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アースクライシス2019⑪~未熟な両肩に背負うもの

#ヒーローズアース #戦争 #アースクライシス2019 #ダストブロンクス

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「この街を壊されるわけにゃいかねぇんだ!」
 ナイフ1本。かろうじてマントにも見える、肩からぶら下げたブランケット。
 それが、少年を『ヒーロー』たらしめる全てだった。
「何故、護る。悪に満ちたこの世界の、さらに腐臭に満ちた場所を」
「うるせぇ! 臭いのはお前らがこんなとこに下水貯めちまうからだろーが! ……じゃなくて!」
 己より遥か大きな白竜の、清烈にして殺気に満ちた視線に、一歩も下がることはない。
「俺は結構悪いこともしたし、地上にはたっくさんいるヒーローの敵の『ヴィラン』ってやつになる、とかって父ちゃん困らせたし母ちゃんは泣かせたし、止めようとした兄ちゃんとは殴り合って両方怒られたりしたけど、それでもっ……」
 自分で敵う相手だなんて思えない。
 でも、今の自分は不良少年じゃない、ヒーローだ。それに、――この街は。
「そんな俺を育てて、何だかんだで悪い道から戻そうとしてくれた、俺の大事な故郷なんだ!」
 ――笑止、と白竜は、少年の訴えを冷えた鼻息一つで吹き飛ばした。
「悪を為した者に守られる街など、つまりは悪だ」
 もはやオブリビオンとなった白竜は、この世界に『正解』など求めていない。ましてや、目の前の吹けば凍るような少年になど。
 それをわかってはいても、少年は――ヒーローは、必死にナイフを握り締めた。

「連日のヒーローズアースでの戦い、お疲れ様だ。……労っておいて申し訳ないが、ダストブロンクス・ダウンに向かえる者は集まって欲しい」
 仙堂・十来の呼びかけに集まった猟兵達に告げられたのは、スカムキングがダストブロンクス・ダウンの住民を支配するために爆弾を仕掛けた巨大汚水槽を、解除しに行こうとしているヒーローが防衛に配置されたオブリビオンによって倒される予知。
「幸い、彼が1人で巨大汚水槽のある場所へと向かう前に、安全な合流場所を伝えて待機してもらっている。皆は彼と合流し、協力してオブリビオンを倒してもらいたい」
 ヒーローたる少年の名はポール・レイル。15歳であり、ヒーローの力にごく最近目覚めたばかりで、それまでは大人への反抗やいたずらを繰り返していたという。
 けれどまだヒーローネームすら決めていない中、それでも彼はヒーローとして爆弾の解除方法を教わり、たった1人で自宅に一番近い巨大汚水槽へとやってきた。

「悪いことをしてきた、という彼に対して、オブリビオンはかつてジャスティス・ウォーで善神と共に戦った白竜だったそうだ。既にその信念は歪み、悪のなくならぬ世界ならば善すらまとめて凍らせてしまおう、と――皮肉だな」
 既にオブリビオンとなってしまった彼女は、もはや理解できないであろう。自分を倒そうとするまだ無力なヒーローが、彼女が忌み嫌った悪を捨て、故郷を護るという善を成すために戦おうとしている、ということを。
「ポール・レイルは、ヒーローとしても弱いだろう。戦いの中で死んでしまえば爆弾が解除できぬまま残されることにもなるし、彼には爆弾の解除に専念してもらっても構わない。ただ……」
 少し考えてから、十来は猟兵達を見渡して、告げた。
「できるなら、彼のヒーローとしての初陣に相応しいと、彼自身が思えるものにしてあげてほしい。どうか、よろしく頼む」


炉端侠庵
 お世話になっております、炉端侠庵です。
 アースクライシス2019、だいぶクライング・ジェネシスが見えてまいりました。
 というわけで油断せず駆け抜けましょう!

