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アースクライシス2019⑭〜Ende

#ヒーローズアース #戦争 #アースクライシス2019 #オブリビオン・フォーミュラ #クライング・ジェネシス

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●終世の刻
「ギャハハ! この世界も、お前らもなにもかも滅茶苦茶にしてやる!」
 かの『発射装置』でな――。
 オブリビオン・フォーミュラたる『クライング・ジェネシス』が、世界的にも有名な観光名所――ノイシュヴァンシュタイン城の天辺に立ち、周囲の景色を見下ろしている。
「どうせ来るのだろう、クソったれた猟兵ども! 良いだろう! オレが直々に相手をしてやる!」
 傲岸不遜、その極み。
 だが、クライング・ジェネシスの全身に漲る『邪気』が、世界を飲み込めるほどの『淀み』が、強がりではないことを表していて。
「全てをグチャグチャに壊す、漆黒の『過去』で――この世界に終止符を打ってやる!」
 胸部の穴から――『虚無の黒』が這い上がり滲み出る。
 それは、覗いても底が見えない――『無限』を内包していて。


「とうとうでたッスね! オブリビオン・フォーミュラ!」
 毒島・林檎(蠱毒の魔女・f22258)が、ノイシュヴァンシュタイン城にいる『クライング・ジェネシス』の姿をでかでかとモニターに映しながら、その紫目を鋭く尖らせている。
「奴の名は、クライング・ジェネシス。皆さんには、奴を倒してきてほしいンスよ!」
 オブリビオン・フォーミュラたる彼を放っておくと、被害どころの騒ぎではない。

 世界が、終る。

「奴は『骸の海発射装置』を用いた『過去』を操る能力で戦ってくるみたいッス!」
 概念を操る能力ゆえ、非常に強力な権能だ。
 ユーベルコードの域を出ることはないが、その性能は非常に危険で強烈。
「シンプルに強敵――いや、おそらく、アースクライシスで戦ってきたどんな敵よりも強い――」
 オブリビオン・フォーミュラという強力な存在でもあり、これまでの敵とは『格が違う』。
「ただ、幸いなことに、奴と戦う以外の懸念事項は無いみたいッスね」
 今回戦う舞台は、草原と森林が散在する場所。
 罠の類などは存在しないため、クライング・ジェネシスとの戦いに集中できるだろう。
「奴は自己顕示欲の塊なので、目立つ観光名所を戦場に選んだっぽいんでスよ」
 こちらも幸いなことに、自分を引き立てる舞台装置だからか――観光名所であるノイシュヴァンシュタイン城をジェネシス自ら破壊することはない。
 すでに人払いも済ませてあるそうで、一般人の被害が出ることも決してないだろう。

「と、いうわけで――小細工一切なしの、最後の戦いッス! 奴を倒さなければヒーローズアースにカタストロフが訪れてしまうッス!」
 だからどうか、『猟兵』の力をお貸しください――。
 毒島は祈るような気持ちを以て、頭を下げたのであった。


こてぽん
 お読み頂きありがとうございます。
 こてぽんです。
 
 オブリビオン・フォーミュラである『クライング・ジェネシス』との【決戦】となります。
 かなりの強敵ですので、注意が必要です。

 このシナリオには、以下の特殊なボーナスが存在します。
=============================
プレイングボーナス……『敵のユーベルコードへの対処法を編みだす』。
(クライング・ジェネシスは必ず先制攻撃してくるので、いかに防御して反撃するかの作戦が重要になります)
=============================

●戦場について
 草原を主体に、草木や森林が点在する平地での戦いです。
 ジェネシスは、自分を引き立てる舞台装置であるノイシュヴァンシュタイン城を破壊されたくないため、積極的に平地へと飛び出して猟兵たちと戦います。
 
 今回のシナリオは、敵が敵ですので『ある程度以上の負傷』が予想されます。
 勿論、上手くやれば無傷で突破できる可能性もあります。
 上記のプレイングボーナスを主体に行動すれば、決して勝てない相手ではないでしょう。

 それでは、皆様のアツいプレイング、心よりお待ちしております!
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第1章 ボス戦 『クライング・ジェネシス』

POW   :    俺が最強のオブリビオン・フォーミュラだ!
全身を【胸からオブリビオンを繰り出し続ける状態】に変える。あらゆる攻撃に対しほぼ無敵になるが、自身は全く動けない。
SPD   :    貴様らの過去は貴様らを許さねェ!
【骸の海発射装置を用いた『過去』の具現化】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【相手と同じ姿と能力の幻影】で攻撃する。
WIZ   :    チャージ中でも少しは使えるんだぜェ!
【骸の海発射装置から放つ『過去』】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【を丸ごと『漆黒の虚無』に変え】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。

イラスト:yuga

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ヘンリエッタ・モリアーティ
【双竜】
やっと出たわね
――ええ、絶滅よ。このバカを殺さないと世界が終わる
ぶち殺してやるよ低脳。よォく覚えとけ
――ダークヒーロー・ウロボロスだ

向こうの技が発動すると同時に灯理と自分を【世界の味方】で防御
灯理の技が発動できたら、彼女に捕まる
――過去すら侵せるか
何百何千の人間を救ってきて漸く報われる
はは、この時を待ってたんだ

私への感謝が、期待が、応援となって力になる
だから今まで「救ってやった」
――「私のために」
馬鹿だなァ、お前。効率の良い奪い方を教育してやる
「死樹の篭手」、フル稼働で怪力をぶちかます
三下根性風情で世界壊されるほど私は優しくない
――お前に世界は要らない
もう此処は私の「巣」だよ
絶えて死ね


鎧坂・灯理
【双竜】
……出たな
やっと、やっと現れたな、クソ野郎

待っていた
ブチ殺してやる
行こう、ハティ
決戦だ

起動、【煌翼天翔】
撃ってこい。私もハティも当たらない
地形が消えたな。だからどうした?
ハティ、私の背に 全速力で飛んで近づくよ
索冥強化。私とハティを覆え
撃ってくる過去を避けて飛ぶ 空中戦は得意だ

さあ――ハティ。今、足場を作ろう
彼女が踏み込むポイントだけ、「虚無」を消し去る
凝縮した意志による、軽度の「現実改変」だ

どうやら私は、怒りすぎると凪ぐらしい
静かに燃えろ、私の心
煮詰めて、圧縮して、太陽のように

意志を集めた拳で、奴の全身を灼滅してやる
三千世界を燃やし尽くす思念だ
明日の日は拝ませんぞ、塵芥



【宙】が、昏色に染まり行く。
 それは、底が見えぬ『過去』の黒渦。
 天を覆う暗黒は、草原に降り立った『クライング・ジェネシス』を中心に広がっている。
 太陽すら飲み込むほどの漆黒であるが、不思議と光は通すようで――不気味に明るい。
「早速自殺志願者がきたようだなァ!」
 逃げも隠れも、策を弄すことすらしない。
 白亜の城を背景に――草原の中心で、ジェネシスは闊歩しながら――彼方の二人の猟兵と対峙する。
「やっと出たわね」
 嗚呼、本当に『やっと』だ。
 ヘンリエッタ・モリアーティ(Uroboros・f07026)が、自分たちに近付いてくるジェネシスを睨みつける。
 それは『竜』を宿す双眸。
 相手が常人であれば、それ『のみ』で討滅すら可能な――大瀑布の殺気である。
「ああ……やっと、やっと現れたな、クソ野郎」
 ヘンリエッタ――愛しき『ハティ』の言葉に呼応する『つがい』こそ、鎧坂・灯理(不死鳥・f14037)。
 それは『煌』を宿す双眸。
 尽くを焼き滅ぼす、超高温の『意思』――灼熱の殺気である。
「こいつを抹消しなければ――」
 灯理の言葉に続くように、ハティも口を開く。
「――ええ、絶滅よ。このバカを殺さないと世界が終わる」

 世界の終演。
 終幕が『Ⅰ』。
 Ende――虚無たる黒。
 
 希望も未来も今も、漆黒の『過去』などに飲み込ませてなるものか――。
 まだピリオドを打つには、あまりに早すぎる。

 何より、そんな暴虐を――許してなるものか。

 『双竜』の意思が、いま、ひとつに束ねられる。

「命乞いにでもきたのかと思えば、オレを『殺す』? オレを『消す』ゥ?」
 全身をバキバキと鳴らしながら、全身から漆黒を染み出させていくジェネシス。
「猟兵ってやつはもう少し頭が回ると思ったんだがなァ……」
 ふわり、漆黒に乗せられて――ジェネシスの巨体が宙に浮く。
 大地が悲鳴を上げ、嘶き始めた。
 暗黒の波紋がジェネシスの胸部から脈打ち、ハティと灯理に叩きつけられるも――二人の髪をなびかせるのみで。
「そこまで早死にしたいってんなら、いいだろう! このオレサマが、貴様らを『過去』に沈めてやる!」
 下劣な笑い声をあげながら、某の胸部に空いた『大穴』を両手で掴んでこじ開ける。
 湿気た、耳障りな軋みと共に、穴の最奥から莫大な『気配』が染み出す。
 周囲の空気どころか、景色すら歪み、その穴へと殺到していき――。
「このオレが、完膚なきまでに未来を消し飛ばして――勝利してやる!」
 音が、空間が、一切の黒に包まれたかと思えば、それらが胸部に集約。
 ハティが、灯理が、その様子を見届けながら――構える。

