ミラ・ケーティーと夜の虹
●ミラ・ケーティーの祈り
ねぇ知っている? 月のない夜に集まる猫たちに伝わる昔話。
千年を生きた猫よりも、百年を生きた猫たちが知る昔話。夜の空を泳ぐクジラのこと。ミラ・ケーティーの祈りのこと。
月の無い夜に現れる虹を泳ぐクジラのことを。
キラキラと輝く不思議な虹は、夜空の架け橋のよう。あんまりキラキラするから、手を伸ばしてしまう猫たちだっているのです。すかっと空ぶっても大丈夫。何事も無かったフリをして、すん、としていれば誰も気がつきません。
なにせ今日は、新月の夜なのですから。
夜の虹を泳ぐのは星鯨のミラ・ケーティー。
きらきら輝く虹に触れることができれば、貴方の望むものがきっと見えるはず。
大切な大切な宝物が。
●月の無い夜に橋をかけて
「夜だと言うのに、虹が見えるのは不思議な話ね」
笑うように告げた娘が、淡く色付く髪を揺らす。真紅の瞳を細め、シノア・プサルトゥイーリ(ミルワの詩篇・f10214)は集まった猟兵たちを見た。
「夜のお散歩に興味はあって? アックス&ウィザーズの街で、不思議な祭りが開かれるの」
それは聖夜を彩る虹の為の祭り。
月の無い夜に、大きな虹がかかるというのだ。
「七色の虹には及ばずとも、星の輝きを集めたような不思議な虹はとても美しいそうよ」
虹が揺れれば、それはミラ・ケーティーが泳いだ証拠。夜空を泳ぐ星の鯨が、たぷん、と泳げばキラキラと虹は光るーーという。
「月の無い夜にかかる虹は、星鯨の道行きの為とも、星鯨の為に空が掛けたものとも言われているそうなの」
だからこそ、この街では言われるのだという。
ミラ・ケーティーの通り道。
星の鯨の逸話とともにある街では言うのだ「虹のたもとには宝物がある」と。
「折角の夜だもの、虹のたもとを探してみるのも良いかもしれないわね。貴方にとっての宝物が見つかるかもしれないもの。それに、うまく行けば、虹に触れられるかもしれないわ」
夜の虹が出るのは、村から少し行った旧市街跡地ーー廃墟となって久しい石造りの神殿地区だ。祭りのこの日だけ、立ち入りが許される。
「ミラ・ケーティーが泳ぐ虹に触れることができれば、心から望むものを見ることができるそうよ」
それは貴方の大切なもの。
けれど惑う夜には気をつけて。
「心から望むものを、見たいとも限らないでしょう」
微笑むように告げてシノアはグリモアの明かりを照らす。
「心を拐われぬように、どうぞ気をつけて。聖夜を泳ぐ星の鯨も、きっと幸せな夜を願っているでしょうから」
ーーさぁ、虹の街へ。
秋月諒
秋月諒です。
折角なのでクリスマスのお出かけを。
アックス&ウィザーズにて、夜の虹を眺めてお散歩なんていかがでしょうか?
●リプレイについて
廃墟となった神殿地区にて、夜に出る虹を眺めるワンシーン。
到着した時点で虹は既に出ています。
●行動について
1)虹を眺める
2)虹に触れる
ざっくりこの二つのどちらかをお選びください。
触れている方も最初は眺めていた……みたいな流れでも大丈夫です(リプレイでメインとする部分、採用される部分は「触れる」がメインになります)
●お出かけ先について
星鯨ミラ・ケーティーと黒猫たちの物語が伝わる街。
石造りの神殿地区は現在は、古くなった為廃墟となっており、使われていない。専ら、お散歩エリア。
●夜に出る虹について
神殿地区で見ることができる不思議な大きな虹。
何らかの理由で夜に出る虹。七色では無く、キラキラと星のように輝いている。
触れると、心から望むものを見せてくれるという言い伝えがあるようです。
●プレイング受付について
12月26日8時31分〜
4人以上の参加は、秋月のキャパシティの関係で採用率は低いです。
1人〜3人くらいが推奨です。
▼お二人以上の参加について
お二人以上で参加の場合は、迷子防止の為、お名前or合言葉+IDの表記をお願いいたします。
お声がけがあれば、シノアがお伺いします。
内容によってはお断りさせていただく場合もございます。予めご了承ください。
それでは、夜を渡る虹のかかる街にて皆様をお待ちしております。
第1章 日常
『アックス&ウィザーズでクリスマス』
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POW : 巨大七面鳥などの肉料理の材料を狩ったり料理したり食べたりする
SPD : 巨大モミの木を装飾したり、クリスマスらしいデコレーションをして楽しむ
WIZ : 巨大キャンプファイヤーの周りでダンスをするなど、恋人や友人と楽しく過ごす
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●星の鯨を辿って
明かりひとつない神殿地区は、ひっそりと眠りについているようだった。見上げる程に巨大な神殿が幾つも立ち並び、競い合って建てたという塔がある。聖夜に立ち入りを許される眠りついた神殿に、夜の虹はかかるのだ。星々の煌めきが夜空を照らし、月の代わりに見えるのは巨大な虹。
どこから見ても、必ず見える。
それは夜の虹が大きいからかーーそれとも、星鯨ミラ・ケーティーが遊んでいるからだろうか。キラキラと輝く不思議な虹は、夜の空にかかる橋。
街で受け取ったシードルを片手に、廃墟となった神殿地区を巡るのも良いだろう。アルコールの無い、炭酸の林檎ジュースもある。金色の飲み物たちは聖夜を彩るひとつ。
さぁ、どんな風に過ごそうか。
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プレイング受付期間
12月26日8時31分〜12月29日いっぱい
お声がけがあれば、シノア以外の秋月のグリモア猟兵もふらっと顔を出します。
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ティル・レーヴェ
1)虹を眺める
夜にかかる煌きの虹
星鯨…… ミラ・ケーティー殿の泳ぐ道
なんと、なんと心惹かれる逸話じゃろう
虹の袂の宝物
どこかで聞いたこともある
誘われる様に導かれる様に
きらきら幻想的な光に近付いて
つと触れそうなそのきわで
伸ばしかけた指先を止める
虹が見せる
虹が魅せる心から望むもの
妾が心から望むもの
嗚呼、それは――
今の『妾』が望む其れ?
其れとも、今は知らぬ曾ての『妾』の望む其れ?
虹が『心』と取る其れが
何方なのかと
不意に怖くなったのだ
知りたいけれど――怖いのだ
つい、と引っ込めた指先を
逆の手で包みつつ
眺めた虹は何処までも眩くて美しくて――
唯々見詰めるばかり
いつか触れられる日は来るだろうか
拐われずに妾の儘で
月の無い夜に、ほう、と落とす息が白く染まる。アックス&ウィザーズにあっても冬はよく冷える。人気の無い石畳の街は、少女の足音を高く響かせていた。緩やかに弧を描く階段を下り、高くそびえ立つ塔を見る。天へと届く筈の飾りは遙か昔に失われ、今はその形ばかりを残す神殿地区は夜にあって尚、暗くは無い。それでも、踏み込む足先が暗闇に飲まれるような感覚は無かった。
「夜にかかる煌きの虹」
そこに、虹があったから。
夜空にかかる星。その煌めきにティル・レーヴェ(福音の蕾・f07995)は息を呑んだ。
「星鯨…… ミラ・ケーティー殿の泳ぐ道。なんと、なんと心惹かれる逸話じゃろう」
夜風に髪が揺れる。白き鈴蘭が石畳を駆ける少女を追って揺れる。満天の星空にかかる虹は、見上げるほどに大きく、すぐ傍にあるようでーー遠い。もう少し行けば、手が届くだろうか。塔へと続く道にティルはとん、と足を踏み出した。上へと向かう道は途中まで、だから、ほんの少しお天端な気分になって、踊り場から小さく、飛ぶ。軽やかな跳躍は、きらきらと輝く夜の虹の下。くぐりぬけるようにして、トン、と辿り着いたのは神殿の一角であった。
星々の輝きを集めたような、美しい夜の虹。緩やかに弧を描くそれは、真昼に見る虹と同じように大地へと下りていく。
ーー虹の袂の宝物。
どこかで聞いたことのある話に、誘われるように導かれるように幻想的な光へと近づいてーー……。
「ーー」
ふと、足を止めた。
つと触れそうなそのきわで、ティルは伸ばしかけた指先を止める。
『きらきら輝く虹に触れることができれば、貴方の望むものがきっと見えるはず』
歌うように紡がれた昔話は、星鯨のようにキラキラと輝いてはいたけれど、でも、と指を止める訳がティルにはあった。
(「虹が見せる、虹が魅せる心から望むもの。妾が心から望むもの。嗚呼、それは――」)
小さく、心が震えた。知らず、小さく息を飲む。
心から望むもの、は。それはーー……。
「今の『妾』が望む其れ? 其れとも、今は知らぬ曾ての『妾』の望む其れ?」
言葉は、喉を震わせ落ちただろうか。
虹が『心』と取る其れが何方なのかと、不意に怖くなったのだ。
(「知りたいけれど――」)
怖いのだ。
小鳥は籠の鳥であった。壊れた籠から放たれるその時まで。過去を持たぬ少女は、自ら飛ぶ羽を、道を行く足は持ったけれどーー心の奥底ばかりは分からない。今の自分か、嘗ての自分か。虹が伝えるのはどれであるかなど。
「……」
つい、と引っ込めた指先を、そっと己の手で包み込んでティルは虹を見た。キラキラと輝く虹。夜を照らす煌めきは、七色の虹とはまるで違う煌めきを少女の瞳に映していた。
「いつか触れられる日は来るだろうか。拐われずに妾の儘で」
眺めた虹は何処までも眩しくて美しく。
見つめるティルの呟きに、きら、きらと光って揺れた。
大成功
🔵🔵🔵
リルリトル・ハンプティング
誠司さん【f22634】と一緒に【2】へ!
夜に浮かぶ虹に触れられるなんて!
夜空の海、星のクジラさん
わたしすごく楽しみなのよ!
少し顔をあげるだけで沢山の星が瞬いて
リンゴジュースだってしゅわしゅわ綺麗
なんて、なんて素敵なのかしら!
それだけだって良いのに、見てあの大きな虹!
誠司さん、行きましょう!
笑顔で少し早足に
卵の殻帽子を落とさないようにしていかなきゃ
何度も考えた事あるのよ、虹の根本に行きたいって
今夜叶ったのね。あぁ目の前に奇跡があるわ
止まらない好奇心で手をのばすの
わあ、わあ!
誠司さん、クジラさんが見えたわ!
ミラ・ケーティよ!
笑顔で見上げて、あら誠司さん?
ふふ、誠司さんも素敵なものが見えたのかしら
楠樹・誠司
リルさん(f21196)と【2】
揃いの飲み物携えて
虹のたもとへ、彼女の歩調に合わせ乍ら
降るひかりの雨、星々が溢れ落とすもの
目前に広がる全てが
屹度、魔法が齎す奇跡と云ふのでせうね
虹に。触れることは、ほんの少し恐ろしかつた
此の『うつろ』がほんとうは何を希うのか
自分でもわからなかつたからだ
けれど――確かめるやうにもう一度触れても
見える景色は変わらない
傍のちいさな姫君が、笑つてゐる
其れだけ。ほんとうに、其れだけだつたのだ
……ふふ、
思わず溢れた不器用な笑みを
悟られまいと片方の掌で自分の顔を覆い
はい、視得て居りますとも
夢が叶ったと燥ぐ彼女にも
如何か優しい夢を見せて御呉れと
煌めく彩、宙游ぐ星鯨へ願いを込めて
満天の星空に、キラキラと美しい虹が見えていた。真昼に見る七色の虹とは違う、星々を束ねたような光。それでも、夜の星とは違うーーと言えるのは今、こうして見上げているからだ。弾む心を抑えきれぬまま、リルリトル・ハンプティング(ダンプディング・f21196)は石畳の通りでくるり、と回った。
「夜に浮かぶ虹に触れられるなんて! 夜空の海、星のクジラさん。わたしすごく楽しみなのよ!」
少し顔を上げるだけで沢山の星が瞬いて、リンゴジュースだってしゅわしゅわで綺麗で。
「なんて、なんて素敵なのかしら! それだけだって良いのに、見てあの大きな虹!」
通りから見える大きな虹は、この先の橋にかかっているようだった。通りから身を乗り出すようにしてーー卵の殻帽子をおさえながら、リルリトルは振り返った。
「誠司さん、行きましょう!」
キラキラと瞳を輝かせる少女に、えぇ、と楠樹・誠司(静寂・f22634)は頷いた。瞳をわずかに細めるだけの男の頷きに、リルリトルは気にする様子は無いままに、煌めきの中を進んでいく。石畳の通りは少女には少しばかり進みづらいのか、それでも、とん、とん、と飛び石のように進んでゆけば同じように横を歩く長身が、あぁ、と静かに声を落とした。
「彼処に」
「この橋を渡った先で虹に出会えるなんて……!」
神殿地区の一角、古びた塔へと向かう一本の橋があった。通りのように大きく広い橋を渡っていけば、夜の空にかかる虹が見える。
「降るひかりの雨、星々が溢れ落とすもの。目前に広がる全てが屹度、魔法が齎す奇跡と云ふのでせうね」
吐息を溢すようにそう言って、誠司は夜の虹を見た。緩やかに弧を描く夜の虹は、塔の程近くで大地に触れていた。
「わあ……!」
目を輝かせたリルリトルが、煌めきの袂で足を止める。ふわ、と浮いた卵の殻帽子を押さえて、少女は声を上げた。
「何度も考えた事あるのよ、虹の根本に行きたいって。今夜叶ったのね。あぁ目の前に奇跡があるわ」
止まらない好奇心で、少女は手を伸ばす。煌めきの中、夜の虹に触れれば、リン、とひとつ鈴のような音がしてーー……。
「わあ、わあ! 誠司さん、クジラさんが見えたわ!」
パシャン、と水音と共に煌めきが跳ねた。視界一杯に広がった虹の輝きの中、星鯨が跳ねる。夜の空を思う存分、渡り行く姿にリルリトルは琥珀色の瞳を輝かせた。
「ミラ・ケーティよ!」
「……」
両の手を挙げて、ぴょんぴょん、と跳ねる少女の髪が揺れていた。卵の殻帽子が一緒に揺れて、嬉しそうな少女に答えるように夜の虹が煌めく。
「……」
その傍らで、誠司は小さく瞬いていた。
男の指先は虹に触れていた。煌めきの中、とぷん、と沈むような感触と共に広がった星の煌めきに小さく瞬く。
ーー何故、とは思わなかった。
(「虹に。触れることは、ほんの少し恐ろしかつた」)
此の『うつろ』がほんとうは何を希うのか
自分でもわからなかつたからだ。
けれど、確かめるようにもう一度触れても見える景色は変わらない。
傍らのちいさな姫君が笑っている。
其れだけ。ほんとうに、其れだけだつたのだ。
「……ふふ」
虹の煌めきの中、瞳を輝かせた少女が星鯨の名を呼びーー笑う。
思わず溢れた不器用な笑みを悟られぬように、掌を顔に寄せる。口元を隠し、瞳に触れた指先は口元に残る笑みを隠したか。
「あら誠司さん? ふふ、誠司さんも素敵なものが見えたのかしら」
「はい、視得て居りますとも」
笑顔で見上げるリルリトルに誠司は頷いた。表情の硬い男の纏う空気は変わっていたか。笑えぬ訳ではない誠司のその声に少女は微笑む。
“きらきら輝く虹に触れることができれば、貴方の望むものがきっと見える”
昔話にひとつ、語られた言葉を思い出しながら誠司は夜の虹を見上げた。
(「彼女にも如何か優しい夢を見せて御呉れ」)
煌めく彩、宙游ぐ星鯨へ願いを込めて。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
宮沢・小鳥
ネージュさん(f01285)と参加
2)虹に触れる。
寒そうだし、和装の温かい服装をしていくよー!