●ヒーローについて
 ポール・レイル。まだヒーローネームなし。
「悪いこと」に走った理由は両親が少し他の家より厳しかった、とか、未だ復興の最中で幾分の我慢を強いられた、とか、小さな理由の積み重なったもので。
 その「悪いこと」もまた、いたずらや喧嘩、反抗期の域を出なかったもの。
 それでもまだ未熟なヒーローのまま1人駆け出した彼の両肩には、「悪いこと」への後ろめたさと、ヒーローとしての自負が乗っかっています。

 右手のナイフにオーラを乗せて僅かに切れ味を上げ、左手にオーラを集めてバリアとする。どちらも未完成なそれが、彼のヒーローとしての力の全てです。
 爆弾の解除方法は別の地区の先輩ヒーローからきっちり教わってきています。

 また、戦闘中に誘爆や水槽の破壊が起きる可能性は考えなくて大丈夫です。思いっきり戦って下さい。
 それでは、よろしくお願いします。
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第1章 ボス戦 『『清烈なる災厄』フッフール』

POW   :    ホワイトミュート
全身を【全ての人工物を凍結させる冷気】で覆い、自身の【世界に蔓延る全ての悪を滅ぼす執念】に比例した戦闘力増強と、最大でレベル×100km/hに達する飛翔能力を得る。
SPD   :    アイスエイジ
【武具を凍てつかせる純白の吹雪】【防具を凍てつかせる青白い吹雪】【道具を凍てつかせる透明な吹雪】を対象に放ち、命中した対象の攻撃力を減らす。全て命中するとユーベルコードを封じる。
WIZ   :    アブソリュートゼロ
対象のユーベルコードに対し【ユーベルコードを凍結させる絶対零度の凍気】を放ち、相殺する。事前にそれを見ていれば成功率が上がる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は黒玻璃・ミコです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

鍋島・小百合子
POW重視

生まれはどうであれ今は共に戦える間柄であろう
そこに善悪なぞ関係ないのう

「わらわにできぬ事を頼むぞ。彼奴の相手は任せておけ」
ポールを鼓舞したらUC「黄金勇霊装」発動
黄金の甲冑を纏い勇気に比例した戦闘力を得たら飛翔能力とダッシュにて一気に接敵
ポールの元へ行かせぬようにしっかり引き付け、ポールを護る事を第一に行動す
主に薙刀による斬撃、炎の属性を刃に込めて冷気なぞ吹き飛ばしてくれよう(なぎ払い、鎧砕き、属性攻撃、空中戦併用)
敵からの攻撃には残像を用いての回避か薙刀での武器受け防御
隙を見せれば懐の小太刀で串刺しにしてくれる(咄嗟の一撃)

他の猟兵との連携を重視、何かしらの作戦があれば協力す


リアナ・トラヴェリア
正義とか悪とか…それを決めるのは少なくともあなたじゃない
過去に囚われて世界ごとそこへ引きずり込もうとするのはただのオブリビオンだよ
それは今を生きている人がすべき事、あなた達に邪魔される言われはないよ!

相手が襲いかかってきたら魔術師の手でなんとか捕まえてポール君から引き離すよ
爆弾の解除は任せたよ!
こっちは私達がなんとかするから!

引き離す途中で余裕があったら敵を壁にぶつけてダメージを与えるよ、できれば他の猟兵の攻撃しやすい位置に

氷竜…、強そうだけど弱点はあるはず!
黒剣を振るいながら弱点を探すよ。もし見つけたら他の猟兵に知らせてそこに攻撃が届くように立ち振る舞うよ。
私とこの黒剣なら…やれるはず!


村崎・ゆかり
初めまして。未だ名もなきヒーローの卵。あたしは村崎ゆかり、陰陽師。
色々あったんでしょうけど、それでもヒーローとして立ち上がろうなんて立派ね。
オブリビオンの方は任せて。あなたは爆弾の解除をお願い。

氷竜の相手は久しぶりだわ。かつて戦った氷皇竜メルゼギオスほどの格はなさそうね。
もちろん油断はしないし、あの時の経験を「学習力」で思い返して有効な行動を心がけるわ。

執金剛神降臨。周囲に被害を出さないようにするには、白兵戦が一番。
あたしも巫覡載霊の舞を行使し、動きを合わせて「なぎ払い」、氷竜の鱗の薄いところを「串刺し」にしてあげる。
この大きさなら、符を当てるのは簡単そう。
七星七縛符に不動明王火界咒でお終い!



