「きゃあああ!」
その日、白里・葵花(しらさと・きっか)は不運だった。
「グフフフ……『黄龍の眼』の女はもらったデース!」
「やめろ!葵花ちゃんを返せッ!」
悪逆!白昼堂々に若き乙女を攫うのは、帝都殲滅の命を受けてこの地へと招聘されし魔人、その名も“超人ゲオルグ”である!
「龍脈……即ちこのヤーパンの地に流れるレイ・ラインを乱せば、この国もたちまち崩壊するのデス!『黄龍の眼』の女……お前を使ってワタシはこの国を滅ぼしマース!」
「そんなことのために、私の“力”は使いません……!」
「グフフフ……いつまでそう言っていられるでショウ!」
そしてゲオルグは向かう。そこは帝都地下に秘されし迷宮だ。恐るべき計画が今動き出す。
「汝ら、仕事の時間であるぞ」
ベースにて。グリモア猟兵、ロア・メギドレクス(e00398)は、集まった猟兵たちの姿を睥睨し頷く。
「サクラミラージュに行け。そこで事件が起きている」
ロアはテーブルに帝都の地図を広げる。赤ペンでその中の一点にバツをつけた。
「実は帝都の地下には秘密の地下空間が無数に存在している……という話は聞いたことがないか?」
曰く、江戸時代に作られた地下神殿。曰く、秘され続けてきた古代文明遺跡。曰く、影朧の秘密基地。……今回挑むのは、そうした噂の正体のひとつ。かつて帝都が江戸と呼ばれていた頃、この地を霊的に安定させる目的で作り上げられた地下神殿なのだという。
「影朧が學府の女生徒を攫ってな。そこに向かっているのだ。汝らの任務は、攫われた女生徒の救出。そして影朧の撃破だ」
しかし障害もある。地下神殿は帝都の地を安定させるために作られた場所であり、逆を言えば乱すこともできる重要なポイントだ。そのため、中には侵入者を阻む罠がいくつの仕掛けられている。
「その上、中には影朧の放った手下どももうろついておる。汝らは、神殿の仕掛けと敵の集団のふたつの関門を潜り抜ける必要があるのだ。少々骨の折れる仕事になるぞ」
そこまで言い終えてから、ロアは案件の内容を一度整理する。
「まず汝らはサクラミラージュに出向き、敵が潜伏している地下神殿に向かう。神殿に仕掛けられた罠や仕掛けを突破し、また、敵の放った手下どもをやっつける。そして最後に此度の目標である影朧を撃破し、攫われた女生徒を救出するのだ」
以上である。
「ほかに質問はないな。では行け。吉報を待っておるぞ」
そして、グリモアは輝いた。
無限宇宙人 カノー星人
ようこそ、イェーガー。カノー星人です。
新たな侵略活動を開始いたします。ご査収ください。
この度もあなたがたと共に旅路をゆけることを幸福に思います。
それでは、よろしくお願いいたします。
第1章 冒険
『矢弾が降ろうと槍が降ろうと』
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POW : 罠を力ずくで破壊する、わざと罠にかかって仲間を守る
SPD : 紙一重で発動した罠を回避する、器用に罠を解除する
WIZ : 罠の配置を予測し、罠のありそうな場所を避けて進む
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
帝都。
桜學府の学び舎のひとつ、新宿学舎の敷地内に、その入り口は密かに存在している。
管理人の男が示した先に、階段があった。本来ならば仕掛けによって隠されているのだが、影朧によって強引にこじ開けられてしまったのだという。
「キミら、猟兵さん達だよねッ!?」
内部に足を踏み入れようとした猟兵たちの背に、威勢のいい声がかかる。
「アタシは八千桜・小明(やちざくら・こあき)!葵花の友達だよ」
「俺もだ」「私も!」「オレも!」
そこに並ぶのは、攫われた女生徒の友人たちであり、桜學府の現役學徒兵でもある少年少女たちだ!
「俺たちも行くぜ。ダチを攫われた上にガッコん中で好き勝手されてよ……黙ってられるか!」
学ランの少年が木刀を掲げながら叫んだ。彼らは次々に声をあげる。
「足手纏いにはならないよ!お願いだから、一緒に行かせてほしいんだッ!」
彼らは同行を申し出る。
猟兵ではないにせよ、彼らは一定の経験を積んだ學徒兵だ。猟兵たちが指示すれば、探索の助けになるかもしれない。
君たちは彼らと共に探索に向かってもいいし、同行を断り、猟兵だけで挑んでもいい。
中は石造りの道が奥へ奥へと続いている。途中にいくつかの部屋もあるようだ。
踏むことでスイッチが起動する矢や槍、吊り天井といった罠が猟兵たちを待ち受けている。
さあ、猟兵たちよ。恐れず先へ進むのだ!
ルパート・ブラックスミス
口先で説得できる手合いでもないようだな。
当方に『転生』促す手段がない、學徒兵たちの中に桜の精がいるなら後に付いてきて貰おう。他はその護衛だ。
UC【錬成カミヤドリ】、50騎超の複製鎧を展開し先行。下手に調べて取りこぼしがあっても困る。あえて複製鎧に罠をかからせ強行突破しよう。
燃える鉛を付加した【武器改造】短剣を随時【投擲】、光源として視界を確保。
もし地下探索に心得がある學徒兵がいるなら【かばう】為の複製鎧何騎かを付かせ協力して進んでいこう。
【共闘・アドリブ歓迎】
ニコリネ・ユーリカ
友達を、ガッコを想う気持ち、素敵ねぇ
でも、少年少女を傷モノにはさせられないから
お姉さん、引率として張り切っちゃうわよー
帝都の地を安定させる為の神殿なら、なるべく破壊せず抜けましょ
不要な罠に掛からないよう基本は隠密行動で、
(闇に紛れる、目立たない、忍び足、聞き耳)
更にワカメに變身して、學徒兵に先行して安全な道を探りまーす
躰を水属性魔法で包んでヌルヌル移動、且つムチンを活性化!
矢も槍もスルッとで回避できるし、縄抜けもバッチリ……ギャー!
罠に掛かりきって安全が確認できたら、學徒兵に助けて貰いましょ
彼等を引き受けた以上は、安全に帰る事も念頭に
移動中は地図と地形を把握して、常に退路を確保して進みまーす!
エダ・サルファー
危険なところへ素人連れてくのはプロの仕事じゃないよねぇ。
でも熱い思いに弱い私なので、連れて行かないって選択は無いのだ!
一応一定の経験もあるってことだし、大丈夫でしょ!
なんかあったら責任持って対応するよ!
さてさて、地下神殿には罠や仕掛けが満載ってことだけど、ドワーフ的には伝説的な言葉に従って攻略したいところ。
つまり……「罠ははまって踏み潰す」!
要するに罠なんて力ずくで突破すれば良いのだ!
私がちょっと先行して罠を破壊して回れば後ろは安全って寸法よ!
私の聖拳突きが唸りを上げるぜ!
……や、もちろん私も積極的に罠にかかりたいわけじゃないんで、他の人や學徒兵ズが上手い罠感知をしてくれるならそれに従うけど。
(危険なところへ素人連れてくのはプロの仕事じゃないよねぇ)
エダ・サルファー(f05398)は内心でそう思いながら、學徒兵たちを見た。
いくつもの真摯な眼差しが、彼女へと注がれる。
僅かな沈黙を置いてから、エダは頷いた。
「そんな目されちゃ、仕方がないね」
そう。エダ・サルファーという女は、こういう熱い想いに弱いのである。
「そうね……友達を、ガッコを想う気持ち、素敵ねぇ」
ニコリネ・ユーリカ(f02123)もまた、彼らの想いを汲んだ。
「それじゃあ……」
「ええ。手を貸してもらうわね。お姉さん、引率として張り切っちゃうわよー」
「なんかあったら、私たちで責任持って対応するよ!」
學徒兵たちが快哉を叫ぶ。やる気に溢れた若さが漲る。
「無理を言ってしまって申し訳ありません……。ですが、必ず役に立ってみせます」
「わかった。頼らせてもらおう」
ルパート・ブラックスミス(f10937)としても、その想いを無碍にすることはできない。であれば有効に活用すべきである、と判断を下した。
「今回の影朧……あれは口先で説得できる手合いでもないようだ。当方に『転生』を促す手段がない。貴殿らの中に桜の精はいるか?」
「それなら、私が……」
おずおずと、學徒兵の中から少女が1人手をあげる。ルパートは頷いた。
「では、貴殿の力を借りることになるだろう。他の者もついて来い」
「はいッ!」
こうして、猟兵たちは地下神殿史跡へと突入する。
「さてさて、地下神殿には罠や仕掛けが満載ってことだけど……」
石の床を叩く靴底の音が反響し、静かに響く。猟兵たちは慎重に、しかし素早く神殿奥を目指して進んでいた。
先頭を進むルパートが、手にした短剣に燃える鉛を纏わせる。掲げたそれは、篝火めいて進む道の先を照らし出していた。ニコリネはその光源を頼りに、地下神殿のマッピングを行なっている。地図や地形を把握しておくことで、万が一の時の退路を確保しているのだ。
「気をつけてください、足元や壁に仕掛けがあるはずです」
「侵入者を阻む遺跡か……」
「そう、この地下神殿はねぇ~、“あの”天海大師によってつくられたぁ、結界の一部だと考えられるわ~」
道すがらに、學徒兵の中から詳しいものが声をあげる。
「かつて江戸の街を作り上げる際にぃ、天海大師が『四神相応』……風水的に最良の場所として設計したのはぁ、有名な話だけどぉ」
「……」
ルパートはちらと横目でエダとニコリネを見た。2人は緩く首を横に振る。この場にいる猟兵は全員が別の世界の出身だ。彼らにとってはあまり馴染みのないオカルト混じりの歴史解説であり、理解が困難な内容であった。しかしてお構いなしに解説役の學徒兵は言葉を続ける。
「……それでねぇ。天海大師は江戸の地を更に安定させるため、龍脈……すなわち、大地を走る“氣”の流れを調整したといわれてるのよぉ。それによってぇ、霊的な守護結界を敷いたのねぇ」
「……なるほど!その結界が今も残り続けて、この街を支える力のひとつになってるってことだね」
猟兵たちは理解する。敵の目的もまた、それを破壊することなのだろうと推察ができた。
「つまりここは帝都の地を安定させる為の神殿、っていうことなのね。なら、なるべく破壊せず抜けましょ」
「神殿そのものを不用意に破壊すればその結界に悪影響が出る可能性があるということか。なら、可能な限り善処しよう」
ルパートとニコリネは前に出た。
「そろそろ罠が仕掛けられているポイントになります」
「そうか」
ルパートは静かに視線をあげる。
そして、その身が分かたれるように、新たなルパートの躯体が現れた。一体。二体。三体。次々に現れる分体ルパートたちは、総勢50体を上回り躊躇なく先へと進んでいく。【錬成カミヤドリ】だ。
がこん、と重たい音がして、先頭をゆく分体ルパートの身が僅かに沈んだ。同時に壁から放たれる無数の槍!がしゃんと音を立てて分体ルパートが砕け散る!