 半瞬遅れて――蠢く『暗黒』の奔流が、解き放たれた。

「ぶち殺してやるよ低脳。よォく覚えとけ」
 灯理の前に飛び出したハティが、見るもおぞましい闇色の大波に立ち塞がる。
 その片手を翳せば、『灯』が溢れ出し――。
「――ダークヒーロー・ウロボロスだ」
 勝つのはお前じゃあない。

 ――私が、勝つ。

 それこそが、ハティの『意思』。
 極めて強固な『決意』。

 それが過去を引き裂く光となりて、断ち割る。
 『道』を繋げゆく守護の昏光。

 【世界の味方】、それこそが、彼女の【晄】。

 だが、引き裂かれた暗夜の過去は、一面の緑地を黒に染め上げ――虚無たる漆黒が彼女らの足を浮かせる。
「地形が消えたな。だからどうした?」
 空中に晒されたハティの手を掴む、灯理の姿。
 その背中には、『朱の大翼』。

「起動、【煌翼天翔】」

 一面の闇、その中心部で――暁光の翼がはためき、ハティもろとも宙に飛翔する。

 それは、流星一条。
 暗闇を照らす、絶対たる『意思』。

「ハティ、私の背に」
 灯理の言葉に応じ、ハティがその背に乗る。
「全速力で飛んで近づくよ」
 虚無から這い出てくる『過去』の屍手を引きちぎるほどの――疾走。
 一介のオブリビオンにも劣る『雑念』ごときに、『意思の怪物』たる彼女を止められるものか。

 『道』を切り開くのが『昏光』。
 そして、その『道』を奔走するのは――灯理が宿す『暁光』。
 
 双頭の光が絡まり合い、一本の光柱となる。
 それは、闇を引き裂き只々真っ直ぐへ――。

「――過去すら侵せるか」
 それは、ハティの言霊。
 何百何千の人間を救ってきて漸く報われる。
 ひとつひとつの光は小さくとも。

 集まれば、どんな過去をも照らせるであろう。

「はは、この時を待ってたんだ」
 閃光と一体となり――ハティは笑う。
 眼前の怨敵の『闇』は、依然として底が見えないっていうのに――。

 負ける気がしない。

 頬を掠める『過去』も、一筋の赤い線を残すのみで。
 一瞥すれば、灯理が覆った『思念』によって捻じ曲げられた『過去』が、彼方へ消えていく。

「さあ――ハティ。今、足場を作ろう」
 打ち付けられる腐肉の過去――某の憎悪により、灯理の視界が明滅する。意識が彼方まで跳躍する。
 だが、某の『意思』が、未来へ突き進み、追い抜いているが故に――彼女の意識は飲み込まれない。
 踏みとどまっている心も永遠ではないが、眼前の敵が消滅するまでなら保つだろう。

 保ってみせよう。
 それこそが、我らの決意であり、意思であり、希望なのだから。

 灯理が、おもむろに手を伸ばす。
 すると、暗闇が焼け爛れ、悲鳴をあげて崩れていき――『現在』と『未来』という異物を作り出していく。
「ありがとう、灯理。その希望を――絶対に繋げてみせる」
 その、眩い『足場』へ一歩踏み出すは、灯理の背中から飛び出したハティ。
 闇に垂らされた、たった一点の光であるはずなのに――周囲の闇が押し負け、亀裂を作っていく。
「私への感謝が、期待が、応援となって力になる」
 ハティに襲い掛かる、過去の有象無象。
 それは剣であり、槍であり、弓矢であれば銃弾でもある。
 
 だが、それが何だというのだ。

 振るわれる刃は圧し折ってみせよう。
 突き出される槍は砕いてみせよう。
 降り注ぐ矢雨は弾き返してみせよう。
 飛翔する凶弾は捻じ曲げてみせよう。

「だから今まで”救ってやった”」

 黒銀の籠手が唸り、数多の『過去』を破壊していく。
 飛来した矢や弾丸は、追随する『つがい』が捻じ曲げていく。

「私のために」

 絶対不歪。
 
 無限大に等しい質量、物量、破壊力の『過去』。
 それらを以てしても止まらない二人に、ジェネシスは驚愕の声をあげる。

「ば、馬鹿なッ。オレの過去が、こんな奴らに――」
「馬鹿だなァ、お前」

 効率の良い奪い方を教育してやる。

 焦燥のあまり、瞬きをしてしまったジェネシス。
 その一瞬、途切れてしまった視界を再び開けば――『双竜』は目と鼻の先。
 眼前で黒銀を振りかぶるハティと、その隣で赤熱を振りかぶる灯理に、思わず両手を突き出して弾き飛ばさんとする。
 
 だが、ジェネシスの足は、一歩退いてしまっているが故に。

「どうやら私は、怒りすぎると凪ぐらしい」
 幾度もの『過去』により、灯理の顔は既に鮮血の赤に染まっている。
 だが、振るった『灼熱』は、ジェネシスの拳とかち合い、融解し、突き破っていく。
 灯理の表情こそ静寂のそれだが、内包した怒りはまるで溶岩が如く――その拳に集まっていた。
「静かに燃えろ、私の心」
 ハティと合わせるように、交互に振るっていく灼拳。
 それがジェネシスの全身を粉砕していく。
 散らばった外殻が一面に広がるも、一瞥すらしない。

「煮詰めて、圧縮して、太陽のように」

 ジェネシスが抵抗するように『過去』を吐き出すも、灼滅。
 再生した拳で灯理を穿たんとするも、灼滅。
 動きを止めようと掌を開くも、灼滅。

 それはまさに、三千世界を燃やし尽くす思念だ。

「明日の日は拝ませんぞ、塵芥」
 
 もはや彼女の振るう両拳は、灼熱の残像を残すのみで――見ることすら、かなわないだろう。
 無限大に思えた闇の一点に、無数の星々が瞬き、煌いていく――。

 そして、その星々を飲み込ませず、広がる黒を破壊するは――。

「三下根性風情で世界壊されるほど私は優しくない」
 
 逆再生のように戻り行く怨敵の身体を、たちどころに砕いていくハティの籠手、その拳。
 ジェネシスの全身に刻まれた灼赤の裂傷を広げていくように――灯理と合わせて殴り抜けていく。

 壊す。
 壊す。
 ひたすらに壊す。

 『過去』から滲み出ていく堅牢たる防具も、鋼も鉄も、ダイヤモンドも、はたまた超物質も――有象無象の破壊対象だ。

 例外などない。

 黒の銀手がひたすらなまでに『絶っていく』。
 振るった先には、粉砕音を残すのみで何者も残らない。

 ジェネシスの身体が、たわみ、歪み、亀裂が広がっていく――。

「――お前に世界は要らない」

 もう此処は私の「巣」だよ。
 絶えて死ね。

 『双竜』は残された力を振り絞り、全身に舞い散る鮮血すら焼き焦がしながら――血濡れの籠手と、赤熱した拳が振るわれる。

 黒と赤が織り交ざり、無二たる一閃となる。
 それは虚無すら晴らす、一条の希望。

 膨れ上がっていくジェネシスの身体。
 内から飛び出さんとする『未来』の光が、亀裂から迸り――。

 爆散した。 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アルトリウス・セレスタイト
真の虚無とは無色
お前の吐く言は妄言だ

先制へは顕理輝光を
『絶理』『無現』で自身への影響を否定し、『天冥』『明鏡』で目標自身を害するものへと転化・命中
反撃しつつ強化も無いように
後の攻撃分含め必要な魔力は『超克』にて“外”より汲み上げる

凌ぎつつ魔眼・封絶で拘束
行動と能力発露を封じる魔眼ゆえ、捕らえればユーベルコードも霧散する
何をしていてもその結果は消え去るだろう
全力の魔力を『解放』で乗せ拘束力を最大化

拘束中も瞳に魔力を溜め魔眼の力を『再帰』で循環させ保持
拘束を逃れた瞬間再度拘束
魔眼の「準備」も『刻真』での固有時加速に高即詠唱の応用を合わせ最速化

あとは『討滅』の死の原理を乗せた打撃で

※アドリブ歓迎



 概念が捻じ曲げられたこの戦場において、世界が一巡することなど日常茶飯事。
 暗転した天を仰ぐアルトリウス・セレスタイト(忘却者・f01410)は、その表情を一つたりとも変えずに――前方で対峙するジェネシスへ視線を移す。
「恐ろしいか? 恐ろしいだろ……底がみえねぇ過去っていうのはなァ!」
 大してリアクションが無いことを、『恐れおののいている』と錯覚したのか――ジェネシスが嘲るような声色でアルトリウスを挑発する。
 だが、肝心の彼はそれすら一切の反応を見せずに――口のみを開く。
「真の虚無とは無色」
 お前の吐く言は妄言だ。
 ジェネシスの胸部に蠢く『過去』の黒を見つめるアルトリウスの表情は、存外に興味なさげで。
 『原理』を操るものゆえ、その黒が本物ではないと――某の双眸は見抜いていた。
 ならば、眼前に揺蕩う、無限の過去は何だ――。

