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世界は終わらず花は咲く

#アポカリプスヘル

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#アポカリプスヘル


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 あの場所に物資が眠っているというのは本当の話だった。
 崩壊しかけている建物の攻略には手間取ったけれど、この行為にはそれだけの価値がある。
 かつてこの近辺を拠点にしていた人達が集めた物資。
 缶詰や非常食といった食べ物。生活必需品の数々。
 そして……花の種。
 ここにある物資を持ち帰れば、きっとみんな喜んでくれるはず。
 そうやって逸る気持ちが、俺の感覚を鈍らせていた。
「お前にも、幸福なル滅びト終焉ヲ」
 突如背後から聞こえた声。
 次の瞬間、体を襲った凄まじい衝撃。
 何が起きたか気付いた頃には……俺の意識は闇の中へと沈んでいた。


「集合お疲れ様。皆はもうアポカリプスヘルには行ってきたか?」
 集まった猟兵達の顔を確認しつつ、茜谷・ひびき(火々喰らい・f08050)が話を切り出した。
「あの世界に広がってるのは荒野に廃墟って具合だが……どうやらとある廃墟に、いくらかの物資が残ってる事に気付いた人達がいるらしい」
 アポカリプスヘルでは『奪還者(ブリンガー)』と呼ばれる人々が危険を冒して物資を入手し、生き残った人類の拠点に運ぶという行為が繰り返されている。取りに行ける場所に物資が発見されたのならば、奪還者が向かうのは当然の事だろう。
「だけどな……その廃墟にはオブリビオンが巣食ってるみたいで。このまま奪還者が物資を取りに行けば、まず助からないだろう。そこで俺たち猟兵の出番って訳だ」
 オブリビオンと戦えるのは猟兵だけ。
 猟兵達が奪還者より先に廃墟へ向かい、オブリビオンの討伐と物資の入手を行えば被害が出ることはない。それが今回の目的のようだ。

「目的地は崩れかけのショッピングモールみたいだな」
 そう言いつつ、ひびきは画像の資料を取り出した。
 そこに映し出されたのはボロボロのショッピングモール。残っているのは一階から三階までの部分で、そこから上は既に崩れ落ちているようだ。
「ここの二階のどこかに物資があるから、まずそこを目指して欲しい。元々はそれなりに頑丈な施設だったんだろうが、今はもうボロボロだ。瓦礫で道が塞がってたり、汚染された水が流れて通れない部分なんかもあるだろうな。気をつけて進んでくれよ」
 物資までの道のりには、瓦礫で塞がれている部分もあれば、工夫せずに通れば崩れてしまう道もあるだろう。
 汚染水や危険なガスが発生している箇所もあるかもしれない。
 そのようなルートを避けたり、各自の能力や知識で対処しつつ進む必要がありそうだ。
「オブリビオンは物資の元に人が集まるのを知ってるから、廃墟に誰かがやって来ても追いかけてきたりはしないみたいだな。だから戦闘は物資のある場所で行うことになるはずだぜ」
 廃墟に巣食っているのは『黙示録教の信者』というオブリビオン達。
 彼らは破滅的な教義を掲げたカルト教団の成れの果て。今もその教義に従い人々を苦しめているようだ。

「オブリビオンを倒して物資を入手したら、近くの拠点まで運んでやってくれ。物資の中身は保存がきく食料や生活必需品、それから……」
 ふと、物資の内容を確認していたひびきの顔が微かに綻んだ。何か気になる点があるようだ。
「……花の種が残ってるみたいなんだ。今回の拠点なら土壌は汚染されてない。井戸もあって水にも多少の余裕があるみたいだから……皆で花を育てられるように整えるのも悪くないんじゃないか」
 荒野ばかりの世界でも、工夫さえすれば花は育つ。
 最初は小さな花だとしても、それは確かに人々の心を癒す足掛かりになるはずだ。
「些細なきっかけでも、積み重ねていけば世界の再建にも繋がるだろうし。良ければ協力してやってくれ。それじゃあ今回もよろしく頼むぜ」


ささかまかまだ

 こんにちは、ささかまかまだです。
 アポカリプスヘルです。

 まずは崩れかけのショッピングモールに乗りこみ、物資の元を目指しましょう。
 現存している部分にはある程度の壁や床は残っていますが、何も工夫せずに進むのは危険です。
 道を塞ぐ瓦礫をどける、危険そうな場所を素早く通り抜ける、そもそも危険そうなルートを避ける……などの工夫をしつつ進みましょう。

 物資の元まで辿り着けば集団戦です。
 戦闘によって建物が崩れて不利になることはありません。
 床などの破壊を戦略に組み込んで頂くのは大丈夫です。

 敵を倒したあとは近くの拠点での描写となります。
 周囲の環境を整え、花を育てられるようにしていきましょう。
 お声がけがあれば、ひびきも出てきます。

 どの章からでも参加していただいて大丈夫ですし、特定の章だけ参加していただくのも歓迎です。
 進行状況や募集状況はマスターページに適宜記載していく予定です。

 それでは今回もよろしくお願いします。
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第1章 冒険 『崩壊しつつある廃墟』

POW   :    瓦礫を撤去して埋まった通路を掘り起こしたり、施錠された扉を破壊して進む

SPD   :    注意深く周囲を観察して危険を発見したり、危険な場所を素早く通り抜けて進む

WIZ   :    廃墟をマッピングしたり、知恵や知識を利用して危険を取り除き、進む

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 転移した先は、目的地であるショッピングモールのすぐ側であった。
 かつては沢山の人々で賑わっていたであろうその建物は既に崩れかけている。
 だけどここには、今を生きる人々の糧になるものが存在しているのだ。

 ショッピングモールにどのように入るかは、それぞれに任されている。
 着実に一階から進んでいくか。
 それとも何かしらの手段で上の階から入っていくか。
 どのようなルートを通るとしても、何かしらの危機が猟兵達の行く手を阻むだろう。
 まずはそれを乗り越えて、物資のある二階を目指さなくては。
無限・虚数
先ずは施設をぐるりと一周。まー上の方は崩れとるみたいやけど、他に窓やらなんやらはあるやろ、そこが塞がれとるかだけ確認しとこ。あとは、UCで崩れた上部へ手を伸ばしてうまい事、手を縮めて上から乗り込ませて貰おか。案外、こっちから攻める手段ってないもんやからな。できるなら上下挟み撃ち、言う形になった方がええやろ。

流石に床ブッ叩いて降下は他の人らに悪いからせぇへんけど…最悪は持ち運べる物資くらいなら持ち出して上から逃げられるよってな、こまめに地図作りながら進もか。あんまし上の階に罠とかは仕込んでないとはおもうけど、まぁその辺もよう見ておかんとな




 乾いた大地を踏みしめながら、現場であるショッピングモールの周りを歩く少女がいた。
「んー、やっぱり上の方は崩れとるみたいやね」
 その少女、無限・虚数(無限残機の非人道性少女・f24500)は上方を見つめてぽつりと呟く。
 建物の外観は今しがた確認してきたところだ。
 事前に聞いていた話の通り、この建物は3階までしか残っていない。それより上の階は崩れ落ちているようだ。
 だけど崩れた瓦礫が3階を全て封鎖している訳ではない。残っている窓から見える部分でも、侵入可能な場所はいくつかあった。
「これで上手いこと行けばいいんやけど」
 虚数は上着を脱いで腰に結ぶと、その白い腕を上へと伸ばす。
 彼女は無限の虚数。自身の身体を伸縮・増減する力を持っている。
 その力を腕へと集中させれば……腕はどんどん伸びていき、3階の崩れた窓まで辿り着いた。
 ガラスで手を切らないように気をつけて、しっかりと窓の縁を掴んだのなら準備は万端。
「よいしょっと……」
 今度は腕をするする縮め、身体ごと3階へと持ち上げる。
 そのまま腕に更に力を加え、静かに身体を薄暗い建物の中へ。
 窓の周りにも瓦礫や危険なものはなさそうだ。虚数は周囲の安全を確認すると、改めて上着に袖を通した。

