Under Siege of “C”Mountain
#アポカリプスヘル
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●パンデミック・ベース
――ずん、と腹の底を揺らす振動が、ついさっきボトルの水で無理やり流し込んだばかりの冷めたポークビーンズを撹拌する。
「いまので何発目だ?」
「さあ……一時間に一発くらいのペースで撃たれてますからね。五十は越えたと思いますが。中佐殿の歳の数だけ撃ってくれるつもりでは?」
不愉快そうに腹の上から胃袋を叩いた壮年の男、マイヤーズ中佐は傍らの少尉の皮肉交じりの冗談に鼻を鳴らす。
「それはまた豪勢なことだな。届けてくれるのが砲弾でなくアツアツのローストチキンなら文句無しなんだが」
彼らが――軍を母体とし、その組織体系を継承した人々が築いたベースがオブリビオンの襲撃を受け、ベースの要たる要塞に立て籠もってから丸二日と少し。昼夜の区別なく叩き込まれる砲弾は彼らの神経をすり減らし、忍耐強い元軍人たちにも疲労の色が見えている。
だが、マイヤーズにとってそれはさしたる問題ではない。この岩山をくり貫いて作られた旧軍のシェルター兼要塞基地は、その気になれば一ヶ月ほどは籠城可能だ。オブリビオンストームの直撃に備えた構造は――実際にその建造目的に堪えるかはさておき――砲弾ごときではびくともしない。直接制圧するために赴いてきた無数のオブリビオンたちも、要塞の唯一の出入り口である長いトンネルを塞ぐように配置した警備部隊と戦車隊、そして幾重もの隔壁が押し留めている。
「戦闘でこのベースが陥ちることはありえん。だが、内から崩されればそうもいかん。少尉、しつこいようだが収容した避難民の統制には細心の注意を払いたまえ」
マイヤーズの懸念。それは敵の襲撃に際して、ベース周辺に滞在していた人々を一時的に要塞内に収容していること。
自分たちと違い、規律に統制されているわけではない。戦闘訓練を受けたわけでもなく、戦況を正しく理解する戦術眼を持つものは少数派だろう。途切れることのない砲声。自分たちの住居であった外の居住区の防衛を早々に切り捨て籠城に徹し、反攻に出る気配のない警備部隊。二日目にして彼らの中にはこのまま要塞の護りが崩れるまで引きこもるしか無いのではないかという不安が蔓延している。長期戦に備えて物資は厳格に管理され、配給が足りぬと喚く者もいる。それらの不満が向くのは、オブリビオンではない。全員を生かすためとはいえ、不自由を強いて単純明快な解決策を明示できない警備部隊に対し、人々の持つ不満が敵意に変わるのは時間の問題だろう。ともすれば誰かがそっとその背中を押したその瞬間に、狂気に駆られた群衆がこの防御を内側から破壊してしまうこともありうる。
少尉の報告次第では、多少配給を緩めてでも彼らの不満を宥めねばならんな。
マイヤーズがため息を一つ。その時再び振動が、今度は胃の腑だけでなく全身を揺らす。立っていられないほどの揺れに膝をついたマイヤーズは、これが砲撃の揺れではないとすぐに理解して駆け出した。
「今の揺れは――内側からだ。誰かいるか! 少尉! 何が起こった!!」
腰のベルトから拳銃を抜き、避難民を収容するホールに向かうマイヤーズ。その前にふらりと見知った少尉の背中が現れ、その肩をがしりと掴んで状況を問えば。
『――ァア゛、ォァ…………?』
「少尉……!?」
眼球は白濁し、皮膚はでろりと剥がれ落ち、破れた腹から臓物のはみ出した――少尉だったそれは、マイヤーズの質問に首を傾げながらその喉笛に喰らいついた。
●獅子身中の虫を狩れ
「――ミッションを発令します」
アレクサンドラは集った猟兵達を、そのカメラアイを左右に揺らして確かめながら迎え入れた。
展開したホロディスプレイに表示される岩山と、その周囲に犇めき立つバラック小屋の空撮写真を示しながら、彼女はこの後発生するであろう最悪の事態の予測を告げる。
「現在、アポカリプスヘルにて人類の拠点の一つ、マウンテンC要塞がオブリビオンの襲撃を受けています」
正体不明の超長距離砲撃型を中心としたオブリビオン集団の攻撃を受けながらも、要塞という有利な地形と、元軍人たちの優れた連携や強力な装備で優勢を維持したまま、人類はなんとかこの苦境を凌いでいる。
そんな状況がこのあとひっくり返される。それがグリモアの見せた未来だ。
「マウンテンC要塞に立てこもる元軍人たちは、戦闘から保護するために周辺に住む民間人を避難民として要塞に迎え入れました。その中にオブリビオンが潜んでいたようです」
言葉巧みに避難民の不安と不満を煽り、元軍人達との間に対立構造を作り上げたこのオブリビオンが、まもなく最後の仕上げとして一部の元軍人をゾンビへと変えて内乱を引き起こす。
いかに堅固な要塞でも内側からの攻撃はひとたまりもない。そうなってしまえば、早晩マウンテンC要塞は陥落し、人類は多くの人命とともに貴重なベースの一つを失うことになる。
「皆さんのミッションはこの内乱を引き起こすオブリビオンを事前に排除することです。これを最優先とし、その後現地の人々と協力して要塞外部のオブリビオンに対し反攻作戦を展開してください」
幸いにも猟兵は避難民に紛れたオブリビオンを看破することが出来る。避難民が一つの巨大なホールに収容されている今ならば、探し出す手間はかかるまい。
「多くの人命が懸かったミッションです。成功と無事の帰還を祈ります」
敬礼とともに、グリモアの輝きが猟兵達を送り出す。
紅星ざーりゃ
こんにちは、紅星ざーりゃです。
ポストアポカリプスといえばレイダーですが、ゾンビもまた終末世界の華だと思います。
そんなわけで、今回はレイダーとゾンビの欲張りセットでお送りします。
一章は籠城戦を展開するベース内部に紛れ込んだオブリビオンの排除が目的です。
避難民が大勢収容された、球場より少し広いくらいのホール施設にて戦闘となります。
敵の撃破に加えて、避難民の保護も考慮する必要があるかもしれません。
オブリビオンが本格的に行動を開始する前に戦闘となるため、要塞を守る元軍人たちは外の敵に注力しています。この時点で彼らは戦力として期待できません。
二章および三章では、要塞を攻撃する外のオブリビオン集団との戦闘になります。
元軍人達に加え、一章の成果次第では避難民たちも猟兵や元軍人のサポートに回ってくれる可能性があります。
それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。今回もよろしくお願い致します。
第1章 ボス戦
『🌗屍商人』
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POW : 【屍商の調教】貴様は私の商品よ
【皮膚を抉り、ゾンビ化薬を注入する特殊弾丸】【戦意を削り折る、鞭による鋭い高速殴打】【心を犯し、自身への隷属と服従を強いる首輪】を対象に放ち、命中した対象の攻撃力を減らす。全て命中するとユーベルコードを封じる。
SPD : 【屍商の遊戯】あぁ、なんて心地よいのでしょう
戦闘力のない【ゾンビ化爆弾を体内に仕込まれた奴隷たち】を召喚する。自身が活躍や苦戦をする度、【自動で爆弾が起爆し、奴隷たちの悲鳴と絶望】によって武器や防具がパワーアップする。
WIZ : 【屍商の命令】ご主人様の言うことには絶対服従よ
【商品の中】から【敵のレベル体の奴隷と戦闘用大型ゾンビたち】を放ち、【調教による狂気染みた忠誠からくる攻撃】により対象の動きを一時的に封じる。
イラスト:ジョンハッピー
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「高橋・湊」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●
「いったいいつまで続くんだ、この攻撃は……」
「お腹を空かせている子がいるのよ! それなのに食事はこれっぽっち! ありえないわ!」
「軍隊の連中、どうして反撃しないんだ? まさか勝ってるっていうのは嘘なんじゃ……」
「早く家に帰らせてくれ! 戦車でも何でも使ってオブリビオン連中を蹴散らすのがあんたらの役目じゃないのか!!」
不安、不満、些細な誤解、小さなエゴも集まれば巨大な力を持って動き出す。
『皆さんの心配も仰るとおり。本当にこのまま此処に居て事態は解決するのでしょうか。いえ、そもそも本当に優勢なら引き篭もる必要などあるでしょうか?』
病的に青白い肌を大胆に晒したマスクの女が、そんな不満を抱えた群衆の前に芝居めいた大仰な振る舞いで躍り出る。
『皆さんを此処に留めているのは、あの元軍人たちがあなた達を支配する為なのかも知れません。オブリビオンの脅威に唯一対抗できる力を持った者が、庇護の代価に過剰な支配と搾取を強いたベースを、わたくしは過去に見てきました。今の状況をみていると、そのベースと此処がどうしても重なってしまいます』
人々の未来を憂えるように、目元を細指で抑えて謳う女。それに同調するように、俺も、私もそんなベースを見たことがあると声が上がる。
奪還者や旅人たちだ。広い世界を渡り歩く者たちの声に、避難民たちの疑心暗鬼が膨れ上がる。
『不安でしょう。自由を統制された人々は奴隷と代わりありません。オブリビオンを退けても、その先に待つのは元軍人たちの奴隷になる未来かも知れない。ですから、自らの身は自分で守るべきです。それが荒野の原初の掟なのですから!』
そうだそうだ。自由のために立ち上がれ。奴隷などまっぴらだ。
誰かが呟けば、それはまたたく間に革命の熱狂となって群衆を包み込んだ。
『とはいえ……まずは話し合いから始めましょうね。わたくしたちは気狂いのレイダーや獣とは違います。理性でもって事態を解決する、知性あるヒトなのですから』
自らが火付けした熱狂を諌めるように微笑んで、ではわたくしが代表で元軍人たちと話しましょうと挙手する女。
「それは願ったりだが……あんたは何者なんだい?」
『わたくしはしがない旅の商人ですよ。でも、交渉事ならお任せください』
あなたとあなた、それからあなた。護衛をお願いしますね、と腕の立ちそうな旅の奪還者を指差せば、それに頷いた如何にも兵士に負けずとも劣らぬ猛者らしい風体の男たちが彼女に付き従ってホールの出入り口――元軍人たちの待機する守衛室へと歩んでいく。
『――主、この後の手筈は?』
先ゆく女にささやくのは、先の熱狂を煽るように女に真っ先に同意した奪還者風の男だ。
『守衛室の兵士たちをゾンビに変えて暴れさせます。半分は他の兵士を襲わせて、もう半分はあの避難民にけしかけましょう』
『数が少ない。軍人相手ではすぐに鎮圧されてしまうぞ、主』
『いいんですよ。彼らが時間を稼いで、その間にわたくしが避難民を纏め上げます。そうですね……交渉が決裂して、怒った兵士に襲われたとでも言えば疑心暗鬼は爆発するでしょう』
おぞましい笑みを浮かべる女は、しかし避難民たちに振り返り、心配無用だと優しく微笑む。
『あとは見込みのありそうなのは奴隷に、そうでないのはゾンビにして兵士たちにぶつけます。それから生き残った優秀な商品は外のお客様に売りつけましょう。あなた達と違って餌を貪って文句を垂れるしか能のない家畜でも、しっかり加工をすれば存外にいい値段が付くものですから』
くつくつと喉を鳴らして、オブリビオン――屍商人の女と、彼女に従う奴隷たちは事を起こすべくしてホールを進む。
――その時だ。外のオブリビオンが撃ち込んだ砲弾が要塞を揺らし、空間を照らす照明が僅かにチラつく。屍商人一行と避難民たちの視線がふとその照明を見上げた一瞬。その一瞬に図らずもタイミングを合わせたように、猟兵たちがホール内に突入する。
アイ・リスパー
「要塞を襲うオブリビオンたちですか。
放置することはできませんね」
要塞内に間者を紛れ込ませるとは、油断ならない敵のようですね。
ですが、避難民の皆さんに犠牲者を出させるわけにはいきません。
「皆さん、落ち着いて聞いてください!
この中にオブリビオンが紛れ込んでいます!
慌てずに避難してください!」
【エレクトロレギオン】で機械兵を召喚。
一般人をオブリビオンから守るように指示を出します。
「一般人たちに被害は出させません!
観念するのですね、オブリビオン!
……って、きゃ、きゃあああっ!」
オブリビオンの正体を看破しますが、敵が放ってきたのは大型ゾンビ!?
ゾンビ……すなわちお化けじゃないですかーっ!?
いやーっ!
エドゥアルト・ルーデル
(右斜め45度に傾きサムズアップしながら転移し)
みんな聞いてくれ、この中に不審な人物がいる
それはお前だ!みたいな視線は一切無視して【言いくるめ】て端に寄ってもらいますぞ
攻勢に出たかったが敵の工作員が居てな…排除する目処がついたからこうして出てきたんですぞ
こんな風になぁ!と唐突にゾンビを銃撃でござるよ
商品から出てきたゾンビ共を狩りに行くで…なんか多くね?
ばっちいキチguy共の相手なんざしたくないので【流体金属】を身に纏い敵の攻撃を防ぎつつ近距離は生命力を奪うブンブンぶん殴り!遠距離は銃撃で片付けて行きますぞ!
流体金属君不満そうね…取れる量が少ない?
ゾンビとかなさそうだもんな…ハナから死んでるし
●
「要塞を襲うオブリビオン達も放置できませんが……」
避難民たちに紛れるように転送されたアイは、悠々と再び守衛室へと歩みを向ける青白い肌の女とその護衛たちに視線を向ける。
あれがオブリビオン。籠城戦を繰り広げる要塞内に紛れ込み、弁舌と悪意で人類の抵抗を砕こうとする油断ならない敵だ。
しかし、猟兵たちがやってきたからにはその悪意のままに人々を玩ばせはしない。仲間が事を起こすのを待つように、アイは息を潜めてその時を待つ。
「みんな聞いてくれ。この中に不審な人物がいる」
『いきなり何ですか? この基地の兵隊さんでしょうか。そんな風に不安を煽るのはよして頂きたいのですけれど?』
右斜め45度。こだわりの角度とともにサムズアップしながら現れたド級の不審者――かろうじて服装から兵士かな? と思えなくもないような気がする男に、あくまで物腰柔らかに、避難民たちの代弁者として抗議する屍商人の女。
既に互いに互いが相容れぬ存在、猟兵とオブリビオンであると理解していながら、男は避難民たちに最大の効果で脅威を理解させるために、女はまだ馬脚を現すべきときではないと、直接的な暴力に訴えることなくにこやかに睨み合う。
そして既に人心を掌握しつつある屍商人の女の後ろからエドゥアルトに向けられるのは、避難民たちからのお前が一番怪しいだろという視線だ。
「……こほん。皆さんには不自由を掛けて本当に申し訳ない……しかし拙者らも攻勢には出たかった! 出たかったが……敵の工作員が居てな。ようやく排除する目処がついたからこうして出てきたんですぞ」
危ないからちょっとみんなそこ退いてねと身振り手振り、人垣を掻き分けるように場所を開けさせるエドゥアルト。
『工作員? 何をバカバカしい……力で押さえつけられなくなったら疑心暗鬼を植え付けて、相互監視で縛るおつもりですか?』
どの口で言ってんでござろうねー。
今更何を言っても、貴方が兵士として扱われる限りは彼らの敵ですわよ。
ぶつかり合う視線で火花を散らしながら睨み合う二人。それを笑顔で包み込んで、屍商人は退けと示したエドゥアルトの動きをなぞるようにしずしずと群衆のほうへ。
「いやいや、工作員は居るんでござるよこれが。今から証明しますぞ――」
こんな風になぁ! 突然のエドゥアルトの叫びとともに、下がる屍商人の背中へ銃弾が叩き込まれた。
『――主!』
それを庇うように飛び出した奪還者風の男。その胸に穴が空き、赤黒く濁った体液が飛び散った。
「――う、うわあああああ!」
「人殺し! 人殺しだ!!」
奪還者風の男がエドゥアルトに撃たれた。明らかな致命傷で、喉からごぼごぼと血を溢れさせながらのたうつ男は素人目にももう助からないと分かる。
その惨劇を見た避難民たちの狂乱を、アイは機械の兵士を召喚して統制しようと試みる。
「皆さん、落ち着いて聞いてください! 私たちは猟兵です! この中にオブリビオンが紛れ込んでいます! 慌てずに避難してください!」
多数の機械兵士が誘導と統制に当たるが、それを押しのけてまで群衆は凶行の現場から逃げ出そうとする。
制御できない。もはや人による激流に抗えば、機械兵士たちが踏み潰され壊滅するまで在りうる。アイは凶行に出たエドゥアルトに恨むような視線を向けるが、当の髭面は素知らぬ顔で流体金属を身に纏い、口笛など吹きながら死にかけの奪還者風へと歩み寄る。
「おう貴様、いつまで人間のフリして死んでやがんの? えぇ?」
無防備に蒼白な顔をした屍商人の脇を通り抜け、死骸の横に屈み込み死体を威圧するエドゥアルト――その顔面めがけて、死体が拳銃を発砲する。
「なーんだぁ、やっぱり元気モリモリなんでござったかー! もー、死んだふりなんてお茶目さんでござるなぁ!」
身体を覆う流体金属が弾丸を受け止め、エドゥアルトは腰を上げて拳を握る。
『ふざけるな……主に銃を向けたこと、後悔させてやる……!』
自身が撃ち殺されたことよりも、主人に害意を向けたことに怒る奪還者風。
『……はぁ。上等のゾンビでもやっぱり頭は腐るのかしらね。あのまま死んでいてくれれば、少なくとも人間どもにはわたくしたちの素性はバレなかったでしょうに……』
実戦で磨いた格闘術と、ゾンビとして得た人外の耐久力でエドゥアルトと交戦を開始した部下の一人に嘆息して、女は高らかに鞭を掲げて床を打つ。
『こうなれば作戦変更よ。全員鏖殺してゾンビの材料にしておしまいなさい。奴隷より値は落ちるけれど已む無しよ』
その声に呼応して、避難民に紛れ込んだ旅人や奪還者達がぶるりと身を振るわせる。生皮をずるり、ぶちりと脱ぎ捨てて、腐臭漂う醜悪な継ぎ接ぎの死体が群衆のあちこちで姿を晒す。
「おー居る居る。よっしあのゾンビ共を狩りに行くでござ……なんか多くね?」
『主の仕込みは万全だ。お前はあれを気にせずともいい。俺が殺すからな』
「あーもうばっちいキチGuyの相手はまっぴらでござるよォ!!」
避難民を襲うゾンビを討とうにも、奪還者風のゾンビがそれを許さぬ。踏み出せば銃弾がそれを躊躇させ、流体金属を伸ばせばナタの一撃がそれを斬り落とす。
エドゥアルト一人でも余裕で相手出来るあたりオブリビオンとしては小物だが、かといって片手間で対処できるほど雑魚でもない。
そんな面倒極まるゾンビに牽制の銃弾を叩き込むが、ヒトのふりを辞めた途端に銃弾を浴びても素知らぬ顔で突っ込んでくる奪還者風。
「んもー! これだからノックバック無効の無神経ゾンビは嫌いなんでござるよぉー!」
『無神経で悪かったな。お前もじきにそうなる』
距離を零に。奪還者風はナタを引き絞り、、エドゥアルトの心臓を狙って渾身の刺突――その刃を流体金属が絡め取り跳ね上げ、がら空きの胴へと鋼の拳が突き刺さる。
「なんて、ゾンビに銃の効きが悪いのもある意味定番でござるからなー! 誘い込まれてご苦労さまですぞ!」
先の銃撃で空いた穴からゾンビの体内に流入した金属が、その生命力を軒並み吸い付くし、不死者を死体へと還してゆく。
「よーしよしよしいっぱいお食べ……流体金属君不満そうね。取れる量が少ない?」
干からびた奪還者風の死体を見下ろし、エドゥアルトは流体金属へ首を横に振って応える。
「ゾンビとか生命力なさそうだもんな……ハナから死んでるし」
「皆さん落ち着いて! 大丈夫ですか、私たちが皆さんには被害を出させま――」
一方その頃、混乱する群衆を宥めるため奔走していたアイは、何かが弾けるような音を耳にした。その後、苦しそうにうずくまる人を見かけてその音をすぐに記憶の外に押し出し駆け寄ったのだが。
「あの、本当に大丈夫ですか? 気分が悪いなら治療を……って、きゃ、きゃぁぁぁああっ!」
さすってやっていた背中がずるりと滑り、皮膚と肉を引き裂いて腐肉がこぼれ出る。まるで蛹が蝶になるように、避難民だった――あるいはそのように擬態していた――モノを脱ぎ捨て現れた、継ぎ接ぎの動死体。
そのあまりに醜悪で冒涜的な容貌にアイは悲鳴を上げて腰を抜かし、じりじりと後ずさる。
助けを呼ぶように周囲を見回せば、群衆のあちこちで似たような大型ゾンビが出現しようとしていた。
「ぞ、ぞ、ゾンビってつまりお化けじゃないですかーっ!! いやーっ! お化けいやーっ!!」
主が恐怖に絶叫し早々に戦力外になる中で、彼女の召喚した機械兵は勇敢につい先程まで自身を押しのけようとしていた群衆の前に立っていた。
コマンダーが脱落しても、オーダーは未だに有効だからだ。下された命令は一つ、オブリビオンから避難民を守る。
銃を構え、その身が腐肉に打ち壊されようとも一歩も退かずに人々の前に立つ機械の兵士たち。
その背中に守られ、勇敢にして無謀な戦いを目の前で見ていたごく僅かの人々の目に、微かにそれまでの傲慢で怠惰なそれではない、一つの意志が宿りつつあった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
ジュリア・レネゲード
トレーラーで乗り込む
そこまでにしときなよカルト野郎
交渉ごっこなんて似合わないわ
言葉で時間稼ぎしつつグリュプスで戦況を把握し
避難民に声を掛けて正気を取り戻させる
軍人を信用しようがしまいがどっちでもいいけど
あなた達を今まで守ってたのは事実でしょ
自分が見たものを信じなさい
あいつの言葉なんて無意味なんだから
それとも、有難い説教で腹が膨れるのかしら?
散弾銃を構え敵を注意をこちらに引付け
トレーラーへ避難民を突っ込む道を確保しつつ動く
全部は無理、シェルター代わりにせめて子供達だけでも
敵が動いたらUC発動
複製したグリュプスで逆に包囲戦を仕掛ける
私は内側から一つずつ雑魚を潰してやるわ
調教――私の方が上手いかもね
ユエイン・リュンコイス
●連携アドリブ歓迎
この手の甘言を弄する手合いは正直言って嫌いだよ。言葉はもっと重いものだ。そういう輩への返答はこれに限る(穿月を引き抜く)
まずは避難民を遠ざけるのが先決か。ならば…頼んだよ、デスワーム。【恐怖を与え】て彼らを遠ざけてくれ。一先ず流れ弾が当たらなければそれで良い。
戦闘は機人を前衛に【グラップル、カウンター】で格闘戦を行いつつ、ボクは後方から『穿月』による【制圧射撃、援護射撃】を。商人との射線は常に機人で切る。機甲人形に薬や痛み、首輪は通じないよ。
ただ、もし動きが阻害され阻害されそうであればUC起動。弾幕を張って【範囲攻撃】しつつ、機人を吶喊させて焔の【属性攻撃】で焼き尽くそうか。
●
『予定はちょっとだけ狂ってしまいましたけれど、案外猟兵というのも抑えられるものですねぇ。この調子ならゾンビも結構増やせるのではないかしら』
阿鼻叫喚に叩き込まれたホールを見渡し、その本性を垣間見せながらもまだ商人として扇動者として悠然たる微笑みをマスクの裡に秘めた蒼白の女。
その傍ら、騎士のごとく付き従う奴隷死者たちは、いよいよ戦闘となって物騒を隠すつもりもなく次々とボディアーマーを身に付け、それと分からぬよう解体し偽装されて持ち込まれた銃火器の類を組み立ててゆく。
その構造の一部にはじめから消音器を組み込まれた銃は、殺傷を目的としない麻酔銃のように見えた。だがその弾倉に込められた弾丸は、鉛の礫より遥かにおぞましい殺意と悪意を秘めている。
一度受ければ即死し、然る後に動死体へと変じる劇毒。それを込めた銃を構え、逃げ惑う群衆の背にそれを向ける。
主が操るつぎはぎどもは、調教された獣とさして変わらない腐った知性のわりによく働き、猟兵の繰り出した機械兵をなぎ倒し避難民を追い回して彼らを一処に追い込もうとしている。そこへ彼らが劇毒の弾丸を撃ち込めば、逃げ場のない集団の中で発生したゾンビによってこの世の地獄が生まれ出る。
冷たく強張って久しい表情筋がにたりと笑んだそこへ、衝撃と轟音が飛び込んだ。
トレーラーだ。輸送用の大型車両。そんなものが今要塞の外から乗り込む術はなく、此処に立てこもる軍人たちも同じような車両を持っていないわけではないが、それにしたとて避難民が犇めくこのホールに直接乗り入れるなどありえない。まして神がかり的なハンドル捌きで人々の鼻先を掠めて継ぎ接ぎの大型ゾンビを轢き潰すなど。
その運転席と助手席から、二人の若い娘が降り立った。
「そこまでにしときなよカルト野郎。グリュプス、戦況把握。避難民の誘導をお願い」
「了解しました。しかし彼らが私の言葉を聞くでしょうか?」
運転席の娘――ジュリアの顔を伺うようにふよふよと漂う機械仕掛け、グリュプスは相棒の頼みに無茶を言うと不服を述べる。
「まずは避難民を遠ざけるのが先決。そういうことならボクが前で連中を押さえよう。この手の甘言を弄する手合は正直言って嫌いでね」
相棒と言葉を交わすジュリアの前に出た助手席の少女、ユエイン。彼女を守るようにトレーラーの荷台からその姿を現した鋼鉄の機甲人形は、繰り手の十指とつながる糸で重厚に、なれど流麗に屍商人を守る傭兵ゾンビたちと相対す。
「言葉というのはもっと重いものだ。それを軽んじて人を誑かす輩への返答はこれに限る」
はらりと糸が緩み、操り人形はマニュアルから魔力によるセミ・オートマチックに移行する。自由に動く両の腕で、ユエインは二丁の拳銃を抜いて銃口を不埒な死者どもに突きつけた。
「ユエインさんには借りができちゃったわね。グリュプス、あなたがごねたからよ?」
「ジュリアが無茶を言うからでしょう。それよりも早く避難誘導を。全員は無理でしょうから、救える範囲で救っていくべきです」
言われずとも。鋼鉄の拳と二丁の銃を巧みに操り強力な死者と相対する仲間に背を預け、ジュリアは最も近いゾンビの背中に散弾銃を押し付けぶっ放す。
腐肉が弾け、生臭い粘液に成り果てた血が飛び散った。それを蹴倒し踏みつけて、怯える避難民たちにジュリアは冷たい視線を向ける。
「あなた達が軍人を信用しようがしまいが、私にはどっちでもいいけど。あの人達が今まであなた達を守ってくれたのは事実でしょ。今になって出てきて耳触りのいいことばかり囀るあの女の言葉にどれだけの意味がある? あの女のありがたい説教で少しでも腹は膨れたかしら? それとも敵が減ったのかしら?」
「そ、それは……でもあの兵隊たちは私たちに不自由を強いて支配しようとしてるって……」
一度芽生えた疑念は、たとえそれを植え付けたものが敵であったとて易々とは消えない。なるほど屍商人の女はゾンビを使役し我らを脅かす敵であった。ならば軍人たちは味方か? そうではない。彼らもまた、自由を縛り我らから搾取する者たちかも知れぬではないか。
そんな疑心暗鬼の沼の中、誰を信じ何を頼みに生きればいいのか。思考に囚われ脚を踏み出せぬ人々を守り、迫るゾンビどもに散弾を撃ち込みながらジュリアは次第に苛立ちを募らせる。
「あーもう、私に交渉ごっこなんて似合わないわ! いいから走って付いてきなさい、生き延びたい奴は助けてあげる!」
ゾンビを蹴散らしトレーラーの開いたハッチへと駆けるジュリアの背中を呆気にとられたように見送る避難民たちの前に、グリュプスがふわりと。
「自分の目で見たものが真実です。貴方達が信じるのは何ですか?」
そのまま飛び去り、空中で幾つにも複製されてジュリアを囲むゾンビを逆に包囲殲滅してゆくグリュプス。一人と一機の言葉に、避難民たちは確かに自分の意志で一歩を踏み出した。
「ひとまず流れ弾が当たらなければそれでいい」
自分の弾丸はもとより、あの傭兵ゾンビどもの撃つ弾丸――というよりはシリンジだが、当たれば絶対にろくでもないことになるだろう。
そんなものの射線に避難民を入れないように立ち回れば、屍商人の女の鞭がさらにユエインを追い立てる。
今のところは機人が盾としてそれらを一心に受けているが、じわりじわりと包囲を試みる傭兵ゾンビたちを相手に機人とのツーマンセルでは防御に限界がある。
「せめて避難民を巻き込まないようにできれば――ん?」
ユエインの言葉に反応してか、あるいは何か餌の気配でも感じたか。
彼女のペットたる奇妙なワームが飛び出し、避難民達をジュリアのトレーラーの方へと追い立ててゆく。
金属に付いた錆を舐め取るような無害なワームだが、何に使うつもりなのかわからない立派な牙やその不気味にブヨつく身体はゾンビに負けず劣らず凶悪で凶暴に見える。
ワームが避難民を遠ざけてくれ――危うくジュリアに撃たれかけたがご愛嬌――その御蔭で、ユエインは完全に周囲の一般人という枷を無視できた。
防戦一方だった機人が大きく踏み出し、正面の傭兵ゾンビに拳を叩きつける。
射撃体勢だったそいつは慌てて銃を盾にするが、やわな樹脂と軽金属の製品など重厚な鋼の拳の前ではウエハースより容易く圧し折れ、ゾンビの冷え切った身体が吹き飛ばされる。
さらに追撃、頭を握り込んで機人は右手を発熱させる。人外の耐久力を持つゾンビとて、焼き尽くされれば二度と動けまい。火だるまになって沈黙した死体をそのまま放り落として機人がゆっくりと振り向けば、ユエインもまた回り込もうとした傭兵ゾンビどもに二丁拳銃を浴びせ撃ち、頭蓋を貫き脳細胞を弾丸でミキサーに掛けたところであった。
『……上等の商品を一気にダメにしてくれるとは、なんて事をしてくれるのでしょうね』
「そうかい。それはご愁傷さまだね。まだやるかい? ボクの機甲人形には薬も痛みも通じない。首輪でだって封じられはしないだろうけど」
『御冗談を。わたくししがない商人ですもの、荒事なんてとてもとても――』
上品に笑う屍商人。それが突然機敏な動きで太腿に括ったホルスターから護身用の小型拳銃を抜き、ユエイン目掛けて引き金を引く。
猟兵であろうと暫しの苦しみの後、忠実なゾンビに堕とす特注の毒を込めた弾丸だ。配下に持たせたものとは濃度が違う。その逆転の一発は違わずユエインの心臓目掛けて飛翔し――すかさず割り込んだ機人によって弾かれた。
だが、屍商人の狙いはユエインのゾンビ化ではない。彼女の視線を機人が遮ったほんの僅か一瞬のうちに、屍商人は眼前の猟兵から逃れ、混迷するホールの何処かへと姿を消したのである。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
●
「――何事だ! 騒がし……うわっ!!」
流石に銃砲が唸りトレーラーが突入すれば、騒ぎに気づいた兵士たちが駆けつける。
守衛室の扉を蹴破らんばかりの勢いで小銃を引っ掴み飛び出した兵士たちは、避難民を収容していたメインホールで大暴れする巨体のゾンビの群れに言葉を失った。
だがそこは元とは言え軍人だ。帰属する国家は消滅して久しいが、積み上げた訓練と継承した戦訓は彼らを直ちに現実へと引き戻す。
「何はともあれ避難民を救出する! 分隊続け、軍曹は中佐殿に報告、援軍を引っ張ってきてくれ!」
「了解です少尉、ご無事で!」
一人が駆け出し、残りは銃口を不死の怪物へと向け引鉄を引く。連続した火薬の弾ける音響とともに、鉄礫がゾンビ共を貫く――が、貫通力に優れた自動小銃はそれが故に腐肉の巨人の肉体を容易く突き抜け、破壊には至らない。
「構うな撃ちまくれ、挽肉にしてやれ! 民間人を救出するぞ、ゴーゴーゴー!」
統率された連携で全方位に銃弾を叩き込み、兵士の一団が狂乱する群衆に切り込み、暴れる動死体へと果敢に挑みかかる。
それは人々にとって何処までも都合のいい希望の光で――
縋るような視線に混じり、冷え切った悪意の視線も彼らを見ていた。
囁石灯・銀刃郎
軍人さん達もずいぶんとま、貧乏くじひいちゃったわね。
…悪いけど、此処で死んでもらうわよ。奴隷、屍商人さん?
