アースクライシス2019⑲〜逃げるが勝ちとも言いマシテ
●骨のパズル
「やってキマシタ空の果て!」
肋骨のような形状の上に、ひとつ、ひとつと違う生き物の骨をくっつけて。
摘んだ小さな骨は道化師の手には脆く即座に砕け散る。
次に手を出したながーい骨は長すぎて、ぼきりと途中で折れた。
不気味な骨の何かを作り出して道化師は一人でケラケラと楽しそうに笑っている。
「るんるん気分で遊びまショウ!」
誰も声を返すことはないのに、その声はとても大きく、誰かに投げかけるようだ。
ぽーんと体を無造作に投げ出して、がらがらがらと骨の中に埋まる姿はまるで、子供。
「ここまで追手が来たらサァ大変!うーむ、どんな遊びをしまショウね、オロロロロ!」
●道化師のパレード
「……クローンではない、ジェスターの足取りを掴んだよ」
ソウジ・ブレィブス(天鳴空啼狐・f00212)は静かにぴっ、と上を指す。
ヒーローズアースの宇宙に、その姿あり。
「ラグランジュポイント。幾つも宇宙船がぶつかって出来た『島』のひとつに、その姿はあったみたい」
色々な個性を持つ『島』の中に紛れ込んでいた。故に、今まで見つからなかった。
……ある『島』は巨大輸送船に改造されていたのだ。
航行する為に特化した形態。誰の手によるものかは、判別が付かないが、その船にジェスターが様々な物品を集めているらしい。
「彼の目的は別にあるんだろうねぇ。どこかで活用するつもりなのか、結構無差別に運び込んでいるようだよ」
巨大輸送船内はまるで、博物館の如き様相をしている。
種類ごとに分類を分けられていて、小さなものから大きなもの。
地球上の動植物すら、それらは含まれる。
無機物と有機物すら、何でも持ち込んでいる。何に使うものか不明のおかしな物質から、言葉では表現できないものまで、本当に様々だ。
「とても『島』を船に変えた、巨大博物館の中でジェスターが居るのは……動物の化石が集められた化石区画みたい」
つい最近まで生きていた物を何らかの技術で朽ち果てさせて得た標本であったり。
お触り可能の区切られた空間に大量にばらまかれた小さな動物の骨や人類の骨が混ぜられたパズル体験エリア。
「彼はそこで、組み合わせた骨で摩訶不思議な標本を創って遊んでいるようだよ」
何が出来るかをわくわく楽しみながら、時折細かな作業に向かない手で握りつぶしてを彼は繰り返す。
道化師が道化師であるのは、常に誰かに見られている事が必然だ。
……まだ生きている犬や猫などもまた、その区画には持ち込まれているのである。
道化を喜ばせる視線は、…………あるのだ。
彼らに怯えと恐怖を齎す殺戮は、今も宇宙で続いておりいつ殺されるかという恐怖に動物たちは怯えているだろう。
「その区画の大半は、大小様々な骨で床が埋め尽くされているだろうけれど。それが皆に何かを齎すことは無いだろうね」
本当に始めから化石だったかも知れないし、いつ貯蔵されたものかも分からない。
猟兵が知らぬ誰かの終わりを悔やむことはない。
その分を、ジェスターにぶつけてやれば、誰かの気分も晴れるだろう。
「……でも気をつけて。ジェスターは必ず、君たちより早く攻撃を仕掛けてくるから」
道化師の特技は驚かすのも仕事のうち。
猟兵は彼にとっても敵であるが、彼にとっては『客』と変わらないのだ。
「必ず、攻撃を防御ないしは防いで反撃の一撃を与えなくちゃねぇ!」
笑うソウジは自身が向かうわけではないのに、殴るポージングで猟兵たちを鼓舞する。
「ガツンとやってきてよ、絶対ね。そうだ、足場に丁度いいくらい色々あるし、何かの役に立てちゃえば?」
どうせならね、と頷いて、ソウジは独り言のように呟いた。
「島は宇宙を進む船。彼の離脱を許してしまう足にも成り得るんだ。……逃げの一手まで用意周到な、彼らしく嫌な戦場だね」
タテガミ
こんにちは、タテガミです。
空の果てまで道化の声を届けてはいけない気がしました。
彼の耳に永遠届く愉快な幻聴のハンドクラップを止めてやりましょう。この依頼は、【一章で完結する】戦争の依頼です。
動物(人間も含む)の化石区画へようこそ。
一歩でも踏み込めば瓦礫の山レベルで骨骨骨です。
そちらはタテガミ依頼ではパフォーマンスとして利用する分には構いません。
手頃な場所に無造作してるほうが悪いですからね。
先制攻撃への対処が甘い場合は、苦戦判定が出る事もあります。ご注意を。
必要な事はきっとグリモア猟兵が伝えて居ると思いますので。
よぉく読んでからご参加下さいますよう、お願い申し上げます。
第1章 ボス戦
『ジェスター』
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POW : 力押しもたまには悪くないデスね
単純で重い【魔法金属製のメイス】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD : 古い馴染みの仲デシて
レベル分の1秒で【意志持つ魔剣『レギオスブレイド』の群れ】を発射できる。
WIZ : 別に見捨てても良いデスよ
戦闘力のない【名も知らぬ一般人の人質】を召喚する。自身が活躍や苦戦をする度、【呪詛により人質が傷つき、悲鳴や苦痛の声】によって武器や防具がパワーアップする。
イラスト:シャル
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
大豪傑・麗刃
とにかく初撃を絶対に回避しなくてはならない。
相手は突っ込んできてメイスを振るうわけだから、まずは速度と武器のリーチを見切る。そして武器が振り下ろされる直前に早業のバックステップ!わたしが潰れたと思ったら残像だったという演出があればなおよし。
ユーベルコード勝負になったら。
ジェスターくんとやら!この勝負は既にきみの負けだ!
なぜならここに大量にばらまかれて骨の山!これが君の運命なのだ!
予言しよう!
きみは凡ミスを繰り返して負ける!
『ボーン』ミスを繰り返して負ける!!
