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恋歌は桜色に誘われて

#サクラミラージュ

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#サクラミラージュ


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●よくある光景
 帝都の中にあるとあるカフェー。それはどこにでもあるような店構えで、それでいて女子学生に人気のスポット。
 彼女たちの手元にはおみくじがあった。白い紙に混じって桜色の紙がひとつ。それを引き当てた女の子は大喜び。

 ――ねぇねぇ、知ってる?
 ――知ってるってば。『桜色の恋結び』でしょ?
 ――あそこのご神木へ、桜色のおみくじを結んでくるのよね?
 ――そうよ。恋の相手を裏面に書いてね。

 誰を書いたかを見られてはいけない。神様にそっぽを向かれてしまうから。
 どの枝に結んだか知られてはいけない。きっと恋路の邪魔をする者が現れるから。
 でも、恋を謳う友達と一緒に行くことは悪くない。

 ――ねえ。今日なんか桜色多くない?
 ――きっと恋の神様が大判振る舞いしてくれてるのよ。
 ――それじゃ今から『桜色の恋結び』してこよう?
 ――いいわね。皆の恋が成就しますように。

 彼女たちはカフェーを後にする。向かうは裏手の山にある、桜のご神木。

 そして……それは悲劇のきっかけ。
 彼女たちはご神木の傍に棲みついた影朧にその命を刈り取られるのであった。

●予知
「フォーチュンクッキー、というものはご存知ですか?」
 昨日見たという予知の内容を話し出す前に。涼月・カティア(仮初のハーフムーン・f05628)がグリモアベースに集まってくれた猟兵たちに問いかける。
 既に知っている人もいるかもしれないが、フォーチュンクッキーとは、『おみくじが中に入っているクッキー』のことだ。
「このカフェーでは以前から『フヲーチュンクッキヰ』があって評判なんです」
 おみくじなので基本的には大吉とか吉とか運勢の占いである。そしてこのおみくじにはお店側からのサプライズがひとつある。
「ごく稀に。おみくじの紙の色が桜色というものが出てきます」
 桜色に意味は無くて、始めたのも担当の趣味。だからその日のおみくじの中に桜色があるかどうかも決まっていないし、何枚という括りもない。それが逆に女子学生には刺激的らしい。
「なので、桜色が出たらただでさえ幸運なのですが、その幸運を使って恋のおまじないをするというのが今、大流行です」
 それが『桜色の恋結び』。恋が成就するとまことしやかに囁かれている噂。女子学生らしい、とても微笑ましいものだ。もちろん、男子学生であっても学生じゃない者であっても。そのおまじないをやっても何らおかしくないのは添えておく。

「問題は……その日に限って悲劇が起こることなんです」
 おまじないをしに行った女子学生たちが影朧に殺され、その命を啜られる。そんな悲劇が。
「この影朧は、最近そのご神木の傍に棲みついたようです」
 今まで不安定すぎて力も弱く、學徒兵たちの巡回にもひっかからないような存在であったが、カティアが予知したその日に活動を開始する。初めての犠牲者が彼女たちだ。
「ですが、彼女たちは本当に幸運でした」
 何故なら。これは『昨日予知した』、『今日』の話だからだ。そして桜色の紙というきっかけがなければ発生しない。
「既にお店には事情を話してあります。今日の桜色はこちらで確保済です」
 そのため、予知の悲劇は起こらない。女子学生たちの命は救われたのだ。

「……なんですけども」
 カティアが話を続ける。
 せっかく予知でみたんだし。影朧が棲みついているのも事実なので。
「皆さんで影朧を退治していただけませんか?」
 桜色のおみくじを手にして。

●作戦
 普段のフヲーチュンクッキヰはどれに何が入っているか全くわからないように作っているそうだ。しかし今日は緊急事態。
「桜色のおみくじが入っているクッキヰは別に分けてもらって、確保してあります」
 そしてそのクッキヰは訪れた猟兵たちにしか出さない、という話をお店側に通してある。
「ですから、サアビスチケット忘れないようにしてくださいね」
 それが猟兵という証拠になるので。

 猟兵たちにお願いしたいのは次の行動だ。
 まずはカフェーで桜色のおみくじを手に入れる。
 その後、人目につかない黄昏時にご神木まで赴き、おまじないをする。
「そこで影朧が現れるまで待っていてもらえますか? 死んだふりをして」
 というのは、この影朧。かなり警戒心が強いらしい。猟兵だと気付かれればまず姿を現さない。しかし、猟兵と影朧はお互いを敵と感知する世界の機能がある。
「そこで死んだぶりをして油断させます」
 おまじないをした後、そこに何か罠があった体で死んでほしい。いや、死んだふりだけれども。そして後から来た人は、地面で倒れている仲間については見て見ぬふりをして欲しい。後で共に戦う仲間なのだ、そこで倒れている人。
「死んだふりをしてしばらく待てば、残った命を啜りに影朧が現れます」
 そこを撃破するという作戦なのです。

●楽しんできてくださいね
「今からサクラミラージュに行っても、黄昏時まで十分時間があります」
 なのでその時間はカフェーでゆっくりのんびり過ごしてほしい。緑茶はもちろん、紅茶にコヲヒヰ、パンやケヱキなどもメニューにある。もちろん、フヲーチュンクッキヰも忘れずに。
「その後にするおまじないは、恋に限らなくても大丈夫ですよ」
 本来の目的からはかけ離れるが、事態が事態なので。恋に関係しないお願いでも神様、聞いてくれるかもしれない。見せ合って騒ぐのもいいかもしれない。
「死んだふりは皆さんの想像力に期待です」
 一番オーソドックスなのは毒だろうか。あるいは地面から槍がとか。ちなみにどんな罠があっても影朧は不思議に思わないので安心して欲しい。
「そして、影朧が姿を現わしたら、皆さんで総攻撃してくださいね」
 影朧の名前は『狂嵐の恋歌アルテミシア』。かつて世界征服を企んでいた悪の華の全盛期の姿という話だが、今はコイバナあるところに現れ、掻き乱し、そして恋想う命を啜って生き長らえる影朧である。
「ちなみに、趣味はイケメンを跪かせること、だそうです」
 グリモア猟兵ネットワーク(要するに聞きかじり)による情報なので本当かどうかは保証できない。なお、イケメン判定については彼女に問い合わせてほしい。
「まあ、説得しながら倒したりすると、転生するんじゃないでしょうか?」
 説得の方向性は……アルテミシアの恋かな、たぶん。サクラミラージュの生活に興味を持たせるという手もありそうだ。
「そして見た目によらず、清純との噂です」
 これは確定情報です。えっち厳禁ですよ。

「それでは後のことは現場の皆さんにお任せします。よろしくお願いしますね」
 そう言ってカティアは猟兵たちをサクラミラージュへ送り出すのであった。


るちる
 こんにちはとかこんばんは、るちるです。明日には新展開もありそうですが、サクミラでひとつ。
 オープニングは真面目ですが、シリアスはもちろん、ギャグやネタからコイバナまで幅広くお引き受けいたしますー。

 シナリオ捕捉です。
 1章は日常、2章は冒険、3章がボス戦となっています。必要あれば各章に状況を追加します。
 1章はのんびりまったりカフェーをお楽しみください。注文はオープニングに無いものであっても大丈夫です。
 2章はおまじないしてから死んだふり。罠の設定は記載あれば採用します。
 3章はバトルです。バトル以外の要素があっても問題ありません。

 フヲーチュンクッキヰは運試し付き。詳細はオープニング承認されてから追記します。

 アルテミシアはるちるにありがちなポンコツ仕様。強がっていますが、アクシデントに弱いです。
 コイバナとイケメンに興奮します。嘘でも本当でもコイバナすると「その話kwsk!!」と動きが止まりますのでうまく使ってください。
 イケメン判定(男女問わず)は申し出があればこちらでします。だいたい当てはまると思う。

