アースクライシス2019⑮〜確固不動のTRIGGER
●
高層ビル街の、ビルの縁。
コートをバタバタと風に靡かせながら、それは動かず下界を見ていた。
「見つけたぜ、ダークポイント!!」
「今日は逃さねぇぞ!覚悟しろ、俺たちの連携、見せてやる!」
特殊な力で空を疾走るヒーローとヴィランが奇跡的な共同戦線で、彼を、追い詰めた。
「否定:正義=無謀」
それは、確かに。好敵手の関係であれば、相手の行動の予想等容易いだろう。
故に、連携など幾つでも思いついた。仕留める算段も、多少の手傷も覚悟の上だった。
ヒーローとヴィランは、ダークポイントに否定された事で熱意を燃やす。
しかし、かちゃり、と響いた時には既に、空を飛ぶものはなく。
ビル上層から人形のように舞う何かが、あった。
音は彼らが認識するより早く刺さり、的確に穿たれたのだ。
撃墜された彼らに息があるかは、夜の闇のみが知るだろう。
「否定:正義=脅威にすらならない」
ダークポイントの言葉に、誰からも返答がないことを彼は知っている。
タイミングよく、勇んだ存在が、――訪れない限りは。
●
「あちらこちらと、忙しそうだな。アンタ」
フィッダ・ヨクセム(停スル夢・f18408)は君を見ている。
「……まァ、此処へ来た時点で俺様が言いそうな事は既に予想できていると思うがね」
――そう、仕事だ。
「マンハッタン島だ、次の行き先は。高層ビルの上で脅威が来るのを待ッている」
あらゆる存在から死角となる「不可視の領域」に潜んでいたダークポイントは、逃げも隠れもせず、脅威の訪れを待っている。
そう、ビルの上だ。なかなか、風が強いだろう。
多少のフリーダイブ、フリークライムなら必要とあらば、現地のヒーロー、またはヴィランがそれとなく手助けをしてくれる、という。
「あまり期待するなよ?ヒーローもヴィランも、猟兵が勝つ事を望んでるんだ」
此処まで無謀な幾人が病院送りになったらしい、とは小耳に挟んでいる。
彼らも、必要以上の戦力を黄泉に持っていかれるわけにはいかないと、苦渋の決断をしている。必要以上にはヒーローもヴィランも、ダークポイントに捕捉されかねない距離へ踏み込むことはない。
ただ、特殊な力で猟兵を援護できるよう、応援の視線を至るところから送っている。
「望まれた力で協力はしてくれる、しかし実際戦うのはてめェらだ。そこは間違えるな」
フィッダは雑に紙を配り、バス停にべたりと貼り付けて、こつこつ、と叩く。
「渡した紙には重々目を通して置いてくれよ、ヒーロー達の証言を参考に、敵のユーベルコードの資料を記しておいた。それを参考に、……対処法を編みだしてから挑んでくれ」
ヴィランたちが言うには、ダークポイントは必ず先制攻撃を行ってきて、撃たれた、という。彼らには防ぐ手立てが欠けていた為、抵抗できぬままに撃たれ、墜ちた。
「ほーら先人に学んで、俺様たちがチャンスに変えてやれ」
道筋は既に示されているのだから、あとはよく考えて向かい、敵対の意志を穿ってその存在を穿つだけ。
「奴は猟兵相手なら縦横無尽に、全力勝負で応えるだろう、と思う。こちらに興味関心はあるんじャねェかな」
無限の射程距離は見つかったら最後、意識が途絶えるまで君を狙い続けるだろう。
しかしそれは、彼を討てば終わる話だ。
「……まァ?口調的に、意思疎通出来てんのかわからんけど。気にするトコ多分、そこじャねェよ」
――さァ、狩りの始まりだ。
どんな終わりを迎えるか、興味がある。
そう呟きながら、フィッダは君たちを見送った。
タテガミ
こんにちは、タテガミです。
硝煙の匂いも、空が近いと簡単に霧散しちゃいそうですねぇ。
やる気を出すと無音で高速にビルを掛ける狙撃手らしいですよ。
この依頼は、【一章で完結する】戦争の依頼です。
タテガミの依頼ではパフォーマンスとして、ソレの手助けが出来そうなヒーローが貴方のやりたいことを手助けしてくれる環境です。
想像は、おそらく貴方の胸の中に。ご利用は、ご自由に。
きっと名無しの誰かがサポートし、貴方の行動を応援してくれることでしょう。
グリモア猟兵が、今回もまた、ソレらしいことを言っているはずですので。
よくご確認の上、ご参加下さいますよう、お願い申し上げます。
第1章 ボス戦
『ダークポイント』
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POW : ダーク・フレイム
【ダークポイントの視線】が命中した対象を燃やす。放たれた【漆黒の】炎は、延焼分も含め自身が任意に消去可能。
SPD : ダーク・リボルバーズ
自身に【浮遊する無数のリボルバー】をまとい、高速移動と【全方位・超連射・物質透過・弾丸】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
WIZ : ダーク・アポトーシス
【銃口】を向けた対象に、【突然の自殺衝動から始まる自分への攻撃】でダメージを与える。命中率が高い。
👑11
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「開始:脅威認定=敵性狙撃対象の来訪を確認」
カーバンクル・スカルン
無音で高速で動き回る、ね。それじゃあどれだけ動いても一ヶ所で動けないようにしてあげる必要があるね。
ならば【置酒高会】を使って、ダークポイントをワニがいっぱいいる檻の中に閉じ込めちゃいましょう!
