ここはアックス&ウィザーズにある、とある自然地帯。
謎の気候現象により、四季を問わず雪が降ったり、炎天が続いたりする、
実にワイルドなエリアなのだ。天候によって出てくる魔獣も異なるらしい。
そんなワイルドなエリアの一つ『砂の海』を進むのは、魔法の力で動く不思議な砂船。
「ソイヤ!」
「ソイヤソイヤ!」
「ソイヤソイヤソイヤ!」
なぜか乗組員はみな屈強なガチムチ親父で、全員ふんどし姿でソイヤしていた。
さて、この実に暑苦しい連中が、なぜこんな砂漠を進んでいるかというと……。
ザバァ! と、突然砂の山が砕け、見上げるほどの巨体が出現した。
「出たぞ! "ビッグマックス"の登場じゃあ!」
「「「ソイヤ! ソイヤ!」」」
どうやらそいつは巨大な蟹である。実に、巨大でマックスというべき威容だ。
特に恐るべきポイントは、片方のハサミが異様に巨大でマックスであることだろう!
なので、この巨蟹はビッグマックスと呼ばれていた。ここは奴の巣穴なのだ。
『『『キュキューッ!』』』
さらに巨蟹の体から、無数の空を舞う不思議な魚の群れが出現すると、
尻尾から竜巻を起こして船を揺らし、ガチムチ親父たちを苦しめる。強敵!
「今日こそ(食材的な意味で)ゲットするんやぜ、ビッグマックス……!」
よくわからない語尾が特徴的な船の長が、ぐっと握り拳を作って呟いた。
そんな船長の隣には、今回の漁に同行した、依頼主であるドワーフがひとり。
「……これ、本当に大丈夫なんかのう……?」
特徴的な兜とヒゲで素顔が定かならぬドワーフの名は、ガラット・ナティビアード。
幻の珍味と謳われるビッグマックスを求め、この地に来た依頼人であった……。
●グリモアベース:ムルヘルベル・アーキロギアはお腹が空いていた
「その巨蟹とやらがな、これがまた実に絶品らしい」
宝石めいた賢者は、自らの視たヴィジョンを説明し終えると、そう付け加えた。
しかし残念ながら彼の視た予知では、漁師たちは全滅し砂の露と消えてしまう。
「オブリビオン相手の犠牲を、わかっていて見過ごすのも寝覚めが悪い。
そしてこう、無事に完遂すれば旨いおこぼれにあやかれるはずであるゆえ、
ワガハイはオヌシらに巨蟹の討伐を頼みたいのだ。いや、腹は減っておらぬ」
ややグリモア猟兵の欲望が漏れている気がするが、それはさておこう。
ともあれ猟兵たちが冒険者として名乗りを上げれば、同行は簡単に許されるだろう。
そもそもの依頼主(といってもあちらが猟兵に仕事を頼んだわけではない)である、
ドワーフのガラットは、以前とある件で猟兵たちに救われた人物だ。
そのため、現地までの移動については、なにか齟齬が起きる心配はない。
「問題は食材……ではなく、戦力であるな。まずは空中を泳ぐ奇妙な魚の群れである。
こやつらは『エアティック・フィッシュ』といって、ひたすらに数が多い。
加えて身が締まっていて美味……ではなく竜巻を起こしたりする能力があるようだ」
巨蟹を(食材的な意味で)ゲットするには、まずこいつらを斃す必要がある。
なおこいつらもこいつらで、特に鍋にすると絶品らしいので、実に楽しみと言える。
「巨蟹……現地住民の間からは"ビッグマックス"という二つ名で呼ばれるこの個体は、
その名の通り実に巨大なハサミであたりを薙ぎ払ったり、分身体を生み出すようだ」
ただし、分身体はまずい。数も厄介だが、分身体は実際不味い。
大事なことなので二回書きました。本体を仕留めるのが重要である。
「あと消し飛ばしたり身が損なわれるような極端な破壊をするとワガハイが困る。
いや違う、そのあとのご馳走が……ではなく、まあとにかく問題なので注意せよ」
できるだけ多くの可食部位を確保したければ、ある程度考えて戦う必要があるだろう。
いずれにせよ斃すことができれば、あとはP.A.R.T.Yの開始だ。
「ドワーフの里で歓待を受けることが出来るのではないかな。彼らはお祭り好きゆえ。
……蟹を使った巨大な鍋……うむ、実によい。蟹味噌とかも酒のあてによさそうだ」
楽して美味しいところを頂くつもり満々のムルヘルベルであった。
「……はっ。いかんいかん、転移させる前から心が宴のことで一杯になってしまった。
あー……"酒は呑んでも呑まれるな"。つまりそういうことなので、健闘を祈る」
だいぶ雑な恒例のやつとともに、涎を拭って本を閉じる賢者。
それが、転移の合図となった。
唐揚げ
蟹鍋です。冬といえばやっぱりお鍋だと思うんですよ。
巨大でマックスな食材をゲットしてP.A.R.T.Yしましょう。
以下のシナリオまとめとルール説明を、念のためご一読ください。
●シナリオの目的
『食材(ルビ:オブリビオン)をゲットする』
●各章の概要
1章:『エアティック・フィッシュ』(集団戦)
空を飛び竜巻を起こす能力を持つ不思議な魚の群れ。とても数が多い。
身は締まっていて鍋にすると相性がよく、刺し身やフライにしてもいけるらしい。
2章:『二つ名持ちの巨蟹』(ボス戦)
"砂の海"に潜む巨大でマックスなボス蟹。二つ名は"ビッグマックス"。
片方のハサミがひたすらデカく、これで薙ぎ払ったりギロチンしたりする。
鍋の具材にするとめちゃくちゃ旨く、蟹味噌は酒のあてとして絶品らしい。
3章:『冒険者の店で大宴会!』(日常)
ガラットの住むドワーフの里にゲットした食材を持ち込み宴会をします。
食材を持ち込んだりしてもいいので、とりあえず新年会ということで騒ごう。
●NPC
『ガラット・ナティビアード(あるいは"無敵の"ガラット)』
『乾杯、ハイホー、もう一杯!』というシナリオで登場したドワーフの戦士。
大きな兜とヒゲで顔は隠れているが、実は女性。酒を呑んで騒ぐのが大好き。
『漁師の皆さん』
なぜかふんどしを締めている屈強な野郎どもの群れ。掛け声は『ソイヤ!』
それ以外の設定は特にない。賑やかしであり戦闘に寄与したりはしません。
●プレイング採用について
頂いたぶんは問題がない限りなるべく採用するつもりです。
章ごとにプレイング受付期限を設けますので、ご注意ください。
じゃあまあ、そんな感じで楽しみましょう。よろしくお願いします。
第1章 集団戦
『エアティック・フィッシュ』
|
POW : キュウ!
【憎悪】の感情を爆発させる事により、感情の強さに比例して、自身の身体サイズと戦闘能力が増大する。
SPD : キュルルー!!
【瞳を黒くする】事で【緊急撃退モード】に変身し、スピードと反応速度が爆発的に増大する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
WIZ : キュゥーン
【尻尾】から【竜巻】を放ち、【風圧】により対象の動きを一時的に封じる。
イラスト:白狼印けい
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●アックスアンドウィザーズ:ワイルドなエリア、"砂の海"
『『『キュキューッ!』』』
ざばぁあああ!! と砂の柱が立ち上がり、巨大な蟹のシルエットが現れた。
その中から甲高い鳴き声とともに飛び出す、無数の空飛ぶ魚の群れ!
「あっ! あれはエアティック・フィッシュじゃ! 珍しいのう!」
砂船の甲板に出てきたガラットが、砂の中に舞う魚群を見て声をあげた。
「くそー、わしの斧が届きさえすれば! この身長では背伸びしてもダメじゃ!
すまんがお前さんたち、あいつらをどうにかして仕留めてほしいんじゃ!」
「「「ソイヤ!」」」
ふんどし姿のガチムチ船乗りたちがハープーンを投擲する、が……駄目だ!
縦横無尽に空を舞い、砂嵐を起こす魚の群れを斃すには、猟兵の力が必要だ!
多分だけど電気とか草とかなんかそういう技が効果あるんじゃないか?
とりあえず美味しそうだし倒そう!
●プレイング受付期限
開始:いまから
終了:2020/01/14 18:00頃
多々羅・赤銅
寿司(鮮魚)だーーー!!!
鍋だっけ?刺身も美味い?砂の海の魚って味がぎゅっと引き締まってて旨そうだよな〜
軽快に話しつつ、刀持つ腕をぶんぶん回す。
高くて砂嵐と来ちゃあ私みたいな刀一筋〜みたいなやつはよーく回しておかねえとなー。
でかくなってない?寿司扱い怒った?
……お得じゃん。
やーーい今が旬!おいしい白身魚ちゃん!!骨まで残さず食べちゃうぞ!!!
食う前提の挑発をガンガン掛けて憎悪を煽ってこ!
魚がよくよく膨らみ襲いかかってきた頃合いにぃ
腕を止め、構え。
羅刹旋風、
天まで届く大嵐、一切合切叩き落とす。
落ちて来たぞー!ねー皆!イカす筋肉!あれキャッチしてして、いいとこ見せて!
ヒュー!カッコいい、抱いてー!
●寿司三昧
「寿司だーーーーー!!!!」
エアティック・フィッシュの群れを見るなり、多々羅・赤銅は快哉を上げた。
『『『キュウンッ!?』』』
よだれを垂らしながら目をキラキラさせる赤銅の"圧"に、あっちもビビっている。
"捕食者"の目であった。なんならもう寿司ネタになった形しか見えていない顔だ。
シンプルな寿司にしてよし、すり身を軍艦に乗せてよし、魚卵という手も……。
「これこれ、あやつらは鍋にしても絶品なのじゃぞ?」
つんつん、と横からガラットが横槍を入れる。
「あ、そうだっけ? いや~どれも美味しそうで迷っちゃうね!」
「って、まだ倒しとらんうちから食い気張ってどうするんじゃ!!」
ずびしぃ! と見事なツッコミを喰らい、赤銅ははっと我に返った。
そうだ、まだ戦ってすらいない。それに蟹までいるのだ……(砂の)海の幸!!
「んじゃま、気合入れていこうかなー!」
刀を持つ側の肩に手を置いて、ぐるぐると腕を回す。
十分に力を蓄え、螺旋旋風によって敵を吹き飛ばそうというわけだろう。
すると見よ。危険を察知したエアティック・フィッシュの群れがわらわら集まり、
8メートルを超える巨大な一匹の魚めいた群れの姿を表したではないか!
「おおっ? もしかして寿司扱い、怒った? ……お得じゃん」
『キュウ……!?』
馬鹿な。この巨影を前にして怖気づかないとは、なんたる食欲!
「やーーーい、今が旬! 美味しい白身魚ちゃん!! 三枚おろしにしちゃうぞ!
もしくはぐつぐつ煮込んでみりんで味付けして骨まで残さず食べちゃうぞ!!!」
女・赤銅24歳、色気よりも食い気、特に酒のあてが大好きな鬼であった。
そんなわけで、こちらにめがけて襲いかかってきた空魚の群れを前にニヤリ笑い、
「――天まで届く大嵐、一切合切叩き落としてやるよぉ!」
ごぉうっ!! と、砂嵐を吹き飛ばすほどの強烈な竜巻を起こしたのだ!
刀とすさまじい膂力によって起きた竜巻は、それ自体が獲物を切り裂く風の刃。
まんまとそこへ飛び込んだ魚の群れは、ミキサーめいてズタズタにされる!
「ソイヤ!」
「ソイヤソイヤ!」
「ソイヤソイヤソイヤ!」
油断なく構えていたふんどしの皆さんが、落ちてきた群れをキャッチする。
まだかろうじて生きていた個体も、素早く仕留めて血抜きする。ワザマエ!
「わーお! イカす筋肉の皆さん、結構なお点前ー! ヒューカッコいいー!」
抱いてー、などときゃぴきゃぴはしゃぐ赤銅に、呆れるガラット。
「やれやれ、こやつらはどうしてこう、腕はよいんじゃが個性が強いのか……」
自慢のヒゲを撫でつつ、ため息をひとつこぼすのであった。
大成功
🔵🔵🔵
オニバス・ビロウ
そうか蟹か!血が滾るな!
すまない…急に失礼した
故郷が似たようなことを…巨大な獣を狩った後に宴をやる地だったので、つい
む、がらっと殿は久方ぶりだな。息災なようで何よりである
大量の魚か…魚は目玉も美味いが今回は身が欲しい故、涙を飲んで目を潰そう
でんきとかくさとかよくわからぬが、草…もといぐれねーどが如き花冠はあるので投げつける
2回攻撃する要領で目だけを執拗に狙えば、魚と言えど怒り狂おう
そうやって憎悪で巨大になり、食い出甲斐ある姿になった魚を剣刃一閃で斬る
巨大になっても身は引き締まっていることを信じて!斬るのみである!
…ヒレはヒレ酒に出来ると嬉しいのでそっちも斬ろう
(アドリブ連携等歓迎
●こうかはばつぐんだ!
「……お前さん、妙に浮足立っておらぬか?」
落ち着かない様子のオニバス・ビロウを見かね、ガラットが声をかけた。
すると金髪の男は、はっと我に返った様子でガラットを見やる。
「おお、がらっと殿。久方ぶりだな、息災なようでなによりである」
「うむ、あのときは世話になったのじゃ! して、お前さんはどうした?」
「……実を言うと、故郷に似たような行事があったものでな」
「行事?」
うむ、とうなずき、オニバスは遠い目をする。
「巨大な獣を狩り、その獣の肉で宴をするのだ。そう、今回のように」
「ははあ、なるほど。それで血が滾っている、というわけじゃな?」
「然り!! ……いや、急に失礼した」
思わず大きな声を出してしまうオニバスだが、ガラットは呵呵と笑い飛ばす。
「よいではないか! 血気盛んなほうがわしも頼りがいがあるからのう!」
「それならなにより……むっ!」
『『『キュウウーン!』』』
ざばあ! そこに現れる新たな群れ! オニバスの目がギラリと光る!
そして懐から取り出したるは、手榴弾代わりの特殊な花冠だ。
「なんとなくだがこれが効きそうだ、喰らえぃっ!」
オニバス の はなばくだん!
エアティックフィッシュのむれ に こうかはばつぐんだ!
KBAM!! 炸裂した草の魔力が、空を飛ぶ魚の群れを大きく傷つけた!
すると空魚たちは憎悪のオーラを燃やし、次々に巨大でマックスになっていく!
「やはりあれでは仕留められぬか……となると目を狙うしかあるまい」
なぜか苦々しげに呟くオニバス。どうやら彼は魚の目玉が好みらしい。
「安心せい! あやつらは目がいくつもあるゆえ、ひとつ潰しても問題ない!」
「なんと! それはまことかがらっと殿!?」
「うむ! しかもあやつらの目玉は、ドワーフの酒で煮ればそれはもう芳醇な」
「空魚仕留めたり! もらったぁ!!!!!」
オニバス の いあいぎり!
エアティックフィッシュのむれ は まっぷたつになった!
「「「ソイヤ!!」」」
ぼとぼとと落下する魚の死骸を、ガチムチの皆さんが素早く〆ていく。
保存用の氷も大量に用意されているゆえ、鮮度も問題なしなのである。
「……ちなみにがらっと殿、ヒレはやはり?」
「無論、酒に使うと絶品じゃぞ」
「この戦い、負けられないな……!」
闘志(ルビ:くいけ)に双眸を燃やし、剣を構えるオニバスであった。
大成功
🔵🔵🔵
黒川・闇慈
「空飛ぶ魚ですか……どういう原理で飛んでいるのでしょうねえ。クックック」
【行動】
wizで対抗です。
ある程度食べられる状態で無力化した方がいいのでしょうねえ。炎で吹き飛ばしたり氷で貫いたりすると身がグチャグチャになりそうです。
ここは鋭い刃でスパっと断ち切る方が身を痛めなくて済むでしょう。
全力魔法、高速詠唱、範囲攻撃の技能を活用しUCを使用します。
攻撃対象はエアティックフィッシュです。なるべく頭を狙ってみましょうか。
「流石の私といえど三枚おろしは厳しいですねえ……そもそもやり方を知りませんし。そこはご容赦いただきましょうか。クックック」
【アドリブ歓迎】
●魚介類は鮮度が大事
黒川・闇慈の握る魔杖が、ぱらぱらと紙片の塊めいてほつれていく。
しかしそれは、本のページの切れ端などという生易しいものではない。
きらきらと陽射しを浴びて輝く、液体銀の花びら……明らかに有害かつ鋭利な刃だ。
「咲き誇れ致死の花。血風に踊れ銀の花。全てを刻む滅びの宴をここに。
――銀嶺に舞え斬翔の花弁(シルヴァリー・デシメーション)!!」
闇慈が花びらを空中に放り投げると、それらは魔力によってランダムに飛び交い、
船めがけて飛来するエアティックフィッシュの群れをスパスパと斬り裂いていく。
名工の銘刀にも匹敵するであろう銀花の切れ味、まさに一刀両断だ。
竜巻を起こして船を転覆させようとしていた群れは、一瞬で無力化された。
「ほほお、大したものじゃのう! なにより綺麗じゃ!」
「エアティックフィッシュ、ゲットなんやぜぇ~! お見事なんやぜぇ!
しかもどいつもこいつも、頭を綺麗に落としてるから〆るのが楽なんやぜぇ!」
なぜか妙な語尾の船長とガラットが、闇慈の業前を褒め称える。
残骸を回収するガチムチふんどし親父たちの汗も、同じぐらい煌めいていた。
「炎で吹き飛ばすことも出来ますが、それでは身が台無しになりますからねぇ。
……ちなみにお伺いしたいのですが、あれらはどうやって飛行しているので?」
「さあのう。魔法的な……なんかだとどこかで聞いたことがあるのじゃ!」
「つまり何もわからないということですか。スコシフシギ、ですねぇ。クックック」
研究者気質な闇慈としては、エアティックフィッシュの生態が気になるらしい。
もっとサンプルを多く回収すれば、なにか謎も解けるかもしれない。
そうすれば……さらに美味しく調理することも出来るはずなのだ!!
「次は生け捕りにでもしてみましょうか」
「器用じゃな! 三枚おろしも出来るのではないか?」
「さすがの私と言えど三枚おろしは厳しいですねえ、そもそもやり方を知りません。
実食するのは帰ってからですし、そこはご容赦いただきましょうか。クックック」
銀の花はひらひらと船の周囲を舞い踊り、空魚の接近を妨げている。
闇慈の思念を受けた花の嵐は、錐のように収束し新たな群れに切っ先を向けた。
「それでは次を仕留めますよ。船員の皆さん、お願いします」
「「「ソイヤ!!」」」
きらめく銀花、新鮮な魚の鱗、そして汗まみれのガチムチ親父たち!!
……最後のはあまり綺麗でない気がするが、まあさておこう。
大成功
🔵🔵🔵
●業務連絡:再掲
プレイング受付期限は、
『2020/01/14 18:00頃』
までとなります。
荒谷・つかさ
千夜子(f17474)と
美味しいものと聞いては黙っていられないわ。
私、焼肉だけじゃなくて鍋だっていけるのよ。
草や電気が有効、か。
生憎と私が得意なのは炎と格闘と鋼だけど……ああ、あの技ならいけそうかしら。
【荒谷流剣術・真伝『零』】発動
身体能力をを大幅に強化しつつ、零式・改三に雷属性を付与
千夜子が捕縛した魚に向けてジャンプ、或いは千夜子の出した藤の枝を足場に突撃
空中戦できる能力は無いから、足場があると助かるわ
鰓や鱗の隙間から大剣を突き刺し、雷撃を体内に放って攻撃しつつ解体するわよ
回収は千夜子、お願いね
雷撃でちょっと火が通っちゃったけど、鍋なら問題無いわね。
ええ、そのためにも本命を仕留めに行くわよ。
薄荷・千夜子
つかささん(f02032)と
草タイプでしたらおまかせあれ!!
美味しくいただくためにしっかりばしっと捕獲してみせましょう!
相手に動かれる前にこちらがさくっと捕縛です!
【早業】【先制攻撃】でUC発動、藤の枝花でエアティック・フィッシュを拘束
そのまま『藤巡華簪』を放ち【ロープワーク】で完全に動けなくしてしまいましょう
仕留めるのはつかささんにお任せするために、合わせて藤の枝花で敵への道となるよう足場まで作ります
仕留めたあとの回収はお任せを!!
鍋の具材は一匹たりとも逃がしはしませんとも……!
と言いながら藤の枝花で捕まえた魚たちをどんどん砂船へと放ります
美味しいご飯にしましょうね!
●タイプ一致により効果四倍? なんのことですか?
びゅううう……と、強い砂嵐が起こり、船の行く手を阻む。
嵐の中からは、キュルル、キュウー、というエアティックフィッシュの鳴き声。
そのさらに奥にそびえ立つシルエットこそ……今回の漁の目当てである巨蟹だ。
「まだるっこしいわね、まず雑魚を仕留めないといけないなんて」
腕組して船の帆先に立つ荒谷・つかさは、じれったそうに呟いた。
彼女の気持ちはすでにこのあとの宴会に向いている。頭の中は食事で一杯だ。
鍋。実によい響きである。この季節につつく熱い鍋の旨さときたらどうだ。
しかも魚介類! 何を隠そう、つかさは肉だけでなく魚も鍋も大好き……!!
美味しいものだったらなんでも好きなんじゃないかって? そういう説もある。
「でもお魚も美味しいですよね! つまり……どっちも重要ですよ!」
と、つかさと共にやってきた薄荷・千夜子が、ぐっと握り拳を作って力説した。
彼女も彼女で燃えている。まあそりゃ、普通美味しいものはみんな大好きだ。
つかさの食欲は少々、いやだいぶ、かなり、すさまじく逸脱しているが……。
そういう話ではない? それもそうですね。とりあえず話を進めよう。
「できるだけ身が無事なように、注意して捕獲しないといけませんね、つかささん」
「ええ、そうね。となると物理的な衝撃ではなく、別の手段で倒したいところだわ」
つかさ、こういう時は普段よりIQが高まる。含蓄のある言葉に千夜子は唸った。
「暴れられると面倒ですし……それじゃあ、私がユーベルコードで動きを止めます」
「わかったわ。問題はどの技で仕留めるか……」
つかさは瞑目して考え込む。脳内に存在する技のレパートリーを参照中だ。
「あいにくと、私が得意なのはほのお、かくとう、はがねといったところなのよね」
「……つかささん? どうして微妙に発音がひらがなっぽいんですか?」
「相手がひこう、そしてみずなら、やはりでんきを使いたいところだけれど」
「つかささん? なんとなくですけどもうちょっと漢字っぽく発音しません??」
わからない。わからないが何かが危ない。千夜子は超自然的な危機を感じ取った。
それはさておき、つかさはゆっくりと目を開き、千夜子の方を見て頷いた。
「……見えたわ、私たちの勝算が!」
「なんだかよくわからないですが、つかささんがそうおっしゃるなら信じます!」
千夜子は色々深く考えないことにした。つかさは信頼できる猟兵でもある。
そして、ふたりが迎撃体勢を整えた瞬間……待っていたかのように嵐が晴れた!
「「!!」」
『『『キュルルルーッ!』』』
嵐の中から飛び出す何体ものエアティックフィッシュ。そして小規模な竜巻!
ひとつの巨大な嵐がいくつもの風の渦に分かれ、船を取り囲もうとしているのだ。
なるほど、見た目は可愛らしい具材……もといオブリビオンのくせに、
本能的な戦術を多少は心得ているらしい。油断すると足元を掬われるだろう。
「千夜子、お願い!」
「はいっ! 行きますよ、五芒の藤が巡るは呪いの楔――っ!!」
千夜子は髪から藤巡華簪を引き抜くと、それをタクトめいて振るった。
簪から藤の枝花が伸びるとその軌跡を追い、空中に五つの楔を打つ。
成長した枝花は楔を中心としてがっちりと結び合い……巨大な五芒陣を描くのだ。
瞬間、すさまじい速度で枝が生長し、船を取り囲もうとした群れに絡みつく。
『『『キュウ! キュルルーッ!?』』』
空中から見下ろせば、それは砂船を中心とした巨大な花籠のように見えるだろう。
これぞ"操花術式:藤巡呪楔"。藤の花枝を用いた呪詛つきの拘束結界だ!
「つかささん、準備完了ですよ!」
声をかけられたつかさは、くわっと大きく目を見開いた。
屹立する五体に満ちる闘気が、バチバチと雷に変じ、収束する。
すなわち、彼女の前に浮かび上がった、巨大な鉄塊剣――零式・改三に。
「我が剣は零にして無限、あらゆる可能性を斬り開く刃也!
具体的に言うと、三枚おろしも片袖開きもなんでもござれよ! せぇいっ!!」
つかさは跳躍し、がっしりと絡み合った藤の枝に着地。その手には銘剣あり。
五体に満ちた雷の力を生体電流とすることで、身体能力をブーストし、
目にも留まらぬ速さで360度を駆け巡る。斬撃、斬撃、斬撃! きらめく剣閃!
なんたる早業か。しかもユーベルコードによって変質した零式・改三は、
その重量と硬度を損なわないまま軟化し、どんな隙間にでも入り込んでみせる。
それを、エラを持つ魚に用いればどうなるか? 瞬断は用意だろう。
だが、つかさの狙いはそこではない。あくまで"体に滑り込ませる"ことにある。
見よ。斬撃とともに煌めくかすかな火花を。あれは電撃が敵に炸裂した証だ。
身を傷つけないギリギリの深さに刃を滑り込ませ、瞬間的に電圧をアップ。
これによって、体内に直接電気を流し込み……内部から敵を仕留めているのだ!
『『『キュルルルルル……!!』』』
すると第二波の群れが、憎悪の力によってその体を巨大化させて襲いかかる。
「待っていましたよ! 鍋の具材……いえ、敵は一匹たりとも逃しませんとも!」
機を伺っていた千夜子が、さらなる呪枝を甲板から放ち、敵を拘束。
「――おとなしく、己の運命を受け入れなさい……斬っ!」
スパッ、とカミソリのように鋭い斬撃が奔り、巨体を一閃した。
電撃と斬撃。二重の攻撃を喰らい、群れはぼとぼとと落下していく……。
当然それらは拘束されているので、籠状になった枝の結界に放り込まれる。
「「「ソイヤ!」」」
そしてふんどし姿の漁師の皆さんが、手早く冷凍してくださるのだ。熟練!
「大漁ですね、つかささん! これは宴が楽しみです……!」
「ええ、そうね。まだまだ行くわよ。本命はこれからだもの」
再び渦巻いた竜巻の向こうを見やり、つかさはにやりと不敵に笑った。
ふたりの双眸に燃える闘志――人はそれを、食欲と云う。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
狭筵・桜人
矢来さん/f14904
さすが忍者賢い。ここはやっぱ網ですよね。
私は追い込み担当します。
……矢来さん、お腹空いてたりします?
『怪異具現』で巨大魚のUDCを召喚。
残念ながらサメではないです。
魚を追い回させて網の設置場所に誘導。
じゃあ網引き揚げちゃってください!
いやあ準備が良くて助かります。
そのネーミングセンスはどうかと思いますけど。
活け締め?あー魚オブ駿足っていいますもんね。
ハイハイ活け締めね、活け締め……。
ネットのない世界だとこういうこと
調べられないのホント不便で困りますよねえ。
理屈から察するに血抜けばいいんですよね。
まかせてください!
(魚を逆さにして振る)
(やってって顔で魚を渡す)
矢来・夕立
狭筵さん/f15055
方針:引き網漁+追い込み漁
オレは賢い美少年なので既に最適解を導き出しています。
ココは船の上ですね?
対して眼前の獲もn…敵は大量の魚。
もう分かるでしょう。
引き網漁。コレです。
紙垂の式紙で投網を作成。
砂の中に隠しておきます。食ざ…敵の足が速いので《だまし討ち》でかかろうかと。
追い込みは任せましたからね。
伏式起動――忍法、【紙技・文捕】。
ここは格好いいところですので存分にガヤるように。今なんつったコラこのピンク頭
ンン。仕掛けておいた網で一度にごはn…対象を捕縛します。
あとは棒手裏剣なりUDCなりで活け締めですね。
(コイツマジかよみたいな顔)
チッ…役立たず…
(全部代わりにやる)
●顔はいいが性根のひん曲がった若者たち
「始まりましたね、漁」
前髪を無意味に直しつつ、狭筵・桜人が言った。
「ええ、そうですね。あちこちで皆さん頑張ってますよ」
別にワックスを使ってるわけではないが髪型を整えつつ、矢来・夕立が答えた。
「私たちも働かないといけないですよね」
「そうですね。オレはいつだって率先して働いてますけどね」
「はいはいウソウソ。何喰えばそんなシラフで冗談言えるんですか? 兵糧丸?」
「忍者が全員兵糧丸食ってると思ってるんですか狭筵さん。漫画の読みすぎでは?」
「は?」
「あ?」
「お前ら、ごちゃごちゃ言っとらんで働かんかーーーーーーっ!!!!」
どこぞの不良漫画風に睨み合っていたふたりが、ガラットのほうを振り向いた。
流れる沈黙。そしてふたりは顔を見合わせると……。
「……この際はっきりさせておきたいんですよね。どちらが真の美少年なのか」
「それなら秒で解決じゃないですか。オレのほうが美少年なんですし」
「は??」
「あ??」
「わしを無視して続けるなドアホッ!! は・た・ら・けと言っとるんじゃー!!」
二度目の恫喝。ドワーフはぷりぷり怒っていた。なにせ彼らときたら、
「だいたいお前さんたち、いつまで船室に籠もっとるんじゃ。甲板に出い!」
「ええ……嫌ですよこんな砂漠で陽射しに当たるとか。お肌痛むじゃないですか」
「しかも砂嵐とか困るんですよね。見ての通り美形で売ってますから、ちょっと」
「お前さんたちこの前といいどうしてそんな真顔でホラ吹けるんじゃ……???」
兜とヒゲで隠されていても、ガラットが呆れ顔をしているのは声だけでわかる。
ドワーフははあー、とため息をつくと、ずんずん近づいて二人の服の裾を掴んだ。
「あ、やめてくださいちょっと。高いんですよこの服。伸びちゃいますって」
「どうせワゴンセールで買ったんでしょうそれ。オレのほうは本物の高級品ですよ」
「は??? いやというかガラットさんマジで離してください首が首が首が!!」
「なるほどこれがドワーフの馬鹿力。いや待ちましょうオレもだいぶ絞まってます」
小僧どもの戯言ガン無視で、ずるずるふたりを引っ張り出すガラットであった。
そして甲板。
『『『キュルルルーッ!』』』
「「…………」」
ぐったりしたふたり。頭上を飛び交う無数のエアティックフィッシュの群れ。
多い。数が多い。おまけになぜか知らんがスピードも上がっている。
「これ、全部私たちが仕留めなきゃいけないんですか……」
「なんかないんですか? 視界内の敵全部殺す即死系のUDCとか」
「あるわけないじゃないですか。そっちこそ忍法とかでなんとかしてくださいよ」
「出ましたね、忍者がなんでも出来ると思ってるやつ。いわゆるシノハラ」
「そんな単語聞いたことも……いややめましょう矢来さん、そろそろ視線が怖い」
「………………」
ちらり。ふたりは後ろを見た。腕組して監視しているガラット。
なんだろうこの迫力。オカン的なあれかな? 本能的に逆らえない気がする。
「……オレは賢い美少年なので、すでに最適解を導き出しています」
「指摘したいところが二点ほどありますがまあいいやさすが忍者賢い。で、策とは」
「ココは船の上ですね? そして獲も……敵は大量の魚。つまり……」
くいっ。これみよがしにメガネを指で上げて知的さをアピールする夕立。
桜人はだいぶイラッとしたが、怒られるのが怖いので飲み込むことにした。
「――引き網漁。コレです」
「…………なるほど!!!!!」
そこまでもったいぶることねえだろ、的なツッコミは控えた桜人であった。
頭上では、エアティックフィッシュの群れがぐるぐると渦を描いていた。
あまりにも多くの数が集まったため、もはやそれは黒い濁流のようである。
「いかにも総攻撃仕掛けてくる気配ですよあれ! 準備まだですか!?」
「実を言うと……もう2秒で済ませました」
「えっ、じゃあ今までの意味深な沈黙は!?」
「聞かれるの待ってたんですよ。ほらオレ引っ込み思案なので。ウソですけど」
「その眼鏡叩き割ってやりましょうか(なら私が追い込めば完璧ですね!)」
「さすがオレですね……賢さのあまり心の本音を聴き取ってしまうとは……」
これ以上相手にしていると本当に敵の先制攻撃を喰らいそうなので桜人はスルー。
片手を挙げ、何秒か意味深に溜めたあと、パチンとフィンガースナップした。
すると虚空がゆらめき……のっぺりとした顔つきの、巨大魚型UDCが現れるのだ。
「いまのカッコつけたタメ要ります?」
「矢来さんには言われたくないですねマジで。ほら、追い込みますよ!」
巨大魚はゆったりとした動作で裂け目のような大口を開き、虚空を泳ぐ。
生物界において、体の大きさは絶対的な差だ。本能に根ざす警戒心がある。
反応速度が鋭敏となっていたこともあり、魚群は咄嗟に巨大魚を恐れ、逃げた。
向かう先は……巨蟹が起こしている、分厚い壁のような砂嵐である。
「伏式(トラップカード)起動――忍法、"紙技・文捕"」
クイッ。これみよがしに眼鏡の位置を直しつつ、かっこよく呟く夕立。
それとなくスタイリッシュな立ち方をした彼の背後、砂嵐から現れたのは、
投網の形に編み上げられた式紙。それが、魚群をぐわっと捕獲してしまう!
「手を焼かせてくれましたね。もう少しでやられるところでしたよ」
かっこいい流し目、そして物憂げな表情とともに決め台詞。
「――まあ、ウソですけど」
「……」
「…………」
「………………え、要ります? それ。ていうかネーミングセンスどうかと」
「今なんつったコラこのピンク頭」
ガヤを期待していた夕立は割と本気でキレた。ガラスの十代である。
全力で煽りたい桜人であったが、背後の視線が怖いのでやめておくことにする。
そこに降ってくる網。びたびたと暴れる無数の魚たち。
「作戦成功ですよ矢来さん! 私たちのコンビネーションの勝利ですね!」
「そういうのいいんで、さっさと活け締めにしませんか」
「は? ……あー、活け締めね、活け締め。わかりますわかります」
うんうん頷きながらスマホを取り出しポチポチする桜人。しかし、圏外である。
「活け締めねー、粋ですよね活き締めだけに! 魚オブ瞬足っていいますしね!」
「……」
「…………」
魚を一匹手に取る桜人。ぶんぶんと逆さにして何か振っている。
どうやら、血抜きという言葉は知っているがやり方を知らないらしい。
「やって」
三歳児かな? みたいな語彙で魚を差し出す桜人。コイツマジかよって顔の夕立。
「……チッ、役立たず……」
「おっいいんですか? 友情にヒビとか入っちゃいますよこれ?」
「そういうのいいんであっち行っててください」
「あ、はい」
マジげな冷たい声にしゅんと肩を落とす桜人、黙々と棒手裏剣で〆続ける夕立。
「…………やれやれ」
監視していたガラットは、重い重いため息をつくのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
夢ヶ枝・るこる
■方針
・アド/絡◎
■行動
成程、確かに美味しそうですねぇ。
後の宴会の事も考えますと、出来るだけ沢山確保しておきたいところですぅ。
まずは、相手の集まっている中心に近い位置を目指しましょうかぁ。
途中仕掛けてくる個体は『刀』で[カウンター]を狙いますねぇ。
その上で、或る程度良い位置まで到達しましたら【秤濤】を使いましょう。
間違えて潰してしまうと勿体無いですから、『重力波』の効果を制御し『落として動きを封じる』程度まで弱めて使い、捕獲を狙いますねぇ。
生捕りに憎悪を感じて巨大化してくれれば、それはそれで。
仕留める際は、味を落とさない様「脳締め」の形で行い、「血抜き」等の下処理をしっかりとしておきましょう。
●白刃、炎天に冴え冴えと
魚介類の中には、体を大きく見せることで身を守る魚類も少なくない。
種類によっては、群れでひとつの巨大な魚のシルエットを作るのだという。
まさに自然界の生み出した知恵の結晶。生き延びるための工夫と言える。
エアティックフィッシュもその例に漏れず、体を巨大化させることがあるようだ。
もっとも奴らの場合、防衛本能ではなく憎悪の感情によるものなのだが……。
「なるほど、たしかに美味しそうですねぇ」
船に迫る魚群を見て、夢ヶ枝・るこるはのほほんと呟いた。
多くの同類を狩られたエアティックフィッシュは、船を敵視している。
鏃のようなフォーメーションを取った群れは、見る見るうちに巨大化していき、
一体一体のシルエットは、通常時の倍……ともすれば三倍近くになっていた。
「……あれ、身はどうなってるのか気になりますぅ」
るこるはさして敵を恐れない。なにせ、相手は文字通りの"雑魚"なのだ。
あれがユーベルコードによるものであることは明白。となると、
魚の身も物理法則に反して、質量ごと増しているはず。……つまり、釣り時だ。
『キュルルルーッ!』
ミサイルめいた速度で、先頭のエアティックフィッシュが船に迫る。
るこるは刀の柄に手をかけ――瞬間、彼女の手元が煌めく閃光を放った。
「あら……動きが速いと手元が狂いそうで怖いですねぇ」
ぼたり。のほほんと言うるこるの足元に、見た目は無事な魚の屍体が転がった。
だがよく見れば、こめかみのあたりをざっくりと刺突されているのがわかる。
いわゆる、"脳締め"である。この一瞬のうちに、なんたる早業か。
「ここは動きを止めてから、生け捕りにしちゃいましょうかぁ」
るこるはそう言うと甲板を蹴り、風にさらわれた布のように軽やかに跳躍。
一瞬にして魚群の中に飛び込み……群れを包み込むように波動を放った。
『『『キュルル……!?』』』
エアティックフィッシュは、まるで見えない巨大な手に抑えられたかのように、
ぐんと高度を下げる。波動による重力変異で、動きを封じられたのである。
「あんまり動くと苦しいですよぉ? えいっ」
そして刀が奔る。先の閃光は、神速の抜刀による剣閃であった。
目にも留まらぬ早業で次々にこめかみを貫き、船の上に死骸を落としていく。
後続の群れはそのさまを見て、さらに体積を増した。るこるはそれを見ると、
「大漁、大漁ですねぇ。まだまだいきますよぉ」
るんるんと楽しげに呟いて、重力を操り空から空を飛び渡るのである。
眼下では、暑苦しい漁師たちが忙しなく仕留められた魚を回収していた。
大成功
🔵🔵🔵
セリオス・アリス
【双星】
アドリブ◎
アレス!あの魚どうやって食う!?
キラキラした目で魚とアレスを交互に見つめ
よし!ちゃちゃっと仕留めて…って
炎はだめ?
あー…そういや…殴った鹿も墨になったな…
そんじゃとりあえず【青星の盟約】で身体強化して
風の属性を剣にまとわせて斬りかかる
ハハッ、でっかい方が食いでがありそうだし
何より狙いやすくていいな!
風の魔力を靴に送り
跳び上がって適当に…っと
なんだよアレス
適当に斬るのもダメなのか?
料理のなんやかんやはめちゃくちゃめんどくせぇが…
うまい飯の為だ!
うずうずと時を待ての姿勢
アレスの指示にしたがって
麻痺した隙に風をまとわせた剣で
頭をぶつ切りに吹っ飛ばす!
どうだアレス!やりゃできるだろ!
アレクシス・ミラ
【双星】
アドリブ◎
見事に食いしん坊だね…
いや、依頼的にその反応は間違っていない、か…?
今日は鍋らしいけど、炎はやめた方がいいな
…うん、焼けばいいって問題じゃない
呆れつつ戦況確認
あの魚…雷なら効果は抜群な気がする。
此方に引きつけるように電撃を放ち
…って、魚も大きくなるのか
あ、セリオス!後で調理するから適当は駄目だ
脚鎧に雷の魔力を充填させ
【君との約束】を状態異常力重視に
僕が動きを止めるから、少し待っていてくれ
大きくなった魚に飛び移り、落とされない為に雷纏う剣を突き刺す
そして、周囲の魚にも迸らせるように
麻痺を込めた電撃の範囲攻撃を強く放つ!
動きを鈍らせたら…セリオス!狙いは頭だ!
うん。上手に出来たね
●相棒というより兄と弟
「アレス! なあなあ、あの魚どうやって食う!?」
目をキラキラさせたセリオス・アリスに、アレクシス・ミラは呆れ顔で笑った。
「見事に食いしん坊だね……あれも一応、立派なオブリビオンなんだが?」
「そうだけどさあ! だってどうせ食材になるんだし!」
「……それもそうか。依頼的にはその反応も間違っていない……?」
真面目なアレクシスはついつい考え込んでしまう。セリオスはじれったそうだ。
そしてエアティックフィッシュは、あいにく彼らの歓談を待ってはくれない。
『『『キュルルルーッ!』』』
船の近くを回遊していた魚群が、一気に方向を変えて甲板に突撃してきた。
思った以上に速い。遊びのつもりで油断していると火傷をするだろう。
「あ、やべえ! こっち来た! おいアレス、どうすりゃいい!?」
「今日は鍋らしいけど、とりあえず炎はやめたほうがいいな。うん」
ぼぼぼぼぼ、と魔力の炎を生み出そうとしていたセリオスはぽかんとした顔。
「えっ、炎はだめ? なんで?」
「……焼けばいいって問題じゃないぞ。セリオスの力じゃ炭になってしまう」
あー、と過去のケースを思い出し、セリオスは納得した様子だ。
その間にも魚群はぐんぐんと近づく。アレクシスはそちらを見て、
「セリオス、雷だ。僕が動きを止めるから、そっちで仕留めてくれ!」
「よっしゃ! そうと決まればちゃちゃっと仕留めてやるぜっ!」
セリオスは頷き、炎の魔力を瞬時に属性変更し、刃を覆う風となした。
そして常人には聞こえない高速詠唱で、口笛のように圧縮された歌を吟ずる。
卓越したシンフォニアの"歌"は、必ずしも旋律を伴う詩に限定されない。
単にユーベルコードで身体強化するだけならば、吐息程度の発生で十分なのだ。
「さあ、かかってこい! 美味しく頂いてやるぜーっ!」
風の魔力を足元に纏わせて高く跳躍し、魚群の突撃を牽制して逸した。
「……はしゃぎすぎだな、まったく」
呆れつつも、油断なく戦況を伺うアレクシス。魚群はターンしているところだ。
……と、そこで、アレクシスははっと何かに気付いたような表情をした。
「待てセリオス! 斬るのはいいけど、適当にバラバラにしちゃ駄目だぞ」
「えっ? なんだよアレス、注文多いなあ。じゃあどうすりゃいいんだ?」
突撃する魚群を二度、三度剣戟によって弾き、逸しながら唇を尖らすセリオス。
実にまだるっこしい……と感じているのは、どうやら彼だけではない。
攻撃がうまくいかないエアティックフィッシュは相当苛立ったのか、
むくむくと膨れ上がり、二倍近い大きさになって複数の群れに分かれた!
「おい、あいつらでかくなったぞ!? そろそろ仕留めないとまずいって!」
「……仕方ないな。いいかセリオス、頭だぞ。頭を狙って一撃で仕留めろ!」
やむを得ない。アレクシスは己の魔力を練り上げ、イメージを育てた。
高まる魔力はパチパチと火花を起こし、その力がころころ鈴を鳴らす。
途端に雷の力が鎧を包み込み、それは腕を伝い剣に纏わりついた。
アレクシスは頭上の魚群を睨み、力強く甲板を蹴る。狙いは左側だ。
「そっちのほうの群れをこちらに合流させてくれ、出来るか?」
「へっ、そのぐらい朝飯前だぜ! タイミング狂わすなよ、アレス!」
セリオスはたんっと空中を蹴り、右側から襲いかかる魚群の側面を取った。
そしてぐるりと身をひねり回転すると、剣風が荒れ狂い魚の鱗を削り取る。
被弾を怖れた群れは、逆方向……つまり左側の群れにぶつかるのだ。
「それじゃあ行くぞ――はあっ!」
裂帛の気合とともに、アレクシスは群れの中心めがけて剣を突き刺した。
串刺しにされたエアティックフィッシュが、甲高い断末魔をあげる。
するとその個体を中心に、蜘蛛の巣めいた電撃の飛沫が上下左右に広がり、
合流した群れを一網打尽! 電撃によって麻痺させてしまう。
「頭を一撃だったよな? せえー、のっとぉ!」
セリオスは勢いを殺さないまま、空中でくるくるとコマめいて回転する。
回転速度は風を生み、その風は魔力と混ざり合って小さな竜巻に変わる。
一度広がった風がカミソリほどの鋭く細い不可視の刃となって収束し――一閃。
ランダムな、しかし精妙に狙いを定めた風の刃の嵐が、頭部を両断する!
「どうだアレス! やりゃできるだろ!?」
不敵に勝ち誇ってみせるセリオス、一方アレクシスは眼下を確かめた。
頭を落とされた魚の残骸は、ぼとぼとと甲板に落ちていく。
そこではなぜか暑苦しい漁師の方々が、手早くキャッチして氷の中に放り込む。
「……うん、上手にできたね。しかしなぜ彼らはあんな格好を……?」
「そこは気にしねえほうがいいと思う。次行こうぜ、次!」
細かいことは抜きに食い気が勝る様子のセリオスは、次の群れへと跳んだ。
その背中に呆れた眼差しを送りつつ、アレクシスも苦笑まじりに後を追う――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
リル・ルリ
🐟櫻沫
アドリブ歓迎
ほんとだ
魚が飛んでるね(櫻宵の周りをくるくる飛んで泳いでみせる
…可愛いの?あれが?(唇を尖らせ、むう…となる
ふうん
美味しい…今朝、僕の血を飲んで美味しいって言ってたの誰だっけ?(ジト目
拗ねてない
いいよ
捕まえよう
別に本気で拗ねたわけじゃない
櫻宵の一番は僕がいいだけだ
歌唱に誘惑のせて魚を惹き付けて「魅惑の歌」
で身も心もとらえて離さない
こうすれば斬りやすいでしょ
しっかりね、なんて鼓舞のせて歌う
水泡のオーラを櫻龍に纏わせ守る
共同作業だもんね
風になんて負けてられないんだ
僕の方がいい魚なんだから!!
憎悪がおいしいとは初耳だ
どんな味がするのかな?
ふふ、お刺身がいい
美味しいの食べさせてよね
誘名・櫻宵
🌸 櫻沫
アドリブ歓迎
見て、リィ!空飛ぶ魚よ!
なかなか可愛いし美味しそうねぇ!
お刺身にして………な、なに?どうしたのリィ
可愛いお目目がじとっとしてるわよ
リィは空飛ぶお魚だけど、お魚じゃないわ
あたしの可愛い人魚!
ばっ……もう!
……リルのほうが美味しいに決まってるでしょ!
さ、ともかく捕獲よ!
綺麗に捌いてあげるんだから!
呪殺弾の桜雨で叩き落としていくわ
避けた子は空中戦で飛んで衝撃波を放ちなぎ払い、斬り落とすの
魚の首を刎ねるのもなかなかいいわねえ
リルの歌に囚われて動きが鈍った子や大きい子はやりやすいかも
熟成された憎悪は美味しいのよ
愛の共同作業よ!
美味しく調理してリルに食べさせるの
リィ
お魚好きだもんね?
●砂の海のジェラシー
「見て、リィ! 空飛ぶ魚よ!」
砂嵐から続々現れる魚群を見て、誘名・櫻宵はきゃっきゃとはしゃぐ。
そんな櫻宵の周囲を、リル・ルリはくるくる飛んで泳いでみせる。
こころなしか……いや気のせいではない、その表情はあきらかに不満げだ。
「……」
「あら、どうしたのリィ? あれ、可愛いし美味しそうじゃない?」
「……言うと思った」
唇を尖らせたリルは、ふんっとそっぽを向く。
「な、なに? どうしたのリィ。可愛いお目々がじとっとしてるわよ?」
「べっつに。なんでもないよ」
「……あ! もしかして、"空飛ぶお魚"ってところが気に入らなかったの?
やあねぇ、リィも空を飛ぶけど、あれとは違うじゃない。あたしの可愛い人魚よ」
「そうじゃない。……それもあるけど」
リルは櫻宵をジト目で睨みつけ、ぽつりと言った。
「……今朝、僕の血を飲んで『美味しい』って言ってたの、誰だっけ?」
「あ」
つーん、とまたそっぽを向くリル。櫻宵はほんのり頬を赤らめつつ、言った。
「ばっ、も、もう! ……リルのほうが美味しいに決まってるでしょ!」
そんな櫻宵をちらりと見て、リルは……ふふん、と小悪魔めいた笑みを浮かべる。
「もしかして、本気で拗ねたと思った?」
「……! からかったの? ひどいリィ!」
ぷんぷんと怒る櫻宵だが、リルはしてやったりという顔だ。
といっても、まったく拗ねていなかったのかと言えばそれはそれでウソになる。
(櫻宵の一番は僕がいいんだもん)
駄々っ子めいた言葉は、口にはしないリルだった。
そこへ、群れを狩られて怒り巨大化したエアティックフィッシュの群れが迫る。
「さ、ともかく捕獲よ! 綺麗に捌いてあげるんだからっ!」
櫻宵は気を取り直すと、桜花に呪詛を籠め、致命の弾雨に変えて解き放った。
しかし敵は素早い。さらに、尾をゆらめかせて砂嵐を起こすのが厄介だ。
竜巻は壁となって桜の雨を散らし、防いでしまうのである。
「手癖が悪いわねぇ。こういうのは尾癖っていうのかしら? リィ、力を貸して?」
「ん。動きを止めてあげるよ。僕の歌で、身も心も捕らえて――」
リルは身をくねらせながら瞼を伏せ、砂嵐にも負けない声量で深々と歌う。
歌声が魔力を励起し、ぽつぽつと水泡のオーラを生み出して魚群の突撃を防ぐ。
たゆたう旋律はエアティックフィッシュの本能を掌握し、蕩けさせるのだ。
「こうすれば斬りやすいでしょ? しっかりね、櫻宵」
「もちろんよ! さあ、お退きなさい!」
櫻宵はふわりと花びらのような軽やかさで浮かび上がり、刀を振るう。
鋼鉄をも瞬断する太刀筋は、どれほど研ぎ澄ませた包丁よりも鋭く細やかだ。
歌に包まれたエアティックフィッシュは、己の死を自覚すらせず堕ちていく。
櫻宵は、ちろりと唇を舐めた――刃から伝わる、憎悪の味を転がすように。
「ふふ。美味しいわ、あなたたちの憎悪。甘やかで蕩けて……」
「憎悪がおいしい? 初耳だね、それ。どんな味がするのかな?」
リルの声に櫻宵はにこりと微笑みかける。秘密めかした妖しい笑みだ。
"それはふたりのときにゆっくりとね"――とでも、言いたげな眼差しに、
リルはぞくりと背徳的な感覚を受け、ふるふると体を震わせた。
「でもまずはお魚のことよね? やっぱりリィが食べるならお刺身かしら?」
「うん。全部終わったら、美味しいの食べさせてよね」
にこにこと囁きあうふたり。その周囲だけ別の空間みたいになっていた。
……甲板でソイヤと作業するのがふんどし姿のガチムチどもであることは、
この際気にしないほうがいいだろう。色々ムードがぶち壊れるので。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
マレーク・グランシャール
【壁槍】カガリ(f04556)と
安心しろカガリ、この魚達はカッピングやマッサージはしてこない
足(触手)がないからな
そもそも全ての魚介類がえろをしてくる訳ではない
それはそうと
マグロやクジラ漁なら自慢の豪槍で一本釣り(串刺し・槍投げ)するのだがな
ここは一つ追い込み漁で行こうじゃないか
機動力(ジャンプ、ダッシュ)を生かして機敏に立ち回りつつ【神速雷鳴】を発動
目的は討ち取ることではなくカガリの方へ追い込むこと
回避されても構わず、敵に狙いを悟られないよう小芝居(演技)も入れるぞ
それでもこっちに向かってくるようなら、そのときは討ち取るさ
竜骨鉄扇でカガリの方へ吹き飛ばす
そっちへ行ったぞ、カガリ──!!
出水宮・カガリ
【壁槍】まる(f09171)と
かっぴ、…まっさー、じ……(何だったかなと思い出す)
……あ、えろか!エンパイアに、そんな巨大タコがいた!
触手はないが、尻尾とかあるからな、気を付けよう
素早いのは苦手なのだが、まるが頑張るからな、カガリも頑張るぞ
何より、美味いらしいからな!
【錬成カミヤドリ】で、【鉄門扉の盾】を複製して『網』を張る
まるが魚を追い込んでくれるので、念力で『網』を細かく素早く操作して、群れを捕らえるぞ
いちもう、だじん!だ!
『網』に気付かれて引き返しても、まるが多分仕留めてくれると思う(※信頼)
よーし、さぁ来い、来い!(挑発)
あ。逃げ、あれ、まる、まるー(※追いきれない)
●城門、(多分)はじめての漁に挑む
砂の海……そこは一面砂漠だが、全体が底なし沼めいた深い流砂という土地だ。
なので、魔法の力で動くこの『砂船』なしで踏み込むことは、非常に危険。
エアティックフィッシュのほかにも、様々な魚介類めいた魔獣が棲むという。
まさに名の通り、砂で構成された巨大な海原なのである。
「……カガリ」
海。そのキーワードが、マレーク・グランシャールの脳裏にある記憶を蘇らせた。
「? どうした、まる。何か気になることでもあるのか?」
当の出水宮・カガリは、なにやら神妙な様子の相棒をきょとんと見返す。
マレークは……彼にしては珍しいことに……やや言葉を選ぶような逡巡ののち、
「安心しろ。あの魚達は、カッピングやマッサージはしてこない。足がないからな」
……と、真顔(というかこれがデフォなのだが)で言った。
真面目である。マレークはいつだって真面目だ。シリアスなキャラなのだ。
だからその発言も、完全に相棒を慮って述べた、安心させるためのものである。
「……??? かっぴ……まっさー、じ……?」
しかしカガリは、忘れていた。フリでなく完全にど忘れしていた。
妙に間の抜けた沈黙が流れる。明後日のほうを見て、思い出す仕草をするカガリ。
やがて記憶を掘り起こすことに成功し、ぽん、と手を打った。
「……ああ! エンパイアの、あの"えろ"だな! 巨大タコの!」
「は!? なんじゃそれ!?」
横で聞いていたガラットが、思わず反応してしまうレベルのアレな台詞であった。
無理もない。そもそもなんだよえろって。えろとは一体……?(哲学)
「そもそも全ての魚介類がえろをしてくるわけではない。そこは重要だ」
「そうなのか……えろとは奥が深いな」
(こやつら天然なんじゃろうか……???)