ボーン=bone=骨
でわたしは二刀流で斬りかかり、わたしのギャグでペースを乱した敵は実際に凡ミスを繰り返して負けてくれ……たらいいなあ。
●single blow
少し遠くでタッタッタ、と誰かの駆け込んでくる音がする。
がさがさがさと骨だらけの区域に迷いなく突き進んでくる者があるとすれば、間違いなく猟兵。
「ようこそようこそ、骨のロマンが心を沸き立たせる庭へ!」
むくり、とバネ仕掛けの人形のように跳ね起きるジェスターは大豪傑・麗刃(変態武人・f01156)の来訪を歓迎で迎えた。
がらがらと、勢いでふっとばされた獣の顔らしき骨がスコン、と頭部に直撃したが、彼はそれに反応しない。
――とにかく、初撃を絶対に回避しなくてはならない。
此処に来るまでに心に決めた決意は硬く。
相手が骨の池の中から飛び起きた事に驚いて居ては、隙を狙われてしまうかも知れない。麗刃の周囲には、そんな張り詰めた緊張感があった。
「アナタがお客様かそれ以外かはあえて聞きマセンガ……もう少し笑ってはいかがデスカ?」
知らず知らずのうちに、ハイテンションが抑えられ表情は思いつめた表情しかしていない。
決意以外にも、表情自体も硬かったらしい。
指摘されてようやく麗刃は気がついた。
「ハハハジェスター君も冗談が上手だな!しかし、きみに伝えなければいけないことがある!」
火がつくいたように話しだした麗刃に、ジェスターは、『んんん?』と首を傾げて反応する。わざとらしい反応だ。
「この勝負は既にきみの負けだ!」
「フムフムそれもまた、面白くない冗談デスネ!」
骨の池から掴んで取り出したるは、彼が愛用する金属製メイス。
殴打を主な目的とする形状は、時折何かの属性の魔法を表面に奔らせる。
「ドウヤラワタクシの客でも敵でもなく、道化だったようデスシ、おかえり願いまショウ早々に!」
ジェスターの踏み込みは軽い衝撃波を生み出し、足元の骨が盛大に吹き飛ぶ。
悪魔的速度で麗刃の傍へ踏み込んでくる。
――『相手は突っ込んできてメイスを振るう』。計算通りだ。では後は……!
叩き潰すようにメイスを振り上げて、有無を言わさず振り下ろされる。
「……なぜならここに大量にばらまかれた骨の山!」
振り下ろしたメイスは勢いのまま床をヒビ割れにしたが、そこに血の跡はない。
相当な重量を受け止めて、粉々になった骨だけだ。
そもそも、誰も潰せていないのだ。
空を掴むように、直前まで合った質量が形を失ったように。
「残念、ここだ」
ズシャアアをバックステップでメイスと、その衝撃の範囲から離脱していた麗刃。 ジェスターが潰したのは、その速度に置いていかれた彼の幻想。
そう、残像に違いなかった。
「みたまえ、そして理解してくれたまえ。これが君の運命なのだ!予言しよう!」
両手を広げて、麗刃は道化師よりも道化らしい動きで告げる。
大きく息を吸って。晴れ晴れしいステージの中央に立つ演者のように。
「きみは凡ミスを繰り返して負ける!」
「……ハイ?」
「『ボーン』ミスを繰り返して負ける!!」
ボーン=bone=骨
清々しい程に、そう言い切る麗刃の表情は、とても満足げだった。
その勢いのまま、麗刃は二刀流でジェスターに斬りかかる。
メイスで麗刃の攻撃を防いたジェスターは、笑いもせずに、ぽつりと返す。
「……ナルホド。アナタの意図は受け取りマシタ。骨のように『ボーン』と折られる覚悟はお有りと」
シリアスな空気、もとい、始めからあった朗らか道化のふんわり空気が壊れている。ぐぐっ、とメイスに力を込めて、ジェスターは麗刃を押し返す。
ペースを乱すことを期待して、クロスするように打ち込まれていた剣の影響で盛大に麗刃は仰け反った。横薙ぎにメイスを構えたジェスターが一度、ズサアァアと横滑りして転んだが、彼は気にしない。
「それではドウゾ、ゴキゲンヨウ!マァ、……少しは笑えマシタヨ」
どごお。
思わず笑ってしまう勢いで、麗刃は骨の池の中に吹き飛ばされて意識を失った。
振り抜かれたメイスの勢いで、後ろに派手に転倒したジェスターが、視界の隅に、見えた気がしたが――そう、気の所為でなければ。
苦戦
🔵🔴🔴
ウィルヘルム・スマラクトヴァルト
様々な骨、ですか。元から骨だったのか、殺戮の結果なのか。
ともあれ、殺戮道化師なんて存在は放置できませんね。
奴を倒し、いたいけな動物達を恐怖から解放しましょう。
先制攻撃は真正面から突撃すると「フェイント」をかけた上で、
「第六感」で予知して軌道を「見切り」、「残像」を残して回避します。
「それは残像だ! 私はここにいるぞ!」
万一攻撃を受けてしまった場合は、「オーラ防御」でダメージを抑えて
「激痛耐性」と「気合い」、「覚悟」で耐えきります。
先制攻撃を耐えたらハイパー・ガーディアン・モードを発動。
破壊された足場から飛翔して、マッハ5弱で緑の斧槍による
「ランスチャージ」を敢行。ジェスターを「串刺し」です。
●Fast green
「様々な骨、ですか。元から骨だったのか、殺戮の結果なのか……」
まじまじと、足元の骨を見つめたウィルヘルム・スマラクトヴァルト(緑の騎士・f15865)の独り言に、ジェスターが愉快そうに答える。
「ソチラにご興味が?アナタはずばり、どちらだと思いマス?」
返答はゆっくりどちらでも、という調子でメイスを握り、ぽん、ぽんと重量を預けた手元でジェスターは遊ぶ。
「……元から説の方でしょうか」
――殺戮道化師、なんて存在ですから。嘘も真も答えないでしょう。
「マァワタクシも運び込んだモノの確認をいちいちしておりませんので、知らないのデスガ!」
――ほら、やはり。
どちらの内容であったとしても、その返答が来ただろう。
そう、騎士道精神に乗っ取り敵を観察するウィルヘルムは疑わない。
「ではこちらを見ているいたいけな動物たちの為、この恐怖からの解放を此処に宣言します」
「ナルホド成程、アナタもまた恐怖の骨々アイランドの住人に成りたいのデスネ!」
身を低く、速度を付けてる為にジェスターは屈む。
スタートダッシュさながらに低く、更に低く。貯め込むのは速度だけにあらず。
振るう為のメイスに込めるは重力。単純で重くするにはそれが一番だ。
一つの呼吸とともに、ガシャアアアンと吹き散らされた骨が飛ぶ。
