美人(はな)に誘われ、現る毒心(どく)
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そのイベントの名は『帝都百美人コンテスト』という。通称『十二階』こと『凌雲閣』で行われるこのコンテストは、出場者の写真を階段の壁面に展示し、投票者は階段を上りながらその写真を見て、最上階で投票するという仕組みだ。
スタァを夢見る女の子の登竜門とも言える有名な美人コンテストで、今日もまた一人の女性が選ばれた。
8階の休憩室――そのセレモニイ会場にて。
様々な記者から優勝のインタビューを受ける女性。その中に、マフラーをした女記者が一人。ぶら下げた名札には『立花』とあった。
「こんな感じでいいかしら?」
立花の質問に答えた女性がはにかみながら告げると。
「えぇ! ありがとうございました! えぇ……やはり可憐な貴女こそ贄にふさわしい!」
「えっ」
不穏な言葉が聞こえた。それを聞き返す前に響く銃声。立花の銃に肩を撃ち抜かれた女性が吹っ飛ぶ。歓談の場であったセレモニイ会場が一転して騒然とする。
「我らは『幻朧戦線』!」
「大正の世を終わらせる者なり!」
「戦乱こそが人を進化させる!」
立花の名乗りに合わせて、観客に潜んでいた同志たちも立ち上がる。悲鳴を上げ、逃げ出そうとする観客たちに対して、入り口を封鎖して退路を断つ幻朧戦線。
「今日ははじまり。貴女の貴い犠牲によって、世は戦乱へと戻るのです!」
立花の声に応じるかのように、女性の周辺に現れる……影朧たち。それはまるで撒き餌に釣られた魚のごとく、湧いて出てくるのであった。
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「がう、グラッジ弾って知ってる?」
グリモアベースでアルファ・オメガ(もふもふペット・f03963)が猟兵たちに問いかける。
既に知っている猟兵も多いかもしれない。過去、サクラミラージュであった大きな戦いで使われた非人道的な『影朧兵器』。その中でも『恨み』を凝縮して弾丸としたのがグラッジ弾だ。
「この銃弾を受けちゃうとね、ケガするだけじゃなくて、影朧を呼び寄せる存在になっちゃうんだ」
グラッジ弾は炸裂すると同時に周囲に『強い恨み』を撒き散らす。これに影朧が反応してしまうらしい。これを敵の医療施設に打ち込んでいたのだから、非人道的と言われても仕方がないだろう。戦いが終わり、グラッジ弾は全て破棄されたはずなのだが……。
「がう、ボクの予知に引っかかったのは、そのグラッジ弾を使おうとする『幻朧戦線』が起こす事件なんだ!」
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予知にあった通り、事件が起こるのは百美人コンテストのセレモニイ会場だ。優勝した女性にグラッジ弾を撃ち込むのは『立花』という女性記者。ただ、動きやすいからなのか、男物のスーツに釣りバンド、ズボンといった服装をしている。
「シャッポから長い黒髪が流れているから、判別するのは難しくないはずだよ」
そして最後のポイントは首元にはマフラーだ。
「幻朧戦線のメンバーは普通の一般人なんだけどね。皆、共通して『黒い鉄の首輪』を付けているんだよ」
それを隠すためにマフラーをしているということだ。冬場だし、他の人もしているしで服装としてはおかしくはない。しかし、決定打にはならずとも、選別の基準にはなるはずだ。
この幻朧戦線が事件を起こす前に、片を付けるのが今回の任務。
「そのために、皆にして欲しいことは2つだよ」
まずは百美人コンテストの投票に参加してほしい。
「何故かって言うと、そうしないとセレモニイ会場に入れないからなんだ」
というのは、セレモニイ会場は百美人コンテストの出場者と関係者しか入れない。関係者とは運営側と投票者だ。いずれも入り口で入場チケットをチェックされる。
「入場チケットは最上階で投票すれば交換でもらえるんだ」
そのため、まずは投票者として凌雲閣に足を運んでほしい。
「そして、セレモニイ会場で立花とその仲間を取り押さえてきて」
タイミングはインタビューが始まった時がいい。何故なら、そのタイミングまでグラッジ弾の所在が不透明だからだ。
「最初から立花が持っているとは思うんだけど、そうじゃない可能性もあるから」
確実にグラッジ弾を回収するには、グラッジ弾を撃つ直前を押さえるしかない。例えば、セレモニイ会場に入る前や優勝者発表のタイミングで動くと、幻朧戦線のメンバーが異変に気付いて撤退する可能性もある。仕掛けるタイミングは慎重にお願いしたい。
「じれったいかもしれないけど、たぶんこれが最短手段だよ。少し手間がかかるけど、皆よろしくね」
そう言ってアルファは、がう、と頭を下げるのだった。
るちる
はじめまして、あるいはこんにちは、るちるです。
運営はひとつだけにしとけよーというるちると、ネタいっぱい溜まってるじゃろ?というるちるが戦った結果、ネタ消化に走りました。ふふふ。
シナリオの補足ですー。
1章は、投票からセレモニイ会場に入るまでになります。
だれに投票すればいいかというと、好きな女の子に投票してやってください。不思議なことにあなたのとっても好みの女性や好きな人に似ている女性が出場しています。つまり、ご自身の本能と性癖に従うんだ。
セレモニイ会場に入ったら、中の様子やマフラーしている人たちを確認するなど事前準備をするのもいいでしょう。
2章は、セレモニイ会場での行動となります。インタビューが始まろうとするそのタイミングで、立花および幻朧戦線のメンバーを一網打尽に捕まえます。1章での動き方次第では、有利なポジションとかを確保できるかもしれません。詳細は、2章開始時に改めて状況追記します。
3章は2章の展開次第で場所が変わりますのでここでは割愛。
いずれの章も一般人が多数いる場所です。攻撃やユーベルコードを使う際は巻き込まないように注意してください。というかやめてください。
あと踊り子(出場者)には触ってはいけません。ナンパはしてもいいですが、断られても落ち込まないように。
それでは皆さんのプレイングお待ちしていまーす。
第1章 日常
『帝都百美人』
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POW : ファーストインプレッションを優先して投票
SPD : 一通り見廻って自分が応援したくなる参加者に投票
WIZ : プロフィールなどの紹介文を読んだうえで吟味して投票