深みのある顔で頷くふたりを見て、反応に困るガラットであった。
それはさておき、エアティックフィッシュの群れはまだまだやってくる。
そのぶん宴の食材も増えるということ。逃す手はないだろう。
『『『キュルルルルー!』』』
あちらもやる気満々だ。その目が黒ずみ、空を飛ぶスピードが凄まじく速まる。
「カガリ、盾で"網"を作ることは出来るか?」
「あみ、か……あまりやったことはないが、まるが頑張るならカガリも頑張るぞ!」
錬成カミヤドリで盾を複製・操作すれば、投網の真似事は可能だろう。
もちろん、それだけ 精妙な制御を要求される……が、その点は問題ない。
カガリは鉄門扉の盾を甲板上に具現化し、それらで立体的な封鎖空間を築いた。
「ここはひとつ、追い込み漁といこう。少し待っていろ」
マレークはそう言うと甲板を蹴り、巻き上がる砂嵐に乗って空を翔んだ。
バチバチと豪槍に稲妻が纏わりつき、マレークが柄を振るうと鞭めいて飛散する。
空中を灼きながらぶんぶんと荒れ狂う稲妻を、空魚の群れはひどく嫌った。
マレークを仕留めようとする個体もいるが、そう簡単にやられる彼ではない。
むしろ逆に、その体を足場として軌道を変え、群れを翻弄するのだ。
船めがけ鏃のように突っ込んできた魚群は、あっというまに統率を失い、
徐々に徐々に追い詰められていく――そう、カガリの広げた"網"のほうへと。
「いちもう、だじん! だ!」
がこん――盾は球状に展開し、袋小路に飛び込んできた群れを閉じ込めてしまう。
一度捕まれば最後、マレークが空中に四散させた稲妻が鉄門扉に感電し、
"網"の中の空間だけをリレイする。仕組みとしては電子レンジに近い。
力尽きたエアティックフィッシュの群れは、漁師たちが仕留めてくれる。
「……大群が来るな」
いくつかの小さな群れを片付けた頃、マレークは大群の接近に気付いた。
数に物を言わせ、マレークを仕留めるつもりらしい。雑魚のくせにいい度胸だ。
「カガリ、大物をそちらに向かわせるぞ! 準備はいいな!」
「準備は万端だぞ! ……よーし、さぁ来い、来い! こっちだ!」
マレークは接触の瞬間、漆黒の鉄扇を振るい群れの先頭の横っ面を殴打した。
びゅう、と起きた突風が、無理やり大群の軌道をカガリのほうへ反らす。
カガリはふんすと鼻息荒く、自信満々の笑みを浮かべて構えている……が。
「あ」
直前で網の存在を察知した魚たちは、四方八方に散っていってしまった。
「あ、あ、あっ! に、逃げ……あ、あれ? まる、まるー」
「……仕方ない。もう少し励むとするか」
相棒の助けにやれやれと頭を振りつつ、マレークは着地してまた跳躍した。
どうやら戦い慣れした相棒でも、漁となるとそうもいかないらしい……。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
露木・鬼燈
なるほどなー。
これは美味しいお酒が飲めそうなのですよ。
本命はカニだけどお魚もいいよねっ!
ってことで、新鮮なお魚をゲットするっぽい!
美味しく頂くには新鮮な物がいいよね。
できたら生きたまま捕獲したいところなのです。
秘伝忍法<海皇>
シャチの狩りを今こそ魅せるときっぽい。
女王が眷属達と船の上まで追い立て、超音波で気絶させて落とす。
そして僕が素早く絞め、<紋章之秘術>で収納。
これで調理の直前まで鮮度を落とさずに保存できるのです。
うん、美味しくイケルイケル!
霊体なら風圧とか物理的な力は関係ない。
今回の漁にピッタリなのです。
いくらでも保管はできるので獲り過ぎても問題ない。
どんどん追い立てて捕獲するっぽーい♪
●忍法・海皇つかまつる
魚介類は新鮮さが肝心……となれば生け捕りを狙いたいのが人心というもの。
とはいえ、相手はオブリビオンだ。捕まえてはい終わりというわけにはいかない。
「ソイヤ!」
「ソイヤソイヤ!」
「ソイヤソイヤソイヤ!!」
てなわけで、ふんどし姿の漁師たちは俄然張り切っていたのだ、が。
「っと、漁師の皆さんは休んでても大丈夫っぽい~」
「「「ソイヤ……?」」」
一体何をしようというのか。一同の視線が露木・鬼燈に集まる。
注目を集めた大道芸人のように、鬼燈はたっぷりともったいぶって間を置くと、
目にも留まらぬ速さで印を結んだ。そして、謎めいた祝詞を瞬時に唱える。
するとどうだ。ふわりと浮かび上がったのは、巨大なるシャチの霊!
「これが海洋の偉大なるシャチの女王なのですっ! さあ、よろしく~!」
シャチの霊はキューン!と甲高く鳴くと、次々現れた群れの霊を率いて翔び、
船に迫る魚群と激突した。立ち上る砂嵐、噛み付くシャチの牙。
まさに海の王とオブリビオンの骨肉相食む争い。熾烈な戦いぶりである。
霊体の群れが叫んだ超音波が砂嵐を貫いて響き渡り、空魚の群れを痙攣させた。
ぼとぼとと甲板上に落ちてきた個体を、鬼燈は素早く〆て異空間に放り込むのだ。
なるほど、これならばたしかに、持ち運びも鮮度のことも考えずに済む。
「うーん、これは宴会が楽しみなのです! さあさ、次々ー」
漁師たちがぽかんとするなか、鬼燈は霊体の群れに指示して次の漁を始めた。
これもまた、ユーベルコードが超常の能力たる所以と言えるだろう。
大成功
🔵🔵🔵
月凪・ハルマ
砂漠に居る上に空も飛ぶ魚ときたか
この世界の生き物はホント面白いなぁ
(なおそれに負けないくらい漁師の面々が濃いな、とか思ってる)
(思ってるだけで声には出さない。けど正直ツッコミは入れたい)
◆WIZ
食材として利用するなら、できるだけ可食部を残したいよな
ここは【心身解放蒸気】で周囲のエアティック・フィッシュを
纏めて眠らせて、捕獲する方向でいってみようか
元々蒸気の範囲外に居る、あるいは逃げた奴に対しては
【武器改造】【属性攻撃】で雷の力を付与した手裏剣を【投擲】
動きを【見切り】、さらに【暗殺】技能も駆使することで
なるべく一撃で仕留められるように努力してみる
※アドリブ・連携歓迎
●吹けよ嵐、満ちよ蒸気
アックスアンドウィザーズは、いかにもファンタジーらしい異世界だ。
おとぎ話に描かれるような魔法の産物が、この世界には特に多く見られる。
オブリビオンの多くもそうした魔獣や幻獣であり、変わった生態を持つ。
幾多の戦場を乗り越えてきた月凪・ハルマにとっても、珍しいのは変わらない。
「この世界の生き物はホント面白いなぁ」
ヤドリガミであろうが男の子は男の子。冒険心がくすぐられるのだろう。
空を泳ぐエアティックフィッシュの群れを見上げ、目を細めるハルマ。
「「「ソイヤソイヤソイヤ!」」」
「…………ホント、この世界の生き物は不思議だな~」
「「「ソイヤ!!」」」
(ツッコむな。ツッコむな俺。なるべく自然にスルーしろ……!!)
視界の端でソイヤし続ける漁師はなるべく見ないようにした。
だって濃すぎる。そもそもファンタジーらしさがガタガタになってしまうからね!
(よし、さっさと仕事しよう。でないと色々雰囲気台無しだ)
ハルマは帽子を被り直すと、トンファーを構え持ち手のスイッチを押した。
すると、肘に近い部分にスリットが開き、シュウウウ……と蒸気が溢れ出す。
「そーらこっちだぞー、獲物がここにいるぞー」
ハルマはととんっ、と砂船のマストを蹴り渡り、魚群に存在をアピール。
そしてマストの先端に立つと、くるくるとコマのように回転し蒸気を撒き散らす。
孤立した猟兵は、あちらにとってもいい的だ。敵は次々殺到する……が。
『『『キュルルル……キュウ……?』』』
蒸気に飛び込んだエアティックフィッシュは、ぱたぱたと落下していく。
どうやら、このガジェットから噴き出す蒸気に、からくりがあるらしい。
「はい、一丁上がりっと。魔獣相手だと小細工いらないから楽でいいなあ」
甲板に着地したハルマの足元では、空魚たちがすやすやと眠っていた。
「起きる前に〆とかないとな……あー、漁師の皆さーん」
「「「ソイヤ!!」」」
「…………えーと、あとよろしく」
暑苦しいマッチョたちをできるだけ視界に入れないようにするハルマであった。
なぜふんどしなのか。そしてなぜ半裸なのか。そもそもソイヤってなんやねん。
ツッコミたい。ツッコミを入れたい。だが……我慢……!!
(無駄な精神的疲労をしたくねえ……!)
そのジレンマ自体がだいぶメンタルを削っている、というのは野暮である。
ツッコミ気質は、こういうときにだいぶ損なのであった。
大成功
🔵🔵🔵
叢雲・源次
【桜煉】アドリブ歓迎
「蟹を奢ってやる。」
働きたくない、でも金が欲しい、キメたい。そう豪語して止まないダメ闇医者に俺はそう提案した。
ウキウキで付いてくる彼女を連れて着いた先はA&W…砂船の上
筋肉祭りだった
「蟹を奢ってやる。」
俺はもう一度言う。嘘は言っていない。
俺達の働き次第で蟹をしこたま食うことが出来るのだからな
甲板に寝転がるな…砂が服に入るし漁師の皆様のご迷惑になるだろう
働け。
今日は絶好の漁日和のようだ…さぁ働け。蟹を食うために
だが、蟹の前に前菜だ…当方に迎撃の用意有り…
対神打刀の鯉口を切る
三十式刀身射出装置に電荷が走り刃が光る
空を舞い、こちらに飛来する魚どもを三枚に下ろさんとする
芥子鴉・芙蓉
【桜煉】アドリブ歓迎
太っ腹な叢雲のの一言にうきうき気分でついてきたわらわを待っておったのは、むさ苦しい男どもとでっけぇー砂の海じゃった。
…………どうして
と゛ う゛ し゛ て゛ ぇ゛ !
どうしてそんな残酷な嘘を……!何が、何がカニを奢ってやるじゃ!
イヤじゃー!わらわ働きとぉないんじゃよぅ!ぶえぇーーーーーー!
(ブサイクに泣きわめきながら地面でジタバタジタバタ)
ぐぬぬぬぅ!こうなればたらふくカニを喰わねばわらわの腹の虫がおさまらぬ!
見ておれよ叢雲のぉ!本気を出したわらわの働きをーー!
桜の癒やしで魚どもを眠らせ、船上にぶち落としてやるんじゃよぉー!
なに!?そもそも魚が眠るかどうか!?知らんッッッ!!
●働かざる者食うべからず
「…………どうして」
砂風吹き荒ぶ中、芥子鴉・芙蓉はぽつりと呟いた。
傍らに立つ叢雲・源次は、無言である。もちろん聞こえた上で無視している。
「と゛う゛し゛て゛ぇ゛!! どうして、こんな……こんな、残酷な嘘を!!」
泣いていた。芙蓉はボロッボロ泣いていた。なんなら鼻水も出ている。
齢60の桜の精が、いやさ(見た目は)美少女がしていい顔ではなかった。
「嘘は言っていない」
「…………」
嘘だろお前この期に及んでまだしらばっくれるのか、という顔の芙蓉。
源次はそこでようやく、年甲斐もなく泣きじゃくるへちゃむくれの方を見た。
「蟹を、奢ってやる」
「…………イヤじゃーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!」
砂船の甲板に、駄々っ子BBAの本当にどうしようもない叫びがこだました。
なぜこんなことになったのか、それは少々時間を遡る必要がある……。
ある日のこと、UDCアースは池袋にある喫茶店にて。
「蟹を奢ってやる」
「……は?」
今日も今日とてだらけまくっていた芙蓉に、源次は前置きもなくそう言ったのだ。
「え、いまおぬしなんと言ったんじゃ?」
「蟹を、奢ってやる」
「蟹……? それはつまり、ハサミがあって横歩きする、あの」
「その、蟹だ」
「茹でたらんまい上に、蟹味噌なんぞはもうたまらんつまみになる、あの!」
「その、蟹だ」
「やったーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!」
両手を上げて飛び跳ねる芙蓉。座った姿勢からなのでそのまま仰向けに倒れた。
どたーん! と派手に後頭部を打ちつつ、ニコニコウキウキはしゃいでいる。
「やーったやったー! 蟹じゃ蟹じゃー! 高級食材を人の金で食えるんじゃー!
はい人生バラ色! わらわ世界一幸せ者! 今日も元気だハッパが美味いっ!!」
「流れるようにキメようとするな。せめて店の外でやれ」
「ははー今日ばかりはお前さんの小言も聞いてやるのじゃ! うひょひょひょ!」
本当に美少女キャラかな? って感じの顔でゲスい笑い声を上げる芙蓉。
源次はツッコまなかった。この重症患者(意味深)の手の奇行には慣れている。
「太っ腹じゃのう叢雲の! で、いつじゃ? 今か? 今からなのかっ!?」
普段あれだけ「働きたくない、でも金が欲しい、キメたい」と豪語するダメ女が、
子供のように目をキラキラさせる。年下に見られるってそういうことじゃねえ!
「明日にでも連絡しよう」
「待ち遠しいのう待ち遠しいのう! ハッパ吸ってええじゃろか!?」
「やめろ」
そうして後日、芙蓉は源次の呼び出しにウキウキとした足取りでやってきた。
グリモアベースに向かい、グリモア猟兵の説明を聞いている間もニコニコだった。
だもんで話は全部聞き流していた。うーんこのダメ人間ぶり。
そして場面は現在に戻る。
「イヤじゃー! わらわ働きとぉないんじゃよぅ! ぶぇえ~~~!!」
「そうか。働け」
イヤじゃイヤじゃとジタバタする芙蓉、しかし源次は一刀両断だ。
蟹を奢る。嘘は言っていない。働き次第で獲物はウッハウハなのだから。
「今日は絶好の漁日和のようだ……さあ、働け。蟹を食うために」
「ぐすっ、うぇえ……ぶぇええ、鬼ぃ、悪魔ぁ、幻朧ぅ……」
「人をオブリビオン扱いするな。働け」
シワシワの電気鼠みたいな顔でぶつくさ文句を言う芙蓉。一顧だにしない源次。
『『『キュルルルルーッ!』』』
そこに飛来するエアティック・フィッシュの群れ! 敵は待ってくれない!
「ぐぬぬぬぅ! こうなればたらふく蟹を喰わねばわらわの腹の虫が収まらぬ!」
ぐぅ~ぎゅるるるる(相槌めいて鳴り響く卑しい腹の虫の鳴く音)
「見ておれよ叢雲のぉ! 本気を出したわらわの働きをーーー!!!」
「……さっさと働け」
「ぷんだ!(見た目相応の美少女要素)こんな雑魚ども眠らせてしまうわーっ!!」
しゅわわわわ。芙蓉の両腕から放たれる桜吹雪が魚群を包み込む。
だがエアティック・フィッシュは尾で砂嵐を起こせる。つまり、無効!
「ぎょわーっ!? そんなバカなーっ!?」
「……お前にいいところはないな」
「あっこれガチめの落胆!? さすがのわらわも心に来るんじゃけど!?」
ぎゃーぎゃー騒ぐ芙蓉をスルーし、源次は打刀の鯉口を切った。
「――当方に、迎撃の用意あり」
バチリ。射出装置に電荷が奔り、刀身が光を孕む。脈動は地獄の心臓と動悸。
しんと静まる空気。心地よい沈黙――噫、薄氷の上にあるような緊張感よ。
「その間合い……戴くぞ」
源次の姿が消えた。――直上! 魚群を越え、剣はすでに放たれている!
遅れて空気がばっさりと斬り裂かれ、群れは見事な三枚おろしと相成った!
「うぇー、がんばえーいぇいがぁ~」
「……働け。漁師の皆様の邪魔になるだろう」
やる気のない子供みたいなノリでふんぞり返る芙蓉を、源次は睨みつけた。
「いやもうこのメンタルじゃハッパないと無理じゃよわらわ……キメていい?」
「働け」
「んもぉー!! なんなんじゃよー! もぉおおおおおお!!」
年甲斐のない悲鳴が砂の海に響き渡ったという。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
詩蒲・リクロウ
ォォォォォ
坐禅を組み精神統一を行っていた少年(オトコ)が静かに目を開ける。
ギシィ
立ち上がり踏みしめる甲板が軋みをあげる。
ソイヤッ
少年(オトコ)は筋肉(オトコ)からハープーンを受け取り、空を舞う魚を鋭く睨みつける。
ザッ、ググッ
視線を逸らさず槍を構え全身力を込める。
少年(オトコ)の覆う鋼鉄を思わせるような硬くそれでいて弾力のある筋肉が大きく膨らんでゆく。
ミシミシミシ
肉体に収まりきらぬ筋肉繊維の脈動に空気が震える。それと共に筋肉(オトコ)共が湧き上がり船上にて筋肉の宴(マッスルフェスティバル)が発生する。
ゴゥンッ
筋肉の弩と化した『漢』は全身の力を槍へと込め、大空すらも撃ち落とさんとその一投を放った。
●よっしゃあ! ソイヤ歌
ドンコドンコドンドン……ドンコドンコドンドン……!
重々しい太鼓の音が砂の海に鳴り響く。バチを振るうのは屈強な漁師たちだ。
真冬だというのにも関わらず、その筋肉には汗が煌めいていた。
ドンコドンコドンドン……ドンコドンコドンドン……!
「…………」
車座になった漁師たちの中心には、シャーマンズゴーストがひとり。
坐禅し精神統一していた詩蒲・リクロウは、くわっと大きく目を開く。
……シャーマンズゴーストって目開いてもわかりにくくないだろうか?
いやまあ、開いてる開いてる。アイコンもそんな感じだし。お目々開いてる。
「「「ソイヤッ!!」」」
ドンコドンコドンドン! ドンドコドンドコドンドン……!
太鼓のビートが徐々に早まり、リクロウは重々しく甲板を踏みしめた。
みしり、ぎしり……悲鳴を上げるように、船の板が軋む。それは、重みだ。
質量ではない。リクロウという少年……いや、"少年(オトコ)"の持つ、重み。
ドンコドンコドンドンドン! ドンドコドンドコドンドンドン!
「「「ソイヤッ!!」」」
円陣から"筋肉(オトコ)"がひとり進み出て、少年にハープーンを渡す。
持ち上げるのも難儀な重量物を、少年はがっしと掴み片手で持ち上げた。
ドンドンドコドンドンドン! ドコドコドコドコドコドコドン!
「「「ソイヤッ!!」」」
「ッフウウウウウ……」
熱を孕んだ吐息を漏らす少年。その両肩からじわりと陽炎が立ち上る。
みしりみしみし……軋むのは甲板? 否……そう、彼の、鋼鉄めいた筋肉だ。
ドコドコドコドコドコドンドン! ドコドコドコドコドコドコ……!
「ソイヤ!」
「ソイヤソイヤ!」
「ソイヤソイヤソイヤ!」
「「「ソイヤソイヤソイヤソイヤソイヤソイヤ……!!」」」
少年が見据える先には、無数の魚の群れ。漁師が狩るべき獲物がある。
みしり、みしみし……おお、見よ。筋肉が倍近く膨れ上がり、そして締まった。
ドコドコドコドコドコドコ! ドコドコドコドコドコドコ……!
「「「ソイヤソイヤソイヤソイヤソイヤソイヤソイヤソイヤ!!」」」
ドコドコドン、ドコドンッ!!
「「「ソイヤッ!!」」」
頂点に達した太鼓のビートが、ひときわ大きく大気を震わせた瞬間!
「ッッッダァアアアアアアアアイッッッッ!!!!!」
「「「!!!!」」」
筋肉が、爆ぜた。ドォン――!! 何よりも大きな轟音を起こすほどに。
緊張が解き放たれ、投げ槍めいて放たれたハープーンが空を切り裂く。
筋肉どもは固唾を呑んで見守った。まるでロケットの発射を見守るように。
おお、空を見ろ。ぐんぐんと嵐を貫く、あの雄々しきオトコたちのロマンを。
ハープーンは、狙い過たず……魚の群れを、一撃で貫いたのである!
「「「ワ……ワオオオオオーッ!!!」」」
筋肉たちは湧き上がった! むせび泣き、肩を組み、抱きしめ合って喜んだ!
筋肉の、宴。Muscle festival……タフな野郎どもの歓声が響き渡る。
「……ネクスト、カム・オン(次をよこせ)」
少年の……いや、リクロウの鋭い声が、筋肉たちをぴしゃりと静まらせた。
少年? 何をバカな。ここにいるのはシャーマンズゴーストでも少年でもない。
「「「……ソイヤッ!!」」」
ドドンッ!! ドンコドンコドンドン! ドンドコドンドン! 太鼓のビート!
それは戦士を、いやさ"漢(おとこ)"を称える筋肉たちの狂騒曲‥…!
新たなハープーンが手渡され、今再び筋肉の弩は躍動する!
「…………え、なんじゃあれ?」
謎の熱狂に包まれた野郎どもを、ガラットはぽかんと見ていた。
しかし悲しいかな、彼女の疑問に応えるものは誰もいない。
タフなオトコは……そんな細かいことを、気にしないのだから……!!
大成功
🔵🔵🔵
花邨・八千代
いっえぇーーーい!魚ーーー!
鍋いいじゃん、さっむい季節にゃ最高だ
熱燗と一緒においしく頂いてやんよ、覚悟しな!
◆戦闘
船の強度ってどんなもん?まー多分だいじょぶだな?
ちっと派手に跳ぶが壊れたらごめんしてな!
マストを駆けあがってそこから『空躁』、砂嵐に飛び込むぜ
武器は黒塚、ぶっとびながら一気になぎ払うぞ!
狙いはヒレだ、叩き切って落とすぞ
ほらほらどうした魚類!かかってこいよォ!
小ぶりなのは天ぷらも良さそうだなァ、
何にしても土産分も欲しいし落とせるだけ落とすとすっか。
俺この為にクーラーボックス持参だもん!
にしても砂嵐を跳ぶのも乙なもんだなァ!たーのしー!!!
ぶぇえっ、口に砂入った!!!なんか生臭ェ!!!
●宴の話をすりゃ羅刹が駆ける
寒い季節につつく鍋。それはおそらく千年経っても褪せぬだろう至福の贅沢。
実にいい。美味しい熱燗があるとなおいい。そうだ呑もう。呑みたい。呑む。
「あーもう口の中が酒って感じになってきた! まだなんだけどなー!」
砂風吹き荒ぶ甲板上、花邨・八千代は呑気に屈伸しつつ物欲しそうに言った。
「お前さん、気が早すぎやせんか? まだ本命も出てきてないというに」
今回の仕事の依頼人であるドワーフのガラットは、そんな彼女に呆れてみせる。
「……ま、酒が待ち遠しいというのはよくわかるがの!」
「だろ? いつも以上に気合入るよこりゃァ」
にかっと人懐っこい笑みを浮かべて言えば、ぐんと背を反らして準備完了。
とんとん、とつま先で甲板を叩き、思い出したように顔を上げる。
「あー、ところでさ。この船の強度ってどんなもん?」
「……ほ? ああ、頑丈じゃからのう、多少戦闘に巻き込まれても問題は」
「ん、まー多分だいじょぶだな?」
「???」
首を傾げるガラットをよそに、八千代が見上げたのは――空ではなく、マスト。
彼女はくいと漁師たちのほうに頭を巡らせ、朝の挨拶のように気軽に言った。
「ちっと派手に跳ぶが壊れたらごめんな! あ、そっちでごめんしといて!」
「「「ソイヤ!?」」」
「ちょっと待て、お前さんまさか――」
ガラットが言い終わらぬうちに、八千代の姿が消えた。いや、駆け出したのだ。
気づけばその姿はマストの根元に。そして当然――垂直に駆け上がる!
「ぬ、ぬおおおおおっ!?」
ガラットは慌てた! なにせすさまじいスピードに砂船が大きく傾いだのである。
だだん、だんっ!! と、八千代は重力を嘲笑う脚力で上へ、上へ!
「よしよし、壊れてねえな! いっえぇーーーーーい!」
ずだんっ!! 天頂をしっかと踏みしめ、八千代は空中へと高く高く翔んだ。
さらに虚空を蹴り上へ、上へ。目指す先は当然、雲めいて渦巻く魚の群れ!
「まずはそのヒレ、いっただきぃ!」
まるで歌舞伎の早変わりめいて、気づけばその手には薙刀が一振り。
八千代はそれを物干し竿か何かのように軽くぐるぐると振り回しているが、
実際のところその重量はおよそ人類の基準を無視した、文字通りの大業物だ。
肩に担いだ"黒塚"を、首を支点にぐるんぐるんと回転させ――一刀両断!
『『『キュルルルゥーッ!?』』』
ヒレを裂かれたエアティック・フィッシュは、空中制御に失敗し甲板に落下。
生き残った群れは慌てて距離を取る……それを見て、八千代はにやりと笑った。
「ほらほらどうした魚類! かかってこいよォ!」
挑発! 空中では防御も取れないはず。無謀――だが、これが彼女だ。
瞳を黒ずませて殺到する群れを、一体、また一体と返り討ちにしていく!
「ごっめーん! 悪ィんだけどさあ、そこにクーラーボックスあるっしょ?」
「んぉ? わ、わしか? わしに言っとるのか?」
「そおそ! 落ちたの入れといてねェ、わざわざ持参したんだし!」
ガラットはわたわたと、そばに置いてあったそれらしい箱に魚を放り込む。
頭上では魚そのものを足場代わりに、八千代が空中散歩を楽しんでいた。
「小ぶりなのは天ぷらでェ、でっけェのは煮物もいいかなァ? たーのしー!
砂嵐を跳ぶのも乙なもん……ぶぇえっ、ぺっぺっ! 口に砂入ったァ!」
ぎゃんぎゃんとやかましく騒ぎながら得物を振るう八千代の姿を見上げ、
「……本当に、どいつもこいうも個性的だのう」
ただただ圧倒されるほかないガラットであった。
大成功
🔵🔵🔵
アルジャンテ・レラ
ガラットさん。ご無沙汰しております。
お元気そうですね。
食材とは……。
ともあれ、為すべき事は実にシンプル。
蟹。あの生物を食そうと最初に考えた人間の柔軟な発想には驚かされます。
雲丹なども同様ですが、どう見ても食材には見えませんよね。
私では弱点を突けそうにはありません。
麻痺毒も今回は塗らないでおきましょうか。
食される時に毒が残っていたら大変ですから。
正攻法でいきます。複数の矢を番え、乱れ射ちを。
矢を当てられなかったエアティック・フィッシュは一体一体射抜きます。
故障はしていない筈なのですが、体感温度の割に随分と暑苦しい気がするのは何故でしょうか……。
三咲・織愛
ヨハンくん(f05367)と
わーいっ、鍋パ!
美味しい食材をしっかりばっちりゲットしましょうね、ヨハンくん!
えいえい、おー!(がっしと手を掴んでえいえいおーさせる)
さて、まずはお魚を手に入れなければ!
ヨハンくんが大量にお水をビャーってして、雷バリバリーッってしたら大漁になりませんか?
うーん……美味しくなくなっちゃったら本末転倒ですし
ちょっと私行って来ますね フォローはお願いしますっ!
ぐぐっと屈伸してから甲板を蹴り砂柱の中に飛び込みます
行きますよ、ノクティス!
えいえいっと素早く三枚下ろしにしながら背負った籠の中に入れていきます
お料理の手間が省けてちょうどいいですよねー♪
いっぱい捕っていきましょー!
ヨハン・グレイン
織愛さん/f01585 と
はぁ……何を言ってもやる事が変わらなそうなので何も言うまい
正直鍋に興味は無いんですけど、後から来る人も同じような事を言いそうですし……
せめて美味い食材を用意した方が喜ぶだろ……いたい、痛いんですけど、腕がもげる……!!
(げんなりした顔で腕をさすりつつ)
感電させるのはいいですけど、加減が難しくて焦がしてしまいそうな気もしますね
地道に仕留めて行く方がいいのでは
行ってきますとは……???
フォロー丸投げじゃないですか
ああ、もう……
指輪から闇を出して操ります
防壁のように凝らせて風圧から守ったり、死角からの攻撃をいなして刃状にし仕留めるなどします
どうしてあんなに楽しそうなんだ……
●人形少年と死霊術師の受難、いつもの彼女のいつものアレ
「おお、お前さんも来てくれてたのじゃな! ハイホー、じゃ!」
ガラットの元気な挨拶を受けて、アルジャンテ・レラはこくりと頷いた。
「ガラットさん、ご無沙汰しております。お元気そうですね」
「違う違う、挨拶はハイホー! じゃぞ!」
「…………はいほー」
抑揚のないハイホーだが、ガラットは満足げな様子でうんうんと腕組した。
「それにしても、まさかオブリビオンを食用にするとは……驚きですね」
「うん? オブリビオンとはなんじゃ? よくわからんがありゃ美味いぞ?
わし食ったことあるし。なんなら鍋にしたこともあるのじゃ。酒が進むでな!」
「……では、例の巨蟹とやらも?」
ガラットは首をふるふると振った。
「うんにゃ、じゃから楽しみでのう! お前さんは気にならんのか? 味」
「いえ、それよりもっと重要な……まあ、いいとしましょう」
アルジャンテとしては、そもそも甲殻類を食すという発想が驚嘆に値するらしい。
海老や蟹は一般的な食材だが、ぶっちゃけほとんど虫と大差ない見た目だ。
そもそも、あんな硬い甲羅を持つ生物を、いつ、誰が食べようと思ったのか。
「ウニなども同様ですが、どう見ても食材には見えません。不思議なものです」
「ふうん? でも酒のあてには絶品じゃぞ?」
「あいにく、私は躯体の設定年齢的に酒類も口に出来ませんので」
「ふーむ、もったいないのう。あっちのふたりはやる気なんじゃがなあ」
「……ふたり?」
なんとなく嫌な予感がするアルジャンテ。それは決して間違いではない。
これが、虫の知らせ。アルジャンテはそんな実感を、彼らの姿を見て思い知った。
どちらかというと、災禍の根源はふたりのかたっぽなのだが、それはさておき。
「鍋パ、鍋パですよヨハンくん! 楽しみですね!」
「……はあ」
「美味しい食材をしっかりばっちりゲットしましょう! えいえい、おー!」
「すいません痛いです痛いんですけど。腕、腕がもげる……!!」
悲しいかな、ヨハン・グレインの全力のSOSは三咲・織愛に届いていない。
彼女はにこにこ笑顔でヨハンの細い手をがっしり掴み、ぐいぐい挙げさせている。
みしって音がした気がする。ヨハンは思わず反射的に織愛の肩をタップした。
「すみませんこれ以上は勘弁してください。戦闘前に腕が使い物に、ならなく……」
「……あっ! ごめんなさいヨハンくん! 私ったらつい、えへへ」
何が"つい"だよこれがデフォだろ、とか、
何を言ってもやることが変わらなさそうなので何も言うまい、とか、
思ったこと言いたいことはぽんぽん湧いてきたが、口は閉ざしておくヨハン。
げんなりした顔で腕をさする姿は、ガキ大将に付き合わされる気弱な子供のよう。
いやバカにしているわけじゃないんですよ。織愛さんの圧がそれだけ強いんです。
わかるわかる。うんうん頷くイマジナリー賢者が空に映った気がした。
「でもでも、美味しい食材を準備しておくのは大事ですよ。ね?」
「……まあどうせ、あの人も同じようなことを言うでしょうし……」
脳裏によぎったのは誰のことか。それをあえて記す必要はあるまい。
どうせなら、美味しい食材を。その点においてはヨハンも異論はなかった。
「って、そこにいるのはアルくんっ! アルくんも来てたんですね!?」
そんな様子を伺っていたアルジャンテは、一瞬で近寄ってきた織愛にたじろいだ。
無表情無感動な人形少年をしてちょっと一歩退かせる、これが"圧"……!!
「あ、はい。ヨハンさんも、お元気……そうではないですね」
「おかげさまで疲弊してますよ。とりあえずさっさと仕事をしましょう」
ヨハンは頭を振り、空を見上げた。そこには、船に近づく魚群がひとつ。
数は3~40体はいるだろう。一体一体相手にしていては日が暮れてしまう。
「はっ、私いい作戦を閃いちゃいました!」
ぴこーん、と豆電球を頭の上に浮かべる織愛を、少年たちは恐る恐る伺った。
「ヨハンくんが大漁にお水をビャーッてして、雷バリバリーッてしたら大漁です!」
「擬音語が大半で作戦の具体性がまったく把握できないんですが」
「……ようは魔術で感電させろということですかね」
訝しげな表情をしていたアルジャンテは、ヨハンの言葉になるほど、と膝を打つ。
やはり彼はすごい。あるいはこれが辞書に載っていたあの言葉なのか?
そう、人間はごく自然にやってのけるというあの――"忖度"!!
「では、動きを止めたところに私が矢を乱れ撃ちしましょう。
弱点を狙うのは難しいですが、少なくとも仕留めることは出来ます」
「なら私はちょっと行ってきますね! ふたりとも、フォローお願いしますっ!」
「「は???」」
きょとんとする少年たちをよそに、ぐぐっと屈伸して身を落とす織愛。
「行きますよ、ノクティス!」
ずだんっ!! と船が傾ぐほどの力で甲板を蹴り、群れめがけて跳んでいった。
「「…………」」
「なるほど、これが俗に言う"丸投げ"というものですね」
「わざわざ言わなくても解ってますよ、ああもう……」
ふんふん頷くアルジャンテをよそに、ヨハンはうんざり顔で指輪の闇を解き放つ。
染み出したそれは風船のように非現実的な速度で膨れ上がり、現実を侵すのだ。
隣に立つアルジャンテは、愛用の弓にいくつもの矢をつがえ弦を引いた。
『『『キュルルルー!』』』
接近してきた織愛のほうを向き、一斉に突撃を仕掛けようとする魚の群れ。
織愛は恐れることなくその中に突っ込み、縦横無尽に竜槍を振り回す。
「えいえいっ! いっぱい捕っていきますよーっ!」
飛行用のヒレを、あるいは尾を斬られ、エアティック・フィッシュは姿勢を崩した。
そこへヨハンの闇が到来し、いくつもの刃に分かれて息の根を止める。
そして群れの内側に染み込んだ闇が、稲妻の魔力を宿して爆裂するのだ。
バチバチバチ……! 身を灼かない程度に抑えられた麻痺用の攻撃である。
「あの人、どうしてあんなに楽しそうなんですかね」
「何か高揚をもたらす作用が、あの魚類にあるのかもしれません」
(絶対そういうことじゃないだろうけど、黙っておこう……)
嘆息するヨハンの隣で、アルジャンテは引き絞った弦を解き放った。
ヒュパッ! と放たれた矢は、狙い過たず魚の頭部を貫いて〆ていく。
「お料理の手間が省けてちょうどいいですねー♪ 漁師さんおねがいしまーす!」
「「「ソイヤソイヤソイヤ!!」」」
空中を跳ぶ織愛が自前の籠に放り込んでいく傍ら、落ちた魚の残骸は、
甲板に展開したふんどし姿の漁師たちが回収し素早く冷凍保管する。
「……故障はしていないはずなのですが、体感温度の割に随分暑苦しいような」
「それは気のせいじゃないですよ。あの光景も大概目に入れたくない……」
汗を煌めかせ躍動する筋肉を、ヨハンはスルーしてアルジャンテはまじまじ見た。
頭上で楽しそうに笑いながら槍を振り回す乙女。悪い夢のような光景である。
大成功
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煌天宮・サリエス
たくさんの食べ物……あぁ、いつも少ない食事で我慢しているのに……誘惑に抗えない。
己の理性と本能が戦いを繰り広げられている中で銀薔薇の園を発動。
飛んで火にいる夏の虫。範囲内に入った魚を眠らせて締めていきます。
ついでに、傷も治るので傷が原因で鮮度が落ちるといったこともないはずなのです。
それと、生命力を吸収して魚の身が痩せてしまうのは嫌なので生命力は吸収させないで眠らせるだけで留めておきます。
……このまま食べたらダメなのでしょうか?
●少年の懊悩、忍び寄る危険
煌天宮・サリエスは、清貧を規範とする。どんなものであれ、どんな時であれ。
聖者たらんと、救済者たるべしと己を縛るがゆえに、その在り方はやや極端だ。
具体的に言うと、彼はまだ10代としてはだいぶ質素すぎる食生活をしている。
(たくさんの食べ物……あぁ、いけない、誘惑に抗えない……)
グリモア猟兵から説明を受けている間も、そして転移してからもずっと、
サリエスの心には深い懊悩があった。罪悪感、とも言うだろう。
欲に任せて暴食するなど以てのほか。世界には多くの飢えた人々がいるのだ。
ましてや、本心を偽り続ける己が我欲を満たすなど、なんと罪深い……。
「いやー楽しみじゃなー、いまごろ里ではみんな鍋の準備をしておる頃じゃろー!」
「……ごくり」
通りすがったガラットの独り言に、サリエスは思わず唾を飲み込んでいた。
(兜とヒゲで隠れているが、おそらくは)きょとんとした顔のガラットの視線で、
サリエスは己の無意識な行動に気づき、こほん、と咳払いをした。
「……失礼しました。なんでもありません。依頼人の方、ここは危ないですよ」
「何を言っておる、誇り高きナティビアードの戦士は隠れたりしないのじゃ!」
えへん、と胸を張るドワーフの戦士。とはいえ、前線は猟兵に任せている。
以前別の事件で猟兵たちに救われたガラットは、そのあたりを弁えているのだ。
「ところで、お前さんも宴会参加希望なんじゃろ?」
「え……いえ、私は」
「わかっとるわかっとる! さ、ぱぱっと働いてほしいのじゃ!」
「あの……はい、わかりました……」
ガラットの勢いにぐいぐい押されるサリエス。仕事をしたくないわけではない。
しかし、やはり鍋を楽しみにして戦うというのはだいぶはしたないのでは?
いやでも、お鍋食べたい……蟹……白身魚……美味しい飲み物……。
『『『キュルルルー!』』』
「はっ。……いけません、すぐに仕留めなければ」
理性と本能の戦いの前に、オブリビオンを倒さなければ道は開けない。
サリエスは銀薔薇の薙刀を振るい、それを甲板に突き刺した。すると……。
「――安らかに眠れ。……そのほうが美味しくなりますし」
突き刺さった部分から銀の薔薇が高速で萌え出て、近づいてきた魚群を絡め取る。
立体的に編み上げられたそれは、炎天を浴びて輝く銀の花籠めいていた。
不可思議な魔力により、銀薔薇の結界は取り込んだものを眠りに落としてしまう。
『『『キュル……キュウ』』』
「おおー、大漁じゃな! しかも眠っておるから身もそのまんま手に入るぞ!」
「…………」
「ん? どうしたんじゃお前さん」
なにやらじっと黙って魚たちを見ているサリオス。ふと彼は呟いた。
「……このまま食べたらダメなのでしょうか?」
「ダメに決まっとるじゃろーが! せめて血抜きはせんと腹を壊すぞ!」
「…………そうですか」
こころなしか、少年はしょんぼりしているように見えたとか。
大成功
🔵🔵🔵
龍之・彌冶久
鍋。鍋と言ったな???
いやぁ爺になると節々が冷えてな。暖かいものが恋しくなるんだなこれが。
あ、処で熱燗はあるかや?
あるとよいなあ。
まあほれ、食材も必要らしいしな。無駄に年だけは取ってきた、好き嫌いなどせんとも!呵々!
では少し張り切るとしよう。
~じいちゃんの魚の下ろし方講座~
魚は三枚卸が基本だなぁ。
では実際にやってみせよう。
とはいえまあやることなぞ簡単よ。
1.魚の骨格を傍目でみて把握
2."九頭龍・春宵一刻"
3.素早く頭を落とす
4.骨を避けつつ中骨と身との三つに切り分け
ん、これだけだ。
な、簡単であろ?
何よりこの斬り方の一番いいところはな、一回で三匹分卸せてお得なのだなぁ。なはは。
●異世界で三枚おろし披露したらガチで称賛された件
「鍋!」
「ぬおっ!?」
いつの間にそこにいたのか。ガラットは背後からの声にびくっと驚いた。
振り返ると、そこには龍之・彌冶久が珍しい真顔で立っている。
「鍋と言ったな。間違いないな? 鍋なのだな???」
「う、うむ。無事に食材が手に入ったら、じゃが……」
「そうかそうか。うむ、いいなあ鍋。寒い季節は温かいものに限る」
イマジナリー顎髭をしごきながら、ほくほくとした笑顔を浮かべる彌冶久。
見た感じは青年だが……彼は本人曰く"老いぼれ"であるとのことで、
やはり関節の冷えなどもあるのかもしれない。辛いよね、寒い日の関節痛。
「あ、ところで熱燗はあるかや? あるとよいのだがなあ」
「……お前さん、もしかして酒が呑みたいだけではないのかのう?」
「呵呵! そんなことは……呵呵!」
「そうじゃよな! ま、わし酒のあてにするつもり満々じゃけどな!」
「「カッカッカッカッカ!」」
飲んだくれ二人の妙な意気投合が起きた瞬間であった。
やがて砂船の頭上に、魚群が現れぐるぐると回遊を始めた。
遠目から見るとそれは黒い魚影のようで、まるで獲物を追い詰める鮫のようだ。
「さあて、では少し張り切るとしよう。魚は三枚おろしが基本よなあ」
「まあそうじゃの。しかしお前さん、あんな空の獲物を下ろせるのか?」
ガラットに問われれば、彌冶久はふふん、と得意げに笑ってみせる。
そして空中を指でなぞり刻の脈を紡ぐと、まるでピアノの鍵盤を弾くように、
さらなる脈を紡いでは束ね織りながら、じっと回遊する魚群を見つめる。
「まずこうして、傍目で見て骨格を把握するだろう?」
「ふむふむ。ん?」
「でだ」
ヒュパッ。彌冶久は、ボールを投げるような気軽さで神速の剣閃を放った。
常人には……いやさ、達人でもその太刀筋を見切ることは難しかろう。
かろうじてガラットにはひとつ剣が見えた。だが、それはあまりにも足りない。
……ぽとぽとと落ちてきたいくつもの魚の頭が、その証明である。
「!? お、お前さん、いま何をやったのじゃ!?」
「ん? 何って、こう……頭を落として中骨と身を分けただけだが?」
ひらひらと舞い落ちる魚の身……おお、見事な三枚おろし!
炎天を浴びてきらきら輝くそれらのおろしぶりに、漁師たちも唖然とする。
「な、簡単であろ?」
「どこの画家じゃお前さんは!? こんなもん誰にも出来るわけがないじゃろー!!」
さもありなん。猟兵としてもなお、彌冶久の剣技は絶無の域だろう。
「なはは。そう騒ぐでない。そら、次も〆るぞ」
「待て待て待て! 拾って冷凍せんと鮮度が、鮮度がー!」
スパスパ脈剣を振りまくる彌冶久の足元で、漁師たちが右往左往するのであった。
大成功
🔵🔵🔵
数宮・多喜
【アドリブ改変・連携大歓迎】
雷とくりゃ、アタシの出番だね!
奴らは水っぽいし、しかも空を飛んでるとなりゃ
こっちのもんさ!
大技は控えといて、まずは数を減らすかね!
早速相棒を纏って【人機一体・雷】の
サイキック増幅モードになるよ!
そうして思い切り強化した電撃の『属性攻撃』を、
『マヒ攻撃』を添えた『範囲攻撃』として広範囲にまき散らす!
これが本当の、カミナリ漁ってね!
迫ってくる竜巻にゃ、これまた気合を込めた『衝撃波』をぶつけて
相殺してこらえようじゃないのさ!
落ちてくる奴らは痺れてるだけだからね、
その後の活〆は任せるよっ!
ソーレ、大漁だぁー!
バルディート・ラーガ
わアいカニ。今日はカニをたらふく食っても宜しいンです?
この季節はあったけエとこできゅーっと日本酒をいって
コロリと寝ちまうのも気持ちイイですよねエ。
ドワーフのオッサ……お嬢サンとまた楽しく呑めるよに、食材狩るぜエ。
ところであっしは炎とか毒が強い感じのアレですので
うっかり水とか地とかのダメージを受けねエよに立ち回りやしょう。
砂嵐の継続ダメージなぞを甘んじて受けつつ、狙うはお魚サンの急所の腹周り。
炎の両手をカジュアルにパージして、スピード対スピードの勝負です。
よーく狙って……シャアーッ!踊り食い一本!細身なお魚は小骨が多い!
後できちんと調理したのも食わして頂きてエなア。
カルキノス・マークスリー
宇宙の遥か彼方で生産された鉄の蟹は、生命の海に泳ぐ蟹を知らぬ。
己の形はすなわち、強度の高いバイオ・メカニクス戦車の在り方である。
けれど似姿を見つけてしまったならば、行って勝ち負けを測る他に無い。
蟹は戦う事の他を知らぬ。
青銀の刃のごとき魚が宙を舞い、砂が赤色の躯体へ間断なく吹きつける。
塗膜が僅かに毀損され、攻撃と見做す。すなわち迎撃の必要がある。
眼柄のランプが赤色に輝き、内燃機関の回転数が上がっていく。
泳ぐ空魚へ砲塔が猛然と火を噴く。鋏が尾を掴み、地へ叩きつける。
執拗に攻撃された魚の身が未だ食材になるか否かは、蟹の判断では無い。
エドゥアルト・ルーデル
ナティビアード氏じゃん!おいすー
ソイヤしないの?
超スピードで空飛ぶ魚!寿命を削られては鮮度に関わるからな…速攻で片を付ける!
それにしても迂闊な魚め!海中なら無敵かも知れんが【空中戦】なら人間の拙者に分があるぞ!
【UAV】を土台の用に使い空中を舞い閃光弾にて目眩まし!
そしてこれが新たなる剣(UC)…拙者の【早業】と戦闘支援ツールを使い借りたハープーンガンにて複数体同時攻撃!ハイマットフルハープーンとでも言っておこう!
頭のみ狙い撃ち身を傷つけず活け締めまで行う傲慢さ!早く飛ぼうがタイプ等倍だろうが関係ねぇいちげき ひっさつ!すれば良いのだ!
落ちた魚はソイヤな漁師達に捌いてもらうでござるよ!
ピリカ・コルテット
そいやっ、そいやっ♪
海じゃなくても、漁の熱気って漲っちゃいますねえ~!浪漫ですねっ!
絶品のカニを狩って味わえるお仕事、最高じゃないですかー♪
まずは前菜のお魚さん漁ですねっ!(ぴこーん☆)
竜巻で動きを止められたって、離れてたってもーまんたいです!なぜならっ!
この技はいつものポーズのまま撃てますものーっ!!【わたしですよ】!!
〈全力魔法〉に〈属性攻撃〉のショック属性とかもマシマシで乗せて、
眩しい光を放ち一気に多数を撃ち落としちゃいましょうっ!
この子達も美味しく食せるのなら、綺麗なまま身柄を頂いちゃいたいですよねっ♪
アドリブ・連携等大歓迎ですよう~!
●このシナリオは鍋のお話なので芋煮会は開かれません
「ソイヤ!」
「ソイヤソイヤ!」
「ソイヤシイヤソイヤ!」
「「「ソイヤソイヤソイヤソイヤ!」」」
次々と猟兵が撃墜するエアティック・フィッシュを回収する漁師の皆さん。
真冬だっつーのに(砂漠なせいもあるが)いちいち煌めく汗が実に鬱陶しい。
しかもふんどしである。どうも彼らには謎めいたしきたりがあるようだ。
「う~ん、海じゃなくても漁の熱気って漲っちゃいますねぇ! そいやそいやっ♪」
ナチュラルボーン美少女と名高い(?)ピリカ・コルテットは汗臭さも気にしない。
むしろ、海の男たちの醸し出す"浪漫"に、少年めいて心をくすぐられていた。
「しかも絶品の蟹を狩って味わえるお仕事だなんて、最高じゃないですか~♪
手前味噌ですけれど、私も頑張ってお手伝いしますねっ、ガラットさん☆」
ぴこーん☆と、輝くような笑顔。ま、眩しい。美少女ぶりが眩しい!
え? 22歳を美少女って言うのかって? 馬鹿野郎女性はいつでも美少女だよ!
「……なあ、お前さん」
「?? なんです、ガラットさん?」
「盛り上がっているところ悪いのじゃが……あれ、何者じゃ……?」
「??? ……ええっ!? あ、あれはーっ!?」
ガラットが指差すほうをゆっくりと見るピリカ。おお、そこには……!
キュイーン、ピピピピピ……ガシャン、ガシャン、ズズズズズズ……。
あちこちからメカニックな駆動音をあげながら、横歩きする巨大な……蟹!
そう、蟹である! まさか、もう目的のビッグマックスが襲来したのか!?
だとすれば一大事だ! まだエアティック・フィッシュも片付けていないのに!
『…………』
キュイン、キュイン。グゴゴゴゴ……ピロロロロロ、アイガッ……ビリー……。
なんかちょっと駆動音とは違う感じの音をさせながら、巨蟹? が二人を見た。
そう、見たのだ。両眼……というか高性能カメラアイがキュウウンと窄まる!
「うわっ、こっち狙っておらんかあれ!? ちょ、なんとかしとくれ!」
「え、えっとー、あれはー……」
ピリカは説明に困った。するとそこに、新たな人影が。
「おっ、ナティビアード氏とコルテット氏じゃん! おいすー^^」
迷彩服にヒゲの犯罪者、もとい不審者、もとい猟兵のエドゥアルト・ルーデルだ。
この緊急事態(?)にえらい落ち着きぶりであった。むしろ馴れ馴れしい。
「いやはや、呑み放題の次ァ蟹をたらふく食ってもよろしいたァ太っ腹でやすねェ。
ドワーフのオッサ……あいや、失礼。お嬢サン、お久しぶりでごぜェやす」
さらにそんな不審者と連れ立って、バルディート・ラーガまで現れた。
酒の気配するところ、このトカゲあり。今回も酒精につられてやってきたか。
「この季節はあったけエとこで、きゅーっと日本酒をいってコロリと寝ちまうのも、
それはそれで早い春を感じられて気持ちイイですよねエ。イヤ楽しみでさア」
「……って、なんだかそれどころじゃなくないかい? 慌ててるみたいだよ?」
ひょっこり。ふたりに続いて顔を見せたのは数宮・多喜であった。
「いや、だってあそこに、か、か、蟹が! 姿を見せとるじゃろうが!!」
「蟹ぃ……? あー、ああ。なるほどね。そういうことか」
ガラットに言われた多喜は、ガシャンガシャン横歩きする巨蟹?を見て、
なにやら納得した様子で頷いている。視線を受けたピリカは苦笑を浮かべた。
「アアン? もしかしてナティビアード氏、敵と勘違いしてるでござるか?」
「みたいでやすねエ。まあこの状況で歩いてたら無理もねエでさア」
エドゥアルトの言葉にバルディートはうんうんと頷いて、巨蟹?を指差した。
「ありゃアね、あっしらのお仲間でございやすよ。ほらよくご覧なってくだせエ」
「ええ……? いやどう見ても蟹……あ、ほんとじゃ冒険者じゃな」
(あ、あっさり納得した!? なるほど、これが猟兵の外見隠蔽効果なんだ~……)
はらはらと事態を見守っていたピリカも、ほっと胸をなでおろした。
そう、猟兵はどんな姿形をした者であれ、異世界の住人に違和感を抱かせない。
じゃなんでさっきビビってたのかって? なんかそういうこともあるんだよ多分。
『…………』
ウィーンガション。ウィーンガション。ブッビガァン!
そんなわけで横歩きでウロウロしているのは、カルキノス・マークスリーだった。
蟹である。誰がどう見ても、真っ赤に茹で上がった蟹である。
しかし……彼女(!)は、立派なウォーマシン。……ウォーマシン?
「何も知らなかったら驚きますよねぇ、あれ……」
「アタシらはいい加減慣れたがね。あの艇じゃいまさらだよ」
ピリカの言葉に、あっけらかんと応える多喜。恐ろしや芋煮艇。謎の人材力。
と、その時である。突如として、カルキノスがスッと立ち上がった。
「! もしかして敵が近づいてきてるんじゃアねエですかい?」
バルディートの推測は当たっていた。砂嵐の向こうから新たな魚群!
それも数が多い。おそらく五十体以上は群れをなしているはずだ。大群である!
『『『キュキュキューッ!』』』
エアティック・フィッシュの群れは、砂船めがけて猛スピードで接近し、
一斉に鋭角的ターンを決める。そして、船の周囲をぐるぐると回遊するのだ。
たゆたう尾びれが空気を叩き、ざわざわといくつもの砂嵐を生む!
「わあっ、私たちじゃなくて船のほうを狙ってきてる~!?」
「しかもあのスピード、寿命を消耗してやがるでござるな! ガッデム!!」
慌てるピリカ、その隣でエドゥアルトは拳を握った。これは許されざる事態だ。
「勝手にくたばられたら、せっかくの具材が台無しでござるじゃねえか!!」
「いやその前に船をなんとか守らないとだろ!? ……っと」
多喜は言葉を途切れさせた。立ち上がったカルキノスの眼柄が……見よ。
赤く光を放ち、くるくると回転し始めたではないか。パトランプかな?
「あ、ちょっ待てよマークスリー氏! フルバーストマキシマムはグワーッ!?」
全方位射撃を静止しようとしたエドゥアルトが、弾幕に呑まれて消えた。
四方八方に飛び交う弾幕! ハサミ! 泡! ミサイル! ビーム! ハサミ!!
「完全迎撃モード入っちまってやすねこりゃア! スピード勝負らしいや!」
「おかげで竜巻は散ったけど。もういっぺんやられたら魚がズタボロだね……。
ピリカ、一緒に合わせちゃくれないか? アンタなら一網打尽に出来るだろ?」
そう言って、多喜は相棒である宇宙カブを呼び出し、これを鎧として装着。
鮮烈な赤のライダースーツに変身し、ぐぐっと深く腰を落とし力を貯める。
「もちろんっ、もーまんたいです! なぜならっ!」
フルバースト・マキシマムで散らばった群れが、再び船めがけて集まる。
ピリカはにこりと笑顔を浮かべ……元気に大きく両手を掲げた!
「この技はいつものポーズで撃てますもの! わ た し で す よ ー!!」
カッ! 突然まばゆく輝くピリカ! まるで日の出のような痛烈な輝き!
国旗で言うとマケドニア王国の柄を背負っているかのような輝きっぷりだ!
「輝いてる輝いてる! ピリカサン、砂嵐の中に輝いていやすよ!」
「それなんか違うんじゃないかい……? まあいいや、アタシもいくよっ!」
多喜の足元からバチバチと電撃化したサイキックエナジーが湧き上がり、
紫電を撒き散らしながら跳躍。閃光に眩んだ群れを稲妻の網が絡め取る!
「こいつがアタシたちの全力サイキックだ、おとなしく痺れなあっ!」
ZZZZZZTTTTTT……!! この同時範囲攻撃には、魚の群れも避けようがない。
「なるほど、でんき……いやエスパーでございやすかね?
あっしのほのおやどくが効くかわかりやせんが、まあいきやしょう!」
なんだかわからないがものすごく危ない気がすることを言いつつ、
バルディートはマストをぬるぬると滑らかに上り、多喜のあとに続いた。
そして地獄の炎で両手を覆い……なんと、あっさりと切り離してしまうのだ!
「シャアーッ! 踊り食い一本ーッ!」
「ええーっ!? それ大丈……ってもう食べてる!? 早いよぉ!」
あまりにカジュアルな四肢切断に、ピリカはさすがにちょっとビビった。
しかもそのロケットされたパンチで魚を掴み取りむしゃむしゃしてるんだから、
いくら見た目が蛇めいているからといってツッコまざるを得ない。
「タイプ等倍だろうが関係ねぇ、いちげき ひっさつ! でござる!!」
逃げ惑う群れの中から、UAVに乗ったエドゥアルト(アフロ)が飛び出した。
両手、さらに背中に無数のハープーンガンを背負い、一斉発射で捕獲だ!
