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感染型UDC『何でも治せる病院の怪』

#UDCアース #感染型UDC

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●何でも治せる病院の噂
「ねえねえこんな噂を聞いたことがある?」
 オカルト研究部の部長のお決まり一言から、その日の部活は始まった。
 それは彼らの日常であり、青春であった。部長がどこからともなく聞きつけてきた噂を部員全員で調査して、成果をファミレスで話し合い、徒労だったとがっかりする。
 そんな非現実(オカルト)ある筈がないと思いながらも、もしも本当だったらどうしよう、まだ見ぬ世界があるかもしれないという好奇心を満たすためのちょっとした冒険。それが彼らの部活動だった。
 彼らは知らなかったのだ、現実と非現実の境界は非常に曖昧で、一般人が接触しないように人類防衛組織(UDC)が必死に隠蔽していただけであっただけという事を。

「その噂の内容はね…こうなんだ。インターネットのサイトに『誰彼病院』っていう謎の病院のHPがあってね。その病院のお問い合わせに『119』の数字を記入して送信すると、どんな病気でも怪我でも治してくれる病院に連れていってくれるんだって」
 部長と呼ばれた少女が語った内容は上記のような内容であった。

「ふむ…普通に検索エンジンにかけても見つからないね。まあ、そりゃあそうだわな」
 スマートフォンの画面をタップして検索をしていたオカルト部員、小野田三郎は軽く溜息を吐いた。
 検索エンジンにかけるだけで見つかるならば、部活動にはならない。
「ほいじゃ、オカルト掲示板でも聞いてみようかね。まあ、本当に見つかるとは思わないけど…」
 専用ブラウザで掲示板を開き、スレを立てて書き込んでみる。
 しばらくすると幾つかレスがついていた。
「ふ~ん、へ~。ほ~ってマジかよ。本当にあったなんて…」
 掲示板をスクロールしていくと、どこかのサイトへと繋がるリンクがあり試しにクリックをしてみると、『誰彼病院』のHPが見つかった。
「じゃあ…適当な住所と名前を入れて…119っと」
 必要事項を入力して送信のボタンをタップする。

 次の瞬間、彼の日常はいとも容易く崩壊し非日常の世界へと足を踏み入れることになった。

「やあ…キミが次の患者かい?」
「ひいっ…誰ですか!?」
 突如背後に現れた女と思われる声に驚き、三郎の肩が跳ね上がる。
 恐る恐る振り返ってみるとフードを被った恐ろしく美人な女医らしき存在が居た。彼女の右腕が異形化していなければ、鼻の下を長くしていたに違いない。
「ひいいい!!うわあああああ!!あの噂は、本当だったんだ!」
 身を突き刺すような恐怖と悪寒から三郎は急いで駆け出して行った。
 その周囲には無数の異形の怪物達がぞろぞろと増殖し始めていた。

●噂の出所を潰せ
「Bonjour!猟兵諸君。早速だけど仕事の時間だ。キミ達は、感染型UDCっていうものを聞いたことがあるかい?」
 グリモア猟兵のオルキテ・タンプル(もう一人の蘭花・f15791)が集まって来た猟兵達に対して依頼の概要説明を開始した。
「人の噂を介して増殖するUDCでね。それを見た人間、それを噂話やSNSで広めた人間、その広まった噂を知った人間全ての「精神エネルギー」を餌として、大量の配下を生み出すんだ」
 カタカタと電脳魔術で作ったキーボードを打鍵しながら、次々と電子ディスプレイに情報を映し出しながらオルキテは続ける。
「今回の噂は『何でも治してくれる病院』だ。その病院のHPに『119』つまりは救急の番号を送るとその病院に連れていって…いや拉致される。まあそんな感じの内容さ」
 現代にも不治の病はあり、溺れる者は藁をもつかむ。この噂が拡散されてしまえば、被害者は際限なく増え、パンデミックが起こるのが予測された。
「このまま噂が広まるとマズイからね。キミ達には早期対処をしてもらうよ。その為にも第一発見者、オカルト部の三郎君の保護をお願いしたい」
 電子ディスプレイに彼の顔写真を表示しながら、オルキテは続ける。
「今、彼の周囲には沢山のオブリビオンがうようよと発生してきている。割と危険な状態だと思う。だから彼の保護を最優先に頼むよ。彼のスマートフォンが黒幕へと繋がる大きなヒントになる筈だからね」
 そう言うとオルキテはグリモアを操作して彼が逃げ纏うUDCの学校へのゲートを開く。
「 Je vous souhaite bonne chance 」
 フランス語で『幸運を祈る』と言う言葉を背に、猟兵達はUDCアースへと赴くのであった。


しろべびさん
 しゃちーっす。冬期休暇中にクトゥルフ神話動画を沢山見たからUDCです。
 久々にまたやりたいですねぇ、クトゥルフ神話TRPG。
 グループ参加をする場合は、分かるようにして下されば。
 それでは、皆さんのプレイングをお待ちしております。
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第1章 集団戦 『繋ぎ合わされし者たち』

POW   :    オ、オマエハ……俺ノ、餌ダ!
【飢えを抑えられず、リミッターの外れた姿】に変化し、超攻撃力と超耐久力を得る。ただし理性を失い、速く動く物を無差別攻撃し続ける。
SPD   :    俺ノ身体ハ……モウ、長クナイ
【猟犬の嗅覚と反射神経】【虎の腕力と家猫のしなやかさ】【狐と狸の狡猾さと馬の脚力】を宿し超強化する。強力だが、自身は呪縛、流血、毒のいずれかの代償を受ける。
WIZ   :    死ヌ前ニ、オマエタチダケ、ハ……!
自身に【決死の覚悟】をまとい、高速移動と【身体の継ぎ目から吹き出す、血の斬撃】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。

イラスト:白狼印けい

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●繋ぎ合わされし者たち
 夕暮れの学校を、スマートフォンを握りしめた男子学生がはあはあと息を切らせながら、全力疾走している。
 脇目もふらずに廊下を駆け抜ける彼の周囲には、次々と怪物が発生しては奇声を上げていた。
 その怪物の姿は異形という他なかった。水色の患者衣の上には二種類の犬を継ぎ接ぎ合わせにしたような顔があり、右腕は虎で左腕は猫のものがついていた。さらに両足は蹄鉄を付けた馬のもので、狐と狸の尻尾が2本、それらすべてが人間の胴体に縫い付けられていた。
 人間を素体にして様々な動物の要素を思いついたままにつなぎ合わせたようなソレは、患者衣を来ていることも相まって、『誰彼病院』の入院患者(ぎせいしゃ)の成れの果てではないかと想像させた。
「はあ…はあ…何だこれは…何だこれは…何だこれは…何だこれは…何だこれは…。嘘だ、嘘だ、嘘だ、嘘だ、嘘だ、嘘だ、嘘だ、嘘だ、嘘だ!ありえない、ありえない、ありえない、ありえない…!こんな冒涜的な現実…あっていい筈がない…!」
 恐怖で縺れそうになる足を必死に動かして階段を下り、上履きのまま、校庭に飛び出す。
「うわあああああああああ!!!嫌だ!嫌だ!僕はあんな怪物になりたくない!!」
 そこには、数えきれない程の患者衣を着た継ぎ接ぎの怪物がうろついていた。
「新規ノ患者ダナ…」
「「「「ヨウコソ…『誰彼病院(たそがれ)』ヘ」」」」
「「「「コノ病院デハ、ドンナ病気モ怪我モ治リマス」」」」
「「「「人間ノ姿ノママデイラレルカハ、ワカリマセンガ…」」」」
 あまりにも冒涜的で衝撃的な光景に正気を保てなくなり叫び出してしまった少年に気づいた怪物達が、病院の宣伝文句を口ずさみながら、三郎少年に向けて歩き出すのであった。
昏森・幸恵
何事もない日常、それがどれだけ幸せなのか。
失ってみるまでわからないものよね……。

レプリカクラフトにて仕掛け罠を設置しつつ、三郎を捜索。
発見したら追いすがる敵を牽制しながら彼を誘導するわ。

「来なさい。……私は人間よ、見ればわかるでしょう?」

敵に対しては罠とフック付きワイヤーで足止めし、視界を切りつつ距離を取ることで連中の攻撃に対処。
可能なら数減らしをしたいけど、最優先は三郎の保護ね。
庇いながら有利な地形を探して、隙を見て罠を設置しつづけるわ。

何でも治せる病院……か。
なら、治して欲しいものね。

夜ちゃんと眠れるように。水を畏れなくて済むように。

わかりやすい化物共。お前たちでは、足りないのよ!


神代・凶津
都市伝説なんて大抵は眉唾物だが『オカルト部の三郎君』とやらは本物に出会っちまったか。
運がいいのか、悪いのか。
「・・・馬鹿なこと言ってないで、早く助けにいかないと。」
分かってるよ、相棒。

「・・・まずは『三郎君』を保護しないと。」
おうよ、相棒。
三郎君を見つけたら周囲にいるオブリビオンを【千刃桜花】でなぎ払うぜ。
こいつは斬り刻む対象を指定できるから保護対象を気にする事もなく存分に破魔の桜の刃を振るえるぜッ!
後は三郎君を護りながら他の敵を斬り刻んでやるよ。

・・・怪異を退治する鬼面を被った巫女とか、これもオカルトの噂になりそうだな、相棒。


【技能・破魔、なぎ払い】
【アドリブ歓迎】


バジル・サラザール
何でも治るなんて胡散臭いけど、人の興味はそうそう抑えられないし、まして今苦しんでいる人に騙されるなっていうのも酷な話よね

極力敵の攻撃の射程外から主に『毒使い』『属性攻撃』を生かした『ポイズン・スピア』で攻撃するわ
極力苦しまない毒で攻撃しましょう
敵の集団からできるだけ離れて三郎君を後ろに庇いつつ戦うわ
弱ってそうな敵を優先、各個撃破を狙いましょう
反撃の隙を与えないように出来るだけ間を開けず攻撃しましょう
それでも攻撃してきたら『野生の勘』を利用しつつ回避や防御をするわ
でも三郎君に攻撃が行きそうなら庇ったり相殺したりしましょう

これ以上巻き込まれる人が増える前にこの場で噂を終わらせるわ

アドリブ、連携歓迎



●かつて日常から足を踏み外した者
「何事もない日常、それがどれだけ幸せなのか。失ってみるまでわからないものよね……」
 大学2年生の夏の日、友人たちと遊びに行った先のあの場所で、日常から足を踏み外し、非日常という底なし沼に肩まで浸かってしまった過去を持つ人間の探索者、昏森・幸恵(人間の探索者・f24777)は、戻れない過去を思い出しながら一人呟く。
 グリモア猟兵によって校庭に転移させられた彼女の目の前には、多数の患者衣を身に着けた『繋ぎ合わされし者たち』が、何かを探すようにうろうろとしていた。
 おそらくはオカルト部員小野田・三郎少年を探しているようだった。
 三郎少年が狂気と恐怖に侵されながら書き込んでいるSNSや掲示板によって広まった噂によって得られた「精神エネルギー」によって増殖した個体だろう。先ほど彼が大声で叫んだ現場には居合わせなかったらしい。
「可能なら数減らしをしたいけど、最優先は三郎の保護ね」
 そう呟く彼女の目の前で、『繋ぎ合わされた者たち』がまた1体、骸の海から現れた。大本の感染源である三郎を確保して噂の拡散を止めなければ、このオブリビオンを全滅させるのは不可能だ。
 それならばせめてもの抵抗をと、幸恵はUC【レプリカクラフト】で増やした仕掛け罠を設置しながら、三郎少年を探しに学校内を駆けていくのであった。

