エンパイアクライシス【Q】~銀雪沈嘯、波濤より
●銀雪沈嘯
織本村(おりもとむら)では、早い時期から雪が積もる。
そうなってしまうと農業などとてもできず、かといって籠ってばかりでは息が詰まる。
「よーっし、いくぞー!」
「喰らって死ねやぁ!」
「おいこら、芯に石入れるの止めろって!」
だから冬の頃、村人たちは雪合戦を楽しむのだ。
あちらでは子供達が雪を丸めて。
こちらでは若者が雪玉をぶつけ合い、雪にまみれながらも声を上げている。
多少の鬱屈も、雪をぶつけ合っていればいつの間にかすっかり忘れて笑い合っている。
「いやはや、今年も愉快で何より……おや?」
その熱気を見守るばかりの老人は、ふと。
雪合戦に惹かれるかのように立っていた女性に気がついた。
「お嬢さん。見学かい?」
「いえ~、ちょっとかえりみちで~」
「おお、そうかいそうかい。大丈夫かえ?」
「じゃあ……おねがいしてもいいですか?」
「儂らに出来ることなら、喜んで」
「だったら」
老人の言葉に、海の女は笑みを浮かべて。
差し出した手の上には、海色の珠。
「わたしのために、しずんでくださ~い☆」
「え、な……うわぁぁぁぁぁぁぁああああああ!?」
頭上から落ちるオーシャンボールが雪原を海に平らげていく。
雪も、人も、家も、何もかも区別なく飲み込んで。
沈む。
沈む。
沈んでいく……。
●戦後処理
「レディ・オーシャンを倒してください」
そして全てが津波に押し流されて、何もかも失われる。
そんな予知の光景を映したモニターを背に、穂結・神楽耶(舞貴刃・f15297)は告げた。
「……アースクライシスを生き延びたレディ・オーシャンは、何故かサムライエンパイアで発見されました。ですので、皆様をご案内するのはエンパイアの北国、織本村です」
改めてモニターに表示されたのは空撮写真。
茅葺きの屋根はすっかり雪に埋もれて小さく、けれど逞しい人々が生きる村だ。
「レディは、この村にある『何か』を求めています。住人達が避難しようと気にしないので、まずは避難誘導をお願いしたく」
三々五々に反応する猟兵達の姿に微笑んで、彼女は言葉を繋ぐ。
「なので、ちょっと雪合戦をしてきてください」
は?
……場を満たした沈黙に、ほんの少し目を逸らした。
「……いえ、この時期の織本村は雪合戦の勝敗で決めごとをするんですって。なので、雪合戦で勝てばスムーズに避難してもらえる……はずです」
当の本刃も突拍子ない発言だとは分かっているらしい。
猟兵の身体能力があれば普通の村人には負けないだろうから、ウォームアップと思って楽しんでほしい。
万一の時は天下自在符を見せれば言うことは聞いてくれるだろうとも早口に付け加えて。
「レディ・オーシャンを放置しておけないのは大前提ですが。その過程で出る犠牲は、出来ることならない方がいいでしょう」
……彼女の故郷は、未だにグリモアベースから繋がらぬグリードオーシャンだと言う。
縁もゆかりもないサムライエンパイアを沈めようと、動く心はあるまい。
けれどその過程で多くの命が失われ、多くの村が沈み、多くの涙がこぼれるというなら。
そんな未来を認めないために。
「どうか勝利を、よろしくお願いいたします」
りん、と響く澄んだ音が道を開き。
温かな日差しと冷たい風が、冬への訪れを告げる。
只野花壇
六度目まして! 冬はこたつでミカンを食べたい花壇です。
今回はサムライエンパイアより、レディ・オーシャンの追撃戦をご案内いたします。
●章構成
一章/日常『寒いからこそ、雪合戦!』
二章/集団戦『義勇兵の亡霊』
三章/ボス戦『レディ・オーシャン』
各章の詳細につきましては断章の投稿という形でご案内させて頂きます。
●織本村について
エンパイアの北国にある小さな村。主要産業は農業。
冬の娯楽は雪合戦。
予知当日は晴天だが、前日までの降雪により三十センチほど積もっている。
●プレイングについて
アドリブ・連携がデフォルトです。
ですのでプレイングに「アドリブ歓迎」等の文言は必要ありません。
逆にアドリブ控えめ希望の方は「▲」、単独描写を希望の方は「×」をプレイング冒頭にどうぞ。
合わせプレイングの場合は【合わせ相手の呼び方】及び【目印となる合言葉】or【お相手様のID】を入れて頂けるとありがたいです。
詳しくはMSページをご覧下さい。
●受付期間
各章の断章でご案内。
その他、MSページやTwitterなどでの案内をご確認いただけると確実です。
それでは、ようこそ雪と水に埋もれる村へ。
皆様のプレイング、心よりお待ちしております。
第1章 日常
『寒いからこそ、雪合戦!』
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POW : 剛速球や硬い球を投げる!
SPD : 下手な雪玉数宇ちゃ当たる!
WIZ : 相手の動きを見て効率的に!
👑5
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●織本村にて
着地した、そこは一面銀世界。
足首まで埋もれるほど積もった雪は、動くのに少し苦労するだろうか。
慣れているのだろう村民たちは意に介さず、ひょいひょいと雪玉をぶつけ合っている。
「多いときは二メートルばかし積もるんだぜ」
「今年は積もるの早い方だなー。けど、雪がよく積もった次の春は豊作になるって言うから」
「あとまあ、寒いしな!」
笑いながら近づいてくる人たちは、誰も彼も笑顔を浮かべている。
人懐こいのは、こうして雪合戦に訪れる旅人が珍しくもないからだろう。
だから投げられる雪玉は、敵意ではなく親愛だ。
「そんじゃ、あんた達もやろうぜ!」
脅威は差し迫っているが、一度脇に置いて雪を取ろう。
きっと、楽しい時間になるはずだ。
◆状況
・時刻は昼下がり。快晴無風。気温は低めですが、行動に支障が出るほどではありません。
・見渡す限りの雪原です。ところどころに雪だるまがあったりかまくらがあったり、雪合戦用の雪壁が作られていたりします。
・村人たちはオブビリオンの襲撃があることを知りません。なので純粋に雪合戦を楽しんでいます。
合戦だけでなく、玉作りや壁作り、まったく関係ない雪遊びなどなど。
あまりフラグメントに囚われず、やってみたい行動をどんどんお書きください。
楽しめば楽しむほど避難がスムーズになります。
◆プレイング受付期間
【12月12日(木) 8:31 ~ 12月14日(土) 13:00】
受付期間外に到着したものや内容がそぐわないものは一律お返しします。
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雨宮・いつき
あぁもう、遊んでる場合ではないと思うのですけれど…
…ですが、郷に入っては郷に従えという言葉もあります
ならばそれに倣って彼らの流儀で応えて、そして避難して頂きましょう
ふふふ、こう見えて雪合戦には少しだけ心得があるんです
丁度いいところに雪壁がありますし、あそこに乗って正々堂々と名乗りを上げましょう
さあ、いざ尋常に…って痛い痛い!
先制攻撃はちょっと卑怯じゃないですか!?
せめて名乗り終わってから…あーっ!
も、もう容赦しません!
分身達を呼んで、一斉に雪玉攻撃ですよ!
弾幕こそ大正義です、お覚悟召されませい!
…普通に楽しんじゃいましたけど、きちんと避難誘導もしますよ
分身達を呼んだのはその為でもあるんですから
玉ノ井・狐狛
――どこからちょろまかしてきたのか、大きな木板。それに書かれたのは、ふたつの字句……とどのつまり〝チーム名〟だ。「公式」の二文字もある。一体何の公式なのか定かではないが。
「さァ、張った張った! 片や歴戦にして不動の古豪、片や雪崩めいた快進撃の新鋭、どっちが勝ってもおかしくねェ一番よ」
……ってなワケで、雪合戦をネタにして賭場を開こうかねぃ。許可なんざ取っちゃいねェが、堂々とやりゃ案外バレねぇモンさ。
もし他のヤツらが出店の類をやるってんなら、その辺と提携してもイイかもなァ。
まァ、今回はカネ目当てじゃない。ただ場を盛り上げて、後で誘導しやすいように人を集めとくのが目的。大目に見て貰いたいところだぜ。
カイム・クローバー
こりゃ、スゲェ。一面の銀世界じゃねぇか!
俺は雪合戦慣れてるからな!遠慮なく、ガンガン投げて来やがれ!!なんて啖呵を切って、最初は混ざって普通に遊ぶ。けど、思ったより…足が捕らわれて(雪玉ボフ)…くそ、動き辛…(ボフ)…ちょっ…タン…(ボフ)。
容赦なく、遠慮なく投げられる雪球を数回顔面キャッチ。
暗く笑ってゆらりと立ち上がってから、俺は本気出す。俺の本気、即ち、UC。
未来を見通し、上半身の動きだけで雪玉を躱す。その俺の動きは上半身だけで【残像】が出来る程。
遅い、遅い!お前ら、全員で掛かって来やがれ!!なんて言いつつ、雪に足取られて結局転んで、集中砲火。
ちょっ…!?タンマ!調子乗った!調子乗っ…
ティオレンシア・シーディア
雪合戦かぁ…そういえばあたし、雪遊びとかほとんど経験ないわねぇ。
折角の機会だし、依頼は依頼として楽しみましょうか。
…さぁて、そうと決まれば暴れるわよぉ。
あたし雪面は慣れてないし、けっこう足とられそうねぇ。
それじゃ、トーチカやりましょうか。射撃ほどじゃないけど〇投擲は得意なんだから。
どんどん当ててくからじゃんじゃん雪玉ちょうだぁい。(←地味に大人げない)
…で、そんなことやってたら集中砲火の一つくらいは喰らうわよねぇ。
あたし全身黒基調だもの、全面真っ白な雪原だと目立ちそうだし。
…それじゃ、迎撃で撃ち落としちゃいましょ。
ジャグリングの応用でタイムロスなく連射するわよぉ。(←すごく大人げない)
●対決! 織本村精鋭衆 VS 猟兵連合班
「さァ、張った張った! 片や歴戦にして不動の古豪、織本村が若衆! 片や雪崩めいた快進撃の新鋭、猟兵達の連合班。どっちが勝ってもおかしくねェ一番! 勝つも負けるも時の運とありゃ張らなきゃ損だぜぃ、オニーサン?」
雪原に刺さった大きな木板は、果たしてどこぞからちょろまかしてきたものなのか。『公式賭場』の墨痕鮮やかな看板の下で、声を張るのは玉ノ井・狐狛(代理賭博師・f20972)の姿。
許可も何も取ってはいない賭場だが、こうも堂々とされると正しく「公式」なのだと思い込んでしまう。人間心理を分かっている狐狛は、やいのやいのと集まって来た村人たちに馬券ならぬ合戦券を手渡していく。
「倍率はどうなってるんだい、お嬢さん?」
「精鋭衆が1.4倍、連合班が2.7倍さ」
「そりゃあ地元の方を応援するだろう。精鋭衆に賭けるよ」
「いやいや、連合班の方もなかなか。もしかするかもわからん、儂は連合班じゃ」
「毎度ありぃ!」
やはり意見は様々、それこそ賭博の醍醐味である。
頬杖の姿勢で様相を眺める狐狛は、視線を「猟兵連合班」達の方へと向けた。
「はてさて、どうなることやらねぃ」
「ふふふふ。僕、こう見えて雪合戦には少しだけ心得があるんです」
大きな狐耳と尻尾を揺らして、雨宮・いつき(歌って踊れる御狐様・f04568)は力こぶを作って見せる。
とはいえまだ年若い繊細な少年、作ったこぶはまだ柔らかい。
「へぇ、奇遇だな。俺も雪合戦には慣れてんだ」
カイム・クローバー(UDCの便利屋・f08018)はといえばコートの袖口をまくりながら応じる。
グローブに覆われた手で雪玉を作りながら辺りを見回す視線は、銀世界への興味が先立ったろうか。
「あたしは雪遊びとかそんなに経験ないのよぉ。お手並み拝見といこうかしらぁ」
肩をすくめるティオレンシア・シーディア(イエロー・パロット・f04145)は、なるほど普段通りの黒づくめ。これから雪合戦に興じるには不利であろう姿だ。
そんな年上の女性の姿に奮起したか、いつきはきりりと眉を吊り上げて。
「任せてください!」
ぴょん、と雪壁の上に立ちはだかった。
「あれ? それって遮蔽じゃ……」
「ローカルルールみたいなものじゃあない?」
カイムとティオレンシアがこそこそと言い合う姿も何のその。雪玉を作っていた織本村の選手たちの視線が一斉にいつきへと向いた。
合戦と言えば名乗り合い。不敵に見えるよう笑ってみせたいつきは大きく息を吸って。
「やあやあ、我こそは雨宮・いつき。いざ尋常に……って痛あっ!?」
「小せぇからって容赦しねぇぞ!」
「わ、ちょ、痛い痛いですってば!」
当然飛んできた雪玉が小柄な体にぶつけられる。
慌てて腕を振って己の体への盾としつつ、叫び返す声は寒さと怒りで震えが混じる。
「せめて最後まで言わせてくださいよ!?」
「いや、そういう作戦なんだとばかり……」
「もう始めていいってことなんだろ! おらっ当たれ!」
「おいおい勝手に始めんなよ、俺も混ぜ……うおっと!?」
踏み出そうとしたカイムに、寒冷地の深い雪は無慈悲であった──。
足首までの可動が制限されている以上普段通りの動きは難しい。うっかり失念したカイムの顔面にぶつかった雪がほどけ、浅黒い肌に白を散らした。
「うわっ目がっ!?」
「よっしゃ、イケメン雪塗れにしてやったぜ!」
「もう一発やってやろうぜ!」
「何発当てられっかな~」
けっけっけと笑い合う若者達は次々と雪玉を投げつける。だいたい顔面近辺にぶつけられるあたり、合戦慣れした若衆のコントロールは抜群だ。あるいはイケメンへの執念は猟兵をも凌駕するのか。
次々投げつけられる、払いきれないほどの玉。
それを迎撃したのは、やはり雪玉だ。
「あらぁ。相手はその二人だけじゃあないのよぉ?」
それはトーチカの要領で雪壁に潜んでいたティオレンシアだ。射撃ほどではないが一芸として磨かれた投擲で以ての見事な反撃は、戦場で培った技術のフル活用である。
遊びにも全力で大人げない。ティオレンシア・シーディア(28)、めちゃめちゃ大人げない。
大人げないが、裏を返せば全力と言うことであり。正確なスローイングで次々雪玉は投げつけられていく。
「むしろ当たりたい……」
「おいコラ何言ってんだおまえ!?」
うっかり彼女の美貌につられた若衆がひとり、遮蔽にしていた壁から出てくる。
逃がそうとした他の手が伸びるより、額に雪玉が当たる方が早く。
倒れていく表情はむしろ幸せそうであったかもしれなかった。
「タカ──っ!!」
「まずは一人、だな」
何もしていないのに不敵に笑うカイムである。頬に残った雪解けの水滴を手の甲で拭う仕草もがサマになっている。
残った面々はその男に狙い定めて雪玉を投げつける!
「おっと」
だが、未来予測のユーベルコード【絶望の福音】が起動する。
十秒先の弾道が分かれば回避など上半身を傾けるだけで十分。
コートのポケットに手を突っ込んだまま、にやりと笑ってみせた。
「なっ、早いっ!?」
「残像に惑わされるな! 正確に投げていけ!」
「遅い遅い! もっと当てる気で来やが、れ……?」
つるっ。
「あっ」
人の重みで潰れた雪が凍り、その上にまた積もることで出来る天然の罠。
地元の人でも予測不可能なそこを、ただ体重移動しただけのカイムが回避できるはずもない。
そしてイケメンの体勢が崩れた瞬間を、歴戦の若衆が見逃すはずなく。
「今だイケメンをボコせー!!」
「うおおおおおおお!!!」
「ちょっ……!? タンマ! 調子乗った! 調子乗っ…………うわあああああああああああっっ!?」
「あちゃー……」
ティオレンシアが苦笑する前、無数の雪玉をぶつけられたカイムが雪に埋もれていくのが見て取れた。
ちょっと痛そうな音も聞こえたから、もしや芯に石か氷でも使われていたか。
「やっぱり、出る杭は打たれる運命なのかしらぁ」
「ふっふっふ……ですが、ようやく準備が整いました」
「な……なんだ!?」
埋もれたカイムを踏みつけて、ずらりと並んだのは小さないつき達。
【稲荷八百万(ハンディー・フォックス)】によって顕現した分身が一斉に雪玉を手に取った。
彼らが作った無数の雪玉は、当然ティオレンシアの手元にも用意されている。雪壁の中でせっせと玉を丸めるいつき達もいるから、補給の心配はもう不要。
「本当に怒ってたのか、まずいぞ……!」
「猫の手ならぬ狐の手による弾幕……お覚悟召されい!」
「さーあ、じゃんじゃん当てるわよぉ!」
「負けてられるかっ! こっちも行くぞ!」
織本村精鋭衆 対 猟兵連合班の決戦は、むしろここから。
誰も彼もが雪を投げ合い、笑みをこぼしてはしゃいでいる。
「ひゃー、さすが猟兵。派手だねぃ」
「いいぞ狐の坊ちゃん! そのまま決めちまえー!」
「おいおい、織本村の意地見せてみろー!」
感心の呟きを漏らす狐狛の周囲、自らの券を握りながら叫ばれる応援の声は絶好調。
誰も彼もがこの雪合戦と賭博に夢中になっている。
予定通りの光景に笑みを深めた狐狛は、そろそろ『動かす』かと黄金を瞳に纏わせる。
「時にオニーサン方。流れ玉が来ないよう移動しないかい?」
「はは、確かにな。迫力はあるが危ねぇ!」
「巻き込まれちゃ世話ねーぜ!」
「ここから混ざるのも狐の坊主と美人さんに悪いからなぁ」
狐の瞳は精神干渉の術。
空気を盛り上げる主要な顔役にかけてやれば、避難誘導を叶えるには十二分。
「そうと決まれば善は急げだ。とっとと行くぜぃ」
その真意には、村人の誰も気づくことなく。
狐狛と賭けに興じる面々は、戦場になる雪原から離れていく。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
レイニィ・レッド
◆狭筵サン/f15055
仕事の前の雪合戦たァ
なんつーか
気が抜けますね
えぇ、こちらは二人で構いません
負ける気はないですから
一面の雪景色
どう考えても目立ちすぎなンで
自分は狭筵サンの代わりに囮をしますよ
雪壁の合間を渡りつつ
自分の姿を晒しながら雪玉を投げ
村人たちの注意を引きます
なるべく囮と勘繰られないように動きましょ
ほォ 流石汚い狭筵サン
いや何でもないですよ
これも避難のためですもんね
流石に雪玉は当たりたくねェので
跳んだり壁を利用して躱します
ついでに狭筵サンに向かっていく雪玉も
自分の雪玉投げて相殺してあげましょ
貸しひとつ、ですね
突然誘ってきたから何かと思えば
何だか慣れない感じですが
…ま、悪くは無ェですね
狭筵・桜人
赤ずきんさん/f17810
たのもー。雪合戦を挑みます。
村人たちをなるべくたくさん集めますね。
私たちって猟兵ですし?
こっちは二人で構いませんよ。ハンデです。
じゃあ、ハイ。私は白い防寒着で雪に身を隠すので
赤ずきんさんは囮をお願いします!
赤ずきんさんが頑張ってる隙にこそこそ回り込んでヒットアンドアウェイです。
卑怯?いやいや、これも人命救助のため……。
か、貸されても雪玉一個ぶんですよ!
勝っても負けても【言いくるめ】て避難は呼び掛けますとも。
仕事前の運動にしてはかなりハードな気がしますけど
いざとなれば頼れる相手が居るのはいいですね。
ねえ、赤ずきんさん。
誰も自分のことを知らない世界ってのも悪くないでしょ。
●紅白雪合戦
「……本当に二人でいいのか?」
「ええ、構いませんよ。ハンデです」
にこやかに微笑む狭筵・桜人(不実の標・f15055)は、真っ白で暖かそうな防寒着に身を包んでいる。
その隣、あらぬ方向へ目線を逸らしたレイニィ・レッド(Rainy red・f17810)だって、決して雪合戦に強そうには見えない細身だ。
「猟兵と雪合戦が出来る」という話を聞いて集まった村人たちは目を合わせて首を捻るばかりだ。
「そのナリで言われても……なぁ」
「負ける気はないですけど……ンじゃ、試してみますか」
見た目で判断する気持ちも分からなくはないレイニィは嘆息ひとつ、 不意の風と化す。
「うおっ!?」
「きゃ!」
ぽんぽんぽん、と小気味良く。
緩く固められた雪玉は不意打ちめいて村人たちに当たって白い花を咲かせた。
軌道を追いかけると、赤いレインコート──彼が“雨男”である限り決して脱ぐことのできない紅色だけが翻って、雪壁の向こうに消えていった。
「すっげぇ、見えなかったぞ!」
「いやこれもう捕まえるっきゃねぇだろ! 待て赤いの!」
「『待て』と言われて素直に待つ訳ねェでしょうよ」
応じながら壁を踏み越える。
雪を固めただけといっても、これだけ寒風に晒されていれば硬くなっているから踏み台には丁度いい。
翻る赤色に、誰もが雪玉を振りかぶって。
「えいっ」
ぽすん、と。
後方からの衝撃に振り返れば、そこには春色の笑み。
「やたっ、当たりました!」
「うっわ、気付かなかった……!」
「それアリなのー!? いやぁ、騙されたぁ……」
赤いレインコートを目くらましに、村人たちの背後へ回っていた桜人だ。
白いニット帽を被って特徴的な桜色を隠してしまえば、こそこそ隠れてせせこましくするのに都合がいいと言っていたろうか。
打ち合わせた通りの動きに、次の遮蔽へと飛び込んだレイニィは目を細めて。
「さすが狭筵サン。汚い」
ぼそっと。
呟いた言葉が聞こえたのか、別の雪壁の背後へ飛び込んだ桜人が大げさな動きで掌を揺らし首を傾げる。
「いやいや、これも人命救助の為ですから」
「ハイハイ、そーですねェ」
雑な応対に肩を竦めて、壁から顔だけを出して様子を伺う。その拍子に、白いニット帽がずり落ちて視界を塞いだ。
慌てて位置を戻そうと帽子に手をやる、同時にこぼれた桜色は雪原には珍しい色彩だ。
「桜色みっけー!」
「あそこだな!」
「わ、ちょ、やめてくださいって!」
「おーおー、モテモテですね」
「嬉しくないですけど!? 赤ずきんさんちょっと、見てないで助けて、うわっ雪が口に入るんですけどこれ!?」
「……騒がしいですねェ」
仕方ないので、一球だけをひょいっと投げつける。
むこうから飛んでくる雪玉が掠めて勢いを失い、桜人に届かず地面に落ちた。
きちんと髪の毛をしまって振り返った桜人の笑みはこれまた満面で。
「いやあ、さすが赤ずきんさん。いざって時に頼れる方です」
「貸しひとつですね」
「か、貸されても雪玉一個ぶんですよ!」
「何をそんなに怯えるコトがあるんですか。取り立てませんて」
嘆息。
改めて見据えた雪原の向こうからやってくる雪に、敵意はない。
誰も命を狙ってはこない。
誰も──正しさを問われる行為を、していない。
ただ雪を投げ合って、ぶつけて。それだけの普通の人々と共にいる。
そもそも陽光の下にこうして身を晒していることすら珍しくて……目を細めたのはきっと、雪の反射した光が眩しかったせいだ。
「なんつーか……気が抜けますね」
「仕事前の運動にしてはかなりハードな気がしますけど!?」
「狭筵サンは運動不足なんじゃないですか?」
「あなた達のような前線要員と、か弱い私を一緒にしないでくださいよ」
話しながら雪玉を作っていたらしい。抱えられるだけそれを抱えた桜人が、中腰のまま壁から出ようとしたところで。
ふと、レイニィを振り返る。
「ねえ、赤ずきんさん」
「はい?」
「誰も自分のことを知らない世界ってのも、悪くないでしょ」
「…………」
したり顔の桜色から顔を背けて。
かわりに視線を向けた空は、抜けるような青。
「……ま、悪くは無ェですね」
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ニルズヘッグ・ニヴルヘイム
【カチコミ】
あー寒……眠……
お、ありがとな、暖かい!
