アースクライシス2019⑭~キング・オブ・ヴォイド
「皆さんお疲れ様です! 勝利まであと一歩ですよ!」
シーカー・ワンダーは興奮した様子でぴょんぴょん飛び跳ね、両手を振った。
猟兵たちが4つの『知られざる文明』を解放した事で、遂にクライング・ジェネシスが姿を現した。クライング・ジェネシスは全世界で、多くの人に注目される場所に出現し、迎撃に出てきた猟兵に戦いを挑んでくるようだ。
猟兵達を撃破する所を人々に見せつける事で、鬱憤を晴らそうという腹積もりのようだ。
ワンダーの画面には、東京スカイツリーの頂上に立つ姿が映し出されている。今回の舞台はここだ。
ワンダーは画面を消し、バツの悪そうな顔で後ろ頭を掻く。
「まぁクライング・ジェネシスの思惑はさておき、それよりちょっと不味い事態も同時進行しています。実を言うと、カタストロフの発生が間近でして……」
現在、クライング・ジェネシスは憂さ晴らしも兼ねたバトルショーと並行して、『骸の海発射装置』のチャージを行っている。このチャージは『12月1日』に完了し、そうなれば最後、ヒーローズアースにカタストロフを引き起こされてしまう。
カタストロフを止める方法はただひとつ。いつも通り、クライング・ジェネシスが復活できなくなるまで倒し続け、復活限界に追い込んでチャージ作業を止めること。だが、クライング・ジェネシスは腐ってもオブリビオン・フォーミュラであり、その討伐は困難を極める。
「まず、クライング・ジェネシスはスカイツリーの頂上にいるんですが……全身を無敵化している上に、配下のオブリビオンをとにかく生成し続けてます。おかげでスカイツリーの空はミニ・ジェネシスの大群で埋め尽くされていまして……」
ワンダーの顔の画面に、クライング・ジェネシスの体型を細くしたようなオブリビオンの姿が映る。ミニ・ジェネシスはクライング・ジェネシスの能力によって生成される特殊オブリビオンであり、クライング・ジェネシスの命令に従って攻撃を仕掛けてくる。
クライング・ジェネシス自体も能力行使中は無敵であるため、なんとかしてこの状態を解除せねばまともなダメージを与えられない。それどころか、増え続けるミニ・ジェネシスによって泥仕合を強制された上押し切られることすら考えられる。何か策が必要だろう。
「何はともあれ、やっとここまで来たんです! クライング・ジェネシスをやっつけて、この戦い、猟兵の勝利で終わらせましょう!」
鹿崎シーカー
ドーモ、鹿崎シーカーです。ちょっと高をくくって居たらカタストロフの危機と言われて焦っています。
●舞台設定
東京スカイツリーの上空が戦いの舞台です。頂上にクライング・ジェネシスが陣取り、自身を無敵化した上でオブリビオンを量産する『俺が最強のオブリビオン・フォーミュラだ!』を常時発動しています。これにより上空は生産されたオブリビオンが大量にいる状態です。クライング・ジェネシスのユーベルコードを解除し、彼を討伐してください。
●第一章『クライング・ジェネシス』(ボス戦)
元は無能力者で、殺したヒーローやヴィランの身体部位を移植する事でユーベルコードを得ました。醜い肉体を鎧で隠し、胸部の「骸の海発射装置」をチャージしています。
プレイングボーナス……『俺が最強のオブリビオン・フォーミュラだ!』の対処。
アドリブ・連携を私の裁量に任せるという方は、『一人称・二人称・三人称・名前の呼び方(例:苗字にさん付けする)』等を明記しておいてもらえると助かります。ただし、これは強制ではなく、これの有る無しで判定に補正かけるとかそういうことはありません。
(ユーベルコードの高まりを感じる……!)
第1章 ボス戦
『クライング・ジェネシス』
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POW : 俺が最強のオブリビオン・フォーミュラだ!
全身を【胸からオブリビオンを繰り出し続ける状態】に変える。あらゆる攻撃に対しほぼ無敵になるが、自身は全く動けない。
SPD : 貴様らの過去は貴様らを許さねェ!
【骸の海発射装置を用いた『過去』の具現化】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【相手と同じ姿と能力の幻影】で攻撃する。
WIZ : チャージ中でも少しは使えるんだぜェ!
【骸の海発射装置から放つ『過去』】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【を丸ごと『漆黒の虚無』に変え】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
イラスト:yuga
👑11
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
大豪傑・麗刃
じゃあね死んでくんの記録を見てとりあえず超怒りっぽいのはたしかなのだ。そのあたりにつけこめそうなのだ。
今回も先制あるならユーベルコード解禁まで雑魚ジェネシス斬り続けるか、無理そうならダッシュで逃げまくるか。
で解禁後は高いとこにいる相手の所まで行くためスーパー変態人2発動。右手に刀2本左手にバスタードヒーローの四刀流で雑魚なぎ倒しながら敵のところまで到達、相手の冷静さを奪うため
落書き。
さらに挑発。
フライパンで時短調理くんだっけ?
こんな高い所まで登って、まさに馬鹿と煙はというやつなのだ!
ここはスカイツリー、きみはすごいずりぃ!
で無敵解けたところで全力攻撃
一人称わたし 二人称きみ、名前+くん・ちゃん
アルフレッド・モトロ
上手く行くかは分からんが
とりあえず無限に沸くオブリビオンを止める!
ヘルカイトに【騎乗】
最高速でスカイツリーの頂上へ!
UCの渦で自身を包んで、敵からの攻撃をひとまずガードだ
残りの渦は近寄ってくる敵を迎撃!
そのままジェネシスの背中に【捨て身の一撃】体当たり!
【怪力】で押してその場でうつ伏せに張ッ倒し上から水流で押さえる!
ツリーから落とせたら尚良し!
胸から細かいのが出てくんのを
ジェネシス本人で栓をする作戦だ!
動けねえなら抵抗もできまい!
ここで一生その地味な状態で居るか?
と煽り、能力解除を促す
目立ちたがりだし案外引っ掛かるかも!
解除の瞬間を狙って
【怪力】でアンカーをフルスイングして攻撃だ!
セゲル・スヴェアボルグ
まずは盾で受け流すかなかろう。
下手に避けて他の奴に迷惑がかかっても行かんしな。
さて……動けないだけで、動かせないわけではないのだろう?
それでもって無敵ときた。
これを利用しない手はないな。
というわけで、尻尾でも捕まえて武器代わりに振り回してやろう。
オブビリオンが出ると邪魔なので、叩きつける時は正面を下にしてだな。
既にいる奴も新たに出てきた奴も潰せて一石二鳥だな。
あぁ、別に好きなタイミングで動いてもらって構わんぞ。
俺がやることは変わらんからな。
まぁ、全く動こうとしなければ、あえて動く隙を与えるだけだ。
少なくとも、奴の思い通りになることはないとは思うがな。
清川・シャル
いよいよお出ましですか
すぐにご退場願うんですけどね
私も飛びます
櫻鬼のジェットで空中浮遊、空中戦で飛行
風魔法で補助と防御も兼ねます
出てこられなければいいのでは?
全力魔法、属性攻撃で氷柱を大量に放つ事で、胸の穴が詰まってくれないでしょうか?もしくは凍らせる
ぐーちゃん零をランダムかつ念動力で毒使い、マヒ攻撃の弾薬で制圧射撃、範囲攻撃、吹き飛ばしで的確に当てる
Amanecerを召喚、音圧で聴覚破壊の衝撃波と、スピーカーから串刺しと目潰しする熱光線を一斉発射
UC発動
チェーンソーモードにしたそーちゃんでの攻撃
呪詛を帯びた捨て身の一撃、なぎ払い、鎧砕き
敵攻撃には激痛耐性、見切り、武器受け、カウンターを使用
ヨナルデ・パズトーリ
無限に涌き出るか
なら穴を塞げば良いだけよ!
