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アースクライシス2019⑭〜過去の濁流、邂逅

#ヒーローズアース #戦争 #アースクライシス2019 #オブリビオン・フォーミュラ #クライング・ジェネシス

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「ギャーッハッハッハッ!」
 世界の全てを恨む男は、高らかに嗤い続ける。
 自由の象徴の前で嗤い続け、今も尚……無能力者だった不自由を呪う。
 オブリビオン・フォーミュラの呪いが、祟りとなりて。
 世界を混沌に包むまで、あと少し――。


 四つの「知られざる文明」を解放した事で、クライング・ジェネシスが姿を現した。
 其処までは良かったが、敵は厄介な装置を持っているらしい。
 グリモア猟兵、氷月・望(Villain Carminus・f16824)は舌打ちをしながらも……敵の持つ其れについて、説明を続ける。
「『骸の海発射装置』っつーらしい。コレのチャージが完了した時、この世界が終わる」
 即ち、カタストロフが起こる。
 過去の濁流に呑まれて、ヒーローズアースは終焉を迎える。
 ……其の前に何としてでも、クライング・ジェネシスを撃破して欲しいと。
 自分が向かえない歯痒さに耐えながら、氷月は己のグリモアを取り出しつつ。
「ヤツが居るのは、自由の女神像の真正面」
 自分の活躍を引き立てる舞台装置という認識らしく、観光名所が破壊される事は無い。
 実際の戦場は其処から、少しだけ離れた場所になるだろう。
 猟兵達も思う存分、全力で戦っても問題ない筈だ。

「で、敵の攻撃手段なんだケドな」
 『骸の海発射装置』を利用した攻撃を中心としているらしい。
 中には……猟兵達自身の過去、其の具現化も有り得る。
 其れは、猟兵達自身の昔の姿かもしれない。
 或いは、過去に喪った猟兵達に深く関わる誰かかもしれない。

「それでも……立ち止まってる暇は、無い」
 過去を振り切り、戦わなければ世界が終わる。
 心して、覚悟が出来た者から向かって欲しいと――氷月は告げた。


ろここ。
●御挨拶
 皆様、お世話になっております。
 もしくは初めまして、駆け出しマスターの『ろここ。』です。

 二十八本目のシナリオは、戦争シナリオとなります。
 戦争シナリオの為、一章のみでシナリオは完結となりますので御注意下さい。
 傾向としては、心情寄りのシナリオを想定しております。

 遂に姿を見せた、クライング・ジェネシス。
 世界が過去に呑まれる前に、恨みに圧し潰されてしまう前に。
 己の過去を含めて、骸の海に還す為の力をお貸し頂ければと思います。

●本依頼について
 このシナリオフレームには、下記の特別な「プレイングボーナス」があります。
 クライング・ジェネシスは必ず先制攻撃してくるので、いかに防御して反撃するかを考えて頂ければと。

 プレイングボーナス:『敵のユーベルコードへの対処法を編みだす』

 敵が使用する技についてですが、皆様が選択したユーベルコードの属性と同じものを使用します。
 其れを踏まえて、対策を考えてもらえればと思います。
 また、本依頼は難易度が高い為、対策が無い場合は不採用とさせて頂く事もあります。
 苦戦判定も有り得ますので、御了承の上で参加頂ければと思います。

●補足
 受付期間はOPが承認され次第、お知らせ致します。
 期間外に頂戴したプレイングにつきましては、流させて頂きますので御注意下さい。

 また、本依頼では同時描写は多くても『二名様』まで、とさせて頂きます。
 お相手がいる際にはお名前とIDを先頭に記載お願い致します。
 迷子防止の為、御協力をお願い申し上げます。

 それでは、皆様のプレイングを望共々、お待ちしております。
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第1章 ボス戦 『クライング・ジェネシス』

POW   :    俺が最強のオブリビオン・フォーミュラだ!
全身を【胸からオブリビオンを繰り出し続ける状態】に変える。あらゆる攻撃に対しほぼ無敵になるが、自身は全く動けない。
SPD   :    貴様らの過去は貴様らを許さねェ!
【骸の海発射装置を用いた『過去』の具現化】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【相手と同じ姿と能力の幻影】で攻撃する。
WIZ   :    チャージ中でも少しは使えるんだぜェ!
【骸の海発射装置から放つ『過去』】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【を丸ごと『漆黒の虚無』に変え】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。

イラスト:yuga

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


【受付期間】
 『11月27日(水)8時31分 〜 11月27日(水)23時59分まで』となります。
木常野・都月
俺は過去の記憶がない。
思い出せないけど、過去がなくても生きていけるし…多分過去なんて、その程度のモノでしかない、と思う。

UC【俺分身】を使用、俺はボスを、分身には幻影を頼む。

俺は接近戦に弱い。
接近戦を挑まれたら、それで精一杯になるはず。
分身には幻影にダガーで相手をして貰いたい。

先制攻撃は[カウンター、高速詠唱、属性攻撃]で相殺を狙いたい。

相殺が無理なら[逃げ足、ダッシュ]で回避を、回避が無理なら[オーラ防御、激痛耐性]で致命傷は避けたい。

ボスへは[全力魔法、属性攻撃(2回攻撃)]で追撃を行いたい。

魔力的なものが足りないなら、アイテム[精霊の石]も使用、可能な限りボスに攻撃を仕掛けていきたい。




 木常野・都月(妖狐の精霊術士・f21384)という妖狐には、過去の記憶が無い。
 気が付いた時には何処かの森で暮らし、狐として生きてきた。
 過去が無くても生きていける、其の程度のモノでしかない。多分。
 思い出せない過去ならば、其れでも構わない。

 嗚呼、ならば。
 ――狐が、木常野となった切っ掛けは覚えているかな?

