高貴で優雅なお茶会〜望むは永遠の刻〜
●とあるラビリンスのティーパーティー
魔法のウサギ穴をくぐればそこは別の国。ここは複数の小さな『世界』が繋がり合う不思議な迷宮、アリスラビリンス。
果実の実る樹木に挟まれた道を着飾ったドレスを着た一人の少女が歩いている。年は15、16ほどだろうか? 彼女はカールのかかった明るい茶色の長い髪をさらりかきあげるとふぅとため息をついた。
「ここにも扉は無さそうですわ……手持ちのドライフルーツも温存したいですし、ここの住民たちを探して何か保存食を分けてもらいたいところですわね。そうと決まれば!」
彼女は膝下までの長さのふわりとしたスカートの腰に吊り下げていた細身の剣を引き抜いた。
「このメリアンヌ、記憶は失えど誇りは失わず。我が家の誇りにかけ、こんなことでは立ち止まれませんの!」
剣を空へ掲げて自らを鼓舞したメリアンヌは、剣を収めると照れながら歩みを再開した。
「……ノリでなんとなく言いましたが、わたくし実家のこと何も覚えていませんし……。いえ、まずは戻ることが先決……恥の可能性は後にいたしましょう。……あら?」
メリアンヌは足を止めた。その先で開かれているのは優雅なティーパーティー。
この世界の愉快な仲間達だろうか? メリアンヌに気がついた一人の少女が話しかけてくる。
「あら、あなたも女王様のティーパーティーへ? このお茶会で優雅さが認められたなら、なんと王子様と永遠のご友人になれるの。みんなお近づきになりたくて、ご覧の通り張り切っているのよ」
この説明を聞き、メリアンヌはこの国で自分がまず何をするかを決めた。
(永遠というものが何を指すのかピンときませんが……。地位のある方と交友を持てば魔法のウサギ穴を探すのも楽になりそうですわ)
それに、なにより。
(優雅たるものが認められる……つまりは、わたくしの独壇場ですわね?)
記憶喪失のお嬢様剣士はどや顔で答える。
「ええ、ええ。わたくしもこのティーパーティーに参加しますの」
しかし彼女は知らなかった――このティーパーティーがこの国に迷い込んだ『アリス』を捕らえるための『オウガ』の罠であることを。
●まずはお茶会に潜入しよう!
「みなさん集まってくれてありがとうございます。アリスと呼ばれる方の一人がオウガに殺されてしまう未来を予知しました」
グリモア猟兵のユーノ・エスメラルダ(f10751)はグリモアベースに集まってくれた猟兵たちにぺこりとお辞儀をすると説明を始めた。
「場所は『アリスラビリンス』です。ここでは別の世界から召喚された方は『アリス』と呼ばれ元の記憶を失っています。アリスは元の世界につながる『扉』を探して旅をしているのですが……アリスラビリンスには、このアリスを餌とする『オウガ』というオブリビオンが存在します」
アリスラビリンスについて説明をすると、ユーノは手にしたペンで持ってきたノートへとざっくり絵を描いていく。
「今回の国を支配するオブリビオンは、『雪の女王』さんです。戦場となった周囲を雪原へと変えてこちらの動きを阻害しながら吹雪や冷気で攻撃をしてくる様です。そして雪の女王さんは今回のアリスを氷漬けにして持ち帰ろうとします!」
描かれたのは雪の銀世界のような白い髪と肌の女性。頭の王冠が、王であることを示している。
「しかし女王は直ぐには現れず、部下や愉快な仲間たちに命令してティーパーティーを開催しています。まずはアリスを誘い込むようです……。雪の女王はパーティーが進めば姿を表すので、皆さんにはこのティーパーティーに潜入してなるべく怪しまれずに雪の女王を待ち構えてほしいのです」
続いて描かれるのは、さまざまなテーブルと、ティーポット。そしてお菓子。
「どうして直接狙わないのかは、予知ではよく解りませんでした。何か目的があるのかもしれません。……会場にいる愉快な仲間たちの信頼を得られたら何か聞けるかもしれませんが……女王の部下のオブリビオンも混ざっているので話を聞くなら相手は選ぶ必要があります」
●世界をオウガから開放するために
「このままではこのアリスの方は氷に閉ざされ命を落としてしまいます……。しかしこの雪の女王を倒せばこの世界はしばらく安全になり旅を続けることができます」
ノートをたたんで説明を追えると、ユーノは猟兵たちに改めて向き直る。
「予知で解った内容は、これでぜんぶです。彼女が無事に旅を続けるため、そして言う事を聞かされている愉快な仲間たちのみなさんの開放のため……。このオブリビオンを倒すために皆さんの力を貸してください」
ユーノは胸の前で手を組み無事の祈りを捧げながら猟兵たちを転移させる。
「ユーノはみなさんを転移させなければならないので、同行はできません。みなさまに幸運がありますように……」
ウノ アキラ
はじめましての方は初めまして。そしてこんにちわ。
紅茶はダージリン7、アールグレイ3くらいの配分が好きです。産地のこだわりはありません。ウノ アキラです。
このオープニングに興味を持っていただき、ありがとうございます。
●お得情報
マスター紹介ページにもあるとおり執筆は主に土日になるので、プレイングを安定して受け付けられるのが【毎週木曜の8時30分から土曜の午後まで】の間になりますことをご了承ください。
章がクリアにならず引き続き参加を募る場合も木曜から土曜にかけてが採用しやすいです。
他にもマスター紹介のページは一読頂けると文字数を少し節約できるかもしれません。
●依頼について
アリスラビリンスの依頼となります。
一章は冒険。二章が集団戦。三章がボス戦となります。
一章はティーパーティーです。微笑みながら「ごきげんよう」と言っておけばとりあえず武器を持ってても怪しまれません。
愉快な仲間たちは少女だったり動物っぽかったりさまざまな姿をしており雪の女王の部下との見分けは簡単にはつきません。
お菓子やお茶は特に仕掛けもないので、飲み食いしても安全です。
二章は集団戦です。なんやかんやあってティーパーティーの会場に紛れる女王の部下たちが独断でアリスまたは猟兵たちに危害を加え始めます。
まだパーティーの体面は残ってるかもしれないし、残ってないかもしれない。一章の結果によって戦いの進み方が変わります。
三章はボス戦です。邪魔な猟兵を排除してアリスを氷漬けにしようと襲ってきます。
もし、二章終了まで優雅なティーパーティーを維持できていた場合は、雪の女王は作戦通りだと考えかなり慢心した状態で現れるとという弱体化ボーナスが入ります。
アリスは次のユーベルコードを会得しています。集団戦ではそれなりに戦えますが、威力が足りずボスへは通用しません。ボス戦では戦術に組み込まない方が良いでしょう。
【トリニティ・エンハンス】
【炎の魔力】【水の魔力】【風の魔力】で自身を強化する。攻撃力、防御力、状態異常力のどれを重視するか選べる。
第1章 冒険
『永遠のお茶会』
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POW : 歌やダンスで楽しませる
SPD : 料理や飲み物を振る舞って楽しませる
WIZ : 話芸で楽しませる
👑11
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●高貴で優雅なお茶会
「ごきげんよう、わたくしもご一緒してよろしいかしら」
メリアンヌがまず向かったのは立派なカイゼル髭を蓄えた貫禄のある猫の紳士。
「やあ、勇ましさのある佇まいの麗しきレディ。さあこちらの椅子へどうぞ」
カイゼル髭の猫紳士は小さな体で椅子を引きメリアンヌをエスコートする。メリアンヌが帯剣していることについては気にしていないようだ。
「お気遣いありがとうございます。申し遅れました、わたくしはメリアンヌと申しますわ。この度のお茶会、共に楽しみましょう」
メイド服を来た給仕がやってくるとメリアンヌへカップを差し出して、紅茶を注ぐ。
この会場にはすでに猟兵たちも紛れ込んでいる。
オウガと猟兵それぞれの思惑が渦巻く中、ティーパーティーは進行していくのだった。
村崎・ゆかり
お茶会好きのオウガか。気が合うかも知れないわね、そこだけは。
いつもよりいい服を着て出かけましょう。
優雅なお茶会にい招きくださり恐悦至極。心から楽しませていただくわ。
さて、器物覚醒。
ティーポットやらティーセットやらに自我と手足を与えて、自分でお茶の用意が出来るようにしてあげましょう。
どうせオブリビオンは猟兵を一目で見破るわけだし、それなら堂々と猟兵として振る舞うわ。
隠密潜入してる人が目立たないよう、注目を一身に集める。
ん、いいお茶の葉を使ってるわね。この国の特産品?
お茶は完全ストレート派。砂糖も無し。
こんにちは。メリアンヌだっけ? あたしは村崎ゆかり、陰陽師。
せっかくだし、一杯楽しんでいかない?
エドゥアルト・ルーデル
&&&
ほう女騎士でござるか…大したものですな
良家のお嬢様らしさにポンコツ臭を添えてバランスも良い
パーチーでは無差別に愉快な仲間達を挨拶して周るでござるよ!挨拶を欠かしてはスゴイ・シツレイだからな
こ”き”け”ん”よ”う”!(ニヤ…)
挨拶ついでにアリスちゃんの可愛さについて早口で語りますぞ!注意を引くのが目的だからな
拙者に気づいた女王の直属の部下共が動き出すだろうからこの【知らない人】を通じて作戦を盗み聞きし敵を炙り出すって寸法よ
知らない人どっから出たって?知らない
後はのんびり盗聴しながらアリスちゃんとお茶とお話しつつなんか良い感じの【言いくるめ】を決めるでござるよ!デュフッ
ポーズとか決めて貰おう
●お茶会は粛々と進む
雪の女王が主催するお茶会には脅して言うことを聞かせている多くの愉快な仲間たちと、一部の部下たちにより粛々と進んでいく――。
あるテーブルではティーポットがひとりでに動きティーカップへ紅を帯びた褐色が注いでいた。濁りのないその色はカップの白い色と相まって鮮やかに引き立て合い色合いを楽しませる。
「ん、いいお茶の葉を使ってるわね」
色味と広がる芳香を軽く堪能して村崎・ゆかり(《紫蘭(パープリッシュ・オーキッド)》・f01658)は感想を漏らした。
ゆかりはユーベルコード『器物覚醒』により式神を憑依させたティーセットを操ってカップへ注いだ紅茶を手に取る。
茶葉は癖の少ないファーストフラッシュのダージリンをベースに数種を混ぜ込んだブレンドの様である。セカンドフラッシュのアッサムを少量混ぜて風味を強めており、ほのかに香る柑橘系の香りはベルガモットか。
香りがほとんど飛んでいないのは水にもこだわっているからだろう。
「お茶会好きのオウガか。気が合うかも知れないわね、そこだけは」
ゆかりは場に馴染むためいつもより着飾った服装をしていた。彼女は紅茶を一口飲み周囲をぐるりと見る。会場入口の少女を始めとしてお茶会の別のテーブルからもいくつか敵意を感じる視線がある。
(どうせオブリビオンは猟兵を一目で見破るわけだし、それなら堂々と猟兵として振る舞うわ)
そんな気持ちで隠れずにお茶会に混ざり振る舞うゆかりへ給仕がひとり近づいてきた。
「女王様のティーパーティーへようこそ。どうぞ『この場に相応しき振る舞い』にて、ごゆっくりお楽しみください」
目にどことなく敵意を感じるがお茶会が終わるまでは手は出してこない様だ……。
(雪の女王の手下かしら、騒ぎを起こすなと釘を差された感じね。『アリス』を逃さない方を優先している……ということかしら)
ゆかりは笑顔で話しかけてきた給仕へと答えた。
「優雅なお茶会にい招きくださり恐悦至極。心から楽しませていただくわ」
●出会いは挨拶と共に
各テーブルを挨拶して回る大柄な軍服の礼装の男性がひとり。
「こ”き”け”ん”よ”う”!」
撫で付けて整えたオールバックの髪と相反するぼっさりした髭と眉とだみ声、そして不器用な笑顔が異質さを醸し出しているのはエドゥアルト・ルーデル(黒ヒゲ・f10354)。
(挨拶を欠かしてはスゴイ・シツレイだからな)
それは絶対の礼儀。そのインストラクションを守らない者は少なからず茶席でムラハチされることまさしくインガオホー。
だがアイサツが醸し出すアトモスフィアが彼を場に溶け込ませる。
「ドーモ、ごきげんよう。ヒヒッ」
蚊のような姿の紳士はオジギを返すとティーカップへ口の管を刺し静かに紅茶を啜る。
(適当に見繕った礼服だが、馬子にも衣装というやつかパーチーには馴染めているようでござるな)
挨拶巡りをしながらエドゥアルトは潜入の成功に気を良くしジリジリと『アリス』であるメリアンヌの席へ近づいていくのだった。
「ふふっ、父親というものは距離が近すぎる異性ですもの」
「ふむ……そういうものかね」
カイゼル髭の猫紳士と会話をするメリアンヌへ、ぬぅと影が落ちる。
「こ”き”け”ん”よ”う”!」
「ヒッ!? ……こほん、ごきげんよう。逞しいおじさま。わたくし無知でして階級で挨拶をお返し出来ないことご容赦頂けますでしょうか」
エドゥアルトの笑顔の圧に一瞬怯んだメリアンヌだが、即座に取り繕い挨拶を返す。
(むっ、今の一瞬の表情……イイねぇ)
気品を保とうと挨拶を返したメリアンヌへ社交辞令を返すため、そして護衛対象の自衛能力を見計らうため、エドゥアルトは彼女をさっと観察する。
鎧は関節を露出し急所と手足のみをおおう身軽さを重視したもの。鎖帷子の有無は外からは解らなかった。腰の剣は細身でレイピアの様な突刺用だろうか。
そして取っ手を摘まむタイプのカップであるのに小さな取っ手へ一生懸命指を入れようとしておかしな持ち方になっている。しかし背筋を伸ばし口をカップへ近づけずにカップを口へ運ぶ飲み方は洗練されていた。
(ほう女騎士でござるか……大したものですな。良家のお嬢様らしさにポンコツ臭を添えてバランスも良い)
「デュフッ。こんな勲章ただの飾りでござる。しかし飲み方一つとっても育ちの良さが見えるでござるな。やや内巻きのふわりとした明るい髪色に上品さが見えつつもその赤い瞳のツリ目の強気さ、しかしながら端々に垣間見える年相応の油断がまた可愛らしい。無骨になりがちな軽装の鎧にあるフリルやリボンなどのワンポイントも女の子らしくそれで居ながら一挙一動に大人らしく振る舞おうとする――」
エドゥアルトは次第に早口になりながら社交辞令――否。己の胸に萌え広がる想いを語り始めた。
その笑顔は至福の輝きを放っていたという。
●女王の部下たち
エドゥアルトの早口の社交辞令は注目を大いに集めた。もちろん、ゆかりの注目も。
(え、ちょっと。隠密潜入してる人が目立たないよう注目を集めるつもりだったのに)
こうしてはいられない。ゆかりもまたメリアンヌの席へと赴く。
「こんにちは。メリアンヌだっけ?」
「あら、何処かでお会いしましたかしら。わたくしの名をご存知ですのね。ええ、わたくしはメリアンヌですわ。ごきげんよう」
「あたしは村崎ゆかり、陰陽師。せっかくだし、一杯楽しんでいかない?」
エドゥアルトが延々と語る横でゆかりは式神を憑依させたティーセットを操りカップへ紅茶を注ぐ。
「まあ、これはムラサキさまのおちからで?」
「ええ、そうよ。式神を使っているの。メリアンヌはお砂糖いる? 私は砂糖なしの完全ストレート派だけれど」
「わたくしは角砂糖を四つほど。熱々のものを甘くしたものが好きですの」
二人に注目が集まる中、会場内で何人かが席を移動する。
(拙者たちに気づいた女王の直属の部下共が動き出したてござるな)
エドゥアルトは、メリアンヌの可愛さを語り続けながらちらりと横目で別のテーブルを見た。金髪の少女たちがなにやらヒソヒソと会話をしている。
その席にシレッと混ざっている金髪の貴公子。不思議なほどに自然にそこに居る極めて発見され難い彼は、エドゥアルトがユーベルコードで召喚した五感を共有する『知らない人』。
エドゥアルトは知らない金髪の貴公子を通してそのひそひそ話を盗み聞いた。
「猟兵が混ざり込んでいるわ。女王様は『アリス』を審査する方が優先だとおっしゃるけれど……」
「お茶会を続行しながらなんとか排除できないかしら」
「事故に見せかけて香水をかけてお詫びとして腐った卵と牛乳で作ったミルクセーキでも食べさせる? それとも事故に見せかけて強酸性の煮え滾る熱湯をかける? そのまま話しかけて甘えるフリをして胸ぐらを掴んで力づくで?」
「でも派手に動くと女王様がお怒りになられるわ。……もうすこしタイミングを図りましょう」
(なるほど……パーチーの続行は確定事項のようでござるな。しかしこの知らない金髪の貴公子、バエルがどうのとブツブツうるさいのだが……UDC世界の悪魔崇拝者か何かでござるか)
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
シャルボン・フランヴェルジュ
アドリブ・絡み歓迎
雪の女王が何故こんな回りくどいトラップを仕掛けたか気になるね。
だけど客の中には雪の女王の配下が入るから迂闊には聞けないと…… 。
こうなったら、ボクの本体の魔剣をUCで複製して、会場のあちこちに隠して盗聴機がわりに使おう。
他の客の会話を盗聴して、情報を集めていくよ。
後は怪しまれない程度にパーティーを盛り上げるよ。
複製した魔剣でジャグリング芸でもすれば、問題ないかな?
