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明日の荒野に実りあれ

#アポカリプスヘル

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#アポカリプスヘル


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「皆様、お寒い中お集まり頂き誠にありがとうございます」
 メイド服の女はスカートの裾を摘んで優雅に一礼すると、その澄ました表情をニッと崩して自前の旅行鞄の上にどっかと腰を降ろし、脚を組んでグリモアを展開した。
 仕事の話だ。これ以上なく分かりやすい振る舞いに、猟兵達はその不作法を咎めない。
「アポカリプスヘル……耳の早いモンならもう知っとるやろ、例の新世界や」
 ニヤニヤと笑いながら、グリモアを回転させ早々に転送準備を始めながら話を進めるメイド――フェイ。
「読んで名の通り、文明らしい文明はぜーんぶ吹っ飛んでもうた"終わりかけ"の地獄みたいな世界なんやけどな。まあ人っちゅう生きモンは逞しいもんでなんとか立て直そうと頑張っとるわけや」
 復興のため、生存のために闘う人々は多い。遠からず彼らの中に猟兵として目覚め、ここに訪れるものも居ることだろう。そういう彼らの生き抜くための努力に豊かな他の世界から上手いこと噛めば大儲け……とは、世界の仕組みが許してくれない。
 故に彼らは可能な限り彼ら自身の力で世界を立て直さねばならないし、猟兵もその補助に徹さねばならないのだ――と、いうところで本題である。
「ほんでそのアポカリプスヘルの荒れ地の真ん中で農業やろかっちゅう計画が在るらしいねん。自分らで耕して自分らで植えて自分らの食い扶持を作る。ええ心意気やな」
 せやけど。フェイはその試みがうまくいかないのだと表情を曇らせた。
「何しろ素人の集まりが手本もなしにいきなり農業に挑むんや。耕しもせんといきなり種だけ埋めてみたり、水加減も多すぎ少なすぎっちゅう具合にまあ失敗まっしぐらの雑っぷりでな。これは農業知識やら何やらの継承が出来とらへんからやねん」
 文明崩壊後、オブリビオンに抗い今日を生き延びるために全力を傾けた人類がその後の復興に際して必要となる知識の保存にまで余力を割くことが出来なかったことを攻められはすまい。そうしなければ、試行錯誤しながら農業に挑む今日ですら訪れなかっただろうから。
「まあトライ・アンド・エラーで正解を見つけていくっちゅうのも必要なことではあるんやろうけど、そんな悠長なこと言っとられへんくらいには世の中逼迫しとるさかい、ぱぱーっと行って手助けしたってくれへんか」
 フェイの言うところでは、作物自体は奪還者がかつての研究所あたりから回収してきたなんか凄いバイオテクノロジー的なやつの産物であり、適切な世話さえしてやれば数日で最初の収穫が可能になる改良種らしい。
 つまり猟兵が畑を耕したり、水路を引いたり――そういった農業の基礎を人々に伝え、しっかりとした農地として成立させさえすれば人々は安定した食料供給手段を得られるということである。
「それとな、成功しても失敗しても、この農業始めたっちゅう噂聞きつけて破落戸どもがタカって来よるねん」
 ならずもの、いわゆるレイダー。壊し殺し略奪してゆくオブリビオンに成り果てたクズども。
「農地つくるついでに防御設備とか用意したってもええかもしれんな。凝ったもん作るんは難しいかもしれへんけど、堀とか塀とかでもいくらか違う思うで。そんでノコノコ出てきよったそいつらを蹴散らして来たったらミッション完了や」
 幸いにも相手は弱小の野盗集団、頭さえ叩き潰せば壊滅するだろう。そうすれば報復の心配などもないとフェイは獰猛に笑う。
「ほな――皆様のご武運を、わたくしはここから祈っております。幸運を」
 ひょい、と立ち上がり背筋を伸ばしたフェイの手の中で回るグリモアのドラムが777を揃え、迸る金色の煌めきが猟兵たちを新たなフロンティアへと送り出した。


紅星ざーりゃ
 こんにちは、紅星ざーりゃです。
 年末も年末にやってきました新世界、これこれこういうのほしかったんだよ。

 というわけでアポカリプスヘルでのシナリオとなります。
 第一章はバイオ・サクモツを育てようとする開拓者たちのサポート。農業の「の」の字も知らない彼らに畑の作り方を教えてあげましょう。
 バイオ的な改造を施されているため実る物は不明ですが、猟兵のみなさんが種や苗を選別することである程度予測できるかもしれません。
 環境や育て方に適した作物を選び、続くレイダー襲撃に備えながら開拓者と交流をするターンです。

 第二章~三章はレイダー襲撃、つまり戦闘となります。
 ヒャッハーしてくるので撃退しましょう。とはいえ多少インテリジェンスな野盗ですので、相手を蛮族だと侮ると思わぬところで苦戦するかもしれません。
 放っておけばいずれ農地がひどいことに成るのでここで殲滅してください。

 それでは皆様のプレイングをお待ちしております。
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第1章 日常 『農業支援』

POW   :    荒れ地を耕したり、瓦礫を撤去して農地となる土地を整備する

SPD   :    用水路を引いたり、たねや苗を準備して農業を始める準備を整える

WIZ   :    人々に作物の育て方を教えるなど、必要な教育を施す

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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

数宮・多喜
【アドリブ改変・絡み大歓迎】

荒野ばかりの新世界、ってか?
ここで畑を作ろうってのも凄いもんだね。
アタシもそう農業の知識なんてないんだけどな、
文明の利器、って奴は多分通用するだろ。
スマホをこの世界に適応させて、
『世界知識』からこの世界での作物の育て方を『情報収集』する。
その上で【超感覚探知】の網を広げ、
農作業をしようとする開拓者の皆に
今集めた役立つ情報を即座に広めるよ!
そうすりゃ、邪魔者が来る前に少しでも作業を進められるだろ。
心折れそうな奴がいたら、
発破をかけて『鼓舞』するよ!


シャルロット・クリスティア
なるほど……物だけでなく、技術も失われてしまえば、手探りになるのも道理、と言うものですね……。
私の故郷も豊かだったとは言い難いですが、それでも農耕はそれなりにやっていましたし……手伝えることがあればいいのですが。

荒地か……乾いた、水はけの良い土地のようです。
ジャガイモ類はそれなりに育てられそうですね。……ありますよね?
まずは土を耕して柔らかくしつつ……少し日に当てて、目が出た種芋を植えて行きましょう。
深く植えすぎると芽が出にくいので気を付けつつ、育って地面から出てきそうになったら土を寄せて隠すように。
腐りやすいので水は少なめですよ。

……余裕があったら柵の一つも作っておきたいところですが、さて。


サリー・オーガスティン
■POW
農機具を持ってくるわけには行かないから、ここは単純に「力」に頼ろう
(人馬一体 発動)

■開拓者サポート
(地形の利用、情報収集、コミュ力使用)
最初はあまり肥料を必要としない作物から初めて、徐々に肥沃にさせる方がいいかも、ですね

芋とかソバとか、トマトとか……バイオ作物のなかから、それっぽいのを探しておこう。
(熟れすぎたとか、収穫後の枝葉とかを堆肥化させるのを伝えておく)

耕したり瓦礫を撤去したりは、「人馬一体」の得意とするところ。
一気に農地をこしらえてしまおう!

※アドリブ・連携歓迎
※記載無き事項や矛盾点は、お任せとします。


エル・クーゴー
●WIZ



躯体番号L-95、アポカリプスヘルに現着

>“農業知識の啓蒙”
タスクが設定されました
適宜支援を開始します


電脳世界、展開
作付予定のバイオ・タネモミ_及び_バイオ・ナエ等の構造情報へ侵入(ハッキング)、成長後の態様を分析します

同時に――コール、ウイングキャット『マネギ』(羽生えたデブ猫をマックス305体召喚)
耕作予定地周辺へ展開、周辺地形や土壌性質を調査し(撮影+情報収集)、収集データをアーカイブに照合、適切な耕作方法をピックアップします

マネギ達を上空へも送り出し、気温・湿度の他、大気の状況も精査
今後の農作業のスケジューリング円滑化を期し、この一帯の気候変動のシミュレーション結果を提出します


アイ・リスパー
「ここが新世界……
機動戦車が活躍できそうな世界ですね!」

期待に胸を膨らませつつ機動戦車オベイロンに乗ってGo!

「皆さん、農業のことなら任せてください」

【チューリングの神託機械】で万能コンピューターに接続。
農業のやり方を検索して現地の人たちに伝えましょう。

「なるほど。
農業では土地を耕すことが重要なのですね。
ではオベイロン、ささっとお手本を見せてください」

戦車に耕作機を着けて畑を耕しましょう。
オベイロンが嫌々やってるように見えるのは気のせいですよね。

「あとは防御設備ですね。
資材が必要でしょうか。
オベイロン、よろしくお願いしますね」

オベイロンに柵を作るための木材の運搬をさせます。
嫌々やってる(以下略


アリシア・マクリントック
農業は土地活用の基礎ですからね。私にも簡単な知識はあります。
場所が決まっているというのであればまずは土作りからです!植物も生きています。つまり、人と同様に水と食料を必要とします。植物にとっての食糧とはつまり……土です!土とは植物にとっての家であり食料なんです。
というわけでまずは土を耕しましょう。農地にする場所を膝くらいの深さまで掘り返して、土を一箇所に纏めてください。次に纏めた土から大きな石を取り除いたり、固まった土をほぐしてください。そこに植物を燃やした灰や骨を砕いたものを混ぜたら元の穴へ戻してください。
簡易的なものではありますが、これで快適で栄養のある植物のおうち……土の完成です!


レナータ・バルダーヌ
たった数日で収穫できる作物なんて羨ましいです!
ダークセイヴァーに持って帰ったらダメでしょうか?

せっかくいい作物があっても畑がなければ始まりませんので、土を耕すお手伝いをします。
この世界なら農業機械も存在するでしょうけど、廃墟から回収するのは大変そうですし、手元にあっても多くはない気がします。
ここは古典に立ち返って、わたしの牛車についているような車馬鍬を作りましょう。
わたしはモーさん(飼っている牛)に牽いてもらいますけど、自動車などに取り付けたらもっと効率がいいと思います。

あ、もし時間があれば畑の隅にこっそりゴボウも植えます。
わが家のご先祖様が改良を重ねた種があるので、たぶん荒地でも大丈夫です。


スピレイル・ナトゥア
農作業のことはよくわかりませんが労働力なら私に任せてください!
お姉様に良く汎用性の高いユーベルコードだって言われている私のゴーレム召喚で、畑を耕したり水路を引いたりします

サムライエンパイアの世界での田植え作業の経験を活かします
だけど、農作業についての知識はないので、農作業については誰か他の猟兵の方に教えてほしいです

この荒野だらけの世界が正しい方向性に進めるように見守り、導くのが私たち猟兵の使命です
いつか『あんな辛い時期もあったね』ってみんなで笑いあうために、明るい未来を迎えるために今日もみんなで力を合わせて頑張りましょう!
いつの日にか平和になったアポカリプスヘルの世界で観光を楽しみたいものです


フィーナ・ステラガーデン
農業・・?なんて読むかわかんないわね!
お腹が空いてるならその種籾を食べれば良いんじゃないかしら!
植物の育て方とか私はわかんないわよ!

仕方ないわね!
mobと一緒にクワを持って
魔女帽子を赤いリボン付き麦わら帽子に替えてえっちらほっちら耕すとするわ!
何か他猟兵が指示してくれるなら
ぐだぐだ言いながら、場合によって突っ込みを入れながらも従うただの1労働者として動くわ!

ところでお腹が空いたわね!!
(アレンジアドリブ連携大歓迎!)


セラエ・プレイアデス
はいはいはい!農業って何!?
食べ物が出来るの!?なにそれ新手の超能力!?

って事でボクその辺の知識ないから、知ってる人に教えてもらいながら畑を耕す?作業とかを行うよ。
ボクの偽神兵器はでっかい鉤爪だからね、土ほじくり返すにはちょうどいいんじゃないかな。

自慢だけど要領は良かったり手先は器用なほうだと思うから、他の作業も一回教えて貰えばガンガン進められると思うよ。
他の開拓者に教えたり言葉にするのはちょっと苦手だけど、やってるのを見せるのはできるんじゃないかな。
あ、お礼は食べ物でいいよ!
良い寝床を貸してもらえるともっと嬉しいな!


レッグ・ワート
根性あるのはありがたいね。仕事の余地がある。

俺は用水路作りの手伝いに。先ずは管理方と話して情報収集。地質や天気に水周り諸々、画像や測定値があれば貸して貰えるかきいてみる。無ければ迷彩起こしたドローン低めに飛ばしてざっと地形だけでも値とるよ。どちらにせよ、ドローンは宇宙バイクに防盾つけるついでに組込んで、情報とのズレや進捗確認しながら作業を進めるぜ。
そんじゃ、ゴッドスピードライドでさくさくいこう。防盾の形状をドリルに変えてトンネル掘り紛いだ。農業船とエンパイアの田畑の記録を参考にするが、周回が利く作物だって話だしあんま広く無くても良さそうだな。余裕あったら物騒が軽率に寄れないように掘でも作るか。




 見渡す限りの荒れ果てた野。かろうじて茶色い草の成れの果てが風にそよぐ他は、青空の下ひび割れた黄褐色がひたすら地平の彼方まで続くその世界に猟兵たちは降り立った。
 きょろきょろと辺りを見回せば、砂に埋れかけたアスファルトの先にかつてガソリンスタンドだったのだろう、錆びついた看板と壁のない柱と屋根だけの大きな建物、それに併設された小さな事務所が見える。
 営業を終えて久しい風化したスタンドには、キャンピングカーやバンに間に合わせで薄っぺらな鉄板を溶接したような装甲車モドキが数台停まっていて、その周囲にはまばらに人影が見える。
 まさかいきなりレイダーに鉢合わせということも無いだろうが、と警戒だけは怠らずに近づく猟兵たち。その接近に気づいた人影たちも、こちらを警戒しているのか鉄パイプででっち上げた先込め式の鉄砲や朽ちた木の棍棒を手に、緊張で身を強張らせて様子を伺っている。
 ファーストコンタクト。そのコミュニティとの初の接近遭遇は、猟兵たちを腕利きの奪還者だと誤解――まだ猟兵という概念が広まっていないのだろう――した彼らの都合のよい解釈と、その認識に上手く話を合わせた猟兵達の機転によって友好的に進んでいった。
 どこぞの遺構から都合よく農作業の道具や知恵を引き揚げてきた奪還者の一団が同じく農業に挑む自分らを手助けしに来てくれたのだ――代表として猟兵たちに誰何したコミュニティのリーダー、タヤマと名乗る東洋風の擦り切れたスーツの中年男はコミュニティの面々に異邦人をそう紹介し、かくして猟兵はコミュニティへと迎え入れられた。
「やぁ、苗や種は買えたんですがね、誰も育て方がわからんかったのですよ。あんた方が来てくれて本当に助かった。お礼は……作物が実ったら、そいつでうまい飯でもどうです?」
 世界がこんな風にならなければ、出張が終わって国に帰れば脱サラして田舎で農家をしながら小さな食堂をやるのが夢だったと笑うタヤマに連れられガソリンスタンドの敷地に踏み込む猟兵達。
 ほんの数人ばかりのコミュニティの人々も半信半疑ではあるが、人のよさそうなタヤマが彼らを宥めれば気まずそうに猟兵たちに会釈する。
 これ以上の信頼は働きで勝ち取らねばなるまい。猟兵たちは気合を入れて、彼らが開墾しようと試みている荒れ地――スタンド裏手のひび割れ乾ききった、他となんら変わりない不毛の大地に挑む。



「荒野ばかりの世界で畑を作ろうってのも凄いもんだね」
 まずは計画だ。何事もしっかりとした計画のもとでこそ成り立つ。
 多喜とエルはスタンドの事務所の屋上から、農地の予定地を見下ろしていた。
「いやぁ、最初の頃は町中で缶詰やら干物やら、日持ちのする食料を漁っとったんですがねえ」
 そういう味が良く、栄養価がよく、数の限られた食料というものは奪い合いになる。遺された食料の数が減っていくに連れてレイダーじみてきた他のコミュニティとの衝突を避け、タヤマの一行はこの不毛の荒野に一足先に疎開してきたのだという。
「ただでさえオブリビオンどもがウロウロしていて恐ろしい世の中になっちまいましたからなあ。このうえ人間同士で食い物の奪い合いなんてとてもじゃないが」
 ぶるぶると身震いして我が身を抱いてみせるタヤマにうなずく多喜。
「その判断が間違いじゃなかった、って思えるようにあたしらも手伝うよ。さてと……」
 多喜が取り出したのはスマートフォン。農業知識を都合よく持ち合わせているわけではない彼女にとって、文明の利器の力を借りて知恵を集めるのは当然の帰結だ。
 だが、それを見てタヤマが怪訝な顔をする。
「携帯ですか。どこの都市生存圏から来なすったか知らんですが、この辺はラジオもやっとで電波なんてとてもとても」
 流石に荒れ地まではソーシャルディーヴァ様も来なさらんですよ、と諌める彼に、まあ見てなよと多喜。
「躯体番号L-95、アポカリプスヘルに現着。
 >“農業知識の啓蒙”
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 スマホを弄る多喜の傍ら、タヤマから借り受けたバイオ・タネモミやバイオ・ナエを手のひらの上に乗せじっと見つめていたエルが言の葉を紡ぐ。
 成し遂げるべきを決めたならば、彼女はそれを為すべき最善を見出すことに特化している。電脳世界を展開すれば、電子化したそれらの組成やそこから予想される成長後の態様を瞬時にデータとしてまとめ上げ、育成マニュアルを構築する電子の申し子。
 それだけではない。むぎょりと肉を波打たせてポップした、けったいな顔つきの白いデブ猫――その背には鳥あるいは天使よろしく一対の翼を持つ――マネギを召喚した彼女は、そのデブ猫を……どんどん呼ぶ。屋上から零れ落ち、身体の割に小さい翼で必死にぱたぱた飛翔するマネギの大群。そんな呼ぶ必要ある?
「肯定」
 あるならしょうがない。そのマネギの群れが農地の周辺へと繰り出してゆく。
 土を前足でほじくり返してみたり、とてとてと歩き回って地面の亀裂に挟まってみたり、腹を上に向けて心地よい陽光にくねくねと身を捩って日向ぼっこしてみたり……遊んでいるように見えるが、マネギはこれで土壌に含まれる成分や性質、周辺の地形、果ては大気の状態、気流や雲の発生状況を収集しているのだ。
 そういったデータが集まれば、過去エルが他の世界で収集したデータやアーカイブを元に適切な土壌改善プログラムや向こう数カ月間の気候変動の予測データを織り込んだ完璧に計算され尽くしたスケジュールも完成する。
「推奨される農業マニュアルおよび気候変化に対する対処法、またそのスケジュールを作成しました。これにより今後の農作業の円滑化が期待されます」
 わずか数分で失われた農業の基本を蘇らせ、事も無げにそれを告げるエルに絶句するタヤマ。
「こりゃまた……ディーヴァ様とは違うようですな。驚いた」
「あたしらは色々と特別製ってね。サンキューなエルさん。マニュアル、ありがたく使わせてもらうよ」
 そしてエルから送られた「バイオ農業のすゝめ.pdf」ファイルをスマホにダウンロードし、文書が問題なく閲覧できることを確かめた多喜が梯子を滑るように屋上から降りてゆく。
「肯定。作業の効率的な進行のためにマニュアルの積極的な活用が推奨されます」
 マニュアルを多喜に託し、自身はマネギたちとともにスケジュール表の作成に取り掛かったエル。
 智慧は蘇った。次は技術と、実践だ。


「と、いうわけでこの通りにやればなんとかなるはずだよ」
 スマホの画面を開拓者たちに見せて回る多喜。
 わかりやすく示されたそれにやる気を出す者がほとんどだが、中には都市部から脱出してきたことを公開しているような者も居る。
 農業なんて無茶だ、残飯漁りになったとしても労せずすぐ食える保存食のある都市部のほうがやはり良かったのではないかとぶつくさ言うようなひねくれ者もやはり中には居るものである。
「アンタねえ、まだそんな事言ってんのかい。殺し合いしてまで少ない飯を取り合うのが嫌でタヤマさんに付いてきたんだろ、だったらいい加減腹を括って働きな! 働かざる者食うべからずって言葉があるんだよ。それとも今から歩いて街に帰るかい?」
 ばしんと背中を叩かれ、卑屈な目を真っ直ぐな視線で射抜かれた青年はモゴモゴと口の中で何事かを呟き、小さな声でやるよ、やりゃいいんだろと言い返す。
 多少反抗的だが、それが原動力に成るならそれもよし。
「おう、がんばんな! 精一杯汗を流せば絶対に美味い野菜が実るからさ!」
「わ、わーったよ。何回も背中叩くなって、姐さん! いい加減いてーよ!」
 多喜から逃げるように鍬を手に取って農地に駆けてゆく青年。そこへ入れ違いに白髪の小柄な少女が訪れる。
「ふーっ、ようやく農業のやりかたを網羅しましたよ! 私とチューリングの神託機械に掛かれば農業なんてすぐに完璧にマスターできます!」
 皆さん任せてください、さあ今から全て細かく指導してあげますよ! ドヤァと擬音の見えるほどの完璧なドヤ顔で胸を張る少女、アイ。
 彼女の前にはひたすらの荒野。開拓者たちは皆エル作成のバイオ農業のすゝめ.pdfを書き写したメモを手に農地へ行ってしまった後だ。
「あー……悪いね、もうそれ教え終わった後なんだよ」
 申し訳無さそうに多喜が手を合わせてぺこりと拝む。
「……………………?」
 無言でそれをじっと見て、それから頑張って書き記した手書きの農業ハンドブックを見下ろすアイ。
「………………………………そ、」
「そんなのって無いですよぉーっ!?」
 アイの絶叫が荒野の青空にこだまする。