 ダストブロンクス・ダウン。
 人々の暮らす居住区域――少年の住む街でもあるその片隅で、手の中のメモに視線を落とし、また顔を上げて周囲を見渡す。
 メモの中にある爆弾の解除方法など、とっくに覚えてしまった。それでも『ヒーロー』として託されたそれに、幾度となく目を通してしまう。
 ……そう、幾度目、だったか。
「初めまして、未だ名もなきヒーローの卵」
 視線を落とした次の瞬間に感じた気配にはっと顔を上げる。紫色の瞳が、柔らかに笑んでいた。
「あたしは村崎ゆかり、陰陽師」
「見たことある、地上のビデオで……俺はポール・レイル。まだヒーローネームじゃないけど」
 緊張と安堵の混ざった表情に、よろしくね、とゆかりは頷く。
「色々あったんでしょうけど、それでもヒーローとして立ち上がろうなんて立派ね」
「そんな、立派なやつじゃないよ、俺……ただ」
 一瞬泳いだ視線が、それでも真っ直ぐに猟兵達を見つめ返す。
「俺が、今ならこの街のために、できることだから」
「うむ!」
 鍋島・小百合子がその答えに、堂々たる様子で頷いた。
「生まれはどうあれ今は共に戦える間柄であろう、そこに善悪など関係ないのう」
 どん、とポールの背を力強く、励ますように叩く。武家の娘である小百合子は、情けない男はとにかく嫌いだ。けれど、まだ頼りなくとも故郷を護るという気概を持った少年は、好ましき後輩のように思える。
「わらわにできぬ事を頼むぞ。彼奴の相手は任せておけ」
「うん、爆弾の解除は任せるよ、ヒーローさん」
 リアナ・トラヴェリアが続けた言葉に、少年――ヒーローは、握り拳に力を込めてもちろん、と頷く。
 道案内を、と駆け出した少年を先頭に、猟兵達は巨大汚水槽のある場所へと走り出した。

「――来たか」
 微睡むように伏せていた顔を上げて、ゆっくりと白竜――『清烈なる災厄』フッフールはヒーローと猟兵達を見渡した。
 すぅ、と息を吸い込む音が猟兵達にまで聞こえる。既に彼女の周りに漂っていた冷気が、一気にその苛烈さを増した。
 巨体に見合わぬ素早さで翼を広げ、突撃してきたその身体をリアナが伸ばした『掴み取る魔術師の手』がひっ掴む。その牙が、冷気が、ヒーローを捕らえ『断罪』するよりも先に。
「オブリビオンの方は任せて。あなたは爆弾の解除をお願い」
「うん、こっちは私達がなんとかするから、任せたよ!」
 ゆかりとリアナの言葉に頷くと、ポールは巨大汚水槽に取り付けられた爆弾の元へと駆け出した。
「我は纏う勇に相応しき極みの鎧……輝け!」
「オン ウーン ソワカ、四方の諸仏に請い願い奉る。其の御慈悲大慈悲を以ちて、此の時此の場に御身の救いの御手を遣わしめ給え!」
 そして白竜フッフールの眼前では、小百合子が『黄金勇霊装』、勇気によって彼女の力を増す黄金に輝く甲冑を纏い、ゆかりが豪奢な薙刀を手にした神霊体へと姿を変えつつ、3メートルを超える執金剛神を神霊体と重ねるかのように呼び降ろす。
(氷竜の相手は久しぶりだわ、かつて戦った氷皇竜メルゼギオスほどの格はなさそうね……)
 かつて戦った同じ氷の力を持つ竜を思い出し、冷静に分析しながらもその判断に油断を交えることはなく。リアナの『魔術師の手』が汚水槽から離れた壁へとその巨体を叩きつけた、その動きとすれ違いざまに執金剛神と動きを合わせてゆかりは冷気に包まれた鱗を薙ぎ払った。
 巨大汚水槽へ、爆弾解除に勤しむポールへと向かう道は、小百合子が塞ぐ。翼持つ相手に空を飛び立ち向かうことをも可能とする甲冑は小百合子の出身たるサムライエンパイアとは異なる意匠――実を言うならばこのヒーローズアースに漂う英気をユーベルコードにて具現化したものであるために、小百合子とこの世界をしっくりと繋ぐかのように馴染み、その力を高めている。
「妄念に満ちた冷気なぞ吹き飛ばしてくれよう!」
 刃に乗せた炎が白竜の纏う冷気を破り、その鱗を破る。左右から僅かにタイミングをずらし襲う爪を、片方は薙刀の柄で受け止めるももう片方は間に合わぬ――と思わせて空を切らせる。受け止めた方の爪を思い切り弾いて一度離れた小百合子の残像だけを、僅かに引っ掛けたのみ。
「愚かな……愚かな」
 ぎしり、と竜の口より音がした。歯ぎしりのごとく牙を噛み締めてから、吹雪を吐きつつ吼えるかのように叫ぶ。
「かつての戦いで善に与して戦った我の、そして善なる神々の奮戦にも応えず、悪を産み続ける世界に何故味方するか!」
「正義とか悪とか……それを決めるのは少なくともあなたじゃない」
 キッ、と氷色に輝く瞳が己の方を向いたのに、リアナは臆することなく竜の耳へと届けと叫ぶ。
 ――もはや心には、届くことはなくとも。
「過去に囚われて世界ごとそこへ引きずり込もうとするのはただのオブリビオンだよ」
「ッ……この我が正義を、善を尊び悪を憎む心を愚弄したな!」
 叫びと共に今度ははっきりと己に向かって放たれた吹雪に、リアナはさっと己の前に真っ直ぐ切っ先を上に向けて黒剣を立てた。僅かにその刃が中央で折れるように変形し、吹雪を左右に受け流す。
「それを決めるのは、今を生きている人がすべき事、あなた達に邪魔される言われはないよ!」
 すぐさま鋭き刃へとその形状を戻した黒剣を振るう。既に何度もその鱗に傷を付けてはいるが厚みに阻まれていた切っ先が、けれど吹雪を吐くために伸ばした首、曝け出していた喉元の、鱗の間を斬り裂いた瞬間――!
「ァ、ガ、グガアアアアアッ!!」
 白き竜の口から、初めて言葉にならぬ絶叫が迸った。
「ここね! 今、剥がれかけた喉の鱗!」
「なるほどね、『逆鱗』ってことか」
 逆さにはついていなかったけど、とゆかりが頷く。さっと投げた白紙のトランプは強力な呪を染み込ませた符、それに宿すは七星の輝き――動きを封じる七星七縛符を投げつけて、さらに執金剛神と共にリアナが薙いだ喉の鱗の間を狙う。二振りで繰り出す突きが、1つに重なって傷ついた鱗をさらに貫き、暴れる前に引き抜くとさらに不動明王の力を宿した符を投げた。
 轟音となり空気震わす悲鳴、人間であれば髪を振り乱すといった勢いで頭を振り回すフッフールに、小百合子がさっと懐の小太刀を抜き放つ。
「覚悟せよ、既に民を虐げる者となった竜よ!」
 短くも研ぎ澄ませた刃が、懐へと飛び込んだ小百合子の全力を乗せて突き刺さった、その瞬間。