そして、やや大柄な巨体が、力の限りウィルヘルムへ向けて一直線に跳ぶ。
「デハお望み通りに!」
振り上げたメイスが頭上に迫るが、真正面から突撃する姿勢を見せて、ウィルヘルムは挑む。
「……なる、だろうか?」
直撃間近で、感を閃かせ体を脇に倒してメイスの軌道から逸れて躱す。
風を切る音がある。見た目より、金属が音だった。
そして、その後来るだろう破壊の衝撃を、範囲を見切り、素早くその場から後ろに数歩分飛び退く。
ウィルヘルムの周辺は吹き飛ばされていない骨の沼だ。
――衝撃は微量でも、緩和されるはず。いや、されるだろう。
ドゴォオオと一息に打ち込まれた衝撃で、骨が文字通り散乱する。
「数歩程度で逃げ切れると思いマシタカ!?」
鎧に骨が当たって音が……ならない。実体が、ない。
スゥウと見えていたウィルヘルムが音もなく消え去る。
「それは残像だ! 私はここにいるぞ!」
更に離れた骨の沼に紛れ、残像が消えると同時にウィルヘルムは飛び出し、走る。
「この世界を護る為……私は、あなたを倒す!」
エメラルドに輝くオーラで身を包み、ウィルヘルムの意志を汲んだ足は速度を増して急激に近づいていく。
場所はそう、破壊された足場。見える世界の本来の速度を置き去りに、飛翔したその手に緑の斧槍を取り標的へ一直線に今度はウィルヘルムが跳ぶ。
「なっ!?」
驚きの声は聞こえたが、時既に遅し。
ウィルヘルムの緑の斧槍は突き出された刃先を腹に盛大に突き刺したのだ。
「……オミゴトデス!攻撃が全く見えませんデシタ。ここ、笑うところデスネ?」
痛みがあるはずなのに、ジェスターは平然とそう返す。
アナタは客だった、と戯けたまばらな拍手をウィルヘルムに向けて称賛しながら。
成功
🔵🔵🔴
カネリ・カルティエ
【SPD】
おやおや、生き物パズルとは楽しそうですね。私も遊びにまぜてくださいよ。貴方の骨で、ステキな標本を作り上げてみせましょう。
ジェスター君がお友だち(魔剣)を召喚するというのなら、私も助っ人を呼ぶと致しましょう。
【UDC召喚】で盾のUDCを召喚。
【武器受け】し、その硬さで剣先を折ってしまいましょう。
※召喚はランダムなので失敗した場合は
「おやおや……」内容はお任せします。
魔剣はUDCに任せて、私自身は【呪詛】を込めた地縛鎖の【串刺し・傷口をえぐる】でジェスター君を攻撃します。
また、【催眠術】で自身の位置を相手に誤認させ攻撃を避けます。
貴方のお噂はかねがね。こうして直接お会いできて嬉しいです。
●Friends blade
「お客様なら大歓迎!ほかにもいらっしゃってるんでショウ?」
ジェスターは戯けてそう問いかける。
腹から血が出ていようとも、声色に痛みを感じているフシはない。
「どうぞどうぞ、骨山だらけでワタクシも物寂しいく思うんデスヨ!」
少し大柄の巨体でしゃがんで拾うなにかの骨。
大きな生き物の、腕に属する骨だろう、おそらくは。
歪な方向にその骨はねじ曲がって切断されていた。この腕が付いていただろう本来の胴体も、その先の手の部位までも、バラバラにどこかに紛れているのだろう。
「これの続きとか、一緒に悩んで遊ぶ人が欲しい気分なのデスガ」
「おやおや、生き物パズルとは楽しそうですね」
ジェスターの盛大な独り言に、カネリ・カルティエ(ブラックタールの探索者・f10978)が少し離れた場所で応えた。
「愉快なお客様は話が分かる方デシタ!ワァ嬉しい!」
「特に、貴方のその骨で完成を戴ければ最高にステキな標本が出来ると思いますよ」
無邪気そうに喜んだジェスターの動きが、ピタリと止まる。
ゆらゆらと頭を揺らして、カネリの方を向く。
「それはツマリ。あぁ成程、ワタクシの頭を撥ねると」
「貴方のお噂はかねがね。こうして直接お会いできて嬉しいです」
雑面を風に揺らし、カネリはそう言い切る。魔術師なローブの袖を胸元に、やや大げさに頭を下げて嘘ではないと伝えるがジェスターには果たして伝わるか。
「ワタクシのクローンが大暴れシテイタそうデスネ?有名人はモテモテ過ぎて大変デスヨ」
がっくり、とわざとらしく肩をすくめて、首を振る。
面識がないのに噂だけが独りで歩き、いつの間にやら居場所を知られて大盛況。
ジェスターにとっては摩訶不思議、と言わざる追えない状態だ。
「そんな愉快なアナタに、此処だけの秘密デス。ワタクシの古い馴染みを紹介させて頂きまショウ!」
指をぱちん、と鳴らすと、ジェスターの頭上に時空の歪みが現れる。
「こちら、レギオスブレイドと申しマシテ……切り刻むのが得意な永遠なる闘争体なんデスヨネェ」
現れたのはジェスターよりはやや小柄の剣……いや、ナイフか。
それらで形作られた、人形のようなもの。
足も手も体も全てが切り刻むに特化した姿。人形のような姿で現れた『レギオスブレイド』から流れてくる気配は地獄めいた殺気と、殺意。
「ほう。それは何とも……威圧的で、不思議な」
「デショウ?これは意志はあっても口は聞きませんケドネ!」
もうひとつぱちん、と指を鳴らせばそれらはバラバラに砕けるように分離していく。ジェスターの操る魔術か、それとも『レギオスブレイド』の意志によるものか、宙にで停止したナイフがカネリに向けて構えられる。
「ワタクシ大盤振る舞いの大サービス!どうぞ切れ味まで堪能していってクダサイネ!」
空気を空間を切り裂くように、意志持つナイフがカネリに飛んでいく。
「良いお友達ですね、ジェスター君。では私も助っ人を」
――さて、どなたが呼び掛けに応えてくださるでしょうか。
ふぉん、と魔術的術式は、カネリの後方に展開される。
何かが墨のように滲み出す、くろぐろと水のような何かが確かに応じた。
カネリの前に液体は進み出て、一般的なブラックタールのように体を伸ばしてナイフをその身に受ける。ぐにょんと剣先がカネリに届きそうになるが、貫かれず、威力を完全に殺されてぽとり、と落ちた。
「お友達がそのような方ならば、私の助っ人はさぞや斬りがいがあるのでは」
召喚したUDCが無尽蔵な目を広げていたが、カネリは向こうへ、と促すだけだ。UDCがぬとぉとカネリの握る地縛鎖に更に色濃い呪詛を施した事には気づいている。
――私の呪詛と、更に色濃い呪詛です。無事では、済まないのではないですか?