クリスマスをこうして誰かと過ごすなんて楽しみ! パーティとかに参加するの、ずっと憧れてたの! 今回はパーティじゃないけど、夜の虹を見に行くのって、浪漫があっていいよね!
虹のたもとに着いたら、来年も楽しい一年が過ごせますように、と神社風にお祈りしながら虹に触る! あたしが心から望むことは……ネージュさんやみんなといつまでも楽しく過ごしたい!
ネージュさんは虹のたもとでどんなものを見たのかな? 笑顔で聞いてみよ~! ネージュさんに聞き返されたら、あたしも素直に答える! うん、ずっとみんなと一緒にいたいな~!
ネージュ・ローラン
小鳥さん(f23482)と参加。
2)虹に触れる。
寒いのでモコモコの冬服を着てきます。
クリスマスも地域によって色々な言い伝えがあるのですね。
夜の虹だなんて、とても幻想的で心惹かれます。
せっかくですので一緒にたもとを探しに行きましょう。
わたしが心から望むもの……自分のことよりも小鳥さんや他の皆さんの笑顔がずっと続くこと……。
欲張るなら、わたし自身もその笑顔を守り広げられる、そんな舞を身に付けたいです。
小鳥さんの質問には少し照れながらも正直に答えましょう。
それに小鳥さんのことも気になり、こちらからも聞き返します。
どんなことを願ったのですか?
これからもこうして一緒に楽しい時間を過ごせると嬉しいですね。
夜のお出かけは、どうしてこんなに心が躍るのだろうか。とん、と2人歩く道筋は、足音だって楽しくて、モコモコの冬服に身を包んだ友人に宮沢・小鳥(夢見る雛・f23482)は笑みを見せた。
「クリスマスをこうして誰かと過ごすなんて楽しみ! パーティとかに参加するの、ずっと憧れてたの!」
今回はパーティじゃないけど、と小さく笑って。白く染まる吐息に、小鳥は羽織を揺らす。寒そうだから、といつもの和装に道中着を合わせたのは間違いなかったらしい。
「夜の虹を見に行くのって、浪漫があっていいよね!」
「夜の虹だなんて、とても幻想的で心惹かれます」
クリスマスも地域によって色々な言い伝えがあるのですね、とネージュ・ローラン(氷雪の綺羅星・f01285)は吐息を溢すようにして微笑んだ。聖夜に伝わる話は、土地ごとに様々であるのか。その地を生きてきた人々の話を知るようだ。見上げた空には月は無く、満天の星空は一人旅をしていたネージュには馴染みのある世界だった。
ただ、夜にかかる虹だけが違う。
「せっかくですので一緒にたもとを探しに行きましょう」
「うん!」
出発だね、と笑う小鳥と一緒に石畳の通りを抜けてゆく。今は使われなくなって久しいその地は、嘗ての祈りの気配を残していた。アーチ型の門を抜け、空に見える虹を辿って歩いていく。右が近いか、左か近いか。
「いっそジャンプで超えちゃうとか」
「それも面白そうですね」
小鳥の提案に、ふふ、とネージュが笑えば、目をぱちくり、とさせた少女が手を伸ばす。
「行こう!」
軽やかに通りの向こうへ飛び込んで、石畳にたん、と足音を響かせる。そうして辿り着いた虹のたもとはきらきらと輝いていた。星々を束ねたような煌めき。大きな虹が触れたその場所は、月の無い夜にあたたかな光を寄せていた。
(「来年も楽しい一年が過ごせますように」)
パンパン、と神社風にお祈りをしながら小鳥は虹に触れた。りん、と鈴に似た音が耳に届きーー瞬間、煌めきが視界いっぱいに広がった。
「わ……!」
そこに見えたのはネージュやみんなといつまでも楽しく過ごす自分の姿だった。
「うん」
頷きと共に、溢れていたのは笑顔だった。そんな彼女を隣に、ネージュはそっと、虹へと手を伸ばす。涼やかな鈴の音色と共に虹の煌めきが視界いっぱいの広がり見えたのはーー笑顔だった。
大切なみんなの笑顔。
小鳥や他のみんなの笑顔がずっと続いている。
(「あぁ……」)
そこに、自分の姿もあった。笑う仲間と共に、指先を踊らせて。
「ネージュさんは虹のたもとでどんなものを見たのかな?」
「小鳥さんや皆さんの笑顔ですよ」
笑顔で問いかける小鳥に、少し照れながらもネージュは正直に言った。
「欲張るなら、わたし自身もその笑顔を守り広げられる、そんな舞を身に付けたいと……」
「小鳥さんはどんなことを願ったのですか?」
「私は来年も楽しい一年が過ごせますようにって」
笑顔の小鳥に釣られるように小さく笑って、ネージュは顔を上げた。
「これからもこうして一緒に楽しい時間を過ごせると嬉しいですね」
「うん、ずっとみんなと一緒にいたいな~!」
2人の願いと約束に、夜の虹がきらり、と輝いた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
アイビス・ライブラリアン
同行者: 紅雪(f04969)
行動: 1
夜空を泳ぐ鯨と夜の虹、ですか
見たことがありません、是非とも見てみましょう
ミラ・ケーティーの物語、覚えていたのですね
また戻ったら読んでみましょうか
なので刀は納めるのですよ、紅雪
…そういえば巷ではクリスマスでしたね
この光景は空からの贈り物、というところでしょうか
紅雪と一緒に見ることができてとてもよかったです
アドリブ歓迎
蓮・紅雪
同行者:アイビス(f06280)
行動:1
綺麗な夜ね。家でクリスマスを祝うのも良いけれど、外で過ごすのも良いわね。
見てアイビス、虹が……七色じゃないわ。不思議ね(珍しくはしゃいで)
ミラ・ケーティー……昔アイビスに読み聞かせして貰った異国の物語にも出てきたわよね。ここの地に伝わる伝承とは違うみたいだけれど。
――で、鯨のオブリビオンはどこかしら?(刀を抜きそうな勢いで)(人の話を聞いていない)
心から望むものなんて、わかっているから見る必要はないわ。
だから静かに、アイビスと夜空を眺め、この景色を記憶に焼き付けるの。
アドリブ歓迎
吐息が、白く染まる。月の無い夜に、街中の明かりは無くとも目は随分と慣れてきていた。
「綺麗な夜ね。家でクリスマスを祝うのも良いけれど、外で過ごすのも良いわね」
石畳の通りを歩けば、足音が響く。廃墟となって久しい神殿地区には祈りの名残だけが残されていた。巨大な柱で作られた神殿を通り抜け、少しばかり開けた場所へと辿り着けば、その煌めきが蓮・紅雪(新雪・f04969)の瞳に見えた。
「見てアイビス、虹が……七色じゃないわ。不思議ね」
珍しくはしゃいでいる少女の赤い瞳に、虹の煌めきが映っていた。夜のかかる虹。星々の煌めきを束ねたかのような光景に、ほう、と紅雪が息を溢す。
「夜空を泳ぐ鯨と夜の虹、ですか。見たことがありません、是非とも見てみましょう」
僅か、ほんの僅か弾んだような声にアイビス・ライブラリアン(新米司書人形・f06280)は顔を上げた。虹に届くまではあと少し、だろうか。背の高い建物は皆、住う為の家というよりは神殿に付随した施設のようだ。己の図書館にあった知識をひとつ、ふたつと思い出しながらアイビスは虹の煌めきに瞳を細めた。
「ミラ・ケーティー……昔アイビスに読み聞かせして貰った異国の物語にも出てきたわよね。ここの地に伝わる伝承とは違うみたいだけれど」
紅雪の声が耳に届いたのは、そんな時だった。足を止めて見れば、口元を綻ばせた紅雪が物語の一節を辿る。小さな瞬きの後、アイビスは口元に笑みを寄せた。
「ミラ・ケーティーの物語、覚えていたのですね。また戻ったら読んでみましょうか」
「――で、鯨のオブリビオンはどこかしら?」
「なので刀は納めるのですよ、紅雪」
全くもって人の話を聞いた様子もないままに。刀を抜きそうな紅雪をアイビスはぴしゃりと押さえた。伝わる話は違ってもーー刀では、星鯨も驚いてしまうに違いない。
「……そういえば巷ではクリスマスでしたね。この光景は空からの贈り物、というところでしょうか」
ほう、とアイビスは吐息を溢す。1人と1人であった2人の見上げた世界。満点の星空にかかる夜の虹。
「紅雪と一緒に見ることができてとてもよかったです」
声はやさしく耳に届いた。
夜の虹を眺めながら、紅雪は小さく笑みを溢した。
(「心から望むものなんて、わかっているから見る必要はないわ」)
虹には触れない。ただこうして夜を、クリスマスを過ごしたことがきっと大切だから。
静かに夜空を眺め、この景色を記憶に焼き付ける。2人の瞳に虹の煌めきが映っていた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
薄荷・千夜子
鈴鹿さん(f23254)と
夜の虹を泳ぐクジラ…!
これは幻想的で楽しみですね
頂いたばかりの大事な首飾りを付け
片手には夜道を照らす鬼灯のランプ
もう片方は大好きな友人の手を取りながら気を付けて進みましょう
使われていない神殿、自身が巫女ということもあり少し物悲しさも感じながら
それでもこうやって一夜でも人が集まるのはここにいた方も嬉しいかもしれませんね
あ……!鈴鹿さん、星鯨ですよ!
その姿に見惚れながら虹のたもと、目指してみましょうかと
虹のたもとには宝物が、そして虹に触れれば望むものが見える
何が見つかるのでしょうね
でもすでに宝物も望みも隣にあるような気はするのですが
大事な友人と過ごすクリスマスなのですから
国栖ヶ谷・鈴鹿
友達の千夜子(f17474)と!
夜の虹を游ぐ星鯨かぁ。🐋
こんな不思議で、物語の中のような景色があるなんて!文豪さんにも見せたい景色だね、本当に幻想的!
ぼくも、千夜子からの贈り物の鈴蘭のラムプに灯りを灯して、千夜子と一緒に星鯨の見える神殿へ。
「星鯨、ミラ・ケーティー!すごい、こんな景色はじめてみるよ!」
興奮気味に、虹のたもとの話を思い出して、一緒に手を引いて。
虹のたもとには宝物があるっていうけれど、それは一体なんだろう?
ふと、隣に居た千夜子の首元に視線が行き、全てに納得がいく。
「あぁ、そっか、宝物ってつまりは……」
宝物は、もう手の中にあって、自分の贈り物を大事にしてくれる人がそばにいる事かな。
見上げれば深い藍の空に、星々が煌めいていた。新月の夜。月明かりの無い夜に星は煌めく。ひとつ、ひとつ。数えられる程の煌めきはーーだが、途中でいっぱい、と声を挙げて2人で笑ってしまうのだろう。冷えた冬の空気に、ほう、と吐息を白く染めながら国栖ヶ谷・鈴鹿(未来派芸術家&天才パテシエイル・f23254)は笑みを溢した。
「夜の虹を游ぐ星鯨かぁ。こんな不思議で、物語の中のような景色があるなんて! 文豪さんにも見せたい景色だね、本当に幻想的!」
創作意欲が湧くと叫ぶだろうか、それとも唯々息を飲むのだろうか。
廃墟となって久しい地に、人の気配は薄い。人々の声はざわめきとなって届くことも無くーー変わりに2人の足音が、トン、トンと軽やかに響いていた。
「夜の虹を泳ぐクジラ……! これは幻想的で楽しみですね」
石畳の階段も、鬼灯のランプがあれば転けるようなことも無い。
遺跡の向こう、見えた煌めきに瞳を細め薄荷・千夜子(鷹匠・f17474)は笑みを見せた。
「お手をどうぞ?」
「ありがとう! 千夜子」
笑って鈴鹿が手を取れば、ふわりと鈴蘭のラムプが揺れた。
たとえ夜の闇であっても、繋いだ手と柔らかな明かりがあれば迷うことは無い。軽やかな足取りで石畳の道を進んでゆけば、塔が見えた。神殿地区の四方に見えるのは、この地の祭事に使われていたのだろう。嘗ては全てが尖塔であったのか、半数は形を失い、残る二塔もくるりと回る階段を半分残すだけであった。
「……」
使われていない神殿。
緩やかに眠りの時を迎えようとしている地に、少し物悲しさを感じるのは千夜子が巫女であるからだろう。ほう、とひとつ息を落とす。
「それでもこうやって一夜でも人が集まるのはここにいた方も嬉しいかもしれませんね」
この地には、祈りの気配が残っている。静謐な空気は変わらずーー一年に一度、人々の思いと願いを叶えるように虹がかかるという。星々を束ねたような煌めきを寄せて。
「あ……! 鈴鹿さん、星鯨ですよ!」
夜の空に緩やかに弧を描く、大きな虹がふいに揺れた。たぷん、と波紋を描くような揺れの向こう煌めいたのは尾びれだろうか。
「星鯨、ミラ・ケーティー! すごい、こんな景色はじめてみるよ!」
瞳を輝かせた鈴鹿が、行こう、と手を引く。興奮気味な彼女の弾む声に頷いて千夜子は微笑んだ。
「はい」
さぁ2人一緒に手を繋いで。駆け出してしまいそうになる心をそっと押さえて。大きな大きな虹を辿っていく。少しばかり道が歩きにくくても大丈夫だ。とん、と一つ飛び越えて、夜風の中を虹のたもとに向かってゆく。
「虹のたもとには宝物が、そして虹に触れれば望むものが見える。何が見つかるのでしょうね」
軽やかな足取りで進みながら、千夜子はふ、と笑った。何が見つかっても、何に出会ってもきっと、と思うのだ。
(「でもすでに宝物も望みも隣にあるような気はするのですが」)
大事な友人と過ごすクリスマスなのですから。
一年に一度の大切な日。聖なる夜に大事な友人と過ごす。
彼女の手にある明かりは、千夜子が贈ったものだった。2人の行く道を照らす明かりが最後の階段を見つけ出しーーそして、虹のたもとへと辿りつく。
「わあ……!」
虹の煌めきが大地に触れていた。煌めきは、大地にほんのりと明かりを溢すようにそこにあった。小さく揺れて見えるのは夜風だろうか、それとも星鯨の悪戯か。夜の空へと旅立てそうな虹の煌めきに、鈴鹿は首を傾ぐ。
(「虹のたもとには宝物があるっていうけれど、それは一体なんだろう?」)
ふと、隣にいた千夜子の首元に視線が行きーーすとん、と心に落ちた。
「あぁ、そっか」
白い首筋に見えたのは暖かな陽の色の水晶花と翠玉、レースで飾られた首飾り。それは、鈴鹿が千夜子へと贈ったもので。
「宝物ってつまりは……」
宝物は、もう手の中にあって、自分の贈り物を大事にしてくれる人がそばにいる事かな。
小さく、鈴鹿は笑う。小さく瞬いた彼女の手を握り返して。
ーー虹のたもと、宝物はこの手の中に。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ロータス・プンダリーカ
猫の物語はどの世界でも不思議なものですのにゃ。
この世界の猫さん達の昔話はロマンチックですにゃあ。
きらきらお星様を見上げて、見上げ過ぎて、後ろにひっくり返りそうになったりして。
だ、誰にも見られてにゃ…い?