 答えは簡単。

「お前の妄執ごときに、世界は渡せん」
 その過去とは、ジェネシス個人の妄執、妄想、願い。
 只それだけのものに過ぎないのだ――と。

 滅びという『原理』は、一介の存在によって成り立ってしまうほど安くはない。
 今からそれを証明してみせよう――。
 アルトリウスの全身に、淡青の光が迸る。
 『過去』を這いずる異形の手が――悪戯に伸ばされた。
 だが、その悉くが光に触れた瞬間に悲鳴を上げ、焼け焦げて消滅していく。
「ぐッ……なんだこいつ。オレの過去を以てしても――『根底』がみえねぇ」
 だが、それで怯むほどジェネシスは臆病ではない。
 裏を返せば『蛮勇』とも言えるが――どちらにせよ、些末なことだ。
 ジェネシスは、己が手に『過去』を集め、その掌に空いた穴を黒く染めていく。
 それを突き出せば、総てを飲み込まんとする漆黒の大顎がアルトリウスめがけて開かれて。

「原理演算、顕理輝光」

 その青が瞬く。

 半瞬遅れて、アルトリウスめがけて殺到する煮凝りから――『過去』の業火が噴き出し、もろとも飲み込んでいった。
 だが、その業火はアルトリウスの身体をすり抜けて草原を焦熱に包み込むのみで、本人はそこに立ったまま。

 それこそが『絶理』。

 ならば――と、ジェネシスが『装置』の出力を上げ、黒色をより色濃く染め上げていく。
 有象無象が雑ざり合った『過去』そのものが、漆黒そのものとなって強襲。
 概念そのものとなった某の一撃は、理から外れたアルトリウスの身体すら穿つだろう。
 だが、再びその青が煌けば――。

「ぐあああああっ!?」

 ジェネシスが情けない声をあげて、既に『消失』した己が片腕を掴まんと――虚しく片手がすり抜ける。
 見れば、肩口から先が黒の切り口を描いて霧消。
「お、オレの『過去』が……”否定”されただと!?」

 それこそが『無現』、『天冥』、そして『明鏡』。

 過去によって構成されている肉体が故に、否定されてしまえば霞んでしまう。
 その霞みに逆光が照らされれば、濁った闇が払われ、丸裸となってしまう。
 己が存在核をひた隠す暗幕が払われてしまえば、手繰り寄せられた『未来』によって消失してしまう。
 腕一本で済んだのは――その原理に抵抗した、オブリビオン・フォーミュラとしての意地か。

 だが、アルトリウス自身も、『絶理』を超えた余波を浴びたせいか――身体の随所に黒い滲みが生まれてしまっている。
 しかし、まるで意に介さないように、その傷を彼は一瞥するのみで。
 ふたたび宙に浮かぶジェネシスを仰げば。

「淀め」

 その双眸が、鋭く細められた。

 刹那、アルトリウスを飲み込まんと周囲に展開されていた虚無の黒色が霧散霧消。
 一切の無色しか吐き出さない『装置』に、ジェネシスは思わずたたらを踏む。
「な、なんだ!? なんだこれはッ!」
 掌を何度もアルトリウスめがけて振りかざし、その黒穴から『過去』を吐き出さんとする。

 だが、何も出てこない。その残滓すら、只の一滴も出てこない。

「それこそが、本当の虚無だ」
 『過去』の漆黒によって塗りつぶされた空間を、アルトリウスは只々歩んでいく。
 足場が無くなったから何だというのだ。
 無いのであれば、その空間を歩けばいい。
 その原理は、たった”今”作った。

「く、くるんじゃねェェェェッ!」
 悲痛な叫び声をあげながらジェネシスは距離をとらんと全速力で後退する。
 だが、両者の距離は一向に離れない。
「な、なんだお前は――何なんだッ!」
 視線の先にいるアルトリウスは、悠然と歩んでいるようにしかみえない。
 だというのに――その姿は小さくならない。
 むしろ、徐々に距離が縮まっているようにさえ感じる。

 ジェネシスにとっては、不気味なのだろう。
 唐突に、毛ほども湧き出なくなった己が『過去』。
 そして、自身の煮詰めた『過去』すらあっさり消し飛ばす、眼前の男。
 
 名状しがたい恐怖の蟲群が、ジェネシスの全身を這いずり回る。
 その感情を抱いてしまったが故に、後退する身体が強張ってしまう。

「お前に語ることなど、何一つとして”無い”」
 ジェネシスの眉間に、人差し指が突き立てられる。
 気が付けば、アルトリウスは目と鼻の先だ。

「討滅」

 とん、と、その指が眉間に叩かれれば――ジェネシスの身体が不自然なくらいに軽く、よろめいていって。
「ア、ア――」
 声にならない声をあげるジェネシス。
 半瞬遅れて、その身体が歪み、さざめいた。
 そして、
 手足が落ちる。
 指が落ちる。
 外殻も、肩も、青に染まっていき――。

「一度で滅びんか。ならば――」

 淡青の掌が、ゆっくりと伸ばされていき、淀み色の最奥で躍動する『心臓』を掴む。
 半ば崩れ落ちたジェネシスの全身が、大きく躍動して強張った。

「二度目だ」

 ”討滅”

 熟れた果実が、無慈悲に握りつぶされた。

成功 🔵​🔵​🔴​

セシル・バーナード
やっとお出ましか、『クライング・ジェネシス』。
トイレに籠もって震えてるのかと思ってたよ。
さあ、派手に行こうか! 君の負けっぷりを世界に晒してあげる!

この世界が排出してきた『過去』か。原理上、「発射装置」から離れるほどに力が落ちるはず。攻撃を「見切り」ながら距離を取り、こちらも体勢を整え直す。

時空迷宮展開。
現在も過去も未来も渾然としたこの迷宮を、破れるかな、CG?
これで長射程攻撃は封じたはず。あとはぼくの得意な近距離戦の間合いだ。
未来収束を併用しながら、「暗殺」するために空間転移を用い、出現と同時に空間断裂を放つ。

過去の恨み辛みなんて知らないね。世界は今日も未来へ進んでいくんだ。亡霊は要らない。



 滅びを二巡して尚、その過去は黒々と世界を染めていく。
 セシル・バーナード(セイレーン・f01207)の眼前で漆黒の柱が立ち上ったかと思えば、ジェネシスが『三度目』の復活を果たした。
 彼は、宙から少年を見下ろす。
「オレの恨みはこんなもんじゃねェ……この程度で、滅びてたまるかよッッッ!」
 鬱憤を撒き散らすように、全身から『過去』の黒色を爆発させる。
「やっとお出ましか、クライング・ジェネシス」
 セシルは、四方八方に散らばる『過去』の軌跡を軽やかなステップで躱していく。
 視界を埋め尽くすは暗黒の豪雨。
 そのひとつひとつが、大地に風穴を空けるほどの威力を含んでいて。
「トイレに籠もって震えてるのかと思ってたよ」
 濡羽色の光線に晒されながらも、その隙間を縫うように左へ右へ。
 感情任せの攻撃など――たとえ、それが概念を覆すほどのモノであろうと――セシルからすれば、欠伸が出るほどに温い。

 何故なら、彼は『時空』を操る存在。
 とめどない時間の奔流を視てきた『目』がある。
 それ故に、少年の見る世界は、あらゆるものが目で追えるくらいに『遅い』。

 セシルは、その狐火を揺らめかせながら、飄々と躱し続けて――距離を離していく。
「ならば、これならどうだァッ!」
 ジェネシスが、その両手で胸部の大穴――その『縁』を掴み、こじ開けるように広げていく。
 ひび割れるような音がジェネシス自身の胸部から響くも、一切構う様子はなく。
「出力最大! 消し飛べッ!」
 耳をつんざく轟音と共に――墨色の激流が胸部から迸った。
 ヘドロすら生温い、目を背けたくなるような『過去』の濁流。
 かのオブリビオン・フォーミュラが、恥も外聞もなく我武者羅に解き放った一撃。
 たとえ時空という概念を操るセシルとて、それを目で追うのは難儀するであろう。

 だが、それは、無策であるならばの話だ。

「やっぱりそうか」
 過去という概念を撃ち放っている以上、音の壁は容易に突破するであろう。少年はそう推測していた。
 だが、同時に、それはあくまでも『放射物』という枠に収まっている。
 つまり――。
「距離減衰は――あるよねッ!」
 セシルの双眸が鋭く尖ったかと思えば――その姿が忽然と”消える”。
 瞬きすら許さず、彼がいた一帯を飲み込む呂色の『過去』。
 一瞬で、大地を『虚無』に染め上げた。
 だが――。
「け、気配が消えた……!?」
 手応えがない。
 ジェネシスが、首を横に振って狼狽える。
 今の一撃は、大概の法則を歪められるほどの――不可避のものであったはず。
 だが、その『虚無』に、少年が飲み込まれた気配は微塵もない。
 攻撃を放った当人であるからこそ、その感覚は絶対に間違わない。
 ならば、彼はどこに――。

「時空迷宮展開」 

 ――現在も過去も未来も渾然としたこの迷宮を、破れるかな、CG?

