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月は満ち満ち欠けてゆく

#ダークセイヴァー #同族殺し

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#ダークセイヴァー
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#同族殺し


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 我は愛ではじまり、愛で終わった。
 領民はただの家畜に過ぎなかった。労働を与え、暇つぶしに踏みつけて、気まぐれに愛でるだけの存在。
 それが統治だと思っていた。白く輝く翼を持つ娘と出会うまでは。
「ゆるさない、ゆるさない……取り戻す……」
 ヴァンパイアは木々の向こうにそびえ立つ領主の館を――かつての己の城を見据えて、呪詛を吐く。
「取り戻す……?」
 己の言葉に赤い目を見開いて、ヴァンパイアは唖然とした。そんなはずはないといくら頭をかきむしっても、脳裏に浮かぶのは、美しい翼が千切れ、真っ白な壁と床が赤く染まっていく光景だけ。
「否、否、否……死んでなどいない。取り戻しさえすれば、死など覆る……!」
 崩壊した論理とばらばらに砕け散った言動は、彼が既に狂ってしまっていることを証明していた。それでもかつての領主は、己が愛したただ一人を奪還すべく暗い獣道を駆ける。


「同族殺し、と呼ばれるオブリビオンの存在は知っているかい?」
 マカ・ブランシェ(真白き地を往け・f02899)は呼びかけに応じた猟兵たちへ問いかける。
「そう、その名の通り、同族であるはずのオブリビオンを殺すオブリビオンのことさ。今回は、その同族殺しが領主の館を襲うのに乗じて、オブリビオンを討伐して欲しいのだ」
 もちろん、同族殺しも討伐の対象だよ、とマカは付け加えた。
「領主の館は、オラトリオの村に隣接する林を抜けた先にある。同族殺しが警備のオブリビオンを蹴散らしている最中に君たちを転送するから、上手いこと混乱を利用して警備を突破してくれたまえ。彼は脇目も振らずに領主を狙って突っ走るだろうから、直接君たちに害を加えることはないだろう」
 警備のオブリビオンは3体と決して多くはないが、それぞれ力が強く、猟兵だけで倒そうとすると骨が折れそうだ。同族殺しの力を利用して、領主との戦いに備えて体力を温存するのが最良だろう。
「上手く館に突入できたら、まずは現在の領主であるオブリビオンを倒してほしい。対象は鳥を使役する女性のオブリビオンだ。彼女は同族殺しを何らかの理由で放逐し、この館と村を乗っ取った。まあ、オブリビオンにはよくある話さ」
 マカは少し呆れたように肩をすくめると、猟兵たちの方へと向き直る。
「……もしも館と村を取り戻したとしても、同族殺しはもう元には戻らない。それに、どっちに支配されていようと、それがオブリビオンである限り、村人たちにとって圧政であることには間違いないからね」
 同情も肩入れもせず、利用するに留めるのだよ。マカはそう猟兵たちに念を押すと、転送の準備に取り掛かるのだった。


Mai
 同族殺しと呼ばれるオブリビオンを利用して領主の館へ突入し、オブリビオンらを討伐してください。


●第一章
 同族殺しを利用して館の警備を突破します。
 
●第二章
 現在の領主であるオブリビオンを討伐してください。同族殺しは積極的に攻撃を仕掛けますが、彼ひとりでは倒せないほどに領主は強力です。

●第三章
 同族殺しを討伐してください。これまでの戦闘で消耗しているため、倒すことは難しくはないでしょう。

 章が変わるごとに短い状況説明のリプレイを挟みますので、それが出てからのプレイングをお勧めいたします。
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第1章 集団戦 『首無しの天馬』

POW   :    突進
【高速移動】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【突進】で攻撃する。
SPD   :    幽鬼の馬車
自身の身長の2倍の【馬車】を召喚する。それは自身の動きをトレースし、自身の装備武器の巨大版で戦う。
WIZ   :    飛翔
空中をレベル回まで蹴ってジャンプできる。

イラスト:にこなす

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 鬱蒼と茂る木々に守られるように建つ領主の館は、あの日と少しも変わらず静かに佇んでいた。中央に聳え立つ塔は、領主のみが入ることを許されている。
 多くの村人たちは、領主に呼びつけられて登る螺旋状の階段を、まるで天に召されるようだと語っていた。生きて出ることは叶わないのだろうと、諦めと祈りの込められた言葉だった。そうと気付いたのは、同じ言葉を違う色を籠めて紡いだ女がいたからだ。
「今もそこにいるのだろう? 我が愛しのクロ―ディア……」
 黒衣を纏ったヴァンパイアは、赤い二振りの剣を携えて領主の館の門をくぐった。侵入者の気配を察したのだろう、馬の蹄と翼が風を切る音が聞こえてくる。首無しの天馬の持つ翼は、混濁する彼の感情を強く煽った。
「どこまでも我を愚弄する気か……!」
 迫りくる3体の天馬へ、ヴァンパイアは我武者羅に剣を振り回して突撃する。
サトー・コゴロー
▼アドリブ・連携大歓迎(SPD判定)
▼心情
同族殺しカ、短い間ダケドお手伝いしてアゲヨウ。
黒子役に徹するのは得意分野サ!
▼方針
同族殺しの能力等情報収集。
自分からは積極的に仕掛けず同族殺しの援護をする。
戦闘はできるだけ長引かせて同族殺しを疲労させつつ自分の消耗は最小限にする。
▼行動
(目立たない)ように同族殺しの動きを観察して(情報収集)をする。
敵の攻撃が自分に来たらuc《オペラツィオン・マカブル》で迎撃する。
同族殺しをからくり人形で援護しつつできるだけ(時間稼ぎ)をして同族殺しを疲労させる。
「オイオイ、黒子にお手付きは禁止サレテルゼ?」


紬雁・紅葉
堂々成らず、それもまた戦の定め…
この騒乱、御鎮めします

羅刹紋を顕わに
闇の魔力を防御力に
空の魔力を攻撃力と状態異常力に
付与
姿を闇に隠す

鳳翔を主に適宜九曜(剣)を使用
忍び足でするする同族殺しの死角に位置取り

射程に入り次第破魔空属性衝撃波UCを以て範囲を薙ぎ払い気絶を誘う
敵の攻撃は躱せるかを見切り
躱せるなら残像などで躱し
そうでなければ破魔衝撃波オーラ防御武器受けUC等で受ける
いずれもカウンター破魔空属性衝撃波UCを以て敵を吹き飛ばす

窮地の仲間は積極的にかばい援護射撃

凶演、終わりの鐘が鳴る
さあ、そこを通してもらうわ

この舞台に前座は不要
去り罷りませ…

※アドリブ、緊急連携、とっさの絡み、大歓迎です※


ノエル・フィッシャー
心無き首無しに、心狂いし同族殺し。少し思う所もあるけど、今はそんな場合じゃないね。
幸いにも警備の注意は同族殺しに向いている。なればその後背を貫くのみ。戦事に卑怯とは言うまいね?

UC【王子様、時空を駆ける】を発動。【魁一番槍】を携えし過去のボクと、【無銘の剣】を握る未来のボクを召喚。本体である現在のボクを狙われれば解除されるだろうけど、幸いその心配は少なさそうだ。過去のボクが天馬の翼を突いて地面に叩き落とし、未来のボクが足を切り裂き完全に動きを封じ、双方のボクがトドメの刺突を繰り出して撃破するよ。

アドリブ・共闘歓迎だよ。


ハルア・ガーラント
同族殺しさんは、利用するだけ、利用するだけ…。

【WIZ行動】
首がない天馬…ヒィ、怖い…! 怖いけど仕事はしないと!

わたし、オラトリオですし翼を使って飛び回るのは得意です。ほら、翼結構大きいんですよ!(翼の一部を掴んでユラユラさせる)

天馬に空中で蹴られないように距離を取りつつ対峙して、この翼に巻き付いてる咎人の枷…鎖を念動力で動かしマヒ攻撃をのせて攻撃します。そんなにダメージはないでしょうけど、攻撃が当たらなかったり無効だった時も囮として天馬の周辺を飛び回りながら降下します。
同族殺しさんの間合いに入るあたりでUC「ブレスドソング」を発動・強化し討伐してもらいます。

(共闘・アドリブ大歓迎です!)


館野・敬輔
【SPD】
アドリブ連携可

圧政を強いるヴァンパイアに対しては同情しないし、肩入れもしない
ただ、どちらも殲滅するだけの話だ
…今だけは同族殺しを目いっぱい利用させてもらう

【魂魄解放】発動
同族殺しを囮にしつつ「目立たない、ダッシュ」で背後に回り込み
「2回攻撃、怪力、なぎ払い」で3体纏めて薙いでしまおう
同族殺しを巻き込まない位置取りができたなら「衝撃波」も併用して「吹き飛ばし」てしまおうか

もし馬車を召喚されたら、馬車もまとめて攻撃

ああ、同族殺しの邪魔はしないよ
もっとも、この個体には思うところがあるが
明らかに「別」だとわかっているから問題ない


コッコ・キキルカ
勝ち目のない相手に一人で挑む、これって普通じゃないです
クローディア様は、ヴァンパイアにとってどんな存在だったの?
戦いが終わったらわかるかもしれませんね

ヴァンパイアに気付かれないように身を隠しながら尾行します
そして、集中攻撃を受けないように
首無しの天馬をびったんびったんで投げ飛ばして援護します
作戦中は可能な限りヴァンパイアに姿を見られないように気を付けます