(シノアさんと目が合う)
にゃわわ、子分達には内緒ですにゃよ?
えっと…シノアさん、もし良ければ途中までご一緒しませんかにゃ?
紳士なボクはレディをエスコートするのにゃ(肉球お手手差し出し)
星鯨さんのスケールに圧倒されつつ、綺麗な虹に手を伸ばし。
ボクの背丈じゃ届かないかにゃあ…?
もしお許し貰えたら抱え上げて貰えば届くか…にゃ?
望むもの…んー、つい食べ物望むのはボクの悪いクセにゃ。ロマン足りないにゃあ。
月の無い夜は猫の時間。
星々の煌めく夜空を猫たちが満喫する時間なのですから。石畳の神殿地区には、高い壁がいくつもある。ひとつふたつ、残っている足跡は猫たちが仕上がりの前に残していった足跡だろう。滑り込むような小さな穴に、イチイの影が落ちる。夜の通りに慣れた瞳は、何の光を捉えて影を見たのだろうか。とん、と足を止め、ロータス・プンダリーカ(猫の銃形使い・f10883)はふるり、と尾を揺らした。
「猫の物語はどの世界でも不思議なものですのにゃ。この世界の猫さん達の昔話はロマンチックですにゃあ」
夜の空を泳ぐクジラの話は、千年を生きた猫よりも百年を生きた猫たちの知る昔話であるという。
満点の星空を見上げ、その煌めきにロータスは瞳を輝かせた。きらきらお星様。見上げて、見上げてーー見上げすぎて、ふいに体が後ろに引っ張られた。
「にゃ……!?」
あわわわ、と伸ばした両手。ぴぴん、と立てた尻尾と一緒に、なんとかバランスを取る。前に後ろに、右に左に。にゃにゃにゃ……!? となんとかバランスを保ったところで、耳も尻尾もぺたん、と倒れた。
「だ、誰にも見られてにゃ……い?」
くる、くるくると見渡した先でロータスは、ぴぴん、と耳を立てた。
「にゃ」
「えっと……ごめんなさい?」
可愛らしかったものだから、と隻眼を細め、シノア・プサルトゥイーリ(ミルワの詩篇・f10214)は首を傾ぐ。
「大丈夫かしら?」
「にゃわわ、子分達には内緒ですにゃよ?」
「えぇ」
ふふ、と吐息を溢すように笑ったシノアに、一先ずほう、とロータスは息をつく。もふもふだったし、と呟いたダンピールの声には気が付かないまま。
「えっと……シノアさん、もし良ければ途中までご一緒しませんかにゃ?」
深呼吸ひとつ。
とん、ととん、と石畳の階段を先に上がって、視線を合わせたロータスは、肉球の手を差し出した。
「紳士なボクはレディをエスコートするのにゃ」
「ーーかわ」
「かわ?」
「……、いいえ。ありがとう、素敵な貴方」
そっと、手を添える。宜しくお願いするわね、とシノアは微笑んだ。
石畳の道を歩いて行く頃には目も随分と夜の暗闇に慣れていた。ケットシーの瞳を細め、あそこは穴が空いてそうだにゃ、とぴぴん、と耳を立てたロータスは、右へどうぞ、とエスコートする。
「ありがとう。貴方は……いいえ、大丈夫そうね」
とん、と軽やかにロータスは飛ぶ。古びた神殿地区は通りひとつとっても穴は珍しいものでは無い。真っ直ぐに抜けて行けば辿り着くかと思った虹までの道筋も、後少しが遠い。それでも、夜の虹は猫たちに伝わった話だ。
「それにゃら……、あ、あったですにゃ」
螺旋階段を上がった先、猫たちの通り道。家々の屋根の上も、今であれば歩いて行ける。とんとん、と進んでゆけば煌めく虹がすぐ近くに見えた。星々の煌めきを束ねたような光が、弧を描く。波打つように光が揺れたのは、星鯨が飛んだからだろうか。
「これが、夜の虹……きれいですにゃ」
ほう、と溢す吐息が白く染まった。つい、とロータスは手を伸ばす。ぴぴん、と尻尾を立ててみても揺れる煌めきが遠い。
「ボクの背丈じゃ届かないかにゃあ……?」
もしお許し貰えたら抱え上げて貰えば届くか……にゃ?
むむむむ、と考えるロータスに、シノアは小さく笑って、もし良ければ、と告げた。
「私が抱き上げても良いかしら? ここまでエスコートしてくださったお礼に」
「……! もちろんですにゃ」
瞳をぱちくり、とさせてロータスは笑った。そうして抱き上げてもらった先、手を伸ばせば虹の煌めきに手が届く。瞬間、りん、と鈴のような音がした。虹の煌めきが視界いっぱいに広がりーーそうして見えたのは。
「おさかなにゃ」
ロマン足りないにゃあ。
つい食べ物を望んだ心が浮かび上がって、ゆるり、と尻尾を揺らす。
けれどきっと、この地で虹を仰いだ猫たちも美味しいご飯とふかふかの寝床を想像したに違いない。あとは、いつかあの星の鯨だって捕まえてやるのだと。
大成功
🔵🔵🔵
シャルファ・ルイエ
今年はウィルの他にもオルとレディさ…じゃなくてレディが一緒ですし、せっかくですから綺麗なものを見に行きましょう。
レディには会いたい人も居ますから、望むなら見せてあげたいです。
以前手に入れた星の意匠のモザイクランプを持って、金色の林檎ジュースを頂いて、星の鯨が泳ぐ神殿へ。
虹に見惚れながら虹のたもとを探すのも楽しいですし、レディ達が虹に触ってみるなら見守ります。
わたしは触らなくてもいいんです。
心から望むものが見えるなら、触ってもきっと何も見えません。
わたしの知らない小さなわたしが居なくなって悲しんだひとが、居ないと良いなって思いますから。
それに、大事なものならちゃんと此処に、あなた達がいますもの。
夜の冷えた風が、長い髪を揺らしていた。ほう、と息を落としたシャルファ・ルイエ(謳う小鳥・f04245)は、満点の星空に小さく瞳を緩めた。
「今年はウィルの他にもオルとレディさ……じゃなくてレディが一緒ですし、せっかくですから綺麗なものを見に行きましょう」
白い小竜が喉を鳴らすようにして鼻先をあげれば、白い翼にシャルファの足元にいたオルトゥスがゆるり、と尾を揺らす。黒豹の太い尾がてしり、とシャルファに触れたのは、レディの、少しばかり不服そうな顔を見たからか。言い直したシャルファに、それなら良いけれど、とばかりに、とん、と通りの壁に乗ってにゃぁんと鳴いた。
「はいはい」
小さくシャルファが笑えば、先を行く猫はつん、とした様子で尻尾を揺らす。そんな姿にウィルやオルと視線を合わせて、ふ、と小さく息を溢した。
「さぁ、行きましょう」
夜のお出かけ。満点の星空に月は無くーーけれど、夜目が利く子たちがいるから迷うことも無い。それに、今日は虹がかかっているのだから。
(「レディには会いたい人も居ますから、望むなら見せてあげたいです」)
星の意匠のモザイクランプを手に、石畳の道を行く。長い階段も、林檎ジュースがあれば大丈夫だ。パチパチと弾ける炭酸が喉に心地よい。金色のジュースは、キラキラと輝く星と同じような色をしていた。長く続く道を一緒になって歩いてゆけば、大きな橋に出会う。月の無い夜、とっぷりと沈み込んだ闇の中、本当であれば見えない道がーー虹の煌めきを受けていた。橋を飛び越えるように夜の虹は弧を描く。
「これが……」
吐息を溢すように告げたシャルファの前、煌めきにレディが足を止めていた。伺うように揺れる尻尾。ふいに、振り返った彼女の小さな鳴き声に誘われるように歩き出す。古びた橋だって、少しばかり見えた穴だって大丈夫だ。みんな一緒にぴょん、と飛び越えれば長き時を此処で過ごした神殿が見えてきた。
「……」
その中腹へと、虹は降りていた。大地と触れたその場所はきら、きらと輝いている。
『……』
伺うように、少しばかり警戒するように虹のたもとを見るレディたちをシャルファは見守った。ーー自分は良いのだ。触らなくても。
(「心から望むものが見えるなら、触ってもきっと何も見えません。わたしの知らない小さなわたしが居なくなって悲しんだひとが、居ないと良いなって思いますから」)
それに、とシャルファは薄く唇を開く。
「大事なものならちゃんと此処に、あなた達がいますもの」
微笑むように告げた彼女に、きらきら、と虹が光った。
大成功
🔵🔵🔵
赤鉄・倖多
【虹誓】
夜の散歩ってさ
なんか探検みたいでわくわくするよなっ
與儀君とヒメ君が一緒だから、余計かな?
にゃはは、おれも嬉しいっ
おう、寒くないぜ!
ありがとう、ヒメ君優しくて大好きだっ
すげーきらきら…!
おれさま、招き猫だから
えいえいって招いたら鯨もこっちに来ちゃうかも!
でもやっぱり與儀君の言葉の力がすごいって気がして
やっぱ敵わねー
でもなんだか楽しい
月のない夜に灯るあかり
でも、ヒメ君の炎だって道しるべみたいで綺麗だぞと笑う
架かる虹には眸を輝かせ、ガジェットで出来た尾を揺らす
やっぱ與儀君とヒメ君、すげー!
また?やった、ありがとう與儀君
わはは
あのきらきらにも負けねーくらい、最高だ!
(――おれの、かみさま!)
姫城・京杜
【虹誓】
夜の外出は心躍るよな!
それに、與儀と倖多と一緒とか…すげー嬉しい
倖多ときゃっきゃする!
あ、二人とも寒くないか?
風邪引かないようさせねェと!(世話焼こうと
倖多が招いて與儀が頼めば
ミラ・ケーティーだって絶対来るだろ!
俺は…えっと、うん、二人を応援するぞ!
でも星鯨の道行き照らせるかなって、虹の海に炎掲げてみる
俺も神だけど…この掌には炎しか灯せねェ
でもな、與儀が雨を降らせてくれれば…ほら、虹だって作れる
すげーだろ、倖多(笑み返し
そう得意顔しつつ夜空見上げる
心から望むのもの…か
なぁ、ミラ・ケーティー
俺さ、護りたいんだ
大切な人達と、幸せな時間を
だから、今見えてるみたいに…傍にいても、いいんだよな?
