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震えるスピカ

#スペースシップワールド

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#スペースシップワールド


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●Erosion
 壁面に最低限の灯りのみが灯る暗い区画では、同じ電子音声が繰り返し響いていた。
≪警告:権限ランクがアクセス規定を満たしていません。≫
 権限ランクは船内におけるコンピューターへのアクセス管理制限だ。所属によってその権限ランクは違い、艦長を最高とし、各部門の責任者である幹部など詳細は多岐に渡る。
 現在、旧型コンソールのモニタ表示は操作者の権限ランクが最低である事を示している。だが、フードを目深に被った人物は手慣れた動きでコンソール下部のパネルを壊して外すと、複雑な配線の中から幾つかを引き抜いて手元に持っていた小型の機械を中継させて繋ぎ直していく。

≪警告:権限ランク――ザザッ――満たしていま――≫
≪警告:エラーが発生――ザザッ――技術保守――連絡してくだ――ザザッ≫

 警告の自動音声にノイズが走り始めた。やがて全てがノイズに飲み込まれていくと、ぷつん、と音が消える。奇妙な静寂が数秒続いた後に、クリアな音声が響く。

≪幹部権限コード:技術保守部長を確認しました。≫
≪アクセスコードを入力して下さい。≫
≪アクセスコードを確認しました。≫
≪自動迎撃システムにアクセスします。≫
≪自動迎撃システムのオーバーライドを開始します。≫
≪自動迎撃システムの停止しました。≫
≪マザーコンピューターにアクセスを開始します。≫

 コンソールのボタンが押されて、滑らかに船への破壊活動を告げる自動音声がオフにされた。
 そして、絶えず光り続けるモニタだけを残して、フードの人物は船内トラムの乗車駅へ向かって歩いて行くのだった。


 その日、グリモワベースで待っていたのは陸刀・秋水(スペースノイドの陰陽師・f03122)だった。悩むような顔付きでファイルを見ていた彼は猟兵達を見付けると、ああ、と一言安堵の声を漏らした。
「皆さん、集まっていただき有難うございます。今回は少々、急を要する件ですので、早速説明に入ります」
 定型文と化した挨拶の後、それではと秋水は一旦区切った。

「事件の発生地は世界名『スペールワールドシップ』
 給糧船スピカが――給糧船は要するに食糧工場だと思って下さい。その船に隕石群が接近しているのですが、隕石群を攻撃して破壊する役割を持った自動迎撃システムがダウンしているようなのです」
 本来ならそのシステムを停止させる機会は少なく、もしあったとしても入念に安全を確認してから行われるものだ。隕石群の到来は事前に予測されていたともいう。
 それなのに何故とは思うが、予知したのだから背後には帝国――オブリビオンの存在があるのは間違いない。

「これは内部に潜入した帝国の精鋭の工作活動と推測されます。他にも何らかの行動を起こしている可能性がありますので、捜索して阻止、最終的には倒す必要があります。ですが、隕石群をまともに受けてしまえばスピカは航行不能な程に損傷してしまいます」
 航行不能になってしまえば食料供給もままならなくなって来る。敢えて給食船を狙ったのだと考えれば、それでは半ば帝国の目的を果たさせたようなものだ。
「ですので、皆さんはまず隕石群の手動迎撃か自動迎撃ステム復帰の手伝いをお願いします」
 船の各所に設置された銃座の前方は、材質は違うがガラスドーム型になっているので目視は容易い。操作も解りやすくなっているそうだ。
 船員達もいるのだが戦闘について未熟な自分達よりも解放軍の再来である猟兵達ならばと任せてくれる筈だ。そして迎撃後の欠片程度ならば、船を守るシールドも飽和せずに受け止めてくれるだろう。
 そう説明して、秋水がファイルを閉じた。
「では、説明は以上です。今回は色々と忙しい戦いになりそうですが、皆さんでしたら必ず果たしていただけると信じています。では、転移を開始します。これが皆さんの良き宙の旅となりますように――」


山崎おさむ
 遅ればせながら、あけましておめでとうございます。
 新年早々の第一本はSFでお届けいたします。

 RPGやアクションゲームをやっていて偶にある『急にシューティングゲー始まった』とのアレな感じで隕石群を迎撃するパートからシナリオがスタートします。
 第二章からはOPで提示してある通りの流れになります。サーチそしてデストロイですね。

 どの章からでもお気軽にご参加ください。
 みなさまのプレイングを心よりお待ちしております。
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第1章 冒険 『隕石群の手動迎撃』

POW   :    リロードの遅い高威力大型機銃で迎え撃つ

SPD   :    速射型または高精度型の機銃で迎え撃つ

WIZ   :    自動迎撃システムの復帰を手伝う

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

リリスフィア・スターライト
給糧船の危機は食べ物の危機だから放ってはおけないかな。
急いで自動迎撃システムを復旧して隕石群から船を守るよ。
オルタナティブ・ダブルで自分の分身を生み出して
復旧作業を効率よく進めるつもりだよ。
マザーコンピューターへアクセスして主導権を奪い返せるかを試みるよ。
幹部権限コードは事前に得られればいいけれど。

首尾よく主導権を奪い返されてもまたアクセスされないよう
権限も聞き替えておくつもりだね。

「今回はこのゴーグルの出番になりそうかな」
「こっとは私の得意分野だからな」



●Interceptor
 給食船スピカ。その船内の一角では今、非常事態を示す赤い照明が点滅し続け、乗務員達の喧騒に重なって自動音声とけたたましい警報が響き渡っていた。

≪警告:隕石群が接近中。自動迎撃システムは停止しています。戦闘員はただちに配置につき、迎撃を行って下さい。≫

 本来ならば旧時代の名残を命令系統にまで残すスピカにおいて、部外者である猟兵達が船に搭載されている火器に触れる事は許可されない。だが、たった今スピカの最高責任者である船長からの協力要請を受ける形で副艦長ランクの権限を得ていた。


「今回はこのゴーグルの出番になりそうかな」
 ブリッジの管制官席でリリスフィア・スターライト(多重人格者のマジックナイト・f02074)は自身の電脳ゴーグルと船のシステムをリンクさせていく。その隣に立つのは自分の分身。オルタナティブ・ダブルで生み出したもう一人のリリスフィアだ。二人かかりなら、きっと自動迎撃システムの復旧の効率化が図れる。
「こっちは私の得意分野だからな」
 ゴーグルを下ろすと、彼女の見る世界は電脳空間のそれへと変わる。電脳魔術師でもある彼女にとっては見慣れた世界であり、泳ぎ慣れた場所でもある。
 船のシステムは大きな光のネットとして可視化され、注視してズームしていくと、光の筋の一本一本が膨大なデータから成り立っているのが解る。
「マザーコンピュータはあそこだね」
 ネットの中央、大きな光点は心臓部でもあるマザーコンピューターなのは間違いない。そこへのアクセスを分身に任せて、リリスフィア本人は迎撃システムを探す為にネットを辿っていく。

(「……あった。自動迎撃システムは今が正常の動作だと示してる、どうしてなの?」)

 けれど、それは有り得ない。リリスフィアは解析を進めていく。
 
(「数時間前に、システムの一部に上書きが行われてる。きっとこれだね」)