「うぅ……頑張ったんですよ?」
 しくしくと滲む涙を袖で拭うアイ。
 しかしまあ、無駄ではなかったのだ。アイの知識は今、この場に居る者たちの中でも最も広範に渡って農業関連を把握している。
 それはただ土を耕し、水を引き、雑草を間引く手段にとどまらない。
 給油スペースに陣取ったアイの指示の下、選抜された数名の手先が器用な開拓者たちが挑むのはトラクターの製造だ。
 このスタンドに放置され朽ちゆく誰かの車や、そこらに転がっている野良戦車の亡骸。ついでにここまで彼らを導いてくれた車のエンジンなどを組み合わせ、農業をより円滑に進めるための機械化というプロセスにまでアイは挑んでいた。
 土を混ぜ合わせて土壌を柔らかく、作物が根を張りやすいように。水はけもよく、巻き込まれた有機物が迅速に分解されることで栄養価の高い土になるように土を耕すのは農業の基本だ。
 それをエンジン駆動によって回転するブレードで自動化することができれば、農業の効率は遥かに向上しより大規模な農地の作成が可能となるだろう。
 自身が調べた知識を元に戦車ベースのトラクターを組み立ててゆく開拓者達の背中を眺め、そういえば昔何処かの世界では戦車をトラクターと偽って条約をごまかし密造した国があったらしいなどと想いを馳せ――それによって滅茶苦茶嫌そうな感じを醸し出す愛機、機動戦車オベイロン(トラクター仕様)の抗議するような砲塔旋回を黙殺するアイ。
「いいですか皆さん、土地を耕すのが農業の基本も基本。これが最初にして作物の出来を左右する最重要ポイントなのです。ではオベイロン、ささっとお手本を見せてください」
 えーホントに行くの? と言いたげに動作の重いオベイロン。
「何を躊躇うんですかオベイロン? 嫌々やってるように見えるのは気のせいですよね?」
 笑顔で圧を掛ける――なお本人は本当に気のせいだと思っている――主に押し出されるように農地へ前進するオベイロン。
 そこに待ったを掛ける声がある。
「待ってくださいアイさん」
 声の主は、袖を捲くりスカートを短く結わえ、令嬢なれども快活な装いのアリシアだ。
「まだ大きな石も取り除いていない農地にトラクターなんて乗り入れたら壊れてしまいますよ。まずは人力である程度耕してから機械でやりましょう。だから待っていてください、ね?」
 背中に括り付けた袋にそこらで毟ってきた雑草をパンパンに詰め、なんだかわからない巨大な動物の骨を咥えたマリアがわふと吼えれば、オベイロンは砲身を上下してそれに同意する。
「む……確かにせっかく作ったトラクターやオベイロンの耕耘装備が壊れるのは困りますね……分かりました、終わったら呼んでください。さあオベイロン、私達はお呼びがかかるまでレイダーの襲撃に備えられる防御設備を作りますよ! まずは柵からです!」
 それは戦車の仕事ではないのでは、と訴えるようにイヤイヤと砲塔を左右に旋回させながら引っ張られてゆくオベイロン。
 その後姿に苦笑しながら、アリシアとマリアは農地の方へ歩いてゆく。


「農業は土地活用の基礎ですからね、私にも簡単な知識はあります」
「のう……ぎょう……? なにそれ知らないわね! お腹が空いてるならその種食べればいいんじゃないかしら! 茹でればいけるでしょ!」
 貴族として領地を運営していく上で、農業とは切っても切り離せない存在である。
 貴族令嬢であるアリシアも未来の領主として、領民の農業に多少口出しできる程度には知識を学んでいた。
 エルのマニュアルを元にしながら、領民から聞き上げた経験や知恵を交えて講義しつつ実践を見せようとしたアリシア――の元に現れた赤い破壊王。
「植物の育て方なんて私はわかんないわよ。お腹が空いてるのに我慢するなんて変だわ!」
「まあまあ。その育て方を今から教えて差し上げますから。それに、これが育って実ればこの何倍もお腹いっぱいになれますよ?」
 野生丸出しで並べられた種を見つめ、土鍋をお玉でカンカンカンする破壊王ことフィーナを窘め、アリシアは種が喰われないうちに慌てて話を進める。
「マニュアルにもありますが、まず重要なのは土作りです。植物も生き物、つまり人と同様に水と食料を必要とするのです」
 その食料というのが土だ。植物は土を寝床とし、土を糧に生きる。その土が悪ければ、どんなに素晴らしい植物でも充分に育つことは出来ないだろう。
「やわらかく栄養価の高い土にするためには土を耕すのが重要なのです」
 膝くらいまで掘り返し、大きな石を取り除く。塊になってしまった土は砕かねばいけない。しかしそれでも見たところこの土壌は栄養価に乏しそうだ。
「じゃあダメじゃない! どうするのよ。やっぱ種を茹でて食べるしか……」
 じゅる。
「食べません。そこでこの草と骨の出番です。草を燃やした灰や骨を砕いた粉を土に混ぜることで、簡易的ですが栄養のある土壌が出来るのです」
 マリアが自慢げに集めてきた草の袋と骨を開拓民たちの前に下ろせば、アリシアはフィーナに目配せする。
「分かったわ、任せなさい! 消し炭に――」
「消し炭にならない程度でお願いします!」
「……しょうがないわね! ちょっとだけ燃えなさい!」
 わいわいと騒がしい中、フィーナの炎が草を燃やす煙が細く空へとたなびいていく。


「まったく本当に仕方ないわね!」
 そもそも魔女はこういう肉体労働をする側では無いはずだ。
 百歩譲って実った作物から薬を作ったりする側で――フィーナにそれらの知識がどこまで備わっているかはさておき――あるはず。
 魔女の三角帽子を麦わら帽子に被り替え、アリシアよろしく袖と裾を結わえて土埃に塗れながら掘り返した土を解す彼女は、ブツブツと文句をいいながらも割合と真面目に農作業に勤しんでいた。
 農業なんてわからない。それでも頑張る人々の力になりたい。そういう想いを胸に集まった猟兵は、何も彼女だけではない。スピレイルもまた、自らの提供できる労働力が助けになると信じて駆けつけた猟兵の一人であった。
「結構な重労働のようですね……大丈夫です、私に任せてください!」
 精霊に仕える巫女姫として、彼らとの意思疎通はお手の物。こんな荒れ果てた世界でも精霊というのは探せば居るもので、彼らに肥沃な農地を約束し協力を取り付けたスピレイルによってこれから掘り返される予定の土が大きなヒトガタに練り上げられる。
 精霊を宿したゴーレムだ。人間の何倍もパワフルで疲れることを知らない精霊の土人形がのそのそと起き上がると、素手で大地を掘り返し、少し離れた――それでも人間の手で掘り進むとなると数週間はかかるだろう水源地までの水路をものすごい速度で造成してゆく。
「サムライエンパイアでの田植え経験が役に立つといいのですけれど……」
 あの水田に水を引くための水路の構造を思い出し、精霊にそれを伝えて同じような水路を作ってもらう。実際に水田にする区画を作るのかはさておき、水が近いのは何をするにも良いことだろう。農作物に限らず、人だって水を飲まねば行きていけないのだから。
 そんな風にゴーレムを操る彼女をじっと見つめる目がふたつ。フィーナだ。
「な、な……なによそれ! 私にも一つ貸して頂戴!」
 重い鍬を振り回すなんて慣れない動きに普段使わない筋肉をフル稼働させたフィーナの腕はもはやプルップルだ。生まれたての子鹿よろしく震える腕をゾンビのようにスピレイルに向け、汗と泥に汚れ、労働から来る空腹でこれまたゾンビめいた顔で労働力の貸与を求める赤い魔女。
「ひぇ……っ。わ、わかりました。み、みなさんも困ったことがあればゴーレムに申し付けてくださいね……!」
 開拓者たちの返事を背に、死霊術師である彼女をして死霊と区別が付かない飢えた赤魔女から逃げるスピレイル。
 多数のゴーレムの投入で瞬く間に水路が引かれ、土壌から不純物が除かれてゆく。


 ゴーレムたちが順調に農地を作り上げてゆく。
 埋まっていた石や岩、不発弾の撤去から、農道の形成――かつてあの侍の国で見た長閑な農村の再現が完成してゆくにつれて、それを見つめていたスピレイルの目に慈愛の色が浮かんでゆく。
「この荒野だらけの世界が正しい方向に進めるように見守り導くのが私達の使命です」
 滅びに負けず、逞しく生きる人々が再び豊かな世界を再建出来る日が来るように。猟兵はあらゆる場で彼らを守り、導いて戦ってゆかねばならない。
 そうすればこの人々はきっと、滅び去っていった栄華を取り戻すだろう。
「ええ、今は物も技術も失われてしまって、手探りで色々と試さないといけないような状態ですが……きっとあの人達は正しく進んでくれますよ」
 ふぅ、と額に浮かぶ汗を拭って、芽の出た種芋を詰めた麻袋をどさりと地面に置くのはシャルロットだ。
「私の故郷も豊かではありませんでしたが、皆で協力してそれなりに農耕をしていました。だからここの皆さんもきっと、この試みを成功させてくれます」
 シャルロットの目に宿る光は、人間を信じる強い意志を秘めている。
 彼女がここまで信じるのであれば、きっとその通り彼ら開拓者は素晴らしい農園をここに作り上げることだろうとスピレイルにも信じられた。
「いつか“あんな辛い時期もあったね”と皆で笑いあえる日々を、明るい未来を迎えるために力を合わせてもうひと頑張りしましょう!」
「はい、あとひと頑張りです。明るい未来のために!」
 気合を入れ直し、麻袋を担いで二人は畑へと駆け出してゆく。


「これはおそらくジャガイモです」
 緑色の芽が出た薄黄色い塊を手に、開拓者たちの前に立つシャルロット。
「バイオなんとかの加工が施されているらしいので厳密にジャガイモかというと微妙ですが、エルさんの解析結果を見ても八割ジャガイモなのでジャガイモとして栽培しましょう」
 何しろたった数十分日に晒しただけでニョキニョキ芽が出たくらいだ。これ食えるの? って思わなくもないが、芽に毒素は無いらしい。(エル調べ)
 ならまあ保存も問題なかろうということで、シャルロットは皆がゴーレムやトラクター、あるいは人力で耕した最初の農地にこれを植える事を提案したのだ。
 ジャガイモ類は素晴らしい作物だ。多少痩せた土でも育つし、年に何度も収穫できる。
 穀物として主食にもなるし、おかずにも便利。調理のバリエーションは多岐に渡り、また地中に結実するということで獣害や鳥害を受けにくい。
「という風に非常に優れた作物なので、最初に植えるのに最適です。腐りやすいので水を少なめにしないといけない……裏を返せば水分をあまり必要としないのもこの辺りの土地に合うと思いますので」
 マニュアルにない、実際の経験を元にした指導は開拓者たちにも説得力をもってすっと馴染んでゆく。
「これで食べ物が出来るのかぁ。なにそれ新手の超能力!?」
 そんな開拓者に混じって大はしゃぎで土を盛り、畝を作って種芋を埋めてゆく、どこか少年のような美女。
 セラエだ。この世界出身の猟兵である彼女は鉤爪型の偽神兵器で人の手やスコップを上回る速度で畝を作り上げ、爪先で器用に種芋を等間隔で埋めては早く実らないものかと期待に輝く瞳で畝を見つめていた。
「超能力じゃないですよ、技術と……あとは植物の生命力、でしょうか。ああ、そこ深く埋め過ぎです。もう少し浅くないと芽が地上に出て来きれないので」
「はぁーい」
 シャルロットがテキパキとアドバイスを飛ばし、セラエが素直に正確にそれを実践する。
 そうして具体例を見せられれば、開拓民たちも図解よりうんとわかりやすくジャガイモ栽培のノウハウを学ぶことが出来た。
「あとは成長につれて地面から出てきてしまう子が居るかもしれませんので、都度土を寄せて隠すようにして育ててくださいね」


「ふふふっ、自慢じゃないけど要領は良いほうなんだ」
 すっかり畝の作り方を覚えたセラエは、次の農地が完成するのをウキウキと待っていた。
 そんな彼女の目に留まったのは、たった一台の手製トラクターとなんだか嫌そうに作業しているトラクター仕様の戦車に混じり、一頭の牛が犂を引く姿。
 美味しそうだな、などと思ってしまうのは仕方あるまい。このアポカリプスヘル、割と喰うか喰われるかの上に動物性タンパク質は希少なのだ。
 と、牛の飼い主がその視線に気づいて慌ててやってくる。
「ダメですよ!?」
 包帯に塗れ、傷だらけの身体に拘束具のようなバンドを纏った少女、レナータは愛牛のモーさんに向けられた食欲の視線を鋭敏に感じ取ってその主の前に立つ。
 モーさんは賢いので、レナータがそばに居なくともトラクターと並んで農地を耕してくれることだろう。耕作機械、在るとは思っていたが持ってはいまいと思ってモーさんを連れてきたが、まさか猟兵の手助けがあったとはいえ現地で作り上げてしまうなんて。
 それにバイオサクモツだったか。数日で収穫できるなんてすごい技術だ。ぜひ故郷の世界に――ダークセイヴァーはこのアポカリプスヘルよろしく痩せた土地で農業が難しい世界だ――持ち帰りたいほど素晴らしい。
 いやそうではなく。脱線した思考を軌道修正して、モーさんに熱視線を送る眼の前の少年のような女性にあれは肉牛ではないと訴える。
「そういうことなら我慢するよ。あ、そろそろ終わりそうだね。ようし、ここから先は任せてよ! お礼は食べ物でいいよ! それと良い寝床も貸してほしいな!」
 モーさんやトラクターが畑から出ていくのを待ち構えていたセラエが、彼らと入れ替わるように飛び出してゆく。
 あっという間に畝をこしらえ、掘り返された土を畑らしく整える彼女もダークセイヴァーに居たら頼もしそうだな、などと思いながらレナータも自らがこよなく愛する作物をこっそり植えるべく畑へ向かってゆく。


 モーさんが耕した区画はセラエ達によって瞬く間に芋畑と化したので、レナータは次の区画で野望を果たすべく一足先にそちらへ回り込んでいた。
 トラクターやモーさんが頑張って土をひっくり返しているその隣では、ミントグリーンの鉄巨人が埋まっている瓦礫を掘り起こし、それを上手いことゴーレムたちが引いてきた水路に取り付けて簡素な水門をこしらえている。
「あんまりたくさん農機具を持ってくるわけにはいかないからと思っていたけど……少しくらいなら持ってきても良かったかな?」
 愛車である宇宙バイク、ジェイクと人馬一体の身で作業に勤しむのはサリーだ。
 彼の足元では数人の開拓者が水門の完成に感謝の意を向けている。
「いえいえ、良いんですよ。これがボクらの仕事だし。それで、ここからですが……」
 灰や骨粉を混ぜ込んだとは言え、決して豊かとは言えない土壌だ。最初に植えるべきは肥料を必要としない作物がベストだろう。
 となると芋やソバ、トマトの類が最適だと思うのだ。で、芋は既に植えられており、ソバは芋と穀物被りする。
 ならばトマ――
「ゴボウを植えましょう」
「そう、ゴボウがいいですね。ゴボウ!?」
 割り込んだ声に何気なく同意して、慌てて聞き返すサリー。
 そもそもゴボウなんてバイオサクモツの中には無かったはずだ。
「こんなこともあろうかと我が家のご先祖様が改良を重ね、荒れ地でも美味しく育つゴボウの苗を持ち込んできていたのです。数はありませんが……」
 レナータだ。彼女のゴボウにかける情熱は一体どこから来るのだろう。
 さておき。
「う、うーん。まあ構わないと思いますが、数があまりないのならメインはトマトにしましょう。畑のここからここまでをゴボウに、こっちはトマトに使うのでどうです?」
 サリーが機械じかけの巨腕で畑に線引きするように指差せば、レナータは素直にそれにうなずく。
「じゃあゴボウはお任せします。ボクはトマトの作付けを指導しますから」
 二人の猟兵の手で植えられてゆく野菜たち。苗からの栽培ということもあって、芋とは違い地上に見える緑は一気にここが畑なのだという“らしさ”を醸し出す。
「もし収穫が間に合わずに熟れすぎてしまったりとか、収穫後に食べなかった枝葉が在れば必ず堆肥にして土に栄養を戻してくださいね」
 この先、この実りがずっと続くように。そういう想いを込めてのアドバイスにしっかりとうなずく開拓者たちの背中を見下ろして、サリーはきっとこの小さな農園がいつか多くの人々を支える農場になるに違いないと確信に似た想いを抱くのだった。


「生体に根性があるのはありがたいね。仕事の余地がある」
「生体……ですか?」
 生きてる人間ってことだよ、とタヤマに注釈を入れ、レグは上空を羽付き猫に混じって飛ぶドローンからの情報を集めていく。
 目的は水路の調整だ。土の地面をひたすら掘って水源地につないだだけの水路は、治水されていない川に等しい。
 この大地の乾きっぷりからして可能性は低いが、大雨が降ったり――ありえる想像として雨季が訪れたりしたら、畑が水浸しになって全滅――なんてことも無いとは言い切れない。
「そういう危険が在るもんでな。水路っていうのはちゃんと治水してやる必要があるのさ」
「ははぁ、勉強になりますな。この歳になって今日は学ぶことばかりですわ」
 地形情報を集めたドローンが愛車に帰還すれば、集めたデータを直接ダウンロードして解析するレグ。そこへ通信が割り込んだ。
「3LGへ。L-95より情報共有を申請します」
「お? そりゃこっちこそ願ったりだな。構わんぜ」
 レグの集めた広範囲の測量データと引き換えに、通信の主であるエルが集めた農園周囲の詳細な調査データが送られてくる。
 あのデブ猫型のドローンのどこにここまでの高性能が、とレグが驚くほど詳細な情報は、例えば音波による地下深くの予測データまで含まれていた。
「地下空洞ね。なるほどなあ。水源が川だってなら枯れるこたほとんど無いだろうし、こっちに繋いじまって水の抜け道作るのもアリだな」
「肯定。水路造成班に情報共有します。地下空間までのトンネル作成は3LGに委任しても?」
「はいよ、任せな」
 愛車の前面から側面を覆うように展開した防盾は、まさにシールドマシン――トンネルを掘るための自走式ドリルさながらだ。
 その機体に乗り込んだレグは、てきぱきと地下空間に向けてトンネルを掘り進める。
 地底洞窟といった風情の空洞にたどり着けば、何か大きな生体反応を検知した気もするがヒトではないので可哀想だがやむなし、生体が入れる別の出口が在るならばそこから逃げるだろうと判断してもと来た道を戻り、地下空間へのトンネルが完成した旨を伝える。
 すぐにゴーレムたちがトンネルまで水路を伸ばし、瀑布のように水が穴へと流れ込んでゆく。
「おし、これで溢れる心配はかなり減ったな。まだ水嵩はありそうだし、念の為堀でも作っとくか」
 ドローンで見る限り、水路自体は将来の農地拡大を見越してかなり計画的に引かれていたようだった。
 それでも水量が余るのだったら、とレグは防衛設備代わりの堀を農場をぐるりと囲うように掘り進めてゆく。
 いつか何処かの奪還者から生きた魚でも手に入れることができれば、堀で増やして釣り堀にするのもいい――そうして、柵と堀で守られ緑茂る農場はひとまずの完成を見る。最初の実りは数日後。猟兵たちの、そして開拓者たちの努力が実ったか否かはそこで分かるはずだ。
 そして、その結果だけを奪い去ってゆこうとするレイダーの襲撃も遠からず在るだろう。
 ――猟兵たちの役目はここで終わりではない。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『フレイムアーミー』

POW   :    ファイアスターター
【火炎放射器の炎】が命中した対象を燃やす。放たれた【ゲル状の燃料を燃やすことで生じる】炎は、延焼分も含め自身が任意に消去可能。
SPD   :    トリプルファイア
【火炎放射器】を巨大化し、自身からレベルm半径内の敵全員を攻撃する。敵味方の区別をしないなら3回攻撃できる。
WIZ   :    ヘルファイア
【火炎放射器の炎】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【を炎で包み】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