「……出来た!」
 かちり、と僅かな音と共に、少年の声が上がる。セットされていた爆弾の起爆装置を無力化し、汚水槽から引き離すとさらに爆薬に至る装置を解除し――振り向いた少年と、一切の悪を赦さぬ白竜の目が、合った。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

君津・輪太郎
つべこべうるせぇよ、オブリビオン
昔はお前が善神でこのガキがヴィランだった?
成程オブリビオンらしいな。やたら過去に拘泥してやがる
御託たれんな、死ね

強大な敵に力押しは下策、ならば搦め手
ここは複雑な地形、ならフック付きワイヤーが有効だ
ガキを抱えつつ【逃げ足】で敵のUCを回避、最悪武器が封じられても全封鎖さえ避ければよし
後の先を取ってUC【五感封鎖】の閃光弾で直ちに視野を奪い、続く音響弾・催涙弾で敵の行動を封じる

悪党が善を為す、分かるぜガキ
俺もまぁ憎悪にまみれた悪党みたいなもんでな
だが大事なのは残した結果だ、躊躇わずに行け

だからな、決意の証としてあんたのナイフであの自称善神を貫いてみろ

アドリヴ絡み歓迎


レジーナ・ドミナトリクス
もはや理屈は通じないでしょうけど、更生の機会を奪うのは善性の否定ですよ?
まあ、罪人の私が言えた義理ではないですが。

あまり長くは保ちませんが、フォースセイバーを鞭状に変化させて冷気から距離を取りつつ、【低頭剄首】で致命の一撃を狙います。
とはいえ完全に避けるのは無理でしょうから、冷気に曝される場合はフォース【オーラで身を守り】ます。

飛行する相手に近接武器はどうかと思いますが、少年の能力は少し似ているようですし、無理をする価値はあるでしょう。
伸ばす方向次第では、同じようにオーラ自体で切断できるようにもなれるかもしれません。
すぐに参考になるかは別として、可能性を示すだけでも違うのではないでしょうか?


