17
クークー・レディオ

#アポカリプスヘル #クークー・レディオ


●アポカリプスヘル、"ドライ・レイク"
 かつてそこには、透き通るほど綺麗で美しい湖があったのだという。
 だが、文明が崩壊し何もかもが枯れ果てたいま、在りし日の面影はそこにない。
 あるのはただ、水の一滴も遺らぬ巨大なクレーターだけだ。
 ……そんなクレーターの中心に、ぽつんと築き上げられた拠点(ベース)がひとつ。
 誰も知らないかつての湖になぞらえて、そこは"ドライ・レイク"と呼ばれていた。

 ザザ……ザザ、ピー。ザリザリザリ……。
 人々が持つ超小型端末から、時代遅れなレトロチック・ノイズが流れ出す。
 この街にふらりとやってきた、ソーシャルディーヴァが営むレディオのジングルだ。
 チューニング音はそういう演出である。もはや誰も知らぬノスタルジー。
 それでも体に刻み込まれた文化遺伝子(ミーム)が呼応し合うのだろうか、
 人々はレトロなノイズを耳にするたびに、心が暖かくなるのを感じた。
 ザリザリ……ザザッ、ピー、ガガ……ザリ、ザザザッ。
『マイク、マイクチェック、ワン・ツー。ガガ、クークー、ガガ、クークー』
 次いで流れてきたのは、抑揚の少ない少女の声である。
『ハロー、ワールド。クークー・レディオの時間です』
 この通信網を築き上げた旅のソーシャルディーヴァ、"クークー"だ。
 レディオのディスクジョッキーだというのに、抑揚に欠けた――しかし通りはいい声。
 人々を勇気づける軽妙なトークがあるわけでも、
 哀しみを拭い去る暖かで穏やかさあるわけでもない。
 だが、耳に心地いい。そして、素朴ながらひたむきで、優しい響きがある。
 ゆえにクークーのレディオは歓迎されていた。人々を励ます一時を提供していた。

 ……が。
『ごめんなさい、残念なお知らせです』
 いつもどおりのペース、
 いつもどおりのリズム、
 いつもより少し沈んだ声で彼女は言った。
『クークーのレディオは、今日でおしまいです。……ごめんなさい』
 ブツン。突き放すような音とともに、レディオは突然終わった。
 瓦礫のスタジオに腰掛けていたクークーは、ゆっくりと腰を上げる。
「……ごめんなさい」
 そして、街に背を向けて去っていく。人々の引き止める声が己に届く前に。
 入れ替わるように……遠くから、屍人どもの臭いが街に近づきつつあった。

●グリモアベース:ムルヘルベル・アーキロギアはこう語る
「……というわけで早速だが、新たに発見された世界で予知を得た」
 少年めいた賢者はそう言うと、、己が視たヴィジョンを説明する。
 アポカリプスヘル。オブリビオン・ストームがすべてを奪い去った荒廃の世界。
 だが人類は死に絶えていなかった。そして、諦めてもいなかった。
 禁忌の技術に手を出し、明日をも知れぬ死と隣合わせの日々を過ごしている。
 ……だがその反抗は、あまりにもか弱く――そして、脆い。
「ソーシャルディーヴァとは、簡単に言えば"自律するインターネットサーバー"だ。
 体内に専用のデバイスを埋め込み、自らを発信源として通信網を繋ぐ者たちらしい」
 文明が崩壊し、あらゆるコミュニティが分断したいま、それを繋ぐ手段は数少ない。
 そのひとつこそが、ソーシャルディーヴァの生み出す通信網なのである。
 ムルヘルベルが予知の中で知ったその歌姫の名は、"クークー"。
「彼女は自らの足でアポカリプスヘルを彷徨い歩いているようなのだ。
 現在の逗留地が、"ドライ・レイク"と呼ばれる拠点(ベース)であるらしい」
 通信網をもたらした彼女の来訪は、人々に快く迎えられた。
 娯楽に飢える人々にとって、クークーのレディオはまさに天の恵みだったのだ。
「……が、彼女は突如、レディオの放送を終了しその場を去ろうとしてしまう、と。
 オヌシらにはまず彼女と接触し、なぜ放送を止めてしまうのかを突き止めてほしい」
 猟兵たちの転移は、クークーが最後の放送を行う直前に間に合う。
 原因の究明は、そのまま彼女の説得と並行することになるだろう……と賢者は云う。
「拠点の人々にとって、彼女のレディオは大切な時間だ。喪われてはなるまい。
 ……なにせこの拠点には、おぞましき屍人(ゾンビ)の群れが接近しつつある」
 そう言って、ムルヘルベルは顔をしかめた。それが、直面する二つ目のトラブルだ。

 ゾンビ。
 世界を切り裂く過去の嵐は、破壊したものをオブリビオンへと変貌させる。
 無機物ですら変異させるその力は、当然死亡した人々にも作用するのだ。
「オヌシらから見ればさしたる敵ではないが、拠点の人々にとっては別である。
 撃退すべき"奪還者(ブリンガー)"も居るには居る……が、多勢に無勢であろう」
 ゆえに、猟兵の介入が必須。あるいはそれこそがクークーの"理由"かもしれない。
 いずれにせよ、クークーを説得し引き止めねば、襲撃に備えることは不可能だ。
「おそらく屍人の集団には、頭目というべき強力なオブリビオンが存在するであろう。
 これらをすべて撃滅し、拠点を防衛してくれ。これは、重要な任務であるぞ」
 ダークセイヴァーにおいて、猟兵たちの奮闘は少しずつ趨勢を変えつつある。
 それと同じように、この世界でのこうした小さな戦いが、いずれ大河のように集まり、
 崩壊しかけたこの世界を再生するための、大きな一手に繋がるかもしれない。
「"人生は幾度かの死と、幾度かの復活との一続きである"。
 ……とある小説の一篇だ。世界は変わろうと、やることは同じであろう?」
 そう言って、ムルヘルベルは本を閉じた。
「オヌシらの健闘を祈る」
 その言葉が、転移の合図となった。


唐揚げ
 運び屋です。ついに来ましたね、新世界!
 人々の心と絆をストランドするため、皆さんの力が必要です。
 以下のシナリオまとめとルール説明を、忘れずにご一読ください。

●シナリオの目的
『ソーシャルディーヴァ・クークーを説得し、屍人のレイダーズを撃退する』

●各章の概要
 1章:『やめるのやめて!』(日常)
 ソーシャルディーヴァの少女が、なぜか放送を止め拠点を去ろうとしています。
 OPの放送が行われる前に転移出来ますので、彼女に接触して説得してください。
 彼女や拠点の人々と交流することで、以降の防衛戦に備えることが出来ます。

 2章:『ゾンビの群れ』(集団戦)
 ゾンビです。ただしこいつらは早く動きますし喋ったりもします。
 戦闘力はそんなでもないですがすさまじい数なので、ガンガン燃やしましょう。
 1章の防衛準備が十分でないと、拠点の人々に被害が出るかもしれません。

 3章:『ゾンビジャイアント』(ボス戦)
 むちゃくちゃデカいリーダーゾンビが出てきます。強いです。
 防衛準備が十分でなかったり、ゾンビの群れの殲滅が甘かったりすると、
 屍体の残骸を吸収してパワーアップしたりするかもしれません。

●固有名詞の解説
『クークー』
 ソーシャルディーヴァの少女。年頃は14~5ほどで、驚くほど肌が白い。金髪。
 どちらかというと無機質な感じの喋りをするが、レディオは好評だったらしい。
 戦闘能力は(猟兵に比べて)ほぼ皆無なため、戦闘ではあまり役に立ちません。
『ドライ・レイク』
 かつての湖だったクレーターに築かれた拠点。規模はそこそこといったところ。
 拠点としての歴史が浅く、逗留している"奪還者"の質もあまり高くない。
 共同体としての雰囲気はよさげで、相互扶助による緩い自治体制が整っている。

●プレイング採用について
 頂く量によりますが、章ごとに最大で30名前後のご案内になるかと思われます。
 具体的な締切は特に設けず、頃合いを見て採用していく予定です。

 それでは皆さん、新たな世界でもどうぞよろしくおねがいします。
534




第1章 日常 『やめるのやめて!』

POW   :    物理的な危機から守ってあげる

SPD   :    放送を続ける為の機材や、インスピレーションを補給する

WIZ   :    元気づけて、放送を続けられるように励ましたりする

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

●白い少女の悩み
「………………やっぱり、来るかぁ」
 拠点からほんの少しだけ離れた瓦礫溜まり。それが彼女スタジオ代わりだった。
 アルビノめいた白い肌の少女は、ふう、とため息をついた。表情は感情に乏しい。
「仕方ないか。仕方ないよね。……仕方ない、な」
 そうひとりごちて、レディオを放送するためにこめかみに手をやる。
 論理スイッチで体内のサーバーをオンラインにするだけだ。
「……仕方、ない」
 呟く声音には、少しのためらいと不安めいたものがあった。

 猟兵たちは、そういう瞬間に転移することになる。
 はたして彼女はなぜ、そんな突然の選択をしたのだろうか?
 もちろん話はそれでは終わらない。迫る脅威への対処も重要である。
 少女の説得に励むか、あるいは拠点にコンタクトして防衛準備を整えるか。
 取るべき選択肢はそう多くない。時間も、あまりない。
アンコ・パッフェルベル
すとーっぷ!…誰、ってカオですね。では自己紹介するです!
わたしはアンコ・白玉・パッフェルベル!
単刀直入に言うです。その終了宣言、まった!
わたし達凄腕奪還者がゾンビ共をぶっ飛ばすのでまったです!

むむむ。信じられないって感じです?ではっ。
赤光刃にてシジルを描き、呼び出すは72柱の魔神、イポス!
彼から未来の情報…ゾンビ達の主要な侵入ルートを皆様にお教えするです!
数多の選択肢から適宜対処するのがアンコちゃん!

それだけではなさそうで。
…ふふ。此処は水無き湖ですが、心を潤す音が満ちている。
その源が枯れようとしているならば。
少しばかり、ひらめきを齎しましょう。
冒険譚はお好きですか?
異郷の調べは如何です?


エドゥアルト・ルーデル
なんでお前さんはレディオを止めるんだ
しかもこれ程…美少女DJであると言うのに
これから拠点へ行く

レディオは良いぞ!という方面で【言いくるめ】…説得ですぞ!
電波に乗せれば遥か遠くのリスナーまでスイと届く
世紀末な心に美少女の美声がスゥーッと効いてこれは…ありがたい…
電波届いた?ってヤツでござるよ

もしゾンビが問題なら…もう大丈夫ですぞ
拙者が来た
お手軽に拠点強化するには…やはり有刺鉄線
拠点の周りをグルリと囲めば…何ということでしょう、簡単に入れずお手入れ簡単な防壁の出来上がり!
そこに要所に配置した監視塔と【武器改造】で作ったお手製セントリーガンをアクセントに添えれば強固な拠点へと早変わりでござる



●幼女と不審人物
「すとーっぷ!!」
「……え?」
 その場から立ち去ろうとしたクークーは、きょとんと虚空を見上げた。
 元気な声とともに現れたのは……誰であろう、アンコ・パッフェルベルだ。
「単刀直入に言うです。その終了宣言、待った! です!」
「…………?」
「あ、自己紹介が遅れましたですね。私はアンコ・白玉・パッフェルベル!」
 怪訝な面持ちの少女に対し、アンコは自信に満ちた表情で胸を貼る。
 見た目の年頃はクークーのほうが上だが、テンションはアンコのほうが上だ。
「クークーさん、あなたが懸念しているゾンビのことなら心配に及びません。
 わたしたち凄腕奪還者が、ゾンビどもをぶっ飛ばすので! まった、です!」
「! ……どうして、そのことを?」
「それは予知……あ、じゃなくて~、えーっと」
 この世界の住人に猟兵のメカニズムを説明しても、話がややこしくなるだけだ。
 なのでアンコは、どう方便を立てようか迷い、視線をさまよわせた。
「電波ですぞ!!!!!」
「「は?」」
 そして、突然割り込んできた不審者を見て、ふたりして素っ頓狂な声を出した。
 ニコッと微笑む髭面の男(迷彩服)。誰がどう見てもレイダーズだ、コワイ!
「つまり、レディオはいいぞ! 美少女DJならばなおさらのこと、でござる」
「「…………」」
「だのになんでお前さんはレディオを止めるんだ。これから拠点へ行く」
 完全にひとりの世界にトリップ中の不審者……もといエドゥアルト・ルーデル。
 警戒するクークーとアンコ……となったところで、アンコは思い出した。
 あ、そうだ、この人見覚えあるわ。ていうか同じ旅団の猟兵だわ。
「エントリーがいきなりすぎないですかねぇ!?」
「インパクトは大事なんでござるよパッフェルベル氏! 電波だけに!!」
「意味がわかりませんが!?」
「……というか、誰……?」
「ドン引き美少女と美幼女のツッコミがスーッと効いて、これは……ありがたい」
 無敵であった。エドゥアルトは変態という名の紳士であるからして、
 何をされようと活力に変えていた。アンコはため息をついて頭を振る。
「変態の相手はあとにして……とにかく、わたしたちは状況把握済み、なんです!
 信じられないかもしれないですけど、あなたに力を貸したいのは確かですよ?」
「…………」
 クークーはいまだ当惑していたが、少なくとも警戒の色はなくなっていた。
「左様、拙者が来た。でござる。必要であれば拠点の防衛強化もやるでござる。
 具体的にはこう、有刺鉄線でぐるぐると防壁を囲んだり、監視塔とか……」
 いつの間に用意していたのか、やけに精緻な見取り図を開くエドゥアルト。
 オブリビオンストームにより、この世界に大量の物資を持ち込むことは難しい。
 が、彼のユーベルコード"塹壕戦"ならば、必要最低限の物資を使って、
 きたる決戦のための有利な防衛陣地を作ることは十分に可能だろう。
「おっと、わたしだって役に立てるですよ? 来たれ、七十二柱の魔神よ!」
 赤く輝く刃を振るい、アンコが瓦礫に魔法の印形(シジル)を描く。
 明滅したそこから現れたのは、獅子の体にガチョウの頭を持つ怪物であった。
「……それ、は……?」
「序列22位の伯爵にして君主、大悪魔イポスです。未来を教えてくれるのですよ」
 驚くクークーに対し、アンコは茶目っ気たっぷりにウィンクしてみせた。
「ゾンビたちの侵入ルートも、イポスの力を借りればお見通しです。
 数多の選択肢から最善を選び、最優の未来を掴む。それがアンコちゃん!」
「……と、我々猟兵……いや"奪還者"、というわけでござるな」
 エドゥアルトの合いの手に、腕組したアンコはうんうんと頷いてみせた。
「だから、あなたにはまだ放送をやめてほしくないです、クークーさん。
 もしもレディオで流す歌が足りないというなら、わたしが力を貸すですよ?」
「電波のことなら拙者が」
「エドゥアルトさんは黙っててくれます!?」
 そんなふたりのやりとりに、クークーはぽかんとして……ふっ、と笑った。
 突然すぎる上に、不思議な力を持つ奪還者たち。
 彼女はそれが、世界を救うためにやってきた猟兵だということを知らない。
 それでもなぜか……もう少しだけ話を聴いてみよう、と彼女は思った。
 おそらくそれは、ふたりの真摯さがなせる技だったのだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

フェルト・フィルファーデン
知らない世界、知らない場所、初めて会う人
まだ何もかもわからないことだらけだけれど、言葉が通じるのであれば……!


と、いうわけで、まずはクークー様と仲良くなりましょうか!
これでも【礼儀作法】は心得ているもの。物腰は柔らかく丁寧に、いつものように優しく微笑んで、軽い世間話でも持ちかけて、彼女の人となりを知りつつ、警戒を解いてもらうわ。
……全く知らない相手じゃ、本題に踏み込むのも難しいものね。


これまで言葉を紡ぎ伝えてきた、言葉の重要性を理解しているあなたが
何故放送を辞めたのか。
何故街を離れるのか。
そして、何故誰にも頼ろうとしないのか。
彼女のため、無辜の民のために聞き出さなくては。敵が来るその時までに。



●少しだけ腰をおろして、お話を
 猟兵たちのコンタクトに対し、クークーは困惑とわずかの警戒をあらわにした。
 無理もない。この世界における彼らが奪還者だとしても、状況が状況である。
 クークーは猟兵たちを知らない。
 猟兵たちも、彼女の行動の理由を知らない。
 それゆえに……フェルト・フィルファーデンは、対話を選んだ。
「ごきげんよう、クークー様? わたし、フェルトと申しますわ」
 妖精の少女は淑やかにカーテシーをしてみせ、柔らかな微笑みを向けた。
 それは、彼女ががむしゃらに戦いの狂気に浸るために浮かべていたものでなく、
 知らない場所初めて出会う、しかし言葉を交わせる相手への友誼の笑みだ。
「……こんにちは。あなたも奪還者……なの?」
「本当のことを言うと、もっと複雑な事情があるのだけれど……。
 いまは、あまり時間がないでしょう? だから、どうかそれでお願いするわ?」
 こんな世界だ。誰しも事情の一つや二つ、背負っていて当然のことである。
 クークーは礼儀正しい彼女の言葉に頷き、それでよしとした。
「けれど時間がないからこそ、互いを知り合うことを忘れてはいけないと思うの。
 ねえ、クークー様。あなたは、言葉で人々を勇気づけてきたのでしょう……?」
 それがなぜ、今になって突然放送をやめてしまうというのか。
 彼女の謎の行動を解き明かすことが、ひいては犠牲を防ぐ手立てとなる。
 だからこそフェルトは、偽ることなくそこに切り込んだ。
「わたし、色んな場所を旅してきたわ。そして色んな人に出会ってきたの。
 話し合いが出来る方もいれば、そんなことすら出来ない人たちもいた……」
「……うん。ワタシも、そんな人たちを見たことがある」
 フェルトは相槌に頷いて言葉を続ける。
「だから、わたし、クークー様とこうしてお話出来るのが、実はとても嬉しいわ。
 そして楽しいの。だってあなたは、わたしの知らないことを知っているもの」
 何故、と詰め寄られ、ともすれば恫喝されるかもしれないと思っていたのか、
 フェルトの優しい言葉に、クークーは目を見開いて驚きをあらわにした。
「……わたしたちは、クークー様とあの拠点の人々の力になりたくてここへ来た。
 だからどうか、わたしたちの言葉に耳を傾けてくださらない? 少しだけでも」
「…………」
 クークーは沈黙を返す。だがフェルトはそれ以上何も言わない。
 そこで無理に押し切ろうとすれば、藪蛇であることを彼女は知っている。
 ……長いようで短い静寂ののち、クークーはこくりと頷いた。
「……わかった。急に逃げたりなんて、しないから。あなたたちのことを」
 どうか、教えてほしい。
 ……白亜の少女の言葉に、フェルトはほっと胸を撫で下ろしはにかむ。
 遠からず、彼女はその理由を語るだろう。理性的な対話が功を奏したのだ。
 遺された時間は少ない。しかし……それでも、言葉を交わす時間は、あるのだから。

大成功 🔵​🔵​🔵​

千桜・エリシャ
想像以上に何もない世界ですこと
花すら咲いていないなんて
私は生きていけませんわ
悩める少女を放って置けるほど薄情ではありませんから
クークーさんに接触しましょう

ごきげんよう
私はエリシャと申しますの
あなたは旅人ですのね
いつもこうして突然拠点を去っていらっしゃるのかしら
まるで敵の来訪を予期していらっしゃるみたい…
これは私の推測ですが
あなたの声か
あなたそのものが
死者を呼び寄せるのではないかしら?
それであの屍人共に狙われているのではなくて?
何れにしても逃げるだけでは駄目
大元から絶たないと
同じことの繰り返し
これからもずっと…
私たちならあなたを助けることができる
この拠点の方々も
だからここに残ってくれませんこと?



●悩める少女と羅刹の話
「……違うの」
 千桜・エリシャの指摘に対して、クークーは静かにそう言った。
 "クークーの存在が、ゾンビたちの呼び水になっているのではないか"。
 ……という彼女の推測は、しかし実際のところは当たっている。
 ソーシャルディーヴァ……それは、この世界において稀有な存在だ。
 世界を破壊せんとするオブリビオンどもは、その存在を察知したのなら、
 放置しておくはずがない。それはエリシャなりの経験則と言えよう。
 ゆえにクークーは、頭を振ったあとで、エリシャの言葉をある程度肯定した。
「ではどうして? あなたは敵の来訪を予期していらしたんでしょう?」
「……うん」
「追手から逃げるわけではなく、しかしともに立ち向かおうとはしない……。
 結局のところ、それは逃避と同じではないか……と、私は思いますわ」
 そう、エリシャの言葉通りだ。
 たとえクークーがオブリビオンを呼び寄せる体質でなかったとしても、
 いま彼女が拠点から離れてしまったのであれば、逃げることと何も変わらない。
 酷ではある。こんな花すら咲かぬ世界では、とエリシャは思った。
 だが、それでも。どうあれ、彼女が拠点を見捨てるよな真似は見過ごせない。
 己の運命に、そして性根にある意味で真正面から向き合うエリシャだからこそ、
 その言葉は重く、クークーの心にも届いた。
「もちろん、私たちもあなたがたにお力添えをいたしますわ、クークーさん。
 私たちにはその力がある。あなたを……人々を助けることが、出来ますの」
「……どうして、そこまでしてくれるの?」
「悩める少女を放っておけるほど、薄情ではありませんもの」
 冗談めかして艶やかに笑いつつも、エリシャは言葉を続けた。
「……正直なところ、あなたは敵から逃げ続けているだけかと思っていました。
 けれど、こうして相対すればわかります。あなたはそんな臆病な人ではない」
 あるいはそれは、多くの客人を、旅人を見送ってきた女将としての慧眼か。
「……本当に拠点の人々のことを思いやるのなら、すべきことは逆ですわ。
 背を向けるのではなく、戦うこと。あなたの声は、そのための武器でしょう?」
 その言葉に、クークーは大きく目を見開いた。
 力があるかどうか、ではない。
 こんな虚無的な世界で、それでも人々を勇気づけるために旅を続ける。
 それがどれだけ過酷なことか、エリシャは察しがついているのだ。
 人々の心に訴えかけ、鼓舞する。それもまた、戦いの一つであるのだと。
「私には、そういうやり方は出来ませんもの。だから少し、羨ましいですわ」
「……ならあなたは、どうやって戦ってきたの?」
 クークーの問いかけに、エリシャは謎めいた笑みを浮かべた。
 美しく、どこか恐ろしい、羅刹らしい笑みを。
「ただ、私が私らしく在るために。……それだけですのよ」
 たとえそれが血塗られた道でも。彼女は、歩むのをやめないだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ゼイル・パックルード
よぉ、なんでやめるんだい?
飽きたとかそういうんじゃないよな。
それとも屍人が来るのでもわかってたとか、そういうわけかい?
ま、状況からの捻くれた憶測でしかないんだけどね。そーしゃる?で情報共有はできるみたいだし。
違うってんならそれが何よりだけどな
屍人は来る。そっちにグリモアについての情報がどれだけあるかは知らないが……去るにしてもそれが嘘かホントか確認して片付けてからでいいんじゃないかい?

ま、こんな世界じゃ自分のことだけ考えて生きるのは仕方ないけどね。どうしたって他人を蹴落として生きるのが効率がいい
屍人についてはどうしたって狩ってやれるから安心しなよ
その間に何人死ぬかは俺の知ったことじゃないけどね



●地獄を裡に秘めた男の話
「よぉ、ひとつ質問をしてもいいかい」
 出し抜けに、ゼイル・パックルードは言った。
「……何?」
「一体どうして、放送とやらをやめちまうのか……訊いてみたいのさ」
 そう言ってから、ゼイルは肩をすくめて言葉を続ける。
「ああ、と言っても実際、答えがどうだろうと俺は関係ないんだがね。
 そっちがどう答えようと、何をしようと、屍人どもは狩り尽くす。それだけだ」
「それは……ただ戦うためにここへ来た、ということ?」
「ああ」
 逆に問い返されると、ゼイルはあっさりと首肯した。
「言っちまえば、この世界で生きてる連中の無事だのなんだの、どうでもいい。
 俺の知ったことじゃないのさ。……そら、俺は答えたぜ。そっちの答えは?」
「…………」
 少しの当惑。それはおそらく、問いかけにどう答えるかという迷いではなく、
 ざっくばらんとしたゼイルの答えそのものへの反応だろう。
 やや逡巡するような間を置いてから、クークーは言った。
「……自信が、なかった」
「自信」
 クークーは頷いて、続ける。
「敵が来る。ワタシはみんなに、それを知らせられる。戦いを呼びかけることも。
 ……でもそれで、勝てる気がしなかった。だから、ワタシは……」
 やれやれ。まったく、この手の冗談はどの世界に行っても同じか。
 とでも言いたげにゼイルは頭を振り、嘆息し、頭をかきつつ言った。
「俺からすりゃ、そもそもそうやって、やる前から悩む時点で不思議なんだがね。
 戦いが必要なら武器を執る。結果はどうあれ、戦わなきゃそのまま死ぬだけだ」
「……うん」
「こんな世界だ、自分のことだけ考えて生きるのは仕方ないし、効率的だろ?
 食い物が必要なら奪う。住む場所がないなら追い出す。他人は蹴落とすもんさ」
「それは」
「戦わないよりはマシだと思うぜ?」
 反論しようと顔をあげたクークーに対し、ゼイルは言った。少女はうつむく。
「だが、あんたはそうしない、と」
「え?」
「違うんだろ? 飽きただの、ひとりだけ逃げようとしたわけでもない。
 それはそれで何よりだと思うがね。少なくとも戦おうとはしたわけだ」
 クークーは言葉を探した。この男の考えは、ひどくドライなようで奇妙である。
 他者をなんとも思わないモノであるなら、そもそもこんな質問をすまい。
 だが、誰かの弱さに寄り添うわけでもない……たとえるなら、試しているのか。
「ま、なんにしても最初に言ったとおりさ。敵は必ず狩り尽くす」
 クークーが我に返った時、ゼイルはすでに興味をなくしたように背を向けていた。
「その間に何人死ぬかは、俺の埒外だ。そいつが気に食わないなら……」
 ――あんたなりに、抗ってみればいい。
 男の背中は、つっけんどんに、あるいは挑発的にそう告げていた。
 クークーはしばし俯き、拳を握って……やがて、意を決したように立ち上がる。
 少女の瞳に、意思の光が宿りつつあった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

数宮・多喜
【アドリブ改変・連携大歓迎】

新しい世界に来てみたら、
いきなり景気の悪い話だねぇ。
どうしたよ、放送を止めちまうって相当の理由がありそうだね?
クークー、アンタの放送が「奴ら」を『おびき寄せ』るからか?
それとも別の理由かい?
ま、どうあってもアンタには放送を続けて欲しいんだ。
なにせこの乾いた湖の、大きな潤いなんだからね。

まずは配信の障害になってる要素をテレパスで感じ取り、
対応できるような機械を【弱点特攻作成】で作り上げる。
そうすりゃダメだって要因がどんな物であれ、
再開までに漕ぎつけられるだろ。

配信再開までの準備中は、
アタシも周囲を警戒するよ。
街の連中から請われたらバリケードも作ってみるかねぇ?


草野・千秋
好きな番組が終わるのは寂しいですよね
UDCアースにもレディオはありますね
時としてアーティストさんに詳しくなれて
時として悩み眠れぬ夜の友です

OPの始まる前に転移
新しい世界にもディーヴァ……歌姫はいたのですね
このままレディオを終わらせるだなんて
あなたのファン、リスナーさん達が悲しみますよ
もちろんクークーさん、あなたの事情によるのかもしれませんし
場合によっては
そちらを優先させるべきなのかもしれません
レディオを辞めるにあたって
何かお困り事がありましたら
僕らに教えては下さらないでしょうか
ゾンビとかのドンパチごとでしたら
もしかしたら僕達猟兵が力になれるかもしれません
そしたら僕ら猟兵が介入の時ですよ


シャルロッテ・ヴェイロン
(転送されてすぐに、周囲を見渡して)
いやー、噂には聞いてましたが、これは想像以上にすごいやられっぷりですね。

――で、あなたがクークーさんですね?突然ですが、あなたが流してる曲を聞かせてくれますか?

(音楽を聴いたところで)
なるほど、さすがにいい曲を選んでますね。
ところで、なんで突然この街を離れようとしたのです?何か理由があるなら聞かせてもらいましょう。
それから、曲が不足してるっていうのなら、私のPCにダウンロードしたので良ければ提供しますよ?あと、UCで必要なアイテムとか出しましょうか?(まぁランダムなので、あまり期待できませんが)

※アドリブ・連携歓迎します。



●そして少女は立ち上がる
 踵を返したクークーの前に、ツインテールの少女がひとり立っていた。
 首には上等そうなヘッドホンをかけて、いかにも音楽少女といった向きだ。
「……あなたがクークーさんですね? 突然失礼します。
 わたしはシャルロッテ・ヴェイロン。あなたにひとつ、頼みがあって」
「……頼み?」
「あなたが普段、レディオで流している曲を聴かせてほしいんです」
 やや唐突な申し出に、クークーはシャルロッテの意図を探ろうとした。
 だが、社長令嬢であるシャルロッテの微笑みは、簡単に腹の中を晒さない。
「いい提案ですね。よければ、僕も聴かせていただいても?」
 膠着しかけた両者のやりとりに、横合いから声をかける男がいた。
 線の細い青年……草野・千秋は、視線を受けて困ったように笑ってみせる。
「僕もそちらのシャルロッテさんと同じ、奪還者ですよ。
 ですがそれ以上に、レディオというものが好きなんです」
 UDCアースで生まれ育った千秋にとって、ラジオは馴染み深い文化だ。
 だからこそ、助け舟を出す意味も込めて、シャルロッテの提案に乗ったらしい。
「もし配信がうまくいかないってんなら、あたしが力になるよ?」
 同じように、勝ち気そうな女……数宮・多喜が、会話に割り込んできた。
 人懐っこい笑みを浮かべ、少しのためらいを見せるクークーの顔を覗き込む。
「アンタもさ、気を張りすぎじゃないかい? リラックスしようじゃないか。
 まだ放送を聴いたことはないけど、あたしはアンタに続けてほしいんだよ」
 こうなっては、クークーに逃げ道はない。
 ……などという意地の悪い言い方は、どうやら必要ないようだ。
「わかった」
 少女は三人の目を見返して、はっきり頷いた。
 これまで彼女に言葉を投げかけてきた猟兵たちの働きが、
 謎めいた旅人たちに対する警戒心と困惑を解きほぐしたのである。

 クークーは専用の超小型端末を三人に渡し、体内サーバーをチューニングした。
 やがて流れ出したのは、西暦で言えば70~80年代のレトロミュージックだ。
 データの劣化によるものか、音源は擦り切れていてあまり音質がよくない。
「僕、これ聴いたことありますよ。こっちの世界にもあったんですね」
「荒廃していても同じ地球、ってことなのかね。しかし……」
 耳を傾ける千秋に対し、多喜が言う。
 そして彼女が口にしようとした言葉を、シャルロッテが紡いだ。
「……これは、あなたのお気に入りの曲なんですか?」
 問いかけに対し、クークーはこくんと頷く。
「こうして昔の曲を聴いていると、見たこともない景色が目に浮かぶの。
 まだ、世界がこんな風にならなかった頃の、知らないはずの懐かしい風景……」
 少女の視線が彼方を見やる。どこまでも続く地平線と、彼方の嵐。
「だからワタシは、こんな古い曲が好き。時間は続いてると、思えるから」
「そうですね。今でこそこの世界は滅びかけています。けれど人々は生きている」
 千秋はそう言い頷いた。だからこそ、それを繋ぐために彼らはここへ来たのだ。
 オブリビオンとは過去の残骸……世界から投棄され、忘れられたモノどもだ。
 それを相手に戦うことと、ノスタルジーに耽ることは矛盾しない。
 いや、むしろ、正しい過去を忘れずにいられるからこそ、戦えるのだろう。
 凄惨な過去を背負う彼だからこそ、その瞳には複雑な色が浮かんでいた。
「音はかすれちゃいるが、配信するのに不足はないってわけだね。
 ……てことはクークー。アンタがここを離れようとしたのは、別の理由かい?」
 多喜の問いかけに、クークーは少しだけ間をおいてから、頷いた。
「……ワタシは、あいつらがここを狙っていることを少し早く察知した。
 その時、確信したの。……このまま戦ったら、拠点は壊滅する、って」
「だから拠点を離れ、自分ひとりで解決しようとした。というところですか」
 シャルロッテの言葉を肯定するように、クークーは俯いた。
 彼女は拠点を見捨てようとしたわけでも、ひとり逃げようとしたわけでもない。
 むしろ逆だ。己の力で敵を押し留めようとしたのである。
「無謀ですね」
「まあまあ……気持ちはわかりますよ」
 あくまで冷静なシャルロッテの言葉に、千秋は苦笑しつつも言った。
「けれどそれなら話は早いです。もう、他の方々からも聞いているでしょう?
 僕たちならば、ゾンビを斃すことができます。お手伝いをさせてくれませんか」
「……でも」
「迷ってるのかい? 見捨てるような真似をしかけた自分が戻っていいのかって」
 多喜の言葉に、うつむきかけたクークーが顔を上げた。
「そりゃまあ無茶ではあるけどさ、現にこうしてあたしらがここに間に合った。
 アンタだってなんとかしたいんだろ? なら、やるしかないじゃないか」
「まだ、放送終了を正式にアナウンスしたわけでもありませんからね。
 今後のラジオ放送が不安なようなら、曲のデータをお譲りしますよ?」
 親しげに言って、シャルロッテは小首を傾げてみせた。
「こんないい曲を選べる方が、そう簡単に放送をやめてしまうのは勿体ないです。
 目の前で、拠点ひとつが壊滅しているのを見過ごすつもりもありませんしね」
 クークーはあっけに取られた顔で一同を見渡し、唇を動かそうとした。
 彼女が"どうして"と言うより先に、多喜は莞爾と笑って言った。
「言っただろ? アンタに放送をやめてほしくないのさ。
 アンタの声はきっと、ここの人たちにとっての大きな潤いなんだから」
 猟兵としての責務がある。義憤、個人的な感情、猟兵それぞれの思惑がある。
 だが少なくとも――放送を止めさせたくないというのは、三人一緒のようだ。
「…………わかった。力を、貸して」
 少女の目に、もう迷いは見えなかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

リル・ルリ
🐟櫻沫
アドリブ歓迎

嗚呼、乾いた湖なのか
新鮮だなぁ。湖が乾くなんて、すごい
大丈夫だ

れでお?は僕もはじめてだけど、いいね
歌を流したりもできるのかな
ゾンビも襲ってくるんだろ?きっとね怖いのを紛らわしたり希望を持つ、拠り所なんだ

……でもクークーの、拠り所は?って思ったんだ
励ます人も励まされなきゃ
クークー、なんでらでおやめてしまうの?
僕も聴きたかったのに
楽しめなくなってしまった?それとも、嫌いになった?
そういう時は少し、おやすみするもいいかもしれないけれど……やめてほしくないな
うん、僕も一緒に守るよ
君は1人ではない
そうだね、歌おう
君のために歌う
れでお、を聴くように聴いておくれ
心を励ます、「凱旋の歌」を