ぶんぶんと、遠振り回し、先端の刃物で狙うは血を流す、その一点への投擲。
「そう、デスネェ」
メイスで鎖を絡めて避けようとするジェスターだったが、その鎖はジェスターが思うより長く。
振り回されていた分の遠心力が、機動力を更にあげていた為に逃げそこねた……とジェスターは思っていたが、これは違う。
短時間ながら話している内に、カネリは催眠術を密かに掛けていたのだ。
道化師が惑わされていた。始めから、そう、今でさえ。
鎖が絡まり、先端が傷を抉るように刺さる。
武器の長さを見誤ったジェスターの本気の落ち度だ、とカネリは冷静に思う。
「……これは、痛い!」
道化の仮面が一瞬でも剥がれるほどに。
抉られた部位は致命的にジェスターを苦しめた。
大成功
🔵🔵🔵
シャルロット・アルバート
イチカが……愛する恩師が愛していたこの世界は絶対終わらせない。
だから僕は『新垣瑞希』として……そして『閃光の戦乙女(ライトニング・ヴァルキュリア)』として『ジェスター』に挑むよ。
そして僕が使うユーベルコードはPOW。
となればメイスが来るだろうから、それを肩部搭載型誘導兵器とオーラ防御で防ごうと試みるよ。
地形をいくら破壊しても空への影響はそこまでないと思うから、
僕は『空を舞う戦乙女』の空中戦闘で空から攻めることで地形破壊に対応するつもりだよ。
●War Maiden's Fist
――がしゃん、と控えめな音が背後に聞こえ、ジェスターが振り返る。
「さァてアナタはどちら様デスカ?」
視線の先に目を伏せた状態で其処に居たのは、シャルロット・アルバート(閃光の戦乙女(ライトニング・ヴァルキュリア)・f16836)。
――イチカが……愛する恩師が愛していたこの世界は絶対終わらせない。だから…………。
カッ、と決意を胸に開かれた漆黒の双眸は、道化師を正面から映して睨んだ。
「僕は『新垣瑞希』として……して『閃光の戦乙女(ライトニング・ヴァルキュリア)』として!」
握りしめた拳も固く揺るがない想いを秘めて、今は遥か遠き恩師に勝利を誓う。
「ジェスターに挑むよ!」
「コレハどうも戦意共々ご丁寧な自己紹介を……ワタクシの紹介もいりマスか?」
名を知っているシャルロットに、その説明は一切不要だ。
ジェスターはそれでも分かっていて、そう聞いてきている。
「アナタのような輩は、肉体言語の方がお好きだと勝手に判断しますケドネ!」
シャルロットの返答を待たず、携えたメイスを手に手頃な骨を蹴り上げて、骨で視界を隠された一瞬、悪魔の如き速度でメイスを振り抜き眼前にまで迫っていた。
ゆらり揺らめく瞳に灯す閃光をにんまりと曲げて、驚いたでしょう、とでも言いたげだ。
「何を言ってもメイスが来るだろう事は、分かってた!」
パワードスーツの肩に未だ装着されたそれらを、戦闘開始の合図と受け取り展開する。
重みのあるそれらを、展開する先は自身の正面。
誘導兵器での常の誘導の仕方とは全く異なるが、『攻撃を誘導する』という意味でジェスターの攻撃を受けるのだ。
シャルロット自身もオーラを纏い衝撃への対処は二重防衛。
がつぅうん、と魔法金属と兵装が甲高い音を立ててぶつかる。
耳に痛い、剣と剣で切り合うような音と、遅れてくる重みというなの衝撃は、光と音の関係のように後からずしりとのしかかってきた。
――……重い!
衝撃へのダメージは、さほどシャルロットへの直接的なモノとして通らなかった。
「力押しもたまには悪く、ないデスねェ……!」
ぐりぐりとメイスに力を込め続けながらジェスターは今にも笑い出しそうな声色で囁く。防衛で受けた威力と衝撃が、重力を伴いシャルロットの立つ床を砕いていく。
「ねぇ、例えこの床が崩れても、いくら破壊しても空への影響はそこまでないと思う。……違う?」
「違いませんね、オロロロロ!」
「……そう」
――パワードスーツ、最大出力!展開、開始!
耳を凝らせば聞こえたかも知れない。コオオオと音を立てる何かの駆動音が。
その音は、シャルロットのパワードスーツ、後方から煌めく粒子を溢れさせて、活動速度を上げていく。
「僕はこの戦況を、好機に変えてみせる、よ……!」
最大出力に到達し、発生した粒子は黄金色となり体を覆って受けたメイスを押し返しジェスターを仰け反らせる。
「おっとっと」
「もらったぁ!」
強化された飛翔能力を用いてシャルロットは空を疾走る。
散らばる骨を無視し、スライディング気味にジェスターの足を払い、わずかに傾き浮いた巨体を蹴り上げて。何度も何度も、蹴り上げる。
空中に飛ばした打点から、そう、納得行く高さに到達したと判断し、飛ばした先へ回り込み、シャルロットは両手を握った即席のハンマーで力いっぱいトゲトゲしい骨の並ぶ床に上に叩きつけた。無残に飛んでいく巨体は床へ一直線に叩き落される。
ジェスターの肩を破り貫通した骨に、頭部が、からりと揺れた。
成功
🔵🔵🔴
御形・菘
道化師は皆を笑顔にするために在るべき!