「あそこに罠があるようだな」
「分身とはいえ、躊躇なく我が身を犠牲にするとは……」
「いや、どうせ分身に過ぎないのだ。大したものではない」
「それじゃあ、こっちもいくわね」
続けてニコリネも前進する。しゅるり、と衣摺れに似た音とともに、彼女は姿を変える。【ニコリネ大變身/マギア・フィト】は身体を植物へと変じさせるユーベルコードだ。海藻もまたその範疇である。ぬるりとした表面。滑らかに滑るわかめへと變身したニコリネは水の魔術で身体を包むと、ルパートの通った道を更に詳しく精査しながら安全な道を探った。
「こっちこっち、このルートで歩いてくれば罠にかからないで来られ……ギャー!」
「おねえさーん!?」
しかし突如壁から飛び出した槍に壁へと縫い止められるニコリネ・ワカメ!うっかりスイッチを踏んでしまったのだ!
「だけど、これでだいたいのトラップは出切った感じかな?」
ニコリネ・ワカメの無事を確認後、天日干しの工程めいて壁に磔にする槍を手刀でへし折ると、エダは學徒兵たちとともにニコリネを壁からひっぺがす。ぺらりと剥がれたニコリネが人の姿に戻りながら床を転がった。
「でもまだ先がありそうよ。引き続き注意して進みましょ」
「だね。攫われた子を助けるのも大事だけど、引率としてしっかり安全を確保しなくちゃ」
ニコリネが示した道をエダは慎重に進み、後続の學徒兵たちを追従させる。
ドワーフであるところのエダは、家訓にも似た伝説的な言葉「罠ははまって踏み潰す」を敢行する予定であったのだが、ルパートやニコリネがより効率よくそれを体現していたため、幸運にも漢探知担当を免れていた。……積極的に罠にかかりたい、というわけでもなかったのだし、結果的には無問題である。その分、彼女は引率としての役目を十分に果たしていた。
「それにしても、すごいユーベルコヲドだ……これが噂の超弩級戦力か」
「どのような力も使い方次第だ。貴殿らも、知恵を絞れば我々以上に成果を出せる日が来るかもしれない」
かくして、罠を躱しながらの探索行は始まり、彼らはオブリビオンの待ち受ける奥を目指すのである。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
エシャメル・コッコ
王様がお呼びとあらば即参上、コッコな!
今回は帝都地下ダンジョンの探索からのきゅーしゅつ任務な。つまり人手が必要な? てことはコッコ率いるひよこ軍団の出番な!
……人の手じゃないとかそもそも手じゃなくて羽だとか細かいことはいいっこなしな! 今はひよこの羽も借りたいはずな!!(押し切る)
コッコのひよこ軍団は勝手に増えたり減ったりするから罠の察知にもってこいな。いわゆる漢探知ならぬひよこ探知で危なそうな場所はまず配下のひよこに行かせて様子を見るな!
皆はその後に続くといいな!
がくとへーのにーちゃんねーちゃんも着いてくるといいな! ちょっとした怪我はコッコの【生まれながらの光】で治してやるな!
八乙女・櫻子
よりにもよって桜學府の人間を拐うとは……
同じ學府に身を置く者として、看過する訳にはいかないであります!
まずは白里殿のご友人方でありますが、ここは共に行くべきでしょう
學徒兵ならば人手としては申し分ないですし、
何より友人の危機に駆けつけたのなら、自分達だけでも白里殿を助けに向かおうとするでしょう。もし自分ならそうします
であれば共に行動する方が安全かと
神殿内の探索は猟兵を先頭に、一列となって進みましょう
先頭で罠が作動したとしても、猟兵であれば被害は抑えられるはずです
皆様の中に罠に詳しい方は居られるでしょうか?居なければ怪しい所を片っ端から斬るまで!
破魔の力を載せれば霊的な物でも問題はないはずです
鏡島・嵐
判定:【SPD】
この世界もまだまだ見てねえモンが多いけど、地下に神殿ってのは予想外だな。
本当ならゆっくり見て回りてーけど……罠だらけな上にこんな状況じゃあ、ちょっとそれは難しそうだ。
勿体ねえけど仕方ねえ。切り替えて頑張るか。
罠のある場所を〈第六感〉で探ったり、《忘れられし十三番目の贈り物》で身体能力を引き上げて避けるなりして、掻い潜って進んでいく。
……あんまり罠が多すぎると〈第六感〉も麻痺しそうな気ィするけど、そこは我慢して先に進むことを優先。
もし近場に協力出来そうな奴がいるなら、自分が知覚できる範囲で罠の位置とか突破するタイミングを助言するなり、援護するなり。
※アドリブは適当に。
メルノ・ネッケル
……うん。友達、助けたいもんな。
よっしゃ、小明ちゃんに皆。よろしゅう頼むで!
でも、命が危ないと思ったら無理せんと逃げてな?葵花ちゃんが帰ってきた時、皆がおらんときっと悲しむ。
さて、それじゃあ行くとするで!
ぶっちゃけ、罠だらけの空間で全部を避けきるのはうちには難しい。
「トオミドローン」を先行させて、目で見て分かる程度の罠は調べとくけど……ある程度は引っかかるもんと思った方がええな。
ここで学徒の皆が怪我するんは出来るだけ避けたい、罠地帯の突破までは皆より前に出とくで。
あとは、ドローンで確認した罠を皆に伝えつつ前進し……引っかかった罠は即座に【見切り】、回避!もしくは『クイックドロウ』でぶっ壊す!
