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奉納戦

#サムライエンパイア #【Q】 #お祭り2019 #冬休み

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●奉納戦
 神の前での戦いというのは、周囲がいくらわいわいがやがやとしていても、その舞台にあがった二人にとっては研ぎ澄まされた清いものとなる。
 神様の前での戦いは、己の心根を露にするということ。神様の前ではひとの心の内など、隠しきれるものではないのだから。
 一撃にすべてを込めて、この戦いを神様へと奉じるのを人々は誇りとしている。
 だから今年も――ご神体である古びた刀の前にて、人々は一年越しの戦いをくりひろげるのだ。
 ただ純粋に一年、己の力を高めた事を神様に見せるためにくるものもいれば、何かしらの想いを抱えてやってくるものもいる。
 神様に戦いを奉納する場ではあるが、何かしらの導きを得ることもあるらしい。
 その場に立つものの想いは、それぞれなのだ。

●案内
「あけましておめでとうございます!」
 昨年も色々ありましたが今年も楽しくやりましょう! と華切・ウカ(空鋏・f07517)は言ってサムライエンパイアのある地でのことを告げる。
 ある神社では神様に戦いを奉納するのだという。
 それは一対一の戦い。武器などは使っても良いが相手を必要以上に傷つけぬように気を付ける必要はある。
 また、つぎつぎと戦いが奉納されていく為、短い時間での決着が求められるという。
「飛び入りも大丈夫なようですよ! おふたりで戦いを奉納するのも良いでしょうし、その場の縁で巡り合った方とやるのもよいかと」
 けれどこれは心してくださいねとウカは言う。
 神様の前に立つのだから――その心に淀みなどなきようにと。
 迷いや悩みを抱えたまま立てば、きっと戦いの中でそれが表にでてしまうでしょう。だって神様はなんでもお見通しになるのだからとウカは紡ぐ。
「単純に力を競い合うというものとはちょっと違う、ような気もしますが……人の戦いのありようはそれぞれですし!」
 己の心根を見つめなおす良い機会でもあるのではないでしょうかとウカは言う。
 純粋に楽しむのも良し、何か思うことあって向かうもよしといったところ。
 お時間あればいってみてくださいねとウカは猟兵達をその地へと送るのだった。


志羽
 お目通しありがとうございます、志羽です。
 プレイング締め切りなどのタイミングはお手数ですがマスターページの【簡易連絡】をご確認ください。

 一章、手合わせ系となります。
 一対一の形式となりますのでお二人さまでのご参加をおすすめします。
 おひとりさまでも大丈夫ですが、他のおひとりさまと一緒。もしくは、モブ参加者とになります。
 勝敗については、プレイング定めでいただいても良いですし、こちらにお任せでも大丈夫です。
 ただ、長時間の手合わせとはなりませんので一撃、二撃。多くても三撃程度の流れとなります。
 ユーベルコードの使用についてはお任せ。
 どう攻撃するかとがちがちに戦闘プレイングをかけるより、どういった気持ちでのぞむかということ多めの方が当方的には良い感じになるかな、と思います。
 また戦うその行動についてはこういうのメインであとは臨機応変のようにちょっとお遊びを残してくださると何か起こるかもしれません。

 フラグメントのPSWについては無視していただいて大丈夫です。
 ただ、行動はある程度絞った方が良いかな、と思います。ご自由に、できそうなことをお楽しみください。
 公序良俗に反しない。また他の方に迷惑のかからない内容でしたら問題ありません。
 当然の事ながら、未成年の飲酒喫煙については絶対禁止です。(なお見た目年齢で判断致します)

 ご一緒する方がわかるように【グループ名】や【ID】を記入していただけると助かります。また、失効日が同じになるように調整していただけると非常に助かります。

 お声がけあれば志羽のグリモア猟兵も遊びに参りますし、ご指名いただければ参加もできるかもしれません。(時と場合によりけりです)

 以上です。
 ご参加お待ちしております。
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第1章 日常 『サムライエンパイアの冬を楽しもう』

POW   :    体力の限りを尽くし、力いっぱい、サムライエンパイアの冬を楽しむ

SPD   :    遊びに参加したり、料理や作品を作ったり、クリエイティブに冬を楽しむ

WIZ   :    恋人や友達と一緒に、サムライエンパイアの冬を幸せに過ごす

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 神様に戦いを奉じる――その場所は清められ、立ち入ることができるのは戦う者ふたりと勝敗を判じるものだけだ。
 その周囲には人々が集い、戦いの様相に声援送ったりと賑わっている。
 人々も神様に奉ずる戦を目にする事を、楽しみとしているのだから。
ミツルギ・サヤ
【氷×妖刀】
ノゾミとか。
こうして対峙するのは初めてだな。
……おまえは氷を操るのが得意であったか。

私に手数はきかぬ。
攻撃の主体たる者がどこから本命の一撃を加えてくるか。
どのように私の動きを誘導しようとしているのか。
それを見切る。
永遠に続く弾幕などない。
体力切れだけではなく、どこかで必ず様子見が入る。
最小限の動きでかわし、攻撃の手が止まったところへ踏み込み
剣刃一閃をきめよう。

勝敗がどうなるかは、神のみぞ知る、であろうよ。
しかし手を抜くつもりはない。
負けはせぬ。
おまえの首をもらうつもりで対する。
私を甘く見ないことだ。

とはいえ、どちらにせよ年の初めを凛として迎えられるのは
ありがたく嬉しいことだぞ。


青霧・ノゾミ
【氷×妖刀】
サヤちゃんとの対戦カードってお初だよね?
……妖刀宿業輪廻の宿り神、相手に不足はないよ。
さくっと倒されちゃって?