役割を履き違えたお主には、キツいお仕置きをしてくれよう!
力押しとは分かりやすい! 妾も全力でガードするのみ!
左腕へと、可能な限り保護すべくオーラを集中させて纏い、頭上に翳して叩きつけに耐える!
なに、頭や首がイかん限りは問題ない!
そして妾のターンだ!
眼前の空間を右手でコンコンコンっと
はーっはっはっは! 骨があるばかりでは、あまりに光景が寂しかろう!
一面の花々に埋もれさせれば、この上なくエモい戦場の誕生よ!
尻尾での薙ぎ払い…と見せかけて、身体へと巻き付け拘束!
砕けた左腕は武器にできんと思ったか? お仕置きと言ったはずであるぞ!
ガード不能の頭に、全力でブチ込む!
●Knock on System flowers
大きく大きく、溜息が一つ零された。
この場にあって、血の匂いを大きく垂れ流す男のものだ。
「何人侵入シテいるか存じませんが。モウいっそ、同時に来ては如何です?」
肩に突き刺さった骨を引っこ抜き、ばきりと握りつぶすジェスター。
「ちまちまと、痛みで笑えと言われマシテも、笑うに笑えまセンのでね」
突如しゃがみ込んで、足元の骨をぶわああと上へぶん投げて。
ガラガラと落下して弾む乾いた音をただ、静まり返った化石区画に響き渡らせる。
「道化師は皆を笑顔にするために在るべき!」
物音の中で、御形・菘(邪神様のお通りだ・f12350)がそう主張した。
爬虫類系が色々混ざった彼女の尾がずるり、と床を撫でて、場所が狭い不快だと言わんばかりに払い除けて骨を弾き飛ばす。
「役割を履き違えたお主には、キツいお仕置きをしてくれよう!」
「アララ、アナタは今笑顔のようデスが……ウーン、見間違いカナ?」
構えたメイスをぶんぶんと振り回すジェスター。
標的とばかりに現れた菘目掛けて、一歩二歩三歩と歩幅の広い跳躍で飛び上がりながら重力に則って菘に落下してくるのだ。
「アナタにもまた、力押し!うん、やはりたまには悪くないデスね!」
「力押しとは分かりやすい!妾をよく理解している!」
――ならば、ならば。全力でガードするのみ!
異形の左腕へと、溢れんばかりのオーラを集中させていく。
強く願われた防衛のオーラを腕に集め、菘は頭上に翳して落下物の飛来を待つ。
「ほう、本当にそれで、ヨロシイので」
落下の速度に合わせて、メイスを振り上げ打撃点として差し出された腕を狙い……衝突は起こった。
一瞬息が詰まるような緊張感が、魔法金属製のメイスを握り潰す勢いで握り込んだ菘の腕から、ブチブチと音が上がる。直撃地点を起点に、そう、腕を起点に破壊の力が腕の筋を強引に千切っている音だ。
「なに、頭や首がイかん限りは問題ない!」
――そして、妾のターンだ!
重い一撃を食らわせた事で、一旦飛び退いたジェスターはこちらの気配を探っている。菘はおもむろに眼前の空間を、怪我など無い右手で叩く。
其処には決して何もなく、だが返ってくる音がある。
コンコンコン、と。
「ん!?」
音と共に化石区域に突如として、ぽん、ぽんと花々が戦場を埋め尽くしていく。
咲き乱れる花びらは、システム・フラワーズで見かけた心穏やかな桃色ばかりではあるが、ジェスターの周囲だけは水色の可愛い花が咲き誇るエモい空間へと塗り替わった。
「はーっはっは!驚いているな!」
一時的に借り受けた力と空間である以上、長続きシないかも知れないが、菘はそれでも構わない。
「骨があるばかりでは、あまりに光景が寂しかろう!一面の花々に埋もれさせれば、この上なくエモい戦場の誕生よ!」
「エモい」
道化師ジェスター、エモいという聞き慣れぬ単語に首を捻った。
明らかに嘲る気配ではなく、困惑という気配がある。
「このエモエモな花々が胸を打たないと!?あぁなんという、……嘆かわしさよ!」
身を翻すように菘が動き、尻尾で薙ぐ……回し蹴りのように体を捩ってジェスターへ迫った。
……が尾が凶器と振るわれる衝撃は届くことはなく、その代わりにぐるりと体に巻き付くのだ。
「青い花、勿忘草……その意味は」
「あぁ意味までは知らぬのだが、知っているなら胸に秘めてそして笑え!」
ぷらぁんと今まで動いていなかった左腕を、構えて菘は舌をちょろりと出して、笑った。
「お仕置きと、言ったはずであるぞ!これでは外しようもないガード不能で」
動けぬ道化師の頭に向けて、鋭利な傷だらけの拳が片目の骨を割り砕き。
派手にふっとばして、達成感に満足する、菘の豪快に笑い飛ばす声が響いた。
大成功
🔵🔵🔵
サンディ・ノックス
あいつはこちらのどんな態度も己の喜びに変換できるタイプだろうな
敵のペースに乗らない、耳を貸さないよう心掛ける
どんな攻撃を仕掛けてくるかも読めない
攻撃に対し反応が間に合うなら障害物(骨)に攻撃を受け流す、黒剣で受け止める
間に合わないなら急所だけは避け、攻撃の特性に応じた耐性で軽減しオーラ防御
動物達への呪詛を破魔で軽減できないか試す
少しでも和らいだら希望を持ってくれるかも
解放・星夜で小人を召喚、状況にあわせ有効な戦闘手段をとらせる
骨の隙間に隠れて死角をついたり
骨を崩して攻撃したり
動物の傍にいてあげたり等
俺は黒剣を剣と鎖鎌形態の切り替えしつつ攻撃
逃走に注意、兆候があれば足場を崩したり鎖を絡めて足止め