『おお、懐かしい顔じゃ……』
「……久しぶりだ」
 ほんの数日、されど数日。
 森で生きてきた木常野に変化を齎した者、其の幻影。
 彼が良く知っている年老いた男性の姿、柔らかい笑顔。
 其れはユーベルコードの発動を、分身を出現させようとした動きを僅かに止める。
 ……無意識に、止めさせた。
『過去が無くても生きていける?……ウソつきだな、俺』
 ゆらり、老いた姿が揺らめいて。
 現れたのは木常野自身だが、分身ではない。
 接近戦に弱い事を理解しているのか、彼の幻影はダガーを振るおうと既に構えていた。
「――っ!?」
 木常野は咄嗟にダガーを手にするが、反撃は間に合わない。
 せめて、痛みを軽減しようと。
 跳躍して距離を取ると同時に、周囲にオーラを纏い始める。
 幻影が踏み込み、初撃が振るわれた――!
「くっ……!」
「ギャーッハッハッハッ!」
 ……致命傷は、防いだ。
 しかし、あと少しの所で間に合わなかったのか。
 斬りつけられた腕からは赤色が滲んで、ぽたりと地に落ちる。
 幻影が笑う、クライング・ジェネシスが嗤う。
「……黙れ」
 木常野は改めて、己の分身を傍らに召喚。
 手にしたダガーは分身へ手渡し、受け取った側は即座に動いた。
 ――幻影に迫り、ダガーの刃をぶつけ合う。
 金属音が響き渡る中、本体である彼は言葉を紡ぐ。
 過去なんて、無くても生きていける。今も、そう思うのに。

「(ああ、何だろうな)」
 大切に取っておいた何かを、傷付けられた様な。
 自身の内側で沸々と湧いてくる、其れが魔力を増幅させる。
 でも、足りない。精霊の石が強く、強く、輝き続ける。
 ……心に浮かんだ言葉を其のままに、木常野は言い放つのだ。
 過去は所詮過去だけれど、それでも――!
「俺の思い出を、壊すな……!」
 超圧縮された魔力、巨大な砲弾の如く。
 精霊達の声と、己の野生の勘に従って――真っ直ぐに放つ!

「なん、だァ……!?」
 クライング・ジェネシスにとって、想定外だった。
 猟兵と言えど、過去に絶望するだろうと思っていたのか。
 木常野の全力を込めた攻撃を真正面から受けて、光に呑まれるが敵は立つ。
 ……恨みを、呪いを、吼え続けていた。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

アナンシ・メイスフィールド
SPD
過去かね?
記憶の無い私に恐れる物など…
…否、無いからこそ恐ろしいのかもしれないね

戦闘と同時に瞳に映るのは難しい顔で窓を見つめる青年と少女…そして私らしき男の姿
そして屋敷の外に出て来た過去の私が炎を持ち屋敷を囲む人々をなぎ払いながら此方へと向かい来れば
手を伸ばし【蜘蛛の意図】…毒液の伝う粘着性のある糸にて動きを止めつつ地から生じた蜘蛛の足を盾代わりにし攻撃を防ごうと試みるよ
この不幸は私が原因なのかは記憶のない私には解らないけれども
けれど…私に似たあの少女のその後に胸騒ぎを覚えればその苛立ちを乗せつつ手にした剣を振るい『カウンター』を敵へと向けよう
早く帰り手掛かりを探さねばならないのだからね




 過去を喪失した、UDC組織の一人。
 記憶を糸で繋ぎ止められなかった、蜘蛛の神。
 どんな過去を吐き出されようが、恐れるものなど……否。
「(無いからこそ、恐ろしいのかもしれないね)」
 何か、大事な事を忘れている様な。
 焦燥感が普段よりも増して、胸を焦がす様な錯覚を感じながら。
 蜘蛛の神、アナンシ・メイスフィールド(記憶喪失のーーー・f17900)は前を見る。
 ……其処から先はまるで、とある舞台を観賞している様で。

 場所は不明、年代も不明。
 とある屋敷にて起きた、悲劇の物語。
 窓から顔を覗かせるのは難しい表情を見せる青年。
 其の傍らに立つのは、アナンシに似た雰囲気の少女。
 そして、もう一人――嗚呼、見紛う筈も無い。違える事は無い。
 毎日、鏡で見ているでしょう?
 アナンシ・メイスフィールド、君自身だ。
「…………」
 三人が何かを話しているのが見える表情に、余裕は無い様に見える。
 窓から、多くの人間が屋敷を囲んでいる様子が見えるではないか!
 聞こえる声は何だろう、激情に任せた怒号か。
 其れとも、救済を求める様な悲鳴かもしれない……いや、どちらも違う。
 アナンシの過去、其の喪失を嘲笑う様に。
 ただ、無音のまま舞台は続く――。
『――っ、――っ!?』
『――――』
 声は、無い。
 過去のアナンシが松明を手に、Masefieldの刃を隠す事無く振るっている。
 人々の声無き声を聞いていない様に、ただ障害を排除するだけだと。
 ……嗚呼、何故だろう。

「(私はこの光景を、不幸と感じているのか?)」
 アナンシは不思議と、此れはあってはならない事だと思うのだ。
 だからこそ、一歩を踏み出した。
 『蜘蛛の意図』による糸が絡み、毒液が過去の自分の足を止める。
 地面から突き出した何本もの蜘蛛の脚は、人々を守る盾に。
 声が発せられずとも、過去の自分の視線が訴えていた。邪魔をするな、と。
「そうはいかない、ね」
 ――全く同じ二つの剣が振るわれる。
 過去の剣はアナンシの頬を裂くが、現在の剣は……幻影の心臓を捉えていた。
 嗚呼、其れよりも。あの少女は、何処かで生きているのだろうか。
 ……灼熱が胸を焼き切りそうな心地がした。呼吸が、苦しい。何故、どうして。
 騒めきが止まらない、早く手掛かりを探さねばと叫んでいる。

『手掛かりなんて、何にも無いと言うのに?』
「お喋りが過ぎる様だね、お前は」
 幻影が、消滅の間際に告げる。
 怒りが滲んだ声で返しては、アナンシがクライング・ジェネシスへと肉薄した。
 鋭い剣閃、敵を覆う鎧を傷付けるも。
 ……余裕を見せる笑い声に、彼は思わず眉を顰めた。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

舞塚・バサラ
【SPD】
許さなぬなら何だというのだ(人格:一式)
知った口を聞くな。己の機嫌すら取れぬ餓鬼が

そも過去の我を呼んで何になる
過去の我など今の我の劣化品(相手の技能の使用は更に数値が上の技能で使用の兆候を見切り、潰す)
加えて手の内全てを把握している上に、此方には其方の知らぬ手がある(UCの使用の際の印切りや詠唱は早業やクイックドロウで手や喉を潰す事で発生を潰す)
端的に言えば、この上なく殺しやすい相手に他ならん(UC使用。数の暴力でクライング・ジェネシス諸共圧殺しに行く。)

最早"我ら"に悔いる過去や絶望は無い
殺した命も救えなかった仲間も、その事実を全て持って進むまで
妬み恨むだけのお前に負ける筋は無い!




 記憶を失い、己を見失い。
 のうのうと過ごしてきた男を、責め立てる声。

 ――あと少し早ければ。
 ――某が、我が、拙者が、わたしが、奴を止めていたならば!

