●それは侵してはならぬ最前線
解放軍を中心とする調査団が未踏宙域に踏み入ってはやくも半年ほどになる。
クエーサービーストという脅威との遭遇、そしてそれらとの交戦。猟兵のユーベルコードが通用する相手とはいえ、人類の理解の外側にある超巨大生命体との戦闘状態は調査団のリソースをじりじりと消費させ、しかして明確な成果らしい成果を挙げられていないことに焦りを抱く者も少なくはなかった。
故に、さらなる深部への強行調査を望む者が現れることも致し方ないことと言えよう。
先発集団として未踏宙域に立ち入り、既にクエーサービーストとの交戦を経験した者たちが慎重論に傾き牛歩なれども着実な調査を訴えるのに耳を貸さず、斯くて増援として未踏宙域に到来した艦隊はそのまま人類未知の領域へと出撃する。
クエーサービーストの脅威を、未知であるということの意味を知らぬままに。
●巨いなる魔獣
「皆さん、ブリーフィングは手短に済ませます」
時間がありません。グリモアたる部隊章を戴くパルは、集まった猟兵達に略式の敬礼を投げかけてやや早口に任務の概要を説明し始める。
「つい先程、スペースシップワールド未踏宙域に到着した解放軍戦艦ドレッドノートⅦを旗艦とする艦隊が、現在の人類既知領域との境界を越境するべく進発しました」
本来であれば先んじて調査を行っていた艦隊と情報交換など入念に準備を整えた上で、複数の艦隊合同で行われるはずの調査航海。それがどういうわけかドレッドノートⅦ艦隊単独で出発してしまった。
「そして該当の艦隊がこのままの進路を維持した場合、既知領域を越境したその瞬間にクエーサービーストに接敵、警戒態勢を取る間もなく艦隊は壊滅してしまいます」
パルのグリモアが見せた予測は、宇宙の無慈悲さそのものであった。放置すれば艦隊は、蜘蛛が獲物を待つが如く張り巡らされたクエーサービーストの罠に飛び込み瞬く間に消滅してしまう。
追いかけて引き止めようにも合流予定だった艦隊は多くが補給や整備の途中であり、この状況では出撃すらままならない。幸いにもドレッドノートⅦの現在位置はパルがリアルタイムでトレースしているため、猟兵であればグリモアベースを経由したテレポートで直接ドレッドノートⅦに合流できるだろう。
「ただちに転送を開始しますが、到着後すぐに戦闘が開始すると覚悟してください。敵はマインドミナBVA型、その無限に姿を変える外殻は今後の対クエーサービースト戦で活用出来る可能性があるそうです」
可能ならば敵の殲滅後、出来る限り多数の外殻サンプルを回収して欲しい。
けれどそれよりもまず、侮りのまま死地に立ち入ってしまう人々の救援を。パルのグリモアが輝き、猟兵達は宇宙戦艦の船内へと送り出されてゆく。
紅星ざーりゃ
こんにちは、紅星ざーりゃです。
今回はクエーサービースト「マインドミナBVA」討伐が目的のシナリオとなります。
一章ではマインドミナBVAの外殻が変貌した銀河帝国軍の砲撃戦用ウォーマシン部隊が展開する強力な火力をかいくぐり、敵の防空網――マインドミナにその意図があるかはさておき――を突破する流れとなります。
二章ではさらなる増援を展開される前にマインドミナを撃破してください。
無事三章に至ったならば、マインドミナの外殻を回収することとなります。
所有者の思念に応じて変形し、ユーベルコードを伝播する性質が判明しているマインドミナの外殻を一定数集めることができれば、今後の対クエーサービースト戦、ひいては未踏宙域調査に有益な何かを作ることができるかもしれません。
それでは、実りあるよい航海を!
第1章 集団戦
『大型標的砲撃用銀河帝国製ウォーマシン』
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POW : 極大エネルギーチャージキャノン「ホウセンカ」
【数と充填時間次第で惑星すら破壊可能な大砲】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【一秒の充填時間で消滅に必要十分以上な出力】で攻撃する。
SPD : 報復の砲華
レベル分の1秒で【対象の攻撃を剣で凌ぎ反撃の「ホウセンカ」】を発射できる。
WIZ : その真紅に触れてはいけない
自身に【装備された背中の頑丈な放熱板に超高温】をまとい、高速移動と【すれ違いざまの溶断、追撃の「ホウセンカ」】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
イラスト:エンシロウ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●
「彼らが臆病風に吹かれている……とは、思わんがね」
旗艦ドレッドノートⅦの艦橋で、艦隊を率いるヴィクター・クラン提督は重力カップを傾け黒々とした合成コーヒーを喉に流し込む。
舌の上に残った苦味が思考を明瞭にする感覚は、この老提督の最も好むものの一つだ。そうしてグリモア猟兵が送り込んだという猟兵達に視線を向けて、提督はほう、と息を一つ。
「この調査事業だって多くの船を動員し、多くの予算が割かれた事業なのだよ。銀河帝国の残党どもがいくら近頃大人しくなったとて、本来なら既知宇宙の治安維持やインフラ復旧に用いられるべきリソースの大部分があるかどうかも分からない惑星の再発見とやらの夢想に費やされている」
それ故に、と提督は言う。
「我々の求めるものがあるならばある。無いならば無い。早急にそれをハッキリさせることこそがこの調査事業の本懐だろう。安全を重視するのは結構なことだが、それで本来銃後の人々の暮らしを豊かにするための資源をこんな辺境宇宙で食い潰すわけにはいかんと、私は思うのだがね?」
もっとも、これは若者たちの逸る血気に老いぼれがそれらしい理屈を付けたに過ぎないけれども、と頬の皺を深めて、クラン提督は笑う。
その時だ。遥か彼方より飛来したビームの光条が、艦橋の窓から見える巡洋艦を真正面から貫通したのが見えた。
真っ赤に赤熱し、一拍の間をおいて爆沈する巡洋艦。
「で……デルフィニウム、轟沈! どこから……」
「前方、高熱源反応多数現出! 砲撃来ますッ!!」
途端にざわめくドレッドノートⅦの艦橋。狼狽えるクルーたちを他所に、クラン提督は静かに重力カップを置いた。
「これが君たちの警告したクエーサービーストの罠というわけか。なるほど、我が方のレーダーの有効範囲外からの超長距離狙撃とはな。これは分かっていても対策は難しい……本当に相手は知性のない下等生物なのかと疑いたくもなるな。サヴィツカヤ君の艦隊が慎重論に傾くのもよくわかる」
提督は好々爺然とした余裕を脱ぎ捨てて、老練の宇宙軍指揮官として狼狽する部下たちを怒鳴りつける。
狼狽えるな、陣形を立て直せ、無事な艦は射程圏外でも構わないから只管に応射せよ。
明確な目的を与えられ、浮足立ったクルーたちは冷静ではないながらに一個の意志を仰ぐ軍組織としての体裁を取り戻す。
「君たちの警告を有益に使えなかったのは私の落ち度だ。若者たちを抑えきれなかったのも、後方の出資者達を宥めきれなかったのも私の責任だろう。そんな老いぼれが恥を偲んで頼む。猟兵、君たちに出撃して欲しい。どうかこの無様を晒した無能な提督に付き合わされるクルー達を救ってはくれないかね」
既に第二撃が飛来し、撃沈こそ免れたもののエンジンブロックを喪失し漂流しつつある艦もある。
彼らを放置して撤退はできない。かといって連携の乱れた艦隊がこのままアウトレンジの殴り合いを続けて勝てる道理も存在しない。
勝敗の確定した盤面を覆せるとしたら、それは猟兵の存在を置いて他にないのだ。
数宮・多喜
【アドリブ改変・連携大歓迎】
提督、アンタも苦労人だねぇ。
それでもま、アタシはそう言うのは嫌いじゃない。
それに、アンタの中にもまだまだ見ぬ先を見てみたいって
熱い心が眠ってるだろ?
皆まで言いなさんな……士気は上がるだろうけど抑えが利かなくならぁ。
こう言う切り込み役は、アタシらに任せとけってんだ!
軽口を叩いたらお仕事の時間だね。
カブに跨りカタパルト射出と、
ビーム砲撃ではなく放電による領域防御を依頼するよ。
放火の只中を『操縦』テクを駆使して駆け抜けながら、
アタシも電撃の『属性攻撃』で『援護射撃』する。
後ろに折る奴は乗っとくれ!
そして宙域が静電で満ちたら祈り時さ。
【黄泉送る檻】で、一網打尽にしてやるよ!
神酒坂・恭二郎
「赤の羽根付か。懐かしいねぇ」
格納庫から見やり、口元を笑みにする
昔馴染みの相手なら対処も分かっている
スタッフに頼みカタパルトで射出してもらおう
「目標は最前線……スペース剣豪、出る!!」
風桜子を随所要所で放出し、自身を【吹き飛ばす衝撃波】でちょっとしたフルバーニアを再現して機動性を高める
相手の大砲は、濃い目の風桜子を【残像】として残しデコイとし空撃ちを誘う。経験上、センサー依存度の高い相手にはこの誘導が効く
「ほい、そこっ!」
そして相手の射線に沿うように、風桜子【誘導弾】を放てば高い命中率となり
「もいっちょ!!」
即【二回攻撃】で【覇気】を乗せた【鎧無視攻撃】で追撃したい
慣れてくれば【乱れ撃ち】だ
ハロ・シエラ
相手が射撃を行うのであれば、私がとるべき行動は一つ。
ビームを避けながら【ダッシュ】で近付いてユーベルコードで斬る、と言う事です。
ここは宇宙、【第六感】で攻撃の気配を感じ取る事が出来れば、砲口や射撃姿勢を【見切り】上下左右と適切な位置に回避出来ます。
レイピアから放つ風と炎の【属性攻撃】を上手く推進力とすれば、【空中戦】の要領で自由に動けるでしょう。
ビームの余波は【オーラ防御】で防ぎます。
接近出来れば後は斬るのみ。敵もビーム砲や剣で防御してくるでしょうが【気合い】でそれらごと両断して見せます。
場合によっては【フェイント】で斬ると見せかけ、【鎧無視攻撃】で内部の機械を攻撃しても良いですね。
●
「提督、アンタも苦労人だねぇ」
鎧装騎兵たちが発艦するためのデッキに降り、カブに跨った多喜の呟きは艦橋で艦隊指揮に力を尽くすクラン提督には聞こえていまい。
若さゆえの無鉄砲な活力と、現場を知らない後方からの圧力。その狭間で戦争を知る老人がいかなる想いを抱いて此処に立つのか。それを理解するには多喜はまだ若いが、しかし老提督の目に宿る若々しい意志の光を彼女は見逃していない。
だから往くのだ。きっとあの提督はその想いを口にしないだろうから。指揮官である己がそれを口にすれば、若者たちは今度こそ止まれなくなると知っているだろうから。
「だがそういう爺さんも嫌いじゃない、だろ?」
悪戯に笑い、フォース――風桜子にふわりとネビュラ着流しの裾を靡かせて恭二郎が鎧装騎兵用のカタパルトに両の足を乗せる。
俺もだ、と言えば多喜はだろうね、と頬を緩ませる。きっと誰もが心の何処かでこの世界に星を取り戻す日を夢見ていて、それに片手を掛けたこの時代を生きる事に熱狂しているのだ。クラン提督もその例外でないと見抜いた二人は、老人の――しかして老いと無縁な熱情をここで潰えさせてはならぬと気合を入れる。
「しかし――」
やる気十分な多喜と恭二郎を見遣って、ハロが眉間に皺を刻んで小首を傾げる。
二人共砲撃型というようなスタイルではない。己もそうだが、果たして彼我の距離が艦砲をして有効射程圏外であるこの超長距離戦の間合いで、如何に機動力を有するといってもただの人間に過ぎない二人がこうも今すぐ飛び出していきそうな程の投資を滾らせているのはどういうわけか。
もちろんやる気があるのは素晴らしいことだが、だからといってやる気だけでは今まさに窮地に陥っている艦隊と変わりはしない。
経験豊富な二人ならばあるいは策があるのか。ハロが思案していると、武装する暇もなく最低限のフレームと推進器だけを身に着けた女性鎧装騎兵がその脇をひょいと抱えてカタパルトに少女の小さな両の足を据え付ける。
がしゃりと靴を金具が噛み、そこでようやくハロの思考は現実へ。
なるほどカタパルトを使って戦力を文字通り投射するのであれば、距離は大きく稼げるだろう。あとは慣性に従って翔び、あるいは各々の道具や技量で軌道修正を図って敵の迎撃を掻い潜ればいい。理に適った戦術だとハロは思う。
「ですが待ってください。このカタパルトは生身の人間を射出することを想定していないのでは……?」
ハロの疑問に答える声はない。ただ、恭二郎の爽やかなサムズアップだけが返答であった。
「目標は最前線……スペース剣豪、出る!」
「あー、ハロさん、乗ってくかい……って聞くにゃちょっと遅かったかね……宇宙カブ、数宮多喜、お先に出るよ!」
足裏に纏った風桜子を煌めかせて宇宙空間にその身を躍らせる恭二郎と、アクセルを回しカタパルトの加速に乗って勢いよく疾走する多喜の小型バイク。
その背中が見えなくなるより疾く、ハロの小さな身体に尋常ならざるGの圧力が叩きつけられた。
「始まってしまったからには、そして相手が射撃を行うのであれば、私はそれを避けて近付き斬る、というだけです」
おそらく自分を撃ち出した甲板クルーの騎兵達は、恭二郎と多喜が自分からカタパルトに乗り込んだことで猟兵の発艦はそういうものだと誤認したのだろう。
一瞬抱いた強烈なG負荷の恨みを頭を振って払い除け、ハロは精神を集中する。幸いにもここは無重力の宇宙空間だ。複数の砲口に狙われても、砲手の位置さえ感知できれば逃げ道はいくらでもある。抜き放ったレイピアに纏う炎と風の魔力をロケットエンジンめいた推力に変換して宇宙を駆ける少女は、早速敵部隊が放った迎撃のビームをくるりと流麗なマニューバで回避する。
「躱してもこの威圧感……当たった時はそれまでと思ったほうが良さそうですね」
念の為に展開しておいたオーラの守りを削り取るほどの余波。軍艦を一撃で轟沈に追い込む威力は、相手が船と比べて豆粒ほどに小さな人間相手でも些かの陰りもなさそうだ。
「躱しながら近付くとなればそれなりに苦労しそうですが……」
それも単騎駆けならばの話。
今この宙域には、もっと敵の注意を集めるような戦士が二人も居るのだ。二射、三射とギリギリを掠める――最小限のムダのない回避機動で受け流した――ビームを見送って、ハロは先往く二人を見上げる。
「このビーム、赤の羽根付きか。懐かしいねぇ」
覚えのあるビームランチャーの光は、スペース剣豪にとって昔馴染みといっても相違ない敵機の姿を脳裏に呼び起こす。あの騎士めいた装甲の砲戦機が相手ならば不足はない。そしてその対策を知る己であれば過ぎたるということも無いだろう。
風桜子を放ち、その衝撃で吹き飛ぶように鋭角に軌道を変える恭二郎。推進器によって飛翔する敵を迎え撃つか、あるいは惑星や要塞のような固定目標を打ち砕くための大型砲では、このような予測不可能でかつ急激に加減速を繰り返す敵を狙い撃つ事は難しい。それでも繰り返せば敵機の人工知能はこの変則軌道をすら予測し、ビームの網で宙駆ける剣豪を焼き尽くさんとするが、しかし。
「俺の経験上、あいつらのセンサー依存度は高い。そういう相手にはこれが効くんだ」
ビームの網に飲み込まれた恭二郎が、幻影のように消滅する。高出力の砲撃に耐えきれなかった――わけではない。風桜子で形作られた分身、デコイが消滅しただけのこと。
後は近付くのみ。彼我の距離は既に大きく縮んでいる。
「おっと、注文通りにやってくれたみたいだね!」
宇宙カブを追い越して、前方へと飛翔していくミサイル――否、誘導性を捨てて射程外から発射したのだからそれはロケットと言うべきだろうか――が、多喜の正面で起爆する。
ぶちまけられる火焔と破片、そして衝撃波。そしてそれを貫き飛来したビームがカブもろとも多喜を撃ち抜く。――それがただのロケット弾であれば、数瞬後にはそんな光景が広がっていただろう。
だが、そうはならなかった。起爆したロケットは極めて静かに、最小の破壊で以て己だけを崩壊させる。
そうして宙域に満ちるのは電気だ。小型の発電装置を弾頭代わりに搭載したロケットは、己が噴射した推進剤――高温の水を媒介に宙域を満たす雷雲となる。
「仕掛けは上々、あとはアタシの祈り時ってね!」
ashes to ashes,dust to dust,past to past.聖句を唱え、雷雲に飛び込む多喜。高圧電流を巧みに回避し、唱える聖句がサイキックエナジーを介して雷を従える。
「――収束せよ、サイキネティック・プリズン!」
そして、爆ぜた。雷雲から引きずり出された雷の竜は、敵部隊の一角を丸ごと包んで容赦のない電撃でそのセンサーを狂わせる。
マインドミナの眷属は、彼の巨獣の外殻の変貌したもの。
だが、それらは生命体であれば知性や意識まで、機械であれば細かな構造まで完璧に再現されるという特性がある。――つまるところ、精密機械である砲撃用ウォーマシンにとってその雷撃は致命傷となりうるのだ。
エネルギー収束用のミラーに、あるいは咄嗟に防御姿勢を取るため掲げた剣に落雷した敵機は、センサーを著しく狂わされ動きを乱す。
そこへ二つの影が切り込んだ。
「いい仕掛けだな、多喜! ――ほい、そこっ!」
風桜子を蹴飛ばし敵機の頭上から背後に回り込む恭二郎。
動きを止め、尋常ではない速射性能を持つ大火力兵装を一時的に無力化された羽根付き。その装甲を砕くように、風桜子を凝縮させた誘導弾が次々と撃ち出される。
一機でも多くを穿つように次々放たれる弾丸は、それだけで敵機を仕留めきれないこともある。が、それでも構わない。装甲を砕き、体勢を崩したならば――
「もいっちょ!! ……ハロ!」
「……行きます!!」
連携攻撃によって迎撃を崩された巨躯の紅い騎士の懐に飛び込んだハロの細剣が、ひゅんと存在し得ない空気を切り裂くように鋭く、風桜子弾によってひび割れ欠けた装甲を的確に貫き――内部機構に火焔を流し込みながらそれを両断する。
「次!」
時に位置取りが悪く、破損箇所との間にビーム砲を盾のように構えた姿勢のまま停止している機体も居る。
構うものか。気合を入れて剣を振るい、それごと機体を両断する。
「まだですっ……!」
時には落雷のショックから機能をいち早く復旧させ、既に最大の脅威と見做したハロに砲口を向ける機体も居る。
「これで……トドメを!!」
ならばフェイントだ。大きく回避軌道を描き、斬撃で真二つにする――と見せかけ、途中から砲撃に身を投げるような最短距離をまっすぐに接近して敵機を貫き焼き焦がす。
三人の連携攻撃は、順調に艦隊を襲う超長距離砲撃部隊の一翼を崩し始めていた。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
白斑・物九郎
●WIZ
『血気に逸った若い衆が』『志半ばで船ごと轟沈した』ってんなら、その意、汲んでやらないでもありませんわ
――“天国では狩りが出来ない”
あの世行きを拒絶しろ
集え、者共
俺めのコトはキャプテンと呼べ
【砂嵐の王・死霊大隊】――!
(詠唱と共に「巡洋艦デルフィニウムをクルー達ごと」宇宙の幽霊船として自身の麾下へ召し上げる)
・デルフィニウムへ搭乗
・操船や艦載武装の運用の勝手は主に幽霊に任せ、己は【野生の勘】で致命弾の到来と回避を指示
・そこそこ高性能な『茶斑の三毛』を通信系に連結
・――もしも幽霊達が望んだなら、クラン提督に一言連絡させてやらないでもない
・別にいいってんなら、己がクラン提督に戦況だけ申し送る
アシェラ・ヘリオース
【アドリブ連携歓迎】
「紅雀はこの手の展開に滅法強い。劣勢は必然か」
古い愛称を呟き、戦況を俯瞰する
味方猟兵は精強無比なので敵主力を必ず撃破する。こちらの仕事は艦隊被害の軽減だ
「すまないが指揮権をお借りする」
老提督に【礼儀作法】で頼み、【メカニック、ハッキング】で通信を掌握する
「全軍に通達する。いまだ敵勢は苛烈だが、強力な援軍が到着した。これより戦況は変わる。焦る必要はない。出来る事だけをやろう」
【威厳】を持って希望を語り、全軍を【鼓舞】する
後は刻々と変わる戦場を見やり、歴戦の【戦闘知識】で適宜必要な指示を出す
戦闘力を保持した複数艦での【集団戦術】で敵に応戦し、その間に全体の連携の乱れを修正したい
●
「“紅雀”はこの手の展開に滅法強い。劣勢は必然か」
「随分と懐かしい名前だ。そうか、あの機体が敵であれば戦艦以上の長射程も頷ける。……さて、どう攻めたものかな」
旗艦の艦橋、映し出された天球の立体映像には遥か彼方に展開する無数の砲撃機の所在を、ビームの軌道を逆算して予想した光点が瞬いている。
この距離からあれほどの威力を叩き出せる兵器など数が知れている。それはカイザーレイであったり、エンペラーズマインド要塞砲であったり――あるいはクラン提督の脳裏にあったのは、先の戦争で解放軍を心胆寒からしめた改ディクタトル級狙撃戦艦の姿。しかしその何れにも満たない小さな反応は、なるほどこの元帝国騎士の曰く、第一次大戦末期に惑星世界を破壊し尽くした兵器のうちの一つであると。
そう言われれば得心がいく。殆ど人間大でありながら、集団運用で星をも砕く銀河帝国最低最悪の兵器の一種。先の大戦では投入されなかったところを見るに、既に前大戦時の伝説と成り果てたかと思っていたが、まさかこのような辺境宇宙で出会うことになろうとは。
だが小惑星クラスの巨体を誇るクエーサービーストを封じ込めるとなれば、アレ以上に適した兵器もまたあるまい。問題はそれが敵の手に墜ち――もとより帝国軍機は敵であるが、少なくとも同じ人類文明側の存在ではあった――此方に砲火を向けているということ。
迅速に艦隊を立て直したクラン提督だが、もともと彼の得意とするのは時間稼ぎや陽動のような、解放軍が軍としての体裁を取り戻す前のゲリラ戦術に近い戦い方だ。老将ゆえの手管は、今この場においては被害の抑制には繋がっても事態の打開には一手足りぬ。
「提督、済まないが指揮権をお借りしたい」
「……きみならばこの状況を好転させられると?」
帝国式の敬礼とともに、ともすれば無礼極まりないことを願い出た女騎士――アシェラへ、提督は訝しむような視線を向ける。目尻に皺の刻まれた目は柔らかな印象を与えつつも、その奥の眼光は生涯を対帝国戦に費やしてきた軍人のそれだ。
その視線に一歩もたじろがず、アシェラはただ頷いた。
「よろしい、やってみたまえ。ただし艦隊すべての命を預けるわけにはいかない。志願を募るが、構わないね?」
「無論です。彼らとて能力も定かならぬ、それも帝国の将校にいきなり従えと言われてはいと頷きはしないでしょう。ですが、私ならばこの状況を打開してみせる。帝国の将校だからこそ、帝国の兵器との戦い方は貴方達以上に弁えているつもりだ」
特にそれが、失われたあの時代から蘇ったものたちならば。
「いいだろう。各艦に臨時分艦隊を編成する旨を通達、志願した者をポイントデルタ24に集結させろ」
「血気に逸った若い衆が」
焦げ付いた艦橋の床にどっかと腰を落とし、胡座をかいて海賊帽の青年は天に瞬く戦闘の光を見上げる。
「志半ばで船ごと轟沈した――」
推力を喪失し、慣性に流されるままに戦域を離れてゆく航宙巡洋艦デルフィニウム。その失われた思考中枢の残骸に座した彼は、宇宙空間に吸い出されたか、あるいはビームの直撃で蒸発したか、誘爆に巻き込まれ粉々に砕け散ったか――既に骸すら消滅してしまったクルーたちの無念を想う。
老提督は言った。この無謀な単独出撃は、若い将兵の希望と使命感の暴発を抑えきれなかったが為に起こってしまったのだと。
それほどまでの念を持っていながら、志半ばで散っていった者たちの。家族に弔われるための骸の一片すら残せず逝った者たちの、その無念はいかほどのものであろうか。
故に――嵐とともに来る百鬼夜行の王は、その末席に彼らの無念を召し上げる。
「――“天国では狩りが出来ない”」
「あの世行きを拒絶しろ。集え、者共――」
朽ちた船が燃え上がる。ちろちろと僅かに残る酸素を舐める炎が、白く黒く業火となりて死にゆく巡洋艦を荼毘に付す。
いいや、ちがう。これは葬送であり、再誕なのだ。炎は吹き飛んだ外壁を、武装を、艦内の装備をなぞるようにデルフィニウムの全身を駆け抜け、そしてその後には幽霊巡洋艦の在りし日の姿が蘇る。
「俺めのことはキャプテンと呼べ。砂嵐の王・死霊大隊――!」
その詠唱とともに、我が物顔で艦橋の真ん中に陣取る白斑の青年の背後にクルーたちの亡霊が現れた。
「お前さんらのその意、俺めが汲んでやらないでもありませんわ」
新たな主を戴いて、デルフィニウムの死に絶えたエンジンが再び息吹を取り戻す。
「――駆逐艦ダリア、ダンデライオン、ダチュラ、分艦隊に合流」
「――分艦隊旗艦ディアスキアより入電! 我、指揮官殿ノ指示ヲ乞ウ!」
集ったのは艦隊のおよそ五分の一ほど。少ないが、しかし元帝国騎士という肩書をもつアシェラにとって、これだけの艦が自身を信じ、命を預けても良いと考えてくれたことは一つの誇りである。
銀河帝国の過ちを正すために戦った臣として、その過ちの犠牲となった者たちが肩を並べ戦ってもよいと考えているとすれば、己のこれまでの戦いの一つの意味をそこに見出せはしないだろうか。
「提督」
どうぞ、と柔らかな微笑みとともにマイクを譲るクラン提督に目礼して、アシェラは朗々と、勇敢なる艦隊将兵への檄を飛ばす。
それは分艦隊に参加した者だけではない、この宙域にある全ての人々へ向けての言葉であった。
「――分艦隊各艦に告げる。いや……全軍に通達する。未だ敵勢の攻撃は苛烈だが、たった今強力な援軍が到達した」
――猟兵の強さは、絶望的な戦況ですらひっくり返してのけるその威力は、他ならぬ解放軍の諸君も知るところであろう。だから、
「これより戦況は変わる。焦る必要はない、出来る事だけを確実にやろう」
「おたくの言う通りでさァ。俺めの“ワイルドハント”が、このクソッタレた戦況とやらをひっくり返してやらぁな」
香箱を作った三毛猫が掌握したデルフィニウムの通信系統を介して、アシェラの宣言に割り込む嵐の王――物九郎。
沈んだはずのデルフィニウムからの通信に驚愕する艦隊各艦の指揮官達の顔が愉快であるが、ちらと視線を向ければ己の言いたいことを分かっていますよとばかりに肩を竦めて首を横に振るデルフィニウム艦長。
白けたような表情で、それならばと物九郎は視線を通信モニターのカメラに戻す。
「巡洋艦改め幽霊船デルフィニウム、ちょっくら連中を引っ掻き回して来ますでよ。適当に援護は頼んますわ」
――そこからのデルフィニウムの活躍は鬼神の如くであった。
敵の迎撃を、巨大な巡洋艦とは思えないほどの曲芸めいた機動ですり抜けて肉薄し、敵部隊に嵐の如く砲火を吹き付けたのだ。
指揮官である物九郎は艦隊戦の門外漢である。が故に、彼はデルフィニウムの戦いにあれやこれやと口を出さない。
艦の指揮は艦長が。砲撃目標の指示は砲術長が。回避機動の選択は航宙士と機関士の見事な連携が。死して肉体から解き放たれた彼らの、しがらみのない全力がデルフィニウムに生前以上の戦闘能力を齎した。
物九郎は王である。王は動かず、そしてただ、まるで気紛れのように直撃弾を予感すると艦長にそれを告げ、適当に避けろと命ずるのみだ。
その大暴れは、アシェラの鼓舞によって戦意を燃え上がらせた艦隊将兵をさらに滾らせる。
「分艦隊はデルフィニウムに続け! あの艦が抉じ開けた突破口を維持するんだ。猟兵の突入路を確保し続けろ! 対ビーム爆雷を散布してビームを減衰させろ、多少は生存確率も上がる」
騎士の下で闘志を奮い立たせた艦隊は降り注ぐビームをくぐり抜けて距離を詰め、そしてビームを防ぎ猟兵を戦場に送り出すための回廊を創り出す。
反撃の狼煙は上がった。盤面は決定的な敗北から徐々にではあるが好転しつつある。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ユーノ・ディエール
あれ、何か見たことある様な……気のせいでしょうか
色も違うし
ともあれ、降り掛かる火の粉は須らく喰らい尽くすだけです!
この子が!
クルセイダーに騎乗し
大食いモンゴリアンデスワームと共に突撃
念動力で進路を切り拓き
先制のミサイルで牽制しつつ
誘導レーザーで各個撃破
遠い敵は連装キャノンの狙撃で
近接戦闘は二振りの大剣で切り捨てます
恐らく旗艦を狙う指揮官機がいる筈です
残骸をハッキングして狙いを絞る
幾ら複製とはいえ二度目の相手、陥落してみせます!
