呪われた人形遊戯
#ダークセイヴァー
タグの編集
現在は作者のみ編集可能です。
🔒公式タグは編集できません。
|
●
「――チェック。さあ、つぎはエミリーのばんね」
おもちゃで溢れかえった薄暗い部屋で、一人の少女がチェスに興じている。
天使のような微笑みを浮かべる、おしゃまで可愛らしいドレス姿の娘だ。
一目見て箱入り娘と分かるような、世間ずれしてない雰囲気を纏っている。
彼女はずっとこの部屋で、"おともだち"と一緒に遊んでいた。
しかし、盤面の向こうの相手から返事は来ない。来るはずもない。
なぜなら彼女と一緒にチェスを指しているのは、人形なのだから。
「あら? どうしたのかしら、エミリー?」
いつまで経っても相手が次の手を指さないのに、少女は首をかしげる。
人形なのだから当然のこと――ではない。少女の"おともだち"は特別製。
ひとりでに動くし、遊び相手にもなる。だからとても気に入っていたのに。
「ねんりょうが、きれてしまったのね。また、あつめてこないと」
まだ動ける"おともだち"はいるかしらと、少女は部屋の中を見回す。
壊れたおもちゃが散らばる部屋には、エミリーと似た造形の人形が何体も。
主人である少女の意を汲んで、それらは見えない糸に繰られて動き出す。
「さあ、にんげんの"たましい"を、あつめてくるのだわ」
天使のように無垢な微笑みを浮かべたまま、少女は人形達にそう命じた。
彼女の愛するダペルトゥット・ドール――とある呪術師の作り上げた呪殺人形達は、動力である死者の魂を求めて、屋敷の外に出ていくのだった。
●
「事件発生です。リムは猟兵に出撃を要請します」
グリモアベースに招かれた猟兵たちの前で、グリモア猟兵のリミティア・スカイクラッド(勿忘草の魔女・f08099)は淡々とした口調で語りだした。
「ダークセイヴァーのとある地方にて、墓地から死体が消えるという事件が頻発しています。リムの予知によるとこの事件は、同地を支配する吸血鬼の仕業のようです」
その吸血鬼領主の名はエシラ・リデル。普段は滅多に領民の前に姿を現さず、屋敷で好きなチェスやトランプ遊びに興じているだけの「世間知らずのお嬢様」だが、彼女が所有している人形の"おともだち"が、死体消失事件の発端となっている。
「エシラの持つ人形は、正式名称を『ダペルトゥット・ドール』と言う、死者の魂や怨念を動力とする呪いの人形の一種です。エシラは自分の"おともだち"に餌を与えるために、自らの領内の墓地から死体を漁らせているようです」
死者の尊厳を冒涜するその所業に、リミティアは微かに眉をひそめながら話を続ける。
主人の命令を受けたダペルトゥット・ドールは、各地の墓地に現れては無念を抱えた死者の亡骸を回収していく。その過程で周辺の村や町に呪いを振り撒きながら。
エシラは人形達に動力を恒常的に供給できるよう、わざと圧政を敷いて領民達を苦しめ、非業の死を遂げるようにも仕向けている。"おともだち"と一緒に遊びたいという、ただそれだけの理由で死者と生者を苦しめ続けているのだ。
「この悪趣味な所業を終わらせるためには、人形の動力源を断つ必要があります」
ダペルトゥット・ドールが現れるのは、いずれも死者の怨嗟に満ちた墓地。
ここに猟兵が先回りして、亡骸を回収される前に怨念を鎮めることができれば、人形達の行動は空振りに終わる。動力の供給を断たれた人形はいずれ機能停止していくだろう。
「墓地にはシエラの圧政の犠牲となった人々の亡霊が漂い、常人であれば近付くだけでも精神を削られる危険な場所ですが……皆様であれば問題はないはずです」
敵の戦力を削ぐという目的も勿論ではあるが、死してなお安息を得られずに世を呪い続けている亡霊達を、どうか解放してあげてほしいとリミティアは言った。
「皆様が墓地の浄化を行っていけば、エシラと人形も異変に気付くでしょう。邪魔者を排除しようと彼女達が姿を現した時が、領主を討伐する最大の好機になります」
警備の厳しい屋敷に引きこもられていては手を出し辛いが、世間知らずで子供っぽいところのあるエシラは、"おともだち"との遊びを邪魔されれば黙っていられないだろう。
「交戦する敵はダペルトゥット・ドールの集団と、領主エシラ・リデルです。高位の吸血鬼であるエシラは言うまでもなく、様々な呪詛を操るドールも決して油断はできません」
しかし墓地の浄化がうまういっていれば、動力不足に陥ったドールの戦力は低下する。
またエシラも能力は高いものの世間知らずのせいで実戦には慣れておらず、戦闘経験の豊富な猟兵が付け入る隙は十分にあるだろう。
「エシラ・リデルが今回の事件を引き起こした動機は『おともだちと遊びたい』ただそれだけです。誰かに対する明確な悪意があってのことではありません」
だからと言って、彼女に説得が通じるとは思わないでほしいとリミティアは言う。
確かに彼女は無垢かもしれない。だがそれ故に善悪の区別がつかず、自分のためなら他者は犠牲になって当然だと考え、無邪気なまま多くの生命と尊厳を踏み躙ってきた。
「これ以上の犠牲が出る前に、彼女の人形遊びを止めなければなりません」
そう言って説明を締めくくったリミティアは手のひらにグリモアを浮かべると、ダークセイヴァーに続く道を開く。その先にあるのは、死者の怨嗟が渦巻く墓地だ。
「転送準備完了です。リムは武運を祈っています」
戌
こんにちは、戌です。
今回の依頼はダークセイヴァーにて、死者の怨念を動力とする呪いの人形と、それを愛でる吸血鬼領主の討伐が目的となります。
第一章では人形の動力源を断つために、怨嗟に満ちた墓地で浄化を行います。
墓地はオブリビオンの犠牲となった人々の亡霊や怨念で溢れかえっており、これを鎮めたり浄化することで次章以降の敵戦力を弱体化させることができます。
亡霊のほとんどは怨嗟のあまり正気を失っていますが、一応話は通じます。
力ずくで除霊してしまっても、作戦目標は果たせるので可です。
第二章からは領内の異変に気付いたオブリビオンとの戦闘になります。
まずは領主のおともだちである『ダペルトゥット・ドール』との集団戦。
それに勝利すれば吸血鬼領主『エシラ・リデル』との決戦になります。
自分の遊戯のために生者と死者を苦しめる、残酷な領主に引導を。
それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
第1章 冒険
『墓地に満ちる怨嗟』
|
POW : 死人は黙れ。生者の力や可能性を見せつけて黙らせる。
SPD : 感傷は不要。理路整然と説き伏せる。
WIZ : 彼らの未練を聞き届け、死者の為に祈る。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
|
種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
ヴェル・ラルフ
もう失われたはずの過去の残滓が、ヒトの魂と遊びたくて死者を漁る
このかなしい連鎖を、終わらせたい
まずは墓地の浄化だね
僕に、人を救う力はないけれど
自分を鼓舞しながら墓地を回って死者の魂を探す
彼らの無念を聞きながら炎の浄化の力を借りて、彼らを冥府へ送り届けよう
話ができそうなら
ここに縛られても何にもならないのだからと説得を試みる
その苦しみや怨みは、僕が果たすからと慰めながら
話が通らなければ恨み言を最後まで聞き届けて、祈りを込めた【ブレイズフレイム】の炎で浄化を試みる
僕を恨んでくれてもいい
その思いも背負って、それでもこの連鎖を終わらせたいから
★アドリブ・連携歓迎
「もう失われたはずの過去の残滓が、ヒトの魂と遊びたくて死者を漁る――このかなしい連鎖を、終わらせたい」
静かな決意を胸に秘め、ヴェル・ラルフ(茜に染まる・f05027)は墓地を訪れる。
耳を澄ますまでもなく、聞こえてくるのは死霊たちの怨嗟の叫びと無念の嘆き。
大気に満ち満ちた瘴気が、この地に眠るオブリビオンの犠牲者の数を示していた。
「まずは墓地の浄化だね。僕に、人を救う力はないけれど」
おどろおどろしい気配に怯まぬよう、自分を鼓舞しながら先に進むヴェル。
すぐに彼は、この地に縛り付けられた亡霊の群れに囲まれることになる。
『憎い……憎い……』
『どうして私が……こんな目に……』
実体を持たない死者の魂は、ただ己の無念を生者に訴えることしかできない。
だが、うわ言のように止めどない怨嗟は、常人に正気を失わせるに十分なものだった。
「キミたちの無念がわかる、とは軽々しくは言えないけれど」
ヴェルは心を強く保つよう努めながら、亡霊の無念に真摯に耳を傾ける。
彼らの言葉はほとんどの場合要領を得ないが、どれだけこの世を恨んでいるのかは分かる。その全てを受け止め、聞き届けたうえで昇天するよう説得を試みる。
「ここに縛られても何にもならないのだから」
むしろ、ここに亡霊が集まるほど、怨敵である領主を喜ばせる結果となっている。
死してなお、その想いを利用されたくはないだろうと、悪辣なオブリビオンの所業を伝えれば、まだ理性を残している亡霊の幾人かは反応を示した。
『これ以上……あいつの思い通りには……なりたくない……』
『だが……この恨みは……憎しみは……捨てられない……』
「その苦しみや怨みは、僕が果たすから」
怨嗟に縛られた亡者を解放するために、ヴェルは【ブレイズフレイム】を放つ。
炎は破壊するだけでなく、穢れたものを浄化し、再生へと導く象徴でもある。
常ならば敵を滅ぼす地獄の炎は、今は浄化の炎となって死者を冥府に導いていく。
「だから、ゆっくりおやすみ」
『ありが……とう……』
祈りを捧げるヴェルに見送られ、炎に包まれて消えていく亡霊たち。
彼らに必要なのは、自分の恨みと正面から向き合ってくれる誰かだったのだろう。
――ただ、この地に眠る死者のすべてが、そうした話の分かるものではない。
『ミンナ、ミンナ、死ンデシマエバイイノニ』
『ユルサナイ、ユルサナイ、ユルサナイ――!』
怨嗟に長く囚われ続けてしまったせいで、理性の壊れてしまった亡者たち。
そうしたものが相手でも、ヴェルは恨み言を最後まで聞き届けてから浄化する。
狂える亡者は抵抗しようとするが、猟兵の祈りと地獄の炎の強さには抗えない。
「僕を恨んでくれてもいい」
その思いも背負って、それでもこの連鎖を終わらせたいから。
ヴェルはすべての怨嗟を心に刻みつけながら、祈り続ける。
墓所に舞い踊る紅蓮の炎は葬送の灯となって、この地の呪詛を清めていった。
大成功
🔵🔵🔵
幻武・極
キミ達の苦しみは何となく分かるけど、いつまでもここにいたら、その恨みもヴァンパイアに利用されるだけだよ。
まあ、話したところで聞き入れてくれるような小さな恨みだったら、いつまでもここに残ったりしないよね。
それじゃあ、ボクが相手してあげるよ。
トリニティ・エンハンスで攻撃力を強化して、属性攻撃で聖属性を付与して、浄化するよ。
聖なる炎・水・風に導かれて向こうの世界に行くといいよ。
「キミ達の苦しみは何となく分かるけど、いつまでもここにいたら、その恨みもヴァンパイアに利用されるだけだよ」
『ウルサイ!!』
『消エロ!!』
浄化のために墓地に赴いた幻武・極(最高の武術?を追い求める羅刹・f00331)に浴びせられたのは、怨嗟に満ちた亡霊たちの罵声だった。
道理を説いて説得しようにも、多くの死者は頑なで、生者の言葉になかなか耳を貸そうとはしない。怨念と恨みはもはや彼らの存在する意義でもあるのだ。
「まあ、話したところで聞き入れてくれるような小さな恨みだったら、いつまでもここに残ったりしないよね」
言葉での説得を早いうちに諦めた極は、鍛え上げた自らの拳をぐっと握りしめる。
話が通じない相手には体に――この場合は魂に直接訴えたほうが有効な時もある。
「それじゃあ、ボクが相手してあげるよ」
【トリニティ・エンハンス】を発動した極の身体は炎と水と風、そして聖なる輝きに包まれる。それを本能的に脅威と感じた亡霊は、敵意を剥き出しにしながら彼女の元に殺到した。
「ボクの武術を見せてあげるよ」
属性の力を帯びた極の魔法拳は、実体なき亡霊の魂を打つ。
怨嗟を焼き祓う炎、穢れを清める水、瘴気を吹き飛ばす風。
聖属性を付与された3つの力が、拳打と共に墓地を浄化していく。
『オォぉぉぉぉぉぉ……!!?』
彼女に近付いた者から順番に吹き飛ばされ、消滅していく亡霊たち。
所詮はただの死者に過ぎない彼らが、猟兵の脅威となるはずもなかった。
「聖なる炎・水・風に導かれて向こうの世界に行くといいよ」
拳を振るう極の表情に敵意はなく、穏やかで、されど力強く。
祈りと闘志を込めて繰り出される一撃が、死者の怨念を打ち砕く。
自らを縛り付けていたモノから解放された魂は、安らかな表情を浮かべて冥府に旅立っていくのだった。
成功
🔵🔵🔴
十文字・武
<アドリブ連携詠唱省略ok>
亡霊に怨念の浄化なぁ。
オレの退魔刀を使えば、強制的に除霊は出来るだろうが。
生きてた時に苦しんで、死んでまで更に苦しんで、邪魔になったら、はい、悪霊退散。
……ってのは、流石に無情過ぎるだろ。
……ちと強引だが、やってみるか。
UC【カラバ二刀流・弐ノ太刀】起動。
切り捨てるわけじゃない。これは相手の魂に直接オレの魂をぶつける業の一つだ。怨霊たちに話を通じさせる事ぐらいは出来るだろう。
一人一人、一霊一霊、今回の顛末を、あんたらが苦しんできた、悪意の元を教えよう。
諸悪の根源はオレ達が必ず討ってやる。
あんたらの恨みは引き受ける。だから、今だけはこの場を鎮めるのに協力して欲しい。
「亡霊に怨念の浄化なぁ。オレの退魔刀を使えば、強制的に除霊は出来るだろうが」
腰に帯びた二振りの刀に手を当てながら、十文字・武(カラバ侯爵領第一騎士【悪喰魔狼】・f23333)は思案する。その周囲に渦巻くのは、死者の怨嗟と瘴気。
彼がその気になれば、この怨念を切り捨てるのは容易かろう。普段戦っているオウガやオブリビオンに比べれば、こんな亡霊は敵にもならない。しかし――。
「生きてた時に苦しんで、死んでまで更に苦しんで、邪魔になったら、はい、悪霊退散。……ってのは、流石に無情過ぎるだろ」
彼らはなんの罪も咎もない、領主の望みに巻き込まれた犠牲者に過ぎない。
その怨念をどうにか安らかに晴らしてやりたいと、青年は思う。
「……ちと強引だが、やってみるか」
やがて、あることを思いついた武は、亡霊たちの前で刀を抜き放つ。
退魔刀【死神殺し】に妖刀【カラバ侯爵領騎士剣】。
いずれ劣らぬ名刀だが、此度その刃が振るわれるのは敵を斬るためではない。
「カラバ二刀流・弐ノ太刀……【御霊貫き】」
目にも留まらぬ斬撃が二度、疾風のように周囲にいる亡霊を薙ぐ。
その瞬間、墓地に満ち溢れていた怨嗟の声が、ぱったりと途絶えた。
【御霊貫き】とは刀を通して、己の魂を相手の魂・精神に直接ぶつける業である。
本来は肉体を傷つけずに霊魂や精神を攻撃するための業だが、それを応用すれば自らの意志を相手に伝えることもできる。
相手によってはどんな言葉よりも雄弁で明快な、意思疎通の手段となるだろう。
『ぁ……今の、は……?』
突然魂に叩きつけられた他者の意志に、亡霊たちは困惑しているようだった。
そんな彼ら一人一人、一霊一霊に、武は真剣な自らの想いをぶつける。
(あんたらが苦しんできた、悪意の元を教えよう)
すべては人形遊びに興じる領主が引き起こした陰謀。"おともだち"の動力のためだけに領民を苦しめるという、人を人とも思わぬ所業の真意を、余すことなく伝える。
『そん、な、こと、の、ために、わたしたちは……!!』
魂と魂の会話に、嘘や偽りが介在する余地はない。武の意志を真実として受け止めた亡霊たちの驚愕は、察するに余りあるものだった。
自分たちが憎めば憎むほど、憎い相手を喜ばせることになる――怨嗟のやり場を失った彼らに、武はさらに誠心を込めて訴えかける。
「諸悪の根源はオレ達が必ず討ってやる」
それは騎士として、猟兵として、そして一人の男としての誓い。
元凶たる領主に報いを与えることを、ここにいる全ての亡霊に約束する。
「あんたらの恨みは引き受ける。だから、今だけはこの場を鎮めるのに協力して欲しい」
武の意志は鋼のように固く、炎のように熱く、まるで鍛えられた刀のよう。
その強き想いは、亡霊を現世に縛りつける怨嗟の鎖を断つのに十分だった。
『……頼む……俺たちの代わりに……』
『もう、これ以上……誰も苦しまずに済むように……』
それぞれの意志を伝えながら、揺らめく煙のように消失していく亡霊たち。
全てを受け止めた武は、静まり返った墓地で、ぐっと刀を握りしめるのだった。
大成功
🔵🔵🔵
雛菊・璃奈
酷いね…怨念と振り撒かれた呪いが死んだ後もこの人達を苦しめてる…。
「かなしい…」
「まっくら…」
「みんな苦しそう…」
連れて来たラン達と共に神酒で墓場を清め、【ソウル・リベリオン】を手に巫女として鎮魂の神楽を舞うよ…。
身に着けた破魔の鈴飾りの音色を響かせ、【破魔】の力で怨念を弱めると共に、【ソウル・リベリオン】の力で呪いや怨念を喰らい、あるべき姿に戻す事で亡霊達の魂を鎮め、救済するよ…。
後は掃除したり整備したりお供えしたりと、安らかに眠れるようにラン達とお墓を綺麗に整え、これ以上、眠りが妨げられない様にわたしの呪力【呪詛】で結界を張るよ…。
安らかに眠って…これ以上、貴方達が苦しむ事は無いから…。
「酷いね……怨念と振り撒かれた呪いが死んだ後もこの人達を苦しめてる……」
悼ましげに目を細めながら、そう呟いたのは雛菊・璃奈(魔剣の巫女・f04218)。
呪われし剣の使い手であり、呪術使いでもある彼女には、この地に満ちあふれた亡霊たちの怨嗟と呪詛を、常人よりもはっきりと感じ取ることができた。
「かなしい…」
「まっくら…」
「みんな苦しそう…」
連れて来たお付きのメイド人形、ラン、リン、レンもみな悲しげな顔をしている。
領主の戯れのために、一体どれほどの悲劇と死が引き起こされたのか。
恐るべきはこの光景ですら、全体のほんの一端に過ぎないということだ。
「すぐにここを鎮めないと……みんな、手伝って……」
「もちろん!」
「てつだう!」
「おきよめ!」
メイド達と共に璃奈は墓場を巡り、祭礼等で使われる神酒による場の清めを行う。
酒には古くから穢れを祓う力があるとされ、神に供えられた酒には霊験も宿る。
それによって墓場に漂っていた瘴気は薄れていくものの、これだけではまだ浄化は不十分であることは彼女にもよく分かっていた。
「本番はここから……」
場を清め終えた璃奈は墓所でもっとも怨嗟の強い中心に立つと、呪詛喰らいの魔剣【ソウル・リベリオン】を手に、死者を慰める鎮魂の神楽を舞いはじめる。
巫女としてその身に覚えこませた流麗な身のこなし。地を踏む足運びから剣を振るう腕の所作に至るまで、ひとつひとつの動作が洗練されて美しい。
身に着けた「破魔の鈴飾り」が舞いの動きに合わせてりん、と澄んだ音色を響かせるたび、怨嗟の声は小さくなっていき、地に満ちる怨念は弱まっていく。
「呪詛喰らいの魔剣よ……彼の者を縛る呪いを喰らい、正しき姿、正しき魂へ戻せ……」
祈りと共に魔剣の巫女が振るいし刃は、死者を縛る呪いを断ち、怨念を喰らう。
鈴音響かせ呪いを斬り祓う巫女の剣舞を、メイド達も固唾を呑んで見守っている。
「彼の魂に救済を……!」
歪んでしまった亡霊をあるべき姿に戻し、逝くべき場所に導く。
璃奈が神楽を終えるのと同時に、怨嗟を祓われた亡霊たちは安らかな表情を浮かべて、墓地から姿を消していった。
「安らかに眠って……これ以上、貴方達が苦しむ事は無いから……」
鎮められた魂が眠りにつく様子を見届けた璃奈は、このまま彼らが安心して眠れるように、メイド達と手分けして墓地の手入れを始める。
長らく常人が近づけない地であったここは、やむなく管理も放棄されているような状態であり、自然のなりゆきのまま荒れ放題になっている。
璃奈達は敷地に生えた雑草をむしり、墓標の汚れを落とし、ささやかではあるが花を供えて、死者の眠る場所として相応しいように墓場を綺麗に整えていった。
「こんなところかな……」
「きれいになった!」
「もうくらくない!」
「きっと苦しくない!」
見違えるように変わった墓地の様子を満足そうに眺める璃奈とメイド達。
最後の締めくくりとして、璃奈は墓地の周りに自らの呪力で結界を張る。
それはもう二度と、彼らの眠りが妨げられないようにする為のもの。
これ以上オブリビオンに死者を弄ばせはしない――そんな彼女の決意の証だった。
成功
🔵🔵🔴
トリテレイア・ゼロナイン
門外漢の私ですら感知できる死者の怨嗟、この地の圧政が偲ばれます…
先ずは荒らされた墓地の整備
妨害する亡霊には●怪力で剣を振るって見せ追い払い、電子的な悪影響は自らの●ハッキングで適宜修正
●操縦する妖精ロボや自らの●怪力で墓地の整備や掃除
墓地や墓石の形式、宗教儀式の痕跡から●情報収集
これまで経験したDWでの依頼の中で入手してきた●世界知識の中からこの地の死者を慰撫する葬儀・宗教儀式の形式に近い物を割り出します
それを●礼儀作法に則り出来うる限り再現します
スピリチュアルな素養が全く無い以上、言葉と行為で死者に示す他ありませんね
これ以上の死者への無法を防ぐことをお約束します
どうか気を鎮め、お休みください
「門外漢の私ですら感知できる死者の怨嗟、この地の圧政が偲ばれます……」
センサーに訴えかけてくる呻き声、そして恨みに満ちた亡霊の姿を捉えながら、トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)はいたたまれぬ想いを呟く。
ここにいる亡霊は全て、領主の人形遊びのために怨嗟を抱いて死ぬように仕向けられたもの――言うなれば人形の燃料のストックとして貯蔵された者たちだ。
怨嗟のエネルギーを搾り取るために虐げられた人々の無念は、想像に余りある。
「先ずは荒らされた墓地の整備からですね」
トリテレイアは肩部から自律式妖精型ロボを発進させると、墓の手入れを始める。
死者の怨嗟に満たされて以来、この地は誰にも管理されないまま放置されていると思しかった。こんな有様では亡霊たちも、安らかに眠りたくても眠れないだろう。
「申し訳ありませんが、今は邪魔をしないでください」
寄ってきた亡霊にはぶんと力強く剣を振るってみせて追い払いつつ、倒れた墓標をウォーマシンの怪力で立て直したり、伸び放題になった雑草を妖精ロボに刈り取らせたりと、結構な重労働も難なくこなしながら墓地の整備と掃除を進めていく。
途中、何度か視界にノイズが走るようなことがあった(ポルターガイスト現象の一種だろうか)ものの、自己ハッキングで適宜システムを修正すればそれも問題ない。
「ひとまずはこんな所でしょう」
訪れた当初に比べれば見違えるほど整った墓地を見て、機械騎士は満足げに頷く。
しかしまだ亡霊を成仏させられたわけではない。魔法や死霊術に精通していれば直接鎮めることもできるかもしれないが、生憎トリテレイアにその方面の得手はない。
「スピリチュアルな素養が全く無い以上、言葉と行為で死者に示す他ありませんね」
墓地の手入れを行っている過程で確認した墓の形状や宗教儀式の痕跡から、この地の葬儀の様式についてはおおむね把握できている。これまでにダークセイヴァー各地の依頼を果たすうちに入手した、この世界の文化知識に照らし合わせた結果だ。
トリテレイアは可能な限りそれに忠実に、死者を弔うための葬送の儀を改めて執り行うことにした。
「これ以上の死者への無法を防ぐことをお約束します。どうか気を鎮め、お休みください」
それは騎士としての真摯なる誓いであり、さまよえる亡者たちに送る祈り。
墓標を前にして礼拝する所作は、この地における死者への礼儀に則ったもの。
死者の安息のために墓場の整備から葬儀まで尽くした機械騎士の誠実さと礼節は、亡霊たちの魂にも確かに届いたことだろう。
「……どうやら鎮まってくれたようですね」
儀式を続けるうちに、亡霊たちの怨嗟の声はいつしか聞こえなくなっていた。
トリテレイアは最後に一輪の花を墓標の前に供えると、その場を後にする。
死者の安息を守り、この地の圧政に終止符を――騎士の誓いを違えぬために。
成功
🔵🔵🔴
スピレイル・ナトゥア
死者の魂を餌にするお人形さんですか
これは悪趣味なお人形さんですね……まあ、私もひとのことは言えませんが
こういうときこそ、私の身につけている魂石のブレスレットの出番ですね
あなたたちを虐げていた領主さんは絶対に倒しますので、いまは大人しく私のブレスレットに吸収されててください
成仏させるよりも吸収しちゃったほうが楽そうなので
うーん……この世に未練のある幽霊さんたちが悪さをしないように、部族の掟に従って私のブレスレッドに封印しているわけですが、よくよく考えたら除霊とかお願いしにいったほうがいいんでしょうか?