何で法螺貝があるんだよ
つかパイナップルって何?
そんなフルーツ投げる遊びがあんの?死人出そう
ええ、皆一緒に攻撃しねえの?
しょうがねえな、前線は任せろ!
氷の魔力はこういうときに便利だ
天罰招来、【氷霜】
……の威力を極限まで殺して……雪玉に……
良し(多数の雪玉を上空に浮かべる)
弾幕とか言うんだろ?
そら食らえ!雪合戦だ!!
……これ雪合戦かな?
灯理とハティが全部撃ち落としてっから、私は一歩も動いてねえけど
匡は何してんの?陣地?
へえ、陣地作るもんなんだ、本当の合戦みてえ
竜三匹だしハントされる側で正解じゃね??
お、皆やるの?
よっしゃ!こっからが本番だぜ!
鎧坂・灯理
【カチコミ】
つまり村人の雪玉を通さず、こちらは全て当てればいいんだな
手加減は任せろ
石も氷もパイナップル(爆発するものを指す)も入れない
カルラ、兄様が寒そうだ
くっついてこい
兄様はオフェンス、ハティはディフェンス
ん?匡は何を……陣地?
なるほどな、雪合戦の最中に目の前でかまくらを作って
余裕を見せつけ相手の意気を挫くっていう作戦か
さすが戦闘のプロ 頭いいな
さてどうするか
とりあえず腕組んで仁王立ちしたまま念動力で雪玉を大量作成し
村人の雪玉を見切って全相殺しよう
ポーズの意味?見得切ってるだけ
雪合戦というか、モンスターをハントする系の合戦だな、もう
お、やる気だな匡
……よし
【脳髄論】起動――全力で行こうかァ!
ヘンリエッタ・モリアーティ
【カチコミ】
ああ確かに寒い やだやだ
よし、ちょっと螺貝鳴らしてこよ
えっ?合戦にはつきものでしょう?
すみませーん!螺貝かしてくださーい!!
さて、では私が【狼谷の戦乙女】で防衛戦を
一般人相手にめちゃくちゃはできないし
最終的な目的はあの魚類の妥当だもの
できるのは――降ってきた雪玉を叩き割ることかな
徹底的な勝利が必要。それから徹底的な手加減
はあ、なかなか難しい
攻撃は兄さんに任せる、そういうの得意でしょ。うわあ悪役っぽい。
灯理はちょっとテンション上がってるだけだよね。みんなで遊ぶの楽しいもの
さあ、匡。目指すは最強の布陣から全力のねじ伏せ
教えてやりましょう、――本当の雪合戦というものを!
鳴宮・匡
【カチコミ】
雪玉当てて打ち負かせばいいんだしその認識で合ってると思う
いやパイナップルは飛んでこねーよ
攻撃の手は十分だろうし
弾避けのバリケードと塹壕でも作っておくか
さすがに流れ玉に当たるほど目が悪くはない
飛んでくる雪玉は避けるよ
え、何って、陣地作成だけど
いやこの短時間でかまくらは無理だろ
鎧坂ちょっといつもよりIQ下がってない? 大丈夫?
……ああなるほど、童心に返る、ってやつか
……それこっちがモンスター側だよな
まあいいや、陣地もできた
ダメ押しのひと攻めしてこようぜ
鎧坂も付き合うだろ? ハティもやる気だし
おーい、ニル、一人で突っ走ってないでお前も来いよ
“最強”で“全力”なら四人いないと始まらないだろ
●カチコミ! モリアーティ一家! ~いざ、雪原の最強決定戦~
ぼええ~と雪原に響き渡るのは、法螺貝の重々しい響き。
まさに合戦が始まりそうな厳粛な雰囲気にざわめきが自然に収まっていって。
「んう……?」
寒さに弱いニルズヘッグ・ニヴルヘイム(竜吼・f01811)は、眠たげな目をゆるゆると開いて法螺貝を構える妹を見た。
「……なんで法螺貝?」
「えっ? 合戦にはつきものなんでしょう?」
首を傾げて返す、ヘンリエッタ・モリアーティ(円還竜・f07026)が一人格・ハティ。どことなくうきうきとして見えるのは気のせいか、あるいは単純にテンションが上がっているのか。
「……村人相手だろ?」
「ああ。つまり村人の雪玉を通さず、こちらは全て当てればいいんだな」
「雪玉当てて打ち負かせばいいんだし、その認識で合ってると思う」
「本当に分かっているのかぁ……?」
頷き合う鎧坂・灯理(不死鳥・f14037)と鳴宮・匡(凪の海・f01612)も、恐らく雪に親しむような経験はないだろう。ましてやこの人数での雪合戦など言わずもがな。
胡乱に目を細めた彼に、堂々ど頷いて見せるのが灯理である。
「任せてください兄様。石も氷もパイナップルも入れません」
「いやパイナップルは飛んでこねーよ」
「名前が出るってことはフルーツ投げる遊びがあんの? 死人出そうだな……」
「兄さん兄さん、そうじゃない」
「えぇ……? そういう暗号? みたいなのやめろよ……わかんねぇよ……」
やいのやいの、知らぬ世界の知らぬ地域であろうとも言い合う距離感は普段と変わりなく。
ただ、非常に寒さに弱いニルズヘッグの反応がどうにも鈍いので。
「カルラ」
主に呼ばれた金翅竜はその意に応じてニルズヘッグの下へ。
背中に炎竜がくっつけば、その温度が凍える彼の体を温めてくれる。
「お、ありがとな。暖かい!」
「いえいえ。では──」
「うん」
もう一度、高らかに法螺貝の音が鳴らされて。
それが開戦の合図と、村人たちが雪玉を投げつけた!
「ブチ撒けて御仕舞い!」
【狼谷の戦乙女】を起動したヘンリエッタが割り込み、雪玉を叩き割る!
秒を下回る超速の体術、緩く投げられた雪玉に追いつけぬ道理がない。いっそパフォーマンスじみたそれに、雪玉を投擲したはずの村人たちの方が歓声を上げる。
が、当の彼女はといえば。
「うわっ、籠手越しでも冷たい!」
「雪だからなァ……溶ければ水になるし、仕方ないだろうよ」
実は寒さが苦手なヘンリエッタである。小さく上げた悲鳴は雪合戦の場で何を今更と思われたろうか。
肩を竦める兄にはよくわかる気持ちだったが、かといって妹任せにぼうっとしている訳にはいかない。
「天罰……にしちゃ威力殺さなきゃだよな……何だろう……まあいいか……? 天罰しょうらーい」
だから展開した術式は、氷柱を生み出し攻撃するユーベルコード【氷霜】だ。
必死に術式の威力を抑え、形状を弄り……作り出したのは氷柱ではなく、不格好だがどうにか丸く見える無数の雪の塊。
これなら雪玉と言い張っても文句は出るまい。うん、とひとつ頷く彼に拳構えた妹も興味津々で。
「よし。なんとかうまくできたな……」
「なるほど。それなら怪我させることもなさそう」
「だろう? よォし、行くぞ!」
「ディフェンスは任せて頂戴。でも手加減って難しいのね」
──と、竜兄妹がはしゃぎ倒しているその裏で。
人間目ひとでなし科の二人はというと。
「匡は何をしているんだ?」
「ん? ああ、陣地作りだけど」
攻防の手が足りているから、必要なのは弾避けである。匡の長年の経験が導き出した解答であり行動だ。
事実、極限近くまで効率化された動きは灯理が思わず感心してしまうほどの手際の良さで。
手伝おうかと声をかける間もなく完成した即席のバリケードと塹壕は、軽く押しただけでは壊れそうにない頑丈なつくりだ。
「なるほどな。雪合戦の最中に目の前でかまくらを作って余裕を見せつけ、相手の意気を挫くっていう作戦か」
「いやこの短時間でかまくらは無理だろ……」
「余裕を見せているのは確かだろう? さすが戦闘のプロ、頭いいな」
「……鎧坂ちょっといつもよりIQ下がってない? 大丈夫?」
「私の脳髄はいつだって万全だ」
「ただ、ちょっとテンション上がってるんじゃない?」
割り込んだ声は、二人──特につがいに雪玉が当たるのを阻止に来たのだろうヘンリエッタだ。
追いかけるようにやって来た雪玉を鞭めいてしなる腕で弾き、破片と注ぐ割れた雪は念動力がそのまま地に落とす。
お返しとばかりにニルズヘッグの放つ雪玉(?)が降り注ぐ光景は流星群めいて、雪合戦と称するにはいささか派手に過ぎたろうか。
想像以上の攻撃にはしゃぐ村人たちの声に含まれた感情は、ただただ明るいだけ。
「こういうの、楽しいものね」
「……ああ、なるほど。童心に返るってやつか」
それなら、言葉の上では理解できる。
この後には厳しい戦いが待っているとして、今この時を楽しんではいけない道理はない。
つがいの方を振り返った灯理の表情にも、ほら。高揚を読み取ることができたろう。
「ハティも楽しんでいるか?」
「うん。結構手加減しないといけないのは大変だけど」
「一般人相手に全力でじゃれつく訳にはいかないからな。今度みんなを集めてやるか?」
「あはは、それも面白そう。でも今は、」
「ああ。雪合戦だな」
「うお! 痛……くはないけど寒い! 背中はあったかいのに!」
上がった悲鳴は、前線をひとり維持していたニルズヘッグのもの。
ヘンリエッタがこちらで喋っていたせいか、うっかり集中砲火の憂き目にあっていたらしい。その様相は雪合戦と言うよりも、なんというか。
「……モンスターをハントする系の合戦だな、もう」
「それ、こっちがモンスター側だよな……」
「竜三匹だし、ハントされる側で正解じゃない?」
「だが兄様をハントさせる訳にもいくまい」
ついと目線を前方へ。規格外の思念力によって丸められた雪たちが先を急ぐように射撃! ニルズヘッグを襲おうとしていた雪玉にぶつかり、見事相殺してのけた。
「灯理……!」
ぱああっと輝く表情は、人の手によらぬ投擲をかわいいかわいい妹のものだと察したからで。喜色満面といった兄の表情に妹の方も満足げだ。
村人たちの方はといえば、人の手とは思えぬ絶技に目を見張り、それでも健気な抵抗と雪玉を投げつける。
自分の方に来たそれを軽く回避した匡は、灯理が念動力で作成した雪玉をひとつ持ち上げて。
「それじゃ、ダメ押しのひと攻めしてこようぜ」
「ええ。目指すは最強の布陣から全力のねじ伏せ」
「お、みんなやるの? こっからが本番だな!」
「それじゃあ」
【脳髄論】、起動。
供給される雪玉を手に、四人は雪原を駆け出した。
「――全力で行こうかァ!」
「「「応っ!!」」」
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
法月・志蓮
【海賊連合】
なんか色々あるけどまずは雪合戦だな!海賊どもが大人気なく乱入してやらぁ!
何を隠そう俺はスナイパー!銃を使わずとも狙い撃つのはお手の物!
いかに雪合戦慣れした村人たちも所詮は一般人。
フェリのサポートも活用すれば投げられる玉を全て『見切』って『カウンター』の雪玉を『投擲』し、空中で全部撃ち落とす無駄な曲芸で『拠点防御』するくらい造作も無い!ハズ!
攻撃はなんかデカいイカが頑張ってるし、余裕あったら軽くやるくらいでいいかな。
つーかクソみたいな笑顔してるお頭はふぁっきゅー!
体力には自信あるし、避難誘導のときはお年寄りとか足悪くしてるヤツでもいれば抱えて移動しようかな。
地鉛・要
【海賊連合】
戦闘前の市民との交流は大事だよな
しかし、雪合戦なんてするの何時ぶりだろうか・・・
今回、俺は補給役。
#属性攻撃で作った綺麗な氷の玉、#怪力で圧縮した雪玉と、技能を使わずに作った固めと緩めの雪玉を作ろう
雪の壁なんかも#属性攻撃で作ろう
雪の壁と志連を壁にして雪玉作りと・・・余裕があれば志連や相手にも弾を投げつけるか
暇を見つけては壁の上に雪ウサギや小さめの雪だるまでも乗っけようかな
って、シノちゃん!船長がサボってんじゃねーよ、雪玉投げんぞ!(#誘導弾で氷玉投擲
避難誘導は誘導灯みたいな感じで吹雪いても大丈夫な光る蟲を出しておこう
羽虫だと嫌がる人が多いかもだから、蝶とかが良いかな?
法月・フェリス
【海賊連合】
雪遊びなんて滅多にできないことだから楽しみたいな。
雪合戦では索敵と回避、指示出しを行うよ。
電脳世界や電子精霊の力も借りて、視界に頼らない情報収集と全体の攻撃回避の演算を行って、仲間に指示を出すよ。仲間の死角を潰して、必要なら雪玉の援護射撃も行うよ。
電脳魔術師であり観測手であるぼくには朝飯前。
それよりも志蓮の技はすごいな。うっとりしちゃう。
要君の多種多様な雪玉には驚かされるね。シスターマリアのクラーケン、良い的に……いや壁になりそうだ。キャプテンの作った雪像にプロジェクションマッピングでも投影してみようかな。
避難誘導をするときは雪崩の危険などを調査して安全なルートを確保しよう。
シノギ・リンダリンダリンダ
【海賊連合】
グリードオーシャンについて聞きたい事は山ほどありますが、
とりあえずまずは雪合戦ですね!
さぁお前達、雪合戦で勝利を収めるのです!
敗者が勝者のいう事は聞くのと拳を交わした相手とはマブダチは自然の掟
とりあえず雪球という拳を叩きつけるのです!
皆を鼓舞したら、自分は近くの子供達といっしょに雪で像をつくる
私の『コミュ力』で子供達と仲良くなり、『アート』の才能で立派な雪のガレオン船を作れます
私雪合戦とかちょっと怖いので…仲間に任せますね…
仲間の活躍には生暖かい笑顔で応援します
いい感じに皆さんと触れ合ったら避難誘導です
最寄りの山を召喚した死霊に探させていました
そちらに誘導します
基本的に名前+様呼び
マリア・フォルトゥナーテ
【海賊連合】
アドリブ連携歓迎
どうやらこの村の雪合戦は勝利条件がとても曖昧!
ならば相手の刃向かう気持ちを折れさせれば勝ちのはず!
私はペットのクラーケンを従え、その10本の剛腕で雪球の雨あられをぶつけましょう!もちろんサイズは人々がケガをしない大きさですが!
人助けをするとは言え、我らは海賊!民衆を恐れさせることなど造作もありません!
「さあ、クラーケン!やっておしまい!手加減、優しさ、雪球増し増しで!」
完璧な作戦だけど、クラーケンへの指示に集中するとロクに動けないから、私自身は良い的なのが唯一の弱点です!
勝利したら、可能な限りクラーケンの巨体に人々を乗せて、誘拐という名の避難誘導をします。
●いざ出航、雪原を蹂躙せよ!
のんびりと雪合戦を楽しむ村人たちの中に割り込む影が五つ!
雪壁が立ち、雪玉が丸められ、瞬く間に作られていく合戦場。あわれな村人たちは好奇心に目を輝かせながら見守るほかない。
「おおっ、なんだなんだ!? 妖怪変化の類か!?」
「それにしちゃあ愉快だな。チンドン屋か?」
「いいや違うね。海賊だ!」
のちのち避難に繋げる為とはいえ、民衆を恐れさせることにも躊躇なし。彼らは【海賊連合】!
ピンクの髪を靡かせて勢いよく作成済み雪壁に登れば、背景には黄金のジョリー・ロジャーと荒波が見えるようで。
「敗者が勝者のいう事は聞くのと、拳を交わした相手とはマブダチは自然の掟……とりあえず雪球という拳を叩きつけるのです! 略奪するは勝利のみっ!」
海賊船『シャニムニー』が船長、シノギ・リンダリンダリンダ(強欲の溟海・f03214)の声を皮切りに、いざ合戦開始!
「さあ、クラーケン。やっておしまい! 手加減、優しさ、雪球増し増しで!」
口火を切るのは、こちらは『フライングダッチマン』が船長。マリア・フォルトゥナーテ(何かを包んだ聖躯・f18077)の呼び出したクラーケンだ。
巨大な十本足を器用に動かせば、ひとがするよりよりずっと早く雪玉が生み出されていく。
意識して緩めに作られた雪玉たちは、巨体を生かし村人たちの頭上からばらばらと降る雪玉の雨と化して。
「うわっ、雨か!? 砲撃か!?」
「違う……イカだ! あのイカが投げてきやがる!」
「畜生……イキのよさを見せつけやがって……! 捕まえて喰ってやる……!」
「はっ、いやいや。この子は食べ物ではありませんよ!?」
「問答無用っ!」
そしてイカに指示を出している間、マリアはその場から動けない。
指示出しさえなければ捌くことも可能だろうと、村人の投げる雪玉は彼女に集中する!
「や、やめてくださああああああいっ!?」
「──志蓮。行ける?」
「フェリのサポートがあって、俺が失敗する訳ないだろ?」
囁き合う声には甘さではなく信を乗せて。
観測手たる法月・フェリス(ムーンドロップ・スポッチャー・f02380)が読んだ軌跡に、スナイパーたる法月・志蓮(スナイプ・シューター・f02407)が雪玉を投擲。
カウンターじみてぶつかり合えば、マリアにはひとつたりとも当たらない。
ぱらぱらと散っていく、雪玉だったものはそのまま地面に積もり直して。
ほっと息を吐くマリアの視線の先、法月夫妻はハイタッチ。
「あ、ありがとうございます……」
「やっぱり志蓮の技はすごいな。うっとりしちゃうよ」
「フェリのサポートあってだ。この調子で次も頼む」
「うん、任せて」
とはいえ攻撃手はクラーケンだけで足りている。
自分も攻撃に参加したらさすがにオーバーキルか……と考えた志蓮の背中に、ぽすん。
柔らかい雪玉がぶつかった。
振り向いてみれば、そこにいたのは予想通り。
「何すんだよ、要」
「……当てられそうだったから?」
せっせと雪玉を作りながら、死んだ目の無表情で地鉛・要(夢幻の果てにして底・f02609)は首を傾げる。
その顔がデフォルトなことを知っている志蓮の方は肩を落としてため息をつくだけだ。
「いや、そういう競技じゃねぇからな、これ?」
「雪合戦なんてするの、いつ振りかも分からないからな。しかもこんなに本格的なの」
「とはいえよくこんなに作ったなぁ」
投げるのが勿体ないほど綺麗に飾られた氷に、見るからに硬く握られた雪玉。普通に作成されたものの方が少ないくらい多種多様に転がされて。
作成者たる要はしかし、作り飽きてきたのか。投げる用ではない二つの雪玉を壁の上で重ねる。地面から掘り出した石を埋め込めば、小さな雪だるまの完成だ。
「おー、かわいいな」
「一体じゃかわいそうだし、次は雪うさぎでも作るか」
「じゃあぼくも作ろうかな。雪遊びなんて滅多にできないもの」
「おいおい、二人とも余裕だな」
「クラーケンも志蓮もいるし、そこまであくせくしなくても……って、シノちゃん!?」
なんということでしょう。
シノギは雪合戦に参加せず、村の子供たちと立派な雪のガレオン船を作っているではありませんか!
要の視線に気づいた彼女は、口元に手を当ててぬるい笑みを作る。
「私雪合戦とか……ちょっと怖いので……お任せしますね?」
「船長がサボってんじゃねーよ!」
「ぎゃーっ!? やめてくださーいっ」
ツッコミと共に投げられた玉はごく正確にシノギに直撃。芯にされていた細氷が表面に散ってきらきらと輝いた。
一瞬の芸術に見とれたのもつかの間、同じ球が次々投げられてくるからシノギは逃げ回るばかりだ。
「わー、綺麗な雪玉。要君よく作ったねぇ」
のんびりと笑うフェリスがゴーグル越しに電脳世界を操作すれば、真っ白なガレオン船が彩られていく。
豪華客船めいた青と赤、それこそ海賊船のような黒、奇想天外な虹かと思えば動物たちが表面を駆けだして……。
次々色を変える雪像に、合戦には参加していなかった村人たちまで近づいてくる。
「なんだこれは……美しい……」
「光だけじゃなくって、船も細かいところまで作ってあるよ。すごい!」
「ねえお母さん、これのってみたーい!」
「こらっ、勝手に触っちゃいけません!」
老若男女区別なく、集まってくる人々は楽しそうで。
シノギと要が鬼ごっこを混ぜた雪合戦をしているから、動きたい人たちはそっちに混ざっていたり。
うっかりやりすぎたクラーケンが雪山から村人を救出していたりと、なんともぐだぐだな雰囲気だ。
「……なんか雪合戦って雰囲気じゃなくなってきたな?」
「では、避難誘導……こほん、誘拐に移りましょうか」
「そこ言い直す必要あったか?」
しれーっと微笑むマリアに志蓮はため息ひとつ。
雰囲気の変化に気付いたのか、シノギと要も鬼ごっこをやめて近づいてくる。
「避難でしたら、近くに丁度いい山がありました。死霊が分かりますから、そちらに誘導しましょう」
「キャプテン、それってどこかな? ぼくが安全なルートを検索するよ」
「それなら俺が先導用の蟲を出しておこう。……蝶とかがいいかな」
「はい、お二人とも助かります」
シノギ・要・フェリスが打ち合わせる傍ら、マリアはクラーケンを見上げる。
この巨体を生かすのは本来雪合戦ではなく、そのあとの避難行動であるために。
「それではクラーケン。皆様を持ち上げてください」
下した命に十本足が応えて村人たちを巻き取って乗せていく。
普通見られない光景に子供たちから声が上がったのは最早必然だったろう。
「わーすごーい!」
「お姉ちゃん、ぼくも乗せてー!」
「おれも!」「あたしもー!」
「えっ、いや、これは誘拐ですからね!?」
「あっはは! まじで浚ってく訳じゃねぇし、いいじゃねーか!」
志蓮の笑い声を皮切りに、次々歓声は弾けて。
クラーケンは多くの村人たちを乗せ、死霊と晄蝶を先導に雪原を進んでいく。
海賊連合の蹂躙と略奪、これにて大成功。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ファン・ティンタン
【WIZ】雪上の戦い
【路地裏A】
雪合戦、ね
私もテレビで見たことしかなかったけれど
戦いをもって歓迎とするならば、受けて立つしかないね
こーゆーのを、確か……オモテナシって言うんだったかな?