桜雨・カイ
ポールさん、協力して下さい!
(彼の前に立ち盾となる。彼にバリアの力を放ってもらう)
私の糸は「思いや記憶」の数で強化されます、共に戦う記憶がこの糸を強化します。
一人では倒せなくても、二人なら倒せます!

結界から冷気が漏れても【氷結耐性】で耐えます。
背後のポールさんには行かせません

想撚糸伸ばして敵を包みます
彼を死なせるわけにはいきません、更に思いを強くして
強く糸の結界で締め上げて倒します。

ありがとうございます、ヒーローのおかげで助かりました
解除もよろしくお願いしますね


ハルア・ガーラント
ポールさん、大丈夫ですよ。あなたは正真正銘の「ヒーロー」です!
…わたしは故郷を捨てて逃げちゃったから、そうしなかったあなたはとても眩しいです。

ポールさんを全面的にサポートするように動こうと思います。
UCの効果で、ポールさんや他の猟兵さん達の戦闘力を上げます。歌なら、相手がどんなにこちらを凍らせようとしてきても大丈夫ですもの。
それに、一撃一撃は僅かなものでも、諦めずに積み重ねていけば…きっと大きな力になるはず。
わたしも可能であるなら、鎖で攻撃して麻痺を蓄積させていきたいです。
長い時間は無理ですけど…危ない時はポールさんを抱えて飛んで回避&距離を取る、こともできるかな…?

共闘・アドリブ大歓迎です!