なんだか、この景色を見ていたら、いままで思いつきもしなかったそんな考えが浮かんできちゃいきました
「死者の魂を餌にするお人形さんですか。これは悪趣味なお人形さんですね……まあ、私もひとのことは言えませんが」
精霊術士にして死霊術士でもあるスピレイル・ナトゥア(蒼色の螺旋の巫女姫・f06014)はそう呟きながら、転送された墓地の様子をくるりと見渡す。
運命さえも見通すという彼女の『精霊の眼』には、強すぎる怨念に縛られて現世を彷徨っている亡霊たちの姿が、はっきりと映し出されていた。
――死の運命に迎えられてなお、自由を得ることのできなかった魂。
まずは彼らが領主の人形の手に渡らないようにしなければならない。
「こういうときこそ、魂石のブレスレットの出番ですね」
スピレイルは身に付けている赤い石のブレスレットをかざして亡霊たちに近付く。
亡霊は敵意も露わに怨嗟の声を上げるが、意図せず彼女に引き寄せられていく。
『ウゥゥぅ……!?』
「成仏させるよりも吸収しちゃったほうが楽そうなので」
死者の魂を吸収する彼女のブレスレットには、すでに無数の怨念が宿っている。
スピレイルはこれまでにもこうして、多くの怨霊のたぐいを封じてきたのだ。
「あなたたちを虐げていた領主さんは絶対に倒しますので、いまは大人しく私のブレスレットに吸収されててください」
彼らの無念は分かるが、ここにいれば領主を喜ばせるだけでなく、まだ生きている人々を害するばかりだ。多少強引にでもこの地から引き離さなくてはならない。
亡霊たちはそう言われて素直に従うものばかりでは無かったが、魂石の力には抗うことができず、無念の声だけを残してブレスレットの中に吸い込まれていく。
『痛イ……苦シイ……』
『オレタチノ……恨ミ……』
『……思イ知ラセテ』
消えていく刹那、憎悪と悲嘆に満ちた死者の表情が、スピレイルの眼に焼き付く。
それは領主に運命を弄ばれた彼らの未練であり、切なる願いであった。
「うーん……よくよく考えたら除霊とかお願いしにいったほうがいいんでしょうか?」
新たな怨念の加わったブレスレットに触れながら、巫女姫は思案げに首を傾げる。
彼女は部族の掟に従って、この世に未練のある幽霊たちが悪さをしないようにブレスレットに封印してきた。これまではその行為に疑問を抱くことも無かったのだが。
「なんだか、この景色を見ていたら、いままで思いつきもしなかったそんな考えが浮かんできちゃいきました」
渦巻く怨嗟によって荒れ果てた墓地と、無念を抱えながら彷徨う亡霊たち。
安らぎとは程遠いあまりに荒廃した光景が、彼女の心になにかを与えたらしい。
――ともあれ今は、自分に為せることを、為せる範囲で。
まだ墓地に残っている亡霊たちを封じるため、スピレイルは奔走するのだった。
大成功
🔵🔵🔵
シャルロット・クリスティア
WIZ
……無念だったでしょう。
ただの身勝手な理屈で、ただ生きる事すらも満足に許されないとは……。
私は神は信じない。神がいるなら、こんな世界を許すはずがない。
だから、代わりにあなた達に祈り、誓わせてほしい。
もうこんなことは終わりにする、と。
聞き入れてくれるかはわからなくても、ただ言葉を尽くすだけです。
あなたたちの無念は、私が持って行きます。
だから、もうみんなは休んでいてください。これ以上、心をすり減らす必要なんてない……。
怒り、憎み……それをぶつけるのは、私が代わりにやっておきますから。
だから、お願いします。
どうか……せめて死後の世界くらいは、安らかでいてください。
「……無念だったでしょう」
領主の戯れのために死に追いやられ、命を落としてなお現世を彷徨う亡霊たち。
彼らが受けた苦しみに思いを馳せながら、怨嗟の声に耳を傾けるシャルロット・クリスティア(彷徨える弾の行方・f00330)は、胸が張り裂けるような気持ちだった。
「ただの身勝手な理屈で、ただ生きる事すらも満足に許されないとは……」
失われた命は戻らない。それでも、せめて彼らが安らかに眠る権利は守りたい。
そのために少女は切なる祈りを抱き、荒ぶる怨嗟の魂に呼びかける。
「私は神は信じない。神がいるなら、こんな世界を許すはずがない」
吸血鬼が民を支配し、怪物どもが蔓延る、この暗黒に覆われた世界。
この地に神の救いなどありはしないことをシャルロットは知っている。
故にこそ彼女は銃を取り、自らの手で支配に抗う道を選んだのだから。
「だから、代わりにあなた達に祈り、誓わせてほしい。もうこんなことは終わりにする、と」
神ではなく自らの力で、彼らを苦しめたヴァンパイアに応報する。
かつて仇にも撃ち込んだ弾丸で、今度は彼らの仇を撃ち抜いてみせると誓う。
『ウゥゥぅぅ……終ワ、り……?』
『憎イ……憎イ……憎イ……!』
怨嗟に囚われた亡霊たちの反応は、あまり芳しいものではない。
簡単に説かれて消えるような憎しみなら、彼らもここに留まってはいまい。
しかしシャルロットは聞き入れられずとも、ただ、真摯に言葉を尽くす。
この胸にある想いのすべてで死者に寄り添うこと、それが彼らに対してできる唯一のことだから。
「あなたたちの無念は、私が持って行きます。だから、もうみんなは休んでいてください。これ以上、心をすり減らす必要なんてない……」
さまよう亡霊たちの前で、少女は慈しみの表情を浮かべながら腕を広げる。
彼らの苦しみを、痛みを、嘆きを、恨みを、すべて抱きしめるように。
「怒り、憎み……それをぶつけるのは、私が代わりにやっておきますから」
だから、お願いします――と、偽りのない真心で、シャルロットは願う。
「どうか……せめて死後の世界くらいは、安らかでいてください」
――少女の優しい祈りとまっすぐな誓いは、果たして亡霊たちの魂に届いた。
怨嗟の声は次第に小さくなり、死者の姿はひとり、またひとりと消えていく。
祈り続けるシャルロットの前で、墓地は本来あるべき平穏を取り戻していた。
『……ありがとう』
土の香りがする風に紛れて、誰かの声が、シャルロットの耳に届く。
託されたのだ、と。そんな確信が彼女の胸に、熱いものを湧き上がらせた。
大成功
🔵🔵🔵
フレミア・レイブラッド
この世界ではオブリビオンによって非業の死を遂げるなんて珍しい事ではないわ。…でも、それが許されるかはまた別なのよね
【念動力】でこの場にいる無数の霊達の思念を感じ取り、逆に自身の声を霊達に届けるわ…。
オブリビオンの我儘に弄ばれた貴方達の無念は必ず晴らしてあげるわ。我儘領主に貴方達の無念を叩き込んであげる。…だから、もう眠りなさい…。
霊達の無念を少しでも晴らせたら、【虜の軍勢】で「メイド・オン・ザ・ウェーブ」と「メイド・ライク・ウェーブ」で眷属にした「万能派遣ヴィラン隊」(総勢多数)を魔城から召喚。
【あらゆるニーズにお答えします】を駆使してこれから現れるドール用の罠の作成や墓地の整備等を指示するわ
「この世界ではオブリビオンによって非業の死を遂げるなんて珍しい事ではないわ」
今回の依頼と同様の事件はこれまでも、そしてこれからも起こり続けるだろう。
自身もダークセイヴァーの出身であり、多くの残酷な悲劇を目の当たりにしてきたフレミア・レイブラッド(幼艶で気まぐれな吸血姫・f14467)はそう語る。
「……でも、それが許されるかはまた別なのよね」
悪辣な領主の戯れによって民が犠牲となる――数え切れないほどに繰り返されてきた悲劇でも、犠牲となった人々の命の重さが軽くなるわけでは断じてない。
墓地を巡る吸血鬼の瞳には、不当に命を虐げる者への静かな怒りが燃えていた。
『ウゥゥ……憎イ……』
『コノ恨ミ……晴レナイ……』
強い怒りの情に引きつけられたように、漂っていた亡霊たちが集まってくる。
念動力を通して彼らの無念の想いや怨嗟の声を感じ取ったフレミアは、逆に自らの声と意志を念動力に乗せて彼らに届ける。
「オブリビオンの我儘に弄ばれた貴方達の無念は必ず晴らしてあげるわ」
凛として力強い、気品にあふれながらもどこか優しい声が墓地に響く。
吸血姫としての誇りにかけて、彼女が一度口にした約を違えることはないだろう。
この地に縛られた死者の怨嗟をすべて聞き届けたうえで、フレミアは誓う。
「我儘領主に貴方達の無念を叩き込んであげる。……だから、もう眠りなさい……」
怨嗟に囚われた亡霊にとって、その約束は幾ばくかの慰めになっただろう。
彼女の言葉に安堵したように、墓地に満ちていた怨嗟の声は小さくなっていった。
「これで少しでも霊達の無念を晴らせたかしらね」
静かになった墓場で、フレミアは続いてこの地の安息を守るための手筈を整える。
自らの拠点である「魔城スカーレット」に繋がる穴を開き、そこから召喚するのは【虜の軍勢】の一員である「万能派遣ヴィラン隊」。
「お呼びでございましょうか、ご主人様」
メイド服に身を包んだ元ヴィランにして、今はフレミアに忠誠を誓う眷属の集団は、一糸乱れぬ所作でお辞儀をすると、主人の命令を待つ。
「これから現れるドール用の罠の作成と、墓地の整備等をお願いするわ」
「かしこまりました。直ちに」
フレミアの指示を受けたヴィラン隊は、すぐさま手分けして行動を開始する。
雇い主の命令に従ってあらゆるニーズに答えることをモットーとする彼女達は、卓越した技能を駆使して墓場の周辺にトラップを仕掛け、同時に墓地の清掃を行う。
はびこる雑草の駆除に墓標の手入れ、地形を利用したブービートラップの設置や、敵の接近を知らせる鳴子まで――その手際は主であるフレミアも感心するほどだ。
「ご命令、完了いたしました」
「ええ、ご苦労さま」
召喚からほどなくして、荒れ果てていた墓地は綺麗に整えられ、その周辺には敵を迎え討つための仕掛けや罠が、巧妙に偽装された状態で施設されている。
二度と死者の眠りが妨げられないよう万全の体制を期したフレミアは、眷属らと共に敵の人形がやって来るのを待ち構えるのだった。
大成功
🔵🔵🔵
アリソン・リンドベルイ
【WIZ 午睡に誘う茉莉花香】
ええ、ええ。私は無力ですが、貴方の無念を受け止めます。慟哭の声を、怨嗟の呪いを…この身で受けますから。…だから、この墓地を悲しみで満たすのは、もう終わりにしましょう…?
『覚悟、呪詛耐性、狂気耐性、礼儀作法』で、正面から墓地に向かいます。……死者と生者は、どうしようもなく断絶してしまっているから。だから、せめて、死者が声を上げるのなら、聞き届けます。まだ生きている私が憎いのなら、呪っても構いません。…私は所詮、赤の他人で、余所者ですからね。大丈夫、貴方の愛した人たちには、残してきた人たちには…禍根を残さぬようにしますから。貴方を最後の犠牲にすることを恨んでください。
「……死者と生者は、どうしようもなく断絶してしまっているから。だから、せめて、死者が声を上げるのなら、聞き届けます」
そう言って、死者の怨嗟が渦巻く墓地に正面から足を踏み入れたのは、茉莉花の香りを漂わせたアリソン・リンドベルイ(貪婪なる植物相・f21599)。
死してなお怨嗟に囚われた魂をこのままにはしておけない、なんとか鎮めたい。
その為ならどんな恨みも怒りもすべて受け容れる覚悟で、彼女はここに来ていた。
『ウゥゥぅぅアァァぁぁぁ……ッ!!』
一歩踏み込めばそこは死者の領域。生者の気配に引きつけられた亡霊たちが、次々と怨嗟の声を上げる。
常人であればそれだけで気が狂いかねない呪詛を、アリソンはぎゅっとスカートを掴むだけで気丈に耐えていた。
「ええ、ええ。私は無力ですが、貴方の無念を受け止めます。慟哭の声を、怨嗟の呪いを……この身で受けますから」
アリソンは亡霊たちの怨嗟に耳を傾け、受け止め、そして優しく呼びかける。
それが自分から彼らにできる数少ないことで、きっと彼らにはそれが必要だから。
「……だから、この墓地を悲しみで満たすのは、もう終わりにしましょう……?」
この地には今、数え切れないほどの死者の嘆きが渦巻いている。
それを慰めるためには、嘆きを受け止めてくれる誰かの存在が必要なのだ。
『悲シイ……苦シイ……痛イ……辛イ……』
止めどなく溢れ、浴びせられる怨嗟の声。それは生者に対する無差別な敵意。
胸が締め付けられるような想いを抱きながら、アリソンはなおも退かない。
「まだ生きている私が憎いのなら、呪っても構いません。……私は所詮、赤の他人で、余所者ですからね」
この地に住まう人々に――亡霊たちの生前の縁者に累が及ぶよりはずっとましだろうと、そう思いながら怨嗟に身を委ね、懸命に声をかけ続ける。
「大丈夫、貴方の愛した人たちには、残してきた人たちには……禍根を残さぬようにしますから。貴方を最後の犠牲にすることを恨んでください」
彼らを死に至らしめた災禍の元凶は、自分たち猟兵が必ず討ち取ってみせる。
これ以上の怨嗟は増やさない――だから貴方たちにも安心してほしい、と。
そう告げるアリソンが放つ茉莉花の甘美な香りは、亡霊たちの心を落ち着かせ、安らかな眠りへと誘っていく。
『モウ……痛イノハ……イヤ……』
ひとつ、またひとつと、無念を伝えきった亡霊たちの怨嗟が消えていく。
微睡むように大気に溶けていく亡霊の姿を最後まで見届け、アリソンは黙祷した。
――舞い散る茉莉花の花びらを、彼らに手向ける花として。
成功
🔵🔵🔴
神元・眞白
【WIZ】
過去形にされた人がいる。個人の望みの為に。望んでないはずだったのに。
…せめて安らかに。何か伝えたい事があるのなら聞いてみよう。
まずは聞いてみることが大事。人形の私には癒す事は難しい。けど向き合うことから始めてみる。
飛威、大丈夫。きっとあの人達は分かってくれる。
少しぐらいの呪詛なら耐える…けど、もしもの時は、お願いね。
話を聞いていくだけで方向性が違うだけで私達と似た様なもの……?
使い方、使い手が違うだけでこうなる未来もあった……うん。
手がかりを探すのも大事だけど、まずは未熟な私で鎮める様にできないと。
「過去形にされた人がいる。個人の望みの為に。望んでないはずだったのに」
悲しげに眉をひそめながら呟くのは神元・眞白(真白のキャンパス・f00949)。
領主の遊興のために死に追いやられた人々。その嘆きと憎悪は察するに余りある。
「……せめて安らかに。何か伝えたい事があるのなら聞いてみよう」
まずは聞いてみることが大事。人形である自分に彼らの悲しみを癒す事は難しいかもしれないが、それでも向き合うことから始めてみようと、少女は墓地に赴いた。
『誰ダ……ッ!!』
敷地に足を踏み入れると、四方から浴びせられるのは強い敵意と怨念の視線。
眞白の世話役にして護衛でもある戦闘用人形の「飛威」が、咄嗟に主をかばうように刃物を構えて立ちはだかる。
「飛威、大丈夫。きっとあの人達は分かってくれる」
自分を守ろうとする人形を手で制し、眞白はすっと亡霊たちの前に進み出る。
肌に突き刺さるような怨嗟は常人なら発狂ものだろうが、彼女には問題ない。
「少しぐらいの呪詛なら耐える……けど、もしもの時は、お願いね」
万が一の際の事だけは飛威に託し、白い令嬢は亡霊との対話に臨む。
「聞かせて、あなたたちの話を。どうしてそうなってしまったのかを」
滔々と呼びかけながら怨嗟を受け止める構えの眞白に、亡霊たちは様々なことを語った。ほとんどは会話にならない恨み言だが、中には一定の理性を残した者もいる。
重税に耐えかねて首を括った者。些細な罪を理由にして処刑された者。
彼らが語る生前や死因は、どれも聞くに堪えないほど悲惨極まるものであった。
『アノ人形……アレノセイデ、俺タチハ……!』
領主が所有するという呪いの人形に関する情報も、断片的にだが得られた。
かの人形は死者の魂や怨念を動力とするだけでなく、ヒトの感情を狂わせたり、呪いで死体を仮初めの使い手として自分を操らせる力も持つ。死体を回収するとき以外でも、領主の命令でたびたび領内に呪いを振り撒いていたようだ。
(話を聞いていくだけで方向性が違うだけで私達と似た様なもの……?)