誘名・櫻宵
🌸櫻沫
アドリブ歓迎

ここが新世界ね!
枯れた湖…リィ、はぐれないでね

呪華の蝶飛ばして周辺の噂や彼女の評判、現状の情報集めをするわ
レディオっていうのはあまり馴染みがなかったけれど、荒廃した地だからこそ癒しや拠り所になっているのね
……リルは優しいわ
そういう所、好きよ
ゾンビが襲ってくるのは皆、怖いもの
きっとクークーも

うふふ
どれだけ狩れるかあたしは楽しみだけど
そんな環境のなかで励まし続けるっていうのも並大抵のことじゃないわ
偉いわねクークー
あなたが支え守ってきたものを今度はあたし達も一緒に守らせて
リル、クークーの為に歌ったらどう?
聴かせる、ではなくたまには聴くのもいいものよ!
リルの歌は珠玉の逸品なんだから



●凱旋の歌
 猟兵たちの説得と対話により、クークーはついに協力を決意した。
 迫るオブリビオンの群れから拠点を守るため、独りで戦おうとした少女。
 その無謀による凄惨な未来は、ひとまず避けられたのだ。
 ……しかし、話はそれでは終わらない。むしろここからが始まりである。
 やるべきことは多い。戦いはまだ火蓋を切ってすらいないのだから。
 だが――此度に語られることは、それとは少し話が異なる。

「よかった」
 クークー本人の口から経緯を聞かされたリル・ルリの第一声は、安堵だった。
 何を安心することがあるのだろう、と言いたげに、少女が人魚を見つめる。
「だって、クークーは"らでお"が嫌いになったわけではないんだよね?
 だから僕、安心した。そういうときは、おやすみするのも大事だけれど」
「リィは情報収集してる間も、ずっと不安そうだったものねぇ」
 そんな彼の隣で、恋人である誘名・櫻宵はにこにこと笑っている。
 サムライエンパイアで生まれ育った彼にとって、ラジオは馴染み薄い文化だ。
 しかし(この荒廃を目の当たりにすれば余計に)その大切さは理解できた。
 実際に彼の蝶たちが集めてきた情報も、クークーに対する好意的な評判ばかり。
 いつもより少し放送が遅れていることを、心配している声が大半だった。
 ゆえに、彼に同行していたリルも、気が気でなかったらしい。
「リルは優しいわ。あたし、そういうところ好きよ」
「ばっ……い、いまはクークーのこと話してるでしょっ」
 不意打ち気味に愛を囁かれて、リルは紅潮しつつまんざらでなさそうに言った。
 当のクークーは、そんなふたりのやりとりを不思議そうな顔で見守っている。
「あら、なあに? あたしたち、そんなに珍しいかしら?」
「……うん。でも、違う。すごく、穏やかな顔をしていたから」
 素直に頷きつつも、クークーは言った。
「ワタシも、あなたたちみたいに愛し合う人たちを見たことはある。
 ……幸せそうだけれど、どこか不安そうに肩を寄せ合う人たちを」
「そりゃこんな世界だもの、何が起きるかわからなくて怖いわよねぇ」
 櫻宵はそう言って、リルのほうを見やった。
「けれど、あたしもそれは一緒よ? 色んなことが不安で仕方ないの。
 怖いことだってあるし……まぁ、リィと一緒なら大丈夫、って思うけれど」
「櫻に何があっても、僕が守るもの」
 ほらね、とくすくす笑いながら、櫻宵は続けた。
「あたしが穏やかでいられるのはリルのおかげ。この子が一緒にいてくれるから。
 人ってそういうものだと思うの。支えになってくれるものがないと、怖いもの」
「……それは、クークーだって同じでしょ?」
 思いがけないリルの言葉に、少女は驚いたような表情をした。
「クークーは"らでお"でみんなのことを安心させてきたんだよね。
 でもクークーの拠り所は、どこにあるのかなって、僕思ったんだ」
「……ワタシの、拠り所」
「だからね」
 まるで小さな子供に秘密の内緒話をするように、リルは微笑んだ。
「僕と櫻が、それにみんなが、クークーのことも守るよ。君は独りじゃないって。
 君に会えたら、そうしようと思ってたんだ。僕は、歌うことが出来るから」
 歌声で、その繋がりで人々に勇気を与えてきた少女。
 誰よりも彼女を労り、励ますために、リルは歌うと言ってみせた。
 困惑した様子のクークーに、櫻宵が続ける。
「いいじゃない。たまには聴かせるんじゃなくて聴くのもいいものよ。
 リルの歌は珠玉の逸品なんだから。今ぐらいは、肩の力を抜いたらどう?」
 ふたりは視線を交わし、頷き合う。そして、リルが旋律を口ずさんだ。
 心を高ぶらせ、希望を――勇気を呼び起こす、"凱旋の歌"を。
「…………」
「あなたが支え守ってきたものを、今度はあたしたちにも守らせて。ね」
 そこで少女は気付いた。知らずうちに、自分が涙をこぼしていたことを。
 なぜ自分は泣いているのだろう。わからない、けれど……。
「うん。……うんっ」
 いまは、この旋律に耳を、心を預けて、ただ浸りたい。
 少女は一時、その思いに抗わず、心を預けることにした。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

マレーク・グランシャール
【壁槍】カガリ(f04556)と

拠点の人達を避難させるならクークーに緊急放送で避難を呼びかけて貰うのか早い
だがクークーを説得するまでの時間が惜しい
寝入っていたり、自力で移動出来ない者がいるかもしれない

クークーへのアプローチはカガリに任せる
そっちは頼んだぞ、カガリ!

緊急放送が始まるまでの間、俺は拠点の外側に近くを回って避難誘導を進めよう
「ゾンビが来襲する! 拠点の中心部に移動するんだ!」と叫ぶぞ
外周を回るのには時間もかかろうが、それでもやれるだけやるさ
足の速さ(ダッシュ)にはそれなりに自信があるつもりだ

それよりも……クークーは来襲を予期していて、生きるのを諦めたのではなかろうかと気になっている


出水宮・カガリ
【壁槍】まる(f09171)と

ん。拠点を守ることこそ、城壁の本領発揮というものだ。
任されてくれ、まる

れでぃお。ラヂオのようなものかな。
何を、そんなに諦めているのか。諦めている時間は、無いぞ。
これからお前は、この拠点の皆を助けるための放送を、せねばならんのだから
この拠点は、ゾンビの群れにやられたりはしないとも
カガリは鉄壁の城壁を築く、城門のヤドリガミだからな
他のものも、きっと拠点の壁となってくれよう
それとも、放送を辞めたいのは、他の理由か?

気力を取り戻してくれたら、放送で、拠点の住人をできるだけ拠点の中央へ集めて貰いたい
くーくーの、生放送?とか
皆、楽しみに集まってくれるのではないかな



●為すべきこと
「……すごい」
 猟兵の説得に応じ、拠点に戻ったクークーが見たもの。
 それは、忙しなく動き回り、猟兵たちともに行動する拠点の人々の姿だった。
「ん。まるが、上手くやってくれたみたいだな」
 彼女とともに戻ってきた出水宮・カガリは、誇らしげに頷いた。
 彼の言葉通り、拠点の人々に避難と警戒を呼びかけ今も走り回っているのは、
 相棒であるマレーク・グランシャールの働きによるものだった。
「あなたの、仲間が?」
「そうだ。クークーのことを、カガリたちに任せると言ってな」
 もちろん、拠点防衛に手間を割いたのはマレークだけではない。
 しかし非戦闘員の避難が迅速に進んだのは、間違いなく彼のおかげだ。
 "ゾンビが来襲する! 拠点の中心部に移動するんだ!"
 ……そんな相棒の鬨の声が、カガリには目と耳に浮かぶようだった。
「カガリ、戻ったか。そちらは上首尾だったようだな」
 そこへ当のマレークが通りがかり、無表情のままふたりを見やった。
 広くはないとはいえ、ドライ・レイクはそこそこの規模の拠点である。
 それを西に東に駆けずり回り、彼は息一つ乱していない。タフネスの賜物だ。
「こちらはおおよそ片付きつつある。手分けしたかいがあったな」
「ならばあとは、防壁を強化するだけか。それならば、カガリの出番だ」
 彼方と此方を分かち、内側にありし者どもを守るのは城壁の務めである。
 カガリは心配するなと胸を叩き、それからかたわらのクークーを見た。
 迫る脅威に己独りで抗うために、人知れず去ろうとした無謀な少女を。
「クークー。お前にも、仕事が山盛りだぞ」
「そうだな。俺や他の猟兵が繰り返し呼びかけてはいるが、
 やはり一番信頼されている人物が放送をするのが一番効果的だろう」
「まるの言う通りだ。そして一番大事なことは、クークー。お前自身の心だ」
「……ワタシの、心?」
 カガリは頷いて、言葉を続けた。
「お前は独りでなんとかしようとした。それは勇敢なことだとカガリは思う。
 でも、死んでしまうのはダメだ。生き延びるなら、皆一緒でないといけない」
 その言葉に、マレークはわずかに目を細めた。
 無表情な彼の双眸に浮かんだのは、理解、納得、そして……共感。
 彼もまた、相棒のために命を捨てたことも、その逆の立場になったこともある。
 クークーは生きることを諦めてしまったのではないか。そんな懸念もあった。
 ……だからこそ、カガリの言わんとすることに、瞼を伏せたのだ。
「カガリは城門だ。しかしラヂオで人々を勇気づけることはできない。
 だから、クークーがやってくれないと、カガリもまるも困ってしまう」
「……ああ。結局のところ俺は、殺し、壊すことしかできないモノだ」
 マレークの声音に籠められた感情とその意味を、クークーは知らない。
 それでも理解できた。彼らは、為すべきことを為せと己に言っているのだと。
「動けない者は俺が手引する。拠点の守りはカガリが務めてくれるだろう。
 だからクークー、お前はお前のやり方で戦うんだ。……協力してくれるな」
 少女はもはや、迷うことも躊躇することもなく、頷いた。
「ワタシにできることを、やらせて」
「いい返事だ」
 そして三人は視線をかわしあい、次の準備に向けて動き出した。
 救うべきものを救うために。そのために為すべきことを為すために。
 ふたりは互いの力を信じている。己にできぬことを相棒は為せると知っている。
 ゆえに。ただまっすぐに、己に出来ることを為すだけだと心に決めて、進むのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

レパル・リオン
滅亡まっしぐらの世界で、ラジオ放送で人々を元気づけるの?すっごい夢のある話じゃない!
でもラジオは突然終わって、拠点の人たちはゾンビにやられちゃうの!?何それひっどーい!夢がなーい!愛がなーい!

クークーちゃんはきっと、拠点がゾンビに襲われるの知ってるのよ!そーね、あたしにできるのはあたし達猟兵のパワーを見せてあげたり、クークーちゃんを元気づけるくらいね!

防衛準備も兼ねて、トリニティ・エンハンスでパワーアップ!重い資材を軽々運んで、バリケードを作ったり他の猟兵のお手伝いをするわ!

…もう大丈夫よ、クークーちゃん!どれだけゾンビが来ても、あたし達は逃げないわ!
(だが微かにレパルの手は震えている)


桜雨・カイ
急に終了とは…何か変化があったのでしょうか?
でも、人を励ます力があるのなら続けて欲しいです

それとは別にゾンビが近づいているのなら防衛準備もしないと。
ベースの人と共に防衛準備のお手伝いをします。人形もいるので手は二倍ありますよ。
クレーターの中心にベースがあるなら、あらゆる方向から襲われる可能姓があるという事ですよね、押し入られれないように壁などを強化しましょうか

レディオの事を聞きここに来たことにして、彼女のレディオの事や
最近の少女の様子(変わった事がないかなど)について聞いてみます

…またこの先もみんなでレディオを聞けるように、頑張りましょうね



●刻一刻の、その合間に
 ドライ・レイクは、蜂の巣をつついたような騒ぎになっていた。
 ゾンビ集団の襲来の予告。見知らぬ奪還者たちの出現。
 ある者は疑念を示し、ある者は死の恐怖に怯え、ある者は協力を申し出た。
 やるべきことは多い。だが時間は少ない。それゆえに誰しもが焦りそうになる。
 そんな彼らを鼓舞し、落ち着かせるのもまた、猟兵たちの仕事だ。
「大丈夫! あたしたちはとーっても強いし、いっぱい来たんだから!
 ほら、こーんな重い資材だってラクラクよ! さあ、どいたどいたー!」
 大の男が数人かけてもやっとの大荷物を、レパル・リオンは軽々持ち上げる。
 彼女の元気な声は、拠点防衛のために奔走する人々にとって癒やしとなった。
「その資材はこっちへお願いします。すみません、お手間を取らせて」
「ううん、気にしてないよ! ここに置いておけばいい?」
 はい、と、防壁の構築を手伝っていた桜雨・カイが、レパルに頷く。
 クレーターのど真ん中という立地は、全方位からの襲撃の可能性に通じる。
 他の猟兵によって、予測される進行ルートの割り出しは進んでいるが、
 万が一の可能性に備えてこそ万全を期すというものである。
 カイは率先して防壁陣地の構築のために働き、人々と轡を並べていた。
「……手伝えること、あるかな」
「あ! あなたがクークーちゃん? よかった……戻ってきてくれたのね!」
 そんな作業場に顔を出したクークーに、レパルは安堵のため息をついた。
 その声で彼女の到来に気付いたカイは、壁からひょっこり顔を覗かせる。
「ではおふたりとも、こちらでバリケードの作成を手伝ってもらえますか?」
「わかった」
「もちろん!」
 カイはちらりと、並んで作業していた人々のほうを見やる。
 拠点の人々もまた、クークーが顔を見せたことに喜びを浮かべていた。
(ある程度聞き込みはしていましたが、慕われているのは本当のようですね)
 先んじて拠点に訪れたカイは、人々にそれとなく情報収集をしていたのだ。
 彼らの語る言葉はどれも好意的なもので、誰もが放送を心待ちにしていた。
 クークー。ある日ふらりと現れ、"繋がり"をもたらした白亜の少女。
 よもや彼女が、自分独りでゾンビどもに立ち向かおうとしていたことなど、
 人々は知る由もない。クークー自身が、まだ放送をしていないからだ。
「……なんにせよ、あなたが戻ってきてくれてよかったです」
「うんうん。心配ないから、ね!」
 カイとレパルの言葉に、クークーは少しだけばつが悪そうにもじもじした。
「クークーちゃん、自分だけでなんとかしようとしていたんでしょう?
 それ、誰にも出来ることじゃないわ。怖かったかもだけど、もう大丈夫!」
「……うん。ワタシも、一緒に戦うって決めたから」
 レパルの言葉に、クークーは頷いた。そして……彼女の手に手を重ねる。
「ありがとう。励ましてくれて」
「……!」
 気丈なことをいいつつも、レパルの手はわずかに震えていたのだ。
 カイは気付いていたが、見て見ぬ振りをした。それは己の役目ではないと。
(人々に慕われる電脳の歌姫、ですか。なるほど、これが彼女の)
 そしてクークーの様子を見て、改めてその風評を納得したのである。
「……さあ、仕事は山積みですよ。焦らずに作業をしましょう」
「そ、そうね。誰も死なせたりしないんだから!」
「うん。……みんな、守ってみせる」
 少女たちはカイの言葉に頷き、作業に集中する。
 その想いは、来たるべき戦いに向けて、たしかに形をなしつつあった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アラン・サリュドュロワ
マリークロード(f19286)と
殿下は声楽に造詣が深くてらっしゃる
かの歌が消えぬよう尽力しましょう

感動家な主の後に口を開く
…我々が来たのは、君の福音となるためだ
命と引き換えにしても亡者の群れを倒すつもりだったのでは?
去る振りをするのは彼らを巻き込まないためか
槍を鼓舞するように掲げる
ならばその命、我々に賭け直してみてはどうか

だが化物は我々で引き受けても、まだ不十分だな…
クークー嬢、拠点の守りを固める手伝いを皆に頼めないか?
足を止める柵や穴などがいいだろう
君が彼らを守りたいように、彼らにも君が要る
人が人を想うときそれは必ず力になる

殿下はそうですね、ジゼルと遊んでいてください
それとも穴を掘りますか?


マリークロード・バトルゥール
アラン(f19285)を伴に
彼女の発する声、レディオとやら。わたくしも興味があるわ
絶えてしまうその理由を探りましょ

あなたが噂のクークーでして?
初めましてと品行方正な一礼と自己紹介から少女を真っ直ぐ見て微笑む
わたくし、皆々からあなたの話を聞いて感動いたしましたの!
声で人を鼓舞する事はそう易々と出来る事ではありませんわ
あなたの声は、語りは、優しさがたくさん詰まった音なのね

あなたがどのような心で旅路を続けているかは存じません
けれどその胸の内にほんの僅かでも、
理不尽な世界に抗いたい想いがあるならば手を貸して頂戴
クークー、あなたにしか出来ないお願いなの

あなたは不安がる人々に声で添って安心させてあげて



●少女と騎士と、王女様と
 クークーは、迫りくる危険を命を賭して止めようとしていたのではないか。
 ……そんなアラン・サリュドュロワの推測は、まさしく的中していた。
 説得に成功した猟兵たちからそれを聞き、騎士たる青年が見せた表情は……。
「あまり嬉しくなさそうね、アラン? 考えが当たっていたのに」
「……からかわないでください、殿下」
 顔を覗き込んでそう言ったマリークロード・バトルゥールに対し、アランは言う。
 彼の表情は、苦み走ったようなものだった。無理もないだろう。
 いたいけな乙女が無謀にも命を捨てようとしていました、などと聞かされて、
 的中を喜ぶ騎士などいない。彼とて、騎士道に誓いを立てた者のはしくれだ。
「ですが大事に至る前に事が収まったようで、なによりでした」
「そうね。けれどせっかくだし、彼女の顔を見てみたくはない?」
 マリークロードの表情は、いたずらっぽい少女めいていた。
 興味。感心と関心。あるいは敬意、好意……そういった色のある表情。
 だがそんなことを言い出した最大の理由はなによりも、
「あなただって、伝えたい言葉があるのでしょう?」
「…………」
 従者に対する、少し不器用で素直でない思いやりだった。

 ふたりがやってきたとき、クークーは防御陣地の構築を手伝っていた。
 アルビノめいた白亜の少女が額に汗して働くさまは、どこか危うい感がある。
「作業中失礼しますわ。あなたが噂のクークーでして?」
「……? あなたたちは?」
 怪訝そうなクークーに対し、マリークロードは品行方正に一礼し、自己紹介。
「他のみなさんと同じ、あなたに協力しに来た奪還者、といったところですわ。
 ……お話はおおよそ聞いておりますの。あなたがなぜ去ろうとしたのかも」
 少女はその言葉に、あっ、と声を漏らしてしかし目線をそらすことなく頷いた。
「……そして感動いたしましたの!」
「えっ?」
「だって、そうでしょう? あなたは声で人々を鼓舞し、勇気づけてきた。
 それだけでなく、自らこの拠点を護ろうとしていた……立派な志ですわ」
 その優しさを褒めそやすように、王女は笑みを浮かべる。
「だから、どうしてもこうしてお話をしたかったの。わたくしも、アランも」
 水を向けられた騎士は、引き結んでいた口元を僅かに緩めた。
「……君のその決意と覚悟を、俺は称賛する」
 そう言って、静かに魔槍ジゼルを取り出し掲げてみせた。
「君が命を賭けようとしたように、俺もまたこの槍に賭けて戦おう。
 ……だからどうか、無謀な真似はよしてくれ。君は、人々の希望なのだから」
「そうね。不安がる人々に寄り添えるのは、誰よりもあなたの声だもの」
 マリークロードは頷いて、微笑んでみせた。
「ねえ、クークー。ことが無事に終わったら、あなたの歌を聴かせて?
 わたくし、あなたの声に興味があるの。……どうかしら?」
「……うん。ワタシでよければ。こんなに助けてもらえてる、お返しがしたい」
 少女の瞳に、捨て鉢な感情はもうなかった。ふたりはそれに安堵した。
 戦いに際して、懸念を抱くことは命取りになりかねない。
 ゆえにこそ、今一度自分たちの言葉で、少女と対話をなしたかったのだろう。
「そうと決まれば、俺も作業を手伝うとしよう」
「あら、じゃあわたくしはどうすればいいかしら?」
「……殿下はそうですね。ジゼルと遊んでいてください。それとも穴掘りを?」
「まあ! 安心したとたんに口さがないのね、アランったら」
 おどけたような二人のやりとりに呆気に取られたあと、クークーは吹き出した。
 緊迫していた拠点に、一時だけ笑みがこぼれる。
 屈託なく笑う少女の表情は、年相応のあどけないものだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ジャスパー・ドゥルジー
馴れ馴れしく声をかけよう
見た目で警戒されるのは仕方ねえ
あんたが「クークー」か?
前回の放送を偶然拾った、お会いできて光栄だ
生で聞かせてくれないか、勿論礼は弾む

新鮮な食べ物や高価めの装飾品
この世界じゃ手に入り難いものを手渡そう
ああ、これ?
俺の生業は奪還者でね
こいつが気に入らなきゃ他のモンをくすねて来てもいい
ゾンビの拠点だろうが潰して取ってきてやるぜ

何せ俺にゃ不可能がねェ
だが荒廃した世界をただ奪って生き延びるってのも寂しいモンでさ
――ああ、やっぱいい声だな
干乾びた聴覚が蘇るようだ

お望みは、クークー?
生活必需品だろうが埋もれた宝だろうが掘り起こすし
あの竜巻の化け物どもの討伐だろうが受けて立つぜ



●悪魔を憐れむ歌
 少女クークーの説得はなされ、拠点の防衛陣地形成作業は滞りなく進む。
 人々は猟兵と手を取り合い、来たるべき戦いに備えて警戒を密にしていた。
 拠点へ戻ってきたクークーも、そんな彼らの一助になろうと働いている。
 ……そんな最中、エアポケットめいた少しの時間。彼女に歩み寄る男がいた。
「なあ、あんたが"クークー"か?」
「……あなたも、奪還者?」
 振り返った少女に対し、男――ジャスパー・ドゥルジーは肩をすくめる。
「まあそんなとこさ。お会いできて光栄だ、歌姫(ディーヴァ)どの。
 ……なんて挨拶はさておき、実を言うとあんたにひとつ、お願いがあってね」
「お願い……?」
「あんたの、歌さ。よければ、今ここで、生で聴かせてくれないか?」
 もちろん礼は弾む、と言うジャスパーに対し、クークーは頭を振った。
「ううん、いらない」
「いいのかい? 食い物も装飾品もあるぜ。ああ、もちろん今回の仕事も」
「そうじゃないの。……ワタシ、歌うときは、何ももらわない」
「……ふうん。そいつはどうして?」
 何気ない問いだった。事実、ジャスパーとしても慮外の言葉だったからだ。
 この世界は荒廃し、物々交換によってかろうじて流通が成り立っている。
 そこを旅する彼女ならば、物資の重要性は理解しているだろう、と。
「……答えは、歌ってから」
 そう言って、クークーは体内サーバーをセットし、旋律を流した。
 かすれたオールディーズなジャズ。それに載せて、しとやかに歌う。
 ジャスパーは何も言わず、瞼を伏せてその旋律に耳を傾けた。
 古い歌だ。奇のてらいもなく、素朴でシンプルな、穏やかなジャズである。
 今風の音楽に慣れ親しんだ若者ならば、古臭いと鼻で笑うような。
 ……けれど。
「――ああ、やっぱいい声だな」
 ジャスパーは呟いた。それは彼なりの、素直な消散だった。
「干からびた聴覚が蘇るようだ。……本当に、礼はいいのかい?」
「うん。……だって、もう受け取っているから」
 クークーは頷いてから、言った。
「あなたは、こんな世界でワタシの声に耳を傾けて、聴いていてくれた。
 ワタシはそれで十分。……だからワタシは、旅をして声を届けているの」
「……こんな荒廃した世界で、よくもまあ」
 悪魔めいた男は皮肉げに笑った。だが眼差しは優しげだった。
「けれどクークー。それじゃあ俺みたいなひねくれ者は納得しないのさ。
 お望みを言ってくれよ。なんでも叶えるさ――怪物退治でも、なんでもな」
「……その代わりに、魂を持っていってしまうの?」
 まさか、と冗談めかして言って、ジャスパーは続けた。
「その時はまた歌ってくれよ。俺みたいな"もどき"には、それで十分さ」

大成功 🔵​🔵​🔵​

龍之・彌冶久
……"戦"あふるる世界とは。
呵々、なんの因果やらなあ!

……まぁ、何。俺はいつも通りに往くまでよ。
とにかくその娘子がラジヲとやらを止めるのを止めれば良いのだだろう。

おう、変わった御嬢。少し老耄と話をせんかな?
爺というのは話相手を欲しがるものでなぁ。
話すのは得意であろう。お前の身の上話でも、好きな話でも聞かせておくれ。

……そうか、そうか。呵々、なるほどこの渇いた地の癒しになるのも頷ける。
爺もお前さんの話は好きだ。
……そして、お前さんも好きなのではないか?

何、手なら貸してやる。
"戦"と諍いを生む物を斬れば良いのだろう?何を隠そう俺はその手の事は滅法得意でな!

……だから安心して謳うが良い、娘よ。



●語らい
「お前の好きな話を聴かせてくれんか」
 クークーの前に現れた青年……龍之・彌冶久のリクエストは、シンプルだった。
 その言葉に、少女が少なからず戸惑いを浮かべたのは無理もないだろう。
 彼女を止めるため、あるいは決意を伝えるために、言葉を紡ぐ。
 それならばわかる。事実、そうした猟兵たちの想いを受けたからこそ、
 クークーは協力を決意し、いまこうして戻ってきたのだから。
「俺は老いぼれなものでなあ。それにお嬢、お前さんは話すのが得意なのだろう?
 ならば、俺はお前さんが知りたい。何を見て、何を考え、何をしていたのかを」
「……ワタシなんかの話で、いいのなら」
 見た目にそぐわぬ老練なその言葉に、クークーが拒む理由はなかった。
 だからふたりは瓦礫に腰を落として、作業の合間の一時に語り合ったのだ。
 いや、実際のところ、話をするのはほとんどクークーのほうだった。
 この荒廃した世界を、人々を勇気づけるためだけに旅をしていること。
 今までいくつもの拠点を旅し、時にはその滅びに立ち会ったこと。
 救おうとした命を救えず、力不足に嘆いたこと。
 ぽつり、ぽつりと。多くのことを、少しずつ、噛み砕くように。

 ……ややあって、話が途切れた。
 そこで彌冶久は、呵呵と笑い、そう言った。
「なるほど、なるほど。お前さんの声が、この乾いた地の癒しになるのもうなずける」
 そう言って、続けたのだ。
「爺もお前さんの話は好きだ。そして――」
 ちらりと、彌冶久が少女を見やる。
「……お前さんも、そうして語らい、歌うことが好きなのではないか?」
「……うん」
「そうか」
 頷いて、彌冶久は莞爾と笑う、
「何、俺は斬るのが得意だ。だから安心して歌うがいい、娘よ」
 幼子を褒めそやす翁のように。暖かく。威厳を浮かべて。

大成功 🔵​🔵​🔵​

オルハ・オランシュ
ヨハン(f05367)と

時間の無駄かぁ
あはは……君らしいとは思うよ
でもね、説得なんて難しく考えなくてもいいんじゃない?
私は彼女の話を聞きたいな
防衛準備は私にはちょっと不得手な気もするし、ヨハンに任せるね

君がクークー、でしょ?
私はオルハ
会ったばかりの相手に打ち明けるのは難しいかもしれないけれど……
レディオを突然終わらせようとしているのは、どうして?
君にとって、そんなに簡単に手放せるような無価値なものだったの?
きっと違うよね
引き留める声を聞いたら気持ちが揺らいじゃうって
わかっているんじゃないのかな
やめようって君を思わせたのは、どんな出来事なの?

励ますことが説得に繋がると思いたいな


ヨハン・グレイン
オルハさん/f00497 と

説得は時間の無駄です

この場合の時間の無駄というのは俺が到底説得など出来る訳がないという意味であり
要するにさっさと防衛準備でも整えに行った方が合理的だという
事実です

適材適所でいきましょうか
話を聞くのはオルハさんにお任せします
話してもらってる間に俺は粛々と準備しますよ

そういう訳で先ずは拠点の人員や物資、周辺地形の把握と、
防衛に投入出来る戦力の洗い出しと割り振りなど必要なことを纏めましょうか
猟兵間で情報共有して撃退に向いた配置でも組んでおけばそう困った事にはならないんじゃないでしょうか

出来る範囲の事をやりきったら一先ずオルハさんと合流しますかね



●時間の使い方
「時間の無駄です」
 ヨハン・グレインの言葉に、オルハ・オランシュは呆れた苦笑を浮かべた。
「あはは……ヨハンらしいとは思うよ。でももう少し言い方とか……」
「……俺に説得なんてことが出来ると思いますか? 到底不可能ですよ」
 決してクークーなる少女をないがしろにしているわけではない、とヨハンは語る。
 それよりも、手分けしてさっさと防衛準備を整えにいったほうがいい。
 あくまで合理的な考えを語るヨハン。新たな世界だろうが彼は相変わらずだ。
「説得なんて難しく考えなくても、話を聞いてみるだけでもいいと思うけどな」
「それも同じですよ。俺に聞き手なんて出来るわけないでしょう」
「そんなことないと思うけどなあ」
「……とにかく、俺は俺で動きます。そちらはお願いしますよ、オルハさん」
 そうしてふたりが手分けしたのが、少し前のこと。

 そして、今。
「そっか。みんなのこと、ちゃんと信頼してくれたんだね。ありがとう」
 クークーと出会い、彼女からこれまでの経緯……彼女が多くの猟兵たちと対話し、説得を受け、協力を決めたこと……を聞いたオルハは、安堵の笑みを浮かべた。
「ワタシはあなたたちのことを何も知らないけれど、あなたたちがとても強くて、
 ワタシのことを慮ってくれていることは、きちんと理解できたから」
「うん、そう言ってくれて嬉しい。……ヨハンが聞いたら否定しそうだけど……」
「ヨハン?」
「あ、えっと。私の……仲間、かな。男の子なんだけど……」
 オルハの視線が、ちらりと拠点の一角を見やる。
 そこには、他の猟兵や戦闘要員の奪還者たちと協議しているヨハンの姿。
 クークーはそんなオルハの横顔を、じっと人形めいて見つめる。
「あなたの恋人?」
「え゛っ」
 顔を赤らめ、図星といった表情になるオルハ。顔には「どうして」と書いてある。
 クークーはきょとんとした顔のまま首を傾げ、こう言った。
「ワタシもいろいろな人々を見てきたから、わかる。愛し合う人たちの表情は」
「そっか……まあ、そうだよね。旅人なんだっけ」
「……うん。本当なら、ワタシはここで旅を終わらせるつもりだった」
 クークーはドライ・レイクに視線を向ける。横顔に浮かぶ感情は複雑だ。
「みんなを守れるなら、死んでもいいって。……だからひとりで敵と戦おうって」
「でも、それはやめてくれたんでしょ?」
「うん」
「ならそれでいいんじゃないかな。少なくとも、私は安心したよ。
 君にとって、レディオが簡単に手放せる無価値なものじゃなかったんだって」
 この荒廃した世界で、希望を届ける繋がりの大切さはオルハにも判る。
 それを手放してしまうのは、たとえどんな理由であれ……悲しいことだと、
 少女は思っていたのだ。だから、その言葉は間違いない本心だった。
「だから、一緒に頑張ろうね、クークー。私もヨハンも、頑張るから」
「……俺は仕事をこなすだけですよ」
「あ」
 ちょうどそこへ、一息ついたヨハンが合流してきた。
 彼はドライな表情でため息をつき、ちらりとクークーを見やる。
「どうも」
「あなたが、ヨハン。……ありがとう。みんなを守るために手間をかけてくれて」
「…………そういう依頼なので」
 ばつが悪そうに目をそらす少年、それを見てくすくす笑うオルハ。
 少女たちは視線をかわし、何か意味ありげに微笑んで頷き合う。
「なんですか。妙な共謀をされている気配がするんですが」
「別に~? ねえ?」
「うん。オルハが色々話してくれただけ」
「その"色々"が不安なんですよ……まあ、いいですが」
 ヨハンは荒れ果てた地平線を見やった。枯れた湖の地平線を。
 戦いの気配が、近づきつつあった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

鳴宮・匡
【アサルト】


どこか懐かしいような“におい”がする
感覚的なもので、そう知覚したわけじゃない
“感傷”に近いかな
あのひとの纏っていた空気に、よく似てる

……ああ、なんでもない
とりあえず始めようか

集落周辺を見て回るよ
手薄な場所・補強や整備が必要な箇所・狙われやすい立地を洗い出す
拠点のやつらの話も聞いて
整備を要する場所、新たに必要な設備や兵装を纏め
ヴィクティムに伝えるよ

狙撃ポイント?
そんな目立つものはいいよ
後々ここのやつらが利用できるようなものにしてやりな
今回の襲撃を退けるのは手を貸せても
ずっとは留まれない
ここを守っていくのは、この土地に暮らすやつらなんだ

敵の接近はこっちで感知しておくよ
作業、急いで頼むぜ


ネグル・ギュネス
【アサルト】
またとんでもない世界に来たもんだ
だが、少女のレディオも、希望も喪うわけにはいくまい
アサルト、出撃と行こう

──とは言え、私は力仕事一択
住民の家周りなどの補強に回ろうか
【勝利導く黄金の眼】を用いて、敵が通る未来を予測演算
抜け穴や裏道も見逃さないようにして、封鎖せねばなるまいか
その周囲に、土壁や岩で障害物を組み上げよう
尖った柵に滑る壁、少々の衝撃で崩壊しないように、重ね組み立ててバリケード

木材、土に岩、軽々抱えながら右往左往
地味な仕事だが、これが一番有効なんだよな

任された、運び込もう
匡、狙撃ポイントとか組んだ方が良い?

