落ちるのはどこか』『そのうちどこが、他の猟兵の守備範囲外か』をリアルタイムで把握することが出来た。最早面的制圧にしか見えない、雨霰と降り注ぐ砲弾すらも――対処の優先順位を決め、破壊すべき対象を絞ったのならば、それは面ではない。只の点だ。
そして点は、互いを結ぶことで線となる。
「シンプルにクソですね。どんだけの物量ですか。撃つ側は気楽で羨ましいですねまったく」
フラットに、棒読みで垂れた悪態の響きを置き去りに駆ける夕立。
最早その影すら地に落ちぬ。夕立は中指と薬指に挟んだ紙束から親指で一枚ピック。人差し指と親指で摘まんだ千代紙がひとりでに捻れ、式紙『牙道』と化す。同時に投擲。着弾寸前の砲弾が棒手裏剣に貫かれ爆発四散。紙が、只の紙のはずのそれが、口径一二〇ミリメートルの戦車砲弾を貫いて破壊せしめる異様。
連射、投擲と同じ数の破壊。降り注ぐ破片を全て回避は出来ずに、夕立の身体を爆ぜた砲弾の欠片が射貫き傷つける。しかし夕立が足を止めることはない。血を流しつつも、渡硝子から共有される迎撃ポイントを、己の脚で結んで線を描く。
「秒速ウンメートルで動く点Pになった気分ですよ」
ぼやくような声を発しながら夕立は唐突にブレーキをかけて空を見上げる。
このポイントが一番まずい。他の猟兵の手が届かず、自分がカバーせざるを得ないポイント。夜空を朱線で埋めるような火線の群が降り注ぐそこで、
カクイ コウモリ スイレン ガドウ
禍 喰、幸 守、 水 練、 牙 道。
クロユリ カミナリ シンキロウ
黒 揺、 紙 鳴、 真 奇 廊。
最早猶予なし。否も無き。
弾いて浮かべた紙切れが、宙で無数に折り上がる。
夕立はそのまま、千代紙を、
「否応無く、死ね」
ぼうりょく
ありったけの 式 紙 に換えて叩き込んだ。
式紙『紙鳴』が派手な音を立て爆ぜ、『真奇廊』が砲弾の幾つかを吸った。他の式紙が砲弾を貫き破壊し、凄まじい爆音を奏でる。――一人では保たない。わかりきっている。故に紙鳴を混ぜた。
保たせる。どれだけ保つかも分からないが。
ただ全力で頭上に式紙を放つ。
鏖殺の驟雨が降り、嘘吐きがそれを首の皮一枚で防ぎ止めるその現場。
まるで爆音に呼ばれたように、炎光咲き乱れる天を横切る、一つの影が閃いた。
その影は、青年のもの。
冴木・蜜(天賦の薬・f15222)のもの。
戦場を凄まじい勢いで飛び回り砲弾を処理しながらも、今し方紙鳴の音――夕立の合図を聞いて参じたのだ。
身体能力に長けていそうにない研究者然とした外見の彼がいかにしてその運動能力を発揮したのか。それには彼の種族的な形質が大いに関係している。
蜜はブラックタール。常は人を模した形状と肌色をしているが、一度その擬態を解けばその本性は流動する死毒、液状の肉体である。
意図的に腕の擬態を解き、粘度と連続性を確保したまま腕を振るえば――彼の腕は類い稀な粘度を保つ流動体として、細く長く伸びる。あとは尖端を目標地点に張り付けて収縮する事で、蜜の身体はその牽引力で空を飛ぶ。
人外ならではの移動方法を見せながら、蜜は夕立の上をフライパスする。
「まずはこちらを」
一言いうなり指をパチンとスナップ。
中空、夕立が迎え撃っていた砲弾の幾ばくかが液体となり、夕立に降り注ぐ。
注いだ液体の正体を夕立が問うまでもなく、彼の全身に刻まれた傷が見る間に癒えた。――ユーベルコード『偽毒』。
空より落ちる砲弾は当然金属で構築された無機物の塊。それは蜜にとっては格好の獲物だ。『偽毒』は、効果範囲内の無機物を、任意の薬液や毒液に変換する権能である。先にもこれを使い、数十人からなる黙示録教徒を鏖殺したばかりだ。
――そう、任意の薬液。『まずはこちらを』、ということは、その次がある。
最初に使ったのは治療薬。夕立の傷を癒やしつつ、蜜は地に向けて手を振り下ろした。夕立の隣に伸びた右腕を打ち込んで縮め、降り立つ。
人の形を取り戻した左手でフィンガー・スナップを一つ。
次に使うのは、夕立のリクエストに応えたものだ。即ち――『増強薬』。
残った砲弾が液状化し爆ぜ散り、霧のようになって二人目掛け降り注ぐ。
夕立の速度は、『ただ単純にその二足で駆けただけ』で――蜜が発揮する尋常ならざる機動力の更に斜め上を行く、まさに規格外の俊敏さだ。
それを、天賦の薬がその全力を込めて強化したとするならば?
――速さは常識の埒外に到り、誰であろうと夕立を捉えられなくなるであろう。
この広い戦場で奇しくも――出会ってはいけない二人同士が手を取ったのだ。
天に煌めく次なる火線を、夕立が顎を突きだすように見上げた。
「ああ、つくづく、信仰心なんか持ってなくてよかったって思いますね。どうせ無様に塵になる。生きる理由と死ぬ理由には、もっとマシなのを選びます」
寝起きのような低い声で唸る夕立に応えて曰く、
「信仰を否定するものではないですが――いささかアレは行き過ぎでしたね。……砕きましょう。今ならば、それも決して不可能ではない。偽毒を含んだキミならば」
「――いいでしょう。あんな莫迦みたいな敵は初めてですが――」
その両手。八本の式紙、牙道を手挟む。
夕立は声を尖らせ、
「借り受けますよ、偽毒怨毒。一切呑んで走りましょう。あの鉄の雨が止むまで」
無造作に踏みだし、軽率に音速を超えた。
地に走る稲妻が如く、夕立が疾る。
蜜はその後ろを追い、次なる鉄の雨を薬の雨に変えながら飛び渡る。
あとに残るのは、爆光と紅蓮、薬の匂いのみ――
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
モール・ヘイヴンに降り注ぐ無数の砲弾を、猟兵達はそれぞれの死力を尽くし防ぎ続ける。
ユキがいなければ、宙で叩き落とそうとも降り注ぐ砲弾の破片が周囲一帯を引き裂いていただろう。
ロカジとシュシュがいなければ襲う砲弾の数はもっと増えていただろう。
夕立と蜜、ハウトと織愛がいなければはぐれた砲弾が地を抉っていたはずだ。そしてムルヘルベルがいなければ、遊撃に回る彼らの動きは制限されていたろう。
クロトがいなければ中央ビル周辺で多数の死傷者が出た事も間違いない。
彼らのうち、一人欠けてもそのギリギリの防衛は成立しなかっただろう。
――猶予は、いつまでもあるわけではない。拮抗したこのバランスは危うく、いつ崩れてもおかしくない。
故に、残った猟兵らは馳せ駆ける。あの巨大なる戦車を叩き潰す為に。砲雨の中を、まるで放たれた銃弾の如く――真っ直ぐに!
ラナ・アウリオン
◎
2攻撃
戦車……に、区分してよいモノでショウか!
装備も規模も、およそ「戦車」の規格内ではありマセン。
戦車ならば後面や上面から攻撃を加えるのが適切デショウが、あれほどの重装甲を相手に砲撃戦をしても、ラナの装備での突破は困難と判断できマス。よって、
直接攻撃ではなく、目眩ましとしての射撃を敢行しつつ……敵機に接近を図りマス!
併行して熱・振動・電磁波・魔力などから多角的に探知――
機関部の位置を特定し、そこに取り付きマス。
この巨大質量、仮に砲撃がなくとも本体自体のみで脅威に足る……デシたら、動力を破壊する以外にはありマセン。
ユーベルコード起動。
零距離からの最大火力を以て敵装甲を貫徹、機関部を破壊しマス!
●神の火を見よ
巨大戦車の機関砲弾を掻い潜り、一人の少女が飛翔する。
相対距離はどんどん縮まり、弾幕もその密度を増していく。第一種戦装『ミネルウァ』の各所より瞬間的・高圧の魔力噴出。スラスター、或いは単発のスプリントブースターとして用い、少女は――ラナ・アウリオン(ホワイトアウト・f23647)は、敵弾の隙間を縫い通す針になったかのように翔けた。
「この規模の建造物を、戦車……に、区分してよいモノでショウか! 装備も規模も、およそ『戦車』の規格内ではありマセン」
サイズ、おそらく重量も、あらゆる意味で規格外。あれだけ巨大であれば自重で崩壊しようとも全くおかしくないが、その様子は見られない。自滅は期待するだけ無駄だろう。
――戦車を攻めるのならば、セオリーがある。主砲が届かない背面からのバックアタック、或いは上からのトップアタックだ。彼女、ラナの力を以てすれば、それらはいずれも実現可能だったが、問題は敵の規模である。
(あれ程の巨体、重装甲が相手では、現行のラナの装備では持続的な砲撃戦を行うには火力が足りマセン。――ならば)
ラナは決意を固めたように、自身の周囲に浮遊する火力投射外装『ウェヌス』に術式を装填。次々と魔力弾を連射し、弾幕シューティングゲームさながらにラナは飛ぶ。砲門の幾つかを潰すが、それと同時に甲板に迫り出した三五連装マイクロ・ミサイルランチャーが一斉に火を噴いた。
ラナは即座に天を仰ぎ、有りっ丈の速度で急上昇。自身を追尾するミサイルの飛来方向を背面のみに集約、反転してウェヌスを連射することで片っ端から撃墜する。三五のミサイルが描くサーカスめいた白煙弾道が、次々と爆炎にて終端を描く。
(熱センサー、振動センサー、電磁波センサー、フル稼働――)
ラナは顔を顰めた。彼女の狙いは敵の機関部の破壊。つまり、この巨体の動力源をブチ抜いて動きを止め、擱座させてやろうというものだった。仮に砲塔を全て潰したところで、この巨体が動き続けるとあれば、それだけでモール・ヘイヴンは踏み潰されてしまうだろう。ならば動きを止めるしかない。
そのためにミサイルを迎撃し、応射しつつ各種センサーの反応をモニターしていたのだ。
解析結果。
動力部の反応、軽い探知のみで実に十五!
おそらく厚い装甲に隠され秘匿された動力源が他にもあるだろう。外殻や末端に配されているのはその近辺に動力を供給するサブ動力のようなものと見える。
――だがしかし、
(十五あるなら十五貫き。残りも探し出して、貫くのみデス!)
ラナの顔は曇らない。目標を真っ直ぐに見据えている。戦車上方より回頭、急降下! 目標、左翼甲板下機関部!
「リーサル・プログラム、オン」
ラナの右手に四連のウェヌスが纏い付き、サイドが連結。まるで角筒めいて集ったウェヌスが、彼女の拳を軸とするかのように高速回転。
回転する四基のウェヌスの内側。
ラナの拳のすぐ先で、神威の炎が目を覚ます。
「擬神回路、最大励起。神威顕現承認――再演開始、」
対空機関砲がラナの肩を、脇腹を抉る! だがこの炎はもう止まらぬ、嘗て神が点した原初の炎、その模倣だ。人の身で止めるに能わず!!
エミュレーション ・ ウルカヌス
「『神 紀 再 製 ・ 神 炎 鐵 火』ッ――!!」
ラナはそのまま、高速回転するクアトロ・ウェヌスを繰り出し、ドリルめいて機関部反応の真上の甲板に突き立てた。
――零距離。神威、再演。
筆舌に尽くしがたい爆炎と爆光が、左甲板を貫いた。バックファイアと機関部の爆発が、天に昇る火柱のように吹き上がる。
直下の機関部は完全貫通、完全破壊! ラナの炎はその真下の履帯すら破壊し、巨大戦車の踏破能力を削ぎ落とす!!
「……次、デス! 神もこう言うことでショウ」
反動を活かし宙に舞い上がりながら、ラナは戒めるように言い放つのだった。
「『――汝ら罪ありき。昇天に能わず』!」
成功
🔵🔵🔴
ルーノ・アルジェ
◎
2
……奪えなければ、壊してしまえ…って?
本当に、オブリビオンって…身勝手。
そんなのは絶対に、許さない。
攻撃に、向かうよ。
私は…結局、何かを壊す事の方が向いてるから。
私が盾になった所で、誰かを護れるワケじゃ、ない。
でも、オブリビオンを倒せば…それで誰かが護れる。
さあ、行こう。とにかく、前へ。少しでも、ちょっとでも、速く。
…荒塵の、向こうへ…!
私みたいな小さな的を、狙いたければ狙えば良い。
私はたどり着いて、武器が振るえればそれでいいから。正面から、突っ込むよ。
手が届いたら…機銃でも、砲塔でも、手当たり次第に叩いていこう。
捨て身の一撃を、お返しの速度を乗せて、全力で。一撃でダメなら、何度でも…!
●血翼翔ける
「……奪えなければ、壊してしまえって? 本当に、オブリビオンって……身勝手。そんなの、絶対に、許さない」
少女は疾る。傷ついているのに、その動きはまるでそんなことに頓着していないかのようだ。傷が拡がることも、流れる血にも、何ら痛痒を感じていないかのよう。
――痛い。痛くないわけがない。けれど。
結局、自分に出来ることはただ一つ、これきりだった。
誰かの盾になることは出来ない。自分の鎌は、刃は、敵を殺すためにあるものだ。誰かの命を救うには、鋭すぎるものだ。
だから直走る。結局殺すことしか、倒すことしか出来ないのは変わらないけれど――それでも、オブリビオンをこの手で殺すことが出来たとするなら、それはきっと誰かを護ったのだと言えるから。そのオブリビオンに殺されるはずだった人を救ったのだと、少しは胸を張れるだろうから。
だから疾る。真っ直ぐに走る。少しでも速く荒塵の向こうへ。
ご、うっ!
黄砂はらむ荒野の風が少女の髪を嬲った瞬間、彼女は決然と跳んだ。その身体から紅きオーラが迸り、その背に翼を形作る。――ユーベルコード『呪血の翼』!