 『虚無』に侵された空間から、まるで最初からそこにいたかのようにセシルが『出現』。
 彼が天を仰ぎ、ジェネシスめがけて手をかざせば――。

 黒一色に、雨粒が落ちる。

 ぽつり。
 ぽつり。

 それは次元を歪曲させる”モノ”。
 景色が、雨粒の一点を中心に波紋を描き――ねじ曲がっていく。
 不規則に、無機質に、『過去』が明滅し始めた。
「な、なんだこれは――うぐッ」
 ジェネシスが、その歪みに覆われた景色を見て――頭を抱え始めた。

 身体を掻きむしり、悲鳴を上げる。
 収まらない悪寒、突き刺すような痛み。
 手足が痺れ、感覚が喪失。留まらぬ吐き気。
 違和感、喪失、不明瞭。

 様々な感情が大渦となって――『過去』の概念を冒していく。

「オレは、オレの過去は――わからない、わからないッ」
 『過去』こそが彼の全てである。
 ならば、時空が混濁した次元断層に身を置かれたらどうなるのか――。

 見ての通りの結果だ。

「それじゃ、次はぼくの番だね」
 セシルは、歪曲した鈍色の床から一本の硝子片を抜き取る。
 それは無色透明でありながら、世界の一部を気まぐれに映し出す――空間の断片。
 それを片手に持ち、切っ先をジェネシスめがけて構えれば、少年の姿が再び『消し飛ぶ』。
「あ、ぐ、くる、なァァァァッ!」
 ジェネシスもオブリビオン・フォーミュラとしての意地を見せたいのか――全身から黒白に散りつく『過去』を噴出させる。
 それを全方位に撃ち放ち続け、拒絶の意志を見せつけた。

 だが、その攻撃は、『未来』のセシルによって――既に『知り得てる』。

「一度で仕留めるには、ほんの少しだけ不安かな?」

 必死に辺り一面を攻撃し続けるジェネシスに対し、セシルによる――鈴が鳴るような声色が響き渡った。
 刹那、ジェネシスの身体に一本の軌跡が煌めいて――景色ごと『ズレて』軋む。
 空間断片によって斬り抜けたセシルが、背後のジェネシスを見返して――。

 微笑んだ。

「じゃあ、”完璧に死ぬ”までやろうか」

 その『断裂』を”保存”し、『繰り返す』。

 それこそが、念じただけで対象を切り刻む、彼の権能。

 何度でも。
 
 何度でも。

 そう、何度でも――。

 切り分けられたケーキのように、ジェネシスの身体が無数に断ち割られ、某の破片が落ちていく。
 それは、崩れ落ちていく『過去』と混ざり合っていき――。

 虚空の彼方へ堕ちていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

出水宮・カガリ
【篝火】篝(f20484)と

あの不動無敵のユーベルコードに似た技を、よく知っている
カガリも、その技を扱うものであるがゆえ
無敵であるから動く必要が無い、が――その「殻」ごと灼かれれば、どうなるかな

溢れ出るオブリビオン達は、カガリの壁で食い止めよう
大型化させた【籠絡の鉄柵】で自分達の周囲を囲い、【隔絶の錠前】で施錠してオブリビオンの攻撃を拒絶する
【内なる大神<オオカミ>】の力も借りて、【不落の傷跡】の力を最大限に
篝の技が完成するまでは、必ず持ち堪えてみせるとも
(オーラ防御、拠点防御、全力魔法、盾受け)

篝の光が『無敵』を灼いた後、こちらは【駕砲城壁】を
反撃せよ、砲を撃て、我が外の脅威を駆逐せよ――!


照宮・篝
【篝火】カガリ(f04556)と

オブリビオン、フォーミュラ
その名に相応しい威容、実力だと思う
無敵のユーベルコードも、オブリビオンの群れを叩きつけられては…私一人であれば、成す術もなかったろう

その傷跡にかけて、耐えてみせよ城門
私があの無敵を破ってみせよう

カガリがオブリビオンを押し留めている間、私も【退魔水晶】でオブリビオンの群れを照らし続けよう
群れは尽きる事が無いだろう。だから彼に、言葉をかける
慈悲にも敵意にも、憎悪を抱く彼に、【泉照魂籠】を掲げて【慈愛灯明】を

カガリの壁は拒絶。
私の光は受容。
遍く全てを等しく照らそう
君の事も、ありのまま照らしたい。『無敵の殻』の下の、本当の君を。



 ――オブリビオン・フォーミュラ。
「その名に相応しい威容、実力だと思う」
 照宮・篝(水鏡写しの泉照・f20484)は、眼前に広がる光景を見つめて――そんな言葉を零した。
 かの存在、ジェネシスの胸部に刻まれた虚空から、無限の『黒』が溢れ出している。
 それは溜りとなり、波となり、瀑布となって――遠方に立つ『こちら側』へ猛進していた。
「ハハハハハ! オレ『ひとり』で勝てねェんなら、オブリビオンどもを呼んじまえばいい!」
 今まで、その手で直接仕留められるとタカをくくっていたのだろう。
 出し惜しみは一切無しだ、と言わんばかりに――『過去』の井戸から汚泥を吐き出し続ける。大地を汚し続けながら迫りくる漆黒の大津波から、手が、足が、飛び出した。
 道半ばで黒色の『不定形』が、異形へ――様々なオブリビオンへ変化していく。

 それらは、かつての宿敵。
 かつての怨敵。
 かつての仇敵。

 視界を埋め尽くすほどの大群が、二人めがけて突撃を開始した。
「あの不動無敵のユーベルコードに似た技を、よく知っている」
 なぜなら、”カガリ”も『同様』のものを扱うがゆえ。
 そして、その”弱点”も――よく知っている。
 出水宮・カガリ(荒城の城門・f04556)が、地平を埋める魑魅魍魎を遠目で眺めていた。
 激突すれば、瞬く間に暴力的な質量に圧し潰されてしまうだろうが――その紫瞳に焦燥の二文字はない。
「カガリが食い止めよう」
 天を仰げば、首無しの魚骨がカガリたちを取り囲むように旋回しているのが見える。
 それらはオブリビオンではない。カガリが従える――『籠絡の鉄柵』だ。
 手を伸ばせば届きそうな『死』の気配に、某の鉄柵が立ち塞がるように突き立った。
 周囲に降り立った鉄柵が二人を取り囲み、カガリが結合点に吊るされた『錠前』に鍵をさして回す。

 二人の世界が、切り取られた。

 半瞬遅れて、二人がいる場所にオブリビオンの大群が殺到する。押し寄せられる腐肉の塊が草原を不躾に踏み荒らし、地面を抉り、その”門扉”を叩き続ける。各々が持つ槍で、剣で、爪で、剛腕で。 己が怨敵である猟兵を護る、某の鉄柵を破壊せんと――轟々とした叫び声をあげながら其々の得物が『壁』に叩きつけられていく。
 絶え間なく打ち付けられる衝撃に『城門』が揺れ、悲鳴を上げる。
 隔絶の権能を持つ某とて、完全無欠の存在ではない。鉄柵が少しずつ軋み、たわみ――その度に、城壁を両手で抑えているカガリの表情が剣呑なものになっていく。
 だが、この防壁は、総てを防御しきるためのモノではない。
 時間稼ぎだ。
「その傷跡にかけて、耐えてみせよ城門」
 あと少しだ――篝の持つ”魂籠”が、周囲の光を集め始める。
「私があの無敵を破ってみせよう」
 最奥でふんぞり返っているであろう、かの怨敵に――報いを。
 だから、この灯明が成されるまでは、どうにか――!
 篝が空いている方の片手に『退魔水晶』を持ち、天に掲げる。眩い光が鉄柵を通して『邪』を照らせば、その動きが僅かに鈍りだして。
「破られてなるものか、絶対に食い止めてみせる――!」
 カガリの口こそ閉じられているが、その奥歯はぎりぎりと噛みしめられている。
 それほどに苛烈な攻撃に晒されているのだろう。鉄柵にヒビが入るたびに、衝撃が波紋となってカガリ本人へ叩きつけられる。
 だが、その足は一歩たりとも引かない。
「必ず持ち堪えてみせるとも!」
 ここが破られれば、二人は只では済まない。十中八九、敗北を喫するであろう。無事に帰還できるかどうかも怪しいレベルだ。
 だからこそ、ここで『隔て』、『守る』。
 それこそが彼の意思であり、本質。
 大群の隙間から屍手が伸ばされ、隔壁の亀裂をこじ開けんと鉄柵を掴まれる。歪曲していく鉄柵に、カガリは思わず顔をしかめた。

 だが、その時である。

「あまねく世界を照らし人々を安らげる命の灯火よ」
 間に合いました――篝が微笑んだ。その魂籠に眩い閃光が溢れ出す。
「如何なる硬き岩をも砕き、深き地の底までも我が愛の御光を届けたまえ」
 言霊が空へ溶け込み、風に乗せられて――陽光が二人を包み込んだ。

 君の事も、ありのまま照らしたい。『無敵の殻』の下の、本当の君を。


「なぜ、破られない?」
 ジェネシスが、首を傾げる。
 鉄柵はもう目も当てられないくらいにボロボロ。その隔壁も亀裂が入ってから随分と時間が経った。
 あと少し、あとほんの一押しで突破できそうなのに――それが成されない。
 敵から強烈な反撃が飛んできたわけでもない。一方的に殴られ続けているのにも関わらず――『城門』は陥落しない。
 何故だ? どうして?
 持たざる者であったジェネシスは、その堅牢さの本質を理解できなかった。
 それは、最強の物質や単純な力などではない。
 絆の強さだ。
 ジェネシスには、身を呈してまで誰かを守ったことなど、一度もなかった。
 只々、無能力であることを恨み、能力者であったヒーローを殺し続けた。
 虚栄で塗りたくった心の内に、『大事な存在』など誰一人としていなかった。