視線で相手を燃やす? クリスタリアンの火炎耐性を舐めるんじゃないよ、それに私が倒れようと檻は無くならない!
私の技術の粋を集めたワニ5体と、ジェネラル・エイトと言いつつダストキングの部下に過ぎないあなたどっちが勝てるでしょうね!
●Non flammable
後ろ姿のダークポイントを誰よりも早く見つけ出したのは、カーバンクル・スカルン(クリスタリアンの咎人殺し・f12355)だった。
始めから既に構えられている銃口。全体的に真っ黒い虚ろな姿でありながら、機械的で排他的な殺意が体より溢れている。
――おっと。なにやらもう気付かれている、かしらね。
残像のように影を残し、カーバンクルの視界から悪魔のごとき速度で人影がかき消えた。走る音すら立てず、視線の緑を軌跡と残光とで置き去りに。
魔神の如き生者とも取れぬ動きで舐め回すように、ダークポイントは来訪した敵の周囲を観察するように走り回る。
「肯定:敵性=排除」
ぽつりと至近距離で言葉を零し、視線が正しくカーバンクルを捉えた。
ボゥ。
視線がぶつかった場所こそ、始まりは肩。
畝るように漆黒の炎は領域を拡大しながら、カーバンクルを炎に焚べていく。
焦がし、燃える黒き炎は蛇のように蠢き轟々と燃える。
「視線で相手を燃やす?……私はどう?燃えてるかな?」
ダークポイントが既に勝負を終えている、という雰囲気を掴んで声を大きく叫ぶ。
「クリスタリアンの火炎耐性を舐めるんじゃないよ!」
宝石の体が漆黒の炎で、燃え溶かされることはなく。
カーバンクルの赤い瞳は強気に煌々と輝きを増した。
「疑問:汝の戦意=状況不利の誤認を指摘」
「私が負けてる。あら。それは、――あなたの方じゃない?」
指摘とも、質問とも取れる言葉と共に、がしゃあん、と湧き立つ檻の中にダークポイントは行動を制限される。
「疑問:汝の質問=理解不能」
「そ!それならいいんじゃない、ワニがいっぱい居る檻の中に閉じ込められてれば!」
――私の技術の粋を集めたワニ5体!この反撃は流石に予想外なんじゃない?
檻の中で、機械仕掛けのワニが蠢き、ダークポイントに絡みつくように牙を剥く。
それらは全部で、5体。スクラップ体とはいえ、ワニはワニだ。
ずるりずるりと体を揺らしながら、威嚇するように、口をわずかに開けて、恐れを知らぬワニたちが一斉に足に噛み付き、捩じ切らんと体を捻った。
「否定:檻=破る為の汝殺害を容認」
「私が倒れようと檻は無くならない!残念でしたー!」
挑発的とも取れる声色で、カーバンクルは笑った。
「ジェネラル・エイトと言いつつスカムキングの部下に過ぎないあなたどっちが勝てるでしょうね!」
足の負傷などお構いなしに、悲鳴も苦悶の声もあげないダークポイントは銃の引き金を引く。
穿つ物は檻ではなく、ワニ。それも動きを止める足に胴に、口に、と無差別だ。
動かなくなるまで、なんども、なんども。なんども。なんども。
「肯定:勝者=常にTRIGGERを穿つ者」
ワニを破壊し尽くして檻から飛び出すダークポイントは、未だ燃え続けていた漆黒の延焼をかき消して。
もう十分、言わんばかりに全速力でカーバンクルの脇を通り抜けていく。
そう、――次の脅威を求めて、走り去っていったのだ。
成功
🔵🔵🔴
セラータ・ファルチェ
アドリブ歓迎
お前もスナイパーか…お前の射撃、気に入らないな。
銃も剣も護るために使う物だ。
他の猟兵を巻き込まずに済むエリアで戦闘開始
物質を透過するなら…撃ち落とすまでだ。
先制攻撃へは【衝撃波】と【スナイパー】、ユーベルコードで弾丸及びリボルバーそのものを撃ち落とす事を試みる
撃ち落とせないモノは【武器受け】や【なぎ払い】で対応
お前自身は無音かもしれない…
だが、お前の持つそのリボルバーや服はどうだ?