情報を集めるうちに、眞白は同じ"人形"として密かな共感を覚えていた。
その所業を認めるわけではないが、在り方に似たようなものは感じる。
(使い方、使い手が違うだけでこうなる未来もあった……うん)
呪いの人形が真に悪しき存在となったのは、所有者の領主の影響もあるだろう。
人形の力を己の戯れと圧政のためにしか利用しない、そんな使い手と出会ってしまったことが、人形による被害を拡大させたのは間違いない。
(手がかりを探すのも大事だけど、まずは未熟な私で鎮める様にできないと)
敵の情報を頭の中で整理しつつ、本来の目的に立ち返る。幸い、伝えられたことで少しは無念も収まったのか、怨嗟の声はいくらか小さくなったように感じる。
亡霊たちの魂が安らぐまで、眞白は懸命に彼らの言葉に耳を傾けるのだった。
成功
🔵🔵🔴
シエナ・リーレイ
■アドリブ・絡み可
ジュリエッタ以外にもいたなんて!とシエナは期待に胸をふくらませます。
呪殺人形と仲良く暮らす少女の噂を聞きつけたシエナ
まずは人形が現れるという墓場を訪れました
あなたのお話聞かせて欲しいな!とシエナは『お友達』候補にねだります。
墓地に沢山の『お友達候補』がいる事に気が付いたシエナは人形達が現れるまで彼らと対話しながら待つ事にしました
『お友達』候補が向けてくる怨念をシエナは笑顔で受け入れます
ヤドリガミとしての器物が他ならぬ[ダペルトゥット・ドールNo.689]であるシエナにとって怨念は本能的に求めてやまないものだからです
シエナは魂達と楽しく会話をしながら怨念を貯め込んでいくでしょう
「ジュリエッタ以外にもいたなんて! とシエナは期待に胸をふくらませます」
歓喜の感情をそのまま言葉にしながら、事件の話を聞きつけたシエナ・リーレイ(取り扱い注意の年代物呪殺人形・f04107)は人形が現れるという墓場を訪れる。
そこに漂っていたのは、数え切れないほどの怨嗟に満ちた亡霊たち――常人にとっては恐怖の対象だが、彼女にとってそれはむしろ親愛の対象になり得るものだった。
「あなたのお話聞かせて欲しいな! とシエナは『お友達』候補にねだります」
沢山の『お友達候補』がいる事に気が付いたシエナは、にっこりと笑顔を浮かべながら彼らに呼びかける。怨嗟に満ちた墓地では、些か似つかわしくない明るさで。
亡霊たちの言葉は生者への憎しみや怨念に満ちており、常人なら耳にするだけで精神を害する類のものだ。だというのに、彼女の笑顔には一点の陰りもない。
『俺タチハ……領主ノ人形ニ、殺サレタ……』
『絶対ニ……許セナイ……』
『憎イ……アノ人形モ……領主モ……何モカモ……!』
死者の怨念と魂を糧として、呪いを振りまく呪殺人形、ダペルトゥット・ドール。
この地の人々が苦しめられている、全ての原因と言ってもいい存在。
その恐ろしさを伝え聞かされても、シエナは瞳をキラキラさせるばかり。
「もっともっと聞かせてほしいな! とシエナは目を輝かせます」
亡霊たちの怨嗟を受けるたび、むしろ彼女は元気になっている。
何故なら彼女にとって"それ"は、本能的に求めてやまないもの。
そう――呪術師ダペルトゥットが作り上げた最後の人形、「ダペルトゥット・ドールNo.689」のヤドリガミであるシエナにとって、怨念とは砂糖菓子のようなものだ。
亡霊たちがシエナの正体に気が付かなかったのは幸運だったろう。
もし、彼女が自分たちを死に追いやった領主の人形と同型のものだと知れれば、彼らの怨嗟は何倍にも膨れ上がっていたはずだ。シエナからすれば望むところだったかもしれないが、少なくとも魂を鎮めるどころの話ではなくなるのは間違いない。
一方で対話を続ける最中にもシエナは自然と死者の怨念を吸い取るために、結果としてこの墓地の亡霊たちは徐々に鎮まりつつあった。
「はやく人形さん達も来ないかな? とシエナはジュリエッタを抱えます」
最初の『お友達』を腕に抱き、沢山の『お友達』候補と楽しそうに会話しながら、怨念を貯め込んだ呪殺人形のヤドリガミは人形達が現れるのを待ちわびるのだった。
大成功
🔵🔵🔵
カタリナ・エスペランサ
…ごめんなさい。もっと早く助けに来られれば良かったのだけれど
使うUCは【天下無敵の八方美人】。
《呪詛耐性+狂気耐性》を高めた上でまずは《歌唱+誘惑+精神攻撃+ハッキング+催眠術》、精神干渉する歌声に《優しさ+祈り+慰め》を込めて亡霊たちの怨嗟を和らげましょうか
彼らがある程度落ち着いたら《コミュ力+礼儀作法》で意思疎通を。その無念や現世に残した未練を一つ一つ聞き届けるわ
もう貴方たちと同じ犠牲者は出させない。領主の圧政は止めてみせる
だから、どうか貴方たちも安らかに眠ってほしい
最後は鎮魂歌で彼らを送りましょう
可能なら《拠点防御+全力魔法》で墓地を守る結界を張っておこうかしら
彼らの眠りを守る為にも、ね
「……ごめんなさい。もっと早く助けに来られれば良かったのだけれど」
救いの間に合わなかった亡霊たちの前で、カタリナ・エスペランサ(閃風の舞手(ナフティ・フェザー)・f21100)は静かな謝罪の言葉を紡ぐ。
世界は広く、グリモアも全ての事件を未然に予知できるわけではない。
承知していることではあるが、それでもやるせない思いはあった。
「償いにはならないけれど、せめてこの歌を捧げましょう……」
渦巻く怨嗟を少しでも和らげるため、カタリナは亡霊たちの前で歌を奏でる。
傷ついた魂を慰めようという優しき祈りを込めたその歌声は、相手の精神に直接干渉する、ある種の呪歌の域にまで高められている。決して声を張り上げているわけではないのに、彼女の歌は怨嗟の声にかき消されることなく、亡霊たちの魂に響いた。
『コレハ……ウタ……?』
『ナンダカ……少シ……暖カイ……』
「ねぇ、よろしければ私と少しお話してくれませんか?」
亡霊たちの心が落ち着いたのを見計らい、カタリナは改めて彼らと対話を試みる。
【天下無敵の八方美人】である彼女は、持ち前の教養に旅で培った対人経験を合わせて、どんな相手にも心を開かせるコミュニケーション技術を会得している。
声のトーンや間の取り方、何気ない仕草や目線まで計算して彼らに気を許してもらえるよう努め、亡霊の抱えている無念や現世に残した未練を聞き出していく。
『私ニハ、マダ小サナ妹ガ……』
『ボクハ何モ……悪イ事ナンテシテナカッタノニ……』
理不尽な領主の圧政への怒りや、まだ生きている縁者への心配。
それぞれに異なる想いのすべてを、一つ一つ聞き届けて胸に刻む。
そして、大丈夫だと言うように、力強く頷きながら応える。
「もう貴方たちと同じ犠牲者は出させない。領主の圧政は止めてみせる」
失われた命に代わってこの地に平穏をもたらすという、それは誓いだった。
領主であるオブリビオンを討つために、自分たち猟兵はここに来たのだから。
「だから、どうか貴方たちも安らかに眠ってほしい」
優しく慈しむようなカタリナの言葉を受け取った亡霊は、ふっと安堵したような表情を浮かべ――墓地を渦巻いていた怨嗟の声が、次第に消えていく。
『……お願いします……どうか……この地に平和を……』
願いを託して消えていく亡霊たちに、カタリナが送るのは鎮魂歌。
ゆりかごのような穏やかな調べが墓地に広がり、濁った空気を浄化していく。
最後の魂が眠りにつくのを見届けてから、彼女は最後に墓地の周辺に結界を張る。
「彼らの眠りを守る為にも、ね」
人形にも領主にも、二度とこの地の安寧は脅かさせない。
魔力を操るカタリナの瞳には、決意の輝きが宿っていた。
成功
🔵🔵🔴
エンジ・カラカ
墓、墓、墓。墓ダー。
鎮めるー?魂を鎮めるー。
相棒の拷問器具、賢い君に話しかける。
応えは帰ってこないケド。
賢い君、賢い君、鎮めようそうしよう。
語る言葉は無いンだよなァ……。
だーってコレは彷徨う魂のコトなんてしーらない。
知らない。
だから力ずくでねじ伏せよう。
怨嗟?大変ダネー。
大変そうダネー。
でもコレには関係ないない。
アァ……でも我儘なのはイヤだなァ……。
賢い君は賢いヤツが好きなンだ。
賢い行動をとらないと、標的になるなる。
アァ、うん。アイツにしよう。
アイツは賢くないない。
言い訳は聞き届けるケド、興味は無いンだ。
賢い君も言い訳は聞かない聞かない。
力ずくで鎮めたら魂は墓に戻してやろう。
バーイバイ
「墓、墓、墓。墓ダー」
奇妙に楽しげな様子で墓地を見回すのはエンジ・カラカ(六月・f06959)。満ちる怨嗟も呪詛もまるで意に介さぬふうで、彼は相棒の拷問器具、賢い君に話しかける。
「鎮めるー? 魂を鎮めるー」
応えは帰ってこない。応える口を持たないのかそれとも知性を持たないのか。
懐に収めた器具はしんとしたままだが、それでも彼は何かを感じ入ったように。
「賢い君、賢い君、鎮めようそうしよう」
そう答えを出すものの、果たしてどうやって魂を鎮めるつもりなのか。
その方法は賢い君がよく知っている。鱗片と毒の宝石、そして赤い糸が。
「語る言葉は無いンだよなァ……。だーってコレは彷徨う魂のコトなんてしーらない。知らない」
エンジは縁もゆかりもない魂の気持ちに寄り添えるような性質では無かった。
牢獄育ちの青年は、挨拶と武器の扱いは知っていても、言葉で相手を説き伏せるような礼儀作法は知らない。
「だから力ずくでねじ伏せよう」
【賢い君】から放たれた赤い糸が、墓地をさまよう亡霊たちに絡みつく。
どんなに怨嗟の声を上げようがお構いなしに、きつくきつく縛り上げる。
『ウゥゥぅぅあぁァァァ……!』
『痛イ……苦シイ……痛イ……!』
「怨嗟? 大変ダネー。大変そうダネー。でもコレには関係ないない」
涼しい顔で聞き流しながら、エンジは口の端を釣り上げて妖しく笑う。
糸で捕らえた亡霊がどんなにもがき暴れようとも、決して放さない。
「アァ……でも我儘なのはイヤだなァ……」
拷問器具の中から飛び出した鱗片が、ひときわ騒いでいた亡霊に突き刺さった。
「賢い君は賢いヤツが好きなンだ。賢い行動をとらないと、標的になるなる」
どういった基準で賢さを判断しているのか、それはエンジにしか分からない。
しかしどうやら怨嗟を撒き散らして暴れるのは"賢い行動"には当たらないようで。
「アァ、うん。アイツにしよう。アイツは賢くないない」
糸に絡めたものを騒がしいヤツから順番に、拷問器具は鱗片と宝石で屠っていく。
そこに慈悲はあるのかもしれないが、容赦は一片もありはしなかった。
『ドウシテ……私達ガ……コンナ事ニ……』
「言い訳は聞き届けるケド、興味は無いンだ。賢い君も言い訳は聞かない聞かない」
どんなに辛い生前の理不尽も、怨嗟の呪いで生者を脅かす理由にはならない。
荒ぶる亡霊を力尽くで鎮めたエンジは、静かになった魂を墓に戻してやる。
「バーイバイ」
願わくばもう二度と合わぬよう。彼らが永久の眠りから覚めぬことを。
ひらりひらりと手を振りながら、青年は賢い君と共に墓場を巡る。
大成功
🔵🔵🔵
リーヴァルディ・カーライル
…ん。死者の怨念を利用して力と為す。
罪深いのは、私も吸血鬼も変わりはしない。
…だけど、私は彼らの想いを背負っている。
…死んだ人達の想いまで、吸血鬼の好きにはさせないわ。
左眼の聖痕に魔力を溜めてUCを発動
怨霊の呪詛を呪詛耐性等で受け流す事はせず、
彼らの精神攻撃を気合いで受け止め、
暗視した魂の残像と手を繋いでいき、協力を呼び掛ける
…この地にさ迷う、いまだ鎮まらぬ魂よ。
救済を求めるなら、祈りを捧げる者達の元へ向かいなさい。
その魂は光の中で安息を得るでしょう。
…救済を求めず、光に背を向け、憎悪に塗れた魂よ。
彼の領主に報いを与える事を望むのならば、私と共に来なさい。
その願い、この私が聞き届けましょう。
「……ん。死者の怨念を利用して力と為す。罪深いのは、私も吸血鬼も変わりはしない」
左眼に刻まれた聖痕――代行者の羈束を輝かせ、リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)はかく語りながら墓所の有様を見渡す。
彼女の瞳には死者の魂を取り込む力が宿る。戯れのために怨念を人形に喰わせる吸血鬼と、戦いのために怨念を喰らう自分。目的は違えど行為に大差はない。
「……だけど、私は彼らの想いを背負っている」
理不尽に踏み躙られた命の嘆きを、断末魔の叫びを、忘れたことなど一度もない。
散っていった魂から託された想いは今も、リーヴァルディの中で息づいている。
「……死んだ人達の想いまで、吸血鬼の好きにはさせないわ」
彼らの怨念を利用させないために、そして想いをここで朽ちさせないために。
代行者の羈束に溜められた魔力は解き放たれ、【断末魔の瞳】が発動する。
「……この地にさ迷う、いまだ鎮まらぬ魂よ」
怨嗟の呪詛を受け流すことなくその身で受け止めながら、リーヴァルディは怨霊達に呼びかける。暗闇の中に浮かぶ彼らの残像を、はっきりとその瞳に映しながら。
死者と手を結びたいと思うなら、小手先の話術は通じない。真心を込めた言葉と強い意志――気合いが無ければ、彼らの心を揺さぶることはできない。
「救済を求めるなら、祈りを捧げる者達の元へ向かいなさい。その魂は光の中で安息を得るでしょう」
すっと指し示した先にあるのは、微かに見える集落の灯り。命の営み。
そこではきっと亡霊たちの生前の縁者が、今も彼らの為に祈っていることだろう。
その祈りは、さまよえる魂をあるべき場所へと導く光になるはずだ。
『光……』
『救済……』
怨嗟の中に混ざる声。亡霊たちがリーヴァルディの言葉に耳を傾けだした証だ。
このまま彼らが鎮まり安息を得ることができれば、それは幸いなのだろう。
しかし少女は知っている。この世には死してなお決して安らぐことのできない、強すぎる想いや願いがあることも。
「……救済を求めず、光に背を向け、憎悪に塗れた魂よ」
冥福を拒むほど強く激しい想いを持つ魂へと、リーヴァルディは再度呼びかけた。
行き場もなく彷徨うしかなかったその黒き願いに、彼女ならば道を示してやれる。
「彼の領主に報いを与える事を望むのならば、私と共に来なさい。その願い、この私が聞き届けましょう」
彼らの怨嗟も、呪詛も、憎悪も、全て受け止める覚悟が彼女にはある。
闇を切り裂く聖痕の輝きは、そんな意志を体現したものでもあった。
『報イヲ……』
『私達ヲ死ニ追イヤッタ……』
『アノ領主ニ……報イヲ……!!』
墓地に渦巻く怨嗟の叫びは、果たしてリーヴァルディの意志と共鳴した。
亡霊たちは自らの意志で聖痕に取り込まれていき、彼女の力になることを望む。
復讐を求める魂たちの激情の炎が、少女の瞳の奥に燃え上がった。
「……分かったわ。貴方達の想いは必ず、領主に叩きつけてみせる」
またひとつ、死者の想いを背負ったリーヴァルディは拳を固く握りしめ。
静けさを取り戻した墓場にて、敵が到来するのを待ち構えるのだった。
大成功
🔵🔵🔵
朱酉・逢真
狂気は心の病さぁ。
いいぜ、おめぇらの恨み辛み、幾らでも吐き出しな。
全部聞いてやる。心をむしばむ病毒は俺が食ってやる。
――そら、神様が来たよ。
俺は確かに神様で、しかも疫病神ってぇ奴だ。
けどよゥ、帳尻合わせのためにしてっから生き物が嫌いとかそう言うのはねぇんだ。
死んだやつを無為に苦しめる必要はあるめぇよ。
なんなら墓場に酒持ってってのォんびり聞いてやらぁ。
毒酒だからよそ様にゃ振る舞えねぇけどな。
おうおう、吐き出すだけ吐き出したら満足したか?
ならさっさと成仏しな。増えてくれねえと俺も仕事がなくなるからよ。
ひっひっひ。
「狂気は心の病さぁ。いいぜ、おめぇらの恨み辛み、幾らでも吐き出しな」
どっかりと墓地に座り込み、亡霊たちにそう呼びかけたのは朱酉・逢真(朱ノ鳥・f16930)。煙の出ないキセルを弄び、口元に慈愛とも皮肉ともつかぬ笑みを浮かべ。
「全部聞いてやる。心をむしばむ病毒は俺が食ってやる」
――そら、神様が来たよ、と。嘯く彼はなるほど真の神性であった。
もっともそれはヒトに幸をもたらす類の神ではなく、命を摘み取る神だが。
『何ダ……オマエ……?』
『ニンゲンジャ……ナイノカ……?』
「俺は確かに神様で、しかも疫病神ってぇ奴だ」
異質なる存在感に本能的な忌避を覚える亡霊たちに、毒と病の神は笑いかける。
逢真の任は帳尻合わせ。増えすぎた命を狩ることで、バランスを保つものだ。
決して欠かせぬ役割ではあるのだが、憎まれ役であるところは彼も承知している。
「けどよゥ、帳尻合わせのためにしてっから生き物が嫌いとかそう言うのはねぇんだ」
死んだやつを無為に苦しめる必要はあるめぇよ、と言って彼が懐から取り出したのは盃と酒瓶。腹の中を吐き出させたければ、生者にも死者にもこいつが何よりの薬だ。
「毒酒だからよそ様にゃ振る舞えねぇけどな」
澄んだ液体をとくとくと注いだ盃を墓の前に置いて、さァ呑みなと勧める逢真。
凶つ神からの思わぬ歓待に、亡霊たちは戸惑いながらもそれを受け容れる。
『死ンデカラ……酒ガ呑メルナンテ、ナ……』
――毒の神に"毒気を抜かれる"というのも、また奇妙な話だが。
酒精を帯びた亡霊たちは当初と比べれば幾らか落ち着いたようにも見える。
逢真はそんな様子を満足げに見つめながら、彼らの抱えた恨み辛み、生前の未練や領主への怨念などを、ひとつひとつ丹念に聞き取っていく。
神と言ってもそれ以上に特別なことは何もしていない。だが、逝くあてもなく彷徨っている魂にとっては"それ"が何よりも必要である事を、彼は知っていた。
「おうおう、吐き出すだけ吐き出したら満足したか?」
墓場に満ちていた怨嗟の声は、いつしかすっかり聞こえなくなっていた。
それに気付いた逢真はにっかりと笑い、亡霊を追い払うように手を振る。
「ならさっさと成仏しな。増えてくれねえと俺も仕事がなくなるからよ」
増えすぎても困るが、減りすぎても困る。彼の役目はどこまでも帳尻合わせ。
だからこそ彼は猟兵としてオブリビオンとも敵対している訳だし、死んだ者には次に生まれてくる者のために、席を開けて貰わなければならない。
『イイ……酒ダッタ……』
亡霊たちはどこか満足げに言葉を遺し、闇の中に溶けるように消えていく。
それを見届ける逢真の「ひっひっひ」という笑い声だけが、最後まで墓地に静かに響いていた。
成功
🔵🔵🔴
ナギ・ヌドゥー
咎人殺しを生業にしてるので怨嗟の声を聴くのは慣れています。
復讐者の恨み節……死ぬ間際の咎人の慟哭……
亡者の怨念もこの世界じゃさほど珍しくもない、
彼らの話を聞いてその魂を少しでも鎮めましょう。
ぼくの様な人間が綺麗ごと言っても説得力が無いので
まず正気を失った亡霊の呪いを全て受け止めます
【呪詛】を帯びた【オーラ防御】を纏いその暗き怨念と一体化し【第六感】で彼らの無念を読み取る
この世界が憎いですか、呪わしいですか?
その苦しみから解放される方法はたった一つしかない
皆さんを苦しめた領主を消し去るのです
あなた方はぼくにその怨念を全て預け、ただこう念じてくれればいい
『領主エシラ・リデルを殺してくれ』と
「咎人殺しを生業にしてるので、怨嗟の声を聴くのは慣れています」
そう言って墓地を訪れたのはナギ・ヌドゥー(殺戮遊戯・f21507)。
復讐者の恨み節や死ぬ間際の咎人の慟哭を数え切れぬほど聞いてきた彼は、怨念に満ちた死者の嘆きを耳にしても眉一つ動かさない。常人にとっては気が狂うほどの怨嗟も、彼にとっては風の音と大差なかった。
「亡者の怨念もこの世界じゃさほど珍しくもない、彼らの話を聞いてその魂を少しでも鎮めましょう」
――とは言ったものの、ナギの本性は殺戮者。死と暴力の気配を滲ませた自分が下手な綺麗ごとを言っても説得力が無いのは、本人がよくよく承知していた。
死者を相手に薄っぺらな口先だけの言葉を重ねても意味はない。必要なのはその怨嗟と向き合う覚悟だと考えた彼は、正気を失った亡霊の呪詛を正面から受け止めた。
『うぅぅああぁがあがぁぁぁぐぅぅああぁぁぁ……!!』
『憎イ、憎イ、憎イ、憎イ憎イ憎イ憎イ憎イ……!!』
地獄の窯の底から溢れ出したような怨嗟の声が、嵐のように響き渡る。
ナギはその全てに耳を傾けながら、身に帯びた呪詛のオーラを亡霊たちの暗き怨念と一体化させ、死者の魂と精神を同調させる。言うまでもなくそれは死者に取り憑かれかねない危険な行為だが、この程度で我を失うほどナギの精神は柔ではなかった。
『どうして……俺たちがこんな目に……』
『痛い……苦しい……辛い……』
『もっと生きていたかった……』
怨念との一体化によってより深く読み取れる、亡霊たちの無念。
怨嗟のノイズの中に紛れた彼らの切なる想いや願いがナギに流れ込んでくる。
「この世界が憎いですか、呪わしいですか?」
死者の想いに流されぬよう気を強く保ちながら、ナギは亡霊たちに問いかけた。
答えは聞くまでもないだろう。墓地に渦巻いている怨嗟と瘴気がその証だ。
「その苦しみから解放される方法はたった一つしかない。皆さんを苦しめた領主を消し去るのです」
この地にあふれる死の元凶である、ヴァンパイアの領主エシラ・リデル。
その寵愛する人形の動力のために、今も多くの人々が死に追いやられている。
彼女に報いを受けさせない限り、亡霊たちの怨嗟が尽きる日は来ないだろう。
「あなた方はぼくにその怨念を全て預け、ただこう念じてくれればいい。『領主エシラ・リデルを殺してくれ』と」
不当な死をもたらす者に死の報いを。それが咎人殺しであるナギの生業でもある。
ナギの魂からほとばしる強い殺戮の意志を感じ取った亡霊たちは、彼ならば自分たちの無念を晴らしてくれると確信した。
『頼ム……アノ領主ニ……エシラ・リデルニ……死ヲ!!』
墓場に満ちていた怨念がナギの元に収束し、その体内に取り込まれていく。
闇のようにドス黒い感情と願いの全てを預かって、咎人殺しはこくり、と頷く。
「任されました」
静かに、そして力強く。それは領主エシラ・リデルに対する死の宣告であった。
成功
🔵🔵🔴
第2章 集団戦
『ダペルトゥット・ドール』
|
POW : 感情暴走の呪詛
【対象の強い感情や欲求が増幅され続ける呪詛】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
SPD : お返しの呪詛
完全な脱力状態でユーベルコードを受けると、それを無効化して【普段は存在が隠蔽されている巨大な繰り手】から排出する。失敗すると被害は2倍。
WIZ : 人形化の呪詛
戦場で死亡あるいは気絶中の対象を【運搬及び自衛用の人形】に変えて操る。戦闘力は落ちる。24時間後解除される。
イラスト:霧島一樹
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
領内にある墓地を巡り、そこに渦巻く亡霊の怨念を浄化していった猟兵達。
その尽力の甲斐あって墓地はひとまずの落ち着きをみせ、彷徨う魂の多くは安らかな眠りについた。死者と墓は本来あるべき状態に戻ったのだ。
――だが、その平穏を脅かさんとする者達は、まだ生きている。
怨嗟の消えた墓地にやって来たのは、おぞましき呪詛の気配。
それを纏い現れたものはヒトの形はしていても、ヒトではない。
領主エシラ・リデルのお気に入りの玩具――ダペルトゥット・ドール。
死者の魂と怨念を糧とする、恐るべき呪殺人形の群れであった。
見えない糸に繰られるように動く人形達の挙動は、どこかぎこちない。
猟兵達が先んじて墓地を浄化したことで、どうやら動力が切れかけているようだ。
ここで彼らを破壊すれば、もう二度とこの地の死者が餌食にされることもない。
同時に屋敷にいる世間知らずの領主を、表に引きずり出す契機ともなるだろう。
補給を妨害する"敵"を認識したダペルトゥット・ドールの呪詛が強まる。
呪殺人形の呪いに侵されぬよう身構えながら、猟兵達は戦闘態勢を取った。
シエナ・リーレイ
■アドリブ絡み可
待ってたよ!とシエナは兄姉達に微笑みます。
漸く現れた自身より先に製造された兄姉達にシエナは親愛と好意と怨念に満ち溢れた存在としての[誘惑]を向けながら駆け寄ります
兄姉達が害意を露わにすればシエナは兄姉達が放つ呪詛により際限なく増幅された『親愛と好意』と『墓場で取り込んだ怨念の情動』に身を任せ、[怪力]と[暗殺]術を振るい始めます
あなたのお友達について教えて!とシエナは兄姉達にねだります。
運搬及び自衛用の人形を破壊された兄姉の本体を抱きかかえたシエナは『親愛と好意』を増幅させながら兄姉達のお友達を待ちます
尚、兄姉達が主の元とシエナを連れていこうとした場合は素直に応じるようです
「待ってたよ! とシエナは兄姉達に微笑みます」
墓場に現れた人形の群れを、真っ先に出迎えたのはシエナだった。
その腕に自らの器物「ダペルトゥットドール No.689」を抱え、自身より先に製造された兄姉達に駆け寄る彼女の顔には、親愛と好意に満ちた笑顔が浮かんでいた。
だが、友好的なシエナとは対照的に、兄姉の人形達は物言わぬまま害意を示す。
親愛と好意と共に末妹に満ちた怨念が、動力切れ寸前の彼らには餌と映ったのか。
あるいはヤドリガミとして魂を得るに至った彼女を、もはや同類と認識しなかったのかもしれない。
いずれにせよ――ダペルトゥット・ドールが放ったのは【感情暴走の呪詛】。
それは対象の強い感情や欲求を増幅し続け、やがては心を破壊する呪殺の力。
無防備なほど無邪気に彼らに近付いたシエナは、その呪詛をもろに受ける羽目になった。
「わたしと遊んでくれるのね! とシエナは感激します」
だが――シエナは止まらない。それどころか逆に先程より活き活きとしている。
同じ呪殺人形だから呪詛が効かないわけではない。ただ、彼女は始めから自分の感情に身を任せていた。ある意味では最初から暴走していたために変化が無いのだ。
その感情とは、漸く会えた兄姉達への親愛と好意――そして、この墓場で取り込んだ、ダペルトゥット・ドールを憎む亡者たちの夥しい怨念である。
「あなたのお友達について教えて! とシエナは兄姉達にねだります」
人形に飛びかかったシエナの動きは、小さな妹が年上の兄や姉にじゃれつく仕草そのもの。ただ普通と違うのは、彼女が怨念を糧にする呪殺人形だという一点のみ。
感情の暴走によってタガが外れた状態にある彼女は、人間離れした怪力で人形を抱きしめる。べきり、ごきりと嫌な音を立てて、人形の躯体が腰からへし折れた。
自分の力をセーブしない幼子というのは、傍からすれば小さな怪獣だ。巻き込まれないように遠ざかるダペルトゥット・ドールを、しかしシエナは逃さない。
「どうして逃げるの? とシエナは疑問を抱きながら首を傾げます」
軽快な身のこなしで相手に近付き、くるりと猫のように背後を取る。
その身に染みついた暗殺術をも無自覚に振るうシエナに、人形達は為す術もない。
ただでさえ動力となる怨念の不足でパフォーマンスが低下しているのだ。基本設計が同じならば尚の事、数多の怨念に満ち満ちた末娘に彼らが敵うはずがなかった。
無自覚なる殺戮者の手によって、人形達は次々と破壊され機能を停止していく。
「あら、もう疲れてしまったの? とシエナは兄姉達を抱き上げます」
バラバラになった残骸のあとに残っていたのは小さな人形。それこそがダペルトゥット・ドールの本体であり、これまで戦っていたのは運搬及び自衛用の傀儡だったのだ。
"お遊戯会"を終えたシエナは兄姉達の本体をいとおしげに抱えると、満足したように墓場のほうに引っ込んでいく。
「それなら、ここで一緒にあなたのお友達を待ちましょう。とシエナは待機します」
捕まえられた兄姉達に否も応もない。力の差はたった今見せつけられたばかりだ。
兄姉達が末妹に抱く感情は定かではないが、相変わらず呪詛は漏れ出している。
その呪いごと兄姉達を抱きかかえるシエナは際限なく『親愛と好意』を増幅させながら、兄姉達のお友達――領主エシラ・リデルの到来を待つことにしたのだった。
大成功
🔵🔵🔵
カタリナ・エスペランサ
動力は死者の怨念、その為に人を苦しめる……見逃す理由は無いね
確実に葬るとしよう
使うUCは【失楽の呪姫】。励起した魔神の魂で《早業+フェイント+破魔+だまし討ち》を強化、虚実織り交ぜた攻撃で隙を突くよ
これはあくまで自己強化だから敵UCの無効化・反撃の対象にはならないんじゃないかな
《第六感+戦闘知識》で敵の動きを《見切り》、隠蔽されている操り手の存在も看破。
呪詛は《破魔》の力で打ち消しつつ、あらゆる存在を終焉に塗り潰す《ハッキング+属性攻撃+範囲攻撃》の劫火の嵐で人形と操り手を纏めて攻撃だね
仮に敵が無効化・反撃を狙ってくるなら適宜《暗殺+スナイパー》の黒雷で撃ち抜いて対応タイミングを狂わせようか
シャルロット・クリスティア
……悪趣味な。
ただ己の退屈を紛らわすために、これらを動かすだけの為に、一体どれだけの尊厳が踏みにじられたことか。
躊躇はありません。
ただ、仕留めるのみです。
反射能力を持っているようですが、対処は単純です。複数対複数であれば、やりようはいくらでもある。
『対応される前に打ち込めばいい』。
こちらに注意を向けていない敵を優先して照準、
弾速の早い迅雷弾の早業で仕留める。
こちらを警戒している相手は、攻撃にだけ気を付けていればいい。
味方の隙を潰し、敵の隙を衝く。集団戦の基本です。
相手の動きが悪ければ、そう難しい事でもないでしょう。
弾速の早い迅雷弾をチョイスしたうえで、
「……悪趣味な。ただ己の退屈を紛らわすために、これらを動かすだけの為に、一体どれだけの尊厳が踏みにじられたことか」
おぞましい呪いを帯びた人形の群れを前にして、シャルロットは静かに呟く。
魔導銃のトリガーにかけた指先が、微かに震えるほどの怒りを胸に秘めて。
「動力は死者の怨念、その為に人を苦しめる……見逃す理由は無いね」
その隣でゆっくりと頷くのは、右手に劫火を、左手に黒雷を宿したカタリナ。
利己目的のために死者を糧にする人形に、格別の誠意も嫌悪も必要ない。
ただこの地より排除するのみだと、普段どおりの振る舞いに戻って。
「躊躇はありません。ただ、仕留めるのみです」
「確実に葬るとしよう」
シャルロットが魔導銃「マギテック・マシンガン」を構えて狙撃体制を取るのと同時、カタリナは双翼を広げて空中からダペルトゥット・ドールを強襲する。
ヴァンパイアに愛でられし呪殺人形の群れは己に向けられた殺気を感じ取ると、だらんと四肢を放り出して【お返しの呪詛】の構えを取った。
「反射能力を持っているようですが、対処は単純です」
その構えが人形遣いのオペラツィオン・マカブルに類似したユーベルコードだと看破したシャルロットは、照準を合わせたまま上空のカタリナに目配せを送る。
歴戦の猟兵同士なら戦場の意思疎通はそれだけで十分。彼女の狙いを察したカタリナは【失楽の呪姫】の権能――守護を貫く黒雷と、終焉を招く劫火を解き放つ。
「仕方ないなぁ――アタシの本気、ちょっとだけ見せてあげる」
その身に宿る魔神の魂を励起させ、代償と引き換えに自己を強化するユーベルコード。これなら人形の呪詛で無効化されないのではないかという目算もあったが、仲間との連携を前提とするならば戦法の幅はさらに広がる。
上空より降り注ぐ攻撃を無効化するために、脱力状態となる人形たち。
だが、彼らを襲うはずだった劫火と黒雷は、途中ですっと逸れていった。
「―――???」
なぜ避けてもいないのに命中しなかったのかと困惑するダペルトゥット・ドール。
それがカタリナのフェイントだと理解する間もなく、一発の銃弾が人形を貫く。
空間に青白い稲光の軌跡を残す、その銃弾の名は――【術式刻印弾・迅雷】。
「見えるならば、届きます。届くならば、当たります……!」
魔導銃の射手シャルロットは、すぐさま次なる標的へと狙いを定める。
呪殺人形の呪いに対する彼女の対抗策は『対応される前に打ち込めばいい』というシンプルなもの。こちらに注意を向けていない敵を狙い、弾速の早い迅雷弾の狙撃で仕留める。ただそれだけでタイミングのシビアな【お返しの呪詛】は封殺できる。
それが可能となるのは、注意のばらけやすい複数対複数の戦いだからこそだ。
「味方の隙を潰し、敵の隙を衝く。集団戦の基本です」
「いいね、狙撃手がいるとこっちもやりやすくて助かるよ!」
迅雷弾の狙撃に反応した人形達がシャルロットを警戒すれば、上空からカタリナが不意打ちを仕掛ける。今度は狙撃の隙を作るためのフェイントではない――正真正銘、魔を破る魔神による狙いすました黒雷の矢が、無防備な人形の頭を撃ち抜いた。
「―――!!!」
物言わず、表情も変わらぬ人形は、木偶のようにバタバタと崩れ落ちていく。
もともと動力切れが間近だった彼らの動きはぎこちなく、反応も鈍い。ふたりの猟兵はその弱みを的確に突いて、虚実織り交ぜた連携で敵を翻弄する。
「あなた達に逃げ場はありません」
「ここで一体残らず終わらせるよ」
遠距離からは迅雷の狙撃が、上空からは劫火と黒雷が。どちらに意識を向けても、その瞬間に死角となる方から攻撃が飛んでくる。人形達からすれば悪夢のような状況だろう。
「……見えた」
敵を追い詰めながら、カタリナの第六感は隠蔽されていた存在までも看破する。
見えない糸で人形を操る、巨大な繰り手。それがダペルトゥット・ドールにとって重要なものだと見切った彼女は、大きく翼を広げて劫火の力を溜めはじめる。
大技の来る予感に、人形達は迎え討つ構えを取るが――シャルロットの狙撃がそれを許さない。電磁加速された術式弾が、確実な一射一殺で標的を仕留めていく。
「今です」
「ありがとう」
互いの応答は短く。そして解き放たれしはあらゆる存在を終焉に塗り潰す劫火の嵐。
呪詛さえも灼き祓う破魔の力が、人形とその操り手を纏めて焼き尽くしていく。
――天をも焦がすような紅蓮の嵐が去ったとき、そこには何も残っていなかった。
人形の残骸も、灰の一欠片すら。呪詛の痕跡さえ残せずに呪殺人形は葬られた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
スピレイル・ナトゥア
死人の魂を餌にするだなんて悪趣味なお人形さんたちですね
恨むなら、あなたたちをそんなふうに作ったひとたちを恨んでください
この世界の平和のため、あなたたちを倒させてもらいます!