「名付けるなら、そう……ハイマットフルハープーンでござるな!!」
「こっちはこっちでなんだか危ない……!? って、だめだめっ。
仕留めたらちゃんと〆ておかないとですよね♪ しまっちゃいますよー♪」
それぞれの攻撃で見事に撃沈したエアティック・フィッシュをピリカがキャッチ。
ガチムチ漁師の皆さんが用意した天然クーラーボックスに手早く収納する。
「よおし、活〆は任せとくよ! この中じゃ一番得意そうだ!」
多喜の言葉に、なにやら自己主張げにハサミをシャキンシャキン鳴らすメ蟹。
「いやカルキノスサン、そいつじゃ〆るどころか開きも出来ねエと思いやす……」
カルキノスは赤いランプを回転させ、バルディートに抗議めいた姿勢を取った。
ピーヒョロロロローーーピブンピブン ピーーーーーガーーーーー(抗議のダイアルアップ音)
「ほらほらナティビアード氏も働くでござるよ! ソイヤするでござる!!」
「せんわっ!! せ、せ、せ、セクハラじゃぞそれ! この変態!!」
「えー、そいやっそいやって楽しそうじゃないですか♪」
「!?」
笑顔でのほほんと言うピリカに、ガラットは愕然とした。
ガラットの中では、ソイヤ=ふんどしという図式が成り立っているのである。
「ぼ、冒険者って、進んでるのじゃ……!!」
何もかもを勘違いして、打ちひしがれる田舎者であった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
フェルト・フィルファーデン
そもそもだけれど、オブリビオンって食べられるの?……いえ、こんなに盛り上がっているところに水を差すのは無粋よね。食べられるということにしておきましょうか……
ええと……炎や氷なら出せるのだけれど……どちらも効果は今ひとつよね。ええ、なんとなく。
この魚も食べるつもりのようだし、捕まえやすいようにしましょうか。UCで手頃な大きさの魚の動きを止めて操り、船の近くまで来てもらうわ。毒に罹っているけれど、多分食べる分には無害だと思うし。
後は他の猟兵の方やガラット様、漁師の方に任せるわね。……そ、その……漁師の方の格好、何とかならないのかしら?目のやり場に困るのだけれど……何ともならない?そう……
ティオレンシア・シーディア
※アドリブ掛け合い絡み大歓迎
はぁい、ガラットちゃん。はいほー。お久しぶりねぇ。
ごはんの素を獲りに行くって聞いたからお邪魔したわぁ。
さぁて、と。せっかく自分から突っ込んできてくれるんだもの。根こそぎ狩りつくして美味しくいただくのが礼儀よねぇ?
ずいぶん沢山いるみたいだし、●鏖殺の〇範囲攻撃で片っ端から撃ち落とすわよぉ。
…で、電気に草?その辺の○属性攻撃に持ち合わせあったかしらねぇ?
電気はテイザー弾でいいとして…草、かぁ。ソーン(茨)の束縛でも大丈夫かしらぁ?
後はまぁ、イサ(氷)や液体窒素封入弾の瞬間冷凍とか、使えそうなのは何でも使ってみましょ。
美味しいもののためだもの。多少の苦労は必要経費よねぇ?
黒白・鈴凛
くふふ、旨そうな魚アル
新鮮な魚と言えば刺身が定番らしいアルナ
メインディッシュの蟹の前に軽くつまませてもらおうか
と言っても包丁を持ってくるのを忘れてしまったからナ
仕方ない、手刀で捌かせてもらおう
野生の勘を駆使して魚を確保
熊猫の手刀で三枚下ろし
新鮮な刺身を食べつつ次の魚を狙うネ
熊は河の鮭を掬うようにとるという
熊に出来て熊猫のワタシにできない道理は無いアルヨ
怪力でどんどん掬って、どんどん食べる!
ワタシの食欲に底はないからナ
安喰・八束
こいつぁ絶景、絶景!
龍宮の御使いみてぇなのがわんさかいやがる。
しかも美味とくらぁ、黙っちゃあ居られねえやな。
鉄砲なら届きゃするが、これじゃ弾が何発あってもキリがねえ。
ときにお前さんら、ガッチン漁って知ってるかい。
まあまあ、見てやがれよ面白えから。
「人狼咆哮」。(気絶攻撃)
石打ち付けたり発破ブチ込んだり
大音声で魚を者皆気絶させる漁法だな。
一喝でどれだけ魚が落ちるかね?
警戒されて素早くなろうが、音の速さからは逃れられんだろう。
そら、もう一声いくぞ!(クイックドロウ)
●狩人たちのちょっとした勝負
「…………はぁ」
妖精の少女、フェルト・フィルファーデンは物憂げにため息をついた。
一体何が気になるのか。主に視界の隅でソイヤしている漁師たちだろうか?
それはそれでだいぶ彼女を恥ずかしがらせているのだが、どうやら違うようだ。
「んん? どうしたんじゃお前さん。もしかして何か怪我でもしたのかのう?」
そんなフェルトの様子に気付いたガラットが、ひょっこりと現れた。
フェルトはふるふると首を振り、悩ましげな表情でこう言うのである。
「……そもそもだけれど、あれらって食べられるのか気になってしまったの」
「??? そりゃ食べれるじゃろ。わし食べたことあるぞい」
(ああ、そうか……オブリビオンと言っても伝わらないのね)
ガラットが猟兵でないことを思い出し、フェルトはふうとまたため息をひとつ。
「なんだ? 若いお嬢ちゃんがそんなため息ついたらもったいねえぜ?
……って台詞も大概ジジくさいかね。だが見てごらんよ、絶景じゃねえか」
そこにやってきた人狼の狩人、安喰・八束が剽げた様子で声をかける。
サムライエンパイアで生まれた彼には、この風景が雅やかに見えるようだ。
「竜宮の御使いみてぇなのがわんさかいやがる。しかも美味とくらぁ……」
「くふふ……鍋にしてよし、刺身にしてよし。酒の肴にももってこいアル」
左目を白い髪で覆ったグラマラスな美女、黒白・鈴凛がしたり顔で笑った。
酒飲み同士のシンパシーとでもいうべきか、あるいは類は友を呼ぶというか。
鈴凛の言わんとすることを察し、八束は違いない、とばかりに黙って頷く。
「あらあらぁ、ちょっと気が早いんじゃないかしらぁ? まだ前哨戦よぉ?
あ、ガラットちゃん。はいほー。お久しぶりねぇ、お邪魔してるわぁ」
驚くほど甘く高い声をした女、ティオレンシア・シーディアがひらひら手を振る。
八束同様、ガラットが巻き込まれた厄介事を解決し酒にありついた猟兵の一人だ。
酒飲み三人、言葉なくとも通じるものがある。不思議だが、そういうものだ。
もはやオブリビオンを食うことに何の違和感も抱いていない三人を見て、
「本当に大丈夫かしら。盛り上がっているところに水は差したくないけれど……」
フェルトが気にするのも無理はない。オブリビオンは根本的に異物なのだ。
しかしそれは、ユーベルコードという奇跡の力を使う猟兵も同じではある……。
「ふうむ。じゃあ実際に仕留めて確かめてみるってのはどうだ?」
「えっ?」
「もともとそのために来たんだしねぇ。ちょうどおあつらえ向きに来たわよぉ」
ティオレンシアが見上げた先――黒ずんだ魚群が、雲のように空を飛んでいた。
愛用のリボルバーを素早くリロードし、構える。八束は猟銃を担いだ、が……。
「あー、ありゃあ届きゃするが、多すぎる。弾が何発あってもキリがねぇ」
「鉄砲なんて必要アルか? これがあれば片付くアルヨ」
しゅっしゅっ。手刀を作って素振りしてみせる鈴凛。徒手空拳でやるというのか。
「ちょっとそこで見てるといいナ、メインディッシュの前につまませてもらうヨ!」
「え、ちょっと……つまませてもらうって、まさか――」
フェルトが呼び止める間もなく、鈴凛は軽功を発揮してひらりと跳び上がる。
迎え撃つエアティック・フィッシュは、憎悪の感情でぐんぐんと膨れ始めた!
「ほほう、わざわざ身を多くしてくれるとは嬉しいアルナ! ……シュッ!」
鋭い呼気とともに手刀を放つ。疾い! 達人ですら見切るのは難しいだろう。
光がカッと煌めいたかと思えば――なんと。巨大な魚は三枚おろしに!
「おお、ありゃあ大したもんだ」
「カンフー映画みたいねぇ……どちらかっていうと手品かしらぁ?」
感心するガンナーたちをよそに……鈴凛は、切り身を一枚断ってそのままぱくり。
「あっ!? い、いけないわ、お腹を壊してしまわないかしら……!」
フェルトはおろおろと慌てた。亡国の王女らしい育ちの良さが出たようだ。
問題の鈴凛だが……もぐもぐ咀嚼すると、にぱっと目を輝かせた。
「これは旨いナ! 脂が乗っていて歯ごたえもなかなかじゃないカ!」
そして次のフィッシュ。鈴凛は目にも留まらぬ速度で手刀を振るい仕留める。
一匹、また一匹。見事な手際だが……いちいちつまみ食いしている癖の悪さ!
「熊は河鮭を掬うように捕るという。熊猫のワタシに出来ない道理は無いアルヨ!」
「って、手ぇつけたら俺らが具材に使えねえだろ! ったく……」
八束は声を荒げるが、もちろん鈴凛は夢中で聞いちゃいない。
まあ、それだけ味がいいということだろう。否応なしに食欲を掻き立てられる。
「オブリビオンを、しかも生でそのままだなんて……!」
「まあ、あれはワイルドすぎるわねぇ。とりあえずあたしも仕事しようかしらぁ」
ティオレンシアは別の群れのほうに頭を巡らせ、リボルバーを抜いた。
BLAMBLAMBLAMBLAMBLAMBLAMBLAM! マシンガンめいた矢継ぎ早の銃声!
マズルフラッシュとともに閃光がはしる。弾丸に仕込まれた電撃によるものだ。
あるいは拘束のルーンを刻まれた弾丸がフィッシュを絡め取り、
また別の弾丸には、氷のルーンが刻まれており被弾した敵を瞬間冷凍してしまう。
にこにことしたまま、神速のファニングで撃墜、撃墜、撃墜!
「たいしたお点前で。ふむ、したら俺ぁそうだな――」
八束は顎をさすり少し考え込むと、何かを思いついたような表情をした。
「ようし、俺の故郷にあるガッチン漁ってのを見せてやろうじゃねえか!」
面白えから見てやがれよ、と言い、八束は大きく大きく息を吸い込む。
そして――!
「発ッッッ!!!!」
「~~~~~~~っっ」
轟くような大音声。近くにいたフェルトは、とっさに両耳を抑えた。
ユーベルコード、人狼咆哮である。熟練の八束にかかれば射程距離は広く長い。
頭上を翔んでいたエアティック・フィッシュは、気絶して甲板に落下した。
「まあ! 声だけで気絶させてしまうだなんて、すごいわ!」
「本当は石打ち付けたり発破ブチ込んだりするんだがなぁ、面白えだろ?
伏せて警戒してる獣ならともかく、群れた雑魚なんざ声で十分ってわけだ」
ちなみに、落ちてきたエアティック・フィッシュはというと、
待機していたガチムチ漁師の皆さんが素早く〆て回収していく。
「……わ、わたしも少しは捕まえないと、よね」
フェルトはできるだけそちらを見ないようにしつつ、一体の魚を捉えると、
目に見えない電脳ウィルスを流し込むことで意識を掌握。傀儡となす。
しかもそのウィルスは、なんらその肉を毒することなく次から次に伝搬していくのだ。
「よかったわ、ほのおやこおりはなんとなく効果がいまひとつな気がしたのよ」
「……微妙に別の意味で危ない気がするわねぇ、その直感」
ティオレンシアは言いかけて、なんとなく触れるのはやめておくことにした。
なんかこう、とてつもなく大きな規矩に触れそうな気がしたからである。
「……ところで、そ、その……」
「「「ソイヤソイヤソイヤソイヤ!」」」
ザザザザ。落ちてきた魚のもとに駆けつける漁師たち。飛び散る汗。荒々しい声。
フェルトは思わず顔を赤らめ、小さな両手で目を覆って困ってしまった。
「りょ、漁師の方々の格好、なんとかならないのかしら? 目のやり場に困るわ!」
「くふふ、ウブな娘アルナ。ま、どうにもならないアルヨ」
「……そう……はぁ」
戻ってきた鈴凛の言葉に、またも深いため息をつくフェルトであった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ネグル・ギュネス
鮫だったら映g──ごふん、なんかでみた竜巻みたいなだなあれ。
…戦士ガラットはあの時の、か
これもまた縁よな
では、我が刃捌きを見るが良い
どんなMiracleも起こしてやる!
とりあえず突貫!
速度なら負けないと────え、待って嵐に突っ込まグワーッ!?
巻き、巻き込ま、やだ、わたし、飛んでる…
じゃない!ええいぶった斬るぞ!ソイヤなおっさん達!準備は良いか!
破魔の雷光を宿した刃で斬る!
衝撃波で鱗は飛ばし、動脈を切って血抜き!鮮血撒き散らしながら切り身をポンポン飛ばしてやる!
っ、数が多い!
ならば最後は、【破魔の断・雷光一閃】!
諸共雷で気絶させた!
あとは運べ、捌け
さて調理は私も共に──え、調理場出禁?ナンデ?
千桜・エリシャ
ガラットさん、お久しぶりですわね
また面白そうな依頼を持ってきて下さって
砂の海を進む船…なんて風流な…
なんて感じ入っている雰囲気ではないようですわね
ふふふ、でもこの世界の美味を味わえる機会ですし
宴は豪盛でないとね
なるほど…まずは前菜ということですわね!
お魚捌きならばお任せあれ
私も厨房には入ることはありますから
この程度、女将の嗜みですわ
魚の首や鰭、尻尾などの部位に同時に斬撃を飛ばし
空中で解体して差し上げますわ!
乗組員の皆様はそれを地に付く前に受け止めてくださいまし!
その逞しい身体は飾りではないでしょう?
強い男は大好きですわ
私に格好いいところを見せてくださいまし
ね?
ふふふ、大漁大漁…♪
お鍋が楽しみね
●首切り女将と皆殺紳士
季節は真冬だが、このワイルドなエリアの気候は一定しない。
そんな炎天と砂風のなか、甲板に正座する黒スーツの男。
「……どうしてこうなった」
ネグル・ギュネスはうっそりとした声で呟いた。
「言うまでもないでしょうに……」
そんなネグルを、千桜・エリシャは呆れた顔で見下ろしている。
なかなか見られない光景である。実際、何がどうなってこうなったのか。
話は、やや前に遡る――。
まだ、エアティック・フィッシュの本格的な襲撃が起こる前のこと。
「ガラットさん、お久しぶりですわね」
「ハイホー! そちらも息災なようでなによりじゃ!」
砂船の甲板上。依頼人であるガラットと再会したエリシャは、にこやかに会釈。
あの時の宴会では、手癖の悪い盗人に少々してやられたが、それはそれ。
楽しい機会を提供してくれたドワーフに対し、女将として礼節を払う。
「それにしても、また面白い依頼を持ってきてくださって……」
そう言って、エリシャは緩やかに進む風景を見た。一面広がる流砂の海。
魔法の力でその上を運行する巨大な船……まさに、異世界らしい風景だ。
「なんて風流なんでしょう……なんて、感じ入っているばかりではいけませんわね」
「うむ! 今回も、お前さんたちの力量を頼らせてもらうからのう!」
兜の下から向けられる信頼の眼差しに、エリシャは淑やかに微笑んだ。
「もちろんですわ。この世界の美味を楽しめる機会ですし。宴は豪勢でないと」
「その言葉には同意する。ましてや我らが来たならば――そうだろう? 女将」
「あら……」
そこに颯爽と現れたのは、エリシャの宿で従者として働くネグルであった。
炎天にあって、そのスーツの着こなしはいっそ涼やかである。
「戦士ガラットはあの時以来だな。これもまた縁か」
「……ああ! お前さんあれじゃろ、べろんべろんに酔っとった」
「んっんん! ンンッンンーッ! オホノオホン!」
シリアスな空気が一瞬でぶっ飛んだ。わざとらしい咳払いでごまかすネグル。
エリシャは袖で口元を隠し、ころころと可憐な声で笑っている。
「それはそれ、これはこれだ。なにせまだ宴は先の話だろう?」
「ええ、けれど――どうやら前菜のほうは、来てくれたようですわよ?」
ちらり。女将の視線に従えば、なるほど彼方から来る砂嵐と……黒ずんだ雲。
否、それは魚群だ。エアティック・フィッシュの夥しい大群である!
「……砂嵐の中に魚と蟹か。あれが鮫だったら映g」
「ネグルさん? 余計なことを言ってないで、お仕事の時間ですわ」
「う、うむ。なに、刀捌きなら一日の長がある」
気を取り直したネグルは、すらりと黒刀を抜き放つ。炎天に鈍く輝く刃紋。
エリシャもまた、桜花を纏いながらすらりと墨染の大太刀を佩いた。
「大事な食材じゃからな、できるだけ身は無事に仕留めてほしいんじゃ!」
「お魚捌きならばお任せあれ、ですわ。私も厨房には入ることもありますもの」
これも女将の嗜み。エリシャには十分な自信があった。
「おっと、ここは私に一番槍を任せてくれまいか。露払いは従者の仕事だろう?」
「キザじゃのー」
「ンッンー! オホン、オホンオホン!」
咳払いしつつ、いいから静かにしててくれとチラチラガラットを見るネグル。
「そういうことならお任せしますわ。けれどあまり遅いと……」
「――速度で、私が誰かに負けると?」
エリシャの言葉にネグルは不敵に笑い、颯爽たる足取りで甲板を蹴った。
「さあ、我が刃捌きを見るがいい! どんなMiracleも起こしてグワーッ!?」
「「…………」」
びゅううううううう。ネグル、あっけなく砂嵐に攫われて飛んでいく。
エリシャとガラットは顔を見合わせ、やれやれといった様子で肩をすくめた。
「乗組員の皆様、受け止める準備をお願いいたしますわ!」
エリシャは漁師たちに言うと、胡蝶に抱かれるようにして空へと翔んだ。
ミサイルめいて飛来し砂嵐を起こそうとする敵の機先を制し、一閃。
狙いは首、ヒレ、尻尾、あるいはエラといった脆弱な部位。見事な太刀筋だ。
目の付け所はもちろん、なにより感嘆すべきはその切れ味である。
一閃に見えてその実、無数に放たれた剣閃は周囲の敵をすらりと両断し、
切断面はといえば、まるで磨き上げた金属のように光り輝いてすらいた。
一方、ネグルのほうは……。
「巻き、巻き込ま……やだ、わたし、飛んでる……?」
なんか感極まっていた。しかしすぐに顔をぶんぶん振って我に返る。
「じゃない! ええいぶった斬るぞ! 天に雷鳴、地に黒刀――!!」
バチバチバチ! 黒刀を覆う稲妻。ネグルは空中で身をひねり、斬撃!
ドロロロロロ……と黒雲めいた雷鳴が響き渡り、魚の群れは四散した。
荒々しいが、腕は確かだ。ネグルとて、伊達に猟兵をやってはいないのである。
しかし……問題は、そう、荒々しい。鱗も動脈血も乱暴に吹き飛んでいく。
数が多いこともあって、斬撃は鋭利ではあるもののやや乱舞めいていた。
「ちょっと、ネグルさん……! 斬るのはいいですけれど、下の方々がっ」
「問題ない。ソイヤなおっさんたちならなんとかなる! せいっ!!」
どぉん――!! 大音声とともに稲妻が炸裂し、群れを撃滅した。
ぼとぼとと堕ちていく魚たち……と、剥がされた鱗や血抜きされた体液。
魚は見事な捌きぶりであった。しかし、甲板上は……。
「……ふう、一段落だな。さて、調理は私も一緒に」
「正座せい」
「えっ」
「調理場なんぞ出禁じゃーーーーー!!」
鱗やらなんやらでべっちょべちょになったガラットが飛び跳ねて怒る。
きょとんとするネグル、しかし"圧"に負けて正座することに。
「お鍋は楽しみですけれど、先行き不安ですわ……はあ」
額に手を当て、やれやれと頭を振るエリシャであった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
リア・ファル
POW
共闘アドリブ歓迎
鍋だって!?
美味だって!?
ゼヒ一度食べてみて、解析の上、似たような食材を探したり
大量に取れるなら入荷できないだろうか!
今を生きる人々の食欲の為に!
「行くよイルダーナ! 狩猟開始だ!」
イルダーナで接敵し、生態や行動その他、情報解析開始
(操縦、情報収集、空中戦)
なんかメチャクチャ暴れるけど、生け捕りは難しいかな?
想起されるのは……憎しみ、かな?
ではUC【銀閃・概念分解】発動、対象概念を『憎悪』に指定!
片っ端からヌァザで斬る!
(早業)
後は『グラヴィティアンカー』で捕縛できたら完璧かな?
(ロープワーク、マヒ攻撃)
皆の衆! 生け簀の用意は良いかい?
次々いくよ!
クロエ・ウィンタース
そういえば季節的には鍋の季節だな。砂漠の地だと判らんが。
まあいい。やる事はいつもと同じ。
オブリビオンは全て斬る。ついでに食えるものは食う。
何も問題はない。問題ないぞ
最近あつらえた細剣と衣装と併せ試してみよう
千日の稽古を鍛とし、万日の稽古を練とす 、ともいうが
実戦に勝る稽古も無しともいう。丁度良い機会だ
群れに無造作に飛び込んでいく
敵の攻撃は【見切り】【カウンター】、
【ダッシュ】【ジャンプ】で攪乱し
【フェイント】を織り交ぜて【2回攻撃】
地上からは無数の突きを。空中からは体重を乗せた突きを地面に縫い止める勢いで突きこむ
ソイヤソイヤ言っている男衆からはそそそと離れる
煩いし目のやり場に困るというか。うむ
ヌル・リリファ
食材。
そうやってかんがえるんらおっきいほうがいいのかな?
憎悪をあおる方法ははよくわかんないけど。
そもそもわたしは殺しにくる敵なわけだし、あんまりきにしなくてもいいのかな?
けしとばしちゃだめだし、ちかくにとんでいって無駄なきずをつけるまえびルーンソードで直接首を一刀のもとにきりおとすよ。
もっといいたおしかたがあるならおしえてもらってそれにしたがうけどね。
ちょっとまえまでたべるの、苦手になっちゃってたけどいまは平気だし……。
まだ“美味しい”はよくわからないけど、みんながたのしそうにしてる場所でたべるのはたのしいってまたおもえるようになってるから。がんばる。
●"美味しい"の価値
『『『キュルルルルーッ!』』』
新たな魚群が迫る! 砂船を破壊しようと体を膨張させ落下してくるのだ!
「図体をデカくしたところで、所詮は雑魚だ。――遅い」
その寸前で、クロエ・ウィンタースが甲板に立つ。腰に佩いた愛刀はそのままで、
代わりに手に担っているのは、白銀の刀身を持つ精緻な刺突剣である。
手元が煌めいた。……そもそも細剣というのは、ただ突くだけが能ではない。
一流の使い手が神速を以て振るう時、それは斬をたやすく可能とする。
独特のしなりを起こした切っ先が、軟鉄ならではの特性により加速するのだ。
ピュウ――と、野鳥が鳴くような甲高い風切り音が響く。……一閃。
微細な刺突傷とエラを狙った斬撃で〆られたエアティックフィッシュが落下する。
「おおっ、さっすがクロエさん! 相変わらずの腕前だね!」
「……リアか。まあ、いるだろうとは思ったが」
ぴゅっ、と刺突剣に纏わりついた血を払い、クロエは振り向いた。
愛機イルダーナを駆るリア・ファルが、にこやかに微笑んで手を振る。
「そりゃあね! なにせ鍋だよ! 美味な魚介類ときた!
これはぜひ一度食べてみて、解析して色々探して商材にしたいからね!」
どんなときでも商機を伺う、したたかなバーチャルキャラクターここにあり。
クロエは馴染みのいつも通りの様子に、ふっと薄くだが笑みを見せた。
「オブリビオンは全て斬る。ついでに食えるものは食う……季節的には鍋の季節だ。
やることはいつも同じ。何も問題はない。……手を貸してもらってもいいか?」
「もちろん! 実はもうひとり、頼もしい助っ人が来てるのさ!」
「もうひとり……?」
ちょうどクロエが空を見上げた時――ルーンソードを振るい、少女が降りてきた。
「リアさん。うえにかくれてた群れ、かたづけておいたよ」
「ありがとうヌルさん! それじゃあここからはスリーマンセルだね」
空色の瞳を持つ人形少女……ヌル・リリファは、こくんと頷きクロエを見る。
クロエのあまり感情的でない表情にも少なからぬ驚きめいたものが浮かんだ。
「……少し意外だな。この手の仕事に来るタイプだとは」
ヌルはきょとんとして首を傾げる。ぱちくりとガラスめいた瞳が瞬いた。
「そうかな。たしかに、ちょっとまえまでたべるのは苦手になっちゃってたけど」
でも、と前置きした上で、ヌルは言葉を続けた。
「オブリビオンをたおすっていうのはかわらないし、それに……。
みんながたのしそうにしてる場所でたべるのはたのしい、ってまたおもえるから」
言葉の端々には、クロエの知らざるヌルの秘めた事情が垣間見えた。
感情に乏しいこのミレナリィドールにも、それなりの厄介事があるのだろう。
あえて首を突っ込むようなタチでもない。なにより。
「どのみちオブリビオンを斬る。それは変わらない――そうだな。うん、そうだ」
別にお鍋が食べたくて駆けつけたわけではない。ホントホント。
クロエは誰にごまかすわけでもなく心のなかで自分を納得させた。乙女心である。
「たくさん獲物を捕まえないとね! クロエさんもお腹いっぱいになれるように!」
「……酒は、我慢しなければな」
宴のことを考えるのはここまでだ。クロエは気持ちを切り替え空を睨む。
そこには、新たな魚群が黒い雲のようにぐるぐると回遊していた。
「ようし、船の皆の衆! 生け簀の用意はいいかい?」
「「「ソイヤソイヤソイヤソイヤ!!」」」
リアの呼びかけに、ガチムチ漁師の皆さんが汗をきらめかせて答えた。
……クロエはそっちをできるだけ見ないようにした。うるさいしちょっと、こう。
「あのひとたち、どうしてあんな格好してるの?」
「気にするな。気にするだけ無駄だ」
「そっか」
そう言われても、ヌルは気になるのかガチムチたちをちらちら見ていたのだが。
ともあれ三人はそれぞれの獲物を構え、砂風を切り裂くように空へ翔んだ!
「行くよイルダーナ、クロエさんにヌルさん! 狩猟開始だ!」
「ああ」
「りょうかい」
「今を生きる人々の、食欲のためにっ! ヌァザよ、次元を斬り裂けっ!」
細剣の銀光、ルーンソードの剣影、そしてリアの魔剣が次元を、敵を断つ。
非物質的な概念すらも切り裂く魔剣は、"憎悪"の感情そのものを斬るのだ。
エアティック・フィッシュの動きと形が衰え……そこを、双剣が仕留める。
もちろん仕留められて落ちてきた魚は、眼下で漁師たちがキャッチする。
『『『キュルルルルーッ!』』』
「まだまだいるみたいだね、大漁大漁!」
仲間とともに敵を斬って斬って斬りまくるリアは、楽しそうに笑っていた。
宴のこととか。あとこれからの商売のこととか考えてるからね!
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
九十九折・在か
お魚とお花は鮮度がイノチ!
ママ達もそう言ってたから、ササーっとソイヤして、ササーっとソイヤするぜ!
ソイヤソイヤ……しへへ
ソイヤ面白ぇね!意味分かんないけど!
☆行動
「砂でも空でも関係ねぇぜ!みんなバリバリだぁ!!」
飛来する魚群へデッドマンズ・スパーク
使うのは利き手ではない左腕
ダメージ増加を抑えて魚を甲板に落とし
漁師に処理してもらう
「痛い思いを弱い魚にさせるのは、オウジャとして良くないけど……せっかくのご飯なら最大限美味しく食べたいもん」
でも
ちょっとくらい食べても良いよね……ダメ?
ソイヤぁ……
●デッドガール・ランペイジ
ZZZZZTTTTTT……バチバチバチ、ガガガガガガ――ッ!!
耳をつんざくような轟音とともに、膨大な電流が解き放たれ荒れ狂った。
炎天の砂風を斬り裂いてのたうち回る稲妻は、まるで神話の竜めいている。
「砂でも空でも関係ねぇぜ! みんなバリバリだぁ!!」
ズガガガガガガ!! 九十九折・在かは、呵呵と笑って片腕を捧げた。
この程度、彼女にとっては何の意味もない――なにせ、少女は死んでいる。
「ぬおおっ、ものすごい雷じゃ! 魔法か、魔法なのか!?」
「マホー? 違うよぉ、えーと……ああ、あれあれ!」
在かがガラットに指さして示したのは、ガチムチ漁師の皆さんだった。
デッドマンズ・スパークによって一網打尽にされたエアティック・フィッシュを、
漁師の皆さんはせっせと回収し、すばやく〆て冷凍保管している。
「??? なんじゃ? 漁師どもがどうした?」
「ソイヤソイヤ! ってさぁ。しへへ。ソイヤ面白ぇね! だからこれもソイヤ!」
「い、意味がわからん……」
「しへへへ、わたしもよくわかんない! ソイヤってなんなん?」
「……実のところ、わしもよくわからんのじゃ……!」
そっかー、と在かはあっさり納得(?)した。だいぶ特異な思考回路をしている。
それはデッドマンであるがゆえなのか、生前からの天真爛漫さなのか。
とにかく在かにとって、漁師たちの気合とデッドマンズ・スパークは同じらしい。
片腕をふっとばす勢いで一網打尽にする、という覚悟の現れだろうか?
楽しげにバリバリと稲妻を放つ在かの表情には、そんな重苦しいものはなさそうだが。
「しかし本当に大したものじゃのう。おかげで雑魚が大漁じゃわい」
「しへへ。……痛い思いを弱い魚にさせるのは、オウジャとしてよくないけどー。
せっかくのご飯なら最大限美味しく食べたいもん。お魚とお花は鮮度がイノチ!」
ぶんっ、と左腕を振り上げる。あ、稲妻の代償にしたせいでなくなってた。
「調理のほうはわしらに任せておけばええぞい。旨い鍋を造らねばのう!」
「おー! ……あ、でも」
「お? どうしたんじゃ」
在かはこてんとしなを作るように首を傾げてぽつりと言った。
「……ちょっとくらい、いま食べてもいいよね……ダメ?」
「ダメに決まっとるじゃろ! 腹を壊すぞ!」
「ソイヤぁ……」
ガラットに叱られてしょんぼりしつつ、吹っ飛んだ片腕を拾い直す在かだった。
大成功
🔵🔵🔵
アウル・トールフォレスト
(※全て自由にお任せします)
砂を進む不思議な船に、大きなカニさんに、空飛ぶお魚さんに…すごいね!ここはとっても楽しそう!
それじゃ、わたしもお手伝いするよ!後のご飯も楽しみだしね!
【戴冠・百獣支配】を使用
大きな声を上げて、お魚さんたちに「動かないように」呼びかけるよ
素早くなったところで、動けなければ意味は無いもの
そうなった後は、船乗りさんたちにも手伝って貰いながら、爪や蔓植物を使ってお魚さんを攻撃したり捕まえたりしていくよ
後で食べるためにも『刻印』で血抜きしたり…ちょっとだけつまみ食いとかしても、大丈夫だよね?
下ごしらえは大事だものね
ふふっ、どんな味がするんだろう…!
アルコ・アーラ
■心情
狩れば狩る程美味しい食材が手に入るってのはいいわね!エアティック・フィッシュもビッグマックスもガンガン狩るわよー!
……乾物とかにしたら、村にも持って帰れるかしら?
■戦闘
基本的には他の猟兵を【援護射撃】しつつ、『天が導くは光陰の矢鏃』で狙いを定めてエアティック・フィッシュを撃ち抜くわ
場合によっては【空中戦】で空に舞い上がって矢を放つのもいいかしらね?
■その他
アドリブや連携等は大歓迎よ!
鬼柳・雄
※アドリブ絡み感激
ほう絶品の食材な巨大蟹。しかも空飛ぶ魚も鍋や刺身でイケると。
シア(契約してる悪魔)、これが終わったらドワーフの里で宴会だとよ。持ち込みもアリらしいしドワーフの宴会だ、たらふく食えるぞ。
わかってんな?それが報酬だ。やる気出たか?出たな。よし、やるぞ。
シアと連携して敵を追い込み、仕留めていきます。
相手の攻撃は「戦闘知識」「第六感」「オーラ防御」で凌ぎ、アサルトウェポンの「誘導弾」で攻撃。シアは燃やしたり凍らせたりはちょっとまずいので、空飛んで双剣でスパッと切る方向で。
「あの魚ども群竜大陸の森にも居たなぁ…砂漠蟹の中にも居んのかよ」
舘林・祀
湯で蟹、焼き蟹、カニみその甲羅焼き……じゅるり
……はっ、いけないいけない。その前に前菜を確保しないと
新鮮なお魚さん。大人しくアタシの胃袋を満たすために散ってくださいな
鮮度を落としたくないから、攻撃は最低限かつ急所を狙っていかないと
『壱之型:陽炎』
刺身の……もとい敵の動きをきっちりと見切りましょう
気を纏った拳で相手の突撃を、竜巻を、いなす
弱点はあの目玉かしらね?コラーゲンたっぷりかもしれないけど……いたしかたない
じっくり時間をかけて動きを把握したなら一撃
ちゃんと身は残ったかな?
っていうか、食事に気をやってたけど
漁師の人たちのあの引き締まった筋肉!最高じゃない!
こっちにも「ソイヤ!」ちょうだーい!
●エアティック・ラプソディ
"ビッグマックス"を覆い隠す砂嵐が、段々とゆらぎ薄らぎ始めた。
砂嵐を起こしている取り巻きのエアティック・フィッシュの数が減ったことで、
いよいよ本命の獲物に手がかかりつつある、ということだ。
『『『キュルルルルル……!』』』
残されたエアティック・フィッシュは一気に群れをなし、砂船を狙う。
あそこだ。あれが原因だ。叩き潰して捻り潰してしまえ!
「いよいよラストスパートかけてきたわね、追い詰められたってことかしら!」
アルコ・アーラは迫りくる大群を前に、きりきりと愛用のロングボウを弓引く。
ここが正念場だ。そして……獲物を狩りまくるボーマスタイムでもある!
ヒュパッ、と放たれた矢が魔力の輝きを放ち、先頭の魚の目玉を貫通した。
「こんな不思議な船を沈められたら大変だもんね、わたしもお手伝いするよー!」
アウル・トールフォレストは、無邪気に目をキラキラさせて手を挙げた。
2メートル50センチの巨体いっぱいに空気を吸い込み――轟くような大音声!
「みんな、動かないでーっ!!!!!」
『『『『キュ……!?』』』』
アウルの声は、あらゆる動物に語りかける百獣支配の魔力を持つ。
それはオブリビオンであろうと変わらない……途端に群れはビクリと震え、
高速遊泳を止めてしまう。そこに突き刺さるアルコの魔力の矢の雨嵐!
「いい調子ね! これならすぐに片付け……――られない、わね」
次の矢をつがえ不敵に微笑んだアルコは、すぐに表情を曇らせた。
いましがた片付けたのは第一波……先ほどの倍近い数の群れが迫ってくる!
アルコはアウルと顔を見合わせる。ふたりでは手が足りない!
そこへ駆けつけ弾丸めいて突っ込んできたエアティック・フィッシュを斬り裂いたのは、獣の特徴を備えた人ならざる女――獰猛な悪魔であった。
「おいシア、突っ込みすぎんなよ! 追い込んで少しずつ仕留めんだよ!」
赤と青の双剣を握る悪魔マルコシアスは、術者である鬼柳・雄の言葉に、
かあっと犬歯を剥き出しにして威嚇してみせる。どうやらご立腹らしい。
「腹減ってるのはわかるがな、さっきも言っただろ。報酬の宴会はあとだ、あと!
少しでもたくさん飯が喰いたきゃ、しっかり丁寧に〆とけよ。出来るだろ!」
少女の姿をした悪魔は不承不承といった様子で頷き、疾風となって駆け抜ける。
双剣を振るうたびに突っ込んできた空魚は斬られ、甲板に転がるのだ。
もちろん雄自身も、アサルトウェポンを使い的確に敵を牽制、撃墜する。
「増援とはありがたいわね。狩る前に食べられちゃったら大変だもの」
「近くに来たのはわたしが動きを止めるけどー、遠くのはお願いー!」
アルコとアウルの言葉に、雄は「おう」とぶっきらぼうに頷いた。
エアティック・フィッシュは、一体一体の戦力は大したことのない雑魚だ。
しかし、そういうものほど群れたときほど、追い詰められたときほど恐ろしい。
狩られるばかりだった獲物の最後の抵抗。猟兵たちは本腰を入れて望む!
「おお、そろそろ嵐が消えそう……あの向こうに幻の巨大絶品蟹が……!」
そんな緊迫した状況の甲板上に、完全にそっぽを向いている妖狐がいた。
砂嵐の向こうに揺らめく巨蟹のシルエットを見つめ、耳をぴこぴこしている。
「蟹、蟹かあ。いいね……茹で蟹、焼きガニ、蟹味噌の甲羅焼き……じゅるり」
「ってうちのシアより食いしん坊な奴がいたな!? 今そんな場合じゃないだろ!」
「はっ! ……いけないいけない。そうね!」
雄の声で我に返った妖狐の少女……舘林・祀は慌てて涎を拭い、拳を鳴らした。
細くしなやかな体つきでありながら、全身に満ちる闘気は達人のそれである。
何を隠そう、祀は拳によってすべてを切り開くゴッドハンドなのだ……!
「とはいえ、焦って鮮度を落とすのはイヤね。大事な刺身……いえ、敵だもの」
見据える祀の視線の先、ごうごうと渦を巻いて砂の嵐が生まれた。
向かう先は無論砂船。船体そのものを巻き込んで破壊しようというつもりか。
「――見えた。コラーゲンたっぷりで勿体なさそうだけど、致し方ない!!」
疾い! だんっ!! と甲板を蹴り、祀は残像めいた速度で疾走する!
そして竜巻を鋭い手刀で切り裂くという絶技を振るい、さらにその先へ!
突進してきたエアティック・フィッシュの目玉を、ぐしゃりと一撃で貫いた!
『キュウウ……ッ!!』
「一丁上がりよ。さあ、次はどいつが相手!?」
息絶えた魚を甲板に放り捨て、祀は拳を掌で叩き……はたと振り返った。
意気軒高の漁師たちが、ソイヤソイヤと暑苦しく魚を〆まくっている。
「いやー、それにしても最高ねあの引き締まった筋肉……こっちにもソイヤちょうだーい!」
「「「ソイヤ!!」」」
「キャー! 素敵ー! 筋肉キレキレー!」
「……いやだからそんな場合じゃなくねえ!?」
「あの手のタイプは言っても聞かないわね、私たちが頑張らないと……!」
アルコは説得を諦め、自ら空中戦を挑み、超近距離射撃で敵を次々に仕留める。
「あっちもー、こっちもー、動いたらだーめー!」
アウルの大音声が敵を縛る。無論、彼女自身の爪が獲物に最期をもたらす。
そしてさりげなーく、爪でこそいだ魚の身をつまみ食いしようとするアウルだが。
「そこ! シアが真似しそうだから今はやめてくれ!」
「むむう、仕方ない……あとの楽しみにとっておこう」
雄の声に少し落ち込んだ様子で肩を落としつつ、進軍を再開するアウル。
エアティック・フィッシュの群れは、もはやほとんど全滅しつつある……!
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ヘンリエッタ・モリアーティ
【双龍】
ウーン、日焼けしちゃいそぉ
灯理、ちゃっちゃとやっちゃいましょお
だって嫌だもん日焼け!乙女の天敵よ乾燥もダメー!
――ということで【全能の逆説】〜!
派手な竜巻に噴水たしちゃえ!
血は派手に出なくて物足りないけど
ちゃんとお魚あとで食べるって思うとぉ
一番適してるかなっておもうのよね。はーあ、むさ苦しい砂の海なんてナシナシ。オアシスがやっぱりないとね!
空気って水がいっぱいあるんだってぇ。砂も全部洗い流してあげる
仕留める担当、私じゃないもの。灯理、ヨロシク〜♡
お魚っていいわよね油分少なめでヘルシーで……♡
実質カロリーゼロ……ね!!?(天啓)
鎧坂・灯理
【双龍】
了解したよ、マリー
とはいえマリーの肌が傷むのは忍びない
二人分の周囲を索冥で覆い、紫外線を防ぐかな
おお、派手だなあ(拍手)
ふむ……便利そうだし、私もそういうの使えるようになるかな
日々学習だ
さて、仕留め役を任されたことだし、【短夜妖精舞】
水竜巻に向かって雷撃をかます 魚が蒸発しない程度にな
えっ(素)
……そ、そう…かなあ……!??
いや待てよ、心頭滅却すれば火もまた涼しと言う
つまりゼロカロリーと心胆から信じ込めばそうなる、可能性が…あるんじゃないかなあ……!!
●騒乱のあと、龍の暴威
天候も季節もあべこべなこの自然地帯では、"外"の季節は当てにならない。
なので漁師の皆さんもあのガチムチふんどし衣装……なのか? それは不明だ。
ともあれ、砂の海にはいつだってじわじわと炎天が降り注いでいた。
そして――大量のエアティック・フィッシュの群れが砂船に殺到し、
猟兵の攻撃によって死滅あるいは生け捕りにされたあとには、
雲ひとつない嫌味なくらいの青空が広がっていた。砂嵐も、もうすぐ消える。
「ウーン、日焼けしちゃいそぉ……」
ヘンリエッタ・モリアーティ――いや、"鎧坂・メアリ"は物憂げに呟いた。
多重人格。"犯罪王"の一部。そして彼女もまた、鎧坂・灯理の"つがい"。
"ヘンリエッタ・モリアーティ"とはまったく別人の間延びした口調。
「灯理、ちゃっちゃとやっちゃいましょお。日焼け嫌だもん、乙女の天敵よぉ!」
「了解したよ、マリー。あと一仕事、必要なようだからな」
灯理は優しく微笑んで頷くと、自身らの周囲を思念防壁で覆った。
これで紫外線は問題あるまい。さて、その上で考えることはといえば……。
「あ、出た出たぁ! もしかしてあれで最後なのかなぁ?」
ズゴゴゴゴゴ……と流砂が重力に逆らい、空に向かって伸びていく。
渦巻く砂嵐。生き残りの群れが協力して生み出した特大の竜巻だ……!
分厚い砂のカーテンの向こうには、何十匹かの空魚が高速て回遊している。
「だろうな。それじゃあマリー、出来るだけ傷つけずにやるとしようか」
「ウーン……乾燥も大概ダメなのよねぇ。――ということでぇ!」
愛用のツイン・チェーンソーをギャリギャリと駆動、そしてたん、とステップ。
鋸刃でずたずたに斬り裂かれた空間は歪み、砕け、そこから矛盾の力が溢れた。
すなわち、自然現象をも操る"全能の逆説(パラドックス)"である。
溢れた魔力は水の性を得ると、砂嵐に混じり合い……ざばあぁっ!!
「おお、派手だなあ」
灯理はぱちぱちと拍手をした。見上げる先、砂嵐が噴水に"喰われる"。
空を翔ぶ魚を、水の奔流で打ち上げ叩きのめすというのはなかなかに皮肉的だ。
「はーあ、むさ苦しい砂の海なんてナシナシ。オアシスがやっぱりないとね!」
血が出ないのは"マリー"としては物足りないようだが、それはそれ。
仕事はきちんとこなすのが彼女"ら"の猟兵としてのスタイルである。
集められた砂は吹き飛び洗い流され、瀑布は流砂をも飲み泥に混ざりあった。
「ふむ……便利そうだし、私もそういうの使えるようになるかな……」
「ってぇ、灯理~? 仕留める担当、ヨロシク~♡」
おや、と灯理は片眉を意外そうに吊り上げて、一瞬だけ思案した。
何気ない動作で片手を向ける――指先を伝い、ばちりと火花が散った。
そしてそれは、瀑布に着弾した瞬間、轟音を伴う雷撃に変わる。
ズズンッ!! と叩き込まれた高圧電流が、魚の群れにとどめを刺す。
電撃の威力で泥めいた水が四散し……巻き上がった水粒が、雨めいて降り注いだ。
依頼人であるガラットも、漁師たちも、その絶技の連打をぽかんと見ている。
「大漁大漁~っ。お魚っていいわよねぇ、油分少なめでヘルシーで……♡」
甲板上に運び込まれ〆られる釣果を見て、るんるんと上機嫌なマリー。
ふと何かに気付いたように表情を変えると、くるりと灯理のほうを振り返った。
「ねえ灯理、わたしすっごぉいこと気付いちゃった!」
「えっ」
「お魚って……実質カロリーゼロ……ね!?」
「ええ……そ、そう……かなあ……!?」
灯理にしては珍しく、割と素の反応であったという。
「……いや待てよ、心頭滅却すれば火もまた涼しともいう……つまり!」
「うん、うん!」
「ゼロカロリーと心胆から信じ込めばそうなる、可能性が……」
「うんうん!(期待と信頼に満ちた眼差し)」
「……………あるんじゃないかなあ……!!」
つがいのこととなると弱くなるとはいえ、それでも言い切るにはガッツが足りない。
残念ながら、この世に食べれば食べるほど痩せるような食べ物は……ない!!!(真理)
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第2章 ボス戦
『二つ名持ちの巨蟹』
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POW : 二つ名特性
自身の身体部位ひとつを【常時】自身の二つ名に由来する【特性】に変異させ、その特性を活かした様々な行動が可能となる。
SPD : 戦闘行動
【常時発動】砂の中を自由に行動できる【潜行】【自身の特性による攻撃】【水鉄砲】【大跳躍】【鋏】のいずれかで攻撃し、負傷による【怒り】で自身を強化する。攻撃力、防御力、状態異常力のどれを重視するか選べる。
WIZ : 狩猟生活
自身が【砂の中に潜行し、レベルの二乗m半径に気配】を感じると、レベル×1体の【実体を持つ「分身体(但し死ぬ程不味い)」】が召喚される。実体を持つ「分身体(但し死ぬ程不味い)」は砂の中に潜行し、レベルの二乗m半径に気配を与えた対象を追跡し、攻撃する。
イラスト:撒菱.R
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「花巻・里香」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
ざばぁあああ……と、巨大な砂嵐が崩れ、もうもうと砂煙が立ち込める。
そしてのっそりと地中から現れたのは……おお、なんたる巨大さか。
そう、とても巨大だ。マックスなほどに、巨大……マックスにキョダイな、蟹!!
「"ビッグマックス! ついにゲットの時なんやぜぇ~!」
「滾っておるな船長! わしもじゃ、わしもじゃみんな!」
なぜかスポ根漫画みたいに熱血モードになっているガラットと船の方々。
巨大な砂船も、ついに姿を表した"ビッグマックス"に比すればなんと小さいことか。
『キィイイイイイン…………グラァアアアアア……』
そしてこれほど巨大なオブリビオンならば、鳴く。蟹だろうが鳴く。
特徴的な巨大ハサミをしゃきんしゃきんとギロチンめいて鋭く鳴らしつつ、
ぞっとするような眼柄が獲物=猟兵を捕らえた。……だが、やつは知らぬ。
「さあ皆の者! 鍋の具材をゲットじゃーーーーー!!」
「「「ソイヤソイヤソイヤソイヤソイヤ!!」」」
ここに集まったのは、だいたい食欲と宴会への期待に支配された餓狼だということを!
てなわけで、なんかこうレイドバトルの始まりだ!
巨大でマックスな砂海の覇王を、鍋に叩き込むためにぶちのめせ!!
●業務連絡:プレイング受付期限
『2020/01/17 08:30頃』までとします。
場合によっては再送のお願いをするかもしれません。予めご了承ください。
花邨・八千代
カニだーーー!!!
すっげー!でけー!何食えばここまででかくなんだろなァ
人間とか数人食ってそう
とりあえず早く狩ろうぜ!
美味しく食べてやっから覚悟しとけよカニ!
俺は茹でて食うのが一番好きだ!
◆戦闘
巨大蟹との力比べなんて初めてだな、楽しみだ!
そういやカニ、目のとこって食わねーよな?
よし、じゃーそこ千切るか!
『空躁』で一気にカニに近づいて目玉のとこに取り付くぞ
力任せに目ん玉ぶちっと引きちぎって即座に離脱
砂に潜られちゃ堪らんからなァ、ひっとあんどあうぇいってやつだ
他にも食えない部分あったらぶちぶちしていこうな
分身体は景気よくぶちのめすぞ!こっちは食わんし!
じゃんけんしようぜカニ、俺はグーしか出さねーけど
「カニだーーーーーーーーーー!!」
花邨・八千代は子供のように目をキラキラさせて、大きな声で叫んだ。
蟹だ。それもちょっとワケわからんレベルのデカさの、蟹だ。
ハサミやっべえ。さすがにあれで挟まれたらちょっとヤバいかもしれない。
いやそれはそれとして、あのハサミでどんだけの身が取れるかが重要では?
蟹。
それは高級食材。
美味しいのに実際食べようとすると殻向くのめんどいし、
一部の品種じゃないとそこまで期待してるほど身が取れないし、
そもそも身が少ないし、まあだから高級食材なわけだが、
とにかくがっかりさせがち&めんどくせえタイプの食材である。
それが、こんなにデカい。ゲーセンで取れる超ビッグサイズのお菓子かなんか?
ああいうのワクワクするよね! そんなわけで八千代もテンション上がった。
「すげー! でけー!何喰えばここまででかくなんだろなァ」
「このワイルドなエリアでは、こういう巨大魔獣がなぜか出るそうじゃ!」
ガラットの言葉に、八千代はマジかよ! と目を丸くした。
「人間とか食ってそうなんだけどなァ。数人」
「さすがに人食い生物はちょっとわし食べたくないのう……」
「それもそうだな! よっしゃあカニぃ、じゃんけんしよーぜィ!!」
先のエアティック・フィッシュ戦のときのように、マストを滑走路に跳躍。
目指す先は敵の目玉だ。あれ、別に食わんし。
ちなみに、カニの部位で一番食べていけないのはエラらしい。
どうせ足から食べるからあんま関係ないね! バラさないとだよね!
「む! こいつ……」
するとカニはぶくぶくと泡を吹き、ハサミを振り回し始めた。
巨大なハサミが起こす風圧は竜巻のようだ。巻き上がる砂嵐。
八千代は空中を何度もジャンプすることで細かく制動して、これを回避。
噴き出した泡はむくむくとビッグマックスと同じ形を作る。分身体だろうか。
「邪魔くせえなァ! まあいいや、俺グーしか出さねーし!」
SMASH!! 落下速度を乗せた八千代の拳が分身体の脳天を破壊!
その衝撃で大きく跳び上がり、次の敵を、さらに次の敵を叩きのめす。
ビッグマックスは、砂の中に潜ろうとしている……そうはさせない!
「その目ン玉、もらいッ!」
ザクンッ! と、八千代の手刀がビッグマックスの目元を抉った。
そこで彼女は気づいた。なんと、カニの目は一つに見えて実は違うのだ。
昆虫と同じ複眼である。とはいえ、そのひとつを抉ったことに変わりはない。
「むしり放題ってことじゃん! たーのしー!」
けらけら笑いながら空中を飛び回る八千代。
キョダイでマックスな敵を相手に、彼女のテンションもムゲンダイな感じだ!
大成功
🔵🔵🔵
アルコ・アーラ
■心情
……もう、言葉はいらないわね
狩りの時間よ!
■戦
一心不乱にユーベルコードを放つわ
■その他
アドリブ等は大歓迎よ!
※好きにしちゃっていいです
月凪・ハルマ
わぁすごい。皆あのばかデカいお化け蟹を
完全にメインディッシュとしてしか見ていない
……人の食欲って、恐いな
◆SPD
まぁ、アレを仕留めるのが今回の俺達の役目だしな
それじゃ気を取り直して、と
しかしなんか色々してくるっぽいなこの蟹
まぁオブリビオンでもあるし、当然っちゃ当然か
なら、一度【迷彩】で姿を隠してからの【潜刃・禍ッ牙】で
向こうのUCを封じよう
少なくとも単純な正面戦闘となれば、猟兵達が負ける道理はない
向こうからの攻撃は【見切り】と【残像】で回避しつつ
手裏剣の【投擲】で反撃する
ただ食材として見るなら、なるべく傷付けたくないな
【暗殺】技能で急所(あるか知らんけど)狙ってみるか
オニバス・ビロウ
姿を現したか…鍋の主役!もとい蟹!
あれほど大きくても、うま味がたっぷり…俄然燃えてきた
如何にして奴を討つかだが…ふむ、閃いた
砂に潜られるとこちらの攻撃が滞る故、上空に打ち出そう
跳躍による攻撃も備えているが、急に打ち出されたら奴とて攻撃態勢へ移りにくかろう
UCで攻撃をし、向こうが俺の方を認識した時点で仕掛ける
俺なら当然のように出来るしやれると己自身で鼓舞しつつ、向かってきた蟹を引っ掴んで上空に投擲する
そして完全に砂に落ちた衝撃で跳ねた所をまた引っ掴んでもう一度上空へ投げる!
つまり蟹ばすけっとぼーるである
…かにばすけとはいったい??
ともあれ、奴の隙は作った
後は他に任す!
(アドリブ・連携など歓迎にて
ズシン、ズシン……巨蟹が身動ぎするたび、砂嵐が巻き起こる。
それはビッグマックスの巨体を覆うほどに巨大で、かつ勢いがとても強い。
アルコ・アーラが一心不乱に放つ矢も、その勢いを減じられてしまっていた。
「まるで城壁かなにかね……! こうなったら、力を込めて貫くしか……」
しかし彼女のユーベルコードに十分な破壊力……つまり魔力を籠めるには、
相応の時間が必要となる。敵の接近を妨げるための前衛が必要だ。
するとちょうどその時、ビッグマックスの前に立ちはだかる男がいた!
「姿を表したな、鍋の主役!! ……もとい、蟹!!」
オニバス・ビロウはくわわっと目を見開き、刀を手に巨体に挑みかかる。
吹き荒ぶ砂嵐を斬撃で切り抜け、まず敵の足を叩き斬ろうと振りかぶったのだ。
……が、ビッグマックスは巨大なハサミを振り回し、オニバスを吹き飛ばす!
「ぬうっ!!」
「大丈夫!?」
アルコは咄嗟に矢を放ち、オニバスがハサミを避ける手助けをした。
飛び退ったオニバスはアルコを振り返り、かたじけない、と礼を述べる。
「やはり、砂の上では奴に分があるか……待てよ、ひとつ閃いたぞ」
「何かいい手があるのかしら? それで足止め出来るならこちらも助かるわね」
アルコの言葉にオニバスは自信の表情で頷く。
「奴の隙はこちらで作ろう。あとは皆に任せるぞ」
そう言って、オニバスは再びビッグマックスめがけて駆け出した。
アルコは後方から矢を放ち、飛来する魔力の泡や小規模な砂嵐を切り裂く。
はたして、オニバスの策とは如何に? まず彼は、あえて刀で真正面から挑んだ。
「さあ、俺が相手だ蟹よ! 観念して身を差し出せぃ!!」
がぎんっ!! と、鋼のように強固な甲殻がオニバスの刃を阻む。
しかし、これでいい。敵の注意はオニバスに向いた。第一段階は成功だ。
ビッグマックスは、体内の水分を操作し、超高圧の水鉄砲を放とうとする!