 壊れた風車のように二振りの剣を払い、首無しの天馬へと襲い掛かる同族殺し。その背中を、館野・敬輔(人間の黒騎士・f14505)は苦虫を噛み潰したように顔を歪ませて凝視していた。
(十字皇シュラウディス……の別の姿か)
 今、目の前で狂えるヴァンパイアは果たして自らの名を覚えているだろうか――。否、と敬輔は愛用の黒い剣を構えながら首を振った。
「圧政を強いるヴァンパイアに対しては同情しないし、肩入れもしない。ただ、どちらも殲滅するだけの話だ」
「堂々成らず、それもまた戦の定め…この騒乱、御鎮めします」
 自らに言い聞かせるように呟いた敬輔の隣へ並び立ち、紬雁・紅葉(剣樹の貴女・f03588)は霊木を組み込んだ倭弓へと己の空を司る魔力を注ぐ。解放された魔力に反応して体に浮かび上がった羅刹の紋章は、全身を闇の魔力で覆い、同族殺しの死角へと忍ばんとする紅葉の姿を闇の中へ隠した。
「同族殺しカ、短い間ダケドお手伝いしてアゲヨウ。黒子役に徹するのは得意分野サ!」
 頭まですっぽりと黒衣で覆ったサトー・コゴロー(強化人間の人形遣い・f23719)は、狼のからくり人形を操り同族殺しの動きをなぞる。まったくの無軌道で法則性の感じられないその動きに、サトーは小さく肩をすくめた。最終的に同族殺しを倒す際に利用できそうな情報を得るには、もう少し観察する必要がありそうだ。
「勝ち目のない相手に一人で挑む、これって普通じゃないです」 
 そんなサトーの背中からひょいと顔を出して、コッコ・キキルカ(フェアリーの力持ち・f22224)は眉根を寄せてヴァンパイアの背中を見つめる。先ほどから聞こえてくる同族殺しの独り言には、“クローディア”という名が頻出している。コッコはその人がヴァンパイアにとってどんな存在だったのだろうかと考える。自分にとっての気が狂ってなお姿を追い続けるほどに焦がれるような相手を思い浮かべ、コッコの胸がちくりと痛んだ。
「心無き首無しに、心狂いし同族殺し。少し思う所もあるけど、今はそんな場合じゃないね」
 ノエル・フィッシャー(アリスの王子様・f19578)は細くしなやかな槍を携えて、俯くコッコににこりと微笑みかける。その槍がかつて振るわれていた戦場を――愛馬の艶やかな鬣と、背負う民の勝鬨の記憶をそっと心にしまい込んで、ノエルは目の前の戦場へと向き直った。
「……そうですね。この戦いが終われば、何かわかるかもしれませんし」
 コッコはノエルの言葉にこくりと頷くと、同族殺しを包囲せんとする天馬に向かって飛び立つ。
「同族殺しさんは、利用するだけ、利用するだけ……」
 各々位置へ着く猟兵たちの背を見つめながら、ハルア・ガーラント(オラトリオのバロックメイカー・f23517)はぶつぶつと繰り返していた。あの怖そうなヴァンパイアと戦わずに済むことにひとまずほっと胸を撫で下ろしていたのも束の間、館の方から飛び出してきた首無しの天馬にハルアは再び震えあがっていた。
「ナラ、一緒に黒子役やりマスカ?」
 ぱくぱくと狼のからくり人形越しにハルアへ提案するサトー。それもいいかも……と思いかけて、ハルアはぶんぶんと頭を振る。
「わたし、オラトリオですし翼を使って飛び回るのが得意なんです。ほら、翼結構大きいんですよ!」
「確かニ」
「だから、わたしにしか出来ないこと……ちゃんとやれるように頑張ります!」
 真っ白な翼を広げて戦場へと飛んでいくハルアを見届けて、うんうんと頷くサトーもまた自らの役割を果たそうと戦場へと歩み出した。

 敬輔は呪われた黒剣に封じ込めた異端の魂を解放し、自らの身に纏う。真の姿を解放してようやく扱える魔力と呪いの強さに溺れそうになる魂を、ヴァンパイアへの復讐心で繋ぎ留めながら、敬輔は極力冷静に戦場の様子を見極める。息を殺して同族殺しの背に回るように影をなぞり走り、天馬のみを衝撃波の射程に捉えられる位置へと滑り込むと、黒剣を構えた。
「ああ、分かってる。同族殺しの邪魔はしないよ」
 衣擦れのように小さく囁かれる異端の誘いは、闇に呑まれまいと抗う復讐心すらも取り込もうと敬輔の耳朶を甘く滑り落ちていく。だが、熱しやすさを自覚している彼にとって、それはそよ風が頬を撫でる程度のものだった。3体の天馬すべてを視野内に収めると、敬輔は黒剣を大きくなぎ払い、その衝撃波で天馬を同族殺しから引き離す。そのままの勢いで地を蹴りヴァンパイアの死角へと飛び退いて、自らの存在を再び夜闇の中へと隠した。理性を失っているヴァンパイアは、たった今何かが起こったことにすら気付かず、再び目の前の天馬へ飛びかかると剣を振り上げる。
「いやはや、怒りのパワーとは恐ろしいモノデス」
 同族殺しの執心っぷりに、からくり人形で彼を目立たないように死角から援護しようとしていたサトーは一抹の不安を覚えた。疲れを知らないかのように我武者羅に戦い続ける同族殺しは、体力が底なしなのかと思うほどに攻撃の手を緩めない。いざ彼を討伐するとなった時、手持ちの情報だけで対処できるか……。
 ぞくり、天馬へ攻撃をしていたからくり人形の先から殺意を感じ、サトーは咄嗟にからくり人形を引き寄せると全身から力を抜く。天馬の突進攻撃を、からくり人形を通してそのまま跳ね返したサトーは、後方へと飛び退り距離を取りながら戦況を確認した。
「オイオイ、黒子にお手付きは禁止サレテルゼ?」
 敵が複数いる戦場では、気を抜けば仲間と分断されてしまう危険がある。目の前の天馬から敵と認識されたことを受けて、サトーは軽口をこぼすと仲間たちの元へと駆けた。

「戦事に卑怯とは言うまいね?」
 天馬の注意が同族殺しへと向かっているならばその後背を貫くのみ、とノエルはヴァンパイアの死角にて未来を信じる奇跡の力で過去の自分と未来の自分を召喚した。本体である現在のノエルが攻撃を受ければ消えてしまうこの奇跡は、本来ならば複数の敵を相手にするような戦場には向かない。だが、同族殺しが天馬のうち1体を、他の仲間がもう1体の天馬を確実に引き付けている今ならば使いこなせるだろうとノエルは判断したのだ。現在と同じ馬上槍を携えた過去のノエルは、手近な天馬の背に飛び乗るとその翼を槍で突いて地面へと叩き落とす。飛翔して逃れようとする天馬の足を、地上で待ち構えていた未来のノエルの無銘の剣が捉えた。
 嘶きと共に地に倒れる仲間を守ろうとしてか、駆けつけたもう1体の天馬の前に、忍び足で同族殺しの死角へと回っていた紅葉が立ちはだかる。
「この舞台に前座は不要。去り罷りませ……」
 紅葉は破魔の力を注ぎ込んだ弓を空を司る魔力を籠めた倭弓に番え、標的へと狙いを定め放った。纏う強力な魔力によって周囲の空気を波立たせながら天馬へと着弾した弓は、籠められた破魔の力で天馬を無力化する。同時に巻き起こった衝撃波は他2体の天馬とヴァンパイアの動きを一時的に阻害した。
(ま、巻き込まれるところでした……)
 天馬に蹴られないようにと高度を保って飛んでいたハルアは、紅葉の見た目の淑やかさからは予想もつかない、苛烈な攻撃と共に過ぎ去った衝撃波にぶるりと身震いをする。怖れを抱いたままでは視野は狭まり判断を誤りかねないと痛感した彼女は、ぺしぺしと自らの頬を叩くと同族殺しの頭上へ飛んでいき、勇気を振り絞って彼と周囲の猟兵たちへ向けて歌を歌った。天使の言葉で紡がれる祝福の言葉が、ハルアの澄んだ声に乗って戦場へ沁みていく。
「クローディア……」
 月の光を受けて白く輝くハルアの翼を目にして、同族殺しの手が止まった。心ある者ならば言葉は通じなくても共感を呼ぶことが出来るのがこの歌の力だ。砕け散っていたとしても繋がる部分はあるのかもしれない、とハルアは思う。実際に今、彼が何に心を留めているのかは分からないが。
 再び歌声を注ごうとハルアが視線をヴァンパイアの方へ向けると、彼と対峙していた天馬が突進の構えを取っているのが見えた。
「……! だめです!」
 同族殺しが集中攻撃を受けないようにと、死角に身を隠しながら彼をカバーしていたコッコは、ハルアとほぼ同時に天馬の攻撃姿勢に気付く。少女は天馬の尻尾に全身を使って抱き着くと、ありったけの力で天馬の体を後方へと投げ飛ばした。宙を舞った天馬は地面に激突する直前に体を反転し、大きなダメージは回避したらしかった。
「なるべく戦闘は長引かせテ、同族殺しを疲労させるのが得策かと思いマスガ……そろそろ数を減らしテモいい頃合いデショウカ?」
「ああ、そうだな。ここで僕らが疲弊しては元も子もない」
 サトーの提案に頷いて、敬輔はノエルによって足を切られた天魔へと黒剣を向けた。傷ついた足の天馬は、猟兵たちから向けられる敵意を感じ取ったのか、なんとか立ち上がり戦おうともがいている。破魔の矢を受けた天馬が起きだして背後を取られないように、からくり人形を構えたサトーとコッコが仲間の背を守るように立つ。
「凶演、終わりの鐘が鳴る……さあ、そこを通してもらうわ」
 矢の照準を天馬へと併せながら紅葉は破魔の魔力を解放し――仲間の猟兵たちと共に一斉に天馬を攻撃した。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

早乙女・翼
ファルシェ(f21045)と。

愛に狂うってこの事なのかねぇ?
利用するってのはちょっと可哀想だけど、情けは無用なんだろうな。

ん、飛ぶのは俺の得意とする所だし。
背中の翼を広げて先に向かい、こっちに気付いた天馬を待ち構える。
頭が無いけどどうやって感知してるのかなこいつら。
そんな事思いつつサーベルを掲げて結界展開。
紅が壁になって立ち塞がるように。ほらほら、そっちに行こうな。
あそこで剣振り回してる元の主人に斬られて貰ってこい。
それでもこっちに来る分は魔剣で全体重乗せて叩き斬り落とす。

ん、ファルシェってばなかなか辛辣さね。
長く生きすぎてアイツ等もボケてるんだろ。
自分の都合の良い事しか覚えてないのは、さ。


ファルシェ・ユヴェール
翼さん(f15830)と

同族殺しが此方を気に留めぬのは好都合ですね

ええ、では私達は少し後をついて行きましょうか
怒りに任せた攻撃に巻き込まれたりせぬよう、近付き過ぎない辺りで

さて
護衛は3体
飛翔するとなると私には少々面倒ですが、翼さんならばお得意でしょう?

懐より淡い桃色のコーラルを一粒、触媒としてUCで呼び出すはペガサス
飛翔力と天雷を操る天馬
警備の首無し天馬が宙を駆けたなら翼さんを補佐するよう、
そして共に攻撃しつつ同族殺しの側に追い立てるよう命じます
自身は攻撃を向けられれば防ぎ、反撃の構え