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それは帝都にあって見上げるほどに高い建造物、『凌雲閣』。雲を凌ぐとはよくいったものだ。
円筒状の建物に入ると中には、壁面に近い場所に各階を繋ぐ階段が見える。最上階までずっと続くこの階段に沿うように、『帝都百美人コンテスト』に出場している女性たちの写真が壁にかけられ、並んでいる。
さて、誰に投票しようか。
まだ階段は上りはじめたばかり。今すぐに決める必要もない。ゆっくりと外の景色も楽しみながら。投票する女性を決めるとしようか。
※投票する女性のイメージがどうしても沸かない! という方はるちるのマスターページから適当に見繕ってください(そんな雰囲気・外見の一般人がいた、という描写をします)
政木・朱鞠
WIZで行動
美人コンテストか~…可愛い子を見れるから楽しみだけど…まずは『立花』というニセ女性記者を探さないとだね。
闇雲に動いて後手に回らない様に感覚共有した『忍法・繰り飯綱』を放って違和感のある男装と帽子からこぼれた髪に注意してターゲットを探索したいね。
こちらの動向を相手に気取られて逃亡されても困るけど、最悪なパターンは手っ取り早く近くのコンテスト参加者の娘さんで計画の前倒しをされちゃったらこちらの手詰まり…。
飽くまでコンテストの投票に来たお客さんを装って会場に潜入するよ…。
ちなみにプロフィールもちゃんと把握して、私が甘やかしたくなる純真で精気に満ちた娘に投票するよ。
連帯やアレンジOKです
●忍狐は百美人に誘われて
「美人コンテストか~……」
政木・朱鞠(狐龍の姫忍・f00521)は凌雲閣の長い階段をのぼりながら思わず呟く。傍らを見れば、壁にはコンテスト出場者の写真が。その下には簡単なプロフィールが書かれている。
「可愛い子を見れるから楽しみだけど……」
朱鞠の性格上、自分が甘やかしたくなる純真で精気に満ちた娘がいいんです。いるかなぁと思いながらプロフィールをチェックしていく朱鞠。
そっちはそっちで楽しみなのだが、猟兵としてこの場に訪れたのであれば。
(まずは『立花』という女性記者を探さないとだね)
事件が起こるのは、百美人コンテストのセレモニイ。それまではまだ時間がある。しかし。
(こちらの動向を相手に気取られても困るけど)
逃亡される恐れもあるし、何より最悪なパターンは『手っ取り早く』、例えば近くにいたコンテスト参加者の娘を利用して、計画の前倒しをされたりしたならば……。
(こちらの手詰まりだね……)
ゆえに、気取られるのは避けなければ。今は『あくまでコンテストの投票に来たお客さん』を装う必要がある。
だが、事件に至るまでの間を無為にする必要もないだろう。情報が無かったがゆえに、後手に回ってしまう可能性もある。闇雲に動くのが得策ではない、とするならば、だ。
「……我が魂魄の欠片よ目覚め……力を行使し見聞きせよ……急急如律令」
小さく、小さく呟いて、ユーベルコード『忍法・繰り飯綱』を発動。子狐に似た分霊を召喚する朱鞠。『極めて発見され難く、かつ自身と五感を共有する』という特性をもつこの子狐ならば。
(相手に気取られることはないはず)
投票場である最上階までの間を、子狐に走らせて。『違和感のある男装と帽子からこぼれた髪』に注意してターゲットを探索する朱鞠。
(今は……いないか)
もしかしたら既にセレモニイ会場にいるのかもしれない。
なおも、道中、幻朧戦線の連中を見逃さないように……。
「あっ! この子にしよう!」
プロフィールチェックも怠らず! きちんとお目当てに該当する娘さんが見つかりました。
(さて……)
投票と引き換えに、無事セレモニイ会場へ入れた朱鞠。コンテストの優勝者発表を待つ部屋の中は、今はまださざ波のような賑わい。それはまるで嵐の前の静けさのごとく。
(後手に回らないようにしないとね)
朱鞠は改めて、子狐の分霊を会場内へ走らせて。事件に関係しそうな人物を探索していくのであった。
成功
🔵🔵🔴
御園・桜花
「この短時間で私達がアピールの精査を出来るわけがない、つまり純粋に外見だけで選べということなんですね」
紹介文を良く読んでから、丁寧に手入れされた髪を腰まで伸ばしていて、ボンキュッボンのグラマラス体型で、且つなるべく長身な女性に投票
直ぐに会場に上がり優勝者が立つであろう中央部に2秒以内に駆け上がれる位置を探しそこに座る
「拳銃なら有効射程は10m程度、多分どちらかの舞台袖から現れ射撃、そこに走って割り込むか飛行で割り込むか。どちらであっても通路に接した席を取らないと」
考えをまとめなるべく舞台に近い通路席を取る
その後は周囲やスタッフにマフラーや襟巻き、スカーフで首を隠した者がいないか視線を巡らせ確認
●パーラーメイド(改造メイド服着用)は結論付ける
「この短時間で私達がアピールの精査を出来るわけがない、つまり純粋に外見だけで選べということなんですね」
と御園・桜花(桜の精のパーラーメイド・f23155)はこのコンテストをそう位置づけた。ある意味正解である。
そんなわけで、階段をのぼりながら、投票する娘を見ていく桜花。プロフィールを良く読みつつ、写真を見て。
(丁寧に手入れされた髪を腰まで伸ばしていて、ボンキュッボンのグラマラス体型で……)
とか思っていると意外といるものである。最後の決め手は『なるべく長身な女性』。お目当ての女性を見つけた桜花は迷うことなく1票をその娘に入れたのでした。
「ふぅ……」
ひと仕事終えた桜花は、8階のセレモニイ会場へと足を運ぶ。
まず行ったのは会場の構造把握。見た目は立食式のパーティー会場といえばいいだろうか。椅子はなく、料理の置いてある丸いテーブルが点在している。
部屋の真ん中に10人ほどが円になって立てるくらいのかつ高いステージ。おそらくはここにコンテストの上位者があがって、優勝者の発表が行われる。
「拳銃なら有効射程は10m程度……」
幻朧戦線のメンバーがインタビューを装って射程距離に入るとするなら。ポイントはステージの周り。今は人がごった返しているが、発表セレモニイ時には人払いするであろう、空白のエリアだ。確実な射線を確保するならここまで出て来る必要がある。
(そこに走って割り込むか飛行で割り込むか)
いずれにしても、おそらく勝負は『2秒以内』。その時間で優勝者が立つであろう中央部に駆けつけられる位置を陣取る桜花。
(あとは……)
固定された椅子が無いのであれば、セレモニイが始まるまでも動き易い。開始時にはまたここに戻るとして。
(周辺も確認しておきましょうか)
料理を楽しむように歩きながら、巡らす視線。確認するのは周囲やスタッフにマフラーや襟巻き、スカーフで首を隠した者がいないか、だ。
(ちらほら、いるみたいですね)