さて、時間は無いが、やるだけはやるさ
ゾンビ共に一泡吹かせてやる為に、な


ヴィクティム・ウィンターミュート
【アサルト】

今正に潰えようとしている、レディオという名の希望があるみてーだ
さてさて、俺達はどうするかって話になるが…
"現実的なアプローチ"ってやつをするべきじゃあないか?
俺ぁここの防衛設備を補強しておく

セット、レディー…『Sanctuary』
まずは容易く侵入されないように高く、強靭な壁
自動で迎撃してくれるセントリーガン
感圧式の地雷なんかも置いておこう…これは奴らの通り道に撒いておいて、味方に被害が出ないにしなくちゃな

レーダーは匡がやってくれるから安心として…
そうだな。パンピーは家に居ときな
大丈夫、住処は補強しておいてやる
ネグル、資材を運んでおいてくれ
こいつらの住処を即席シェルターにするぞ



●少女の見た背中
 クークー。たった独りでゾンビの群れに挑もうとした無謀な少女。
 猟兵たちの説得が彼女の決意を変え、彼らとの協力を決意させた。
 そうして彼女は防衛陣地の構築を手伝っている。そんな合間のことだ。
「…………」
 クークーは作業中の一角をじっと見つめていた。そこには男がふたり。
「資材、持ってきたぞ」
「おうサンキュ、ネグル。んじゃこっちの木材を組み立ててくれねえか?」
「任された」
 ネグル・ギュネスとヴィクティム・ウィンターミュートである。
 彼らは最初から、拠点に急ぎ防衛戦のための作業に勤しんでいたのだ。
 力仕事に長けたネグルが資材の運搬を担当し、ヴィクティムが設計を行う。
 電脳魔術によって地形そのものをハッキングすることで、
 セントリーガンや感圧式地雷といった本格的な装備を構築している。
「なああんたたち、手伝えることはあるかい?」
 そこへ、拠点の若者がひとり、声をかけてきた。
「いや、パンピーは家に居ときな。それか、他のところを手伝ってくれ」
 と、ヴィクティム。
「ああ。下手に触ってトラップが誤爆してしまってはコトだ」
 ネグルも同調する。若者はきょとんとした顔で、肩をすくめた。
「大したもんだな、あんたたち。よほど修羅場をくぐりぬけてきたみたいだ」
「そうでもないぜ? 楽しいショーばかりさ」
 皮肉げに笑うヴィクティム。……若者が去っていったあと、ネグルが言う。
「今の台詞、匡のやつが聞いていたらまた小言を言いそうだな」
「だからこそ、さ。少なくとも、俺にとっちゃいつだって舞台のつもりだったぜ」
「命を捨てるような真似をしておいてよく言う……なんてな。それはオレもか」
 ともに盟友/相棒に苦言を呈されがちな者同士、男たちは肩を揺らして笑う。
 そんなふたりの背中を、クークーは物陰からじっと見つめている。
「……ところで、レディ? 私たちが珍しいかな?」
 そこでネグルに声をかけられ、クークーは驚いた。
「どうしてわかったの」
「私の眼はいろいろなものを映し出すのでね。まあ、相棒ほどじゃないが」
 土嚢を担ぎ上げながら、ネグルは気障ったらしく言った。
「相棒?」
「俺らの仲間さ。……そういやあいつの狙撃ポイントとかいらねえのか?」
「"そんな目立つものはいい"だと。あったところで、此処の人々が利用できまい」
「それもそうだな。俺らがいつまでも居れるわけでもねえんだ」

『今回の襲撃を退けるのは手を貸せても、ずっとは留まれない。
 ここを守っていくのは、この土地に暮らすやつらなんだ。だから――』

 そう言っていた相棒の表情が、ふたりの脳裏に浮かんだ。
「さて、俺らは見ての通り作業中なんだが、そっちの用はなんだ?」
 AR投影されたいくつものウィンドウを見ながら、ヴィクティムが言った。
「……あなたたちは、みんなワタシや拠点の人たちによくしてくれている。
 でも、それだけじゃいけないと思って。ワタシも、あなたたちを知りたかった」
「そいつは光栄だ。が、俺は所詮裏方だ。インタビューはこっちに頼むぜ」
 ヴィクティムが親指でネグルを示すと、少女の視線がそちらに向く。
 当のネグルは、やれやれといった様子で苦笑を浮かべた。
「……なら、少し手を貸してもらっても?」
「わかった」
 クークーは素直に頷いて、ネグルとともに地味な仕事に黙って従事する。
 その間にも、少女はときおり手を止めては、じっと彼らの背中を見ていた。
 いつも通り、"現実的なアプローチ"でこの拠点を護ろうとする、
 プロフェッショナルめいた男たちの背中を、その眼に焼き付けるように。

「……こんなところか」
 一方、そんな彼らのチームメイトである鳴宮・匡は、情報収集に徹していた。
 拠点を見て回り、補強すべき箇所や狙われやすい立地を洗い出す。
 あるいは実際に拠点の人々と対話することで、必要な設備や兵装をまとめ、
 都度ヴィクティムとネグルに伝える、それが彼の役目だ。
 だが匡にしては珍しく、彼も時折足を止め、地平線を見つめることがあった。
 枯れた泉のクレーター。その先に無限に続く、陽炎がゆらめく荒野。
 この光景が珍しいというわけではない。むしろ逆だ。
(……懐かしい、って表現するのかな、これは)
 もしくは、感傷だろうか。そんな人間的な感情が己にあるとは思えないが。
 それでも、この死にかけた世界は――黄昏に沈んだダークセイヴァーとはまた違った意味で――匡にとって慣れ親しんだものがある。
 戦場の荒廃。あるいは、そこで出会った"あのひと"の纏う空気。
 普通の人間であれば、そのノスタルジーを唾棄して嫌悪しただろう。
 なにせこの世界は、地獄だ。世界が滅びかけ、人々も死に絶えようとしている。
 遺棄された禁断の技術に手を出さねば、生きることもままならぬ世界。
 ……似ている。生きるためにあらゆる暴力に手を染めた、自分の半生と。
 そんな血塗られた過去を、好んで想起するような者はいない。
 喜悦とともに思い起こす者がいるならば、そいつは間違いなくサイコパスだ。
 匡はどちらでもない。ただ、虚無的な感慨めいたものがあった。
 もっとも近い言葉で示すならば――それは、寂寥感と呼ぶべきなのだろう。
「…………ラジオ、か」
 ヴィクティムとネグルの台詞が、匡の脳裏に蘇る。

『いままさに潰えようとしているこの世界の、形なき希望ってワケだ』
『少女の想いを喪うわけにはいくまい。しかし、とんでもない世界に来たもんだ』

 こんな世界で、奪うでもなく殺すでもなく、人々を繋げるために旅をする。
 その繋がりを大切にし、人間らしく身を寄せ合って生きていく。
 どちらも、匡にはできないことだ。
 どちらも、匡にはできなかったことだ。
 今はどうだろうか。それを、せめて護ろうとすることは出来る。
 ……したいというねがいがある。だがやはり、自分には――。
「ん」
 匡は何かに気づいて、しかし振り返ることをやめて歩き出した。
 ……そんな彼の背中を、少女はじっと見つめ、見送った。
 少しでも、その姿を記憶に留めておこうと努力するかのように。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ジュリア・レネゲード
ドライ・レイク、転移完了……
ハァイ、クークー
公開録音には間に合ったかしら?

話しかけながらUCでドローンをばら撒き周辺のスキャン
戦闘知識でフィールド情報を精査しておく

私は彼女に話かけて時間稼ぎ
素敵な放送を突然辞めてしまうのは何故?
それはドライ・レイクが戦場になるから、かな

うん……そこで提案があるのよ
全員がハッピーになるような奴がね
私達は戦力を提供する
最大級の……それこそ、世界を何度も救っちゃう様な
業務内容はドライ・レイクの完全な防衛
報酬はあなたの放送を特等席で観せてもらう事
さあ、どうする?

あのね、この世界で娯楽ってのは
時には水より尊く貴重な場合もあるのよ
あなたはオアシスみたいな存在なんだから、ね


大紋・狩人
【SPD】
テレビやレディオに触れるのはアースに来てからのことだった。
そういう娯楽なんて初めてだったから、こんなに楽しいものもあるのか、と。
……アポカリプスヘルでは。
それらは懸命に生きる人々にとっての希望や祈り、なんだな。

……善き魔法使いの真似事にも満たないが、【灰白鳩】。
続けられない理由に機材があるならそれを、守りの不足があるなら防壁となるものを作り出そう。
どうか、望んで。
どうか、教えて。
何がきみを思い悩ませている?

……叶うことなら、僕にも聞かせてほしいんだ。
誰にも僕にも作り出せない、君にしか生み出せない、人々の希望のレディオを。


抹消個体第九一零号・クト
アドリブ歓迎

いつかこの日が来るって知ってたみてえな言葉だ

直接の説得は他に任せらあ
俺は、戦闘知識を元にバリケードの補強にでも走り回ろう

ついでに、クークーの放送の視聴者に話を聞く
どんな問いかけがあったか、どんな言葉があったか
どんな事でも誰かの説得の役に立つかもしれねえ

あいつは「残念な知らせ」っつったんだ
あいつが期待されてる事を知ってる
あいつ自身が期待している事を知ってる

成るようになるさ

バリケードの上で監視する
嫌な臭いだ
だが、風は変わった
同じように世界は変わっていく

「猟兵か」

ごめんなさい
そうやって黙って謝るしか出来ない世界は変わり始めている

ここに集った俺達がその証だ
こんな事だろうが、立派な説得だろ?



●この世界での賢い生き方
 浅黒い肌の巨漢が、黙々とバリケードの補強作業に勤しんでいる。
 野性味の強い顔立ちには、しかしどこか虚無的な気配が浮かんでいた。
 彼の名はクト。抹消個体第九一零号(がらくたの)・クト。
 この世界で生み出された人工生命――すなわち、フラスコチャイルド。
 かつて、あらゆる手を使ってでも生き延び、"いま"を掴んだ男である。

 ……クトは、はじめからクークーの説得を他の猟兵たちに任せていた。
 ただ愚直にひたすらに、防御陣地の構築のために拠点を駆けずり回る。
 慣れている。当然だ、彼はこの世界で生まれ育った男なのだから。
 こうして生き延びるために、必死でがらくたをかき集めたことも一度ではない。
「……あん?」
 しかし男は手を止めて、藪睨みめいた表情で頭上を見やった。
 雲だらけの青空に、浮かび上がるものは"バリケードになるであろうもの"だ。
 それは超自然的な力でふわりとゆっくり地上に降り、新たに積み重なる。
 ユーベルコードか。クトは、口の中で言葉を転がすように呟いた。
「作業の邪魔になったのであれば謝罪する」
 そう言って現れたのは、黒いクリノリンドレスを纏う少年であった。
 大紋・狩人。瀟洒で女性的な見た目と反対に、その灰色の瞳は冷たく峻厳だ。
「別に、構いやしねえよ。それよか、例のディーヴァの説得はいいのか」
「ああ。僕も話を聞いたが、彼女は協力を決意してくれたようだ」
 だから、彼女の望むもの――少しでも多くの防壁を作るために、僕は来た。
 狩人はそう言って、新たなバリケードをユーベルコード"灰白鴉"で生成する。
「便利なもんだ。猟兵ってのは」
「君も同じだろう?」
「……俺は"こっち"で育ったもんでね。見たとこ、あの女もそうだろう」
 クトが視線を巡らせた先には――なるほど、クークーともうひとりの女。
 ソーシャルドローンを伴とした金髪の女の名を、ジュリア・レネゲードと云う。

「このへんの精査(スキャン)は終わりね。いい調子で作業も進んでるみたい。
 これなら、仮に拠点まで攻め込まれたとしても、被害が出る可能性はないわ」
「……よかった」
 安堵のため息を零したクークーに、ジュリアは視線を向けた。
「ドライ・レイクが戦場にならないよう、私たちは出来るだけ尽力するわ。
 あなたももう、独りであいつらを倒そうだなんて無茶はしないでしょうけど」
 それでも、無理はしないように。歴戦のサバイバルガンナーは重ねて忠告する。
「せっかく公開録音に間に合ったんだもの。放送前に死なれちゃ興ざめだわ」
「大丈夫。みんなに言葉をもらったから、ワタシはもう、間違えない」
「そう、ならいいの。でもせっかくだし、個人的に仕事の契約をしてみない?」
 仕事の契約? きょとんとした顔のクークーに対し、ジュリアは云う。
「私たちはあなたと拠点の人々に戦力を提供する。誰よりも最大の力をね。
 業務内容はドライ・レイクの完全な防衛。そうね、報酬は――」
「……ワタシの、放送?」
「を、特等席で観せてもらうことかしら」
 茶目っ気たっぷりなジュリアの言葉に、クークーは薄く笑んで頷いた。
 契約成立だ。ふたりは握手を交わし、改めて地平線の彼方を見つめる。
「この世界での娯楽ってのは、水よりも尊く貴重な場合もあるのよ。
 あなたはオアシスみたいな存在なんだから。ここの"人々にとっても"」
「……?」
「あら。あなたの放送を楽しみにしているのが私だけだと思った?」
 ジュリアは言って、顎でふたりの男を――狩人とクトのほうを示した。
「あの子たちだって、同じよ。きっと、だけれどね」

 そんな女たちの声が、風に乗ってふたりのもとへ届いてくる。
「だとよ。ま、やる気になってくれてんならなによりだ」
「ああ。僕も聴いてみたい。誰にも作り出せない、彼女の希望というのを」
 素直に言った狩人の横顔をちらりとみやり、クトは視線をバリケードに戻した。
「そこは心配するまでもねえさ。実際のところ、はじめからな」
「? どういう意味だ?」
「グリモア猟兵の話を思い出せよ」
 訝しむ狩人に対し、クトは云う。
「あいつは"残念な知らせ"と言った。"残念"だぜ? それはつまり、だ。
 ……あいつは期待されていること、自分が期待していることを知っている」
 だから、なるようになる。男ははじめからそう考えていた。
 かすかに漂う死臭。それに顔を顰めつつ、クトは続ける。
「"ごめんなさい"だなんて、黙って謝るしかできない世界が、変わってんのさ。
 ここに集った猟兵(おれたち)がその証だ。……違うか? ご同輩」
「……そうか。そうだ、な」
 狩人は、アリスラビリンスで生まれ育った少年である。
 オウガに抗おうとしたアリスたちの末裔。地獄めいた世界の生存者。
 彼の中で、この世界で懸命に生きようとする人々の希望は、祈りは、
 どこか他人とは思えないという感傷があった。
「……僕も楽しみだ。彼女の放送が」
 そう言った少年の眼差しに、未来への不安は、曇りはなかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アルマ・キサラギ
拠点の防衛準備は他の人達に任せて、あたしは女の子に話を聞きに行こうかしらね
ハロー、お嬢さん
今生の別れを惜しむような雰囲気醸し出して、どうしたのかしら?

まずはここを去ろうとしてる理由を聞かなきゃね
拠点の人達に相談出来ないって事は、彼らには言い難い事なのかしら

だからって一人で抱え込んで理由も言わずにお別れだなんて、悲しいし残酷な事よ
人は日常を失う事を恐れるものだから…きっと、貴女を追って無茶をする人が出るわ
ネットワークと一緒に人の絆を結んできた人が居なくなるなら尚更
だからほら、理由を聞かせて

大丈夫よ
あたし達の特技はね、世界を救う事なんだから
人の悩みの一つや二つ、あっという間に片付けてやるわ



●少女と女の話
 この世界において、腕のいい奪還者は誰もが求める人材だ。
 ゆえに猟兵を邪険にする者はほとんど存在しない。少なくとも正気の人々は。
「ここの人たち、優しい人ばっかりよね」
 アルマ・キサラギは、隣に立つクークーを見てそう言った。
 彼女なりに、事前にある程度の情報収集をした上での言葉である。
 人々に繋がりを提供してきた少女のことを、とうの人々はどう思っているのか?
 ……その答えは、おおむね好意的なものだった。
 だからこそ、説得しなければならない。話を聞かなければならない。
 アルマの決意は強まり……そうした猟兵たちの考えと実際の対話が、
 今こうしてクークーを拠点へ立ち戻らせ、猟兵への協力を決意させたのだ。
「うん。みんな、ワタシのことを受け入れてくれたから」
「受け入れられなかったことがあるのかしら?」
「…………」
「……よくない質問だったかしらね。忘れて」
 僅かな沈黙から意図を察し、アルマはばつが悪そうに手を振った。
 こんな世界だ。狂気に染まり銃を手に取った人々は当然いるだろう。
 旅人であるクークーが、そうした人の悪意に直面したことも、おそらくは。
「でも、よかったわ。あなたがひとりでお別れだなんてことにならなくて」
「ワタシも、本当は……できるなら、一緒に戦いたかった。けれど」
「そうね。自分独りでなんとかしようとしたって気持ちはわからなくはないわ。
 ただもしそうしてたなら、きっとこの中には、あなたを追う人もいたでしょう」
 そしておそらくは、クークー同様に無茶をして死んでいたはずだ。
 だからこそ、アルマの言葉は正直な本心だった。
 ……善き人々のために、どうにかして自分だけでゾンビたちを止めたい。
 クークーの語ったその理由に、アルマなりに思うところがあったのだろうか。
「でもま、心配いらないわ。あたしたちの特技は"世界を救うこと"なんだから」
 自信満々に言ってみせるアルマの顔を、クークーはまっすぐ見つめた。
「……こんな、今にでも滅びそうな世界でも?」
「もちろんよ」
 いわんや、いたいけな少女の悩みの一つや二つ、わけはない。
「おねーさんに任せなさい。あなたの日常を、必ず守ってあげる」
 優しげな声音に、クークーの瞳が揺れる。
「……ありがとう」
 微笑みとともにこぼれた言葉は、暖かく穏やかなものだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

狭筵・桜人
いいですねえ新世界!
娯楽のひとつも有りはしないって感じです?
いやあ大事ですよね、娯楽。
てなわけでクークーさんを説得します。

どうも通りすがりの奪還者です。
大勢の屍人がこちらへ向かって来てますがご機嫌いかがでしょう?
やぁ残念なお知らせですがディーヴァ一人が
身を呈したところで時間稼ぎにもなりませんよ。

人には得手不得手がありますからね。
あなたはあなたの得意な手段で戦うってのはどうです?
例えばレディオで拠点の人々に防衛の準備を呼び掛けるだとか。

大丈夫、屍人ならここに来た人たちがそれはもういい感じに倒してくれますって!ね!
私?私はほら……居るだけで癒し枠みたいな?

て、手伝います!
防衛準備手伝いますから!


夏目・晴夜
私は声もかなり良いですが、
こんな世界の人々を励ますようなレディオは多分無理ですね
世の中には凄い人もいたものです

防衛準備の為に拠点にコンタクトします
こんな事態でなければ存分にチヤホヤして貰いたかったんですがねえ

クークーさんが気がかりでしょうが、
向こうも私ばりに有能な面々が対応していますので心配無用です
それよかこのままでは永遠に何も聴けなくなる危機が迫っていますので、
早い話がゾンビの群れがドバッと向かって来ていますので、
戦う為の準備を出来る範囲で整えて頂きたく

まあ戦う準備といっても、拠点と自分たちの身を守る為の準備のみで大丈夫ですよ
このハレルヤはメチャクチャに強いですからね
腕相撲はイマイチですけど



●割れ鍋に綴じ蓋とはよく言ったもので
「…………疲れた。帰りたい」
 防衛準備のために土嚢を抱えながら、ピンク髪の少年がげんなりと言った。
 彼の名は狭筵・桜人。れっきとした猟兵であり、今回の事態を解決するため、
 意気揚々とやってきたはいい……の、だが。
「……みんなの準備、手伝ってくれるって言ってた」
「え? ああ、そりゃもうもちろん! ほら見てくださいこの頑張りぶり!」
 クークーは腕組して、ジト目になりつつため息をついた。
『どうも、通りすがりの奪還者です。ご機嫌いかがですか? クークーさん。
 やぁ、残念なお知らせですが、あなたが身を挺したところで時間稼ぎにもなりませんよ』
 出し抜けに現れた桜人は、クークーに会うなりそう言ったのである。
 少女は驚いた。なにせ、まだ話してもいない己の無貌の理由を、
 おそらくは他の猟兵から耳にしていないだろう少年があっさり言い当てたのだ。
 その驚愕を不思議がるふうでもなく、桜人は続けた。
『人には得手不得手がありますからね。どうせなら得意な手段を使いましょう。
 たとえば、レディオで拠点の人々に、防衛準備を呼びかけるだとか……』
 立て板に水というべき説得口上であった。そこでクークーは問うたのだ。
 それは、理解した。では、あなたは一体どうするのか、と。
 少女に対し、協力や力添えを約束してくれた猟兵は数多くいる。
 あなたもそうなのか、とクークーは素朴に問いかけたのだ。そして……。
「……私、どちらかというと癒やし系というかムードメーカーというか、
 いることで効果を発揮する系の人材なんですよね、やっぱり。だからこう」
「何もしてくれないの」
「いや、します! 一度口にしたからにはきちんと手伝いますよ、準備!」
 ……という具合で、馬車馬のごとく働いていた、というわけである。

「無様ですねえ」
 そんな彼の姿を、夏目・晴夜はばっさりと一刀両断した。
 なにせこの男、およそ遠慮や配慮といった言葉には無縁の少年である。
 天上天下唯我独尊、誰よりも自分は優れていると言ってはばからない。
 とはいえ、
「しかしクークーさん、改めて思いましたが、私はあなたに敬意を示しますよ。
 このハレルヤも美声ではありますが、人々を励ます放送など多分無理ですし」
「美声と言ってはばからないのすごいですねこの人……」
 汗だくの桜人ですら、ツッコまざるを得ないふてぶてしさであった。
 晴夜はそんな視線にも慣れたもので、誇るでもなく視線を返すと、
「もちろん、戦いに関しても超一流なのでご安心ください、無様な方」
「せめてもう少し名前っぽく呼んでもらえませんか!? 貴族か何かです?」
「精神的貴族ではありますね。少なくともあなたよりは綺麗です。体とか」
「誤解を招くような表現やめてください(真顔)」
 といった、割れ鍋に綴じ蓋というべき噛み合いっぷりであった。
 桜人は内心で思う。この手の、何を云うにも表情を変えない輩に、覚えがある。
 ぼや~んと浮かんできた黒髪眼鏡の忍者の顔を、ぶんぶんと振り払った。
「とにかくほら、もっときちんと働いてください。時間は残り少ないですよ」
 他の方々も準備をしてくれているんですから、私たちが怠けるわけにはいきません」
「ご自分で仕事をしてから言ってもらえませんか……?」
「していますよ? このハレルヤがいるだけで、皆さんの士気はうなぎのぼりです」
 マジか、という顔になる桜人。これがナチュラルな……アレなのか。
 勝てない。ここまで自分はふてぶてしくなることができない。謎の敗北感だ。
「……ふ、ふふっ」
「ほら、クークーさんも微笑んでくれています。ハレルヤの力の賜物ですね」
「どう見ても私たちが笑われてるだけですよこれ!」
「いえ、笑われてるのはあなただけですよ?」
「不思議そうな顔で首を傾げないでもらえませんかね……!?」
 少女はいよいよ腹を抱えて笑う。なぜか自信満々なドヤ顔スマイルの晴夜。
 桜人はうんざりした顔で新たな資材を担ぎ、作業に没頭することにした。
 どうして自分は、こういうタイプの人間に縁があるのだろう、と運命を呪いながら。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ロク・ザイオン
◎ジャックと

……レディオ。
歌が、聞こえるやつか。ジャック。
(機械的なノイズは耳に馴染んで
今となっては心地好くすらある。
きっと。
この世界のひとたちにとって。
真っ白なキミの声も。)
守るの。ジャックに、任せていいか。
おれは、話がしてみたいから。

さよならを、したいのか。
しなきゃいけない、のか。
ひとは、したいことをするから。
おれはキミのこころを守る。

けれどキミの声は。
静かで冷たい水みたいに、きれいだ。
それを、皆、待ってるから。


ジャガーノート・ジャック
◆ロクと
(ザザッ)
そうだな。
電波に乗って多くの人に届けられる音だ。

了解此方は防衛拠点の方へ向かう。其方は君に任せた。

(侵略される日々を過ごす人々にとって
レディオはオアシスの様な物だったのだろう。
いつかの自分にとっての友人の様に。)

(街の高台に乗り叫ぶ。多少目立って怪訝な目を向けられようと構わない。)

耐え忍ぶ民らよ!!
今この地に脅威が迫っている!
じき死者の群れが訪れる!
諸君も
そしてこの地に流れたレディオも平く食い尽くす為!

諸君は其れを良しとするか!!
("演説者"としての役割を演じ、人々を焚き付ける。)

否と思う者は牙を向き脅威に立ち向かえ!!
諸君の大事な物を護れるのは諸君に他ならないのであれば!!



●響く歌、鬨の声
 ザリザリザリ……ザザッ、ザリザリザリ……。
 超小型端末から、規則的なノイズが響く。クークーから手渡されたものだ。
 防衛準備中ということもあり、レディオの放送は事実上の準備状態だった。
 だがロク・ザイオンは、そのノイズに心地よさげに耳を傾けている。
 なにせ彼女にとって、ノイズは相棒のトレードマークであり、福音だ。
 罅割れた声を持つ女は……だからこそ、機械的な不協和音を愛した。
 それはまるで、自分も人として生きていいのだと言われている気がしたからだ。
「クークー。キミの声は、静かで冷たい水みたいに、きれいだ」
「……あなたの声は、とても不思議。がりがりしているけれど、優しい」
 返ってきた言葉に、ロクはほのかに頬を赤らめて微笑んだ。少女も笑う。
 人形めいて感情が乏しく、しかしたしかに喜怒哀楽を備えたクークー。
 獣を怯えさせる罅割れた声を持ち、しかし人であろうとするロク。
 どこか対象的な少女と森番には、一種のシンパシーがあった。
「ひとは、したいことをする。みんな、キミの声を聴きたいから、聴いてる。
 おれも、そうしたい。キミが、"さよなら"をしなくて済むように」
「……うん」
 頷いて、クークーはロクとともに彼女の相棒の姿を見やった。
 拠点の人々の前に立つ、ジャガーノート・ジャックの姿を。

《――耐え忍ぶ民らよ!!》
 クークーの呼びかけで集められた人々に対し、ジャガーノートは呼びかける。
《――いまこの地に、脅威が迫っている。それは諸君の知るところだろう》
 それは彼なりの"演技(ロールプレイ)"だ。理想的な演説者という役割。
 ならば、それは偽りなのか? ……否。演技とはただの虚飾ではない。
 ロクは言った。"ひとは、したいことをする"。それはジャガーノートも同じだ。
 彼はそうしたいと思った。それゆえに、彼なりに出来ることをした。
 それが、役割を演じるという選択肢。弱気な少年なりの戦い方。
 ゆえにもはや、ジャガーノートはその鋼の豹たる異形を隠すことはない。
 相棒が、その声を誇るように。怪訝な眼で見られようとも。
《――じき、死者の群れがここを訪れ、諸君らを喰らい尽くそうとするだろう》
 人々は彼の言葉に耳を傾ける。熱狂的な役割のせいもある。
 しかし、希望の放送に耳を傾けてきた人々は、無意識に感じ取ったのだ。
 鎧の下の少年の、"そうしたい"というひたむきな心を。
《――そしてこの地に与えられた"繋がり"と希望をも、平たく食い尽くすため》
 人々の沈黙が、ジャガーノートの言葉を促す。
《――諸君は、それをよしとするか!!》
「そんなわけがない!」
「俺たちだって、死んでたまるか!」
 誰かが答えた。ジャガーノートは頷き、続けた。
《――ならば、否と思う者は戦え》
 誰もが息を呑む。
《――牙を剥き、脅威に立ち向かえ!!》
 猟兵はあくまで来訪者(ストレンジャー)。この地は彼らのものだ。
 だからこそ。世界を真に救いうるのは、その世界に住む人々に他ならぬ。
 ジャガーノートはそれを識っている。これまでの戦いで見てきたのだから。
《――諸君らの大事な物を守れるのは、諸君らに他ならないのだ!!》
「応!」
「俺たちも、やれるところを見せてやる!」
「あんたたちだけに頼ってられるかよ!」
 人々の声は、やがて鬨の声となり、轟くように響き渡った。
 ジャガーノートは人々を見渡し、重々しく頷く……。

「……ジャックも、守る。だからおれも、みんなと一緒にキミたちを守る」
 ロクは相棒の姿に微笑んで、改めてクークーに言った。
「クークーは、どうしたい。キミの"したいこと"は、なんだ」
「……ワタシも」
 少女は女のまなざしにまっすぐと応えて、言った。
「一緒に戦いたい。あなたたちと。みんなと一緒に。生きるために」
 もはや憂いはなかった。戦いのときが近づいている。
 人々の魂は、生きることを望んでいる――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ヒルデガルト・アオスライセン
貴女達の築いた
ささやかでも確かな紐帯が傷つき、崩壊する様が
歌声を受け入れ護ろうとした聴衆が生気を失い、屍人のうねりを象るその道行が
怨嗟の声が恐ろしいですか

死の囀りに身が竦むなら
憩いを重ねた心の末路を愁えるならば
その恐怖は私達が押し止めます
今ここで共に暗黒の時代を終わらせましょう

声を愛した者は守ると宣言

(逃げ続けの私が言えた立場ではないのですが)

クロークは地下をトンネル掘りで情報収集
聖水+魔除け香水+塩で簡易結界、土壌浄化
防衛地点の地中からの侵攻阻害

水源で聖水瓶量産。護身用に住民配布

手薄な防衛線、避難所に絞り
前線に落し穴&UCで底なし沼形成。注意伝達
破魔・オーラ・拠点防御で防壁を張って堅牢度増強



●かくて戦いの狼煙はあがる
 日が沈みつつあった。
 拠点の周囲には鉄壁のバリケードが構築され、トラップの数々と銃口が並ぶ。
 水も漏らさぬ防備。一切の命を奪わせぬための猟兵たちの努力の結晶。
「聞こえますか」
 立ち並ぶ人々とクークーに背中を向けた少女が云う。
 ヒルデガルト・アオスライセンは、逆光の中で言葉を続けた。
「あなたたちの築いた、ささやかでも確かな紐帯を傷つけようとする者ども。
 すべてを崩壊させようとする屍人のうねり。それを象る道行が、怨嗟の声が」
 誰もが息を呑む。地平線の彼方、夕焼けの向こうから来たるものども。
 死霊の群れ。オブリビオンストームに引き裂かれた人間たちの末路。
 この世界において推奨されるのは火葬。屍体を遺してはならぬよう禁律。
 そこからも見捨てられた――あるいは葬られることのなかった――者たち。
 生者を貪ろうとする悪意。その数は数百、否、あるいは……。
「死の囀りに身が竦むならば、あるいは憩いを重ねた心の末路を愁えるならば。
 その恐怖は私達が押し止めましょう。今ここで暗黒の時代を終わらせましょう」
 ヒルデガルトは水瓶を擲った。ガラスが割れ、清浄なる水が塹壕を浄める。
 かぐわしき魔除けの香が、彼方から漂う死臭を押し返す。
「――あなたたちは、あなたたちを鼓舞した声を愛しますか」
 聖女は問うた。人々はそれぞれの武器を振り上げて応えた。
 ヒルデガルトは頷き、クークーを見つめた。
「あなたは、人々を愛しますか。あなたが護ろうとした人々を」
「……わからない。ワタシは、ただ繋がりを届けたくて、旅していたから」
 でも、と少女は続ける。
「ワタシはもう、あなたたちの言葉で気付いたの。自分のやるべきことを。
 ……だから、もうひとりで戦ったりしない。みんなと一緒に、未来が欲しい」
「いいでしょう」
 屍人どもが来たる。夕焼けの彼方、虚無の暗黒をもたらすために。
 この戦いは小さきものだ。この滅びかけた世界ではあまりにも些末。
 たとえ勝利したところで大勢は変わるまい。決定的な凱旋とはなるまい。
(だからなんだというのです)
 少女はさだめから逃れた。否、逃れ続けている。
 "いま"が続いている。それを神のために棄てるなどもってのほか。
(私は挑む。忌まわしい運命から逃れ続けるために)
 ならばそれは紛れもなく、勇猛なる挑戦だ。
「日が落ちます。屍人どもは涎を垂らして呻き声をあげ、獲物を求めるでしょう。
 戦いなさい。戦いましょう。私たちと共に。皆ともに――生きるために」
 人々は頷いた。かくて戦いの狼煙はあがる。
 生きるために。夕暮れ時の戦いが、幕を開けようとしていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『ゾンビの群れ』

POW   :    ゾンビの行進
【掴みかかる無数の手】が命中した対象に対し、高威力高命中の【噛みつき】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD   :    突然のゾンビ襲来
【敵の背後から新たなゾンビ】が現れ、協力してくれる。それは、自身からレベルの二乗m半径の範囲を移動できる。
WIZ   :    這い寄るゾンビ
【小柄な地を這うゾンビ】を召喚する。それは極めて発見され難く、自身と五感を共有し、指定した対象を追跡する。

イラスト:カス

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

●フロム・ダスク・ティル……
 アポカリプスヘルにおいて、土葬や水葬の類は決して認められていない。
 宗教上の自由に目を向けられるほど、この世界に余裕はないのだ。
 屍体を放っておけば、あの災いの嵐がそれをゾンビに変える。
 歩く異形。命なき者。ありふれた怪異。されどけして赦してはならぬモノ。
 屍人が来たる。数百を超える屍人の群れが、来たる。
 命を刈り取るために。奪われるべきでない平穏を引き裂くために。
『――――!!!』
 ひときわ巨大なる異形が、吼えた。
 あまりにもおぞましき存在。死をこねくり回した巨人こそがその頭目。
 腐り果てた異形どもが来る。あいにくと奴らはフィクションの存在ではない。
 腕をまっすぐ伸ばしてのろのろやってくるような手合ではない。
 錆びた武器を手に、屍人ゆえの非常識な速度と膂力を振るってやってくる。
 さあ武器を取れ。火を絶やすな。生きることを諦めるな。
「――戦おう。みんないっしょに。ワタシも、戦うから」
 クークーは呼びかける。レディオの時間にはまだ早い。
 それは別れを告げるためではなく、生きるために流すべきものなのだから。
 日が落ちる。夕焼けが大地を染めて、じきに夜が来るだろう。
 さあ、来たぞ。屍人の群れが到達した。枯れた泉の命を刈り取るために。

 銃を構えろ。
 髪の毛も、指も、骨も、神経も、心を凍らせて引き裂き殺せ。
 屍人が来る。夕焼けの彼方から、哀しみなき亡者どもが、来る。

●第一章リザルト
 皆さんの説得により、クークーは拠点を去ることなく戦いを決意しました。
 彼女はたった独りでゾンビに立ち向かう無謀な選択をしかけていたのです。
 また、堅実な防御陣地構築により、拠点および非戦闘員の安全も保証されました。
 戦える人々は、後方から銃器などによる援護射撃を行い皆さんを支援します。
 敵は大量のゾンビです。複数の集団があちこちの方角からやってくるでしょう。
 殲滅が十分でなかった場合、ボス敵が強化されます(判定が少し厳しめに)
 確実にぶっちらばして燃やしましょう。では、ご武運を!
ゼイル・パックルード
こんな世界で自己犠牲をやろうとするなんざ人が良すぎるな、それも勝ち目なんてほぼないってのに。ま、そういうのは嫌いじゃないがね。

殲滅には鉄塊剣と、新しい技でも使わせてもらうとするか。
薙ぎ払いで斬り裂いた敵を延焼させて、周りの地面と屍人どもにも燃え移させる。
鉄塊剣のリーチなら相手の手もそう届きはしないだろう。

そういう風に基本俺は前に出てどんどん敵を狩っていく。
討ち損ねとかは気にしない。街を守るのは住んでる奴らの役目だろうし、他の猟兵もいるだろうしな。
夜で暗いだろうが、炎で目標は分かりやすくしてやるさ。この世界で暮らしてるならまるっきり素人ってわけじゃないだろうし

―――死者如きにやらせるには勿体ない


アルマ・キサラギ
おーおー、おいでなすったわね
世界を救うのが特技です、なんて大見得張った手前、カッコ悪いトコは見せらんないわ
派手に行こうじゃないの

景気づけにレッドラムの榴弾を叩き込んで、それを追いかけるように早駆術で突撃
二丁拳銃に持ち替えて、ツヴァイの出力を上げてアインスのような威力重視に調整
ラグナデバイスで周辺の【情報収集】をして視界を補強しつつ、
爆発で起きた土煙に紛れてバレットアーツで一気に周りの敵に銃弾の嵐を浴びせてやるわ!