 プレイングの注意事項は、公序良俗を守る。他の人に迷惑をかけない。
 その上で今回マイナールールをちょっと試してみたいと思います。

 ◆アルテミシア(本体に限らず、力の一部も含む)が、リプレイ執筆完了時点で、MSである『るちるの制御下に無い』状態が見込まれるプレについては、採用しません。

 制御下に無いっていうのは、るちるが自由に動かせない状態であるとか、リプレイ終了後も関係が続いている状態を指します。
 逆に言えば、制御を最終的にこちらに返してくれるなら、リプレイの中では何をやってもOKです。アブナイ描写は表現を落として大丈夫なレベルにして書きます。

 試験的な試みがありますが、良識の範囲でやっていれば無茶振りしたとしても、全然ひっかからない項目ですので。

 それではご参加お待ちしていますー。
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第1章 日常 『大正浪漫の溢れるカフェーで』

POW   :    甘味や食事を楽しむ

SPD   :    珈琲や紅茶や飲み物を楽しむ

WIZ   :    人々との歓談を楽しむ

👑11
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 桜舞う帝都のとある通り。
 そこにあるカフェー『花よりだんご』は、どこにでもあるような店構えで、オープンテラスがあって、それでいてお洒落で。今日もとっても盛況だ。
 看板メニューの『フヲーチュンクッキヰ』は運試し付き。
 占いたい事を頭の中に浮かべながら、クッキヰを割れば。中から小さなおみくじが出てくる。
「いらっしゃいませ。ごゆるりと」
 メニューを渡されて、席に座れば。ふわりと舞うテーブルの上に置かれた季節の花の香り。

 さて、何を注文されますか?

※おみくじ
 プレイングに『00~99』の数字をひとつ記入いただければ、るちるがダイスを振っておみくじします。
 指定数字からの差が:大吉(1~10)吉(11~25)中吉(26~45)小吉(46以上)凶(指定された数字)
 占いの内容はプレイングで指定してください(無い場合は全体的な運勢となります)

※メニュー追記:ジュース、アルコールもおいてあります。お酒は(ステシ年齢が)20歳になってから。
山梨・玄信
ふむ。つまりは女学生の保護などは気にせず、思う存分影朧の対策をすれば良いのじゃな。
それは助かるのじゃ。

【POWを使用】
忘れずにサアビスチケットを使い、フヲーチュンクッキヰを注文するぞい【01】

その後みたらし団子と緑茶を頼むのじゃ。
「占いの結果はさておき…一体どんな影朧なんじゃろうなあ。恋話のある所に現れては襲う…わしと同じくRB団(リア充爆発しろ団)関係者か?いや、イケメンを傅かせる趣味があるという事は違うのう」
「説得方法はRB団に誘う…イケメンで釣って現世に興味を持たせる…恋愛以外の興味を持ちそうな物を提示する…こんな所かのう。BL本とか興味を持つじゃろうか?」

アドリブ歓迎じゃ。




 カフェー『花よりだんご』に訪れた山梨・玄信(3-Eの迷宮主・f06912)はウェイトレスに案内されてテーブルにつく。
「ふむ」
 思い起こすはグリモア猟兵の遠い目。メニューに目を通しながら、玄信は状況を再度整理する。
(つまりは女学生の保護などは気にせず、思う存分影朧の対策をすれば良いのじゃな)
 ここにいる、あるいはこの後ここに訪れる女学生。彼女らは桜色を手に渡らなければ悲劇の対象とはならない。それは占いで言うのならインチキなのかもしれないけれど。
(それは助かるのじゃ)
 という玄信の感覚もまた正しいものであろう。悲しいことは無い方がいい。

 そんなわけで、サアビスチケットを使い、フヲーチュンクッキヰを注文する玄信。
「いただくとするぞい」
 運ばれてきた香しい匂い。占いの入っているクッキーを手に取り、ぱきっと割ってみる。現れたのは桜色のおみくじ。
 さっそく中を確認してみる。

 『小吉』

 可もなく不可もなく。もしかしたら一番コメントに困るヤツかもしれない。でもこの後何事も無く、解決できるかもっていうサインかもしれない。
「占いの結果はさておき」
 そっとおみくじをテーブルの上に置く玄信。これで桜色は手に入ったのだから、後はゆっくり過ごすのみ。
 その後、みたらし団子と緑茶を頼み、ゆったりとした時間を過ごす玄信であった。

「一体どんな影朧なんじゃろうなあ」
 緑茶の入った湯飲みを口元へ運びながら、玄信は考えを巡らせる。
 事前に聞いた話では、恋話のある所に現れては襲うという。となると、だ。
「……わしと同じくRB団(リア充爆発しろ団)関係者か?」
 いずれの世であっても等しく存在するという、かのRB団……! その由緒正しき信念(?)を持つ者がまだいようとは。
「……いや。イケメンを傅かせる趣味があるという事は違うのう」
 そう、RB団はリア充を爆破することに意義を見出す。どんな形であれ、それはリア充の姿。自分がリア充になろうものなら仲間から爆破されるが宿命なのだから。
 こうやって並べ立てると、結構、倒錯的な趣味してますな、アルテミシア。
 まあ会ってみないことにはよくわからなさそうだ。

 しかし、想定することは大切だ。例えば説得のシーン。
「RB団に誘う……」
「イケメンで釣って現世に興味を持たせる……」
「恋愛以外の興味を持ちそうな物を提示する……こんな所かのう」
 意外とさくさく出てきます。これは……チョロインの可能性があったりなかったり?
「……BL本とか興味を持つじゃろうか?」
 沼に叩き落とすおつもりか。いや、それもありかもしれない。

 そんなこんなで玄信の時間はゆったりと過ぎていく。まだもう少し時間はあるけれども。

 そういえばアルテミシアの性別書いてなかった、生物的な分類は女です。中身? それは会ってからのお楽しみ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鈴木・志乃
66 全体的な運勢
運試しなんて久しぶりだよ……
普段占いとかしないからなぁ。A&Wでタロットやってもらったことはあるけれど。今日の運勢はどんなかな、と……
(良くても悪くても気を引き締める)

オレンジジュースありますか?
出来れば生絞りがいいんだけど、難しいかな
あんまりサクラミラージュには詳しく無いから分かんないや

そうそう、お持ち帰り用に何かお菓子買おうと思ってたんだった
知り合いへのお土産と、後でアルテミシアと恋バナする用ね
という訳でアルテミシア用のフォーチュンクッキー一つ下さい
出来れば恋愛関係について書いてあるやつがいい
お土産はーお姉さんにお任せします!!
この店のおススメで!!




 鈴木・志乃(ブラック・f12101)は軽快な足取りと共に、カフェー『花よりだんご』のドアを開く。
「いらっしゃいませ~」
 ウェイトレスの明るい声に案内されて、テーブルにつく志乃。サアビスチケットを使って注文するのはもちろんフヲーチュンクッキヰ。
(運試しなんて久しぶりだよ……)
 普段占いとかあまりしないらしい志乃。
(アックス&ウィザーズでタロットやってもらったことはあるけれど)
 それにしても久しぶりなので、さてさてどうなることやら。
「あと、オレンジジュースありますか? 出来れば生絞りがいいんだけど、難しいかな?」
「いえ、大丈夫ですよ~。ご注文は以上ですか?」
 ウェイトレスの笑顔に笑顔を返し、志乃はのんびり外の人通りを見て待つ。

 そしてテーブルの上に運ばれるフヲーチュンクッキヰと生絞りオレンジジュース。

(今日の運勢はどんなかな、と……)
 早速クッキーをぱきっと割ってみると、そこにあるのは桜色のおみくじ。

 『中吉』

 今日の全体運はなかなかに良好。意外といい感じでいけるかもしれない。
 結果に微笑みを浮かべながら桜色のおみくじをテーブルの上へ。一緒に運ばれてきたオレンジジュースをひと口飲んで。
 まったりしかけていた志乃はふと思い出す。
「あ、そうそう、何かお菓子買おうと思ってたんだった」
 お持ち帰り用に。目的は知り合いへのお土産と後でアルテミシアと恋バナする用』。
 近くにいたウェイトレスを手招きし、サアビスチケットを見せて。
「フヲーチュンクッキヰもう一つ下さい」
 と注文しつつ、志乃はウェイトレスに耳打ちする。
「出来れば恋愛関係について書いてあるやつがいい」
 その注文に、一瞬目を丸くするウェイトレス。しかし志乃の表情とサアビスチケットを見て、はたと得心がいったようで、頷き返す。
「それから、お土産はー……お姉さんにお任せします!! この店のおススメで!!」
「かしこまりました♪」
 快諾して厨房へ下がっていくウェイトレス。