マリオン・ライカート
&&&
・心情
「記憶は失えど誇りは失わず」…か
良い言葉だね
その誇りを潰えさせない為にも頑張らないとかな?
・行動
さて…ここは給仕側として潜入しようかな
メリアンヌ嬢に話しかけつつさり気無く護衛
その上で、他の『給仕仲間』に話し掛けてオウガや女王についての情報も探っておきたいね
そちらのお嬢様。紅茶に合うスコーンなど如何でしょうか?
おや?
帯剣されていると言う事は何か武芸を修めておられるのですね
ボクもご覧の通り、武芸を齧っているんだ
…おっと、話しやすくてつい地が出ちゃったよ
さて、ボクはちょっと席を外すけれど、引き続きお茶会を楽しんで
…ええと、ちょっと聞きたいんだけど『お客様』はこの後どうすれば良いんだっけ?
●雪の女王の目的
(なるほど……この会場内にいる女王の配下の攻撃手段はわかったよ)
先の会話を、シャルボン・フランヴェルジュ(契約魔剣(ただしご主人募集中)・f22312)は自席でゆったり紅茶を飲みながら盗み聞く。
ヤドリガミであるシャルボンは、自分の本体である魔剣、『魔剣シャルボン』を幾多も複製して――ユーベルコード『錬成カミヤドリ』によるものだ――念力による操作で会場内に散りばめおき、その本体の複製を盗聴機のように扱ってあちこちの会話を盗み聞いていた。
『今度のアリスは女王様のおめがねに叶うのかしら』
『失敗してほしいわよね、不合格なら食べちゃって良いのだもの』
『けれど、女王様は王子様が寂しくないように早くご友人を見つけたいみたい。アリスが不合格だと、せっかくの食材なのに不機嫌になるのよ』
(雪の女王が何故こんな回りくどいトラップを仕掛けたのか……少しわかったけれど、同時に新しい謎も増えたね。もうすこし情報を拾えないものかな。お茶会を盛り上げるように動いてみるか……)
シャルボンはティーフードとして提供されているサンドイッチを一口食べる。
「塩っ気のあるものも存外合うものだね。……おや」
シャルボンの視界に入った一人の給仕。その足取りはまるで剣技を修めた者の様であり……。
(あの足取りは……あの給仕も猟兵かな。ならもうすこし様子を見てみよう)
●給仕たちの内情
給仕に紛れて潜入していたのはマリオン・ライカート(Noblesse Oblige・f20806)。多くの愉快な仲間たちに紛れてお茶会の運営側に潜り込んだマリオンはメイド服姿で各テーブルへお湯を運び、またティーフードの補充をしていく。
(ふう、思ったより忙しいね……けれど)
「……こっちこっち」
給仕の一人がマリオンを手招きする。二人はお湯を沸かしながら会話をした。
(思ったより話を聞く機会があったね)
リーダー格の少女――女王の部下のひとり――が地味な嫌がらせをしてくるが、そのリーダー格を除いた給仕……愉快な仲間たちは猟兵に協力的で、女王の部下の目をぬすんでは裏手のそこかしこでマリオンに話をしてくれるのだった。
彼女らが言うには、雪の女王の機嫌を損ねると一瞬で氷漬けにされてしまうため逆らえないらしい。そして雪の女王は過去に捕らえたアリスの少年を長らく溺愛しているとか。
しかし誰もその王子様の姿を見たことはなく、女王の妄想かあるいは監禁されているのではないかとかどうとか。または、すでに少年は氷漬けにされて命を落とし永遠のオブジェとして飾られているという話もある。
「ちょっと新入り! 何処行ったの、Fテーブルのティーフードが切れそうよ! このくそ忙しい中なにやってるのよ!」
マリオンの姿が無いことに気づいた給仕のリーダーがバックヤードで声を荒げる。ティーパーティーを維持する、猟兵の動きも気にする、どちらもこなさなくちゃあならないのが女王の部下の給仕リーダーだ。
「おっと、そろそろ行かなきゃ。忙しいのは事実だからね。話を聞かせてくれてありがとう」
マリオンは給仕仲間である愉快な仲間たちの一人に礼を言うとフロアの仕事へ戻っていく。
この内容もまた、シャルボンの耳に入っていた。
(なるほどね……その少年のアリスが件の王子様というところかな)
残る紅茶を飲み干すとシャルボンは立ち上がる。
「そろそろボクもパーティを盛り上げようか。女王の部下たちの注意がそれたなら、味方ももう少し動きやすくなるかもしれないからね」
シャルボンは立ち上がると会場の少し開けた場所へと出ていく。
「みなさん、ごきげんよう。場も温まったところで、すこし余興など如何でしょう」
シャルボンが魔剣を取り出すと会場のそこかしこから殺気が飛んでくるが、お茶会の維持のためすぐに争いにならないことは既に解っている。
「それっ」
シャルボンは魔剣を真上へ放り投げるとそのままジャグリング芸を始めた。
愉快な仲間たちはこの芸に感嘆の声を挙げ拍手が起こる。そして女王の部下と思われる者たちはピリピリした雰囲気でシャルボンの動向を気にしている。
●アリスの末路は
「あら、大道芸かしら。凄いですわ、一つ間違えば手を斬り落とすかも知れないというのに……」
メリアンヌもまた、シャルボンの芸に注意を向けていた。刃物の扱いの恐ろしさは、剣を扱う者としてメリアンヌもまた知っている。それ故にジャグリングに要求される繊細な力加減と集中力の高さに心を動かされる。
「そちらのお嬢様。紅茶に合うスコーンなど如何でしょうか?」
シャルボンへ会場全体の注意が向いてる隙に、ティーフードの補充を手にしたメイド服のマリオンがメリアンヌのテーブルへと現れた。
「あら、どうも。いただくわ。クロテッドクリームも追加で頂けるかしら」
「かしこまりました。……おや? 帯剣されていると言う事は何か武芸を修めておられるのですね」
マリオンはメリアンヌの剣について触れてみた。
「ボクもご覧の通り、武芸を齧っているんだ」
「まあ、あなたもですの? わたくしはこのように軽いものしか扱えませんの。ですが驚異を討ち倒すのではなく退ける程度ならば、これで十分ですの」
会話を二、三ほどしたところで、マリオンはカイゼル髭の猫紳士が周囲の目を気にしながらテーブルの下からマリオンへ折りたたんだ紙を渡そうとしていることに気付いた。
「……おっと、話しやすくてつい地が出ちゃったよ。さて、ボクはちょっと席を外すけれど、引き続きお茶会を楽しんで」
テーブルを離れバックヤードへ戻ったマリオンは渡された紙を確認した。そこにはチョコクリームで文字が書かれていた。
『ゆきのじょおうは このかいじょうを みている』
猟兵たちを心配しての忠告だろうか。会場内が見られているということは、雪の女王はやはり猟兵たちに気づきながら放置しているのだろう。
雪の女王に捕らえられているとされる少年のアリス、そして敵が紛れ込んでいてもなお続けようとするこのティーパーティー。このパーティーで雪の女王は『アリス』の何を見ているのか。
マリオンは給仕の愉快な仲間たちに聞いてみた。
「……ええと、ちょっと聞きたいんだけどこのお茶会のあとはどうなるんだい?」
給仕の愉快な仲間たちは答えた。
「アリスが『不合格』なら、そのまま食べられてしまいます。けれどもし『合格』なら凍らせるとか。その時は、王子様のご友人として相応しい笑顔のまま凍らせるから、ギリギリまで楽しませるようにと……」
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
●雪の女王は見ている
このティーパーティーの様子を魔法的な氷の水晶を通して雪の女王は観察する。
一部余計なものも混ざっている様だけれど。
――今度のアリスは彼に相応しいかしら。彼が寂しくないように、けれど彼に相応しい優雅さを……そんな友人を用意したいの。……けれど今度のアリスも相応しくないのなら、その時は食べてしまうだけなのだけれど――。
なにやら強烈に敵だと感じる者たちが混ざっている様子ではあるけれと、それらはあとでまとめて凍らせてしまえば良いだけ。
愛する彼のため、このアリスが相応しいかを審査する――。
ポーラリア・ベル
・アドリブ歓迎だよ
雪人転身であらかじめ人の少女姿になって。
雪の皇女様の装いをして、冬告げのベルを鳴らしながらご来訪。
「アイスの国からはるばると来ました。プリンセス・ポーラなの…よ。宜しくお願い」
冬をも統べる雪の女王様のお茶会だなんて素敵。私もお友達になりに来ちゃった。
アリスさんとも接触して、アイスを振る舞いながら、どちらが優雅さで優れているか勝負しましょう。って持ち掛けるの。
礼儀作法のスキルとか取ってないけど、がんばる。
どうして出てこないのか、優雅さ重視のお茶会。
そして王子様と永遠のご友人…
私なら、優雅極まった所でこの会場全体を皆纏めて氷漬けにして、王子様専用の素敵な氷庭にしたいな。
トール・ヴォーグ
&&(テフラ f03212 と同行)
寒い冬をこれでは越せないでありますよ!
諸悪の根元雪の女王を倒して冬を越すであります!
と…お茶会でありますな…
ご機嫌ようであります!情報集めは敵と仲良くなってからでありますな!
そこのお嬢ちゃんお名前は?テフラ殿!いまからコーヒーでラテアートを見せてあげるであります!
(もちろんメリアンヌ殿をいつでも守れるように警戒はしつつ)
テフラ・カルデラ
トール【f14539】と同行
&&&
雪の女王様に凍らされる…ゴクリ…そんな内なる欲望を隠しつつお茶会に参加しようと思います!
今回はアリス服を着てきました♪女王の配下に猟兵とは見られないはず…?
これで襲われるはずのメリアンヌさんの身代わりにできればよいのですが…
「ごきげんようなのです♪」軽く会釈をしてトールさんと一緒にお茶会に参加します!
メリアンヌさんのところへ近づき、彼女や同席している方々に自分が猟兵とバレないように色々なお話をしましょうか♪
情報を得つつもいつでも配下の強襲に彼女を避難できるように対応できるようにします!
あ、トールさんからコーヒーのラテアートもらいました、とても綺麗なのです♪
ロベリア・エリヌス
&&&
優雅さ…ね
一番優雅とかけ離れて居そうな存在がそれを言うのかしら?
滑稽だわ
まあ、油断してくれてるならそれに越した事は無いし、この状況を利用させて貰おうかしら
さて、私も給仕のフリをして情報を集めるとしましょう
取り合えずキーワードは「笑顔」と「優雅さ」ね?
笑顔の方は私がメリアンヌに直接話しかける以外にも、他者との会話から「好みの話題」を引き出すわ
誰だって好きな話の時は笑顔になりますもの
後は…そうね
元々貴族令嬢だったみたいだから優雅さの基準は満たしているでしょうし…
何かミスをしそうな時だけそつなくフォローすれば安心かしら?
…こう言った経験も中々ないでしょうし、この『物語』を蒐集すべく力を尽くすわ
メラニー・インレビット
&&&
どんな理由であれ、オウガどもにアリス様を好きにさせるわけにはいきません
しばしの間給仕のお手伝いをさせて頂きながら、お茶会の様子を観察します
どうやら猟兵に露骨な敵意を向ける者がいるようでございますが、女王の手先と見て間違いないでしょう
目星をつけた相手に近づき、周囲に聞かれぬ様にこっそり提案します
「何やら思うところがございます様ですね?」
「しかしお互いにお茶会が台無しになるのは本意ではないでしょう
よろしければ場所を移しませんか?」
敵も女王の怒りを買ってまでこの場で襲撃を強行する事は避けたいはず
後の事は愉快な仲間の皆様に任せ、
女王の手先達と密かに会場を離れるとしましょう
リュアン・シア
&&
王子様と永遠のご友人に、ね。永遠なんて言葉には不穏さしか感じないわ。
ともあれ、アリスの優雅さを認めさせるのだったかしら。
まずは、「ごきげんよう」と微笑んでおかしなお茶会に混ぜていただくわ。
情報収集はすでに他の猟兵達が上手に進めているようだから、そちらはお任せ。
アプリコットジャムのスコーンと紅茶を暫し愉しんでから、自然にメリアンヌに近づいて、
「ねえあなた、せっかくのパーティですもの、皆に優雅なダンスの披露なんていかが?」
【Arabesque】で華やかに、私が王子役になり彼女をリードして二人でワルツを。
主人格が元皇女なだけにそれなりの舞踏と作法は身についてるの。どなたか伴奏をくださらない?