英比良・與儀
【虹誓】
何時も傍らにいるのが当たり前のヒメと
まだどう対すればと迷いもある、俺が嘗て生んだ招き猫と
娘は冷たいが。この人懐こさにどうすればいいかまだわかんねェ…
けど、嫌じゃねェなァと見守り
……寒くねェよ、大丈夫だ
ああ、綺麗な虹だなァ
俺は神様だから丁寧に頼めば来てくれるかもしれねェな
そこゆくミラ・ケーティー殿、少しお前の旅路を聞かせてくれないか、なんてな
虹か
手元に水を遊ばせヒメの方へ鮮やかに、雨のように
人前ではあんまやらねーけど――いや家族だからな
家族だから、見せてやりたいと思った
尾を揺らし喜ぶ姿を嬉しく感じ
たまになら、またつくってやるよ――こーた
だから、ヒメも傍にいろよ
お前がいねェとできねェからな
冷えた夜の空気が、吐息を白く染めていた。ほう、と落ちた息が夜の空気に溶けて行くのですら、なんだか楽しい。思わず笑みを溢した青年の漆黒の瞳に、満点の星空が写っていた。
月の無い夜。空にはたくさんのきらきらが散りばめられていた。
「夜の散歩ってさ。なんか探検みたいでわくわくするよなっ」
くる、と振り返って赤鉄・倖多(倖せを招く猫・f23747)は笑みを見せた。ぴん、と見える耳は招き猫のそれだ。
「與儀君とヒメ君が一緒だから、余計かな?」
こて、と首を傾げて見せた倖多に、姫城・京杜(紅い焔神・f17071)は笑みを見せた。
「夜の外出は心躍るよな!」
どうしてか特別な気がするのだ。
真夜中のお出かけ。目を擦り、必死に起きているような歳でも無いというのに。どうしてか、ワクワクしてしまう。
「それに、與儀と倖多と一緒とか……すげー嬉しい」
柔らかな笑みと共に京杜は瞳を緩めた。吐息を溢すように紡がれた名前に、2人、揃って笑う姿に英比良・與儀(ラディカロジカ・f16671)は薄く、口を開く。
「……」
一瞬、だ。言葉を探すような間は、はしゃぐ倖多には届かなかったか。上機嫌ーー基、楽しげな京杜は目があったそこでぱちくりとして見せる程度で、何も言わない。言う気がないのか、言わないのかはーー問いただすには流石に向かないか。
(「何時も傍らにいるのが当たり前のヒメと。まだどう対すればと迷いもある、俺が嘗て生んだ招き猫と」)
娘は冷たいが。この人懐こさにどうすればいいかまだわかんねェ……。
真顔を向けてきた娘に対して、倖多は近い、のだ。そこ抱く戸惑いは、どちらかと言えば「どうしたら良いか」というタイプのもので。
「けど、嫌じゃねェなァ」
言葉は、舌の上に溶けて。
苦笑めいた息は、夜の空気にただただ白く染まってーー笑みに変わる。
「あ、二人とも寒くないか? 風邪引かないようさせねェと!」
世話焼きを始めた京杜に、瞳をパチクリとさせた倖多が大丈夫だと量の手を広げた。
「おう、寒くないぜ! ありがとう、ヒメ君優しくて大好きだっ」
「……寒くねェよ、大丈夫だ」
そのままむぎゅり、とハグでも始まりそうな2人を見ながら、與儀は息をつくようにして笑った。
古びた神殿地区は、四方に塔を備えていた。最も、半数は尖塔を失い、残った塔も外殻を回る螺旋階段を崩していた。廃墟ではあった。長く使われずーー聖夜にのみ開く。それでも、この地に祈りの気配は残っていた。アーチ型の門をくぐりゆけば、石畳に響く足音も変わる。
「與儀君、ヒメ君! にゃはは、これ音が変わるなっ!」
たん、と踏み込めばさっきまでと変わらず。けれど、ととん、と行けば音が変わる。作ったのでは無く、長く人々が使う中で変わってきたのだろう。おお、と声を上げた京杜と一緒に足音を鳴らし、たん、と大きく前に飛んだ倖多は、この地に残る昔話の猫たちと同じようにその煌めきにーー出会った。
「すげーきらきら……!」
大きな橋へと向かう途中、踊り場でのことだった。街を見下ろすことができるこの空間に、光があった。眩しいとは不思議と思わない。星の煌めきに似て、少し違う。金色の輝きは、ぴかぴかできらきらでーーでも、銀色の輝きにも見える気がする。
「これが、夜の虹……!」
「「ああ、綺麗な虹だなァ」
ふ、と口元に笑みを浮かべた與儀の近く、瞳を輝かせた倖多が、ガジェットで出来た尾を揺らした。
「おれさま、招き猫だから、えいえいって招いたら鯨もこっちに来ちゃうかも!」
「俺は神様だから丁寧に頼めば来てくれるかもしれねェな」
ミラ・ケーティーは夜の虹を泳ぐ、星の鯨。たぷんと、虹が煌めけばそれはミラ・ケーティーが泳いだ印。
「倖多が招いて與儀が頼めば、ミラ・ケーティーだって絶対来るだろ!」
笑みを見せて京杜は、はたと辿り着く。2人が頼むとして、自分は何をするかーー……。
「俺は……えっと、うん、二人を応援するぞ!」
応援も大事。
うんうん、と頷けるのは結局二人を信じているからだ。知っていて、信じているから。
「そこゆくミラ・ケーティー殿、少しお前の旅路を聞かせてくれないか」
詩の一節を紡ぐように、與儀が空を仰ぐ。虹に触れることはないまま、すい、と見せた掌に虹の煌めきは落ちてきたか。
「なんてな」
「やっぱ敵わねー」
でもなんだか楽しい。
ぷくり、と膨れて見せるのは足らなくて。でもやっぱり與儀君の言葉の力がすごいって気がして。忙しい倖多の心はどうしたって弾んでいく。ヤドリガミの青年の笑みは太陽のように明るくてーーあたたかい。
「でも星鯨の道行き照らせるかな」
虹の海に京杜が炎を掲げる。赤々とした炎が夜の闇に映え、吐息と共にふわり、と揺れる。
「俺も神だけど……この掌には炎しか灯せねェ」
「でも、ヒメ君の炎だって道しるべみたいで綺麗だぞ」
月の無い夜に灯る灯り。
それを見上げていれば、京杜がふ、と笑った。
「でもな、與儀が雨を降らせてくれれば……」
「……」
誘いの声に、手元に水を遊ばせ、與儀は京杜の方へと鮮やかに、雨のようにと力を向ける。
(「人前ではあんまやらねーけど――いや家族だからな」)
家族だから、見せてやりたいと思ったのだ。
水は踊り、炎と出会えばそこに七色の景色が広がる。それはーー。
「虹だって作れる」
虹だ。
七色の虹。夜の虹の下、作りあげられた七色に倖多は瞳を輝かせた。
「すげーだろ、倖多」
「やっぱ與儀君とヒメ君、すげー!」
ガジェットで出来た尾を揺らす倖多に、ふ、と與儀が笑う。
「たまになら、またつくってやるよ――こーた」
「また? やった、ありがとう與儀君」
漆黒の瞳は、二つの虹の光を受けてきらきらと光る。
「わはは。あのきらきらにも負けねーくらい、最高だ!」
夜風に髪を揺らし、満面の笑顔で倖多は告げた。たくさんの嬉しいとたくさんのありがとうを。
(「――おれの、かみさま!」)
ーーきらきら輝く虹に触れることができれば、貴方の望むものがきっと見えるはず。
昔話に語られる虹は、ならば大切なものを、知っているのだろう。この虹を泳ぐ、星の鯨も。
「心から望むのもの……か」
なぁ、ミラ・ケーティー、と京杜は心の中、囁くように告げた。
(「俺さ、護りたいんだ。大切な人達と、幸せな時間を」)
だから、と紡いだ言葉が風に揺れた。
「だから、今見えてるみたいに……傍にいても、いいんだよな?」
「ーーヒメ君?」
かすれる声は届いたか。瞳をぱちくり、とさせた倖多が首を傾げる。何かあったか? と問うよりも先、ふいに與儀の声が届いた。
「だから、ヒメも傍にいろよ。お前がいねェとできねェからな」
「ーー」
それは、先に倖多としていた話の続きで。辿り着いた先の話で。今度は小さく目を瞠る側となった京杜が、與儀! と声を上げる中、倖多は幸せそうに笑っていた。
なにせ、招き猫は幸せを招くのですから。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
シルヴェスター・トラッシュ
シノア(f10214)の都合がつきそうなら声かけ
【1】
神殿地区に踏み入れ、天を仰ぎ嘆息
オレひとりじゃ湿っぽくなりそうなんでね
散歩に付き合ってもらえませんか
ただ虹に直接触ろうとは思わない
宝が埋まってるわけないでしょ
…ま。ただのオレの持論ですが
手を伸ばさず
眉を寄せ、ただ星の虹を眺めている
夢って何でしょうね
宝物って、何でしょうね
途方に暮れた声で囁いた
…オレは、昔は
見るだけじゃ嫌だったんです
月がない夜に
星のようなあの人を
攫いに行きたかった……、…
心から望む相手にもし会えたとしても
オレは何もしてやれない。心惑うばかりだ
だから行かない
行けないんです
…変なことを言ってすみません
シノアはどう思います?この虹を
冷えた夜風が、長衣を揺らしていた。はた、はたと靡くコートを気にする様子も無いままに石畳の道を進んでいたシルヴェスター・トラッシュ(月の動脈を噛む・f19453)は、ほう、と息を漏らす。吐息が白く染まる。あぁ、これくらいの気温か、と身についた暗殺技能が告げる。物の判断に持ち出されるのは結局育ちか、稼業か。赤い髪を揺らし、神殿地区の奥へと向かう道にシルヴェスターは瞳を細めた。
「虹、ね」
緩やかに光は弧を描いていた。
夜の星ーー満天の星空とは違う煌めきは、それでいて星の光を束ねたかのようであった。大きな虹。大通りよりは広く、地区を覆うには流石に足りず。もう随分と夜の暗闇には慣れた自分が、眩しいと思わないのはあれが虹であるからか。
「オレひとりじゃ湿っぽくなりそうなんでね、散歩に付き合ってもらえませんか」
廃墟の一角、家の屋根に腰掛けていたダンピールの娘は、小さく瞬き緩やかに微笑んで。
「えぇ、夜の散歩はいつだって楽しいものだもの」
道幸に会話らしい会話があった訳でも無くーーだが、シノア・プサルトゥイーリ(ミルワの詩篇・f10214)も気にする様子も無かった。沈黙は美徳と言ったのは誰であったか。石畳の通りは、街の四方に建つ塔へと向かっていた。長い橋の向こう、屋根を失った尖塔のほど近くに虹はあった。星空に弧を描き、大地へと触れる場所にもーーこのまま行けば辿り着けるだろう。ふいに、シルヴェスターは足を止めた。虹を見るだけならば、この橋でも十分だ。見上げれば夜にかかる虹。橋の下を見れば、真っ逆さまの暗闇。
「宝が埋まってるわけないでしょ。……ま。ただのオレの持論ですが」
言い切って、ふと言葉を足す。小さく笑ったシノアは「そうねぇ」と唇に弧を描いた。
「埋まっていたらきっと、ここは廃墟にはならなかったでしょうからーーというのは、流石に情緒がないかしら」
神殿地区は廃墟であった。祈りの気配は残っていてもーーかの街に、この地に変わるものは無い。廃れたのか、手放されたのかーー将又、失うだけの何かがあったのか。街の人々さえ知らぬ時を語れるだけの者がいるわけもなく。人を失って久しい神殿を見せる土地に夜の風が吹き込んだ。
「……」
虹は揺れることなく。ただ、きらきらと光る。金色のようでいて、どこか銀にも似ている。手を伸ばすことは無いままに、シルヴェスターは眉を寄せて星の虹を眺めていた。
「夢って何でしょうね。宝物って、何でしょうね」
途方に暮れた声で囁いた。夜の風は、その声を拐うことも無いままに、赤い髪が揺れる。美しい緑の瞳に、虹の煌めきが映り込んでいた。
星に似て違う煌めき。触れられる夜の虹。手を伸ばせば届くそれにーー触れることはしないまま。出来ぬのか、しないのか。辿り着く解を呼び起こさぬままにシルヴェスターは薄く、唇を開いた。
「……オレは、昔は見るだけじゃ嫌だったんです」
肺腑の底から、吐き出すような言葉であった。
美しい青年の横顔が、ほんの僅か、歪む。
「月がない夜に、星のようなあの人を攫いに行きたかった……、…」
ぽつり、ぽつりと溢れていただけの言葉が、嗚咽のように一瞬震えた。深い緑の瞳が来し方を辿るように揺れてーー吐き出す息と共に沈む。
「心から望む相手にもし会えたとしても、オレは何もしてやれない。心惑うばかりだ」
夜にかかる虹は、望むものを見せるという。
貴方の望むものを。大切な宝物を。
もしもそれを知ったとして、思い知ったとしてーーそうして、どうしたら良いというのか。
「だから行かない、行けないんです」
掠れた声を、夜に落とした。煌く虹の下、紡ぎ落とされた言葉は、この輝きには似合わないと思うのに、一度話し出して仕舞えば止まることもできないまま。シルヴェスターは、息を落としややあって視線を上げた。
「……変なことを言ってすみません。シノアはどう思います? この虹を」
「ーーそうね」
夜風が長い髪を揺らしていた。
心の奥底を、浚うかのような言葉に何を言うこともなく、シノアは煌く虹を眺め見た。
「幸福を知るもの、かしら」
幸せは、本当にその人にとって幸せかなんて分からないものだけれど。
「きっと知ってしまうわ。不幸せなものも。ーーだからそうね、少しだけ恐ろしいと思うわ」
それこそ、オブリビオンの攻撃であってくれれば良いと思うほどに。
案内役がそれを言うのかと、小さく瞬いたシルヴェスターにシノアは小さく笑った。
大成功
🔵🔵🔵
朧・ユェー
【紅月】
今日は聖夜ですか
普段気にした事は無かったのですが
誰かと過ごすのも良いですねぇ
おやおや、綺麗な虹の星
おや?虹のあり方ですか、それは気になりますね。
七結ちゃん触れる事が出来るみたいですよ
そっと触れる、心から望むものなど今まで無かったが
彼女とその周りに居る子達の笑顔
あぁ、僕は…こんなにも興味がある事が増えているのか
ふと虹に触れる彼女を見る
何故だが不安になり
彼女の手を取り片手で抱き寄せる
ごめんねぇ、君が虹に拐われると思って…なぁんてね
紅茶を飲みませんか?