「よりにもよって桜學府の人間を拐うとは……同じ學府に身を置く者として、看過する訳にはいかないであります!」
八乙女・櫻子(f22806)は拳を握る。攫われた女生徒と同じく帝都の學徒兵である彼女は、義憤の炎を胸に灯した。
しかして熱情に駆られただけではない。櫻子は冷静に検討し、判断する。ここに集った學徒兵たちは、皆友人の危機に駆けつけた者たちだ。同行を断ったとしても、自分たちだけで助けに向かおうとすることは容易に想像がついた。櫻子自身も、自分が同じ立場に置かれたらそうするからだ。そのように思考をまとめ、櫻子は彼らの同行を許可すべきだと考えた。
「共に行きましょう。自分についてくるであります」
「ああ、よろしく頼むぜご同輩。俺たちの仲間に手出ししたこと……あのヤローに後悔させてやろうじゃねェかッ!」
「そうだよッ!それに、葵花がアタシたちを待ってるんだ。1秒でも早く助けなきゃッ!」
學徒兵たちが気炎をあげて、逸る。にわかに空気が熱を帯びた。
「……うん。友達、助けたいもんな」
メルノ・ネッケル(f09332)がそこに言葉を挟む。
「よっしゃ、小明ちゃんに皆。よろしゅう頼むで!」
「うん。よろしくね、猟兵さん!」
「でもな、みんな」
メルノは學徒兵たちを落ち着かせるように、静かな声音で言い添え、付け加える。
「無茶はしたらあかんよ。命が危ないと思ったら無理せんと逃げてな。葵花ちゃんが帰ってきた時、皆がおらんときっと悲しむで」
血気にはやる若者たちに、冷静さを取り戻させる。
「……うん、そうだね。慎重にいくよ。たしかに猟兵さんの言う通りだ」
「よし、話はついたよーだな!」
ぴよぴよと鳴くひよこの群れを引き連れて、エシャメル・コッコ(f23751)は頷く。
「今回の案件は、は帝都地下ダンジョンの探索からのきゅーしゅつ任務な。つまり人手が必要な?」
「アッハイ」
「てことはコッコ率いるひよこ軍団の出番な!」
人手。
學徒兵たちは胡乱なものを見る目で、コッコの足元にぴよぴよと展開するひよこの群れを見た。
「……人の手じゃないとかそもそも手じゃなくて羽だとか細かいことはいいっこなしな!今はひよこの羽も借りたいはずな!!」
「アッハイ」
コッコは勢いで押し切る。ぴよぴよ。明らかに異なるコミカル加減になにか言いたげな學徒兵たちは何名かいたが、まあ、うん。しかたないですね。
「ならば早速出発な!」
「せやな。葵花ちゃんも待っとるはずや。早く助けに行かな!」
「はい!帝都桜學府所属、八乙女・櫻子……行くであります!」
「よっしゃ――行くぜェ!」
神殿内の探索は、猟兵たちを先頭に進む。
「おー、やっぱり他にも来てたのか」
先行して神殿内の探索を進めていた鏡島・嵐(f03812)は、後からきた猟兵たち、および學徒兵たちにかち合う。
「この神殿、すげえところにできてるな……。石壁一枚隔てた向こうから、すごい力を感じるよ。本当ならゆっくり見て回りてーけど……罠だらけな上にこんな状況じゃあ、ちょっとそれは難しそうなのが残念だな」
嵐は占術を学んだ経歴がある。魔術の知識が豊富であり、更に興味をもって様々な世界での見聞を広げ続けている猟兵だ。風水についてもその知識の範疇である。この地下神殿においても、建築様式や史跡を見ると同時に魔術的・霊的な仕組みについても構造を分析していた。
「そーなのな?」
「はい。自分も桜學府の所属として聞き及んだことがあるのであります。帝都の地下には、強い力の流れが存在していると……」
「『龍脈』っちゅーやつやな。うちも聞いたことがあるで」
「そうなんだよ。……だからきっとあいつは葵花を攫ったんだ」
「あァ。葵花の『黄龍の眼』は龍脈に触れることのできる【力】らしーからな」
「『黄龍の眼』な……?」
コッコは随伴するひよこ軍団に先行するよう指示をしながら、聴き慣れぬ言葉に首を傾いだ。
「『黄龍』っていうのは、四神……東西南北を司る青龍、白虎、朱雀、玄武がいて、その中央に配されるっていう龍神のことだな」
嵐が解説を加えた。黄龍とは即ち、五行における土であり、そして王位を象徴する存在なのだ。
「そーなのな!」
「ああ、その猟兵のニイさんが言う通りだ。そして、一説によれば黄龍とは地の龍……つまり龍脈そのものだとも言われてる。葵花の【力】は、その龍脈の流れを見通し、そして影響を及ぼすことができるってことらしい」
「なるほどな……そんな力をこの神殿の中で悪い方向に使えば、帝都の地を走る龍脈を乱すことができるってわけだ!」
「それ、メチャメチャヤバい案件やんか!」
「敵はこの国を崩壊させることが目的だと言っていたであります。……敵の目論見が成功すれば、その実現すら可能かもしれない、ということでありますね」
「な、なんか話がメチャメチャでっかくなってるな!?」
「そうならないために、一刻も早く葵花を助けなきゃなんだよッ!」
猟兵たちと學徒兵たちは、慎重に、しかし速やかに地下神殿の通路を進む。メルノの放ったトオミドローンで先の状況を確認し、コッコのひよこ軍団が勇敢なトラップ探知をしていくことで罠の場所をチェック。必要に応じて嵐が罠を躱して進む道筋を見極め、また、乙女と學徒兵たちが罠を排除しながら安全を確保して侵攻を進めてゆく。
「大丈夫な?みんな怪我はしてないな?」
コッコは時折振り返り、聖者としての光を振り撒いた。その輝きが傷と疲労を癒し、ペースを落とすことなく猟兵たちは進む。(余談であるが、彼女の【生まれながらの光】は暗い地下遺跡を進むための光源としてもおおいに役立っていた)
「ああ、うちは大丈夫や。お陰でぜんぜん疲れとらんで。……それより、そろそろみたいやな」
メルノは頷く。風の流れを感じたのだ。そして、奥に複数の気配。……敵の手下たちに違いあるまい。
「思ったより順調でありましたな。しからば、次は剣を抜くべき時でありますか」
入り組んだ罠だらけの通路の先で猟兵たちがたどり着いたのは、大きく開けた空間であった。篝火が焚かれ、その中で影が揺らめく。学舎の運動場ほどもある広い空間の中には、古びた寺社ひとつが丸ごと建っていた。その周囲を警戒するように、オブリビオンの集団がうろついている。
「もう敵が来るのか?ちょっと待ってくれよ。心の準備を整えるから……」
嵐はあくまで慎重にいく。深呼吸、深呼吸。敵に相対するにも、まずは気持ちを落ち着けてから……
「ぴよぴよ」
「「「何者だ!!!」」」
「バレたな!!!!」
「話が早いな!?」
嵐はぎょっとした。慌ただしく戦いの準備に取り掛かり、迎撃の態勢を整える。
「ばれてもうたもんはしゃあない!みんな、いくで!」
メルノはホルスターへと手をかけた。途端、空気が熱を帯びる!
「はい!いくでありますよ、同輩たち!我々桜學府の意地を見せつけてやるであります!」
「「「おおッ!!」」」
乙女の号令とともに、學徒兵たちはそれぞれに抜剣し、あるいは武具を構える。
かくして、帝都地下での龍脈を巡る戦いが幕を開けたのである!
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
第2章 集団戦
『雀鬼』
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POW : 決戦雀技「自摸」
【役満以上のツモ】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
SPD : 決戦雀技「栄」
【役満以上のロン】が命中した対象を切断する。
WIZ : 決戦雀技「燕」
レベル分の1秒で【イカサマ牌】を発射できる。
イラスト:Sugaken
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
紫煙の匂い。粗末な木製のテーブルセットにたむろする男たち。
オブリビオンの手下である彼らは、牌に触れる手を止めて一斉に立ち上がり、猟兵たちの姿を見た。
「フン……誰かと思えば學府のガキどもじゃねェか」
「ケッケッケッ……ここはヒヨッコどもが遊びに来ていい場所じゃねエんだぜ……?」
寺社を守るように配された人相の悪い男たち――ゲオルグによって呼び出された影朧の群れは、じゃら、と牌を鳴らしながら相対する。
「クク……ここでお前らを足止めすればあとでたんまり報酬が出るっていうんでな……」
「ヒヒヒ!遊んでやるぜェガキども。洗牌の作法から教え込んでやる」
「鉄火場の怖さを思い知らせてやるよォ!」
男たちは卓につき、挑発するように猟兵たちを呼ぶ!
なお、君たちは卓上での勝負を挑んでもいいし、ふつうにブン殴ってもいい。
ニコリネ・ユーリカ
慥かに此処は遊びで来ていい場所じゃないわ
でもこの子達は大切な友達を救いに来たの
私達の戦いを見守る事が、今のこの子達の試練よ
未成年に莨の煙が行かないよう卓について勝負!
オジサマ方の健康麻雀に付き合ってあげる
ふふ、私は強いわよ?
大丈夫、麻雀はコンビニムックで毎週読んでるの
自身は敵の表情や卓の空気を具に観察して注意を引きつつ
密に地面や壁をスイスイ滑って移動するラッコの影を放ち
相手の手牌を覗き見して戦術を見破ろうっと
手の内が読めたらイカサマが仕掛けられるタイミングも読める筈
敵の白手袋が動いた瞬間、シャッター棒のフックで絡げ取ってやるわ
鋩を肘から肩口に滑らせて逆関節をキメるの
貴方達の土俵で勝ってみせる!
エダ・サルファー
聖職者的に賭博はちょっと……
あ、金銭は賭けてないのね。
なら麻雀で勝負をしてやろうじゃない!
麻雀のルールは漫画やゲームでふわっと知ってるだけだけど、信仰の加護を見せてやるぜ!
とは言うものの、私は所詮麻雀初心者に過ぎないから、ビギナーズラックに懸けるくらいしか出来ないんだよね。
だから前に漫画で見た技を使わせてもらおう!
そう、手元の牌の表面を指の力と摩擦で削り取り、全部を白にしてやるのだ!
これぞ天地創せ……そんな役無い?
じゃあ普通に四暗刻字一色のダブル役満でいいよ。大三元は乗るのかな?
イカサマだと言われたら、役作る前に見抜けなかったんだから駄目だろと突っぱねるよ!
それでもグダグダ言うならはっ倒すよ。
鏡島・嵐
判定:【SPD】
えっと……麻雀で勝負すんのか?
んー……まあ、戦うんは怖ぇし、それで白黒つけるってんなら、イヤとは言わねー。
でもおれが勝ったら、大人しく通してくれよな。負けそうだからって雀卓ごとひっくり返すってのはナシだぞ。
麻雀はルールうろ覚えで本格的なのはやった事無ぇけど、〈第六感〉〈野生の勘〉あたりを駆使して、なんとか慣れるように頑張ってみる。
やり方がわかってきたら《忘れられし十三番目の贈り物》で捨て牌とかから打ち筋を読んで、何の役を狙ってるんか、どの牌切るのが危ないんかを推測しながら、自分もいい役を狙って打っていく。
……欲を言えば、どうせ和了るんなら面白い役で上がりてーけどな。
「ククク……さあ、卓につきな」
口の端を吊り上げ笑う雀鬼たち。彼らは猟兵たちをテーブルへと誘う!