 そして届けられたのはお持ち帰り用のフヲーチュンクッキヰと。
「こちら、当店の人気メニュー『花と団子』です」
 ふんわり甘いひと口サイズのお饅頭に、桜の塩漬けが添えられた人気のお菓子セット。お饅頭と櫻の塩漬けは一緒に食べてもいいし、別々に食べてもいいし。
「ありがとう」
 どんな反応をするだろうか。ちょっとそう思いながら志乃はもう一度クッキーを口元へ運ぶ。
 桜色の恋結びの刻までは、もう少し。もう少しゆっくりしていってもいいだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​

彩瑠・姫桜
POW
23:恋愛運(いい出会いがあるか)

サアビスチケット使用し
桜を使った和風パフェーとフヲーチュンクッキヰを注文するわね

恋バナ…(割と真剣な表情で、むぅ、と眉間にシワを寄せ)
私、そういうの今のところ全く縁遠いんだけど、
そろそろ何かしら考えておいたほうが良いのかしら…
(考えてどうにかなるものでもないというのに生真面目に捉えてしまう娘)
…って、ダメよ私、こうも真剣にしすぎると唐突にどこかしらから
横槍入ってからかわれるんだから
(たいてい親友にからかわれているため少し警戒気味な模様
は、と気が付けば、思わずキョロキョロ辺り見回し)

コホン、まぁいいわ(気を取り直し)
今は食い気よね
しっかり楽しませてもらうわ




 桜舞う風に流れる髪を押さえながら。彩瑠・姫桜(冬桜・f04489)はカフェー『花よりだんご』のドアを開ける。
 からんからん、と鐘が鳴って、ウェイトレスが姫桜の来店に気付く。

 テーブルに座り、置かれたメニューと入れ違いに見せるのはサアビスチケット。猟兵であることを示した上で。
「桜を使った和風パフェーとフヲーチュンクッキヰをお願い」
 姫桜がメニューから選んだのは、桜風味なスイーツ。

 ウェイトレスが去っていったのを見届けてから。

 改めてチェアにしっかりと座り直した姫桜は、割と真剣な表情で腕組みをしつつ、眉間にしわを寄せる。
「恋バナ……」
 むぅ、と唸りながら零れた言葉は、この後訪れるであろう影朧との戦いにてきっと避けて通れない何か。何か。
(私、そういうの今のところ全く縁遠いんだけど……)
 えー、ほんとで……失礼。それはとてももったいない。

 ともあれ、彼女が目指す母親のような素敵な女性になるためには、恋も避けて通れない要素なのかもしれない?
(……そろそろ何かしら考えておいたほうが良いのかしら……?)
 考えてどうにかなるものではなるものではないのだが。そこを考えてしまうのが生真面目体質な姫桜さんなのである。
「むむむ……」
 そしてドツボにハマる思考。眉間のしわが深くなりかけた時、姫桜はハッと顔を上げる。
「って、ダメよ私。こうも真剣にしすぎると唐突にどこかしらから横槍入ってからかわれるんだから」
 正気(?)に戻った姫桜が思わずキョロキョロ辺りを見回す。こういう時はたいてい親友からからかいが入るのだ。今回は一人で来たはずだが、もしや……?
 そんな感じで少し警戒気味の姫桜さん。しかし、目が合ったのはスイーツをトレイに乗せたウェイトレスさんのみだったり。

 ほっと胸を撫で下ろす姫桜。次にテーブルの上に運ばれたスイーツを目で楽しむ。
「それじゃあ、っと……」
 最初は運試し。ここまでの流れでお分かりかもしれないが、もちろん占うのは恋愛運である。
 ぱきっとクッキーを割って、中から出てきた桜色のおみくじを広げる姫桜。

 『吉』

「あ」
 意外と良い感じの結果である。そこはかとなく、吉の中でも吉っぽい雰囲気すら受ける。
 これはもしや恋バナ的にも幸先がいいのでは?

 不意に訪れた幸運(?)に口元が緩みかける姫桜。そこでまたもや、は、となる。
「……コホン、まぁいいわ」
 ツッコまれる隙は与えない。何事も無かったかのように気を取り直す姫桜。
「今は食い気よね。しっかり楽しませてもらうわ」
 クッキーをまずひとかけ口に運んで。
 メインはもちろん桜を使った和風パフェーである。
 桜の花びらによる見た目だけでは無く、ふんわり甘く仕上げられた桜色のクリームに季節のフルーツが添えられて。見た目も楽しいパフェーをスプーンでひとすくい。口に運んで味わえば、姫桜の顔に満足そうな笑みを浮かぶ。

 影朧との遭遇までまだまだ時間はある。もうしばらくカフェーでの時間を楽しむ予定の姫桜さんでした。

大成功 🔵​🔵​🔵​

木元・刀
『フヲーチュンクッキヰ』の置かれたカフェーですか。
なるほど、偵察がてら行ってみましょう。

確かに、女学生が多いようですね。
……そうですね、黒蜜の葛切りと緑茶をいただけますか。

近くの席にいる女学生さんたちの会話に耳を傾け。
おまじないの話題が出てきたら、さりげなく話に加わりましょう。

フヲーチュンクッキヰ?
小さなおみくじの入っているお菓子ですか。

ああ、僕も興味が湧いてきました。
サアビスチケットを示して、『幸運を呼ぶ』クッキーをお願いします。

カリっと齧ると、薄桜色のおみくじ。
【61】

おや、申し訳ないことに、僕が貴女たちの運を吸ってしまったようだ。
お詫びの印に、何か一品ご馳走しましょう。

よい話を有難う。




 グリモア猟兵の話を聞いて、木元・刀(端の多い障害・f24104)は活動拠点でもあるサクラミラージュに戻るような形で降り立つ。
(『フヲーチュンクッキヰ』の置かれたカフェーですか。なるほど、偵察がてら行ってみましょう)
 その足でそのまま件のカフェー『花よりだんご』へ向かう刀。

 からんからん、と鐘の鳴るドアを開ければ、時間が夕刻に近付いてきたせいか、客層にも変化が。
(確かに、女学生が多いようですね)
 店内を見渡しながら、ウェイトレスの案内のままにテーブルにつく刀。
「……そうですね、黒蜜の葛切りと緑茶をいただけますか」
 ゆったりとスイーツが届くまでの間を待つ刀。

「あー、普通のだー……」
「でも大吉じゃない」
「それはそれでどうしていいかわからなくない?」

 刀の耳に聞こえてくるのは、すぐ後ろの席にいる女学生たちの会話。どうやら彼女たちは桜色のおみくじを目当てに訪れているらしい。
「今日こそ『桜色』したかったのになー」
「桜色、ですか?」
 さりげなく。振り向いて声をかける刀。
 するりと入ってきた声にびっくりしたものの、視線の先にあった刀の顔は純粋に興味しかなく、視線もまたおみくじに注がれている。彼の立ち居振る舞いもプラスに働いたのだろうか。警戒を解いた女学生たちが『桜色の恋結び』の事を話してくれる。
「なるほど、小さなおみくじの入っているお菓子ですか。ああ、僕も興味が湧いてきました」
 ウェイトレスを呼んで、女学生には見えないように体で隠しながらサアビスチケットを示して。
「『幸運を呼ぶ』クッキーをお願いします」
 と微笑む。届いたクッキーをカリっと齧ると、出てきたのは桜色のおみくじ。

 『吉』

「あっ!」
「桜色……いいなぁ」
 刀の手にある桜色のおみくじを見て、驚嘆と落胆の入り混じった、何とも言えない表情で羨む女学生たち。どうやらおまじないは『自分で引き当てないとダメ』らしく、あからさまに肩を落とす女学生。
「申し訳ないことに、僕が貴女たちの運を吸ってしまったようだ。お詫びの印に、何か一品ご馳走しましょう」
「「「えっ!?」」」
 刀の想定外の言葉に、刀の顔を振り上げ見る女学生たち。
「よい話を聞かせてもらったお礼ですよ」