少女は――忌血の鎌、ルーノ・アルジェ(迷いの血・f17027)は、紅きオーラの翼を強く羽撃き、もはや数百メートル先にまで迫った戦車へ向けて、放たれた矢の如くに飛んだ。
マンハント
人 狩 り用の小口径機関銃――小口径と言っても一二・七ミリメートル、歩兵が気軽に撃てるような代物では無い――が、けたたましい銃声と共に、ルーノ目掛けて鉄の雨を注いだ。ルーノは紅のオーラを纏うことで得た飛翔能力で滑空、虚空を蹴り飛ばすように中空で跳ね、弾丸の雨をギリギリのところで掻い潜る。
ルーノの動きには、巧みな戦闘機動や戦術、戦法というものがない。護りたいという意志、前に駆けるという意志だけがある。速度に任せた我武者羅な動きを、四方から放たれる機銃が逃がさない。
ルーノの身体を覆う紅のオーラさえも侵徹し、何発も銃弾が着弾した。命中の度にルーノの身体から血が飛び散る。
――だが。止まらない。それどころか、銃弾が命中する度に彼女の動きは速くなる。
呪血の翼は、ルーノが血を流せば流すほどに彼女の能力を強化するユーベルコード。傷つけば傷つくほどにルーノは強くなる。
ルーノはその藍色の瞳を、今や真っ赤な光に染め上げて、黙示録教の牙城の一つたる巨大戦車の甲板へ躍り込んだ。
「――ッぁあぁぁぁぁぁああ!!!」
その身から迸る血が巨大な鎌を形作る。鮮血呪装『重き血の咎』。鎌の形に固まる前に、ルーノは力の限りそれを振り抜いた。
――おお、迸る血が薄く長く伸び。本来ならば射程外となる筈の対人機銃を、一瞬にして八つ斬り飛ばす!!
何という威力、そして射程か。半径二十メートル余りを一閃にて薙ぎ払う。しかしそれすら行きがけの駄賃。ルーノの動きは止まらない。
傷ついた身体から紅い滴を散らしながら、ルーノは背のオーラの翼をはためかせ、今一度跳躍。ひっきりなしに基地への砲撃を繰り返す戦車砲に迫り、
「これ以上――誰も、傷つけさせない!!」
咆えるなり迷いなく、巨大な血の鎌を振り抜くッ!!
暗闇に赫の一閃が煌めき、砲身の一つが根本からずるり、とずれた。砲台を蹴って飛び抜けるルーノの背後で、根本に装填されていた砲弾が爆ぜ、派手な爆発と火柱を巻き起こす。
ご、ごごおんッ……!!
砲身長数十メートルの巨砲が、ゆっくりと落ちて甲板上を薙ぎ倒しながら横倒しとなる。
その戦果を誇ることもなく、ルーノは進む。
力の続く限り――この殺戮機構を破壊し続ける。
それだけが今の自分の存在意義なのだと、背中で語るようだった。
成功
🔵🔵🔴
斬幸・夢人
◎
2
コイツはすげぇの持ち出してきやがったな
初めて関心したぜ、こんなサイズをお目にかかれるとは
煙草を吸いながら超重戦車を眺めて戦力分析をしつつ、
自分の調子を確認するように
……2800……3000、いや、今日の感じなら3200ってところか
相手のサイズ、斬るべきモノ、動くべきタイミングを見据えて
――斬るぜ
――久々にマジになってやるよ、と力を込めて超重戦車へと接近する
接近方法は他の猟兵と協力、または広場に張り巡らせた鋼糸を使って三次元機動を行う
――魔剣抜刀
神だろうが悪魔だろうが因果も機械も――斬れぬものなし
必中必斬超射程の魔剣、即ち――神超の剣閃
半径3200mをほこる縦一文字のUC斬撃にて敵を斬る
●刃雨
「コイツはまた、すげぇのを持ち出して来やがったな。今日初めて感心したぜ、こんなサイズの戦車にお目にかかれるとは。お前らのたまげたクソ教義なんぞより、こっちの方がよっぽど感動的だな」
斬幸・夢人(終焉の鈴音・f19600)には、それが何故動けるのか、動力は何なのか――全く、見当も付かなかった。アポカリプスヘルに嘗て栄えた文明の、その最先端を尽くしたであろう巨大戦車、移動要塞。
その砲門数は数百、破壊される都度新たな砲門がその内部より迫り出し、破損したユニットはパージされる。終わりの見えない敵だ。
間違いなく難敵。しかし、それを知ってなお夢人の飄々とした表情は崩れない。
煙草に火を点ける。
周囲の猟兵達の配置を頭に入れる。長距離戦。無線機の類の準備は無い。連携不足のために巻き込むことがあってはならない。
夢人は親指を立て片目を閉じ、対象との距離を測る。
「ここからでも届くが――ちっとばかり近づくとするかね。――相対距離一一五〇って所か。ハッ――」
皮肉げに唇を歪める。
砲弾が降り注ぎ、そこかしこで爆発が巻き起こり。地獄絵図、或いは地獄そのものと化したモール・ヘイヴンエントランス前広場で――夢人は余裕を見せるように、笑った。
「今日は調子がいいんでね。その三倍だって、届かせてやる」
左手で愛用の黒刀の鯉口を包むように握り、刀の柄を右手で取る。抜刀の予備姿勢を取って、夢人は声低く低く、誓約するように呟いた。
煙草を弾き飛ばし、
「――久々にマジになってやるよ。今から、斬るぜ」
そして、爆ぜ駆ける。
煙草が地に落ちたその瞬間には、夢人の姿は遙か前方。迫る砲撃の真ッ最中にある。数多いる猟兵が砲弾を撃ち落とすその間を、夢人は身一つで駆け抜けた。正に捨て身、獣めいた勘働きで砲弾の着弾箇所を避け、地面に炸裂する砲弾と紅蓮の爆炎を避け潜り抜ける。
避けきれない弾雨が来れば、中途に残った、砂に埋もれた街灯に鋼糸をかけて巻き上げることで加速。糸を切り、加速もそのままに宙に身を躍らせて着地、尚も疾駆。
十秒で相対距離三〇〇まで詰める。敵躯体の全長三〇〇メートルを考慮に入れても総距離六〇〇。釣りが来る。
一際強く踏み込みながら、夢人は左手親指で刀の鍔を押した。かすかな鍔鳴りの音が地面に落ちるその前に、右手が刀身を疾らせる。
魔剣抜刀。
神も悪魔も因果も機械も。その絶刀の前に斬れぬものなし。
必中必斬、一閃一殺、神殺の剣閃。
その射程、実に三二〇〇メートル。鞘走りからコンマゼロ二秒で、夢人は抜剣した刀を振り下ろした。
――ざ、ギンッ!!!
実に戦車の三〇〇メートル手前から、闇夜に一条の銀閃が走り、超重戦車のボディに浅からぬ傷が刻むッ! だが、一撃必殺とは到底いかぬ。神殺しの刃をしてさえ、旧文明の粋は裂けぬというのか。超金属による複合装甲が斬撃を表層で止めている。――しかし、
「固ぇな。――だが関係ねぇ」
夢人は既に刀を鞘に戻している。抜刀一閃の射程を極限まで拡張する、それがユーベルコード『神さえも覆せない確実』の効果。つまりは。
彼が納刀からの抜刀一閃を繰り出すたびに、同様の斬撃が超重戦車を襲うと言う事に他ならぬ!
「一打で足りねえなら、十打。それで足りなきゃ百打だ。そのでかい図体がいつまで保つか――」
鍔鳴り、
「試してみようぜ?」
抜刀ッ!!!
斬撃、斬撃、斬撃斬撃斬撃斬撃斬撃斬撃斬撃斬撃斬撃斬撃斬撃斬撃斬撃斬撃斬撃斬撃斬撃斬撃斬撃斬撃斬撃斬撃斬撃斬撃斬撃斬撃斬撃斬撃斬撃斬撃斬撃斬撃斬撃斬撃斬撃斬撃斬撃斬撃斬撃斬撃斬撃ッ!!!
鋸台に乗せられた材木めいて、超重戦車の装甲が裂け、各所で火花が咲き、砲台が刻まれていく! 巨大な図体ではその斬撃の嵐を避けることも叶わぬ!
そこかしこから黒煙を噴き出す戦車に笑みを深め、夢人は尚も斬撃を加速。
天国侵犯の手痛いツケを払わせるべく、驟雨の如く居合いを注ぐ!
成功
🔵🔵🔴
シャルロット・クリスティア
◎攻撃
あまりにも巨大な移動要塞……内部から破壊出来れば一番ですが、流石に簡単には入り込めそうにないですね……。
仕方ありません、上方から攻めます。レン、仕掛けますよ!
中途半端な距離で足を止めると狙い撃ちにされるのは自明。
ここはいっそのこと距離を詰め、主砲の攻撃半径の内側に飛び込む。
でかい得物です、そう旋回は利かないでしょう!
速力を活かした刺突でその砲身に穴でもあけてやれば、発射不能まではいかずとも威力は激減する。
それに、主砲はともかく機銃座程度なら狙い撃たずとも対地掃射である程度なら潰せます!
一撃離脱を繰り返し、少しずつ戦力を削ぎ落す……。
私達の空中戦、披露して差し上げましょう!
アルナスル・アミューレンス
◎2
これはまた、どえらいのが来たねぇ。
でも、あれだけでかいのが沈めば、見てる方の気持ちはより上がるかなぁ。
――さて。
攻撃は最大の防御、てね。
是より放つは天災が如き破滅の砲弾
――偽神細胞、拘束制限解除
その脅威もそこまで、これで『暴威(コワス)根絶』よ。
真の姿、偽神細胞と同化し、不定形の黒い異形となった体の一部を増大・変容させ、複製するは射撃形態の偽神兵器。
実に44挺。
同時に、アンカーの様に下に突き刺して体を固定。
全門より斉射するのではなく、継戦能力を優先して半分程度に、絶え間なく連射。
撃たれる砲弾にも、スナイパーの腕で撃ち込んで破壊し、更に本体にも容赦なく制圧射撃を行う。
跡形もなく、消し飛ばす。
青葉・まどか
◎
攻撃
これまた、とんでもないモノが出てきたね
隠し玉にしてはデカすぎるでしょ
相手の戦力は規格外。それは事実
でも、それが戦う事を諦める理由にはならないよ。守り切ってみせる
リアルで弾幕系シューティングゲームとかマジで勘弁。のべつ幕無しに撃ち込まれたら迷惑なんだよね
だったら、砲弾に対処するよりも砲撃をする砲自体を無力化してしまえばいいのでは?
『射撃武器・魔改造』発動
ビームキャノンを【スナイパー】仕様にカスタマイズ
上手くいくのかは分からない、どれ程の効果があるのかも分からない
でも、やる価値はあると思う
砲撃を繰り出す砲そのものを無力化する為に砲門を狙い撃つ
一つ二つ潰すだけじゃ埒が明かない。ドンドン撃つよ
日下・彼方
◎2
デカい奴の相手は苦手なんだがな…
ここまできたら出来る限りの事をやってやる
と言う訳で持ってきましたHeimdadll
これ今まで空飛ぶサーフボードだと思ってたんだが
本来の使用法は違うみたいでな
敵の見える見晴らしの良い高台に陣取る
天板を操作しHeimdallを砲撃形態に分離変形させ構える
狙うは本体ではなく砲身
【呪殺弾】を連射し、とにかく攻撃の手数を減らす
使用不能がいいとこだが暴発すればなお良し
こっちを狙って来ようが弾を打ち落とし続行する
旧時代の兵器がなんだ
こっちは最新鋭通り越したオーバーテクノロジー兵器だ
負けてやる道理はない
●迫撃
突撃して白兵戦を挑む猟兵らの攻撃により、巨大なる戦車は次々と各所で爆炎を上げる。
しかし、この移動要塞は猟兵らが思うよりも遙かに堅固だ。いかなる技術で作られているのか――その表層装甲は、時間経過と共に互いに結びついて傷を塞ぎ、驚異的な継戦能力を発揮する。しかも破壊した砲は次から次へと装甲下ウェポンベイより再度迫り上がりラッキングされ、速やかに砲撃を再開する。
総重量何トンかも想像の付かぬ、自己再生する要塞めいた巨体――
普通の人間ならばその絶望的な戦力差に希望を失い、膝を屈していたかも知れぬ。
しかし、そこにいるのは猟兵だ。形となって迫る巨大なる絶望を、己が剣で銃で、貫こうと決めた者達だ!