 舞塚・バサラ(罰裁黒影・f00034)の幻影が上げる叫び声は、まるで悲鳴の様だ。
 紅蓮の炎が、轟々と燃え盛っていた。
 みんなが、師匠が、死に絶えてしまった。
 悪党を罰し、裁く事を生業とする羅刹達――即ち、罰裁羅の壊滅した日。
 彼の日の幻影は悔やんでも、悔やみきれないと哭き続けている。
『結局、何も守れず……ずっと、某達は……!』
「…………」
『許さぬ。嗚呼、そうだ。某達は、許さ――』
「許さぬなら何だというのだ」
 淡々と、突き放す様に告げるのは……舞塚の第二人格、一式。
 そもそも、過去の己などを呼んで何になる。
 過去はもう戻らない。だが……逃げてはならない、縋ってはならない。
 彼は確りと理解しているのだ。
 しかし、返された言葉に憤りを覚えたのか。幻影は印を――。

「過去の我など、今の我の劣化品」
 ――結べ、なかった。
 風の如き速さを以って迫り、まずは幻影の片手を払い落とす。
 彼の空いた手には既に、陰術:無形刃が握られていた。
 其のまま、幻影の喉を貫けば……刃が鮮血に塗れる。
 過去の己ならば、手の内全てを把握している。恐れる事など何も無い。
「端的に言えば、この上なく殺しやすい相手に他ならん」
 淡々と、舞塚は過去の己が知らぬであろう業、陽術:不知火刀を発動する。
 何も無い空間に炎が生まれては、人の形を成し始める。
 其れらは全て、彼の分身。一人、また一人と現れて。
 最終的には本体も含めて、五十六の忍び達が集う。
「(悔いる過去や絶望は無い)」
 殺した命、救えなかった仲間、師の最期の願い。
 全てを背負った上で進むと決めた、舞塚の覚悟は揺るがない。
 数多くの分身達が幻影を千々に刻んだ上で、焼き尽くす。
 ……クライング・ジェネシスの動揺の表れか、呪詛の声が止んだ。

 己は羅刹に非ず。
 四の人格を宿しただけの、凡庸な人に過ぎない。
 されど、師より学んできた業は此処に在る。
 罰裁羅なる一党が存在した証明は、確かに此処に在る!

「――妬み恨むだけのお前に、負ける筋は無い!」
 多くの忍びが一斉に襲い掛かり、一つの大きな炎を作り出した。
 クライング・ジェネシスが邪魔な炎を払おうと、骸の海発射装置の位置を調整し直した瞬間――炎を裂いて、舞塚自身が迫る!
 渾身の斬撃の数は九つ、全てが鎧の隙間を縫ったもの。
 巨悪が痛みに呻き、たじろいだ。

成功 🔵​🔵​🔴​

月待・楪
自由の女神、か
…ヴィラン心くすぐられるのはよーくわかるけどなァ
テメェみてーなのに自由は必要ねェよ!

他の個体とは一勝負済みだ
【戦場知識】で現れる過去を警戒
よォ、中途半端な俺
動けなくなるような攻撃だけは【見切り】かわして
サイキック【オーラ防御】でいなし、【念動力】で攻撃の軌道を奪ってジェネシスへの【カウンター】に

許されなくていい
【覚悟】の1つも決めてない過去に許されたくもねーからなァ!
【thistle】発動
【ダッシュ・フェイント】でジェネシスを過去の幻影と挟むような立ち位置まで移動して
攻撃はそれぞれ【敵を盾にする】ことで回避
雷花に紫電を纏わせた【部位破壊】攻撃をお見舞いしたら撤退

さっさと骸に還れ!




 ヒーローは好きじゃねぇ。
 何かあればすぐに、ヒーローヒーローって騒ぐ奴等も。
 ……其れでも、此処は。此の世界は。
 月待・楪(Villan・Twilight・f16731)は、激情を吼えた。

「テメェみてーなのに自由は必要ねェよ!」
「威勢だけはいいじゃねぇか、クソガキィ!!!」
 ――ガキはどっちだ、クソ野郎。
 内心舌打ちをしながらも、月待はクライング・ジェネシスの動きに注視。
 骸の海発射装置、其処から放たれる過去を警戒していた。
 漸く現れたのは……あァ、わかってる。
「よォ、中途半端な俺」
『……ヒーローなんて、弱っちいのは滅べばいい』
 眩い程に輝く、月と星は遠くて。
 手を伸ばしても届かなくて、次第に憧れは焦がれて、焼けて。
 悔恨が滲む、嫉妬の感情を其のままに……幻影は呟いた。
 ――絶対に許さない、と。
『世界を救うなんて、ヒーローみてぇな――』
「クハッ、わかってねェな?」
 ヒーローとか、ヴィランとか。
 今の月待にとって、そんな事は関係ない。
 ……自分自身が、月と星が好きだと思うのと同じ様に。

「ヴィラン・トワイライトが、俺が――俺自身で決めた意志だ」
 紫電が迸ると同時に、幻影が握り締めた銃から弾丸が放たれる。
 月待は即座に念動力を用いて、軌道を逸らした。
 次弾が撃たれる前に雷花を逆手で持ち、幻影の懐へ。
 ――其れはまるで、赤雷と踊る様にも見えた。
 射程距離に入った瞬間、刃を振り上げて手首を傷付ける。
 間髪入れず、柄を持ち直して……今度は心臓を狙い、深く抉る。
「さっさと消えろ」
 覚悟の一つも決めていない、過去の己。
 そんな輩に許されるつもりはない、許されたくもない。
 ……幻影が消える間際、少しだけ羨ましそうな目をしていたのは気のせいか。
 月待は念動力を駆使して、フェイントを織り交ぜながら駆ける。
 苛立ちのままに振るわれた敵の拳など、躱すのは容易い。
 ――『thistle』による紫電が、再び彼の周囲を迸る。

「三流以下は、さっさと還れ!」
 雷花の刃を更に深く、深く。
 其れが、簡単には抜けない事を確認した直後。
 月待は後方転回をする様に宙を舞い、クライング・ジェネシスから距離を取る。
 恨んで、呪って、怨み続けるばかりの野郎に。
 己の唯一である一条の赤雷、アイツと日常を過ごす場所を壊させてたまるか。
 ――絶対に、奪わせるつもりなどない!