 そんな感じで、刀と女学生たちのカフェータイムは和気あいあいと続くのでした。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 冒険 『カフェーのおまじないの噂』

POW   :    自身でおまじないを試し、何が起こるか確かめる

SPD   :    おまじないを実行した人に接触して手がかりを探す

WIZ   :    カフェーに魔術的な仕掛けなどが無いか調査する

👑11
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●誰そ彼時
 日が沈もうとする夕暮れ時。
 カフェー『花よりだんご』のお客たちもそろそろ帰宅と店を出ていく。そのまま帰路につく者、そして……カフェーの裏手にある小さな山に向かう者。そこにある神社の境内にご神木がある。
 誰そ彼時。道行く人の顔すら判別できなくなる、不思議な時間。

 『その時ならば神様に会えるのではないか?』

 そんな想いが『桜色の恋結び』を作り出した。

 さて。今日の桜色はすべて猟兵の手にある。
 運試しの後は、神頼み。叶うか否かは別として、手にした桜色のおみくじで以て、神様にお願いしよう。おみくじの裏側にお願い事を書いて、それを見えないように折り畳み、ご神木に結び付ける。
 お願い事は何でもいい、お願いと思えないものであっても特に問題は無い。

 それが終わったなら、猟兵のお仕事だ。
 桜色の恋結びに来た人に惹かれ、影朧が現れる……のだが。今日覚醒した影朧は、まだ人に対して警戒している。
 ゆえに、死んだ振りをして欲しい。ぱたっと倒れるだけでもいいけれども。死ぬ振りをする際の演技が真に迫っていればいるほど、影朧の興味を引くことができる。
 そうすればその分、死を確認しに来た際に影朧の注意が逸れるであろう。頑張ってほしい。

※この章ではプレイングに、桜色の恋結びの内容と死んだ振りの内容を記載ください。
死んだ振りの演技が迫真だった場合、その参加者の分だけ、次章の難易度がちょっとずつ下がって(orコミカルになって)いきます。
彩瑠・姫桜
さっきのおみくじでも吉って出たし、
この流れに乗ってお願いするのは『よい人に出会えますように』にするわ

…よい人…って、でもどんな人の事を言うのかしら
神様だろうと自分目標だろうと
こういう願い事って具体的なのがいいのよね確か

…(うーんと、一瞬悩み

…くれぐれもうちの父親みたいなのが来ませんように!
(ご神木に結びつけながら切実にお願いした:笑)

母さんはアレでよかったかもしれないけど、私は嫌!だってウザいもの!(酷
誰よ、娘の理想は父親だって言った一般論者!
私は絶対違うんだからっ

死んだふり…は、「ご神木に居た蛇に絞め殺される」で

Weiß(白蛇外見のドラゴンランス)、協力お願い
演技は頑張るから急所は外してよ?




 たそがれ時に、ご神木へ訪れる彩瑠・姫桜(冬桜・f04489)。
(さっきのおみくじでも吉って出たし……)
 何か来てる気がするビッグウェーブ。この流れに乗って、姫桜がお願いするのは……!

 『よい人に出会えますように』

 そう心に決めて、桜色のおみくじをくるりと裏返して……動きが止まった。
「む……う……」
 眉間にしわが寄った、不機嫌な時の猫の顔をご想像下さい。
(……よい人……って、でもどんな人の事を言うのかしら)
 姫桜さん、根本的問題に抵触してしまった。姫桜にとってよい人とは……!

 ふんわりお願いしてもいいのだが、どこかで聞いたことがある。
(神様だろうと自分目標だろうと、こういう願い事って具体的なのがいいのよね確か)
 真面目に考えちゃう系姫桜さんはこの問題を避けて通れ無さそうである。なお、今はひとり。誰もいない、安心安心。
「…………」
 目を閉じて、うーんと、悩んで……姫桜さんはかっと目を見開きました。
 しゅばばっとおみくじの裏に『具体的な言葉』を書き込む!

「くれぐれもうちの父親みたいなのが来ませんように!」
 念のため、声に出して切実にお願いしながらおみくじ結びました、まる。

(母さんはアレでよかったかもしれないけど、私は嫌! だってウザいもの!)
 自身の夢でもある素敵な母親……の伴侶である父親。溺愛してくれているのはわかるんだけれども、ソレとコレは別である。切実にして率直な乙女心。
(誰よ、娘の理想は父親だって言った一般論者! 私は絶対違うんだからっ)
 そんなわけで知らないところ(?)で、めった斬りにされている姫桜の父親。本人聞いたら卒倒するんじゃなかろうか。それはそれで見てみたい気がしますが。

 さて。

 おみくじを結び終えた姿勢のまま、静止すること数秒。姫桜の頭の中をよぎるのは影朧を誘い出す死んだふりのこと。もちろん用意はしてある。姫桜が考えたシチュエーションは『ご神木に居た蛇に絞め殺される』。
「Weiß、協力お願い」
 誰にも聞こえないように、小さな声で。話しかけるのは袖の中に潜ませている、赤目に白いからだを持つ、蛇のような外見のホワイトドラゴン。姫桜の愛竜『Weiß』である。
 姫桜の声に応じて、Weißがおみくじを結ぶ手を伝ってご神木へ移り渡る。
 それを確認してから、姫桜はご神木から手を離した。
(演技は頑張るから急所は外してよ?)
 そう願いながら、踵を返して帰ろうとする姫桜。

 その瞬間。ご神木から白い縄のようなものが姫桜の首に襲い掛かる。それはそのまま姫桜を拘束して、ご神木の枝を利用して釣り上げるような姿勢で固定する。
「……っ!」
 思わず息が詰まる姫桜。ぎゅぅぅ、と蛇が首を絞める。
 誰かがこの光景を見ていたらこう表現したであろう。

 ――それはまるで、神が与えた罰のようだった、と。

 するりと拘束を解いて白蛇がどこかへと去っていく。体を支える力を失い、どさっと倒れる姫桜。
(意外と本気だったんだけど、あの子!!)
 もちろん、Weißさんは苦しくない箇所を絞めていたので姫桜にダメージはないんだけれども。

 そう思いながら死んだ振りをする姫桜さんなのでした。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鈴木・志乃
『アルテミシアが良い恋愛出来ますように』
って書いて御神木に結び付けに行きますか
私は神頼みする側じゃなくて、される側なんだけどなァ

ちゃんと転生できるといいね、アルテミシアさん
さて……持参した大福でも取りだして食べますか
UC発動。【演技、歌唱、パフォーマンス】
(うめき声を出して喉を押える。くぐもった声を出し続けながらその場に蹲ってジタバタするも、そのまま意識を失うようにぱたりと倒れる)

(古典的過ぎるけど死因としては結構あるんだよなァ。この前もCFで餅詰まらせた御婆ちゃん助けたばっかだし。いやァ、あるんだね本当に。餅詰まらせるって……ちゃんと似せられてると良いな。)




 たそがれ時。不思議な光が満ちる刻。
 ご神木がある神社の境内に訪れた鈴木・志乃(ブラック・f12101)は、まっすぐに目的地へ。大きなご神木を見上げながら、桜色のおみくじを結びつける枝を見繕う。

『アルテミシアが良い恋愛出来ますように』

 書いてあるお願い事はそれであった。
(私は神頼みする側じゃなくて、される側なんだけどなァ)
 志乃を良く知るものであれば、彼女の微苦笑を良く理解するであろう。彼女の源こそはその一端、『光』なのだから。
(ちゃんと転生できるといいね、アルテミシアさん)
 そう想いながら、おみくじを枝に結び付ける志乃。

(さて……)
 境内にある休憩所。その中で温かいお茶を湯飲みにいれつつ、志乃は持参した大福を取り出す。
 おもむろに大福を口に運んで……同時に発動するユーベルコード。
「……っ!」
 突然、呻き声のような、あるいは声にならない声のような。そんな声をあげて喉元を押さえる志乃。
「……っ、ぐ、っ」
 くぐもった声を出しながら、椅子から崩れ落ち、その場に蹲って手を激しく動かす。先に用意したお茶がすぐそこに、すぐそこにあるのに……!
 空気を求める意識の方が強くて、どうしても手先が湯飲みに届かない……!