陣取戦形式なら、いかに相手の雪玉の射線を通さず、自分の雪玉を当てられるかが重要になるね
雪壁の配置された【地形の利用】はもちろん、自分の位置を調整することで【敵を盾にする】ことも
手持ちの雪玉は少なめに、フットワークを軽く一撃離脱でいこうか
折角の関係構築の機会だし、一般の人には猟兵としての力は発揮しないよう、意識してセーブする
ただし、同業者には容赦無し
仲の良い身内であっても、ね
えーと、避難誘導の件、忘れてないからね?
落浜・語
【路地裏B】
こっちは、津雲さんと俺の二人
逃げられたと思ったら、まさかのここに出てくるなんてなぁ…。折角落ち着いてきたってのに全くまぁ…。
まずは、雪合戦か。取り敢えず楽しもうかな。
猟兵対村の人だと、一方的になりそうな気もするから、あえて村の人に混ざって参加。大人げなくはない。はず
最初の内は、雪壁の影で雪玉作り…は津雲さんやってるし手伝いつつ、必要そうな所へ【運搬】
投げるときは【フェイント】いれながら人の固まった所へ投げる。一般人相手なら加減をしつつ、猟兵相手なら全力で
味方にぶつかりそうなものへも投げて、相殺を狙う。
雪合戦が終わったなら避難してもらうように言って、誘導。
あんまり時間もないからな。
吉備・狐珀
【路地裏】チームA
取り逃したレディ・オーシャンがサムライエンパイアに現われるとは…。
レディ・オーシャンが探している『何か』が気になりますけど、まずは村人の避難が先です。
スムーズに避難してもらうためにも、まずは雪合戦。
といっても実際にするのは初めてなので周りの人のやっているのを手本にしながら見よう見まねで。
雪壁に隠れて雪玉作りつつ投げたらいいのかな?
投擲はあまり得意ではないので特定の人を狙わず雪玉を投げます。
雪玉なら当たっても痛くないから良いですね。
…雪壁からちらっと雪だるまが見えたら人影と勘違いしないかな?
カモフラージュにならないか試しに作ってみる。
雪うさぎもついでに作って並べてみる。(夢中)
ペイン・フィン
【路地裏】Aチーム
……交渉のために、雪合戦……
ふむ
結構楽しそう、かな
自分は、得意の隠密能力使いながら、確実に1人1人当てていく感じで
目立たないとか、迷彩とか
後は、忍び歩きとかで、こっそりと動くよ
特に、雪玉、投げるのがうまい人を狙っていこう
……ただ、流石に、一般の人には、手加減しようか
偶には、わざと雪玉に当たったり、ね
あ、猟兵相手なら、いざとなったら、雪に潜ったりして、隠れるよ
特に、同じ路地裏メンバーの語と津雲
負けてられないから、ね
……敵が来る、か……
……戦争も終わって、数ヶ月
きっと、平和な日々が続いてた
……台無しには、させないよ
勘解由小路・津雲
【路地裏B】2人
語と共に村人の方へ。
前の戦争は謎が多かった。レディ・オーシャンを追うことで、その一部が解き明かせるとよいのだが。……が、まずはこの戦(雪合戦)を、勝ち残らねばな。
一般人とあなどるなかれ、雪国育ちで慣れているからな、案外苦戦するかも知れんぞ?
まずは遮蔽物! 【投擲】は得意でも、かわすのは苦手でな。雪で四方に壁を作り【拠点防御】を固めさせてもらうぞ! そして近づくものには【スナイパー】!
おお、冬を司る霊獣、玄武の気合も高まっている(気がする)! 特に手伝ってはくれないけれど!
と、ひとしきりはしゃいだ後は、式神などを使って避難の誘導を。ここはもうすぐ本当の戦場になりかねないのでな。
●路地裏同盟雪原最強決定戦
「雪合戦、ね」
若干時期には早い紅白サンタ衣装に身を包み、ファン・ティンタン(天津華・f07547)は腰に手を当て笑う。
本物のそれを経験したことはないが、雪を集めて丸める姿を見れば察するものはある。
それに、何より『合戦』なのだ。高揚しない訳がない。
「戦いをもって歓迎とするならば、受けて立つしかないね。オモテナシはありがたく」
「ふむ……結構、楽しそう」
「ええと……雪壁に隠れて雪玉を作りつつ、時々投げたらいいのかな?」
情動の乏しい顔に、僅かな期待を滲ませたペイン・フィン(“指潰し”のヤドリガミ・f04450)。その隣ではそわそわと落ち着かない吉備・狐珀(狐像のヤドリガミ・f17210)が銀雪の様子に目を輝かせている。
サムライエンパイアの存亡を賭けた戦争から早四か月。
いよいよ落ち着きを取り戻し、平和が続いていたこの世界にやってくるという幹部級オブリビオン。
何を狙っているのかは分からないが、村人の平和を守るためにも今は雪合戦である。
「皆、やる気満々だな」
「ああ。だが、まずはこの戦を勝ち残らねばな」
「……で、おまえさんたちはこっちでいいのか?」
共に村を訪れたというのに、村人たちに混ざって雪を固めているのは落浜・語(ヤドリガミのアマチュア噺家・f03558)と勘解由小路・津雲(明鏡止水の陰陽師・f07917)の二人だ。
村人の問いに頷く所作に迷いは見られない。最初からそうするのが当たり前だと言いたげだ。
「ああ。猟兵対村の人だと、一方的になりそうだからな」
「何、助っ人という奴よ。上手く使ってくれ」
「それならいいんだが……仲違いではなく?」
「それこそ、まさかというものだ、よっ!」
先に動いたのは津雲。
と言っても、動かしたのは周囲の雪だ。術により動かされたそれは周囲の気温によってすぐさま固められ、四方を守る壁と化す。
狐珀が恐る恐る投げつけた玉も、それに弾かれ地に落ちた。
「うおおおお! すごいなこれ!」
「お褒めに預かり恐悦至極」
「当たった……けど、壁じゃ駄目ですかね」
「雪合戦だから、直接当てないとね。それにしたってちょっとズルいんじゃない?」
若干気配の沈んだ狐珀の肩を抱いて、ファンが津雲へ眦を吊り上げる。
怒りの気配、とはいっても仲間内のじゃれ合いに近いトーンだから、語は肩を竦めながらチームメイトの方を見た。
「って向こうは言ってるけど。津雲さん?」
「はは、使えるものを使って何が悪いのだろうな」
「じゃあ、悪く思わないでね」
「うおっ!?」
声の正体は、目立たぬよう雪を被って忍び寄っていたペインだ。
壁と壁の間の僅かな隙間にねじ込むような雪玉が、中にこもってぬくぬくとしていた津雲の左肩で弾ける。
「よし」
「ナイスよ、ペイン!」
「ん。負けていられないから、ね」
この組み分けが決まった時から意気込んでいた戦果にペインは小さくガッツポーズ。
だがファンと目線を合わせて頷き合ったその時、彼の背にも雪玉が直撃した。
攻撃に成功した村人は、笑顔で語と手を打ち鳴らしていた。片腕に抱えている雪玉を見るからに、恐らく彼が作って渡した雪玉だったのだろう。喜びを分かち合う姿は成程芽生えた絆が透けて見えて。
「やったな!」
「ああ。いい投げ方だった」
「……しまった。津雲に気を取られすぎた」
「ペインー! あなたの仇は私が取るから!」
「いや、まだ負けてない」
そう言った「ダーリン」の声が聞こえていたのか、いないのか。
ともかくファンは雪原を蹴る。配置された雪壁を盾に、着実に接近。
「あっちの壁だ!」
「いやもう動いた! 次の動きに備えろ!」
「服が赤いからもう少し見えると思ったが、これはなかなか……」
「えいっ」
「よっと……!」
後方から、狐珀の投げる玉が不意を打つ。本人の申告通り慣れていないのだろう、緩くて柔らかいそれを避けるのは簡単だ。
「ハッ!」
「ぐあっ!?」
だが意識を外した瞬間、ファンの鋭い雪玉が放たれる!
村人が慌てて視線を向けるも、鮮やかな一投の後すぐ速やかに離脱したからだろう。赤い影はもう雪壁の向こうだ。
歯噛みする村人たち。そこに立ち上がったのは延々と雪玉を作っていた津雲だ。
「くっ……なかなかやるな」
「かくなる上は、気合の高まった冬を司る霊獣、玄武が!」
「おお!」
「……いや、何も手伝ってはくれないが」
「ええー……」
「どうして出したんだ、津雲さん」
「こやつが出てきたがっていたからなぁ。意味はなかったが」
「でも、ここからが本当の勝負よ!」
ファンの赤い服が視線を惹きつけ、隙を縫ったペインの雪玉が鋭く投げつけられる。
それは互いを分かり合っているからこその、言葉のいらない連携だ。
だが二人が息を合わせてくることなど、知己たる語と津雲には承知の上。素早く展開した雪壁がペインの鋭い投擲を受け止め。守る雪壁の向こうから人数に勝るが故の弾幕が浴びせかけられる。
「おおおおおお──!!」
「むううううう……!!」
「……っ!」
「勝つぞ……っ!」
……と、前線で炎が燃えている中であったが。
その喧騒から遠く離れて、ハミングで奏でられる旋律ひとつ。
「ふふふ~ん……よし、雪だるまできた。次はおっきい雪うさぎも並べてあげようかな」
隠れた狐珀は、あくまでマイペースに雪壁を飾っていた。
囮のつもりの大きめ雪だるまくんはもう三体目。壁の上部にはうさぎたちの大集合ができつつあって、ここだけが戦場にあって楽しげな雰囲気に満ちる。
雪だるまづくりに夢中になった彼女は雪合戦など知らぬ顔。
暗黙の了解で不可侵と化したそこに、雪玉も決して近づかない。
……路地裏同盟最強は、ある意味彼女に決まりだろう。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
榎本・英
雪遊びか……。
ふむ。童心に返って雪玉を転がしてみようかね。
こうやって雪玉を作り、それから転がして行く。
雪はやはり冷たい。
指先が凍ってしまいそうだよ。
ゆっくり慎重に雪玉を大きくして行こう。
そうでないと唐突に崩れてしまうからね。
これを二つも作るなんて中々骨の折れる作業だ。
幼い頃はこんな作業も難なくこなしていたのだがね。
寒い寒い。
しかし、二つとも程よい大きさになったかな。
こちらを上に乗せて、それから木の枝で顔を作ろう。
うん。出来た。
童の物より大きいだろう?
君たちも私くらい大きくなればこのくらい簡単に作れるさ。
嗚呼。寒い。
けれどもたまにはこんなのも悪くないね。
●雪やこんこ
ころり、ころころ。
合戦の喧騒から外れた雪原を、赤茶けた人影が歩いている。
「嗚呼……寒い」
すっかり着膨れした榎本・英(人である・f22898)は、その両手で雪玉を押していた。
最初は英の手に収まるほどしかなかった雪玉は、ころころと転がされていくうちに積もった雪を付着させて大きくなっていく。
骨身に染み込む寒さは、それこそ指先から凍ってしまいそうで。
けれど懐かしくもある冷たさを手放してしまうのも勿体なくて。
真っ白い雪に足跡を刻みながら、ころころころと雪玉を転がしていく。
そうしていると、不思議なもので。
特に何も騒いでいないというのに、近付いてくる子どもの姿があるのだ。
「おじちゃん、なにしてんのー?」
「……『おじちゃん』ではないよ」
「えー?」
いくら老けて見えようと二十四歳。たとえ子どもにとっては区別がつかぬとしてもそこは否定しておきたい。
とことこと着いてくる子を気にせず、ただただころころ。
真似したくなったのか、隣でこどももころころころ。
とんとんと歩く英に、とっことと並ぶこども。
けれど英の歩幅に追いつかず、こどもの雪玉はぽろりと割れてしまう。
「あっ……」
「あまり急いではいけない。こうして、ゆっくり大きくしていかないと」
ころころ、ころり。
英のペースはゆっくりだ。押していけば、一抱えもあるほどに成長していく。
「ふぅ。このくらいかな」
「わぁ……! すごいねおじちゃん!」
「おじちゃんではないし、これでは終わらないよ」
もう一つ、雪を固めてころころと。
今度は子供は雪に触らず、英のあとを着いてくる。
さくさく、ころころ。さくさく、ころころ。
さっきのそれより少し小さい雪玉を完成させて。
「よい、しょっと」
先に作った雪玉に乗せれば、おおきな雪だるまの出来上がり!
「すっ……ごーい!」
「だが、これでは完成とは言えまい。顔になりそうな……そう、木の枝でも探してきてくれるかな」
「うん、わかった!」
英に大きく頷いて、子供は雪に踏み出していく。
……けれど、先んじて調査した英は知っている。
すっかり雪に沈んだ村で、雪だるまの顔になるような大きな枝は山に行かねば見つからない。
知らぬと駆ける、その背を見送って。
「子供は風の子。元気だなぁ……」
英は屈めていた腰をゆっくり起こし、伸ばす。
小さなころは、いつまでも飽きることなくできた雪遊び。
けれど、あの頃はこんなに大きな雪だるまは作れなかったから。
少しだけ清々しい気持ちになって、快晴の空を見上げた。
──遠く、高い、青の果てから。
波濤のざわめきが聞こえてくる。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 集団戦
『義勇兵の亡霊』
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POW : 我が信念、この体に有り。
自身の【味方】の為に敢えて不利な行動をすると、身体能力が増大する。
SPD : 我が信念、この刃に有り。
自身に【敵に斃された仲間の怨念】をまとい、高速移動と【斬撃による衝撃波】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
WIZ : 我が信念、この矢に有り。
【弓】を向けた対象に、【上空から降り注ぐ無数の矢】でダメージを与える。命中率が高い。
イラスト:シルエットさくら
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●沈嘯、降臨
そうして。
猟兵たちの手により全住人の避難が終わった雪原に。
いつの間にか、雪を踏んで歩く海色の女がひとり。
「あら? あらあらあら~☆」
疑問は確信に。そして歓喜に。
集う猟兵の数を物ともせず、レディ・オーシャンは無邪気に笑う。
「やだ~☆ もしかして、わたしにんきものですか? アースクライシスの時にはだぁれもきてくれなかったのに☆」
くすくす、笑う声はただただ正の明るさで。
完全勝利とはいえなかったあの戦争の結果を揶揄する響きは全くない。
雪を躙るような足取りで、けれど猟兵たちからは一定の距離を保ったまま。
そこに隙を見出すことはできなかったろう。
「あ、そっか。あのときのいちばんはジェネシスさんでしたものね☆」
変わらぬ明るさは、彼のフォーミュラが斃されたことにも欠片の痛痒も持ってはいないことを示す。
きっと真実、「どうでもいい」のだろう。
これから村をひとつ押し流すのも同様に、何とも思っていない。
気紛れにすべてを滅ぼして、けれどそれらを顧みることはない。ひとを模っただけの、海の魔性。
「でも、猟兵さん達にはごめんなさ~い☆」
彼女へ攻撃を仕掛けようとした猟兵もあるいはいたかもしれない。
だがそれは舞い踊る水に流されていってしまう。
仕掛けられたという事実に、ただ愉快げに唇を歪めた女は。とても戦うためと見えない白い手を空へ差し伸べて。
「わたしにはやることがあるので……あなたたちのあいては、このこたちがします☆」
空から、海が落ちてくる。
────ばしゃん。
●歪められし義勇
世界が揺らめいている。
ぽこぽこと、空気ばかりは逃げ出すように上へと向かっていくけれど。
いつの間にか押し寄せた波に押し流されて、見えなくなっていってしまう。
此処は女の手により定義された「海」の底。
まとわりつくような水は四方から押し寄せて。動きのたびに波が生まれて、ぶつかり合い、生きる者がいる限り決して凪ぐことはない。
地面から浮き上がることも、呼吸が阻害されることもないのは僥倖だろう。
不可能なのは水泳に取って代わられる飛翔だけだ。
「我等がレディに仇為す不届き者よ!」
堂々と張りのある声と、武器を打ち鳴らす音がする。
歩みと共に響く甲冑の奏では規則正しく一個の生き物めいて、骸の海に落ちる前からそうだっただろうと想起させるに十分だ。
「貴様らが『猟兵』か」
「我等の敵。未来へ偏向した埒外よ」
「海の御方の下へ辿り着きたくば──」
猟兵たちの前に続々と姿を見せる過去は、どれもが仮面を被っている。
個を潰し義にのみ仕えた勇兵達は、しかし。
依って立つ旗を海と定義されたが故、既に死兵として在る。
「我等の屍を越えて行くがいい!!」
◆第二章プレイング受付期間
【12月19日(木) 08:31 ~ 12月21日(土) 18:00】
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シノギ・リンダリンダリンダ
海賊を海の底に押し込めてデカい面ですか?
片腹痛いですねぇ、マリア様?
教えてさしあげましょう。海賊は海のどこでだって、略奪と蹂躙を行えるのだと
さぁ海賊の時間です。36の海を駆けましょう、略奪の限りを尽くしましょう!!しゃにむにー+フライングダッチマン、出航です!
マリア様と並び、【幽玄な溟海の蝗害】でガレオン船を海中に召喚
普段と違う海とて、ここは『海』。我が無敵の戦艦が海中を泳げないわけがない
船を『運転』し海で縦横無尽に『水泳』させる
仲間がサポートしてくれているのでノリノリで大砲とか撃ちまくる
途中でノってきたら最大船速で吶喊。敵をひき殺します
YAAAAAAAAAAAHAAAAAAAAAッ!!!
法月・志蓮
【海賊連合】
船長連中はテンション高いなー……これだから海狂いは!
しかしまあこの海は基本的に陸地とそう変わらない感じで助かるな……超迷惑だけど。
船2隻に大量の虫、質量と物量の両方で圧倒する戦いで俺がチマチマやっても仕方ないし、今回も援護メインでいくか。
船の甲板を陣取って『拠点防御』だ。フェリがくれる情報を元に【流れ断つ点撃】による『援護射撃』で懐に潜り込んで味方を狙う敵を撃とう。
一撃で仕留める必要はないし、多少狙いは雑になっても速さ重視で『吹き飛ばし』てやればいいかな。
お頭のテンションが上がってきたら吶喊する船から振り落とされないようその辺にしがみついておこう……上のフェリ大丈夫かなぁ。
地鉛・要
【海賊連合】
船長二人がなんかテンション高いし突っ込むのは任せて船の中から援護に回るか
攻撃は船内に居れば問題ないだろうからな
楽出来るうちに楽をして、布石をばら撒いておかなくては
監視軍蟲により蟲の群れを召喚。此処は海らしく海の虫達を使用
対応させるモノは海中と水流
#迷彩、目立たない、地形の利用、水泳を付与する事で元からある発見のし辛さを強化しつつ機動力を確保し、何処から来るか解らない#恐怖を与える
更に#捕食、吸血、生命力吸収を付与して虫特有の生命力を強化し、#傷口を抉る、鎧無視攻撃で確実に攻撃を与える
さて、コレは撹乱攻撃
無視しても致命傷、無視せずともシノちゃん達の攻撃から意識を逸らした時点で致命傷だ
法月・フェリス
【海賊連合】
さて、張り切ってるW船長のフォローに回ろう。まったく、海中じゃ背中の翼も役に立たないんだから。
電脳空間を操り現実にリンクさせよう。【迷彩】を船長達が召喚したそれぞれの船に施す。基本はこれに集中し、【地形の利用】とクラーケン君の撹乱を考慮しつつ船の配置を船長達に伝達する。これで奇襲も出来るんじゃないかな?
戦闘開始後は出来るだけ船の【迷彩】を維持しつつも戦闘には参加せず索敵を行う。船の見張り台など、できるだけ俯瞰出来る位置から戦場を見下ろし、攻撃や回避のタイミングを見計らって伝達。
矢の攻撃は船内や屋根の下に退避。高速移動と斬撃は予兆に気をつけて先制攻撃を仲間に指示。あとは志蓮に任せる!
マリア・フォルトゥナーテ
【海賊連合】
全く、ちゃんちゃらおかしいですよね、シノギさん!
オーシャンを統べる私達に海で勝てる訳ないのにねぇ!
海で死んだ者をあの世に導く権能を持つ幽霊船フライングダッチマン号を、シノギさんの海賊船しゃにむにーに並走するように召喚。この船は神の呪いで審判の日まで海を彷徨わねばならず、逆説的にその時までは決して沈めない不死の船。
深海の怪物クラーケンをけしかけつつ、幽霊船員に船首の二門の三転式カノン砲で砲撃させましょう。仲間が危ういなら、船を盾にして守ります。どうせ不死故にすぐ直りますから。
海はね、この私です。自分が誰に仕えるべきだったのか、死の国でよーく考えなさい。撃てえええええ!
●海は我が物、故にこそ
「ふふ、ふふふふふ」
「あはははははは!」
海底に響く、二重奏の笑い声。
高く、低く、それでいて奥底に怒りを孕んだ声は、敵対者を震え上がらせる──“海賊”と称するに相応しいそれ。
「海賊を海の底に押し込めてデカい面ですか。 片腹痛いですねぇ、マリア様?」
「全く、ちゃんちゃらおかしいですよね、シノギさん! オーシャンを統べる私達に海で勝てる訳ないのにねぇ!」
言い合う声もが圧に満ちて聞こえることだろう。
片や虹色の瞳で義勇兵達を睨みつける、シノギ・リンダリンダリンダ(強欲の溟海・f03214)。
片や柔らかな笑みを浮かべたままでいる、マリア・フォルトゥナーテ(何かを包んだ聖躯・f18077)。
絵になりそうな光景でありながら、目を背けたくなるような畏怖を同時に纏う。
彼女達こそ、海を統べる者。
「さぁ海賊の時間です。三十六の海を駆けましょう──【幽玄な溟海の蝗害】!」
「略奪の限りを尽くしましょう。救いの日まで彷徨うが故に──【神に呪われた幽霊船】!」
力ある言葉が喚び出したのは、彼女達を船長たらしめる象徴たる船。
古き良きガレオン船と神に呪われた幽霊船に仲間を乗せて。
たとえ底だろうと、海であるならば。彼女たちの船が進めぬ道理はない。たとえあったとしてもぶっ飛ばす!