●鬼面ノ巫女
「都市伝説なんて大抵は眉唾物だが『オカルト部の三郎君』とやらは本物に出会っちまったか。運がいいのか、悪いのか」
 患者衣を身に纏った異形の怪物が徘徊する高校の屋上で、巫女服の少女に抱えられた真紅の鬼面、神代・凶津(謎の仮面と旅する巫女・f11808)が軽口を叩いた。
「…馬鹿なこと言ってないで、早く助けにいかないと」
「分かってるよ、相棒」
 相棒である巫女服の少女、神代・桜といつものやり取りをすると、2人は屋上から校庭や中庭を見渡して、『オカルト部の三郎君』の姿を探す。
 すると、校庭から中庭を抜けて裏門のある方へと走っていく三郎君とそれをゆっくりと追い詰めるように奇声を上げながら歩いていく怪物の群れの姿が見つかった。
「…見つけた」
「おう、じゃあ行くか相棒」
 桜は凶津を顔に装着すると、屋上から身を翻して中庭の方へと飛び降りると、怪物に追われる男子学生の背を追いかけていった。

●ラミアの闇医者
「何でも治るなんて胡散臭いけど、人の興味はそうそう抑えられないし、まして今苦しんでいる人に騙されるなっていうのも酷な話よね」
 グリモア猟兵によって怪物が徘徊する高校の裏門に転送された下半身が蛇のキマイラであるバジル・サラザール(猛毒系女史・f01544)は、一人溜息をついた。
 今回流された『何でも治せる病院』のような医療関係の噂や怪異についての話は、薬剤師を本業としているUDCエージェントである彼女にとっては、その悍ましい顛末を含めて聞き慣れたものだった。
「これ以上巻き込まれる人が増える前にこの場で噂を終わらせるわ」
 だからこそ、医療従事者として助かりたい、健康になりたいと思う切実な願いを踏みに弄るような噂は断たないといけないと決意を新たにする。
 そんなバジルの視界に、はあはあと息を切らせながら、背後にある裏門に向かって走って来る一人の男子生徒の姿が目に入った。

●合流
「はあ…はあ…はあ‥!逃げなきゃ!逃げなきゃ!逃げなきゃ!」
 パニックに陥った三郎少年は息を切らせながらただひたすらに走り続ける。どこに逃げればいいのかなんて分からない。どこに行っても怪物は出続ける。見知った筈の学校が、どこか違う場所のように思える。
 瞼からは涙が溢れ、鼻水は止まらず、その所為で呼吸がし辛い。
「怖い!怖い!怖い!怖い!怖い!誰か助けて、お願いだから!誰か!」
 涙声で叫んだ。誰かが自分の声を聞いてくれることを願って。
「こちらに向かって走ってきなさい!」
「へっ?」
 声の下方へと顔を向ける。するとそこにはどこか人とは違う気がするが、確かに安心できるような緑の髪をした綺麗な女医らしきヒトが居た。
「助けて下さい!突然怪物が出てきて!何が何だか分からなくて!」
「ええ。大丈夫よ。私『達』に任せておきなさい」
 縺れそうになる足を懸命に動かしながら駆けてきた少年を守るように前に出ながら、バジルは安心させるべく言葉をかけた。
「わたし…たち?」
 その言葉に疑問を持った少年は、恐る恐る自分が逃げてきた方向を振り返る。
 するとそこには、華麗な太刀捌きで怪物を斬り伏せる鬼面を被った巫女服の少女と、どこからともなく生み出した無数の罠を使い、怪物の足止めをしている不健康そうな表情をしたウェーブヘアの女探索者の姿があった。

●激闘
「…まずは『三郎君』を保護しないと。」
「おうよ、相棒。」
 患者衣の怪物の群れに真っ先に斬り込んでいったのは凶津と桜のペアであった。卓越した剣技を持ち、近接戦を得意とする彼らは今回の戦いにおいて前衛の役割を果たすこととなった。
「来なさい。……私は人間よ、見ればわかるでしょう?」
 そして、【レプリカクラフト】で仕掛け罠を量産して、次々と罠を設置していくことで怪物達の足を止める遊撃の役割を幸恵が担う。
「極力苦しまない毒で攻撃しましょう」
 遠距離攻撃を得意とするバジルは、後衛で三郎を庇いながら凶津と桜のペアの討ち漏らしや幸恵の罠に掛かり動けなくなった相手を得意の毒攻撃で仕留める役を担った。
 
 猟兵達が各々の能力や得意とすることを活かして即席の役割分担による連携を繰り出すのに対して、怪物側の対応はその身体スペックを活かしたゴリ押しが中心であった。
 人間を素体にして動物のより優れた部位を取り変えていけばより強力で優れた生物になるのではないか。
そんな単純明快な思想から生み出された怪物達は、その身体能力を遺憾なく発揮して猟兵達を攻撃する。
馬のように速く、虎のように力強く、猫のようにしなやかで、タヌキやキツネのように狡猾で、猟犬のように鼻が利く究極の生物。
それは理想論であり机上の空論であった。
「「「「グルアアアア!!!!」」」」
故に完ぺきではない彼らは、寿命を犠牲にして無理矢理に体を動かすことでしか、その身体能力を活かすことが出来なかった。

●千刃桜花
「・・・いけ、千刃桜花」
「細切れになっちまいなッ!」
 無銘の妖刀が淡い桃色の光を発すると、刀身がほどけ儚くも美しい千の桜の花弁へと姿を変えていく。その花弁1枚1枚が破魔の力を宿した桜の花をした刃だ。
 UC【千刃桜花】によって生まれた美しい花吹雪は、淡い光を発しながら凶津と桜の周囲を渦巻ながら展開されている。
「こいつは斬り刻む対象を指定できるから保護対象を気にする事もなく存分に破魔の桜の刃を振るえるぜッ!」
 凶津の言葉と共に桜吹雪が舞い踊り、彼らの周囲を取り囲んでいた怪物達から次々と血しぶきが上がっていく。
 斬撃の嵐をその身に受け、破魔の力に体を焼かれた怪物達は、膝から崩れ落ちると、体を光の粒子に変えて骸の海へと帰って行った。
「…怪異を退治する鬼面を被った巫女とか、これもオカルトの噂になりそうだな、相棒」
「…馬鹿なこと言ってないで、残った敵を倒すよ」
 凶津と桜は何時通りのやり取りをすると、次なる標的の群れを殲滅するべく桜吹雪を舞い踊らせた。

●猛毒の槍
「薬も過ぎれば毒となる。元々毒だけど、たっぷりと味わいなさい」
バジルのUC【ポイズン・スピア】で創り出されたのは56本の毒属性の魔法の槍。
 彼女の持つ【毒使い】の技能によって強化された猛毒の槍は、幸恵がフック付きロープで足止めした個体や、虎ばさみを始めとした仕掛け罠にかかった敵、凶津と桜の操る桜の刃から生き延びてフラフラとしていた敵を貫いていった。
 猛毒の槍によって貫かれた怪物達は、心臓を抑えるとそのまま真っ青な顔になり、どさりとうつ伏せに倒れて、眠るように息を引き取り、そのまま体を光の粒子へと変えて骸の海へと帰って行った。

●切実な願い。
「何でも治せる病院……か。なら、治して欲しいものね。夜ちゃんと眠れるように。水を畏れなくて済むように」
 日常が壊れた日から、幸恵は夜中にまともに寝られたことはなく、食は細いままで、水への恐怖感は、心の奥底まで深く刻みつけられたまま少しも癒えていない。
 故に治せるならば治して欲しいというのは心からの言葉であった。
 尤も…。
「グルルルル!『誰彼病院」ヘヨウコソオオオオオオ!!』
 異形の怪物にされ、理性も尊厳も失った彼らの姿を見ると、期待していたような効果が得られる確証は限りなく0に近いことが分かるのだが。
「わかりやすい化物共。お前たちでは、足りないのよ!」
 幸恵は苛立ちを滲ませた声で叫びながら、虎ばさみに足を取られた異形の怪物に拷問具を振るう。
「キャイン!!」
 拷問具の一撃によって頭蓋を破壊された怪物は、断末魔の叫びを上げるとそのまま体を光の粒子に変えて骸の海へと帰って行った。

●一時収束
 凶津と桜の放つ桜吹雪の斬撃が敵の大半を斬殺し、生き残った敵を幸恵の罠で捕え、バジルの毒槍が撃ち抜いていく。
 猟兵達の即席ながらも息の合ったコンビネーションによって裏門に集結していた敵については一時的に片付いたと言っても良かった。
 猟兵達は、三郎少年を落ち着かせると掲示板のスレの削除やSNSの発言の消去をさせた。感染源である少年による書き込みが無くなったことで、『繋ぎ合わされし者たち』の増殖は段々と速度を落としていった。
 後は、この学校に現れた全ての『繋ぎ合わされし者たち』の殲滅が完了すれば取りあえずの異変の収拾は可能になるだろう。
 猟兵達は、三郎少年を守りながら、『繋ぎ合わされし者たち』の殲滅を継続するのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ニーレット・ジンクス
おーおーいるねぇワラワラと。件の少年は…錯乱してるけど、まだ大丈夫そうかな?いきなり非日常に放り込まれたらそりゃ正気も削れるよね、ちゃーんと帰してあげないと。

【WIZ】
私自身は非力だし、超強化して単純な暴力で来られると押し切られそう…ここはガムテの出番ね。UC「粘着封印剣」でうまく抑えて戦えるといいな。
相手のUC封じられたら、弱点っぽいから継ぎ目のとこを狙ってバールでぶん殴って突き刺して、とにかくどんどん数を減らしていかないと。
私の他にも猟兵来てるし、数が結構減ってる様なら少年の保護優先しようかな。
はいはい大丈夫、私達はキミを助けに来たんだよ。信じなくてもいいから助けさせてねー。なんて。


ガルディエ・ワールレイド
テメェ等も被害者なのかもしれねぇが既に手遅れなんでな
悪ぃが容赦はしねぇぜ

◆行動
三郎とスマートフォンの保護を優先
混乱しないよう声もかける
「ちゃんと助けてやるから冷静になりな」

【竜神領域】で飛翔し、三郎のいる場所(=大量の敵が動いてそうな場所)へ突っ込むぜ
武装は《怪力/2回攻撃》を活かす魔槍斧ジレイザと魔剣レギアの二刀流
《念動力》は遠距離攻撃、または三郎やスマートフォンを保護する等、補助的に使用

【オ、オマエハ……俺ノ、餌ダ!】対策
三郎が他猟兵に保護されているなら、素早く動いて囮になりつつ戦闘
本格的に囲まれても飛翔で脱出出来るしな

三郎の安全が不確かなら、彼を抱えての飛翔で逃走することも視野に入れる



●怪物の行進(キメラ・パレード)
 カチカチカチと鋼鉄の蹄鉄がアスファルトを叩きつける音が響く。
 それは馬の脚を縫い付けられてしまった人間だったモノの足音だ。
 患者衣を身に纏った醜い怪物達は、同じ言葉を繰り返し叫びながら猟兵達が守る三郎少年を目掛けて行進していく。
「「「「ヨウコソ…『誰彼(たそがれ)病院』ヘ」」」」
「「「「コノ病院デハ、ドンナ病気モ怪我モ治リマス」」」」
「「「「サア、人ノ力ヲ超エタ素晴ラシイ存在ニナリマショウ」」」」
「「「「私達ミタイニネ!!ギャハハハハ!!!!」」」」
 狂気に満ちた笑い声と共に怪物達は、少年に迫る。
「そ…そんな…嘘だろ…。さっきあんなに倒したのに…まだあんなに居るのか」
 三郎少年は怪物の群れを見て尻もちをついた。
 猟兵達が強いのは先ほどの戦闘を見たので知っているが、今回の攻勢は先ほどよりも数が多い。今度こそ駄目なのではないか…という思いがどうしても消えない。
 窮地に陥った彼らを救援するべく、心強い助っ人が2人。新たに怪物が徘徊する高校の裏門へと召喚されてきた。