この状況で強い感情や欲求を増幅しても『ダペルトゥット・ドールさんへの敵意』や『人々を救いたい想い』が増幅されるだけだと思うのですが、みなさんは違うのでしょうか?
相手の呪詛を【破魔】で軽減しつつ、精霊印の突撃銃で他の猟兵のみんなを【援護射撃】します
あなたたちのような物騒な玩具は、持ち主に代わって私たちが廃棄処分してあげます
私のユーベルコードをあなたたち墓暴きの棺桶代わりに、二度と修理できないように粉々に砕いてさしあげましょう!
十文字・武
<アドリブ連携詠唱省略ok>
死者の怨念で動く人形。
こんなモンの為にあの人等は苦しんでたか。
悪趣味ここに極まれりって奴だな。
集団戦ならこいつが一番だ
UC【悪喰魔狼と笛吹き男】起動。
周辺、墓地に立つ墓石からから飢えた魔獣の顎を呼び出し、喰らい付かせろ。
飛び込み斬り掛かりながら集団の列を乱し、死角から顎に喰らわせ多方面からの同時攻撃【二回攻撃・だまし討ち】
彼らの怨念が動力源なんだろ?退魔の剣にて呪詛を切裂け【なぎ払い・串刺し】
玩具なら玩具らしく、玩具箱で眠ってな!
「死者の怨念で動く人形。こんなモンの為にあの人等は苦しんでたか」
「死人の魂を餌にするだなんて、悪趣味なお人形さんたちですね」
押し寄せる呪殺人形を前にして、武とスピレイルが抱いた感情は異口同音。
まだはっきりと耳に残っている、亡霊たちの怨嗟の声を思い出す。その元凶がこの人形達であるというのなら、湧き上がる激情を抑えることは難しい。
「恨むなら、あなたたちをそんなふうに作ったひとたちを恨んでください。この世界の平和のため、あなたたちを倒させてもらいます!」
凛として力強い宣言と共に「精霊印の突撃銃」を構えるスピレイル。
同時に武も妖刀と退魔刀を抜き放ち、墓地に迫る人形の群れと相対する。
対するダペルトゥット・ドールは一切の感情を示さぬまま、周囲に呪詛を撒き散らし続ける。それは生者の心を狂わせる、おぞましき【感情暴走の呪詛】だ。
この呪いによって、これまでにも多くの人間が精神の均衡を崩し、破滅と死に追いやられてきたのだ。
――しかし、そんな呪詛を受けてもなお、猟兵達はまるで動じていない。
「この状況で強い感情や欲求を増幅しても『ダペルトゥット・ドールさんへの敵意』や『人々を救いたい想い』が増幅されるだけだと思うのですが」
他の猟兵がどうなのかは分からないが、少なくともスピレイルにとってはそう。
胸の中で激しさを増した感情は闘志を高める理由になっても、心を乱す理由にはならない。破魔の力を秘めた彼女の魂は、人形の呪詛などに惑わされはしなかった。
「約束したんだよ、諸悪の根源はオレ達が必ず討ってやるってな。ここでオレが我を失うわけにはいかないだろ?」
武もまた、あらゆる魔を祓う退魔刀【死神殺し】にて呪詛を斬り裂くと、力強い笑みを浮かべながらユーベルコードの詠唱を紡ぐ。亡霊たちとの誓いを果たすために、こんなところで立ち止まってはいられない。
「集団戦ならこいつが一番だ――飢えたる餓鬼よ! 暴食たる闇森の獣よ! 終末の宴に応じ顕れよ! 【ジェイルファングビースト】ォッ!」
瞬間、墓地に立つ墓石から呼び出されたのは血に飢えた無数の狼の顎。
腕に、脚に、胴に、頸に、所構わず喰らいつくそれが、人形達の動きを封じる。
その機を逃さず武は敵陣に飛び込むと、怒涛の勢いで斬り掛かった。
「彼らの怨念が動力源なんだろ?」
ならば退魔の剣にて呪詛を断つ。武の斬撃によって呪いの力を失った人形は糸が切れたようにその場に倒れ、二度と動き出すことはない。同時に背後からは魔獣の顎が牙を剥き、武に気を取られた人形の頭を容赦なく噛み砕く。
「援護します!」
後方からはスピレイルが彼を支援するために、精霊印の突撃銃のトリガーを引く。
放たれた弾丸には火の精霊の力が宿り、真っ赤な弾道を描きながら、武の背後を取ろうとした人形の背中を撃ち抜いた。
正面からは退魔刀、死角からは魔獣の顎、後方からは精霊の銃弾。
多方面からの同時攻撃に、ダペルトゥット・ドールは為す術がない。
もともと呪詛頼りの能力に偏っているうえ、動力も尽きかけているとあっては、猟兵達の動きについていけないのも必然であった。
「あなたたちのような物騒な玩具は、持ち主に代わって私たちが廃棄処分してあげます」
「玩具なら玩具らしく、玩具箱で眠ってな!」
裂帛の気合いと共に、隊列の乱れた人形の群れを圧倒していくスピレイルと武。
このまま一気に敵を一掃すべく、魔獣憑きの騎士は再び【ジェイルファング・ビースト】を発動し、精霊の巫女姫は【グラウンドジェイル】を唱えた。
土の精霊から生成された檻が大地から出現し、追い詰められた敵を閉じ込める。
さらに、その檻から新たな魔獣の顎が現れ、檻の中の人形に猛然と喰らいつく。
「そいつらはいつも腹を空かせてる、一度喰らいついたらもう二度と放さないぜ」
「この檻をあなたたち墓暴きの棺桶代わりに、二度と修理できないように粉々に砕いてさしあげましょう!」
完全に拘束されたダペルトゥット・ドールに、ふたりの猟兵は宣告する。
数多の生命と魂を喰らい呪ってきた人形達の終焉は、今、ここに――。
「グラウンドジェイル……パニッシュメント!」
スピレイルの言葉と同時に土の檻は圧縮され、内部の敵を粉々に押し潰す。
もうもうと上がる土煙の中、そこには砕け散った人形の破片だけが残されていた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
朱酉・逢真
よゥ、おまえらが噂の呪い人形ってやつかィ。
いいところに来たなァ、ちょうど病をたらふく食ったところだ。
戦ってねぇから神威も溜まってる一方。
ここでひとつ、てめえらにぶちまけてやろうじゃねぇか、ええ?
人の子が想像する、ありとあらゆる毒をガスにして吹きかけてやる。
毒ってなァ生き物を害するもののこった。酸やアルカリからマイコトキシン、言っちまえば呪詛だって毒の内さァ。
てめえらがどんな素材で出来てようが関係ねェ。
残った魂まで腐れ爛れて崩れ落ちな。
大丈夫、腐り落ちてもかわいいよ。
「よゥ、おまえらが噂の呪い人形ってやつかィ」
薄い笑みを口元に貼り付けたまま、ひらりと人形に手を振ったのは逢真。
呪殺人形ダペルトゥット・ドール。数多の人々を破滅させてきた魔のヒトガタ。
――そんなもの、彼にとってはまだまだ赤子のようなものに過ぎない。
「いいところに来たなァ、ちょうど病をたらふく食ったところだ。戦ってねぇから神威も溜まってる一方」
それは呪いを超える厄災。命の帳尻を合わせるもの。
毒と病を司りし凶星は、自らに課した軛を僅かに緩め。
「ここでひとつ、てめえらにぶちまけてやろうじゃねぇか、ええ?」
瞬間、凝縮されていた神威の瘴気が、嵐となって戦場に吹き荒れた。
逢真の【エレメンタル・ファンタジア】が顕現させたのは毒の風。
それも人の子が想像する、ありとあらゆる毒をガスにして吹きかけたのだ。
「毒ってなァ生き物を害するもののこった。酸やアルカリからマイコトキシン、言っちまえば呪詛だって毒の内さァ」
当然それは、血と肉を持った生物だけを害するものに限らない。神が司る"毒"の中には、無機物を腐食・分解・融解するような劇物も含まれている。
「―――!?」
毒の風を浴びせられた人形達の躰が、ぐずぐずと表面から爛れていく。
気付いたときには、もう遅い。神の猛毒はまたたく間に獲物の芯まで侵蝕する。
最初に肌が溶けて、髪が抜け落ち、関節がぼろりと外れて、剥き出しになった"中身"まで、腐って果てて朽ちていく。
「てめえらがどんな素材で出来てようが関係ねェ」
残った魂まで腐れ爛れて崩れ落ちな――常人であれば目を覆いたくなるような惨状を前にして、逢真は変わらぬ笑みを浮かべたまま人形達にそう告げた。
この吹き荒れる猛毒の嵐さえ止めれば助かるはずだと彼に襲い掛かる人形もいたが、毒の源である逢真に近付く愚行は自らの"死"を早める結果になるだけだった。
愛らしく整えられていた呪殺人形は、見るも無惨な姿と成り果て、力尽きていく。
「大丈夫、腐り落ちてもかわいいよ」
そんな人形達の末路を、最期まで微笑みながら看取るのもまた、逢真だった。
彼にとってオブリビオンは敵だ。さりとてそれは憎んでいる訳ではない。
亡霊達にしたのと同じように、人形達の死も、彼は穏やかに見届ける。
――毒の風が止み、戦場に静寂が訪れる。
あとには朽ち果てた人形と朱色の羽根だけが残っていた。
大成功
🔵🔵🔵
ヴェル・ラルフ
凝った想いを、忘れずに
約束は、必ず守る。
ヒトガタをしていても、惑わされない
その見た目はまやかし
淡々と、終止符を
得物はナイフ
早業による串刺しはお手のもの
動きも鈍っているようだしね
更に足技を織り混ぜながら近接攻撃で暗殺技を繰り出し猛追
人形にも関節技は効くのかな
腕や足を捻りあげて動きを封じたい
この入れ物が、あるから
囚われてしまった魂の哀しみだけが残される
ヒトガタは灰に
【ブレイズフレイム】
先刻と違って、仄暗い地獄の業火に焼いてくれよう
さよなら虚ろな入れ物
例え至近距離で敵のUCを喰らっても、己の身は衣服の火炎耐性である程度保護しながら耐え抜いて
燃え尽きるまで、決して離さない
★アドリブ・連携歓迎
(ヒトガタをしていても、惑わされない)
手にしたナイフよりもなお鋭き琥珀色の眼光が、人形達を射抜く。
どんなに愛らしく見た目を整えられていても、それはまやかし。
隠しきれぬ呪詛と染み付いた怨念が、ソレの本質を物語っている。
「約束は、必ず守る」
ただ淡々と、終止符を――凝った想いを忘れずに、ヴェルはたんと地を蹴った。
呪殺人形ダペルトゥット・ドールは、言葉を発することなくヴェルに襲い掛かる。
それはただヒトを呪い殺すモノ。生者であれば呪い、死者であれば魂を喰らう。
ぎこちない動きで掴みかかる人形の腕を、ヴェルはひらりと躱しながら反撃する。
「だいぶ動きも鈍ってるようだね」
一瞬の早業で胸に突き立てられるナイフ。ヒトであれば心臓を貫く一突き。
だが人形がこれだけでは止まらないのは彼も承知している。ぐらりと怯ませた隙を突いて、間髪入れずに繰り出された蹴撃が、人形の頭部を蹴り砕いた。
「―――!!」
「遅い」
身に染み付いた暗殺の技で、目にも留まらぬ猛追を仕掛けるヴェル。あくまでも呪殺が本領であるダペルトゥット・ドールには、その動きに対応する術が無い。
巧みなナイフ捌きと体術を織り交ぜた近接戦闘で敵を圧倒しながら、少年はふと隙を見せた一体の人形の腕を掴み、そのままぐいと捻り上げた。
「人形にも関節技は効くのかな」
確証はないままに繰り出した極技。しかしヒトガタに痛みを感じる機能はないが、ヒトを模しているからには構造上の限界がある。関節部をがっちりと極めてしまえば、いかに人形でもそれ以上動くことはできなかった。
「この入れ物が、あるから。囚われてしまった魂の哀しみだけが残される」
人形の動きを封じたまま、静かに胸の内の激情をほとばしらせるヴェル。
その想いは先刻とは違い、仄暗い地獄の業火となって戦場に現出する。
「ヒトガタは灰に」
浄化のためではない、焼き尽くすための【ブレイズフレイム】が人形を包む。
身を焼く炎の熱から逃れようと人形は暴れるが、ヴェルの腕はびくともしない。
相手が完全に灰になるまで、このまま関節を極め続ける構えだ。
「―――!!!」
炎上するダペルトゥット・ドールが苦し紛れに放ったのは【感情暴走の呪詛】。
相手の感情や欲求を際限なく増幅することで破滅へと導く呪い――拘束中のヴェルはそれを躱すこともできずに、至近距離で喰らうことになる。
「……っ!」
まるで火に油を注がれたように、内に秘めた激情がさらに激しく燃え上がる。
彼自身にも制御不能なほど膨れ上がった感情は【ブレイズフレイム】にも影響し、暴走した炎は我が身をも焼き焦がしはじめた。
――それでも、ヴェルは絶対に手を離さない。
「燃え尽きるまで、決して離さない」
たとえこの身が灼けようとも、衣服に施した耐火性を頼りに耐え抜いて。薪を焚べられるならば上等とばかりに、噴出するがままに地獄の業火を燃え広がらせる。
もはや誰にも止めることはできない。荒れ狂う業火は巨大な炎の嵐となって戦場を渦巻き、ヴェルが捕らえた人形のみならず、周囲の人形までも諸共に焼き払った。
「さよなら虚ろな入れ物」
地上に現出した火炎地獄がようやく収まった時、炎の中心に立っていたのは火傷を負ったヴェルただ一人。それ以外のヒトガタは全て灰となり消え去っていた。
大成功
🔵🔵🔵
アリソン・リンドベルイ
【WIZ 庭園守護する蜂軍団】
貴方たちは、命ぜられるがままに動く人形。ええ、ええ。私個人としては恨みも憎しみもないけれど…もう、終わらせると約束しましたから…っ!
緑指の杖を前に構えて、『オーラ防御、呪詛耐性5』で呪詛を防ぎ、『庭園守護する蜂軍団、破魔』で、人形に応戦します。 墓石や遺体が荒らされそうなら、『かばう、覚悟』で割り込んで止めます。
…本当は、私も怒りたいのかもしれません。けれど、当事者ではない私が怒るのは、憤って貴方たちにぶつけるのは…筋違いだと思う。 でも、もし感情を溢れさせてしまうのなら。それは、問いです。…なんで、どうして。理不尽に、不条理に、幸福より不幸が多いのですか…っ!
「貴方たちは、命ぜられるがままに動く人形」
生命力に満ちた緑指の杖を構え、アリソンはダペルトゥット・ドールの前に立つ。
ソレがあくまでも道具であり、死者の魂と怨念を糧にするのも、呪詛で生者を呪い殺すのも、「そうあるように」作られたからに過ぎないのだと彼女は理解していた。
「ええ、ええ。私個人としては恨みも憎しみもないけれど……もう、終わらせると約束しましたから……っ!」
この墓場に眠る亡者たちを、この地で落とされた最後の犠牲にする。
アリソンが戦場に立つ理由は、それだけでも十分すぎるものだった。
「この墓場に、貴方たちはお呼びじゃないんだから……っ!」
人形達が放つ呪詛を杖から発する生命力のオーラで防ぎながら、アリソンが召喚したのは【庭園守護する蜂軍団】。敵意や悪意、害意に反応する巨大なハナバチの群れが、ブンブンと羽音を立てて人形の群れに飛び掛かる。
「―――!!」
動力の不足により動きの鈍っている人形達に、それから逃れる術はない。蜂の針に刺し貫かれ、穴だらけとなった傀儡の中から、ぽとりと小さな人形が落っこちた。
「あれは……」
一目で感じた禍々しい気配から、アリソンはそれが呪殺人形の本体だと看破する。
自力では動くことのできないダペルトゥット・ドールは、死者の骸を運搬及び自衛用の人形に変えて操ることで、自由に動ける手足を得ていたのだ。
そして傀儡を失った人形は、新たな傀儡を求めて【人形化の呪詛】を発動する。
「……駄目っ!」
ソレの狙いが墓に眠る遺体だと悟ったアリソンは、咄嗟に身を呈して墓を庇った。
生者である彼女が人形になることは無いが、それでも濃縮された呪いの塊だ。心魂を蝕まれるような不快な感覚を、少女はぎゅっと目をつむって懸命に耐える。
(……本当は、私も怒りたいのかもしれません)
黒く渦巻く呪詛の中で、アリソンは己の心の奥底にある想いと向き合う。
恨みはない、憎しみもない。しかし燻り続ける薪のような熱さが胸の奥にある。
(けれど、当事者ではない私が怒るのは、憤って貴方たちにぶつけるのは……筋違いだと思う)
だから自分はあくまで「約束を果たすため」に戦うのだと、感情を抑えこんで。
しかし人形の呪詛によって、燻っていた想いは暴走し、溢れ出してしまう。
「……なんで、どうして。理不尽に、不条理に、幸福より不幸が多いのですか……っ!」
ばっと杖を振るって呪詛を払ったアリソンの口から溢れたもの。それは問い。
どうして彼らは死ななければならなかったのか。なぜこんな人形は作られたのか。
あまりにも多くの悲劇に満ちたこの世界そのものに対する、それは怒りだった。
アリソンの問いに答えられるものはいない――けれども応えるものはいた。
召喚者の想いに呼応した庭園守護する蜂軍団は、いっそう激しく羽音を響かせながら針を振りかざし、ダペルトゥット・ドールの本体に襲い掛かる。
遺体の人形化に失敗した無防備な呪殺人形達は、為す術なく無数の針に貫かれ、崩れ落ちるように骸の海へ還っていった。
大成功
🔵🔵🔵
雛菊・璃奈
呪いが欲しければわたしを倒すと良い…。わたし達は呪力の塊みたいなものだし…やられてあげるつもりは無いけどね…。
これ以上この地は荒らさせない…。
ラン達には【暗器】や【居合】による後方支援をお願い…。
「わたしたちはもともと人形!」
「人形化なんてきかない!」
「同じ人形でもあなたたちはダメ!」
わたしは【呪詛】で強化した【unlimited】を敵集団に放ちつつ、同時に黒桜の呪力解放【呪詛、衝撃波、なぎ払い】で一気に集団ごと吹き飛ばしていくよ…。
魔剣と呪力を受けた生き残りがいれば、凶太刀の高速化で一気に接近し、神太刀との二刀で一気にバラバラにして殲滅…。
悪いけど、一体も逃がすつもりはないよ…。
「呪いが欲しければわたしを倒すと良い……。わたし達は呪力の塊みたいなものだし……やられてあげるつもりは無いけどね……」
人形達の前でそう宣言した璃奈は、自らの周囲に無数の魔剣や妖刀を顕現させる。
魔剣の巫女の力によって生み出された、呪われし剣の現身。動力となる怨念が尽きかけているダペルトゥット・ドールからすれば、それはまさに"ご馳走"だろう。
その狙いどおりに、周辺にいた人形は蜜に群がる虫のように彼女に殺到してきた。
「これ以上この地は荒らさせない……」
鎮め清めたばかりの墓場と亡霊の安寧を守るために、璃奈は呪槍・黒桜を構える。
顕現させた魔剣達には自らの呪力を付与してさらに強化。呪詛に惹かれて集まってきた人形が射程内に纏まったタイミングを見計らって、その全てを一斉に解き放つ。
「呪われし剣達……わたしに、力を……『unlimited curse blades』……!!」
同時に振るうは黒桜の呪力解放。放出された黒い呪力の桜吹雪は、呪われし剣の一斉射とひとつに束ねられ、全てを呑み込む巨大な呪力の大嵐となった。
いかに呪殺人形が怨念を糧にするとはいえ、それには許容量というものがある。一個人のレベルを遥かに上回った膨大な呪詛を、受け止めきれるはずがない。
「―――!!!?」
呪殺人形の群れは愕然としたように立ち尽くしたまま大嵐に吹き飛ばされ、傀儡としていた人形も、本体の人形も、諸共にすべて呪力に侵され朽ち果てていった。
「―――!」
しかし魔剣と呪力の嵐が過ぎた後には、僅かながら原型を保った生き残りもいる。
運搬及び自衛用の人形を失い、身動きの取れない無防備な本体を晒した呪殺人形は、新たな傀儡を求めて【人形化の呪詛】を放つ。
だが、人形の呪いが墓場の遺体を新たな人形に変える前に、璃奈は妖刀・九尾乃凶太刀を抜き放つと一瞬のうちに彼我の間合いを詰める。
「遺体を人形になんてさせない……」
凶太刀の呪力によって音速を超える疾さを得た魔剣の巫女は、もう一振りの妖刀・九尾乃神太刀との二刀による超高速の斬撃で、人形をバラバラに斬り捨てた。
妖刀を振るう璃奈の後方では、3人のメイド人形が彼女の支援に徹している。
討ち漏らした敵がいないか確認し、まだ原型を保っている物があればトドメを刺す。相手は同じ人形だが――いや、だからこそ彼女達の士気と憤りは激しかった。
「わたしたちはもともと人形!」
「人形化なんてきかない!」
「同じ人形でもあなたたちはダメ!」
人に仕える人形と、人を呪い殺す人形とでは、どうあっても相容れる筈はない。
メイド達は人形化の呪詛を払いのけながら、仕込み箒と暗器を振るって呪殺人形を破壊していく。
「悪いけど、一体も逃がすつもりはないよ……」
もう二度と死者が脅かされないように。そして全ての元凶を引きずり出すために。
璃奈は妖刀を振るいながら縦横無尽に戦場を駆け、残る人形を殲滅していった。
大成功
🔵🔵🔵
トリテレイア・ゼロナイン
あの人形達が領主がこの地を蝕む手段の主たる一つ
死者の方々との約束を果たす為にも一つ残らず破壊しなくてはなりませんね
精神干渉の呪詛…正道の騎士や戦士であれば精神統一で対処したのでしょうが…
別のアプローチで対処しましょう
私は紛い物ですので(苦笑のような声)
UC発動 敵に類似した能力・存在の味方への誤攻撃は厳に注意
墓地の保護を第二目標としつつ戦闘開始
重傷での行動阻害は人形である為困難と推測
四肢の破壊か完全粉砕を遂行
●怪力での剣で解体し大盾で●なぎ払い粉砕しつつ敵の残骸を●情報収集
敵の頭脳・核となる場所を●見切れたら効率化の為そちらに攻撃を切り替え
装備の損耗を抑える為、破壊した人形を鈍器として戦闘続行
「あの人形達が領主がこの地を蝕む手段の主たる一つ。死者の方々との約束を果たす為にも一つ残らず破壊しなくてはなりませんね」
墓場を脅かす呪殺人形の群れを前にして、トリテレイアは儀礼剣を抜き放つ。
暗闇に浮かぶ頭部のセンサー光には、この地に安寧をもたらす強い意志が宿っている。
対する人形も動力が不足した現状では、猟兵に敵わないことを察しつつある。
それでも彼らは呪殺人形としての本能のままに【感情暴走の呪詛】を解き放つ。
その呪いは生物に限らず、人形や機械の精神すら蝕むほどに強烈であった。
「精神干渉の呪詛……正道の騎士や戦士であれば精神統一で対処したのでしょうが……別のアプローチで対処しましょう」
人形の呪いに対抗するために、トリテレイアは自らの感情を一時的に封印する。
【機械騎士は「人」ではない】――ゆえに人には出来ないことが、感情や欲求を消し去り、純粋な機械として戦闘のみに専念することができる。
「私は紛い物ですので」
苦笑のような声を最後にして、機械騎士の声音から一切の感情が抜け落ちる。
ベルセルクトリガー、限定励起――ここから始まるのは一機のウォーマシンによる、破壊と殲滅であった。
「敵に類似した能力・存在の味方への誤攻撃は厳に注意。墓地の保護を第二目標に」
赤く染まったセンサー光が戦場を見回し、戦闘中の敵味方の識別と優先目標の設定を行う。第一目標は言わずもがな、呪殺人形ダペルトゥット・ドールの殲滅だ。
「戦闘開始」
機械的にそう宣言したトリテレイアは、脚部スラスターを吹かし敵陣に猛進する。
感情を捨て去ることで呪詛を無効化した時点で、敵に此方に対する有効な攻撃手段は無い。彼が考えるのはいかに効率よく敵を殲滅するか、それのみであった。
「重傷での行動阻害は人形である為困難と推測。四肢の破壊か完全粉砕を遂行」
機械的なモーションで振り下ろされる儀礼剣。ウォーマシンの怪力にものを言わせた斬撃が、ダペルトゥット・ドールの四肢をバラバラに解体する。
追撃とばかりに叩きつけられるのは、腕に装着された重質量大型シールド。その凄まじい大きさと重量を打撃武器として扱えば、人形の躯体は粉々に砕け散った。
「第一目標のデータを更新、攻撃プログラムを効率化」
さらにトリテレイアは破壊した残骸から情報を収集し、自らの戦闘を最適化。
呪詛を発生させる核らしきものを見つけると、その一点に攻撃を集中させる。
人を呪うために作られた人形と、戦うために作られた機械。互いがその製造目的に従う限り両者の戦力差は歴然であり、もはやそれは"戦い"にすらならない。
「装備の損耗を抑える為、武装の変更を行う」
トリテレイアは呪殺人形の核に剣を突き立てると、機能を停止させたその躯体を鷲掴みにして、まだ動いている人形に力任せに叩きつける。
少ない損傷で敵を仕留めれば、その人形は鈍器として利用できると判断したのだ。強度には少々難があるが、「予備」はいくらでも戦場に転がっている。
最小限のコストで最大限の戦果を――徹底的な効率化を突き詰めていく彼の戦いぶりは、どこまでも騎士から程遠いものとなっていく。
情を封じたがゆえに、機械としての容赦のなさが剥き出しとなったトリテレイア。
それでも彼は、死者の眠る墓場には一切被害が及ばないように立ち回っている。
墓石や墓標を利用すれば、倒した人形よりずっと効率のいい武器になるだろうが、彼は頑なに「第二目標」である墓地の保護を貫き通す。
――たとえ純粋な機械になろうとも、騎士は己の使命と約束だけは、決して見失いはしないのだ。
大成功
🔵🔵🔵
フレミア・レイブラッド
悪いけど、呪いを振り撒く貴方達に手加減はしないわ。さっさと破壊してあげる。我儘領主に無念を叩き込んであげるって約束もあるしね。
【ブラッディ・フォール】で「蘇る黒き焔の魔竜」の「黒焔魔竜・ヴェログルス」の力を使用(ヴェログルスの角や翼、尻尾等が付いた姿に変化)。
一章でヴィラン隊に作らせた罠を活用しつつ、【生ヲ貪リ喰ラウ黒キ焔蛇】を放って敵集団を可能な限り一か所に追い込み、【禍ツ黒焔ノ息吹】で一気に焼き尽くして一網打尽にするわ!