発見後、念動衝撃波で障害を吹き飛ばしながら
デトネイターのランスチャージで指揮官機を串刺しに!
雑多な障害はデスワームが尽く喰らうでしょう
怯えて竦んで撤退するなら今の内です!
アリシア・マクリントック
高火力に長射程……まともに戦うのは難しそうですね。それなら……変身!マリシテンアーマー!
カミカクシ・クロスで姿を隠しながら接近しましょう。ハヤテ・ワイヤーガンで移動すれば敵にもにも完治されにくいはず。この装備はレーダーを多用しがちな宇宙空間での戦闘に向いているかもしれませんね……
まずは接近して一体ずつ、装甲の隙間……関節などを攻撃していきます。撃破を狙わずダメージをばらまくのです。
そしてこちらの存在に気づかれたら、ワイヤーガンも武器に転用です!敵に直接打ち込んで接近、攻撃していきましょう!こうやって撹乱、機動力を奪えば大技も当てやすくなるはず……搦手こそニンジャの真骨頂です!
アヴァロマリア・イーシュヴァリエ
この先を行けば、マリア達の新しい星が見つかるかも知れない……そう思ったら、急いで行かなきゃって、思うよね。
マリアも、この先に進みたい、この先を見たい。
だから大丈夫だよ、提督のおじさん。
クェーサービーストはマリア達がやっつけるから!
サイコキネシスを使って、相手のエネルギー砲をそのまま捻じ曲げてお返しするね。
サイキックエナジーを全力で注いで、これ以上艦に一発だって通さないように守り切るよ。
どんなに強力でも、こっちに当たらないようにして、敵にぶつけちゃえば大丈夫!
貴方達がどうしてこの先へ行かせないようにするのかはわからないけど、絶対負けないんだから!
●
この先には新たな惑星があるかもしれない。
その願いが焦りを生んだのは理解できる。だってマリアもそうなのだから。
銀河帝国ですら知らぬこの先へ進みたい。この先を見てみたい。
その前にクエーサービーストが立ちふさがるというならば、
「大丈夫だよ、提督のおじさん。クエーサービーストはマリア達がやっつけるから!」
旗艦ドレッドノートⅦの艦橋目掛けて飛来したビームを、その甲板上に立つ小さな少女がただならぬサイキックエナジーで捻じ曲げ撃ち返す。
クルーたちの殆どが、何が起こったのか解らぬまま呆然と、しかしただ一人状況を把握した提督の細かな指示に応えて手だけは止めずにその光景を見ていた。
狼狽えたのは敵も同じだ。敵艦を確かに捉えた砲撃が突如一八○度旋回して戻ってきた、などという事象を理解できるほど紅い砲手達の思考性能は高くない。良くも悪くも目標を撃ち砕くことに特化した知能は、想定外に対して取りうる手段を著しく狭めてしまうのだ。
よって彼らが導き出した結論は、原因不明にて回答保留という絶え間なく移り変わる戦場において愚かなほど曖昧な先送り。
それが導く対抗手段は、ただ只管の物量戦以外にありはしない。
「どんなに強力でも――」
余波だけで小型の兵器ならば消滅させてしまうような強力な砲撃を前に、アヴァロマリアは一歩も退かない。
「どれだけの数が来ても――」
周辺宙域ごと――そこを往く、大破した艦艇からの脱出艇をも巻き込んで――旗艦を焼滅せしめんとする、光条の乱舞を前に、アヴァロマリアはわずかにもたじろがない。
彼女は信じている。己の力を。この先に待つ希望を。人類は必ず勝利するという結末を。
――故に。
「マリアの全力で、これ以上一発だって通さないんだから!」
純粋なる想いはそれだけ強力なサイキックエナジーへと転換される。飛来するビームを根こそぎ捻じ曲げ、突撃を開始した分艦隊が築く猟兵が為の突入回廊に沿って螺旋を描いて花咲くように宇宙空間に広がっていくビームの雨。
凄まじいサイコキネシスは使用者にも相応の負担となってのしかかるだろう。僅かによろめく足元を見かねて、ドレッドノートの艦載騎兵の一人がその肩を支えようと思わず飛び出すのを、大丈夫だとマリアは制止する。
「貴方達がどうしてこの先に行かせないようにするのかはわからないけど」
三度目の砲撃を翠玉色の輝きとともに捻じ曲げ、額に汗を浮かべてマリアは叫ぶ。
「絶対……絶対負けないんだから!!」
――マリアさんが頑張ってくれている。今を置いて好機はない。
ディアブロクルセイダーに騎乗し、解放軍分艦隊が決死で維持している比較的安全な――気休め程度ではあるが――突入路を駆け抜けるユーノ。
「ともあれ降りかかる火の粉は須らく喰らい尽くすだけです!」
喰らい尽くす、とはユーノらしからぬ表現である。が、彼女の視線の先、騎兵に随行するように宇宙を泳ぐ巨大な生物を見ればその発言はまさしくこれから起こる事象を正確に表現したものだと理解できるだろう。
それはさながら巨大なイモムシであった。大きな牙を持ち、うねうねと蠢きながら身体の先端にある口を開閉している艦艇クラスの怪物。
宇宙モンゴリアンデスワーム。否、最早その性質は原種から大きくかけ離れていよう。ブラックホールの如くあらゆる物を飲み込む様は虚無、あるいは大食いモンゴリアンデスワームとでも呼ぼうか。
それこそがユーノの切り札であった。
「突入回廊を突破……まずは牽制、ミサイル全弾斉射!」
小型のミサイルが機体の各部から射出され、炎の尾を引いて飛翔する。敵部隊のうち旗艦攻撃に参加していない機体がそれを撃ち落としてゆくが、そちらに敵機の思考リソースを割くのがユーノの狙いだ。一発だって届かなくとも構わない。何故ならば、
「変身! マリシテンアーマー!」
モンゴリアンデスワームの背から翔び立つ「無」の影。
それが現れそして消えるその瞬間を敵機の視界から覆い隠す、そのためのミサイルなのだから。
そうして援護を受けながら宇宙空間に身を躍らせる無――もとい、カミカクシ・クロスであらゆる反応を極限まで零に近づけたアリシアは、漂うデブリを巧みに用いてワイヤーガンを使った静音機動で敵機に忍び寄る。
旗艦を狙い、あるいは大暴れするモンゴリアンデスワームを、そしてそれを従え誘導レーザーや連装砲の盛大なる砲火で牽制するユーノを撃たんとする敵機。
それにワイヤーが巻き付き、不可視の暗殺者の存在に彼らが気付いたときにはもう手遅れだ。装甲の隙間から滑り込んだ刃が、静かに機体の思考中枢と駆動系の連携を断ち切り機械人形を鉄の塊へと作り変えてゆく。
「…………この装備、レーダーに頼りがちな宇宙空間での戦闘にも向いているかもしれませんね」
思わぬ発見であった。アリシアはその感嘆を感知されぬよう宇宙服の中で小さく吐息を零し、次なる獲物へと密かに忍び寄ってゆく。
「はぁぁぁぁッ!!」
裂帛の気合いとともに振り抜かれた二振りの大剣が、同じく大剣を振りかざし近接防御を試みた敵機を一撃のもとに両断する。
デスワーム共々陽動としてはこれ以上無い活躍を為した自信がある。敵の目はこちらに――主に毒々しい紫色の巨大怪生物に向いていることだろう。
そろそろ潮時か。先程から執拗に旗艦を狙い続けている一団の指揮官機、そのアタリも付いた。護衛機も相当に数を減らした。他の部隊までは手が回らないのが口惜しくもあるが、少数での強襲ならばよくやった部類だろう。
「それにいくら複製とは言え二度目の相手、墜としてみせます!」
幾度目かの旗艦攻撃を先導する指揮官機へとデスワームをけしかければ、咄嗟に砲撃を中断した随伴機が庇うように巨大な幼虫へと体当たりを仕掛けてそれを阻止する。
そこにユーノの本命、念動の穂先を携えた突撃槍によるランスチャージ――これは躱せまい。ユーノの確信。そしてそれを裏切るように、敵機は放熱板を強制破棄した反動で無理矢理に回避機動。
駄目だ、外れた。ユーノの脳裏に浮かぶ失敗の二文字。眼前に飛び込むチャージ済の砲口。
死を覚悟した彼女を救ったのは、アリシアの蜂の一刺しであった。ワイヤーガンが敵機の頭部センサーを貫き、それを巻取り急接近したアリシアの斬撃が逃げようとした敵指揮官機をユーノの軌道上へと投げ返す。
「これで大技も当てられるでしょう……搦手こそニンジャの真骨頂です!」
はたしてそれが搦手と呼べるのかを議論するより先に、仲間が拓いたこの機を逃してはならぬとユーノは怯みかけた心を鼓舞して大加速。
勢いのままに槍が敵機を串刺しに、そして内部から爆裂する。
「この隊の指揮官機は討ち取りました! 怯えて竦んで撤退するなら今のうちです!」
……とは言うものの、いくら思考形態までオリジナルを模倣した贋作でもマインドミナの防御機構である以上は撤退することは無いだろう。
案の定継戦の意志を示す残存機を前に、ユーノとアリシアは再び戦いを挑むのであった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
トリテレイア・ゼロナイン
装備や弾薬補給、自身の整備に予備部品の確保…スポンサー(後援者)の意向の影響を受ける労苦、個人レベルですが理解できます
異世界を転戦し、騎士と名乗れる程の余裕がある程此方の裁量を認められている私は恵まれているのでしょう
ですが、それとこの悲惨な現状は話が別
一隻でも、一人でも帰還させる為、騎士として助力しなければ
機械馬に●騎乗しUCで敵陣に突撃
砲撃を此方に集中させることで艦隊や他の味方を●かばう
センサーでの熱源や敵位置、発射タイミングの●情報収集、●スナイパー知識の「狙いにくい機動」で火線を●見切り潜り抜け
●怪力で振るうランスで撃破
残骸を●踏みつけ敵陣内を縦横無尽に駆け敵集団の態勢崩し
味方の追撃援護
ジャック・スペード
聞き届けた、クラン提督
当機で良ければ、細やかながら手を貸そう
敵機の群れのなかへと駆け
広範囲に電の弾丸を放ち足止めを狙おう
其の隙に接近し涙淵にて敵の大砲を切り落としていく
大砲が無理ならば狙い定めるモノアイを部位破壊しようか
接近叶わぬ敵には銀の弾丸を贈ろう
スナイパーの心得を活かし
大砲の発射口を狙って確実に当てて行きたい
着弾点から開いた薔薇で発射を防げたら幸いだ
撃墜されそうな艦が有れば
ビームシールドを展開して守ろうか
多少の衝撃と損傷は覚悟の上だ
激痛耐性で堪え凌ぐとしよう
俺の使命はヒトを護るコト
お前たちの砲撃に今さら怯んで堪るものか
此の胸には勇気が有る
必ず彼らを護り抜き、伴に窮地を切り抜けてみせよう
トルメンタ・アンゲルス
その溢れるやる気はよし!
でも、ここは未踏の最前線。
無謀は通じず、今までの戦術も通じるとは限らないんですよね。
だから俺達がいる!
さあ、切り拓くぞ相棒!
変身!アクセルユニゾン!
『MaximumEngine――Mode:Formula』
相棒を攻撃力重視の装甲と化し、宇宙空間へと飛び出します!
相手が超長距離戦で来るなら、一気に肉薄して反撃より速く砕くまで!
唸れ俺のコアマシン!
出力全開──
『Full Throttle──』
──HyperDrive!
超光速モードに移行!
第六感をフルに生かして動きを見切りながら、ダッシュで急接近!
防御を許さぬ早業で、片っ端から殲滅します!
希望は、ここで絶えさせない!
●
「スポンサーの意向の影響を受ける労苦、個人レベルですが理解できます」
自身も後援者達の協力を以て戦場に立つ以上、彼らの考えにある程度沿うように動かねばならない。
トリテレイアはその身を構成する各種パーツの予備や武器弾薬の調達に伴う苦労を思い返してしみじみと呟いた。
それでも自分はスペースシップワールドだけでなく数多の世界を転戦するだけの自由がある。
騎士を名乗り、それにふさわしい戦いを許されるだけの裁量権を認められている。
上の意向と、そして下の意志が一致したとき、間に挟まれた老将の権威にいかほどの意味があっただろうか。それを致し方無しと受け止めたのであろう彼の提督は、この窮地にあってよく戦線を保たせているとすら言える。老将の手管というものか、その采配は流石ではあるが、相手は猟兵をして常識の埒外と驚嘆させたクエーサービーストとその眷属だ。戦況を覆すべく猟兵達が次々と突入していくが、それでもじりじりと損害が増えていく状況は悲惨と言う他にない。
「こうなれば一隻でも、一人でも多く帰還させるために。私も騎士として助力いたしましょう」
機械仕掛けの馬に跨り、槍を掲げる白銀の騎士。その勇姿は兵士たちを更に奮い立たせる。
「頼めるかね、猟兵」
先行する同胞はよく戦っている。この距離からでも敵の一角が崩れ行くのはよく見えるし、それによって艦隊が受ける砲撃の圧力も減退してはいるのだ。
だが、まだ足りない。それほどまでに帝国が遺した負の遺産、惑星破壊兵器たるあの機体は脅威であった。
「――無論だ。その頼み、聞き届けた」
だから往くのだ。白騎士に並ぶ黒き軍装が真っ直ぐに前を見据えて力強く告げる。
後ろに護る旗艦の、艦長席にある提督へ向けて。そして彼を通じて艦隊全てのクルーに向けて、黒いウォーマシン――ジャックは任せろと言ってのける。
白き騎士と黒き銃士。二機が宇宙の戦場へ踏み出せば、それを追い抜く蒼い閃光。
「皆さんやる気十分ですね。その溢れるやる気はよし!」
艦隊クルーの惑星世界に賭ける願い。提督の若者たちを想う優しさ。そんな彼らを死なせまいと戦う猟兵達の決意。
それらを一身に受けて、けれどクエーサービーストの脅威を知るものとして心だけではこの先を生きて進むことは難しいということを彼らに示すべく彼女は来る。
「――だから俺達がいる! さあ、切り拓くぞ相棒! 変身! アクセルユニゾン!!」
『MaximumEngine――Mode:Formula』
それは銀河において比肩するものは数えるほどであろう神速。
白き騎士と黒き銃士を追い越して、蒼い閃光は光芒の渦を駆け抜ける。
「あれは……トルメンタ様ですか。負けてはいられませんね」
「なら俺たちも続くだけだ。俺の使命はヒトを護ること、これしきの砲撃に今更怯んで堪るものか」
奇遇ですね、とジャックに頷き、トリテレイアも機械馬の手綱を掴む手に力を込める。
「私も同じことを考えていました。彼女ほどの速度は得られないでしょうが、その分派手な機動で敵の注意を惹き付けましょう」
「陽動か。危険な役割だな」
「それを恐れて艦隊の皆様を危険に晒すわけにはいかないでしょう?」
当然だ、とジャックはその眼を金色に輝かせて首肯する。そのような臆病者なら最初から此処に立ってはいない。
その胸に燃え立つ確かな勇気を信じて、艦隊を守り抜きこの窮地を切り抜けてその果てにある未来を掴むのだ。
「「――いざ」」
一直線に駆け抜ける蒼を追いかけるように、白と黒が螺旋を描くように駆け抜ける。
飛び交う砲弾が光速に至ることが当たり前の宇宙空間において、回避機動とは究極的には“攻撃を躱す”のではなく“照準を絞らせない”ことに帰結する。
で、あるならば。回避など投げ出しても、敵機が照準を合わせるより先にこちらが一撃を入れることができれば問題ない。
トルメンタの戦法はつまりそういった理屈の下に立つ。
「唸れ――」
敵機の攻撃が光速のビームであるならば。
それを直撃せしむる高精度の照準機構を有するならば。
「唸れ、俺のコアマシン!」
それをも上回る速度でただ真っ直ぐに戦場を貫くまでだ。分艦隊が展開した突入路を一瞬で走り抜けるトルメンタの脳裏に、万が一にも己が被弾するかもしれぬという恐怖はない。そんなものは既に置き去りにしてきたのだから。
「出力全開――」
『Full Throttle』
至る。光速の壁の向こう、ワープドライブにも匹敵する超光速。人類が至りうる最高速に足を掛け、トルメンタは星の瞬きより疾く敵機との距離を零に。
数十秒前の彼女を狙う黄色の単眼を蹴り砕くその威力は、速度そのものを破壊力に変える大威力の砲弾もさながらだ。
「――HyperDrive!!」
砕ける紅い装甲。照準システムを有する頭部が失われ、更には激突の衝撃でぐるぐると回転しながら弾き飛ばされた敵機がビームを放つが、在らぬ方向へ垂れ流されるそれはトルメンタどころか艦隊にすら掠りもしない。
「希望は、ここで絶えさせない!」
僚機が未知の砲撃で撃墜された。その事実に慌てて迎撃体制を取る敵機が、かなり遅れてそれが猟兵による強襲白兵戦の結果だと理解して剣を抜く。
遅い。あまりにも鈍重にすぎる。
彼らが剣を抜く頃には、すでに蒼い閃光はそれを打ち砕いていたのだから。
回避機動がすなわち照準を絞らせないということを目的とするのであれば、トリテレイアとジャックの機動はまさにその体現であった。
加速、減速、旋回――全てが有機的に結合した、予測不可能な乱数回避機動。
どうせ当たらぬと判断して、やけっぱちにとりあえず引鉄を引く――などという手段に訴えるほどの柔軟性を持たず、仮にその思考に至ったとしてもそれをやるにはあまりにも重火力が過ぎる敵機は、その機動に翻弄され攻撃回数を大きく減じざるを得ない。
距離を詰めてくる二機を無視して艦隊を叩くという手も無いではない。が、その手段に訴えた機体がどうなったのかを彼らは知っている。
今もまた、せめて一矢を報いるためか分艦隊を前線で統制する巡洋艦を狙ったビームが放たれる。
その射線に飛び込んだ黒。ジャックはその身を盾に、戦艦すら焼却しうる重粒子砲の威力に立ち向かう。
光の盾は掻き乱され、僅かに時間を稼いで砕け散る。
黒の軍装が閃光の中に融けて消える――彼に守られている巡洋艦ディアスキアのクルーたちは、勇敢なる猟兵の挺身への感謝と、そしてそれをして防ぎきれぬ大威力に次は自分たちが呑まれ消えることへの覚悟を抱かねばならない。
「いいえ、そうはさせません!」
それを断ち切るような勇敢な声。白騎士が砲撃を放つ紅に激突し、構えたランスが装甲を激しく凹ませ吹き飛ばす。
砲撃が中断され、閃光の中から現れた満身創痍の黒き銃士が、白騎士によって吹き飛ばされた機体へと返礼とばかりにその拳銃から弾丸を撃ち込めば、機体に食い込んだ弾丸から迸る電撃が中枢制御機構を焼き付かせ敵機を永遠に黙らせた。
「――助けられたな」
報復を為したジャックは、そのまま次々と敵機に弾丸を送り込む。正確無比な狙いが放つ弾丸は、カバーリングのために動きを止めた己を睨めつける敵集団の砲口を違わず捉え、その中へと飛び込んで。
「咲き誇れ、紅き女王よ」
血のように紅い薔薇が咲く。弾丸を種子に、砲を苗床に、水を吸い上げるように背部のミラーが収束させたエネルギーを強奪して、動力炉をすらその棘で雁字搦めに縛り上げて。
数機がまとめて薔薇の庭園へと変貌すれば、紅の園を踏み荒らさぬよう駆け抜ける白馬の騎士と蒼き閃光。
閃光が瞬き敵陣を崩し、白騎士がその綻びを叩き伏せる。
宇宙に咲く薔薇の園という非現実の光景の中で、また一つ敵の集団が潰滅した。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
彩波・いちご
【恋華荘】
さすがにクエーサービーストの相手は、私達でないとですね
さぁ、ここから逆転しましょうかっ
と言っても自前の宇宙船の無い私は、理緒さんのリオ・セレステに同乗しているわけですが
ここから攻撃するのなら、私にもできます
【幻想よりきたる魔法の演者】
私が生み出す魔法のオブジェクト…今回は大量のミサイル群
セレステの船外に無数に作り出し、作った端から敵に向けて飛ばしていきます
目標、敵の密集域!
生み出した魔法のミサイルひとつひとつにホーミング性能も付けて、
理緒さんの攻撃と合わせて、なんちゃらサーカス張りの弾幕を飛ばしてみせましょうっ
ラストは、巨大な爆発の魔力を込めた大型ミサイルを生み出し、どっかーんと!
菫宮・理緒
【恋華荘】
調査団として情報は知ってるはずなのに、暴発しちゃったか……。
マインドミナBVAを知らないからこその気合い、と思おう。
先行したがっちゃうくらいだから、腕はいいんだろうしね。
腕のいい人をこれ以上失うのは探索的にもきついだろうから、
しっかりがんばって、外殻げっとしてこよう。
戦闘は【リオ・セレステ】に乗っていくね。
ウォーマシンの陣地に突っ込む前に、楔、撃ち込まないとね。
「セレステ、砲雷撃戦スタンバイ」
【E.C.O.M.S】で【Octagonal Pyramid】を展開、
「攻性弾幕、展開っ!」
誘導弾っぽく使って、ウォーマシンを撃墜していこう。
相手の陣形に楔をうてたら、突撃して傷口広げていくよ。
セナ・レッドスピア
【恋華荘】
むぅ、相手が相手ですし、なおさら焦っちゃうとダメなのに…
ともあれ、ここはピンチな艦隊を助けないとですねっ
理緒さんの艦「リオ・セレステ」に乗せてもらい
現場へ辿り着いたら、理緒さんの弾幕発射に合わせて
私も猟銃形態に変えた血槍での【援護射撃】で
弾幕をさらに強化していきます!
時折【スナイパー】での狙撃を混ぜつつ
それでも敵が接近してきたら
血槍を推盾形態に変え、敵の攻撃を防ぎながら接近&迎撃!
そのまま【シールドバッシュ】で体当たりしたり
槍形態に戻して【ランスチャージ】で突撃!
そして、刻印での攻撃で追撃!
そうして得られた血で『刻印覚醒「血力励起」』を発動!
強化した戦闘力を使ってさらに攻撃を!
葛葉・アリス
やれやれね
勇気とやる気は買うけど、状況を見る目は育てなさいね
今は面倒見てあげる
神様だからね
さて、ようやく産み出せた新たな電脳悪魔『レヴィアタン』
貴方の出番よ
レヴィアタンに乗って宇宙を駆けていくわ
※レヴィアタンの見た目は手足のない竜
向こうの攻撃はバレルロールで避けながら、高速機動のまま敵機の中を駆け抜けるわ
レヴィアタン、意地見せなさいね?当たるんじゃないわよ
避けながら【世界情報更新】&マルチロックオン
敵機の情報を書き換えて装甲の薄い所や一撃で爆散させられるような弱点を作り出してターゲットロック
『green-eyed monster』の全砲門一斉発射
フルバーストの範囲攻撃でまとめて乱れ撃つわ
●
知識とは武器である。敵を知ることで対策を立て、より優位に、より安全に戦うことができる。
だが、知識とは諸刃の刃でもある。もし知り得た敵の存在が、到底敵うべくもないほどに強大であったならば。
――人は、戦わぬまま敗北に膝を折ってしまう弱い生き物でもある。
「だからあの人達がマインドミナBVAの脅威を知らないのは、ある意味では幸運だったよね」
解放軍艦隊の弾幕を隠れ蓑に進む空色の船、リオ・セレステの操縦席で理緒はそう結論づけた。
無策のまま敵の罠に飛び込んでしまったことは確かに蛮勇が生んだ失態であろう。
けれども、知れば後方で遅々として進まぬ調査をよしとする慎重派の艦隊のように惑星再発見の夢想に向けて進む活力を削がれてゆくこともまた事実。
それに彼らとて未知の宙域に単独で踏み込むことを選択肢に入れられる程度には練度のある艦隊だ。奇襲攻撃を受け、全く無防備のうちに僚艦を撃沈されたにしては立て直しが速く、その上に猟兵を送り出すための突入路すら確保してのけた辺りは指揮官の腕だけでなく、各艦の力量も相応に優秀であることが伺える。
「そんな腕のいい人たちをこれ以上失うのはこの先の探索にもきついだろうから……」
「焦らず確実に、ピンチな艦隊を助けないとですね!」
通信機越しに聞こえる理緒の声に応じて、艦上に立つセナは後方から飛翔してゆく実体弾――光学兵器の有効射程に踏み込めないのであれば、慣性によって威力が保持される実弾を使用すればよい――が頭上を飛び越えていくのを見上げる。
殆どが一瞬の内に通り過ぎていくそれら。時折交じるロケット弾や曳光弾の光に照らされて、巨大な影が浮かび上がる。
アリスの眷属、人造の悪魔にして万象の領域を泳ぐ巨竜レヴィアタン。その威容がリオ・セレステを護るように寄り添い、ともに敵地へと向かってゆくのだ。
「やれやれね――勇気とやる気は買うけど、状況を見る目は育てなさいね」
出撃前に彼の巨竜の主がため息混じりに零したセリフ。心底呆れたような、艦隊クルー達への苦言を零した彼女が、しかし彼らに聞こえないよう続けた言葉をセナ達は知っている。
「――仕方がないわ、今回は面倒見てあげる。……神様だからね」
あの竜に乗った彼女、電脳の神アリスの懐の深さを彼女たちは知っている。
彼女はついぞ言葉にはしなかったが、敢えてこちらの宇宙船に同乗せず目立つレヴィアタンを呼び出したのはきっと己が身を以てリオ・セレステに乗る仲間たちを護るためなのだろう。
艦隊の放った砲弾を撃ち落とし、レヴィアタンを狙って放たれるビームの嵐。
それを正面から、僅かも視線を逸らすこと無く見据えるアリスは竜の背を軽く踵で小突いてさらに加速。螺旋を描くようにバレルロールで極大のビームを回避すれば、天地目まぐるしく入れ替わる中で頭上を掠める熱量にちりちりと肌が焦げるような不快感。
「レヴィアタン、意地見せなさいね? 当たるんじゃないわよ」
音無き宇宙でも伝わる振動は主の命に応えんとする竜の咆哮か。そしてその巨体の後を続くリオ・セレステ。
敵の対処能力は今、艦隊の支援砲撃とレヴィアタンの迎撃に費やされている。この好機こそ正面に展開する敵の布陣に新たな大穴を抉じ開け、艦隊突破の糸口を掴むのだ。
そのための秘策をアリスは持っている。視界に捉えた敵の集団。それらに対して行使するは神の権能、すなわち世界への干渉。
世界の書き換えを始めましょう――小さな神の言葉の通り、兵器であるならばまず真っ先に対策されるような在り得ざる弱点を初めから斯くあったかのように創り出す。
今よ、と神が後続のリオ・セレステに道を譲れば、前に出て竜と並走する宇宙船。
「陣地を突破する前に、楔を撃ち込まないとね」
「ええ、ここから逆転しましょうか!」
船内の理緒といちごが力強く頷き合い、それぞれの眷属を呼び起こす。
宇宙空間に現出するは無数のミサイル。いちごの魔法で生み出された、“矢”ならぬ“誘導弾”が先端のセンサーで敵集団をしかと捉えた。
そしてそれらを護衛するように出現する八角錐の戦闘ドローン。
「セレステ、砲雷撃戦スタンバイ」
それらが突撃隊形を構築するに合わせて、リオ・セレステの各所に搭載された宇宙魚雷発射管やレーザーキャノンも火器管制システムに接続してゆく。
「彼らを倒した後はクエーサービースト戦ですか……さすがにそっちの相手は私達でないとですね」
本命はこの後だ。だから全力を出しこそすれ疲弊してはいけない。共に往く少女たちを率いる立場からそう諭しながら、いちごは全力だ。
すでに飽和しているようにすら思える無数のミサイルの後方に、空間殲滅用の大型ミサイル――それは対要塞戦において表層の火砲を根こそぎ焼き尽くすための戦術級ミサイルと同等クラスであると判断した敵機のAIは最大級の警戒をもってこれへと照準を合わせた――を召喚したのだ。
「セナさん、アリスさん、巻き込まれないように気をつけてくださいね!」
いちごの声に頷いて、船外の二人も一斉攻撃に備えただろう。
「ミサイルっ! 全弾斉射!」
「攻性弾幕、展開っ!!」
かくて八角錐のドローンと小型のミサイルが乱舞し、その後方を大型ミサイルがゆっくりと加速を付けながら推進し始める。
大型ミサイルを狙って敵機が砲撃体勢に入れば、その隙をつくように小型ミサイルが陣形に忍び込み、ドローンが相打ち覚悟の突撃を敢行する。
それでも敵部隊は冷静であった。大型ミサイル撃破に必要な最低限の数を残して、飛来するミサイルやドローンの前に飛び出した機体群。それらは尋常ならざる、機関が焼け付くほどの超加速でミサイルを誘導し、接近するドローンをその剣で斬り落としてゆく。
理緒といちごの攻撃は、敵機によって的確に対処されてしまった――狙い通りに。
――彼らは失念してしまっていたのだ。大型ミサイルという見えている切り札を前に、それを迎え撃つための最適解を叩き出した。が、故に散開した彼らは迎撃部隊の護衛という臨時の役目を果たせない。
ミサイルに、ドローンに追い立てられながら彼らのモノアイが見たのは、竜に跨る少女と船の甲板で銃槍を構える少女の姿。
「ふたりが作ってくれたチャンス、逃しません!」
「そういうことよ。レヴィアタン、ここまでお膳立てしたのだから外さないでよね?」
竜の全身に据え付けられたビーム砲が唸り、迎撃部隊を打ち崩す。
咄嗟に回避し得た機体はセナの狙撃によって、ひときわに脆い弱点と化した推進器を撃ち抜かれ、くるくると制御を失いながら竜の制圧射撃に飲み込まれてゆく。
大型ミサイルを迎え撃つための部隊はその戦闘能力を失い、陽動部隊は戦術的な目標を見失った。彼らは一瞬の混乱の後に、ミサイルやドローンを引き連れたままリオ・セレステへと襲いかかる。
砲撃がために足を止めれば撃ち落とされる。ならば剣を抜いて勢いのまま白兵戦へ。合理的な判断ではあるが無謀でもあった。事実大半はリオ・セレステの迎撃に遭い撃ち落とされ、そうでなくともレヴィアタンによって叩き潰されたのだから。
それでも幸運にリオ・セレステへと肉薄した機体はいた。剣を振りかざし、大型ミサイルが止められぬならばせめてその大本を断って意趣返しを。そんな怨念めいた色を湛えた単眼で敵艦を見据えるそれは、直後に血色の盾で強かに殴打され押し返される。
「やらせませんっ!」
セナだ。銃槍を盾に変え、我が身ごとの体当たり。それはリオ・セレステの窮地を救った。だが敵機は狼狽えこそすれ健在で、すぐさま反撃を行おうとする。
だから、セナは吸血鬼の刻印を使ったのだ。
激突の刹那、発動した刻印は咄嗟に身体を庇った敵機の腕を融かし、血液へと変えていた。それを刻印を通じて取り込んだ彼女は、その血に秘められた力のままに宇宙を駆け紅の鉄騎士を屠るだけの膂力を手に入れる。
「この力で……私は皆を守ります!!」
縦横に舞う銀の騎士。真紅の刃が閃いて、紅の騎士の銀の刃を打ち砕く。
斯くしてリオ・セレステを強襲した敵集団は戦闘能力を失い、離脱したものからミサイルやドローンに捕食されて塵と化した。
レヴィアタンとリオ・セレステの進路を塞ぐものたちに、最早組織的な抵抗能力など残ってはいなかった。そこへ駄目押しとばかりに到来し、起爆した大型ミサイル――その威力によって完膚なきまでに消滅した敵の一集団がかつて在った宙域を、竜と共に船が往く。
大成功
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ウィンディ・アストレイ
やれやれ。また彼らですか…しかし照準が甘いですね。
炎のMS乗りさんを見習った方が宜しいかと。
【選択UC】を起動、最高速度(約マッハ5.8)で
乱数機動と某MEPE宜しき残像による
最低限の回避運動を取りつつ敵陣に突入
戦略兵器で精密速射など不可能ですから、恐れず懐に飛び込みます!