「えっと……麻雀で勝負すんのか?」
鏡島・嵐(f03812)は突然の敵の申し出に面食らいながらも、血を見る戦いよりはいいかと思案しながら卓につく。
「それで白黒つけるってんなら、イヤとは言わねー」
「私は……、聖職者的に賭博はちょっと……」
エダ・サルファー(f05398)は眉根にしわを寄せる。
「馬鹿がァ!俺たちの命をかけた鉄火場は“賭博”なんてお遊びとは違ェンだよ!」
「あ、金銭は賭けてないのね」
「賭けるのは己の誇り、そう、プライドよ……!」
「遊びのつもりならそこのガキどもを連れてとっとと帰るンだなア!」
「慥かに、此処は遊びで来ていい場所じゃないわ」
ニコリネ・ユーリカ(花売り娘・f02123)は顔を上げ、男たちへと対峙する。
「でも、この子達は大切な友達を救いに来たの。遊びなんかじゃないわ」
「そうだよッ!アタシ達は、葵花を助けに来たんだッ!邪魔するなら、許さないぞッ!」
「ケヒヒ……なるほどなァ。面白ェじゃねえか」
雀鬼の中から1人が歩み出て、卓についた。
「なら、この俺が相手をしてやる……3対1で構わないぜ。俺をトップから引きずり下ろせたらお前らの“勝ち”にしてやる……」
「わかった。でもおれ達が勝ったら、大人しく通してくれよな。負けそうだからって雀卓ごとひっくり返すってのはナシだぞ」
「クク……勝負をひっくり返すなどするものかよ。この腕に誓って」
「ええ、そう誓ってくださるなら……。オジサマ方の健康麻雀に付き合ってあげるわ。……ふふ、私は強いわよ?」
「よし、じゃあ私も勝負をしてやろうじゃないか!信仰の加護を見せてやるぜ!」
「たいした自信じゃないか……ククク。なら、始めるぞ」
こうして、猟兵達は卓につく。
じゃら、と音を立て混ぜられる牌。卓上の戦いが始まる。
麻雀とは、多くの競技人口を抱える賭博競技として知られる卓上遊戯である。
しかして、同様に現在でもカジノなので用いられる遊戯としてのトランプが占術の道具として用いられていたタロットを基にしていたように、麻雀もまた古代中国で発展した魔術的な思想を表したアイテムなのだ。
筒子・索子・萬子はそれぞれに天の星・地の草葉・人の世にあまねく生命。すなわち天地人を表し、いわずもなが風牌は包囲をあらわす。白發中もまた上元
中元・下元といわれる時節の移り変わり、即ち三元をあらわしているのだ。麻雀とは、易のための道具がもととなって発展した遊戯なのである。そのように捉えれば、巨大な運命の流れを変えうる力を持つ龍脈の流れるこの地において彼ら雀鬼が集うのも必然であったと言えよう。
さておき。
「ロンッ!立直・断么・役牌ッ!くっははははは!放銃だぞ、女ァ!」
「くッ……!なんてパワー……!」
「ああッ!おねーさんが!」
放銃!3飜!堅実な攻め手、ニコリネが一撃をもらう!ユーベルコードほどではないにせよ、和了から放たれる雀力の圧力にその身体が揺らいだ!
「大丈夫よ……この程度で、倒れはしないわ……」
しかしてニコリネは態勢を立て直し、學徒へいたちへ微笑みかける。
「ククク……腕が震えているぞ。やせ我慢がいつまで続くかな?」
「おねーさん……!」
不安げな表情で學徒兵たちが駆け寄ろうとするのを、ニコリネは手で制した。
「大丈夫……私達の戦いを見守る事が、今のあなた達の試練よ。それよりあなた達は、莨の煙を吸わないようになさい。受動喫煙は健康を害するわ」
「自分より他人の心配か?ククク……いつまでそうしている余裕があるかな?」
一巡を終え、雀鬼はトップを独走していた。
「ククク……しかし、よくもまあここまで痛めつけられて誰もハコテンせずにいられるものだな」
「……まだ、終わってねえからな」
「そうだよ……!大逆転は、ここからだからね!」
「よくも言う!ならば、次の局でこの俺が自摸和了し、お前たち全員をハコにして終わりにしてやる!」
ざ、っ!洗牌を終え、そして新たな局が始まる。状況は圧倒的に敵の優位。しかし、まだ決着がついたわけではない。
(……これが麻雀、か。……やっとだけど、わかってきたぞ)
嵐は場の流れを見極める。
これまでの戦いで戦い方は理解した。敵の手癖もわかってきた。敵はここまで大技を狙わず、少ない点数でも確実に和了を迎え堅実な攻め手を続けている。素人相手に確実に詰め、このまま圧殺する気か。だが、そうはいかない。
【忘れられし十三番目の贈り物/マルール・トレーズ】は嵐の知覚力と思考演算能力を飛躍的に高める。盤面は見えた。『どう動けば負けるのか』を、敵の捨て牌から推理する。更に手牌から勝ちまでの道筋を類推――そして、静かに勝機を伺う。
「……」
一方、ニコリネもまた静かに盤面の状況を伺っていた。
密かに影を走らせる。【影の追跡者の召喚】。目立たぬよう放たれた影は獣の形を成し、静かに敵の動きを観察する。
「なかなかやるね……!
「お前たちとはかける熱意が違うんだよ」
エダは残り少ない手元の点棒を見てから、雀鬼の姿を睨め付ける。嘲笑うように口の端を吊り上げる男は、挑発するように手の中で膨大な量の点棒をじゃらじゃらと鳴らしてみせた。
「それでも、負けるわけには!」
「クク、果たして本当に……」
だが、その瞬間である!
「ロン!」
「……なに!?」
嵐が、動いた。見極めた勝機を掴む!
「七対子、清一色、断么……あと平和、だったな……!」
オープンされた牌を構成するのは、天をあらわす筒子の並びである!二筒から八筒までが順に2枚ずつ並ぶカタチだ!
「大車輪、だと!?」
「「グアーッ役満!!」」
「まずは一発、取り返したぞ!」
役満!嵐は劇的な点数を雀鬼から奪う!放たれる雀力に雀鬼が悲鳴をあげながら仰け反り、口の端から血を流した。周囲を囲みギャラリーを形成していた雀鬼たちはまとめて吹き飛ばされ爆発四散!
大車輪とは一部の雀荘で採用されるローカルルール役満だ。筒子のみで構成された二から八の七対子を指す。読まれやすい清一手でありながら、七対子のカタチである都合上迷彩を仕掛けることが可能な役でもある。
「馬鹿な……!いや、まぐれだ。まぐれでしかない!」
荒い呼吸とともに雀鬼は態勢を立て直す。
「そういうのは、三下の台詞じゃーないのかい」
その動揺にエダはつけ込む。洗牌。次の局へと試合を移し、彼女は行動に出た。
「クソ……馬鹿な、まぐれの、ビギナーズラックで、この俺を……」
「ロン!」
「なに!?」
雀鬼が手配から白を捨てた瞬間にエダは叫ぶ。オープンされた手牌は……すべて白だ!そう、エダはその指先の力で牌の表面を削り取り手牌の全てを無理くり『白』にしていたのである!
「これぞ天地創せ……」
「いやいやいやいやいやいや」
いくらなんでも無茶が過ぎる。もうズルとかイカサマとかそういう次元ですらない。思わず真顔になった雀鬼が首を振った。
「じゃあ普通に四暗刻字一色のダブル役満でいいよ。大三元は乗るのかな?」
「いや、白しかないから大三元にはならないが……」
大三元とは白發中が『揃う』ことが条件なのだと雀鬼は抗議する。……イカサマを見抜けなかったこと自体は落ち度だ。役作る前に見抜けなかったんだから物言いは認めない、とエダは言い張る。そこについては口を挟まない。憎らしげな顔で、雀鬼はエダへと点棒を渡した。
そして迎えた最終局。白だらけになった麻雀牌を破棄して入れ替え、請求書をエダに叩きつけながら卓上での決戦が始まる。
雀鬼は急いていた。素人ばかりだと思って舐めてかかっていた。……既に点数では逆転を許している。この最終局で点を取らねば総合的には敗北だ。ここで雀鬼は奥の手を用いる。指先を密やかに踊らせ、牌のすり替えを――
「いけないわね?」
白手袋の指先を、ニコリネが抑えた。
「き、貴様……何を……」
「気が急いたんでしょう?ここで取れなかったら負けるものね。……動くと思ってたわ」
彼女はそれを予測し、目を光らせていたのだ。ラッコの姿をした『影の追跡者』がそれを監視していた。イカサマを使おうとしたならば、その瞬間に捕まえてやろうと備えていたのである。
「見抜いていたというのか……グアッ!」
ニコリネは男の肩関節を極めながら微笑む。
「これでチョンボ。……あなたの負けよ?」
「……わかった。負けを認めよう」
雀鬼は抵抗しない。力を抜き、緩く首を振りながら猟兵たちの勝利を認めた。
「お、じゃあおれ達の勝ちだな。じゃあ先へ……」
席を立った嵐は額の汗をぬぐい、寺社へと視線を移す。あとは攫われた女生徒を助けさえすれば……
「いや、待て」
「えっ」
しかしてそれを雀鬼が呼び止める。
「俺は負けを認めるし、“俺に勝ったお前たち3人”は許してやるが……ほかの奴らがまだ認めていない」
「「「ええーっ!?」」」
學徒兵たちが一斉に戸惑いと抗議の意味をこめて声をあげた。屁理屈じゃん!!!ブーイングが地下神殿を満たす!
「ケッケッケ……そいつは負けたが、俺たちはまだ負けてねえからなア……?」
「ヒヒヒ……!俺たちを“全員”倒したら素直に通してやるよ……!」
残る雀鬼たちはニヤニヤと嫌らしく笑いながら猟兵たちの前になおも立ちふさがる。
「どうやら、易々と先には進ませてくれないみたいだね」
「せっかくそっちの土俵で勝負してあげたのに!」
やはりこの男たちは、一筋縄でいく相手ではないらしい。
猟兵たちは対峙する。地下神殿における雀鬼たちとの戦いは続くのである!
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
エシャメル・コッコ
バレちまったもんは仕方ないな! こうなりゃ真正面から殴り込みなー!!
ゆけーっ、ひよこ軍団! 悪い奴らぜーんぶピヨピヨさせてやるな!!
ちなみにコッコは麻雀はさっぱりな! ドンジャラしかわかんないな!
だから【ピヨピヨサークル】で雀鬼たちをピヨピヨさせて、その隙に【ひよこんぼう】で片っ端から殴ってさらにピヨピヨさせるな!
はたしてピヨピヨしながらでもイカサマはできるな……?