神様への奉納なら見映えも大事!
ってことで、攪乱のために多数の氷矢を集め
目くらましと踏み込みをさせないために、
一気にサヤちゃんへ放つ。
うん、避けてくれるのは予測ずみ。
氷矢の一本を手にとってサヤちゃんの刃を弾きつつ、
凍刃でカウンター気味に刃先を胸元に向ける。

……僕も本気だよ。
でないと、サヤちゃん怒ると思うから。
あー、でも個人的な勝ち負けより、
やっぱ奉納戦っていうほうが先に意識にでちゃうかな。
ともあれ戦いの技術では負けないつもり。
冷静さを欠くことなく、最後まで刃は下げないよ。



 始め、とは勝敗を判じるものは言わない。
 戦いはふたりがその舞台に上がれば自然と始まる。戦う者同士の呼吸があった瞬間にだ。
 銀色の髪が冷たい風でそよぐ。
 ミツルギ・サヤ(輪廻宿業・f17342)は目の前の相手、青霧・ノゾミ(氷嵐の王子・f19439)へとふと、笑いかけた。
「ノゾミとか。こうして対峙するのは初めてだな」
「サヤちゃんとの対戦カードってお初だよね?」
 ふふ、とノゾミは笑い零す。
「……妖刀宿業輪廻の宿り神、相手に不足はないよ。さくっと倒されちゃって?」
 その言葉には、戦いに向かいあう気持ちが滲んでいる。
 笑み浮かべるノゾミに対し、サヤは冷静に構えた。
「……おまえは氷を操るのが得意であったか」
「その通り! 神様への奉納なら見栄えも大事!」
 多数の氷矢をノゾミは生み出した。キン、と空気凍る冷やかさ。
 攪乱のため、目くらましと踏み込みをさせないためにそのすべてを一気に、ノゾミはサヤへと向かって放った。
「――私に手数はきかぬ」
 いくら多くの矢を向けようとも、攻撃の主体がこれでないことをノゾミは察していた。
 どこからか本命の一撃を加えてくるか、どのように動きを誘導しようとしているのか。
(「――見切る」)
 永遠に続く弾幕などない、放たれる氷の矢をかいくぐりサヤは己の本体である双剣・輪廻宿業のうち一振りの柄に手を添えた。
 サヤが避けるのは、ノゾミは予測済みだ。ノゾミは思った通りと、口端を上げて笑う。
 氷の矢を放つのをノゾミが止めた瞬間――互いの思惑が重なり合う。
 最小限の動きでかわしていたサヤは踏み込んだ。
 その動きをノゾミは、あの刀を一閃、解き放つだろうと予想する。
 そしてサヤもどんな手を向けるかはわからないが、何かしらの手を持っているだろうとただ受けるだけでない事を予想していた。
 互いの意識が交錯する一瞬がそこにはある。
 サヤが抜き放つ――その一閃を、一つ残していた氷矢を手にノゾミは弾こうとした。
 勝敗がどうなるかは、神のみぞ知る――サヤは手を抜くつもりなどない。
 負けはしないと、その首をもらうつもりで放った一閃はノゾミの一手を挫く。
「私を甘く見ないことだ」
 言い放つサヤの視界の中、ノゾミはふと笑った。
 瞬きの間に砕かれた矢。そしてノゾミのもう一方の手に逆手で握っていたのは凍てつく氷のような刃の短剣。
 それはひゅっと軽い音たてて、刃の先がサヤの胸元に向く。
「……僕も本気だよ」
 それはぴっと、サヤの身傷つける前で止まった。冷静さを欠くことなく、ノゾミは突きつけて――でないと、サヤちゃん怒るよねとノゾミは笑った。
 そしてそこまで、と審判が止める。
 勝ちはノゾミの手に。けれどサヤもどこかすがすがしい心地を感じていた。
「やっぱ奉納戦っていうほうが先に意識にでちゃうね」
 ノゾミの言葉に、戦いは戦いだとサヤは思う。けれど勝敗を超えて、何かがある。
 一戦終えたサヤの心には凛とした、澄んだ気持ちが満ちていた。
「ありがたく嬉しいことだ」
 ふと微笑んで、零す。
 互いに負ける気などは無く。けれど勝負は時の運でもあるのだ。
 今回はノゾミの勝ち。けれどどちらが勝ってもおかしくないような、駆け引き交えた戦いに人々は賞賛を贈るのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

筧・清史郎
我が友・らんらんと手合わせ願えればと

らんらんとこの様に試合う事は、そういえばあまりなかったな
以前、殺し合った時くらいだが…あの時は互いに正気を失っていたからな
今日は俺も純粋に楽しませて貰おう

ご神体は刀、か
では、と蒼桜綴を抜き
打ち倒すというよりも、神に互いの武芸を披露する心持ちで
心穏やかに舞う様に一撃一撃繰り出していこう
らんらんの成す炎は【水龍桜雨】で対応
攻撃も確りと見切り躱し、広げた扇で武器受けも

らんらんの動きは普段共に在る故に、手に取るように分かる
無論、らんらんもそうだろう
だからこそ、神に奉納するに相応しい一戦となるだろう
だが勿論、隙があれば踏み込み、攻め込もうか(微笑み
楽しいな、らんらん



 手合わせをしよう、と筧・清史郎(ヤドリガミの剣豪・f00502)は終夜・嵐吾(灰青・f05366)を誘う。その誘いに嵐吾はええよといつもの調子で笑って返した。
「らんらんとこの様に試合う事は、そういえばあまりなかったな」
「そうじゃな。遊び半分もないかぁ」
「以前、殺し合った時くらいだが……あの時は互いに正気を失っていたからな」
 その言葉に、ああと嵐吾は返す。そのようなこともあったなと――あの時はなんでもありだったと。
「神様の前じゃし。けど楽しむんはええよな?」
「今日は俺も純粋に楽しませて貰おう」
 清史郎は涼やかに笑み――ご神体へとその赤と青交じる不思議な色合いの視線向け。では、と桜の意匠が凝らされた蒼き刀、蒼桜綴を抜き放つ。
「ではらんらん、参ろうか」
 ええよ~と柔らかに嵐吾は返し尾を揺らす。そしてひらりと開いて見せたのは夜色に桜の嵐吹く雅な扇。その扇を目に清史郎は微笑み浮かべた。友が持つは己が贈ったものだからだ。
 打ち倒すというよりも、神に互いの武芸を披露する心持だろうか。
 地を蹴ったのはどちらか先か。
 清史郎の刃を扇で受けて反らせる。そうされるのも清史郎は予想していた。
 そして次に嵐吾が扱うのは炎であろうことも。
 ともに遊び、戦い。その動きは普段共に在るが故に手に取るように分かるのだ。
(「無論、らんらんもそうだろう」)
 清史郎は楽しそうに笑みかたどる。ぱちりと爆ぜる音がし、炎が花となり清史郎へと向かう。
「舞い降れ、桜雨」
 その前に、ふわり、ひらりと桜花弁舞う。それを纏うは水龍の加護受けし水の矢だ。
 清史郎の周囲から放たれたそれが炎とぶつかりかき消していく。
 嵐吾は瞬いて、楽しそうに笑いながら懐へ踏み込んだ。面白いものを見たというように無邪気に笑って。
「せーちゃんそれわし知らんよ!」
「ああ、見せたことはなかったな」
 踏み込んで突き出す拳――というより掴みかかる様な掌を腹に捻じ込んでこようとする。
「虚はいいのか?」
「招けばやり過ぎるじゃろ」
 その手を叩き落とすように広げた扇で受け流す。この場で嵐吾の右目の洞にあるものが舞えばそれも楽しそうではあるのだが、楽しくなりすぎてしまうだろう。
「もっと派手に燃やすもありじゃけど」
 そうなると奉納どころではなかろうと嵐吾が紡ぐ。清史郎も涼やかに笑って、ああと頷いた。
「神に奉納するに相応しい一戦でなければならないからな」
 鮮やかに、舞う様に戦う――楽しいな、らんらんと清史郎は微笑む。けれどその奥底にあるのは好戦的なものなのだろう。
 それを嵐吾も感じ、知っているから同じように笑って返す。その袖翻し一瞬視界が途切れたのを見逃さず清史郎は踏み込んだ。
「いつまでも戦っていられそうだが」
 終わりは必要。清史郎が向けた刀の切っ先は嵐吾の鼻先掠め、右目の上で止まった。
「っ、そこで止めるのがやらしいの~」
 わしの負けじゃあと嵐吾は苦笑し、楽しいひと時じゃったと紡ぐ。清史郎も刀を鞘に納め。
「俺もだ、らんらん」
 次は手の内隠さずやろうかと――笑って見せた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