土煙が晴れる前に、置き土産にスマートボムを放って早駆術で離脱
そしてまた突撃の繰り返し
撃って、倒して、吹っ飛ばす
持ってる銃火器をフルに使って、徹底的に殲滅させてもらうわよ



●M.U.R.D.E.R
 ……KRA-TOOOOOM!!
 火蓋を切って落としたのは、アルマ・キサラギが撃ち出した榴弾の爆音だった。
 突撃するゾンビ集団の最前列に炸裂した爆炎が、死体をバラバラに吹き飛ばす。
 噴煙の向こうから、文字通り屍を踏み越えて現れる後続の屍人ども。
 同個体への思いやりだの、敵への義憤だの、そんな人間らしい感情はない。
 なにせ奴らは脳の根っこまで腐り落ちた、動く死体に過ぎないのだから。
「向かってくるってのは楽でいいわね、狙いをつける必要もなさそうだわ!」
 榴弾を叩き込んだと同時にバリケードを蹴って疾走していたアルマは、
 スプリント状態のまま二丁拳銃を抜き放ち、迫る屍人どもの脳天を吹き飛ばす。
 BLAMN、BLAMN! 丁寧なヘッドショットだ。腐った脳漿が荒野に飛び散った。
 一瞬のリロードで隙を殺し、土煙に紛れるように跳躍、前転。
 殺すべき獲物を見失い、敵が隙を晒し――BLAMBLAMBLAM! 吹き荒ぶ銃弾の嵐。
 舞うような銃擊の武踏(バレットアーツ)である。さすがは手練の銃士か。
「腐った目玉でも見えはするのかしらね? 鼻が利かないのはなによりだわ。
 ――置き土産、受け取って頂戴。どうせなら派手に死にたいでしょう?」
 背後から飛びかかってきたゾンビを振り返り、女はにこりと皮肉げに笑った。
 掌からこぼれ落ちたのは円筒手榴弾(スマートボム)である――KBAM!!
 視界を灼く強烈な閃光と爆音。顔を掻き毟るゾンビの頭部がスイカめいて破砕。
 そのときにはすでに、アルマは次の榴弾を撃ち出し、疾走していた。

 "この世界らしい"銃撃戦と並ぶように走るのは、ゼイル・パックルードである。
 しかし彼は銃など使わない。振るうのは巨大な鉄塊――いや、鉄塊剣だ。
 常人では持ち上げることすら不可能なその質量を、ゼイルは軽々と振るう。
 疾走速度を載せて小さく跳躍、空中で身をひねり、バネを解き放つ。
 瞬間、旋風が生まれた。周囲のゾンビ五体がバラバラに引き裂かれ飛び散る。
「死んでまで無様を晒すってのはぞっとしないね。燃え尽きちまえよ」
 言葉通り、四散した残骸はひとりでに燃え上がり、地獄の炎を生み出した。
 それは大地を焦がし、ひいては残骸を浴びた別のゾンビにすら延焼する。
 いわば、斬り捨てた敵が一種の散弾となるのだ。屍人に相応な一石二鳥の剣技。
 彼なりに編み出した新たな術式である。鉄塊剣のリーチが敵の反撃を妨げる。
 そしてなにより、ゼイルは止まることも振り返ることもなかった。
 アルマの戦いともっとも異なる点があるとすれば、そこだろう。
 彼女は丁寧に周囲の敵を撹乱し、殲滅して安全地帯を少しずつ広げているが、
 ゼイルは逆。脇目もふらず、敵のど真ん中へと矢のように突っ込むのだ。
 彼ほどの腕前をもってすれば撃ち漏らしなど存在しない――が、
 そもそもゼイルは、撃ち漏らした敵の存在を(あったとして)考慮していない。
 仮に自分が突破され、後方に敵が到達したとしても、振り返ることはないのだ。
 よくも悪くもスタンドアローンな、それでいて前のめりな戦いであった。

 はたして、銃兵と剣士の進軍は、並走から交錯へと至った。
 "レッドラム"から放たれた榴弾が大地を抉り飛ばし、土煙をもたらす。
 ふたりの戦士がそこへ飛び込み、殺戮の嵐を起こして飛び出した。
 遺るのは残骸だけだ。めらめらと燃える死骸のそれは、篝火めいている。
「ずいぶんぶっきらぼうに戦うのね。拠点のことは考えないのかしら?」
 と、アルマがリロードしながら問うた。特にこれといった意識はない、
 たとえるなら手慰みにおもちゃをいじるような、世間話めいた声音である。
「どうでもいいね。あいつらだって素人じゃないだろうさ」
「ふうん」
 ゼイルの言葉に対し、やはりアルマは納得したようなそうでないような、
 曖昧な吐息を漏らした。ある意味で、彼女も同じ考えだったからだ。
「まあ、そうね。あたしたちがやれることなんて、結局のところ――」
 BLAMN!! 背後から忍び寄っていたゾンビの上半身を吹き飛ばす。
「こうやって殺して壊して、道を開いてあげるぐらいなんだし?」
「自分たちの住処が守りたいなら、あいつらが好きにやりゃいい」
 さもありなん。最終的に、この戦いを乗り越えたあとは彼ら次第なのだから。
 猟兵に出来ることは、敵を殲滅しその一助を担うことである。
 そのための武器を彼らは持ち、そのための技術を彼女らは持っている。
「なら、派手に行くとしましょうか。カッコ悪いトコは見せらんないわ」
「死者如きにやらせるにゃ、勿体ないしな」
 会話はソレで終わり。再び弾丸の嵐が吹きすさび、刃と炎が屍人を焼き払う。
 死せざる死に囚われた屍人たちに、あるべき終わりを齎すために。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

レパル・リオン
ゾンビ怪人軍団…!凄い勢いで走ってくるけど、パワーはそれほどでも…いや、あなどれない!
しかもそれ以上に!数が!多いわ!!

でも、逃げるわけには…!
…すーーっ………
…はーーーっ………(深呼吸)
…よっしゃ!行くわよ!

【転衣召還】!馬のスピードと炎の力を持つ、『バーニングサラブレッド』フォームに変身よ!
とにかくゾンビ怪人軍団のまっただ中を走り抜けて、燃やして燃やして燃やしまくるわ!
そんな感じで暴れ回るから、援護射撃バリバリちょうだい!大丈夫、銃弾くらいならよけられるし、当たっても燃やしてみせるわ!

いい頃合で大ジャンプ!とどめの【虎狼竜・神風脚】をゾンビ怪人軍団に叩き込み、炎の大爆発で焼き尽くすわよ!


エドゥアルト・ルーデル
汚物は消毒せねばならんでござるな!

あちこちからくるゾンビが相手となればまとめて吹っ飛ばせる火力を持ち足の速い機体がいいでござるね
【軍用機】召喚!今回は攻撃ヘリですぞ!
当然【操縦】は自前、今回は上空からの対地攻撃メインでござる

ゾンビは焼かれて死ぬべきだ。また機銃、対地ロケット、ありとあらゆる火器がゾンビ共を地獄の炎(ヘルファイア対戦車ミサイル)に投げ込むものである。

粗方焼き付くした辺りでなんかが背後で暴れてるでござるな
…オイオイオイ居るわ後部座席に【
ゾンビ】
うおっ急にすげぇ空間識失調…墜落かな?これ絶対カプコンヘリでござるよ
墜落前に脱出、以後銃撃で【なぎ払い】つつ残敵掃討して帰還ですぞ!


アンコ・パッフェルベル
わたしはアンコちゃんですけど今はベンチ代わりになってた野ざらしのソファで寛いでるんですよね。
でもゾンビの数ちょっと多くないです?
得物片手に特売のお肉でも買いに来ましたって速度なのもずるくないです?
まあわたしはアンコちゃんなのでかわいくやっつけるですけど。
行くですよ白狼!

敵のユベコで迷惑を掛けないよう陣地の外、
援護射撃が届く範囲で遊撃です。
背中を白狼に任せ自在鞭を怪力ぶんぶん。
威力と射程の暴力は如何です!ついでに屈伸煽り。
おっと白狼ありがとです!背後にゾンビが召喚されたら、
怪力ロープワークゾンビ投げですおらー!

まだまだです!サラマンダー!
呼んだ精霊を黎明剣で吸収付与!
炎属性開放斬りで一掃です!


数宮・多喜
【アドリブ改変・連携大歓迎】

おいでなすったな!
奴らも元は犠牲者だったんだろうけど、
こうしてお仲間を増やそうとするのはいただけないね。
ま、終わった後にゃ墓碑でも立てて鎮めてみるかぁ!?

カブとアタシなら、この戦線で遊撃に回りやすいだろ。
今までもずっとこの戦法を続けてきたんだ、
どんな悪路でも『操縦』するのにゃ難はないさ。
後ろに誰か『騎乗』してくれりゃ、
ウェイトも増えてありがたいね!

そしたらゾンビ共の集団へ雷光の『目潰し』を織り交ぜた
『衝撃波』を放ち、突っ込む道を切り拓く。
そのまま全速力の【サイキック・ブレイカー】で蹂躙し、
暴れに暴れまくるよ!
こちとら燃費は良好さ、『経戦能力』もそれなりなんでね!



●レイダー死すべし
 BRATATATA! BRATATATATA!! BRRRRRTTTTTT!! KA-BOOOOM!!
 鼓膜が破れそうなほどの戦争交響曲。機銃、対地弾頭、榴弾に火炎放射器。
 ありとあらゆる火器が牙を剥き、ゾンビというゾンビを吹き飛ばしていた。
 頭上を見よ。バラバラとローター音を響かせるのは、おお、攻撃ヘリである!
「汚物は消毒でござるな~! なんにしてもゾンビは焼かれて死ぬべきでござる! 軍用重火器の地獄の炎(という名の対戦車ミサイル)に投げ込むでござる!」
 そこはかとなく預言者っぽい顔になったエドゥアルト・ルーデルが叫ぶ。
 おお、なんと心地よき轟音と砲声。ハイになるのも無理はないだろう。
 ユーベルコードで生み出された空を飛ぶ軍用航空機にゾンビは為す術……いや!
「ハーハッハッハッハ! 見るでござるよ、ゴミがゾンビのようでござる!
 あれ? 逆でござるか? はて、逆といえばさきほどから後ろで物音が」
 操縦桿を握ったまま振り返るエドゥアルト。ウボァー(ガチ恋距離のゾンビ)
「オイオイオイ、死ぬわ拙者」
『ウバシャアアアアア!!』
「ギャアアアーッ!!」
 ゾンビたちは人間タワーを組んでヘリに組み付いていたのだ!
 途端に操縦が失われ、ばらまかれる銃弾! 混乱する不審者の絶叫!
「わたしはアンコちゃんですけど、ちょっとゾンビの数が多くないです?
 得物片手に特売のお肉でも買いに来ましたって速度なのもずるくないです?」
 一方戦場の後方、なぜか野ざらしのソファでくつろぐアンコ・パッフェルベル。
「まあわたしはアンコちゃんなのでかわいくやっつけるですけど。
 それにしたって多くないです? これは高速屈伸もやむなしでは?」
「って何こんなとこでバカ言ってんだい、さっさと行くんだよ!」
 そんなアンコを叱咤して立ち上がらせたのは、数宮・多喜だった。
 彼女がまたがる宇宙カブがエンジンを唸らせる。タンデムシートは空席だ。
「歩くのが面倒ってんなら載せてやるよ。ウェイトが増えてありがたいからね!」
「わたしはアンコちゃんなのでウェイトになるほど重くないですけど、
 実際歩くのが面倒なので同席失礼するですよ! 行くですよ、白狼!」
 ひらりと後部座席に飛び乗ったアンコ、相棒の白狼はカブと並走して駆ける。
「オーライ、んじゃ行こうか。薙ぎ払ってやるよぉ!」
 向かう先は前線、そしてあの通り制御を喪った軍用ヘリのもとである。
 立ち並ぶゾンビどもを前輪で轢殺し、アンコの自在鞭が吹き飛ばし、
 文字通りちぎっては投げながら一気呵成に駆けていく。猛進だ!

 ……そんなカオス極まる戦場を前に、呆然としているキマイラの少女がいた。
「な、なによあのゾンビの数……おまけに全然スピーディじゃない……!」
 さしものレパル・リオンですら、敵の数には圧倒されざるを得なかった。
 何よりも恐ろしいのはあの機敏さだ。だが、屍人ならばある意味当然である。
 一説によれば、常人が発揮できる筋力は本来の数%でしかないという。
 あまりにも強すぎる力は、人体そのものを破壊してしまうゆえのセーフティだ。
 しかし、死体に自己保存本能はない。脳によるリミッターも存在しない。
 ゆえにこそ、奴らは非常識なパワーをスピードで獲物を追いかけるのである。
「……すーっ、はーっ、すーっ、はー……っ」
 レパルは胸に手を当てて深呼吸した。動悸を抑え、平静を取り戻す。
 やれるのか。あの数を相手に、この共同体を守るなんてことが、自分に。
 ……違う。やらねばならないのだ。さもなくば多くの人が死ぬ。
「……行くわよ。見てなさい、ひとりだってやらせはしないんだからっ!」
 駆け出したレパルの姿が光に包まれ、直後、そのフォームが一変した。
 踏みしめる足跡は燃えるように焦げ付き、疾走する速度は駿馬のようである。
「バーニングサラブレッドフォーム……! 燃やして燃やして、燃やし尽くす!」
 燃え盛る馬の力を手に入れたレパルは高く跳躍し、魔力を解き放った。
 炎の魔弾が全周囲に飛来し、拠点に迫るゾンビどもを真上から焼き尽くす!
「わたしはアンコちゃんですけど、あのユーベルコード羨ましいです!!」
「ああもう、後ろで変なこと言うんじゃないよ! ほら、サポートしな!」
「わかってますよぅ、白狼! あの方を支援してあげてくださーいっ!」
 レパルと並走する宇宙カブの上で、多喜とアンコは言い争った。
 そしてアンコが自在鞭を振るい、火炎弾を避けようとしたゾンビを拘束。
 さらに着地際のレパルを襲おうとしていたゾンビを、白狼が噛みつき引き裂く!
「ありがと! まだまだ暴れ回るから、援護攻撃バリバリちょうだい!」
「元気でいいねぇ、けどスピードならアタシだって負けちゃいないよ?」
 多喜はレパルの言葉にニヤリと笑い、一気にスロットルを開いた。
 ゴアアオオオンッ!! と大型獣の唸り声めいたエンジン音とともに加速!
 敵のど真ん中にレパルとともに飛び込み、鋭角的ドリフトからのスピン!
 ギャリリリリッ!! とバーンナウトを刻みながら、敵を吹き飛ばす!
 速度とともに解き放たれたのは、彼女が持つサイキックエナジーの力だ!
「うおっ、急にすげぇ衝撃……墜落かな? いや自由の身でござるな!」
『ウボァアアアー(エドゥアルトの背後に迫るゾンビの呻き声)』
「この距離で脱出は無理でしょ、というわけでヘッドショットでござる!!」
 BLAMN!! 持っていたハンドガンでゾンビの頭を吹き飛ばすエドゥアルト。
 三人の攻撃によってゾンビの攻撃から逃れた彼は、そのまま操縦桿を倒し、
 半壊した軍用ヘリの角度を地上へと向ける。あえて墜落させる構えだ!
「これだからヘリは駄目でござるな! さあ盛大に吹き飛べでござるーっ!!」
 コクピットから飛び出すエドゥアルト、落下するヘリ……KA-BOOOOM!!
 すさまじい衝撃と爆発が炎を噴き上げ、周囲のゾンビを吹き飛ばした。
 その炎を切り裂いて走るのは、もちろんレパルと多喜の宇宙バイクだ!
「こんな炎、わけないわ! 他の奴らも全員、燃え尽きなさいっ!」
「わたしはアンコちゃんですけど、炎と聞いてはなぜか負けられません!
 いでよサラマンダー――さあ、黎明剣解放斬り、行くですよーっ!!」
 炎を纏ったレパルの蹴りと、火炎精霊を宿したアンコの斬撃。
 ふたつの熱源がやや遅れて地面に着弾し、再び盛大な爆炎をもたらす!
「はっはっは! こりゃまるでアクション映画だねえ、派手でいいこった!
 じゃ、まだまだ行こうじゃないか! 奴さんらもそのつもりみたいだしねぇ!」
 炎を背後にジャックナイフした多喜は、前輪でゾンビの頭を叩き潰し、
 新たにやってくる地平線の影を睨んで笑う。不敵である。それが士気を高める。
 レパルにももはや動揺はない。最期の一体まで、敵を叩き潰すのみ……!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

オルハ・オランシュ
ヨハン(f05367)と

元が人間……だめだね
こんな時に考え事しちゃうなんて
この世界では仕方のないことなんだ
目標は敵の殲滅
躊躇いなく、殺してあげる

視覚も利用するなんてさすがヨハンだね
フォローは任せておいて
敢えて敵の群れに飛び込んで【範囲攻撃】で怯ませる
ヨハンが各個撃破を狙うようなら
最も深い傷を与えられた個体に【鎧砕き】の一撃で下準備も欠かさない

彼に託した後は翼飛行で後退しつつ空中から視野を広く
地を這うゾンビを発見次第、ダガー投擲
一撃で仕留められなければ降下の勢いをつけた【2回攻撃】で追い打ち
――近寄らないで

援護してくれている人達もしっかり守りきらなくちゃね


ヨハン・グレイン
オルハさん/f00497 と

さて、この世界の屍人の群れと相対するのは初めてですね
元が人間だからと躊躇う理由になりはしない
屍体が残ると面倒とのことですし、思う存分燃やし尽くしましょうか

焔喚紅を指に嵌め、黒炎を
詠唱で紅炎を交えて視覚的な攪乱も狙っていきましょうか
まぁ屍人に目が見えているのかは識らないんですが

足止めをお願いします
動きの止まった個体に集中業火を浴びせる
数が多いのなら無駄のないように、一体ずつ確実に狙っていきます

後ろからの援護が臨めるのなら、前に出過ぎることのないように気を付けましょう
援護の届く範囲で、それ以上は進ませぬよう立つだけだ
塵も残さず消えるといい



●炎と風の歌
 屍人は来たる。どれほど灼いて切り裂こうと、次から次へと。
 それは逆説的に、このアポカリプスヘルの荒廃ぶりを示していた。
 オブリビオンストーム。世界そのものを切り裂き、オブリビオンを生み出す嵐。
 それがある限り、この世界自体が過去によって侵略されていくのである。
 不潔な環境が病毒を呼ばうように、屍人は新たな屍人を生む呼び水となる。
 迫りくる屍人の軍勢は、すなわちあの忌まわしき嵐の被害者でもあり……。
「……っ」
 感傷に囚われかけ、オルハ・オランシュは首を振った。
 今は戦うべき時だ。こんなときに、彼らのかつてに想いを馳せる余裕はない。
 死者を悼むならば、なすべきは感傷に浸ることでなく彼らを討つこと。
 呪われた生を一刻も早く終わらせ、これ以上の死を撒き散らせないことである。
「……死体はこちらで燃やし尽くします。オルハさんはどうぞ、前へ」
 そんなオルハに対し、ヨハン・グレインはぶっきらぼうに言った。
 傍目から見れば彼の声音は冷徹で、彼女を叱るようにも聞こえたかもしれない。
 だがその実、ヨハンは彼なりにオルハのことを慮っているのだ。
 汚い仕事は己が請け負う。だから気にすることなく戦えと、不器用ではあるが、
 彼なりの真摯さで言葉にしただけである。オルハにも、それはわかっていた。
「……ありがとう、ヨハン。なら、行くよっ!」
 オルハは頷き、ばさりと翼を広げ前に出た。敵の群れの渦中へと飛び込む。
 危険な試みである。相手は常人では不可能な膂力と速度で敵を襲うのだ。
 ましてやゾンビ! 本能に支配された奴らは天然の連携で獲物を取り囲む。
 しかしオルハは着地寸前にぐるりと二回転し、地面に三叉矛を突き刺した!
 突き刺さった地点からぐわっと巨大な魔法陣が広がり、風を逆巻かせる。
 竜巻じみた暴風が敵を吹き飛ばす――ヨハンの視線は空へ!
「せめて苦しまないように一撃で仕留めますよ。痛みがあるか知りませんが」
 ぱちん、というフィンガースナップ。同時に、焔を呼ばう紅指輪が輝く。
 直後虚空に迸ったのは、墨で染めたような漆黒の闇焔であった。
 光を産まない闇の焔はマイナスの熱量を持ち、屍人を囚えて焼き尽くす。
 仮にゾンビどもに魔術への備えがあったところで無意味だっただろう。
 ネガティブエネルギーの塊である黒炎は、いかなる防壁も無力化するからだ。
 ヨハンは片手を空中へ向け、もう片方の手を地上の敵の群れに差し向けた。
 指先から生まれたのは対照的な紅色の炎。それは陽炎をもたらし視覚を乱す。
「オルハさん、もう一度足止めをお願いできますか」
「了解――さあ、こっちにおいで、私が相手だよっ!」
 オルハは再び翼をはためかせ、死骸の灼かれた空へ急上昇する。
 置き土産とばかりにダガーの雨を降らせ、避けそこねたゾンビを大地に拘束。
 回避した目ざといゾンビめがけ、急滑空して落下しウェイカトリアイナの刺突。
 さながら猛禽じみた急制動、体にかかる負担も相応ではあるが……。
「これ以上、生きようとしている人たちのもとに――近寄らないで」
 その双眸は狩人のそれ、生命を奪う暗殺者としての冷静なものだった。
 串刺しにしたゾンビをぶん、と吹き飛ばし、敵の群れを足止めする。
 そしてそこをめがけ、膨れ上がった闇の炎が降り落ちる――着弾、爆裂!
「この調子で仕留めていきましょう。後を残さないのが大事です」
「うん。……大丈夫、もう迷わないから。私だって、猟兵だからね」
 ヨハンの視線を見返し、オルハは頷く。少年はそれについて何も言わなかった。
 なすべきは殲滅。そのために鍛え上げた力を、魔術を彼は練り上げる。
 それこそが、愛する人を手助けする最善の方法であると信じて。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

リル・ルリ
🐟櫻沫
アドリブ歓迎

あれがぞんび?
わらわらいると気持ち悪いな……変なの食べないでよ?
むう……あんなのを愛するなんて、やめてよね
クークーとも約束したんだ
しっかり務めるよ

櫻宵に掴まり舞い上がり、彼守る為に水泡のオーラ防御で包み込む
ここまで攻撃が飛んでくるかもだもの
守るよ

歌う歌う
桜龍への鼓舞をのせて
蛇に睨まれた屍ってこと?
君の翼に桜が咲けば少しだけわくのは嫉妬心
こんなのが櫻宵の桜になるなんてさ
歌う「月の歌」
傷を癒して、君の才能を引き出してあげるから
全部、斬ってしまってよ

本当、楽しそうだよね
楽しげに斬ってまわる櫻は活き活きとして美しくて
荒野に美しい桜が咲くのも悪くない
君が舞う舞台は
ちゃんと僕が守るから


誘名・櫻宵
🌸櫻沫
アドリブ歓迎

沢山の屍人!壮観だわ
醜く崩れた姿もまた美しいわ
…不味いのが玉に瑕
愛して愛して愛(殺)してあげる

リル抱えて空中戦で空へ
群れを見下ろし空から呪殺弾の豪雨を衝撃波と共に降らせまとめて屠るわ
あとはこの瞳で睨めればいい
大蛇は睨むものよ?
「喰華」で喰らって私の翼彩る桜にするわ
真っ赤な夕焼けに相応しく美しく花葬し祓ってあげる
リルの歌が力をくれる
なんだってできるわ!

やっぱりこれでは物足りないわね
攻撃見切り躱し
カウンターのように破魔のせた衝撃波でなぎはらう
肉を断つのが楽しいわ
首を刎ねるのは至福だわ!
斬撃に生命力吸収をのせ体力を補い剣舞を舞う

睨んで斬って散らして
花が咲く
幾らだって殺してあげる!


千桜・エリシャ
屍人一人程度なら御するのも容易い
けれど集団ともなればまた話は違ってくる
これを一人で対処しようとしていたなんて…
あまりにも無謀
ですが
私はその“強さ”を讃えたい
私、強い人は好きですから

強敵と戦うのも愉しいですけれども
護りながら戦うことも難しくて面白い
屍人の首を刎ねたなら
花咲かぬ地に舞う桜
屠った先から手駒に変えて操って
味方を増やして行きましょう
倒せば倒すほど戦える手駒は増える
芋蔓式に数を増やして屍人共の数を減らして行きましょう
ふふ、この世界は死霊術と相性がいいみたい
クークーさんに危害が及ぶなら
手駒に守らせるか
花時雨を開きオーラ防御

…こんな血染めの花でなく
いつかこの世界にも本物の花が咲くといいですわね



●桜の花は屍体に根を這い咲き誇る
「屍人がたくさんねぇ! これだけの数がいると壮観だわ。醜いけれど綺麗……」
「……わらわら気持ち悪い群れにしか見えないよ。食べたりしないでね?」
 戦場を睥睨する空。抱きかかえられたリル・ルリは誘名・櫻宵に云う。
 恋人の言葉に、櫻宵は苦笑めいた表情を浮かべて「大丈夫よぅ」と応じた。
「だってあいつら不味いもの――それだけが玉に瑕ね」
「うん。だから早く、蹴散らしちゃおう。クークーとも約束したんだから」
 人魚が言えば櫻宵は改めて首肯して、片手で彼の体を抱えながら刃を振るう。
 静脈血めいた真紅の大刀が虚空を撫でれば、剣戟の軌跡が空中に焼き付く。
 それはじわじわと動脈血のように黒ずんで……呪殺の雨となって戦場に降った。
 雨あられとはまさにこのことか。逃れようのない呪殺弾の豪雨。
 生者の血を求め拠点へとまっすぐに疾走していたゾンビが、融けていく。
 ぶすぶすと煙をあげて大地へと崩れ塵に変わる様は、どこか無情であった。
「噫。あたしを、リルを、どうか綺麗に咲かせてちょうだい!」
 大きく見開かれた櫻宵の瞳孔が縦に裂け、龍のそれとなって敵を睨んだ。
 蠱惑の龍眼の凝視は、それ自体が力を持つ一種の呪い、心蕩かす魔眼である。
 呪殺弾の威力にかろうじて耐えたゾンビは、その眼差しに震えて蠕動した。
 やがてその体がほつれ、麗しい桜の花びらに変じてうず高く積み上がる。
「こんなのが櫻の翼に咲き誇るなんて――むう」
 抱えられたリルは、屍人たちへの少しの嫉妬に唇を尖らせながら、
 うたかたの障壁によってその身と恋人を守りつつ、高らかに歌う。
 響き渡るのは"月の歌(ルナティック)"。狂惑を以て魔力を研ぎ澄ます幽玄の詩。
 それはいわば、屍人たちを融かす龍を称えた歌だ。
 声音は甘やかに脳髄を撫で、心のタガを剥がしてさらなる力を引き出す。
 櫻宵は耳朶をその幸福に浸らせて、高らかに笑いながら翼を大きく大きく広げた。
 木龍の翼に萌え息吹くのは桜の花――その花弁は、死を苗床に燃え上がる。

「……すごい」
 その美しくもどこかぞっとするような光景を、クークーは呆然と見ていた。
 見惚れるしかない。圧倒的な力量に、自己犠牲しようとした己を恥じるほどだ。
 それほどまでに、猟兵である彼らと彼女の間には、埋めがたい差があった。
「あら、すごいのはあなただってそうでしょう?」
 そんなクークーに対して微笑みを向けたのは、千桜・エリシャである。
「え? ……ワタシが?」
「あなたは無謀でも、誰かのために戦おうとした。私はその"強さ"を讃えますわ」
 殺すために殺し、悦楽のために斬る呪われた羅刹の身では決して出来ぬこと。
 同時に彼女は識っている。守るために戦うものが引き出せる種類の違う強さを。
 ゆえにエリシャの声音には、幾ばくかの憧憬めいたものが籠もっていた。
「私、強い人は好きですもの。だから――私もその流儀に倣おうかと思いますわ」
 しゃらりと愛刀を抜き放ち、エリシャは踏み出す。散歩のように気軽な足取り。
 この世と彼方の狭間をたゆたう魂のように、玄妙なる後ろ姿を見せつける。
「どうせ咲き誇るなら、桜の花は多いほうがよいでしょう?」
 振り返り言った直後、彼女の姿がクークーの視界からかき消えた。

 そしてほぼ同時に、目前に迫っていたゾンビの首がずるりと刎ね飛ばされる。
 神速の斬撃。彼女は挑むように頭上のふたりを見上げ、また地を蹴る。
 ひとつ、またひとつ。踊るような刃には、屍人への慚愧や躊躇はなかった。
 桜花と胡蝶を引き連れてくるくるステップを踏むさまは、嫣然として輝く。
 恐るべきことに、切り伏せられた首なしの屍体はぶるりと痙攣すると、
 力強く起き上がって彼女のあとに続くのだ。"百華夜行(ヘッドレス・マーチ)"。
「ふふ、この世界は私の死霊術(ちから)と相性がいいみたいですわね――」
 敵を斬れば斬るだけ、エリシャが引き連れる屍人の軍勢は増えていく。
 奴らが引き裂いた獲物を仲間に引き込むならば、その逆もあり得るだろう。
 華麗なる血染めの花。その嵐の中に、リルと櫻宵が降り立つ。
「楽しそうね。あたしもご一緒してもいいかしら?」
「もちろんですわ、首を刎ねるのは誰だって楽しいでしょう」
 櫻宵とエリシャは、同類の笑みを浮かべた。そして龍もまた地を走る。
 翼をはためかせ、人魚の歌を追い風として競うように刃を振るう。
 斬撃の生み出す衝撃が敵をバラバラに切り裂き、首をずるりと削ぎ落とす。
「さあおいでなさい、いくらでも殺(あい)してあげるわ! さあ――!」
「まったく、ふたりして楽しそうにしちゃってさ……いいけど」
 相変わらずふてくされながらも、リルはオルゴールのように規則的に歌った。
 正気をかき乱し、狂わせ、惑わす月の歌。月光が輝くにはまだ早いけれど。
 昼と夜の境界線、逢魔が時に鬼と龍が舞い踊り、首という首を斬り落とす。
 それを急かす歌声は、鬼神たちの囁き声めいてこの世のものとは思えなかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

マリークロード・バトルゥール
アラン(f19285)を伴に
生者として彼らに敗北する事は許されません
わたくしも策の一手と為りましょう

囮として彼等が襲い易そうな≪演技≫をするわ
弱々しい獲物として振舞い多数を≪魅了≫しましょう
≪聞き耳≫立て警戒しつつ敵から付かず離れずを保ち、
≪フェイント≫や≪見切り≫交え逃げ惑うフリをして誘導するの
時折、抵抗する仕草で関節を≪部位破壊≫し動きを鈍らせておきましょ

わたくしの騎士、あとはお願いね
数を引き連れ駆けてはアランへと彼らを託す
刹那、氷刃に貫かれた屍人らを横目に「俺」は視線を伏した
――せめて人として屠ってやりたかったな
らしくない感傷は一瞬
「姫」は背を正して騎士を労い再び戦場を駆けるべく刃を握る


アラン・サリュドュロワ
マリークロード(f19286)と
こんなに元気な死人はなかなかお目にかかれませんね
では我々も生きる努力を致しましょう
殿下──いや、クロード
余計なことは考えないことだ、役目を果たせ

主と一旦別れ、迫る手を《なぎ払い》で捌く
ときに《属性攻撃》で氷の障壁を張り防ぎながら移動
時折大地を槍で抉り、大きな円を描くようにして所定に付き
主の引き連れたものも纏めて引き継ぐ

ご苦労様でした、殿下
お任せを──ジゼル

斧槍を振り上げれば幾本もの氷柱が地から湧く
それは移動中、地に埋めた氷刃を成長させたもの
氷で灼かれるのは初めてだろう?
内部まで凍てついた岩は、自重で崩壊し砂となる
槍の姿のまま竜が咆哮し、牢獄へ氷の刃を降り注がせる



●仮面の下の真実
「はあ、はあ、はあ……っ」
 息をせき切らせて、艶やかな金髪のエルフの少女が走っている。
 だが不幸にも、小さな裂け目に躓いてしまい、勢いよく転んでしまった。
「あうっ! ……痛っ」
 足をくじいたか、足首を抑えて顔をしかめる少女。
 しかしその表情も、すぐに絶望と恐怖のそれに変じ、かたかたと震える。
 ……屍人どもの生臭い吐息。気がつけば周囲を取り囲まれていた。
「い、いや……」
 身を守るすべもないのか、少女は眦に涙を浮かべながら頭を振る。
 相手が下衆な野盗の類であれば、なけなしの慈悲を引き出したかもしれない。
 されど、相手は屍人だ。脳髄まで腐りきった、嵐に引き裂かれた成れの果て。
 慈悲も憐憫も、容赦もありはしない。あるのはただ本能。絶対的な飢え。
 ――暖かい肉を齧り、血を啜りたいという、動物的な欲求である。
「こ、来ないで! お願い、来ないで……っ」
 少女は震えながら言う。それは威嚇というよりほとんど懇願だ。
 むべなるかな、屍人は聞き入れる仕草すらなく、そして彼女に飛びかかり――。

「ご苦労さまでした。殿下」
 ぱきん、という澄んだ音が響いた。地の底から。
 見れば大地から逆巻くように突き出したのは、いくつもの氷柱である。
 槍の穂先めいた鋭い氷柱は、狙い過たずゾンビどもの手足を貫いていた。
 少女を中心として馬防柵めいて突き立ったそれは、まるで氷の花弁のようだ。
「ジゼル。君の氷を少し借りるよ――さあ、氷に灼かれてしまうがいい」
 一閃。重々しい斧槍の質量すらも感じさせぬ槍捌き。容赦ない薙ぎ払い。
 氷柱が音を立てて我割れ、それに貫かれていたゾンビどもも同じようになった。
 そして少女の傍らに降り立ったのは――然り、アラン・サリュドュロワである。
「さすがはわたくしの騎士。ナイスタイミングでしたわ」
「恐れ入ります。然らば、後片付けと参りましょう」
 アランの言葉に頷き、少女――マリークロード・バトルゥールが立ち上がる。
 先程までの怯えはどこへやら、別人のように堂々たる凛とした表情で。
 ……言うまでもなく、先ほどの振る舞いはすべて彼の演技であった。
 自ら囮となって無力な生者を装い、ゾンビどもを引きつけるという作戦だ。
 敵が十分に集まったところで、別行動を取っていたアランが殲滅する手はず。
 見れば周囲には、巨大な氷の障壁が張り巡らされていた。
 それは誘い込まれた敵を逃さない壁であり、介入を防ぐ境目でもある。
「さて、残りもじきにやってくるでしょう。始末はすぐに……殿下?」
 槍を構えるアランは、ちらりとマリークロードをみやり、顔を顰めた。
 貴女の横顔は、死者の無念を悼むような少年のものになっていたからだ。
「……クロード」
「!」
 アランの言葉に、マリークロードは我に返り、表情を引き締めて彼を見る。
「余計なことは考えないほうがいい。役目を果たせ」
「……わかってるよ」
 少年はらしくもない感傷を垣間見せ、瞼を伏せた。
 しかし素顔はそれで終わり。目を開けば、そこにいたのは凛とした乙女である。
「生者として、彼らに敗北することは許されない。そうでしょう?」
「――ええ。我が身は殿下の矛として、屍人どもを狩り尽くしましょう」
「それでいいわ、アラン。さあ、来ますわよ」
 壁にせき止められた屍人どもが、生々しい血の匂いを感じてここへ来る。
 立ちはだかるようにアランは前に出て、ジゼルを振り上げ、大地を叩いた。
 矛が震えて龍めいた咆哮を轟かせ――砂を巻き上げ氷の刃を降らせる!
(…………。らしくもないな、俺としたことが)
 その後ろでマリークロードは頭を振って、今度こそ感傷を捨て去る。
 人として屠ってやるなど、この戦場には無用の慚愧である。
 彼もまた自らの刃を振るい、逃げ惑う屍人どもの手足を切り裂くのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

出水宮・カガリ
【壁槍】まる(f09171)と

住人まで、危険な戦いに臨むのは
ひとを安全な壁の内に囲っておきたいカガリとしては、思うところが無いではないが
…今は、外の敵が優先、だな

拠点の外の一角で、まると共に迎え撃とう
大きなのはまるに仕留めてもらう
目に見えにくい小さなものは、カガリの【追想城壁】で阻もう
【鉄門扉の盾】を打ち立てて、城壁を築く
存在だけで、脅威となる異物
カガリの壁から、即刻立ち退くがいい
お前は、カガリが守るべきひとでは、ない

万が一にも拠点への侵入が無いよう、【籠絡の鉄柵】を大型化させて拠点の壁としよう
【不落の傷跡】が、屍人相手に陥落するものか


マレーク・グランシャール
【壁槍】カガリ(f04556)と

クークーの協力で概ね避難は完了、これから屍人どもを迎え討つ!