銀刃刀を引き抜き、【心残身】本来なら敵の攻撃なんて避けて
本体を斬り捨てちゃえば良いのだけど、下手に避けて誰かに当ったら
大変そうだもの。
良心から避難民に当らないよう、あえて敵の攻撃を避けずに迎撃。
銃口の先、鞭の軌跡を見切り、
弾丸をガントレットで武器受け、間髪入れずに刀の鞘を引き抜き
鞭を受け止め巻き取り怪力で引っ張って体勢を崩す、鞘を投げ捨てて
残像、ダッシュ。一気に接近、
早業でなぎ払い斬り。首輪を放つ隙は与えない。
生憎、誰かの奴隷になるのはもう御免なの。
…いつ奴隷になったんだっけ?
鎧坂・灯理
己の命を他人の手に乗せる事をよしとするか、愚か者共め
とにもかくにも落ち着かせんと話になるまい
民衆の「怒りの熱」を食ってやろう
【火食い鳥】発動――冷静になるがいいよ
さて、説得などは他の猟兵に任せて……
カルラ、ウィルに乗って奴に接近し火炎放射
ウィルは憶病由来の敏感さを発揮して敵の鞭や弾丸を避けつつ接近しろ
なァに、避けきれずともカルラが火を噴いて落としてくれるさ。気楽に行け
『双睛』で身体能力を上げ、『黄龍』の短距離転移を併用し
敵の懐に潜り込み、渾身の念動力と怪力を込めた一撃を叩き込む
何を上から目線してやがる、この痴女が!
海を割った拳を喰らうがいい!
●
「助けて! 早く助けなさいよ!」
「どけよババア! 俺が先だ、俺を!」
「落ち着いて! 落ち着いてください! くそっ、好き勝手しやがって……射線を塞ぐな!」
軍人たちの突入は、突然のゾンビ発生に混乱する人々に縋るべき存在の登場として迎え入れられた。
都合のいいことに、そこに先程までの敵意は無いが、代わりに我先にとその庇護下に入ろうとする人々が押し寄せたことで彼らは身動きを封じられてしまう。
「軍人さんたちも随分とま、貧乏くじ引いちゃったわね」
「軍人の次は胡散臭い商人女、その次はまた軍人ども。よくもまあ己の命を他人の手に乗せることをよしとするか、愚か者共め」
自分勝手に振る舞った結果、助けに来た兵士たちの足枷となっている民衆を苦笑と冷笑で見遣り、銀刃郎と灯理はホールに降り立つ。
混乱する群衆の中でも、猟兵にすればオブリビオンは気配でわかる。暴れるでもなく身を潜める気配があれば、それは即ち策を弄する屍商人かその腹心であろう。
そのように判断して怪しげな気配を辿ってみれば、今まさに兵士たちを狙撃せんとする屍商人の姿がある。群衆に遮られその姿を兵士たちは認識できず、気づいたとしてもああも囲まれていては対処もできぬ。対する女はたとえ兵士に当たらずとも押し寄せた群衆のだれか一人にでも当てればそこから狂乱と殺戮の連鎖を引き起こせるだろう。悪辣な手だ。
「――連中は任されようか」
「そう? 助かるわ。こっちは奴を止める!」
灯里が軽快な足取りで、されど靴音もなくコートの裾を翻し、愚かなる人々の背に歩みを向ければ銀刃郎は踏み込み一つ、滑るような足捌きで屍商人へと忍び寄る。
銀刃郎の刀が今まさに引き金を引かんという屍商人の女の手から拳銃を跳ね上げたのと、灯里の一喝が群衆をシンと黙らせたのが同時。
「よろしい、静かになったな。説得と誘導は諸君に任す、適切に逃がすがいい」
「君は……いや、話は後だな。了解した、安全な場所まで誘導します! 慌てず、順番を守って移動を開始して!」
呆気にとられ、恐怖も怒りも何もかもを忘れたかのように呆然とする群衆は、兵士たちの指示に従って安全な方へと逃げてゆく。
「まったく後味の良くない熱だった」
胃の腑が煮えるような、悪いものを食べたときのあのむかつき。自由を抑制する兵士たちへの我儘な怒り、理不尽を押し付けるオブリビオンへの怒り、自分だけでも生き残りたいという恐怖、兵士たちは本当に庇護してくれるのかという恐怖。
あらゆる感情の熱を飲み下した灯里は呼び出した巨体の白狼に子竜を載せて、彼らを引き連れ先んじてオブリビオンと刃交える銀刃郎の元へと歩を向けた。
「悪いけど、此処で死んでもらうわよ。奴隷商人――いえ、屍商人さん?」
『あらあら、随分と鼻の利く猟犬ですこと。こう見えても死臭には気を配っていますのに』
跳ね飛ばされた拳銃がくるくると落ちてくるのを、鞭で器用に巻き取りながら屍商人は笑う。
『死んでもらうも何も、わたくしだって随分前から死人ですのよ?』
発砲。回避すると踏んでその射線からわざとずらして蛇のようにのたうつ鞭打ちが這う。
いずれも銀刃郎にしてみれば、躱すも弾くも易い攻撃だ。商人は所詮商人、直接の荒事は大方側近の戦闘ゾンビどもに任せきりだったのだろう。
だが――銀刃郎は背中に感じる気配のために、敢えて回避を放り捨てた。
銃弾を手甲で受け止め弾き――通常の弾丸ではなく、毒を送り込むために貫徹能力を重視しないそれがために貫かれることはなかった――間髪入れずに刀の鞘を振るえば、軌道修正して死角から銀刃郎に迫る鞭が鞘に巻き付きミシミシと締め上げる。その身で受ければいかにデッドマンとて肉体の破壊を免れぬであろう締め上げに、鞘を思い切りぐいと引くなり容易く手放し引き寄せた女にさらに踏み込む剣士。
「その鞭、奴隷を躾けるためのものじゃなかったの? 随分と力加減が下手くそみたいね」
『あら、貴女みたいに聞き分けのないデッドマンにはあれくらいしないと躾の意味が無いでしょう?』
貴女の死体も高く売れそうね。女は銀刃郎の間合いに引きずり込まれながら笑う。
「黙りなさい。生憎誰かの奴隷になるのはもう御免なの」
一閃――屍商人を一刀のもとに切り捨て、否。屍の女は腕一本を犠牲に頚を落とされぬよう守りきった。宙を舞う手首。それを鞭で絡め取り、女はくつくつと喉を鳴らす。
『わたくしにばかりかかずらっていられる場合でしたかしら? ほうら、どんどんわたくしの商品が集まってきていますわよ』
振り向かずとも分かる。ゆらゆらと意思なき屍が集まってきているのが。
見えずとも分かる。今にも両の肩に腐れた手を掛け、首筋に噛みつかんと糸引く大顎を開け、決して満たされぬ飢えへの慰めを欲する者共がそこにいると。
だが知らずとも信じている。己が決してたった一人ではなく、そこには敵だけでなく味方も居ることを。
「――総員撃ち方! 突入を援護しろ!」
「何を上から目線で勝ち誇ってやがる、この痴女が!」
銃弾の嵐が吹き荒び、ゾンビ共を貫き引きちぎる。
火炎を散らす子竜がその死体共を焼き尽くし、白狼とともに突破口を抉じ開けた。
そこへまるで瞬間移動のごとく一瞬にして灯里が飛び込み、銀刃郎の包囲を食い破る。然らば屍商人の顔に浮かぶは忌々しげな渋面。
「形勢逆転だな。海を割った拳を――」
「改めて此処で死んでもらうわ――」
喰らえ。二人の声が重なり、銀の刃と鋭い殴打が閃いた。
「――ダメージは与えた。それは間違いあるまい」
「そうね、腕一本……決して安い代償だったとは思いたくないけど」
切り飛ばされた右腕を遺して姿を消した屍商人。二人の渾身に手応えは有った。
有ったが、それで仕留めたと断じるには少し弱い。何しろあの女の生き汚さ――しぶとさは、ほんの僅かの交戦でも尋常のものではないと二人には理解できたからだ。
それを証明するように、悲鳴とともに新たなゾンビがホールに現れる。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
羽堤・夏
おっけー、要するに外道だな?
人を売るやつはあたしの敵だ。
防人の敵だ、死にやがれ
いつもの笑みを引っ込めて、怒りのみを鉄拳に込める
【動物使い】突入と同時支援の食料と、軍人や民間人に敵の存在を知らせるメモを持たせたハムハムスクワッドを展開
「敵がいる。あたし達が守る、全員、こっちに来るなぁ!!」
突撃、【怪力】の拳を叩き付ける
なおかつ民間人をやつらの攻撃から【かばう】
ゾンビ化薬は鉄拳ではじき、抉られた皮膚はコードで爆破し、炎で弾丸も薬も焼く
鞭は日輪丸を投げ、振り回して斬る
首輪は【覚悟】で跳ねのけ【怪力】で引きちぎる
奴の攻撃でやばくなった部位は自爆でごまかす
こいつは何が何でも、何があってもここで終わらせる
レナ・ヴァレンタイン
やあ商人くん!お勤めご苦労!
――不幸を届けにきた。店仕舞いの準備はいいかね?
ユーベルコード起動
敵が広く避難民や奪還者などに向かうようなら7割ほどをそちらの方に広く展開
残りで私の周りを固める
あとは敵の突進や突撃に鴉をぶつけ、その運動ベクトルを「地面に強烈に激突するように」変える
銃弾や刃物の攻撃は直接敵の頭に打ち返してもいい
地面に叩き伏せた敵がゾンビならば延髄や脳をぶち抜いて運動機能を奪う、奴隷ならば手足を撃つか武器を破壊するかして抵抗できないようにする
屍商人自体はマスケットによる狙撃、あるいはアームドフォートとガトリングで盾ごとぶちぬいて終わりにする
これまでの稼ぎは地獄の渡し賃にでもするといい
●
「人を売るやつはあたしの敵だ。防人の敵だ」
背には生き残った僅かな避難民を庇い、常の晴れやかな笑顔を潜め怒りに眉根を寄せる向日葵の少女。
夏は外道――屍商人によって“商品”に加工されてしまった哀れな元人間を前に拳を震わせた。
自慢の商品を盾にそれを嘲笑う屍商人は、半ばから斬り落とされた右腕を、まるで果実でももぐように年格好の近い女のゾンビから引きちぎったそれで補完し手を握っては開き、くすんだ爪をふぅと息吐き不満気にため息。
『あまり綺麗じゃありませんわね。B……いえ、C等級というところかしら。この状況で我儘は言いませんけれど』
元はきっと日々を生きるために必死に働いていたのだろう、丸くすり減り、深爪気味の爪には黒い煤や埃が詰まっていて、指先には小さな傷跡が数え切れないほどに刻まれている。
一人の人間が懸命に生きようとしていたその残滓を、商品価値を下げるただの疵だと肩を落として落胆するその女に、夏の怒りは爆発した。
放ったハムスターたちが屍商人の所在を正しく伝達してくれた頃だろう。じきに猟兵の応援が来るはずだ。
『それで何の話でしたかしら? ああ、貴女が右腕を売ってくださるんでしたっけ。色味はあまり好みではありませんけれど、“これ”よりはマシですわね』
ひらひらと奪った右手を揺らす女へと、夏は猪突に駆け抜ける。拳を握り、力を込めて踏み込み、渾身の一撃を――
『――いいのかしら?』
その拳が紙一重で静止する。ひたりと鼻先で止まった一撃に顔色一つ変えず、女は夏に後ろを振り向くよう促した。
視線だけをちらと向けると、守るべき避難民に迫るゾンビ共の魔手。今にもその両手で彼らを引き裂き、哀れな肉を胃の腑に押し込まんと欲するものどもが、夏が離れたこの一瞬こそが好機であると無力な人々に躙り寄る。
「てめぇ……!」
『あら怖い。反抗的な子は徹底的に調教するに限りますわね』
人質を取って優位に立って、女は嗜虐的な笑みで鞭を振り回す。
空気を切り裂く音。床を叩く音。身も竦むような痛みの音響を前に、夏は決して目を瞑らずにじっと屍商人を睨みつける。
『気に入りませんわね。その目刳り貫いてもう少し可愛げのある顔にしてあげましょう』
鞭が肌を打ち赤い疵を刻みつける。つぅと血が滴って、その匂いにゾンビたちがにわかに色めき立つ。
「まだだ……全然痛くねえ。こんなの全然痛くねえ」
『あのねえ貴女、人が優しいうちに服従しておいたほうが良くってよ?』
鞭打ちが止まり、甚振ることを楽しむ様子を見せていた女がすっと表情を欠落させまるで虫でも見るような視線を夏へと投げかけた。
かちゃりと嵌められるのは首輪。そうして、女の継ぎ接ぎの右腕が銃を手に、夏へと死者の弾丸を撃ち込んだ。
――銃声。ぐらりと傾ぐ身体。
屍の一つが沈黙したのを確認して、レナは配下の渡り鴉たちをさらに戦場へと飛び込ませる。
夏が屍商人を引きつけている間に狙撃位置を確保した彼女は、マスケット銃に次弾を手早く押し込め次なる獲物に狙いをつける。
本来ならば彷徨くゾンビのその移動のベクトルを鴉によって捻じ曲げ、動きを封じたところで二度と起き上がれないように神経の要所を狙撃するつもりであった。だが、既にゾンビたちが避難民を包囲しているならば話は変わる。いちいち転ばせる余裕はない。可能な限り少数の銃弾で多数を無力化せねば、少なからず犠牲を許容せねばならない場面が訪れてしまう。
「だからこそ」
銃声。弾丸はゾンビのこめかみから頭蓋に侵入し、反対側の耳を突き抜けて飛び出した。それを鴉が弾き、別のゾンビの頭部を破裂させる。繰り返すこと数体分、ようやく推力を無くした弾丸はからりと転がった。
「反撃はさせない。やぶれかぶれの無差別攻撃も然りだ」
弾丸を込めて、再び狙いを定める。
「逃げ場はあるが――逃げ切れるかな? そも逃げるような生命の本能を持ち合わせているかも怪しいものだが」
放たれた弾丸が何度も弾かれ、またも複数のゾンビを射抜いて斃す。
『――ちっ、安物とはいえ商品を……何処の誰がっ』
そうしてゾンビ共をほとんど無力化した弾丸が、最後に鴉によって弾き返され屍商人の肩を掠めた。
びりと皮膚が避け、思わず夏への攻撃の手が止まる。
「やあ商人くん、お勤めご苦労! ――不幸を届けに来た。店仕舞いの準備はいいかね?」
何処からともなく響く朗々たる声が、屍商人へとその悪辣な商売の終わりを告げる。曰く、これ以上商品は作らせない。持たせない。売らせない――つまりは此処で死ね。
「これまでの稼ぎは地獄の渡し賃にでもするといい」
銃弾が飛来し、女の腹を貫いた。よろめく女、そこへ――そこへ、首輪を引き千切りゾンビ化薬に侵された肌を肉を自らの内なる炎で焼いて患部ごと吹き飛ばした夏が卑劣な戦術への怒りを込めた拳を叩きつける。
「てめぇは何が何でも、何があっても此処で終わらせる! 吹き飛びやがれっ!」
拳とともに噴き出した炎の奔流が、屍の女を包み込む。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
シキ・ジルモント
◆POW
そこに居たか、オブリビオン
屍商人を排除する
商品だと?冗談じゃない、攻撃は回避…いや、下手に避ければ避難民に被害が出る
それでは完璧な仕事とは到底言えない
多少の不利は承知で避難民への攻撃は割り込んで『かばい』、こちらへの攻撃は全て正面からピンポイントで狙撃し相殺する事で無力化を試みる(『スナイパー』)
周囲の人間を巻き込まないよう、攻撃を捌きつつ接近して屍商人だけに銃弾を撃ち込む
避難民が屍商人への攻撃を非難するなら質問を投げかけ考えさせる
屍商人の言は信用に値するのか、否か
「何を根拠にその女の言葉を信じた?自分で直接確かめたのか?言われた事を鵜呑みにして従うだけなら、それこそ奴隷と同じだろう」
チトセ・シロガネ
【POW】
ボクをそれっぽっちで好き勝手したいだって?
ハハッ、レディー、ボクをからかっちゃいけないヨ。
UC【光輝幻影】を発動、まずは電気を纏うネ。
特殊弾丸は避けたら避難民にも当たっちゃうから
念動力とオーラ防御による電磁バリアで弾きつつじっくりと接近。
高速殴打は第六感を頼りにザンテツで切り払い。残念、ボクは鞭で叩かれる趣味はないネ。あと踏み込みが足りないネ。
首輪は飛んで来たらチャンス。
グラップルで掴み、ユーを念動力で引っ張り出して顔面キャッチ。
心折れるくらいの電気ショックをプレゼントネ。
【アドリブ歓迎】
●
『――まったく。まったく付き合っていられません。客にもならない。商品は壊す。そのうえ商品を補充させもしない。商売というものを何だと思って』
「商品? あれがか? 冗談じゃない」
「ホントにネ。あんなの買うスキモノがいるノ?」
銃創を穿たれ焼け焦げた腐肉を落として新しい屍肉で疵を補う屍商人の悪態に、ひたりと押し付けられる二つの殺意。
片や後頭部に感じる冷たい銃口。
片や喉元に感じる熱い薄刃。
『あらあら。わたくしとしたことが……』
やれやれと両の手を挙げようとする女へ、拳銃を押し当てる男――シキは動くなと冷たくその動きを静止する。
「あんたに動かれると何をされるかわからないからな」
『まぁ。投降しようとしただけですよ?』
何しろ駄目になった身体部位を適当に作ったゾンビと取り替える――生者の常識で測れない、死者の倫理観で動く女だ。今この瞬間にも自身もろとも自爆することでゾンビ化薬をぶちまけるような凶行に出ぬとは言い切れない。
「とにかく動くな。動かずそのまま死んでもらう」
引鉄に指が掛かり、力が込められる――その時だ。
「ま、待った……! 待ってくれ。あんたたちが何者かは知らないし、その人がこのゾンビ共を作ったっていうのもなんとなくだがわかる。わかるが……それでも私たちを導こうとしてくれた人なんだ。一度話をさせてくれ、これだってなにかの間違いかも――」
そうだ。そうに違いない。この期に及んで未だに屍商人の善性を期待し、それに縋るものは居る。いや、他に縋るものを見いだせないのだろう。
あるいは自分たちだけは、交渉によってゾンビたちの標的から外してもらえるかも知れないという打算。あるいは女の見せた柔和な指導者の一面への信仰。あるいは兵士たちへの不満や不信。それらが彼らの判断を狂わせる。
「あのさあ……ユーたち状況をわかってル?」
チトセがため息を吐くのもむべなるかな。油断ならぬオブリビオンを相手に交渉の余地などありえない。ましてこの女はゾンビ専門ではなく、生きた人間をすら奴隷として商う存在だ。言葉巧みに彼らを丸め込み、忠実な手駒に仕立て上げる術を持たないわけがない。
「お前達は何故この女と話したがる。何を根拠にこの女の言葉を信じた?」
兵士が信用ならない。確かにそういう思いはあるだろう。
武力を持つものが庇護の代償に搾取と圧政を強いる。そんなベースもあるかも知れない。
なるほどこの女の言葉はまるきり嘘ではないのだろう。心当たりがあるからこそ、人々もころりと騙されたのだ。
それを理解した上で説得しようと試みるシキに、チトセは優しいネと呆れ混じりの、それでいて好ましい視線を向けながら屍商人を刃で押さえつけている。
「だが、実際に此処がそうなのか、そうなるのか、実際に自分で直接確かめたのか? 兵士たちが戦っている姿を見たか?」
今もなお、ゾンビを相手に少数で避難民を逃がすための戦いを繰り広げている兵士たち。あれが支配者の、自由を認めぬ圧制者の振る舞いであろうか。
「言われたことをただ鵜呑みにして従うだけなら、それこそ奴隷と同じだろう。奴隷が嫌だと言うなら自分で見て考えろ」
シキの言葉にひとつの反論もせず、出来ずにそれを聞き終えた人々は、視線をそらして俯いた。俯くしか出来ぬのだ。命がけで自分たちを守ろうとしてくれた人々に背を向けて、不平不満を叩きつけ、あまつさえこの期に及んで自分のためだけに明確な悪意を持つ存在に阿った。
それを恥じる程度の人間らしさを彼らは残している。心の根まで奴隷に堕してはいない。
「……私たちは、ああ、そうだな。私たちも自分で考えないとな……なぁあんた、商人さん」
『はい、何かしら?』
「あんたは……何が目的でこんな事をするんだ?」
その問いに、女はゾッとするほど邪な笑みで以て応えた。曰く――
『そんなもの。お金儲けのために決まっています。奴隷は高く売れますからね、できれば生きていて若くて健康で……女子供ならなおよし。そういう商品が労せずたくさん手に入りそうなコミュニティを見つけたら、どんな商人だって商売をします。でしょう?』
女が――急所に凶器を突きつけられたまま、己の命を気軽に投げ捨てるがごとく気安くそれらを無視して拳銃を抜き、避難民たちに向ける。
『おわかりになったら、四の五の仰らずに商品になりなさい』
乾いた破裂音がいくつか。何かが弾ける金属音が僅かに遅れて同じ数だけ。
電磁バリアを纏ったチトセが、咄嗟女から離れて避難民の前に飛び出し銃弾を弾いて守ったのだ。
だがこれで女は前からの楔を解き放たれた。転がるように前に出て、すかさず鞭をシキに這わす。それをシキは拳銃で射落とし迎撃しようとするが、銃口が向いたその瞬間に蛇のごとく撓る鞭は、この至近距離で銃で撃ち落とすにはあまりにも難度が高い。
「下手に避ければ避難民に被害が出る。それでは完璧な仕事とは到底言えない」
「だったらどうするノ? 受ける分には平気だけど、彼女逃げる気マンマンだヨ」
拳銃と鞭の双方で二人を牽制しながらじりじりと後退する女。その抵抗を片や撃ち落とし片や切り払って防ぎながらも、距離を詰めるには至らない。
『厄介な相手ですねえ、猟兵さんというものは。商品にすればいい値段が付きそうですけれど』
弾丸が有限で、かつ迎撃も点で相殺するという離れ業を要求されるシキを与しやすいと判断したのか、彼の頚へと目掛け放たれる奴隷の首輪。嵌まればいずれ奴隷に落とされる。あるいは抵抗するにしても、その邪悪な意志と本来の意思の葛藤は彼の判断力を鈍らせるだろう。
だからチトセはそれを庇った。首輪がチトセに届き、しゅるりと――その掌に巻き付いた。否、掴まれたのだ。
「オーケー、捕まえたヨ。抵抗しないでこっちに来るんだネ!」
首輪とリードをぐいと引くチトセと、それに抗う屍商人。
膂力は互角。拮抗している。
「奴を引き戻すんだな? 了解した、仕事を果たそう」
双方一歩も譲らぬ引き合いの天秤を、シキの銃弾が傾ける。膝を射抜かれた屍商人が姿勢を崩し、チトセに引きずり込まれたのだ。
至近距離。飛び込んでくる整った女の顔面を出迎えるチトセの五指。
それが人間の頭部大のモノを掴んだならば、チトセはこれでもかと電撃を流してそれを無力化する。
電撃を受けた屍商人の女は、粘膜から焼け焦げた煙を吐き出しながら膝をつく。
「心折れるくらいの電気ショック、ボクからのプレゼントネ」
ぱちりとウィンクを飛ばすチトセ。屍商人は大きなダメージを受けたように見える。
しかしゾンビは止まらない。ホールの各所で戦闘中のゾンビたちは、司令塔が膝をついたその瞬間に金切り声を上げて彼女の元へと走り寄って来たのである。
「うげっ。走るゾンビなんて聞いてない! 解釈違いヨ!」
「……追撃している暇はないな。退こう」
ゾンビ共が主を喰らおうとしているのか、あるいは助けようとしているのか。場合によっては女をまたも取り逃がす可能性がある判断だが、避難民を守りながらあれだけの走るゾンビを相手取るのは至難も至難。全員生還をよしとする二人は、それ以上の追撃を他の仲間達に委ねて避難民とともに兵士たちが固めるホール出入り口付近まで撤退するのだった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
ダビング・レコーズ
敵は相応の戦術的判断力を有するオブリビオンですか
避難民を人質に取られる可能性も想定し任務に当たります
リジューム、重火器の使用は極力控えて下さい
【レコードセーバー・SPD・アドリブ連携歓迎】
避難民への被害を抑えるべく非致死性武器を使用
キャプチャーバインドによる目標無力化を試行します
仮に民間人を巻き込んでしまっても行動を阻害するだけなので生命維持への深刻な影響は及ぼさないでしょう
増援として出現した奴隷についても同様の対処を実行
無力化後は内蔵している爆弾が起爆する前にルナティクスで排除する事を前提としますが、爆発した場合でも粘着剤で包まれていればある程度の爆発被害軽減の効果が得られると推定します
リジューム・レコーズ
姑息な戦術を使う相手ですね…よくもこんな所で…!
言われなくても分かってます!
ダビングこそ機体サイズが大きいんですから気を付けて!
【レコードセーバー・POW・アドリブ連携歓迎】
あの気持ち悪い弾丸には当たらないようにしないと
機械とは言えどんな影響が出るか分かりませんもんね
これにはEMフィールドに念動波を重ね掛けした二層のバリアで対処
首輪と鞭は軌道を見切りデュアルムーンで切り払います
この状況じゃ強力過ぎる武器は使えなさそうですね…
それなら格闘戦で勝負です
パワーアシストギア起動
人混みをダンスステップですり抜けながら急速接近
手でも足でも捕らえてしまえば!
再起不能になるまで地面に叩き付けてあげますよ!