桜雨・カイ
アドリブ・他の方との手合わせ歓迎・勝敗おまかせ

神の前での戦いですか
私も全力を尽くさせてもらいます

【錬成カミヤドリ】発動
一部の錬成体で相手の攻撃を妨害しつつ攻撃
錬成体メインの攻撃と思わせておき、途中から参加させた器物(人形)で攻撃
新年最初ですからね……先ほど言った通り「私」も全力を尽くそうと思って
(相手の攻撃をかいくぐり、倒さず寸前で止めるよう攻撃)
あくまで手合わせですし、新年早々怪我は良くないですからね

それに攻撃手段を増やせば、いざという時 人を助ける手段の一つになるかもしれませんし
…甘いのかもしれませんが、それでも一人でも多く人を助けたいと、今年も思っているので。


アニカ・エドフェルト
決まった相手は、いませんから、相手選びは、主催者の方に、お任せ、します。

先の見えない、戦いに、身を置いている、からこそ、
戦いで、神様に、ご加護を求めるのも、いいかも、しれません、ね。
こっちの、世界なら、神様も、しっかり見ていてくれてそうな、気がします。

ええと、この世界だと、こういう礼の仕方も、あるん、でしたね。
(ぎこちなく座って、相手と神社本殿に向かって深々と座礼)
それじゃ…よろしく、おねがいしますっ

戦い方は、武器は使わず、《死闘天使》で、受けてからの、《転投天使》、狙いで、あとは、その場に応じて、ですっ

あ、終わった後も、礼を、忘れないように、しませんと。

(アドリブ行動台詞歓迎、勝敗お任せ)



 先の戦いが終わり、場が清められ整えられた。
 次に、と名乗りあげたのは桜雨・カイ(人形を操る人形・f05712)とアニカ・エドフェルト(小さな小さな拳闘士見習い・f04762)だ。
 己よりも小さな少女――カイは瞬き一つ零す。けれど彼女もまた猟兵であるのだ。
 それに、とカイはご神体へと視線を向けた。
「神の前での戦いですか。私も全力を尽くさせてもらいます」
 それが、神と――それから、目の前にいる少女、アニカへの礼儀だろうと。
 アニカも、またご神体へと目を向けた。
(「先の見えない、戦いに、身を置いている、からこそ、戦いで、神様に、ご加護を求めるのも、いいかも、しれません、ね」)
 こっちの、世界なら、神様も、しっかり見ていてくれてそうな、気がしますとアニカは思う。
「ええと、この世界だと、こういう礼の仕方も、あるん、でしたね」
 そういって、アニカはぎこちなくその場に膝をついて座る。正座だ。
「ええと、この世界だと、こういう礼の仕方も、あるん、でしたね」
 神社の、ご神体の方へ向かって一礼。そしてカイの方を向いて、また一礼。
「それじゃ……よろしく、おねがいしますっ」
 アニカへと、カイも礼を返す。そして、己の本体である人形を生み出し連ねた。
 その人形、錬成体操って――攻撃を繰り出す。
 アニカは自分よりも大きな人形が向かってくるのを自然なままで受ける。
「そこで、寝ていて、くださいっ」
 受け止めて――投げ飛ばした。
「あとは、その場に応じて、ですっ」
 右から向かってくる次の手。アニカの手は掴まれるが、それを逆手に勢いつけてまた投げ飛ばした。
「新年最初ですからね……先ほど言った通り」
『私』も全力を尽くそうと思って――カイは錬成体の中からアニカへと近づく。
 アニカは次々と向かってくる錬成体に対し続けていた。簡単に投げ飛ばすことができ、手応えが薄いような気も少しする。
 受け身での攻撃となるアニカへとカイの手が届く距離だ。
 これはあくまで手合わせであり、新年早々怪我は良くない。
 カイはそう思いながら、アニカの傍へと踏み込んだ。
 攻撃手段を増やせば、いざという時 人を助ける手段の一つになるかもしれない――カイがそう思いながら自分のできる手を打つ。
(「……甘いのかもしれませんが、それでも一人でも多く人を助けたいと、今年も思っているので」)
 そう思う現れだろう。
 カイはアニカが投げ飛ばす、その動作を見ていたからこそそうされぬように動いた。
 踏み込んで、カイは投げられる前にアニカを抱え上げた。
 抱え上げられれば、アニカも投げることはできない。審判がカイの勝ちを声高に告げる。
 その声にカイは、アニカを地面に下ろした。アニカは負けて、しまい、ましたと言ってカイの方へ向き。
「ありがとう、ござい、ましたっ」
 まだまだ、鍛錬が、必要、です、とアニカは一呼吸。その礼儀正しさにカイも同じように礼をして返した。
 新年の始まりの戦いは例え身の丈の大きさが違っても相手に対して、真っ直ぐに礼を尽くして遠慮することもなく。清々しく、終わるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

浮世・綾華
【鍵錠】

思えば、お前と戦うなんてハジメテだな

なぁ、折角だ
賭け、しようぜ
…当たり前だろ
いいよ、負けねえから

(俺は、お前のすべてを否定したい
あの人が、主が肯定したお前を否定したい
あの部屋からみたひかりは眩しかった
でも、もっと美しいものを知った
お前もだろう。違うのか?)