イカサマをするようなやつのゲームに付き合ってやるどーりはないな!
牌を掴むまでもなく雀卓ごとぶっ飛ばしてピヨピヨさせてやるなー!!
……え、雀卓は別に使うわけじゃない?
……知ったことじゃないな! とにかくピヨピヨなー!!!
ルパート・ブラックスミス
(學徒たちから麻雀のルールを【情報収集】)
ふむ、なるほど……よし。
UC【炎抱きて白熱せし鋼肢】起動。
敵を机諸共蹴り飛ばして爆砕する。放とうとしている牌も【吹き飛ばし】てしまおう。
役満でなければそちらのUCは発動できないのだろう?
先程ルールを聞いているのだ、的確に【武器落とし】を狙おう。
卓に着く気?あるわけなかろう、こちらは影朧と葵花嬢の捜索中だ。遊戯に興じてる場合ではない。
學徒たちはいつでも【かばう】ことができるように近くに控えていてもらう。
(蹴散らした後で、机を立て直し、牌を拾って並べて)
ツモ。タンヤオ三暗刻。…この場合は何点だったか?
八乙女・櫻子
ま…麻雀…?
ただ遊戯に興じているだけにも見えますが、
これがなんやかんやで霊脈に影響があったりするのですかね?
とは言え今はゲオルグとやらの目論見、そして何より白里殿の安否が心配であります…故に悠長に付き合っている暇はないッ!
ここはスクワッド・パレヱドによる強行突破を敢行するであります
自分ひとりではたかが知れているかもしれません…しかしここには、友の為に危険を省みず集った勇気ある學徒兵の皆が居る!
同じくスクワッド・パレヱドを使える皆で力を合わせれば、数え役満で雀鬼など恐るるに足らず!
え、実は麻雀した事ないだろ?ハハハそんな事は……
メルノ・ネッケル
お互い血ぃ流さんで済むならその方がええけど……生憎、麻雀は慣れとらんもんでな。できる人に任せよか。
とはいえ、卓につける人数は限られとる。暇する影朧連中の相手はうちがやるで。雀力勝負とはいかへんが、武力勝負で押し通る!
そういや、聞いた事あるで……確か、捨てた牌でアガられるんを「放銃」って言うんやったね。
そんじゃ、文字通りの「放銃」や。捨て牌代わりの鉛玉、アガれるもんならアガってみぃ!
とはいえ向こうの技は牌の速撃ち、コンマ秒の射撃を避けるのは難しい。
ここは【先制攻撃】で不意を突き、サマ牌発射より一手先に動かせてもらうで。
【クイックドロウ】、抜き撃ちで放つ『旋風連射』!一発一人、六発六人や!
「ところで、麻雀とはなんだ」
ルパート・ブラックスミス(f10937)はカルチャーギャップに首を傾ぐ。
「コッコは麻雀はさっぱりな!ドンジャラしかわかんないな!」
エシャメル・コッコ(f23751)もまた、完全にお手上げだ。
「お互い血ぃ流さんで済むならその方がええけど……生憎、うちも麻雀は慣れとらんもんでな」
メルノ・ネッケル(f09332)が首を横に振った。
「ケッケッケ……なら、通してやるわけにはいかねェな……」
「ヒーッヒッヒ!素人の出る幕じゃねエんだよ!」
「……」
ルパートは學徒兵たちの中から何人かを呼ぶ。
「鎧のニイさん、打ったことないのか」
「そうだ。簡単でいい、説明してくれ」
「つっても、俺達も時々夜中にこっそりやってる程度だが……」
ルパートの呼びかけに反応した男子學徒兵が数名集まった。基本的なルールの説明を始める。
「夜中にこっそりやってるのでありますか!?」
不良のやることでありますよ!?と八乙女・櫻子(f22806)は素っ頓狂な声をあげる。
「まあまあイイじゃねえか、そんなに目くじら立てなくても……」
「しかしご同輩!」
「いや、待ってくれ八乙女さん。麻雀とは、古代中国の気学に端を発する伝統的な占術と密接な関わりがある遊びなんだ」
ここで解説役の學徒兵が口を挟む。
「ええ……」
「占術の一種だからね。吉凶を占ったり、あるいは先を見通す兆しを見つける学問でもあるんだよ」
「はぁ……そうだべか……あ、いえ。ただ遊戯に興じているだけかと思っていましたが……とすると、ここで行われている麻雀もなんやかんやで霊脈に影響があったりするのですかね?」
「影響を及ぼすというよりは、観測の役目に近いのかもしれないね」
學徒兵が麻雀を嗜む是非についてはさておき、一応の理屈を理解した櫻子はあらためて敵の姿を見る。
「よし」
その横をルパートが通り過ぎた。用意された雀卓へとかける。
「え、やるのでありますか?」
「……」
「ヒヒヒ……他にはいねえのか?」
「なら、3対1で構わねエよなア……へへへ、カモにしてやるぜ」
雀鬼たちが続いて卓を囲み、席についた。洗牌を始める。空気がにわかに張り詰めた、その瞬間――
「ふん」
爆砕!ルパートの全身が炎を放ち、雀卓ごと雀鬼たちをまとめて火達磨にする!【炎抱きて白熱せし鋼肢/ブライブライトブラスト】!
「「「グアーッヤキトリ!!!」」」
燃えながら床を転げる雀鬼たちはたちまち爆発四散!
「き、貴様!どういうつもりだ!」
「どうもこうも、卓に着く気などあるわけなかろう。こちらは影朧と葵花嬢の捜索中だ。遊戯に興じてる場合ではない」
至極当然である!剣を抜いたルパートは爆破した雀卓の残骸を蹴倒し、一歩進み出た。
「うむうむ。そのとーりな!」
ぴよぴよ。ひよこ軍団を引き連れて、コッコもまた前進!ウォークライめいたひよこたちの声が響く!ぴよぴよ!!
「うんうん、この方が話がわかりやすくてええな!」
メルノがホルスターから銃を抜く。相棒二挺、構えて地を蹴り飛び出してゆく!
「なに……!て、テメエら、麻雀は……」
「うるせーーー!な!こうなりゃ真正面から殴り込みなー!!」
もはや道理は通じない!そもそもがここにいるのは猟兵とオブリビオン。滅ぼし合う宿命の両者なのだ。弱肉強食の理を体現するように、コッコとひよこ軍団はぴいぴいぴよぴよ駆け巡る!
「ゆけーっ、ひよこ軍団! 悪い奴らぜーんぶピヨピヨさせてやるな!!」
「その通りであります!今はゲオルグとやらの目論見、そして何より白里殿の安否が心配であります……故に悠長に付き合っている暇はないッ!」
「よし、いくぜ八乙女!」
「俺達桜學府の力を見せてやろう!」
「はいッ!」
「ええで、そんならうちが道を拓くッ!」
先制攻撃!機先を制して飛び込んだメルノが二挺銃を振り回す!Bull’s eye!素早く正確な射撃が敵を撃つ。
「鉄火場に銃なぞ持ち込みやがって!」
「縁起でもねえ!」
男達は雀卓の上から牌をひっ掴み、その指先から雀力を込める。反撃態勢だ!
「そういや、聞いた事あるで……確か、捨てた牌でアガられるんを『放銃』って言うんやったね」
卓上においては本来負けや失点を意味する言葉だ。しかして戦場においてその意味は大きく異なる!
「文字通りの『放銃』や!捨て牌代わりの鉛玉、和了(アガ)れるもんなら和了ってみぃ!」
連射ッ!メルノは敵が反撃の手を打つよりも早く弾丸を撃ち、敵を制する!嵐めいて激しく唸りを上げながら疾走する鉄の嵐、ファニング技巧だ!【旋風連射/ハリケーン・ファニングショット】が雀鬼たちを次々に戦闘不能に追い込んでゆく!
「つ、強いぞ、こいつら……!」
「こっちも突撃なー!ゆくのな、ひよこ軍団!」
ぴよぴよ!やかましく鬨の声をあげて押し寄せるひよこの群れは残る雀鬼たちに取り付き更に頭上へと飛翔!さらにオブリビオンたちの頭上を周回するように旋回!
「な、なんだこりゃア……!」
「あたまのうえにぴよぴよがあるってことは、ピヨピヨな!」
曰く、『パニックになると頭上にひよこが現れる』のであれば、ひよこはパニック状態の象徴である。であれば逆説的に、頭上でひよこが回ればパニック状態になるのではないか?コペルニクス的転回!その理論の実践こそが【ピヨピヨサークル】なのだ!
「ば、バカにしやがッ……うむむ……」
「ああー……だんだん、頭が……」
恐るべきユーベルコードである!混乱状態に陥った雀鬼たちは反撃に移ることができずにいる。
「とにかくピヨピヨなー!!!」
「グアーッ罰符!!」
身動き取れぬ男たちへと向かってコッコは得物を構える。ひよこんぼうッ!容赦なく殴打!雀鬼たちの頭上でひよこに加えて星が散る!昏倒!次々に無力化!
「ムウウーッ!ゆ、許さねえぞォ!」
ピヨピヨを免れた男たちは数少なくなりながらも高い戦意を保ち、卓上で牌を揃え始める!雀力を高めて強力なユーベルコードを放とうとしているのだ!
「させん」
「グアーッチョンボ!!」
爆砕ッ!ルパートの放つ炎が卓ごと牌を破砕し、そのテを崩す!
「役満手を作れなければそちらのUCは発動できないのだろう?」
學徒兵たちから仕入れた知識で最低限のルールを解したルパートは的確に敵の攻撃手を見切り、それを止めたのである。
「八乙女!敵は弱ってる。畳みかけようぜッ!」
「はいッ!勝機は逃さないでありますよ……自分が先頭をいきますゆえ、ついてくるであります!」
「おおッ!」
猟兵たちの攻め手を受けてパワーダウンしたオブリビオンたちへと、櫻子たちは最後の一手を詰めるッ!号令に応じる声に続いて、學徒兵たちが武具を構えた!