●邪道剣豪と黒騎士
「おーおーいるねぇワラワラと。件の少年は…錯乱してるけど、まだ大丈夫そうかな?いきなり非日常に放り込まれたらそりゃ正気も削れるよね、ちゃーんと帰してあげないと」
 尻もちをついて怯える三郎少年の隣に転送された少女が呟く。
 彼女の名前は、ニーレット・ジンクス(邪道剣豪・f24342)。
 黒い髪に青い瞳、左右で大きさの違うちぐはぐな翼をガムテープで纏めたオラトリオの少女。邪道剣術と名付けた刀剣類を使わない独特の戦法を扱う、風変りな女剣士だ。
 ニ―レットは、尻もちをついて動けなくなった少年に手を差し伸べながら、話しかける。
「はいはい大丈夫、私達はキミを助けに来たんだよ。信じなくてもいいから助けさせてねー。なんて」
「あ、ありがとうございます」
 尻もちをついていた少年は、二―レットの手を取って立ち上がると彼女にお礼を言った。
「ちゃんと助けてやるから冷静になりな」
 ニ―レットとほぼ同時に少年の隣に転送された、ガルディエ・ワールレイド(黒竜の騎士・f11085)は、少年を安心させるように肩に手を置きながら混乱を抑えるように告げる。
 黒竜を想起させるような漆黒の甲冑『魔鎧シャルディス』を纏い、『複合魔剣レギア』と『複合魔槍斧ジレイザ』を両手に装備したガルディエは、誰がどう見ても強そうな見た目をしており、彼のことを見上げる少年の心の安定化を促すのに大いに役立った。
「わ、分かりました。皆さんを信じてここで待っています」
 そういう彼の口調に動揺やパニックの兆候は見られず、発狂してどこかに逃げたりするといったトラブルは起こらなさそうに見えた。
「三郎は大丈夫そうだな。俺は敵が一番居そうな所に突っ込んでいくが、どうする?」
「私は少年の保護を優先しようかな」
 互いのポジションを確認すると、2人はそれぞれ自分の愛用する得物を手にして、患者衣を身に纏った怪物との戦闘に入るのであった。

●竜神領域
「此処は俺の領域だ。俺が定義するぜ」
 そう力強く宣言するガルディエに不可視の念動力が宿り、ふわりと体を浮かばせた。
 その力こそ、UC【竜神領域(ドラゴニック・フィールド)】。彼の持つ【竜としての権能】に応じた身体能力の増強と強力な念動力と飛翔能力を授ける強大なUCだ。
 そして竜の力を得た黒竜の騎士は、先ほど宣言した通り、敵が密集している所を目掛けて飛翔していく。
「テメェ等も被害者なのかもしれねぇが既に手遅れなんでな。悪ぃが容赦はしねぇぜ」
 念動力で高速飛翔してきたガルディエは、地面に足をつけて踏ん張り、急制動をかけながら、その勢いのまま『複合魔槍斧ジレイザ』を横薙ぎに振るう。
 高速飛翔による運動エネルギーとUC、ガルディエの怪力によって強化されたハルバードの一撃は強烈で、『繋ぎ合わされし者たち』の群れを、薄紙を裂くように容易く真っ二つに切り裂いた。
「ヨクモ同胞ヲ!」
 そして、攻撃直後の隙を狙って跳びかかってきた敵を、反対の手で持っていた魔剣の一撃を以て袈裟に斬り伏せた。

「グルルル…強イ」
「コウナッタラ、アレヲ使ウ」
 このままではただただやられるだけだと悟った『繋ぎ合わされし者たち』は、UCを使うことで状況の打開を図る。
「「「「グルアアアア!!!!!!」」」
 犬顔の怪物の目が充血して血走り、口からはだらだらと涎が溢れ出す。空腹を思い出したのか、彼らの胃からはグーグーと腹の虫が大合奏を奏でていた。
「「「「オ腹ガ空イタ!オ腹ガ空イタ!オ腹ガ空イタ!オ腹ガ空イタ!オ腹ガ空イタ!オ腹ガ空イタ!食ワセロ!食ワセロ!食ワセロ!食ワセロ!食ワセロ!食ワセロオオオオオ!!」」」」
 極限にまで達した飢餓状態によって暴走した彼らには理性というものはない。ただただ、生きている者を捕え、爪牙を振るい肉の塊に変えて満たせぬ腹を満たす。
 それが味方だろうと同胞だろうと関係ない。餓えた獣にとっては弱肉強食の理が全てだ。
 制御不能の暴走獣と化した『繋ぎ合わされし者たち』が、同士討ちをしながらガルディエに襲い掛かった。
「掛かってこい怪物ども。一応、騎士を名乗ってんだ。簡単には退けねぇな」
「「「グルアアアア!!!」」」
 黒竜の騎士は理性を無くし、リミッターの猛虎の左腕を振るう継ぎはぎの怪物をハルバートで真っ二つに裂き、馬の脚力で跳びかかり猟犬の顎で食いちぎろうとする敵を念動力で止めて、魔剣で次々と両断していった。

●邪道剣術
 三郎少年の保護のために彼の近くで防衛戦闘にはいったニーレットもまた、継ぎはぎの怪物との戦闘へと移って行った。
 ガルディエが、その怪力と恵まれた体格を活かしての一撃必殺の剛剣使いであるならば、ニーレットは柔の剣、テクニックや小技、小道具を活かした戦闘を得意としている。
 そしてそのどれも邪道と名がつく通り真っ当な剣術で使われるようなものを使ってはいなかった。
「私自身は非力だし、超強化して単純な暴力で来られると押し切られそう…ここはガムテの出番ね」
 そう言いながら彼女が取り出すのは、特注のガムテープ。その名は『ハイパーガムテープ』と言う。恐ろしく強靭で伸縮性に優れ防水性もあるとのことだ。
「私のガムテープから逃げられるかな?」
「ナ、何ダコイツ。ガムテープ持ッテ向カッテ来タゾ!?」
 思いもよらない行動にぎょっとして動きが止まった患者衣の怪物に対して、ニーレットはガムテープの粘着面を素早く貼り付けると、くるりと怪物の周囲を回ってぐるぐる巻きにして拘束をした。
「コンナガムテープクライ、色々ナ動物ノ力ヲ手ニ入レタ俺ナラ…ッテ固イ!?」
 虎の腕力を以てしても、ガムテープの拘束はほどけない。
「ナ、ナラバ…ユーべルコードヲ…ッテ発動シナイ!?」
 継ぎ接ぎにされた犬の顔が驚愕に染まる。
 その隙をついて、ニーレットは怪物の膝裏に蹴りを入れて体勢を崩させる。
「ガッ!?」
「その継ぎ目が弱点なのかな?」
 膝をついて丁度いい位置に下がってきた継ぎ接ぎの猟犬の顔。その継ぎ目を狙って、ニーレットは愛用のバールを全力で振り下ろす。
「キャイン!?」
 無理矢理に継ぎはぎされた脆い部分を殴り砕かれた怪物は、白眼を剥いて倒れると、そのまま体を光の粒子へと変えて骸の海へと帰って行った。
「とにかくどんどん数を減らしていかないと」
 敵の消滅を確認したニーレットは、バールとガムテープを手にして別の個体へと戦闘を仕掛けていく。

●掃討完了まであと少し
 最初の3名に加えてニーレットとガルディエが参戦したことで5人体制となった猟兵チームによる『繋ぎ合わされし者たち』の掃討は大分安定してきた。
 これならば時間をかければ誰も怪我することなく敵勢力の完全排除はできるだろう。
 一時はどうなることかと思った三郎少年も安堵をして、スマートフォンを覗く余裕も出てきた。
「うん?何だこのメッセージ?」
 見慣れぬ番号から来たメッセージを不審に思い、タップして内容を確認する。
 するとそこには―
「うん?外来受診のご案内について?」
 感染型UDCの完全排除への新たな手掛かりが記されていた。
 猟兵達は、彼を守り切り次の情報を手に入れなければならない。
 残的掃討まであと少し。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ジェイ・バグショット
異形の拷問具『神化せしクグーミカ』を従え探索
女と黒鳥が混ざった姿のクグーミカは自立思考で、嬉嬉として敵捕まえ拷問する

……敵が密集してるところを探すか。
どうやら敵もソイツのところへ集まってるみたいだしな。

『荊棘王ワポゼ』を複数空中に召喚。自動モードで敵を追尾
広い範囲の敵を同時に攻撃可能
自動モードを解除し自分で操ることで【早業】により速度アップ

保護自体は他の猟兵へ任せ
サポートメインに行動
広範囲攻撃に長けたワポゼ、クグーミカ、影のUDCテフルネプによる敵の制圧

UCメドゥーサの瞳で体の一部でも石化させた敵に悠々とトドメを刺す

あーぁ、余計に治療が必要になったな。
にっこり悪どい笑みを浮かべ心臓を一突き



●学校を我が物顔で闊歩する者たち
 カチカチカチと蹄鉄がアスファルトを叩く音を響かせて、患者衣を身に着けた異形の怪物は、高校生たちの日常の象徴である学校を我が物顔で闊歩する。
 人間の何万倍も鋭い猟犬の鼻を以て探し出すのは、この噂の発生源である三郎少年だ。
 忌々しい猟兵達によって奪い取られた彼を奪い返し、恐怖と狂気の渦に閉じ込めて、病院の噂を広めさせる。そうして得た精神エネルギーを使い、彼らは増える。増える。ひたすらに増える。増えることこそ彼らの本懐であり、存在意義だ。
「「「『誰彼(たそがれ)病院』ハ素晴ラシイ所デス。サア、彼ノ病院デ治療ヲ怪我モ病気モナイ体ニナリマショウ!外来受診ハ時間厳守デオ願イシマス!!」」」
 病院の宣伝文句を口ずさみながら怪物達は、三郎少年目掛けて歩みを進めていく。
 その背後から駆逐しに来た猟兵の存在に気づくことなく。

●虚弱のジェイ
 どうせ殲滅するなら、離れた所から裏門に向かって追い立てて行った方が効率的だろう。そう判断したグリモア猟兵によって、校庭にある正門付近に、新たな猟兵が、グリモア猟兵によって転移させられてきた。
 転移させられた猟兵の名は、ジェイ・バグショット(幕引き・f01070)。
 色白の肌に金色の眼。黒を基調とした衣服を着こなし、どこかアンニュイな表情を浮かべている。『虚弱のジェイ』と彼を呼ぶものもあるらしい。
 そして彼のすぐ後ろには異形の拷問具『神化せしクグーミカ』が付き従っていた。
 それは、拷問好きの悪女と黒鳥を混ぜたような姿をしており、あらゆる拷問に精通し、自立思考をする進化する拷問具だ。
「ナ、何ダコレハ…!?来ルナ、ヤメロ…!ギヤアアアアア!!!」
 先に転送された来たであろう猟兵が仕掛けた罠にかかり、動けなくなった間抜けをクグーミカが、捕獲して嬉々として拷問をしていく。
「……敵が密集してるところを探すか。どうやら敵もソイツのところへ集まってるみたいだしな」
 クグーミカに捕らわれ、苦痛の悲鳴を上げてのたうち回る異形の怪物を無視して、なるべく敵が多く居るだろう場所を目掛けて、ジェイは歩みを進めていった。