●幕間~下ごしらえは入念に
ここまでの聞き込みで判明しつつあるティーパーティーの目的。それは雪の女王の目を盗みつつひっそりと猟兵たちのあいだに共有されていく。
女王の手下のオブリビオンたちは猟兵にすでに気づいていたが、女王が猟兵を脅威とみなしていないためかお茶会の続行が優先されていた。
「どんな理由であれ、オウガどもにアリス様を好きにさせるわけにはいきません」
メラニー・インレビット(クロックストッパー・f20168)は決意を固めるようにそう呟く。
給仕として紛れ込みメイド服に身を包んだメラニーは、追加のティーフードを作るためクッキー生地を型抜きしていた。作業をしながらメラニーは過去に出会った数々の『アリス』たちの姿を思い返す。
――その行動の原理が愛情であろうとも、オウガどもはわたくしめからあの方達を奪ったのですから――。
型抜きされた生地に卵黄を塗っていくのはロベリア・エリヌス(recorder・f23533)。こちらも給仕として紛れ込んでおりメイド服に身を包んでいる。
「優雅さ……ね。王子様についても姿を誰も見ていないというし、女王の独りよがりと余裕の無さが滲み出ている感じよね」
卵黄を塗られたクッキーは余熱済みのオーブンへ入れられた。
焼き上がりまでは約15分。クッキーを盛り付ける皿を用意しながらメラニーはちらりと会場のテーブルを見る。
「どうやら猟兵に露骨な敵意を向ける者がいるようでございますが、女王の手先と見て間違いないでしょう」
「そうね。まあでも、女王が油断してくれてるならそれに越した事は無いし、この状況を利用させて貰おうかしら」
「確かに、わたくしめたちは女王には脅威と見られていないのでございましょう。部下たちもどうやら女王の怒りを買ってまでこの場で襲撃を強行する事は避けたい様子。ですが……」
「雰囲気から察するに女王の部下のほうは全員が納得しているわけではなさそうね。……このままだと一部が暴走することはあり得るかもしれないわ」
二人は焼き上がったクッキーを配膳のための皿に盛りつけると、紅茶の出がらしを回収するためのバッグを腰に装着し給仕として会場に出る準備をする。
「さて、私も給仕のフリをして情報を集めるとしましょう」
「ではわたくしめは、血の気の多そうな方に目星をつけてこの場から引き離しましょう」
ウサギ耳とふわりとした琥珀色の髪が特徴的な給仕と黒フレームの眼鏡とさらりとした長い薄紫の髪が特徴的な給仕は、焼きたてのクッキーを片手にティーパーティーの会場へと踏み出した。
●冬の訪れは
ティーパーティーへ綺麗な装いの少女がしゃなりしゃなりと訪れる。彼女はユーベルコード『雪人転身』により人間の姿となったフェアリー、ポーラリア・ベル(冬告精・f06947)だ。
「アイスの国からはるばると来ました。プリンセス・ポーラなの……よ。宜しくお願い」
会場入口にいた少女はポーラリアをジッと見定めるとうやうやしくお辞儀をする。
「ようこそいらっしゃいました、プリンセス。ティーパーティーへようこそ。どうぞ『この場に相応しき振る舞い』にて、ごゆっくりお楽しみください」
雪の女王の望みにより『アリス』を理想の姿で凍らせるため『アリス』に違和感を与えないことがこの場では優先されている。この場に限ってはよほど場違いではない限り女王の部下たちは相手が敵だと気づいても受け入れざるを得ない様子だ。
ポーラリアは空いている席へ静かに歩みを進める。
(冬をも統べる雪の女王様のお茶会だなんて素敵。私もお友達になりに来ちゃった。礼儀は詳しくないけれど、がんばる)
冬を告げる妖精として雪の女王に興味津々な様子。ポーラリアは内心ウキウキして思わず漏れ出す冷気で周囲の気温を下げながら席についた。
(王子様と永遠のご友人……私なら、優雅が極まった所でこの会場全体をみんなまとめて氷漬けにして、王子様専用の素敵な氷庭にしたいな)
「急に冷えたであります……これも雪の女王が原因でありますか。こう寒いと冬を越せないでありますよ」
ポーラリアが近くを通り過ぎた時に冷気を浴びたトール・ヴォーグ(防具マニアの黒騎士・f14539)は寒そうにぶるりと震えた。
その隣に居るのは小柄なエプロンドレス姿の男の娘、テフラ・カルデラ(特殊系ドMウサギキマイラ・f03212)。
「トールさん大丈夫ですか?」
「諸悪の根元である雪の女王を倒して、冬を越すであります」
「雪の女王様……このままパーティーが進めば凍らされる……ゴクリ。ではなく、襲われるはずのアリスさんの身代わりに……」
「そうでありますな。アリス殿を……あとで名前を聞くであります……彼女のことをいつでも守れるよう警戒するでありますよ」
寒さを嫌うトールに対してテフラはなにか期待をしているようなそぶりを見せる。身を挺して『アリス』を護らんとする二人はお茶会の会場で歩みを進めた。
●ラテ・アートの微笑み
「ご機嫌ようであります!」
「ごきげんようなのです♪」
トールの鍛えられた肉体はテフラの容姿と小柄さを強調しており二人は少年少女の微笑ましいペアに見えた。二人は周囲のテーブルへ会釈をしてまわりこの場を荒らすつもりがないことを示していく。
途中でトールは、情報集めは敵と仲良くなってからでありますな! とテーブルに居る相手へ話しかけるが相手の反応は当たり障りのない社交辞令で終わることが多かった。
「そこのお嬢ちゃんお名前は?」
「ふん、慣れ慣れしくしないで頂戴」
少なくとも棘のある返しをする者は女王の配下だろう。オブリビオンは見ただけで猟兵を敵だと直感的に察するため、敵意を抱きやすいのだ。
こうして二人は『アリス』のいるテーブルへ近づいていく。
「ご機嫌ようであります!」
「あら、ごきげんよう。わたくしはメリアンヌですわ。鍛えていらしゃるのね、毛並みの上からでも努力の賜物が見えますの。お連れの方もとても可愛らしいですわ」
トールが挨拶をするとメリアンヌもまた挨拶を返す。第一印象は良さそうだ。テフラはいつでも『アリス』を庇えるように同席を申し出る。
「同席しても良いですか?」
「ええ、どうぞ」
二人の着席に合わせて近くにいた給仕が二人の前にティーカップを置いて紅茶を注いだ。
「コーヒーはあるでありますか?」
トールは給仕に尋ねた。
「我輩、ラテアートが出来るであります。この場の出会いの記念に披露をしたいのでありますが」
その問いかけに給仕――としてもぐりこんでいるロベリア――は答える。
「ティーパーティーだからお茶なら何種類かあるけれど……。そうね、けれど、インスタントで良ければ私物のコーヒーがあるわ。それで良いかしら」
「助かるであります!」
トールはラテ用に砂糖を加え泡立てたミルクを入れた容器を手にコーヒーの黒い水面へロゼッタを描く。
「まあ! ミルクの注ぎ方でこのような模様ができますのね」
「エスプレッソではないのですこし模様が薄いでありますが」
トールの作ったラテアートはテフラへ渡された。
「ラテアート、とても綺麗なのです♪」
小さな驚きと感動がお茶会を飽きの無いものにしていく。
●甘くて苦い物語の残滓
このやり取りをロベリアは安心した様子で見ていた。
(取り合えずキーワードとしての『笑顔』と『優雅さ』は問題なさそうね? 優雅さの基準は満たしているでしょうし……)
ここへさらに一押しとロベリアは話題を提供する。それらは全て雪の女王を油断させるため。
「素敵なアートね。皆は他に何か好きなものはあるのかしら」
空になったカップへ追加の紅茶を注ぎながらロベリアは話を作る。
「好きなもの……? 何か……忘れているような……」
その問いにメリアンヌは少し考え込んでしまった。
「……ごめんなさい、わたくし昔の記憶がなくてすぐには思い出せませんの。みなさんは何がお好きなのです?」
(『物語』を蒐集する者として、今の反応は気になるわね……好きなことが辛い思い出と絡んでいるパターンかしら)
ロベリアが好奇心からこの過去の『物語』を掘り返してみようかと逡巡していると。
「アイスだよ……です」
とん、とバニラアイスがのったお皿が置かれた。
「ポーラは、アイスが好きだよ」
がんばって上品に振舞おうとしながらポーラリアはバニラアイスを差し出す。
「ごきげんよう、ポーラなの。ポーラはアイスが好き……です」
「ごきげんよう、可愛らしいお嬢さま。わたくしはメリアンヌですわ。おいしそうなアイスクリームですわね」
「どうぞ、なの。これはお友達の印だから……です。女王様とも、お友達になりたいな」
「ふふ、そうですわね。女王様や王子様も含めた、この国の全員とご友人になりたいですわ」
ポーラが持参したバニラアイスはとても甘くて冷たく、熱々の紅茶やほろ苦いコーヒーともとてもよく合う味わいだった。
テフラはラテアートのコーヒーを飲みながらその冷たく甘い味わいを堪能する。
「甘くておいしいですね♪」
「本当に、甘くておいしいですわ。冷やしながら持ってくるのは大変でしたでしょうに」
「大丈夫。ポーラはアイスの国から来た……ですの」
「まあ、そうなのですね。遠くて知らない場所には興味がありますの。そうですわね、わたくし、きっと旅が好きなのですわ。ねえ、アイスの国について聞かせて下さらない?」
「えっ。えと……雪がね、いっぱいあって……」
メリアンヌはポーラリアが話すアイスの国の話を楽しそうに聞いていた。驚き、そして未知。そういったものに対してメリアンヌは目を輝かせ興味を示していく。
●黒いウサギ
談笑の裏でメラニーもまた動いていた。
給仕としての仕事をする傍ら、特に敵意が強い様子の者へ近づいて小声でそっと声をかける。
「何やら思うところがございます様ですね? しかしお互いにお茶会が台無しになるのは本意ではないでしょう」
相手はそんなことは解っていると言いたげにメラニーを睨んだ。テーブルをトントンと指で叩きイライラを隠そうともしない。
(刺激しすぎると爆発でもしてしまいそうでございますね)
メラニーは声を抑えて言葉を続ける。
「よろしければ場所を移しませんか? わたくしめも思うところがございますので。ここではない別の場所で決着をつけましょう」
数名がテーブルの間を行き来して何か連絡を取っていた。その後に猟兵たちへ明らかな敵意を向けていた者たちの一部がメラニーと共にティーパーティーの会場を後にする。
その様子はロベリアも確認していた。
(あちらも上手くいった様ね。相手は下っ端だからたぶん大丈夫だと思うけれど……)
メラニーは言葉に乗ってきた数名の敵と共に移動をしながら、服の下に隠し持つ殺戮刃物の柄を握る。
――あらゆる物の時計を止めるという黒いウサギの『インレビット』。わたくしめはオウガたちの時間を止める死神となりましょう――。
●一つのあこがれの歌
(王子様と永遠のご友人に、ね。永遠なんて言葉には不穏さしか感じないわ)
談笑がはずむ『アリス』のテーブルの近くで静かにアプリコットジャムのスコーンと紅茶を楽しんでいたリュアン・シア(哀情の代執行者・f24683)。
黒い髪と目が白い肌に映え育ちの良さそうな振る舞いが本物を醸し出している。
(ともあれ、アリスの優雅さを認めさせるのだったかしら)
リュアンは静かに席を立つとメリアンヌのテーブルへと近づき、魅力的な微笑みと共に挨拶をした。
片足を斜め後ろの内側に引き、もう片方の足の膝を軽く曲げドレスの裾をつまんでお辞儀をする――丁寧なカーテシーだ。
「ごきげんよう、私の名はリュアン・シアよ」
「まあ、これはご丁寧に……ごきげんよう。わたくしはメリアンヌですの。過去のことを覚えていないもので、自分のファミリーネームを覚えておりませんの。名乗りが中途半端である無礼をお許しください」
リュアンにつられてメリアンヌもまた丁寧なあいさつを返す。
「まあ、若くて髪も綺麗なのに……。自分のことを思い出せないのはさぞかし大変でしょう」
「慣れてしまえばどうということはありませんわ。リュアンさんも黒い瞳が神秘的で美しいですわ。立ち振る舞いに気品と魅力がありますの」
「ふふ、ありがとう」
(社交辞令はこんなものかしら。思い出せないことが救いである場合もあるけれど……そうね、『アリス』の振る舞いは及第点ね。けれど動きがすこしぎこちないかしら……まるで憧れの対象を真似ているかの様だわ。優雅さについてはあと一歩というところね)
雪の女王が猟兵の存在を忘れてしまうほどこの『アリス』に夢中になれば、この後の戦いは有利になるだろう。ならばこのあと一歩をどうするか。
「ねえあなた、せっかくのパーティですもの、皆に優雅なダンスの披露なんていかが?」
「……その、わたくしダンスは……」
「大丈夫、私がリードをするわ。どなたか伴奏をくださらない?」
会場内にいる愉快な仲間たちのうち楽器の心得のある数名が手を上げて名乗り出ると、給仕によりテーブルが移動されて即席のダンス会場が作られる。
(あら驚いた。さすがアリスラビリンス……不思議の国ね。知っている曲がスッと演奏されてきたわ。確かUDCアースの有名な曲だったかしら)
流れてきたのはウィンナ・ワルツの一種。基本となる三拍子に合わせて足を運び、くるくるりと二人は踊る。
ユーベルコード『Arabesque』により技能を高め即席で曲に合わせるつもりだったリュアンだが、聞いたことのある曲が流れたことでリードも上手くいき二人のワルツは始めてペアを組んだとは思えない優雅さを醸し出す。
(これで女王様のお眼鏡にかなうかしら)
ワルツを踊りながらリュアンは自分の中で眠り続けるシアへ心の中で語りかける。
(シア、あなたの人生は今ここで役に立っているわ)
滅亡した小国の皇女として生まれ育った過去……それが傀儡の様であったとしても、そして裏切られてすべてを失ってしまっても……生きた証として身についた舞踏と作法が今、『アリス』を救う一翼を担っている。
成功
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第2章 集団戦
『『偽アリス』アリーチェ』
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POW : ミルクセーキはいかが?
【怪しげな薬瓶】が命中した対象に対し、高威力高命中の【腐った卵と牛乳で作ったミルクセーキ】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD : 甘いおねだり
レベル×1tまでの対象の【胸ぐら】を掴んで持ち上げる。振り回しや周囲の地面への叩きつけも可能。
WIZ : お茶を楽しみましょ?
【頑丈なティーポット】から【強酸性の煮え滾る熱湯】を放ち、【水膨れするような火傷】により対象の動きを一時的に封じる。
イラスト:ちびのしま
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●二章についてのお知らせ
一章へのご参加、ありがとうございます。
引き続き二章のプレイングの受付は予定通りに木曜の1月16日(木)からとなる見込みです。
執筆は土曜と日曜になります。引き続きよろしくお願い致します。
●始まる一部の暴走
雪の女王の部下――『偽アリス』の『アリーチェ』たち――はこのティーパーティーの会場で大まかに次の反応を見せていた。
ひとつは、雪の女王の指示を忠実に守りお茶会を維持しようと努力するグループ。
ひとつは、猟兵たちに対する敵意を抑えきれず排除に乗り出そうとするグループ。
そして最後は……好物である『アリス』の血肉を前に飢えを我慢しきれなくなっているグループ。
さらに現在は、ティーパーティーの会場の外におびき出されているグループも一部ある様である。
「何をするつもり? やめなさい。女王様は望んでいないわ」
「邪魔をしないで、解るでしょう。あいつらは敵よ。今ここで排除しなきゃ」
(どさくさに紛れてちょっとだけ味見しちゃお。腕の一本くらいなら平気よね?)
会場内のテーブルの端々が少々騒がしい。
「他の席も盛り上がってきているようですわね」
このお茶会をただのパーティと信じているメリアンヌは、ダンスの後も全く異変に気付かず微笑んでいる。
しかしティーパーティーが罠だと知っている猟兵たちは気づいていた……給仕のメンバーが少しずつ入れ替わってきている。
女王に忠実な部下は多くはない様で暴走しかけている仲間を抑えきれていない。はじめこそ給仕リーダーが止めに入る姿も見られたが数に圧されて捕らえられたのか途中から姿が見えなくなっている。
「お茶のお代わりはいかがですか?」
「ミルクセーキもございます♪」
――お茶会を維持しつつ猟兵たちを追い返す――そのために『事故』を起こそうと『偽アリス『アリーチェ』』たちが敵意を笑顔で取り繕い迫ってくる。
雪の女王の油断を誘うため『事故』を防いで誤魔化しながらお茶会を続行するという水面下での戦いが始まる。
村崎・ゆかり
「コミュ力」を使いながら、アリーチェたちと駆け引きをしていくわ。
あら、担当の給仕さんが変わったの? せっかく楽しく話してたところだったのに。
まあいいわ。お茶はお湯と茶葉だけ用意してくれれば、ティーセットたちが自分で淹れるから。
ティーポットも式神だから、危険物を入れられたら悲鳴を上げるでしょうね。その責任を、あなたは取ってくれるのかしら?