「案外、こっちから攻める手段ってないもんやからな」
 恐らく1階から侵入する猟兵の方が多いだろう。それなら皆で2階を挟み撃ちにした方がいい。
 3階の下見をしておくのも大切なことだ。
 まだ見つかっていない物資や敵が設置した罠、利用出来そうな道具やルート。それらを発見出来る可能性は見過ごせない。
「それに……上り下りする方法も考えんとな」
 物資の場所が分からない以上、流石に床を叩き壊して降りるのはまずいだろう。
 幸いな事に利用出来そうな階段は残っていた。罠や崩壊の危険性もなさそうだ。
 虚数は紙とペンを片手に、ゆっくりと残りの場所を探っていく。
 丁寧に地図を作りつつ、進めるルートを確認する事を忘れずに。
 まずは安全第一だ。初めて通る場所ではしっかりと罠の有無も探っていく。
「あんまし上の階に罠とかは仕込んでないとはおもうけど……万が一もあるしな」
 虚数の予想の通り、3階に罠は殆ど設置されていなかった。
 一番大きな理由は『上階からの侵入者について想定していない』事だとは思われるが……。
「カルト教団の考える事なんて分からんしな」
 相手はオブリビオンでカルト教団の成れの果て。彼らなりに妙な考えを持っている可能性もある。
 ……そんなよく分からない考えよりも、嵐のない空に憧れた方がずっと良いのに。
 心の隅でそんな事を考えつつ、虚数はショッピングモールの中を進んでいった。

成功 🔵​🔵​🔴​

ルフトフェール・ルミナ
大きい建物だなあ……それに、随分崩れてる。これ、中に入って出られないとか普通にあるよね。
けど、元々店だったなら、物資は期待できそう。危険を冒す価値あるよね。今生きてる人のために、がんばろう。
【WIZ】
物資は二階……だったね。足掛かりになりそうな場所、あるかな。なければフック付きロープを使ってみる。
登った後も、行く手の太い柱などにフックをかけて、床崩れに備えとくよ。
で、確保した安全なルートに印をつけてっと。
ところで、他の世界にも、ショッピングモールってあるよね。
その構造を思い出しながら、主に食料を探してみる。
食べ物の店は近くに固まってたり、貯蔵倉庫も店に近い場所にありそうだけど、どうかなあ。




「大きい建物だなあ……それに、随分崩れてる」
 細い瞳を更に細めつつ、ルフトフェール・ルミナ(空を駆ける風・f08308)は巨大な建物を見つめていた。
 ショッピングモール自体は他の世界でも見た事があるけれど、やっぱりこんな建物は馴染みがあまりなくて。
 その上で『ボロボロのショッピングモール』なんてものは初めて見た。
 物珍しさや寂しさも感じるけれど、それ以上に思うのは……こういう建物って、入ったら出れないとか普通にあるよね。
 だけど危険を冒す価値も十分だ。だってここは元々お店で、それなら物資も期待は出来る。
「今生きてる人のために、がんばろう」
 前向きな決意と共に、ルフトフェールは建物の周囲を歩き始めた。
 物資が2階にあるのなら、直接そこに入ってみるのもアリだろう。まず探すべきは足がかりになる場所だ。
 例えば窓や壁が崩れ去っている部分。建物の周囲には瓦礫が積み重なっている部分もあった。
 まずはそこに足をかけて、崩れ落ちないかを確認してみる。
「少しの間なら登れそうかな。でも高さが少し足りないか……よし」
 足りない部分は道具で補えばいい。ルフトフェールは懐からフック付きロープを取り出して、フック部分を上方へと投げ込んだ。
 フックは上手く崩れた壁に引っかかり、彼の身体を上方へと持ち上げてくれる。
 まずは少しだけ頭を出して周囲を確認。ここに物資はなかったけれど、敵の気配も感じられない。
 なるべく物音を立てないように気をつけつつ、ルフトフェールは2階へと身体も持ち上げた。
 すぐにロープを再び奥へと投げ込む事も忘れない。次に引っ掛けたのはしっかりとした柱だ。
「いつ崩れるか分からないからね……気をつけて進もう」
 もし床崩れが起きたとしても、ロープで身体を支えておけば安全だろう。
 ルフトフェールはフックをかけられる場所を確認しつつ、2階の進行ルートを確認していく。

 安全なルートのマッピングを進めつつ、ルフトフェールは自分の記憶を辿っていた。
「そういえば、他の世界のショッピングモールってどんな構造をしていたっけ……」
 思い浮かべるのは他の世界のショッピングモール。
 ああいう場所だと食品を扱っているお店は1階に多かったはずだ。
 飲食店もフロアの中央より壁寄りが多かった記憶がある。
「食べ物ならそういう場所にあるかもしれないね」
 そう目星をつけて、ルフトフェールは1階への階段が近い部分や、壁際を重点的に歩いていく。
 その最中、ちらりと人の気配を感じた。他の仲間だろうか、それとも……。
「どっちにしても当たりかな。進んでみようか」
 鬼が出るか蛇が出るか。兎に角今は進むしかない。
 ロープをしっかりと握りしめ、ルフトフェールは更に歩を進めていく。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アゼリア・リーンフィールド
この世界、植物はどのくらい根付いてくれるのでしょうか。
しかし花は命!実りの象徴!人々には希望になるはず!頑張りますよ!
べ、別に他の物資のことを忘れてる訳では、な、ナイデスヨー……?

さて、崩れそうな所もなるべく崩さずに、安全に進みたいですね。
UCで木や蔦を生やして、危なそうな所は補強します。
既に落ちている瓦礫はその下から生やせば少しは隙間ができるはず、慎重に通っていきましょう。
他にも蔦は足場にも出来ますし、上手く生えなかったら汚染の察知にもなります。
……む、意外と植物便利ですね?

とはいえやっぱり怖いので、見通しが良い所を選んで慎重に、周囲をよく見て進んでいくことを心がけましょう。


善哉・鼓虎
奪還屋さんのお手伝いやな!まかせときぃ。
伊達にこの世界産まれやないでー【サバイバル】の知識はバッチリや!
派手なことは出来らんけどマッピングとかやったら任せてや。

誰かの生活の役に立てるんやったらうちがんばるで。
食糧や生活用品も大事やけど…花の種かぁ…。
うちはそういうの大好きやで。
食べるもんやないもん育てることに意味はないって思う人もおるやろけど。
その辺は音楽も一緒。歌ったところで演奏したところで腹は膨れん。
せやけどな…人間心のゆとりゆーもんがあった方がええ思うんや。
それをくれるのが花やったり歌やったりやと思う。