●『幕引きのジェイ』
 ジェイが怪物達を追いかけていく途中で罠にかかっていた敵の幕引きをしながら、進んでいった先にあったのは、校舎と校舎の間にある中庭だった。
 先に転送された猟兵によって大量の仕掛け罠が設置されていたこともあり、かなりの渋滞が起こっていたのであろうことが分かる。
「折角犬の頭をしてるんだ。首輪がないと不便だろう」
悪どい笑みを浮かべたジェイは『荊棘王ワポゼ』を複数空中に召喚した。自動モードで敵を追尾する棘が刺さった鉄の輪の群れは、継ぎ接ぎだらけの怪物に襲い掛かると、ギリギリと首を棘で突き刺しながら締めあげていく。
「アアアアア!!痛イ!苦ジイ…!棘ガ…!首ニ…!抜ゲナイ…!!」
 首元に嵌った拷問具を猫と虎の腕で必死に引き剥がそうとするが、物凄い勢いで締め上げる鉄輪を外すことはできない。それどころか、鋭い爪によって人間の部分の皮膚を引っ掻いてしまうことで余計に傷が増えてしまっていた。
 そして鉄輪を外せなかった怪物は、酸欠による窒息と首元からの出血によって意識を失い、そのままバキリと首の骨を砕かれて絶命した。

「ナ、何ダコレハ…!何時カラココハ、地獄ニナッタンダ…!」
 自動モードを解除しジェイの操作に変わりさらに速度を増した茨棘王ワポゼから逃げられた個体についても、クグーミカに捕まって凄惨な拷問を受けたり、影のUDCテフルネプに暗殺される。
 継ぎ接ぎだらけの怪物『繋ぎ合わされた者たち』にとっては地獄のような状況が展開されていた。
「「「殺サレル前ニ、殺セエエエエ!!!」」」
 生き残った怪物達は、一矢報いようと一斉にジェイに向けて飛び掛かろうとする。
 ――だが、
「ЮЬηιιςψρ」
 神化せしクグーミカの瞳が解放されることで発動されるUC【メドゥーサの瞳】の石化の呪いによって飛び掛かろうとした体勢のまま、物言わぬ石となり固まってしまった。
「嘘…ダロ…!?」
 幸運…いや、運悪く3/4が石化する程度で済んでしまった怪物の顔が絶望に染まる。
 そんな彼の元にジェイは悠々とした足取りで近づいてき、
「あーぁ、余計に治療が必要になったな」
 にっこり悪どい笑みを浮かべ心臓を一突きにしてその命の幕引きをするのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

虚偽・うつろぎ
アドリブ連携等ご自由にどぞー

なんてこった
女医やナースが増えてるのかと思ったらワンコヘッドじゃないかー
絶望したので自爆するよ!
吹っ飛ばせばきっと女医がいっぱい出てくるはずさ
サブローだかサボローだかいう少年よ
楽園はすぐそこさ

登場即自爆
とにかく速攻で自爆するよ
台詞よりも自爆、活躍よりも自爆
これがジャスティス

技能:捨て身の一撃を用いてのオウサツモードによる広範囲自爆
対象は範囲内の敵全て
三郎少年以外だね
強化は攻撃力重視

射程範囲内に敵が1体でも入っていれば速攻で自爆するよ
いなくても自爆するけどね
1歩も動かず近づきすらせずに自爆さ

自爆は1回のみ
捨て身の一撃だもの

自爆後は消し炭になって退場かな



●最終攻勢
 猟兵達の活躍によって高校の敷地内に居た『繋ぎ合わされし者たち』の数もかなり減ってきた。それには、最初に噂の発生源である三郎少年を確保したことで、感染型UDCの増殖を抑制したことが大きい。
 このままでは、何もできないまま全滅させられる。そう直感した『繋ぎ合わされた者たち』は最後の力を振り絞り、一斉攻勢に出ることにした。
 中庭で足止めをされていた仲間達が全滅した所為で思ったよりは集まらなかったが、それでも数は圧倒的だった。
「「「グルアアアア!!アノ少年ヲ奪イ取リ、誰彼(たそがれ)病院ノ噂ヲ、コノ世界中ニ発信サセル!!」」」
 ガチガチガチと蹄鉄を鳴らし、病院の宣伝文句を謳いあげ、恐怖を誘うように裏門に目掛けて行進をしていく。
 本日最後の怪物達の行進(キメラ・パレード)が、今まさに起ころうとしていた。

●最終(自爆)兵器投下
「なんてこった!女医やナースが増えてるのかと思ったら、ワンコヘッドじゃないかー」
 虚偽・うつろぎ(名状しやすきもの・f01139)は絶望した。
 病院と聞いたので、清楚なナース服を着た可愛らしい看護師や白衣の美人女医がわんさか増えていると思い喜び勇んで来たのに、そこに居たのはみすぼらしい継ぎ接ぎだらけのワンコヘッドの患者っぽい何かだけだった。
 純粋な(下)心を弄ばれたようで計り知れないショックを受けた。
「絶望したので自爆するよ!」
 だからごく当たり前のような結論として彼は自爆することを決意した。(この間0.1秒)
「吹っ飛ばせばきっと女医がいっぱい出てくるはずさ。サブローだかサボローだかいう少年よ。楽園はすぐそこさ」
 三郎少年に向けて最後の言葉を残すと、うつろぎは即座にオウサツモードを起動した。
 だが、その言葉については、高校の上空に転移してきたうつろぎの姿を見た猟兵達が、三郎少年を抱えて全速力で逃げた為、誰の耳にも入ることはなかったと言う。

「 鏖殺領域展開  一爆鏖殺執行 」
 全てを爆砕する爆風がほとばしり、少し遅れてズドオオオオン!!という爆音が大気を揺らした。
 うつろぎの周囲、半径60mにあるすべての生き物は全て鏖殺され、建造物は悉く破砕された。
 爆心地は赤く焼け焦げ、クレーターが出来ていた。
 この捨て身の一撃による自爆攻撃に生き残った生物はいない。つまりは、うつろぎの自爆で、『繋ぎ合わされし者たち』は文字通り鏖殺されたのだった。
 そして学校も木端微塵に破壊されたのであった。次の日から、学校はどうなるんだろうか。まあ、UDCの職員の皆さんには、ご愁傷様だと言っておく。
 消し炭になったうつろぎは、満足そうだし…まあうん。無事なんじゃないかな。多分。

●学校を襲った怪異は学校と共に消滅しました。
 斯くして猟兵達の活躍によって第一発見者、『オカルト部の小野田・三郎』少年に襲い掛かった全ての『繋ぎ合わされし者たち』は倒された。
 第一発見者を抑えたことで、噂の拡散を抑えてパンデミックに繋がる事態は何とか防ぐことが出来たと言えよう。
 後は、三郎少年のスマホのメッセージに入った情報と彼のアクセスしたというHPを解析して、敵の本拠地を割り出して噂の出所。つまりは黒幕を排除するだけだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 冒険 『怪奇・誰彼病院』

POW   :    扉やロッカーをこじ開ける

SPD   :    こっそりと病院内を調査する

WIZ   :    院内の人影に聞き込みを行う

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●重要情報『外来受診の案内』
 小野田・三郎様
 当院のHPにアクセスしていただき誠に感謝申し上げます。
 先日は、当院から迎えの者を送ったのですが、何か手違いがあったのかお迎えに上がることが出来なくて申し訳ございませんでした。
 小野田様のご都合もあると思いますので、都合がいい時に来られるよう外来受診の案内をさせていただきます。
『怪奇・誰彼(たそがれ)病院』の外来受付時間は午後4時44分00秒~午後4時44分59秒までとなっております。くれぐれも時間厳守で遅れることがないようにお願いいたします。
 それでは小野田様の来院をお待ちしております。

 怪奇・誰彼病院
 〒△△△―XXXX
 東京都●●区××町―◆◆
 電話番号 XXX-△△△―◆◆◆◆

●誰彼病院を攻略せよ
 UDCに保護された小野田三郎少年のスマホから得られた住所を検索すると、そこには何もないただの荒廃した荒れ地があるだけだった。
 だが、実際の現場に指定された時間内に行けば必ず見つかると確信した猟兵達は、時間を合わせて指定された空地へと赴いていった。
 そこには、薄暗い市民病院くらいの大きさの病院が、おどろおどろしく立っていた。
 中に入ると異形の患者がウロウロとしており、同じく異形となった受け付けや、医療スタッフと話をしていた。
 キミ達には、この誰彼(たそがれ)病院を踏破して、三郎少年が出会ったであろう右腕が異形と化した女医を倒さねばならない。
 学校に現れた異形の怪物の姿と、少年が見た右腕の形状から彼女の担当は外科だと思われた。
キミ達には、異形が徘徊する病院を踏破して無事に外科病棟の手術室まで行ってもらいたい。
神代・凶津
こりゃまたホラーゲームみたいな病院だな。
ただの人間じゃ正気を保つのが精一杯じゃねえか?
まあ、俺達はこの手の怪異にはプロフェッショナルだから関係ないがなッ!
「・・・いいから行きますよ。」
おうよ、相棒ッ!

まずは、相棒の式神【捜し鼠】でこの病院内にいる親玉の女医を探すぜ。
俺達も移動しながら情報収集するか。

病院内に居る異形共は、敵意がないんだったらスルーするぜ。
もし、襲い掛かってくるってんなら攻撃を見切って破魔の力が宿ったこの薙刀でなぎ払ってやるぜッ!



【技能・狂気耐性、情報収集、見切り、破魔、なぎ払い】
【アドリブ歓迎】



●怪奇・誰彼病院を進め
 午後4時44分に、その病院は現れ、扉が開かれる。
 病院の中は、電灯がともっている筈なのに薄暗く、【普通の地球人】のような姿をしたヒトは、居なかった。
 ここに居る全てのものが、手や足や体の一部や頭、そのどれかが人間以外の別の部品(パーツ)と取り換えられていた。それは、動物のものだったり、鳥類のものだったり、UDCの一部を体にくっつけている者も居た。
 笑顔で来客を迎えるはずの医療事務も看護師も、チェアに足を組んでイライラしながら待たされる客も…皆どこか可笑しい。可笑しいのが当たり前。
 異常で異形で異境で違法。それが怪奇・誰彼(たそがれ)病院だった。
 その病院に、猟兵達は確かに足を踏み入れたのだった。

●赤い鬼面を被った巫女
「こりゃまたホラーゲームみたいな病院だな。ただの人間じゃ正気を保つのが精一杯じゃねえか?まあ、俺達はこの手の怪異にはプロフェッショナルだから関係ないがなッ!」
 異形溢れる病院ロビーを一通り見渡すと、赤い鬼の仮面、神代・凶津(謎の仮面と旅する巫女・f11808)は自信満々な口調でそう言い放った。
 猟兵として退魔の仕事をしている彼らにとっては、こういった異常な光景も確かに珍しくはないかもしれない。
 だからといって油断は禁物だ。
「…いいから行きますよ」
「おうよ、相棒ッ!」
 桜は凶津を諌めると、凶津を顔に装着しつつ、まずは、人気のない所まで移動をするのであった。

「…式、召喚【捜し鼠】」
 桜は人の眼がない所まで移動をするとUC【捜し鼠】を発動して、探索力が高い鼠型の式神達を召喚した。
「…右腕が異形となった外科医の女医を探して」
「「「チュッ!」」」
 桜の指示を受けた鼠型の式神達は、散り散りになって病院内を駆けていった。
「俺達も移動しながら情報収集するか」
「…うん」
 全ての式神達が移動したのを確認すると、凶津と桜のコンビも誰彼病院の探索を開始するのであった。