『――。――……』
 こしゅー。こしゅー。
 マスクのフィルターを通し、呼吸の音が荒野に響く。
 ざっくざっくと砂を踏みしめ雑草を踏みつけ行進する一団は、一目見ただけで正常な人類の集団ではないと理解できるだろう。
 鋼鉄に身を包んだ巨躯に率いられ、言葉もなくザクザクとブーツの足音を引き連れ歩くその集団の背には巨大なボンベ。
 顔はマスクに覆われ、古臭い擦り切れた野戦服を纏う彼らは、ボンベからチューブで繋がれた銃器のようなものを携えている。
『――。――……、――…………』
 こしゅー、こしゅー、こしゅー。
 先頭を行く一人が立ち止まる。視線の先には、ガソリンスタンドまで何マイルと示す朽ちた看板。その足元には、砂に埋まりかけたアスファルトがかろうじて見える。
『――発見』
 目的地が見えてきた。自らが見つけたそれを自らの王たる鋼の巨人に報告し、アスファルトに沿って看板の導くままに彼らは進路を変える。


 猟兵達が農場を作り上げて数日後。
 バイオ技術というのは凄まじいもので、もう最初の収穫を終え一同は自ら汗を流して育て上げた作物を調理して楽しんでいた。
 まだまだ作物の種類が少ないために、出来るのは蒸した芋に塩をまぶしてみたものだったり、味の薄いトマトスープだったりと物足りないが、保管されているバイオ・サクモツの種類はまだまだ豊富だ。
 このノウハウをもとにさらに多くの野菜を栽培できれば、具沢山の野菜シチューくらいは遠からず味わうことができるだろう。
「こんなに早く成功できたのは皆さんのお陰ですな。本当に頭が上がりませんわ」
 開拓者を代表して猟兵たちに感謝を伝えながら料理をよそうタヤマの表情は、慣れない農業への疲れが浮かんでいながらも楽しげで満足げだ。
「それでは農業の第一歩、その成功を祝って――」
 トマトスープで乾杯を。というところで、何かを打ち壊す轟音。
「な、なんですか!?」
 大慌てでパイプ銃を引っ掴むタヤマ。開拓者たちも各々の武器を握りしめ、猟兵とともに轟音の出処を探りに駆け出してゆく。
 程なくその発生源は見つかるだろう。立てられた柵を破壊しながら農場に踏み込もうとする軍装の一団。
 堀があったことで侵入経路を限定できたのが功を奏し、またそこに集中して設置された柵を越えるのに手間取っているおかげで大挙して農場内に押し寄せるという事態には至っていないが、枯れた木製の柵を火炎放射で焼き払い、炎を恐れず踏み越えて侵攻する彼らが防御を突破するのは時間の問題だろう。
「れ、レイダーだ! 皆、武器を構えろ!」
 タヤマの号令のもと開拓者たちがハンドメイドの銃で応戦するが、低威力で連射性の低い手製の銃では彼らを押し止めることすら難しい。
 故に、ここから先は猟兵の役目だ。レイダー――否、オブリビオンを駆逐し、この農場の安全を確保する。そこまでが彼らの請け負った仕事なのだから。
モア・ヘリックス
同類の臭い……来たな?餌の匂いに釣られてきたハイエナ共が。
まあ狙うよな。うん、わかるわ。そっちの立場だったら俺だってそーする。
が、そう上手く行かねえんだなこれがよ。

お行儀よく入り口から入ってきてくれるいい子にはグレネードのプレゼントだ。
爆炎に紛れて突撃、態勢崩したやつからショットガンで処理しつつ暴れてやる。

油断しきった脇腹を食い破ってやつらに教えてやるのさ。
狩るのは俺で、狩られるのはお前だってな。


レッグ・ワート
おでましだな。そんじゃ物騒から逃がす仕事をしようか。

防具改造値以下の各耐性用の領域を火炎耐性に合算変換しとく。そんで防盾複製して開拓面々の盾に使うぜ。時間稼ぎのうちに退いてくれると助かるが、何にせよ下手に顔出して炙られるなよってな。救護パックでの応急処置は出来るが、そも怪我しないにこしたことないんだ。
余った防盾は連中に近づく際にとっかえ操作しながら使う。重ね並べて寄って、仕掛け時に一部を空上げて注意惹いて乗り込むよ。でも道が混んでたらドリル変換した防盾バイクのトンネル掘りで地面からこんにちわするわ。後で埋めるから。とまれ後は鉄骨で怪力任せに足元払ったり、背中の火炎放射器狙ってぶん殴ったりだ。




「コイツぁ……同類の臭い、来たな?」
 すん、と鼻を鳴らして不敵に立ち上がる男。
 奪還者モア・ヘリックスだ。水を一口呷った彼は愛用のショットガンに弾を込め、額に上げていたゴーグルを下ろしてマスクを身につける。四方八方に炎を撒き散らす馬鹿どものお陰で、戦場は煤と一酸化炭素にまみれている頃合いだろう。馬鹿を狩るのは朝飯前だが、見えざる悪魔に首を締められるようでは三流以下だ。
「おでましか?」
 モアに問うのはレグ。奪還者と奪還支援機――異なる世界で生きた、しかして偶然ながらに奇妙な符号を持つ一人と一体がざっくざっくと土を踏みしめ歩み出る。
「おう。餌の匂いに釣られてきたハイエナ共がわんさと来てやがる」
 まあ狙うよな。わかるわ。俺だってあっちの立場ならそうする。モアはレイダー共の狙いが至極妥当であると評しながら、弾込めを終えたショットガンの薬室に最初の一発を送り込んだ。
「はいよ。そんじゃ開拓者連中を物騒から逃がす仕事をしようか」
「なら俺は前で大暴れしてやろうかね。そっちは任せたぜ」
 駐機してあったバイクに跨るレグと、堂々とした歩みを駆け足に黒煙立ち込める灼熱の戦場へ走り込むモア。
 二人の猟兵は簡素なハンドメイド銃で軍隊めいた破落戸に抵抗する開拓者たちと瞬く間にすれ違い、じりじりと歩を進め農場に踏み込まんとする火付けどもに相対した。
「おおかた此処の食い物を労さず根こそぎって魂胆だろうが、そう上手くいかねえんだなこれがよ」
 幸いにもわざわざ堀を泳いで渡ろうという気概のある馬鹿は居ないらしい。連中の進路は堀に渡された狭い道に限られている。ならば相手をするのは容易かろう。
 モアはベストにぶら下げた握りこぶしよりやや大きいくらいの鉄球を放り投げる。
「おらよ、お行儀よく入り口から入ってきてくれるいい子にプレゼントだ」
 軍装の群衆の前衛、そのちょうど真ン中に落下した鉄球はごろりと地を傾ぎ、それを見下ろしたレイダーの一人がガスマスクの丸窓越しに目を見開く。
 鉄球などではない。これは――
『グレネードッ!!』
 一人が叫び、ヘルメットを被せボンベを投げ捨てると自らその上に飛びかかる。
 他の面々も道の上で少しでもそれから遠ざかるように跳び、地面を滑って身を伏せた。
 爆発。衝撃とともに撒き散らされる火薬と砂埃と多少の腥い臭い。
「ちっと派手だが初手には良いんじゃないか……? いや派手すぎか」
 ひるひると飛来する某かの破片を、ユーベルコードで増殖、開拓者の前にずらりと並べた防盾で防いだレグがごちる。
「とにかく此処は俺らが支えるからおたくらはその間に退いてくれると助かる」
 前衛が数人吹っ飛んでもなおお構いなしにまたぞろ行進を再開するレイダーどもを背に、親指で指してレグは開拓者たちに指示――いや、“お願い”をする。
「ですが……此処は私らの農場です。いつまでもあなた達に頼れんのなら、ある程度は戦う力を身に着けんといかんのです!」
 レグの頼みに、タヤマはしかし首を横に振る。逃げて逃げてたどり着いた此処だ。ようやく此処を住処と決めて、猟兵の力を借りて農場まで作った。
 そこを放り出してまた逃げることは出来ないし、今回のように襲撃の度に猟兵が助けに来てくれるとは限らない。いずれは自分たちで自衛する必要がある。
 銃を手に、冷や汗に塗れながらもそう訴える中年男の言葉に、及び腰だった開拓者たちの目にも力が籠もる。
「……しゃあなし。盾は置いていくから使ってくれ。応急処置の心得くらいはあるが、下手に顔だして炙られるなよ」
「ええ、農家たるもの身体が資本ですからな……!」
 強張った笑みを貼り付け、防盾から銃口を覗かせ爆発に散らされたレイダーを狙撃してゆく開拓者たち。
 正面はモアと彼ら、そして後続の猟兵がなんとかするだろう。ならばとレグは彼らの射線を塞がぬようバイクに防盾を取り付け、再び地中へと飛び込んでゆく。
「――くっそ熱いな! この野郎!」
 初手のグレネードで陣容の頭を砕き、その内に飛び込んだモア。
 ショットガンの散弾で後続を数人まとめて吹っ飛ばし、怯んだ隙にさらに距離を詰めて接射。
 散弾を近距離でブチ込まれた軍装はずたずたに裂け、胴体もろとも千切れかけながら地に伏せる。
 だがマシンガンほどに面制圧に長けている訳ではないショットガンでの殲滅は何しろ時間がかかり、また装弾数もそう多くない以上弾込めの隙をへらす為には発砲とてここ一番の切り札だ。
 必然、銃床を棍棒代わりにヘルメット頭をブン殴り付けての格闘戦も視野に入る。
 だがここでモアを邪魔するのは、地面に撒き散らされ未だメラメラと燃え続ける粘性のナパームだ。
 接近戦で火炎放射を封じたのは良いが、迂闊に踏み込めば火傷で済まないだろうそれらがモアの立ち回りを制限するのだ。
「油断しきった脇腹を食い破ってやるつもりだったんだがな」
『――、――!』
 こしゅー、こしゅー。息荒く火炎放射器のチューブを両手で引っ張り、モアの首を狙って突進してくるレイダー。
「追い詰めたつもりか? あぁ? 違ぇぞ、狩るのは俺で狩られるのはお前らだ!」
 飛び退れぬならばとすっと身を屈め、レイダーの脚を払い体勢を崩した奴の胸に銃口を押し付け一発。脱力しどっと重くなったその肉塊をくすぶる炎に放り込めば、担いだボンベが引火して盛大に火柱が上がる。
「あ、今の連中の方に投げりゃ良かったかね」
「――そいつはいいアイデアだ」
 モアのぼやきに応える声。レグだ。地中を経由してモアを半包囲するレイダー共の背後に現れたレグの装甲バイクは、慌てたレイダー共に火炎を浴びせかけられてもびくともしない。
 飛び散る火が仲間に引火してもお構いなしのレイダー共が諦めるまで、赤熱しながらも耐えきったその装甲が開けば、レグ――ウォーマシンの怪力で振り回された鉄骨が火達磨含めてレイダー共を掘に叩き落とした。
「そろそろ交代だぜ、下がるぞモア」
「あいよ、もうちっと暴れたかったが仕方ない」
 農場に向けてエンジンを蒸かすレグのバイク、その後席に飛び乗るモア。
「おっと、最後にお前さんのアイデアを試してみようぜ」
 忘れるところだった、とレグ。倒れて事切れているレイダーのひとつを掴み上げ、二人の撤退に乗じて戦線を押し上げようとする後続どもの頭上に放り投げる。
 それをモアはショットガンで狙い撃ち。近距離ほどの破壊的な威力はないが、小さな散弾のつぶてはそれが背負ったボンベを小気味よい金属音とともに弾き――そして空中で爆裂し引火したゲル状の炎がぼとぼとと奴らの頭上に降り注ぐ。
「これで火が消えるまで連中も一気にゃ来れないな。交代する時間稼ぎくらいにはなるだろ」
 ショットガンの弾倉はちょうど今のが最後の一発だったようで、すっかり軽くなってしまった。
 次に備えて弾を込めながら、二人の猟兵は開拓者達が補強したバリケードの奥へと一時引き返していった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

セラエ・プレイアデス
食べ物を……ボクのジャガイモ達を奪うなら明確にボクの敵だ、絶対に許さないよ!

ボクの偽神兵器「ジャバウォッキー」の本領発揮、ワイヤークローで【グラップル】とか【釣り】の要領でガンガン敵の武器に手をかけていくよ!
全部が全部盗みに成功しなくても、戦場にそういうリスクがあると示されれば警戒せざるを得ないからね!
本領を出せなくするには十分さ!

そうして戸惑ったり鈍ったり、武器を失ったりで隙の出来た敵からドンドン斬り裂いていくよ!
オブリビオンに堕した時点でボクにとっては敵であると同時に食料。
その細胞、美味しく【捕食】させてもらうね!


アリシア・マクリントック
民を護ることこそ貴族の務め。これが私のノブレス・オブリージュです!変身!
扉よ開け!ヘパイストスアーマー!
自ら歩みだそうとする人々の道を阻むことはこの私が許しません!

アーマーの力と私のアーマーで防炎シールドを錬成しましょう。そしてレイダーの群れに突撃、ジェネシックハンマーで薙ぎ払う……接近戦です!このアーマーなら炎には強いはずですから、創ったシールドは他の人に渡してしまうのもいいですね。

マリアは一般人の避難を手伝ってください。この炎相手では前線に出るのは危険です。
この世界には動物用の装備もあるようですし、近いうちに調達したいところですね。




 爆裂した燃料ボンベが生み出した炎の壁は、レイダーたちに対して有用な障害物となっていた。
 おかげで唯一の陸路であるその道を使用できなくなったレイダーは、堀を挟んで開拓者たちと相対することになっている。そうなれば貧弱でも射程のあるパイプ銃と強力だが銃には劣る射程の火炎放射器の戦いは一方的だ。
 勝利の予感に勢いづく開拓者たち。だが、猟兵は彼らレイダーが――オブリビオンがこの程度で侵略を諦めるとは思っていない。
「このまま勝利、と行けばよいのでしょうが……流石にそうはいかないでしょうね。ならば私達も備えをしておくべきです」
 白いドレスを翻し、腰に白磁のベルトを巻きつけこの戦況を導く鍵を手にするアリシア。
「変身! 扉よ開け、ヘパイストスアーマー!」
 鍛冶神を冠する鎧に身を包み、ヒーロー然とした姿に変じた彼女は相棒たる狼に語りかける。
「マリア、もし敵がこちらに踏み込んできたら皆さんの避難を手伝ってあげてください」
 アリシアのように身を守る道具を持たないマリアには炎の相手は酷だろう。友を心配するように見上げ、喉を鳴らすマリアに大丈夫、このアーマーが炎に強いのはマリアも知っているでしょうと笑いかけ、それでも渋る彼女を一撫で。
「この世界には動物用の装備も在るようですし、この次までにマリアの防具も揃えられるよう頑張ってみましょう。そうしたら炎の中でもきっと一緒に戦えますから、ね?」
 言い聞かせれば、聞き分けのあるマリアは小さく吼えて後方へと駆け出してゆく。
 その時だ。砂を踏みつけ接近する足音が聞こえてきたのは。
『――……。――、――……突撃、開始』
 こしゅー、こしゅー。マスク越しのくぐもった声。堀から汲み上げたのだろう水を頭から被り、炎を踏み越え攻勢に出たレイダー達。
「ふぅん、あれが……」
 身構えるアリシアに並ぶようにレイダーの真正面に立ちふさがり、道を封鎖するセラエ。
 その目には彼らに対する明確な敵意が宿っていた。ともすれば危ういような、不機嫌に染まった怒りの火が燃えている。
「食べ物を……ボクのジャガイモ達を奪うなら明確にボクの敵だ。絶対に許さないよ!」
 がしゃりがしゃりと巨大な鉤爪――偽神兵器ジャバウォッキーを鳴らして猛るセラエへと、アリシアが一枚の盾を渡す。
「防炎シールドです。よかったら使いますか?」
「でもそれキミのだろう? いいの?」
 レイダー共が迫る中、優雅に微笑むアリシア。きょと、と盾を受け取ったセラエが目を丸くする。
「大丈夫、このヘパイストスアーマーは火に強いんです。だから使ってください」
 そういうことなら、と盾を構えるセラエ。
「では参りましょう。民を守ることこそ貴族の務め、これが私のノブレス・オブリージュです!」
「ええっと……ご飯を守るのがボクの役目、行くよっ!」
 ワイヤーで繋がったジャバウォッキーの爪が飛び、レイダーたちの火炎放射器のチューブを引っ掛け跳ね除け、あるいは鋭利な刃で切り裂いてゆく。
『――!?』
 手から火炎放射器を弾き落とされ、あるいは切断されたチューブから漏出するナパーム燃料を被って驚愕するレイダー達。
 そこへアリシアが滑り込む。セラエが作り出した火炎の幕の空隙に飛び込んだ、鍛冶神の名を宿す鎧を纏った少女が鉄槌を振るえば、一隊纏めてレイダー共が天高く打ち上げられた。
 だがレイダーの中にも気骨の在る――あるいは戦闘慣れした手練が混じっていたらしい。彼は頭上に跳ね上げられたまま、糸の切れた人形のように脱力する仲間から火炎放射器を毟り取り、二丁で頭上から火炎を撒き散らす。
 落ちれば自らも火達磨となるだろうに、それを微塵も恐れず無差別に吐き出された炎は、地を這うように二人の元へと押し寄せる。
 火炎の濁流。耐火性の高いヘパイストスアーマーで鎧うアリシアは難なく耐えるが、一枚の板に過ぎない防炎シールドしか持たぬセラエは盾を回り込むように押し寄せるそれに耐える術はない。
 ――耐える術はない。ならば、耐えねば良い。
「アリシアさんごめんね、ちょっとこれ踏むよ!」
 セラエは防火シールドを拳で強かに地面に打ち付け、自らの支えなくして直立するよう固定するとそのまま跳躍、盾の縁を足場に高く跳び上がる。
 空中へ舞い上がった彼女を、レイダーのマスク越しの視線が捉える。
 だが今更遅い。鋭利な巨爪が難燃性の野戦服に守られたレイダーの焼け爛れた身体を引き裂き、彼女に宿る偽神細胞がその骸の兵団を食い尽くす。
 とん、と火の海に立つ盾の上に舞い降りたセラエはぺろりと唇を舐めて眉根を寄せた。
「うーん……少し火が通りすぎかな。まあ、美味しかったよ!」

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

エル・クーゴー
●WIZ



動体の接近を感知
略奪目的の敵性と判定

>タスクが更新されました

これより、敵性の完全沈黙まで――ワイルドハントを開始します


・【嵐の王・多用途空戦】発動、【空中戦】を敢行すべく出撃
・【メカニック+武器改造】で懸架する爆装を消火剤に換装

・敵集団上空を最大戦速で旋回
・火炎放射の射線を伸ばし辛くさせると共、外した炎も地形効果に転化させない狙い

・消火剤を次々投下
・敵の操る火勢を【吹き飛ばし】つつアームドフォート展開、撃ち下ろしで射撃戦開始
・【誘導弾】による【範囲攻撃】、撃ち漏らしを狩るべく駆動する副砲群から続く【2回攻撃】とマニピュレーターが操る機関砲からの【援護射撃】

・【一斉発射】で【蹂躙】する


シャルロット・クリスティア
敵の侵攻経路の制限は上手く行っているようですね。
だとすれば、いくらでもやりようはある……。

時間的余裕はあまりないですが、本格的なものでなくとも、楔を巻き菱代わりに敷設するくらいは十分可能ですし、あらかじめ即席の地雷でも用意出来たなら御の字です。

罠と言うものは、どれだけあるかは設置した側にしかわからない……
少ししかないかもしれないし、何重にもあるかもしれない。心理的プレッシャーは大きい筈。
強引に進むのであれば被害は免れませんし、より安全に、着実なルートを選ぼうとするなら……そこは私の攻撃範囲です。
物陰から、確実に仕留めさせていただくとしましょう。




「敵性を略奪目的の武装集団と識別。
 第二陣の制圧は順調。
 第三陣が接近中――
 >タスクが更新されました。
 これより、敵性の完全沈黙まで――ワイルドハントを開始します」