 それ故に、眼前で瞬いた陽光に対し――『腕を翳してしまう』。

「……!?」
 あまりの突然の出来事に、ジェネシスは身を包み込む光に反応が遅れた。
 己が両手を開き、纏う光を見つめて呆然と佇んでいると――。

「ガ、ッ!?」
 オブリビオンが群がる最奥から――閃光が迸った。
 それは光の弾丸。螺旋状の穴が大群に空いたかと思えば、ジェネシスの腹部に”光”が突き立っていた。
「な、なんだッ!?」
 大群が『蜂の巣』になるとはこのことだろうか。
 城門から発せられた『光』の大嵐がオブリビオンたちを次々に穿っていく。
 一体何が起きた――ジェネシスが思わずたたらを踏んだ。

「反撃せよ。砲を撃て。我が外の脅威を駆逐せよ」

 カガリの号令が、響き渡った。
 城門の各所で光が瞬き、軌跡を残す。
 その度にオブリビオンが貫かれ、倒れていく。
 それは勢いを止めることなく、ジェネシスめがけて軌道を曲げ――追尾弾のように殺到していく。
「お、オレの無敵が、なぜっ」
 声も絶え絶えに腕を振るい、防御態勢をとるジェネシス。だがその光は、翳した腕すら貫いてジェネシスの身体を撃ち抜いていった。
 全身から黒い血のようなものを噴出させてよろめくも、光の弾幕は止まらない。
 もはや閃光で全身が見えなくなるほどに――光弾がジェネシスに集まり続けていた。
「あ、あの壁をさっさと破壊しろォォォォォォッ!」
 耳障りな叫び声がジェネシスから上げられれば、オブリビオンたちが『黒』に戻り――ひとつの『巨人』へと変化する。
 それが全速力を以て――大地を削り取りながら、奔った。

 城門に迫る最後の『足掻き』に、カガリは片手を翳して――目を見開いた。
「何が来ようと――必ず護ってみせる」
 金の長髪が大きくはためいた。大きく吠えたわけでもないのに、その言葉は不思議と大きく響き渡って。
「私が、その背中を必ず支えてみせよう」
 カガリの後ろで、篝の魂籠がひとつ揺れたかと思えば――世界を光に染め上げる。
 その閃光は城門の輝きを一層のものとして――。

 両者が激突した。

 空間が割れるような轟音。
 大地が轟き、ひび割れ、陥没していく。

 だが、城門は揺らぎひとつすら起こすことなく。巨人の全身を光で包み込み、文字通り『消し飛ばした』。
 そして、霞みを残しながら消失した巨人の奥から、光柱が如き熱線が迸り――。

「ちょ、直撃だったはず……なぜ、何故だあああああああっ!?」

 光に飲み込まれたジェネシスの叫び声が、焼け爛れて霞んでいく。
 その淀みがまたひとつ、浄化の熱により、融かされていった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ラティナ・ドラッケンリット
「さて、巨人殺しの時間だ」
まず豆の木の種を胸の穴に向かって全力で投擲する
穴を塞げればベストだが壁になれば十分だ
その隙に全力疾走して斧の間合いまで接近する
「見せてやろう。巨人を殺すのは豆の木と斧だと相場が決まっている」
断山戦斧『しゅとれん』を思い切り上段に構え
全身全霊のグラウンドクラッシャーを足許に叩き込む
動かなければ無敵なら動きたくなるようにしてやる
反撃して来ないなら襲って来るオブリビオンごと
何度も足許にグラウンドクラッシャーを叩きつけて足場を切り崩す
「動きたくなったらいつでも動け。その時は脳天をかち割ってやる」
その内埋まってオブリビオンも出て来られなくなるだろう
根比べならいくらでも付き合うぞ


御形・菘
あ~、お主は勘違いをしているようであるな?
このバトルの主役は妾! そしてお主は引き立て役!
さあ全力を絞り出せ、妾が存分にもてなしてやろう!

先手は譲ってやろう! 好きに怪人どもを呼ぶがよい!
数がどれだけ増えていこうが関係ない、妾も切り札を一つ出してやろう!
右手を上げ、指を鳴らし、鳴り響き続けろファンファーレ!
短い旋律はあくまでバトルの演出、長い楽曲にもできる!
出現する端から炎上せい!

はっはっは、この絶景をエモく照らす篝火は十分であるな
後は思考や行動に制限がある怪人どもを、ボコり倒して突き進み…動けぬお主をブチのめす!
『ほぼ無敵』など、妾の左腕の前では無意味! 何故なら倒せるまで殴り続けるからな!



「さて、巨人殺しの時間だ」
 ラティナ・ドラッケンリット(ビキニアーマー道の冒険者・f04425)にとって、眼前の『クライング・ジェネシス』という存在は正に『巨人』とみるに相応しい存在であろう。
 大丈夫だ。『竜』すら殺したことあるのだ。目の前のジェネシスなど――まだまだ小さい。
 片手に持つは断山戦斧『しゅとれん』。常人であれば持ち上げることすら不可能な巨大超重のバトルアックスである。それを片手で持つラティナは、まさに『竜殺し』の非凡さをはらんでいると言えるだろう。
「今度こそだッ! 今度こそぶっ潰してやるッッッ!!」
 何度も何度も、数えるのを止めてしまうほどに敗北を重ねてきたジェネシスは――既に頭に血が上っている。
 一切の躊躇なく、某の胸部から暗黒を吐き出し――オブリビオンを生成していく。その数は鼠算式に増えていき、瞬く間に視界を埋めるほどの大群へと成り果てた。
「あ~、お主は勘違いをしているようであるな?」
 ジェネシスらに対峙するのはラティナだけではない。
 御形・菘(邪神様のお通りだ・f12350)も戦線に加わっている。
 ラティナとジェネシスらの間に割り込むように勢いよく飛び込んだ。
「このバトルの主役は妾!」
 どん、と力強く己が胸を叩き――。
「そしてお主は引き立て役!」
 びし、っと人差し指をジェネシスに向ける。
 主役を引き立てる役目でしかないお主が目立ってしまっては色々と台無しであろう――。
 故に。
「さあ全力を絞り出せ、妾が存分にもてなしてやろう!」
 百鬼夜行と言えるほどの敵陣に対して、菘が誘うように両手を開く。

 あまりの突然の出来事に、一瞬の静寂が訪れた。

「――な、なめやがってぇぇぇぇぇぇっ!」
 ぶちり、ジェネシスの頭からそんな音が聞こえたような気がした。
 ジェネシスはその場で轟き、叫ぶ。
 恐らく動けていたら真っ先に飛び出してしまいそうな――そんな殺気をはらみながら。
「殺せ! 一片たりとも奴らを残すなッッッ!」
 ジェネシスの号令に従うように、おぞましい咆哮をあげながらオブリビオンどもが動き出す。
 大地を打ち鳴らしながら奔走し続ける、異形の群れ。
 それらは、恨みつらみを吐き出しながら這いずり回る――屍人たち。
 まるで、今のジェネシスの心中を表しているかのようで。
「見せてやろう。巨人を殺すのは豆の木と斧だと相場が決まっている」
 蠢く魑魅魍魎に対してもラティナは怯まない。
 懐から、ひとつの『豆の種』を取り出す。
 それは、只の豆ではない。

 ”伝承”に語り継がれる――”Jack”の銘を持つ種だ。

 ラティナはそれを勢いよく振りかぶり、豪風猛々しく投射した。
 余波で地面が削れるほどの剛速球が、ジェネシスめがけて真っ直ぐ飛来していく。
「させねぇよッ!」
 それを身で受けるほどジェネシスは油断していない。屍人が弾道に飛び込むように跳躍し、主を庇う。
 だが、ラティナは、命中しないこともある程度の想定に入れていた。
 故に、”プランB”である。
「な、なんだこりゃぁっ!?」
 巨大な根が絡まり合い、ひとつの壁となる。
 それが屍人もろとも飲み込んでいき――大群が壁に阻まれ、かき分けられていく。
 突如現れた壁も勿論のこと、それに阻まれて見えなくなった二人の猟兵に対してジェネシスは焦燥を覚える。
「ど、どこだ! どこへ行きやがったッ!」
 全く動けないため、距離をとることも近付くことも許されない。動いてしまえば尚のこと危険だからだ。動けない、という制約が己の首を真綿のように締めてしまっている。
 不意に、壁の天辺から、戦場全体に響き渡るほどの高笑いが聞こえてきた。
「はーっはっはっは! 妾だけを刮目して見よ!」
 凛と構える菘の姿が其処に在って。
 天辺で片手を天に翳し、指を鳴らす。すると、どこからともなく豪奢絢爛なファンファーレが響き渡って――。