 やがて。そのまま意識を失ったのか、ぱたりと倒れる志乃。

(古典的過ぎるけど死因としては結構あるんだよなァ)
 『死んだ振り』をしながら志乃が思い起こす。お年寄りのお正月の死亡原因ナンバー1はお餅を喉に詰まらせることだと言う。ついこの前もキマフューで餅詰まらせた御婆ちゃん助けたばっかだし。
(いやァ、あるんだね本当に。餅詰まらせるって……)
 とか何とか思いながら。先ほどまでの『演技』を思い返す志乃。ユーベルコード【上演】。彼女の技能を(今回は演技、歌唱、パフォーマンス)を飛躍的に上昇させるソレを以て披露した、迫真の死んだ振りである。
(ちゃんと似せられてると良いな)
 そんな志乃の想いも含みながら。
 その休憩所は徐々に夜の帳に包まれていったのである。

大成功 🔵​🔵​🔵​

山梨・玄信
ふむ、ここでおみくじを結んだ後に死ぬんじゃな。
意外と難易度が高いが…やってみるか。

【POWを使用】
先ずはおみくじを木に結び、お祈りをするぞ。この時は全く無心で何も願わんぞ。RB団の矜持としてな。
そして帰ろうとした瞬間、胃を押さえて急に苦しみだすのじゃ。
「ぐ、ま、まさか!一服盛られた…?裏切りがばれたか?それとも義勇軍…か?」
口の中を噛んで血を出し、喉に指を突っ込んで実際に少し吐くのじゃ。血の混じった吐瀉物を見れば毒殺の現実感も増すじゃろう。

「だ、誰か医者を…解毒剤………」
苦しそうに掻きむしり、そのままばったりといくぞ。

アドリブ歓迎じゃ。




 たそがれ時。赤い夕焼けと暗い闇が混じりあうその刻に。山梨・玄信(3-Eの迷宮主・f06912)は、桜色のおみくじを手に、ご神木のある境内に訪れた。
(ふむ、ここでおみくじを結んだ後に死ぬんじゃな)
 出発前の話を思い出しながら、玄信は手元のおみくじに視線を落とす。あのグリモア猟兵は、話の中でさらっと『死んだ振りしてくれ』と言ってたわけだが。
(意外と難易度が高いが……やってみるか)
 意を決して、玄信はご神木の元へと歩き出すのであった。

「……」
 おみくじを枝に結び付ける玄信。そして祈り……。
 されど、おみくじに書いた願いも無くば、その心は無心である。
 桜色の恋結び……RB団の彼にとっては、それを願うことは。その矜持ゆえの行動である。
「さて」
 踵を返して帰ろうとする玄信。

 その時……!

「……ぐふっ!?」
 突如、吐血する玄信。口元を押さえ、胸をかきむしり、その場に崩れ落ちる。
「ぐ、ま、まさか! 一服盛られた……? 裏切りがばれたか? それとも義勇軍……か?」
 RB団であるがゆえに。いかに猟兵のお仕事といえども、恋を助ける行為は許されないのか……!
 さらに咽せ、胃の中の物を吐き出す玄信。血の混じった吐瀉物、それはどう見ても毒による……。
「だ、誰か医者を……解毒剤…………」
 苦しそうに喉を掻きむしり……そして玄信はばったりとその場に倒れ、動かなくなった。

(うーむ、上手くいったかのう?)
 倒れながら、死んだ振りの演技を思い返す玄信。
 口の中が痛い。何でかっていうと、吐血した時に口の中を噛んで血出したし、口元を押さえる振りをしてさりげなく素早く、喉に指を突っ込んで実際に少し吐いたし。
(毒殺の現実感も増すじゃろう、と思ったが、はてさて)
 それはこれから現場を見るであろうアルテミシアに聞くしかあるまいが。
 それを差し置いても迫真の演技であったことは間違いない。

大成功 🔵​🔵​🔵​

木元・刀
恋みくじを結び。
その後に死んだふりを。ふむ。

懐から万年筆を取り出して、さらさらと。
何かを書き付け、神木の元に向かいましょう。

近くに影朧がいるかと思うと、少し緊張しますね。
お祈りは、口の中で小さく。

『……さんが幸せでありますように』

せっかくなので、女性の手の届かない、高所の細枝に結びたいですね。
あぁ、あのあたりが良い。

人通りが少なくなるタイミングで、下枝に手を掛け。
するすると木登りを敢行しましょう。

お目当ての枝にみくじを結び。
微笑んで、神のおわします空を仰ぎ。

ああ、木漏れ日が美しい……
ふらりと足元が崩れ、高枝から落下。

そのまま、ぴくりとも動かず。
いやぁ、不幸な事故でした。ね?(微かに笑み)




 最後にご神木へ訪れたのは木元・刀(端の多い障害・f24104)。
 たそがれ時が深まる中、刀はご神木へと歩みを進める。
(恋みくじを結び。その後に死んだふりを。ふむ……)
 グリモア猟兵に教えられた手順を順番に思い出す。やることは簡単。難しいところはないが。
(近くに影朧がいるかと思うと、少し緊張しますね)
 そう思いながらも、少し歩みを止めて、懐から万年筆を取り出して。桜色のおみくじの裏側にさらさらっと書き付ける。
 改めてご神木の元へ赴き、大きな枝を張っているご神木を見上げる。
(せっかくなので、女性の手の届かない、高所の細枝に結びたいですね)
 目を細めて枝を見る刀。ご神木だけあって、その力強さはとてもすごくて。刀の体格であっても木登りくらいならできそうだ。
(……あぁ、あのあたりが良い)
 人の目を気にしていたのだが、既に人影はない。下枝に手を掛け、するすると木登りを敢行する刀。
 目的の枝まで辿り着いた刀は近くの手頃な枝に座ってから手を伸ばして。桜色を枝に結び付ける。
 そのおみくじを見上げるようにして、微笑みながら、神のおわします空を仰ぐ。

『……さんが幸せでありますように』

 祈りは、口の中で小さく紡がれて。
 再び目を開けると、眼前には木漏れ日のように降り注ぐ夕日。
(ああ、木漏れ日が美しい……)
 熱にうなされるかのように、ふらりと刀の体が揺らいで。地面に吸い込まれるようにして刀の体が高枝から落下する。

 どさっと重い音が響いて。そのまま、ぴくりとも動かず。

(いやぁ、不幸な事故でした。ね?)
 人知れず、微かに笑む刀であった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『狂嵐の恋歌アルテミシア』

POW   :    ラブ・ハリケーン
【自在に伸び縮みする鞭剣による斬撃】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
SPD   :    ボルカニック・ダンス
【ダンスを踊るような華麗な足技】が命中した対象に対し、高威力高命中の【フランケンシュタイナー】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
WIZ   :    ディア・マイ・ヒーロー
【鞭剣の柄にあるマイクで増幅された歌】を披露した指定の全対象に【アルテミシアへの強い保護欲と恋慕の】感情を与える。対象の心を強く震わせる程、効果時間は伸びる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠ヒューベリオン・アルカトラズです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●恋に恋して
 猟兵たちがご神木に『桜色の恋結び』を行っている頃。
 神社の境内から少し離れた場所で『狂嵐の恋歌アルテミシア』は目覚めた。いつから眠っていたのか、あるいは、今生まれたのか。
 胸にくすぶるのは、悪の華であった頃の力と顔も思い出せない誰かとの恋心。

 ――これを満たすには。

 影朧――オブリビオンとしての本能が告げる。
 食らうのだ、恋を、コイバナを、それを紡ぐ命を。
 跪かせるのだ、悪の華たる力で以て、敵対する者を。

 その本能が告げる。『敵』が近くにいる、と。
「ふ、ふふふふ」
 本能のまま、アルテミシアは敵を『喰らう』べく、その場へ赴く……!

