アースクライシス2019⑱〜浮き滓の王
「さて、クライング・ジェネシスの居場所もわかって、あと一歩というところではあるが、お前さん達にはこっちの対策もしてもらいたい。」
セゲル・スヴェアボルグ(豪放磊落・f00533)が猟兵たちに提示したのは、ジェネシス・エイトの一人、スカムキングのアジトを示した地図。
ナイアガラ瀑布から連なる運河の一つ、ニューヨーク州ナイアガラ・フォールズ市の『ラブ・キャナル』が、スカムキングの拠点である事をヒーローたちが突き止めたとのことだ。
「ラブ・キャナルとは、化学合成会社による廃棄物投棄が原因で……いや、話が長くなるのでやめておこう。ともかく、そこに潜んでいるスカムキングを撃破するという、至極単純な任務だな。」
スカムキングは、要塞化した運河の地下で、スーパープルトンから譲られたUFOを改造し、宇宙へと逃走する準備を整えており、多数の人員と資材とともに、地球外へと逃走しようとしている。しかし、ただ逃げるだけであれば、オブリビオンの脅威は残るものの、それ以上の問題にはならないはずだ。
「言ってしまえば奴さんのUFOは汚物の塊だ。そのUFOが飛び立てば、世界を汚染し莫大な環境破壊を引き起こすだろうな。それを防ぐためにも、急ぎ撃破する必要があるわけだ。」
現場は光化学スモッグなどに覆われた有害物質の舞う、都市の肥溜めのような場所だ。猟兵が都市に侵入すれば、向こうから迎撃に赴いてくるので、捜索などの手間はひつようないそうだ。
「相手が相手だ。ヘドロや汚染物質で汚れたくないというやつは、あまり近づかん方が良いかもしれんが……そういうわけにもいかんだろうからな。あまり、粧し込んだりしない方が良いぞ?まぁ、今更かもしれんがな!」
ガハハと笑いながら、セゲルは猟兵たちを送り出すのだった。
弐呉崎
この事件を契機に、スーパーファンド法ができたらしいですね。
どうも、弍呉崎です。
さて、本シナリオは例に漏れず、以下のプレイングボーナスがあります。
プレイングボーナス……『敵のユーベルコードへの対処法を編みだす』。
スカムキングは必ず先制攻撃してくるので、いかに防御して反撃するかの作戦が重要になります。勿論、無くても対処は可能ですが、苦戦する可能性も高くなるので注意しましょう。
なお、戦争期限の都合上採用数は普段より少なめに、できる限り早めに執筆を行う予定です。恐らく、成功数に達した時点で終了しますので、ご注意ください。
それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
第1章 ボス戦
『スカムキング』
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POW : キングアンドクイーン
自身の【体重60kg】を代償に、【体内から飛び出した破壊魔術師アシュリー】を戦わせる。それは代償に比例した戦闘力を持ち、【肉弾戦を挑むスカムキングとの連携攻撃】で戦う。
SPD : スーパートニックナイトメア
【アシュリーが禁断の呪文をかけ続ける】事で【近付くだけで敵を侵食する超汚染存在】に変身し、スピードと反応速度が爆発的に増大する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
WIZ : ダスト・テリトリー
自身からレベルm半径内の無機物を【汚染物質】に変換し、操作する。解除すると無機物は元に戻る。
イラスト:V-7
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
ラモート・レーパー
「こうゆうのは僕的に合わないんだけどね」
UC対策
自分の小柄さを上手く利用して、スカムキングの側をちょこまかと動き回る。こうすれば、スカムキングの攻撃を躱しつつ、アシュリーは誤射を恐れて魔法を使えないはず。