●
「次から次に姑息な戦術を使う相手ですね……よくもこんなところで!」
リジュームとダビング、二機の“レコーズ”は犇めき合うゾンビを自慢の機動力で掻い潜り、その密集の中心――猟兵によって手傷を負わされたはずの屍商人の元へと向かう。
掴みかかる手があれば荷電粒子の刃がそれを焼き切って、二つの白銀が駆け抜ける。。
人海、まさしく人の海。白波の如く押し寄せるのは流血と腐臭に塗れた屍共だが、その数は明らかに潜入でどうこう出来るものを上回っている。
助けられなかった者がいるのだ。この惨劇の中、命を奪われ尊厳すらも縛り付けられ間に合せのゾンビとして駆り立てられた哀れな人々が。そして敵は、おそらく出来るであろうに避難民達を一息に鏖殺することはせず、じわりじわりと殺しゾンビに仕立てることで、己がそうなるのではないか、隣の人間がそうなるのではないかと恐怖する人々を猟兵や兵士たちに対する足枷として利用している。
「その上数度の会敵のいずれも撤退を繰り返している。敵は相応の戦術的判断力を有するオブリビオンです。――リジューム、避難民を人質に取られる可能性も想定して任務に当たります」
「言われなくてもわかってます! ダビングこそ機体が大きいんですから気をつけて!」
大火力のダビングと範囲制圧力のリジューム。ゾンビを掃討するだけならばこの上ないほどに最適の二機だが、そこに人質という要素が加わることで一気にその戦術的優位性は低下してしまう。巻き添えを嫌えば、取るべき選択肢は大幅に制限されるのだ。
「もちろん、非致死性の武装で対応します。これならば仮に民間人を巻き込んでしまっても――」
「選別して敵だけを排除する時間の余裕があるというわけですね」
一刀両断、兵士たちと猟兵の奮闘で大きく数を減らした大型ゾンビの生き残り――死体を生き残りと数えることが正解かはさておき――を切り裂いて、まるで肉団子のごとく折り重なるゾンビの塊へとたどり着いた二機。
そのカメラアイが、死者の宮殿にふさわしからざる生者を捉える。
「サーマルセンサーで見る限り、人間のようですが……」
「この状況でゾンビが手を出さずに居るということは敵か人質のどちらかでしょう、ダビング」
巨大な肉塊を前に、人の壁を作るように一列に立たされた人間たち。その背後には武装したゾンビが立ち、腐敗しながらも知性を感じさせる眼差しで二つの機体をじろりと睥睨する。
『そうら来たぞ。誰から行く? 最後の一人は助けてやろう』
ゾンビがニタニタと腐った表情筋で笑みを作れば、人間たちは頬に汗を滴らせて視線を交わす。二機のセンサーは、その人間たちの容姿に一定の共通性を――血族の証を見出した。
つまりゾンビは、その主たる屍商人は、捕らえた人間の家族に某かの仕込みを施した上で戦わせようというのだ。死ぬまで戦え、そうすれば最後に残った一人の命は助けてやる。美しき自己犠牲を強いる醜悪な自死の強制に、ダビングは静かに、リジュームは激しく怒りを覚えた。上は老人、下は幼子まで。到底戦えそうもない人間まで巻き込んで命の選択を強いる。それを見せつけるこの戦術のなんと非人道的なことか。
「リジューム」
「何ですか、ダビング」
今にも突撃しそうな兄妹機を制して、しかし彼女にも負けない怒りを秘めて、ダビングは前に出る。
「彼らは自分が制圧する。リジュームは“敵”に備えろ」
ダビングが踏み込んだ一歩を号砲とするように、恐怖と同胞の助命という使命に錯乱した人間たちが、幼子を一人残して一斉に駆け出した。
素手。凶器の類を隠し持っているようには見えない。で、あるならば。
「自爆ということか。つくづく悪辣な手段を選ぶ」
腕部のランチャーを向ければ、銃口に一瞬怯む人間たち。だがすぐさまに背中に守る子供を思い、涙を流し恐怖に呼吸を引きつらせながら再び走り出す。
「その勇気があるならば、次からは屈さない。貴方達は生きている、生きていける」
発砲。空中で弾けた強力な粘液が避難民たちの身体を固め、バランスを崩させる。よろめき、前進しながら転ぶ彼らに最大出力で突撃したダビングは、すれ違いざまにブレードを振るう。
粘液の戒めごと、彼らの身に括り付けられた爆弾を切り離して――落ちたそれを蹴飛ばし、ゾンビたちの連なる屍肉の塊へと。
爆発。背後からの衝撃にたたらを踏んだ知性あるゾンビの頚を刎ね、最後に残った幼子の爆弾を引きちぎっって全速離脱するダビング。
その背中を守るように、リジュームが退路の入り口へと滑り込む。死肉塊は先の爆発で大きく抉れ、だらだらと流れる赤黒い液体が床に染み出している。
リジュームはその奥に強烈な悪意を感じ取った。咄嗟、機械らしからぬ直感のままに刃を振るえば弾き飛ばされた鞭がひるひると肉塊の中へ戻っていく。
『何度も何度も女性の肉体を壊して……猟兵という生き物はなんて粗野なのでしょう』
屍の山から現れたのは商人の女だ。屍人は代謝をしない。代わりに生者以上の再生力を持つ。姑息なる時間稼ぎを繰り返し、受けた傷を癒やして被害を広げるこの敵を討つことは不可能であるのか。
――否。リジュームは放たれた弾丸をバリアで弾き、鞭のしなりをブレードで防ぎ止めてその思考を排除する。
斃せぬ敵ではない。これまでに与えたダメージは確実に蓄積しているのだと、リジュームはその優れたセンサーで把握している。
少しばかり頑丈で、少しばかり部品交換が利く敵。何のことはない、銀河帝国の機動兵器と似たようなものだ。
「だったらその粗野な猟兵が、二度と修復できなくなるまで破壊してあげますよ!」
踊るがごとく鞭と剣を打ち合わせ、一体と一機はぴたりと息の合った攻防を繰り広げて――距離を詰めゆく。商人は確実に防壁を貫ける距離から銃撃するべく、リジュームは敵をここで捉えるべく。
そして両者の距離が殆ど零に帰して、銃声が響く。
防壁を貫いた弾丸が長髪を数本散らして彼方へ飛び、伸ばした手がその銃持つ手首を掴む。
「パワーアシストギア……最大出力でぇッ!!」
轟音。何かが折れて潰れる音が、悲鳴重なるホールに反響する。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
フィーナ・ステラガーデン
【PPP】
はあ!?動きもせずに何好き勝手言ってんのよあんた達!(避難民に殺気、恐怖を与える)
この建物ごとかまどにしてやろうかしら?
いい!?もうこの世界は崖っぷちなのよ!救われて当たり前だと思ってんじゃないわよ!
良く見なさいよ!
こいつ(敵)が何もしてないあんたらに手にかけようとして私達が何も動かなかったらその時点で狙われた奴は終わりなのよ!?
死は遠い他人事じゃないわ!何もしない奴から死んでいくことを覚えておきなさい!
ビードットタッチよ!喋るだけイライラするわ!
何みてんのよ?そもそもあんたがいなきゃイライラしないのよ!!(UC発動)
消し炭にしてやるわ!(八つ当たりに続けて属性攻撃)
(色々OK)
アリシア・マクリントック
【PPP】
避難はお任せして私は敵を煽って気を引きましょう。
残念ですが、貴方には理性はあっても知性は乏しいようですね。
武器を取り戦うとは命をかけること。ここにいる彼らの中から代わりに武器を取れる者がどれだけいるのでしょう。本来であれば逆もしかり。銃後の支えなしに軍人は戦えませんが、現代では専門化が進み人々が直接軍人を支えることは少ない……今のみなさんは戦っていないのです。みなさんがすべきは……支え合うこと。自分達にできる方法で軍人のみなさんと共に戦うんです!
気を引いたらスカディアーマーで防御態勢に。周囲に被害が及ばぬようできるだけ攻撃を受け止めてから「傷こそ我が力なり」でまとめてお返しします!
ビードット・ワイワイ
【PPP】
見たり見たり見たり、汝の破滅を見たり
もはやありふれし汝の考え。下す評価は俗物なり
よくおる者ゆえその結末もありふれしもの
ここが汝の破滅なり
諸君、落ち着くが良い。我は大統領である(催眠術)
我らは敗北しているか?我らは弱者か?
朽ちるを待つだけの死者か?否否否である
泣き言は負けた時に叫べ!一度も勝利せずして諦めるな!
今は後ろに下がるがよい。しかしてその目に焼き付けよ
血を流すのは兵である。では貴様らは何をする!
後方で出来る事も有り!後ろより撃つだけでも支援なり!
願え勝利を!叫べ生を!
心を掌握し迅速に避難。我は無敵の大統領
兵を想像し創造
罪状、内乱罪及び外患誘致罪、人身売買
大統領特権発動、銃殺執行
イデアール・モラクス
【PPP】
見よ!そして聞け!民衆達よ!
我らこそが貴様らを救う女神の軍勢である!
・勢いで押す女神
「その青白い女では貴様らを救えない!
一つ、私の方が美しい!
二つ、私の方が強い!」
UC【鏖殺魔剣陣】を『全力魔法』で威力を増し、『範囲攻撃』で空を埋め尽くすほどの数に増やした上で『属性攻撃』で《》を纏わせ、『高速詠唱』を用いて『一斉射撃』と『乱れ撃ち』による二種の『制圧射撃』を敢行し敵勢を『蹂躙』
「この世界で頼れるのは力のみ!
力が無いなら力ある者に従えばいいのだよ!」
魔剣は命中したら敵を壁か地面に『串刺し』にして縫い止めた上で剣に血を『吸血』させ『生命力を奪い』嬲り尽くす。
※アドリブ歓迎
四宮・刀真
【PPP】
では、「自分たちが置かれた状況を小説とし、それを俺が執筆することでその事象の因果に影響を与える」為に後方から執筆を開始する。
突入前のブリーフィングから相談した結果、ビードットの演説を劇的に盛り上げることで洗脳の解除とそれによる迅速な避難の様子を執筆することで因果に反映し、民衆を迅速に動かしていく。
民衆の避難の完了を終えたら同じく後方担当、もしくは避難誘導している猟兵の元へ赴き、攻撃される危険性を減らす。そこで執筆による因果反映のバフをかけ、反対にオブリビオンにはデバフをかけながら後方支援を行う。
アンナ・フランツウェイ
私はゾンビを倒し他の猟兵がオブリビオンに接近する為、そして避難民達が逃げれる隙を作ろう。
確かにこの人達は私とは無関係だし、助ける義理もない。でも見捨てて人で…私が私で無くなってしまうよりはいい。だからこそこの力を…【断罪兵器シンズ・ブレイカー】を使う!
ゾンビの群れに向け【断罪兵器シンズ・ブレイカー】を構えUCを起動、噴出する血液をブースターにして加速しゾンビ達の群れへ突撃。血液を失う痛みは【激痛耐性】で耐える!
ゾンビの群れに接近したらそのまま武器を振りぬき、加速を付け破壊力を高めた一撃&発生する衝撃波でゾンビ共をなぎ払う(【範囲攻撃】【なぎ払い】【衝撃波】)。
・絡み、アドリブ歓迎
●
「見よ! そして聞け、民衆よ!」
絶叫と悲鳴が満たすホールに高らか響き渡るは女の声。
屍商人のそれが静かに、なれど心にじわりと染み込むとろりとした甘毒の声音ならば、その声は溌剌と聞くものの心を震わす覇者の声音であろう。
「――我らこそが貴様らを救う女神の軍勢である!」
ホールに乗り込んだ多脚戦車から飛び降りたその女は、屍商人に負けず劣らず大胆に肌を晒した姿をしていた。大きく異なるのは、屍肉のように青白い静の肉体と違い白くも血の通った動の肉体であるということか。
ゾンビと交戦する兵士たちも、逃げ惑う民衆も、とうのゾンビたちですらも黙らせ止めるだけの何かがその声にはあった。
「いいか貴様ら! あの青白い女では貴様らを救えはしない! 理由はたった一つ――」
すぅ、と息を吸う女――イデアール。腕を組み、堂々たる姿を避難民たちの前に見せて彼女は告げる。たった一つの真理、真に頼るべきは何であり、何故それを頼るべきなのかを。
「一つ! あの女より私のほうが美しい!」
その背後で、仲間たちがコイツはそういうやつだったとかくりと肩を落とす。天上天下唯我独尊、自分の美しさが万物を平伏させると信じて疑わぬ美貌の魔女。美しさは認めないこともないがそれでゴリ押せる状況は限られているし、今はその局面ではない。
「二つ! あの女より私のほうが強い!!」
組んだ腕を解き、天井を指差しナンバーワンであると示すかのようなポーズ。釣られて上を見た者は気づくだろう。ホールを覆わんばかりの魔法陣を。
「…………なんだ、あれ」
魔導の類を見慣れぬこの世界の民には異常に――いや、魔導を知らぬとしても異常であるとわかる極大の魔法陣。そこから降り注ぐ刃が屍兵どもを貫き斬り倒す。
「うわーっ! あ、アンタ俺たちまで殺す気か!! ちったぁ狙いを付けやがれ!」
ゾンビどころか避難民まで掠めた刃の雨に、たまらず抗議の声が上がる。それをイデアールは鼻で笑うと、刺さった剣の一つを手につかつかと講義した男の前へと歩む。ひゅん、空気を切り裂き刃の鋒が男の鼻先に突きつけられた。
「悪いな、あまりに無力すぎて動死体どもと区別が付かなかった」
その物言いに悪意など感じられない。だからこそたちの悪い火種となって、避難民達を燻ぶらせる。
「この世界で頼れるものは力のみなのだろう! 貴様たちは無力だ。死体と変わらぬほど無力だ。ならば力あるものに従え。兵士が嫌ならあのゾンビ女に、ヤツも無理ならこの私に従うがいい!」
悪役の如き論調で従属を求め、高笑いする魔女。その傲慢に燻りは徐々に燃え広がっていく。
「…………なんだよ。結局お前らも俺たちを支配しようってだけかよ!」
「助ける代わりに従えだなんて恥を知りなさい!」
「そ、そうだ! 私たちが無力だと!? だから従えだと!? ふ、ふざけるな!!」
避難民たちの罵声。それを一身に浴びて、イデアールは剣を放り投げる。身体のどこかしらを犠牲にして剣雨を生き延びた少なくない数のゾンビの一体、その額に刃が突き刺さり、屍を今度こそ死体に還してやった。それをさして面白くもなさそうに見下して、彼女は冷酷な視線をひとしきり避難民たちに向け踵を反す。
すれ違いざま、弱者の傲慢への怒りに肩を震わす小柄な共に笑いかけ、魔女はさも我が玉座とでも言いたげに積んであったコンテナの一つに腰掛けた。
――憎まれ役は任されたとでも言うように。
「長駆の魔女はその傲慢で以て弱者の傲慢を引きずり出し、その敵意を一身に集めることで群衆の意志を一つに纏めたのである。なれば次に訪れるべきは意識の改革だ」
その様を最後列から原稿用紙にガリガリと刻みつけてゆくものがいる。
小説の体で記された刀真の記録は、その圧倒的な速さで踊る筆によってこの現実をも追い越してゆく。
未来を記せ。起こりうる展開を現実に先んじて文章とせよ。然らば“現実は小説に帰せり”だと。
「友からその役目を受け継いだ少女は、意を決して息を呑み、その胸の内に蓄えた思いの丈を避難民へと投げかける。その飾らぬ言葉は、ばらまかれた燻りが消えぬように、それでいて火勢を強めるように計算され尽くしたふいごの風のようで」
「――自分から動きもせずに何を好き勝手言ってんのよあんた達!」
眉間にいくつもの皺を刻みつけたフィーナは、不平不満を垂れるばかりで自ら状況の打開に動くこともせず、結果最後までホールに取り残されている人々への憎しみにも似た怒りを僅かも隠さず率直に、その殺意に至るまで余すところなく叩きつける。
「いい? もうこの世界は崖っぷちなのよ! いつまでも救われて当たり前だと思ってんじゃないわよ!」
国家が健全にその機能を維持し、数多の集団とシステムによって人類という群体が保たれていた頃ならば、軍人や警官は一般人を守って当然、助けられて当然だという論も心証はともかく理屈としてはまかり通ったことだろう。彼らが責務として人々の救済を行う代わりに、人々は国家を通じて彼らに報奨を与える立場だっただろうから。
だが、その国家体制が崩壊して久しい今、軍人や一般人という区切りに何の意味があるだろう。誰もが等しく一人の人であり、彼ら群衆は元軍人たちの誇りと矜持、そしてほんの一握りの善意によって今日までの庇護を受けられたのだ。それは義務などではなく、まして現実とは異なる支配者、独裁者の誹りを受ける謂れが何処にある。
なによりフィーナが気に食わないのは、死から逃れようともせず、その責任だけを他者に負わせようとする態度。
「周りをよく見なさいよ! ゾンビ共があんたらに手をかけようとした時、私たちや兵隊たちが何もしなかったらその時点であんたらはお終いなのよ!?」
その時、自分を助けられるのは自分だけだ。死を他人事にした者は、自身の死すら他人事にされてしまう。誰かのためにでなくてもいい。自分のためにだって、生きるために足掻けなかった人間は、きっと誰からも見向きもされずに死んでいくのだ。
「…………本当イライラするわ! ビードット、タッチよ!」
「傲慢に煽られ、怒りに打ち据えられ。民衆はここに来てようやく己の愚かさを自覚する。認めたくはないが事実だ。それを受け入れる程度の善性は、彼らにとて残っていた。愚かであると自覚して、それでも開き直れなかったが故に此処に居る。レイダーに堕ちる道を選べなかった、根底は善である人々に次に必要となるのは心の支えだった」
文章を刻み続ける刀真。彼の記述どおりに、人々は今、立ち直るための言い訳を探している。
ならば我が斯く在ろう。
「諸君、落ち着くが良い」
ずいと前に出た多脚戦車は、電子の声音で人々に呼びかける。
そのドラム缶めいた頭部が一度車体に引っ込み、きゅるきゅると回転しながらせり上がる――鏡餅。
「む……間違えたか」
それがもう一度車体に引っ込んで、球体の頭部を持つ頭身の低いスーツ姿の人形が現れた。
「改めて――我は大統領である」
喜劇めいた一連の動作に、思考が吹き飛び空白となったそこへすーっと染み込む謎電波。納得はどうあれ、人々にそう認識させることに成功した自称大統領ことビードットは、穏やかに、かつ力強く語りかける。
「我らは敗北しているか? 我らは弱者か? 朽ちるのを待つだけの死者か?」
人々は顔を見合わせ、そして振り返る。いつしか聞こえる剣戟の音。ゾンビ共が襲いかかってこない。一体何故――その答えを求めた視線は、たった二人でゾンビの集団を抑える少女たちを捉えた。
「理性はあっても知性は乏しいようですね――残念です」
『主に賜ったこの頭を足りんというかよ。ならお前は私以下のゾンビにしてもらおう』
傭兵ゾンビの一体、板ばねを加工した撓る刃を振るう女がアリシアと鎬を削る。
『そうら掛かれ掛かれ。身体は壊すな、脳味噌は食い尽くして構わんぞ?』
きぃん。金属同士が激突し、火花を散らす。撓んだバネ刀の反動で女ゾンビはくるりと身を翻して回転斬りを繰り出すが、アリシアはそれを半歩下がって紙一重で躱し押し寄せたゾンビ共の頭蓋を串刺し、着実に無力化していく。
「聞こえていますか、皆さん」
たった一人でゾンビを抑え、その上で知性ある傭兵の女ゾンビすら相手取って時代錯誤な剣の舞踏を踊る少女が語りかける。
「武器を取り戦うとは即ちその生命を懸けるということ。その覚悟がある人は一体どれだけいるのでしょう」
『こいつらのような連中は覚悟など無くとも、“そういう流れ”で容易く命を投げ出すのさ!』
打ち合えば弾け、躱せば撓る刃を細剣の一つで受け流し、ゾンビ共の牙を片腕だけのガントレットで防いでアリシアは嘲笑う女を睨みつけた。
「確かにそうでしょう。ですが此処にはそれこそを使命と抱く人達も居ます。命を懸けることを恐れる心を恥じる必要はありません! ただ――」
アリシアの言葉に、人々の視線は闘うことを、命を懸けることを自らの使命と任じた者たち――自分たちが疑い、拒絶した者たちの方へ。
「――リロード! 弾倉残少!」
「誰か予備弾取ってこい!」
「――なるべく狙いを定めて弾の消費を抑えるんだ! 誰か一人でも抜けてこっちが崩れたら避難民連中まで一直線だぞ!」
突然のことに装備も物資も乏しい中で、それでも一体だって突破させまいと奮戦する兵士たち。
その姿を見て、避難民たちは俯いて震える。
「――あれの何処が圧制者だよ。何が支配だ、何が搾取だ……そいつぁ俺たちのことじゃないか」
支え合うことを放棄し、一方的に寄り掛かっておきながら疑って敵意を抱く。なんと恥知らずな行いだったのだろう。
「皆さんがするべきことは支え合うこと。銃を取れとは言いません。自分たちに出来る方法で、兵士の皆さんと共に戦うんです!」
『戯言ッ! あの愚か者共に何が出来るって言うのさ!』
刃同士の激突で散る火花が、次々と人々の心の燻りに火を灯す。
『ヴゥウウウウウ!』
「あの人達と私は無関係だし、助ける義理もない」
押し寄せるゾンビを前にアンナは独白する。
助けたいような人柄でもない。不平不満を垂れ、自ら動こうとしなかった怠惰な人々だ。
けれど、変わろうとしている。立ち上がろうとしている。歩き方を忘れた脚に精一杯力を込めて、その非力な両腕で戦う者たちを支えようとしている。
「そんな人達を見捨てる人でなしに……私が私でなくなってしまうくらいなら、私はこの力を、断罪兵器を振るう!」
ぞぶりと機巧が肌を破り、兵器と少女の肉体が合一する。肉を貫き血管に達する痛み。体内から何か大切なものが吸い出されていく恐怖。それを噛み殺し、歯を食いしばってアンナは耐える。命ここで潰えようとも、私は私として戦い抜いてみせる。
それは彼らが投げ出した権利であり義務だ。彼らと私は違う。最後まで、その一瞬まで絶対に矜持を捨てたりはしない。
兵装の噴射口から勢いよく血液が噴き出した。一瞬で致死量に達するほどの激しい流血。血の匂いに餓えた動死体どもが色めき立つ。邪魔だ、どけ。アンナの視線はまっすぐにその亡者の群れに据えられている。
「私の命を……この一撃に賭ける!」
それを見て自分たちも戦えだとか、考えを改めろだとか、そういう期待の一切をアンナは避難民たちに向けては居ない。何処までも利己的でどこまでも理不尽に、自分のためだけに人々を守る姿勢は、その程度の差はあれ兵士たちと同じ強さと尊さを秘めている。
『アァァアア……!』
「そこを退きなさい、ゾンビども!」
深紅の尾を引いて、死者の軍勢に断罪の刃が振り下ろされた。
「もう一度聞こう。我らは敗北しているか? 我らは弱者か? ただ朽ちるを待つ死者か? ――否! 否、否、否である!」
ビードットの言葉が民衆の心に灯った儚い火を容易く消えぬ強い火へと育ててゆく。
「泣き言は負けてから叫べ! 一度も勝利せずして諦めるな! 今は後ろに下がるがよい。しかして目をそらすな、しかとその目に焼き付けよ! 血を流すのが誰であるか。その時貴様らが何をすべきか!」
「――ああ」
「後方でも出来る戦いはある! 後ろから撃つだけでも支援となる! それも出来ぬなら願え勝利を! 叫べ生を! 拳を振るえぬ者は魂で戦うのだ!」
「――ああ! 俺たちは、」
「そうだ、俺達にだって戦える!」
「走れ、まずは邪魔にならないように場所を空けろ! おいあんた、俺とあんたで弾を取りに行くぞ! 便所行ったときに見たよな!」
「任せろ、あと何人か手伝ってくれ!」
小さな火が、大きな炎へと燃え広がっていく。恐怖と疑念を焚べた赤黒い炎ではない。信頼と闘志が燃える、真っ赤な炎が人々の表情を力強いものへと変えてゆく。
「――そして立ち上がった民衆によって支えられた兵士と、その闘志を受けた猟兵の手でオブリビオンの有象無象は駆逐さる。残すは首魁、手傷を負った商人へのトドメのみ」
刀真が文章を締め括り、原稿をそっと懐に納める。
これ以上の執筆は野暮というものだろう。既に人々は物語の先にいる。ここより先は全て終わって、その記録を綴るのみだ。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ジャック・スペード
お前達の企みを邪魔しに来た
大人しく骸の海に還って貰おう
リボルバーから広範囲にマヒの弾丸をばら撒いて
屍商本体と、付き従う奴隷たちの足止め狙い
その隙に屍商へと接近すれば零距離射撃を
電の弾丸を撃ち込み、敵の体勢を崩せたら
鋼鐵の蹄で屍商へと鋭い蹴りで2回攻撃しよう
鞭や弾丸などは軌道をよく見切り躱したい
奴等に蹂躙される知れない人々のことを思えば
此の胸には勇気と覚悟が湧いてくる
戦意が劣えることも、こころが折れることも、当機には決して無い
首輪は怪力で破壊して無力化したく
戦闘に巻き込まれそうな避難民がいたら
この身を盾として庇おう
戦場離脱させた方が良ければ、怪力で抱えて安全な場所へ
損傷は激痛耐性で凌いでみせよう
アビー・ホワイトウッド
アドリブ連携歓迎
大きな拠点。かなり堅牢な造り。
それにしても不思議…見ただけであいつがオブリビオンだと分かる。
ホールに突入するなり9mm拳銃を持って目当てのオブリビオンに近寄る。至近距離でいきなり弾倉が空になるまで撃とう。弾が切れたら再装填。
…まだ生きてる。
周りに人が居るなら離れる様に促そう。野次馬が居たら巻き込まれる。下がらないのなら巻き込まれても知らない。
内側から崩そうとするのは上手い手だと思う。でもグリモア猟兵に見つかったのが運の尽き。
とにかくオブリビオンを速やかに倒そう。
UC発動で近接しての打撃とナイフの連撃で反撃の隙を与えない内に攻める。
召喚された奴隷は戦意があるなら銃撃して排除する。
●
形勢は決まった。
猟兵の奮闘と避難民の協力を受けた兵士たちによる反撃で、ゾンビ共は駆逐されてゆく。
もはや負けることはありえないだろう。オブリビオンの、屍商人の企みは阻止されたのだ。
此処から先は後始末だと、誰もがそう考えるだろう。
しかしそれに異を唱えるものは居る。他ならぬ屍商人その人だ。
『……まだ終わってなどいません』
屍体でなければとうの昔に死んでいた――そんな表現もどこか奇妙で可笑しなものだが、そうとしか言えぬダメージを負ってなお活動し続け、生者への悪意を翳らせはしない蒼白の女。
それに付き従うのはゾンビではない。もはや人間の優勢が確定した場にあって、死体を引き連れるのは殲滅のよい的になるばかり。
故に女は、あの殴打で死んだと見せかけ捕らえてあった人間の奴隷たちに己を救出させたのだ。人間の壁に身を隠し、稼ぎが望めぬなら脱出して再起と報復を。
そうだ、脱出の折に外の連中を引き込んでやろう。凄惨に凄絶に、最後の一人に至るまで抵抗し尽くし死に絶えるがいい。そのあと残った死体は有効に活用してやろう。
引きつった笑みを貼り付けて、人目を憚り逃げ延びるその姿に、はじめの優雅さや余裕というものは見当たらぬ。それほどまでに彼女を追い詰めたのは猟兵たちの働きであり、人々の勇気であろう。
――だから。
『ぐあっ!』
『ぎゃっ!?』
銃声。こつん、こつんと足音を引き連れて、黒鉄の男が屍商人の前に現れる。
先行してルートの確保に当たっていた二人の奴隷を非殺傷の電撃弾で黙らせて、これ以上先には行かせぬとその男は女の道を塞ぐのだ。
『あらあら……猟兵さんもつくづくしつこいことですね』
「そうかもしれんな。お前達の企みを邪魔しに来た。そのためならばしつこくもなる」
何しろお前は生かして逃せば際限なく災厄を生むタイプの女だ。
黒鉄の――ジャックはリボルバーの銃口をひたと女の額に合わせる。
「もはや抵抗は無駄だ。大人しく骸の海に還って貰おう」
発砲。それを女は奴隷の襟首を掴んで肉の盾とすることで防いて凌ぐ。すぐさま鞭の反撃が来るがジャックはその軌道を視覚で捉えて躱し――否、躱しきれぬともその胸に湧く勇気と覚悟を信じて身を掠めるそれのダメージを黙殺する。
「痛みや恐怖で戦意が劣えることも、こころが折れることも、当機には決して無い」
『そうですか、ゾンビよりよほど人非人でいらっしゃるんですね!』
毒蛇が得物を噛み殺す如く奔る鞭を小さなステップで回避し、反撃の銃弾をグリップにぶち当て女の手から武器を弾き飛ばす。
『ッ……ちぃっ!』
盾に使われている奴隷の胸に穴が開く。撃たれたのだ。心臓を射抜かれごぽりと血を吐き、痙攣しながら死に――損ねる奴隷。
撃ったのはジャックではない。屍商人が盾越しにジャックを撃った。盾となった奴隷の命をすら、ジャックの視界から武器を隠すための捨て駒として使ったのだ。
その為にジャックは躱すことも出来ずに弾丸を受けるが、毒薬を捩じ込むための弾丸は肉を貫通してなお鋼の身体を貫くほどの威力を持たない。
崩れ落ち、みるみる動死体へと変わりゆく奴隷を放り投げ、踵を反して逃げる女。それを追うジャック。
「お前は……部下を無為に使い捨てるとは、思った以上に愚かなようだな」
『無為ではありませんよ。二束三文の売値よりずっと有効な使い方ができました。さあ、貴方達もあの男を止めなさい。死んでも抑え込むのよ』
人の命をほんの一握りの小銭と同価だと嘯いて、震える奴隷に命がけの遅滞を命じて逃げる女。ジャックは奴隷たちに向けて突進し――その頭上を飛び越え、女の背に電撃弾を叩き込む。
ゾンビと言えど神経に出鱈目な電気信号を流されればひとたまりもない。体勢を崩し転倒しかけたその背中へと、鋼鐵の蹄が食い込んだ。
ぼきりと致命的な骨を粉砕した感触。少なくとも脳からの信号は下半身までは行かぬだろう。
死を覚悟して顔をぐちゃぐちゃにしながら命ぜられるままに望まぬ遅滞戦闘を挑む奴隷たちをジャックは無手で相手取り、自由を再び取り戻させるべく彼らの首輪をその手で引き千切る。
「……大きな拠点。かなり堅牢な造り。ここなら籠城戦を選ぶのも正解」
外敵の脅威はよほどの――それこそオブリビオンストームの直撃でもなければ跳ね返すだけの要塞だ。そこに立てこもり、有利な戦場でオブリビオン相手に持久戦を選んだこのベースの司令官は、少なくとも定石を知るマトモな指揮官なのだろう。
「不思議……見ただけであいつがオブリビオンだと分かる」
そして、その堅牢な要塞を内部から崩壊に導こうとしたあの女も、厄介ながら上手い策を使うものだ。
下半身を引きずるように文字通り地を這って逃げようとする女。ゾンビ掃討に乗り出した人々は、その姿に意識を向けていない。危険度の低い、無力化されあとはトドメを刺されるばかりのゾンビだと誤認されているのだろう。
如何にも今から殺しにきますと言わんばかりの五体満足のゾンビどもを前にすれば、実際の脅威度など容易く引っくり返ってしまう。ゾンビを生み出す元凶よりも、目の前のゾンビを優先して叩いてしまうのは心理的に仕方のないことであり、彼女――アビーにも責められることではないだろう。
ただ、自分が戦闘から一歩引いた立ち位置を守っていたから見つけられたのだ。騒乱を盾に逃げ延びようとする諸悪の根源を。
拳銃の安全装置を外し、スライドを引いて弾を撃てるようにしておく。そうして靴底で床を打ちながら、這ってでも落ち延びる強靭な生存本能――いや、その胸中に在るのは自身の保存より人々への復讐心だろう――の持ち主である女の前に立つ。
『――猟兵!』
「あなたの作戦は上手い手だったと思う。うん、私もあなたの立場ならそうする」
いきなり何を。突然称賛を送る敵の姿に目を丸くした女の頭蓋に、冷たい銃口が突きつけられる。
「でもグリモア猟兵に見つかったのが運の尽き」
銃声。銃声。銃声。銃声。銃声。銃声。
銃声。銃声。銃声。
――銃声。
弾が尽きるまできっかり十回、弾丸をその腐りながらも怜悧だった脳に叩き込み、アビーは弾倉を取り替える。
「驚いた」
残弾を回復した拳銃をホルスターに収めたアビーが見たのは、頭部を損壊させもはや正常な思考など不可能であろうにも関わらず、這い進もうとする屍商人だったものの姿。
それは何処に向かうべきかすら思い出せぬのか、まっすぐにアビーに向かって――崩れた頭がニヤリと笑った気がした。
「……まだ生きて、っ!」
生きていることへの驚きはすぐさま脅威への認識へと切り替わる。
幾重にもこのベースの避難民達を陥れる策を弄する女が、その身一つで袋小路に追い込まれたときの備えをしていないはずがない。
アビーの爪先が女を蹴飛ばし仰向けにすれば、やはりというべきか奴隷たちに仕込まれていたのと似たような爆弾を彼女もその腹に巻いていた。
解体は間に合わない。威力や効果がわからない以上、屋内であるこの要塞内で不用意に動かしたとしても無意味な可能性がある。それこそゾンビ化薬を散布するための爆弾であれば、要塞内の空調システムに通じるどこで自爆されても致命傷を負わされる。
無力化するしかない。ナイフを抜いて、アビーはまだ若いが為に足りているとはいい難い爆弾処理の知識と経験を信じてその刃を爆弾に振り下ろす――
●
施設内のゾンビは掃討されつつあり、被害は――避難民が受けたものを思えば決して軽微とはいい難いが、外のオブリビオンに反攻する主力たる元軍人たちはほぼ無傷。
そして彼らと避難民を隔てる亀裂も、完璧ではないにせよ補修されている。
反撃は此処からだ。屍商人どもは前座、本当の闘争はこの先にこそ秘められているのだから。
だが、少なくとも元軍人たちとの意思疎通が成り立つまでのごく僅かな時間だけでも、勇敢に戦った者たちへの休息が必要だ。猟兵たちは率先して身体を休めることで、来る決戦に向け英気を養うのであった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
第2章 集団戦
『黙示録教の信者』
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POW : 【黙示録教の信仰】我らガ祈りを聞き届ケ給ヘ!