力じゃ敵わないことは知ってる
殺し合いでもきっと敵わない
お前は躊躇わないだろうから

我武者羅にぶつかってくる攻撃を軽やかに避けつつ
隙を狙い一撃で仕留めるつもりで

――ばぁか
これ、殺し合いじゃねーもん
俺が勝つだろ

そんな顔、できるんだな、お前
…飯、奢れ

少しだけすっきりしたからそれでちゃらだと笑った
切り捨てるような言葉を浴びせる気にはなれなかった


憂世・長閑
【鍵錠】

そうだね
(だって戦う理由なんてなかった
オレの中で君はずっと守るべき対象だった)

…オレは――
賭け?
そんなの、知らない
でも…それなら、あやちゃんも賭けてくれるんだよな
大切なもの

(あやちゃんの憧れた空は、綺麗だった?
あの夕焼けより、綺麗だった?
オレは今だって、そうは思わない)

頭脳勝負では敵わないことなんて知ってる
だから初めから全力で攻める
防御の為の盾は常に傍に

――知ってる、君は、優しいもの
オレとは違う

(ころそうと思えば、ころせる
まもりたいと思った君ですら、ころせる)

(でも、あやちゃんは違うでしょう
大嫌いだと罵る癖その手は傷つける事を躊躇う)

…うん、そうだよね
望みは、なに
目元を抑える
声は震えた



 これは神様に奉じる戦いというのに――そこにある感情は捧げられるものではない。
 浮世・綾華(千日紅・f01194)は憂世・長閑(愛し秉燭・f01437)を見て。
「思えば、お前と戦うなんてハジメテだな」
 そうだね、と長閑は応える。
 だって戦う理由なんてなかった。
 オレの中で君はずっと守るべき対象だった――長閑の向ける視線。その心内を綾華は知らない。
 きっと知ろうとも、思わないのだろう。
「……オレは――」
「なぁ、折角だ。賭け、しようぜ」
 と、長閑の途切れた言葉の先を綾華が塞いだ。
「賭け? そんなの、知らない」
 その答えに綾華は瞳眇めたのだが、長閑の唇が僅かに動くのを見て言葉を待った。
「でも……それなら、あやちゃんも賭けてくれるんだよな」
 大切なもの、と長閑は続ける。
 綾華は僅かに沈黙して、ふと口はを上げて笑った。
「……当たり前だろ。いいよ、負けねえから」
 俺は、と綾華は言葉を飲み込み己の心内に落とし込む。
(「俺は、お前のすべてを否定したい」)
 向き合う長閑へと綾華が抱く感情は渦巻くようだ。
 あの人が、主が肯定したお前を否定したいと思うのだ。
(「あの部屋からみたひかりは眩しかった。でも、もっと美しいものを知った」)
 世界の広さを綾華は知ったのだ。
 お前もだろう。違うのか? ――そう問いかける視線。
 長閑は、その視線に頷いたりなどはしない。
 外にでた綾華は一体何を見たのか――長閑は、そのすべてを知らない。
(「あやちゃんの憧れた空は、綺麗だった? あの夕焼けより、綺麗だった?」)
 長閑も、世界を知った。けれど知ったからこそ、思うのだ。
 オレは今だって、そうは思わない――長閑は、嘗てに留まったままだ。あの場所で見た、差し込む光が一番綺麗だと思っているのだから。
 長閑は盾を構える。頭脳勝負では敵わないことなんて知っている。
 だから初めから全力で攻めるだけ。盾は己を守る為にだ。
 長閑が踏み込んでくる。体低くしてそのまま蹴り放つのを、そう来ると見越していた綾華は飛び込んでかわした。
 綾華もまた、力じゃ敵わないことは知っている。
 殺し合いでもきっと敵わない。そう、綾華は思う。
「お前は躊躇わないだろうから」
 ぽつりと零す。その声は長閑の耳に届いていた。そして長閑はふわりと、笑った。
「――知ってる、君は、優しいもの」
 オレとは違うと長閑の瞳は僅かに冷える。
(「ころそうと思えば、ころせる」)
 まもりたいと思った君ですら、ころせる――長閑は瞳に綾華の姿を映す。
 そしてでも、と思う。
(「でも、あやちゃんは違うでしょう」)
 大嫌いだと罵る癖その手は傷つける事を躊躇う。
 オレは、それを知っている。
 長閑が身を翻し踏み込む。戦いに集中できているようで、わずかにできていない。
 突っ込んでくる、その動きは大きく綾華は僅かに動いただけで避けて後ろを取った。
 そしてその背中へと足振り上げて蹴り飛ばした。
 前のめりにつんのめって、長閑はその場にずしゃりとこける。
 その背中で綾華が詰めていた息を吐いて。
「――ばぁか。これ、殺し合いじゃねーもん」
 俺が勝つだろと綾華は言い放ってふいと顔反らす。
 長閑にとってはその心に思っていたことを見透かされたかのような、そんな言葉だった。
 向けられた言葉に、長閑は息詰まりそうな一瞬を得て。
「……うん、そうだよね」
 望みは、なにとどうにか紡いで長閑は目元抑える。
 その声も震えていて、綾華は視線を呼び戻された。
「そんな顔、できるんだな、お前」
 綾華は、はーと長い息をひとつ。
 長閑は何を言われるのかと顔を上げられぬままだ。
「……飯、奢れ」
 けれど向けられた言葉は他愛のないこと。
 長閑がそろりと顔をあげると、綾華は笑み向けた。
 その笑みは、まだ少しぎこちなさも含まれているのかもしれないが。
「少しだけすっきりしたからそれでちゃらだ」
 切り捨てるような言葉を浴びせる気にはなれなくて――綾華は先に歩み始める。
 待って、あやちゃんと――長閑はその後を追った。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

霧島・ニュイ
【クロトさん(f00472)と】

一度は手合わせしてみたいと思ってたんだよね……

実力が彼に全然届いていない事は知っている
それなら、どれだけ足りていないのか?推し量りたい

まずは素手で
きっと読まれるだろうけど、持てるスピードで近寄り
手で目潰しを狙う…と見せかけて足払い
右拳でストレートと思いきや左を使う…と読ませての右続行
裏と裏、戦術の読み合いが特手
視線、踏み込み、それすら偽る

……っ、強い、速い
誘われる儘に乗る
左袖に隠した銃を手に取り、スナイパーで命中率上げ、的の広い中心部分を狙う
それでも怯まない姿にこちらが怯み
隙は見逃される訳もなく…

…あー、もう悔しいなぁ
今度やる時までにはもうちょっと差縮めるからね


クロト・ラトキエ
ニュイ(f12029)にお相手願い。

迷い?
…否。
一兵たる時、如何な事物も己を縛らず。

常在戦場…故に備えは常の侭。
但し得物もUCも用いずの徒手。
背を預けた事もあればこそ、彼の手は知識の内に。
けれど油断は無い。
だって、失礼でしょう?