【聞き耳・野生の勘・追跡】で敵の移動先を予測し迎撃を試みる
【地形を利用】しながら、銃と剣の両方を使っての戦闘
着弾すると爆破し【範囲攻撃】となる弾丸で攻撃
また、【鎧砕き】が出来る威力で【気絶・マヒ攻撃】
杼糸・絡新婦
他の猟兵に意識が向いているなら、
【忍び足】にて接近。
鋼糸を足場にした括り付けて登ったする。
ちょいと手伝ってもらえたら飴ちゃんお礼に、おおきにな。
さて、先制攻撃の全方位物質透過連射て
大盤振る舞いやなあ。
あえて回避行動を取ったり鋼糸で攻撃する【フェイント】で
視線誘導と【かばう】利用し、
【見切り】【第六感】でこちらへの攻撃タイミングをはかり
脱力し受け止める。
オペラツィオンマカブルを発動。
排し返せ、サイギョウ。
●声の限りに
猟兵を、敵性を、――脅威を目撃。
確かにそれは実在していた。ヒーローでも、ヴィランでもない。
決してそれは一人ではないだろう。脅威は敵を殺すために動くもの。
狙撃手の目は次なる目標を求め、そしてそれは、直ぐに見つかった。
人狼の耳が、微かな音を聞き、力を込めて睨まれる前にセラータ・ファルチェ(蒼蒼の盾・f03368)は言葉を紡ぐ。
「お前もスナイパーか……お前の射撃、気に入らないな」
「疑問:汝=脅威か否か」
ダークポイントは、ただこちらを見ていた。
見定めるように、他に誰も居ないこの場所で、――セラータだけを。
「そんなこと、お前が決めるんだな」
――銃も剣も護るために使う物だ。
決して、目的のための虐殺のために用いる道具ではないのだと。
セラータの意志は、ほかの猟兵を巻き込む可能性を避けて、この場所へ導いた。
そう、踊り込んできたダークポイント以外、誰もこの場には、いない。
「肯定:解答開示=REVOLVERを展開」
ふわり、と無数のリボルバーが空中展開される。
それら全てが、標的を一人と定め、息をつかせぬ速度で一斉に銃弾の集中豪雨を齎した。高速の射撃と、装填の二重構造の雨は、乱射と言わんばかりに寿命を削る勢いで火を噴くのだ。
走りながらも、銃口はセラータだけを狙い続けている。遮蔽物の後ろを走り抜けても、弾丸は突き抜け速度を殺されることなく真っ直ぐ貫通していく。
「物質透過をするなら……撃ち落とすまでだ」
冷静に弾丸の道筋を見据えたセラータは、激しい咆哮を轟かせる。
遠吠えのようで、夜闇を脅かすような声色で。聞くものを竦ませる程の威圧を放った。声色で落ちる弱まる弾丸がもしあるのなら、試して見なければ勿体ない。
「疑問:速度=減退を確認」
弾丸の雨は、声色の衝撃波で軌道を逸らされセラータから外れていく。
しかしそれでも全てではなかった。衝撃すらも突き破り、速度を殺しきれなかった弾丸が迫る――。
●銃弾をその身に
――あれだけ派手に、他の猟兵に意識が、銃口が向いているなら。
杼糸・絡新婦(繰るモノ・f01494)は傍で聞こえ続ける弾丸の雨に耳を傾けながら息を殺し、忍び足で潜み接近を試みていた。
見えるけど見えない、しかし、戦場が何処だか分かる、という近場だ。
ダークポイントの索敵能力が強ければ、容易く見つかる可能性もあっただろう。
しかし、彼は敵対者から目を逸らさない。
――此処からなら、鋼糸を足場にして。……うん。
括り付ければいける、と登って行けることを確信しながらも、闇に紛れるヴィランがそれのアシストを務めた。
息を殺し、ヒーローを欺き続けてきた能力を、正義のために使うおかしな場面だが、絡新婦は笑わない。
「ちょいと手伝って貰うたからね。飴ちゃん」
物音を立てそうになったところを、ヴィランが支えて音を虚空へと消し飛ばしてくれた。
「……飴」
「そう、飴ちゃんやね。おおきにな」
軽く礼の言葉を述べれば、ヴィランはそれ以上何も言わず、闇に溶けて消えていく。これ以上先は、立ち入れない。しかし、貰った礼はキチンと受け取り、口に放り込む様を、絡新婦は確かに――見た。
――さて、先制攻撃の全方位物質透過連射て。
他の猟兵に撃ち込まれている、弾丸は壁を抜け、遮蔽物すら刳り貫いて、存在を色濃く穿った。ビルの天井を穴だらけにし、その弾丸が何処まで突き抜けていくのかは、考えるだけ想像の上をいくことだろう。
「なぁに、ひらり舞って煙に紛れて踊り混んだって、えぇよねぇ」
弾幕に紛れ、放たれた攻撃の中を、絡新婦は回避行動を取りながら、鋼糸で縛り上げるように動く。
誰かがいる、と思われるのと紙一重なことだが、不思議なことにダークポイントの足元は始めから紅く染まっているのだ。
――ほかの誰かがやったことでしょう。ならば、狙い目は、そこです。
きら、きらと鋼糸が輝きながら締め上げ切断を狙う。
その時、確かに、ダークポイントに気付かれた。
もうひとり、いる、と。
「疑問:弾幕=紛れ込む脅威の訪れ」
「あらあら、もうばれはりました?」