メンカル・プルモーサ
……ふぅん……一般人を盾に、ね……
…あの呪詛をどうにかしないと…箒に乗ってジェスターの攻撃を凌ぎつつ
まずは呪詛の情報を集めて解析…
…浸透破壊術式【ベルゼブブ】によりジェスターを介して魔術的に呪詛へハッキング…呪詛の対象を人質からジェスター自身へ書き換え…そして武具への影響を逆転させるよ…即興呪詛反転術式【ミカガミ】とでもしようか…
…ジェスターが物理的に人質にしようというのであれば……【尽きる事なき暴食の大火】により人質を迂回するように操作してジェスターを攻撃…
…人質には一切の延焼無し……熱を与えずにジェスター「のみ」を焼き尽くす用に設定して燃やし尽くすよ…
●Do not bind with curse
骨の中に埋まって起き上がる。
それだけのことですら愉快に思っているのか。コミカルにがばっと起き上がり、ぺらぺらと思いついた事をジェスターは垂れ流し始める。
「ウーン、メイスで物理も限界がありマスからね。そろそろワタクシらしい方法でより最高のショウタイムをお届けする頃合いでしょう!」
ぽい、とメイスをどこかに投げた。投げる先は特に確認しない。
どこかの骨の山の中にずぶずぶと無造作に、埋まっていく。
「あー!大切なメイスがー!」
わざとらしい大声が上がった。
割れ砕けた頭上を燐光のような紅が、嘲るように揺れている。
少なくても、サンディ・ノックス(闇剣のサフィルス・f03274)はそう見えた。
――あいつはこちらのどんな態度も己の喜びに変換できるタイプだろうな。
普段サンディの穏やかな表情も、彼ばかりは冷めた目でみていた。
――第一、わざとらしい。うん、敵のペースには乗らないし、耳を貸さないよう心掛けよう。
「見ているだけデスカ?ウーン、それはツマラナイ!折角なんです、お喋りシまショウよ!」
無言で返すサンディに、ジェスターは残念そうに肩を竦める。
「……あーあ、正義感とかデスかねェ。なら、ソウデスネ…………」
ぱちん、と指を鳴らすとジェスターの足元に展開される魔法陣。
赤黒い線で描かれたおどろおどろしいそれらは、召喚の術式。
骨やほか猟兵の戦闘あとの花びらなどを全て無視し、その魔法陣は起動して、一人の少女を喚び出した。
「えっ……あ、えっ…………!?」
戦闘力など明らかにないだろう、戦うことに何の術を持たない一般人。
少女はポップコーンを持って、殺伐としたこの区域に呼び出された。唖然とした少女が抱えていた、膝を抱えるほどの容器がバサァアとぶち撒けられる。
「この子で今から、遊びマス!……ああほら、そちらのアナタもこちらのステージへお出でませ!」
「……ふぅん、一般人を盾に、ね…………」
呼ばれたメンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)は遠くからただ、こちらをみていた。
「そう、盾!具体的にはァ……ワタクシの術で現れた以上、呪詛に愛されておりますから」
ニィと紅い視線は歪んで嘲る。
手を叩いて、喜ぶやや大柄な男の大舞台が、始まるのだ。
「ワタクシに手を出せば、彼女も連帯責任として代償を負うでショウ!別に見捨てても良いデスよ?名も知らぬ人間がただ一人、死のうがワタクシには関係ありませーん!」
それと、とジェスターが続ける。
「イイ忘れて居ましたがこの区画の動物もまた、同じような呪詛で縛り付けて居ますからさて、ワタクシへの攻撃で一体何匹死んだことやら」
クククと笑うジェスターに、鋭利な爪を手を伸ばし、手頃な場所にいたサンディの胸ぐらを掴まんと迫る。
「それ、は……!」
掴もうとしてくる手を、足元の骨を蹴り上げて反らし飛び退いた。
携えた黒剣で受け止める事も考えたが、斬りつけた場合を考えると手が止まってしまう。
――武器を持たない男を傷つけたら、何が起こるか……。
「……あの呪詛をどうにかしないと……」
飛び退いたサンディと場所を変わるように、メンカルが箒に乗ってジェスターを撹乱する。
「サァサァサァ、どうします?避け残って剥製になっていただいてもオーケーデスよ!無関係の少女を殺すもよし!」
自分の状況にようやく気がついたのか、少女がしゃがんでわんわん泣き始めた。
ジェスターの嫌がらせか少女はこの区域での生存を許された呪詛に身を侵された動物たちと共にある。
猟兵二人が遠巻きに見るに、何体かは確かに動いていない。
最前線にメンカルを残し駆け寄ったサンディが、先に動物たちへ呪詛を払えないかと破魔の力を充ててみた。
刻印されたように赤黒い文様が暴れるように蠢く。
まるで息をする、なにかでもあるように。
きゅうう、と動物たちから安らいだ声が上がったのを聞いて、サンディは少女にも同様に施す。
――少しでも和らいだら、いいのだけれど。
「大丈夫。俺たちが希望になって、……きっと、助けてみせるから」
考えるだけ、心が痛む思いだった。
「……呪詛の情報、集めて、解析…………」
ふわあと箒の上からメンカルは術式を開示する。
表面上は、タブレット操作を施して、画像を見せただけなのだが。
力を込めた、何らかの画像をジェスターに見せつけると、彼は覗き込んだ。
「猫、デスカ?ああ、美味しデスヨね!」
――掛かった。