「しゃにむにー!」
「フライングダッチマン!」
「「いざ、出航!!」」
「ああもうまったく、これだから海狂い共は!」
動き出した「しゃにむにー」の甲板上。
眼鏡を取り払いハンティングライフルを携えた法月・志蓮(スナイプ・シューター・f02407)は思わず目の前の落下防止柵を握った。
操舵が普段より荒っぽいのは接地しているせいか、あるいは船長たちの不機嫌の表れか。
『でも、そこをフォローするのがぼくたちの仕事だろう?』
窘めるような穏やかさで、法月・フェリス(ムーンドロップ・スポッチャー・f02380)の声が耳元囁かれる。
【遠方よりの打開の声(ウェーブ・オブ・コマンド)】による電波通信は潮の流れ如きに妨害されることなく、万全の通信を届ける。
彼女本人がいるのはマスト部分に設置された見張り台だ。電脳ゴーグル越しに水の向こうを眺めて、思案は数秒。
『少しオシャレしよっか』
電脳空間にアクセス、現実世界へダウンロード。
世界を改変するのはパートナーのスポッターであるフェリスにとっていつも通りの仕事であり、今日のこれも規模が少し大きくなっただけのこと。
維持は少し手間であるが……それで勝利に繋がるなら、やるだけだ。
「わっ!?」
「マリア様!?」
二隻の船が見えなくなる。
高度な迷彩はお互いすらも認識できなくさせる、けれど。
『ぼくがフォローする。安心して』
彼方より、打開の為のフェリスの声。
それは夜闇を照らす満月のように優しく淡く、されど確かに。
声を標に、船団は海底を進み出す。
『こちら地鉛、援護を飛ばす。上手く使ってくれ』
船室内に隠れた地鉛・要(夢幻の果てにして底・f02609)もようやく腰を落ち着けて通信に混ざる余裕が出てきた。
「援護……お前が飛ばすってことは」
『当然蟲だ。視に行け、【監視軍蟲】』
船室から要の代わりに現れたのは、黒い雲めいた蟲の群れ。
短い手足を細かく動かしながら、五百を優に超える蟲達が海を進んでいく。
あるものは地を這い、あるものは水流を漂い、あるものは水を切り裂いて。
接敵。
「何だこいつは? 我等がレディの海に生物はいないはず……」
「となると、猟兵の産物か。それにしても珍妙な……」
生理的嫌悪を催す見目であろうと義勇兵達は冷静さを崩さない。
各々の武器を構え、まずはその蟲から処理しようとする、も。
流れが生まれる。すり抜ける。当たり前に小さな蟲の体を、大ぶりな薙刀や弓矢では捉えきれない。
そして逆に、武器の間合いの内側に入ることのできる蟲達は悠々とその体を噛みつき喰らう。
「ぐっ!?」
「この……蟲如きが!」
「そればかりに気を取られるな! 術者を探さねば勝機は……」
振り払えば一匹二匹は離れていくが、その間に三匹四匹が食らいつく。入れ替わり立ち代わりの蟲達は、けれどその実撹乱に過ぎず。
「シノちゃん達から意識を逸らした時点で、致命傷だ」
全員を繋げるフェリスの電波通信は、当然要にも届いている。
元来スポッターであるからこその正確な伝達指示に、勝利を略奪すべく動いている海賊達が応じぬわけがない。
施された迷彩は健在、故に敵からは見えぬ砲門が一斉に火を噴く。
「「撃てえええええ!」」
海中だからか、音はくぐもっていた。
だがカノン砲の威力が損なわれたかというと、当然否。
蟲に集られ動くに動けない義勇兵達を鋼鉄の質量が圧し潰していく。
「くっ……このままでは、ッ」
「せめて数人、大砲まで行ければ……!」
「それしかない、か。口惜しいものだが……」
蟲に集られた味方を盾に、目立つ薙刀を囮にして。
せめて、せめて、大砲の射手だけでもと必死の突貫。
「そいつはなしだ」
【流れ断つ点撃(インタラプト・ポイント)】。
当然と差し込まれた射撃が義勇兵を穿った。
水流に乗る血は、赤い花弁が散るに似て。
分厚い水の壁に阻まれたそれが致命でないことは自明の理。
体勢を立て直そうと身を起こす、そいつが。
「な────っ!?」
……最期に見たのは恐らく、自分に迫るガレオン船だったろう。
「では、丁寧に蹂躙と参りましょう」
『へ? シノちゃん何すんの?』
「当っ然。────轢き殺します! YAAAAAAAAAAAHAAAAAAAAAッ!!!」
『えっちょっと、揺れるよ船長さん……うわああああああ!?』
「フェリ─────ッッッ!!」
「まあ。楽しそうでございますね! 私達も参りましょう。クラーケン!」
「ぶ!」
豪快奔放の海賊を、偽りの義勇如きが止め得るはずもなく。
海賊連合一同は、海を称する女の下へと舵を切る。
大成功
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雨宮・いつき
本当に一瞬で、辺り一面が海の底に…
こんなにも恐ろしい力を悪用する者を、野放しにしておくわけにはいきません
早々に決着をつけて止めなければ
その為にも…道を開けて頂きます!
九頭龍様を御呼びして、その頭に乗せて頂いて共に戦います
距離を取って泳ぎ回ってもらい、こちらへ弓を向けようとしている者に渦巻く水の息吹を放って頂きましょう
荒々しい水流を巻き起こす事で敵の体勢を崩して攻撃を妨害し、
その隙に僕の雷撃符の【範囲攻撃】による【マヒ攻撃】を撃ち込みます
水中だからって無差別に痺れさせるような間抜けはしません
きちんと制御して…射手の動きを止めてしまえば、あとはこっちの物です
水の刃で、斬り伏せてしまいましょう!
カイム・クローバー
言われなくても越えさせて貰うさ。雪合戦の決着はまだ着いてねぇんだ。この一件が片付いたら猟兵VS織本村、再開だぜ
水の中って割には息も出来る。寧ろ、こいつは俺の場合、有利に活きそうだ。
二丁銃を用いて【二回攻撃】、紫雷の【属性攻撃】。水中なら俺の紫雷が広範囲に広がって【範囲攻撃】出来るんじゃねぇかな。
あっちが使う味方の為の不利な行動ってのが何かは知らねぇが…例えば味方を庇う、とか。銃弾だけなら止められてたかも知れねぇが、水中を伝わる紫雷は単純に庇うだけじゃ防げねぇぜ。
…歪められた信念か。レディの思惑はどうか知らねぇが…惨いもんだな。俺にだって一角の信念ぐらいはある。…安心しな。借りは返してきてやるよ
●巡り来たる日常の為
「本当に一瞬で、辺り一面海の底に……」
「まだ雪合戦の決着も着いてねぇってのに、これじゃ雪がなくなっちまうじゃねぇか」
ずり落ちそうな眼鏡を持ち上げながら雨宮・いつき(歌って踊れる御狐様・f04568)が見回せば、カイム・クローバー(UDCの便利屋・f08018)は軽く毒づく。
息が出来るのは楽でいいが、銃弾は水の壁に遮られて決定打には至らないだろう。
戦術を思索するカイムの前で一歩前に進み出たいつきは、武器を構えた義勇兵達を睨みつける。
「こんなにも恐ろしい力を悪用する者を、野放しにしておくわけにはいきません! 道を開けて頂きます!」
「ふん。我等がレディの糧となる幸福を理解できぬとは、哀れなものだな」
「っ……!」
凛と告げたいつきを鼻で笑う義勇兵の言葉に、『義勇』と言うべき響きはない。
いっそ狂信と言った方が近い態度にいつきの声が詰まって、カイムはゆるやかに目を細めた。
「……歪められた信念か。惨いもんだな」
彼らは。
『義勇兵』と名付けられた程、過去には一角の信念を持って戦っていたのだろう。
その高潔を穢し、踏み躙るレディにはやはり怒りしか湧かない。
己の道は己で選び掴み取ると生きるカイムは、引き抜いた銃口を兵達に向ける。
「そんじゃ、言われなくても越えさせてもらうぜ!」
海中、されど問題なくオルトロスは吼えた!
吐き出す銃弾はやはり膨大な水に阻まれるが、メインは銀弾ではない。
【紫雷の銃弾(エクレール・バレット)】の本領は纏った紫雷である故に。
電流をよくよく伝える海流に乗って、広がる紫が義勇兵を捉えた。
「ぐっ!?」
「貴様……ッ」
「痺れるだろ? 全員纏めて沈んじまいな!」
「させる、かッ!」
だが、義勇兵たちもさるもの。
致命に至らぬなら、まだ体が動くなら。猟兵どもを斃すのだ──と。
既に身動きのままならぬ者は水流に乗って味方を庇う位置取りへ。まだ動く兵たちは弓をカイムへと向ける。
海の魔性の配下たる彼らの矢は、流れに後押しされた速度を持つ。
「我等が信念によって猟兵を撃滅せよ! 矢、放てッ!」
「させません。水神の逆鱗に触れし者に、清き怒りを与え給え……参りませ、九頭龍大明神!」
だが猟兵は、カイム一人ではない。
【龍神絵巻開帳(ライオット・オブ・デリュージ)】──いつきの体をすくい上げて頭上に戴く、それは真白く神々しい九頭竜の姿。
水神が息吹を放てば、たちまち水は渦巻き流れは荒れる。波に乗っていた矢も例外ではなく、あらぬ方向へと弾き飛ばされていく。
カイムの紫雷が乗っていた水もまた然り。本人たちも予想がつかない方向の流れを、分析に優れる訳でもない義勇兵達が避けきれるはずもない。
にわかに嵐が巻き起こったような水底で、いつきとカイムの周囲だけが静かなまま。
「へぇ、いいタクシーだな。少し借りるぜ」
「く、九頭竜様をタクシー呼ばわりとは不敬ですよ!」
「いいじゃねーか、細かいことは気にすんなって」
……いや、あまり静かではなかった。
頭に乗ったいつきの後方。九頭竜の胴の上に着地したカイムは立ったまま悠々と銃口を敵へと向ける。
後でお供えする梨が九つでは足りないかもしれない……と息ついたいつきは、一度頭を振ってその考えを追い出す。
引き抜いたのは、水の中で有効たる雷の符。
滑るように泳ぎを始めた九頭竜の巨体が水を乱すから、義勇兵達の矢はもう届かない。
「では、その分お助け願います」
「おう、任せとけ!」
銃弾と符術。
体勢を崩した義勇兵達へ向け、二種の雷撃が水流を切り裂く。
海の魔性への道は、すぐにでも切り拓かれることだろう。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
茜崎・トヲル
あははは。雪合戦はおれ、混じれなかったけど。戦いはできるよ。
息ができなくて苦しいな。ごぼごぼって感じだ。
でも死なないからへーき、へーき。
アサルトウェポンは水中だから撃てないかなあ? 火薬だもんな。
なら殺戮刃物で斬りかかろうかあ……水中だし、両手だけでなく両足でも振れそうだよな。靴脱いでさ、親指と人差し指で柄をはさんでさ。
ははは。重力が軽いからおどりやすいや。
窒息も攻撃食らうのも痛くもかゆくもないんだけど体は壊れるから、それは彼女たちにぜんぶ返すよ。
ごめんなあ。一緒に死んではあげられないんだ。ごめんなあ。はは、またなあ。
榎本・英
嗚呼。困った。
非常に困った。
入水日和でもない。
只々、そう。寒いだけだ。
呼吸は出来る。
彼女は私が思っているよりもずっと優しいようだ。
海に沈んだ所で私は死にはしないのだがね。
そんなことよりもやる気満々な彼等をどうするかだ。
ここで両手を挙げても逃してはくれないのだろう。
よくある話だよ。
本が読めなくなっていたらどうするんだい。
はぁ……綴るしか無いのだろうね。
君達は名も無き従者として出すのも惜しい。
筆で狙うのは武器。
部位破壊で武器を壊してしまおう。
私はただの人だからね。
水中でそんな物を振り回されては逃げられない。
無駄な足掻きはそのくらいしか出来ないよ。
なぜなら私は金槌だからね。
あとは任せた。
●生死流転
ごぽごぽごぽ、空気の泡が上へ上へと逃げていく。
水の中などそんなものだろう。水を吸って、息を詰まらせそうになりながら、茜崎・トヲル(白雉・f18631)は水底の地面を歩いていく。
見ていられないと息ついた榎本・英(人である・f22898)は、ふらふらと揺れる白い背中に声を投げかけた。
「君」
「ぅん?」
「普通に息をしてみるといい」
「? ……あーはは、本当だ。息できるのか。水の中なのに不思議だなぁ」
「彼女は私達が思っているよりずっと優しいようだね」
「……優しい?」
ぱち、と銀虚の瞳が英を映さぬまま瞬く。
映されないことを気にしない英は、ゆっくりゆっくりと水底を歩いて進んでいく。
とすると、今度は懐こい態度を取るトヲルの方が英に追いついて、並んで、追い越して、くるり。
向き合った顔は何を考えているのか分からないへらへら笑いのまま。
「村は沈めるのに人は気にするのか。へんなやつだなぁ」
「人でないものが何を考えるかなど、私には分からないよ」
「──覚悟ッ!」
言い合う二人の間を裂くように、割り込んだのは義勇兵。
斬撃と衝撃波でトヲルの体が瞬時に刻まれ、透明の水が赤く濁った。
流れに踊る銀の髪もを赤く濡らして、爬虫類じみた情のない目がソイツを見る。
「わぁ。早いなぁ」
「両手を上げれば通して……は、くれないか」
「無論。貴様ら猟兵をレディの下へ向かわせるわけにはいかぬ」
対峙する義勇兵の目は反して鋭く、そして容赦なく英へと襲い掛かる。
トヲルを放っておいたのは、あの重傷では満足に動けないと判断してのことか。
「まあ、よくある話だ」
応じて、刀を受けたのは糸切り鋏。
英が筆と称する殺戮刃物はしっかりと敵の刃物を受け止める。
「はぁ……君のことは名も無き従者として出すのも惜しい」
鋼では物語を綴ることが出来ない。
魅力のない登場人物では物語が動かない。
だから義勇兵の存在は英の興味の外で、加えて本が不機嫌になる水の中。
それでも冷徹に振るわれた鋏は九度。
三回目で罅が走り、七回目で刀が砕ける。喰い千切る動きのそれが身を裂く前に、義勇兵は水流に柄を捨てて下がった。
「無駄な足掻きを……」
「私は金槌だからね。これくらいのことしか出来ぬとも」
吐き捨てる声に対して英は飄々としたまま、あろうことか懐に刃物を仕舞ってしまう。
仮にも敵の眼前でするとは思えない動きに、義勇兵の顔が憤怒に染まる。
「貴様……武器を奪うだけでは飽き足らず、我を愚弄するか!」
「いやいや、そんなまさか。ただ借りっぱなしはよくないから、任せないと」
「そーいうこと。返すよ」
声は後方から。
まさかと目を見開くより早く、義勇兵の体に無数の傷が走る。
「な、んだ貴様ぁああああああああっ!?」
己の体に向けた傷を、痛みを、対象へと移す。
茜崎・トヲルの悪辣な奇跡の名を【不浄なる犠牲】という。
「あはーはは。まだ死なないんだ。すごいなぁ」
死ねないからこそ。
どれだけやれば普通死ぬのかという境界線を曖昧にしか理解していないトヲルだ。
だからその称賛は本物で、向ける笑みも本物で。
「でも苦しいよなぁ。ちゃんと死なせてやらなきゃなぁ」
だから、その祈りも本物だ。
英が気を惹いている間に靴を脱ぎ捨てていたから、両手両足に携えた刃物が怪しく輝きを放つ。
ゆら、ゆらと水に漂う動きは海月めいて読むのは難しく。けれど義勇兵はどうにか手甲で受け止める。
「かくなる上は、貴様たちだけでも道連れに……ッ!?」
足に掴んだ刃物が一閃。
頸動脈に当たる部分をすっぱりと切り裂かれ、それは声なく絶命する。
「あーはは。最期まで話聞けなかったや。ごめんなぁ」
水に沈んだところで死にはしない。死ぬことを許されない二人。
やさしくもない“ひとでなし”達は、ただただ綺麗な笑顔を消えゆく死体に向ける。
「一緒に死んではあげられないんだ。あはーは」
「だが、こうも寒いと心中日和には程遠い。もっと美人になってから出直してくれたまえ」
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
吉備・狐珀
【路地裏A】
村人の避難が無事に済んでいたからよかったものの…。
気まぐれに村を押し流すなんて許せません。
幸い呼吸の心配はないけれど慣れない水中戦、闇雲に動いては相手の思う壺。
ならば水に慣れたものにお願いするとしましょうか。
UC「百鬼夜行」使用。
呼び出すのは水に棲む妖怪「蛟」。
300の水神を(一斉)に義勇兵に放ちます。
蛟の吐く毒は猛毒。
(毒)(属性攻撃)を増した毒気を吐いて義勇兵に擦り付けて体を(マヒ)させ自由を奪います。
さらに毒で侵された体に巻きつき、その身を守る(鎧を砕いて)攻撃を通りやすくさせてもらいましょうか。
鎧を砕いた後も締め上げたまま動きを封じて二人が攻撃しやすいようにします。
勘解由小路・津雲
【路地裏B】2名
雪合戦の次は本当の合戦か、やれやれ。村人の避難が間に合ってなりよりだ。しかし、これがオーシャンボールというやつか、これまた面妖な。
【戦闘】
一応海中ということなら、水の抵抗の少ない刺突攻撃主体で攻めるとしよう。【歳刑神招来】! 亡霊であれば、この【破魔】の矛槍で弔ってくれようか。あんたら、そんなやつに忠義を誓うことはないぜ、もう静かに眠りにつくがいいさ。
敵の攻撃は、上から来るのなら【属性攻撃】で頭上の水を凍らせて盾としよう。矢で氷を突き通すことは難しかろう。ちと寒いのが難点だがな。
ペイン・フィン
【路地裏】Aチーム
水中か……
兄なら、泳ぎ、得意だけど
自分は、そこまで自由じゃ無いからね
……でもまあ、何とかしよう
コードを使用
倒れ行く、義勇兵の怨念を
再びこの世界を戦場にされた、猟兵達の抱く怒りを
そして、なすすべ無く、逃げるしか無かった、村の人の悲哀を
奪い、宿し、喰らい、自らを強化する
……動きが鈍るなら
鈍った以上に強化すれば良い
同時に、そちらの力の元である、怨念も喰らわせて貰うよ……
強引に強化した状態で、仲間と敵の攻撃を掻い潜りながら接近し、攻撃
切り結んだ後はすぐに避けて、仲間の攻撃がしやすいように
使用武器はナイフ"インモラル"
拷問具使いの自分だけど
貴方たちの最後は、刃の方が良いだろうから、ね
落浜・語
【路地裏B】
全く持って遠慮も容赦もなく沈めやがったな。わかってたことだけど本当、はた迷惑すぎる…。
とりあえずあれだ、前座にはとっととお引き取り願いましょうかね。
数をまとめてやるからな。UC『人形行列』を使用。
呼吸はできるけれど、水の中なんで炎なんかは期待できないかな。でも衝撃波は発生するだろう。
小型の人形を召喚。その時にうまく爆発の方向なんかを調整して、衝撃の向かう先を敵の方だけに絞れる様に配置を。
300ちょっとの連鎖爆発で広【範囲攻撃】をしながら、一気に倒せれば。
ファン・ティンタン
【WIZ】郷に入らば、
【路地裏A】
さて、水の中
元より呼吸の要らぬ身だけれど、それより身のこなしをどうするかの方が課題かな
幸い、いい手があるよ
【精霊使役術】にて水精ウンディーネを召喚
水没【地形の利用】は彼女のお手の物、敵だけの有利にはさせないよ
水属性で海嘯さえ操るその力、私の魔力を捧げるから、手助けしてね
水流の一部の支配権を奪い、自身を含む仲間の行動への妨害を軽減する
その上で、加速水流を纏って自らは敵陣に突貫
上方からの矢の雨を【敵を盾にする】事で防ぎながら、超近接戦で飛び道具の優位性を潰しながら斬り結ぶ
あなた達も、面倒な環境で戦わされて大変だね
恨むなら、何事にも無関心なほわほわレディを恨みなよ?
水の中。
大勢では動きが鈍るから二手に分かれたけれど、
それでも信じている。それぞれが勝利を掴んで帰ってくると。
●背中を合わせて、身を寄せ合って
「水中、か……」
「慣れない水中戦。闇雲に動いては敵の思う壺です」
「身のこなしが課題、か。手はある?」
此方、僅かに眉をひそめたペイン・フィン(“指潰し”のヤドリガミ・f04450)。
義憤に燃えつつも冷静さを保ったままの吉備・狐珀(狐像のヤドリガミ・f17210)。
迫る義勇兵達を視界に収めながらストレッチするファン・ティンタン(天津華・f07547)。
揃って三名、濡れた地面に足を置いて交わす言葉は慣れが大きい。
猟兵としてあちこちの戦場に赴いていれば、その場で対応策を練るのも恒例だ。
「では、私は水に慣れたものにお願いするとしましょう」
まず進み出たのは狐珀。
しゃらりと鉾鈴を鳴らせば場が清められ、召喚の為の基盤が整う。
巫女たる彼女が呼びかければ、異形の存在達は【百鬼夜行】を開始する。
「生と死の狭間に彷徨うものよ 我に呼応し集結せよ」
現世とは異なる幽世から。
ずるりと、身を引きずるように現れた、ソレ。
表現するとしたら角と足が生えた蛇というのが近いか。
それは毒を吐き、ヒトを害すと信じられた妖怪。
──「蛟」という。
「お願いします。行ってください!」
「ふん。爬虫類如きで我等を止められるとでも思うたか!」
蛟の群れと、矢の発射はほぼ同時。
さすがに三百を超える百鬼夜行、落ちる矢を完全には避けきれず地面に縫い留められるものもいる。
だがすべてがそうではない。
矢の雨を潜り抜けて義勇兵の下へ辿り着いた蛟は、一斉に毒を吐いた。
「ぐっ……!?」
上がった悲鳴が微かだったのは呼吸器が侵されたことを示す。
当然オブリビオンに呼吸などないだろうが、ヒト型である以上きっと苦しいことだろう。
冷静を保ったままの視線で、狐珀は更なる指令を蛟へ下す。
「蛟の吐息は猛毒です。もう身体は自由に動かないでしょう?」
「この、程度で……ッ!」
もちろん終わらない。
自在にくねる体で義勇兵達に巻き付き、あるいは武器や鎧を砕いて動きを封じる。
術者たる狐珀が望んだ通り、味方のサポートとして。
「行ってください、二人とも」
「……ああ」
「ありがとうね、狐珀!」
好機とばかりに、近接を担う二人が飛び出した。
ペインは怨念と憤怒、ファンは加速水流を纏って。
「……予想以上に加速が鈍い、かな」
この海は正しい自然のそれではなく、レディ・オーシャンが生み出したものだ。
よって本来どこにでも宿るはずの精霊達の存在がひどく少ない。【精霊使役術】の効きが悪いのはそういうことなのだろう。
「それならそれで、やり様もあるってね!」
だから、狐狛の指揮下にある蛟の力を借りる。
数の有利を生かせば、水流はある程度思い通りに動かせる。
そうして生じた流れに乗って義勇兵達へ向かい。
蛟に拘束され動けぬ兵を、すれ違いざまに切り裂いた。
「くっ……!」
「あなた達も大変だね? こんな面倒な環境で戦わされて」
「儀式の為だ! その間あの方をお守りするのが我らの使命!」
「ふぅん」
あのふわほわのレディがそんなことを考えているだろうか?