「如何に火力を誇ろうと、当たらなければ関係ありません!」
突入後も減速せず、敵陣をかき回しながら
すれ違い様にライフルで敵火砲を狙撃
敵の攻撃手段を封じながら火砲数を減らし、艦隊への攻撃を防ぎつつ
あわよくば誘爆での撃墜を狙います
(以上、空中戦&ダッシュ&戦闘知識&第六感&見切り&残像&スナイパー&先制攻撃)
※アドリブ&絡み連携OK
イデアール・モラクス
敵の力を見誤る愚、それは人間にありがちな失策だが…そうして挑まねば辿り着けぬ境地もある。
そう、何も持たなかった私が吸血鬼さえ超えたように、諦めを踏破した者だけが超越した世界へと到るのだ!
・行動
「超長距離からの砲撃…撃ち合ってばかりではこちら艦が保たぬか」
ゆえに征く。
敵の射線を見極め『多重詠唱』にて自らに【アクセラレート】を付与、高機動『空中戦』と魔剣の『武器受け』で砲撃を掻い潜りながら敵に接近しUC【絶殺武刀】を『全力魔法』と『属性攻撃』で威力を増した上で『高速詠唱』を用い一瞬で行使、不可避の刀による『一斉発射』で『串刺し』にして刀身からエネルギーを『吸収』して完全に搾り殺す。
※アドリブ大歓迎
●
「やれやれ、また彼らですか……」
肩を竦めて呆れを滲ませるウィンディ。過去にも一度、マインドミナ型クエーサービーストが再現したあの紅い機体と交戦したことがある彼女に言わせれば、敵の砲撃はあの精度をしてまだ甘い。脳裏に浮かぶのはUDCアースで観たロボットアニメの主人公だ。彼も似たような大型の戦略級ビームキャノンを装備した機体を扱っていたが、あの紅い鉄騎士のように軽率に撃ちまくることもなければ、此処一番で撃つときには必ず狙い通りに当てていた。
彼を見習え――言っても詮無きことでもあるし、むしろそうされると困りはするがそう言いたくもなる砲撃。精度を犠牲に速射性を高めているのか、あるいは彼らの運用思想としてそも精密狙撃より集団で弾幕を張ることで絶え間なく火力を投射し続けられるようになっているのか。なんにせよ脅威ではあるが、それは艦隊にとってという但し書きあってのこと。
超音速に至る鎧装騎兵にとって、砲撃の余波が及ぼす影響の範囲さえ見誤らなければさして脅威にはなりえまい。
「最低限の乱数回避機動で突入、恐れず懐に飛び込めばその後はどうとでもなります!」
「クク……ならば私も同行させてもらおうか」
勝手知ったるといった風に対策を立て飛び立とうとするウィンディを呼び止める魔女。
「超長距離での撃ち合いでは此方の艦が保たぬ。故に往く、他の連中も選んだ妥当な戦術だ」
だがな、と魔女――イデアールは不敵に笑う。
「相手の力量を知っているからと単独で挑むのは失策に繋がる。艦隊の連中が敵の力を見誤って愚を犯したように、人間というのはすぐに判断を間違えてしまうからなあ」
如何に対人火器は貧弱だといっても、集団を相手に単独で挑めば全ての敵に一人で対処せねばならない。いくら機械化された身体を持っていても、数を頼みに押し込まれて対応能力を飽和させられないとも言い切れないのだ。
「それは……そうかもしれませんね。少なくとも突入するまでは事故が起こらないとは言えません」
だろう? と笑う魔女。だが、お前はそれを気付いていながら敢えて挑もうとしていた。
イデアールは見目麗しく勇敢な機械じかけの少女に、だから気に入ったのだと、故に共に並び立ち艦隊の窮地を救おうと手を差し出す。
「愚策と分かっていても挑まねば辿り着けぬ境地もある。私がそうであったように諦めを踏破したものだけが到れる超越した世界がな」
そこにウィンディも手を掛けている、あるいはもう至っている――ということなのだろうか。言動に共感するところもあるような、しかし抽象的な表現故によくわからないような。
ともあれ共に戦ってくれると言うならば拒む理由はない。
「わかりました、ボクと一緒に飛んでください!」
艦隊を飛び立ったウィンディとイデアールはまさに星であった。
「如何に火力を誇ろうと、当たらなければ関係ありません!」
尾を引く彗星のように残像を引き連れ敵機の照準を幻惑するウィンディ。
「アーッハッハッハ! 私に当てようと言うならこの十倍は持ってきて貰わんとなぁ!」
一瞬だけ煌めく流星の如く、照準に捉えられてからの急加速で砲撃をすり抜けるイデアール。
流れるように美しい回避機動と、稲妻のごとく激しい回避機動。まるで似ていないふたつの軌跡が絡み合い、幾度も放たれるビームをするりするりとすり抜ける。
星の瞬きは一瞬のようで、最小の回避で砲火の飛び交う彼我の距離を詰めた二人。もはや艦隊は後方に小さく見えるか見えぬか。小型艦に至っては確実に見えはすまい。それほどの距離を前進した二人の前に、紅い騎士たちが現れる。
背負った放熱板を真っ赤に燃やして、尋常ならざる推力で二人に追いすがる騎士たち。
最早一撃必殺をすら諦めたか、速射性にのみ全性能を振り分けた低出力モードで次々に砲撃を浴びせ撃つ彼らの間隙をすり抜けた二人は、後方から追撃にかかる敵機に対して揺さぶりを掛けながらなんどもすれ違う。
その度にウィンディのライフルが吼え、敵機のビームキャノンが撃ち抜かれる。
射撃戦を封じられる機体が増えるに連れて、白兵戦――背に負った放熱板を巨大なヒートブレードとして機体ごと振り回し、接近すれば手にした剣で斬りかかる――に移行してゆく敵機は、もはやイデアールの獲物にしか成りえない。
必中不可避の妖刀を召喚し、撃ち出すイデアール。
ビームキャノンの火力を持ってすれば、回避不能の攻撃であっても焼き払うことは出来たかもしれない。
だがそのための武器はウィンディによって破壊され、もはや騎士たちにはそれを防ぐ手立てはなかった。
次々と装甲に突き刺さる刃。そしてそこから吸い上げられていく動力。
炉の出力を上回る勢いで奪われていくエネルギーは、騎士たちを速やかに死に至らしむだろう。
が、たった一機。たった一機だけ、刃の刺さりが甘かった機体が居た。真っ先に死んだと偽装して、イデアールの注意が逸れた瞬間に刀を引き抜き、破損したビームキャノンでイデアールを狙うその騎士は、もはや己も部隊も用を成さぬならば敵とともに果ててしまえという執念を――在りし日の帝国兵達の狂信じみた思考形態の模倣とも取れる――を滾らせて、火花を散らすひび割れたビームキャノンへエネルギーの全てを流し込み、そして。
「させない!」
その暴発より速く砲口に飛び込んだ熱線が、ビームキャノンの機関部を融解させ機体もろともに爆破する。
ウィンディの咄嗟の狙撃、これまで牽制と砲撃の妨害に努めていたが故の余力が、イデアールの窮地を救ったのだ。
「……ほう、助けられたか。クク……油断するなと説いた側がこれではな。まあいい、この礼はいずれたっぷりと返すとしよう、期待してくれて構わんぞ?」
「い、いえ……ボクは遠慮しておきますね……」
救われたことを感謝するイデアール。その言葉に何故か嫌な予感がして素直に喜べないウィンディは、魔女の謝礼を丁重に断るのだった。
大成功
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チトセ・シロガネ
ぶっこくのが早いビッグマグナムネ。そんなんじゃレディーを満足させられないヨ。
空間を飛び交う閃光の軌道を野生の勘と第六感で読み取りつつ、最小の動きで回避。まるで早業の如くヨ。
それでもタイミング合わせて撃ち込むヤツがいると思うカラ、念動力によるオーラ防御を纏った刃を怪力で振り抜きカウンター!ピッチャー返しってヤツダネ。
その間にUC【光輝体系】を発動。
回避と並行してハッキングで一体を踏み台にネットワークに干渉。
火器管制の味方識別にちょっとしたイタズラをしてフレンドリーファイアさせていくネ!
火力は高いけど、それがユーたちのアダになるネ。
ガーネット・グレイローズ
さて、未踏宙域の探索も何度目になるかな。
クェーサービーストに撃破される前に、
ドレッドノートⅦを救助しなければ。
<空中戦>の要領で宇宙空間を泳ぐように飛び回る。
敵の高速起動に対処するため、小惑星やデブリの陰に
潜りながら移動し、距離を詰めていく。
すでにあのタイプの性能は<戦闘知識>と
過去の対戦経験で把握している!
放熱板による突撃は偽翼刃による<武器受け>で捌き、
<メカニック>の知識を使って相手の構造上脆い部分を攻めてやる。
<念動力>で操る鋼糸を糸鋸のように振動させ、<鎧無視攻撃>で反撃だ。
再び突っ込んで来たら、すれ違いざまに
【サマーソルトブレイク】による<カウンター>を叩き込んでやろう!
●
敵部隊は過半が壊滅し、艦隊が受ける損害も目に見えて鈍化している。
このまま対ビーム戦術を怠ること無く徹底し、勢いに任せて突破を図れば艦隊だけでも残敵を掃討することは可能だろう。
だが、この紅の砲手達を倒してそれで終わりではないのだ。その先に潜む彼らの主――あるいは本体か――であるクエーサービーストを撃破しなければ、艦隊の救援は成ったとは言い難い。
「つまりこの状況では優勢を勝ち取ったとはいえ、全体を見ればまだ艦隊の窮地は去ったとは言えないわけだ」
ガーネットの為すべきことに変わりはない。艦隊が窮地を脱するまで助け、ドレッドノートⅦが撃沈されることを防ぐ。優勢であろうと劣勢であろうと、シンプルな目的をスマートに達成するのがグレイローズ家の娘としてのらしい立ち振舞いであろう。
「そうネー、あんナ連中さっさと片付けて大物の相手がしたいヨ」
歯を剥き出しに獰猛に笑うチトセ。どちらが合図をしたわけでもなく、それでいて同時に前進する艦隊各艦の上を駆け抜け二人は宇宙の海に身を投じる。
対ビームフィールドを展開し、更には艦全体のスラスターを活用して器用に砲撃を回避する艦艇。その背中から飛び降りれば、その後の回避も防御も各々の実力に全て委ねられる。
しかしてそこは宇宙に慣れ親しんだ二人だ。猟兵と艦隊、そして敵の砲撃部隊との戦闘で生じたデブリを巧みに盾とし足場として、飛来するビームを掻い潜る。
度重なる攻撃を受け、機体数を減らし密度を大きく減退させられた砲撃は、それだけでも十分に対処可能な程に脅威度を低下させている。
だが偶然かそれとも腕利きが紛れているのか、それでも時折ごく付近を掠めて二人の肝を冷やすものも飛んでくるのだ。
そんな中でもガーネットは冷静に慎重に、自身のペースを崩さずに進む。が、チトセはそんな至近弾を回避した直後に真横を掠めたビームが髪の先をちりと焦がしたのが我慢の限界だった。
「あーモウ! ぶっこくのが早いビッグマグナムネ。そんなんじゃレディーを満足させられないヨ!!」
やや下品なスラング混じりにデブリの陰から飛び出したチトセ。稲妻を纏う彼女の輝きはよく目立ち、敵機も容易に照準を合わせて引鉄を引くだろう。
それをまったく回避しようともせず、ただ苛立ちのなかで却って研ぎ澄まされた思念を纏わせた刃をひゅんひゅんと幾度か振り回す。
それだけで刃をぶち当てられた砲撃は軌道を無理矢理に捻じ曲げられ、くるりと進路を変えて砲手達のもとへと帰っていった。
「イェイ! ピッチャー返しってヤツダネ!」
ビームが敵陣に飛び込み、直後に瞬いたいくらかの光芒が敵機を撃ち落としたことを示すものだと見て、チトセが歓声を上げて小さく飛び跳ねる。
と、同時にその派手な芸当を目眩ましに、チトセはその身体の一部を電気に変質させ、ビームに添えて敵陣に送り込んでいた。
反射された砲撃の直撃を避けた機体のうち一体がそのチトセの放った電気に触れ、ばしりと機体を這う電流に僅かに硬直する。
単眼を明滅させ、ほんの数十分の一秒ほど機能を停止したその機体が再起動したとき、その眼前ではいよいよ砲撃部隊の陣容に飛び込んだガーネットによる襲撃が開始されていた。
「お前の性能は既に把握している!」
砲撃では不利な近接戦闘の距離と見るや、放熱板を巨大な溶断兵装として突撃してくるのは既に承知の上。複数機が連携し回避至難な同時攻撃を挑むが、わかっていれば対処のしようはいくらでもある。
たとえば、こんな。
「――ブレイドウィング!」
ガーネットのマントの内から現れた流体金属の翼は、鋭利な刃と化して敵機の放熱板を受け止め押し返す。
ならばと砲を構えた敵機は、既に彼女の罠の中。装甲に守られていない関節部に食い込んだワイヤーが高速で振動し、火花を散らして哀れな獲物をバラバラに寸断せしめて撃破する。
「その程度の機動でグレイローズの名に泥を塗れると思うなよ!」
さあ次だと敵を煽るガーネットだが、紅の鉄騎士たちも無能の案山子ではない。僚機が接近戦で為すすべもなく殲滅されたのを見てまだ突撃を敢行するような蛮勇を示す機体は無く、むしろ見えずとも張り巡らされているのであろう鋼糸もろともガーネットを葬るべくビームキャノンを構えて距離を取り始める。
――一機の鉄騎士がそれを背中から撃った。
チトセの放った電撃に触れた機体だ。彼はその電流に思考を破壊され、敵味方の識別を失ったのだ。今の彼には自分に接近するものが全て所属不明機に見えているがために、後退し接近してきた同胞を敵と誤認して焼き払ったのである。
「ふふン、火力は高いけどそれがユーたちのアダになったネ」
ただの一撃、仕込まれた罠によって撃たれてしまった友軍誤射。それは残存部隊の大多数を消滅させ、生き残った機体にも敵味方の識別喪失を感染させる。
味方のはずの機体に撃たれた。あれは敵か。敵だ。撃ち落せ。ならばその敵と同じ形状、同じ識別信号を発するあの機体は、あの機体も、そこの機体も。
あの暴走機と同一のデータリンクに接続する機体は全て――当機すらも“敵”である可能性は否めない。
理論の暴走が至る結末は壮絶な同士討ち。大火力が故にその余波が味方を傷つけ、正常な思考を維持していた機体が巻き込まれたことで疑心暗鬼に狂っていく。
――とはいえ、だ。敵味方の識別を失ったのと、敵が敵同士だけで撃ち合うことはイコールではない。
味方同士での殺し合いを演じながらも正常を保ち、あるいはたまたま目についたからかガーネットを狙って襲撃を挑む機体も僅かに存在する。
あるものは砲を抱え、あるものは剣を抜いて――猛然と突進してくる重鉄騎を前に、怯まず竦まずガーネットは凛と宣言する。
「見るがいい。これがグレイローズ家秘伝の一撃!」
放熱板を煮えたぎらせた敵機がガーネットと交錯するその瞬間、その場でくるりと宙返りした彼女の脚が巨体の騎士の顎を蹴り上げ吹っ飛ばす。
後続を巻き込み同士討ちの戦場に押し戻され、無防備に漂う的も同然のその機体を、疑心暗鬼に駆られ目に映る全てを焼き払う者たちが見逃す道理もなく。
斯くて部隊は壊滅し、僅かに生き残った機体もガーネットとチトセによって入念に解体され――マインドミナの放った伏兵、砲撃型ウォーマシンからなる大部隊が最後の集団はここに消滅した。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第2章 ボス戦
『クエーサービースト・マインドミナBVA』
|
POW : BVAジェノビック
【無限に変化する外殻が超殺戮形態 】に変形し、自身の【防御力】を代償に、自身の【攻撃力と攻撃速度】を強化する。
SPD : BVAエクスタリ
いま戦っている対象に有効な【無限に変化する外殻が変形した殺戮兵器 】(形状は毎回変わる)が召喚される。使い方を理解できれば強い。
WIZ : BVAリモーフ
対象のユーベルコードを防御すると、それを【無限に変化する外殻によって再現し 】、1度だけ借用できる。戦闘終了後解除される。
イラスト:はるまき
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●
砲撃部隊を殲滅し、ひとまず艦隊の脅威を取り除いた猟兵たち。
その眼前にひとつの小惑星が現れた。巨大な石塊は表層に分厚い氷の鎧を纏っているのか、恒星の光を浴びてきらきらと美しく青白い光を放っている。激戦のさなかだったとはいえ、これほど美しいものを見落としていようとは。クエーサービーストの脅威さえなければ此処に暫し留まり艦隊再編を行うついでにひとときこれを眺めていてもいいかもしれない。宇宙に漂う水と石の宝玉はそんな想いを抱かせるほど美しかった。
猟兵に遅れてきた艦隊クルーたちも、その光景を見て同じような想いを抱いたに違いない。
損傷した艦をワイヤーロープで牽引し、自身も砲のいくつかを失った旗艦ドレッドノートⅦで老提督も思わずほうとため息を吐いた。
既知宇宙では真っ先に水資源の鉱脈として砕かれるような氷の小惑星。それがここまで美麗な姿を得るまでに成長するとは、未踏宙域は危険に見合った収穫があるのだという確信。
あまりに荘厳にして美麗な光景を前に、艦隊のクルーたちも一瞬忘我にも似た感情を得た。
その時だ。氷の小惑星の影側から伸びた触手が、美しく煌めく氷を貫き、中心の核たる石塊をゴリゴリと砕いて咀嚼する。
「――敵襲! 全艦砲撃用意!!」
「合図を待つな、撃てる艦から全火力を投射しろ!」
提督の命に従って艦隊の放つレーザーやミサイルが一斉に小惑星に集中する。氷の塊が砕け、ぐるりと日向と影が入れ替わる。
そこに在ったのは醜悪な塊であった。美しい小惑星の影に潜む、深海生物のような不気味な腫瘍の塊。それが甲殻の隙間から覗く組織を蠕動させ、ドリルのような器官をぎゃりぎゃりと不快に回転させながら姿を現す。
艦隊の放ったビームやミサイルはその巨大な何者かを爆煙に包み隠し、飛散する破片が決して軽からぬ損傷を与えたことを雄弁に語っていた。
――が。
煙の下から現れた怪物は全くの無傷。否、ダメージは通っていたのだ。ただし致命傷を与えるより修復速度のほうが上回っただけの、シンプルな生物種としての性能差が艦隊に絶望を齎す。
「……提督! 敵は、敵は我が方の攻撃が通用しません!」
「…………ぬぅっ。これがクエーサービーストというものか。だが、だからといって砲撃を止めるな! 殺しきれぬとも外殻を砕くことはできる! あとはそれを突破口に猟兵が致命傷を与えてくれると信じて踏みとどまるのだ!!」
絶え間なく浴びせられる艦砲射撃の中で、意志を感じさせずただ体組織を蠕動させる巨体――クエーサービースト、マインドミナBVA。
その外殻から突き出すように、銀河帝国の兵器群が再現模倣され飛び立とうとしている。
ウォーマシンがいる。人型機動兵器がいる。戦闘機が、爆撃機が、戦車が、艦艇が、砲台がミサイルがあらゆる兵器が、ただ当然の防御反応だというように無機質に艦隊を睥睨し、各々の武装を構えるのだ。
次々に着弾する砲撃がそれらを粉砕してゆくが、艦隊の物資が尽き、砲撃の手が弱まったとき彼らは飛び立つだろう。そうなってしまえばもはや艦隊などはひとたまりもあるまい。
その前に猟兵が友軍の艦砲射撃を掻い潜り、防衛機構として複製された帝国軍を突き抜けて、マインドミナの中枢器官に致命の一撃を与えるのだ。
勝機はそれしかない。クラン提督からの通信を受けて、猟兵達はその決死行に身を投じてゆく。
エル・クーゴー
●POW
躯体番号L-95
当機は無重力下三次元機動に高い適性を発揮します
●【狩猟の魔眼と砂嵐の王】
・敵POW発動を見次第、行動開始
・「弱点指摘」は「代償にしている防御力」
・友軍と己の命中弾による敵毀損程度の差を以って「弱点実証」とする
・プラズマジェットで飛翔(空中戦)
・但し敵と戦速では張り合わず、あくまで回避/迎撃を重視した位置取りの為に機動
・友軍による敵外殻破壊箇所に畳み掛ける形で、直後の退避用途以外の【継戦能力】を度外視しアームドフォートを【リミッター解除】、【砲撃】と【爆撃】の【一斉発射】
・一発でも刺せれば、即ち「実証完了」
・空間跳躍“門”を敵の注意が薄い箇所に座標指定し、物九郎を送り込む
アシェラ・ヘリオース
「これが陛下の見据えていた先か……」
この戦いが終われば、亡き主の夢に思いを馳せるのも良いだろう
「無礼な望みを受けて頂き感謝する」
勇敢なる老提督と兵達に挨拶を終える
血路を開く為に本気で行く
「真の姿」で帝国時代の装備を着用し、赤光を物質化した槍で突貫しよう
常に励起状態にある【破天槍】は触れるだけで敵を消し飛ばす
味方を【鼓舞】しつつ【空中戦】で応戦
【情報収集と戦闘知識】で奴の超殺戮形態 を観察し、薄くなった外殻の守りの結節点を探る
「彼等の道を拓かねばな」
見出せば赤槍を構え【念動力】で投擲し【串刺し】にする
後は外殻の結節点に突き刺した赤槍のフォースを開放し、超新星めいた輝きで【鎧砕き】と【吹き飛ばす】
●
「これが陛下の見据えていた先か……」
あまりに巨大。あまりに強大。生命としての在り方それそのものが、文明を含めた人類という存在を超越する異形の怪物。
クエーサービースト。かつてこの存在を誰よりも先んじて知った帝国の同胞は、そして銀河皇帝は何を思い、何のために彼らと戦い、そして既知宇宙とこの未踏の宇宙を隔てる境界を敷いたのか。
考えるのは後だ。アシェラは瞼の裏に蘇る銀河皇帝の面影をひとまず振り払い、旗艦ドレッドノートⅦの艦橋を後にする。
「……往くのかね」
その背中に向けられたクラン提督の声に、黒き女騎士は振り返ること無くただ踵を揃え一度立ち止まった。
「ああ。提督と艦隊将兵には無礼な望みを受けていただき感謝する。分艦隊司令の権限も返上しよう」
そうか、とクラン提督は頷いて、合成コーヒーを一口。
「――分艦隊各艦は“帝国騎士”の出撃に合わせ全火力を本艦正面に集中せよ。一度は仰いだ将の出撃だ、邪魔をさせるんじゃあないぞ」
かつて異なる旗を仰いだ将同士、かたや帝国の圧政に逆らい続けた老提督。かたや忠義を胸に祖国に刃を向けた若き騎士。この戦いの中で二人の間に芽生えたある種の信頼関係は、それ以上の言葉を必要としない。
老提督の指揮する艦隊は必ずや女騎士の道を切り拓くだろうし、女騎士の一撃は必ずや老提督達の窮地を救うだろう。
背後で扉が静かに閉まる音を聞きながら、叩けども尽きぬ無尽の敵部隊を少しでも漸減するのだと老いた提督は再び声を張り上げる。
「――躯体番号L-95」
「当機は無重力下三次元機動に高い適性を発揮します」
その言葉に偽りなし。L-95、エルを目掛けて放たれたマインドミナBVA――その剥離した外殻が変貌した銀河帝国軍の改ディクタトル級と思しき防空巡洋戦艦の嵐のような対空砲火を掻い潜り、エルは次々と後続の艦隊を生成し続けるマインドミナの外殻の隙間を高精度のセンサーで凝視する。
小型の兵器を排出する表層近くの外殻と異なり、艦隊は外殻と外殻の隙間、腫瘍めいた本体に近い奥まった位置で生まれ、そして進出している。
故に艦砲射撃は帝国艦隊に届かず、艦隊は接近する猟兵にとって依然脅威として存在し続けている。
だが、エルは推測する。艦艇であれ小型兵器であれ、元を辿ればマインドミナの外殻である。再生力に長けるとはいえど大質量の艦艇を生成したその一瞬であれば、その部位の外殻は大きく消耗する筈。
それこそが突破口に至る可能性ではないか、と。
「>推論を実証します」
ならば試す価値はある。艦隊を生み出す“港”を守るように蠢く外側の“岬”へと艦隊からのミサイルの嵐が降り注げば、砕けゆく“岬”の残った部分に出現した砲台が猛然と反撃を開始する。
砲台程度ならばエルにとって歯牙にかける必要もないほどまばらな抵抗だが、高密度の弾幕を展開する改ディクタトル級が居てはそちらを回避するために砲台の射線に踏み込むリスクを排除しきれない。
「まずは砲台を排除します」
「――その必要はない、あなたの道は私が切り拓こう」
多少とは言え強大な敵を相手に無視できないリスク。これを排除するべく“岬”に進路を向けようとしたエルへと、それを制止する声。
分艦隊から注ぐ数多のレーザーの嵐が“岬”を粉砕し、ついで赤い軌跡を描いて黒衣の騎士が飛来する。
「因果なものだ」
下手な砲弾より凶悪な殺意を持って飛散する外殻の破片を構えた赤き槍で打ち砕き、岬の内側で出撃体勢に在った改ディクタトル級のうち最も外側に位置する一隻の上に立つ黒騎士。
この距離からならば無人の艦橋がよく見える。無人であるから遠慮は無用、紛い物とはいえど同胞を手に掛けることを気に病む必要もない。
「――またこの槍を振るうことになるとはな」
“岬”に守られていた艦隊は五隻。その中心に位置する一隻に視線を上げたのと、黒騎士――アシェラを排除するべく、彼女が取り付いた一隻を除く四隻が対空砲を照準したのは同時。
「それも贋作とはいえ帝国の艦隊相手に、とは。だが……彼らの道を拓かねばな」
振り返らずともわかる。突入した猟兵達を援護するため、満身創痍の身で一歩も退かず壮絶な砲戦を繰り広げている解放軍艦隊がそこに居る。
ならばアシェラも退かぬ。人が乗っていないからこそ躊躇なく、無尽蔵が故に冷徹に僚艦ごとアシェラを撃ち落とそうとする艦隊に向けて、彼女は己が槍を勢いよく投げつけた。
フォースの力で加速する赤き槍は、そのまま中心の一隻を貫通し、コアマシンが存在する――それがディクタトル級の内部構造を正しく再現しているのであれば――区画に突き刺さる。
「――破天槍」
アシェラが足場とした艦を蹴って解放軍艦隊の方へ退くと同時、四隻の改ディクタトル級からの砲撃がその足元を掠めて一隻を撃沈する。その一瞬の後に、槍で貫かれた艦が激しい爆炎とともに内部から爆ぜた。
吹き付ける熱波。武器を失い、フォースの半分を消耗したアシェラがその流れに乗って退くのと入れ替わりに、エルが翠色の残光を残して炎に飛び込んでゆく。
僚艦の爆発に呑まれ、“港”を守る艦隊は激しく損傷している。爆沈するのも時間の問題だろう。
だが、“港”そのものへのダメージは微々たるもの。“岬”を失い前進を開始した艦隊との距離が離れすぎた為に巻き込めなかったのだ。
問題ない。黒騎士のおかげでエルはその火力の殆どを温存したまま“港”へと肉薄することが出来たのだ。
後の事は考える必要すらない。帰還さえできればそれでよい。
「目標を照準。再生能力の鈍化を視認しました」
「>推論が正しい可能性を20%上方修正」
出し惜しみすることなど愚の骨頂。あらゆるリミッターを解除し、銃が砲がミサイルがロケットが爆雷が、エルの持つ全ての火器兵装が彼女の背後から現れ“港”を見下ろす。
「全火力、投射開始」
それは個人の火力と言うにはあまりにも強大であった。
かつてこことは異なる世界で計画されたアーセナルシップという軍艦がある。
自身を守る力を捨て、敵を狙う頭脳すら他者に依存することで極限まで火力を詰め込んだ時代の徒花。エルはそれに匹敵するほどの火力を単身で、単独で、敵の守りの内側に潜り込んでただ一点を狙いぶちまける。
“港”の外殻はあまりにも容易く崩壊した。
作りかけの帝国主力戦艦が空き缶を握りつぶすかのごとくべきべきと潰れながら沈みゆき、それに引きずられるように外殻がその裏側の体組織を引きちぎりながら脱落してゆく。
「推論を実証完了」
やはり、大質量を生み出した直後の外殻は脆い。内部組織にまでダメージを伝播させられる、マインドミナの急所である。
全ての砲弾を撃ち終えたエルは、すぐに来るであろう反撃から退避しながら己を囮にさらなる一手を仕込んでゆく。
「ENGAGE>“ワイルドハント”」
「――いい仕事っすわ、褒めて遣わす」
嵐の王が来る。
「デルフィニウム、通常空間に復帰」
「目標の敵損傷部位、十二時方向距離二百」
「全兵装オンライン――本艦周辺にワープアウト反応複数、識別友軍――巡洋艦ディアスキア麾下分艦隊、通常空間に現出します!」
嵐の王と亡霊巡洋艦がエルの指定した、マインドミナの急所を狙える位置かつ己を囮としてマインドミナの注意を逸した安全地帯へと出現する。
だけではない。分艦隊となった小型艦を中心とする快速艦隊が、亡霊巡洋艦の識別信号を頼りに次々と現れる。
「はン、命知らず共がまァ雁首揃えて集まったモンでさァ」
「――ディアスキアよりデルフィニウムの指揮官、お互い様だ。君に言われたくはないな」
嵐の王はニヤリと笑んで、それから麾下の亡霊たちに号令を下す。
分艦隊司令もまた、己をここまで導いた帝国の女騎士に報いるべく部下に告げる。
シンプルに、ただ一つ――ありったけをぶちかませ、と。
防御の内側に突如出現した艦隊による集中砲火。これによって“港”として機能していた外殻の一部は、その下の体組織ごと大きく抉り取られる事となった。
いずれは再生するであろう傷だが、それまでの間マインドミナの強力な防衛戦力である艦隊はその数を大きく制限されたのだ。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
数宮・多喜
【アドリブ改変・連携大歓迎】
さぁて、ようやく本命か。
元からコイツが目的だったからね。
提督、迎撃は任せたよ。
アタシは巨獣殺し(ジャイアントキリング)といくことにするか!