…… 同族殺し
己も領主として、似たような事を繰り返してきた身で
其れを省みる事もなく怒り狂うばかり
――滑稽ですね



 他の猟兵たちが天馬を1体骸の海へと還したのを確認して、ファルシェ・ユヴェール(宝石商・f21045)は造花と模倣宝石をふんだんにあしらった華美な帽子を目深に被り直す。ちらりと同族殺しの方を見やれば、最初に斬りかかった天馬を倒すまであと一息といったところで、疲れからか剣の切れが悪いように見えた。飛翔して逃げる敵をただ一人地上から狙っていては無理もないだろう、とファルシェは思う。
「さて、護衛はあと2体。飛翔するとなると私には少々面倒ですが、翼さんならばお得意でしょう?」
「ん、飛ぶのは俺の得意とする所だし」
 懐にそっと手を忍ばせながら言うファルシェに、早乙女・翼(彼岸の柘榴・f15830)は口元を引き締めて頷くと、血の色に似た赤い翼を広げて地を蹴った。事前に打ち合わせていた通り、天馬を同族殺しの方へと追い立てる翼の補佐をするようにと、ファルシェは懐から取り出した淡い桃色のコーラルを天高く放ると、それを触媒にペガサスを召喚する。雷の魔力を帯びたその神話生物は、首のない天馬を軽々と飛び越えその背後に付いた。
(頭が無いけど、どうやって感知してるのかなこいつら……)
 ペガサスに追い立てられ真っ直ぐに向かってくる天馬にふと疑問を抱きながら、翼はサーベルを掲げて結界を展開する。十字架が細くしなやかに変形したような鍔を持つ細身のサーベルが、翼の魔力を受けて紅に染まったかと思うと――次の瞬間、ほろりと花束が崩れるように戦場へ散り、瞬く間に紅の壁を作った。無数の深紅の鳥の羽根や曼珠沙華の花びらで構築されたその壁は、天馬の進路を遮り同族殺しの目の前へ誘導せんと乱立する。
「ほらほら、そっち行こうな。あそこで剣振り回してる元の主人に斬られて貰ってこい」
 天馬が進路を猟兵たちの方へと変えるたびに、翼は紅の壁を立ち上げてそれを妨害し、ファルシェのペガサスが天雷と強靭な蹄の一撃で同族殺しの方へと弾き飛ばした。仕上げにと翼は紅の壁で、同族殺しと天馬2体をぐるりと包み込む。
「同族殺しが此方を気に留めぬのは好都合でしたね」
 柔らかな壁の向こうから聞こえる戦いの音に耳を傾けながら、ファルシェは翼に労いの言葉をかけた。血色の翼を畳んで静かに着地した翼は、黒衣の乱れを整えながら笑みでそれに応える。
「愛に狂うってこの事なのかねぇ?」
 利用するってのはちょっと可哀想だけど、と同族殺しの様子を同じく音で伺いながら翼は肩をすくめた。
「……己も領主として、似たような事を繰り返してきた身で。其れを省みる事もなく怒り狂うばかり――滑稽ですね」
「ん、ファルシェってばなかなか辛辣さね」
 普段の、少し底の知れぬ笑顔を引っ込めて冷たく呟くファルシェの肩にポンと手を置いて、翼がからりと笑う。
「長く生きすぎてアイツ等もボケてるんだろ。自分の都合の良い事しか覚えてないのは、さ」
「……そう、かもしれませんね」
 肩に置かれた戦友の温もりは、ファルシェの心に差し込んだ氷のような感情を緩やかに溶かしていった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ミリア・ペイン
もういっそオブリビオン同士で戦争でもやって、勝手に自滅して頂けないかしらね

【WIZ】《冥き深淵の守護者》
彼を盾として利用しつつ戦っていきましょ

私は攻撃を受けない様守護者の影に隠れて自衛を【オーラ防御】

あの馬、飛びまわってて鬱陶しいわね
全員の翼を刻んで、地面に引き摺り下ろしてやるわ【部位破壊】
刃に【呪詛】をたっぷり込めておくから
掠っても痛みで飛び辛くはなる筈よ

後は地面に落ちるか、弱った個体を優先して叩きましょ

同族殺しは基本放置で
苦戦してそうなら援護するくらいに留めるわ

さっきから名前を叫んでるみたいだけど
誰かの為に戦ってるの?
まあオブリビオンの情なんてどうせ薄っぺらいものでしょ
…どうでもいいわ


アルバ・ファルチェ
(絡みやアドリブ歓迎)

なんかこう…色々と複雑だけれど、まずは手を貸そうか。

UCを使用、空を翔るために必要な翼と空を翔る足を狙って【空中戦】を仕掛けるよ。
地に落ちれば同族殺しの彼が後は切って捨ててくれるかなって…楽観的かもだけど試してみるね。
切り落としたりは出来なくても【マヒ攻撃】が効くだけでも良いかなと思うんだけれど。

こっちに攻撃が向かってくるのは【見切り】と【第六感】で出来るだけ避けたり、【武器受け】【盾受け】【オーラ防御】【各種耐性】で耐えたり出来るといいな。
あ、見切りが出来そうなら【カウンター】を仕掛けてみるのも良いかもね。

けどあくまでも倒すよりは地面に叩き落とすことをメインに、かな。


リーヴァルディ・カーライル
…ん。同族殺しにどんな理由があるにせよ、
今までの罪が消えた訳じゃないもの。
私のすべき事は、何も変わりはしないわ。

同族殺しの行動を【吸血鬼狩りの業】で先読みして警戒しておき、
“写し身の呪詛”の呪力を溜めて“血の翼”を展開
第六感を惑わす存在感のある残像のオーラで防御しつつ空中戦を行う

…あの吸血鬼を討ち果たすのは最後の最後。
まずは邪魔者を先に排除しないと…。

今までの戦闘知識から敵の殺気を暗視して行動を見切り、
不可視のUCを突撃の進路に目立たないよう張り巡らせ、
敵の気合いや怪力を利用するカウンターを試みた後、
魔糸で捕縛して生命力を吸収し傷口を抉る2回攻撃を行う

…無駄。勢いだけで私を捉える事はできない。



「もういっそオブリビオン同士で戦争でもやって、勝手に自滅して頂けないかしらね」
 猟兵の作りだした紅色のドームが破れ、中から転がり出てきた天馬と同族殺しに、ミリア・ペイン(死者の足音・f22149)は無表情のまま心底呆れたと言わんばかりにため息をこぼす。
「なんかこう……色々と複雑だけれど、まずは手を貸そうか」
 アルバ・ファルチェ(紫蒼の盾・f03401)は再び頭上高く飛翔した天馬を空中戦にて引きずり降ろそうと、自らの姿を翼を持つ狼へと変化させた。威嚇するように一声吼えて天馬へと飛びかかるアルバに合わせるように、ミリアは鎌を携えた死神と不気味な大きな兎のぬいぐるみを召喚すると、身を守るように兎のぬいぐるみの影に隠れる。
「あの馬、飛びまわってて鬱陶しいわね。翼を刻んで、地面に引き摺り下ろしてやるわ」
 ミリアは死神の鎌に呪詛をたっぷりと流し込む。たとえこの鎌が翼をズタズタに出来なかったとしても、羽根の先にでも掠りさえすれば痛みで動きを封じることが出来るように、念入りに。
 天馬の翼に取り付いて、噛みちぎらんと牙を立てるアルバは、脚と翼に纏った風の魔力を利用して、さらに上昇しようとする天馬を上から押さえ込む。大きく羽ばたく翼に幾度となく振り払われそうになりながら、食い込ませた牙でその身にしがみついてなんとかやり過ごす。そんな彼を助けるように、ミリアの死神は鎌で天馬のもう片方の翼を捉えた。
 猟兵たちによって翼をもがれる天馬の悲鳴を聞き流して、同族殺しによって足を切られた天馬の前に立つ、リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)。
「まずは邪魔者を先に排除しないと……」
 リーヴァルディは呪われし力を解放し、自らの存在を吸血鬼の領分へと近づける。その背中に宿った魔力の翼は彼女を守るように大きく広がり、戦場に血の色を咲かせた。
「……ん。どんな理由があるにせよ、今までの罪が消えた訳じゃないもの。私のすべき事は、何も変わりはしないわ」
 ふわりと魔力の翼で飛翔したリーヴァルディは、地上の同族殺しを見下ろし冷たく呟く。吸血鬼を狩ることは彼女にとって使命であり、生そのものとも言えた。見逃すことなど如何なる理由があろうともありえない。
 だが、物事には順序というものがある。
(最終的に仕留められれば……それでいい)
 リーヴァルディは代々伝わる吸血鬼狩りの秘奥を用いて、同族殺しの行動を予測する。視線の動きや足さばきなどの末端の動きには瞬間の思考が表れてしまう。それを読まれないようにするためには相当の訓練が必要となるが、対象のヴァンパイアにそれらを気にする余裕や思考力はなさそうだった。現に今、目の前に猟兵がいるにもかかわらず、ヴァンパイアは天馬へ一心不乱に剣を突き立てている――その目には進路の邪魔をした天馬しか写っていないようだった。
 ならば好都合、とリーヴァルディは見えない糸を自らの周辺に無数に張り巡らせる。吸血鬼の魔力で錬成したその魔糸は捕らえたものの生命力を吸収する力を帯びていた。
 どさり、と翼をもがれた天馬が地上へと落下する。体に触れたリーヴァルディの血糸を振り払うように、動きを封じられた半身を引きずるようにして、魔力の集結する地点へと照準を定めて突進する姿勢を取る。
「……無駄。勢いだけで私を捉える事はできない」
 呪術によって生み出した自らの分身を身に纏い、リーヴァルディは魔力の翼を広げた。姿と気配の両方で存在感を攪乱され、照準を狂わされた天馬に生じた一瞬の隙を見逃さず、リーヴァルディは張り巡らせていた魔糸で天馬の体を絡めとり生命力を吸い尽す。
「あっちの天馬も倒せたみたいだね」
 変身を解いたアルバは、翼と十字の意匠を施した白銀の盾を構えてミリアを守りながら、同族殺しの様子を伺っていた。うわ言のようにひとつの名を繰り返しながら剣を振るっていたヴァンパイアは、絶命し灰となった天馬の屍を踏み越えて、再び領主館の方へと走り出す。
「あれだけ剣を振ってもまだ走る体力があるなんて、火事場の馬鹿力ってやつなのかな」
 同族殺しを急いで追う猟兵たちに続いて走りながら、アルバは思わず苦笑いをした。それは、自分も心を傾ける誰かのためならば、彼と同じようになってしまうかもしれない……そんな小さな痛みから出た綻びだった。
(……さっきから名前を叫んでるみたいだけど、誰かの為に戦ってるの?)
 ミリアは熊のぬいぐるみをぎゅっと胸に抱いて、仲間たちと共に同族殺しの背を追いかける。死神と兎のぬいぐるみを召喚した後は、なんだか感傷的になっていけない――ミリアは、先ほどから薄っすらと感じていた、死んだ兄と姉の気配を頭を振って払った。
(オブリビオンの情なんてどうせ薄っぺらいものでしょ……どうでもいいわ)

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​




第2章 ボス戦 『シエラ・ロスト』

POW   :    鳥の舞
【鳥の大群 】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
SPD   :    イーグルシュート
【鷲を乗せた右腕 】を向けた対象に、【鷲が相手に向かって飛びつき攻撃】でダメージを与える。命中率が高い。
WIZ   :    ウィングソング
【歌声 】を聞いて共感した対象全てを治療する。

イラスト:utgw

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はシエロ・シーカーです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 警備を突破し、塔へと踏み入る同族殺し。彼が開け放ったままの扉から、少し遅れて中へと突入した猟兵たちの目に飛び込んできたのは、塔の天辺から吊るされたおびただしい数の白い羽だった。引きちぎられたのだろう根元は赤黒く染まっていて、この塔の最上階で何が行われていたのかを想像するには余りある光景だった。
 同族殺しは獣のように吼えると、螺旋状の階段を怒りに任せて駆けあがる。ここに至るまでの疲労や負傷を忘れたかのような同族殺しが、ひとりで戦闘を始めてしまわぬようにと猟兵たちはその後を追った。

 領主が暇つぶしのために村から呼び寄せた女は、まるで天に召されるようだ、と雪のように白い羽を震わせて微笑んだ。
 ――なぜ笑っている。
「私は村から出たことがありません。塔の階段を一歩一歩と登って空へ近づき、こうして領主様にお目にかかれました。……こんなに美しい部屋がこの世にあるなんて」
 ちょうどいい、怯えきった顔にも飽きてきたところだ――部屋の調度品を見て回りながら目を輝かせる女に、はじめはそう思っていた。
 愛でるのに飽きた頃に殺そうと、クローディアと名乗った女が望むままに書物を与え、村の外の世界の話をした。自らが望むままに彼女に美しい服を与え、好みそうな食べ物を用意した。いつしか彼女に乞われるままに、他の村人へも同じように物資を送り、願いを叶えるようになった。毎日ころころと変わる彼女の表情はどんな虐殺よりも刺激的で、どれだけ愛でても飽きることはなかった。
 あの黒い羽を持つ女、シエラ・ロストが現れるまでは。