「これはまた、どえらいのが来たねぇ。でも、あれだけでかいのが沈めば、見てる方の気持ちはより上がるかなぁ」
呟くのはアルナスル・アミューレンス(ナイトシーカー・f24596)。
小高くなった丘陵の上に陣取り、巨大なマシンガンを己が傍らにずん、と突き立てる。今から使うユーベルコードに、銃は不要だ。
「――さて。攻撃は最大の防御、ってね。準備はいいかな、三人とも?」
「デカい奴の相手は苦手なんだがな。……まあ、いい。ここまできたら出来る限りの事をやってやるさ」
フロートボード『Heimdall』に飛び乗り、空中に飛翔すしつつ応じるのは日下・彼方(灰の追跡者・f14654)。
「私がなんとか敵の手数を抑えてみる。どこまで上手くいくか知らんが、やらないよりはマシだろう」
「私も手伝うよ。――確かにとんでもないサイズだし、規格外の戦力だと思う。でも、それはきっと、戦うことを諦める理由にはならない」
青葉・まどか(玄鳥・f06729)がそれに続いた。手に持った歩兵携行用ビームキャノンを、『ガンスミスモード』発動により組み替え、長い砲身を保つ狙撃用ビームキャノンへと変形させる。
「膝を折るには、まだ早い。守り切ってみせる」
「よく言った。なら一緒に行こう。私たち二人で迎撃だ」
「分かったわ。行きましょう!」
まどかがフロートボードの上に飛び乗ると、彼方がボードを蹴りつけてそのまま宙を滑り出す。
「攻撃は任せるぞ、お二人さん。お互い、幸運をな」
ドライだが、互いの無事を祈る言葉を残す彼方。フロートボードは加速、狙撃に適したポイントへと二人を運んでいく。
「ええ――幸運を。では、私たちがアタッカーですね。その様子だと、ここから撃つおつもりですか?」
二人を見送り、アルナスルへ問いかけるのはシャルロット・クリスティア(彷徨える弾の行方・f00330)。その傍らには飛龍『レン』が侍り、徐々に迫りつつある巨大戦車を睨んでいる。
「そうするつもりだよ。彼女たちが砲撃をなんとかしてくれるなら、ここでギリギリ、やれるだけ弾をねじ込んでみるつもりさ。君は?」
「私は――砲撃半径の内側まで接近します。やることはあのお二人と変わりません。敵の砲撃の手数を減らして、他の猟兵が攻撃しやすい環境を作ろうと思います」
「その竜で行くつもりかい?」
「ええ――」
シャルは地面を蹴り、飛龍につけた鞍に跨がった。首筋をトン、と撫でてやると、飛龍は嬉しげに鳴き、黄砂を巻き上げて飛び上がる。
「竜騎兵の突撃戦術、ご覧に入れましょう。人竜一体・一撃離脱の機動戦、戦車ごときには捉えさせてもあげませんよ」
眩しげに見上げるアルナスルの視界の端で、ビームキャノンが火を噴いた。伸びる光条が砲弾を叩き落とし、機銃を一つ潰す。
「そいつは頼もしいな。任せるよ。じゃあ――始めようか。彼女たちもやり始めたみたいだ。僕らも僕らの仕事をするとしよう」
「はい!」
かくて竜は天に舞い、アルナスルは巨大なる敵を真っ向より見据える。
「砲身除き高さ七〇メートル……全幅約一〇〇メートル……なら全長はその三倍弱ぐらいかな。オーバーテクノロジーもここに極まれりって感じだけれど、僕らのすべきことは変わらない」
アルナスルはマスクの位置を直し、低い声で宣言した。
「是より放つは天災が如き破滅の砲弾。――偽神細胞、拘束制限解除。その脅威もここまで。これ以上先には進ませない――」
アルナスルの腕が、偽神細胞と同化し、ブラックタールめいた不定形を呈する。
コワス
「これで『根 絶』よ。祈りは早いうちに済ませるんだねぇ」
アルナスルの呟き。そのかそけき響きを受けたように、巨大戦車目掛けてビームと弾雨が降り注いだ。
アルナスルは機を待つ。己の全力を注ぎ込むべきタイミングが来るのを、ただ静かに。
まどかと彼方の思考は近しかった。砲という根本を抑えることで敵の攻撃密度を下げる、というのが彼女らの目的だ。
「まったく、隠し球にしちゃデカすぎるでしょ。リアルで弾幕系シューティングゲームとか、マジで勘弁。のべつ幕無しに撃ち込まれたら迷惑なんだよね」
「同意見だな。適当なあたりで地面に降りて砲撃開始だ。それとは別に撃てるだけ撃っておけ。奴ら、もうこっちを捕捉してるぞ」
「分かってる!」
まどかの声に応じ、彼方がHeimdallをコントロールする。気流の波をサーフィンめいて乗りこなし、空中で一転、かろうじて砲撃を回避。まどかと彼方のバランス感覚が無ければ転落の憂き目を見ているところだ。
「こっ、の!!」
ボードを右手で捉えたまま、まどかは腰撓めにしたビームキャノンを連射。空中で砲弾を幾つか撃ち落とし、その根元にある砲台を一つ破壊する。
「あの高台に着地する。そこまでなんとか保たせてくれ」
「簡単に、言ってくれる、よねっ!」
片手はバランス維持に使っている。片手保持での連射では精度に限界がある。しかしまどかはやってのけた。
「喰らえっ……!」
トリガーを引くと同時に、夜闇をプラズマ光が引き裂いた。
相対距離約一〇〇〇メートル。巨大な砲弾を撃つ敵戦車の砲塔は、当然ながらそれに比例するサイズをしている。その砲口を目掛け放たれたビームが、砲より飛び出す瞬間の砲弾を射貫いた。紅蓮の爆光が咲き乱れ、一拍遅れて爆発音が飛んでくる。
「やるじゃないか。それじゃあ、私も一つご披露といこうかな」
彼方は楽しげに言うと、高台にHeimdallを着陸させ、ひらりと飛び降りる。まどかが並んで降りるなり、Heimdallを踵で蹴った。
「これ、今まで空飛ぶサーフボードだと思ってたんだが――実のところ、本来の使用法は違うみたいでな」
訝るような顔をするまどかの前で、蹴られたHeimdallが浮く。天板に浮いたコンソールにコマンドを叩き込むと、Heimdallは真ん中から二つに割れ、変形した。反重力ユニット作動、空中に浮いて静止したHeimdallの前方、切っ先に該当する部分が展開し、砲口が迫り出す。
「Heimdall、『RagarokMode』。展開完了」
左右の砲撃ユニットに分離変形し、彼方の左右を固めるHeimdall。反重力ユニットのおかげでその重さは無に等しく、取り回しも抜群だ。展開されたグリップとアームレストを手に取る彼方に、まどかが呆れたような調子で声を上げる。
「本来の用途ってそっちなのね……空飛ぶサーフボードと勘違いするってありえる? それ」
「仕方ないだろ、コマンドを入れなきゃこの形態にならないんだから。私だってまさかこれが本来の使い方だなんて思いもしなかったよ」
呆れたようなまどかの声に肩を竦めて応じつつ、彼方はおよそ一キロ先の敵戦車を睨む。視線をやるが速いか、無数の砲火が花開いた。
――食いついた。彼方は左口端を持ち上げる。敵の総火力の、多く見積もって二〇パーセント程度。それでも呆れるほどの数だ。
「私が砲弾を叩き落とす! 砲塔を片っ端から撃ち抜け!」
言うより早く彼方はHeimdallを連射している。放たれるのは漆黒の『呪殺弾』。その連射密度は艦船用迎撃機関銃、ファランクスめいている。黒き火線が砲弾の行く末をなぞり遮り、次々と紅蓮の爆炎を散らし、撃墜、撃墜撃墜撃墜!
「言われなくてもっ!」
その横でまどかが膝をつき、ニーリングの姿勢から次々とビームキャノンを連射する。次々と空に散る爆光を貫く閃光が、砲塔を撃ち抜いて、根本より轟炎を迸らせた。敵の射撃密度が減れば、彼方もまた呪殺弾を砲塔目掛け全開で連射。
「一つ二つ減らす位じゃ埒があかない! 見える範囲のは全部潰すつもりでいくよ!」
「はっ、上等!」
収束したビームの火線が、またも二つの砲台を一挙に射貫き、派手な爆発を巻き起こす。まどかが破壊した分、新たな砲台がラッキングされ、修復されるが、しかしそれが射撃準備を整える前に彼方が弾幕を張り、放った砲弾を即座に撃墜できるように備え、鼻先を押さえる。敵の攻撃のほんの一部ではあるが、彼女ら二人がここで敵火力を抑えることで、他の猟兵が攻撃する隙が生まれる……!
「――旧時代の最新兵器なんだろうが、終わった文明の最新なんて、これから先は遅れていく一方。こっちには最新鋭通り越したオーバーテクノロジー兵器が二つ。負けてやる道理はない!」
「そうよ――私たちは負けない。お前達の腐った教義も今日この日まで。……正面から叩き潰してあげるっ!!」
Heimdallとビームキャノンが吼え、超重戦車を猛撃する……!
光と漆黒の呪殺弾が吹き荒れ、砲弾を墜としては砲を破壊するその最前線を羽撃く一つの影がある。鳥か? 否。 グライダーか。否。或いはドローン? それも否。
ドラグーン
それは、文字の通りの竜 騎 兵だ。
「さぁ、仕掛けますよ、レン……!」
アックス&ウィザーズで絆を深めた翼竜に跨がり、凄まじいスピードで空を翔るのはシャルロットだ。勇ましい彼女の声に、跨がる竜が声高く鳴いた。
常ならばそのマシンガンによる遠距離狙撃を常套戦法とするはずのシャルロットだが、今日その手に握るのは長剣『アルケミック・ガンブレード』。
敵は巨大な移動要塞。表層部はともかく、深層部まで侵徹して内部から破壊するにはそれなりの用意が必要だ。さりとて、半端な距離で足を止められれば蜂の巣にされてしまうだろう。自分の狙撃技能を用いても、単独では飽和攻撃に巻き込まれ撃破される恐れがある。
――ならば、とシャルロットは前に飛んだのだ。あれだけ巨大でも、敵は『戦車』。トップアタックとバックアタックが有効であることに違いはない。敵主力火砲群の攻撃半径内に飛び込み、物理的に射撃を受けない位置まで接近すればいい。それが彼女の戦略であった。
ガンブレードのシリンダーをオープン、術式弾を最大数装填してセット。撃鉄を起こし、トリガーを引く。術式弾が炸裂。刀身にエメラルドの光が疾る。
まどかと彼方の砲撃に乗じて接近するシャルロット目掛け眼下より対空砲火が伸びた。けたたましい射撃音と共に火線がシャル達を叩き落とそうとする。しかし、
「当たるものですか!」
シャルロットは刀身に渦巻く風を手繰り、レンの翼に纏わせた。レンはそれを待ちわびたように羽撃き、信じがたいほど機敏にコースを変える。風の術式弾とレンの機動力を相乗させ、機銃掃射ですら追いつけない高速で急降下!
「はああああああっ!!」
右手に引いたガンブレードのトリガーをもう一度引く。激発。朱く朱く燃え上がる刀身。急降下の最中、吹く強風に煽られ尚朱く燃え上がる。炎の術式弾だ!
シャルロットは急降下の勢いを乗せ、主砲群の一つを真っ赤に燃えるガンブレードで貫き引き裂いた。熱と自重でひん曲がる砲から砲弾が飛び出ようとして砲身途中で停弾、燃焼ガスが逆流して砲身底部のロック機構を破壊、爆炎を撒き散らして吹き飛ぶ! シャルロットはそれを尻目に手綱を引き、急降下の後の揚力を利用して急上昇しながら更に小型砲の砲身をガンブレードで切り裂いて破壊する。
その脅威度を認識した対人機銃群が俄にシャルロットを狙って掃射をかけるが、
「この程度っ!」
何もシャルロットも、有射程武器に対して無策で突撃したわけではない。回避機動をとりつつレンの肩に銃座めいて据え付けられたマギテック・マシンガンを連射、機銃を破壊しつつ大きく旋回。火砲群の狙いを外し、機銃の狙いを引き付けつつ、敵の戦力を着実に削ぎ落としていく!
「さあ、まだまだこれからです。私たちの空中戦――とくと味わってもらいますよ!」
声を置き去りに、シャルロットは今一度急降下。次なる砲を目掛けチャージを仕掛ける!
まどかが、彼方が、そしてシャルロットが、それぞれの方法で戦車の火力を削ぎ落とす。砲のうち幾つ目かが、シャルロットの突撃とまどかの光条を受け爆散するのを合図に、アルナスルは急激に己の肉体を変容させた。両腕がまるで黒いスライムめいて膨れ上がり、淀んだ黒色の肉塊からずるりと射撃形態の偽神兵器を模して変形・増殖する。最終的に居並ぶのは四十四挺の偽神銃身。銃身下部からアンカーめいて飛び出した黒鉄が、地面に突き立って四十四対、八十八本のバイポッドめいてアルナスルの身体を支えた。
高出力の偽神兵器、それが四十四挺。銃口に宿る光を恐れるように機銃の幾ばくかがアルナスルを睨もうとするが、
「ああ、ほら。僕じゃなく彼女たちを見ておかないと――痛い目を見るよ」
アルナスルの飄々とした声に被さり、Heimdallの呪殺弾の連射が対人機銃群を粉砕する。
「――まぁもっとも、僕を放っておいても痛い目を見るんだけどね。どちらにしても君達は、ここでお仕舞いだ。僕達がここに来たからには、それは確定事項なのさ」
アルナスルは偽神兵器の照準を定める。正面からこちらを睨む砲を吹き飛ばし、装甲を侵徹し、可能な限りのダメージを与える。
あの巨体を猟兵一人では突破できまい。彼方、まどか、シャルロットの支援を受けてもそれは同様。だが、アルナスルはその偽神銃身、その底冷えのする輝きそのもののような声で吐き捨てた。
「――跡形もなく、消し飛ばしてやる」
低く唸るなり、アルナスルは巨大戦車が砲を放つ前に偽神兵器のトリガーを引いた。一から二十二番管まで時間差射撃。
大口径故の射撃インターバル、つまりはロックタイムを、砲身の数で補う。射撃直後から再装填を開始。二十二番管までを撃ち終えればシームレスに残りの管の連射に切り替える。二十三番管から四十四番管までを等間隔で連射。再装填と射撃を滑らかに繋いだ結果生み出されるのは、秒間二十二発の大口径偽神砲弾の絶え間ない連続射撃だ!
炸裂炸裂炸裂炸裂ッ!! 対オブリビオン用反物質弾が敵の表面装甲を、対人機銃を吹き飛ばし表層防護を引っ剥がす。敵の火力密度が下がる。アルナスルへ目掛け放たれる砲撃を、三人の戦乙女が防ぎ止める!
四人。たった四人の猟兵が、束の間、あの超巨大戦車の大火力と真っ向から渡り合う――!
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ジン・エラー
◎ 2
さァ~~~てェ、アレはどう救ったモンかね。
生憎とアレに急接近出来るほど便利なモンは持ち合わせてねェ~~~ンだよな
じゃ、乗らせて貰うぜ。その特急。【独立赴輝】
飛んでく先?決まってンだろ。今にもドデケェ~弾にやられそうなやべェヤツな。
お前も救ってやるよ。【高慢知己】
豆鉄砲なンかほっとけよ。"どうせ当たらねェ"【天意無法】
さァ、突っ込むぜ。
テメェごときに侵せるほど、この世はそンなにヤワじゃァねェ。
救ってやるよ、ガラクタ。【オレの救い】
ティオレンシア・シーディア
◎
2:攻撃
あ…あは、は…
…バッ……カじゃないのぉ…?
機動要塞とか、対人武装でどーしろってのよも―…
…ふぅ、現実逃避はこのへんにして、と。…ちょぉっと、○覚悟決めなきゃいけなそうねぇ。
エオロー(結界)のルーンで○オーラ防御の傾斜装甲を展開。○視力と○第六感フル活用で迎撃兵装の弾道○見切って●轢殺で突貫するわぁ。
進撃目標は搭乗するためのハッチ。
まともに当たったって、あたしの武装じゃせいぜい文字通り傷をつける程度が精一杯。…なら、乗り込んで中で暴れ回るしかないわよねぇ?