カブに誰か2ケツする奴ぁいないかい?
超特急でブッ込むよ!
そうして『騎乗』してるカブを『操縦』し、
攻撃を掻い潜りながらマインドミナの体組織の組成状況を
テレパスでスキャンして『情報収集』する。
外装を吹っ飛ばすなんてまだるっこしい、
相棒にゃ取って置きがあるんでね!
奴が生物である以上は、再生コアみたいなものがある筈。
そのコアの座標が特定できれば、こっちの物さ。
Anti-Beast-Sequence、承認!
内側から【宙穿つ穴】で崩れとけ!
神酒坂・恭二郎
「さぁて、このデカブツはどうしてくれるかねぇ」
目の前に広がる理不尽に笑みが浮かぶ
こう言う無茶な戦場こそ願う物だ
今回の猟兵仲間は突破力に優れたメンバーが多い
道を拓けば必ず中枢を抉るだろう
方針は最前線にて、帝国兵器群と死闘を演じる
収束した風桜子の【衝撃波】を【鎧無視攻撃】の斬撃とし、【早業】で【乱れ撃ち】一歩も下がらない
潮目は奴の超殺戮形態。変形を【見切り】、機先を制して自身の腕を切り、風桜子と共にスペース絵馬を満たして、【星喰鮫】を召還
薄くなった奴の守りに合せ、超巨大な顎で噛み砕かせて血路を拓きたい
消耗が激しく突撃は無理なので、後は【覚悟】を決めて追撃隊を防ごう
「さて、こっから先は通行止めさね」
●
「「さぁて」」
ようやく本命か、と小さなバイクに跨って女が唸る。
このデカブツはどうしてくれるかね、と不敵に笑った男が零す。
多喜と恭二郎の前で不気味に蠕動する、氷塊砕く奇怪な肉塊。
クエーサービースト、マインドミナBVA。その蠢く肉の隙間からは絶えず銀河帝国の兵器達が現れている。
少なくとも大きな脅威である艦隊の増産は一時的に停止したようだが、それでも無尽蔵に湧き出す戦闘機や騎兵たちは接近戦を敷いられる猟兵たちにとっては無視できない障害になるだろう。
「提督、恭二郎さん、迎撃は任せたよ」
後方から絶えず砲火を繰り出す艦隊へ、そして共に突撃を敢行する戦友へと背中を預ける宣言を。それから多喜はアクセルを全開に。
「任せな。こういう無茶な戦場こそ願う物だ」
多喜のバイクは小ぶりだが、速度は十分。直線での走りでは帝国の宇宙戦闘機にも劣るまい。ならば驚異となるは機動性に長けた人型。
それらを惹き付け大暴れすれば、彼女は必ずや敵の中枢に一撃を入れるだろう。
「アタシのカブにニケツ……は必要なさそうだね。いくよ、恭二郎さん!」
「おう、お前さんは何があろうと送り届けてやるよ、多喜!」
エンジンの遠吠えを引き連れて、あるいは風桜子の爆ぜる衝撃を蹴飛ばして、二つの影が巨大な肉塊に急速に近付く。
戦闘機がそれを迎え撃とうと飛来するが、細やかな機動を熟すパイロットが不在の機体では直線的に侵入者を追い回すのが関の山。
そんな素人機動の戦闘機をすら撃ち落とせないようではこの未踏宙域調査団に加わることなど甚だ笑止とばかりに、後方のドレッドノートⅦ艦隊からの砲撃が一機ずつ戦闘機を喰らい、爆炎の中に沈めてゆく。
それを背中に感じる熱と衝撃でのみ感じながら、振り返ること無く突き進む猟兵。
その前に、真紅の人型機動兵器が立ちはだかった。
「おっと、お前さんは――デストロイウォーマシンか。こんなとこにも配備されてたのか、全く泣ける忠義心だな」
恭二郎の言葉に応じることもなく、沈黙を守りながら外套型の装甲を開き、内に有する数多の銃砲刀剣を展開する紅の機械にスペース剣豪は苦笑する。
言葉は無用――などという武人めいた意志の表現ではない。表現するべき意志すら宿さぬ、これはただの機械人形。マインドミナBVAを守るための道具でしか無い。
「奴さん、俺たちに突かれてよほど慌てたらしいな」
本来であれば精神までも模倣することなど容易いマインドミナがこのような傀儡を無節操に生み出してはばらまいている。それが意思疎通不可能な巨大な腫瘍めいた生命体の焦りを感じさせるようで、恭二郎は自分たちの攻勢が決して通用していないわけではないという確かな手応えを覚える。
「行け、多喜。こいつは俺が相手をする。お前さんはまっすぐ行って本命に一発叩き込んでやれ」
意志無き模造品でも、多数の猟兵を相手に互角以上の戦いを演じてみせたかの帝国のデストロイウォーマシンを相手にたった一人恭二郎を置き去りにして行っていいのか。
多喜の頭にそんな迷いが一瞬浮かぶが、それは己を送り出すための囮、足止めを買って出た恭二郎への侮辱となると首を横に振って、任せたよと多喜は往く。
その背中を狙って旋回したブラスターの銃身を風桜子の衝撃波を斬撃のごとく飛ばして斬り落とし、ネビュラ着流しの懐に手を突っ込んだ恭二郎はデストロイウォーマシンの追撃を阻止して笑う。
「お前さんの相手は俺だって言ったろ? 余所見をするなよ」
無数の刃を広げた巨大な紅の戦機を前に、風桜子の刃を幾重に纏った剣豪は一人、仲間のために挑みかかる。
「こんだけ分厚い上にすぐ再生するってんじゃ、外装をいちいち吹っ飛ばすなんてまだるっこしいね!」
ぼこりぼこりと外殻の表面から突き出す対空砲の迎撃を躱し、追い駆けてくる戦闘機からの機銃掃射をくるりとハンドリングで受け流して多喜はマインドミナの体組織を超能力で読み取っていく。
硬度は、構造は、何処までが外殻で何処からが本体なのか。そして生物である以上必ず存在するであろう再生の中枢――臓器ないし脳にあたる部位。
それらを識るべくテレパスを送る多喜だが、やはり後を任せ残してきた仲間を気にしないと言うほど冷酷には成りきれぬ。
その僅かな雑念が邪魔をするのか、あるいはマインドミナの持つ何かが干渉するのか、思うようスキャニングできない多喜。
「ちくしょう、コアの所在さえわかれば相棒にはとっておきがあるんだけどね……」
必殺の一撃は必殺であるがゆえに易々と連発できるものではない。
一撃限りの大威力を必ず致命傷に届けるためには焦りは禁物。だというのに、一向にあるはずのコアの場所が分からない。
何故だ、という焦りもテレパスのノイズになるならば、それすら耐えて多喜は駆ける。
そして気付いた。コアは無いのではない。複数のコアが、何れかが機能停止してもそれを補えるようにとあちこちに散在しているのだと。
「あちゃー……よりによって最悪のパターンじゃないか……」
これは多喜一人で処理できる状況ではない。が、仕切り直して一斉攻撃を挑むほどの余力も無いだろう。
「こりゃしょうがないね……アタシ一人でできるだけ処理して後は任せるしか無いか。相棒、Anti-Beast-Sequence、承認!」
せめて他の猟兵達がその存在と所在に気付いてくれるよう祈りながら、多喜はコアの最も密集した――ドリル状の器官がぐるぐると渦巻く肉腫を狙って、とっておきの一撃を放つ。
獣を殺すための切り札。多喜が把握したマインドミナのコアの一つを飲み込むように発生した亜空間が、周囲の肉を巻き込んで次々と生まれては崩壊してゆく。
体内から器官を抉り取られる苦痛を感じているとでも言うのか、一際激しく肉を蠕動させてのたうつマインドミナに多喜は確かな手応えを感じ、しかし殺しきれぬという確信も得ていた。
「ははっ、お前さん中々やるじゃないか」
デストロイウォーマシンとの激しい剣戟。それは真紅の戦機から装甲の過半とフォースセイバーのいくつかを奪うことに成功したが、恭二郎も同様に数多の傷を負っていた。
かすり傷だ。気にするほどのダメージではないが、宇宙空間ではそれすらダメージに成りかねない。お気に入りのネビュラ着流しの上から纏った、自己修復素材の宇宙服がダメージに耐えきれなくなれば、恭二郎は生身で死の宇宙に投げ出されることになる。
「そろそろ決着だな」
その言葉に呼応したように、デストロイウォーマシンは恭二郎を強行突破して本体を強かに叩く多喜を強襲しようと全ての機肢にフォースの刃を展開する。
一切殺戮モード。旧解放軍の多くの英雄たちを屠った、かの機体の最凶たる所以。それが手傷を負った恭二郎を一蹴してやるとばかりに起動してゆく。
「おっと、こっから先は通行止めさね。俺も倒さず行かせるかよ」
ならば殺す。デストロイウォーマシンが刃を掲げ、先程までと比較にならぬ勢いで乱舞を放つ――より先に、風桜子の刃が恭二郎の腕を切り裂いた。
宇宙服の裂け目から、空気とともに宇宙空間に流れ出る血液。それをスペース絵馬に吸わせ、傷口をスペース手拭いできつく縛って恭二郎はそれを喚ぶ。
「暗き宇宙の深淵より来たれ、星喰の鮫王――」
斯くて。恭二郎の四肢をバラバラに引き裂こうと振り下ろされた刃が届くより疾く、暗黒宇宙より現れ出し巨大な星喰鮫が横合いから赤い甲鉄をばりばりと噛み砕いて攫っていった。
「――ってなもんかね。さてと、多喜は上手くやったかね。あいつが逃げてくるまで、せいぜい足止めに徹するか」
連鎖する空間崩壊に巻き込まれ、未だ苦しむマインドミナ。多喜の攻撃は今暫く続くであろう。ならば彼女が攻撃を完了するまで邪魔を遣らぬがスペース剣豪。
デストロイウォーマシンとの一騎打ちで消耗した身体でどこまでやれるか、もしもの覚悟も決めて恭二郎は迫りくるマインドミナの尖兵に相対す。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
ハロ・シエラ
酷い目に合いました。
生身であんな加速をさせられるとは……しかしこの激しい攻防。
どうやら私にはもう一度あの様なスピードが必要そうですね。
一度近くの艦に戻り、先ほどのカタパルトを使わせてもらいたい所です。
使えなければ何かを【怪力】で蹴ってもいいですし、誰かに投げてもらっても構いません。
とにかく最大速度でクエーサービーストに突っ込みます。
敵の攻撃は【見切り】、味方の砲撃は【第六感】で察知し、最小限の動きで回避しつつ接近しましょう。
ある程度の怪我は【激痛耐性】で耐えます。
力は防御には回さず、【気合い】と共に全て巨大化した剣に込め、防御力の落ちた敵にユーベルコードを叩き込んで断ち切って見せます。
トリテレイア・ゼロナイン
敵群が抑えられている今が好機、このまま切り込みマインドミナを攻略します
クラン提督及び調査艦隊に勝利を!
艦内で装着したUCを装備し出撃
●ハッキングで艦隊攻撃管制システムに接触し艦砲射撃情報を把握
センサーでの●情報収集で敵位置、種別、攻撃を●見切り、●盾受けでの防御や慣性制御による鋭い切り替えしの三次元機動による強行突破敢行
障害は槍型対艦砲の●スナイパー射撃
近接戦は●怪力●シールドバッシュで排除
…制御にかなりの処理負荷
デチューンして一般販売は難しいかもしれませんね
接近後、槍型対艦砲を●ハッキング限界突破
長大な光剣状の●なぎ払い掃射で敵群ごとダメージを与えつつ後続の味方の進路を切り拓きます
●
騎兵軽母艦デンファレの甲板に着艦したトリテレイア。
彼が持ち込んだ追加兵装を甲板クルー達が次々と搬出し、白き騎士の各部にごてごてと推進機や装甲、武装を取り付けてゆく。
「敵艦隊が抑えられている今が好機、このまま切り込みマインドミナ本体を攻略します」
視界に浮かび上がるウィンドウが追加装備の全てに異常がないこと、それら全てがすぐにでも使用できることを訴えてくる。トリテレイアはそれに小さく頷き、いつでも出撃可能であることを確認していく。
「しかし、凄まじいですな」
デンファレ艦載騎の一人である妙齢のクリスタリアンが、トリテレイアの携える長大な突撃槍を見上げて思わずつぶやく。
彼女たちも対艦用の大型ブラスターを装備しているが、トリテレイアのそれは艦載騎兵たちの身の丈の数倍はあろうかという巨大さだ。
「あの巨大なバケモノ相手でもそれならばダメージが通りましょう」
騎兵達の期待するような眼差しを一身に浴びて、トリテレイアはその想いに応えねばならぬと誓った。
「お任せください。私は本職の皆様ほどではありませんが、騎兵の真似事は出来るつもりです」
絶対に敵の防衛網を突破して蜂の一刺しを与えてみせる。その頼もしい言葉に、何人の騎兵が救われたことだろう。
彼女たちもその双眸に決意の光を宿して敬礼し、そして次々と発艦カタパルトに両の踵を収めてゆく。
「ならば貴殿を無事に送り出すのが我々の役目、道中の有象無象は我らにお任せを」
トリテレイアの露払いのために飛び立ってゆくデンファレ艦載騎兵たち。
銀河帝国攻略戦にも比肩しうる激戦の宇宙に飛び込んでゆく彼女らは精鋭だ。精鋭だとしてもきっとあのうちの何人かは帰れないだろう。
それでも往くのだ、この先にある未来を誰かが見ることの叶う時代を作るために。
「酷い目に遭いました」
生身でカタパルト射出され、とてつもない慣性を浴びせられたことを思い出してハロは肩を落とす。
周囲には切り刻まれた銀河帝国の戦闘機。いずれも徹底的に破壊され、宙を漂う鉄くずと化している。
ハロの仕業である。独力で接近を試みた彼女は、マインドミナの放った護衛戦闘機に捕捉され激しい戦闘の末にひとまずこれを退けた。
だが、再び接近しようとすればその度に妨害が差し向けられるであろう。
「その都度相手をするのではキリがありません。不本意ですがどうやら私にはもう一度あのスピードが必要そうですね」
本当に不本意ではあるが、戦術的にあのカタパルトを用いた長距離侵攻は理に適っている。このまま連戦で消耗するよりも賢い選択だろうと思える。
振り返れば丁度、空母型の艦から鎧装騎兵達が次々と飛び立ってゆくのが見えた。
あれを利用させてもらおう。ハロは一度クエーサービーストに背を向け、決死の部隊を送り出す軽空母デンファレへと降りてゆく。
「そういう訳です。カタパルトをお借りしてもよろしいでしょうか?」
艦載騎を全て吐き出し、残すは重騎兵となったトリテレイアを撃ち出すのみ。そこへやってきたハロの問いかけに、デンファレのクルーたちは快く応じた。
今度は不意打ちの射出ではない。大丈夫、覚悟をしていれば耐えられぬものではない。
「大丈夫ですか? いつもの装備でしたらお乗せ出来たのですが」
生憎全身に推進機を増設したトリテレイアにしがみつこうものならスラスターの炎に炙られあっという間に丸焼けになってしまうだろう。緊張の面持ちで射出タイミングを待つハロを気遣う白騎士に首を横に振って、お気遣いなくと告げたその時、出撃した騎兵部隊と戦闘を繰り広げていた大型対艦爆撃機が炎上しながら突っ込んでくるのが見えた。
「なっ…………」
撃墜され、あちこち誘爆しながら流れてくるその巨大な鉄の鳥はしかし爆散すること無くデンファレに体当りするルートを取っている。
艦隊の砲撃がなんとか撃墜しようと盛んに吠え立てるが、誘爆の度にひるひると姿勢を変えるそれに致命傷を与えることはできない。
「甲板の猟兵! すぐに射出する、後は任せた!!」
甲板員の怒号が聞こえたのと同時、ハロとトリテレイアは凄まじい衝撃とともに、爆撃機と紙一重ですれ違って宇宙空間に投げ出される。
――背後で感じる衝撃と爆発の気配。
大丈夫だ。きっとデンファレはあの爆撃機の特攻を耐えた。
そう信じて、白い巨大な騎士と黒い小柄な少女は前だけを見据えて駆け抜ける。
「迎撃部隊は上がってきませんね」
飛来した長距離ビームをくるりと回避してハロは安堵する。カタパルトの速度をして一気に侵攻することで敵の迎撃体制が整う前の隙を突く試みはひとまず大成功ということだ。
マインドミナに防衛網に空けられた穴を適宜塞いで戦線を形成する、という知能が無かったことが功を奏したのだろう。
だが、トリテレイアは防衛網がここまで手薄になった理由に心当たりがある。後方からの艦砲射撃の射線から退避する中で見た、解放軍の徽章を付けたアームドフォートの残骸。そのおそらく肩部装甲だったであろう破片に見覚えのある騎体番号を認めて彼は存在しない歯をぎり、と噛み締めるような思考ノイズを得た。
「……彼らの挺身を無駄には出来ません。このまま敵陣を強行突破します!」
追加の推進機を全て後方に収束し、一気に加速する白の騎士。彼が一秒でも疾くクエーサービーストにたどり着けば、それが今も戦い続ける兵士たちの負担を軽くすることに繋がる。
ハロを置き去りにするような機動は気が引けはするが、敵の迎撃も全て己が誘引すれば問題ない。
のこのこと現れ、全ての砲をトリテレイアに向けるべく横腹を見せた戦艦に槍を突きつけ――槍の様に長大な砲身を持つ対艦ビーム砲だ――トリガーを引く。
艦隊戦においても強固さで鳴らす帝国戦艦の装甲が真っ赤に融解し、大きな穴を空けて制御を失い爆沈してゆく。
それをすり抜け、マインドミナの外殻から翔び立った高機動型のバトルドロイドが電磁警棒を振りかざし突撃してくるのを盾で殴りつけバラバラに粉砕して、トリテレイアは対艦砲の有効圏内にマインドミナの外殻を捉える。
次々と爆撃機を生み出しては出撃させているその黒々とした甲殻を睨みつけ、白騎士は対艦砲のリミッターを解き放つ。
「……これは、かなりの処理負荷がかかりますね…………」
多少性能を下げてでも量産し、解放軍の同志たちの剣になれば、とも思ったがそれは難しかろう。よい兵器とは強いだけでなく、素直で扱いやすいのも重要だ。であるなら、これらの装備は失敗作もいいところであろう。だがトリテレイアが今ここで敵を討つには充分。
「彼女たちの弔い合戦です。あなた如きを滅ぼしたとて相応の対価などと言えませんが……」
それでも。ビーム砲から放出された粒子の渦が、巨大な剣の様に外殻に突き刺さる。
それを無理矢理に薙ぎ払い、今まさに出撃するところだった爆撃機を次々と焼き払って赤熱した斬撃痕を刻みつけるトリテレイア。
だが絶ちきれぬ。半ばほどまで刃を押し込んだところで、対艦砲が異常加熱の悲鳴を上げた。後少し、あと僅か。その無理を押し通すことすら許されず、強制パージされる対艦砲。
「――ですがああも深い傷が付いたならば、私でも斬り落とせます!!」
無念を抱くトリテレイアを追い越して、ハロの小さな背中がマインドミナに向かって突っ込んでゆく。
宙域に漂うドロイド兵達の迎撃が届く距離へ。無数のドロイドからの迎撃は回避至難、ハロの肌を貫き焼け付く痛みを刻み込む。だがそれを噛み殺して、防御を捨ててハロは往く。損傷した外殻は接近する大きな脅威を感じ取り、それそのものを巨大な対空掃射砲へと変貌させてゆく。このまま行けばハロは要塞砲クラスのビームを真正面から受けるだろう。しかしそれほどの火力を生み出すためにマインドミナが消費したエネルギーも大きい。再生が目に見えて鈍化している今ならば攻撃は有効なはずだ。
ハロの細剣が、彼女の体力を、魔力を際限なく吸い上げ巨大化してゆく。敵地で余力すら残さぬ一撃を放つ。しかもそれはダメージにこそなりはすれ、一撃必殺に届かぬ可能性のほうが高い。
そうなれば待ち受けるのは反撃による死。その予感に呼応するように、生存本能がいつも以上に魔力を引き出す。
「このまま斬ります! ――ちぇえすとぉおぉおぉおぉぉぉぉ!」
溶断されかかった傷跡を半ばから引き継ぐように、ハロの斬撃が外殻の一部を本体から切り離してゆく。
その一撃が完全に外殻を断ち切ると同時、切り離された外殻が変貌した巨大なビームキャノンが宇宙に光の柱を描いた。
「――無茶をしすぎですよ」
ハロが目を覚ました時、彼女は白い騎士に抱えられていた。
彼の周囲には何れも満身創痍の解放軍騎兵たち。あの反撃の瞬間、寸でのところで割り込んだトリテレイアがハロを救出したのだ。
間一髪で極大のビーム掃射を回避した二人は、そのまま解放軍のデンファレ艦騎兵部隊の残存騎たちに護衛されて追撃を逃れていた。
全力を使い切り、敵に痛打は与えた。ここから先は仲間たちに任せよう。
遥か彼方、中破した甲板から煙を靡かせながらも帰還を歓迎する発光信号を送る空母の姿を認めて、戦士たちは戦場から離脱してゆく。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
イデアール・モラクス
ハッ、綺麗な塊を剥いたらこんな醜悪なモノが出てくるとはなぁ…全く宇宙というのは果てしない!
・消滅
「この世に滅せぬモノなど無い、全てを消し去り全てを滅ぼす光…見せてやろう!」
魔導ビットのビーム『乱れ撃ち』で模倣された兵器や本体を撃ち砕き、クェーサービーストの生み出す破片や攻撃をUC【究極魔法《天剣絶刀》】を『全力魔法』で『高速詠唱』し残さず【UCという武器で『武器受け』し無機物として変換】する事で光の剣を生み出す。
「模倣出来るならしてみろ、変換するモノなどない虚無の中で出来るならば!」
圧縮した長大な光の剣で破片すら残さずビーストや兵器を『薙ぎ払い』その奔流が敵を跡形も無く『蹂躙』
※アドリブ歓迎
ガーネット・グレイローズ
あれは、銀河帝国軍…。クェーサービーストに敗れて、補食されたのか。
【ブレイカーシップ・ブレイブナイツ】を発動し、宇宙艦隊を編成して挑む。
無限に変化する外殻とはいえ、自分が見たものしか再現できないようだな。〈戦闘知識〉を活用し、外殻が変化した敵戦力を分析。ウォーマシンや艦隊がメインなら、自身の〈メカニック〉知識も活かせるだろう。敵のスペックやメイン武装を見抜き、ウィークポイントを狙うよう艦隊に伝達。
私も宇宙仕様に改造したマシンウォーカーを〈操縦〉して出撃だ。艦隊は装備した武装による〈砲撃〉で〈援護射撃〉せよ。その隙に敵に接近し、近距離でブラスターとマイクロミサイルを内部の器官に叩き込んでやる!