材料は無限にあるしの!
魔法は原則『高速詠唱』且つ『範囲攻撃』
先ず『呪詛』入り闇の『属性攻撃』『全力魔法』を周囲に放ち『目潰し』
『存在感』を消し『目立たない』様にし『闇に紛れ』敵に接近
『野生の勘』で敵の動きを『見切り』『残像』で回避したり『敵を盾にする』事で攻撃は凌ぐ
穴から出て来る敵に氷の『属性攻撃』『全力魔法』
周辺の敵も穴を塞ぐ様に『怪力』の『グラップル』で取り押さえつつ『投擲』
氷の『属性攻撃』『全力魔法』で固めるを繰り返す事で穴を塞ぐ
攻撃が効くようになれば『怪力』の『鎧無視攻撃』をぶちかまし『傷口をえぐる』様に『零距離射撃』『全力魔法』の『二回攻撃』
メンカル・プルモーサ
……これ、あらゆる「攻撃」に無敵なだけだから……スカイツリー頂上から叩き落として(落下は攻撃ではなく物理現象)傍の川にでも沈める(窒息は(ry))ってどうだろう……
…頂上に辿り着かないと話にならないから……【連鎖する戒めの雷】で纏めてミニジェネシスを雷鎖に捕えて仲間の猟兵が頂上へ行くサポートをするよ…私は箒に乗って移動かな…
頂上に着いたら…吹き飛ばすことが出来れば良いけど…違う場合は上手い具合に床を破壊して川へと転がり落ちるようにしたいね…
…川に落ちたら…顔が下になるようにひっくり返す…そのままだと溺れるけどどうする…?
…動いたら再度【連鎖する戒めの雷】…ミニジェネシス諸共縛り上げるよ…
ショコラ・リング
ボク・貴方・名前+さん
ヒーローズアースに住まう方々と、強力してくれたヒーローやヴィランの皆様方の為にもここは絶対阻止せねばなりませんね!
目立ちたがり屋さんでもあるのでございますね
ならばそこにつけ込むまででございます
相手の不意を突けるよう迷彩を利用し死角から【神の杖】を放ちます
狙いは相手の足元で、頂上から落とすことを狙うのです
相手が自ら動きたくなるまで足場を破壊し、下に落としていくのですよ
解除されたらボクはミニ・ジェネシスの掃討と併せて、第六感を利用しながら相手の攻撃と皆様の攻撃それぞれのタイミングに合わせるように援護射撃で支援を行います
可能であれば骸の海発射装置を狙ってみても良いかもしれません
中村・裕美
「……骸の海発射装置……色々と解析してみたい気も」
とか思ってしまうけど我慢。今回探るのは必要なデータだけ
攻撃はパターンを【見切り】回避
最初は戦闘に積極的には参加せずに敵のデータを【情報収集】。方法は敵の体や漆黒の虚無に【早業】で【ハッキング】を仕掛ける形で
「……この虚無が骸の海の一部なら……過去というデータが……サルベージできるかしら?」
クライングジェネシスのデータを得ることができたら、リアリティハッキング】で相手を健康体、つまりは改造前の無能力者の状態へと肉体のデータを上書きする
「……相当身体に……無理してたでしょ?」
自分の疲労はドラゴンエナジーの【ドーピング】で誤魔化す
あとは味方の回復とか
カタラ・プレケス
アドリブ連携歓迎
……うん、君は正しく悪だ
どこまでも清々しいほどの悪だ
ならそれに敬意を示そう
そして一切の手心無く君を殺そう
大量の小さい敵が邪魔だね
でも、まあ多いだけなら僕の餌だ
惑う意識はさかしまに
『幻惑偽音』全力起動
この声が届く範囲の敵を
催眠術と呪詛で同士討ちを発生させよう
ついで『天蝎縛砂』で砂嵐を起こして視覚妨害
そして君は攻撃に対して無敵でも
敵からの支援は防げないんだろう
だから、纏めて眠れ
【生葬呪界・原初の愛】発動
さあ、鉄よりも岩より脆く泥以下の強度になるまで眠れ
そして寝るのなら体勢は崩れるだろう
なら動いたも同然だ
ある程度脆くしたなら致死の呪詛を込めた『呪槍蒐監』で貫こう
さあ、滅殺を始めよう。
カイム・クローバー
一人称:俺 二人称:あんた 三人称:あいつ 名前:名前で呼び捨て
折角遠くまで見渡せる景色なんだ。デカブツ野郎の出涸らしで汚すなよ。
胸の発射装置から大量に生み出され続ける出涸らし。全身無敵って話だが、あの装置の内側はどうだろうな?
銃撃を放ちながら接近し、頃合いを見て左手に銃、右手に魔剣を顕現。銃撃の【属性攻撃】と【範囲攻撃】で発射装置への道を開け、右手の魔剣を【投擲】。【串刺し】にて発射装置を叩き壊す。
突き刺さったままなら好都合だ。UCにて内側から召喚し、更に損傷を与えるぜ。空を飛ぶ出涸らしも纏めて、邪神と共に掃討する。俺は【二回攻撃】に【属性攻撃】、【クイックドロウ】で手数を増やす。
ヒルデガルト・アオスライセン
この星が悪の坩堝となる前にケリを着ける
ミニ・ジェネシス対策
大剣と銀靴のスラスターを用いて空中機動戦
足を止めず、只管敵のヘイトを稼ぎ、一匹でも多くこちらに引き付けましょう
属性&破魔で大剣に雷光を纏い、射出
オーラ&拠点防御で雷の壁を纏い、接近したミニの行動を阻害します
被弾でも怯まず、涼しい顔で踊るように、強引に飛び続けて大した事ないと鼻で笑います
突破する友軍を送り出し、追っ手と追撃を横取り、空をミニが埋める迄
ここから本体に攻撃が届く事は無いでしょう
端からやるべき事は一つ
銀貨を弾き、リキッドブレードを起動
撫でつける様に、徐々に広がるように空を光速旋回して
光の渦を生み、黒点を掃い、天上を白く染めます
神代・凶津
おいおい、状況は割りとヤバいんじゃねえか!?
ともかくカタストロフってのを止めるにはあのスカイツリーの天辺にいるオブリビオンをぶちのめせばいいんだな!?
って簡単にいけば苦労しねえか。
「・・・それでも、止めないと。」
たりめえよ、相棒ッ!
とりあえずミニ・ジェネシスとやらを薙刀でなぎ払いながら奴等の親玉に近付かなきゃな。
何とか弓の射程内まで近付けたなら破魔弓に持ち代えて封縛の矢をぶちこんでやるぜ。
ほぼ無敵でも三矢全部ぶちこめばユーベルコードを封じる効果が発動するはずだぜッ!
「・・・上手くいきますかッ!?」
さあな相棒、でもやるだけやってみようやッ!!
【技能・なぎ払い、破魔、スナイパー】
【アドリブ歓迎】
枯井戸・マックス
「例え奪った力だろうと寄せ集めだろうと、それだけ束ねればそれは立派な力だ。終いにはタダではしなず世界をひっくり返す力まで手に入れて……正直、尊敬に値する。そこまで鍛え上げるには並々ならぬ努力もあっただろう」
こいつは何よりも共感を嫌う
ならば世界知識でこいつの過去も調べた上で、コミュ力の限り同情してやろう
ついでにコレは俺の本心でもある
さあ、怒れ
怒りの余り身じろぎしろ
お前のユーベルコードは動けない代わりに無敵の力を得るもの
ならば僅かでも動いた時、一瞬力が途絶える筈だ
その隙を逃さず、狙いすました一撃をその胸に叩き込んでやる
痛打必中は命中率重視
体内で爆発する特製のソフトポイント&炸裂弾だ!【武器改造】
東京スカイツリー! 黒く巨大な円に頭上を覆われた白亜の塔の足元から、いくつもの光が垂直に飛び出し遥か天空めがけて一直線に上昇していく。それはスカイツリーの頂上を目指す猟兵たちだ!