敵を探すように透過の礫は、絡新婦目掛けて飛んでくる。
わざわざ声をだしたのは、視線を誘発してのこと。
誰かが狙われた弾丸だ、それをかばえば必然と――絡新婦は確実に、狙われる。
「ほおら、こちらや」
「肯定:脅威=居場所を認識」
標的を定めて、銃が絡新婦を向く。
弾幕は強めの風に流されて役目をもう、果たさない。
視界が良好となったと同時、ダークポイントが打ち込んでくる。
――これでいい。
射撃のタイミングは、息を一つ吐く程早く。
緑色の視線が、脱力し、目を伏せんばかりに隙を見せつける。
――オペラツィオン・マカブル、発動。
ユーベルコードで創り出されたリボルバーと弾丸は絡新婦に致命的なダメージを、……齎さない。代わりに、ついぃと十指が滑らかに空気を撫でる。
「排し返せ、サイギョウ」
狩衣を着た狐人の姿をした戦闘用の人形がエネルギーを受け流し、繰る指が排した力をダークポイント本人へと、投げつけた。
銃弾によく似た連続した弾ける発砲音と共に、ダークポイントが誰かに撃たれた、そんな音が耳に届く。
蜂の巣になっても屈する膝を持たないのは、命令遂行の為なのか。
「理解:銃弾=死を齎す牙である」
●穿つ切っ先
バランスを崩したダークポイントは、乱入者から視線をもうひとりへ戻す。
ひとりひとりへの理解と、殺す殺さないはまた、別の話だ。
「お前自身は無音かも知れない……だが、お前の持つそのリボルバーや服はどうだ?」
ダークポイント自身の足音は、確かに無。
耳が拾える音としては、発泡音と着弾の連続ばかり。
――集中。集中すれば、きっと。
刹那の瞬間に、確かにセラータの耳は拾い上げた。
――そうだ。この音は、"最初に聞いている"。
――コートが翻る音。
ばさり、と翻る音は右手側から聞こえ、すでに弾丸は降り注いでいる。
「銃弾の雨は、避けきれないだろう」
セラータの頬に、赤い線がひとつ、ふたつはしった。
体に幾つか、それ以上に受けた気がするが、今この時は表情にも出さない。
「だが……擦れるコートが消しきれてないな」
躱し損ねた軽い怪我に構わず、ぐっと踏み込んで。
野生の勘が伝えてくるダークポイントの着地予想地点を、翼と狼の細工が施されたZanne d'argento nereと名付けられた黒銀の銃が火を噴く。
発泡音と同時に、着弾。そして、爆破が広範囲に起こり、上がった弾幕に視界を閉ざされダークポイントは被弾する。
「お前本体を直に穿ったら、避けるより早くかたが付く、そうだな?」
握られた剣に迷いはなく、駆け寄った一撃で、突き刺してセラータは睨んだ。
「肯定:汝=護る為の爪であり脅威である」
認識を改めるには遅く、深く攻撃が重くダークポイントを蝕んでいく。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
フォルク・リア
無音、高速移動、無限射程。狡い位の強敵ぶりだな、
それでも勝てないと言えないのがつらいところだ。
敵の攻撃を躱す為に都合のいい場所へ移動。
地下街や地下駐車場の行き止まり。
又は大きな建物内の一直線上の道の見通しの良い所に移動。
出来るだけ照明をつけて此方の居場所はばれているつもりで
潜伏し敵を待つ。
敵が現れたら敵の銃や手足の動き、重心の動きを観察し
銃口を直接向けられない様に【残像】を発生させつつ回避。
反撃の隙が出来たらカウンターで死々散霊滅符を使用。
敵の機動力を制する様に【範囲攻撃】で敵周辺を
呪符で埋め尽くし。呪符には【マヒ攻撃】の【呪詛】を込め。
【二回攻撃】で追い打ち。
消滅時の爆発でダメージを与える。
●鬼さんこちら
「自問:敵意=放たれるに遅く。殺意=持たれるには多く」
「自答:持ち込まれた敵意=全てを脅威の認定に修正」
ダークポイントは、訪れた脅威のレベルを測り損ねていた事に、自問自答を零す。
故にこそ先制を取り切れず、重いダメージをその身に受けた。
視界の隅に、明かりが動いたのを捉えたこの場に居るのならば、それは――。
――無音、高速移動、無限射程。狡い位の強敵ぶりだな。
証明を付けて、ビル内部の廊下をフォルク・リア(黄泉への導・f05375)は急ぐ。
戦いが始まった時点で、建物内部、被害を受けそうな階層、それら全ての人々は避難している。
建物内部は電気も消され、物音も人影も、なにもない。
「それでも、勝てないと言えないのがつらいところだ」
「疑問:汝=認知されても尚隠れる者」
ダークポイントの機械敵な声。
間違いなく、彼はフォルクに付いてきた。
ちゃきり、と銃を動かす音がする。かつりこつりと、堂々と悠然と歩く音もある。
証明を燈したまま、潜伏した場所から覗き見たダークポイントは、足元を夥しい血で彩りながらも普通に歩いていた。
「……!」
しかし、手元の銃を、くるりと回している。
――ひとつふたつ、手持ち無沙汰な無の状態で回しているのか?