【常人には理解不能な狂った教義と信仰】を聞いて共感した対象全てを治療する。
SPD : 【黙示録教の崇拝】我ラが願イヲ聞き届け給え!
【常人には理解不能な狂った教義と信仰】を聞いて共感した対象全ての戦闘力を増強する。
WIZ : 【黙示録教の殉教】幸福なル滅びト終焉ヲ此処に!!
【心臓と同化したオブリビオン爆弾による自爆】が命中した対象に対し、高威力高命中の【疑似超大型オブリビオン・ストーム】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
イラスト:嵩地
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●
「経緯は理解した。我々の初動が遅れたばかりに、というと傲慢かもしれんがもっと早く増援を回せていれば事態収拾も迅速に行えただろう。こちらの不手際で犠牲を増やしてしまったことを謝罪する」
屍商人が死に、殆どその直後と言っていいタイミングで駆けつけた増援の兵士たち。
そのリーダーであるマイヤーズ中佐は、制帽を脱いで避難民たちに深く頭を下げた。
「…………いや、いいんだ。気にしないでください。俺たちはあんた達を信じきれなかった。そんな俺たちを外の連中から精一杯守ってくれたのはあんた達だって思い出したよ。そりゃあ、もっと早く来てくれれば死んじまった連中も此処に居られたかもとは思うがね。たらればで恨み言を言ってちゃあまた良いように騙されちまう。来てくれてありがとう、兵隊さん」
避難民のリーダーもまたマイヤーズに深く頭を下げ、両者の和解は成立したのだろう。
勝利の熱狂の中で、落ち着いてから自分の身勝手さやそれが故に起きてしまった惨劇に巻き込まれた命を想い、どこかやるせない空気を纏っていた人々も、それを見て息を吐き、それから闘志と生気を漲らせた表情で君たちを見る。
「猟兵、だったね。君たちの戦闘能力無くしてオブリビオンの鎮圧は困難だったろう。救援に感謝する。感謝ついでに厚かましい頼みだが、反攻作戦に協力しては貰えないだろうか」
もとよりそのつもりで来たのだと猟兵たちが頷くと、マイヤーズはびしりと敬礼して制帽を深く被り、副官の少尉に要塞の見取り図を取ってこさせる。
それを適当なコンテナの側面に貼り出して、老練の中佐はこの要塞の状況を説明する。
「このマウンテンC要塞はかつて空軍司令部の退避壕として使われていた基地施設だ。強力な広域破壊兵器の直撃はもとより、敵勢力が本土上陸を果たした場合の籠城も考慮して出入り口は厳重に防御された正面トンネル一つに絞られている」
このメインホールから出て少し、要塞メインゲートから外部に通じるたった一本のトンネル。それが要塞と外界を繋ぐ唯一のルートとなる。
「敵は現在、我が軍の計画的後退によってこのトンネルの2/3地点まで侵攻している。必然的に敵の大勢力は縦に伸び、正面に掛かる圧力は全ての敵を面で相手せねばならない野戦と比較するべくもない薄弱なものだ」
少数で防戦が成立しているのもその証拠。敵を引き込みすり潰しながら引き籠もれば、勝ちもしないが負けることはないとマイヤーズは断言してみせた。
「だが我々は勝ちに行く。猟兵、君たちの戦力を借りればそれが出来る」
真っ直ぐに猟兵を見据えるマイヤーズの瞳。そこに嘘の色はない。勝てる。いいや、勝たせてみせる。猟兵にも伝播するその闘志は、彼が纏う一軍の将としての責任感と自信によるものだろうか。
「猟兵を先鋒に据え、君たちが敵陣を切り裂く。我が軍がその傷口を押し広げ、そして――民間人諸君、君たちにその維持を頼みたい」
銃を手に兵士と並んで戦えとは言わない。多少の撃ち漏らしが在りうる以上、その機会があり得ないとは言わないが、基本的には補給物資を要塞から前線まで届ける輸送と負傷者への応急処置や要塞医務室までの搬送が任務だ。その言葉に避難民たちも頷いた。
「虎の子の戦車中隊はトンネル内での機動戦に向かない以上、外での決戦に備えて温存する。戦車の支援無しで敵陣を貫かねばならない猟兵の諸君には辛い戦いを任せる事になるが、頼めるか」
その言葉に尻込みし、怯えるような者ははなからこの戦場に飛び込んだりはしない。案ずるなと笑う猟兵たちに、兵士たちはその強さに感服したように口笛を吹いて歓声を上げる。
「――ありがとう。作戦開始は明朝、前衛を猟兵、中衛を少尉率いる歩兵部隊、後衛を民間人からなる支援部隊としてこの要塞からの反攻作戦を開始する。ゾンビとの戦闘の疲れを少しでも癒やして事に当たって欲しい。以上!」
山猫・ラン子
ゴン(f24586)と行動
やっと統率がとれてきたみたいね?
人間ってほんと犬以下ね。
え?ちゃんと身体洗ってるわよ!?(ガーン)
あ、私じゃないのね。ふ、ふん
・ゴンにデコトラを量産してもらう
・デコトラの荷台に漆黒の堕天使【アイテム】忍ばせる
「プレゼントよ」
・容赦のない無数のデコトラによる敵陣突撃
・その様子をゴンの頭の上に顎を乗せつつ双眼鏡で確認「ヒット」
・確認後ラン子UC発動。ドローンを増やして轢き殺せなかった残りを無数の機銃での蹂躙を開始
・混乱の中、ラン子近くにある土台【アイテム】に置いた煉獄を招く悪魔【アイテム】で【スナイパー】
散りなさい有象無象。煉獄の炎の中で(キリッ
(アレンジアドリブ歓迎!)
龍神家乃・ゴンちゃん
山猫・ラン子ちゃん(f24742)と協働
※アドリブ歓迎
■目的
露払いと道を作ることを任として行動する。
「ランちゃん、変な匂いしてるでし。くちゃ!」
UC【ゴンちゃんとはたらくなかまたち!】を使用し、
愛用の柴犬の顔がついたデコトラをレベル分複製し、嫌な匂いの元であるゾンビへとぶつける。
※荷台にはランちゃんの武器?アイテム?を積んでいるが、何かはゴンちゃんは知りません。
「ランちゃん、後ろに何積んだでし?」
■ゴンちゃん
オリジナルのデコトラ内にて待機
生身での戦闘力は低いため、負傷者や補充用のアイテムなどの運搬を買って出る。
「今後もごひーきに!」
鎧坂・灯理
戦線が縦に細長く伸びていて、トンネル内
つまり飛んで逃げることもできない、と
ふぅん?なら少し面白いことができそうだ
起動――【過去からの贈り物】
以前、SSWで惑星規模のオブリビオンと戦ったことがあってな
当然宇宙船にも巨大な電磁砲が付いていたんだ
それをここに再現しよう サイズ的に一基が限界か
思念エネルギーを『鸞鳥』で電力に転換し起動する
さすがSSW、起動準備が速いな
射線を開けろ!
ぎゃあぎゃあ喋くってる馬鹿どもを一掃するぞ!
シキ・ジルモント
◆SPD
こちらの力を認めて任せてくれるというのなら、その期待に応えられるよう努めよう
交戦中は中衛の歩兵部隊との連携を意識する
リロード等の隙は兵士の援護も受けて埋め、積極的に攻撃を仕掛ける
教義を語る信者とそれによって強化された信者をユーベルコードで攻撃する
狙うのはその頭部、急所を狙撃し速やかに黙らせる(『スナイパー』)
戦闘力の増した敵とその原因を優先して潰す事で、兵士を含む味方への負担と被害を減らしたい
接近されたら進路を塞ぐように割り込み、『カウンター』で敵の方へ蹴り飛ばして味方から遠ざける
先の敵のように爆弾でも隠し持っているかもしれない
反撃や自爆を警戒して味方から遠ざけ、改めて銃で追撃を試みる
ダビング・レコーズ
これがオブリビオンが内部工作に及んだ理由ですか
確かにこの防衛線が敷かれたトンネルを突破する事は不可能に近いでしょう
通常の歩兵戦力ならばですが
【レコードセーバー・SPD・アドリブ連携歓迎】
最前線で当機自身を遮蔽物とし友軍の進攻を支援
前線を押し上げます
システム、ディフェンダーモード
EMフィールドを正面に集中展開
スヴェルを構え防御態勢を維持したまま前進
強引な突破を試みる目標はシールド打突で弾き返し阻止します
その際には極短距離を瞬間的に急加速
速度を相乗させ打撃力を増強します
防御行動を最優先としますが猶予が在れば攻撃を実行
セントルイスの照射モードで敵前衛を薙ぎ払います
リジューム・レコーズ
今度はこっちが反撃する番ですね
数じゃ不利ですけどこの戦闘領域の状況なら大丈夫
攻撃を正面に集中できるなら負ける理由なんてない
【レコードセーバー・POW・アドリブ連携歓迎】
最前線で敵部隊を排除しつつダビングを遮蔽物にしながら前進します
敵の総数はどれ位なんでしょうか?
弾薬が持つか心配ですね
この世界にジュノーのマガジンバッテリーがあるとも考え難いですし予め武器を借用しておきたいです
ガトリングガンや設置式の機関砲など威力が高く装弾数が多いものがいいですね
重量が大きく反動が強くてもパワーアシストギアを起動しておけば運用に問題はありません
徹底的に制圧射撃して進路を切り開きますよ
ユエイン・リュンコイス
●連携アドリブ歓迎
神、神か。うん、良いだろう。求めるのならば応えよう。尤も、望んだ通りの存在かは保証しないけれどね。
まずは榴弾を込めた『月墜』を機人に構えさせ【スナイパー、範囲攻撃】でトンネル内を砲火力で埋め尽くす。密閉空間内で火薬が爆発すればどうなるか、身をもって体験してもらおうか。
ただ、彼らは心臓と同化した爆弾によってオブリビオンストームを起動させる。その破壊力は榴弾以上だろう。だから…それ以上の威容を以て食い止めようか。
UC起動。戦闘によって通路内も崩壊しているだろう。それらを素材に機械神を形成。通路を支えつつ前へ。巨躯と硬度に任せて押し留める。
これが神だ。さて、お気に召してくれるかな?
アイ・リスパー
【PPP】
「戦場はトンネル内部ですか。
少数で大戦力を押し止め撃滅するには申し分ない地形ですね」
そして戦車では活躍できないというならパワードスーツの出番です!
【クラインの壺】で電脳空間から実体化させたオベイロンを【ビルドロボット】で変形させて乗り込みます。
「これこそ戦車形態が苦手とする戦場に対応するためのパワードスーツです!」
トンネルの崩落を避けるため主砲やミサイルは使わず、ロボットアームとプラズマブレードで接近戦を挑みましょう!
狂信者はすべて凪ぎ払ってあげます!
「疑似オブリビオンストーム!?
そうはさせませんっ!」
機体がボロボロになるのを覚悟して自爆する信者に覆い被さるように攻撃を受け止めます。
フィーナ・ステラガーデン
【PPP】
キシャー!!結局鬱憤を禄に晴らせなかったわ!
んん?ここだと遠慮なくぶっ飛ばしていいのよね!?
私暴れていいわけよね!?任せなさい!トンネルごとぶっ飛ばしてやるわ!!
え?駄目?・・・頑張るわ!!
ってわけでガンガンいくわよ!
こんな逃げ場所も無い一直線の道なんて
まさに私達魔法使いの出番じゃない!
イデアールのレーザーに合わせて私もスペシャルなの(UCです。)を打ち込むわ!
なんか教義とか信仰とかのたまってるらしいけど知ったこっちゃないわ!
一撃で消し飛ばせば何も問題ないわね!!
でもこれ一直線のトンネルよね?熱波がこっちにまできそうなら
ビードットの後ろかブラックオニキスの盾で防ぐわ!
(色々大歓迎!)
イデアール・モラクス
【PPP】
クク…首尾は上々、貧乏籤を引き受けた甲斐はあったか…まぁ憎しみの瞳もまた私を熱くさせるがな!
・合体究極魔法
「さぁここからはお愉しみの時間だ…破壊して!蹂躙して!殲滅してやるぞ!フィーナ!」
魔導ビットを放ちビーム『乱れ撃ち』で敵を牽制しつつフィーナと共に合体究極魔法を詠唱開始、UC【七星覇天煌】を『全力魔法』と『属性攻撃』で威力を増した上で『高速詠唱』を用い練り上げ、フィーナと共に合体究極魔法として放ち、膨大な魔力光線の『一斉発射・制圧射撃』による『範囲攻撃』で眼前の敵勢を跡形も無く『なぎ払い』『焼却』し『蹂躙』する。
「スーパーフィーナイデアールレーザー!」
※アドリブ大歓迎
アリシア・マクリントック
【PPP】
長期戦となるのであれば士気の維持が課題になりそうですね。猟兵が協力しているという事実だけに頼るというわけにもいきません。それなら私の役目は……
変身!セイレーンアーマー・神話形態!私の歌でみなさんを勇気づけます!
「♪さぁ手を 取り合い開いた 世界を映すのは 他の誰でもない 私だと叫んで」
戦意高揚を主に行いますが、それだけというわけではありません。上空から敵の後方へ向けて突撃からの一撃離脱を繰り返して敵陣の撹乱、後方へ流れた撃ち漏らしの迎撃などの戦闘面でのサポートも適度に行います。
ニーケーのようにみなさんに勝利をもたらしてみせましょう!
ビードット・ワイワイ
【PPP】
見たり見たり見たり、汝の破滅を見たり
破滅に恐怖し心を壊し、狂いし教えに縋るは
現実からの逃亡か。全てを忘れ楽になりて最早救えぬ
狂信か。そこまで狂えば苦しみも無かろう
数で攻める者には蹂躙見せよう。ここが汝の破滅なり
トンネルならば進む道も戻る道もただ一つ
既に狂っておるなら、汝ら進むしか知らぬであろう
憐れな人形。無惨に散りて屍を晒せ
我は増える、膨大にどこまでもどこまでも
3969体の小型の我々は前進する、前へ前へ
足を掴み引きずり倒し潰し潰し念入りに乱暴に
引き潰すべし引き潰すべし
これが数の驚異なり。矮小なりし存在であろうと
数集まれば群をも潰す。単純なりし攻撃が
戦況変える一手となりけり
四宮・刀真
【PPP】【黒代朝希】
では、シャルロットから電脳魔術の影響のある端末を受け取って性能発揮の仲介となり、歩兵部隊と支援部隊を護衛し潤滑かつ高成果な支援を出せるようにする。
また、ユーベルコードとして作戦開始前の夜の間に歩兵部隊と支援部隊のメンバーに予め接触、会話から人物像や嗜好等を知り、全員に最適な『物語』を見繕うことで各員の能力を十二分以上に発揮させる。
時折無線から戦線の状況を聞き、オブリビオンストーム発生の兆候が感じ取れたら阻止される物語を執筆して阻止しようとする。
シャルロット・シフファート
【PPP】【黒代朝希】
刀真から応援として決戦前夜にグレムリンに搭乗し参戦。
作戦では知人のアイと一緒に共闘。
前に聞いていたパワードスーツの力に感嘆しながらもグレムリンの炉心から純粋属性魔術の出力を確保。
その出力を威力でなく精密動作性に注ぎ込みユーベルコードを起動する。
属性武装を放射してトンネルの壁を損壊させないよう精密に照準操作をしながらレーザー砲のように纏めて薙ぎ払っていく。
合間を見て確実に余裕と安全が確認出来たら刀真に持たせた端末越しから歩兵部隊と支援部隊にグレムリンの機能を解放して支援を潤滑にする。
囁石灯・銀刃郎
まともな宗教家がいるのは知ってるけど、
こーいう手合いはどうしてこう、うるさいのかしら。
手近な敵に自動拳銃で【制圧射撃】。
銃撃で負った信者のキズが彼らの言葉と共に癒えるのをみる
――直った、なら…―と同時に、
信号拳銃を引き抜き装填していた炸薬榴弾を発射、
爆発で頭を【吹き飛ばし】攻撃。
――直るより先に殺る!
銃火器から刀に持ち替え、
【ダッシュ】速攻、敵の元へ踏み込み『銀光流閃』
信者の胴体を超高速の抜刀術で【なぎ払い】切断。
自身の間合いにいる敵の数、動きを【見切り】攻撃を回避、
一呼吸事に【早業】で信者達の首や胴を斬り飛ばし、
致命傷を与えながら敵陣を押し返す。
……ゼンイン、コロス。
アンナ・フランツウェイ
追撃を軍が担当してくれるならこっちも戦いやすくなって助かる…。前線の敵は私が受け持つから、背中は任せたよマイヤーズさん!
再度シンズ・ブレイカーと【血液媒介装置】を接続し、【スカーレッドウィング・エンド】を起動。今度は文字通り致死量ギリギリまで展開、【捨て身の攻撃】【範囲攻撃】で血の翼となってオブリビオンをなぎ倒していこう。
疑似オブリビオンストームが放たれても、迷わず突き進み【捕食】機構での捕食を試みシンズ・ブレイカーの動力源へ変えていこう。
UCが切れたら後は【激痛耐性】で意識を保ちつつ、【吸血】しながら戦闘を続行。体力の続く限り戦い続ける。
「ま…、負けてたまるか…!この世界の残酷さに…!」
レナ・ヴァレンタイン
※他猟兵との絡み、連携歓迎
この唯一の侵入口を攻め上がれとは無茶を言う
――よろしい、指揮官命令だ
さあ戦争といこうか!
ユーベルコードで銃器、近接武器、バイクを複製
まず兵士に頼んでバイクには遠隔爆破装置を積ませて発進
敵陣の厚い場所に叩き込んで爆破し、敵陣に切り込みを入れる
次にガトリングと重機関銃による弾幕形成、マスケットとリボルバーによる精密射撃、アームドフォートによる障害物ごとの敵排除
ダメ押しにナイフとフォースセイバーで残敵掃討
無駄に口を開こうとする敵から始末する
下らん演説を聞かせんための爆音と炸裂音と銃声だ
仲間には当てん、【援護射撃】と【スナイパー】は得意技なのでね
なので遠慮なく突っ込むがいい!
エドゥアルト・ルーデル
トンネルで防戦、実に手堅いでござるね
手堅いんだけどそれはそれとして野戦してぇ、さっさと片付けて地上に出てぇな
宗教キチの自爆攻撃って面倒でござるよね
イカれたヤツの相手をしたくない気持ちをコントロールできないので手持ちの【UAV】と【小型爆撃機】をトンネル内に投入でござるよ
何させるかって?敵も使ってる通り今のトレンドは自爆攻撃がホットなんですぞ、このUAV達に自爆攻撃をさせるんだよ
トンネル内なら逃げ場も無いしお手軽だからネ
大体特攻合戦が終わったら生きていようが死んでようが関係なく心臓か頭を銃撃して止めを刺しておきますぞ
仕上げを雑にやると面倒だからな…
ふーむ…今度は人間だけを殺す機械でも作ろうかな…
ジュリア・レネゲード
成程、先陣の猟兵が陣を押し広げるのね
だったら――私は正面切っての殴り合いは苦手なのよ。嫌いじゃないけど
グリュプスを複製し全域に展開、
トレーラーに管制機能を設けて逐次状況を把握する。
目的は戦線の維持――そこから弾の補充に情報の共有、
車体を盾にして防衛戦に輸送の護衛と、やる事に溢れているもの
前線は精鋭の猟兵に任せて、中盤の損失を出さない様立ち回るわ
という訳でグリュプス、ちゃっちゃと行くわよ
――了解。ユーベルコード起動、複製……展開
それじゃ私はアクセル全開!
自爆してくるなら爆発する前に跳ね飛ばしてやるわ!
半端に生きてたらオマケの手榴弾を喰らわせて
それでも生きてたら散弾銃の餌食よ
スラッグでぶっ飛ばす!
ジャック・スペード
先鋒は任された
共に勝利を掴み取ろう
引き続きリボルバーからマヒの弾丸を乱れ打ち
迫り来る敵の足止めを狙いたい
其れでも向かって来るなら、広範囲に炎の弾丸をばら撒こう
討ち漏らしは後方へ向かわぬよう怪力で捕まえつつ
リボルバーで零距離射撃して各個撃破を
教義と信仰を語ることで敵が強化されるなら
その口が語る言葉を銃声で打ち消してしまおうか
片腕を機関銃に代えて、教義を語る敵を中心に
再び炎の弾丸を乱れ打ちたい
軍人や民間人の犠牲は抑えたい所だ
彼等が危ない時はこの身を盾として庇おう
誰一人として死なせはしない、アンタらの事は必ず守る
だから、もう少しだけ共に戦ってくれ
そう励ましつつ、損傷は激痛耐性で堪えてみせよう
アビー・ホワイトウッド
アドリブ、連携歓迎!