「そこなんだよなあ。図体がデカいヤツほど、周りを見てないだろ?」
その時である。ビッグマックスの甲羅……人間で言えば背中の上に、少年が独り。
いつのまにそんなところに忍び込んでいたのか、月凪・ハルマが立っていた。
いや、しがみついているというべきだろう。巨蟹は暴れるがふりほどけない!
「このためにタイミングを図ってたんだ、おとなしくしてろ!」
ハルマは忍者手裏剣……クナイをナイフめいて逆手に握り、振り下ろした。
オニバスとアルコが戦っている間、彼は姿を隠して敵の行動を観察、
その身体構造上の弱点がどこかを、密かに探っていたのである。
いくら甲殻が硬いとはいえ、生物である以上必ず急所というのは存在する。
ましてや、これほど巨大なオブリビオンならば、逆鱗に当たる場所も相応だ。
ハルマは甲羅の脆弱な部分を見極め、刃を突き立てた。KRAAAAASH!!
『グ、グラァアアアアアアッ!?』
ビッグマックスは強烈な痛みと衝撃にもんどり打ち、水鉄砲どころではない。
ユーベルコードを封じ込める呪力が込められたクナイは、いわば楔である。
「これなら、中身だって無事なまま仕留められるだろ……!」
「見事だ少年! ……よし、俺ならばやれる。やってみせるぞ。いざ!!」
オニバスは……見よ! ビッグマックスに肉薄し、甲殻を掴んだ。
そして全身の膂力をあらん限りに発揮し、その巨体を……も、持ち上げた!?
「うわっ!? マジか!?」
咄嗟にハルマはクナイを蹴り(これで楔はさらに深く突き刺さった)脱出。
直後、オニバスは巨体を砂から浮かび上がらせ、真上に投擲したのだ!
『グラァアアアアア!!』
「なんたる重さ……これがすべてうま味のある肉とは! 俄然燃えてきた!!」
(み、みんな蟹をメインディッシュとしか考えてない……!!)
人の食欲、怖い。ヤドリガミであるハルマは心底恐怖した。
なにせ食い気が勝れば、このように巨体を持ち上げることも出来るのだ。
ビッグマックスは巨大なハサミを振り回し、砂嵐を起こして逃れようとするが、
「そこ! じたばたしないで、おとなしくやられなさいっ!」
アルコの放った矢が甲殻の隙間に突き刺さり、痛みに悲鳴をあげた!
無防備に落ちてきた巨体を、オニバスは両手で受け止め……再投擲!
「ぜえ、ぜえ……どうだ、隙は作ったぞ!!」
大声で叫ぶオニバスのほうを見て、アルコはこくりと頷いた。
空中に投げ飛ばされたのでは、砂嵐も水鉄砲も起こしようがない。
全身の魔力を練り上げ、番えた矢の先端に圧縮・集中させる……。
すると引き絞られた矢がまばゆく輝き、星と見紛うほどの光を放つではないか。
「私、じたばた悪あがきをする獲物は好きじゃないの。だから大人しくなさい。
――この一撃は、特別よ? 足掻いたところで防ぐ術なんてないんだから……!」
天を駆ける流星の輝きが、弓弦から解き放たれた。
光めいた速度で突き抜けた矢は、鋼の如き甲殻を貫き蟹を穿つ。
『グ、グ、グラァアアアアア!!!』
ズズン……!! 砂埃を巻き上げながら地面に激突するビッグマックス!
もんどり打つ巨蟹の受けたダメージは甚大。そのぶんうま味も……倍増だ!
「まだ生きてるのね。いいわ、きちんと仕留めて肉の締まりをよくしてあげる!」
「応とも。蟹鍋が俺たちを待っているのだからな……!」
(……人間の食欲、怖っ!!)
アルコはエルフだが、まあそこはそれ。
ハルマは、密かに猟兵たちの食欲に恐れおののくのであった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
リル・ルリ
🐟櫻沫
アドリブ歓迎
わぁ、大きいね!かに、というの?
櫻は蟹が好きなんだ?
僕は食べたことないよ
水槽に蟹はいないもの
ふふ、ご馳走してよ
楽しみだなぁ
櫻が斬った蟹は一等美味しくなるはずだもん
僕だって、蟹をはんとするんだから!
そいやそいや!(口真似
えっダメなの?ふうん…むつかしいんだな
ふふ
……はしゃぐ君も、可愛いななんて
ダメだよ
逃げるのも不味い蟹になるのも許さない
歌唱に誘惑とろかしひきつけて歌う「星縛の歌」
櫻の邪魔する術なんて
星瞬くように消えてしまえ
鼓舞しながら歌いオーラ防御の水泡は僕の櫻を守る盾にする
…くす
そんなの気にしなくていいのに
僕が蟹に負けるわけないじゃないか
綺麗に仕留めてきて
僕、お腹がすいたよ
誘名・櫻宵
🌸 櫻沫
アドリブ歓迎
キャー!巨大な蟹よー!
蟹鍋に蟹しゃぶ食べ放題よ
リィも蟹好き?
え…
人生損してるわ
ご馳走してあげる
蟹ハンターの腕がなるわ
やめてリィ!変な口真似はダメ!
可愛いけど許されないのよ
蟹食べるリィは絶対可愛いわ
それこそご馳走様ね
どう愛してあげようかしら
まずは脚からハサミから?衝撃波でなぎ払い斬り落とす
殻をかち割り蟹味噌を啜るのも素敵
思い切り怪力込めて傷を抉り刀突き立て割るの
桜花の嵐で攻撃防ぎ
斬撃に生命力吸収の呪のせてこっそり味見
いいお味…あっリィには及ばないわよ?
リィの歌とあたしの刀から逃げられないわ
狩らせて
斬らせて
解体させて
踏み込み放つ絶華
黙って食べられなさい
人魚がお腹を空かせてるの
『キィイイイイイイン……グゥゥゥゥ……ラァアアアア……』
ずしん、ずしんと砂埃を巻き上げながら、超巨大蟹が砂の海に君臨する。
そこそこ巨大な船をして卑小に見えるほどのサイズ差。すさまじい大きさだ。
「わぁ、大きいね! あれが"かに"というの?」
「リィは食べたことも見たこともないのね? そんなの人生損してるわ!!」
誘名・櫻宵の"圧"に、リル・ルリはちょっと気圧された。
「そ、そうなんだ。でも水槽に"かに"はいないし……」
「だからここにいるじゃない! 巨大な蟹! 蟹鍋に蟹しゃぶに食べ放題よ!!」
くわわっ。どうやら櫻宵は蟹が大好きらしい。
蟹。それは誰もが大好きな高級食材。嫌いな人は多分いない。
いるとしたらそいつは人間じゃない!!(暴言)
アレルギーとか、食べるのが面倒とか、そういうのはあるかもしれない。
「蟹ハンターの腕が鳴るわ……リィにご馳走してあげる。待ってなさいな!」
「ふふっ、楽しみだなぁ。僕だって蟹をはんとするんだから! そいや、そいや!」
テンションガン上げで漁師たちの真似を始めたリルの顔を、櫻宵が二度見した。
「え、なに? 櫻」
「……やめてリィ! 変な口真似はダメよ! 可愛いけど許されないわ!」
「ええ~……むつかしいんだなあ。まあ、そういうならやめるけど……」
「「「ソイヤ! ソイヤソイヤソイヤ!!」」」
「外野はリィの教育に黙ってなさい!!!!!!!!!!」
保護者(櫻宵)の剣幕に、漁師のみなさんもビビりちらしたという。
『キィイイイイイイン……グラァアアアアア……!!!』
そこへ、ビッグマックスが自慢の超巨大ハサミを振り下ろす。
まともに喰らえば、そもそも船が真っ二つになって沈んでしまうだろう!
「そうはさせないわ! その身たっぷりのハサミ、よこしなさい……!!」
櫻宵は殺意(と食欲)に血走った目を見開き、愛刀を振るった。
がぎぃんっ!! と甲高い衝撃音が響き渡り、衝撃波が砂の海に波を起こす。
強烈な一撃はビッグマックスの膂力を勝り、ハサミごとその巨体を押しのけた!
『グラァアアアア……!!』
不利を悟ったビッグマックスは、口からぶくぶくと泡を噴き出す。
するとその泡はぷくぷく膨らんで、ビッグマックスと同じ姿になっていくのだ。
櫻宵は喜々としてそれらを切り裂き、瑞々しい蟹味噌をじゅるじゅる啜った!
「ふふ、見てなさいリィ! ここに詰まってる蟹味噌が美味しいのよ!」
「櫻!? 戦闘中なのにはしたないよ!」
「酒飲みのサガがあたしを突き動かすのよ!!!! ……うぐっ!?」
しかし櫻宵は顔色を豹変させ、がくりとくずおれた。
「さ、櫻!? どうしたのさ櫻!」
「……ま」
「ま……?」
「ま、まずいわ……!!!!」
なんたることか。ビッグマックスの分身体は……超☆まずいのだ!
蟹は美味しいもの。どんな安物だって身がスカスカなだけで味はいいはず。
櫻宵は絶望した。この世にまずい蟹が存在したというその事実に!
そう、彼はなんだかんだいいとこの育ちなので、いい蟹ばかり食べてきたのだ。
その当然の常識が崩れ落ちた時、人はあまりにも脆い……!!(龍だけど)
「こ、この……! 蟹! よくも櫻を苦しめたなー!!」
リルはぷんすかと頬を膨らませ、ビッグマックスに戒めの歌声をまとわりつかせる。
ぶくぶくと現れていた泡の分身がぱちぱちと弾けて消えていく。
砂の海に沈もうとしていたビッグマックスは、ユーベルコードの力に驚愕した!
『グッ!? グラァッ!?』
「さすがねリィ! 蟹の美味しさだってリィには勝てないわ、うふふ!」
愛する人魚の歌声と可愛らしい横顔で戦意を取り戻した櫻宵はにこりと笑い、
桜花の嵐を巻き上げ蟹の巨体を包む。そして、刀を振るい甲殻を叩き割った!
『グラァアアアアアアッ!!』
「……あ、ちゃんと本体はいいお味ね」
「またつまみ食いしてるの櫻!?」
刀をぐりぐり体の隙間に突き刺して、てへぺろスマイルをする櫻宵。
一方のビッグマックスはたまったもんではない。内臓をえぐられているのだ。
『グラァアアアアアアア!!』
どうせ喰うなら普通に美味しく食べてくれ、いや喰われたくはない!
……とでもいいたげに、巨大なハサミを振り回して暴れ狂う。
「もう逃さないわよ! あたしの人魚がお腹を空かせているんだからッ!!」
(お腹を空かせてるのは僕より櫻の気がするけどなあ)
やる気満々の櫻宵の後ろで、リルはきょとんとしつつ心のなかで突っ込むのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
マレーク・グランシャール
【壁槍】カガリ(f04556)と
カガリは慣れぬ追い込み漁、お疲れ様だ
ここからは俺の本領発揮、見事この銛(槍)で巨蟹を一本釣りして見せよう
……ということでまた出番だ、カガリ
ちょっとロボ化してあの鋏に挟まっていてくれ
如何なる巨大な鋏でもお前を砕けまい
そしてお前を挟む限り鋏の攻撃はこちらに向かない
それれにな、蟹は蟹爪の方が身がぎゅっと引き締まって美味いのだ
しかも蟹爪は二本しかない
大きい方の蟹爪は俺達で頂きだ
お前には一番美味いところを食べさせたい
鋏がカガリロボを挟んだらもう一本の鋏の死角へ向けジャンプ
【流星蒼槍】で蟹爪の腕を碧血竜槍(部位破壊+鎧砕き)でへし折る
砕き切れなければ双頭竜に食いちぎらせるぞ
出水宮・カガリ
【壁槍】まる(f09171)と
びっぐで、きょだいで、まっくすで、きんぐ、らー
とても、でかいが…釣れるのか、これ
船の方が、小さいのだが
ろぼ。ろぼとは。まるはメカとか、ロボとか、好きなようだが…ああ、あれかな?
しかし、この辺りの建材と言えばこの船だし、これを壊すわけには…、…砂の海、か
ん、頑張ってみよう
えいえいと蟹によじ登りながら、注意を引くぞ
砂も、固めれば建材になる
蟹が暴れて飛び散っている砂や、海の砂をかき集めて【異装城壁】を
特に腕の部分を重点的に、全体を水(オーラ防御)で強化、石のように硬い鎧としよう
カガリに鋏を使うように仕向けて、まるを手伝うのだ
まるー、まるー、美味い蟹を頂くぞー!
「びっぐで」
屹立する蟹。
「きょだいで」
ガチガチと威圧的に鳴らされるハサミ。
「まっくすで」
『キィイイイイン……グゥウウウラァアアアアア……!!』
「……とても、でかい、かに……釣れるのか、これ」
出水宮・カガリはビッグマックスの巨体を見上げ、呆然と呟いた。
「釣れるとも。我が槍をもってすれば、可能だ」
そんなカガリに対し、マレーク・グランシャールは無表情で答える。
こころなしか普段よりも、自信が満ち溢れているように感じられた。
「しかし、まる。船のほうが小さいのだぞ……?」
「問題ない。カガリ、お前の助けがあればな」
「……カガリの? 一体どうすればいい」
カガリは問い返した。船を守れというならば、それは造作も無いことだ。
しかし、槍で一本釣りするために、守りが役立つというのだろうか?
「ああ。ちょっとロボ化して、あのハサミに挟まってきてくれ」
「ろぼ」
「そうだ、ロボだ」
マレーク、ガチンコシリアス顔で重々しく頷く。いまそういう状況だろうか?
だが、彼はいつだって真面目だ。今回も極めて真面目だった。
「まるはメカとかロボとか好きなようだが……ああ、あれか」
過去の……主にスペースシップワールドで相手にしてきたオブリビオンを想起し、
無機物と合体し巨大ロボと化すユーベルコードは、彼も得意とするところだ。
「いかなる巨大なハサミでも、お前を砕くことは出来まい」
「ふむ……それはもちろんだとも」
「そしてお前を挟んでいる限り、ハサミの攻撃はこちらに向かない」
その間、マレークハ攻撃し放題ということだ。なるほど理屈ではある。
だがそのためには一つ問題がある……合体すべき無機物の存在だ。
まさか、この船を壊せというわけではない。そうなれば全員が砂に飲まれる。
「材料なら無限にあるさ。周りを見てみるんだ、カガリ」
「……! そうか、砂か!」
カガリはハッとした様子で言った。砂も、塗り固めれば立派な建材となる。
であれば、無機物として合体することも……工夫は必要だが、可能だ!
「わかった、そういうことならやってみる。しかしまる、一つ訊いていいか?」
「なんだ、カガリ?」
「まるはどうしてそこまでして、蟹を釣りたいんだ……?」
マレークはカガリの問いかけに、意味ありげな沈黙を挟み、答えた。
「……蟹は、蟹爪のほうが身がぎゅっと引き締まっていて旨いのだ。
しかも、カニ爪は二本しかない……大きいほうのカニ爪は、俺たちで頂きだ」
「な、なるほど(ここまで闘気を放つまるは珍しいかもしれない)」
「……お前には、一番旨いところを食べさせたいからな」
マレークはそう言って、わずかにだが目元を綻ばせた……ような、気がした。
そして彼は、蟹めがけ跳躍し牽制を加え、泡の分身を破裂させていく。
「まる……!」
カガリは莞爾と笑い、頷いた。相棒の想いに応えてこその城門であろう。
彼のその、旨いものを食べさせたいという切なる願いを叶えるために……!
……シリアスにしてみたが、はたしてこれは絆がどうこうの話なんだろうか?
ともあれ、そうして彼らの戦いは始まったのである。
『キィイイイン……グゥウラァアアアアア……!!』
巨大ハサミを振り回し猟兵を牽制するビッグマックス。
その複眼が、何かを捉えた。カシャカシャとズームしていく先はマスト先端部。
そこからビッグマックスへ飛びついたのは……カガリではないか。
「蟹よ、このカガリが相手だ! さあ、ハサミで潰してみろ!」
空中に身を投げだしたカガリに、砂の海にたゆたう無数の流砂が集まる。
それはレンガのように集まり固まって、非常に強固な鎧へと変じるのだ!
岩石とはつまるところ砂の集合体。そして石は立派な建材である!
『グゥウウウラァアアアアア……!!』
ビッグマックスは自慢の巨大ハサミを開き、カガリを圧潰しようとした。
しかし! 強固な鎧……腕部分に集まったそれらは、水のオーラによって粘土のように結合した……は、がぎんとハサミの圧力に抗った!
『グラァアア……!?』
「これは、なかなかだな……しかし、カガリの城壁には敵わないぞ!」
ぎちぎち、みしみしと音を立てながら、カガリの鎧は強烈な圧力に耐える。
ビッグマックスはさらに力を籠める。当然、注意はカガリに集中していた。
「油断大敵だ……そのカニ爪、いただくぞ!」
一方、もう片側のハサミの根本。死角に隠れていたのはマレーク!
彼は裂帛の気合とともに龍槍を振るい、碧眼の双頭竜とともに根本を突いた!
KRAAAAAASH……! 鋼よりも強固な甲殻が砕け……蟹爪が、脱落する!
『グッ!? グラァアアアア……!?』
「まる! どうだ、うまくいったか!?」
「ああ。これでカニ爪の身は、俺達のものだ……!」
相棒の声に応え、マレークはさらに深く槍を突き刺した。龍の牙もそれに応える。
飢えたる男の双眸に輝くもの、それは戦意とか殺意とかではない。
美味しい蟹の身への期待と空腹……人は飢えた時、これほどにも強く戦えるのか!!
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
薄荷・千夜子
つかささん(f02032)と
え、あの鳴き声大丈夫ですか!?
こう完全にあの蟹が…いえ、これ以上はやめておきましょう
つかささん、鍋です
カレーは今回はやめておきましょう、その方が良い気がします!
『藤巡華簪』から放つ藤の枝花を【ロープワーク】でつかささんの足場を作りながら
本命はマックスにキョダイな蟹!!
不味い分身は不要!纏めて吹き飛ばします!
UC発動、鈴蘭の花嵐とともに風も巻き起こして砂と分身ごと吹き飛ばします
これがはなびらのま…なんでもありません
しかし、なぜくさが効果4倍だったり、つかささんのその丸太は一体どこからでてくるのか???(ちよこはこんらんしている)
荒谷・つかさ
千夜子(f17474)と
なるほど、アレがビッグマックス。
その二つ名の通り巨大でMAXな奴じゃないの。
……どうしてかしら、無性にカレーが食べたくなってきたわ。
さしずめ地名的に『砂の海のすがた』って所かしら。
属性は多分水と地面だから草は通常の四倍よね、千夜子よろしく。
……って、よくよく考えたら私も草の技というか武器あったわ。
(とてもいい感じの丸太を束ねたウッドなハンマーを持ち出す)
千夜子の援護を受けて【荒谷流重剣術奥義・稲妻彗星落とし】発動
足場を駆けあがり高所を取り、その巨大な甲羅へ急降下&丸太ハンマーでスマッシュ
効果は抜群、そうよね?
反動がきつい技らしいけど、私は石頭だから問題無いわ!
「……どうしてかしら、無性にカレーが食べたくなってきたわ!」
ビッグマックスの巨体を目撃した荒谷・つかさは、なぜか唐突にそう言った。
すると隣にいた薄荷・千夜子が、なぜか非常に緊迫した表情で彼女を見る。
「待ってください、つかささん。鍋です、私たちは蟹鍋を食べにきたんですよ!」
「でもカレーが食べたいのよ。こう、ネギとかりんごを使ってね」
「つかささん。鍋です!!! カレーは今回はやめておきましょう!!!!」
なぜか千夜子は慌てていた。これほどまでに彼女が動転したことは滅多にない。
何か、とてもよくない気がする……あの鳴き声とか、カレーとか!
なぜかわからないが、キャンプするなどもってのほかだと第六感が伝えていた!
あの鳴き声もとてもヤバい……まさか、あれもオブリビオンの能力なのか?
千夜子は思った。一刻も早くあの蟹を物言わぬ鍋にしなければ……と!
「あの巨大でMAXな蟹……そうね、さしずめ"砂の海のすがた"といったとこ」
「つかささん!! 戦いましょう!! ね!!!!!!!!!!」
千夜子は有無を言わせぬ"圧"でまくしたてたという。
するとビッグマックスの巨大なカニ爪が、音を立てて崩落していった。
おそらくは先に戦い始めた猟兵たちの攻撃のおかげだろう。……しかし、その時!
『グゥウウウラァアアアアア……!!』
ビッグマックス の じこさいせい! 蟹爪が再生していくではないか!
「再生!? 再生したわよ千夜子! ……つまり食べ放題ってことじゃない!!」
「え、ええ……今回だけは再生能力があると嬉しいですね!」
つかさの目の色が変わった。完全に羅刹の本能が全開になっていた。
その眼光に恐怖を覚えたのか、ビッグマックスは無数の分身を生み出す。
すでにその分身がゲロマズであることは、先の猟兵たちが看破してくれている。
「まずい分身は不要! まとめて吹き飛ばしますよ!」
「これ、ダブルバトルだものね」
「つかささん?」
「こっちはくさで相性四倍なのよ。覚悟なさい!」
「つかささん! とにかく戦いましょう、ね!」
千夜子はウッドなハンマー(どう見ても丸太を束ねただけ)を担ぐつかさに言い、
己の武器を破魔の力を宿した鈴蘭の花びらに変え、解き放った。
風に舞い上がった花びらの嵐は分身を切り裂き、無に還していく。
まずい分身は狩る必要もない。そして花の嵐は本体の甲殻をも斬り裂いた!
「……これが、はなびらの……いえ、なんでもありません」
「千夜子だってノリノリじゃないの! そうよ、くさタイプはこうかばつぐんよ!」
つかさはそう言いながら花びらに紛れて戦場に飛び込み、分身を飛び石とした。
消えゆく分身を蹴り渡り、向かう先はビッグマックスの巨体である!
『グラァアアアアア……!!』
ビッグマックスのギロチンめいたハサミ! しかしはずれてしまった!
「30%がそうそう当たると思ったら大間違いよ、とうっ!!」
「その30%っていう数字はどこから出てきたんですかつかささん!?」
「見せてあげるわ。ジャイロめいた回転を加えた、この重い一撃をね!!」
まるでボールめいて体を丸めたつかさは、回転とともにその力を解き放つ。
高所から振り下ろされる丸太ハンマーの一撃! KRAAAAAAAAASH!!
『グゥウウウウラァアアアアアア!!』
すさまじい威力に、ビッグマックスの巨体は吹き飛ばされた!
甲殻がビシビシとひび割れ、蜘蛛の巣めいたヒビが巨体の全身に走る!
「これぞ荒谷流重剣術奥義・稲妻彗星落とし……!!」
「……待ってくださいつかささん、そもそもそのハンマーはどこから……?」
「もちろん溜め攻撃も可能よ! 場外までスマッシュしてやるわ!」
「つかささん!? 色々まずい気がするんですが大丈夫ですか本当に!?」
なんなんだこれは、どういうことなのだこれは。
しかし千夜子は混乱の中で思った。よくわからないがたしかに思ったのだ。
自分はカウンター技持ちがいいなとか、よくわからないがそういうことを……!
(この戦い、長く続けば続くほど危険な気がする……な、何かが!)
超自然的な恐怖心と戦いながら、千夜子ははなびらの嵐を引き起こす。
美味しい蟹鍋を食べるため……そしてこの恐怖を克服するために!!
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
アルジャンテ・レラ
【Magia】
蟹……ですね……。
オブリビオンが鍋の具材。常識が覆され言葉も出ません。
織愛さんあたりは大いに喜ばれるのかもしれませんが。
ああ、オルハさん。ちょうどいいところに。
依頼内容はシンプルです。"食材を狩る"のですよ。あの蟹の事です。
……鳥型ガジェット、ご活用いただければよいのですが。
ヨハンさんの目配せに頷きを返します。
前線で戦う織愛さんとオルハさんの援護を。
同じ役割を担うであろうヨハンさんとの連携を心掛けます。
両眼等、攻撃の通りやすそうな部位を探る必要がありそうです。
あくまで支援に徹するので、本体・分身体問わず御二方を狙う敵を標的とします。
……地獄絵図の意味を今知りました。
オルハ・オランシュ
【Magia】
あれっ、3人一緒だ
今来たばかりで状況が……どんな依頼?
なるほど一蟹!わかった!
アルジャンテに貰ったこの鳥型ガジェット、
トコって名前にしたんだけれど
この子が早速役に立つかも
ヨハンったら暗い顔して、そんなにお腹が空いているんだ……
美味しい鍋にしようね! ねっ!
砂の中から出てきた蟹を即座に槍で突く
必要なのは本体だけだものね
あっヨハン、一人じゃ大変でしょ?
私も手伝うよ!
トコ、焼き蟹になる程度の火力でお願い
まずっ……分身体だよねこれ……
灰になるまで燃やしてくれる?
ガジェットすごい!便利!
本体は丁重に攻撃しなくちゃね
こっちは燃やしすぎないように、それと身へのダメージは最小限に
大事な具だもの!
三咲・織愛
【Magia】
わーい!蟹ですよ、蟹!メイン料理ですっ!
すっごく美味しいというお話ですよ?
何か問題あったでしょうか?
ふふ、オルハさんも合流ですね!
さあさあ、一緒に一狩りならぬ一蟹しましょう!(拳を天に突きあげる)
分身体は不味いとのことですから、ぜーったいに食べたくありません!!
鍋に入ってしまったら大変!
粘着草とぺいんと実を調合して作りましたるはペイントボール!
これを本体に投げつけます
本体と分身の区別は実際に齧ってみるしかありませんね
砂から出てきたら足をちょん切って食べてみます
生で食べたら大変そうですから、火を通すのをお願いしますーとヨハンくんの方にぶん投げつつ
じゃんじゃん狩っていきましょー!
ヨハン・グレイン
【Magia】
……俺はもう既に色々と諦めているところですよ
覚悟完了済みというやつです
問題しかないですが、それだって些事だ
美味しい鍋にしましょうね……
オルハさん、分かっていますよ
美味しい鍋にしましょう(二回目)
せめてこちらの被害が少なく済むように動きましょうね、と
アルジャンテさんに目配せしておきます
あくまで支援に徹するので直接的な被害はない筈
そうでなければならない。だろう?だよな?
甲殻類の殻も平気でベリベリひん剥きそうなんだよな……
あまり心配はしていないのであくまで援護です
防御や回避の手伝いをします
味方の方が敵のように感じるが冷静さを失ってはならない
焼きます
とんだ共同作業だな……
そもそも、オブリビオンを食材にするってどうなんだ?
アルジャンテ・レラの疑問は、他の多くの猟兵も抱えていたことを付記する。
相手は骸の海から現れた過去の残骸。存在からして邪悪なモノである。
存在するだけで世界を害し、未来を破壊して破滅をもたらす根源的な招来体。
だからこそ猟兵は戦う。おそらくその宇宙的な闘争に根本的な終わりはなかろう。
どうなんだ? そういうのを食べるって、いやマジでどうなんだ?
アルジャンテはいまさらながら、困惑した様子でヨハン・グレインを見た。
しかし対する少年は、何もかも諦めきった表情で首を横に振る。
無理もない。なぜなら大半の猟兵は、そもそも疑問すら抱いてないから……!
「蟹ですよ蟹! メイン料理の登場ですよオルハさんっ!」
「すっごく美味しいって本当? これは一狩り……ううん、一蟹しないとね!」
そして彼らの同行者であるオルハ・オランシュと三咲・織愛はその筆頭だった。
だからもうヨハンは諦めきっていた。まあこういう依頼よくあるし。
多分食べても大丈夫だろう。仮に毒性があってもふたりならなんとかしそうだ。
「……そうですね。問題しかないですがもはやそれすら些事ですよ。
せめて美味しい鍋にしましょうね……オルハさん、美味しい鍋にしましょう」
「えっ、二回も言うなんてヨハン、もしかしてそんなにお腹が空いてるの?」
「そういうことではないと思うんですが……」
相変わらずの天然ぶりで首を傾げるオルハに、思わずツッコむアルジャンテ。
でもやっぱり右から左になんだろうな。これが馬耳東風というやつか。
なまじっか本から知識を得てしまっているアルジャンテは、余計に嘆息した。
「ほらほら、アルくんもヨハンくんも気合入れて! えいえいおー!!」
「「「えいえいおー!!(うち男二名は極めてダウナーな声)」」」
笑顔で拳を突き上げる織愛。ノリノリで応えるオルハ。ダウナーな男二名。
戦いが本格的に始まる前から、色々ともうズタボロでデコボコであった。
『グゥウウウラァアアアア!!』
そしてビッグマックス! あいにく敵はトンチキに染まってはくれない!
いやそもそも存在自体がトンチキではないかという説がなくもないが、
その巨体とパワーは折り紙付きだ。なにより恐ろしいのは自慢の巨大ハサミ!
ビッグマックスはそのハサミを振り上げ、船めがけて勢いよく振り下ろした。
まともに食らったならば、船は真っ二つどころか粉微塵となるだろう!
「むむ! パワー対決ですね? 受けて立ちますよ!!」
力自慢の織愛は愛槍ノクティスを構え、マストを垂直に蹴立てた。
跳躍、そして衝突……KRAAAAASH!! ただひとりの少女が巨大ハサミと拮抗し、
一撃で吹き飛ばした! さしものビッグマックスもその巨体を揺るがす!
『キィイイイイン……!?』
ぐらりと巨体を揺らがせたビッグマックスは、さらなる攻撃を諦めた。
代わりに奴が生み出したのは、まったく同じ姿をした無数の分身体である。
見た目は同じ。その巨大さも当然脅威となろう。もはや区別がつかない!
「そうくると思っていました! てえいっ!」
『グラッ!?』
ばちん! 織愛が投擲したのは、特製のペイントボールである。
粘着性を持つそれは本体の甲殻にべっとりと特徴的なマーキングを施した。
いくら分身体が現れたところで、これでは見分けが容易だ!
「……もはや慣れましたが、あの馬鹿力もコントロールも大概恐ろしいですね……」
織愛のさりげないトンデモっぷりに呆れ返るヨハン。だが手は止めない。
闇を操って分身体を攻撃し、砂の中に潜る前に仕留めてしまうのだ。
所詮はユーベルコードで生まれた分身体。急所を突けば倒すのは造作もない。
そう、きゅうしょにあたればこうかはばつぐんなのだ……!
「あっヨハン、ひとりじゃ大変でしょ? 私も手伝うよ!」
オルハは笑顔でそう言って、船の甲板から跳躍し分身体を槍で串刺しにした。
そして消滅寸前にばさりと翼ではためいて、砂から現れた敵を倒していく。
そんな彼女の隣で同じようにはばたくのは、機械じかけのオオハシ。
「……鳥型ガジェット。ご活用いただけているようですね」
火炎を吐いて分身体を倒すガジェット『トコ』の働きぶりを見て、
アルジャンテは静かに頷いた。何を隠そう、それは彼がオルハに贈ったものだ。
当のアルジャンテ本人は、得意の弓術で次々に分身体を仕留めていく。
「最初に織愛さんが攻撃を吹き飛ばしてくれたおかげで、船は安全ですね」
「ええ……というか、こっちまで襲われたらさすがに困りますよ」
戦闘の難易度的にというか、これ以上悩み事が増えてほしくなさそうなヨハン。
彼の重い重いため息に、アルジャンテは親近感めいたものが湧いてくる。
「……この面子で同じ戦いに同道することはもはや初めてではないですが」
「慣れるわけがないじゃないですか、永遠にこの悩みはついて回りますよ……」
遠い目をするヨハン。そんな彼の姿に、アルジャンテは哀愁を感じた。
そうか、これが『苦労人』……! またひとつ、彼は知識を得たのである。
……ん? これ自分も同じじゃないか? というのは、考えないことにした。
『グラァアアアア……!!』
「砂の中に紛れても無駄ですよ! 本体はそこですねっ!!」
織愛はギラリと眼光を輝かせ、姿を見せたビッグマックスに取り付いた!
そして……おお……わしゃわしゃうごめく脚を……へ、へし折った!
『グラァアアアアア!?』
「ヨハンくん! 火を通すのをお願いします!」
「ナイス織愛! こっちも一本仕留めたからよろしくね、ふたりとも!」
ぶーん。オルハと織愛はへし折った脚(ちなみにそれらは再生する)を船にめがけて投げる。
……ビッグマックスは巨大である。それはもうマックスなぐらいにキョダイだ。
当然、その脚もキョダイである。しかも今は戦闘中だよ!!
「ちょっと待ってくださいいきなり投げられると船がおいやめろ」
KRAAAAAASAH!! 甲板に衝突する脚! 揺れる船! あちこちから悲鳴!
「「「ソイヤソイヤソイヤ!?」」」
「漁師も暑苦しいしうるさすぎる!!」
「…………なるほど。これが地獄絵図という意味ですか……」
阿鼻叫喚の甲板上で、今度はアルジャンテのほうが遠い目をする番であった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
リリア・オルトラン
結都殿(f1056)と共に
砂海の覇王か!良い名だな!
このような巨体を鍋の具材とするとは、たくましい者達ばかりだ
私達も負けてはいられないぞ
一等美味な部位を持ち帰らねばなるまい
さて、蟹が食べたいとは言ったのだが、このような依頼は初めてなのだ
結都殿、立ち回りを指南してもらえるだろうか
ふむ…では自由に行かせてもらおう
砂の中を自由に行き来するとはまったく厄介だな
ルーンソードを扱いトリニティ・エンハンスを使おう!
水の魔力で攻撃力を強化し、関節の隙間など硬度の低い部位を狙って攻撃するぞ
砂は水を含むと重くなるだろう。少しでも歩みを遅く出来れば上々だ
さあ、最後まで気を抜くなよ結都殿
蟹鍋が私達を待っているのだ!
桜・結都
リリアさん/f01253 と
覇王とは、強そうですね
一番初めに食べようと思った御人はどのような気持ちだったのでしょう
逆に食べられてしまわぬよう気を引き締めていきましょうね
私も人様に助言が出来るほど経験はありませんので、思うままに動いてみてください
あなたが怪我をされないよう、御守りしますよ
『桜咲』を手に携え、<全力魔法>で雷を喚びます
リリアさんの攻撃に合わせ追撃を加え、雷撃で次の行動を鈍らせるよう狙います
<破魔>を『桜霊符』に籠め、彼女の身を護るよう展開させ
回避の難しい攻撃は障壁で足止めて、その隙にさらなる追撃を
分身体は不味いらしいですし……区別がつくものは除けておきましょう
最後までがんばりますよ
オブリビオンとて生物は生物。食べようと思えば食べられるものもいる。
……しかし食べられるということを知っている、そして味がわかっているとは、
誰かが最初にそのオブリビオン(あるいは残骸のオリジナル)を食べたのだ。
たとえばフグのような毒性を持つ生物も、誰かがはじめにあれを食べたのだろう。
そして、その無毒化の方法を編み出した。おそらくは相応の犠牲のもとに。
「すごいですよね……あんな巨大な蟹を、どうやって食べたんでしょうか?」
「なにせ"砂海の覇王"だからな! たくましい者なのは間違いないだろう!」
桜・結都の疑問に対し、リリア・オルトランはうんうんと頷きながら応えた。
名も知らぬ"一人目"もそうだが、このワイルドなエリアにいる漁師たち。
そのたくましさと来たら! ……たくましすぎて暑苦しい気もするが、
あの巨大な敵を相手に一歩も引かぬ勇敢さは、実際とても好ましく頼れるものだ。
そして集まった猟兵たち……も、だいぶ目が血走って飢えているが、
頼りがいはある! 飢えているから逆に頼れるまである。というかちょい怖い。
「と、とにかく私たちも負けていられんな! 一等美味な部位を持ち帰らねば!」
「ええ。逆に食べられてしまわないよう、気を引き締めていかないとですね」
「……それは、蟹に、だよな? 結都よ」
「??? それ以外に何かありますか……?」
やや天然な茶飲み友達は、リリアの言葉にこてんと首を傾げた。
そうだよな、猟兵に取って喰われるとかそんなことない……ないよね?
リリアは実のところ、ちょっと不安だったという。だが彼女は表には出さない。
そんな弱気(過ぎた心配とも言う)は、己にはそぐわないのだから……!
とはいえ実はリリア、この手の依頼(討伐的な意味でもトンチキ的な意味でも)は初めてらしい。
指南を、と求められれば、結都は鷹揚に彼女に応じた。
「といっても、私も人様に助言が出来るほど経験があるわけではないですが……」
「それでもいいさ。先人の知恵というのはそれだけで価値があるのだからな!」
「わかりました。では、あなたが怪我をされないよう、お守りしますよ」
「では頼むぞ! さあ我らの力を見せてやる、砂海の覇王よっ!」
リリアは頼もしげに頷くと、ルーンソードを構えて甲板から飛び立った。
そして刀身を指でなぞれば、軌跡に赤・青・緑の3つの魔力のラインが走る。
炎、水、風。それらの魔力を刀身に纏わせることで、自己とその切れ味を強化。
ぐおんと振るわれた巨大ハサミの攻撃を軽やかに回避し、甲殻に剣を振り下ろす!
しかし……がぎぃんっ!! と、強固な甲殻はルーンソードを跳ね除けた。
予想だにしない手応えに、リリアは奥歯を噛み締め手のしびれをこらえる。
「むう、さすがに一筋縄にはいかんか……!」
「リリアさん、危険です!」
そこへもう片方のカニ爪がぶおんっ、と勢いよく薙ぐように振るわれた。
結都は桜霊符に霊力を込めて投げナイフめいて投擲し、即席の破魔障壁を展開。
ハサミ攻撃を跳ね除けた瞬間、もう一方の手から鋭い雷撃を放つ。
ZZZZZZTTTTT!! 高圧電流が甲殻に弾かれるが、敵の勢いはこれで弱まった。
「すまんな結都殿! そうか、甲殻を貫けぬならば……こうしてくれよう!」
リリアは勢いを失った蟹爪を足場に跳躍し、巻き上がる流砂を斬り裂いた。
すると水の魔力が砂に絡みつき、粘ついた砂の渦が生まれ鞭のようにしなる。
それはぐるぐるとロープのようにビッグマックスの巨体にまとわりつくのだ!
『グラッ!?』
「ふふっ、砂は水を含むと重くなるのだ。そして、動きを止めたなら……!」
リリアの目には、これまでの攻防で敵の関節部が解っている。
狙うのはさらにその隙間。強固な甲殻も、隙間を突けば形無しなのだ。
巨体だからこそ、リーチに潜り込んでしまえば敵は鈍重である。
リリアの突き出した剣は……柔い肉を斬り裂いて、蟹の内臓に食い込んだ!
『グ、グラァアアアアアッ!!』
「お見事です! しかしなぜでしょう、雷撃があまり効きませんね……?」
結都は継続的に雷を放っていたが、妙に効きが悪いことに首を傾げていた。
蟹は水生生物、いわばタイプで言うならみず。かみなり……もとい雷撃は効果的、
なのだが……砂海に紛れたこのビッグマックスは、地面の特性も持つのである。
つまり、こうかはいまいち……それでも、ダメージがないわけではない。
「支援感謝するぞ結都殿! このとおり急所を抉ってくれたわ!」
リリアが剣を再び突き刺せば、ビッグマックスは悲鳴めいた雄叫びをあげる。
急所に当たった……つまり彼女の攻撃は、こうかはばつぐんなのである。
この戦い……猟兵たちの有利に進んでいる。蟹鍋はもうすぐ(?)だ!
「我らの宴のために、倒れてもらうぞ覇王よ!」
『グゥウウウウウラァアアアアア!!』
巨体は身動ぎしリリアを振り払おうとした。戦いは、まだまだ続く……!
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
アレクシス・ミラ
【双星】
アドリブ◎
でかいね…!
ああ、絶品らしい。僕も気になってきた
確か…爪の中も食べれる部分はあったはず
うん、出来る限り残せるように戦おう
――我が身は鋼、不屈の盾
巨獣相手だろうと弾き返して見せよう!
【天誓の暁星】を力に
さあ、戦闘(バトル)だ
殻は…硬そうだな
関節部分を狙って彼を援護するように雷を放とう
彼への攻撃は盾でかばう
任せて!
盾を上に掲げ、飛び乗ったセリオスの跳躍に合わせて盾を衝き上げる
蟹が彼に意識が向こうとしたら、僕へと戻させよう
余所見をしないで…もらおうか!
盾を最大サイズに変形、さらにオーラ防御を纏わせ巨大な盾の如く
ハサミに向かって全力の突進でシールドバッシュ!
セリオスには当てさせないよ
セリオス・アリス
【双星】
アドリブ◎
すっげーでけぇカニだなぁ!
あんだけソイヤの奴らがはしゃいでんだからきっとうまいんだろうな!
どこが一番うめえんだ?胴体か…アレス、あのでけーハサミの中って肉?
沢山中身が詰まってんなら綺麗にかりとらねえとな!
『歌』で身体強化して
まずは『先制攻撃』だ!
…ッ!コイツも固い敵か
ああ、つっても
狙いどころはちゃんとありそうだ
アレス!
まっすぐアレスに向かって駆けてって
軽く跳びアレスの盾の上へ
そのまま高く跳んで
ハサミの関節が斬りやすい位置へ
ハッ…!この高さなら見下ろされなくていいなぁ!
アレスが斬りやすい位置までハサミを持ってきてくれっから
あとは関節めがけて【彗星剣】を振り下ろすだけってな!
「「「ソイヤソイヤソイヤ! ソイヤソイヤァ!!」」」
繰り広げられる猟兵VSオブリビオンの激戦を前に、漁師たちは湧いていた。
あの冒険者たちの姿を見よ。その勇ましさ、食欲と来たらどうだ。
あれほどの巨体を前に慄くどころか、むしろほとんどが戦意を高揚させている。
もちろんそれが蟹鍋への期待であることはわかっている。だからこそいいのだ。
ゆえに漁師たちは汗を振り散らし、猟兵を鼓舞する(つもり)の舞いを踊る。
あまりにもそれが暑苦しすぎることだけが唯一の、そして問題なのだが……!
「ソイヤの奴らもはしゃいでんなあ! こりゃーやる気が出てきたぜ!」
そんな中で、セリオス・アリスは目をキラキラさせてはしゃいでいた。
蟹! 高級食材! めったに食べたことのない、しかし美味なあれである。
それだけでもテンションマックスなのに、その大きさときたらたまらない。
男の子マインドのセリオスは、主にそのキョダイさにテンションアガっていた!
「ああ、でかいね。しかも絶品らしい。こうなると僕も気になってきたな」
普段ならそんなセリオスをたしなめるアレクシス・ミラも、そわそわしていた。
デカいカニ。しかもそのぎゅっと締まった身は、どこも絶品だという。
食べたい。こればかりは仕方ない、誰だってよだれを垂らしてしまうだろう。
いやよだれまでは垂らしていないが、セリオスは垂らしそうな勢いだった。
「たくさん中身が詰まってんなら、綺麗に刈り取らねえとな!」
「そうだね。なかなか慣れない戦いだけど……まあ、やってみせるさ」
むしろアレクシス的には、そんな繊細な戦い方が幼馴染に出来るか不安だった。
が、このやる気だ。逆にそのやる気のおかげでなんとかなるだろう。
そしてアレクシスの期待通り、セリオスは歌声をともとして素早く飛翔した。
普段よりも疾い。食欲というものはここまで人を強くさせるのか!
「先制攻撃、もらったぜ! おりゃあっ!!」
……しかし!
がぎんっ!! という衝撃音とともに、強固な甲殻は斬撃を弾き返した。
セリオスは意外なまでに衝撃をかろうじてこらえ、空中で体勢を整える。
『グゥウウウウラァアアアアア……!!』
だがそこへ、小虫を払うように乱雑に振るわれた巨大ハサミが迫っていた。
まともに喰らえば、いくら身体能力を強化していたとしてもひとたまりもない。
だが、セリオスの目に恐れはない――そういうときのために彼はいるのだ。
「アレス! 防御頼むぜ!」
「もちろんだ、任せてくれ! その攻撃、通しはしないッ!」
遅れて跳躍したアレクシスがセリオスに追いつき、気合とともに盾を構えた。
守護の誓いのもとに掲げられたその盾は、超常の力を以て敵意害意を跳ね除ける。
ぎぃん……!! と甲高い音が響き渡り、巨大なカニ爪が押しのけられた!
『グゥウウウラァアアアア……!?』
さしものビッグマックスも、この意外な防御力には驚いたらしい。
「いまがチャンスだ。セリオス!」
「ああ、使わせてもらうぜその盾っ!」
セリオスはアレクシスの目線に頷き、掲げられたままの盾を踏み台に跳躍。
目指す先は、アレクシスの盾に弾かれた巨大なカニ爪……その根本の関節部!
「ハッ! この高さなら見下されなくていいなぁ! えぇ、カニ野郎!」
『グゥウウウウウ……ラァアアアアア……!!』
ビッグマックスは無理矢理に体勢を立て直そうとする。
「よそ見をしないで……もらおうか!」
その時、アレクシスの掲げた盾がぐんぐんと超巨大サイズに変形したのだ。
そして聖なるオーラを纏い、ビッグマックスの顔面に叩きつけられる!
SMAAAAAAAAAASH!! その巨体に負けずとも劣らない強烈なシールドバッシュ!
『グッ!? グゥウウウラァアアアアア……!!』
「彗星のごとく――いただきだぜ、その旨いハサミっ!!」
セリオスの双眸が、そして全身が白蒼の光を放つ。
光は彼の振るう剣に収束し、やがて身の丈をはるかに越えた巨剣となった。
そして落下速度を乗せて空中を蹴り……巨大魔力剣を、振り下ろす!
ZAAAAAAAAANK!! 根本を狙われた巨大ハサミは、轟音を立てて切断された!
「「「ソイヤソイヤソイヤソイヤ!!」」」
油断なく構えていた漁師たちがハープーンを投擲、ハサミを回収する。
甲板に着地したセリオスとアレクシスは、爽やかな笑みを浮かべハイタッチ。
ふたりのコンビネーションが、砂の海の覇王に一矢報いたのである!
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
矢来・夕立
狭筵さん/f15055
方針:爪目当て
爪むしり取ってきてドヤ顔するつもりらしいんで休んでます。
美味しいんですよね。爪。
茹でてよし、揚げてよし、蒸してよしと。
……。なんか、そんな気はしてました。前フリが上手いですね。
じゃあ切ってきますけど、脚と爪の間まで行かないと届きません。
そのままレギオンとロープで鋏を固定しといてください。
知人の上半身と下半身がちぎれるとこなんか見たかないでしょ。オレもそういう無様な死に方はイヤです。
さて。丁度よく節から切り取れるでしょうか。
ミスると可食部位が減っちゃうんですよね。
【竜檀】、一回。
成否問わず一回だけ。退かないとたぶん潰されます。
砂船が。鋏の直撃を貰って。
狭筵・桜人
矢来さん/f14904
こ、このままでは私の株が……!
それに獲った魚をその場でシメれるのって
ちょっとカッコ良くてムカつくのでダメです。
ここは私の力で希少部位のカニ爪を
手に入れてドヤ顔したいと思います。
矢来さんはお疲れでしょうから休んでてくれていいですよ。
エレクトロレギオンでカニ爪に右左上下から
ロープを潜らせぐるぐる巻きにしてしっかり固定します。
こっちでロープをソイヤしてる人たちに引っ張って貰いましょう。
これでカニ爪ゲット――――
引っ張ったくらいでポキッて折れたりしない感じ?
…………。
あの……矢来さん?
カニの脚と鋏を切り離してきて貰えると
助かるな~なんて……。
エッハイちゃんと固定しときます!絶対!
狭筵・桜人は苦しんでいた。無力感、そして行き場のない焦燥感に。
(こ、このままでは……私の株が、ただでさえ低い気がすることもない株が!!)
先のエアティック・フィッシュ戦における、矢来・夕立の冷たい瞳と舌打ち。
別にあんな忍者にどう見られようが彼のタフネスなハートは気にしないが、
それを漁師たちとガラット、あと猟兵のみなさんが目撃していたのが大問題だ。
このままでは、自分は役立たずの烙印を押されてしまう。そんなことないのに!
……ほんとにそんなことがないのかは割とはなはだ疑問だが、さておき。
あとなんか、ああいうアウトドアなことをさらっとやられるとかっこいい。
かっこいいのでムカつく。そんなわけでわりとむくむく怒りが湧いていた。
筋違いにも程があるが、残念ながら彼はそういう男である。うーんダメ人間!
「矢来さん! 今回は私が働きますよ、あなたは休んでいてください」
「え? そうですか。じゃあ休みますね」
「せめてどういうつもりだとか聞いてくれませんかねぇ!?」
「別に尋ねなくてもあなたの考えは大体わかりますから……ウソですけど」
夕立、サボれる時は容赦なくサボる。わざわざ労力を割くのはスタイルではない。
「どうせええかっこしいのつもりなんでしょう? どうぞ頑張ってください」
「完全に見抜かれているのが腹立ちますね!! ですがまあ、見ていてくださいよ」
いっちょやってやりますよ、となぜかもうドヤ顔でキメる桜人。
しかし夕立はもうそっちを見ないで新しいコミックスの単行本を読んでいた。
さて、これまでにその巨大なカニ爪は二度、猟兵によって切断されている。
ん? 二度? だったらもうハサミは残ってないのでは?
という読者(誰だ?)の皆さんの疑問はもっともであろう。
しかし見よ。切断されたカニ爪の根本を。じわじわと再生しているではないか!
「旨い上に再生能力まで持ってるとか、サービスモンスターかなんかですかねあれ」
「オブリビオンってそういうものですよ。いや知りませんけど」
「まあ、そうですね……では行きますよ。まず用意するのはこのロープ!」
くわわっ。存在しないカメラに目線を向け、なにやらロープを取り出す桜人。
その長いロープを運ぶのは、彼が召喚したエレクトロレギオンの軍団だ。
ビッグマックスが猟兵たちと戦っている隙に、機甲兵器部隊は颯爽と飛んでいく。
「これでロープでぐるぐる巻きにし、固定した上で引っ張るわけですよ」
「ほう。狭筵さんがですか?」
「いえ、漁師のみなさんがです」
「「「ソイヤッ!?」」」
「……え? なんですかその反応。出来ますよねそんな筋肉あるんですから。
みなさんが力を合わせて綱引きすれば、あんなカニ爪なんてボキッと……」
「「「…………」」」
「……えっ、あれ? なんですこの沈黙。まさかボキッと折れたりしない……?」
漁師の皆さんは顔を見合わせ……やがて、おずおずと頷いた。
それが申し訳ないというより、『何言ってんだコイツ』感満載の顔で。
「そ、そんな……私の完璧な作戦が、こんなたやすく……!?」
桜人は愕然とした面持ちで崩れ落ちる。誰もが呆れた顔で見ていた。
なお、夕立は最初からコミックスをのんびり読んでいた。だって最新巻だし。
「……」
「…………」
「………………あ、あの、矢来さん」
「なんですか」
「その、なんというかですね、あの、ええと」
「……」
「……か、カニの脚とハサミを切り離してきてもらえると助かるな~なんて……」
「前フリが上手いですね」
「ぐ、ぐうううう……ッ!!」
耐えた。桜人は耐えた。衆人環視のなか与えられるこの恥辱に……!
なんか夕立が悪いみたいな書き方をしているが、全面的に彼が悪い。
「まあいいでしょう。代わりにレギオンとロープでハサミを固定してください」
「えっ? なんかこう忍法とかでどうにかならないんですか?」
「知人の上半身と下半身が無様にちぎれるとこなんて見たかないでしょ」
オレもそういう死に方はイヤです。そう言って、夕立はすぐに姿を消した。
桜人は漁師のみなさんと顔を見合わせ……死の物狂いでロープを掴んだ!
「すみませんみなさんも手伝ってくださいお願いしますなんでもしますから!!」
「「「ソイヤソイヤソイヤソイヤ!!」」」
ぎちぎちぎち……! と、超巨大ハサミをロープが固定する。
ビッグマックスはその拘束に忌々しげに身動ぎし、ハサミを振り回した。
船が揺らぐ。桜人も漁師のみなさんも、悲鳴とうめきを漏らし必死に耐える!
「――……見えた」
一方空中に身を躍らせた夕立は、眼鏡の奥の瞳を鋭く細めた。
おそらく、チャンスは一度。その一度で、船か彼らのどちらかが砕け散る。
落下速度が彼を迎え、重力の愛撫が全身を落下させる。抗わずに受け入れた。
ぐんぐんと近づく関節部……直後、その両腕が、霞に包まれたように、消えた。
『グッ!? グゥウウウウ……ラァアアアアアッ!?』
見よ! なんらかの不可知の斬撃により、ハサミは根本から真っ二つだ!
すさまじい量の血を噴き出しながら、ビッグマックスは苦悶する!
「ちょ、重い重い重いですよこれ!?」
「きちんと耐えてくださいよ。こっちは働いたんですから」
超巨大ハサミの重さに慄く一同に対し、夕立は冷ややかに言った。
そして腰を下ろし、読みかけの単行本を拾う。もう仕事は終わったとばかりに。
「……か、かっこいいなあ、くそう!!」
さしもの桜人も、完敗を認めざるを得なかったという。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
露木・鬼燈
…食のためなら本気出すっぽい!
バッチリ狩って熱燗で一杯とかね。
せっかくだし甲羅酒なんてのもありじゃない?
このサイズだし色々と楽しめるよね、きっと。
可食部分を減らさないためにも、きれいに倒さないとね。
そーなると普通に戦うだけじゃダメだね。
こーゆー時はサポートに徹するのもありだよね。
その巨大なハサミ、封じさせてもらうですよ。
秘伝忍法<封縛>
砂に潜ろうとも無駄無駄!
ハサミと力を封じて引き摺り出してやるっぽい!
気合と根性と…食欲!僕にパワーを与えてくれるっぽい!
カニ、早く喰わせるっぽーい!
分身?マズいのならいらない。
呪詛を籠めた棒手裏剣を投擲。
発生する百足型の呪詛が平らげてくれるのですよ。
夢ヶ枝・るこる
■方針
・アド/絡◎
■行動
これはまた、大きな蟹さんですねぇ。
食べでは有りそうですが、油断は禁物ですぅ。
『F●S』3種を展開、『FBS』は四肢に嵌めて飛行能力を確保し、砂地という「足場の悪さ」を補いましょう。
その上で【耀衣舞】を使用、『FRS』『FSS』は『光の結界』へのエネルギー供給に回し、光速の突撃を行いますねぇ。
最初は脚を狙い、低空飛行からの連続突撃で片側を順に払いましょう。
少しでも体勢を崩させましたら、お腹を突き上げる様に突撃しますねぇ。
巨大とは言え蟹の甲羅、腹側の方が背中側より柔らかいでしょうし、背中側から転倒させられれば色々狙い易くなりそうですぅ。
後は仕留められるまで繰返し、ですねぇ。
ティオレンシア・シーディア
※アドリブ掛け合い絡み大歓迎
わぁおおっきい。これだけの大きさならみんなで分けても十分食べ出があるわねぇ。
…とはいえ。デカくて隠れてしかも頑丈って、あたしあんまり相性よくないのよねぇ…
砂の中に潜られたまんまじゃさすがに手が出せないし。攻撃のために顔出したとこをぶん殴るしかないかしらねぇ。
狙うは●明殺○一斉発射での後の先○カウンター一本。いくらデカくて頑丈でも、関節の継ぎ目まで完全には鎧えないでしょ。
鋏は流石に望み薄としても、最低限足の一本くらいは吹っ飛ばしてやるわぁ。
…にしても、みんなテンション高いわねぇ。やっぱりごはんやお酒が絡むと人格変わるのかしらぁ?
そりゃまぁあたしも楽しみではあるけれど。
鬼柳・雄
※アドリブ絡み歓迎
おおでけえ!見ろシア、これなら食い甲斐あるだろ。たらふく食えるぞ!その為にはきっちり仕留めないとな。つーわけで、いくぞ!変身!