 つまり上書きされる前の状態に戻せば良い。メンテナンスシステムにアクセスして膨大な船のバックアップデータから該当のものを探している最中、分身から声が掛けられた。マザーコンピューターへのアクセスは問題無く成功したが、見て欲しいものがあるらしい。
 ここだと示された場所を見ると光のネットから、ほつれた糸のように細く薄らとしたラインがあった。
「船本来のシステムならこんな風にはならないかな。……不正なデータだよね」
 一旦復旧作業の手を止め、他に同様のものが無いかを探してみれば、ひっそりと隠れるように数本のラインが見付かった。何本も見付かったのは何故か考えたリリスフィアが呟く。
「もしかして連動式のクラッキング……? このラインの管理権限はどうなってるの? まずはそっちから止めていこう」
 了解した分身が使用されている権限ランクを確認し、書き換えの為の艦長許可と該当権限を所持している技術保守部長へ通達を行う為に急ぎ出す。
「もしかして自動迎撃システムが止められたのは陽動なのかな……」
 こうしている間にもマザーコンピューターへの工作は続けられている。間に合うのだろうかと胸に不安が広がって来るが、給糧船の危機は食べ物の危機。間に合わせてみせるとリリスフィアは決意を新たに電脳空間での戦いに再び身を投じて行くのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

峰谷・恵
「大きいのから撃っていくから小さいのは任せたよ」

【POW】で挑戦。
大型機銃を使い、スピカに当たるコースの隕石のうち大きいものから順に破壊していく。
直撃コースの隕石は中央部分に撃ち込んで破壊、スピカを掠るくらいのコースでくる隕石は端の方に撃ち込んで軌道を外側に逸らしてスピカに当たらないようにする。
多少弾倉に余裕があってもスピカに迫る隕石が細かいものだけの間に大型機銃のリロードを済ませる。

「これでもブラスターガンナーの端くれ、撃ち漏らしとチョンボしてたら格好つかないからね」


ゴォグ・ツキシマ
供給元を絶たれては如何なる強兵・大組織であろうと立ちゆかぬ! 特に食料はいかん!
このゴォグ、助太刀するぞ! 何、昔仕事でやっていたデブリの解体作業とそうは変わらぬであろう!

ゴォグは【POW・大型機銃】の銃座に着くぞ!
装填が遅く高威力となれば、衝突コースにある隕石の中でも『特に大きな隕石』の破壊を担当しよう!
速やかな連射が難しい以上、先ずは十分な距離まで引き付け、銃座の最大威力を叩き付ける【一斉発射】で、一つ一つ慎重に確実な破壊を狙っていく!
その為にも、リロード時間の長さは予めよくよく把握しておかねばならぬな!
この船、そして他の味方の為にもゴォグは役目を果たそう!(絡み・アドリブあれば歓迎)


ユーイ・コスモナッツ
給糧船を狙ってくるとは、なんて卑怯な!
……だけど、たしかに、有効な作戦ですね……
だからこそ、私達が阻止しなくては

銃座に座り、隕石群を迎撃します
使うのは「リロードの遅い高威力大型機銃」
視力には自信がありますので、
遠方凝視で隕石を確認しだい、
リロードにはいります

射撃のウデに自信はありませんから、
ユーベルコード「バトル・インテリジェンス」を併用します
照準あわせと、発射のタイミングをサポートしてもらいますね


トルメンタ・アンゲルス
んー、俺としては、船外に飛び出て直接ぶっ壊す方がやりやすいんですがねぇ。
そうすると後が面倒ですし、たまにはこういうのも良い物ですよね!

【SPD】
レーダーや強化された視覚から入ってくる情報を収集、分析・演算を行い、俺の正確な操縦で的確に撃ちぬいてやりますよ!
どんなものにも、そこを突かれると弱い「目」って奴がありますからね。
そこを計算と研ぎ澄ました第六感でガンガン撃っていきますよ!

……と言っても、流石に威力不足で壊せないものもあるでしょうねぇ。
高威力の機銃の人が撃ってくれればいいんですが、間に合わなそうなら、撃つ所を工夫して軌道をずらしたり他の隕石をぶつけたりして、時間を稼ぎましょうか。



自動迎撃システムの復旧と並行して、手動での迎撃に回っている者達もいた。
 船内上層フロアでは整備員達が機銃の最終チェックを終わらせ、銃手となる猟兵達がそれぞれ選んだ機銃の操作席へと乗り込んでいた。

「供給元を絶たれては如何なる強兵、大組織であろうと立ちゆかぬ! 特に食料はいかん!」
 ゴォグ・ツキシマ(グッドバッドインシネレィト・f09674)の声は熱さを伴っていた。
 それも当然だろう、彼は怒れる焼却炉。オブリビオンに抗う人類達に感化され、世界に満ちる不条理に対して炉を燃やすウォーマシンなのだ。継戦だけでなく生命活動に直接関わる危機にゴォグが燃え立たない筈は無い。
 ゴォグの熱は通信に乗ってユーイ・コスモナッツ(宇宙騎士・f06690)にも届き、整備員達にも伝播していく。
「給糧船を狙ってくるとは、なんと卑怯な! 私達で阻止していきましょう!」
 作戦として有効であるからこそ、敵の目論み通りにさせる訳にはいかない。
 おう、と士気の高さが伝わってくる通信に峰谷・恵(神葬騎・f03180)も微笑むと自分の言葉を乗せて行く。
「そうだね、その為にもきっちり隕石を片付けていこう」

『隕石群、迎撃ラインに到達!』
 数秒後、宙に放たれた光源が宇宙の闇を照らして行く。それによって接近しつつある隕石群の映像がサブモニタに映し出された。黒いマーブル状の大小様々な隕石群の動きは一見緩やかだが、実際は恐るべきスピードで迫っており、その質量を考慮すれば兵器と言っても過言ではない。
「んー、俺としては、船外に飛び出て直接ぶっ壊す方がやりやすいんですがねぇ」
 サングラスを押し上げてトルメンタ・アンゲルス(流星ライダー・f02253)が溜息を混じらせるように呟いた。彼女としては愛車に乗って対抗する方が楽に思えたのだ。
 その間にも通信からは続々と大型機銃を担当する仲間達の声が聞こえてくる。
『大きいのから撃っていくから小さいのは任せたよ』
『うむ、同じく特に大きな隕石を破壊しよう! 何、昔仕事でやっていたデブリの解体作業とそうは変わらぬであろう!』
『狙いやすいものから確実に狙って行きます!』
「つまり俺は大きくなくて、狙い難いのを担当って事ですねぇ。了解しましたよ」
 難易度の高いのが回って来るという事だ。それを理解したトルメンタが挑戦的な笑みを浮かべた。その姿はまるで唸りを上げるエンジンのようだ。
「たまにはこういうのも良い物ですよね!」
 トルメンタの体内で高度演算デバイスのForecastが即座に視覚情報を集め始める。機銃の補助システムが表示する内容も情報として加え、サイボーグ化した彼女の中で行われる分析、演算が高精度型機銃の精度をより一層高めていく。
 容易に先頭の隕石に照準を合わせたトルメンタがタイミングを図る。どんな物体にも最も破壊のエネルギーに弱い目となる部分あはる。そこをトルメンタは狙っているのだ。
 第六感も頼りにして発射ボタンを押す。まだ距離はあるというのに発射された実体弾は過たず隕石に着弾、粉砕し、細かな欠片へとなっていく。
 その後もやる事は同じだ。高精度の射撃でトルメンタは隕石を着実に片付けて行く。トルメンタの瞳が新たに有効射程距離内の隕石を見る。
(「あいつらを相手にするには……威力が足りませんねぇ」)
 増え始めた大きな隕石にそう判断を下した次の瞬間、それらが弾けるように四散した。大型機銃達が迎撃を始めたのだ。花火でも咲くかのように隕石が次々と砕かれていく様子にトルメンタが笑う。
「いやぁ、派手ですねぇ」
 では、自分は大型機銃のリロードタイミングを作る為に時間稼ぎに回ろうと、トルメンタは隕石の軌道をずらす為の射撃に移った。