聖夜に相応しい美味しい紅茶を淹れますねぇ
楽しい時間を過ごしましょうか
その砂糖が溶けて消えるまで
虹に囚われないように
ねぇ、綺麗な僕のお嬢さん
蘭・七結
【紅月】
幻想世界で迎える聖夜
なんてステキなのでしょう
うつくしい景色が、増してみえるわ
虹――極彩の、七色の橋
虹の在り方を教えてくださった方がいたの
あなたも識っている方よ
ナユにとって大切な思い出
触れられるだなんて胸が高鳴るよう
そうと、指さきを伸ばして
真白の館に集う者たちの姿
皆々がわらい合う、その先
みえるはずのないもの
眞白の幻を視る
嗚呼、よんでいるのね
――さま。ナユの『かみさま』
幻へと歩み寄ろうと、して
視界から其れらが消滅すれば
あなたに攫われていて
今のは、幻
虹に魅せられていたのね
あなたの声色に引き戻される
まあ、うれしいわ
ユェーさんの紅茶、とてもすきよ
角砂糖ひとつ蕩かせて
とびきりのお茶をいただきたいわ
ほう、と溢す吐息が白く染まっていた。深い夜の闇に月は無くーーそぞろ歩くままに瞳は夜に慣れていた。ほっそりとした白い指先が、嘗ての神殿に触れる。祈りの気配が残る地は、空の煌めきを映していた。
夜の虹。
真昼の七色の虹とは違う、星の輝きを束ねたような大きな虹が神殿地区にはかかっていた。塔へと向かう大きな橋も中腹までやってくれば、夜の空が近くなる。夜風が、蘭・七結(戀紅・f00421)の長い髪を揺らしていた。
「幻想世界で迎える聖夜。なんてステキなのでしょう」
揺れる髪にそっと手を添え、七結は唇を綻ばせる。
「うつくしい景色が、増してみえるわ」
吐息を溢すような娘の言葉は、伏せる瞳と共にあった。白皙がほんの少し、染まるのは冬の寒さからだろうか。つ、と視線を向けて、緩く首を振った彼女に朧・ユェー(零月ノ鬼・f06712)は「七結ちゃんがそう言うなら」と肩を竦めてみせた。
「今日は聖夜ですか。普段気にした事は無かったのですが誰かと過ごすのも良いですねぇ」
独り言めいた言葉は、喉を震わせておちただろうか。夜風は雲を浚い、波打つような美しい光が見えた。夜の虹。金とも銀とも見える輝きが夜の空に弧を描いていた。
「おやおや、綺麗な虹の星」
「虹――極彩の、七色の橋」
誘われるように空へと視線を向けた七結の瞳がゆるり、とユェーへと向く。
「虹の在り方を教えてくださった方がいたの」
「おや?虹のあり方ですか、それは気になりますね」
「あなたも識っている方よ」
囁くように告げた娘は、大切にたいせつに言葉を紡ぐ。
「ナユにとって大切な思い出」
胸に手を置いて、来し方を思う。その名を紡ぐよりは心に描いて、七結は夜の虹を見た。
「……」
星々の煌めきに似てーー少し、違う。胸の高鳴りを隠せぬまま、そう、と七結は夜の虹へと指先を伸ばした。
ーーりん、と鈴に似た音がした。
瞬間、視界いっぱいに広がった虹の煌めきが、緩やかに形を得ていく。
そこにあったのは、真白の館に集う者たちの姿。皆々がわらい合う、その先ーーみえるはずのないものを、見た。
眞白の幻。
「嗚呼、よんでいるのね」
薔薇色の唇は、零れ落ちるように言葉を紡ぐ。虹の煌めきの中、吐息は笑みへと変わっただろうか。
「――さま。ナユの『かみさま』」
歩み寄るように足がーー動いた。
「ーー」
虹の中、触れれば金とも銀とも知れぬ煌めきが波紋を描くようにユェーの周りに広がっていた。リン、と聞こえたのは鈴の音であったか。一面の煌めきは慣れず、金色の瞳に星を写した青年は唇を結びーーだが、小さく瞬く。
「あれは……」
煌めきの中、誰かの姿があった。
星々はやがて形を得て、声を得る。
『 』
それは、彼女とその周りに居る子達の笑顔。
「心から望むものなど今まで無かったが」
吐息を溢すように紡ぐ。唇から零れ落ちた言葉は、青年の美しい横顔をくしゃりと歪めた。
「あぁ、僕は……こんなにも興味がある事が増えているのか」
浮かべたのは笑みだっただろうか。泣くような笑みであったかーーそれとも、純粋な驚きであっただろうか。
指先で触れていた煌めきに、撫でるように手を滑らせればふいに、牡丹の花が揺れた。
「ーー」
見えたのは、虹に触れていた彼女。
手を、伸ばしてしまったのはどうしてか不安になったからだ。煌めきに触れる指先を攫うように取って、小さな瞬きに構わず抱き寄せていた。
「今のは、幻」
腕の中、二度、三度と赤い瞳が瞬いた。ゆっくりと視線を合わせるように仰ぎ見る七結にユェーは口の端に笑みをのせてみせた。
「ごめんねぇ、君が虹に拐われると思って」
……なぁんてね。
悪戯っぽく言って、ユェーは微笑んだ。
「紅茶を飲みませんか?」
「まあ、うれしいわ。ユェーさんの紅茶、とてもすきよ」
ぱち、ぱちと瞬いて七結は微笑んだ。
「聖夜に相応しい美味しい紅茶を淹れますねぇ」
囁くように落ちた言葉に、くすくすと微笑みながら頷く。あぁ、この声が。この声色が引き戻してくれたのだろう。あの時、虹の向こうにかみさまの姿を見た時。
(「虹に魅せられていたのね」)
今は腕の中。虹の煌めきは見上げる先に。触れた手は彼に掴まれたまま届かない。地に足をつけ、夜の闇の中、七結は甘やかに告げた。
「角砂糖ひとつ蕩かせて。とびきりのお茶をいただきたいわ」
「えぇ。楽しい時間を過ごしましょうか。その砂糖が溶けて消えるまで」
虹に囚われないように。
満天の星空の下、虹は夜に橋をかけるまま。
「ねぇ、綺麗な僕のお嬢さん」
触れた手を包み込むようにして、熱をーー分けた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ヴィクトル・サリヴァン
空を泳ぐ鯨かあ。…シャチも鯨に分類されるから、空シャチもある意味同族?
虹はこの世と神の国だとかあの世を繋ぐもの、そのたもとにあるのはどちらの側のものだろね。
虹を眺めようかな。
望むモノが見たい訳でもないし、クリスマスに湿っぽいのは、ね。
リンゴジュース片手に夜の廃墟散歩も中々風情があっていいものだ。
…ちょっと寒いけどね。
ユラ君(f04657)かけたらご挨拶。
虹に触りに来たのかな、と尋ねてみたり。
いや、猫が触ろうとするって話聞いてたし。まあ無粋かなーとかテンション高めに。
あくまで伝承、でもいると信じるほうがロマンだし、案外空を見上げれば星鯨が見えるかもよ、と夜空を見上げようか。
※アドリブ絡み等お任せ
満天の星空に月は無く、夜の暗闇に慣れた瞳は石畳の道を捉えていた。長く緩やかに弧を描きながら続く道は、嘗ては神殿へと続く道であったのか。アーチ状の門をくぐりれば、深い夜の空に星々とは違う煌めきが見えた。
夜にかかる虹だ。
真昼の虹とは違う。星々の煌めきを束ねたかのような光は、金に、銀にと不思議な光を見せる。時折、たぷん、と揺れて見せるのは噂の星鯨が跳ねたからだろうか。
「空を泳ぐ鯨かあ。……シャチも鯨に分類されるから、空シャチもある意味同族?」
大きな虹は、星鯨が泳ぐ為だという。
神殿地区のどこからでも見えるその虹は、ヴィクトル・サリヴァン(星見の術士・f06661)の頭上で緩やかに弧を描いていた。このまま歩いて行けば、虹のたもとにも辿り着けるのだろうか。
虹のたもとには宝物が。
歌うように紡がれる昔話は、その始まりがどこであったかは知れぬまま。煌めく夜の虹は、触れれば望むものを見せてくれるという。
「望むモノが見たい訳でもないし、クリスマスに湿っぽいのは、ね」
小さく、息を溢してヴィクトルは階段を上がった先へと向かう。リンゴジュースを片手に廃墟を進んでゆけば地区の四方に塔が見えた。尖塔として残っているのは半数だけか。残っている塔も、螺旋階段を途中で失っている。
「よいしょ、と」
途切れた道の代わりに、背の低い建物の屋根を渡っていく。とん、と隙間を飛び越えて、着地した石畳はコン、と少しばかり高い音がした。
「噂の神殿が近いからかな。夜の廃墟散歩も中々風情があっていいものだね」
笑みを溢してーーひゅう、と吹き抜けた風に、たっぷりと間を開けて、うん、とヴィクトルは頷いた。
「……ちょっと寒いけどね」
「ーーあれ、お兄さんも散歩?」
少しばかりの苦笑は、目をぱちくりとさせた少年に拾われた。やっぱり寒いよね、と頷くユラ・フリードゥルフ(灰の柩・f04657)にヴィクトルは軽く肩を竦めた。
「ユラ君。こんばんは。虹に触りに来たのかな」
「んー……。ちょっと気になってはいるけど、かな。でも、見るじゃなくて触る?」
こてり、と首を傾げたユラにヴィクトルはさらり、と言った。
「いや、猫が触ろうとするって話聞いてたし」
無粋かなーとテンション高めに、言ったシャチにユラは瞳をぱちくり、とさせた。
「猫」
「そう猫」
「……俺がにゃんこさんだったら、ヴィクトルお兄さんに泳ぎに来たの? って聞くべき?」
すちゃりと何処から取り出したのか、黒猫のぬいぐるみを構えて、片手を上げさせつつ、なら、とユラは紫の瞳をひたり、とヴィクトルに向けた。
「ヴィクトルお兄さんは、ミラ・ケーティーのことどう思う?」
「そうだなぁ」
ふ、と息を溢す。夜の風は冷たくとも、深い海の底を見るように慣れてしまえば、冷たいばかりとも思わない。瞳は夜に慣れ、星々の煌めきと夜にかかる不思議な虹を見た。
「あくまで伝承、でもいると信じるほうがロマンだし、案外空を見上げれば星鯨が見えるかもよ」
「ヴィクトルお兄さんは意外とリアリストだ」
小さく笑ったユラと共に夜の空を見上げた。たぷん、と波紋を描くように揺れる夜の虹を。
大成功
🔵🔵🔵
都槻・綾
【1】
黒い翼猫の惺と
絡繰り人形の縫を連れて
廃墟の片隅へ
足許に気を付けてくださいね、と
少女に恭しく掌を差し出せば
至極当然のような気高さで添えられる小さな手
まるで己が貴婦人に寄り添う付き人みたいに思えて
ふくり笑み零す
どちらが主か分かりませんね
――お寒くありませんか、姫君
なんて
芝居めいた戯れが粋なのも
夜の虹が掛かる舞台だからこそ?
おや、
揺らぐ虹の煌き
やんちゃな仔猫の惺が
黒猫の物語と同様に
星めく銀の瞳を更にきらきら煌かせ
小さき手を懸命に伸ばしている
もしかしたら
星鯨が拍手の代わりに尾鰭を揺らしたのかもしれない、と
顔を綻ばせて
林檎の酒杯を空に掲げ、乾杯
メリークリスマス、ミラ・ケーティ
どうぞ佳き聖夜の旅路を
月明かりの無い深い夜は、星々が思うがままに煌めく。夜風が雲を払ったのだろう。帯のようにあった白も消え去れば、星々の煌めきがよく見えた。青磁色の瞳に星を写し、ほう、と都槻・綾(夜宵の森・f01786)は息をつく。
「綺麗なものですね」
吐息が、白く染まる。
揺れる髪が青年の美しい横顔を、隠す。なびく髪をそのままに、石畳の通りに綾は絡繰り人形の縫に恭しく掌を差し出した。
「足許に気を付けてくださいね」
「……」
す、と至極当然のような気高さで添えられる小さな手。まるで己が貴婦人に寄り添う付き人みたいに思えて綾はふくり笑み零した。
「どちらが主か分かりませんね」
石畳の道筋は、コトン、トンと縫の足音を残し、緩やかに弧を描いてゆく。
「――お寒くありませんか、姫君」
なんて芝居めいた戯れが粋なのも夜の虹がかかる舞台だからこそか。尖塔の近く、地区を見下ろす一角には美しい装飾が残っていた。噴水の跡地か。水こそ枯れたが、残された遺跡は未だ美しくあった。この地には、祈りが残されている。小さな段差に姫君へと手を添え、切揃えの黒髪を風に揺らせた少女人形は、主の趣向に僅かばかり視線をあげたがーー結局、口を挟むよりは、とつ、と進むことを選んだらしい。口達者な縫のそんな姿に小さく笑えば、ふいに目の端に煌めきが映った。
「おや、」
揺らぐ虹の煌めき。
やんちゃな仔猫の惺が、物語の黒猫たちのように星めく銀の瞳を更にきらきら煌かせて、小さな手を懸命に伸ばしていた。
満天の星空にかかる夜の虹。
煌めきは金のように、銀のように色彩を変えて見せる。真昼の虹とはまるで違う。星々の煌めきを束ねたかのような虹は、綾たちの近くで緩やかに弧を描いていた。
「惺」
つい、つい、と伸ばす手はきらきらと輝く瞳と一緒に尾も揺らして。転ばぬようにと目をやりながら綾は微笑んだ。
もしかしたあの虹は、星鯨が拍手の代わりに尾鰭を揺らしたのかもしれない。
「メリークリスマス、ミラ・ケーティ」
金色の林檎酒がぱち、と弾ける杯を掲げて、乾杯を告げる。
「どうぞ佳き聖夜の旅路を」
夜の空へと掲げた言葉に、煌めく虹はとぷん、と波うって見せた。星の鯨が跳ねたように。
大成功
🔵🔵🔵
オズ・ケストナー
晶硝子(f02368)と
夜のにじいろ。
きっとアケガラスみたいだ、と思う
星みたいに、いろがきらきらしているんでしょう?
わあ、みてっ
空を指さして
ふふ、思ったとおりだ。アケガラスみたいだね
くじら、およぐかなあ。
みえないけど、もうちかくにいるのかな?
アケガラスはくじらみたことある?
おうちから見えるのっ?
こびん?って、指で大きさを測るようにして
うん。ちかくでみるとクジラってね、すごくすごく、おおきいよ
両手を広げ笑って
アケガラスとわたしがごろんて横になれちゃうくらいっ
にじのたもと、さがしにいこうか。
どんなたからものがみつかるか、気になるものっ。
うんっ。アケガラスとならね、きっとおよぐクジラだってみつかるよ
彼者誰・晶硝子
オズ(f01136)と
夜の虹
本で読んだそれとは、また違うのかしら
きっと、神秘的なのでしょう、ね
ふふ、虹はきれいだけれど、似ていると言われるのは、照れちゃうわ
でも、うん、きれい…ね
きらきら、くじらが游ぐのに相応しい、海の水面のよう
せっかくだもの、くじら游ぐ虹、見てみたいわね
くじらは、ね、うちが、海沿いの街を見下ろせる、丘の上にあるから
だから、遠くの海を、跳ねているのを見たことが、あるわ
ほんとうに、たまに…だから、もう何年も、見ていないけれど
遠くから見たら、小瓶に入ってしまいそうな大きさなのに、そうね、おおきいのよね…
虹が、揺れるくらいに
たからもの、さがしにいくの?