これで全部か否かは、もう一度確認する必要があるだろうけれども。今時点での『幻朧戦線候補』のいる位置を頭の中に入れながら、桜花は会場内をゆったり歩いていく。
成功
🔵🔵🔴
楠葉・狐徹
【STD】
「皆可愛いから誰に投票しようか迷っちまうな。俺の好みは清楚な感じの娘とかいいかも。」
会場内を一通り見て回り、投票を済ませたら、聞き込みを試す。【コミュ力】を使い、女性客や出演者に聞く場合は【誘惑】も使用。ストレートに特徴を聞くと敵に感づかれる可能性があるので遠回しに聞く
「すみません。俺のツレがマフラー落としたみたいなんだけど知りませんかね?特徴がうろ覚えだから何か例があるとわかりやすいんですが…」
相手が「あのマフラーみたいなやつか?」と他の客を示すように誘導してみて怪しい人物を絞り込み、マークできるか試す
失敗したらとりあえずインタビューが始まるまで待つ
※アドリブ&連携OK
●刃はその身を潜めつつ
グリモアベースから転送されてきた楠葉・狐徹(表裏一体の刃・f17109)は凌雲閣を前に軽いノリで呟く。
「さて、どんな娘がいますかね?」
階段をのぼりながら壁面に貼られた写真を見ていく狐徹。
「皆可愛いから誰に投票しようか迷っちまうな」
コンテストに出場するだけあって、誰も彼もが自信のある表情で愛らしく写っている。
「俺の好みは清楚な感じの娘とかいいかも」
というわけで、7階に張り出されていた清楚美人な女性に投票する狐徹でありました。
セレモニイ会場へ足を運んだ狐徹。そろそろセレモニイが始まるのか、会場内の人数がかなり多い。おそらくは、幻朧戦線のメンバーも既に入り込んでいるはずだ。
となれば、だ。
「すみません。俺のツレがマフラー落としたみたいなんだけど知りませんかね?」
すぐ近くにいた男性に聞き込みを仕掛ける狐徹。ストレートに聞けば敵に感付かれる可能性もある。
「特徴がうろ覚えだから何か例があるとわかりやすいんですが……」
コミュ力を頼りにこの場の雰囲気に溶け込みながら、遠まわしにアプローチをかける狐徹。聞いた相手はどうも今回の事件には全く関係ない感じで、狐徹をじっと見た後、不審者ではないと判断したのか、気軽に答えてくれる。
「マフラーねぇ……この時期、誰でもするんだから、ほら、見渡しゃどこにでもいるじゃないか」
男性が周りを指し示す。すると、確かに室内にもかかわらず、マフラー着用の人間がちらほら。確認できた人々が全て幻朧戦線のメンバーであるとは限らない。……しかし。
「ああ、でも……よく見りゃ、同じ色、同じ柄のマフラーしてる奴が何人かいるねぇ」
「……!」
男性が指差した方向へ視線を遣る狐徹。そこにいたのは、全身がほぼ一系統の色で揃えられた、潜むように目立たない衣装を纏った女性。マフラーもまた目立たない色をしている。
「普通、こういうところには目立つ衣装で来るもんだけど……流行りなのかね?」
「どうなんでしょう? しかし参考になりました。後は自分で探してみます」
男性にお礼を言って人混みへ戻る狐徹。会場内を一通り回りつつ、先に確認したマフラーと同じマフラーをしている人間をチェックしていくのであった。
成功
🔵🔵🔴
クリュウ・リヴィエ
人を進化させるために戦乱を呼ぶって、もっともな様で本末転倒だと思うんだけど。
そんなこと言っても通じないんだろうなあ。
んー、まずは美人コンテストの投票。
どっちを見ても美人さんばっかりで眼福だね。
ずっと迷っていたいくらいだけど、今回は残念ながら幻朧戦線とやらを拝まなきゃならない。
時間をかけずシンプルに、スタイルのよさそうな人に投票しよう。
会場に入れたら、勿論マフラーとかで首元が見えない人をチェック。
記者は名札を付けてるみたいだから、「立花」さんも確認かな。
あと、事を起こした後の幻朧戦線は退路を塞ぐようだから、出入り口近くの人、全体が見えそうな外縁部にいる人も着目しておこう。
●ここが飲み屋だったらすごく呑んでた
(人を進化させるために戦乱を呼ぶって、もっともな様で本末転倒だと思うんだけど)
凌雲閣を前に、クリュウ・リヴィエ(よろず呑み・f03518)は嘆息ひとつ。敵の思惑は筋が通っているようで、そうでもない。
「そんなこと言っても通じないんだろうなあ」
まだ相見ぬ敵のことながら、そんな推察ができることにまたまた嘆息ひとつついて。クリュウは凌雲閣に足を踏み入れる。
ともあれ、まずは百美人コンテストの投票だ。
「んー、どっちを見ても美人さんばっかりで眼福だね」
さすがは美人コンテスト。本当に美人ばかりで、ここが飲み屋だったらお酒が進むに違いない。しかし、残念ながら今は任務中である。
(ずっと迷っていたいくらいだけど……今回は残念ながら幻朧戦線とやらを拝まなきゃならない)
そのための準備時間もいることだし。シンプルに直感を信じて。スタイルのよさそうな人に投票したクリュウなのでした。
投票を終えて、セレモニイ会場へ足を運ぶクリュウ。
まずは会場の状態をチェック。もう少しでセレモニイが始まるようで、会場内はざわついているものの、人の動きが少ない。
(記者は……あそこか)
区分けされているわけではないのだが、インタビューをする記者たちは何箇所かにわかれて集まっているようだ。どうやら優勝候補が絞られてきているらしく、その前を陣取る態勢になっているらしい。
(……っと、マフラーとかで首元が見えない人をチェックしておかないとね)
会場内にある料理のテーブルからテーブルへ移動すると見せかけて、周辺の人々の首元をチェック。怪しい人物を出来るだけ頭の中に叩き込んでおく。
そして、お目当ての記者たちの近くに。不自然にならないよう、視線を走らせて。
(……いた)
男物のスーツを着ている女性。そしてぶら下げている名札を確認して、彼女が『立花』であると確信するクリュウ。
その側にそっと陣取りながら。
(あとは……出入り口か)
予知によれば、グラッジ弾の発射とともに幻朧戦線は退路を塞ぐようだ。ならば、出入り口付近、そして指導がしやすい全体が見えそうな外縁部。その箇所にいるマフラー組を注視することにするクリュウ。
そして、百美人コンテストのセレモニイが始まる。
成功
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第2章 冒険
『華やぐ街のセレモニイ』
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POW : オードブルにデザート、美味しい料理に舌鼓!
SPD : 今日はハイソにゴージャスに、正装姿で参列だ!
WIZ : 式典の模様をカメラで撮影、今日の主役は!?