あなたたちは、きちんと招待客をおもてなしする作法を覚えた方がいいと思うわ。
使用人が勝手なことをして雪の女王の怒りを買ったらどうなるか、想像してみるのも楽しそうじゃない?
うん、お茶が入ったわ。あなたたちも一緒にどうかしら?
ここで拒否するなんて無礼は働かないわよね?
リュアン・シア
&&
あらあら。ダンスを終えてメリアンヌを席までエスコートしてから戻ってみれば、何かしらこの不穏な空気。
全然敵意を隠せていないわよ? 仕方ない部下達ねぇ。ちゃんと女王様の意向に従いなさいな。
さ、お茶会を続けましょ。いいわね?
アリスに危害を加えんとしている面々や、何だか頑丈なティーポットを手にしている給仕達へ【ひとときの誘惑】を。
「メリアンヌをもてなし、この素敵なお茶会を粗相なく楽しく続けるのがあなた達の役目。そうよね」
微笑みかけて、有無を言わせぬ命令を。そもそもの女王の命令と重複することなのでしょうし、効果は高そうな気がするのだけど、どうかしら。
女王に忠実そうな部下にはさりげなく協力を。
ロベリア・エリヌス
&&&
…ふーん
メリアンヌも『面白い』のね
武門故に優雅さを疎かに…っていう可能性もあるけれど
これは一寸フォローしてあげないと拙いかしら
こうしたトラブルを難なく脱してこその優雅さでしょ?
彼女に連れ添って優雅さを補助する…
のは、残念ながら私の力量的に出来そうもないけれど…
彼女の笑顔が曇らない様、事故を未然に防ぐ位は出来るわよ
取り合えず近寄ってくる偽アリス達は別席に案内するという名目で引き離すわ
事故の為の嫌がらせは【クロックアップ・スピード】で反応と速度を上げて優雅に対処するわ
まったく…所詮短絡思考な相手だから仕方ないのかもしれないけれど、遅過ぎるし優雅じゃないわ
蒐集する価値もないなんて嘆かわしいわね
エドゥアルト・ルーデル
&&&
恐ろしく分かりやすい殺気…拙者じゃなくても見逃さないね
デュフフフ!メリアンヌ氏は可愛いなぁ!
さっきの声が胡散臭い頭アグニカに協力してもらいますぞ!
アリーチェ氏達話しかけさせて注意を引かせるでござる
アリスでも猟兵でもない存在だからな、敵対していないから都合がいい
【言いくるめ】も上手そうだしせっかくだから革命の同志にどうよ?
貴公子とアリーチェ氏達が歓談しているスキに【薬瓶】を背後から【スリ取り】でござる
うnうn危ないお薬はしまっちゃおうねぇ
代わりといっちゃなんだけどちくわでもスリ渡しておくか
メリアンヌ氏が気づかない内にササッと処理して後はおしゃべ…護衛ですぞ
メリアンヌ氏は可愛いなぁ!!
ポーラリア・ベル
【雪人転身】続行
&&&
人がどんどん替わってるわ。休憩時間かしら?
でも私達は先程までお茶をしていましたものね。
踊ったり、お茶会お料理のバイキングはいかが?
アリスの手を引いて。女王様な気風よりおてんば好奇心第一な子供の様に。
あっちいってお料理食べようとしたり、お庭の中央でクルクルダンスしようとしたりします。
ミルクセーキ?ありがとー!(薬瓶受け取り)
わ、ごめんなさい、凍っちゃったわ。(自身の冷気で)
代わりにポーラの魔法のジュースをあげるわ。しゅわっとブルーハワイのお味!
(お料理場からもって来た、冷気でゆっくり過冷却水にしたジュース)
…飲んだら、凍っちゃった?不思議!
なんて言いながらあっちこっちへ
●策略の行き交う中
ワルツに紛れテーブルから何人かが席を立ち、徐々に給仕を主に務めていた愉快な仲間たちと入れ替わっていく。
給仕を務めていた彼女たちはテーブルマナーの心得があまりないため、突然の役割変更に戸惑いながら場を壊さないようにと緊張の面持ちだ。しかし、それ以上に。
「アリーチェさんたち……突然給仕をやりたいだなんて。給仕を取り仕切っていたアリーチェ・Lさん困らないかしら」
「けれど私たちは逆らえないわ、荒事になれば彼女たちの方がずっと強いもの……強引に変わりなさいと言われたら、仕方がないわ」
自分たちが務めていた仕事がうまくまわるのか――それが気になり彼女たちはチラチラと給湯やキッチンがある裏手のほうを気にしている。
その席にシレッと混ざっている金髪の貴公子――エドゥアルト・ルーデル(黒ヒゲ・f10354)がユーベルコードで出しっぱなしにしていた、五感を共有する『知らない人』――は苦笑を浮かべて呟き紅茶を口へと運ぶ。
『……フッ、大きな組織が腐敗するのはどこも同じだな』
もちろん彼が見聞きした情報はエドゥアルトにも共有がされている。
(とりあえずこの声が胡散臭い金髪の貴公子に引き続き協力してもらいますぞ。召喚したただの人だからな、アリスでも猟兵でもないのは都合がいい)
エドゥアルトは指先で小気味よくワルツの曲の音頭をとる。
「デュフフフ! 踊るメリアンヌ氏は可愛いなぁ!」
しかしその指先の動きは手旗信号。思考までは共有されないため、エドゥアルトは音楽にノッているフリをして金髪の貴公子へ協力の指示を伝える。貴公子はエドゥアルトの動きに気が付くと、ほほ笑みを返すことで返事をした。
やがてリュアン・シア(哀情の代執行者・f24683)とメリアンヌのワルツは終わり、即席のダンス会場は元に戻された。
「素敵なひと時でしたわ。シアさま、至らないわたくしをエスコートしてくださり感謝いたします」
「気にしないで。せっかく素敵なお茶とお菓子があるのだもの、身体も動かしたくなるわ。良い余興にもなったでしょうし」
ほどよく盛り上がったのか、端々のテーブルから聞こえる話し声が多くなっている。その様子を見てメリアンヌは楽しげな表情でこう言った。
「他の席も盛り上がってきているようですわね」
だがリュアンは聞こえ漏れる声の調子から別のものを感じ取った。
(あらあら。ダンスを終えてメリアンヌを席までエスコートしてから戻ってみれば、何かしらこの不穏な空気)
元からこのティーパーティーが仕掛けられたものであると知っていれば気づけるほどの変化。その異変が、ティーパーティーの裏で進行していく。
「さて、次は何のお話をいたしましょう」
一人気づかぬメリアンヌは旅先の思わぬ出会いを楽しみニコニコと笑顔になっていた。
●お代わりはいかがですか?
「足がもつれたー、あぶなーい」
エプロンをつけた『『偽アリス』アリーチェ』のうちの一人がワザとらしくよろけながら怪しげな薬瓶を放り投げる。
その先は村崎・ゆかり(《紫蘭(パープリッシュ・オーキッド)》・f01658)の席――しかしその薬瓶は、身構えたゆかりまで届くことは無かった。
ロベリア・エリヌス(recorder・f23533)がユーベルコード『クロックアップ・スピード』で自身の動きを増大させ、雫も零さずに薬瓶をキャッチしたためだ。
「全く、危ないわ」
ロベリアは薬瓶を懐へ回収すると同じテーブルで目を丸くしているティーパーティーの主役……『アリス』であるメリアンヌへ頭を下げる。
「給仕の一人が失礼をしました。……パーティの『お客様』に粗相だなんて躾の足りない給仕だわ」
雪の女王を怒らせないため、表向きはパーティーを続けなければならない。そのため初手を失敗した『アリーチェ・A』はすごすごと引き換えしていった。
そこへ横からさっと別の『アリーチェ・B』がティーポットを手に割り込んでくる。
「お茶のお代わりはいかがですかぁ?」
「まあ、ちょうどお湯も切れていたところなの。お願いできるかしら」
快くお代わりを受け入れようとするメリアンヌに対してゆかりがストップをかける。
「あら、さっきまでこのテーブルに付いていた給仕さんとは違うのね。担当が変わったの? せっかく楽しく話してたところだったのに」
「ええ、休憩とかそんな感じですぅ。さぁさぁ、お熱いうちにぃ」
しかし何やらグツグツ音が聞こえ湯気が尋常ではない。
「お茶はお湯と茶葉だけ用意してくれれば、この式神のティーセットたちが自分で淹れるわ」
ゆかりはユーベルコードで式神を憑依させたままのティーセット達を指し示す。
「もしも――そう、もしもの話だけれど。もし危険物を入れられたら式神たちは悲鳴を上げてパーティどころではなくなるでしょうね……そんなことはないと思うけれど」
そう忠告を加え、ゆかりはティーポットを手にした『アリーチェ・B』をちらりと見る。相手はグツグツいうティーポットを片手にぐぬぬっとした困り顔をしていた。
どうやら『アリス』にパーティーそのものを怪しまれない様にしようという理性はあるらしい。
「ごめんなさい、変な話をしてしまったわ。きっと騒ぎになるような危ないものは入っていないわよね。ごめんなさい、用心深い性分なの」
ゆかりがそう答えて式神が憑依したティーポットを差し出すと、『アリーチェ・B』はしばし逡巡した後に。
「お湯が冷めてしまったみたいだわぁ。ちょっと淹れ直してくるぅ」
と、しょんぼり帰っていった。
その背中を見送りながらメリアンヌは不思議そうに呟く。
「まぁ……ムラサキさまはよほど以前の給仕の方がお気に入りでしたのね」
「それもあるけれど、無断で担当が変わったのがすこし気になったのよ。それに会話もお茶請けに必要だもの。さあ、追加のお湯が来るまでクッキーでも食べましょう?」
このやり取りで納得したメリアンヌは「あら、これ美味しいですわ」とクッキーを頬張り再び笑顔になる。
テーブルの反対側では転ぶ角度だけを変えてまた薬瓶を投げようとした『アリーチェ・A』が再びロベリアに妨害されていた。
「メリアンヌがティーセットに気を取られている今なら、このくらいは構わないかしら」
ロベリアは妨害が失敗して悔しがる『アリーチェ・A』の背後へ素早く回り込むと、暗殺技能を活かして非常に分厚い文庫本の角でゴスっと沈黙させる。
動かなくなった敵をキッチンへ引き摺りながらロベリアは一人呟いた。
「……それにしても、この敵がさっき投げたの薬瓶じゃなくてちくわだったわね……どうしてかしら? それにしても……」
ロベリアは遠目にメリアンヌを見る。口調はともかく食事のマナーなど行動の端々に若干の雑さが見受けられる。
(さっきのワルツの時といい……メリアンヌも『面白い』のね。武門故に優雅さを疎かに……っていう可能性もあるけれど)
いったい彼女はどういう物語を歩んできたのだろう……『蒐集』する対象としてロベリアはメリアンヌに興味を感じていた。
「私の力量的に優雅さの補助は出来そうもないけれど……彼女の笑顔が曇らない様、事故を未然に防ぐ位は出来るわよ」
●暗躍の影
可能な限り違和感なく猟兵を襲撃、またはどさくさに紛れて『アリス』を一口食べようと暗躍する複数の『アリーチェ』たち。
それを妨害するべく動く影。
「こちらも不注意だった。謝罪しよう」
どことなく胡散臭い金髪の貴公子――エドゥアルトがユーベルコードで出しっぱなしにしている『知らない人』――は、キッチンから飛び出した『アリーチェ・A』とぶつかりそうになり、謝罪をしていた。
再び薬瓶を投げつけようと意気揚々と出てきた『アリーチェ・A』だが、まるで図ったかのように金髪の貴公子がタイミングよく歩いていたのだ。
「こんな物しかないが……お詫びのしるしに受け取ってもらえないだろうか?」
金髪の貴公子は懐からチョコレートを取り出すとお詫びの品として渡そうとする。この甘いマスクと上品そうな物腰に『アリーチェ・A』はちょっぴりときめいた。
この隙に『アリーチェ』の背後をスッと人影が通る。
(うnうn危ないお薬はしまっちゃおうねぇ)
エドゥアルトがユーベルコード『Pickpocket』により背後から薬瓶をスリ取っていたのだ。そして……。
(代わりといっちゃなんだけどちくわでもスリ渡しておくか)
この時のちくわは後にロベリアが回収することになる。
「ところで聞きたいことがあるのだが……このお茶会は今、なにやら給仕の入れ替わりが激しいようだが何かあったのかな?」
「あっ。ごめんなさい、私、やることがあったの」
そう言い、薬瓶がちくわにスリ替わったことに気づかないまま『アリーチェ・A』は先を急ぎ去る。
エドゥアルトはその後ろを見送りつつ次の標的を探した。
「この調子でどんどんスリ替えるでござる。ところでお前ほんと誰なの?」
「力の象徴……その威光さえあれば彼女たちもすぐ我々の正しさに気付くだろう」
エドゥアルトは召喚しっぱなしの『知らない人』と連携し『アリーチェ』たちを徐々に無力化していく。
(メリアンヌ氏が気づかない内にササッと処理して余った時間でおしゃべ……護衛ですぞ)
●お茶会はつつがなく
「人がどんどん替わってるわ。休憩時間かしら?」
先ほどのやりとりで給仕の顔触れが変わっていることに気が付いたポーラリア・ベル(冬告精・f06947)は首をかしげ頭に疑問符を浮かべる。
「お昼も近いですものね。そういえば随分と長いことお茶を飲んでいる気がしますわ。けれどもほら、ティーフードもお菓子ばかりではなく軽食もありますの」
「わわ、そういえば本当だね」
いつの間にか皇女様っぽい演技が消えているポーラリアは、ユーベルコードによる人間の姿のまま椅子からぴょこんと降りるとメリアンヌの手をとる。
「お姉ちゃん、お茶会お料理のバイキングはいかが?」
「まあ、食べ歩きですの? 少しはしたない気もしますけれど……」
「あ、そっか。ポーラは今、プリンセスだった……です」
そこへ撫で付けて整えたオールバックの髪とぼっさりした髭の顔が割って入る。
「デュフフッ、ずっと同じテーブルでは話題も尽きるでござるからな」
「ヒッ!?」
ニュッと出てきたエドゥアルトの顔のアップに一瞬怯むメリアンヌ。エドゥアルトはニコッと笑顔を作り説明を続けた。
「15分程度を目安としてテーブルを周りながら挨拶と会話をしつつ軽くつまむのならば、上流階級の社交的に有りと思いますぞ」
「なる程……さすがルーデルのおじさま。経験豊かでいらっしゃいますわ」
「では、拙者もまた挨拶まわりがあるゆえ失礼するでござる」
そう言うとエドゥアルトは忙しなくこの場を去った。
(ぬぅぅっ!! やることが、やることが多い……! それにしてもメリアンヌ氏は可愛いなぁ!!)
この会話を横で聞いたリュアンはメリアンヌへ微笑んで「行ってらっしゃい」と声をかける。
「ずっと同じ席ではもったいないもの。けれど大勢で移動しても迷惑でしょう。私はここでもう少しゆっくりしていくわ」
(それに、女王の部下たちにすこし用事もあるのよね。全然敵意を隠せていないわよ?)