 大炎上、灼熱地獄。

 菘の眼下に広がる屍人の大群が『炎』へと転化していた。大地を彩る、焔の輝き。
 うめき声や悲鳴が下から聞こえるも、菘にとっては戦場を飾るオーディエンスだ。
 火達磨になった屍人が、一斉に壁に群がり出す。その視線は、尽くが菘へ向けられていて。
「はっはっは、この絶景をエモく照らす篝火は十分であるな」
 一面に広がる赤々とした戦場を見渡して、満足気に頷く菘。そして、菘を追い越すように走り抜け、壁を駆け降りていくラティナの姿が。
「素晴らしいファンファーレだった。あとは――」
 疾走するラティナと追随するように菘も降りていく。彼女の言葉を紡ぐように菘も口を開き――。
「怪人どもをボコり倒して突き進み……動けぬ彼奴をブチのめす!」
 菘が我先にと、ラティナを追い抜いて炎の中心へと飛び込んだ。
 加速していった彼女に追いつくように、ラティナもその足を早めていく。
「炎に包まれた戦場――かつて、竜と戦ったころを思い出すな」
 ラティナが、思わずそんな言葉を零す。
 竜と戦えば、灼熱の大火に見舞われる可能性が非常に高い。人々はそれが分かっているからこそ、己が身体を消し炭にされないように対処をする。
 だがそれでも――竜という存在は、稀なる人でしか倒せぬ『絶対』を抱えているのだ。
 そして、菘の放った猛火は、『竜』のそれと遜色ないどころか、それ『以上』。
 故に、強さどころか知性すらない屍人ごときに、この炎は突破できまい。
 炭化した死体が疾走するラティナの足に踏みつけられ、砕け散った。

 火柱が二人の間を挟むように立ち昇り――屍人たちを寄せ付けない。
 只々真っ直ぐに、業火が壁となり、二人を導くように。
「ジェネシスがみえたぞ」
 そう言ったラティナは、菘の前面に乗り出したかと思えば大きく跳躍。
 眼前のジェネシスめがけて、某の大斧を振りかざした。
「切り崩す」
 狙いはジェネシス――ではない。その『足許』。
 大斧の厚刃が地面に叩きつけられた瞬間、地鳴りと共に円状の陥没穴が作り出される。
 だが、砕けた岩片も、砂塵も舞い上がらない。
 なぜなら、先の一撃は”掘削”したわけではなく、地面を埒外の破壊力で『圧縮』したからだ。
 衝撃によって発生した地震も相重なり、周囲の大地に亀裂が迸る。
 ジェネシスは無防備にクレーターに落ちるが、動くわけにはいかない。
 動いたら、その時点で『敗北』が確定するからだ。
「動きたくなったらいつでも動け。その時は脳天をかち割ってやる」
 ジェネシスの『装置』から這い出てくる屍人たちも、ラティナによって振り上げられた『二撃目』によって諸共が地面の染みと化す。
 クレーターはより深く、大きく、ジェネシスの身体を落として埋没させていく。
「根比べならいくらでも付き合うぞ」
 三回、四回、五回――やがて、その穴は岩盤にまで至る。
「ま、負けねぇぞ……貴様らなんぞに、このオレがッ……」
 ジェネシスもジリ貧であることが理性で理解できていても、それを解除するわけはいかず――半身が埋没しながらも未だに動かない。

 だが、そこにさらなる『ダメ押し』が飛び掛かった。

「『ほぼ無敵』など、妾の左腕の前では無意味!」
 ズルいではないか! 妾も混ぜろ!
 ラティナに割り込むように、ジェネシスの身体に馬乗りになる菘。
 それを見届けたラティナが振り上げた武器をおさめて見守る。
 大丈夫だ。これも手筈通り。
 ジェネシスの半身が埋まる『その時』を待っていたのだ。
 振り上げた菘の『左腕』が、光にあてられて鋭く乱反射する――。
「何故なら倒せるまで殴り続けるからな!」
 ぎらつくような某の殺意に、ジェネシスは短く悲鳴を上げる。
 オブリビオン・フォーミュラという強大な存在でありながら――こちらを見下ろす蛇の双眸に、ひどく恐怖心を覚えて。

 …………
 ………
 ……
 …

「や、やめろ、やめろやめろやめろやめろッ!」
 竜尾を叩きつけるような重音が、何度も何度も聞こえ続ける。
 未だ大きな傷が見られないジェネシスであったが、ひたすら己が顔面に迫る『左腕』に情けない声をあげてしまう。
 何故なら、『ほぼ』無敵であるが故に――尽くを相殺することはできない。
 99.9%を防ぐのだとしても、0.1%が積み上がっていく。
 
 徐々に、徐々に――膨れ上がっていく痛みと恐怖心に、ジェネシスは思わず顔をそらしてしまった。

「嗚呼、ようやくか」
 流石にオブリビオンを出た傍から叩き伏せるのには、少しばかり疲弊していたんだ――。
 ラティナが大斧の柄を両手で握りしめる。
 全身を大きく捻り、その刃を振りかぶって――飛び上がった。
 それを肩越しに一瞥した菘が不敵な笑みを浮かべると、ジェネシスへ視線を戻して目を見開き――。
「妾の踏み台、ご苦労であった!」
 撮れ高バッチリ。スパチャよろしく!
 それはジェネシスに向けられた言葉。菘は左腕を振るうと同時に、殴り抜けた衝撃を利用して身を翻した。
 ジェネシスの顔面がひしゃげ、岩盤に勢いよく激突してめり込む。
 菘と入れ替わるように、ラティナが落下。大斧を勢いよく振り下ろして――。

「真っ二つだ」

 その一撃は、山を断ち、竜を断ち、そして。

 巨人をも断ち割った。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

鳴宮・匡
◆コガラス(f18713)と


まあ、清々しいまでに分かり易いよな
俺は嫌いじゃないぜ、殺すのに躊躇わなくていい

吐き出されたオブリビオンを射撃で牽制
或いは落とせそうならば頭や心臓を撃ち抜いて排除
相手の攻勢を凌ぎ、コガラスが反攻の手を練るのを援護
次々に増えるだろうが、それを上回る速度で落とし続ければいい

狂化した敵が同士討ちを始めたら
敵の陣容が最も手薄な箇所を見極め
通常の射撃で敵を排除しながら機を待つ

――射線が通った一瞬で本命の一撃
影の魔弾を、確実に本体へと命中させる
影が導くのは、力も命も諸共に食い破る虚無の魔弾
わざわざ動かないでいてくれるなんて良い的だ
……そのまま死んでくれたら、なおいいんだけどな?


式島・コガラス
◆鳴宮さん(f01612)と

全くもって……暴力性の塊のような方ですね。
それが好きとか、嫌いとかではありませんが。

そのすべてを破壊する暴力性。それこそが付け入る隙となる。
吐き出されたオブリビオン、その特に体が大きそうなものに向かって【呪殺狂化弾】。
骸の海より現れた力は、そのまま同士討ちに費やされる。そして最後は、狂化したオブリビオン自身が崩壊する。
射出可能な私の魔弾は五発。よって五発分、敵を狂化させ暴れさせます。

オブリビオン同士の争いで、射出されたオブリビオンにも目減りが見られるはず。
それだけの隙間があれば――鳴宮さんなら大丈夫ですよね?



 ノイシュヴァンシュタイン城を背景に、地平線の彼方まで続く緑青の草原。
 観光地として見れば、目を奪われてしまうような雄大な風景であっただろう。
 だが、そんな場所も、今では硝煙揺蕩う戦場と化してしまっている。
「全くもって……暴力性の塊のような方ですね」
 式島・コガラス(明日を探す呪いの弾丸・f18713)は、焦げ色に染まりつつある草地の成れの果て――そして、その最奥に立つ『クライング・ジェネシス』の姿を双眸で捉えた。
 焼き畑、などという次元ではない。ジェネシスの『過去』によって浸蝕された大地も、その権能が発動しなければ元の様相であるが――土中に内包している成分や生態系がどうなっているかは分からぬまま。二度と生命が宿せぬ、不毛の土地になっている可能性すらある。
 眼前のオブリビオン・フォーミュラが暴れまわるたびに、少なからず世界が『傷ついていく』。コガラスは、その理不尽めいた膂力を『暴力性』と捉えたのかもしれない。
「それが好きとか、嫌いとかではありませんが」
 褐色交えた大地から熱煙が吐き出され、ジェネシスの姿を揺らめかせた。そこに、己が愛銃『アプスー』を構え――”定める”
 この銃で撃ち抜けるのであれば、そこに好き嫌いなんて存在しない。
 生きるか、死ぬか、只々それだけなのだ。
「まあ、清々しいまでに分かり易いよな」
 鳴宮・匡(凪の海・f01612)、そのひとである。
「俺は嫌いじゃないぜ、殺すのに躊躇わなくていい」
 世界を堂々と『壊す』と宣言したオブリビオン・フォーミュラに、一切の躊躇を抱く必要がない。
 その三下めいた口調、台詞、その全てに同情の余地なし。
 "Resonance"のグリップを握る手に、僅かながら力が籠る。ハンドガードに添えられたもう一方の掌も同様に。
 この銃で殺せるのであれば、相手が誰であろうと何ら問題ない。それが、たとえ埒外の能力を振りかざすオブリビオン・フォーミュラであれど。
 戦場では何方かが生き、何方かが死ぬ。只それだけなのだ。
 コガラスと近しい感情を抱きながら、鳴宮は表情を変えることなく、某の銃口をジェネシスに定める。
 それはまるで、冷え切った鋼のようで。
「たかだか銃二丁で、なにができるってんだッ!!」
 ジェネシスは吠える。その度に、怨讐の煮凝りが胸部の『装置』から漏れ出していく。
「このオレが命を賭してまで手に入れた『過去』に、只の鋼弾が敵うものかッッッ!!」
 黒々とした邪気が爆発する。暗雲で染め上げた天は太陽をひた隠し、暴風が二人に打ち付けられる。
 だが、それは二人の髪をなびかせ、頬を撫でるのみで。
 殺気をぶつけられる程度、この二人は数えきれないほど経験した。怯むことなど、決してない。
「もうオレには”後”がねぇッ……ここで、貴様らを八つ裂きにして――他の猟兵どもの見せしめにしてやるわッッッ!!」
 恨みつらみの、淀んだ『過去』が、その虚空から溢れ出して大地を汚す。
 その汚れは各々の形をとり――かつて見たことあるような、ないような――そんな曖昧な姿の『オブリビオン』に変化していった。
 大小さまざまな異形の怪物が、二人めがけて殺到していく。這いずり回るもの、空を飛ぶもの、大地を駆けるもの――数えるのも馬鹿らしいほどの物量が、大地を圧し潰す。
「鳴宮さん、援護をお願いします」
 思った以上に敵の動きが速い――そう悟ったコガラスが、並走する鳴宮を一瞥する。
 事実として、後方に走り距離をとらんとする二人に、大群が追いすがらんと距離を縮めつつあった。
「了解。牽制射撃なら任せな」
 鳴宮が足を止めぬまま、背後に迫るオブリビオンの一角に銃口を合わせて発砲。
 マズルから閃光が瞬き、凶弾が怪物らの足を的確に穿つ。
 おどろおどろしい叫び声をあげながら足をもつれさせ、倒れていく最前列の異形たち。それを踏みつけて行進し続ける個体も数多だが、足をとられてドミノ倒しのように転がっていく個体も多い。
 僅かに、地上部隊の動きが鈍った。
 不意に、鳴宮が弾かれたように天を仰ぐ。見れば、空中を飛ぶ大鷲のようなオブリビオンが数体。
 鳥たちは、けたたましい咆哮をあげながら某の身を弾丸とするように嘴を前に突き出し、二人めがけて落下していく。
「――ッ」
 鳴宮は一息の間に照準を定め、トリガーを小気味よく引き続ける。そのマズルが僅かに左へ右へ。だが、それは迷っているわけではなく――瞬きすら許さぬ速度で『定め』、『狙撃している』のだ。
 大鷲たちが、各々の翼や身体を的確に撃ち抜かれて、その軌道が逸れていく。こうなれば二人に避けられないことはない。
 鳴宮、コガラスが別々の方向に飛び退き、それぞれに飛来する大砲が如き大鷲の突進を躱していく。
 制御を失った大鷲たちは二人が立っていた地面に穴を空け、大地のシミに転生。
「攻撃の間が空きましたね。”行きます”」
 一転、コガラスが身を翻して『アプスー』の銃口を大群の一角に定める。
 その照準は――オブリビオン群の中でも特段大きな存在、『巨人』の一つ目に向けられていて。