👑11
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●惨劇の前の静けさ
帝都百美人コンテストの結果発表まであと少し。各々が目的の調査を終えた猟兵たちは、意図せず出入り口付近で集まった。その場で素早く、各自が持っていた情報を交換していく猟兵たち。
例えば、セレモニイ会場の構造。
凌雲閣の8階、その半分ほどを使ったこの部屋は上弦の間――半月状の形をしている。中にいる人の数は100人に届かない程度。
円の外周にあたる部分は幾枚かの窓となっており、外を眺めることは出来るが、8階という高さゆえに出入りには使えない。そのため、人が出入りできるのは、弓のつるにあたる直線の壁、そこにある出入り口ひとつのみ。
セレモニイ会場は立食式のパーティーの仕組み。真ん中を除いて、料理の乗った小さなテーブルが点在しており、窓際にはお寿司や肉など人気の高い料理を大量を提供できる長テーブルが陣取っている。椅子はなく、セレモニイも立って行われるようだ。会場のの真ん中には、コンテストの出場者、その内上位10名が円になって立てるほどの小さな舞台。その周辺は『立ち止まり禁止』区域となっている。
そして幻朧戦線の情報だ。記者の立花は立ち止まり禁止区域のすぐ手前で待機している。衣装はグリモア猟兵が伝えた通り。そして白地に灰色の格子模様をしたマフラーをしている。
ちなみに立花を含めた記者たちは3か所ほどにわかれて集まっている。
立花の同志たる戦線のメンバーは断定できてはいない。しかし、立花と同じマフラーをしている人間が10人。それ以外の色や柄をしたマフラーをつけている者が3人。
事前の調査で服装や動向が怪しい人間は、上記のマフラーをしている者以外に見当たらず。
マフラーをしている者たちはいずれも一人で会場内に佇んでおり、今のところ連携しているような気配はない。しかし、出入り口からずっと動かない者がひとり。そして半月の直線と円の線が交わる部分にそれぞれひとりずつ。ここは人が少なく、元々部屋にあった荷物などが寄せられているため、その上に立って部屋を見渡すことができそうだ。
猟兵たちはグリモア猟兵の話を思い出す。
『がう。コンテストの発表は下位順にされるよ。そして名前を呼ばれたら舞台から降りるんだ。つまり、最後に残った人が優勝だね』
『優勝者が決まったら、舞台の上を1周する決まりだよ。元の位置に戻ってきたらインタビュータイム。早い者勝ちなんだけど、ここで立花が一番乗りするみたい』
つまり、作戦の始動は立花が優勝した女性の前に立つ瞬間から。
どのタイミングで仕掛けるかは猟兵たち次第。そして、立花の行動を阻止しながら、部屋の中にいる幻朧戦線のメンバーも取り押さえないといけない。なるべく他のお客にはケガなどが無いように、迅速に制圧するのがベストだ。自分の中で優先順位を決めるといいだろう。
そうこうしている内に刻限となった。各々が決めていた配置に戻る猟兵たち。
そして、百美人コンテストの上位10名がセレモニイ会場へ入ってくる。
ここからが……本番だ!
★2章追加情報
・上記に記載した内容は『共有された』ものとして自由に使ってOKです。
・プレイングには『どのようにして立花を止めるか』『どのようにして幻朧戦線のメンバーを取り押さえるか』をお書きください。片方だけでもOKですが、プレイングの送付タイミング次第では立花の方は既に確保されている可能性があります。
・幻朧戦線のメンバーは武器を持っている可能性があります(いざという時の武力制圧用)。それに対する対抗手段を考えるのも良いと思います。
・せっかくのお料理なので、プレイングに記載があれば、美味しく頂いてもらう時間(リプレイ)を設けます。和洋中と揃っているようなので、ぜひ食べてくださいな。
クリュウ・リヴィエ
(もぐもぐ)
もしかすると「立花」さんにグラッジ弾を渡す者がいるかも。
出場者を見るふりして観察していよう。
マフラーしてる人が近づいたら要注意。
接触する様子があれば敵の可能性ありとして警戒。
小籠包旨いわ。
(もぐもぐ)
インタビューが始まったら、警戒されない程度に近づき、会話に
聞き耳を立てる。
「立花」さんが動いたら血統覚醒して優勝者との間に割り込む。
銃撃から庇いつつ、銃を取り落とさせよう。
ステーキ食べ応えあるな。
(もぐもぐ)
「立花」さんの方が十分なら、集められている荷物に着目。
上に乗って見張りになろうとする者がいたら、荷物を破壊して
床に落とす。
呆気にとられる間に、他の敵を取り押さえよう。
鰻重最高だな。
政木・朱鞠
幻朧戦線のメンバーは普通の一般人だし、今回は敵相手でも怪我をさせない方法で捕縛したい。
予知を歪ませないよう捕えないといけないから『立花』以外のメンバーを鉄の首輪を隠している可能性が有るマフラーの人達に絞って注意を向けておきたいね。
戦闘【WIZ】
『立花』の捕縛が優先だけど…私は幻朧戦線のメンバーの行動の阻止に気を配る様にしようかな。
優勝者発表のタイミングで手荒な行動を取らない様、マフラーの人を対象に本来は回復のための眠り薬の『忍法・春眠香』で眠気を促すよ。
眠気と葛藤しながら武器を使われない様に、武器を確認したら行動が緩んだ隙をついて拷問具『荊野鎖』で手元を拘束するようにしたいね。
アドリブ連帯歓迎
楠葉・狐徹
【pow】
まずは優勝者の発表が始まるまで料理を食べる
「腹が減っては戦はできぬってね。」
優勝者が発表されたらランウェイの時間に【目立たない】と【忍び足】を使って記者団の中に潜り込む。インタビューが始まったら最初に手を挙げた記者に【殺気】を飛ばして怯ませる。成功したら【グラップル】からの鬼神力で持ち上げて記者団の最後列まで投げ飛ばし、そのまま【怪力】で取り押さえる
「お前が立花か。グラッジ弾はどこにある?」
幻朧戦線の仲間が襲ってきた場合は食事の時に拝借してきたナイフや串で【カウンター】を行い、怯ませたら鞘に入れたままの刀で思い切り殴る
「ここで抜刀してミスコンを血祭りに変えるわけにはいかないんでね。」
●真っ先にやらねばならぬこと
帝都百美人コンテストのセレモニイ会場。ここではコンテストの優勝者発表が、それに前後してパーティーが開かれている。
その中を視察、調査した猟兵たちは自然と集まっていた。目的は情報交換。
「もしかすると、立花さんにグラッジ弾を渡す者がいるかも」
クリュウ・リヴィエ(よろず呑み・f03518)が告げる。それは今回、猟兵たちがここに訪れた理由として最大にして最も重要なポイントだ。
もぐもぐ。
「小籠包旨いわ。」
クリュウ、しっかり食べていた。
「腹が減っては戦はできぬってね」
楠葉・狐徹(表裏一体の刃・f17109)もまたその手にしっかりと料理を持って。ひと通りの前準備は完了している。優勝者の発表が始まるまで、今は雌伏の時。英気を養うのも大事なことだ。
「人が増えてきたな」
人がごった返してきたセレモニイ会場の中へ視線を遣る狐徹。
まだ確認したいことがあると先に人混みへ紛れていった政木・朱鞠(狐龍の姫忍・f00521)もいるはずだ。
二人と別れて会場内を歩いている朱鞠。
(幻朧戦線のメンバーは普通の一般人だし……)
今回は敵相手でも怪我をさせない方法で捕縛したいと朱鞠は考える。ただ、グリモア猟兵が予知した内容に干渉しすぎるとマズイ。ゆえに、今は幻朧戦線のメンバー、鉄の首輪を隠している可能性が有るマフラーの人たちに注意を向けるべく、会場内を最終確認しているのだ。
不意に鐘がなる。セレモニイ開始の合図だ。
「時間のようだ」
狐徹の言葉に頷きを返すクリュウ。
「ステーキ食べ応えあるな。」
最後にステーキを頬張って。
猟兵たちは打ち合わせ通りの動きに出た。
●その時を待つ
入り口から会場の真ん中の舞台まで、カーペット――ランウェイが敷かれる。その上を歩いて、会場に入ってくる優勝候補者たち。
(さて……)
素早く立花がいる記者団の側まで移動したクリュウは、入ってきた優勝候補者たちを見る振りをして、立花に注意を向ける。
先に運よくすれ違った朱鞠からの情報によれば、立花はずっと同じ位置で待機しており、彼女に話しかけていた者は同じ記者仲間のみということ。もちろん記者仲間に首元にマフラーが無いことも確認している。
優勝セレモニイに注意が向くこの一瞬だからこそ、と注意を向けていたのだが、マフラーしてる人が近づいてくる気配はない。
ならば、と警戒されない程度に近づき、会話に聞き耳を立てるクリュウ。チャンスは一瞬……。
同じく、優勝候補者たちの入場に沸き立つ会場の時間を使って。
狐徹はゆっくりと記者団の背後からその中に紛れ込む。このタイミングと、目立たないように振舞いながら忍び足でするりと入り込むその行動は見事のひと言。
粛々とセレモニイが進行していく中、人の動きは無い。
立花の捕縛が優先事項だとは思うが、他のメンバーも放っておくわけにはいかない。
(私は幻朧戦線のメンバーの行動の阻止に気を配る様にしようかな)
朱鞠はクリュウや狐徹とは離れた位置に待機する。
そして……優勝者が決まった。
●刹那の攻防
優勝者へのインタビュー希望者。真っ先に手を挙げつつ、立ち止まり禁止区域に踏み込む、男装の女性記者を見て。
(コイツか!)