攻撃自体は自分のUCを発動するまで折った角のナイフで敵をひたすら切り込む。浅くて良いひたすら傷をつける。UCで汚染物質を分解する細菌をばら撒く。病魔って現代で考えれば菌とかウイルスだしね。本来病に罹らせるUCなんだが病気にならないなら仕方ない
ジャスパー・ドゥルジー
▼対抗策
ないです(笑顔)
というのは流石に嘘だが
俺に出来る事は唯一つ
『死なねえ』事だけさ
魔術師の方は手が読めねえが
本体の方は肉弾戦だ
避けられる可能性があるならそっち側だな
全神経を集中して回避
あとは【激痛耐性】でスルーさ
▼反撃
おもしれえ術を使うじゃねえか
俺の『カノジョ』も紹介させろよ
ナイフで肉を抉って【ジャバウォックの歌】
相棒の竜を召喚する
アシュリーの方は任せた
自慢の爪と炎で蹂躙してやれ
俺は本体を討つ
ナイフ片手に肉薄
懐に飛び込むように捨て身の一撃
女の欠けた腹を貫いてやる
もし戦場を共にする猟兵がピンチだったら【かばう】ぜ
接近戦を仕掛ける奴がいたら
邪魔しねえようにナイフ投擲で援護に回ってもいいぜ
「こんな肥溜めにまでやってくるとは……猟兵ってやつは存外暇らしいな?」
「仕事だから仕方なく来てあげたんだよ?こうゆうのは僕的に合わないんだけどね。」
あまり乗り気ではないラモート・レーパー(生きた概念・f03606)の発言に異を唱えたのはスカムキングではなかった。
「あーん?だったら他のとこ行けばよかったんじゃねぇの?……ひょっとしてお前、ドMなのか?」
ジャスパー・ドゥルジー(Ephemera・f20695)が、本気なのかふざけているのかわからないような口調でラモートに問う。
「なんでそうなるのかな?……まぁいいか。」
ラモートはジャスパーの発言に半ば呆れながら首を横に振る。緊張感のない二人のやり取りを見て業を煮やしたのか、スカムキングが怒号を飛ばす。
「何ごちゃごちゃ喋ってやがる?そっちから来るつもりがないなら、こっちから行くぜ!アシュリー!」
「あいよ、あんた!」
突如としてアシュリーがはじき出され、二人が分離する。アシュリーはその勢いのまま二人の間を通過し、スカムキングと挟撃の体制を取った。しかし、それを見た二人はそんな状況を待っていたかのように、スカムキングへ向けて駆けだした。
「そっちもあの汚物狙いか。なんだかんだで気が合うんじゃねーか?俺達。」
「一緒にしないでほしいな。なんか、変な菌がうつりそう。」
奇しくも、二人が手に取った得物は同じナイフ――同じとは言っても、片や角の切片、片やカッターナイフという差はある訳だが――巨体に立ち向かうにはあまりにも小さな刃だが、二人は臆することなく突き進む。そんなもので俺に抗うつもりかと、スカムキングは右手の拳に力を籠め、ジャスパーへと殴りかかる。眼前に迫る拳を、間一髪のところで回避するが、続いて振り上げられた拳がジャスパーの脇腹へと突き刺さる。だが、その隙をラモートは見逃さない。
「後ろがあまりにもお留守だね。もうちょっと周りに注意を払った方がいいと思うよ?」
――縦横無尽に駆け回る小さな体によって振り回されるのは、黒い角のナイフ。
「でかい図体なのが面倒だけど、やっぱり動きが遅いかな。」
――一つ、また一つとスカムキングに傷を増やしていく。
「援護もなければ、僕を捕まえることもできないなんてね。」
――吹きかけられたのは、嘲笑か。それとも……
「ちょこまかと鬱陶しい奴らだね……これじゃあ攻撃できないじゃないかい!」
「アシュリー構うことはねぇ!俺に構わず撃っちまえ!」
狙いを定め放たれた魔法弾は、寸分違わずラモートへと迫る。二人のオブリビオンは確信していた。数秒後には確実に標的に着弾する――そのはずだった。爆発音とともに周囲の汚染物質が霧散する。汚物の霧が晴れた着弾点、アシュリーの目に映ったのは、左腕が不自然な形で前に押し出されているジャスパーの背中だった。
「わりーわりー、ちょーどここら辺に用事があってな。がきんちょのお守なんだけどよ。」
「別に頼んでないんだけどなぁ……。」