「おのれ……何故、我が邪魔をする……!」
 爆弾の不発処理までされてしまえば、もはや番人としての役割すらも存在しない。
 その怒りのままに吠え立てる『清烈なる災厄』フッフールの吹雪より先に、漆黒の鳶コートの腕が少年ヒーローを掻っ攫った。
「つべこべうるせぇよ、オブリビオン。昔はお前が善神の側でこのガキが悪だった? 成程オブリビオンらしいな」
 天井部に走る梁へと引っ掛けたフックを中心に、壁を蹴って軌道を変えつつ君津・輪太郎が器用なワイヤーアクションで噴き付けられる吹雪をかわし、その間に擲弾のピンを歯で引き抜く。
「各種擲弾用意、投擲。死に至らぬ事は慈悲とは限らぬと知れ――つかやたら過去に拘泥して御託たれんな、死ね」
 既にポールを抱えたのと同じ側の手と両足でワイヤーを掴み、もう片手で白竜の顔に向かって投げた閃光弾が炸裂、ぐらりとバランスを失った間に一度着地。手元のワイヤーを手繰って一度フックを回収しつつ抱えていた少年を下ろし、その間に少年の前には桜雨・カイが、フッフールの前にはフォースセイバーの出力を上げ力場の鞭を作り出したレジーナ・ドミナトリクスが飛び出す。
「もはや理屈は通じないでしょうけど、更生の機会を奪うのは善性の否定ですよ?」
 敵が飛行能力を持つ竜であることを知りながら、それでもフォースセイバーでの戦いを選んだのはまだ幼きヒーローの能力が、レジーナ曰く「少し似ている」からだ。フッフールの冷気に当てられぬよう間合いを取りつつ、それでも接敵が避けられぬとあればフォースを展開しオーラ防御の技術で身を守る。
「まあ、罪人の私が言えた義理ではないですが」
 くすと笑って肩を竦める妖艶さにはサディスティックな色を混じえ、けれど己の背を見ているはずの『戦う者』としての後輩には、その戦いぶりを余すところなく魅せる。これから育ちゆくであろうヒーローに、可能性の1つも示せるならばそれでいい。
 そして、先達と白竜の戦いに息を呑む少年には、カイが守るように立ちはだかった。
「ポールさん、協力してください!」
「え、えっと、何すればっ……」
「私の力……私の『糸』は、『思いや記憶』の数で強化されます。共に戦う記憶が、この糸を強化します」
「っ……」
 握った手が震えた。子供、からは脱しても、まだ大人の手ではない。ナイフを持つ手もきつくその柄を握り、反対の手にも爪を食い込ませ――その手を、そっとまだ少女めいた、少年よりも幾分小さな両手が包み込む。
「ポールさん、大丈夫ですよ。あなたは正真正銘の『ヒーロー』です!」
 目を見開き振り向いた少年に、ハルア・ガーラントは新緑の瞳を細めて笑ってみせた。ヒーローズアースの、それもこのダストブロンクスの最下層で生まれ育った少年には、ごく僅かなアニメや絵本の中でしか見たことのない天使――白い翼と、薄い青に輝く花を宿したハルアはまさにそう見えたのだけれど。
 少年が見つめるよりも、ずっと眩しげにハルアは少年を見つめていたのだ。
「……わたしは故郷を捨てて逃げちゃったから、そうしなかったあなたは、とても眩しいです」
「……出来なかった、だけだよ」
「ううん、それでも……」
 ダストブロンクスにだって、『街』が1つしかないわけではない。
 もしくは猟兵達がここまで通じる道を拓いてきた今ならば、地上に逃げることだってできるはずだ。
 選択肢は少なかったけれど、存在しないわけではなかった。だから今、こうして故郷を守ろうとする選択をしたポールが、ハルアにとってはとても眩しいのだ。
「あの、わたしも……一緒に思いを、重ねさせて下さい」
「ええ、一人では倒せなくても、共にならば倒せます!」
 鞭と化したフォースセイバーをしならせて鱗の剥がれかけた喉元を狙うレジーナと、空いた片手で擲弾筒の狙いを付けつつまたワイヤーアクションもかくやとばかりに飛び回る輪太郎の間から、流れ弾ならぬ流れ吹雪とばかりに爆ぜた零下のブレス。それをポールまで届かぬようにとカイはその身を冷気に晒す。雪を孕む嵐が届く前には、ポールがカイの前にバリアを張ってギリギリながらもなんとか防ぎ、同時にハルアが歌声を響かせた。『ブレスドソング』、天使言語を用いた祝福の歌は、戦場の全てへと響き渡り、歌詞はわからずとも懸命に響かせる祝福に、その旋律に、声そのものの美しさに、何であれ共感した猟兵達の力を増して戦うその背を支えるかのように歌いかける。
 ――元来潔癖すぎるきらいはあったとはいえ、オブリビオンとなる前であれば、白竜フッフールもその歌声に耳を傾け、祝福に籠もる善意へと共感を見せたのかもしれない。
 けれど、もはや全てを凍らせるだけのオブリビオンでしかない『清烈なる災厄』に、その歌は届けども響かない。偽善なり、と叫んだその耳を、けれど輪太郎が今度は擲弾筒から射出した音響弾の轟音が塞ぐ。
「この糸は想いが紡ぐ糸。――痛みも記憶も、過去を全て抱えてその先へ進みます!」
 ――ユーベルコード『想撚糸』、その本性はからくり人形たるヤドリガミのカイが、だからこそ己と『ひと』を繋ぐ糸を想いによって紡ぎ、撚り、糸の結界へと変えて、堕ちたる白竜、かつては善神に与した竜を包み、締め上げるのだ。