リュアンもまた自分なりの方法で『アリーチェ』たちを無力化しようと考える。
●挨拶はごきげんようと共に
「ごきげんよう……なの」
「ごきげんよう。よろしいかしら」
他のテーブルへ移ったポーラリアとメリアンヌは先に座っていた愉快な仲間たち――このテーブルでは雪だるまと子犬――が仲良くアイスティーを飲んでいた。
「ごきげんようです。ささ、遠慮せず」
「わふっ、ごきげんようですっ!」
席につくとポーラリアは早速ハムをチーズで巻いたティーフードへ手を伸ばそうとして……はたと気が付いた。
「ここはアイスティーなのね……です」
「熱々(あティティ)なティーだと雪だるまは溶けてしまいますので」
「犬舌なので熱いのは苦手でっ」
「まあ、猫ではなく犬ですの」
「わふっ」
アリスラビリンスでそうだというのなら、きっとそうなのだろう。そんな不思議な個性にメリアンヌは思わず顔が綻ぶ。
「あら、まあ。犬舌なのですね。ふふ」
「アイスティーを愛す(アイス)のね!」
一方でポーラリアは、雪だるまが放つダジャレになにやら対抗心を燃やしている。
そこへイイ感じに死角から放り込まれる薬瓶。
「ミルクセーキをお持ち……あーれー」
転んだふりをした『アリーチェ・C』が放つ怪しげな薬瓶がポーラリアを襲う!
この瓶の中身はなんかこうイイ感じに鼻をごまかす強いバニラの香水であり、これをぶっ掛けて鼻を利かなくさせてから本命の『腐った卵と牛乳で作ったミルクセーキ』を口にぶち込みトイレへご退場願うというのが『アリーチェ・C』の勝ちパターンだった。
――しかし。この香水はちょこっと外に出掛けた状態で固まってしまい、中身をぶちまけないままポーラリアの手の中にキャッチされてしまう。
「わ、ごめんなさい、凍っちゃったわ」
ユーベルコードによる人間の姿への変身に付随する冷気の力……それがびっくりした拍子に解放されたのだ。
「代わりにポーラの魔法のジュースをあげるわ。しゅわっとブルーハワイのお味!」
カチコチに凍らせてしまったお詫びとばかりにポーラリアは容器に入れた飲み物を『アリーチェ・C』の口に流し込む。
「ふぇっ!? ひゃわわわ……!?」
ずっと冷やし続けていたこの飲み物、ゆっくり冷やしすぎてポーラリアも気づかないうちに過冷却水になっていた様だ。
口でどんどん凍っていくジュース。
塞がり凍っていく唇と鼻。苦しむ『アリーチェ・C』。
メリアンヌが会話に夢中な間にスッと現れて『アリーチェ・C』を本の角で殴りおとなしくさせるロベリア。
動かなくなった『アリーチェ・C』を引き摺っていくロベリア。
ぐったりしたまま引きずられていく『アリーチェ』を見てポーラは目を丸くした。
「……飲んだら、凍っちゃった? 不思議!」
●パーティーを続行せよ
元の席に残ったリュアン。その周辺には問題なく業務を続行する『アリーチェ』たちの姿がある。
「このままちゃんと女王様の意向に従いなさいな」
リュアンは濃い紅茶を一口飲むといちごジャムをひとさじ食べる。そんなロシアンティースタイルでお茶を楽しんでいるとリュアンの前に『アリーチェ・B』と『アリーチェ・D』の二人に拘束された『アリーチェ・F』が連れてこられてきた。
「あなた達、何のつもりなの。こんなことしてただで済むと……」
騒ぎにならない程度に抵抗する『アリーチェ・F』。リュアンは連れてこられた彼女を見ると、『微笑んだ』。
「『ちゃんと女王様の意向に従いなさい』。メリアンヌをもてなし、この素敵なお茶会を粗相なく楽しく続けるのがあなた達の役目。そうよね」
リュアンは抵抗する『アリーチェ』の中にある氷の女王の命令を催眠で重ねた。
ユーベルコード『ひとときの誘惑』……この能力による誘惑の微笑は『この人の命令に従いたい』という感情を相手に与える。リュアンが下した命令は新しいものではなく、元々『アリーチェ』たちが受けていた命令を改めて出し直したものだ。
それ故に何の抵抗もなくスルリと重ね掛けされて『雪の女王の指示を忠実に守りお茶会を維持しようと努力するグループ』が一人増えた。
「今だけ協力するわ、けれど女王さまの邪魔をしたら許さないわよ」
「ええ、もちろんよ。私達は敵同士……けれど、今は争うタイミングじゃない。ただそれだけよ」
暴走した過激派の鎮圧という共通の目的のため、リュアンと『アリーチェ』の一部は共闘を進める。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴
シャルボン・フランヴェルジュ
アドリブ・絡み歓迎。
これは……あまり騒ぎを起こさずに対処した方が良さそうだね。
見たところオウガ達の装いは肌の露出が少ない。
これを利用して、目立たないように拘束させて貰おうか。
さっき盗聴器の代わりに使った沢山の魔剣からUC【灰の舞踏装束】を発動。
時間が経つと固まる石膏を生成して、彼女達の服の中へ忍び込ませるよ。
そして服の中で石膏を広げて、首から下の肉体を全部覆って……時間が経てばカチン、だ。
普段は全部塗り固めちゃうんだけど、それだと目立つからね。
彼女達には服の下に、硬い石のダイビングスーツを着てもらおうって寸法だよ。
客をもてなそうとする心意気に応じて、お似合いのドレスをプレゼントだ。
トール・ヴォーグ
&&(テフラ f03212 と同行)
なかなかよいかんじに盛り上がれてるようでありますな
(できる限り騒動が起きてもその騒動を目立たないようになおかつ巻き込まれたときに行動に移せるようにしている)
テフラ殿も何か考えがあるかんじであったためそれを手助けするように我輩の体をスキルで石化させ興味を分散させることにした
テフラ・カルデラ
トール【f14539】と同行
&&&
ちょっと騒がしくなってきた?しかし騒ぎを起こすのも後々が大変ですし…ちょっと「お花を摘みに行く」とか言っておいて席を外しましょう
近くにいる偽アリスにトイレはどこか聞いてみましょうか?
教えられた通りに道を進むも人気もいないしトイレすらありません
やはり一人になってから始末しようという魂胆でしたか…完全に騙されましたね…わたしとしては都合がいいですけども♪
数としては数人…少しだけでも敵意のある存在を引き離さなければです!
さて、ユーベルコード『固化塗料粘液散布』で偽アリスたちを一人残らずドロドロに塗り固めちゃいましょうか♪
このお城に新しいオブジェが出来上がりましたね♪
メラニー・インレビット
&&&
アリス様と女王、どちらに気取られても大変でございますね
少々手荒になってもお茶会に差し支えないよう、
また僅かでも女王の目が届きにくくなる事も期待して、
林など「会場から見えづらい場所」を探して、誘い出したオウガどもとそちらに移りましょう
「…さて、忌々しいバケモノ共め。終わりの時間だ」
よりによってアリス様方の振りをするなど、不愉快極まる奴等め
目的地に着いたら即座に『時間加速』でスピードを増大して、こちらの胸ぐらを掴まれる前に殺戮刃物を突き立ててやる
さて「掃除」が首尾良く行ったら会場へ戻りましょう
戦闘でついた汚れや傷を見咎められても、
不注意で食材をひっくり返してしまった事にして誤魔化します
マリオン・ライカート
&&&
・心情
自己の利益を優先させるのも間違いじゃないけれど…
仕える者としてはどうかなと思うよ
・行動
色々嫌がらせはされたけれど…
「話が分かる」と言う意味で給仕リーダーを助けて協力を依頼しようと思うよ
少なくともこのお茶会を維持したいという部分に関しては協力体制が敷ける筈さ
給仕仲間に聞きながらリーダーの姿を探すけれど…
愈々もって猶予がなくなれば『白馬の王子様』でリーダーの許へ転移
少なくとも今は、彼女も味方な筈だしね
上手く救い出したら過激派は会場の外へと御退場願うよ
ボク達自身を餌にすれば釣り出せるだろうし、一応スタッフ側だから連れ出すのも不自然じゃない筈さ
その間はリーダーに上手くお茶会を運営して貰うよ
●少し離れた林の中
ティーパーティーの前半では特に敵意が強い様子の者へ声をかけていったメラニー・インレビット(クロックストッパー・f20168)。
彼女はいま、ティーパーティーの会場を後に十を超える『『偽アリス』アリーチェ』たちと歩みを進めている。
しかし決して散歩のようなのどかな一行ではないことは彼女たちの雰囲気から察することができるだろう。
「……この林なら、会場からも見えづらいでしょう」
互いを見る目が相手は明確な『敵』であると物語っている。
「そうね。この戦いは『アリス』と女王さまのどちらに気づかれても駄目だもの」
メアリーを取り囲む『アリーチェ』たちはそれぞれ武器を取り出した。それはティーポットと異臭を放つ飲み物のようなもの。
「……仕方がないでしょ! 武器になりそうなのこれしかなかったのよ!」
ちょっぴり言い訳をする『アリーチェ』だが、そんなことはメラニーにはどうでも良いことだった。
敵たちの衣装は良く観察してみれば『アリスクロス』のような魔力を微細に放っている。これでは何も知らないアリス適合者、あるいは愉快な愉快な仲間たちは『アリス』だと騙されてしまうことだろう。
(よりによってアリス様方の振りをするなど、不愉快極まる奴等め)
メラニーは服の下に隠し持っていた殺戮刃物を取り出した。同時にメラニーの顔から愛らしい雰囲気が消え首狩りウサギの如き殺意が滲み出る。
「……さて、忌々しいバケモノ共め。終わりの時間だ」
●この場を統率できるのは
一方でこちらは会場。
徐々に暴走を始めては猟兵たちにいなされている『アリーチェ』たちを見てマリオン・ライカート(Noblesse Oblige・f20806)は小さくため息をつく。
(自己の利益を優先させるのも間違いじゃないけれど……仕える者としてはどうかなと思うよ)
暗躍する味方の猟兵たちがうまくやっており、メリアンヌの周辺には敵意のある者は殆ど居ない状態になっている。
「さて、ボクはどうしようかな。一人ずつ相手にするには相手が多いし、かといってまとめて対処するのは目立ちすぎるね……」
差し迫った危機は特になさそうだ。特に攻撃的な面々は会場の外に連れ出されている様でもある。
(あれ……? そういえば給仕のリーダーが居ない気がする)
姿を良く思い返せば確かにあのリーダーも『アリーチェ』だ。
彼女からは敵意からくる嫌がらせは受けていたものの、仕事の効率が極度に悪くなるようなものは無かったはず。
(彼女はお茶会の妨害さえしなければ猟兵の参加を許容してしまうほどに女王の命令を盲目的に守るタイプだ……だから、今この状況で姿が見えないのはおかしい)
――彼女が居れば女王に忠実なグループの統率がとれて過激派の動きをより組織的に抑えらえるのではないだろうか?
マリオンは給仕リーダーを探し始めた。
●囮作戦
時間は少し遡る。
「足がもつれたー、あぶなーい」
などと『『偽アリス』アリーチェ』がわざとらしく転んだり、投げられた薬瓶を猟兵がサッと回収して何も起こらなかったことにしたり、煮えた強酸の液体が黒い炭酸飲料にすり替わっていたり。
そんな『事故』の未遂がちらほら発生し始めていた。
「ちょっと騒がしくなってきた?」
「なかなかよいかんじに盛り上がれてるようでありますな」
「しかし騒ぎを起こすのも後々が大変ですし……」
テフラ・カルデラ(特殊系ドMウサギキマイラ・f03212)とトール・ヴォーグ(防具マニアの黒騎士・f14539)の二人も、明らかな害意を持つ給仕の出現に気づいていた。
とりあえず二人は背後から近づいてメリアンヌをかじろうとしていた『アリーチェ』の一体の、口と動きを抑え込み目立たないように気絶させてから雪の女王の指示を忠実に守るグループへと引き渡す。
「騒動を目立たないように……となると流血沙汰は良くないでありますらかな」
このままでは兎に角やりにくい。そう考えた二人はしばし悩む。
「……あ。これならどうでしょう」
「ふむふむ」
テフラは思いついた作戦をトールへと伝える。
「ちょっとお花を摘みに行ってきますね」
そう言うとテフラは席を立ち、近くの給仕――『アリーチェ』にお手洗いの場所を聞く。
「だったら私が案内するよー♪」
そう言うと『アリーチェ・AA』はテフラを連れて会場の外へと向かった。この『アリーチェ』は途中で意味深な目配せを周囲にしながら歩いており仲間に合図を送っているのは丸わかりだ。そしてさらにその二人をトールがこっそりと追跡していく。
戦い易いように敵を外へおびき出すテフラの作戦は上手くいっている様だ。
(教えられた通りに道を進んでいますが……人気もいないしトイレすらありませんね)
案内されたのは会場の近くの小さな崖の下の岩場。近くを川が流れているがトイレのような設備は見当たらない。そして……。
「ふふーん。かかったわねぇ。おまぬけさぁん♪」
テフラを囲むように『アリーチェ・AA』から『アリーチェ・AN』までの10体を超える『アリーチェ』が現れた。
●灰かぶりの生き人形
「これは……あまり騒ぎを起こさずに対処した方が良さそうだね」
猟兵たちを狙って偶然を装い『事故』を起こそうとする『アリーチェ』たちを見て、シャルボン・フランヴェルジュ(契約魔剣(ただしご主人募集中)・f22312)も彼女たちの暴走を確信する。
さらに言うなら、つい先ほどシャルボンも強引なお茶のお代わりを迫られて強酸の湯を浴びてしまうところだった。シャルボンの足元の床は一部に溶けて抉れた箇所が出来ている。
(見たところオウガ達の装いは肌の露出が少ない。これを利用して、目立たないように拘束させて貰おうか)
シャルボンは会場の各所へ配置して盗聴機のように扱っていた、ユーベルコードによる自分自身の複製へと指示を出す。
すると、いくつかのテーブルの下から灰塵による石灰がぶわっと湧いて近くにいた『アリーチェ』を覆った……それはシャルボンのユーベルコード『灰の舞踏装束』。
「な、なんなのこれ……?」
石灰の塵は『アリーチェ』の服の隙間から内部へ入り込むと肌に積み重なっていく。
「やだ、中に入り込んで……なんだかべた付く感じで気持ちが悪いわ」
――いちど作業場へ戻って洗い流そう。石灰を受けた『アリーチェ』はそう考え戻ろうとする。しかし――。
「――え」
歩き出そうとした姿勢から体が動かない。首から下が一切動かせないのだ。
「や、やだ……何よこれ……!」
あちこちの離れたテーブルで一人か二人ずつ、困惑の表情で立ち尽くしている『アリーチェ』たちが発生していく。その様子を見ながらシャルボンは紅茶を一口飲んだ。
「ご覧、仲間も同じ目に合っているよ。みんな拘束しているだけだから安心して」
そう言うシャルボンの傍にも一体の『アリーチェ』が立ち尽くしている――そう、シャルボンに強引に迫った末に強酸を浴びせる事を失敗した『アリーチェ』だ。
「普段は全部塗り固めちゃうんだけど、それだと目立つからね」
服の下で全身を包む灰で固められ、『アリーチェ』たちは生きながらにして動けない人形となってしまている。
シャルボンの隣に佇む一体の生き人形は、ティーポットを手に青ざめた表情で固まっていく仲間たちを見ていた――いや、見ていることしか出来なかった。
シャルボンはそんな彼女に対して可愛い王子様の微笑みをニコリと向ける。
「客をもてなそうとする心意気に応じて、お似合いのドレスをプレゼントだよ」
●暴走は鎮圧へ
「こんな所に居たんだね。助け出すのが遅くなってしまったよ」
マリオンは縛られて焼却炉に放り込まれていた給仕リーダーこと『アリーチェ・L』を救出していた。
「あんた……どうして敵なんかを」
「ボクたちも女王の怒りは買いたくないのさ。最終的にはもちろん敵対をする。けれど、少なくともこのお茶会を維持したいという部分に関しては協力体制が敷ける筈さ」
そう言うとマリオンは『アリーチェ』の拘束を解き手を差し出す。
「会場では過激派が勢力を強めている……この状況を抑えるためにも君の力が必要なんだ」
このままゴミと共に燃やされるかという絶望的な状況で、光り輝く白馬と共に駆け付けた王子さまが真摯に必要だと言ってくる。
この口説きに近い状況でこの『アリーチェ』は敵意と愛情の狭間で頭がパンクしそうになっていた。