一人残らず焼き尽くしてあげる…その呪いごと塵になりなさい!
後は残った敵を黒焔を纏った魔槍【怪力、早業、属性攻撃】で斬り裂き、穿ち、容赦なく叩き潰してあげる!
「悪いけど、呪いを振り撒く貴方達に手加減はしないわ」
呪殺人形と対峙したフレミアは、その宣言に違わず初手でユーベルコードを発動する。
過去に倒したオブリビオンの能力をその身に宿す【ブラッディ・フォール】――顕現するのはアルダワの迷宮に潜みし黒焔魔竜・ヴェログルスの力。
「さっさと破壊してあげる。我儘領主に無念を叩き込んであげるって約束もあるしね」
漆黒の焔をその身に纏い、魔竜の角や翼、尻尾が生えた半竜半人の姿に変化した吸血姫は、一切の容赦なくその力を全力で解き放った。
「―――!?」
フレミアの元から人形の群れに襲い掛かったのは【生ヲ貪リ喰ラウ黒キ焔蛇】の群れ。闇と炎から作られた禍々しき黒焔の蛇が、鎌首をもたげて獲物に喰らいつく。
一度その牙にかかったが最後、蛇の焔は猛毒のように徐々に体を蝕んでいく。たとえ生物でなかろうとそこに例外はなく、人形達は次々と黒焔に焦がされ朽ち果てていく。
彼らに恐怖という感情があるかは定かではないが、少なくとも自己保全の本能はあるのだろう。倒れた仲間を見た人形達は、蛇に噛まれないよう我先にと逃げていく。
「掛かったわね」
――だが、人形達が黒焔の蛇から逃れようと後退した先は、フレミアが意図した通りの場所だった。この墓場を浄化する時に眷属のヴィラン隊に仕掛けさせておいたトラップ地帯、そこに彼女は敵を誘導したのだ。
一歩足を踏み入れた瞬間、巧妙に隠された数々のブービートラップが作動し、人形達を陥れる。それは殺傷力という面においては心許ないが、足止めとしては十分な効果を発揮するものだ。
「あの子達、いい仕事をしてくれたわね」
じたばたと無様にもがいている人形達を見て、フレミアは薄く笑みを浮かべる。
黒焔の蛇に追い立てられ、罠にかかった呪殺人形。敵を纏めて一網打尽にするのにこれ以上のシチュエーションは無いだろう。この機を逃さずにフレミアはヴェログルスの力を最大火力まで高めると、【禍ツ黒焔ノ息吹】を解き放つ。
「一人残らず焼き尽くしてあげる……その呪いごと塵になりなさい!」
禍々しく燃え盛る黒焔の息吹が、トラップ地帯ごと呪殺人形の群れを焼き払う。
地獄の業火もかくやというその圧倒的な熱量は、人形達の呪詛も魂もすべて焼き焦がし、灰の一欠片も残さぬように、徹底的に燃やし尽くしていった。
「……――!!」
幸運にもその業火の範囲の外縁にいた僅かな人形は、完全に燃え尽きる前に退避することができた。しかしそんな残党のこともフレミアは決して見逃さない。
「逃げても無駄よ……全て叩き潰してあげる!」
魔竜の翼を得て自在に空を翔ける彼女の追撃から、逃れられる者はいない。
黒焔を纏った魔槍「ドラグ・グングニル」が、半壊した敵を斬り裂き、穿ち、叩き潰し――吸血姫の周囲にいた人形達は、かくして一人残らず殲滅されたのであった。
大成功
🔵🔵🔵
エンジ・カラカ
アァ……人形が沢山。
賢い君、賢い君、どうする?どーしよ。
うんうん、そうしよう。
おびき寄せでたーくさんの人形をおびき寄せる。
近くに他のヒトがいればソイツの戦いやすいように立ち回る
そうじゃなければ一人で相手を出来る数を相手にするする。
おびき寄せたら人狼咆哮。
そうやってまとめて相手をしようそうしよう。
この人形たちも糸で動く?
敵サンの攻撃は見切りで回避。
自慢の足。狼は足が速いンだ。
それから反撃しようそうしよう。
属性攻撃は賢い君の毒。
真っ赤な糸を括り付けて毒を人形に。
そこから錆びてしまえばイイ。
糸は賢い君だけでイイヨイイヨ。
ばーいばい。
幻武・極
さて、現れたようだね。
キミ達が欲しているものはここにはない訳だけど、このまま帰すつもりはないよ。
バトルキャラクターズをレベル1で召喚し攻撃をさせるよ。
さて、キミ達の呪詛はどれだけ処理ができるかな?
とこっちは囮で敵ユーベルコードによって現れた操り手にボク自身で攻撃するよ。
「アァ……人形が沢山。賢い君、賢い君、どうする? どーしよ」
ずらりと視界に並んだ敵を前にして、エンジは相棒の拷問器具に問いかける。
数多の咎人の血を啜ってきたそれは、人形どもの放つ呪詛に反応したかのようにカタカタと揺れ。それをどう捉えたのか、人狼の青年は得心いったように頷く。
「うんうん、そうしよう」
どうやら作戦は決まったらしい。彼はにっこりと笑みの形に口元を歪めると、俊敏な動きでダペルトゥット・ドールとの交戦に入る。
「キミ達が欲しているものはここにはない訳だけど、このまま帰すつもりはないよ」
エンジの向かった戦場では既に、極が人形の群れとの戦いを繰り広げていた。
多勢を相手に彼女が召喚したのはレベル1【バトルキャラクターズ】の軍団。ゲームの中から呼び出された数々のキャラクター達が、呪われし人形に挑み掛かる。
「さて、キミ達の呪詛はどれだけ処理ができるかな?」
挑発的な言葉を投げかけながら自らも拳を固める少女の前で、呪殺人形とゲームキャラクターの群れは激突し、戦場はおもちゃ箱をひっくり返したような様相となった。
「近くに他のヒトがいるね。ならソイツの戦いやすいように立ち回ろう」
そこに飛び込んできたのが「賢い君」を携えたエンジ。のらりくらりと笑いながら戦場を駆ける彼は、まずは近くにいる人形を一箇所におびき寄せるように動く。
彼の相棒に染み付いた亡霊達の怨念に釣られてだろうか。怨念を糧とする人形達は角砂糖を見つけた虫のように、わらわらとエンジの後を追いかけてくる。
そうして敵が夢中になっている隙を突いて、極のバトルキャラクターズが攻撃を仕掛ける。集団の中に囮役がひとり加わることで味方の被害は少なくなり、戦いの効率は大幅に向上した。
「集まってきたね、うんうん」
そしてエンジもただ逃げ回っているだけではない。味方が戦いやすいように敵を引きつけるうち、いつしか周囲をぐるりと人形に囲まれていた彼は、頃合いとばかりにすうっと大きく息を吸い込むと、思いっきり【人狼咆哮】を放つ。
戦場に轟く狼の遠吠えは衝撃波となって響き渡り、まんまとおびき寄せられた呪殺人形をまとめて吹き飛ばしていく。もちろん周囲に味方がいないのは確認済みだ。
――しかし、咆哮が吹き荒れた後の戦場には、だらんと腕を下ろして脱力したまま、無傷で立ちつくしている人形が何体か残っている。攻撃の瞬間に【お返しの呪詛】を発動し、エンジのユーベルコードを無効化した者達だ。
彼らの頭上に浮かぶのは巨大な繰り手。不可視の隠蔽を解いたそれは、たった今取り込んだ攻撃の威力をそのまま猟兵達に向けて排出せんとする――だが。
「まんまと姿を見せてくれたね」
反撃が放たれる寸前、洗練された身のこなしで人形達の懐に飛び込んだのは極。
バトルキャラクターズにこれまで攻撃を任せてきた彼女は、敵が反撃のために繰り手の姿を晒す、この瞬間を待っていたのだ。
「ボクの武術を見せてあげるよ!!」
それは魔法拳とゲーム武術を融合させた、極独自の戦闘技法。魔力を込めた拳が炎を纏い、まるで格闘ゲームのような派手な動きで呪殺人形の繰り手を叩き潰す。
繰り手を失った人形本体は、かくんと糸が切れたようにその場に崩れ落ち、二度と動くことは無かった。
「この人形たちも糸で動く?」
一方のエンジはそんな敵の様子を観察しながら、お返しされた咆哮から逃れる。
もともと自分の攻撃だからこそ、その規模も最初から見切っている。彼のスピードを以ってすれば、範囲外へと退避することは造作もない。
「自慢の足。狼は足が速いンだ」
攻撃をやり過ごせばすぐに反撃へ。すっと伸ばした手から真っ赤な糸を放ち、まだ動ける人形の躯体に括り付ける。亡霊たちを葬ったのと同じ、「賢い君」の毒が仕込まれた糸を。
「糸は賢い君だけでイイヨイイヨ。ばーいばい」
身動きが取れぬまま毒に蝕まれていく人形に、エンジはひらりひらりと手を振る。
笑う人狼に見届けられながら、呪殺人形は赤い糸に触れたところからぐずぐずと錆びて、朽ち果てていった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
リーヴァルディ・カーライル
…ん。人形のお前達に教えてあげるわ。
お前達が食い物にしている感情がどれだけ危険な代物か。
そして、呪詛を弄び死者を冒涜する者の末路を…。
呪力を溜めた大鎌を魔槍に変化して右手を繋ぎ、
【断末魔の瞳】で取り込んだ魂に祈りを捧げ【死棘槍】を発動
今までの戦闘知識と第六感から敵の精神攻撃のタイミングを見切り、
怪力の踏み込みから空中戦を行う“血の翼”の加速を加え、
全身を呪詛のオーラで防御しつつ残像を置き去りにして突撃
敵が攻撃を行う瞬間に死刺を残して吹き飛ばして、
別の敵諸々、自爆させて周囲をなぎ払う闇属性攻撃のカウンターを試みる
…怨念が欲しいのならくれてあげる。
よく味わいなさい、お前達が増幅した怨嗟の死棘を…。
「……ん。人形のお前達に教えてあげるわ。お前達が食い物にしている感情がどれだけ危険な代物か。そして、呪詛を弄び死者を冒涜する者の末路を……」
静かに、そして冷たく、現れた敵に宣告しながらリーヴァルディは得物を構える。
過去を刻むもの、グリムリーパー。死者の想念を力とする漆黒の大鎌は、溜め込んだ呪力を迸らせながら禍々しい魔槍へと変化し、今は彼女の腕と同化している。
その武器の名は【代行者の羈束・死棘槍】。無念を抱えし魂の想いを束ねて必殺の一撃と成す、断罪と復讐の魔槍である。
「……復讐を望む魂達よ、死棘となれ」
リーヴァルディが呼びかけるのは、左眼の聖痕に取り込んだ犠牲者達の霊魂。
救済の光よりも復讐の闇を選んだ亡霊達は彼女の祈りに応え、憎悪を委ねる。
その怨嗟は魔槍を覆う呪いの死棘となり、魔槍の威力をさらに高めていく。
リーヴァルディは今にも弾けそうなほどに荒れ狂う霊魂と共鳴しながらも決して心乱されず、魔槍の矛先を敵陣に向けて突撃の体勢を取った。
剣呑なる気配を漂わせながら収束されていく死者の怨念。それはダペルトゥット・ドールにとっても動力源であり、何よりも欲するものである。
ゆえに人形はまるで篝火の明かりに吸い寄せられる羽虫のように、自らリーヴァルディの元に殺到する。動力が切れかけた彼らにとって、それは本能的な行動だった。
そして彼女の手から怨念の塊を奪い取るために、精神を狂わせ破滅へと追いやる【感情暴走の呪詛】を放とうと――。
「……怨念が欲しいのならくれてあげる」
人形が攻撃を仕掛けるまさにそのタイミングで、リーヴァルディは地を蹴った。
全身を呪詛のオーラで防御し、背中には赫々と輝く魔力の双翼を広げ。ダンピールの怪力による踏み込みに翼の加速を乗せた彼女の身体はその瞬間、音速を超える。
その場に残像を置き去りにして真っ直ぐに標的へと突撃する、その姿はまるで闇を纏った一条の流星であった。
呪詛を発動させる暇は与えない。むろん回避も、防御も、一切の抵抗を許さない。
瞬きする間もない刹那のうちに、リーヴァルディの死棘槍は人形の群れを貫いた。
魔槍の加速がもたらす衝力と、遅れて到達した衝撃波が、進路上にいた呪殺人形を粉砕しながら吹き飛ばしていく。
「―――!!」
幸運にも突撃の進路上にいなかった人形達の元には、同胞のパーツが降り注ぐ。
バラバラになったその残骸には、禍々しい死棘が突き刺さったまま残っていた。
それはリーヴァルディに力を貸した亡霊達の怨念が形となったもの。憎き仇の呪詛を感知したそれは、溜め込まれていた呪力を一気に解き放ち、炸裂する。
「よく味わいなさい、お前達が増幅した怨嗟の死棘を……」
魔槍を解除し歩き去っていくリーヴァルディの背後で、凄まじい爆発が起こる。
呪力の爆弾と化した残骸の自爆に巻き込まれた呪殺人形達は、爆音と共に轟く怨嗟の声に苛まれながら、塵の一片も残らぬほど完全に破壊され――爆風が全てをなぎ払っていった後には、何もない荒涼とした大地と静寂だけが残されるのだった。
大成功
🔵🔵🔵
神元・眞白
【SPD/割と自由に】
あれが次の問題。……話の通り中に色々詰まっているみたい。
霊達はなんとかできたけれど次は……そう、あの子達。
ものは扱う人で在り方が変わる。あれも元々の形に戻せればいいんだけど。
元々が人形なら中に詰まっているものをどうにかすればいいってこと。
魂が詰まっているならさっきと同じ要領…っていう訳にはいかないし。
飛威、相手も構えてるしまずは体勢を崩してあげて。余り傷付けない様にね。
魅医、大変だけどあの子達の中身も助けてあげて。使われるだけで壊されるのも可哀相。
やった事は残念だけど頑張った分は褒めてあげないと、ね。
少しずつ何でもない様に装って。同じもの同士、助けてあげないと。
「あれが次の問題。……話の通り中に色々詰まっているみたい」
じぃっ、と、ぎこちない動きで迫ってくる呪殺人形の群れを観察するのは眞白。
人形遣いにして死霊術士である彼女には、彼らに宿る死者の魂や怨念をはっきりと感じ取れる。その一体一体を動かすために必要となった犠牲がどれ程だったのかも。
「霊達はなんとかできたけれど次は……そう、あの子達」
呪殺人形を見つめる眞白の瞳には、怒りや憤りではなく哀れみの情があった。
人形はあくまでも道具。そうあるように作られて、使われるものだということを、彼女はよく知っている――自分達も似たようなものだから。
「ものは扱う人で在り方が変わる。あれも元々の形に戻せればいいんだけど」
既にオブリビオンと成った今からでは完全な救済は難しいやもしれないが。
それでも出来る限りのことはしよう、と、白き令嬢は自らの人形を操る。
「飛威、相手も構えてるしまずは体勢を崩してあげて。余り傷付けない様にね」
主の命に静かに頷きながら、メイド服を纏った戦術器「飛威」が戦場を駆ける。
近接戦闘用である彼女の動きは、あくまで相手を呪い殺すことを目的としたダペルトゥット・ドールよりも遥かに機敏。緩慢な動作で掴みかかってくる相手の手をひらりと躱し、刃物の柄や体術を駆使して逆に地面に転がしていく。
「元々が人形なら中に詰まっているものをどうにかすればいいってこと。魂が詰まっているならさっきと同じ要領……っていう訳にはいかないし」
ならばと眞白が人形と死者の救済のために呼び出したのは戦術器「魅医」。
それは彼女が操る人形のなかでも特殊な、他者を癒す力を持った戦術器だ。
「魅医、大変だけどあの子達の中身も助けてあげて。使われるだけで壊されるのも可哀相」
呼ばれた人形はその頼みにふわりと微笑で応じ、飛威が転倒させたダペルトゥット・ドールの元に近付くと、優しい手付きで癒やしの力を注いでいく。
「やった事は残念だけど頑張った分は褒めてあげないと、ね」
どんな目的で作られて、どんな用途で使われようと、道具は役目を果たすだけ。
それさえも否定されてしまっては浮かばれない。だから眞白は彼らを労う。
魅医の力の代償として、自らの血を流してでも――染み付いた呪詛と怨念を癒やし、閉じ込められた魂を解放するために。
怨念をすべて癒やされれば、呪殺人形はもう動くことも、誰かを呪うこともない。
どこにでもある、ただの人形となった彼らを眞白は優しく拾い上げると、戦いで傷ついたところを修繕し、少しずつ何でもないように装っていく。
「同じもの同士、助けてあげないと」
その瞳が見つめるのは、あり得たかもしれない自分の未来。
たとえ、呪殺人形の行いが許されることでは無いとしても。
人形の少女には、彼らを見捨てることなど出来はしなかった。
大成功
🔵🔵🔵
ナギ・ヌドゥー
視認できないがこの人形を操っている手がある筈だ。
そいつを誘き出し、破壊する。
中々趣味の悪い人形達だが、オレの拷問具ほどじゃあないな。
【殺気】を放ち敵の攻撃を【おびき寄せ】
拷問具ソウルトーチャーを形状変化させ敵攻撃を【盾受け】
受けると同時にさらに形状変化させ人形達を拷問具に捕える
そしてUC「九忌怨刃」発動し攻撃9倍化
9連続斬撃、この攻撃を受ける為に敵もUC発動するだろう
受けたその時に隠蔽されている巨大な繰り手が見える筈だ
オレの攻撃はまだ終わっていない、【2回攻撃】の9倍化により再び9連斬撃を繰り手に放てる!