 
「隕石C破壊しました! 次はFを撃ちます!」
 ユーイは連携を取る為、レーダーシステムが簡易的に割り振る名称で呼びながら伝達していく。
 射撃に自信の無かったユーイだが、AI搭載型戦術ドローンの補正を受けて問題無く迎撃に加われていた。そうして行われる三機の大型機銃の連携の前では、隕石はただ破壊されるだけの的でしかなかった。あるいは――。
「隕石D、軌道変更に成功だよ。これで掠める事もないかな」
 恵が今やったように、隕石の端を撃ち回転させるようにして外側へ軌道を逸らされるかだ。いずれにせよ船にダメージを負わせる衝突には至らない。
 粉砕された隕石の破片は飛んで来るが、それも船が装備している物理エネルギーを中和するシールドによって受け止められて行く。慣性吸収技術を利用したものなので許容限界はあるが、まだその心配はしなくて良いだろう。
「実に順調であるな! 今の内に一旦リロードに入るのである!」
 ゴォグはリロードに必要な時間を考慮して、ユーイと恵の弾数が残っている内にと数十秒の待機に入った。懸念していたリロードの遅さは、トルメンタの時間稼ぎの成果と三機で補い合う事で常に誰かが射撃出来る状態を維持出来ていた。
 しかし、事態の急変は突然訪れる。
「――っ! 大型隕石来ます! 今までで最大です!」
 視力に自信があるからと警戒に回っていたユーイが思わず叫んだ。
 モニタに映し出されるのは、今まで対処してきたものの二倍はあろうかとの巨大隕石。これが船に直撃すればただでは済まない。
「おぉ!」
『……あの大きさじゃ軌道を逸らすのも無理だねぇ』
 ゴォグが驚き、通信からはトルメンタがお手上げだと告げるのが聞こえる。
 巨大隕石の異様に恵も息を呑んでいたが、すぐに立ち直って仲間へ声をかける。
「ユーイさん、残弾は?」
「は、はい! 半分以上残ってます!」
「良かった。ゴォグさんの残りリロード時間は?」
「20秒を切った所である!」
「了解。ユーイさんとボクとで一斉射撃しよう、行けるかな?」
「大丈夫です!」
「うん。それじゃあカウント始めるよ、5、4――」
「「0!!」」
 恵とユーイのゼロカウントの声が重なる。二つの機銃が同時に実体弾の連続発射を開始した。恵の狙った通りに中央を穿ち、削って行きながら罅を広げていく。
 二人の一斉射撃で隕石の速度が緩んだ。だが、止まった訳ではない。徐々にドームの前方を埋めるように迫ってきている。乗務員達は今頃、この光景を見ながら猟兵達が迎撃に成功するよう祈っているに違いない。その信頼に応えなければ――。
「――リロードが終わったのである! この船、そして仲間の為に! このゴォグ、役目を果たすのであるっ!!」
 ――誰かを泣かせる訳にはいかない。その瞬間、ゴォグの炉は最大の火力を見せたのだろう。その熱をそのまま叩きつけるような射撃が始まった。
 三人での同時攻撃に、既に破壊寸前だった隕石が耐えられる筈もない。威力に堪えかねたように割れた隕石は大きな破片の塊と化す。だが、その破片もまた撃ち壊さなければいけない大きさを保っていた。
「これでもブラスターガンナーの端くれ、撃ち漏らしとチョンボしてたら格好つかないからね」
 矜持にかけて撃ち落とすと、恵は残弾を撃ち尽くす勢いでそれらを狙い、片っ端から撃って行く。
『どんどん弾いて逸らしていきますよぉ!』
 トルメンタも支援も再開していた。砕かれながら近付き、そして通り過ぎていく隕石を船首に集中されたシールドが受け止めて行く。シールドの存在で揺れはしないが、ドームから見る光景はまるでデブリ帯に突入したかのように見える。そして、スピカにとっては長い時間が過ぎていく。

「……残弾ゼロ。リロード入ります」
 ユーイは静かに告げてから、レーダーを見てほうっと息を吐いた。船に接近してくる存在はもう確認されない。
「やりました! 隕石群の迎撃に成功しました!」
 ユーイが快哉を叫ぶと通信から乗務員達の歓声が聞こえてきた。迎撃成功のアナウンスはすぐに船内に流され、船全体が猟兵達の喝采に満ちて行く。
 猟兵達の元へ、次々と乗務員達から感謝を告げる通信が入って来る。食事を奢る、いや酒だと様々な声に溢れて賑やかだ。そこに割り込むように船長からも通信が届く。
『こちら、給糧船スピカ船長だ。船を代表して猟兵達の果敢な奮戦とその献身に感謝する。本当に有難う』
 噛み締めるような言葉に思わずユーイは相好を崩したが、すぐにはっと表情を引き締めた。
「お役に立てたなら何よりです! でも、まだ終わってません。倒すべき敵が残ってます」
『ああ、既に君達の仲間から話は聞いてる。頼るばかりで申し訳無いが給糧船スピカは君達に全面協力すると約束しよう』
 まだ危機は去っていない。猟兵達の戦いはまだ終わっていないのだ。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​




第2章 冒険 『クラッキング未遂事件』

POW   :    船内で聞き込み。場合によっては聞き込みの対象を脅してでも情報を集める。

SPD   :    関係者の身元調査や怪しい者の尾行などで潜入者を特定する。

WIZ   :    ハッキングや魔法でクラッキングの痕跡を探る。

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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●Manhunt
 隕石群の手動成功にした猟兵達だったが、自動迎撃システムをダウンさせた犯人はまだ見付かっていない。
 更にその犯人はこの一連の騒動を陽動としてマザーコンピューターへ連動式の破壊工作を仕掛けていたのが判明していた。
 技術保守部門長の権限ランクが不正に利用されていたので、その権限を書き換える事で対応はしたが、連動式という事はまだ設置が行われていく可能性が高い。その内に犯人も権限が書き換えられていると気付くだろう。
 そうなれば犯人は――逃走か、物理的な破壊工作に切り替えるのか。何をするか解らない危うさがある。だから猟兵達は急いで犯人を探さなければならない。
 給糧船スピカの全面協力を受けて、宇宙船内を舞台にした猟兵達の追跡劇が始まる。
リリスフィア・スターライト
ハッキングの痕跡を辿って犯人を突き止めるよ。
また破壊工作をしてくる可能性もあるし、
工作されても大丈夫なダミープログラムも
仕込んでおいて逆に犯人を特定する
手掛かりにもなればかな。
逆に反撃とかもされるかもしれないし、
トリニティ・エンハンスで自身の防御力も高めて備えておくね。
電脳戦は時間との戦いでもあるし、集中して一気に捜査するようにかな。