 天空よりの宣言。高速で旋回するそれに気づいた者は、驚愕の声を上げる。
 何しろオブリビオンストームで文明の壊滅したこの世界、航空戦力というものはとかく希少だ。少なくとも人類側でこれを運用できるものは数えるほどしかあるまい。
 それが今、自分たちの頭上に居る。麗しき人形の乙女が鋼の翼を大きく広げ飛翔していたのだ。
 レイダーたちはその予想外の光景にうろたえながらも火炎放射器の銃口を天に掲げ、届かぬ炎を吐き出して火炎の槍衾を形成する。
 だが彼らの炎とはつまり単純な燃焼反応だけでなく、それを持続させ拡散させるために燃料という実体を伴わねばならぬ。それもより殺傷力に長けるために粘性の強いゼリー状のものを用いている炎は、通常のそれより射程は極端に短い。
 高高度を飛ばぬ猟兵であっても、その炎が届くことはよほどのことがなければありえぬだろう。
「敵性の脅威度査定を下方修正。
 周辺への火災拡大を懸念します。
 >新規タスク、敵性集団撃滅に先行して燃焼を鎮圧します」
 彼女――エルの有する無数の銃砲を収めた鉄棺には、そういう装備も収まっている。
 投下されるそれは火炎を瞬く間に消し去る発泡性の薬剤を詰めたボトル状の消火剤――無論、もし畑に飛散しても無害なもの――だ。それが爆撃機さながらに降り注げば、決して広くはない道の上で広がる薄桃色の泡が火炎を吹き飛ばし押しつぶし、酸素との燃焼反応を阻害して炎を殺す。
 もこもこと立ち上がる泡はそれだけでなく、彼らの足元をも覆い隠して歩みを大幅に遅らせた。
 そこへ頭上からの砲撃である。たまらず逃げ惑うレイダー達だが、泡で足を取られて満足に退避もできぬまま、飛来した誘導弾の炸裂に吹き飛ばされてゆく。
 それでも運良く逃げ切れた者がいる。後ろではなく前方に活路を見出した者たちだ。
 彼らはエルの真下を駆け抜け、泡を振り切って柵を乗り越え農場側に逃げ延び――そして足元からの爆発で先頭を走る一人が消し飛んだ。
『――……!?』
 こしゅ、こしゅと短く荒い息。肩を激しく上下させ、何が起こったのかを焼けた瞼を見開いて確認しようとするレイダー、その眉間に風穴がひとつ。乾いた銃声とともに、一人また一人とレイダーが倒れゆく。
「罠というものは――」
 立ち並ぶ防盾に身を隠し、同じく隠れて銃に装弾する開拓者たちに語る少女。
 シャルロットは言の葉をこう続けた。
「それが何処にあるのか、仕掛けた側にしか解らないというところに単純な殺傷力以上の価値があります」
 先頭の一人を吹き飛ばした地雷、あれは一つだけなのか。それともまだ仕掛けられているのか。
 あるいは既に自分はそれを踏んでいて、この右足をわずかに持ち上げた瞬間彼と同じく哀れな最期を迎えてしまうのではないか。
『――、――、――ッ』
 焼け潰れた汗腺から嫌な脂汗が伝うような幻覚。進めば爆死、退けばエルの空爆の餌食、立ち止まっていれば狙撃手や開拓者から七面鳥撃ち。
 どう足掻いても死。それを彼らは理解してしまった。火炎の狂気に染まった彼らであっても、絶対致死のキルゾーンの中心に取り残されれば僅かな正気が恐怖に心を竦ませる。
『――、――、ひ、るむな。少しずつでも進め、火だ、火を燃やせ。炎の壁が俺たちを守ってくれる』
 それは確信などない、炎への信仰めいた祈りの言葉。
 だがそれ以外に縋るもののないレイダーたちは、火炎放射を前方に吹き付けながら歩むしか無い。
「このように罠で歩みが鈍れば――」
 立てかけられた防盾から上体を晒し、狙撃銃を構えてスコープを覗くシャルロット。
「そこは私の、狙撃手の間合いです」
 赤く燃える炎の切れ目から僅かにレイダーの恐怖に引きつった顔が見えた刹那、軽く絞られた引き金が銃声を響かせ――続く開拓者たちの弾幕が、そして上空からのエルの掃射がレイダーの第三陣をなぎ倒す。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

火土金水・明
「この世界で頑張っている人達を、あなた達に殺させるわけにはいきません。」
【WIZ】で攻撃です。
攻撃は、【先制攻撃】で【高速詠唱】し【破魔】を付けた【属性攻撃】の【全力魔法】の【コキュートス・ブリザード】を【範囲攻撃】にして、『フレイムアーミー』達を纏めて巻き込めようにして【2回攻撃】をします。相手の攻撃に関しては【見切り】【残像】【オーラ防御】【火炎耐性】で、ダメージの軽減を試みます。
「オブリビオンは『骸の海』へ帰りなさい。」
アドリブや他の方との絡み等は、お任せします。


フィーナ・ステラガーデン
はあ!?なんでこのタイミングなのよ消し炭になりたいの!?
ちょっとご飯が終わるまで体育座りでもして待ってなさいよ!
農場が焼かれる!?あーもーほんと仕方ないわね!

私はご立腹よ!大層ご立腹といってもいいわ!
身体に鞭打って肉体労働して、ようやくご飯かと思ったらこれよ!
なんなのあんたら!?こしゅーじゃないわよ!焼き尽くしてやるわ!!
【属性攻撃】の火球でボンベとかに傷がついてたりしたら容赦なく打ち込むわ!別についてなくても打ち込むわよ!
炎が広がってきてちょっとやばそうとか
別にやばくなくても炎を撒いてくるなら周囲の消火も兼ねてUC発動よ!
群れにまとめて返してやるわ!

ふう!終わったらご飯ね!!
(色々大歓迎!)




「なんでこのタイミングなのよ! ちょっとご飯食べ終わるまで体育座りでもして待ってればいいじゃない!」
 それが出来ないからレイダーなのだが、やっと味気ない保存食から――味気なさは変わらないとしても、少なくとも温かい食事が食べられると期待に胸膨らませていたフィーナの怒りはとどまるところを知らない。
「その上農場が焼かれるですって!? あーもーほんっっっと仕方ないわね! 分かったわよやるわよ! どいつから消し炭になりたいのかしら!」
 塩を擦り込んだ蒸し芋を握り、怒りのままにのっしのっしと歩くフィーナ。割と最後の方までスープ鍋に未練を残していた彼女は、他の猟兵より一足遅く移動を開始していた。
 ――それがまさか功を奏するなんて誰が予想したことだろう。
 戦場へと向かう途中、ふと堀の対岸を向いたフィーナ。芋を齧り、もぐもぐと咀嚼する彼女は対岸でわらわらと集まり何やら巨大な鉄板を運ぶ砂色の集団を見た。
「バーベキューかしら。良いわね、私もお肉が食べたいわ!!」
 やっぱり芋とトマトだけでは物足りない。肉よ肉、と目を輝かせたフィーナだが、その鉄板は大きすぎやしないだろうか。
 それこそこの堀を岸から岸まで橋渡しできそうな――というか橋だよそれは。
 フィーナの目の前でずしんとこちら側に架けられる鉄板の橋。がっつがっつとブーツの底で鉄板を蹴りつけこちら側に押し寄せるレイダーの別働隊。
「な、なななんなのあんたら!?」
 予想外の事態に怒りを忘れて目を丸くするフィーナへの返答は、無言と火炎放射器の銃口だ。
『――、――……』
 こしゅー、こしゅー。フィルターを通じて響く呼吸と、ちゃりちゃりと擦れ合う火炎放射器の金具の音。
 しゅぼ、しゅぼと銃口下部のバーナーに火を灯し、背中のボンベから粘性の燃料を送り込もうとするレイダーども。
 だが彼らの不運はふたつあった。
 一つはこの眼の前の少女――フィーナ・ステラガーデンという魔女が、こと炎と熱量の扱いに関しては彼らに劣らず卓越した知見を持つある種の天才であったこと。
 もう一つは少女一人と侮り、甚振るように取り囲んで恐怖を煽る彼らを、ガソリンスタンドの屋根上から見ていたもう一つの視線があったこと。
「……ほんっと、人のご飯は邪魔するしこんな風に囲んで火遊びするしこしゅーこしゅーって意味分かんないし」
 怒りを思い出したフィーナが杖を握る手から血の気が失せていく。否、怒りのままに指が白くなるほど杖を固く握りしめているのだ。
「煩いのよあんた達! 人様の食事を邪魔した罪は重いわよ! 焼き尽くしてやるわ!!」
 刹那、火炎放射器から意図せずして吹き出した炎が杖へと吸い上げられてゆく。
 ずるりずるりと無理やり引っ張り出されるように消費されてゆく炎熱。さしものレイダー共もこの少女に火炎は通用せぬと理解するだろう。故に次なる手段は単純な暴力だ。ボンベを背負うベルトを切り離し、フィーナへと拳を握り、蹴り足を掲げ殺到する。
「――大の大人が子供相手に寄ってたかって。見苦しいですよ」
 それを涼やかな声音で止めるのは、スタンドの上からその様子を見ていたもうひとりの魔女だ。
 魔女――明は、レイダー共の打撃がフィーナに届くまでの刹那に術式を詠唱し、それを編み上げた。フィーナのそれが近づく熱量を我がものとする魔導であるならば、明のそれは触れたものの熱量を零に帰する魔導。
 放たれた魔法の矢弾は空気すら凍てつかせ、レイダー共の胸を射抜く。
 貫通はしない。流血もなければ、傷すら負わせてはいない。
 ただ、レイダーたちは体温の一切すらも一瞬の内にかき消され、ヒトガタの氷柱と化した。それだけだ。
「大丈夫かしら、お嬢さん?」
 とん、と軽やかにフィーナの元に舞い降りた明は、凍てつく仲間に狼狽え、橋の上でまごつくレイダーたちに視線を移す。
「誰よあんた! 助けてくれてありがとうでも私はお嬢さんじゃないわ! 私はもう21歳よ!!」
「…………えっ?」
 まさかの年上。こんなに小柄で幼な――情緒豊かな少女が、自分より歳上であることに驚く明。
 よく見れば何度か同じ戦場で見かけたことがある気はするが、まさか。
 さておき今はそんな場合ではない。明は脱線しかけた思考をレイダーに向け直し、杖を突きつけ啖呵を切った。
「この世界で頑張っている人達をあなた達に殺させるわけにはいきません。オブリビオンは骸の海へ還りなさい」
「ちょっと私の話を――もういいわ! そういうことよ! あんた達全員丸焼きにして私はご飯を食べるのよ!」
 続いてフィーナも杖をふりかざす。その口上にレイダーどももたじろいだ。
『――、――…………! 喰う、のか? ……俺たちを?』
 誤解である。
「ちっがーう!! 誰があんた達みたいなのを食べるっていうのよ!」
 放たれた火球は、先のレイダーどもから奪った火炎放射の熱を込めた超特大のものだ。
 それが鉄の橋に着弾し、一瞬でそれすら融かして焼き落とす。橋の上のレイダー共も跡形すら残っていまい。
 そしてそれだけの高熱が叩きつけられれば、土すら燃える。ぼ、と引火した炎が乾いた草を伝って農場の方に――
「あああーッ!? ちょ、ちょっとやりすぎたかもしれないわ!?」
 焦るフィーナ。このままでは畑が火事になってしまう。突破されていないのに畑が燃えれば、炎の魔女など第一容疑者以外の何物でもあるまい。いや犯人なんだけども。
「落ち着いてください。任せて」
 明がそのフィーナを宥めて杖を振るえば、再び熱量を殺す魔導の矢が炎を一瞬で凍りつかせる。さらには溶け落ちた橋の向こう、本隊に合流するべく駆け出したレイダーすらも射抜き、凍てつかせ砕く明の魔法。
「生者から奪い殺すことしかしない者に容赦はしません。これで全員仕留めましたね。では戦場に合流しましょう。彼らの首領もきっとそこに居るはずです」
「あ、ありがとう。って、ええっ……まだご飯食べられないの!? レイダーだったかしら、ほんっと腹が立つ連中ね!!」

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

エウトティア・ナトゥア
※アドリブ・連携歓迎

おっと、この先は立ち入り禁止じゃよ。
妹が折角手伝った畑じゃ、お主らの汚い足で踏み荒らす事は許さぬぞ。
【巨狼マニトゥ】に【騎乗】し『フレイムアーミー』の手前まで移動。
【掌の創造】を発動して、敵前面の地面を聳え立つ氷河に変えて足止めしつつ、【風の刃】を纏わせた【誘導する矢】を射掛けて火炎放射器のホース部分を切り裂くという行動で遊撃して回るのじゃ。
火炎放射器を封じる事ができた敵は、【秘伝の篠笛】で呼び出した狼の群れを嗾けて処理するとするかの。

『ヘルファイア』に対しては、【ノアの長杖】の力を借りて水の精霊を呼び出し、火炎放射や地面で延焼中の炎を水流で押し流すのじゃ。


スピレイル・ナトゥア
私たちの農場は傷つけさせません!
作業を手伝ったこともあって、私たちの農場には愛着が湧いているのです!
……事件が解決したあとは、たまにお野菜をせびりに来ても良さそうですね

こういう戦いで役に立つのが私たち猟兵のユーベルコードです
我ながらチート能力だとは思いますが、迷路を作成してレイダーさんたちと農場を分断してしまうとしましょう
……同じような迷路のユーベルコードをもってるひと、そういえばたくさんいそうですね(効果の適用順で困りそうです)
迷路を生成する土壁が、火炎放射器の炎から農場を守ります!

精霊印の突撃銃を使用して、前衛のみんなを【援護射撃】します
レイダーさんが背負ってるボンベを狙って大爆発です!




 別働隊による架橋作戦は失敗に終わったが、しかし橋を渡すことで突破口そのものを増やすというレイダーたちの作戦は継続していた。
 唯一農場に至る道の正面でぶつかり合う農場側の戦力とレイダーの集団。その脇を抜けるようにいくつもの鉄板の橋が架けられ、火炎放射器を携えたレイダーたちが重さに撓む橋を踏みしめ開拓者たちの側面を取るべく押し寄せる。
 本来はこれで開拓者と猟兵の戦力を分散させ、回り込んだ別働隊が背後から各個に焼却する手筈だった。どうやらそれは阻止されたものの、ならば正面からの圧力で踏み潰せば良いと遥か後方で控えるレイダーの頭目は部下を戦場に駆り立てる。
 ざっくざっくと堀を渡りきり、開拓者による銃隊を守るように立ち並ぶ盾に炎を浴びせる軍装ども。
 そうして抑えに回った者たちによって開拓者たちが盾の裏から出られなくなれば、次々渡河したレイダーの後続が畑へと歩を進めてゆく。
『――、――、根こそぎ、奪え。奪い尽くしたなら、燃やせ。火だ、火を付けろ。炎で全てを灰にしろ』
 呪文のように唱和しながら、青々と葉が茂る農地に向かう破落戸の前に、エウトティアとスピレイルの姉妹が立ちふさがる。
「おっと、この先は立ち入り禁止じゃよ」
「私たちの農場は傷つけさせません!」
 小柄な少女二人、それも農地は目と鼻の先まで攻め込まれておきながら何をとレイダー共はマスクの裏でせせら笑う。
 それでも立ちふさがると言うならば、いいだろうまずはお前たちを景気よく燃やし尽くしてやろうと。
 勇敢な子供を火炎で脅し恐怖に竦む姿を見たい。そんな歪んだ欲望が彼らに火炎放射器を構えさせ、燃料を供給する前に点火用バーナーをしゅぼ、しゅぼとちろつかせて二人を追い立てる。
 その嗜虐心が齎した僅かな時間が彼らにとって致命的だった。
「土の精霊さん、力を貸してください!」
「森羅万象、あるがままを受け入れるのじゃ」
 少女たちの願いに応えるは精霊だ。地の精霊宿る土が震え、猟兵と開拓者が引き込んだ水路から水の精霊すら集って巫女姫たちの言の葉に従うだろう。
 然る後に現れるは巨大な氷塊と土壁の迷宮である。
「妹がせっかく手伝った畑じゃ、お主らの汚い足で踏み荒らすことは許さぬぞ」
「そうです。ここは私たちの農場、愛着が湧いているのです!」
 迷宮の壁がレイダーと農場を隔て、レイダー共の集団をも細かく分断する。然らば始まるのは、侵略者に対する逆襲だ。
 姉巫女を背に乗せた巨狼が迷宮何するものぞと迷いなく駆け巡り、混乱しながらも氷を焼き切り最短距離で脱出を図るレイダーどもの前へと主を運ぶ。
 すれ違いざまに奔るはエウトティアが射掛けた矢と、それが纏う風の刃。燃料チューブを切り裂かれれば火炎放射器など錘に過ぎぬ。
 そこを迷宮の壁上を軽やかに駆ける妹巫女が頭上から突撃銃で掃射。たたん、たたんと軽快な破裂音が響く度に姉巫女が破壊した火炎放射器のボンベが爆ぜ、粘ついた灼熱が辺り一面へと飛び散った。
 何かが焼け焦げる不快な臭いに狼がヴルルと唸るが、それを慈しむように撫で宥めてエウトティアは笛を吹く。
 ほとんどがスピレイルの銃撃で燃え尽きたレイダー共だが、火達磨になりながらも装備を保ち離脱を試みるものもいる。
 それらが横道から飛び出してきた狼の群れに喰われたのを見届けて、姉は妹を見上げて微笑んだ。
「これで畑は無事じゃな。スピレイルもよくやったのじゃ」
「はい! ……この調子で事件が解決したら、お野菜を分けてもらいに来ましょう」
 それはいいアイデアじゃと笑う姉と、特に自信のある野菜はぜひ食べてもらいたいと笑い返す妹。
 レイダー共が攻め込んだ痕跡たるくすぶる炎は、彼女たちの後ろで崩れ行く迷宮の壁であった土と水によって始めからそんなものは存在しなかったかのように押しつぶされて消えていった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

サリー・オーガスティン
■SPD

■心証
炎への対抗策はない!
でも、スピードの権化のボクが、負けるのはシャクだからね

■戦闘
「命中したら」燃やすんだね?じゃ当たらなきゃいいんだね!
(Cloud Nine発動)
【地形の利用、情報収集、第六感】で、より安全な進路を見極め
【騎乗、操縦、ダッシュ】でよけ、【迷彩】でより的を絞りにくくさせるよ
あと【火炎耐性】で流れ弾くらいなら耐えられるかも。

【スナイパー、追跡、2回攻撃、零距離射撃、誘導弾、なぎ払い、援護射撃、だまし討ち、一斉発射、吹き飛ばし】のせで一撃離脱を繰り返そう

各個撃破で確実に倒していこう!

※アドリブ・仲間との連携はともに歓迎


数宮・多喜
【アドリブ改変・連携大歓迎】

おいでなすったか!
早速相棒に跨り、一気に最前線に……
は、行かないよ。
開拓者たちの防衛線にまずは急行し、
カブの予備パーツから【熱線銃作成】で
メーザーガンを作成、皆に配っていく!
急ごしらえなんであまり長く使えるもんじゃないが、
今回の襲撃を押し返すくらいはできるだろ!

そうして防衛戦の火力を底上げしたら、
アタシは遊撃に躍り込む。
自分用の熱線銃も作り、
奴らの背負う燃料タンクを狙って『援護射撃』していくよ!
とにかく遊撃は機動力が肝心!
どうだい、カブの後ろに『騎乗』する奴はいないかい?
絶賛大歓迎さ!
戦闘中で『操縦』がちょいと荒っぽいのは許しとくれよ!