「この館ならくれてやる! だが、クローディアは返してもらうぞ!」
 領主の部屋へ飛びこみ、二振りの赤い剣を構える同族殺し。現在の領主であるシエラ・ロストは、腕に乗せた鷲を撫でながら興味なさげに首を傾げるだけだった。
「忘れたのね。それとももう分からなくなってしまったのかしら……貴方が今立っている床を黒く染めたのが、誰の血だったのか」
 シエラ・ロストは同族殺しの肩越しに、猟兵たちの姿を捉える。
「出来損ないが、害獣を引き連れて戻ってきたということね。……この世から翼のない者を消し去る、いい機会だわ」
 領主は両手を広げて鳥の大群を召喚すると、侵入者を殺害しようとけしかけた。
ファルシェ・ユヴェール
翼さん(f15830)と

決して相容れぬ存在の罪禍に順位を付ける程、無意味な事はありません
同族殺しが如何なる気の迷いを起こしたにせよ、その根底は何一つ変わっていないのですから
しかし
…どうしてでしょうね、この現領主から滅ぼしたいと思ってしまったのは

翼さんの言葉にも貼り付いた笑みは崩さず
然し一瞬、瞳の奥に真紅が揺らぐ
答えの代わり「慈悲」のセレスタイトを手にするとUC発動

…「鳥」を引き付けます
翼さんは領主を

先に踏み込んで見せるのは気を引く為のフェイント
鳥の群れを嗾けられれば飛翔も活用して後退しつつ
少数ずつ愛用の杖で受け、武器落としの要領で叩き落とす

その隙に同族殺しと仲間が無防備となった現領主を叩ければ


早乙女・翼
ファルシェ(f21045)と。

散る羽根と床の血の跡は何があったか想定するには容易い。
…惨いな。羽根持ちとしては少しキツイかねぇ。
目の前のお嬢さんも羽根持ちだけど…残念ながら仲良くなれる気はしないか。
その前にファルシェは見た目程冷静でもねぇんだろ?

腕を伸ばせば溢れる炎と共に鎖が撃ち出される。
鳥は基本的にはファルシェに任せ、俺は鎖をなぎ払うよう広範囲に振り回して鳥ごと現領主に攻撃。
どうかな、大事な鳥が焼き鳥にされる気分は。
鎖で腕か足でも捕らえる事が出来れば、距離詰めてそのご自慢の黒い羽根を叩き斬ってやる。
向こうが飛んで回避するようであっても、俺も飛んで追いかけ、同族殺しの前に突き落としてやるさね。



「……惨いな。羽根持ちとしては少しキツイかねぇ。目の前のお嬢さんも羽根持ちだけど……残念ながら仲良くなれる気はしないか」
 猟兵たちの方へ降り注ぐ矢の雨のように突撃してくる鳥の大群を前にして、翼はため息を漏らす。ここに至るまでに目にした散る羽根と床の血の跡から、ここで何があったか想定するには容易い。彼の狂いようも納得がいく、と取り付く鳥をがむしゃらに斬り捨てている同族殺しを見て彼は思う。そんな翼の心中を察しているのか、ファルシェは小さく頭を振った。
「決して相容れぬ存在の罪禍に順位を付ける程、無意味な事はありません。同族殺しが如何なる気の迷いを起こしたにせよ、その根底は何一つ変わっていないのですから」
 オブリビオンである以上、どちらも討伐しなければならない。ファルシェは愛用の仕込み杖を構えて一歩前に出ながら、同族殺しの背中を盗み見た。
「しかし……どうしてでしょうね、この現領主から滅ぼしたいと思ってしまったのは」
 飛びこんでくる鳥を矢を落とす要領で杖で叩き落としながら、ファルシェは顔を上げて天井近くに位置取っているシエラ・ロストを見上げる。如何なる心境であろうとも微笑みを崩さない彼ではあったが、翼にはその微笑みの裏で彼が何を感じているのか、考えるまでもなく伝わっていた。鳥の大群を親友に任せて、翼は巻いていた清められた包帯を解いた腕を真っ直ぐにシエラ・ロストの方へと伸ばし、ファルシェへと笑いかける。
「その前にファルシェは見た目程冷静でもねぇんだろ?」
 すぅと華美な帽子の下で細められた紫の瞳の奥で、真紅がちらりと揺れていた。浮かべた微笑みはそのままに、答える代わりにファルシェは取り出した貴石を握り込む。天空を閉じこめたような彩のその貴石を触媒として、同色の光の欠片を作りだすと、彼は石の持つ浄化と慈悲の力を全身に纏った。空の色に怯んだ鳥によって崩された陣形を割るように、ファルシェは飛翔し鳥を落としていく。
「主よ、罪深き者に裁きと戒めの業火を!」
 親友が射程の外にいることを確認して、翼は伸ばした腕の手首にある傷跡から炎を纏った鎖を具現化して放った。ファルシェの杖を逃れた鳥を浄化の炎で焼きながら、鎖を鞭のように振り回してシエラ・ロストを攻撃する。黒い羽根で鎖の打撃を防ぐ彼女の隙をついて、翼は足首を絡めとった。
「おのれ……!」
「どうかな、大事な鳥が焼き鳥にされる気分は」
 鎖を強く引いてシエラ・ロストを同族殺しの目の前に引きずり下ろして、翼は浄化の炎の火力を上げる。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

館野・敬輔
【SPD】
アドリブ連携大歓迎

目の前の領主…シエラ・ロストは白い翼を蒐集していたのだろうか
だとすると…クローディアという方はおそらくオラトリオか
そして、もう……

…いや、余計な感傷は不要だ
今は目の前の領主を倒すのみ

同族殺しの邪魔はせず、囮として使う
その隙に「闇に紛れる、目立たない」で背後に回り込もう

背後を取ったらすぐに「早業、先制攻撃、2回攻撃」+【憎悪と闘争のダンス・マカブル】
18連撃全部をシエラ・ロストに叩き込む!(※味方攻撃なし)
その翼を、お前が切り取ったであろう白い翼と同様に切り取って…いや斬り刻んでやるよ!

もし鷲に飛びつかれたら「残像、ダッシュ、見切り」で回避
止めは同族殺しに譲る


ノエル・フィッシャー
オブリビオンに貴賎なし。原則として悉く滅ぼさねばならぬもの故。
とは言え、その中でもボクが【不興】を感じる程、格別に下劣なのもいる。だから指を差してこう告げるよ、「あれは害鳥だ」とね。

シエラに感じた不興をもってUC【近衛、汝の不敬を許さず】を発動、親衛隊一個小隊を召喚。同族殺しは正面切って戦うだろうから、親衛隊はその左右より剣を持ちて追跡・攻撃。絶え間なき連続・多方向攻撃によって同族殺しを援護しつつ、シエラに回復の歌声を歌わせる暇を与えないようにするよ。
ボク目掛けて攻撃を仕掛けてきても親衛隊の手を休めることはない。ボク自身の事はボクの【無銘の剣】の剣捌きで守るよ。

アドリブ・共闘歓迎だよ。


ハルア・ガーラント
う…あのぶらさがり羽、見ないようにしよう。

【WIZ行動】
主人に忠実な鳥が大量となると、傷を負わせた傍から回復されるのは問題です。
彼女のUC発動に合わせてこちらもUCを即座に発動、全力で歌い、歌声を歌声でかき消せないかやってみます。少しでも効果を下げることができれば…!癒される前に倒すんです。

オラトリオであるわたしなら、彼女に対して問いかけができないでしょうか、ここで起きたことを。
「理由」を知ることは、悪いことじゃないはず。
同族殺しさんのように…世界中が敵に見えて、ひとり絶望して憎んで…そういう思い、しましたから。

ああ、わたし…自分が救われたいだけじゃないか、最低だ。

共闘・アドリブ大歓迎です!


ミリア・ペイン
随分と悪趣味な部屋ね、何方の嗜好かは知らないけれど
お前達の身勝手な行動で人間がどれだけ迷惑してるか分かる?
害獣がどっちなのか思い知らせてやるわ

【WIZ】《黒き怨恨の炎》
彼を援護してあの鳥女に張り付かせてやりたいわ
先ずは邪魔な鳥の大群を一掃するのが得策かしらね【先制攻撃】

鳥の大群は【オーラ防御】でしっかり防ぎましょ

鳥女の翼を破壊して地に落としたいけれど…治療も厄介ね
口元あたりを狙って歌声を封じてやるわ【部位破壊】
炎に【呪詛】を込めて【精神攻撃】で麻痺させられるかしら

…これで耳障りな騒音が聞こえなくなるといいけれど

クローディアさん、ここで亡くなったのかしら?
あの鳥女が殺したの?
それとも…まさか


カレン・ナルカミ
おそるべし、クローディアさんの洗脳術と怨念(ぶるぶる)

さてと、まずは領主を片付けないとね
領主の意志が同族殺しに集中してる間に忍び寄って先制攻撃
暗殺の要領で不意打ちを仕掛けるわ
同族殺しの動きを把握して領主の攻撃の盾として利用するわね

そうそう女性相手なら誘惑の言葉の一つもかけないと失礼よね

「こんなに綺麗な黒い翼を見るのは初めて。ね、もっとよく見せて?」

降魔化身法で纏った幽鬼の力を暗器・曼殊沙華に乗せて
黒翼を絡めとりズタズタにして機動力を奪うわ
無数の手に黒翼を引き裂かれる錯覚を見てくれたなら
領主にも可愛いトコ残ってたのね、くすくす