気を付けるべきは屍人の速度と、敵が放つ刺客
地を這う刺客の発見は困難を極めるが、カガリの【追想城壁】ならば刺客は封じ込めてくれるだろう
ならば俺は屍人どもの方を討ち取るまでだ

【大地晩鐘】を成就し大地から無数の槍を屹立させ、敵を足止めの試みる
それでも逃れるのなら地竜の顎を噛み付かせよう
ユーベルコードで襲撃者を留めたらダッシュ
敵の目をフェイントと残像を駆使して欺き接近
神・霊・魔に特攻する【山祇神槍】のランスチャージで一体ずつ討ち取っていくさ

カガリと俺が守るこの一角、ここから先へは行かせない
防衛ラインを死守するぞ



●何者をも通さぬために
 ガ、ガ、ガガガガガ――ッ!
 轟音とともに、パイルバンカーめいた無数の鉄杭が大地を穿つ。
 それらを結節点として浮かび上がるのは、蜃気楼めいた城壁の幻影だった。
 中央に位置する鉄門扉を盾のように構えるのは、出水宮・カガリである。
 ずしん! と大地に盾を突き立てれば、幻想の城壁は強固な現実性を得ていく。
 背後に負った拠点には、誰一人、なにひとつ通さない。決然たる眼差し。
「屍人たちよ。お前たちはカガリが守るべきひとでは、ない。
 ゆえに、この先には通さない――それでも通りたいと思うならば」
 眦を決し、カガリは迫りくる屍人の軍勢どもをしかと見据えた。
 拒絶と敵意の意志は、彼の瞳を爛々と輝かせ燃え上がるようですらある。
「無理を承知で挑むがいい。だが、カガリは何があろうと、退くつもりはないぞ」
 彼方と此方を分かち、裡にありし"ひと"を守るために築き上げられたもの。
 黄泉路の門としての矜持と自負、そして覚悟を称えた宣言であった。

 ではそんな彼の相棒、マレーク・グランシャールは何処にありや?
 見るがいい。恐るべき龍槍を携え、死したる地龍の王と突き進む男の姿を。
 挑むは無限めいた屍人の群れ。半身たる城壁を背後にして堂々と走る。
 凋落した生者たちの成れの果て、その無惨な姿に対する躊躇は欠片もなし。
 彼らがかつていかな営みを持っていたとしても、ここにあるのは屍人である。
 生者の血を貪り、肉を喰らい、すべてを滅ぼすまで止まらぬイナゴの群れだ。
 マレークはその存在を許容しない。誰よりも彼自身が飢えを知るがゆえに、
 それに突き動かされた亡者たちの存在を、何があろうと許容はしない。
「これがオブリビオンストームの生み出すもの、この世界の現状か、醜いな」
 マレークはただ端的にそう言って、豪槍をぐるぐると振るい地に叩きつけた。
 地震と思えるほどの大衝撃が地平線の彼方まで届き、地鳴りは雷めいて轟く。
 はたして亀裂から生まれたのは、龍の鋭牙のような無数の地槍である。
 スパイクじみたそれらは真下からゾンビの群れを串刺しにし、縫い止めた。
 歴史に名高きブラド・ツェペシュの城門めいた、おぞましい惨状であった。
 それでもなお死にきれぬ屍人どもは、もがきながら槍から逃れようとする。
「引き際すらも忘れ果てたか――ならばせめて、引導をくれてやる」
 ばきばきばき、と大きな裂け目が生まれ、竜王の顎が獲物を飲み込んだ。
 それすらも逃れた哀れな(そして不運なゾンビ)は、マレークの神槍が貫く。
 戦士としての誇るような威風はない。ただ、峻厳なる最期を齎す死神めいて、
 確実に、まっすぐに、チャージの勢いを載せて屍体を穿つのである。
「さあ、お前たちの敵はここにいるぞ。肉を求めるならば我が身を狙うがいい。
 血を欲するならば相手になろう。だが、俺の槍(きば)は生半可ではないぞ」
 何者をも通さぬという鉄の如き決意。恐るべき戦意に荒野が震えた。
 されど恐れなき屍人は来たる。見える限りのそれをマレークは薙ぎ払う。
 ……その足元、勇ましき王に媚びへつらうように、這いずる屍人どもがいた。
 矮小ゆえにマレークの目を逃れたそれらは、生者の気配を求めて嗤笑する。
 これは龍人の不手際か? 否、ここに相棒に対する信頼があるのだ。
「退け。お前が通ることのできる道は、ここにはないぞ」
 カガリである。いまや城壁はたしかな現実性を持ち、立ちはだかっていた。
 天を衝くような巨大なる境界は、賢しらな這いずる屍人どもを妨げ、滅する。
 壁に触れたそれらは灼き焦がされ、悲鳴をあげながら塵へと変じていった。
 マレークとカガリ。肩を並べずとも、相棒ふたりの連携はいくらでも出来る。
 ひとに仇なす者どもを、彼らはけして通さない。ただの一歩ですらも。
 この世界に息づく人々を守るため、ふたりはどこまでも力を振るうのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ジャガーノート・ジャック
◆ロクと
(ザザッ)
例のディーヴァに貰ったものか。
そうだな。きっと聞こえるだろう。

さて、本機もああして奮い立てた手前、無様を晒す訳にはいかない。
拠点は任せた、ロク。
此方は遊撃を担う。

(ザザッ)
各種センサーをフル稼働し戦況をシミュレート。(視力×情報収集×学習力)
自身の周囲、及び街人を含めた友軍各位への援護射撃も即時可能な様にしつつ――

"C.C."発動、『クイックドロウ』指定。
ターゲット捕捉。

一射0.02秒未満の秒数で狙った敵を60体、一度に射抜き灼き撃つ。

敵一部隊の撃破完了を確認。
引き続き殲滅を続ける。オーヴァ。(ザザッ)


ロク・ザイオン
◎ジャックと

(クークーに貰った小さな機械)
…全て終わったら
聴こえるかな、歌とか

(枯れ果てた土
還らず、動き回る骸
ととさまの御旨も祝福も失われた世界は、こうなるんだろうか
それでもまだ、ひとの裡に森が残されているのなら)

やろう、ジャック。
おれは"森"を守る。
…骸は全て、土に。
糧になれ。

(遠くの皆を守るのはジャックに任せ
自分はその背を【かばい】【拠点防御】に努めよう
【野生の勘】で背後、足元からの奇襲に備え
「烙禍」で骸が這う地ごと【焼却】し灰に)

たくさんの骸は森を豊かにする
森に巡ってまた芽吹く
歪んだまま、ずっといるのは
病は苦しいから

最期、言いたいことを聞いてやりたいけど
おれには、うたしか聞こえないんだ。



●荒野に響く歌声
 ロク・ザイオンの手には超小型端末。もはやノイズは響かない。
 クークーもまた、彼女なりに戦っているのだ。今は緊急事態なのだから。
「……全部終わったら、きこえるかな」
 相棒がぽつりと零した呟きに、ジャガーノート・ジャックが振り返る。
《――例のディーヴァの歌か。……そうだな、きっと聴けるとも。彼女の歌を》
「うん」
 頷いて、ロクは地平線を見つめた。どこまでも荒涼たる割れた大地を。
 彼方で陽炎めいて揺らめくのは、この世界を引き裂く原初の暴威。
 オブリビオンストーム。あの嵐は、森(せかい)にあってはならぬモノだ。
 それによって引き裂かれたものは、どんなものであれオブリビオンとなる。
 有機無機を問わず、屍体であろうとも――見るがいい、あれこそがその結果だ。
(けれど、ひとはみな生きようとしている。こころの中に森を宿して)
 ロクは力強く超小型端末を握りしめ、それを大事そうに懐にしまった。
 であれば、己がなすべきことはなんだ――問うまでもない、答えはひとつ。
「やろう、ジャック」
《――ああ。本機もああして奮い立たせた手前、無様を晒すわけにはいくまい》
 言って、ジャガーノートはがしゃりと一歩前に踏み出す。
《――拠点の防衛は任せる、ロク。こちらは遊撃を担う)
「わかった」
《――こちらも作戦行動に突入する。オーヴァ》
「おーば」
 ざりざりざり……砂嵐が吹き荒れて、そしてジャガーノートの姿は消えた。
 枯れた風がひとつ。ノイズの残滓を撫でて、拭き取って彼方へ流れていく。
「……おれは"森"を守る。来るなら来い」
 屍人どもの怒涛じみた行進の地響きが、ロクのつぶやきに応えるように轟いた。

 ZZZZZTTTT――ガガガガガガッ!!
 罅割れた荒野を恐るべき轟雷が貫く。それは罪人を鞭打つ刑罰執行者めいている。
 ジャガーノートの"C.C.(コピー・コード)"による、熱線の一斉射であった。
 戦いを経て成長したジャガーノートのクイック・ドロウ、射撃要時間0.02秒未満。
 わずか10ミリ秒前後の間に放たれる射撃を、複製する数実に一度に六十。
 瞬きよりも疾い閃光は、いくら素早かろうがゾンビどもを射抜き滅殺する。
 それは雨だ、降り注ぐ熱の雨。生命なき者にあるべき終わりをもたらす鉄槌だ。
《――周辺敵性体、排除完了。敵予想進路シミュレート……》
 ジャガーノートのカメラアイが赤く瞬く。彼は戦場全体を俯瞰していた。
 様々な方角から敵は来る。明らかに秩序立った、ゾンビらしからぬ組織的戦術。
(例の巨人によるものか。あるいは、ゾンビどもの本能的な連携行動か)
 いずれにしても、ただの屍人と傲れば足を掬われるだろう。油断は禁物だ。
 ジャガーノートは――その鎧を纏う少年は――屍人どもに対する感傷を持たない。
 挑んでくるならば殺す。いかなものであれ、オブリビオンはそういうものだ。
 かつての級友をすら手にかけた彼にとって、いまさら手を止める理由はなかった。
(だが――)
 それでも思うところが一切ないのかと言えば、否だった。
 彼らとて生きたかっただろう。この荒廃した世界で、彼らなりに。
 しかし、世界はそれを許さなかった。世界を侵す力がそれを許さなかった。
 厳然たる自然現象……そう呼ぶには、あの嵐はあまりにも悪意が過ぎる。
 死者の静謐すら冒涜する猛威は、虐げられた少年にとってはあまりに覚えがある。
《――目にもの見せてやろう、オブリビオン。本機らを倒せると思うな》
 こぼれた言葉は兵士としての冷徹な、しかしきっぱりとした敵意であった。
 さらなる屍人が来たる。砂嵐を纏い、ジャガーノートは新たな熱線をコピーした。
 カッ――と閃光が輝き、迫りくるゾンビどもの手足を精密に貫く。
《――引き続き殲滅を続ける。一匹たりとも逃しはしない》
 砂嵐の向こうに輝く赤い曳光は、狩人の鋭き双眸に似ていた。

 されど骸どもの数は多い。あらゆる方角から来たるそれらは包囲網をなす。
 猟兵たちの攻撃をかいくぐり、非常識な速度でスプリントする哀れな亡者ども。
 すでに死したる存在ゆえに、常人が有する脳的なリミッターが奴らに存在しない。
 己の体を自壊させながら跳躍し、疾走し、ハンマーじみた膂力で獲物を裂くのだ。
「ああああァああァアアアっ!!」
 ロクの眼光はそれを見逃さぬ。燃える残像を刻みながらその前に立ちはだかり、
 這うほどに身を沈め、円弧を描く。烙印の炎が荒野と屍体を灼き焦がした。
 あるべき終わり。葬られなかった、あるいは葬ることすら出来なかった骸は、
 炭化して灰に変わり、慈悲深い炎に抱かれてうず高く積み上がる。
 削ぎ落とす。切り裂く。叩き割る。抉り飛ばす。刎ね落とす。ねじ切る。
 こけつまろびつ、砂埃に汚れることもいとわず、ロクは縦横無尽に駆けた。
「燃え、落ちろ。燃え落ちて、森のいしずえになれ――!」
 ロクの耳に届くのは悲鳴。あの歌姫のそれより優しげで恍惚としたうた。
 彼女はそれがなんであるかを識っている。己が生まれ持った歪みを知っている。
 だからこそ、一刻も疾い終わりを。嫌悪ではなく、慈悲と憐憫を込めて。
「――言いたいことを聞いてやりたいけど」
 おれには、悲鳴(うた)しか聞こえないんだ。
 無数の灰に囲まれて零した言葉は、哀れな亡者への祈りに似ていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

鳴宮・匡
【アサルト】


勝ち目のない戦いに一人で赴くのを
少し前なら“馬鹿げてる”なんて言ったんだろうな

それは、俺ならしない選択で
きっと、できない選択で
だからこそそれを守りたいと思う
決して届かない、眩い“ひと”の営み
それを守りたいと願ってしまったのだから

じゃあ、行こう
一つ残らず壊せばいいんだろ、……得意分野だ

敵数の特に多い一帯を受け持とうか
ヴィクティムの横についておくよ
ネグル、お守りはこっちに任せて好きにやんな

拠点に近づく敵から順に【死神の咢】で殺していく
無駄弾は使ってられない、一射で確実に頭部を破壊する
丁度ネグルがよく攪乱してくれてる
体勢を崩した相手も多いだろう

使えるもんになってたか?
……そいつはよかった


ネグル・ギュネス
【アサルト】
皆の覚悟が、クークーの決意が伝わってくる
行くぞ、二人とも
万難苦難、全てからオレ──オレ達が、守り抜く!

如何に数が多かろうとも、近づけさせはしない
敵の群れに飛び込みながら
── change. 【強襲具現:深き海の瞳】

左腕をショットガンに変換!【破魔】を宿した弾丸を放つ
電脳の補助に、海の瞳の力を得た力で撃ち抜き、粉砕していってやる

多数はオレが排除し、たとえ見逃しても最高の相棒がいる
アイツが撃ち漏らす等、有り得ない

さあ、纏まった奴らはご退場願おう
トリガーを逆巻き、【封印を解く】ことで、バスターモードに移行
【衝撃波】の大砲を大群に打っ放し、バラバラにして弾き飛ばす!

使い易いぜ、相棒
最高だよ


ヴィクティム・ウィンターミュート
【アサルト】

おーおー、おいでなすったぜ
ありゃクークーのファンどもか?随分小汚いが…風呂入ってねえのかな?
ダメダメ、そんなきたねーで手で握手を求めようなんてナンセンスだぜ
聞き分けの無いファンには躾が必要だ

ニューロン・アクセス、開始
電気信号改変完了──スタート!『Lightning Blitz』
戦える奴らもアサルトも、そうでない奴でも…欲しい奴は受け取りな!
たとえゾンビが強靭でも、いきなり後ろに現れるとしても、見つけにくい個体がいるとしても!
6倍のパワー、6倍の知覚、6倍の反射があれば…上から潰せるだろ?
ヘイチューマ!66秒後に俺は1分間のクールダウンに入る!
全力で俺を守れ!…ネズミ一匹通すなよ



●強襲、破壊、殲滅
「ま、まだ来るのか」
 防衛陣地の銃眼を覗き込んだ現地住民が、悲鳴まじりに呻いた。
 スコープ越しに見えたのは、地平線から来たるさらなるゾンビの姿だ。
 急ごしらえのバリケードには無数の血と脂、そして引っかき傷が刻まれて、
 そのたもとには屍だったモノども――灼き尽くされた灰の山が堤防のように。
 もはやどれだけの弾丸を放ったか分からない。数えるのも億劫になる敵襲、敵襲。
 猟兵たちはよくやってくれている。間違いなく最強の奪還者たちだ。
 それでもなお敵は来る。さしもの彼らですら気力が萎え、折れかかる。
「……まだだよ。まだ、ワタシたちは負けてない、だから」
 クークーは声を絞り彼らを勇気づけようとする。声音に力はない。
 無理もない。これほどの攻勢は彼女の旅路においてすら見たことがないのだ。
 やはり、駄目なのか。押し切られ、この拠点は蹂躙されてしまうのか。
 魔が差すように去来したかすかな不安。それは音叉めいて増幅され広がり――。
「案ずるな!!」
 ……かけたその時、ネグル・ギュネスの朗々たる声が彼らを打ち据えた。
 誇張ではない。電撃で撃たれるように、彼らは身をすくませて顔を上げたのだ。
「皆がここに居る。そして――オレが、オレたちがここに居る」
 肩越しに振り返った男の相貌には、不敵なる笑みが浮かんでいた。
 こんな状況で、笑えるのか。ああも力強く、堂々と、何を恐れることもなく。
 それはどれだけ生き足掻こうと、この世界の人々には手に入らないもの。
 あらゆる敵を打倒し乗り越えてきた戦士だけが見せられる、強い笑みだった。
「万難苦難が立ちはだかろうと、すべて打ち砕く。それが"オレたち"だ」
 ネグルは立ち並ぶふたり――鳴宮・匡とヴィクティム・ウィンターミュートを。
 銃士はいつもどおりの無表情で銃火器のスライドを引き、答えとした。
 ハッカーの少年は同じように不敵に、そして皮肉げに笑い、頭をかく。
「……ひとつ残らず壊せばいいんだろ。それなら、得意分野だ」
「クークーのファンどもか知らねえが、あんな小汚いナリじゃ入場禁止だな。
 聞き分けのないファンどもにしつけをするとしようや。ランのスタートだぜ」
 ふたりの言葉に頷き、ネグルは……三人は一歩踏み出す。
 クークーはその背中をしかと見届けた。強襲の名を持つ三人の男たちを。

 ――AAAAAAAARRRRGGH!!!
 耳障りなノイズじみた絶叫。屍人どもの、獣のようなおぞましい雄叫びであった。
 ウォークライめいたそれは、心弱き者の精神をへし折り戦意喪失させるだろう。
 唾棄すべき死者の叫び。それを切り裂いたのは、けたたましいマズルフラッシュ!
 BLAMN!! 轟くような銃声、放たれた散弾がゾンビどもの上半身を消し飛ばす!
「やかましいぞゾンビども! 放送妨害は感心しないな!」
 左腕を大型ショットガンに変形させたネグルは、一瞬で接近し零距離射撃を行う。
 "強襲具現:深き海の瞳(サジタリウス・トリガー)"。射手の引き金。
 定めた獲物に逃れられる可能性は存在せず、左目はあらゆる可能性をねじ伏せる。
 次から次にゾンビどもをヘッドショットして踏み倒すネグルの動きは無造作だ。
 なぜゾンビは彼を捉えられない? ネグルがあまりに疾すぎるからか?
 否である――そうさせないために、死神が冷徹な瞳で狙っているからだ。
 やや後方、ヴィクティムの側に待機した匡による、精密なスナイプである。
 どれだけ素早かろうが、しぶとかろうが……それこそ屍人であろうが、
 元は人間。姿形を人型に留めているならば、これ以上にやりやすい獲物は居ない。
 脳髄が腐っていたところで、あらゆる神経は頭部に直通しているもの。
 ドタマを吹き飛ばしてしまえば、物理的に動けなくなるのは当然の話である。
 匡にとってはまさに"得意分野"だ。万の屍を積み上げてきた罪人にとっては。
『ネグル、お前は好きにやんな。お守りはこっちに任せておけよ』
 ついさきほど、相棒に対して口にした自分の言葉が、脳裏に蘇る。
「悪いな――なんて言ったところで、考えるための脳みそがもう残ってないか」
 無感情に呟いて、視界に捉えた屍人の頭部を吹き飛ばす。無駄弾は許されない。
 ヴィクティムのもたらした電脳プログラムによって鋭敏化された彼の視覚は、
 仮に数キロ先に潜む獲物ですらも看破し、かつ眉間を撃ち抜いてみせるだろう。
「派手にやれよチューマ! そうすりゃそれだけこっちに狙いが向かうからなァ!」
 バックファイアで酩酊めいたハイになったヴィクティムは大笑して言い放つ。
 "電撃作戦(ライトニングブリッツ)"の号令(オーダー)は彼に負荷をもたらす。
 66秒後の眠り。それを代償とした、すべての味方を強化する電脳術式である。
 ネグルの足を早め、匡の目を鋭くさせ、彼自身の体をも電脳は突き動かす。
 電子のように疾く、影のように音もなく。充血した視界がスローモー化する。
「足りねえ、足りねえな。スピードが足りねぇよ。ニューロンには遅すぎる!」
 笑いながらヴィクティムは残像じみた速度で走り、周囲のゾンビを切り裂く。
 切っ先が焼け焦げるほどの速度のナイフ捌き。愚かな屍人どもの頭部が飛んだ。
「クールダウンまで残り54秒だ! 匡、残りのゾンビはいくつだァ!?」
「183体。全部俺とネグルで片付ける。お前はもう備えておけよ」
「ハッ、ありがたい労りだね――だが不要さ。なにせ奴らは遅すぎる」
 BLAMN! 散弾が新たな残骸を生んだ。倒れ伏した屍を越えてネグルは走る。
 その軌道上に来るであろう敵を匡はミリ秒で算出、先んじてヘッドショット!
「きりがないな。ネグル、吹っ飛ばせるか?」
「当然だ、相棒! バスターモード移行……支援頼むぞ!」
 ガギュンッと音を立てて左腕が変形、内側から展開し巨大化していく。
 身の丈を越えた大砲と化したそれを膂力で抱え、ネグルは狙いを定めた。
 足を止めた彼に殺到する敵はすべて匡が殺す。ふたりに意思疎通は必要ない。
(――"馬鹿げてる"なんて、昔の俺なら言ったかな)
 思考の合間に匡は思った。少女の選択を耳にした時の己のことを。
 勝ち目の戦いに赴く無謀など、理解不能、どうでもいいと切り捨てていたはずだ。
 いや、理解できないという意味では今でも同じだろう。だが。
「壊すことしか出来なくても――守ってみせるさ。そう決めたんだ」
 誰にも聞こえぬように呟いて、トリガを引く。弾丸は音を越えて飛翔する。
 最期の一体の頭部を吹き飛ばし……同時に、砲台が閃光を放った!
 カッ! と荒廃した空を貫く一条の光。見える限りのゾンビが吹き飛び消える。
 ガシュン――と圧縮空気を吹き出し、ネグルの左腕が変形していく。
「ハ! いい眺めだ。邪魔なゴミは全部綺麗に吹き飛ばすに限るな」
 手でひさしを作り彼方を見つめ、ヴィクティムは皮肉を口にした。
「――それで、ネグル。そいつは、使えるもんになってたか?」
 匡の言葉に対しネグルは振り返り、サムズアップしてみせた。
「最高だよ、相棒」
 屍どもを吹き飛ばす光と砲声。それは、人々にとっての希望の兆しになった。
 今一度人々は奮い立つ。勇敢なる猟兵たちの戦いに報いるために!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

龍之・彌冶久
死せど尚動く骸ども。
哀れとは思うまい。
お前達ももはや、哀しみを想う"魄"などないのであろう。

ああ、だが。
弔いはしてやれる。
来い、死に場すら失い彷徨うものら。
せめてもの手向、老耄が荼毘に伏してやる。

紡ぐは"焔脈"、街の灯火より一紡ぎを賜りて。
煌々燃ゆる刃をなそう。

いざ、"那由多"の一太刀。

燃ゆるこの剣、亡者の手を、骸を、一切合切断ち切ろう。
刃に乗せた灯の弔火ととも、その骨肉をも灼きながら。

灰となり、この地に眠れ。
お前達の戦はこれで終いよ。

……些か長い旅路だったろう?休息の時だ。
生憎子守唄は爺は不得手だが……何、歌姫が謳ってくれるだろうよ。
お休み、子供らよ。



●弔いの剣脈
 枯れた風が吹き抜ける。龍之・彌冶久は、この風が好きではなかった。
 神である彼にとって、この荒涼は嫌というほど見慣れた景色である。
 そう、神であるからこそ――それだけか? ……あいにく、そうではない。
 ゆえになおのこと、彼はその荒廃を厭う。生命なき荒野をよく思わぬ。
「どんな戦いも、畢竟最後に待っているのは"これ"よ」
 彌冶久はそうひとりごちて、指先から剣脈を紡ぎ、刃と織り上げる。
 灯火より生まれたそれは、この世界でなおも生きようとする人々の営みの輝き。
 "焔脈"の剣は、まるで心臓のように拍動し、規則的に色を変えている。
「死せどもなお動く骸ども――もはやお前たちに、哀しみを想う"魄"は亡いか」
 ゆったりと剣を構える。腰だめに身を低くし、しかと敵を見据えた。
 敵――数十以上の敵の群れ。生命を求めて飢えに突き動かされる残骸たち。
「哀れとは思うまい、だが弔いはしてやれる――来い、死に場所を失いしものら」
 せめてもの手向けに、神となりしこの手ずからに斬り伏せよう。
 少しずつ、真紅の刀身が燃え上がり、生命を誇示するように強く輝いた。
 その輝きに引き寄せられるように、ゾンビどもがさらに増えていく。
 たったひとりで相手にするには多すぎる数。しかし、彌冶久に恐れはなし。
「――いざ、"那由多"の一太刀」
 剣は燃えて光を放ち、死せざる死に囚われたモノどもの影を長く伸ばす。
 照らすは残骸。もたらすはあるべき終焉。一切合財を断ち切る無尽の剣閃。
 おお、おお……寂寂とした声音で、屍人たちが呻き、囁く。
 それは救いを求める亡者どもの、すがるような嘆きか。
 あるいは世界を破滅させる残骸どもの、生命を嫌う憎悪の声音か。
 どちらともつかぬ。どちらとも判じる必要はない。ただ、斬れば終わる。
「灰となりこの地に眠れ。――お前たちの戦は」
 緩やかに、しかし目に止まらぬほどの速度で、しなやかな抜刀術が奔った。
 遅く見えるのは、その型があまりに見事でありかつ神速であるがゆえ。
 那由多の剣。真一文字に空を裂き、非現実的に伸びた焔が骸を抱きしめた。
 撫でるような剣閃は音もなく駆け抜けて、彼方の嵐にすら触れる。
 ――遅れて、赤い焔に包まれた屍人どもが、呻きながら崩れ落ちた。
 両断されたそれらは大地に転がり、やがて暖かな灯火のなかに消えていく。
「……これにて終いよ。いささか長い旅路だったろう? 憩うがいい」
 だからどうか。おやすみ、子供らよ。
 ……塵へと帰する骸を見下ろす男の瞳は、哀しみでも嘆きでもなく。
 眠りまどろむ我が子を見守るような、深い慈愛に包まれていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

桜雨・カイ
アドリブ連携歓迎
クークーさん残ってくれて良かったです。終わったらレディオ聞かせて下さいね。皆さんの力になるレディオ、私も聞いてみたいです。

さぁ後はゾンビの人達を相手にするだけです
だれ一人倒されないように全力をつくします
…そして、ゾンビの人達にも安らかな眠りを。

後方の人達にお願いして、一カ所にゾンビを誘導するように攻撃してもらいます。ある程度まとまったら【想撚糸】の結界を大きな網のように編み、ゾンビの頭上へ落とします。
結界の力で祓う事と、動きを封じて他の人が攻撃しやすくします。
…もういいんですよ、どうか静かに休んで下さい

もしバリケードが破壊された時は中へ入られないように即席の壁とします


ジャスパー・ドゥルジー
じゃ、約束を果たしてもらう為に?

【ゲヘナの紅】使用
索敵困難な個体を召喚するなら纏めて燃やし尽くすまでだ
何もかもを忘れた連中に死を思い出させてやるとも

屍人を惹きつけるべく派手に火をくべる
疵を受けた側から【生命力吸収】で傷を塞ぎ
【激痛耐性】で攻撃を受け続ける
適材適所さ
俺にゃクークーのように人を鼓舞する力はねえが
暴虐の限りを尽くすのは得意でね
暴虐の限りを尽くされるのも

彼女や市民に危機があれば【かばう】
好き勝手暴れてるように見せつつ
全体に目を向け続ける
突破は許さねえ
一匹たりとも逃しゃしねえし、誰も殺させねえとも

血が滴れば炎が猛り
炎が猛れば傷は癒える
何度も死ぬのは不死の悪魔の役目さ


フェルト・フィルファーデン
アナタ達も、元はこの地で暮らす人々だったんでしょうね……でも、今生きる者達のために、ここは通さないから。覚悟して。

わたしはUCの炎の壁を幾重にも重ね、攻防一体の防壁を作り上げるわ。
とはいえ、この数では全面はカバー出来ないし、炎を避けて回り込まれる恐れもある。だから、各所に少しだけ隙間を開けておくわ。人1人分のね。
進行ルートを残し、そこに敵を誘導する。後は確実に各個撃破するのみよ。

……仕方のない事だとしても、人が人だった者を撃つのは辛いでしょう。
だから、自己満足だとしても、彼らに引き金は引かせない。
さあ、わたしの絡繰の騎士よ!その一騎当千の刃を奮い、一撃の元に、この者達に永遠の眠りを与えなさい!


大紋・狩人
[覚悟]ひとつ。
脇腹を灼灰で浅く切り、よろめき走る。
森に迷う兄妹がパンや小石を落とすよう、血の滴りを引いていく。
戦場を駆け、屍人達を可能な限り[おびき寄せ]よう。
手負いの無力な獲物──本当を混ぜた[演技]。

(人を喰う虫や獣よりも、ひとがたの人喰いは恐ろしい)
(僕の家族を喰らったオウガ達も、人の形をしていた)
常のおびき寄せより一層、疑似餌めかすことに思うところはあるが、
ああ、構うものか、悍ましくて大嫌いで憎むべき存在ごと、
全て薪として炎にくべてしまえ!

充分以上に集まったところで、
黒炎の[属性攻撃]による[焼却]!
【おそれは零時に熔けて】──
己の不甲斐なさごと焼き焦がす[限界突破]の炎嵐を!