風を切って飛翔する猟兵たちの一人、紫メインの巫女服を着た少女に被さる鬼の面―――ヒーローマスクの神代・凶津(謎の仮面と旅する巫女・f11808)が両目を忙しなく点滅させた。
「おいおい、状況は割りとヤバいんじゃねえか!? 空真っ黒だぞ!」
猟兵視力がスカイツリー上空の黒い円をズームアップ。激しく表面を波打たせながら回転し、大きくなる円の正体は無数の飛行する人影である!
ねじ曲がった二本角を持つ頭部、引き締まった紫の肉体と胸に空いた穴、背中の岩石じみた赤い翼。クライング・ジェネシスを小柄にしたかの如き姿をした特殊オブリビオン、ミニジェネシスの大軍勢! 下駄からジェット噴射して飛ぶ清川・シャル(無銘・f01440)は青い瞳を剣呑に光らせた。
「いよいよお出まししたと聞きましたが、余計なものをポンポン増やしているようですね。全員まとめて退場してもらいましょう」
「それがいい。折角遠くまで見渡せる景色なんだ。デカブツ野郎の出涸らしで汚されちゃあな」
紫電を両足にまとわせ、壁面走行しながらカイム・クローバー(UDCの便利屋・f08018)が左手に銃を構えた。直後、ミニジェネシスの円の端が伸び、スカイツリーを駆け上がってくる猟兵たちめがけて垂直降下を開始する!
空飛ぶ箒に座ったメンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)と並行して飛行する扉型の魔法陣から上半身を出し、中村・裕美(捻じくれクラッカー・f01705)はミニジェネシスの胸に空いた穴を見つめる。オリジナルにもある骸の海発射装置!
「……骸の海発射装置……あれだけサンプルあるんだし、色々と解析してみたい気も……」
「……気持ちはわかるけど、我慢して……」
「……しょうがないか……」
メンカルに言われ、裕美は魔法陣に引っ込んだ。メンカルは陣に手をかざして消し、改めて迎撃にかかってくるミニジェネシスの群れを見上げる。彼女前方、エイ型のフライングボードに乗ったアルフレッド・モトロ(蒼炎のスティング・レイ・f03702)が左手の平に右拳を打ちつけた。
「まぁとにかくだ! まずは無限に湧いて出るオブリビオンを止める! んでもって本体を叩く! それで解決だ!」
「決着をつけましょう。この星が、悪のるつぼとなる前に」
ヒルデガルト・アオスライセン(リベリアス・f15994)が言い、機械式の片刃大剣に白い雷光をまとわせた。同時にミニジェネシスの軍団が耳障りな哄笑で合唱!
先頭集団の六体が展開し、空中うつ伏せ状態で仁王立ち。セゲル・スヴェアボルグ(豪放磊落・f00533)は一度羽ばたいて加速し、仲間たちの列から突出!
「止めてくる。前には出るなよ!」
言い放ち、セゲルは両手をミニジェネシスたちへとかざした。手の平から青い0と1が煙めいて立ち上る中、ミニジェネシスは両拳を引き絞って胸を張り、骸の海発射装置を回転させた! 発射口の周囲に渦巻く赤紫色の光粒子が閃光を放ち、ミニジェネシスたちは漆黒のレーザーを撃ち出す!
VOOOOOOOOOOOOONG! ノイズの如き重低音を響かせながら、発射された骸の海がセゲルを消し飛ばさんと迫る。対するセゲルは全く動じぬまま両手の平を光らせた!
「下の奴らに迷惑はかけられんのでな……。受け止め、押し返せ! トゥルバーディッグ・フロッタ!」
セゲルが両手の平を足元の壁に打ちつけた。直後、彼の目前に青い01が間欠泉めいていくつも噴出! 物質化したデジタルノイズを突き破って現れたのは古代ローマ兵じみた武装の竜人たちだ!
竜人兵たちは丸盾を構え、ミニジェネシスたちが放つ光線を弾きながらなおも疾走! そのままミニジェネシスの先頭集団にシールドバッシュで突っ込み、大挙して押し寄せるミニジェネシス軍団に飲み込まれた。同時にカタラ・プレケス(夜騙る終末の鴉・f07768)がセゲルを追い越す!
「なるほど、大した物量だけど、多いだけなら僕の餌だ。惑う意識はさかしまに」
カタラは自身の首輪に指を触れ、息を吸い込む。次の瞬間、放たれた高音のシャウトが降り注ぐミニジェネシスの大軍勢に直撃! ビブラートを利かせたカタラの声に脳を揺さぶられたミニジェネシスたちは頭を抑えて絶叫し、傍らの同胞と殴り合い始める!
悲鳴を上げ、仲間同士で相争うケオス。ジャガーめいた黒曜石の鎧をまとったヨナルデ・パズトーリ(テスカトリポカにしてケツァルペトラトル・f16451)は、血と骨で形作られた翼を羽ばたかせながら目を細める。
「呪詛の類か。見事なものじゃの」
「まだまだ。天蠍縛砂・スコルピオ!」
勢いよく広げたカタラの両袖口から砂嵐が噴き出した! 二つの竜巻は依然殴り合うミニジェネシスの軍団に突撃して爆裂、スカイタワー中腹を砂煙で覆い隠す。
もうもうと立ち込めるライトブラウンの薄雲を見上げ、ヨナルデは黒曜石の大斧を振りかぶる。主の身の丈を超える刃を漆黒が包み込んだ!
「我ジャガーにして煙吐く鏡、テスカトリポカにしてケツァルペトラトルたる者! 闇に退け、妖どもよ!」
戦斧を横薙ぎ一閃! 放出された膨大な闇が砂嵐もろともミニジェネシスの群れに食らいつき、後から来る個体群をも飲み込みながら真っ直ぐに上昇していく。やがてスカイツリーの頂上をも突き抜けた闇を横目に、細い柱に足一本で立つクライング・ジェネシスは鼻を鳴らした。
「ようやく来たか。待ちわびたぞ!」
組まれた両腕の直上、骸の海発射装置が回転し、マシンガンめいて紫光の弾を乱射する。ある程度進んだところで停止し、爆ぜ飛んだ光弾から現れるミニジェネシスたち。卵の孵化めいて産み落とされた軍勢は赤い岩の如き翼を広げて直下へと飛ぶ!
ミニジェネシスたちの下方には、スカイツリーの壁を全力疾走するカイム! 右手から伸ばした紫電を弾けさせ、召喚した黒銀の長剣剣を逆手に握ったカイムは、左手の銃口をミニジェネシスに突きつけた!
「道を開けな出涸らし共! お呼びじゃねえんだよ!」
BLAMBLAMBLAMBLAM! 紫のマズルフラッシュが光り、雷をまとった銀の銃弾がミニジェネシスの眉間を次々と射抜く。死亡し推進力を失った第一波を殴り飛ばして飛来する第二波! カイムは刀身に紫雷を走らせ、真横に振り抜く!
「はッ!」
ZGRAAAAAAAAAAK! 津波じみた紫電がスカイツリーの壁を駆け上がり、ミニジェネシス第二波をまとめて消し飛ばす。その奥の第三波が急制動をかけ、胸から骸の海を射出! 黒い光線がカイムの雷波に幾本も突き立ち、それぞれ巻き取るように雷を吸収消滅させていく。
VOOOOOOOM―――! 雷鳴に混じって聞こえる虚無の音響。骸の海を放ち続ける第三波を飛び越える第四波に、凶津とアルフレッドが強襲をかける! 二人の前面をそれぞれドリルめいた暴風と水流が防御! 第四波が撃ち出す骸の海を弾き飛ばす!