「これもまた一つの戦いだね」
「何が出てきても対応してみせるよ」



リリスフィア・スターライト――。彼女はまだ電脳空間の中にいた。
 マザーコンピューターへのクラッキングを仕掛けた犯人を突き止める為に、彼女はハッキングの痕跡を辿って犯人を追跡しているのだ。
 不正に利用されていた権限ランクを書き換えた事によってマザーコンピューターに繋がるネットワークへのアクセス権限も失効しているが、連動式のクラッキングプログラム自体はまだ動いており、失効した権限でのアクセスを試み続けている。
 ラインとの繋がりが切れたその動きは、彼女が見る電脳空間の中では頼りなく揺れる糸のように見えた。

(「この糸の根元がプログラプの設置元、つまり仕掛けられた場所だね」)

 リリスフィアは幾つかあるその場所にマーキングを置き、現実世界の情報と照合していく。
 その結果、すぐに共通点が判明した。発信元は全て生体認証を必要としない旧型のコンソールからであり、倉庫や旧居住区画という現在使用されていない場所に設置されているものだ。
 つまり、犯人が次に狙うのも、この条件を満たすものだと考えられる。
 この情報はリリスフィアの手によって、他の猟兵達にも連絡との形で共有されていくだろう。

 引き続きリリスフィアは犯人の手掛かりを追い掛ける。
 「これもまた一つの戦いだね。何が出てきても対応してみせるよ」
 敵から仕掛けられた電脳戦ならば、絶対に負けたりはしないとリリスフィアは小さく呟く。
 そして、クラッキングプログラム自体を解析しようとコンソールへ腕を伸ばした瞬間、バチン、と指先が弾かれた。衝撃はあったが痛みは無い。こんな事もあろうかと事前に防御力を高めていたお陰で犯人からのカウンターアタックを防げたようだ。
(「そう来るなら、書き換え前の権限を利用してる場合のみ繋がるダミープログラムを置いておこう」)
 これでマザーコンピューターへ繋がっているように見せかければ、犯人がこちらの妨害工作に気付くのが遅れるかもしれない。素早く対応を決めたリリスフィアがダミープログラムを組み始める。
 時間との戦いだ。今までも充分集中していたリリスフィアだったが、まるで海へ沈み込むかのように作業へ没入していくのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

トルメンタ・アンゲルス
さて、物理的な障害は一段落しました。
次は、獅子身中の虫の駆除と行きましょうかねぇ。

【SPD】
さて、怪しい人間を探すにしても、先立つ物がありませんとね。
コミュ力を駆使して船長さんに許可を得て、乗組員名簿にハッキングし、情報収集。
顔と経歴をピックアップ。それと、あれば船内の監視カメラの映像も見ましょうか。
経歴が怪しい奴がいたら、そいつの事を知っていそうな乗組員に聞き込みを。
乗組員名簿にいないはずの顔があれば、そいつの跡を追跡をしてみましょうかねぇ。
バレそうになったらダッシュと逃げ足でささっと隠れてパパっと再追跡。
オートロックの向こう側に行かれたら、ハッキングして鍵開けの早業をお見せしましょうか!



 トルメンタの見るモニタには乗組員名簿が表示されていた。
「さて、物理的な障害は一段落しました。次は、獅子心中の駆除と行きましょうかねぇ」
 腕が鳴るとばかりに呟いた通り、これから行うのは数百名にも及ぶ乗組員の中から容疑者として経歴不明者をピックアップする作業だ。情報収集に手慣れていても、地道で時間のかかる作業になるだろう。
 チェック対象から弾ける条件を見付け出して、人数の絞り込みから始めようとしたトルメンタだったが、名簿に気になる点があるのを気付く。
 急いで監視カメラデータを捜し始めた彼女の元に船長からダイレクトメッセージが入る。

『こちら、スピカ船長だ』
「どうも、船長。もしかして息子さんのご到着ですかねぇ?」
『もしそうなら、ワープ航法という莫大な価値が取り戻された事になるな』
 トルメンタは乗務員名簿へのアクセス許可を貰う際に船長と軽い雑談をしたのだが、その時に船長の幼い息子なら猟兵達を英雄視して会いたがるだろうとの話を聞いていたのだ。
 だが、その話ではないと船長が笑いながら否定する。

『もう作業を始めていると思うが、名簿について説明し忘れていた部分があった』
「≪C2-M71輸送船≫についてですかねぇ」
『ああ、その通りだ』

 渡された乗組員名簿に≪C2-M71輸送船≫とインデックスの付いたものがあるのはトルメンタも気付いていた。試しに確認してみると、スピカ乗務員名簿は詳細なパーソナルデータまでアクセス出来るのに対して、こちらは乗組員の名前の後ろに≪C2-M71輸送船:乗員≫と簡略化された一行が記載してあるリストでしかなかった。
 何故なのかと疑問を投げかけると、このような記載になるのはスピカに一時滞在中の外部所属船だけであり、≪C2-M71輸送船≫も居住船から派遣されてきた小型の輸送船だとの返答が来た。
 この手の輸送船の作業員は短期労働として募集されやすく、人の入れ替わりが激しいらしい。
『経歴不明者を捜すならば、こちらから当たった方が良いだろう。昔馴染みで信頼出来るクルーに連絡しておくので尋ねてみてくれ。顔データ代わりに≪C2-M71輸送船≫到着時のハンガーの監視カメラデータを送るよう保安部にも手配しておく』
「それは有り難いですねぇ、監視カメラデータはちょうど捜し始めていた所なんですよ」
『本来ならもっと早く連絡すべきだったんだろうが、先程の騒ぎの事後処理で失念していてね。副船長と君の話をしている時に指摘されたんだ』
 つまり、ブリッジでトルメンタの話題が出たという事だ。≪C2-M71輸送船≫の存在については、いずれトルメンタから問い合わせただろうとはいえ、向こうから先に気付いて色々と手配してくれたのは円滑なコミュニケーションを図ったお陰とも言える。思わずトルメンタの顔に笑みが浮かんだ。
 そして、互いに親しみを込めた挨拶を交わしてから通信を切った。
「さて、監視カメラのチェックをしながら動きますかねぇ」
 輸送船の関係者への聞き込みに向かう為、取り敢えずハンガーへ向かおうとトルメンタは歩き出した。

成功 🔵​🔵​🔴​

峰谷・恵
「犯人が使っているのは現在使われていない区画の旧型コンソール…ならそういう区画を渡り歩いているやつを探せば…!」

【POW】で聞き込み。これは怪しい、という相手以外は脅さず【礼儀作法】【コミュ力】で丁重に情報を聞き出す。
旧型コンソールがある現在使用されていない区画に何度も向かっている者が居ないか船内トラムの駅員や利用客に聞いて回る。
犯人を見つけたら【追跡】しつつ他の猟兵に位置情報と人相情報を伝える。

「犯人が帝国騎士なら捕まえるとき大立ち回りになるから使用されていない区画で現場押さえて、と行きたいところだけど」


ユーイ・コスモナッツ
犯人捜しかあ
正直言って、苦手分野です

隕石の迎撃を成功させたとき、
感謝の言葉をくれた人たちを、
疑いたくない

だけど、う~ん、そうだなあ

それじゃあ皆さん、
簡単に自己紹介をお願いします
艦のお仕事のこと、ご家族のこと、趣味のこと……
どんなことでも結構ですから
ただし、ウソはいけませんよ

自己紹介の内容が
目立ってあやふやな人と、
反対に完璧すぎる人にアタリをつけて、
身の回りのことをいくつか質問します

偽っている部分や、作っている部分があれば、
自然と浮かび上がってこないかなあ?