本物の花なんてこの世界では見たことないけど…いつかこの世界でもたくさん咲けばええな。




 ショッピングモールの入り口付近にて、賑やかな少女の声が響く。
「花の神様……猟兵ってそんな人もおるんやな。うち、ずっとこの世界におったからびっくりしたわ!」
 ショートツインテールをひょこひょこ揺らし、明るい声をあげるのは善哉・鼓虎(ハッピータイガー・f24813)。
「ええ、わたしは小さな神ですが……この世界にもお花や植物が必要だと思います。是非お手伝いさせて下さい!」
 その横で花の紋章をゆらゆらと漂わせ、朗らかな声をあげたのはアゼリア・リーンフィールド(空に爆ぜた星の花弁・f19275)。
 二人は偶然合流し、意気投合。
 共にショッピングモールの攻略を進めていく事にしたのだ。
「うち、この世界の産まれやさかい、サバイバルの知識とかはまかしときぃ。マッピングとかそういうのは得意やで」
「それならわたしは道を切り開きます。この世界にどのくらい植物が根付くのかも気になりますし」
 まずは鼓虎が先行し、建物の中を進んでいく。
 罠の確認や危険な気配の察知、足場の安全確認といった部分は彼女の方が詳しいのだ。
 まずは鼓虎が安全を確認し、アゼリアを奥へと導く。
「ワイヤーとかそういうのは……仕掛けられてなさそうやな。道もちょっと不安定やけど、気をつけていけば大丈夫なはずや」
 姿勢を低く保ち、しっかりと目を凝らして。
 鼓虎は確かな足取りで前へと進んでいく。
 その後ろを歩くアゼリアは、懐から小さな杖を取り出していた。
「ありがとうございます。念の為道の補強をしておきましょうか」
「補強、出来るん?」
 首を傾げる鼓虎に対し、アゼリアはにっこりと笑みを浮かべて前へ出た。
「息吹く命は戒め。さあ、出てきて……!」
 アゼリアが呪文を唱え杖を振るえば……突如、地面から鮮やかな緑が飛び出してきた。
 それは小さな植物の蔦。しゅるしゅると伸びる蔦は瓦礫を捕らえ、しっかりと地面や壁に固定し始めたのだ。
「わ、わ……凄い、こんな綺麗な植物初めて見たわ!」
 鼓虎からすれば瑞々しい植物というのは大変貴重なものだ。初めて見るそれに思わず感動し、満面の笑みを浮かべる鼓虎。
 アゼリアも喜ぶ鼓虎を微笑ましげに見つめ、花の紋章を嬉しそうにゆらりと揺らす。
「この世界でもちゃんと力が使えて安心しました。危ない場所はこうやって進んでいきましょう」
「うちももっと気合が入ったわ! 頑張ろうな!」
 二人は笑みを浮かべつつ、けれど油断はせずに先へと進んでいく。

 進行ルートには瓦礫が積み重なっている部分もあった。
 アゼリアが植物の力を借りて、それを持ち上げようとしたけれど……何かがおかしい。
「む……何だか上手く生えてくれませんね」
「ちょっと待ってな……」
 鼓虎が瓦礫の側へ顔を寄せ、感覚をしっかりと研ぎ澄ませた。
 奥から感じるのは水の音と……異臭。
「こっちはアカンな。汚染水が流れてるみたいや」
「だとしたらこのルートは駄目ですね……別の場所に行きましょうか」
 通れないのなら仕方がない。二人は元来た道まで引き返し、別の場所を目指し始める。
 通ってきた道なら安全は確保されているはずだ。少しくらい雑談するのも大丈夫だろう。
「うち、花の種があるって聞いて凄くワクワクしたんよ」
「わたしもです。花は命、実りの象徴! ですからね」
 アゼリアの言葉を聞き、同意するように頷く鼓虎。
「食べるもんやないもん育てることに意味はないって思う人もおるやろけど、それこそこの世界に必要やと思うんよ」
 そう言いつつ、鼓虎は背負ったエレキギターに目を向ける。
 これは彼女にとって大切な相棒。なくてはならないものだ。
「音楽も一緒やな。歌ったところで演奏したところで腹は膨れん。せやけどな……人間心のゆとりゆーもんがあった方がええ思うんや」
 アポカリプスヘルに暮らす人々は、すっかり心の余裕を失ってしまっている。
 でも、だからこそ。心の潤いというのは大切になっていくはずだ。
「そういうのをくれるのが花やったり歌やったりやと思う」
「ええ、花や音楽……そういうものは、人々には希望になるはずです!」
 アゼリアも同じように頷いて。
 普段は花に囲まれて暮らしている彼女だからこそ、この世界の現状は見過ごせない。
 それに植物というのは人にとって頼れる存在にもなるはずだ。事実、彼女が生み出す植物が手助けになってくれている。
「うち、花の種とかそういうの大好きやで。本物の花は見たことなかったけど……いつかこの世界でもたくさん咲けばええな」
「はい! そのためにも頑張りましょう」
 二人は再び顔を向け合い、楽しげな笑みを浮かべ合う。
 今回の事は小さなきっかけかもしれないけれど、それがいつか希望に繋がっていくはずだ。
「食糧や生活用品も大事やし、誰かの生活の役に立てるんやったらもっとがんばらんとな!」
「えっ、あっ、ええ! 別の物資も大切ですね!」
 もちろん食料品や生活必需品も忘れてはいけない。生き抜くことも大切だ。
 けれど二人共目指す場所は同じ。この世界を花でいっぱいにしてみたい。
「絶対に花の種、持ち帰ろうな」
「そのためにもあと少し、頑張りましょうね!」
 決意を胸に、二人の少女も更に廃墟を進んでいく。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

アマゴ・マイアル
POW
物資は大事やな
それも花やて?そらまた珍しいモン見つけたなぁ
こらしっかり【覚悟】決めんとな

茜谷くんの話やと、元々この建物は頑丈に出来とったらしい
つまり、瓦礫も頑丈
丁寧に撤去しとる時間はないし、水を塞き止めとるのもまた瓦礫
雑にいじって水漏れも起こせん
そして俺の【戦闘知識】的にこういう所に罠を仕掛ける奴らも居る
足下にワイヤーでも張られてないか常に注意しておくで

もちろん施錠されとるドアも要注意や
火炎放射…と行きたいとこやけど、ここはアサルトライフルで錠を壊してドアを蹴破るで!
すぐに後ろに跳べば罠があっても多分大丈夫やろ

物資はもちろんやけど、花の種はまた特別や
必ず持ち帰るで

アドリブ連携歓迎




 薄暗いショッピングモールの内部を、一人の男が進んでいた。
 頭部にはガスマスク、両腕にはアサルトライフルといった厳つい風貌だが……彼もここの攻略にきた猟兵である。
「物資は大事やな。それも花やて? そらまた珍しいモン見つけたなぁ」
 うんうんと頷きつつ、その男……アマゴ・マイアル(ファイヤーフィッシュ・f24418)は周囲の確認を行っていた。
 この世界で生まれ育った彼からすれば、花の種の貴重さはとても痛感出来るもの。
 これは気合を入れて覚悟を決めなければ。ガスカスクの奥の瞳に決意の色を宿しつつ、アマゴは奥へと進んでいく。

 まずは道なりに進んでいくが、やはり崩れた瓦礫が目についてしまう。
「事前に聞いてた話やと、ここは頑丈やったみたいやな」
 つまり落ちている瓦礫も頑丈だろう。
 もしここにオブリビオンが潜んでいないのならば、ゆっくりと撤去しても構わないが……そうも言っていられない。
 それに瓦礫が頑丈だからこそ、汚染水を堰き止めてくれている可能性もある。
「雑に弄って水漏れするのも嫌やしな。瓦礫は触らんでおこか」
 アマゴが警戒しているのはそれだけではない。
 ここに潜んでいるオブリビオンはカルト教団の成れの果て。獣のような類ではないのだ。
 つまり……知性があり、知識がある。わざわざ物資の前に張り込んで奪還者を誘き寄せるようなやつらだ。
「……ああいう奴らなら罠を仕掛けてるかもしれんしな。気をつけていこか」
 アマゴも罠の類に関する知識は持っている。
 足元や壁際、危険そうな場所をしっかり見定め、ワイヤー等が設置されていないかを確認する事も忘れない。
 更に警戒すべきは施錠されたドアだろう。
「鍵かかっとるか……どうしようかな」
 景気よく火炎放射器でドアをぶち破る! というのも手段の一つだが、ここにも罠が仕掛けられている可能性は存在している。
 だからこそのアサルトライフル。錠の部分を慎重に撃ち抜き、そして次にドアを蹴破って。
 けれどうかうかしてもいられない。アマゴはすぐに後ろに飛び退き、ドアの方を確認していく。
 幸いな事に扉に罠は仕掛けられていなかった。
 けれど警戒するのは大切な行動だ。それに『罠が仕掛けられていない』という情報が手に入るのも良い事だろう。
「あんまり罠もなさそうやし……誘き寄せる方がメインなんやろうか」
 オブリビオンの考えというのはよく分からないが……相手が待ち構えているなら、堂々と向かってやろうじゃないか。
「物資を囮にするなんて良い根性しとるわ。それに花の種はまた特別やしな」
 だからこそ、必ず手に入れる。
 更に意志を強めつつ、アマゴも奥へと向かっていった。