「ちょーっとどいてな、凶津。狙いやすくしてやるからよ!」
「手早く頼むぜ。後がつっかえてる!」
「おうよ! じゃあ行くぜ!」
アルフレッドが右手指をかぎ爪めいて折り曲げ、限界まで引き絞った。青く闘志を燃やす瞳が、第四波と合流し迫りくる第五波をにらみつける!
「行くぜクライマックスだ! ライオット・イン・ブル―――ッ!」
アルフレッドがアッパーじみて右手を振り抜いた瞬間、彼の周囲に現れた複数の渦潮が槍の如く伸びた! 流線を描きながら飛んだ渦の先端が、ミニジェネシスたちの腹部を連続で貫通していく。アルフレッドは突き出した両手を手首で合わせ、渦潮を束ねた。
「ほらよ、お膳立て完了だ!」
「サンキューアルフレッド! ここが狙い目だ、気張れよ相棒ッ!」
凶津を被った巫女服の少女が頷き、薙刀を頭上で回転させる。刃に風をまとわせて柄をつかみ、叩き斬るように振り下ろした。
SLASH! 一瞬の無音ののち、ミニジェネシス軍団の体に無数の切れ込みが入り爆散死! 空中に飛び散る肉片と黒い粘液を白い光が一条射抜いた。全身に白雷をまとったヒルデガルトが、銀靴からスラスター噴射させた飛翔! おかわりミニジェネシス軍団を見据えて前転、足裏でスカイツリーの壁を蹴って跳躍しつつ大剣の先に稲妻を溜める!
「こちらです。来なさい」
機械式大剣の柄についたトリガーを握り込み、切っ先から白雷を発射! ZGAM! ZGAM! ZGAM! 稲妻が軍勢に直撃しては爆発し、隊列を乱す。ミニジェネシスの数体がヒルデガルトを見上げ、彼女の方へ飛び立った!
「そう、あなたたちの相手は私。追ってきなさい」
ヒルデガルトはクルリと回ってミニジェネシスたちに足を向け、スラスター噴射でスカイツリーから距離を取る。追いすがるミニジェネシスたちは両手や胸から骸の海を撃ち出して砲撃! ヒルデガルトは錐揉み回転からの急上昇、急転換を駆使して背を射抜かんとする黒い筋の隙間を駆け抜ける。対空射撃を掻い潜る戦闘機めいて!
大量のミニジェネシスたちとドッグファイトを繰り広げるヒルデガルトを見下ろし、クライング・ジェネシスは喉を鳴らした。
「ハッ、力押しじゃ越えられないと見て囮作戦に出たか馬ァァァァァァ鹿めぇぇぇぇぇぇ! そんなことをしたところで、俺の分身は無限に作れる! お前らは俺の圧・倒・的な物量に押し潰されて無様に死ぬんだよ! ヒーロー大敗北シーンを全国ネットで流してやるぜ! ギャ―――ハッハッハッハ!」
骸の海発射装置が回転数を増し、ガトリングガンじみた速度で紫光弾を吐き出し続ける。彼女を追うミニジェネシスはさらに増加。より密度を増す骸の海の弾幕が、ヒルデガルトのスカートや肩を穿った! ヒルデガルトは鼻で笑う!
「その程度ですか? 大したことありませんね」
ヒルデガルトは身をひねって切っ先をミニジェネシスたちに向け、雷撃を繰り出す! 白い稲妻が空気を引き裂き、ミニジェネシスの頭部を吹き飛ばした。二体目、三体目も同様に消し飛ばし、クライング・ジェネシスが追加で呼び出したミニジェネシスをも砲撃!
BOOOM! BOOOM! BOOOOM! 白い爆発を突っ切った数体のミニジェネシスがヒルデガルト襲撃部隊に加わった。
「いじましい努力、ご苦労さん! 俺の分身はいくらでも作れる! お前の無謀な囮作戦は犬死にの失敗でジ・エンドだ! ギャハハハハハハハハハハハ!」
哄笑するクライング・ジェネシスの胸部が加速度的に連射速度を上げていき、空中に吐き出された光が新たなミニジェネシスたちを大量生産! 球状にどんどん増殖していくミニジェネシスの群れ。その下方で青白い魔法陣が開かれた。魔法陣の向こう、メンカルは手にした杖の先を新規ミニジェネシスたちを指し示す!
「紡がれし迅雷よ、奔れ、縛れ。汝は電光、汝は縛鎖。魔女が望むは魔狼封じる天の枷」
魔法陣が煌々と輝き、無数の紫電鎖を解き放つ! ZZZZZZZZT! 電光を散らしながら噴き上がった鎖は空中に止まるミニジェネシスの軍団をネット状に縛り上げ、激しい感電光で空を照らした。クライング・ジェネシスは腕組みしたまま余裕を崩さぬ!
「雷と捕縛のユーベルコードか! 縛られてねえミニジェネシスはいくらだって作れるんだ! 全部縛りつくすなんてことが出来るわきゃーねえだろ!」
なおも放たれ続けるミニジェネシス軍団の卵が爆散し、新たな個体群を生成! 垂直上昇したメンカルは捉えたミニジェネシスたちの陰に飛び込み、骸の海の砲撃を避ける。そのままメンカルは杖を打ち振り、クライング・ジェネシスを遠巻きに取り囲むように無数の魔法陣を展開! 陣から吐き出された紫電の鎖がスカイツリーの頂上に張り巡らされた!。
一瞬にして構築される空中ジャングルジムじみた巨大な雷鎖のアスレチック! その隙間を金色の光が突き抜け、クライング・ジェネシスと斜め下からすれ違う。金光をまとった大豪傑・麗刃(変態武人・f01156)は抱え込み前転から身をひねり、直線状に張り渡された鎖に着地!
「えーっと……きみ、フライパンで時短調理くんだっけ? こんな高い所まで登って、まさに馬鹿と煙はというやつなのだ! ましてここはスカイツリー! きみはすごいずりぃ! いよっと!」
弓から跳ぶ矢の如く水平に跳躍する麗刃! 右手指に刀二本、左手指にバスタードソードと玩具めいた剣を挟み、メンカルの鎖を錐揉み回転回避するミニジェネシスの一体とすれ違う!
SLASH! 彼の背後で三枚下ろしと化すミニジェネシス! 振り来る黒い血と肉片を余所に、クライング・ジェネシスは己の腕を見下ろした。すれ違いざまに為された『バカ』『あつりょくちょうりなべ』などの落書きが踊る。四本角の生えたこめかみからブチリという音!
「ザコが……俺に落書きなんぞしやがって……!」
「悪いな、うちの同僚が」
クライング・ジェネシスの視線が上に滑った。すぐ近くの鎖に屈み込む形で陣取った枯井戸・マックス(マスターピーベリー・f03382)は丸いサングラスを押し上げる。
「例え奪った力だろうと寄せ集めだろうと、それだけ束ねればそれは立派な力だ。終いにはタダでは死なず世界をひっくり返す力まで手に入れて……正直、尊敬に値する。そこまで鍛え上げるには並々ならぬ努力もあっただろう。それに馬鹿って書くとはな。やれやれ」
「なんだァ、テメェ……」
突き刺さるクライング・ジェネシスの視線に、マックスは肩をすくめてみせた。
「いやなに、だいぶ苦労したんだろうなって思っただけだ。死ぬまで力を求めて、死んでもなお蘇るその根性。そんな奴は中々いない」
「ふん、心にもねえことを!」
直後、マックスは華麗に跳躍! 彼が居た地点を黒い光線が射抜き、別の鎖に飛び移ったところへミニジェネシスが殴りかかった! マックスは右腕に群青色の光をまとわせ、飛来するパンチをガードする。
SMASH! インパクトにより吹き飛んだ群青色の光の下には、無骨な機械式の手甲! クライング・ジェネシスは組んだ両腕を小刻みに震わせ始めた。
「どいつもこいつも……いつもそうだ! 俺が無能力者だとわかった途端に馬鹿にしやがって……そん中にもいたぜ、お前みたいに賢しら顔で同情なんぞするクソが! 気持ちはわかるだのなんだのと偉そうにゴチャゴチャ吐きやがって! そういう連中は一人残らず引き裂いて、力を根こそぎ……んぐっ!?」
クライング・ジェネシスの視界が一瞬ぼやけ、体勢が揺らぎかける。彼は即座に腕を組む力を強め、腹と首に力を込めて姿勢を制御。骸の海発射装置の回転が弱まると同時、彼の周囲を砂嵐と黒い闇が覆い隠した!