「ここを……通せェーッ!」
硬球ッ!帝都桜學府女子野球部エースピッチャーの豪速球が唸る!嚆矢めいて放たれたボールが口火を切り、學徒兵たちが次々と雀鬼めがけてその力を叩きつけた!
「剣気、発勁ッ!」
「八乙女さん、突破を!」
「了解であります!皆で力を合わせれば、数え役満で雀鬼など恐るるに足らず!」
「ば、馬鹿な!なんだこのパワーは!?」
「「「グアーッハコテン!!」」」
退魔の刃を掲げ、櫻子は押し通る!刀剣乱れ舞い、あるいは招聘された悪魔が踊り、力自慢が腕を振るって男たちを叩きのめす【スクワッド・パレヱド】!集った學徒兵たちの勇気と熱意は遂に雀鬼たちを圧倒し、そして完全に制圧する!
「これでもう文句つける奴もおらんな」
もはや動く雀鬼も残ってはいない。残るのはもはや無力化された者たちばかりだ。メルノは銃口にくゆる煙を吹き消して、ホルスターにしまう。
「うむ!ぴよぴよの大勝利な!」
「ぴよぴよ」
コッコ配下のひよこ軍団は勝利の凱歌を歌い上げた。彼女もまた意気揚々と先を目指す。
「……」
「あれ、何してん?」
そこで、メルノは床から何かを集めているルパートに気付いた。麻雀牌である。ルパートは比較的無事な机を立て直すと、その上に牌を並べた。
「ツモ。タンヤオ三暗刻。……この場合は何点だったか?」
「……実はちょっとやりたかったんやな?」
「やりたかったのな!」
「やりたかったんでありますか……」
さておき。
かくして、道を阻む悪党の群れは蹴散らかされた。あとは最後の目的を果たすのみである。
猟兵たちと學徒兵たちは、意を決してその先へと進む。
間も無く、決戦の幕は開く。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
第3章 ボス戦
『超人ゲオルグ』
|
POW : 超・イービルアイ
【奇石「宙の眼」から超エネルギー光線】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
SPD : 超・クレアボヤンス
技能名「【追跡・暗視・視力・情報収集・失せ物探し】」の技能レベルを「自分のレベル×10」に変更して使用する。
WIZ : 超・パイロキネシス
【奇石「宙の眼」による千里眼】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【体内から発生する凄まじい業火】で攻撃する。
イラスト:V-7
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「仇死原・アンナ」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
「グフフフ……感じマス……。龍脈の力は、ここにあるのデース!」
地下神殿の奥に建造された寺社の中で、オブリビオンは笑う。
「ここは龍脈を安定させるための要の地であり、パワースポット……グフフフ、『黄龍の眼』の女よ。ここでお前が死ぬことによってお前の身体に秘められた“氣”が解放され龍脈に流れ込むことでそのパワーは暴走し、帝都を守護する霊的結界を崩壊させながら巨大な地震として荒れ狂い、この国は全滅するのデース!」
「いけません……そんなことをしたら、たくさんの人が犠牲になってしまう!」
「だからそうするのデース!」
白里・葵花は縄で縛り上げられ、寺社の本堂にあたる広間の奥に転がされていた。ゲオルグは懐からナイフを取り出し、高く掲げる。
「グフフフ……モウ抵抗するチカラもないでしょう。我が祖国の大いなる野望の礎になるのデース!」
怪人の哄笑が地下空間を満たす。……急げ、猟兵たちよ!超人ゲオルグの悪しき目論見を粉砕し、攫われた女生徒を助け出すのだ!
エシャメル・コッコ
ついに親玉のとこまでやってきたな!
こいつはまたヒゲの長いやつな、まるごと引っこ抜いてやるな!!
といっても一番大事なのは攫われちゃったがくせーさんのきゅーしゅつな!
そのためにコッコ、秘策を用意してきたな!
(懐から小さな卵を取り出し)これはコッコがひよこさんから譲り受けたひよこ王国のお宝な!
この卵はひよこさんの王国につながってるな! いい子がこれに触るとピヨピヨランドにご招待な!
中ではひよこたちが大勢お出迎えしてて、わたあめの雲とプリンのお山、ジュースの泉でお客様をかんげーな!
攫われたがくせーさんもここにいればご安全な!
そのためにもコッコはがくせーさんの救助に専念するな!
仲間のみんな、任せたなー!
ルパート・ブラックスミス
忠義は認めよう。
だがその野望、我らが断つ。
【先制攻撃】。短剣【誘導弾】を【投擲】、敵のナイフを葵花嬢に当たらないように【武器落とし】。
ダメージより敵への【挑発】が主体だ、その後も學徒たちを【かばう】のを兼ねて正面堂々と接敵。
回避も防御も無用、敵の攻撃はこの鎧(み)の【火炎耐性】で弾く。
体内から業火?生憎、当方には至極いつも通りだ。
攻撃はUC【映す心断ち割る呪剣】。
敵がこちらを視認しなければならない以上回避は不可能。
逆にその眼がどれだけ強力だろうと使い手が意識朦朧では脅威ではない。
敵が隙を見せたら【怪力】込めて蹴りつけ葵花嬢の傍から【吹き飛ばし】。學徒たちに救助を任せよう。
【共闘・アドリブ歓迎】
メルノ・ネッケル
刃物なんか出しよって……このままやと葵花ちゃんが危ない!
ここは【クイックドロウ】の抜き撃ち行くで。
奴がナイフを振り下ろす前に、リボルバーで撃ち落としてご挨拶!
……超人ゲオルグ、アンタの野望もここまでや。友達総出に猟兵で、その娘を返してもらいに来たっ!
行くで、その目立つデコに銃弾熱線ぶち込んだる。『九秒の狐』の出番や!
奴の技は視力強化に透視能力、追跡能力。少なくとも隠れるのは危険やね。
ここは、九秒間を動き回りながら稼ぐ!
ガン逃げでも追跡能力は厄介やけど、タイマンでやり合う訳やない。うちに注意が向くなら良し、向かないならそれも良し。
十分距離を取っても射撃は届く、九秒経ったらデコへ銃撃やっ!
「さあ、死になサーイ!」
「みんな……」
かざした刃をゲオルグが振りかざしたその瞬間である。
「そうさせるわけにはいかんな」
「せやで、アンタの野望もここまでや!」
「ムウウーッ!?」
その眼前を走り抜ける銃弾!ゲオルグの髭を一房落とし、同時に放たれた短剣がその手の先に握られたナイフを叩き落とす!
「私の計画を邪魔するとは……何者デース!」
「その娘の友達と、猟兵や!」
「貴殿の野望、我らが断つ」
メルノ・ネッケル(f09332)は銃を構え、ルパート・ブラックスミス(f10937)もまた剣を抜いて敵の姿へと対峙する。
「オーウ!猟兵!こんなところまで一体何をしに……」
「その娘を返してもらいに来たっ!」
「ヒゲオ!お前の悪巧みももーおしまいな!」
ぴよぴよ!エシャメル・コッコ(f23751)もまたひよこ軍団を引き連れ、本堂へと突入!
「私はヒゲオではありマセーン!ゲオルグデース!」
「遊んでいる暇があるのか」
抗議するゲオルグへと向かい、ルパートが走る。同時にメルノの牽制射。ゲオルグが僅かに動きを止める。
「今な!ヒゲの長いやつな、まるごと引っこ抜いてやるな!!」
その一瞬にコッコは突貫!
「小癪なデース!返り討ちにしてやりマース!」
対し、ゲオルグは迎撃態勢をとる。その額で赤い奇石が鈍く輝いた。……念動発火!パイロキネシス能力だ。虚空に炎が生まれ、そして猟兵たちへと襲いかかる!
「あっちーな!」
コッコは一旦足を止めて炎の襲撃を躱す。なんたる出力か!煌々と燃える火が寺院の内部を赤く照らし出す。
「自分が前に行く。葵花嬢を頼んだ」
「そしたらうちもサポートにつくわ。救出、そっちに任すで」
「コッコが承ったな!秘策を用意してきたな。安心して任せとくな!」
3人は短くやり取りを済ませ頷き合い、そして燃えるパイロキネシスの火の中へとルパートが先陣を切って飛び込んでゆく。
ルパートという猟兵は、炎を纏う鎧という姿を持つヤドリガミだ。そのため火に対しては強力な耐性を彼は持っている。であるが故に、ルパートは燃え上がる超常の火の中を掻き分けて進むことが可能なのだ。道を阻む熱をその手にした刃で薙ぎ払いながら、彼は敵に迫る!
「私のパイロキネシスが効かないとでもいうのデース!?」
「生憎、当方には至極いつも通りだ」
斬閃!炎ごとゲオルグを裂く勢いで鉛滴る大剣を振るう。しかしてゲオルグはその巨躯に見合わぬ素早い身のこなしで後方へと回避!
「ムウ!いけまセン、これではせっかく捕らえた『黄龍の眼』の女が!」
離れすぎてしまった。ゲオルグは舌打ちしながら更に床を蹴立て、ルパートの剣を掻い潜る軌道で葵花へと再び接近を試みる――が、その眼前を掠めて飛ぶ弾丸!ゲオルグは怯み足を止めさせられる!
「残念やったな、そっちは行き止まりやで!」
メルノである。構えた二挺が唸りを上げ、弾丸と熱線が次々とゲオルグに襲いかかった!