●
「ハッ、綺麗な塊を剥いたらこんな醜悪なモノが出てくるとはなぁ……!」
宝石のような小惑星を砕いて現れた、深海生物が如き気味の悪い容貌の巨大生命体。
そこに儚さ、あるいは永遠を感じられるような美は存在し得ないのは当然のことだとしても、不気味なりにある種のエロチシズム位は弁えて欲しい。
せっかく触手を持っているのだ、そのくらいは言われずとも用意しておけ、とイデアールは腕を組み、蠢く肉塊を睥睨する。
「兎にも角にも早急に撃破しなければ。あの再生能力、時間を掛ければ掛けるだけ此方が不利になるだけだろう」
ガーネットの言う通り、クエーサービーストは解放軍艦隊の攻撃だけでなく猟兵の攻撃で負ったダメージすら再生し始めている。
もし再生しきってしまえば、疲弊した解放軍を抱えてこの戦いを最初からやり直すことになる。そうなればいくら猟兵の戦闘力をもってしてもあの宇宙の怪物を仕留めきれるかは分の悪い賭けだと言わざるを得ないだろう。
短期決戦。再生の追いつかないほどの連続的な大火力の投入でもって一気に決着を付ける他に勝機はない。
だがしかし、それを阻むものがある。
漆黒の艦影を中心に、巨獣の甲殻より分裂するように現れた軍勢。その姿をガーネットは、そしてイデアールもよく知っていた。
「あれは、銀河帝国軍……クエーサービーストに敗れて捕食されたのか……」
この未踏宙域の調査団の成れの果てか、あるいはもっと直接的な軍事衝突が起こったことを示す、失われた歴史の証人たちだったものか。
何にせよ彼らは最早クエーサービーストを守るため、無限に複製され外敵を排除するための器官に過ぎない。
「フン、喰らった兵器を我が物とするか。醜悪な上に悪趣味な生態だな。全く宇宙というのは果てしない!」
故郷であればあのような生物は存在し得ないだろう。宇宙戦艦のような高等な機械をも再現してのける獣など、それでいて知性はなく交渉の余地すら無い存在など、おぞましいにも程がある。
もしあんなモノが既知宇宙まで漏れ出してこようものなら、そして文明の全てが喰らわれ彼らの防御機構としてのみ記憶されるようになってしまったならば。
あるいはそれは永遠の生なのかもしれないが、オブリビオンに滅ぼされるより恐ろしい未来ではなかろうか。
そうはさせない、そうなってはいけない。
二人の猟兵は、巨大なる敵を討ち倒すべく動き出す。
「勇敢なる騎士たちよ、今ここに集え!」
ガーネットが掲げた刀を旗印に、彼女の艦隊が集う。七十を超えた艦影は次々と合体し、数を半数ほどに減らしながらいくつかの大型、中型艦を交えた戦闘艦隊を構成してゆく。
接近する敵部隊は小型艦からなる快速艦隊を主力とする機動部隊。ならば戦力として彼女の騎士団は互角以上に戦えるだろう。
そして彼女の戦力が展開されてもなおクエーサービーストがそれに対抗する戦力――例えば超長距離砲艦や対艦仕様の戦闘機だ――を送って寄越さないこと
を見るに、あれの能力は限定的な再現なのだろう。あれは、自身の中に蓄積したモノをそのまま再現することしかできない。組み合わせてより効率的な兵器を生み出すほどの知能を持っていないのだ。
「ならば対処できるな。全艦に帝国艦隊の性能諸元を送信する、各艦は敵の砲撃射程距離と砲の旋回可能角度に留意して死角から近接雷撃戦を敢行するんだ!」
ガーネットの号令一下、艦隊が次々と偽の帝国軍に切り込んでいく。ビーム砲が放った閃光が小型艦を貫通し、射出された宇宙魚雷が中型の巡洋艦クラスを爆炎に押し込めてゆく。高い練度で連携するガーネットの騎士艦隊は、自らもいくらかの損害を出してはいるがそれ以上の戦果でもって護衛艦隊を封じ込めた。
「よし、艦隊はそのまま敵艦隊を足止めだ。彼らが時間を稼いでくれる今が好機、いくぞ!」
「ほう……見事なものじゃないか」
巧みな艦隊運動で組み上げた網に帝国艦隊を捕らえ逃さない騎士艦隊。その姿に感嘆し、イデアールは宇宙戦車に乗り込んだガーネットとともに戦場を横切りクエーサービーストに肉薄する。
だが、艦隊同士の戦闘で縛りきれなかった小型兵器――ウォーマシンや戦車タイプの兵器群がその進路を妨害するべく無数の砲を向け、次々と熱線を放つ。
「ええい、邪魔だッ!」
それを魔導の一振り、使い魔めいて飛翔するビット群からのビームで応射して撃墜しながらイデアールは考える。
あれが生物であることは間違いない。だが、あれが模造し切り離した兵器群は見るからに無機物である。
で、あるならば試す価値はあるだろう。
「ガーネットだったか。お前は一旦ここで待っているがいい。巻き込まれたくないのならばな。何しろこれから使う魔法は敵味方の区別などという上等な真似はできん」
そうも言われてはガーネットも一度立ち止まる。幸いにも、後方の敵艦隊は完全に艦隊戦で封殺され、それ以外の機動戦力はイデアールが殲滅してくれている。無防備に立ち止まってもすぐにどうこうという危険はなかった。
激戦の中、一瞬生まれた安全地帯。そこでガーネットはあの魔女が成そうという業を見届ける。
「お前の玩具が無尽蔵だとしても、お前の身体が無限に蘇るとしても、この世に滅せぬモノなどない! 全てを消し去り全てを滅ぼす光を見せてやろう!」
イデアールの詠唱が、宇宙空間に漂う魔力を介して偉業を為す。
すなわち無機物のエネルギーへの転換。極めて高効率で、極めて高純度のエネルギーへと変換されてゆくデブリや撃破された敵兵器の残骸たち。
そしてそれは、今まさに兵器へと変貌している外殻も例外ではない。
引きちぎられるように消滅し、イデアールの魔力に迎合してエネルギーへと転化する砲台や作りかけの艦隊。そうして残されるのは、その部分だけぽっかりと穴の空いた脆い外殻だ。
「模倣できるものならやってみろ、変換するモノなどない虚無の中で果たして出来るならばな!」
そしてイデアールの手の中で光の剣と化したエネルギーの渦は、脆弱と化した外殻を切り裂きその内の肉腫のような本体を大きく切り裂いてゆく。
「フン、他愛もない。が――まだだな」
「ならば私の出番だ!」
切り裂かれた肉の内側で、臓器めいた艷やかな何かが拍動している。
それこそが再生を司るコアの一つだと直感的に認めたガーネットが、それを目掛けて肉薄してあらゆる火力を全力で叩きつける。
至近距離からの攻撃であれば、そしてそれが本来大事に守られていた器官への直接攻撃であれば、クエーサービーストをして防ぐ術はなかった。
損傷し、弱々しい拍動を徐々に停止させてゆくコア。
全体の活動はまだ続いているところを見るに、いくつかのうちの一つを破壊したに過ぎないが――これで更に、クエーサービーストの再生力を削ぎ落とすことは出来ただろう。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
アイ・リスパー
【恋華荘】
「ティターニアの調整が長引いたため参戦が遅れましたが、私も加勢させていただきますっ!」
ティターニアを駆り、仲間と合流してクエーサービーストへと突撃します!
「ティターニア、全武装発射!」
ミサイル、ロケット、レーザーガトリングを発射しつつ敵の巨体に近づきます。
そして、十分に近づいたところで艦隊旗艦に通信です。
「ティターニアより要請。オベイロンを射出してください!」
格納庫から射出されたオベイロンと【夏の夜の夢】で合体。
そのまま【月世界旅行】を発動します。
「相手が小惑星規模なら――その表面にマイクロ波送電施設を召喚させてもらいます!」
エネルギーチャージをおこない、全力の荷電粒子砲で攻撃です!
菫宮・理緒
【恋華荘】
ここからはアイさんもいっしょだし、より心強いね!
それにしても、マインドミナBVA、何度見ても巨大だね。
ちまちま攻撃しても埒があかないだろうし、
わたしはセナさんと連携して、
アイさんとアリスさんの護衛と露払いでいこう。
引き続き【E.C.O.M.S】でユニットを展開して、
半数はセナさんにつけて、攻撃の援護。
残りは盾やデコイとして使って、大火力砲発射までの時間を稼ぐよ。
わたしも囮になって敵を引き付けていくね。
「いちごさん、ちょーっと揺れるから、振り落とされないよう気をつけてっ!」
射線をクリアにして、
最高の攻撃力の一撃が叩きこまれるところを、特等席で見せてもらおう。
「ふたりともかーっこいい♪」
彩波・いちご
【恋華荘】
前章同様リオ・セレステに同乗中
見るのは初めでではありませんが、本当にあの大きさには圧倒されます
でも今回は、アリスさんやアイさんという大火力もいますし、私は支援に徹するまでです
「では、外に出てきますね?」
宇宙船の外に立ち詠唱…極大の召喚術を
【異界の抱擁】で呼び出すは宇宙を埋め尽くす、小惑星のごときマインドミナをも飲み込むほどの大量の触手
私の中の邪神が宇宙的恐怖というのなら、宇宙さえ飲み込んで見せて!
外殻に絡みつき、その動きを阻害しつつ、拘束させます
揺れる宇宙船にしがみつつ、大量の触手を制御するだけで精一杯ですが…あとは皆がやってくれるっ
「頼みますよっ」
最後は2人の大火力を見守りましょう
葛葉・アリス
【恋華荘】
相変わらずレヴィアタンに乗っているわね
※巨竜の頭の中にコクピット有
後ろも振り向かずに言うわ
「アイ、遅れてきたなら、その分ちゃんと働きなさいよ?」
レヴィアタンに砲撃させつつ
アイと連携して互いに適切なポジションをとれるように動くわ
理緒やドレッドノートの面々が援護してくれるから、あとはタイミングを狙うだけ
…ふふ、神様の面倒見てくれるなんて、いい子たちじゃない
なら、守ってあげるわよ、神の権能でね
「どんなに姿が大きかろうが、一介の生物風情。神の怒りに触れれば焼かれるのみよ」
【幻想神罰雷霆】
レヴィアタンの外に出て頭の上に立ち、マインドミナを指さす
放たれるは神の雷……極太の光の奔流
「貫き、焦がせ」
セナ・レッドスピア
【恋華荘】
クエーサービースト…
話には聞いていましたが
実際に見てみるとその大きさの凄さが分かります…
でもそれに圧倒されちゃダメですよね…!
理緒さんの艦から出撃し
『狩罰の血槍』の推盾形態でみんなを守り、防御しながら間合いを詰め
敵が攻撃してきたら回避しつつ、猟銃形態で迎撃!
そうやって出てきた兵器群を倒し、突破口を開き
敵本体へできるだけ近づきます
そして近づくことが出来たら
引き続き防盾形態で近づき
隙を見て槍形態の【ランスチャージ】で突撃!
そこへ出せる限界ギリギリのサイズの「血は血へ・暴喰者形態」を出し
敵の装甲を喰らい千切ります!
そこにアイさん&アリスさんの
ダブル大火力砲をお見舞いしてもらうために…!
●
「クエーサービースト……話には聞いていましたが、実際に見てみると大きい……」
星をも食らう巨獣。艦隊をしてちっぽけな玩具に見えてしまうような威容を前に息を呑むセナ。
「こうも大きいんじゃちまちま攻撃しても埒が明かないね」
彼女が足場代わりに立つリオ・セレステ。その艦橋であらゆる艦砲兵装を巨大な敵に撃ち込みながら理緒は思案する。
そもリオ・セレステの数倍はあろうかという旗艦ドレッドノートⅦの主砲ですら、そしてその麾下艦隊の集中攻撃ですらマインドミナに致命傷を与えることは出来ていない。
せいぜいが次々に生み出される模倣兵器――偽帝国軍の殲滅が限界だ。
外殻を粉砕し本体を露出させるような、あるいはその内側のコアらしき器官を破壊するような攻撃はすべて肉薄した猟兵によるもの。
大火力をぶつけて一息に破壊する以外は焼け石に小さな柄杓で水を掛けるようなもので、求められる威力には戦艦の主砲ですら及ばない。
唯一今この場でそれを発揮できるだろう存在は、アリスが従える巨竜のみ。あれの全力攻撃ならば外殻を貫通出来る可能性はある。
「そうですね、アリスさんならばきっと……でも、その前と先――あの無限に現れる兵器をなんとかして、外殻を打ち砕いた後の本体への攻撃を行える戦力が足りません」
いちごの懸念もまた然り。外殻ほどの強度はなかろうが、再生力だけならば本体も充分な脅威だ。全力攻撃を放ち疲弊したアリスのレヴィアタンを欠けば、再生機能に致命傷を与えるほどの瞬間火力を齎すほどの攻撃力を彼らは持っていない。
万事休す、たった一つ手が足りないだけで八方塞がったかに思えたその時、リオ・セレステとレヴィアタンの間にワープアウトする船影がひとつ現れる。
白亜のそれは、彼ら彼女らもよく知るもの。解放軍のいかなる艦艇とも異なるそれは、聞き慣れた声音を届けながら今最も欲していたモノを携えやってくる。
「お待たせしました皆さんっ! ティターニアの調整が長引いてしまって……ここからは私も加勢させていただきますっ!」
白き宇宙戦艦ティターニア。リオ・セレステよりいくらか大型のそれは、艦の規模以上に強力な攻撃力を持っている。
「アイさん! うん、アイさんが一緒なら心強いね!」
「アイ、遅れた分はちゃんと働きなさいよ?」
白い艦影を認めた理緒の歓声と、その姿を振り返らずじっとクエーサービーストを睨むアリスの言葉にアイはこくりと頷いた。
「もちろんです! さあ、反撃開始ですよっ!」
「頼もしいですね。さて、アイさんが間に合ったなら私も外で皆さんの支援をしてきます」
ここで全力を出すわけにはいきませんから、とリオ・セレステのエアロックから外に出たいちごは、セナと並んで艦上に立つ。
ふと、銀髪の少女騎士の肩が僅かに震えていることに気付いた。
「……怖いですか?」
いちごの問いにセナは首を横に振りかけて、しかし僅かに視線を伏せて小さく頷いた。
「あんなに大きい敵を、本当に倒せるのか……と思ってしまって。こんなところで圧倒されてちゃダメだってわかってるんですけどね……」
気圧されていることを素直に認めたセナに、いちごは私もです、と頷いた。
「あれを見るのは初めてではありませんが、私だってあの姿には圧倒されます」
でもね、といちごはいたずらっぽく笑う。いつもの笑顔が彼女を勇気づけるだろうから。
「今回は私達だけじゃありません。アリスさんやアイさんの火力は頼もしいですし、この船を操る理緒さんだって頼れます。後ろには解放軍の皆さんが居て、他にも沢山の猟兵達があのクエーサービーストを倒すために戦っている」
だから気負う必要も、怯える必要もない。全力で自分にできる最善を尽くせば、その先をきっと誰かが繋いでくれる。
「そっか、そうですよね。ありがとうございますいちごさん、肩が軽くなった気がします!」
「いえいえ、寮長ですからね」
寮生の心を支えるのも私の役目ですから、と気取らず構えず、いちごは会話から流れるように詠唱を開始する。
「……星海の館にて微睡む我が眷属よ――!」
ありったけの魔力を注ぎ込んだ召喚術式が、小惑星を戒めるマインドミナの巨体をも巻取り縛り上げる巨大な触手を招来する。
「私の中の邪神よ、あなたが宇宙的恐怖だというなら宇宙さえ飲み込んでみせて!」
マインドミナにとって己より巨大な存在などそうそう出会うものではない。そんなものが突如として出現し、襲いかかってきたのだからその衝撃は尋常ではないだろう。
傷ついた肉腫を激しく蠕動させ、数多の砲を生み出し触手に果敢に攻撃を繰り出している様がよく見えた。
――本体からの攻撃は触手が引き受け、その間はマインドミナの迎撃は無い。それどころか外殻を動かし防御体勢を取ることすら許さぬのだから、この好機を逃す道理はありはしない。
だがそれはあくまで本体からの攻撃に対してのもの。既に複製された兵器達は構わず接近するものを迎え撃つだろう。
それでも、それでも往かねばならぬ時が今だ。
「――頼みますよ!」
暴れるクエーサービーストを封じ続けるために、絶えず触手に魔力を流し続けるいちご。長く保つものではないが、これ以上の最善手もないならば仲間を信じて捕縛を維持し続けるまで。
「アリスさん、アイさん、砲撃は!」
「まだダメよ。アイと合わせなきゃ意味が無いわ」
「この距離では有効な威力が出せませんっ、接近します!」
理緒の問いに二人の答えが返ってくる。いずれも未だだという回答。
それならば。
「いちごさん、セナさん、ちょーっと揺れるから振り落とされないように気をつけてっ!」
前進するリオ・セレステ。火力源たる二人を無事に送り届けるために、その射線を邪魔する有象無象を掃討するために接近する宇宙船を撃ち落とそうと、真紅のウォーマシンが再び現れ砲列を向ける。
「E.C.O.M.S! 作戦行動開始!」
そのビームが飛来すれば、いくつもの八角錐が互いに面を組み合わせ、一つの巨大な盾となってそれを受け止める。
「いける……セナさん、こっちで砲撃を受け止めてる間に射手を任せられる?」
「――はい、行きます!」
赤い盾を構えてリオ・セレステを飛び立った銀髪の騎士が、砲撃の隙間をくぐり抜けて赤の砲手に肉薄する。距離が零に、手には盾が変じた銃が一丁。
銃弾が赤騎士を貫き、撃破された機体が爆散する。それを幾度か繰り返し、狙いがリオ・セレステから己に向いたならば再び盾に戻したそれで攻撃を受け流し――だがそれも何度もやれる芸当ではない。たったの一撃を逸しただけで盾は悲鳴を上げている。
「でも……諦めるわけにはいきませんっ!!」
攻撃を受け赤熱した盾で敵機を殴りつけ、すぐさま銃に変えて連射を叩き込む。
これでまた一機、だが絶えず増派される敵部隊はじわりじわりとセナを追い込んでゆく。
飛翔するミサイル。クエーサービーストの外殻上を這い回る歩行戦車が放ったそれを銃弾で迎え撃つが、半数撃ち落とす前に弾が尽きた。
「くぅ、っ……アイさん、アリスさん――」
後は任せます――その言葉がつい唇から漏れる前に、八角錐の群れが次々とミサイルに体当りして爆発してゆく。理緒の援護が間一髪でセナを救ったのだ。
「セナさんをやらせはしませんっ! 照準、敵戦車部隊! 目標座標を解放軍艦隊と共有してください! ティターニア、全武装一斉射ですっ!」
「ふふ、神様の面倒を見てくれるなんていい子たちじゃない。なら守ってあげるわよ、神の権能でね。でしょう、レヴィアタン?」
直後に飛来した無数の砲撃が、外殻上に展開した敵の戦車部隊を貫き殲滅してゆく。
――ティターニアとレヴィアタンが到来した。
セナと理緒によって道は切り開かれ、狙うべき目標はいちごによって動きを封じられている。
「セナ、よく頑張ったわね。あとは私達に任せなさい」
「旗艦ドレッドノートⅦへティターニアより要請、お願いしたものを此処に!」
竜頭の内から此方を見やる小さな神の視線の暖かさに、巨大なエンジンの火を連れて敵へ向かっていく白磁の戦艦の頼もしさに、セナは勝利を確信した。
そして後方の旗艦より射出された戦車を認め、アイも勝利のための次の一手を叩き込む。
「合体プログラム起動、敵の外殻表面に送電施設を転送……月というにはあまりに醜悪ですが!」
戦車と合体したティターニアが人型形態を取り、巨砲を構えてマインドミナを睨み据える。
その視線の先、外殻に召喚された送電施設はマインドミナの無尽のエネルギーを変換し、ティターニアの元に届けてくれるだろう。
急速にチャージされるエネルギー。これならば外殻を貫ける――
「準備はいいかしら、アイ?」
「……はい、いつでも撃てますっ」
ヴェルヌ・キャノン。およそ艦砲の粋を超越した戦術兵器級の一撃が。
そしてそれに寄り添うように全く同じ座標を狙い、竜がその顎門から放つ全力の砲撃が。
クエーサービースト・マインドミナBVAの外殻をじわりじわりと蒸発させ貫通させる。
「やったっ! ふたりともかーっこいい!」
理緒の歓声。致命傷を負ったのか、一層激しく自身の触手を振り乱して暴れるマインドミナを抑えきれず、魔力の限界を迎えて拘束を解いたいちごもその一撃が甚大なダメージを与えたことを確信する。
だが――
「まだ、です!」
セナの位置からは見えた。見えてしまった。強大な一斉攻撃を受け、外殻に大穴を空け肉腫めいた体組織を焼けただれさせたマインドミナの体内、コアの如き臓器は傷を老いながらもかろうじて生き延び、尋常ならざる再生能力を頼りに己の傷を塞ごうとしているのが。
「しぶとすぎね」
殺しきれぬ絶望。外殻を破壊した時点で送電施設も停止し、ヴェルヌ・キャノンの第二射は望むべくもない。レヴィアタンも疲弊しきっている。
だが、そのなかでアリスだけは冷静に、涼やかにクエーサービーストを睨みながらレヴィアタンの頭上に立っていた。
「あなたは神を怒らせたわ……どんなに姿が大きかろうが、どんなに優れた再生能力を持っていようが、所詮は一介の生物風情。神の怒りに触れれば焼かれるのみよ」
愛おしい仲間たちの奮戦を嘲笑うかのようにみるみる傷を癒やしてゆくマインドミナ。
その傷が塞がりきる前に、アリスの小さな人差し指がコアを指差した。
「貫き、焦がせ」
――神罰が下る。生命とは永遠であってはならず、いつか必ず朽ちねばならないというシンプルな誓約を無視した愚かな生き物に目掛け、凄まじい威力の雷が降り注ぐ。
それはヴェルヌ・キャノンほどの威力はない。ともすればドレッドノートの主砲と互角かそれに僅か劣る程度かもしれない。アリスとてレヴィアタン程ではないにせよ、眷属を十全で戦わせるために疲弊している。
だが、その一撃は必要十分。諦めなかった神の怒りは再生しかけたコアを再び露出させ、ダメージの回復を寸でのところで阻止したのだ。
「……セナ、行きなさい!」
神の声に弾かれるように、槍を構えた銀色の騎士が宙を駆ける。
「今やれるのは私だけ……だったら私がやるしかありません! 喰らいます、その血を――全てを!」
槍がコアに突き刺さる。巨大な宇宙生物からすれば、あまりに小さな――例えるなら壁蝨に噛まれたような、ダメージにもならない一刺し。
されど楔は打ち込まれた。
「血は血へ――」
槍を手繰り寄せ、左手をコアに押し付ける。
粘つくような感触。焼け付くような熱。不快な感触を耐えて、セナの左手に刻まれた刻印が起動する。
刻印から滲む真っ赤な鮮血が左の五指を伝い、そして腕を遡って――左腕全体を巨大な血の獣の頭部に変える。
それは宿主の血の気が失せるのと引き換えにみるみる肥大し、同時に失われゆく血を補うための獲物――マインドミナのコアに牙を突き立てる。
ぶしゅりと牙がコアに喰い込み、巨大な宇宙生物の血が流れ出る。
それを美味そうに啜る獣を、渾身の力でセナは引き戻す。
マインドミナの巨体からコアが引きちぎられてゆく――如何に再生能力に長けた器官であれ、身体から切り離されればただの肉塊に過ぎぬ。
また一つ再生の要を失って、マインドミナは苦悶するように全身を震わせる。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ウィンディ・アストレイ
いよいよ、本命の登場ですね。
ウィンディ・アストレイ、ENGAGE!
【選択UC】を起動して
最大速度で回避運動を取りつつ敵の周囲を挑発する様に巡り
シールドザンバーにエナジーを注ぎ込みつつ敵UC使用を促します
敵UCの反動で防御力が低下したら、当該部位を正確に把握した上で
大剣状態のシールドザンバーを構え
弱体化部位に速度による運動エネルギーを加えた理力刃を突き立て
そのまま理力刃を思い切り伸長させ
限界まで伸びた刃で敵を一気に切り裂きます!
(イメージはダブルオークアンタのライザーソード)
(以上、空中戦&ダッシュ&情報収集&戦闘知識&見切り&第六感&力溜め&怪力&鎧無視攻撃)
※アドリブ&絡み連携OK
ジャック・スペード
お前は――
あの小惑星の美しさが分からないのか
そうか、まあ、仕方の無い事だな
中枢器官の破壊は仲間に任せて
俺は複製された帝国軍の相手に注力しようか
片腕を機械竜に転じさせ、マインドミナの元へ往こう
シールドで此の身を護りつつ
片腕で電気纏う銃弾を乱れ撃ち、武装の機能低下を狙い
其の隙に接近したのち、機械竜の顎にて鎧無視攻撃を
帝国の武装も、今と成っては懐かしい光景だ
廃棄されて以降、祖国を忘れた事など無い
ゆえに腕が鳴るな、ハインリヒ
これらは総てお前の獲物だ
喰らって、喰らって、喰らい尽くせ
既に満身創痍だが、決死行の覚悟は出来ている
それに、此の身は変えが効くので問題無い
損傷は激痛耐性でギリギリまで凌いでみせよう
ユーノ・ディエール
出し惜しみしている場合ではありませんね
先ずデスワームを放ち複製された敵部隊を誘き出します
そこで敵が何を目印に攻撃してくるかを探りつつ
敵の探知を避けながら
空いているルートを策定し
騎乗したクルセイダーで抜けましょう
残骸など地形を利用し
迷彩機能で所在を隠匿しながら
空中戦の要領で一気に加速します
目標はあくまでマインドミナ
複製艦隊を出していれば
装甲代わりの外殻も減っている筈です
懐に入ったら全武装を一斉発射
範囲攻撃しつつ乗騎から飛び出て
ハッキングでクルセイダーを遠隔操縦し
注意を向けて攻撃を受けます
私自身は真の――七色の鉱石の姿に
奴に取り付いたらデトネイター展開
私達の未来の為に、お前を虚無へと還してくれる!
アリシア・マクリントック
いくらマリシテンアーマーでもこうも数がいては隠密性を活かすのは難しいですね。それなら……扉よ開け、セイバークロス!
八艘翔びで敵と敵を渡って近づきましょう。同士討ちを避けて攻撃できないなら良し、それでも攻撃するなら効率的に数を減らせて良し、です。
本体は……これほどの大きさであれば装甲も厚いでしょう。貫くのは容易ではないはず。こういうのはいかがでしょうか?扉よ開け、ヘパイストスアーマー!
短刀『昴』を釘に見立てて、ジェネシスハンマーで装甲に打ち込んでやります!このパワーと重さを一点に集中させれば、亀裂を入れることくらいできるはずです!いざ!