ZAAAAAAAAAP! 真夜中の砂漠めいた暗黒の空間に砂が擦れる音が鳴る。それに混じって響く潮騒。砂嵐の外側で、カタラはマックスに殴りかかる個体を蹴り飛ばし、青い鬼火を閉ざした鳥籠を鈴のように揺する。揺らぐ炎から波の音!
「はいはい、そこまで。悪いんだけど、君の身の上話に興味はないんだ」
暗闇の中、うめくクライング・ジェネシスの体が小刻みに震え始める。目に見えて遅くなる紫光弾の発射速度!
「ごおおおおおおおっ……! こっ、こいつはッ! 催眠術の類かッ……! っつーことはッ、そこのグラサン野郎のおべんちゃらは時間稼ぎの……!」
「ご明察。あらゆる攻撃に対して無敵だというのなら、こっちから君を傷つけるのは不可能だ。そして君は攻撃に対して無敵でも、敵からの支援は防げないんだろう」
「一応、本心なんだぜ?」
苦笑しながら呟くマックス。カタラはマックスの額を隠す、上半分の鬼面を見やって視線を砂嵐の方へと戻した。
「だから、纏めて眠れ。鉄よりも岩よりも脆く泥以下の強度になるまで」
「おおッ……ぬうおおおおおおおおおおおッ!」
己を強いて体勢を保ち続けるクライング・ジェネシス。力を込めた両腕が軋みを上げ始め、骸の海発射装置が回転を停止させた直後、彼の前方で砂嵐が爆ぜた! 飛び出したシャルとヨナルデがそれぞれ左手と振りかぶった斧に冷気を収束!
「おっと、ちょうど止まったところだったんですね。ナイスタイミングです」
「無限に湧いて出るなら埋めるまで! 凍りつけ!」
シャルが手の平を突き出し、ヨナルデが斧を振るって同時に大量の氷柱を発射! 横殴りの雨じみて飛来する氷の矢ぶすまを、クライング・ジェネシスは霞む視界の中に捉えた。胸筋に力を込めるが発射口は回転せず! 無敵保持が限界! 彼は頭にかかる靄を吹き飛ばすようにして叫ぶ!
「分身共おおおおおッ! 今すぐ俺をガードしろおおおおおッ!」
次の瞬間、四方八方の砂嵐を突き破ったミニジェネシスたちがクライング・ジェネシスの目前で肉壁となった! SINKSINKSINKSINK! 次から次へと突き刺さる氷柱の弾幕がミニジェネシスの壁を片っ端から凍らせていく。骸の海発射口の動きは鈍い!
(動きやがれクソめ! コレさえ動けばこの程度ッ……!)
クライング・ジェネシスの身体が薬物禁断症状めいた震えに走る。視界はぼやけ、焦点が合わぬ。千々に霧散しかける意識を眉間にかき集め、大胸筋に力を集約! わずかに発射口が回り始めた刹那、ミニジェネシスの壁がクライング・ジェネシスに叩きつけられた!
「むぐおッ!? 今度はなんだァ……ッ!」
クライング・ジェネシスの呻き声を、ヨナルデは凍りかけたミニジェネシスの壁越しに聞いた。血と骨の翼を羽ばたかせた彼女は、ミニジェネシスが結集して作り出した防壁をクライング・ジェネシスに押し付けているのだ!
「わざわざ集めてくれたからのう、有効に使わせてもらうぞ!」
ヨナルデの両腕にまとわりつく吹雪が波紋めいてミニジェネシスの壁を撫で上げる! SiiiiiiiiiNK! 真っ白な霜に覆われるミニジェネシスたち。そこへシャルの氷柱がどんどん突き立ち、氷を分厚いものへ変えていく! 砂嵐を突っ切ったカイムはシャルの隣を駆け抜け、右手の魔剣を振りかぶった。
「ヨナルデ、ちょっとどいてな! それごと奥の奴に風穴空ける!」
「よかろう。外すでないぞ!」
ヨナルデは両手を折り曲げて力を込め、思い切り押し出した! クライング・ジェネシスはミニジェネシス壁の圧を爪先に力を込めて受け止める。一方反動で吹き飛んだヨナルデは羽ばたいて急上昇、その背後で長剣をジャベリンめいて振りかぶったカイムは刃を紫電で包み込んだ!
「俺の自慢の一品だ。冥土の土産に食らって行きな!」
ZGYAAAAAAAAM! 紫のビームと化した投剣が氷壁のど真ん中に直撃! 蜘蛛の巣状の亀裂を入れた刃は深々と凍ったミニジェネシスたちを貫き、クライング・ジェネシスの胸部に達した。骸の海発射口に稲光放つ剣が突き立つ!
「うおおおおおおおおおおおおッ! 畜生めがぁぁぁぁッ!」
叫ぶクライング・ジェネシス! 肉壁の圧力と電光が彼の体勢を突き崩さんとする。霧がかかりブラックアウトしかける意識! 腹が穴の開いた風船めいて脱力していく! バチバチと視界がスパークするのを感じながら、クライング・ジェネシスは吠えた!
「負けてたまるかァ! 動けクソがああああああああッ!」
大胸筋極度収縮! 同時にカイムの剣が食い込んだままの発射口が勢いよく回転を始め、黒く禍々しいオーラを波打たせていく! そして―――VOOOOOOOOOOM! 黒の砲撃が氷の壁から噴き出した!
「っと!」
カイムは傍らのシャルを横抱きにして虚空を蹴り、放たれた骸の海を掻い潜る。亀裂を深めたミニジェネシスの氷壁が爆砕! ガラガラと崩れ落ちる壁の奥から姿を見せたクライング・ジェネシスは、肩で息をしながらも体勢を維持!
「ハァーッ、ハァーッ……! 味な真似をしやがって……!」
空回りする胸の発射口に力を集中させ、再回転! 過去の集積たる漆黒の光をチャージする!
「だがネタは割れた。今度こそ俺の分身で押し潰して、真っ逆さまに叩き落としてやるァァァァァッ!」
「いいえ、真っ逆さまに落ちるのは貴方の方です」
声はクライング・ジェネシス後方上空! 上下反転状態で浮いたショコラ・リング(キマイラのアーチャー・f00670)が黒い矢を限界まで引き絞る。クライング・ジェネシスは後手に回った!
「後ろにッ……!」
「捧げるは我が祈り、矢に纏いたるは神の怒り。全てを薙ぎ払う破壊の果てに創造を! メテオアロ―――――――――ッ!」
SHOOOOOOOT! 撃ち出された黒い矢がスカイツリーの頂上に命中し、一瞬眩い光を見せた。刹那、KRA-TOOOOOOOOOOM! 真っ黒い大爆轟が砂嵐もろともスカイツリーの頂点を消し飛ばした! 吹き荒れる凄まじい烈風がメンカルの鎖を激しく揺らす。爆発が晴れたそこには、抉り取られたスカイツリーの頂上部分と、足場を失い宙に投げ出されたクライング・ジェネシス!