ボゴ・ソート
※改変・絡み歓迎です。

工作員が今すぐ逃走するつもりであれ破壊工作を続行するつもりであれ、少なくとも猟兵がいる場所では下手な行動は取れない。
警察官の目の前で仕事をする盗賊がいないのと同じだ。
船内で熱心に聞き込み捜査をする猟兵の姿は、工作員にとってさぞ目障りなことだろう。
俺は捜査対象を"猟兵による聞き込み捜査を避けるように行動している者"に絞ることにした。
条件に該当する人物を見つけたら[目立たない]ように[追跡]して[情報収集]を行う。
こういった諜報活動は俺が最も得意とするところだ。
「大船に乗った気持ちでいてよ」
この言葉が慢心か否かは、じきにわかる。
俺は愛用の帽子と共に隠密行動を開始した。



 スピカの船内には様々な区画へ向かう船内トラムが走っている。
 その中で最も路線が集まるハブステーションでは当然利用も集中している。混雑するプラットホームで恵はトラムの利用客に声を掛け続けていた。
「旧型コンソールがあって今は使われてない区画を渡り歩いてる人ですかぁ……。ちょっと思い当たらないですねぇ」
「そっかぁ……。教えてくれてありがとう」
「いえいえ~。私こそお役に立てずにすいません。でも応援してますからね!」
 ガッツポーズした女性客がトラムに乗り、ホームから発車していくのを見送った恵は、次は誰に話しかけようかと周囲を見渡していく。
 すると、一際身長の高いヒューマンの青年――ではなく青年の見た目をした人型ウォーマシンのボゴ・ソート(盗賊・探索者・f11583)が歩いて来るのが目に入った。
 肌も髪も真っ白な体に薄汚れた作業服とのボゴは恵の前まで来ると、挨拶代わりに車両用ナンバープレート付きのワークキャップを軽く持ち上げる。
「やあ、調子はどうだい?」
「今の所はって感じかな。ボゴくんの方はどう?」
「先週、主計部のミラちゃんが施設管理部のルウイくんを凄いエグい形で振ったって話は聞こえてきたなぁ」
「それ、犯人捜査に関係無いよね?」
 しかも『聞いた』ではなく『聞こえてきた』だ。ゴシップ好きの血を騒がせて、ボゴはついそんな噂話まで拾って来てしまったのだろう。
「でも、熱心に聞き込み捜査してる俺達の姿を見せるのも工作員への妨害って意味では大事だよ」
 まるで誤魔化すようなタイミングだったが、確かにそこはボゴの言う通りだ。警官の前で泥棒を働く奴はそうそういない。抑止との面では効果的だろう。

≪3番線にトラムが到着します。スクリーンドアから離れてお待ちください。≫

 二人の会話を遮るようにアナウンスが流れ、新たなトラムがホームに到着した。
 ビー、と低い電子音を立てて扉が開くと、ユーイが乗客達と話しながら降りてくる。
 ホームに視線を移したユーイは二人の姿を見付けると、人にぶつからないようにしながら急ぎ足で近付いて来た。
「お二人とも、偶然ですね!」
「そうだね。ユーイさんは何か解ったのかな?」
 それが、とユーイが肩を落とす。
「色んな人に自己紹介をしてもらっているんですけど、違和感のある方はいないんですよね」
 違和感がある人がいれば、色々と質問を重ねる事で嘘が浮かび上がってくるのではと考えていたらしい。だが、ユーイはそもそも迎撃を成功させた時に感謝の言葉をくれた人達を疑いたくはないとの本音があるらしく、犯人探しも苦手だと少し弱気だ。
 そんなユーイの後ろから、先程まで彼女と話していた乗客達が追い付いて来た。
「もう話は良いのかい、猟兵のお嬢ちゃーん」
「あっ、ごめんなさい!」
 ユーイが謝る相手、揃いの制服を着た男性の小集団に恵が首を傾げた。
「えっと、この人達は?」
「ご紹介しますね。こちらは施設管理部の方々です」
 ユーイの説明に、男達はご紹介されましたとばかりにめいめいに挨拶をしてくる。
「在庫管理部っていうと、ルウイくんがいる部署かい?」
 好奇心を浮かべたボゴの問い掛けにモブ顔の青年が手を上げた。
「あ、はい。ルウイは俺です」
「そっか、君が。……うんうん」
「……なんですかね、初対面の人にめちゃくちゃ優しい目で見られてるんですが」
 優しい目をしたボゴ、不思議そうなユーイ。このままでは話が進まない気がした恵は早々に本題を切り出す。
「ところで、聞きたい事があるんだけど良いかな?」
 尋ねるのは矢張り、旧型コンソールがあって、現在使われていない区画を渡り歩いている者がいないかだ。男達は唸っていたが、一番目端の利きそうな雰囲気の男が最初に声を上げた。
「あいつとかどうだ? お前が気にして道教えたって言ってただろ」
「誰だ……って、あー、あの迷子野郎かぁ」
「心当たりがあるの?」
「おう。仕事柄、どこそこのライトを交換して欲しいだのと船内のあちこちに移動するんだが、その時に何度も同じフードの奴を見掛けててな」
 その人物を見掛けるのは得てして利用客の少ない路線やメイン区画から外れた場所だったりするそうで気になっていたそうだ。外部からのゲストはちょくちょく道を間違えているのもあり、フードの人物はいつ見てもスピカの制服を着ていなかった事から、その口かと思って道案内の為に声をかけた事もあるらしい。
 親切そうな男が風体を説明すると、俺も見たかもしれないと同僚達からも目撃証言が上がって来る。
「じゃあ、さっき言ったような区画って無いかな? 出来ればトラムが通ってる所が良いね」
 今の目撃証言と重ね合わせて、まだフードの人物が行ってなさそうな区画が特定出来れば犯人確保へ向けて大きな一歩になるだろう。
(「犯人が帝国騎士なら、捕まえるとき大立ち回りになるから使用されていない区画で現場押さえて、と行きたいところだけど」 )

 彼らから幾つか条件を満たす候補地を教えて貰った猟兵達が、まだフードの人物が目撃されていない区画へ向かう為にトラムへ乗り込んだ。
「南下層フロアA-3区画ですか」
「老朽化を理由に撤去作業が予定されてる旧カフェエリアだってね」
 行き先を確認する三人を乗せたトラムの車内は、駅に止まる度に乗客が減って行く。使われていない区画に向かっているのだから当然だが、それでもまだ残っている乗客には何らかの理由があるのだろう。
 ここでも聞き込みをしようかと乗客を見ていた視線を何となく別の車両まで移したボゴが、まるで猟兵達を避けるように奥の車両へ移動していく人影に気付いた。そのシルエットはフードを被っていたように思われる。
「あれは……もしかして」
「どうかした?」
「見付けた、多分犯人だよ」
「解った、他の皆にも連絡を入れておくね」
 恵が他の猟兵達に情報共有する為に通信を始めた。その間、ユーイは少し不安げな様子でボゴを見上げる。
「大丈夫ですか?」
 その問い掛けに、ボゴは、にっと口端を上げて笑ってみせる。
「製造が一世紀前とはいえ、人型探査機の名前は伊達じゃないからね。追跡には大船に乗った気持ちでいてよ」
 ボゴがさりげなく車両を移って逃げた人影を追いかけていく。その人物は矢張り逃げるようにどんどん奥へと歩いているようだ。恵とユーイも少し距離を置いてボゴについて行く。