 雷花を中心に、紫電が爆ぜる。
 彼の覚悟もまた雷となりて、敵の鎧の一部を破砕した。

成功 🔵​🔵​🔴​

リオネル・エコーズ
過去から現在にやって来て自分以外の過去まで出すの?
映像のサイズだけじゃなくてしつこさも桁違い…ヤバ…

なんてひいてられないね
オーラ防御で守り固めながら翼で全力飛行
過去からは目を逸らさず躱さず、魔鍵で受け止めるよ
おいで
一緒に飛ぼう

ダメージ抑えを狙って相手の勢いに抗わずそのまま飛行
過去を魔鍵で斬った時に飛べる状態なら
クラジェネさん目指して全力飛行からのUC
難しければその場でしっかり狙って放つ

ねえ
貴方はそれ以上強くなれないよ
恨み辛みでここまで進めたように見えるけど
実際のとこ生前の事にしがみついて立ち止まったまま
そんなんで今と未来を覆う?ムリムリ!

今のが間違ってるかどうか?
そんなの
きっとすぐにわかるよ




 リオネル・エコーズ(燦歌・f04185)は愕然としていた。
 過去から現在にやって来て、自分以外の過去まで出すときた。
 知人のお兄さんが使う、不思議な単語で説明をするならば。
 映像のサイズも鬼ヤバいし、しつこさも桁違い!やばたにえんじゃね!?
 ……そんな感じだろうか。

「なんて、ひいてられないね」
 深海色が揺れる、ネモフィラの香りが一瞬で過ぎていく。
 グラデーションが鮮やかな翼を羽ばたかせて、リオネルは真っ直ぐに進んでいく。
『……俺は、飛べない』
 現れた幻影は、彼の過去。
 嗚呼……どれ程の間、囚われていたのだろうか。
 目の前で自由に飛んでいる未来の自分が、妬ましい……!
 呪う様な幻影の視線、其れでもは目を逸らさない。
「おいで。一緒に、飛ぼう」
 深く澄んだ青の魔鍵――『Celestial blue』を片手に。
 少しだけ飛行速度を緩めながら、空いた手を幻影に差し出す。
 幻影が悔しそうに、苛立った様子を見せるが……背の翼を広げる事はない。
「……っ!?」
 魔鍵で受け止めて、相手の勢いに合わせる様に飛ぶ方向を変更。
 少しでも痛みを軽減しようとするが、幻影の怨嗟にも似た声がリオネルの心を抉る。
 己の境遇に対する嘆きを絶唱している様な。
「それで、も」
『…………?』
「絶望の中に……希望は、あるよ」
 手放せない希望を知っているからこそ、リオネルは笑って。
 未来は暗闇ばかりじゃないと伝えてから、幻影を両断する様に魔鍵を振るった。
 全く動かなかった筈の幻影の翼が……消滅の間際、少しだけ動いた気がした。

「ねぇ」
 そして、リオネルはクライング・ジェネシスと視線を合わせる。
 ――今出来る、全力の飛翔。
 限界ギリギリまで距離を詰めては、不意にぽつり。
「貴方は、それ以上強くなれないよ」
「はァ?何を言ってやがんだ、貴様……」
「実際のとこ、生前の事にしがみついて立ち止まったまま」
 巨悪と成り果てた今も、生前の恨みにしがみついて。
 生前と同じように、恨みを撒き散らすばかり。リオネルにはそう、見えたから。
「そんなんで、今と未来を覆う?ムリムリ!ムリゲーってやつだよ」
「貴様ァ……!さっきから、舐めた口利いてんじゃ――」
「今のが間違ってるかどうか?」
 宙の使者よ、此処においで。
 淡く透き通る様な彩りが、多くの光矢と化す。
 百五十本以上の光が生み出すのは、美しい七彩だった。

 あの日見た極光、其の再現。
 今は本物には及ばなくても良い。でも、いつかは。
 リオネルが希うと同時に、光は益々輝きを増していく。

「そんなの――きっと、すぐにわかるよ」
 眩い流星が、次々とクライング・ジェネシスを貫く!
 強固な鎧が弾いているが、既に亀裂が入っている部分は其れが出来ない。
 ……寧ろ、光矢によって亀裂が広がり始めていた。

成功 🔵​🔵​🔴​

霧隠・惑
アドリブ◎
過去の俺が相手なら
俺は答える言葉を持たない
ああ、残念だ
嘆き悲しめよ過去の俺
俺は未だに答えを識らねェんだ
情念の獣はどう足掻いても俺を喰らうだろう
けどそれも些細な事だ
薬を飲んで痛みに耐え
一言でも言えばいい
血の味のする唾を飲み込んで
悲鳴の代わりに言葉を引きずり出す

俺はアンタに問うぜ
なァ…クライミング・ジェネシス
『今流れてる俺の血は何色だ』
『俺は何を求めてる』
『夢のアレはどうすれば手にはいる』
過去甦らせるなら教えろよ

何を聞いても満足しない
足りる答えになりはしない
獣の牙は俺を蝕むだろうが
この程度で死ねるなら
俺は今頃生きちゃいない
死なない空っぽの飢えた獣
その牙に音をあげるのは
どちらが先だろうなァ




 世界は、様々な色で溢れている。
 美しい景観のみならず、人の感情にも色はあるのだろう。
 あゝ、されど。どんなに世界が彩に満ちていようとも。
 霧隠・惑(モノクローム・f22823)の目には、彩などありはしない。

 あの、夢に見る唯一以外は。
 遍くすべてが、無彩に等しい。
 目の前に映る己の幻影も同じく……はっ、そりゃ元からか。

「ああ、残念だ」
 アレは何処だ、アレは何処だ。
 幻影の嘆きに呼応する様に、獰猛な獣が姿を現す。
 譫言の様に何処だ、何処だと呟き続ける幻影の姿は……何も知らない人が見れば、酷く痛ましく見えるかもしれない。
 己の内側で虚ろが広がって、止まらなくて、息が苦しい。
 あの鮮烈な、いろ、は……?どこに、ある――?
「嘆き悲しめよ過去の俺。俺は、未だに答えを識らねェんだ」
『――ッ!?』
 幻影が、声無き声で叫ぶ。
 牙を剥き出しにした獣が、即座に霧隠の肩に喰らい付く。
 深々と食い込ませている為か、ぶちっと皮膚を破る音が聞こえて来た。
 あゝ、本当に……過去の自分が相手だと、話の流れが至極読み易い。つまらない。
 獣が気紛れに喉笛を狙う前に彼は錠剤を口内へ、適当な数を放り込んだ。
 鉄錆の味に眉を顰める、激痛に呻き声を漏らしそうになる。
「なァ……クライング・ジェネシス」
「ギャーッハッハッハッ!意外と余裕だなァ!?」
 ――さあ、問答の時間だ。