「お、俺の足場を! この野郎ッ!」
「落ちました! セゲルさん!」
「よくやった」
ショコラの真下を流星めいて滑空したセゲルは空中に投げ出されたクライング・ジェネシスの尻尾をつかみ、ハンマー投げ選手めいて振り回し始める! SWING! SWING! SWING! 遠心力と勢いをつけ、斜め下方へと投擲!
「うおあああああああああああああ―――ッ!」
腕組み姿勢のまますっ飛んでいくクライング・ジェネシス。削れた塔の上に着地したセゲルは、長い顎髭を撫でつけた。
「敢えて無敵は解かないか。あぁ、別に好きなタイミングで動いてもらって構わんぞ。俺たちがやることは変わらんからな」
セゲルが平然と呟く反面、仰向け状態のクライング・ジェネシスは高速思考を振り絞る! 骸の海発射装置は依然駆動中! クライング・ジェネシスが意を決した直後、彼は右肩甲骨部分に硬い球状の物体が引っ付くのを感じた。箒に横座りしたメンカルが杖を軽く振り下ろす!
「……詠唱破棄、ステルス・ボム」
BOOOM! 爆発と共にクライング・ジェネシスが仰向けになった。地上を向いた彼の死角にエイ型フライボードの影が滑り込む! クライング・ジェネシスの真上を取ったアルフレッドはボードに片足を叩きつけた!
「っしゃあ! このまま真っ逆さまに叩き落としてやるぜええええええええええッ!」
身をひねり、コマの如く高速回転! たちまちアルフレッドを竜巻じみた水流が包み、クライング・ジェネシスの背中に垂直落下して直撃! そろって地上へダイブしていく中、クライング・ジェネシスは恐るべき速度でズームアップする河川に気づいた。
「うおおおおおおッ! 川にッ! 川に落とすつもりか! ランドマークを破壊してまでッ! お前らそれでもヒーローかぁぁぁぁぁぁぁぁッ!」
クライング・ジェネシスの声に、メンカルは眼鏡を押し上げて言い放つ。
「……魔王にだけは……言われたくない……。ところで……そのままだと溺れるけど、どうする……?」
「動けねえなら抵抗もできまい! それとも、ここで一生その地味な状態で居るか? 全国ネットで放送されてるんだろ!?」
速度を増すアルフレッド! クライング・ジェネシスの脳裏にいくつかの選択肢が浮かぶ。無敵は現在継続中。ミニジェネシスを召喚してのガードが有力だが、猟兵による先の対処! どれほど成功するものか! クライング・ジェネシスは近づいてくる川の水面を睨み、覚悟を決めた!
「いいや、まだだ! まだ手はあるッ! 見せてやるぜ俺の機転! 骸の海、発射ああああああああッ!」
VOOOOOOOOOOM! 骸の海が川に向かって放たれる! 水面に直撃し、派手に噴き上がった水柱の下から―――黒い大穴が開かれた! 周囲一体を飲み込む極大の奈落。骸の海に塗り替えたのだ! 猟兵たちがそろって目を剥く!
「ギャーッハッハッハッハッハッハ! どうだカスども! これでお前たちの思惑は外れたぞ! それとも来るか? この俺が作った空間に!」
大笑するクライング・ジェネシス。アルフレッドは数秒迷った末、ドロップキックじみてクライング・ジェネシスを吹き飛ばした! 突き落とされたクライング・ジェネシスは腕を解いて無敵を解除。翼を広げて奈落へ飛び込んでいく彼の背に、メンカルは杖を突きつけて魔法陣を展開。紫電の鎖を五本撃ち出した!
「……逃がさない……ここで必ず倒す……」
クライング・ジェネシスの後を追う鎖。だがその行く手にミニジェネシスの大軍勢が割り込み、骸の海発射装置を回転させる。銀靴のスラスターを吹かせ、その真横に飛び込んだヒルデガルトは片手で銀貨を弾いた。くるくると回りながら飛んだコインは白熱し、プラズマ化して爆散! ヒルデガルトを螺旋状に包み込み、白い稲妻に塗り替えた!
「相手は私です。リキッド・ブレード起動」
ヒルデガルトが機械剣を撫で上げ、刃をプラズマに変える。直後、彼女の姿が掻き消え、ミニジェネシスたちの周囲に白光の円環が作り出された! 円環は徐々に光量を増し、獣の遠吠えじみた雷鳴を響かせる。SMACK! 中空が真っ白に染め上げられると共に、空間を揺さぶる大轟音が響き渡った! 激しい光がおさまったそこにミニジェネシスの姿無し! 上空に飛んだヒルデガルトの体から白雷が消滅。
「ふう……これで全部でしょうか」
「お疲れさん!」
ヒルデガルトに一言告げた凶津が、奈落の底で体勢を整えたクライング・ジェネシスを睨む。回転を加速させる骸の海発射口を見据え、巫女服に呼びかけた。
「これ以上援軍呼ばせるかよ! 構えろ相棒! ほぼ無敵でも三矢全部ぶちこめばユーベルコードを封じる効果が発動するはずだぜッ!」
「……上手くいきますかッ!?」
「さあな相棒、でもやるだけやってみようやッ!」
「……はいっ!」
頷いた巫女服の少女が両足をクライング・ジェネシスに向け、矢を三本まとめて引き絞った。クライング・ジェネシスは両腕を引き絞り、胸を張った姿勢のまま動かぬ! 動いているのは骸の海発射口のみ!
「撃てェ相棒ッ! 封縛の矢ぁぁぁぁぁッ!」
「……射抜きますッ!」
SHOOOOOT! 疾風をまとって撃ち出された三本の矢が、骸の海発射口をめがける! クライング・ジェネシスはまだ不動。距離が徐々に縮まり、彼我の距離3メートル、2、1! 直後、クライング・ジェネシスは右手を閃かせて矢を受け止めた。そして左手を握り込み、遠く離れた凶津たちめがけて対空パンチを繰り出す! 拳から噴き出した火球がミサイルめいた速度で凶津に急接近!
「んだとぉッ!?」
「…………っ!」
火球は愕然とする凶津と少女に直撃し、CABOOOOOOOM! 空中で爆炎を巻き起こした。クライング・ジェネシスは呵々大笑!
「ギャーッハッハッハッハッハッハ! 引っかかりやがったな! お前の矢が何に当たったのか……生きてんならよーく見るこったなぁぁぁぁぁぁっ!」
哄笑しながら大きく掲げられた右手。そこに握られているのは―――三本の矢が突き刺さった朱塗りの鬼面! 実際凶津の本体そのものであった! クライング・ジェネシスは手中の凶津を握り潰すと、両手を胸の穴に突っ込んで引きずり出す。右手にメンカル、左手にショコラ! 奈落の外側、空中に陣取った二人は瞠目した。
「えっ……」
「なっ、あれは、ボク……?」
「ギャーッハッハッハッハ! 見覚えあるか! あるに決まっているな! これは過去の貴様ら自身ッ! そしてこの力を……俺がもらうッ!」
クライング・ジェネシスはメンカルとショコラの頭部をつかみ、握り潰した! 頭部を失った体が黒い霧となって消え、クライング・ジェネシスの腕に螺旋を描いてまとわりつく。全身を折り曲げた彼の体が隆起!
「お、おおおおおおおおおおおおッ! みなぎって来たぞおおおおおおおおッ!」
クライング・ジェネシスが生み出した虚無が急速で拡張! 周囲の景色を黒一色で塗りつぶし、猟兵たちを暗黒の中へと閉ざして行く。カイムの腕から跳ね起きたシャルは、両手にピンク色の長銃を。両肩と頭部にかけてアーチを描くように浮遊するスピーカーを呼び出した!