「呪いは楔となり、楔は心を蝕む……」

 撃鉄が打ち鳴らされ、シリンダーが回転する。
 マズルから吐き出される、”魔”の色彩をはらんだ弾丸。螺旋を描いて空を切り裂く。
 その色は何色かは、撃ったコガラス本人にしかわからないだろう。何故なら、それを見つめ続けようものなら――。
「グ、オオオオオ――」
 弾道が単眼に吸い込まれたかと思えば、その目を両手で抑えて仰け反る某の巨躯。
 ぶるりと大きく震えたかと思えば、その両手が力なく下ろされ――。

 眼下の『オブリビオン』を踏みつけた。

 肉が潰れ、繊維がぷつぷつと千切れる音が足許から聞こえようと、巨人の動きは止まらない。閉じた瞼から鮮血を滲ませながら、辺り一面に両手両足を振るい続ける。
 その度に、舞い飛ぶオブリビオンたちの矮小な身体。巨人を中心に、陣形が乱れ始めた。
「流石だ。残り四発分も、宜しく頼む」
 鳴宮がコガラスの仕事ぶりに満足気な笑みを浮かべながら、絶え間なく襲い掛かって来るオブリビオンたちを撃ち続ける。
 また一体、空薬莢と硝煙を添えて――鳴宮の足元に事切れた肉塊が転がっていった。
「お任せください。牽制射撃も、続けてお願いします」
 そして、”その時”がきたら――。
 コガラスは最後まで言葉を放つことはなかった。事前に作戦を練って示し合わせているから、というのもあるが――万が一の『ミス』はあってはならない。
 何より、鳴宮は数多の戦場で共にしてきたからこそ――全幅の信頼を置いている。末まで言わずとも、彼ならやり遂げてくれるだろう。
 二発目の狂化弾が、『アプスー』から撃ち放たれる。石造りの巨躯を的確に穿ち、某は”一つ目”と同様に周囲を薙ぎ払い始めた。
 コガラスを狙うように狼型のオブリビオンが飛び掛かるも、彼女が身をそらせば、入れ替わるようにして突き出されたアサルトライフルのマズルが某の大口に突き刺さって。
 間髪入れず、無慈悲な発砲音。大きく身体を震わせた狼は、どさりと地面に落ちて血溜りに沈む。
 見惚れるような連携が、そこにはあった。
 時間を止める、空間を裂く、超次元的な爆発を起こす――その何れでもない、只々剛弾を交わして舞い続けるのみ。
 それだけのシンプルな動きであるにも関わらず、一言では片付けられない『経験』の重みが混ざりあって――戦場を硝煙で彩っていく。
 
 さて、同士討ちをはじめたオブリビオンが『五体目』に差し掛かったところで――敵の動きが当初と比べて露骨にまばらになり始めた。
 狂い果てた大型のオブリビオンたちは、自身の周囲に屍を積み上げていき、やがては自分自身も『仲間』となって倒れ往くだろう。
 戦場を舞い飛ぶ血肉の隙間から――ジェネシスの姿が見えた。
「今です」
「ああ」
 その瞬間に、長い言葉など言わない。
 コガラスと鳴宮の会話は、ほぼ同時に――そして、その照準が構えられ、トリガーが引かれるのも同様に。
 鳴宮の視界が、息を止めた瞬間に――”遅延”する。
 ゆっくりと、宙を舞うオブリビオン――某の障害物の隙間を縫うように――マズルから放たれた弾丸が通過していく。
 その照準の先には、寸分の乱れなく『ジェネシス』が捉えられている。
 弾道も、阻まれることもなく、某の”虚空”に吸い込まれていき――。
「あ、ガ――」
 ”黒”の弾道は、弾かれることも消失することもなく、『装置』を貫通してジェネシスの背中を抜ける。
 息をひり出すような、苦悶の声をあげ――大きくたたらを踏み、膝を折った。
「殺すぜ、その力ごと」
 虚の黒星は『過去』の宙を照らし、『未来』を示す。
 鳴宮の息が吐かれたころには――黒々とした”蜂の巣”が、其処に出来上がっていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ヴィクティム・ウィンターミュート
嵯泉と(f05845)

へっ過去がなんだってんだ
今を生きる、芯が強固な俺達の方が強いさ
だろ?

【早業】で自己サイバネを【ハッキング】
瞬間的なオーバーロード、能力拡張
強化された知覚と反射で【見切り】、身体能力に任せて【ダッシュ】で直撃を回避
以降は高機動状態を維持しつつ、右腕の仕込みクロスボウで牽制と妨害の射撃

嵯泉、もう充分『吸ったな?』
オーケー、では真実を歪めよう
『Dirty Edit』

過去は変えられない?いいや、変えられる
過去へ向き合う姿勢さえ変われば、過去の表情は変わる
その証拠に見ろよ…お前を強くする、過去から生まれた『虚無』の真実は…反転したぜ!
その上に立つお前は!著しく弱くなる!決めろ嵯泉!


鷲生・嵯泉
魔術師(f01172)同道
全く始末の悪い……
ああ、過去を操った所で今には勝てん
では頼むぞ、魔術師

――剣怒重来、総てを糧と変えろ
初撃はなぎ払いにて威力を軽減し方向を逸らす様に図る
戦闘知識と第六感に拠る軌道の先読みで
致命的なものは躱し、叩き落として後ろへは通さん
残りは敢えて受けて戦力増強へと回す
攻撃が軽く感じる様に変じたならば魔術師へ合図
……そろそろ頃合いだ