兵士の士気は高い。ここは勢いで押すのが正解、かな。
それでは先鋒ということで私も前に出よう。敵の数と装備の質によってはトンネル内の戦いは少し面倒かもしれない。
…一気にカタをつけよう。
背負って持ち込んでいたグスタフM4無反動砲を準備する。
弾頭は榴弾。着弾地点から向こう側を消し炭にしてやる。
準備ができたら照準、発射はやや後方から行う。
一緒に戦っている仲間が居たなら警告。
猟兵は下がって。奴らを吹き飛ばす。
猟兵の退避完了後グスタフM4から榴弾を発射、敵を排除する。
撃ったら拳銃とナイフで武装してUC発動、生き残った敵を片付けに行こう。
●
バリケード代わりに配置され、機銃掃射でオブリビオンの侵攻を食い止めていた戦車が後退してゆく。
その傷つきながらも任務を果たした勇姿とすれ違い戦場に繰り出した猟兵達を迎えるのは、遥か向こう、肉眼では見ることも難い出口に至るまで凄まじい密度で犇めき合う黒いローブの群衆だ。
『黙示録を!』
『死にゆく世界に終焉を!』
『其は戦によって齎されん!!』
――黙示録教団。
オブリビオンストームによる破滅の中で、それを救いとして捉えてしまった狂える人々の成れの果て。
世界の破滅をこそ救済であると唱える彼らは、教義を掲げ未だに世界にしがみつき必死に蘇生を試みる人々を諸共に滅ぼすことをその命題としている。
その黙示録教の分派の一つ。それがこの要塞を包囲している敵の正体であった。
『戦死を! 戦死を! 戦死を!』
『尊き戦死者の魂を骸の海に捧げよ!』
『戦え、戦え、戦って死ね! 名誉ある死を主オブリビオンストームに奉じよ!』
その群衆を前に辟易するエドゥアルトは、だが彼らがただのカルトに汚染された衆愚であるという認識を改めた。
「宗教キチってだけでも面倒なのに一端の訓練積んでやがりますぞコイツら。えっ軍人崩れか何か? イカレ軍人とかマジで面倒でござるな……」
その群衆は統率されている。ただ押し寄せるだけの集団であれば、今頃いくらかは味方に踏み殺されていたはずだ。だが彼らにはそれがない。兵士たちの迎撃で息絶えた屍は容赦なく踏み砕いて進軍するが、その速度は極めて一定であり制御されたものだ。何より、手にした旧式の小銃を扱う手付きローブの端から見え隠れする軍用の装備のあれこれが素人集団ではないと言外に仄めかしている。
「ええー、装備はショボいし統率取れてるっても行進レベルでござるけど。これ全部相手すんの? 拙者たちが? マジで?」
そもそもエドゥアルトとしてはさっさと野戦に打って出たいのだ。トンネルで敵の戦力を限定して防戦という戦術は手堅く妥当だが、それ故にヒャッハー出来る余地に乏しい。変な真似したらトンネル崩れるしね。
「イヤイヤしててもしょうがねぇな。さっさと片付けて地上に出るか」
「そうだな。何、戦線は縦に長く伸びていて此処はトンネル内。上下左右は塞がれて逃げ道も無いということだろう?」
がちゃがちゃと機材を並べるエドゥアルトの隣で肩を並べる灯里は、コートの裾を翻して堂々と敵軍の前に立つ。
「面白いことができそうな戦況じゃないか」
このトンネルを「戦場」ではなく「射線」と捉えた時、全ての敵は射線上に収まる。
灯里の理屈はこうだ。が、生半な火砲では狭いとはいえ巨大なトンネルを薙ぎ払うような砲撃は放てまい。
「――手を止めずにそのまま聞いてくれ。以前私はSSWで惑星規模のオブリビオンと戦ったことがあってな」
「クエーサーなんたらでござるか? アレやべーよね。で、いまどうしてその話を?」
「何……思い出しついでだよ。あの時の宇宙船にはこんなものが付いていた」
想起するものは巨大な砲塔。SFじみた銀の鋭角に、突き出した三本の棒は開放式バレル――砲身だ。その間に電光を迸らせるそれは、遥か宇宙文明の作り上げし巨砲。戦艦クラスの大型単装電磁投射砲を背に、灯里は不敵な笑みを浮かべる。
あの人智を越えた巨大生命体、クエーサービーストには効果的でない通常兵器でも、戦車隊で足止め可能な――生身の人間とさして変わらぬ耐久度しか持たぬ教団信徒どもを一網打尽に殲滅するには十二分の威力を持つだろう。
「ヒューッ。この艦砲大きいナリィ……でも鎧坂殿、こんなデカブツホントに運用できるんでござるかぁ~?」
機材を展開し終え、ラジコンめいた小型のドローン飛行機を順次飛ばしながらエドゥアルトは問う。どうにもこれだけの巨大兵器となれば、発射までに相応の時間が掛かりそうに見えた。一射で敵陣を殲滅しうる超兵器でも、その一射までの時間を稼ぐべく戦う必要はあるだろう。
「普通に使おうと思えば困難だろうよ。だが私には鸞鳥がある。思念エネルギーの扱いもあの世界の十八番だろう?」
心身に巡る想念を電力に変換する。灯里の想いがエネルギーとなり、巨砲は発射体制を整えていく。
――さすがSSWの技術、起動が早いな。
――さすが早いでござるけど、だがまだ足りねぇな。
二者の評価は相反す。確かに電磁投射砲の起動はこの世界の類似兵器と比較すれば格段に早い。だが出力はあくまで人一人分だ。――足りないのだ、エネルギーが。灯里の膨大な思念エネルギーをして、味方の迎撃を突破した敵が取り付く前に実用圏内で射撃するならば敵の半数撃滅――上手く行って五分の四程度の撃滅に留まるだろう。
トンネル外にまだ余剰戦力が待機している可能性も鑑みれば、可能な限りフルチャージで多くの敵を巻き込みたいエドゥアルトは、灯里にその旨を説きながら飛行させたドローンに急降下を命ず。
「連中自爆も辞さない感じでござるからな。こっちも今のホットなトレンドに乗って自爆攻撃でお手軽に遅滞攻撃でござるよ。鎧坂殿、なる早でフルチャよろしくネ!」
サムズアップと同時、天井付近を飛行するドローンが敵陣の前衛へと飛び込み爆ぜた。
『終焉だ!』
『我らの求むる救済は此処に在り!』
『走れ走れ走れ、滅びを享受せよ! 救い知らぬ哀れな子羊に滅びを分け与えよ!』
そのカミカゼ爆撃を潜り抜け、傷を負っても一切足を止めること無く走る信者たち。
唱える聖句と信仰で身体能力の限界を超え、ただの一人でも敵陣にたどり着かんと走る彼らの望みはまさにエドゥアルトの指摘どおりの自爆だ。
心臓と同化したオブリビオン爆弾による自爆。それは巨大な疑似オブリビオン・ストームを生む最悪の兵器。生きてたどり着いた時点でそれが発動するとなれば、迎え撃つ側も必死となろう。
「げえっ案の定自爆かよ!」
「くっ……エドゥアルト貴様、まだ撃つなと言ったからには砲を守って見せろよ!」
「あーもうわかってるでござるよォ! 今度は人間だけを殺す機械でも作ろうかな……」
小銃弾で狂信者の頭を吹き飛ばし心臓を破裂させて自爆を望む群衆を押し止めるエドゥアルト。ドローンの爆撃で数を減らしたとはいえそれでも次から次に飛び出してくる彼曰くの宗教キチの常軌を逸した特攻に、エドゥアルトは狂人の相手をしたくない気持ちをコントロールできない。
――だから。
「えっなにこれ」
電磁投射砲の脇をすり抜けて、押し寄せる群衆に突撃していく――可愛い柴犬の顔が描かれた犬小屋付きトラックとしか言いようのないなにかに目を丸くした髭面は、思わず銃撃の手を止めてしまう気持ちもコントロールできなかった。
「ランちゃん、変な匂いしてるでし。くちゃ!」
次々敵陣に突っ込んではヤバ気な音とともに狂信者どもを轢いていくデコトラを、同型のトラックのダッシュボードに顎を乗せた柴犬が眺めている。
「え? ちゃんと身体洗ってるわよ!?」
その柴犬の頭の上に顎を乗せて、ブレーメンめいた姿勢で双眼鏡を覗くのはショックを受けた様子の黒猫。
龍神さんちのゴンちゃんと野良の自称山猫、ラン子である。
「ちがくて。ランちゃんはランちゃんの匂いでし」
くちゃなのはあっち、と肉球でフロントガラス越しにオブリビオンの集団を指すゴンちゃんに安心した様子のラン子は、紛らわしいのよとゴンちゃんのおでこの真ん中あたりを前足でぐにぐに。
「ふ、ふん。私じゃないならいいのよ。……またヒット」
何台目かの複製暴走トラックが狂信者を吹っ飛ばしながら敵陣突入したのをゴンちゃんに告げれば、それと同時に最終便が出発、突入していく。
「これで最後でし。そいえばランちゃん、出発前にごそごそしてたけど後ろに何積んだでし?」
「プレゼントよ」
素っ気なく答えたラン子は、ゴンちゃんの頭から顎を下ろしてひょいと運転席の窓から抜け出してゆく。
「プレゼントでしかー。ボクもプレゼント欲しいでし」
お気楽なゴンちゃんにしっぽをゆらりと適当な返事を返し、ラン子の仕込みが発動する。
突入した十台のトラック、その荷台からは肉球マーク入りのドローンが飛び立ち、今度は機銃掃射で轢殺や爆撃を逃れた信者たちを迎え撃つ。
あくまでドローンの装備だ。弾数も多くなければ威力も低いが、頭上からの銃撃はこれが気持ちいいほどに頭によく当たる。
戦死を望みながらも無抵抗での殉死を望まぬ狂信者たちもこれを迎え撃って交戦を開始し、彼方での戦闘は対空戦の様相を呈し始めていた。といってもトンネルの天井までの高さ、さほど高度が取れない以上はドローンが撃墜されるのも時間の問題だろう。
だが。
「降車降車降車! 駆け足!」
ゴンちゃんトラックの荷台、犬小屋めいたそこから次々降り立つフル装備の兵士たち。彼らが戦線に加われば、時間稼ぎはより盤石になるだろう。
「って待ちなさいよ。頼んでたやつちゃんと持ってきたんでしょうね」
てしてしと前足でズボンに爪を引っ掛け兵士を呼び止めたラン子に、その若い男性兵士は一瞬「ネコチャン!」という顔をしてから表情をきりりと引き締める。
「勿論。少尉からも猟兵のオーダーは確実にこなせと言われてるからね。あれでいいのかい?」
兵士の指差す先にはラン子愛用の土台とそれに据え置かれたロケットランチャー。
「やっと統率がとれてきた犬以下の人間にしちゃ上出来ね」
つんとお澄まし、お礼の一つもなく兵士に背を向けるラン子だが、当の兵士的にはそういうクールなところが可愛いらしい。後で猫じゃらしさせてくれないかなってつぶやいたら振り向きざまに睨まれた。
さておき、可愛いトラックによる情け無用の轢殺とかわいいドローンによるこれまた無慈悲な空襲に突撃の足を止めた敵集団。それをロケットランチャー……彼女曰くの煉獄を招く悪魔で狙い、ラン子の短い猫指が引鉄を引く。
「散りなさい有象無象。煉獄の炎の中で」
キリッ。放たれた弾頭はひるひると蛇行しながら敵陣中央に着弾し、信者共を纏めて吹っ飛ばした。
「ランちゃんランちゃん。れんごくって何でしか?」
「……う、うるさいわね!」
「ゴーゴーゴー! 戦線を上げろ! レールガンに取り付かせるな!」
『闘争を! 闘争の果ての救済を! 進め進め進め、戦死こそ黙示録に記された救いなり!』
「撃て撃て撃て撃て! 補給の事は気にするな、弾も薬もあのパピーちゃんと避難民が運んできてくれる!」
『殺せ殺せ殺して死ね! 我らの幸福は奴らが齎してくれる!』
移動式のバリケードから突き出した自動小銃がローブ姿をなぎ倒し、単発のボルトアクションライフルがその弾幕に隙間を穿つ。
兵士たちと狂信者どもの銃撃戦はじりじりと最前線を押し上げていくが、やはり猟兵のように一網打尽に大きく前に出るには至らなかった。
いや――猟兵が担う戦線の突出部分と比較すると、進退は互角――押せば引き、引けば押し返すようなシーソーゲームの様相を呈しつつある。
「それでも耐えろ! 猟兵連中が出口までブチ抜いてくれる。それまで耐えれば俺たちの勝ちだ!」
「――その期待に応えられるよう努めよう」
激しく撃ち合う兵士たちに投げかけられる声。同時に銃声が響き、正面でバリケードを釣瓶撃ちにする信者どもの頭が爆ぜた。
「こちらの力を認めて任せてくれるというのなら、俺もあんたたちの力を信じて協力させてもらう」
続けざまのヘッドショットで救援を果たしたシキは、そのまま拳銃を手にバリケードの前に出る。
「あんたたちのリロードの隙は俺が埋める。だからあんたたちは」
「……ああ、任せろ!」
シキの言わんとするをすぐに理解した兵士たちは、手早く弾倉を交換して今度は慎重に、狙いを定めて確実に敵を討つべく射撃を開始する。
弾幕で抑え込む必要はなくなった。猟兵が共に戦ってくれる。彼らは自分たちを見捨てはしない。その信頼感と安心が兵士たちの力量を最大限に発揮させてくれるのだ。
そしてその戦線に加わる影がもう一つ。
「追撃と戦線維持を軍がやってくれるなら戦いやすくなって助かる……その代わり前は私が受け持つわ。背中は任せたわね!」
信仰を唱え、一人前に出たシキを取り囲む信者たちへと躍りかかる小柄な影。
緑髪の少女が断罪の偽神兵器シンズ・ブレイカーを再び己の肉体に接続し、噴出する血液の翼を広げて敵へ襲いかかったのだ。
「軍の皆が後ろで支えてくれるなら気兼ねなくやれる。シンズ・ブレイカー、致死量ギリギリまであげるわ。もっと翼を広げなさい!」
翼が更に広がり、速度を増した少女――アンナの攻撃も激しさと破壊力を増していく。
「無茶な戦い方をしやがって」
その鬼気迫る戦いぶりに心配そうな視線を向けたシキへと、言葉ならぬ咆哮を上げて突進する信者の男。小銃を振りかぶり、棍棒のように振り下ろすその目とシキの銃の目が合った。
両手でひたと狙いを付けて発砲。呼吸も挟まぬ一瞬の間に、眼窩を穿たれた信者の男は後頭部から中身を零してひっくり返り動かなくなった。
だがそれも囮だったのか、あるいはそれに触発されたのか。次々突撃してきた信者たちを相手にしては、如何に迅速に正確に頭蓋を射抜けるシキとて対応できる数には限界がある。
一人が生き延びシキへと肉薄する。フードの下の顔がにまりと笑い、ローブの胸元を引きちぎる。
『――救済を!!』
その全身に後背からの弾幕が吹き付けて、穴だらけにして男を撃ち倒した。
「大丈夫か猟兵!」
「カルト野郎ども、俺たちのことも忘れんじゃねえぞ!」
間一髪でシキに当たらぬよう狙いを定めて銃撃した兵士たちが信者共に中指を立てれば、応射がバリケードの表面で跳ねた。
「囮でも何でもやるさ。猟兵、背中は任せてくれよ」
「……そうだな、頼んだ」
本当の意味で背中を預けたシキ。彼がまず取ったのは、単身至近距離で戦い、信者たちに戦死という救いを与え続ける天使の少女へ警句を発することだった。
「――そいつらは自爆をするぞ」
その言葉をアンナの耳が聞き届けたのと、眼前で今まさに頚を刎ねんとした信者が笑みを浮かべて胸を搔き毟ったのは同時だった。
偽神兵器を通じて感じるただならぬオブリビオンの気配。喰らうべき終焉の渦が今ここに現界しようとしていることに、シンズ・ブレイカーの原初の衝動が歓喜し、それを喰らうために力を――血をよこせとアンナに強請る。
致死量ギリギリまで――その言葉を覚えているかどうかすら定かではない、主を殺してでも喰らうという意志に飲まれかけながら、自爆した信者とそこから生じた力の渦へとシンズ・ブレイカーを突き込むアンナ。
鮮血が旋風に巻かれ、滅びの嵐の芽が急速に縮小してゆく――
「分隊一時下がれ! あのお嬢ちゃんを回収するんだ! トラックに突っ込んで医務室までひっぱれ!」
兵士が叫ぶ言葉は、鼓膜を打っても脳までその意味を届けない。
「無茶はよせ、此処は俺とあいつらに任せて休むんだ」
猟兵が差し伸べた手は幾重にもブレて見える。
けれどその何れにも首を横に振って、アンナは痛みという形で全身が脳に叩きつける悲鳴を黙殺して再び武器を構えた。
「ま、けて……負けて、たまるか……! この世界の残酷さに……!」
「……畜生、なんだってあんた達はそんなに無茶するんだ! お前ら気合い入れ直せ、猟兵にばっかりしんどい思いをさせてちゃ何のために此処に居るかわかんねえぞ!」
その少女の痛ましい勇気に応えるためにも、兵士たちは更に戦線を押し上げる。
「私は正面切っての殴り合いは苦手なのよね」
装甲トレーラーの荷台に増設された管制室でモニターの光に照らされて、ジュリアは戦場を俯瞰する。
トレーラーの真上を飛ぶグリュプスが送る映像は、先鋒で戦う猟兵たちの苛烈な戦いを映し出している。
「やれやれ、この唯一の侵入口を攻め上がれとは無茶を言う」
肩越しにモニターを覗き込むレナがぼやく。確かに打って出るなら後顧の憂いを廃した今をおいて他になく、そのためのルートはこのトンネル一本。とはいえこれほどまでに敵が流入した閉鎖空間で、撃退ではなく突破ないし殲滅となればそれは並大抵ではない戦いになるだろう。
野戦で全集包囲されたまま決戦を仕掛けるよりマシな戦況に持ち込んではいるのだろうが、それもマシというだけだ。再前衛で敵軍の圧力を受け続ける猟兵にかかる負荷は想像を絶する。
「とはいえ指揮官命令だ。よろしい、さあ戦争と行こうか!」
「了解、というわけでグリュプス、ちゃっちゃと行くわよ。“荷物”の積み込みは?」
「――了解。貨物の積載は予定の工程を終了しています」
グリュプスが振り向けば、兵士と避難民たちがレナの“荷物”の最後の一つをトレーラーに固定し出発準備よしとハンドサインを送る姿がモニターに映る。
「オーケー、それじゃ私は運転席に移動するわ。レナ、荷台で好き勝手しても構わないけどトレーラーは壊さないでよね?」
修理だって大変なのよ、と釘を刺すジュリアに心得ているともと手をひらひら、レナは管制室の外、荷台に載せられたバイクに跨りエンジンを掛ける。それとほぼ同時に、トレーラーのエンジンも低く唸りを上げて鉄の巨体がゆっくりと――そして間もなく速度を上げて走り出す。
運転席のジュリアにはすぐさま聖句を喚き立て突進してくる敵の群衆が見えたが、ブレーキを踏むどころか一層アクセルをベタ踏みして加速。交戦中の兵士たちを一瞬で抜き去って敵陣に突っ込んだトレーラーが、纏めて十数人を吹き飛ばす。
その衝突の衝撃に車体が大きく揺れたのを合図にレナが荷台から飛び出した。
「ようこそ我らが要塞へ! 盛大に出迎えてやるとも!」
トレーラーから飛び出したバイクは一直線に敵へと突っ込んでいく。だがトレーラーと比較すればあまりにも小さなそれは、激突したとてさほどの破壊力もなければ騎乗するレナ自身も傷つける諸刃の剣。だからレナはバイクを乗り捨てた。
衝突寸前で地面に飛び込み、受け身を取りながら転がるレナ。その視線の先で狂信者に激突したバイクが横転し、そしてレナの手中のリモコンで遠隔爆破される。
撥ねられた同胞を助け起こそうとした者も含めて吹き飛ばした爆発。
それに敵の注意が向いたその隙に、複製されたグリュプスが次々と荷台からレナの“積荷”を運んでは投下していった。投げ渡されるそれを受け取って、立ち上る炎を切り裂くようにレナの攻撃が繰り出される。
ミンチ・メイカーが唸り、電動ノコギリが吼える。ガトリングによる破壊。重機関銃による掃討。
爆炎で抉じ開けられた陣形の穴が大きく抉り取られ、弾切れを起こし銃身を真っ赤に焼き付かせたそれを放り捨てたレナはマスケットやリボルバー、アームドフォートに至るまであらゆる銃砲火器を用いて生き残りを狩ってゆく。
『救済だ! 恐れるなかれ、これぞ銃火の救さ』
混乱に陥った仲間を立て直そうとした信者の胸に風穴が空き、破裂した心臓から内容物を溢れさせながらローブ姿が斃れてゆく。
「下らん演説を垂れ流すな。口を開いた奴から仕留めていく」
――一方、積荷を大放出しつつも敵陣ど真ん中に突っ込んで停車したジュリアのトレーラーには信者たちが集っていた。
銃撃を加え、投石し、銃床で棍棒で拳で装甲を殴りつける様は、昨日要塞内部で戦ったゾンビどもよりよほどゾンビらしいように思える。
思考を停止し、信仰に全てを委ねた彼らはもはや本能に従って活動するゾンビと等しいのかも知れない――再びアクセルを踏み、すぐさまバックして包囲を突き崩しながらジュリアは想う。
それはそれとして窓を開け、グレネードをひょいと投擲。連中は自爆すら厭わないというし、苛烈過ぎるということはないだろう。後退してゆくトレーラーに追い縋ろうとした信者どもが爆発に飲まれ、体中に鉄片をデコレートして倒れる。
それでもまだ、這ってでもトレーラーに取り付こうとする執念深い者には直々にショットガンの洗礼を。戦死が救済だと言うならば、多少癪だが天使になってやろうじゃない。
放たれたスラッグ弾が信者の骸を引きちぎるのを視界から外し、ジュリアは猟兵や物資を輸送するべく再び後方へとトレーラーを走らせる。
「ところで、誰が天使になるというのです?」
運び屋任務を終えて戻ってきたグリュプスの問いに、ジュリアはうるさいと一言だけ返すのだった。
「さぁ手を取り合い開いた世界を映すのは 他の誰でもない私だと叫んで――」
銃声、爆音、怒号と祈りの言葉が木霊するトンネルに響く澄んだ歌声。
「これは……歌?」
「誰が……いや、でも……悪くないな!」
「誰だかわからないが粋な計らいじゃないか。総員歌声に傾注! だが聞き惚れるなよ、聞き終えるまでに死んじまっちゃ世話ないぞ!」
その声を耳にした兵士たちは、心の奥底から湧き上がる力に奮い立ち、猟兵に続いて果敢に前進する。
――この戦いは長期戦となるでしょう。
歌声を紡ぐアリシアは、胸の内から湧き上がる詩を声に乗せながらこの戦いを考える。今は猟兵の奮戦で士気も高く、オブリビオン相手に優勢にことを進めている彼ら。だけれどそれだけで立つ士気は決して頑強なものではないはずだ。損害を受けた時。戦いが長引いた時。あるいは敵の最悪の手段を――自爆をその目で見てしまった時。
心に蓄積していく小さな恐怖は、いつか決壊してしまう時が訪れる。だから――
私は歌いましょう。皆さんの心を奮い立たせ、束の間でも恐怖を忘れられるように。
「触れたもの全てが未来になっていく ただ突き進んで行くのも悪くないでしょ? My way――」
純白のドレスを翻し、光の翼を広げた歌姫は、歌声とともに頭上を征く。
兵士たちに手を振り鼓舞し、敵には頭上や後方などの死角から突撃して隊伍を崩す。その援護に敵は浮足立ち、味方は一層戦意を高めて勇敢に崩れた敵へと攻勢に出るのだ。
「カルト相手にしてる時に言うのも何だが、コイツはニケーの加護だ! 俺たちは勝てるぞ!!」
「見たり見たり見たり。汝の破滅を見たり」
鏡餅が破滅の聖句を唱える。
『戦死を! 戦死を! 戦死を!』
狂信者が終末の聖句を唱える。
降り注ぐ清らかな歌声を背景に睨み合うは鏡餅に率いられた無数の小型歩行戦車とカルトの軍勢。
「破滅に恐怖し心を壊し、狂いし教えに縋るは現実からの逃亡か。全てを忘れ楽になりて最早救えぬ狂信か。そこまで狂えば苦しみも無かろう。数で攻める者には蹂躙見せよう。ここが汝の破滅なり」
『終末を恐れるなかれ。生にしがみつくは救済に背を向ける愚行なり。勇敢に戦い死せる者こそ、骸の海で永遠の幸福を享受せん。もはや現世は苦痛ばかり。故に我らが攻め滅ぼそう。我らは戦死を齎す救済の徒なり!』
「……ビードットが増えたと思ったら敵もビードットみたいなやつだったわ!!」
睨み合い、己の信仰をぶつけ合う鋼鉄と黒ローブの軍勢を嫌そうに見て、フィーナが眉を顰める。
「なんかもうアイツら纏めてぶっ飛ばしていい? 昨日は碌に鬱憤晴らせなかったし! トンネルごとぶっ飛ばして――」
「よせフィーナ、気持ちは分かるが此処が崩れたらあいつら含めて全員仲良く生き埋めだそ」
無駄に増えまくって場所を取るミニビードット軍団と一緒に閉じ込められるなどゾッとしない。イデアールは嫌な想像を振り払い、勇戦する兵士たちを支援するべく、輸送特化の猟兵と連携して力を尽くす避難民たちへと視線を向ける。
「クク……首尾は上々、貧乏クジを引き受けた甲斐はあったか……まあ、憎しみの瞳も私を熱くさせるが」
果たしてあのまま君臨者として憎悪されっぱなしだったらばどれほど心地よかっただろう。
「イデアール、くねくねしてないで話聞きなさいよ!」
その妄想に溺れかけた思考をフィーナの怒声が現実に引き戻した。
「こんな逃げ場のない一直線の道なんてまさに私たちの出番じゃない?」
背後に控える巨砲のチャージには時間がかかる。
それまでに敵を可能な限り減らすのであれば、アレに類似した攻撃を発動できる自分たち魔法使いがこそその任に堪えうる存在だ。
「なるほどな。ここからはお愉しみの時間というわけだ……破壊して! 蹂躙して! 殲滅して! 奴らのお望み通り戦死をくれてやるぞ、フィーナ!」
「イデアールならそう言うと思ったわ! ちょうどビードットがマトと睨み合って動き止めてくれてるし、教義だか信仰だかをのたまってる今がチャンスよ!!」
二人の魔女が持てる大魔力を放出し、混ぜ合わせ、練り上げて一つの魔法を作り出す。
それは光であり熱であり、そして彼らカルト信者の望むものを齎す救済である。
「「スーパー!」」
「フィーナイデアール!」「イデアールフィーナ!」
「「レーザー!!」」
トンネルを埋め尽くさんばかりの閃熱が奔り、カルト集団の一角が文字通り蒸発する。
「……加減を知らぬか、危うく我も蒸発するところであった」
いい感じに焦げ目が付き、ぷくりと膨れた鏡餅――ビードット。
眼前には閃光に焼き払われた敵陣。すぐに後続がその穴を埋めるだろうが、それより先にビードットと四千に近い彼の小さな兵団が動き出す。
穴を埋めさせぬように、穴を広げるように。運良く――彼らの信仰からすれば運悪く――生き残ってしまった炭になりかけの何かを踏み潰し、もう少し死に損なっている者があれば足を手を掴んで引き回しながら、ビードットの破滅の軍勢は行進す。
「これこそ数の脅威なり。矮小なりし存在だろうと、数集まれば群れをも潰す」
ただ更新し、手近なものを掴んで引きずる。戦闘とも言えない単純なそれが、戦線を大きく前進させる一手となる。
「えげつねえな……」
「ああ、あいつらが味方で心底よかった」
圧倒的な破壊力。そして続く蹂躙。味方としては頼もしいが、それ以上に恐ろしさすら感じる猟兵たちの戦力に兵士たちは乾いた笑いを浮かべるしかない。
果たして自分たちの切り札である戦車が投入されたとして、彼らほど効率的に圧倒的に敵部隊を打ち破れただろうか? それに――
「うん、少数で大戦力を押し止め撃滅するには申し分ない地形ですね」
ずしりと鋼の足音を立てて進軍する白い機体。アイが駆る機動戦車、オベイロンの人型形態だ。戦車での機動戦が困難な閉所であるならば、パワードスーツとして火力を投入すればよい。異世界の技術に由来するこの柔軟さも猟兵の強さの一つであろう。
「これこそ戦車が苦手な地形に対応するための機体です! 兵士の皆さんは離れて援護してください、もう一つくらい突破口を開いてみせます!」
意気揚々と前進するオベイロンに浴びせかけられる銃弾や投石。それらが装甲を小気味よく弾く音を意にも介さず、アイは聞こえてくる歌声の旋律を口ずさみながら距離を詰めてゆく。
もともと戦車であるオベイロンだ。最大の武装はやはり中、遠距離戦用の砲撃装備にこそあるが、トンネルに必要以上のダメージを与えて崩落させる危険性を鑑みれば――この後発射が控えている最終兵器たる電磁投射砲によるダメージも見越して――あまり使うべきではない。故に敵を蹴飛ばし、殴りつけ、プラズマの刃で焼き払う戦術に限定される。が、それでもなお巨大な鉄機兵のそれは十二分に凶器として機能する。
ただの打撃といえど車に撥ねられた程度のダメージは与えるのだ。当たりどころによっては致命傷にもなるだろう。
敵がそれに怯むこと無く、むしろ戦死を望んで殺到するのは予想外だが、オベイロンの装甲ならなんとかなる。
アイがこのまま勝利を確信したとき、その鉄拳に強か打ち据えられた狂信者がニヤリと不気味に笑むのが見えた。
自爆だ。先程からすんでのところで阻止され続けている敵の最大火力。発動すれば要塞とて無事では済まないだろう。まして至近距離でこれを受ける自分たちや兵士たち、勇気ある避難民達については言うまでもない。
止めなければ。だが、どうやって。白兵武装はもう間に合わない。砲撃するか。だが、万が一にも崩落したら。
どうしたら。どうすれば。アイの演算能力をして、独力では全てを救えぬという答えにしかたどり着けない。
「ならば独力でなければよいのだ。起爆寸前、すんでのところで乱暴なドリフトとともにオベイロンの前に出た一台の装甲車。火薬と鉄ではなく魔術と電子で武装したそれが砲塔をくるりと回し、精密な狙撃で今まさに弾け飛ぼうという心臓爆弾を射抜いて止めた」
アイの耳朶を打つ声音は今まさに物語の次章を描く刀真のそれだ。通信機から聞こえるその通りに滑り込んだ装甲車が、自爆せんとする心臓を正確に狙い撃つ。
しかし狂信者とてただ呆然と阻止されるばかりではない。
『救済を! 主オブリビオン・ストームの御許に我らとともにィイ!』
『戦って死ね! 我らが死出に一人でも多くの伴を得よォ!!』
次から次に心臓を掻きむしり、狂気に目を血走らせて押し寄せる群衆に、オベイロンと装甲車――グレムリンの火力をして対応能力が飽和させられる。
「オベイロン、良く耐えるじゃない。思ってたよりやるわね……っても、この数はちょっとしんどいわ……」
グレムリンを駆るシャルロットが砲塔を操作し、敵を薙ぎ払いながらも駆逐しきれぬ自爆部隊に舌打ち一つ。以前からアイが自慢していたオベイロンの話に違わぬ活躍に驚嘆一つ。それをして物量に押される現実に苦々しい表情を浮かべ、已む無く次善を繰り出す決断。
「刀真、“登場人物”を増やしなさいよ!」
「――言われずとも。強力な二つの兵器を持ってしても人海戦術に押し込まれる。何故ならば二機は多少の差異はあれどその本質は戦車であり、戦車とは随伴歩兵を必要とするからだ。強力な火砲の隙間を埋める小火器を。狭い視界を補う外付けの眼を。取り付いた敵を排除する防御機構を。それらを為すものこそ随伴歩兵。戦車対人間の戦いに置いて、これの有無が勝敗を決す。少数精鋭を是とする猟兵より、多数の連携で強力な力を生み出す兵士たちこそそれを知っていた。故に――」
「撃ち方! 前の二人は装甲に守られている、構わずぶっ放せ! なぁに装甲車なら小銃弾程度で貫けはせん、心配無用だ!」
雄叫びとともに銃弾をぶち撒けながら突進してくる兵士たち。
「果敢に先陣を切るのは実戦経験豊富なダニロフ軍曹だ。多くの戦いを経験し、その全てを生き延びた歴戦の軍曹の指揮は兵士たちを一個の力へと変える」
「自爆とか時代遅れにも程があんだろ! 可愛いお嬢ちゃん達を吹っ飛ばすとかもったいねえ! ホントもったいねえ!!」
突進の途中で立ち止まった兵士は狂信者の行いに憤慨しながら軽機関銃を迅速に据え付け、伏射で敵兵の足元を薙ぐ。
「昨晩見かけたアイとシャルロットの横顔を思い出し――軟派な物言いと裏腹に、文明崩壊の騒乱で生き別れた故郷の姉妹を思い出してリックマン上等兵は二人の猟兵を守る銃弾の壁を作り上げた」
「此処は僕らの砦だ! 出てけよ、出てけったら!!」
軍曹に続いて突進した兵士達の一人が、弾幕の援護を受けながらセミオートの小銃でオベイロンやグレムリンに取り付いた敵を狙い撃ち引き剥がす。
「部隊で一番の臆病者と笑われながらも、部隊の皆から護られていたウィラード二等兵はいつもどおりの半泣きながら、これまでに無かった勇気を見せて猟兵の窮地を救う」
「――兵士たちが、猟兵という主役を彩る脇役という分を誰よりも知る彼らが、ほんの一度だけ舞台の前面に立つ。それは二人の猟兵を飲み込もうとした滅びと破壊の波濤を打ち砕き、反撃の糸口を作り出す――」
刀真が描く物語は、昨晩作戦に備えて兵士たちと交流を持ったが故に彼ら個人個人の思考に寄り添ったものとなる。兵士という記号、集団を一つに纏めた書割の武力ではなく、ひとりひとりの登場人物として描写され、刀真の物語の効果を最大限に受けるのだ。