そんなラモートの反応すらも嗤い飛ばしながら、ジャスパーは外れた左肩を右手で押し返す。――ぼすんっと鈍い音が聞こえる。しかしそれは、彼の肩が元の位置に戻った音ではない。
「なっ!?」
スカムキングの上げた喚声に、そこにいた者たちが傍に落ちた『それ』に視線を落とす。傷はどれも深くはなかった。所詮、体を刃先がかすめていただけにすぎない。だが、そこに落ちていたのは、紛れもなくスカムキングの左腕だった。
「てめぇら、何しやがった!?」
「大したことはしてないよ。汚染物質を分解する細菌をばらまいて、その傷に染み込ませただけだからね。」
傷に吹きかけられれいたのは病魔の息吹。
「本来、病に罹らせるものなんだけど、病気にならないなら仕方ないよね。」
「はっはーん、ちびっ子のくせにやるじゃねぇか!」
「……君にも吹きかけた方が良かったかもね。」
皮肉なのか本気なのか、ラモートの言葉の真意は図りかねるが、そんなことを気にする余裕などアシュリーにはなかった。
「あんた!」
スカムキングの様子を見て、すかさず駆け寄ろうとするアシュリー。しかし、それを阻むかのように一本のナイフがアシュリーの足元に突き刺さる。
「おっと、悪いけどここから先は通行止めなんだなぁ、これが。」
――ぼとりと何かが落ちる鈍い音と共に、瞬く間に鬼の周囲には赤い水たまりが形成されていく。
「あんたたちが、おもしれえ術を使ってるじゃねぇかって思ってよ。」
――やがてそれは、人より高い彼の鬼の体温すらも容易に上回る熱を帯び始める。
「だからさ、俺の『カノジョ』も紹介させろよ……とびっきりだぜ?」
――立ち上る黒炎の中に垣間見えるのは、一体の邪竜。
「……アシュリーの方は任せた。自慢の爪と炎で蹂躙してやれ。」
――始まろうとしているのは、混沌による一方的な暴虐だった。
「アシュリー!」
そうはさせまいと、スカムキングが声を荒げ、アシュリーの元へと駆け寄ろうとする。だが、猟兵達がそれを阻む壁となる。
「ダメだよ。君の相手はこっち。」
「そうそう、こっちはこっちで、楽しい楽しい宴の続きと洒落こもう……ぜ?」
先程まで、スカムキングの眼前にいた鬼たちは既にそこにはいない。不意に視線を下ろすと、赤黒く染まった鬼はそこにいた。下がらねばならない。だが、背後に感じたのは別の殺気。回り込んでいたのは少女という仮初めの姿を取る、もう一人の鬼。二体の鬼の携える刃が、空虚となった腹部へと容赦なく突き立てられる。男の唸声と女の叫声が戦場に響き渡った。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
シキ・ジルモント
◆SPD
汚れは仕方がないが、この臭い…
…とっとと撃破してここを出るぞ
アシュリーの呪文を警戒、接近せず遠距離から攻撃する
追ってくるだろうがとにかく『逃げ足』を活かして距離を取る
少し交戦したらヘドロに足を取られた風でも装って動きを止めてみせる
初めに距離を取ったのも今動きを止めてみせたのも、全て無防備に突っ込んでくる事を期待しての『挑発』だ
接近を察知したら『クイックドロウ』で銃を構え、アシュリーをピンポイントで狙撃(『スナイパー』)、怯ませて呪文を中断させたい
呪文を一時的にでも封じて強化を妨害したら反撃
反応速度の鈍ったスカムキングに『零距離射撃』の近距離でユーベルコードを発動、一気にダメージを与える
フィッダ・ヨクセム
汚染でもなんでも好きにしろよ
……実際は凄く気にするし鼻がしんどいが、いい
激痛耐性を信じて、俺様は気にしない
反応速度に追いつけるかは賭けになるが、本体で受けるのは流石に嫌だ
純粋に、怪力を発動した両手で対抗しよう
目つき悪く睨むくらいは、するがね
バァカ俺様は武器を持たない丸腰なんじゃねェ
俺様が、武器そのものなんだよ!
此処までのイライラを笑いに変えて、破壊の限りに爪を振るおう
牙は……惜しいが却下だ、馬鹿にする程度で留めたい
代償で味覚がトんじまッてるなら……手段は選ばないな
鼻の痛みの分は永遠に逆恨みするが!