「オイ、あんた。外科病棟のえらく美人な女医さんのことを知ってるか?」
「…外科病棟ノ美人女医?…モシカシテ、ドクター氷室ノコトカ?」
 病院内での聞き込みについては、凶津がメインとなって話をすることでスムーズに進んでいった。
 ここは怪奇・誰彼病院だ。異常が通常で通常が異常。鬼の仮面を被った少女から男性の声がしても、相手としてはここでそういう風に手術したのかと思いこむだろう。
 それ故に凶津が危惧していたように、異形となった患者やスタッフが襲い掛かって来るということはなかった。

「…捜し鼠達が外科病棟の手術室の扉を見つけて来たみたい」
 再び人気のない所へ移動して、鼠達の報告を受けた桜が小声で告げる。
「おう、じゃあ行こうぜ、相棒。ドクター氷室とやらの面を拝みに行くか」
「…うん」
 凶津と桜は鼠に先導してもらいながら病院の奥、手術室へ向けて歩みを進めていくのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

昏森・幸恵
化け物が、人間ごっこに興じているの? たちの悪い冗句だこと。

けれど、決まった時間にしか侵入できないこの病院。
それ自体が確かな形を定めていない可能性もある。
案内を得た方が辿り着くに容易いというなら、その選択肢は頭の片隅に残しておくべきね。

影の追跡者を召喚、女医を追う。
その手で手術室を確定出来れば良し、阻まれるなら異形どもに問う。
外科の病棟へはどう行けば良いか。そう、フレンドリーにね。

おぞましい。恐怖が無いわけがない。
だけど、コートの中で猟銃に触れ、少しでも心を落ち着かせる。
何も無い事に比べれば、このざわつく感覚、見える脅威は歓迎すべきだ。
それがむしろ私の正気を保たせてくれるのだから。



●怪奇・誰彼病院を進め②
 決まった時間、決まった場所に行って扉を開く。
 するとそこには異形の怪物達が屯する病院のロビーが現れた。
 そこでは、患者衣の異形とその家族だろうか普通の服を着た異形が長椅子に座って、名前を呼ばれるのを待っており、受付ではマネキン頭の受付嬢が、犬頭の患者らしき異形と、何かトラブルを起こしているようであった。
 どこをどう見回しても【普通の地球人】は居ないのに、ここではどこにでもあるような病院での当たり前の日常が展開されていた。
 それはまるで、出来の悪いおままごとか茶番劇を見せられているようだった。

●探索者『昏森・幸恵』
「化け物が、人間ごっこに興じているの?たちの悪い冗句だこと」
 病院ロビーに到着した地球人の探索者、昏森・幸恵(人間の探索者・f24777)は、誰にも聞こえないように小声かつ早口で毒づいた。
 薄暗い病院ロビーでは、相も変わらず、多くの異形が長椅子に座って順番を待ち、テレビからは意味の分からない冒涜的な邪神を讃える映像が流れ続け、マネキン頭の受付嬢や体の一部をUDCのものに取り換えた看護師が走り回っている。
 気味が悪く、悍ましい光景だ。さっさとロビーを抜けて手術室まで向かおうかと、幸恵は考える。不本意ながらも彼女は過去に結構な長期間入院していたこともあり、病院の構造についてはそれなりに理解がある。
(けれど、決まった時間にしか侵入できないこの病院。それ自体が確かな形を定めていない可能性もある。案内を得た方が辿り着くに容易いというなら、その選択肢は頭の片隅に残しておくべきね)
 ここは怪異の腹の中。用心をするに越したことはない。そう考えた幸恵は、召喚した影の追跡者を、マネキン頭の看護師の影に潜ませることにした。

 異形化した看護師の影から、別の医療スタッフの影へと移動しながら周囲を伺い聞き耳を立てる。五感を共有することができる影の追跡者を使った病院探索は、順調で誰にも見つかることはなく、病院の奥へと進むことが出来た。
 しかし、矢張りというか怪奇とつくだけあるのか、普通の病院とは違う階層構成になっているのか、中々探している外科病棟の手術室は見つからない。
 幸恵は、大きな溜息を吐くと、意を決して聞き込み調査も並行して行うことにした。

「外科の病棟へはどう行けば良いか教えて下さらない?」
 幸恵は、「女医」の患者だろう継ぎ接ぎだらけの犬頭の患者を見つけると、努めてフレンドリーな口調で声をかけた。
「何ダ?新入リカ?オ前。ドクター氷室ノ外科病棟ナラ、地下4階ダロ?」
 犬頭の患者は不思議そうに首を傾げながら答える。
「この病院広いでしょう。ちょっと迷子になってしまいまして」
 悍ましいと吐き捨てたくなる嫌悪感と恐怖に耐えながら、作り笑いを浮かべながら話を続ける。
コートの中で猟銃に触れ、武器を持っている安心感で少しでも心を落ち着かせながらも、裏では影の追跡者を動かし、地下四階の外科病棟、その奥にある手術室を探していく。
「マア、確カニ。最初ハ迷子ニモナルカ。手術室ナラ病棟ノ一番奥ダ」
「あ、ありがとうございました」
 必要な情報を手に入れると、そそくさと話をしていた患者から離れて人気のない所へと移動をする。
 極度の緊張とストレスで心臓は早鐘を打ち、冷や汗は止まらない。だが、何も無い事に比べれば、このざわつく感覚、見える脅威は歓迎すべきだ。それがむしろ私の正気を保たせてくれるのだから。
 コートの中の猟銃を触りながら、瞳を閉じて影の追跡者と五感を同期させる。
「見つけた」
 そこには確かに白地に黒い文字で『手術室』と書かれた大部屋があった。
 彼女は、影の追跡者によって得られたルートを辿り、黒幕の女医がいる手術室へと向かうのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

バジル・サラザール
病院が感染源っていうのは皮肉かしら……

とりあえずフロアガイドとかないかしら
無さそうなら……明らかに怪しいけど院内の人達に聞き込みしましょうか
受付の人や患者等々に「外科病棟の手術室はどこですか?」「外科担当の女医さんを知りませんか」等といった具合に聞いて回りましょう
噂を聞いて病気を治してもらいに来た患者、という設定で聞き込みをしましょうか
答えてもらえたらお礼を言って情報を元に探索しましょう
行き詰まったらまた聞き込み、探索と繰り返すわ
案の定襲ってきたりしたら、何となく攻撃は躊躇われるし、『睡魔を誘う蛇の果実』で眠ってもらいましょうか

これ以上被害が拡大する前に根治しましょう

アドリブ、連携歓迎



●誰彼(たそがれ)病院を進め③
 夕方の4時44分に、『何でも治せる病院』の扉が開く。
 何の動力で動いているのか分からない自動ドアを潜り病院のロビーに入ると、そこには多くの体の一部を人ニンゲン以外のモノへと置換された者達が居た。
 そこには犬の顔を縫い付けられたモノだったり、UDCのものと思われる触手を腕の代わりに縫い付けられているモノも居た。
 彼らは、誰彼病院のシステムとして召喚されたものなのか、それとも『何でも治せる』という『噂に手を伸ばした者(ヒガイシャ)』たちの成れの果てなのか。
 ただ1つ分かっているのは、この噂を流した元凶のオブリビオンを撃たなければ彼らのような存在が増え続けるという事だ。
 この誰彼病院の噂を根治させるべく、1人の猟兵が誰彼病院を進んでいく。

●薬剤師兼UDCエージェント・バジル
「病院が感染源っていうのは皮肉かしら……」
 誰彼病院のロビーへと無事に潜入を果たしたバジル・サラザール(猛毒系女史・f01544)は、頬に手を当てながら溜息を吐いた。
 怪我や病気で困った人を、医療を提供することで助ける病院が、感染型UDCという洒落にならないような病魔をばら撒くと言うのは、皮肉が効いていると言うのを越して悪趣味だ。
 だからこそ、医療に携わるものとして、UDCのエージェントとして、バジルは、この噂は終わらせるべきだと思い行動する。

「とりあえずフロアガイドとかないかしら」
 バジルがまず探したのは、大病院ならば必ずある各フロアにどんなものがあるのかを図で示したフロアガイドだ。
 表の顔が薬剤師であり、病院への出入りも慣れているバジルは、病院の何処に何があるのかは大体分かっているので、フロアガイドも簡単に見つけ出すことが出来た。
 それによると、外科病棟の手術室は地下四階にあるとのことだった。
 そこでバジルは、情報収取の聞き込みをしながら、地下四階の外科病棟手術室に向けて探索を行うことにした。

「実は病気を治してもらえるという噂を聞いてここまで来たのですが。外科担当の女医さんを知りませんか?」
「外科ノ担当?ソレナラバ、ドクター氷室デハナイカ。元防衛組織ノ科学者デアラユル分野ニ精通シタ才女ダッテ聞イタコトガアルゾ。オレモアノ先生ニ…」
「貴重な情報ありがとうございました。手術室はこちらであっていますよね」
 道すがらに遭った患者や医療スタッフから話や道を聞きながら奥へ奥へと進んでいく。
 聞き取りの中で得られた情報は少なくなく、有用な手掛かりを得ることが出来た。
 1つは、女医の名前が判明したこと。2つ目は、その女医がオブリビオンとして復活した元人類防衛組織の研究者で、その技術を使って治療という名の人体改造を行っていたことだった。

「…元同僚のオブリビオンね。まあ珍しいことではないけれど」
 外科病棟の奥へ歩を進めながら、バジルは一人呟く。
「これ以上被害が拡大する前に根治しまましょう」
 元同僚の凶行を止めるのもまた、UDCのエージェントの使命だ。
 強い決意を持って、進んでいくバジルの前に、マネキン頭の医療スタッフが現れる。
「ここより先は関係者以外立ち入り禁止です。紹介状はありますでしょうか」
「アポイントメントはありますでしょうか」
 彼女らは電子音的な音声を発しながら、道を塞ぐようにして立ちふさがった。
「睡眠は薬に勝る、今は少し休みましょう」
 UC【睡魔を誘う蛇の果実】によって発生した即効性の催眠ガスにより、道を塞いでいた異形の医療スタッフ達が静かに眠りにつき、道が開かれる。
 バジルは誰かが誤って踏みつけないように、通路の壁側に医療スタッフ達をもたれかかせると、そのままドクター氷室が居るであろう手術室へと向かっていくのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ガルディエ・ワールレイド
巫山戯た受付時間に合わせて来てやったんだから、手術室まではVIP待遇で案内するくらいして欲しいもんだぜ

◆行動
ほぼ殴り込みだが、戦い続けてもキリが無いし搦め手も混ぜるぜ

武装は《怪力/2回攻撃》を活かす魔槍斧ジレイザと魔剣レギアの二刀流

堂々と目的地を目指すが直ぐに戦闘になるだろう。
そうなったら近接攻撃時に《生命力吸収》を使って暴れた後に【血脈覚醒】使用し、魅了魔眼で周囲の敵に適当な暗示をかける。
「今日は外科病棟への来客が有る日だろ? 俺がそうなんだ」
「あっち(外科病棟とは別の方向)に変な奴がいたらしい。皆にも伝えといた方が良いだろうな」

そんな感じで戦闘とやり過ごしを適度に織り交ぜながら先へ行くぜ


ニーレット・ジンクス
わーこりゃまたいかにもって感じ。でもま、怪談話には季節外れだからちゃっちゃと片付けて帰ってこたつでぬくぬくしたいわ。

まずは探索、目的地は外科の手術室ね。このくらいの規模の病院なら普通はフロアの案内板みたいなのが入口近くにあるはず、それを探してみようかな。首尾よく見つかればルート確保、罠があったりするかもだから案内板から2〜3ルートは見繕っておきたいわね。
患者や職員は…これオブリビオンなんだろうけど、積極的に襲ってこない様ならできるだけスルーしたいなぁ。襲ってくるなら仕方なし、他に来てる猟兵もいるから囮がてらUCで派手に頭カチ割ってどんどん排除していこう。