文豪の記した戦記物語の通り、戦場は再び人類優勢に傾いてゆく。
『ああ。死が来る! 我らを神の御許に導く尊き戦死が来る!』
歓喜に身を震わせ、恍惚の表情を浮かべて銃弾に引き裂かれ散りゆく信徒ども。
そのエゴイスティックで無差別な宗教的集団自殺に付き合わされる側はたまったものではない。多くの兵士たちは理解し難い狂気を相手に、優勢で在りながら精神的には疲労を蓄積させているように見えた。
「前線は猟兵が受け持つとはいうものの、連中にしてみればそんな事はお構いなしか」
戦って殺し殺される相手であれば、敵が何だろうとお構いなしに殺到する狂信者。それらの視線が兵士たちに向くのは道理であり、兵士たちもまた一発逆転の切り札――大型レールガンを死守するべくその狂気を一身に受け止めている。
ユエインはそんな戦況にやれやれと肩を竦めて、その狂気を気軽くその小さな身体で受け止める。
「神……神か。うん、いいだろう。求めるのならば応えよう、尤も望んだ通りの存在かは保証しないけれどね」
ずしりと重い機体を踏み出させ、戦線後方に陣取る巨躯の機人。ユエインがその十指の糸で細部に至るまで完全制御下に置く鋼鉄の巨人は、戦車砲もかくやと言わんばかりの巨砲を――あるいは艦砲を構えて砲撃姿勢を取るのだ。
その威容たるや、荒野に根強い戦車信仰がヒトガタを得たかの如く。かの機人が齎すであろう破壊の渦には、敵はおろか味方でさえも息を呑む。
「弾種榴弾、構え。――閉鎖空間での爆発、どんな結果を齎すか身をもって体験してもらおうか」
「そういうことなら私も手伝おう。兵士の士気が上がっている今、勢いに乗るのが正解」
背負った無反動砲を下ろし、弾込めしながらユエインに語りかけるのはアビー。そして彼女に誘われて、似たような装備を引っ張り出してきた兵士たち。
「全員で一気にカタをつけよう。榴弾の雨でここから向こうを消し炭にしてやる」
「いやお嬢さん、消し炭にされちゃちょっと困るな。中佐たちの戦車が出られなくなってしまう」
苦笑する兵士たちの指揮官――少尉の言葉に目を丸くして、アビーはこくりと頷いた。
「なら、それなりに吹き飛ばそう」
「そうだね。何、やり過ぎたって気にすることはない。ボクに秘策ありだ」
――撃て。誰が言ったか、多数の火砲が文字通りに火を噴いた。強烈なバックブラストが後方に散らばる様々な残骸を吹っ飛ばす。
爆発。業火の渦がトンネルに沿って吹き荒れ、破片の雨が柔らかな肉と血の革袋をズタズタに引き裂き撒き散らす。
『――あぁぁ! 死を、戦死を――黙示録に記されたヴァルハラの門よ!』
火焔に喉を焼かれながら狂喜して死にゆく信徒どもに、少尉は露骨に渋面を作る。
「なんだって連中、ああも戦死に拘るんだ。死にたきゃ入水なり自爆なり、自分たちだけでやればいいだろう!」
「さてね。全てを喪って戦うことでしか自己を維持できないとか、色々想像は出来るけど。実際のところは彼ら自身に聞いてみなきゃわからないさ」
――もっとも、仲良くインタビューなど試みようものならたちまち自爆に巻き込まれて骸の海に招待される羽目になるだろう。
故に、万に一つの瑕疵も残さず殲滅するべし。猟兵たちの判断は迅速で冷酷だ。
「……機神召喚」
軍用のトンネルをいっぱいに埋め尽くし、窮屈そうにその身の一部だけを現界させた超巨大機械神が、崩れそうな場所をその腕で支えながらもう片方の腕で生き残りを薙ぎ払う。
「でもあいつらはもうオブリビオン、理解しようとする意味も、理解できる余地もない。殺るか殺られるか、それだけよ」
アビーも無反動砲をからりと転がし、倒れ伏す狂信者に銃弾を叩き込み、明らかに死にかけている者にはナイフを突き立て念入りに息の根を止めてゆく。
「そうか……そう、だな。我々はあいつらとは違う。だから考える必要はない、ないんだ」
中衛寄りの前衛に座し、慎重な進撃で兵士たちと肩を並べて戦う猟兵たちが圧倒的優勢を確保して戦線を上げる一方で、敢えて突出し敵の再前衛を突き崩し、その圧力を一身に受ける再前衛の二人は背中合わせに眼前の敵と相対していた。
全周囲、見渡す限りに武器を手に殺気立つ狂信者ども。死をこそ望む彼らは生半な痛めつけで怯みはしない。目の前で同胞が斃れようとも、それを羨み攻勢を強めこそすれ怯え竦むことは絶対にしない。
「多少の怪我はお構いなしか。宗教家っていうのはどうしてこう……」
マトモな宗教家が居ることも知らぬではないが、カルト化した連中はなぜこうも人間を辞めたがるのか。ぶつぶつと焦点の定まらない目で救済だの戦死だのと復唱しながら、銀刃郎の拳銃に穿たれた怪我から血を流しながらもそれを意にも介さない狂人たち。
教義に酔い、それを遂行する自分に酔い、硝煙と血の匂いに酔った狂人は、痛みという人間として当たり前の機能を忘却しているのだ。
銃弾が効かぬ訳ではない。傷が癒えるわけでもない。ただ、死なぬ限りはそれを認識出来ぬほどに狂いきっているのだ。
「麻痺弾が効くのはせめてもの救いだな」
黒鉄の腕で黒ローブの額を鷲掴み、ぶらりと釣り上げその腹に麻痺弾を叩き込んで、弛緩した信者を放り投げることで群衆を一網打尽になぎ倒すジャック。
「それはそうだけど、随分本隊も押してるみたいだし、そろそろ頃合いだと思わない?」
銀刃郎の言葉にコクリと同意を返して、ジャックはリボルバー拳銃に代わって機関銃を抜き放つ。
「ならば先鋒は任された。共に勝利を掴み取ろう」
連続した銃声はまるでひとつの羽音の如く、曳光弾がローブを貫き、引火したローブの裾から燃え広がる炎で包み込む。
火だるまになってもお構いなしの信者どもだが、炎に巻かれ酸欠となっては聖句を唱える間すらなく斃れゆくしかない。
唸る機関銃によって次々狂信者をなぎ倒すジャック。その背後から襲いかかるべく旧式のライフルを構えたローブ共は銀刃郎の領分だ。
自動拳銃を納め、信号弾を打ち上げるための単発銃をホルスターから引き抜いた。閉鎖空間で信号弾を打ち上げる必要もなし。つまり装填されているのは純粋な殺意。ぼしゅ、と気の抜けた音響で飛び出した榴弾が銃隊の真上で爆ぜ、フードに覆われた狂信者の頭を綺麗サッパリ消し飛ばす。
「痛みを感じない、怪我をしても気にしないなら――一撃で殺る!」
ダメージの蓄積が彼らにとって足枷たり得ぬならば、それに体力と時間を消費する意味はない。銃隊が崩れた穴に飛び込み刀を一閃、そばにいる者から順に首と胴を切り離す。
一撃に一呼吸。瞬時に行われる抜刀と納刀。居合いがひらめく度に数人纏めて首がごとりと落ちてゆく。
「…………ゼンイン、コロス」
「そうだな。お前達は全員ここで足止めされてもらおう。後ろで戦う軍人や民間人に万に一つも犠牲を出さないために。誰一人として死なせないために、お前達には死んでもらう!」
「これがオブリビオンが内部工作に及んだ理由ですか」
どこまでも続く真っ直ぐなトンネルは、なるほど引き篭もっての防衛線にこれほど向く地形は無いだろう。正攻法で突破できる存在はあり得ない。
それは裏を返せば、猟兵という戦力を加えた人類であっても一息に引き込んだ敵を殲滅するのは困難だということの裏返しでもある。
だが、それを覆すものは既にある。ダビングにも馴染み深い、航宙戦艦が主砲クラスの電磁投射砲。
それが間もなくチャージを完了しようとしている。
「射線を空けろ! ぎゃあぎゃあ喋くってる馬鹿どもを一掃するぞ!!」
巨砲の主たる灯里が叫び、子犬めいた愛らしいトラックや装甲トレーラー、装甲車に分乗して押し戻した戦線を放棄した猟兵や兵士たちが後退してくる。砲と前線までの距離がここまで確保出来たならば、狂信者どもが走って攻め寄せたとて砲に取り付かれる前に雷霆の一撃が根こそぎにトンネル内を掃滅するだろう。
だが。
「ダビング、未帰還の猟兵が二人います。最前線で遅滞行動に徹するうちに包囲されたようです」
リジュームが片耳を押さえて僚機に告げる。ダビングにも、彼らの救出に向かうと聞かない兵士たちの叫びが聞こえていた。
「――駄目です。彼らは貴方達を守るために孤軍奮闘しているのですから、その貴方達が舞い戻っては彼らの戦いを無に帰す行為です。それに、発射までに救出して戻ってくることは不可能でしょう」
「だったら見捨てろっていうのか!? 助けられたんだ、その恩人を見殺しに……!」
「勘違いしないでください、皆さん。通常の歩兵戦力には無理でしょうが、自分とリジュームになら発射までに彼らを脱出させることは可能です」
「ええ。敵の総数がわからない以上、残弾が保つかは心配でしたが……行って拾って帰ってくるだけなら充分足ります」
二機の白銀が、稲光を蓄えた巨大砲塔の前に出た。
「鎧坂様、120秒だけ猶予を。時間内に戻れなかったときは構わず発射してください」
「戻ってこられなくても、グリモア猟兵がうまい具合に回収してくれるかもしれませんし」
果たして当てにしてしまって良いものか、こちらの戦況をどこまでリアルタイムに把握しているのか不明だから、それは気休めめいた言葉に過ぎない。灯里に同士討ちの懸念を少しでも捨てさせるための言葉。
「……言ったからには帰ってくるのだな。私はさんざん焦らされてそろそろ我慢の限界なんだ」
勿論、頷いて二機は砲弾の如くトンネル内を飛翔する。
「リジューム、当機が前衛で突破口を形成します」
「了解、進路上の脅威はこちらで排除しましょう」
盾を構えて駆け抜けるダビング。猟兵と兵士たちの奮闘で確保された縦深の分は妨害もなく迅速に突破できるが、それを越えれば包囲された猟兵たちに届くまで的中を貫かねばならぬ。
十数秒でその安全地帯を駆け抜けた二機の前に、黒ローブの群れが現れた。
行軍の足を止め、数え切れないほどの数でたった二人を磨り潰さんと襲いかかり、返り討ちに遭って彼らの願う死出の旅に出る狂信の輩。
「掃射十秒、全弾撃ち尽くしたら武装を投棄!」
その背中にめがけて、リジュームの銃撃が突き刺さる。華奢な少女の細腕に振るわれているとは思えない重機関銃が咆哮し、ダビングの背中を越えて群衆を切り開く。
銃身が赤熱し、弾倉が一瞬で空になった重機関銃がトンネル内に放り捨てられるまでの短時間で敵は真二つに――陣形も、そしてその肉体も――引き裂かれた。その亀裂へとダビングとリジュームは突入した。
「EMフィールド正面集中展開! 障害物はこのまま弾き飛ばして進路維持!」
ダビングの盾が無謀にも掴みかかろうとするカルト信者を弾き飛ばし、叩きつけられる銃弾を打ち砕く。打撃の瞬間に加速することで、激突による速度低下を相殺し進む二機は、満身創痍で大集団を相手取るジャックと銀刃郎をその視界に捉えた。
「遅滞戦闘お見事でした、おかげで掃討の目処が立ちましたので撤収しましょう」
「そうか……犠牲は抑えられたのだな」
貴方達のおかげで。敬礼するダビングにジャックは鷹揚に、焼け焦げた機関銃の片手を掲げて未だ敵に斬りかからんと衝動に突き動かされる銀刃郎を小脇に抱えて撤退準備に取り掛かる。
「もう時間がありません、今すぐ撤退しないと砲撃に巻き込まれます」
次から次に兵士たちから借り受けた銃火器を撃ち尽くしては投げ捨てて群衆を押し留めるリジュームが、冷静さの中に焦りを滲ませ三人を急かす。
「了解、殿軍は当機が。リジュームはお二人の先導を。撤退します!」
追い縋ろうと駆け寄る狂信者を荷電粒子スマートガンの照射で足止めし、猟兵達は巨大電磁投射砲の射線上から急ぎ離脱してゆく――
「119……120。約束の時間だ、撃つ! 蓄積した電力はおかげさまで臨界寸前でな、地平線の向こうまで消し飛ぶだろうよ!」
電磁投射砲が金切り声を上げて絶叫する。
寸前、砲の後方へ滑り込む白銀と漆黒とすれ違い、灯里の唇の端が僅かに吊り上がった。
間に合ったか、心配を掛けやがって。
トンネルそのものを追加の銃身として放たれた超高速の大質量弾は、その進路上に存在するあらゆるものをその直撃で、あるいは通過の衝撃で粉砕してトンネルを飛び出し、外に集結していた狂信者どもの予備戦力をすら粉微塵に打ち砕き吹き散らして遥か彼方の岩山に着弾し、それをすら木っ端微塵に破砕してみせた。
あれだけの物量で要塞を攻め落そうとしていた狂った信徒は一掃された。
猟兵たちと、兵士たちと。そして彼らを陰から支えた避難民たちと。全員が力を合わせたからこその、完全なる大勝利である。
歓声を上げ、肩を組み、抱き合い、握手して。思い思いに勝利の喜びを噛みしめる人々に、猟兵たちの頬も緩む。
――その時だ。電磁投射砲のそれとも違う、鈍く重い巨大な砲声が要塞を揺らした。
大成功
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第3章 ボス戦
『『超重戦車』スーパーモンスター』
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POW : ウルトラ・ザ・キャノン
【旧文明の国際条約の破棄】を代償に自身の装備武器の封印を解いて【主砲の砲弾を大都市を一撃で消滅させる砲弾】に変化させ、殺傷力を増す。
SPD : 加農・ファランクス
レベル分の1秒で【全砲門に砲弾を再装填し、連続で砲弾】を発射できる。
WIZ : ゴールキーパー
【連続で射撃攻撃を行う、大口径の車載機銃】が命中した箇所を破壊する。敵が体勢を崩していれば、より致命的な箇所に命中する。
イラスト:8mix
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「アララギ・イチイ」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●
――其は異様である。
グロテスクなまでに無秩序に積み重ねられた楼閣は、しかし兵器としてこれ以上無いほど効率的に機能する。
――其は偉容である。
黒鉄の塔から無数に突き出した砲は、大小のその何れもが一撃で敵を粉砕せしめる王者の矛だ。
猟兵によるレールガンの一撃。地を刳り、遥か彼方の岩山を打ち砕いたその砲撃は、彼方から要塞に砲弾を降り注がせるもの――超大型戦車、あるいは陸上戦艦の姿を暴き出す。
山越しの曲射弾道で一方的な攻撃を繰り出していたその巨大兵器は、進路を遮る岩山が消え去ったことでゆっくりとその異様なる偉容を前進させる。これまで要塞の岩盤に打撃を加え続けていた百二十糎加農砲に加えて大小の砲をすべて要塞への火力投射に使う算段なのだろう。
それが一度全力火力投射を開始すれば、要塞から出るその瞬間に降り注ぐ無数の鉄火が全てを吹き飛ばすだろう。今でさえ距離を測るように散発的に飛来する砲弾が、生き延びた狂信者どもを巻き込み荒野に大穴を穿っている。
これが、その全てをトンネルの出入り口に集中させたならば。あるいは要塞を守る分厚い岩盤に一点集中で大火力が叩きつけられたならば。
それでも明るい結末を迎えると想像できるほど楽天的な者は居ないだろう。
「だが奴はまだこちらとの距離を測りかねている」
トンネル内に二列縦隊で並ぶ、総数八輌の旧軍主力戦車。
荒野に君臨する現行の――崩壊した世界で戦うために異常進化を遂げた――戦車に比べると尖った部分はないが、その分走攻守にバランスの取れた優秀な兵器だ。
その先頭の一輌から身を乗り出して、マイヤーズ中佐は猟兵たちに視線を向ける。
「今、散発的に撃ち込まれているこの砲撃は観測射撃だと予想される。よって、誤差が修正され敵が正確にこちらへ効力射を開始する前に肉薄し、近接戦闘であれを破壊する」
幸いにも岩山を迂回して砲兵陣地――実態は件の陸上戦艦だったが――へと侵攻する作戦案は、岩山自体が消滅したことでより迅速に、敵の妨害を考慮する必要の薄い直線的な進軍へとシフトしている。
「この要塞は我々に……いや、人類に遺された貴重な生存領域だ。これを破壊されるわけにはいかん。何としてもここで奴を撃破し、要塞を死守する!」
マイヤーズがバンバンと戦車を叩けば、エンジンが鼓動し動力を全身に漲らせた戦車たちがゆっくりと履帯を回し、トンネルから出撃してゆく。
「猟兵諸君、足が無いなら乗っていくと良い。こいつの速さは最高だぞ、乗り心地は保証しないがね!」
●
『将軍――いえ、猊下。“巡礼”に出た信徒たちは本懐を遂げたようです』
羨ましいことですな。軍装に黒いローブを羽織った男は、遮蔽物が消滅したことでよく見えるようになった要塞をペリスコープ越しに覗き見てつぶやいた。
『戦死できたものは幸福だ。最期まで諦めずに逝ったということを世界に刻みつけてゆける。主オブリビオン・ストームを前に、斯様な陸の王者を擁してなお諦めてしまった我らに遺された最後の救いだ。彼らの旅路に幸多からんことを』
祈るように、豪奢な軍服を纏い制帽を深く被った「将軍」は瞑目する。
『間もなく最後の決戦だ。我らが救われるか、彼らが救われるか。どちらにせよ彼らは諦めなかった。打って出るつもりだろう』
故に。車長の椅子から立ち上がった将軍は、伝声管を握りしめ、腹の底からその低く響く声音を全ての信徒――諦めを後悔し、戦い抜いた果ての死を願う古くからの腹心の部下たちに告げる。
『我らが選んだ敵は、我らの期待通り諦めずに抵抗する道を選んだ! 我らにできなかった偉業だ! 故に!!』
荒野に砂埃を巻き上げて、車体を跳ねさせながら迫るたった八輌の小さな戦車。
そして其れを守るように、あるいは戦車に守られるように駆ける猟兵達。その姿を夢想して、将軍は彼らに敬意を捧ぐ。
『全力を以て迎撃せよ! 全ての火砲で彼らを歓迎せよ、護衛戦車隊を供物に捧げよ! 彼らがこの超重戦車に乗り込んでくるならば、生身の白兵戦にて彼らを讃えよ! 我らが望んだ名誉ある滅びが今に来るぞ!!』
超重戦車を震わす程の雄叫び。魂が死ねぬまま嵐に飲まれ死んでいった男たちが吼える。
あらゆる砲は迫る人類の部隊を捉え、周辺を並走する旧式戦車の群れは速度を上げて人類の戦車隊に挑みかかる。そして巨大戦車の乗組員達は、拳銃や小型のサブマシンガンを手に、今か今かと猟兵たちの突入を待ち構えている。
――――――決戦が始まる。
囁石灯・銀刃郎
さっきのはすごかったわねぇ…それに、
こんなデカイのと戦うのは多分人生で初めて。
猟兵ってすごいわね…昔だったらさっさと逃げてたわ。
…さて、私も猟兵な訳だからして、少しは頑張ってみましょうか
身体がドロドロに崩れ、「真の姿」開放・水銀の粘体に変異。
『ミュータントダブル』発動
地面に広がった身体から、超重戦車と同等の姿と戦闘能力を持つ
水銀の巨体が姿を現す。
こんだけデカイ【存在感】のだもの、
敵の攻撃を【おびき寄せ】るのにはうってつけってね!
【オーラ防御】でミュータントダブルを強化、
超重戦車への【スナイパー】【制圧射撃】砲撃
味方が近付く余裕が出来れば良し。
うまくいったら…ブチ壊してやりますか!
チトセ・シロガネ
大きなキャノンネ。まるでサムライエンパイアの時に見たオシロみたいネ。
あのビッグな砲身、とんでもない火力がありそうだけど、軌道は読みやすそうネ。
よし、決めた。
あんなデンジャーなモノを撃つなら投げ返すのみネ。
だから、第六感で落下地点を予測。
UC【光輝体系】で電気に変異して落下地点まで移動、早業で行くネ!
飛んでくる砲弾は念動力とグラップルで掴むヨ。
それでもキツそうなら限界突破で踏ん張りつつ、
そのままジャイアントスイングしつつ投げ返すネ!
あと、砲弾の威力的にビッグキャノンにぶつけると巻き添えを喰らいそうだから念動力と属性攻撃による電撃を使って空中で爆破とかできるといいネ。
【アドリブ歓迎】
●
「まるでサムライエンパイアで見たオシロみたいネ」
遥か彼方に聳え、相当の距離を置いてなお巨大に見える敵大型戦車の巨砲。
それを支える多層構造の車体は、チトセが想起した戦闘城塞に似ていると言って過言ではないだろう。
つまるところあの城は、敵対者を鏖殺するための攻撃的な要塞としての機能を有する。迂闊に近づけば石垣の如き装甲を突き破るより早く、大小の砲から撃ち下ろされる弾幕で粉微塵にされるだろう。
――とはいえ。
「あのビッグな砲身もとんでもない火力ネ……軌道が読みやすいのが幸いヨ」
チトセ達が腰掛けた戦車。並走する物も加えて総勢八輌が駆ける荒野に、敵の百二十糎加農砲の砲弾が落着する。
衝撃波が吹き付け、チトセ達の髪や服がはためく――どころか、戦車の重厚な車体が一瞬ふわりと浮き上がりさえした。
精度はさほどでもなく、また砲自体がよく見えるのが幸いして狙いは読みやすい。熟練の戦車乗りたちが駆る戦車は直撃を避け続けているが、余波ですらいつ戦車を横転させ壊滅させる凶器に転じるかわからない。
「さっきのはすごかったわねぇ……」
巻き上げられた砂埃が絡んだ髪をかき上げて、銀刃郎が独り言ちた。
見れば、もうもうと煙を上げる着弾地点は遠く彼方。あそこに落ちた砲弾が、あれほどの衝撃波をぶち撒けたというのだから至近弾など受ければ影も形も残るまい。
「あんなデカいのと戦うのは多分人生で初めて。昔の私ならさっさと逃げてたわ。で、アイツとやるの? 猟兵ってすごいわね……」
「モチロン。あんなデンジャーなモノを撃つならこっちにも考えがあるネ」
巨大な陸上戦艦に挑む猟兵の正気を疑う銀刃郎は、ついでチトセから告げられた彼女の“とっておき”にもう一度猟兵の正気を疑う羽目になるのだった。
『――誤差修正、左コンマフタゴー、俯角マルサン。次弾装填急げ!』
一方の超重戦車内では、接近する敵を次こそ消滅させるべく次弾の用意が急がれていた。
『とはいえ、敵は対応してくるだろう』
照準を修正し、今度こそ敵戦車を捉える長大な百二十糎砲。
オブリビオンストームを吹き飛ばすべく、かつて兵器を戒めていた国際条約を無視してまで建造されたその超兵器は、既にその性能を見せつけすぎた。
猟兵はこれに対応し、無力化してくるだろう。将軍はそれを承知で砲撃を命ずる。
無力化されたとて構わないのだ。むしろそれを望んですら居る。
戦いの中で討ち滅ぼされるために、この巨大なる砲はあまりに一方的に過ぎるのだから。
「撃ってくるヨ……!」
「ええい、私ももう猟兵な訳だからして、少しは頑張ってみましょうか!」
チトセに促され、やけっぱちに銀刃郎が戦車から飛び降りる。
高速で前進する戦車に置き去りにされた銀刃郎の身体がどろりと形を失えば、彼女の真の姿――粘りつく水銀の身体が膨れ上がり、人一人分の体積を優に上回る巨大な城塞――敵の超重戦車と寸分たがわぬ銀の陸上戦艦が姿を現した。
「これだけデカいと存在感も無視できないでしょう。こっちに注目、よしんば砲弾も吐き出して貰うわよ!」
突然現れた同級の巨大兵器に面食らった敵戦車は、中小の砲門を銀刃郎に向けて砲撃を繰り返す。最大級の主砲ほどではないが充分な威力を持ったそれは、人類の戦車隊の頭上を飛び越え銀刃郎へと着弾し――ずぶりとその体内に沈み、炸裂。
だが銀刃郎の身体は流体だ。ぼごりと気泡を弾けさせるだけで、それは砲弾が本来持つ破壊力を発揮し得ない。
敵もそれを承知で、銀刃郎へは牽制として副砲を浴びせこそすれど、主砲の照準は戦車隊に合わせたままだ。
そして、大地を震わす発射音とともに次なる巨大砲弾が放たれる。
「来たネ! そんなノ、味方の上に落とされちゃ困るのヨ!」
戦車の上から紫電一閃、光の速さでチトセは砲弾の軌道上に飛び出した。
飛来するのはチトセの身体ほどもある直径の砲弾。質量だけで言うならば彼女の数倍はあろう。
それが音を越えた速度で突っ込んでくる。光を越えたチトセは、そんな超音速の砲弾をしかと見据えて念動力でそれをしっかと掴み取る。――無理だ。砲弾を持ち上げる程度ならば彼女の念動力で造作もないことだろう。だが、それはあの巨大砲によって超加速を得ている。その運動エネルギーまで加味した時、チトセ一人で処理できる限界を越えている。
ならばチトセも限界を超えればいい。眼下には何が居る。戦う人々だ。猟兵の仲間たちだ。その頭上に砲弾を落とすのか? 否だ。ならば限界などという自分のちっぽけな都合の為に諦めない。
気合で踏ん張り、推力を受け流し、円を描くようにジャイアントスイングで威力を殺す。
そうして百二十糎という規格外の砲弾を鹵獲したチトセは、それを銀刃郎へと投げ渡す。
「ギンジロー、ユーがアイツにお返しするのヨ!」
「任せなさい! 照準合わせ、砲弾装填――」
チトセから受け取った砲弾を、模造品の百二十糎加農砲へと装填した銀刃郎。
規格外の砲同士が睨み合い、そして。
「撃てーッ!!」
砲弾が打ち出され、流体の砲身が弾け飛ぶ。
使用済みの砲弾を撃ち出すという無茶苦茶をやり遂げた銀刃郎の砲は原型を失いドロドロと溶け落ち、それでも彼女の意地で飛翔する砲弾は超重戦車に真っ向から向かっていく。
爆ぜた。
超重戦車の眼前で炸裂する百二十糎砲弾。
火焔が装甲に吹き寄せ、破片が車体を叩く。
空中で爆散した砲弾は、直撃のダメージを与えるには至らなかった。が、その炎は少なからず衝撃を与え、超重戦車の無敵の歩みを揺るがした。そして爆炎は彼らの視界をほんの一瞬といえども塞いだのだ。この一瞬の視界の喪失が、次なる攻勢を隠す陽動として見事に機能する。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
ダビング・レコーズ
目標を確認
戦闘行動を開始します
【レコードセーバー・アドリブ連携歓迎】
当機の機動力を以って敵超大型戦車に接近
リジュームの対要塞荷電粒子砲を直撃させ撃破する
以上が今回の作戦計画です
ソリッドステート形態に変形しリジュームを積載
サブフライトシステムとして攻撃を開始します
作戦の性質上脅威となるのは主砲よりも無数の対空砲です
障害となる防空システムを破壊します
SS・WMを起動
装甲を貫徹するべく兵装は収束荷電粒子砲(攻撃力)を選択
集中的な火砲に曝される状況が想定されますが速力による回避とEMフィールドで対策とします
対空機能を一定数破壊後に上空へ急上昇し目標直上より急降下
ブレイキングドーンの発射終了後離脱します
リジューム・レコーズ
あんなものが…
戦車というより移動要塞ですね
【レコードセーバー・アドリブ連携歓迎】
致命打を与えるには至近距離から高威力兵器を直撃させる他無さそうですね
ソリッドステート形態のダビングをサブフライトシステムとして運用
全エネルギーを後述のUCに充填する為戦闘機動は一切行いません
攻撃もマルチロックしたスターダストでの追撃程度に留めます
ダビングの急上昇と同時にブレイキングドーンのチャージを開始
急降下開始後相対距離を限界まで詰めてから私の全エネルギーを代償に最大出力で発射します
発射後は強制的に機能停止に陥りますが私一機の戦線離脱であの要塞戦車に打撃を与えられるなら全体としては十分な対価でしょう
●
「目標を確認、戦闘行動を開始します。――振り落とされないでくださいね、リジューム」
爆炎で視界を塞がれた超重戦車へと真っ向接近する銀がある。
この世界から失われて久しい航空戦力。即ち空間戦闘機ソリッドステートへと変形したダビングと、その背に膝をつき華奢な機体を猛烈な突風に堪えさせるリジュームの二機だ。
「機体の固定は万全です。気遣いなく、わたしの分まで戦闘機動を行ってください、ダビング」
リジュームは今、飛翔することができない。命運のすべてをダビングに預けているのだ。本来ダビングに劣らぬ空間戦闘能力を持つ彼女だが、今作戦においてはそれに回す余力がないのだ。
「それにしても」
対要塞荷電粒子砲の起動準備を整えながら、ダビングの背でリジュームは嘆息する。
「あんなものが存在するなんて……あれではまるで戦車というより移動要塞ですね」
だからこそブレイキングドーンの使用に踏み切った訳だが。それでも撃破出来るかはリジュームをしてわからないというのが率直なところだ。
「などと考えていても仕方ありません。プラズマ・リアクター直結、EMチャンバー加圧開始……」
「すみませんリジューム、回避起動に移行します!」
不意の急激なG。横殴りの負荷に砲身ごと機体が持っていかれそうになるかと思えば、天地がひっくり返り空が正面に。
踊るように翻るダビングを追うように、爆発の衝撃から立ち直った超重戦車からの砲撃が空を覆う。
「やはり対空砲がありましたか……!」
『敵航空機、対空両用砲の迎撃を受けて離脱していきます。近接信管の八十八粍弾は猟兵といえど恐ろしいようですね』
弾幕から逃げ帰っていく銀の機影をペリスコープで追っていた副官の言葉に、将軍は油断するなと制帽の鍔に隠れた鋭い視線を向ける。
『いまにやつは戻ってくるぞ。今の接近はこちらの対空火器の配置を見るための偵察だ。次はそれを潰すために――そうだな、正面から来るだろう』
だから。
『主砲、次弾装填。衝撃波で追い散らせ』
「コンバージェンス・プラズマキャノンアクティブ!」
収束荷電粒子砲――リジュームのブレイキングドーンとは比べるべくもないが、それでも充分に並の戦車を貫徹できる威力を有するそれが閃き、対空砲を射抜いていく。
将軍の予想通り、真正面からの狙撃戦。車体側面に一列に並ぶように配備された対空砲は、側面からの攻撃には互いが互いを補うように機能することで濃密な弾幕を形成しうる。だが正面ないし後方からの接近にはそれに近い少数を除いて、自らの巨体が障害となり射角を取れないのだ。
それをダビングは一度の接近で見抜き、将軍は見抜かれたことを見抜いた。
故にダビングの攻撃は対空砲をほぼ一方的に粉砕し、そして将軍の策がその横面を殴りつける。
轟音。音そのものが破壊力として吹き荒れる凶暴な一撃。
咄嗟防御フィールドを最大出力で展開したダビングとリジュームは空中分解だけは免れるが、その暴威に煽られ吹き散らされる。
「何ですか……!」
「砲撃の余波だけでこれだけの威力とは……!」
驚愕する二機が姿勢を立て直せば、遥か彼方で要塞を隠す岩山が土煙に飲まれている。まだ耐えるだろうが、それでもこれ以上撃たせたくはない。
要塞への攻撃は勿論、近距離で衝撃を浴び続ける自分たちもただでは済むまい。
「リジューム、一度上昇しましょう。チャージまでの残り時間は?」
「もう間もなく。上昇後、一度で構いません。降下して再接近できますか?」
その問いに答えを返すこと無く、機首を持ち上げたダビングが遥か雲の上まで飛び出し、そのままくるりと地上を向いて落下してゆく。
その先には巨大な超重戦車。彼我の距離はみるみる近づき、
「ライフリングサークル最終加速、発射準備完了……ディスチャージ! AFPCIXブレイキングドーン、発射!」
黎明の朝日の如く光の柱が立ち昇る。
リジュームという機体の全動力を注いだ一撃が、地表を焼き砕き超重戦車の頭上を横切って大地に巨大な一文字を描いた。
「――お疲れさまでしたリジューム、戦果確認は後続部隊に任せて離脱します!」
強力な一撃だが、撃破にまでは至っていまい。すぐさま差し向けられるだろう迎撃から逃れるべく、ダビングは超重戦車のキルゾーンから速やかに離脱していった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
エドゥアルト・ルーデル
拙者が本当の戦争を教えてやる
速さは最高ねぇ…戦車は結構、ゆっくり行きますぞ
【軍用機】召喚、"ウォートホッグ"の出番でござるね
トンネル内から【操縦】し低空で味方の頭上を越える際に発光信号
ワレニ追イ付ク戦車ナシ、オ先ニ失礼
道中の雑魚はナパームで適当に蹴散らしつつ低空飛行で敵の砲撃を避けながら接近ですぞ
うーぬどう装甲自慢の敵を倒そうか…敵の主砲身内にこちらの砲弾をぶち込む!?できらぁ!