どれだけデカくても蟹は蟹。甲羅は固くともむき出しの目と関節部が弱点なのは変わりない。
UCで変身して巨蟹まで飛んでいきます。「先制攻撃」で鋏を凍らせて封じ、目に炎を飛ばして牽制。「戦闘知識」を基に「2回攻撃」「グラップル」で相手の関節部分を蹴ったり殴ったり梃子の原理でへし折って攻撃します。相手の攻撃は「オーラ防御」「第六感」で防ぎます。
「いや人の事は言えねえけど。ほんとスゲーな食欲って」
九十九折・在か
蟹
でっけぇカニ!
でかいは強くてエラいってママも言ってた!
だからビッグマックスをブッ飛ばして
わたしのが強くてエラいって教えたげる!
……あのカニどやって鍋に入るのかな
しへへ
楽しみ!
☆心情
敵と相対した高揚
ガラットおじさんへの親愛
美味しい鍋への期待
☆行動
「しへへ。髭おじさん!もっとすげぇソイヤ見せたげる!」
エレメンタルファンタジアを起動
指定は「雷の洪水」
蟹の潜行の足止め狙い
攻撃に船を巻き込まないよう制御に努めつつ
念動力技能で雷を蟹側へ押し出す
既に潜行しているなら「雷の竜巻」
砂を巻き上げ蟹を炙り出す
船を巻き込まぬよう距離を空けて使用
「ソイヤさん達も気ぃつけてね!死んじゃうから!」
*漸次調整してください
『グゥウウウウラァアアアアア……!!』
三度、その巨大ハサミを切断され、ビッグマックスが雄叫びを上げた。
込められたのはおそらく怒りと苦痛。そして邪魔な敵に対する宣戦布告だろう。
巨体に見合うすさまじい生命力により、切断された超巨大ハサミは即座に再生。
普通であれば、あまりにも高すぎる強靭さに誰もが呻くところだろう。しかし。
「わお! ハサミ再生したっぽい? これはつまりもぎ放題っぽい!」
戦いを見守っていた露木・鬼燈は、バリバリテンションがアガっていた。
「おお、すげえ! 見ろシア、あれなら喰い甲斐あるだろ。働きどきだぞ!
たくさん働いてたっぷりもぎ取ってたらふく喰うんだ。きっちり仕留めないとな!」
鬼柳・雄、そして彼女の相棒とも言える悪魔・マルコシアスもアガっていた。
「しへへへ! でかいからって、ほんとにエラいのはわたしのほうだぜ?
それをこれから教えて……ン? あれって、どうやって鍋に入るのかな……?」
強敵を前に高揚していた九十九折・在かは、はてなと首を傾げる。
……なんとかなるんだろう、多分。鍋とか出せる猟兵、いそうだし。
ドワーフの里にはものすげえ大きさの鍋がある。あの重機とかでかき回すやつ。
現実にあるんだから何の問題もない。今そうなりました。問題解決!
「……みんなテンション高いわねぇ。ご飯やお酒が絡むとこうなのかしらぁ」
そんなアガりまくりの一堂を見て、ティオレンシア・シーディアは首をかしげる。
彼女からすると、オブリビオンを狩って食う時点でだいぶあれなのだが、
ここに集まった猟兵のほとんどは、そんな常識的なことで悩みはしないのだ。
カニ!(多分)無限に再生する超デカブツ! デカさもそうなら味も折り紙付き!
テンションがアガらないわけがない。みんなもう食ったつもりになっていた。
「でもでも、油断は禁物ですよぉ。船がやられたら大変ですからねぇ」
ビームリングの力で飛行する夢ヶ枝・るこるが、猟兵たちを軽くたしなめる。
そのとおり、ビッグマックスはその名のとおりに実にキョダイでマックスなのだ。
ハサミが再生するということは、裏を返せばその脅威は常に彼らを脅かす。
猟兵はもちろん、今回の依頼人であるガラットや漁師たち、船も同様に……!
「しへへ。だったらやられちまう前にやっちまえばいいし! な、ヒゲおじさん!」
「なっ、ワシのことか!? ワシはおじさんではないのじゃー!!」
在かに言われたガラットは、飛び上がって怒る。実は彼女は女性なのだ。
しかし、その自慢のヒゲ(ナティビアード族の誇りらしい)と兜のせいで、
当然素顔はわからない。在かが間違えたとしても無理はないだろう。むしろ自然。
「まあまあ、気にすんなって。もっとすげぇソイヤ見せたげるからさ!」
在かはガラットの剣幕もたいして気にせずに言うと、両拳を力強く握りしめた。
その両腕に、バチバチと稲妻がまとわりつく。魔力で増幅された生体電流だ。
そして在かは雷を解き放つ……流砂の起こす静電気と同化した、雷の洪水を!
『グ、グラァアアアアアッ!?』
ZZZZZZZTTTTTTT!! 雷は砂の海を覆い尽くし、ビッグマックスを飲み込んだ!
すさまじい高圧電流が巨体の内部まで隅々と浸透し、ヤツを痺れさせる。
絶え間なく流し込まれる電撃は、いわば高熱を持つとてつもない大きさの網だ。
「しへへ! こうやって痺れてたら砂に潜り込むとこじゃねえだろ!
あ、ソイヤさんたちも気ぃつけてね! 前に出ると死んじゃうからさぁ!」
ZZZZZZTTTTTTT……!! 雷はビッグマックスを決して逃さない。
「おお、なんという魔術か。いや武芸なのか? ともかくすごいのう!」
「しへへ! あたしはスゲぇでしょ? 強くてエラいカニよりもエラいんだ!」
見た目よりもあどけない素直な笑みを浮かべ、ガラットの称賛に照れる在か。
ともあれ、これで敵の動きは縛り付けられた。今が一気呵成に攻め込む好機だ!
ビッグマックスは麻痺しかけながらも、巨大ハサミを振り回そうとする。
在かは船の上。ならば、砂の船をまるごと薙ぎ払ってしまえばいいのだ。
動きはぎこちないとはいえ、質量で流砂をかき混ぜれば威力は絶大である!
「悪あがきしやがるな……行くぞシア、変身!」
ガウ、と悪魔マルコシアスは頷き、光に包まれその体を変形させた。
スーツ状となったマルコシアスは雄の体を覆い、彼を助ける鎧にして矛となる。
甲板を蹴って空中に飛び出した雄は、指先から凍てつく冷気の魔力を放出。
さながら火炎放射器めいて噴き出した冷気が、ぎこちなく動きハサミにかかると、
ビシビシと大気ごとその甲殻を、関節を凍らせ、動きを封じてしまう!
「おっと、寒いだけじゃ苦しいだろ? あったかくしてやるよ!」
『グラァアアアッ!?』
ごおうっ!! もう片方の腕から放たれたのは、大気を焼き尽くすほどの魔炎。
複眼に叩きつけられた炎は、ビッグマックスを大きくひるませる。
「これはチャンスですねぇ。反撃の心配もないし、全力でいきますよぉ」
好機と見たるこるは、光のリングを励起させ全身を光の結界で覆い隠した。
中を見通せぬほどに分厚く質量を得た光の加護は、彼女を光の速度で飛翔させる。
全力を込めた体当たり……そのために、鬼燈とティオレンシアが動く。
「可食部分を減らさないためにも、きれいに倒さないとね~!」
「今回ばかりはその図体に同情するわねぇ。狙いを定める必要もないわぁ」
ティオレンシアは神速のリロードを行い、関節を狙ってファニング射撃を連発。
BLAMBLAMBLAMBLAMBLAMLBLAMBLAM!! マズルフラッシュが砂の海を照らす。
放たれた大量の弾丸は、氷と雷で弱まった関節部に命中し……KRASH!!
『グラァッ!?』
脚を叩き割った。巨体を支える脚を失ったことで、ビッグマックスが揺らぐ。
続けざま、鬼燈の放った鎖ががらがらと音を立てて体とハサミに絡みついて、
疑似生命体としての力を発揮し、逃げられぬようにがっちりと縛り付けてしまう。
「うーん、こうなってくると本当の漁みたいねぇ。ここは海じゃなくて砂漠だけど」
「だったらこーやって引き上げてやるっぽい? 砂に潜るなんて、無駄無駄ぁ!」
ぐぐ、ぎぎぎぎぎ……おお、見よ。鬼燈の超膂力が巨体を引きずりあげる!
砂に埋もれかけていたビッグマックスの巨体が完全に地上に姿を表し、
接近した雄の拳がガツンと叩きつけられ、強固な甲殻に蜘蛛の巣めいたヒビを刻んだ!
「――さあ、いきますよぉ? どこまで耐えられますかねぇ……?」
そして、光を纏ったるこるが解き放たれた。まるでそれは引き絞られた矢のごとく。
光のレールを空中に刻み、誰にも視認不可能な速度で飛翔したるこるは、
反動をものともせずに巨体に激突。質量化した光の加護が叩きつけられる。
しかも一度ではない。小刻みな低空飛行突撃を連続で繰り返しているのだ。
いかに鋼じみた甲殻を持つとは言え……ビッグマックスはひとたまりもない!
『グ、グラァアアアア……!!』
KRAAAAAAAASH!! 分厚い甲殻が砕け、血と体液がどくどくと溢れ出た。
空中でカーブする光の軌跡はるこるのものだ。浮き上がった巨体にさらなるチャージ!
「……いや人のことは言えねえけど、ほんとスゲーな食欲って」
「食欲だけじゃなくてお酒のこともあるっぽい! 頑張らないとね!」
唖然とする雄に対し、鬼燈は明るく言った。彼は大変な酒豪なのである。
「……オブリビオンも、こういうときはちょっと可哀想かしらぁ……」
さっぱりそう思っていないような声音で呟きながら、ティオレンシアは射撃を継続。
圧倒的攻撃が、ビッグマックスを徐々に追い詰めていく。
「しへへ。ソイヤソイヤ! もっともっと派手に行くぜ!」
新たな電撃を纏いながら、在かは楽しげに言った。まさに、祭りのような大騒ぎである!
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
数宮・多喜
【アドリブ改変・連携大歓迎】
で、で、で……
デケェぇぇぇぇぇ!?
ちょっと待て!?これカルキノスさんの何倍あるんだよ!?
ただでさえカニには苦手意識持ってるってのに!?
ちくしょう、このビッグマックスがみずタイプで、
闇属性でない事を祈るしかねぇ!
そうなるとハンマーみたいな打撃や鋏でのギロチンが怖いし、
さっき纏っていたアーマーのまま『念動力』で浮遊し、
『衝撃波』の反動で逃げつつ『マヒ攻撃』の電撃で牽制するよ!
そして他の皆とタイミングを合わせ、
【黄泉送る檻】をぶっ放す!
アタシがタイプ一致かどうかは分かんねーけどさ、
水鉄砲を使うならこの電撃の『属性攻撃』に
こたえられるかい!?
バルディート・ラーガ
ッシャーッ出やがったなア、キョダイカニ鍋!の材料!
おとなしくまな板に乗ッかって下さいまし……どでけエ!マックス!
のっぴきならねエ諸事情により蟹属性が弱点、どころか
いちげきひっさつモノなンですが、果たしてお鍋タイムまで
無事に生きのびる事ができンのかしらコレ。
ひとまずは火属性の矜持、やっこサンを炙ってみやしょうかねエ。
ちょいとばかしいい匂いが立ち昇りゃ、皆様の空腹中枢もブン回って
集団の士気も上がるやも。……既に十分ですかねエ?ヒッヒ!
そのまンまじゃカニビル(甲羅に付いてる黒い粒)のサイズ比ですが
こちらもキョダイ化して対抗!変身のカードを切りやす。
脚の一本くらいは焼きガニで頂いちまいやしょうやア!
カルキノス・マークスリー
砂煙の向こうに聳え立つは蟹。
魚を退けて進んだ旅の末、ついに鉄蟹は生身の蟹と相見えた。
鈍光る巨大な鋏、重厚なる体躯、長大な脚の数々。
この機械たる蟹と比してなお、遥か見上げるような体高。
しかし蟹の小さなワーキングメモリに後退のUnicode文字は無い。
ただ横へと進む命令を下すのみ。
蟹の戦<ファイト・クラブ>である。
蟹と蟹を並べて比べ、勝る所は比重である。
たとい相対的に小さくあろうと、高密度金属装甲とエンジントルクは
強大な破壊力を一点に加え、巨大蟹のキチン質外殻を割らんとかかる。
さながらてこの原理で食用蟹の殻を割り、蟹肉たらしめる道具の如く
一見無謀とも見える力比べを挑んで見せるのである。
エドゥアルト・ルーデル
来たのか!(腕を組み仁王立ちしながら)
待ちかねたぞ、カニ!
今日だけは苦難は拳で砕かないとな!己の中に眠る"漢"を解き放つでござるよ!
【流体金属】を全身に纏いますぞ!特性てつのこぶしでござる
狙うは本体のみ!分身体やら偵察に出した【UAV】やらなんやらをハッソウビートからの蟹の背にライドオン!やっぱモンスターには乗らないとネ!
ここで蟹の背中から戦闘力を上げた流体金属の潜影蛇手!もといメガトンパンチ!生命力吸収はダメだぞ、うま味が落ちる!
そう、蟹のうま味はどんな世界でも普遍…
拙者達は…分かり合うことができた…
ついでに盛り上げるために漁師隊を煽っていきますぞ!響かせろ!漢の唄を!
ソイヤ!
ソイヤ!
カニ!
それは高級食材。めったに食べられないお高い食べ物。
カニ!
それは鋼めいた甲殻を持つ、横歩きが特徴的なニクいやつ。
カニ!
それは……とある艇のメンバーにだけは特別に恐ろしい謎の生命体!
「シャーッ! 出やがったなァ! キョダイカニ鍋! ……の、材料!!」
「来たのか! 遅ぇんでござるよ、待ちかねたぞカニィ!!」
バルディート・ラーガとエドゥアルト・ルーデルは腕組し敵と相対する。
カニ……すさまじい図体。だがそれ以前に、カニそのものが彼らは恐ろしい。
そのハサミは、頭皮がいやに薄い人々にすさまじい特攻性を持つという。
「って、そんなカッコつけてる場合じゃないだろ!? なんだよあの図体!
あれじゃカルキノスさんの何倍あるのか……ただでさえ苦手なのにさ、カニ!」
さすがの数宮・多喜をして、冷や汗を隠しきれないほどのプレッシャー。
恐ろしい。カニに打ち倒された英雄は(ごく一部で)数知れないのだという。
そのフォークロアめいた伝説を知るのは、ごくごく一部の猟兵のみ……。
しかし、同じ艇に乗る彼らは知っていた。カニという甲殻類の、恐ろしさを……!
ピーヒョロロロ。ビヨーンビヨーン……ウィーン、ガガガガガ。
しかして見よ。そのキョダイなビッグマックスに立ち向かうあの巨体を見よ。
カルキノス・マークスリー。どこからどう見てもカニの姿をしたウォーマシン!
同じカニだからか。あるいは鋼である彼女に恐怖とは存在しないのか?
あるいは……同じカニだからこそ、臆する理由はないのか?
カルキノスは突き進む。カニだから横向きに……敵へと突き進む!
「シャーッ、見てくだせエカルキノスのお嬢の装甲を! まるで鋼みてェだ!」
「いやそりゃ鋼だよウォーマシンなんだからさ!」
「あれはやるかもしれねえでござるな……いわば、蟹の戦(ファイト・クラブ)!」
「蟹(クラブ)なだけにねって上手いこと言ったつもりかいアンタ!?」
外野(ルビ:みかた)のヤジとツッコミをよそに、カルキノスは巨躯へと挑む。
ビッグマックスは……おお、悠々と再生したハサミを掲げ迎え撃つ構えだ!
しかし、いかなカルキノスとて、キョダイさでは敵わない。
だがそのぶん、ウォーマシンであるカルキノスは質量的な意味で勝っているのだ。
ウィーン、ガシャン。ウィーン、ガシャン……ズババロロロ、ダダドムゥ……!
体内のエンジントルクが焼き付くほどに回転し、突進(横歩きだけど)速度を増す。
そこへ振り下ろされる、ビッグマックスのキョダイハサミ。な、ナムサン!
『キィイイイイイン……グゥウウウウラァァアアアアア!!!』
『…………!!』
カルキノスは……ふ、振り上げた! 自らのハサミを、相対するかのように!
高密度金属装甲の鋼のハサミと、オブリビオンのキョダイハサミが、激突!
KRAAAAAAASH!! すさまじい衝撃が流砂を巻き上げ、船をぐらぐらと揺らす!
そして……なんたることか。拮抗している。ハサミとハサミが、拮抗している!
同胞のその姿は、三人の蟹に対する原初的恐怖を振り払うに余りある勇猛さだ!
「よし……負けちゃいられないね! いくよみんな!」
最初に飛び出したのは多喜。アーマーの力で素早く空中を飛翔する。
そしてサイキックエナジーを電撃に変え、ZZZZTTTT!! 解き放った!
鋼めいた甲殻は雷撃の威力を弾く……が、関節部の隙間から電撃が忍び込み、
体内で炸裂。ビッグマックスを麻痺状態にした。こうかは ばつぐんだ!
「へっ、こいつはでんきじゃなくてエスパーだからね! 効くだろう!」
「なンかわかりやせンが、多喜サン、そいつはアブなくねエですかい!?」
しかしバルディートもおとなしくしてはいられない。彼が放つのは地獄の炎。
ぞわぞわとその体が変態し、九つの頭を持つ恐るべきヒュドラに変わった。
まさに、キョダイでマックスな変化である。そして口から放たれる恐るべき業火!
『SSSSSSSHHHHHH!!』
『グゥウウウラァアアアアア!!』
ごおうっ!! と逆巻く火炎が、鋼めいた甲殻の上から身を焼き焦がす。
ぱちぱちと弾ける火花……そして、おお、なんたるいい匂いか……!
「うおォん拙者はまるで人間火力発電所でござる!! ヒャア我慢できねェ0だ!」
食欲を刺激されたエドゥアルトは船を飛び出し、UAVを足場に連続跳躍。
向かう先はもがくビッグマックスの背である。そこは蟹にとっても……死角!
「それじゃ、今日はかくとうタイプのワザで優勝していくわね!」
『グ、グラァアアア……』
「がら空きの背中に、影に潜るような蛇手をビャーッといくでござる!!」
SMAAAAASH!! 流体金属生命体に覆われたエドゥアルトの手刀が炸裂!
メガトンパワーを持つパンチが甲殻を叩き割り、裂け目から体液が噴き出した!
「ムム! あれはうま味が濃そうでさアな!」
「……ちょっと待ったアンタ、いまなんて?」
「エッ? いやア、うま味(み)が濃厚そうだと……」
「うま味(あじ)だろうが!! 次間違えたら承知しないよ!!」
「アッハイ(た、多喜サンのココまでの剣幕めったにねエぞ……???)」
悶え苦しむビッグマックスの体を、カルキノスの鋼のハサミが挟み込む。
まるでギロチンのようだ。並のオブリビオンであればいちげきひっさつだろう。
怒りの力を電撃に変えた多喜は、すべての力を収束させた!
「ashes to ashes,dust to dust,past to past……!!
収束せよ、サイキネティック・プリズン! こいつを喰らいなぁ!」
バチバチバチバチ……!! 電撃の檻が巨体を包み込み、熱で責めさいなむ!
さらに降り注ぐ業火。そしてエドゥアルトの容赦ない連続攻撃!
「ソイヤ!」
『グラァアアッ!?』
「ソイヤ!!」
『グゥウウラァアア!!』
「ソイヤァアアアアッ!!」
KRAAAAAAAASH!! 甲殻がひび割れ、ビッグマックスは悶絶する。
まさにそれは、漁師たちよりも力強き漢(おとこ)の唄……。
食欲がもたらす、鬼神のごとき戦いぶりであった……!
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
フェルト・フィルファーデン
さてと……あまり動揺してばかりではいられないわよね。本命のカニを捕まえましょうか。
とはいえこの大きさのカニを無事に捕まえる術をわたしは持たないし……わたしはあまり美味しくないカニを片付けましょう。
炎の壁で美味しくないカニだけを隔離しつつそのまま焼いてしまうわね。
……これ、本当に美味しくないのかしら?
いえね?これまでカニを食べた事は無いのだけれど、皆がこれだけ興奮しているのを見るに、さぞかし美味しいのだと思って……だから、ちょっと、味見を……ほ、ほら、捨てるよりはいいじゃない?既に焼いてはあるし……本当はお料理した方が美味しいのでしょうけど……わたし、お料理は、ちょっと苦手で……ど、どうかしら!
舘林・祀
さぁ、刺身は確保した
いよいよ本命。ビックマックスをソイヤする時が来たわね!
あの大きな鋏の中にも身がぎっしり詰まってそうね
そして何より大事なのは……ミソよミソ。カニミソがどれだけぎっしりつまっているかが最重要事項ね!
だからこそ、なるべくお腹に攻撃はしたくないのよね
ここは一つ様子見で狐火であぶってみる?ちょっと焼き蟹をつまみ食い
わらわら出てくる蟹たちをじっくりことこと炙ってやりましょう!
……せっかくだから、ちょこーっとだけ味見してみてもいいわよね?
こんがり焼けた分身体(但し死ぬ程不味い)をぱくりと
反応はMS様にお任せします
女の子としての最低限の尊厳さえ守られれば
黒川・闇慈
「いやはや、大したサイズの蟹ですねえ。一匹いくらになるんでしょうか。クックック」
【行動】
wizで対抗です。
相手は砂の中に潜って行動する様子。どうにか地上に引き摺り出したいところです。
高速詠唱、属性攻撃、全力魔法の技能を活用し、炎獄砲軍を使用します。
分身の蟹を範囲攻撃の技能で焼き払い迎撃しつつ、炎のいくつかを蟹が潜行している地面に叩きつけて爆破しましょう。
爆破の轟音で蟹が飛び出してくるかもしれません。飛び出した所を残りの炎で攻撃して爆破しましょうか。あれだけの巨体の甲殻なら多少爆破しても大丈夫でしょう。
「蟹の身が焼けていないとよいのですが……クックック」
【アドリブ歓迎】
猟兵の攻撃は、おもにビッグマックスのキョダイハサミに集中していた。
絶品の超巨大蟹の、さらにキョダイな蟹爪。間違いなく身は絶品である。
そんなハサミを手に入れれば、鍋の具材をはじめ食糧としては超一流だ!
てなわけで、みんなハサミを狙っていた。もうちょっとヒくぐらい狙っていた。
もうすでにキョダイハサミは四、五度ほど切断された叩き落されているのだが、
ビッグマックスはすさまじい再生能力をそのたび発揮、ハサミを復活させている。
これに対する猟兵の反応は……もちろん、だいたいが喜びの歓声であった。
「いやはや、大したサイズです。しかも再生能力まで持っているとは……。
一匹いくらになるんでしょうかねぇ? 値段もつけられなさそうですよ」
「オ、オブリビオンを売買だなんて……! 誰も聞いてなさそうだけれど……」
陰気に笑う黒川・闇慈の冗談を、フェルト・フィルファーデンをたしなめた。
しかし、誰も彼も気にしちゃいない。絶品蟹鍋のことしかもう考えてなかった。
おかしい。猟兵ってここまでバーサーカーめいた集団だっただろうか?
フェルトは訝しんだ。彼女はなまじっか育ちがいいので、こういう時まともだ!
「……刺身を確保したいま、大本命をソイヤすることこそ唯一無二の目的よ。
あの大きなハサミ……何度も再生するというなら何度でももぐまで!!」
普段ならどちらかというとフェルトと同じツッコミ側のはずの舘林・祀も、
今回は完全に熱気(と有り余る食欲)に飲まれ、だいぶ我を失っていた。
彼女が考えることはふたつ。
あのハサミにぎっしり詰まっているであろう身の味。
そして……あの鋼めいた甲殻の下に隠された、魅惑のカニミソの量……である。
しかしそんなことを言ってる間に、ビッグマックスな砂中に潜り始めた。
猟兵の"圧"にビビりちらして、巣に帰ろうとしているのかもしれない。
「あっ! ど、どうしようかしら、あんな大きさの蟹は捕まえられないわ……!」
「ちょこざいな……身の程を教えてあげるわ! 蟹の身だけに!」
「ノリノリですねぇ。では、ひとつ北風と太陽の寓話に倣うといたしましょう」
そう言って闇慈は魔杖をタクトめいて振るい、背後に魔法陣を生み出した。
そこから現れるのは、すさまじい炎獄の業火……燃え盛る火炎の砲軍である!
「戦場を満たすは灼炎の王威なり。一切全て灰に帰せ――っと、それはいけません。
ここはひとつ、中身を出来るだけ傷つけないようにしましょう……クックック」
などと冗談めかしながら、闇慈は十分に高まった魔力を解き放つ。
魔法陣からマグマめいて炎が噴出し、蛇めいてくねりながら砂海に炸裂!
『グ、グゥウウウラァアアアア……!!』
さながら寓話の旅人めいて炎熱に苛まれ、ビッグマックスは悶え苦しんだ。
そして半ば潜行した巨体から、無数の分身体を生み出し盾にしようとする!
「わらわら出てきたわね。ならアタシも炙ってみようかしら!」
祀は狐火を自分の体のように自在に操り、分身体へと降り注がせた。
灼熱弾のような魔炎に包まれ、かりそめの分身体は燃え上がりながら消し炭に。
漂うのは、蟹を茹でた時のあのいい匂いである。否応なく刺激される食欲!
「……いい匂い、ね?」
「うーん、あれまずいらしいけど、これはなかなか甘美な誘惑だわ……」
フェルトは祀と闇慈に習い、電脳の炎壁を生み出し分身体を焼き尽くす。
そのたびにいい匂いが漂う。とてもまずいとは思えない、香味……!
「…………これ、本当に美味しくないのかしら……?」
「そうよね。ものすごく美味しそうな匂いするもの、もしかしたら!」
フェルトと祀は顔を見合わせ、うんうんと頷いた。
まずいっていうのは、実はこう巧みな情報操作だったりするのでは?
もしかしたら、分身体すらも独り占めしようとする猟兵の策謀……!?
本来なら浮かばない邪な考えも、この狂乱ぶりではふっとこみ上げてくる。
それほどまでに、ほとんどの猟兵が食欲に頭をやられていたのである。
「……せっかくだから、ちょこーっとだけ味見してみてもいいわよね?」
「そ、そうね。もし美味しいんだったら、これも具材にしないともったいないわ」
「「……捨てるよりはいいものね!」」
完全に共犯者である。少女たちは、好奇心には勝てないのだ。
こんがり丸焦げになった分身体を狐火と電脳魔術によってうまいこと引き寄せ、
脚を一本ぽきり。甲殻を割ってみると、ジューシーな身がこんにちわ、だ。
赤々と熱で茹で上がった身は、この上なく美味しそうである、が……?
「……このことは、みんなには秘密にしましょう」
「ええ、ええ、もちろんよ! それじゃあ、さっそく……」
祀とフェルトはこそこそと身をちょっとだけつまみ、恐る恐る食べてみた。
ぱくり。ジューシーな蟹のうま味が口の中に広がり……広がる……味が……。
「「…………」」
「好奇心は猫をも殺す、ということわざはご存知ですかねぇ? クックック」
「「…………~~~~~~~~~~~~~ッッッ!!!」」
闇慈の皮肉に応えることも出来ず、ふたりは口を抑えて悶絶した。
ま、まずい。ジューシーで芳醇なのに、なんかもうすさまじくまずい!
舌がピリピリする。いや、カビの生えたパン? いや腐った餅……?
様々な比喩が浮かんでは消えていく。だがまずいことに変わりはないのだ!!
「み、水! 水を誰か……だれ、か……がくり」
「あ、ありえないわ! 蟹なのよ? 蟹なのに、どうして蟹が……ぐふっ」
水を求めたフェルトはへろへろと甲板に落ちて、そのまま動かなくなった。
持ち前の体力で耐えていた祀も、青い顔のままぐったりとうなだれる。
「……いやはや、ユーベルコードとは恐ろしいですねぇ。クックック」
黒魔術師は、やや呆れた様子で肩をすくめて笑うのであった……。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ネグル・ギュネス
カニかぁ…(溜息)
お前らの殻って、剥き難くないか?
自分で剥けない?脱皮?いや違ってさ
無理?──あ、そう
おい誰だオレをカニに話しかける可哀想な目で見るやつは
かにもかくにも行くぞ、カニだけに
…どうした笑えよ
狙いは脚の関節部や付根
【サジタリウス・トリガー】セット
悪いが貴様の弱点は、視えている
雷撃属性攻撃を上乗せし、左腕をガトリングに変えてfire!
殻は硬くとも、同じ場所に集中したらどうなるかな…!
あくまで破壊するのは付根やいらぬ殻部分だし、弾丸は雷の魔法弾だから着弾したら消える!
オレは学ぶ子なんだ、今度は散乱させないし不必要に破壊はしないからな…殻だけに!!!
どうした、笑えよ(天丼)
千桜・エリシャ
さて、気を取り直して
遂に主菜の登場ですわね!
なんて大きな…嗚呼、身が詰まっていそうで美味しそう…
私ったら端ない
うちの宿に仕入れるのもありですわね
さあ、宴の前の準備運動と参りましょう!
勢い付けて風に乗れば蟹の上に降り立って
私、蟹の解体も得意ですのよ
女将に食べさせて欲しいと仰るお客様もおりますから…
うちの宿にお泊りの際はご奉仕しますわ、なんて
ふふふっ
翻弄するように駆け回り
攻撃は見切りで避けて
いくら硬い殻で身を包んでいようと所詮は蟹
関節は柔らかいものでしょう?
そこに狙いを定めて斬撃を一閃で2回攻撃を叩き込んで
ばらばらにしていきましょうか
ふふ、蟹の鳴き声って初めて聴きましたわ
いい声で哭いてくださいまし
リーオ・ヘクスマキナ
美味しい! お鍋と!! 聞いて!!! 突撃、砂海の蟹御飯ー!!!!
(右手に杓文字、左手にお椀持って。尚、小道具とセリフ監修は赤頭巾さんである。俗な事に詳しすぎでは?)
……全力で蟹を倒したい所なんだけど、俺の装備、銃と爆発物だからなぁ
下手に使うと蟹の味が落ちそうだし、仕方ない。食べても美味しくない分身を相手にしていよう
赤頭巾さんに前衛を頼んで、ソレを俺が後ろから援護射撃するのは普段通り
本体はどうも分身とは見た目がちょっと違うみたいだし。ヘタに本体に手を出さないようにしつつ、分身をライフルで狙撃していこうか
美味しい御飯のためにも!
他の人が本体を美味しくぶちのめす(?)のを邪魔はさせないよォ!?
ピリカ・コルテット
遂に出ましたねっ!大本命の絶品ガニさん!
こちらも出し惜しみは無しの、全力全開で迎えましょうっ!
桜竜刀に願いを込めて、遥か彼方の相棒の力を完全開放します!
【桜剣覚醒】、これより桜は大満開ですよっ!🌸
桜花の羽衣を身に纏い、桜の幻影で蟹さんを翻弄しながら、
限界を超えた速度と手数で、守りの弱そうな眼や関節への集中攻撃を狙います!
〈属性攻撃〉で刀に紫電を纏わせれば追撃も望めそう!
初実用なのでコントロールは不確かですが、力の強大さは折り紙付きです!
敵の強さが相当な物だった場合は一人で無茶をせず、
周りの味方と連携して自分の役割に徹しましょうっ!
すべては、絶品蟹料理の為にっ☆
アドリブ・連携等大歓迎ですよう!
「さて、気を取り直して……ついに主菜の登場ですわね! 嗚呼、なんて大きさ!」
若干不自然な前置きを挟みつつ、千桜・エリシャが言った。
え? さっき何があったのかって? あんまり気にしてはいけない。
彼女の従者がなんかものすごく無様な姿を晒したとか、そんなことはなかった。
「美味しい! お鍋と!! 聞いて!!! 参上、そして突撃だぁ!!」
そんなエリシャの隣では、彼女の宿の関係者であるリーオ・ヘクスマキナと、
「ぴっこーん! こちらも出し惜しみはなしの全力全開で迎えましょうっ☆」
エリシャの友人であるピリカ・コルテットが、はつらつとはしゃいでいた。
大本命の絶品ガニ。あのハサミも脚もカニミソも全部全部猟兵のものだ。
誰にも渡さねえ、誰にも……! 飢えたる食欲はいかなる不可能も可能とする!
さあ、猟兵たちのあとに続き、楽しくトンチキにビッグマックス退治をしよう!
「……はぁ、カニかぁ」
「「「えっ」」」
そんな三人の背後、ものすごくどよ~んとした暗い暗い空気が滞留していた。
薄暗くなっているようにすら見えるオーラの奥には、ネグル・ギュネスが蹲る。
心なしかその目は落ちくぼみ、なぜか服装もやけにボロボロになっていた。
「なぁビッグマックス……お前らの殻って、剥ぎづらくないか? 醜くないか?」
「……あ、あのエリシャさん、彼はなんであんなことに……?」
「も、ものすごい"負"のオーラを纏ってますよぅ!? 一体何が!?」
「…………気にしないほうがいいですわ」
にこっ。エリシャは笑顔で言った。リーオとピリカはウソだろオイって顔に。
女将の笑顔が言っている。あれはどうしようもないのだと……!
「どうした、笑えよ……誰かいまオレを笑ったかぁ……?」
「笑えよって言っておいてノータイムで怒り出すの怖いよ!?」
「だ、誰も笑ってないですよネグルさん! どうしてそんな地獄オーラに!?」
(まだあの魚の群れ相手の失敗が響いてますのね、ネグルさん……)
混乱するリーオとピリカの後ろで、エリシャはやれやれと頭を振った。
ここは言わぬが花、あえて放っておいてあげるのが慈悲心というものだろう。
というか、下手にからかってさらにこじらせるとそれはそれで困るし。
一方のネグル、なぜかブーツについている拍車でガリガリと地面をひっかき、
おもむろに立ち上がる。そしてじろりとカニを睨めつけて、ぽつりと言った。
「かにもかくにも行くぞ……カニだけに」
「「「…………」」」
「……カニだけに、かにもかくにも、行くぞ」
「「「……………………」」」
「……どうした、笑えよ。笑えよオラァアアアアアッ!!」
「「「か、カニのほうにキレたー!?」」」
ネグルは甲板を蹴った! そして左腕をガトリングガンに変形させ、Fire!
BRATATATATATATATA!! 無数の銃弾を叩きつけ、戦いを挑む!
「……こほん。さ、私たちも参りましょう。宴の前の準備運動ですわ!」
「いやエリシャさん、やっぱり彼あきらかに何かが」
「え、エリシャさんの全身から『触れてくれるな』オーラを感じます……!?」
もはやエリシャはリーオとピリカの質問をスルーした。あーあー聞こえなーい。
とりあえずさっさと食材を処理しよう。コレ以上のトンチキを防ぐために!
『グゥウウウラァアアアアア……!!』
まとわりつく猟兵たちを羽虫に見立て、ビッグマックスはキョダイハサミを振るう。
すでに何度も叩き斬られているキョダイハサミは、その都度再生して復活。
おかげで蟹の身無限湧きとばかりに多くの猟兵たちがアタックを仕掛けていた。
オブリビオン殺すべし慈悲はない。美味いならなおさら慈悲はない。
ギラギラ輝く猟兵たちの眼光にビッグマックスは恐怖し、分身体を召喚する!
「おっと、そんな激まず分身体はいらないよー。カモン、赤頭巾さん!」
リーオがフィンガースナップすると、その背後に"赤頭巾さん"が音もなく出現。
そして風のように駆け出し、砂の中から現れる分身体を一刀両断する!
「本体はともかく分身なら、銃でも爆発物でも使い放題だからいいよね!」
BRATATATATATA!! KA-BOOOOM!! 三段銃が、機関銃が、ライフルが火を吹く。
リーオと"赤頭巾"のコンビネーションはいつも通り抜群だ。しかも今日は鍋!
鍋がかかっている。こころなしか、"赤頭巾さん"もやる気のようだ!
するとその隙に、ビッグマックス自身が砂の海に巨体を埋没させようとする。
隠れられてしまえば厄介だ。そこを見逃さず、ピリカが空中を飛翔!
「これより桜は大満開! 瞬きしてたら見逃しちゃいますよっ、カニさん!」
桜花の鮮やかな羽衣を身にまとい、振るう桜竜刀の溢れる力を制御する。
輝けるその身はまさしくピリカの真の姿。生まれるのは無数の桜の幻影だ。
『グラッ!? キイイイィイイン! グラァアアアアッ!!』
「ふふふ、当たりませんよ~? こっちこっち、です☆」
ピリカは高速機動と幻影を巧みに操ってキョダイハサミ攻撃を軽々と回避。
そして死角に入り込むと、脅威的速度の斬撃を関節部に叩き込む!
切り裂くたびに肉が削げて体液が噴き出し、巨蟹は苦痛にもんどり打った!
これほどの高速でまとわりつかれていては、砂の中に逃げ込むことなど不可能だ。
(実戦で使うのは初めてだけど……うん、いけるっ!)
ピリカは荒ぶる力を制御し、音を超える速度で刀をふるい続ける。
衝撃波が流砂を吹き飛ばす。まるでそれは凄腕の板前の包丁さばきめいていた!
『グゥウウウラァアアアアア!!』
「あら、わたしに夢中になってていいんですか~? 背後に注意、ですよ☆」
「――ええ、まったくもう。けれどこれだけの図体では仕方ありませんわね?」
ビッグマックスの背後。まるではじめからいたかのように女がひとり。
エリシャである。ピリカの高速機動を隠れ蓑に密かに接近していたのだ!
「私、蟹の解体も得意ですのよ? よければ腕前、披露してさしあげますわ」
『グ、グラ――』
「そう遠慮なさらずに。ね? ……ふふふ」
すらりと抜き放たれた剣の切っ先が、三日月の軌跡を描いて直上へと。
そして切っ先が真下を向き、容赦なく振り下ろされた――鋼の甲殻めがけて!
ZANK!! 甲殻を貫き、刃はたやすく身を貫通……ビッグマックスは苦悶!
「ふふっ、蟹の鳴き声って初めて聞きましたわ。いい声で哭いてくださいまし!」
「そのほうが美味しくなりそうだからね~、俺詳しくないけどさ!」
BRATATATATA! リーオと"赤頭巾"の攻撃が、さらなる分身体の出現を抑制。
「さあさあ、解体の時間ですよ~☆えいえいっ♪」
エリシャとピリカは縦横無尽に巨体の周囲を舞い、次々に甲殻を切り裂く。
そして見よ。捲土重来、汚名返上、名誉挽回に燃える鋼の男を……!
「……オレは学ぶ子なんだ。今度は散乱させないし不必要に破壊はしないからな!
そう、殻だけに……カラだけに、不必要な破壊はしないからな!!!!!!」
「「「…………」」」
「どうした、笑えよ。笑えよオラァアアアアア!!(BRATATATATATATA)」
「「「(て、天丼……!?)」」」
容赦なく降り注ぐ雷の魔法弾。ビッグマックスは混乱と苦痛に悲鳴を上げた。
ネグルの目は据わっていた。もはや誰も彼を止められない……!(?)
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
叢雲・源次
【桜煉】アドリブ歓迎
前菜は終わりいよいよメインか…大きいな…ドラゴンと同程度といっても過言ではないな。芙蓉、戯れはそろそろ終わりにしろ。真面目にやらんと死ぬぞ。
……。(明らかに雰囲気の変わった芙蓉に、こいつ…と一瞬目を細めるも)
それで本気が出せるのならば、何も言うまい
対神太刀を抜き放ち、八双に構え。
あれだけ大きな相手ならば、加減はいらんな…最もするつもりも無いが
>Inferno_Cylinder…ignition...
>RDY BURST
エネルギーを対神太刀に回す
自身の心臓と同じ名を冠する対神武装【炎獄機関】
「着剣、完了。」
太刀の刃は、長大なエネルギーの刃と化し巨大な敵を狩らんとする
芥子鴉・芙蓉
【桜煉】アドリブ歓迎
ぐぬぬぅ~!
ぐぬぬぬぅぅぅ~~~~!!(ジダンダジダンダ)
叢雲のー!やはり、やはりわらわにはハッパが必要なんじゃよ!
……よし、もう内緒で一服しちゃお。
これはね、落ち着く為に必要な処置なんじゃよ。仕方ないの。
しかし、いつものアゲアゲ系じゃとすぐバレるから今回はダウナー系じゃな。アイテム化しとらんやつじゃったらバレんじゃろ。
という訳でお薬使って[ドーピング]。スンッ!
────うむ。冴えわたるような感覚。五感も鋭い。
今なら妾もそれなりの戦いができようもの。
故に待つ。我が身、得手とするは後の先。
あらゆる感覚を総動員して機を見切り、時が来れば蟹へ肉薄。
そして、全霊の患部断を放とうぞ。
伊達・クラウディア
蟹!培養槽から出て日が浅く、まだまだ勉強中の身の上ですが知っています!貧乏人には縁のない高級食材と雑誌で学びました!
我が胸の刃が蟹を食せと震えています!
食材(てき)は巨大、ならば我は【空中戦】と洒落込もう!
可食部位はできるだけ残せということなので、【怪力】【グラップル】で殴り倒す!
まずは一当て!潜られる前に一直線に近づき勢いを乗せた一撃を馳走する!
遠慮はいらん、貴様を食す前のもてなしだ。存分に喰らうがいい!
「剣豪パァァーンチ!!ソイヤアアァァアー!!!」
大人しくその(美味しそうな)身を差し出せとは言わん。好きに抗え。その全てを踏破して、貴様を我が血肉へと変えてやろう!
「ぐぬぬぅ~! ぐぬぬぬぬぅううう~~~~~~!!!」
「……立て。真面目にやらんと死ぬぞ」
「いやじゃいやじゃいやじゃ~~~~~!! 働きとうない~~~~!!」
「またそれか……」
大乱戦のなか、甲板上で横になってじたばたする芥子鴉・芙蓉を、
叢雲・源次は呆れた様子で一瞥し、嘆息して頭を振った。
先のエアティック・フィッシュの群れとの戦いで無様を晒したこともあって、
芙蓉は完全に駄々っ子モードに入っていた。御年61歳の桜の精、無様の極み。
「叢雲のー! やはり、やはりわらわにはハッパが必要なんじゃよ!」
「ハッパはやめろ。それではあまり意味がないだろうが」
「じゃけどじゃけど~~~!! わらわあれがないとだ~め~な~の~!!」
じたばたじたばた。ほしいお菓子を買ってもらえない子供みたいな芙蓉。
源次はもう付き合いきれないとばかりにまた頭を振って、踵を返した。
そこへ振り下ろされる、巨大ハサミ……船自体を狙ったビッグマックスの攻撃だ!
「これほど大きな相手ならば、加減はいらんな……するつもりもない、がッ!!」
ガンッ!! 源次の掲げた刀と、巨大ハサミの鋼めいた甲殻が激突する。
火花を散らしながらの拮抗。そう、源次は巨大ハサミをひとりで受け止めていた。
「や~じゃ~や~じゃ~!! ハッパ~、ハッパキメたいのじゃ~!!」
「……ええい、せめて駄々をこねるのをやめ……ろッ!!」
じたばたする芙蓉にはもはや構わず、源次は全身の膂力でハサミを跳ね返す。
そして巨体を押しのけ、マストを滑走路として疾走、跳躍し敵に飛びつく!
そして源次がビッグマックスと激闘を繰り広げている頃。
「……芥子鴉、何をやっているのです?」
「やじゃ~いやじゃいやじゃ……んぉ?」
じたばたしていた芙蓉は、聞き慣れた声にぱちくりと目を瞬かせた。
呆れた様子で彼女を見下ろしているのは、伊達・クラウディアである。
何を隠そう、芙蓉の診療所に厄介になったことのある元患者、そして猟兵。
芙蓉のこのダメ人間ぶりを知る知己のひとりであり、つまり呆れていた。
「おお、クラウディアではないか! なあ~クラウディアよ言ってやっとくれ!
こやつがのうこやつがのう、わらわにハッパをキメるなと……あれ? 叢雲の?」
「……さきほどの御仁なら、あの蟹に向かって挑んでいかれましたよ」
「えっマジ!? もしかしてわらわ大ピンチだった!?」
どうやら、船めがけて巨大ハサミが振り下ろされたことに気づいていなかった。
クラウディアはやれやれと言った様子でジト目になった。相変わらずの女である。
「蟹ですよ! 貧乏人には縁のない高級食材、ここで発奮せずどうするのです!」
「わ、わかっとるんじゃよ~……いや待てよ? 叢雲のがおらんのなら……!!」
芙蓉はキラキラ目を輝かせ、ごそごそと懐から何かを取り出した。
ててててーん。合法阿片~(どこかで聞き覚えのあるだみ声とSE)
「あっ芥子鴉、まさかあの御仁に内緒で」
「いやね、これはね、落ち着くために必要な処置なんじゃよ。仕方ないの。
ちゃんとアゲアゲ系じゃなくてダウナー系にしとるから大丈夫じゃ大丈夫スンッ」
「の、ノータイムで吸った、しかも鼻から直接……!?」
さしものクラウディアですら、躊躇のなさに驚いたほどである。
芙蓉、御年61歳。ダウナー系もアッパー系もキメるジャンキーであった。
「ッハー……アーッス……アーイイ、遥かに良いです、アー、タマラナイ……」
「……もう知りませんからね! 我もさっさと戦列に加わります!」
キリッと真顔になった芙蓉を無視し、クラウディアも巨蟹へと戦いを挑む。
ちょうどその時、ビッグマックスは砂の中に潜り込もうとしていた。
「待て、蟹よ! そうはさせないぞ、この剣豪の刃(こぶし)を受けてみよ!!」
剣豪と言いつつやることは銃撃やパンチ。それがクラウディアスタイル。
心意気があれば剣豪はそれでOKなのだ。彼女も大概にトンチキ? ごもっとも!
「剣豪パァアアーーーーンチ!! ソイヤァアアアアアアーッ!!」
SMAAAAAAAAASH!! ガジェットパンチが、鋼めいた甲殻に叩きつけられた!
『グゥウウウウウ……ラァアアアアアア……!?』
「――隙を見せたな」
その時、巨大蟹の直上にいた源次の義眼がぎらりと剣呑な赤い輝きを放つ。
《Inferno_Cylinder…ignition...RDY BURST》
サイボーグである彼の体内、エネルギーが輪廻し対神太刀へと雪崩を打った。
炎獄機関(インフェルノ・シリンダー)、着火。地獄化した心臓より蒼炎が溢れ、
五体を巡りて刀身に殺到。それは、長く長く伸びるエネルギーの刃だ。
「――着剣、完了。ここが貴様の地獄と知れ……!!」
ぐおんと振り上げられた刃、だがビッグマックスはハサミを盾めいて掲げた。
無敵の一太刀をして、このハサミであればある程度威力は削げてしまうだろう。
しかしその時! 芙蓉がカッと目を見開き、甲板を蹴ったのだ!
「後の先、得たり。我が身は刃……さあ、執刀じゃ!」
『グッ!? グラァアアアアア!?』
見よ! 芙蓉の放った手刀が、メスのように巨体を斬り裂いた!
曲がりなりにも医者である彼女の目には、狙うべき急所が見えていたのだ。
関節部を切り裂かれもんどり打つビッグマックス。そこへ魔剣――到来!!
ばっさりと切り裂かれた巨大ハサミが宙を舞い、ずしりと流砂に着水する。
「ふっ。我が眼をもってすれば、この程度造作もなきことよ……」
「……それで本気が出せるのならば、何も言うまい」
ドヤ顔をする芙蓉(ダウナーモード)を見て、源次はかぶりを振った。
そんな彼の隣で、クラウディアもまた重々しく頷く。同情とか理解の顔で。
「御仁よ、心中お察しいたします。本当にこれさえなければ……」
「……これがないと、ただの働きたがらない怠け者なのだが、な」
「…………それもそうですね」
キリッとシリアス顔でキメる芙蓉(キメたすがた)を前に、剣豪たちは呆れるばかり。
なお、ハッパの切れた芙蓉が、また駄々を捏ね始めたのは言うまでもない。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ダンド・スフィダンテ
●陽
うはははは!マックスに巨大なカニだ!!すごいな!キングの名に相応しいクラブだな!!
全身が鎧の様だ!これでは急所を狙うのも難しい!せめて鋼であれば炎も通じたものだろうに!はっはっはっ!
よし!ミューズ・タタラ、一閃頼む!オッケーいい感じの裂目だ!
いくぞ、アンブロジウス!ドラゴニックエンド(属性攻撃:電気)だ!(裂目に向かって槍の投擲!刺さったならそれを避雷針に、黄色の召喚ドラゴンがカニの中へと吸い込まれていく!)
効果は抜群か!?どう思うミューズ・ガラット!
あとこの後の宴会、良かったら一緒にどうだろう!ああ、ああ!ナンパだとも逞しく美しいミューズ!
両手に花、いいなぁ男が憧れる言葉だ!どう?ダメ?
多々羅・赤銅
で
けーーーー!!!!
ヒューー怪獣映画ばり!?巨大だなあ!マックスだなー!食べ放題だよスッフィー蟹好き!?
なーに急所に当たらないなら外殻叩っ斬るまで、鋼も鎧も大差無え!まっかせろー!
羅刹旋風練り上げ風圧で飛躍、陣取るは蟹の真上
向かう鋏を身を縮め翻し木の葉の如く回避ーー鎧無視の斬撃、その甲羅に刻みつける。
どーよスッフィーこんな感じ!?っと(槍と入れ替りで船に戻る)
おー、これはもう既にいい匂い……蟹味噌も楽しみだな〜
んえ。ガラット女なん?あーどーりでなんかそそらねーわけだ納得したぁ。
スッフィーと飲む酒は楽しいぞぉガラットぉ、そん時は私も混ぜろよぉ。両手に花だかんな!多分酒臭え花になっけどさー!
多々羅・赤銅の刀を、鋼めいた甲殻ががぎんっ!! とはねのけた。
これで十度目。あえて甲殻を狙った攻撃は、傷ひとつ与えられていない。
「あっははははは! でけーー!! 硬てー!! 力入れねえと全然通らねえ!!」
「うははははは! さしものミューズ・タタラも斬撃では敵わないか!」
そんな彼女と一緒に大笑いするダンド・スフィダンテ。何がおかしいのか。
あふれかえる"陽"の者のオーラは、"陰"の者には恐ろしく効果がありそうである。
「これでは全身が鎧のようだな! 急所を狙うのも難しい! はっはっは!」
「鋼じゃねーから炎も通じねーしな! こりゃふつーは形無しだわ!」
あっはっは、わはははと呵々大笑するふたり。本当に何がおかしいのやら。
怪獣映画めいたその巨体が、陽の者たちのテンションをぶっ壊したのだろうか。
「うむ、ミューズ・タタラよ。ではそろそろ、本気で行くとしようか!」
「んだなー! このまま終わっちまったら、まじで形無しみてーだしさあ!」
とんとん、と愛刀で肩を叩き、赤銅は笑みを浮かべた。鮫のような鋭い笑みを。
凄絶である。これまでの斬撃は、彼女にとってはウォームアップですらない。
戯れがてらに鋼めいた甲殻を試していた……ただそれだけのこと。
ダンドとてそれは承知済みである。なにせ"あの"赤銅なのだから。
たかがデカいだけの蟹に遅れをとるなど、逆立ちしてもありえまい。
「ではさっそくだ、一閃頼む!」
「オーケィスッフィー、まあ見ときなって!」
赤銅は無造作に刀を振るった。それだけで、彼女を竜巻が包み込む。
砂嵐をも食い破るような竜巻――風の階段の勢いに体を任せ、赤銅は跳躍。
甲板を蹴って空へと舞い上がり、一瞬にしてビッグマックスの真上に到達した!
『キィイイイイイン……グゥウウウラァアアアア……!!』
「お、来るか? 私のことハサミでギロチンしちゃう? うわーこえー!」
ぐおん、と巨大なハサミが大きく開かれ、赤銅を圧潰しようと迫りくる。
しかし赤銅は毬のように体を丸め、圧潰寸前にハサミを蹴って再び上へ跳躍。
そこに狙いすましたようなもう片方のハサミ……だが、あまりにも遅い!
「いやー、当たってやれねーんだなー、ごめんなー!」
『グラッ!?』
「――んじゃお返し、いっくぜぇ?」
羅刹の眼光が巨大蟹を竦ませた。そして落下速度とともに剣が振るわれる。
さっきまで甲殻に弾かれていたのはいったいなんだったのか。別人のような剣筋。
さもあらん。赤銅はただの剣豪ではない。ただの羅刹でもない。
その彼女が『斬る』と決めて刃を振るったのならば、神も悪魔も真っ二つ。
いわんや、デカいだけの蟹をや……甲殻はバターめいて両断された!
ざっくりとした剣閃は、ビッグマックスの巨体にすさまじい一撃を刻みつける!
「どーよスッフィー、こんな感じ!?」
「オッケーいい感じの裂け目だ! さあ、行くぞアンブロジウス!」
着地した赤銅と入れ替わりに、ダンドの擲った槍がごうっ!! と大気を切り裂く。
稲妻を纏うそれは、まさに全能神が地上に振り下ろす神の槌の如し。
音を越えて飛来したそれは、弓なりの軌道を描いて甲殻に"着弾"した。
がぎんっ!! と力強く裂け目に突き刺さった竜槍……そして、ZZZZTTTTTT!!
天から野太い雷がほとばしり、落下。金色の竜へと姿を変えて到達する。
槍=避雷針に、そして裂け目から体内へ。……直後、巨蟹の体内から轟音!
『グ、グラァアアアア……!?』
もんどり打つビッグマックスの体のあちこちから、ぶすぶすと煙があがる。
すんすんと香りを楽しむ赤銅の横で、ダンドはにこやかに振り返った。
「こうかはばつぐん、か? どう思う、ミューズ・ガラット!」
「えっ、ワシ!? えっ、いや、すごいとしか言いようがないのじゃが……」
「……んえ。ガラットって女なん? どーりでそそらねーわけだなあ」
驚くガラットの方を見て、香りを堪能していた赤銅がなにやら頷いている。
その背後でソイヤソイヤと船を操る漁師の皆さん。オス臭さがダンチであった。
「ま、まあそうじゃぞ。しかし本当にすさまじいのうお前さんたちは……」
「はっはっは、お褒めに預かり恐悦至極だ。で、どうだろうミューズ・ガラット。
このあとの宴会、よかったら一緒にどうだろう! 俺様と貴殿とで、ぜひ!」
「えっ!! なんじゃそれ!? まるでナンパ……」
「ああ、ああ! ナンパだとも、たくましく美しいミューズよ!」
ドキーン! ダンドの歯に衣着せないセリフはガラットに効果抜群だ!
ヒゲと武勇を重んじるナティビアードの女に、「たくましい」は褒め言葉である。
「そ、そこまで言うなら……ま、まあ、よいぞ。うむ!」
「いいねぇ。スッフィーと飲む酒は楽しいぞぉガラットぉ、私も混ぜろよぉ」
「なんと。これでは両手に花だな、男が憧れる言葉だ!」
「多分酒臭え花になっけどな! あっはっは!!」
(……こやつら、もう酔っ払っとるんじゃないのか……!?)
わははと呵々大笑する陽キャのオーラに、ガラットも圧倒され気味であった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ヘンリエッタ・モリアーティ
【双龍】
もいでいいの!!?やったー!
カニカマがカニじゃないのは最近知ったんだけど
コレどこからどう食べてもちゃんとカニよね!よーし!
灯理といっしょに【女王様のブランチ】でGOGO!