視線、手足に身の捻り、踏み込み、速度…
見切る全てを知識を照らし、応じる。
共闘の時と変わらずとも、それは己が経験、軌跡。
知る程度で覆される程安いつもりも無い。
回避優先、距離を詰め。
攻撃とみせた牽制で態と隙を作り、渾身を誘って。
考えるは常通り、“喰らうは致命傷で無ければ良い”
決め手、急所狙う手刀は寸止め。

お強かったです、と。
笑んでの言に偽りは無く。
…でも僕、負けず嫌いなんで



 前に立つことに妙な緊張感もあった。
 霧島・ニュイ(霧雲・f12029)はひとつ、深呼吸をする。
「一度は手合わせしてみたいと思ってたんだよね……」
 その目の前に対しているのは――クロト・ラトキエ(TTX・f00472)だった。
 ふと、彼は笑みを浮かべて余裕がある。
 クロトは、聞いていた話を思う。
 けれど迷い? と思うのだ。
 否――一兵たる時、如何な事物も己を縛らず。
 クロトの在り様は、自然なのだ。
 常在戦場――故に備えは常の侭。ただ今は、得物も何も用いず徒手のまま。
 対するニュイは、背を預けた事もあればこそ、彼の手は知識の内にある。
 けれど、油断はしない。だって、失礼でしょう? とクロトはニュイへと真っ直ぐに視線向けた。
 その視線だけで――いや、元から知ってはいたのだが改めて思うのだ。
 実力が、彼に全然届いていない。それをニュイは知っている。
 けれど、それなら。
 それなら、どれだけ足りていないのか――それを推し量りたい。
 ニュイはとんと、その場で軽くジャンプしてリズムをとる。
 クロトはいつでもどうぞと、自然な構えだ。
 いくよ、と言わずとも呼吸でわかる。
 まずは素手とニュイはまっすぐ、クロトへと走り込んだ。
(「きっと読まれるだろうけど」)
 持てるスピードで近寄ってその手を向ける。狙う先は目だ。
 手で目潰し狙ってニュイは突き出す――と見せかけて。身を沈めてその足を払った。
 しかしその動きをクロトは見切っている。跳ねてかわして、さて次の手はとニュイを見る。
 ニュイは短く息吐いて、勢い乗せて右拳握り込みストレートで打ち込む、と思いきや左も握り込む。それをクロトはちらりと目で見たのを確認して、そのまま右手を真っ直ぐ突き出した。
「残念」
 その拳をあえて片手でクロトは受け止めて、その勢いを受け流す。ニュイは勢いのまま一歩二歩と前へ。
 視線の使い方、手足に見の捻り、踏み込み、速度、力の乗せ方も、知っている。
 全てを知識照らしてクロトは応じるのみ。
 どう動くかを考えて、それに合わせて動く。共闘の時とも変わらずとも、それは己が経験、軌跡でもある。
 そしてそれをニュイも知っているだろう。知っていても、覆される程安いつもりもない。
 右から、左から。足払い。
 ニュイの攻撃をクロトは回避し、そして距離を詰める。
 回避し続けていたところ、攻撃とせた牽制をかけるクロト。
 裏と裏、戦術の読み合いを重ねて、すべての動きに気を巡らせる。
 その中にいくつの偽りを混ぜたか、だましたか、だまされたか。
「……っ」
 強い、速いとニュイは踏み込んだ。
 それはクロトによる誘いだと、わかっていたがニュイは踏み込んだ。
 左袖に隠していた銃を手に取り、的の広い中心部分を狙う。
 撃たれる、とはクロトも瞬間的にわかる。けれど、クロトはまったく焦りもしない。
 喰らうは致命傷で無ければ良い――致命傷、急所でなければ別にどこを撃たれても構わない。
 ニュイは参ったなぁと心の中で零す。
 撃たれるとわかっても怯みもしない、その姿に怯む。
 そして僅かに零した隙をクロトが見逃すわけはなく。ひゅっと空斬る音は手刀が向けられる音。
 その刃たる手はニュイの目の、その前でぴたりと止まった。
 そのまま進めば、その瞳を貫くことになっただろう。
 審判が、やめと声をかけクロトの勝ちを告げた瞬間、は~とニュイは長い息を零した。
「……あー、もう悔しいなぁ」
 同時に気も抜ける。そんなニュイへとクロトは笑いかけた。
「お強かったです」
 笑んで向ける言葉に偽りはなく。けれど、とクロトは笑い零し。
「……でも僕、負けず嫌いなんで」
「今度やる時までにはもうちょっと差縮めるからね」
 まだまだ、遠い。
 ニュイはそれを感じて次はもっと距離つめて見せると、クロトにぴっと人差し指向けた。
「覚えててよね、クロトさん」
 その言葉に緩やかに、柔らかにクロトはええと返す。
 いつもと変わらぬ笑み湛えて。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ユルグ・オルド
黒羽(f10471)と
※勝敗諸々お任せ

戦を奉納なんて気の合いそうなカミサマだわ
そんで相手が幾度と背を預けた黒羽とくれば
そりゃアまた随分、――心が躍る
恥じないように見せようと思った
背を見せるなら相応であろうとした
けれど今向かうのは同じ色をした瞳
口角上げたらたった一本、柄に手を

来いよ

全力で全身で、その一瞬を、捉えたくて
その重さを知っているから初手を凌ぎに
掠める程度気にもならない
焼ききれそうな熱と
踏み込んで追いかけて躍るように躱して
目の前の男を打ち負かすことだけに支配される一瞬
膝をつかせてみせてよ喰らいついてやるから、

躊躇わず狙うのはその心の臓
翻れば差し込む紙一重の先で
――きっと同じ表情をしてる


華折・黒羽
ユルグさん(f09129)
※戦闘・勝敗お任せ

初めて彼の戦いを見た時思った
──戦ってみたい
共闘でも何でもなく、個として、この人と

けれど同じ猟兵
機会はそうそう巡ってくるわけも無く
だから、奉納戦と聞いて居ても立ってもいられなかったんだ

屠を構え前を見据える
ずっと戦ってみたかった人が目の前に居る
その事実にゾクリ湧き立ちながら
眸に宿る強い戦意

行きます!