フォルクは意を決して走る、それは此処が好機を定めた為だ。
「肯定:脅威=袋の鼠の潔い死」
「さて、それはどうだろう?」
悪魔的速度で銃が向けられる、のをフォルクは残像で躱す。
銃弾を避けるよりも難易度は高いが、標準を合わせさせないよう躱し続ければ。
――反撃に出る隙も距離も稼げる。
身を低く屈め、転がって銃口を更に避けて素早く呟く。
「死より出でて死を招く、呪いを携えしもの……」
高速化した詠唱で、最後まで言い切らないうちにダークポイントの周囲はレベルに呼応した呪符が所狭しと埋め詰つくされる。
そう、狭し、どころではない。
この場は見通しの良い、長い廊下だ。窓や部屋やらは確かにある。
何の施設であるかあでは分からないが、通路は、廊下は、とんでもなく閉鎖的だ。
この攻撃を、範囲で設置した時点で規模は予想の範疇を出ない。
「肯定:汝=隠れるだけの鼠。汝=呪術に精通する脅威」
「……称賛?要らないが?」
――あぁ、でも今なら呪符に麻痺の属性も付与しよう。
呪符が、フォルクの意志に添いダークポイントをあちらこちらから襲撃していく。
狭い廊下だ、体に張り巡らされていくのを避けられない。
びりりと痺れる攻撃に、銃を取り落しそうになり床に近づいたダークポイント。
「こんな狭いところだ。周囲だけじゃない」
攻撃に成功し一撃て消え去った呪符。果たしてそれは、全てであると言い切れるだろうか?
「足元。今、踏んだろう」
地雷のように設置された呪符を踏み付け、爆発で体が吹き飛ぶ。
連鎖するように、残された呪符も爆発を繰り返し、その風圧は、窓ガラスにダークポイントを叩きつける。防弾加工もあるだろう堅く簡単には砕けないガラスに、男が一人、身を埋めたのだ。
「誤算:油断=罠」
冷静にそう言ったかと思えば言葉は途絶えた。
重度の衝撃に、思わず言葉を、意識を、一瞬でも手放した証拠だろう。
大成功
🔵🔵🔵
佐那・千之助
ヒーローとヴィランの共闘…誠によきものを見た
尊き魂、総てをかけて護ろう
『どうか私を見守っておくれ』
第六感砥ぎ、烈しく火花散るオーラ防御
敵視認後早業で拷問具(棘付き大車輪)放つ
手傷+自害UCの威力削ぐ狙い
死にたい×無限
矢継ぎ早に思い出す絶望、慟哭、怨嗟、…徒労の連鎖
こびりついた哀しみ
腹抉る死への痛みは甘く
視線に正気取り戻す
予め『見守って』と頼んだのは策
助ける者の存在、それは魂に刻んだ絶対的な生きる理由
死など比較にならぬ甘い行為
傷口は焼き塞ぐ
以前友に聞いた荒療治。痛み無視
もう無様晒さぬ
全力UC2回攻撃
炎媒介の生命力吸収で回復
黒剣の変形は盾にも槍にも敵を斃すため常に最適化
自在に間合い変える渾身の連撃
●怨嗟の中で
瓦礫の温床と化したビルのなかで、尚一点の輝きを持つ視線が、暗闇の中で右へ左へと動いた。
「肯定:室内=不利。移動=制限されず狙撃に最適の場」
体は動く、とダークポイントは確認し、新手が訪れる前に開けた場所へ、屋上へと出ていく。弾丸は全ての遮蔽物を無視できても、自身の高速移動だけがどうしても制限される。
「確認:損傷=被害甚大」
ぽつり、とつぶやかれた確認は辛うじて動く足、体を指した。
――ヒーローとヴィランの共闘。……誠に良きものを見た。
佐那・千之助(火輪・f00454)は二人で一対の関係にそう思う。
今も、此処までの道をそれとなく導いて貰ったのだ。屋上から撃ち落とされた同胞の無念を理解する、血気はやった仲間を抱える者たちに。
――尊き魂、総てをかけて護ろう。
『どうか、私を見守っておくれ』
声を掛け、協力者と別れると屋上には既にダークポイントが戻っていた。
姿ですぐに分かる、明らかな敵意。そして、静かに削られてきた時間の数々。
――出方を、待っているな。
思いながら、駆ける足は決して止めない。千之助の手に馴染む棘付き大車輪を、体を護るぱちりぱちりと火花を散らした音と共に放り飛ばす。
「走るにはどうも不具合の有りそうな足をしておるのう」
拷問具の質量から、避けるにも難を示すだろうことを予想したが、ダークポイントの顔色は黒いばかりで何もわからない。
「否定:損傷=行動不能にあらず」
吹き出す足の流血に構わず、拷問具をひらりと躱し、すこしバランスを崩した体は千之助に銃口を向けた。
向けられた銃口を起点に。
戦う意志がある衝動に塗り潰され書き換わるのを瞬時に感じた。
――死にたい。
敵を討ちに来た思考が、ダークポイントのような漆黒に墜ちていく。
何を考えようとしても無限に湧くのは4文字の言葉だけ。繰り返し濁流のように襲ってくる。
――死にたい。死にたい。死にたい死にたい。
矢継ぎ早に脳裏を過ぎっていくのは、千之助の抱えた抑えられた感情。
それらは無かったわけではない。ただ、隠していた。