あっちからいきましょ、狙いは的確にねっ
カニってはさみが取れやすいんですって、トカゲのしっぽと同じらしいわぁ
とれやすいってことは壊れやすいってことよね!
まあね、カニの身だって食べればぺしゃんこになって実質カロリーゼロだし
ねえねえ、カニって脳みそ無いんですって。神経?はあるんだけど
衝撃によわいって聞いたわぁ
ねえ灯理、私カニミソが食べたい!
グラタンにするの!壊しつくさないようにしないとね
――さあ、あなたの「内臓」捧げて頂戴!
鎧坂・灯理
【双龍】
よし、カニがハサミ生やしてやってきたな
もごうか!
カニカマはカニじゃないし、松茸のお吸い物は椎茸だが
これはちゃんとカニだからな!安心してくれ
間接ごとに【分子崩壊】で切り分けていこう
二つ名通り大きいな つまり可食部位がでかいってことだな
では私はこちらから……おいこら逃げるな
あ、うん そうだな、たぶんカロリーもそんな感じだな
らしいね カニミソは内臓だとか おいしいならいいけど
了解したよマイディア
カニの甲羅をそのまま使って作るグラタンも乙なものだね
逃げないよう足をスパスパ切ってしまおう
女王様のお望みだ、素直に献上することだ!
「うーん……うん、間違いないね! これはカニ!!」
大量の猟兵を相手に大立ち回りを繰り広げるビッグマックス。
その巨体をしばししげしげと観察していたヘンリエッタ・モリアーティ……もとい、
"メアリ"は、納得いった様子で、自信満々に、誇らしげに言った。
カニである。オブリビオンだし意味わからんほどキョダイだが、
まあ誰がどう見てもカニである。そこは疑いない……はず、なのだが。
「ああ、そうだな。どう見てもカニだ。ロブスターでも海老でもない」
「カニカマでもないよね! もしかしたらって思ったけど、よかったー」
「……カニカマはカニじゃないからな。マイディア、理解してくれてなによりだ」
うんうんと頷く鎧坂・灯理の目は、どこまでも暖かであった。
"メアリ"のこの手の素っ頓狂な発言は、つがいの彼女にはもう慣れたものである。
「そうだよね! あ、ちなみに松茸のお吸い物って松茸?」
「いや、それはしいたけだ」
「難しいなぁ……松茸なのに!」
「そういうものなんだ。この機会に覚えてくれ」
普段ツッコミする探偵が全肯定BOTになるとこうも会話がちぐはぐになるという。
と、その時。ビッグマックスのキョダイハサミが振り上げられた。
狙う先はふたりのいる船。まるごと叩き割ろうというつもりか!
「来たわね、カニ! よーし、狙うトコきーまった!」
"メアリ"はずびしとカニの巨体を指差し、宣戦布告めいて言った。
それこそが封印解除のサイン。女王様のブランチはこうして始まるのだ。
両手のガントレットがメキメキと音を立て、凄絶なる真の姿を現す……!
「散らしてやろう。あまり暴れるなよ、せっかくの可食部位が無駄になる」
灯理は腕組しながら言った。その視線が、ビッグマックスの脚をなぞる。
するとどうだ。触れてもいない、武器を構えても魔術を発動してもいない。
にもかかわらず、彼女の視線の軌跡をなぞるように……脚が、叩き斬られた!
『グッ!? グラァアアアア……!?』
「おいこら逃げるな。おとなしくバラされろ!」
超絶のサイキッカーである灯理の思念波は、不可視防御不可の斬撃となる。
いかに甲殻が強固であろうと、関節部を狙われてはどうしようもない。
そもそもこの心術は、単なる斬撃や衝撃の類ではない。
分子そのものの結合に焦点を当て、これを"切断"してしまうのである。
ぱくりと関節部が真っ二つに割れ、脱落……巨体が、苦痛にもんどり打つ!
「ねえねえ灯理、知ってる? カニってハサミが取れやすいんですって!」
「ほう、トカゲの尻尾と似たようなもの、ということかな?」
「そうそう! 取れやすいってことはぁ、壊れやすいってことよね!」
"メアリ"はにこやかに語りながら甲板を蹴り、ハサミの付け根に篭手を振るう。
爪先がぞぶりと脆弱な部分に突き刺さり、膂力そのままにハサミをもぎ取る。
返り血めいて噴き出した体液をぺろりと舐め取り、"メアリ"はご満悦だ。
やはり獲物はもいで引き裂いてこそ。この手応えがなければ楽しくない!
「蟹の身って食べればぺしゃんことになってカロリーゼロだもんねえ!」
「……え? あ、うん。そうだな、たぶんカロリーもそんな感じだな」
探偵はあえて指摘を避けた。惚れた弱み、というべきか微妙なところである。
こうやって運動してるし多分大丈夫だろう。最悪体重計いじくればいいし。
「私カニミソが食べたい! グラタンにするの!」
「だ、そうだ。女王様(マイディア)のお望みだ、素直に献上しろ――!」
思念波が、容赦なき殺戮の鉤爪が、一つまた一つと脚とハサミをもいでいく。
ビッグマックスは怯んだ。そして怖れた。この強大なるふたりの女傑を。
自分はまな板の上の鯉、いやさ鍋に入る前のカニであることをいま自覚したのだ。
どれだけ脚やハサミが再生しようが、そのたびに"解体"は続く。
まさにそれは、強大であり気まぐれな神に捧げられた供物そのものである……。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
安喰・八束
ソイヤァ!!!!!!(猟師は場に呑まれている)
久しく吸ってなかったぜ、この大物狩りの空気!!
行くぜ古女房!!今夜は蟹三昧だ!!!
てめぇに相応しい弾丸は決まった
炸裂する榴弾で潜った砂を吹き飛ばし
怒って飛び出して来りゃ関節目掛けて「狙い撃ち」よ(追跡、スナイパー、鎧無視攻撃)
蟹に突っ込んで殴る野郎ども、援護射撃は任せな!(援護射撃)
……砂場は気に入らねえってか古女房よ
後で念入りに掃除してやるから、今はヘソ曲げないでくれ
黒白・鈴凛
やあー!旨そうな蟹アルナ!
しかし、これはつまみ食いしたら他の奴等の怒りを買ってしまいそうネ
我慢我慢
あー!!でも分身だったら不味いらしいし!!本物かどうか調べるためにも一口くらい食べて確かめないといけないアルナ~
鍋で不味いもの食べさせる訳にもいかないからなー!仕方ないアルナー!!!
いくらキョダイでマックスだろうと蟹は蟹
筋肉が強かろうが甲羅が堅かろうが関節は脆いもの
そこを狙ってぶん殴る!!
千切れたら肉片でも見つけて食べて確認する!
確認は大事ヨ!!
詩蒲・リクロウ
「速攻でカタをつけます!トーーーーゥ!!!」
勢い良く駆け出し、大きく砂船を蹴り、帰還を省みぬ大跳躍を敢行します。
あれ、なんかモンスターをハントするゲームでこういうのした事あるきがする。
ガッシリと蟹の上にしがみつき、グラウンドクラッシャーをぶちこみます。
振り落とされそうになればしがみつき、飛び移り位置を変えながらグラウンドクラッシャーです!
あれやっぱりなんかこういうゲームした事ある様な。
そうそう、ゲームでは大ダメージ与えようとしたら他の味方の攻撃が直撃したりしたんですよねぇ。
まあ今はそんな事より攻撃です!
さて、お気付きでしょうか?
こいつは「帰還を顧みず」蟹に飛び乗った阿呆だと言う事を……。
煌天宮・サリエス
決めました……決めましたのです。
……今回だけは……今回だけ自分に甘くなるです……!!
なので、お食事になってください。
全身を白い炎で覆い変身。
熾天使の書の炎の出力が上がり、銀薔薇の薙刀から生まれる薔薇は銀の炎に変わる。
そう、焼き蟹。分身体は灰にしますが本体はいい具合に焼いてみせるです。
砂を白炎で炙り出したら、炎の薔薇で蟹を拘束し焼き上げます。
美味しい食事は目の前なのです。
ヌル・リリファ
アドリブ連携歓迎です
そいやそいや……?(あんまり分かっていない顔。考えるな感じろ的なのは人形として造られた少女には馴染みがない。マスターは理論派だからね!)
……まあいいか。
えっと、たべるなら爆破でふきとばしちゃうのとかガラスみたいにしちゃうのはやっぱりまずいよね。
分身体をうみだすのにエネルギーつかうだろうから、あじがおちるかみがへるかみたいなのがおこってもおかしくないし、これもあんまりよくなさそう。
だから、純粋に自分を強化してルーンソードでたたかう。これが一番みをそこねないための手加減がしやすいし。
おおきい相手だから空中をとんで接近、きずつけすぎないよう注意してきるよ。
クロエ・ウィンタース
【SPD】アレンジ共闘歓迎
周囲のノリはともかく真面目に戦闘するぞ
あの巨躯だ。一撃を受けたらそれだけで終わりだろう
慎重に【見切り】【カウンター】でUC【無銘・参】を使用
蟹の装甲を物ともせず【鎧無視攻撃】をブーストして斬る
「なるほど。二つ名に恥じぬ巨躯からの質量、膂力が貴様の武器k「ソイヤ!」」
「しかし斬って殺せないものでもな「ソイヤソイヤ!」」
「…俺の刀で斬れないものなぞ「ソイヤソイヤソイヤ!」」
「……ここが貴様の果てだ、オブリビオ「ソイヤソイヤソイヤソイヤ!」」
や か ま し い!
助走をつけて殺さない程度にドロップキックする(褌衆に
怒られたら戦闘に戻る。俺は悪くないぞだってあいつらが煩いから!
「おお、見よ皆の者! ビッグマックスが怯んでおるぞ!」
デッキから身を乗り出し、ガラットがビッグマックスを指差した。
これまで(食欲に飢えた)猟兵たちの攻撃で脚をハサミを目をもがれた巨蟹。
砂の海の覇王として君臨したビッグマックスも、もはや風前の灯火。
最後の抵抗とばかりにハサミや脚を再生させながら、もがき苦しんでいる。
本来なら誰もが快哉をあげたろう……が、惜しむ声も少なくなかった。
なんせ再生する味が絶品の巨大蟹である。もげるだけもぎたいのが人心だ。
しかしオブリビオンであるのを忘れてはいけない! 倒すべき敵でもあるのだ!
「あと一歩じゃ! 頼むぞ、ワシらの楽しい宴のためにもう!」
「「「ソイヤソイヤソイヤソイヤ!!」」」
ドワーフの声に応じ、ガチムチ漁師の皆さんがふんどしを振り乱し踊る。
バックダンサーか何かかな? いいえ、こう見えてその道ウン十年の漁師です。
「そいや、そいや……???」
ミレナリィドールであるヌル・リリファは、その狂乱にきょとんとしていた。
あんまり食欲が湧くタイプではないし、そもそもなんだあのガチムチども。
猟兵たちの目がやけにギラギラしているのも彼女には理解不能である。
なので、この悪い夢みたいな空間でも、相変わらずいつも通りの無表情だ。
「(漁師たちの)歌は気にするな。ここまで来たら真面目に戦闘せねば、だ。
最後まで気は抜けまい。一撃喰らえば、おそらくそれで終わりだろうからな……」
そんなヌルの肩に手を置き、クロエ・ウィンタースはふるふると首を振った。
あまり深く考えてはいけない。考えると多分あのトンチキに持っていかれる。
正気とか。シリアス加減とか。そういう猟兵として大事なものが!
「ソイヤソイヤソイヤァ!!!!!!!!」
そう、あそこでノリにノッている安喰・八束のように……!
どちらかといえば渋みとハードボイルドな感じで勝負するいぶし銀の猟師も、
完全に場に飲まれていた。満面の笑みでソイヤソイヤと騒いでいる。
だが無理もない。久方ぶりなのだ……この、大物相手の狩りの空気!
誰も彼もが浮足立ち盛り上がり、乱痴気騒ぎめいて戦うこの空気。心地よい。
"古女房"と名付けた猟銃を肩に担ぎ、八束も目をギラギラさせていた!
(……よし、決めました。迷いましたが、もう決めたのです……)
そんな熱狂をよそに、煌天宮・サリエスは静かに真面目な面持ちでいた。
いかにも聖者らしい静謐な空気を纏っている。実にシリアスな感じだ。
もしも彼の横顔を見つめる者がいれば、その静かな圧力に驚いたことだろう。
彼は迷っていた……清貧を是とする己が、宴にかまけていいのかと。
蟹だの刺身だの、どう考えても贅沢な食材を口にして良いのかと……。
そして決めたのだ。……今回だけは、今回だけは自分に甘くなるのだと!!
無理もない。彼も大人びているがまだ19の若者、食い気盛りの年頃である。
しかも普段質素な食事ばかりしているから、そりゃ食べたいよ蟹だって!
お鍋が食べたい。正直お腹が鳴りそうで今も我慢するのが必死なぐらいである!
だから今回はいいのだ。贅沢しないとむしろ体に悪いし、それはいけない。
なので無問題。これは許される。サリエスはうまいこと自己正当化した。
……まあ実際、彼にそんなご無体なことを言うような輩はそうそう居まい。
それを己を強いて聖者たらんとするのが、彼の難しいところでもあるのだが……。
「やあー! これはうまそうな蟹アルナ! つまみ食いしたいところだネ。
が、さすがにこんなところで怒りを買いたくないからナ、我慢我慢っと」
ところでそんな彼の隣、黒白・鈴凛はじゅるりとよだれを拭う仕草をした。
野生が告げている。あの窮地に追い詰められたビッグマックスは美味いと。
恐怖を感じたことで身がさらに引き締まり、もうたまんねえことになってると!
早く食べたい、そしてぐびぐび呑みたい。酒飲みの本能は爆発寸前である。
でもまずい分身体だったらいけないし、ちょっと食べて確かめないとね。
本体と分身体を見分けるためだから仕方ない。アーイイタマラナイ……。
こっちもこっちでだいぶダメな方向に自己正当化していた。おい誰か止めろ!
「ええい、もう見ていられません! 速攻でカタをつけますトーーーーウ!!」
するとその時、一同の中から飛び出したのは詩蒲・リクロウであった!
勢いよく駆け出し、荒ぶる鷹のポーズで跳躍。甲板を蹴って空へと身を躍らせる!
モンスターは討伐目前。ハンターの本能(※彼は別にそんなジョブではない)が疼いて仕方がない!
こう、爆弾をたっぷり詰め込んだ樽でひるませたり、
なんか虫とか操る笛とか、かっこよく変形するランスで砲撃したり……。
ん? なんだこの妙な思い出は? もしかして……走馬灯……!?
ともあれ一方通行の大跳躍をキメたリクロウを、ハサミが迎え撃つ!
船ごと叩きのめすようなハサミの一撃、喰らえばリクロウは爆発四散だ!
「てめぇにふさわしい弾丸は決まった! そろそろ往生しとけやぁ!!」
その時、八束が動いた。BLAM! 古女房が火を吹く!
放たれたのは……特製の炸裂弾! 狙いはハサミではなく流砂のほうだ!
KA-BOOOOOM!! 爆弾めいた衝撃が砂を巻き上げ、ハサミの勢いを削いだのだ。
派手に砂が巻き上がったことも相まって、潜って逃れるのも難しい!
「じたばたしても運命は変わらないアルヨ? 喰らっておくがいいネ!」
そして関節部に取り付いた鈴凛が、気を込めた崩拳をハンマーめいて叩きつける!
KRAAAASH!! 関節にビシビシとヒビが走り、ハサミの勢いは完全に殺された。
放物線を描いて甲殻へと取り付くリクロウ。ビッグマックスは悶え苦しむ!
『グラ! グラ! グゥウウウウラァアアアアア……!!』
ぶくぶくと口元から溢れた泡が無数の分身体に変わり、砂の海に潜っていく。
しかし、そうはさせない。真下からの攻撃などいまさら許されないのだ。
この機を見据えていたサリエス、白き炎で己を燃やし、銀薔薇の薙刀を振るった!
「味の落ちた分身体はいりません……本体です。本体をよこすのです……!!」
鬼気迫るような執念を双眸に燃やしながら、一心不乱に分身体を薙ぎ払う。
白い炎はついに砂を伝って本体に到達し、甲殻を……いやさ、身を焼き焦がす!
『グ、グ、グラァアアアア……!!』
立ち上るいい匂い! 狩りのクライマックスに盛り上がる漁師たち!
「なるほど、二つ名に恥じぬ巨躯からの質量が貴様の武器か。しかs「ソイヤ!」
……しかし俺に斬って殺せないものなど「ソイヤソイヤ!!」……。
…………俺の刀で斬れないものなぞ存在しn「ソイヤソイヤソイヤ!!!」
かっこよく決めようとするクロエ、そのたびに被さってくる漁師たちの歓声。
柄を握りしめた手をぷるぷる震わせながら、クロエはそれでもシリアスを維持する。
「どうしたの、クロエさん?」
「……いや、なんでもない。いかな強敵であろうと、過去の残骸は斬り伏せる」
ヌルのきょとんとした顔を見返し、クロエはかっこよく決めた。
いける。いまなら決め台詞出せる! 息を吸い込み気を取り直してもう一度!
「ここが貴様の果てだ、オブリb「「「ソイヤソイヤソイヤソイヤ!!」」」
「おっと、これはまたうまそうな……いや違うネ、分身が多すぎてわからナイアルヨ!
これは身をちぎって食べるしかないアルネ~いやー仕方ないアルうめーうめー!!」
「はっはっは! 今夜はカニ三昧だぜ古女房! そら、次弾装填だぁ!」
「あっちょっと射撃やめてください! 当たってます僕に当たってますから!!」
「もう逃しません……おいしい食事はもう目の前なのです……!」
「や か ま し い ! ! ! ! !」
くわわっ。クロエは大声で叫んだ。誰も彼も騒がしくて仕方ねえ!
しかし鈴凛はもうお題目そっちのけでもぎ取った蟹の肉モリモリ食べてるし、
甲殻に取り付いたリクロウの必死の訴えも八束は気にせず撃ちまくってるし、
慣れない食欲に支配されたサリエスも若干アンストッパブルになっていた。
「一番やかましいのは貴様らだこのふんどしどもーっ!!」
「「「グワーッ!?」」」
クロエのドロップキック! 漁師の皆さんはボウリングのピンめいて吹き飛んだ!
ぽかんとしたヌルが見守るなか、ぜーはーと息を整えたクロエ、おほんと咳払い。
「ええい、もうさっさと仕留めてしまおう。ヌル!」
「うん。よくわからないけど、戦うつもりになったならよかった」
「俺は! 最初から!! 真面目なんだがなああ!!!!!」
頭の周りにはてなマークを浮かべたヌルとともに、クロエは跳躍した。
なおも振るわれるハサミの目元。分身体を切り裂きながら切迫する。
砂の中に潜ろうとする巨体は、サリエスの放った炎の薔薇が拘束していた。
「いい匂いをさせて私を誘惑するだなんて、いけない蟹ですね……?」
「えっあっちょっ待ってください! 燃えてまーす! 僕燃えてまーす!!」
リクロウの訴えは誰にも届かない。そもそも取り付いたのは彼である。
ヌルの刃が、そしてクロエの一撃が、ハサミの根本を……叩き割った!
「まったく、どいつもこいつも……!」
「わたしも?」
「いや、ヌルは違う! 違うがある意味なんというか、ええいとにかく死ね蟹ぃ!!」
『グラーッ!?』
KRAASH!! ふたたび炸裂、クロエのドロップキック!
「もうコレ以上燃やされるのは勘弁なので、死ねぇ蟹ぃ!!」
『グ、グラァアアアアアアッ!!』
取り付いていたリクロウの攻撃が、ついに甲殻を叩き割り体内に到達。
炎に苛まれ苦しみながら、ビッグマックスは力尽き……ずしん、と倒れた!
「よっしゃあ! 狩りの成功だ、宴だ宴だぁ!」
「(もぐもぐ)いやこれマジ絶品アルナ、鍋が楽しみアルヨ」
「……って、もう食べてる方がいるのですが!?」
歓声を上げる八束、もりもり食べてる鈴凛、いまさら気づいたサリエス。
猟兵たちの反応は悲喜こもごも(?)だが、ともあれ戦いはここに終わった。
ひっくり返った巨蟹は、漁師たちの手で余さず解体されるだろう。
「まあ、もう細かいことは考えまい。宴だからな……」
「うん。たおせてよかった」
眩しい。今回ばかりはヌルの無垢さが眩しい。疲れ果てたクロエは思った。
ともあれこうして、ビッグマックスとの激戦は幕を閉じたのである……。
……ん?
(あれ? 僕忘れ去られてます!? すみません! 誰かー!!)
ひっくり返ったビッグマックスの真下。流砂の中で何かがもがいていた。
背中に取り付いたまま飲み込まれたリクロウの声のような気がしなくもない。
だが、誰も気づかない。そもそも片道切符で飛び乗ったのは彼である。
流砂はずるずるとリクロウを飲み込んでいく。なにせ海なのだ。いわば底なし沼。
(ちょっと! 誰かー! 開けてくださいよー!! いやまじで助けがぼこぼごぼ……)
ひめいは むなしく こだました……。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第3章 日常
『冒険者の店で大宴会!』
|
POW : 肥沃な大地で育った肉料理で乾杯!
SPD : 澄んだ清らかなる川や海で捕れた魚料理で乾杯!
WIZ : 大自然の恵み!お野菜や果物で乾杯!
イラスト:chole
👑5
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
……そして大波乱の蟹狩りが終わり。
「皆の者、盃は持ったな? 酒でも別の飲み物でもなんでもよいぞ!」
ここはドワーフの氏族、ナティビアード族の集落。
そこにある一番大きな酒場、"逃げ惑う兎"亭。
ジョッキになみなみとドワーフの地酒を注いだガラットは、待ちきれない様子だ。
そして一同の前には……見よ! 氏族がこさえた特製の超・大鍋!
その中には、猟兵たちが刈り取ったビッグマックスの残骸が放り込まれている。
あ、この場合はオブリビオンの比喩とかそういうかっこいいのではなく、
まじの残骸である。さすがに巨体そのままで茹でるのは無理だったらしい。
あまりにもいだハサミが多すぎる(もぐたびに再生したのだ)上に大きいので、
大小様々な鍋があちこちの席(臨時のオープンテラスあり)にも用意され、
その中で蟹の一部が煮えていた。もちろん、エアティック・フィッシュもだ。
「此度はご苦労じゃった! 報酬代わりですまんが今日は酒は呑み放題じゃ!
乾杯の音頭は、よければワシらの氏族に倣ってこのように言ってくれると嬉しい!」
ガラットはそう言って、ジョッキを勢いよく、高く掲げた。
「ハイホー!!」
それが、陽気なドワーフたちの合言葉なのである。
さてこの宴、すでに告知されていたとおり食糧や飲み物の持ち込みも自由。
申し出れば酒場の台所も使い放題、席は店の内外に十分に用意されている。
少人数でつつくための小さな鍋も、大人数でつつくための大鍋ももちろんある。
猟兵たちの奮闘のおかげで、未調理の蟹肉や魚の身は山程あるようだ。
食ってよし、飲んでよし、捌いてよし、騒いでよし!
戦いのあとは乾杯、そして食べて飲んで騒いでもう一杯!
ここはドワーフたちの流儀に則って、大いに宴を楽しむとしよう!
●業務連絡1:NPCの参加について
マスターコメントでお伝えしそびれましたが、
この章ではグリモア猟兵のムルヘルベル・アーキロギアもさりげなくいます。
プレイングで希望をいただければ、該当リプレイにNPCを登場させますので、
ムルヘルベルだけでなくガラットとも絡みたい方は、ぜひご明記ください。
●業務連絡2:宴の注意点。
未成年の飲酒は禁止です。守ろう、法律!(どこの世界のかはともかく)
また、あまりに公序良俗に反するプレイングはマスタリングいたしますので、
こちらもご了承をお願いいたします。清く正しく、健全に騒ぎましょう。
●業務連絡3:プレイング受付期間
『2020/01/28(火)08:30』
から、
『2020/01/30(木)08:30前後』
まで、
とします。
薄荷・千夜子
つかささん(f02032)と
なんだか色々と危ない橋を渡りかけた気もしますがなんとかなってよかったです
あの、つかささん?
これ2人前の量じゃない気が…いや、つかささんなら大丈夫ですね、うん
残念ながら私はまだお酒は飲めないのでとつかささんにお酒を注ぎつつ自身はジュースで
ハイホー!お疲れ様です!!(ジュースをぐいっと)
お酒でなくとも一仕事終えた後の飲食は格別ですねぇ
はい、つかささんおかわりもどうぞどうぞ
っと、つかささんに食べ尽くされる前に私も食べねばすごい勢いで鍋の具が減っていきます!!
慌ててカニを取り分け一口食べれば瞳をキラキラ輝かせ
確かに蟹汁も身の柔らかさと旨味も格別ですねぇ…
鍋サイコー!!
荒谷・つかさ
千夜子(f17474)と
明らかにパーティーサイズのカニ鍋を二人で頂く
さあ、待ちに待ったカニ鍋よ!
千夜子、ジョッキは……って、貴女未成年だったわね。
ともあれ、ハイホー!お疲れ様!
(ぐいっと呷る)
……っはー!
仕事の後の一杯は格別ね。
ん、ありがと。千代子のお酌なら何杯でもいけそうだわ。
まずは殻を煮込んだ汁から。
……ん~、濃厚なお出汁♪
これでじっくり煮たエアテック・フィッシュも……はふはふ。
淡白でぷりっぷりな身に、カニの風味が浸み込んで美味しーいっ♪
さて、本命のカニの身は……んんっ!
しっかりとした食べ応えなのに、噛んだ身がさらりと口の中で解けて……
そこからさらに濃厚な蟹汁が、じゅわっと……ああ、幸せ。
「「ハイホー!!」」
がちゃーん、と小気味いい音を立てて、ジョッキとグラスがぶつかった。
薄荷・千夜子と荒谷・つかさは、そのままぐいっと中身を呷る。
未成年の千夜子は新鮮な果実のジュース、つかさはドワーフ製のエールだ。
実はこの里に住むナティビアード氏族の酒は、周辺地域ではかなり有名である。
つかさが飲んでいるのは、彼らの造る酒の中で一番度数の低い"ハイ・ホー!"
黒みがかった色合いのこの酒は口当たりがよく、客人向けにうってつけなのだ。
「……っはー! 仕事のあとの一杯は格別ね。千夜子、お疲れ様」
「はい、つかささんも無事でなによりです! ジュースも美味しいですよ」
千夜子はにこりと笑ってそう言うと、さっそくつかさのジョッキを満たしてやる。
戦闘中はなにやら超自然的な危険を感じて気が気でなかったが、それはそれ。
もう戦いは終わったし、キョダイでマックスなあいつはもういない。
何も問題はない……と言いたいところ、なの、だが……。
「あの、つかささん?」
「ん? どうしたの千夜子」
「これ、2人前の量じゃない気がするんですけど……」
テーブルの中央には、大ガマのようなサイズの鍋がでん、と鎮座している。
そこに盛り込まれた溢れんばかりの具材。もちろん周囲にも料理は様々。
おそらく、成人男性が6、7人揃ってようやく食べきれるか、という量だった。
しかしつかさは、きょとんとした顔で首を傾げる。
「? このくらい食べるでしょ?(私が)」
「そ、そうですね! つかささんなら大丈夫ですね、うん……」
自分より一回り近く小さな体の、一体どこにこれだけの量が入るのやら。
人体の神秘に思いを馳せる千夜子である。ああ、恐ろしきは胃袋かな。
「……ってつかささん!? 私が物思いにふけってるあいだにもう食べてます!?」
「当然よ! 早くしないと冷めちゃうじゃないの! 待ちに待った蟹鍋よ!?」
なぜか逆ギレしながら、つかさは取皿によそった煮込み汁をごくりと口にした。
蟹のうま味がたっぷり染み込んだ煮汁は、ほんのりと甘みが感じられる。
一緒に煮込まれた魚の身や、新鮮な野菜類の味が溶け込んでいるおかげだろう。
「ん~、濃厚なお出汁♪ 寒い季節はやっぱ鍋よねえ」
「ですね! それに私の世界のお鍋と、ちょっと味付けが違うのも面白いなあ」
ドワーフ族というと、なにかとスパイシーな味付けが想像されがちだが、
ナティビアード氏族は調理に関してもそこそこ名を馳せているらしい。
今回の仕事に同行した漁師たちから、秘伝のレシピを教えてもらったのだとか。
素材の味を生かした、さっぱりとした風味が保たれているのである。
「っとと、お次は具のほうも楽しまないとね」
つかさは続けて、じっくりと煮込まれたエアティック・フィッシュの身をぱくり。
透き通るような白い身はほどよい歯ごたえが感じられ、噛むと口の中でほどけた。
すると、身中からさらに濃厚な出汁が溢れ、口の中で味が変化するのである。
これがあのキューキュー鳴きながら飛んでいた敵かと思うと、これはもう、
「はふっ、はふ……いやあ、こういうオブリビオンなら万でも相手にできるわ!」
「そ、その感想はどうなんでしょう……? でもこれは、たしかに……」
千夜子はふーふーとあつあつの具材をさましながら、ちびちびと味を楽しむ。
そんな間に、つかさは数倍以上の速度でもりもりと鍋の中身を消化していく。
早い。早すぎる。ちょっとしたブラックホール並の進行速度であった。
「あっ! つ、つかささん! 待ってください、私のぶんがぁ!」
「甘いわね千夜子、鍋は戦いと同じ……強い者が勝ち、弱い者が負けるのよ!」
「もっと穏便に落ち着いて楽しませてくださいっ!!」
仕方ないわねぇ、とぼやきながら、つかさは蟹の身を千夜子の取皿によそった。
驚くべきはその色艶だ。湯気のせいか、はたまた空腹がもたらした幻覚か、
脂の乗った蟹の身はきらきらと輝いて見えた。つられて千夜子の目も輝く。
「わああ……こ、これ、ほんとに私たちが戦ってたあれなんですよね?」
「そこらの蟹じゃ、こんな身のしまったヤツはそうそういないわよ」
つかさは苦笑しながら自らの分もよそい、ふたり揃って一気にかぶりつく。
もぐもぐと咀嚼し、ぱちくりと目を見開いて、お互いに顔を見合わせた。
もぐもぐもぐもぐ。無言で丹念に咀嚼し……そして、ごくり。
「「……美味しい!!」」
繊維のちぎれる感触が歯で感じられるほどの、ぎゅっと締まった身。
しかし噛み締めた肉はほろりさらりと口の中でほぐれ、あっという間に溶ける。
あの変わった砂の海という地形が、これほどのものを育て上げたのか。
はたまた、オブリビオンであるがゆえのものなのか……この際どうでもいい。
ふたりはこくこく頷きあって、競うように蟹の身をよそい、そして食べる。
なにせ、ひたすら美味いのだ。苦労して獲ってきた甲斐があるというもの!
「これはなんというか……期待以上ですね! 本当に、とろけそうっ」
「酒との相性も抜群じゃないの。ああ、でもこれは……日本酒が欲しいわ!!」
がつがつ、ぐびぐび。ごとん! 空っぽのジョッキを叩きつけるつかさ。
いやこの際白米でもいい。でもエールで呑むのもこれはこれで……!
「は~……思いっきり暴れて美味しいもの食べて。幸せね、私たち」
「はい! 鍋サイコー!! あ、こっちの刺身も食べてみましょうつかささん!」
乙女たちはきゃいきゃいと黄色い歓声をあげながら、しばし美味を楽しんだ。
気がつけば、あれほどあった料理は綺麗さっぱり空っぽに。
膨れたお腹をさすり、ほっこり満足げな吐息を漏らすふたりがいたとか。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
リリア・オルトラン
結都殿(f01056)と共に
蟹だーーー!労働の後の食事は格別に美味しいものだ!蟹身に感謝を捧げながら舌鼓を打とうではないか!なぁ、結都殿!
普段は繊細な食事ばかり口にしているからな。大雑把な味付けは新鮮なのだ。しかも鍋とは。同じ器の物をそれぞれつつくのだろう?
父上がいたら行儀が悪いと叱咤されてしまいそうだ。が!郷に入っては郷に従えと言う!
楽しめるものは共に楽しまなければな!
んんん!美味だ!労働の対価にしては貰いすぎだよ、これは
ほら結都殿、ここの身はとても美味いぞ!ちゃんと食べているか?たくさん食べるといい!ははははは!
桜・結都
リリアさん/f01253 と
楽しみにしていた蟹鍋ですね
互いに怪我もなく卓につけて良かったです
お料理はお任せしてしまいましたが、
自分達で獲った物となると一層美味しく感じられそうですね
リリアさんはお鍋は初めてですか?
お父上が厳しい方なのでしょうか
私はこうして一つの物を人と共に囲めるのは久しぶりです
火傷をしないよう気を付けてくださいね
元気に食べる姿は微笑ましくも逞しいものですね
大丈夫、私もちゃんといただいていますよ
周りの人々の騒めきも、楽しげな声も、心地好い
このような場にいるとそれだけで元気がいただけますね
何か飲み物をいただきましょうか
私の分と、リリアさんの分と
乾杯しましょう
ハイホー、と言うのですよ
ぐつぐつ煮える蟹鍋を前に、リリア・オルトランは目をキラキラさせていた。
具材の豪華さや、食欲をそそる芳醇な香りのせいもある。
しかしそれ以上に……彼女はどうやら、"鍋"そのものが珍しいようだ。
「……はっ。お、おほん!」
対面に座る桜・結都のにこやかな眼差しに気づいたリリアは、咳払いひとつ。
そんな彼女に穏やかな笑みを浮かべる結都も、けして不機嫌そうではなかった。
「ふふ。お気分を害してしまったなら申し訳ありません、リリアさん」
「いやいや、そんなことはないぞ結都殿。ただこう、なんだ……」
リリアは心持ち頬を赤く染めながら、ぽつぽつと言う。
「普段は繊細な食事ばかり口にしているからな。大雑把な味付けは新鮮なのだ。
……しかも鍋とは、あれだろう? 同じ器のものをそれぞれつつくのだろう?」
はい、と頷く結都。といっても、彼もこうした大衆料理に慣れてるわけではない。
「私もこうして、一つのものを人とともに囲めるのは久しぶりですよ」
「む、そうなのか? ふうむ、だが私の場合とは事情が違いそうだな……。
私の場合、父上がここにいたら行儀が悪いと叱咤されてしまいそうだ。ははは」
「お父上に……なにやら、厳しい方なのでしょうか?」
といったところで、結都ははたと気づいた。
こうして初めて同道した仲ではあるが、リリアの家庭の話はあまり聞いていない。
彼女のきびきびした挙措と(この点は彼も同じだが)歳にそぐわぬ振る舞いは、
相応の育ちのよさを感じさせる。いや、むしろ少々堅苦しくもあるか。
……などと考えて、自分が言えたことではないな、と心のなかでひとりごちた。
「ん? まあ、そうだな。しかし! ここは私の世界なれど故郷とは別の里。
なれば"郷に入っては郷に従え"とも言うし、楽しめるものは共に楽しまねばな!」
「……はい、そうですね。改めて、互いに怪我もなく卓につけてよかったです」
ふんわりと微笑む結都の言葉に頷き、リリアは意気揚々とカトラリーを握った。
「……む、むむ? そういえば鍋とはフォークとナイフでどのようにすれば???」
「ああ、そういえばそうですね。こういうときはお箸が一番ですよ、リリアさん」
なんと! と驚くリリア。彼女にとっては、初めてのことづくしである。
……なんで西洋っぽいA&Wの、しかもドワーフ族が蟹鍋などやってるのかって?
そこはそれ、多分あのソイヤな漁師たちから文化が伝わったのだろう。多分。
細かい話はさておき、ふたりは慣れない手つきでおっかなびっくり具をよそった。
彼らが苦労して採集したエアティック・フィッシュと巨蟹の身だけでなく、
鍋の中には新鮮な野菜やきのこ類がふんだんに盛り込まれている。
もちろんこれらはナティビアード氏族からの、ささやかだが嬉しい贈り物だ。
リリアは、よく味の染み込んだ白菜から食べてみることにした。……ぱくり。
「んんん! なるほど、同じ鍋で煮ることでそれぞれの味が混ざり合うのか!
大雑把な味付けと思っていたが、とんでもない。むしろ格別の味だ!」
「この季節のお鍋は暖まりますし、なおさら美味しく感じます」
結都のほうはしいたけをぱくり。こちらもまた、出汁がよく効いている。
そのまま煮汁を口にすると、体の芯から優しい暖かさが湧いてきて心地よいのだ。
ほう、と安堵めいたため息一つ。やはりこうした味付けは体に馴染む。
「スープも絶品ではないか。さて肝心の蟹は、と……んん!」
ほくほくとよく煮えた蟹の身を口にしたリリアは、目をぱちくり見開いた。
噛んだ瞬間ににじみ出る甘み、そしてさらりと雪のように解れる身の柔らかさ。
上等なソースやいくつもの香草を使っているわけでもないのに、この甘美とは。
素材本来の味わいと、ちょっとの調味料だけで、こうも仕上がるのか!
「これは……驚きました。サムライエンパイアでも、ここまでのものは……」
結都が普段口にする食材は、家柄のおかげで上等なもののほうが多い。
そんな彼をして、文字通り舌を巻くレベル。なるほど覇王と謳われるだけある。
あるいは、実際に死闘を繰り広げ苦労したからか。なおさらに、旨い。
「労働の対価にしてはもらいすぎだよ、これは。いやあ、たまらん! ははは!」
「ふふっ。美味しくて笑顔になってしまうというのは、滅多にない経験です」
言葉に尽くせぬ美味に笑みをほころばせ、ふたりはぱくぱくと箸を進めた。
育ちがいいとはいえ、互いにまだ10代前半の若者である。育ち盛りだ。
最初こそ気品を感じさせる控えめな所作だったが、だんだん二人して前のめりに。
合間に舌鼓を打つ魚の身も、よく熟れた果実のようにとろけているかのよう。
それぞれによく沁み込んだ具材の味が、たまらなく舌を楽しませてくれた。
「ほら結都殿、ここの身はとても美味いぞ! ちゃんと食べているか?」
「ええ、大丈夫。私もちゃんといただいていますよ」
リリアのよそってくれた具を取皿で受けながら、結都は微笑んだ。
周囲から聞こえてくる楽しげな喧騒に耳を傾けて、舌の上で味を転がす。
「……このような場所にいると、それだけで元気をいただけますね。
とても心地いいです。前にここへ来た時とは、似ていますがどこか違う……」
「おお、そういえば結都殿は、この里は二度目なのであったな?」
はい、と頷き、結都は言葉を続けた。
「あの時はどちらかというと飲み物を……あ、そうだ。すっかり忘れてました」
「たしかに! といっても私も結都殿も、酒は飲めないからなあ」
「大丈夫です。たしか果実のジュースなどが……ええと、すみません」
結都は手を挙げて給仕を呼び、ふたりぶんの飲み物を注文した、
ほどなくして運ばれてきたのは、ほどよく冷やされた林檎のジュースである。
「ありがとう、結都殿。さて、ではさっそく……」
「あ、待ってくださいリリアさん。……ほら、あれ」
結都の言葉にきょとんとしたリリア、示されたほうを見やる。
すると近くのテーブルでは、別の一団が楽しげに乾杯をしていた。
がちん! と中身が溢れるのも構わず勢いよくジョッキを打ち合わせ、一気飲み。
豪快である。だが、彼らはみな、楽しげに笑い合っていた。
「あ、あれをやるのか? グラスが割れたりしないだろうか……」
「あそこまでの勢いは要りません。ですが、音頭は大事、だそうですよ」
そう言って、結都はグラスを差し出す。リリアもおずおずそれに応えた。
いつかに招かれた饗宴の会場で、父がやっていた乾杯の仕草を思い出す。
といっても大抵グラスを掲げるだけか、軽く打ち合わせる程度のものだったが。
……そこまで考えて、リリアはぶんぶんと首を振った。
テーブルマナーや礼儀作法など、今日はうっておこう。ここは宴の場なのだ。
「そうであったな! では、我らの勝利と美味の数々への感謝を捧げて!」
「はい。今日ともに来られた喜びと、この一時の楽しさに」
「「――ハイホー!」」
がちん、と小気味よくグラスの打ち合う音がした。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
オルハ・オランシュ
【Magia】
一仕事終えた後のご馳走は最高だね
わ、これ全部織愛が作ったの……!?すごい!
私なにもしてなかった
ちょっとだけ肩身が狭いかも
でも、美味しそうだからいっか!
ムルヘルベルも沢山食べようね
アルジャンテ、この間言っていたよね
私みたいに『美味しく』食べることはできないって
あの旅館でクッキー買ってくればよかったかな?
えへへ、ご馳走を前に食が進まない方が有り得ないんだからっ
飲み物今度はどれにしよう
炭酸で美味しそうなの、何かある?
あれっ、ヨハン
戦闘中はあんなに空腹そうだったのに
あんまり食べてないみたいだね
パーティーの時くらい気を遣わなくて大丈夫だよ!
お刺身なら重たくなさそうだし、一緒に食べない?
アルジャンテ・レラ
【Magia】
ご無事ですか、ムルヘルベルさん。
それにしても織愛さんは準備がよろしいようで。
料理がお上手だったとは意外……いえ。何でもありません。初めて知りました。
私ですか?好きも嫌いもありません。
飲食せずともコアが壊れない限りは動く事が出来ますので。
ただ、味を識別する機能は備わっていますよ。
例えば……カニ汁は塩分濃度が程よいですね。
カニクリームコロッケの隠し味はオイスターソースですか?
お二人のペースが早すぎるだけだと思います。
"食べ盛り"にはヨハンさんが該当する筈ですが、流石に胃に収まる量を超過していませんか?
彼女のストッパーと成り得るムルヘルベルさんに止めていただきましょうか……。
三咲・織愛
【Magia】
蟹かにカーニ! かにっかにィ~♪
こんなに大きな身を食べられるなんて夢みたいです
楽しみですねーっ、ムーくん(首根っこずるずる)
という訳で円卓を確保しました!
みなさんで鍋を囲みましょー♪
今日は私が鍋奉行になりますから、安心して食べてくださいねっ
ちゃんと分身体は除いておきましたから、美味しい蟹ばかりですよ
お鍋以外にも張り切ってお料理しちゃいました
カニ汁にお刺身、マヨネーズ焼きにカニクリームコロッケも!全部手作りです!
(家庭的~~~!)
ほら、お椀の中が減ってないですよ
じゃんじゃん食べてくださいな!
特に男性陣!食べ盛りなんですから食べないと!
わんこそばよろしくほいほいと注いでいきましょー!
ヨハン・グレイン
【Magia】
一仕事終えた後ですし、あとはゆっくり……
したいんですけど……
いや、何も言うまい
助け舟を出したら自分も大変な事になりそうなので、
何も言わずに卓につきましょうか
俺が鍋奉行した方がまだ被害が少ないのでは……?
とは思いつつも、料理はどうやらまともらしい
ほっと息を吐きつつ
アルジャンテさんて食べ物の好き嫌いなどあるんですか?
なんでも食べそうだが、何も食べなくても大丈夫そうな印象もある
あまり急いで食べ過ぎないようにしてくださいよ
飲み物は足りていますか?
オルハさんの様子を窺いつつ
グラスが空になっている人には飲み物でも頼んでおこう
あまり食べられない分、他の事をしていた方が気が楽だ
「ここが宴の会場であるか。テーマパークに来たようでテンションが上がるなあ」
のほほんとした顔で酒場の中を歩き回る、ムルヘルベル。
なにせ鍋である。しかもあの、美味なドワーフ族の酒が飲める!
普段はグリモア猟兵として、仲間たちの帰還を待つばかりの彼だが、
こういう役得はグリモア猟兵をやってて嬉しいことのひとつだ。
「さて、それではワガハイはひとりでのんびりと鍋を」
「蟹かにカーニ! かにっかにィ~♪(ぐわしっ)」
「アッちょっとまて織愛よせめて了承を取ってギャアアアアアアアア!!」
まあ、そんな穏やかな日常なんて、NPCに許されるわけがないんだが。
三咲・織愛は当然のようにムルヘルベルの襟首を掴んで引きずっていく。
「こんなに大きな身を食べられるなんて夢みたいです。楽しみですねムーくんっ!
……ムーくん? ははあ、さてはお腹が空きすぎて喋れないんですね、もー!」
襟が締まって窒息しているだけだということには、彼女はさっぱり気づかない。
ほらほらトンチキリプレイの始まりだよ! みんな席に着きな!!
「…………(助け舟を出そうと口を開き、やっぱりやめるまでの長い間)」
ヨハン・グレインは織愛に引きずられる哀れな少年から、露骨に目をそらした。
何か言ったら自分も大変なことになりそうな気がする。見殺しにしよう。
「ご無事ですか、ムルヘルベルさん」
「何言ってるのアルジャンテ、そんな戦場じゃあるまいし!」
アルジャンテ・レラのセリフに、オルハ・オランシュは笑顔で言った。
誰がどう見てもムルヘルベルの顔は鬱血して泡を吹いているのだが、
オルハ的にはこれがデフォに見えるらしい。なんか別の世界見えてるのかな?
あるいはそれが彼女なりの処世術なのか、マジで気づいてないだけなのか。
どうあれ、この女性陣には何を言っても無駄である。アルジャンテは自戒した。
「さあさあ皆さん、あそこですよ! 席、確保しておいたんですっ!」
(ムルヘルベルを引きずったまま)合流した織愛が、大きな円卓席を指差す。
卓上には蟹鍋と様々な料理……刺身、マヨネーズ焼き、クリームコロッケ、etc.
「わ、もしかしてこれ、全部織愛が作ったの……!? すごい!」
照れくさそうに微笑む織愛と卓上を交互に見て、オルハは目を輝かせた。
「準備がよろしいですね。料理がお上手だったとは意外……」
「(アルジャンテの言葉に被せるように)いえ、初めて知りましたね」
食い気味なヨハンの台詞に、アルジャンテは何事かと彼の顔を見つめた。
ヨハンは無言で頭を振る。それ以上はまずい、という危険サインだった。
(下手なことを言うと俺たちに矛先が向きますよ。気をつけてください)
(待ってください。なぜ猛獣のような扱いを心がけねば……?)
だが、なんとなくヨハンの言うことには従っておいたほうがいい気がする。
アルジャンテの背筋を駆け抜けたもの……それは、死の恐怖……!!
「? ふたりして小声でひそひそ、どうしたの? 何か内緒話?」
「「いえ、なんでもないです」」
「??? そっか」
男子らの妙な様子にきょとんとしつつ、オルハは少しだけ落ち込んだ様子だ。
表情はにこやかだが、耳と尻尾がしゅんとなっていてわかりやすい。
「あれれ、オルハさんどうしました? もしかしてマヨネーズダメでした!?」
「あ、ううん。ほら、私途中から合流したでしょ? だから何も準備してなくて。
ちょっとだけ肩身が狭いなあ、とか……あはは、変に考えちゃった」
「……それならムルヘルベルさんは戦っていなかった、という話になりますよ」
ヨハンのフォローらしき言葉に、織愛は「そうですよっ!」と同調した。
「いなかったとか途中からとか、そんなこと気にする必要ありません!
ムーくんもそう思いますよね? ムーくん? ムーくーん!!(がくがく)」
「織愛さん、呼吸困難になっている方の頭を揺らすのは非常に危険かと」
さすがにアルジャンテが止めに入った。ぐったりとうなだれる哀れな被害者。
「そうだね! ムルヘルベルも早くご飯が食べたそうにしてるし!」
「誰がどう見ても失神してるんですが……いや死んでますかねこれ」
ヨハンが適当に背中を叩いたりすると、はっとムルヘルベルが目を覚ました。
「ふ、父祖の賢者たちがグロス単位で川向こうから手を振っていたのである……」
「わあ、ムーくんのご先祖様ってどんな方なんでしょう? 見てみたいですね!」
「この場合はまず臨死体験に陥っていたことを心配すべきでは……」
アルジャンテの声は届かない。なぜなら織愛はボケキャラだから……!
主に1800文字ほどの紆余曲折を経て、卓に着いた一同。
俺がまとめ役をしなきゃならないのか、というヨハンの不安を裏切り、
織愛が率先してまともに鍋奉行を務めた。まともに。重要なので二回。
「噂になるだけあってとっても美味しいね、この蟹!」
「ちゃんと分身体は取り除いておきましたから、安心してくださいね!」
オルハはうんうんと頷き、織愛から取皿を受け取って蟹の身を頬張った。
なんだかんだお腹が空いていたこともあって、美味しさもひとしおだ。
「……そういえばアルジャンテさんて、食べ物の好き嫌いはあるんですか?」
そんな彼女の様子をさりげなく伺いつつ、ヨハンが言った。
「私ですか? 特に好きも嫌いもありません。
そもそも飲食せずとも、コアが壊れない限りは動くことが出来ますので」
「ミレナリィドールの利点であるな。だが味は楽しめるのだろう?」
ムルヘルベルの言葉に、アルジャンテはこくりと頷く。
「たとえば……このカニ汁は塩分濃度がほどよいですね。
こちらのカニクリームコロッケの隠し味は、オイスターソースですか?」
「すごい、そこまでわかるなんて! じゃあもっと食べましょうアルくん!」
「"じゃあ"の使い方がおかしいですよかなり……って俺はいいです、いいですから」
久々に子供が帰省した時のお母さんみたいな勢いで具材をよそる織愛を、
ヨハンがさりげなく制した。すると今度は彼の椀にもっもっとよそわれる。
ムルヘルベルの椀に至っては、ちょっとした山のようになっていた。
「ワガハイこんな量食えぬのであるが……」
「でもたくさん食べないと背伸びないよ? 猟兵は体が資本なんだから」
「いやワガハイこう見えて100歳……」
「まあ、それはさておいてさ。アルジャンテ、こないだ言ってたよね」
さておきとはなんだ!? と騒ぐムルヘルベルを背景に、オルハは言った。
「"私みたいに『美味しく』食べることは出来ない"、って」
アルジャンテの脳裏に、サクラミラージュでの風景が蘇る。
殺人罠を張った影朧を斃すため、仲睦まじい恋人同士を装ったあの一時。
彼女に差し出された"あいすくりん"の味が、不思議と舌の上に想起された。
自分では、それらしく振る舞えていた自信がまったくない。
「……そうですね。その点では、皆さんには申し訳なく思います」
「何を言う。織愛の顔を見てみるがよい、にこにこ笑っておるではないか。
……まあこやつはいつも笑っている気がするが、それはともかく」
「もー、ムーくんってば一言多いんですから! めっ、ですよ、めっ!」
「おい待て織愛よだからって無理やり具を突っ込むなんがぐぐぐ」
「どうしていちいち呼吸器に拷問をしかけるんですかあなたは……」
喉をつまらせた時に備え、ヨハンは空いていたジョッキを満たした。
そのまま残りのメンバーのグラスを順々に満たしていく。
「そういうヨハンも、戦ってた時はあんなに空腹そうだったのに。
あんまり食べてないよね? パーティの時くらい気を使わなくて大丈夫だよ!」
「いや、そんな殊勝なつもりではないんですが……」
「ヨハンくんももっと食べないと!!(ずずいっ)」
(これを避けるためだって言うと余計に盛られるから黙っておこう)
"圧"をかけてくる織愛を口八丁でなんとか躱すヨハン。
オルハはそんなふたりのやりとりを見てくすくす笑った。
「じゃあこのお刺身、一緒に食べようよ。あんまり重たくないでしょ?」
「……そうですね。であれば、頂きます」
「えーっ!? 食べ盛りなんですからもっと食べましょー!」
「一般的に考えて、おふたりのペースが早すぎるだけだと思います」
アルジャンテはぴしゃりと言った。そして、ふ、とため息をついて一言。
「……さきほどの話の続きですが、たしかに"美味しく"食べることは出来ません。
ただ――この雰囲気を、私はおそらく好ましいと感じています。ですから……」
その先が出てこない。言語化が出来ないわずらわしさが胸をかき乱す。
知っているはずの幾千の言葉、そのどれもがふさわしくないように思えた。
「……言うべきことは思い当たりましたが、俺にこの手の台詞は似合わないので」
「えっ、ワガハイに振るのか!? あ、あー……まあ、そうであるな」
ようやく具を飲み込んだムルヘルベルは、おほんと咳払い。
「ある哲学者に曰く、"友とともにせざる晩餐は、獅子か狼の生活の如し"と云う。
こうして食卓を囲み騒ぐことこそ人間性であり、"楽"の本分なのであるよ」
つまり、それは"楽しい"というのだ、と賢者はしめくくった。
「友達と食べるご飯は楽しい、っていうことだね。私もそう思う!
だからさ、アルジャンテも……胸を張って、そう言っていいんじゃない?」
「……そういうもの、なのでしょうか」
「もちろんですっ! 私もヨハンくんも、みーんな今を楽しんでますから!」
「勝手に俺を数に含めないで……いやまあ、否定は……しませんが」
素直じゃない少年の言葉に、少女たちとムルヘルベルは肩を揺らして笑った。
人形の少年は不思議そうに見つつ、納得したように頷く。
黒衣の少年は、やっぱり俺には似合わない、とひとりごちるのだった。
大成功
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マレーク・グランシャール
【壁槍】カガリ(f04556)と
ハイホー!
お前もハタチになり、共に酒を酌み交わせることを嬉しく思うぞ
俺が贈った酒(竜血果酒)も喜んでくれているようで何より
大鍋もいいが追い込み漁に、釣りの餌にと頑張ってくれたお前には最高の鍋を食べさせたい
蟹爪と白身魚、そして茸と白菜と春菊などの野菜を入れた北海鍋にしよう
カガリも好きな具を入れていいからな?
白味噌ベースで、味噌ラーメンスープの素が隠し味だ
食べる前にルビー色のイクラ(魚卵)を彩りとして贅沢に振り掛けて食べるとしよう
(無言ではい、あーんしたり、あーんされたりするぞ)
やはり自分達で獲った魚介類を頂くのは最高だな
今度は妻と子も交えて家で鍋をやろう
出水宮・カガリ
【壁槍】まる(f09171)と
はいほー!
かんぱいを、このように言う事もあるのだな
【竜血果酒】、ちゃんと持ってきたぞ
飲もう、飲もう
ふふふ、相変わらず不思議な味がするなぁ、酒とは
甘いような、酸っぱいような、ふわふわとして楽しい感じだ
好きな具を入れていい、らしいので
鍋と言えば、あれを入れなければ
(※鍋物と言えばおでんしか知らなかった城門)
大根にー、しらたきにー、ひらてんとー、あつあげとー
きっとうまいぞ!
……――――???(おでんとは違う複雑な味に宇宙城門顔)
まる、まる、何を入れたらこんな味になる……??
おでんと、全然違うぞ!