極短時間の手合せならば初手より全力
戦いは手に馴染む屠のみを用いて
己の四肢を惜しみなく使い挑む

楽しい
もっと戦いたい
追い付きたい
肩を並べたい

けれどそれ以上にもっと、高みへ
強く、強く──強く!

五感が訴える昂りに知らず弧を描く口元には
きっと気付かぬままに



「戦を奉納なんて気の合いそうなカミサマだわ」
 とんとんと己の肩を、本来の己でたたきながらユルグ・オルド(シャシュカ・f09129)は楽し気に笑っていた。
 楽しいのも、当たり前なのだ。
 何せこれから相手になるのは――華折・黒羽(掬折・f10471)だ。
 幾度と背を預けた相手と戦うとなれば、笑みがこぼれるのも仕方ない。
 この、今心にある思いを言葉にするならば。
「そりゃアまた随分、――心が躍る」
 恥じないように見せようと、ユルグは思う。それは神様相手にもだが――黒羽にもだ。
 背を見せるなら相応であろうとした。そして相応であったはずだ。
 けれど今向かうのは同じ色をした瞳だ。
 知らず、その心躍るままにユルグの口角があがる。
 ああ、楽しそうな顔をしていると黒羽も思っていた。
 初めて、ユルグの戦いを見た時思ったのだ――戦ってみたい。
 それは、共闘でもなんでもなく、個として、この人と。
 だが敵対することのない相手。黒羽も、ユルグも猟兵なのだから背を預けること、肩を並べることはあっても対する機会はそうそう巡ってくるわけもなく。
 けれど今日は、この場は――それが許される。
 神様に奉納する戦と聞いて居ても立ってもいられなかったのだ。
 己の身の内に依存し、共存する黒剣、屠を黒羽は手にする。
 ずっと戦ってみたかった人が目の前に居る。
 その事実にゾクリと沸き立つものを黒羽は感じていた。
 それは高揚か、惧れか、喜びか、それとももっと別のものか、さまざまな感情混ざりあうものか。
 いずれにせよ、その眸に宿る強い戦意だ。
 その戦意をユルグは受け取って、思わず口笛吹きそうなくらいにご機嫌だ。
 柄に手を乗せ――笑って返す。
「来いよ」
「行きます!」
 極短時間の手合わせならば初手より全力でいくだけだ。その手にある屠は黒羽の手によく馴染む刃だ。
 ぐっと、下肢に力込めて黒羽は踏み込む。もちうる身体、その四肢を惜しみなく使って挑むだけだ。
 全力で来るということをユルグも予想していた。
 全力で、全身で。その一瞬を捉えたくて。その重さを知っているからこそ、その初手を凌ぐ。
 振り下ろされる、受け止める。
 軽い、重い。
 一撃が入りきらない、一撃がかわし切れない。
 そんな、刹那のやり取りを視線が咬み合い知らず互いの口端も上がる。
 ユルグの手にあるじんとした痛みは初撃の重さの置き土産。
 そのまま、くるりと身を返して振りぬかれる刃は己の瞼、そのわずか上を掠っていく。
 おお怖い、なんて軽口叩く暇が今は無い。ただ胸に焼ききれそうな熱を灯して、ユルグは踏み込んだ。
 黒羽はこのくらいかわせる、かわされたとギリギリをせめて踏み込まれた瞬間身を引く。
 楽しい、もっと戦いたいと――本能が言う。
 追い付きたい、肩を並べたいと――黒羽の何かが言う。
 ユルグはふと笑って、なぐように払われた屠の軌跡を踊る様に躱して身をかがめ踏み込む。
 ふ、と――笑って見せた。
 ユルグの心は今、支配される。目の前の男を打ち負かすことだけ――それだけで溢れかえっていた。
「膝をつかせてみせてよ喰らいついてやるから、」
 その言葉と、笑みにああ、強いと黒羽は思う。
 けれどそれ以上にもっと、高みへ。
 強く、強く――強く! と黒羽の身に力滾るものがある。
 ユルグの向ける切っ先は躊躇う事なく黒羽の心の臓。
 突き付けられる、その速さ。
 身を引くのも間に合わない、体をずらしても追いつかれる。
 なら、と黒羽は地を踏み縛りその足振り上げその手を蹴り上げた。
「そうきたか!」
 それたならば、避けることも叶う。
 視線が交差した瞬間、瞳の中の己の姿を見つける。
 互いに高ぶりのままに、その口は弧を描いて吊り上がっている。
 知らずそうなっていたことを知って、同じ表情していることを知って戦いは止まることを知らない。
 もう一撃、刃が咬みあった瞬間にそこまでと審判の声が入る。
 その声に高揚は僅かに冷え、引き戻された。
「引き分けだってさ、黒羽」
「仕方ありません、短い時間ではお約束です」
 戦える限り戦いたかった、とは。
 互いに思っているのだ。けれどそれを口にせずまたの機会に持ち越し。
 背中を合わせるのも楽しいがこうして向き合うのも、また別の楽しさがある。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

姫城・京杜
與儀と!

賑やかな神社だな、何か催しやってるのかな?
ん?奉納戦?
観るのすげー楽しそう…って、俺達も!?
でも俺、與儀に手ェ出すとか…え、無理…
…まぁ戦うっていっても、神様に見せるためのものか
なんかあのご神体の刀を前にしたら、やんなきゃって気にはなるからな…
あくまで奉納戦、だしな…(自分に言い聞かせるように

神に力を見せるように、與儀と攻撃繰り出してく
でもやっぱり與儀に手とか出せねェから
與儀の攻撃相殺する形で【紅き猛火】を繰り出す
俺達も神だからな
與儀の水と俺の炎が合わされば、奇跡も起こせるから