「そ、そそ、そこまで言うなら仕方ないわね! 私が居ないと何もできないんだからっ! ……べつにあなた達の為なんかじゃないんだからね」
「ありがとう、感謝するよ。君なら話が分かると思っていたんだ」
一度会場に戻り着替えた『アリーチェ・L』は見分け方をマリオンへ伝える。
「名札よ。組織的に動こうとしたら全員が『アリーチェ』では都合が悪かったの。だから『この国』での私たちは名札にアルファベットを入れて個体認識しているわ」
「そうなんだね、確かにみんなアリーチェでは分かりにくいかもしれない」
この国の『アリーチェ』たちは頭の時計の飾りに小さい札をつけているらしい……集団の存在なのに妙に個性的なのは固有名をつけたことによる自我の芽生えか。
少なくとも今回のこの国でのみ適用される特殊事例だろう。
「私のアルファベットはLよ。エルでいいから」
そう言いながらエルは会場へと出ていく。
マリオンとエルの二人がティーパーティーの会場に戻ると状況は思ったより拮抗していた。
何人かの猟兵が特に殺意の強い過激な者たちを会場の外へおびき出し、深く考えていないだけの中立寄りの面々も洗脳やら襲撃失敗であきらめさせたなど、なんやかんやで女王に忠実なグループに戻りつつある。
現場に復帰したエルは早速キビキビを指示を出した。
「いろいろ滞った分を取り戻すわ。女王さまはアリスに夢中だから、アリスの近くでなければ邪魔する『アリーチェ』はぶん殴っていいわよ。あとテーブルの掃除や補充はアリスの周辺を最優先でやりなさい」
バラバラに動いていた女王に忠実なグループは、この指示で一斉に動き出した。これにより会場内に残る過激なグループは次第に鎮圧されていく。
●オブジェの森
会場の近くの小さな崖の下の岩場、そこでテフラは多数の『アリーチェ』たちに囲まれていた。
「やはり一人になってから始末しようという魂胆でしたか……完全に騙されましたね」
「いくらなんでもこの数ではさすがにきついでしょー。覚悟してねー♪」
『アリーチェ』たちはそれぞれ煮えたぎる強酸の液体の入ったティーポットや腐ったミルクセーキを手にし、テフラを始末しようと襲い掛かる。
しかしこのピンチの状況でテフラは余裕の笑みを見せていた。
「いいえ、わたしとしては『都合がいい』ですけども♪」
「へー、でもこの地形では仲間もすぐには来れないでしょー。どうや――え?」
――崖の上から何かが落下してきた。
ズシン、と音を立てて落下してきたのは石像……それも鍛えぬいたムキムキの大胸筋を誇示するマッスルなポーズの石像だった。
泥岩をベースにしたきめ細かい表面と白っぽい色が陰影を強めており、盛り上がる肉体の凹凸をより強調している。
それはトール自身が崖上から飛び降りながらユーベルコード『要塞の石像』によりどんな攻撃も無効化する石となった姿。
「え、この石像どこから――きゃっ!?」
落下してきたトールの石像に呆気にとられている『アリーチェ』たちへ次々と特殊塗料がかけられていく。
「キマフュ製特殊塗料! 浴びると固まるよ! 触れても固まるよ!」
テフラのユーベルコード『固化塗料粘液散布』だ。テフラは特殊塗料を手当たり次第に振りかけていった。
この塗料がかかった『アリーチェ』は、頭と肩、半身だけ、足だけなどが接着剤かボンドで固められたように動けなくなっていく。
「ん゛ん゛ー!?!」
中には抵抗して藻掻くものも居たが、すぐにバランスを崩して倒れ苦しい姿勢となっていく。
この混乱の中で『アリーチェ』たちは物言わぬオブジェへと固まっていった。
オブジェたちは呆然と立ち尽くしているもの、助けを求め手を伸ばすもの、無理な姿勢でおよそ人の形になっていないものと様々なものとなり崖下の空間はさながらアーティスティックはオブジェの森の様相を醸し出す。
一仕事を終えたテフラは汗をぬぐい満足気に周辺を眺めた。
「このお城に新しいオブジェが出来上がりましたね♪」
なお一部が自分にもかかってテフラ自身も下半身が固まっていたのだが、なんやかんやでトールの助けもあり雪の女王の登場までには抜け出せた様子。
●死神ウサギ
「アリスの皆様が受けた痛み、そして苦しみはまだこんなものではない」
血に濡れた大地でそう吐き捨てるメラニーの周囲には『掃除』をされた『アリーチェ』だったものたちが転がっていた。
ある者は胸を突かれ、ある者は手首を斬り落とされ、そして多くは首を跳ね飛ばされている。
……絶命したオブリビオンたちはやがて骸の海へと還り、消え始めた。
それを見たメラニーはユーベルコード『時間加速』を再び発動させると『消えなかった』『アリーチェ』の心の臓へ殺戮刃物を突き立てる。
ここまで一瞬の出来事だった。メラニーの使用したユーベルコードは自分の『命の時計』の刻む時の流れを早め、寿命と引き換えにスピードと反応速度を爆発的に増大させるというもの……。
メラニーは突き刺した刃先を回して内部の傷口を広げるとその刃を抜く。
「まだ息があったか」
この攻撃によりこの場の最後の『アリーチェ』は絶命して消えた。
メラニーは服の汚れを軽く確認する。なるべく血が噴き出す前に離れることで汚れは抑えたつもりだが、かなりの乱闘となったためメラニー自身も完全な無傷ではない。
(……返り血などでついてしまった赤い部分は、不注意で赤い食材をひっくり返してしまった事にいたしましょう)
「……ふぅ」
メラニーは比較的綺麗な木にもたれかかって座り込む。
(こういうことは、慣れるものではございませんね)
後悔や怨恨で気を奮い立たせて戦っているものの、生来の気の弱さまでが変わるわけではない。
「少し休んだら皆様のところへ戻りませんと。今のわたくしは昔の弱いわたくしではありません……今度こそアリスの皆様をお助けしなければ」
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴
第3章 ボス戦
『雪の女王』
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POW : 【戦場変更(雪原)】ホワイトワールド
【戦場を雪原(敵対者に状態異常付与:攻撃力】【、防御力の大幅低下、持続ダメージ効果)】【変更する。又、対象の生命力を徐々に奪う事】で自身を強化する。攻撃力、防御力、状態異常力のどれを重視するか選べる。
SPD : 【戦場変更(雪原)】クライオニクスブリザード
【戦場を雪原に変更する。又、指先】を向けた対象に、【UCを無力化し、生命力を急速に奪う吹雪】でダメージを与える。命中率が高い。
WIZ : 【戦場変更(雪原)】春の訪れない世界
【戦場を雪原に変更する、又、目を閉じる事】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【除き、視認外の全対象を完全凍結させる冷気】で攻撃する。
イラスト:熊虎たつみ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「アララギ・イチイ」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●三章についてのお知らせ
二章へのご参加、ありがとうございます。
引き続き二章のプレイングの受付は予定通りに木曜の1月23日(木)からとなる見込みです。
執筆は土曜と日曜になります。引き続きよろしくお願い致します。
●優雅たれ
ティーパーティーの会場に拍手が響いた。
「素晴らしいわ。貴女なら彼に相応しいわ」
会場にいた『アリーチェ』たちが一斉に片膝をつき道を作って頭を下げた。その真ん中を『雪の女王』が悠々と歩いてくる。
その様子を見るやメリアンヌも無礼が無いように倣って片膝をついた。
「そこの『アリス』。そう、そこの細身の剣を帯剣した、明るめの茶の髪の貴女」
声をかけられたメリアンヌは女王に応えて挨拶と名乗りを上げる。
「雪の女王様とお見受けいたしますわ。わたくしはメリアンヌ。この度は素敵なティーパーティーをありがとうございます」
その挨拶に対し雪の女王は満足そうに微笑んだ。
「メリアンヌ。貴女を王子の友人として歓迎するわ。貴女の立ち振る舞いは相応しいものよ。さあ、もっとよく顔を見せて……一緒にお茶を飲んで、お話をするのよ」
雪の女王はそう言いながらメリアンヌへ近づいていく。
優雅さが認められたメリアンヌは内心は小躍りしそうなほど悦んでおり、その様子は満面の笑顔とキラキラした瞳に現れていた。
そしてメリアンヌの顔を食い入るように見つめる雪の女王もまた、求めたコレクションを見つけたコレクターのように興奮を隠せない様子である。
このまま雪の女王がメリアンヌに接近すると一瞬で凍らされてしまうだろうことは、想像に難くないだろう。
……しかし雪の女王は、周囲の猟兵たちを全く気に留めておらず非常に隙だらけな状態である。
ここまで事が上手く運んだことから、雪の女王にとって猟兵は障害とすら認識していない様だ。
雪の女王はその自信と慢心により猟兵たちの行動に反応できず、必ず先手を許してしまうことだろう。優雅さが終始求められたこの場で作られたこの余裕を存分に使うことが出来そうだ。
此度の不思議の国の物語は、今まさに佳境を迎える。
村崎・ゆかり
ようやくお出ましね、雪の女王!
長期戦になるとまずい相手ね。速攻で仕留めなきゃ。
まずは「先制攻撃」で先手を取って、「全力魔法」炎の「属性攻撃」「破魔」の不動明王火界咒で「2回攻撃」!
反撃が来る前に、アリスを守りアリーチェたちの妨害を防ぐために浄玻璃紫微宮陣を展開するわ。
戦場の塗り替えが厄介ね。七星七縛符を飛ばして解除出来ないかしら。
まあ、戦場に関しては、あたしの陣と女王のコードとどっちが上かの勝負かもだけど。
「衝撃波」を伴った巫覡載霊の舞で攻撃を回避しながら、薙刀で「串刺し」を狙うわ。
吹き付けてくる吹雪は「全力魔法」の「オーラ防御」で耐え、吹雪を突き抜けて、「なぎ払い」を雪の女王にお見舞いする。
エドゥアルト・ルーデル
&&&
かたっ苦しい紳士タイムは終了でござるよ
悪巧みの時間ですぞ
油断しきっている今がチャンスですな
敵がこちらを見ていない内に【忍び足】を駆使して移動、背後に周ったら無痛注射器にて【投与】ですぞ!
良い感じに頭ハッピーになったら【言いくるめ】にて目的をゲロって貰ったりしながら時間稼ぎですぞ
ハッピーすぎてアーパーな今なら三流悪役のようにべらべら喋ってもらうのも容易い
何よりメリアンヌ氏に状況説明する手間も省けるでござるしな
そうこうしている間に昏睡するので手持ちの爆薬を使ってIEDを仕掛けメリエンヌ氏を担いで逃走ですぞ!
優雅さを保つなら横抱きなどにするけどな
ついでにこのままお持ち帰りしちゃダメカナ?
ダメか
メラニー・インレビット
&&&
アリス様を王子の友人として歓迎する?
その王子の姿が見当たらないようだが、友人に顔も見せないというのは不躾ではないか?
…まあ真相がどうであれ、我はアリス様をお守りする為に貴様の時間を終わらせるだけだ
辺が一瞬で銀世界とは、雪の女王の名に偽りなしか
ただ、完全に氷漬けにするまでにはもう一歩必要らしい
我に取り得る手段は、「時間加速」によってそれよりも早く動く位だろうか
一度くらいは「ウサギ時計」が身代わりになってくれるかもしれないが、過信は禁物
一刻も早くバラバラにしてやりたい所だが、女王の動きには注意しよう
女王のせいですっかり体が冷えてしまいました
戦いが終わったら温かい紅茶を淹れ直すと致しましょう
●瓦解する女王の計画
「ようやくお出ましね、雪の女王!」
『アリス』であるメリアンヌへ雪の女王が接近していく最中に声が割り込む。その声の主は村崎・ゆかり(《紫蘭(パープリッシュ・オーキッド)》・f01658)。ゆかりは真言を唱えながら白紙のトランプカードのようなものを投げた。
「ノウマク サラバタタギャテイ――」
放たれたのは霊符『霊符『白一色』』。
「――ウンタラタ カンマン!」
霊符から全力の絡みつく炎が噴出――ユーベルコード『不動明王火界咒』による炎が雪の女王を襲う。
「……!?」
足を止め炎に苦悶の表情を見せる雪の女王へ、すぐさま二枚目の霊符が届き、炎はその勢いをさらに増加させた。
「え、いきなり何ですの?」
目の前で突如行われた襲撃に動揺してメリアンヌは笑顔のまま困惑する。そして周辺の『アリーチェ』たちは顔を青ざめながら我先にと四方へ逃げていった。
(反撃が来る前に、アリスを守ってアリーチェたちの妨害を防……あら? 全力で逃げていったわ)
困惑するメリアンヌへとゆかりが駆け寄っていく最中、即座に周辺が雪原へと変わる。
この変化と共に雪の女王を中心とした90kmほどの範囲に冷気が一度だけ広がった。この冷気により愉快な仲間たちやアリーチェたちは次々と凍り付き物言わぬ氷像に変化してしまう。
地形によっては冷気が届かず助かった者が居るかもしれない。しかしいつ二度目の冷気が来るかわからないこの状況では、生き残った者が安全圏から出てくることは無いだろう。
この冷気は視界に収めた相手は凍らせないという特性がある。そして雪の女王は周辺の襲撃者たち――猟兵たちへ怒りの視線を向けていた。
「……そう。こういう無礼なことをするのね。何となく『敵』が居ることは解っていたの。けれど何もしなければ放っておこうと思っていたのに」
……そしてこの冷気は、近くで立ち尽くしていた『アリス』も覆っていた。
「けれどそうね、まだ予定の範囲内だわ。少し早いけれど、こうして凍らせてしまえば問題は――」
雪の女王は始めからまとめて凍らせてしまうつもりだった様だ。だがしかし、『アリス』は凍結していなかった。
反射的に炎の魔力を周囲に展開して【氷結耐性】を強化――ユーベルコード『トリニティ・エンハンス』によるもの――することで、メリアンヌは最初の寒波を耐えきっていたのだ。しかし顔は青ざめてガタガタ震え、寒さのあまり朦朧として動けない状態になっている。
「――忌々しい……一度とはいえあれに耐えるだなんて。こんなにひどい顔では彼に相応しくない。彼の隣には『飾れない』」
絡みつく炎に炙られながら雪の女王は眉をひそめる。それは火に炙られる苦痛か、それとも理想のアリスを手に入れ損ねたことへの不快か。
●ホワイトワールド
雪の女王はさらに力を発現させて雪原そのものに効果を加えた。
それは敵対する者の攻撃と防御の能力の大幅な低下。そして冷気による継続的な敵の生命力低下と雪の女王自身の強化。雪の女王は守りを高めて絡みつく炎に抵抗する。
「『アリス』については……もう『笑わない』というのなら、要らない。食べてしまおうかしら。この炎で受けた傷を癒したいの」
再びメリアンヌへ近づこうとする雪の女王。そこへ黒い影が飛び込む。
「アリス様を王子の友人として歓迎する? その王子の姿が見当たらないようだが」
ユーベルコード『時間加速』で加速したメラニー・インレビット(クロックストッパー・f20168)が間に割り込み、雪の女王の手を払うように殺戮刃物を当てた。雪原に付与された大幅な能力低下と女王自身の強化により刃の通りが悪い、しかしこの一撃は女王の手を傷つけて『アリス』へ迫る命の危険を確実に止めた。
メラニーはそのまま雪の女王の不審な点を問い詰める。
「友人に顔も見せないというのは不躾ではないか?」
先ほどの『飾る』という言葉も含め、このティーパーティーと女王の行動は『王子の友人として歓迎する』と言う割には明らかにおかしいところがある。それを指摘するメラニーの言葉はメリアンヌに疑問を抱かせた。
ティーパーティーが一瞬で命の危機がある極寒の雪原へ……この変化に理解が追い付いていなかったメリアンヌ。だがしかし、ようやくメラニーの背中越しに言葉を発した。
「……雪の女王様、これは、どういうことですの……」
対する雪の女王の視線は、出会った時と異なりひどく冷たい。
「あなたは、もう要らないの」
雪の女王は不要となった『笑わないアリス』を、メラニーと共に吹雪に包んでしまおうと指先を向けた。メラニーは動けないメリアンヌを咄嗟に抱き寄せる。
「アリス様……!」
(もうアリスの皆様を、殺させたりはさせません……!)