成功 🔵​🔵​🔴​




第2章 集団戦 『黙示録教の信者』

POW   :    【黙示録教の信仰】我らガ祈りを聞き届ケ給ヘ!
【常人には理解不能な狂った教義と信仰】を聞いて共感した対象全てを治療する。
SPD   :    【黙示録教の崇拝】我ラが願イヲ聞き届け給え!
【常人には理解不能な狂った教義と信仰】を聞いて共感した対象全ての戦闘力を増強する。
WIZ   :    【黙示録教の殉教】幸福なル滅びト終焉ヲ此処に!!
【心臓と同化したオブリビオン爆弾による自爆】が命中した対象に対し、高威力高命中の【疑似超大型オブリビオン・ストーム】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。

イラスト:嵩地

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 猟兵達はそれぞれの手段で安全を確保しつつ、ショッピングモールを進んでいった。
 そして2階に辿り着き、進んだ先で目に留まったのは物資が入っているであろうコンテナだ。
 積み上げられたコンテナには食料や生活必需品が入っている事を示すラベルが貼られている。
 そしてその中には花の種も……だけどすぐにそこまで辿り着く事も不可能だ。
 何故ならコンテナの前には複数の人影があるのだから。

「不幸ナ者が現れタ」
「我らガ祈りを彼ラに」
 ボロボロの黒衣を纏った人影は、猟兵達に向かってぶつぶつと何かを呟いていた。
 彼らの手元には鉄パイプやバールのようなものといった凶器。
 不自然に膨らんだ左胸からは禍々しい気配も漂っている。
 彼らは『黙示録教の信者』。
 「世界が滅ぶことでその世界に住まう者は幸福になれる」という狂った教義を掲げるカルト教団「黙示録教」の成れの果て。
 死してなお世界を滅ぼす過去の存在。

「……幸福なル滅びト終焉ヲ此処に!」
 叫びと共に、オブリビオン達は猟兵目掛けて走り出す。
 彼らを倒さなければ物資を持ち帰る事は不可能だろう。
 猟兵達も彼らを迎え撃つべく、それぞれ戦いの準備を進めていく。
ルフトフェール・ルミナ
へえ、君ら「滅びは幸せ教」の信者なんだ?
けどさ、人の幸せ勝手に決めないでくれる? 僕ぁ「生きてて幸せ教」信じてるんで。
それと、そこの物資ちょうだい。君らには必要ない代物だよ。

【WIZ】
自爆すんだよね。やっぱり人を巻き込んじゃうんだ、やだわぁ……。
僕は、魔術『大いなる冬』で信者の動き自体を止めようとする。
自爆はねぇ……このフック付きワイヤーをまた使うよ。自爆する奴を引っ掛けて、他の信者んとこに放り込む【敵を盾にする】。
物資が巻き添え食らうのもやだなぁ……物資近くの信者も挑発して引き離しておこうかな。
へいへーい、僕ら不幸な者を君ら全然倒せてないじゃん! 教義って口先だけ? 悔しいなあ、悔しいなあ。




 迫りくる信者達を前にして、ルフトフェール・ルミナは呆れたように溜息をついた。
「へえ、君ら『滅びは幸せ教』の信者なんだ?」
 黙示録教の考えは大雑把に言ってしまえばそんなものだ。
 滅びは幸福、だから皆で滅びよう。どう考えても狂った考え。
「けどさ、人の幸せ勝手に決めないでくれる? 僕ぁ『生きてて幸せ教』信じてるんで」
「我らガ教義を受け入レられないカ。愚かナ」
 ルフトフェールの言葉を受けても信者達は止まらない。
 変な考えを持つだけなら別に構わない。けれどそれに他の人を……今生きている人達まで巻き込むのは悪質だ。
「そこの物資ちょうだい。君らには必要ない代物だよ」
 そう言いつつルフトフェールはちらりと物資のコンテナの方を見た。
 奪還を恐れているのか、数人の信者はコンテナの前に陣取っているようだ。
 彼らはいつでも自分達の爆弾を起動する準備をしつつ、猟兵達の動きを窺っている。
「自爆すんだよね。やっぱり人を巻き込んじゃうんだ、やだわぁ……」
 コンテナは頑丈そうだけど、至近距離で爆発に晒されるのは良くないかもしれない。
 まずはあいつらを引き離そう。ルフトフェールは手作りの杖を振り上げて、大きな声を張り上げた。
「へいへーい、僕ら不幸な者を倒すんだろう! 教義って口先だけ? 悔しいなあ、悔しいなあ。かかっておいでよ!」
「我らガ信仰を愚弄スルカ!」
 信者達の思考は単純だった。彼らにとっては自分達の教義と信仰こそが至高。それ以外の事は考えられない。
 ルフトフェールに挑発された信者達は、胸の爆弾を起動して一斉に彼へと迫る。
 敵がひとかたまりになってくれるのならば僥倖。ルフトフェールは再び杖を掲げ、魔術の詠唱を始めていく。
「我、己が体熱を代償に、異なる時、異なる地への途を開かん。三度の冬を経し世の吹雪、この世に阻めるものはなし」
 前方に開くのは時空の裂け目。
 そこから溢れ出る冷気は世界を凍らせ、全てを止める吹雪へと変わる。
「大いなる冬。君らも一度冷静になろう?」
 異界の吹雪は次々に信者達を凍らせて、その足を床へと縛り付けた。
 けれど爆弾は既に起動してしまっている。ルフトフェールは素早くフック付きワイヤーを握りしめ、手近な信者の方へと投げ飛ばした。
 人を掴みやすい形状をしたフックはあっさりと信者を捕まえて、そのまま他の信者の方へと飛ばせば良い頃合いで爆弾も起動する。
 信者の爆弾は次々に誘爆していって……ちょっとした大爆発が起きたけれど、巻き込まれたのは信者達だけだ。
「……これが君らの幸せなんだよね。やっぱり僕には分かんないや」
 生きてる事こそ楽しいのに。だからせめて、物資は今頑張ってる人達のために使わせてもらおう。
 立ち上がる煙を眺めつつ、そんな考えを抱いたルフトフェールだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

善哉・鼓虎
まさに『狂信者』やなぁ…残念やけど滅びる事が救いやなんてうちは思ってへんからな!
むしろ最後の最後まで足掻いたるそ!それくらいの気持ちでおるよ。
生きる為の物資も花の種も取り返したるわ。

UC【ハッピーエンドコール】
うちのSNSのみんな力を貸したって。
ハッピーエンドへ導く為の力を。
【パーフォーマンス】も駆使しつつ賛同人数を増やしソーシャルレーザーで攻撃。