「“命中したら”燃やすんだね? じゃあ当たらなきゃいいんだね!」
 乱戦の様相を呈し始めた防衛線。開拓者たちはレイダーに抑え込まれ、猟兵も物量を相手に開拓者を守りながらでは攻勢に出るだけの隙がない。
 犠牲を許容すれば一気に押し返し、敵を駆逐するだけの戦力はある。だが共に汗を流し、この滅びかけの世界で夢を見た人々を「犠牲」などという冷たい文字の羅列に放り込むことなど、この場の誰にも出来なかったのだ。
ゆえの均衡。ゆえの乱戦。それを切り裂いたのは、鮮やかな緑の疾風であった。
 炎への対策などない。触れれば骨の髄まで焦がし尽くすような、人間を焼き殺すことに特化した炎熱を相手に小手先の対策が何処まで役に立つものか。
 ならば、自らに可能なただ一つの可能性に全てを注げ。空力を制御する外殻をすら脱ぎ捨てて、計算され尽くした速度をも超越した信念と意志の高速域へ至れ。
 斯くして炎を回避することに全てを傾けたサリーが疾走る。レイダーどもの隊列を引きさいて、突風の如きミントグリーンの鉄騎が駆けた。高速の鉄騎といえど二輪、衝突すればこちらも無事には済まぬだろう。サリーはおよそ人智の外の速度で疾駆しながらも、直感的にレイダーを躱し、彼らの放つ炎を潜り抜けて開拓者へと向けられるはずだった火炎放射を引きつけてゆく。
「炎への対策はない! 無いけど、スピードならボクは何者にだって負けはしないからね!」
『――、追う、な。壁を。炎の壁を!』

「おー、やってるねぇ」
 小型のバイクに跨って、ヘルメットのバイザーを上げた多喜は速度でレイダーを翻弄するもうひとりのライダーを見て目を細めた。
 彼のお陰で開拓者たちの防衛線にかかる圧力はかなり軽くなったのだ。反撃は今、多喜はそれを肌で感じ取っていた。
「カズミヤさん、来てくだすったんですか」
 ちら、と横目に彼女の姿を認めたのもそこそこに、ようやく切れ目の見え始めた火炎の隙間を狙ってすかさず防盾から身を乗り出し、パイプ銃でレイダーを撃つタヤマ。だが粗悪な銃は酷使にいよいよ耐えかね、その一発を最期にネジがへし折れそこから崩壊してしまう。
「替えの銃は――いや、ありませんでしたなぁ。後は皆に任せにゃあならんですか」
 リーダーとして皆を率いてきただけに、この状況を生み出してしまったことへのタヤマの自責の念は強い。だと言うのに銃が壊れ、一足先に戦線から脱落してしまう己の不運と不甲斐なさに拳を握る彼の肩を力強く叩いて多喜は笑う。
「何を言ってんのさ。ほら、こいつを使いな」
 多喜がタヤマに押し付けるように手渡したのは、愛車の予備部品からでっち上げた熱線銃。一丁や二丁ではない。全員に行き渡るほどのそれは、簡素なパイプ銃より高威力で、そして頑丈だった。
「そいつがあればまだ戦えるだろ? さ、手を止めてる暇なんて無いよ! 皆の農場は皆で守る、んだろ?」
 応。開拓者たちは老いも若きも男も女も、多喜の言葉に力強く応えてみせた。
 近いものが銃を受け取り、それを仲間に放って渡してゆく。すぐに全員へ熱線銃が行き渡れば、猛然とした反撃がレイダー達を撃ち倒した。
「よし、それじゃあアタシも前に出るよ! 後ろに乗るやつは居るかい?」
「魅力的なお誘いですがオッサンにはちょっとばかり大役過ぎますな!」
「俺みたいな若輩に姐さんの後ろなんて恐れ多いっす!」
 わははと困難を笑い飛ばしながら、防衛線に張り付いてレイダーを狙い撃つ開拓者達。その射撃はお世辞にも正確とはいい難いが、それでも数の多いレイダーを着実に捉えて火炎の密度を落としてゆく。
「そうかい、それじゃあ後で乗せてくれって言っても遅いからね!」
 彼女は自分用の熱線銃を片手に、小型バイクで戦場に乱入してゆく。

「各個撃破で確実に数を減らして……いくら何でも多すぎじゃないかな!」
 弱小レイダーという話だったが、それにしたって物量が多すぎる。各個撃破では押し切れず、むしろ倒した側からその穴を埋められるサリーの戦いは、決して劣勢ではないが優勢ともいい難い。
 おまけに開拓者たちが勢いづいたことで後がなくなったと感じたのか、レイダー共は同士討ちすら恐れず彼を狙って炎を吐き散らしている。
 ありとあらゆる隙を逃さず、愛車に積載した火砲から砲撃を加える彼であってもその全てを捌きながら勝ち切るのは至難であろうと思えた。
 彼一人であったならば。
「中々いい腕してるじゃないか!」
 まるで荒野に似つかわしくない赤い小型バイクにまたがった女が、目にも留まらぬ早撃ちでレイダーのボンベを射抜いて爆散させる。立ち上る炎を突き抜けて、サリーを追い回す炎の出処を盛大に跳ね飛ばした彼女は、サリーの死角をフォローするように走り、撃ち、そしてぶつけてゆく。
「運転がちょいと荒っぽいのは許しとくれよ!」
「うわ……凄いな!」
 混戦の中ぶつからぬよう走るのも相当な技術を必要とするが、重武装の成人男性に小型バイクでぶつかりながら微塵も姿勢を崩さないのもまた凄まじい技術だ。
 多喜もサリーもお互いの技量を素晴らしいと内心で評価しながら、ほとんど言葉を交わすことなくライダー同士のシンパシーだけを頼りに連携を紡ぎあげてゆく。
 多喜に撥ねられたレイダーがバランスを崩せば、その隙を逃さずサリーがトドメを放つ。
 そうして抜けた穴を多喜が押し広げ、慌ててそれを塞ごうと連携を乱すものが居ればサリーからの全武装の一斉射撃がそれを封じ、更に陣容を抉り取る。
 二人の鉄の騎手によって、混戦は再び開拓者有利の睨み合いへと押し戻されてゆく。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

エドゥアルト・ルーデル
ヒャッハー!水だ!食べ物を寄越せぇ!
うむ!やはりレイダーごっこは楽しいでござるネ!ガチレイダー相手ならごっこじゃ無くなるけど

それにしてもお散歩がてら歩いてたら楽しい事やってますな!
ここは拠点防衛に参加せずに【地形の利用】にて敵から姿を隠しつつ裏取り、敵部隊の背後から強襲でござる
【スナイパー】にて背中に背負った火炎放射用のボンベを撃ち抜けばよく爆発するでござろう!汚ねぇ花火だ!
こっちに気づいて向かってきそうなら【罠使い】で適当に地雷撒きながらすたこらさっさですぞ!
逃げ撃ち引き撃ち上等でござる!

まったく火炎放射持っとるのにあの台詞を言わないからこうなる!
拙者が代わりに言いますぞ!汚物は消毒だァ~!


レナータ・バルダーヌ
植物に火はまずいです……!
頑張って育てた作物を燃やさせるわけにはいきません!

火炎放射はB.I.ライダー――炎の鎧で無効化したいところですけど、それだとどちらにしても作物を駄目にしてしまいそうです。
仕方ありません、畑に被害が出ないようにサイキック【オーラ】で炎を正面から防ぎつつ接近して、【A.A.ラディエーション】で攻撃します。
下手に胴体を狙って背中のボンベまで壊したら引火して爆発しそうなので、あまり気は進みませんけど、狙いは頭部に絞ってできるだけ一撃で仕留めましょう。
放ってくる燃料も、気体でないのでしたら【念動力】で叩き落せると思います。




「炎には炎、火炎放射にはB.I.ライダーで……と行きたいところですけど、それだと……」
 ちら、と背後を見るレナータ。そこには守るべき農地がある。開拓者たちと汗水を流して育てたバイオ作物が、そして先祖が作り上げた大切なゴボウがこれから多くの命を繋いでいくだろうそれを背に、火炎に対して有利だからと自らも炎の鎧を纏うのは憚られた。高熱と高熱のぶつかり合いは、直接火の手が回らずとも植物に対して良い影響を与えるとは思えない。
 故にレナータは持ち得た有利を使えない。使わない。敢えて圧倒的な有利を封じ、纏った闘気で焔を抑え込みレイダーに白兵戦を仕掛ける包帯の少女。
 最初は怪我人すら駆り出さねば立ち向かえぬ壊れかけのコミュニティだと嗤っていたレイダー共も、そのただならぬ戦ぶりにレナータが尋常の娘ではないと気付きかけていた。
 だが、それを認めればこの両脚をこの場に縫い留め、炎を広める徒となったその魂が怯え竦み、彼女に背を向けてしまうだろう。そうなれば無防備な背中を撃たれるだろう。あるいは運が良ければ逃げられるかもしれないが、そのときは遅かれ早かれ頭目によって処刑され死ぬのだと彼らは理解している。
『――、――、――! 炎を、燃やせ。燃やせ、燃やせ! 焼き尽くせ、焼き焦がせ、手に入らないならば、灰に帰せ……!』
 故に逃げない。逃げられない。片や背に大切なものを守るため、片や自らの命を一秒でも永らえさせる可能性に懸けるため。両者は死力を尽くして激突する。

「おーおー派手にやってるでござるなァ」
 一人の少女を寄ってたかって火で炙る兵隊崩れの集団。見るに心苦しい光景であるが、これもまた世紀末らしいといえばらしいのかもしれない。
「ステキめな新世界をお散歩がてら歩いてたら楽しそうなことやってますな!」
 望遠鏡代わりに使っていたライフルのスコープから顔を離し、頬を僅かに上気させてほっこりと笑みを浮かべる不審な男。軍装はまるでレイダーの一味のようだが、細部の仕様が色々と違うそれを身に纏う男はエドゥアルトという。
 グリモア猟兵の依頼斡旋とかそういうの全然関係なく、本当に偶然たまたまこの世界の世紀末っぷりを観光していたところにこの戦闘と出くわした彼は、うーむと髭面の顎を擦って思案する。
 遠目から観察する限り、猟兵と現地住民の混成部隊が火炎放射器で武装した組織的な軍集団と交戦しているらしい。
 猟兵が加担している時点で、この戦いに「まーぜーてー!」するならばどちらに与するかは決まりきっているが、さて。
「このまま拠点防衛に参加するのは普通すぎますなーそうだ連中引っ掻き回してやろ!」
 後方から奇襲を受ければレイダー共も動揺するだろう。袋小路の寡兵を押しつぶすだけだと油断したところに背後から襲われたとなると、どれほどの混乱が巻き起こるか。
「ぐふふ、楽しみでござるネ!」
 エドゥアルトが足音一つ立てないスキップで気配を殺して敵の背後に忍び寄る。

「くっ……炎が重いのは幸運でしたね……!」
 放たれた燃え盛る燃料を念動力で地面に叩き落とし、肌に炎が絡みつくのを阻止してステップを刻むレナータ。
 直撃こそ避けているが、地面で燻る炎の熱はレナータの体力を容赦なく奪い取っていくのだ。
「……最初から分かってましたけど、時間を掛ければ掛けるだけこちらが不利になっていく……なら!」
 押し寄せる炎の渦を切り裂いてレイダーに飛びかかるレナータ。
 一気に勝負を決める。一人に一撃、それで仕留める。それ以上は難しいだろう。
 ならば何処を狙うか。的が大きいのは胴体だ。臓器の一つや二つも潰せば戦えまい。それを叶えるだけの威力もレナータにはある。やるか、と狙いを定めた彼女の目に、しかし燃料を満載したボンベが飛び込んできた。
 ――レイダーを一撃で仕留める威力を持つ、レナータのA.A.ラディエーション。至近距離の対象を内部から念動力で破裂させるその業は、人間相手には高威力に過ぎる。
 余波でボンベが誘爆しようものなら、至近距離に接近せざるを得ない自身もただでは済まないだろう。
 咄嗟に狙いを胴から逸らすレナータ。
 懐に飛び込んできた少女と目が合い、レイダーの焼け爛れた顔面が驚きに染まって――そのままガスマスクの窓が真っ赤に塗りつぶされた。
 ぐらりと倒れたレイダー。ヘルメットとマスクの隙間から流れ出る鮮血は、めらめらと燃える炎ですぐに蒸発してゆく。
「あまり気が進みませんが……仕方ありません!」
 無残な死に狼狽えたレイダーたちが放つ炎の鞭を、念動力で受け止め捻じ曲げ次々と肉薄しては唯一胴体から離れた重要臓器を収める身体部位――頭を内側から破壊してゆくレナータ。
 最後の一人が永遠に思考を握りつぶされ崩れ落ちるとともに、大きすぎる力を振るった反動と、救う手立てなど在りはしない破落戸だとしても――それがオブリビオンでも、生きた人間のように振る舞う存在の――命をあまりに残酷な手段で奪ってしまった己へのストレスからレナータは膝を付く。
「ッ……はぁっ、はぁっ…………でもこれで諦めて退いてくれれば…………ッ!」
 前を見上げたレナータは見た。退いてくれという願い虚しく、なにかに駆り立てられるように更に行進してくるレイダー達を。
 もう少し頑張らねば。彼らが近づききる前に、まだ遠いうちに膝に力を込め、立ち上がり、農場を守らねば。
 覚悟を決めたレナータの前で、突如レイダーが爆散した。
 
「たーまやー! 汚ねぇ花火だ!!」
 ボンベを狙撃すれば、狙い通り爆散したレイダーども。
 身を低く、姿を隠していたエドゥアルトはその盛大な爆発に立ち上がり、ガッツポーズ後両手を叩いて快哉を叫ぶ。
「あっヤベ、いまのでバレちったでござるかな?」
 その歓声を聞きとがめたレイダーの生き残りがぎょろりと振り返り、火炎放射器を振りかざせばあわわと口元に手を当てコミカルに狼狽えてみせる。
『――、――、伏兵。伏兵だ。伏兵が居るぞ。燃やせ。燃やせ、焼き殺せ。小賢しい輩は灰にしろ』
「ひえぇーッ! スナイパーたるものバレたからにはスタコラサッサでござる! あーばよとっつぁん!」
 ライフルを担ぎ、時折後ろすら見ずに拳銃で牽制射撃を加えながらズダダダと無駄に多いステップで一目散に逃げるエドゥアルトと怒り心頭、炎を讃え歯向かうものの末路を唱えながらそれを追うレイダー。
 その集団が爆発する。地雷だ。エドゥアルトが前もって敷設してあった地雷が起爆し、どういうわけかその他の地雷にも誘爆してレイダー共の足元一帯が吹き飛んだのである。
「いいことを教えてやるでござるよ。スナイパーは逃げ撃ち引き撃ち上等、追いかけている時も油断大敵ってネ!」
 死にかけて散らばるレイダーの側に屈み込み、焦げた装備を漁って食料や水を抜き取っていくエドゥアルト。
「ヒャッハー、水だ! 食べ物をよこせぇ! うむ、レイダーごっこは楽しいでござるなァ! 貴様もそう思うだろ? だからガチレイダーなんてやってんだもんな?」
『ぁ……熱い、痛い……み、ず……』
 奪われてゆく水に手を伸ばすレイダーと、その目の前で奪った水を美味そうに飲み干すエドゥアルト。そうして空になった水筒をこれみよがしにレイダーの前で逆さに振ってから放り投げ、冷たい視線でその半死半生を見下ろし拳銃を抜く。
 乾いた銃声が一つ、二つ――激闘の喧騒の裏で死にかけのレイダーの数だけのそれが荒野に響く。
「まったく。……火炎放射持っとるのにあの台詞を言わないからこうなる! 今回だけ特別に拙者が代わりに言っておきますぞ! 汚物は消毒だァ~!」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

レナ・ヴァレンタイン
※他猟兵との共闘、絡み歓迎

ハローハロー略奪者諸君
抵抗せず武器や薬や弾薬を捨ててさっさと失せろ
――などと言って聞くような連中でもないのは知っているがね

ユーベルコードで武装複製開始
私自身は戦車に乗り込み進軍開始
流石に火炎放射を浴びると蒸し焼きになるので、そうなる前に掃討するとも

ガトリング、アームドフォート、アサルトウェポンに【乱れ撃ち】【援護射撃】【範囲攻撃】技能を合わせて周辺掃射、迂闊な動きをする奴から雑に薙ぎ払う
マスケットと拳銃は【スナイパー】技能を用いて敵の燃料タンクを狙撃する
フォースセイバーと黒剣のナイフは物陰に隠れた敵に向けて突っ込む
接近してきた奴は戦車で【蹂躙】だ

さあ、戦争をしようか


アイ・リスパー
「せっかく作った畑を壊させるわけにはいきません!
オベイロン、レイダーたちを迎撃です!」

機動戦車オベイロンを住人たちの盾として停車させて敵の攻撃から守らせます!

「オベイロン、全武装一斉射撃!」

荷電粒子砲、ミサイルランチャー、ロケットランチャーを放ちオブリビオンたちを攻撃するよう命じます。

その間に、私は敵の攻撃に対処しましょう。
オベイロンでも炎による範囲攻撃から人々を守りきるのは難しいはずです。
【バタフライ効果】によって用水路の水を大気中に巻き上げて人工雨を降らせ、燃えた地面を消火します!
さらに【マックスウェルの悪魔】で氷の壁を構築、敵が放った炎を防ぎます。

「実った作物を燃やさせはしませんっ!」




 無尽蔵にも思われたレイダーの波状攻撃もそろそろ終わりが見えてきつつあった。
 というのも、猟兵と開拓者たちの奮闘を警戒してかそれまでただただ火炎の壁を頼みに押し寄せてきた彼らが堀の対岸に集結し、一丸となって大攻勢を掛ける構えを見せたのである。
 物量に飽かせ、戦力を最前線に釘付けにして疲弊を誘うやり方を続けるには彼らもあまりに多くの血を流しすぎたのだろう。あるいは、彼らの指導者がいい加減に進展のない戦闘についに焦れたかのどちらかだ。
 それがどちらであれ、次の攻勢が最後となる。鉄板の橋を掘に叩き落とし、柵などとうに燃え尽きた道を挟んで対峙する両者。そしてどちらからともなく、その時の訪れを悟った両者は再び戦火を交える。
『――、――、――!! 燃やせ。燃やせ、燃やせ! 焼き尽くせ、全てを!』
「奴らを中に入れるな! なんとしても追い返すんだっ!」
 レイダーが吼え、タヤマが叫ぶ。
 火炎が撓り盾の表面を焦がし、開拓者たちの熱線銃が走るレイダーを射抜いてなぎ倒す。
 ――今、勝敗にもっとも重要なピースは三つ。
 数は既に互角にまで持ち込んだ。
 武器は開拓者たちのほうが有利とすら言えるだろう。
 だが、致命的なまでに最後の一つが及ばない。それは経験である。
 死を潜り抜けてきた経験を、開拓者たちは持っていない。一方のレイダーたちは、その全員が身体の何処かに、多い者ではほぼ全身に重篤な火傷を負いながらも火炎放射兵であることを辞められなかった筋金入りのファイアスローワーどもだ。
 身を屈めることもできず、重いボンベを背負い、目立つ火炎を武器に戦場を駆け抜けた命知らずどもだ。
 至近距離で燃え盛る油の熱波を浴び続け、ときに味方や己の撒いた炎にその身を焦がされようとそれこそが己の生き方であると定めた愚か者どもだ。
 そんな彼らは死の恐怖を炎で焼き尽くすことが出来る。相手が素人同然の開拓者だと分かっていればなおのことそれは容易い。
 隣に立つ仲間が撃ち倒されても、仲間のボンベの誘爆に巻き込まれ炎がその被服に飛び散っても、立ち止まらない。立ち止まらない。立ち止まらない。
 前に進め、進め、進め。焼き尽くせ、焼き焦がせ、焼き払え。
 正気を焚べて狂気の炎を燃やせ。その先に奪うべきものがあるのだから。
 ざっくざっくとブーツの底で砂を蹴り、一気呵成に攻めかかるレイダー達。
 ――その前に、二つの鉄塊が現れた。

「ハローハロー略奪者諸君」
 片や荒野には似つかわしくない洒落た男物を装った女。
 それが六ツ脚の鋼鉄に腰掛け、開拓者を守る盾より一歩前にずいと出る。
「一応言っておこうか。抵抗せず武器や薬や弾薬……有用そうな物を全部捨ててさっさと失せろ。そうすれば見逃してやってもいい――などと言って聞くような連中だといいんだがね?」
 くつくつと喉を鳴らして、もう一つ現れた白い鉄塊に笑いかけるレナ。
「そういう人達じゃないとレナさんもご存知でしょう。なにはともあれせっかく作った畑を壊させるわけにはいきません! オベイロン、レイダー達を迎撃です!」
 片や純白の、未来的な形状の戦車に収まる小柄な白い少女。
 レナの問いかけに否と首を振り、迫る悪を蹴散らさんと愛車のエンジンを唸らせる。
 二人がこのタイミングで参戦したのは全くの偶然であった。レナは非武装の多脚戦車――ワンダードッグでレイダー共を殲滅するべく、自らの手持ち武器を複製してその車上に積載する時間が。アイは此処数日で耕耘用のブレードに加え、スプリンクラーや鳥を追い返すためのキラキラしたディスクを搭載し農作業仕様に変貌を遂げたオベイロンを元の戦闘仕様に戻す時間が必要だったのだ。
 それを終え、いざ戦場に繰り出した。それがちょうど最後の攻勢で勢いに乗ったレイダー共とかち合っただけのこと。
 だが、レイダーたちにとってはそうではない。多くの犠牲を出し、ようやく押し切れそうな戦況で突然行く手を阻むように現れた陸の王者。それも二つ。
 仲間が死んだお陰で勝ち筋が見えた、仲間が死んでくれたお陰で自分の分け前が増えた。そんなこの後の皮算用をすら浮かべていたレイダーどもの脳裏に浮かぶのは絶望だ。
『――、――……に、げ……いや、逃げるな。逃げても死ぬ。死ぬなら炎とともに死ね。続け、続け、燃やし続けろ……!』
 震える脚に力を込め、ざりと一歩を踏み出す勇敢な男に続いてレイダーたちの死の行進が再び始まった。
「そうくるだろうと思っていたよ。ならば――さあ、戦争をしようか」