●誰彼病院を踏破せよ
 夕方4時44分から45分になるまでの1分間。その間だけ、誰彼(たそがれ)病院はUDCアースに現れる。
 おどろおどろしい外見の市民病院といった出で立ちで、太めの白いゴシック体で「誰彼病院」と書かれた看板を掲げた病院の中は、病院の外見に違わず冒涜的なものであった。
 邪神を讃える禍々しいポスターや、邪教への入信を促すようなポスターが数多く壁面に飾られ、テレビからは、よく分からない映像と音声を垂れ流しいている、
そこに居る患者や医療スタッフ達は、全員人体改造を受けて、異形と化していた。
 受付の背後にある時計は4時44分から動かず、手元の時計を見ても狂ってしまったのか、秒針が前へと進まない。
 この病院では患者やスタッフの正気だけでなく、時間や空間までどこか狂っておかしいようだ。
 恐らくは、この事件を引き起こした黒幕の信奉する邪神の恐るべき力の一端だろう。
 猟兵達は、覚悟を決めるとこの病院の奥に潜む黒幕を討つべく、病院の探索をするのであった。

●マイペースなニーレット・ジンクス
「わーこりゃまたいかにもって感じ。でもま、怪談話には季節外れだからちゃっちゃと片付けて帰ってこたつでぬくぬくしたいわ」
 夕暮れの空き地に突如現れたおどろおどろしい病院を一通り眺めた、ニーレット・ジンクス(邪道剣豪・f24342)は、とてもマイペースな感想を述べた。
 夏だったら怪談か肝試しのネタになったかもしれないなぁと思う彼女は、とても肝が据わっているように見える。
「さて、まずは探索ね。フロアの案内板はどこかしら?」
 こういうものは大体入口付近にあるものだと目星をつけたニーレットは、病院の中に入ると、まずは案内板を探すことにした。
 すると、案内板は入り口から少し入った所の壁側に掛かっており、地下4階に外科病棟があることが分かった。
「出来れば、罠に備えて2~3ルートくらいあればいいんだけど」
 案内板にある建物の案内図と睨めっこをしながら、侵入ルートを考える。
 すると、いくつかのルートが思いついた。1つ目が最速だろうエレベータールート。2つ目がエスカレータールート。3つ目が非常階段ルートだ。
 この中でどのルートを通れば、なるべく安全かつ穏便に行けるのかと頭を捻っていると、背後から見知ったガシャリという鎧の音が聞こえてきた。

●VIP待遇を求める黒竜の騎士
「巫山戯た受付時間に合わせて来てやったんだから、手術室まではVIP待遇で案内するくらいして欲しいもんだぜ」
 漆黒の甲冑の板金同士がぶつかり合う、ガシャリという音を響かせながら現れたのは、ガルディエ・ワールレイド(黒竜の騎士・f11085)。
 鎧兜を装備して、両腕にハルバードと魔剣を装備したフル装備の彼は、どこからどう見ても通院患者や見舞客には見えなかった。
それもそのはず、彼が『なんでも治せる病院』の噂を流した女医型オブリビオンを退治する為に、彼女が潜む手術室へ突入するために取った手段は、正面突破による殴り込みだ。
 正面から堂々と行き、行く手を阻む障害を力づくで、時に搦め手を使いながら、突破して道を拓く。それが黒竜の騎士としてのやり方だ。
 直ぐに戦闘に移れるように臨戦態勢を取りながら、病院のロビーへと向かおうとするガルディエ。そんな彼に突如横合いから声が掛かった。

「VIP待遇かどうかは分からないけど、手術室まで案内しようか?なんてね」
 それは、先日行われた学校での戦闘でも一緒に転送されたオラトリオの少女の声だった。

●外科病棟へ
 ニーレットが提案したのは、非常階段を使って一気に地下四階まで駆け下りるルートだ。入院患者用のエレベーターは速いが待ち時間が辛いのと、挟み撃ちに遭いやすい。エスカレーターは、目立つ位置にあるため、敵に見つかりやすいし狭いので戦闘しづらい。
 それならば、階段を下りるのが大変ではあるが、広く戦闘に不自由がなく、あまり人目につかないだろう非常階段を下りた方が穏便かつ、確実だ。
 2人は素早く非常階段を駆け下りると、地下4階にある外科病棟へと足を踏み入れるのであった。

●正面突破
 2人が非常階段駆け下り、外科病棟の廊下へと差し掛かると、病室のドアが大きな音を立てながら開き、肉頭や体の一部を別の生き物のモノに挿げ替えた患者衣を着た異形の怪物たちが、姿を現した。
 恐らくはこの病院に取り込まれ、異形の怪物へと人体改造された哀れな入院患者の成れの果ての姿だろう。
 彼らは殺意を持った鋭い視線で猟兵達を睨みつけると、口を揃えてこう言い放った。
「「「侵入者ダ!殺セ!殺セ!我等ノ神ニ血ヲ捧ゲロ!!いあ!いあ!」」」
 冒涜的な神を讃える言葉を叫びながら、異形の怪物達は猟兵達に襲い掛かってきた。

「さあ、正面突破だ。行くぜ」
 肉体改造によって手に入れた猛獣の爪牙や、クランケヴァッフェを埋め込んだ触腕を振るう怪物の群れに、魔槍斧ジレイザと魔剣レギアの二刀流を扱うガルディエが斬り込んでいく。
 人並み外れた怪力から繰り出されるハルバードと魔剣による剣戟の嵐は凄まじい物で、固いクマの毛皮を持つ怪物や、触腕を束ねて防御しようとする怪物を次々と一刀両断の元に斬り伏せ、傷口から彼らの持つ生命エネルギーを奪い己の力へと変えていった。
 
「積極的に襲って来なかったらスルーしようと思ったけど、襲ってくるならしかたなし」
 そう呟いたニーレットが取り出すのは愛用の獲物であるバール(真)だ。
 彼女はそのバールを思いっきり振りかぶると、攻撃に失敗して体勢を崩していた虎頭の異形の怪物の脳天目掛けて全力で振り下ろす。
「この一撃でブチ抜く!」
 その宣言の通りに致命的な部位、いわゆる急所に吸い込まれるように直撃したバールによる一撃は、敵を一撃で絶命させた。

 黒竜の騎士が、魔剣と魔槍斧による二刀流によって敵を両断し生命力を奪って倒していき、邪道剣豪がバールでド派手に頭をカチ割って行く。
 猟兵達の怒涛の攻撃によって、患者衣を着た怪物は次々と数を減らし、ついには誰も居なくなった。
 猟兵達は全ての敵の撃破を確認すると、奥へと進んでいくのであった。

●搦め手
 しばらく進んでいくと今度は、マネキン頭の看護師たちが立ちふさがった。
「「「ここから先は、ドクター氷室の手術室です。ドクター氷室へのアポイントメントや、紹介状等はございますでしょうか。なければお引き取りくださいませ!!」」」
 彼女たちは、口を揃えてアポイントメントの有無や紹介状の提示を求めてきた。
 ここを無理矢理突破しようものならば、警備員に通報が入り非常に面倒なことになるだろう。
「この力はあまり使いたくねぇんだが……仕方ねぇか」
 そう呟いたガルディエの両の瞳が赤く禍々しく輝き、呪われし吸血鬼としての血脈が覚醒する。
 UC【血脈覚醒】は、戦闘中に得た生命力によって吸血鬼としての血脈に覚醒することで吸血鬼由来の様々な能力に覚醒して、高い戦闘力を得るUCだ。
 その数多ある能力の中で、彼が今回使うのは『魅了魔眼』の能力だ。
「今日は外科病棟への来客が有る日だろ? 俺がそうなんだ」
 赤く輝く瞳の力で暗示をかける。
「ご予約のあったガルディエ様ですね。失礼いたしました。ドクター氷室がお待ちしております。どうぞ」
 暗示にかかったナースたちは、猟兵達に道を開ける。
「あっちに変な奴がいたらしい。皆にも伝えといた方が良いだろうな」
「さようでございますか。では、こちらで確認をして警備のものを向かわせます。情報ありがとうございました」
 ナースたちはぺこりと90度のお辞儀をすると、ガルディエが示した方向に向けてパタパタと駆け出して行った。

●手術室到着
 ルートを見つけ、正面突破し搦め手を使って道を拓いた。
 ニーレットとガルディエの目の前には『手術室』と書かれた扉があり、中からは女性のものらしき声が聞こえた。
 ニーレットとガルディエの2人は顔を見合わせると、手術室のドアを蹴破り、黒幕の潜む手術室の中へと突入するのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『ドクター・氷室』

POW   :    亜空間工房
いま戦っている対象に有効な【自作のクランケヴァッフェ:UDC製製品】(形状は毎回変わる)が召喚される。使い方を理解できれば強い。
SPD   :    限定召喚
自身に【精神を蝕み狂わす邪気】をまとい、高速移動と【邪神の欠片】の召喚や【邪神の権能】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    眷属生成
レベル×1体の、【肩】に1と刻印された戦闘用【兼依代や贄となる様改造された者達】を召喚する。合体させると数字が合計され強くなる。

イラスト:純志

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は月宮・ユイです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 手術室に入るとフードを被った女が居た。
 女は開け放たれた扉の方へと振り返ると、驚いたように声を上げた。
「あら、今日はもう予約はない筈だけど…ってそういうこね。見ない内に随分と防衛組織も有能になったわね。もう…ここを突き止めたのね。驚いたわ」
 パチパチパチと手を叩きながら彼女は告げた。
 そして少ししてから拍手を止めるとマイペースな口調で話し始めた。
「では改めまして。ようこそ、何でも治せる病院へ。ここでは何でも治ります。お客様、どこか悪い所はありませんか?例えば…頭とか?」
 フード越しに頭を異形化していない左手で指さしながら彼女は嗤う。
「馬鹿に付ける薬はないと言うけれど、頭が悪いのは治せるわ。そう…もっと良い頭にすげ替えればいいだけよ。幸いなことにここには一杯頭はあるわ。さあ、どうかしら。貴方達も手術を受けて見ない?きっと人生が変わるわ。邪神の教えに目覚めた私みたいにね」
 相も変わらずマイペースな口調で悍ましいことを告げる。
「そう、嫌なの。で、帰る気もないと。…邪魔ね、貴方達」
 ドクター氷室の纏う空気が冷徹なものへと変わり、ひりつくような殺気が猟兵達のはだを突き刺す。
「こう見えてもそれなりに実戦経験はあるわ。覚悟なさい」
 クランケヴァッフェを突きつけながら、ドクター氷室は宣戦布告を告げた。
昏森・幸恵
……くだらない噂を撒いてくれたものね。
釣られたのは興味本位の子供だったけれど。
生きたい、救われたいと願う者を嘲笑うその性根、許すわけにはいかない。

とは言え、人のように振る舞われては少々、遣りづらいわね。
あれはオブリビオンだと自分に言い聞かせ、猟銃を抜く。

合体前の眷属を優先して攻撃。
至近距離で射撃戦を演じながら隙を見て氷室に咎力封じを使用。
被弾は致命的なもののみ回避し、出来る限り食い下がるわ。

私は軍人でも英雄でもない、ただのド素人だもの。
持っているものなんて執念ただ一つ。形振り構ってなどいられない。
手術室にある物は何でも利用し、詰めにかかる。

……邪神には、骸の海で仕えなさい。


神代・凶津
てめえがドクター氷室か。
どうやら想像以上にイカれた奴のようだな。
これ以上、被害が出ないようにきっちり引導を渡してやるぜッ!

「いくぜ、相棒ッ!」
「・・・転身ッ!」
雷神霊装で決めてやるぜッ!