手数が足りないなら、憑依召喚してる奴の得意な炎を吐き散らして
距離を詰められないようには、したいがね
「はぁ、はぁ、アシュ……リー。」
崩れた脇腹を抑えながら、スカムキングはアシュリーを回収するために、くぐもった呻き声のする方へと近づいていく。しかし、その足はすぐに止まった。二人の間を割こうとする邪魔者が二人立ちふさがったのだ。邪魔だと言わんばかりに、スカムキングは周囲に散らばっていたヘドロを投げつける。それは、この場にそぐわぬ鼻摘まみ者――実際は、この場の臭いのひどさに、彼らの方が鼻を摘まんでいるわけだが――二人の猟兵の足元に着弾して飛び散った。
「汚れは仕方がないが、この臭い……とっとと撃破してここを出るぞ。」
「汚染でもなんでも好きにしろよ……実際は凄く気にするし鼻がしんどいが、いい。」
互いの発言に顔を見合わせたのは、シキ・ジルモント(人狼のガンナー・f09107)とフィッダ・ヨクセム(停スル夢・f18408)の二人。しかし、目が合った瞬間、シキはふいと目を逸らす。すると、すぐさまフィッダが抗議の声をあげる。
「あぁ?てめェ……なんで、顔を背けやがったんだ、おい?」
「いや……すまない。こう、何かもの言いたげな雰囲気だったから、ついな……。」
猟兵というのは、どいつもこいつも斯くもマイペースなものなのか。その隙に攻め込み、アシュリーを回収しようと、スカムキングがその巨体を走らせ始める。
「また何やら騒がしいやつらが来てるようだ……ね……!」
片や喧騒の最中に意識を取り戻したアシュリーは、間髪入れずに呪文の詠唱を始める。すると、終始漂い続けていた汚染物質による腐臭がより一層強くなっていく。その匂いの変化、本能的に危険を察知したシキは、スカムキングから距離を取らんと、すぐさまその場を駆け出した。
「おい、くるぞ!」
シキの忠告が届いていないはずはないだろう。だが、フィッダはその場から動こうとはしない。そんな彼に向けて、スカムキングは容赦なく拳を振り上げた。ぐしゃりと音を立てて、汚染物質が周囲に散らばる。
「やっぱり、くせーな、おい。こいつが憑依してなきゃ、もう少しましだったかもしれなないが……まぁしかたねェな。」
フィッダはスカムキングの攻撃を力任せに受け止めていた。痛みがないなどということはない。スカムキングの一撃により、腕の血管がはじけると、周囲に血飛沫が舞い、骨がきしむ。しかし、拳を受け止めたその両手――いや、その全身が先程までとは違った様相を呈し始める。口が長く突き出すとともに、その口角が吊り上がり牙を見せる。頭部側面についていたはずの耳は、気が付くと頭頂部に近づいており、髪のなかからピンと立っていた。妖怪鬣犬――バスが憑依したシキは、その爪をスカムキングの拳へめり込ませる。
「はっ!動かねぇから何をするかと思ったら……何やら動物の力を借りてるようだが、そんな丸腰で俺達に勝てるとでも思ってるのか?」
その言葉に対するものなのか、あるいは鼻腔を刺激する臭いに対してか、フィッダは目を細め、顔をしかめるかのようにスカムキングを睨みつける。しかし、その口からはわずかに笑みがこぼれている。
「バァカ。俺様は武器を持たない丸腰なんじゃねェ。俺様が、武器そのものなんだ……よ!」
握っていた拳を離すと同時に、フィッダは爪を振りあげた。スカムキングに対する確かな手ごたえを感じる。しかしその一方で、爪をはじめとして全身に感じる不快感。痛みなどどうにでもなる。しかし、汚染物質による浸食は、たとえ本体に影響はしていなくとも、心地よいものではない。武器を持たないフィッダは、戦えば戦うほど浸食は進行していく。
だが、それが攻めることをやめる理由にはなりはしない。ここまで溜め込んだイライラは、スカムキングを倒すことでしか晴れはしない。威嚇というよりも嘲笑に近いだろうか、フィッダは牙をむき出しにすると、再びスカムキングへと一撃くらわすため、駆け出した。
――不意に銃声が辺りにこだまする。それは、先ほど距離を取っていたシキによる援護射撃。間髪入れずに放たれた次弾がスカムキングへと迫る。しかし、それが着弾することはなかった。強化された状態のスカムキングには、ハンドガンで狙うには少々厳しいものがある。しかし、それでもシキは攻撃の手を休めることはない。この距離から当たらないのであれば距離を詰めればいい。シキは、射程距離を補うためにスカムキングへ向けて駆けだした。