一度くらいは『ウサギ時計』が身代わりになってくれるかもしれない。……少しでも吹雪から守れたなら。そのためなら例えこの身の体温を分けてでも――。
「させるものですかっ!」
衝撃波を伴うゆかりの薙刀の一撃が雪の女王の指を払い除けた。妨害は出来たがしかし、この一撃でも大きな傷はつかない。
(戦場の塗り替えが厄介ね……!)
「……邪魔よ」
雪の女王の指先がゆかりを向く。放たれた吹雪をゆかりはオーラを纏う防御で耐え、霜焼けになりそうな指先に力を込めさらに薙刀を大きく薙ぎ払う。
「はぁっ!」
それを雪の女王は煩わしそうに受けた。雪の女王は先ほどから攻撃を回避する様子がない……自身に余程の自信がある様子だ。
実際に雪原から付与される大幅な能力低下と女王自身の強化は強力ではある……だが、この自身にこそ隙がある。
吹雪が止むと、ゆかりは生命力を奪われて気だるい体に活を入れながら懐から白紙のトランプのような霊符を多数放った。
それはユーベルコード『七星七縛符』。霊符は雪の女王を包んで縛り上げ、ユーベルコードの使用を封じる。
「……これで、しばらく新しく使うことはできないでしょ」
動きと能力を封じられた雪の女王は不機嫌そうに眉をひそめる。
●コレクション語り
この攻防の中、雪の女王の背後をひょこっと動く一人の人物。
(油断しきっている今がチャンスですな。かたっ苦しい紳士タイムは終了でござるよ。悪巧みの時間ですぞ)
忍び足でぬるりと移動したエドゥアルト・ルーデル(黒ヒゲ・f10354)は悪い顔で無痛注射器を取り出す。
霊符で動きが止まった雪の女王は眼前の邪魔な二人に夢中で背後に全く気が付いていない。そんな女王の首へエドゥアルトは早業を以て針の無い注射器を押し当てた。
それはユーベルコード『Happy Grass』。この何かを投与された相手はしばらくハッピーな気持ちが増強され、レベル秒後に1分間の昏睡状態になるらしい。
「こんなもので私を封じたつもり?」
雪の女王は纏わりつく霊符を引きはがすと笑みを浮かべた。
「こんなに力を振うのは、久しぶりよ。いつもは最初の冷気でみんな、動かなくなるもの。だからそうね……たまにはこういう訪問者も、悪くない。部下たちはまた補充のし直しになるけれど。入れ替えのいい機会でもあるもの」
女王の顔に浮かぶのは愉悦。
「『彼』が寂しくないような、隣に飾れる『アリス』の入手が失敗したのは残念だけれど。けれどこの住人たちやアリーチェたちの氷像は綺麗にできているわ。今にも動き出しそうな躍動感……綺麗だと思わない?」
ユーベルコードの効果で興が乗り、口数が増えた雪の女王。その隣にエドゥアルトが顔を出して女王をさらに調子に乗せようと相槌を打つ。
「躍動感のある像はストーリー性もあり見ていて飽きないですからな。拙者の場合はフィギアでござるが。ちょっぴり解かるような気がしないでもないですぞ」
ハッピーが増強されている雪の女王はエドゥアルトの相槌に好感触を示した。その表情は、序盤に見せていた興奮するコレクターのような嬉しさを垣間見せる。
「その瞬間を文字通り切り取る感じが大事だと思うの……。ただの人形では背景の重みが足りなくて」
(三流悪役のようにべらべら喋ってもらうつもりがオタク会話になっている気がするでござる)
とりあえず今回の『アリス』を襲う理由について話してもらい、どちらが悪役かをはっきりさせなければならない。エドゥアルトは話題を誘導しようとする。
「ほうほう、そういえば先ほどはアリスを飾ると言っていたでござるが。何か素敵なコレクションがあるのですかな」
「解るかしら、そうなの。かわいい男の子の氷像が一体あるのよ。食べちゃうのが勿体無いくらい何も知らない素敵な笑顔で凍ってくれて。けれど彼一人じゃ寂しそうなの」
「なるほど、なるほど」
「だから、一緒に飾るのに相応しいアリスが欲しくて」
「フィギアの場合でござるが、お気に入りと出会うとどんどん増えますからな」
「あなた、話が分かるのね。だから、こうしている場合じゃないの。早く邪魔ものを片付けて『次』の『アリス』を見つけないと」
●脅威からの退避
話が終わりそうになり、エドゥアルトはちょっぴり焦る。
(話が途切れた……! 昏睡するまであと何秒だ……!?)
「シ……シチュエーションなどのこだわりもあればぜひ聞きたいなあ!」
「時間がもったいないの。次のアリスがいつ来るかわからないのに何時までもこうしていられないわ。でも、そうね」
再び氷像について語り始める雪の女王。
(さすがにボスは高レベルですな……。このまま昏睡状態になるまで時間を稼ぎたいところだが、いくらハッピーすぎてアーパーな状態とはいえヒヤヒヤするでござる。何秒だ……あと何秒稼げば)
なんとなく攻撃しづらくて猟兵たちが見守る中、エドゥアルトによる聞き役と話題提供の甲斐もあり雪の女王は5分ほどしゃべり続けた後に昏倒した。
雪の女王の意識と同時に力が途切れたことで、敵の能力の大幅な低下と冷気による継続的な生命力低下。そして雪の女王自身の強化が解除される。
「よーしよし! やっと昏倒した! いったん逃走ですぞ!」
エドゥアルトは寒さで動けないメリアンヌへ駆け寄る。
「ちょいと失礼。持ち上げますぞ」
「あ、はい。一時撤退ですわね、おじさま」
エドゥアルトはお姫様抱っこでメリアンヌを持ち上げると近くにいた二人にも声をかける。
「やつは一分は動かないはずでござる。その間に拙者はいちどメリアンヌ氏を連れて離れますぞ」
「アリス様をよろしくお願いいたします。わたくしは奴め時間を終わらせるべく、少しでも多くの傷を与えておきましょう」
「あたしも出来るだけ速攻で仕留めたいし、残ろうかしら」
作り出した時間を有効に使うべくそれぞれが早速動き出そうとする中、エドゥアルトは腕の中のメリアンヌを見てぼそりと呟く。
「ついでにこのままお持ち帰りしちゃダメカナ?」
「「え?」」
「あの、おじさま……?」
「ジョウダンダヨ」
「……やっぱりあたしもついていくわ」
「アリス様に手を出してみろ。ただでは済まさないぞ」
鬼のような形相のメラニーに委縮しつつもエドゥアルトは凍えるメリアンヌを抱きかかえ、ゆかりと共に雪の女王から距離をとっていく。
それを見届けるとメラニーは殺戮刃物を手に倒れ伏した雪の女王へ歩み寄った。
「……どうであれ、我はアリス様をお守りする為に貴様の時間を終わらせるだけだ」
その後しばらくザクザクと刃が突き立てられ雪の女王はドレスを赤く染めながら起きることになる。序盤の火の直撃と加えてかなりのダメージとなるだろう。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
●アリスを探して
目覚めと共に全身の酷い痛みに襲われる雪の女王。
「――っ。何が起きたというの」
いつの間にか気を失っていた様だ。その間に幾度か刺された様で体の傷が多い。傷を癒さなければ――。
「『アリス』はどこかしら……あの子を食べて栄養をとらなくてはいけないわね」
雪の女王はよろめきながら立ち上がると、静かに目を閉じた。すると周辺の90kmほどの広範囲へ視認外の全対象を完全凍結させる冷気が広がる。
「……これでどこかで凍ってくれていたら、楽なのだけれど」
地形によっては冷気が届かないことはあるだろう。ならば、まずは隠れていそうな場所へ絞って探すのみ。
雪の女王は何処かへ避難した『アリス』と、そのアリスを護る猟兵たちを探してふらりと歩く。
トール・ヴォーグ
&&(テフラ f03212 と同行)
さてアリスを氷の女王から守るために
攻撃を狙うでありますが
二人かかりでアリスができる限り逃げれるように応戦する。
氷像にされようが必ず受け止めるしかないであります!
テフラ殿とアリスに視野を集めてそれから我輩が後ろを狙って斧で攻撃するであります!
氷つけにされる…であります…
テフラ・カルデラ
トール【f14539】と同行
WIZ
&&&
とと…間に合いましたね…もう戦いが始まっているのでわたしたちも参戦しましょう!
メリアンヌさんを安全な場所に移動させなければ…
しかしやっぱり女王が攻撃を…こちらもウィザード・ミサイルで反撃しつつメリアンヌさんを安全な場所に…
くっ…わたしたち(女王の視認箇所)以外が凍りついた!?偽アリス達も氷像になってる…ってそんなこと言ってる場合じゃないです、さっきの攻撃でトールさんが凍ってしまいました!?
このままでは…でも距離にも限界があるはず…ギリギリまで逃げて…
彼女を押し飛ばして凍らないところまで逃がして―――
(メリアンヌを庇うように逃がしつつ、完全凍結してしまう)
マリオン・ライカート
&&&
[WIZ]
・心情
笑顔を輝かせるのは永遠の停滞じゃなくて一瞬の煌めきなのさ
だからメリアンヌ嬢の笑顔を、此処で曇らせるわけにはいかないよ
・行動
君の選ぶ王子様じゃなくても大丈夫だろう?
ボクにだって傍に立つ資格はある筈さ
<真の姿を開放>し、いつもの王子様スタイルに
メリアンヌ嬢を【鼓舞】しつつ凍らされない様に戦うよ
油断している隙に一撃でも加えられたら良いんだけどね
メリアンヌ嬢、ボクと【手を繋いで】くれるかい?
ボクと君で優雅に笑顔で剣舞を踊ろうじゃないか
…念の為、ユーベルコードで防御力を高めておいてくれるかな?
…ところで女王様
君が選ぶ「友人」が共に凍るべき「王子様」は、今一緒にいるボクで良いのかな?
ロベリア・エリヌス
&&&
女王も良い感じに油断してくれてるみたいね
頑張った甲斐があった…ってところかしら?
…とは言うものの、私って本来荒事には不向きなのよね
全方位攻撃は厄介だけど…取り合えず背後でも取ろうかしら?
さっきアリーチェ達を【暗殺】していったのは何だか癖になりそうだったし…
折角だし、暫くは様子を見ながらこの『物語』を特等席で蒐集しようかしら?
敵側の視点で猟兵を見る機会って中々無いと思うのよ
頃合いを見て【クロックアップ・スピード】で反応と速度を上げて畳み掛けるわ
…絶対強者であるが故の油断、突かせて貰うわ
それにしても、雪とか氷を司る女王ってワンパターンよね
凍結がアイデンティティーだから仕方ないのでしょうけれど
ポーラリア・ベル
女王様を雪だるまに変える【属性攻撃】で不意打ち。
おねえちゃん、オウガさんにお持ち帰りされる所だったのよ。
氷漬けになるのは可愛いからおっけーだけど、二度と帰らないのはだめー!
反撃してくる女王様に冷気魔法と【氷結耐性】で張り合うの。
アリスさんが凍りそうなら、先に全身を氷で覆う疑似氷漬け状態で守るよ!
頃合いを見てコード発動。雪妖精達と一緒に散らばるの!
あたし達、素敵なアイスの王女様出来てた?
【物を隠す】で女王様の服の中に妖精さん達を入れて、
くすぐったり、足元に氷の罠を作ったり、耳をふーしたりして、指先を逸らすよ!
最後には皆で一緒に【全力魔法】【捨て身の一撃】で凍らせるの!
どこまで優雅にいられるかしら
●反撃への布石
離れた場所にあった林の中。そこに大きな雪の塊が出来ていた。それは一部に穴が空き内部が空洞のかまくらの構造になっている。
その雪洞で冷気を防ぎながら一行は雪の女王に対抗する手段を思案していた。
「おねえちゃん、オウガさんにお持ち帰りされる所だったのよ」
ポーラリア・ベル(冬告精・f06947)は、毛布に包まり暖かい飲み物を飲むメリアンヌへそう告げる。
「氷漬けになるのは可愛いからおっけーだけど、二度と帰らないのはだめー!」
「氷漬けは良いんですのね」
苦笑いを浮かべるメリアンヌの顔には赤みが戻っており、冷気で奪われた生命力はだいぶ回復した様子だ。
そのやりとりをマリオン・ライカート(Noblesse Oblige・f20806)は安心した様子で見守る。
「ひとまずメリアンヌ嬢も元気が戻ってきた様で良かったよ。さて……まだ油断があることを期待して、油断の隙に一撃でも加えられたら良いんだけどね」
外の様子を気にしながらマリオンは思案をする。
ここまでの戦闘で雪の女王の能力の特性と威力は把握できた……問題は視認外のすべてを凍結させる冷気だ。
(メリアンヌ嬢が再び素敵な笑顔となれば雪の女王にとっての価値はまた上がるだろうか?)