ほらほら、食え、食え(あーんするしされる)
ふふふ、今度は皆で食べてみたいな
「ハイホー!」
「はいほー!」
マレーク・グランシャールと出水宮・カガリのジョッキが小気味いい音を立てた。
マレークは一気に、カガリは味を確かめるように控えめに一口。
揃って、ほう、とため息を漏らす。やはり労働のあとの酒は、旨い。
「かんぱいを、このように言うこともあるのだな。珍しい」
「(化身の年齢が)20歳になって、カガリもようやく乾杯を出来るようになったな」
相棒と酒を酌み交わせることが嬉しいのか、マレークの眼差しは優しげだ。
常に仏頂面としか見えない彼でも、親しき者ならばわかる表情の変化がある。
「もちろん、まるにもらった"あれ"も持ってきたぞ」
ドワーフ氏族が醸造した、アルコール度数の低い初心者向けのエールを呑みつつ、
カガリが取り出したのは上等そうな切子徳利である。
中にたゆたう紅く染まった白葡萄酒は、その色合いだけで味が伺えた。
「……喜んでくれているようでなによりだ」
マレークは微笑むように目を細め、相棒の心遣いに感謝した。
「しかし、ペースには気をつけろよカガリ。泥酔しては元も子もない」
「だいじょうぶ、だいじょうぶ。……ふふ、相変わらず不思議な味がするな、酒は」
甘くて酸っぱくて、呑んでいるだけでふわふわと楽しくなる。
陽の氣が溢れる喧騒も心地良い。カガリはふにゃりと柔らかく微笑んだ。
……割と酩酊してそうな顔なので、マレークは少しだけ心配になったが。
もっとも、彼は城門のヤドリガミだ。肝臓の守りもそうそう弱くあるまい。
ともあれ、酒の味をひとしきり楽しんだところで、ふたりの前に鍋が供された。
さらに集めた材料の数々と、マレークが申し出て用意してもらった食材が並ぶ。
蟹爪、白身魚、茸、白菜、春菊……いわゆる北海鍋の材料か。
近隣の村落から『冒険者(猟兵)への差し入れに』ということで、
茸も野菜も採れたての新鮮な具材ばかりが集まっている。
特に白菜などは、真冬ということもあって非常に甘みが増す頃だ。
「さっそく鍋を作ろう。……カガリも好きな具材を入れていいからな?」
「鍋かぁ。じゃあ、あれを入れなければ」
「あれ……?」
手際よく白味噌ベースの隠し味を盛り込みつつ、相棒を訝しむマレーク。
うん、と頷いたカガリが取り出したのは……はてな、大根にしらたき……?
「待てカガリ。それは」
「あとはひらてん(さつま揚げ)とー、あつあげとー」
「…………いや、言うまい。好きな具を入れていいと言ったのは俺だ」
それは蟹鍋ではない、おでんだ。という指摘は無粋だ、マレークはそう思った。
よほど珍妙な具材でもなければ、うまいこと調和するのが鍋という料理である。
きっとなんとかなるはず。実際、蟹を入れるおでんも一部にはあるとか?
マレークが用意した味付けが味噌ベースだったこともあって、
ほくほくと煮える鍋は、どうやらうまいことベストマッチになったらしい。
「うん、いい匂いだ! きっと、いや絶対にうまいぞ!」
うきうきして箸を取る相棒を、マレークがスッ……と無言で制した。
「??? どうした、まる。食べないのか?」
「待てカガリ。仕上げはこれだ……」
おもむろに取り出したのは、紅く輝くルビー……いや、違う、これは!
い、イクラだ! それも相当に高級そうな、まさに天然の宝石!
なんたることか、肝臓への挑戦である。若き猟兵だからこそ出来ることか。
きらきら輝くルビー色のいくらが散りばめられた蟹鍋は、誇張抜きに光っていた。
その輝きに目をぱちくりさせつつ、カガリはそっと一口……ぱくり。
「……――????」
きょとんとした顔のまま、頭の周りにいくつも?マークが浮かんでいた。
なんだこれは。旨い。いや旨いのもそうだが、思っていた味と全然違う。
おでんってこんなんだったっけ? いや、そもそもおでんではないのだが。
「まる、まる、何を入れたらこんな味になる……???」
「それが隠し味というものだ、カガリ。さあ、白身魚も食べてみろ」
「おでんと、全然ちが……あ、あーん」
マレークが差し出したエアティック・フィッシュの身を、素直に頬張るカガリ。
歯ごたえのいい新鮮な白身もまた絶妙。味噌の味がよく沁みている。
「うん! まるに食べさせてもらうと、より美味しいな! ほらほら、食え!」
「いただこう」
カガリが差し出した蟹の身を、マレークも口にする。実に仲睦まじい。
一本釣りを狙った成果は上々。やはりあの爪が一等旨い部位だったのだ。
噛めばほろりとほぐれる蟹肉は、様々な具材の味を受けて渾然一体としていた。
合間合間に酒をつまむ。実に大人らしい、優雅な宴の一時であった。
「ふふ、いいものだな、鍋とは」
「自分たちで獲ったからこそ、最高だな。今度は妻と子も交えて、家で鍋をやろう」
「そうだな、みんなでだ。きっと喜ぶぞ」
麗しき女神と、その愛子らが笑う団らんを思い浮かべ、カガリは微笑んだ。
今はしばし、ふたりで勝利の美酒を分かち合うとしよう。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
アルコ・アーラ
■心情
ハイホー!さぁ、宴を楽しみましょう!料理もたくさん!飲み物もたくさん!
これが、冒険の終わりって奴よね!
さぁさぁ、杯が空いたら注いであげるし皿が空いたら料理も回すわ!
楽しんじゃいましょう!
■その他
アドリブ等は大歓迎だし、ムルヘルベルさんともガラットさんともガンガン絡んでいっちゃって構わないわよ!
こういうのはみんなで楽しまないとね!
月凪・ハルマ
(宴会が始まって暫くしてから会場にやって来る)
あー、流石にもう始まってたか
どもガラットさん、ハイホーっす
お仕事お疲れ様でした
あとデカいすね鍋
なんで遅れたか?ああ……ちょっと別所で薬を調合してまして
酔い覚ましと、あと食べ過ぎに効くヤツを
(【世界知識】【医術】)
宴会って規模がデカくなるほど羽目外す人出てきません?
だからまぁ、あった方がいいかなって
ともかく鍋だ鍋。前章で人の食欲怖いとか言ったがそれはそれ
折角手に入れた食材を味わわずにどうする
酒がNGな分、食べる事に集中しよう
なるほど、身も美味いけどこの出汁がまた……
魚もいいお味だね
あ、漁師の皆さんもお疲れ様でした
結局最後までソイヤとしか言わないんすね
黒川・闇慈
「さて、ビッグマックスなる蟹のお味はいかがなものでしょうねえ?クックック……」
【行動】
さて、蟹肉や魚肉、お酒をいただくのはもちろんですが……一度蟹を食べる時にやってみたかった食べ方があるのですよねえ。
調理場の一角を少しだけお借りして試してみましょう。適度な大きさの蟹の甲羅にカニミソと蟹肉を詰め、甲羅を火にかけます。甲羅焼きというやつですね。溶けたカニミソと肉が混ざり合って美味だとか。
そして甲羅焼きの蟹肉を食べ終わった後の残ったカニミソと出汁にお酒を入れて再加熱です。なんでも甲羅酒というそうですよ。
「これは中々……飲み過ぎないよう注意いたしませんと。クックック……」
【アドリブ歓迎】
露木・鬼燈
お酒がメインなら食事は控えるところ。
だけど今日はカニがメインなんだよね。
酒の哲学とかは脇に置いておくですよ?
カニに合うお酒を厳選、なんてのもなし!
合いそうなお酒をてきとーに選ぶですよ。
後はカニを喰らい酒を飲む。
お魚も忘れちゃいけないよね。
こーゆー時は静かでなくてもいい。
騒がしくたって楽しければいいっぽい!
でもカニを食べてるときって不思議と無口になるよね。
なんでだろうね?まぁ、どーでもいいか。
満腹度50%ってところで一番合うお酒の探求へ移行。
<隠忍之薬酒瓢箪>を取り出して清酒を生成。
最高の組み合わせを求めるのです。
んん?この味なら…カニ雑炊とかが合いそうな気がする。
最高とは…奥が深いっぽい。
フェルト・フィルファーデン
……あら、いつの間にかカニが捕まっているわ!(棒読み)
ええ、わたしは何故か気を失っていたけれど無事成功してよかったわね……
違うわ!決して好奇心に負けて美味しくないカニを食べてその不味さに気を失っていたとかフェルト・フィルファーデン一生の恥みたいな事全然なかったんだから!!
……と、いうわけで。わたしは己を戒めるためにカニを食べないわ。……本当よ?すっごく良い香りが漂ってくるけれど……この機会を逃すともう食べる機会無さそうだけれど……今度こそ間違いなく美味しいでしょうけど……!
……ちょっとくらいなら、いいわよね?ええ、ちょっとだけ。ほんのちょっとだから。一口だけ。本当よ?ちょ(以下略
美味しい……!
九十九折・在か
カニオラ
ソイ……ちがった
ハイホー!
ソイヤさん達は大丈夫だったのかな?
途中で船が揺れまくったけど……
ま、いっか!カニ食べれるし!
飲みもの?お水ください!
☆方針
ガラットと話す
髭の"おねえさん"だ!
しへへ……おじさんと間違えてごめんな?
カニ、オススメの食べ方とか知ってあんのか?
食材にはたくさん食べ方があるってママが言ってたんだぜ!
食器は食べちゃダメとも言っていた!
あっ!酒のニオイだ!
これが酒?カンチューハイとは違ぇ感じだ……美味しい?
ワタシもいつか飲むからな!しへへ!
*漸次調整していただいて構いません
「ハイホー! こっちもハイホー! そっちもハイホーじゃ!!」
あっちでがちん、こっちでかちん。ドワーフのガラットは陽気に練り歩く。
見ず知らずの相手であろうとあるまいと、猟兵だろうと同族だろうと、
宴の席についたなら同じ仲間。彼女はそういうフランクさで生きていた。
だからこうして、ねぎらいも兼ねて乾杯をして回っているのだ。
「あらガラットさん、ハイホー! ふふ、いいわねこの音頭!」
そんなガラットの乾杯に応じ、アルコ・アーラはジョッキを打ち鳴らした。
見た目は淑やかなエルフの彼女だが、どうやら酒もいけるクチらしい。
「そうじゃろうそうじゃろう。エルフにしては見どころのある娘じゃな!」
「あら、ガラットさんってそういうステレオタイプなドワーフさんだった?」
「わっはっは、ドワーフ流のジョークじゃ! 古いおとぎ話でもあるまいに!」
ドワーフとエルフは、互いに互いの種族に偏見を抱いている。
……というのは、まあデミヒューマンなりの「おなじみなジョーク」だ。
もちろんこの世界の氏族の中にはそういった風潮の者らもいるかもしれないが、
少なくともナティビアード氏族は、偏見や差別の類とは無縁である。
「ってあなた、杯が空いてるじゃない! 注いであげましょうか?」
「ん~? あー、ちょっとどのお酒にするか迷ってただけっぽい!」
アルコに言われ、羅刹の青年、露木・鬼燈は鷹揚に笑った。
「なんじゃなんじゃ、お前さんは以前の宴にも来ておったじゃろうに」
「うん。でも今回は食べ物があるし、美味しそうなのをてきとーに……、
って思ってたんだけど、どれも美味しそうだから逆に困っちゃったのです」
「だったら全部呑んじゃえばいいのよ! あなた、いけるくちでしょ?」
それもそうだ、と陽気に応え、鬼燈はさっそくアルコの酌を受けた。
今日ばかりは、酒飲みの哲学だのこだわりだのは横にうっておこう。
宴とは騒いでこそ。しかし口を湿らせると、今度は鍋が恋しくなる……。
さて、そんなところでタイミングよく、何人ものドワーフが厨房から出てきた。
「「「ハイホー♪ ハイホー♪」」」
楽しそうに唱和しながら、ひときわ大きな鍋を持ってきたのである。
……ん? よく見ると、具材を運ぶ面子の中にドワーフでない者がいるような。
「ソイヤ~♪ ソイヤ~♪」
「って、それは漁師どもの気合の掛け声じゃろうがっ!?」
「あ、ちがった。はいほー! だったな、しへへ!」
ガラットのツッコミに、皿を担いだ九十九折・在かが照れくさそうに笑う。
どうやら、あの気合がよほど気に入ったらしい。中毒性があるんだろうか。
「しかしすまんのう。せっかく働いてくれたのにこんなところでまで給仕とは」
「しへへ……こっちこそおじさんと間違えてごめんな、"おねえさん"!」
「ここのドワーフさんたち、みんな兜被ってヒゲ着けてるから仕方ないっぽい!」
鬼燈の言葉に、アルコもたしかに、と深く頷いた。割と見分けがつかない。
そんな彼らの指摘で、これはしたり、と膝を打ったガラット。
大事そうな兜をほいっと投げ捨て、べりべりと付け髭も剥がしてしまう。
「うわっ!? おねえさん、それ自前のじゃなかったのか!?」
「当然じゃろう! 我が氏族にとってはヒゲもアクセサリじゃからのう!」
「変わってるわね~、ナティビアードの文化って。面白いわー」
驚く在かと柔軟に受け入れるアルコ、住んでいる世界の違いが割と出た。
ちなみにガラットの容姿は、見た目で言うとむしろ未成年にすら思える。
こう見えてもちろん成人、というか実年齢は……いや、言うまい。
さっそく具材を持ち寄り、大鍋を使った蟹鍋調理が始まった頃。
そんな楽しそうな一団を、物陰からちらちらと伺っているフェアリーがいた。
「……だめ、ダメよわたし、過去にきちんと学ばないといけないわ……。
いえ、そもそも何もなかったのだけれど、でもだからこそ我慢しなきゃ……!」
フェルト・フィルファーデンは、なにやらぶつぶつ独り言を呟いている。
……ここで、彼女に何があったのかをかいつまんで記しておこう。
先のビッグマックス討滅戦においてのこと。
敵が召喚した分身体――知っての通りあれはゲロマズである――の肉を、
フェルトはつまみ食いし……そして、気絶してしまったのだ。
もしかしたら美味しいのではないか、という邪念が起こした悲劇である。
ありえない。(亡国の)王女として、つまみ食いの挙げ句にぶっ倒れたなど、
姿を消した廷臣や騎士たちがなんと言うか。化けて出てきそうである。
だから彼女は迷っていた。蟹を食べたいけど、でもちょっと……というアレだ。
「己を戒めるためには仕方ないことなのよ、フェルト・フィルファーデン……!
……でもやっぱりあれ、美味しそうね……ちょっとだけなら食べても……」
「ちょっとと言わず、存分に楽しまれるべきだと思いますが? クックック」
「~~~~~~~~~ッッ!?!?!?」
突然後ろからかかった陰気な声に、フェルトは飛び上がった。
心臓が口から飛び出そうな勢いで振り返ると、そこには黒魔術師がひとり。
「び、び、びびび、びっくりしたわ! お、おお、おどかさないで……!」
「これは失礼。なにやら思い悩んでいらっしゃったようですから、クックック」
黒川・闇慈……なにげにフェルトの醜態を目撃した猟兵……は、
ほかほかと湯気の立つ皿を手に、相変わらず陰気な笑みを浮かべていた。
フェルトの視線は、彼の顔よりもその手に持つ皿の内容に注がれている。
「ま、まあいいわ……あの、ところでそれは、その、もしかして……?」
「ええ。ご覧の通り、蟹の甲羅を使った料理ですよ」
闇慈は、どうやら厨房で調理をしていたらしい。
手頃な大きさに割られた蟹の甲羅に、みっちり詰まったカニミソと蟹肉。
甲羅の表面が焦げているところから見て、これを器として火をかけたのだろう。
いわゆる甲羅焼きである。ああ、書いているだけで腹が減ってきた。
「…………ごくり」
「量が量ですからねぇ、まだまだお皿が山積みでして。
よければ運ぶのをお手伝い頂けませんかねぇ、クックック」
「……そ、そうね! 運ぶぐらいなら、全然、問題ないわね……!」
フェルトは「食べてないからノーカン」的なことをぶつぶつ自分に言い聞かせ、
闇慈に従った。……まあ彼女はフェアリーなのであるからして、
皿を運べば当然甲羅焼きの匂いがダイレクトに突き刺さる。ダイレクトアタック。
(な、なんて美味しそうな匂いなの、この料理は……!!)
そして鍋に近づけば近づくほど感じられる、白身魚や煮汁の風味!
まずい。これはいけない。姫の自制心がオブリビオンしちゃう!
「わあ、これまたごちそうが来たじゃない! ハイホー!」
「すっかりドワーフの流儀に馴染んでおるなあ、オヌシ……」
目をキラキラさせてフェルトらを出迎えたアルコの隣で、
さきほど合流したグリモア猟兵のムルヘルベルが、呆れた顔をした。
「いいじゃない、美味しいものはいくらあっても誰も悲しんだりしないもの!
ムルヘルベルさんだって、それが目当てでここに来たんでしょ? このこの~」
「なるほどなー! しかもこれ、すごいな! カニってこんな食べ方あんのか!」
アルコの戯言を素直に受け取る在か。甲羅焼きの物珍しさに目を輝かす。
色々一般常識が壊れた少女にとっては、何もかもが新鮮である。
「なあなあおねえさん、これもあれか? やっぱサケノツマミにすんの?」
「難しい言葉知っとるのう。ま、鍋よりも向いとるのは確かじゃな!」
「そっかー、ワタシもいつか呑むからな、酒! しへへ!」
この雰囲気が楽しいのか、ガラットと話す在かはウキウキしていた。
「鍋に刺身に甲羅焼き。いい感じに酒の宴らしくなってきたっぽい!
カニ雑炊とかも合いそうなのです……うーん、もっと強いの呑みたい」
「であれば、空いた甲羅に出汁と酒を入れてもよさそうですねぇ、クックック」
「な、なんてはしたな、いえ美味しそうな……だ、ダメよ、そんなのダメっ!」
闇慈と鬼燈の酒飲みトークに、顔を赤らめたフェルトが待ったをかけた。
一度食べ散らかした甲羅を再利用とか、そんなのテーブルマナー的にアウトだ。
いや違う。お酒飲めないけどもう聞くだけで美味しそうで腹が減るとか、
そういう妬み嫉みの類じゃない。マジでマジで。
「あら、だったらいらない? 美味しいのに、どれも」
「……そ、そういうわけじゃないけど……」
「であれば、ひとつ賞味してみよ。せっかくの宴であるぞ?」
アルコとムルヘルベルに挟まれ、フェルトはぷるぷると震えた。
「じゃ、じゃあ一口だけ……(ぱくり)……!!!」
そして恐る恐るフェアリーサイズに分けられた蟹の身を食べて、瞠目。
きょろきょろと猟兵たちの顔を見渡し、視線を受けた者らは苦笑して頷いた。
「……美味しい! 美味しいわ! あの分身とは大違い!」
「え? もしかしてあの激マズな蟹、食べちゃったのです?」
「や、ち、違うの。違うのよ。それは……うううう……!」
鬼燈の指摘で口を滑らせたことに気づき、ぱくぱく頬張るフェルトであった。
そうして、宴もたけなわといったところ。
「っと、さすがにもう始まってたか」
やや遅れて酒場にやってきたのは、月凪・ハルマであった。
「んぉ? どうしたんじゃお前さん、どこかへ行っておったのか?」
ちょうどそれに気づいたガラットに声をかけられると、ハルマは肩をすくめ、
「ええまあ、ちょっと別所で薬を調合してまして。お仕事おつかれ、ハイホーっす」
「薬とな? もしや酔い醒ましとかかのう?」
そうっす、と頷くハルマ。
「ほら、宴会って規模がデカくなるほど羽目外す人出てくるでしょ。
だからまぁ、あったほうがいいかなって用意したんですんすけd」
「それは見事じゃぞお前さん!! ささ、こっちへ来い!!」
「え? は? いやいやそんな引っ張らないでも大丈夫ですから!!」
ぐいぐいとドワーフの馬鹿力で引っ張られるハルマ。
連れてこられた席では……猟兵たちのほとんどが、ぐでーんとなっていた。
「……なんだこれ」
「う、ううっ。も、もう食べられないわ……!」
特に苦しそうなのは、フェルトである。ちょっと気持ち悪そうだった。
どうやらまずい肉を食ってしまった反動で、思わず食べすぎたらしい。
平気で火酒を呑んでいる鬼燈などもいるが、まあそこはそれ。
あれだけの鍋を他の料理付きでぱくぱくもりもり食べるとなると、
酔いにせよ食いすぎにせよ、普通は無理が出てくるものだ。
「……ま、転ばぬ先の杖ってヤツですかね。はい、皆さんどーぞっと」
「かくいうワシもちょっと呑みすぎとっての……むむ!」
ハルマの配った薬は、効果てきめん、呑んだ途端に効いてくる。
「これならばまだまだイケる気がしてきたのである! アルコよ、もう一杯!」
「だからって早すぎないムルヘルベルさん!? まあ、注ぐけど……」
「しへへ、ワタシはまだまだ食い足りないなー! おかわりー!」
陽気に酒を呑むムルヘルベルや、もりもりと健啖を発揮する在かにと、
給仕代わりのアルコは大忙し。そんな彼らをよそに酒の調合中の鬼燈。
彼が入れた清酒は、さりげなく闇慈がおこぼれを頂いていたりする。
「「「ソイヤ! ソイヤソイヤソイヤ!!」」」
「うわっ、漁師の人らも来た。つかソイヤしか言わねえのな……」
驚きつつ、ハルマはさりげなく鍋の中身を覗いた。さすがに空だ。
が、そこへちょうどいいタイミングで、新たな具材が運ばれてくる。ガラットだ。
「さあさあ、一息ついたところで飲み直しの喰い直しじゃ! 準備ええかー!」
「「「おー!!」」」
「そいつはなにより。俺もご相伴に預からせてもらいますよ」
空いていた椅子を持ってきてハルマが卓につくと、どんっとジョッキが置かれた。
もちろん、ノンアルコールだ。アルコはにこりと笑って頷く。
「み、皆様まだ食べるの? ……じゃあ、わたしももうちょっと……」
「薬に頼りすぎないように注意しないとですねぇ、クックック」
闇慈もフェルトも、それぞれのグラスを手に、一同をみやった。
そして誰ともなく杯を掲げれば、みなが同じ言葉を唱えたのである。
「「「ハイホー!!」」」
どうやら宴は、まだまだ続きそうだ。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
花邨・八千代
ハイホー!!!
いぇーい鍋だ酒だ宴だァーーー!
いっぱい飲むし食うぞー!
あ、そん前に土産用のカニとカニ味噌と魚くれ。
捌いてくれてると尚よし、俺は料理してくれる奴の気持ちもわかる良い女。
まー俺料理しねーんだけどなー!
喜んでくれっかなァ。
さて土産も詰めたし俺にも酒!ピッチャーでくれ!
あとカニ食うカニー!あのな、カニ味噌と一緒に甲羅焼きしたのとか好きだぞ!
誰か作ってくんねぇかなァ。
あ、魚は塩焼きが良いな俺!白飯と大根おろし誰かもってきてねーの?
んまーい!カニがうまくて酒がすすむ!
おぅ誰か飲み比べしようぜ!かかってこいよ!
俺ァ強いぜェ、6タテしてやんよ!!!
(※この後ドチャクソに酔っぱらった)
ダンド・スフィダンテ
●陽
ハイホーーーー!!
はっはっはっ、賑やかな宴会は良いものだなぁ!どの酒も肴も最高に旨い!
あ、ミューズ・ガラット!こっちの席空いてるぞ!
いやぁ、それにしても逞しいなぁ。うんうん、強そうで俺様も良いと思う。(具を取り分けて、女二人の前に置く)
ミューズはどんな冒険を?今回みたいな狩りをこれまでも?あ、そうだ。酒のおかわりは?
(鍋と二人の様子を見ながら、片手間に酒を飲んだり、蟹を食べたり)
(髭に興味津々な様子をにっこり見守っていたら突然の急展開!驚きと共に酒が気管にIN!)んぶっ!?……げっほ!んんん、ミューズ・タタラ!水飲む!?そっかぁ!俺様とする!?
(尚別に、赤銅と恋人とかそういう訳は一切無い)
多々羅・赤銅
●陽
ハイホーーーー!!
やーー期待はしてたけど派手な宴会になったなあ
んっカニも魚もんーーまい、後でヒレ酒もしねえと。先ずはジョッキを干してから!
や、ガラット飲んでるー?♡色男がお呼びだぞ♡
あーんスッフィー取り分けとかお代わりとか気が効くぞ女子か〜〜↑
髭女子ってさー
結構私らの感性だと新しいんだけどさあ。髭があると男だと思うくらい新しいんだけどさー
女とわかるとまた違った魅力見えてくんね。毛並み豊かな猫ちゃんみてえ、触って良い?い?
はーん
ほーん
…………
ガラットぉ
ちゅーしていい?
(この酒飲み、キス魔であった)
(お水いらない!)
(恋仲では決して無いがスッフィーに欲求は丸めてもらいましたとさ!めでたし!)
「ガラットぉ、ちゅーしていい?」
「えっ」
「いいだろ? な? 減るもんじゃないしさぁ~いいじゃんさぁ~」
「んぶっ!? ……げっほ、んんん!?」
突然の急展開に、ダンド・スフィダンテはバチクソに慌てた。
しかし多々羅・赤銅は、赤ら顔でガラットを掴んで離さない。
あの目……酩酊してはいるが、完全に刀めいて鋭さを保っている……。
サバンナの草むらに臥せるパンサーのような、"捕食者"の目……!!
「ミュ、ミューズ・タタラ! 水飲む!?」
「いらなーい!」
「いや呑まんか!?」
「欲しいのはぁ、ガラットの唇だけぇ~」
「さりげなくマウス・トゥ・マウスをご所望しておられるー!?」
怖い。絡み上戸&キス魔とかやべえ! ダンドは脳細胞を高速回転させた!
どうする。ガラットはかなり死にそうな顔だ! そりゃそうだよね!
どうするどうするどうする、君ならどうする! いや俺様なんだが!
考えに考え抜いた結果……ダンドの頭の上に、ぴこーんと豆電球が灯った。
「ミューズ・タタラ!」
「んぁ?」
「俺様とする!?!?!?!?!?」
「しない!!!!!!!」
ウソやん。プレイングと展開違うやんけ! 愕然とするダンド。
もはや万事休すか。ガラットは口の中まで蛇の手めいて鋭く潜られてしまうのか!
……その時!!
「"飲み比べ"の"時間"だオラァ!!!」
「「「"!?"」」」
大量の酒を両手に抱えて殴り込んできた、聞き覚えのあるあの声は――!!
時間はやや遡る。
「ハイホーーー!!!」
その頃、花邨・八千代は大いにノリノリで酒をかっくらっていた。
そこらへんにいた猟兵やらドワーフやら相手を問わず乾杯しまくり優勝しまくり。
しかしジョッキを三杯ほど空けたところで、スンッとシラフに戻り、厨房へ。
「すいませェん! 土産用の蟹とカニミソと魚もらえる!?」
「捌いときますかぁ!」
「ビューリホー愛してるー!! アンタA&Wイチの美男子だわ!」
「アタシ女だよぉ!」
「じゃあ美女だウヒャヒャ! んじゃよっろしくぅ!」
キッチンにたっていた陽気なドワーフと冗談と飛ばし合い、上機嫌で席へ。
いやしかし、なんと気配りのできる女だろう、俺。料理しねェけど。
土産を渡す相手は誰を思い浮かべたのか、煙管の似合うどこぞの色男か。
どうでもいいですが彼、実はエロ本を拾うシナリオに来てくださったんですよね。
え、どうでもいい? そうですね、話を進めよう。
「あージョッキじゃ足りねェ! ピッチャーでくれピッチャーで……ン?」
さて鍋から始めるか甲羅焼きから始めるか思案していた八千代だが、
そこで羅刹センス(羅刹が持つ鋭い聴覚のこと。羅刹イヤーとも)が、
なにやら大変に"陽"な気配、あるいは厄介な酒飲みの気配をキャッチした。
「ガラット呑んでるー?❤色男がお呼びだぞ❤」
「いやあの、ワシそういうテンションはちょっと」
「はっはっは! ミューズ・ガラット! そう言わずまずは一杯いってみよう!」
「え、あ、ワシさっき呑んだばかり」
「「なーに持ってんの!」」
「えっ」
「「「なーに持ってんの! 飲み・足り・ない・から持ってんの!!」」
「え、いや」
「「アイのーんでのんでのーんでのんでのんで!!」」
「ワシこういうノリ無理~~~~~~!!!」
絡み酒か。まったく、こんな楽しい宴の席で迷惑な酒飲みもいたことd
「姉貴じゃん!!!!!!!」
そんな感じで、陽キャどもの暴虐を目につけた、というわけである。
そして時間は現在に戻る。
「た、助かった……」
ガラットはへとへとの様子で席についた。赤銅はゲラゲラ笑っている。
殴り込みをかけた八千代との飲み比べで、互いの肝臓を称え合ったからだ。
「姉貴ぃ、なんでキスなんてねだってたんさァ~?」
「えー? だってさー、ヒゲ女子って私らの感性だとけっこう新しいじゃん?
毛並みが豊かな猫ちゃんみてえっつーかさぁ、つまりいーじゃん?」
「ワシこれ付け髭なんじゃよね」
べりべりべり(付け髭を剥がす音)
「え~~~~~~~~!?!?」
赤銅、大いにビビる。おかげで酔いがだいぶ吹っ飛んだ。
「なぁんだよもー、いやでも素顔もいいじゃ~ん❤」
「いかんミューズ、流れが同じだ! とりあえずこれを食べて、ね」
素早く具を取り分けるダンド。堂に入った紳士ムーブであった。
思わずテンションが上がってダメなホストみたいなノリになってしまったが、
落ち着いてみればこの通り気配りのできる男だ。ほらプレイングにも書いてある。
「姉貴に引っ張られちゃったかー、まァ仕方ねェわこのヒト酒つえーし」
「ミューズ・ハナムラの言う通りだ。酒は呑んでも呑まれるな、だな……」
ダンド、大いに自戒する。彼は穏やかで紳士的なのが本分なのだ。
そうして嵐のような酒の狂乱が過ぎると、だんだんとペースは穏やかになった。
というか、取り分けや酒注ぎを担当するダンドがうまく制御している。
「ところでミューズ・ガラット。これまでいったいどんな冒険を?」
「えっ」
「今回みたいな狩りを? これまでも? あ、そうだ、お酒のおかわりは?」
「お前さんもお前さんでなにげにぐいぐい来るな!?」
「まァこういうやつだから。だいじょぶだいじょぶ、コワクナイヨー」
ほんとかなぁ、と半信半疑のガラット。なにせ八千代も相当呑んでいる。
が、ここでダンドの差し出した塩焼きを食べた八千代、ダン! と杯を置いた。
「これ白米欲しいやつじゃん! だれか大根おろしねェの!?」
「酒飲んでる最中に米はねーだろ米はー!」
「そう思うだろう? こんなこともあろうかと用意しておいた。どうぞ、ミューズ」
「「さっすが~~~~~~❤」」
(ノリええのうこやつら……)
きゃっきゃとはしゃぐ女子&紳士にガラットは遠い目をしていた。
「なんというか、冒険者の酒の呑み方は色々あるんじゃのう」
「おや、ミューズはもっと穏やかな酒のほうが?」
「んにゃ、そういうわけではない。どちらかというとこう、がーっと騒ぐ」
「私らのことじゃーん!」
「カワイー女子呑みじゃーん!」
「いやお前さんらのは違う。絶対に違う」
また出来上がってきた羅刹女子たちに鋭いツッコミが入った。
「……ともあれ最初は面食らったが、ま! これはこれで悪くないのう!」
「はっはっは! そう来なくては、ミューズ・ガラット! にぎやかな宴会はいい!
そしてこの鍋に肴、どれも最高に旨い! 労働のあとだからなおさらだなあ!」
ダンドの言葉にうんうん頷く鬼女子たち。
「てかさぁ、スッフィー女子力高くねー? とりわけとか女子か~~~~?」
「俺も野郎の気持ちがわかるいい女だけどさぁ、さすがに負けるわ~」
「はっはっは。ミューズたちの美しさには勝てないよ。あ、甲羅焼き食べる?」
「「食べる~~~~❤」」
「あ、ワシも食べようかのう! いやーキスとか言われた時は驚いたのj」
「キスする~~~~❤」
「えっ」
ギラリ。赤銅の目が輝いた。コワイ!!
ダンドは思わずまたむせた。そして理解したのだ。
一流の肉食動物は、獲物を狩るために一昼夜に渡って臥せるという。
待っていたのだ・・・っ! 起死回生、逆鱗を砕くこの一瞬・・・っ!
狩人の野生・・・っ! 魔王の如き慧眼・・・っ!
「待て待て待て! お、お前さん、止めてくれんか!?」
「姉貴とガラットがちゅーちゅちゅー!! あっはははは!」
「こやつ出来上がっておるー!?!?!?」
八千代はもうへべれけだった。ガラットは赤銅を押さえつけながら絶望!
ダンドは再び高速思考した。そして導き出した答えは……!!
「ミューズ・タタラ!!」
「んぉ?」
「俺様とする!?!?!?」
「「またか(よ)!!」」
「する~~~~~~❤」
「「今度はするの!?」」
慈愛に満ちた微笑みで両手を広げるダンド。飛び込む赤銅。
倒れ込むふたり。ポワポワ湧いてくるハートマーク。
「姉さんすげー! ディープだディープ! おらおらやっちまえー!」
「冒険者、怖っ!!」
野次を飛ばす八千代を見て、ガラットは心底陽キャを怖れたのであった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
リア・ファル
アドリブその他・良きように
皆さんの歓談が弾むように
全力でトークと給仕を回します
それでは……UC【変幻自在】で
パーラーメイドのメイド服に変身!
奉仕100レベルでナビゲーションしようじゃないか
鍋だ鍋だ!
明日への活力だ!
皆行き渡ってるかな?
飲み物は大丈夫? それじゃあハイホー!
お、こっちの肉団子はイイ感じに仕上がってるよ!
シラタキ食べる?
カニは鍋だけじゃなくバター焼きとか、
海鮮ちらしと蟹寿司とかもあるから、ドンドン食べてね!
やっぱり宴会は良いモノだね!
ヌル・リリファ
アドリブ連携歓迎です
はいほー!(二度目なのでちゃんとあわせられる。人形は学習しているので。
……ついていけてはいないけどね!)
……♪(食欲があるわけではないので、そこまで食事に真剣ではないが適当に手を伸ばす。
それよりは賑やかな場所にいることが楽しいし喜ばしいのだ。)
……おいしい?(話しかけるのはここまで送ってくれたグリモア猟兵かもしれないし、他の誰かかもしれない)
そっか。それならよかった。
わたしはね、ここでこうやってたべるの、たのしいんだ。
(美味しい、はわたしにはまだわからないけれど。
誰かがそう思いながら食べている場所で、一緒にお話ししながら食べる時間は。とても素敵なものだと思うのだ。)
「はーい、"ハイ・ホー!"おまちどうさまー!」
パーラーメイド姿に変身したリア・ファルが、忙しなく酒場の中を行き交う。
人々の媒を己の役目とする彼女にとって、こういう仕事はまさに天職。
誰かの役に立っている瞬間こそ、リアにとっての美酒のようなものだ。
「こっちの席は大丈夫? 飲み物は行き渡ってるかな? それじゃあハイホー!
あ、そっちのお鍋いい感じだよ! 肉団子なんか食べごろじゃないかな~?」
飲み物や料理を配膳しては調理場に引っ込み、行ったり来たり。
鍋の火加減もくまなくチェックし、広い酒場を隅から隅まで把握している。
……そんな彼女が、ヌル・リリファの姿に気づくのはすぐのことだった。
「やあヌルさん、ハイホー!」
「はいほー!」
「!」
思った以上の元気な返答に、リアは思いがけずきょとんとした。
ヌルはそんな彼女の表情を見て、すこしだけ得意げに微笑む。
「二度目だから、ちゃんとあわせられるよ」
「そういえばそうだったね。あ、ご飯はどう?」
「うん、たべる」
リアがすいっとお盆の上、茹で上がった蟹の脚をひとつ差し出してみると、
ヌルはそれを受け取りぽきりと折った。まじまに眺め、はむりと食べる。
戦闘人形であるゆえに本能的な食欲があるわけではない。
が、ヌルが楽しそうにしていることは、同じ人工的な存在であるリアにもわかった。
「お、なんかお前さんたち! ワシにもひとつくれんか!」
そこにやってきたのは、同じく席から席を回っていたガラットである。
ひょいっとリアのお盆の上から蟹の足を受け取り、ぱくり、ぐびり。
「……おいしい?」
「んぅ? そりゃあ旨いとも! お前さんはどうじゃ?」
「わたしは……わからない。でも、たのしいよ。それに、よかったっておもってる」
「ふーむ? ようわからんが……楽しいならいいことじゃの!」
ガラットはにかっと笑って(彼女は素顔を晒している)リアの方を見た。
「お前さんも! 給仕はありがたいが、自由に食べて呑んでええんじゃぞ?」
「ありがとガラットさん。でもね、ボク"も"これが一番楽しいんだ」
言葉の響きに何か気づくものがあり、ヌルはリアの横顔を見つめた。
「鍋は明日への活力。歌い騒いで食べて呑んで、未来へ生きていく大事な行事!
それをみんなが楽しんでくれること、そしてお手伝いを出来ることが、ね?」
リアはそう言ってヌルのほうを向き、いたずらっぽくウィンクした。
……ふたりそれぞれ、在りようも考えていることも違う。
ただ、"人に作られたモノ"として、"人々の幸福と喜びを尊ぶ"ことは同じだ。
……この喧騒そのものを楽しみ、耳を傾け肌で感じていたことも。
「うん、そうだね。わたしは、ここでこうやってたべるのが、たのしいから」
「なんじゃなんじゃふたりして、ワシにもわかるように言ってほしいのう!」
「残念。これはボクとヌルさんだけのシンパシー、ってとこかな?」
「むうっ、ケチじゃのう! じゃあ代わりにみんなでもっと騒ごうではないか!」
などと言って、ガラットはふたりにさっそくグラスを差し出した。
ヌルとリアは顔を見合わせ、困ったように笑ってそれを受け取る。
「じゃあ、わたしがいうよ――はいほー!」
「「ハイホー!!」」
かちん、とグラスが打ち合う。ヌルはその音に、不思議な安堵を覚えた。
奇妙なことだ。こんな飲み物も食べ物も、自分の起動には必要ない。
そんな心の余暇を楽しめる人間の機微が――ただ、嫌な気分ではない。
それが自分にも出来ることが、好ましく思う。自然と口元は緩んだ。
「やっぱり宴会はいいモノだね! 次は蟹寿司とかどうかな?」
「スシ? なんじゃそれは、気になるな!」
「オーケー、じゃあボクが握ってあげよう! ね、ヌルさんも!」
リアの言葉に頷いて、ヌルはともにカウンター席へ歩いていく。
作られた少女たちの足取りは、どこまでも軽やかだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
矢来・夕立
狭筵さん/f15055
実は:お弁当を持ってきている
蟹爪と魚を分けてもらってきました。
そうですね。はい。そうですね。二人でね。はい。ええ。(棒読み)
コレは素材集めから調理まで自分の目で見て確認してるワケですから、食べます。鍋。
それはそれとして別口でお弁当は持ってきましたよ。
万に一つ収穫がなかったときオレだけはお腹をすかせないでいられるようにこの兵糧丸を、あっやべ乾燥タピオカだコレ間違えた。
わざわざタピオカの煮を作ることもないでしょ。
目の前にあるじゃないですか。煮えてるものは。
はい寄って。カメラを見る。撮る。
#鍋パ #A&W #カニタピ
(だからおいしいって言ったじゃ〜んみたいな雰囲気)
狭筵・桜人
矢来さん/f14904
ほら矢来さん、私たちの友情パワーで獲った
カニ爪が鍋で煮えてますよ。
私たちの友(略)で獲った魚も。
二人で獲りましたよね!二人で!!
そんなに気にしいなら毒味くらいしてあげるのにも~(毒耐性)
は?お弁当?ウッ デジャビュ……!
また台所借りて煮ですか?
うん?鍋?ありますね目の前に
あ~なるほどカニタピ
なるほどね
すご~いキャビアみた~いブチアゲ~
#鍋パ #A&W #カニタピ
やっぱ私って写真うつり良すぎ――――
何してくれてんだテメェ!!!!
そのタピオカに対する全幅の信頼は何なんですか
タピオカで命を繋いできたんですかあんたは!!!
あっカニの出汁吸って意外と美味しい……ヤダ……。
ぐつぐつ。音を立てて、鍋の中で美味そうな蟹の身が煮えている。
狭筵・桜人はニコニコ笑顔だ。もう爽やかな少年漫画の主人公みたいに。
「ほら矢来さん、私たちの友情パワーで獲った蟹爪が鍋で煮えてますよ!」
「……」
「もちろん蟹だけじゃありません、白身魚もきちんと煮えています!」
「……そうですね」
「私たちの友情パワーで獲った、大事な獲物ですよ! 私たちで!」
「…………」
「ふたりで獲りましたよね!! ふ・た・り・で!!」
「……そうですね(極めて抑揚の少ない棒読み)」
もともと矢来・夕立は、あまり人と視線を合わせることがないタイプの人間だが、
全力で目をそらしていた。気まずいというより見るに堪えないのである。
ついに事実の歪曲まで始めた桜人の、その無様さが……。
さすがの夕立ですら、ちょっとネタにするのが不憫になるレベルであった。
ちなみに、この材料も夕立が分けてきてもらったものであった。分担とは?
まあそれはさておいて、旨い蟹をたらふく食えるのはまたとない機会だ。
「ところで矢来さんって蟹とか食べるんです?」
「どういう質問ですかそれ。もちろん食べますよ今回のは」
「今回のは……?」
「毒がないのははっきりしてますからね。素材の確保から全部オレがやってますし」
忍らしい理屈である。桜人はやだもうと大阪のオバハンみたいに手を振った。
「そんなに気にしいなら毒味くらいしてあげるのにも~」
毒耐性(1)で何を言っているのだろうか彼は。
「そうですね」
「全力でボケ潰しに来るのやめてもらえます????」
「それはそれとして別口でお弁当は持ってきましたよ、実は」
「さらにボケ被せに来るのやめてもらえます????」
しかも、お弁当。桜人の笑顔がぴしっと固まった。
思い返される過去の記憶。なぜか取り出されたタピオカ……!(乾燥)
「なにひとつ収穫がなかったとき、オレ一人が腹を空かさないでいられるように」
「しかも動機が最低すぎる」
「そんなわけで兵糧丸を……あっやべ乾燥タピオカだこれ」
「ネタまで一緒じゃないですか!! また台所借りて"煮"ですか……」
結局このパターンかよ、とため息をつく桜人。その顔にもわっとかかる湯気。
……ん? 湯気? 目を開ければそこにはぐつぐつ煮えた鍋。
「鍋、ありますね目の前に」
「でしょう。台所に行く必要ないですよわざわざ」
「いやでも今回は蟹ありますし……」
「そう言うと思って、すでに投入してあります」
「タピオカを?」
「タピオカを」
頷いて、夕立はスマホを取り出した。
「はい寄って。撮りますよ」
「え? あ、はい」
ぱしゃり(#鍋パ)
ぱしゃり(#A&W)
ぱしゃり(#カニタピ)
「撮れましたよ。どうですか」
「わ~、すご~いキャビアみた~いプチアゲ~やっぱ私写真映りよすぎ~」
「これはバズ間違いないですね。あとで投稿しておきます」
「って何してくれてんだテメェ!!!!!!!!!!!!!!」
桜人の こうげき! しかし 夕立に たやすく避けられた!
「なんですか気に入らなかったんですか修正とか」
「違ぇよ!! 何せっかくの蟹鍋にとんでもねぇもの入れてんですか!!」
「タピオカですが?」
「何そんなのも知らないんですかみたいな顔するなウッゼェ!!!!!」
しかし夕立は相変わらず平気の平左である。
「そもそもオレが狩ってきたんですからどうしようとオレの勝手でしょ」
「うっ」
「あとタピオカ美味しいですよ。たぶん蟹とも合う」
「そのタピオカに対する全幅の信頼は何なんですか……。
タピオカで命を繋いできたんですかあんたは!!!!!!」
「文句言うなら食べないでいいですよ」
「食べますけど!?!?!?!?」
なぜかキレながらカニ汁featタピオカを啜る桜人。ずずず。
「……あっ」
「どうですか」
「蟹の出汁吸って意外と美味しい……ヤダ……」
(だから美味しいって言ったじゃ~~~ん、みたいな顔をする)
「その顔はウザいからやめろ」
すったもんだの飯会であったという。
なお、実際に投稿されたのは、夕立が自撮りしたものだけであった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
セリオス・アリス
【双星】
アドリブ◎
カニ鍋だ!
だいぶ食べにくいけどスゲー美味いな
けどこれだけじゃ物足りない…アレス
じっとアレスを見ておねだり
だってアレスの飯が一番うまいし
アレスが作ってる間はずっと後ろをうろうろと
アレスまだ?…そうか
もうできた?…まだか
オーブンに入れてもすぐにはできない
そんならその間に酒でも…!
むぅ…けどまあ、もうすぐ食えるならお茶で我慢するか
アツアツのグラタンを前にパァッと顔を輝かせ
手を合わせてくいつく
んー!うまい!
さっきの鍋もうまかったけど
このグラタンはもっともっとうまいから
アレスの手は魔法の手だなぁ
アレスの視線に気づいたら
にっこにこでスプーンを差し出す
ん、アレスも食えよ
どうだ?うまいだろ!
アレクシス・ミラ
【双星】
アドリブ◎
ん、確かに絶品だな
蟹鍋を堪能してると
…え。まさか、作れと…?
見つめる目に仕方ないなあと苦笑
酒場の台所と食材を借りて
ギャルソンエプロンをつけ、いざ、調理開始
(セリオスのまだ?にはまだだよとかわしていこう)
まずは蟹の身を殻から出す
切った玉ねぎとマッシュルームを炒め、小麦粉も入れて混ぜ
牛乳を入れながら煮込み、蟹の身と生クリーム等を投入
ソースができたら容器に入れ、チーズを敷き
あとはオーブンで焼き上がるのを待つだけ…と
その間に片付けて、一休み
…こら。もう少しだから、お酒は我慢。ね?
はい、蟹グラタンの出来上がり
…その表情と美味しいって言葉が、本当に嬉しいよ
ふふ…では、僕も一口
うん。上出来
がつがつ、ぐぁふぐぁふ。茹でた蟹の脚をもりもり貪るセリオス・アリス。
ぷりっぷりの白身魚もホクホク煮えた白菜も、どれもよく出汁が効いている。
そんな幼馴染の健啖っぷりを眺めつつ、アレクシス・ミラも上品に堪能していた。
「美味いな、セリオス。……けどもう少し落ち着いて食べてもいいんだよ?」
「バカ、アレス……もぐもぐ……食えるときには喰わないと……がつがつ……」
「わかった。わかったから、せめて口の中のものを飲み込んでから喋ってくれ」
アレクシスは苦笑してジョッキを差し出す。ごっごっごっと飲み干すセリオス。
「っぷはぁ! こういうのは食える時に食わないともったいないんだって!」
「そんな急がないでも、蟹は逃げないぞ? ……さすがにもう動かないよな」
言ってからアレクシスはちょっと不安になった。なにせ元オブリビオンだ。
ん? よくよく考えるとオブリビオン喰うのってめっちゃ危なくないか?
いや、気にしないことにしよう。みんな食べてるし、旨いし。
そんなこんなで、待望の蟹鍋をたっぷりと賞味したふたり。
あらかた具材を(主にセリオスが)食べきったところで、一息ついた。
口当たりのいいエールを呑みつつ、ぼんやりとしているアレクシス……。
しかしそこで、なぜか幼馴染がこちらをじーっと見ていることに気づいた。
「……どうしたセリオス? もしかして……足りないのか?」
「うん! 物足りねぇ! なーアレスー、なんか作ってくれよー」
あれだけ食べておいて、まったく健康的なものである。アレクシスは呆れた。
が、幼馴染の弱みと云うかなんというか、この顔でおねだりされると弱い。
「……仕方ないなあ。わかったよ、厨房を借りてこよう」
「よっしゃあ! さっすがアレス! んじゃさっそく行こーぜ!」
「って、君もついてくるのか?」
「そりゃそうだろ! あ、でも手伝いはあんま出来ねぇ! ごめん!」
「わかってるよ。今に始まった話じゃないだろ」
などと言い合いつつ、まずは鍋の片付けから始めるふたりであった。
さんざん狩り尽くしたおかげで、蟹の具材はそれこそ山盛りに残っている。
アレクシスの申し出は快く受け入れられ、彼は厨房の一角を借りることに。
なにやらまな板の上には、玉ねぎやマッシュルームなどが並んでいるが……?
「なーなーアレスー、まだー?」
「まだだよ。いま材料を捌き始めたばかりじゃないか」
後ろでせわしなくうろうろするセリオスにいいつつ、アレクシスは手を動かす。
一口大に刻んだ玉ねぎとマッシュルームを炒め、そこに小麦粉を投入。
程よく炒めたら牛乳を流し入れ、さらに蟹の身や生クリームなども放り込む。
フライパンの中で材料が煮立ってくると、ミルクの甘やかな香りが立ち込めた。
「うお、旨そー! もしかしてもう出来たか、アレス!?」
「まだだよ。あとはここにチーズを敷いて……と」
具材をみっちり詰めた容器を、オーブン窯に投入して薪に火を点ける。
もちろんここからまだまだ時間がかかる。セリオスはもう辛抱たまらん状態だ。
「ふう。あとは焼き上がるのを待って、ってこら!」
一息ついたアレクシスが振り返ると、そこにはセリオスが酒を持っていた。
ジョッキに注ぐ寸前だったそれを取り上げると、セリオスは口を尖らせる。
「あ! なんだよぉ、どうせ出来上がるの待つなら呑んでもいいだろー!」
「それじゃ味がわからなくなるだろう? もう少しだから、お酒は我慢。ね?」
むう、とすねたような顔をしつつ、セリオスは不承不承頷いた。
「だってよー、もう十分待ったのにさー……」
「だからこそご飯は美味しくなるんだよ。なに、すぐに……ほら」
がぱり、と大釜の中から取り出してみれば、焼き上がったグラタンが顔を見せた。
セリオスは一点表情を輝かせ、皿を受け取ろうと手を伸ばす。
「うひょー! いっただっきまーす!!」
「あ、ばか。まだ熱いからミトンを」
「あっちーーーーーーーーーーーーーーー!?」
「……まったくもう」
わんぱくな子供のような振る舞いに、また苦笑を浮かべるアレクシス。
待ちきれないセリオスのため、台所の片隅で食べることにしたふたり。
スプーンをさくっと沈めてみれば、中から現れたのはきらきら輝く蟹の身である。
豪勢なカニグラタン。セリオスはよくふーふーしてからほくほく一口。
「んー! うまい!! さっきの鍋も旨かったけどこいつはもっともっと旨い!!」
「そんなにかい? 美味しいって言ってもらえるのは嬉しいけどね」
「当たり前だろ! アレスの料理が一番旨いんだよ!」
ぐっとサムズ・アップしつつ言って、セリオスは続けた。
「アレスの手は魔法の手だなぁ。なんでこんな旨くなるんだろうなあ」
(そういう君の喜ぶ姿が、僕にとって一番の嬉しさだから……なんてね)
少し歯の浮く台詞を心にしまうと、セリオスがスプーンを差し出した。
「ん」
「ん? ……ああ、僕も食べていいのかい?」
「おう。せっかく作ってくれたんだからな!」
にかっと笑う幼馴染に微笑み、アレスはそのまま一口受け取った。
「……うん、上出来だ。ふふ」
「だろ? 旨いだろ! やっぱアレスはすげーよなー!」
「僕に自慢することじゃないだろ、それは」
などと言いつつ、幼馴染の喜びっぷりに笑顔の止まらない騎士であった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
リル・ルリ
🐟櫻沫
アドリブ歓迎
わーい!蟹
櫻も頑張ってはんとしてくれたんだ
一番美味しいに決まってる
でもお酒はダメ
ヨルと一緒に茹で上がるのを即興の蟹の歌口ずさみ待つ
硬い甲羅は櫻が剥いてくれた
大きい口で頬張り幸せを噛み締め
嗚呼美味しい
お魚も蟹も美味しい
君が食べさせてくれたから特別
身体が熱いのは鍋のせい?
それとも君の
…?
……!?
あっお酒は!
…ヨルに何してるんだ!(取り上げ
櫻宵の抱き枕は僕だ!
沸騰しそう
色気に酔いそう
いや、ちょっ違―ピィ!
途端突っ込んでくヨル頭突き
伸びた櫻を膝枕し溜息
大丈夫だよ
本当に目が離せない
ヨルわかった?
櫻にお酒は絶対ダメ
八岐大蛇だもん
君は本当に懲りないよね
ヨルはお腹の純潔を奪われたとご立腹だ
誘名・櫻宵
🌸櫻沫
アドリブ歓迎
蟹よ! 魚よ!お酒よ!
はい、リルにヨル!たんとお食べ!
蟹も魚もどんどんお食べ
こうして食べると美味しいのよう
2人にあーんと食べさせて
幸せな笑顔に舌鼓
味見とは比べ物にならないくらい美味しいわ
初蟹はどう?
さ、ヨル…
リルの目を盗み
ヨルを蟹と魚で籠絡しこっそりお酒を注いでもらう
蟹と酒は恋人なの
離せないの
はいほぅ(上品
ぐいと飲み干せば噫おいし
…
ヨル…こんなもふもふなんて罪よ
あたしの抱き枕にならない?(お腹にキス
リィったら
一番はあなた
頬に接吻、そのまま首筋に牙たて血を啜る
噫、なんて美酒
甘く咲いた愛の味…少し蟹ね
可愛いくて愛しい子
お望みなら―キャン!(気絶
何故ヨルは震えてるの?
記憶にないわ
「かーに、かーに。おいしくなーれ。かーに、かーに、赤いかに~♪」
妙な抑揚つきのリル・ルリの歌に合わせ、ヨルがぽてぽてと踊り(?)を舞う。
待ちきれない食欲と期待を込めた、即興の"蟹の歌"である。
目の前にはぐつぐつ煮えた大きな鍋。誘名・櫻宵はにこにこ笑顔だ。
「ふふふ。蟹よ! 魚よ!」
「うんうん、楽しみだねs」
「お酒よ!!!」
「それはダメ」
「なんで!?!?!?!?!?」
一転、櫻宵はこの世の終わりのような顔をした。リルはぶんぶんと首を振る。
「蟹も魚も楽しみだけど、お酒はだめ。ぜったい、だめ!」
「そ、そんなぁ……だって、蟹よ? お鍋なのよ!? お酒の友なのよ!!
いえむしろ運命共同体、いわば一心同体、あたしとリィみたいなものよ!!」
「そ、そこまで……?」
そう言われると悪い気はしない、いやむしろ嬉しい……が、それでもダメである。
なにせこの男、大トラみたいな顔をしておいて割とすぐ酔っ払うのだ。
しかも面倒くさい。そりゃもう大変に面倒くさいタイプの酔い方をする。
前回もそれでひどい目に遭った。今回はもはや起こさせまい!(フラグ)
「いい、櫻。今回ばかりはどれだけおねだりしても……櫻?」
「じゃあ仕方ないわね、ほら蟹が煮えたわよリィ! それにヨルも!」
てっきりぐずられるかと思っていたリル。だが、櫻宵はにこっと笑顔だ。
そして鍋の具材を取り分け、蟹の殻を剥いたりと甲斐甲斐しく世話してくれる。
この割り切りぶりには、逆に構えていたリルのほうが少し拍子抜けした。
(よかった、櫻もわかってくれたのかな?)
恋人の理解に笑みをほころばせ、喜んで蟹の身を頬張るリル。……美味しい!
「どう、リィ?」
「んー! すごい櫻、おいしーよ! お魚はどうかなぁ?」
「ふふ、そっちも煮えてるわよ。ほら、ヨルもたんとお食べ!」
にこにこ笑顔で鍋奉行を務める櫻宵。ヨルも新鮮な魚の味にご満悦だ。
「初蟹はどう?」
「美味しいけど、それ以上に櫻が食べさせてくれたから、特別だよ!