過った疑問を、けれど考えない。
近接戦の間なら飛び道具の心配はないから、ヒット&アウェイを意識して着かず離れずを繰り返す。
毒に出血。じわじわと削られる義勇兵達が倒れていくのにそう時間はかからない。
「貴様……っ」
「いや待て、様子がおかしい」
、、、、、
流れていく。
本来ならば味方を強化するはずの怨念が、ペインの方へと。
「そちらの力の元。怨念も喰らわせて貰うよ……」
水で動きが鈍るなら。
鈍った以上に強化を施せばいい。
狐珀やフィンのように水中で戦う術を持たないペインが出したのはそういう答えだ。
同時に敵を強化する怨念をこちらに引き寄せることで強化を阻止。
【出来ることは、ただ傷つけることのみに非ず】。
拷問具の身であれど。たとえこれが偽善であったとしても、できること。
そう思って取り出したのは、本体や普段使いの拷問具たちではない。多機能ナイフ“インモラル”。
義勇に行き、死んだ者たちの残影を。
護刀であった彼女と共に屠るなら。
……きっと、この方が相応しい。
「行こう」
「ええ、一緒に」
肩を並べて水を蹴る。
水中、走った銀閃は。
どこか、願いを叶える流れ星の軌跡に似て。
●弔いの波を捧ぐ
「全く持って遠慮も容赦もなく沈めやがったな……」
「まったく、村人の避難が間に合って何よりだ。このようなところで死しては浮かばれまい」
此方、高座扇子の落浜・語(ヤドリガミのアマチュア噺家・f03558)と鏡の勘解由小路・津雲(明鏡止水の陰陽師・f07917)。
呼吸ができる水。けれど放っておけば何もかもを洗い流してしまうという海の中で二人は顔を見合わせる。
「しかし、これがオーシャンボールというやつか、これまた面妖な」
「わかってたことだけど本当、はた迷惑すぎる……」
ため息をつく語が視線を向ける先。
生まれた水流は義勇兵達が向かってきているからのもの。
村に発生するかもしれない災禍を防ぐためにも、ここは押し通らねばならぬ。
「では、本当の合戦といこう。準備は良いか?」
「ああ、いつでも。前座にはとっととお引き取り願いましょう」
「それは──こちらの台詞だ!」
義勇兵達が向けたのは、エンパイア世界ではありふれた武器である弓。
けれど降り注ぐ矢は弓の数に比例せず、二人へ無数降り注ぐ。
「おおっと」
慌てず騒がず、津雲は上方へ手を差し伸べる。
たちまち水たちは寄り集まり、凝縮し、温度を減らして氷と化す。
流れを味方につけ加速した鏃は氷に突き刺さって、けれどそれだけ。突き崩すまでは至らない。
「くっ……」
「はは。この技は少しばかり寒いのが難点だな」
「ならば近づいて斬ってくれる!」
武装を弓から刀に持ち替えて。
地面を、水を蹴って接近を試みる義勇兵達の前。
遮るようにヒトガタが割り込んだ。
「おっと。それは困るな」
それは語……ではなく。彼と同じ見目の、けれど彼より小柄な人形たち。
三百を超える【人形行列】が行く手を阻んで立ち塞がる。
「壊さないでくれ。派手に壊されたら、泣く」
「そのようなものを配置する方が悪いだろうが!」
語の嘆願など意に介さず、義勇兵達は人形たちを切り捨てる。
それこそが語の狙いとも知らず。
「──あなたたちが、だけど」
爆音。
水中だからか炎こそ咲きはしないが、それでも発生した衝撃波は甚大。人形を斬り捨てた義勇兵は跡形もなく吹き飛ばされ、周囲にいた兵達も武器や四肢を吹き飛ばされ行軍が停まった。
「な、なんだ!?」
「ある意味でのお約束というやつだ」
語の【人形行列】で呼び出される人形たちは、壊されると爆発する。
言ってしまえば単純なからくりだから、義勇兵達も落ち着きを取り戻すのは早い。
「ふん。ならば壊さず進めばいいだけのこと!」
「ふむ……ではこうしようか。急急如律令──【歳刑神招来】」
告げる津雲の背後に浮かび上がるのは、三百本超の矛槍。
刑罰を司る歳刑神の加護の下、破魔を宿した刺突が一斉に放たれる。
義勇兵達と、彼らの進路を塞ぐ語の人形を巻き込んで。
「いいか?」
「ああ。前座の幕引きは早い方がいいだろう」
「はは。あんたらしい表現だ」
「待ッ────」
待たない。
三百を超える矛槍が三百を超える人形に突き刺さる。
発生した爆裂は花めいて、けれど容赦のない衝撃波で義勇兵達を圧し潰す。
海を掻き混ぜる流れに引き込まれぬよう、しっかと地を踏む二人。
「あんなやつに忠義を誓うことはない。もう静かに眠りにつくがいいさ──」
平らげられた水を見ながら。
決別の言葉は、どこか柔らかい響きで落とされた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
狭筵・桜人
赤ずきんさん/f17810
雪遊びのお次は寒中水泳大会ですって。
赤ずきんさんは引き続き囮をお願いします。
『怪異具現』。喚び出すのは影の魚群。
私よりずっと速く泳げるはずです。
これらをすべて肉壁として赤ずきんさんに随伴させます。
首魁に辿り着く前にあんまり怪我されても困りますからね。
さて私は……水中ですね。
拳銃使えなかったら丸腰なんですけど。
いやでも敵に弓兵がいますよね。
弓矢が飛ぶなら銃も撃てるのでは?
試しついでに『援護射撃』で手伝います。
ダメなら奥の手――
まだちょっと地面の雪が残ってるはず……
保護色を盾に片付くまで地面に伏せて背景の雪になります。
ちがいますー!
UDC貸したのでサボりじゃないでーす!
レイニィ・レッド
◆狭筵サン/f15055
次は寒中水泳ですか
ハイハイ
引き続き囮は任されました
『赤ずきんの裁ち鋏』を鳴らす
先ずは手近な義勇兵を刻み
奴らの注意を引きましょう
上手くタゲを取りつつ
狭筵サンの周囲の戦力を削れれば上出来
さァサムライさん
競走と洒落込みましょ
狭筵サンの援護もありますし
負ける気はしませんけど
スピードにモノを言わせて
義勇兵どもの間を縫い飛び
全員刻んでやりましょ
攻撃は水流や音を頼りに回避
受けそうになったら手近な敵を盾に
出来なければ魚群のお世話になります
弓兵を優先して殺します
地面に張り付いてるヒトを狙われちゃ敵いませんから
それにしても
堂々とサボってますねあの人は
まぁ次に余力を残して貰えるならいいか
●俄雨、ふるふる
「赤ずきんさん赤ずきんさん、雪遊びのお次は寒中水泳大会ですって。どう思います?」
「正月特番の芸人……ですかねェ」
「ははは、こんな美少年を捕まえて芸人扱いとか。赤ずきんさんってば冗談が上手いんですから~」
「……」
このやり取りが正月番組で流されるコントみたいですね──などと、もうひとりでもいれば突っ込んでいただろうか。
だが今同道しているのは桜と白を着こなす狭筵・桜人(不実の標・f15055)と、赤を纏ったレイニィ・レッド(Rainy red・f17810)の二人きりだ。
よって突っ込みは入れられることなく、レイニィは懐から大振りの断ち鋏を取り出すことで解答とした。
開いて、閉じて、じょぎりじょぎり。
水の流れは切り裂けなくとも、音は遮られることなく。
雨の赤ずきんが、空から降って来た海の中に現れる。
「うっわぁ、やる気満々ですね」
戦争からこっち、何度も戦場を伴にした桜人は今更それに驚くことはない。
むしろ自分から進んで動いてくれるのだから、こっちとしてもやりやすい。
どーれーにーしーよーおーかーなー、などと気の抜ける歌を口ずさみながら『コレクション』を選び取る。
「じゃ、赤ずきんさんの役に立ってください」
【怪異具現】。
どこからともなく、湧水が立つような自然さで桜人の影から飛び出したのは影の魚群だ。
ひとつひとつは小さいけれど、集まることで目くらましにも壁にもなるソレの性質はまさに海底たる今の状況に丁度いい。
だから桜人は、それはそれはいい笑顔で親指を立てたのだ。
「では肉壁は貸しましたので引き続き囮をお願いします」
「ハイハイ、任されました」
言い置いて、鋭く地面を蹴る。
水流が纏わりつくような感覚は慣れないが、水の中と考えればおおよそレイニィのホームたる『雨』に近い環境だ。
当たり前のように並走──並泳?──してくる影魚になんとなく感心を覚えつつ。
「よ、ッと」
斬り捨てる。
すれ違いざまの一撃は、速度を頼みとする彼女達でも目で追えなかったか。
ころり、転がるのは般若面を被った首。
遅れて、赤い雨が海中に降る。
「な……っ!」
「貴様、よくもッ!!」
「さァ、サムライさん。競争しましょうか」
負ける気はしませんけど、と。
落とした呟きは、後方に控える青年に聞こえないように。
義勇兵達の間へ割って入って断ち鋏を振り上げた。
右も左も敵ばかり、そんな状況をレイニィは幾度も幾度も乗り越えてきた。
だから恐れることはないし、いざとなれば敵を盾にすればいい。
そのように動き、身をこなし、時に強引に鋏の切先を捻じ込みながら。
ひらり。
敵を惑わすように踊る影の魚が、斬撃の衝撃波を防いで散る。
「……」
しゃきん、と。
金属同士をすり合わせる音がまた響いて。
再加速。
直線距離にいた弓兵の頸を刈ったのは、偶然ではなく意図的だ。
なんせこちらの援護射撃は期待できない。
水中だから拳銃は使えないだろうと、視線をちらとやってみれば。
「こうなれば奥の手──【背景同化】!」
そんなユーベルコードは存在しない。
そもそも地面の雪はほとんど水に溶けてしまっているし、たとえ残っていたとしても雪の白と上着の白では質感が違うし。
「ちょっと狭筵サン、サボってないでくれませんか」
「ちーがーいーまーすー! 拳銃が使えないだけでUDCは貸しましたー! なのでサボリじゃないです給料も弾んでくださいー!」
「おい、あそこにももう一人いるぞ!」
「赤いのより殺しやすそうだ。かかれ!」
「ひっ!? 無害な美少年なので優しくしてください!?」
まあ、当然そうなる。
桜人を狙いそうな弓兵を優先的に刻んで、レディの水を赤い雨で染めていきながら。
唇を吊り上げるだけの笑みは、誰に向けられたものだったか。
「あーほら。大人しくしてないからそうなるんですよ」
「それは赤ずきんさんがケチ着けてきたせいでしょう!?」
「あんまり叫んでいると、余力残りませんけどいいんで?」
「……!」
年末特番のコントめいたやりとりの間だろうと、義勇兵達をものともしない。
なんせ、問うまでもなく彼らは『正しくない』のだから。
雨の赤ずきんを前にしたら切り刻まれるだけ。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
玉ノ井・狐狛
まったく迷惑な嬢ちゃんだなァ、こんなトコで濡れちゃあ寒いだろうが。
藪から海の次は、矢の雨ときたか。風流なことで結構結構。
つっても、水中を進む間は軌跡が見えやすい。何の術を使わずとも問題ねェくらいにはよぅ。
それに、なァ、おまえさんがた、弾幕シューティングをやったことはあるか? ――当たり判定ってヤツぁ、意外と小さいんだぜ。
さっきの賭場で発生しちまった儲けは、ここらで還元しとこうかねぃ。
集まった金品を触媒にして、適当な霊を召喚する。
場所柄、あの兵隊連中と同じようなヤツはどこにでも居るだろうさ。死兵には死兵をぶつけるとしようぜ。
〝ボム〟も〝石〟も、使い所で使わねぇと、なァ。
ヴィクティム・ウィンターミュート
よーやくツラァ見せたな、アバズレ
アースクライシスの時から、その舐めたツラをぶっ壊してえと思ってたんだ
だからよぉ…前座のカスどもは退いてろよ
生前はさぞかし義に篤かったみてーだが…『どうでもいい』
黙って死んどけ
【早業】でプログラムを高速起動し、【クイックドロウ】
『Analyze』で開幕から【先制攻撃】
【誘導弾】のおかげで回避も難しいぜ
着弾したなら、俺の仕事は8割終わった
敵の詳細を【情報収集】し、指定した味方全員に情報を配布
【学習力】によって癖と弱点を完璧に記憶できるだろう
どれだけ速くなろうが【見切り】出来ちまうくらいにな
其処に行くことは『知っていた』
弱点もそこだろう?
ナイフで刺して【傷口をえぐる】
鷲生・嵯泉
ようやく平穏へと至る筈の世界
海水に晒される等、後々迄どれ程の被害を被り続ける事か
赦し難い蛮行を以って迄何を探しているか知らんが
……決して逃がしはせんぞ
……屍を越えて行け、と
云われずとも最初から其の心算だ
傀儡と化したお前達に用は無い
慣れぬ水中戦を目論む位なら、最小限での対処こそが遣り易かろう
戦闘知識にて行動を先読みし衝撃波にて誘導
数が纏まった所で怪力乗せた攻撃で一気に叩き潰してくれる
攻撃は第六感にて水の流れから測って見切り躱す
如何な数であろうと関係無い、総て此の刃にて屠るまで
あの時は届かなかったが今度はそうはいかん
此の責を取らせる為にも、何人にも邪魔はさせんぞ
如何な手を使おうとも討ってくれる
●前座、ならば前座らしく
「よォやくツラァ見せたな、あのアバズレ」
嗚呼、心から逢いたかったとも。
アースクライシスの時からずっと、ずっと。
こちらなど眼中にもない、あの舐め腐ったにやけ面をぶっ壊してやるために。
ヴィクティム・ウィンターミュート(impulse of Arsene・f01172)は冷たく、けれど殺意を隠しもせずに唇を吊り上げる。
「……決して逃がしはせん」
他方、押し殺した苛烈。
鷲生・嵯泉(烈志・f05845)は、サムライエンパイアを出身とする剣士だ。
故郷たる都市こそ疾うに失われていれども、平穏へと至るはずの世界を乱す蛮行を許すことは出来ない。
柘榴の隻眼は爛々と、澄んだ水の向こうから迫る甲冑群を見据えて。
「ったく、血気盛んなこって」
殺気立った男二人の背を見遣り、玉ノ井・狐狛(代理賭博師・f20972)は軽く肩を竦めた。
世の中にはまったく魔力を使うことなく、天然の振る舞いだけで人心を弄ぶ悪女がいる。
レディ・オーシャンとかいう海の魔性も、恐らくはその類なのだろう。
聞くところによれば、男に大陸を沈めさせたこともあるようだし。敵愾心を煽るも庇護欲をくすぐるもお手の物だろう。
「ま、そこは前座サンたちが上手くガス抜きしてくれることを祈るっきゃないかねぇ」
怒りは、力だ。
冷静さを欠くこともあるが……それでミスを犯すほどのアマチュアには見えぬことだし。
前座には、噛ませ犬になってもらうとしよう。
「弓隊、構え!」
呼吸できるとはいえ水の中、隊長格らしき岡目の面姿が張った声は三人まで届く。
生前より培った連携そのままに、整然と弓が向けられるのを。
「遅ェ」
嗤って吐き捨てるのが『Arsene』だ。
電脳世界の速度はこんなものではない。ましてや、彼はその電脳領域ですら俊敏さを武器に生き抜いてきたカウボーイだ。
敵の矢より早く飛び出したのは、鏃の形状を持ったウィルス。
この世界には存在しない概念であっても、危険なものだとは察せたのか。散開していく義勇兵達を、しかし鏃は執拗に追いかける。
着弾音はない。
けれどそのウイルスは、確実に義勇兵達を蝕む。
「くっ、体が……」
「行動阻害の術か……面倒な。だが!」
同時、それでも放たれた矢衾を。
嵯泉と狐狛は余裕をもって避けることが出来た。
「ほぉ! こりゃ便利なこった。“ちぃと”は自分が使うべきだなァ」
「感謝する」
当然、水中を進む矢の軌跡は追いやすい。行動阻害が速度を鈍らせていたということもあっただろう。
だがそれ以上に「見えて」いた。
向ける目線、弓の向き、放つ一瞬前の溜めに、描かれる軌跡。
そうした情報が共有されていれば、回避の動きは最小限でいい。
「大体分かれば対応出来るからな。アドリブの巧い主役で何よりだ」
それを為したのが、ヴィクティムの放った鏃。
行動阻害ウィルスが命中した敵の情報を分析、味方に共有することで強化を施す。
常に手札を更新し続ける端役が新たに編み出したコード──【Attack Program『Analyze』】は十全の動きで主役達を導く。
「そういうことなら、コッチは小道具に来てもらうとするかね」
狐狛が雪合戦の場で開いた賭場。その賭け金代わりに置かれた石を取り出すな否や指で弾く。
水の抵抗に呑まれ地に沈むはずのそれはしかし、どこからともなく現れた光に包まれて。
「さァて、何が出るかはお楽しみ、鬼でも蛇でも大歓迎──ってなァ!」
柏手ひとつ、打ち鳴らし。
おいでませ、【日雇い勇者(イリーガル・ブレイヴ)】様。
消えた光の中から、目の前の義勇兵とよく似た兵達が姿を見せた。
具足の音を立てて踏み出す死霊兵──「小道具」たちに、狐狛はスートの髪飾りを揺らしながら指示を出す。
「お前さんたち。詰将棋って奴はしたことあるかい?」
「何を──ッ!?」
詰めていく。
先回り、待ち伏せ、時にその身を盾と砕くも、それすら伏線。
矢を避ける。衝撃波を相殺する。味方を庇う身ごと串刺して、爆破。
死兵と死兵。どちらも損耗を厭わぬなら、相手の癖を読めている方が有利なのは自明の理。
寡兵が大軍を追い込んでいく。下剋上という言葉を形にしたような光景は、いつ目にしたって胸がすく。
「はっはー! ボムにも石にも使い所ってのがあるンだよ。弾幕ゲーって知ってるかい?」
「……狐で陰陽師っつっても、色々あんだな」
ぼそりと呟いたヴィクティムの声は、甲冑の擦過音に紛れたらしい。
意に介さぬと一歩、踏み出した剣鬼が刃を引き抜く。
「だが、傀儡と化したお前達に用は無い」
届かなかった。
全力を尽くして、尚。
それは嵯泉にとって悔悟の別名だ。
届かぬ故に、手の裡からすり抜けた幸福を知っている。
だからこそ男は、笑いながら平穏を奪い去る『過去』を許しはしない。
「『屍を越えて行け』、そう言ったな」
動きは最小限、されど力感は最大限。
対多数に特化した殲滅剣技、【破群領域】が牙を剥く。
「言われずとも其の心算だ。道を開けろ……!」
乱打、乱打、重ねて連打!
狐狛の呼び出した死霊兵に足止めされて動けぬ者から頭蓋を砕かれる。味方の死体に足を取られたものから倒れ伏す。庇おうとも関わりなく、すべての義勇兵を砕き散らして、修羅は血濡れの水を掻き分けていく。
「……前座にしては刺激が強すぎかねぇ?」
「あの生魚には丁度いい脅しになんだろ」
小道具係と端役が言い合う前で。
主役の手により、前座の幕は下ろされ行く。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
鳴宮・匡
【カチコミ】
屍を越えて行け、ね
要は全部殺せばいいんだろ、得意分野だ
……死んで守れるものなんて何一つないんだけどな
こいつらにはわからないんだろ
狙いがブレないよう、レディに周囲の水流をある程度緩和してもらう
あとは、鎧坂が纏めてきた敵を片端から撃っていく
――と言っても、殺すのは命じゃない
行動や攻撃の起点、武具や手足、関節
ありとあらゆる“動きの要”を穿ち
相手の取りうる戦術・異能のすべてを
文字通り水泡に帰すのがこっちの仕事だ
壊すのが俺より得意なやつがいるからな
今回に関しては、援護に徹するよ
さて、こんなもんでお膳立ては十分だろ
あとは頼むぜ、ニル、ハティ
一つ残らず排除してくれ
こっちまで巻き込まないでくれよな
鎧坂・灯理
【カチコミ】
ああ、ハティや兄様にはわかりづらい表現か
日本風の古い言い回しだよ
「死ぬまで邪魔をする覚悟だ」と言っているのさ、奴ら
――だからこそ腹立たしい
動き回る死体が覚悟を「騙る」な 踏み躙って跡形も無くしてやる
その為にも役目を果たすか
起動――【風精散歩】「人垣」再現と行こう
あれからもっと上達したぞ私は
高速移動なぞ関係ない そのまま地に埋めてやる
衝撃波を転移させあさっての方向へ
奴らを「かかし(マンターゲット)」にしてやる
複数同時転移 一部を「重ね」よう バラバラになられては困るんだ
「連鎖消し」しやすいよう隙間無く 弱点を晒すように組んでやる
大道具の仕事はここまで
それでは皆様、お手を拝借!
ニルズヘッグ・ニヴルヘイム
【カチコミ】
屍を越えて良いんだな?
よし。ならば全て屍にしてやろう
……エンパイアの奴らって、そういう覚悟好きだよな、本当
土地柄とか世界柄とかあんのかな……
灯理と匡のサポートもある
なら私たちが考えるのは壊すことだけで良いな、ハティ?
おう、派手にやってやろうぜ
壊すだけなら息してるだけでも出来るんだ
頭を使わなくて済むのは最高だな
さて死後も蹂躙されるというのはどういう気分なんだか
主のために死ぬなら本望かな?
天罰招来、【氷霜】
一つの容赦もしてはやらない
ハティの雷を閉じ込めて――匡と灯理が作ったサンドバッグどもに突き刺して、起爆
任せろ、お前たちには傷一つつけねえよ
ははは、派手な花火だな!もう一発行くか!
ヘンリエッタ・モリアーティ
【カチコミ】
屍を超えていけって、――自殺志願者なの?
いいえ、いいえ。ジャパニーズ・カクゴってことね?
オッケー、それはそれで「私の知っている人間を馬鹿にした」ということ
躊躇いなく屍を砕き踏みにじり跡形も残さない。約束しましょう
真水より海水のほうが電流って通りやすいの
知ってた?知らなかった?まあいいでしょう
兄さん、派手にやろう
――起動、【雷王竜の鏖殺領】
兄さんの攻撃に合わせる。空気中に海水の飛沫一つでもあればたちまち、――この領域は私の巣だ
死ぬことを恐れろよ、馬鹿ども
さあ、蹂躙を
お前たちに華を持たせてやる
派手に絶えて死ねよ亡者ども
「死なないと守れない」程度のお前達じゃあ――私たちは止められない!