操縦担当と砲手しかいないんなら、乗り込みさえすればそう抵抗はないでしょ。内側からの○破壊工作ならいくらでもやりようはあるのよねぇ。
●地獄へ道連れ
「あ、ははは……はは……バッッッカじゃないのぉ……?」
状況は戦争さながらだ。砲弾と爆炎が席巻する戦場において、呆れたように遠方の戦車を見仰ぐのはティオレンシア・シーディア(イエロー・パロット・f04145)。そうなるのも致し方なし、何せ規模が規模だ。言ってみればあの戦車は、要塞に履帯を履かせて移動せしめているようなもの。巨大戦艦に勝るサイズ、そのエンジンの出力は如何ほどか。見当すらつかぬ。
「機動要塞とか、対人武装でどーしろってのよもー……」
ティオレンシアの手持ちは六連装のシングルアクション式リボルバー『オブシディアン』、ポーチに入ったグレネードが幾許か、加えてダガーが数本。あとはクロスボウが関の山だ。真っ当に考えてあの巨体にケンカを売るには装備の規模からして足りぬ。
「あァ~、分かるぜェ、あんなデカブツどうやって救ってやったモンかってよ――ちッと考えちまうよなァ、ティオレンシア」
不意に横合いから声。ティオレンシアが細い目を向ければ、そこには泥めいた色の肌をした聖者が立っている。不気味な、黒い、笑顔を象ったマスクをした男。
「ジン。来てたのねぇ」
「おォよ。救いを求める声が聞こえりゃ、オレはどこにだろうが飛んでいくぜ」
名を、ジン・エラー(救いあり・f08098)という。
気安い調子でティオレンシアに並び立つと、ジンは肩を竦めた。
「さァ、どうするよ? オレは生憎アレに急接近できるような便利なモンを持ち合わせてねェ~~~ンだが、お前はどうだ?」
相対距離、実に一キロ近い。敵は苛烈に攻撃する猟兵への迎撃と、モール・ヘイヴンに対する砲撃に手数を裂いてはいるが、近づく猟兵には分厚い弾幕を張ることだろう。無策の徒歩で近づこうものなら、辿り着く前に挽肉になるのが関の山だ。
「……現実逃避してる場合じゃないわねぇ。最初、スケール違いすぎてヤケになってたけど。ちょぉっと覚悟決めて、突撃といこうかしらぁ」
問いに答えると、ティオレンシアはぱちん、と指を鳴らす。同時に、ジジジッ、と音がして彼女の右隣の空間が歪んだ。ゲーム画面のバグめいてテクスチャがぶれ、空間に姿を現すのは一台のバイク。――正確に言うのなら、バイク型UFO。『ミッドナイトレース』。
「安全運転の保証は出来ないけど、これで良かったら一緒に乗っていくかしらぁ?」
「上等ォ~じゃねェか。そんじゃ乗らせてもらうぜ、その特急。ドライブと洒落込もうぜェ。お前も、あの戦車も、乗ってる連中も――纏めてオレが救ってやるよ」
「弾が当たらないように祈っておいて頂戴ねぇ。――じゃ、行きましょぉ」
ひらりとバイクに跨がり、ティオレンシアは巨大戦車を睨む。
「――デス・ロード・ドライブの始まりよぉ」
ティオレンシアはエンジン全開で、巨大戦車へ突っ込む。引っ切り無しにバイクを狙って唸り飛ぶ機関砲弾が、何もない中空で跳ねて弾けて火花を散らし後方へ飛んだ。ティオレンシアが展開したエオロー――結界のルーンによる障壁が弾丸を弾いたのだ。正面からの射撃に対応するべく傾斜して張った障壁は、直進してくる機関砲弾に対しては無類の防御力を発揮する。
だが、対戦車砲弾はどうしようもない。あんなものが直撃すれば、流石の結界のルーンとて貫通される。
メタルジェット
対戦車砲弾――成型炸薬弾は、装甲を超高速金属噴流で貫通するために特化した、文字通り戦車殺しの砲弾だ。今回の場合はそれが、人が入れるような砲から撃ち出されるのだ。到底、結界一枚で耐えられるようなものではない。
――だが、此度突撃するのはティオレンシア一人ではない。彼女の後ろには泥のいろした聖者が一人座している。
「ハッ――汚ェ花火を何発も続けて打ち上げやがる。よくやるぜェ、ご苦労なこった。ティオレンシア、真っ直ぐだ。真っ直ぐ突っ走れ」
「それじゃいい的よぉ? 戦車砲を一発食らったらあたし達、月まで吹っ飛ぶんじゃないかしらぁ」
「問題ねェ~よ。“どうせ当たらねェ”」
ジンはティオレンシアの訝るような声に、軽やかに返した。
彼の『救い』は天意無法。後ろに差す輝きは増すばかり。
「豆鉄砲なンかほっとけよ。さァ、突っ込め。救ってやンのさ、偽神に魅入られた、あの哀れな奴隷共をよ」
「……信じたわよぉ、ジン。死んだら化けて出るからねぇ!」
ティオレンシアは、ドライビングテクニックも迎撃の銃捌きも、ひとまず全てを横に置いてアクセルを全開に開けた。ミッドナイトレースの車輪が凄まじい音を立てて地を噛み、荒野を砂を巻き上げ疾走する!
当然のように天に光り、降り注ぎ襲い来る砲弾。前だけを睨み最高速を更新し続けるティオレンシアをよそに、ジンはバイクの後部でゆらりと立ち上がって両手を広げた。
「安っぽい教義――滅びと救いをごっちゃにしちまッたような理屈をブン回して壊せるほど、この世はそンなにヤワじゃァねェ。今から行くぜ――救ってやるよ、ガラクタ」
涼しげに一説ぶるなり、ジンが纏う聖光の煌めきがバイクを取り巻いた。ティオレンシアの結界を聖者の光が強化する!
降り注ぐ成型炸薬弾の嵐が、その切っ先――スタグネーションポイントをずらされ、結界に突き刺さることなく逸れて地面に突き刺さり次々に爆ぜる! まるで往年の特撮映画のような爆発と粉塵の中を、ミッドナイトレースが駆け抜ける!
瞬く間に戦車が迫る。射程半径の内側に入れば入るほど、迎撃砲の手数は減る!
「そォら、当たんねェだろォ?」
「生きた心地がしないけどねぇ! ――突っ込むわよ、ジン!」
「おォよ!」
眼前に逸れた一発が着弾、凄まじい爆発を吹き上げたその瞬間、ティオレンシアは全力でハンドルを引き車体をウィリーさせ、跳んだ。
ぐんぐんと戦車の巨体が迫る。壁面激突間違いなしのコース。
「そこよぉ!」
カーキの車体、壁にしか見えない装甲のモールド。そこを搭乗ハッチと看破したティオレンシアは、バイクの車体ごとハッチに突っ込み――轟音!!!
ハッチを吹き飛ばし突き破って派手にドリフトをかまし、スピンしながら内部に突入する!
「な、なんっ――」
内部にいた黙示録教徒三名が反応してアサルトライフルを持ち上げるその前に、
「見えてるわよぉ」
クイック・ドロウ。ロデオめいて跳ねる車体を押さえ込みながらティオレンシアがオブシディアンを三連射した。殆ど一つに聞こえる銃声と同時に三人が仰け反って吹っ飛び、仰臥する。
ようやくの停車。悠々とバイクを降りるジン、それに続くティオレンシア。
「さぁて、お待ちかねの救済の時間だ。救って欲しい奴ァどこだ?」
「さぁね。奥に行けば見つかるんじゃないかしらぁ? ――これでようやく対等ねぇ。外からじゃ大したダメージは与えられなくても――内側から破壊するなら、幾らでもやりようはあるのよぉ」
撃鉄の落ちたオブシディアンをスピンさせてからハンマーを煽ってコックし、ティオレンシアは危険に笑んだ。まるで棘持つ、鮮やかなる薔薇のように。
斯くして二人は内部に進撃する。破壊活動がその区画の機能を止めるまで、そう遠くない。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
薄墨・ヴィーシュニャ
◎
2(部分的に1)
……思い通りにならないからって、全部壊すって、子供の、癇癪みたい。
わかってる。もう、何を言っても、聞かないん、でしょ?
じゃあ、仕方ない、よね。
UC【呪刃凶血】これであの戦車の中に忍び込むよ。【闇に紛れ目立たない】ように近づき、全身を血に変えて僅かな隙間から侵入するね。
後は、片っ端から皆殺し。目指すの、砲手のいるところ。上手くいけば、発射を、遅らせられるかも。少しでも、場をかき乱して、混乱させて、戦車の動きが鈍れば、嬉しいな。
命乞いしたら、許してあげる。でも、あなた達は、しないよね。
……うん、わたし、怒ってる、から。だから、呪刃の制御、出来てない。
楽に、死ねると、思わないでね。
●酸鼻なる刃
……思い通りにならないからって、全部壊すって、子供の、癇癪みたい。――わかってる。もう、何を言っても、聞かないん、でしょ?
じゃあ、仕方ない、よね。みんな死んじゃっても。殺すつもりで来ているんだから。それなら、殺されることだって覚悟してるよね。
闇の中で、少女は内心呟いた。
名は、薄墨・ヴィーシュニャ(聖なる呪いの刃・f23256)。彼女がそこに至った経緯は常軌を逸している。
真っ当な方法では、その戦車にとりつくことは叶わない。他の猟兵も、空からの攻撃、圧倒的高速での近接、他方に攻撃が集中している隙に乗じての強襲、或いは装甲を固めての突撃などの策をとっている。
ヴィーシュニャもまた、他の猟兵の手を借り、空中からその戦車に襲いかかった。
そして、当たり前のように機関砲の対空砲火に引き裂かれ、紅い血液として宙にブチ撒けられた。
びしゃり、びしゃり、闇の中に散ったその紅い血液の行く先を気に掛ける敵勢は一人としてない。
ただ一人、その飛び散った血に息を呑んだのは、ヴィーシュニャを運んだ猟兵だった。
――対空砲火で引き裂かれた?
否。空から、ヴィーシュニャを運んだ猟兵は見ていた。
・・・ ・・・・・・・・・・・・・
彼女は、弾丸が命中する前に液化したのだ。
数々の猟兵が攻撃を重ね、劣化した表層装甲の罅より染み入った血液が、じわりと浸透し、雨漏りめいて内部にぽたり、ぽたりと落ちていく。やがて出来た血溜まりから、ずる、り、と白い少女が立ち上がった。言うまでもない。ヴィーシュニャである。
ユーベルコード、『呪刃凶血』。その身を刃と化す呪血に変換し、その特性を活かした行動を可能とするユーベルコードだ。
彼女は液体となり、敵装甲の瑕疵からその内部へと侵入したのである!
「なッ、貴様ッ――」
角を曲がった哨戒部隊がヴィーシュニャと鉢合わせ、銃口を上げようとする。が、
「無駄だよ。わたし、いま、怒ってる、から」
ヴィーシュニャは腕を一閃。右腕が半ばより呪血に変わり、飛沫となって伸びる。紅き飛沫が狭い路を満たした一瞬のちには、煙るような赤は銀に変わった。
「あげゃっ?!?」
「が、げえっ……っ、」
奇怪な声がした。貫かれた教徒らの声である。教徒達はその一瞬で、剣山めいて全身を貫かれ噴血していた。
――呪血となって迸ったヴィーシュニャの肉体が、即座に吹雪めいた銀の嵐に変わったのである。呪刃凶血は無数の刃と化す呪血。この閉鎖空間に振りまかれたのならば、その全域を支配し連なる刃の群となる。
「命乞い、したら、許してあげる。でも、あなた達は、しないでしょ。だから、殺すね。一人も、残さない」
よしんば命乞いをする気があったとして、全身を、喉を貫かれた教徒らにそれが許されたものか――それをすら気に掛けず、刃に貫かれて藻掻く教徒らの横を、ヴィーシュニャは右の袖を垂らしたまま歩き抜ける。
「――楽に、死ねると、思わないでね。呪刃の制御、出来てないの」
無温の怒りがそこにあった。奥へと歩を進めるヴィーシュニャの後ろで、断末魔の呻きがいくつも上がり――彼女の内心の猛りを示すように暴れた呪刃が、教徒達を微塵に引き裂いて鮮血を散らす。
呪血に還った刃が、地面を伝いヴィーシュニャの右腕へ戻ってくる。軽く手を握り、開き、ヴィーシュニャは通路の奥の暗がりを睨んだ。
目指すは管制室。或いは砲手のいる末端部。
どちらでもいい。目に付いた敵は、片っ端から斬り刻んで殺すだけだ。
少女は往く。
その爪先を血に染め、この暴虐の戦車の足取りを、僅かでもいい、鈍らせるべく。
成功
🔵🔵🔴
フローラ・ソイレント
◎
・行動:スーパーモンスターを破壊する
敵に狙われる優先順位を低くするため
脅威と思われないよう素手、生身で敵目標に走って接近
(見切り、限界突破、覚悟、激痛耐性)
近寄ったのち手頃な鉄骨(敵部品やモールの残骸)を拾い
それを盾に機銃を防ぎながら
磁力で車体に取り付き砲塔に接近
砲塔が照準を付けるための可動部に鉄骨を差し込んで
ウルトラ・ザ・キャノンの発射を阻止する
(怪力、部位破壊、鎧無視攻撃)
・セリフ
えらく仰々しいものを持ちだして来やがった
ありゃぁ、撃たれただけでモールごと吹っ飛ぶな……
となればまずは撃たせないことが肝心か
一人の拳法家に何が出来るかわからねぇが
しゃあねぇ、行くか!
やってやるぜ!