「さて、ここからが本番……おっと!?」
進路にあったのは汚染物質による泥濘。躊躇いなく踏みつけた汚泥に足を取られたシキは、その勢いのまま盛大に転倒する。それを見たスカムキングは、これ幸いとシキへと向けて急接近した。だが、シキはその様子を確認すると、転倒時は渋面だったはずの顔からわずかに笑みがこぼれていた。シキが再び銃を構える。しかし、その銃口の向く先はスカムキングではない。
「アシュリー!」
スカムキングが叫ぶ。しかし、その声が届く前に、先程まで戦場内に響いていた呪文が途絶えた。スカムキングの意識は完全にアシュリーの安否へと向いていた。故に、懐と背後、強化を失った己の体へと近づく二人から逃げるタイミングを完全に逸していた。
「戦いの最中に余所見は厳禁だ。だが、隙を作ってくれたお礼だ。残りの弾、全弾くれてやる。」
「鼻の痛みの分は返させてもらうぜ!永遠に逆恨みはするがな!」
無数の弾丸と炎と爪の連撃がスカムキングへと叩き込まれる。愛人の名を叫ぶ声は、やがて苦痛を訴える咆哮へと変わっていった。
大成功
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アリソン・リンドベルイ
【WIZ 侵略繁茂する葛蔓】
うう…。この戦いが終わったら、また訪れないといけませんかね…。一朝一夕には、土地に緑は戻ってきませんから…。
溜息を吐きながら、口元に香水を吹きつけたハンカチをあてて、酷い空気を直に吸い込まないように。髪に咲くガーデニアの花の香りで、少しでも臭いを紛らわしつつ、進みます。
敵のユーベルコードとは、奇しくも性質が同じ…『無機物の変換』…なので、初手で汚濁を産み出されるのは痛いですけれど。こちらも遅ればせながら、『侵略繁茂する葛蔓』を発動。超生命力で伸びる葛の蔓を用いて、汚濁流に対抗する緑のバリケードを形成。『生命力吸収、オーラ防御、拠点防御』で、陣取り合戦を挑みます…!
アダムルス・アダマンティン
スカムキング――汚物の王
かつては槌を手に、鉄を打ち泥を捏ね、炭を焼べて煤にまみれた身だ。汚穢に満ちた貴様を嗤えはすまい
なれど貴様の企み、増上慢、捨て置けぬ。豊穣神が貴様を知れば、決して貴様を許しはすまい
今は神性なき身なれど、ここで俺が貴様を誅そう
纏うは漆黒、ダーク・ヴェンジャンス
スカムキングへと突撃する
飛び来る汚染物質は、漆黒を纏わせた鉄鎖網を盾代わりに防ぐ。防ぎきれぬ分は激痛耐性にて耐え忍ぼう
この大鎚が届くまでに貴様が我が守りを崩し切るか
貴様の猛攻凌ぎ切り、貴様へ鉄槌が振り下ろされるか
――勝負だ、汚穢の王よ
「クソ……猟兵どもめ……」
自らの傷をいやすかのように、スカムキングは周囲の汚物――彼のユーベルコードで変換された無機物を貪っていた。だが、それは所詮その場凌ぎでしかない。猟兵との戦いが終われば、元に戻ってしまうということは、彼自身もよくわかっていた。だが、この場さえ凌げれば問題はない。この地球から脱出さえすれば、汚染物質でできた体など位からでも元に戻せるのだ。なによりもアシュリーのために、ここで負けるわけにはいかないのだ。
「うう……。この戦いが終わったら、また訪れないといけませんかね……。一朝一夕には、土地に緑は戻ってきませんから……。」
溜息を吐きながら、口元に香水を吹きつけたハンカチをあてて、酷い空気を直に吸い込まないように――髪に咲くガーデニアの花の香りで、少しでも臭いを紛らわしつつ、その場に現れたのはアリソン・リンドベルイ(貪婪なる植物相・f21599)だった。
「はっ!結局、お前らも俺を笑いに来たってわけか。これだからお高くとまっている強者ってのはいけ好かねぇ!」
「わ……私はそんなつもりは……。」
反論しようとするアリソンを、彼女の顔程はあろうかという巨大な手が遮った。
「……かつては槌を手に、鉄を打ち泥を捏ね、炭を焼べて煤にまみれた身だ。汚穢に満ちた貴様を嗤えはすまい。」