アドリブ連携歓迎です。




 戦いが始まり、数を減らし始めた信者達。けれど相変わらず彼らが止まる気配はない。
 自分達が死んでも、仲間が死んでも、彼らにとっては教義の方が大切なのだろう。
 そんな彼らの事を善哉・鼓虎は悲しげに見つめていた。
「まさに『狂信者』やなぁ……残念やけど滅びる事が救いやなんてうちは思ってへんからな!」
 世界の滅びに抗うためにソーシャルディーヴァになる事を志願した彼女にとって、黙示録教の教義は許せるものではない。
「むしろ最後の最後まで足掻いたる! それくらいの気持ちでおるよ。だから生きる為の物資も花の種も取り返したるわ」
「足掻ク必要など無イ! 幸福なル滅びコそ至高ナのだ!」
 濁った声で叫びつつ、信者達は胸元の爆弾を起動し始める。
 あの爆弾も鼓虎からすれば信じられないものだ。
 心臓と同化させている時点で彼らの命を削っている。爆発すれば疑似オブリビオン・ストームを生み出してしまう。
 誰も彼も不幸に終わらせてしまうその選択。
 そんなもの、ハッピーエンドで打ち消してしまえ。
 鼓虎はしっかりと前を見つめつつ、自分のSNSへと声をかけ始めた。
「みんな、うちの声が聞こえる? うち、今物資を手に入れるために戦ってるねん」
 レスポンスはすぐに返ってきた。誰も彼もが彼女の戦いを応援してくれている。
「応援してくれてありがとうな。今戦ってるの人ら、世界は滅べば幸せになるって考えてるんよ」
 そんな怖い相手と戦ってるの。鼓虎ちゃん大丈夫? 絶対に無理はしないでね。
 大好きな音楽と一緒に流れてくるのは暖かな言葉達。
 みんなの言葉は鼓虎の身体を確かに支えてくれていた。そして鼓虎なら、それを確かな力に変えることが出来る。
「そんな終わり、うちは絶対嫌や。みんなでこの世界をハッピーエンドに導きたい。そのために、みんなにちょっと力を貸して欲しいねん」
 そう言いつつ取り出したのはソーシャル・レーザー。みんなの力を一つに束ねる荷電粒子砲だ。
「うちが絶対ハッピーエンドにしたる! せやからうちに力を貸したって、ハッピーエンドへ導く為の力を!」
 鼓虎の提案にあつまるのは沢山の賛同の声だ。
 そしてこれは決して荒唐無稽な願いではない。
 目の前の敵を倒し、物資を手に入れて、誰かを幸せにする。それは決して不可能なんかじゃない!
 みんなの声は電力に変わり、ソーシャル・レーザーのエネルギーへと変換されていく。
 そしてそれが極まった瞬間……。
「行くで!!」
 廃墟の中に眩い光が走り、雷鳴が全てをかき消していく。
 凄まじい勢いのレーザーは信者達を撃ち抜いて、爆弾ごと消滅させていった。
「ごめんな。もし次があるのなら……その時はあんたらも幸せになれればええな」
 信者達が消えた地点を見つめつつ、鼓虎はぽつりと呟く。
 その声はどこか寂しげで、だけどとても暖かかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アゼリア・リーンフィールド
破滅、終焉、ですか……
信じるものは否定しませんが、オブリビオンの存在は許してはなりません。
未来に繋がるお花の種と物資、渡してもらいますよ!

戦闘力を上げてくるなら相殺してしまいましょう。
語ってる方は口を開いているはずです、そこ目掛けて毒の瓶を投げつけます。
皮膚でも良いのですが……粘膜の方が吸収が早いですから。
同調して声を上げてる方も入ればその人にも投げますよ。毒瓶は何本も用意してあります!
毒に怯んだり動きが鈍った方から確実に、お花のバスケットでぶん殴っていきましょう!
狙うのは頭でもいいですが、胸も怪しいので叩いてみましょうね。より効果的に、です。

口だけの方に慈悲を与える神さまなど居ないのです!!




「破滅、終焉、ですか……」
 信者達の言葉を思い出し、アゼリア・リーンフィールドは静かに目を伏せた。
 神である彼女からすれば『信仰』自体は否定するものでもない。
 けれどオブリビオンは、人を傷つける存在は許してはいけないものだ。
「未来に繋がるお花の種と物資、渡してもらいますよ!」
「未来ナど要らナい! 我らガ祈リ、崇拝こソ正しいノダ!」
 アゼリアの言葉を受けて、数人の信者が不気味な声をあげ始めた。
 その口から溢れるのは狂った教義と信仰の言葉。ぶつぶつと、滅びの素晴らしさを称える邪悪な言葉だ。
 だけどそれは信者達の身体を確かに刺激しているのだろう。彼らは狂ったように武器を振り上げ、アゼリア目掛けて進み出す。
「彼らの言っている事は理解出来ませんが、言葉の力は確かみたいですね。それなら……!」
 敵の到着にはまだ時間がある。その間にアゼリアが取り出したのは紫色の小瓶。
 中に詰まっているのは植物から抽出した特性の毒薬だ。
「かみさま特製の毒、あなたに合うのを差し上げますよ」
 そう言いつつアゼリアは思い切り瓶を投げつけた。方向は……信者達の口の中!
 教義を語る彼らの口は無防備だ。投げつけられた毒瓶は彼らの顔に叩きつけられ、溢れる毒薬がその顔を侵食していく。
「こ、コれは」
「何の薬ダ!」
 毒薬を浴びた信者達は次々に蹲り、ゆっくりと動きを止め始めた。
「毒瓶は何本も用意してあります! どんどんありますから!」
 アゼリアはその隙も見逃さない。焦る信者達目掛けて、次々に毒瓶を投げつけていく。
 更に攻めるならここだろう。アゼリアは花が詰まったバスケットを携え、一気に敵の方へと走り出した。
「いきますね!」
 敵へと接近しきったのなら、まずは凶器を握る腕にバスケットを振るって。
 魔力で強化されたバスケットは花びらを散らしながら、敵へと衝撃を与えていく。
「危ないものはなしです! それから……」
 次に気になったのは彼らの胸元。不自然に膨らんだそこに仕掛けられているのは危険な爆弾だ。
「こういうのも、なしです!」
 爆弾に対しても思い切りバスケットをぶつければ、それは起動することなく粉々に砕け散った。
「そして……口だけの方に慈悲を与える神さまなど居ないのです!!」
 示すべきは誰かのためになる行動。誰かを傷つける言葉を嘯くだけだなんて、許せない。
 そんな怒りを乗せて……アゼリアは全力でバスケットを振るう!
 最後に狙うのは信者達の頭だ。勢いよく放たれた衝撃は、信者達を大きく吹き飛ばして骸の海へと還していく。
「せめて、花の種は大切に使わせていただきます。安らかに眠って下さい」
 消えゆく信者の方を見て、静かに祈りの言葉を囁くアゼリア。
 もし彼らに次があるのなら、その時にはこの世界に花が溢れている事を願って。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アマゴ・マイアル
POW
お前らが居る事自体はわかっとったんや
まあ元々話の通じる連中でもなし、やる事は変わらへん
UCで移動速度を代償に攻撃力と射程距離を強化するで

まずは【戦闘知識】からや
聞いた話じゃこの建物、上は三階まであるらしいけど…二階は概ね閉所の筈や
このH・F・Aの火ィが黙っとるワケないやろ!
逃げ場は無いで?汚物は消毒…いや【焼却】や!
もちろん【範囲攻撃】で全員満遍なく焼いていくで
多少の被弾は気にせず【限界突破】してとにかく燃やしたる!