≪間もなく南下層フロアA-3区画に到着します。≫

 トラムが停車し、フードの人物が歩を緩めた。ここで降りるのだろう。ボゴがハンドサインで二人に合図する。
 そして扉が開いた途端、フードの人物はトラムから逃げ出すように走り出した。
「さぁ、行こう!」
 逃がす訳にはいかない。猟兵達はスピカに脅威を齎した悪を潰えさせる為に駆け出していく。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『帝国騎士』

POW   :    インペリアルブレイド
【念動力を宿した「飛ぶ斬撃」】が命中した対象を爆破し、更に互いを【念動力の鎖】で繋ぐ。
SPD   :    ダークフォースバリア
自身に【鮮血の如きオーラ】をまとい、高速移動と【赤黒い電撃】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    インペリアルフラッグ
【念動力で形成した帝国の旗】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【を『帝国の領土』であると見る者に認識させ】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
👑17
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●Exclusion
 ――南下層フロアA-3区画。現在は撤去作業を待っている旧カフェエリアだ。
 そのエリアに人気は無く、壁面の各所に設置されたモニタは何も映さず暗く沈んでいる。放置された宣伝ポスターの内容だけが妙に明るく、逆に無人の虚しさを感じさせてくれる。
 まるでゴーストタウンのようなエリアの中央、広場のように空間を取られたスペースには天井まで届く高さのクリスタルを模したオブジェが置かれているが、それは滅びの時まで見守るこの空間の主のようにも見えた。
 そのオブジェの前まで猟兵達は犯人を追い詰めていた。
 これ以上は逃げられないと察したのだろう、犯人はずっと被り続けていたフードを静かに落とした。
 ――帝国騎士。
 その帝国騎士は静かに円筒を取り出すと、低い稼働音を響かせて光のブレードを生み出したのだ。
峰谷・恵
「こそこそ工作してたから直接戦闘は大したことない…なんておめでたい見くびりをするつもりはないよ」

出し惜しんで勝てる相手じゃないと判断、始めから血統覚醒を使用して戦闘。
距離をとって【一斉発射】【鎧無視攻撃】【鎧砕き】【2回攻撃】でアームドフォートの砲撃と熱線銃の射撃にヴァンパイアの力を乗せて攻撃(直撃させて耐久と防御を削れればよし、かわすか防ぐかされても攻撃への対処をさせることで他のメンバーが仕掛ける隙を作る)。
インペリアルフラッグで領土主張されたらヴァンパイアの力をこめたダークミストシールドを旗に叩きつけて旗を破壊、領土主張に対抗する。

「領主ごっこは吸血ゾンビの十八番、此処に帝国の領土は無い」


ボゴ・ソート
※改変・連携歓迎です。

ブレードの放つ光の軌跡がクリスタル状のオブジェに反射する。
「綺麗だ。でもあれを喰らうのはちょっとだけ嫌だな」
敵は恐るべきサイキックエナジーの使い手だが、今の俺には頼もしい仲間がいる。
あえて捨て石になるのもいいだろう。
チェスにおけるギャンビットというやつだ。
俺は覚悟を決めるとワークキャップを目深に被り直した。

■具体的な行動
[フック付きワイヤー]で天井に[クライミング]して、飛び降りながら[シーブズ・ギャンビット]で攻撃します。
もし「●インペリアルブレイド」の効果により[念動力の鎖]で繋がれたら、[ロープワーク]を駆使して逆に妨害してやりたいです。


トルメンタ・アンゲルス
あぁ、このタイプの騎士でしたか。
あの手の妨害が出来る相手は限られていましたが、捉えればこちらの物。

さぁ、始めましょうか!
『MaximumEngine――HotHatch』(ベルトの機械音声)
来い、NoChaser!
変身!アクセルユニゾン!

宇宙バイクと合体変身、防御力重視の装甲を纏います。
自慢の速さやスマッシュ・エアを駆使し、騎士の周囲の床を壁を残骸を宙を駆けまわり、撹乱と味方への攻撃を妨害します。
ブラスターやプラズマブレードで攻撃を仕掛け、一瞬でも大き目の隙が出来たら肉薄。
痛撃のブリッツカノーネを思い切り叩き込む!
その一撃で怯んだら、踏み込んで、二回攻撃で更にもう一度叩き込む!

※アドリブ大歓迎


リリスフィア・スターライト
ようやく犯人が見つかったけれど、中々手強そうね。

近接戦闘が得意で強気な人格の「リリス」として戦うわ。
光のブレードに応戦できるようトリニティ・エンハンスで
剣を炎の魔力で強化して帝国騎士に戦いを挑むわ。
帝国騎士の動きを見切って反撃に対応し確実に追い詰めるわ。

「ようやく私の番のようね1いざ尋常に勝負してあげるわ」



「あぁ、このタイプの騎士でしたか」
 こ帝国騎士の姿を見て、トルメンタは得心した様子を見せた。
 あの妨害工作が可能な相手は限られて来るとの予想は、鎧装騎兵団に所属する者との立場も関係していたのかもしれない。
 手古摺らされたとはいえ、捉えてしまえばこちらのもの。トルメンタは意図的にゆっくりと靴音を響かせながら帝国騎士へと近付いて行く。
「さぁ、始めましょうか!」
『MaximumEngine――HotHatch』
 トルメンタのベルトから機械音声が流れた。何かが起きると察した察した帝国騎士が妨害しようと一気に迫るも、トルメンタが叫ぶ方が早かった。
「来い、NoChaser!」
 彼女が叫んだ瞬間、フロアを走りながら宇宙バイクが飛び込んできた。帝国騎士が一瞬そちらに気を取られた隙にトルメンタは自分が呼んだ愛車へと手を伸ばす。
「変身! アクセルユニゾン!」
 ――それは瞬間の出来事だった。
 NoChaserの機体は走行しながらほどけるように分解されていき、宇宙バイクの構造を失った部品はトルメンタに到達すると彼女の装甲として再構成されていく。
「遅いですよ!」
 攻撃の挙動に入りかけたフォースセイバーを防御力重視の装甲で弾いてから自慢の素早い動きでフェイントをかけながら正面から横へ、背後へと位置を変えていく。

 そんなトルメンタを追うように帝国騎士がフォースセイバーを振り回す。そのブレードはクリスタル状のオブジェにも映り込み、絶えず煌めきを変えるオブジェと踊る淡いプリズムを眺めながら、フック付きワイヤーで天井まで昇ろうとするボゴが二重の意味で溜息を吐いた。
「綺麗だ。でもあれを喰らうのはちょっとだけ嫌だな」
 ボゴは人型探査機であって白兵戦専門のウォーマシンではない。よくトルメンタは、あの恐るべきサイキックエナジーの使い手を翻弄し続けているものだと感心すると同時に、その頼もしさに対して笑みも浮かんで来る。
 その仲間の為なら捨て石になるのも良い。
「チェスにおけるギャンビットというやつだ」
 これからやる行動は自暴自棄ではなく、次に繋ぐ為の戦術としてポーンとしての役割のつもりだ。上手く果たしてみせるさと、覚悟を決めたボゴは鈍く光を返す車両用ナンバープレート付きのワークキャップを目深に被り直した。
 そして有効なタイミングを図る為に眼下で行われている戦闘を見る。