思い出す絶望、慟哭。怨嗟。その波が思考を総て、一つの言葉に直接塗り替える。
――死にたい。
徒労の連鎖、こびりついて離れない哀しみ。抱える温度差の感情が手を伸ばしてくる。死の手を握りかえしたら最後、安らかに眠る事が赦される。
精神を抉る死の痛みは、甘くそして、どこまでも甘呂であるだろう。いつのまにか抜いていた黒剣で首を掻ききってしまえば、どこまでも楽に終わる……。
「…………千之助」
死の概念は吹き荒ぶが自分で自分の名を呼んで強引に顔を上げて、ダークポイントを見返した。
それでも自殺願望が絡みつく。黒剣で部分的に腕を斬りつけ以降は盾へと変えて向き直る。
呼ぶ声に反応するように、予め『見守って』と頼んだ。
――誰かが呼んだなら、顔を上げるは道理だ。
助ける者の存在は此処から見えずとも、それは魂に刻んだ絶対的な生きる理由。
「私は『死ねない』理由を持って此処へ来た」
――死など比較にならぬ甘い行為だが。
「肯定:自殺願望=乗り越えし者」
「乗り越え……そうさなぁ。垂れ流したままではこれからに影響がでようものか」
おっとりとした口調で返し、斬りつけた部分の傷口を焼いて塞ぐ。
いつか千之助が共に聞いた荒療治だ。痛みは倍に発生したが、無視を決め込む。
「もう、無様は晒さぬ」
意識に灯る業火の行く先は、願望を抉り出したダークポイントただ一人に向かう。
「我が呼びかけに応え、暴威を振るえ」
地獄の業火は竜の様が噛み付くように、容赦なくぶつかっていく。
燃えるだけでは済まない熱量を持って、二度、三度と炎の奔流と成ってダークポイントを焼いた。
「肯定:炎=総てを焦がす熱量」
包み込まれた地獄の炎のなかで、引き金を引く音がある。
激しい熱量の中でさえ、――未だ、戦意は失われていない。
大成功
🔵🔵🔵
ペトニアロトゥシカ・ンゴゥワストード
相手はビルの屋上、能力は見た相手を燃やす、と。
ヒーローに協力してもらう必要はあるけど、手はあるかな。
空を飛べるヒーローに協力してもらって、
上空から太陽を背にダークポイントに向かって勢いよく飛ばしてもらおう。
そして発電器官を使って全身から放電して発光すると、
太陽の光に紛れてあたしの姿が見えなくなるはず。
深海魚が使う、カウンターイルミネーションって奴だね。
見えなきゃ燃やすことは出来ないだろう?
ある程度まで近付けたら手の出糸突起から糸を伸ばして捕まえて、
【縛索豪振】で引き寄せて掴んだら、
ダークポイントを下にして落下の勢いそのままにビルの屋上に激突するよ。
半分自爆だけど、体の丈夫さ比べなら負けないよ。
シキ・ジルモント
◆POW
奴が舐め切っている正義、脅威にしてやろうじゃないか
ヒーローの協力を得てバイクに乗ったまま上空から自由落下して敵に接近する
エンジン音を出して気付かれ、視線を向けられたら終わりだからな
それでもある程度近付けば気付かれるだろう
その振り向きを『見切り』、タイミングを合わせて小型スタングレネードを顔目掛けて『投擲』し炸裂させ『目潰し』を狙う
敵の視界を少しの間でも奪い、視線に捉えられる事を阻止する事で敵の先制攻撃を捌きたい
敵の攻撃を防いだらユーベルコード発動
バイクに飛翔能力を付与しそのまま敵に突撃して再び視線を向けられないよう『吹き飛ばし』、吹き飛んだ先を『追跡』して銃で追撃する(『スナイパー』)
天海空・奏楽
【鎮火】
敵の射線から逃れられて、こっちも狙えるポイントってのに
案内してほしいですわー、先輩。
相手もこっちを意識してるっすから、まあ、
ある程度は敵も、こっちへ近づいてくれるっすよね?
なるべく瓦礫近くとか遮蔽物のあるところを歩きたいっす。
炎がきたら。
ぐわっ!
マジやめて!
炎耐性あっても好きじゃねェですから!
UC発動、相手の襟首を掴んで手前に引っ張って
バランスを崩させるっすよ。
俺は同時にしゃがみ込んで遮蔽物に隠れて
視線から外れるつもりっす。
UCは継続して相手を見てなくても使えると思うんで。
せめて延焼効果は追加させねえように!
俺が注意を引いて奴の気も狙いも逸らして、
掴んで離さねェっす!
さあ今のうちに!
ニノマエ・アラタ
【鎮火】
…せめて、奏楽が苦しまずにすむように。
互いに狙撃のポイントになりそうな場所を見定めつつ、
相手の出方を待つしかないな。
俺は目立たぬよう離れた場所で殺気を消して待つ。
奏楽が敵を捕まえたら、視線の射線をたどって間合いを詰めに駆ける。
妖刀で胴を狙い一閃するためだ。
視線が合い、黒炎に巻かれることがあったとしても。
捨て身の一撃、絶好の間合いに入ることを優先し。
渾身の気合を込めた一太刀でお返しだ。
ただ焼かれるのも芸がない。
俺だけを視ていていいのか?
あっちにも猟兵がいるぞ?