でも、ちょっとの手違いで與儀に攻撃掠っちまったら超動揺しまくる
與儀がその隙見逃すわけねェから、その後はお察しで



 姫城・京杜(紅い焔神・f17071)は賑わいに気付き、そちらへと顔向ける。
「賑やかな神社だな、何か催しやってるのかな?」
 行ってみるか、と英比良・與儀(ラディカロジカ・f16671)は言って足を向けた。その後ろを京杜はついていって目にしたのは。
「ん? 奉納戦?」
 神社の中、賑わう声の中で戦う姿が見えた。
 戦いを奉納する――それをふたりは近くにいたひとびとの話声から察して。
 與儀は瞳細め、なぁと京杜に声向ける。
「やるか?」
「観るのすげー楽しそう……って、俺達も!?」
 そうだと與儀は頷く。何を思ってそう主が言うのか――京杜は分からず。與儀はその表情にどうすると問いかける。
「嫌ならいーけどよ」
「でも俺、與儀に手ェ出すとか……え、無理……」
「手合わせでもか?」
 無理、と再度頷く京杜。ま、そういう感じだよなァお前はと與儀は苦笑して。
 けどよ、と視線で促す。その視線を京杜はおいかけてご神体を見つけた。
「あのご神体に見せるんだってよ」
 戦うと言っても神様に見せるもの――京杜はじぃとご神体を見つめ。
「なんかあのご神体の刀を前にしたら、やんなきゃって気にはなるからな……」
 あくまで奉納戦、だしな……と、自分に言い聞かせるように呟く。その様を與儀は笑って見つめ、じゃあいくかと先を進む。
 向かい合って――そして京杜は緊張する。
 神に力を見せるように。でも、やっぱりと京杜は思うのだ。
(「與儀に手とかだせねェ」)
 だから、と受け身の姿勢だ。その考えを與儀は見通して、仕方ないと自分から仕掛ける。
 遊ばせるように水生み出せば、それを相殺するように京杜は激しく燃え盛る数多の焔を。
 水と焔がぶつかって、爆ぜて。飛沫となった水がキラキラと降り注ぐ。
 するとその中に浮かび上がるのは虹だ。それを見つけた人々がわぁと声あげる。
「俺たちも神だからな」
 その様を目に、京杜は少しだけ嬉しくなって笑み零す。
 與儀の水と俺の炎が合わされば、奇跡も起こせるから――そう思っていると操る焔に僅かにぶれが。
 それは與儀の傍らを、僅かにその髪の端を焼いていく。
「!」
 その瞬間に、体に傷など一つもつけていないのに京杜は動揺し息をのむ。その隙に與儀はため息交じりに踏み込んで懐へ。
「ぼーっとしてんなよ」
 その視線があった瞬間、京杜の足が払われる。
 バランス崩し腹のあたりに手を添えて、與儀は京杜を地に伏せて――その腹の上にどっかりと胡坐かいた。
 見下ろしてくる主の視線。與儀が何を言いたいのか――それを京都はわかってはいるのだがどうにもならないのだ。
「ったく……傷なんてついてねーよ」
 與儀は苦笑して、立ち上がる。
 京杜もそれに続いて。けれど、與儀が見上げたその顔は微妙にへこんでいて、これは神様に捧げる戦だろと告げる。
「あれくらいで動揺するのを、見せんなよ」
 與儀の言葉を、そして言いたい言葉を京杜は飲み込んだ。
 その様子に與儀は仕方ねェやつと笑うのだ。
「お前は、いつも俺をちゃんと守ってる。それから――帰って、珈琲淹れてくれよ」
「!」
 その柔らかな言葉と、向けられる視線に京杜は瞬いて、頷き返す。
 それは己の役目のひとつであることを知っているから。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ミザール・クローヴン
乱入もいいか!なら、おれ様もいくぞ!
黄金の爪は外して挑む。この身体と技で死力を尽くす!

相手は誰でもいいが、強そうなやつがいい
勝てても負けてもおれ様にとって実りがある
さあ、さあ!おれ様と一騎打ちだ!

時間はかけない、合図があれば即攻撃だ
拳を握り、距離を詰め、急所を抉る
二撃目なんていらないくらいの氣をこめてやる!

神の前でもおれ様は変わらない
より強く、より高みへ
敵に負けず味方に負けず己に負けないおれ様である!
勝負ではなく、精神が、だ!

戦いのあとには名を聞こう
おれ様はミザール、よぉっく覚えておくといい!
次も勝つ、次は勝つ
かける言葉がどっちでも、手を差し出そう
仕合のあとには握手するんだぞ貴様!



 賑やかな、その戦いの賑わいにミザール・クローヴン(星踏武曲・f22430)の心もは惹かれるばかり。
 そわりと、競われるその武にミザールは逸る思い抱くばかりだ。
 あれは事前に言ってないと参加できないのだろうか――そう思ったのだが、どうやら飛び入りも大丈夫な様子。
「乱入もいいか! なら、おれ様もいくぞ!」
 黄金の爪、それはその手より外す。それはきっと相手を傷つけてしまうだろうから。
 この身体と技で死力を尽くす――それがミザールの心持だった。
 戦う場に名乗り出たミザール。相手は誰でもいい。でも、強そうなやつがいい。
 勝てても負けても、どちらでもミザールにとって実りがあるからだ。
「さあ、さあ! おれ様と一騎打ちだ!」
 かかってこいと名乗り出た少年――見渡す限り相手になりそうなものはいない。
 と、思ったところで。
「はい! ではウカが!」
 と、戦うと手を挙げたのはこの場へと誘った華切・ウカ(空鋏・f07517)だった。
 強いのだろうか――そう僅かに思うが見た目で相手を侮ってはいけないと戒める。 それに、同じ猟兵であるのだ。戦う場はいくつか経ている様子。
 場にふたり上がると同時に戦いが始まる。
 ミザールは拳を握り、距離を一気に詰める。
 急所――体の中心、そこをめがけて踏み込みと同時に抉り出すように突き出す。
 二撃目なんてない。この一撃ですべてを決めるという氣を込めて。
 神の前でも――おれ様は変わらない。
 より強く、より高みへ。
 今、目の前にいるのは敵ではないが――同じく拳を交えようとする。
 拳を向けるなら拳というように握りしめて踏み込む。逃げる、避ける。そんなことはしないのだと向き合った瞬間にわかっていた。
 二人とも背丈は同じくらい。歩幅も同じゆえに踏み込む距離も、タイミングも合う。
 己の拳が、相手の腹に入る重さと――相手の拳が己の腹に入る衝撃とは同時にやってくる。
 息を詰めたのはどちらが先か。
(「敵に負けず味方に負けず己に負けないおれ様である!」)
 勝負ではなく、精神が、だ!
 と――心の中で強く叫ぶ。踏み込む力がその勢いに乗って、拳を振りぬかせた。
「わ、わわ!」
 その勢いに負けて、ウカの身が後ろへと傾ぐ。バランス崩しそのまま尻もちついた。
 審判がミザールの勝ちを高らかと告げる。
 と、ミザールはまだぺたりと座り込んだままのウカへと近づいて。
「名前は?」
「名前、ウカと言います」
「おれ様はミザール、よぉっく覚えておくといい!」
 そういって、口端を上げもうひとつ告げねばならぬ言葉を向けるのだ。
「次も勝つ」
「次は、負けません!」
 次も勝つと言われたならば、次は負けないと返すのは当たり前の事なのだろう。
 そしてミザールは手を差し出した。
 手? とウカがその手とミザールの顔をいったりきたり。
「仕合のあとには握手するんだぞ貴様!」
 その言葉にウカは手を握り返しミザールもまたぎゅっと。
 悪手してどちらともなく込めた力は拮抗しているのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ロク・ザイオン
◎赤銅と