●
臓器の一つを内側から押し潰され、もう一つを焼き切られ、そして今さらに一つを抉り出され――苦しむようにのたうつマインドミナ。
その醜い肉腫めいた身体の下で、今もなおごりごりと氷の小惑星が噛み砕かれている。
美しく透き通った輝きが、醜悪極まる害獣によって失われていく。
その許しがたい事実にジャックの声が震える。怯えではない。怒りがために。
「お前は――」
拳銃を握りしめる指に力が籠もる。
「お前はあの小惑星の美しさが分からないのか」
その問いかけにマインドミナは応えない。言語を解するかも分からない生命であることは承知の上だ。それ故に回答がないことも仕方のないこと。
ジャックは無意味な問答を切り上げて、銃を保たぬ片腕を高く掲げる。
「――餌の時間だ、ハインリヒ」
軍服の内側から鋼鉄が成長してゆく。それはジャックの左腕を覆い隠し、機械じかけの竜の顎を創り出す。
紅の砲兵騎士達との戦いで既に傷を受けたジャックは、しかして怯まず。
「決死行の覚悟は出来ている。大破しようと此の身は替えが効く。だから付き合え、ハインリヒ。懐かしい相手を喰らいに往くぞ」
金属の擦れるような咆哮を上げて主の戦意に応じる銀の機竜。頼もしき相棒を携えて、同じく満身創痍のマインドミナを守るべく展開する帝国軍だった者たちへと黒き戦機が向かってゆく。
「いくらマリシテンアーマーでもこうも数が多くては……」
静穏性を追求し、敵に見つからずして敵陣の中枢を突く。なるほど厚い防空体制を敷くマインドミナ相手には有効な装備だが、そのマインドミナが狂ったように眷属を大量投入しているのではその全てから身を隠して接近することは至難に思えた。
特にワイヤーガンを使った直線的な機動が主となる今のアリシアでは、ワイヤーに戦闘機でも突っ込めばそれだけで行動が阻害されるどころか大きなダメージを受けることにも繋がりかねない。
「……やはりこのまま接近するのは難しいようですね。それなら……扉よ開け、セイバークロス!」
身に纏うは始まりの白。アリシアにとって最も使い慣れた白き鎧を携えて、彼女はキッと正面を見据える。
何もなかったかのように見えた空間から突然現れた可憐な少女騎士。その姿を偽帝国軍の兵器達は見逃さなかった。
すぐさま対艦衝角を携えた戦闘攻撃機が飛来するのをアリシアは動じること無く迎え撃ち、コックピットに刃を突き立てその背中に飛び移る。
制御を失い漂流し始めたそれ諸共にアリシアを撃ち落とそうと迫る敵機。次々にやってくる戦闘機の背を次々蹴って、アリシアは敵を辿るようにマインドミナへと向かってゆく。
そして敵は――偽帝国軍は、無限に現れるだけあって同士討ちに躊躇がない。
アリシアをその足場――友軍機ごと葬るべく容赦なく機関砲やミサイルを浴びせてくるが、攻撃するということはある程度限定された方位から一定の距離を詰めねばならぬということでもある。
アリシアにとって好都合。敵同士が数を減らし合ってくれる上に、次に飛び移るべき足場は自分からやってくるのだ。
鳥のごとく軽やかに鉄の大鳥の上を駆け抜ける白い少女。だが近づけば近付くほどに敵の数は増し、飛び移るその瞬間を狙った砲火が彼女を襲う。
「――そこまでだ」
機関砲から放たれた腕ほどの砲弾を切り払うアリシアの通信機が男の声を拾う。
それは自身に向けられたものではない。何故ならば砲弾を吐き出し続けていたガンシップが雷を帯びた弾丸に射抜かれ、全身に火花を散らして射撃を止めたから。
この声の持ち主があの弾丸の射手ならば、それは味方の到来を意味する。
一斉にアリシアから狙いを外し、その乱入者目掛けて銃撃を開始した戦闘機隊。
嵐のような砲弾の雨を夜色の盾で受け止めて、応射する弾丸は戦闘機を違わず同時に貫き徹す。
戦闘機どもの爆発を背にガンシップの背に降り立った黒――ジャック。
「……此処は俺が引き受ける。行け!」
「――感謝します、どうかご無事で!」
最低限以上の言葉を交わす時間すら惜しいとばかりに黒と白は一度視線を合わせ、ガンシップの上で交差する。
アリシアが跳び立ったのを送ってから、次々に殺到する敵の部隊をジャックは見上げて不敵に構える。
「帝国の兵器がこうも数を揃えるのも今となっては懐かしい光景だな」
かつて彼が廃棄されたその頃、銀河にて最大最強を誇った帝国宇宙軍はこの数倍、いや数千、数万倍の戦力を誇った。
懐かしい光景だ。祖国に棄てられてもなお、彼はあの栄光あふるる光景を忘れてなどいない。
銀の機竜――ハインリヒが足場代わりのガンシップをばりばりと喰らうのを慈愛を込めて見遣りながら、ジャックは相手にとって不足なしと偽帝国宇宙軍を迎え撃つ。
「腕が鳴るなハインリヒ。栄光の我が祖国、その一端がお前の獲物だ。総て喰らって喰らって喰らい尽くせ――!」
戦闘機を真っ向から噛み砕き、銃弾に貫かれ麻痺した爆撃機の腹を食い破り、ガンシップが吐き出す機関砲弾を銀色の甲殻で弾いて肉薄する黒銀の竜騎兵。
満身創痍なれども獅子奮迅。かつて帝国に欠陥と棄てられた彼は今、帝国の成れ果てを前に傷を負いながらも決して斃れず勇敢に、獰猛に戦い続けている。
「たどり着いた――あれが本体!」
ジャックの縦横無尽の高機動戦闘に敵が対応力を割いている好機を逃さず、アリシアはマインドミナの外殻に取り付いた。
「これほどの大きさ……装甲の厚さも見た目通りでしょう。きっと私の武器で貫くのは容易ではないはず。ならば……」
見上げた宇宙、ジャックの激闘を回り込むように駆ける流星がふたつ。
そうだ。ジャックが自分に託して自らを囮としたように、己も彼女らに託すのだ。
不可能なんて無い。可能の限界に挑むことなら、誰にも出来るはずだから。
「――扉よ開け、ヘパイストスアーマー!!」
白銀が紅に染まり、炎を纏った鉄槌がその手に収まった。鍛冶神の名を持つ鎧を纏い、少女は己の可能の極地を実現するべく両の手にそれぞれ武器を取る。
片や夜空に輝く星を思わせる輝く短刀。片や紅蓮を纏った重厚な大槌。
「一点集中でこのパワーと重さを叩き込めば――」
短刀を外殻の僅かな傷に突き刺して、アリシアは巨大な鉄槌を振りかぶる。
「――亀裂を入れることくらい出来るはず! ……いざ!!」
凄まじい勢いの振り下ろしが柄尻を叩き、白い刀身を外殻に一気に押し込んでゆく。
そして、マインドミナの外殻が割れた。
粉砕はできぬ。破壊したとも言い切れぬ。けれども確かに刻まれた亀裂は、外殻の強度を著しく劣化させた。
――そこへ次なる猟兵達が挑みかかる。
「デスワーム、彼の救援は任せましたよ」
余計なお世話かもしれないが、単機でこの方面に出現した敵の迎撃部隊の殆どを相手取る黒いウォーマシンを捨て置くわけにはいかぬとユーノは信頼できる――不本意ながらいつの間にかその有用さは彼女自身が実証してしまった――相棒を送り出して、ディアブロクルセイダーに騎乗したユーノは駆け抜ける。
激戦の中で力尽きた敵味方の残骸を目眩ましに、己の存在を秘匿して。デスワームの巨体はいい陽動になるし、そこに獅子奮迅の戦いぶりを見せるジャックの存在があればユーノなど巨大なマインドミナにとって居ないも同然だ。
「あれだけの複製兵器を展開していれば外殻も消耗しているはずです」
「そうですね、つまり今こそ本命に一撃を入れる好機ということでしょう?」
如何にもそのとおり。クルセイダーの速度に並走するウィンディに頷きで応え、ユーノ達はさらなる増速を掛ける。
加速し、暗礁を抜ければ流石に気付かれ迎撃部隊が出てくるが、過半をジャックたちに差し向けた今ではその抵抗も断じて厚いとは言えぬだろう。
「目標はあくまでマインドミナ、消耗した外殻が再生する前に駆け抜けます!」
ユーノが一直線にマインドミナの懐を目指す一方で、ウィンディは敢えて敵の攻撃を誘発するように速度を緩め、ユーノの軌道から逸れてゆく。
自らを囮にした。確かにその理解で相違ない行いだが、それはユーノを送り出すためだけではない。敵の迎撃部隊を誘引することでさらなる増援を誘い、外殻を消耗させるための罠こそが目的。
「来ましたね……そうです、ボクを撃ち落とすためにもっと! そのくらいの数じゃ足りないでしょう、さあ! ウィンディ・アストレイ、ENGAGE!」
挑発するように敵の攻撃を紙一重で回避して、ウィンディは次々迫る銃弾と踊る。
当たらない。当たらないが、当たるはずだ。そのギリギリを演出する彼女を撃ち落とすために生み出された戦闘機部隊は数を増していく。
それらをまるで己の眷属のごとく後ろに引き連れ縦横に飛び回る金の星。
彼女は幾百の敵機に追い立てられながら、携えた大剣に力を注ぎ込んでいた。そのチャージが今完了する。
「目標部位は見えています。ここからなら運動エネルギーも充分確保できる――」
大剣の刃が伸びる。鋼鉄の刀身を包むように巨大な理力刃が伸長してゆく。
前方に向け逆噴射制動、のち後方斜め上へのバックブースト。追い駆ける戦闘機部隊が急激な軌道変更に対応しきれずウィンディを追い越してゆくその最後尾から喰らうように、巨大な刃が旋回する。
戦闘機を次々に爆砕し、その回転をエネルギーに変えて、巨大な刃が外殻に叩きつけられた。
――本来のマインドミナであれば、いくら戦力を絞り出した直後といえどその一撃にはかろうじて耐え得ただろう。
だが、ウィンディの刃がぶち当たったそこは、アリシアが亀裂を刻み込んだまさにその部位だ。
罅が広がり、脆くなった外殻が崩れながら切り裂かれてゆく――
外殻が砕けてゆく。その奥に隠された体組織が顕わとなり、それにも一文字に斬撃痕が刻まれた。
その奥に微かに見える器官、それは四つめのコアにほかならない。
「見つけた……ユーノ・ディエール、ディアブロクルセイダー! 突貫します!」
みるみる塞がっていく肉の渓谷にミサイルやレーザーを叩き込み、強引に進入口を形成。ついでに外殻表面で凄まじい斬撃の余波を鉄槌を楔代わりに耐えていたアリシアに向けてクルセイダーの本体を送り出す。
彼女であれば此方の意図を察し、あれに掴まって離脱するだろう。あとはユーノが全力を叩きつけるのみ。
飛び降りる刹那にこれだけ持ち出しておいたインペリアルデトネイターを構え、ユーノは偽りの肌を脱ぎ捨てその身に七色の光を帯びる。彼女の隠されるべき真の姿、すなわち膨大なエネルギーを秘めたクリスタリアン少数民族の色がマインドミナの肉の渓谷を満たす。
「この先に安住の惑星があるのなら――」
光を推力に変えて塞がってゆく肉の傷跡を飛翔する彼女の前に、露出したコアが現れる。
「私達の未来がそこに存在するというのなら――」
デトネイターを構え、コアに射出された穂先が突き刺さる。
「――念動加速器最大稼働! 私達の未来のために、お前を虚無へと還してくれる!」
主の放つ輝きを受けて、突き刺さった穂先がまるで枝葉のように結晶を生やしてゆく。目に見えぬコアの内側も例外ではなく、根を張るように伸びた結晶がコアのほぼ全てを侵食した。
「さあ――喰らい尽くせ虚無の申し子」
ユーノが渓谷を飛び出すのと同時、傷口が完全に塞がった。
その内側でコアに食い込んだ槍は、そしてそこから侵食した結晶は周囲の組織を巻き込んで、虚無の宇宙へと還っていく。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
トルメンタ・アンゲルス
天体級の金属生命体、はたまた自立型の防衛装置か。
まったく、星の様なのが星の数ほどいそうなのは、やめてほしいんですけどねぇ。
だが!
どれだけいようと関係ない!
たとえ眼前にどれだけ立ちはだかろうとも!
俺の、俺達の力で━━
『FullThrottle━━』
━━全て、捩じ伏せる!
『━━Code:Rage』
黄金の攻撃特化装甲を創造!
超光速モードのままにダッシュで突っ込みます!
第六感をフルに生かして敵の動きの先の先を読み、
物理法則を無視した出鱈目な動きで突っ切り、
片っ端から自慢の早業で粉砕していきます!
どんなに鋭く速くなろうとも!
俺の前では隙だらけすぎる!
輝き唸れ、俺のこの一撃!
砕け散れェエエエエ!!
チトセ・シロガネ
これが噂のクェーサービースト、大きいネェ!
とにかくアレの外殻をゲットするンだネ。マカセテ!
それにしても飛び掛かる弾の密度がすごいネ
念動力で瓦礫を盾にしてもすぐボロボロ
刀と両足にオーラ防御を纏って撃ち返すにも手数が足りナイ
……あ、手数増やせばいいジャン
躯体のリミッターを解除してUC【蒼ノ按手】を発動
髪の毛、背中のマフラーが擬態を解いて稲妻を纏った触手となるネ
さて……と、早業と怪力で触手をウネウネ操ってギアを上げるネ!
飛び掛かる火の粉は第六感の予測で残像回避、当たりそうなのは念動力とオーラ防御を纏った触手で撃ち返すネ!
秘技ピッチャー返し!
接敵する奴はもれなく触手の属性攻撃で捕食して外殻ゲットネ。
●
再生器官を失って、またマインドミナが苦しむようにのたうった。
だが何かが違う、それまで以上に激烈な反応。ぼこぼこと外殻を様々な兵器に変貌させながらも分離を恐れるかのように戦闘機や機動兵器、艦艇は引っ込められ砲台ばかりが造られてゆく。
――最後のコアが破壊されたのだ。もはやこのクエーサービーストにあの無限の再生能力はない。外殻を切り離せば補充が効かぬ、それ故の砲台偏重。
それは誰の目から見ても明らかだ。この千載一遇、多くの犠牲と尽力の果ての好機を逃してはならぬと艦隊が一気呵成に攻め込んでゆく。
しかしそれまでと打って変わって、砲撃は外殻を貫けない。砕けない。
「…………奴め、再生できぬとなって守りを固めることを覚えたかな」
あと一手。一手、硬い防御を貫けるだけの攻撃力があったならば。
提督の苦々しい呟きを、二人の猟兵がいま聞き届ける。
「ヤーでっかい。噂通りに大きいネェ!」
艦隊と猟兵の猛攻を受け、全身のあちこちを寸断されてなおもその威圧感は衰えぬマインドミナ。
艦砲の距離にして至近に在るかのような、遠近感をも狂わす巨体をわざわざ遠見するように額に手を当て眺めて笑うはチトセだ。そうしてよくよく観察してみれば、蠢く無数の砲身が艦隊からの攻撃を片端から撃ち落としている。
「天体級の金属生命体……いや、自律型の防衛装置って言ったほうが正しいか……?」
蒼い装甲に身を包み、チトセとともにドレッドノートⅦの上に立つトルメンタが独りごちる。
人類の兵器を模倣し、あれほどの堅固な防衛線を敷くあの怪物が本当に生命の進化の果てに生まれたものなのか。
意志ある何者か――たとえばこの先に在るかもしれない惑星世界の文明であったり――が生み出した兵器だと言われたほうがまだ馴染みよく納得できるだろう。
「正体がなんであれ、あんな星のようなのが星の数だけ居る……なんてのはやめてほしいんですけどねぇ」
「でもアレの外殻を剥げば効率よく倒せる武器が作れるカモなんでショ」
だったらやるっきゃ無いじゃナイ。眼光に戦意を滾らせて歯を剥き獰猛に笑うチトセに違いないと同意して。
チトセとトルメンタ、共に神速の猟兵達が戦艦を蹴飛ばし手負いの獣へと躍りかかる。
艦隊がマインドミナの脅威に無知であったように、マインドミナも猟兵の戦闘力に対して無知であった。
だがかの巨大肉腫はこの戦いの中で、猟兵を脅威として認識し始めている。悠久の時の中、銀河帝国軍をすら意にも介さず泰然と君臨し続けていた宙域の王は今、死を前に己の永遠を終わらせうるものの出現に対してその生涯で初めてであろう必死さを以て抵抗を開始した。
すなわち尋常ならざる鉄火の嵐。針鼠のように全身に生やした砲身から凄まじい勢いで放射される、ありとあらゆる砲撃の雲霞。
視界の全てが閃光に塗りつぶされるような高密度の砲撃を前に、たまらず解放軍艦隊はその射程外へと退がってゆく。猟兵であってもそうするべきだ。これほどの攻撃を前にしては前進など不可能、数分と保たず宇宙の塵に化すことは必至。
――けれども白と蒼の雷光は止まらない。
「ヒュー! とんでもない弾の密度ネ」
盾代わりに引き寄せた帝国軍艦の残骸が数秒経たずに消滅する。
身を隠せるような盾は的の面積を広げ、被弾のリスクを上げるばかりで防御の役には立ちはしない。即座にチトセが投げ捨てた残骸は、慣性に流されながら光の雨に貫かれて消えてゆく。
「ですが所詮は巨大生物、ちっぽけな人間を相手にするのには慣れていない!」
トルメンタの言も一理はある。ある程度大型の目標――戦闘機や艦艇のような兵器群との戦いが主であったのだろうこの個体は、人間大の――ヒトそのものが殆ど生身で突撃してくるような状況に対応しきれていない。
降り注ぐ弾雨に僅かな隙間が存在するのがその証左。もっとも光の速さで飛来するそれらの間隙を縫うなど尋常のヒトには不可能な芸当だ。
――しかし速度に特化したこの二人ならばあるいは可能であろう。
「どんなに鋭く速く、密度を増した攻撃だろうとも!」
トルメンタの蒼を覆い隠して煌めく黄金の装甲が現れる。
加速。
加速加速加速加速加速加速加速せよ――
最早ヒトの認知の及ばぬ光の先、ワープドライブにも匹敵する――あるいはそれすら超越した人類未踏の速度領域。
そこに至りてトルメンタは、彼我の相対速度が齎す一瞬の数万分の一にも満たない僅かなタイミングで生じる安全なルートを違わず駆け抜ける。
「――俺の前では隙だらけ過ぎる!」
「ワオ、見えないくらい疾いネ……っとト!」
砲撃よりも速く駆け抜けるトルメンタを見送って、チトセはマインドミナの砲撃と相対す。
「こりゃほったらかすと後ろの艦隊もまずそうネ、なるだけここで止めなキャ不味いカナ」
まだ完全に後退しきれていない艦隊に流れ弾が到達すれば、それこそ壊滅的な被害を齎すだろう。あれを倒しても艦隊が全滅するのでは意味がないと、チトセはここで砲撃を受け止めることを決意した。
とは言うものの両手両足にオーラを纏い、刀にも同じくそれを纏わせれば頼りない盾より遥かに頑丈な防御となる。それらを振るって砲撃を打ち返すが、チトセの四肢では手数が足りぬ。捌ききれぬ。
直撃コースのものだけを弾き返し、後は身体を捻って回避するか。いやだがそれでもいくらかは攻撃をもらってしまうだろう。
「面倒臭いネ……あ、じゃあ手数増やせばいいジャン」
そこでチトセは忘れていた秘策に思い至る。己に備わるは四肢にあらず。もっと多くの肢を有するこの躯体ならば、チトセの思い描く全力の防御――どころか攻勢をすら為し得るだろうと。
「リミッターをちょっとだけオープン、蒼ノ按手……発動するネ!」
その艷やかな銀髪が、幾本も枝分かれしたマフラーが、意志持つ腕のように撓りオーラの守りを受けて新たな肢となれば、千手の如くそれらを操るチトセは巧みに砲撃を切り抜ける。
残像すら残す速度で弾けぬ光学弾をくぐり抜け、危険な実体弾は片端からマインドミナの砲を目掛けて打ち返す。
ここでチトセが戦い続ける限り、先を駆ける戦友も、後ろに控える人々も、誰一人として傷つけさせはしない。
「どんどんギア上げてくネ! さァもっとどんどん撃ってくるといいヨ!」
稲妻に照らされたチトセの表情は朗らかな笑み。常識はずれの巨大な敵を前に一歩も退かぬ、一歩も譲らぬ己の戦いぶりたるや我ながら称賛に値する。
この先に在るやもしれぬ星界のロマンを守るために、彼女は独り笑って怒涛の砲火と踊り続ける。
「お前たちがどれだけ居ようと」
白銀の輝きが砲撃を打ち返す中、黄金の輝きはただ只管に永い一瞬を切り裂いてマインドミナへと突き進む。
「たとえ俺達の眼前にどれだけの数で立ちはだかろうとも」
無限に引き伸ばされた一秒のを貫いて、トルメンタはその速度それ自体を威力に変えて特攻する。
「俺の、俺たちの力で――」
『FullThrottle――』
相棒の声が彼女をして超えられぬ速度の最高潮に達したことを告げる。予定通りだ。後はこのまま、
「――全て、捻じ伏せる!!」
『――Code:Rage』
光よりも疾い不可視の黄金がクエーサービーストに激突する。
凄まじい運動エネルギーの直撃。いかなる戦術――いや、ともすれば戦略兵器にも劣らぬ単純にして強大な破壊力が、幾度もの戦いで損傷し、再生能力をも奪われた外殻を薄氷のように叩き割り、その奥の肉腫めいた身体をも引き裂いて、今まさに咀嚼されている小惑星の核たる岩塊や表層を彩る透き通った氷をも当然の如く貫いてゆく。
「輝き唸れ、俺のこの一撃! 砕け散れェエエエエエ!!」
トルメンタがマインドミナの向こう側の宙域に飛び出して、黄金の輝きがまるで冷却されるように蒼く戻っていく中で、びしりとマインドミナの全身にひび割れが走る。
崩壊してゆく。不気味な肉塊が、ひび割れに沿っていくつもの小さな欠片に。
断末魔のごとき激しさで蠕動するその肉腫は、絶叫するように大きく身体を波打たせ――
そして、死に際のそれは――死にながらも、まるでただでは死んでやらぬとでも言うかのように一際に巨大な砲を産み落とす。
要塞砲――要塞を自衛するための固定砲ではない、要塞の持つ膨大なコアマシン出力を攻撃に一点集中で転用するという帝国の狂気の一端。それが崩れ行く外殻の下から顔を出す。
チャージは既に完了している。あの規模の砲ならば、艦隊主力を根こそぎ消滅させるに不足するということはありえない。
「総員退艦――」
その姿を認めた提督は部下たちに逃げるよう命ずるが、しかし何処へ逃げろというのか。
脱出艇に乗り込んだとて艦隊丸ごとを消滅させる攻撃から逃れられるはずはない。
そも、今から脱出艇に駆け込もうとして間に合うわけもない。
為すすべもなく閃光が放たれるのを、艦長席から渋面で受け入れる以外に出来ることは――
「――こんなノ、星の輝きと比べたラまだまだネ」
その閃光の前に立ちふさがる影。逆光で誰であるかなど分からない、わからないが。
「…………猟兵、君たちには最後まで助けられてばかりということか。まったく……君たちはどうしてこうも」
人が良いのかな。
提督は椅子に深く腰を掛け直し、決して目を逸らすまいと巨大な光に立ち向かう小さな影をじっと見つめる。
「我が魂は星の輝きネ――つまりこの程度じゃボクを消すなんて絶対に無理ダヨ!!」
触手めいた数多の腕を撚り合わせ、創り出したる巨大な隻腕。
翠色の輝きを、白銀のフォースナイトの魂の色を刃と纏い、その隻腕が真っ向から巨獣の断末魔と激突する。
「秘技………………!!」
閃光が切り裂かれ、二股に割れた光が艦隊を避けるように宙域を過ぎってゆく。
チトセは艦隊の無事を第六感で感じ取り、ただの一人も欠けていないことを確かめて刃を大きく振り払う。
「ピッチャー…………返し!!」
閃光を切り裂く剣が回り、薄く鋭い刃に代わって肉厚の峰が光を受け止め――渾身の力を込めて振り抜かれ、光が弾き返される。
砲撃を放つ要塞砲へと、道連れを求めた断末魔の叫びが撃ち返される。
凄まじい威力の光が砲身を粉砕し、その下の死にゆく星獣に今度こそトドメを刺したのだ。
光が失せ、再び静かな暗黒を取り戻した宇宙。そこにマインドミナの不気味な蠢動も、過去より呼び起こされた偽帝国軍の虚ろな防衛線もありはしなかった。
猟兵達は見事に艦隊の窮地を救い、クエーサービーストをまた一体屠ったのである。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第3章 冒険
『マインドミナBVAの外殻を剥ぎ取ろう!』
|
POW : 腕力と体力を活かして大量の外殻を剥ぎ取り、運搬する
SPD : 巨大な外殻を器用に解体し、運搬効率を高める
WIZ : 思念によって形を変える外殻の特性を利用し、変形させた外殻を運搬する
|
種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●
クエーサービーストは斃れ、打ち砕かれた死骸はデブリとなって宇宙空間を漂う。
帝国軍兵器に姿を変えていた外殻も元の金属塊めいた姿を取り戻し、この宙域に猟兵と解放軍艦隊を除いて動くものはない。
さて――猟兵達の仕事はまだ終わりではない。さらなるクエーサービーストとの戦いに向けて、巨大、強大な存在を屠るための新しい対策を講じるためには、この主の思念に応えて無限に姿を変える特性を持ったマインドミナの外殻の研究が近道だろう。
――とはいえ、だ。
ドレッドノートⅦ艦隊は満身創痍、航行能力を喪失した艦を己の巨体を引きずるように航行するのがやっとの艦が数隻がかりで力を合わせて引っ張っているような有様である。
ここにさらに大きく重いクエーサービーストの死骸を載せろというのは中々に酷ではなかろうか。
だからといって猟兵たちが独力で持ち帰れる量もたかが知れている。少量でも無いよりはマシだろうが、せっかくの大戦果だ。これだけの死骸を放置して帰るというのも後ろ髪を引かれないと言えば嘘になる。
そんな時だった。ドレッドノート艦隊を取り囲むように、多数のワープアウトの光が現れる。
ワープドライブ航行を終え通常空間に次々と出現するのは、ドレッドノートⅦと同級の戦艦が率いる解放軍の艦隊。
「追いつきましたよ、クラン提督。……随分と損傷しているようですが?」
漏れ聞こえてきた通信からは、新手の戦艦の指揮官らしい女の声。
「ソリダリティ艦隊……サヴィツカヤ君か。見ての通り、クエーサービーストに手ひどく痛めつけられてしまってね。若く勇敢なクルーを多く喪ってしまった」
戦艦ソリダリティとその指揮官、サヴィツカヤ提督。もしかすると猟兵達の中には、星界の門要塞の攻防とキエリビウムJOX討伐で知った仲の者もいるかも知れない。
彼女らが人類勢力圏で合流予定のドレッドノート艦隊に置き去りにされた解放軍艦隊だったのだろう。
「ともあれ、猟兵諸君のおかげでなんとか切り抜けたというところだ。我々も頭が冷えたよ、済まないが何隻か曳航してくれると助かる。帰り次第裁判でも処罰でもこの老いぼれに言い渡してくれ」
クラン提督の一方的な、されども暴走したクルーたちを思い遣り庇うような物言いにサヴィツカヤ提督は大きなため息を一つ。
「猟兵、友軍の救援に感謝します。マインドミナ型の残骸回収が全戦線で言い渡されているのは我々も承知しておりますので、空母を一隻、それから海兵隊を協力させましょう。……クラン提督のことも悪いようにはしませんので」
渡りに船とはこのことか。ドレッドノート艦隊と係留索で繋がれていくソリダリティ艦隊の各艦から離れ、一隻の巨大空母がマインドミナの死骸の方へやってくる。
死骸から外殻を剥ぎ取るための工具を携えた海兵たちを満載した輸送艇が次々と発艦してゆくのが見えた。
猟兵たちも各々の力で、あるいは海兵隊から工具を借り受けて、持ち帰る術に憂いなく外殻回収に乗り出してゆく。
白斑・物九郎
【エル(f04770)と】
仕留めた獲物は有効活用せにゃ猟師の名折れですわ
銀河戦争ン時の便利宇宙服装備で船外活動にゴー
友軍の艦の方に待機させたエルと双方向通信を維持、誘導を受けながらそのヘンの外殻に取り付きまさ
エルのデジタル分析でポイント指定をざっくり受領したら、後は俺めのアナログ分析【野生の勘】の出番っスよ
いいカンジにカチ割れそうな所、よさゲな何かしらが採れそうな所を見出して――魔鍵で小突く
何も魔鍵でブッ叩くだけでカチ割ろうってワケじゃありませんわ
コイツはあくまで『照準設定』
ココだ、エル
火力支援、送れ
・【砂嵐の王と狩猟の魔眼】発動
・照準設定完了次第その場を離れ、エルからの火力で外殻破砕を果たす
エル・クーゴー
【物九郎(f04631)と】
敵性の沈黙を確認しました
これより友軍と協調しての鹵獲作業に移行します
周辺宙域_及び_目標物構造情報のスキャンを開始――
・友軍の艦の方に待機して物九郎をお見送り
・情報分析用途に【狩猟の魔眼】発動
・あと声掛けられそうならパル・オールドシェル(f10995)に情報処理の支援要請を送ってみる
――タスク達成に最適と思われる対象デブリ点在位置のリストアップ_並びに_ルートの構築を完了しました
目標地点への誘導を開始します、マスター
・なお【狩猟の魔眼】は周辺分析の傍ら、攻撃力重視のプログラムをランさせておく
・物九郎からの合体ユーベルコード指令を受けて、ゴリゴリに高めた火力を送付する
●
「敵性の沈黙を確認しました」
「これより友軍と協同で鹵獲作業に移行します」
解放軍の空母にいち早く着艦したエルは飛行甲板の、忙しなく離着陸してゆく輸送艇の邪魔にならない辺りにテキパキと自前の装備を展開していた。
「おう、テキトーに計らえ」
死者をあの世に見送った物九郎が酸素その他の補充のために空母に一旦戻り、先の空間跳躍の誘導を簡素に、視線だけで“まぁ、よくやった”程度に褒めつつすぐさま飛び立ってゆくのを無機質なゴーグル越しに見送るエルは、無数のホロディスプレイを展開して周辺宙域に視線を這わす。
「周辺宙域_及び_目標物構造情報のスキャンを開始――」
魔弾の悪魔の名を冠した彼女の砲撃管制システムが起動し、戦場の女帝――砲兵の眼が一帯を嘗めた。
漂う解放軍兵器の残骸。マインドミナに破砕された小惑星の屑。そしてあの巨大な生物の死骸、大小の外殻。
ちょっとした暗礁宙域の様相を呈している宙域はただ飛ぶだけでも危険と隣り合わせだ。エルの視界のあちこちでデブリ同士が激突し、殺傷力を持った砲弾と化して飛び交っているのだ。解放軍の海兵たちはそれら慣性のまま勝手気ままに飛翔する残骸をネットで回収し、ひとまず安全確保を優先している様子がよく見えた。
「――宙域の安全確保タスクを解放軍に委任」
「>優先タスクを対象デブリの回収に設定。――達成に最適と思われる目標の座標リストアップ……完了」
「>当該座標への安全ルート策定、構築……完了」
解放軍がまだたどり着けていないエリアを漂う細かな破片をレーザーライフルで焼却したエルが物九郎に通信をつなぐ。
「ルートを確保しました。目標地点への誘導を開始します、マスター」
物九郎の狙いは大型の外殻であった。
あれらとの戦争が今後激化してゆくのであれば、その対策に必要だというマインドミナの外殻サンプルは多ければ多いほどいい。
マインドミナ型の研究が実を結ぼうが結ぶまいが戦わぬ選択肢は無いし、時の銀河帝国のごとく消極的な現状維持――物九郎にいわせれば敗北だ――に甘んじる気もない。
「かといって誰も彼も俺めの猟団に入れてやるつもりもありませんでよ」
今回の戦いで艦隊が被った被害は少ないほうだ。猟兵の奮戦が艦隊を守り、艦隊司令もまた生存に重きを置いた戦術を選びあの生物の脅威を目の当たりにした艦隊はそれに忠実に従っていた。
故に撃沈した艦艇は片手の指で数えられる程度ではある。が、それとて限り在るコアマシンの喪失と多くの人命が宇宙に散ったことを意味するのだ。
デルフィニウムのように彼の猟団の末席に召し抱えて、軍勢としての規模を維持することは出来るやもしれぬ。だがそれでは宇宙の未来を担う若者達の死を避けることにはならないし、何より物九郎自身が無分別に配下を増やすことを良しとしない。
「何処の誰だか知りやせんが、我に秘策ありってんなら乗ってみるまで。何より仕留めた獲物は有効活用せにゃ猟師の名折れですわ」
それで死人が減るなら万々歳だ。鹿や熊から毛皮を剥ぐが如く、物九郎は気負う事なくデブリを伝って奥へ進む。