其れでは此方の手番だ
調子に乗って寄越した攻撃での増加分に怪力、鎧砕きに鎧無視も重ね
其の下らん機械ごと真っ向から叩き斬ってくれる

生憎だったな、愚か者
盤面は魔術師の手に因って反転した――最早過去の残滓如きには変えられん
抱えた虚無ごと潰えて消えろ



「へっ、過去がなんだってんだ」
 ヴィクティム・ウィンターミュート(impulse of Arsene・f01172)にとって、過去など過ぎ去った事象に過ぎない。
 彼が戦闘において何よりも大事にしていることは、『勝つか負けるか』、それだけなのだ。
 たとえ、強大な『過去』を撃ち放たれたとしても、そこに『勝利』の道筋がある限り、『敗北』の二文字は起こり得ないのだ。
「今を生きる、芯が強固な俺達の方が強いさ」
 『過去』は決定づけられた事象が故に、覆すことのできない頑固さが芯を脆くする。一方の『現在』は不安定さの裏に、無限の可能性がある。
 強大な力というものは、なにも絶対不変のものだけとは限らないのだ。
「だろ?」
 ヴィクティムが、鷲生・嵯泉(烈志・f05845)を一瞥する。嵯泉が瞑目し、口を開いた。
「ああ、過去を操った所で今には勝てん」
 過去が、只々硬いだけのモノだとするならば、それがどれだけ強固な事象であったとしても――斬り伏せられる可能性がある。
 剛と柔を制した者のみ、本物の強さが生まれるのだ。
 それにしても。
「全く始末の悪い……」
 再びその目を開き、ジェネシスを見据えれば――そんな言葉が思わず零れる。
 『過去』を振りかざし、己が怨讐に従って世界を滅ぼす。
 癇癪を起こした子供と同等ではないか。
 それで以て、その幼稚さをはらみながら『フォーミュラ』の冠位にまで昇りつめた、おぞましい執念。
 性質が悪いとは正に、このことだろう。
「では頼むぞ、魔術師」
 闇色の凶刃が鞘から引き抜かれていく。ヴィクティムの前に出るように歩み、構えた。
「ああ、サポートなら任せな」
 ヴィクティムの全身を覆うサイバネの煌きが、演算領域を作り出す。
 それは数字の羅列と共に彼の身体を覆い、某の輝きを一層のものとする。
「ゴチャゴチャと喧しい奴らだ……もう、オレの傍に寄るんじゃねェ――!」
 ジェネシスが己が両手を突き出し、そこに深淵たる漆黒を集約させていく。
 既に彼の全身は傷だらけ、満身創痍に等しいだろう。
 だがそれでも、そんな状態でも――。
「オレはもう、あんな惨めな思いなんて――したくねェんだァァァァァッ!」
 それは練り上げられた殺意の岩塊。それが『過去』の黒をはらみ、宇宙の色を空間に刻みながら――両手から放射された。
 ジェネシスの足が反動でひきずられるほどの膂力。解き放たれた奔流は、ジェネシスの全身よりも遥かに巨大で雄大。
 その総てを賭して、眼前の二人を滅ぼすつもりだろう。
 虚無の色彩を内包した瀑布が嵯泉らに迫るも、お互いの両足は一歩も怖気づかない。
「そのくだらない『過去』、その首と共に跳ね飛ばしてくれよう」
 だからこそ、初撃は何としても耐えてみせる――。
 大地を虚無で染め上げながら迫る『過去』の激流に、その双眸を合わせ――静寂と共に、一閃。
 黒から滲み出した有象無象の『武具』たちが、嵯泉の刃とかち合い、火花を散らす。
「オ、オ――」
 全身に打ち付けられた衝撃に、嵯泉の口から咆哮に近い声色が漏れる。
 埒外の膂力に全身が押し退けられ、鍔迫り合う刀が震え続ける。だが、その身体を穿たんと牙を剥く数多の『過去』は、何れもが嵯泉の寸でで止まっていた。
 刹那、ひたすらなまでに押し寄せられる『殺意』に、僅かな綻びが生まれる。両手に伝わる感触を悟ってか、嵯泉の目が大きく見開かれた。
 そして、僅かに柄を捻り、刀筋をずらしたかと思えば――満月を描くように得物を振るう。光が瞬き、火花が弾け飛び――『過去』が弾かれた。
 彼の眼前で、真横に逸れていく漆黒の奔流。背後にいるヴィクティムに当たらぬよう、水際で『止めた』。
「――剣怒重来、総てを糧と変えろ」
 再び刀を構えなおす嵯泉の目が鋭く尖り、纏う空気が『変わった』。
 絶え間なく押し寄せてくる、後続の奔流。
 それは道半ばで嵯泉を取り囲むように分裂したかと思えば――『槍』となって殺到する。
「無数の剣槍とて、其に心が無ければ――我が身を貫けはしない」
 視界を覆うほどの無数の凶刃。それを前にしても嵯泉は退くことなく、刀を振るった。
 そのたった”一度”で――四散し落下する『過去』の武器たち。僅かに”抜けた”ものも、嵯泉が身体を逸らせば直撃は免れて。
 肩口を掠った『槍』も、腿の一部を抉った『剣』も、破れたところから滲み出る鮮血も、一瞥すらしない。
 続けざまにやって来た巨大な黒拳も、己が得物で『抑え』、斬り捨てていく――。

 一方のヴィクティムも、不意に横から飛来する『殺気』に顔を向ければ。
「やっぱ、そういうのもアリだよな――っ!」
 回り込むように雪崩れ込む『過去』の一部から、黒々とした銃口がひり出し――凶弾が撃ち放たれる。
 陰った弾道はヴィクティムの胸部や頭部を的確に定めている。即座に身体を屈め、ヴィクティムは駆ける。彼の背後すれすれを通り抜けていく、幾多もの凶弾。
 続けて放たれ続ける矢弾の弾幕をも、ひたすらなまでに疾走して躱していく。
 身体を丸めて『的』を小さく、それで以て全身のサイバネを赤熱させるほどに『オーバーロード』させ、神速の反射を以て弾幕の隙間を縫う。
 身体の随所に掠り傷を残すも、致命的なものは辛うじて回避。
 僅かに開いた攻撃の合間。
 ヴィクティムは咄嗟に右腕を奔流の中心めがけて突き出し、クロスボウを撃ち放つ。
 かちり、無機質な音と共に――濡れそぼった黒色の『過去』に弩矢が突き刺さった。
 刹那、黒の銃撃を『止める』ほどの大爆発。
 虚無に染まりつつある周囲の大地を傍目に、僅かに止まった『過去』の攻勢。
「嵯泉、もう充分『吸ったな?』」
 ヴィクティムは、全身を血で汚しながらも立ち続ける嵯泉を見据えた。
 ひと呼吸、その瞬間だけであったが――その束の間が、永劫のようにも思えて。
「……そろそろ頃合いだ」
 血濡れの背中は、傷だらけであるはずなのに――戦鬼が如く猛々しい。
 刹那、嵯泉の姿が『消し飛ぶ』。
 半瞬遅れて、斬り開かれていく『過去』の大瀑布に、ヴィクティムは思わず息を飲む。彼の『目』を以てしても、嵯泉の姿は残像を僅かに残すのみで。
 その剣客は、『虚無』を軽々と跳び越え、飛来する『過去』も等しく塵芥に斬り刻み、彼方のジェネシスへと奔走していく。
 ヴィクティムはその様子を確認しながら、右腕を翳した。
 不敵な笑みを添えて。
「――オーケー、では真実を歪めよう」

 『Dirty Edit』

 彼の視界に広がるは、マゼンタのウィルスマーク。それが無数にジェネシスの全身に迸り、足許の『虚無』へ伝播。
 一息つく間もなく、無限に広がる『過去』の奔流へと拡散していく――。
「……な、こ、これは――」
 ずぷり、ずぷり――底なし沼のように、ジェネシスの足を埋める。
 己が『過去』が変質した。その事実に言葉すら出ないようで。
「過去は変えられない? いいや、変えられる」
 『過去』は不変のものであると言ったな。
 確かに、絶対不変の事象ではある。それは揺るがない。
 だが――。
「過去へ向き合う姿勢さえ変われば、過去の表情は変わる」
 それは、『未来』へ進む姿勢でもある。
 『過去』を恨み、淀んだ停滞しかしてこなかったジェネシスには、決して考えつかなかった発想。
「その証拠に見ろよ……お前を強くする、過去から生まれた『虚無』の真実は……反転したぜ!」
 いまや、虚無の『黒』は何処にも存在しない。ただひたすらに、ジェネシスの身体によじ登る――純白の諸手があるのみで。
 その色彩こそ、『未来』の色。永劫の色彩。未知。展望。希望――。
「い、イヤだ……この色をオレに見せるんじゃねぇッ! クソったれ――ああ」
 一切の穢れを知らない、某の純白に――ジェネシスは言葉すら弱弱しく。
 能力すら無かったオレに何ができた?
 無能であったオレに、希望なんてなかったはずだ。
 未来なんて、こんな綺麗な色じゃない。もっと、淀んだ――。
 だというのに、どうしてこの色は、オレの目に焼きつくんだ……?
「その上に立つお前は! 著しく弱くなる! 決めろ嵯泉!」
 ヴィクティムの言葉に意識を引き戻されたジェネシスが、天を仰ぐ。
 羅刹が如き某の片目と、目が合った。
 そこには、赤々と全身を染め上げながら――腰に携えた鯉口を切る嵯泉の姿が在って。
「ああ、そうかい……」
 ジェネシスの口から、そんな言葉が漏れる。
 その雄姿は、ひどく眩しく見えた。
 その光は、オレの羨望でも何でもなく――正しく『白』であったんだな。
 ジェネシスは、力の抜けた片腕を辛うじて振りかぶるも――。
「生憎だったな、愚か者」
 振るった拳の先には、誰もいなかった。
 代わりに、背後で聞こえる嵯泉の声。
 刃が鞘を通り、鯉口が鳴る音が聞こえた。

 ずず、と、己が視界が斜めにズレていく――。

「盤面は魔術師の手に因って反転した――最早過去の残滓如きには変えられん」
 己が意思に反して、徐々に近付いていく大地。
 ジェネシスは、声を発そうとするも、息が出ない。
 
 否、息が『吸えない』。

 滲んでいく意識、近付いていく『海』の潮風を感じながら――。

「抱えた虚無ごと潰えて消えろ」

 嵯泉が肩越しに背後を一瞥する。
 オブリビオン・フォーミュラは、既にそこに在らず。
 代わりに、さざめくような音と共に、黒の粒子が舞い散り――太陽に当てられて融けていった。

 世界の終焉は海に揺蕩い、那由多の過去をはらんだまま――消失。
 
 『未来』の純白は、護られたのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年11月29日


挿絵イラスト