死ぬっちゅうんは、苦しい事やで…
そん中でも火炙りは最悪や
焼けて死ぬか、窒息で死ぬかのどっちかやもんな
『死を【覚悟】せずして死を語るべからず』
来世に持ち帰れるなら覚えときや




 信者達は着実に減ってきている。けれど彼らの戦意は衰えない。
「お前らが居る事自体はわかっとったんや。まあ元々話の通じる連中でもなし、やる事は変わらへん」
 重々しい武装を掲げ、アマゴ・マイアルはマスク越しに信者達を睨みつける。
 ヴォルテックエンジンを走らせて身体に力を巡らせていき、彼の身体は重武装モードへと変形し始めた。
 両腕のヘビー・ファイア・アームが凄まじい勢いで火力を高め、その炎が放たれるのを今か今かと待ちわびている。
「悪いけど、さっさとやらせてもらうで」
 今のアマゴに速く動く事は難しい。けれど信者の方から彼に向かって走ってくれているので都合が良かった。
 更にここは元々ショッピングモールだった場所。崩壊は進んでいるが、閉所である事に変わりはない。
「我らガ祈りを聞き届ケ給ヘ!」
「勝手に言っとれ! さあ、H・F・Aの火ィが黙っとらんで!」
 アマゴの武装によって強化されたH・F・Aは勢いよく稼働して、彼の前方で凄まじい炎を放ちだす!
 射程距離の伸びた炎は次々に信者達を飲み込み、彼らの身体を燃やしていく。
「逃げ場は無いで? 汚物は消毒……いや焼却や!」
 出来るだけ複数の信者を纏めて燃やす事を意識しつつ、アマゴはひたすらにH・F・Aを振るい続けた。
 身体への負担も感じているが……そんなの限界突破してしまえば耐えられる。
 何故なら心が震えているから。
 彼らの教義は、信仰は、見過ごせるものではないからだ。
「ぐあァ……滅ビこそ、至高……ダが……苦イい……!」
 炎に呑まれ、酸素を奪われ、信者達はじわじわと息絶えていく。
 その顔に喜びの色は決してない。これこそが彼らの望んでいた行為のはずなのに、そこに存在しているのは苦しみだけだ。
 残酷な行為だろう。だけど、こうでもしないと信者達は理解出来ない。
 アマゴはマクスの下で苦々しい顔をしつつ、信者達へと語りかけた。
「死ぬっちゅうんは、苦しい事やで……そん中でも火炙りは最悪や」
 炎で死ぬという事は、焼け死ぬか窒息するかのどちらかだろう。そのどちらも、とても苦しい。
「だけどな……『死を覚悟せずして死を語るべからず』っちゅー訳や。あんたらが今まで他の人の押し付けてきたのもこういう事やで」
 その言葉が信者達にどこまで届くかは分からない。
 彼らはひたすら苦しみつつ、後悔しつつ骸の海へと還っていく。
「……来世に持ち帰れるなら覚えときや」
 アマゴがそう呟く頃には、目の前にいた信者達は全て灰になっていた。
 その様子を一瞥し……アマゴは静かに目を閉じた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

無限・虚数
まーなんや、ウチは人類存続を目的に製造されたわけやから…言うてもしゃーないなぁ。こんなんなっても世界は滅ばへん。滅べへんのかな?
なんちゅーか、そんなもんを人間の力でどうこうできるちゅーのがえらい思い上がりやとウチはおもうけどなぁ…。

ま、ええわ。墓嵐でとりあえず蹴散らしたろ。あんましこういう相手に小細工やってもせんないことやでな。ほいじゃま、さいならやね




「幸福なル滅びト終焉ヲ……我ラが願イヲ……」
 残る信者達は不気味な言葉を呟き、最後まで猟兵達を殺そうと目論んでいるようだ。
 一方、その様子を見つめる無限・虚数はとても静かだった。
「まーなんや、ウチは人類存続を目的に製造されたわけやから……言うてもしゃーないなぁ」
 フラスコチャイルドとして、みんなの未来のために生み出された虚数にとって、信者達の考えは納得の行くものではない。
 むしろ抱く感情は諦観だろうか。
 何故ならオブリビオン・ストームが世界を破壊し尽くしても、人々は生き延びて来ているのだ。
「こんなんなっても世界は滅ばへん。滅べへんのかな?」
 滅びは訪れない。きっとこれからも世界は進み続けるだろう。
 自分達が思っている以上の大きな何かがこの世界にはあって、皆それに抗ったり流されたりしているのかも。
「なんちゅーか、そんなもんを人間の力でどうこうできるちゅーのがえらい思い上がりやとウチはおもうけどなぁ……」
 そうは言っても信者達はきっと納得しないだろう。
 ある意味彼らなりに世界に立ち向かった結果がこの状態なのだろうか。
 どちらにしても、黙示録教が虚数の道を阻んでいる事に変わりはない。
「ま、ええわ。そっちも引いてくれないやろうし……ちぃと激しくするでな、ごめんなぁ」
 そう言いつつ虚数が取り出したのは簡素な造りのスコップだ。
 スコップの柄をぎゅっと握りしめ、虚数は一気に前へと駆けていく。
 それに合わせて信者達も走り出す。教義と信仰を讃える言葉を叫びつつ、凶器を振り上げる彼らは鬼気迫る雰囲気があった。
 だけど恐れる必要はない。虚数は彼らのような存在と戦うためにここにいるのだから。
「そのよウナ武器で我ラを殺セルとでモ?」
「ん、あんまし小細工やってもせんないことやでな。ささっと行こか」
 次の瞬間、廃墟の中を嵐が舞った。
 虚数の握るスコップが脈打ち、巨大な兵器へと姿を変えて……迫りくる信者達を一斉に薙ぎ払ったのだ。
「なっ……」
「墓嵐。終わりにはぴったりやないかな」
 周りに味方がいない事を確認したのなら、敵が再び動くより先にもう一薙ぎ。
 スコップに埋め込まれた虚数の因子――オブリビオン・ストームの因子が超常の力を生み出して、嵐のように敵をどんどん薙ぎ払う。
 残る信者もあと僅かだ。
 虚数は思い切り地面を蹴って、一気に彼らの方へと跳んだ。
「ほいじゃま、さいならやね」
 終わりの一撃はあまりにも呆気なかった。
 少女の生み出す嵐は、全てをあっさりと飲み込んでいく。
 残ったのは仲間たちと物資の詰まったコンテナだけ。あとはこれを持って帰ればいいだろう。
「……これでまた、良い未来に一歩近付いたかな」
 自らの務めを果たした事を感じ、安堵するように息を吐く虚数。
 その表情はごくごく普通の少女のそれだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『この荒廃した世界に花を植えよう』

POW   :    花を植える為に荒れ地を耕したり瓦礫を撤去する

SPD   :    花を植えるのに適した場所を探したり、花壇を整えたりする

WIZ   :    花の種や苗を植えたり、水やりなどをしてお世話をする

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 ショッピングモールでの戦闘は終わり、猟兵達は無事に物資を入手する事が出来た。
 物資を外に持ち出し終えたタイミングで、現地の奪還者もショッピングモールへとやって来たようだ。
 ここまでの経緯を説明すれば、彼らは猟兵達に深く感謝の意を示した。
「も、もしかしてその物資はあなた達が手に入れてくれたんですか? ありがとうございます!」
 あとはこの物資を運ぶだけ。猟兵達は奪還者と協力しつつ、近くの拠点を目指す事になった。

 目的の拠点は農場だったようだ。
 数人の住民が畑の土を耕したり、道具の修繕に励んでいる。
 奪還者達が住民達に事情を話せば、彼らもまた猟兵達へと何度も頭を下げた。
「これだけの物資があれば暫くは安全です。本当にありがとうございます……!」
「花の種もあるんですね。是非植えましょう!」

 住民達も花を育てる事には前向きだ。
 だけどそのためには準備も必要だろう。
 例えば土を耕したり、花壇を作ったり。
 井戸を上手く使う方法を考えるのもいいかもしれない。
 他にも用意が整った場所にどんどん種を植えたり、住民達に花の世話のコツを教えたり。
 自分のやりたいこと、得意なことで出来る事があるならどんどん提案してみよう。
ルフトフェール・ルミナ
ここは元農場だったんだ。
もう畑があるけど、一番優先は皆が食べる農作物だから、新しく畑作ろっか。
花畑の開墾なのだけど、僕、力仕事あんまり得意じゃないんだよね。
と、いうわけで……ゴールデンハムスターを呼んで一緒に耕す。
えっ、鍬さばきがなってない? ひびきさん、やり方わかる?
住民の人にも鍬フォームを習いながら、畑を耕してみるよ。

これでちゃんと耕せたかな……ひびきさん、種まいてみない? あと、拠点の住民の人達もどう? 自分の花を育ててみない?
えっとさ、自分がまいた種から花が咲く、って嬉しくない? そういう思い入れって、厳しい世界で生き抜く時に、少しだけ……ね。ほら、希望とか勇気とかそういう系のあれね。