「――目標地点への誘導を開始します、マスター」
そんなエルの声が聞こえると同時、宇宙服に内蔵されたHADに座標を示す数字が送られてくる。
細かな座標の読みは面倒だと同じく宇宙服のコンピューターに処理を丸投げし、大まかに指定座標の方角を見上げた彼は見た。
銀河帝国の主力戦艦が艦尾から突き刺さった――あるいは内側から抜け出そうとしたまま硬化したような大型の外殻だ。
「アイツぁ見覚えあんな。俺めらが叩き割ったヤツかね?」
艦砲を受けて爆砕された外殻。デルフィニウムクルーたちが“港”とマーキングしていた部位だ。同様に艦艇を積極的に模倣していた部位は全身至るところに在ったようだが、戦艦クラスをああも活発に生み出していたのはあの部分だけだったと物九郎は思い返す。で、あれば。それだけ質量に余裕があるかということ。
「つーてこれを引っ張って帰るってなぁちっと無理がありますわな」
無重力といえど質量が違いすぎる。物九郎の宇宙服に内蔵されたスラスターだけでアレに推力を与えようとすれば、それこそかかりきりで数日以上は掛かりそうだ。無論、それだけの推進剤は標準仕様の宇宙服には積まれていない。
「おけ、なら砕くまでっすわ。いいカンジにカチ割るんなら……」
半分だけの船体を半壊させた戦艦。幸いにも艦首の大型レーザーキャノンは形成されているようで、であれば内部にはその動力ラインが這わされているはずだ。そこを撃ち抜き、誘爆で外殻を破砕する。砕かれた外殻ならば回収はしやすかろうし、一人では無理でもエルを通じて何人か手伝いを寄越させれば輸送艇までの運搬程度なら可能だろう。
手の中に魔鍵を生み出し、呼んだ砂嵐を蹴るようにして戦艦に取り付いた物九郎は、残骸の上を闊歩する。戦艦部分はこの形を強く意識したまま本体から引き剥がされたためかこの形を維持していたようだが、どうにもマインドミナの特性らしい変形能力はまだ残っているようだった。
レーザーキャノンの砲口を滑り降りてゆく物九郎が試しにと壁面に手を付いて、この残骸を叩き割る為のもうひと押しをイメージしてみれば、戦艦の死骸を食い潰すように壁が爆薬へと姿を変える。
「ン、これならブチ砕けそうっすな」
それを一定の指向性を持って炸裂するよう砲口の中に仕込んで――この配置は物九郎の異能じみた直感によるものだ――満足に頷いて、物九郎は魔鍵でレーザーキャノンの発振部を小突いて飛び出す。
「ココだエル、火力支援、送れ」
直後、豆粒のような空母の甲板から針の穴に糸を徹すようにデブリの隙間を縫って放たれた閃光が砲身に飛び込んでゆき――物九郎の小突いた、その小さな痕跡に正確無比に突き刺さる。
造りかけの戦艦の砲撃システムが崩壊し、物九郎が仕込んだ爆薬が次々と誘爆してゆく。
それは艦内構造を突き抜けるように外殻と戦艦の間の空洞を強かに叩き、そして巨大な外殻が崩れてゆく。
「おし、持って帰るに丁度いい大きさになりましたわな。エルご苦労。集めて撤収しますでよ、回収を寄越しなさいや」
「――了解しました、マスター」
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
ガーネット・グレイローズ
引き続きマシンウォーカーに搭乗して作戦参加
対象活動停止、生命反応なし…か。やったな。
よし、これから外殻の回収作業に入ろう。
マシンウォーカーでマインドミナBVAの死骸上に着陸。
がしょんがしょん歩き回って手頃な大きさの外殻を探し、
装備した武装で外殻を解体していこう。
<操縦><メカニック>技術でブラスターの出力を調整しつつ、
熱線で外殻を溶断。さらにヒートクローで
外殻を細かく切り取ったら、【仮初めの死】を発動。
出現した黒い棺に収めれば、安全に運べるだろう。
ソリダリティ艦隊にも協力を頼みたいんだが、
構わないかな。海兵隊員諸君、外殻の運搬を頼む。
優しく頼むぞ?生まれたての赤子を抱くようにな。
※アドリブ歓迎
●
「対象活動停止、生命反応なし……か。やったな」
機体のコックピットで各種センサーが示す数字を確かめ、細かな破片の一つに至るまで目標が完全に死に絶えたことを見届けたガーネットがほうと安堵の息を一つ。
戦闘は終了したが、今すぐ撤収というわけにはいかない。むしろこの先の長い戦いを思えば、ここからが本番と言ったほうがいいかも知れないだろう。
「……よし、外殻の回収作業に入る」
周囲を見回せば、隕石破壊用の工具を持ったウォーマシン達がハンドサインで遣り取りしながら小さな外殻を回収しているのが見えた。
この機体は細かな作業には向かないが、彼らの回収しやすい大きさに外殻を裁断するような――言ってしまえば大雑把な、重機的な作業にはもってこいだ。
ウォーマシン海兵達が持ち帰れないような大型の外殻片はそこら中に漂っているが、その中でも損傷の少なめなものを見繕ってガーネットは機体を旋回させ、そちらに脚を向けて降下してゆく。
脚部のアンカーめいた爪がしっかりと外殻の溝に食い込んだのを、機体を揺らす衝撃で確かめて、それからガーネットの解体作業が始まった。
先ずは大きすぎる――彼女の機体と比較しても、歩いて回るに不自由はない程度に巨大な――塊を一定のサイズに切り出すところからだ。
搭載されたブラスターの出力を上げ、しかし照射口を細く絞ることで強力なレーザーカッターとした彼女は、機体をがっしがっしと歩かせながら外殻を端から順に棒状に切り出してゆく。
宇宙に漂う巨大な甲殻が長大な針金、といっても太さは鉄骨より一回り二回りほど大きいものだが、概ね針金と呼んで相応しい姿に切り出されたのを満足気に眺め、ガーネットは発光信号で海兵隊に協力を願い出る。
応答はすぐに帰ってきた。了解の意を示す光に頷いて、操縦桿を握る指に力を入れ直す。
「さて、と。もう一仕事だ。海兵隊の第一波が到着するまでにある程度切り分けておかないとな」
片方のアームで針金を掴み、もう片方のアームは鉤爪めいたクローを赤熱させる。あとはニッパーで針金やプラ棒を切り落とすように、ぱちんぱちんと人間大に切断してゆくのだ。
刻まれた小さな欠片はすぐさまガーネットの呼び出した黒い棺桶に収納され、彼女が足場とする外殻の上に並べられてゆく。
「死んでいても思念に反応するという話だしな。間違って事故が起こらないとも限らない。安全を期してやりすぎ、ということは無いはずさ」
誰にとも無いつぶやきは、自身の思考に感応して外殻が予期せぬ変形をせぬように、思考をある程度集中させる為のもの。安全を第一とする輸送業を取り仕切る社長として、万が一すらあってはならぬという彼女の矜持でもあった。
そうこうしている内に一本目を刻み終え、程なくして海兵隊が輸送用の大型コンテナを携えてやってきた。
「うおっ……一応聞くが猟兵、これ戦没者の遺体じゃねえんだよな?」
外殻上に無数の棺桶が並ぶ光景にカメラアイを点滅させて慄く海兵に、ガーネットは違うよと苦笑して。
「思念を遮断するために入れておいただけさ。もしかすると趣味があまり良くなかったかも知れないが、性能は保証するよ。さあ海兵隊諸君、運搬を頼む。迅速に、だが優しく頼むぞ?」
生まれたての赤子を抱くように、という彼女の例えに海兵達は肩を竦める。
「俺らは軍用ウォーマシンですよ、赤ん坊なんざ抱いたことはねぇし今後も多分ンな機会は来ねぇでしょ」
「ま、せいぜい優しく……レディの肩を抱くように運びますかね! 空母に積み込み終えたらまた戻ってくるンで、切り出し頼んますよ!」
陽気に笑いながら棺桶をコンテナに収めてゆく海兵たち。あんな態度を取りながらもしっかりと首の座らぬ赤子を抱きかかえるような――安定にとことん留意しながらもおっかなびっくりなところもそっくりだ――挙動にガーネットは思わず吹き出して、ようやく意図せず肩に籠もっていた力が抜けた事に気づきながら次の裁断作業に戻っていった。
大成功
🔵🔵🔵
ウィンディ・アストレイ
まあ…部隊がどうの、処罰が云々といった話は。向こうにお任せして…
ボク達は、自分の仕事をするとしましょう。
さて…破片をひとつひとつ、処理するのも手間ですし
ここはその特性を、利用させて頂きましょう
【妖精の舞】を起動、複合センサをアクティブモードにセレクト
複数の周波数の電磁波や音波を放出して、破片にアクセスします
アクセスが成功したら、放出波にボク自身の思念を乗せて
必要なら分割や合体させて、破片を一定の大きさと形状に変形させて揃え
積載と整理を容易にした後に、艦に積み込んでいって貰います
(世界知識&ハッキング&範囲攻撃&一斉発射)
「意思や思念の取り扱いは、サイキッカーの本領です」
※アドリブ&絡み連携OK
●
「部隊がどうの、処罰が云々といった話は向こうにお任せして……」
自分たちにはやるべき仕事がまだ残っている。それはこの損害の責任を追求することではなく、この先の未来に繋ぐ糧――マインドミナの残骸を回収することだ。
ウィンディは艦隊に背を向け暗礁と化した死骸の海へと飛び込んでゆく。上下左右、どちらを向いても残骸だらけ。
当然ながらサイズも形状もまちまちで、片手で拾えるようなものもあれば戦艦でなければ引っ張れないような大きなものまである。
「うーん、大きいのを運ぶのは無理そうですね。かといって……」
研究にどれほどの量が必要になるか分からない以上、要求される残骸は多めに見積もられている筈だ。それを小柄なウィンディが――というより人間一人の腕力で――運べるものを選んで運搬するのでは、膨大な時間と手間がかかる上に決して少なくない大きな破片を見逃すことになる。
「置いていく、というのももったいないですし」
無理だから捨て置いてきました、というにはあまりにも魅力的かつ今後の戦いを思えば必須とも言えるキーアイテムであるマインドミナの外殻。多くの犠牲の上に斃された貴重な死骸を、運べなかったからと置き去りにするのは有り得ない選択だ。
だから解放軍の海兵たちも必至にレーザーカッターや小型の爆薬を使って大型の残骸を細かく裁断し、回収を試みているわけだが。
ウィンディにしてみればそれすらも非効率だ。なにせ戦艦の攻撃すら耐え凌いだ外殻である。あれが生きていた頃のマインドミナの思念によってより強固な特性を得ていたのは、海兵達の工具が遅々としながらも解体を進めている様子から想像できるが、死んで思念による強度のブーストがなくなったからと言って決してビスケットのようにサクサクと砕けるものになったわけではない。戦艦の装甲と同等かそれより硬い程度の強度は死してなお保たれている。
「ああやってひとつ一ひとつ処理するのも手間ですよね……」
ならば。不揃いな大きさを、解体するには不都合な強度を一挙に解決する術があるではないか。
「マインドミナの特性は思念による外殻の変性……本体が死んだ今、外殻は付近の最も強い思念に感応するはずですから――」
見えざる妖精が舞う如く、彼女の処理能力が軽やかに踊りだす。
センサーが常時送り込む解析情報を元に、マインドミナの外殻にアクセスしやすい――思念の伝達ロスが少ない――波長を算出。
それに似せた電磁波と音波を発し、外殻に己をマインドミナと誤認させるのだ。
反応は劇的であった。死んだはずの中枢からの信号を受け取った外殻は、サイズこそ復元されずそのままだが、激しい戦いで受けた傷は跡形も残さず修復し始める。
「よし、繋がりました。あとは思念を乗せて……」
マインドミナ“もどき”と化したウィンディからの思念を受けて、外殻は次々とその形を変えてゆく。
より回収しやすく、より整理しやすく、より管理しやすく、より研究しやすく。
ウィンディの意志のままに大きな破片は解放軍規格のコンテナへと姿を変え、コンテナに至るには満たないサイズのものは細かく分割や集合を繰り返しながら無数のインゴットとなって自ずからコンテナに収まってゆく。
わずか数分で思念が届く範囲の――全体からすればごく一部だが、それでもかなりの量だ――残骸をインゴットを満載したコンテナへと変えたウィンディは、額の汗を拭おうとして宇宙服に阻まれながら一息。
「ふぅ。……海兵の皆さん、コンテナの回収お願いします」
「おう、任された。お嬢ちゃんは先に船で休んでな! しかし、すげぇな。あんだけの残骸を一瞬でまとめちまうなんてよ」
海兵からの驚き混じりの称賛にウィンディは照れくさいようにはにかんで。
「意志や思念の取り扱いは、ボクらサイキッカーの本領ですから」
ひゅう、という口笛を真似た電子音声や自分の活躍を称えるやや音痴な替え歌を披露する賑やかな海兵たちに恥ずかしさを味わわされながらも、ウィンディはまた一つ宇宙の未来のために貢献したという充足感を覚えるのだった。
大成功
🔵🔵🔵
アシェラ・ヘリオース
「これが最後の仕事だな」
久々の近衛装備に赤槍の使用でかなり疲労した
切り出された巨大な外殻に苦戦する人員を制し、その表面に降り立つ
方針は、今までの【情報収集】の成果を【戦闘知識】で考察し、切り出された外殻の中心部に向け赤の光剣を突き立て、【念動力】でフォースを注いで貫き通す
「こんなものか……ではっ」
後は【ハッキング】の要領で思念を送り、【メカニック】で脳裏にある構造を【武器改造】で現実の物に落し込む
すなわち汎用型の輸送艦だ
「粗作りはした。細部の仕上げはお前達に任せる」
部下達を召喚。人海戦術で細かな部分を修正し、実働に耐える艦と仕上げたい
後は部下達に任せ、亡き陛下の失われた夢に想いを馳せよう
ジャック・スペード
折角の検体をデブリにしておくのは
確かに勿体ない気がするな
此の身が役に立てるよう、最後まで力を尽くそうか
怪力を活かして外殻の回収を
素手で剥ぎ取るのが難しい時は工具を使ったり
鎧砕きの心得を活かして
涙淵で切り取ったりして行こう
キティーズ、お前たちも手伝ってくれ
彼らのメカニックの技能を活かして
効率的に外殻を回収できないだろうか
難しかったら応援や助言をさせよう
こう云う作業は話相手が居たほうが捗るからな
トランプ兵達には、当機の故障個所も直して貰おう
ああ、提督達の部隊の損傷は如何程だろうか
何はともあれ、戦場を共に切り抜けられて良かった
必要なら彼らの船もキティーズに修理させよう
●
「折角の検体をデブリにしておくのは確かに勿体ない気がするな」
「ならばこれが最後の仕事ということだ」
ジャックとアシェラ、元帝国の黒い騎士と銃士が疲弊した身体を引き摺るようにして宙域を往く。
ジャックは偽帝国軍の航空部隊との激しい宙戦で、アシェラは久方ぶりに披露した近衛騎士の装備と自身のサイキックエナジーを大きく消耗する赤槍の使用で体力を削り取られていたのだ。
外傷の有無はあれど両者ともに満身創痍。空母に帰還しようものなら問答無用でメディカル送り必至の有様だ。
だが彼らには医療ベッドで寝ている暇はない。そのつもりもない。人類が、そして時の銀河皇帝が夢見た未知の宇宙に至る足掛かりが目の前に横たわっているのだから。
「――ああ。此の身が役に立てるよう、最後まで力を尽くそうか」
眼下に漂う大型の外殻。海兵たちもさすがの大きさに後回しにしたらしいそれへと降下してゆく二人は、道中で海兵たちから工具を――軽く一個大隊分ほど拝借してゆく。
工具を背負うだけでいっぱいいっぱいではないか――それだけ持っていっても使う腕は二本しか無いぞ――外殻を持ち帰る分の余力は在るのか――そもそも母艦で休んでいろ――様々な言葉を大丈夫だと軽く手を振って受け流した二人の黒は、外殻の上にじゃらりと工具を並べて一呼吸。
「やるか」
「ああ、仕上げは任せる」
消耗したフォースをわずかでも補填するため瞑想に入ったアシェラに背を向け、ジャックは友を呼び出した。
ぜんまい仕掛けの玩具の兵隊。赤と黒、ハートにダイヤにクラブにスペード。トランプのスートが描かれた薄っぺらな兵士の人形は、わいわいがやがやと賑やかに工具を受け取りジャックの後ろに付き従う。
「キティーズ、お前たちのメカニックスキルが頼りだ。こいつを効率的にバラしたい」
ジャックからの頼みに顔を突き合わせて考え、到底無理だと訴えるトランプ兵――キティーズ。
「何故だ?」
キティーズの面々の曰く、解放軍式の工具では出力が足らぬ。
このサイズの外殻には切り込みこそ入れられるが、裁断は困難だと。
あるいはジャックの腕力と装甲兵器をも打破してみせる技量を持ってすればそれも叶うかも知れないが、キティーズ達がいくら下準備をしたとてこの巨大な外殻全てを一人で割って回るのは現実的ではない。その上ジャックは損傷しているのだ。なおさらにその選択は有り得ない、と。
「問題ない。仕上げは俺じゃない、彼女がやる。下準備までは出来るんだな?」
ジャックが示す先では、少しずつではあるがフォースを練り上げ身に纏いつつある帝国騎士の姿。
確かに皇帝の騎士に召し上げられる程の使い手ならば裁断も可能かもしれないと、それならばジャックが無理をすることは無いだろうとキティーズは作業に取り掛かる。
ジャックはそんな彼らと言葉を交わし、適度に気分転換を交えながら外殻に切れ目を入れてゆく。
十数分――よりは少し長い時間。
アシェラが目を開くのと、ジャックがキコキコと玩具のように歩くトランプの兵士たちを引き連れ戻ってきたのは殆ど同時だった。
「作業はあらかた片付いた。あとはアシェラ、お前の仕事だ」
「そうか、世話を掛けたな――ならばジャックさん、あなたは一足先に休んでくれ」
アシェラは足元を一睨み。ジャックとキティーズはここが中心になるように外殻に傷を刻んでくれた。ここさえ粉砕すれば、その威力は全体に伝播しこの外殻は分断されるだろう。
「――いざ!」
手の中に赤き刃。騎士の証たるフォースセイバーが外殻の中心部に突き立てられ、瞑想によって回復したフォースが剣を伝って外殻を貫く。
びしり、とジャックたちの刻んだ傷から細かな、砂のような破片が噴き出した。続いて傷を境界に、断層のように外殻がいくつにもズレ始め――暫くも経たないうちに破片は分断されてゆく。
「……こんなものか」
「見事だな、さすがは帝国騎士だけある」
ふぅと息を吐くアシェラにジャックが称賛を投げれば、過去のことさと肩を竦めた彼女は分割された中でも大きめのものを見据えて次なる一手を打つ。
「確か……こう、だったな」
かつて麾下に置いたこともある、帝国式の汎用輸送艦。ペイロードに優れ、反乱軍の多少の攻撃も物ともしない厚い装甲はデブリ帯と化したここでの作業に最適だ。
狙った外殻が思い通りの姿になったことに満足し――しかし自身の座乗艦ならともかくただ艦隊に在っただけの輸送艦の細部を本物通り思い出せたかと言えば、特に機械系統において自信満々とは言えず。
アシェラはやむなく、この手の細かな調整に向いた者たちを呼び出した。
帝国騎士の装束に身を包んだ、低頭身のマスコットたち。彼女の部下たちを再現したAIを積んだ機械人形達の中には、あの輸送艦を直接指揮した者もいた筈だ。
その個体を指揮官に任じ、アシェラは艦の最終調整を委任する。
あれで高度な人格を持ったAIだ。不足があれば自前の思念で継ぎ足し、あの艦を本物さながらに仕上げるだろう。そうなれば他の外殻片を積み込み、艦隊とともに撤収するだけだ。
「手が多すぎて困るということも無いだろう。キティーズ、お前たちもあの騎士たちを手伝ってこい。ああ、何体か残って俺の傷も修理してくれると助かる」
トランプ兵と小さな黒騎士たちが輸送艦に乗り込んでいくのを見送って、アシェラは前を、ジャックは後ろを遠く視る。
――この先に広がる宇宙。帝国軍ですら踏み入ることを許されなかった未知の世界に、今は亡き銀河皇帝はどんな夢を思い描いたのだろう。
今となっては誰にも分からないことだ。だが、自分が皇帝すら辿り着けなかったこの先に至った時、少しでもその夢の一端を理解できる、だろうか。
――此処に至るまでに多くの犠牲を払った解放軍艦隊。此処から先激化する戦闘はより多くの命を礎にして道を切り拓いてゆくことになるだろう。
痛々しく損傷し、後続のソリダリティ艦隊に曳かれてゆくドレッドノート艦隊は己と同じく正に満身創痍。だが、彼らは生き延びたのだ。何はともあれその結果があれば充分ではないか。
「苦難を切り抜けた先、生きてさえいれば――」
「誰も知らぬ、人類の失われた夢にいつか到れる、か」
二人の呟きが静かに重なって、しかしそれも目覚めた輸送艦の唸りによってすぐに宇宙の闇に溶けて消えた。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
イデアール・モラクス
ンン?今何やらイイ女の声が聞こえたような…ああ、あの艦か。
よし、帰りはあの艦に乗って帰ろう…クククク。
・お持ち帰り
破片を持ち帰るなら、破片自体が自ら動いてくれた方が楽だろ?
という訳で私は『全力魔法・範囲攻撃』で効果範囲を拡張したUC【機甲兵団】を用いて漂う破片を人型機動兵器へと変換、綺麗に整列させ省スペースで戦艦に持ち込んで運搬する。
「向こうに着くまでくらいなら私の魔力も持つだろうが…ああいや、補給しないと維持出来ないかもなぁ?
誰か私に魔力を補給してくれる乗組員はいないかなぁ?」
帰り道は魔力を乗組員で補充しながら帰れば良かろう、お愉しみの時間さ。
※アドリブ大歓迎
●
「ん?」
なにやら今、いい女の声が聞こえたような――
宇宙服の通信機が拾った声音に耳聡く反応して振り返ったイデアールは、ドレッドノートが二隻に増えているのに気付いた。
否、よくよく見れば同じような艦だが艦首付近に描かれた番号を始め、細部が違う。どうにも見覚えのあるその数字の羅列をじっと眺めていれば、閃くように脳裏に浮かんだのはあのタコのような触手生物、キエリビウムJOXとの戦いで肩を並べた女提督の戦艦ではないだろうか。
得心がいったと頷けば、なるほど先程聞こえた声も彼女の声音だった。
「よし、帰りはあっちに乗って帰ろう」
紳士然とした老提督が悪いとは言わないが、どうせならまだ若々しさの残る女と同じ船の方がいい。そちらのほうが色々と“楽しみ”がある――とイデアールは舌舐めずりをしてくつくつと喉を鳴らす。
結果から言えば、サヴィツカヤ提督を狙ったイデアールの悪巧みはある年少のクルーたちの身を挺した大活躍によって未然に阻止されることになるのだが――
閑話休題。
そんな未来を露知らず、己にとって最良の百合色の未来を夢見ながらイデアールは残骸の前に立つ。
イデアールは思うのだ。いちいち人間様が出向いて丁寧に運んで差し上げる必要はなかろう、と。
なんなら破片の方から己に傅ける栄誉に咽び泣きながらこっちに来い、と。
何たる唯我独尊であろうか。されどもそれもまた一つの正解である。
「見たところあれは骨に近い、か? ならば四捨五入すれば無機物、やってやれぬ相手ではないな」
思念を送ってイメージ通りに変形させるなどまだるっこしい。我が道を往くイデアールにとって、効率など度外視で使い慣れた方法を選ぶほうが手っ取り早い。
「――いでよ我が鋼鉄の兵団!」
全力の魔法で無理矢理に外殻を人型機動兵器へと作り変えてゆく。彼女の魔力と熟達した魔導制御で以て、無数の破片が人型に変貌し、魔女の操るままに母艦に帰投し格納庫に収まってゆく――が、なまじ出来るからと張り切りすぎた。
全機が格納庫に収まる前に魔力の底が見えてきたのだ。
「…………不味いな。この分だとギリギリ魔力も保つだろうが……」
そこでチラっと振り返れば、作業中の空母甲板員たちが見える。
その内のまだ年若い少年少女といったクルーたちが尊敬の眼差しを向けているのに気付いたイデアールは、此処だとばかりにわざとらしくよろめいた。
大丈夫ですか、と駆け寄ってくる彼らに、魔女はその強かさを覆い隠して寄りかかる。
「魔力の限界が近いんだ。このままだと魔法が維持できないなぁ……くっ、補給が、魔力の補給ができればなんとかなるんだが……」
額に汗を浮かべる魔女にすっかり騙された少年少女はおろおろと狼狽え、やれサバイバルキットから高カロリーペーストを持ってこいだの、医官殿を連れてこいだのと大慌て。
「いや、そこまでしてもらう程じゃない……ただ君たちに少し協力してもらえば……」
言いながら機械兵団にはほぼ自動制御で帰還するよう追加の術式を組み込み、若者たちを連れて魔力補給に向かうイデアール。
――その後、彼らによって魔女の提督襲撃計画は阻止されることになる。
だが其処に至るまでに何が在ったのか、提督を守るにあたってどのような攻防が繰り広げられたのか――彼らはついぞ語ることはなかった。
成功
🔵🔵🔴
アリシア・マクリントック
こういった作業ならティターニアアーマーの出番ですね。
手の引っかかりそうな隙間を探して、力づくで引き剥がしていきましょうか。小さくするのはあとでもできますから、力づくとはいえ欠けてしまわないよう丁寧に。
それにしても、未知の鉱物?金属?でしょうか。どちらにせよこれで刀や剣を作ったらどんな物ができるのでしょうか……変幻自在ということは無限の可能性があるということ。想像が膨らみますね……!
あぁ、いけません。作業に集中しないと。せっかく大きくなっているのですから、大きなパーツの搬入をやりましょうね。
ユーノ・ディエール
外殻の回収ですか……
早足を生かして輸送に勤しみましょうか
運搬用機材を借りてクルセイダーに接続
そのまま騎乗して作戦半径内を駆け巡ります
僅かな欠片もちゃんと拾わなければ……
念動力で散らばった破片を掻き集めつつ機材に乗せて
そして友軍が回収した資材も一緒に纏めて運びましょう
そういえばユーベルコードに反応して形状を変えるのでしたっけ?
大型の外殻に念動力を浸透させて
大きなキャリアに変形させられるでしょうか
上手くいったらジャンジャン外殻を乗せて
更に大きな外殻を……
ええ、意思が通じるなら巨大なクルーザー的な物にもなるでしょう
クルセイダーをコアにして、超大型輸送船をイメージします……
この力、何かに使えませんかね
●
「外殻の回収ですか……」
輸送艇との接続を切り離し、残骸の海に繰り出したクルセイダー。
その背に跨るユーノとアリシアは、作業の途方もなさに思わず声を漏らしていた。
なにしろ宇宙的規模の巨大生物の亡骸だ。本来であれば艦隊総出で回収に当たるところであろうが、戦闘艦隊である都合積載量の余裕が乏しく、さらに損傷したドレッドノート艦隊を曳航せねばならないためにソリダリティ艦隊の余力もそちらを優先する形となった今、何を置いても人手と艦が足りない状況であった。
海兵を割き、大型の空母を一隻とはいえ回収作業に当ててくれただけまだありがたいがそれでも軽く済ませて帰ろう、と言える作業量ではない。
「こういった作業ならティターニアアーマーの出番なのですけど……」
アリシアは眉を八の字にして困り果てる。パワーのあるティターニアアーマーはなるほど大型のデブリを除去するような局面において、彼女の持ついくつかのアーマーの中で最良の選択肢だ。
が、機動力が乏しいのが一つのネック。いくら大型の残骸を回収できても、それを格納する母艦に向かう時間が絶対的なロスとなる。
かといって空母周辺宙域に漂うのはティターニアアーマーを持ち出すまでもないような中小の残骸ばかり。どうしたものかと思案しながら、ひとまずユーノの後ろに乗って調査に付いてきたのである。
「あれは流石にクルセイダーには乗りませんしね」
ユーノも困ったと苦笑する。出力的にやってやれないということは無いだろうが、ティターニアアーマーを座席に乗せるのは不可能。外殻を担いだ彼女を牽引していくことになるのならば、ティターニアアーマーの分まで残骸を追加で引っ張ったほうが効率的だ。
「それに細かな欠片もちゃんと拾うことを考えると……」
どうしたものでしょうねえ、と念動力で機体にぶら下げたネットに小さな破片を集めながらユーノは考える。
と、そんな折に帝国仕様の輸送艦とすれ違った。
すわ敵襲かと身構えれば、友軍を示す発光信号を打ちながら艦隊に合流してゆく輸送艦。
「…………こんなところで帝国の? ――あっ!」
「今のは……どうしました、ユーノさん? ……あ」
二人は同時に気付きに至る。そうだ。マインドミナの外殻を集める理由は、クエーサービースト戦において自在にその姿を変えるマインドミナの性質が役に立つ可能性がある、というところに端を発している。
で、あれば。あの帝国輸送艦と同じ様に、自分たちも外殻を輸送艦にすればいいのだ。
それだけで大型の破片を一つ回収できるし、それを母艦にすればティターニアアーマーでの回収作業も効率的に行える。
「このやり方なら……!」
まずは手始めに、クルセイダーよりいくらか大きい破片を小型の輸送艇に。
それに外殻を積み込んで、増えた素材でもう少し大きな――それを更に――と繰り返すこと数回。
戦艦にも比肩する立派な輸送艦が宙域に鎮座していた。
「や、やれば出来るもので……この力、確かに有用ですね」
自身の所業にちょっとばかり慄きながら、操縦室の窓の外を漂うティターニアアーマーに向けて誘導灯を点滅させるユーノ。
「未知の鉱物……金属、でしょうか? 骨格のようにも見えますが……なんにしろ、これで刀や剣を鍛えたらどんなものができるのでしょう」
貴族の趣味、と言うには些かハイレベルかつ情熱を込めて打ち込んでいる刀鍛冶の素材にこれを使えたらきっと面白いだろうと、ティターニアアーマーの両腕でベリベリと外殻から肉片を引き剥がしながらアリシアは思う。
何しろ戦闘機や戦艦まで創り出し、攻撃手段も完璧に模倣してのけたような変幻自在の材質である。これを武器に用いれば、この性質を上手く引き継がせることができれば、無限の可能性を秘めた武器が打てるのではないか。
「想像が膨らみますね――あっ!」
力づくながらも外殻が割れたり欠けたりしないようにある程度繊細な力加減を制御していた彼女だが、ふと想像に意識が持っていかれた刹那、ぺきと小さな振動を伴って外殻がひび割れてしまう。
「あぁ……いけませんね、作業に集中しないと。ユーノさん、また大きなパーツを搬入します。空いているカーゴまで誘導をお願いしますね」
お任せあれ、と点灯した誘導灯に従って、ヒビてしまった外殻を抱えて戻るティターニアアーマー。
ユーノとアリシアの回収作業はまだ始まったばかりだ。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
ハロ・シエラ
まぁ自分で選んだ戦法とは言え、二回もカタパルトで射出された上でスターブレイカーを放ってしまうとは。
一度こういう相手に試して見たかったのは確かですが、思ったより疲労が……
ですが眠ってしまう前に最後の一仕事です。
とりあえず外殻を剥ぐくらいは出来るでしょう。
工具に頼るよりはこの剣を使う方が私には向いています。
と言っても、いつも通りユーベルコードでそこらを斬り刻むだけの事ですが。
地面から突き出ていたりする部分などがあれば、その方が斬りやすくていいですね。
後は【怪力】をもってして出来る限り運びます。
体力の限り回収したら、ちょっとだけ休憩させてもらいましょう。
眠ってしまって置いて行かれない様にしないと……
数宮・多喜
【アドリブ改変・連携・絡み大歓迎】
よっし沈黙したか!