手術室を縦横無尽に高速移動しながら破魔の雷を纏った妖刀でぶった斬ってやるぜッ!
敵の攻撃を見切って避けながら隙あらばカウンターを叩きこんでやるよ。
ドクターが召喚した雑魚は雷の斬撃の放射でなぎ払ってやるぜ。

「・・・止めます、貴女を今ここで。」
おうよ、相棒。
この女医の悪行を終わらせるぜッ!


【技能・破魔、見切り、カウンター、なぎ払い】
【アドリブ歓迎】


バジル・サラザール
医療倫理もエージェントの職業倫理もあったもんじゃないわね……オブビリオンとしては珍しくないけど

数には数。極力相手の攻撃の射程外から『毒使い』『属性攻撃』を生かした『ポイズン・スピア』で攻撃するわ
距離を取って相手をよく見て、状況を把握しましょう
極力攻撃も召喚もさせないように素早く攻撃、改造された人達が召喚されたら出た側から攻撃、合体させないようにしましょう
改造された人には強力だけどなるべく苦しませないような毒で攻撃ね
それでも攻撃されたら『野生の勘』も用いつつ、防御や回避をしていくわ

医療関係者で元エージェント……あなたとはまた違う出会い方をしたかったわ

アドリブ、連携歓迎


ガルディエ・ワールレイド
さぁ外科手術の時間だ。
患者はこの世界で、オブリビオンっていう患部を切除する術式となる。
医者の観点でのアドバイスが有れば、有り難く受け取るぜ?

◆戦闘
【黒竜の騎士】を発動し、先ずは限界突破以外の技能を軸に戦闘。
限界突破は敵UC発動後に使用。

《怪力/2回攻撃》を活かす魔槍斧ジレイザと魔剣レギアの二刀流。
《見切り/武器受け》で受け流し、間合いは《ダッシュ》で詰めて近接戦を行う。

【亜空間工房】対策
俺に対して有効な道具を用意するUCか。
ならば話は簡単だ。
俺が”対策された俺自身”を超えれば済むだけの事。
(自分自身を《限界突破》。特殊な能力などは無くただ純粋に強くなる)
今の俺が、一瞬前の俺と同じだと思うなよ!


ニーレット・ジンクス
うーんなるほど…これは邪神の教えもガンギマリ、話し合いの余地はないわね。悪いところの診断もきちんとできないヤブ医者はさっさと骸の海に帰ってちょうだいな。

さてさて、どれだけ強かろうと多勢に無勢って奴よね。ならホームであるこの空間を活かして召喚系で埋めつつ本体が攻めてくる感じかしら?
味方にもフィジカル強くてタイマン張れそうな猟兵いるし、私は基本邪神の欠片やら眷属やらを片っ端から潰していこうかなー。バールは勿論ショットガンでの面攻撃で、胴体から頭あたりを狙うと効率良さそう。
隙あらばスタングレネードを本体に食らわせて、体勢崩れた所にUC「滅殺剣」で大ダメージも狙っていくわ。



●誰彼病院の主
「こう見えてもそれなりに実戦経験はあるわ。覚悟なさい」
 そう宣言したドクター氷室から黒く禍々しいオーラが放たれ、彼女を中心として空間が歪んでいく。
 禍々しいオーラによって手術室の空間が拡張され、部屋の広さが何倍にも広がる。
大体、体育館くらいの広さだ。これならば、全力で武器を振るっても壁や物にぶつかることはないだろう。
「…貴重な機材よ。壊さないように運びなさい」
 ドクター氷室は、パチンと左手の指を鳴らして亞空間から患者衣を着た継ぎ接ぎだらけの怪物を呼び出すとその一部に医療用機器や人体改造用の素体(パーツ)を部屋の隅へと片付けさせた。
 その間も不意討ちは許さないと言わんばかりに射貫くような鋭い視線を猟兵達に投げかけ、クランケヴァッフェを構えたままの姿勢を崩さない。
「状況開始!」
「「「了解デス。ドクター氷室!!邪神様!!万歳!!」
 その掛け声共に、ドクター氷室の眷属達は彼女を守るように立ちふさがった。

●探索者と薬剤師と邪道剣豪
「……くだらない噂を撒いてくれたものね。釣られたのは興味本位の子どもだったけれど。生きたい、救われたいと願う者を嘲笑うその性根、許すわけにはいかない」
 患者衣を着た怪物に守られたドクター氷室を、昏森・幸恵(人間の探索者・f24777)強い憤りを持って睨みつける。
 彼女もまた、夜に眠れない、水が畏ろしいという悩みを持ち、治せるものなら治してほしいと願うものだ。それ故に、救われたい思う心につけ込み、身も心も悍ましい怪物に変えてしまう、ドクター氷室の所業は許されざるものだった。
「そう…別に許してくれなくてもいいわ。どうせ貴女は、私達の与える救いを理解しないでしょうから。説明するだけ時間の無駄よ」
 幸恵の言葉を受けた、ドクター氷室は、極めて平坦な口調で答えた。オブリビオンとして復活した彼女には、被害者達の無念は伝わらないだろうという事が感じられた。
「…人のような見た目をしていても、やはり貴女は、オブリビオンね」
 幸恵は、あれはオブリビオンだと自分に言い聞かせると、コートの内側に隠しておいた猟銃を引き抜いた。銃床と銃身を短く切り詰めた水平二連式のショットガンだ。
 セーフティを前にスライドさせてロックを解除し、ドクター氷室目掛けて引金を引いた。
 ハンマーが、ショットシェルのプライマーを叩き、散弾が発射される。
「お願いね」
「…ハイ」
 ドクター氷室は、眷属の一人の肩をぽんと叩くと、迫りくる散弾を庇わせた。
「ガアッ!?」
 散弾を全身に浴びた怪物は、断末魔の悲鳴を上げて倒れ、光の粒子となって消滅した。

「医療倫理もエージェントの職業倫理もあったもんじゃないわね……オブビリオンとしては珍しくないけど」
 本来守るべき患者を自分の身を守る盾にするという医療従事者にあるまじき行為を目にした、バジル・サラザール(猛毒系女史・f01544)は、呆れて溜息を吐いた。
 医療従事者は、患者の身の安全を第一にするものだ。患者の抱える病気や怪我を治して帰るべき日常へと復帰させる。そのために日夜激務に勤しんでいるのだから。
 だが、そんな当たり前の考えも、オブリビオン化したドクター氷室には存在しない。
「…効率の問題よ、元同僚。私が倒れたら、誰が彼らの体を治すと言うの。ならば、倒されてはいけない私を、彼らに守らせるのは合理的な判断よ」
 極めて平坦な、何の感情もない声でドクター氷室は、そう言い放った。
「そう…貴女は、骸の海に良心や倫理観を置いて来たのね。ならば、貴女は医者ではないわ。そんな危険な存在に、病院運営はさせられないわ」
「哀れね…倫理観、良心。そんなつまらないものに縛られているなんて」
 バジルとドクター氷室の互いを哀れむ視線が交差する。
 彼女達の間にある溝は決して埋まることはないだろう。

「うーんなるほど…これは邪神の教えもガンギマリ、話し合いの余地はないわね。悪いところの診断もきちんとできないヤブ医者はさっさと骸の海に帰ってちょうだいな」
 今まで黙ってオブリビオンと猟兵とのやり取りを聞いていた、ニーレット・ジンクス(邪道剣豪・f24342)は、呆れ顔でそう言った。
「断るわ。私には、私を必要とする患者がいるもの。『何でも治せる』という噂に縋らなくてはならない程、逼迫して困った人に、私は私の医療を提供する義務がある」
「これ以上、ヤブ医者の被害者を増やす訳にはいかないわ。誰彼病院は今日で閉院よ」
 ドクター氷室の言い分を遮って、ニーレットは閉院宣言をする。
「そんなこと許すと思う?私の患者達よ。あの者たちを八つ裂きにしなさい」
「「「ハイ、ドクター氷室!!」」」
 氷室の眷属である患者衣を着た異形の化け物達は、その爪、牙、クランケヴァッフェの触手を伸ばして、幸恵とバジルとニーレットに対して一斉攻撃を始めた。

●鬼面の巫女と黒竜の騎士
 幸恵とバジルとニーレットの3人がドクター氷室の眷属と戦闘を始めたころ、2人の猟兵が眷属の群れを避けるように回り込み、ドクター氷室に近接戦を仕掛けようとしていた。
「てめえがドクター氷室か。どうやら想像以上にイカれた奴のようだな。これ以上、被害が出ないようにきっちり引導を渡してやるぜッ!」
 赤い鬼の仮面をつけた巫女が、濡れ羽色の黒髪を風に靡かせながら、上段に構えた無銘の妖刀で、右腕が異形となった研究者に袈裟に斬りかかる。
 赤い鬼面のヒーローマスク神代・凶津(謎の仮面と旅する巫女・f11808)とその相棒の巫女の少女、桜だ。
「くっ。我が神よ!」
 鬼面を被った少女が妖刀を構えた姿を視界が入れた瞬間に、邪神を【限定召喚】すると、その身に宿した高速移動の力で、大きく後ろに跳び退く。
 斬られたコートの一部が宙を舞い、冷や汗がどっと噴き出した。

 そして、息を吐く間もなく、もう一人の猟兵が斬りかかる。
「さぁ外科手術の時間だ。患者はこの世界で、オブリビオンっていう患部を切除する術式となる。医者の観点でのアドバイスが有れば、有り難く受け取るぜ?」
 漆黒の竜を想起させるような甲冑に身を包み、魔槍斧ジレイザと魔剣レギアを装備したダンピールの黒騎士。ガルディエ・ワールレイド(黒竜の騎士・f11085)は、左手の魔剣をドクター氷室に向けて全力で横薙ぎに叩きつけた。
「くっ!?何ていう馬鹿力なの」
 横薙ぎに振るわれた剛剣を、左腕のクランケヴァッフェで受け止めるも、勢いを殺し切れずに、大きく後ろに飛ばされる。
 咄嗟にガードが出来たのは、彼女の生前の経験豊富さから来ているのだろう。
 ドクター氷室は、綺麗に受け身を取って、亜空間工房から新しいクランケヴァッフェを取り出して、左腕に装着した。
 それは多数の蛇の頭で出来たクランケヴァッフェであり、自分の意思を持って敵を自動追尾して、攻撃する機能を持っているようだった。
「…敵に塩を送る趣味はないわ」
 自作のクランケヴァッフェの自動攻撃機能を使って、黒い甲冑を着た騎士に向けて蛇の頭をけしかける。
 さらに、
「我が神よ、我が正気を食らい。その力の一端を地上に顕現させ給え」
 悍ましく精神を狂わせる邪気を再度纏い、邪神の欠片を大量に召喚し、それを凶津と桜のコンビに向けてけしかける。
「耐斬撃に特化した多頭蛇(ラドン)のクランケヴァッフェと、我が神の力の一端。倒せるものなら倒してみなさい」
 フードの奥からギロリと猟兵達を睨みつけながら、ドクター氷室はそう言い放った。

●哀れなる眷属を討て
「「グルアアアアアア!!死ネエエエエエ!!」」
 患者衣を着た異形の怪物達、体を治して欲しいという願いを利用され、肉体改造を受けることで、ドクター氷室の眷属へと作り替えられてしまった者達が、鋭い牙と爪を剥き出しにして、女探索者に襲い掛かる。
「邪魔よ」
 幸恵の水平二連装式ソードオフショットガンが火を噴いた。
 正面から襲い掛かる敵に向けて1発、横合いから襲い掛かる敵にもう一発撃ち込む。
「「ガアアアアア!!」」
 全身を散弾によって穴だらけにされた眷属は、血だまりに倒れ込むと、そのまま体を光の粒子へと変えて消え去って行った。
 至近距離から放たれるショットガンの一撃は非常に強力だ、
 ただし、2発撃てば必ずリロードを要求される。ショットガンを中折れにして排莢し、ショットシェルを2発分装填して元に戻す。その作業をしている間はどうしても隙が生れる。
 仮に幸恵が一人で敵に囲まれながら戦っていたのだとしたら、このリロードの隙は致命的な隙になっただろう。
 だが、今の彼女は一人ではなかった。