「こそこそ工作してたから直接戦闘は大したことない……なんておめでたい見くびりをするつもりはないよ」
 帝国騎士と対峙する前、恵の言動には柔和さがあった。だが、敵に対峙した瞬間から殺意の下に潜められ、夜の湖面のようだった黒い瞳も血の紅色へと変わっている。
 血統覚醒。その身に宿すヴァンパイアの因子を目覚めさせて爆発的に力を増大させた恵は、出し惜しんで勝てる相手ではないと判断を下してアームドフォートと熱線銃の両方を構えていた。
 こちらに狙いを付けさせないように距離を取りながら走る動きは、同時にこちらにとっても狙いを付けにくくなる動きとなるが、鎧装騎兵であり、ブラスターガンナーでもある恵にとってそんな事は問題では無かった。トルメンタの牽制攻撃で足を止めた一瞬を見計らい、銃口を向けた瞬間には照準器の中央に帝国騎士の体を捉えている。恵の銃と砲が一斉に眩い閃光を発射する。その激しい攻撃はオブジェ全体が光らせ、その中で帝国騎士の鎧の一部――ローブに隠すように存在していた帝国の紋章が砕けるのが見えた。
 放っておけば、あれを意匠とした旗を立てて領土を主張するのだろう。全て砕けてしまえと恵が更に射撃の閃光を放って行く。
「領主ごっこは吸血ゾンビの十八番、此処に帝国の領土は無い」
 吸血鬼などという耽美趣味のゾンビと等しい事をするつもりならば絶対に許さないと、恵は唾棄すべき存在を見るような瞳を帝国騎士へと向けた。

 広場のベンチで爆発が起きる。恵が躱したインペリアルブレイドが起こしたものだ。
 苛烈な恵の攻撃に重ねるようにリリスフィアが肉薄する。
「ようやく私の番のようね! いざ尋常に勝負してあげるわ」
 リリスフィア――いや、”リリス”が強気に言う。多重人格者であるリリスフィアはシチュエーションによって人格を交代させており、今は剣士としての憧れを具現化したリリスが体を支配している。
 近接戦闘担当のリリスが愛用の魔剣を振り上げた。トリニティ・エンハンスの魔力によって生み出された炎を纏う魔剣は緋色に輝く。その輝きに戦意で対抗するも僅かに惑わされた帝国騎士の揺らぎを見逃さず、リリスフィアは炎の軌跡と共に鎧の砕かれた部分へと斬撃を見舞わせた。
 刹那、燃え上がるような景色の中で帝国騎士の影が動いたのを見たリリスフィアが体を躱すと、ひゅっと冴えた音が通り過ぎた。リリスフィアに回避された飛来するエネルギーはフロアの床に着弾して爆風を巻き起こしていく。

 撒きあがる塵や粉塵に眼下の景色が霞んだのを見たボゴは、天井点検口のハンドルから手を離した。
「よっ、と――!」
 落下していくボゴの手にあるのはダガーだ。それを帝国騎士目掛けて投げ付ける。
「くっ……!?」
 突如、肩に襲った痛みに帝国騎士が驚愕の声を上げた。背後で起きた着地の音にフォースセイバーを振るうが、それは体勢を這うように低くしたボゴの体をぎりぎり掠めるだけに留まった。
 ならばと赤黒い電撃を生み出してボゴを狙うが、その直前に炎が舞う。
「余所見してる余裕があるのかな!」
 リリスフィアが横合いから電撃を纏う腕を剣で叩いたお陰で狙いが逸れた。あらぬ方向へ飛んで行った電撃は壁のモニタを破裂させていく。
 帝国騎士は邪魔だとばかりにリリスフィアへ念動力を宿した斬撃を送るも動きを見切った彼女は既にそこにいない。
「どうも! こいつはお礼ですよ!」
 ボゴはリリスフィアの有り難い支援に感謝しながら、巨体のリーチを活かして、帝国騎士が伸ばしていた念動力の鎖を掴んだ。そして、その鎖を活かして得意なロープワークで帝国騎士の腕を拘束しようと跳ねさせる。
「おっと」
 だが、途中で鎖がふっと消えた。帝国騎士と目が合う。鎖の作成も消失も帝国騎士の念じるままという事なのだろう。隙を見せている形となったボゴだが、焦りはなかった。何故ならば――。
「ぼくがいるのを忘れたか? 良い度胸だ、褒美をやろう」
 冷徹に恵が連続攻撃を叩き込む。ボゴへの対処で気を散らしていた所為で直撃を受けた帝国騎士は弾かれるように床へと転げる。
「この隙、いただきますよ! ――打ち抜く!」
 大きな隙ならば見逃さないと、トルメンタが装甲の出力を解放する。そして、起き上がりかけていた帝国騎士の至近まで接近すると目にも止まらぬ速さで拳を繰り出した。殴られた帝国騎士の体が吹き飛び、衝撃音を響かせながらオブジェに叩き付けられる。ずるりと落ちる姿は無防備だったが、猟兵達は気を抜かずに武器を構え直す。
「まだやる気みたいだね。良いよ、おいで。戦いはまだ終わってないんだから」
 リリスフィアが言う通り、帝国騎士は呻き声をあげながらも立ち上がり、こちらを睨んでいる。
 緩やかな殺意の放射を受けながらも、猟兵達は怯む事無く帝国騎士を睨み返すのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

峰谷・恵
「追い込んでも詰めをしくじれば負ける…」

敵が倒れるまで出し惜しみなしと血統覚醒を使用、ヴァンパイアの力をのせ【先制攻撃】【一斉発射】【鎧無視攻撃】【鎧砕き】【2回攻撃】でのアームドフォートの砲撃と熱線銃の射撃を続けて敵の反撃の機会を潰していく。
追い込まれた敵がダークフォースバリアを使うのを警戒。発動し高速移動で砲撃をかいくぐって接近してきたらダークミストシールドで敵の攻撃を受け流しながら【カウンター】【傷口をえぐる】【鎧無視攻撃】【鎧砕き】で遅すぎた収穫期の突き刺し→アームドフォート【零距離射撃】で反撃。

「距離を詰められたときの反撃くらいは備えている」


ユーイ・コスモナッツ
さあ、構えなさい
剣と盾とで勝負ですっ!

盾で止める、剣で払う
盾で弾く、剣で突く
幼いころから訓練してきたことです、
身体が反応してくれる!