 そこから先は蹂躙だった。二輌の戦車からの砲火がレイダーを吹き飛ばし、銃火が紙くずのように肉体をなぎ倒す。
 味方の死を盾に運良く近づいたものが、勝利を確信して火炎放射器で猟兵を蒸し焼きにしてやろうと企んでも、戦車の巨体がそれをあまりに呆気なく踏み潰す。
 終わりゆくこの世界で、戦車とは地上の王である。それは竜であり、戦艦であり、鋼鉄で鎧い内燃機関で鼓動する絶対の支配者。たとえ生まれた世界が違おうと、この世界においては戦車であるということが即ちそういった存在であるということとイコールであるのだ。
 その絶対者を従える二人の下で、レイダーたちは為すすべもなく粉砕されてゆく。
 敵わぬとレイダーたちは恐怖した。正気をすべて燃やし尽くし、己の魂の根底までもを狂気の炎に委ねてなお消せぬ原初の恐怖。それは狂気を先鋭化させ、火炎信仰と融合した結果――
『燃えろ、ヒッ……燃えろ、燃えろ! 俺が、お前も!』
 死に絶えた仲間のボンベを毟り取り、それを腹に抱きかかえて突進する男たち。
 殆どが戦車に辿り着く前に撃ち倒されるが、それでも迎撃を上手いこと潜り抜けるものが一人なり二人なり現れる。
 それらが、自らの確固たる狂気に殉じて爆ぜた。
 複数の燃料ボンベを束ねた自爆は、火炎放射の数倍の規模の炎の濁流を戦車とその後ろの人々に叩きつけるだろう。
「おいおいおい、流石にこれは蒸し焼きにされてしまうじゃないか!」
 迫る爆炎をもろに浴びれば、一瞬で戦車の装甲の内側は人間の耐えられぬ高温環境に成り果てるだろう。外に出ても一面炎に包まれているのでは、遠からず焼け死ぬしかない。
 かといって躱せば背後の開拓者たちは一瞬で全滅してしまう。
 破れかぶれの自爆だが、猟兵を手こずらせるというそれだけの執念を遂げるには最適解だったそれに、レナは冷や汗を流す。
「――全武装の制御を全てオベイロンに移譲しますっ! そのまま後続を迎撃してください!」
 万事休す。誰もが目を瞑り、その後に来る灼熱の地獄に身構える中、アイはその双眸でじっとそれを見つめていた。
「オベイロンが支えてくれる間に、私は私に出来ることを!」
 火炎という敵の武装から、ある程度こういった事態は想定していた。
 まさか自爆で此処までの規模の火炎の波を生み出すとは思っていなかったが、アイはこの事態に全く無策というわけではなかったのだ。
 オベイロンの巨体をしても炎という流体から全員を守ることは困難に近い。ならば、炎を消してしまえばよい。
「せっかく実った作物を、生きようと頑張っている人達を燃やさせはしませんっ!」
 周辺の環境を解析し、大気中の分子に干渉。電脳が現実を改変した結果生まれた竜巻めいた突風は、炎を巻き上げることなく堀の上で渦を巻き、そこに蓄えられた水を天高く運んでゆく。
 ――雨が降る。土砂降りの雨が、農場の上、極狭い範囲に降り注ぐ。
 火炎を打ち消し、畑には恵みを。灼熱と戦う人々に涼やかな癒やしを。
 雨を浴び、破滅が来なかったことに歓声を上げる開拓者たちが猛然とレイダーたちへと熱線銃を撃ち返す。
「やれやれ、まさかそんな隠し玉を持っていたなんてね」
 さしもの私もダメかと思ったがなんとかなるものか、と笑って、レナとワンダードッグが撃退され潰走してゆくレイダーを入念に狩れば、長い長い業火との戦いはようやく幕を閉じたのである。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​




第3章 ボス戦 『サイバーレイダー』

POW   :    パワーアシストアーマー
予め【パワーアシスト機能に充電しておく】事で、その時間に応じて戦闘力を増強する。ただし動きが見破られやすくなる為当てにくい。
SPD   :    奪い尽くす者達
レベル×1体の、【タトゥーで額】に1と刻印された戦闘用【機械化レイダー軍団】を召喚する。合体させると数字が合計され強くなる。
WIZ   :    レイダーズシャウト
【略奪を宣言する叫び声】を聞いて共感した対象全ての戦闘力を増強する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



『軍隊崩れっても頭のオカシクなったパイロマニアどもじゃこんなもんかね……だが』
 もうもうと立ち籠める煙を巨大なスレッジハンマーの一振りで振り払い、舞い散る火の粉をその身に浴びながら現れる巨体。
 真紅に輝く眼光はちろちろと電子的に明滅する。それは軍用のサイバネ・アーマーを元に野蛮な改造を施された強化装甲を肉体に組み込んだ男だ。
 男はかつて傭兵だった。戦場でしか生きられない、武器の扱いと殺しの業以外に秀でたもののない存在。戦争があればそこへ行き、敵を殺して糧を得る。
 だがオブリビオン・ストームの襲来で全てが変わった。戦争に費やすリソースが人類の維持に注がれるようになり、彼を雇っていたクライアントはほんの二言三言の労いの言葉を残して彼ら傭兵を切り捨てた。
 ――だから殺した。殺して、奪った。
 その時男は略奪者となった。殺し以外に特技がないなら、殺しで全てを手に入れるしかない。
 食い物は殺して奪えばいい。水も殺して奪えばいい。世界が滅びてしばらくは機能していた警察や軍隊も軒並み押しつぶし、受けた傷は奪った軍用の義肢で一層強化して。男はその果てに半身鋼鉄の戦鬼と成り果てた。
 そして、男と思想を同じくした者たち――殺すことでしか己を維持できない、およそ人間の屑と呼ばれる者たちを力でまとめ上げ、小規模ながらも凶悪なレイダーとして組織化した彼は、人生最高の時を迎えたその直後、オブリビオン・ストームに飲み込まれたのだ。
 オブリビオンと成り果てた彼は、だがしかしその後も何も変わることはなかった。
 生きていた頃から殺して奪うのが彼らのやり方だった。ならばオブリビオンとして殺すことが本能に刻まれたとて何を変わる必要があるだろう。
 彼は何者にも縛られない。鋼鉄と電子の身体を唸らせて、息絶えた火炎放射レイダーの死骸をぐしゃりと踏み潰して農場の前に立つ男が吼える。
『テメェらなァに農民風情に殺されてやがるグズ共が! 俺たちは何だ、あァ? レイダーだ。泣く子も捻り殺すイラプションズの略奪者だろうが、ン? 違うか?』
『――、――、違わない。ボス、俺達はレイダー、だ』
『――、――、そうだ。殺せ、奪え、何もかも!』
 機械化レイダーの男の叫びにガスマスクたちが呼応する。
『なら走れ! 銃の引き金を引け! ナイフを奴らの柔い肉に突き立てろ! 紙屑みてぇに薄っぺらい頭蓋骨を殴り潰せ! 生暖けえ血を多く浴びた奴ほど分け前は多くくれてやるぞ!!』
 炎と血に酔った男たちが開拓者に襲いかかる。猟兵たちが渡した装備と、先程の大攻勢を凌いだ経験を活かして彼らは見事にそれを迎え撃ち持ち堪えるが、長くは保つまい。
 その激しい殺し合いを眺め、満足気に悠然と歩みを進める首魁の男。
 猟兵が開拓者に手を貸せば、その間に戦場に踏み込んだ首魁の男が有象無象とは格の違う、殺しに最適化を果たした肉体でより多くの命を刈り取るだろう。
 逆にその男さえ倒せば、恐怖にしろ心酔にしろレイダー共の精神的支柱となっていた存在が消えることで開拓者たちを襲う賊は瓦解するだろう。
 より多くの命を救うため、猟兵は苦境に立つ開拓者たちに後ろ髪を引かれる思いで首魁の男の前に立ちふさがる。
サリー・オーガスティン
■SPD

■心証
さぁ出番だよ、ボクのもう一台の相棒!
(エルウッドに乗り換え)

■戦闘
【地形の利用、騎乗、操縦、第六感、ダッシュ、吹き飛ばし】で、サイバーレーダーや手下を【追跡】し、【地形の利用、スナイパー、2回攻撃、誘導弾、零距離射撃、なぎ払い、援護射撃、一斉発射、だまし討ち】で兎に角まずは数を減らす

たまらずに合体したら、カウルをパージして、スピードでさらに追い詰める!

「背中からバイクのハンドルみたいなのが見えるけど、それは単なる格好つけ?人を苦しめるための象徴? なら、ボクは猟兵としてはもとより、一人のバイク乗りとしてボクは許さないよ」

※アドリブ・仲間との連携は歓迎


数宮・多喜
【アドリブ改変・連携大歓迎】

アンタが頭目?
確かに他の奴らに比べりゃごつくてデッカイね。
奪う事、力が全てってのはまぁ分かりやすいか。
……だから本当は、あまり流儀に乗ってやるのも癪なんだけどね。
どっちのチカラが「上」なのか、分からせてやる!

カブから降りて、親玉に真正面から相対してゆっくり歩いていく。
奴もアタシに気付けば、その意図は察してくれるだろ。
距離を詰めながら、右手にサイキックの渦を纏め。
そいつに注意を『おびき寄せ』ながら、
奴のサイバネアーマーに『ハッキング』で接続。
充電率のモニター程度にしておくよ。
そうして攻撃の起こりを『見切り』、
『カウンター』で【漢女の徹し】をぶち込むよ!


レッグ・ワート
耐えてる、この短期間に頼もしいね。そんじゃこっちは良く効く発破から逃がしにかかろうか。

俺らの手どのくらい見てたんだろうな。とまれドローンはバイクに組込んだまま、逃げ足利かせた運転しつつ動きの傾向の情報収集。いけそうなら鉄骨使って兼牽制。……一応フェイントや予備機能の用意はある想定でいくわ。生き残らないと次無いもんな。そういう訳で逃がす気無いぜ、仕事納めの準備はいいかい。
基本動線確保の上で見切り避け、ゴッドスピードライドの速度と怪力でぶん回す鉄骨でぶん殴ったり足関節とか機器の隙間や外装備の破損を狙ってく。湧いても同じだが、ボスの動線目掛けて打ち上げてこう。誰か送る時は、忍び足というか消音同期で。




『はッ、グズどもが。最初っから本気でやりゃあ手前らに敵う農民なんざいねぇんだよ。舐めてかかるから無駄に死に腐るンだボケが』
 開拓者を相手に死闘を繰り広げるガスマスクたちの背中をじろりと睨めつけ、スレッジハンマーを振り回しアーマーに電力を蓄える巨躯の男。
「そこのゴツくてデッカイの。アンタが頭目?」
 そこへ配下の波を掻き分けて滑り込む一台の小型バイク。猟兵たちの最先鋒を切るライダーたち、その中で最も非力でありながら抜群の小回りの良さで人の群れを潜り抜けたそれが、男の前でドリフトして停車する。
『あ? そうだぜ、俺がコイツらのボスよ。お前は何か? 俺を殺しに来たのか? ン?』
 ずしりと重いスレッジハンマーを杖のようにつき、ライダー――多喜を品定めするような粘つく視線を這わせて男は笑う。
『いいねぇ、ちっとばかし垢抜けねえが肉付きは上々じゃねえの。モノにしてもいいし売り飛ばしてもいい値が付きそうだぜ、お前』
 この男は相手をヒトとして見ていない。自分が使うための道具か、幾許かの価値で売られる商品か、あるいは生意気にも敵対し、踏み潰されるべき虫けらか。
「……本当に奪うことしか考えて無いんだね。ま、力が全てってのは分かりやすいか」
 だから多喜は、静かに瞑目して――
「本当はあまりアンタみたいなのの流儀に乗ってやるのも癪なんだけどね」
 見開いた目には力強い覚悟。体躯で劣り、膂力でも勝てぬだろう。それでも戦おうという覚悟を秘めた瞳で、ちろつく赤い眼光をまっすぐ見据えて多喜はバイクから降りる。
 ゆっくり、ゆっくりと歩みを進める多喜。右手にはサイキックエナジーが渦を巻き、巨体のレイダーすら圧倒する威圧感を放つ。
「――どっちのチカラが上なのか、分からせてやる!」
『――はッ、面白え! その自信ごと圧し折ってやるよ、クソアマ!!』

「耐えてる、この短期間に頼もしいね」
 後ろを振り返ったレグは、ガスマスクどもを相手に地形や道具を駆使して防衛に徹することで崩壊を食い止めている開拓者たちの姿を認めてカメラアイを明滅させた。
 被害がゼロとはいかないだろう。だが、最悪の事態だけは避けられそうだ。ならば後は自分たち猟兵がどれだけ迅速に首魁を仕留め、暴徒どもを瓦解させられるかに全てが懸かっている。
 これ以上振り返る暇はない。首魁の腹心の部下なのだろうか、サイバネアーマーを組み込んだガスマスク共が銃を手にバイクに襲いかかるのを、高速域の機動であしらい逃げ回るように振る舞いながら、格納したドローンに首魁の情報を集めるよう指示すれば、多喜と相対し軽やかに身を躱す彼女にハンマーを振り下ろす巨体が徐々にその攻撃を洗練させていくのが分かった。
「やべぇな……あの速度で学習してやがる。半分機械って頭まで弄ってやがんのか、それとも奴さんの才能か……あいつ、さっきの火炎放射器どもとの戦いも見てやがったんだろうな。……俺らの手、どのくらい見てたんだ?」
 場合によってはこちらのユーベルコードは既に対策済み、という可能性もある。
『――、――、これ以上、ボスのところへは……行かせん!』
 意識を首魁に向けた僅かな思案。そこへ機械化ガスマスクが対戦車ロケットを叩き込んだ。
 低初速のロケットとは言え、そこに最高速で真正面から突っ込んでいくレグにとって回避できる時間は零に等しい。
「……!」
 急ブレーキ。いやドリフトで旋回――間に合わない。ならば防盾で耐え――
「構わないで、そのまま突っ切るんだ!!」
 ウォーマシンならではの合理的かつ迅速な思考で絶望にたどり着かんとしていたレグへ投げかけられた声。
 一発の銃声がロケット弾を横合いから射抜き爆散させる。
「無事かい? とにかくこいつらを減らさないことにはボスを狙うのも一苦労だ、協力してくれないかな」
 大型のオフロードバイクに乗り換えたサリーが銃を下ろしてハンドルを握り、爆風を突き抜けたレグに呼びかける。
「――そうだな、そちらさんもスピードにゃ自信ありそうだし、さっさとこいつら散らしてボスにちょっかい掛けに行こうか!」
 ――でないと、どうもアイツに長期戦は不味い。レグの言外の意を汲んで、サリーは一度頷いた。
「了解、さぁ――出番だよエルウッド、ボクのもう一台の相棒!」
 エンジンが唸り、マフラーが咆える。
 より実戦的な装備と組織的な戦術を用いる機械化ガスマスクどもを相手に、二人のライダーが挑みかかった。
 レグが宇宙バイクの特性を活かし、悪路であろうとお構いなしにまっすぐ最高速を駆け抜けるライダーであるならば、サリーは地に足の付いた二輪車で地形を活かし、蛇のように柔軟に進路を変えて敵を翻弄するライダーである。
 僅かな起伏に敢えて乗り上げ高く飛び上がり敵の頭上を越え、あるいは荒野に微かに残った凹凸のない道で加速して敵を撥ねる。
 強靭なオフロードバイクだからこそ、多少強引な戦い方も許される。とはいえあまり多用したい戦術ではないが。
 サリーを追えば視界の外から一瞬で近づいたレグの振るう鉄骨で薙ぎ倒され、レグを迎え撃てば巧みに死角に潜り込んだサリーの射撃がレイダーを射抜いて数を減らす。即席にして真逆の二人は、見事に噛み合った連携でレイダーを狩る。
『――、――、二人同時は無理だ』
『――、――、ならば、どうする』
『――、――、一人ずつ、殺す。他にない』
 一方的に追い立てられるレイダーたちは、いつしかこの二人を相手にして今の自分達では敵わぬと理解していた。
 だが、彼らは軍団の誇りを重んじる精鋭。持ち場を放棄して逃げることはしない。
 ならば出した結論はひとつ。ボスに禁じられていた行為を、ボスの誇りのために解禁する。勝ったとしてもボスの怒りを買って殺されるだろう。だがそれでもだ。
 一人が自らのサイバネアーマーを引きちぎる。それに触発されたように一人、また一人と。
「なんだ、何やってやがるあいつら……?」
「軽量化? 生身の人間がいくら装甲を脱いだって……違う!」
 仲間たちがもぎ取り脱ぎ捨てたアーマーを、一人がその身に組み込んでゆく。
 腕が、足が、胴体が――機械化された装甲歩兵が、ボスにも匹敵する人間戦車が完成する。

「筋肉ばかりのウスノロかと思ったけど、中々出来るねえアンタ!」
『何を狙ってやがるか知らねえが、露骨なんだよお前ェはよ!』
 多喜の狙い通り、ボスはその右手のサイキックエナジーを十二分に脅威として警戒している。おそらくそれをぶつけられれば、鋼鉄の身とて無事で済まぬと本能か経験かで悟っているのだ。
 だが、それが故にボスの挙動に隙がない。ハンマーの届くギリギリ、これ以上には踏み込ませぬと巧みに距離を取り、戦鎚を振るって多喜を遠ざけるのだ。
「ちっ、ハッキングでもかけて充電率でも覗き見てやろうかと思ったんだけどねぇ!」
 中々そのようには行かないものだ。とはいえ、だ。この応酬でボスも相応の電力を消費しているハズ。
「もうじき好機が来る、そう信じて躱すしか無いかね!」

「お前らも生き残らないと次無いもんな」
 だが、その「次」はこの世界にとって害悪だ。
『――、――、――、いや、俺に、俺達に、次はない。お前らを殺せば、ボスに殺されるだろうさ』
「ああそう。まあ、だからって逃がす気はないぜ。仕事納めの準備はいいかい」
 バイクの上で鉄骨を構えるレグ。
「ボスには一言言いたいことがあるからね。押し通らせてもらうよ」
 エルウッドのカウルを脱ぎ捨て、軽量化を果たしエンジンを蒸かすサリー。
 二人が同時に疾駆し、機械化レイダーが棍棒のように弾頭が装填されたままの対戦車ロケットを振り回す。
 ――ロケットの殴打を加速ですり抜けたサリーが両の膝裏に連続で射撃を叩き込む。
 ――たまらずバランスを崩したレイダーの第二撃をレグは紙一重を見切って最短距離で回避し、そのまま脇に抱えた鉄骨を投げつける。
 ――金属が潰れる音、そして粘つく液体が荒れ地に撒き散らされる音。
 ――二人のライダーは振り返らず、鋼鉄の墓標に背を向けてボスへと駆ける。

『ちょこまかとうるせえアマだったが、そろそろ鬼ごっこは終わりにしようや!』
 薄皮一枚を掠めていったスレッジハンマーがライダースーツを引き裂いた。
 凄まじい勢いで至近距離を大質量が駆け抜けたことで、ヒリヒリと焼ける痛みを感じながら多喜は強気に笑う。
「そうだね、アンタの充電もヤバいんじゃないかい?」
 覗き見ずとも分かる。ボスの動きは当初に比べ洗練されているが、その速度とパワー自体は低下している。
 一撃を加えるならば今しかない。が、その今、既に奴は多喜の動きを見切っている。
 何かもう一手、戦況を変えるものが必要だ。
「――もう一手欲しいってタイミングだな?」
 そこへ割り居る暗緑の疾風。レグが二人の間に割り込み、鉄骨の殴打を叩き込む。
 スレッジハンマーで咄嗟受け止めたボスへは深追いをせず鉄骨を手放しUターンで帰還するレグ。
 なぜなら彼は一人で介入したわけではない。
「君さ、背中からバイクのハンドルみたいなのが見えるけど、それは単なる格好つけかな? それとも人を苦しめたトロフィーか何か? まさかそれがレイダーの象徴とか言わないよね?」
 押し付けられた鉄骨を投げ捨てたボスの顔面、装甲に覆われたセンサー部分を狙って放たれる無数の銃弾。ちゅいんちゅいんと金属音を立てて弾かれる礫をうざったそうに払い除け、ボスは次なる闖入者――サリーに面倒な物を見るような視線を。
『あ? こいつか? 何だったかな……ああ、こいつァ警察のバイクを罠に掛けて袋叩きにしたときにもぎ取ったやつだったかな』
「あぁそう。バイク乗りを罠にはめて殺して、バイクまで壊して……ならボクは猟兵はもとより、バイク乗りとしても君を許さない!」
『許さない? 聞き飽きたぜそんな台詞よォ! だったら何だ、その豆鉄砲を俺が死ぬまでペチペチぶっ放してみる、か――!?』
 ――だが、ボスは気づく。レグの介入で一瞬視界が塞がれ、蛇行しながら執拗に頭部を狙うサリーに気を取られているうちに、自身が今最大の脅威だと認めていた女が姿を消していることに。
「気づいたかい、もう遅いよ!」
『手前ェ――』
 ハンマーが振り下ろされるより早く、練り上げられたサイキックエナジーを纏った掌底がボスの腹を穿つ。
 巨体が嘘のように吹き飛び、もうもうと砂煙を上げてその中へ消えてゆくボス。
「……あれで死んだ――といいんだけど。多喜さん、疲れてるでしょ。一旦戻ろう。皆も心配だし」
 サリーに促され、多喜も小型バイクに跨り火炎放射兵と戦う開拓者たちに合流する。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

レナータ・バルダーヌ
農民風情とはわかっていませんね、畑仕事は重労働なんですよ?
このくらい、ゴボウを掘るのに比べたら朝飯前です!

……とはいったものの流石にちょっと疲れましたし、火炎放射のレイダーさんたちと戦っている皆さんも心配です。
早めに決着をつけたいところではありますけど……。

堅い相手にこそ【A.A.ラディエーション】は相性がいいので、先程と同じく接近戦を仕掛けます。
ただし、敵の攻撃は当たったらまずそうなので出来るだけ回避します。
幸い動きは読みやすそうですけど、サイキックオーラで防御も張れるようにはしておきます。
狙いは敢えて機械部分に絞り、鋼の【鎧を無視】して内部機構に損傷を与え、焦らず確実に力を削ぎましょう。


セラエ・プレイアデス
キミがこいつらのボスってヤツ?
うーん、強化装甲のハードな食感もいいんだけど……
今は蒸したお芋とかコトコト煮込んだ野菜のスープとかの気分なんだよね!

さて、獅子はウナギを狩る時もなんとやらって言うし初手から全力だ。
UC発動して目についた敵を超高速で切り裂いてくよ。
移動しながらのすれ違い様の攻撃で、回避されても追いかけてくけどボスくらい強いと迎撃されるのは十分ありえるからね。
いざって時の為に【武器受け】とか【見切り】が出来るように気を張っておくよ。

後はひたすら斬って斬って斬りまくるよ!
キミ程度でボクがお腹いっぱいにはならないだろうからね、
この後の食卓がボクにとって本番なのさ!