 敵への憎しみではなく、ただ、人と共に、人の側にある『人形』としての、カイの在り方ゆえに、人であり、人を守ろうとするポールを守るように立つのだ。
「ふふ、助かります」
 無論、相手が動けなければ近くで戦うレジーナのフォースセイバーの精度も上がる。
「どうやら、まずあなたに更生の余地がないようですから……ね」
 軽く石畳で音を立ててから、青き輝きの鞭が白竜の喉元へと向かって跳ねる。『低頭剄首』、咎人に刑を与えるかのように、器用に糸の合間から白竜の首へと届いた鞭がその喉元を横に薙ぐ。『フォースセイバー・レジーナカスタム』は鞭状の出力でも切断形態を取ることが可能であり、何より熟練の使い手の手にある鞭は、ただでさえ『斬る』ことすらできる鋭利な得物となるのだ。
 完全なる斬首には至らずとも、大きく斬り裂かれた喉から呻きと、その肌とは対象的な鮮血と、冷気が一気に溢れ出す。
「ア゛――ァアッ、グ、ァ、愚かな! 愚かな愚かな、これ以上罪を重ね、さらなる悪の上塗りをするのみの、愚かな、者、ドもガッ……!!」
 その口の奥に白く、ただ白く、ユーベルコードすらも凍らせる吹雪が渦巻く。その狙いは痛打を与えたばかりのレジーナではなく、カイとハルア、そして庇われたポールの方へと向いていた。
 カイに当たれば糸の戒めが解かれる。ハルアに当たれば祝福の歌が途切れ、それは全員の戦闘力の低下へと繋がる。
 まだ弱い自分が、守られていることはわかっている。だから、前には出なかった。
 それでも、カイの、ハルアの隣に並ぶように、前に出る。開いた手に、盾となるようにオーラを集める。まだあまりにも頼りない盾だ。あの一撃を正面から受け止めて、1秒と保つかわからないほどの薄いバリアだ。それでも!
「――悪党が善を為す、分かるぜガキ」
「っ!」
 その瞬間、大きく開いた竜の口元に輪太郎の投げ込んだ催涙弾が、爆ぜた。
「――――!!」
 声なき絶叫と共に放たれたのは、もはや冷たくはあっても単なる吹雪でしかなかった。ポールのバリアで防がれて散るだけの、力なき吹雪に成り果てていた。
 擲弾筒を背負って再び片腕を空け、輪太郎が円軌道で空中を駆けた。そのアイコンタクトがハルアへと飛ぶ。一瞬目を瞬かせたハルアは、はっと輪太郎の意図に気付くとえいっとばかりにポールの脇を支えて飛び上がった。
「おっ通じたなありがてぇ!」
「いえいえいえ! その、お願いします!」
 自分と同体重かもしくは重いくらいの少年を抱えて垂直飛行は、僅かな時間でも割と必死だったけれど。
「サンキュ!」
 輪太郎へと『パス』されて離れていくポールが慌てて振り向いて叫んだ礼に、よしあと少し頑張る、と小さくガッツポーズしてハルアは再び歌声を響かせる。
「俺もまぁ憎悪にまみれた悪党みたいなもんでな、だが大事なのは残した結果だ」
 先程ポールと飛んだ時は小脇に抱えた状態だったが、今はポールにも片手でワイヤーを掴ませて、輪太郎は背後から彼を支えるように掴んでやる。ポールの空いた片手には、使われることはなくても、ずっと掴んでいたナイフがある。
 ――それが戦う意志であるならば。
 使うべき時は、今だ。
「だからな、決意の証として、あんたのナイフであの自称善神を貫いてみろ」
「……ああ!」
 少年の、新米ヒーローの声に宿った確かな力に、輪太郎は口元をほんの僅かに釣り上げた。まだその色を確立してもいない不確かに揺らぐオーラが、けれど確かにその決意ははっきりと宿して、ナイフの刀身を一回り、二回り、大きくするかのように纏い付く。
 既にユーベルコードを封じられ、カイが尚更きつくその動きすらも縛り上げた白竜の、晒された喉の傷。そこにしっかりと狙いを定めたヒーローを、輪太郎がぶっきらぼうな激励と共に放り投げる。
「躊躇わずに行け」
「あああああああ――っ!」
 頭の上まで振りかぶり、両手で思い切り、突き刺す。ただのナイフにただのオーラを乗せた、まだ名もなきヒーローの、名もなき技は、けれど。
 断末魔の咆哮は、既に吹雪すら伴うことなく――崩れ溶けるように消えた『清烈なる災厄』を締め上げていた糸をさっと変形させ、ネット代わりにしてカイがポールの身体を受け止める。
「ありがとうございます、ヒーローのおかげで助かりました」
 そのままほっと息をつくカイ、ふふと笑って親指を立ててみせるレジーナ、地上に下りるのを手伝おうと翼を羽ばたかせ近づいたハルアの手を取って、この場に集まってくれた猟兵達全員の顔を見渡して、ヒーローの顔から15歳の少年の顔に戻ったポールはへたり込みながらも、照れたように笑ってみせた。その笑顔に、握ったナイフに、守りきったという誇りが宿っている。
 ――同じように立ち上がったヒーロー達が、この世界の人々が、猟兵達が、着実にアースクライシス2019、その最終局面へと歩を進めている。オブリビオン・フォーミュラの脅威からこの世界を解放するために。
「出発だ。次の、な」
 自称『悪党』、その実どうしようもなく仲間や無辜の民には冷徹になれぬ青年は、既にまだ見ぬ次のオブリビオンへの憎悪を研ぎつつ、口の中で呟いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年11月25日
宿敵 『『清烈なる災厄』フッフール』 を撃破!


挿絵イラスト