チャンスとみたら
あるいはピンチに陥ったら、
ユーベルコード【流星の運動方程式】を発動

反重力シールドに乗って一直線に突っ込み、
直前でシールドから跳びあがります
反重力シールドはそのままの軌道で突撃、
私は騎士の頭上をとります
剣と盾の同時攻撃!
避けられるものなら避けてみなさいっ



 猟兵達の連携によって帝国騎士は確実に追い込まれている。しかし――。
「追い込んでも詰めをしくじれば負ける……」
 追い込まれたからこそ引き出される力もあり、そして追い込んだとの油断は自らの破滅を招く。
 それを知っている恵は血統覚醒による能力増強を継続させたまま、熱線銃とアームドフォートによる銃撃の構えを解きはしない。
 ユーイは、そんな恵に頷くと反重力シールドを片手に、クレストソードの切先を帝国騎士へと向けた。そして、宇宙騎士の誇りにかけて騎士として正道の戦いを挑む。
「さあ、構えなさい。剣と盾とで勝負ですっ!」
 それに対して帝国騎士も、ヒュンヒュン、と円を描くように回したフォースセイバーの先端をユーイに向けて構えた。
 刹那の空白の後、二人が同時に走り出す。
 剣の打ち合う音が響き、ひらりと身を翻した二人の位置が入れ替わった。踏み込みながら振り下ろされる帝国騎士のブレードを反重力シールドで受け、ユーイが剣を突き出す。鎧の砕けた部分を切り裂きながらマントを貫く。
 盾が剣を弾き、そして切り合う。そうして続く打ち合いはまるで剣舞だ。
 合間合間に恵からの支援射撃と呼ぶには威力の高い射撃も入り、ユーイは幼い頃から訓練してきた成果を存分に発揮させ、体が反応するままに剣を振るっていた。

 呼吸が乱れる前にユーイは恵を信じて後方へ飛ぶ。帝国騎士はユーイを追おうとするが、閃光が乱れ打ちとばかりに飛んで来たのだから、防御の為に足を止めざるを得ない。
 恵の銃撃の圧されて、鎧を削られながら腕を交差させた格好で足を縫い付けられているの見て、ユーイはチャンスだと反重力シールドを重力バイクへと変形させた。
「ブースト・オン!」
 駆動音を響かせて重力バイクに乗ったユーイが真っ直ぐに疾駆する。それに帝国騎士が気付くが、もう遅い。ユーイはステップを蹴って高々と空中へと飛び上がると、残された空中バイクはそのまま帝国騎士目掛けて突っ込み、ユーイ自体は頭上から帝国騎士へと襲い掛かる。
「剣と盾の同時攻撃! 避けられるものなら避けてみなさいっ!」
「ぐ、あっ――!?」
 斬られ、重力バイクに撥ね飛ばされた帝国騎士の体がフロアの床を転がり、ベンチにぶつかって止まった。しかし、すぐさま膝を立てて起き上がると、その体からオーラを立ち上らせながら腕に電撃を纏わせ始める。
「いつまでも、しぶといやつだ」
 それを妨害しようと恵が撃つも、高速移動を可能とした帝国騎士は一瞬で広場と通路を分ける仕切りの陰に飛び込むとユーイへ雷撃を撃ち放っていた。ユーイが反重力シールドで防御の構えを取ったのを一瞬の隙として、帝国騎士は射撃を回避するようにジグザグに走りながら恵の元まで走って来る。
「チッ!」
 速い、と舌打ちした恵は遅すぎた収穫期という名の剣型兵装に手を伸ばしながら、手袋に着いた青い菱形の発生機から黒い霧状のエネルギーを散布する。眼前に迫るのはフォースセイバーの赤い光――。
 だが、そのブレードは恵に届く寸前で止まった。
 恵が掲げていたそれはダークミストシールド。霧状ではあるが確かなシールドは、当然接近される事もあるだろうとの恵の的確な備えだった。
 そのシールドでブレードを受け流すと、遅すぎた収穫期を紋章のあった場所に突き刺す。何かの生温かい液体が毀れ掛かるのも意に介さず、恵はその体にひたりとアームドフォートの銃口を据えるとトリガーを引く。零距離射撃の威力で帝国騎士の体が弾けるように跳ねる。当然、鎧を着ていようとも関係無い。
 遅すぎた収穫期から伝わってくる衝撃の重さに軽く眉根を顰めながらも、恵はそれを引き抜き、砕ける鎧の破片ごと帝国騎士の体を放り出す。
「距離を詰められたときの反撃くらいは備えている」
 それも考えずに無防備に飛び込んで来たのかと、冷たい口調で恵が敵の甘さを詰った。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

トルメンタ・アンゲルス
まだ立ち上がりますか。
とはいえ、窮鼠猫噛み。ここから何をするかわかりませんからね。
……こちらも、一気に潰しましょうか。

第一リミッター、解除。
真の姿の力の一部を解放。
装甲から薄緑の光が漏れだす。

フィニッシュブロー、決めてやりますよ。
『OverDrive――Thunderbolt』(ベルトの音声)
右足の装甲を展開、エネルギーを重点収束。
その間、味方が敵の気をひいたりしてくれれば僥倖。
そうじゃなきゃ、左足や両手、背中のブースターで回避に専念。
限界までチャージし、バチバチと激しく放電したら潮時。

最大速度まで加速し、対象に突撃。
奴に風穴空けて終わらせてやりますよ!
追撃のォ!ブリッツランツェェェェ!!



 帝国騎士はふらつきながらも高速移動の強みを活かして距離を取る。だが、その場で膝を突いた。
「まだ立ち上がりますか」
 猟兵達に撃たれ、切り裂かれた鎧やローブはもはや原形を留めていない。それでもなお、立ち上がった姿にトルメンタは呟きに感嘆の色を乗せた。
 とは言え――。
(「窮鼠猫噛み。ここから何をするかわかりませんからね」)
 蝋燭は燃え尽きる寸前こそ燃え上がる。肩で息をする帝国騎士の仮面が放つ光も熾火のようならば、休む暇を与えない事こそ正解なのだろう。
「……こちらも、一気に潰しましょうか」
 トルメンタがすっと意識を集中させる。

 ――第一リミッター、解除。

 彼女のみが知るそれは、即座に誰の目にも変化として映る。装甲から溢れ始める薄緑の光が、彼女が真の姿を一部解放した証だった。
 右足の装甲を展開し、エネルギーを重点収束させながら再びトルメンタが奔った。危険を察知した帝国騎士も赤黒い電流の軌跡を残しながら逃げて接近を避けようとするが、速さでの勝負ならば軍配はトルメンタに上がる。
 苦し紛れに放たれる電撃を左足と左手のブースターを瞬間的に点火する事で躱すと、背中のブースターを激しく唸らせて加速していく。
『OverDrive――Thunderbolt』
 ベルトから音声が響く。それは帝国騎士にとって宣告と近しかっただろう。縦横に奔るトルメンタの右足がとうとう放電を起こし、プラズマジェットによる加速は最大に達した。トルメンタが猛々しく叫ぶ。
「追撃のォ! ブリッツランツェェェェ!!」
 物理法則を無視しての飛び蹴りはスパークする流星のようだった。腹を蹴られた帝国騎士がフロアの壁面まで吹き飛び、衝突の痕跡を作ってから床へと落ちた。倒れ伏した体はぴくりとも動かない。

「っ、はぁ……はぁ……」
 トルメンタが右足を庇うように膝を突く。限界までエネルギーをチャージした反動なのかもしれない。だが、終わった今なら多少安堵しても良いだろう。
「さて――船長に全部終わったとの連絡をしないとですねぇ」
 あの船長は猟兵達の報告をブリッジで待ち詫びている筈だ。そんな相手に吉報を齎せる事に、ははっ、とトルメンタが笑みを溢した。

 その後――。
 船内に緊急事態終了のアナウンスが船内に流れた。船を挙げて猟兵達を歓待するとの船長の声で船内の空気が一気に賑やかになっていくのが感じられた。
 猟兵達もすぐに気付く事になるだろう。通路で、トラムで、様々な場所で出会う乗組員達が感謝を告げながらパーティーの会場に招いて来る事に。
 だが、まだアナウンスは終わってはいない。
 ゆっくりと語られるのは乗組員達の総意とも言える厳かな宣誓だ。

 ――誰よりも勇敢な猟兵諸君に感謝し、輝く星々に誓って給糧船スピカは永遠に貴方達の友であろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年01月17日


挿絵イラスト