『っクソがァ……いや、俺が連中を舐め腐ってた。オーケー、そうとも。認めるさ。農民風情とは毛色が違うのが居るとは思ってたんだ。そうか、手前ェらが猟兵ってヤツか……』
 オブリビオンとなったことによる変質が、本人がそれと認識しないほど微々たるものだった。生まれながらにしての殺戮者だった男は、オブリビオンの本能に対しても無頓着だった。殺したければ殺す。そこに本能の介在する余地はない。己の意志がその上位に立つのだから。
 ――故に、強烈な一撃で頭に昇った血が少し降りてきたところで彼は理解する。
 眼前の敵こそが猟兵。我らオブリビオンの不倶戴天の天敵なのだと。
 立ち上がり、砂煙の中から進み出る巨躯。
『そこらの雑魚奪還者とも違う。クズみたいな農民風情とも違う。いいぜ、傭兵やってた時以来だよ、手前ェらみたいな殺し甲斐のある相手はよ!』
「――農民風情とは分かっていませんね」
 再充電を開始したボスの前に立つのは、戦場を片翼で飛び越えふわりと舞い降りたレナータだ。
「畑仕事は重労働なんですよ? 貴方を倒すことくらい、ゴボウを掘るのに比べたら朝飯前です!」
『あ? ゴボ……? 舐めた口利きやがって、露出狂の姉ちゃんよォ!』
「ろッ……これは由緒正しい人魚の服です!」
 顔を真っ赤にして反論するレナータを鼻で笑うボス。今のやり取りの間にも電力は急速に蓄えられてゆく。
 くだらない口先の応酬に乗れば乗るほど、手前ェらの首を絞めるのさ。ボスはほくそ笑み、さらなる挑発を吐き出すべく声帯を震わせ――
「どうでもいいよそういうの。キミがあいつらのボスってやつなんでしょ?」
 遮るようにもうひとり。中性的な美女でありながら、ボスと同じく異形のシルエットを有するセラエは、その異形たる両の巨爪をしゃらりと鳴らして眼前の大男を値踏みする。
「強化装甲のハードな食感も嫌いじゃないんだけどさあ。今は蒸したお芋とかコトコト煮込んだ野菜スープの気分なんだよね」
『食感だァ? いや……手前ェ、ストームブレイドか!』
 よく知ってるじゃん。敵を称賛してみせたセラエは、レナータより一歩を前に出る。
「キミ、疲れてるでしょ? ボクがあいつを抑えるからさ、ちょっと休憩してから本気の一発をぶち込んでよ」
 眼前のレイダーに聞こえぬように、小さな声で。
 レナータの疲労を見抜いたセラエが戦闘準備を整える一方で、ボスの元にもふたたび有象無象が集まりつつあった。
『――、――……ボス、無事か?』
『――、――、俺達にはアンタが必要だ。アンタの力が。だから俺たちに有益なうちは』
 殺させない。装甲を纏ったガスマスク共が未だ充電中のボスを庇うように前に出て、すらりと大ぶりのナタや片手斧を携えセラエとレナータを睨みつけた。
「セラエさん、後ろで戦っているみなさんも心配です。わたしも一緒に……!」
「いいからいいから。あんな雑魚くらいぱぱっと片付けてくるよ。獅子はウナギを狩る時もなんとやらっていうしね、最初から全力だ!」
 地面に蹴り足ひとつ、ガスマスクどもとの距離を零に詰めたセラエの爪が振り下ろされる。火花散らしてそれを受け止めるナタ。だが簡易のサイバネアーマーによるパワーアシストでは、生粋の兵器たるセラエの鋭利な一撃を防げはしてもそれが手一杯だ。
 ――が、ガスマスクは一人ではない。ナタの一人がセラエのもう片腕で腹をごそりとえぐり取られ息絶える刹那に、二人目が両の腕が塞がった瞬間を逃さず斧を振り下ろす。
 踊るように身を躱して勢いのままの斬撃でそいつの首を飛ばすセラエへと叩き込まれる銃弾。殆どを巨爪の甲で弾くも二、三発が肩や足に食い込んだ。
 だが構わない。止まらない。捕食者は眼前の得物を食い尽くすまではその牙を収めない。
「キミ達程度でボクがお腹いっぱいにならないだろうからね、この後の本番、楽しい食卓のために平らげさせてもらうよ!」
 ガスマスクどもは断末魔すら上げずに――いや、上げるだけの暇すら与えられずに肉となり、過去喰らいの顎門に斃れてゆく。
「どうせまた手下は来るんだろうけど、いまのでひとまず残りはキミだけだ!」
 最後の一人を斬り倒し、勢いのままにボスへと躍りかかるセラエ。その爪をスレッジハンマーの柄で受け止めたボスは、チャージされた電力が生み出す膨大な膂力で彼女を押し返す。いや、それはもはや投げ飛ばす、打ち上げると言ったほうがいいだろう。天高く跳ね上げられたセラエは、偽神細胞が命じる攻撃動作を中断できぬまま、しかして反撃を予期した体捌きで致命的な墜落を避け受け身の準備をしながら叫ぶ。
「レナータ!!」

「――はい!!」
 ハンマーをかち上げたボス。そこへ至るまでの道に邪魔するものは何もない。
 敵に隙を作ってくれた。敵までの道を作ってくれた。頼もしい戦友の抉じ開けたその好機を逃さぬよう、身を低く這うように地面スレスレを飛翔するレナータは加速する。
 敵は鋼鉄の身体を持つ。生半な物理攻撃は耐えられてしまうだろう。それは先行した猟兵たちが与えた大ダメージが、見かけの上でほとんど無いように見えることからもよく分かる。実際にダメージを与えられるのは一定以上の破壊力で直接内部の肉体――臓器を攻撃した時のみと考えてもいいだろう。
「だったらわたしとは相性が良いはずですっ……!」
『クソだらァ……ッ!』
 かち上げたハンマーを振り下ろすことも、引き戻して防御に使うことも間に合わぬ。ならばとボスは姿勢が崩れることも厭わず蹴り足でレナータを迎え撃つ。
 それを羽ばたき一つ、間一髪で躱してレナータの手が装甲されたボスの脇腹を触れた。
 一瞬のタッチ。その一瞬で充分。レナータの念動力が、装甲の内側の機巧を破砕し、その奥に防護された生の臓器を握りつぶす。
『がァァァァッ!!!!』
 ボスの呻き声が荒野に轟く。その声に驚いたのか、開拓者たちと戦うガスマスク共の気配が僅かにたじろいだ。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

アイ・リスパー
「あなたがレイダーたちの首魁ですね!
オベイロン、力を貸してください!
機甲モードに変形です!」

【ビルドロボット】でオベイロンをパワードスーツ形態に変形!
鋼鉄の鎧を身に纏い、オブリビオンに対峙します。

『オベイロンのAIとの電脳接続良好。
全武装オールグリーンです!』

先日の損傷を修理したついでにカラーリングとデザインを一新した新オベイロンの力を見せてあげましょう!

レーザーガトリングで牽制しつつ敵に接近!
相手と組み合い力比べです!

『オベイロンの出力を甘く見ないでくださいっ!』

敵を押し返したら荷電粒子砲をプラズマブレードモードにして斬り付けます!

『半端な機械化でオベイロンに敵うと思わないでくださいね』


フィーナ・ステラガーデン
どこの世界でもこういうやつらがいるわね!
あんたらが屑の集まりで
それを誇りに思ってるどうしようもないバカってことはわかったけど
そんなことよりも私はお腹がすいてるのよ!
だいたい奪う気なら燃やしてんじゃないわよ!
食べる分減ったらあんたらどうやって責任取るつもりよ!?

出来るかぎり仲間猟兵と共に戦うわ!
そうねえ。とりあえず復活したマスク被ってるのは
引き続き【属性攻撃】で焼き払いつつ戦うとするわ!
あまり炎出しすぎると農場燃えちゃうのよね?
じゃーUCでなぎ払うわ!【全力魔法】で後衛から
合図を送ってボスっぽいやつもまとめて横薙ぎにするわ!

(アレンジアドリブ連携大歓迎!)




『がぁぁ…………クソが、クソどもが……!』
 ドス黒い油混じりの血をマスクの縁から滴らせ、レイダーの首魁たる男は呻く。
 即死に至るような重要な臓器をやられた訳ではない。それは彼にとって不幸中の幸いであったし、生身のヒトであった傭兵時代、撃たれて内臓の一つや二つを破裂させた経験が無い訳でもない。
 だがヒトがヒトである限り――いや、たとえ獣に堕していたとしても臓器を失う痛みに耐えきれるものではないだろう。ましてそれを為した相手が本能に刻まれる憎き仇敵たる猟兵であったならば、明滅するその赤き眼光に宿る憤怒は生半なものではない。
『殺す。奴隷も要らん。全員ぐちゃぐちゃにすり潰してゾンビ共の餌に撒いてやる』
 ずるりとスレッジハンマーを担ぎ上げ、肩に載せてよたよたと農場に進む巨体のレイダー。
 その前に、ずしりと彼に匹敵する巨躯が割り込んだ。
「あなたがレイダーたちの首魁ですね!」
 純白の鋼鉄は、その外観に不釣り合いな愛嬌のある声音で彼を呼び止める。
 機動戦車オベイロンを人型の装甲として身にまとったアイは、戦車形態時以上に戦闘に特化した数多の銃砲火器を鋼の略奪者に突きつけた。
「オベイロンAIとの電脳接続良好、全武装オールグリーン。新しいオベイロンの力を見せて――」
『うるせえ、退きやがれ!』
 まずは牽制。充分な距離から射撃でダメージを与え、勢いを削がんとするオベイロン。そのレーザーガトリングの銃身が射撃に備え空転を開始した刹那に銃の間合いを飛び越え一瞬で距離を零に詰めた男の、戦車すらアルミ缶よろしく押しつぶす戦鎚の振り下ろし。
 確かに彼は鋼鉄と肉の混じった巨体の持ち主だ。その身体はさぞ重かろう。
 その上で負傷をしていたし、これまでの交戦では小刻みに間合いを刻みながらも決して大きく躍動するような戦闘を見せなかった。
 彼を鈍重であると認識したことは決してアイの侮りではなかったし、その上で彼女の選択した戦術――接近までに射撃でダメージを蓄積させ、然る後に馬力勝負の白兵戦に持ち込む――は、順当なものと言えただろう。
 が、猟兵たちには誤算があった。
 一つは彼の身に纏うサイバネアーマーが、都市三次元機動戦闘を考慮した米陸軍の実験機であったこと。
 もう一つは、常に余力を保ち狡猾に相手を嬲り殺すこの男が、猟兵という存在への殺意に突き動かされるまま後先を考えぬ全力駆動を良しとしたこと。
 どちらも事前に知ることなど不可能であった。故に、この状況は誰の油断によるものでもない。
 ただ、ただ――運命の噛み合いが悪かった。それを呪えと男は嗤い、それが分からぬと少女は目を固く閉じる。

 ――爆発。
「……まったく! アイってばそんな奴に何を押されてるのかしら!!」
 爆ぜたのはオベイロンではない。純白の機甲と血に錆びた戦鎚の狭間、何もなかった空間が火炎によって炸裂する。衝撃に対して衝撃を叩きつけることでその浸透を阻害する。厳密な理屈は異なるが、俗に爆発反応装甲と呼ばれるようなそれと似た効果を瞬時に形成したその魔女は、こめかみに青筋を立ててハンマーの重量に引かれて後ろへたたらを踏んだレイダー相手に杖を突きつける。
「どこの世界にもこういう賊はいるわね! あんたらが屑の集まりでそれを誇りに思うようなどうしようもないバカだってことはよーっく分かったわ」
 それに関してはあんたたちの生き方だし、邪魔するなら倒すけれども人様に迷惑を掛けないように生きるなら口出しはしないけど。
 魔女はすっと息を吸って、吐く。
「そんなことより私はお腹が空いてるのよ! あんたたちのせいでご飯食べそこねたの! 分かる? だいたい奪う気なら火付けてんじゃないわよ! 私が食べる分減ったらどう責任とるつもり!?」
 捲し立てる小さな魔女に、ようやく恐る恐る目を開いたアイは歓喜する。
「フィーナさん! 助けてくれたんですか!?」
「そんなところよ! それよりアイ、アイツぶっ飛ばすから手伝いなさい!」
 小さな身体で誰よりも態度は大きく。白の機兵に指示を出す魔女に頷いて、オベイロンは駆け出した。
「あなたの機動力は学習しました! 既にそれも織り込んで演算は終わっています! オベイロンの大型火砲で捉えるのが難しいならば!」
『うるせえガキどもがッ! てめぇらの飯だ何だを俺が知ったことかよ!!』
 戦鎚を後ろに引き、突進するオベイロンを迎え撃たんとする首魁の男。
 僅かな一歩。その差で重厚な戦鎚の先端より内側に踏み込んだオベイロンは、柄に強か打たれながらも損傷を最小限に巨体の男と組み合った。
「オベイロンの出力を――」
『あァ!? ざけんなよ、俺のサイバネアーマーを――』
「甘く見ないでくださいっ!」
『舐めんじゃねぇぞ、ガキがァ!!』
 単純な力と力のぶつかり合い。スペックだけならば互角であったろう。だが、レイダーの男は連戦で猟兵に負わされたダメージがある。アイには背中で見守ってくれる友がいる。
 徐々に、本当に少しずつ、形勢はオベイロンに傾いていく。
「半端な機械化で……オベイロンに敵うと思わないでください!」
 押しのけ、突き飛ばす。姿勢を崩したレイダーへと荷電粒子ブレードの一閃。
 だが浅い。すぐさま体勢を整えた男がスレッジハンマーを振るう。
 アイは動じない。斬撃が浅いことなど百も承知。互角の相手にたった一撃でトドメを刺せるなど思ってはいない。然らば反撃が来るのも至極当然。だが、彼女には信頼できる仲間がいる。
「――――斬リ払ウ黒炎の剣! 薙ぎィ……払えええぇぇぇえッ!!」
 咄嗟振り返ることなく跳躍したオベイロン、その爪先をかすめるギリギリを、後方からの黒炎の剣が切り裂いた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

白斑・物九郎
●WIZ



控えなさいや、賊風情が
こちとら具マシマシのトマトスープの完成と献上とを待ってるトコだったんスよ
王のメシ時を邪魔した咎、思い知りなさいや
(味の薄いトマトスープをかっこみながら偉そうなのがエントリー)


・【オーバードライブⅡ】発動
・懐のスマホが50秒後にアラームを鳴らしたら戦線を離れに動く

・首魁目掛け【ダッシュ】で肉薄

・経路上の手下連中は魔鍵の【なぎ払い】で最低限対処
・レイダーズシャウトへの共感を挫くべく、こちらの【殺気】を直でブチ込む【精神攻撃】を魔鍵に宿し討つ

・首魁を近接戦闘の射程に捉え次第、相手の得物を魔鍵の先端形状を駆使した【武器受け+武器落とし】で捌きざま、咽喉を狙った【串刺し】を


シャルロット・クリスティア
まぁ、その生き方に口を出す気はありませんが……こちらも生きるために迎撃はさせてもらいます。

所詮は力で統率された烏合の衆。最も強い『力』を潰せば繋がりは断てる……!

まずはあいさつ代わりの斉射。
機械化レイダー部隊程度なら蹴散らしたいところですが、まぁそう簡単にはいかないでしょう。
見るべきは、部隊単位での動き方。
各個に仕掛けてくるか、グループ単位で行動してくるか……そしてその中でボスは前に出るか指揮に徹するか。動き方次第で対処は変わる。
下がるのであれば機械化部隊に集中すればいいし、共に来るのであれば逆に取り巻きを引き剥がす。
極力、奴一人対猟兵複数の状況を作り出すように立ち回らなければ。


エドゥアルト・ルーデル
おっユニークボスじゃん!
アーマー持ちだしこれは倒した後の略奪が捗るネ!

まず【パワーアシスト】を使うタイミングで煙幕を張り視界を潰しますぞ
そして【流体金属君】に敵の近くで移動しながら伸び縮みさせる事で人影と誤認させ攻撃を誘発させますぞ!
後はこれを繰り返せれば充電切れの玩具の完成でござる!待ってる間は近くでおみずのもうね
UC無駄撃ちで動けなくなってクッソ無様でござるね

再充電を始めるであろうタイミングで背後から【忍び足】で近づき適当にパーツを【スリ取って】やりますぞ!
動力源やバッテリーをスリ取れるといい感じでござるね
抜き取った場所には適当に手榴弾でも突っ込んでおけばよろしい




 黒炎がレイダーの首魁を飲み込んだのを見て、シャルロットは狙撃仕様の機関銃の照星を除く視線を上げた。
 開拓者とレイダーどもが乱戦を繰り広げる最後方からの長距離狙撃によるボスの撃破。
 この程度、距離だけならばシャルロットにとって何ということもないが、それが乱戦の中となると難易度は跳ね上がる。
 射線にレイダーが割り込む可能性がある。あるいは開拓者たちの防衛線が崩れ、狙撃の最中に背中からレイダーに襲われるかもしれない。
 そういった不測の事態全てに注意を払いながらの狙撃は、技術以上の負担を狙撃手に強いる。
「観測手でもいてくれればいいんでしょうけど……」
 いないものはしょうがない。ともあれボスが討たれたのであれば、残る有象無象を散らすまで。
「所詮は力で統率された烏合の衆。最も強い『力』が潰された今、繋がりが断たれた彼らは……」
 敗走する他にない。そして統率を失した群衆をなぎ倒すのは、機関銃手の得意とするところだ。
 銃のセレクターを単射から連射に。華奢な身体でしっかりと銃床を抑え込み、あとは引き金を絞る。たったそれだけの小さな動作で、シャルロットは農場に押し寄せる機械化ガスマスクどもをいとも容易く潰走せしめる旋律を奏でるだろう。
 事実、小気味よく刻まれる銃声が二、三轟く度に面白いように装甲を弾けさせたガスマスクが踊り、血に泥濘んだ泥に沈んでいく。
 だが、その光景とは対象的にシャルロットの表情は強張っていた。
「……ボスは倒したはず。なのに、敵の圧力が衰えていない……」
 烏合の衆という話だったはずだ。
 グリモア猟兵の胡散臭い笑みを思い返し、彼女が適当な情報で猟兵を戦場に叩き込んだのかとも思う。ありえなくはなさそうだが、可能性は低い。
 では彼らを支配するものは恐怖ではなく、例えば信仰であったり、忠誠心のようなものだったのか?
 大いに有り得そうだが、それだけで首魁が死んでもなお死地に身を投げるほどの挺身を行えるものだろうか。
 ならば、あり得るのは――
「すみません皆さん、少しの間撃つのを止めます。その間防衛線を支えていてください」
「えぇ? ええ、それは……やっては見ますが!」
 開拓者たちが戦場を支えきれるのはごく僅かな時間だろう。その間にシャルロットは戦場を見渡し、レイダー共の動きを確かめる。
 ――分隊規模。分隊間の連携も取れている。片方が退けば片方が押し、僅かでも崩れる予兆があれば迅速に戦力を再配置して穴をこじ開けようとする。
 ――別の指揮官が居る。あるいは奴はまだ死んでいない。
「――おそらく敵の首魁はまだ生存しています! 後方で身を隠して指揮を取っているんだと思います、ここは私と開拓者の皆さんで支えるので行ってください!」

「――ニャるほど、殴り合いで勝てないと踏んで手下どもの指揮に集中ですかいや。思った以上に小狡いやつじゃニャァですか」
 秘書役の人形が襲撃直後、開拓者が軒並み迎撃に出た無人の広場でマイペースに鍋から器によそっていたトマトスープをぐびりと飲み干し、具が足りんと少しだけ不満そうにしながら黒白斑の青年が飛び出す。
 態度のデカい脳筋と踏んでいたが、さすがは元傭兵。その辺りの小心さと狡さを持ち合わせた、ひたすらに面倒でうざったいタイプの敵かと青年――物九郎は首をこきりこきりと鳴らしてスマホを弄る。
 アラームを設定して、ぽんと開始をタップ。同時に前進に呪紋が浮かび上がり、物九郎のあらゆる能力を、感覚を、六倍の人外の神域に引き上げた。
「デッドリーナイン・ナンバーエイト・ダッシュ」
 勝負は61秒間。戦場離脱を考慮すると50秒以内には撤収したい。往路を入れて実戦闘可能なのは30秒強だろうか。
 それもガスマスクどもに邪魔されなければもう少し長くボスとやり会えるのだが。
 そんな物九郎の懸念に心配ないと返すように、彼の道を作るが如くシャルロットの掃射がレイダーをなぎ倒す。
 よろめき倒れゆくガスマスクのヘルメット頭を蹴飛ばして、物九郎は黒く燃える荒野に飛び出していった。