●彼女の拳にできること
無数の呪弾が、光条が、火線が、炎纏う剣が、そして煌めく対オブリビオン用反物質弾が、超巨大戦車の主砲群を、機銃群を削り倒し、その火力を限定する。
しかし、その中でも不気味に律動し続ける超巨大砲が存在した。敵の残る全リソースを突っ込んで、一射に対し莫大なコストを注ぎ込む必要のある火砲。即ち、『ウルトラ・ザ・キャノン』とその関連機関である。
「えらく仰々しいものを持ちだして来やがった。……ありゃぁ、撃たれただけでモールごと吹っ飛ぶな。――なら撃たせないのが肝心だろうよ」
嘲るように言い、巨大戦車目掛け真っ直ぐに駆ける影が一つ。フローラ・ソイレント(デッドマンズナース・f24473)である。
今なお砲撃を続けるアルナスルの横を駆け抜け、フローラは無手のまま前進した。黄砂蹴立て、尋常ならざる速度で砂まみれの荒野を駆け抜ける。
――無手、特殊武装なし。排除優先順位、低。
巨大戦車に搭載されたAIが脅威レベルを判断し、馳せ駆けるフローラを優先処理対象から外す。幾許かの機関砲弾が彼女に向けても注ぐが、しかしそれだけだ。それ以上の対処はない。
「ヌルいぜ。この程度なら――」
フローラは電磁覇気を纏わせたバックナックルと手刀で機関砲弾を恐ろしいほど精密に受け流す。無傷のままに駆け抜けるフローラを前に、脅威レベルが更新される。『可及的速やかに排除すべし』。
フローラを排除すべく対人機銃弾が立て続けに火を噴く。連射密度は砲弾と比べても圧倒的だ。手の振りだけで止められるレベルではない。
しかしフローラはかつてモールの電波塔に設えられていたであろうパラボラアンテナの残骸を盾めいて構えて銃弾を受け流す。放たれる弾に磁性がなかろうと、その程度の回避は容易だ。
距離一〇〇。フローラは左手を突きだし、磁界を左手の先に力の限り集束した。敵の装甲の磁性を捉まえ、胸倉を掴むように衝き上げ引き寄せる。――敵との重量差は覆せない。物理法則は当然の帰結として、敵戦車側に、フローラの身体を引き寄せた。磁石のそばでネジを手放した時のように、引き寄せられてフローラの身体が飛ぶ。アンテナの残骸を力の限り投擲、甲板の機銃群を薙ぎ倒し、転がるように甲板に着地。他の猟兵の攻撃でへし折れた砲身を、磁力で自分の手に引き付ける。
「お、おおおお、」
全身の筋肉をフル稼働。自身六人分はあろうかという長さの砲を右手一本で支えたまま、フローラは力の限り跳んだ。
ただの、一人きり、他に特殊技能があるわけでもない拳法家がその破壊を成すと言われ、誰が信じただろうか。
可能だ。可能なのだ、フローラ・ソイレントならば!
「おおおおおおおおおッ、やってやるぜぇぇえっ!!!」
フローラは砲塔の残骸を槍めいて、下方へ真っ直ぐに投げ放った。
主砲塔群の一つ、一際巨大な砲口に砲身が突き刺さり射撃を妨げる! ――そればかりでは飽き足らず――
「っせええぇぇえぇぇあァッ!!!」
咆哮と同時に落下エネルギーをフルに活かした蹴りを別の砲身に叩き込み、反動でピンボールめいて反射。更に二つ、三つと、人の足ほどもあるような太さの砲をへし折りながら落ちる。
「まだだ。まだまだオレは止まらねぇぞ――止めるなら、もう一度殺してみせろ! 磁極流活殺剣拳、フローラ・ソイレント――参るッ!」
叫ぶなり、フローラの周りのスクラップが呼応したように浮かび上がった。手を突き出すのを皮切りに、彼女を狙う機銃群目掛け、屑鉄が弾丸の嵐のように押し寄せる。その後ろを追い、フローラは戦鬼の如く身を躍らせる!
成功
🔵🔵🔴
雨宮・いつき
2
あれが敵の隠し球…まるで城が動いているようです
あの手の相手は天津丸がうってつけなのですが、先の戦いでの消耗を考えると…
ですが、まだやりようはあります
他の方の協力を得られれば重畳ですが、難しそうなら己の力で相手を射程に捉えるまで接近です
氷の多重防壁で砲弾を食い止め、起爆符で土煙を上げて身を隠し、魂縛符の対象を自分自身にして吸引力を利用し高速での移動を
狙うは主砲
如何に弾が強力でも、砲を壊せば持ち腐れです
雷撃符の【マヒ攻撃】で動作不良を起こさせ【時間稼ぎ】をし、放った雷を主砲を囲む五芒星陣に形成
さあ、参られよ四天が一柱
怪物退治の時間です
主砲を叩き潰し、そのままの勢いで他の砲も破壊していきましょう!
●穿つ雷
「あれが敵の隠し球……まるで城が動いているようです」
左翼、距離七〇〇の丘陵より密やかに敵の侵攻を見つめる少年が一人。
闇夜に光が走った。猟兵らの攻撃が次々と突き刺さり、巨大戦車を消耗させる。しかし、あの巨大戦車は決して止まろうとはしていない。これだけ攻撃をしても、即座に破損した外殻の再生と副砲台の再ラッキングが行われる。いくら破壊しようと、アレを完全に止めないことには勝利とは言えない。眉をひそめ、少年――雨宮・いつき(歌って踊れる御狐様・f04568)は唇を噛んだ。
「あの手の相手は天津丸がうってつけなのですが、先の戦いでの消耗を考えると――ここでもう一度、というのは下策ですか。ですが、まだやりようはあります」
いつきは代々物の怪と戦い今日まで脈々と力を受け継いできた妖狐の血脈の末裔だ。その祓魔術は天津丸や伊吹大明神の召喚のみに止まらぬ。
「皆様が攻撃をして下さっている今が好機――接近して、叩く!」
いつきは符を両手に広げ、空中にばらまいた。同時に駆け出す。
彼の歩法は独特だ。魂魄を吸い寄せる力を持つ『魂縛符』を霊力により前方に複数投射。地面に張り付けた魂縛符のひとつに、己の魂を『引き寄せ』る。肉体に宿る魂が引かれれば、即ち身体は引かれる速度に従って前に推進する。引き寄せられ切る前に魂縛符の励起を切り、次なる符を励起して高速移動――いうなればリニアモーターカーめいた歩法である。凄まじい速度で距離を詰めるいつきを見とがめ、左翼甲板から複数の砲が彼を睨んで火を噴いた。
「――ッ!」
ず、っどぉオォォンッ!!
着弾と同時に凄まじい爆音、爆炎、土煙が上がり視界を埋める。成果確認の為の弾幕の切れ目――一瞬の沈黙を破り、いつきの身体が黒煙斬り裂いて飛び出す! その身体には煤の跡こそ残るものの目に見える傷はない!
砲弾の着弾を『冷撃符』による氷の多重防壁で防ぎつつ、『起爆符』で着弾の土煙を演出。あたかも命中したかのように見せかけつつ自身は魂縛符による高速移動を継続していたのだ。
泡を食って連射される複数の砲を冷撃符の氷壁で受け流し回避、いつきは角度を変えつつある一際巨大な砲台の射程の内側へ潜り込む。
(狙うは一つ――左翼主砲!)
魂縛符を空中固定し、いつきは三次元的に機動しながら接近。
そのまま左翼の甲板に降り立ち、懐から抜いた五枚の符を空中へ投げた。五枚の札は絡み合うような複雑な軌跡で飛び、左翼でもっとも巨大な砲――左翼主砲を中心とした五芒星を描くように散った。――符と符の間に夜目に眩しい蒼白い雷が走り、回頭する主砲の動作を一瞬封じる!
「さあ、参られよ四天が一柱。――怪物退治の時間です!」
いつきが猛く叫ぶなり、雷で描かれた召喚陣が一際強く光った。夜の天を陰らす黒雲から、呼ばれるように雷一つ! 空を裂いた天雷が陣を撃ったその瞬間、陣の内側から飛び出すのは巨斧を担いだ豪傑であった。
――ユーベルコード、『快童丸演戯開帳』!
豪傑は天を揺るがす如くに吼えて、天雷の光湛えた巨斧を振り翳したまま前宙二転。ひねりを入れ、主砲へ真っ向から斧を叩き込み破壊するッ……!!
吹き飛ばされそうな爆風に髪を嬲らせながらも、いつきの目は曇ることも陰ることもなく次の敵を睨む。
「さあ、今宵の演戯はまだ初手も初手。まだまだとっくり味わって戴かねば。――参りましょうか、山を相手に相撲を取るも、時には乙なものでしょう」
いつきは豪傑に涼しげに語り、次なる砲へ狙いを定めた。己の手に再び雷撃符を広げ、雷迸らせて投げ放つ!
雷撃の軌跡を豪傑が追う。大捕物は、未だ始まったばかり。
成功
🔵🔵🔴
清川・シャル
でっかい!!ロマン溢れるけど敵なんですよね!(見上げて)
火力(腕力)ならちょっと自信ありです
真の姿は鬼神也!角伸びて目が赤くなる感じですけど
さぁ仕上げと行きましょうか!
足場辺りから壊して行けたら。
繋ぎ目とか主要な部分を狙いに行きます
ぐーちゃん零に硫酸弾と火炎弾を交互に詰めて発射
念動力で確実に当てていきます
そーちゃんをチェーンソーモードにしてUC起動して殴ります
敵攻撃には激痛耐性と武器受け、カウンターで対応
防御には氷盾を展開
移動は櫻鬼のジェットで空中浮遊してホバリングです
時折仕込み刃で攻撃も行います
つかの間かもしれませんが、平和が訪れますように。
●やすらぎをあなたへ
ばうッ、ごおおぉぉぉう、と厚底高下駄『櫻鬼』の足下より噴き出す魔力の奔流に乗り、空を翔る小柄な影が、敵戦車の巨体を見上げた。猟兵達の攻撃が吹き荒れる中、空中から接近するのは清川・シャル(無銘・f01440)。
今やその瞳は紅く染まり、角の長さも常に増して長く。彼女もまた鬼神としての本性、真の姿を開帳しての接敵だ。
「でっかい!! ロマン溢れるけど敵なんですよねー」
地上五〇メートルから飛んで接近してさえ、その頂点は未だ上方にある。しかしその巨大さに気後れすることなく、シャルはアサルトライフルにマウントされた十二連装式グレネードランチャーのシリンダーをスイングアウト。色の違う二色の弾頭を鼻歌交じりに詰め、じゃきりとシリンダーを定位置に戻した。
敵の迎撃機関砲が火を噴き、空中にいるシャルを捉えようとするが、シャルは宙を蹴って機関砲の火線の上から身を躱す。サーチライトめいて宙を踊る火線の軌跡を華麗に掻い潜りながら、シャルはグレネードランチャーの砲口を下向けた。
あの極まった銃装甲相手にはアサルトライフルの銃弾など豆鉄砲のようなもの。通るわけもあるまいが、榴弾ならば話は別だ。
「じゃあ始めますよぉ、そぉれっ!」
トリガーを引く。飛び出した榴弾が次々と降り注ぎ、巨大戦車の甲板へ飛ぶ。迎撃機関砲が薙ぎ払うように榴弾へ火線を向けるが、しかしシャルはサイコキネシスで弾道に干渉、弾幕を掻い潜らせ、装甲板の継ぎ目をめがけて榴弾を集中させる!
「迎撃なんてさせませんよ……!」
炸裂炸裂炸裂ッ! 次から次へと命中した砲弾の炎が吹き上がり、それに継いでひりつくような腐食臭が立ち上った。
シャルが放ったのは焼夷弾と硫酸弾。弾頭から炸裂した炎と酸が、敵の表層装甲を蝕んでいく。
空中から次々とグレネード弾を連射するシャルを厭わしく思ったか、彼女を迎撃する機関砲の数が増える。最早空を覆うのではないかと思えるほどに凄まじい数の機関砲の火線がシャルに集中する!
「すごい数っ……!」
シャルは櫻鬼によるジェット・ダッシュで攻撃を回避しつつ、氷の盾を展開して機関砲弾を受け、弾く。氷の盾に瞬く間に無数のクラックが疾り割れる。破片と貫通した銃弾が彼女の身体を傷つけるが、シャルは決して動きを止めない。足を手を、銃弾で射貫かれようとも。
更に十二発の榴弾で甲板を再び蹂躙しつつ、右手に桜色の金棒を構える。耳障りな音を立て、棘が互い違いに回転を開始する。内蔵した魔力原動機が、シャルの魔力を受けて金棒の棘をスロットリールめいて超高速回転させているのだ。
――この世界は確かに、今を生きる人々に優しくないかもしれない。こんな超巨大戦車を率いて、人の世界を終わらせようとする魑魅魍魎が跋扈する世界だ。ただ呼吸を続けるのさえ難しい世界だ。
それでも、とシャルは祈る。
自分が、恋人の腕の中にいるときに感じるような安息が――この世界にも、少しの間だけでもいいから訪れれば良いと思う。
生きていれば安らげるときが、平和の時が来るのだと――この、歪な天国に棲む人々に、知って欲しかった。
「――そのためには、あなたたちは邪魔ですねっ!!」
シャルは高速回転する棘もつ鬼金棒を振り翳し、掠める敵の機関砲弾すら無視して急降下! バックスイングした鬼金棒を、火焔と硫酸で侵食された戦車の甲板目掛け叩きつけるッ!!
――轟音!
金属の拉げる大音がして戦車の甲板に巨大なクレーターが描かれ、燃料パイプから噴き出した液体燃料に引火、紅蓮の炎を散らしての大爆炎が周囲を席巻する。
巻き上がる黒煙を突き破りシャルは再び飛翔。グレネードを再装填、次なる標的へと飛ぶッ!
成功
🔵🔵🔴
ネグル・ギュネス
【アサルト】②
巨大だろうが何だろうが関係無い、打ち抜く
どんな物体だろうが核や動力が存在するはず
任された
ただ一手、奴等を滅するために振り絞る
砲撃を残像で欺き、迷彩で姿を眩ませ配置に付く
防衛ラインの高い場所、風を浴びながらその時を待つ
二人が失敗る等有り得ない
故にタイミングを見計らい、跳躍
解き放たれた弾丸、其れを【我が縛りの支配下に置き、打ち返す】
──クラックメタル・インパクト!
義手が歪もうとも義脚が凹もうとも殴り返し蹴り返す
如何に堅かろうデカかろうとも、弾丸を一点に全て返せば
装甲が破れた先に、心臓部は、ある!
匡、狙い撃ってくれ!
貴様らが如何なる手段を用いてきても関係無い
絶対に、滅ぼし尽くしてやる!
ヴィクティム・ウィンターミュート
◎【アサルト】2
……オイオイ、度が過ぎたパニックムービーかよ
なんだあのデカさは?…まともにダメージ通せる手札があまりねえな
…いや、いけるか
匡、奴の足回りを止められるか?
ネグル、お前は"射手"だ
パスは俺が出す…始めるぞ!
砲撃来るぞ!念のため対ショック姿勢!
砲弾も機銃も飛ばしてきやがれ!
『Reflect』展開───グオオオオ!!?
クッソ重いんだけどこれ!
匡の足回りへの射撃に、保持した砲弾を少し使ってアシスト
匡の合図で足が止まった瞬間、反射板で推進力を保持し続けた砲弾と銃弾を開放する
───ネグル!今だ!!そいつらを"ブン殴れ!"
ちょいと変則的だがバレーボールといこうぜ!
お前のパワー乗せて、ぶち抜け!
鳴宮・匡
◎【アサルト】2
……さすがに戦場でも
このサイズのデカブツにお目に掛かったことはないな
……うん? 足を止めろって?