赤銅は。
炎。燃えるの。
好きか。
(森の娘、野火の仔は
比喩とも、そのものともつかぬ問を、キミに)

おれの炎は。
病を灼く。森を焦がす。
健やかな次のいのちのために。
けれど、燃えてしまうことを、かなしく思う時もある。

(灼熱する山刀
掠れば灰に
外せば炭に
火花散らして打ち合えば、捧げものには足るだろうか)

(流れる血を舐め取り拭って、笑う)
熱いの好きか。
炎から、ものを生んでくれるか。
(火の種ひとつ、キミの煙草に放り投げて)
炎を喜んでくれたのは。
ひとが、はじめてだったよ。


多々羅・赤銅
◎ロクと

ロク。ひでぇ声で鳴く、野火。
お前の火はいい匂いだ。ちょいと私に、分けてくれよ。

ーー穢れ焼き祓う火を二つ。千早振る神前、赫赫奉る。

好きだな!
夜を灯し、凍える冬を越す。鋼を打ち、私らの刃を造る。人が得た、神の一欠片。
あと、何より、熱いから好き!

哀しいかぁ。
そんなら、必要だったら。
私が炉に押し込んでやるよ。
烏有に帰すよか良い時もあるだろ。

(刀一振り、鍛治でもある鬼は炎熱に怯む事も無し。寧ろ飼い慣らすように熱に耐え、受け流し、火花と躍る。
打合いを終えて見れば。火炎耐性を越えて爛れた甲に口笛ひとつ)

そーそー
人は愚かだから、炎を愛しちまえるんだよなあ
な、煙草に火ぃ頂戴!
神前は禁煙?そう言わず!



 赤銅は、と。
 ロク・ザイオン(蒼天、一条・f01377)は多々羅・赤銅(春荒れに・f01007)へと声向けた。
 その続きを、なんだよと赤銅は待つ。
「炎。燃えるの。好きか」
 ロクは――森の娘、野火の仔だ。
 比喩なのか、それとも――そんな問いをロクは赤銅へと向けた。
 赤銅は、はっと息吐いて笑い、ロクとその名前を紡いだ。
「ひでぇ声で鳴く、野火。お前の火はいい匂いだ。ちょいと私に、分けてくれよ」
 ひらりと気に入りの煙草をその指に持つ振りして赤銅は言って、改まる。
「――穢れ焼き祓う火を二つ。千早振る神前、赫赫奉る」
 それはよくよく響く声だった。
 赤銅は紡ぎ終わると同時に笑って、刃を抜き放つ。
 自分で使う刀だからと呼び名はどこまでも適当――卵雑炊と呼ばれてもその刃の冴えは優しくはない。羅刹の女が持つ大業物はどこまでも純然たる刃だ。
 抜き放ち、薙ぐか、振り下ろすか、振り上げるか。それも気分次第のようなもの。
 その一撃をロクはその心に応ずるように、己を使えと魂魄奮うて白熱を生む剣鉈で受け止めた。
「好きだな!」
 その言葉は、唐突でもなく。先ほどの返答の続きだ。
 炎――それは、夜を灯し、凍える冬を越す。
「鋼を打ち、私らの刃を造る。人が得た、神の一欠片」
 無邪気に、赤銅は子供のように笑って。
「あと、何より、熱いから好き!」
 そんな風に赤銅に思い、感じるものもロクにとってはまた違うものだ。
「おれの炎は」
 病を灼く。森を焦がす。
 健やかな次のいのちのために。
「けれど、燃えてしまうことを、かなしく思う時もある」
 それでもか、とロクの言葉は問いかけるようだ。
「哀しいかぁ。そんなら、必要だったら」
 私が炉に押し込んでやるよと、赤銅は笑いかける。それは真っ直ぐ、ロクに向けらえた笑みだった。
「烏有に帰すよか良い時もあるだろ」
 なぁ! と言って刃振り下ろす。
 空斬る音、触れると同時にロクの身を僅かに切り裂いた。
 その次の攻撃を、受け止める朱金の山刀が一層の熱帯びる。
 灼熱――掠れば灰に、外せば炭に。
 打ち合えば火花が散る。
 この火花は――捧げものには足るだろうかとロクは思う。
 刃と刃が拮抗して咬み合う。
 刀一振り、鍛冶でもある赤銅は炎熱に怯む事もない。むしろ、打ち合う度に生れなおすその炎を、熱を飼い慣らすように耐え、受け流し、そして踊る。
 それをいつまでも続けていたいような――そして見る者たちもそれをずっと見て痛いような。
 ご神体は、刀である。
 まるでそれを打ち据えているような、そんな戦いにひとびとは魅入っていた。
 けれど互いに決着つかぬ筋が見え、引き分けだと審判の声が入る。
 まだ、ロクの手にある山刀も収まらぬ熱を持つ。赤銅も、もうちょっとさせてくれてもいいだろと言いつつも、己のその手の甲――火炎耐性を越えてただれたそれに口笛一つ。
 ロクも流れる血を舐めとって、そして笑い戦いの中で向けられた言葉を、反芻して。
「熱いの好きか」
「好き!」
「炎から、ものを生んでくれるか」
 生む生む、と赤銅は軽いノリで答える。
「そーそー。人は愚かだから、炎を愛しちまえるんだよなあ」
 赤銅はもういいだろと煙草を手に持って。
「な、煙草に火ぃ頂戴!」
 そういったところで神前は禁煙の看板が見えたが、見えぬふり。
 ロクは禁煙と言うが、そう言わず! と赤銅は呵々と笑って煙草持つ手を揺らす。
 火の種ひとつ、赤銅の手にある煙草へとロクは放り投げた。
「炎を喜んでくれたのは」
 ひとが、はじめてだったよ――ロクはそう、小さく笑み浮かべて紡いだ。
 炎の在り様は様々で。そしてあの手は炎からものを生み出す手とロクは瞳細める。
 その手――赤銅の手には今煙草があり、ゆるりと紫煙を吐き出した。
 神様に戦いを捧げた後だからかいつもより美味い気がする、なんて冗談交じりに紡ぎながら。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年01月05日


挿絵イラスト