「う、えぇぇぇぇぇぇぇえええええ?!」
 そして、変な声出してビックリした。何故かって、敵が既に死んでいたからである。
 たそがれ時が終わり、夜の帳が降りて。境内に設置されていたライトがぴかーっと点灯して、こう、殺人現場を検証する時のスポットライトみたいになってた。
「え、あれ? こ、これ死んでる? 大丈夫? アタシ触っても動かない?」
 そろりそろりと近付いて、一番近い死体(?)を手にしていた鞭剣(剣状態)でそーっとツンツンするアルテミシア。

 動かない。ただの死体のようだ。

「ふぅ、驚かせてくれちゃってー。そうよね、アタシが騙されたりしないわよね」
 額の汗を拭いながら、くるっと背を向けるアルテミシア。
 盛大にフラグをまき散らす彼女に、奇襲を仕掛けるなら今!


※皆さんの死体の演技がとても良かったので、アルテミシアは全力で油断中です。性格や弱点などはマスコメに書いてある通り。アクシデントによる隙をつくことで、攻撃、説得、誘拐等々やりやすくなります(誘拐しても最後には消えますけども)
 説得がありますと、転生の可能性を残して退場します。恋など転生後の世界を想像させることでより心が動かされていくようです。
彩瑠・姫桜
…ちょ、死体(?)も生き返るくらいのびっくり声出さないでよっ(叫
そんなわけで、遅ればせながら私も参戦するわよ

【咎力封じ】発動
拘束ロープをアルテミシアの足へ向け放って
技を止められたら上出来よ
攻撃は[武器受け]で対応
余力あったら[串刺し]で攻撃するわ

私は…まだ恋するって気持ちを理解できてないんだけどね
(仲の良い親を見てるから誰かに恋したり
愛したりする気持ちがある事はもちろん知っているけれど)

でも
貴女は、本当の意味で恋したり愛したりする気持ちを知ってるんでしょ?
そしてきっと、どこかに未練もある
折角のこの世界
人の恋バナでうだうだなんかしてないで
転生して恋のワンチャン狙うくらいの乙女心で貫きなさいよね!




「う、えぇぇぇぇぇぇぇえええええ?!」
 死屍累々(?)な境内の状況を見て全力で叫んだ『狂嵐の恋歌アルテミシア』。しかし、死体は死体と確認してホッとしてくるりと振り返ったところで悲劇(喜劇)は起こった。

「……ちょ、死体(?)も生き返るくらいのびっくり声出さないでよっ!!」
「ひぃぃぃ!?」
 がばっと起きてびしっと指差しながら叫ぶ彩瑠・姫桜(冬桜・f04489)に全力でビビるアルテミシア。
 その隙を逃す姫桜では無い!
「いくわよ! って、えぇぇぇぇぇ!?」
 ビビったついでにフランケンシュタイナー。意味不明な行動パターンで攻撃してくるアルテミシアの足をかろうじてかわす姫桜。
「あぶないでしょうが!」
 お返しと、姫桜が【咎力封じ】を発動する。姫桜の手から飛ぶ手枷、猿轡、拘束ロープ。猿轡は外れたが、拘束ロープがアルテミシアの足を縛り、手枷がアルテミシアの両手を彼女の頭上で捉える。
「Weiß!」
 さっきめっちゃ首絞められたお返し(?)に『Weiß』を槍形態にして投げつける。串刺しにしたのは手枷。アルテミシアをご神木に貼り付ける。
「くっ……殺」
「しないわよ!」
 思わずくっころしかけたアルテミシアを止める姫桜。しかし態勢はかなり危険な香りがする(注:気のせいです)
「アタシをどうする気!?」
「恋って!!」
「……!」
 食いかかってきそうな勢いのアルテミシアを『恋』という言葉で殴る姫桜。その衝撃(?)にアルテミシアの動きが止まる。

 その様子を見て、姫桜はふぅ、と深呼吸してから話し出す。
「私は……まだ恋するって気持ちを理解できてないんだけどね」
 さっきまでの緊迫した表情では無く、いつものふんわかした表情の姫桜さん。ほのかに頬が赤らんでいるだろうか?
 その心中に思い浮かぶのは仲の良い両親。
(うん。誰かに恋したり、愛したりする気持ちがある事はもちろん知っているけれど)
 姫桜のその表情を見て、コイバナエナジーを感じ取ったアルテミシア。目を輝かせながら、ある意味大人しくなった。
「でも……」
 姫桜の視線はアルテミシアの目を覗き込んで。それは乙女同士の本音トーク。
「貴女は、本当の意味で恋したり愛したりする気持ちを知ってるんでしょ?」
「それ、は……」
 アルテミシアの視線がそっと逸れる。この想いは未練なのか、ただの名残なのか。そんなアルテミシアの想いは姫桜に推し量れるわけもなく。
 ただ、姫桜は思うのだ。
「折角のこの世界、人の恋バナでうだうだしてたらもったいないでしょ!」
「……!」
 姫桜の言葉にアルテミシアは顔を上げる。
「転生して恋のワンチャン狙うくらいの乙女心で貫きなさいよね!」
 ウインクしながらびしっとアルテミシアを指差す姫桜。
 それは恋を応援する乙女の矜持(ポリシー)。

大成功 🔵​🔵​🔵​

山梨・玄信
せっかく転生出来る世界じゃ。努力はするぞい。

【POWを使用】
先ずは死んだフリを続けたまま、懐に忍ばせた「びいえる本」をするりと落とすぞ。
表紙はマイルドじゃが、中身は中々に濃厚なやつじゃ。
相手が気に入ったようなら、そのまま説得するぞい。
襲いかかってきても、戦闘しながら説得じゃ

オーラ防御を全身に展開し見切りでダメージを極力減らすように攻撃を受け止めつつ、褌一丁無になってUCを使い邪心を削るぞ。

「世の中にはお主の知らぬものが、まだまだ沢山ある。恋愛も自分で体験するだけでなく、側から眺めるのも楽しいものじゃ」
「特に、そういう世界は絶対に自分では体験出来んからな。気に入ったなら、その本は差し上げるぞ」




 仲間の猟兵が『狂嵐の恋歌アルテミシア』を捕縛し、説得する光景を死んだフリしながら見守る山梨・玄信(3-Eの迷宮主・f06912)。
(せっかく転生出来る世界じゃ。努力はするぞい)
 敵は仲間のコイバナに釘づけだ、チャンスは今しかない。

 死んだフリを続けながら 懐に忍ばせておいた例のブツをこっそり。アルテミシアの視界に入るであろう位置へ落とすっていうか、ぽんっと配置する玄信。
 後はアルテミシアが罠にかかるのを待つのみ……。

「くっ……アタシがまさか、そんな……」
 猟兵のコイバナエナジーをまともに受けて。その衝撃にふらつきながらも玄信の方へ歩いてくるアルテミシア。そして目につく1冊の本。
「……ナニコレ?」
 無造作に拾い上げる。表紙は……イケメンが載っている。何かの雑誌だろうか?
「ふむ……?」
 何気なく開いてみるアルテミシア。どうやら漫画のようだ。表紙に載っていたイケメン二人が仲良く、仲良く(?)、仲良く(意味深)している……!
「これ……は……!」
 その時、アルテミシアは気付いた。これはもしや噂で聞いた……!