いいぜ、それに乗るよ
さしあたってヴィクティム
その砲弾、こっちに一つパスをくれ
心配すんな、ちょっと向こうに投げ返してやるだけだ
自分の裡から生じた【万象の影】でユーベルコードの砲撃を受け止め
受け止めたその“影”で銃器を模る
別にそのままでも使えるが、慣れた形の方がやりやすい
片側面から足回りを狙って狙撃
攻撃は一ヶ所――重心に集中して
一瞬でもバランスを崩すタイミングを作る
体勢を崩せたら二人に合図
あとは、仕上げのタイミングまでしっかり相手の動きを視ておくよ
最後の最後、外しちゃ様にならないしな
●オペレーション・シルバーバレット
距離七〇〇。他の猟兵が攻撃の大部分を惹き付けている隙に、三人の猟兵が小高い砂丘から敵の巨体を望む。
「オイオイ、度の過ぎたパニックムービーだな。ああまでデケぇと、ダメージを通せる手札ッつっても……限定されてくる」
ヴィクティム・ウィンターミュート(impulse of Arsene・f01172)の呟きに、ひょいと肩を竦めて答える声が一つ。
「まあ……さすがに戦場でも、このサイズのデカブツにお目に掛かったことはないな。UDCアースの技術レベルを遙かに越えた代物だ。――けど、なんとも出来ないわけじゃないだろ、ヴィクティム。それとも、ウィザードってのはお飾りの名前か?」
鳴宮・匡(凪の海・f01612)の挑発めいた一声に、ハッ、とヴィクティムは笑った。
ウィザード
「不可能を可能にするからこその魔 術 師だ。見くびってもらっちゃ困る。……あの手が使えるか、やれるだけやってみるさ。その代わり、お前にも働いてもらうぜ、匡。ネグル! お前が『射手』だ。やれるか?」
「任された。この身の全ての力――ただ一手、奴らを滅する為に振り絞る」
ネグル・ギュネス(Phantom exist・f00099)がヴィクティムに応える。三人の視線が交錯する。
「俺は砲弾を止める。ネグル、今からしばらく迷彩を補助する。真っ直ぐに走れ」
「応!」
「匡はあのデカブツの足を止めろ! やれるな?」
「いいぜ。乗ってやる。――ただ種銭がいる。五・五六ミリじゃあんなもの、物理的に止められやしない。一発、砲弾をパスしてくれ。あとはなんとでもするさ」
「オーケイ。ミッション・スタートだ……始めるぞ!」
ヴィクティムの声に従うように、ネグルがドウッ、と音を立てて地面を蹴り飛ばした。同時に光学迷彩開始。ブーストされた『ファルバルフォール』が駆動、ネグルの背が、闇の中にブレて混じる。足取りの形に爆ぜる砂のみが、彼の存在を教えている。
三人の猟兵をこの距離から気取ったか、戦車の右翼、対戦車火砲が立て続けに火を噴いた。雨霰と降り注ぐ四二〇ミリメートル対戦車砲弾。迫る火線を前にヴィクティムは両腕を広げる。
「匡、対ショック姿勢! 『Reflect』展開──ッ、」
ヴィクティムのコマンド入力に従い、砂粒が寄り集まり硝子めいた壁となって空中に浮く。無数の反射障壁、弾道の支配者――コード『Reflect』。その能力はあらゆる飛び道具の反射だ!
無数の砲弾が展開された障壁に真正面から食い込む! ヴィクティムは即座にベクトル演算、砲弾を即反射せず、その運動エネルギーを一時的に凍結、反射板にめり込み停弾した状態で保持!
「何発だろうが降らせてみやがれ、砲弾だろうが機銃だろうが纏めて跳ね返――」
調子のいい台詞にここぞとばかりに乗っかる砲弾。
十発、二十発、四十、八十、百六十!!
ヴィクティムのサイバーデッキに過負荷でスパークが走る!
「ッグオオオオ!!? クッソ重いんだけどこれ!?」
「そりゃ戦車砲だろうからな。それより一発くれ」
「くっ、の、お前んとこだけ障壁穴開けてやろうか?!」
冷静な匡の台詞に目を剥きつつヴィクティムは大きめの砲弾を一発解放。他の反射板で軌道をコントロールして匡に飛ばす。
匡は手を無造作に突き出した。その手から黒いオーラが迸る。――オーラ? 否。それは、『影』だ。ユーベルコード『万象の影』。
それは六十九秒の『略奪権』。砲弾を、迸った“影”が受け止め、くるみ、その本質を歪める。
「右翼のキャタピラを潰す。表面装甲が再生するところを見るに、どうせ足回りも再生機構があるだろうが――」
砲弾を包み込んだ“影”がその姿を変じた。匡がもっとも扱い慣れたアサルトライフルの形を取り、彼の手の中に収まる。『万象の影』は、受け止めた敵のユーベルコードをコピーし、制限時間内ならば無尽蔵に連射可能とする能力だ。
「今から六十九秒は、『再生すらも許さない』」
即ち。
いま匡の手の中には、戦車砲弾を連射する自動小銃があるのと同じ事。
爆轟が鳴り渡る。匡が保持した影の銃から、連続して光条が迸った。戦車砲弾と同等のエネルギーを持つ光が、立て続けに夜の闇を裂いて唸り飛ぶ。前方を疾走するネグルの横を抜け、重量の集中する右翼側前方キャタピラを破壊、破壊、破壊、破壊!! トランスミッションまでもが完膚なきまでに破壊され、束の間巨大戦車はその動きを止める!
匡の目は、爆炎の内側で履帯とギアが蠢いて再生を始めていることを見逃さない。一度猛撃した部分に再度秒速十二発で光弾を叩き込み、敵の再前進を阻む。
「出番だぞ、ヴィクティム。残り一分ジャスト」
「お膳立てありがとよ、チューマ! ネグル! バレーボールは好きか?」
『ルールは知らんが、要は敵の陣地に球を叩き込めばいいんだろう?』
凄まじい大雑把な理解が通信機の向こうから返る。ひっきりなしに爆音が混じり、彼にも砲撃が集中しつつあることを教えていた。
『得意分野だ。パスをくれ』
「オーケイ! ――なら、お前のパワーを乗せて、全弾叩き込んでやれ! ゲームスタートだ!」
ヴィクティムは即座に受け止めていた戦車砲弾のベクトル凍結を段階的に解除、前方へ向けて戦車砲を山なりに反射する!
それは正に彼が言うとおりの、バレーボールのトスめいた弾道。
その落下予想地点付近で光爆ぜる。
跳躍。宙に吹き流しの如く、赤いマフラーが棚引いて揺れた。
――ブースト終了、光学迷彩解除。夜気の輪郭がブレて、ネグルの姿が宙に露わとなる。
全エネルギー、戦闘機動に集中。
ヴィクティムと匡がしくじることなど、あり得ないと最初から信頼しきっていた。だから、ネグルがすべきことはたった一つ。真っ直ぐに走り、然るべき指示に従い、己の力を与えられた手段で、最大限に敵に叩き込むことだけ。
彼は弾丸だ。匡という射手に放たれ、ヴィクティムという銃身を通り、三千世界の敵を穿つ、ただ一発の銀の弾丸だ!
敵がいかほどに巨大だろうが、ただ撃ち貫くのみ。アレが機械的に駆動しているならば、その動力が必ずどこかに存在する。それを破壊すればいい。
『やれ、ネグル! そいつらを“ブン殴れ”!!』
「応!! 我が意に従え、滅びの砲弾よ……!! ――……クラックメタル――」
ネグルは腕と脚を振り姿勢制御、
「インパクトォ――――ッ!!!!!」
落ちてくる砲弾を力の限り左拳で打ち抜くッ!! 打撃力を伝えられた砲弾は、正に流星めいた軌道を取った。元以上の速度で敵右舷甲板に突き刺さり炸裂! ボディ内部にメタルジェットを撒き散らし、派手な火柱を吹き上げる!
己の体重を優に上回ろうかという砲弾をその速度で打ち返す――当然、純粋な膂力のみで成せる技では無い。
ユーベルコード、『クラックメタル・インパクト』! 黒き光――矛盾する表現だが、彼の左拳はそうとしか言い表せぬ煌めきを帯びている。悲劇と嘆きを薙ぎ倒すため、失われた記憶より引きずり出した黒閃!
殴った弾体を黒閃で封じ、己が支配下に置き――軌道を操作。自身の膂力と黒閃の威力を上乗せし、巨大戦車へと叩き込んでいるのだ!
「お、お、オオオオオォッ!!!!」
吼える。落ちてくる巨大砲弾の雨の間を、ネグルは稲妻めいて翔けた。打撃の反動を活かし跳躍、次の砲弾と位置を合わせ、拳脚問わず渾身の打撃を叩き込んで戦車目掛け砲弾を撃ち込む、撃ち込む、撃ち込む、撃ち込む撃ち込む撃ち込むッ!! 機械の腕が軋もうとも、機械の脚が歪もうとも、熱く燃える心がネグルに停止を許さない!
――貴様らが如何なる手段を用いてきても関係無い。絶対に、滅ぼし尽くしてやる!
「突き、抜けろォォォッ!!」
ネグルは最後の一弾へ渾身の蹴りを叩き込み、敵右翼甲板にダメ押しの一撃を叩き込む。
――閃光、爆炎。崩壊する装甲の下。
動力部の露出を確認した瞬間、ネグルは信を置くスナイパーの名を叫んだ。
「匡ッ!!」
『ああ。視えてる』
叫ぶような無線の声。言われずとも、ネグルが砲弾のラッシュを叩き込むところを、匡はずっと見つめていた。いずれ来るであろう最大最高の好機を探して。
装甲が崩落したタイミングで飛んできた声。どうして欲しいと望んでいるのか、今更言われなきゃ分からないようなチームではない。
イミテーション・シャドウ、効果時間終了二秒前。匡は筒先を五センチずらし、ネグルが突き破った甲板の奥を銃口で睨む。影の銃が揺らめいて消えてしまう、その前に――
「やっと届くな。返すぜ、受け取れよ」
言葉を発しきる前に、匡はトリガーを引いた。
最後の光弾が唸りを上げ、闇を引き裂いた。一直線に飛んだ光弾が、再生しかかる敵表層装甲を吹き散らすように破り、――閃光!
一際大きな爆発が、巨大戦車の右舷を吹き飛ばした。動力部に叩き込まれた光弾がその威力を遺憾なく発揮し、完全に破壊したのだ。ネグルが着地し、匡の手の内から影の銃が失せ、ヴィクティムの反射障壁が役目を終えて崩壊していく中――巨大戦車の右前方ブロックが切り離され、大爆発する。
「尻尾を切りやがったな。野郎、まだ他に動力がありやがる」
爆炎の内側で揺らめく巨大戦車――ブロックをパージして永らえた敵にヴィクティムが吐き捨てるなり、響くように回線のむこうのネグルと、ネグルと匡の声が続いた。
『オレはまだいける。この程度で終わらせてやるつもりはない!』
「だとさ、ウィザード。――さて、次はどうする?」
「やれやれ、端役遣いが荒いこって……」
ぼやくように言って肩を竦めつつ、ヴィクティムは軽やかにステップ。
「同じ手ってのも芸がねぇ。突っ込みがてら説明するぜ。――煮え湯のお代わりだ。喰らわせるぞ!」
「了解」
『ああ!』
斯くて、ヴィクティムと匡は先を行くネグルに追いつくべく地を蹴った。
三位一体の猟兵小班、チーム・アサルトは、今一度紅蓮の劫火の向こう側、巨大なる要塞へ馳せ駆ける!
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
セリオス・アリス
【双星】◎
2
ああ、アレス
信じてるぜ
お前の分まであのでかブツにたっぷりと叩き込んできてやるよ
歌で身体強化して靴に風の魔力を
自由に動ける準備ができたら
あとはまっすぐ駆けるだけ
近づくまでは回避に集中
砲撃は見切って避ける
なんの予兆もねえなんてことはねぇだろ!
アレスが…俺の盾が後ろへの攻撃は何とかしてくれるから
俺は気にせず
ただ、前へ
んなにデカい主砲なんざ
自分に向けては撃てねぇだろ
近づけたら…上に飛び乗り反撃開始だ
でかいものにはデカい剣―ってなッ
純粋な魔力に、炎の属性を入れ込んで
【彗星剣】でぶったぎってやる…!
もっと強く、もっとでかく
アレスと二人分の思いを込めて
歌い、全力の魔力をここに
――くらいやがれ…!
アレクシス・ミラ
【双星】◎
1
…最後の悪足掻きか
セリオス、此方の防衛は僕に任せてくれないか
君は思う存分、暴れてこい
後ろは僕が守る
ああ…頼んだよ
守る為に戦おう
脚鎧に魔力を充填して跳躍、高所から状況を把握
砲撃は光の衝撃波で軌道を逸らし
機関砲は盾にオーラを込めて防ぐか
地属性を地面に叩き込み土壁を形成しよう
離れていても敵は強大…だが、
向こうにはセリオスが…僕の剣がいる
だから、僕は盾としてやるべき事をするまでだ
連続砲撃にも見据えて、盾を最大に変形
不屈の誓いと覚悟と共に【天廻聖盾】で受け止める!
衝撃にも耐えてみせよう!
耐えきれば…この砲弾、返させてもらうぞ!
砲撃の相殺に、牽制に…友への援護に!
――決めてやれ、セリオス!!
●友に捧ぐ無窮の剣
チーム・アサルトが叩き込んだ連携攻撃により、敵戦車右翼ブロックは全壊。敵は破損したブロックをパージして未だ侵攻中。その火力は先程までより明確に落ちたかに見える。
しかし、『蒼穹眼』でそれを見るアレクシス・ミラ(赤暁の盾・f14882)の目には油断はない。――もう一山ある、という事を彼は知っている。
「最後の悪足掻きが来る。セリオス、此処の防衛は僕に任せてくれ。君は後ろを心配しないで、思う存分暴れてこい」
傍らに投げる言葉に、黒歌鳥がさえずった。
「――あぁ。分かった。お前の分まであのデカブツにたっぷり叩き込んできてやるよ」
比翼の片割れ、セリオス・アリス(青宵の剣・f09573)である。『青星』を抜剣、既に戦線が展開され激戦となった最前線を睨む。
「ああ。頼んだよ。距離は離れるけど――僕の意志は、常に君と共にある」
「分かってら。――アレス、」
「うん?」
セリオスは一歩進み出て、アレクシスに顔を向けぬまま零す。
「――死ぬなよ。絶対だぞ」
「……ああ、分かってる。それは君もだよ、セリオス。約束だ」
「ああ、」
セリオスは肩越しに振り向き、少年のように笑った。
「約束。絶対守れよ。俺も守るから」
――そして、走り出す。
背を見送りながら、アレクシスは脚鎧に充填した魔力を爆ぜさせブーストジャンプめいて跳躍。遠方の敵戦車の容態を観察する。
敵戦車はパージしたブロック断面を変形。まるで生きているかのように数十からなる砲塔を伸張させ、モール・ヘイヴン目掛けて照準を絞っている!