●嵐が如き殴り込み
「――自殺志願者なの?」
「よし。ならば全て屍にしてやろう」
さすが兄妹というべきか。
立ち塞がる義勇兵達を見て、ヘンリエッタ・モリアーティ(円還竜・f07026)とニルズヘッグ・ニヴルヘイム(竜吼・f01811)は即座に戦闘態勢を取る。
「ああ、ハティや兄様にはわかりづらい表現か」
気付いて、声をかけたのは鎧坂・灯理(不死鳥・f14037)。
世界の加護を受けた猟兵は、あらゆる世界の言語を理解することができる。といっても、慣用表現までカバーしている訳ではないから時々「すれ違い」も起こってしまう。
気付かれているかもしれないが、伴侶や兄に「教えられる」ということはくすぐったいような幸福を伴って。
「日本風の古い言い回しで。──『死ぬまで邪魔をする覚悟だ』という意味だよ」
だから纏っていた、柔らかな空気が。
突如発火でもしたかのように熱を持つ。
「それ」を誰より固めて生きてきた彼女だ。「騙られる」だけで腸が煮えくり返ることこの上ない。
「まあ、やることは変わらないよ。全部殺せばいい」
感情の激しい友人たちを見遣って、唯一「凪」を保った鳴宮・匡(凪の海・f01612)は肩を竦める。
その程度でひとでなしの心は揺らがない。
普段からやっていることを言葉にすれば、ピンと来ていなかったらしい兄妹も笑みを深くした。
「オッケー、私の知っている人間を馬鹿にしたってことね? なら跡形も残さない。約束しましょう」
一度死んだ身では分からぬらしい。
死んで守れるものなんて、何一つないのだと。
「……エンパイアの奴らって、そういう覚悟好きだよな、本当」
盟友を思って、ニルズヘッグが落とした吐息は水流に紛れて。
「では、再現といこうか」
思えば、始めて戦線を共にしたエンパイアウォーから四か月。
ここまで縁を繋ぐことになるとは思わなかったから、懐かしい──そう思えるほどになった記憶の光景を再現する。
【心術:風精散歩(シルフィード)】。
あの時と同じ敵に。
あの時と同じように。
あの時以上の精度と速度を以て、地に埋めてやる。
「な──ッ!?」
「遅い」
いくら高速機動しようと、灯理には「見えて」いるから転移は実行される。
衝撃波はあらぬ方向。仲間を邪魔しない位置まで飛ばし。
義勇兵達はパズルのように組み上げていく。
隙間なく、弱点を晒すように、壊しやすくと計算しながら。
腕同士、腿と肩、肘と膝。共に復活する程の仲である彼らを重ね固めて仕上げるのは、以前より上達したと己でも頷けて。
「ああくそっ、動かない……!」
「逃げられる者はいるか!」
「いや、弓を向けろ! あいつから殺せば──」
「じゃあ、お前からだな」
差し込まれる、銃声。
ぎりぎり見えるか見えないかという黒い霧が、水の中を進む銃弾を後押しして着弾を果たす。
上がる悲鳴は聞かない。アサルトライフルのマガジンを入れ替えて、無数のからだを撃ち抜いていく。
殲滅ではない。それはもっと得意な仲間がいるのだから、匡は援護射撃に徹する。
武器を、関節を。運良く重ねられなかった腕や足が壊されていくのは義勇兵にとっての災厄だったろうか。
凪の海は共感しない。
【抑止の楔(ブレイクダウン)】は淡々と、だが容赦なく撃ち込まれる。
「……こんな光景、二度と見ることはないと思ってたよ」
埋められ、固められ、それでも生かされている義勇兵達がつくる。
文字通りの「人垣」、なんて。
「はは。もしかしたら三度目もあるかもしれないぞ?」
これまで二度、地獄絵図を為した女が悪どく笑って。
身を翻すから、心得た匡も前線を開ける。
「巻き込まないでくれよ、ニル」
「ハティ、後はよろしく頼む」
手番は、「竜」へ。
冷たい殺意を剥き出して、よく似た顔で兄妹は笑う。
「任せろ。お前たちには傷一つつけねえよ」
「勿論。派手に絶えて死なせるとも」
否。物理的に温度が下がっている。
周囲に海水という物理的な触媒があるから、いつもよりずっと冷気が凝縮しやすい。
といっても、使えるようになったのが最近だからというのもあるだろう。
取り戻した力の解放になんとなしの感心を得ながら、足掻く案山子を指し示す竜の視線。
「ははは。主のために死ぬなら本望かな?」
「葬式に花を飾るのは全世界共通だもの。派手に送ってあげましょう」
花は花でも、閃く火花。
雷王竜が尾を一薙ぎすれば、人垣の向こうは鏖殺領に変じて。
それが逃げ出したり、万一にも妹達や親友を傷つけぬよう氷壁が遮る。
「真水より海水のほうが電流って通りやすいの。知ってた?」
プールのように。
区切られた海水が、たちまち雷をたっぷりと含んで人垣を構成する兵達を痺れさせていく。
やはり死なないように手加減されているそれに、「おーい」なんて呼び掛けてみたりして。
「あれ? 答えてくれないんだ。だったら落第にするしかないかな」
「ハティは手厳しいなァ」
「兄さんだって、壊すことしか考えてないくせに」
「おう! 頭を使わなくて済むのは最高だな」
壊すのは、息しているだけでも出来るから。
そうすればいいだけの舞台を立ててくれた妹と親友に感謝を。
「それでは皆様、お手を拝借────」
外連味たっぷりに灯理が打った拍手を合図に。
氷と雷が炸裂する。
圧力を上げた雷撃が肉を焦がす。壁から生えた氷柱が幾人も纏めて刺し殺し、流れた血と甲冑の鋼に電流を走らせれば人垣は内側から爆ぜ割れる。
飛び散る欠片を海水から生成された氷槍が打ち返す。上がった悲鳴は「仲間」の破片が口に入った誰かのもので。
騒がしいのを止めるために、破城鎚めいた尾の一撃が突き刺さった。
「ははは、派手な花火だな!もう一発行くか!」
「いや。もう崩れそうだ」
「ちぇっ、じゃあお預けか」
崩壊は連鎖する。
組み合わせられた義勇兵達では、もう竜とひとでなし達を止められない。
上がる声は断末魔めいて、けれどそれだけではない呟きもあった。
「嗚呼────我等、が……レディに、栄光を……」
「──死ぬことを恐れろよ、馬鹿ども」
ひとつ、指先で手繰った雷が吹き飛ばせば。
静かな海には、人垣の跡形も残されてない。
「ニルもハティも、お疲れさん」
「……まぁ、ウォーミングアップくらいにはなったかな」
「むしろここからが本番だがな」
「んじゃ、とっとと片付けに行こうぜ!」
邪魔の消えた海底を四人そろって進んでいく。
目指すはオーシャンボールの中央部。
そこに、レディ・オーシャンがいるはずだ。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『レディ・オーシャン』
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POW : ディープシー・ストーム
【激しく渦巻く冷たい海水の奔流】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD : 「邪魔が入らないようにしちゃいますね〜☆」
非戦闘行為に没頭している間、自身の【周囲を舞う膨大な海水】が【防壁を形成し】、外部からの攻撃を遮断し、生命維持も不要になる。
WIZ : ウォータージャベリン
レベル×5本の【海】属性の【当たったものを海水に変える水槍】を放つ。
イラスト:hina
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴
|
種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●エンパイアクライシス
「必要なのは涙の汀。果て無き欲の大海へ、臨む鍵を探すなら──」
オーシャンボールの中央。
レディ・オーシャンが手の上に生み出した魔法陣が、広がりながら地面を染める。
詠うような声が強まるのに合わせ、魔法陣の光もまた強くなる。
輝きは清らに美しく、けれどどこまでも寄せ付けないが故に悍ましい。
「レディ!」
そんな儀式の只中へ、駆け寄ってきたのはひとりきりの義勇兵だ。
般若面はほぼ全面に罅が入り、甲冑の大半は砕かれて剥き出しの肌を血に染めている。
「申し訳ありません、猟兵達を止められず……!」
「ん~?」
うたが、止まる。
どうでも良さそうに、あるいは面倒そうに。
地面に頭を擦り付ける義勇兵を見るレディの視線が、ふと逸れて。
「なんとお詫び申し上げたらよいか……!」
「あ、そこじゃまです☆」
ほんの少しだけ。長い髪の先が、波に揺られて魔法陣を遮っていたから。
彼女の「海」が意を汲んで動いた。
「え、あああああぁぁぁぁぁぁあああああアアアアアアッッッ!?」
突如、渦を巻く。
義勇兵を中心にした奔流が残った体を切り刻み、圧し潰し、悲鳴すらもくぐもらせて。
魔法陣から遠ざけるように流すだけでは不満だったのか。
「うるさーい☆」
渦の内側へと、水槍が突き刺し。
義勇兵だったものは悲鳴すらなく海水に変わる。
満足したように解けた渦は、ほんの少し容積を増しただろう。
美しい海は、生命の気配が無いから歪なまま。
「さっ、ぎしきをつづけなくっちゃ☆」
迫る猟兵達の足音は、彼女の興味の外。
村を押し流してでも帰るのだと、彼女の態度が雄弁に語る。
◆第三章プレイング受付期間
【12月25日(水) 08:31 ~ 12月28日(土) 13:00】
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茜崎・トヲル
きれーなお姉さんだけど、胸が尻みてえ。はっははぁ。重たそうだけど水中ぐらしならへーきかぁ。脂肪って水に浮くしな。
水ん中なのに呼吸できるの面白いなぁ。でも海水だし、外出たらがびがびになっちまう。ああーあ、地面にも染み込んでるよなぁ。
この人が死んで水が消えたら、このあたりの地面全部【等価交換】かけて海水使ってない土に変えようなぁ。
ミミズやモグラは死んだままだけどな。
戦い方はそうだなぁ、防壁作るんだろ?
それならいいこと思いついた。
防壁になってる海水を、同じ量のアルカリ金属に変える。セシウムとかいいな。非放射性のやつ。
攻撃を遮断する防壁がそのまま爆弾になるんだ。あーははぁ、びっくりした?邪魔したぜー。
●緞帳の下りた舞台裏
だからこれは、終わった後の話だ。
「ふーふふんふん、ふふーん」
のんびりと鼻歌を奏でながら、茜崎・トヲル(白雉・f18631)は土が剥き出した地面を撫でる。
レディ・オーシャンが倒れた後、オーシャンボールは跡形もなく霧散していったが……短期間とはいえ海水に浸かっていた大地に、雪は戻らなかった。
そして、おそらく。海水は地下まで染みこんでいる。
「あーあー、ひでーなぁ。きれーなお姉さんだったけど」
配下としていた義勇兵も使い捨てて罪悪感の欠片もない。
雪の下、厳しい寒さを土の中で耐えるちいさな命のことなど言うまでもなく視野の外だろう。
「……乳が尻みたいだったなぁ。あそこから牛乳絞れたりすんのかなぁ」
あはは! と罪のない想像を巡らせて、意味のない言葉を零して。
地面に触れる白い指先を泥で汚しながら、細められる銀は虚無のまま。
……思い出す。
トヲルがレディ・オーシャンの近くに寄っても。
彼女は、トヲルを一切見なかった。
「っはは、ひでーよなぁ。いくらおれが殴りに行くタイプじゃないからって」
本当に、どうでもいいのだろう。
自分こそ世界の中心。自分の都合がすべて。
だからトヲルがしたのはちょっとした悪戯だ。
拒絶と疎外の海流防壁を、アルカリ金属の爆弾へと【等価交換】。
連鎖発生した爆音は少しだけ愉快な心地だったが、それだけ。
レディ・オーシャンにとってトヲルがそうだったように、トヲルにとっても彼女はどうでもいい。
「んしょ……っと。あはは、すっごい染み込んでるな。モグラもミミズもおんなじ命なのになぁ」
地面を掘っても掘っても濡れている土が出てくるのは、それだけ海水が染みてしまっているから。
多すぎる塩分は作物を枯らしてしまう。トヲルに飢餓は無縁だけれど、人間たちはそうではないことを知っている。
だから。
「あーんなおねーさんの痕跡なんて、無い方がいいもんな」
【等価交換】。
海水の染み込んだ土を、真水が染みた土と交換する。
重さだけが等価の交換が果たされたのを確かめて、トヲルは地面から手を離した。
「じゃ、邪魔したなー」
誰もいない広原に言い放って踵を返す。
ふらり、ふらりと定まらない足取りこそいつも通りで。
そうやってひとを助けることも、彼にとってはいつも通りだ。
成功
🔵🔵🔴
玉ノ井・狐狛
ほほぅ、アレが海槍か。
被弾即ゲームオーバー。飛沫だけでもアウトかもしれねぇし、壁やらで止まるかも不明ときた。
幹部の女連中は容赦がねぇなァ、おい。
――手下を始末する光景を千里眼で眺めつつ、そんなコトを思ったワケだ。
「よう、海の嬢ちゃん。遊びに来たぜぃ」
適当に喋りつつ近づく。奇襲が警戒されてんなら、雑談でもしといた方がマシだろ。
水槍のシークェンスは確認済み。アレは、〝意図しないと撃てない〟技だなァ。
だったら単純、意識のタイミングに合わせて蹴りでもくれてやるぜ。
格ゲーで云う〝牽制〟ってところかねぃ。一回見せときゃ、ずっと警戒させられる。
嬢ちゃん、ゲームは嫌いかい?
ちょいと付き合って欲しいんだけどよ。
雨宮・いつき
己の部下すら簡単に手に掛けるなんて…
外面は琉球の海が如き美しさでも、内は大時化の海中が如く澱んでいるようですね
なおの事、貴女のような者をのさばらせておく理由が無くなりました
片手に蒼扇、片手に冷撃符
迫る水槍を氷の壁で食い止め、あるいは凍らせ打ち消しつつ舞を捧げます
生命無き水の塊を海と呼ぶなど愚の骨頂
本物のワダツミをお見せ致します
如何に形を変えようと、水であるならば泳げぬ道理はありません
攻撃の回避や防壁の突破を行いやすくするよう竜宮の加護を他の猟兵達に与えると同時、
敵は鯛や鮃の舞で幻惑し、手足を凍り付かせ動きを封じます
…宴もたけなわ、そろそろお帰りの時間です
無論、貴女が望む海への帰還ではないですが
鷲生・嵯泉
探すものも求めるものも、お前なんぞに渡しはしない
如何な目論見であろうと叩き潰す
蛮行への責を取らせると云った筈だ
水芸如きに付き合う心算は無い
遮斥隕征――此の刃の前では全てが無駄だ
第六感と見切りにて水流の方向を見定め其の奔流を斬り払う
多少の傷は激痛耐性と覚悟で捻じ伏せ前へ
なぎ払いと衝撃波に因るフェイントで隙を作り
戦闘知識での先読み使ったカウンターで
魔法陣ごと蹂躙する怪力乗せた斬撃を一気に叩き込む
此処で潰えろ、神なぞと称する愚かな残滓
お前の還る……否、還れる場所は1つだけだ
骸の海の底こそ其の腐った性根に相応しかろう
護る為に在る此の身、此の刃が、此の世界に在る事を赦しはしない
お前の為の海は未来には無い
●化かし化かされ斬り捨てる
「己の部下すら簡単に手に掛けるなんて……」
レディ・オーシャンの不興を買った義勇兵が海へと変じさせられる。
そんな信じられないような光景に、雨宮・いつき(歌って踊れる御狐様・f04568)は息を呑んだ。
琉球の海の美しさでありながら、内面は大時化の海の淀みに匹敵する。
「幹部の女連中は容赦がねぇなァ、おい」
肩を竦める玉ノ井・狐狛(代理賭博師・f20972)は、銀に変じさせていた瞳を常の色に戻した。
彼女は、いつきほどお人よしではない。
敵である義勇兵の砕ける光景は、己の勝算の為の材料だ。
「アンタも気を付けた方がいいぜ? 女ってのはどいつもこいつも化け物揃いだからなァ」
「……かといって、あのような者を放っておく訳にはいきません」
「はっ、違ぇねぇ」
水をかき分けて。
狐の陰陽師たちは、その領域へと辿り着く。
「よう、海の嬢ちゃん。遊びに来たぜぃ」
「あら☆ こんな水の中でお茶なんて出せませんよ~☆」
どうせ奇襲は警戒されているのだから、裏の裏をかいて正面突破。
ゆるりと小首を傾げる女はやはり美しく、海へ引き込む魔性の姿と納得させられる。
水に同化させた紗を揺らめかせながら、狐狛は手を後ろで組み合わせた。
「いやいや、そんな贅沢言わねぇよ。ただちょいと、ゲームに付き合ってくれりゃあいい」
「ふぅん……それって、こういうのでいいんですよね☆」
レディが白い手をひらめかせる、一瞬。
【ウォータージャベリン】が放たれる二秒前。
地面を蹴る。
「よ、っとォ!」
「……っ!?」
水を裂いたのはブーツに包まれた爪先。
咄嗟に下がったレディはさすがの勘の良さ、幹部級オブリビオンだったろう。
生まれた水流が描いた軌道は、そのままだったらこめかみを打ち抜いていたルートだ。
「ひ、っどいですねぇ……?」
「ほら、よく言うだろう? 『他人の嫌がるコトを進んでしましょう』──ってなァ?」
にたりと唇を歪めて。
浮かべた笑みは性格の悪さが滲み出していただろうか。
「アンタと一緒だよ、お嬢ちゃん」
「あなたのそれは、わたしよりひどいですよ~☆」
「はははっ! 幹部級にお褒め頂けるとは、さっすがアタシ!」
【俗手ノ好手(クロスチェック)】は、牽制だ。
合わせられることを証明して見せたから、レディ・オーシャンも警戒を続けている。
そして狐狛の方も、先手を取る訳にはいかない。
……そうして膠着した二人の後方で。
いつきは独り、舞っている。
「東春南夏西秋北冬、顕現するは竜の宮。真なる海は此処に在り」
生命のない水の塊を、「海」と呼ぶわけにはいかない。
選んだ玉手箱は本物の綿津見。
ひとがいつか理想とした水底の伝承で、海の魔性を引きずり込もう。
「艶美に酔い痴れ享楽に溺れ、常世に呑まれ果て給え──【竜宮演戯開帳(ニライカナイ)】!」
開かれしは竜宮城。
正しき者を歓待し、されど現世と異なる時間に彷徨わせてしまう海の御伽噺。
周囲が海であるからか、住人たる鯛や鮃は迷わず滑り出し舞い踊る。
「あら、あらあら☆ お綺麗で無意味な踊りですね~☆」
「本当に無意味かどうか、貴女自身で確かめてみてください」
引き抜いた冷撃符を手に水を蹴る。
竜宮の加護は、味方に高速で泳ぐことを可能とする。
加護を預かったいつきは、迷わずレディの懐へと飛び込んでいく。
「術式解放!」
冷気が渦を巻く。
水ごとレディの手足を封じ込める。
己が巻き込まれる前に空間に鮃を置いて下がれば……ぱちりとレディが瞬いた。
「……あら~?」
子供のように首を傾げる彼女は、いつ己の手足が凍り付いのか気付いていない。
竜宮の幻惑に呑まれ、五感を封じられ時間感覚を狂わされたが故に。
感心の頷きをする狐狛の隣に着地して、いつきは告げる。
「宴もたけなわ、そろそろお帰りの時間です。……無論、貴女が望む海への帰還ではないですが」
いつきには感じ取れる。
竜宮の加護の対象となった猟兵が、もう一人いることを。
透明な水に混ざったのは、琥珀色のひかり。
戦場に辿り着いた男が柘榴の隻眼で海の魔性を睨み据える。
「蛮行への責を取らせると云った筈だ。如何な目論見であろうと叩き潰す」
「あらあら、もちろんおことわりします☆」
拘束されて動けずとも、周囲の「海」は彼女の意志に従う。
雪を溶かした冷たい水が渦を巻き、怒涛の波と化してオーシャンボールを揺らす。
「さようなら、猟兵さん☆」
いつきは鯛に指示を出すも、水が動くからレディの下まで届かず。
狐狛は男の実力を知る故に、ただ腕を組んで。
男は災禍断つ刃『秋水』を正眼に構えた。
「水芸如きに付き合う心算は無い―― 何をしようが無駄だ」
銀閃一過。
ひかりの正体は、ユーベルコードを切り裂くための術式だ。
すなわち、渦巻く海──【ディープシー・ストーム】を達人の業で以て斬り捨てる。
埒外の腕力と超絶の見切りが為した絶技に、レディは無防備に瞬いて。
「まぁ……☆」
「此処で潰えろ、神なぞと称する愚かな残滓」
惑い拘束された女ひとり。ならば過つ筈が無い。
世界を護る為の刃──鷲生・嵯泉(烈志・f05845)の【遮斥隕征】が、氷ごとレディを斬り捨てる。
「お前の為の海は、未来に無い」
吹き上がる飛沫は、海と決定的に異なる透明。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
榎本・英
嗚呼。現れたね。君が元凶かな。
海の中も疲れる。それに寒い。
私はそろそろ帰りたいのだよ。
帰って熱々のコロッケを食べたい。
その為には君の目的を早く阻止してしまわなければならないのだろうね。
それにしても君の兵はとてもお粗末な物だね。
数は多いが……嗚呼。本人もどうでも良さそうだ。
では問おう。
「儀式が失敗したらどうする?」
私の望む答えは君が何もせず、大人しく撤退する事。
しかし、君は撤退を選ばないかもしれない。
その時は――
嗚呼。君に手を下すのは私ではない。
情念の獣。
そう。私はまだ死にたくないのでね。
動きは必要最小限。
既に体力は消耗している。
敵の攻撃はどうやって防ごう。
私はただの人だ。
獣に任せてしまおうか。
カイム・クローバー
へぇ、これが儀式か。探し物は見付かったか?
まだ見付かってねぇってんなら、そいつは良かった。アンタをぶちのめして、寒中水泳は終わり。まだ俺にはやるべきこと(雪合戦)があるんでね。
『邪魔が入らないように』?儀式の終わりまで黙って見てろって…それはちょっとツレねぇんじゃねぇか?…やれやれ、ガン無視かよ。仕方ねぇな。
UCを発動するぜ。防壁の内側、丁度儀式やってる足元ぐれーから鎖でぐるぐる巻きだ。『攻撃』って訳じゃねぇし、色々と封じさせて貰うぜ。
封じた後は一気に接近。魔剣の【二回攻撃】に刀身に紫雷の【属性攻撃】、【残像】を残す速度の【早業】で渾身の【串刺し】。
…ようやく目が合ったな。自己紹介は必要かい?