 そう、玄信が用意した『びいえる本』でした。

(表紙はマイルドじゃが、中身は中々に濃厚なやつじゃ)
 どうしてそれを選んだのか。小一時間くらい理由が聞きたいところだが、今はそんなタイミングじゃない。
「え、これいいの? こんなの世の中に出ちゃっていいの?」
 未知の衝撃はいつだってハートを貫いてくる(?)。コイバナとは別のベクトルで興味津々……っていうか、アルテミシアにとっては一度は経験しておきたいよね的なワールドらしい。
「気に入ってもらえたようじゃな」
「誰……!」
 不意に聞こえてきた声に、びいえる本を腕の中に隠しながら振り向くアルテミシア。
 そこにいたのは。
「ぎゃぁぁぁぁぁぁ!!!」
 悲鳴と共に、ラブ・ハリケーンをぶっぱするアルテミシア。そりゃ、いきなり目の前に褌一丁な男が現れたら、普通はこうなる。仕方ないよね。
 そこにいたのは、脱いだことによって力を十全に使える態勢でなった玄信だったのだ!
「ふんっ」
 既に展開していたオーラ防御でアルテミシアの鞭剣を弾き、そのまま接近。脱ぎ力を籠めた拳による一撃をアルテミシアに叩き込む玄信。
「かはっ?!」
 その一撃は肉体を傷つけず、アルテミシアの邪心――ちょっと新しい扉を開きかけて後ろめたい気持ちに直撃する。崩れ落ちるアルテミシアの腕の中から、びいえる本が地面に落ちる。ぱさっと軽い音を立て、びいえる本はとあるページを開いて示した。
「ぶっ」
 特別に濃厚なシーンだった。導入読んでたはずなのに、いきなりクライマックスだぜ! 思わず噴き出した鼻血を必死で押さえるアルテミシア。
「世の中にはお主の知らぬものが、まだまだ沢山ある」
 そんな様子を見ながら、玄信はゆっくりと諭すように声をかける。
「恋愛も自分で体験するだけでなく、側から眺めるのも楽しいものじゃ」
 そう、恋の形はひとつではない。人の数だけ、そして生き様の数だけ存在する。
「特に、そういう世界は絶対に自分では体験出来んからな」
 アルテミシアが自身で恋をするなら。確かにこの世界は一生縁が無いものであったろう。その事実に、アルテミシアは改めて視線を落とす。やっぱり刺激が強すぎる。
「気に入ったなら、その本は差し上げるぞ」
「え、いいの? じゃ遠慮なく……」
 玄信の言葉に、即答するアルテミシア。きっと新たな扉が開いた瞬間である。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鈴木・志乃
死んだフリ状態から念動力で手紙を動かしUC発動【罠使い、マヒ攻撃】

はっはっは
恋愛っていいよね!!!(心臓マヒにさせておいてこの台詞)
人の恋路を食らうより、自分が恋愛した方がきっと楽しいよ?
分かんないって言ったらUC撃ちまくるけど(真顔)

誰かのことを考えて、四六時中胸がときめいて楽しくなって
他の誰にも代えられない、大切な相手にお互いがなる……凄く幸せなことだね

どこに行くんでも何するんでも楽しいの!
一緒にのんびり散歩するだけで、もう胸がいっぱいだよ!
ね、転生して恋愛しよ?

アルテミシアさん用にフォーチュンクッキー買ってきたからさ………ほら、割ってみてよ
何か素敵なこと書いてあるといいね




 新たな世界の扉を開きつつ、しかし色んな衝撃をうけまくって、ふらふらになった『狂嵐の恋歌アルテミシア』。
 彼女の行く先にいまだ死体っぽく横たわっていたのは鈴木・志乃(ブラック・f12101)である。

 もちろん、それは不意打ち(恋)のため。その仕込みは万全である。
(まずは、ここをこう)
 死んだフリしたまま、指先からの念動力。懐から取り出した(?)手紙を元に、発動するユーベルコードは。
「Just for you.」
 【I'm crazy for you!!】。先の手紙は『顔面発火どころか全身心臓化ものの手紙』、ここから放たれた想いを伝える無数の光の鳩の群れがアルテミシアに襲い掛かる。
「きゃぁぁぁぁぁ!!」
 完全なる不意打ち。そして光の鳩がもたらす恋愛感情によるトキメキ、悶え、全身麻痺。その攻撃に歌を披露する間もなく、身動きが取れなくなるアルテミシア。

 あれ? これ、ある意味自爆技なのでは?

「はっはっは。恋愛っていいよね!!!」
 そんなことは気にしてない志乃さんの宣言。不意打ちで心臓マヒまで追い込みながら、がばっと立ち上がり、このセリフはさすがである。
「人の恋路を食らうより、自分が恋愛した方がきっと楽しいよ?」
「くっ……貴女になにが……!」
 志乃の言葉に反応するアルテミシア。
「……」
「はぐぅっ?!」
 無言で、ユーベルコードのおかわりをぶち込む志乃。トキメキの強要は良くない、たぶん。でもとりあえず高鳴りすぎる胸の鼓動に、話を聞く態勢になったっぽいアルテミシアでした。


 志乃は目を閉じて、そっと言葉を紡ぐ。
「誰かのことを考えて、四六時中胸がときめいて楽しくなって……」
 それは彼女の経験なのだろうか。とても、とても大切に紡がれる。
「他の誰にも代えられない、大切な相手にお互いがなる……凄く幸せなことだね」
 目を開けた志乃の顔に浮かぶのは笑顔。
「どこに行くんでも何するんでも楽しいの!」
 それは例え、一緒にのんびり散歩するだけでも。
 その様子にアルテミシアは目も離せず、耳を傾け続ける。これこそがコイバナ、この昂ぶりこそが求めていた熱さ……!
「もう胸がいっぱいだよ!」
 胸に溢れかえる想いのままに、志乃がアルテミシアに手を差し出す。
「ね、転生して恋愛しよ?」
「……!」
 コイバナの熱量に蕩けかけていたアルテミシアを不意打ちするひと言。それはアルテミシアの業を断ち切って、次につなげる何か。
「アルテミシアさん用にフォーチュンクッキー買ってきたからさ……」
 いつの間にか志乃が手にしているのは、アルテミシアへのお土産である『フヲーチュンクッキヰ』。
「ほら、割ってみてよ。何か素敵なこと書いてあるといいね」
 志乃に言われるがままにクッキーを割るアルテミシア。
 そこには『大吉』と書かれた桜色のおみくじが入っていたのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

エリカ・グランドール(サポート)
 サイボーグのシャーマン×電脳魔術士のエリカ・グランドールです。
 戦闘はあまり得意ではありませんが、周囲の状況を観察して違和感のある箇所を発見したり、敵の弱点を推測して隙を作り出すといった行動で皆さんをサポートしたいです。

※セリフ例
「今、何か光りました。ここに何かあるのでは……」
「あの敵の動きには規則性があるわ。うまく狙う事が出来れば……」

 冷静沈着と言う程ではありませんが、ビックリする事はあまりありません。
 あと、笑いのツボが良くわかっておらず「今の、どこがおもしろかったのでしょうか?」と、真面目に聞き返す事もあるようです。

 ユーベルコードは、エレクトロレギオンを好んで使います。


大崎・玉恵(サポート)
『あまり、老狐に無理をさせるでないぞ』
 妖狐の戦巫女×陰陽師女です。
 普段の口調は「女性的(わし、おぬし、じゃ、のう、じゃろう、じゃろうか?)」、気にいったら「尊大(わらわ、おぬし、じゃ、のう、じゃろう、じゃろうか?)」です。

 ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し積極的に行動します。他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。また、公序良俗に反する行動はしません。
ユーベルコードを絡めた【誘惑】による認識操作や籠絡、【呪符】に【破魔】【焼却】等の【呪詛】を込め【呪殺弾】とする、薙刀による【薙ぎ払い】【2回攻撃】が得意です。
卑劣な手段をとる敵には【威厳】【存在感】を放ち神として振る舞います。




 猟兵たちの攻撃は確実に『狂嵐の恋歌アルテミシア』へと届いていた。物理的なダメージはもちろんのこと、その言葉に宿る想いに心を斬り裂かれていく。それは痛みを伴わず、されど、アルテミシアの心を抉る鋭利な刃。
「アタシ……は……」
 アルテミシアの存在意義が揺らぐ。

 胸にくすぶり続けるのは、悪の華であった頃の力と顔も思い出せない誰かとの恋心。
 これを満たすために。
 食らうつもりだった、恋を、コイバナを、それを紡ぐ命を。
 跪かせるつもりだった、悪の華たる力で以て、敵対する者を。

 だけど、突き付けられた言葉は、幾度となく諭される転生への道。
 それは過去を振り向かず、未来を向くということだ。その手に収まっている、びいえる本と桜色のおみくじ(大吉)。
 ……冷静に見るとカオス感たっぷりであるが、そこはさておき。