「シャイセ!!」
「今や!うちらで抑えとる内に!」
「がってんしょーちな!コッコの秘策を見せてやるな!」
2人がオブリビオンに仕掛けている間に、敵と葵花の間には大きな距離が開いていた。コッコへと視線を向けるゲオルグへと、メルノが更に照準。吠える銃口がその足を止める。支援は十分。であれば、あとはヒロインを救出する役目を果たすのだ。コッコは一気に葵花のもとへと駆け寄ると、縛り上げる縄を解き解放する。
「ありがとうございます、猟兵さん……」
「もー安心な。おともだちもきてるからな。コッコたちが助けるから、まずこれに触るな!」
「……たまご?」
コッコは懐から卵を取り出す。それは本人曰く、『ひよこ王国のお宝』なのだという。葵花はおそるおそるそれに触れる。
「わ」
そしてその姿は一瞬にしてかき消えた。【永世平和領コペルニクス】。それはコッコのもつ卵の内側に形成された『ひよこ王国』の中へと対象を吸い込むユーベルコードだ。簡易的な隔離結界であると言える。
「ぴよぴよ」
「わあ……!?」
「ピヨピヨランドにご招待な!」
これで戦いに巻き込まれたり、逆上したオブリビオンに害されたりするリスクは大きく低減された。コッコは卵を抱えて一旦後方へ下がる。桜學府の學徒兵たちに合流するのだ。
「待つのデース!これでは任務に失敗し、祖国に顔向けできなくなってしまいマース!」
「祖国への忠義か。その志は立派なものかもしれんが」
それに追い縋ろうとするゲオルグの進路を、ルパートは断つ。振り抜く剣筋。【映す心断ち割る呪剣/クリスカットコンシャス】!
「かと言って、許すわけにもいかん」
「グオ……!なん、デスか、これは!?」
ゲオルグを襲ったその技は、肉体そのものを傷つける剣としてよりも精神を蝕む呪詛としての力が大きい。精神集中を要する超人のサイキック能力を、呪詛の力が阻害するのだ。
「今がチャンス、ってとこやな!」
ふらつくゲオルグへと向けて、更に銃弾が襲いかかる。メルノは好機を逃さない。敵のサイキックは一度発動すれば強力だ。特に知覚力を大きくブーストするクレアボヤンス能力が万全に機能すれば、メルノとてたちまち捉えられ凄まじい念動力を叩きつけられてしまうだろう。故に、敵がふらついている今この瞬間は、畳み掛けるには絶好のタイミングといえた。メルノはこの好機に最大の結果を導き出すべく、胸の内で数字を数える。カウントアップ。1つ、2つ……
「グオオオオ……!フェアダムト!!」
ゲオルグは揺れる頭蓋を抑えながら、集中しきらぬ精神に鞭を打ち念動波を放つ。メルノの立つ場所から50センチほど横にずれた床が爆砕した。メルノは冷静に引き金を引いて応戦。更にカウント。7つ、8つ……カウントナイン。メルノの瞳孔がきゅ、と窄まる。精神が極限まで研ぎ澄まされる感覚。9秒間のカウントを心的なスイッチとして集中力を高める【九秒の狐/ナインカウント・フォックス】の発露。
「これで、どうや!」
視線の先に敵を捉え、そして、引き金を引く。
「グオオオオ……!わ、私の『宙の眼』が!」
放たれた弾丸は寸分違わずその額の赤い奇石を叩いた。人知を超越したサイキック出力を実現するための霊的器官としての役割を果たすその部位はゲオルグの心臓部であり、パワーの源であると同時に弱点であるとも言えるのだ。
「もうええ加減観念せえ!」
「もはや逃げ場もない。……“詰み”だ、影朧」
「ひとじちのがくせーさんだってもーこっちのもんな!いまごろプリンとジュースで乾杯してるな!」
「おのれ……おのれ猟兵どもめ!ゆ、許せマセン!」
しかして、激昂!誇りか矜持か、はたまた悪足掻きか逆上か。超人ゲオルグは一切譲らず、猟兵たちを睨め付けながら咆哮する!強力な念動衝撃波が四方八方に放たれ、暴れ回った!
「ゴボッ……『黄龍の眼』の女も……お前たちを皆殺しにしてから取り戻せばいいのデース……!」
ゲオルグは強力なサイキック攻撃の代償として身体にかかった甚大な過負荷に血を吐きながらも、抵抗の意志を潰えさせない。
「まだやる気か」
「そんなら、終いまで付き合ってやろか!」
「なら、がくせーさんはこっちに任せるな!」
猟兵たちは対峙し続ける。
帝都地下における影朧との戦いは、既に佳境を迎えつつあった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
ニコリネ・ユーリカ
此処に来る迄に學徒兵さん達が教えてくれたの
帝都の地を安定させる為に天海大師が守護結界を敷いたって
貴方の野望で、祖国の都合で、闇雲に壊さないで頂戴
額の向きや角度で、奇石の攻撃はある程度読める筈
初動を見切って積極的に割り込み、魔法で相殺を図りつつ、ダメージは気合と覚悟で受けきる!
私ったら建物や少年少女より頑丈だもの、頑張るわ
(火炎耐性、激痛耐性)
敵の暴走を食い止めるべく行動阻害を
【Unbidden Green】で敵躯を囲むように温室を作り
お節介な攻性植物をわっさわっさ召喚するの
(全力魔法・高速詠唱)
粘液を出してウザ絡みするカペンシスの檻に閉じ込めちゃう
寒さに強くて冬にオススメよ
いっぱいあげちゃう!
エダ・サルファー
身勝手な目的のために未来ある若者の命を利用しようとか言語道断!
それが過去たるオブリビオンの仕業なら尚の事!
お前の計画、ここで潰す!
というわけで真の姿を開放!
こいつの攻撃は概ね額の奇石を利用したものっぽいよね。
だから額を狙いたいところだけど、こいつも額が狙われることは読んでるよねぇ。
ので、あえて額は特別に狙わず、ボディあたりに聖拳突きを叩き込んでやるのだ!
みんなが狙うであろうところは避けるというのも戦術なのだ。
エネルギー光線は気合いで耐えたり避けたりするよ!
上手いこと方が付いたら、桜の精の學徒兵に転生を促してもらおうかね。
こいつがどんなやつだったとしても、転生の機会を奪うわけにはいかないもんね。
ラムダ・ツァオ(サポート)
A&Wの遊牧民出の自由人。
見た目からダークエルフと揶揄されることもあるが、当人は特に気にしていない。普段は外套と丸サングラスですっぽりと身体を覆っているが、外套の下はかなり身軽。
なお、見た目は怪しいがわりと気さくな性格。
臨機応変に動くが、完全勝利よりは条件達成を目指す。
行動指針としては以下の3通りが主。
1.潜入・変装・尋問等で確実な情報一つの入手を試みる
(または情報の裏を取る)
2.斥候・探索役として周囲を探り、情報収集を行う。
3.戦闘にて囮役または攻撃補助に徹する。
台詞回しや立ち位置などは無理のない範囲でご随意に。
ユーベルコードは状況に応じて使い分けます。
八乙女・櫻子
どうやら白里殿は無事助け出せた様でありますな
後はこの事件を引き起こした張本人を成敗するのみ!
…とはいえ敵は追い詰めて尚この気迫!
迂闊に踏み込まず、まずは【残像】を織り混ぜた動きで回避に専念します
強大な念力も手負いでは長くは続かない筈、息切れした瞬間を見逃さず反撃に転ずるであります
満身創痍の奴は今や気力…言い換えれば邪なる心の力にて立っている状態
ならばそれを強制改心刀にて断つ!
影朧となって甦る程に、その「祖国の野望」とやらの成就は貴殿の悲願なのでしょう
しかしその為に今を生きる人々が犠牲になるのを看過する訳にはいかない!
邪悪な願いと共に幻朧桜へと還るがいい!
鏡島・嵐
判定:【WIZ】
絵に描いたようなワルモンだなぁ。……まあ、こっちは戦うんが怖ぇからそんなツッコミ入れるどころじゃねーんだけど。
ともあれ、そんな大それた企みは放っておけねえよな。
攫われた女生徒さんは他の仲間が保護してくれたようなんで、そっちに任せて親玉退治に専念。
主にはダメージ負った仲間とか學徒兵たちを《大海の姫の恋歌》で治癒したり、〈援護射撃〉や〈鼓舞〉で攻撃するんを援けたり。
あとは手が空いてたら親玉に〈目潰し〉を喰らわせて、視覚を利かなくして攻撃を妨害。
それでも防げねえ分は〈第六感〉を利かせて躱すなり〈オーラ防御〉〈火炎耐性〉でダメージを殺すなりだな。
~これまでのあらすじ~
帝都において白昼堂々に桜學府の女生徒・白里葵花を攫った影朧、超人ゲオルグ。彼は帝都の地下に残された神殿へと入り込んでいた。
そこはかつて、この地に江戸の都が築かれる際に天海大師によって建造された社であり、大地を走る氣の流れ――即ち龍脈を制御するためのパワースポットだったのである。
龍脈を見極め、そしてその流れさえも変えるという『黄龍の眼』の力をもつ葵花の命を使うことで龍脈を乱し、帝都を殲滅する。それがゲオルグの狙いだったのだ。
対し、猟兵たちはその悪事を止めるため地下神殿を目指す。その道中に同行を願い出たのは、葵花の級友たちである桜學府の學徒兵たちであった。彼らと共に障害を乗り越え最奥へと辿り着いた猟兵たちは、元凶である影朧、超人ゲオルグに対峙する!