セリオスの蒼穹眼にはそれが発射されたあとの光景が克明に見える。現在、モール・ヘイヴンの護衛に回っている猟兵達は曲射弾道に対する対応がメインだ。ムルヘルベル・アーキロギアが水平方向より射入する機関砲弾を防いでいるが、彼だけに任せることは到底罷り成らぬ大火力!
このまま行けばモールに被害が出ることは必定!
「させるものか――!」
それを防ぐために、アレクシスはここに残ったのだ!
「はああああああああああああああッ!!」
アレクシスは空中から、剣に纏わせた光の衝撃波を放ち、着地の前に迫った数発の砲弾を叩き落とす。爆炎を背景に、盾を掲げながら落下――
地に落ちるなり、振り上げた盾で地面を力強く殴りつけた。ど、ごおおう! 激音と共に、叩き込まれた地の魔力が地面を大きく隆起させ岩壁を作り上げる! 先攻して飛んできた機関砲弾が岩壁を、まるでグラインダーに掛けたように吹っ飛ばしていく。
アレクシスは岩壁の上に立ち、砲撃をくれる敵戦車を睨んだ。これだけでは足りぬ。機関砲弾だけでも長くは保たぬと言うのに、敵の砲撃が集中すれば、この程度の岩壁では容易く突破されてしまう。アレクシスは己が盾――『早天の盾』を見下ろし、眦を決した。
「守ると約束したんだ。僕の剣に――セリオスに! 此処は通さない!」
アレクシスは早天の盾に魔力を注ぎ込み、その面積と硬度を最大とする。
「是なるは不滅不倒、不撓不屈の赤暁の盾! 全ての無辜なる人の為、闇に煌めく一等星! ――破れると思うのなら放つがいい、外道共!」
アレクシスは闇を揺るがす大音声で言うなり、大楯の切っ先を地面へ突き立てた。
ユーベルコード、発動。
――『天廻聖盾』!!
暁の空に燃える陽光めいた金のオーラが、盾を中心として、岩壁を補強する如く拡がった。
「……さあ、来いッ!!」
アレクシスが吼えるなり、一キロ先で紅蓮の砲火が花開く。
ほぼ直線弾道、圧倒的な初速で、艦砲射撃レベルの戦車砲が連続で火を噴いたのだ!
数十台からなる戦車師団ですら一瞬で壊滅しかねぬ砲撃の嵐を――アレクシスが広げた金の障壁が、真っ向から受け止める!!
「がっ、ああああっ…………!!!」
腕に掛かる力は余りに重く。人の身で受け止めるには、その暴虐は余りに激しすぎた。受けた左腕の骨に亀裂。全身を苛む障壁からのフィードバック。噛みしめた歯が砕けかける。
アレクシスは口端から、目の端から血を流しながらも、しかし一歩として退かぬ。
「言った……はず……だ、」
アレクシスは砕けそうになる身体を、意志と魔力と気力だけで支え、
「ここは、――通さない、と……!!!」
障壁になおも強く魔力を注ぎ込む。聖盾の光高まり、受け止めた砲弾の運動エネルギーを吸い――
「行け。……決めてやれ、セリオス!! 疾れ――ッ!!」
真っ向、受け止めた数十発の砲弾を一気に跳ね返す!
敵の第二射と真っ向より交錯、立て続けに相殺ッ!
爆炎が夜空を焦がすその下を、――ああ、黒歌鳥が駆けていく!
魔導蒸気ブーツ『エールスーリエ』に有りっ丈の魔力を叩き込み、セリオスはアレクシスの援護を受けてジグザグに走る。その速度はもはや生半な弾幕では捉えられぬ。況してや、アレクシスを突破しようと正面に火力を集中させている今、セリオスに細かく狙いを付けるリソースがない。然りとてアレクシスを放置すれば、天廻聖盾による砲撃反射が迫り被害を被る。スーパーモンスターは正面からの力と力の押し合いを仕掛けたが、それをアレクシスとセリオスが一時的ではあるにせよひっくり返している!
長くは保たぬ。明らかだ。
だからこそ、セリオスは今まででもっとも疾く駆けた。
遠くから、暁星の声が背中を押す。
「――分かってる。その声の分まで俺が叩き込んでやる!」
セリオスは降り注ぐ機関砲弾の火線の一歩先を疾る。距離二〇〇を切った。接敵まであと数秒! ここまで来てはもはや巨大な壁のようにしか見えぬ敵のその甲板で、複数の大口径砲がセリオスを狙い俯角を向いた。
「歌声に応えろ、力を貸せ」
セリオスは叫ぶ。己の一番深く、根源に向けて。
俯角を向く戦車砲の動きすら緩やかに見える。
ああ、これほどに銃声砲声飛び交う戦場だというのに。自分を狙う砲の根元からの、装填音さえ聞こえるほどの集中。
「――この壁を打破する、無窮の力を!!」
力を求めるセリオスの声に、溢れ出す魔力が応えた。彼の手の中で魔力が輝きを放つ。
それは純粋なる白蒼の魔力で構築された魔力剣。長剣『青星』を魔力で覆い拡張した、その、彗星のいろした剣を、セリオス・アリスはこう呼んだ。
メテオール
「――翔けろ、彗 星 剣ッ!!!」
星剣開帳。『彗星剣』!!
同時に砲声! セリオス目掛け巨大な砲弾が疾る。避けようとも間に合わず、退けばそのそぶりを取った時点で挽肉だ。――それを、
「おおおおおおおおおおおおっ!!!」
蒼白の光が、刹那を見切って全力一閃。
まさか、まさか――真っ向から、唐竹割りに断ち斬ッた!!
背後に咲く大爆発の煽りを背に受けながらも、その勢いさえ活かしセリオスは前進。地面を力強く踏み切って跳躍! 魔力で構築した彗星剣の安定を崩し、魔力を漏出させることでブースターめいて用いて尚も加速! 空中に身を躍らせ、
「こんだけ近けりゃ、ンなデケぇ主砲なんざ使えねぇだろ……!」
歌を奏でる。友との絆を今も証明する、無き故郷を唄う歌!
背負ってきた友の思いを、声に、歌に乗せ――
「デカいものにはデカい剣ってなッ!! ――こちとら、アレスの分まで預かってきてんだ。燃えろ、彗星剣!! 全て呑み込んで、灼き尽くしちまえッ!!」
彗星剣とは、言わば高密度に圧縮された白蒼の魔力の塊だ。それにセリオスが歌で詠唱を――属性をつければ、それはさらに異なる術へと派生する!
此度帯びるは炎の魔力! 友の想いを宿したが如く、彗星剣は天まで届けとばかり紅く紅く燃え上がる!!
その場のあらゆる砲が、彼の身体を捕捉するその一拍前に――
セリオスは、歌を結んでその炎剣を振り下ろした。
メテオール・サラマンドラ
「――喰らいやがれ!! 彗 星 剣・『紅 蓮 旋』――ッ!!!!」
それは焔の剣と言うより、最早巨大な火柱めいていた。
火柱は砲の十数本を一手に薙ぎ払いつつ、左甲板を深々と抉り、動力の一つを焼き切った。
――振り下ろしたその火剣に増す勢いの爆光が、夜にけたたましい音を散らして咲き誇る……!!
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
霑国・永一
◎2
いやぁ、なんか凄いの出てきたなぁ。ああいう搦手なしに強いタイプあんまり得意じゃないんだけども…ま、微力ながら俺に出来ることするかぁ
いつもは面白くないから加減して使ってるけど、これならば
行くよ、《俺達》
『やっべー!なんだありゃ!』『俺様、今日はいつもより多く死ぬな!』
狂気の分身発動、真の姿となった分身を一斉砲撃でも有り余るくらいの軍勢で召喚し続け、あらゆる方向から分身たちを突撃させ、敵の大きい砲身に飛び込んで内部で自爆を繰り返す
入れない砲身は、砲身がひしゃげるまで外部から自爆などの攻撃加え続ける
本体は分身に紛れながら周囲を移動し、弱点探しなどしつつ指示
「分身を蹴散らす向こうは爽快だろうなぁ」
●狂気に包まれて
「いやぁ、なんか凄いの出てきたなぁ。ああいう搦手なしに強いタイプあんまり得意じゃないんだけども――ま、チャンスみたいだしねぇ。微力ながら俺に出来ることするかぁ」
霑国・永一(盗みの名SAN値・f01542)は、いつも通りののんびりとした口調で呟いた。事態は彼の声とは裏腹に、今まさに畳みかける好機の様相を呈している。
数々の猟兵達が挑み、その砲撃の密度を下げつつ、効果的にダメージを積み重ね。チーム・アサルトによる敵右舷甲板破壊、双星による左舷破壊により、敵の攻撃効率は最早どん底と言ってもいい。
――ここまで追い込んで尚。それでもこの超重戦車は、一人の猟兵の手には余りある難敵だ。それを知っての上で、永一は涼しげに笑う。
「ま、そのぐらいじゃなくちゃ面白くもない。行くよ、《俺達》」
『おう! やっべーな、なんだありゃ!』『ケヒヒッ! 俺様、こりゃあ今日はいつもより多く死ぬな!』『やってやろうじゃねぇか!』
永一が軽く右腕を上げるなり、彼の周囲に複数の人影が立った。――その一人一人が、まさに永一と同じ顔をしている。ユーベルコード『盗み散る狂気の分身』により生み出された分身だ。狂気の分身とは言葉だけにあらず。その分身達は、自爆能力を備えている。言わば、神風特攻をするべく生み出されたものである。
「じゃ、死んできてくれ。死に場所にするには悪くないだろ?」
『いつも通りのひでぇ扱いだぜ、「俺」もたまには自爆してみりゃどうだ?!』
「バカだなぁ、そうしちゃあもう二度と楽しく遊べないじゃないか。敵とも、女将とも」
永一は『自分』の言葉をあっさりと受け流し、くい、と顎をしゃくった。
「さぁ、戦争だ。死ぬにはいい日さぁ」
号令と言うには軽すぎるその一言を受け、『永一』達は距離二〇〇メートルより、一斉に襲いかかった。
『ヒャーッハッハッハハハハッ!! 今日は手加減抜きだぜぇ!!』『こんなデケぇ奴に突撃するなんて流石に初だな!』『さぁ行くぜ行くぜ行くぜぇ!!』
走りながらも尚増える、増える、増える、増える! 最初は本体含めて数人だった分身は、ねずみ算式に分裂して、いつしか戦車の巨体を円状に取り捲く程の数に到る。
砲撃。数人がその爆炎をまともに食らってバラバラになって吹き飛ぶが、分身の数人が吹き飛んだところで永一にはさしたる痛痒もない。
「さぁ、畳みかけるよぉ」
嘲笑い、狂気の男は呟いた。先駆けとなる分身が、身軽な動きで戦車の壁面をにとりつき、ボルダリングめいて登破。
『ハハァッ、一番乗り――っうお?!』
登った分身らを、対人機銃の銃撃が襲う! 全身を蜂の巣にされてデタラメにダンスする分身達だが、口端より血を流しつつ彼らは笑う。
『それで仕留めたつもりかよォ……!』
消滅間際、自爆ッ!! 凄まじい爆風が、衝撃波が機銃を嬲る。爆風の後ろから、次々と分身達が走り出る!
機銃にとりつき自爆するものがいれば、その後ろ側で砲塔の可動部分しがみついて自爆するものもいる。甲板上のひときわ巨大な砲によじ登り、分身の一人が高らかに笑った。
『ハハァッ! こん中に飛び込むってのはどうだ?!』
――いいね、やってくれよ、『俺』。
本体である永一は、分身らに紛れ、やり放題の分身らの動きを薄ら笑いで眺めるばかりだ。
『行くぜぇっ、ヒャッハーーーッ!』
人が一人入れるほどの砲身に飛び込んだ分身の一人が、その最奥で自爆! 既に装填されていた砲弾が熱で誘爆し、爆圧で歪んだバレル内で停弾、結果、巨砲が根本から爆ぜ飛ぶ!
周囲の機銃が薙ぎ倒され、甲板は瞬く間に阿鼻叫喚の様相を呈した。
「いやぁ、分身を蹴散らす向こうは爽快だろうなぁ」
永一は他人事めいて言い、更に分身を生み出しつつそのうちへ紛れる。むなしく火を噴く機銃と砲。しかしそれで討てるのは分身ばかり。
攻撃は止まず――
その戦車の終焉は、もはや間近に迫っている。
大成功
🔵🔵🔵
鷲生・嵯泉
『攻撃』
何が出てくるかと思えば此れか
巫山戯た連中には或る意味相応しいのかもしれん
だが……此の世界には不要だ
砲門の向き、風切り音、装甲から計れる可動域の総てを計算に入れ
戦闘知識と第六感に因る先読みと
カウンターでの衝撃波にて攻撃の威力を軽減しつつ、見切り叩き落して接敵を図る
確かに其の砲弾は脅威ではあるが……生憎と使わせる心算は無い
――遮斥隕征
怪力加えた斬撃を以って総て鉄屑へと変えてくれよう
砲も弾も使う事能わず、巨大なだけの役立たずに成り果てるがいい
……未だ「天国」なぞとは名ばかりの場所だろう
だが未来を信じ、生きる命がある限り、其処は紛れも無く人が生きる為に在る
過去の残滓が踏み入って良い場所では無い
●天国侵犯の終焉
男は抜き身の刃――『縛紅』を引っ提げて、今や全ての猟兵の総力を挙げた攻撃により各所で爆発を繰り返すのみとなった巨体を見上げた。
「何が出てくるかと思えば、此れか。この馬鹿げた丈も、砲の数も、あの巫山戯た連中には或る意味相応しいのやも知れん。――だが」
距離、一〇〇メートル。もはや敵はこの距離まで近付いても、男の迎撃に手が回らぬほど追い込まれている。
男はゆっくりと両刃の剣を持ち上げて、遠間より敵の真芯を射貫くように差し向ける。
「此の世界には不要だ。貴様らがいかに滅びを訴えようとも、この世に生きる人々の祈りを、願いを、否定できるものでは断じてない。――ここで断ち切ってくれる」
隻眼の男――鷲生・嵯泉(烈志・f05845)は撫でるように眼帯の位置を直し、
「覚悟」
低く吼えるなり、駆けだした。
戦場の情報を五感の全てを以て感じ取りつつ、嵯泉は疾る。砲門の向き、風切り音、装甲形状とその厚みから推し量れる敵の砲口可動域。全てを計算に入れ、敵が放つ砲弾の軌道から己が身を躱して駆け抜ける。
――敵の火力は猟兵達の圧倒的かつ電撃的な一斉攻撃により封じられつつある。しかしそれでもなお、自由となる砲を集めれば、一人の猟兵に放つにしてはオーバーキルなほどの砲撃を放つことが可能だ。
巨大戦車の砲が十数発、やはり纏めて火を噴いた。嵯泉を狙っての俯角射撃。狙いは散漫だが、破片だけで充分に人体を粉々に引き裂ける威力を秘めた砲弾である。
「……!!」
しかし嵯泉は先を読んでいた。砲が火を噴いた時には既に縛紅をバックスイングして構えている。後の先。振り抜いた刃の先から剣圧が迸り、空中の砲弾に直撃。紅蓮の爆発と破片、黒炎を舞い散らす。
砲弾の運動エネルギーは完全には殺せない。飛び散った砲弾の破片が疾る嵯泉の身体を裂く。だが、今更身が多少裂けようが、血が飛沫こうが、その程度でこの剣鬼が止まるわけもない!