私に夢中になってくれるのは嬉しいわ
他の猟兵達が攻撃しやすくなるものね



 突如手の届く場所へ落ちてきたシエラ・ロストに、激高した同族殺しの刃が向けられる。
「おそるべし、クローディアさんの洗脳術と怨念」
 カレン・ナルカミ(焔桜の糸遊狐・f02947)は激しい剣戟の嵐にぶるぶると震えた。冷徹な武人として過去に名を刻んでいたオブリビオンが虐殺と圧政をやめ、彼女を失ったことでここまで狂っているという現状は、にわかには信じがたい。愛って劇薬よねと誰にともなく呟くと、カレンは幽鬼の力をその身に宿して戦闘力を強化する。
(目の前の領主……シエラ・ロストは白い翼を蒐集していたのだろうか。だとすると……クローディアという方はおそらくオラトリオか)
 敬輔は塔に吊るされていたおびただしい数の白い羽根と、シエラ・ロストの言動から過去に何があったのかを悟った。近くの村の住民が皆オラトリオであったことから、同族殺しの放逐は彼女にとって領地の乗っ取りという旨味のある謀略だったのだろう。
「……余計な感傷は不要だったな」
 狂える同族殺しの背中から視線を外して、敬輔は黒い剣を強く握りしめる。今なら同族殺しを囮に使うことが出来る……呼吸を整えると、彼は闇に紛れるように気配を消した。
「そ。まずは領主を片付けないとね」
 鋼糸を手にしたカレンはこくりと頷くと、敬輔と同じく気配を消してシエラ・ロストの背後へと忍び寄る。同族殺しの様子を伺えば、火事場の馬鹿力というやつだろうか、疲れを知らない様子で怒りに狂うままにシエラ・ロストへと斬りかかっていて、もうしばらくは女領主の注意を引き付けていてくれそうだった。
「こんなに綺麗な黒い翼を見るのは初めて。ね、もっとよく見せて?」
「! なに……!」
 礼儀として誘惑の言葉をかけて、カレンは己の体を通して死者の霊の力を鋼糸へと注ぎ込むとシエラ・ロストの黒い翼をがんじがらめに絡めとる。鋼の糸が纏った呪いの力は、オブリビオンを怯えさせるほどの錯覚を――自慢の黒い翼が無数の手によって引きちぎられていくような幻を見せた。
「怒りと憎悪、そして闘争心を力に替えて……貴様を切り刻む!!」
 幻にシエラ・ロストの動きが止まった瞬間を見計らい、敬輔が連撃をその体へと叩きこむ。普段の彼からは想像もつかないほどの憎悪を青い瞳に浮かべて、湧き上がる怒りと闘争心を抑えることなく剣へと乗せて斬りつけた。
「お前が切り取ったであろう白い翼と同様に、その羽根切り取って……いや斬り刻んでやるよ!」
 18度目の斬撃がシエラ・ロストの背を捉える間際。高く鳴いた鷲が、主を守るように翼を広げて敬輔の懐へ飛びこんだ。剣を引いて後ろへ飛び退きそれを躱した敬輔は、抑えきれない闘争心を持て余して仲間を襲う代わりに剣で自らの左手の甲を突き刺した。蹲る敬輔へ鷲を嗾けようと手を伸ばすシエラ・ロストの眼前に、ひらりとカレンが躍り出る。
「あら、私に夢中になってくれるなんて嬉しいわ。領主にも可愛いトコ残ってたのね」
 くすくす、と煽るように笑って注意を引くカレン。怒りに頬を染める領主の背に、同族殺しが再び斬りかかる。狂える吸血鬼と猟兵、同時に相手をするには、猟兵たちによって落とされた鳥たちを回復させなければならない。そう判断し猟兵へ向けた手を引っ込めると、シエラ・ロストは空中へと飛び上がった。
「あの……質問しても、いいですか?」
 ハルアは吊るされた羽根が視界に入らないようにしながら、シエラ・ロストへと問いかける。
「あなたは、先ほど“翼のない者を消し去る”と言っていました。けれど、村の人たちの翼を切り取ってもいて……どうして、翼のある者まで傷つけるんですか?」
「傷つける? 誰が何を?」
 膝を震わせながら問うハルアに、領主は眉根を寄せて冷たい瞳を向けた。
「そこに這いつくばっている狂った男が隠し持っていた翼。あれを、そいつの目の前で切り取った日のことは今でも鮮明に覚えているわ」
 ちょうどお前が立っているところでね、とシエラ・ロストはハルアの足元を指さす。小さく悲鳴を上げて飛び退いた彼女に、領主はうっとりとした顔になった。
「私は、お前のような白い翼を、愛する者の目の前でもぎ取ることを何よりも楽しく思う。翼のない者にはそれができない……だから消し去る。シンプルな話でしょう」
 真っ直ぐにシエラ・ロストに見つめられ、ハルアの膝が折れる。クローディアが殺された理由を知ることで、かつての自分がそうであったように、世界中を敵だと憎んでいるのだろう狂える男を癒せないかと思っていたからだ。だが、過去を生きるオブリビオンと現在を生きる人々の間では、あまりにも価値観が違いすぎた。
(ああ、わたし……自分が救われたいだけじゃないか、最低だ)
 彼を癒すことがもしもできたなら、自分は必要な存在なのだと思えるかもしれないから。無意識の自分の欲望に気付き、ハルアはぽろぽろと涙を零す。シエラ・ロストの歌声が戦場に響き渡る中、泣きじゃくり顔を両手で覆う彼女の肩をぽんと叩いたのは、ノエルだった。
「キミはよく頑張ったよ。話しかけてみようなんて、普通は考えないものだ」
 にっこり笑んで手を差し出しハルアを立たせたノエルは、シエラ・ロストと鳥たちから彼女を庇うように立つ。
「ボクの仲間をそんな目で見ないでもらいたいね。少しは自分の立場を弁えると良い」
「ええまったくもってその通りね。お前達の身勝手な行動で人間がどれだけ迷惑してるか分かる?」
 随分と悪趣味な部屋ね、何方の嗜好かは知らないけれど、と無表情で付け足して、ミリアがその隣に並んだ。燃える悪霊の魂を無数に召喚して呪詛の力を乗せると、力を取り戻した鳥が攻撃態勢に入る前にその翼を焼いた。再び地に落ちる鳥たちの間を縫って、悪霊の炎がシエラ・ロストの翼へ取り付く。
「力が……入らない……?」
「……気を抜くと私まで喰らおうとしてくるのよ。怨念って怖いわね」
 呪詛によって麻痺させられた翼を畳んで地上へと降り立ったシエラ・ロストは、猟兵たちを退けるため鳥たちを回復させる歌を再び歌う。
「これじゃ、キリがないです……回復される前に倒さないと……!」
 ハルアは両手をぎゅっと握りしめると、白い翼を広げてありったけの大声で祝福の歌を歌い始める。領主の歌をかき消して、鳥たちを回復させないようにするのが狙いだ。もしも完全にかき消せなかったとしても、回復力を落とすことが出来、また仲間たちの攻撃力が上がるならば、回復が追い付かないという状況に追い込むことは可能だろう。
「……うるさい鳥女ね。害獣がどっちなのか思い知らせてやるわ」
 ハルアの横顔を見て、ミリアは再び悪霊の魂を召喚する。今ならば確実にシエラ・ロストの口元へ当てることができそうだ、と呪詛を乗せたその炎の狙いを慎重に定め、放った。歌うことに集中していたシエラ・ロストは、防御の姿勢を取ることすらできずに呪いを顔面で受け止めてしまう。
「……これで耳障りな騒音が聞こえなくなるといいけれど」
 呪詛による精神攻撃により感覚を失ったシエラ・ロストは、歌はおろか口を動かして話すことも出来ないようだった。
「オブリビオンに貴賎なし。原則として悉く滅ぼさねばならぬもの故。……とは言え、その中でもボクが【不興】を感じる程、格別に下劣なのもいる。だから指を差してこう告げるよ、『あれは害鳥だ』とね」
 ノエルの高らかな宣言を受けて、幻影の親衛隊が戦場へ召喚される。主の指示に従い同族殺しを左右から取り囲んで援護の陣形を取った親衛隊は、一斉にシエラ・ロストへと剣で斬りかかる。同族殺しの剣戟も加わり、受け流しも避けも出来なくなった女領主は、剣で体を斬られながら自棄を起こしたようにノエルに向かって鷲を嗾ける。
「残念だけど、そんなことではボクの親衛隊は止まらないよ」
 ノエルは無銘の剣で鷲の嘴を受け流すと、柄頭でその体を打ち、叩き落とした。シエラ・ロストの表情が、みるみる焦りと絶望に染まっていく。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

リーヴァルディ・カーライル
…ん。翼の無い者を消し去る、ね。
消えるのはお前の方よ、黒い翼の鳥使い。
今まで彼らから翼を奪った罪、その身で償うが良い。

犠牲者達の目立たない魂の存在感を暗視してUCを発動
心の中で祈りを捧げ怨念の精神攻撃を呪詛耐性と気合いで耐え、
鳥の攻撃を生命力を吸収する呪詛のオーラで防御して、
残像が生じる速度で空中戦を行う

…あの吸血鬼に怨みがある者もいるでしょう。
だけど今はあの女を優先して。

第六感と戦闘知識を基に敵の殺気を見切り、
呪力を溜めた大鎌による闇属性攻撃のカウンターをした後、
怪力任せになぎ払い傷口を抉る2回攻撃を仕掛ける

…翼を持たない者に地に落とされる気分はどう?
そのまま、骸の海の水底まで沈めてあげる。


アルバ・ファルチェ
(絡み・アドリブ歓迎)

出来損ないとか、害獣とか酷い言いようだね。
人を傷つけ殺めるような存在は、いくら女性でも許さないよ?

【挑発】【おびき寄せ】【存在感】で攻撃を自分に引きつける。
攻撃は出来る限り【見切り】、見切り損ねたものは【武器受け】【オーラ防御】などで被害を最小限に。
鳥の大群が向かってくるなら【範囲攻撃】【なぎ払い】の【カウンター】を狙う。

仲間や同族殺しが現領主に攻撃を仕掛けてくれるならそれを援護、守りに徹する。

仲間などの攻撃が期待できない場合は【ダッシュ】からの【全力魔法:火】で領主を燃やそうとしてみる。
【祈り】と【破魔】の力を乗せて、吊された白い羽達共々浄化の炎で焼き尽くせたら…。


コッコ・キキルカ
奪われた白い翼の数々にそれぞれの悲痛な声が聞こえた気がして
身体が震えて涙があふれて目を反らす事が出来ません
奪っても奪っても、底に穴が開いた器のように
オブビリオンの心は決して満たされる事はないのでしょう
倒すのではなく
永遠に続く渇きから救って差し上げたいです