 困惑しながら、それでも歩みを止めないアルテミシアの行く手を阻んだのは二人の猟兵。大崎・玉恵(白面金毛・艶美空狐・f18343)とエリカ・グランドール(サイボーグのシャーマン・f02103)であった。
 本来は後詰として、アルテミシアが街に出て行かないようにする役目を担っていた二人。アルテミシアの行く手を阻んだのは、二人が守っていた防衛ラインに彼女が現れたから……でもあり。他の猟兵たちの意思を汲んでのことでもあった。

 ここから先へと通すわけにはいかない。アルテミシアが街で影朧としての力を振るえば、これまでの他の猟兵たちの想いも霧散させてしまうのだから。

 万が一にも取り逃がさない様、【エレクトロレギオン】を召喚して、周囲に展開するエリカ。その様子にアルテミシアが鞭剣を構える。戦闘になれば鞭剣の柄にあるマイクでその歌声を披露して来るだろう。

 手荒なことをせずに、足止めするならコイバナしかない。

「コイバナ、とはのう……」
「コイバナ、ですか……」
 思わず玉恵とエリカが顔を見合わせる。ちなみに二人の身長はほぼ一緒、誕生日もひと月違いの15歳同士である(プロフィールによる)。
 さて、何故顔を見合わせたかというと、そういう事態を想定した準備が無いんです。
 エリカのコイバナとかある意味、盛大な波紋を呼びかねない。そもそも手持ち(?)はあるのか。彼女の生活はいまだ謎が多いのだ。
 対して玉恵。(見た目)15歳ほどのもふもふ狐っ娘であるが、中身は本人曰く違うらしい。それゆえに残弾(?)は大量にあるはずだ。しかし、この人の場合、現在進行形(?)はまず軽々しく口にしないだろうし、過去の傾国(?)はアルテミシアにかえって悪い影響を与えかねない気がする。せめて今の相方がここにいてくれたら……!(サポートなので無理)

「仕方ないのう……ここはわしが出張るとするか……」
「玉恵さん」
 意を決して一歩前に進み出る玉恵を、エリカが頼もしく見つめる。
「具体的にはどうするおつもりですか?」
「うむ。およそ万人が逃れ得ぬこの御業……もふもふで魅了する」
「コイバナじゃないんですね……」
 だって恥ずかしいもの、と玉恵が言ったかどうかは謎であるが。とりあえず玉恵の【傾国・酔生夢死】がアルテミシアに炸裂する。
「くっ……この抗いがたい……もふもふ、もふもふ」
 アルテミシアの目の前に現れた、玉恵の雰囲気によく似た狐(幻影です。手触りも再現!)をひたすらもふり続けるアルテミシア。
「特別じゃぞ?」
 もしかしたら眷属とかそういう類なのだろうか。ぴん、と立った玉恵の狐耳が心なしか、ぴこぴこ動いており、その耳をじーっと見つめるエリカさんの図でした。

 そして【エレクトロレギオン】の出番は包囲網だけで終わりそうである。何故なら。
「お待ちしていました」
「足止めとしては上々じゃな」
 近付いてきた足音に、エリカと玉恵が振り返る。それはアルテミシアに相対すべく、新たにこの場へ駆けつけた猟兵のものであった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​


●狂嵐の恋歌を乱す……
 『狂嵐の恋歌アルテミシア』は影朧である。
 サクラミラージュにおいて影朧とは。傷つき虐げられた者達の『過去』から生まれた不安定なオブリビオン。その荒ぶる魂と肉体を鎮めたならば、その後、桜の精の癒やしを受ければ『転生』できる存在。

 アルテミシアもまたその規則から外れるものでは無い。
 彼女の胸には、過去に得た『悪の華であった頃の力と顔も思い出せない誰かとの恋心』が宿り続けている。
 しかし、過去は変わらない……いや、そうじゃない。

 いつだって過去から生まれるものは変わらない、けれども、いつだって現在の影響を受けて価値が変化する。
 その時、『新たな未来の道筋』が現れるのだ。

 今、ここに。狂嵐の恋歌は自身の意味を変えようとしていた。
クレア・フォースフェンサー
この世界の影朧は、傷つき虐げられた者達の過去から生まれた存在と聞く
とするとおぬしは、辛い記憶のみを持たされ、この世に生み出されたのであろう
今日目覚めたばかりのそんなおぬしに、いきなり転生せよと言うのも酷な話よな

そこでじゃ
この世界の者ではないわしがこんなことを言って良いのか、ちと不安じゃが――この世界を少し見て回らぬか?
帝都の劇場には、おぬし好みの髭のダンディも幾多といるであろうしの
隣を歩くのがわしというのは色気がなくてすまぬが、そこは容赦せよ

結果、転生を選ぶならそれでよし
影朧として人に害を為す者だったならば斬るだけじゃが――
もし、この世を楽しむというならば、しばし付き合うとしようかの




 ゆっくりと『狂嵐の恋歌アルテミシア』に向かって歩いてくる足音は、クレア・フォースフェンサー(UDC執行人・f09175)であった。対オブリビオン用のUDC製の人造人間、オブリビオンと戦うために在るクレアがまず最初に行ったのは、アルテミシアに対する問いかけであった。
「今日目覚めたばかりのそんなおぬしに、いきなり転生せよと言うのも酷な話よな」
「……!」
 クレアの声にアルテミシアの動きが止まる。
(この世界の影朧は、傷つき虐げられた者達の過去から生まれた存在と聞く)
 クレアが声に出さず、データを整理していく。そうであるならば、アルテミシアもまた、辛い記憶のみを持たされ、この世に生み出されたのであろう存在。
 ゆえに、目の前のアルテミシアの戸惑いもまた自然なものかもしれない。

「くっ……!」
 アルテミシアが何かを振り払うように、手にした鞭剣を振るう。自在に伸び縮みするそれは、嵐のような激しさを以てクレアに襲い掛かる。
「……」
 しかし、その攻撃はあっさりとクレアの見術にて見切られ、回避される。ああ、いや。アルテミシアの攻撃自体も精度が荒い。

 動揺している。迷っている。

 それを感じ取ったクレアは、再度提案する。
「そこでじゃ。――おぬし、この世界を少し見て回らぬか?」
「……なっ?!」
「まあ、この世界の者ではないわしがこんなことを言って良いのか、ちと不安じゃが」
 その提案に驚愕して思わず動きを止めるアルテミシア。対してクレアは視線をわずかに泳ぐ。提案そのものは問題ないと思っているが、まるで渡り鳥のように世界に干渉するクレアが言っていいのかという不安はよく分かる。

 ま、ともあれ。アルテミシアがその『在り方』を変えようとするならば。必要なのは時間と価値観、文化といった情報、そして想い。
 どれも目覚めたばかりの彼女には足りないものであろう。
「帝都の劇場には、おぬし好みの髭のダンディも幾多といるであろうしの」
「……うっ」
 どこで知ったのか、って顔でアルテミシアが戸惑う。どこでそんな性癖を得たのか、彼女すらも覚えていないが、きっと大切なことだ。今もなお胸に残っているのだから。
「隣を歩くのがわしというのは色気がなくてすまぬが、そこは容赦せよ」
 そういって、クレアは佇む。答えを出すのはアルテミシアだ。

(結果、転生を選ぶならそれでよし。そうでないならば斬るだけじゃが――)
 今、目の前で迷っている彼女を見る限り、そうはならない予感がする。
(もし、この世を楽しむというならば、しばし付き合うとしようかの)

 そして、夜の帳が降りる。
 その場にいた猟兵たち、そしてアルテミシアの姿はご神木のあった境内から消え。
 この事件は解決をみたのである。


 結局のところ、影朧としての『狂嵐の恋歌アルテミシア』の姿を見た者は、その場で相対した猟兵たち以外に誰もいない。ゆえに彼女が害した一般人も誰ひとりとしていない。
 無事(?)に影朧としての生を終えた彼女が、再びこの世に、今度は『人と歩む者』として現れる……かどうかは彼女の気まぐれ次第、というところだろうか。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年07月07日


挿絵イラスト