マリオンの脳裏に浮かぶのは現れた当初の雪の女王の様子。求めたコレクションを見つけたコレクターのような視線。そしてソレを手に入れるためにここまで回りくどく手間のかかるティーパーティーを用意をしたこだわり……。
「試してみる価値はある……かな」
そう呟くと同時にマリオンは剣を抜く。雪を踏みしめる音が聞こえたためだ。その足音の主は外の様子を見ていたロベリア・エリヌス(recorder・f23533)だった。
「女王はまだ良い感じに油断してくれてるみたいね。雪景色の中を無防備にフラフラ歩いていたわ」
「それは朗報だね」
「まだ自分が優位だと思っていそう。お茶会も含めて頑張った甲斐があった……ってところかしら? それで、どうするのかしら? 私って本来荒事には不向きなのよね。戦闘ではあまり役に立てそうにないのだけれど」
一同の視線が交差する。
「わたくしは……あの場の皆を凍らせてしまった雪の女王を許せませんの。お髭の猫さん、素敵なワルツの楽曲を演奏してくださった方々、お茶やフードを出して下った給仕たち……。あの女王は、あの場にいた皆を、自分の部下さえも躊躇なく切り捨てましたわ」
その言葉を聞いたマリオンは、彼女にしては珍しく、裏技を思いついたような悪そうな笑顔で提案を口にする。
「そういうことなら、だいぶ危険もあるけれど……こんな方法はどうかな」
●遭遇戦
かまくらを出てすこし歩いた矢先に一行は雪の女王と遭遇してしまう。
「こんなところにいたのね。さあ、おとなしく餌になりなさい。『アリス』」
「お断りですわ。あなたこそ命を粗雑に扱ったこと、恥を知りなさい!」
先の寒さに凍え打ち震える姿から一変し、ティーパーティーの最中に近い輝きを見せるメリアンヌを見て雪の女王の目の色が少し変わる。
「……『アリス』、あなた少しマシになったわね。まだ『笑える』のかしら」
そして何やら考え込み始める女王の様子をロベリアは興味深そうに観察する。
(ふぅん。意外と脈がありそうね。この『物語』、どうなるかしら)
その時、この場に現れる者が二人。
「とと……雪の女王と『アリス』の方ですね。ここに来るまで何度かすごい冷気が通り過ぎて氷像になりかけましたが、間に合ったみたいですね」
「『アリス』を雪の女王から守るために、攻撃を狙うでありますな」
テフラ・カルデラ(特殊系ドMウサギキマイラ・f03212)とトール・ヴォーグ(防具マニアの黒騎士・f14539)は、いちどティーパーティーの会場に戻るとそこで氷漬けの惨状を発見し、そのまま雪の女王と猟兵たちを探していたのだ。
「もう戦いが始まっているのでわたしたちも参戦しましょう! 私は味方の皆さんに加勢して、雪の女王の気を引いてみます。なのでトールさんはその隙に」
「後ろを狙って斧で攻撃するでありますな!」
「偽アリス達も氷像になっていました。女王の攻撃には気をつけましょう」
考え込む雪の女王の横からトテトテとテフラが駆け寄って合流をする。
「みなさん無事でしたか! えっと、女王は何を考え込んでいるのでしょう」
「さあ……たぶん、一度取り逃したコレクションをまた手に入れるための算段を立ててるのだと思うけれど」
ロベリアは雪の女王を観察しながらそう答える。実際に隙だらけではあるのだが……緊張か恐怖か、強張った様子のメリアンヌの表情を見ると、雪洞の中で共有されたマリオンの策――素敵な笑顔によって『アリス』の価値を取り戻すことで行う駆け引きは使えそうにない。
下手に動くと『アリス』も危険であるため状況は硬直してしまっていた。
「いちどかまくらへ戻ろうか。平常心が保てなければあの作戦は難しいものだと思うから」
メリアンヌを気遣うマリオンだが、ロベリアは難しい顔で制止をかける。
「足場も雪で悪いし、下手に動いて気取られると一瞬で凍らされるかもしれないわ……。なにか、隙を作りたいところだけれど」
その話へテフラが小さく手を挙げる。
「あの、時間稼ぎならなんとかなるかもしれません」
続けてポーラリアもハイっと手を挙げる。
「ポーラも氷はたぶん平気だよ」
●女王の怒り
「そうね……やっぱり、しばらく監禁するのがいいかしら。落ち着かせればまた笑顔になるかもしれないし」
ティーパーティーというまわりくどい作戦を好む性格と強者ゆえの余裕から、雪の女王は敵前でありながらその場であれこれと思考に耽っていた。
しかし全く注意が逸れていたわけでもない。ターゲットである『アリス』が動くと、雪の女王は視線を上げた。
「……待ちなさい。何処へ行こうというの」
その冷たい目はこれまで繰り返し放たれた強力な冷気を思い起こさせる。これ以上動けばこの場で凍結させるという意志が視線に込められていた。
この時、こっそりと移動していたポーラリアが岩陰から飛び出して雪の女王へ雪の魔法で不意打ちをする。
「それー!」
近くの背の低い植物が雪に埋もれ雪だるまになるが雪の女王は若干の苦痛を感じるのみ。即座にポーラリアへ吹雪を返した。
「邪魔よ」
「ひゃ、さむーい!」
ポーラリアも大きなダメージは受けていない様だ。冷気が主な攻撃手段となるこの場では【氷結耐性】の効果が大きい。しかし何度もまともに受けては生命力そのものが尽きかねないため、ポーラリアは次の吹雪を物陰に隠れたり作った氷の陰に隠れるなどをしてやりすごす。
「ちょこまかと、うっとおしい子供ね……」
雪の女王は前半の戦いで負った傷のせいで動きが鈍くなっていた。ポーラリアのもつ耐性と小柄さにてこずっており、しかしポーラリアの攻撃もまた冷気であるため雪の女王も耐性を持っている。
「そこ、待ちなさいと言っているのが聞こえなかったの」
ポーラリアの相手をしながら雪の女王は再び警告を出す。
「……やっぱり、難しいわね」
悩まし気に呟くロベリアの前へテフラがずいっと出た。
「わたしの出番ですね。会場も氷像だらけで、なんだかすごいことになっていますが。こんな冷気には絶対負けませんよ!」
テフラがちらりと雪の女王の後方を確認すると、ちょうどトールも背後に回り込んだところだ。
テフラはユーベルコード『ウィザード・ミサイル』を展開した。現れたのは300本もの炎の矢。
「火をたくさん打ち込めば温度も上がって凍り難いはず。これならどうですか!」
一斉に放たれた炎の矢に対して雪の女王は指先を向け吹雪で迎撃をした。空中で吹雪と炎の矢が交差し水蒸気を上げる中、数十発の矢が吹雪を突き抜け雪の女王の半身へ突き刺さる。
続けて背後に迫る影。トールが黒剣を変形させた斧を振りかぶり、雪の女王を背後から斬りつける。
「これは痛いでありますよ!」
ガッという音を立て、雪の女王の肩へ斧の刃が食い込んだ。
「――くっ」
「今のうちに!」
テフラはウィザード・ミサイルを放つと同時に声をかける。それに合わせてメリアンヌを始めとした4名はかまくらへと向かって走った。
「あなたたち……余程、むごたらしく死にたいみたいね」
雪の女王はゆっくりと顔を上げる。その表情は冷え切り、一見すると静かな瞳の中には怒りをたぎらせていた。
●犠牲
対象を完全凍結させる冷気が再び放たれる。この冷気により最も間近にいたトールが真っ先に凍結してしまった。
四肢が動かなくなり地に転がるトール。冷気が体内まで侵食しいくのが感覚でわかる。猟兵はいかに死ににくいとはいえ、意識は保てないだろう。
身体の凍結に続いて表面に霜がつき徐々に白くなっていった。霜は積み重なり氷の透明な層となる。ティーパーティーの会場で見た氷像たち……トールは、自分がそれらと同じものになっていくのを自覚した。
(氷つけにされる……であります……)
「トールさんが凍ってしまいました!?」
テフラは走りながら後方を見て動かなくなったトールを目撃する。広がる冷気は再び周囲を凍らせ、炎で溶けかかった雪原の雪を氷へと変えていた。
「そんな……ラテアートの方が!」
振り返るメリアンヌをマリオンが引く。
「立ち止まらないで!」
一時退避をするためのかまくらまであと一歩。テフラもまた、咄嗟に目の前を走るメリアンヌの背中を押し出す。
(このままでは……でもあと少し……)
「きゃっ!?」
押し出されたメリアンヌをマリオンが受け止めると、即座にかまくらの中へ飛び込み冷気をやり過ごした。
冷気が一度過ぎ去り外をうかがうとそこには凍結してしまったテフラの姿がある。メリアンヌを逃がそうと突き飛ばした時の姿勢のまま凍り付き物言わぬ氷像となってしまっていた。
「そんな……わたくしのせいでお二人が……」
ショックを受けるメリアンヌへ、ロベリアが声をかける。
「……猟兵は簡単には死なないわ。きっと二人とも大丈夫。まずは安全を確保するためにもあの女王を何とかしましょう」
自分を護ろうとして誰かが犠牲となっていく……そのショックでメリアンヌはその場に座り込んでしまった。
(わたくしには……いえ、『わたし』には……そんな価値は無いの。そこまでして守る価値なんて)
メリアンヌの心に絶望が覆いかぶさっていく中で、同時に断片的な記憶が蘇った。それはまるで闇に輝く灯。
記憶の断片。そこで響くのは懐かしい声。
『いいえ、マリー。わたくしと同じ名であるなら、自分を下卑してはいけないわ』
いけません。貴女はアンヌ家のお嬢様、マリーアンヌ。私は家族も無い奴隷のマリー。身分が違います。せめて音を変えメリーとお呼びを。
『くどい。何度も言わせないで、マリー。貴女は剣の才能があり、そしてわたくしのお気に入りなの。護衛としてわたくしと同じ空間に住むのよ。ならばわたくしと同じ名を誇り、優雅でいなさいマリー』
――自分を家族として迎え入れてくれた恩人を思い出した。それは憧れの人。救われて、憧れて。……そして、どうなったっけ。
思い出せない。けれど、わたくしは自分に誇りを持ち、優雅に強く在らねばならないのですわ。
●決意と輝き
「……やっぱりあの作戦はやめよう。この状況では、笑って見せるのは難しいだろうからね。ポーラリアさんの能力なら氷で冷気を防いで緊急回避は出来そうだし。ボクたちで何とかしよう」
マリオンは最初に考えていた作戦をあきらようと考える。
「いいえ、大丈夫ですわ。すこしだけ、思い出しましたの。だから大丈夫」
その表情に見えるのは決意。そして危険に身を晒してでも守るべき矜持への覚悟。その様子にマリオンは無意識に近い部分で複雑な感情を抱きながらメリアンヌの手を取る。
「……わかったよ。なら作戦通りにいこう」
「たーっ!」
「いい加減に、凍ってしまいなさい」
外では互いに冷気に耐性を持つ者同士による泥仕合が展開されていた。
元の力量に圧倒的な差はあるものの、雪の女王はここまでの戦闘からくるダメージと消耗が激しい。その前提の上ではあるがポーラリアは生命力を削られながら奮戦している。
そんな戦場へ、再び『アリス』をエスコートしたマリオンが歩み寄ってきた。
「さあ、メリアンヌ嬢、ボクと手を繋いでくれるかい?」
マリオンは王子様のような男装の装いの真の姿を開放した。煌びやかな品位のある礼装は白い雪原に色彩を放つ。
「ダンスへのお誘い、感謝したしますわ」
「お互いに帯剣して武芸をたしなんでいる身でもあるし、ここは剣舞の踊りでどうかな」
マリオンは右足を引き、右手を体に添えてお辞儀をする――それは形の整ったボウ・アンド・スクレープ。
対するメリアンヌもカーテシーによるお辞儀で受ける。
「ええ、喜んで」
二人は剣を抜き互いに対峙した。
「……何をしようというのかしら」
二人の行動が理解できず雪の女王は呆気にとられていた。やがて始まったのは実技ではなく魅せるための剣技の打ち合い。
リズムを合わせた打ち合う剣は楽器のように音を奏で、くるりと舞う腕と足さばきはまるでダンスの様。そして何より。二人は余裕のある微笑を称えながら舞っている。
その様子を、ロベリアは雪の女王への暗殺の機会を伺いながら木の上で見ていた。
「フフ、なかなかの特等席ね。この突飛な展開……童話か絵本にありそうで悪くないわ。これは思わず面白い『蒐集』になりそうね」
「笑顔を輝かせるのは永遠の停滞じゃなくて一瞬の煌めきなのさ。この煌きも凍らせるかい? けれど、この状況だとボクも一緒に凍ってしまうだろうね」
マリオンはメリアンヌと剣を打ち合いながら雪の女王へと語りかける。
「ところで女王様。君が探している『王子様』の隣に飾る『友人』は、ボクも加わって良いのかな?」
この剣舞を雪の女王は眉を潜めて見ていた。
「その躍動感、凍らせて飾りたいほどだわ……けれどダメ。剣を仕舞いなさい。シチュエーションが違うの。私が欲しいのは姫よ、そしてお茶会なの。あなたは邪魔……近すぎるわ。離れなさい」
雪の女王は剣舞を舞う二人へと指を向ける。
「ああ、駄目。近いわ。二人とも離れなさい」
望むものが手に入りそうで手に入らないもどかしさに悶えながら、雪の女王は離れるよう何度も二人に告げた。
●雪は氷へ
力づくで割って入れば剣で斬り刻まれるだろう。かといって凍らせてしまうと『余計なものが混ざる』。吹雪で殺してしまってはこのコレクション入手のチャンスを失ってしまうだろう。
雪の女王は大いに悩んだ。
その隙にポーラリアが動く。ここまで人間の姿をとっていたポーラリアがぱっと沢山の小さな冬妖精へ分裂したのだ。
「あたし達、素敵なアイスの王女様出来てた? みんなでいっしょにあそびましょ♪ あのこといっしょにあそびましょ♪」
急に現れた沢山の冬妖精――ユーベルコード『常冬の招来』――は、そのまま雪の女王の服へと潜り込んでいく。
「!? ……なんなの、これ。まとわりつかないで」
雪の女王は羽虫を払い除けるように冬妖精たちを払おうとするが、冬妖精たちは数にものを言わせどんどん雪の女王にまとわりついていく。そして――。
「みんな、いっくよー。女王さまを綺麗な氷にしちゃおー。せーの」
ポーラリア自身を含む妖精たちは、一斉に全力で冷気を放出しはじめた。自身のエネルギーを使い切るかのような捨て身のそれは、空気の僅かな水分を急速に冷やし、雪の女王の表面に氷の層を作り始める。
「小癪な……!」
雪の女王は冬妖精の一人に指を向け、自分を巻き込んだ吹雪を放ちポーラリアのユーベルコードを無力化する。しかし、女王の背中に張り付いたポーラリアの全力の冷気は止まらなかった。
「雪の女王様、ポーラはね、お友達になりに来たんだよ。みんな纏めて氷漬けにしたかったんだけど、女王様が先に氷庭を作っちゃった。だからね、あとは女王様が居れば氷庭が完成するの」
「やめなさい。私は、観賞する方よ……飾られるのは望まない」
雪の女王はポーラリアを振りほどこうと抵抗する。だがそこへ更なる追撃が加わった。
「さっきアリーチェ達を暗殺していったの、何だか癖になりそうだったのよね」
そう呟くロベリアの声と共に、雪の女王の首へ氷柱が突き刺さる。ユーベルコード『クロックアップ・スピード』で加速したロベリアが、氷柱を手に追撃を加えたのだ。
「かはっ……」
このダメージで雪の女王はさらに消耗した。氷が背中からどんどん広がっていく。
耐性を持つポーラリアが凍り難いのはこれまでの戦闘で分かっていた。そのため雪の女王がこの状況で取れる有効な手段はこちらもフルパワーで凍結させるか、あるいは力づくで引きはがすことのみ。
しかし雪の女王はすでに大きく消耗しており、いずれも出来なかった。
「やめ……な……! や……め……」
雪の女王はやがて氷に閉ざされて動きが取れなくなり、沈黙した。
「さて……あとはこれを思いっきり砕けば良い訳ね」
ロベリアは手元の荷物で最も破壊力がありそうなものを探す。
「……電話帳か百科事典で良いかしら」
●次の旅へ
雪の女王が砕けて消ると温度の上昇と共に徐々に雪原の雪も解け始めた。
オウガを倒したことで、この国は次のオウガが現れるまでは安全な場所になることだろう。
「皆さまには、感謝の言葉もありませんわ。ありがとうございます」
メリアンヌは出会った猟兵たちへ礼を言う。彼女はこのまま旅の続きへと戻り、次の魔法のウサギ穴を探すそうだ。
今回の戦いで彼女は何かを思い出した様だがそれを聞く機会は残念ながら得られなかった。
しかし、縁があれば再びアリスラビリンスのどこかで会えるだろう。そして運命がつながれば、アサイラムを含めた過去を猟兵たちに語る機会も来るだろう。
多くを思い出せないまま、いつか現実の世界へと帰るために『アリス』は扉を探して旅を続ける。
成功
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