領主の動きを妨害して仲間を手助けします
領主の鳥は武器なのでしょうか?
身に着けた技能を駆使して必要ならサモニング・ガイストも使って武器落としに挑みます



 戦場のやや後方、開け放たれた領主の部屋の扉にもたれるようにして、コッコは立ち尽くしていた。仲間たちの戦う音が、声が戦場へ駆けつけよと呼んでいるのに、彼女はある一点に視線を縫い付けたまま動けずにいた。
 一方的に暴力を振るわれ奪われ、見世物のように吊るされている白い翼。コッコの耳には、確かに翼の持ち主たちの悲痛な叫びが聞こえていた。
 小さな体で受け止めるには強すぎる苦痛の残滓に、彼女の体はがたがたと震える。内側から押し上げられるように目尻から零れた涙は止まる気配がなく、コッコの呼吸と脈拍は上がっていく。
「出来損ないとか、害獣とか酷い言いようだね。人を傷つけ殺めるような存在は、いくら女性でも許さないよ?」
 そよ風のように軽やかに言うと、コッコの視界を横切ってアルバが床を蹴った。体を丸めて宙がえりの姿勢を取ったかと思えば――次の瞬間、彼の姿は翼を持つ狼へと変化する。大きく派手に羽ばたいて、頭上から鋭い爪でシエラ・ロストを引っかいて攻撃することで、アルバは注意を自らに引き付けようと試みていた。
(……ひとりでここにいるのではありません)
 仲間のために動く猟兵の背に、コッコは大きく息を吸い込んだ。手の甲で涙を拭ってから胸の前で手を組み、自身と、場に満ちた痛みに対して祈る。
「……あの吸血鬼に怨みがある者もいるでしょう。だけど今はあの女を優先して」
 リーヴァルディは大鎌に呪いの力を込めながら、静かに仲間たちへと語りかけた。犠牲となったオラトリオたちの魂へと心の中で祈りを捧げ、彼らの苦しみへと寄り添うことで死霊の怨念を自らの戦闘力へと変換しようと試みる彼女は、己が精神を呪いによって侵食されまいと鋼の忍耐力で踏ん張っている。先の語りかけは、同行する猟兵以外にも、前領主に虐げられ死んでいった者たちの呪いを取りこぼさないためでもあった。
「奪っても奪っても、底に穴が開いた器のように……オブビリオンの心は決して満たされる事はないのでしょう」
「……ん。途方もなくて、壊れた器にはお似合いの欲望ね」
 リーヴァルディの全身を、場に満ちていた怨念を抱いた魂が覆い尽くす。一切の望みを捨て、純粋な力へと還元された死者の霊魂は黒い靄のような形を取って、リーヴァルディに途方もない程に強い戦う力と飛翔する能力を与えた。名も無き神が得意としていたように、彼女は凄まじい速さで敵との距離を詰める。
「っと!」
 びりびりと毛並みが痺れるような気配を察知したアルバは、咄嗟に翼と足に纏った風魔法の出力を上げて同族殺しの背を蹴ると、急上昇して衝突を避ける。蹴られた吸血鬼は予期していなかったのもあって、無防備に床に転がった。
 刹那。ひらけた空間を真っ直ぐに切り裂きながら、リーヴァルディの大鎌がシエラ・ロストを捉える。闇の力を纏った大鎌に二度背を引き裂かれたシエラ・ロストは、苦悶の叫び声を上げ尻もちをついた。
「……翼の無い者を消し去る、ね。消えるのはお前の方よ、黒い翼の鳥使い」
「っ……! 私から離れなさい、この無礼者!!」
 シエラ・ロストはまだ動く腕を伸ばして、生き残った鳥たちに攻撃を命じる。領主の頭上で群れを成す鳥たちの嘴は、一様にリーヴァルディを狙っていた。
「僕がいる限り、その手は届かないよ」
 アルバは背後から、鳥たちを聖なる祈りと破魔の魔力を燃やした炎で焼く。落ちた鳥から床や壁へ、燃え広がるままに領主の部屋を炎で包む――誰が見たって辛い気持ちにしかならない、吊るされた白い翼や惨劇の記憶が刻まれた床を、部屋ごと全て焼き尽くしてやろうと考えたからだ。
 赤く燃える炎に横顔を照らされながら、コッコは祈りの手を解いて静かに前へと差し出す。
「僕は……倒すのではなく、永遠に続く渇きから救って差し上げたいです」
 たとえ骸の海で眠る僅かな間でも、激情から解放されて欲しい。傷ついた魂の残留思念に打ちひしがれても、コッコの心は折れなかった。噛みしめて赤くなった唇で決意を述べて、コッコは古代の戦士の霊を召喚する。槍や炎を手にした戦士たちは、武器を掲げると炎を逃れた鳥を払い落しにかかった。
「なぜ、そこの男に協力するの? あいつと私のどこが違うというの……!」
「協力なんかしてないよ?」
 人の姿へと戻ったアルバは、仲間たちとシエラ・ロストの間に着地すると愛用の白銀の盾を構える。ゆらりと炎の壁の向こうで同族殺しが立ち上がったのを横目で確認すると、再び目の前の領主へと視線を戻した。
「何も違いませんよ。彼とあなたは」
 呆然と天井を見上げている吸血鬼の男を見、それ以上何も言えなくなったコッコは頭を振る。
「……翼を持たない者に、地に落とされた気分はどう?」
 リーヴァルディは感情の一切を出さず、領主を冷淡に見下ろしていた。憎しみに満ちた視線を投げられることにも、特に抱く感慨はなく。
「そのまま、骸の海の水底まで沈めてあげる」
 目の前の吸血鬼は、ただ狩るのみ。リーヴァルディは躊躇いなく大鎌を振り下ろす。
 致命傷を受け、床に転がったまま動かなくなったシエラ・ロストに、アルバの浄化の炎が燃え移って――見守る猟兵たちの前で、領主の死体は跡形もなく燃え尽きたのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​




第3章 ボス戦 『十字皇シュラウディス』

POW   :    我を暴くことかなわず
全身を【漆黒の霧】で覆い、自身が敵から受けた【攻撃の威力】に比例した戦闘力増強と、生命力吸収能力を得る。
SPD   :    堕天十字翔
【天空から双剣による衝撃波】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
WIZ   :    我を欺くこと能わず
対象のユーベルコードの弱点を指摘し、実際に実証してみせると、【無数の光の鎖】が出現してそれを180秒封じる。

イラスト:純志

👑8
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠白石・明日香です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 猟兵の放った浄化の炎に四方を囲まれながら、同族殺し――十字皇シュラウディスはただそこに立っていた。探し求め、手を伸ばした愛する者はとうにこの世にはおらず、全ては徒労であったと気付いた彼に、もう戦う意思は残っていないようだった。
「……このままにはしておけません」
 炎の中に落ちた二振りの赤い剣を拾うこともせず、天井を見上げたまま微動だにしないシュラウディス。既に狂ってしまった彼をこのまま放置すれば、きっとまた怒りに飲まれて“敵”を殺しに行くだろう。その時彼の目に映る“敵”が同族であるとは限らない。
 じわじわと、聖なる炎が彼の体を焼く音がする。
ノエル・フィッシャー
キミも分かっただろう。死者は決して蘇らない、蘇ってはならない。
例えそれがどんなに理不尽な結果の末だったとしてもだ。故に――ここで全てを終わらせる。それこそがボクの答え、そして【勇気】と【覚悟】だ。

今は茫然自失しているようだけど、すぐに同族殺しが気を取り直し、その恐るべき双剣術がボク達に牙を剥くことを前提に行動するよ。
UC【煌々光る夜空の王子様】にて彼の足元に滑り込むように双剣や衝撃波の間合いの内側に潜り込み、そこから【無銘の剣】の柄や鍔に近い部分から刃を強引に押し当てて攻撃する格闘戦に持ち込むよ。

アレンジ・共闘歓迎だよ。


コッコ・キキルカ
シュラウディスさんとクローディアさんの過ごす姿を
僕は知りません
それでもお二人が互いを慈しみ幸せに過ごしていたと伝わります

痛々しい白翼たち
呼びかけるように目に止まる白翼が一つありました
クローディアさんのものかもしれません
媒介道具に白翼と再会の願いと安息の祈りを込めて
UDCを具現化。サモニング・ガイストを使います
クローディアさんも待っていたはずです
二人の愛し合う心は本物
僕はシャーマンの誇りにかけ再会の奇跡を起こします
古の戦士の姿をクローディアさんの姿にします
ぎゅって、抱きしめて笑ってあげてください
欠けた月同士の再会は、満月になって陽だまりの炎の中
真昼の月のように明るい空に溶けて消えていきますように


リーヴァルディ・カーライル
…ん。戦意が無いなら好都合。
このまま大人しく消えてくれるなら、
此方から手出しする必要は無いんだけど…さて。

第六感が殺気を捉えるまで武器は構えず、
他の猟兵が戦闘しようとしても止めに入る
“葬送の耳飾り”に魔力を溜め、目立たない魂の存在感を見切り、
目当ての魂を暗視したら両手を繋ぎ祈りを捧げUCを発動
魂を精霊化して吸血鬼を葬送できないか試みる

…怨嗟に染まった魂は全て私が引き受ける。
だから、そこの吸血鬼は貴女に任せるわ、クローディア。

…後は【断末魔の瞳】に取り込んだ魂に対してもUCを発動
呪詛を浄化して昇天させましょう。

…もう増悪に囚われる必要は無い。
眠りなさい、安らかに…。


ミリア・ペイン
…お前の、彼女への情が本物だっていうのは認めてあげるわ
その腑抜け切った様を見れば嫌でも分かるわよ
私も…家族を殺された時はそうだったもの

【WIZ】《黒き怨恨の炎》
まあ、だからと言ってここでお前を見逃すほど私は甘くないけれど

…ねえ、聞こえてる?
何か最期に何か言い残しておきたい事はあるかしら
抵抗しない方が楽に逝けるかもしれないわよ

念の為、炎を纏めて待機
何時でも攻撃出来る様準備しておきましょう【先制攻撃】
少しでも変な動きをしたなら返答を待たず止めを刺すわ

…別にどうでもいいけど
彼女は、お前にここまで想われて…幸せだったのではないかしら
事切れる寸前まで、きっとお前の事を想い、身を案じていたと思うわよ


ハルア・ガーラント
救いと、言い訳が欲しかったんです。
彼が狂うほどの理由を知った上で、わたしは猟兵だから。オブリビオンは討伐すべきもので、それは仕方のない事なんだと。

全て知ってしまった今でも、殺し続けたいと思っているのかな。
何かを憎み続けるのって、とっても疲れます。

攻撃に対しては、こちらもUCを発動します。
わたしのUCの弱点、背の鎖を使うので攻撃中は技能で防ぎでもしないと無防備になることでしょうか。なのでオーラ防御・第六感で防ぎます。もし別の弱点を指摘されても、実証されてしまう前に全ての鎖を花に変えられればと思います。
……攻撃してこなくても、UCは発動します。

うぅ、涙が止まりません。

共闘・アドリブ大歓迎です!


カレン・ナルカミ
避けられる戦闘は避けるが大大吉(誤字ではない)
シュラウディスの気が変わらない内に
「生命力吸収とマヒ攻撃」を宿した「曼殊沙華」で
「先制攻撃」を仕掛けて鋼糸で絡めとって動きを封じるわ
彼に言葉をかける仲間に危害をくわえないようにね

「愛とか笑わせないで。安らかに死ぬなんて許さない。死んでから安らかに眠りなさい」
頃合いを見てフォックスファイアを50個ほどぶつけるわ
仲間の退路を確保して、屋敷も真っ白な灰になるまでボウボウに燃やし尽くす
生贄を差し出し続けた村人たちは
この先も自分を責め苦しんで生きていかなくちゃならない
これ以上、彼らを苦しめる要素を増やしたくないわ
生贄の末路も象徴の屋敷も灰にして隠しちゃうわね