メンカルの浸透破壊術式【ベルゼブブ】の効果が、遅延して起動する。画面の切り替わった画面を淡々と操作するメンカルを、ジェスターは猫画像を探す少女だと、次の画像を期待して待った。
認識したことを引き金に、術式は魔術的に絡みつき歪な因果へのハッキングですら許してしまう。
――呪詛の対象を、少女や動物たちから、ジェスター当人に変更。
――これは私の逆襲だね。武具への影響を逆転させよう。
――そう、コレの術式の名前は、即興呪詛反転術式【ミカガミ】とでもしようか……。
書き込んだプログラムに、エンターのボタンで適応した。
彼は気づかず毒をその身に匿ってしまったが、やっと見つかった、と別の猫画像を見せてメンカルは誤魔化す。
「トコロデ今なにか、おかしなことをしませんデシタ?」
「……ううん、なにも…………」
この戦闘中に猫の画像を敵同士で見ている状況におかしなところ以外のなにがあるだろう。
「いけませんね嘘は下手くそですかアナタ、そちらのアナタも同情などおよしなさい。戦闘は非情であらねばなりません、アナタがたの悩む表情、困惑した気配!それら全てがワタクシは愛おしい!最高に楽しいのデス!」
くるり、くるくるジェスターはその場で回りだし愉快な状況への礼を述べる。
それにカチンと来たのは、サンディ。
『この子たち、どう見える?――いや、見えて無くても構わないよ』
だんだんと、ジェスターに近づくに連れて、その周囲に、隠れ潜むように追従している青系の色彼らを、ジェスターが敵しすることはないだろう。
骨の隙間に隠れたり、少女と動物の元へ結構な数が防衛に残ったり、と彼らの小さな活躍の場は、場所を問わない。
「……ねぇ、やっても構わないよ……」
メンカルの傍を通り抜けたとき、メンカルは確かにそう呟いた。
その意図は、サンディの足に力を与え、を黒剣を剣と鎖鎌の形態に切り替え、思い切り斬りかかる。
振り上げられた剣に、ジェスターは余裕たっぷりに静止の声をかけるのだ。
胸元でぱちん、と手を叩くと、少女が手元にテレポートさせられている。少女が、――居る。
「ホントウにヨロシイのですね?」
『貪欲なる炎よ、灯れ、喰らえ。汝は焦熱、汝は劫火。魔女が望むは灼熱をも焼く終なる焔』
メンカルの返答代わりの白色の炎は、人質を迂回するように操作し、ジェスター目掛けてぶつけられる。
ぼぼぼ、と当たる白炎は払われれば周囲の骨も喰らい炎の大きさを拡大させて燃え盛った。
「……これが、私の返事」
――人質にしようとしても無駄。一切の延焼無しただ只管に、燃やし尽くす。
燃えるジェスターは熱いという痛みに違和感を覚える。
――苦戦しているはずだ、人質はこの煙火に巻かれ悲鳴の一つや二つあげて……。
「ま、まさか……私の呪詛を、いかなる方法かで『呪詛返し』してラッシャル!?」
一方的に下がっていくばかりの防具の耐久度が、それを証明していた。
これはもはや、何を守っているのだろう。なにも、守ってなどいやしない。
「――ほら、足元も留守だし。折角だから味わっていきなよ」
鎖鎌による足元拘束。ジェスターはそれにすら気づくことが出来なかった。
思いの外、同様は激しいらしい。抜き放つ剣に遮られる呪詛もなし、サンディは一思いに血まみれの腹を掻っ捌いて――斬り倒す。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
エンティ・シェア
意志持つ魔剣とか面倒なもの持ち出してくるな
対策できてる気は微塵もしねぇ。耐えるしかねーわ
武器だけは構えといて、逸らすなり躱すなりは頑張るけど
とりあえず致命傷は避けたい
最終的に痛みは耐えて生きてりゃ勝ちだわこんなもん
そっちが数で押してくるならこっちだってやってやらぁ
ありったけの白狼喚び出して、10体ずつくらいで合体させて挑ませる
足りなきゃ倍だ。全部合わせたっていい
とにかくそのクソ道化に一矢報いてこい
俺も、立って動けるなら、殴りに行くさ
振り回す力が足りそうになきゃ足払いでもしてやろうか
辺りの骨を適当にゴルフ感覚でぶち当てて目眩ましにでもなりゃ上等
全力で嫌がらせしてやるよ
あんたの最期を、見届けてやる
シキ・ジルモント
◆SPD
剣の発射は山と積み重なっている骨の影へ『地形を利用』し、即座に身を隠し防ぐ
意思を持つ事を利用し剣の群れを『挑発』して冷静さを失わせたい
「数はともかく、速さは大したことは無いようだな」
挑発に乗った剣の攻撃はいくらか直線的になるだろう
その軌道を『見切り』、回避を試みる
剣の回避後ユーベルコードを発動
増大した速度で攪乱し、射撃と移動を繰り返す
正面、側面、背後、骨を足場に跳び頭上から、一撃入れたらジェスターに捉えられる前に『ダッシュ』で移動し再び射撃を繰り返す
ジェスターが体勢を整える前に一発でも多く撃ち込みたい
逃げを打っても『追跡』して執拗に攻撃する
そう簡単に勝ち逃げなどさせるわけがないだろう?
●観客は牙を向く
白い虚ろの骨を赤に染めて。
周囲の骨をばきばきと叩き潰してウサを晴らさんとするがそれで流血が満足して止まるわけでもなく。
「まさかまさか、ここまでの深手を負わされるナンテ……」
投げ飛ばして見失ったメイスを今更探す時間があるだろうか?