狐徹が殺気を飛ばして牽制する。その強烈なプレッシャーにその記者が一瞬怯んだ刹那。
「やらせないよ」
ざっ、と音を立てて優勝者と立花の間に割り込むのは、赤い瞳をしたクリュウ。ユーベルコード『血統覚醒』による身体強化。常人では着いて来れない速度で、名札の『立花』を確認した後、懐の銃を握っていた立花の手を弾く。その拍子に銃が飛び、地面を滑っていく。
「なっ!? ええいっ!」
銃を求めて手を伸ばす立花。しかし、先回りしたクリュウが足で拳銃を押さえる。
「いかせねぇよ」
立花の注意が完全に銃に向いた、その横から。ユーベルコード『鬼神力』を用いて拳を突き上げるようにして立花の体を持ち上げる狐徹。そのまま記者団の最後列まで投げ飛ばし、優勝者から距離を引き離す。
「なっ、何なの!」
立ち上がろうとした立花を怪力で上から押さえつける狐徹。
「ここで抜刀してミスコンを血祭りに変えるわけにはいかないんでね。」
本当はそれが一番楽だったのかもしれないが。
駆け寄ってきたクリュウが話しかける。
「立花さんで間違いないよ」
そう言うクリュウの手には奪い取った名札と拳銃が。
「グラッジ弾は……これか?」
狐徹の鋭い視線が立花と拳銃の間を往復した。
(続く)
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
(続き)
●会場を支配する香り
クリュウと狐徹の行動は、予知を知っている猟兵たちにとっては必然であったが、『周囲の人々』にとっては青天の霹靂のごとしであった。
不意に騒然とする会場内。ただ、あまりにもクリュウと狐徹の動きが速すぎたので。大多数の人々は呆気にとられるばかりであった。
……作戦を阻止されたと感付いた幻朧戦線のメンバー以外は。
(見えた!)
事前に会場内でチェックしていたマフラーをした人々。その内でこの状況下において、『果敢に動こうとしている者』。他のマフラーの人々はともかく、『今、動こうとしている者』ならば、幻朧戦線のメンバーと言っていいだろう。
ならば、ここからは行動に移すのみ!
(本来は回復のためのものだけど)
『忍法・春眠香』。秘伝の眠り薬が香煙として放たれ、セレモニイ会場を漂う。香気を吸った者を少なからず意識がふわりとさせるソレは、朱鞠が対象とした者のみに強烈な眠気をもたらす。
「なっ……くっ」
呻きながらふらつき始める幻朧戦線のメンバーたち。それでもなお、使命感に従って前に進もうとする者がひとり……懐から拳銃を取り出しながら。
「……!」
それを視認した朱鞠は、周囲がパニックになる前に。人混みを素早く縫うように駆け抜ける。接近しながら最短距離で『荊野鎖』を鞭のように振るい。
「がっ?!」
メンバーの拳銃を叩き落としながらその手元を拘束する朱鞠。
「ふぅ……セーフ」
見回すと朱鞠がメンバーと視認した者は全て眠気で崩れ落ちていて。周囲の視線は朱鞠に集中している。ただし、恐怖などでは無く、これまた呆気にとられた表情で。
「こっち、確保したよ!」
大声でクリュウと狐徹に朱鞠が呼びかけると、狐徹とクリュウが手を挙げて応じてくれた。あちらも無事取り押さえたようだ。
不意に。
「鰻重最高だな」
とクリュウが言っていたのを思い出す。そういえば狐徹も美味しそうに食べていた。
「私も食べようかな」
さっきまで会場を巡回していたことだし。
荊野鎖で拘束していたメンバーが眠気で崩れ落ちるのを確認してから、朱鞠も料理に手を伸ばすのであった。
神楽坂・神楽(サポート)
アルバイトでUDCエージェントをしている女子高生です。
「私の目や耳はごまかせないよ♪」
「それじゃあ、取っ捕まえさせてもらうよ♪」
「バイト代になれー!」
持ち前の超常的な運動能力と知覚力をもって、そして、UDC組織から貸与されている超常のワイヤーを操って、調査や戦闘を行います。(それぞれアイテムを参照いただければと思います。)
基本的に敵の目的や境遇などは気にせず、モグラ叩きのモグラを叩くが如く、敵をボコボコにします。
UDCアースではオブリビオンを捕縛してUDC組織に引き渡すことを狙いますが、それ以外の世界では捕縛した後にそのまま切り刻んでポイします。
[SPD]
●仕上げのワイヤー
それは、違和感。神楽坂・神楽(バイトエージェント・f21330)の『超感覚』が捉えた違和感であった。それも通常なら見逃してもおかしくないほどに、小さな、それでいて確実な違和感。
仲間の猟兵たちが、立花と幻朧戦線のメンバーと思しき人物たちを取り押さえたのだが、その基準はいずれも『予知で捉えた者』と『予想外の展開を嫌い、行動を起こした者』である。
幻朧戦線の大部分はその通りであったのだが……神楽が自身の違和感に従って、周囲を見渡す。人混みの中、人知れず……否、周囲にバレないようにひっそりと出口へ向かおうとしている、マフラーの者が数名。
それは紛れも無く、違和感の正体。神楽の超常的な知覚力から逃れることはできなかったようだ。
「私の目や耳はごまかせないよ♪」
『イデアワイヤー』をロープワークの要領で素早く振るい、その数名を絡め取る神楽。ワイヤーが縛るのは身体だけではなく、その思考も。がくん、と膝が崩れ落ちる幻朧戦線のメンバー。
「それじゃあ、取っ捕まえさせてもらうよ♪」
そう言って、神楽は仲間が捕まえた幻朧戦線のメンバーもまとめて、イデアワイヤーで縛りあげるのであった。