 赤々と照らされた吸血鬼の青白い横顔は、まるで夜空に浮かぶ満月のように冷たく静かだった。先ほどまで迸っていた怒りは、まるで幻だったかのように薄い皮膚の下に鳴りを潜めている。
「……あれは」
 コッコは吊るされた無数の命の残骸の中から、一枚の白い翼に目を留めた。飛んでいって手を伸ばせば、他の翼と違って頑丈な鎖に結び付けられたそれは、埃を被ることもなく毎日手入れを施された形跡がある。どうやら領主のお気に入りらしかった。
(クローディアさんのものかもしれません)
 羽根を傷つけないように鎖を外して、コッコは翼を抱いて着地する。猟兵の手によって静かに床に安置された翼に、シュラウディスの赤い目が見開かれた。
 吸血鬼が大きく息を吸ったのとほぼ同時に、カレンが床を蹴る。
「避けられる戦闘は避けるが大大吉♪」
 大きく跳躍してシュラウディスの背後に回ったカレンは、体をマヒさせて生命力を吸収する魔力を宿した鋼糸で吸血鬼の体を縛り上げた。一歩、前に踏み出そうとしていた吸血鬼の動きが止まる。
「愛とか笑わせないで。安らかに死ぬなんて許さない。死んでから安らかに眠りなさい」
 相手は狂気に飲まれたオブリビオンだ、いつ何時他の猟兵たちへ刃を向けるか分からない。カレンは鋭く吸血鬼の動向を監視しながら、その耳に囁いた。
「……ん。このまま大人しく消えてくれるなら、此方から手出しする必要は無いんだけど……」
 カレンと同じく第六感をひらいて殺気に注意を払いながら、リーヴァルディは仕草で他の猟兵たちへ攻撃しないようにと合図を送る。武器を構えて警戒を続けながらも、それぞれに仲間へ協力する意思を表し頷く猟兵たち。リーヴァルディは仲間からシュラウディスの方へと視線を戻すと、耳飾りを外して手の中に滑り込ませる。祈りの形に両手を組んで、周囲に漂う死者の思念を聞き取ることができるその耳飾りに魔力を注ぎながら祈る――この場に満ちた死者の呪詛と、目の前のオブリビオンをすべて精霊として浄化し永遠の眠りを与えられないかと。
「……もう増悪に囚われる必要は無い」
 自らの左目へと伸ばされる数多の救いを求める手を取って、自然と調和する精霊へと変えて昇華していくリーヴァルディ。
 だが、場に満ちた苦痛を天へと還してもなお、吸血鬼はこの地に留まったままだった。
「生意気にも、何か心残りがあるのね。まあ、だからと言ってここでお前を見逃すほど私は甘くないけれど」
 手の中に悪霊の魂を燃やした炎を宿して、ミリアが一歩、歩み出る。
「……お前の、彼女への情が本物だっていうのは認めてあげるわ。その腑抜け切った様を見れば嫌でも分かるわよ」
 私も家族を殺された時はそうだったから、と独り言のように小さく付け足して、いつでも迎え撃てるのだというように黒い炎を大きく育てながら、ミリアはコッコの方を見る。床に膝をつき媒介道具である小さな箱に手を置いて、白い翼の前で祈りを捧げていた彼女は、シャーマンの誇りにかけてクローディアの魂にアクセスしようとしていた。
(シュラウディスさんとクローディアさんの過ごす姿を、僕は知りません。それでもお二人が互いを慈しみ、幸せに過ごしていたと伝わります……)
 コッコは場に残された過去の記憶を辿り、月の光に照らされ膨張する白い部屋の中で、穏やかに笑うオラトリオの女性の姿を掴み取る。
(今のおふたりは、まるで欠けた月同士です……)
 半分ずつの月も重ねれば、きっと満月になるだろう。この炎という陽だまりの中で、どうか真昼の月のように、明るい空へと溶けて消えていきますように――コッコは祈り、日頃ユーベルコードで召喚している古代の戦士へ、読み取ったクローディアの姿のテクスチャを重ねて召喚する。
「……クロー、ディア……」
 微笑みを湛えて炎の中に立つオラトリオの姿に、シュラウディスの手が伸びる。カレンは拘束していた鋼糸を少しだけ緩めて腕の動きを自由にしてやる。
「クローディアさんも待っていたはずです。ぎゅって、抱きしめて笑ってあげてください」
 仮初の姿を得たクローディアは、夫の返事を待たずに駆け寄り彼を抱きしめた。
「……怨嗟に染まった魂は全て私が引き受ける。だから、そこの吸血鬼は貴女に任せるわ、クローディア」
 自然と調和することを拒んだオブリビオンを、何の力も持たないたったひとつの魂が骸の海へと還すことが出来るのか。リーヴァルディが抱いたままの一抹の不安に応えるように、クローディアが少し困った顔をする。彼女の白い手に包まれて再び落ち着きを取り戻したシュラウディスは、明確な意志を持って猟兵たちへ視線を投げかけていた。まるで三日月のような鋭さを持った冷静な視線に、先ほどまでの強い怒りは感じられない。
「……ねえ、何か最期に何か言い残しておきたい事はあるかしら」
 今ならば話が通じると見て、ミリアは吸血鬼に語りかける。
「抵抗しない方が楽に逝けるかもしれないわよ」
「……それは、無理な相談だな」
 静かで重いシュラウディスの声に、猟兵たちの間に緊張が走った。全身に黒い霧を纏い、自らを拘束する鋼糸を逆流するように魔力を吸い上げて戦闘力を増強する吸血鬼に、チッと舌打ちをしたカレンは鋼糸を巻き取って飛び退き、シュラウディスから距離を取る。炎の中、オラトリオの亡霊を背に庇うようにして吸血鬼は高らかに宣言した。
「領主として、十字皇として。自らの過ちを省みずに逝くことなど出来ん!」
「そう」
 無表情のまま頷いて、ミリアは手の中で育てた大きな黒い炎をシュラウディス目掛けて放つ。背後に愛する者が立っている状態ならば攻撃を避けることはしないだろう……そう読んでの一撃だった。
「――我を欺くこと能わず。この威力を出すには連続攻撃を捨てねばならない、そうであろう?」
 強化した戦闘力で黒い炎を受け止めたシュラウディスは、ごうごうと腕を焼かれながらも無数の光の鎖を放ちミリアを捉えようとする。鎖を撃ち落として反撃しようと悪霊の魂を燃やして小さな炎を大量に生み出すミリア。両者の間で黒と白がぶつかる瞬間――戦場を一筋の光が駆け抜けた。
「キミも分かっただろう。死者は決して蘇らない、蘇ってはならない」
 光はシュラウディスの間合いの内側へと着地すると、人間の姿になる。流星の如き素早さを得たノエルは、飾り気のない剣を抜き寝かせた刃で吸血鬼の腹部を斬りつけた。受け身を取れず傷口を押さえて蹲るシュラウディス。
「例えそれがどんなに理不尽な結果の末だったとしてもだ。故に――ここで全てを終わらせる。それこそがボクの答え、そして【勇気】と【覚悟】だ」
 仲間たちを守るように立つノエルの、真っ直ぐな青い瞳は、蘇った過去であるシュラウディスだけではなく、彼の後ろに立つクローディアにも向けられていた。凛としたその視線に、オラトリオは目を伏せて静かに頷く。
「ならば、その覚悟で我を屠ってみろ!」
 地に落ちた赤い双剣を拾い、シュラウディスは渾身の力でノエルへと斬りかかった。剣の鍔で受け止めて弾き、ノエルは相手の間合いに飛びこむと、剣の柄に近い部分から刃を強引に押し当てての至近距離での格闘戦へと持ち込む。僅かでも隙を与えれば、シュラウディスは天空から衝撃波を放ってくるだろう……仲間を巻き込むわけにはいかない、とノエルは懐に剣を抉り込むように食らいつき続けた。
 翼に巻き付けた鎖状の拘束具を、無数の白い鳥の羽根に似た花びらへと変形させながら、ハルアは人差し指で涙を拭っていた。この館で起こったことを思うと、涙が次から次へとあふれて止まらない。彼が狂う程の理不尽と狂った末に行ったことを目の当たりにすれば、戦うことへの迷いなど持たないだろうと思っていた。自分は猟兵だからオブリビオンは討伐すべきもので、これは仕方のないことなのだと。
(言い訳が、欲しかったんです)
 むせかえるほどの甘い香りに、刃を抱いた花びらを忍ばせて。ハルアはきゅっと眉を寄せてシュラウディスの姿を視界に捉えた。
(全て知ってしまった今でも、殺し続けたいと思っているのかな。何かを憎み続けるのって、とっても疲れます……)
 一刻も早く骸の海へ還してあげないと、と。己のユーベルコードが束の間、せめてもの救いになることを祈って、ハルアは声を張り上げる。
「か、覚悟してください! 当たると痛いですよ!」
 泣き声まじりの虚勢が、武人として戦場に散ることを望んでいるシュラウディスに対して出来るハルアの精一杯だった。
「我を欺くこと能わず! 本体を叩けば止む嵐など、幻術に過ぎん!」
 白い羽根に切り裂かれながらもハルアを光の鎖で捉えようとする吸血鬼の視界を遮るように、カレンが自らの周囲に浮かべた無数の狐火を立て続けに叩きこむ。花びらの一部を自らの周囲に吹雪かせることで刃の壁を作り、弱点の指摘を回避したハルアは、助けてくれたお礼にとカレンの狐火の応酬に花びらの波を重ねた。
「本当はあなたも灰になるまで燃やしてあげたいところだけど……そうすると手が足りなくなっちゃうのよね」
 手首をひらりと翻して、カレンは割れた窓の外へ狐火を送り出した。
「この屋敷、灰の下に隠しちゃった方がいいわよね」
 眼下に燃え広がる炎を見、カレンは吸血鬼へウインクをする。
 領主の圧政に従い、虐殺から目を背けて仲間を差し出し続けてきた村人たち。彼らは誰に言われなくても、自らの判断を責め苦しんでいる。この先、命が尽きるまでずっと。屋敷が目に入る限り、彼らの苦しみは日ごと増すだろう。ならば、弔いの意味も兼ねて燃やしてしまおうとカレンは考えたのだ。
 取り付いた狐火を振り払ったシュラウディスに、黒い炎を放ってミリアが呟く。
「……別にどうでもいいけど。彼女は、お前にここまで想われて……幸せだったのではないかしら」
 ミリアの後方で、魔力の制御に集中していたコッコの膝が折れる。普段とは違う特殊な手順を踏んだ召喚に、彼女の肉体は悲鳴を上げていた。
 シュラウディスへと手を伸ばすクローディアの姿が、大きく揺らぐ。
「事切れる寸前まで、きっとお前の事を想い、身を案じていたと思うわよ」
「……ッ!」
 武人の誇りをかなぐり捨て、敵に背を向けてでも。最後にもう一度彼女に触れようと伸ばしたシュラウディスの手は空を掴んだ。
 ――また出会ってね、あなた。
 広げた手のひらには、奇跡を願う祈りだけが残されていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ラウラ・クラリモンド
「彼がこの世界の十字を冠するオブリビオンですか。」と言いながら、『十字皇シュラウディス』の前に立ち塞がります。「これから増えるかもしれない悲劇を防ぐために、ここであなたを止めさせてもらいます。」
【POW】で攻撃します。
【フェイント】や【カウンター】を織り交ぜながら、【属性攻撃】の【全力魔法】【鎧無視攻撃】の【悪夢の聖夜】で『十字皇シュラウディス』を【範囲攻撃】でどこに動いても狙えるようにして【2回攻撃】します。相手の攻撃に関しては【残像】で、回避を試みます。
「今の私ができることは、全力で戦うだけです。」
アドリブや他の方との絡み等は、お任せします。


館野・敬輔
【SPD】
アドリブ連携可

ああ、ここで見逃しはしない
もとより最初から両方とも葬るつもりだったからな

ただ、まだ言葉が通じるようなら「愛する者の元へ向かいたいなら死に方は選ばせてやる」と伝え、選択肢を提示
黒剣に斬られるか、衝撃波で斬り刻まれたいか、選べ

どちらも嫌なら抗え!
その赤い剣を拾ってかかってこいよ!