アダムルス・アダマンティン(Ⅰの“原初”・f16418)は同情にも似た言葉をスカムキングに向けてかけ始めた。
「それなら、そこの旦那もこっち側に付いたらどうなんだ?俺の君持ち、わかってくれるんだろ?」
「然り。なれど貴様の企み、増上慢、捨て置けぬ。豊穣神が貴様を知れば、決して貴様を許しはすまい。今は神性なき身なれど、ここで俺が貴様を誅そう。」
アダムルスの言葉にスカムキングは歪んだ顔をさらにしかめ、不快感を示す。いや、はなから期待などはしていなかったのであろう。所詮この男も今まで見てきた奴と大差はないのだと。もはや、憂さ晴らしのための暴食ともいえるだろうか。スカムキングは再び周囲の無機物を汚染物質へと変化させ、自らの体へと取り込んでいく。
「これ以上、力を蓄えさせるわけには行きません……!」
スカムキングが手に取ろうとした、いまだ無機物のままだったそれは、突如として葛の蔓へと姿を変える。それはアリソンのユーベルコードによる無機物の植物化。奇しくも、同じ性質を持ち合わせた力が、スカムキングの思惑を阻害したのだ。憤りの発散場所を失ったスカムキングはもう片方の手に握っていたヘドロを、躊躇うことなくアリソンに向けて投げつける。アリソンは思わず目をつぶり、体を強張らせた。
――べちゃり。
何かに汚物が当たった音がする。だがそれはアリソンにではない。彼女にもそれだけはわかる。恐る恐る目を開けると、その目に映ったのは彼女を庇ったアダムルスの背中だった。
「あ……ありがとうございます。」
「感謝は不要だ。是が俺の成すべき仕事故にな。」
直後、アダムルスは漆黒の粘液――ダーク・ヴェンジャンスを己の体と鉄鎖網に纏わせ、それを盾代わりに構え、スカムキングめがけて駆けだした。アリソンはその巨躯が地を踏みしめるごとに世界が揺れるような錯覚を覚える。しかし、それを呆然と眺めている余裕は彼女にもない。アダムルスをサポートするため、アリソンは周囲の無機物をと他へと変化させ、スカムキングによる汚物化を阻止していく。さながら、陣取り合戦ならぬ無機物取り合戦。変化させた蔦は突撃するアダムルスを汚物の投擲から守る壁となっていた。
「この程度では、俺を止めることは不可能。」
スカムキングの猛攻をすべて防ぎきることは出来ないが、直撃による痛みなどアダムルスは歯牙にもかけない。しかし、言葉とは裏腹に付着した汚染物質は次第にその量を増していき、アダムルスの動きを鈍らせ始める。彼の大鎚が届くまでにスカムキングが守りを崩し切るか、スカムキングの猛攻凌ぎ切り、アダムルスの鉄槌が振り下ろされるのが先か。やがて、先程まで止まることのなかった足が、ついにその動きを停止させた。
「元神さまだか何だか知らねぇが、ずいぶんとハンサムになったじゃねぇか。その方がお似合いだぜ!」
汚物にまみれたアダムルスをスカムキングが嘲笑する。しかし、スカムキングにはそんな状態の彼にかける慈悲も同情も持ち合わせてなどいない。止めを刺さんとばかりに、ひと際大きな汚染物質の塊をアダムルスに向けて投げつけた。
「させません……!」
渾身の一発に合わせるかのように、大きな蔦の壁が汚泥の直撃を阻む。スカムキングがは舌打ちをしつつも、再び汚物を投げ込まんと手を伸ばす。しかし、そこには既に掴むことのできる武器はない。
「万策尽きたか。刻限だ。貴様の命運もここで尽きる。」
しかし、スカムキングは未だ諦める様子はない。少しでも無機物を確保しようと、二人から距離を取り始める。だが、再び現れ、その行動を遮ったのはアリソンの生み出した蔦の壁。すでに彼には逃げ出す場所も残されてはいなかった。やがて、アダムルスが汚染物質を振り払い、その手に握る大鎚に力を籠める。立ち上るは地獄の業火。その熱量により、彼を覆っていた汚泥は瞬く間に霧散していく。寸刻、鉄槌がスカムキングめがけて振り下ろされる。滾る炎の鎚は、スカムキングを跡形もなく潰し、蒸発させていく。
「――勝負ありだ、汚穢の王よ。」
スカムキングが最後に見たものは、己を打ち滅ぼす猟兵の姿か。はたまた、己の消失と共に消えゆくアシュリーの姿か。それを知る者はもはや誰もいない。
大成功
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