こうして、猟兵たちは帝都百美人コンテストに潜む幻朧戦線。そのメンバーを全て捕えたのである。
成功
🔵🔵🔴
第3章 集団戦
『紅き妖刀』
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POW : 人を喰らい、人を斬る
自身の【宿主の生命力】を代償に、【妖刀を装備し、身体能力を強化した宿主】を戦わせる。それは代償に比例した戦闘力を持ち、【達人級の剣術】で戦う。
SPD : 心を喰らう呪い
自身に【忌まわしき呪いのオーラ】をまとい、高速移動と【精神を蝕む呪いの刃】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
WIZ : 奥義:紅刃十連撃
【宿主を操り、必殺の奥義】を発動する。超高速連続攻撃が可能だが、回避されても中止できない。
👑11
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●幕間
グリモア猟兵の予知。そしてそれに従った猟兵たちの正確にして迅速な行動。
それはセレモニイ会場に幾ばくかの騒然をもたらしたものの、パニックや混乱を引き起こすものではなく。
いまや、男装の女記者『立花』と猟兵たちを、あるいは一纏めに縛られた幻朧戦線のメンバーと猟兵たちを、遠巻きに囲むようにして人々が佇んでいる。
「立花さんで間違いないよ」
「グラッジ弾は……これか?」
立花に問いかける猟兵。その手には立花の懐から奪取した拳銃がある。
「あ、貴方たちは……くっ……!」
組み伏せられ、拳銃を奪い取られ。そしてシャッポが落ち、女性ということが露わになった立花は悔しげに唇をかむ。
「確認だ。グラッジ弾はこれだな?」
逃げるよりも何よりも。仲間から託されたその弾を撃てなかったことが悔しい立花は、猟兵の再度の問いかけに肯定を示す。
「それじゃ、このまま回収してっと……」
「待って!」
それは駆けつけてきた女性の猟兵の声。幻朧戦線のメンバーを部屋の隅に押し込んで、この場に来てみたら。気付いたのは銃口から漏れる、恨みの気配。
「おい!?」
「これは……もしかして『弾自体が壊れてる』のか?」
破壊するわけにもいかず、されど投げ捨てるわけにいかず。誰もいなくなった舞台の上に拳銃を放り投げる猟兵。
「ああ……ああ、ふふ、だって元々ボロボロな弾丸を無理やり詰め込んだんだもの」
壊れて当然、と立花が笑いだす。
「アハ、アハハハ! やはりここが! 私たちの始まりの地なのよ!! 最高だわ!」
壊れたように笑いだす立花に。
「面倒なモノ、持ち込みやがって!」
猟兵たちは辟易しながら、彼女もまた部屋の隅へ押し込む。
「逃げて! 今なら大丈夫だから! 落ち着いて、順番に!」
出入り口にいた猟兵がセレモニイ会場にいた人々を避難させていく。しかし、ビシビシ、と音を立てて、グラッジ弾が壊れていくほうが早い。溢れだす恨みが……ついに影朧を呼び寄せる。
ゆらりと揺れた空間から、姿を現わしたのは『紅き妖刀』。すなわち、短刀や脇差、打刀といった刀の群れ。それが会場中を飛び交い、逃げ遅れた人々に憑りつく。紅き妖刀に操られ、意識を乗っ取られた人々が猟兵たちへゆっくりと向き直る。その中には、幻朧戦線のメンバーも、立花もいる。
グラッジ弾の始末をつけるには、この影朧『赤き妖刀』を倒すしかない。本能的にそう悟った猟兵たちは戦闘態勢へうつるのであった。
☆シナリオ捕捉
『赤き妖刀』の本体は、人々が持っている赤い刀身の刀(種類は色々あります)です。操られた人々は刀で誰かを斬り殺したい衝動に憑りつかれています。
猟兵の攻撃の全てのダメージは、この刀に蓄積され、持っている人へのダメージはありません。また、刀を破壊すると、操られていた人々は正気に戻り、会場から脱出します。
秋月・紅(サポート)
『さーて!楽しくなってきたじゃねぇか!』
羅刹のバーバリアン×ブレイズキャリバー、23歳の女です。
普段の口調は「サバサバ系?(アタシ、てめぇ、だ、だぜ、だな、だよな?)」、時々「真面目(アタシ、アンタ、だ、だぜ、だな、だよな?)」です。
ユーベルコードはその時に応じて一番使えそうなのを使います。戦闘狂なので怪我は一切厭わずヒャッハーします。
戦闘以外にはあまり興味はないけどなんだかんだで最終的にはノリノリで参加します。
カッコいい物が好き。
可愛い格好とかさせられるのは苦手。恥ずかしいから。
弱い者にも優しい。
でも脳筋なのでパワーで解決しようとする。力こそパワー。
よろしくおねがいします!
月夜・玲(サポート)
『さてと、I.S.T起動。お仕事お仕事。』
口調 元気(私、~君、だね、だよ、だよね、なのかな? )
お仕事ついでに研究も出来るんだから、この仕事良いよねぇ
さあ、私の研究成果の実験台になってもらうよ
模造神器という独自の兵器開発を生き甲斐とする研究者
誰にでも気さくに砕けた口調で話しかける
戦いは全て研究の為、楽しみながら戦闘を行う
全ては研究の為、研究と戦闘を楽しめる猟兵生活は結構気に入っている
戦闘スタイルは4本の模造神器から2本を選び、二刀流で敵と戦う形です
UCで遠距離戦闘にも対応したSF剣士
日常ではのんびりと景色を楽しんだり風情を楽しんだり
冒険では考察しながらじっくり進む
あとはお任せ!