●絶火、業炎、灰燼
 拠点の一点を包み込むように、高い高い炎の壁が燃えていた。
 フェアリーの少女、フェルト・フィルファーデンが生み出した防壁である。
 電脳魔術によって編み上げられた炎は、彼女が敵とみなした者の侵入を許さない。
 バリケードを覆うような炎の壁……しかしそれも、拠点全体はカバー出来ない。
「……これで準備は完了。あとは、屍人たちをここに誘い込むだけだわ」
「散発的に戦うよりは一網打尽にしたほうが効率的ですから、ね」
 物憂げな表情のフェルトに、同じく後方に残った桜雨・カイが頷き応じた。
 あえて炎の壁に隙間を生じさせ、ゾンビが誘い込まれるようにする。
 敵が殺到してきたその瞬間、ユーベルコードによって屍人の群れを包囲し、
 逃げられるより先に圧殺する。それが、彼らの選んだ戦術プランだった。
「前線に向かった方々も、うまくやってくださるといいのですが……」
「……成功するわ。いいえ、させるのよ。拠点の人々には決して撃たせない」
 フェルトの言葉に、カイは少女の横顔を覗き見て瞼を伏せた。
 "人が人だった者を撃つのは辛いはず。自己満足だとしても、それは避けたい"。
 そんな彼女の提案に応じ、ふたりの猟兵が先んじて敵陣に飛び込んだのである。
 先制攻撃を行い、自ら囮になることで敵の連携を乱そうというわけだ。
 危険な試みではある。しかし、迎え撃つだけでは防御を崩される危険がある。
(何事もなければいいのですが……いえ、そう甘いことは言ってられませんか)
 カイは心のなかでひとりごちて、迫りくる戦いに備え改めて覚悟を決める。
 遠く地平線に炎が燃える。それは、囮となったふたりの壮絶な戦いを示していた。

 アリスラビリンスという世界がある。
 オウガ……すなわち人食いのオブリビオンどもに支配された小世界の群れ。
 外世界から引きずり込まれた人々は"アリス"と呼ばれ、オウガにもてあそばれる。
 生命を駆けたゲームに挑むを余儀なくされ、あるときは恐怖の中殺し合い、
 またあるときは狂気めいた責め苦のなか、あがくことを強要されるのだ。
 九割九分のアリスは、己らのたどり着くべき"扉"を見出す前に力尽きる。
 オウガに殺されるか、アリスに殺されるか、別の何かに殺されるか。
 あるいは永劫じみた地獄の苦しみに心折れて完全なる狂気の闇に堕ちるか――。
 末路は様々であろうが、生きてその牢獄を脱することのできる者は滅多に居ない。
 しかし、何事にも例外はある。猟兵として覚醒した者はその典型的な例だろう。
 囮を買って出たふたりの猟兵は、どちらもそうした"例外"であった。

「適材適所。いい言葉だよな? "こういう仕事"は、俺にぴったりだぜ、全く」
 揺らめく魔炎のなか、悪魔めいたシルエットの男が裂けたような笑みを浮かべた。
 全身にはおびただしい傷。与えられたものもあれば己で刻んだものもある。
 名はジャスパー・ドゥルジー。オウガをその身に宿した者――オウガブラッド。
 地を嘗め焦がす魔炎は彼が共生する魔龍の生み出すそれであり、
 獲物はおろかジャスバー自身をも責め苛む。だが苦悶の代わり、彼は嗤っていた。
「さあ、来いよ。俺はまだ立ってるぜ? 肉が喰いたい、血が飲みたいんだろ?
 俺の喉を抉ってみろよ。心臓を引きずり出して貪りゃいい――出来るなら、な」
 餓狼じみた雄叫びを上げて迫りくるゾンビに、ジャスバーは真正面から挑む。
 肉を削ぎ落とす強烈な鉤爪を喰らい、滂沱の血を流しながら凄絶に笑った。
「足りねえ――足りねえよ! 俺を殺すにゃ足りねえ! ハッハハハハハ!!」
 何が面白くて笑うのか。傷の痛みがもたらす高揚か、あるいは敵の不足か。
 余人には理解できない。彼は"そういう手合"だった。つまりは、凶人である。
 そしてジャスバーは呵々大笑しながら、カウンターの一撃で屍人の首を刎ねる。
 倒れ伏した死骸を魔炎で灼き焦がし、裡なる"ゲヘナの紅"をさらに燃え上がらせ、
 次の獲物を――あるいは次の傷を――求めて、悠然とした足取りで歩む。
 傍若無人。その笑い声は、血の匂いは、ゾンビどもをよく引きつける。

「滅茶苦茶をやる……ッ!」
 そんなジャスバーとともに立ち回るのは、黒いドレス姿の少年だった。
 大紋・狩人。残酷なる運命に抗ったアリスたちの子――アリス適合者である。
 ジャスバーはオウガを迎え入れた。それをよしとし、悪魔めいた異形を誇る。
 一方の狩人はオウガを、ひいては人々を脅かすオブリビオンを強く憎む。
 たとえばそれは、自ら脇腹を刃で切り裂き、血の芳醇で奴らを惹きつけることも、
 手負いを演じて敵の油断を誘い、その喉笛を切り裂いてみせるといったふうに。
(人食いの虫も、獣も、"ひとがた"のそれに比べればまだマシだ)
 正直に言えば、怖い。恐怖がある。だが恐怖は生存本能の裏返しだ。
 あの悪魔めいた男のように笑うことは、狩人には出来ない。
 ただ己を強いて歯を食いしばり、徹底的に憎悪を燃やして抗うことしか。
 それすらも常人から見れば偉業であるが――少年には、そうするしかないのだ。
「ああ、ああ! こいつらを、これらを灼き尽くせるならば、構うものか!
 おぞましい者どもよ、灼いて尽きて消えてしまえ。僕の炎を味わい滅べッ!!」
 煤けた刃が火花を散らし、少年の抱いた怒りと殺意を炎の形に変える。
 生まれたのは骨灰によって形作られた、形容しがたい異形の怪物であった。
 耳障りな絶叫をあげたそれは(おそらくは)顎に当たる部分を大きく開き、
 血の匂いに群がる獲物を貪る。裡なる炎に焦がし、己の一部にしてしまう。

「ハ――! いいね。好みの造形だぜ、ソレ。趣味が合うんじゃないか?」
「冗談を言え! 合ってたまるか、こんなモノが……!」
 ジャスバーの皮肉めいたからかいに対し、狩人は眉根を顰めて吠え返した。
 オウガを受け入れた者と、オウガを討つために刃を振るう者。
 ともに肩を並べて戦う仲間同士ではあるが、その思想は相容れまい。
 疑念、嫌悪、不思議、恐怖、関心、侮蔑――多くの感情が駆け抜ける。
 それらをも薪として狩人は駆け回り、足を止めることなく刃を振るった。
 一秒でも疾く、おぞましき屍人どもを滅するため。終わりを齎すために。
「獲物を貪る怪物ってのは、恐ろしい見た目をしてればしてるほどいい。
 なあ、おい。暴虐は得意分野だぜ――するのも、されるのも、どっちもな」
 ジャスバーの言葉は誰に向けたものか。ゾンビの群れか、あるいは狩人か。
 はたまた彼の裡に巣食うオウガに対して? 解るまい。言葉は濁流めいている。
「殺させねえよ。それが嫌なら殺してみろ、俺を。さあ、どうした、ハハハッ!!」
「……ッ! どうしてだ、なぜそんなふうに笑える、きみは……!」
 少年は恐ろしくてたまらない。敵も、己の力も、この世界そのものが。
 塗りつぶすような怒りが骨灰の怪物を強化し、怪物じみた咆哮がなお轟く。
 やがてそれは魔炎と混じり合い、すべてを焼き焦がす黒き炎嵐となった。
 対照的なふたり。しかして目指すところはひとつ――殲滅、そして勝利である。
 一匹たりとも逃すまい。悪魔には歌姫と交わした約束がある。
 どんな敵でも焼き滅す。少年にはそうせねばならない理由がある。
 終わりなき亡者どもを相手に、相反する炎は調和し燃え続ける――。

 その輝きに引かれ、しかし暴威を恐れて離れた亡者どもは少なくない。
 そいつらが次に惹かれるのは、当然拠点から漂う生者どもの香りである。
 だが、恐るべき怪物の蹂躙を目の当たりにしたゾンビどもは、色を喪っていた。
 ゆえに、容易い。カイの念糸と、フェルトの絡繰騎士たちが迎え撃つのは。
「さあ、わたしの絡繰の騎士たちよ! その一騎当千の刃を振るいなさい!」
 あらかじめ用意された隙間を目指して、満身創痍のゾンビどもが来る。
 盾を構えて迎え撃った絡繰人形の騎士たちが、無双の刃でこれを斬り伏せる。
 それを見切ってくぐり抜けようとする者があれば、カイの領分だ。
「ここまで来た以上、あなたたちは終わりです――進むも退くも出来ません」
 念糸による結界がゾンビどもを取り囲む。ドーム状のそれは一種のコロセウムだ。
 騎士人形の刃からゾンビが逃れる術はなく、次々に両断されていった。
「――もういいんですよ。どうか静かに休んでください」
 仕上げにカイが手を引く。糸が、糸の結界が狭まり、収束する。
 織り上げられたそれは一種の質量だ。ゾンビを頭上から押しつぶす結界の蓋。
 屍人どもは虫めいて足掻いた。無慈悲なる一撃が呪われたその生を閉じる。
 結界が完全に閉ざされたとき……もはや、屍人どもは残ってはいなかった。
「……これが、この世界を包んでいる絶望の正体なのね」
 結界によって押しつぶされ、あるいは騎士によって永久の眠りを与えられた者どもの残骸。
 そして彼方に燃える炎。それを見やる、フェルトはぽつりと呟いた。
 渇いた風が吹く。死の香りを洗い落とすには、それは淀みすぎていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ジュリア・レネゲード
アドリブ連携歓迎

誰一人死なせるな
残念だが公録は既に定員一杯満席だ
亡者共にはお引き取り願え
奴らに鉛玉のパスポートを浴びせてな!
それじゃあ……ミッションスタートだ

展開状況と戦況は逐次確認しアップデート
陣形に複製したドローンを展開
トレーラーに通信の中継拠点を設置し
メイン端末で状況を確認し周囲の仲間と共有
特に戦力が足りない所へ援護に向かうか
行ける人に行ってもらう

小型の偵察ゾンビか……可能ならハッキングで
周辺情報の差分を検索、それらしき形跡があって
誰もいなければ破片手榴弾を投げ込んで炙り出す

敵は散弾銃で確実に一体ずつ潰す
弾種は状況に応じて、援護は突撃銃で届く範囲も
無茶をして足を引っ張っちゃいけないからな


抹消個体第九一零号・クト
アドリブ歓迎

ち、息がしやすくなってきちまった

出来れば逃げてえ所だが、まあ、踏ん張りどころか

しかし、派手にやるねえ、ご同輩
俺は地道にやるだけさ。どのみち、真っ正面から向かい合いなんざ性に合ってねえさ

バリケードの作成に使ったがらくたを集めて罠を仕掛けながら、前線に紛れる。

他の派手な攻撃に紛れれば楽かもしれねえが、まあ巻き添えは勘弁だ。

狙うは脚、機動力。

罠や攻撃を抜けた奴は気にしねえ。少数なら即座に対応出来る。
最悪は数でバリケードごと押しきられるこった。
数が固まれば砲撃なりで纏めて数が減らせるだろ。
主砲代わりが揃ってんのは、嬉しいぜ。

さて、嫌な感じだ
何が来る?


シャルロッテ・ヴェイロン
ついに来ましたね。ここからが正念場といったところですか。

まずはFPSの兵士キャラ(そういえば、最近のFPSもゾンビモードが当たり前になってきましたが)を最大人数で召喚しておきますか。
で、それらを三段階で活用していきましょう。

ライフル装備の者たちによる制圧射撃

ランチャー装備の者たちが敵陣を吹っ飛ばす

火炎放射器装備の者たちで跡形もなく焼却する

――てな流れでいきますか。
もちろん、撃破されたらその都度補充して、攻撃を絶やさないようにしていきましょう。

※アドリブ・連携大歓迎です。


狭筵・桜人
ゾンビのクセに全力ダッシュとかズルくないですか?

エレクトロレギオンを召喚。
空中で一塊にさせて雨雲を作りましょう。
弾丸の雨を降らせながら敵の数を減らしていきますね。
あちらは自動操縦で敵の群れを追尾させるとして。

こっちはこっちで自分の身を守らないといけないワケですが。
いや痛覚もない屍人相手に護身用の拳銃一丁で
対処しろってのが無茶なんですねえ。
頭ごと吹き飛ばせる威力の銃とか!何なら鈍器とか!
だってゾンビと戦う前にホームセンター寄っていいですかって
聞く前にムルヘルベルさんがグリモアでポイって!

……。
強そうな仲間のうしろから【援護射撃】で手伝いまーす。
サポートしますからジャンジャンやっちゃってください!


草野・千秋
クークーさん、お一人でゾンビと戦おうとしていたのですね
それは勇気と呼べるかもしれませんが
実際は『かなり無謀』とも呼べます
ドンパチ事でしたら僕達奪還者におまかせ下さい
そのためにこの世界にやってきたのですから
earth to earth, ashes to ashes, dust to dust.
埋葬の時こんな言い回しもありますね
住む地球は違えど気持ちはひとつです

UCを展開
勇気で敵に立ち向かう
武器改造でアサルトウエポンに炎の属性攻撃を付与し
範囲攻撃で炎をばらまく
襲い掛かるゾンビがいればスナイパーで撃ち抜く
このゾンビたちもちゃんと火葬されていれば
このような無残な形で蘇りませんでしたのに


夏目・晴夜
あれに独りで立ち向かうつもりだったとは
勇敢というか無謀というか
ハレルヤでもない限り無理でしょうに

敵が人型であるならば足の位置は皆大体同じです
妖刀の斬撃から呪詛を伴う衝撃波を身を低くして一帯に放ち、
ゾンビ共の脚を纏めて斬り落として機動力を削ぎます
その時に生じる隙を突いて高速移動で一気に頭を斬り落としたり
踏み潰したり蹴り飛ばしたりしてしまいたく

良いですねえ、何匹倒しても湧いてきます
食べ放題ではないですか

援護射撃は実にありがたいですが、常に身の安全第一に動いて下さい
全員生きていて下さらないとこの戦いの意味が無くなってしまいますし、
そうやって大活躍されすぎてしまうと私が褒められる機会が減ってしまうので



●猛攻、来たる
 ……出し抜けに、完全な静寂が荒野を包み込んだ。
 あれほど鳴り響いていた砲声も、怒号も、鬨の声も、屍人どもの咆哮も。
 何もかもが尽き果てた――誰が示し合わせたわけでもない、沈黙のエアポケット。
 立っている屍体は一つもなく、荒野を埋め尽くすような灰が広がっている。
「……お、終わった、のか?」
 誰かが言った。それは猟兵かもしれないし、現地住民かもしれない。
 しかし誰もが理解していた。――まだ、終わりではないと。
「……見て」
 数秒か数分か、再び訪れた静寂を破ったのはクークーであった。
 白亜の少女はその顔面をさらに青ざめさせて、彼方を指差している。
 誰もがそれを見た。――地平線を埋め尽くすような大量の屍人どもを。
 これまでのいかなる敵襲を超えた数。辺り一帯の屍人が引き寄せられてきたか。
 ……蛇に睨まれた蛙、という言葉がある。
 絶対的な捕食者、すなわち強大な存在に相対し、忘我に至ったさまを示す言葉だ。
 拠点の人々は、それに襲われた。もうダメだ――そんな言葉が脳を満たした。

 しかし。
「誰一人死なせるな!」
 はじめにその空気を切り裂いたのは、ジュリア・レネゲードだった。
 銃器を構え、拠点の人々に呼びかける。いや、ほとんど怒号であった。
「残念だが歌姫の公録は既に定員一杯、満席だ! 亡者どもにはお引取り願え!!
 言って利かない連中には、鉛玉のパスポートを山ほどくれてやるんだよ!!」
 戦え。銃を取れ。逢魔が時を生き延びろ。彼女の声はそう言っていた。
 ……もちろん、猟兵たちは諦めていない。否、むしろ。
「ついに来ましたね、ここからが正念場、といったところですか」
 ヘッドホンを首にかけた少女、シャルロッテ・ヴェイロンは冷静に言った。
 彼女の周囲にワイヤフレーム模様の人影がいくつも生み出される。
 現実化したそれは電脳存在――FPSゲームに出てくるような兵士のキャラたちだ。
「そうです! ドンパチでしたら僕たち奪還者にお任せください!」
 僕たちは、そのためにこの世界にやってきたのですから――。
 戦うための装甲を纏った草野・千秋も高らかに言い、拳を打ち合わせる。
「あれに独りで立ち向かうつもりだったとは、まったく勇敢というか無謀というか。
 このハレルヤでもない限り無理でしょうに。本当無事でよかったですねぇ」
 人狼の少年、夏目・晴夜はクークーのほうをちらりと見て言った。
 口元に浮かんでいるのは、笑み。負けるはずがないという不敵な笑みだった。
 強がりではない。この程度の苦境、彼にとっては慣れたものだ。
 そこにすべての人々の生存を加えたとしても、当然のようにこなしてみせる。
 晴夜の表情はそう語っていた。そしてそのままに彼は戦うだろう。
「いや、普通に私は帰りたいですけどね? 無理でしょあの数相手の防衛戦は。
 せめてホームセンターとか寄れたらよかったんですけどねぇ、はぁ……」
 護身用の拳銃のスライドを引きながら、狭筵・桜人は嘆息をこぼした。
 猟兵でありながら感性も戦闘能力も極めて一般人に近い彼の視点は、
 圧倒的に現地住民に近い。しかし、彼にも仕事に対する心構えがある。
 それに、こういうピンチのときほど、彼はしぶとく立ち回るのが得意なのだ。
「……逃げてえってのは同感だがな」
 浅黒い肌の大男、抹消個体第九一零号・クトが同調しつつ、眉根を顰めた。
「やるしかねえや。この世界はそういうモンだ……踏ん張りどころ、ってことだろ」
 アサルトライフルと医療用ノコギリを肩に担ぎ、うんざりした様子で言う。
「やるこたなんだってやるさ。この世界で生きてくにゃそれなりのやり方がある。
 ――んじゃま、始めるとしようか。え? ご同輩の皆さんよ。精々派手に、よ」
 猟兵たちが前に進み出る。遠雷めいて、屍人どもの雄叫びが轟いた。
 猛攻、来たる。猟兵たちを先頭に、人々は最後の防衛戦に挑む――!

 ――AAAARRRGHH!!
 数を数えるのも馬鹿らしい屍人どもが、地鳴りを起こすほどの咆哮をあげた。
 狩人である。筋肉を引きちぎりながらの疾走は自動車にすら匹敵するだろう。
 先触れとなる敵どもの頭部が、スイカめいて爆ぜ飛んだ。遅れて銃声が響く。
 BRATATATATATA! BLAMBLAMBLAMBLAMBLAMBLAMBLAMBLAM!!
「撃て撃て撃て撃て! 弾のことなんて考えてたら追いつかないよ!」
 銃眼から突き出した無数の火砲がマズルフラッシュを放つ。
 号令を下すのはジュリアだ。彼女の周囲には無数の機構兵器群。
 複製したドローンを全域に展開し、リアルタイムで戦局を俯瞰しているのである。
 サバイバルガンナーである彼女も前線に出、散弾銃で敵を手当り次第吹き飛ばす。
 BLAMN!! 馬鹿げた砲声が鳴り響き、ゾンビの腰から上が消し飛ぶ!
「11時方向から第三波だ! 誰か行ける!?」
「こちらでランチャー部隊を展開済みです。ご心配なく」
 通信に応じたのはシャルロッテ。彼女は拠点の高台から戦場を見下ろしている。
 双眼鏡で覗き込んだ先――迫りくる数十体のゾンビを迎え撃つ兵士たち。
「それでは吹き飛ばしましょう――ファイア!」
 BOOOOM……KRA-TOOOM!! ランチャー部隊の一斉射撃が地形ごと敵を抉り飛ばす!
 浮足立った敵めがけて突撃小隊が突っ込み、制圧射撃で仕留めていく。
 なおも生存しているゾンビは、後続の火炎放射器部隊が念入りに焼却だ。
 ユーベルコードで生み出されたバトルキャラクターたちは、
 それゆえに即座に補充が利く。数に限界はあるが大きなアドバンテージである。
 優れたバトルゲーマーであるシャルロッテにとっては、容易いミッションだ。
「正面、武装した連中が接近中! 前線には誰が出てるかしら!?」
「僕が居ます! さあゾンビども、ダムナーティオーが相手だッ!」
 生前に有していたものか、銃器を構えたゾンビどもを相手に千秋が立ちはだかる。
 飛来する弾丸を装甲で弾き、大地を削るような踏み込みとともに接敵!
 打ち鳴らした拳が火花を生み出して炎を纏い、烈火の拳が防具の上から屍人を滅殺!
 しかし敵はそれを見越したかのように、伏兵数十体で攻め込む。が!
「畳み掛けます……! せめてこれ以上、無残を晒さないようにっ!」
 千秋の持つ全武装が即座にアクティベートし、炎とともに嵐を生み出した。
 冷たい雨を貫く炎の魔弾。すべての人々を守り抜くという誓いの銃雨である。
 千秋はひとりだ。しかして彼を立たせる者は不退転の覚悟と義憤の心。
 それがある限り、彼は斃れない。並み居る敵を吹き飛ばし、逆に突き進む!
「……背後から奇襲!? あっちはたしか――」
 ドローンがもたらした情報にジュリアは目を剥き、しかし状況判断した。
 あちらには配備した猟兵たちがいる。すなわち、晴夜と桜人であった。
「援護はお願いしますよ? まあ、ハレルヤには別に必要ありませんが」
「えっ、だったら私引っ込んでていいですかいや駄目ですねわかりました!!」
 拠点住民とともに援護する桜人を振り返りつつ、晴夜は頭を振った。
 呪われた妖刀を手に、地を這うほどに伏せ――疾駆。姿がかき消える。
 獣じみた低姿勢から放たれた斬撃は衝撃波を伴って数十メートル先まで吹き抜け、
 真正面から迫りくるゾンビどもの両足を一斉両断。地に伏せさせる。
 斃れ蠢く芋虫じみたそれらに、タイミングを合わせた砲火が降り注ぐ。
 拠点住民、そして彼らの陣頭指揮を執る桜人のエレクトロレギオンだ。
「まったく、これだから痛覚のない化け物って嫌なんですよねえ、本当。
 でもまあ、前衛がいてくれるおかげでやりやすいのはなによりです。次弾装填ですよ!」
 BRATATATATA! BRRRRRRRRRRTTTTTT!!!
 晴夜はその一斉射撃を一瞥してからさらに前へ。刀が空腹に高く震える。
「いいですねぇ。何匹倒しても湧いてくる。食べ放題ではないですか?
 どんどんこのハレルヤの餌食になってください。褒められたいですからね!」
 斬る。前へ。斬る。前へ。斬る、前へ――。
 恐れというものを削ぎ落としたような狼の蹂躙は、貪るように執拗であった。
 そして事実、彼らの連携は背後から襲ってきた敵をせき止めている!
「……ち。まったく、息がしやすくなってきちまった。忌々しい」
 一方、拠点側面部。バリケード上に座したクトは苦々しく吐き捨てた。
 地べたを這いずり泥を啜るように生き延びてきた彼にとっては、慣れた空気だ。
 だからこそ、忌まわしい。生き死にが絡む状況はいつもこうだ。
「おとなしくくたばっとけよ。オレに手間をかけさせんじゃねえ」
 見下ろす先、そこにはいくつものトラップに引っかかった残骸ども。
 アサルトライフルを無造作に三点バーストし、蠢くゾンビどもを吹き飛ばす。
 クトの"狩猟特性(キラー)"をもってすれば、即席の罠などいくらでも作れる。
 ゾンビごときがそれを看破できるはずがない。決して、誰も、通すまい。
 四方八方から響いてくる砲声、あるいは鬨の声に、クトは耳を傾けた。
「派手にやってくれるのはなによりだ、巻き添えは勘弁だがな……」
 こちらの方角は問題ないだろう。クトは別地点に向かうため立ち上がる。
 徐々にだが屍人どもの呻きは薄れていく。これは間違いなく敵の総攻撃だ。
 ……しかし。この世界で生き延びていた男の本能はたしかに告げていた。
「さて――嫌な感じだ。何が来る?」
 こちらの隙を虎視眈々と伺う悪意。隠しようもない死臭を。

 ほどなくして、敵の猛攻は辛くも退けられた。
 バリケードは傷つき崩れかけているが、拠点は、人々は守られた。
 誰もが勝利を喜び、銃を携えたクークーも安堵したように胸をなでおろす。
 ……しかし頭を振って少女は彼方を見据え、声を張り上げて言った。
「来る。――一番の大物が。ここからが、本番」
 猟兵たちも皆、それを感じ取っていた。目で、耳で、あるいは肌で、本能で。
 地鳴りとともに巨人が来る。沈みつつある夕闇を背負って――!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『ゾンビジャイアント』

POW   :    ライトアーム・チェーンソー
【右腕から生えたチェーンソー】が命中した対象を切断する。
SPD   :    ジャイアントファング
【無数の牙が生えた口による捕食攻撃】を発動する。超高速連続攻撃が可能だが、回避されても中止できない。
WIZ   :    レフトアーム・キャノン
【左腕の砲口】を向けた対象に、【生体レーザー】でダメージを与える。命中率が高い。

イラスト:タヌギモ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

●バッド・テイスト
 一言で言えば、それは"塊"だった。
 屍体を粘土のようにこねくり回し、不細工な人型にこしらえたようなモノ。
 蠢く肉の塊。蠕動する残骸。存在そのものが嫌悪感をもよおす汚物。

 ――AAARRGHHH……。

 それは鳴いた。言葉と呼ぶには、あるべき知性が存在しない。
 しかし、無垢なのかといえば否。愚かなのかといえば、それも否。
 "それ"は純然たる死の塊であるがゆえ、生者の殺し方を本能的に知っていた。
 ゾンビジャイアント。集合、異形化した死骸の塊。屍人どもの王。
 はたしてどれだけの残骸を取り込んだのか、巨体は天を衝くようだった。
 錆びた血まみれのチェーンソーがギャリギャリと軋み、悲鳴のように鳴り響く。
 体に縦に走った線がばかりを開き、気味の悪い牙まみれの口蓋をあらわにした。

 やつは、飢えている。
 獲物(にんげん)を、どうしようもなく求めている。
 陽が沈む。逢魔が時が終わり、奴らの時間がやってくる。
 夜が来る。だが月を見上げて微笑む前に、片付けるべき敵がいる。

 ――AAAAAARRRGGHH!!!!

 咆哮。屍巨人はよだれを撒き散らし、チェーンソーを振り上げて疾走した。
 目指す先はただひとつ。ドライ・レイク、そこに集まった人々、生者!
「……! 負けない、ワタシは、ワタシたちは、絶対に……っ!」
 震えながらもクークーは言った。人々は青ざめながら銃を取る。
 これがこの戦いの終幕だ。嵐が生み出したおぞましき巨人を引き裂き滅ぼせ。
 躊躇は不要。容赦は不要。気の合うことにあちらもそのつもりでやってくる。
 死の塊を殺し尽くし、枯れた湖に安寧をもたらせ!
マレーク・グランシャール
【壁槍】カガリ(f04556)と

チェーソーにキャノン、それに牙の生えた口か
なかなか凶悪な姿だが人型ゆえに背後の敵には無力
ならば背後に回り込んでやるさ

カガリを囮にし、敵の目が【錬成カミヤドリ】の盾に向いているうちに【金月藤門】の残像とフェイントでそこにいるように見せかけ、迷彩効果を発揮したら【黒華軍靴】で一気にダッシュ
背後に回ったら【玄竜王槍】で槍を強化し、背後から膝裏を狙い、両膝を砕く

優先すべきは敵の機動力を奪うこと
足を潰せば拠点の者を襲いに行けまい

槍兵としての働きをとくと見よ
一人で立ち向かおうとしたクークーのため
それから幾ら複製とはいえカガリの盾を食らったお返しにこの王の槍を受けて貰うぞ


出水宮・カガリ
【壁槍】まる(f09171)と

敵の攻撃は…「人型」の範囲で、動くのであれば
なるほど、背後はちょっと弱い、ようにも見えるな
ならば、そちらは任せたぞまる

【錬成カミヤドリ】で【鉄門扉の盾】を最大数複製
本体の1枚は手元に残して、複製に炎を纏わせた状態(属性攻撃)で敵の周囲にちらつかせ、どんどん食わせよう
食った分だけ更に複製して、また食わせて、まるが敵の背後に回りやすいように誘導する
誘導から外れそうなら、他の盾を大量にぶつけて進路を極力戻すぞ

注意をこちらへ向けている間に、まるには背後から頑張って貰おう
食わせる盾に炎が灯っていれば、暗くても狙いを誤る事はあるまい
さて、さて。何枚食えるかな!



●何をも貫く矛、何をも防ぐ盾
 ズシン、ズシン、ズシン……ッ!!
 大地を揺るがすほどの轟音と衝撃、空から降ってきたのはいくつもの門扉だ。
 鋼鉄で鋳造されたそれは、出水宮・カガリの盾であり本体でもある。
 錬成カミヤドリ――複製された鉄門扉は、超常たる滅びの炎で燃え上がり、
 その威容と比べてもなお巨大なゾンビジャイアントを取り囲む。

 ――AAARRRRGH!!!

 屍巨人にとって、飢えを満たすための食料は何も有機物に限らない。
 いや、オブリビオンである彼奴には、カガリの本体は美味に移るのだろうか。
 いずれにせよゾンビジャイアントは……燃え盛る錬成体をその巨腕で鷲掴みにし、
 体を貫く巨大な口をがばりと開け、炎の熱ごと丸呑みにし、咀嚼した。
「悪食なものだ。……カガリを喰いたくてたまらないか?」
 眼なき怪物の相貌が、ぐるんとカガリを捉え、よだれを垂らした。
 朽ち果てた街の鉄柵を思わせる、デタラメに牙の生えた口をさらに大きく開き、
 おぞましい咆哮。巨体が毬めいて丸まり、カガリめがけて跳躍する。
 疾い! だが、錬成召喚された鉄門扉はひとつふたつではなかった。
 怪物の行く手を阻むように、燃え上がる盾が層を連ねて立ちはだかり……。

 ――GRRRRRッ!!

 化け物じみた膂力で引きちぎられ、紙くずのように咀嚼破壊される。
 もしあれを、カガリ自身が喰らったらどうなるか。想像するまでもない。
「さて、さて。何枚食えるかな。すべて喰えば、カガリに辿り着くかもしれないぞ」

 ――AAAAARRRRGH!!

 ばきん、べきん、ぼきっ、ごり、ぐしゃんっ!!
 残骸を食いカスのように撒き散らし、一歩、また一歩と怪物が迫る。
 しかして、カガリは不敵に笑っていた。それがなお怪物の食欲をそそる。
 オブリビオンとしての本能――すなわち、天敵たる猟兵への絶対的敵意。
 火だるまになろうとも、行く手をどれだけ塞がれようとも、それは尽きぬ。
 そしてついに、柱のような指先がカガリを鷲掴みにしようとしたとき!

 ――ズシンッ!!
『AAAAARRRR……!?』
 ゾンビジャイアントの巨体が、揺らいだ。怪物は己の眼下を見る。
 膝頭を貫いて、強靭な流槍の切っ先が突き出していた。屍肉と血まみれで。
「卑しい屍人め。完全にカガリに目がいっていたな」
 マレーク・グランシャールがそこにいた。ゾンビジャイアントの背後である。
 彼はカガリが囮となって敵の注意を引き寄せている間、密かに背後に回り、
 気配を消した上で敵の隙を狙っていた――さながら、獲物を狙う猛禽めいて。
 だがマレークの振るう槍(きば)は、猛禽の鉤爪など比較にならない。
 狙いすました極限の一撃。あらゆる盾を貫くであろう絶無の刺突。
 それはゾンビジャイアントの巨体を支える強靭な膝を、やすやすと貫いた。
 結果として怪物は、その自重によってぐらりとよろめき、地を舐める。
 ずずん――此度の地響きは、巨人が一杯食わされたことを意味していた。
「これでお前は、もはや拠点の人々を襲いに行くことは出来まい」
 ゾンビジャイアントは上体を両腕の力で起こし、マレークを喰らおうとした。
 だがそこに、燃え上がる無数の盾が縛めとなってまとわりつき、攻撃を防ぐ。
「お前に恨みはない。だがお前は、複製とはいえカガリの盾を食らった」
 抜き取った槍を振るい、汚れた血を払いながら、マレークは言った。
「お前にたったひとりで立ち向かおうとしたクークーの覚悟に報いるためにも、
 これから嫌というほど俺の王槍を受けてもらうぞ。……せいぜい足掻くがいい」
 ゾンビジャイアントは獣めいて唸る。それは知性なき化け物の咆哮だ。
 込められたものは、怒り。天敵に対する凝り固まった憎悪と敵意であった。
「無論、カガリの後ろに通しもしない。お前はここで、何も出来ず朽ちていけ」
 燃え上がる複製体を背に、境界を定める城門の化身は言った。
 矛と盾。ありえぬことの寓話とされるそれも、ここには実在する。
 そのふたつが肩を並べたならば――いかなる敵も敵わぬことは、道理であろう。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

龍之・彌冶久
呵々、なかなかの身の丈に風変わりな獲物よ。
なんにせよ、お前さんを斬るのが今回の仕事の肝らしい。――そして、此度の戦も幕を落とす。

であるならば、爺がする事はただ一つという訳だ。

――いざ一太刀仕る。

弔火焔刃に"陽"の脈を重ねよう。
地平の彼方、僅か光る暮日の光を紡ぎ賜りて。此なるは死者を灼き祓う聖火の刃。
(属性攻撃:焔×光)

為す事は至極単純。

"阿僧祇の構え"。
光明が進むが如くに、彼奴が鋸を振り抜くよりも、その刃が廻るよりも遙かに疾く、そして鋭く。
聖光一閃、己の刃を閃かせるのみ。
(攻撃力特化)

――鋸と俺の刃との勝負。年の功で爺のほうに些か分があったらしいな。呵々!



●夕闇の終わるとき
 地平線の彼方、渦巻く嵐――オブリビオンストームに飲まれるように、
 夕陽が沈んでいく。世界を闇が包み込んでいく。
 この世界において、夜の到来はすなわち"奴ら"の時間が始まることを意味する。
 超常の嵐が人も器も引き裂き化け物に変える世界で、亡者は珍しくない。
 ここで猟兵たちが滅したものなど、所詮氷山の一角に過ぎないのである。
「――亡者よ。空に登るのだけが、陽と思うたか?」
 闇の到来を受けて歓喜するように叫ぶ巨人の前に、男がひとり。
 龍之・彌冶久。その手には、見よ……橙色に燃える超常の刃ひとつ。
「見えるか、屍巨人。これなるはお前さんを弔う篝火にして、人の焔の結晶。
 重ねたるは僅かな陽の光、そこより紡ぎし聖暁の刃――忌まわしかろう?」
 応じるようにゾンビジャイアントが吠える。敵意と殺意、憎悪と嫌悪を込めて。
 人の営み、つまりは生命の活力を凝縮したようなそれは、地上の太陽のようだ。
 闇を拒み退ける輝き。この世界においてなお消えぬ、消されぬ灯火。
 血まみれのチェーンソーが競うように、がなりたてるように胎動して、
 数多の肉と骨を抉り引き裂いてきたであろう、鋼の獣めいた咆哮をあげる。
「おう、おう。俺を、この輝きを引き裂きたいと云うかよ。それも善き哉」
 ずしん、ずしん、ずしんずしんずしん――ズンズンズンズンッ!!
 スプリント体勢に入ったゾンビジャイアントが、非常識な速度で間合いを詰める。
 彌冶久は泰然自若とした緩やかな動作で刃を構え、剣気を張った。
「お前さんはなるほど強かろう。死をねじ伏せ、数多の生を喰らってきたのだ。
 だがな、覚えておけ屍巨人よ。この世において何よりも疾きは……光なり」

 ――AAAAAARRRRRGH!!!

「お前さんのその鋸が届くのが先か、俺の刃が斬るのが疾いか。
 呵呵――これだから戦場に立つのは止められぬ。さあ、来い!」
 ズウンッ――土煙をあげ、ゾンビジャイアントが高く鋭く跳躍した。
 音の壁すら越えそうな速度で接敵し、巨大なるチェーンソーを振り下ろす!

 ……瞬間、人々は見た。朝焼けのような聖なる輝きを。
 振るわれた刃は屍を切り裂き、地平線に届き、つかの間嵐を断ちすらした。
 何よりも疾く。そのためだけに、その術理だけを鍛え上げてきた男の一撃。
 屍が太刀打ちできるわけがない。遅れて、巨体に橙色の傷跡が生まれ、燃えた。

 ――AAAAARRRRRGH!?!?