「何をするつもりか知りませんが、いいことはなさそうですね」
「ああ。とてつもなく嫌な予感がする。さっさと終わらせた方がよさそうか……!」
カイムの全身に紫雷がほとばしり、黒コートの背中を突き破って漆黒の翼が飛び出した。金色に変色させた両目を見開き、腰に下げた拳銃を引き抜いて二丁拳銃スタイルに移行! 羽ばたき、雷光を散らしたカイムは両腕を交叉した!
「行くぜ、ショータイムだ!」
カイムの二丁拳銃がクライング・ジェネシスを狙い、紫電の咆哮を放った! GRRRRRRRRRRRRRRR! マシンガンじみた速さでまき散らされる銀の弾丸。シャルはピンクの長銃を投げ上げ、両肩部分に出現した花形のスピーカーに触れるCADOOOOOOOOM! 全てのスピーカーから甲高い金属音と熱線!
他方、アルフレッドが振り上げた手に呼び出した巨大な渦潮を投げつけ、ショコラが黒い矢を再度射出! ヨナルデの振り下ろした黒曜石の戦斧が吹雪の大竜巻を繰り出し、セゲルは巨大化した槍を投擲! 押し寄せるオーバーキルめいた遠距離攻撃! だがクライング・ジェネシスは一切動じず両手の平を突き出して魔法陣を開いた。蒼白い光をたたえ、六芒星をベースにした紋様。メンカルが驚愕の声を漏らす!
「……嘘。それは、私の……」
「もらったぜ、お前の力ァッ! ユーベルコード・ディスインテグレイト! お前ら全員のユーベルコードを『却下』するぜッ!」
SMAAACK! 魔法陣から放たれた光がクライング・ジェネシスに向かう攻撃を全て押しとどめ、風前の灯じみて消失させた。光が消えると同時、クライング・ジェネシスの両手に空いた発射口が黒い閃光を撃発! メンカルとショコラをめがける、漆黒の矢! ショコラが愕然とした面持ちで凍りついた。
「ボクの、メテオアロー……!? どうして……!」
矢が二人にぶつかるその寸前、彼らの背後から伸びた鎖が腹をグルグル巻きにして引っ張り寄せる! 目標を失った矢は闇に閉ざされた空に消失。鎖で二人を引き寄せたカタラは、クライング・ジェネシスの方に目を向けた。
「他人のユーベルコードを奪って来た経歴……まさか」
カタラからやや離れた地点。彼の言葉を聞いたマックスが、呟いた。
「恐れ入る。人のユーベルコードをコピー……いや、呼び出した過去から奪い取ったのか。生前の所業の、骸の海を使った発展版というわけか」
「チッ、速攻バラしやがってクソグラサンが……。やっぱお前からぶち殺してやるべきか!?」
罵りながら、クライング・ジェネシスは胸の穴に手を差し込んでは引き抜いていく。虚無の空間に投げ出されていく、猟兵たちと瓜二つの現身たち。横一列に並べたそれらの首を腕のひと振りで吹き飛ばしたクライング・ジェネシスは、黒い霧となって散る猟兵たちをその身にまとった。
「その通り。ここは部分的に再現した骸の海! 即ち過去そのものだ! こいつらを俺自身に取り込むことで、俺はその力を得ることが出来る! お前らの過去を糧に、俺は無限に強くなるってえわけだ!」
声高な宣言が虚無に木霊して消える。ショコラとメンカルに巻いた鎖を砂化させたカタラは、手に下げた鳥籠を持ち上げた。中の鬼火が膨れ上がって鉄格子を包み込み、伸長! 炎が失せたそこには、一本の槍が握られていた! カタラは槍の穂先をクライング・ジェネシスに突きつけて言う。
「……うん、君は正しく悪だ。どこまでも清々しいほどの悪だ。ならそれに敬意を示そう。……そして一切の手心無く君を殺そう」
「やってみろ! 『ゾディアックアーマー』、『ナウイオセロトル』、『ルストニン・ギャラノット』、『ストームフォーム・ツー』、『コウテン・マリシテン』!」
胸を張るクライング・ジェネシスが赤青黒の混じった暴風に包まれた! 黒曜石の鎧を失ったヨナルデは全身を包む血の渦を内から斬り裂き、鎧と戦斧を再生させる。また、宙を漂う爆炎を振り払った凶津が薙刀を構え直した。
「ゲホッ! ったく、俺だけじゃなくて相棒との連携技までパクるってのか? ぶちのめしてやりてえが……簡単にいけば苦労しねえか」
「……それでも、止めないと」
「たりめえよ、相棒ッ! まだやれるな?」
「……うん!」
巫女服の少女が構え、薙刀を用いた演武で暴風を巻き起こす! 一方、三色の嵐を内側から跳ね飛ばしたクライング・ジェネシスは、全身に青みがかった黒色の鎧をまとい突撃槍を肩に担ぐ。背中からは血と骨の翼! 様変わりした彼は槍をひと振りして咆哮!
「思い知れ。お前らを殺すのはお前ら自身だってなあああ!」
VANISH! クライング・ジェネシスの巨体が消えた次の瞬間、空中でうろたえていた麗刃の横面に鉄拳が入った!
「ぐべえええっ!?」
「まずはお前だ! よくも落書きなんてしてくれやがったよなああああああッ!」
SMAAAAASH! 殴り飛ばされた麗刃が砲弾めいて飛ぶ。その行く手に出現したクライング・ジェネシスは彼の脇腹にアームハンマーを振り下ろした! CRASH! 肋骨の半分が粉砕!
「うげふっ!? ちょ、ちょっと……これはわたしの管轄外ッ……」
「うらああああああッ!」
クライング・ジェネシスの蹴りが麗刃の背中に突き刺さり、蹴り飛ばした! またしても吹き飛ぶ麗刃を暴風のジェット噴射で追うクライング・ジェネシス。その目の前にヒルデガルトがインターラプト! 繰り出された槍の穂先を両手でつかむが抑えきれず鳩尾を射抜かれる!
「くふっ……!」
血を吐きながらも槍を握りしめるヒルデガルト! 血の染みが広がるドレスを這い回る白雷が球状に膨れ上がった。球の表面に触れたクライング・ジェネシスから激しい電光の音が散る! ZZZZZZT! だがクライング・ジェネシスは平然とした声音!
「ハッ。痒いぜ」
「そうですか。では、次はどうです?」
ヒルデガルトは片手を閃かせビンをクライング・ジェネシスの顔面に投げた。FLAAASH! ビンから派手な閃光を爆発! 鼻で笑ったクライング・ジェネシスの背をセゲルの声が打ち据える!
「その場を動くな!」
逆光となったクライング・ジェネシスの背後に回り込むセゲルとアルフレッド! セゲルが大きく振りかぶった槍の柄尻に、アルフレッドはドリルめいた流水をまとわせた拳を腰だめに引き絞る!
「アルフレッド。お前の渦を貸してもらうぞ」
「やるっきゃねえか。ブチ抜いてやろうぜ!」
流水のパンチが放たれ、SMAAASH! セゲルの槍が撃ち出された。槍は柄尻から昇る流水に飲み込まれ、水のドリルと化してクライング・ジェネシスの背中を狙う! クライング・ジェネシスは無造作に放った裏拳でこれを撃ち落とした! そのまま自分の槍を振るってヒルデガルトを振り払う。セゲルたちに向き直ったクライング・ジェネシスのうなじにシャルが強襲!
「そーちゃん、チェーンソーモード!」
振りかぶられたピンクの金棒が平たくなりチェーンソーに変化する。駆動音を撒き散らす回転刃に黒みがかった桜色のオーラをまとわせ、シャルはクライング・ジェネシスの首を断ち斬りに行く! CRASH! シャルは目を見開いた。チェーンソーの刃は鎧の上を滑るのみ!