喚び出した少女に掛けた呪いは反転するよう改良され、舞台の上で苦しむのはただ、道化師一人だ。
「デハデハそうだ、最後の仕掛けで盛大な拍手は頂きマショウ!そう、――セメテこれくらいは!」
ぱちん、と指を鳴らすその音に、動物たちが一斉に苦しみ悶え始める。
刻印されたような赤黒い文様から、漏れ出すように黒々した闇が溢れ出るのだ。
「古い馴染みの仲ではあるんデスガ、自主的に出てくるのもワタクシの作る魔術でも少々限界なので……体をお借りシマシタ」
闇が縮小を繰り返しながら、ジェスターの周囲に集まってくる。大小様々でありながら、剣は群れとなり個体のように振る舞って存在感を顕にするのだ。
「魔術的な意味デスヨ、オロロロロ!なに覚醒めなくとも誰の問題にも、ならないですカラネ!」
集めた生き物が何処から来たかなど、ジェスターは意に介さない。
故に非道も演出のために利用する。
「『レギオスブレイド』に無残でドキドキな緊張感を迫られると良いデスヨ!」
剣の体は即座にバラバラに宙に散乱する。歪な形状のナイフが体の構成数の数だけ展開されていく。
あれは、確かに剣の群れではあるが、レギオスという個体としての群れなのだ。
再びの、ぱちん、という指の音。
隠れ潜む猟兵に、その刃は無慈悲に黒々としたオーラを纏って飛来する。
「おい、意志持つ魔剣とか面倒なもの持ち出してくるな」
エンティ・シェア(欠片・f00526)がそう悪態を零す。
武器を構えて居たものの、剣はジェスターの手から離れ独自な意志を持って飛び回っている。
――こんなんどう対処しろっつーんだ。
打ち払って追い返しても、その刃は何度も飛来を続けるのだ。
これはおそらく、目標を殺すまでやめる気がないのだろう。
「……チッ」
頬を掠めた一振り。うち損ねた二振り。
エンディが乱暴に踏み付けた暴れる一振り。
それでも空に浮いた刃は突然飛来し命を狙ってくる。
動き続けなければいずれは、ジェスターの思惑通り串刺し人形と化してしまう。
「……地形の利用をすれば手傷を、減らせたのでは?」
そんな彼に声がかかった。少し声を伏せられた、男のものだった。
「……致命傷は避けてる。最終的に痛みに耐えて生きてりゃ勝ちだわ、こんなもん」
ため息交じりの応戦で、剣の動きから目を離せないエンティは、誰かにそう返す。
声を掛けたのは剣の襲来を、大きく身を隠せそうな骨山の影に隠れていたシキ・ジルモント(人狼のガンナー・f09107)。
大柄な彼でも隠れるレベルの骨の群衆だ。ここまで派手に骨を吹き飛ばしていたりした分が折り重なって山を作ったのだろう。
冷静に判断し、シキは其処に隠れていた。
――だが、意思を持つ、というのは本当のようだな。
「どれが誰で、どれが『あんた』という個体かは分かないが……数はともかく、速さは大したことは無いようだな」
エンティの驚くような表情を尻目に、シキはそうして剣に向けて挑発を試みた。
ジェスターは遠巻きに、怪我で動けないようだった。
戦闘中にごろりと寝転がって、休んでいる。
――総てを旧友の考えに任せ、あとは命運身を任せ、というところか。
「……俺はここだ。――どうした、殺ってみろ」
ぴたり、と飛来する刃がエンティから直線的動きでシキを狙い加速を始めた。
撹乱することを求められていない、確実に殺してやると逆上感すら思う軌道は頭を胸を狙ってくるのがよく分かる。
「なんだ、単純か」
剣にしては短絡的。ヤドリガミだったらこうはならなかっただろう。
悪魔か何かなのだとしたら、群れたるあれらには熟考が少し足りない。
戦闘の感、アーチャーたる彼が最短で殺すならば、という軌道と同一に過ぎた。
殺意むき出しの刃をひょい、と躱し、シキは目を軽く伏せて呟く。
「だから、遅いと……言っている」
開いた瞳は輝いており、人狼の野生身が体から存分に漏れ出した。
走り出す速度に足場の骨も、レギオスブレイドですら置き去りに。
骨を足場に跳躍し、人狼が機敏に刃を撹乱し始めた。
既に抜き放たれたハンドガンは、回り込み敵を見失った剣に向けてシキの代わりに吼える。吠えまくる。
「そっちか数で押してくるならこっちだってやってやらぁ」
標的が完全にシキへと移り、エンティの手が空いていた。
「丁度群れのボスに向いてる奴がいる、――そら。全力で、食らってこい」
声に呼応しありったけの白狼が喚び出されていく。
10ずつの個体で合体しており、それらは幼体よりは大きい。
成獣よりは少し足りないくらいか。澄んだ蒼い目の獣達が一斉に駆けていく。
獣特有の脚力で飛び上がって刃を噛み砕き、無造作に置き去りにする。
――足りなきゃ倍だ。さて、どうくるか……。
「アー、実は劣勢なんデスカ?旧友も光が薄いと型無デスネェ……」
壊れて動かぬ破片となっていくレギオスブレイドに関心はなく。
ジェスターがやっと、脅威を抑えきれないと認識した。
「もっと早くに気づくべきだったと思うが」
声がした、とジェスターが認識した瞬間にズドン。
体を銃弾が抜けていく。
撃ってすぐにその場を離れ、速度で生まれる風でシキの尾と耳が風に揺れた。
「いえいえ、多勢に無勢ともイイマスヨ?ワタクシが頑張ろうとも、手に出来ないものもアリマス」
――例えば、『レギオスブレイド』が感じたかも知れない猟兵への恐怖、とか。
「はぁ?」
がぶぅ、と牙がジェスターの腕に足に、突き立てられた。
時間差で、後ろから上から飛来する最後の一頭が頭を思い切り踏んづけて、満足げに尾を振る。
「それで今遊び感覚でこのザマ?あー、いいからその面ぶん殴らせろよ」
シキの撹乱の裏で移動していたエンティが、足場の血溜まりを無視して思い切り拳で殴って吹き飛ばした。骨を利用した嫌がらせも考えたが、嫌がらせとも思われない可能性に舌打ちがでる。
「殴る直前にそれ言いマスカ!?」
「あんたの都合なんて、それこそ知るか」
食い込んだ獣の牙を手足に貼り付けたままのジェスターに、シキは容赦なく弾丸をご馳走していく。
「嫌がらせはなにも行動だけじゃないだろ。あんたの最期を、見届けてやるから笑顔でどうぞ」
道化師というのならば、客を満足させてこそ。
客に一方的に責め立てられて、道化を気取って演出できないなら、道化の資格すらない。
――それこそ、笑い草だ。
「モウスグ死にそうって所でソウイウ事を言う馬鹿が居るからこの世界は面白い!」
身に受け続ける弾丸の勢いに負けじとジェスターが笑いながら言葉を紡ぐ。
「コレにて閉幕、ワタクシのショウも終わりとナリマス!」
吐血を気にせず。道化師は幻聴の喝采を聞く。
溢れる流血すら、もう関係ない。
急激に体を大きく大きく膨らまて斬られた部位を気にせずに。
「それでは、――ゴキゲン、ヨウ……!」
別れの言葉を最後に、道化師は盛大に嗤った。
オロロロロ、そのおかしな声がどうにも耳に残る。
――『躯の海に』、逃げるが勝ちとも言いマシテ。
死ぬことと逃げる事を同列に言う殺戮道化師は、これらを持ち去る事を達成出来なかったがそれこそ風船のようにあっけなく消えていった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