「ふむ。この勝負、年の功で俺の勝ちか」
 悶絶する巨人を見下ろし、彌冶久はにやりと笑った。
 呵々大笑。爽やかさすら感じさせるそのふるまいは、まさに快男児である。

成功 🔵​🔵​🔴​

オルハ・オランシュ
ヨハン(f05367)と

……うん
奪われた命は戻ってこない
ドライ・レイクの人達は憎さも怖さも抱いているはずだよね
でも大丈夫
やるべきことはたったひとつ
これから先、奪われる命がないように
こいつに死を与えること……それだけ

ヨハンがフォローしてくれるなら百人力だね
下準備が整うまで時間をもらえるかな

【力溜め】とUCで己の火力を高めていく
影を突く時間を長めれば得る力も大きくならないか、
試してみたかったんだよね
チェーンソーによる攻撃は【見切り】を狙い
ヨハンへ砲口が向けられたら左腕を突き刺してレーザーを阻害
攻める際は可能な限り【2回攻撃】で

今回ばかりは君に同意だね
もう何ひとつ口にできないように、切り刻んであげる


ヨハン・グレイン
オルハさん/f00497 と

醜悪なオブリビオンはそれなりに見てきましたけど、こいつもなかなかの醜さですね
狡猾さが無い分、苛立ちも少なく済みそうですが
……コレに親しい者が殺された人々には、そうもいかないか

ともあれ、狙い易い的です
足止めしますので、存分に三叉槍を振るってください

蠢闇黒の黒闇に呪詛と全力魔法で力を注ぐ
左腕の砲口に注意しましょうか
レーザーを撃たれないよう砲口を人に向けさせない、か 向けられても軌道を逸らせるよう気を向けておきます
這わせた闇と【蠢く混沌】で身動きを取らせなくしてやろう

気色の悪い口は切り裂いて、もっと見るに堪えないものにしてやるよ



●もたらされるべき終焉(おわり)
 べきべき、ばきばき……混ぜ合わさりミンチとなった骨と肉が再生していく。
 たとえるなら、それは映像の逆回しめいた、生命の摂理に反した光景だった。
 おそらくはユーベルコードではなく、ゾンビジャイアントという存在、
 オブリビオンが持ち得るより根源的な再生能力であろう。
 もしも、あの屍の群れを一掃できていなかったらどうなっていたことか。
 想像するだに震えをこらえきれず、戦いを見守る人々は恐れおののいた。

 一方で、それと相対するオルハ・オランシュとヨハン・グレインが見せたのは、
 恐れではなく嫌悪――この程度の敵など、数多の世界で越えてきたゆえに。
 だからこそ、ふたりは退くことなく、まっすぐに屍巨人へと挑みかかった。
「もう何一つ口にできないように、その口切り刻んであげる……っ!!」
 オルハは疾風をヴェールのように纏い、きりもみ回転して戦いを挑む。
 ウェイカトリアイナの矛が――がぎん!! チェーンソーに受け止められた。
 回転する鋸刃による切断を恐れ、オルハは翼をはためかせて後退。
 直後、さきほどまで彼女がいた空中を、鋸刃がぞっとするような速度で薙いだ。
 防御は難しい、極めて厄介な攻撃だ。しかし敵の手立てはそれだけではない。
「――させないっ!!」
 オルハは看破していた。ゾンビジャイアントの左手が動いていたことを。
 癒着したレーザー砲の狙いは、彼女ではない……後方のヨハンである!
「……感謝します」
 キュバッ! という閃光の直後、ヨハンのすぐ横をビームが貫いていた。
 すさまじい熱が一瞬にして駆け抜け、彼の黒髪を一筋焼き焦がしている。
 オルハのインタラプトがなければ、直撃していた。しかしヨハンは動転しない。
 それによって生まれた間隙のうちに魔力を練り上げ、黒闇を現出させる。
 影から立ち上がった黒き拘束具は振り上げられたチェーンソーに絡みついて、
 オルハへの追撃を阻止。さらに巨大な両足を、闇のスパイクが縫い止める。
「……どこまでも醜悪な化け物だ」
 嫌悪感ばかりがこみ上げる。しかし、この巨人に殺された人も多いだろう。
 さきほど殲滅した亡骸たちも、かつてはそうであったはず
 ……感傷を捨て去り、さらなる闇の棘を生み出して敵の動きを削ぐ。
 必要なのは、オルハが研ぎ澄ませた一撃を放つための十分な時間だ。
 その結果敵の注意がこちらに向いたとしても構わない……否、好都合である。
 左腕のレーザー砲が再びヨハンを狙う。だが彼は、動かない!
「撃ってみろよ。お前なんかに殺されるほど、俺は同情的じゃない」
 挑発的な言葉を口にして、ヨハンはあえて回避せずに魔力充填に全力を注いだ。
 レーザー砲に光が収束する。閃光が放たれれば、熱量は彼を蒸発させるだろう。

 ……その瞬間、オルハは閉じていた目をカッと見開いた。
 ねじったゴムが解き放たれるように、彼女が溜めに溜めた力が開放される。
 弾かれた槍の行き先はどこだ? ――それは、巨人の大きな影である。
「君の力、分けてもらったよ……自分の力で、斬り裂かれろっ!!」
 ぶんっ、と乱暴に振るわれたウェイカトリアイナの矛先が、疾風を纏った。
 数メートル以上の巨大な刃のようになった風が、正中線の大口を真横に切り裂く。

 ――AAAAARRRRRGH!?!?

 すさまじい量の血が吹き出し、ゾンビジャイアントは左腕を振り上げた。
 闇に染まりつつある空を、狙いを外したレーザー砲が貫き、衰滅していく。
 死をねじ伏せた巨人に、あるべき終焉をもたらすために。
「……まだまだ攻めますよ、オルハさん」
 闇と風の力が、屍巨人を切り裂き、削ぎ落とす。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

夏目・晴夜
我々を食い殺す気ですか?
これは素晴らしい、両想いというやつですね
しかしハレルヤが守るものを食べようだなんて無礼です

敵の攻撃は【第六感】で回避し【カウンター】で『恋う欲求』
敵の傷口を狙って妖刀を深く【串刺し】にして【傷口をえぐり】ます
おや、こんな所を怪我しているではないですか!
これはなんとも痛そうで、とてもお可哀想に

回避する事で他の方に敵の攻撃が命中してしまうようであれば
まあ致し方ありませんので、素直に正面から受け止めますよ
妖刀での【武器受け】で凌いでいる間にニッキーくん、おいで
【怪力】と【力溜め】で敵をブン殴ってブッ飛ばして【蹂躙】して下さい
流石はニッキーくん、荒野でもその可愛さは健在ですね!


ゼイル・パックルード
本能的に動くヤツ、野生動物と同じだな
警戒に値しないとは言わないが、対策は考えやすいね

辺りが暗ければ、闇に紛れつつ暗殺……というか不意打ちをする
得物は炎を纏った脚、これも新しい技、友と呼べるヤツに教わった技

小回り効かせて攪乱したほうが手玉に取りやすそうだ。
攻撃を当てた後は、培った見切りとUCの特性で敵の攻撃を避けつつ、カウンターを狙う。
狙いは……巨体だし、両手には取りこんだように見える武器。
転ばせればそれなりに立ち上がる間に隙ができそうだし、脚を削っていくか。
その間なら、クークーとかいうチビとかも一矢報いるくらいできるかもしれないからね。別に他の猟兵でもいいけど
自分で追撃するときは口に気を付ける



●強欲の末路
 猟兵たちが与えた傷は、すさまじい速度の再生能力で治癒していく。
 斬り裂かれた筋繊維や抉れた神経が、びちびちと陸に揚げられためいて震え、
 互いに繋ぎ合わさることで再生するさまは、生理的嫌悪感を催させた。
 しかし、オブリビオンとてこの世界に実体を持つ存在である。
 どれだけ高い治癒能力を持とうと、それ自体がユーベルコードでない以上、
 いずれ限界は来る……問題はそれが『いつ』か、ということだが。
「デカブツだろうが、ようは死骸の塊だ。燃やしちまうに限るねッ!」
 ゼイル・パックルードは巨木のような両脚の真下を八の字に高速移動して、
 ゾンビジャイアントの攻撃を誘う。誘った上で、死角に紛れる。
 宵闇が訪れつつある荒野……ゼイルにとっては、隠れ放題の理想郷だ。
 姿が消えたかと思った次の瞬間、金色の瞳と火花のような地獄の炎がぼうと現れ、
 死神の鎌じみた円弧の襲撃をひとつ。ゾンビジャイアントの肩肉が抉れ焦げた。

 ――AAAAARRRRGH!!

 屍肉にも痛みはあるのか、あるいはしてやられたことへの屈辱感か。
 炭化した傷口を自らのチェーンソーで抉り、強引に再生しながら、
 ゾンビジャイアントは盲滅法に左手のビーム砲を乱射し、ゼイルを殺そうとする。
 予想通り、本能的で野生動物のような、単調で読みやすい攻撃だ。
 しかし、それゆえに危険である……一撃の威力が恐ろしく高いゆえに。
「おや、痛いんですか? 苦しいんですか? それとも怒っているのでしょうか。
 そんな感覚存在しないぐらいの低知能だと思いましたが、これは驚きですね!」
 暴れるゾンビジャイアントの体に、夏目・晴夜が嘲笑混じりに飛びつく。
 ゾンビジャイアントの巨体から比すれば、サイズ差は象と草食動物に等しい。
 しかし、彼はただ狩られるだけの獣ではない、一流の狩人、人狼だ。
 逆手に構えた妖刀を躊躇なく肩口に突き刺し、再生しかけの傷を抉った。

 ――AAAARRRRRGGHHH!!!???

「奇遇なことに、このハレルヤもあなたを食い殺したくてしょうがないんですよ。
 まあ腐った屍肉なんて御免ですが……これは両思いというやつですかねえ!」
 ぶちぶちと音を立てて筋肉が引きちぎれる。その感触に晴夜は獰猛に笑った。
 腐った返り血が耽美な顔を染め上げ、ぞっとするような表情を引き立てる。
 ゾンビジャイアントはぶんぶんと腕を、上半身を振り回し、暴れた。
 意識が晴夜のほうに逸れている……問題はビーム砲が乱射されていることか。
(あの腕、やっぱり邪魔だな)
 ゼイルは沈思黙考し、ちらりと共同体のほうを見やった。
「お前も一矢報いたいだろ? 美味しいところはくれてやるよ」
「え――」
 驚いたクークーが言葉を返すより先に、ゼイルは闇に紛れて消えた。
 ランダムに放たれるビーム砲を先読み回避し、敵から見て左側後方に回る。
 両脚の筋肉に力を集中させ、腰だめに深く身を落とし……跳躍。
 ドウンッ!! と荒野の土を抉りながら跳んだゼイルは、サマーソルトを刻んだ。
 罪人の首を斬り落とすギロチンのごとき、鋭い斬影が闇に浮かぶ。
 ずるり……腐った左腕が切断され、大地に転がった。ビーム砲撃が止む!
 ゾンビジャイアントが大口を開け、咆哮した!
「ニッキーくん、おいで! 一発ブン殴ってあげてください!」
 晴夜の声に応じ、オーバーオール姿の不気味な人形が現れ、拳を握りしめた。
 頭部に当たる部分めがけ、斜め下からの強烈なジャンプアッパーカット!
「……! みんな、あそこを狙って……撃って!」
 我に返ったクークーは、拠点の戦闘員らに号令をかけ、自身も銃を構える。
 BRATATATATA……BRATATATATATATATA!!!

 ――!?!?!?

 よくもこんな恐怖の一夜を。よくも名も知らぬ我らの同胞たちを。よくも!
 この世界に生きる人々の、怒りと哀しみを籠めた銃弾が口蓋に突き刺さる。
 雨あられの弾丸を浴びせられ、ゾンビジャイアントの巨体が仰向けに斃れた!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ロク・ザイオン
◎ジャックと

わかった。
……おれも。
あとは、キミに任せた。

(聴こえるのはただの呻き声。咆哮)
…そう。
お前のは、ちゃんと聞こえる。
きっと。
……こころが、ないんだな。

(ただの死病なら、慈悲も無い)

(その砲塔が己を捉えぬよう【ダッシュ、ジャンプ】で翻弄、【野生の勘】で攻撃を躱し
【早業】「烙禍」で腕を断ち、躰を灼き落とそう
肉を削ぎ落とされ続ければ、飢えた死の病は
手近な己から喰らおうとするのだろう)

口を開けたな。
――ジャック!

(【手を繋ぎ】ジャックと共に跳躍する)


ジャガーノート・ジャック
◆ロクと

(ザザッ)
――作戦は伝えた通り。
陽動はいつも通り君頼りとなる。
奴を引きつけるのは任せた。
作戦を開始する、オーヴァ。

(ザザッ)
後方から援護射撃を敢行しつつロクの行動を支援。
ロクと敵の行動を注視しつつ、タイミングを見計らう。

――今。
(敵の捕食攻撃がロクへ伸びるのを見計らい、ロクの元へワープを実行。)
(生成した爆弾を代わりに残し(罠使い×破壊工作×フェイント)、ロクの手を繋ぎそのまま二度目のワープ(二回攻撃×手を繋ぐ)。顔見知りもいた事だしワープ先には事を欠かないだろう。)

生憎と相棒を食べさせる気はない。代わりにそれはやろう。刺激的な味を堪能するといい。
――起爆。(ザザッ)



●慈悲もなく、容赦もなく

 ――AAAAARRRRRRGH!!!!!

 獣じみた咆哮。だが、それはいかな獣とてあげぬおぞましい声音だった。
 ヒトであったモノを捏ね合わせて生まれた反自然の屍巨人は、それ自体が災厄だ。
 ただ在るだけで、生物の健康を損ない、自然を捻じ曲げ摂理を狂わせる。
「……おまえの咆哮(こえ)は、"きちんと"聞こえる」
 相対するロク・ザイオンは、鋭い瞳で敵を睨みながら呟いた。
 歪み壊れた彼女の耳でも、あまりにヒトからかけ離れたモノの声には惑わない。
 ――きっと、こころがないんだな。
 続く言葉は心の裡で。こころを持たないモノに、語りかけたところで意味はない。
 ならばあれは病だ。動き、蠢き、叫ぶだけの世界を侵すモノ。
 森を汚す病。"ひと"を脅かす災厄。ならば、慈悲などない。迷いも同じく。
 ゾンビジャイアントは、猟兵の攻撃によって切断された左腕を強引に接合し、
 ロクに狙いを定めてビーム砲を放った――ZAAAAAAAAP!!
 しかし、そんな攻撃は読めている。ロクは身を沈め全力でスプリント。
 マフラーめいてたなびく髪が一房光条に灼かれ、地面に堕ちる前に炭化した。
 あの腕をもう一度斬り落とす。もう片方の腕でも、別の場所でもいい。
 逆手に構えた烙印刀に炎が灯る。時間差でチェーンソーが地を削り振るわれた。
 しかしそれを予期していたのか、ジャガーノート・ジャックの支援砲撃が着弾。
 ZZZZZZTTTTT!! 稲妻じみたレーザービームが鋸刃を熱し、弾く。

 ――GGGRRRRRR……!!

 肉食獣めいた唸り声とともに、ゾンビジャイアントはジャガーノートを狙った。
 ビーム砲で焼き払うか。あるいは直接近づき、引き裂き食らうか?
《――本機に注意を惹かれている余裕が、本当にあるのか?》
『!!』
 疾い。今の一瞬の間に、ロクはすでに巨体の懐に滑り込んでいた。
 全身のしなやかな筋肉をバネめいて躍動させ、伏せた姿勢から一瞬で起立。
 体の流れにしたがって烙印刀が音速で奔り、腐った屍肉を灼き裂いた!
「おれが相手だ」
 静かな、だが決然たる敵対の言葉。それはゾンビジャイアントに届いたか。
 脳髄の腐った屍巨人とて、猟兵が天敵にして仇敵たることは理解できる。
 ちょこまかと動き回るロクを狙い、チェーンソーが、ビーム砲が唸りを上げた。
 まるでそれは、嘲笑うように周囲を飛び回る羽虫に翻弄されるかのようだ。

 ――SSSSHHHHH……AAAARRRRGH!!!!!

 そしてついに、ゾンビジャイアントはしびれを切らせた。
 がばりと花を咲かせるように大きな口を開け、ロクを飲み込もうとするのだ。
 あちこちに燃えた裂傷を帯びているが、痛みに怯む様子はない。
 巨大な腕がガツンッ!! と地面を抉ってロクの逃げ場を塞ぎ、のしかかる。
 逃れようがない。そして彼女は、屍巨人の牙に咀嚼され――。

「……ジャック!!」
《――今》
 声は真横からした。然り、後方から支援していたはずのジャックが、そこに。
 一瞬にしてロクの隣にワープし、彼女の手を掴んでいたのだ。
 相棒は、鋼の豹の硬く無骨な手を強く、信頼を込めて握りしめる。
 かつてならば、こうして手を繋ぐことも出来なかったろう。
《――あいにくと、相棒を食べさせる気はない》
 再度の跳躍で後方にロクとともに戻ったジャガーノートは、静かに言った。
《――代わりにそれはやろう。刺激的な味を堪能するといい》

 ――……!!

《――起爆(イグニッション)》
 カチリ。大口にねじ込まれていたのは、巨大な……爆弾!!

 KRA-TOOOOOOOOOOOOOOOM!!
 爆炎が巨体を包み、宵闇に沈みつつある世界を照らし出した。
「……こころのない病は、燃えてしまえばいい」
 誰に云うでもなく呟いたロクの手は、今も相棒の指を握りしめていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

シャルロッテ・ヴェイロン
ようやく出ましたね、ゾンビの親玉みたいなのが。
あれだけのでかいのが相手というのならば、こちらも巨大なので相手しましょう。

てなわけで、ロボットもののキャラ召喚してを戦わせましょう(装備は相手に合わせて右腕にチェーンソー、左腕にビーム砲と行きましょうか)。
そのほかにもロボに装備させた火器類での追撃とかもやらせましょうか。
――あぁ、そうだ、クークーさん、ここらで戦意を高めるような楽曲でも披露せてまらえますか?

――で、片付いたら祝宴の前に、残存敵がいないか一応確認はしておきましょう。

※アドリブ・連携大歓迎です。


ジュリア・レネゲード
随分なモンスタークレーマーね
でもチケット無しは退場よ退場

グリュプスはユニバースにバックアップを取って囮として扱う
――相変わらず乱暴な
五月蠅い。アレを止めなきゃこれまでの積み重ねが全部パァよ
やってもらうわ。奴の周りを飛び回り言葉責めで攻撃を誘発させて
――好きにやらせて貰いますよ、全く
高級オイルで手を打って頂戴。さて

私が狙うのはあの大口、捕食攻撃を止める為に
特殊セメントを込めた手榴弾を投射するチャンスを伺うわ
グリュプスの煽りで隙を見せた時、投射してからの……

奴の臭い口は封じたぞ、全員ブチかましてやれ!
私は散弾銃と突撃銃を乱射、乱射、乱射
この図体、狙うまでも無いわ

悪いがお前の席は無えんだ……諦めろ!


アルマ・キサラギ
えぇ、思ってたよりデカいのが来たんだけど…
ここまで来るとゾンビっていうより只の怪物だわね
…まぁ、相手が何であろうと。今を生きる人達の前に立ち塞がるなら叩き潰すまでよ

デカさの割にそこそこ動きは速いようね
おまけに飛び道具持ち…手こずってる間に拠点に撃ち込まれでもしたら、たまったもんじゃないわね
ラグナデバイスで【情報収集】して相手の行動を予測演算
長距離から徹甲榴弾を装填したレッドラムのレールカノンで、左腕を狙撃して吹っ飛ばすわ
再生するなら何度だって撃ち抜くまでよ

射撃を封じられたとあれば、こっちの防衛を薙ぎ倒して突っ込んでくるしかないわよね
その大口を開いた所に【全力魔法】の一発を叩き込んでやるわ!


狭筵・桜人
うわぁ……キモカワイイからカワイイを引いた感じですね。
ヤダー近寄りたくなーい。

――『怪異具現』。敵の死角から……目どこだ?
地を這わせ仲間の影に紛れさせながら近づけて。
『茨』のUDCを敵の両足へ絡ませます。
暴れれば暴れるだけ茨の棘が食い込むワケですが……
痛がったりはしなさそうですね。屍体だし。

でもほら、屍肉の塊が人型を取って歩くってのも可笑しな話ですよねえ。
二本足で体を支えているのなら“足止め”する価値もあると思うんですよ。
UDCは使い捨てなので喰われたって構いませんけど。
その口、自分の足に届きます?

私は拠点の防衛ラインで生体レーザーを警戒。
【かばう】気ではいますが極力避けてください。マジで。



●ファイア・ファイア・ファイア
 BRATATATATA! BRATATAATATA!!
 爆炎に包まれたゾンビジャイアントめがけ、無数の弾幕が降り注いだ。
 アルマ・キサラギとジュリア・レネゲードが号令となり、現地住民の支援も得て、
 動きを止めたゾンビジャイアントにダメ押しとしてフルファイアを叩き込む。
「……駄目ね、豆鉄砲じゃいくらぶっ放しても効かないわ」
 噴煙が晴れるより先に、アルマがそう言って嘆息した。
 やがて煙が消えると……彼女の言葉通り、ゾンビジャイアントは健在。
 おびただしい弾痕で屍肉が抉れ不浄な血を垂れ流しているが、
 その傷跡が不気味に蠢くとともに弾丸を外に射出し、いびつに再生してしまった。
「しぶとい上にしつこい。まったく、随分なモンスタークレーマーね。
 でも、チケット無しは退場よ、退場。ここはやり方を変えるしかないわ」
 ジュリアはそう言って、傍らに浮かぶ特徴的な形状のドローンを見やった。
「"グリュプス"。アレを止めなきゃこれまでの積み重ねが全部パァよ。
 バックアップは取っておくわ。囮の役目……やってくれるわよね?」
《――相変わらず乱暴な。仕方ない、好きにやらせてもらいますよ、まったく》
「高級オイルで手を打って頂戴。……さて、仕掛けるわよ!」
 ハンドサインに応じ、ドローンはバーニアを噴射して屍巨人に接敵。
 迎え撃つチェーンソー攻撃を曲芸的軌道で回避し、敵の周囲を飛んで撹乱する。
「あれだけのでかいのが相手ならば、こちらも巨大なのが必要ですね」
 その状況を静観していたシャルロッテ・ヴェイロンは、不敵に笑ってそう言った。
 そして彼女がパチンと指を鳴らすと――ずしん、と背後に現れた巨大な鋼!
 ユーベルコードによって召喚された、屍巨人に匹敵する巨大ロボットである!
 おあつらえ向きに、両手の武装もゾンビジャイアントと同じものだ。
「追撃します、最適な攻撃タイミングを測ってください。巻き添えも問題ないです。
 破壊されたとしてもまた召喚できますからね――さあ、行きなさいッ!」
 ドッシ、ドッシ、ドッシ……グオオオオ、ギャリギャリギャリギャリッ!!
 鏡合わせめいた巨大チェーンソーが鍔迫り合いし、文字通り鎬を削る。
 火花が飛び散り、宵闇に包まれつつある荒野に不吉で不穏な灯りをもたらした。
 膂力はあちらが上か。関節部からスパークしながら、ロボットは奮戦!
 ビーム砲が致命的部位を狙うたび、"グリュプス"が妨害し敵を追い詰める!

 ――GRRRRRR……AAAARRRGH!!!

 苛立ちがゾンビジャイアントの腐った脳髄を支配する。
 本能に支配された屍巨人は、目の前でちょこまかする機械を見過ごせない。
 肉であろうと機械であろうと捕食するその見境のなさが、相手に災いしたのだ。
(時間は稼げてる、こうなったら同時攻撃で腕と体内を叩くしかないわね……)
 後方で予測演算しながら状況を見守るアルマは、心のなかでひとりごちた。
 彼女は自らの愛用する"レッドラム"をレールカノン化し、がしゃりと構えた。
 一瞬。一瞬の間隙さえあれば、奴の左腕を肩から撃ち抜いてみせよう。
 たとえ銃身が焼き付こうと、再生しようと、何度でも撃ち抜いてみせる。
 そうすれば奴はこちらに突撃し……そこを、集中砲火で叩けばいい。
 だが。シャルロッテのロボットは、僅かにゾンビジャイアントに力負けしている。
 膂力で圧倒し、身動きを止めるには至らない。あと一手が足らないのだ!
「誰か、あいつの足を止めてくれれば楽なのに……!」
「――おお、ナイスタイミングですね。得意ですよ、そういう嫌がらせ」
「「!」」
 ジュリアは、そしてアルマも、弾かれたように声の主を見た。
 にこやかに人のいい笑みを浮かべた桜色の髪を持つ少年。そして!
「あんなキモカワイイからカワイイを引いたような化け物は勘弁ですよね。
 ヤダー、近寄りたくなーい。……だから、遠くから悪さ、しちゃいましょう!」
 つい、と指を向けて示したのは、ゾンビジャイアントの足元。
 見よ。巨大ロボットの影と重なり合ったそこが、不可思議に起き上がった。
 影は蔦めいてのたうち……茨のフォルムを形作る。不可思議なるUDC!
「知恵と化け物は使いよう、ですよ。目には目を、とも言いますし?
 わざわざ人型になって、二本足で体を支えてるなら――足止めの意味はある!」
 スパイクめいた茨はうねうねとひとりでに蠢き、巨人の両足に絡みついた。
 鋼めいて鋭いトゲが、腐った肉に食い込み、そして締め付ける!

 ――AAAARRRRRGH!?!?

「おや、痛覚あるんですねぇ。それはなにより、痛いし苦しいでしょう?」
 狭筵・桜人は嬉しそうに笑い、ちらりとジュリアとアルマを見やった。
「――ぶちこんでやるわ、その臭い口に!!」
 瞬時に銃器を構えたジュリアは、躊躇なくグレネードを投げつけた。
 狙いは大きく開かれた口。それは特殊セメント入りのとっておきだ!
 KA-BOOOOM……!! 強烈な爆発が、ゾンビジャイアントの動きを鈍らせる!
「クークーさん、ここは盛り上げどころですよ。ひとつ楽曲でも披露してください」
「えっ? ……わかった。ワタシの歌が、戦いに役立つなら――!」
 シャルロッテの言葉に、呆然としていたクークーは楽曲データを再生した。
 がなりたてるようなハードロックが戦場のテンポを早める。巨大ロボの追い打ち!
 ビーム砲をゼロ距離で叩き込み、巨大な口を灼き焦がして怯ませる!
「瞬きしてる暇もないわよ――喰らいなさい!」
「全員、一斉砲火(ファイア)よ!!」
 アルマのレールカノンが、ジュリアと現地住民らの一斉砲火が!
 ビーム砲つきの左腕を貫き、全身を穿ち、砲火によって敵の屍肉を焼き尽くす――!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

草野・千秋
クークーさんと約束したんです
ゾンビとのドンパチは僕らが解決させるって
解決したらラジオだってまたできるはず
住む地球は違えど音楽を愛する気持ちは変わらない
僕はまたラジオが聴きたい

ゾンビジャイアント、その形態に至るまで
どれまでの『個』を潰し犠牲にしてきたのか
『彼ら』も元は『人間』ではあったのでしょうが
ここはもうお前達の生きていていい世界ではない
骸の海に帰るがいい

肉弾戦でしたら僕にお任せ下さいとおびき寄せ
勇気でこの戦いに挑む
武器改造で全ての攻撃に炎の属性攻撃を纏わせる
前のめりで捨て身の一撃
怪力、2回攻撃、グラップルで攻撃
激痛耐性、盾受けで攻撃を耐えて
敵攻撃は見方に及ぶならかばう


レパル・リオン
とうとう出たわね…巨大ゾンビ怪人!!

……【変身】!
魔法猟兵イェーガー・レパル!参上!

うおおおっ!チェーンソーはとにかく気合いでよける!勘でよける!
攻撃の後の隙を狙っていくわ!相手がゾンビで、肉でできてるなら!あたしの爪(比喩でない)で切り裂けるっ!そんで腕やら足やらを切り落とすわ!
繋げて回復とかできないように、切った部分はキッチリ焼却していくわよ!

ヤバいだけの奴なら色々相手してるっての!
世界を救わなきゃならないってのに!こんな所でやられてられるかーっ!


アンコ・パッフェルベル
…独り死者の群れに挑まんと一度は腹を決めた少女が、
今は仲間達と轡を並べ、脅威に立ち向かっている。
うんうん、それも冒険ですね。私好みのストーリーです。
ハッピーに終わらせる為にも、
大一番。ここは真面目に行きましょうです。
ぽちぽち手鏡を操作し、BVA道士服に早着替え。

さあさ、死人は土へ…いえ、骸の海へ還るお時間です。
雲中子さんをユベコで降ろし、浮遊装甲を地面に潜らせ準備完了。
常人を遥かに超越した仙人の感覚でひらりひらりーと攻撃を躱し、
敵にニガい思いをさせながら誘き寄せっ。

今です!宝貝(パオペエ)・通天神火柱っ!
敵の周囲に立ち上るは浮遊装甲が変じた八本の柱。
柱より四十九の火竜が現れこんがり焼くです!



●還るべきところ
 爆発、炸裂、そして集中砲火。
 並のオブリビオンなら十度は死んでいるであろう立て続けの超火力。
 ゾンビジャイアントは――健在である。再生能力はもはや異常の域であった。
 焼け焦げ炭化した肉体がぐちゅぐちゅと音を立てて蠕動し、再生し、
 ちぎれた左腕がひとりでに動き、切断面を無理矢理につなぎ合わせ再動した!
「なんておぞましい……その形態に至るまで、どれだけの"個"を犠牲に……!」
 草野・千秋は装甲を纏ったまま、怒りとともに地を蹴って疾走した。
「あのゾンビも、"彼ら"も元は"人間"だった! だが結局はあのざまだ!
 ここはもう、お前達の存在していい世界ではない……骸の海へ、還れ!!」
 振り下ろされるチェーンソー、千秋はそれを真正面から受けた!
 両腕をクロスガードして受け止める。鋸刃がギャリギャリと蠢き装甲を削る!
「ぐ、ぅううう……っ!! それでも、僕は……絶対に、退かない!!」
 ヒーローを名乗るものとしての矜持、猟兵としての責務と義務感。
 それもある。だが、彼はここに生きる人々の姿をその目で見、耳にしてきた。
 肌で感じたその声が、その喜びが、生きようとするひたむきさが。
 彼の心を突き動かしているのだ――ここで、それを潰えさせてはならないと!
「わ、ワタシたちも……!」
「おっと、クークーさん。せっかくここまで来たのに無謀は勘弁ですよ?」
 千秋の奮戦ぶりに思わず急ぎかけたクークーを、アンコ・パッフェルベルが制した。
 そしてにこりと微笑み、現地住民らを、戦う猟兵たちを見やる。
「……独り死者の群れに挑まんと一度は腹を決めた少女が、希望を知った。
 そして今は仲間たちと轡を並べ、恐るべき脅威に立ち向かおうとしている……」
 うんうん、と少女は頷く。嬉しそうに。
「それも冒険ですね。私好みのストーリー、ハッピーに終わらせてみせますよ」
 そう言って手鏡を操作すると、その体は光に包まれて瞬時に道士服に変じた。
「さあさ、死人は土へ……いえ、骸の海へ還るお時間です。いざや来たれ仙人よ!
 終南山玉柱洞に住まいし闡教仙、金霞童子の姉――雲中子さん、来ませぃ!」
 その身に宿りしは、中朝の歴史深き小説にその名を残す伝説の仙人。
 アンコは浮遊装甲を地面に潜らせ、軽功によってひらりと空中を浮遊する!
「か、かっこいい……! で、でもあたしだって、変身ぐらい出来るんだから!
 ――さあ、行くわよゾンビ怪人! 魔法猟兵イェーガー・レパル! 参上!!」
 その背中を見送ったレパル・リオンもまた、生命誕生のパワーを覚醒させ、
 ライオンをモチーフとした魔法少女のコスチュームに身を包む。
 そしてマントをはためかせ、高速飛翔。再びチェーンソーを振り上げた巨体に、
 速度を乗せたまっすぐな飛び蹴りを……SMAAAAAASH!! 叩き込む!

 ――AAAAARRRRGGH!?!?!?

「まだまだっ! こんなもんじゃないわよ、あたし達の力はっ!!」
 ひとつ、ふたつ、みっつ! 立て続けの攻撃がゾンビジャイアントを揺るがす。
 そして片腕に全膂力を注ぎ込み、鋼をも切り裂く爪を展開した!
「っせぇええええいっ!! こんなとこでやられてやれるかーっ!!」
 SLASH!! 裂帛の気合とともに放たれた爪擊が、腐った肉をぞぶりとえぐる。
 焼け焦げる傷跡が再生を阻害し、その痛みに屍巨人はもんどり打った!
「この世界で生きる人々の希望となるために……僕らは、負けない!」
 そして体勢を整えた千秋もまた、拳に炎を纏い捨て身の攻撃を叩き込んだ。
 焼け焦げた傷口に鋼の拳がえぐりこみ、強烈なソバットが脇腹を貫いた!
 その時、アンコの目がぎらりと輝いた。彼女も法力を解き放つ。
「屍体の塊は焼いて消毒するのに限りますね――宝貝(パオペエ)・通天神火柱っ!」
 カカカカカカッ! 地面から突き立つは、浮遊装甲が変じた八本の柱。
 吹き飛ばされたゾンビジャイアントの周囲に現れた柱は屍巨人を閉じ込め、
 そして柱から出現した四十と九の火竜が泳ぎ――炎を撒き散らす!

 ――GGG……RRRRAAAAAAHHHHH!!!!

「これぞ四海封災術。我が身、我が手に名高き神仙の力あり!
 そして我らは猟兵、すなわち群れをなしてオブリビオンを倒すものっ!」
「負けないわよ、絶対に! アンタを倒して、生きて帰るんだから!」
「……決着をつけるとしましょう。もはや、お前に朝日は拝ませない……!」
 戦士たちは肩を並べて身構える。その攻撃は、たしかに敵を追い詰めていた。
 すなわち、戻ることなき滅びの道へ。勝利という朝日を目指して!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

エドゥアルト・ルーデル
こういう敵って苦労する割には倒しても実入りが少ねぇから困る
どうして拙者に気持ちよく略奪させねぇんだ!

ダーク・クロヒゲマンは実入りが少ないなら敵を最大限おちょくって遊びたい気持ちをコントロールできない…
拙者は【罠使い】だけどおちょくる準備のために罠を張るのがいいんじゃないのかい?とばかりに爆発物を設置しておきますぞ
罠設置後は罠を背にヒャァーっと敵を逆立威嚇しながら挑発でござる!拙者を見ろ!
怒った敵がこちらに来たら【捕食攻撃】を【直感】にて先読みし曲芸のように飛び越えたりしながら回避でござる
避けた先には火薬量を盛るペコした罠が盛り沢山!連続攻撃を中止できない敵!
(今更気づいても)おそいよ…


数宮・多喜
【アドリブ改変・連携大歓迎】
クークー。
ジングルを鳴らしとくれ。
再開を決めた、記念の放送をね!
早速のリクエストさ、
エイティーズのメタルロックがイイな!
ゾンビにゃやっぱりロックが付き物、
ノリにノってカブで走り回るよ!

開けた戦場にデカブツ相手なら、
スピードでかき回すよ!
特に噛み付き攻撃は『マヒ攻撃』の
電撃を飛ばして怯ませる。
そうして動きを鈍らせて、
【黄泉送る檻】の聖句を歌い上げる。
ロックのリズムに乗せて、
激しくぶちかましてやろうじゃないのさ!

後ろのシートはまた空いてるさ、
相乗り大歓迎ってね!



●アポカリプス・メタル・ロック
 がなりたてるようなギターと、突き刺すようなドラムがリズムを刻む。
 混迷の荒野に響き渡るのは、古めかしいエイティーズ・メタルロックだ。
 BRATATATA!! BRATATATATATA!! 示し合わせたような規則的なマズルフラッシュ。
 鼓膜を引き裂くような狂騒曲のなかで、数宮・多喜は曲芸的にカブを駆っている。
 ああ、心地いい。生きるか死ぬかの瀬戸際で、こんなゴキゲンなナンバーとは!
 猟兵のリクエストを受けて流れ出したクークーの音楽は、
 スリルと興奮に弾む多喜のハートのリズムと噛み合っていた。
「そらそら、鬼さんこちら、手のなる方へ! ってねぇ!」
 ギャリリリリリッ!! ひび割れた土にバーンナウトを刻み、鋭角ドリフト。
 曲がり損ねたゾンビジャイアントの巨足がそれを砕く。丁々発止のチェイス!
「それだけのデカブツじゃあ、こっちのスピードにゃ追いつけないだろう?
 だけど止まってなんてやらないよ。腹が減ったなら気張ってごらん食いしん坊!」

 ――AAAAARRRRRGGHHH!!!!!