と、ちらり己の視線を背後へやってかまをかけ、
視線を外させることも試みる。
大ダメージを与えて、思うように動けなくさせてやるぜ。
●空の上で
ビル屋上よりも大分空の上。
重力を無視する能力を有するヒーローと、何でも持ち上げる力持ちのヴィランが協力し空の行く者がいた。
「相手はビルの屋上。能力は見た相手を燃やす、と」
ペトニアロトゥシカ・ンゴゥワストード(混沌獣・f07620)は下方を眺め見て、こうするのが良いだろう、と考え赴いている。
「うん。あたしを全力で、あのビルに勢いよく投げ飛ばして欲しいんだ」
敵の場所があの場所から変わっていないのなら、一網打尽で行うのも対策の打ちだ。力持ちのヴィランも、飛行を協力しているヒーローも、ペトニアロトゥシカが無事で済まないだろう、と不安げな顔を見せる。
気配だけでも分かるほど、困惑した気配が感じられるのだ。
「大丈夫。彼が、先に行くならねぇ?事前にそうすれば、被害はあたしだけ、最小限にはなるよ」
空の上で、彼、と名指しされたバイクに跨るシキ・ジルモント(人狼のガンナー・f09107)もまた、協力を得て下方を眺めていた。
「……言える場であれば、そうしよう」
――奴が舐め切っている正義、脅威にしてやろうじゃないか。
獣の耳を低めに倒して、シキはそう返す。
狙い定めた標的は、今も誰かと戦闘中であるだろう。
「ある程度まで支えて貰えれば以降は、自由落下でいい」
エンジン音があれば、気付かれるが、視線が向けられる前からこの状態であれば、見える勝ち筋もある。そうして、重力を徐々に戻されて、上空からバイク乗りが自由落下のフリーフォールを始めた。頬に当たる風は、徐々に激しさを増す。そう、これもまた、――仕事の完遂の、為。
●鎮火
ダークポイントとの邂逅前に、会話があった。
「敵の射線から逃れられて、こっちも狙えるポイントってのに案内してほしいですわー、先輩」
天海空・奏楽(道士見習い・f13546)が先輩、と呼称する存在へ軽めの口を叩く。
屋上に居るという存在の出方を伺うにも、適切な場所を欲する思考だ。
――せめて、奏楽が苦しまずにすむように。
「互いに狙撃のポイントになりそうな場所を見定めつつ、相手の出方を待つしかないな」
「相手もこっちを意識してるっすから、まあ、ある程度は敵も、こっちへ近づいてくれるっすよね?」
先輩、と呼ばれたニノマエ・アラタ(三白眼・f17341)は最適である解答を返す。
現場で実際起らば分からぬことではあるが、ようは心構えの問題だ。
予め気をつけるか、気をつけないか、の違い。
「ああ。おそらく。俺は目立たぬよう離れた場所で殺気を消して待つ」
――武運を。
強い眼光と共にニノマエが言えば、奏楽はふわり軽く頷いて応えた。
――なるべく瓦礫近くとか遮蔽物のあるところを歩きたいっす。
何十何発と撃ちまくられた痕跡。貫通したらしい幾つか下の階が見える床。
ダークポイントが既に、際限なく打ち込んだ跡だ。
そしてところどころにある、真新しい血痕。見れば見るほど生々しい。
「察知:脅威」
奏楽の動きを、狙撃手は感で気がついたのか、視線をこちらに向けて応えた。
ごおう、と炎が湧き起こる。視線が命中した。
点火した熱量に驚き、奏楽は払い除ける動作をしながら驚く。
「ぐわっ!マジやめて!炎耐性あっても好きじゃねェですから!」
「否定:汝の願い=命令と認定し無視を敢行」
転げ回るようにしても、漆黒の炎は簡単に消えず燃え続けている……が、奏楽はダークポイントの銃を扱うても重症を負っているのでは、と疑う。
「そういうことなら、んまぁ、じゃあ失礼!」
気脈の流れを息を吸うように読んで見えない手のように操り、ダークポイントの襟首を、後ろではなく手前、前のめりになるように引っ張った。
ダークポイントにも見えない気の流れで反応が遅れ、バランスを崩し重症の足に体重が一気にかかり鮮血が吹き出す。
――いょっし!今だ!
視線から外れると同時に、低く身を伏せて遮蔽物の影に逃げ込んだ奏楽。
延焼などさせぬよう、早く倒すべきという認識は変わらない。熱いし、痛い。
――今なら十分に注意が逸れてるっすよ、まだ襟首掴みっぱなしっすから!
この状況を見ている先輩と、まだ何処かに居るだろう猟兵へと望み、託す。
――掴んで、離さねェっす!さあ今のうちに!
「奏楽、よくやってくれた」
ニノマエが、眼前の敵を見失ったダークポイントの視線の射線を潜るように走り駆けて間合いを詰める。
「否定:軽微」
ダークポイントの視線がニノマエを捉え、黒炎が巻き取るように燃え盛る。
視線が舐めるようにニノマエを見ていた。全身が焼けるのが、体感として物理的に分かるが、抜かれた銃は撃ち放たない。
――手に握力が、ないのでは。持っているだけで、限界なのでは。
――見かけ以上に、重症を負っているのではないか。
顔色で判断できず、走り回る事すらしいないでいる様は、弱っていることの証明そのものではないか?