オズとの冒険は、たのしそう、だわ
とん、と飛び移った先、高く伸びた塔にほど近い庭園には少しばかりの木々が残っていた。トン、トトン、と石畳は2人の足音を夜闇に慣れる前とは変えていた。古びたーーというよりは、神殿地区特有の作りなのだろう。今は使われていなくとも、この地には祈りの気配が残っている。背の高い壁、アーチ状の門には草木の細工が施されていた。
「わあ、星がいっぱいだよ」
プラチナブロンドの髪を揺らし、 オズ・ケストナー(Ein Kinderspiel・f01136)は振り返った。門を抜けた先、しばらく続いた通りには屋根がついていたのだ。そこを抜けて、行き止まりに出会ったところで、ぴょん、と道を帰る代わりに真横の屋根に飛び移った。まっ平の屋根には遠い昔に先客がいたのか。四つ足の足跡が点々と残っていた。微かに見える煌めきが、夜にかかる虹だろうか。
「夜の虹。本で読んだそれとは、また違うのかしら」
ほう、と彼者誰・晶硝子(空孕む祝福・f02368)は息をついた。
「きっと、神秘的なのでしょう、ね」
「夜のにじいろ」
白く染まる吐息が、夜の風に拐われていく。夜空に月は無く、満天の星空にオズは笑みを見せた。
「きっとアケガラスみたいだ、と思う。星みたいに、いろがきらきらしているんでしょう?」
オズのその言葉に、晶硝子は瞳を瞬かせた。瞳に星を宿した娘が、薄く唇を開き言葉を探す。驚いた、からだ。夜風に煌めく髪を揺らし、一歩、前にいたオズが「わあ、みてっ」と声を上げた。
「ふふ、思ったとおりだ。アケガラスみたいだね」
指さしていたその場所にあったのは、きらきらと輝く不思議な夜の虹。星の煌めきを束ねたかのような大きな虹は煌めく金色にも、静かな銀色にも似て。夜の空に星々とは少しばかり違う輝きを添えていた。
「ふふ、虹はきれいだけれど、似ていると言われるのは、照れちゃうわ」
でも、と振り返ったオズに晶硝子は小さく頷いた。
「うん、きれい……ね」
きらきら、くじらが游ぐのに相応しい、海の水面のよう。
ミラ・ケーティー。夜の空を泳ぐ鯨は、月の無い夜にかかる虹を泳ぐという。
大きな大きな虹は、2人を飛び越えるようにして弧を描いてーーこのまま行けば虹のたもとにも辿り着けるだろうか。夜にかかる虹はきらきらと輝いて、じっと見ていれば漣のように不思議に揺れる。
「くじら、およぐかなあ。みえないけど、もうちかくにいるのかな?」
「せっかくだもの、くじら游ぐ虹、見てみたいわね」
漣は遊んでいるからだろうか。それとも、星鯨が跳ねた証拠か。キラキラと輝く夜の橋に、ほう、と零す息が白く染まった。
「アケガラスはくじらみたことある?」
とん、と隣にやってきたオズが煌めきを背に問う。小さく首を傾げた彼に晶硝子はこくり、と頷いた。
「くじらは、ね、うちが、海沿いの街を見下ろせる、丘の上にあるから。だから、遠くの海を、跳ねているのを見たことが、あるわ」
「おうちから見えるのっ?」
目をぱちくり、とさせるのは今度はオズの番だった。ふふ、と小さく笑って頷く。
「ほんとうに、たまに……だから、もう何年も、見ていないけれど」
あの日見た鯨は、元気でいるのだろうか。
瞳の奥、思い描いた姿に晶硝子は星を宿す瞳を緩めた。
「遠くから見たら、小瓶に入ってしまいそうな大きさなのに」
「こびん?」
指で大きさを測るようにしてみせるオズに頷く。こびんかあ、と空に掲げて見せるとオズは、ぱ、と笑みを見せた。
「うん。ちかくでみるとクジラってね、すごくすごく、おおきいよ」
両手を広げて、オズは笑った。
「アケガラスとわたしがごろんて横になれちゃうくらいっ」
寝転がって、きっとそのまま何処にだって行けてしまう程に、クジラは大きいだろう。夜の空を泳ぐ星鯨なら、何処までいけるのだろうか。
「そうね、おおきいのよね……虹が、揺れるくらいに」
晶硝子の言葉に、オズは笑って頷いた。
ゆらり、ゆらり、夜の虹が煌めくのは星鯨が通ったからだろうか。とぷり、と沈んではまた少し跳ねた光はミラ・ケーティーの悪戯だろうか。
「にじのたもと、さがしにいこうか」
「たからもの、さがしにいくの?」
瞳をぱちくり、とさせた彼女にオズは頷いた。
「どんなたからものがみつかるか、気になるものっ」
「オズとの冒険は、たのしそう、だわ」
瞳はゆるり、と弧を描いて、煌めきを写す瞳にオズは微笑む。キトンブルーの瞳をいっぱいに輝かせて晶硝子を見た。
「うんっ。アケガラスとならね、きっとおよぐクジラだってみつかるよ」
「オズとの冒険は、たのしそう、だわ」
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
萌庭・優樹
ライラックさん(f01246)と
もこもこコート靡かせ
いざ鯨さんを追いかけましょ!
ふたりなら、風は冷たくても
行く路、話し声と灯はあったかい
眺める虹はまさに絶景!
思わず指を伸ばしたくなって
けれどこの手は、ふれないまま
司書さん…ライラックさんは
心から『望むもの』を見るなら
どんなものを見たいですか?
触らないのに尋ねるなんて
ヘンかも、だけど
でも知りたくて
…おもいで!
あなたから蘇ってくる物語は、どれも
この夜空の星みたいに
きらきら、キレイだろうなぁ
おれは未来を知りたいです
望んだ大人になった自分
…でも、それは
見つめるよりも追いかけなくちゃ
そう、このお出かけもひとつの夢のようで
望みが叶うって、ステキですね!
ライラック・エアルオウルズ
優樹(f00028)さんと
暖かなコートに身を包んで、
星鯨の軌跡を追いに往こう
貴方が転ばぬ様にと灯で照らしつも
共に路より星空に釘付けだろうか
夜の虹、想像していたよりも綺麗だね
煌めき探して見上げていると、
手伸ばす猫たちの気持も解るかも
虹に触れるとは、どんな心地かな
…そうだねえ、僕は
古びた想い出を見たいと思う
年の所為か未練がましくも、
先より後にと望む物が多くてね
優樹さん、貴方は何が見たい?
未来、――ああ
それは素敵な望みだ
そうして、素敵な考えだ
虹の袂を探すよりも多望で、
先の貴方を僕も見たいと密か想う
先の望みに後の望み
今は互いに、目蓋に想い描く位が丁度良いかな
共に眺める夜の虹もまた、望むものだから
月の無い夜に、満天の星空。暗い筈の夜は、不思議と明るく感じた。足元を見れば吸い込まれるような暗闇もあったというのに不思議なものだ。トン、トトン、と歩く石畳も音を変える。この地に、元からあったものだろう。緩く、弧を描く階段を降りてゆけば、ライラック・エアルオウルズ(机上の友人・f01二46)の掲げた灯が草木の紋様を見つけていた。
「おや」
地上には花の名残。丸天井は、此処が十字路であったからだろうか。ぽっかりと開いた穴からは夜の空が覗く。きら、きらと輝く星は、なお深き闇の中にいるから煌めいて見えたのだろうか。トン、トン、と軽やかな足取りで先を行った萌庭・優樹(はるごころ・f000二8)のもこもこのコートがふわり、吹き込んだ夜風に揺れた。
「わあ……!」
思わず、声が上がった。キラキラと輝く星に、足を止める。満天の星空に大きな虹がかかっていたのだ。神殿のほど近く、広場に出ればその煌めきも近くなる。金とも、銀とも言える不思議な輝きは星を束ねたようんだ。
「これが夜の虹!」
「夜の虹、想像していたよりも綺麗だね」
煌めきを探して見上げていると、手を伸ばす猫たちの気持ちも分かるかも、とライラックは笑った。
「虹に触れるとは、どんな心地かな」
手を伸ばせば届くほどの距離に、煌めきはある。つ、と足を伸ばさずとも近い光に、ライラックは手にした灯りを下げた。夜の闇は深くとも、瞳は十分に慣れた。転ばぬように、と照らした灯りだがーー共に、路よりも星空に釘付けだったのだから。
「司書さん……ライラックさんは、心から『望むもの』を見るならどんなものを見たいですか?」
ふいに、そんな声が耳に届いた。夜の虹を見上げていた優樹の瞳がゆるり、とこちらを向いていた。小さく、上がっていた指先はぱたり、と降りたまま、ほんの僅か悩むような迷子のような色彩を滲ませた瞳に紫の瞳を細めた。
「……そうだねえ、僕は古びた想い出を見たいと思う」
見上げた夜の虹は何処までも煌めいて、夜の空を染めるほどなのに虹だと思う。何処にあっても変わらぬ思い出のように。
「年の所為か未練がましくも、先より後にと望む物が多くてね」
声は苦笑めいていただろうか。
ふ、と吐息を溢すようにして笑った男の瞳がゆるやかに弧を描く。
「……おもいで! あなたから蘇ってくる物語は、どれもこの夜空の星みたいにきらきら、キレイだろうなぁ」
作家の綴る物語は、どんな想い出なのだろうか。煌めく虹の中、思い浮かべられる世界にほう、と息を溢していれば、小さく笑ったライラックの声が届いた。
「優樹さん、貴方は何が見たい?」
「おれは未来を知りたいです。望んだ大人になった自分」
故郷の森を出て、沢山の日々を過ごした。時々家が恋しいけれど、成長した自分の姿を見せに帰るまではーーまだ、なのだ。
背は伸びるだろうか。大人っぽくなるだろうか。王子様にーー……。
「……でも、それは見つめるよりも追いかけなくちゃ」
夜の虹を一度見上げて、優樹は微笑んだ。
「未来、――ああ、それは素敵な望みだ。そうして、素敵な考えだ」
虹の袂を探すよりも多望で、先の貴方を僕も見たいと密かライラックは思う。
「先の望みに後の望み。今は互いに、目蓋に想い描く位が丁度良いかな」
「そう、このお出かけもひとつの夢のようで、望みが叶うって、ステキですね!」
小さく笑ったライラックに、優樹も笑った。満天の星空。かかる夜の虹の煌めきを二人、瞳に写して。
共に眺める夜の虹もまた、望むものだから。
緩やかにひとつ、微笑んで作家は夜の空を見た。星の鯨が泳ぐという空を、二人一緒に。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
シン・バントライン
アオイ(f04633)と
ミラー・ケーティ…そんな御伽噺の様な美しい生き物は勿論、海に泳ぐ鯨さえ自分は知らない。
祖国の海は荒れた冷たい海で近付こうとも思わなかった。
一本のシールドを分けて飲む、繋いだ手の先に居る愛しい人は鯨が好きだと言う。
彼女の好きなものになってみたくて鯨に憧れる。
見た事もない得体も知れない生き物にだってなりたいと思う自分はきっとこの恋に狂っている。
揺れる虹に触れ目を開けるとそこには彼女が居る。
自分にとって、とても当たり前でとても特別な彼女の居る風景。
これ以上望むものなど何一つ無い。
「ミラー・ケーティ、お前知ってたんやろ?」
神秘的な鯨が居るだろう方角に笑ってから彼女を抱き締める。
アオイ・フジミヤ
シンさん(f04752)と
ああ、ミラ・ケーティ
あなたはどんな音を立てて空を泳ぐの?
新月の月のない夜を歩く黒猫たちの足音の中に
初めてあなたの名を聞いた時
星鯨の幻に恋をした
シードルをふたりで分けて飲みながら、手を繋いで歩く
私ね、鯨が好きみたい
海の生き物はみな好きだけれど
あなたと世界中の鯨を見て回りたいなぁ
恋をした鯨の虹を恋しい人と眺める
月のない夜の虹の下
まるで届かない月あかりを全部集めたかのような
きれいな彼に何度も恋をする
鯨が立てた波に触れても
この目に見えるのは何も変わらないんだろう
繋いだ手の先にいるあなた
今、恋をしている
月夜の海でまるで落ちるように出逢ってしまった
私のすべてを変えた彼との恋
長く続く通りを抜ければ、夜の空が開けた。月の無い夜、暗闇に不思議と瞳は慣れていた。二人、手を繋いで歩いていれば迷うことも無い。
石畳に足音を残しながら、緩やかに弧を描く階段を上がってゆけばその煌めきは近づいてきた。
「あぁ……」
夜の虹。
星々の煌めきを束ねたかのような、煌めく不思議な虹が通りにかかっていた。
「ミラ・ケーティ、あなたはどんな音を立てて空を泳ぐの?」
新月の月のない夜を歩く黒猫たちの足音の中に初めてあなたの名を聞いた時、星鯨の幻に恋をした。
歌を囀るように、夜の空へと捧げたアオイ・フジミヤ(青碧海の欠片・f04633)は、その瞳に星を写すようにして微笑んだ。
「私ね、鯨が好きみたい。海の生き物はみな好きだけれどあなたと世界中の鯨を見て回りたいなぁ」
「……」
やわく紡ぎ落とされた言葉に風が揺れた。さわさわと揺れる美しい髪に、ふ、とアオイが笑う。指先を添えた彼女の声が、己を呼ぶのにシン・バントライン(逆光の愛・f04752)は知らず瞳を細めていた。官服の覆面を外し、晒した己は笑っていた。小さな笑みを彼女の瞳から知る。
「ミラー・ケーティか……」
そんな御伽噺の様な美しい生き物は勿論、海に泳ぐ鯨さえ自分は知らない。祖国の海は荒れた冷たい海で近付こうとも思わなかった。グラスに唇をつけ、一本のシードルを分けて飲むアオイは鯨が好きだという。
星の鯨。
夜の虹を、かの鯨は泳ぐという。
金とも銀とも知れぬ煌めきを溢す、大きな虹は共に行く道のすぐ傍を通っていた。小さな踊り場。少し登ってきたからだろうか。煌めきが愛しいひとの頬に煌めきを添えていた。
「……」
瞳を輝かせて空を仰ぐのはそこに星鯨を思ってからだろうか。憧れを抱くように、シンは夜の星を、虹を見た。アオイの好きなものになってみたい、とそう思って。
(「見た事もない得体も知れない生き物にだってなりたいと思う自分はきっとこの恋に狂っている」)
そ、とシンは手を伸ばす。とぷり、と指先が沈み込めば、涼やかな音色と共に虹の煌めきが広がった。
(「あぁ……」)
煌めきは、やがて線を結ぶ。長い髪を、微笑む瞳をーーその青を、見せる。
「シンさん?」
小さく、瞬いた彼女に愛しい人にシンは吐息を溢すようにして笑った。
彼女がいた。アオイがいた。
自分にとって、とても当たり前でとても特別な彼女の居る風景。
これ以上望むものなど何一つ無い。
「ミラー・ケーティ、お前知ってたんやろ?」
神秘的な鯨が居るだろう方角に笑って、シンは彼女を抱き締めた。
「ーー」
ほのかに触れるあたたかさと共に、笑うような声が耳に届いた。アオイ、と呼ぶひとを見上げる。抱きしめられた腕の中、その胸に触れながら仰ぎ見たそこには虹の煌めきと共に笑うシンの姿があった。
(「えぇ、きっと……」)
月のない夜の虹の下、まるで届かない月あかりを全部集めたかのようなきれいな彼に何度も恋をする。
「きれいね」
やわく、言葉はほどけた。彼の名前を胸にそっと抱いて、アオイは煌めく夜の虹と、美しい金色の髪を、彼を見る。
(「鯨が立てた波に触れてもこの目に見えるのは何も変わらないんだろう」)
繋いだ手の先にいるあなた。
抱きしめられた腕の中、笑う声を聴きながら何度だって思う。
今、恋をしている。
月夜の海でまるで落ちるように出逢ってしまった。
私のすべてを変えた彼との恋。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
泉宮・瑠碧
髪を下ろし
長いマントにロングスカートの様な装束で
元の「私」で虹を眺めます
人目に触れない様に更に影に隠れて
シノアさんには挨拶と
いつも案内の感謝を籠めてお辞儀を
…この格好はお気になさらず
シノアさんは、虹を触りには行きました?