●神を穿つは人なれば
「嗚呼、寒い。早く帰りたいのだがね」
「同感だ。俺にはまだ雪合戦ってやるべきことがあるんでね」
「元気なことだ。私は熱々のコロッケを食べたいよ」
「ははっ! それもいいな!」
海の底で交わされているとは思えないほどのんきな雑談。
榎本・英(人である・f22898)とカイム・クローバー(UDCの便利屋・f08018)の視線は、レディ・オーシャンへと向けられている。
膨大な海水が形成する防壁は、男たちの攻撃どころか視線をも拒絶するように。
「にしても……儀式の終わりまで黙って見てろって? それはちょっとツレねぇんじゃねぇか? レディ・オーシャンよ」
カイムがそう声を投げかけてみても反応はない。
渦巻く流れだけがごうごうと音を立てながら存在を主張するばかりだ。
「……やれやれ、ガン無視かよ」
「なら、無視できなくすればいいのだろうね」
応じて英は懐から一冊の本を取り出す。
周辺が水であるからたちまち染み込んで重たくなるが、今は気にしていられない。
早速暴れ出しそうな『獣』達を撫でるようにして抑え込みながら、英は硝子越しの視線を防壁へと。
所作は向こう側にいる女を見透かすようにも見えるだろうか。
「君の兵は、数こそ多いがとてもお粗末だね。これでは儀式とやらは失敗してしまうかもしれない」
壁は揺らがない。
本当にどうでも良かったのだろう。面白くもない登場人物ではあったが不憫だ……そう吐いた息を吸って。
ねぇ君、と呼び掛ける声は隣人にするように。
隣人にするには容赦のない声を届ける。
・・・・・・・・・・・・
「儀式が失敗したらどうする?」
【人である】──だからこそ生じた疑問に、赤紫の手が我先と頁から飛び出す。
お粗末な隠蔽工作で探偵に犯人と見抜かれた、そんな情念を具現した獣達は。
成功に手を掛けた女を守る壁に爪を立てる。
「私の望む答えは君が何もせず、大人しく撤退する事だが……」
壁の向こうから答えはない。
だから満足を得られない指先が壁をノックし、水流を遮り、それでもなお暴れて女へ取り付かんと藻掻く。
激しく、そして膨大な水に弾き飛ばされながらも。
「それしかない」情念達は女へ向かって手を伸ばす。
「おい、あんた!」
「『あんた』ではない、人間だ。して、何だい?」
「その手、アイツの足元の辺りに飛ばせるか?」
「……ふむ。やってみよう」
策があるというなら、従うのも悪くはない。
地面スレスレ、指先の一部が地面を引っ掻くほどの部分の手が取り付けば。
流れが遮られる一瞬、レディ・オーシャンの足が見える。
それはカイムにしか見切ることを許されない一秒にも満たない瞬間。だが見えたのであれば、そこを起点に抉じ開ける。
「見えたぜ──大人しくしなッ!!」
起動、【過去を封じる鎖(グレイプニル)】!
地面に突き刺した神殺しの魔剣、それが放つ黒銀の魔力が鎖と化して神を称する女へと絡みついていく。
そのたびに刻まれた術式がユーベルコードを封じ込める。弱まる流れを突破した手が掴み、爪を立て、それを振り払うか弱い抵抗を鎖が押し止める。
仮面の奥のヘーゼルの瞳が、ようやくカイムの紫とかち合った。
「ようやく目が合ったな。自己紹介は必要かい?」
「……拘束しゅみがある猟兵がいるなんて思いませんでした☆」
「そうされてるってのによく回る口だな」
「とはいえ、もう抵抗はできまいよ」
ならば容赦こそ不要だろう。
閉じられる本に戻っていく無数の手を待たず、神殺しの剣は紫雷を宿す。
「なら覚えていきな。アンタを倒す剣を!」
「ふふ、おことわりします☆」
哂った表情を見もせずに。
魔剣は残像を連れて海を貫いた。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
ペイン・フィン
【路地裏】
さて……
護り、邪魔だね
……どうにか、突破してみようか
相手の海水の槍に合わせて、こっそり、毒湯の水を混ぜておく
槍が回収されると同時に、毒湯が海水に混ざるように立ち回ろう
ある程度、毒湯が混ざったところで、コードを使用
呼び出すのは、先が少し黒い、白いマフラー
強化するのは、念動力、鎧砕き、破壊工作
やることは、単純
念動力で、思いっきり、海水に混じった毒湯を操作して、防壁を壊す
あくまで攻撃じゃ無く、壊すだけ
敵が対抗しようとしたら、力ためや、怪力も使用して、無理矢理にでも壊していこうか
……邪魔な防壁
でも、これが無くなったら……、さて、どうなるかな?
吉備・狐珀
【路地裏】
やりかねないとは思っていましたが…。
オブリビオンとはいえ見ていて気分の良いものではありませんね。
ですが怒りに任せて勝てる相手ではないのは確か。
気を引き締めて参りましょう。
UC【稲荷大神秘文】を使用。
放たれた水槍を(なぎ払い)身を守る(オーラ)で包まれるように(祈り)を込めて祝詞を唱え仲間を(鼓舞)する。
月代、レディ・オーシャンに突貫するファン殿のスピードが増すように(衝撃波)を放って(援護射撃)を。
ペイン殿が防壁を壊し、ファン殿が一撃お見舞いしたら月代の雷(属性攻撃)を(全力)で放ち追撃といきましょうか。
勘解由小路・津雲
【路地裏】
(義勇兵の末路を見届け)そんなことだろうとは、思っていたよ
さて、忙しいところを恐縮だが、ひとつお相手願おうか、レディ・オーシャン。そうつれなくするなよ、どうせあんたは、帰れないのだから、な!
【戦闘】
【八陣の迷宮】を使用。海水と氷を使って結界を。どちらかというと迷宮というより、相手のウォーター・ジャベリンを防ぐ盾として使うとしよう
海水にされてもまた凍らせるだけさ。まあ凍るまでに間があるから、おれ一人ではそのままでは押し負けてしまうかもしれんがな
さらに氷は白濁させて透明度を下げておこうか。ある種の【迷彩】だ。これで仲間たちの行動の目隠しといこうか
しかし、今日は遮蔽物ばかり作っているな……
落浜・語
【路地裏】
いやー、わかってたけどな。わかっちゃいたが。
すっごくへし折りたい。
あぁ、帰ることはできるだろ?帰る先は骸の海の底だけどな。
あらかじめ、連れている仔龍へ、、可能な範囲で飛んでくる水槍を相殺するように雷【属性攻撃】の指示を。水槍の向ける先を【おびき寄せる】ため、迷宮の方に向かってくるものを中心に。
【存在感】を消して迷宮の影から回り込む形で、レディに接近。飛んでくる水槍は【第六感】にも頼りつつ【見切り】かわす。
フィンさんが防壁を壊した後、ティンタンさんの一撃に続く形で【呪詛】【属性攻撃】を。一撃と言わず九連撃で食らってどうぞ。
ファン・ティンタン
【POW】必至たる決死の一矢
【路地裏】
アドリブ可
……、想像出来なくはなかったけれど
実際にそこまで、無造作に身内を切り捨てられると、くるモノがあるよ
そうは言えど、敵は強い、全力で倒しに行こう
【狙矢貫徹】
人型の姿をも解き、自らが器物たる【天華】に全てを集約し、刀身に【力溜め】
津雲の作る氷の障壁に器【物を隠す】ことで死角に入り、機を待つ
水槍が氷壁と相殺になり視通が通ったタイミングで、放たれた矢の如く突貫
大幅に流水抵抗の少なくなった刃の我が身で槍の追撃を【見切り】回避しつつ、【串刺し】の一撃を
刺さることがかなえば、そのまま刀身を介して【生命力吸収】
これだけ状況を掻き乱せれば、追撃のきっかけには十分かな
●路地裏よりアイを込めて
彼らは、野良だ。
主を持たず自由気ままに生きる。だからこそ、路地裏には一定の秩序がある。
そういうものが必要だと、知っているから。
気儘な混沌を認めない。認める訳には、いかない。
「……やりかねないとは、思っていましたが……」
「実際にそこまで、ああも無造作に身内を切り捨てられるとね……」
「分かっちゃいたが……すっごくへし折りたい」
「無論、帰すしかなかろう。骸の海にな」
「うん……どうにか、突破してみよう」
彼らの心は、ひとつ。
「天狐・地狐・空狐・赤狐・白狐 稲荷の八霊五狐の神の光の玉なれば 浮世照らせし猛者達を守護し 慎み申す」
しゃらりと響く神楽鈴の音色。朗々と詠われる祝詞は清らの内に力強さを秘めて。
かつて吉備稲荷神社に祀られていた吉備・狐珀(狐像のヤドリガミ・f17210)の祈りは、仲間たちを鼓舞する為の祝福。
組み合わせた手の、指に煌く三色を見ながら狐珀はうたに没入していく。
味方に加護を与えるうたに気づいたのだろう。海水めいた雫を傷ついたからだから零しながら、レディ・オーシャンは繊手を翻す。
「ふっとんでいってください☆」
「仔龍!」
主──落浜・語(ヤドリガミのアマチュア噺家・f03558)の声に、雷が弾けた。
放たれた海水の槍を撃ち落とす、には少し足りない。
けれど掠めた身が海水と変じないのは、祈りにより得られた守りがあるからで。
それを齎した彼女を庇うように、同じ三色の嵌った手を伸ばす。
「まったくつれないな、レディ・オーシャンよ。少しはこちらも見ておくれ」
そんな若人たちの姿に勘解由小路・津雲(明鏡止水の陰陽師・f07917)は僅か、目元を和ませて。
けれど一切油断なく鋭く海中へと霊符を投ずる。
「休・生・傷・杜・景・死・驚・開。今や三吉門は閉ざされ、汝に開かれたるは死門のみ──開け、【八陣の迷宮】」
玄武が変じた錫杖の遊環がしゃらりと響き、氷属性の霊符が海水を呑んでいく。
裡に『あるもの』を隠しながら形成される氷壁を眺め、独り言ちるのは。
「……しかし、今日は遮蔽物ばかり作っているな……」
「ううん……おかげで、助かってるよ。津雲」
「はは、そう言ってもらえると何よりだ」
ごくごく温度を下げられた結界は、海水の槍を次々に凍らせていく。その上から殺到するものが凍った海水を砕きながらさらに進んでくる。
ひとりでは押し負けていたかもしれない。
だが、ここには仲間がいる。
「月代、おねがい」
「仔竜、行ってくれ」
二匹の竜の雷撃が合わさって当たりそうな海槍を撃ち落とす。
神楽の音色が薙ぎ払い、奏剣が押し返す。
海へと零された毒湯が氷を溶かし、海水の容積を増やすのを見て。津雲が深めた笑みは無意識だったろうか。
「あら。あらあら☆ 面白い小細工をするんですね☆」
くつくつと。健気な抵抗を楽しむように海の魔性も微笑んで。
指先で海流を引きずる。やってきたそれを当然のように纏う。
膨大な水が生み出す防壁はレディ・オーシャンを包み込み、視線すら通さない守りの中へと閉じ込めてしまう。
「っとと、引きこもっちまったか」
「……ううん。こっちの準備は、できている」
顔をしかめた津雲の隣。ペイン・フィン(“指潰し”のヤドリガミ・f04450)は一歩、進み出て。
差し出したのは、何もない手だったけれど。
「力、貸してね……」
【自分が変わってきた、その証拠】──それは絆を具現化し、借り受けるユーベルコード。
無かったはずの手の中に現れたのは、白いマフラー。先端部の黒いそれが何を意味するかなんて、自分が一番よく知っているから。
くるり、迷いなく首へと回しかける。その温かさが彼女の指先のようで、冷たい水の中で少しの安堵を得る。
「……行くよ」
息を吸う。吐く。
海水に流し込んだ「姉」──毒湯へ、意識の焦点を合わせた。
思い切り引き千切る。
「な……っ!?」
いくら海水に混ざっていようと。
毒は、毒だ。静かに拡散して致命へと届かせるもの。
それを知らずに取り込んでいた壁は、ペインの意に従って捻じ曲がる。
そうなってしまえば儀式に没頭もできない。壊れた箇所から解れていく海流が、新たに渦を巻くのが見て取れただろう。
「いえ。いいえ☆ まとめてこわれればおなじことです☆」
「海」が蠢く。
ひとの手で抗うことの許されない極大の災害が、魔性の手により顕現する。
激しく渦巻く海が、野良たちを引きずり込んで喰らい尽くさんと荒れ狂う。
「くっ……!」
「させ、ません……」
「負ける訳にはいかない……」
「防がせてもらうとも」
けれど、生命の埒外として。未来へ偏向した意志として。
止めてみせると意思を合わせる。
龍達の雷が弾き、ペインの念動力が逸らし、それでもなお止まらない渦を津雲の氷が受け止める。
「ぐっ……!」
けれど、止めきれない。
重ねた氷に罅がひとつ。入ってしまえば弱くなったそこから罅が走り、パキパキと音を立てながら自重で割り砕けて。
「刃の下に心、忍びて──」
中に潜んだ、白華一輪。
ファン・ティンタン(天津華・f07547)は、この瞬間の為にひとの形すら解いて待っていたのだから。
傷つく仲間たちに申し訳ないという気持ちも今は押し隠して。
この魔性を斃す、ただそれだけの闘志を己に込める。
「── 一刀の下に、刺し穿ち撃ち砕く」
【狙矢貫徹】、突貫。
必至たる決死の一矢が海を貫いて飛翔する速度は六千四百キロメートル毎時。
最早目で追うことすら馬鹿馬鹿しい護刀は、衝撃波を引き連れてレディ・オーシャンを貫いた。
「あ、ら……?」
目で追いきれないから、理解も出来まい。
喰らったそれを分からないと瞬く目線が、胸元に落ちて。
「もらうよ」
収奪開始。
刻まれた紋章が輝いて、レディの命を喰らっていく。
刺されただけではありえないほどの倦怠感に、優美な指が込めてファンを握る。
引き抜く動きは、白しか見えていない証。
「ちょ、っと……! なにを、するんですか……!」
「分からない? ──後方注意、よ」
だから、彼女は。
津雲の氷に隠れて接近する「黒」に気付かない。
引き抜かれた天華がレディの手を離れる、その背から。
「それじゃあ、死なせてやるよ」
「……っ!?」
【死神騙り】。
染み付いた死の具現を纏って、語の刃が一撃九閃。
傷口から染み入る呪詛が、内からレディを侵していく。
「あなた、たち……っ!」
「じゃあな」
生命力を奪われ呪詛に喰われ、膝をついたレディでは彼らを追っていけない。
彼らは、路地裏野良同盟。
何者にも捕らわれないからこそ、自由な刃はどこまでも往く。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
シノギ・リンダリンダリンダ
【海賊連合】
あぁ会いたかったですよレディ・オーシャン
海を統べる者、強欲の海を知る者!
探し物、略奪させていただきます!
テンション高いままに船で突撃
海水の奔流だろうと、水槍だろうと、ここが海で仲間が乗っていて、ライバルが一緒にいる。我が海賊船の強さにどうやって疑問を抱けというのでしょう
水槍が当たっても無視して、どれだけ船が海水にされようと無敵の船で海を『蹂躙』する
突撃後、防がれようと直撃しようと後は関係ありません
さぁ皆さん。略奪と蹂躙の時間ですよっ!
船から飛び降り、どんな障壁があろうと『属性攻撃』をのせて【力いっぱい殴るだけ】
あいつが探していたもの、『失せ物探し』でなにか見つけれないでしょうかね?
法月・フェリス
【海賊連合】
レディ・オーシャン……故郷に帰りたいのかな。キャプテンもグリードオーシャンに興味津々だし、その方法を略奪もしてみるかい?
チャンスがあれば訊ねてみようか。『何を』探していたのか……
『情報収集』で魔法陣の解析。『封印を解く』ことで『何か』を取り出せるかも?
でもまずは彼女を倒してからだね。
船が突っ込むことの衝撃は柱に掴まって耐え、『地形の利用』や『迷彩』で狙撃ポイントに志蓮と共に潜む。
射線さえ通るなら、見づらくてもぼくがいる。ぼくの電脳空間を介した『視力』は遮蔽物なんて関係ない。
志蓮の狙撃銃を『武器改造』で海中仕様にアップグレードし、必殺のタイミングを『見切り』志蓮に狙撃の指示を送るよ。
法月・志蓮
【海賊連合】
ようやく大ボスか……現在進行形で傍迷惑すぎるし、さっさと退場してもらおうか。
目的地や探し物も気にかかるけど、そういうのは得意なやつに任せよ。
戦闘開始だけど、まずは……船の突撃の衝撃に耐える事からだな!舌噛むなよフェリ!
……さて、突っ込んでお頭たちが戦闘に入ったら『スナイパー』らしく『目立たない』ように後方へ移動し、フェリのサポートを受けよう。
改造によって今の戦場に最適化された愛銃を構えたら【致命への道筋】を発動だ。
相手の動きや水の流れを『見切り』、生半可な防御や妨害ごと撃ち貫く『鎧砕き』の弾丸を。他の連中との戦いに意識が向いているレディオーシャンの、急所を正確に撃ち込んでやる!
地鉛・要
【海賊連合】
海が広がった所でやる事変わらない
むしろ、略奪し甲斐がある
嫌がらせとして影業を使って魔法陣に【ハッキング】を仕掛けてみるか
依然船の中から攻撃
監視軍蟲の海や海流適応はそのまま強敵への適応としてより早く硬くし#一斉発射
召喚した蟲には#鎧無視攻撃、属性攻撃で電気属性と自爆属性を付与
船へのダメージは心配して無いから、基本的に蟲には攻撃を避けて不快音を出させる等で作業に没頭させない様#精神攻撃、鎧無視攻撃
が、味方へのダメージは防がなくてはな。味方に当たりそうな時だけ庇う様に蟲に指示
必殺のタイミングを作り、より確実にする為に蟲に#鎧無視攻撃と衝撃波付きの#傷を抉る自爆を指示
派手に散るが良い
マリア・フォルトゥナーテ
【海賊連合】
「出ましたね、この偽物!海は私!私こそがレディ・オーシャンを名乗るにふさわしいんです!あなたはそこらの水たまりでも統治してなさい!」
呪いにより不死となったフライングダッチマン号から削り出して造った宝箱に、自らの心臓を抉り出して納めることで、この身にも同じ不死の呪いがかかります。代償として体が深海生物化しますが、その代わりに海そのものとなり、海ならばどこへでも瞬時に移動ができるようになります。
これで水の障壁を透過してレディの正面に瞬間移動して、呪いで蟹の爪となってしまった左腕で、シノギさんと共に、レディに肉弾戦を挑みます。
「降参するなら今のうちです!乗り込むぞおおおおお!!」
●いざ、略奪と蹂躙を
オーシャンボールの水底で、波を起こすは二隻の船。
此方、海賊船「シャニムニー」の甲板上。
彼女は水中にピンク色の髪を靡かせて、手すりに足を掛けてその時を待っていた。
「ああ……ああ! 逢いたかったですよ、レディ・オーシャン!」
想い人に焦がれる淑女のように。
限りない殺意で絢爛の瞳を歪ませて。
シノギ・リンダリンダリンダ(強欲の溟海・f03214)は、海の中央へ向けて愛を叫ぶ。
「海を統べる者、強欲の海を知る者! 強く、傲慢で、勝利を疑わないあなたから──」
海賊が敵に向ける愛などふたつきり。
高らかに叫べば、肯定が返ると知っている。
「──それを略奪し、蹂躙させて頂きましょう!」
「──ええ、ええ。その通りです、シノギさん」
それは彼方、幽霊船「フライングダッチマン」より。
穏やかな微笑と裏腹に、マリア・フォルトゥナーテ(何かを包んだ聖躯・f18077)の身を包む修道服は真っ赤に染め上げられていた。
それは、不死に至る為に必要な儀式。
己の手で抉り出した心臓は、既に死者の宝箱の中に。
「海は私! そう、私こそがレディ・オーシャンを名乗るにふさわしいんです! 偽物はそこらの水たまりでも統治してなさい!」
【船の一部(パーツ・オブ・ザ・シップ)】。
髪は烏賊の肢。身体全体にフジツボを着け、左腕と右足は蟹の爪。
海に侵され深海生物と化したマリアは、だからこそ海の魔性を称するに相応しい。
高らかに宣誓する声に煩わしげに振り向いた、レディの返事を待つことなく。
「降参するなら今のうちです!乗り込むぞおおおおお!!」
「おおおおおおおおお!!!」
船長二人の号令で、二隻の船はレディを守る海流防壁に突っ込んでいく。
狙うはレディ・オーシャンの首級、ただひとつ!
「……シノちゃんもマリアも、元気だな」
呟く、地鉛・要(夢幻の果てにして底・f02609)の身は先と変わらず船室の中。
けれど派遣した【監視軍蟲】が作る視線の檻で、状況は追うことが出来ている。
船長二人は突撃させた船から飛び出した。どうもレディ・オーシャンへ肉弾戦を仕掛けているらしい。
殴り掛かっては水流に払われ、肢で薙ぎ払えば水槍が応じ。海水と化した烏賊肢は、けれど即座に治癒してレディへと絡みつこうと伸びていく。
それに噛みついて阻んだのは、レディの周囲に控えた機械めいた魚の群れだ。
生物ではあり得ざる質感のそれらは、肉弾戦を挑む彼女達にとって海流よりずっと確かな障害だ。
「ま、考えることは一緒ってことだな」
ゆらり、揺らした指先に影が集う。
魔法陣に仕掛けようとしていたハッキングは上手くいかなかった。幹部級オブリビオンが入念な準備をしたものだから、ある意味当然か。
だから、こちらに全神経を傾ける。
「行け、蟲達」
キィィィィィィン────────
不快な羽音が海中に鳴り渡る。
咄嗟に耳を塞いだのはレディ・オーシャンだけだ。マリアもシノギも、要の取り得る戦術は承知している。不快な音はただ不快なだけで、足を止める理由にはならない。
「力がなくても群れは脅威なり」
殴り掛かる二人の足場に、甲殻を強化した蟲を置く。
水流で減衰する勢いを、自爆の衝撃が押し上げる。
進路を邪魔する鋼鉄の魚を拳と爪が砕くのが見て取れた。
「今、この場にもっとも適応しているのは蟲だ」
直後、放たれるのは海水の矢衾。
当たれば諸共レディ・オーシャンの支配する海になるそれに、蟲達へ自爆指示を出した。
船が揺れる。
壊れたからではなく、波を起こしたからだ。
海流によってあらぬ方向へと逸れた槍達はもう、脅威ではない。
「派手に散れ」
駄目押しの自爆が、再び海流を複雑と化す。
海槍は放てまい。渦も作れまい。
船長たちも迂闊に近づけないだろうが……。
つまり、この瞬間は『そこ』を射抜ける者の独壇場だ。
「……どうせ、見てるんだろう? 志蓮、フェリス」
「こんな感じ……かな」
法月・志蓮(スナイプ・シューター・f02407)はスナイパーで、法月・フェリス(ムーンドロップ・スポッチャー・f02380)はスポッター。
戦場での二人は、夫婦ではなく相棒だ。
打撃音と蟲の羽音が歪なハーモニーを奏で、海流が不規則に荒れ狂う。環境としては最悪に近い水底であってもするべきを果たす。
雷撃の名を持つ銃を海の中でも問題なく動くよう……そして志蓮にとってもっとも使いやすくなるように。調整を施した銃を渡す。
フェリスにとっては少し重たく感じる銃も、志蓮にとっては手足同然。
スコープ越しに戦場を見る横顔はいつ見たって飽きない程に凛々しい。
「ああ。サンキュー、フェリ。よく見えるぜ」
「うん、どういたしまして」
一度、戦場から視線を外してこちらを見る。
向けられた『旦那さん』の声と笑顔が、フェリスにとっては何よりの報酬で。
また、心臓が跳ねてしまう。
「さて……狙い撃つか」
「……志蓮」
「どうした、フェリ」
「少し、手を握っていてくれるかな」
「勿論。フェリが望むならいつでも、いくらでも」
【公然の言い訳】だ。
けれど、そのぬくもりが、信頼が。
法月・フェリスにとっては何よりの力になる。
「──ありがとう、志蓮。さあ、行こう」
電脳世界と現実世界を重ね合わせる。
海流がいくら複雑だろうと。どれだけの邪魔が入ろうとも。
それを『通させる』のは、フェリスの誇りだ。
「ああ。現在進行形で傍迷惑すぎるし、さっさと退場してもらおうか」
だから志蓮も。
愛する妻にして最も信頼する観測手に、全てを預ける。
「────」
息を吸う。吐く。
それだけの動作も意識してゆっくりと行うのは、生じるブレを嫌ってのこと。
交錯する海色とピンクと黒灰をじっくりと観察する。
殴り合い、流れを生み出し、放ち放たれる動きの中。
どの瞬間なら射貫けるのか。
それを見切る。
タイミングは生まれるものであると、志蓮は知っている。
「!」
爆発音。
海流が乱れる。
けれど。
この程度の障害ならば、射貫ける。
「今!」
「ああ──!」
二度目の爆音と同時に。
音より早い弾丸が。
【致命への道筋】を辿り、レディ・オーシャンへと吸い込まれる。
レディ・オーシャンが、のけ反った。
それは要の作り出した隙に、志蓮が銃弾を通したから。
ヒト型生物共通の急所である額に走った衝撃が、レディの動きを数秒止めた。
「お先に失礼しますよ」
「なんの、負けません!」
だからシノギもマリアも、周囲の海が凪を取り戻すのなんて待ってやらない。
むしろ我先に、ライバルより早く。ひとつでも多くの打撃をレディに撃ち込むために水をかき分ける。
海をすり抜けるマリアが先に辿り着いて、烏賊の肢で女の体を絡め取る。
そうして縛り付けたたおやかな四肢へ、へし折らんばかりに力を込めた。
「ぎっ……! こ、この……っ、はなしなさい……!」
「あらあら。抱擁はお嫌いですか、偽物さん? でしたらこれから、とびっきりを差し上げましょう」
締め上げられる、レディ・オーシャンの前。
くつりと唇を吊り上げたシノギは、その手にメリケンサックを握り込む。
ノウキンナリノセイイイッパイ
「【力いっぱい、殴るだけ】……!!」
連打、連打、ひたすらのラッシュ!