「効いてねえぞ!」
クライング・ジェネシスはシャルの腹に肘を打ちこむ! 彼女の背後に瞬間移動し、前蹴りでセゲルへと蹴り出した! さらに姿を消し横合いから乱射された紫電の弾丸を回避! 離れた地点で弧を描くように飛びながらガンスピンリロードするカイムの真横に密着した!
「悪いね。俺はゴツい男に付きまとわれる趣味はねえ!」
「安心しろ。そのうちイイ女が見つかるだろうさ。骸の海でな!」
突き出された槍をカイムは間一髪でクロスガード! 耐えきれず吹き飛ばされた彼の両腕がへし折れた所へ、クライング・ジェネシスは急降下タックルをしかける! カイムは紫電まとう漆黒の翼を羽ばたかせ電光を放出! だが青黒い鎧の腕がひと薙ぎで雷を振り払った。右手を振りかぶるクライング・ジェネシス!
「『ソニックブロウ』+『炎獄砲』!」
紫電と紅炎に覆われた拳で右ストレート! FABOOOOOM! カイムの頭部が消し飛び―――彼の身体が頭を失った木製人形に変化した。
「……偽物か!」
「その通り。ついでにひとつ聞いていいか?」
クライング・ジェネシスの肩の上にマックス! 空っぽの革張りアタッシュケースを捨てた彼は、槍ぶん回しをバク宙して回避する。衝撃波に両脚を砕かれながらも、彼は青い鬼の面で目元を覆った。マックスの頭上で青黒いオーラが爆発し、巨大な裁ちバサミが出現!
「お前は、今までいくつのユーベルコードを奪って来た? 答えてもらうぜ!」
「知った……」
クライング・ジェネシスは槍を下段に引き絞る! まとわりつく黒銀の炎と青色の冷気!
「ことかァッ!」
マックスの顔面めがけ突き出された槍の穂先に、裁ちバサミが食らいついた! SLASH! 槍を真っ二つに切断したハサミは、閉じた切っ先を鎧の胸へと叩き込む。硬い音を立てて止まる刃! 刹那、クライング・ジェネシスの背後に回ったヨナルデが黒曜石の斧を脳天に振り下ろした! 衝突、しかし破壊ならず! ヨナルデは斧を押し込みながら叫ぶ!
「我らに仇成す者を呑め、夜の闇!」
黒曜石の戦斧から噴き出した黒い霧がクライング・ジェネシスを覆い隠す! マックスと一緒に素早く飛び下がったヨナルデが合図を出した!
「今のうちじゃ! 早うせいっ!」
彼女が声をかけた先は下方! クライング・ジェネシスの真下で両手の平を合わせるカタラとショコラだ!
「一発勝負だ。彼から、光と音を奪い取る。行くよ」
「はい……!」
緊張した面持ちで頷いたショコラが目を閉じる。二人を中心にして緑と紫二色の魔法陣が展開! 二人はそれぞれの詠唱を口ずさんだ。
「我が祈り、我が血を以て、悪しきモノを鎖し給え!」
「私が願い、私が謳う。全て全ては夜の中、光は岩戸に閉ざされて、もはや音さえ届かない」
魔法陣の中央から二色の光が球状に膨らみ、闇を振り払ったクライング・ジェネシスを捉えた。光が消えた時、クライング・ジェネシスは周囲を見渡す。無音と暗黒の世界に一人!
「チッ。偽物の次は幻覚の類か。しゃらくせえッ!」
クライング・ジェネシスは両拳を打ち合わせ、力を込める! 己の手も見えないが、その感触は確か! 彼を中心に虹色の光が激しく渦巻く!
「『エレメンタル・オード』、『ヴァーダン・ティラニー』、『神威の顕現』、『マイティショット』、『ガンズ・ラプソディ』、『第三禁忌・終末狂騒ヒガンバナ』!」
虹色の光が大爆発し、大嵐を引き起こした! 無音にして盲目状態で放つ無差別攻撃が、互い違いに飛び離れるカタラとショコラを押し潰さんとす。だがその寸前、二人の足元にそれぞれ青白い魔法陣が展開し、彼らを青白い光に変えて吸い込んだ。BLASTOOOOOOOOOOOM! 嵐が吹き荒れた先、生み出された台風の目に再度青白い魔法陣が出現! そこから飛び出したメンカルと凶津が嵐の中心で力を注ぐクライング・ジェネシスへ一直線に向かう!
「ったく、そういう奴だとは聞いていたがよ! 実際にパクられると気分が悪ィ! 禁止だ禁止!」
「……ん。邪なる力よ、解れ、壊れよ。汝は雲散、汝は霧消。魔女が望むは乱れ散じて潰えし理」
メンカルが杖の石突を足元に振り下ろす! 一方、メンカルがまとうローブの裏側に刻まれた魔法陣の奥。一時的に提供された空間でホロキーボードを叩いていた裕美はマウスを素早く動かし、缶ドリンクを一気に飲み干す!
「……この虚無が骸の海の一部なら……過去というデータが……サルベージできるかしら?」
ドーピングドリンクでブーストされた速度で高速タイプ! 画面に映し出されたクライング・ジェネシスの体をスキャンし、エンター!
「……相当身体に……無理してたでしょ? これで無効化、できるはず……頑張って」
魔法陣の外で裕美の呟きを聞いたメンカルは杖の石突とクライング・ジェネシスの頭上に魔法陣を展開! ペールブルーの閃光を放射した。
FLAAASH! 光に触れた傍からクライング・ジェネシスを覆っていた鎧が消滅し、同時に際限なく膨らんでいた超常の嵐も霧散する。軽くなった体を見下ろすクライング・ジェネシス。視界はい変わらず黒一色!
「クソッ! 俺の鎧を解除しやがったかッ!」
「何が俺の力だこの野郎! パクっただけだろうがよッ!」
「……射抜くッ!」
凶津と巫女服の少女が叫び、三本の矢を一度に放つ! クライング・ジェネシスの脇腹、左二の腕、左腕に突き刺さった矢は無数の光の帯状に解け、彼の体を雁字搦めに締め上げた! そこへ頭から飛びかかる麗刃!
「麗ちゃん、こういうシリアスな戦場と僕が考えたさいきょうのラスボス的な相手は苦手なのだ! ボケを挟む暇もないじょ!」
顔の半分を張れ上がらせたままクライング・ジェネシスに抱きついた麗刃は、手中のボタンを押し込んだ! KRA-TOOOOOOOOOOM! ド派手な大爆轟と共に赤いオーラが周囲に飛び散り、猟兵たちの体を炎のようにつつむ! 爆心地からクライング・ジェネシスの悲鳴!
「ぐおおおおおおおおッ!? なんだ! やめろッ! 俺の力がッ……!」
呻くクライング・ジェネシスの声を聞きながら、裕美はさらにタイピング!
「……無駄だよ……過去のデータをサルベージ、ハッキングでインストール……メンカルと凶津と桜の力も加えて、無能力者……あとは、がんばって……」
裕美がホロキーボードに突っ伏した。同時に、ショコラが一本の矢を放つ! 縛られたクライング・ジェネシスの胸を射抜いた矢は、骸の海発射装置から太い樹の根を生やして彼をさらに締め上げる! さらにその上からカタルの檻槍とマックスのハサミが腹を貫く! 剣を振り上げたカイムの紫電と黒銀の炎! セゲルは業火のブレスを吐き出し、アルフレッドは頭上に超巨大な渦潮を召喚! ヨナルデの振りかぶった黒曜石の斧が煉獄じみた炎をまとい、シャルのスピーカーが熱線を、ヒルデガルトの周囲の虚空が無数の光の刃を放った!
それぞれ麗刃が放った真紅のオーラをまとわせた全方位攻撃が、クライング・ジェネシスを呑み込む! 音も光もかき消す轟音が断末魔を掻き消した。虚無を吹き飛ばす極大のビッグバンにつつまれ、クライング・ジェネシスは爆発四散した。
大成功
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