「おっと、リロード中の攻撃はご法度だよ」
 ショットガンのリロードをしていた幸恵に、攻撃を仕掛けようとしていた眷属に向けて、ニーレットは、アポカリプスヘルで拾って改造した『使いやすいショットガン』を発砲した。
 頭から胴体にかけての面を目掛けて発射された散弾は、眷属の肉体に無数の穴を開けて絶命させる。
 そして、ショットガンを撃っている間に、こっそりと接近してきた眷属に対して、振り向きざまのバールを見舞う。
 故郷から飛び出して、天涯孤独の猟兵となり、独自の戦術を編み出して生き延びてきた彼女は、荒事慣れをしており多対一の場面でも非常に安定して、敵を倒すことが出来ていた。

 そして、遠距離から前衛で戦う幸恵やニーレットの支援を担うのが、バジルの役割だった。
「薬も過ぎれば毒となる。元々毒だけど、たっぷりと味わいなさい」
 バジルが、詠唱台詞が唱えると、空中に【毒属性】の魔法の槍が330本展開される。
 その毒槍を、リロード中の幸恵やニーレットに近づく敵、2人を無視して自分に向かってくる敵、合体しそうな敵の順番で優先順位をつけて次々と射出していく。
「ガッ…」
「ギッ…」
「ギアアアア!!」
 猛毒の槍を受けた眷属達は、胸を抑えるようにして膝から崩れ落ちると、白眼を剥いて手術室の床へとうつ伏せに倒れ込んだ。
 そして、そのまま速やかに絶命すると、骸の海へと帰って行った。

「後ろから援護射撃は入れるけど、無理はしすぎないでね」
 前衛で眷属相手大立ち回りを演じる幸恵やニーレットに向けて、バジルが声をかける。
 敵の攻撃を受けやすい接近戦をしている彼女達の負担は、バジルの眼から見ても大きい。
「私は軍人でも英雄でもない、ただのド素人だもの。持っているものなんて執念ただ一つ。形振り構ってなどいられない」
 早口かつ小声で幸恵が答える。幸恵は自分が凡人であると自覚している。猟兵として覚醒はしたが、戦況を一人で変えるような大技はなく、出来ることはただ頑張ることのみ。
 故に彼女は、鬼気迫る表情で猟銃を握り、使えるものは何でも使って戦うのだ。
「無理するなという方が無理なようね」
「だね。私もまだまだ大丈夫だよ」
 ニーレットバジルは顔を見合わせると、次の敵へと向かっていった幸恵のフォローに入った。
 炸裂した散弾が敵を穴だらけにして、バールが頭蓋を砕いて、毒の槍が速やかに苦しみがないように絶命させる。
 そうして、患者衣を着た異形の怪物は1体、また1体と姿を消していった。

●邪神vs雷神
 一方その頃、凶津と桜のコンビは、邪心の欠片達との戦闘を行っていた。
「kjhgfdsちゅsおおp@ghjkl」
 ドクター氷室の呼び出した、邪神の欠片達は、黒く鈍く光るツルツルとした肌を持った人型の怪物で、顔に当たる部分が真っ黒で何もなかった。
 この世の如何なる生き物とは、違った外見を持つその生き物は、常人ならば見ているだけで吐き気を催し、正気を失わせるだろう。
 だが、猟兵である彼らには、そんなことは関係ない。
「いくぜ、相棒ッ!」
「・・・転身ッ!」
 轟轟と轟く雷鳴の音と共に、紫電が凶津と桜の姿を包み込み、周囲を眩い紫光で照らす。
 そして、光が収まった後に現れるは、紫色の鬼面を被り、紫電を纏い妖しく紫に光る妖刀を携えた巫女の姿。
「雷神霊装(スパークフォーム)で決めてやるぜッ!」
 破魔の紫電纏う妖刀を手に、二心一体の猟兵は、地上に顕現した邪神の欠片を討つべく、手術室の床を目にも止まらぬ速度で駆けだした。

「変身した…ですって!?だからと言って…!我が神よ!!」
「「「ghjkl;:ういkl、。hjkl」」」
 ドクター氷室の声に応えた邪神の欠片達は、地球の生物では発音も理解もできない声を発しながら、虚無の弾丸を撃ち放つ。
 それは当たったものを空間ごと抉り取る強力な邪神の権能の一部だ。当たればいくら猟兵と言えども、ひとたまりもないだろう。
 ――当たればの話だが。
「そんなすっとろい攻撃当たるか!」
 迫りくる虚無の弾丸の弾道を見切り、雷の如き速さで手術室を高速移動する凶津と桜を、鈍重な邪神の欠片達は捉えることができない。
「おkjhbvghj」
 破魔の雷を纏った妖刀によって首を刎ねられた邪神の欠片は意味不明な断末魔の叫びを上げると、そのまま黒い塵となって消失した。
「…脆い。これならば纏めて倒せる」
「おう、やっちまえ、相棒!」
 霊装にさらなる力を籠めて、雷神の力をチャージする。そしてさらに輝きを増した妖刀を振りかぶると、全霊の力を以て振り下ろす。
 紫電一閃。
 眩く紫色に輝く雷の斬撃は、轟轟と轟く雷鳴と共に邪神の欠片達を飲み込み、跡形もなく消滅させていった。

●限界突破
 幸恵とバジルとニーレットがドクター氷室の眷属達と、凶津と桜が邪神の欠片達と戦っていたのと同じ頃、ガルディエもまたドクター氷室と彼女の操るクランケヴァッフェと戦っていた。
 ドクター氷室が亜空間工房から取り出したのは、タイプ多頭蛇(ラドン)と名付けた彼女特製のクランケヴァッフェだ。
 AIを搭載した無数の蛇の頭を持ち、非常に斬撃に強い鱗を持ち、強く再生力が高い。ドクター氷室が防衛組織所属時に開発したクランケヴァッフェの中でも傑作と名高い逸品だ。
「さあ、食らいつくしなさい」
 ドクター氷室の言葉にAIが反応して、鎌首をもたげた無数の蛇の頭が一斉に黒騎士目掛けて襲い掛かる。
「俺に対して有効な道具を用意するUCか。ならば話は簡単だ」
 次々と迫りくる蛇の頭をハルバードと魔剣の二刀流で叩き落としながら、ガルディエは言葉を紡ぐ。
「強がりを。貴方の力では、このタイプ多頭蛇(ラドン)は攻略できない」
 ガルディエに叩き落とされて、首に切れ目が入っていた蛇の首が再生し、再び鎌首をもたげて彼を狙う。
 ガルディエ対策として召喚されただけあって蛇型クランケヴァッフェの首や胴体は非常に斬りづらく、今の状態では一撃で切り落とすことは難しかった。
「俺が”対策された俺自身”を超えれば済むだけの事」
「そんな根性論で、私のタイプ多頭蛇(ラドン)を超えられるわけないわ…!」
 ドクター氷室はそう言うと、再びクランケヴァッフェをガルディエにけしかけた。

「俺の全力を……いや、全力を超えた、その先を見せよう!」
 UC【黒竜の騎士(ブラック・ドラゴン・ナイト)】を発動させたガルディエが、多頭蛇型のクランケヴァッフェを迎え撃つ。
 鎌首をもたげて襲い掛かる、数多の蛇の首を魔剣で切り落とし、ハルバードの先端で突き刺し、斧の部分で薙ぎ払う。
 UCを発動してから直ぐの頃は、強化された怪力を以てしても一撃で首を切り落とすのが難しく、手術室の床に叩き落とすので手一杯だった。
 だが、時間が経つごとにどんどん斬撃は鋭くなっていき、刻まれる傷口はどんどん深くなっていく。
「ば、馬鹿な。邪神の力でさらに強化された私のクランケヴァッフェを一撃で切り落とす…ですって!?」
(一瞬、紫の閃光と轟音と共に変身した仮面と巫女に注意が向いた。その僅かな時間に驚異的な成長速度で、私のクランケヴァッフェを超えたって言うの…)
 自慢のクランケヴァッフェが一刀のもとに切り捨てられるという信じられない事実を見た、ドクター氷室の眼が大きく見開かれる。
「今の俺が、一瞬前の俺と同じだと思うなよ!」
 次々と襲い掛かる蛇の首を斬り伏せながら、さらに成長を続ける黒竜の騎士が諸悪の根源であるドクター氷室に迫っていった。

●終幕
「…負けね。ここは退きま…!?」
 頼みの綱の邪神の欠片達は全て倒され、クランケヴァッフェは陥落間近。眷属達も長くは保たないだろう。
 ならば引いて再起を図る。幸いここは彼女のホームグラウンドだ。戦力の補充は容易い。
 そう考えた彼女の足元にカツンという音と共に、何かが転がってきた。
「スタングレネード!?」
 激しい閃光と音が鳴り、ドクター氷室の視覚と聴覚が一時的に麻痺をする。
「がはっ…!?」
 そして、動けなくなった彼女の腹部に何かが突き刺さる。
「医療関係者で元エージェント……あなたとはまた違う出会い方をしたかったわ」
 それは、バジルが放った毒属性の魔法の槍だった。
 体の自由を奪う毒によって蝕まれたドクター氷室の動きが鈍る。
「……邪神には、骸の海で仕えなさい」
 すかさず、幸恵が追撃する。
 手枷と猿ぐつわと拘束ロープがドクター氷室の元に放たれ、動きと共にユーべルコードの発動を封じた。
「…止めます、貴女を今ここで。」
「おうよ、相棒。この女医の悪行を終わらせるぜッ!」
 咎人封じによって動きもUCの発動すらも封じられたドクター氷室に、紫電を纏う妖刀を携えた凶津と桜が袈裟斬りを仕掛け、
「さあ、これで仕舞だ!」
 凶津達とは反対の方向から、全てのクランケヴァッフェを切り捨てながらダッシュして間合いを詰めたガルディエが、類まれなる怪力を以て魔剣を振るい、
「この一撃でブチ抜く!」
 最後に、ニーレットの【滅殺剣(フルスイングバールアタック)】が、脳天を直撃したことでドクター氷室は、完全に絶命した。

●エピローグ
 ドクター氷室が光の粒子になって消滅すると、誰彼(たそがれ)病院も同じように光の粒子となって消滅をしていった。
 猟兵達は、病院の消滅前にグリモア猟兵によってグリモアベースへと転移されたことで、誰彼(たそがれ)病院の消滅に巻き込まれることはなかった。
 これによって、侵食型UDC『何でも治せる病院』は完全に無力化された。パンデミックは防がれたのだ。

 UDC(人類防衛組織)によって保護された、小野田三郎少年も無事に日常へと帰ることになった。
 学校は、ド派手に吹き飛んでしまったので復旧にはしばらくかかるそうだが、それが終わればまた楽しい高校生活をオカルト研究部の部員たちと送るだろう。
 ただし、今回の件で痛い目を見たのか、怪しい噂には飛び込まずにストッパーの側へと回るそうだ。
また、何か気になる噂が学生間で広まったら、UDC(防衛組織)に連絡をくれると協力を願い出たらしい。
 今後、彼からも何らかの通報があるのかもしれない。

 狂気と正気の薄氷の境界を歩みながらも、今日もUDCアースは平和だった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年01月13日


挿絵イラスト