「今、流れてる俺の血は何色だ」
「貴様、訳がわからねぇ事を……」
「俺は何を求めてる」
「あァ?」
「夢のアレはどうすれば手に入る。過去甦らせるなら教えろよ。ほら、早く――」
「ふざけてんのか、貴様ァァァ!!!」
 クライング・ジェネシスが激昂するも、霧隠は何の反応も示さない。
 どうせ、答える気など無いだろうと思っていた。
 何を聞いても満足出来ない、足りる答えになりはしない。
 ……ぐちゅり、と音が聞こえてくる。
 薬が効いてきたのだろう。獣が何をしようが、今の彼には些事に思えて。
「(この程度で死ねるなら……俺は今頃、生きちゃいない)」
「ギャアァァァ!?」
「……あァ、どうやら空腹で仕方がねェらしい」
 満たされぬ解答ばかりを続ける、愚鈍な阿呆。
 既に半壊しているとは言えど、霧隠の著作から現れた獣の牙は強固な鎧をものともしなかった。邪魔な物を砕き、敵の肉を貪ろうと唸りを上げる。
 其の間にも、彼は幻影が呼び出した獣に食らわれていたが。
 次第に、ふと考えるのだ。……紙と筆は何処だ、と。

 夢現の境界を越えた先。
 あの鮮やかに見える『何か』は、どうすれば手に入るのか。
 そもそも、自分は何を求めているのだろうか。

 ――其の答えを識るまで、俺は死ぬ事もままならぬ。

成功 🔵​🔵​🔴​

ルーチェ・ムート
ユエ(f05601)と!
アドリブ歓迎!

先制は第六感と見切りで回避!回避しきれない物は「紅鎖」を即座に造って盾に!

それは過去だ。牢獄の中、孤独に震えていただけのボクに、今のボクが負ける気なんてしないよ!

この鎖はボクに出来た守りたい縁の具現化。
守りたいものの為なら、どこまでだって強くなれるんだよ!今のボクはボクの縁から生まれる強さを信じてる!
ユエの強さも、ボクは信じてるよ!月と太陽のハーモニーを届けよう!

うん!行こう、ユエ!
鎖で足場を作り空中浮遊!

最後に「朧陽縁」を歌おう。
過去の自分と本体に向け、先の尖ったクナイのような鎖で範囲攻撃かつ串刺し!

残念だけど、ボクらの勝ちだよ!


月守・ユエ
ルーチェちゃん(f10134)と
アドリブ歓迎

先制攻撃対処
オルタナティブダブルで対応

僕の歌は命を紡ぎ、死を送る葬送
この聲は昔、大切な人を闇の底に送ってしまった
故にか目前に現るは
この力を持って生まれた事を悔やんだ己の姿
”己の心の底に封した
闇底の人格”
――命を手繰る歌はなくていい
君は僕を恨んで拒んでる

この聲は確かに呪いだ
けど、呪いはいつか祝福になると教えたくれた人がいたの
だから僕は納得するまで歌うよ

愛刀の終焉ノ月律を抜刀
カウンターからの串刺し
「過去に惑わされてる暇はないんだよ」

ジェネシスへ攻撃
「さ、いくよ!ルーチェさん♪全力全開に」
捨て身の一撃
”死刻曲”を歌う
サヨナラ
僕らの唄に看取られ、過去に沈みな




 ――月は、見た。
 両手で顔を覆いながら、慟哭する己の姿を。
 人々の平穏や神の為に歌を捧げていた……筈、だったのに。
『こんな、こんな……!』
 己が命を手繰る歌は、聲は。
 紡ぎ手たる月の――月守・ユエ(月ノ歌葬曲・f05601)の大切な人を、闇の底へと導いてしまった。其れが事故か、其れ以外の理由かは解らないけれど。

『どうして、まだ歌い続けるの』
「……君は、僕を恨んで拒んでいるんだね」
『こんな、命を手繰る歌なんか、聲なんて――!』
 嗚呼、そうか。
 月守は何となく、理解した様だ。
 目の前で哭く彼女は、己の過去であると同時に。
 ……ずっと、ずうっと。己の心の底に押し込めて、封をしていた人格だと。
 心の底から恨む様に、存在を拒む様に。
 過去の幻影はナイフを手に、月守の喉を執拗に狙っていた。
 ――こんな歌を、聲を、生み出すものなど無くなってしまえばいいッ!
「そうだね。この聲は……確かに、呪いだ」
 幻影の連撃を辛うじて回避。
 代わりに肩や腕が傷付けられながらも、月守は呟く。
 死を手繰り、零れ堕ちた魂を手繰る。
 此の歌は、己の聲は……死を飾る導の様なものでもある。
 呪いと呼ばれてもおかしくない。彼女はそう理解していた。
 だからこそ、過去の言葉に全く共感出来ない訳ではない。でも――。

「けど、呪いはいつか祝福になると、教えたくれた人がいたの」
 過去には無い、出会いがあった。
 呪(のろ)いは、いつか……祝福を齎す呪(まじな)いとなる。
 そう教えてくれた人がいたから。だから、歌い続けると。
 月守は月影を呼び、共に『終焉ノ月律』を抜刀――。
「恨まれても、拒まれても」
「過去に惑わされてる暇はないんだよ」
 ユエと月影による二つの刃が、同時に幻影を貫き……其れによって、消滅。
 月影も満足したのか。頑張ってねーと月守を応援しては、姿を消した。


 ――太陽は、目にする。
 まだ牢獄の中と思い込んでいるのだろう、震える己の姿を。
 寒さを感じているの?恐怖が直ぐ傍にあるの?
 ……どちらも違う、かもしれない。
『誰か……誰、か……』
 名前を呼んで。
 ボクの名前を呼んで、呼んで。
 ……何度願っても、祈っても、静寂に変化は無い。
 瞳に灯る僅かな光も消え失せて、ただ孤独に震えるばかり。
 嗚呼、確かに此れは己の過去だと。
 太陽は――ルーチェ・ムート(吸血人魚姫・f10134)は目を逸らさず、見ていた。
 誰か、誰かと求める声。放たれる声は同時に刃と成りて、ルーチェを――。
『誰、か……』
「うん……確かに、それはボクの過去だ」
 牢獄の中、孤独に震えていた。
 投獄された記憶は、事実は、消える事は無い。でも――。
「今のボクは、ボクの縁から生まれる強さを信じてる!」
 紅色の鎖が盾を作り、声の刃を防ぐ。
 ルーチェの想像力によって具現化された、『血鎖』。
 此れは彼女が求め、焦がれる縁。守りたい縁、そのものだ。
 ……牢獄から出た後、彼女は想像もしていなかった程の縁を結んできた。
 そして、多くの縁を守りたいと願う様になった。
『え、ん……?』
「うん!守りたいものの為なら、どこまでだって強くなれるんだよ!」
 だからこそ、孤独に震えていただけの自分に負ける気なんてしない。
 ルーチェは真紅の鎖を操り、盾から矛へと作り変える。
 彼女は、其のまま――幻影の胸の中央を貫く。
 嗚呼。守りたいものを得て、戦う己の姿は……なんてキラキラしているんだろう。
 ……いいな、と。
 微かな羨望を含む言葉をぽつりと零して、過去の幻影は其の場から消失した。