「都市を消し飛ばすなどという砲弾――確かに其れは脅威ではあるが。生憎と使わせる心算は無い」
嵯泉は駆けながら左手、人差し指と中指二本を揃えて右手の剣の刃をなぞる。――刃が淡く光る。術式、『遮斥隕征』。
「これ以上の狼藉、赦すべくもない。砲も弾も使うに能わず、巨大なだけの役立たずと成り果てるがいい……!」
嵯泉は輝きを放つ剣を振り翳し、砲撃第二射を衝撃波で撃ち落として、戦車の車体の凹凸をましらの如く駆け上った。
「おお、おっ!!」
裂帛の気合。手近な砲より斬り断ち、破壊していく。傷が浅かろうと、彼の剣に断たれた砲はその動きをぴたりと止め、砲弾を吐き出せなくなり停止する。
そう、この戦車はオブリビオンだ。放つ砲弾はその一つ一つがユーベルコード。『遮斥隕征』はユーベルコードを封ずる刃――嵯泉の放った言葉の真意はそこにある!
その怪力纏って振るう刃が、予備部品で修繕され火を噴こうとする戦車砲を切り、一つ一つ動きを止めていくのだ。そればかりではない。嵯泉は甲板を駆け抜け、手の届く砲全てを――否、届かないものですら跳躍して叩き斬りその動きを止め、
「――ここは未だ、『天国』なぞとは名ばかりの場所だろう。だが、未来を信じ、生きる命がある限り、其処は紛れも無く人が生きる為に在る」
甲板を飛び降り左舷側に着地!――未だ走ろうとギャリギャリと回るキャタピラに縛紅の刃を突っ込み、
「ならばこそ。過去の残滓が踏み入って良い場所では……無いッ!!!!」
その、超常を否定する。
ユーベルコードを断つ刃が、不可解な再生を繰り返す履帯と表面装甲を、駆け抜ける彼の軌跡通りに破壊していく!!
「貴様らはここで潰える。『天国』に滅びは、似合わぬ!」
吼えながら三〇〇メートル近くを駆け抜ける嵯泉。裂いたキャタピラの距離は、彼が駆け抜けたその距離に等しい。
――おお、鉄の居城めいた戦車は、ついに猟兵達の攻撃の前にその動きを止めた……!
大成功
🔵🔵🔵
バンッ、とコンソールに手が叩ききつけられた。
「このようなことが……このようなことが、許されてなるものかッ!! 斯くなる上は『終焉砲門』を開く!!」
「ハッ! 支部長殿! 既に終焉砲門、セキュリティロックを解除済です!」
「おお――なんと目端の利く、――ありがとう同志よ、君のような篤き信仰心の持ち主と最後まで共に戦えたこと、望外の幸福である!」
巨大戦車、スーパーモンスターの中枢で、数名の黙示録教信者が声を交わしていた。
彼らの狂った頭でも分かるほどに明確な劣勢。最早戦況は覆らぬと明らかとなった今――
彼らが選ぶのは、自爆前提の渾身の一撃だ。
恭しく導かれた黙示録教イ組第六支部長が、朱いボタンを勿体ぶった所作で押下する。その瞬間、全動力のパスが切り替わり、スーパーモンスターの中枢にある『終焉砲門』に注ぎ込まれた。
終焉砲門は、このスーパーモンスター自体を砲とする、影の主砲。
全動力を以て放たれるビーム・キャノンである。
外から見てもその異様は明らか。
巨城めいた戦車は中央から二つに割れ、その内側から巨大な砲が迫り出す。
随伴砲門とでも言うべき小型の砲が更に数十と、その周囲に有機的に伸びた。最終防衛機構。
禍々しく変貌したあの巨大戦車は、その全てのリソースを以て、オーバーヒート覚悟の一撃を繰り出そうとしている――
距離一〇〇。敵、超重戦車、最終攻撃形態。
「いけるか、クロウ」
「当然だ、――ヤるぞ」
紅蓮と蒼の炎が、最後の詩を奏で出す。
叢雲・源次
【義煉】◎
2
先程の戦闘で消耗した分、万全とは言い難い…そこにあの超大型戦車か…もはや移動要塞だな…
「いけるか、クロウ」
問う。返答など分かりきっているが、これは儀式のようなものだ
クロウの返答を聞き、小さく頷く。それでこそ、相棒だ。
対神太刀を抜く。有効な攻撃を放てるのはおそらく一度…しかし
「このような修羅場、幾度となく潜り抜けてきた」
踏み込む足が地面爆ぜさせ、駆ける
対空砲火を太刀で斬り払い、跳躍
超重戦車に飛び乗る
目指すはあの主砲
砲口に太刀を突き立てる
>Inferno_cylinder overdrive
>RDY BURST
自身の心臓と同じ名を冠する長大なエネルギーの刃を零距離で形成し貫かんとする
杜鬼・クロウ
【義煉】◎
2
怪我継続
上着脱ぐ
防刃ベスト着用
七つ道具内の包帯で応急処置
源次に自分が食せない甘いチョコを渡す(回復力高い
鉄壁の要塞ってか
戦力差は歴然…ンな訳ねェよなァ?
立ちはだかる強大な敵を前にしようとも
いつだって、
俺らに敵無し
下吐が出るクソみてェな喜劇は終いだ
当然だ、ヤるぞ
俺の親友であり
相棒のお前とならば
一章の時に使った剣を引き摺り地に傷を作る
UC使用
攻撃力up
主砲の射線を見切り・第六感
研鑽された風刃で砲弾を真っ二つ
戦車へ一気に近付く
火と風の精霊宿した剣で爆発を誘発
火炎渦巻く
部位破壊で装甲削り耐久減らす
クレーターの如く凸凹に
俺も剣も哮り立つ
敵の心臓部分へ渾身の一撃ぶち放つ
仲良く“天国“で暮らせや
●神殺絶刀
ばさりと翻して上着を放り、杜鬼・クロウ(風雲児・f04599)が前を睨む。
その身体は既にズタズタの傷まみれ。ゾンビジャイアント、そして黙示録教徒との激闘を経て、幾度となく攻撃を受け、血の滲む肌が露わとなる。纏った防刃ベストも度重なる被弾で既にボロボロだ。
傷を包帯でぐるぐる巻きにしながら、クロウは傍らにピンとチョコレートを弾く。
シガー・チョコレート。煙草めいた棒状のチョコレートを、ノールックで受け止めるのは叢雲・源次(DEAD SET・f14403)。封を切り、咥え、染み入るような甘さのそれを舐る。
源次もまた、インフェルノ・シリンダーを全開で回したあとだ。万全の状態かと言えばほど遠い。そこにやってきた巨大戦車、しかも最終砲撃形態に入ったものとくれば、膝を屈してしかるべきな戦力差のはずだ。
――しかし彼らは。ボロボロの彼らは。
「鉄壁の要塞ってか。戦力差は歴然――火力差は圧倒的――ンな訳ねェよなァ? 立ちはだかる強大な敵を前にしようとも、いつだって俺らに敵無し。下吐が出るクソみてェな喜劇は終いだ」
「ああ――このような修羅場、幾度となく潜り抜けてきた。今更怖じけて退がるほど、楽な道を歩んできたわけではない」
包帯を巻き終え、
チョコレートを噛み砕き、
「いけるか、クロウ」
「当然だ、ヤるぞ」
そう、当たり前のように言ってのけたのだ。
いけるか、という問いは儀式のようなもの。返答など分かりきっている。
源次は顎を引くようにかすかに頷いた。
「それでこそ、相棒だ」
「当ッたり前だろうが。行くぜ、源次――親友にして相棒、俺の盟友。奴を――」
クロウの放り投げた上着が光の粒子となって散る。大剣『玄夜叉』が、その姿をギチギチと変じ、ゾンビジャイアントを断った時の鋸刃の剣へと今一度の形態変化。
「ブッ潰しになぁッ!!!」
クロウは剣を引きずり、黄砂に露出した石畳の上に火花を曳いて駆けだした。
その横を源次が固め、今一度、義煉の二人が直走る!!
無数の砲火が空を灼いた。
降り注ぐ砲弾は一〇〇とも二〇〇とも付かぬ。その一瞬では最早数えきれぬ。他の猟兵達が各々迎撃するのを横目にしながら、クロウは降り注ぐ砲弾の射線を見切り、玄夜叉に纏わせた風に炎を孕ませ、
「オラァッ!!!」
集束させ、放つッ!!
渦巻く風が、消えぬ炎を孕めば、燃える焔は火勢を増して火焔の竜巻めいて猛る。クロウの放った斬撃の切っ先から炎風捲き、炎の竜巻が巻き起こった。天を衝くような炎の竜巻が複数の砲弾を灼き墜とす。そればかりではない、身を返したクロウは風の刃を玄夜叉に湛え、続けざまに複数の風刃を放つ。炎竜巻を逃れた砲弾が斬れ飛び、立て続けに連鎖爆発!!
――『奏上・三位一体之祓剣』。
今やクロウは精霊の力帯びる刃、玄夜叉と一つとなり、己の手脚の如く精霊魔術を操る。
駆け、爆炎に照らされながら、クロウの隣で、源次はようやく刀を抜いた。対神太刀『黒ノ混沌』。
腕は重く、足はおぼつかぬ。
数えきれぬほどの黙示録教徒を斬り、己も浅からぬ傷を負った。血塗れとなって、今なおここに立ち――あの戦車を止めようとしている。
有効な攻撃を放てるのは、恐らくあと一度が限度。炎獄機関――インフェルノ・シリンダーが軋みを上げ、これ以上の連続稼働を否定する。
――だが。ここで止まれるのなら、そもそももっと先に戦うのをやめていた。
マキナ教団を壊滅させたとき、彼の戦いは終わっていたはずなのだ。なのに未だ、その手に握る対神刀剣を手放すことなく彼が戦い続けるのはなぜか。
――今なお、神の名を盾にに嬲られる人々を助ける為だ。これ以上、自分のように傷つけられる人々を出さない為だ。あの身勝手な邪教徒共を、これ以上のさばらせておかない為だ。
……自分という名の地獄を、奴らに骨の髄まで、刻み込んでやる為だッ!!!
「――貴様らに教えてやる。地獄の温度を」
踏み込む足が大地を爆ぜさせる。足裏から蒼炎迸る。心臓から溢れる地獄の炎が、炎獄機関を経て彼の推力となる。クロウが自身の横に、速力を上げて伴うのを確認し、源次は力の限り地を蹴った。一瞬で一〇〇メートル近い高度への跳躍。
「っらぁあああぁぁああ!!」
クロウが叫び、再び炎の大渦を放つ。
砲弾が幾つも爆ぜる。爆炎を突き抜け二人は巨大戦車目掛けて落ちる。放たれる機銃掃射。クロウが火花を散らして玄夜叉で打ち払う傍ら、源次も黒ノ混沌を翻して機銃弾を斬り払う。
インフェルノシリンダー ・ オーヴァードライブ
炎 獄 機 関 、神 殺 絶 刀。
「滅びがお好きなんだろォ? なら手前ェらだけで――仲良く『天国』で暮らしやがれァッ!!!!!」
クロウが、渦として残る斬撃ではなく――『ただ断ち切る』ことを目的とし、炎と風を最大収斂した縦一文字の飛斬撃を描く。灼熱の、真ッ赤に燃え立つ剣波が、数々の砲弾を融解誘爆させながら一直線に『終焉砲門』に迫り突き立つ! 爆炎が巻き起こるそこへ、源次がためらいなくその身を躍らせる。
終焉砲門が火を噴くその前に――蒼き輝きそのものとなった黒ノ混沌を砲口へ突き立て、
「――最早何を言うこともない。滅びをくれてやる」
レディ ・ バースト
――此処が貴様の地獄と知れ。
稲光めいたスパーク一つ、源次の対神太刀『黒ノ混沌』は、その瞬間純粋なエネルギー体と化した。猛り狂う源次の心臓、炎獄機関より送り出される熱量全てが蒼炎となり、切っ先より迸って終焉砲門の底部を穿つ。
――それ即ち、その戦車の心臓部を射貫いたことに他ならぬ。
一瞬の間も置かず、超重戦車の最奥から光が迸った。――爆裂。爆光。天まで届くのではないか、という爆発、光の柱めいた、迸る巨爆の中より、二つの影が半ば吹き飛ばされるように飛び出して、荒野に流星めいて着弾。二人仲良くクレーターを描く。
咳き込む声、喘鳴、あ”ー、という唸り。
「……ひでェ目に遭ったぜ。生きてるか?」
「見たままだ。また一度死に損なったな」
「いいじゃねェか。俺はお前が生きてる方が楽しいぜ。……お疲れさん、源次」
「ああ。……」
「……ありがとう。クロウ」
天を掴むように、二人の男の拳が突き出された。
仰臥する彼ら二人の拳の向こうで、天国侵犯の戦車が、今まさに、炎に捲かれて崩れ落ちるのだった。
大成功
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