 広がる畑を見つめ、ルフトフェール・ルミナは何をすべきか考え込んでいた。
 元々農場なら土は悪くないだろう。
 けれど優先すべきは農作物。花畑のための土は新たに耕した方が良さそうだ。
「でも……僕、力仕事あんまり得意じゃないんだよね。というわけで……」
 ルフトフェールは鍬を杖の代わりにして、力仕事に適した魔獣を召喚する事にした。
「艶ある絹毛と長き前歯、結構鋭い爪持つ魔獣よ……顕現し我に随え」
「おお……なんだこれ!?」
 物資を運び終えたひびきがその場を通り過ぎようとしたが……魔獣の姿に思わず驚きの声をあげている。
 それもそのはず、呼び出されたのは巨大なゴールデンハムスターだったのだから。
「ハムスターか? すっごいでっかいけど」
「そうなのかい? 僕の故郷だと皆このくらいの大きさだったよ。ほら、力仕事も得意だし」
 呼び出された魔獣はしっかりと鍬を装備していた。
 ルフトフェールが土を耕し始めれば、魔獣も一緒に土を耕していく。
 けれど……魔獣の顔はなんだか不服そうだ。
「どうしたの? えっ、鍬さばきがなってない?」
 魔獣さんは土の耕し方に拘りがあるようだ。
 けれどルフトフェールからすれば開墾は初体験。なかなかコツを掴むのは難しい。
「ひびきさん、やり方わかる?」
「俺もあんまり詳しくなくて……」
「兄さん達、こういう時はね……」
 気がつけば拠点の住民達も畑へとやって来ていた。
 そして始まるのは鍬フォーム講習会。丁寧かつ分かりやすい住民達の指導はとてもありがたいものだった。
 コツさえ掴めば後はひたすら土を耕すだけ。ルフトフェールとひびき、そして魔獣はとにかく鍬を振るい続けた。

「これでちゃんと耕せたかな……」
 気がつけばかなりの広さの畑が出来上がっていた。
 額の汗を拭いつつ、ルフトフェールは安堵するように息を吐く。
 横に立っていたひびきも満足げだ。
「後は種を蒔くだけだな」
「そうだね。あ、そうそう。ひびきさん、種まいてみない? 皆さんもどう?」
 自分の花を育ててみない? と人々を集めるルフトフェール。
 彼の手のひらの中にはいくつもの花の種が用意されていた。
「兄さん、いいのかい? 君達が取ってきた種だろう」
「確かにそうなんだけど……えっとさ、自分がまいた種から花が咲く、って嬉しくない?」
 遠慮しがちな住民達へ、ルフトフェールはニコニコ笑顔を向けていた。
 これからこの種を育てるのは住民達の役割だ。それなら彼らにも愛着を持ってもらいたい。
「そういう思い入れって、厳しい世界で生き抜く時に、少しだけ……ね。ほら、希望とか勇気とかそういう系のあれね」
「ああ、そういう感じか」
 身振り手振りを混じえて伝えられるルフトフェールの気持ちは、住民達もよく分かってくれていた。
 彼らも種を受け取って、少しずつ畑へと植えていく。
「花が咲いたら、きっともっと愛着が湧くよね。そういうの、いいよね」
「ああ、楽しみだ」
 種を植える住民達は、皆とても楽しそうだ。
 彼らの作る花畑とその未来を思い、ルフトフェールも楽しげな笑みを浮かべるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

善哉・鼓虎
物資も花の種も無事にゲットや〜♪
SNSのみんなにもお礼言っとかなな!
農場…つまりここは植えれば育つ土壌ってことやな。
住民の人らも花を植えんのに協力的で嬉しいわ。

うち、ちゃんと『農業』ってしたことないから住民の人らに教えてもらいながらやらせてもらおう。
せっかく手に入れた種をあかんくしてしもたら申し訳がたたんからな。

土を掘って種を植えて水をあげて…こんな感じでええんやろか?
綺麗な花が咲くとええなぁ。
よかったら花の成長とか伝えてくれる人がおったらええんやけど…。
誰かうちのSNSに参加せん?

アドリブ歓迎。




「物資も花の種も無事にゲットや〜♪」
 オレンジの髪を楽しげに揺らし、善哉・鼓虎は畑の周りを歩いていた。
 まずはSNSの皆に、お礼と共にここの光景を中継していく。
「皆のおかげで助かったで! 今からここに花を植えるからな!」
 SNSの皆も安心したようなコメントを残し、これから始まる作業にも興味を示している様子。
 今日の出来事は始めの一歩だけれど、それに立ち会えるというのが嬉しいようだ。
「ここって農場なんよね。それなら植えれば育つ土壌ってことやし。住民の人らも協力的で嬉しいわ」
「お、姉ちゃんソーシャルディーヴァなのかい。SNSの人もここを見てくれてるんだなぁ」
 鼓虎の中継の様子を見て、住民達も集まってきたようだ。
「そうそう。皆のおかげやで! それで……うち、ちゃんと『農業』ってしたことないんよね。教えてもらってもええかな?」
 この世界において花の種というのは貴重なものだ。
 そして生きているものである以上、どうしても扱いは繊細になる部分もある。
 せっかく入手出来たものならしっかりと取り扱わなくては。
 鼓虎の責任感のある言葉を受けて、住民達も快く頷いてくれた。

「よっと……こういうのって新鮮やなぁ」
 鼓虎が任されたのは、耕した土から石やゴミを取り除く作業だ。
 シャベルを使った肉体労働というのはこの世界では珍しくない事だが、自分でやるのもなかなか楽しい。
「こういう風に力を入れると楽だぜ」
「あ、ほんまや。おおきに!」
 住民にコツを習いつつ、少しずつ作業を進める鼓虎。
 その間に住民達は水を用意したり、肥料になるものを集めてくれている。
「準備は整ったな。それじゃあ……種を植えてみようか!」
「やった! 種を植えるとこ、皆にも見てもらお!」
 記念撮影もしつつ、皆で楽しく種を植えて。鼓虎のSNSの利用者からも祝福のコメントが多数寄せられている。
 最後にしっかり水も与えて、鼓虎は満足げに微笑んでいた。
「綺麗な花が咲くとええなぁ」
「そうだな……いつになるかは分からないけど、その時は是非見に来てくれ」
「見に来れるのが一番やけど……うちも猟兵やしなぁ……」
 色々な世界へ赴く猟兵である以上、どうしても花が芽吹いた瞬間に立ち会うのは難しい。
 むむむ……と腕を組んで考え込む鼓虎だが、彼女には彼女の解決方法があるではないか。それが閃いた瞬間、ショートツインテールが大きく跳ねた。
「そうや、誰かうちのSNSに参加せん? 花の成長とか伝えてくれへんかなって!」
 SNSを通せばリアルタイムに状況の報告ができる。そして鼓虎がその中心になるのだから、彼女も真っ先に情報を知る事ができるのだ。
「おお、良いアイデアだ! それじゃあ俺が参加するよ!」
「私も! 楽しそう!」
 住民達も乗り気のようだ。次々にSNSの使い方を習い、登録を進めていく。
「みんな、おおきにな! 報告楽しみにしてるで!」
 自分の選んだ役割が、誰かのハッピーを繋いでいける。
 改めて感じたその実感と目の前の光景が、鼓虎の胸を暖かく満たしていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アゼリア・リーンフィールド
ふっふっふ、ついにわたしの本領を発揮する時が来ましたね……!?
農場!植物!ええ!任せてくださいませ!!
しかし神さま的なパワーでぱぱっとやってしまうのはわたしの主義に反しますので地道に参りますよ。

まずは土の状態を確認です。
農場を拠点にしているのでとても悪いということは無いと思いますが、状態が偏ったり栄養が無くなったりは起こりますから。
土の状態を整えるのには秘伝のおくすりを提供しましょう。ええ、毒も処理すれば薬になるものです。植物由来なので安心安全!