…私は、知るのが怖い気がして、触りに行けなくて
…同じ女性のシノアさんに少し訊いてみますね
僕で居る事に後悔はないのです
動物や植物は私の見掛けよりも、気配や気持ちで接してくれますし
でも…
そう在ろうと努めているのに
女性らしくなくて痛いと思う事も、あって…
…やはり、私の覚悟や心が弱いのでしょうか
虹を見れば思い出す昔話
星の鯨さんや猫さんにも、幸せな夜でありますよう
虹に手が届くと良いですね
冷えた夜の風が、吐息を白く染めていた。さわさわと夜風に下ろした髪が靡く。石畳の道を長く進んで行けば、地区の四方に塔が見えた。尖塔は半数が崩れ、残る半数が在りし日の姿を伝えてくれる。最も、残った塔も外観を辿る階段を途中で失っていた。
「……」
あの先を登って行けば、虹へと近づくのだろうか。
夜の空に月は無く、森の暗さとは違う暗闇の色に泉宮・瑠碧(月白・f04280)は息をついた。
「星……」
満点の星空。
月の無い夜に輝く星は、道先を告げるという。指先で辿れば伝わる物語を知ることができるのだろうか。長く、淡い青の髪は結んだままでいれば夜気を纏った。二度目の吐息が白く染まる前に息を吸う。長いマントに裾の長い装束は、ふわりと風邪に揺れていた。
「シノアさん」
「あら、こんばんは」
人目に触れぬよう、更に影に隠れて進んでいた娘がそのダンピールに出会ったのは影を行っていたからかもしれない。通りの向こう、塔へと続く橋にかかった虹を見ていたというシノア・プサルトゥイーリ(ミルワの詩篇・f10214)は貴方も夜のお散歩かしら、と微笑んだ。
「はい。……この格好はお気になさらず」
いつも案内の感謝を込めて、お辞儀をすれば虹の煌めきが瑠碧の瞳に触れた。
「あれが……」
金とも、銀とも言える煌めきだった。星の光を束ねたかのような、大きな虹。だというのに、夜の虹とは少し違う、と思う。
「シノアさんは、虹を触りには行きました?」
問いかけは、知らず唇から零れ落ちていた。緩やかに弧を描く虹は、このまま通りを抜ければ触れられるほどの距離に来るのだろう。
「……私は、知るのが怖い気がして、触りに行けなくて」
そう、と頷く声があることもなく、どうして、と問う声がある訳でもなかった。ただ、トン、と石畳に降り立ったシノアが視線の高さを合わせるようにやってくる。
「……」
夜風に長い髪が揺れていた。白い衣が裾をひいて、女性らしいそのドレスに、己の今の姿を思う。
下ろした髪。
常とは違う長いマントに裾の長いスカートの装束。ドレープのきいた衣装は、普段の瑠碧ではありえない姿だった。
(「これは元の「私」)
僕、という自分は姉のように凛々しくと願ったものだ。亡き姉のようになれたらとそう思って、瑠碧は言うのだ。僕、と。
「僕で居る事に後悔はないのです。動物や植物は私の見掛けよりも、気配や気持ちで接してくれますし」
でも……、と薄く唇を開く。言葉は悩むより先に零れ落ちた。
「そう在ろうと努めているのに、女性らしくなくて痛いと思う事も、あって……」
僕、という自分。
凛々しくある姿は、確かに自分が思ったものだというのに。
「……やはり、私の覚悟や心が弱いのでしょうか」
夜風が、髪を揺らしていた。視界を遮るように靡く自分の髪を押さえる為の手が冷えていた。ひどく冷たく。動かない訳では無いのに、惑う。
「そうね」
声はひとつ、静かに落ちた。
肯定でも否定でも無い言葉。顔をあげれば靡く髪を抑えたシノアが小さく笑う。
「私が貴方の覚悟に何を言えるものではないけれど。ーーねぇ、お嬢さん」
カツン、とヒールが石畳を叩いた。距離を詰めてきたシノアが静かに問う。
「お嬢さんと言われるのは嫌かしら?」
ぱち、と瞬く瑠碧に、シノアは、ふ、と笑う。私は、と紡ぐダンピールの手は刀に添えられていた。抜く訳では無い。ただ夜歩きにも持ち込まれた刀に触れながらシノアは微笑んだ。
「私は、私が狩人であることも一族の長であることにも憂いは無いの。この身は戦場にあり、私はこの血によっていずれ滅びるのでしょう」
別れの杯など交せるとも思わず。
けれど、えぇ、とシノアは微笑んだ。
「何一つ後悔もなくいるかと言えば、きっと違うのでしょうね」
お嬢さん、とシノアは告げる。視線を合わせるように一度膝を折って。
「あなたが痛いと思うのであれば、そう感じたのであれば応えてあげられるのも貴方だけよ」
今は愛せずとも。許すことはできなくても、いつか。
「そこに覚悟がないとも、心が弱いということもきっと無いのでしょうから」
だからいつか応えてあげて。
囁くように告げられた言葉に、風が揺れ夜の虹がきら、きらと光った。
大成功
🔵🔵🔵
ラナ・スピラエア
蒼汰さん(f16730)と
夜の虹…幻想的で綺麗ですね
キラキラしていて吸い込まれそう…
色んな世界の聖夜も良いけれど
やっぱり自分の世界がほっとします
あ、揺れました!
今星の鯨さんが通りましたね
虹を渡ってどこに…星の鯨さんの宝物の元ですかね
私達も手を伸ばせば、宝物が見つかるでしょうか?
蒼汰さんの言葉に不思議そうに瞳を瞬いて
その真意は分からなくて、いつも通り微笑むだけ
寒いですか?
でも、こうして手を繋げば温かい、ですね
繋いだ熱は、いつもより何故か熱くて鼓動が逸るけれど
望むもの…
十分今が満たされているから
それは何も浮かばなくて
この景色が見れただけで、十分かもしれません
この温もりを、傍で感じられるだけで
月居・蒼汰
ラナさん(f06644)と
夜の虹ってどんなものだろうと思ったけれど
…綺麗、ですね。…とても
星鯨さんはこんなに大きな空を渡って、どこへ行くんでしょうね
宝物かあ、…やっぱり、そうなのかな?
揺れる虹の光が眩しくて、思わず手を伸ばしそうになるけれど
傍らを見やれば楽しげに瞳を輝かせているラナさんがいて、思わず
俺は、…虹よりも、ラナさん
貴女に触れたい、です
…なんて
きっと本当の意味はまだ伝わらないから
繋いだ手にそっと力を込めて、誤魔化すように笑う
はい、温かいです、とても
満たされてると言うラナさんは、本当にラナさんらしくて
それが何だか嬉しい
(貴女が笑顔でいてくれること
きっとそれが、…今の俺が、心から望むもの)
吐息が、白く染まった。
石畳の道行きはトン、トン、と二人分の足音を響かせる。アーチ状の門を抜ければ、神殿地区に残る塔が見えた。水の消えた噴水は、鳥たちの住処であったのだろう。小さな家がちょこん、と乗ったまま、巣立った鳥たちの羽だけが腰掛けていた。
「これが……」
トン、と一歩、先を歩いていた娘の髪が夜気に揺れた。ふわり、と風をはらんだラナ・スピラエア(苺色の魔法・f06644)の淡い桜色の髪が夜の煌めきに触れ、踊り場から僅か身を乗り出すようにしてその煌めきを見た。
「夜の虹……幻想的で綺麗ですね」
月の無い夜には、虹がかかるという。
満点の星空にかかる虹。キラキラと光る星たちの光にて、どうして少し違う。星の光を束ねたように見えるのに、金とも、銀とも言えぬ煌めきがそこにはあった。蒼汰さん、と届いた声に誘われるようにして、足下残っていた紋様の外へと踏み出す。はた、はたと衣が靡いたのはそこがちょうど開けた空間だったからだろう。噴水広場の外側、地区を見下ろすことができる空間は大きなバルコニーのようになっていた。下を見れば夜の暗闇。見上げれば満点の星空と、きらきらと輝く夜の虹があった。
「キラキラしていて吸い込まれそう……。色んな世界の聖夜も良いけれど、やっぱり自分の世界がほっとします」
白く染まった息が風に拐われた。手すりに手をかけたラナの横、同じように見上げた虹に月居・蒼汰(泡沫メランコリー・f16730)は小さく目を瞠った。
「夜の虹ってどんなものだろうと思ったけれど、……綺麗、ですね。……とても」
「はい」
笑って頷いたラナが、ぱち、と苺色の瞳を瞬かせた。
「あ、揺れました! 今星の鯨さんが通りましたね」
たぷん、とぷん、と。大きな虹は揺れて、漣を起こすように煌めきが跳ねる。夜の空に大きく弧を描く虹は、ミラ・ケーティーの通り道だという。
「星鯨さんはこんなに大きな空を渡って、どこへ行くんでしょうね」
「虹を渡ってどこに……星の鯨さんの宝物の元ですかね」
考えるように小さく首を傾げたラナの話に思い出すのは虹のたもとに、とよく聞く昔話。
「宝物かあ、……やっぱり、そうなのかな?」
揺れる虹の光が眩しくて、蒼汰は思わず手を伸ばしそうになる。きっと、このまま手を伸ばせばーー背伸びをしなくてもきっと、触れることができるのだろう。
夜の虹。不思議な虹。
触れれば、望むものがきっと見えるというーー。
「私達も手を伸ばせば、宝物が見つかるでしょうか?」
「……」
傍を見れば楽しげに瞳を輝かせているラナがいて。
「俺は、……虹よりも、ラナさん。貴女に触れたい、です」
思わず、そう口にしていた。
滑り落ちた言葉に、彼女がこちらを向く。苺色の瞳は虹の煌めきを写したまま不思議そうに瞬いて。
「……なんて」
小さく添えた言葉。
不思議そうに瞬いて、いつも通りに微笑んだ彼女が寒いですか? と問う。
「でも、こうして手を繋げば温かい、ですね」
バルコニーにかけられていた手が、そっと蒼汰の手を取った。冬の夜。歩き回って、指先が冷えていたのだと今更に気がつく。触れた指先で、繋いだ手で。寒さにもあたたかさにも気がつく。
(「きっと……」)
本当の意味はまだ伝わらないから、蒼汰は繋いだ手にそっと力を込めて、誤魔化すように笑った。
「はい、温かいです、とても」
「ーー」
温かい、と思う。夜の冷えた空気が消えていくように温かい、と。高く、どこまでも広がるこの世界の夜の空は、ラナにとって知らないものではなくて。自分の世界の聖夜は、ほっとするものだったのに。
「……」
不思議と、鼓動が逸る。
彼と繋いだ手。そっと、力を込めるように結ばれた手は、その熱はいつもより何故か熱くて。どうしてだろう、と思う。ぱち、ぱちと瞳を瞬かせて、傍の蒼汰を見る。瞳を伏せるようにして小さく、笑っていたひとが、視線に気が付いて顔を上げる。
「ラナさん?」
寒いですか? と今度は逆になった問いかけに首を振る。寒くは無かった。いつもより熱いと思う手の熱に不思議な気持ちを抱きながら、夜の空を見た。
星鯨の泳ぐ虹に触れることができれば、望むものが見えるという。
「望むもの……。十分今が満たされているから、それは何も浮かばなくて」
ラナは吐息を溢す。ほう、と落とした息が白く染まって、繋いだ手の熱を思い出す。
「この景色が見れただけで、十分かもしれません」
この温もりを、傍で感じられるだけで。
やわく落ちた笑みが夜の虹を見ていた。靡く髪に煌めきが落ちる。
「……」
満たされてると言うラナさんは、本当にラナさんらしくて。それが何だか蒼汰には嬉しかった。
(「貴女が笑顔でいてくれること。きっとそれが、……今の俺が、心から望むもの」)
星の煌めきは、虹の煌めきが夜の闇から二人に届く。たぷん、と弧を描いた先、虹のたもとに向けて星の鯨が飛んだ。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
飛白・刻
千鶴(f00683)と
静寂を歩み辿り着いた先
それは辺りを包む様に
どこまでも眩く在った
触れられれば視えるか
言われるがまま共に伸ばそうとした、
そっと降ろされたその指先を追うて
納得をしてしまったのだ
望んだとてそれが本当に幸いかなど
己は己で解らぬと
心から望むそのものが
求め方それすらも
だから指を伸ばしきるは
あの虹に全てを視るは、まだ
それでも
ただ輝きを追うだけの
無邪気な猫としてならば
伸ばせるかも知れないなと
苦笑を返して
…千鶴はどこか
行ったままになりそうだな、と
どうしてそう思うたかは解らぬまま
それだから
預かった体温を、その聲を
今はただ出来うる限りに受け止めんと
今宵だけは何方の言葉もこの虹の帳に隠れるのだから
宵鍔・千鶴
刻(f06028)と
朽ちた神殿の石段へと登り
空を仰げば見たこと無い程の瞬く虹の光
星鯨は良いな、空を泳いで虹も作れる
…なあ、刻。一緒に触れてみようか
いつかの物語の猫達のように。
届くかは解らないけれど
天へと伸ばす指先は届く前に力なく降ろして
…こわい、
俺の望むものが視えてしまうことが
何を望むのか解ってしまうことが
だって見せてくれるだけで
手には入らない
こてん、と隣の彼へ何気なく身体を預けて
刻は、虹まで届いたか?
昔の猫達も宝物、見たかったのかな
何処かへ……いく……?
ミラ・ケーティーの虹を辿れるならふらっと行くかも、なんてな
誰かに幸せを願う方が余程良い
なんて、傲慢。
声を潜め今夜だけの秘密に、と請い微笑んで
月の無い夜に、冷たい夜の風が吹き抜ける。空の雲はとうに消え、長く続く石畳の階段を上がって行けば背の高い柱に支えられた神殿が見えてきた。一年に一度、開かれるだけの場所となったこの地には、それでも不思議と祈りの気配が残っていた。石畳の階段には紋章が残り、草木の彫刻が長い影をひく。
「これが……」
ほう、と吐息一つ溢すように少年の声が零れ落ちた。昏い瞳に夜の星々とーーそこにかかる煌めきが映る。
夜の虹。
星鯨ミラ・ケーティーの通る虹。
夜の空にかかる虹は、きらきらと輝いていた。星の煌めきを束めたような光の帯。だというのに、星の光とは少し違うとも思う。金とも、銀とも言えぬ煌めきは辺りを包むように何処までも眩しくあった。
「星鯨は良いな、空を泳いで虹も作れる」
空を仰いでいた宵鍔・千鶴(nyx・f00683)が、一歩遅れて階段を上がりきったこちらを見る。
「……なあ、刻。一緒に触れてみようか。いつかの物語の猫達のように」
届くかは解らないけれど、と落ちた声は静かに響いた。笑うような気配を僅かに残した千鶴の声に、触れるのか、と飛白・刻(if・f06028)は紡ぐ。
「触れられれば視えるか」
言われるがまま、共に手を空へと伸ばそうとしたそこでーーぱたり、と傍の指先が降りた。力なく、夜の空気だけに触れて落ちていった指先に小さく瞬いたのは一度きりで。
「……こわい、俺の望むものが視えてしまうことが。何を望むのか解ってしまうことが」
だって、と千鶴から落ちた声は揺れていた。絞り出すような声は、唇をひき結んで止めるにはもう足りない。
「だって見せてくれるだけで、手には入らない」
「ーー」
ふいに、刻は納得してしまった。
望んだとてそれが本当に幸いかなど、己は己で解らぬと。
「心から望むそのものが、求め方それすらも。だから指を伸ばしきるは、あの虹に全てを視るは」
まだ、と落とした声は風に揺れていただろうか。美しい銀の髪は風に揺れるまま、視界を攫う銀をそのままに、ただひとつ刻は息を落としていた。
幸いが、須く幸いであるとは限らない。
「それでも、ただ輝きを追うだけの無邪気な猫としてならば、伸ばせるかも知れないな」
苦笑を返す人に、千鶴はこてん、と身体を預けた。黒髪が揺れ、瞳を隠す。見上げずとも、構わなかった。今は。
「刻は、虹まで届いたか? 昔の猫達も宝物、見たかったのかな」
黒猫たちは何かを望んで手を伸ばしたのだろうか。それとも、きらきらと光るあの虹が、綺麗だからーー気になったから、手を伸ばしたのだろうか。
「……千鶴はどこか、行ったままになりそうだな」
「何処かへ……いく……?」
落とされた言葉は、問うた彼にも理由は分からぬままか。漸く、上げた視線が刻の瞳と出会う。
「ミラ・ケーティーの虹を辿れるならふらっと行くかも」
夜の虹を写す、煌めきを宿す瞳にそう言って千鶴は笑った。
「なんてな」
誰かに幸せを願う方が余程良い。
なんて、傲慢。
声を潜め今夜だけの秘密に、と請い微笑んだ。
「ーーああ」
応えは音となって響いたか。
預かった体温を、その聲を今はただ出来うる限りに受け止めんと、刻は肩にかかる重みに、生者の重さに瞳を伏せた。ゆっくりと、双眸をひらけば見えるのは満点の星空。夜の虹。かける鯨は跳ねたのか、虹の煌めきがたぷん、と揺れる。
今宵だけは何方の言葉もこの虹の帳に隠れるのだから。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
アルバ・アルフライラ
ジジ(f00995)と
ほう、夜に架かる虹とは面妖な…
これは調査する以外の道はない
往くぞジジ――目指すは星鯨の軌跡
文字通り従者の肩を借り天架ける虹の煌きへ
ただの虹とは異なると聞いておったが…不思議なものだ
少し手を伸ばせば、触れてしまいそうな
月の無い夜、空を泳ぐ鯨の伝承
鯨は何故新月の夜しか姿を現さぬのか
のうジジ、お前は如何思う?