「……ってワケなんだ」
「なるほどね。だいたいわかったわ」
火急の案件だと戦場へ招かれたラムダ・ツァオ(f00001)は、學徒兵たちから現在の状況についての説明を受ける。既に盤面は大詰め。既に他の猟兵によって人質も救出されている。
「はい!後はこの事件を引き起こした張本人を成敗するのみであります!」
八乙女・櫻子(f22806)は學徒兵たちを先導するように得物を構えて前に出る。
「ああ!いくぜ、八乙女!」
「あいつをやっつけるぞッ!」
「帝都桜學府、ふぁいとー!」
櫻子に続いて學徒兵たちが声をあげ、剣を抜いて走り出した!
「シャイセ!調子に乗らないでくだサイ、猟兵ども!我が祖国の悲願のため、お前たちはここで死ぬのデース!」
襲撃!手負いの獣ほど危険だ。口の端から血を溢しながら、ゲオルグは額の奇石を光らせる!
「そんな身勝手な目的のために未来ある若者の命を利用しようとか言語道断!」
「まったくね。そんな大それた企み、放っておけねえよな!」
エダ・サルファー(f05398)は走る。鏡島・嵐(f03812)は身構える。その足元で、壁で、天井で暴れまわる念動衝撃波が建材を破片に変えた。猟兵たちはそれを躱しながら敵の喉元へと迫る!
「この土地はね、大地な場所なのよ」
ニコリネ・ユーリカ(f02123)はその手の中に花束を握りながらゲオルグとの間合いを詰めてゆく。
「學徒兵さん達が教えてくれたの。ここは帝都の地を安定させる為に天海大師が守護結界を敷いた、この街にとっても重要な土地……!」
「だから破壊するのデース!」
奇石が鈍く光り、迸る炎!ニコリネは床板を踏み切り炎の軌道を躱す。
「貴方の野望や祖国の都合なんかで、闇雲に壊さないで頂戴」
「こざかしい女デース!……ムウッ!」
巨体に似合わぬ加速度でゲオルグが跳ねた。直前まで彼が立っていた地点に、巨大な拳が隕石めいて落ちる!
「お前の計画、ここで潰す!」
エダである!力を解放した彼女は、その力を行使する。虚空を破り飛び出す2つ目の拳が更にゲオルグを追った!
「フェアダムト!!」
轟音!ゲオルグの躯体に叩きつけられる巨腕!しかして咄嗟に構築した念動障壁が致命打を避ける。
「この私を倒すことはできまセン!」
ざ、ッ!床に靴底を滑らせながら態勢を立て直し、ゲオルグは額の奇石より光を放つ!
「追い詰めて尚この気迫……!」
「油断できない相手ね」
櫻子とラムダは暴れ回る光線を回避しながら反撃態勢を整える。間合いはまだ遠い。それぞれに得物の柄を握る手の中に力を込め、2人は敵との距離を詰めつつあった。
「ぐあ……ッ!」
「なんつー威力だ……!」
だがその一方で學徒兵たちがその攻撃に晒される!爆発の中に響く苦悶の声!
「グハハハハハ!ただの学生の身ではやはり力不足のようデース!とどめを刺しマス!」
「みんな!」
「大丈夫だ、こっちは!……頼む、シレネッタ!」
ブルースハープの音色。奏でるメロディとともに力が広がり、虚空に浮かぶ波紋。【大海の姫の恋歌/シレネッタ・アリア】。人魚の姿をもつ精霊が歌い、ひろがる力が傷を癒すユーベルコードとなる。
『La――――――』
「小癪な!その小賢しい歌声もかき消してやるデース!」
業火!ゲオルグは更に高めたパワーでサイキックを放つ!パイロキネシスが再び學徒兵たちと嵐に襲いかかる!
「くっ、そ……向こうだってぼろぼろなのに、めちゃくちゃやるじゃねーか!」
嵐は術式を編み上げオーラ防壁を構築!
「だけど、負けるわけにはいかないわよ」
そこへ更にニコリネが加わった。2人とシレネッタは燃え上がる炎の道を立ち塞ぐ!
「私ったら、頑丈だもの!頑張るわ」
シャッター棒を魔法の杖めいてくるりと回し、その手の中に術式が輝く。歌うシレネッタに重ねて魔術の力を放ち、超常の炎に力をぶつける。拮抗する力と力!
「グフフフ……。このまま焼き尽くしてやりマース!」
「そうは、させっかよ!」
「ええ、押し返すわよ!」
「なに……!?」
炎の中から、緑の蔦が伸びた。巨大な蛇のように這い回る植物の蔓は四方八方に伸びながら敵の元を目指す!
「お花はいりませんか!」
「ヌウッ!?」
走る蔦は更に数を増やしながらゲオルグへと殺到!【Unbidden Green/オシウリ】の攻性植物はミントめいた生命力でドクダミのごとく生い茂りたちまちに絡め取る。その攻勢にゲオルグは押され、攻撃の手を止めざるを得ない。パイロキネシスの火が消える。そこに立つ嵐とニコリネは、疲弊こそしているもののシレネッタの加護に癒されダメージとしては軽傷にとどまる。ひと呼吸の間を置き、ニコリネは更にユーベルコードの力を励起した。
「カペンシス……寒さに強くて冬にオススメよ」
「こ、んな、おぞましい、雑草……!」
「遠慮しないで。いっぱいあげちゃう!」
「シャイセ!!」
這い回る蔦に締め付けられ、ゲオルグは呪詛めいて吐き棄てる。
「もらったよ!」
「ヌオ……」
そして、この瞬間こそが好機だ。動きを抑えられたゲオルグへと向かい、猟兵たちが詰めてゆく!
「くらえ必殺!聖拳突きぃっ!」
先陣を切って辿り着いたエダは浮かべた巨腕をゲオルグへと叩きつける!【必殺聖拳突き】!衝撃にゲオルグの身体が軋み、威力に耐え切れず蔦を引きちぎりながら吹っ飛んで壁に激突!
「ゴフ……、ッ!」
「たたみかけよう。決着をつけにいくよ」
更に、その姿をラムダと櫻子が追う!
「行きましょう。これで終いであります!」
「八乙女に続けッ!俺たちもいくぞ!」
「「「おおッ!」」」
「なめるなあッ!私とてプライドがありマース!!」
咆哮!最後の気力を振り絞るか、ゲオルグは巻きついた蔦を引きちぎりながら額の奇石を光らせる!
「しつこい男は嫌われるわよ」
「ムウウーッ!」
【剣刃一閃】ッ!白刃閃き、ラムダの放つ太刀筋がオブリビオンの眼前に踊る。ゲオルグは攻撃態勢から咄嗟に回避運動へと移行し、後方へと下がった。しかし、そこはもはや壁際だ!
「馬鹿な……!これでは我が祖国の野望が……!」
「影朧となって甦る程に、その『祖国の野望』とやらの成就は貴殿の悲願なのでしょう」
櫻子が剣に光を灯す。
「しかしその為に今を生きる人々が犠牲になるのを看過する訳にはいかない!」
「そうだよッ!アタシたちだって、必死で生きてるんだッ!」
「俺らのダチに手出ししたツケ……きっちり払ってもらうぜ!」
學徒兵たちもまた、手にした退魔の剣に想いを乗せた。
「ガキども……!お前たち、など……!」
「大人気ないわよ、おじさん?」
尚も反撃に転じようとするゲオルグの前に刃が走り、牽制。ラムダが敵を抑える。
「これで終わりだ、影朧ッ!」
「邪悪な願いと共に幻朧桜へと還るがいい!」
そして、櫻子は振り下ろす。
【強制改心刀】!邪悪な意志を断ち切る退魔の刃が、オブリビオンの身の内に宿った邪悪を一撃のもとに斬りふせた!
「グオオオアアアアアア――ーッ!!ハ……ハイル!!」
そして、爆発。存在の核となっていた邪悪な意志を両断されたことでオブリビオンとしての存在を保てなくなったのだ。その姿は幻朧桜の花びらとなって無数に散った。
「……じゃ、頼むよ」
「はい」
爆ぜ散った桜の花びらを見上げ、エダは學徒兵たちの中から桜の精を見繕い、滅びゆく影朧の魂へと共に祈りを捧げる。
「こいつがどんなやつだったとしても、転生の機会を奪うわけにはいかないもんね」
それは、彼女の聖職者としての矜恃でもあった。
「この度はありがとうございました、皆さん」
白里・葵花は頭を下げる。
戦いを終えた猟兵と學徒兵たちが地上へと出ると、空には丸く月が輝いていた。
猟兵たちの尽力によって龍脈の破壊は免れ、そして帝都を護る霊的結界は安定を取り戻す。
「いいのいいの。歳下の子たちを助けるのはオトナの務めよ」
「私も仕事を果たしただけだからね。とにかく、無事でよかった」
「エヘヘ……ありがと、おねーさんたち」
ニコリネとラムダは學徒兵たちに笑いかける。
「たしかにちょっと怖かったけどさ、色々おもしろいものも見れたし、おれは楽しかったよ」
「あんたの術にも助けられたな」
嵐は學徒兵たちと健闘を称えあい、順に握手する。
「では……全員、傾注!」
櫻子の号令に合わせ、學徒兵たちが並び猟兵たちへと敬礼する。
「この度のご協力、誠に感謝致します!」
敬礼。櫻子は學徒兵たちとともに、猟兵たちへと礼を述べた。
「地下の冒険、オブリビオンとの戦い。葵花の救出。どれも、皆さんの協力なしではなし得ないことでした」
「「「ありがとうございました!」」」
月明かりの下を夜風が吹き抜け、風に乗って幻朧桜の花びらが舞った。
かくして、帝都地下を舞台に繰り広げられたひとつの冒険譚が幕を閉じる。
學徒兵の少年少女たちにとっては、この事件もまたひとつの思い出だ。猟兵たちの戦いが続いてゆくように、彼らの冒険も、続いてゆく。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