あの巨大な手にUCを反射されたらオレも危ういが、肉を斬らせて骨を断とう。
「中々趣味の悪い人形達だが、オレの拷問具ほどじゃあないな」
呪詛を発する呪殺人形を前にしながら、そう嘯いたのは咎人殺しのナギ。
彼の拷問具ソウルトーチャーは、彼が殺してきた咎人の肉と骨で造られたもの。勘の良い者なら直視するのも躊躇われるほどに、おぞましい業が染み付いている。
それを手にした青年は、まるで敵を挑発するかのように、激しい殺気を放った。
「―――!」
怨念を糧とする呪殺人形は、狙い通りナギの殺気に惹かれておびき寄せられる。
その生命を呪い殺し、肉体は人形に、魂は動力に。それが彼らの行動原理。
ぎこちない動きで飛び掛かってくる人形の魔の手を、しかしナギは盾のように形状変化させたソウルトーチャーで受け止めた。
「鈍いな」
やはりこの人形は呪い殺すのが専門。その手で獲物を切り刻み屠ることに長けた、殺人鬼たるナギから見れば――動力が切れかけていることを加味しても、欠伸が出るほど彼らの動きは単調で緩慢で非効率だ。
「オレが手本を見せてやるよ」
人形の攻撃を受け止めた直後、ナギはソウルトーチャーを鎖と拘束具に形状変化。
至近距離で絡みつくように形を変えた拷問具に、人形達は動きを封じられる。
その隙を逃さず、得物を「歪な怨刃」に持ち替えた彼の両目が真紅に染まる。
「殺戮の宴の始まりだ」
【九忌怨刃】。振るわれる怨刃の攻撃回数は、刹那のうちに九度。
鋸の様な刃が人形の躯体を引き裂き、切り刻み、バラバラにする。
――だが、ナギ渾身の9連撃を受けてなお、無傷のままの人形がいた。
その頭上に浮かぶのは巨大な手。攻撃を受ける直前、その人形は脱力状態で【お返しの呪詛】を発動し、ダメージの無効化に成功していたのだ。
人形を傷つけることなく取り込まれたユーベルコードの力は、繰り手から排出が可能。これで敵は強力な武器を手に入れてしまったことになる。
しかし自らの技を無効化されたナギに動揺はなく、口元には酷薄な笑み。
彼が凝視しているのは、人形の頭上に浮かぶ巨大な繰り手のほうだ。
(視認できないがこの人形を操っている手がある筈だ。そいつを誘き出し、破壊する)
彼の狙いは最初からそれで、先の連撃はそのために放った誘い。そして彼の攻撃はまだ終わっていない。
9連撃の動作からすぐさま体勢を立て直すと、狙いを修正し、再びの9連撃を繰り手に向かって放つ。
(あの巨大な手にユーベルコードを反射されたらオレも危ういが、肉を斬らせて骨を断とう)
繰り手から1度目の連撃が排出されるのと、ナギが2度目の連撃を放つのはほぼ同時だった。
技の威力が同等であれば、結果を左右するのは使い手の技量。繰り手が繰り出す9度の斬撃を、ナギは最小限の動作のみで致命傷を避け、苦痛にも構わず歪な怨刃を振るった。
「――――終わりだ」
一瞬の静寂の後、バラバラのパーツに切り刻まれて消滅する人形の繰り手。
繰り手を失ったダペルトゥット・ドールは、ぱたりと糸が切れたように倒れ伏す。
それが、墓地に現れた呪殺人形ダペルトゥット・ドールの、最後の一体だった。
死者の魂を糧とする恐怖の人形が、この地に呪いを振りまくことは二度とない。
墓所の平穏を守り抜いた猟兵達だが――まだ、最後の一仕事が残っている。
大成功
🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『エシラ・リデル』
|
POW : いやなら、しんだらどうかしら?
自身の装備武器を無数の【薔薇とスミレ 】の花びらに変え、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
SPD : わるいこには、おしおきね
【クイーンのチェス駒 】が命中した対象に対し、高威力高命中の【トラウマを呼び起こす言霊の刃】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
WIZ : へいたいさん、あそびましょう
戦場で死亡あるいは気絶中の対象を【赤いトランプ兵 】に変えて操る。戦闘力は落ちる。24時間後解除される。
イラスト:OG
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴
|
種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「有栖川・夏介」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
「――どうして、こんなひどいことをするのかしら?」
猟兵達がダペルトゥット・ドールを駆逐してから間を置かず、それは訪れた。
鈴を転がすように愛らしく、砂糖をまぶしたように甘ったるい少女の声。
怒りと悲しみを隠そうともしない、子供っぽく感情的な声色。
死の匂いに満たされていた墓場に、薔薇とスミレの香りが漂いはじめる。
「わたしの"おともだち"をこんなにして、ひどいわ」
現れたのは、ピンク色のドレスに身を包んだ、天使のように可憐な娘。
いかにも世間知らずのお嬢様といったふうの、浮世離れした無邪気さ。
それが、この地を支配するヴァンパイアの領主、エシラ・リデルだった。
大事な"おともだち"を猟兵に壊されて、彼女はひどく怒っている。
お気に入りの玩具を壊された子供としては、それはごく自然な反応かもしれない。
だが、その"おともだち"の為に犠牲になった者達の存在を、それは一顧だにしていない。
「ぜったいに、ゆるさないんだから。あなたたちみんな、おしおきよ」
エシラが語るのはどこまでも自分の気持ちでしかない。
彼女の虐げてきた領民にも、同じように大切なものがあったはずなのに。
普通の人間であれば働くはずの発想や共感性が、すっぽりと抜け落ちている。
どこまでも悪意がなく、無邪気であるがゆえに、それは邪悪であった。
呪殺人形がいなくなっても、彼女が君臨する限りこの地の災厄は終わらない。
すべての悲劇の根源を断つために、猟兵達は再び戦闘態勢を取った。
十文字・武
<アド連携詠唱略ok>
己の成してきた事、全てが己へ返るは世の摂理
餓鬼の身なりのままに、そんな事も知らないか
良いだろう、教えてやる
手前ぇが愉しんできた時間は、彼らが苦しみ続けてきた時間
精々苦しみもがき、その悲鳴をあの世の彼らへ届かせろ
清算の時間だ、オブリビオン
UC【悪喰魔狼と七匹の子ヤギ】起動。血と肉と魂を捧げろ
花びらの攻撃は【武器受け】の高速剣で切裂き、多少の怪我は無視しろ【激痛耐性】
【戦闘知識・団体行動】による魔獣との連携だ
【なぎ払い】、【串刺し】、微塵に刻め
……なぁ、痛くて苦しいか?手前ぇに弄ばれた彼らも、それ以上に痛くて苦しかったんだよ。せめてそれを理解してから、あの世に行きな
カタリナ・エスペランサ
因果応報、行いには相応の結果が返ってくるものさ
そして次はキミの番だ
別に理解しなくてもいいよ。キミを骸の海に還す事には変わりないからね
敵の動きは《第六感+戦闘知識+見切り》で先読みして対応、チェス駒は《カウンター+先制攻撃+クイックドロウ+武器落とし》の羽弾を放って即座に叩き落とそうか
基本は《早業+怪力》を発揮してダガーと体術を組み合わせ、翼を活かした《空中戦+ダンス》の要領で立ち回る
攻撃には《属性攻撃+ハッキング+マヒ攻撃》の蒼雷を纏わせ、電撃と魔力で侵蝕して行動を阻害するよ
頃合いを見て敵に刻んだ魔力を起点にUC【世界の不完全証明】を発動、《全力魔法+鎧砕き》で最大火力の重力崩壊を叩き込もう
「己の成してきた事、全てが己へ返るは世の摂理。餓鬼の身なりのままに、そんな事も知らないか」
「因果応報、行いには相応の結果が返ってくるものさ。そして次はキミの番だ」
目の前の敵への憤りと嫌悪感を隠そうともせず、武とカタリナはそう言い放った。
あれをただの少女とは思うまい。彼女こそがこの地に渦巻く因業の中心点。数多の悲劇と死と怨嗟を生み出しがら今だ報いを受けぬ、無垢なる諸悪の根源だ。
「なにをいっているのか、わからないわ」
エシラはきょとんと首を傾げる。演技ではない、この娘は本当に分かっていない。
自分が犯したことがどれほど罪深く、そして猟兵の逆鱗に触れる行為だったのかを。
「わからないことをいうひとは、きらいよ。いやなら、しんだらどうかしら?」
エシラがそう呟くと、ざあっと墓場に激しい風が吹き、薔薇とスミレの花弁が嵐を起こす。その一枚一枚にヴァンパイアの魔力が込められているのを猟兵達は悟った。
敵の動きを先読みしていたカタリナはさっと上空に逃れ、武は妖刀と退魔刀の二刀流で花弁を切り払う。攻撃の規模は大きいが、それほど対処は難しくはない。
「なによ、さっさとしねばいいのに」
ぷんぷんと頬を膨らませながら、さらに花弁を撒き散らすエシラ。
その姿は戦っているというよりも、ただ癇癪を起こす子供の所作だ。
「別に理解しなくてもいいよ。キミを骸の海に還す事には変わりないからね」
「あんなつまらないところに、わたしはかえらないわ!」
吹き荒れる花弁をやり過ごしながら、踊るような身のこなしで直上より接近するカタリナ。対するエシラはポケットからクイーンのチェス駒を取り出し、投げつける。
見た目にはなんの変哲もない駒だが、なんとなくそれに嫌な予感を覚えたカタリナは、背中の翼から羽弾を放って即座に叩き落とす。
「キミのお遊びに付き合うつもりもない」
その言葉はどこまでも冷たく淡々としていて。ダークセイヴァーに生まれた者のひとりとして、迅速かつ確実に目の前のヴァンパイアを消し去りたいという心象がありありと窺えた。
「どうしてそんなにおこっているの? わたしがなにをしたというの?」
「言いだろう、教えてやる」
なおも理解できないといった表情で花吹雪を起こし続けるエシラに、刃のような鋭い声音で応じたのは武。二刀で花弁を切裂きながら、その歩みは着実に間合いを詰めている。
「手前ぇが愉しんできた時間は、彼らが苦しみ続けてきた時間。精々苦しみもがき、その悲鳴をあの世の彼らへ届かせろ」
払い切れなかった花弁に己が身を切り裂かれようとも無視。まっすぐに射抜くような眼光をエシラにのみ向ける青年の瞳には、獣のような殺気が宿っている。
死者との誓いを果たす時は今。諸悪の根源を必ずや討ち果たすために、騎士はその身に宿した魔獣を解き放つ――。
「清算の時間だ、オブリビオン」
【悪喰魔狼と七匹の子ヤギ(グリム・リーパー・ビースト)】発動。
騎士の血肉を糧として、現世に降臨するは強大にして異形なる『悪喰魔狼』。
その全身は漆黒の剛毛で覆われ、顎下が人の背丈を越えるほどに巨大であり。
両目は抉り潰され、鼻と耳のみを頼りに獲物を探る魔獣は、すぐそこにいる美味そうな小娘の匂い――エシラ・リデルを嗅ぎつけて、歓喜の咆哮を上げた。
「なんなのよ、そのばけものは……」
魔狼の咆哮に怯えたように身をすくめ、びくりと後ずさるエシラ。
その隙を逃さずに、上空からカタリナがダガーを片手に斬り掛かる。
「まず一つ」
「きゃっ!」
ピンク色のドレスが裂け、紅い血飛沫が舞う。突然走った鋭い痛みにエシラは驚いたようだが、この程度ではヴァンパイアにとってさしたるダメージにはなるまい。
しかしカタリナのダガーには蒼雷の魔力が付与されており、命中時に伴う感電が標的の肉体を麻痺させる。それがさらなる追撃への好機に繋がった。
「行くぞ悪喰。テメェの爪牙の鋭さを見せてみろ」
動きの止まったエシラにすかさず猛襲を仕掛けたのは武と『悪喰魔狼』。
力強い踏み込みから繰り出された二刀の斬撃は、吸血鬼の身体に十文字の傷を刻みつけ。同時に魔狼の爪が獲物を押さえつけ、たおやかな脚に喰らいつく。
「いたい、いたい、いたいっ!!」
これにはたまらずエシラも悲鳴を上げて、狼を引き剥がそうとじたばた暴れる。だがその膂力は見た目よりも遥かに強いが、"供物"を得た魔獣に伍するほどではない。
「そのまま放すなよ、悪喰」
刀を構え直す武の口からは血が。花弁に切られた外傷ではない、内部からの負傷。
武の憑依オウガである『悪喰魔狼』は、使役のたびに彼の内蔵をひとつ食いちぎっていく。どこを持っていかれるかは魔狼の気分次第だが、いずれにせよ重い代償には違いない。そしてそれ故に、ひとたび顕現した魔狼が持つ力は絶大であった。
「はなしてっ! さもないと、ひどいめに――!」
「うるさいよ」
甲高い声で喚くエシラの側頭部を、カタリナの空中蹴りがしたたかに打つ。
強烈な打撃と蒼雷のショックが脳を痺れさせ、ほんの一瞬だけ意識がトぶ。
その瞬間、閃風の舞手もまた自らに宿るヒトならざる存在――魔神の力を限定解放し、己が持つ最大にして最高の威力を誇るユーベルコードを発動する。
「"見るがいい、思い知れ、そして戦慄せよ! 是こそ此世の脆弱たる証左である!!" ――なんてね」
【世界の不完全証明(ヴァニティ・ワールド)】。それは魔神の権能によって擬似的な重力崩壊を引き起こし、標的を空間ごと圧潰させる大魔法。
その絶大な威力ゆえに制御は難しく、発動までの隙も大きいため普通に撃っても避けられるだけだが――相手が気を失っているうえ、魔獣に片脚を齧り付かれていれば話は別だ。
「―――? ――――なに、なにこれは、なんなのっ?!」
はっと気が付いたエシラが目にしたのは、自らを圧し潰す凄まじい重力の塊。
空間ごと我が身を捩じ切られていく、言葉にならないほどの激痛が彼女を襲う。
「――――ッ!!?! いたい、いたい、やめて、たすけてっ!」
悲鳴を上げながら助けを求めるエシラだが、手を差し伸べる者などいる訳もない。
カタリナも、そして武も、重力に圧し潰される彼女を冷たい眼差しで見つめていた。
「……なぁ、痛くて苦しいか?」
「いたいわよ、くるしいわよ! おねがい、ひどいことしないで!」
ぽつりと呟くような武の問いに、エシラは懇願するような調子で答える。
それを聞いた彼は、鋭い視線を彼女に向けたまま――退魔刀と妖刀を振るう。
「手前ぇに弄ばれた彼らも、それ以上に痛くて苦しかったんだよ。せめてそれを理解してから、あの世に行きな」
真夜中の墓地に血飛沫が舞い散り、刃が少女の背中から飛び出す。
騎士の双撃はエシラの片腕を斬り落とし、胸の中心を貫いていた。
「ひ、ぎ……いや、いたいのはいやぁっ!」
血まみれのエシラは必死に暴れに暴れ、なんとか魔獣の牙を引き剥がし、重力崩壊から逃れる。それでも彼女が全身に負った傷は重篤で、腕も一本失っている。
それは彼女への、長きに渡ってこの地の人々を苦しめてきた報いの証であった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
朱酉・逢真
エシラ・リデル。Ecila・Liddell。逆さまアリスかィ。
なァるほど、性格も立場も逆さまか。
まあ俺に出来ることは一つなんだが。芸が無くて悪いね。
他の猟兵さんを巻き込まねェようにだけ、気をつけるさ。
トランプ兵は犬型の獣に乗って避けるぜ。
近くに来たら、キセルからマヒ毒を噴く。
UCで毒の風を作る。VXガスを風に乗せて、嬢ちゃんだけに纏わせる。
吸血鬼は呼吸しねェかもだが、このガスは皮膚からも吸収されるから安心だ。
ごまかす為に虫や鳥の群れを向かわせる。
囮っつっても傷が付きゃ、そっから菌や病毒が流れ込むからな。
体が腐ったり皮膚が剥がれ落ちんの見たくなけりゃ、がんばって避けな。
撒いた毒は全部回収するよ。
「エシラ・リデル。Ecila・Liddell。逆さまアリスかィ。なァるほど、性格も立場も逆さまか」
領主の名に綴りを打って、得心がいったように口元を歪めたのは逢真。
彼が連想したのは童話「不思議の国のアリス」のこと。異世界に迷い込み理不尽に巻き込まれるアリスに対し、エシラはこの世界に君臨し理不尽を強いる側であった。
「まあ俺に出来ることは一つなんだが。芸が無くて悪いね」
相手が誰にせよ、どんな経緯があるにせよ、彼が為すことは変わらない。
朱ノ鳥の足音が、戦場に"病"と"毒"を連れてくる。
「ここなら他の猟兵さんを巻き込まねェですみそうだ」
「なんなの、あなたは?」
傷ついたエシラが逃げた先へと先回りした逢真は、少女の前でにっかりと笑う。
猟兵の攻撃で深手を負ったエシラは、未だ傷を再生しようとしている途中。
そこに現れた怪しげな男の相手をしている余裕も興味もまったく無い。
「あなたとあそんでいるひまはないの。へいたいさん、よろしくね」
呼びかけたのは付近に散らばっていたダペルトゥット・ドールの残骸。
その幾つかが不意にむくりと起き上がると、赤いトランプ兵に姿を変えた。
「お人形の次はトランプ遊びかい。女の子だねェ」
皮肉げな笑みを貼り付けた逢真に、槍を構えて突っ込んでくるトランプ兵隊。
串刺しにされるのは勘弁だと、彼は呼び出した犬型の獣に飛び乗って避ける。
病と毒の神である彼にとって、媒介者となる獣はすべて眷属のようなものだ。
「そら、鬼さんこちら、っと」
獣の足を活かして墓地を駆け回りながら、ふうとキセルから吹きかけるのは毒の霧。人形さえも侵した神の猛毒はトランプ相手にも効果を発揮し、霧に巻かれた兵士達はたちまち痺れて動けなくなった。
「さて、そんじゃ次は嬢ちゃんの番だ」
護衛を手早く無力化した逢真は【エレメンタル・ファンタジア】を発動。
まだ傷を治している最中のエシラに向かって、猛毒――VXガスの風を吹かせる。
それは人類が作りあげた中では最も強い毒のひとつ。無味無臭であり、皮膚からも吸収されて神経を侵す。仮に吸血鬼が呼吸を必要としなくとも効果は覿面だ。
「わたしのうで、まだはえてこないわ――っ、ごほっ?!」
ガスの影響は時を待たずして現れる。傷の再生に手間取っていたエシラが急に咳き込みはじめ、胸を押さえて苦しそうに悶える。ガスの散布があまりに静かだったため、何が起こったのかまだ分かっていない様子だ。
「こいつらもオマケしとこうか」
不調の正体(ガス)を誤魔化すために、逢真は続けて虫と鳥の群れを向かわせる。
囮といえども毒神の眷属、病毒と菌をたっぷりと抱えた危険な媒介者たちだ。
「ひっ?! なによこいつら、きもちわるい!」
エシラはぱたぱたと片方しか無い腕を振り回して群れを追い払おうとするが、その際に他の猟兵から付けられた傷から毒と菌が流れ込む。たちまち少女の白かった肌には毒々しい斑点や発疹が浮き上がり、強い痛みやかゆみを訴え始めた。
「なんなのよ、これ……かゆい、かゆい、かゆいかゆいっ」
たまらず掻き毟れば疹が破れ、膿と血があふれて余計に痛みを引き起こす。
ヴァンパイアであるエシラにとって、病や毒の苦しみは初めての経験だったろう。
「体が腐ったり皮膚が剥がれ落ちんの見たくなけりゃ、がんばって避けな」
「あなたの、しわざなのね……ごほっ! おぼえて、なさい……!」
VXガスの侵食のほうも順調。この場は不利とみたエシラは動けなくなる前にと、鳥と虫の群れに追い立てられながらぱたぱたと後退していく。
追っても良かったが、あまり毒ガスを広く撒き散らしては逆に仲間が不利になるだろう。十分なダメージも与えたところで、逢真は撒いた毒を全て回収する。
「ま、ケリは他の猟兵さんがうまいこと付けてくれるだろうさ」
病と毒の神は飄々と笑いながらキセルを揺らし、戦いの趨勢を見守るのであった。
成功
🔵🔵🔴
幻武・極
へぇ、キミはクイーンの駒を使うのか。
じゃあ、ボクはポーンでいいよ。
バトルキャラクターズで8体の駒を作るよ。
ポーンだから1レベルかな。
残りのレベルは後で観戦してていいよ。
さて、このチェスは何気にボクが不利なルールが付くんだよね。
ボク自身があのクイーンを取ることができないからね。
相手のユーベルコードの条件に引っ掛かる。
あくまでクイーンはポーンで取らないとね。
ポーンを囮にポーンでクイーンを狙う戦術で進めておくよ。
あと、気付かれないようにポーンを1体相手陣地まで進ませておくよ。
そしたら、プロモーションだね。(相手の)後で待機させていたキャラクターと合体させてクイーンに成り上がるよ。
「もう、みんなひどいわ……よってたかって、わたしをいじめて……」
魔神と魔獣の洗礼を受け、毒と病に侵されて、予想だにしない深手を負ったエシラ。
猟兵の追撃を逃れ、傷を再生する場所を探そうとしていた彼女は、しかしそれを許さない次なる猟兵と会敵する。
「見つけたよ」
「もう、しつこいわね……わるいこには、おしおきね!」
ぐっと拳を握りながら構えを取る極に対して、エシラが取り出したのはクイーンのチェス駒。ヴァンパイアの魔力を宿したそれは、投げればひとりでに標的を襲う。
そして命中さえすれば、トラウマを呼び起こす言霊の刃が、標的の肉体ではなく心を切り刻む――他者を苛むことに特化したエシラのユーベルコードだ。
「へぇ、キミはクイーンの駒を使うのか。じゃあ、ボクはポーンでいいよ」
それを見た極は【バトルキャラクターズ】を発動し、レベル1の駒を8体作り出す。
ゲーム武術の使い手としては、ゲームでの勝負を挑まれれば乗らざるを得ないだろう。
「残りのレベルは後で観戦してていいよ」
自らをキングの駒に見立て、予備の47体の駒には後ろで待機させておきながら、8体のポーンと共にクイーンを迎え撃つ少女。その戦力は此方が不利のように思えるが、彼女には勝算があった。
「そんなポーンなんかに、わたしのクイーンはまけないわ!」
チェス遊びが好きなエシラは楽しそうに笑いながらクイーンの駒を操作する。
極は向かってくるクイーンの前方にポーンを起き、その進撃を阻みながら反撃の一手を練る。
(このチェスは何気にボクが不利なルールが付くんだよね。ボク自身があのクイーンを取ることができないからね)
極が相手の駒に触れれば「攻撃が命中した」としてユーベルコードの発動条件に引っかかる以上、あくまでクイーンはポーンで取らないといけない。
ポーンはチェスの中でも最弱の駒だが、決して無力な駒ではない。豊富なゲーム知識を持つ極の巧みな指揮のもと、徐々に盤面の不利を覆していく。
「このっ、じゃまよこのポーン!」
「はい、これでどうかな」
「ああ、こっちからもきたわ?!」
ひとつのポーンが囮になっている間に、別のポーンがクイーンを狙う。
複数の兵隊にあちこちから攻め立てられて、クイーンはきりきり舞いだ。
「ぜったいに、まけないんだから!」
なんとか状況を打開しようと相手がムキになって盤面に集中しはじめた隙に、極は一体のポーンを相手の陣地に進ませておく。それが、このゲームを終わらせるチェックメイトの一手となった。
「プロモーション」
「え……っ?!」
エシラが気が付いた時には、全てが遅かった。彼女のすぐ傍まで近付いていたレベル1のポーンは、同様に彼女の後ろで待機していた予備のキャラクターと合体する。
敵の陣地の最終列に到達することで、ポーンは他の駒に成り上がる(プロモーション)。そこに居たのはもはやレベル1の貧弱な駒ではなく、レベル48相当の最強のクイーンだった。
「このゲームはボクの勝ちだね。キミ、案外弱かったね?」
「う、うぅぅぅぅ……っ、きゃぅっっ!!?」
にっこりと笑った極の挑発に、エシラは顔を真っ赤にして何か言い返そうとしたが――それよりも早く、巨大なクイーンの一撃が彼女を打ちのめす。
これまで人形としか遊んでこなかったツケと言うべきか。広い戦術眼や相手の心理を読み取る技術を持ちえなかった少女は、歴戦のゲーマーに完敗を喫する事となった。
成功
🔵🔵🔴
雛菊・璃奈
許さないのはこちらも同じ…。
貴女に悪い事をしてる意識は無いのかもしれない…でも、貴女がこれ以上人々を苦しめるなら、ここで止める…!
【九尾化・魔剣の媛神】封印解放…!