通り抜ける際にクラスター爆弾にてペリスコープ他外部観測装置を破壊して周りますぞ!
仕上げに主砲とヘッドオン!ギリギリで砲弾を回避してから30mm機関砲をピンホールショット!
見事な腔発により綺麗な華が咲きました
鎧坂・灯理
出たな首魁!ふむ、まだまだ離れているか
ならばこちらから向かってやろうじゃないか
感謝しろ
起動、【煌翼天翔】
空中戦は得意だよ 元から念力で空を飛んでたんでね
黄龍の近距離転移と念力による弾道改変を駆使し、敵の化け物戦車に突貫
機銃を回避しつつ接近する
強化された全力の念動力で、あらゆる砲身をねじ曲げる
物理的に撃てなくしてやる 特に主砲は念入りに曲げてやる
自殺に他人を巻き込むな!
死にたいならそれこそカミサマとやらに突っ込んでひとり寂しく死んでいやがれ!
貴様らに名誉なぞ渡すか!
力の象徴たる大砲もうてないまま、みじめに死んでいけ!
●
「ワレニ追イ付ク戦車ナシ、オ先ニ失礼」
唸るジェットエンジンの甲高い叫びを引き連れて、戦車隊の頭上を飛び越えていく攻撃機。
かつて戦車の天敵として君臨した、最も頑強にして最も強力な戦車狩る猛禽。大砲鳥、あるいはイボイノシシ。
それが地上スレスレをゆき、追い越しざまに戦車隊へと発光信号を送ったのだ。
それは自分たちの戦車の速さを最高だと謳う彼らへの小さな対抗心であった。
と同時に、彼らを煽ることで進軍速度を僅かなりとも加速させるニトロとなる。
それはそれとしてエドゥアルトは、先行した猟兵の一撃を受けて停車した超重戦車をどう攻略したものか操縦桿を握りしめて思案する。
如何にこのウォートホッグが戦車に対して因果レベルで優勢なスーパー対戦車攻撃機であろうと、あのレベルの重装甲はちょっと物理的に無理だろう。
代名詞たる三十粍では貫けないだろうし、爆弾でもどこまで効くかわからない。
「うまいこと主砲に真正面からヘッドオンできたらいいんでござるがねー」
それでも先の猟兵たちのように、衝撃波で薙ぎ払う為の砲撃などされたらバリアを持たぬウォートホッグはたちまちバラバラになるだろう。
道中の護衛戦車をナパーム弾の投下で火だるまにし、対空戦車の弾幕を意にも介さず機関砲の掃射で返り討ちにしながら飛ぶエドゥアルト。
その視野の端に、生身で空を駆ける灯里の姿が見えた。
「うわっ何アレUFO? フライングヒューマノイド? 録画しなきゃ……ってなんだ鎧坂殿じゃござらんか……」
「何だとは何だ貴様。まあいい、奴の足が止まったようだな。こちらから出向いて一撃いれてやろう。貴様も付き合え」
念動力で空を飛ぶ灯里がウォートホッグに並走すれば、念話めいたやり取りで互いに連携を協議する。半ば灯里に強引に付き合わされるエドゥアルトといった構図だが、先のトンネル戦ではエドゥアルトの意見を飲ませた以上、断るわけにも行かないだろう。
「まあ鎧坂殿がそうまで言うならしょうがないでござるけどぉ……拙者の武器じゃアイツにはろくすっぽ通用しないと思いますぞ?」
「白々しいな。貴様も気づいているんだろ、ヤツにも絶対に装甲化が不可能な場所があることに。それを私が暴いてやろうと言うんだ」
肉薄した攻撃機の機銃掃射が、比較的柔らかな対空砲を穴だらけにして炎上させる。その穴目掛けて投下されたクラスター爆弾が、空中で破裂し炎上する対空砲の痕跡から超重戦車の体内へと爆風を流し込んだ。
「イヤッホー! 迎撃は潰したから反復爆撃で目を潰しますぞー!」
エドゥアルトの宣言通りに舞い戻ったウォートホッグ。その爆撃がペリスコープやレーダーを巻き込み粉砕する。
「これで暫くは見えんでしょ! 鎧坂殿、次ヨロシク!」
「ああ。――あまりにのろまなのでな、こちらから来てやったぞ首魁、感謝しろ」
ふわりと超重戦車の前に立つ――空中に浮かびながら――灯里。
ちっぽけな人間と、巨大な陸上戦艦。彼我のサイズ差は歴然、小さな、それこそ砲ですら無い機銃ですら小さな人一人を撃ち落とし粉砕するに充分。そんな力の差は、この状況において逆転する。
エドゥアルトの爆撃で視界を奪われた超重戦車は、砲手や機関銃手の目視射撃による迎撃に速やかに移行した。ぞろぞろと車体のあちこちに張り巡らされた通路を駆け回り、機関銃に取り付いた黒ローブたちが銃弾を撒き散らすのを、灯里は短距離の転移で躱し、隙間ない弾幕は念力で射線そのものを捻じ曲げることで無力化してさらに距離を詰めた灯里は、黒ローブたちの驚愕に目もくれずその念動力で銃身を、砲身を捻じ曲げる。
ぐにゃりと飴細工のよう折れた機関銃から手を離し、懐から拳銃を抜いた黒ローブが銃撃するが、そんな豆鉄砲が通用するものか。
ぎろりとそれを睨んだ灯里が、彼らを威圧する。
「自殺に他人を巻き込むな。死にたいならそれこそお前達の神様とやらに突っ込んで一人寂しく死んでいやがれ!」
片手間に銃撃を逸し、その強大な力で灯里は巨大なる城塞に単身挑む。
「貴様らに名誉など渡すものか。力の象徴たる大砲も撃てないまま惨めに死んでいけ!」
『――将軍! 主砲が……主砲が旋回しています!』
『…………何?』
超重戦車の司令室では、その報せに動揺が走っていた。
威信の象徴たる主砲が、彼らのコントロールを離れて動いている。
いや、それは機構による稼働ではない。外部からの力で強引に動かされているのだ。
『制御を取られたというのか? だが、あれは超長砲身だ。奪われたところでこの超重戦車を自滅させることはできん』
それを狙ってのことならば、随分と拍子抜けだな猟兵。あるいは自分たちに名誉ある戦死を齎してくれる存在かと期待もしたが、所詮は素人奪還者に毛が生えた程度の存在か。
冷ややかにその報告を聞き、帽子を引き下ろした将軍。だが次に入った報告にその両の眼は見開かれることになる。
『――敵攻撃機、主砲射線上より再度侵入!』
「鎧坂殿が接近したからまあいいけど、もうペリスコープ交換してやがんの。仕事が早い兵隊は結構でござるけど、敵だとクソ面倒くせえだけだな」
操縦桿を捻って再突入コースに入ったウォートホッグ。
正面には百二十糎砲の威容。吸い込まれそうな砲身は黒々と奥を見通すこともできず、このまま接近すればこの機体ごと飛び込めてしまいそうな気さえする。
「まあ何にしてもグッジョブですぞ鎧坂殿!! 主砲がバッチリこっち向いてござるぜ! ヘッドオン! しかも砲弾も装填済みじゃね?」
機関砲が唸る。吼える。放たれた三十粍の“砲弾”の群れは寸分たがわず百二十糎砲の砲身へと飛び込んでいき、その砲身内を跳ねながら奥に鎮座する巨大な砲弾を貫いた。
砲弾が爆ぜ、行き場を無くした破壊のエネルギーが砲口から溢れ出る。
それでも足りぬ。出口から逃れきれなかった破壊力は車内に逆流してもなお行き場を求め、砲身を内側から破裂させた。
「見事な腔発ですな! 綺麗な華が咲きましたぞ!」
低空飛行、灯里を回収して飛び去ってゆくウォートホッグ。
その背後で鉄の華と咲いた百二十糎砲が、もうもうと爆炎を靡かせ悲鳴のような金属の軋みを轟かせていた。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
ビードット・ワイワイ
【PPP】
見たり見たり見たり、汝の破滅を見たり
圧倒的巨体誇ろうと、凄まじき火力あろうとも
扱う者は折れた者か。輝く死など何処にもあらず
死は勲章程の価値も無く、其処に一切の救い無し
只どう解釈されるかなり。良き解釈をされることを
祈りて散らせ。ここが汝の破滅なり
空に浮かぶは我が母艦。新たに行うは種の生存競争
新たな侵略に砲を鳴らせ。新たな脅威に装甲震わせよ
今こそ絶望せずに挑むが良い
我が隣人達よ、バリアの強度は問題無しか
砲の準備は整いけりか?戦域一帯に警報を
ならば世界に聴かせよう。高らかにならせ号砲を
世界に轟け豪砲よ。世界に刻む最初の一撃
さて巻き込まれた者は収容せよ
解析し収集し手当せよ。返却も怠らぬように
イデアール・モラクス
【PPP】
アーハッハッハ!イイぞ、あのデカブツはイイ…我々の力を存分に振るえるじゃないか!
さぁ、征くぞ!
・行動
「極限状態の果てに死にたがる者と生きようとする者…私のようにヒトを超えるのは後者なのだ!」
魔導ビットを広域展開、全砲門から私を取り囲むようにビームの『一斉発射・乱れ撃ち・制圧射撃』の三重層でカーテンを作り敵の攻撃を『武器受け』して防ぎながら『高速詠唱』でUC【究極魔法《天剣絶刀》】を唱え、周囲にある全てを長大な光の剣へと変換。
「悦べ、私が貴様らの望む最高の死を与えてやる…さぁ!光になれぇぇぇ!」
そして光の極大剣で敵を『範囲攻撃』と呼ぶべき規模で『薙ぎ払い』『蹂躙』する。
※アドリブ大歓迎
フィーナ・ステラガーデン
【PPP】
でかい鉄くずが現れたってきいたわ!
んー。宇宙世界で見た船より小さいわね!
少し大きいからって調子にのってんじゃないわよ!上には上がいるわ!
潜入とかそんなことしないわ!正面からどかーんよどかーん!!
縦方向に切り落として真っ二つにすればいいわね!
タイミングは何か強烈な砲弾を打つその時よ!
誘爆を狙って砲弾ごとでもいいし、何か力を溜めてるのを暴走させちゃってもいいわね!
魔力がめーいっぱい溜まるまで後衛で溜めて【全力魔法】で一気にUCを放つわね!
それにしても鉄くず倒しても食べれないわね!
なんか食料とかもってないのかしら!
(アレンジアドリブ大歓迎!)
●
――それは突然現れた。
主砲を失い炎上する超重戦車の頭上、青空に浮かぶ雲を突き破りて。
巨大な陸上戦艦をも圧倒するさらなる巨大。それは見るもの全てに畏怖と恐怖を刻みつける存在だ。
超重戦車の生きた砲の幾つかが迎撃の火線を伸ばすが、それを意にも介さず君臨する巨大なるもの。
人類の戦車隊すらもそれを前に、思わず砲を仰ぎ超重戦車より優先して破壊すべきものだと認識してしまうほどの威圧感。
その存在は、人類の――オブリビオンとなった者たちも含めて――抵抗など、意識するまでもない瑣末事だとばかりに空中に居座り告げる。
「――見たり」
「圧倒的巨体を誇ろうと。凄まじき火力があろうとも。其を扱うは折れた者か」
「さすれば輝く死など何処にも有らず。死に勲章ほどの価値も無く、其処に一切の救い無し」
「汝らの死に意味あるならば、只どう解釈されるかなり。良き解釈を祈りて散らせ、ここが汝の破滅なり」
それは神の宣告の如く傲慢で、一方的に断ずるもので、そして――
「あれビードットのなの!?」
フィーナの驚愕。あの破滅ロボはとうとうあんなものまで呼び出すようになったのか。空に浮かぶ人智を超えたモノが敵ではないと警戒する戦車兵たちに慌てて伝えれば、その飛行物体は下部を展開して尖塔の如き巨砲を展開する。
「世界に轟け豪砲よ。世界に刻む最初の一撃、高らかに鳴らせ号砲を」
超重戦車の砲に匹敵するそれが光を放ち、世界が一瞬白に塗りつぶされた。
『――損害報告』
『主砲が基部から損壊、脱落します! 車内各部に火災発生、ダメージコントロール追いつきません!』
度重なる被弾で損傷していた上で、比較的不利なトップアタックを取られたとはいえただの一撃で主砲が根本から断ち切られ脱落していく。
超重戦車を超重戦車たらしめる象徴が崩壊してゆく。
『……そうか。ダメコン急がせろ。エンジン復旧を最優先に。直ちにアレの真下から移動する』
『迎撃は、なさらないので?』
副官のその言葉に、将軍は自嘲するように鼻を鳴らす。
『あれはオブリビオン・ストームと同じよ。相手にするだけ無駄な類だ。それより足元の戦車隊の相手をしたほうが有意義に死ねるぞ?』
超重戦車がその巨体を再び動かし始めた。その報せに、イデアールは腕組み高らかに笑う。
「イイぞ……ビードットのデカブツの一撃を受けてまだ動くか。実にイイ。我々の力を思う存分振るえるじゃないか! さぁ往くぞ!」
魔導に拠って操られる攻撃端末を無数に散らし、動き出した巨体が戦車隊に向けて吹き散らす砲弾の嵐を迎え撃つ。
それでもその光条のカーテンを幸運にもすり抜ける砲弾がある。あるいは魔導ビットを撃ち落として飛び込んでくる砲弾がある。
「少しくらい大きいからって調子に乗ってんじゃないわよ! 上には上がいるわ!」
それを火焔の壁が焼き尽くした。フィーナが杖を掲げてフンと一息、超重戦車を威嚇する。
「フィーナは下の方だろう?」
それをおちょくるイデアール。けらけらと笑う友にも威嚇を浴びせてフィーナは頬を膨らます。
「私じゃなくてアレよアレ! 宇宙で見た戦艦よ!」
ああアレか、とイデアールが頷いて、ようやくフィーナは怒りを収める。
「それで? あのデカい鉄くずが諸悪の根源なのね。じゃあ真正面からどかーんとやっちゃいましょ!」
「そうだな……奴ら極限状態の果てに死にたがる連中だ。私のようにヒトを超えるのは最後まで諦めず生きようとする者だと言うのにな!」
故に貴様たちの物語は此処で終わる。
イデアールが宣告し、フィーナはそれをよそに早々に魔導を練り上げていく。
「喜べ、私たちが貴様らに最高の死を与えてやる」
「魔力のありったけをぶち込んであげるわ! ……鉄くずは食べられないのが残念ね。なんか食料とか持ってないのかしらあいつら!」
二つの魔導が膨れ上がり、巨大な熱と光の刃が振り上げられる。術者の体力をも喰らって成長した刃が勢いよく落ちれば、超重戦車の履帯にそれが激突して火花を散らした。
「クク……アハハハ、アーッハッハッハッハ! 貴様たちも光になるがいい!」
「これやると本当にお腹空くんだけど! ビードットあんた上で見てるんでしょ! なんか後で食べるもの出しなさいよ!」
履帯が砕け、超重戦車の歩みが今度こそ完全に停止した。
主砲を失った移動要塞の如き威容は、その推進能力の一切をも斬り落とされたのだ。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
アイ・リスパー
【PPP】
「あれが敵の決戦兵器ですね。
ならばこちらも奥の手です!
オベイロン、ティターニア、電脳合体!」
電脳空間から『小型宇宙戦艦ティターニア』を実体化させ、
パワードスーツ形態のオベイロンの背面飛行ユニットとして合体させます!
「飛行能力を得たパワードスーツの力、見せてあげましょう!」
飛行ユニットのブースターを全開にし、敵の陸上戦艦に向かって飛翔。
ミサイルとロケットランチャーで弾幕を張りつつ、敵の頭上を取ります!
「どれだけ巨大でも戦車である以上、頭上が弱点です!
受けてください、フルパワーの一撃を!」
オベイロンとティターニア、二機の動力炉のエネルギーで荷電粒子砲をチャージ。
全力で砲撃します!
アリシア・マクリントック
【PPP】
戦車や戦闘機といった大型の兵器は多数の砲で接近を許さず、的の小さい歩兵に接近されても対応できるだけの人員はいる、ですか。
では変則的な支援になりますが、私はそのどちらでもない方法で戦いましょう。まずはセイバークロスで仲間とともに接近します。
そして取り付いたらティターニアアーマーにチェンジです!扉よ開け!
ここまで接近すれば砲ではこちらに狙いがつけられないはず。砲身を攻撃して歪ませて使えなくしたり、アーマーを盾代わりにして仲間の防衛を行います。手持ち武器相手であれば十分な防御力はあるはずです。この巨体であれば適当に攻撃するだけでも敵の歩兵の混乱を誘発できるかも。余裕があればやってみましょう
四宮・刀真
ここまでくれば次に書くのは「猟兵」の物語だ。
この場面に至るまでの奪還者や民間人とのやり取りなどを物語として再編。
それらをこの戦いの勝利の要因となる伏線と化して執筆させ、この戦いの俺たちの勝利と言う物語を紡ぎ出す。
執筆では猟兵のユーベルコードを精密に描写することでスペックを向上させ、立ち回りを有利なように紡いでいく。
そして戦いを共にする軍人たちの物語も挟むことで彼らの安全を逆説的に確保、十二分以上のサポートを遂行させる。
全てが片付いた後は、大団円を描くだけだ。
シャルロット・シフファート
【PPP】刀真とも共闘。
では、アイと共闘しながら電脳精霊術でオベイロンの演算処理をサポートしながら、ユーベルコードを起動させる。
属性武器を空中に放出し、頭上から個々を50本まで融合させ出力を強化した武装を叩きつけるわ。
砲弾が発射されそうな砲塔を最優先に潰しながら無力化していき、攻撃側とは別に展開させた盾の属性武装で軍人たちを護衛。
更にグレムリンの砲塔からも砲撃を放ち、戦車を解体していく。
●
頭上からの稀人の鉄槌。
正面からの魔女の斬撃。
強烈な一撃は、巨大な戦車の移動能力を完全に奪うに至った。
停車した巨大戦車の主砲は既に失われ、要塞が破壊される危険はもはや考慮するべくもないだろう。
だが、敵戦車はまだ生きている。そして彼らは、戦って死ぬことをこそ本懐とする狂信の将兵たちは足を奪われた程度で戦いを止めはしないだろう。
「戦車隊は接近戦を仕掛けるようですね」
オベイロンに加え、小型戦艦ティターニアをも合体させたことでその戦闘能力を完全なものとしたアイが、護衛戦車部隊と砲撃戦を繰り広げる人類の戦車中隊へ支援砲撃を加えながら跳躍する。
「戦車や戦闘機と言った大型の兵器は護衛部隊と大小の火砲で近寄せない……ならば的の小さい歩兵で接近するのが定石」
その機体に取り付く、セイバークロスを纏ったアリシア。
彼女はしかし、自ら見出した定石に首を横に振る。
「ですがそんなことは彼らこそ百も承知のはず。無事接近できても、きっと迎撃のための人員が配置されている筈です」
ならばどうするのか。地上を戦車隊と共に駆けるシャルロットが通信機を介して疑問を投げかける。
彼女の装甲車、グレムリンも敵戦車を相手に遠隔誘導兵器を放ち、それを盾に矛にと駆使して機動戦を繰り広げているがアリシアの指摘通り、地上の敵戦車部隊による砲撃と頭上から降り注ぐ超重戦車からの迎撃でその進みは遅々として進まない。
地上からのアイへの情報支援に割くリソースを自衛に回せば多少は改善するのだろう。アイも先程からしきりにそれを提案しているが、この部隊で今最も火力のあるアイを少しでも万全の状態で攻撃させるためにシャルロットはその提案を頑なに固辞していた。
その後席に座る刀真はといえば、ペンを片手に原稿用紙を広げ、只管に文字を綴り続けている。
「此処までくれば後は大団円に続く物語を書くだけだ。主役は猟兵、此処に至るまでの全ての出来事を伏線にする。民間人との会話も、兵士たちとの交流も、全ては勝利のための伏線なのだ」
ガリガリとペンが紙を刻み、インクが勝利の因果を描き出す。
こちらの攻撃は当たるように。あちらの攻撃は当たらぬように。都合のいい物語だが、それを以てなお戦況は優位とはいい難いまでに超重戦車は頑丈であった。
「ともかく陽動は地上部隊に任せてアンタ達はやることやって来るのね!」
装甲で劣り、火力でも互角か其れ以下。唯一勝る機動性も荒野では十全といえぬ。それでも刀真のサポートを受けて見事に敵戦車の背後に回り込み、グレムリンの砲撃がそれを仕留めてゆく。
そうして動きが止まった戦車へと、人類の戦車が複数台で砲弾を撃ち込み確実に各個撃破して数を減らしゆく。
「……すみません、おふたりとも。すぐに片付けて戻ります!」
飛行ユニットに据え付けられたロケットブースターを点火し、巨大な楼閣の真上まで跳び上がるオベイロン。慌てて迎え撃つ弾幕は狙いが甘く、こちらの応射するミサイルやロケットは面白いほど敵の砲台に吸い込まれてゆく。
そうしてアイとアリシアは敵戦車の頭上に飛び出した。
「ではアイさん、ここまで送って頂きありがとうございます」
「いえ……アリシアさんもお気をつけて!」
アリシアが飛び出し、遥か高みから鋼鉄の山脈へと身を投げ出した。
自殺行為だ。叩きつけられれば只では済むまい。あるいは何処かに引っかかったとしても全身の骨を粉々に粉砕するだけの行為。
――だがアリシアにはそれを否定するだけの力がある。
「扉よ開け! ティターニアアーマー!」
奇しくもアイの戦艦と同じ名を冠した超重の装甲を纏い、アリシアが超重戦車の上に降り立った。
狙うはアイを追い立てるように弾幕を形成する中小の砲塔。それに拳を叩きつければ、ひしゃげた砲塔は旋回も砲の上げ下げもできず無用の長物へと成り果てる。
泡を食って飛び出したローブ姿が撒き散らす銃弾も、ティターニアアーマーの装甲には通用しない。歩兵をなぎ倒し幾つかの砲台を叩き潰して、アリシアは頭上のアイに合図を送る。
「どんなに巨大でも戦車である以上、頭上が弱点の筈です!」
シャルロットと刀真の陽動で超重戦車の砲の半分は地上に向き、天を仰ぐ砲塔の半分はアリシアが文字通り潰してくれた。
迎撃の圧は驚くほど下がり、ゆっくりと狙いを付けるほどの余裕すらある。
アイは大型荷電粒子砲を超重戦車の天面に向け、二機の動力炉をフル稼働させエネルギーを蓄える。
アイの言う通り、大抵の戦車は上部装甲が薄い。
戦車同士の撃ち合いで被弾しやすい前面や側面の装甲が分厚いのに対し、軽量化のために上下の装甲は側面ほどの厚みもないのが常だ。
まして航空戦力による砲撃を想定していないほどの巨大にして鉄壁の超重戦車であるならば。
「受けてください! フルパワーの一撃を!」
アイの放った閃光は、度重なる爆撃や砲撃によってダメージを受けていた区画の装甲を貫き、そして内側から超重戦車を貫通して大穴を開ける。
「エネルギーダウン、アリシアさん、キャッチお願いします……!」
一時的な過負荷による動力炉のセーフティ起動。それによって停止したオベイロンが降下していくのを、ティターニアアーマーが抱きとめ超重戦車の上から飛び降りてゆく。
「アイさんのおかげで突入口はできましたね。外部から攻略するのが難しい相手でも、内部からなら停止させることは出来るはずです……!」
そのために。
未だ厚い弾幕を乗り越えて、超重戦車に突入する勇敢な者が必要だ。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
シキ・ジルモント
◆POW
戦車に乗せてもらい戦場へ向かう
敵戦車に乗り移り、砲塔・主砲塔を破壊する
突入タイミングは猟兵だけでなく戦車を操る兵士にも伝える
背中は任せていいんだろう?
真の姿を解放
(※月光に似た淡い光を纏う。犬歯が牙のように尖り瞳が輝く)
改良型フック付きワイヤーを敵戦車へ射出、車体へフックを引っ掛け、巻き取る力を利用し一気に飛び移る
その後は乗組員の攻撃を『見切り』、戦車の車体も遮蔽に使って回避
目的の砲塔へワイヤーも使って登り接近したい
狙うのは砲身の駆動の為に装甲の隙間を開けざるを得ない砲塔の根本
『零距離射撃』の距離からユーベルコードで破壊を試みる
味方戦車部隊の攻撃で敵の注意が逸れた瞬間なら、更に狙い易い
レナ・ヴァレンタイン
私は一発直撃どころか掠ったら終わりなのでね、戦車隊にはスモークなり土煙なり全開で物を隠せるような環境を作っておいてくれ
――刀身は60m
あの巨大さを考えると、致命傷を与えるならほぼ密着距離が必要だな
苦労をかけるが、味方戦車の陰に隠れながらバイクで並走
ある程度距離が詰まってくれば今度は味方からの応射、砲台破壊、その他諸々の騒動、あるいは敵の戦車群も使って自身の位置をごまかしつつ敵陣突撃
わざわざ中に入ってお行儀よく制圧すると思ったかね?
ユーベルコードで暴走させたフォースセイバーで足回りを徹底破壊
履帯もそうだが、上部構造を支えるための柱を中心に切り捨てる
足下から達磨落としだ。せいぜい楽しんでいけ…!
●
「敵が崩れた! 全車吶喊、距離を詰めて損傷部分に砲撃を集中する!」
度重なる攻撃で破壊された主砲。その傷口から飛び込んだ強烈な一撃は、巨大な超重戦車を貫通してその車体下部にも大穴を穿つ。
並の火砲では通用しない超重戦車に刻みつけられた傷痕は、其処からならば通常兵器であろうとこの巨体を突き殺すことが出来る急所に相違ない。
勢いに乗って護衛戦車部隊を打ち破り突撃する戦車中隊。その側、戦車に乗るシキと並走するバイクに跨るレナは迫る巨体をじっと睨みつけていた。
その視線に凝視を返すように、敵の下層ブロックに配置された小型砲が旋回して迫る戦車を黒々とした砲口で睨み返す。
「やあ曹長、ちょっといいかね」
こんこんと車体を叩き、ちょっと世間話でもしようじゃないかと言わんばかりの気楽さで操縦士を呼び出したレナは、断り無く彼のヘッドセットをむんずと掴んで引き寄せる。
妙齢の美女に顔を寄せられどぎまぎと頬を染める曹長をよそに、そのマイクを通じてレナの言葉が全車輌に通達される。
「――私は一発直撃どころか、あれらが至近を掠めるだけで終わりなのでね。不躾にじろじろ睨めつけてくる連中への目隠しが必要なのだけど?」
攻勢発起にあたって、それを阻止するべく敵はこれまで以上に必死に弾幕を展開して抵抗するだろう。その一撃一撃が戦車砲のそれに等しいとするならば、かすめただけでバイクなどひとたまりもなく宙を舞うだろう。まして生身で接近戦を仕掛ける猟兵など言うまでもない。
「君の意見は了解した、猟兵。全車スモーク展開、煙に紛れつつ散開して陽動を開始せよ!」
通信機越しにレナの要請を受諾したマイヤーズ中佐が承認の意を伝えるが、あくまでヘッドセットを付けた曹長越しに意見を通しただけのレナにはその言葉が聞こえていない。手を離し、車体に押し込んだ曹長に何て、と聞けばぼんやりと浸っていた彼は慌てて中佐の返答をレナに伝える。
それとほぼ時を同じくして、戦車隊から煙幕弾が打ち上げられレーダーを欺瞞する金属粉入りの白煙の中に戦車中隊の姿が消えた。
「いい援護だ。俺は今から奴に突入する。背中は任せていいんだろう?」
白煙に隠れた戦車の背で、シキはフック付きワイヤーを手繰り立ち上がる。白く烟る視界にあって、ぼんやりと白く輝く彼の瞳は爛々と光り、獰猛な牙をむき出しにしてシキはフックを撃ち出した。
まずは近場の護衛戦車に。上手く引っかかったフックを巻き取る要領で跳び、敵戦車の頭上に着地。ハッチを蹴り開け、中で驚いた様子の黒ローブの戦車兵に鉛玉をブチ込み次の足場へ。
直ぐさま味方戦車の砲撃が、シキの足場になった戦車に殺到してこれを貫通破砕する。
それを繰り返し三輌ほどをスクラップに変えたところで、シキはどうしたものかと腕を組む。
足場になるべき護衛戦車隊がもう居ない。あるいは視界の外で戦っているのか、それとももう全滅してしまったのか。味方戦車を頼るにも、迂闊に近づきスモークから出ればあっという間に砲撃の雨に曝されシキ諸共鉄くずに帰すだろう。
「――やあ。困っているようだね、乗っていくかい?」
そこへ駆けつけたのは、バイクに跨り颯爽と煙を切り裂くレナであった。
「君と戦車が暴れてくれたおかげでね、護衛戦車の目も逸らせたしまさか連中も戦車同士の撃ち合いの中をバイクが走ってくるなんて思っても居ないだろう」
シキを後部に乗せて疾走するバイク。それが煙の壁を突き抜けて、ビルのように巨大な履帯の側に近づいてゆく。
「世話になったな。あんたも無事でやり遂げてくれ」
「そいつはお互い様さ。君こそしくじるんじゃないよ、私はわざわざ中にまで助けには行かないから」
わかっているさと拳を突き合わせて、シキはワイヤーを手繰って超重戦車へと乗り込んでゆく。
「……さて。私の刀身は六十メートル。この巨大な戦車を叩き割るには少しばかり長さが物足りないが、その分切れ味は保証するよ」
ぶん、と振り抜いたフォースセイバーが、制御を失い無尽蔵にエネルギーを吸い上げ成長してゆく。
長大く、分厚く、より強力に。その刃を軽々振るい、横倒しに――バイクで走り抜けるそのすれ違いざまに、レナの刃が巨体を支える鉄柱を纏めて斬り落とす。
「足下から達磨落としだ。せいぜい楽しんでいけ……!」
『何事――』
超重戦車の外壁に張り巡らされたキャットウォークに乗り込んだシキと、彼を迎え撃つべく銃を手に現れた黒ローブ。迅速に攻め込むシキは彼らを相手にせず、するりするりとすり抜け、あるいは飛び越えて砲台の下へ向かう。その途中で、強烈な振動が一同を揺らした。
レナの斬撃が直撃したことで、巨大な超重戦車がゆっくりと傾いでいく。簡素な手すりしか存在しない超重戦車の外壁では、シキを排除するために飛び出してきた敵がそのまま投げ出されて地表へと零れ落ちてゆく。
「やることが派手だな、彼女は」
ともあれ好機だ。敵兵はレナの反復攻撃による振動に対処することで手一杯。この隙を逃すまいと駆けるシキ。そして眼下、煙幕へと遠慮も容赦も無く砲弾を浴びせかける砲塔へとたどり着いた彼は、その拳銃にとっておきの弾丸を込める。
炸薬量を反動度外視で増加させ、弾頭自体も重い徹甲仕様の特注弾。それを押し込めた銃を、狙い過たぬようにしっかりと構え、発砲。
ごがん、と鈍い激突音。穴を空けた砲塔が一拍置いて爆ぜる。
「よし。次だ――」
ごがん。ごぎん。続けざまの銃声。それが響くたびに、砲火の玉座が一つずつ巨大戦車から脱落していった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ジュリア・レネゲード
あんなゲテモノ、全部人力で動かしてるとは思えない
グリュプス、電脳戦用意
複製した端末を張り付かせて防空網を麻痺させる
無線でクラッキングが通せる程賢い奴じゃ無いだろうし
あなたを仮設ポートにして仲間の電子戦補助も行うわよ
――あれに、張り付けと
そう。大丈夫よ……パンクなだけでサイバーじゃないわ
あんな骨董品に後れを取るあなたじゃないでしょ
230体の複製端末を敵に向けて飛ばし
うち半数を時間稼ぎの囮にする
残り半数を取りつかせたら制御系へ物理的に割り込ませて
私は仮設指揮所にしたトレーラーからハッキングを開始
鍵を開けたら暗号化したウイルスで気絶させてやるわよ
その隙に火器管制を掌握して攻撃を止めるわ
援護に徹するの
ユエイン・リュンコイス
●連携アドリブ歓迎
相手は中々の巨大さ。となればこちらの取る手も決まってくる。ただ、少しばかり本気を出すとしようか。
敵中へと飛び込み、可能な限り複数の戦車を近くへと引きつけてからUC起動。
先程は狭かったけれど、ここなら全力を出せる…そう、全力をね。真の姿を発動、敵戦車を溶解させて取り込みつつ機械神を形成。黒鉄を赤熱させながら、巨大戦車へと挑もう。
全身を焔の【属性攻撃】じみた熱に包み込みつつ、【グラップル】で格闘戦を仕掛ける。攻撃を受けても銃弾そのものを取り込んで、そのまま【カウンター】。
もし砲撃が来そうであれば【操縦】を駆使し【フェイント】を混ぜて直撃を避けようか。
全力、それが希望なのだろう?