ふむ、私と真逆の考えだな
…鯨は一際美しい星彩を皆に見せたかったのやも知れぬ
無論この謎に答えなぞないが
――折角だ、ジジも触れてみるか?
煌きに手を伸ばす姿を観察していると
ふと視線が合い目を瞬かせる
やれ、何を当然の事を言っておる
…それに当然の事を聞くでない
遊色湛うる双眸を指差して
ジャハル・アルムリフ
(2)
師父(f00123)と
祝祭で研究、とは
筋金入りの魔術師に首は傾げど
踊る好奇心は相似形
…承知
真昼の七色は
幾ら手を伸ばそうと届かずじまい
あの虹は逃げぬのだな、師父
…何故だろう
なれば、星が見たかったのやも
月のない夜に、暗闇の中に
一際輝くそれらを
師の見解に
だとしたら…鯨の気持ちが少し、解るやも
美しいものを見つけるたび
一番に見せにいった頃のよう
ふむ…こうか?
促されて無造作に虹へと手を伸ばす
瞬きのなかに見えるという宝を求め
目を懲らせど見出せず
如何したものかと肩に乗せた星を見上げる
――嗚呼、そうか
最初から見えていたならば致し方無い
うむ、宝が見えたぞ
師父はどうだ?
そう答えて
ふと、虹が揺れたのは気の所為か
石畳を叩く足音が、カツコツ、と軽快なリズムを刻み出したのは新月の夜に、星とは違う煌めきを見出したからだった。満点の星空に、緩やかに弧を描く階段は空へと挑むようであった。神殿地区の四方、守るように建つ尖塔は半数が失われ、残る半分も外殻に添う階段を途中で失っていた。あれでは、最上段までは辿り着けまい。ーーけれど、深き夜、煌く虹にはきっと届くのだろう。長く続いた階段を終え、辿り着いた踊り場から先、道を失ったアルバ・アルフライラ(双星の魔術師・f00123)は迷うことなく、平らな屋根へと飛び移った。
「師父よ」
「何をしておる、ジジ」
僅か、眉を寄せた姿は常であればジャハル・アルムリフ(凶星・f00995)よりはアルバのものであっただろうか。夜にかかる虹、その揺らめく尾を瞳に見つけた魔術師の心はひとつであった。
「ほう、夜に架かる虹とは面妖な……。これは調査する以外の道はない」
まっ平の家々は、神殿に纏わる者たちの施設だったのだろう。随分と補強された屋根へと先に足を進めれば、トン、と飛び移ってきたジャハルが僅かに首を傾げた。
「祝祭で研究、とは」
眉を寄せる訳でなく、ただ首を傾げたジャハルへとアルバは構わず言った。
「往くぞジジ――目指すは星鯨の軌跡」
星空を写す瞳に、隠しきれぬ好奇心は互いに変わらぬまま。トントン、と屋根の上を歩いて行けば塔へと向かうように煌めきが緩やかに弧を描いていた。
「ただの虹とは異なると聞いておったが……不思議なものだ」
従者の肩を借り、天架ける虹の煌きへと向かう。地区を渡るようにかけられた虹は、星の光を束ねたかのようだ。ほう、とアルバは息を漏らす。煌めきは星に似てーーだが、見上げた夜の空に見える星々とは何処か違う。色であれば金とも、銀とも言えた。キラキラと常に輝いているように見えた。
「真昼の七色は、幾ら手を伸ばそうと届かずじまい。あの虹は逃げぬのだな、師父」
「あぁ、そうだな」
不思議と、夜の虹には近づくことができた。大きな虹であるからかーーそれとも、この地に意味があるのか。
「月の無い夜、空を泳ぐ鯨の伝承。鯨は何故新月の夜しか姿を現さぬのか」
考えるように顎に手をかけ、アルバはジャハルへと声を投げた。
「のうジジ、お前は如何思う?」
涼やかな声は、上から届いた。肩に乗せた師父の問いかけにジャハルは考えるように夜の虹を見上げた。
「……何故だろう。なれば、星が見たかったのやも」
月のない夜に、暗闇の中に。
一際輝くそれらを。
新月の夜に見える闇は、深く、濃い。溶け込むような暗闇にあって、空には散りばめたように多くの星が見えていた。
満天の星空を渡るように、虹はかかる。
「ふむ、私と真逆の考えだな」
風が、吹いていたか。さわさわと揺れるアルバの髪が虹の煌めきを写し、手を添えた師父の声が耳に届く。
「……鯨は一際美しい星彩を皆に見せたかったのやも知れぬ」
「……」
その言葉に、ジャハルは小さく瞬き、ふ、と息を落とすようにして笑った。
「だとしたら……鯨の気持ちが少し、解るやも」
美しいものを見つけるたび、一番に見せにいった頃のよう。
ほんの小さな笑みであった。口元に乗せるだけの柔いそれに気が付いたか。無論この謎に答えなぞないが、と言葉を添えたアルバの手が、とん、と肩に触れる。
「――折角だ、ジジも触れてみるか?」
「ふむ……こうか?」
促されて無造作にジャハルは虹へと手を伸ばす。とぷり、と沈み込んだ指先。弾けるように煌めきが広がりーー瞬きのなかに見えるという宝を求めた。
「……?」
だが、見えてこない。
目を懲らせど見出せず、如何したものかとジャハルは肩に乗せた星を見上げ、気が付いた。
(「――嗚呼、そうか」)
最初から見えていたならば致し方無い。
すとん、と想いは胸に落ちた。煌めく虹を背に視線が合えば、ぱち、とアルバが瞬いた。
「うむ、宝が見えたぞ。師父はどうだ?」
「やれ、何を当然の事を言っておる」
軽く肩を竦めた師父の美しい髪が揺れていた。その瞳に映るのは、己か。煌めきは、見上げたひとのものか、それとも夜にかかる虹を映してか。
「……それに当然の事を聞くでない」
遊色湛うる双眸を指差して、悠然とアルバは告げた。たぷん、と波紋を描くように虹が揺れる。星の鯨、ミラ・ケーティーが跳ねたように煌めきが溢れた。二人の元へと。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
イア・エエングラ
シュエリエ/f18954と
夜天は尾鰭の跡を見上げほうと息ついて
隣のあなたへ微笑んで
今宵童話への手招きを
――僕らも游いで、みましょうか
そっと手を取り繋いだならば一歩
お伽噺の欠片を嘯き近づく七色の光
いつかあなたの聴かせてくれた
空ゆく鯨の子に似た星の鯨
ねえ、シュエリエ、どんな夢をみたいと思う?
こわい夢もあるかしら、お空の随分遠いから
でもね、きっとと握り直して
僕らふたりなら、こわくない
隣の青い眸を覗いたならば
広がるのは冬の海、見晴るかす夜天
おおきな星の鯨と灯る光を
あなたと二人で見下ろすならば
零れる感嘆と繋ぐ手に星が歌うようだと笑って
そうな、今夜鯨は星と咲うよう
――ええ、いつだって
星降る下で、逢いに来て
シュエリエ・カノ
イア(f01543)と星鯨の旅路を触りに
夜の虹とは…、綺麗なものだな
優雅に泳ぐ様も、とても綺麗だ
イアの笑みが混ざれば
これ以上のものはないだろう、と
心が震え
煌く彼の手を握って
いつか話した鯨
泣いてると雨が降り、楽しいと虹が出る
彼の星鯨のよう
御伽噺では、なかったのだな
虹に触れるのが少し怖い
心の奥底には見てはいけないものも
あるのだろう?
だが、そうだな…
イアの言葉は私を包むから
虹に触れ、隣の海色を見つめて
私はイアと星鯨と一緒に旅する夢がいい
行ったことのない見たことのない幻想的な世界へ
イア、鯨は泣いてないな
でも、まだ…
出逢った縁のように
イアの所で雨宿りさせてもらえるだろうか?
繋ぐ手に
微笑みに
願いを伝えよう
月の無い夜に星はなお煌めく。
深い藍色を抱く夜の空を、星々が埋めていた。散らばったその光で、明るいとさえ思う。石畳の続く通りは、緩やかに弧を描き神殿へと向かっていた。神殿地区は廃墟となって長く、だが、一年に一度、こうして夜にかかる虹と共に人々を招くからか深い眠りにはついてはいなかった。
建物は住う人々を失えば徐々に自らも死へと近づいてゆく。深い闇に沈み、眠りいくように。
だが、この地には未だ祈りの空気が残り、長く伸びた柱は丸い天井を支えていた。二度目の曲がり角を抜けた先、天井の残る通路はひとつ、二つと星の煌めきを通していた。落ちているところもあるのだろう。小さな穴から覗く夜空に吐息を溢し、二人進んできた道は踊り場で開けた。
「夜の虹とは……、綺麗なものだな」
そこにあったのは、星の煌めきを束ねたかのような大きな虹であった。星々の煌めきに似て、どこか違う。ほう、とシュエリエ・カノ(空鯨ノ唄・f18954)が零した吐息が白く染まった。金とも、銀とも言えぬ煌めきは時折、波打つように弾む。あれが、星鯨が跳ねた名残だろうか。
「優雅に泳ぐ様も、とても綺麗だ」
吐息を溢すような声は笑みを誘ったか。
尾鰭の跡を見上げほうと息ついたイア・エエングラ(フラクチュア・f01543)の瞳と出会う。
「今宵童話への手招きを。――僕らも游いで、みましょうか」
微笑み告げたひとに、シュエリエは小さく息を飲んだ。美しい夜の虹に、イアの笑が混ざればこれ以上のものはないだろう、とそう思ったのだ。
「ああ」
イア、と呼ぶ。心が震えるまま、煌めく彼の手を取った。
夜の風は二人の髪を揺らしていた。はた、はたと衣が靡けば虹の煌めきが映るよう。不思議と燐光を抱く風に、とん、とん、と手をつないで夜の虹へと近づいていく。石畳の道筋、踊り場は身を乗り出さずとも手を伸ばせば虹へと触れることができそうだった。
ふいに、思い出すのはいつか話した鯨。
泣いてると雨が降り、楽しいと虹が出る。彼の星鯨のよう。
「御伽噺では、なかったのだな」
唇から、零れ落ちた言葉と共にやわい笑みが落ちた。ほう、と息を溢すシュエリエに、なぞるようにイアがあの日に語った鯨の名を紡ぐ。
「空ゆく鯨の子に似た星の鯨。ねえ、シュエリエ、どんな夢をみたいと思う?」
「虹に触れるのが少し怖い。心の奥底には見てはいけないものもあるのだろう?」
夜の虹は、望むものを見せるという。
あなたが心から望むもの。けれど、そう、心から望むものが、あなたの望むものとは限らない。
「こわい夢もあるかしら、お空の随分遠いから」
でもね、きっと、と握り直しされた手にシュエリエは顔を上げた。
「だが、そうだな……イアの言葉は私を包むから」
「僕らふたりなら、こわくない」
イアの言葉に、微笑んでシュエリエは笑った。
二人、手を繋いだまま、夜の虹に触れる。空へと手を伸ばすようにして、つ、と触れれば光の中に指は沈んで。目を見合わせるようにした瞬間、リン、と鈴の音と共に光が、一面に広がった。虹の光。夜の虹が持つ不思議な煌めきが、やがてゆっくりと線を結んでいく。
「ーー」
隣の海色を見つめ、そこに、シュエリエが見たのはイアと星鯨と一緒に旅をする姿。行ったことのない、見たことのない幻想的な世界へ。
「イア」
「ーー」
呼ぶ声に、イアは小さく息を飲んだ。ほんの小さく、見せた驚きは夜の風と煌めきの中に消えて、イアは隣のひとを見る。その青い瞼を覗いたならば広がるのは冬の海、見晴るかす夜天。
「おおきな星の鯨と灯る光を、あなたと二人で見下ろすならば。零れる感嘆と繋ぐ手に星が歌うようだ」
微笑んで見た先、虹の見せた光景は二人つながり合う。
「イア、鯨は泣いてないな」
「そうな、今夜鯨は星と咲うよう」
柔く告げたイアの声に、でも、まだ……、とシュエリエは言葉を紡ぐ。夜の虹。その煌めきを瞳に映しながら。
「出逢った縁のように、イアの所で雨宿りさせてもらえるだろうか?」
繋ぐ手に、伝えられるように届いたシュエリエの願いにイアは微笑んだ。
「――ええ、いつだって。星降る下で、逢いに来て」
とぷり、と煌めく光の中、虹が揺れる。星の鯨が泳いだのか。歌うような声だけは聞こえぬまま、それでも大きな尾が遊ぶように夜の虹を揺らしていくのを二人で見る。
ミラ・ケーティーと夜の虹。
願いと祈りの地で、結んだ約束と共に。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