穿つ肉の感触がひとのそれとなんら変わりないのがまた愉快だ。
刃を出してやらなかったのはサービスの一環。
蹂躙するならとことんまでが、「しゃにむにー」の流儀である故。
そう。
このまま、ボコボコにしてやる。
「かは……っ!」
「そんなか弱くて、海じゃあやっていけませんよッ!!」
そして最後の一発で、海の向こうまで吹っ飛ばす!
マリアも同時に烏賊の足を離して押したから、海流の向こうに海色の姿は見えなくなり。
そうなれば上げる声はひとつ。
「海賊連合の、勝利です!」
「「「「おおおおおおおおおおおおお!!!」」」」
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ヘンリエッタ・モリアーティ
【カチコミ】
こんにちは、レディ。会いたかった
――水害はよくない。特に潮があるやつは
作物もみんな死んでしまうわ。やめておいた方がいい
「効率が悪い」って言ったんだ
支配者がおいしいご馳走にありつくには
手足がいなきゃいけない
手足がご馳走を届けるには
健全な日々がないとうまく働けない
多ければ多いほど支配者の得るものは多い
……わからない?あは、じゃあ
お前は支配者に相応しくない
【安難ノ太刀】、起動―― 永縁刀「紫衣紗」、力を貸してね
無尽刀「蠍火」と暖気の赤晶を手に
熱さで塗り替えてあげる
兄さんからの上着も一緒にね
真っ向から挑む
――どう?熱い?
為すべきは完全、果たすべきは完全の勝利
過去らしく化石にでもなっておいで
鎧坂・灯理
【カチコミ】
ずいぶんと楽しそうだな、もっと広い場所で遊んだ方がいいんじゃないのか?
ああすまん、皮肉が理解出来るほど頭良くなかったか
さっさと骸の海に帰れって言ったんだよ
起動――【誰が為の戦場】
今から六十五分、この場を「普通の地上」に書き換える
奴の攻撃が当たった者は海水にならず癒やされ、強化される
電脳怪盗には些か劣るが、悪くないステージだろう?
では皆様、あなたたちを阻むものは何もない
後は「ご自由にどうぞ(セルフサービス)」だ
さっそく蠍火が役に立っていて嬉しいな
兄様が直に殴りに行くのは珍しいかもしれない
匡のあれは……記録しておこう
散々だなァ半魚人 好きにやるなら好きにやられるのさ
――『海』に沈め
ニルズヘッグ・ニヴルヘイム
【カチコミ】
やァ、いつ見ても頭の悪そうな顔だな
私に言われたら終わりだぞ
そんなに海が好きなら、良い場所を紹介してやろう
骸の海と言うのだが――あァ、もう嫌というほど知っていたかな?
妹たちが張り切ってるようで何よりだ
私も少々殴らせてもらうよ
現世失楽――【悪徳竜】
魚は冷気に弱いんだったか忘れたが、そら、何も見えんであろう
視覚に頼る者には辛かろうなァ
知覚を奪われた単純な軌道、貴様の表に出やすい思考なんぞ読むまでもない
蛇竜を槍と変え、腹に叩き込んでやろう
妹と親友共々、生憎と手加減が苦手でな
少々どころでなく痛いかも知れないが……
まァ、この世界を選んだのが運の尽きだと思って
精々旨い刺身にでもなってくれよ
鳴宮・匡
【カチコミ】
だそうだぜ、嫌われてるなお前
さっさと骸の海に帰った方が痛い目に遭わないんじゃないか?
……ま、嫌と言っても叩き返すけど
鎧坂のおかげでこちらの動きに制限はない
相手の攻撃は癒しに転化される――とくれば
向こうがやることは決まってる
“防御を固める”だろうな
なら、こっちのやることも決まってる
その防壁を、抉じ開ける
【虚の黒星】、初撃を当てるのは防壁のどこでも構わない
当たりさえすれば、それでことは済む
――命も力も食い破る影の魔弾だ
そんな防壁如き、幾らでも破ってやるよ
守りがなくなっても、“非戦闘行為”に没頭していられるかな
さて、最低限の仕事は済んだ
あとは【援護射撃】に徹しよう
それじゃ頼むぜ、三人とも
●波濤沈嘯
「く……っ☆」
海が渦を巻く。
吹っ飛ばされたレディ・オーシャンの体を押し止めんと、彼女の意思に従う海が蠢いた。
渦の中央に着水すれば、彼女は常態を取り戻す。
「っと、もう……やばんなんですから☆」
服の埃でも払うような動作で体をはたく、いっそ無防備な所作。
そこへ、唐突にしろがねの炎が撃ち込まれた。
「わ、っと☆」
呪詛炎を打ち払う海水の向こうで。
カチコミに来た彼らは、誰も彼もが戦意に満ちた顔をしている。
「やァ、いつ見ても頭の悪そうな顔だな。──なんて、私に言われたら終わりだぞ」
ニルズヘッグ・ニヴルヘイム(竜吼・f01811)は気さくなようで隙のない挙動で片手を挙げ。
「ずいぶんと楽しそうだが、もっと広い場所で遊んだ方がいいんじゃないのか?」
鎧坂・灯理(不死鳥・f14037)はじろりと射殺さんばかりの視線を向ける。
「だそうだぜ、嫌われてるなお前」
肩を竦める鳴宮・匡(凪の海・f01612)の前へ。
ヘンリエッタ・モリアーティ(円還竜・f07026)は、いっそ柔らかい歩調で進み出てきた。
「水害は──特に潮があるやつは、作物もみんな死んでしまうわ。やめておいた方がいい」
だって、「効率が悪い」じゃないかと。
かつての犯罪王は、悪徳の教授は。
幹部級オブリビオンたるレディ・オーシャンに、真っ向からそう言ってみせるのだ。
「はぁ……?」
「支配者がおいしいご馳走にありつくには手足がいなきゃいけない。手足がご馳走を届けるには、健全な日々がないとうまく働けない。分からない?」
「ええー? だってここ、わたしのせかいじゃありませんし☆」
ヘンリエッタの問いに、レディはこてりと首を傾げてみせた。
それだけ切り取れば見惚れてしまうほど愛らしかっただろう。だからこそ、ひとや世界を何とも思っていない態度が際立つ。
「あなたたちって……みちをあるいているアリを、いちいちきにするんですか? それってあるきにくそうですね☆」
「ふん。どうせ、自分の世界に帰ってもそうするんでしょう?」
「ええ、それがなにか?」
「あは、じゃあ────お前は、支配者に相応しくない」
宣告は、死刑と同義だ。
もともとオブリビオン相手に問答の意味も無かったろうが、つがいの準備を待つくらいの時間は稼ぐことが出来た。
「それでは遠慮なく。舞台を整えようじゃないか」
ヘンリエッタを引き継いだ灯理が、『霊亀』越しに世界を見据える。
確認、意志接続、──現実改変は一瞬で足る。
直後。
海が掻き消えた。
「えっ……なに? わたしのうみを、どこにやったんですか?」
「さて、知らんなァ。ここは『普通の地上』だが?」
翻しても抵抗のない空気に目を白黒させるレディへ、にたりと笑ってみせる灯理だ。
そのユーベルコードの正体は【技術:誰が為の戦場(アシンメトリー)】。
六十五分の制限こそあるが、戦場を書き換えて掌中に収めてしまう冗談のような絶技。
けれど、できる。
彼女が信じれば、現実の方が着いてくるのだから。
「では皆様。あとはセルフサービスだ。ご自由にどうぞ」
芝居がかった一礼に、答えたのは大きな手。
大人の体にまで成長してまで、まさか頭を撫でられるとは思うまい。
彼女の髪の毛が跳ねたのは驚きが理由ではないことが分かって、ヘンリエッタはそっと口元を覆った。
「おお、すごい! よくやってくれた灯理、これで凍えなくて済むよ」
「……あの、兄様。敵の前です」
「っとと、すまんな。だが可愛い妹が整えた舞台だ。張り切って踊らせてもらうぞ」
竜翼を翻す。
レディ・オーシャンへと向き直る顔に穏やかさは欠片もない。
悪徳の長兄、氷獄の処刑竜──それは【悪徳竜(デッドエンド・オブ・ニヴルヘイム)】。
「海が好きなんだろう? 良い場所を紹介してやろう。骸の海というのだが──貴様に良く合うはずだ」
男が従えるのは、霧だ。
地上と化した戦場を包み込み、冷やし、知覚を奪って動きを鈍らせる──『もうひとつの故郷』の霧。
水に代わって世界を呑んだ白濁に、レディ・オーシャンの息を呑む声が僅か。
「……っ、もちろん、おことわりします☆」
それでもすぐさま攻撃に転じる手際は見事なものだ。
視界を奪われているからこそ、全周へと叩き込まれる海槍はお手本のような範囲攻撃。
「甘い」
けれど一本一本は単純な軌道を描く海槍をドラゴンランスが受け止める。
海水には、ならない。
水浴びをした蛇竜が、ニルズヘッグの手の中で嬉しそうな声を上げる。
「お? もっと浴びたいか、そうか。気持ちいいものな!」
「ちょっと☆ どうしてうみにならないんですか☆」
「灯理が──妹が書き換えたのは、戦場だけではないということよ」
「その通り」
仕事は終わったと、腕を組んで眺めていた灯理はやはり悪どく笑ってみせた。
ただの念動力で海槍の大半を捻じ曲げたなど面にも出さないのは、そういう態度が強者なのだとつがいから学んだもの。
「Arsene殿には些か劣るがね。悪くないステージだろう?」
「おう! 最高だ!」
「くっ──なら、こうしますね☆」
虚空から引きずり出されるのは水のカーテン。
ニルズヘッグが突貫するも分厚い海流が行く手を阻む。
儀式に集中してしまえばこっちのものだと言わんばかりの防壁に思わず舌を打った。
「くっ、これだから魚は!」
「ま、予想通りだけどな」
攻撃が通らないなら防御を固めるのは戦場の定石だ。むしろ逃走を選ばなかっただけ上等と言えるだろう。
知っているから凪の海は揺らがない。揺らがないから、放つ返答も定石だ。
「────」
故郷を追われる者の苦痛など分からない。
作物が出来なくなったら大変だろうが、それで生計を立てているひとたちの気持ちなど知る由もない。
「どうでもいい」と、いつか切り捨ててきたもの達を。
放っておくには、周りにお人よしが増えすぎた。
だから。
「殺すぜ」
その力も、命も──あってはならないと。
【虚の黒星(アナイアレイト)】が霧を引き裂いて飛翔する。
一発目。あっけなく水の中に呑まれる。
問題ない。
二発目。
放たれた虚無の魔弾が、膨大な水を消滅へと導き食い破る。
「さて。そのザマで“非戦闘行為”に没頭していられるかな」
「きゃっ……、おんなのひみつをのぞくなんて、ひどいおとこですね☆」
「いや、オブリビオンにそういう興味ないから」
「ははは、まったくな。詰まらない冗談を吐く半魚人だ」
いつの間にか、冷気の霧は消えている。
かわりに戦場を支配するのは炎が生み出す熱さだ。
寒さに弱い竜たちが全力を出すために、彼女のつがいが誂えた刀と友達が用意した護符が唸りを上げている。
「──化石になっておしまい」
「それとも、刺身になって食われるのが好みか?」
地面を蹴る音は、同時。
紫基を輝かせる黒刀と竜の変じた黒槍が陽光の下で光を放つ。
「どちらも、おことわりですっ☆」
「それはこっちの台詞だよ」
「さっさと『海』に沈め」
水がなくとも──繊手を翻す動作はユーベルコード発動の起点。
だから匡がその手を撃ち抜き弾く。
空間から僅かに漏れた水は灯理が地面に染み込ませる。
期した必殺を封じられて、レディの表情が歪んだ。
「っ────猟兵ッ!!」
「ははっ、そういう顔の方が似合っているぞ」
「そのまま、──絶えて死ねッッ!!」
もう、阻むものはない。
槍は腹部へ。刀は顔面へ。
完全な勝利を果たすべく、吸い込まれる。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
レイニィ・レッド
◆狭筵サン/f15055
空から降ってきた水って
広義では雨って呼びません?
……とまぁ、屁理屈はさておき
役割交代です
いえいえ
ちゃんと信じてますよ
アナタの逃げ足は、ね
纏った雨は十分
自分はこの海の中でも
『雨の赤ずきん』となりましょう
レディの視界内に入らないよう意識し
物陰を渡りレギオンに紛れながら
気配を殺して潜伏
機を待ちましょう
奴さんが"邪魔者"に夢中になった瞬間、一気に接敵
喉を掻き切り
今度こそ派手に血潮をぶちまけて貰いましょ
ほら
アンタの血が魔法陣を汚してますよ
残念、儀式は滅茶苦茶ですね
あの人の(悪)知恵を侮りましたね
彼を放置しても
自分を放置しても
アンタは帰り道を見失う
さァ
赤い雨を見せてやるよ
狭筵・桜人
赤ずきんさん/f17810
さてさて、囮交代ですね。
見てのとおり女性の視線を集めるのは得意ですよ。
……アレ?信じてない?
水中に浮かぶテツクズ――エレクトロレギオンを召喚。
遮蔽物としてしか機能しないレギオンを盾に得意の【逃げ足】で勝負と行きましょう。
ただ逃げ回るのも癪ですし一番嫌がりそうなことしようと思います。
せっかく準備した魔法陣を踏み荒らしまーす!
えいえい木の棒とか石とか乗っけてやる。ざまーみろ。
クローンと同じ人格なら煽り耐性も低いはず。
水流を暴れるだけ暴れさせて視界が悪くなれば儲けもんですねえ。
まあ逃げ回るにも遮蔽物だって有限なワケですが。
でも大丈夫です。もうすぐ雨が降りますから。
●本日の天候、不実の俄雨
「ああーーーーーーーーっ☆ 何してるんですか!」
「おやおや、お帰りなさい。待ちくたびれていましたよ」
魔法陣を敷設した海の中心部では、桜色が待っていた。
だって、主が不在だったのだ。小細工を仕掛けるには丁度いい。
狭筵・桜人(不実の標・f15055)は、傷を負いながら戻ってきたレディ・オーシャンに向けて『それ』を見せてやる。
「どうでしょう! 会心の出来だと思いますけど」
小石。木の棒。捨ててあった葉っぱ。テツクズ。etc.etc.
名画に落書きをする子供のように、そのくせ陣の機能を的確に殺すように障害物が置かれていたのだ。
ドヤ顔で。
さあ褒めてくださいと言わんばかりのドヤ顔で。
「しんでください──ッ☆」
「うわおっと!? 熱烈ですねぇ!」
当然返答は海槍の雨だ。
転がって回避、テツクズ……【エレクトロレギオン】の影に滑り込む。
水にブチ当たった機械は一撃で海水と化して周囲の水に同化した。
遮蔽が消えれば当然視線は重なる。レディ・オーシャンのヘーゼルが怒りで歪んでいるのが分かったから。
にっこり、微笑みかけた。
「もちろん、お断りします」
「おいで、【ウォータージャベリン】☆」
「でっすよねぇ──!」
当然襲い来るそれに当たっていられないと駆け出した。
水中故の圧力と些細な動きからも生み出される流れが邪魔で、口が裂けても肉体派とは言えない桜人には少しばかりキツイ。
鉄屑を盾に、数々のオブリビオンから逃げ回って来た足を武器に。
それでいて、レディが自分から目線を外さないように。
「うふふ、にげまわってばかりではかてませんよ☆」
「いやあ、そう言われても勝つのは私の役目ではありませんし」
「?」
「だって、」
・・・・・・・・・・・
空から落ちてきた水の中。
・・・・・・・・・・・・
水槍が降ってきているから。
「今日の天気は、雨ですよ?」
『都市伝説』の条件は、整っている。
「? なにを、」
「それじゃ、紅い雨を降らせましょうか」
ぞぶり、と。
レディ・オーシャンの喉に鋏が差し込まれた。
「な、ぁ────」
「ほら、見てください」
水の中で──雨の中で、彼が気配を匂わせるはずがない。
設置されたレギオンの影に隠れて機を伺っていた【雨の赤ずきん】──レイニィ・レッド(Rainy red・f17810)は。
敵の降らせた雨を纏った姿で、海の魔性へといっそ優しく微笑みかける。
けれど裏腹に手つきは荒々しい。捻りながら鋏を引き抜けば、海水めいて透明な液体が魔法陣を汚す。
「かはっ……」
「アンタの血? ……ですよね、コレ。これじゃあ儀式は滅茶苦茶ですね。残念でした」
ちらりと目線をやった先、桜人はもう足を止めている。
この絵面を引いた青年がレイニィの視線に気付いて親指を立てたので、彼の方から口を開いた。
「……さすがの逃げ足と悪知恵ですね」
「やだなあ、赤ずきんさんってば! 褒めても何も出ませんよ!」
「あ、褒め言葉換算なんですか」
「でも何か下さるっていうなら喜んで!」
「じゃあ雪玉でイイですか?」
「えー……」
「現金ですねぇ」
「今現金って言いました?」
「その現金じゃねぇですよ」
どうしてこうも軽口に応じてしまうやら。
レディの軽い体を突き飛ばしてやると、波に乗って流れていく。
そんな光景を見て、不実の桜はまた笑うのだ。
「人の嫌がることをした後は気分がいいですね!」
「……一緒にしないでくれませんか」
「ええー?」
嘆息。鋏に着いた血を振り払う。
主が斃れたなら、この「雨」もすぐに晴れるだろうか。
思って、少しだけレインコートのフードを深く被る。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ヴィクティム・ウィンターミュート
ハッキリ言うが、俺はお前が大嫌いだ
骨折って何とか平和にした世界に、我が物顔でやって来て踏み荒らしやがる
分かるか?自分の脚本がカスみたいな価値しかない奴に落書きされる気持ちがよぉ
喜べアバズレ───今日は一番『酷い』殺し方を用意してきた
クライング・ジェネシスに感謝するといい
ヴォイドリンク、スタート
全身の変質を確認、物質の構成情報にアクセス開始
『漆黒の虚無』変換条件により、揺蕩う水を始めとしたあらゆる無機物が
『漆黒の虚無』となる
あぁ、海水を増やしていいぜ…材料が増えるだけだからな
増えろ、増えろ、満たせ、満たせ
極大の虚無を殺到させ、削り取るのは──
『生誕』という『過去』
お前が生まれた時を、否定してやる
●そして、いつか海底で
もし。
エンパイアウォーの折、アースクライシスにおけるフォーティナイナーズのような猟兵個人を讃える仕組みがあったなら。
絶対に上位に入っていただろう少年がいる。
ヴィクティム・ウィンターミュート(impulse of Arsene・f01172)。
サムライエンパイアの平穏に一役どころでなく買った青年は、今。
「よう、クソアバズレ。なかなかイカしたお洒落じゃねぇか」
「にあわ、ない……でしょう……?」
「いやいや」
喉を裂かれ、死を待つだけになったレディ・オーシャンの前で。
限りない殺意を滲ませて、わらっている。
「VoidLink,Start」
呟きはコマンド。
アースクライシスはクライング・ジェネシスとの闘いで、彼はかのフォーミュラから骸の海の一部を強奪せしめた。
全身のサイバネの変質強化と共に得た、それを操る力。
「喜べよ半魚女。一番『酷い』殺し方を用意してきてやったぜ」
【Forbidden Code『Void Sly』】──
狡猾なりし虚無の牙は、レディのものであるはずの海を漆黒へと変換していく。
そこにあるはずなのに、言い様のない虚ろを湛えた黒の名前は、骸の海。
「あは、」
それを見て、あろうことか。
レディ・オーシャンは、笑った。
「あははははははははははははは!! まさか、まさかまさか! さいごにこんなものがみられるなんておもいませんでした☆」
過去を強奪する虚無の海が、女を徐々に飲み込んでいく。
爪先、指先、長い髪も鱗に包まれた肢体も一切合切区別なく、削り取られ強奪されているというのに。
抵抗はない。あるいは無意味と分かっているのか。
女は、ただ笑っている。
「……何が可笑しい」
「だって、だって! まさか猟兵がそれをつかうなんて! あなた、『こっち』のほうがちかいんじゃないですか☆」
言う間に下半身が呑み込まれた。
頭部ごと右目が削ぎ落される。
生誕を否定され、糧と踏み潰され、歪む片目はそれでも同類を眺めるようにヴィクティムを見ている。
「……それがどうした。こっちが得た手札を使って何が悪い」
「──あはは! じかくがあるんですね? じゃあほんとうに、すぐにこうなるんじゃないですか☆」
「ハッ、よく回る口だこと」
漆黒の虚無へ指示を出す。
開いた口へ、ついでに眼窩、鼻の穴、耳の穴、喉に開いた傷から体内へ侵入。女の体を食い荒らす。
黒が体を突き破る。骸の海へと沈んでいく。
「さきに、骸の海でまってますね☆」
なのに置かれた最期の言葉は、呪いめいて。
それを否定しきれなかった少年は、僅かに目を伏せた。
漆黒の虚無は操作を解かれてもとの海へと戻り、そして霧と散っていく。
主のいない海は、もうここにいる必要はないと言わんばかりに。
雪の消失と言う僅かな爪痕も、少しすれば埋められ忘れられていくのだろう。
少なくともこの村は、平和な新年を迎えることが出来る。
それは間違いなく、猟兵たちの功績だ。
成功
🔵🔵🔴