「さ、いくよ!ルーチェさん!」
「うん!行こう、ユエ!」
 月と太陽は背を合わせて、ハーモニーを奏でる準備を。
 ルーチェが作り出した紅色の鎖の足場によって、彼女と月守は宙へ立つ。
 クライング・ジェネシスが其処を狙い、骸の海発射装置を使おうとする前に――。

「サヨウナラ、愛すべき生命よ」
「ひかり求めたる者よ、えにしを掴め」
 現れたのは死を創造する唄によって作られた、黒き刃。
 周囲の無機物が歌声によって姿を変えた、縁たる紅の鎖。
 ――互いを信じ合う、二人の絆の証。

「残念だけど、ボクらの勝ちだよ!」
「僕らの唄に看取られ、過去に沈みな」
 縦横無尽に動き、クライング・ジェネシスに軌道を読み取らせない様に。
 出来る限り回避を試みるが、鎖の先端が敵へと突き刺さり……動きを封じる。
 鬱陶しい、と敵が鎖を破壊する暇は無かった。
「ク、ソ……ガキャァアアッ!!!」
 死神の刃は、もう、直ぐ其処まで。
 脆くなった鎧の大部分を砕き、全身を斬り裂いていく。

 ――そして、遂にオブリビオン・フォーミュラが膝を突いた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

鎧坂・灯理
【虚殺】

了解だネームレス
式場の飾り付けはお任せあれ
どんなニーズにもお応えしよう

敵が『過去』を撃ってきたなら、見切って早業で『黄龍』の近距離転移で回避
勢い殺さず『白虎』に跨がり、ネームレスを拾ってタンデムで接近する
『睚眦』で敵の攻撃着弾地点を予測し、運転技術で回避
この時にこっそりUCを発動させておく
そのまま突貫――というところで『炎駒』を開き、風の抵抗で自分だけその場に
『白虎』はそのままぶち当てる
すぐさま『炎駒』を抜刀し銃を斬り払い、早業で『饕餮』を起動し本体へ食らいつく
――制裁の時だ

目には目を、歯には歯を 屑は星屑に潰されて死ね
名も無き『未来』の踏み台となるがいい


ヴィクティム・ウィンターミュート
【虚殺】

行こうぜ鎧坂
過去を丸ごとぶっ殺して、終いにするんだよ
この世界最強の過去、その引退式を始める

俺の左腕には、仕込みワイヤーアンカーが搭載されている
発射装置から『過去』を撃たれたら、【早業】でワイヤーアンカーを射出
バイク付近の地面に突き刺して、高速巻取りで攻撃を避けつつバイクへ
そのまま飛び乗り、タンデムだ

封印指定、解放
セット『Martyr』
生命力を消費──ナイフを極限まで強化し、リーチと威力を増強
バイクから飛び降りて『地面をナイフで割きながら』接近する
生命力──つまり未来を前借し、凝縮した力
過去の力で現出した虚無には、この上ない特効薬となる

さァ──首を寄越しな!
これが『未来』の力だぜ、三流!




 クソ、クソッ、と。
 クライング・ジェネシスが吐き捨てる。
 再び両足で立った上で、何らかの気配を察したのだろう。
 付近のビル、其の屋上にて。
 自信に満ち溢れた笑みを浮かべた男が、言葉を紡ぐ。
 ……指で作った銃、其の銃口を己の米神に宛てながら告げるのだ。
「撃ってこいよ、スクィッシー」
 後半の言葉の意味が解らずとも、雰囲気で虚仮にされていると理解したのか。
 クライング・ジェネシスが、彼――ヴィクティム・ウィンターミュート(impulse of Arsene・f01172)に向けて、骸の海発射装置から過去を放つ。
 其れがどんな内容か、どんな様子か、どんな恨み言を撒き散らしたのか。
 嗚呼、残念ながら解らずに終わった様だ。
 ――彼は既に、其処には居ない。

「行こうぜ、鎧坂」
「了解だ、ネームレス」
 ヴィクティムが左腕に仕込んだワイヤーアンカーを、地面へと射出。
 だが、闇雲に射った訳では無い。
 ワイヤーを高速で巻き取り、降下した先には――鎧坂・灯理(不死鳥・f14037)が跨る、改造二輪『白虎』の背だった。
 大分荒っぽいタンデム方法だったが、彼女は其れも想定していたのだろう。
 『白虎』が唸りを上げて、クライング・ジェネシスへと向かう。
 ――此れより始まるは【虚殺】による、世界最強の過去の引退式。
「過去を丸ごとぶっ殺して、終いにするんだよ」
「式場の飾り付けはお任せあれ」
 どんなニーズにもお応えしよう、と。
 常人が堪えられぬ程の速度の中で鎧坂が、ヴィクティムが笑う。

「(奴に、明日は要らん)」
 電磁眼晶『睚眦』にて分析を開始。
 ネームレスへの先制攻撃から、攻撃の仔細データは取得済。
 ……単調な過去の砲弾、狙いも甘い。近距離転移を使うまでもない。
 鎧坂は己の運転技術のみで、クライング・ジェネシスの次弾を回避していた。
 同時に、思念の力を発動。星災の準備も並行して実行。
「封印指定、解放――セット『Martyr』」
 ヴィクティムもまた、ユーベルコードを発動していた。
 彼にとって、勝つ事は全てに優先される。
 ――勝利の為ならば、幾らでもチップをくれてやろう。
 今、此処に存在する生体機械ナイフに注ぎ込むのは……己が生命力、即ち未来。
 なぁに、一番安いチップだ。何の問題も無い。
「ネームレス」
「あァ」
 其れだけで、充分過ぎる。
 まず、不意にヴィクティムがバイクから飛び降りた。
 其の直後に鎧坂がハンドルから両手を離して、可変武傘『炎駒』を開く。
 ……クライング・ジェネシスは瞠目しただろう。
 突貫してくるかと思え。向かってくるのは何故か、バイクだけ。
 こんな乗り物だけで、倒せると思っているのか?