政木・朱鞠
邪な使われ方をして血の味を覚えて悪に落ち咎を重ねた武具を討つのも咎人殺しの役目…なんてね。
主を持たず混乱と血を求め欲望を満たすために非道を行なう悪い刃物さん達…その歪んだ刃と共に邪な心ごと砕き折ってあげるんだよ。
戦闘
【SPD】
ダメージの蓄積は本体の武器の方になるのはすこし安心だけど、警戒したいのは高速移動かな…行動を鈍らせる事に重きを置いてユーベルコード『咎力封じ』を使用して紅き妖刀さんの動きを封じた後に武器でアタックだよ。
鎖で束ねて折るイメージで武器は拷問具『荊野鎖』をチョイスして【鎧砕き】や【鎧無視攻撃】の技能を使いつつ【傷口をえぐる】でダメージを与えたいね。
アレンジや他の猟兵との連携OK
●
『紅き妖刀』――それに憑りつかれた人々が『妖刀使い』となって、猟兵たちの前に立ち塞がる。
紅い刀を手に、無造作に距離を詰めてくる妖刀使いたち。それに臆することなく、政木・朱鞠(狐龍の姫忍・f00521)は彼らの前に立つ。
「邪な使われ方をして、血の味を覚えて悪に落ち咎を重ねた武具を討つのも咎人殺しの役目……なんてね」
朱鞠は己の所属する忍者集団から『異世界へ逃れた『咎忍』を処理』する者。目の前の状況に彼女がたじろぐ理由などどこにもなく。
「その歪んだ刃と共に邪な心ごと砕き折ってあげるんだよ」
ただ、主を持たず混乱と血を求め欲望を満たすために非道を行なう悪い刃物らを誅するべく、武器を構える。
そこへサポートに駆けつけてきたのは月夜・玲(頂の探究者・f01605)と秋月・紅(紅の暴風雨・f01395)である。
セレモニイ会場に入り、周囲を見渡す二人。
「さてと」
そう呟いて、玲は彼女特製のガジェットに手を置く。
「I.S.T起動。お仕事お仕事」
I.S.T――『System[Imitation sacred treasure]』。それはUDCの力の再現を目指す、『模造神器』の名を冠する兵器。『戦いは全て研究の為』と、玲は口元にわずかに笑みを浮かべて、眼光鋭く妖刀使いを見据える。
「さーて! 楽しくなってきたじゃねぇか!」
対して紅はその嬉々とした感情を隠すことなく、笑みを浮かべる。
『戦闘さえできればいい』という戦闘狂の彼女であるが、それはそれとしてサクラミラージュの武器に関しては興味がないわけではない。まぁ、色々な世界の武器を見た結果、今手にしている巨大な斧を愛用しているのだ。カッコいいから。
その斧を肩に担ぎ、妖刀使いを待つ紅。
3人の猟兵と妖刀使いたち。『一足一刀』という刀独自の間合いまで接近した、その刹那。両者が一斉に動いたのである。
●
先制攻撃は紅のユーベルコード『グラウンドクラッシャー』。単純で重い、斧による鎧を砕くかのごとき強烈な一撃が妖刀使いたちの足元に刺さる。その威力は余波で床が半壊するほどの。直撃した妖刀使いたちが成す術も無く、弾き飛ばされる。
その様子を見た『紅き妖刀』が『このままでは対抗できない』と、憑りついた人々の生命力をより強く吸い上げる。その力で以て妖刀自身を強化し、宿主に達人級の剣術を振るうことを強いる『紅き妖刀』。
「ちっ」
鋭く振るわれる刀をかわしきれず、紅の腕に赤い血筋が数条走る。
「てめぇ! 覚悟できてんだろうなぁ!」
しかしその程度の傷で戦闘狂の紅が止まるわけもなく、斧を振り回して妖刀使いたちをなぎ払う。
紅に対抗すべく、『紅き妖刀』が宿主の生命力をより強く吸い上げる。代償に血を吐きながらも操られ、刀を振るう宿主たち。
「見ていられないね」
それは横合いから割り込んできた玲の言葉。紅を取り囲んでいた妖刀使いの一角を玲の二刀流がなぎ払う。
「さあ、私の研究成果の実験台になってもらうよ」
模造神器のうち、手にした今日のふた振りは『《RE》Incarnation』と『Key of Chaos』。実体をもった刀身にて、血を吐いた妖刀使いたちを斬り伏せていく。
刀と剣、その勝負に必要なのは、速度。そう判断したのか、『紅き妖刀』が忌まわしき呪いのオーラを纏う。直後、高速移動で接近してくる妖刀使い。
「……!」
二刀流で攻撃を受け止める玲。対応できない速度ではないが、妖刀使いの数が多い。このままでは押し切られると、玲が奥の手を発動させようとしたその瞬間。
空中を『手枷』『猿轡』『拘束ロープ』が飛び交う。
それは朱鞠のユーベルコード『咎人封じ』。『紅き妖刀』と妖刀使い、その全てを封じることはできなくとも、その動きを鈍らせることは出来る。
(警戒したいのは高速移動かな……)
と準備していた作戦が功を奏し、妖刀使いたちの動きを格段に鈍らせる。こちらの攻撃のダメージは本体の武器の方に蓄積する。少しばかり安心しながら朱鞠は『咎人封じ』を繰り出していく。
近付いてはなぎ払われ、高速で惑わそうとしてもその動きを封じられる。ならば、と妖刀使いたちが足を止める。
「……!」
精神を蝕む呪いの刃のオーラを放射してくる妖刀使いたち。不意に切り替わった攻撃パターンに朱鞠の回避が一瞬遅れる。飛ばされた呪いのオーラが朱鞠の肌をかすめて蝕む。
しかし、距離を取って足を止めたのは明らかな失敗だ。何故なら。
「おりゃぁぁ!!」
固まっている妖刀使いたちへ、飛び上がった状態から斧を振り下ろす紅。再度の『グラウンドクラッシャー』がまとめて妖刀使いたちを吹き飛ばした。
●
3人は連携で、相手の数の優勢を徐々に覆しつつあった。
攻撃の勢いそのものが鈍ってきた瞬間、猟兵たちは一気呵成に畳み掛ける。
「せいっ!」
拷問具『荊野鎖』を振るう朱鞠。普段は鎖で絡め取るのだが、今日は。
(鎖で束ねて折るイメージ!)
鎖を束ねるようにして妖刀の刃に叩き付け、その衝撃と鎧砕きの要領で刀身をへし折る。ついでに妖刀使いに巻きつけて、鎖についているスパイクで傷口を抉るようにダメージを拡大させ。
「おらーっ!」
乱雑ながら、その一撃一撃が重い。紅の攻撃を妖刀使いたちは刀で受けるのに必死だ。
そして……鈍い音を立てて妖刀が1本へし折れた。
(ここだ!)
好機と直感で悟った紅は巨大な斧を大きく振り回す。耐久力の限界に来ていた周囲の妖刀がその衝撃で一気に叩き折られていく。
妖刀から解放され、その場に崩れ落ちる人々。
(よし、これで命は助かったな)
内心でほっとひと息つく紅。力こそパワーな彼女は力技でしか対応できないが、弱い者を労わる心は常に持ち続けているのだ。
(お仕事ついでに研究も出来るんだから、この仕事良いよねぇ)
両手の二刀を絶えず振るい続ける玲。そろそろ目の前にいる妖刀使いも品切れのようだ。
「最終公式起動、全てを零に!」
ユーベルコード『Code:F.F』。自身に模造神器の全ての力を終結させ、眼前に球状のエネルギー体を作り出す玲。
「いいデータが取れたよ。ありがとう」
そう言い放った後、高威力のエネルギー体で周囲の『紅き妖刀』をまとめて叩き折るのであった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
楠葉・狐徹
【SPD】
「俺の浄玻璃刀と似てるな。抜けば殺意が暴走する…だけど俺のは刀で斬るだけじゃない…どんな手を使ってでも殺したくなるんだ!」
最初は敵の攻撃を受け止め、【カウンター】と【2回攻撃】。また、チャンスがあったら【怪力】と【グラップル】で妖刀を敵から奪ってへし折ることを試す
「まずは1本刀を殺してやる。」
敵が心を喰らう呪いを発動してきたら対抗してこちらも妖剣解放。高速移動で敵の横などなるべく死角に移動し刀で思い切り斬りつける。集団に囲まれた場合は【なぎ払い】を使った衝撃波で包囲突破を試みる
「刀で斬ったり刺したりしかできないみたいだな。俺は殺すためなら殴るし、蹴るし、狐火で燃やしたりしてやるさ!」
クリュウ・リヴィエ
いや、ここが始まりの地って…。
とりあえず世が乱せれば何でもよくなってない?