「では俺は、笑止と返す」
その有様に短く息を吐いて、ニノマエはふと、思う。
「俺だけを視ていていいのか?」
少し大きく、声を鮮明に。
「あっちにも猟兵がいるぞ?」
ニノマエは本当に、かまを駆けるために虚言を吐くつもりだった。
しかし、確かに見えたのだ。
少し遠く、確かにこの場に訪れようとしていた人影が。
「疑問:背後=空に脅威の反応は」
途切れた言葉は、ダークポイントが振り向こうとした瞬間に、ヒュウウウウウと音が聞こえた事が原因だ。
「……あと少しでバラす奴があるか」
音に反応して振り向かれるのを、エンジンを全開に踏む込む事で避けるシキ。
多少の衝撃はバイクのクッションがなんとか緩和するだろう。
視線を外れた事でカッ、口で絡繰起動のスイッチを素早く外し、時限式の刻限を刻む小型グレネードを投擲するはご丁寧に顔面だ。
「特別サービスだよ。ドカンとやられてくれ」
ダークポイント言葉を待たずに炸裂するグレネードは盛大に破裂して、黒々とした顔を仮面が割れるようなヒビ割れ状態を齎す。
「それでもう睨みを効かせられないだろ、あんた」
「被害:甚大」
返答を常に聞き流し、シキはプログラムを展開させていく。
「システム起動。もう少し、無理をさせるが……頼んだぞ」
軽く叩いたボディは起動と同時に防衛用シールドで乗り手共々包み、飛翔能力を得て空を駆ける。
好調で軽快なエンジン音はシキの期待に答えるように、唸り、衝突事故を思わせる勢いで突っ込み、シールドに守られたシキはダークポイントを盛大に吹き飛ばす。
「そら、あんたの得意としたことは、こうだろう」
吹き飛ぶ体に追従するように宇宙バイクを高速で空で滑らせて、脇からバンバンと銃が火を噴く。
「無防備を晒してるところ悪いが、それは………最高に、良い標的だ」
妖刀の閃きはこの場にこそ輝く、とニノマエが短く息を吐いて渾身の一撃を持って剣戟の冴えを見せる。
一閃、胴を狙った妖刀は少し狙いを外れて銃を持つ手を自由の身にしてみせた。
もう、この銃を手に取ることは、叶わないだろう。
膾切りにでもしてやろうかと思ったが、捨て身の一撃では一太刀叩くのが限界だった。
それに、なにより、未だなにか、空から音がする……。
「あと、悪いことは言わない。急いでビルから飛び降りろ。俺はもう行く」
シキは勿論その理由を知っている。エンジン速度をそのままに、戦場を全力で離脱していく。
腕を失ったダークポイントがどうなることか、などの予想は付かないがどうしようもない破壊行為が降り注ぐことを知っているのだ。
「……奏楽、その辺にいるだろう。迷いもあるだろうが、俺もいく。跳ぶぞ」
「え?あ、はいっす!……え、本当にっす?」
ニノマエと奏楽が素直に戦場を去るためにフリーダイブに踏み切った。
あとはこの状況を見ている正義の陣営が、なんとしてでも、助け出すだろう。
少し離れた空で、銃の発砲音がひとつ。
それは、――敵はまだ、ここにあり、の合図だ。
●きらめくほしに
「あたしは星のようにみえるかい?」
怪力の勢いを受けて空から射出されたとも言える、ペトニアロトゥシカ。
上空から太陽を背に、電気鯰のような尾から発生させるエネルギーを自身に放電させながら発光する弾丸だ。
「被害:行動不能を計測」
ダークポイントだけが残された屋上で彼は太陽を向いて倒れている。
猟兵たちが何かを囁き慌てて退避していった。理由を考える。思考が乱れる。
「疑問:太陽の中」
割れた視界の中で、太陽の中がバリバリと電気を帯びている、気もした。
太陽は炎であるならば、電気は、おかしい。
――深海魚が使う、カウンターイルミネーションって奴だね。
「太陽光に紛れたあたしの姿はきっと、見えないんじゃないかい?」
ペトニアロトゥシカは真っ直ぐに、標的目掛けて重力を増して加速していく。
「見えなきゃ燃やすことなんて、出来ないだろう?」
大分近づいて見えた戦場は半端なく破壊の限りを尽くされており、ペトニアロトゥシカは多少なりとも苦笑を浮かべた。
「あぁ……逃げることすら出来ないんだね、ご愁傷さまだねぇ」
でも、躱されるわけにはいかないから、と出糸突起から糸を伸ばしてダークポイントの逃げる可能性を完全に潰しきる。
掴んで引き寄せ、色濃い血の匂いを感じたが、それらは総て、無視した。
「半分自爆だけど、……体の丈夫さ比べなら負けないよ」
眼前に迫るは、ビルの屋上。
だいぶ上空から飛来した弾丸となったペトニアロトゥシカが、ダークポイントを下にして、ビルへ激突し、戦場となったビルをことごとく打ち砕き破壊していく。
今更ビル一つがまるごと破壊されたとして、敵の殲滅と比べれば、可愛いものだろう。
「終焉:敗北:命令遂行、を、断念」
最期に聞こえたその言葉は、瓦礫の中に埋もれて消えた。
ビルを完全破壊したペトニアロトゥシカは、勿論、元気に生還してみせた。
その様子を、ヒーローやヴィランが拍手と共に祝って喜んだ。
「まるで、ヒーローよりヒーローらしい力技でした!」と地方紙のいち面を染める事は、まだ少し、未来の話。
大成功
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