しかも空母に輸送艇?こりゃありがたい!
艦隊での回収作業のお手伝いしながら、
「とにかくデカいスペースを開けておいてくれ」と
通信を入れとくよ!
なんでかって?そこにデカブツが飛び込むからさ!
残骸漂う空間の合間を縫うように『操縦』しながら、
外殻の分布状況を『情報収集』するよ。
アタシが狙うのは大物狙い、ただ一点!
先に入れた通信で把握できるギリギリの大きさの外殻を探し、
可能な限り接近するよ。
接近しただけで持ち帰れるのかって?
そりゃ【縁手繰る掌】で一気に運ぶからね!
そうして空母まで問題なく搬入を終えたなら、
後は漂ってるカブを【悲劇覆す札】で回収って寸法さ。
神酒坂・恭二郎
「これがあの銀河の果ての風景かね」
前人未到の宇宙のその先を見やり、感慨にふける
酒の一杯でも傾けたい所だ
が、働かざるもの……という奴だ
美味い一杯のために一仕事と行こう
方針として、巨大な外殻の切り出しで難航している場所に向かう
少しはなれた所からそれを俯瞰し、『合』の手応えを得たら作業する艦隊の皆に離れるように依頼する
「さて、少し離れてくんな。一つ大技を仕る」
相棒を抜いて上段に構え
銀河剣聖壱の型を取る
刃や距離や相手の大きさなどは関係ない
ただ『合』に沿って刀を振り下ろすのみだ
一瞬とも永遠とも分からぬ時間の後
恭二郎はその刀を振り下ろすした――
銀 河 一 文 字
●
「よっし、沈黙したか! しかも空母に輸送艇、こりゃありがたい!」
マインドミナ撃破と増援艦隊による援助の申し出に喝采で応える多喜。
戦いながら思ったのだ。このあと外殻を回収しろと言われても、その量はたかが知れてしまうと。
猟兵の手で持ち帰れる量は多くても一抱え程度だろう。艦隊に引っ張ってもらうにしてもその余裕がある艦自体があの激戦の中で貴重になってしまった。皆どこかしらを損傷し、此処に重量物を持ち込むというのはいくらこの先の戦いのためとはいえ気が引ける。
そんなところに遅れ馳せながら参じた艦隊は、マインドミナ残骸回収の重要性を知る指揮官だったらしく可能な限りではあるが支援を差し向けてくれた。
ありがたいことである、と多喜は思う。
なによりこれから外殻を“積み込んでも問題のない”大きさの“味方の艦”が在るということを知れたのが嬉しい。
真正面に捉えた巨大な外殻は、空母の格納庫になんとか収まるかどうか――少なくとも発着エレベーターやカタパルトハッチは通過できない――という超特大級。
そのうえ破損状態があまりよろしくなく、あちこちに棘のように外殻の名残が突き出し、裏面には結構な規模で体組織の残滓がへばりついている。
これをこのまま持ち帰っても、無駄な重量や無駄な面積を取ることになる。
「というところで俺たちの出番ってわけだな。ハロ、お前さん大丈夫か?」
「ええ、まぁ。自分で選んだ戦法とはいえ、二回もカタパルトで射出された上にスターブレイカーを放ったので……」
大型目標を相手に全力を試してみたかったのは確かだが、そこまでに失った体力が多すぎた。うとうとと落ちそうになる瞼を擦ろうとして、宇宙服にそれを阻まれながらハロは首を横に振る。
「いえ、大丈夫です。眠ってしまう前に最後の一仕事、できます」
そういうことなら、と恭二郎はハロの意志を尊重する。帰って寝ろと言うのは簡単だし、ハロが欠けてもその分の時間を掛ければ外殻の切り出し作業は不可能ではない。
だが本人にやる気があるならやるべきだし、それを敢えてダメだと拒む理由もない。
「ならとっとと片付けて戻ろう。正直、この向こうに広がる前人未到の宇宙を肴に酒の一杯でも傾けたいところなんだが――」
働かざるもの……とは古い格言だが至言だと思う。恭二郎は酒の肴に仕事を為した達成感という一品を足すために、刀に手を掛け外殻片に相対する。
「多喜、ハロ、少し離れてくんな。一つ大技を仕る」
愛刀の柄に手を掛け、すらりと艶やかな黒銀を引き抜いた。宇宙服の内側をめぐる酸素をすぅ、と吸い込み、吐き出して呼吸を整え刃を上段。
「銀河剣聖壱の型――」
銀河剣聖。無敵にして最強、星々の間を光の如く飛び交う最盛期の鎧装騎兵をも断ち斬ったとも、戦艦を一刀のもと斬り伏せたとも言われる伝説の剣豪。
恭二郎の師でもあるその、宇宙という距離と速度、そして大きさが無制限に等しい空間で剣を貫き頂にまで至った存在の一刀をなぞるのだ。
一瞬のようで、永遠のようで。体感にして数分の、光より疾い刹那でスッと刃が振り下ろされる。
銀河剣聖壱の型、銀河一文字。
彼の愛刀の銘と名を同じくする秘奥は、恭二郎の思う通りにまず外殻から巨大な肉片を切り離した。
「――一刀は万刀に化し、万刀は一刀に帰すってね。さぁハロ、次はお前さんだ」
「神酒坂さんのそれの後で剣を振れ、って言われてもちょっと気が引けるんですけど……とりあえず外殻を削るくらいは出来るでしょう」
余計な錘を取り除かれた外殻。次は余計な出っ張りを排除する番だ。
「私にあんまり曲芸みたいな剣を期待しないでくださいね、いつもどおり切り刻むだけのことなので」
言いながらも剣を振るうと、棘状の外殻が根本から切り離されてゆく。なめらかな断面は、彼女が謙遜をしながらも並外れた技量の持ち主である証左だろう。
ひとつ、ふたつと欠伸混じりに次々に棘を落としてゆくハロ。いくつめかの棘が落ちれば、外殻の本体はつるりと整形され空母の格納庫にもきっと収まりのよい形になっていた。
「二人ともおつかれさん。じゃあ最後はアタシの番だね。このデカブツを運び込んだら迎えに来るよ、ハロは眠いんならうたた寝してな」
恭二郎にハロが流されていかないように見ておくよう頼み、宇宙カブを降りた多喜は外殻に近づいてゆく。
彼我の距離が零に近付くに連れて、緩やかに流れる外殻の端までが多喜の超能力の射程に収まってゆく。
「捕まえた! デカブツが飛び込むよ、場所を開けな!」
ふっと多喜と外殻の姿が消える。彼女は外殻を射程に収めるなり、それを携え空母の格納庫に直接テレポートしたのだ。
「お疲れさん。悪いけど拠点に戻るまでにこっから搬出できるように解体しといておくれ!」
突然飛び込んでくるなり次の指示を出して駆け出してゆく多喜に、空母所属の整備士が何処へいくんです、と思わず声を掛ける。
「ちょっと相棒と仲間を迎えに行ってくるのさ!」
多喜が戻ってくるまでの僅かな時間。斬り落とした棘も外殻には変わりない、と束ねておいたそれを抱き枕に、疲れ切ったハロはすやすやと寝息を立てている。
頑張ったもんな、と恭二郎は苦笑して、起こさないように小さな声でお疲れさんと声を掛けた。
「しかし……」
真正面に視線を上げれば、その先は無数の恒星が瞬く宇宙だ。背後にも同じような景色が広がっているが、しかしそれは全く似て非なるもの。
この先に在る宇宙は、この世界の何処の誰にも知られていない未知の世界。そう思えば見慣れたようで星の位置も何もかも異なる宇宙は、既知のそれとはまるで別世界に思えた。
「これがあの銀河の果ての風景かね……」
あるいはまだまだ果てには程遠いのか。帝国であれそうでない者であれ、銀河に覇を唱えた人類という種族が未だに知らぬ領域。
その最前線にいま、自分たちは立っているのだ。
「……酒、持ってくればよかったぜ」
多喜が迎えに来る前に多少楽しんでもバチは当たらなかったかな、と。いつの間にか戻ってきた彼女の宇宙カブがこちらに向かってくるのを感じて振り返り、恭二郎は独りごちるのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
葛葉・アリス
【恋華荘】
レヴィアタンもよく頑張ってくれたわ
初めての出番のわりに上出来じゃないかしら?
というわけで、皆が作業している傍らに、レヴィアタンに乗ったままぷかぷか浮かんで見物してるわね
神に働かせるとか…どんな不敬だっての
※ただのサボり
…あら、アイ、いいじゃないその演説(?)
グッドよ、理緒
【箱庭空間記録】で永久保存しておくわね
で、私の手伝い必要?
仕方ない、少しくらいは
【世界情報更新】
外殻の情報を書き換え
接合部の強度のパラメータをゼロにして、何の抵抗もなく自重だけで剥がれるようにしておくわ
もちろん余計なことはしないで、ただ剥がしただけよ
そうやって適当に剥がしてあげるから、あとは適当に持っていきなさいな
菫宮・理緒
【恋華荘】
いよいよ解体作業だね
とりあえず今回も【E.C.O.M.S】を使って、
6機のチームを20。12機のチームを12つくって外殻を解体・確保していくよ。。
残りのユニットには、周辺の警戒に当たってもらっ……?
ん? アイさん、説得するんだ?
ならこういうの効くと思うよ! と悪魔の囁き。
アイさんの説得に
わたしも『きゅぅぅぅぅん(はーと)』
ユニットが赤く、3倍早くなるね!
数を確保できたら、恋華荘のみんなと連携して、
大きな外殻もげっとしておきたいな。
係留索はあるみたいだし、
できれば空母でひっぱっていくくらいのが欲しいよね。
ということで、ユニットに命令!
「この辺で、いちばんおっきなの、みつけてこーい!」
アイ・リスパー
【恋華荘】
「味方に多大な被害は出てしまいましたが、なんとか撃破できましたね……」
ティターニアもオベイロンもボロボロです。
これでは素材の係留くらいしか役にたてないでしょう。
こうなったら仕方ありません。
理緒さんに教えてもらった説得を使用します!(騙されてる
「海兵の皆さん、私に力を貸してください(はーと)」(萌え萌えキュンなポーズ
【反逆の機兵団】で量産型オベイロンを呼び出し、海兵の皆さんに渡します。
本家のオベイロンほどではないですが、装甲の剥ぎ取りや運搬には役に立つはずです。
「では、ティターニア。最後のひと働きですよ!」
恋華荘の仲間や、海兵の皆さんが回収した外殻を牽引し、巨大空母に運び込みましょう。
彩波・いちご
【恋華荘】
ひとまず無事に終わったことですし
あとはできるだけ外殻の確保、ですねぇ
私の能力だと、外殻を引き剥がしたり加工したりは難しいでしょうから
【異界の抱擁】の触手に運搬させましょうかね?
影から呼び出した触手で、切り取られ小分けにされたし外殻を持ち上げ
巨大空母まで運搬させましょう
あ、海兵隊の皆さん、驚いたりしないでくださいね
ちゃんと制御してますので、危険はないですよー?
って、アイさん?
(きゅんっ)
アイさん可愛い……って、いけない、つい見惚れてしまって、触手の制御を忘れてました
…触手がアイさんの方に行ったりしてません、よね?
と、とにかく
アイさんの兵団とか理緒さんのユニットと手分けして運ばせまーす
セナ・レッドスピア
【恋華荘】
相手が相手ですし、かなり大変でしたが
もうひと頑張り、ですね…!
…とはいえ、運搬は私一人では厳しい感じです…
そこはみんなにお任せしちゃいますけど
その分、みんなの苦労を減らせるようにしていかないとっ!
血槍を私に接続して…
錬血解放「融血浸獣形態」を発動!
【融血浸獣形態】に変化させた血槍の力で
クエーサービーストの装甲を剥ぎ取ったり
運搬しやすいサイズにカットしていきます!
そうやってカットした装甲を
みんなに運んでもらいます
あと、だいじょぶそうなら
ワイヤーで推盾形態に変えた血槍と装甲を繋ぎ
少しでも運搬のお手伝いをしていけたらっ!
…アイさんのきゅんきゅんアピールでのドキドキが
不思議と力に…!
●
「味方の被害は甚大ですが……でも、なんとか撃破できましたね」
後方のドレッドノート艦隊はズタズタで、ティターニアとオベイロンもまた損傷激しくこれ以上の戦闘は不可能だ。
いや、回収作業すら怪しい。試しに腕を動かしてみれば、嫌な音とともにアラートが鳴ったのですぐに止めてアイはため息を一つ。
勝ったは勝ったが、その後の回収作業で役に立てない。遅刻してきてこれではあまりにもあんまりではないか、と。
ならせめて他に出来ることはないかと考え込むアイを他所に、リオ・セレステに乗る三人もまた戦いの終わりに一心地ついていた。
「ひとまず無事に終わったことですし、あとはできるだけ外殻の確保、ですねぇ」
いちごが音頭を取れば、理緒の操縦でリオ・セレステが外殻の暗礁地帯に進んでゆく。
「相手が相手なのでかなり大変でしたが、もうひと頑張り、ですね……!」
あとちょっとで仕事は終わり。疲れてはいるが此処を踏ん張れば、危機を脱しただけでなく未来への足掛かりも手に入るのだ。
セナもやる気を振り絞って、もう一度船外に飛び出してゆく。
「運ぶのは私一人では厳しいですね……」
こればっかりは仕方あるまい。セナは一人しか居ないし、その一人もパワフルとは縁遠い華奢な少女なのだ。戦闘で疲労した今、重作業に全力を割けるほどの余力が在るかと言えば首を横に振らざるを得ない。
「運ぶのはみんなにお任せしちゃいましょう。その分みんなの苦労を減らしていかないとっ!」
自身の血を吸わせた槍を獣が如き形に変貌させて、セナは力いっぱいに中規模の破片を引き裂いてゆく。
「いよいよ解体作業だね……」
リオ・セレステを操る理緒も作業に向けてやる気は充分だ。いつもどおりの八角錐を飛び立たせ、大小の編隊を編成して小さな外殻を解体し、セナが切り裂いた外殻とともにリオ・セレステへと回収してゆく。
「いちごさん、わたしとセナさんじゃ大きいのを運ぶのは難しいから……お願いしていい?」
だが二人の力では回収できても中型の破片まで。大型以上のものはマインドミナの肉片などがこびりつき、質量を大きく増大しているおかげか多少の攻撃では解体すら難しく、そもそも人ひとりに小型のドローンがいくらか、といったセナと理緒では動かすことすらままならない。
「そういうことなら任せてください。ついでにお二人が回収した破片も空母まで持っていっちゃいましょう!」
いちごはトンと胸を叩いて、影から呼び出した巨大な触手で外殻を巻き上げ空母の方へとパスしていく。
だがこれに面食らったのが作業中の海兵たちだ。なにしろ彼らはキエリビウムに――触手の姿をしたクエーサービーストによって一度窮地に陥った事がある面々。すわキエリビウムの強襲かと迎撃体制に入った彼らを見て、いちごは慌てて通信を開く。
「海兵隊の皆さん、驚かせてごめんなさい。これはちゃんと制御してますので危険はないですよー?」
猟兵の支配下にあるものだと分かって、納得は今ひとつ出来ていないが了解はした、と作業に戻っていく海兵たち。だがちらちらと向けられる怯んだような視線がなんだか居心地悪く、いちごは話題を切り替えようと理緒に向き直った。
「そういえばアイさんとアリスさんはどうしたんでしょう。さっきから見ませんよね?」
確かに、と理緒は頷く、戦闘はともかくこういう作業には我関せずを決め込むこともあるアリスはともかく、むしろ喜び勇んで自慢の機体を振り回すアイが居ないというのは妙だ。
なにかトラブルが在ったのか。心配になった理緒がティターニアに通信回線を繋げば、アイは頭を抱えてうんうんと唸っていた。
「あ、アイさん? どうしたの? 大丈夫?」
理緒の問いかけに、アイは泣きそうな顔を上げてどうしましょう、と訴える。
「機体がボロボロなので素材の係留くらいにしか役に立てません……私は役立たずですぅ…………」
調整に手間取った、万全の状態でクエーサービーストにぶつかるため、という理由があれど友人が命がけで戦っている中後方で待機し、いざ戦いを終えればその後の作業には参加できず。
すっかり自信を喪失したアイは、ぐすぐすと鼻を鳴らして凹んでいる。
「これは重傷だねぇ……」
いちごと顔を見合わせてどうしたものかなあと考える理緒。慰めるだけなら簡単だが、なにか作業に加わって貰わないと彼女の自信は戻っては来ないだろう。
かといって普通に作業に参加させれば、損傷して性能が低下したティターニアでは他と比べて効率が悪いことは明らか。その部分で彼女は更に凹むかもしれない。
「うーん……あ、そうだ。ついさっきいちごさんが触手を出したんだけど……」
海兵隊は触手にトラウマがあるのか。どうにもぎこちなくなってしまった。連携もいまいちで、このままでは作業効率が下がってしまう。
――だから一つ、お願いしてもいい? こういうときはこういうのが効くと思うんだ。
理緒の囁きは、隣に立ついちごにすら聞こえない二人だけの内緒話。
それをアイはこくこくと頷いて、言われるがままにその類まれな情報処理能力をフル回転させて通信回線を全域で開いてゆく。
そして、それは起こった。起こるべくして起こったのか、あるいは運命の悪戯が故か。
だが誰もがその出来事を忘れないだろう。だってそれはあまりにも――
「海兵の皆さん、私に力を貸してください(はぁと)」
あまったるい少女の声音。同時に視界いっぱいに強制で映し出される映像は、どこぞのコックピットで白髪の少女が、その。
いわゆる萌えを体現したようなポーズで、愛らしく笑っていたのだ。
これには海兵の反応も真二つに割れた。
どういうことなのか理解が追いつかず、呆然としたまま触手のプレッシャーも忘れてしまったものと。
そのアピールに微笑ましさを覚え、じゃあ一つ手助けしてやるかとやる気を出したものたちだ。
そしてむしろその効果は海兵より猟兵達に強烈に作用した様子であった。
「アイさんかわいい…………」
いちごは呆然と通信ウィンドウに見入ったまま触手の制御を忘れ――その衝動のままに触手が一本ティターニアを巻取りかけたのを寸でのところで食い止めた。
「アイさんいいよぅ、それ! きゅぅぅぅぅんってしたよ!」
ばたばたと手を振り回しながらアイの所作をべた褒めする理緒は、その感情に呼応したように赤く変色し速度を上げた八角錐をより巧みに操り破片をかき集めてゆく。
「なんででしょう、アイさんのきゅんきゅんアピールでドキドキして…………不思議と力が湧いてきます!」
それはおそらく心拍数の上昇とともに血流が良くなったことで血槍に流れる血も増えたからではないかと予想されるが、ともあれセナもより力強く外殻を回収してゆく。
気がつけば一同は周辺の破片を軒並み回収し終え、残すは殊更に巨大な外殻のみ。
これはその大きさに見合った体組織の残滓がへばりついているせいで、多少の推力では引っ張れそうもないようだった。
いちごの触手が絡みついても動かず、セナがワイヤーで盾と結んで推力最大で引いてもうんともすんとも言わず。
理緒が八角錐で押しながらリオ・セレステで引っ張ってもダメで、ならばとアイがティターニアの簡易型を海兵にバラ撒きともに押してみてもダメ。
もう充分に外殻は集めたし、勿体ないがこれは諦めるべきか、と一同が諦めかけたその時、なんの奇跡か外殻から肉片が剥がれ落ちていった。
これ幸いと一同が力を合わせて外殻を押して引いて、空母の方へと運んでいく。それをレヴィアタンの頭部の内側に誂えたコックピットで見下ろして、アリスはやれやれと肩を竦める。
「まったく、神に働かせるとかどんな不敬だっての」
このままサボってしまう気だったのに、あまりにも哀れに見えたので手を貸してしまった。
あまり甘やかすべきではない――と神らしく繕ってはみるが、結局の所アリスもレヴィアタンの初陣に付き合って疲れているのだ。あまり力を行使したい気分ではなかった、というだけの理由が大きい。
とはいえ、アリスが世界に介入し、外殻にこびりつく肉片の強度を極端に低下させたおかげで特大の外殻は見事に回収されてゆく。
「……ま、代価は貰っておくけれど。ふふ、グッドよ理緒」
くすりと意地悪く笑う――だがその表情には隠しきれない慈しみを込めて――アリスが何度も繰り返し再生するのは、海兵に訴えかけるべく精一杯にアイドルめいた愛らしさを演じるアイの動画。
先程の突然の通信を神の予言めいた直感で予見したアリスは、通信回線の開通と同時に最高画質でそれを録画しておいたのだ。
「これは永久保存版ね。ふふ、いい演説じゃない」
くすくすと笑うアリス。レヴィアタンのコックピット内では、何度も何度もアイの声とアリスの笑いがこだましていた。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴
トリテレイア・ゼロナイン
(退避させた機械馬を遠隔●操縦で呼び騎乗)
サヴィツカヤ提督所属の海兵隊…確か指揮官は…
ご壮健で何よりです、アイアンズ様
また合同作戦を共に出来、騎士として喜ばしい限り
此度も頼りにさせて頂きます
その前に、少々お時間を頂いても宜しいですか
宙に還った戦士達の為に
(剣を掲げ暫し)
…作業を開始しましょう
外殻回収作業も慣れたもの
今回は装備をお借りすることも無さそうです
これまでも現地調達してきましたので
漂う外殻にワイヤーアンカーを打ち込み●ハッキング●情報収集
UCも併用し外殻から(先の戦闘で使った強化版)大型対艦ビーム砲再現
●なぎ払い掃射で溶断し解体
海兵隊の皆様は解体した外殻の細かな破砕や運搬をお願いします
チトセ・シロガネ
この外殻の特性、どうなってるンだロ。
その特性の謎を追うべくボクはテンタクルユニットで外殻の捕食を行った
まずは喰らったそれをハッキングでその構造をデータにするネ
さらにUC【星屑従者】を呼び出すヨ
3人集まればなんとやら、まぁ72体もいるけどネ
構造データを今までの戦闘データと照らし合わせて情報解析を行ってもらうネ。
そこから導き出された答えは……
アイシー、つまりは念動力で形を変える素材と言えるンだネ
それなら僕の得意分野じゃナイ!
そんなわけで比較的なじみのあるドローンと同じ構造の物体を念動力で量産、空母に大行進させていくネ。
え、海兵さん、なんで怖い顔してるノ? かわいいデショ?
●
機械馬に跨る白い騎士は、現れた艦隊の姿にメモリーを呼び起こしていた。
旗艦ソリダリティ。指揮官はサヴィツカヤ提督。――この艦隊に所属する海兵ということは、その指揮官は――
「ご壮健で何よりです、アイアンズ様」
「様はよしてくれよ。お前さんも元気そうで何よりだぜ、トリテレイア」
がはは、と笑う大柄なウォーマシン。海兵隊指揮官のアイアンズは、あの日の戦いから変わることなくこの未踏の宇宙で戦い抜いているのだと思うと、同胞戦友の奮戦にトリテレイアも誇らしさを覚える。
「貴方とまた合同で作戦に参加できたこと、騎士として喜ばしい限り。此度も頼りにさせていただきます」
礼儀正しく騎士の礼を捧げるトリテレイアに、解放軍式の敬礼で応えたアイアンズ。
「ま、どっちかと言えばまた俺たちが頼らせてもらう……貰った、って方が良いだろうがなァ」
アイアンズとトリテレイアの視線が、マインドミナの死骸に紛れて漂う無数の残骸――鎧装騎兵や艦艇の成れの果てを捉える。
激戦だった。騎士は多くを守るために全てを守ることを諦めるという苦渋の判断を耐えねばならなかったし、海兵は己が間に合わなかったが為に救えたかもしれない命が宇宙の光に消えていくのを見送ることしか出来なかった。
「宙に還った戦士たちの為に」
「ああ、宙に還った戦士たちの為に」
騎士は剣を掲げ、海兵は銃を掲げて、未来のために命を駆けた勇敢な人々の魂が安らかならん事を祈る。
鋼鉄と電子の生命たるウォーマシンであっても、生きた人々に魂が在って、それが今この宇宙に溶け込み永遠の安らぎに還ったのだと信じたい。
二人の男は静かに、ただ静かに死者たちの冥福を願い続けた。
「……作業を開始しましょう」
「ああ、連中の頑張りの結果だ。欠片の一個も無駄にゃ出来ねえな」
マインドミナ討伐は数度目になるトリテレイアにとって、外殻の回収はもう手慣れたものだ。近場の程よいサイズの破片にワイヤーを撃ち込み、それを介して擬似的に思念を再現して送り出す。
模倣させるのは先の交戦でマインドミナに叩き込んでやった対艦砲の強化型。
どうせ一射で済ますのだから、連射性やエネルギー効率など度外視で只管に威力を高めたそれを手元に手繰り寄せる。
「随分と手慣れたもんだなあ」
「もう何度もやっていますからね。アイアンズ様、射線上に友軍は?」
トリテレイア自身で索敵できないわけではないが、砲撃が暴発しないように制御しつつあくまで友軍に過ぎない解放軍機の居場所を完璧に把握するのは多少苦労する。
それよりは自軍の識別信号を共有し、データリンクを結んでいるアイアンズに聞いたほうが早いという合理的判断。
「……十秒待て。……………………よし、全員射線上から退避した。いいぞ」
それでは、とトリテレイアの巨槍が光の渦を放つ。
それは宇宙をまばゆく照らし、巨大な外殻に直撃してそれを破砕しながら融かし割っていく。
「…………砲撃終了、海兵隊の皆様に破片の回収と運搬をお願いします」
「はいよ、お疲れさん。此処はもういい、船に戻って機体を休めてな」
アイアンズの気遣いを受けて、変形の解けかけた対艦砲を抱えたトリテレイアは空母へと戻ってゆく。
「この外殻の特性ってどうなってるンだロ?」
先程規格外の高出力ビームで撃ち砕かれた外殻の欠片。赤熱するそれがある程度冷え次第、海兵隊が回収してこの宙域での回収作業は終了、撤収――という段取りらしい。
見回せばあらかた回収作業も終わりつつある様子で、チトセはここが調査の最後のチャンスだとその瞳に真剣な光を宿す。
まだまだ熱いが、回収作業が始まればチョロまかすのも一苦労。逆にまだ触れられぬが為に海兵達が外殻には注意を向けず、工具のチェックをしている今がチャンスだと、チトセは触手を這わせて熱々の外殻を一つ捕食する。
「あフ、あフ……あっちチ、思ったよりホットだったヨォ……」
触手越しに感じる熱を、まるでタコ焼きでも頬張ったかのごとき振る舞いで受け流し――チトセはキエリビウムがタコならマインドミナはタコ焼きに似ているなとよくわからないことをふと思い立ちながら――飲み下したマインドミナ外殻の構造を解析してゆく。
人類の科学技術では未知があまりにも多すぎるそれを一人で解析するとなれば膨大な時間が必要となるだろう。
が。
「生憎ボクは一人じゃないんだよネ。三人集まればなんとやラ、まぁボクの場合七二体も居るケド――」
情報解析用のドローンを呼び出せるだけ呼び出して、これまでのクエーサービースト戦のデータと共に構造データを共有して並列で情報を解析してゆく。
それでもすぐさま何かに転用できる、というような画期的なデータは出てこないが、これがどういった性質を持つのか――というようなデータに関してはざっくりとした経験談以上に深く、理論のレベルで理解に指が掛かってゆく。
「アイシー……これはつまり念動力で形を変える素材と言えるンだネ?」
その効率的な干渉方法も理解した今、辺りに漂うマインドミナ外殻はチトセの一部も同然、と言ってもいいだろう。
「ふふン、ボクの得意分野じゃナイ!」
念動力によるシェイプシフトはチトセの最も得意とするところ。対象が自身の肉体か、周囲に漂うバケモノの残骸か、という小さな違いしかない。
「そういうコトなら、カモン! 皆で空母まで帰るヨー」
チトセが高く掲げた指をぱちんと鳴らせば、外殻はぽこぽこと彼女馴染みのドローンに似た姿に変形してゆく。
――いざ回収作業、と意気込んだ海兵達の目の前で。
「お、おう……あんた、その……すげぇな?」
海兵達にしてみれば、目の前でギリギリまで引きつけてから仕事を掻っ攫っていった女であるチトセ。やるんならもっと早くやってくれよ、とか。全部持ってくことないだろう、俺たち手ぶらで帰る羽目になっちまったじゃないか、とか。
恨めしげな視線にチトセは小首をひとつ傾げて。
「え、海兵さん、なんで怖い顔してるノ? かわいいデショ?」
ドローンのデザインに対する不平不満じゃねぇよ、という抗議に頭上に浮かぶ?マークの数を増やしながら、チトセとマインドミナ外殻の行進は海兵を伴って空母まで続いてゆく。
●
多くの犠牲とともに、猟兵と解放軍はまた一体のクエーサービーストを打ち倒した。
その戦いがきっとこの宇宙のさらなる未来に繋がると信じて、さらなる深部宇宙に希望を託して、艦隊は更に先を目指すだろう。
払った犠牲に恥じぬ為に。やり遂げたぞと誇れる日をいつか迎えるために。
クエーサービーストとの先の見えない戦いは続いてゆく。けれど、終わりがない戦いではないのだ、と。誰もがそう信じ、倒した巨獣の骸をも糧として宇宙を突き進んでゆく。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