「ナメやがって、貴様らァ……!」
「過小評価をした覚えは無いがな」
 ――そう、引退式はまだ始まってすらいない。
 バイクを回避した直後、クライング・ジェネシスに迫るのは『炎駒』の刃。
 其れも辛うじて躱したが、鎧坂は更に畳み掛ける様に……思念竜の顎門にて、敵の腕に喰らい付いた。罅の入った鎧も、肉も、骨も。
 嗚呼、竜の強靭な顎は全てを食い千切ってしまった。
「ギッ、ギャアアアッ!?」
「目には目を、歯には歯を。屑は、星屑に潰されて死ね」
 ――制裁の時だ。
 喰らった其れを即座にエネルギーへと変換、完了。
 鎧坂は距離を取った後、遙か彼方にて待機させていた物を降らせようと。
 ……隕石、漂流していた無人宇宙船、他にも大小様々に。
 無論、常人には不可能だろう。しかし、出来ると思えば『出来る』のだ。
 少なくとも、鎧坂・灯理という人間には其れが可能だった。
 敵の身体が抉られて、潰されて、尚耐えるが……。
「さァ──首を寄越しな、三流!」
「名も無き『未来』の踏み台となるがいい」
 誰が、終わりと言った?
 地面を削る……否、割く音が聞こえるだろう?
 ヴィクティムが握り締めた、『現在』と『未来』の象徴は。
 過去の力で作り出した虚無及び、死した後も過去にしがみつくクライング・ジェネシスには此の上無い効果を示す!
 ――生命を対価に、未来を斬り開け。
「これが『未来』の力だぜ!」
 宣言通り、ヴィクティムが狙うのは首だ。
 地面を割く程の威力を見たからか。しかし、降り注ぐ星災が動く事を許さない。
 ――こんな所で、オレの恨みが終わるだと!?

「ふざ、けんじゃ……ねェェェ!!!」
 星災の渦中に、ヴィクティムは飛び込み――ナイフを振るう。
 彼が駆け抜けた直後、クライング・ジェネシスの首には深々とした切断の跡が。
 ……だが、両断には至らなかった。
 世界を滅ぼそうとする程の強い恨みが、無意識に首だけを動かさせたのか。
 辛うじてだが……まだ、敵は立ち続けている。

 されど、終わりはもう直ぐ――。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ツムギ・オーギュスト
おおー!あれが女神像!直接見るの初めて!
…そっちはどうかな?あたしが忘れたあたしなら、もう知ってること?

むむ…ノリほぼ同じ、踊って跳ぶのもおんなじ…
けど…必死?踊ること、高く跳ぶことしかないのに…的な?
よし!ともあれその気なら!こっちも応えましょう!
<ダンス>すなわちリズムに乗せた体の動き!
よーく<見切り>をすれば動きの法則も見える!次の動きを読んで合わせて相殺!

あたしはまだ苦労も悩みも夢もなくしたままだけど!
今の…過去から見て未来のあたしが楽しいって謳わないと明日を夢見る意味がないから!
<武器改造>、[ル・ソレイユ]<空中戦>モード!
踊って高く跳んで飛んで…急降下してまとめてどーんだ!




「おおー!あれが女神像!直接見るの初めて!」
 ――すごい、すごい!大きいー!
 ツムギ・オーギュスト(dance légèrement・f19463)はハイテンションのままに、少し離れた場所に見える自由の女神像を眺めている。
 写真か何かで見た事はあるかもしれないけれど、実際に見ると迫力があって。
 くるり、と。踊る様に半回転して、彼女は改めて向き合う。

「そっちはどうかな?」
『許さない』
「あたしが忘れたあたしなら、もう知ってること?」
『絶対に、許さない……!』
 何を?どうして、許さないのか。
 其れはクライング・ジェネシスが出現させた故に、膨らんだ憎悪かもしれない。
 或いは……そんな憎しみを剥き出しにする、理由があるのか。
 失った記憶、例えば……あのパスケース入りの写真に関係が?
「……っ!」
 嗚呼、考える暇は与えてくれない。
 許さない、許さないと呟きながら繰り出される技。
 軽やかな踊りに乗せて、繰り出される蹴撃。其のリズムはほぼ同じ、だったが。
 ……不思議と、ツムギは違和感を覚えた。
「(どうして、こんなに必死なんだろう……?)」
『踊って、高く跳んで、それしかないのに』
 槍の様に鋭い幻影の蹴りが、ツムギを襲う。

『その為だけに、必死に頑張って……なのに』
「あたし……」
『そんな、気楽な気持ちで踊らないで!』
 タンッ、タンッ、タタンッ!
 ツムギも知るリズムで、幻影の鋭い蹴りが何度も繰り出される。
 彼女は其れを時には避けて、時には抉る様な痛みに眉を顰めるが……瞳から光は、消えない。決して、絶やさない。
「そうだね。あたしはまだ、苦労も悩みも夢もなくしたまま」
『だから――ッ!』
「――けど、その気なら!こっちも応えましょう!」
 防御で精一杯になるのは、もうおしまい!
 ツムギもまた、リズムに乗せて身体を動かし始める。
 攻撃、ターン。距離を詰めると見せて、跳躍から――降下の勢いを乗せた蹴り!
 頭の中に残らなくても、何故か身体に染み付いている。
 過去の幻影の踊り、其のリズムを彼女はほぼ正確に読んでは相殺。
 更に……過去の自分が知らない踊りを組み込み、攻撃に転じるのだ。

「未来のあたしが楽しいって謳わないと、明日を夢見る意味がないから!」
『そんな踊り、知らな――』
 過去のあたしも、きっと。
 確りと頷いて、ツムギは躍る、踊る。
 力尽きるまで踊り続けては、高く跳躍するのだ。空を舞う様に、高く。
 羨む過去の自分も、満身創痍であるクライング・ジェネシスも全て纏めて。

「どーん、だ!」
 舞踏に乗せた、超高速連続攻撃。
 勢いと決意を乗せたツムギの蹴撃が命中、彼女は見事踊り切って魅せたのだ。
 ……消える幻影が感動のあまり、瞬きを忘れる程に。

成功 🔵​🔵​🔴​

薄荷・千夜子
澪(f03165)君と

カタストロフ、必ずや阻止してみせます
澪君、あと一息頑張りましょう

【早業】で『花奏絵巻』を開き花嵐の幻影【迷彩】【残像】を起こし、敵のUCは【見切り】での回避狙い
花嵐には【オーラ防御】も纏わせ威力軽減も狙って攻撃の【吹き飛ばし】を
澪君が隙を作ってくれたタイミングで『操花術具:藤巡華簪』を敵の足元に【投擲】してUC発動
決して離さぬ藤の枝花で縛り上げ、虚無の上に立たせないように
その藤の枝花に油を染み込ませた『獣尾綜絡』を絡ませ発火材に【罠使い】

えぇ、一人ではできずとも二人だからできること……
澪君、今のうちにお願いしますっ!
花炎とともに骸の海へと還してさしあげましょう


栗花落・澪
薄荷(f17474)さんと

そうだね
これ以上好き勝手させるわけにはいかない!