 大地を震わせるほどの咆哮でロック・サウンドをかき消し、屍巨人が跳んだ。
 先読みしたコースに回り込んで、退路を塞ごうというわけか。
 しかし、甘い。多喜の反射神経ならば、即座のコース変更など余裕である。
 ギアを切り替えスロットルを開き、ジャックナイフして進路を切り替える。
 ゾンビジャイアントの真横をすり抜けざま、嫌がらせのような電撃攻撃!
「ハッハァ! いいざまだ! ますます気分がノッてきたよ!」
「それはなによりでござる! てなわけでタンデムするでござるよ」
「っととぉ!?」
 その時である。ひゅーん、と真上から落ちてきたエドゥアルト・ルーデルが、
 空席の後部座席にホールインワン。思わぬ重量に宇宙カブが揺らいだ。
「ってアンタ! 乗るのはいいけどもう少し前触れをくれないかい!?」
「いやあ、拙者ついさっきまでトラップ作りに勤しんでいたものゆえ」
「トラップ……? ……ははあ、なるほど。そこまで誘い込めってわけだね?」
 多喜は肩越しにエドゥアルトを振り返り、ニヤリと笑った。
 ……そして、呆れた。なぜかエドゥアルトは敵を挑発していたからだ。
 しかも器用なことに、後部座席の上で逆立ちして、である。なぜ逆立ち!?
「アンタね!? 振り落とされたいのかい!?」
「ヒャアー! 拙者実入りの少ない戦いは嫌いでござる! 気持ちよく略奪したい!」
「それはそれでダメ人間だねぇ……ま、とにかくどっちに行きゃいいんだ!」
 座り直したエドゥアルトはアサルトライフルをぶっ放し敵を牽制しながら、
 振り返らないまま多喜の肩を叩き、進むべき方角と距離を知らせる。
「ちなみに爆薬たんまりでござるゆえ、うまいこと飛び越えてほしいのでござる」
「それを最初に言いなよ! ――ま、そのぐらい朝飯前だが、ねえっ!」
 指定ポイントに到達した多喜は、巧みなドライビングテクニックで高く跳躍。
 それを追って、まんまと地雷原に踏み込むゾンビジャイアント――KA-BOOOOM!!
 着地したカブの背後で、地形を変えそうなほどの爆発が噴き上がった!
「さすがだぞ! 特撮ヒーローのお約束をわかっているんでござるな!!」
「別に狙ったわけじゃないんだけどね……ありゃ堪えただろうさ!」
 エンジン音の陰で、多喜はリズミカルにユーベルコードの聖句を読み上げた。
 爆炎の中から飛び出そうとした屍巨人を、電撃を纏う超常の檻が包み込む。
 時間差でさらなる地雷の爆発! さらに、支援射撃が雨あられと降り注いだ!
「小回りが効かず攻撃を避けられないのが特徴。でござるな」
「相手するにゃ好都合だ、この調子でまだまだ攻めるよ!」
 多喜はカブを鋭くターンさせ――ゾンビジャイアントへ挑みかかった。
 ロック・サウンドが最高潮に達する。ショータイムはここからだ!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

フェルト・フィルファーデン
これが、人……?何をどうすればこんな、異形の……
いえ、今は考えるのは後回しよ。……誰一人、死なせはしないんだから。

「さあ、行きましょう、ワタシ。クークー様を、人々を救うために」
『ええ、行きましょう、わたし。絶望を打ち払い、世界を救うために」

することは至極単純、わたしとワタシ、そして操る人形騎士達で挟撃するわ。
高速で飛び回り【空中戦】を仕掛け、目にも止まらぬ【早業】で捕食を避けて、その一瞬の隙を突くわ。
ええ、それでもどこまで避けれるかわからない。でもいいの。わたしとワタシは何方もが本命であり何方も囮。少しの間なら【激痛耐性】で耐えてみせる。何方かが捕食された瞬間、それがアナタの終わりよ……!



●双影の妖舞
 オブリビオンストーム――世界そのものを引き裂く終末の前触れ。
 あれこそがこの世界を、"アポカリプスヘル"という呪われた地に変えた。
 なにがあんなものを生み出した。どうすれば払えるのか。まだ何も分からない。
 たしかなのは、あの地平線の彼方に渦巻き続ける超常の嵐が存在する限り、
 この世界を真の意味で救い、未来を守り抜くことは出来ない……ということだ。
「さあ、行きましょう、ワタシ。クークー様を、人々を救うために」
『ええ、行きましょう、わたし。絶望を打ち払い、世界を救うために』
 ふたりのフェルト・フィルファーデンが向かい合い、頷きあった。
 ユーベルコードによって生み出された絡繰人形。鏡像めいたもうひとりのフェルト。
 まったく同一の存在ゆえに、どちらが本物か見破ることは極めて困難だ。
 あるいは、使命と義務のために戦うならば本物など最初から存在しないのか。
 ……否。かつてはそうだったかもしれない。だが、今はもう違う。
 彼女は真実を、現実を認識し、しかと受け止めて戦っていた。
「『続きなさい、ワタシ/ワタシの人形騎士たちよ!』」
 無数の人形騎士たちが、ふたりのフェルトに付き従い刃を弓を槍を掲げる。
 迎え撃つのは咆哮。ゾンビジャイアントはチェーンソーを薙ぎ払う。
 だが、疾い。フェルトと騎士たちの舞うような空中戦は残像を生み出すほど!
 目にも留まらぬ早業で、腐った肉を切り裂き翻弄する。

 ――GRRRRRR……!!

 苛立つゾンビジャイアントは、ひたすらにフェルトを捕食しようと暴れた。
 涎を垂らして傷も厭わずに暴れ狂い、どうにかしてその肉を喰らおうとする。
 なんとおぞましき執念。しかしあれも、かつてはヒトだったはずなのだ。
「哀れね、そして無様だわ……さあ、ワタシ。引導を渡してあげましょう」
『そうね、わたし。あんなものを、これ以上この世界に存在させてはならない』
 ふたりのフェルトが並んで翔んだ。いけない、それでは飛んで火に入る夏の虫だ。
 ゾンビジャイアントは、ただ接近を待ち構えて捕食すればいいだけなのだから!

 ……だが、それははじめから"織り込み済み"だった。
 ゾンビジャイアントが捕食したのは、人形のほうのフェルト。
 彼女が身を挺して勝ち得た時間こそが、本体にとっての好機である。
「――わたしの人形騎士たちよ。あのおぞましき敵を、ともに討つのよ!」
 弓が放たれ傷を穿ち、先触れとなったランスが巨体を縫い止める。
 そして絶叫するゾンビジャイアントを、騎士と王女の刃が切り裂き……一撃をもたらすのだ!

大成功 🔵​🔵​🔵​

アラン・サリュドュロワ
マリークロード(f19286)と
無茶をする貴方を止めるのも職務ですが…全く、俺もつくづく甘い
はい、殿下。私は貴方の盾、常に傍らにおりましょう

主を背にかばい、巨漢の足下へ向けて走る
狙うは至近距離からの一撃
襲い来る肉片は《武器受け》で防ぎ
彼が察知した砲弾から《手をつなぎ》引いて避けるのを助ける
チェーンソーが下ろされたときは逆に好機だ
さすがにさばくのは難しいだろうが
《激痛耐性》と背後から聴こえる旋律が己を支える
主が捨てられない情ごと、守る力を手にしよう
《カウンター》でその腕を狙い斬撃を放ち

ジゼル、その砲を防げ!

間髪いれず召喚した愛し仔に命じれば
マントをさばき道を開いた
君が照らす道だ、思うままに進め


マリークロード・バトルゥール
アラン(f19285)を伴に

アラン、討つ為の路を開きなさい
怖くないわ。わたくしには信ずる騎士が傍に居るもの
行きましょう。生きる為に

騎士と伴に巨漢の攻撃を避けるよう隙間を縫って動く
砲口が準備音を≪聞き耳≫で聞き取っては、着弾地点を予想
砲撃寸前に≪フェイント≫を掛け空振りを目論む
一発でも被弾を防げれば結構よ!
防御の隙に声響かせて傷を癒しましょう

「進め」と開かれたマントの向こう
≪ジャンプ≫で攻撃を躱し迫る腕を蹴って登る
狙うは脊椎の≪部位破壊≫。原型無きヒトガタの急所を穿つ
名も亡き人らよ、安らかに逝きなさい
何れ「俺」も同じ道を辿る
その時は――迎えて頂戴ね
命を終わらせるべく力強く握りしめた刃を振り被った



●名も亡きモノたちへの鎮魂歌
 ZAAAAAP!! ……空気を灼き焦がし、左腕のビーム砲が日を噴いた。
 屍肉と融合したそれは、ゾンビジャイアントの不浄な生命力で稼働する。
 すなわち、エネルギーは無尽蔵。そして破壊力は折り紙付きだ。
 言わずもがな、ふたりですら直撃すれば即死は免れないだろう。
 ゆえに。この場においては、アラン・サリュドュロワが前衛を担った。
 迸る閃光を氷槍ジゼルで角度をつけて弾き、熱量をかろうじて受け流す。
 絶対に正面から受けてはならない――そら見ろ、防御したところへ急激な接近。
 大地を砕きながら間合いに踏み込んだ屍巨人が、右腕を振り上げる。
 ギャルギャルといびつな音を立て、血錆にまみれたチェーンソーが呻く。
 あれもまた、直撃は即死である。ゆえに、ふたりは全力で飛び退った。
 アランの背後に守られていたマリークロード・バトルゥールもまた同様に。
 一撃一撃が致命打。一瞬たりとて油断出来ぬ戦い……鉄火場にも慣れたものだ。
「殿下、ご無事ですか? やはりやめるということならば止めませんが」
「……アラン、わかっていて聞いているでしょう? 最初に言ったとおりです」
 慎重に敵との間合いを測りながらのアランの言葉に、マリークロードは言った。
 "アラン、あれを討つための路(みち)を拓きなさい"。
 無理難題もいいところだ。しかし、マリークロードはそうせよと命じた。
 ならば、そのように路を整えることこそ、騎士の本懐である。
 ――たとえそれが偽りのものであれ。ふたりがそうあると決めたならば。
「……まったく、俺もつくづく甘い」
 アランは聞こえるかどうかの声でひとりごちて、氷槍を構え直した。
「私はあなたの盾。常に傍らにおりましょう――参りますよ」
「ええ、わたくしの騎士。行きましょう。生きるために」
 再びふたりは地を蹴った。直後、ふたりのいた場所をビーム砲が薙ぎ払う。
 頭上すれすれを駆け抜けた閃光に怯むことなく、股下をめざしてスプリント。
 相手はそれを予期していたか、右腕のチェーンソーを横薙ぎに振るった。
 アランは――あえて、踏み込んだ。鋸刃が迫り、それを斧槍の柄で受け止める。
 一瞬の拮抗。その間にアランは右腕の付け根へ、マリークロードは前へ。
 曲芸的な身のこなしと体重移動でチェーンソーの直撃と柄の破砕を避けて、
 まず縦に刃を振るった。屍肉が抉れ、チェーンソーの動きが鈍る。
「――ジゼル、その砲を防げッ!!」
 声とともに、彼の担うハルバードから、愛しき仔が召喚され羽ばたいた。
 見据える先は左上。マリークロードを狙い撃とうとしているビーム砲の肩口!
 ばさりとアランのマントがはためき、主の進むべき路を拓いた。

 ……召喚された龍がビーム砲に食らいつき、再び閃光を逸したとき、
 エアポケットめいた静寂が訪れた。その中で、マリークロードだけが動いている。
 静かに響くのは、彼が口ずさむ旋律。ふたりの背中を押し歩かせる力。
 見据えるのは腐れた巨体、数多の屍を捏ね合わせて築き上げられた異形。
 それを生み出すために、どれだけの屍が費やされたのか。
 それが暴れ狂うことで、どれだけの命が奪われたのか。
 もはやわかるまい。そして、数えたところで意味はない。
「――名も亡き人らよ。せめてどうか、やすらかに」
 祈りめいて呟き、マリークロードは跳躍して刃を振るった。
(いずれ、"俺"も同じ道を辿る。だから、そのときは――)
 どうか……ひとりの男として人間として、偽ることのないいのちとして。
 役目を全うした自分を、せめて迎えてほしい。

 誰にも届かぬ言葉は巨人の咆哮に遮られ、呪われた血が噴き出した。
 刃から伝わった手応えは、哀しいほどに慣れたヒトのそれと同じだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

誘名・櫻宵
🌸櫻沫
アドリブ歓迎

あらあら!
醜くくって可愛らしいわ!
一周まわって美しい、こんな化物がいるのねぇ
どんな斬り心地なのかしら?
斬って、殺して、愛させて!

拗ねるリルを一撫で刀を構え
宿す破魔に吹雪かせる生命力吸収の桜花
蕩ける歌に踊るよう、斬撃に呪殺弾重ねて放ち
傷を抉れば重ねるよう2回攻撃
攻撃をオーラでいなし受け止めカウンター

飢えは辛いわ
わかるわ
でもあたしは愛する人しか食べないの
グルメだもの
あなたとは違うのよ…それに
誰も食べさせないわ!
拠り所である枯れた湖を守りましょ!
だってあたしは陰陽師!
その醜魂ごと、斬り祓ってあげる
リルの歌を追い風に渾身の力で奮い放つ「絶華」

散り際くらいは美しく
綺麗な血桜咲かせてよ


リル・ルリ
🐟櫻沫
アドリブ歓迎

ええ?あれのどこが可愛いの?
よくわからないけれど君がそういうならそうなんだろう
僕は櫻宵を理解する

僕のすることは変わらない
君を守る
クークー達の大事なこの場所も
死の蠢く荒野を君と駆けて桜と歌を咲かせよう
僕は歌
死の世界に響かせよう―美しい櫻を彩る歌を
鼓舞を乗せた歌声で櫻宵を応援して
オーラ防御の泡沫で君を守り支援する
誘惑蕩かす歌声で敵を誘う『魅惑の歌』
搦めて捕らえて溺れさせて
僕の櫻は傷つけさせない

はらぺこは嫌だけど
僕を?
ツッコミどころしかないな
君になら食べられてあげてもいいけど
もっと一緒にいたいから我慢して

そうだよ
守るんだから
僕の歌と君の刀と
たくさんの、枯れた湖を満たす命達の想いで



●枯れた湖に咲き誇る花
 この地からいのちは失われて久しい。
 人々は食糧はおろか水の調達にすら事欠き、日々をかろうじて生きている。
 陰陽師である誘名・櫻宵にも、人魚であるリル・ルリにも、
 見て聞いた拠点の様子だけでなく、超自然的な魔力感覚としてそれがわかるのだ。
 この地には、あるべき活力――霊脈や龍脈と呼ばれるもの――が、ない。
 それでもここは他の荒野に比べればマシなほうで、だから人々は拠り集まる。
 そんな場所を、いのちも知性もない屍巨人に蹂躙させることなど、
 いくらふたりですら見過ごすことは出来なかった――だから、戦うのだ。
「本当に可愛い子! いくら斬っても裂いても倒れない、本当に本当に楽しいわ!」
 櫻宵は微笑みながらそう言って、まず横薙ぎの斬撃をひとつ。
 勢いを殺さずにくるりとステップを踏んで一回転、重ねて斬撃をもうひとつ。
 鋼鉄すらも両断するであろう鋭利な斬撃がふたつ。骨まで裂いて向こうが見えた。
 しかし裂け目からは菌類めいた肉のワイヤーが湧いて互いに結び合うと、
 ぐじゅぐじゅと忌まわしい音を立てて再生する。……それも遅くなりつつある。
「櫻! そんなの全然可愛くないよ。君がそういうならそうなんだろうけど……」
 後ろで見守り呪歌と泡沫のオーラで彼を守るリルは、拗ねたように言った。
 けれども、嬉しい。櫻宵というひとの、理解できない領域がまだあることが。
 それを理解できる喜びが。だから高らかに、奇跡のように澄んだ歌を口ずさむ。
「花よ咲き誇れ/いのちなきこの荒野に/ひび割れた灰色を桜色で染めておくれ」
 その歌詞を現実にするかのように、櫻宵が舞うたび桜吹雪が吹き荒れた。
「誰も知らない"いつか"の時と同じように/澄んだ水面の代わりにその花びらで。
 枯れた湖を埋め尽くして/この心も沈めてしまいたい。愛しき桜の水底へ――」
 歌声に籠められたいとおしさは、敵対者にとっては呪いとなる。
 呪いとは表裏一体である。それは祝福になれば害意にもなるのだ。
 歌声は櫻宵の背中を押し、剣を振るう手を軽くさせ、足取りを弾ませた。
 対してゾンビジャイアントの巨体を縛り、振るわれる鋸刃を鈍くする。
「辛そうね。ええ、ええ、わかるわ。だって飢えは辛いもの」
 けして満たされることのない飢餓を嘆くように、ゾンビジャイアントは吠える。
 櫻宵はつかの間瞼を伏せて、その哀れな雄叫びに憂いを浮かべた。
「――でもね、あたしは愛するひとしか食べないの。美食家(グルメ)だもの!」
 だから、あなたとは違うの。それにもう、食べさせたりしない。もう誰も。
 美しき木龍は歌声に乗せてそう告げて、斬撃をもうひとつ。もうひとつ。
 呪いを籠めた殺意の弾丸が筋繊維を吹き飛ばし、切り裂くべき間隙を生んだ。
「君になら食べられてあげてもいいよ。けれど僕はもっと一緒にいたい」
 歌声がその声に応えた。
「だから我慢して。――早く、斬ってしまってよ。僕らを脅かすそれを」
「ええ、ええ、もちろんよ! 桜のように、斬りましょう。殺しましょう!」
 ぐるんと身をねじり、あらん限りの力を込めて愛刀を握りしめる。
 はたして放たれたのは絶華の一撃。空間すらも両断せしめる絶無の刃。
 一撃は皮膚を裂き、肉を斬り、骨を絶ち、その存在そのものを断裂した。
 雄叫び――表現されるものは苦痛。失われたはずの痛覚すら呼び起こす一撃。
 くずおれる巨体を見て、その手応えに櫻宵はうっとりと微笑んだ。
 重力が己の役目を思い出したように、舞い散る桜の花々を地面へと引き寄せる。
 枯れてひび割れたかつての湖を、ぞっとするような鮮やかな花が覆っていく……。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ネグル・ギュネス
【アサルト】
ああそうだ、オレ達は負けねぇ、朽ちねぇ、砕けねぇ。
其の切り込みは、このネグル・ギュネスが引き受ける!

そしてその希望に力を灯すのは──新たなトリガー、 ≪強襲具現:冬寂の采配 ≫
暴威と外道に、冬寂を齎すべくした力を、今!

全員に力が行き渡れば、Phantomに乗り込み、デカブツに突貫!
強化した速度で引っ掻き回し、脚を刀で叩き、チェーンソーの凶刃を受け流し、斬り払う!

能力を限界まで引き上げた今なら、足止めぐらいわけはない!

そして脚を止めたならば、其処は地獄の一丁目だ
──頼むぜ、ブチ抜け!!

この戦いの勝ちが、明日への希望の道への一歩となる!
クークーの為に、街の人の為なら、オレが負けるかァ!


鳴宮・匡
【アサルト】


常に凪いであれ、と教えられたことを思い出す
戦うための力も、その術も、すべてをくれた人がいた
そうであったことを、だから喪ったその痛みも
思い出せるようになったから

今なら――それを“生きるため”に
こいつらと並んで戦い抜く為に使えると思う

【静海響鳴】――全てを研ぎ澄ませて相手を“視る”
その挙動も、思考も、癖も、弱点も
観察して読み取った全てを、戦うための糧にする
動き出しさえ捉えれば攻撃を見切るのは難しくない
隙を晒す瞬間が判ればより効率的にダメージを与えられる

二人の攻撃と回避を助ける援護射撃も交えながら
着実にダメージを重ねるよ

悪いがお前にくれてやるものは何一つない
骸らしく、黙って骸の海に還りな


ヴィクティム・ウィンターミュート
【アサルト】

オイオイ、こりゃまたテンプレートみてーなフリークスだな
ゾンビアクションにクリーチャーは付き物だが──
クークーのレディオにテメェは似合わねえな
さぁ行こうぜ!強襲の時間だ!

ハッハー!良い具合だろネグル!
前線にいるお前こそ、誰よりも輝くセイリオスさ!
そして俺は、その星の輝きに潜む名無し
近づいて押しまくるネグルに気ィ取られて気づかねえよな…俺に
クローク起動、【忍び足】とと【目立たない】で隠れる
狙うは捕食攻撃後の隙
【ダッシュ】で一気に近づいて、『口の中』にナイフをぶち込む
内部は痛いだろ?おまけにネグルの強化が入ってる

レディオの準備をしな!
今宵のナンバーはフリークスの絶叫…いや
勝利の雄叫びだ!



●枯れた湖、碧の狼、凪の海
 ギャ、ギャ……ギャルギャルギャル、ガガガガガッ!!
 戦闘の余波であちこちがクレーター状にデコボコになった荒野を、
 飢えた狼の遠吠えめいたエンジン音を立て、ネグル・ギュネスが疾走する。
 常の彼の――そして相棒であるSR・ファントムの――速度を知る者なら、
 元より疾く鋭いそのドライブが、さらに研ぎ澄まされていることに驚いただろう。
 然り。いまのネグルとその相棒を、ふたつでひとつの鋼を突き動かすのは、
 ネグルの裡にて燃え上がる正義と怒りの炎だけではない。
「ハッハー! いい具合だろネグル! それがお前だ、それでこそお前だ!
 誰よりも疾く、誰よりも前に居るお前こそ、誰よりも輝くセイリオスさ!」
 そのスピードと煌めきを見て、ヴィクティム・ウィンターミュートは快哉をあげた。
 電子の速度で思考する端役(コマンダー)・ヴィクティム。
 彼のもたらした電脳魔術が、ネグルの卓越された知覚能力と演算能力に合わさり、
 何者も追いつけぬ冬寂(ウィンターミュート)の瞬間を生み出す。
 それこそがチーム・アサルトだ。数多の強敵を打ち倒してきた戦士の力だ。
「オレ達は負けねぇ。朽ちねぇ。砕けねぇ。捉えてみろ、木偶の坊!!」
 極限まで強化されたスピードに、ゾンビジャイアントはどうしても追いつけず、
 それでもなおも悪あがきするようにチェーンソーを振るい砲撃するたび、
 戒めめいた斬撃が足を、脚を、胴体を、腕を、頭部を切り裂き砕くのである。

 敵は追い詰められている。
 無限と錯覚してしまいそうなほどに強大な再生能力は、
 これまでの猟兵達の猛攻撃を浴びて、目に見えて明らかに低下していた。
 いわんや、それが鷹の目のように鋭敏な鳴宮・匡の瞳であるならば、
 もはやゾンビジャイアントの存在力が枯渇しつつあることは一目瞭然と言えよう。
 動き、ダメージ、再生速度、反応速度、防御力……あるいは攻撃の威力。
 匡の瞳はその一挙一動をコマ送りの映像めいて仔細に捉え、
 その耳は筋肉の音すらも聴き取って、得られた情報を思考に繋げるのだ。
「お前、もうボロボロだぜ。諦めるって選択肢を採れないのは面倒だな」
 あるいはゾンビジャイアントに、一生命体としての然るべき知性があったなら、
(もちろん、相応の潔さを備えていたならばという前提でだが)
 自らの最期を悟り、せめて悔いなく散ろうとしてみせたかもしれない。
 しかし脳髄まで腐った死の塊、屍の具現、歩き咆哮する腐肉の尖塔に、
 そんな選択肢はない――ましてや敵はオブリビオン。過去を以て未来を侵すモノ。
 咆哮し、激怒し、狂乱し、飢渇し、自らを破滅の渦として全てを呑もうとする。
 猟兵はそれを認めない。彼ら三人もけして、絶対に、それを許容しない。
 匡が的確なタイミングで放った弾丸は関節を、筋肉の要を、骨の接合部を貫き、
 砕き、滅ぼし、再生が追いつかぬほどの速度で自壊させて追い詰める。
 見た目は取り繕ったところで無駄だ。"そうなるように匡は撃っている"。
 加えてばらまかれた弾丸は、攻撃であり防御、そして滞空するトラップだ。
 たとえばネグルの進路を予測してチェーンソーを振り上げれば、
 それが振り下ろされようとした瞬間に肩口を弾丸が抉り、相棒への攻撃を阻止。
 ならばと左腕のビーム砲に生体レーザーの熱量が高まれば、
 それが己を貫く――いや、そもそも狙いを付ける前に弾丸が砲弾に到来。
 発射装置もろとも左腕を爆散させ、たたらを踏んだ敵は刀に切り刻まれる。
 そしてひと時も足を止めることなく、駆けて、近づき、攻撃が来れば避ける。
 表情は感情が抜け落ちたように何もない。人形めいてフラットだった。
「――悪いが、お前にくれてやるものは、なにもない」
 しかして心という水面は揺らがず。水底に無理矢理に沈むものはなく、
 ゆえに海は凪いである。無興味と停滞ではなく、前に進むための無心。
 かつてこの地にあったはずの湖と同じように、狂乱の戦場の中の静謐。
 だからよく響く。敵の狙いも、味方の声も、言葉に拠らないふたりの動きも。
 "痛みがあるからこそ、生きる実感を覚えられる"なんてありふれた言葉がある。
 皮肉なことに、彼を――彼の心を真の意味で"凪の海"たらしめたのは、
 "どうでもいい"と言って切り捨てることではなく、受け入れることで成された。
「もう潮時だろ。骸は骸らしく、黙って海に還りな」
 弾丸がもうひとつ。脊髄を貫いて敵の動きを強制的に停止させた。
「――あとは任せるぜ、ふたりとも。お前らなら、やれるだろ」
 トリガを引くたびにちくりと疼くこの胸の痛みが、生きようとする活力なのだ。

「おォッ!!」
 ネグルが吠えた。まっすぐに矢のように駆け、ジャックナイフ。
 速度と重さを乗せて前輪を叩きつけ、ギャルギャルと腐った肉を削る。
 骨を砕いて存在そのものを削り取る一撃。ダメ押しの愛刀が神経を断った。
 再生するまでの数秒、敵は腕も脚も動かせない。狙いすました好機。
「ここが地獄の一丁目だ、デカブツ。――頼むぞ、ぶち抜けッ!!」
 はたしていつのまにそこにいたのか。瞬間移動でもしたのか。
 苦悶と屈辱に大きく開かれた口の前、影がひとつ立っていた。
「ハロー、スクィッシー」
 影の男がそこにいた。ヴィクティム。姿を消し忍び寄っていたランナー。
 手にはガラスのナイフがひとつ。電脳の力を纏った銀の銃弾。
 好機とは必然の積み重ねの上にやってくる。死せざる屍をも殺す一撃。
「店じまいの時間だぜ――テメェの絶叫(こえ)はレディオにふさわしくねぇ」
 ぞぶりとナイフが体内を裂いた。胃を貫き心臓を貫き肉を骨を断ち切る。
 始まりは荒々しく、そして最期は静かに、気づかれることなく、素早く。
 それこそが強襲(アサルト)の流儀。屍の中枢に、一撃が食い込み存在へ抉り込む!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ジャスパー・ドゥルジー
【バンダースナッチの影】
全身を黒い炎に変化させる
これでも「斬れる」ってなら斬りゃァいい

炎のまま纏わりついて視界を阻害したり
腕だけ元に戻してナイフで斬りつけたり
トリッキーな動きで翻弄してやるぜ
連携する仲間がいりゃ積極的に補助に回る

あんな化物にひとりで立ち向かおうとしたって?
そりゃ役不足ってなモンだぜ
あんたがじゃねえよ、クークー
化物は化物同士喧嘩させときゃいいのさ
この「悪魔」みてェなさ!

誰かに危機が迫りゃ実体に戻り【激痛耐性】で【かばう】
その裂けた口よりでけえ傷を刻んでくれよ
善人演じるのも悪かねェが飽きるんだよな
あんたとは遠慮なく殺し合いが出来そうだ
覚悟しろよ


千桜・エリシャ
あら、これが黒幕ですの?
随分と醜い姿ですこと
そんなに大勢喰らって
あなた、ご自分が何者か説明できるのかしら?
…過ぎたる力は身を滅ぼす
所詮その力は寄せ集めの紛い物
首もありませんし
その分不相応な身体、ばらばらにして差し上げますわ

レーザーは花時雨を開いてオーラ防御
屍体と屍体、あるいは残骸の繋ぎ目を見切り
そこに狙いを定め斬撃を飛ばし解体
弱体化を狙いましょう

この刃は巨体を斬りつける度に犠牲者の魂を捕食する
――嗚呼、可哀想に
思わず浮かんだ言葉
それは犠牲者への言葉か
私に囚われてしまったことか
それとも――
何にせよ死人に口なし
私の強さの糧にして
それで仇を取ってみせますわ

血を吸って紅く紅く咲く…
私なりの手向けの桜花




「それで? 恐ろしくて強い怪物は、いったいどうなったの?」
「……みんなの力でやっつけられておしまい、じゃあ満足できなかった?」
 興味津々といった様子で目を輝かせる少年に、クークーは言った。
 感情に乏しい表情で、けれども優しく穏やかな笑みを浮かべて。
「だって、見てたんでしょう? その人達の戦いをさ!」
「……うん。みんな、みんな強かった。とっても、とっても――」
 それはけして、おとぎ話のような綺麗でも素敵なものでもなかった。
 血みどろで、エゴが渦巻いて、痛みがあり、哀しみがあり、苦しみがあり、
 怒りがあり、喜びがあり、狂気があり、けれども……。

●クークー・レディオ
 左腕のレーザー砲から、破滅の光線が雨のように乱舞する。
 幾度もの再生を経た巨体は、遺伝子異常を起こしたかのように奇形化し、
 ただでさえ不気味でおぞましい見た目は完全に化け物に堕していた。
 ――降り注ぐ光線を、千桜・エリシャの広げた花時雨が弾いて反らす。
 ならばと怪物はチェーンソーを振るう。その肉を裂いて砕いてしまおうと。
「ガラクタばっかに頼ってよォ。怪物のくせに、つまんねェな」
 ジャスパー・ドゥルジーはせせら笑いながら言って、炎を纏った。
 否、炎に"なった"。黒い魔炎そのものに、化け物の姿に変じた。
 振るわれたチェーンソーをそのまま受けて、けれども斬られはしない。
 炎を裂くことは出来ない。化け物が化け物を殺すことも出来ない。
「足りねェ! あんたじゃ俺を殺せねェよ。だってあんた、中途半端な化け物だ。
 殺され続けたら死んじまう。その程度じゃ"殺されてやれねェ"。失格さァ」
 燃え盛る炎そのものとなったジャスパーはけらけらと笑いながら近づいて、
 チェーンソーを振るい狂乱するゾンビジャイアントにまとわりついた。
 時折、その腕だけが人間のそれに代わり、ぎらりと鈍く輝くナイフを振るう。
「そんなに大勢食らって、ご自分が何者か説明することもできなくなって。
 無様で、分不相応。寄せ集めの紛い物だなんて、ええ……醜いだけですわ」
 化け物同士の戦いの中を、誇張と桜花を纏うエリシャが舞い踊る。
 舞踏を刻むたびに刃が走り、腕を脚を喉を斬り飛ばす。再生する。斬る。再生する。
 彼女の振るう刃は、斬った相手の魂を捕食し、胡蝶へと変える。
 ゆえに。呪いを籠めた斬撃は、それ自体が敵の存在力を削り取る。
 無数の屍を喰らい、取り込み、捏ねあわせて、死を死で洗って塗りつぶし、
 それでようやく積み上げた伽藍の塔が。瓦礫の山が、崩れていく。
「――ああ、可哀想に」
 艶やかな唇から漏れた憐憫は、誰に対してのものだったか。
 そんな無為で不細工なものに囚われてしまった犠牲者へのものか、
 そう成り果ててなお、己のようなどうしようもない鬼に食われたことへか、
 それとも――この何者でもない"もの"にか、あるいは。
「手向けるものはありませんわ。その屍、私の糧にさせていただきます」
「そうだ、そうだ。中途半端なヤツはよ、"本物"に喰われて苗床になりゃァいい。
 なあ、見えるかクークー? コイツにあんたがひとりでなんざ、無茶な話だ」
 傷だらけの状態で、己自身が生み出す炎で陽炎に包まれながら、
 ナイフを手に振り返ったジャスパーが、恐ろしい笑みを浮かべた。
 裂けるような笑み。誰もが目を背け怯え竦むようなおそろしの、化け物の笑み。
「化け物は化け物同士喧嘩させときゃいい。――この"悪魔(おれ)"みてェなさ!」
「あら。私も化け物のひとりなのかしら? ジャスパーさん」
「ハ! 違うのかい? ならそれはそれでいいさ、主義主張は否定しねェよ」
 ふたりは軽口を叩き合いながら、ナイフ/刀を振り上げた。
 もはや巨人を構成する要素は最後のひとつ。再生は出来まい。
 善人を演じるのはもう飽きた。やはり自分は"こう"でなくては。
 ベクトルと思い描いた姿は異なるが、ふたりは似たようなことを思っていた。
 だって、これこそが自分にとって一番楽しいことなのだ。
 だって、これこそが何より求めた一番やりたいことなのだ。
 殺す。殺される。斬る。斬られる。相手の一切合財を踏みにじり、奪う。
 外道の摂理。だからこそ立てる瀬もある。見えてくるものもある。
 あるいはそれこそ地獄だと、路を外れられない奴らは言うのだろうか。
「その裂けた口よりでけぇ傷を刻んでくれよ。出来ないならそこで"終い"だ」
「――葬(おく)る花もないなら。せめて、あなた自身が紅く、紅く」
 ナイフが心臓を抉り、刀が頭部に当たる部分を真一文字に斬った。
 そうしてようやく、死の化身はうなだれて、欠片も残さず消えた。

 荒野に乾いた風が吹く。
 撒き散らされた血と脳漿、肉と骨はおびただしく、地獄めいていた。
 幻想的な炎のゆらめきと舞い散る桜花、その中でうっそり佇む男と女。
 妖しく、美しく、だからこそ恐ろしく、ヒトは目をそむけるべき光景。
 悪魔は笑った。羅刹はただ瞼を伏せた。
「……あなたたちは、ワタシよりずっと怖くて、おそろしいんだね」
 ぽつりと、白亜の少女は言った。男と女は振り返らない。
「――でも、それでも。ワタシには、ワタシだから出来ることがあるから。
 あなたたちがしてくれたこと、絶対忘れない。悪魔でも、鬼でも、関係ない」
 少女の言葉には誰も応えない。為すべきことを終え、楽しむべきを楽しんだなら、
 ただ去るのみ。殺すべき敵はまだ多く、味わうべき痛みも悦びも多いなら。
「…………ありがとう」
 感謝の言葉にどういたしましてと返す必要もない。
 乾いた湖を染めたのは数多の死と血。それは彼らの未来にはそぐわないものだ。
 だから、悪魔も鬼も、振り返らぬまま宵闇の中に歩いていった。
 歓声を上げる人々と、それを祝う明るさと喜びの声から遠のくように。
 それでも少女だけは、じっと彼らの背中を見送った。
 いつかその姿を、どこかの誰かに伝えて聞かせるために――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年01月05日


タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#アポカリプスヘル
#クークー・レディオ


30




種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


挿絵イラスト