あとは現地の方と話し合って花壇に植えるレイアウトを考えます。
背が高くなるお花は後ろに植えて、あと色がグラデーションになるようにするときっと綺麗ですよ!




 花畑の準備は少しずつ進んでいる。
 その光景を眺めつつ、アゼリア・リーンフィールドはとてもワクワクした表情を浮かべていた。
「ふっふっふ、ついにわたしの本領を発揮する時が来ましたね……!?」
 農場。植物。どちらも花の神である彼女にとっては十八番の存在。花屋でのバイトの知識だって大いに役に立つはずだ。
 更にアゼリアの神としての力を使えば、簡単にこの地にも植物を生やす事は可能だが……。
「神さま的なパワーでぱぱっとやってしまうのは、わたしの主義に反します。地道に参りましょう」
 ここに住む人達にとっても、知識や経験を蓄えていく事が大切なはず。
 けれどせっかくの能力を使わないのも損だろう。アゼリアはバスケットに詰めた道具を確認しつつ、畑の方へと向かっていく。

「まずは土の状態を……なるほど、ふむふむ」
 畑の側にしゃがみこみ、アゼリアは土に流れる力を感じ取っていく。
 この土は元々悪くはないようだ。しっかりと準備さえすれば花が育つだけの力はある。
 けれど世界の荒廃に合わせて栄養を失っている部分もあるし、どうしても農作物にリソースを割かれている部分もあった。
「姉ちゃん、ここの土はどうだい?」
「きちんと整えれば大丈夫です。ですがこのままだと時間がかかってしまいそうですね……」
 肥料になるものを用意し、それを加工するのにも時間は必要だ。
 けれどアゼリアならより早く状況を改善できる。彼女は手にしたバスケットから綺麗な小瓶を取り出し、住民達に手渡していく。
「これは?」
「秘伝のおくすりです。植物由来なので安心安全、ですよ!」
 小瓶の中身は先の戦闘でも使った植物のポーションだ。
 けれどこちらはより丁寧に処理を施し、薬として扱えるように工夫がしてある。
「これを土に混ぜてみて下さい。植物が弱った時にも使ってあげてくださいね。農作物にも使えますから」
「本当かい? ありがとう!」
 思いがけない神様からの贈り物に、住民達は次々に感謝の言葉を述べていく。
 その言葉を受けて、アゼリアも柔らかく笑みを浮かべた。

「あとは……せっかくですし、レイアウトも考えたいですね」
 種を植える段階で、アゼリアは更に一工夫加える事にした。
 ここは花屋としての知識の見せ所だろう。
「このお花は大きく育つので、花壇の後ろの方に植えるといいですよ。それから色合いは……」
 種から花の種類を判断し、出来るだけ見栄えがよくなるように工夫して。
 同じような色の花を並べてグラデーションにしていくのもいいだろう。
 せっかくの花畑だ。見た目も楽しいものにしよう。
「全部のお花が咲けば、凄く素敵な光景になりますよ」
「本当かい? 楽しみだなぁ」
 住民達もいつか完成する花畑に思いを馳せている様子。
「ええ、本当に楽しみです。育ったお花から種を貰って、更に花畑を広げるのもいいですね」
 種は一度植えたら終わりではない。咲き終わった花は種を残して、その次へと繋げてくれる。
 きっとこの花畑も、皆が繋いで残してくれる。
 そんな予感を感じつつ、アゼリアも畑を愛おしげに見つめていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アマゴ・マイアル
POW
むむむ…こういうのは得意やないんやけどなぁ
まあ手伝わんわけにもいかんっちゅう事やな
作業するのに仕事着の上を一枚脱いで…
顔が一番酷いだけで火傷痕は全身にあるんや、厳つい見た目やけど気にせんといてな

…瓦礫とかも燃やしたら肥料にならんかな…まあならんよな
金属やコンクリのゴミが散乱しとったら花も何も育たんやろうし、なるべく取り除かんと
ゴミを取り除いたら次は土を耕して…
肥料っちゅうたけど、この辺の土の栄養は大丈夫なんかいな?
どっかに肥料を探しに行った方がええかもな
…燃やした敵の灰とか、倫理的にアウトやろか…まあアウトか

花は食えん事もないけど、何より心に重要や
しっかり育てんとな

アドリブなど歓迎




「むむむ……こういうのは得意やないんやけどなぁ」
 ガスマスクの下で困ったような表情を浮かべ、アマゴ・マイアルは広がる畑の前に立っていた。
 彼が得意なのは戦闘行動だ。花を育てるというのは世界が平和だった頃にもあまり経験がない。
 かといってせっかくの縁を無碍にするのも勿体ない。手伝わないという訳にもいかないだろう。
「しゃーない、一肌脱ごか」
 着込んだ作業着を一枚脱いで、腕まくりをするアマゴ。
 むき出しになった腕には火傷の痕が痛々しく残っている。
「厳つい見た目やけど気にせんといてな」
「大丈夫さ、俺達も似たようなものだからさ」
 住民達に心配をかけまいとフレンドリーに声をかければ、彼らも笑顔で応えてくれた。
 彼らの中にも傷跡が残る人はいるようだ。
 アマゴは改めてこの世界の惨状を実感しつつ、だからこそ花を育てようという意欲も感じ始めていた。

「まずは瓦礫とかをどかそうか……これって燃やしたら肥料にならんかな……まあならんよな」
 アマゴが行ったのは畑を広げる作業だ。
 農場の周囲にも畑として扱えそうな土地はあるが、そこには未だにゴミやコンクリートの欠片が散乱している。
 まずはそれを丁寧にどかし、使えるものは拠点の中まで運んでいって。
 燃やしても大丈夫そうなものはさっとH・F・Aで燃やしてみたが、出来た灰に栄養はなさそうだ。
 別の用途に使えるかもしれないと思い、とりあえず袋にはしっかり詰めておく。
 同時に土を耕す事も忘れない。
 掘り返した土は意外にも鮮やかな色をしていた。見た目よりもこの土地は逞しいのかもしれない。
「元気そうやな。けど……肥料っちゅうたけど、この辺の土の栄養は大丈夫なんかいな?」
 他の猟兵が肥料になるものを手渡していたようだが、ここの住民達が自分で作れる肥料も必要かもしれない。
 アマゴの脳裏に真っ先に浮かんだのは『オブリビオンを燃やして出来た灰』だが……。
「倫理的にアウトやろか……まあアウトか」
 そのようなものを使うのは最後の手段にしておいた方が良さそうだ。
 代わりに目をつけたのは、土を掘り返した時に出てきた雑草達。
「これならええかな?」
 かき集めた雑草と住民達の生ゴミをうまく加工すれば、自作の肥料になるはずだ。
 これなら安全だし無駄もない。良い材料が見つかった事を確認し、アマゴは安堵の息を吐いた。

 そして作業は進んでいき、気がつけば種を植える時もやって来ていた。
 ぽんぽんと土を叩き、種を植えた箇所を確認すれば後はお世話をするだけだ。
「花は食えん事もないけど、何より心に重要や。しっかり育てんとな」
「そうだな……花畑が出来れば、皆きっと喜んでくれる。大事にしないと」
 この世界はこれからきっと良くなるはず。この畑がその大きな一歩になってくれるだろう。
 アポカリプスヘルの住民として、同じように傷を負ってきた者として。
 希望を胸に抱きつつ、アマゴは住民達と畑を見下ろしていた。


 こうして無事に畑は完成し、花の種も植える事が出来た。
 それが芽吹くのは未来の話だけど、その時はきっとやってくる。
 この拠点に足を運んだ誰もがそれを実感し、優しい土の香りに包まれていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年01月16日


挿絵イラスト