敵の先制は音を聞き分ける【聞き耳】と
視覚で捉える【見切り】で軌道を見極め
【空中戦】の機動力で回避
念のため【呪詛耐性+オーラ防御】の防壁を張り
★お守りと★ネックレスに宿る【破魔】の輝きでダメ押しの相殺狙い

未来が、希望があるから
人は強くなれるんだよ

更に薄荷さんが藤の枝花を仕掛けやすいよう
光の【高速詠唱、属性攻撃】で攻撃兼目眩し

孤独を選んだあんただからこそ、身を持って知るべきだ
あんたが棄てたもの
絆の力を

【指定UC】発動
炎の鳥達を合体させ、【全力魔法】で特攻
藤の枝花を火種とすることで火力上げ
【祈り】の炎で、堕ちた魂の浄化を




「澪君、あと一息頑張りましょう」
「そうだね。これ以上、好き勝手させるわけにはいかない!」
 クライング・ジェネシスは目に見えて、疲弊している。
 あと少しだと視線を合わせて、頷き合い……薄荷・千夜子(鷹匠・f17474)と栗花落・澪(泡沫の花・f03165)は共に駆ける。
 二人が駆け抜けた後には、藤と金蓮花が花香った。

「調子に乗るんじゃねぇ、貴様らァァァ!!!」
 しかし、敵も意地がある。
 生前から抱いていた恨みはまだ、欠片たりとも晴れてはいない!
 残る力を振り絞り、骸の海発射装置から凝縮した過去を放つ。

 ――家族と離れることなく一緒に暮らしたかったと願う、薄荷を。
 ――彼に救われる前、見世物として生きてきた……瞳から光が消えた、栗花落を。

 さあ、絶望しろ。
 思い出したくなかったであろう、過去に絶望しろ!
 今に、未来に、希望など無いと足を止めてしまえばいい!
 恨みしか知らない、クライング・ジェネシスにはきっと理解出来ないのだろう。

「薄荷さん、来るよ!」
「ええ、任せて下さい!」
 栗花落の合図を受けて、薄荷が動く。
 彼女が勢い良く開いたのは、百花が咲き誇る『花奏絵巻』だ。
 ――直後、ぶわりと浮かぶのは花嵐の幻影。
 眼前に現れた二人の過去が見えなくなる程、舞い踊る。
 舞う花弁の一つ一つ、ふと仄かに灯るのは……栗花落による破魔の輝きか。
 そして、二人の目に曇りは無い。
 過去に惑う事無く、クライング・ジェネシスに堂々と立ち向かおうと。

「前にも見ましたが、私の気持ちに変わりはありません」
「未来が、希望があるから……人は強くなれるんだよ」
 大切な相棒達と、傍らの仲間と過ごす此れからの為に。
 一人でも多くの心を救う、未来へ進む為に。
 花嵐に宿る魔を祓う力が、過去の幻影を消して行く。
 其れは二人の意志の強さと、クライング・ジェネシス自身の限界を物語っていた。
 ……嗚呼、憤る暇も無く。
 栗花落による目が眩む程の強烈な光が、敵へと襲い掛かる。
 故に、クライング・ジェネシスは足元に刺さる『藤巡華簪』に気付かなかった様だ。
「龍脈より力を借り受けし五芒の藤、巡るは呪いの楔」
 眩い光が止んだ時には、もう遅い。
 クライング・ジェネシスの腰辺りまで、藤の花枝が絡み付いている。
 引き千切ろうとしても出来ず、拘束は緩む様子も見せない。
 何故、何故、何故だ――ッ!?
 咆哮を上げる敵と真正面から向き合い、栗花落は真剣な表情を見せていた。

 罵倒、嘲笑、侮蔑。
 其れらに対する悔しさ、悲しさは……解る気がするけれど。
 差し伸べた手すらも振り払い、孤独を選んだ。
 何かが変わったかもしれないのに、未来に希望を見い出せたかもしれないのに。

「孤独を選んだあんただからこそ、身を持って知るべきだ」
 あんたが棄てたもの。絆の力を。
 相棒の鷹、彗と共に『獣尾綜絡』を絡ませ終えて、薄荷はこくりと頷く。
 ……其れはただの糸、ではない。
 たっぷりと油を染み込ませた、発火材代わりだ。
 其れをクライング・ジェネシスの全身に。多くの糸で、より燃え易く。
 ――敵が焦りを覚え始めるのと、栗花落のユーベルコードの発動は同時だった。
「鳥たちよ、どうかあの人を導いてあげて」
 心を救えぬならば、せめて……過去に還そう。
 『浄化と祝福』によって生み出された多くの鳥達は、直ぐに一つへ。
 浄化の炎による、大きな一羽の鳥。
 声無き声で上げる鳴き声は、栗花落の決意の表れか。
「一人ではできずとも、二人だからできること……」
「どんなに強くても、そんな悲しい孤独に……僕達は負けない!」
「チッ、ク……ショォオオオッ!!!」
 藤の枝花を火種として、猛火が燃え盛る。
 最後の最期まで、堕ちた魂が少しでも浄化される様に……。
 栗花落の祈りが届いたかどうか、其れは解らない。
 恨み晴らせぬ嘆きの中に、一抹の後悔が感じられたかは判断出来ず。
 二人に見守られる形で……祟りの権化は灰と成り、散って行った。

「……やりましたね、澪君」
「うん。本当にありがとう、薄荷さん!」
 クライング・ジェネシスの消滅を見届けて、栗花落と薄荷は安堵した様に笑い合った。
 本当に此れで終わりか、其れとも……。
 今の時点ではまだ、解らなかったけれど。

 一つの大きな戦いを終えて。
 二人はパンッ!と、労う様にハイタッチをし合ったのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年11月30日


挿絵イラスト