敵の薔薇とスミレは黒桜の呪力解放【呪詛、衝撃波、なぎ払い】で迎撃…。
遺体をトランプ兵に変えられたら、無限の終焉の魔剣による一斉斉射で殲滅…。
残ったトランプ兵はラン達に【暗器】と【居合】で対応を任せ、これ以上変化させられない様に本体めがけてバルムンクで纏う【呪詛と衝撃波】の一撃を放って吹き飛ばし、その隙に神速で一気に接近…。
神速の速度のまま、バルムンクの全力の一撃【力溜め、鎧砕き、鎧無視、早業】で一気に袈裟懸けに両断し、仕留めるよ…。
「もう、もう、もう、もう! どうしてみんな、わたしにひどいことするの?」
ボロボロになったドレスを血に染めて、綺麗に梳られていた髪を振り乱して、吸血鬼エシラ・リデルは叫ぶ。その姿は傲慢な領主というよりも癇癪を起こした子供だ。
「ぜったいに、ぜったいにゆるさないわ!」
傷を負うたびに、痛みを感じるたびに。それを上回るほどの怒りが彼女を衝き動かす。
燃え上がる感情と魔力に呼応して、人形の残骸や遺体がトランプ兵に姿を変えていく――。
「許さないのはこちらも同じ……」
そこに立ちはだかったのは呪槍・黒桜を構えた璃奈と、お付きのメイド人形達。
彼女らの瞳に燃えるのは、数多の怨嗟を引き起こした元凶に対する、静かな怒り。
「貴女に悪い事をしてる意識は無いのかもしれない……でも、貴女がこれ以上人々を苦しめるなら、ここで止める……!」
悲劇の連鎖を断ち斬るために、魔剣の巫女は【九尾化・魔剣の媛神】の封印を解放。
莫大な呪力をその身に纏い、無限の魔剣を率いる九尾の媛が、ここに顕現する。
「だれかがくるしんでいたって、そんなのしらないわ!」
エシラは俗世とのつながりを断たれた箱入り娘であり、ヴァンパイアという生まれながらの支配者。自分のために誰かが犠牲となるのを当然と考えて憚りもしない。
思い通りにならない猟兵達への怒りが具現化したように、戦場には薔薇とスミレの花弁が嵐となって吹き荒れる。対する璃奈は黒桜の呪力を解放――その銘のように咲き乱れる呪力の花吹雪を以って、エシラのユーベルコードを迎撃する。
「それを知らないままでいたのも、貴女の罪……」
花弁に紛れて押し寄せてくるトランプ兵に対しては、顕現した無限の魔剣を展開。
"終焉"の力を宿した剣による一斉斉射が、紙切れの兵士達を貫き、切り裂き、吹き飛ばし――今度こそ誰にも利用されることのない、完全なる終わりを彼らに齎した。
「ラン達は残ったトランプ兵の対応をお願い……」
「りょうかい!」
「がんばる!」
「ご主人もがんばって!」
メイド人形達は魔剣の掃射から逃れた敵の元に迫ると、暗器を投げつけて相手を怯ませ、狙いすました仕込み箒の居合斬りで、次々とトランプ兵を両断していく。
その間に璃奈は得物を呪槍から魔剣バルムンクに持ち替えると、刀身に呪力を纏わせながら大上段に振りかぶる。
「これ以上、ここに眠っている人達を利用させない……」
「え……なにっ、きゃぁっ!?」
振り下ろされた魔剣の一撃は、九尾化した璃奈の呪力と合わさって凄まじい衝撃波となり、新たなトランプ兵を呼ぼうとしていたエシラ目掛けて一直線に放たれる。
小柄なエシラの身体は衝撃を受けて木の葉のように空高く舞い上がり、目を丸くした少女の悲鳴が戦場に響き渡る。
飛行能力を持たないエシラに空中でのバランスを保つ術はない。この隙に璃奈は媛神の封印解放によって得た神速のスピードを活かし、閃光のごとく駆けだした。
「貴女の遊びは今日でお終い……ここが終焉だよ……」
吹き飛んだエシラが無防備に落下する地点にまで、一気に接近する璃奈。
その手に握られたバルムンクの刀身には、先の一撃を遥かに上回る呪力が溜めこまれ、上段の構えから解放の瞬間を待っていた。
「やめ、やめて、や―――!!!」
懇願するエシラの悲鳴にも構わず。神速の速度のまま振り下ろされた一閃は、竜の命をも屠る凄まじき切れ味を以って、標的を袈裟懸けに断ち斬った。
「――――ッ!!!!!!」
言葉にならない絶叫。脳髄が痺れるほどの激痛。噴水のようにほとばしる鮮血。
真っ二つにならなかったのが不思議なほど、魔剣の一撃がエシラに与えた傷は深かった。
これが、自分の成してきた行いの報いだと――果たして彼女は理解しただろうか。
大成功
🔵🔵🔵
フレミア・レイブラッド
お仕置きするのはこちらの方よ?
無念を貴女に叩き込むと約束したしね。
【ブラッディ・フォール】で「蘇る黒き焔の魔竜」の「黒焔魔竜・ヴェログルス」の力を使用(ヴェログルスの角や翼、尻尾等が付いた姿に変化)。
トランプ兵やチェスの駒を空中から多数の【生ヲ貪リ喰ラウ黒キ焔蛇】と黒焔魔弾【属性攻撃、高速詠唱、全力魔法、誘導弾】で粉砕し、花びらも【禍ツ黒焔ノ息吹】で焼き尽くして攻撃を悉く封殺・圧倒し、この子本体にも焔蛇で追い込んでいくわ。
貴女の身勝手な我儘で死んでいった人達の恨みと痛み…思い知りなさい。
幼い子だし、これで罪を自覚するならとも思うけど…無理よね。【禍ツ黒焔ノ息吹】で一気に焼き尽くしてあげるわ
「いたい……いたい、いたい、いたい……」
止まらない自らの流血でできた血溜まりに膝をつき、呆然とするエシラ。
こんなに痛いのも、苦しいのも、誰かに傷つけられるのも彼女には初めての経験で。だからこそ何故自分がこんな目に合わなければならないのか理解できないのだろう。
「ゆるさないわ……みんなみんな、おしおきしてやるんだから……」
「お仕置きするのはこちらの方よ? 無念を貴女に叩き込むと約束したしね」
本人にとっては理不尽への怒り――しかし他者からすれば逆恨みに等しい激情を糧に立ち上がるヴァンパイア。その前に立ちはだかったのは、黒き焔をその身に纏った吸血姫、フレミアだった。
「わたしは、なにもわるいことしてないわ! おしおきされるりゆうなんてない!」
「本気でそう思っているのね……何年生きたか知らないけど、心は幼いままみたい」
幼い子供じみた言い訳をするエシラに、フレミアは憐れみにも似た表情を浮かべ。
しかし一切の容赦はせず、呪殺人形との戦いでも発動した黒焔魔竜・ヴェログルスの【ブラッディ・フォール】、全てを焼き尽くす黒焔の力を解き放つ。
「さあ、お仕置きの時間よ」
「うるさい! こないで!」
フレミアが放った【生ヲ貪リ喰ラウ黒キ焔蛇】に対して、エシラが呼び出したのは墓地に散らばるダペルトゥット・ドールの残骸を変化させたトランプ兵の群れ。
兵士たちはエシラの周りをぐるりと囲むことで、主君を守る防御陣形を取った。
しかし、そんな薄っぺらいトランプごときでフレミアの攻勢は止められない。襲い掛かる黒焔の蛇は黒い河のように押し寄せ、兵士達の身体に喰らいつき炎上させる。
「姫を守るにしてはずいぶん頼りないナイトね」
上空からは魔竜の翼を得たフレミア自身が、ヴェログルスの力と自らの魔力と合わせた黒焔の魔弾を放ち、燃え上がる兵士を粉砕していく。
「わたしのへいたいさんが……やっぱり、あなたにはおしおきがひつようだわ!」
配下を失ったエシラは眉を吊り上げながら、クイーンのチェス駒を投げつける。
それは相手のトラウマを呼び起こす言霊の刃のトリガー――肉体ではなく精神を傷つける厄介な能力だが、起点となる駒が当たらなければ意味はない。
「無駄よ」
黒焔魔弾を次々と放って、クイーンの駒を消し炭に変えるフレミア。
あっさりと攻撃を封殺されたエシラは顔を真っ赤にしながら、ならばと今度は薔薇とスミレの花吹雪を巻き起こす。
「もういい! はやくしねばいいのよ!」
「残念ね、それも届かないわ」
迎え撃ったのは【禍ツ黒焔ノ息吹】。竜巻のように燃え盛る禍々しい黒焔のブレスが、エシラの花弁をチリ一つ残さず燃やし尽くし、フレミアの元に届かせない。
「やっぱりまだお子様ね。戦い慣れてないのが丸分かりだわ」
攻撃を悉く封殺されて唖然とするエシラを見下ろしながらフレミアは呟く。
エシラのヴァンパイアとしての能力は高い。しかし致命的なまでの実戦経験の差が、百戦錬磨であるフレミア達猟兵との力の差を埋めがたいものとしている。
どうして勝てないのか、その敗因すら分からぬまま戦場で立ち尽くすエシラの腕や脚に、トランプ兵を燃やし尽くしたフレミアの焔蛇が喰らいつく。
「貴女の身勝手な我儘で死んでいった人達の恨みと痛み……思い知りなさい」
「いたっ! やめて、あつい、あついのよ、やめて!」
悲鳴を上げてじたばたする少女に、しかし蛇達は容赦せず執拗に牙を剥く。
多数の蛇に絡みつかれたその身体は、炎と闇によって徐々に蝕まれていく。
「幼い子だし、これで罪を自覚するならとも思うけど……無理よね」
この期に及んでも反省する様子の片鱗すらないエシラを、フレミアは小さくため息を吐きながら眺め――せめてもの慈悲としてこれ以上苦しまぬよう、火力を最大に高めた【禍ツ黒焔ノ息吹】を放つ。
「これで一気に焼き尽くしてあげるわ」
「ひ―――っ!!!!!」
怒涛の勢いで押し寄せる黒焔の奔流が、絡みつく黒蛇ごとエシラを呑み込む。
全てを燃やし尽くさんとするその圧倒的な熱量は、愚かなヴァンパイアの血を、肉を、骨を、そして魂を焼き焦がしていくのだった。
成功
🔵🔵🔴
シエナ・リーレイ
■アドリブ絡み可
大変だよ助けないと!
辛うじて本体が生きている兄姉達を保護していたシエナ
一段落したかと思えば兄姉達のお友達のエシラが危機に陥っています
これはいけないと真の姿の一端である仮初の体を操る繰り手を隠すのも忘れてエシラの救助に向かいます
兄姉達を大切にしてくれてありがとう。
どうにか猟兵からエシラを引き離したシエナは墓場で得た怨念に促されるままに治療を始めます
[怪力]で止血し裁縫針で傷を縫合し[毒使い]の傷薬を塗り込みます
エシラが暴れれば[怪力]で抑え[優しさ]に溢れた声掛けで落ち着かせます
薬が効いてエシラが眠ったら兄姉達と怨念が待つスカートの中の人形世界へとエシラを避難させる事を試みます
「大変だよ助けないと! とシエナは走り出します」
――その時、慌てたような大きな声を上げて駆け出したのは、シエナだった。
墓地に散らばった呪殺人形の残骸を巡り、辛うじて本体が生きている兄姉達を保護していた彼女。それが一段落しようかという時になって視界に飛び込んできたのは、兄姉達の"お友達"――すなわちエシラが危機に陥っている姿だった。
これはいけない、とばかりにシエナはなりふり構わず彼女の救助に向かう。
あまりに慌てているため、その頭上には巨大な手が――ダペルトゥット・ドールとしての真の姿の一端である、仮初の体を操る繰り手の隠蔽が解けてしまっている。
周囲にいた猟兵達もこれには驚いただろう。先刻まで共に戦っていた仲間が、実はあの呪殺人形と同族だったという正体を白日に晒しているのだから。
「大丈夫、今助けるから! とシエナは兄姉達のお友達に呼びかけます」
しかし幸運にもそのうっかりは、結果としてシエナの目的にとって有利に働いた。
猟兵達が驚いているうちに、彼女は黒い炎に包まれているエシラの元に駆け寄ると、見た目によらぬ怪力で担ぎ上げ、そのまま一目散に駆けていく。
皆の動揺から戻るまでの僅かな間に、その姿は墓場のどこかに消えてしまっていた。
「あなた……どうして……」
「兄姉達を大切にしてくれてありがとう。とシエナは感謝の言葉を告げます」
ボロボロに傷ついた吸血鬼の問いに、人形少女はにっこりと微笑みながら答える。
どうにか猟兵からエシラを引き離したシエナは、深手を負った彼女を"救う"ために治療の準備を始める――墓場で取り込んだ死者の怨念に促されるままに。
「あなた……そう、あのこたちのかぞくなのね……まって、それはなに?」
最初はほっと一安心といった様子で表情を緩めたエシラであったが、道具箱の中からシエナが取り出したものを見て、一転して顔を引きつらせる。それは明らかに救急箱のようなものではなく、出てきた物も医療器具とは到底思えなかったためだ。
「まずは血を止めて傷を縫わないとね。とシエナは兄姉達のお友達の治療を始めます」
シエナはおもむろにエシラの患部の周りをぎゅっ、と力任せに押さえつける。
止血のつもりらしいが、怪力の彼女が加減もなしにそんなことをすれば――。
「いたい! もっとやさしくして!」
肉は潰れ、骨が軋む。暴れるエシラを強引に抑え込みながら、シエナは続いて人形の整備のための裁縫針と糸で傷の縫合を始める。もちろん麻酔も消毒もなしにだ。
破れた布を繕うような気楽さで、ちくちくと肉を針で貫かれ糸で貫かれる激痛。傷だらけのエシラにとってそれは拷問に等しい所業であった。
「ひぎっ、あ、やめ、いたい、いたい、いたいっていってるの!」
「もう少し我慢してね。とシエナは兄姉のお友達を宥めます」
シエナはまだまだ"治療"を続ける。暴れるエシラを落ち着かせようとする声掛けは心からの優しさに溢れていたが、だからこそ実際の行動とのギャップが著しい。
シエナにとってこれは【友達作りの儀式】なのだ。そして彼女にとって"お友達"とは自身と同じ人形であり、友達作りとは相手を人形にする"作業"に他ならない。
「塗れば直に体が楽になるよ! とシエナは魔法のお薬を塗り込みます」
儀式の最後に使われるのは特別製の傷薬。シエナが真心を込めて、エシラに合わせて薬物の配合を調整した――相手を"楽にする"ためのお薬。オブラートに包まず言うならばそれは、献身的治療に見せかけた毒薬投与である。
「ぎ、あ、ぐ、くるし、やめ、て……」
患部にたっぷりと塗られた傷薬はたちまちエシラの体内に浸透し、その命を蝕んでいく。あまりの痛みと苦しみに耐えかねて、彼女の意識はそのままふっつりと途絶えた。
「薬が効いて眠ったみたいね。とシエナは治療の完了を確認します」
シエナは自分の行為が一般的な"治療"と真逆の行為だと気付いていない。
彼女を衝き動かしているものは、まったくの善意と純粋な好意だった。
しかし呪殺人形である彼女の本能と、取り込んだ怨念からの干渉は、どれほどの親愛と好意を向けていても相手を殺めるように導いてしまう。
同型のダペルトゥット・ドールの"おともだち"でありながら、エシラは最後までかの人形の本当の恐ろしさを知らなかった。
「今のうちに避難させないと。とシエナはスカートをたくし上げます」
シエナが開くのは【スカートの中の人形世界】。気を失ったままその中に入れられそうになったエシラは、しかし間一髪のところで意識を取り戻した。
「うう、ん……なに……ッ!!?!?!?!」
たくし上げられたシエナのスカートの内側に、彼女が見たものは――ずらりと並んだ人形と、すさまじい怨念と呪詛に満ちた世界。その中には彼女が愛した"おともだち"も、彼女が殺した死者の怨念も含まれていた。
――オイデ。
――コッチニ、オイデ。
――"オトモダチ"ニ、ナロウヨ。
「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!?!!?!」
絹が裂けるような悲鳴を上げて、エシラはシエラの手を振りほどくと、脇目も振らずに逃げ出した。少しでもあの怨念と人形の、おぞましい誘いから遠ざかろうと。
ぽつり、と置いていかれる形になったシエナは、一体何がいけなかったのだろうと首を傾げながら――"お友達"になることを拒否した彼女が闇の中に消えていくのを、ただじっと見送っていた。
大成功
🔵🔵🔵
トリテレイア・ゼロナイン
どうして…
悟る知識を教える方が居なかったのか、得ても理解できなかったのか…
どちらにせよ「時間切れ」です
ここに貴女を護るナイトはいません
花も脅威ですが死体を兵に…ならば…
銃器での●なぎ払い掃射での●武器落としや●武器受け●盾受けで防御し、近接攻撃狙いで接近
幼くとも距離の有利は認識し離れる筈
墓地整備での●情報収集で地理は把握
意図した位置…墓地の入り口と領主と私が一直線上に並ぶよう誘導
それを●見切り●怪力で剣を●投擲
その隙に遠隔●操縦し呼んだ機械馬に●騎乗しUC使用
花を突破し●串刺しついでに墓地から追放
死者を玩具としか認識できぬ貴女にこの場は相応しくありません
ルークとして立ち塞がりましょう
スピレイル・ナトゥア
私も大切なものを壊されたら悲しくなると思うので、その辺りは共感できてしまうので戦いづらいですね
それになにより、相手からの純粋な怒りが伝わってきます
このままでは、気圧されてしまいそうです
ですが、私は幽霊さんたちに領主さんを倒すと約束しました
その誓いのためにも、この世界に平和をもたらすためにも、ここで負けるわけにはいきません!
子供が周囲に迷惑なオモチャで遊んでいるときに怒るのは本来は親の役目ですが、今回は私がその役目を果たすとしましょう
トランプ兵さんたちにはゴーレムさんたちを召喚して対抗します
前衛を他の猟兵さんたちやゴーレムさんたちに任せて、私は後ろから精霊印の突撃銃でみなさんを【援護射撃】します
「いたい……くるしい……なんで……どうして……」
深手を負ったエシラ・リデルはただ一人、深夜の墓地をよろよろとさまよい歩く。
なぜ、自分がこんな目にあっているのか、どうして、自分の思うようにならないのか。
彼女にとってこの状況はまったく不条理で、理不尽なものでしかなかった。
「どうして……」
「っ?!」
再生のための場所を探す彼女の前に立ちはだかったのはトリテレイア。
事の善悪をまるで分かっていないエシラにこそ、彼は「どうして」と思う。
悟る知識を教える方が居なかったのか、得ても理解できなかったのか――。
「どちらにせよ『時間切れ』です。ここに貴女を護るナイトはいません」
贖罪の余地を与えられるには、彼女はあまりにも怨念と犠牲を生みすぎた。
この地の安寧と平穏を取り戻すために、機械仕掛けの騎士は剣を抜く。
「じかんぎれ? なにをいっているの? わたしはもっともっとあそぶんだから!」
どこまでも無垢で、それゆえに罪深い少女は、癇癪と共に薔薇とスミレの花吹雪を呼ぶ。吸血鬼の魔力を宿したその花弁は、彼女に敵対するものを迎撃する矛にして盾だ。
さらに地面からは少女の叫びによって目覚めさせられた死体が、トランプの兵士となって這い出してくる。それは意思を持たず忠実に主に仕える、彼女の護衛だった。
「私も大切なものを壊されたら悲しくなると思うので、その辺りは共感できてしまうので戦いづらいですね……それになにより、相手からの純粋な怒りが伝わってきます」
剥き出しの激情を全身全霊で表現するエシラを見て、スピレイルがぽつりと呟く。
幼く未熟だが、それゆえに混じりけのない感情の奔流。手負いの獣のように激しく荒々しい憤怒に、このままでは気圧されてしまいそうにもなる。
「ですが、私は幽霊さんたちに領主さんを倒すと約束しました。その誓いのためにも、この世界に平和をもたらすためにも、ここで負けるわけにはいきません!」
怯みかけた心を鼓舞し、己を奮い立たせるために、もう一度それを言葉にする。
突撃銃の照準を覗き込むスピレイルの瞳には、揺らがぬ決意が宿っていた。
「花も脅威ですが死体を兵に……ならば……」
敵の布陣を確認したトリテレイアは格納銃器を展開し、まずは一斉掃射で花吹雪を薙ぎ払う。銃弾に撃ち抜かれて花弁の密度が下がったところに目をつければ、大盾を前に構えながら吶喊する。
「こないで!」
怯えるように後ずさりながら、エシラは呼び出したトランプ兵を差し向ける。
しかしそれがトリテレイアの進路を阻む前に、土塊でできた埴輪のようなヒトガタの群れが地面からぬうっと現れ、立ちはだかる。
「土の精霊さん。お願いしたいことがあるんだけど……」
それはスピレイルが【土の精霊は断つ】で召喚した、土の精霊を宿したゴーレム。
脆いのが弱点だがそこそこに強く、なにより数を喚べるため、大群に対抗するにはもってこいの魔法だ。
「子供が周囲に迷惑なオモチャで遊んでいるときに怒るのは本来は親の役目ですが、今回は私がその役目を果たすとしましょう」
ゴーレムの群れとトランプ兵隊の衝突により、戦場はたちまち乱戦の様相に。
その中でもスピレイルは狙うべき相手を見失わず、後衛として突撃銃のトリガーを引く。
「きゃっ?!」
チュンッ、と頬を掠めていった銃弾に、悲鳴をあげてエシラがのけぞる。
その間にもトリテレイアはずんずんと花弁を防ぎながら距離を詰めていく。
いくら幼くて戦闘経験が乏しいエシラでも、大きくて剣を持った相手に近づかれると不利なことは分かる。接近戦を避けるように、花弁を振り撒きながら後退する。
――しかし、彼女がそう動くであろうことはトリテレイアの予測の内であった。
(墓地整備での情報収集で地理は把握しています)
(……なるほど、そういうことですか)
一気に距離を詰めるのではなくあえて後退する余裕を与え、移動先を誘導する。
トリテレイアがどこへ相手を向かわせようとしているのか、その意図を察したスピレイルも援護射撃を行う。
「こないでって、いってるのに……きゃぁっ!」
ダダダダダッと音を立てて、エシラの足元にばらまかれる炎の銃弾。
それは逃げ惑う彼女をこちらの狙ったとおりの方向へと追い立てていく。
「ここです」
ふたりがエシラを誘導した場所。それは墓地の入口とエシラとトリテレイアが一直線上に並ぶ位置取りであり、なおかつ入口までの障害物が一切ないラインだった。
"レール"の上に相手が乗ったのを確認したトリテレイアは、持っていた剣を力任せに投げつける。それを慌ててエシラが避けている隙に、待機させていた切り札を呼ぶためだ。
「出番です、ロシナンテⅡ」
馬蹄を響かせ、墓標を飛び越えてやって来たのは機械白馬「ロシナンテⅡ」。
その背に跨った機械騎士が構えたのは【艦船強襲用超大型突撃機械槍】。宇宙船の外壁すら破壊・貫通する、巨大なブースターを搭載した機械仕掛けのランスだ。
「死者を玩具としか認識できぬ貴女にこの場は相応しくありません。ルークとして立ち塞がりましょう」
彼女の好むチェスの駒になぞらえてそう宣言すると、トリテレイアは騎馬のスラスターと機械槍のロケットブースターを同時点火。迫る城塞か戦車さながらの迫力で、一直線に目標目掛けて突撃する。
「ひ……っ!!」
吹き荒れる花吹雪もその勢いの前にはなんの障害にもならない。息を呑んだエシラは咄嗟に白馬の進路上から飛び退こうとするが――タンッ、と一発の銃声が響き、少女の細い脚に穴が開く。
「いぎっ!?」
「逃げては駄目です。これはお仕置きですから」
煙のたなびく銃口を向けたまま、スピレイルが静かに告げる。
絶好のタイミングでの援護射撃。足を封じられたエシラに、もはや回避のための猶予は無い。
「貴女にはお引取り願いましょう」
「―――っぎゃぅっ!!?!?!」
直後、全速力で突っ込んできたトリテレイアの槍が、ヴァンパイアの領主を貫く。
潰れた蛙のような悲鳴を上げたエシラは、疾走を続ける機械馬によって死体とトランプ兵から引き離され、墓地の入り口から外に放り出される。
胸に大穴を開けられ、血と泥に塗れながら墓地より追放された彼女の姿は、この戦いが終わりに近付きつつあることを如実に示す有様であった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ヴェル・ラルフ
未来にも行けず、過去からやってきた残滓
人の命を虐げることでしか、遊べないかなしい生き物
──この世には、ひとと生きる喜びがあると、知らないなんて
かなしい、ね
彼女はどうやら子どもっぽいようだ
遊んであげるよ、この世の最後に
投擲用のナイフでまずは様子見
敵の動きをよく見切って、攻撃の予備動作を確認次第【反照舞踏脚】
雪合戦、ってとこかな
当たったら命取りだけれど
避け続ければ、彼女の苛々は募るだろう
苛つきによる隙を見逃さず
彼女の隙に乗じて早業で背後から一思いに胸をひと突き
焼けた己の身よりも、尚
苦しいこの世界の連鎖
君もいつか、抜け出せますように
★アドリブ・連携歓迎
「未来にも行けず、過去からやってきた残滓。人の命を虐げることでしか、遊べないかなしい生き物」
墓所より追放されたエシラの前に立ち、ヴェルは憐れむような視線を投げかける。
怒りや殺意よりも彼の心を占めている感情は、何がこの悲劇を招いたのかも理解していない目の前の少女に対する、哀しみの情が深かった。
「──この世には、ひとと生きる喜びがあると、知らないなんて。かなしい、ね」
人形を友と呼び、孤独に君臨してきた彼女に、それを知る機会は無かっただろう。
そして、今からそれを知ろうとするには、もはや全ては遅すぎた。
「なに……なんなの。そんなめで、わたしをみないでよ……!」
満身創痍のエシラ・リデルは、ヴェルの視線に怒りに満ちた眼差しで応じる。
彼女も誇り高い吸血鬼の一人。憐れみや哀しみなど侮辱としか感じないだろう。
幼稚な怒りを力に変えて立ち上がったその手には、大事な遊び道具のひとつ、黒いクイーンのチェス駒が握りしめられていた。
「遊んであげるよ、この世の最後に」
どうやら彼女は子供っぽいようだ。そう理解したヴェルはまずは様子見とばかりに投擲用のナイフを放つ。夜気を切り裂いてキラリと閃く白刃を、エシラは傷ついた身体に鞭打ってどうにか躱す。
「わたしをいじめるわるいこには、おしおきよ!」
お返しに投げつけられたクイーンの駒。それ自体に大した力は無いが、迂闊に触れれば危険なのはこれまでの戦いからよく見知っている。慎重に軌道を読みながら身をかわし、投擲のモーションや予備動作を観察して、まずは回避に専念する。
「雪合戦、ってとこかな。当たったら命取りだけれど」
クイーンを避けて、ナイフを投げ返して。危険な遊戯を続けながらヴェルは笑う。投擲の応酬が続く中で、彼の予測と見切りのセンスは徐々に研ぎ澄まされていく。
「はぁ、はぁ、はぁっ……じっとしてなさい!」
息を荒げながらナイフを避けるエシラは、苛立ちを込めてえいっと駒を投げる。
分かりやすいオーバースロー。もはや完全に動きを読みきったヴェルは【反照舞踏脚】を放ち、飛んできたチェス駒を蹴り砕く。
「このっ、このっ、このっ!」
躍起になって何回繰り返そうとも結果は同じ。靭やかに舞うように放たれる蹴撃の輪舞曲は、間合いに入ったものを一つ残らず叩き落としていく。
「どうして、どうして当たらないのっ!」
当たらないどころか、本当に遊ばれているように余裕であしらわれている。
エシラの苛立ちは募り、さらに蓄積したダメージと疲労が注意力を散漫にする。
そこに生じるまばたきほどの隙を見逃さず、ヴェルは彼女の視界から消えた。
「っ?! どこに――」
ヴェルの本領は暗殺術。間隙に乗じて死角に入り、背後に回るなど造作もなく。
朱い影法師のように立つその手には、黒塗りの短剣「暮れの鈴」が握られている。
「―――っ、かは、っ!?」
言葉はなく、音もなく、一思いに突き出された黒刃が、エシラの胸を突き刺す。
喀血し、ふらふらとよろめく少女は、信じられないといった表情で振り返り、そこに立っていたヴェルを見る。
「どう、して……」
それ以上は言葉にならなかった。彼女の心には砂漠の太陽のような怒りが燃えたぎっているが、ダメージを負いすぎた肉体はもはや精神についてこれない――しかしヴェルは、今の一撃で彼女を仕留められなかったことに微かな悔恨を抱いていた。
(少しだけ狙いがずれた。心臓を貫けなかった)
先の戦いで負った、未だその身に残る生々しい火傷の痛み。
それが攻撃の瞬間に僅かではあるが、彼の動きを鈍らせたようだ。
「おぼえて、いなさい……!」
絞り出すような捨てゼリフを残して、ふらつきながら逃げていくエシラ。
追撃するのは容易だったが、なぜか今のヴェルはそうする気が起きなかった。
「焼けた己の身よりも、尚、苦しいこの世界の連鎖。君もいつか、抜け出せますように」
火傷の痕をなぞりながら、慈しみと悲しみに満ちた眼差しで少女を見送る青年。
何れにせよあの傷ではもう逃げ切れないのも分かっている。墓所で彼が望んだかなしい連鎖の終焉は、もうすぐそこに迫っていた。
成功
🔵🔵🔴
リーヴァルディ・カーライル
…ん。どうして、ね。
それは今までのお前の行いが自身に返ってきただけ。
…それが分からないと言うならば、“私達”が教えてあげる。
左眼に取り込んだ魂の呪詛と自身の生命力を吸収してUCを発動
【血統覚醒】を九重発動して吸血鬼の血の存在感を増幅
全身に真紅の魔力を溜め残像が生じる速度で突撃する
…血によりて生くる者、血によりて滅びぬ。
…吸血鬼らしく。蹂躙してあげる。
吸血鬼の第六感を頼りに敵の殺気を見切り回避しつつ、
真紅のオーラで防御を貫く大鎌を怪力任せに叩き付けた後、
傷口を抉る連続攻撃(2回攻撃)を行い、大鎌をなぎ払い吹き飛ばす
…少しは理解できたかしら、シエラ・リデル?