支離滅裂…は最初からそうだったか。
宿主の生命力を代償に、戦闘力を増して戦わせるって、本体の妖刀はノーリスクじゃないか。
操られている人達の事を考えても、時間をかけるのは得策じゃないね。
トリニティエンハンスで攻撃力を強化。
薙ぎ払い…は危ないので封印して、丁寧に刀を狙って攻撃しよう。
吸血も捕食も出来ない…。
ええい、早く終わらせよう。
正気に戻った人が襲われないようにも注意がいるかな?
そのまま逃げてくれそうだけど、その途中で襲われないように敵の足止め、場合によっては庇うのも必要かな。
幻朧戦線は逃がさないように気絶させておこう。
●
『紅き妖刀』――それに憑りつかれた人々が『妖刀使い』となって、クリュウ・リヴィエ(よろず呑み・f03518)と楠葉・狐徹(表裏一体の刃・f17109)を取り囲んでいく。グラッジ弾の近くにいたせいか、既に妖刀使いの数は多く、その中には立花も含まれている。
「いや、ここが始まりの地って……とりあえず世が乱せれば何でもよくなってない?」
その立花に突きつけるようにクリュウが言葉を発するが、今の立花に声は届かない。
「支離滅裂……は最初からそうだったか」
このままやられるわけにはいかないと、大鉈の様な黒剣『カミ砕き』を構えながら、クリュウが呟く。
対して狐徹は、呼び集められたオブリビオン『紅き妖刀』を注視していた。
「……俺の浄玻璃刀と似てるな」
抜けば殺意が暴走する、危険な刃……しかし、違う点も……ある。
「だけど、俺のは刀で斬るだけじゃない……どんな手を使ってでも殺したくなるんだ!」
『封印帯』を解き、『浄玻璃刀』を抜き放つ狐徹。吠えるような狐徹の叫びに、妖刀使いたちが仕掛けてくる!
●
背中を預けあうような形で妖刀使いたちと相対する狐徹とクリュウ。
妖刀使いが仕掛けてきた斬撃を浄玻璃刀で受け止める狐徹。
狙いはカウンター、そしてそこからの連続攻撃。妖刀使いの刀の軌道からするりと抜け出した狐徹は素早く浄玻璃刀を二度振るう。その斬撃にたたらを踏む妖刀使い。
(ここだ!)
体勢を崩した妖刀使いへ『ブラックガントレット』による強烈な一撃。そのまま妖刀を奪い取った狐徹は。
「まずは1本、刀を殺してやる」
怪力によるグラップルで紅い刀身をへし折るのであった。
クリュウのカミ砕きが妖刀を弾き飛ばす。空中に浮いた妖刀をカミ砕きの強烈な一撃でたたき折るクリュウ。
直後、妖刀使いたちの妖刀が、より強く紅く染まる。それは主の生命力を吸っている証拠。ダンピールだからこそ、その現象に察しがついたクリュウは内心で舌打ちする。
(宿主の生命力を代償に、戦闘力を増して戦わせるって……本体の妖刀はノーリスクじゃないか)
そしてクリュウの察しの通り、妖刀使いたちの動きが格段に鋭くなる。達人級の剣術で以て振るわれる妖刀。それらを何とかかわし、再びカミ砕きを構えて対峙するクリュウ。
(操られている人達の事を考えても、時間をかけるのは得策じゃないね)
直後、ユーベルコード『トリニティ・エンハンス』でカミ砕きに炎と水と風を纏い、攻撃力を強化するクリュウ。そのまま大きく振りかぶったカミ砕きを振るおうとして。
(っとと。薙ぎ払い……は危ないので封印して)
妖刀に操られている人々の身を考慮して、丁寧に刀を狙う方向へ転換するクリュウ。
(ええい、吸血も捕食も出来ない……)
打ち据えた妖刀を絡め取るようにしてカミ砕きで妖刀を弾き飛ばし。
「早く終わらせよう」
捕まえた妖刀を乱雑にへし折っていくクリュウであった。
狐徹の戦術に、このままではやられると判断した『紅き妖刀』たちが忌まわしき呪いのオーラを纏い始める。その様子を見て、狐徹もまたユーベルコード『妖剣解放』を行う。それは呪いのオーラと妖刀の怨念がぶつかり合う戦い。
高速移動してきた妖刀使いの斬撃。それをかわして高速移動で妖刀使いの死角へ回り込む狐徹。そのまま思い切り斬り付け、そのダメージで妖刀を戦闘不能にする。
「ハッ!」
狐徹を取り囲む妖刀使いの一斉攻撃に、短く呼気をはいて。一閃した浄玻璃刀から放たれた衝撃波がその包囲網を崩す。
「刀で斬ったり刺したりしかできないみたいだな」
両手で浄玻璃刀を構え直した狐徹が言い放つ。
「俺は殺すためなら殴るし、蹴るし、狐火で燃やしたりしてやるさ!」
その言葉通り、狐徹の持てる力すべてをこの場に投入して。
やがて、グラッジ弾に呼び寄せられた『紅き妖刀』たちは猟兵たちの活躍で、全てその刀身を折られたのである。
●
「よし、本当に完了だ」
狐徹がセレモニイ会場を見回った結果を皆に告げる。万が一もあってはいけない、と慎重に見て回ったが、先の戦闘で全ての『紅き妖刀』は倒せたようだ。
「こっちも終わったよ」
応える声はクリュウのもの。その足元には幻朧戦線のメンバーたちが気絶した状態で、ロープで縛られている。
(正気に戻ったらどうなるかと思ったけど)
それは幻朧戦線のメンバーだけでなく、妖刀使いとなっていた人々全てに対して。
正気に戻った後、逃げ出そうとした人が後ろから斬り付けられたら、という心配をしていたのだが、それは杞憂だったようだ。人々は妖刀から解放された直後、その場で気を失って倒れていた。
その中から黒い首輪を確認して、幻朧戦線のメンバーだけを縛り上げた、というわけだ。そして彼らはこの後、しかるべき機関に引き渡される。
帝都百美人コンテストのセレモニイはまた明日にでも改めて行われるとのこと。
グラッジ弾を使った幻朧戦線の、恨みから悲劇をもたらす作戦は、猟兵たちの活躍によって阻止され。グリモア猟兵が予知した悲劇に対する後顧の憂いは、全て断たれたのである。
……この事件の真相はいまだ闇の中。
大成功
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