……かーに、かーに、美味しいかーに♪ 僕らで獲った かーにかに~♪」
嬉しさのあまりに今度は「かに美味しいの歌」を即興して歌い出すリル。
つられて踊るヨルのはしゃぎっぷりを見て、笑みを深める櫻宵であった。
……。
こんな普通の日常リプレイっぽいエモい終わり方すると思った?
あんさん甘いでっせ! そんな理屈トンチキシナリオでは通りまへんわ!
プレイングの通りに、しっかりオチつけさせてもらいまっせ!(金融漫画風)
「……さ、ヨル」
にこり。櫻宵は箸を置き、上機嫌でぽわぽわするヨルに耳打ちした。
リルはほわぁ、と湯上がりのようにのぼせている。味を堪能しているのだ。
「蟹、美味しかったわよね?」
(こくこくと頷くヨル)
「魚、美味しかったわよね?」
(ぶんぶんと頷くヨル)
「あたし、大人しくしてたわよね?」
(うんうんと頷くヨル)
「ちょっとぐらい呑んでもいいと思わないかしら?」
(はいはいと頷き……かけて、悪魔の顔を二度見するヨル)
笑っていた。狡猾な悪魔(種族:ドラゴニアン)はホホホと笑っていた。
このためか。すべてはこのため! 何もかも布石……!!
嗚呼、しかしヨルは逆らえない。だってもうお腹いっぱいで口が幸せだから!
ペンギンだからもうお腹いっぱいだと難しいことわかんない。仕方ない仕方ない。
こうしてあっさりと買収は成功し、ヨルはこそこそお酒を持ってきた。
櫻宵がしゃなりと差し出した杯を、とくとくと注いでいく……犯行、成立!!
「蟹と酒は恋人なの。離せないのよリィ……はいほぅ(上品)」
「んぅ……?」
なにやら不穏な気配にぱちくり目を開くリル。ぐいっと杯を呷る櫻宵。
ん? 杯? ジュースにしてはなんかだいぶ呑み口が勢いいいんだが?
口笛(吹けない)をしつつよそ見しているヨル。その背後……ひ、火酒!!
「あーーーーー!!」
「うふふ。二杯目よヨル」
「ちょ、櫻! お酒は」
「注いでくれないの? じゃあ手酌するわ(ごぽっごぽっぐっぐっ)」
「こらーーーーー!!」
バレた。だがもう櫻宵は止まらない。止められない!
慌てて酒を取り上げようとするリルだが時既に遅し。犯行、成立!!
一方櫻宵は、なぜかおもむろにヨルをすっ……と取り上げた。据わった目で。
あれ? 展開おかしいぞ? 逃げようとしていたのに慌てるヨル。
「ヨル……こんなもふもふなんて罪よ。あたしの抱き枕にならない……?」
「あっ、ちょ、ヨルに何を……櫻ーっ!?」
ヨルのもふもふお腹に吸い付く櫻宵。スーハースーハークンカクンカ。
キスというか吸っている。ヨ、ヨルを……吸ってる……!!
「こら、櫻! ヨルに何してるんだ!」
慌ててヨルを救出、もとい取り上げるリルだが。
「まあ、リィったら。もちろん一番はあなたよ、当たり前じゃない」
「櫻? いいから水を――ピィ!」
しなだれかかった櫻宵は、そのままリルの頬に甘い口づけをひとつ。
そして白いうなじを下り、首筋にかぁっ、と大きく口を開き血を少し。
リルはぞくりと身を震わせ、沸騰しそうな頭で必死に考える。
あかん。このシナリオこういう退廃的な描写するタイプのやつやないで!
ほな頼みますわヨルはん! あーっとヨル選手勢いよく吶喊したー!!
「噫、なんて美酒。紅く咲いた愛の味、少し蟹ね……ふふ」
「ちょっとまって櫻、微妙に言ってることが意味分かんないよ!」
「可愛くていとしい子、お望みなら――キャンッ!!」
KRAAAAAAAAAAASH!! ヨルミサイル、着弾!(櫻宵の顔面に)
くらぁ、と仰向けにぶっ倒れた櫻宵。ぜえぜえと息を整えるリルであった。
……ややあって。
「んぅ……?」
ようやく目を覚ました櫻宵、そこには照明を背にしたリルの顔。
はあ、とため息をついたリルは、震えるヨルを向いてこう言った。
「いい、ヨル。わかった? 櫻にお酒は絶対ダメ。八岐大蛇だもん」
こくこく頷くヨルを見て、櫻宵はきょとんと首を傾げる。
「どうしたの? 記憶がないわ――ぎゃんっ!?」
「少しは懲りてね、まったくもう!」
再度のヨル頭突きを顔面に喰らう櫻宵を見て、リルはまたひとつため息をつくのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
数宮・多喜
【アドリブ改変・絡み大歓迎】
いやぁ終わった終わった!
終わってみれば大漁で言う事なしじゃないのさ!
さあ皆、盛大に盛り上がるよ!
ムルヘルベルさんもほら、遠慮すんなって!
さすがにこのデカさだと、食いでがあるねぇ。
ハサミや足をメインで食いたいところだけど、
ここはもう一捻り!
軽く割った甲羅を少し洗って、ざるに入れて煮込む。
これでしっかりとしたうま味が出ただし汁が完成!
コイツを使って米を煮込んで、カニ雑炊のベースにしちまうよ!
そこに最初に捌いてた魚の刺身も合わせて……
旨い!こりゃあ酒も進むってもんだよ。
ドワーフは火酒が好きだって言うけど、
アタシもご相伴に預かってみたいもんだね!
ほら、ハイ・ホー!
バルディート・ラーガ
ハイホーッ!ワッハッハ。発泡するおサケが美味いッ。
あのドデカイ蟹にゃ肝冷やしやしたが、なンとか皆々様と力を合わせ
無事に大ナベ・パーティと相成りやしたねエ。良かった良かった。
おサカナも無事に調理済にありつけやして……ンンー。美味!
生も良いモンですが、焼いた身もほぐれて格別ですよう。グビグビ。
流石ドワーフの皆々様。イメージに違わねエどでかいぶつ切りで
大変豪快なお鍋ですねエ。……一口食うにゃ顎が外れっちまいそだぜ。
しかしいかに恐ろしき蟹と言えど、こうしてお料理されちまやア
すっかり形無しじゃアねエの。ヒッヒッヒハフっ!熱ッ!熱い!!!1
(蟹にマウントをとり調子に乗るや否や口内を火傷する蛇)
エドゥアルト・ルーデル
アーキロギア氏とガラット氏も誘いますぞ
拙者との仲だもんね!断ったら絶対に許さないよ
乾杯の前から戦いは始まっていると言っていい
ここはシンプルに蟹鍋でござるね…蟹の貯蔵は十分か?
乾杯と同時に酒を飲み干し蟹の争奪戦開始でござる
残念だけど蟹の前には味方も無いんだ…そして敵もね
【早業】のように蟹を奪い取り殻を吹き飛ばしその身を貪り食い、そして時になんかやられる
いいでござるかアーキロギア氏、ガラット氏、死は結果だ!
うま味な蟹を愉快な仲間達(旅団員)と取り合って死ぬ、それはただの結果だ
実際すぐ【リスポーン】するしな(ヌッ)
あと知らない人がいても気にするな
拙者は今メチャクチャ蟹が食べたいんだ
カルキノス・マークスリー
蟹の眼柄カメラはぐつぐつと煮える鍋の中にピントを合わせる。
戦いは鉄蟹の、また鉄蟹の与した陣営の勝利であった。
敗けた砂漠蟹は狩られ、いまや無残な有機物質の塊となり
加水分解された肉はうま味として溶け出しながら人々の腹に収まる。
アックス&ウィザーズの大地に根ざした、自然のサイクルである。
蟹は食物連鎖に加わる事は無く、ただ鉄鋏で鍋を撹拌する。
その姿はかの地に伝わる、超巨大芋煮鍋を供する為の重機にも似ていた。
鍋を供する巨大蟹の姿は誰かにショックを与えるやもしれないが
蟹はただ機械的に作業を続ける。その思うところは誰にも分からない。
「いやぁ、終わった終わった!」
激闘(?)を乗り越え、酒場にやってきた数宮・多喜。
あちこちではがやがやと乾杯の音頭があがり、蟹鍋の熱気が酒場を包む。
終わってみれば大漁、言うことなし。あとは呑んで食べて騒ぐだけだ。
「いやまったく、大山鳴動してなンとやらでございやすねエ」
バルディート・ラーガも上機嫌だ。強敵・蟹を打倒した喜びもあるだろう。
「おや、オヌシらも戻ってきたか。もうみな騒ぎ始めているぞ」
「さあさあ、細かいことはええから乾杯じゃ乾杯じゃ! ジョッキを持て!」
宴を堪能していたムルヘルベルとガラットが、ふたりのもとへやってくる。
そしてジョッキをふたりによこし、とくとくとエールで杯を満たす。
「そうだね、盛大に盛り上がるよ!」
「ンじゃまア、さっそくハイh」
「アーキロギア氏! ガラット氏! こんなところにいたでござるか!!(にゅ)」
「「うっ」」
そこで軟体動物めいて顔を出したのは、エドゥアルト・ルーデルである。
ガラットもムルヘルベルも、乾杯しようとした姿勢のまま苦い顔をする。
なにせこの変質者、関わるだけでろくなことがない。前のあれこれで知っている。
「なんでござるかその顔。拙者とも乾杯しようでござる!」
「いや、ワガハイはちょっと……」
「ワシもこうなんというか、お前さんのヒゲはなんかのう」
「拙者と氏らの仲でござろう? 断ったら……絶対に許さないよ」
ぐぐぐっ。なぜか妙な角度でサムズ・アップするエドゥアルト。
「誰このおっさん!?」
「いやエドゥアルトさンでさアよ……しかしうま味を感じる口元ですねエ」
仕方ないのでエドゥアルトも交え、改めて乾杯をすることに。
「「「「「ハイホー!!」」」」」
ガッシャーン!(乾杯をした音)
「「ワーハッハッハッハ!」」
ゴッゴッゴッ。一気に酒を呷るバルディートとエドゥアルト。
「「ワン・モア!!(おかわり!)」」
「開幕からテンションマックスであるなオヌシら!?」
開幕からやや不穏な気配である……(フラグ)
「って、カルキノスさん何やってんだい!?」
さっそく鍋を賞味しようと、ひときわ大きな鍋のところへやってきた一同。
そこではカルキノス・マークスリーは、重機めいて鍋を撹拌していた。
ウィーン、カリカリカリ。蟹の姿をしたウォーマシンは眼柄カメラで語る。
「なるほど……すべてはうま味のため、と。そういうことですかい……!」
「え、いまのでなんの理解があったのかアタシにはさっぱりなんだけど……?」
「まあまあ数宮氏、細かいことは気にせずぱーっと行くでござるよぱーっと!」
二杯目を飲み干し上機嫌のエドゥアルトが、多喜に言った。
「そう、いわばこれは蟹鍋争奪戦。願いを叶えるための無慈悲な戦いでござる」
「いやなんで蟹を聖杯かなんかみたいに言ってんのさ?」
「残念だけど蟹の前には味方もないんだ……そして敵もね!!」
ササササーッ! エドゥアルト、ゴキブリめいた速度で鍋に接近!
そして煮えたばかりの蟹の身をひとりでおいしくいただこうと手をKRAAAAASH!!
「グワーッ!?」
「ああっ! カルキノスさんのハサミが!!」
「エドゥアルトさンがふっ飛ばされたーッ!!」
カルキノス、無慈悲なハサミ攻撃でエドゥアルトを容赦なく一蹴した。
弓なりに吹っ飛んだエドゥアルトが、頭から地面に激突する。ドゴンッ!!
「まあいきなり手を出せばそうなるよね……アタシらは普通に食おうか」
「というかなんであやつは、いきなり争奪戦とか言い出したんであろうか……?」
呆れつつも、ムルヘルベルは多喜とともにカルキノスの了解を得る。
そこで多喜が取り出したのは、細かく割り少々洗った蟹の甲羅である。
ザルに入れたそれを鍋の片隅に放り込み、ぐつぐつと煮込むのだ。
「ほほう、カニ雑炊であるか。美味そうであるなあ」
「お、わかるかいムルヘルベルさん! 酒もいいけど米もないとねぇ」
「かーっ、魚の刺身が進みそうじゃアねえですかい! けどやっぱ……」
バルディートのほうはというと、赤赤と茹で上がった大きな蟹の身を頬張る。
ドワーフたちが豪快にぶつ切りにした蟹の身は、それだけで顎が外れそうだ。
「はふっほふっ……っくぅ~! この丸呑みの快感ったらねエや!」
「ドラゴニアンらしい食べ方だねぇ。けどそれ、口の中火傷しないかい?」
「なアに言ってやす多喜サン。いかに恐ろしき蟹と言えど、もう調理済みですぜ?
すっかり形無しでございやすよ、そうらもう一口……ヒッヒッヒハフッ!?」
調子に乗ってもう一口食べたバルディート、涙目でのたうち回る。
案の定調子をこいていたら口の中を火傷したようだ。あるいは蟹の逆襲か。
一同はそんな彼の姿を見て笑いつつも、水を差し出してやった。
「落ち着いて食べようじゃないか、蟹は逃げやしないよ! ねえムルヘルベルさん?」
「うむ。のんびりいこうではないか、酒もあることだしな」
「斃れたって実際すぐリスポーンするしな(ヌッ)」
「「「ギャアアアアア!?」」」
背後から現れたエドゥアルトの"圧"に、悲鳴をあげる三人。
「ンモーいちいち反応がひどいでござるよー? 拙者傷つくでござる☆」
「いやそのくねくね踊りをやめんかお前さんは! ……ところで」
ガラットは、そんなエドゥアルトの隣で蟹鍋の調理をしている男を指差した。
なぜか首にコルセットをしており、前髪がだいぶ後退している。
「誰じゃそいつ……?」
「誰であるか!?」
「えっ誰だい!?」
「誰でごぜエやす!?」
「ピーボッポーピポボボー(誰だそいつという動きをするカルキノス)」
振り返るエドゥアルト。
「……えっ誰!? 誰なの!? 怖いよぉ!!」
謎の男、黙々と蟹鍋をかき混ぜる! コワイ! 誰なの!?
一同は、何か盛られてないかと戦々恐々とするのであった。
「あ、でもこいつは旨いね。酒まで持ってきてくれんのかい? ありがたい!」
「しかもお酌までしてくれるとかいたれりつくせりでやすねエ」
「なんなのであるかこの空間は……」
謎の男、割と甲斐甲斐しく世話してくれたという。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ネグル・ギュネス
戦を終え地獄モード解除(地獄が終わったとは言っていない)
さて、カーニィ(流暢な発音)を捌いて、鍋の具材に並べる
料理はあまりやるなと言われたが──そうだ、絶対やるなとは言われてない(独自解釈)
大丈夫、私にも得意な料理がある
パスタだ!!
ワインでも飲みながら、カニクリームパスタを作成し、振る舞おう
特に女性には、
「麗しい貴女の素敵な唇に合えば宜しいのですが」
とか
「素敵な貴女にだから食べてほしいのです」
とか、酔っ払った勢いで地中海式紳士とスマイルで食べさせてみよう
なおちなみにパスタだけは上手い
茹でてソース絡めただけだから(ソース作:別の人)
ほらムルヘルベル、ガラットも、美人に言葉を紡がないのは大罪だぞ?
千桜・エリシャ
ふぅ…色々とありましたが…
ついに宴が始まりますのね!
まあ!こんなに大きなお鍋を見たのは初めてですわ!
それに随分と豪快なお料理ですこと…
異世界であることを抜きにしても
こういうお料理は生まれて初めてかもしれませんわ
新鮮ですわね
いつもはお料理を振る舞う側ですが
たまには羽根を伸ばしても構いませんわよね…?
では、はいほー!ですわ!
ふふふ、身体も動かしましたし
いつにも増して沢山食べられそうですわ
🌸お食事する方向でお任せ
見た目に反して健啖家
お上品に沢山沢山食べて宴を楽しみます
リーオ・ヘクスマキナ
……なんか凄いトンチキが起こってた気がするけど気にしない。うん、気にしないようにしよう……
ともあれ、ハーイホー!!
お鍋だー! 器2つ下さいなー!!
はい、赤頭巾さん。器どうぞ。んでもって、いっただっきまーす!
……あぁ~、蟹の味が染み込んだ野菜も蟹の身も美味しい……
空飛ぶ魚も、見た目は不思議だったけどコレまた美味しいし。ん~……幸せ
……あれ、なんか香ばしくて良い匂いが?
って、赤頭巾さん何やってるの?! そんなのアリ!?
(炎を纏った弾丸を種火に、シレっと持ち込んだ醤油や味噌を塗った蟹の身を軽く炙っている。俗な事に詳しすぎでは??)
(……ところで、彼女が食べた分は一体何処に消えるのだろうか)
ピリカ・コルテット
蟹さん狩り、お疲れ様でしたー♪(ぴこーん&はいほー!)
慣れない真の姿でしたが、流石大きな依頼!知り合いも沢山で助かりましたねっ!
戦いでカロリーを放出した分、ばっちり美味しく回収していきますよーう☆
絶品の料理には、やっぱりお酒がお供ですよねっ♪
目に付いた蟹料理にー、ご当地なドワーフの地酒を合わせて私も優勝していきます!
ビッグマックスさんに感謝しつつ幸せを味わっちゃいましょう☆
せっかくの宴ですから、どなたかとお祝いしたい気持ち!
私はお酒には強い方なので、いくら飲んでもちょっと馴れ馴れしくなる位ですよ~~
えへへっ☆
混ざるも絡むも聞くもヨシ、騒ぐもヨシな感じでノリに流されつつ楽しみましょう♪
「「「はいほー!!」」」
かっちーん、とグラスを打ち合わせる三人。
千桜・エリシャ、リーオ・ヘクスマキナ、そしてピリカ・コルテットだ。
うちふたりはジュースで、ピリカはお酒。マナーもきちんと守っている。
杯を勢いよく傾け、まずは一杯。飲みっぷりも実にダイナミックであった。
「ぷはー! やっぱり運動したあとのジュースって最高だよねー!」
「カロリーはたっぷりと放出しましたもんね、ここからは美味しく回収です♪」
リーオもピリカも満足げ。蟹と魚のパラダイスということもあってウキウキだ。
「そうですわね、色々あった気がいたしましたけれど……」
「エリシャさん、そのことは気にしないようにしよう。終わったことだからね」
女将の台詞に被せるように、リーオが言った。すべては過去!
なんかえらいトンチキな一幕があった気がしたが、頭がぼんやりするので解らない。
詳しく考えると色々頭痛が痛くなりそうだ。なので、忘れよう。
「そ、そうですわね。宴ですもの。楽しいことを考えましょう!」
「それで思い出したんですけれど、蟹鍋はどこなんでしょ~?」
きょとんとした顔のピリカ。そういえば、卓上に鍋がない。
はてな、誰かが持ってきてくれるのか? などと考えていると。
「ナイスタイミングのようだな。おまたせしました、こちらでございます」
「「「あっ!」」」
そこへ鍋やらなんやらを運んできたのは、ネグル・ギュネスであった。
まさか、また地獄が始まるのか。トンチキが始まってしまうのか。
微妙に不安になる一同だったが、ネグルはいつもの紳士的な笑みを浮かべる。
「? どうした、みんな? カーニィ(流暢な発音)、食べないのか?」
「……(一瞬不安になりましたけれど、大丈夫そうですわね)」
「ひそひそ……(やっぱりトンチキなんてなかったんだよ、うん)」
「こそこそ……(むしろネグルさんが全力でなかったことにしにいってますね……)」
三人は声を潜めて語り合い、とりあえず流すことにした。
だって楽しいパーティなのだ。ここからはもう素直に呑んで騒ぎたい。
しかもテーブルの中央に置かれた蟹鍋は、もうすっかりぐつぐつ煮えている!
「それにしても、ずいぶん豪快なお料理ですわ。私、生まれて初めてかも」
「あー、たしかにエリシャさんはもっと繊細なお料理がメインっぽいよねぇ」
目を輝かせるエリシャのほうを見て言い、リーオはさっそく蟹の身をぱくり。
なおそんな彼の隣では、相棒である"赤頭巾さん"もちゃっかり着席している。
「……ああ~、出汁がよく沁みてて美味しい……これだよ、これ!」
「きゅるるー! なお魚さんも、身がぷりぷりしてて美味しいですねー☆」
ピリカもご満悦だ。なにげに彼女、見た目不相応に酒が強いらしい。
蟹や魚の身を肴に、ドワーフ印の"巨人殺し"をちびちびやっている。
「ビッグマックスさんに感謝、ですね♪ これは優勝間違いなしですよー!」
「実はこれらは私が捌いたものでしてね。喜んでもらえてなによりだ」
ネグルのセリフに、エリシャは「ん?」と一瞬首を傾げた。
はてな、エアティック・フィッシュを退治するとき、
ネグルは大いにヘマをやらかして、ガラットに厨房立ち入り禁止を申し渡されたような……?
「おほん! まあ、細かいことは気にせずに。女将、こちらもいかがです?」
「あら、これは……パスタですわね? それもカニクリームパスタ!」
見た目にそぐわぬ健啖ぶりでもりもり蟹の身を食べていたエリシャは、
思考に割って入るように差し出されたネグルの皿に、快哉をあげた。
なるほどたしかに、皿の上に盛り付けられたのは美味そうなカニクリームパスタだ。
「私の得意料理だからな。ああ、もちろん人数分あるから、ご安心を」
「わーお! 和洋折衷なんて贅沢だなー、いっただっきまーす!」
「これまたお酒に合いますねー♪ あ、ネグルさん、ワインありますか?」
リーオもピチカもこぞってパスタを賞味。これがまたとろけるほどに旨い。
得意料理と豪語するだけあり、具材の味はもとよりパスタの茹で具合もバッチリだ。
そしてピチカに言われれば、ネグルはソムリエめいて瀟洒にぶどう酒を注いだ。
「せっかくだ、私も頂こうか……うん、旨い」
「ちゃっかりしてますわね、ネグルさん。酔っ払ってはいけませんわよ?」
大丈夫大丈夫、とエリシャに手を振るネグルだが、飲むペースが少々早い。
味のせいかノリのせいか、あっという間にいい気分になってくる。
「おお、お前さんたちも派手にやってるようじゃな! ハイホー!」
「珍しい顔ぶれであるな? それにしてもパスタか、これはまた美味そうな……」
と、そこへ、あちこちの席を巡っていたガラットとムルヘルベルがやってきた。
「ガラットさん! 楽しんでますかー!? はいほー!」
「ぴ、ピチカさんが普段よりテンション上がっていますわ……!?」
「酔っ払っているというより、ノリノリなようだなあ」
いえーい! とドワーフと乾杯するピチカの姿。ちょっと新鮮である。
ネグルのほうもネグルのほうで、すいすいと酒を呑んでいる真っ最中だ。
「ところでそこの美しい方。このパスタ、よければあなたにもご賞味いただきたい」
「ん、ん、なんじゃ? この男ノリが少々……?」
「お気になさらず。素敵なあなたにだから食べてほしいのです……」
キョトンとした顔のガラット。なぜかずいずいと攻めていくネグル。
酔っ払ったせいで、地中海式のイケメンモードが顔を出したらしい。
「まったくもう、殿方ってみんなこうなのかしら?」
「ってその台詞は男として聞き捨てならないな~、一部だけだって!」
呆れた様子のエリシャに、ツッコミを入れるリーオであった。
……なお、隣りにいる赤頭巾は、自慢の炎弾でうまいこと蟹の身を炙り、
なぜかご持参していた醤油だの味噌だので味付けをしている。し、渋い。
「あ! 美味しそうな匂いじゃないですかぁ、味変カンフー世紀ですねー☆」
「味変カンフー世紀とはなんであるか……? だが美味そうであるな」
「ムルヘルベルさんも乾杯しましょー♪ はいほー!」
「うむうむ、わかったわかった。いやはや騒がしいことである」
ピチカの乾杯に応じつつ、グリモア猟兵の賢者も苦笑混じりに楽しげだ。
「え、何、みんな食べたいの? じゃあ赤頭巾さん、配ってあげてよ!」
「あ、よければワシも」
「その前にレディ、どうかこのパスタをもう一口……」
「ええい、お前さんなんじゃそのノリは!? ワシじゃぞ、ガラットじゃ!!」
「あ、なんだガラットか(スンッ)」
「その冷静ぶりも逆に腹が立つんじゃが!?」
どうやらネグル、酔いのせいで馴染みのドワーフと気付かなかったらしい。
ぷんすか怒るドワーフ(彼女はなにげに今素顔を晒している)とのやりとりに、
誰ともなく笑い声があがった。うまい飯に旨い飲み物、これぞ宴の醍醐味だ。
「ネグルさん、こうなったら私、まだまだいろんな蟹料理を食べてみたいですわ」
「むっ。女将のご所望とあれば仕方ない。頑張ってみるか!」
「ぴっこーん☆ おつまみ作っちゃいますかー? お手伝いしますよ♪」
あれをこうしよう、これをこうしよう、とピチカもノリノリだ。
乾杯の音頭は、定期的に何度も卓の上に転がったとか。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ヘンリエッタ・モリアーティ
【双龍】
お疲れ様ぁ、灯理
やったー!私ねぇ、肉よりも魚の方がほんっとに好きなの!
灯理はお料理?一緒に作っちゃお
……灯理、料理上手になったわよねぇ
成長を感じるわぁ。女子力的な
私は隣でパスタ作っちゃお
魚介はペペロンチーノが美味しい気がするのよね、手軽だしぃ
一部はほぐして唐辛子とニンニクひとかけと一緒にパスタと混ぜちゃうのよ、メインの身はちょっとオリーブオイルかけてグリルで焼いておけばOK
ンー、いいかんじ
あー!グラタン!ありがとぉ
灯理もどーぞ。一緒に食べましょ?
はい、「あなた」。ワインついであげる
赤の方が好きでしょお?――私っぽくて
今日もお疲れ様でした♡
いーなー、動物たち
私にも構ってくれなきゃ嫌ぁよ
鎧坂・灯理
【双龍】
マリー、お疲れ様
カニも魚もたくさんあるから、たくさん食べてくれ
さて、キッチン借りようかな
コーンとキノコを炒め、薄力粉と牛乳でホワイトソース風に
カニの身を入れて塩胡椒、味を調えて甲羅に盛る
チーズを乗せたら、カルラに弱めにあぶって貰って
焦げ目が付いたら完成
はい、どうぞ
料理なあ 食えればいいと思っていたが、美味しそうに食べてもらえると幸せでね
好きな人ならなおさらだ
ああ、そちらもおいしそうだな うん、一緒に食べよう
おや、ありがとう……ふふ、確かに
そちらこそさ、「おまえ」
何個か包んで『玄武』で持ち帰ろう みんなにお土産だ
ん?ああ、ウィルとカルラの分もあるぞ そら食え(ゆで野菜と魚介を紙皿に盛る)
あちらこちらで騒がしい酒場、厨房もフル回転である。
ドワーフというのは元来お祭り好きで、ナティビアード氏族は輪をかけてそうだ。
ゆえに厨房は、多くの猟兵が借りても余裕があるだけの広さが用意されていた。
そこへ新たにやってきたのは、ヘンリエッタ・モリアーティと鎧坂・灯理。
「有り難いけれど、いいのか? マリー。席で待っていてくれてもよかったのに」
「いいのよぅ、ひとりでいるより灯理と料理したほうが楽しそうだもん❤」
どうやら、メアリのほうが一緒に、とねだってついてきたようだ。
灯理は苦笑しつつも無碍にはせず、キッチンの一角を借りて調理を始める。
まず最初にしたのはとうもろこしと茸、さらに薄力粉と牛乳だ。
もちろん、わざわざ一本狙いした蟹爪の美味な身もたっぷり並んでいる。
「で、何を作るの灯理?」
「甲羅を器にしてグラタン風、というのはどうかと思ってね」
「いいわね! じゃ、私はパスタ作っちゃおーっと」
ふたりは並んで作業をする。揃ってどちらも手際が良い。
灯理は茸とコーンを手早く炒め、薄力粉と牛乳を加えてホワイトソース風に。
時折塩コショウを入れて味を調整しつつ、蟹の身にもしっかりと火を通す。
対するメアリはパスタを茹でつつ、手頃に切り分けた魚の身をほぐしていく。
唐辛子、にんにくと、味付けのための細かな材料も並行作業で刻むのだ。
「……ん? どうしたマリー」
ひととおり調理を終えた具材を蟹の甲羅に盛ったところで、灯理が顔を上げた。
なぜかといえば、隣で料理していたメアリが彼女の手元をじっと見てたからだ。
何か不足があっただろうか……と手順を思い返すが、特にミスはなかったはず。
「や。灯理、料理上手になったなぁ、って。成長を感じるわぁ」
「ああ、なるほど。……そうだなあ」
盛り付けた具材のうえにチーズを乗せ、小龍の炎で炙ってもらいながら、
灯理は昔を懐かしむように遠い目をした。そして、ふっと苦笑する。
「昔は食えればいいと思っていたのはたしかだ。が……色々、あったからな。
美味しそうに食べてもらえると幸せだろう? それが好きな人ならなおさらに」
普段の鋭い雰囲気しか知らない人が見たら驚きそうな柔らかそうな微笑み。
そんなつがいの台詞に、メアリは生娘のように頬を赤らめた。
「そうねぇ、食べてもらえてこその料理だもの。灯理の料理、楽しみだわぁ」
メアリ特製のペペロンチーノが出来上がったのは、ほどなくしてのことだった。
互いに手ずから用意した料理を間に、ドワーフおすすめのワインをひとつ。
グラスはふたつ。揃って向かい合った席につき、いただきますと手を合わせた。
「さて、どちらから手を付けようか。やはりマリーのパスタを……ん?」
灯理が顔を上げると、メアリがワインボトルを手ににこりと微笑む。
その仕草の意味するところを察し、灯理はおもむろにグラスを取った。
「はい、"あなた"。ワインついであげる。改めてお疲れ様ぁ❤」
「ありがとう、"おまえ"。お疲れ様だよ、そちらは私が注いであげよう」
とくとくとく……と音を立てて、血のように紅い葡萄酒がグラスを満たした。
ふたりは互いの顔を見つめ、ゆるく笑みを浮かべ、グラスの縁を打ち鳴らす。
かちん、と上品で小気味いい音。ルビーのような液体がきらめき揺れた。
「「乾杯」」
そして一口、唇を濡らす。労働のあとの酒はそれだけでも格別だ。
ましてや一緒に卓を囲むのが、愛する"つがい"であるならばなおさらのこと。
「灯理、ワインは赤(こっち)のが好きでしょお? ――私っぽくて」
「ふふ、もちろん。さて、それでは料理のほうをご賞味させてもらおうか」
最初に手をつけるのは、互いに相手の料理。それが礼儀というものだ。
そして慣れたふたりが愛情を込めた手料理は、具材の新鮮さも相まって、
実に舌を楽しませてくれた。ワインが進む味付けたのもまた心地よい。
「そういえば、事務所のみんなにお土産も必要よねぇ?」
「ああ、『玄武』で持ち帰ろう――っと」
物欲しそうな顔の白狼と小龍に気づき、灯理は紙皿の上に具を盛ってやった。
どちらも嬉しそうに高く鳴いて、ぱくぱくと魚介を堪能する。
「……いーなー、動物たち」
「そうへそを曲げないでくれ、"おまえ"。これからはふたりの時間なんだから」
「……ふふっ。そういうことなら勘弁してあげるわぁ」
拗ねたような表情から一転、嬉しそうに笑みを綻ばせるメアリだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
叢雲・源次
【桜煉】アドリブ歓迎
「蟹を奢ってやる。」
互いに相応の対価を払った故に奢る、というのは語弊があるが…
まぁそういうことだ。食え。絵的に危険な気もするがお前も齢60ならば飲め
厨房を借りられるらしいが、俺の台所はここではないのでな…
今回は、食べる事に専念するとしよう
流石あそこまで成長した蟹だ…味も濃厚でいい出汁が出ている
エアティックフィッシュも脂がのっていて旨いな…ムルヘルベル・アーキロギア、良い依頼を持ってきてくれた。感謝する
余っている蟹肉があれば分けて頂きたい
いや、折角なのでな…これらを使ってうちの店でも限定メニューを出してもいいと思った。何、保存は心配するな。UDC組織の冷凍保管庫を借りる
芥子鴉・芙蓉
【桜煉】アドリブ歓迎
今回の一件でわらわは“叢雲のの甘い言葉には気をつけろ”という教訓を得たんじゃよ!高い授業料じゃったね!ぷんだ!(せめてもの美少女要素)
しかし誘ってくれたことには感謝せねばの。
こうしてカニをたらふく食えるんじゃから!
まぁ労働はしたけれどカネは払っておらんし、実質タダじゃ!
タダほどうまいメシはない!わらわそう思うことにした!
あ、今回一服するのは食後に控えておくんじゃよ。
美味いメシ食った後の一服がね?これまたたまんないの。
さて、叢雲のも飲め言うとるし、じゃんじゃか飲むんじゃよ!
飲めや歌えやって気分じゃな!がはは!絵面は気にするでないよ!
(数時間後)
お゛え゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛……
"蟹を奢ってやる"。
叢雲・源次の台詞に端を発する、今回の一騒動(?)
芥子鴉・芙蓉ははじめ、騙されただのなんだのと大いに騒いだ。
しかし実際に仕事が終わって酒場に来た彼女が、いまどうなのかというと……。
「かーに! かーに!! かーに!!! かーに!!!!」
ノリノリであった。子供みたいに手を叩いて蟹コールをしていた。
ぐつぐつ煮える蟹鍋を挟み、源次は鍋奉行を半ば押し付けられている。
「叢雲のぉ~、蟹はまだ煮えんのか!? わらわ待ちくたびれたのじゃ~!!」
「……こんなことを俺からいうのもなんだが……」
煮具合を確かめつつ、源次はじろりと芙蓉を睨んだ。
というか、呆れた。はしゃぎまわる子供を見る親の目つきであった。
「最初のあの駄々っ子ぶりはどうした……」
「ふうむ、よくぞ聞いてくれた」
なんでお前そんな偉そうやねん、みたいなふんぞり返り方をする芙蓉。
「たしかにわらわは今回の一件で、叢雲のの甘い言葉には気をつけようと思った。
高い授業料じゃったよ……じゃが、それはそれ! これは!! これ!!!」
くわわっ。大きく目を見開く芙蓉。美少女要素どこ行った?
「誘ってくれたことには感謝! そして蟹をたらふく食えるのは事実!
労働はしたけれどカネは払っておらん、つまり実質タダということじゃ!!」
「……(労働をした時点で対価は発生しているが、言うまい……)」
ただよりうまい飯はない。タダだと考えればそれだけで気分が上向くのだ。
単に芙蓉がバカだから労働の大変さをさっぱり忘れているとか、
まあそういうことでもあるのだが、源次は野暮はいわないことにした。
「ならばそれでいい。煮えたぞ、食え」
「おっほー!! かーに!! かーに!!! かーに!!!!」
「せめて静かに食え」
「蟹を前にして静かにしていられるわけがないじゃろうがむがもごもぐもぐもぐ」
「わかったから黙って食え」
丁寧に殻を剥いてやると、芙蓉はそのたびにズルルルーッ! と身を飲み込む。
喰う、というより吸い取っている。まるで跳ねるピンクの悪魔のようだ。
ハッ! まさか、芙蓉の髪色がピンクだったのはそういう……!?
「なんだか騒がしいようだが、どうかしたのであるか?」
「がつがつぐぁふぐぁふずぼぼぼもぐもぐもぐもぐ!!!!!」
「……怪物かなんかであるか? あれは……」
蟹を食べる化け物と化した芙蓉を見、呆れ返るグリモア猟兵のムルヘルベル。
源次は静かに鍋を楽しみつつ頭を振り、そんな彼を見て言った。
「あれは気にするな。だが、この蟹も魚の身も、実に濃厚な味で旨いのは確かだ。
ムルヘルベル・アーキロギア。いい依頼を持ってきてくれた、感謝する」
「はっはっは、こちらこそである。おかげでワガハイも楽しんでおるしな」
「ところで、余った蟹肉は分けてもらうことは可能だろうか?」
「うむ、量が量なのでな、むしろ推奨されておるようだ。ワガハイから頼んでおこう」
「……手間をかける。うちの店でも限定メニューを出してもいいと思ってな」
「ほう、オヌシは店をやっておるのか。それは気にな」
「がつがつがつがつもぐもぐもぐごっごっごっごっ(芙蓉が酒を飲み干す音)」
「やっぱり化け物かなんかなのではないかあれは……」
「……(静かに首を横に振る源次)」
散々な見た目であった。芙蓉はジョッキと言わず酒瓶をラッパ飲みしていた。
そしてぷはー! とおっさんみたいな酒くさい息を吐き出す。最悪だ。
「タダ飯にタダ酒じゃからのう! 呑んで騒いで食わねば損じゃろう!?
叢雲の、おぬしにも注いでやろうか! 美少女のわらわが! 美少女のわらわが!」
「ラッパ飲みしていた瓶を向けるな。いらん」
「このこの~、そう言って実は照れくさいんじゃろ~?」
「……(静かに大太刀の鯉口を切る)」
「どうどうどう! 源次よ、ステイステイステイ!」
血みどろの惨劇の気配に、慌てて止めに入るムルヘルベルであった。
「ガッハッハ! 叢雲のは面白いのう、おーい次の酒を持ってきとくれ!」
「ってオヌシ呑みすぎではないか? あとが怖いぞ?」
「何を言うておる! わらわは不滅じゃ! がははグッドじゃー!!」
ムルヘルベルは源次を見た。源次はやはり、静かに首を振る。
芙蓉は調子こいて呑みに呑みに呑みまくり、蟹に魚を堪能するのであった……。
数時間後。
「帰るぞ、芙蓉」
「お゛え゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛……おぼろぼろぼろぼろ……オロロロ……」
「…………」
酒瓶と合法アヘンにまみれてけろけろと虹色の液体を吐き出す芙蓉を、
絶対零度の眼差しで見下ろす源次であった。とっぴんぱらりのぷう。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
詩蒲・リクロウ
あー……ムルヘルベルさん回収ありがとうございました……。
死ぬかと思いました…。
いや、毎度色々な処理してくださってほんとありがとうございます、ええ、ほんと。
感謝してます。
さて、カニ鍋で……
ん?なんか光ってません?
あれ?僕の周りになんか鹿いませんか?
ここに鹿っていましたっけ……?
ハァッ!!!鹿!?
ちょ、ま、まだ僕鍋食べて、ヤメテ、乱暴シナイデ!僕のカニが!鍋が!
ムルヘルベルさん!カニ!タッパー詰めてとっていてくださああああああああああああ______
(リクロウは鹿と光に飲まれどこかへと消えた。また何処かの地で悪巧みの暴風を巻き起こしている事だろう。)
※ギャグです
「……なあオヌシ、なんで砂の中で溺死しかけておったのだ」
「深い理由があるんですよ……」
酒場にて。ムルヘルベルの呆れ顔に、詩蒲・リクロウはしわくちゃになった。
流砂に呑まれてTHE・ENDしかかっていた彼をなんとかテレポートで救い、
ここまで連れてきたのである。何をどうしたら砂の中で死にかかるのか。
「まあオヌシらの評判は耀もボロクソ……色々言っておったからな」
「えっいまボロクソって言いました? っていうかさりげなく一括ですか!?
やめてくださいよムルヘルベルさん、僕はあの三人とは違いますからね!」
「ワガハイ、まだ誰のことかは言っておらぬが……?」
「だいたいわかりますよ! 他に思い当たるフシないですし!」
やっぱり大概なんじゃないか、と言いかけたムルヘルベルだが、やめた。
"あの"チームの中で、リクロウがそこそこまともなのは事実である。
感謝しているのも間違いないだろうし、不憫さをなんとなく感じたのだ。
「ま、鍋は人数分十分に用意されているからな。さっそく食べるとよい」
「そうそう、蟹鍋ですよ! いやーこのために頑張りましたからね!」
ぐつぐつ煮えている鍋の置かれた卓に、ニコニコ笑顔で座るリクロウ。
さて、どれから食べようか。蟹か、白身魚か、はたまた野菜か?
笑顔で箸を手に取り鍋を覗き込むリクロウ。煮えている鍋が光り輝く。
「ん??? あ、あのムルヘルベルさん、なんか鍋光ってません?」
「は? ……本当に光っておるな???」
「ですよね、なんかこう料理漫画的なエフェクトが……?」
首を傾げつつも、リクロウは蟹の身を取ろうとした。
がっ。その腕に鹿の角が当たる。……ん? 鹿の角?
「「鹿!?」」
そしてふたりは気づいた。鹿(インパラ)が周囲に大量にいることに!
「ハアッ!!! 鹿!?」
そして鹿(タイガー)の群れは、リクロウに飛びかかる!
「リクロウーッ!!」
「ちょ、ま、まだ僕鍋食べて、ヤメテ! 乱暴シナイデ!!」
必死に鍋を守りつつ応戦するリクロウ、だが鹿(グリズリー)が多すぎる!
あっという間に鹿に呑まれるリクロウを、ムルヘルベルは愕然と見送るほかない。
すると空に鹿(UFO)が現れ、リクロウをトラクタービームで照らした!
「UFOー!?」
「ムルヘルベルさん!! 蟹!! タッパー詰めておいてください!!」
「えっ」
「僕は大丈夫ですからいやダメですがああああああああああああ――……」
そのまま鹿(バッファロー)の群れとともに吸い込まれていくリクロウ。
消えていくUFO。あとに残されたのはグツグツ煮えた蟹鍋のみ……。
「…………やっぱりあやつら、猟兵ではない別の何かなのでは……?」
嵐が去っていったあとで、呆然と呟くグリモア猟兵であった。
大成功
🔵🔵🔵
夢ヶ枝・るこる
■方針
・【POW】使用
・アド/絡◎
■行動
後は、実食ですねぇ。
楽しみですぅ。
ハイホー!
【豊饒現界】を使用し[大食い]と[料理]を強化、大鍋を中心に回り、出来るだけ色々な種類のお料理を沢山いただきますねぇ。
量はかなり有るみたいですし、遠慮は無用でしょうかぁ?
お飲み物は、年齢上お酒はいただけませんので、それ以外を色々と。
「現地のお料理」等も教えていただけますと、有難いですぅ。
代わりに、と言っては何ですが、私の方からも「カニクリームコロッケ」と「かにめし」を御用意させていただきましょう。
宜しければ、レシピもお伝えしますねぇ。
出来れば、皆さんへのお土産に幾らかお持ち帰りしたいところですが、如何でしょう?
オニバス・ビロウ
はいほー
…これらを食すために、朝から食事を抜いてきたのだ
いや元から戦闘をする前は飯を食わぬ事を誓っているのだが、今回は特に気合を入れて抜いてきた
…うむ、食を抜いてきた故に戦闘中は敵が飯にしか見えなかったのでな…少々気が立っていたのだ
訳の分からん挙動をしたなと己でも思うわ
だが今は心が落ち着いて穏やかな心持ちである
やはり美味いものを食すと心が満たされるということを実感するな…
蟹が無限に食えるし…ヒレ酒も目玉も美味いし焼いたものも美味い
あと刺身で食べたいがわさび醤油はどこだ、これだけ猟兵が居たら持ってきてる奴居るだろ
こちらからは柚子胡椒が出せるので交換希望だ
(アドリブ等は歓迎する)
ティオレンシア・シーディア
※アドリブ掛け合い絡み大歓迎
はぁ…お酒飲み放題の上にカニとお魚食べ放題なんて、ホント幸せだわぁ…
普段はあたしも作る側だけど。今日はオヤスミして、ひたすら消費するほうに回ろうかしらぁ。
ん~、やっぱりここのお酒は美味しいわねぇ。
(ちなみに。ティオレンシア、細い見た目に似合わず中々の健啖。端から料理を制覇していく気満々である。
…そして、手にしたグラスになみなみと注がれているのは当然のように「悪魔殺し」。手を出す人間自体がさほど多くないため、もはやボトルを抱えてチェイサーかの如くかぱかぱと空けている。知識のあるものからすれば卒倒ものの光景であろう)
後味は甘いんだけど、口の中すっきりするのよねぇ、コレ。
舘林・祀
さぁ、宴よ宴!
新鮮なエアティックの刺身に、ビッグマックス蟹三昧!
ハイホー!頑張ったかいがあるってもんよ
……でも、おかしいわね。不思議と何か口内に残ってるの
蟹だけど、蟹じゃない。ジューシーなのに、ぴりぴりする
そんなありえない味が、ほんのりと舌の上に
えぇい、嫌な記憶は最高の記憶で上書きよ!
もう今日はお腹がはちきれてもいいっ
片っ端から食べれるものをもってきなさーい!
あ、もちろんお酒はNGよ?
なんてたって、まだ華の高校生なんだから
酔っぱらいの相手はしてあげるわよ。もちろん、この拳で
遠慮しなくていいわよ、ちょうどいい腹ごなしになるしね!
煌天宮・サリエス
……たくさんの蟹……たくさんの魚。
あぁ、楽園はここにあった。
大きめの海鮮鍋を頂いて、蟹と魚の出汁が利いたスープをジョッキに注いで
ハイホーなのです!!
蟹の殻とか魚の骨も気にせずばりばりと食べていくのです。
……あっ、蟹も魚もとてもとても美味しい。
これだから、他の世界の食は私の心を惑わせるのです。
私の箸が止まる気配はないけれど……そんな日があってもいいよね。
伊達・クラウディア
「ハイホー!」
やはり労働の後の一杯は格別ですね!(ジュースです。
そして、蟹!蟹です!蟹ですよ!
これが高級食材…ゴクリ
で、では、いただきます!
(黙々と鍋が空になるまで食べ続ける)
…ハッ!いつの間にか鍋が空に!?これが高級食材の魔力というのですか。
いくら美味とはいえ己を見失うなど未熟の証!このような誘惑をはねのけてこその剣豪です!我は決して屈しません!
えっ!おかわりもあるんですか?お願いします!
鬼柳・雄
※アドリブ絡み歓迎
いやー大漁だったなぁ
折角のドワーフとの宴だ、連中と騒ぐか 。ガラットー飲んでっか。アレ、お前女だったんか...?ドワーフは性別わかりにくいな。シア、しっかり食っとけよ。こんな大宴会滅多にねぇぞ。.......あれお前成長してね?食ってたらでかくなった?マジかさすが悪魔。それともこの蟹がジャイアントだからか?
ま、いいか。それならしっかり食えんだろ。
いやー一仕事終えた後の酒は美味えな!
「「「ハイホー!!」」」
宴で盛り上がる酒場に、また乾杯の音頭がひとつ響き渡る。
今回の発起人であるドワーフのガラットは、席という席を練り歩いていた。
「そっちはどうじゃ、呑んでおるか? お前さんはどうじゃ!」
「お、ガラット。そっちこそ呑んでるか……って!」
相棒の悪魔・マルコシアスとテーブルを囲んでいた鬼柳・雄は、
ガラットの顔を見て驚いた。なにせ彼女は素顔を晒していたのである。
「お、お前女だったんか……? 兜はともかく、あのヒゲは?」
「ああ、あれは付け髭じゃよ! ワシらナティビアードの正装なのじゃ!」
「そうだったのか……ドワーフってのは見た目じゃ性別分かりづらいなあ」
「よく言われるわい。ところでどうじゃ、お前さんもあっちで大鍋を囲んでは」
「大鍋? ああ、あの特にデカいやつか……シア、どうする?」
隣の悪魔をチラ見すると、シアはいましがた鍋をけろりと平らげていた。
「……選択肢、ねえなこれ。よし、んじゃおかわり食いに行くか!」
という具合に、雄らは大鍋を囲むメンバーに加わることとなった。
一方、その酒場中央にある大鍋の周囲では。
「ハイホー!」
ジュースが並々注がれたジョッキを勢いよく掲げつつ、舘林・祀が楽しんでいた。
「いやー、頑張ったかいがあるってもんよ。新鮮な魚の身に蟹の肉!
……蟹の、肉……いえ、忘れなさい祀、あんなまずい分身体のことは……!」
「何? まさかあの、不味いと言われていた分身体をつまんだのか」
「へっ? い、いえ、そんなことないわよ! 全然ないわ!!」
と力説する祀の慌てっぷりを見て、オニバス・ビロウは呆れた表情をした。
「みなまで言うまい。飢えていればそうもなる。
かくいう俺も、この宴のために朝から食事を抜いてきたからな……!」
「気合入ってるわねぇ。でもその気持ち、ちょーっとわかるわぁ」
近くでぱくぱくもりもりと鍋をつついていたティオレンシア・シーディアが、
うんうんと頷いた。取皿によそわれた蟹の身は、恐ろしい速度で消えていく。
しかもよく見ればこの女、恐ろしく強い"悪魔殺し"の酒をかぱかぱ呑んでいた。
アルコール臭だけで目が痛くなるレベルの、すさまじい劇物である。
ナティビアード氏族ですら飲み干せる者は稀という、勇者の酒なのだ。
「な、なんですかこのアルコールの匂いは……酒とは思えませんが……!?
やはり労働のあとの一杯はジュースでこそ。これが剣豪の心得ですよ!」
と、刺激臭に反応した伊達・クラウディアが、なぜか誇らしげに杯を掲げた。
見た目はあどけない少女であるものの、実は高齢のクラウディア。
飲もうと思えば酒を飲める年齢だが、言葉の通り酒は控えているらしい。
そんな彼女も彼女で、山盛りの身をよそってはすさまじい量で消化している。
……一方、大食いと言えば、新たにやってきた夢ヶ枝・るこるも大概だろう。
どうやら其処此処の様々な料理をつまみ食いし、堪能しているようだ。
「それにしてもこの蟹、本当に美味しいですねぇ。魚のほうもぷりぷりですよぉ。
お鍋にお刺身、甲羅焼きにカニミソ……どれも絶品で飽きないですぅ」
「甲羅焼き……? 名前からして心惹かれますね、そのメニューは……」
耳ざとく彼女の言葉を聞きつけた煌天宮・サリエスが、控えめに呟いた。
普段は清貧を心がけている彼も、今日ばかりは完全に軛を断たれている。
しかも驚くべきことに、サリオスは蟹の殻を剥いてすらいないのである。
魚の骨も一切気にせず頭からバリバリと喰う。見た目にそぐわぬ豪快ぶりだ。
「って殻まで食べるの、すごいわね……? 案外いけるもんなのかしら?」
「やめておいたほうがいい気がするわぁ。口の中、怪我しちゃうでしょお」
恐る恐る殻ごと食べようとした祀を、ティオレンシアがたしなめる。
サリエスは頭の上にはてなマークを浮かべつつ、バリバリまるごと食べていた。
「とか常識人みたいなことを言っているが、その強い酒も大概ではないか……?」
「お酒、まだ飲めないからピンと来ませんねぇ。匂いはすごいですけどぉ」
呆れるオニバスときょとんとしたるこるの視線も意に介さず、
ティオレンシアは火をつけたら燃えそうな酒をすいすい呑んでいた。
ちらほら人間をやめているのがいるあたりも、実に猟兵らしい光景と言える。
「おういお前さんたち、盛り上がって……おるな。ものすごい食いっぷりじゃな!」
「あっ、ガラット殿……はっ!? こ、これは……違うのです!」
やってきたガラットの呆れた声に、クラウディアは我に返った。
彼女がこんもりと取り分けた皿は、もうすでに空になっている。
どうやら旨さのあまり、無我夢中で勢いよく平らげてしまったらしい。
「まあそう恥ずかしがらんでよい、見てのとおりこの鍋は特製じゃからな!
お前さんたちのおかげで材料も山ほどあるし、鍋以外の料理もたんまりじゃぞ!」
「あ、そういえばガラットさん、お料理のことで聞きたいことがあるんですかぁ」
「? なんじゃ?」
きょとんとするガラットに、るこるはにこりと微笑んだ。
「よければ、この氏族の皆さんのお料理をいくつか教えていただきたいんですぅ。
代わりにといってはなんですが……私もいくつかお料理を用意しましたのでぇ」
言いつつるこるが差し出した皿の上には……おお。
かりっかりに揚がったカニクリームコロッケ、さらにかにめしが載っている。
「ほう……どちらも旨そうだな。特に前者は酒のあてにぴったりだ。
……そうだ。誰ぞ、ワサビ醤油は持っていないか? 刺身に使いたい」
「渋い趣味してるわねぇ。そのひれ酒と交換でどうかしらぁ?」
「もちろんだとも、柚子胡椒もあるから、どうか自由に使ってくれ」
ティオレンシアとオニバス、酒飲みふたりの間で取引が成立した。
次第に大鍋を中心に、あれやこれやと料理を持ち寄っての宴会が始まる。
酒が飲めないクラウディアやサリエスも、量を目当てにこぞって参加した。
「ん~! 美味しいわねこのコロッケ! こっちの刺身も絶品だわ!」
「調理の仕方でこんなに味が変わるとは……ああ、いけませんまた食べすぎてしまう……」
「くっ、我もいささか食べすぎなのですが……しかし箸が止まりませんっ!」
若さに任せて次々に平らげる祀の勢いに、サリエスとクラウディアも刺激されてどんどん箸が、フォークが進んでしまう。
聖者と剣豪(自称)、節制を誓い普段は抑えているふたりであるが、
今日ばかりは無礼講。悔しそうに味を堪能するのであった。
「ようし。地元料理の披露がてら、メニューの追加といくかのう!」
「へえ、いいタイミングで来れたな。おいシア、おかわりが来たぜ!」
と、遅れて鍋のところへやってきた雄は相棒を振り返る……が、そこで首を傾げた。
「……ん? おいシア、お前成長してね……? 食ったらでかくなったぁ?」
気持ち背丈が伸びているように見えんこともない悪魔、雄はやや驚く。
が、あれほどの巨大な蟹であれば、こういう変化が起きるのもさもありなん。
「ま、細かいことはあとで考えるか。なあ、俺にも酒分けてくれよ!」
「おうとも、火酒もひれ酒も葡萄酒もあるぞ。乾杯といこうか!」
雄のジョッキをオニバスが満たしてやり、男ふたりでグラスを打ち合わす。
次から次に運ばれてくる、ドワーフらしいスパイシーな味付けの料理は、
酒飲みどもにとってはいいつまみ、若者にとっては米が進むいい主菜だ。
「なるほどなるほどぉ、ドワーフさんの料理文化は勉強になりますねぇ」
「お酒呑み放題の上に蟹もお魚も食べ放題なんて、ホント幸せだわぁ……」
ひとつひとつ舌で味わって、こくこくと頷くるこる。
ティオレンシアのほうも、気兼ねない宴の雰囲気に呑まれてご満悦だ。
まあ、ティオレンシアのほうは、相変わらずとんでもなく強い酒を水のように呑んでいるのだが。
「まさしく、地上の楽園はここにあった……というところですね」
「ですが食べすぎてしまうのは剣豪的に……えっ、おかわり? お願いします!!」
「遠慮するようなこと言いつつどんどん食べてるんじゃないの、ふたりして!」
サリエスとクラウディアの食べっぷりにツッコミを入れる祀。
そんな彼女は、鍋を中心にわいわいと騒ぐ猟兵とドワーフたちをみやった。
戦いのあとのにぎやかな喧騒。悪いものではない……いや、
この騒がしい陽気さこそが、どんな料理にも勝る最高のスパイスといえよう。
「よーし、私もまだまだ食べるわよ! 今日はカロリーも考えないわ!」
「うむうむ! では改めて、皆で乾杯といこうではないか!」
「「「ハイホー!!」」」
ガラットの音頭を合図に、みんなが杯を掲げて唱和するのであった。
もちろん希望者には、たっぷりと蟹や魚肉のお土産が贈られたという。
酒場がまるごと空っぽになるまで、まだまだ時間はかかるようだ……。
大成功
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