吸血鬼に虐げられる“人間”の気持ちが…。
「どう、して……なんで、わたしが……」
傷ついた身体を引きずりながら、よろよろと夜の闇を歩くエシラ・リデル。
猟兵達の怒りと力の前に打ちのめされた、それは無様な遁走であった。
しかしこの期に及んでも、彼女は己の成した罪を理解しようとはせず、なぜ、どうして、と、無知なる問いを繰り返す。
「……ん。どうして、ね。それは今までのお前の行いが自身に返ってきただけ」
そんな彼女の前にすうっと立ちはだかったのは、黒衣纏いしダンピールの少女。
漆黒に染まりし大鎌を担ぎ、威圧的な存在感を発するその様は、まるで死神。
「……それが分からないと言うならば、"私達"が教えてあげる」
彼女――リーヴァルディにエシラを逃す理由はない。そして"彼ら"にも。
見開かれた左眼の聖痕が、亡霊たちの怨念でギラリと輝いた。
「な……なによ、あなた。おしえてあげるって、なにをよっ」
ぎゅぅっとクイーンのチェス駒を握りしめながら、震える声でエシラは叫ぶ。
まさしく"鬼気迫る"相手の存在感に、世間知らずなこのヴァンパイアは完全に呑まれていた。
「……限定解放。代行者の羈束、最大展開開始」
超然とした佇まいでリーヴァルディが起動したのは【限定解放・血の光輪】。
左眼に取り込んだ魂の呪詛と術者の生命力を引き換えに、聖痕の主たる"名もなき神"の力の証、巨大なる血色の光輪が彼女の背後に現出する。
「……血によりて生くる者、血によりて滅びぬ」
時を圧縮するその力を以ってリーヴァルディが為すのは【血統覚醒】の九重発動。
その身に流れるヴァンパイアの血の力を増幅することで、あふれ出す魔力は真紅に輝き、全身には力が漲る。その存在感は、純粋なヴァンパイアであるエシラ以上。
「……吸血鬼らしく。蹂躙してあげる」
冷たく酷薄な――まさにヴァンパイアらしい微笑を浮かべながら構えを取り。
直後、少女は残像だけをその場に残して、猛然とエシラに突撃を仕掛けた。
「ひ……っ、こないで! きえなさい!」
"自分以上"の存在感に気圧されながらも、エシラはクイーンの駒を投げつける。
しかし吸血鬼化によって第六感も研ぎ澄まされている今のリーヴァルディに、そんな殺気が丸分かりの攻撃が当たるはずもない。速度を落とさずにひらりと身を躱しながら、標的の懐までするりと潜り込む。
「……悪い子には、お仕置きね」
真紅のオーラを纏った大鎌を、ぶぉんと力任せに叩きつける。吸血鬼狩人として磨き上げた"技"は敢えて使わない、ただの身体能力にものを言わせただけの一撃。
しかし覚醒した吸血鬼の"力"はそんな技術に頼るまでもなく、あらゆる防御を貫いて風よりも疾く命を奪う、恐るべき破壊の御業となる。
「ひ、ぁッ―――!!!?!?!」
闇夜に閃いた斬撃は、反応すらも許さずにエシラの身体を深々と斬り裂いた。
一拍遅れて"斬られた"と認識した少女の口から悲鳴が出るよりも速く、リーヴァルディは二撃目の構えを取っている。振るった鎌の勢いを殺さずに弧を描くように回転させ、初撃よりも深く、速く、鋭い斬撃が放たれた。
「……彼らの怨念、その身に刻みなさい」
「ぎゃ……ッ!!!!」
刃を覆う真紅の魔力が、刻みつけた傷をさらに深く抉る。大鎌になぎ払われたエシラの身体は、血まみれのボロ雑巾のような有様で、彼方に吹き飛ばされていった。
「う、ぎ、ぃ、が、ぃたい、いたぃ……」
「……少しは理解できたかしら、シエラ・リデル? 吸血鬼に虐げられる“人間”の気持ちが……」
あまりの激痛と出血で立ち上がることすらできない小娘に、リーヴァルディは酷薄に告げる。これが今までお前が虐げてきた人々の痛みと苦しみ、そして絶望だと。
朦朧とする意識の中で、エシラ・リデルは初めて"死"の気配を感じ、恐怖した。
誰かから奪うことが当たり前だった者が、誰かに奪われることを恐れ始めたのだ。
大成功
🔵🔵🔵
アリソン・リンドベルイ
【WIZ 禁樹・黄金の枝】
生存競争を、しましょう。
貴方は貴方で、ただその在り方であっただけ。山の狼を、荒野の獅子を、恨み憎しみ怒ることは…私には難しいです。たとえ、それが人々の怨嗟と悲嘆を産むと理解っていても……やっぱり、私は、こういうのが得意ではありません、ね。
『生命力吸収、破魔、覚悟』 ーーーですから、恨んでください。憎んでください。怒ってください。私は、理不尽に貴方から全てを奪います。この枝は、弑逆と簒奪を象徴するヤドリギの枝。担い手ごと全てを喰らう禁樹。……草木や鳥獣に、善悪はありません。ただ、貴方も私も、時が来れば滅びて朽ちるだけ。…ただ、その時を早めた咎は、私の意志で背負います。
「生存競争を、しましょう」
"死"の恐怖を理解しはじめたエシラに、静かにそう告げたのはアリソンだった。
血まみれで蹲っている吸血鬼を見つめる眼差しは穏やかで、しかし迷いはない。
「貴方は貴方で、ただその在り方であっただけ。山の狼を、荒野の獅子を、恨み憎しみ怒ることは……私には難しいです」
たとえ、それが人々の怨嗟と悲嘆を産むと理解っていても。自然と共に生き、草花に囲まれて過ごすアリソンには、我が侭に生きるものを責めることはできなかった。
「……やっぱり、私は、こういうのが得意ではありません、ね」
自嘲するような響きを言葉に滲ませながら。少女の身体が、枝に覆われていく。
それは【禁樹・黄金の枝】――己を喰らい、敵を喰らい、全てを喰らうヤドリギの枝だ。
「―――ですから、恨んでください。憎んでください。怒ってください。私は、理不尽に貴方から全てを奪います」
覚悟を込めた宣言と共に、アリソンは我が身を貪るヤドリギを差し向ける。
その枝から、ただならぬ脅威を直感的に悟ったエシラは、ボロボロの身体に鞭打ちながら跳ね起きると、懸命に枝から逃れようとする。
「いや……いや、いや、いや! わたしは、うばわれるのはいや!」
切実なる悲鳴に答えて現れたのは、散らばる人形の破片から変化したトランプ兵。
されど不完全な素体から作られた兵士は戦闘力も脆弱。迫りくるヤドリギの枝の前に立ちふさがり、ただ壁になることしかできない。
「この枝は、弑逆と簒奪を象徴するヤドリギの枝。担い手ごと全てを喰らう禁樹」
命を吸われていく痛みを表に出さないようにしながら、詠うように囁くアリソン。
黄金の枝は貪欲にどこまでも枝を伸ばし、邪魔なトランプからまずは絡みつくと、あっという間に根を張って、魔力も何もかもあっという間に奪い去っていく。
「やめて! こないでってば! やめないとおしおきよ!」
きいきいと甲高い悲鳴を上げながら、エシラは必死にアリソンと枝から遠ざかろうとする。しかし彼女が敵意や悪意を示せば示すほど、それに吸い寄せられるようにヤドリギの伸びるスピードは速くなる。
「いや、ぁ―――っ!!!!」
ついにヤドリギに捕らえられたエシラの口から、絹を裂くような悲鳴があふれる。
黄金の枝は少女の傷を抉り、肉を裂き、血を啜り、骨に根を張る。禁樹と呼ばれるに足るその恐ろしさ、生命を根こそぎ奪われる激痛は筆舌に尽くしがたい。
「……草木や鳥獣に、善悪はありません。ただ、貴方も私も、時が来れば滅びて朽ちるだけ。……ただ、その時を早めた咎は、私の意志で背負います」
その光景をアリソンは痛ましげに、しかし決して目を背けずに見つめていた。
これは、貴方と私の生存競争。これを為したのは自分なのだと、胸に刻むために。
大成功
🔵🔵🔵
エンジ・カラカ
アァ……鼻の曲がりそうな匂いダ。
甘ったるいハナの匂い……。
嫌だ嫌だ。
賢い君もそう思うだろう?
それに、頭の高いヤツは嫌いなンだ。
やってしまおうそうしよう。
オトモダチ?知らない知らない。
オトモダチ?そんなのいた?いなかった!
先制攻撃で仕掛ける。
あくまでも立ち回りは支援。
敵サンへの攻撃や一撃は味方任せ。
属性攻撃は賢い君の毒。
毒をばら撒いて敵サンの動きを鈍らせるのサ!
敵サンの攻撃は見切りで回避して
それから一気に間合いを縮めて2回攻撃。
狼の足は素早いのサ。
素早さを生かした戦い方で追い詰める追い詰める。
アァ……頭の高いヤツってワガママだよなァ……。
神元・眞白
【SPD/割と自由に】
必要みたいだし返してあげよう。
形は残してあるから1から始めてもらわないといけないけど。
…違う?…返してあげても帰ってくれないと。なら、少し話し合い。
違う遊び方とか違う人形の動かし方、ミレナリィドールもいることだし
勉強すればきっとできるはず?私達も似た様なもので動いているし。
こんな世界だけど色々探して…協力してもらえれば。
……うん、分かってもらえないなら仕方ない。私の説明が下手だっただけ。
彼女の想いを聞いてそこから始めよう。分かり合えないのは悲しいこと。
飛威、サポートはお願いね。私は、きっと知りたい事に頭が一杯になるから。
何が彼女を突き動かすのか。
「アァ……鼻の曲がりそうな匂いダ。甘ったるいハナの匂い……」
ゆらありと、毒のしたたる拷問具を担ぎながら、エンジが呻くように呟く。
墓場に充満する薔薇とスミレ。一緒に薫りはじめてきた血の匂いはさておくとして、これは彼にとってあまり好ましいものではない。
「嫌だ嫌だ。賢い君もそう思うだろう?」
相棒に同意を求めつつ、幽霊のような足取りで向かうのはこの匂いの元凶。
どこに逃げようともすぐ分かる。嫌な匂いは元から絶ってしまおう。
「それに、頭の高いヤツは嫌いなンだ。やってしまおうそうしよう」
満身創痍のエシラを見つけたエンジは、相手がこちらに気付く前に機先を制す。
【賢い君】から放たれる毒の宝石。吸血鬼すら蝕む猛毒を辺りに撒き散らす。
「う……っ、げほっ! なによ、これは……」
ふいに大気に混ざった違和感を感じながら、苦しそうに咳き込むエシラ。
一度似たような攻撃を受けていた彼女は、それがすぐに猟兵の攻撃だと気付く。
「どうして、こんなめにあわなければ、いけないのかしら……!」
口元を押さえながら毒の範囲から逃れ、エシラは憎々しげな表情でエンジを睨む。
それはどう考えても逆恨みだったが、無知な彼女にとっては自分の感情が真実。
「わるいのは"おともだち"をこわした、あなたたちのほうでしょう!」
「オトモダチ? 知らない知らない」
癇癪と共に投げつけられたクイーンの駒を、青年はへらりと笑いながら避ける。
度重なる負傷に毒の作用。相手の動きはもう亀のように鈍りきっていた。
駒を躱した動きから流れるように、そのまま一気に間合いを縮める。
「オトモダチ? そんなのいた? いなかった!」
「きゃぅっ!!」
人狼の俊足を活かしたヒット&アウェイ。放たれた鱗片がエシラの身体を2度刻んだ直後、エンジの姿はもう手の届かないところまで離れている。彼の立ち回りは相手を仕留めるよりも、こうして弱らせて味方を支援することに重きが置かれていた。
「ちょこまかと、しつこいわんこね……!」
エンジの素早さについていくことができず、ふらふらのエシラの足が止まる。
そこに、ひとつの人形を抱えた娘が、白い髪をなびかせながら彼女に近寄った。
「必要みたいだし返してあげよう」
「……? なにかしら、あなたは」
その娘――眞白が差し出したのは綺麗に整備されたダペルトゥット・ドール。
もっとも、癒やしの力で呪詛と怨念を浄化されたそれは、もうただの人形だが。
「形は残してあるから1から始めてもらわないといけないけど」
「……いらないわ、こんなこわれたおにんぎょう!」
純粋な好意から差し出された元"おともだち"を、エシラはぱしりとはたき落とす。
こうすれば満足してもらえると思っていた眞白は、不思議そうな顔で首を傾げる。
「……違う? ……返してあげても帰ってくれないと。なら、少し話し合い」
人形が動かなくなったのが不満なら、人形遣いとして力になれるかもしれない。
死者の魂や怨念のほかにも、違う遊び方や違う人形の動かし方は幾らでもある。
「ミレナリィドールもいることだし、勉強すればきっとできるはず? 私達も似た様なもので動いているし。こんな世界だけど色々探して……協力してもらえれば」
「うるさい、うるさい、うるさいっ!」
一生懸命に意図を伝えようとする眞白の言葉を遮り、癇癪を起こしたようにエシラが暴れだす。その様子を見守っていた戦術器「飛威」は、咄嗟に主人をかばって吸血鬼の元から引き離した。
「そんなことをしたって、ぜったいにゆるさないんだから……!」
まるで手負いの獣のよう――事実そのとおりな有様で、怒りを剥き出しにするエシラ。やはり何がいけなかったのだろうかと、飛威にかばわれた眞白は首を傾げる。
「……うん、分かってもらえないなら仕方ない。私の説明が下手だっただけ」
分かり合えないのは悲しいことだ。まずは彼女の想いを聞いてそこから始めようと、めげない眞白は白金の召喚符を取り出して、ふっと放り上げて――。
「飛威、サポートはお願いね。私は、きっと知りたい事に頭が一杯になるから」
何が彼女を突き動かすのかを知るために、人形遣いの令嬢は【百器夜行】を発動した。
「こんどは、なんのつもり……?!」
訝しむエシラの眼前に出現したのは、何十体という眞白の分身人形たち。
ひとりひとりが自作の戦術器を操る彼女たちは、「答えを知りたい」という想いに衝き動かされて目標に殺到する。
「ねぇ、教えて――?」
「な、なにかしら、なんなのかしらっ」
同じ顔をした群れに一気に詰め寄られたエシラは、恐怖を感じて分身を払いのけようとする。しかしそこに護衛役の飛威と戦術器たちが割って入り、逆にエシラは彼女らの反撃を受けることになる。
「きゃぅっ!? やめて、やめて……っ、ごほっ!」
双刃が切り裂き、血飛沫が舞う。悲鳴を上げたエシラの口から溢れたのは喀血。
――そう、ふたりが話している間にも「賢い君」は毒を撒き続けていたのだ。
「アァ、これは面白い。人形たちのお祭り騒ぎダ」
突如として出来上がった混戦状態。この状況をエンジは撹乱のために活用する。
答えを求める分身たちの間をするりと俊敏にかいくぐり、人形の影から死角に回り込んで、背後からの奇襲を仕掛ける。
「このまま追い詰めようそうしよう、賢い君、できるよなァ……?」
「ひ、ぐ……っ!!」
放たれた赤い糸がエシラの腕に、足に、そして首に絡みついて動きを止める。
抵抗しようにも「賢い君」には対象のユーベルコードを封じる力もある。もがいても薔薇とスミレの花弁は散らず、助けてくれるトランプの兵士も出てこない。
鳥の羽をむしるように、丁寧に、丁寧に、エンジは獲物の力を削ぎ落としていく。
「どう、して……なんで、わたしのおもいどおりにならないの……!」
封じ込められたエシラの口から、絞り出すような怒りの言葉が漏れる。
彼女を突き動かしているのは、"おともだち"を壊されたことではない。
世間知らずのお嬢様で、自分のためなら他者は犠牲になって当然だと思いこみ、好きなように生きてきた彼女は「自分の思い通りにならないこと」が許せなかった。
無垢で傲慢で幼稚で無邪気。それがエシラ・リデルという少女の在り方。
「アァ……頭の高いヤツってワガママだよなァ……」
エンジもこれには少し呆れたように肩をすくめながらも、賢い君を操り続け。
戦場に撒かれた毒によって、もはやエシラは完全に追い詰められていた。
――果たしてこれが、眞白にとって納得のいく答えだったかは分からないが。
いずれにせよ、エシラが自らの傲慢の報いを受ける時は間近に迫っていた。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
シャルロット・クリスティア
等価交換……を説いても無駄でしょうね。
この少女にとって、人形の"材料"など、それ以上の価値も無かったことでしょう。
……故に、こちらもこちらの都合で討たせて頂く。
道徳も正義も関係ない。ただ、無念と怒りを以て。
花ならよく燃える事でしょう。
ショットガン仕様に調整した術式弾……ばら撒かれる炎の散弾です。
飛んでくる花弁を撃ち落とすには十分。地形の花にも延焼してしまえばしめたものです。
怒って敵視がこちらに向くのであれば、それはそれで他の人も戦いやすくなるでしょうし。
隙を見せるのであれば、もう片方の手にエストックを握り、その胴を貫いて差し上げましょう。
理解できぬままの詫びなどいりません。……消えろ。
「どう、して……なんで……わたしが、こんなめに……」
「等価交換……を説いても無駄でしょうね」
息も絶え絶えの有様で、なぜ、と壊れたオルゴールのように繰り返すエシラ・リデルの前に現れた最後の猟兵は、魔導銃士シャルロット・クリスティア。愚かな少女に向けられるその眼差しは、その言葉は、まるで氷の棘のように鋭く冷たい。
「貴女にとって、人形の"材料"など、それ以上の価値も無かったことでしょう」
壊された人形のために虐げられた人々の苦しみと、自らの受けた苦しみや痛みが等価なものであると、この少女はついに理解することは無かった。どんなに追い詰められても、彼女はただ自分の都合を主張することしかしない。
「……故に、こちらもこちらの都合で討たせて頂く」
その双眸に静かに燃えるは青き激情。
思考は冷静に保てども、消ゆることなき魂の劫火。
今宵の想いは、彼女ひとりだけのものではない。
「道徳も正義も関係ない。ただ、無念と怒りを以て」
無念はすべて引き受けた。
怒りも憎しみも託された。
祈りと誓いを果たすときは、今だ。
「う……ぁ、あぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!!!!!」
怒れる銃士の瞳から最大級の恐怖を感じたエシラは、狂ったように絶叫を上げた。
拘束する糸を無理やり引きちぎり、満身創痍の身体で立ち上がる。零れ落ちた血の雫は真っ赤な薔薇とスミレの花びらとなって、美しくも禍々しく戦場に咲き乱れる。
「いやよ……いやよ、いや! わたしはしにたくない!」
生存本能に衝き動かされるままに放たれたユーベルコードの花吹雪。
迫り来る怒涛の殺意を前に、シャルロットは脚のホルスターから銃を抜く。
「花ならよく燃える事でしょう」
銃身を切り詰めた水平二連式ショットガンの銃口が火を噴き、散弾仕様に調整した【術式刻印弾・炎爆】が炸裂する。ばらまかれる炎の散弾は、真っ赤な彼岸花のような軌跡を描いて薔薇とスミレを焼き払う。
火力を散らしたとはいえ飛んでくる花弁を撃ち落とすには十分な威力。さらに焼けた花弁と散弾の余りは地面にも降り注ぎ、草花に延焼してまたたく間に燃え広がる。
「―――っ!! あ、あついっ」
一瞬のうちに紅蓮に染まった地形の中で、エシラの表情が驚愕と絶望に染まる。
髪やドレスにかかった火の粉を、慌てふためきながら払うその様は、踊り狂っていいるかのようだ。
「隙を見せましたね」
シャルロットはショットガンの銃口を下げると、炎上する戦場を駆け抜ける。
もう片方の手に握られたエストックの切っ先が狙うのは、呪わしき吸血鬼の心臓。
エシラがはっと気付いたときにはもう遅く――刃は彼女の胴を深々と貫いた。
「かは……っ!?」
喉の奥から血反吐があふれる。突き刺さった刃をぐっと掴んでみても、抜けない。
少女はその時、シャルロットの瞳を、触れ合うほどの距離で直視した。
多くの人々の怒りと無念を託されたその眼差しに、彼女はなにを感じたか――。
「ぁ―――ごめん、なさい。ごめんなさい、ごめんなさいゆるしてゆるしておねがいたすけていやよしにたくないしにたくないしにたくないしにたくないしにたくないしにたくないしにたくないしにたくないしにたくない―――ッ!!!!!!!」
「理解できぬままの詫びなどいりません。……消えろ」
ぐっと刀身に力を入れると、捻り込まれた刃がずぶりと心臓を抉る。
その瞬間、吸血鬼エシラ・リデルはかっと目を見開き、言葉の出ない口をぱくぱくと動かし――ざぁっ、と、無数の薔薇とスミレの花弁となって散っていった。
静寂に包まれた戦場で、シャルロットはエストックについた血を払う。
死者との誓いは、ここに果たされた。
――かくして、生者と死者を弄ぶ呪われた人形遊戯はここに閉幕する。
もはやこの地の人々が虐げられることも、死の尊厳を奪われることもない。
怨嗟の消えた墓地は、今度こそ本当に、死者が安らかに眠る地となったのだ。
大成功
🔵🔵🔵