【魂魄解放】発動
黒剣選択、もしくは会話不成立ならダッシュ(+UC効果の高速移動)で一挙動で間を詰め、「2回攻撃、怪力、吹き飛ばし」で斬り刻む
衝撃波選択なら「2回攻撃、なぎ払い、吹き飛ばし」を乗せたUC効果の衝撃波をシュラウディスに叩きつける
相手の攻撃は「武器受け、オーラ防御」で受け止め


アルバ・ファルチェ
【絡み・アドリブ歓迎】

戦う意思が残ってなくても狂ってしまったものはもう戻らない
…だから、最愛の人が待つ場所へとは言えないのかも知れないけれどもう苦しみも悲しみもない場所へ…ゆっくり、おやすみ。

戦う意思はないようだけれど、攻撃の意思を感じ取って反射的に動く可能性も考慮して、UCを使い戦場に居る仲間達を衝撃波から守る。
一緒に戦う人がいる場合は基本的には防御と回復に専念、一人の場合は防御しながらも隙を見て攻撃を仕掛ける。

どう動こうと反撃してこないようであれば、槍竜コルノを槍の姿に戻して【属性攻撃:破魔】を乗せた【串刺し】を。
…【医術】の心得もあるから出来るだけ苦しまないよう、一撃で送れたら良いな…。



 闇が少しずつ月を覆い隠していくように。
 手のひらで顔を覆ったシュラウディスが天高く吠える。青白く長い指の隙間から見える赤い瞳から、彼の理性が再び徐々に失われていることをアルバは察した。装備していた盾の複製を魔力でいくつか作りだしながら、せめて愛した人の記憶までも怒りで塗りつぶしてしまう前に、彼を苦しみも悲しみもない場所へ送ってやりたいと願う――そこが彼女の待つ場所かどうかはわからないけれど。
「狂ってしまったら、もう元には戻らない……か。どのみち倒さなきゃいけない相手とはいえ、ちょっとやりづらいな……」
 アルバは盾の陰で仲間たちへ愛情を込めた視線を送って傷を癒す。傷口の塞がった左手を何度か握って動きを確認した敬輔は、アルバの肩をぽんと軽く叩くと、黒い剣を構えてシュラウディスの前に立った。
「愛する者の元へ向かいたいなら、死に方は選ばせてやる。この黒剣に斬られるか……それとも、衝撃波で切り刻まれたいか?」
 顔を覆ったままのシュラウディスは何も答えない。敬輔は黒剣に魔力を注ぎ、これまで剣が喰らってきた異端の魂を解放して自らの身に降ろした。死に直面した時の感情を抱いたまま剣の中で保存されていた魂は、戦う力を分け与える代わりに敬輔の精神を自らの激情で塗りつぶさんと重くのしかかる。混乱と恐怖を振り払い、湧き上がる憎しみと怒りの波に身を任せるように、敬輔は大声で啖呵を切る。
「どちらも嫌なら抗え! その赤い剣を拾ってかかってこいよ!」
 シュラウディスがゆらりと剣を構えて戦いの構えを取った。足元から吹き上がるように発生した漆黒の霧がその全身を覆うや否や、吸血鬼は地を蹴り高く飛翔する。これまで刃を交えてきた猟兵たちは、それが衝撃波を放つ前動作であると分かった。アルバは複製した盾を念力で操って、戦場にいるすべての猟兵たちを守るように配置する。
「なるほど……彼がこの世界の十字を冠するオブリビオンですか」
 アルバの守りの盾から顔を覗かせて、ラウラ・クラリモンド(ダンピールのマジックナイト・f06253)は十字皇シュラウディスを改めて観察する。狂気に染まる前からそうなのか、或いは発せられる殺気に反射的に動いているだけなのか、彼はあまり搦め手を使用せず、真っ正面からぶつかる性質を持っているようだった。天空で赤い二振りの剣で十字を模り、魔力を集める姿は『十字皇』の肩書に相応しい雄々しさだ。
「させるものか!」
 敬輔は天空より襲い来る衝撃波に、持てる力のすべてで黒剣をなぎ払い生み出した衝撃波をぶつける。互いの間でぶつかった力が空間を揺らした。反射的に体を庇うように腕を交差したシュラウディスに、ラウラは今が好機と盾の陰から飛び出す。
「これから増えるかもしれない悲劇を防ぐために、ここであなたを止めさせてもらいます。永劫の悪夢に落ちよ!」
 ラウラの振り下ろした氷剣が、シュラウディスの右腕を斬り落とした。剣が纏う冷気は傷口から肩までを駆けあがるように瞬く間に凍り付かせる。再度振り下ろされたラウラの剣先は、固く凍った腕に弾かれた。
 音を立てて落ちた赤い剣に、アルバは唇を噛みしめた。揺れ動く不安定な相手だからと様子を見ながら戦うことは、苦しみを長引かせるのではないか。医術の心得を利用して、一撃で彼にとどめを刺してやるのが人道というものではないか……。
「あいつは、ああやって無様でも最後までもがいて逝くことを望んでるんだ」
「私も……なんだかそう感じます。だから今の私ができることは、全力で戦うだけです」
 アルバの心中を知ってか知らずか、黒い剣を上段に構えた敬輔がそう呟き、氷の剣を前へと突き出した姿勢のラウラが相槌を打った。
 そうだ、とアルバは緩く頭を振る。戦いの中でしか昇華できない感情は、おそらく誰の中にもある。肉体を滅ぼし骸の海へ送り返すだけが今すべき戦いではないのかもしれない。
 複製した盾を城塞のように仲間たちの周囲へ重ねながら、アルバは声をかけた。
「みんな、あと少し……一緒に頑張ろう!」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

早乙女・翼
ファルシェ(f21045)と。

元々が戯れであれ、ガチ恋愛であれ。
結果的にこの領地のオブリビオン支配は瓦解してる。
この世界の奴等の支配にも綻びがこうして生まれていくんだろうな。

頑ななファルシェの表情に思う。
きっと彼のようなダンピールという存在が生まれることも、また綻びの証左なのだろうと。

友人の刃を補佐するように動くかねぇ。
背の翼より舞い上がるは紅い炎の鳥。
場にいる他の猟兵達の傷を癒しつつ。
その聖なる炎にてあの憐れな吸血鬼を焼き尽くせ。

向こうで彼女さんが待ち詫びてるだろうさ。
さっさと詫びに逝け、骸の海へ。

最後はこの館ごと焼き尽くしてやりたいけど。
支配の象徴、そして彼らの墓標は不要だから。


ファルシェ・ユヴェール
翼さん(f15830)と

……翼さんは、私と違って優しいですからね
結果は同じであろうと
救えるものもあるのでしょう

私は同族殺しの事情を汲む気はありません
かの領主も彼も、本質的には同じもの
彼等はオブリビオンであり、私達は其れを還すもの
…さぁ、覚悟は宜しいですか

鉄壁の表情の侭に告げる言葉は平坦で、其れこそ人によっては違和感を覚える程の

但し
UCを以て仕込みの刃を向けても同族殺しに抵抗の意思が見えなければ
この手は止まってしまう

…私は貴方の『敵』で
貴方は私より強い筈でしょう
剣を取りなさい、そして滅されて海に還ればいい

笑みの裏に抑え込むのは
多分苛立ちで
それはきっと、冷徹に徹する事も優しくも成れぬ自分自身への



(元々が戯れであれ、ガチ恋愛であれ。結果的にこの領地のオブリビオン支配は瓦解してる。……この世界の奴等の支配にも、綻びがこうして生まれていくんだろうな)
 翼は仲間の猟兵が築いた盾の壁の内側から、ボロボロになりながらも戦場に立ち続けるシュラウディスの姿を見ていた。憎しみでも愛情でも、戯れでも。膠着した事態の突破口になり得る感情というものの力強さを改めて感じ、知らず微笑みが漏れる。きっと隣で戦っている彼のような、ダンピールという存在が生まれることも、綻びの証左なのだろう、と翼は親友の横顔をそっと盗み見た。
「私は同族殺しの事情を汲む気はありません。かの領主も彼も、本質的には同じもの。彼等はオブリビオンであり、私達は其れを還すもの」
 仕込み杖をしっかりと握りながら、吸血鬼の姿を観察しているファルシェの表情はこれまでと変わらず柔和だ。自らに言い聞かせるように独白を重ねるその口元に浮かぶ笑みは、仮面のように本心を皮膚の下へ隠している。彼にとっては常のことだが、翼は努めて冷静さを装う平坦な口ぶりに引っかかるものを感じていた。喉元まで出かけた気遣いの言葉は、けれど今は不要だろうと飲み込む。代わりに赤い翼を広げて、いつでも彼の背を守れるようにと魔力を練り上げた。
「……さぁ、覚悟は宜しいですか」
 片腕を失って肩で息をしながら立っているシュラウディスに、仕込みの刃を向けてファルシェは己に流れる血の力を解放する。紫の瞳は赤く染まり、肉体はヴァンパイアのそれへと変わった。戦場へと駆けだし一息に間合いを詰めると、シュラウディスの首に仕込みの刃をあてがう。予想していた抵抗や反撃はなかった。
「……私は貴方の『敵』で、貴方は私より強い筈でしょう」
 片腕を砕かれたとはいっても、まだもう片方の腕で剣を振るえるはずだ。ここで何もしてこないということは、きっと何か策があるに違いない――ファルシェはさらに一歩踏み込み、刃を首筋へと強く押し付ける。じくじくと胸を蝕む何かには気付かないふりをした。
「くっ……!」
 ファルシェを突き放さんと、片腕で剣を振るうシュラウディス。まるで力の乗っていないその剣を仕込みの刃で絡めとって弾いた瞬間、ファルシェは己の胸を侵蝕していくそれが何であるかに気が付いた。
(私は今、苛立ちを感じている……?)
 どこか無力で脆い印象すら与える今のシュラウディスに対してではない。彼が同族殺しに転ずるに至った事情を汲まずに淡々と骸の海へと還す冷徹さへも、魂の浄化と安らかな眠りを祈る優しさへも成り切れず。それは、この地へ降り立った時から感じていた迷いにケリを付けられぬまま、ここまで辿りついてしまったことへの焦りと、決断できぬ自らの不甲斐なさへの苛立ちであった。
「っと、泥沼にハマる前に助けるさね」
 翼は親友の手が止まっていることに気付き、自らの赤い羽根を代償に霊鳥フェニックスを召喚する。聖なる朱い炎と癒しの白い炎を持つ不死鳥は、魔力とありったけの羽根を吸い上げて翼の背から舞い上がるように戦場へと姿を現すと、ぐるりと部屋中を旋回して猟兵たちを白い炎で癒してからファルシェの背後に位置取った。
「向こうで彼女さんが待ち詫びてるだろうさ。さっさと詫びに逝け、骸の海へ」
 翼の言葉を合図としてフェニックスはその両翼を大きく広げると、大きな火の塊となってシュラウディス目掛けて急降下した。

 虫の息だった十字皇シュラウディスを一瞬で焼き去った霊鳥フェニックスの炎は、他の猟兵が放っていた浄化の炎と混ざりあいながら領主館全体へと燃え広がっていく。支配の象徴であるこの館を残せば、村人たちの心が休まることはないだろう。それに、オブリビオンには墓標は不要だとも考えていた翼は、さっぱりとした顔で燃え盛る炎を見ていた。
(……翼さんは、私と違って優しい。結果は同じであろうと、救えるものもあるのでしょう)
 隣でいつも通りの微笑みを浮かべて炎を見ながら、ファルシェは思う。どんな境遇の敵に対しても譲歩せず、けれど祈りに似た言葉も送る。救えるものには手を伸ばす、そんな親友のような境地に至れる日がいつか来るだろうかと。

 大地に染みた悲しみを弔うように、炎はなおも燃え続ける。
 猟兵たちは各々、言葉少なにそれを見つめていた――すべてが灰燼に帰した後、穏やかな未来が芽生えるようにと祈りながら。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年12月05日


挿絵イラスト