●
「あんなゲテモノ、全部人力で動かしてるとは思えない」
「――肯定です。見た目はレトロですが、あれは陸に上がったイージス艦のようなものですよ」
グリュプスの例えに、すごいんだかそうでないんだか分からないわねと苦笑して、後方に停車したトレーラーの仮設指揮所に座するジュリアはならばと自分なりの戦い方を定める。
ショットガンや手榴弾でどうこうできる相手ではない。
たとえグリュプスを複製し、決死の覚悟で特攻させたとしてもあれは揺らがないだろう。しないけど。だから本当ですか? みたいなふうにこっちを見ないでよグリュプス。
「本当だってば。グリュプス、電脳戦用意」
「しかしジュリア、この距離からの無線通信であれへの介入は不可能です」
大丈夫、貴方が居るじゃない。笑うジュリアに、グリュプスはげんなりとアームを落とし、それでも自身の推論が間違っているという一縷の望みに懸けて主に問う。
「――あれに、張り付けと」
「そうよ。大丈夫、あれはパンクだけどサイバーじゃないわ。イージスなんたらとか言ったって旧時代の兵器でしょ。そんな骨董品に遅れを取る貴方なのかしら?」
「まさか。仕方ありません、間違ってもオリジナルの私を破壊させないでくださいねジュリア」
トレーラーから飛び立つ、複製を含めたグリュプスの編隊。彼らは半数を帰れぬ囮にして、巨大な移動要塞へと飛翔する。
「近くで見れば中々に巨大だね。となればこちらの取れる手段も決まってくる。――ただ、少しばかり本気を出すとしようか」
スモークの中、近接戦闘で敵戦車を各個撃破してゆくマイヤーズの戦車中隊に下がるよう促して、ユエインは敵の護衛戦車部隊に単身で挑む。
「来たまえ。小娘一人に砲弾を使うほど臆病な戦車乗りは居ないと信じているよ?」
誘うように指を振るユエインに挑発され、少女を轢き潰さんと加速して突撃する敵戦車。それらが充分距離を詰めたところで、ユエインの罠が発動する。
「叛逆の祈りよ、昇華の鉄拳よ、塔の頂より眺むる者よ。破神の剣は我が手に在り――機神召喚!」
敵戦車が融けた。溶鉱炉に放り込まれた鉄くずのように、赤熱し炎上しながら融け落ちる金属は、意志を持つようにユエインを中心にひとつの形を創り出す。
其れは神なりし鋼。鋼なりし神。赤く燃える鉄を黒く冷ましながら、しかして身の内より燃え上がる灼熱にじわりと紅く輝いて、巨大戦車にも匹敵する巨大な機神が顕現す。
「全力の闘争、それが君たちの希望なのだろう?」
『――面白い。ああ、オブリビオン・ストームの時。先の訳のわからぬ宇宙船の時。そして今、こいつを前にして私は畏怖している。勝てぬとこの膝が震えている』
『将軍……』
部下たちの不安げな視線に、だが、と将軍は拳を握り、車長の椅子に叩きつける。
『二度までは恥を忍ぼう。三度目は無い! 私は私と君たちのこの戦車こそが最強であると信ずる!』
全砲門、目標正面――敵人型機動兵器。
『撃て――』
砲火の嵐が、その砲の大部分を失ってなお並の砲兵陣地よりも苛烈な鉄火と破壊の旋風が機械神を穿ち砕き押し返す。
「構うものか。実弾ならそのまま鋳潰して補修材にしてしまえ!」
ユエインの言う通り、被弾した側から砲弾の残骸を融かして装甲剤に変える機械神。だが防戦一方ではなく、攻撃――鋼鉄の四肢を用いた近接白兵戦を挑めば当然、その砲撃に晒す面積も広くなる。修復が僅かに追いつかない。このまま攻めきれば、一撃を入れることは叶うかも知れないがその最大効果を叩き出せるかわからない。
「――――グリュプス!」
「了解、物理回線で侵入を開始します。砲撃管制システムにクラッキング、完全自動化砲台の制御を奪取、半自動砲台を強制停止」
その時だ。ジュリアの放った鋼鉄の鳥たちが超重戦車に取り付いた。
直接制御システムに介入し、その動きを止めたグリュプスによって砲撃の威力が著しく低下する。
「今が好機、だね。――ぼくの本気の一撃を受けるといい。この拳は砲弾なんかよりずっと強力だ!」
激突。拳に強か打ち据えられた超重戦車がミシミシと悲鳴を上げて、その上部構造物を拉げさせてゆく。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
ジャック・スペード
では、俺はOdileに搭乗して行こう
敵戦車の動きをよく観察して攻撃の軌道を見切り
運転技術を駆使して砲撃を躱しながら
勇気を胸に抱き、敵戦車本体へとヒーローカーごと突進
寄る辺なきパ・ド・ドゥを披露しようか
勿論、アクセルは全開だ
あとでちゃんとメンテナンスしてやる
怯まずに力を貸してくれ、オディール
車体に降りかかる火の粉はビームシールドで防ぎつつ
鎧すら無視して砕くような、捨て身の一撃をお見舞いしてやろう
敵戦車の後退を確認したら
激痛・火炎耐性で損傷を耐えながらブレイドで攻撃を
其の砲門を切り落としてやる
手荒な歓迎に礼を言おう、兵士諸君
お前たちの戦争に終止符を打つ時が来た
其の戦車ごと、躯の海に還ると良い
アンナ・フランツウェイ
まったく、素直に主導権を渡せばボロボロにならずに済んだのに…。まあいいわ、この剣での戦い方を私が…この呪詛天使が教えてあげるわよ!
広範囲兵器は動かない目標の破壊に適するけど、常に動き回る相手に直撃させるのは難しい。なら【空中戦】でセンサーや脆い部位を攻撃し、注意をマイヤーズ達から私に引きつけ、何も無い場所へ主砲を誘導。
誘導後は【残像】を残しながら飛行し照準を定めさせず接近を試みるわ。もし発射されても【見切り】による回避と【武器受け】で受け流す。
接近出来たら【武器改造】したシンズ・ブレイカーを【鎧砕き】の要領で突き立て、そのまま切り裂いて(【傷口をえぐる】【部位破壊】)主砲をぶっ壊してやるわよ!
●
荒野を駆ける漆黒の車体。黄白色の砂煙に似つかわしくない艷やかな黒のスポーツカーは、荒れ狂う砲弾の雨あられに怯むこと無く猛然と疾走する。
護衛戦車部隊の数少ない生き残りが、その無防備な側面をマイヤーズ戦車中隊に晒してまで、遮蔽など無い荒野の真ん中で立ち止まってまで迎え撃つのはジャックとアンナだ。
「シートベルトはしっかりと締めておけ」
全身に傷を負い、避難民たちからの申し訳程度の応急処置を受けてすぐさま戦場に舞い戻ったアンナと、同じく損傷して他の猟兵たちにやや遅れて参戦したジャック。
二人は遅れを取り戻すべく、ブレーキの一切を無視した最高速度で鋼鉄の踊り狂う戦場に馳せ参ず。
「あら、安全運転してくれる気なんてまだあったの?」
負傷した身体を右へ左へ振り回され、さらには不整地の凹凸がシート越しに背中と尻を蹴飛ばしてくるような状況で、シートベルトを閉めろだなんて。
アンナは――アンナの内に宿る“天使”はくすりと笑って、されどもシートベルトではなくドアノブに手を掛け車外に躍り出る。
夜天の如き闇黒の翼を広げ、呪詛の天使が漆黒の鉄馬の頭上を征く。
「む……走行中のドアの開閉は危険なのだがな」
まあいい。彼女はこのOdileに劣らぬ速度で飛翔している。もともと同乗したのも体力温存のためということだろう。
「オディール、そういうわけで乗員はオレ一人だ。こんなところを走らせた詫びに後でちゃんとメンテナンスしてやる、だから――」
敵がどれほど巨大であろうと、如何に強力な砲撃を叩きつけてこようと。
「怯まず力を貸してくれ、オディール」
勇気を胸に。ジャックとオディールは飛来する砲弾を見事なハンドルさばきで一つとして残さず躱し、降りかかる石ころや火の粉はビームシールドで防いで真っ直ぐに超重戦車への距離を詰めてゆく。
「まったく、素直に私に主導権を渡せばこんなにボロボロにならずに済んだのに」
荒野の空を駆け抜けて、天使は包帯まみれのアンナの腕を見て呆れたように嘆息ひとつ。一人の身体では無いのだから大事にしてほしいものだわと諌める言葉は、消耗しきって眠るアンナに届くことは無いだろう。それでも。
「いいわ。この剣での戦い方を私が……この呪詛天使が教えてあげる!」
シンズ・ブレイカーを掲げ、鋼鉄の巨神と激突する戦場の覇王に目掛け飛翔するその姿はまさに黒き戦乙女である。
甲板上やキャットウォークに現れた黒ローブたちが機関銃や狙撃銃で彼女を撃ち落とそうと弾幕を張るのをひらりひらりと回避し、さらにそれに混じって砲火を打ち出す中規模の副砲からの砲弾を叩き斬って天使は優雅に可憐にそして妖艶に空を踊る。
地上で突入のため、愚直なまでにまっすぐ駆けるジャックに彼らの目が向かぬよう。
そしてジャックを援護するため、護衛戦車隊に挑むマイヤーズ中隊の戦車を護るために。
「Un, deux, trois――!」
天使が稼いだ時間。それは決して長くはないが、ジャックとオディールにとって充分な時間だった。
進路を妨害する敵の護衛戦車を黙らせたマイヤーズ中隊の戦車たちと無言ですれ違い、Odileはその身を超重戦車目掛けて踊らせる。
漆黒のスポーツカーが損傷した傷口に飛び込み、内部の様々な資材を蹴散らしながら火花を散らしてドリフトし停車する。そこへ現れたのは、突入に備えて防衛網を敷いていた乗員たちだ。黒ローブの兵士たちが銃を砲を手に手に携え、飛び込んできたOdileを蜂の巣にするべく引鉄を――引くその直前、運転席から飛び出したジャックが剣閃、彼らを真一文字に薙ぎ斃す。
ことりと落ちた擲弾筒が暴発し、爆発に飲まれ火焔を纏ってなお、それを些かの痛痒にもあらずとばかりに平然と踏み越え兵士たちに挑むジャックの姿は、漆黒の戦鬼の如く。
『――ああ。来てくれた、来てくれたぞ』
『待っていた。長かった……俺たちのための死が来てくれた。死神が来てくれた!』
『死神を殺せ。死神に殺されろ。将軍は俺たちを戦死者のための都に連れて行ってくれる!』
次々銃撃を加え、侵入者を排除せんと襲いかかっては返り討ちに遭い満足気に死んでいく兵士たち。
彼らを切り捨て、ジャックはせめてもの慈悲をその死に送る。
「手荒な歓迎に礼を言おう、兵士諸君。お前たちの戦争に終止符を打つ時が来た。其の戦車ごと、躯の海に還ると良い」
彼らが望む死神であろう。せめてその死出の旅路が安らかであるために。
「戦車隊はもう大丈夫かな。ジャックも突入できたみたいだし」
残像を追うように撓る機関銃の掃射を難なくいなし、アンナは陽動の完了を認めて攻勢に転ずる。
ひらひらと落ち葉の、あるいは冬の雪のように掴みどころのない飛翔から、真っ直ぐに距離を詰め――脱落した主砲に代わり、充分な脅威、象徴として君臨する副砲群を睨めつけて――シンズ・ブレイカーの刃をまっすぐその基部に突き立て、全身の力と全霊の羽撃きによって刃を滑らせ砲を切り裂き断ち割ったのだ。
「これが世界の生み出した、アンタたちの世界を滅ぼす呪詛よ!」
ギリギリと軋み、苦悶の叫びを上げながら副砲が落ちてゆく。
陸戦の絶対王者、その権威が今、完全に失墜した。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
山猫・ラン子
【ゴン(f24586)と行動】
こんなバカでかいのとまともにやりあわないわよ。
ゴンが複製した車を囮に使って潜入よ。
潜入後は私は暗がり、パイプ等に乗って
【目立たない、闇に紛れる、忍び足】で進むわ
って何であのわんこちょっとした散歩気分なの
まあいいわ
敵兵がゴンに目が行って危害を加えられそうなら
少数ならUCで首を掻っ切る
それなりにいるなら【猫のぬいぐるみ】を投げつけてドローンで打ち抜き爆発させるわ
二匹が散歩の末目指す場所は
んー、どこ進めばよくわかんないわね【野生の感】で道を選ぶわ
何か機械があればゴンに任せるわ。私こういうのよくわかんないのよね。
適当にむちゃくちゃしてくれるから私は護衛ね
(アドリブ歓迎)
龍神家乃・ゴンちゃん
■ラン子ちゃん(f24742)と協力参加
※アドリブ大歓迎!
UC【ゴンちゃんとはたらくなかまたち!】を使用して柴犬型の無人トラックをレベル分複製し、内一台にラン子ちゃんと乗車して超重戦車へと向かう
その他のトラックは撹乱や、味方の援護のために囮役として走り回らせる
超重戦車に近付いたらトラックから飛び降り、生身で侵入を目指す
「おじゃましまーし」
「ゴンちゃん、端末いじりにいってくるでし!」
敵砲台を【ハッキング】で掌握するため、ネットワーク機能のある部屋を探して歩き回る
・発見成功後
敵砲台のコントロールを掌握できた場合、射線が通れば超重戦車へ砲撃を
通らなければシステムの無力化を目指す
「ポチッとな、でし!」
アビー・ホワイトウッド
アドリブ連携歓迎!
とんでもないのが出てきた。戦車で来るべきだった。
足がない。護衛戦車に便乗させてもらおう。
無理をさせてしまうけど、できるだけあの怪物戦車に近付いてもらう。その途中で向かってくる敵戦車には、私も護衛戦車上からグスタフM4で敵戦車を攻撃する。【援護射撃】だ。
最接近したところで護衛戦車から下りて怪物戦車に取り付く。梯子を登って上へ上へ。
途中途中の敵兵は遮蔽に身を隠しながらカービンで射撃して始末する。銃撃戦は苦手…。
一気に詰められそうな相手は、接近してカービンで殴りナイフを抜いてUC発動。
そうして怪物戦車の要所要所にC4爆弾を設置していこう。
終えたら脱出、起爆。
…派手な花火。
羽堤・夏
アドリブ、絡み歓迎
いてて…予想より回復に時間かかっちゃった…
凍える闇の力で吹き飛んだ部位を凍結してたらあまりに痛々しい
治療を受けてくれって引っ込んでたけどさ
死守ってことなら、防人に休んでる暇はねぇ
思いだけ貰って…元気百倍だぁ!
治療してもらった部位をまた吹き飛ばすわけにはいかない
突撃を控えめにコードを発動
【投擲】で日輪丸をぶん投げ周囲の戦車を牽制
空いた両腕から、光の矢を連射
【継戦能力】これ、雑に速くかつ少ない消耗で連射できるから扱いやすいんだよな~…目についた砲弾をすべて凍らせ撃ち落とす!
迎撃しつつ【失せ物探し】で味方の猟兵が開いた戦艦の損傷を探し
【属性攻撃】【傷口をえぐる】狙い撃ってやる!
●
護衛の戦車を軒並み撃ち倒し、砲台の過半も崩落した超重戦車。
かつての強大さも見る影のない散発的な抵抗に対し、再集結したマイヤーズ中隊の戦車部隊は的確な砲撃でこれをゆっくりと、だが着実に損壊させてゆく。
その戦いぶりをトラックの助手席から眺める黒猫は、冷ややかに――けれど何処か慈しむように笑った。
「やっぱり人間はバカね。こんなバカでかいのとマトモにやり合うなんて。私たちは賢い動物だから、こっそり潜入して中から倒すわよ」
「りょーかいでし! ランちゃん、それからアビーちゃんになっちゃんも。みんなでスクランブルでし!」
ハンドルを肉球でひっしと挟み、柴犬トラックを操り超重戦車に乗り込んでゆくゴンちゃん。
キャビンの二匹と荷台の二人は、見事に敵戦車内に突入する。
「おじゃましまーし」
そろりとゴンちゃんが運転席のドアから降り、次いで荷台からカービン銃を隙なく構えたアビーが、そして彼女を守るように盾を携えた夏が続く。
敵の抵抗はない。先んじて突入した猟兵が始末してくれたのだろう、戦闘の痕跡と、簡素ではあるが弔われた形跡のある乗員の死体だけがそこにある。
「敵の迎撃はなし。クリアー」
「ありゃ、拍子抜け……いや大怪我してたし、これでまた戦闘ってなったら絶対怪我じゃすまなかっただろうけどさ」
「その通り。本当なら要塞で休んでいるべきだった。無茶をしすぎ」
アビーの苦言にたははと苦笑いを浮かべ、しかし夏は強い意志を込めた瞳でアビーと目を合わせる。
「そりゃアタシだって無駄に無茶はしないけどさ、死守ってことなら防人に休んでる暇はねぇ! 皆の思いを背負って元気百倍だからな!!」
そこまで言うなら自己責任、と半ばアビーに呆れられながら、夏は先へ進もうとして――背後からの強襲につんのめってコケかかる。
夏を背後から蹴倒して、自身は優雅にしゃなりと床に降り立ったのはラン子だ。
「出迎えが無いなんて躾のなってない人間ね。じゃあいいわ、かってに散歩しちゃいましょ。行くわよゴン」
夏を蹴飛ばしたことなど意にも介さず、その黒猫はひょいと天井のパイプラインに飛び乗って自由気ままに立ち去ってゆく。
「あー、ランちゃん待つでしー! ゴンちゃんも行くでし!」
その尻尾を追いかけて、とてててと走り去ってゆく柴犬。
「……まあ、動物のすることだから大目に見てやってほしい」
「…………お、おう。動物のすることだもんな……!」
――内部からの破壊を試みるべく歩を進めていたアビーと夏だが、道中鉢合わせた敵の警備隊との戦闘で二人は離れ離れになってしまった。
「困った。……まあ、こればかりは仕方ない」
カービン銃で敵兵を仕留め、すぐさま撃ち返される弾丸を通路の角に飛び込んで凌ぐ。とはいえ相手にとって勝手知ったる庭であるこの超重戦車の内部、迂回路を用いて挟撃を図った敵兵が向かってくる――それにナイフを投げつけ、悪趣味な黒尽くめの喉元に銀色のアクセサリーを追加してやって無力化。
「逃げながらでもモノを隠すくらいはできる。自爆連中には大分迷惑させられたし、今度は仕返しをする番」
懐から灰色の粘土塊を取り出したアビーは、壁を走る配線や配管の隙間にそれをねじ込みペンのようなモノを突き刺して、それから銃撃で敵を牽制しながら逃げ出した。
『逃がすな、追え!』
『捕らえる必要はない、殺せ!』
「……それでいい。脇目を振らないで私を追ってくるのね」
「治療してもらったところをまた怪我するわけにはいかないしな」
無謀な突撃は怪我の元。盾を構えての突撃戦法は今回は封印だな、と夏は敵兵の銃撃が僅かに緩んだ隙を突いて盾を放り投げる。
鉄刃の付いた盾が回転しながら飛び、兵士たちを切り裂いた。そこへすかさず光の矢を連射すれば、陣形を崩された敵兵はそのまま氷像に化して夏の通過を恭しく見送るしかない。
「これでアタシを追いかけてきた連中は全部かな。……ここ何処だろう」
逃げ回る内に現在地を見失った夏は、直感だけを頼りに“自分にとって大切な”場所を目指して再び歩き出す。
「ゴンちゃん、端末いじりにいってくるでし!」
とたたたと爪の音を響かせて、尻尾ブンブン何やら大切そうな機材の匂いに大興奮で走り出すゴンちゃん。
ラン子がその暴走に身を隠したままやれやれと続けば、ゴンちゃんは何やら部屋の中に入っていく。
とん、と静かに配管から飛び降りたラン子がそっと部屋を覗けば――
『何処から入ったんだ、この犬』
『ちっ、この殺るか殺られるかって最高の一時に……』
「ちょっとその端末さわらせてほしいでし!」
『ウワーッしゃべ、喋ったー!! いや、賢い動物だなてめえ。誰がこのメンテナンスシステムの管理コンソールに触らせるかよ』
えーっ、どうしてもだめでしか? とつぶらなお目々で兵士たちを見上げるゴンちゃん。どうしても駄目だと拳銃を向け、安全装置をゆっくりと外す兵士。
「散歩気分もいい加減にしなさいよこのわんこ!」
そこに黒い疾風、ラン子の断罪の鎌――もとい咥えた短剣の一撃が閃き、兵士たちの喉を掻き切った。
「ランちゃん! きいたでしかランちゃん、これこの戦車の修理とかするやつらしいでし」
颯爽現れ窮地を救ってくれたラン子にしっぽパタパタ、笑顔で発見を報告するゴンちゃん。
「あっそ。私機械とかよくわかんないのよね。ゴンが分かるならかってに触っていいんじゃない?」
「……いいんでしか!! やったー! ランちゃんありがとでし! それじゃさっそく……ポチっとな、でし!」
あからさまに押してはいけなさそうなボタンを肉球で押しちゃうゴンちゃん。
『解体整備シーケンス起動。副砲パージを開始。外部作業員は速やかに車内に退避、砲塔付近の区画から退避せよ』
『――副砲パージを開始。外部作業員は速やかに車内に退避、砲塔付近の区画から退避せよ』
突然車内を震わせたアナウンス。自動音声が告げるその文言に、豪奢な軍服に制帽を被った男は肩を震わせた。
『なるほど貴様の狙いはこの時間稼ぎということか……私としたことがしてやられたな』
「えっ、いやアタシはしらねぇけど……」
『……………………まあいい。この損傷状況で副砲のパージが始まれば如何に頑強な本車のメインフレームとて堪えきれまい。じきにこの戦車は崩壊する。我々は敗北したということだ。見事な戦いに敬意を。そして我らに戦死を齎した全ての存在に感謝をくれてやる』
そりゃどうも、とたまたま司令室を引き当てた夏は肩を竦める。
死を受け入れたような物言いのこの男の目は、だが眼前の敵を討ち滅ぼすことを諦めていない。夏が油断を見せるのを今か今かと待つ狩人の目だと彼女は気づいている。
「なぁ。あんたの末期の望みに付き合ってやるからさ、一つだけ聞かせてくれよ」
夏は問う。これほどまでに諦めの悪い、戦意に満ち溢れた将兵がなぜオブリビオンに成り果て、こんな死をも厭わぬ――それどころか死こそを望むような戦いを繰り広げたのか。
『単純な話だよ、我々は軍人として滅びと戦った。だが最後の最後、オブリビオン・ストームと相対した時、我々は戦いから逃げた。その結果がこれだ。軍人として守りたかったものは滅び、我々を軍人だと定義していた国家ももはやない』
彼らは、自らの存在証明を戦って死ぬことでしか確立できなかった。軍人として作戦行動を行い続けなければ生きられず、そして軍人として作戦中に戦死することで救われる。肉体が、ではない。魂がそういう形に歪んでしまったのだ。
オブリビオンとなったことで、等身大の人間だった兵士たちはどこか人間らしさを喪失してこういう存在になってしまった。
「そうか……ありがとな。それじゃせめて、あんたらの望み通り戦って死なせてやるよ……ごめんな」
将軍が拳銃を抜き撃ち、夏が盾を勢いよく投げつける
一発分の銃声が響き。そして。
「ゴン、とラン子。あなた達も無事だったのね」
「あい! 大砲を分解するボタンを押してきたでし!」
「なんだか知らないけど、さっさと逃げないと不味いんじゃないの?」
ウキウキのゴンちゃんを小脇に抱え、頭の上にラン子を乗せてアビーは元きた道を駆け抜ける。
「脱出しよう、なるべくすぐに。最悪の場合、夏は待てない」
「はぁっ、はあっ…………くそっ、痛ぇな……」
銃創を刻まれた肩を抱いて、事切れた将軍の両の瞼を引き下ろして夏は他の将校達に目を向ける。
「……次は誰が来るんだ?」
『いえ。私たちはこの超重戦車とともに、将軍閣下――教主猊下の下へ逝きましょう。もう充分戦いました。軍人の本懐を遂げたものと満足しております。猊下もきっとそうだったでしょう』
副官のローブが恭しく夏に一礼し、ゴンちゃんのトラックまでの最短ルートを彼女に伝える。
『これが、私たちの墓標が朽ちる前に逃げるとよろしい。あなた達はこの先の未来で、我らの分まで戦い抜いてほしい』
「…………そっか。できればさ、あんた達にオブリビオン・ストームのこととか色々勉強させてもらいたかったよ。達者でな!」
将校たちの敬礼に見送られ、夏は司令室を飛び出した。
「もう待てないわよ、なんかすごいグラグラしてるわ!」
猫の感覚を持ってすれば、この超重戦車がいつ崩壊してもおかしくないと如実にわかる。そんな状況で戻るかわからない一人を待つなど、とてもではないが自殺行為だ。
「ランちゃんはせっかちすぎでし。もう少しのんびり待ってみるでしよ」
「とはいえラン子の懸念も尤も。最初のパージが始まればあとは連鎖的に車体のダメージが拡大していくはず。そろそろ車に乗っておいたほうがいい」
アビーに促され、ラン子とゴンちゃんがキャビンに入っていく。
「…………夏、早くこないと本当に置いていくことになる」
手の中のリモートスイッチを弄び、今か今かと帰還を待つアビー達。
そこへ、聞き覚えのある足音と――待ちわびていた人影が駆けつけた。
崩壊してゆく超重戦車。砲が脱落すれば、それに引っ張られて装甲や構造物が抜け落ち、あるいは絶叫のような軋みをあげて車体が歪んでいく。
それを背に荒野を駆ける柴犬印の軽トラック。
「マイヤーズより猟兵、お帰り。よくやってくれたな、おかげでこちらも負傷者は居ても脱落はいない。完璧な戦果だ、感謝する」
その生還を歓迎するように戦車隊が周囲に寄り添い、崩れ行く巨体から離脱してゆく。
充分に鋼鉄の巨体から距離を離したところで、アビーがスイッチを押し込んだ。その瞬間、彼女が各部に仕込んできた爆弾が起爆し、盛大な誘爆とともに巨大戦車を消し飛ばす。
「もったいない、けどあの戦車もオブリビオン。消したほうが世のため。――派手な花火」
「あの人達の墓標にはあのくらい派手で立派な方がいいさ」
大量に備蓄された砲弾に引火し、連鎖する爆発で巨大なキノコ雲を生んだ超重戦車。
その威容は、軍人としての生を全うしたかった人々の墓標として荒野に刻まれたことだろう。
大成功
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