 ――その頃、荒野に刻まれた焼け焦げた爪痕状のクレーターの中では、髭面と装甲面が相対していた。
「おっユニークボスじゃん! アーマー持ちだしこれは倒した後の略奪が捗るネ!」
 楽しげにサムズアップする髭。
 プラズマと黒炎、二重の斬撃痕を刻まれたアーマーを応急修理し、忌々しげにそれに視線を向けるレイダーの男。
『遊び気分か? 舐めやがって殺すぞ』
「当然遊びでござるよぉ、拙者にとってこの程度の戦場はゲームみたいなもんでござるしィ」
 エドゥアルトにはどうやら男が「伝説のサイバーレイダー★」とかそんな風に見えているらしい。得てしてこの手のボスは強力な装備品を落とすものだし、それが面倒極まるアーマー装備の相手ならば苦労に見合うものである可能性は高い。
 ニコニコと笑顔でウィンクまで飛ばしてレイダーを挑発するエドゥアルトと、その挑発に怒りを露わにしながらも決して勢い任せの攻撃はしないレイダーの男。
「そのくらいの分別は身についてござるかあ。流石にあんだけボコられれば学習もするよネ、仕方ない仕方ない」
 やれやれと肩を竦め、ポケットから取り出したスモークグレネードをころからといくつも転がせば、エドゥアルトとレイダーの男はもうもうと立ち籠めた煙幕に飲み込まれた。
 近距離にいながらお互いを認識出来ないほどの濃密な煙の壁の中、エドゥアルトは次なる一手として流体金属君を放つ。
 地を這い進みながら一定間隔で人間大に直立するその金属の液体は、幾度目かの伸縮で攻撃を受け飛散した。
 ならばその周囲に敵はある。飛び散った飛沫が再集結し、その地点を中心に何度も伸縮してスレッジハンマーを振るわせる。そうするとどうなるか。電力の無為な消費に加え、高速で旋回する重量物による旋風が煙幕を一部だけ吹き飛ばし、さながら台風の目のように首魁の男を白日の下に晒すのだ。

「見つけた。控えなさいや、賊風情が」
 煙の中、潰せど潰せど現れる影に流石に違和を覚えた首魁に、頭上から降り注ぐ声。
 見上げれば黒白斑の青年が、男の身を隠す地面の亀裂へと飛び込んでくる。
『またぞろ猟兵どもが増えやがる! クソが、ブチ殺して――』
「――ブチ殺されるのはテメェでさァ」
 こちとら具マシマシのスープの完成と献上を待ってるトコだったんスよ。
 王のメシ時を邪魔した咎、思い知りなさいや。
 巨漢の肩の上に落ち、首を両の脚で締め上げた物九郎が魔剣を延髄に突き刺しねじる。
 首の後ろから突き刺さり、喉元を貫く鍵は、しかし装甲を貫く抵抗感を感じさせぬ代わりにレイダーの肉体も破壊することはない。
 ただ、鍵を開けただけだ。物九郎の殺気をダイレクトに精神に送り込むために、男の心の鍵を抉じ開けただけのこと。
 しかし男は恐怖した。初めて戦場で敵兵と、お互いの表情もよく分かる距離で相対した日を思い出す。
 その時男は、身を守るものなど正規軍から払い下げられた安物の防弾チョッキ一着しかない状態で、ゲリラの戦士の無数の銃口の前に立った日の事を思い出したのだ。
 機械化された両膝がぶるりと震え、自動制御で関節がロックされそれ以上の失態を抑え込む。
 だが、僅か止まればそれで充分。
「気づいたときには終わりでござるよ」
 物九郎が男の肩から飛び降りれば、待ち構えていたエドゥアルトが男のアーマーからスリ盗ったバッテリーパックをポケットに押し込みイエーイとハイタッチをせがむ。
 だが、スマホのアラームを面倒くさそうに止めた物九郎はそれを一瞥だけしてさっさとその場を離れていってしまった。
「いぇーい……いやいいんでござるけどさ! 拙者ぜんぜん悲しくも寂しくも無いし! ていうかやっべ、そろそろバッテリーの代わりに突っ込んだグレネードが爆発するでござるよこれ拙者じゃなきゃ見逃しちゃう恐ろしく速い物々交換の解説ね。走れー!」
 駆け出したエドゥアルトの背後、正気を取り戻した首魁の雄叫びと爆発音が響く。
 

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

エウトティア・ナトゥア
※アドリブ・連携歓迎

チーム【獣人同盟】で参加
味方の行動に紛れて奇襲するのじゃ

彼奴が首魁か、ここで討たせてもらうぞ
何やら増援を呼んでいるようじゃな。真正面からは危険か?ここは【秘伝の篠笛】で狼の群れを呼び出し【巨狼マニトゥ】を先頭に敵をかく乱するのじゃ
狼達のけん制やスピレイルの行動を待って、【目立たない】ようフェードアウト
【野生の勘】で敵の注意がそれたタイミングを【見切り】、【緋色の線条】を発動して高速移動で一息で『サイバーレイダー』の背後に回り背中を駆け上がって両手から直接【崩壊の概念】を流し込むのじゃ
このままパーツを破壊してやるわい。生命維持に係る部分を破壊できたら言うことないのう


スピレイル・ナトゥア
【獣人同盟】で参加します

機械化レイダー軍団を精霊印の突撃銃で攻撃して、開拓者さんたちを【援護射撃】します
猟兵として、あなたたちオブリビオンさんに、これから美味しいお野菜を作る私たちの農場の開拓者さんたちを殺させるわけにはいきません!

……お姉様
さては、なにか仕掛けるつもりですね
そういうことなら、私が支援しましょう
サイバーレイダーさんの叫び声もちょうどかき消したかったところですし、精霊印のグレネードランチャーでサイバーレイダーさんを狙って、音と爆発と砂埃でサイバーレイダーさんの注意を私に引きつけます

いまです。お姉様!
私たち姉妹のコンビネーションをサイバーレイダーさんたちに見せつけてあげましょう!




 爆発。左腕を肩口から抉り取られ、隻腕となったレイダーの男はそれでもまだ生きていた。死ねなかったと言ったほうが正しいのかもしれない。
 半身を機械に変えた男にとって、痛みでショック死しそうな大きな損傷も生命維持には支障を来さなかった。
 ただ文字通り身を裂くような痛みだけが頭蓋の内側を全力で殴りつけ、己を解放してくれと我儘に泣きわめくばかりだ。
『るせぇ……うるせぇ、うるせぇうるせぇうるせぇ! 黙れクソが! 俺は俺だ! ヘボい肉の俺は黙ってろ! 機械の俺も好き勝手言ってんじゃねえぞ! 俺が俺だ、俺の言うことを聞きやがれ!』
 冷徹に目的を遂行せよと強いる鋼鉄と、半身を失った激痛に泣き叫ぶ生肉の間で、男の自我はただ叫ぶ。
 叫ぶことで自己を再認識し、己が暴走機械でも非力な傭兵の男でもないとアイデンティティを再び立ち上げた。
 そこへ、指揮が途絶えた事を不審に思い駆けつけたレイダーの一隊が現れ男を燃える亀裂から引き上げる。
『――、――、ボス。撤退は、しないのか』
『あァ? こんだけコケにされて逃げろってのか、舐めんなよ手前ェ……』
『――、――、ならいい。指示を。お前の力が、必要だ』
 黙ってろ。片腕を喪おうとも威圧的な態度のボスに、ガスマスクはそれ以上を言うことなく頷く。
 そこへ前衛を食い破り、二人の少女を乗せた白き狼が滑り込んだ。
「お主が首魁か。ここで討たせてもらうぞ」
「あなた達オブリビオンさんに、これから美味しいお野菜を作る私たちの農場の開拓者さんを殺させるわけにはいきません!」
 狼の背からひょいと降りたエウトティアとスピレイルの姉妹は、各々の得物を突きつけるようにレイダー共に啖呵を切る。
 殺気立つレイダーを前に、白狼マニトゥが前に出て姉妹を守る。その陰でエウトティアは妹に囁いた。
「……お姉さま。わかりました、何を仕掛けるかは聞きません。ですがそういうことならば、私が支援しましょう」
 スピレイルがこくりと頷き、エウトティアはにこりと笑って篠笛を吹く。
 荒野から集うは狼の群れ。巨狼の眷属は聖獣に率いられ、ガスマスク共の腕に脚に喉笛に食らいつく。
『犬畜生に怯むんじゃねえ! 殺せ、撃ち殺せ!』
 自らもマニトゥへ片腕でハンマーを振り下ろし、近寄せぬ戦いぶりを見せる首魁が吼える。
『クソ獣どもなんざとっととブチ殺して毛皮にしてやれ!』
「……聖獣様になんて不敬な。その叫び声、私がいま消します!」
 そこへスピレイルからのグレネード投射。
 オオカミたちがさっと退けば、炎の精霊を詰め込んだ擲弾が放り込まれる。
『この程度の爆発でよォ、今更俺がくたばるかよ!』
「でしょうね、でもっ!」
 二発、三発。焦熱と閃光、爆風と巻き上げられた砂塵。それがレイダー共の視界を塞ぐ。無論、首魁の男も例外ではない。人間の域を越えた複合センサーの視野を持ってしても盲目。先に交戦した猟兵の放った煙幕のように朧気な陰すら見いだせぬ。
 間断なく撃ち込まれる擲弾の雨に、首魁の男の意識はスピレイルへと収束する。
 ――その背後に、初弾の炸裂直後から身を隠していたエウトティアが現れる。
「今です、お姉様!」
「任せておれ、スピレイル!」
 赤い霊力を纏い、一息に巨躯の背を駆け上るエウトティア。
 跳躍して頭上で一回転、両の手のひらをその頭に押し当て――崩壊の概念を直接叩き込む。
「これでパーツを――あいや脳みそを破壊できたら言うことないのう!」
 妹の支援射撃とオオカミたちの猛攻撃で配下のガスマスク共が打ち倒されていく中を、マニトゥの背に飛び乗って離脱するエウトティア。
 スピレイルを回収し、群れを引き連れ駆け抜ける巫女姉妹の背後で、鋼鉄の巨体がぐらりと傾いだ。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

アリシア・マクリントック
その技を対価に生きる術を知っていたのに。己の弱さ故により弱いものから奪うことを選んでしまったなんて……なんと哀れなことでしょう。
ですが、自ら選んだ道です。残念ですが……貴方のやり方では、貴方は奪われる側になるしかないのです。扉よ開け!ティターニアアーマー!

力あるものと戦うことを忘れた戦士などおそるるに足りません!大地を砕くこの力に立ち向かう覚悟と勇気はありますか?
アーマーのサイズとパワーを活かして純粋に力比べとまいりましょう。パワーアシストがあろうと上から抑え込めば重量を武器にできるぶんこちらが有利です。文字通り叩き潰してあげます!




 ――メインシステム:リブート
 ――セルフチェック:左腕欠損
 ――バイタルチェック:意識不明
 ――周辺状況確認:戦闘中
 ――メモリーより敵性を識別:実行中
 ――装着者の生還を第一優先事項とし、脅威を排除する

 赤い眼光が再び灯る。
 だがそれは不安定な狂気と殺意にちらつく光ではない。
 明確に無機質に確固たる意思のもと輝く光だ。
 そこに男の精神は介在しない。ただ、彼が最後に焼き付けた想念を遂行するために、その鉄巨人は前進する。
『――、――、ボス』
 こしゅー、こしゅー。呼気を荒く、肩を上下させ、開拓者――敵性と交戦しながら振り返った「アンノウン」の頭蓋をスレッジハンマーでくしゃりと潰す。
『――、――、!?』
 理不尽な仲間の死。其れは珍しくもない。だがそこに続くべき怒号が無いことに、その異常事態にたじろぐガスマスクたちの上半身が根こそぎ戦鎚に刈り取られる。
 ――所属不明部隊を排除。敵性を殲滅する

「貴方は……!」
 その光景に、アリシアは拳を固く握りしめた。
 自身の技を対価に生きる術を持ちながら、それを奪うために費やす哀れな男。
 それが今、片腕を失い、ゆらりゆらりと人形か幽鬼かの如く仲間すらなぎ倒して向かってくる。
 もはや眼前の存在が誰であるかすら理解していないのか。そこまで堕ちながら――いや、破壊されながら、男は戦場から、奪うことから離れられない。魂も肉体も、この外道の戦場に縛り付けられているのだろう。
「本当に哀れなことですね。ですが貴方自らが選んだ道です。残念ですが、そのやり方では貴方は奪われる側になるしかないのです」
 アリシアを包むように顕現した巨大な鉄人。ティターニアアーマーが鋼の唸りを上げ、隻腕の幽鬼に挑みかかる。
『――迎撃』
 振り上げられた戦鎚と打ち下ろされた鉄拳が激突し、激しい破壊音とともに火花を散らす。
 一合、二合。激突する度に戦鎚の柄が大きくたわみ、ティターニアアーマーの指がみしりと悲鳴を上げる。
「力あるものと戦うことを忘れた戦士など!」
 体格差を活かし、振り下ろしの重量を込めた打撃で互角。だが隻腕に対してティターニアアーマーは五体満足。
 連撃を叩き込めば、男はそれを十全には捌ききれない。
「そんな戦士は恐るるに足りません! ちがうというなら大地をも砕くこの力に立ち向かう覚悟と勇気を見せなさい!」
 男の魂に呼びかけるアリシアの叫びとともに、大重量の一撃を。
 それを隻腕は受け止めない。防御を捨て、代わりに戦鎚の薙ぎ払いをティターニアアーマーに叩き込む。
 貫通はしなかった。アリシアに傷はない。一方で隻腕の幽鬼は殴りつけられ、膝を屈しながらも戦鎚を杖に立ち上がりティターニアアーマーの横をふらりと抜けていく。
「待ちなさい! 行かせは――」
 隻腕を追おうとしたティターニアアーマーに撃ち付けられる弾丸や火炎。
 振り返ればガスマスクたちが、その矮小な身体でティターニアアーマーに立ち向かって来るではないか。
 もはや敵味方の区別もつかぬ首魁を守るように。
『――、――、いつか、殺してやると、思ってた』
『――、――、ああ、俺も、だ』
『――、――……だけど、よォ』
 あんなクソでも、行き場のない俺たちを束ねて、メシの食い方を教えてくれた。
 それは開拓者たちと同じ想いだ。タヤマがレイダーに怯える人達を纏め上げ、拙いなりに此処に農場を作り上げようとしたように。
 あの隻腕の男もまた、レイダー以外の生き方を知らない軍人崩れ達を纏め上げ、恐怖という手段を用いながらも食い繋げるような組織を作った。
 恩がある。それをレイダー共は猟兵と開拓者たちの戦いから思い出した。理解した。返さねばと思った。
「…………貴方達は! わかりました、逃げぬと言うならば私がお相手します!」
 アリシアを相手に、勝てるはずもない戦いに身を投じる人間の屑ども。
 彼らの戦闘を背に、幽鬼の赤い眼光がちろりと揺らめいた。

成功 🔵​🔵​🔴​

モア・ヘリックス
気合入ってるトコに水を差すようで悪いがな、てめえらは何も得られねえよ。

やることは一つ、近づいて鉛玉ぶち込んでぶっ殺す。
…だけなんだが、装甲化してんのが面倒くせえな。それに取り巻きの方も場慣れしてる。突破も楽じゃない。
腐っても軍人崩れ、野良犬よりは知恵があるらしい。

クスリにも大分慣れてきたが、まだ“持つ”のは37秒……それがタイムリミットだ。
……ハ、上等。食い破ってやるよ。
反応する間も与えず突っ込んで、殴って刺して爆破して突破。頭カチあげて推定可動部の喉に弾をぶち込む。
スッキリしたら方向転換、意識を失う前にお堀様へダイブだ。

話は単純だ。俺は奪われねえ、俺は奪う側だ。
わかったか?じゃ、貰ってくぜ。




『――クソが』
 役にも立たねえ軍人崩れどもに守られた。
 クソッタレな心境だ。
『――クソが』
 機械じかけの俺じゃない俺が、此処まで俺を連れてきた。
 おかげさまで覚えのない損傷に全身が悲鳴を上げている。
『…………クソがッ!』
 全身ボロボロで、脳みそすらもはや機能しているか危うい。
 己が此処に在るのは、クソッタレた神とやらの気まぐれか、あるいはオブリビオン故に死んでも死ねぬという呪縛が為か。
 何者にも縛られない男は、何者かによってこの世に縛り付けられているような現状に吐き気を覚えて悪態を吐く。
『だったら俺は俺として奪う殺すそれだけだ。今までもこれからもそうする。それが俺のイラプションズだ』
 戦鎚を引きずりながら、ガスマスク共の死に絶えた躯転がる道を進む男。
 その正面に立つのは、くるくると無針注射器を手の中で弄び、今しがた殲滅したガスマスクどもの中心で待ちくたびれたとばかりに視線を送る猟兵の男。
「気合い入れてるトコ水を差すようで悪いがな、てめえらは何も得られねえよ」
『そうかい。手前ェが俺を止めるって? やってみろよ、出来るかもな。なんたって俺は今死にかけだ。婆ちゃんに小突かれただけでも泡吹いて死んじまうかもしれねえぜ』
 抜かせ阿呆。レイダーの妄言を鼻で笑い飛ばし、注射器から薬剤を体内に取り込む男――モア。
 僅か40秒足らず。モアとレイダーの男に与えられた、ほんのひとときの交戦時間。
 それまでにレイダーを斃せばモアが勝ち、耐えられるか返り討ちに遭えばレイダーが勝つ。
「なんとも単純だな。あとは近づいて鉛玉ぶち込んでぶっ殺す」
 取り巻きのガスマスクどもですら場馴れしていた。そんな連中を実力で支配するこの男を、手負いとはいえ殺すことが出来るだろうか?
 いや、やるしか無い。モアには選択肢など既に無い。
「……装甲化した野郎相手に、徹甲弾も無しで時間制限付き……ハ、上等。食い破ってやるよ」
『――来やがれクソ野郎、ブチ殺される前にブチ殺してやるぜ』
 瞬発。モアの踏み込みにレイダーは対応しきれない。殴打。そして殴打。だが鋼に覆われた男はそれを微かによろめきながらも受け止め、スレッジハンマーを振り下ろす。
 跳躍してその打撃を飛び越え、顔面への膝蹴りついでにクラッキングナイフを首筋に突き刺してやる。
 機械じかけには特効のハッキングプログラムを刃から流し込み――エラー。こいつのサイバネアーマーは既にシステムダウンしている。
 ならばナイフはナイフとして使うまで。ぐりと刃を捻り押し込めば、くぐもった呻き声とともに男がたじろぐ。そこへ首に手を掛け、後ろに引き倒すように飛び降りればレイダーの男が仰向けに倒れて来た。顔面に一発蹴りをブチ込みすかさず馬乗りに。オラ面上げろと殴り掛かれば、うるせえ死ねと隻腕に殴り返される。
 数度目の攻防で右腕の打撃を左腕で押し留め、残り時間数秒。
 渾身の拳がついにレイダーの顎をカチ上げた。曝された無防備な喉にショットガンを押し付け引き金を引く。引く。引く。
 首が引きちぎれるまで散弾を浴びせかけ、胴体と別れたそれを掴んで持ち上げる。
「話は単純だ。俺は奪われねえ。俺は奪う側だ。わかったか? じゃ、貰ってくぜ」
 活動を停止した頭に言い聞かせ、それをやっぱり要らねえなと放り捨て立ち上がったモアは――
「残り二秒。こいつで決着、上等じゃねえか」
 意識を投げ出しながら、その身を掘の水面へと落としていった。



 この周囲一帯を取り仕切るレイダー集団、イラプションズ。
 今日この日、彼らは精鋭部隊と首魁を共に失い崩壊した。
 もともと資源も旨味も少ない土地を縄張りにしていた連中だ。遠からず三々五々に散らばり、野垂れ死ぬか他のレイダー集団に吸収されるかするだろう。
「何にせよ、当面の安全は確保されたと考えてもいいでしょうな」
 皆で温め直したスープを味わいながら、タヤマは猟兵たちに重ねて頭を下げ礼を述べる。
「お陰で此処から先の準備をする余裕も出来ました。守りを固めて、もちろん農業の方も皆さんに教えてもらった通りコツコツやっていきます」
 貴重な戦闘経験を積み、欠けた人数もほんの僅か。あの規模と装備のレイダー相手に簡素な防衛陣地でやりあったにしては奇跡的な大勝と言っていいだろう。
「仲間内の結束も強まっとります。あとは成功に胡座をかかんように気をつければきっと此処をもう少しばかり立派なコミュニティにできるでしょう」
 此処から先は、自分たちの力だけで戦うべきだ。環境の過酷さ、荒野をうろつくフリークスや暴走兵器ども、思うように行かない農業との付き合い。
 困難は数えるのも嫌になるほど待ち構えている。だが、彼らはきっとそれを乗り越えていくのだと猟兵たちには確信めいた予感が有った。

「あぁでも、どうにもならん問題が起きたときは……」
 その時は、どうか手を貸してください。
 タヤマたちが頭を下げる。きっと彼らが助けを請わずとも、本当に必要な時であれば猟兵たちは再び駆けつけるであろう。
 荒野の復興はまだ始まったばかり。迫りくる困難の姿はおろか大きさすら知るものは誰もいないのだから。

成功 🔵​🔵​🔴​



最終結果:成功

完成日:2019年12月30日


挿絵イラスト